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平成22年決算特別委員会 本文 開催日:2010-10-12

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  1. 福岡市議会 2010-10-12
    平成22年決算特別委員会 本文 開催日:2010-10-12


    取得元: 福岡市議会公式サイト
    最終取得日: 2021-05-07
    ↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1  議案審査  議案第119号ないし議案第141号、以上23件を一括して議題とし、審査を行った。  なお、質疑・意見の概要は次のとおりである。 ◯三角委員 庁用自動車母子寡婦福祉資金貸付事業高齢者施設の整備、以上3点について質問する。まず、庁用自動車について質問する。議会ごとに多くの庁用車の事故報告があるが、それぞれの賠償額は少額であっても、事故の相手方である市民の車両に損害を与え、また、運転手など市民の身体に傷害を与えることもあり、庁用者の事故は大きな問題となることも十分に考えておかねばならない。21年度における事故の総件数と、そのうち本市側に過失を有する事故及び人身が絡んだ事故の件数を尋ねる。 2 △財政局長 21年度の市長事務部局における庁用自動車の交通事故については、総件数が26件で、そのうち本市側に過失を有する事故は18件となっており、内訳は、市の100%過失事故が14件、双方責任事故が4件となっている。また、人身が絡んだ事故は、有過失事故18件のうち4件となっている。 3 ◯三角委員 他の政令指定都市や民間と比べて、本市の事故の発生状況はどうなっているのか。 4 △財政局長 事故発生件数車両保有台数で除した事故発生率で見ると、本市の21年度の事故発生率は3.1%となっている。他の政令指定都市の状況については、回答が得られた9都市の21年度の事故発生率の平均は3.7%となっている。また、民間の事故発生率は、ある損害保険会社のデータでは、全国値で4.6%、福岡県内では4.9%となっており、本市の事故発生率は他都市や民間と比べて若干低くなっている。 5 ◯三角委員 21年度に相手側に支払った賠償額は幾らか。 6 △財政局長 庁用自動車自動車保険に加入しており、交通事故による賠償額は損害保険会社から支払われているが、21年度に支払われた賠償額は302万9,000円余となっている。 7 ◯三角委員 人身が絡んだ事故の賠償額も含んでいることから、単純に割り戻しはできないとは思うが、本市に過失がある18件で割り戻すと、1件当たり約17万円が支払われている計算となる。さらに、支払額が多額となっている原因に、全体の5割を超す14件が本市側に100%の過失があるということがある。一般的に車両同士の事故は、双方が動いているので、過失責任は双方に生じることになる。過失割合100%の事故が大半を占めるということには正直驚かされるし、運転手のちょっとした確認や状況判断が不足しているとしか思えない。このちょっとした確認や状況判断が適正であれば、過失割合が100%である14件の事故は発生しなかったことになり、政令市の中でも、全国で見ても事故率が最も低い都市として誇れたのではないか。庁用者を運転する職員に対しては、事故を抑制するためどのような取り組みを行っているのか。また、事故を起こした職員には何らかの取り組みがなされているのか。さらに、ことしの3月議会において他会派の議員からも、市職員であることをもっと自覚させるために、車両が一目で本市の庁用自動車とわかるような工夫を行ってはどうかという指摘があったが、その取り組みはどうなっているのか。 8 △財政局長 安全運転に関する取り組みについては、本庁、港湾局及び各区役所において、運転登録者全員を対象とした研修を毎年開催するとともに、庁用自動車で実際に起こった事故などを題材にして、その原因や予防策などを掲載した「ストップ・ザ・事故」を毎月作成し、全職員に対し安全に関する啓発を行っている。さらに、各職場においては、職場研修や朝礼等において安全運転の励行等を指導している。事故を起こした職員に対しては、所属長による安全運転指導のほか、事故の内容に応じて適宜、自動車管理事務所より指導を行っている。また、毎年3月に適正検査や実技指導等も取り入れた特別研修を実施している。車両の表示については、車両の更新時期に合わせて、市章や文字をこれまでよりも大きくし、本市の庁用自動車であることをよりわかりやすくするようにしている。 9 ◯三角委員 地域のニーズに即応するためには、庁用自動車を活用して率先して地域へ出向くことも必要と考えている。事故を気にし過ぎて庁用自動車の運転を敬遠するようになることは避ける必要があるが、どうしてこのような事故が起こったのかと疑いたくなるような事故はなくさなければならないと思っている。先日の第2委員会でも事故報告があったが、その事故報告の内容を聞きながら唖然とした。その内容は、「当該車道は単純な道路で変化に乏しく、事故当時、交通量も少なかったことなどから、一瞬集中力が途切れ漫然運転となり、左車輪が歩道の縁石ブロックに乗り上げ歩道内に入り、福岡県が設置している道路標識を破損させた。さらに、右車輪も歩道に入り、左コンクリート擁壁に接触、この間、ブレーキを踏み続けたが、操作不能となった」というものである。あたかも道路が真っすぐで交通量が少ないのが事故原因の一部であるかのように、また、ブレーキを踏み続けたがとまらなかったと、まるで車両のブレーキに異常があったかのように読み取れる説明がなされている。通常、事故が起こること自体が考えられないような状況である。所属長も十分に調査して議会に報告していると思うが、このような認識では余りにも事故に対する責任の認識が低いと言うしかない。ことしも既に2けたの過失事故が発生しているようだが、過失事故はしっかりした認識を持ってハンドルを握ることで防げると思っている。庁用自動車やそのために掛ける損害保険も市民の税金で賄われており、庁用自動車は市民の財産であると考えるべきである。しっかり認識を持っていただき、全職員で事故ゼロを目指していただきたいと意見を述べておく。国や他の地方自治体では公用車の見直しを行っているという報道を見ることがあるが、本市でも歳入の根幹である税収が伸び悩む状況下、車両管理についても経費の抑制を積極的に図る必要がある。本市では庁用自動車としてどのような車両を保有しているのか。 10 △財政局長 本市が保有している市長事務部局及び教育委員会庁用自動車は、平成22年4月1日現在で、乗用車43台、普通貨物車17台、マイクロバス等10台、特殊用途車32台、軽自動車476台、合計578台となっている。 11 ◯三角委員 特殊用途車の内訳はどうなっているのか。 12 △財政局長 環境局のパッカー車12台、こども未来局母子巡回健康相談車2台、保健福祉局レントゲン車2台と医療防疫車4台、経済振興局の競艇場救急車と計量検査車、道路下水道局のポンプ車、教育委員会移動図書館車が各1台、区役所及び西部出張所の道路パトロール車が各1台で計8台、合計で32台ある。 13 ◯三角委員 パッカー車の業務内容について尋ねる。 14 △環境局長 本庁舎、区役所、小中学校、公民館など市の施設約600カ所から廃棄される廃棄物を定期的に収集し、清掃工場や資源化センター及び埋立場へ搬入している。また、豪雨や台風などの災害において発生した災害ごみの収集運搬に当たっており、21年度は、7月に発生した中国・九州北部豪雨による水害ごみの緊急収集を的確に行った。さらに、12年度から、子どものころからのごみ減量、リサイクルへの意識づけとして、小学校4年生を対象とした環境学習支援事業を行っているが、その際、見て、触れて、楽しんでもらうため、パッカー車による収集実演を行い、環境への理解が深まるよう取り組んでいる。なお、21年度は、小学校141校、約1万2,000人の児童に対し実施している。 15 ◯三角委員 市の施設については、なぜ直営による収集を行っているのか。 16 △環境局長 本市では、一般家庭ごみは委託収集、事業系ごみは許可収集、市施設から発生したごみは直営収集を行っている。直営収集は、事業者としての自己処理責任を果たすとともに、収集業務などの経験やノウハウは、その後の工場へのごみ搬入者などに対する的確な指導に生かされることから、最少限の配置で実施している。さらに、豪雨や台風などの災害において発生したごみの緊急収集も担っている。
    17 ◯三角委員 直営収集を行うため、どのような体制で車両が配置されているのか。 18 △環境局長 パッカー車については、廃棄物の収集を効率よく行うため、市内を3分割し、3カ所に事業所を配置している。また、パッカー車1台に対して、運転手1人と積み込みを行う環境業務員2人の合計3人による体制で運営をしている。 19 ◯三角委員 パッカー車1台の購入経費、更新時期、この業務に直接かかわる人件費はどうなっているか。 20 △財政局長 パッカー車の購入経費については、19年度に1台購入しており、その価格は772万円余となっている。また、更新時期については、買いかえ基準を8年としているが、予算の状況や車両状態を見ながら更新を行っている。 21 △環境局長 パッカー車1台当たりの直接人件費については、おおむね1,819万円である。 22 ◯三角委員 市の事業者責任として事業を継続しているとのことだが、市内の民間事業者事業者責任という点では同じだと考える。市内の民間事業者はどのような方法で事業者責任を果たしているのか。 23 △環境局長 民間事業者が排出する事業系一般廃棄物については、事業者が直接市の清掃工場や埋立場に搬入する自己搬入と、市が許可した業者に収集を依頼する方法がある。 24 ◯三角委員 私の知る限りでは大半が市が許可した民間業者に頼んでいるのではないかと思う。3事業所の維持経費や車両経費、人件費を単純に計算すると年間2億1,828万円にもなっており、市のごみ収集に係る業務のすべてがなくなるとは思わないが、公的施設のごみ収集を民間業者に依頼することで、経費の削減が図られ、さらに、委託を受けた民間業者は企業収益の増加につながり、ひいては市税の増加にもつながるなど、その効果は非常に大きな結果となるものと考える。多くの職員もかかわっていることから、一気に切りかえることが困難であることも理解できるが、当該業務専門の職員採用などはこの際停止し、市長も日ごろから言っているように少しずつでも民でできることは民に任せるべきである。財政健全化と民間の業務拡大により雇用創出につながると思われる業務の見直しについて検討すべきと思うが、市長の所見を伺う。 25 △市長 現在、最少の経費で最大の効果が発揮できるように、民間能力の活用、または指定管理者制度の導入など、簡素で効率的な市役所づくりを着実に進めている。現在、市の施設から発生したごみや資源物の収集については、市の直営で行っている。あわせて水害とか地震などで発生するごみに対しても直営で行っており、緊急かつ的確な収集体制が可能になっている。市施設のごみの収集、運搬に関しては、今後の業務量の推移を見守りながら、適切な対応に努めていきたいと考えている。 26 ◯三角委員 何度も申し上げるが、本市の最大の課題でもある財政健全化の指標の一つである、民でできることは民に任せるという視点で検討を行うよう要望しておく。次に、母子寡婦福祉資金貸付事業について質問する。母子寡婦福祉資金貸付事業の21年度の決算状況と収入未済額の増減状況はどうなっているのか。また、本事業の目的、用途、貸付条件はどうなっているのか。 27 △こども未来局長 21年度の決算額については、歳入額9億3,500万円に対して、歳出額5億7,200万円であり、差し引き3億6,300万円を翌年度に繰り越している。主な歳入としては、償還金収入5億9,000万円と前年度からの繰越金3億1,100万円となっている。また、主な歳出としては、貸付金が5億3,800万円であり、このほかに電算システムの再構築費用や償還指導に伴う嘱託員の報酬などが3,400万円となっている。また、収入未済額は前年度から1億6,700万円増加している。貸し付けの目的については、母子及び寡婦福祉法で定められており、母子家庭等経済的自立と生活の安定、児童の福祉の増進を図ることとなっている。貸し付けの用途については、貸し付けには就学資金、技能習得資金、転宅資金など12種類の資金があり、資金ごとに用途を定めている。最も多く貸し付けを行っている就学資金の場合では、児童の就学に際し必要な授業料等の経費を賄うものである。貸し付けの条件については、本貸付金は過去に資金を借りた人からの償還金を原資に運用していることから、借り入れ後の返済を担保するために、市税等に滞納がある人等を除くなど一定の条件を設けている。 28 ◯三角委員 本市の貸付件数及び貸付金額は、全国の中でも非常に多い状況であると聞いているが、現状はどのようになっているのか。 29 △こども未来局長 21年度の貸付件数は、1,476件で、政令市の中では2番目に多い状況である。また、貸付金額は、約5億3,800万円で、政令市の中では4番目に多い状況である。なお、貸付件数は17年度から、また、貸付金額は19年度から減少を続けている。 30 ◯三角委員 償還状況が悪い現状においては、償還金だけでは貸付金の原資が不足することになると思うが、どのように対処しているのか。 31 △こども未来局長 母子寡婦福祉資金の原資は、貸し付けを受けた人からの償還金と前年度からの繰越金で賄うこととしているが、それでも不足するときは、不足する額の3分の2を国から借り入れ、残りの3分の1を一般会計から繰り入れることとしており、本市では長年にわたって国からの借り入れを行ってきた。しかしながら、20年度から担当主査を配置して業務全般の抜本的な見直しを行い、償還機能を強化するとともに、貸し付けの適正化に努めてきた。その結果、21年度の償還金収入額が当該年度の貸付額を上回り、21年度は国からの借り入れが不要となっている。これにより貸し付けの原資は償還金で賄っていくという事業本来の形となっており、事業の健全化が図られつつあると考えている。 32 ◯三角委員 21年度は国からの借り入れが不要となり、健全化が図られつつあるとしている一方で、収入未済額が1億6,700万円も増額しているが、どのような制度になっているのか。また、収入未済額がこれほど増加している要因は何なのか。 33 △こども未来局長 貸付金の返済は、貸し付け終了後または貸し付けに係る就学期間等の終了後、一定の据え置き期間を経た後に開始することになる。収入未済額については、償還率が100%ではないので、毎年度収入未済が発生し、その累積により未済額が増加している。なお、収入未済額が増加している背景としては、近年、最も多く貸し付けを行っている時期の返済が始まったことにより、返済の対象となる現年度調定額が増加している状況がある。また、経済基盤のぜい弱な母子家庭が対象であること、経済状況の悪化に伴い就労状況が不安定となっていることなどにより償還に支障を来たしていることが増加の大きな要因と考えている。 34 ◯三角委員 収入未済額が増加する状況を解消するために従来から対策を行っていると思うが、その内容について尋ねる。 35 △こども未来局長 償還指導については、従来から督促状や催告書による文書指導のほか、市役所からの電話指導、償還指導員による訪問指導を行っている。なお、20年度からは、口座振替の原則化、償還開始前の一斉説明、初期段階滞納者に対する重点的な指導など新たな滞納をふやさないことに重点を置いた取り組みを進めるとともに、電算システムの再構築、貸付基準の見直しなど貸し付けの適正化にも努めてきた。この取り組みにより、21年度の現年度償還率は前年度から4.7%増となり、改善されている。 36 ◯三角委員 償還率が21年度に4.7%増と改善したとはいえ、償還率は70.5%と、依然として3割が収入未済となっている。それ以前の償還率はおおむね65%程度となっており、収入未済はふえ続け、現在では累計額が27億円に達している。また、20年度決算を調べてみると、一般会計からの繰り入れが約7,000万円、さらに市債が1億1,300万円となっており、民間であれば、この事業は既に破綻していると言ってもおかしくない。このような現状を踏まえても、母子寡婦福祉資金事業を続けていく必要はあるのか。 37 △こども未来局長 本事業は、経済基盤がぜい弱である母子家庭及び寡婦家庭に原則無利子で貸し付けを行う制度であり、生活の安定及び経済的自立、児童の福祉の増進を図ることにおいて極めて重要な事業であり、今後とも継続していく必要があると考えている。 38 ◯三角委員 この制度が母子世帯にとって有意義な制度であることはある程度は理解できるが、給付金ではないので、現在の償還状況をこのまま見過ごすことはできない。この制度を本当に意義あるものにするために、今後どのような取り組みを行っていくのか。 39 △こども未来局長 償還指導の対象が経済基盤がぜい弱な母子家庭であることを考えると、指導が困難な面もあるが、一方で、収入未済が増大する現状は決して看過することができない状況であると認識している。今後も、新たな滞納をふやさないことに重点を置いた取り組みをさらに充実するとともに、滞納解消に向けた取り組みを強化していく。 40 ◯三角委員 給食費及び教育振興会の育英資金の21年度決算における滞納状況と比べてみると、給食費は、滞納累積額が2億2,991万円余で、収納率が98.7%、育英資金は、滞納累計額が6億2,827万円余で、収納率が90.2%であり、母子寡婦福祉資金事業のほうが滞納累積額が大きく、また、収納率も低くくなっており、本事業においては収納対策により一層積極的に取り組むよう要望しておく。次に、高齢者施設の整備について尋ねる。我が国は世界に例を見ないスピードで少子高齢化が進展しており、さらに、いわゆる団塊の世代も高齢者となることから、今以上に要介護者の増加が予想される。比較的若い都市と言われる本市も例外ではない。高齢化のほか、本市は、大都市ゆえの地域のつながりの希薄化や、相互に助け合う地域社会の醸成が不十分であるという状況もある。このような状況下で自宅での生活が困難となった要介護高齢者が入所あるいは地域で利用できる施設としてさまざまな施設が求められているが、その中でも中心的な施設として市の認可を受けて整備される特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護事業所、認知症高齢者グループホームの21年度末の整備数について尋ねる。 41 △保健福祉局長 高齢者施設等の整備については、21~23年度を計画期間とする第4期介護保険事業計画に基づき整備を進めている。21年度末の整備状況は、特別養護老人ホームが3,502人分、小規模多機能型居宅介護事業所が14カ所、認知症高齢者グループホームが1,312人分となっている。 42 ◯三角委員 介護が必要になった高齢者は、住みなれた自宅や地域の中で親しい人たちとともに最後までその人らしい人生を送りたいと望んでいるが、小規模多機能型居宅介護事業所は、今までの人間関係や生活環境を変えることなく利用できるよう、通いを中心に、訪問、泊まりの三つのサービス形態が一つの事業所で、また、24時間切れ目なくサービスが提供されるため、地域での生活を長く続けるための切り札的サービスになっていると聞いている。小規模多機能型居宅介護事業所の区別の事業所数について尋ねる。 43 △保健福祉局長 21年度末現在で、東区1カ所、博多区ゼロカ所、中央区2カ所、南区2カ所、城南区2カ所、早良区4カ所、西区3カ所の合計14カ所となっている。 44 ◯三角委員 私も実際に東区香椎にある小規模多機能ホーム「いやしの宮前」を訪問したが、1人1人のニーズに合わせた介護プランを立て、身近な地域でその人らしい過ごし方を支援していた。この施設は東区に唯一ある小規模多機能型居宅介護事業所であり、利用希望も多いようだが、利用者を車で15分以内の移動距離の地域に限定しているとのことである。超高齢社会と言われる現状の中、できるだけ高齢者が住みなれた地域で、安心できる環境のもと、介護サービスを利用しながら生活していくことが大切だと考えている。小規模多機能型居宅介護事業所は、平成18年の介護保険制度改正により創設された地域密着型サービスだが、東区では1施設、博多区ではゼロと整備が進んでいない。待機児童の問題と同様に介護を必要としている高齢者がいる共働き世帯では、夫婦のどちらかが仕事をやめなくてはならない状況にもなっている。小規模多機能型居宅介護事業所は、その機能から見て、中学校校区に一つは必要な施設だと考えるが、今後の整備方針を含め、所見を伺い、質問を終わる。 45 △保健福祉局長 本市では、地理的条件、高齢者人口等を勘案し、整備計画の単位として39の日常生活圏域を設定しており、第4期介護保険事業計画において、日常生活圏域程度の39の小規模多機能型居宅介護事業所の整備を目標としている。22年度は、既に開設されている博多区の1カ所を初めとして計9カ所を整備することとしており、22年度末までに全市で23カ所を整備する予定である。さらに整備を促進するため、23年度末までとなっている国の緊急経済対策による補助金を活用し、事業所の整備が図られるよう取り組んでいく。 46 ◯鬼塚委員 都市公園におけるスポーツ施設の維持管理、視覚障がい者に配慮した誘導用ブロックの整備の2点について質問する。まず、都市公園における有料の野球場やソフトボール場などについて尋ねる。私は長年ソフトボール協会と軟式野球協会の役員をしている関係で、雁の巣を初め多くの球場で開催されるソフトボールや軟式野球の大会に参加する機会があるが、役員や関係者からは、グラウンドを申し込んでもなかなかとれないという声が多く寄せられていたことから、グラウンドの新設を要望してきた。このような状況の中、東区香椎浜公園には、平成16年に1面、さらに平成19年にも1面、本部席を備えた硬式野球場として大きな大会も誘致できるすばらしい施設が整備され、関係者からも喜ばれていた。しかしながら、先日、軟式野球の市長杯大会が開催された香椎浜公園野球場に出向いたが、整備後3~6年しか経過していないにもかかわらず、内野部分のグラウンドと外野の芝生との境に大きな段差ができていたり、ピッチャーマウンドや練習用ブルペンのマウンドの土が流されていたりと、施設の傷みがひどくなっている様子が見受けられた。雨天時にはファールラインの芝生がはがれてくぼみができたり、雨水が川のように流れることもあるということである。私は多くのソフトボールや軟式野球の大会に参加させていただき、さまざまなグラウンドを見ているが、どの球場も傷みがひどいようである。また、利用者からは、「市のグラウンドの維持管理はどうなっているのか」、「常駐の管理人がいるのに、かぎのあけ閉めしかしていないのか」、「グラウンド整備はしないのか」などさまざまな苦情も出ており、香椎浜公園野球場でも複数の人から同様の質問を受けている。まず、有料の野球場やソフトボール場の維持管理経費について、最近3年間の推移を尋ねる。 47 △住宅都市局長 運動公園などの広域的な公園を除き、香椎浜公園などの地域に身近な公園内にある野球やソフトボールができる有料施設は市内12公園で14施設あるが、その維持管理経費の過去3年間の決算額については、19年度3,400万円余、20年度3,500万円余、21年度3,000万円余となっている。 48 ◯鬼塚委員 これらの野球場等の維持管理はだれが行っているのか。 49 △住宅都市局長 これらの公園の管理を委託している(財)福岡市森と緑のまちづくり協会において、年間の維持管理計画や、これに基づく作業計画の作成、施設の調査点検など総括的な管理業務を行った上で、地域ごとに委託を受けた民間事業者において、現場での日常的、具体的な維持管理業務を実施している。 50 ◯鬼塚委員 民間事業者の年間管理業務とはどのような業務を行っているのか。 51 △住宅都市局長 専門的な業務と管理人等による日々の業務からなっているが、専門的な維持管理業務については、主として外野部分の芝刈り、専門の車両や器具等を用いたグラウンドの整地などで、年に数回実施している。また、管理人等による日々の維持管理業務については、施錠や駐車場の施錠の管理、グラウンドの点検や軽易な整地、ライン引き、散水、施設内の軽易な清掃や除草などとなっている。 52 ◯鬼塚委員 市民に安全で気持ちよく利用してもらえるよう、しっかり予算を確保し、全力を挙げて施設の維持管理を行うべきと考えるが、今後どのように施設の維持管理を行っていくのか、当局の決意を伺う。 53 △住宅都市局長 近年、野球場等を利用される人が多く、利用時間を最大限活用してスポーツを楽しんでいただいており、その中でグラウンドの整地の時間が十分に確保できない場合があるほか、競技用スパイク等の利用や最近の集中豪雨の影響などでグラウンドの荒れが起こりやすくなっていることなどにより、一部の野球場等で十分な整地等ができていない状況が出ていると認識している。今後とも、市民に安全かつ快適に利用していただけるよう、日常的な点検の徹底や必要に応じて速やかにグラウンド整地を実施するなど、予算の効率的かつ効果的な執行を図りながら、公園施設の適切な維持管理に努めていく。 54 ◯鬼塚委員 市の財政状況も厳しいとは思うが、多くの要望もあることから、今後ともしっかりグラウンド整備を行っていくよう強く要望しておく。また、ソフトボールや軟式野球など各種団体から、グラウンドの利用申し込みをしてもなかなかとれないという声をいまだによく聞くが、まだまだ市民のスポーツ利用に対してグラウンド数が圧倒的に不足していると感じており、関係者の意見を聞きながら、今後とも整備を進めるよう要望しておく。次に、視覚障がい者に配慮した誘導用ブロックの整備について尋ねる。私は、多くの市民が安全で住みやすいまちづくりを望んでいることから、これまでも道路の管理や街路灯、地下鉄の管理について質問をしてきた。本年6月の定例会で質問した海外からの観光客にもわかりやすい駅ナンバリングについては、早速前向きに検討され、平成23年春には導入されることになったが、今後、観光客など初めて地下鉄を利用する人にとっても大変利用しやすい地下鉄となると考えており、大いに期待している。このようにあらゆる人々が安全で安心して暮らせる、人に優しいまちづくりは、アジアの玄関口として発展する本市においては非常に重要なことと考えている。先日、一般的には点字ブロックと言われている視覚障がい者誘導用ブロックの破損を取り上げた新聞報道があった。視覚障がい者の方々は、道路などを通行する際、誘導用ブロックを頼りに通行しており、この維持管理は非常に重要なことである。国においては、平成12年に、高齢者、障がい者、妊婦、けが人などを含め、すべての市民が移動を円滑に行えるようなまちづくりの取り組み、いわゆるバリアフリー化に関する交通バリアフリー法が制定され、さらに、平成18年には交通バリアフリー法とそれまでの建物に関するハートビル法が統合拡充される形でバリアフリー新法が制定されている。本市においては、交通バリアフリー法に基づき、平成13年に福岡市交通バリアフリー基本方針が策定され、鉄道駅周辺で高齢者や障がい者の方などが利用する官公庁や福祉施設などが複数ある地区を重点整備地区として11カ所指定し、優先的に道路の段差解消や視覚障がい者誘導用ブロックの設置などの取り組みがなされている。しかし、町じゅうの誘導用ブロックの破損や未設置などの不備を放置することは、広い意味で視覚障がい者の人権侵害に当たるとして、福岡県人権擁護委員連合会が実態調査を行い、施設管理者である自治体に改善を求めるとの新聞報道があった。また、東区松島においては、子どもや障がい者などが歩きにくいまちになっていないか点検するセーフティーチェックが平成22年9月26日に行われ、誘導用ブロックの破損などについて今後市に改善を要望するとの新聞報道もあった。視覚障がい者に配慮した道路の整備について、本市のバリアフリー重点整備地区における道路整備の考え方及び整備計画延長、21年度までの整備延長並びに21年度の決算額を尋ねる。 55 △道路下水道局長 バリアフリー重点整備地区については、平均利用者数が1日当たり5,000人以上の鉄道駅を中心に、おおむね半径500m以内に高齢者や障がい者の方がよく利用する官公庁や福祉施設などが複数ある地区を指定しており、現在11地区ある。その重点整備地区内の鉄道駅と各施設を結ぶ道路を特定経路として優先的にバリアフリー化を進めている。重点整備地区の整備計画期間は14年度から22年度までとし、特定経路約34kmの整備を行うこととしている。21年度までの整備延長は約24kmで、71%の整備率となっている。なお、11地区中2地区の整備が完了している。21年度の決算額は12億8,200万円余である。 56 ◯鬼塚委員 これまでに私が独自に調査した箇所においても、誘導用ブロックがマンホールや障がい物を避けるなどして整備されている事例があった。また、電柱などが誘導用ブロックに近接して歩行の支障となっている箇所も見受けられた。誘導用ブロックは利用者に対する方向の誘導や危険回避のための有効な手段であり、その適切な整備は安全安心な道路に欠かせないものであると考える。視覚障がい者の誘導用ブロックは、どのような基準や考え方に基づいて設置しているのか。 57 △道路下水道局長 福岡市福祉のまちづくり条例に基づく敷設整備マニュアルを整備基準とし、利用者が連続性を持って最短距離で移動できるように、原則として直線的に設置している。 58 ◯鬼塚委員 マンホール上の誘導用ブロックの施工方法や誘導用ブロックの整備に支障となる電柱類の移設等について、工事の前に占有者と協議を行う必要があると考えるがどうか。 59 △道路下水道局長 歩道の整備に当たっては、設計や工事の前に、マンホールや電柱などの管理者とその占用位置などについて協議調整を行っている。しかしながら、電柱が誘導用ブロックに隣接して歩行の支障になっているところや、マンホールがブロックを遮る位置に設置されるなど支障のある箇所も見受けられるので、今後はより一層連携を密にしながら、安心して通行できる歩行空間の整備に努めていく。 60 ◯鬼塚委員 都市計画道路の福岡空港線における誘導用ブロックについて、地下鉄空港線が開通した平成5年3月に福岡空港駅の4番出入り口から空港3丁目地内までの歩道には誘導用ブロックが設置されていたが、空港前4丁目地内の約200mには未設置だった。その後、平成14年に実際された東平尾までの道路拡張工事の際に、東平尾までの間の歩道に誘導用ブロックが設置されたが、そのときも3年もの間、未設置の状態となっていた。このような連続性のない整備状況を目の当たりにして、本当に視覚障がい者のために設置されているのかという疑問を持ったことから、当時、博多区役所の維持課に相談し、設置されたという経緯がある。東平尾公園周辺の状況を見てみると、月隈6丁目パークゴルフ場交差点から立花寺東の交差点までは誘導用ブロックが設置されている。その中間には横断歩道があり、そこには視覚障がい者用の押しボタン式が設置されている。この間は視覚障がい者のために必要ということで誘導用ブロックが設置されていると思うが、東平尾3丁目地内からパークゴルフ場前の交差点までの約1.5kmの区間は今でも未設置となっている。また、ユニバ通りにおいては各交差点ごとに誘導用ブロックが設置されているが、交差点と交差点を結ぶ歩道には誘導用ブロックが設置されておらず、連続性がない状況となっている。ほかにもこのような例はよく目にする。そのような箇所において、まずは誘導用ブロックだけでも整備を行い、連続性を確保すべきと考えるがどうか。 61 △道路下水道局長 誘導用ブロックの設置については、現在、福岡市交通バリアフリー基本方針に基づき、重点整備地区を優先して整備を進めているところである。また、地区外の路線についても、道路の新設や改築補修とあわせて誘導用ブロックを設置している。整備完了の路線においても、今後優先順位をつけて誘導用ブロックの設置を進めていきたいと考えている。 62 ◯鬼塚委員 誘導用ブロックは、天神や博多駅周辺の都心部や幹線道路を中心に整備されてきているが、天神から渡辺通方面へ歩いていくと、はがれやがたつきなどのふぐあいがある誘導用ブロックを見かける。特に駐車場等の出入り口では多く見かけるように思う。先日、渡辺通を歩いていたら、渡辺通2丁目バス停の交差点には、誘導用ブロックがはがれアスファルト補修のままとなっていたが、本当に視覚障がい者のことを考えて対応しているのかと疑問に感じる。交差点は危険を促す場所であり、視覚障がい者に配慮した対応を行うよう要望しておく。また、ほかにも誘導用ブロックに置き看板や自転車が放置され、通行の障害となっている状況も多く見受けられる。このような状況では余り良好に維持管理されているとは言えないと思うが、誘導用ブロックの点検や補修の必要性の判断はどうしているのか。また、違法な看板や放置自転車については撤去させるなどの措置が必要と考えるが、どのように対応しているのか。あわせて、このような誘導用ブロックの補修費用は、舗装などの維持補修費と同様の予算の中から捻出していると思うが、21年度の補修面積、補修費用、及びその補修が市の管理道路面積の何%になるのか尋ねる。 63 △道路下水道局長 区役所が現在行っている歩道の点検については、穴ぼこや段差など歩行者全般の安全性確保を主体としたものである。そのため、誘導用ブロックの補修については、がたつきやブロックの破損など歩行に支障を来たすものについては行っているが、溶着タイプの誘導用ブロックの部分的なはがれの補修までは行っていない状況である。また、誘導用ブロックの支障となっている路上に放置された置き看板や自転車については、所有者へ撤去の指導等を行っているが、所有者が従わない場合は本市で移動や除却等を行っている。21年度の道路補修面積は約23万6,000m2で、補修費用は16億8,593万円余である。また、その補修面積の管理道路面積に占める割合は約1%である。 64 ◯鬼塚委員 せっかく整備された誘導用ブロックも、維持管理が適切に行われていなければ、かえって利用者にとって危険なものとなる。特に高齢者や障がい者などの利用が多いバリアフリーの重点整備地区においては注意する必要があると思っており、今後とも安全安心な道路として市民が利用していくためには、適切な維持管理が重要であると考える。道路の改築が進む中、今後、道路の補修など維持管理に重きを置いた予算の配分が必要と考えるがどうか。 65 △道路下水道局長 道路の維持管理については、道路の整備が進むとともに管理する延長や面積もふえているが、道路はだれもが安心して使えるよう良好な状態に保持しなければならない。しかしながら、道路の新設や改築の要望もいまだに非常に多い状況である。このような中、限られた予算の中で道路改良と維持管理の両面から各区ごとの特性を踏まえ予算配分を行っていきたいと考えている。 66 ◯鬼塚委員 誘導用ブロックについては、利用者の視点に立って点検することが最も重要であると考えるが、これまでに利用者の意見を取り入れながら点検を実施した事例はあるのか。 67 △道路下水道局長 団体や個人の利用者とともに行う点検については、区役所が地元や警察などと通学路や校区の危険箇所などについて現地調査を行っている。また、障がい者団体等からの申し出や要望に対してもその都度点検し、誘導用ブロックなどの改善を行っている。 68 ◯鬼塚委員 交通局においては、開業当初から駅施設のバリアフリー整備について取り組んでおり、とりわけ平成17年2月開業の七隈線においては、バリアフリー整備にとどまらず、だれもが利用しやすいユニバーサルデザインに基づいた先進的な施設整備を行っており、国内だけではなく、中国や韓国などからも視察に来ていると聞いている。しかし、現在の地下鉄駅の誘導用ブロックは、長年の利用で破損や磨耗により損傷している箇所も見受けられ、このままでは、視覚障がい者の安全安心で円滑な移動を確保するための誘導用ブロック本来の目的を達成することができず、かえって利用者に不便をかけることになる。交通局では、誘導用ブロックの維持補修について、21年度はどのように取り組み、また、決算額はどうなっているのか。 69 △交通事業管理者 誘導用ブロックの維持補修については、19年度から計画的に実施しているが、21年度は、博多駅及び東比恵駅の階段やコンコースにおいて誘導用ブロックの張りかえ等の補修工事を実施し、費用は約328万円となっている。 70 ◯鬼塚委員 先日、所用で千代県庁口駅を利用したところ、張りつけの誘導用ブロックがはがれているものを見つけた。そこで詳しく調べたところ、1番出入り口で2枚、2番出入り口で6枚、3番出入り口で14枚、4番出入り口で1枚、5番出入り口で2枚、7番出入り口で14枚、8番出入り口で12枚、さらに、ホームからコンコースへ上がる階段のところで2枚、合計で53枚もの誘導用ブロックのはがれ箇所が見受けられた。しかし、その後に確認した呉服町駅ではふぐあい箇所が一つもなかった。誘導用ブロックの維持管理ができている駅とできていない駅があるが、各駅の誘導用ブロックの維持管理はどのように行われているのか。 71 △交通事業管理者 空港線・箱崎線においては、駅の地上出入り口やホーム、コンコース間の階段部分の誘導用ブロックが、利用者の通行や雨水の浸入等により部分的な剥離や磨耗、破損が発生しているところがある。その維持管理については、駅務員や担当職員がパトロールを行い、ふぐあいな箇所については早急に補修を行っている。また、各駅における誘導用ブロックの補修等は計画的に行っているが、誘導用ブロックの劣化等が進んでおり、補修等が不十分な箇所があるのが実情である。 72 ◯鬼塚委員 公共交通機関の旅客施設である地下鉄駅において、誘導用ブロックは視覚障がい者の安全性と利便性を確保する手段として重要な役割を果たしている。地下鉄の経営は厳しい状況であり、予算との兼ね合いもあると思うが、障がい者の方が安心して地下鉄を利用できるように優先して補修等に取り組むべきと考える。今後、誘導用ブロックの補修等にどのように取り組んでいくのか。 73 △交通事業管理者 交通局では、人に優しい地下鉄を目指して、地上からホームまで高齢者や体の不自由な方々が円滑に移動できるように、バリアフリー化を開業当時から進めてきている。誘導用ブロックの補修等については、福岡市福祉のまちづくり条例に基づく施設整備マニュアル等を踏まえながら、視覚障がい者の方が安全に、また、安心して地下鉄を利用できるように、計画的にふぐあい箇所の解消に取り組んでいきたいと考えている。 74 ◯鬼塚委員 今回の新聞報道にあった福岡県人権擁護委員連合会から、誘導用ブロックの不備に関する調査報告が提出された際には、その要望を真摯に受けとめ対応するとともに、今後、目の不自由な人など交通弱者と言われる方々の意見を十分に聞き、連携しながら道路事業などを進めていくことが重要と考えている。最後に、視覚障がい者に配慮した誘導用ブロックの維持管理に対する市長の所見を尋ねて、私の質問を終わる。 75 △市長 本市の歩道整備は、ユニバーサルデザインの理念に基づき、子ども、高齢者、障がい者などすべての人が移動しやすく、そして、社会活動、経済活動への参加が促進されるよう、安全安心な道づくりを進めている。また、整備が完了した道路についても、常に良好な状態に保つことが必要であり、維持管理の重要性がますます高まっていると考えている。誘導用ブロックの維持管理についても、視覚障がい者の方々の意見を伺いながら、点検マニュアルに利用者の視点を入れるとともに、現場の点検を一緒に行うなど、良好な維持管理と施設の改善に努めていきたいと考えている。 76 ◯松野委員 障がい者の就労支援と特別支援教育のあり方、アイランドシティのまちづくりとアジア戦略、以上2点について質問する。まず初めに、障がい者の就労支援と特別支援教育のあり方について尋ねる。21年度の障がい者就労移行事業所の利用者数と就労実績はどうなっているのか。 77 △保健福祉局長 就労移行支援事業所の月平均の利用者数は173人、就労者数は41人となっている。 78 ◯松野委員 これまでも障がい者の就労については、多くの議員から質問されてきたが、障がい者の就労の実態は、依然として厳しいものがある。21年度の本市の障がい者就労支援センターの決算額及び主な事業内容について尋ねる。また、これまで保健福祉局教育委員会などは、障がい者・障がい児の就労促進に向け、就労支援センターとの連携を密にすると答弁しているが、どのように連携し、前年度と何が変わったのか尋ねる。 79 △保健福祉局長 障がい者就労支援センターの21年度の決算額は1億1,825万円余である。障がい者就労支援センターでは、ハローワークなどの関係機関や企業との連携を図りながら職場開拓を行うとともに、障がい者雇用に係る総合相談やジョブコーチによる人的支援、雇用に関する情報提供、職場定着を促進するサタデーカフェなどの事業を行っている。就労した障がい者数は、20年度126人であったが、国の緊急雇用創出事業の活用などもあり、21年度は150人が就労しているが、21年度からは、就労支援を行っている事業所の職員に対し、障がい者就労支援センターのジョブコーチが就労支援に関する技術的支援を行う事業を実施している。また、保健福祉局では、教育委員会と連携を図り、特別支援学校生徒も含めた障がい者インターンシップ事業を実施している。今後とも連携を密にしながら、障がい者雇用に対する理解と雇用の促進に取り組んでいきたいと考えている。 80 △教育長 就労支援センターとの連携については、教育委員会が主催する就職連絡会議において、就労支援センターの所長も委員として出席しており、その中で障がい者就労支援の事例を紹介したり、特別支援学校の進路指導に関し専門的な立場から意見をいただいている。さらに、21年度は、就労支援センター所長を研修講座の講師として招聘し、特別支援学校、特別支援学級の教職員に直接障がい者就労に向けて学校が取り組むべき事柄や就労支援センターの就労支援の取り組みについて話しをしていただいた。 81 ◯松野委員 ことしの6月議会において、我が会派の議員からも障がい者施設製品の統一ブランド化やブランドマーク化の提案がなされ、「ときめきプロジェクト2010」において協議するとの答弁があっていた。私は、先月、大分県内9法人12施設で構成された「チャレンジ!おおいた福祉共同事業協議会」という福祉事業所が行っている障がい者施設の共同受注支援事業を視察してきた。20年度の大分国体に出場した選手へのお土産、記念品として共同でクッキーを製作するために協議会が結成されたということであった。現在、大分県では21~23年度まで国が行っている緊急雇用創出事業基金を活用して、県庁舎1階ロビーに「けんちょうのパン屋さん」という店舗を開設して、加盟施設が共同制作したパン、クッキー、せんべいなどを販売し、大変好評を博しており、障がい者の皆さんも生き生きと働いていた。同時に、県と同協議会は現在防災関連の備蓄用クッキーの企画、開発に取り組んでおり、製品のめどが立ち次第、県が先頭に立って県下の市町村や官公庁の優先発注に取り組み、販路の拡大とともに工賃アップを目指しているということであった。この秋に本市で開催される「ときめきプロジェクト2010」においても、優秀と認められた製品をバックアップすることで全体の底上げを図る予定だと聞いている。障がい者施設製品の売り上げの成否に行政の支援が欠かせないことは当然であるが、一方で施設の運営者側の経営感覚も大変重要であると日ごろから感じている。障がい者施設製品、各施設が他者との差別化を図ると同時に、施設同士が横の連携を強化して、それぞれが商品の企画販売においてスキルアップを図り、統一ブランドにより売り上げを拡大させ、工賃の向上を図ることも大事であると感じた。今後、本市においても、共同事業の支援などにより施設のスキルアップを図り、また、統一ブランド化により売り上げをふやし、工賃のアップを推進すべきと思うがどうか。 82 △保健福祉局長 「ときめきプロジェクト2010」は、社会で活躍する障がい者や魅力的な障がい者施設の商品について広く市民に周知し、障がい者の就労を支援していくために実施している。今年度は、障がい者施設の商品コンクール「ときめきセレクション」の実施や、その入賞商品のPRイベント「ときめきCITYふくおか」の開催などを進めているところである。また、経済振興局の事業として、障がい者施設へのアドバイザー派遣、ビジネス商談会の開催なども計画しており、一体となって障がい者施設の支援を進めていく。今後の取り組みについては、現在、障がい者施設関係者のほか民間事業者や学識経験者などで構成する「ときめきCITYふくおか」実行委員会において検討を進めているところである。今後実施していく具体的な事業内容については、提案いただいた趣旨を踏まえ、実行委員会でも議論いただきながら、効果的な販売促進策について検討を行い、障がい者施設の商品の売り上げ増を図っていきたいと考えている。 83 ◯松野委員 経済振興局が行っている商店街空き店舗等活用事業の概要を尋ねる。 84 △経済振興局長 商店街、NPOや社会福祉法人といった公益活動団体、学校などが商店街の空き店舗を継続的に賃借し、集客施設や活動拠点などとして有効活用を図り、商店街のにぎわいに寄与すると認められる場合に、これらの出店者に対して賃借料、改装費の一部を助成する制度である。 85 ◯松野委員 そのうち障がい者施設製品関連店舗の現状を尋ねる。 86 △経済振興局長 22年度に商店街空き店舗等活用事業を活用してNPO団体が箱崎商店街内に出店している「箱崎翔店」は、障がい者の就労施設としてプリンの製造販売を行っている。このNPO団体は、商店街に加入し、ともに可能な協力と連携の関係を築いている。また、店舗の一部を地域の交流の場として開放し、障がい者の自立、就労などの啓発につながることを目指している。なお、製造している「ひだまりのぷりん」は、「ときめきセレクション2010」に出品しており、口コミを中心に地域での人気も高まっていると聞いている。 87 ◯松野委員 大変すばらしい取り組みだと思う。今後、障がい者の皆さんと地域の輪が広がり、さらなる好循環を生むような成果につなげていただきたいと思っている。そのためにも、経済振興局においては、空き店舗等活用事業で多くの障がい者と地域住民との交流の場が確保できるよう制度の柔軟な運用を図るとともに、保健福祉局において取り組んでいるときめきプロジェクトにおいても、障がい者施設商品の販売、PRの場として空き店舗活用事業を広く活用してもらいたいと考えている。今、地域にとって大変重要で、かつ、重い課題である高齢者の孤立や子育てにまつわる事件、あるいは長期にわたるひきこもりなど、地域関係者や民生委員の負担は大変大きく、以前から我が会派も対策の強化を訴えている。将来的には、商店街支援策と障がい者支援策、高齢者支援策をタイアップさせ、地域の交流拠点や地域住民の居場所づくりにつなげるために、今後全庁的な取り組みに広げることを強く要望しておく。今年度の就職採用は前年度以上に厳しい状況だと聞いているが、21年度の高卒者の就職状況はどうなっているのか。 88 △教育長 平成22年3月に高校を卒業した生徒の就職率は、市立高校では96.0%となっている。なお、福岡県全体では93.2%、全国で91.6%となっている。 89 ◯松野委員 景気回復にはまだ遠く、企業の厳しい財務状況から考えても、社会的には一定の訓練期間が必要である高卒者は特に就職を勝ち取ることは厳しく、障がい者ではなおのことである。本市の特別支援学級に在籍する生徒の卒業後の進路について、過去3年間の進学者数及び就職者数とそれぞれの全体に対する割合、21年度の進学先を尋ねる。 90 △教育長 特別支援学級卒業後の進路については、19年度は、卒業生94人のうち、進学が91人で割合は97%、就職は1人で割合は1%となっている。20年度は、卒業生83人のうち、進学は81人で割合は98%、就職は1人で割合は1%、21年度は、卒業生114人のうち進学が112人で割合は98%、就職が1人で割合は1%となっている。また、21年度の進学先は、市立特別支援学校高等部が71人、県立・県外の特別支援学校が15人、県立高校1人、私立高校20人、通信制高校4人、高等専修学校1人という状況であり、ほとんどの生徒が高等学校、特別支援学校高等部へ進学している。 91 ◯松野委員 博多高等学園卒業生の過去3年間の卒業後の進路と就職定着率について尋ねる。 92 △教育長 博多高等学園の卒業生の進路は、19年度は、卒業生29人のうち就職25人、授産施設1人、就労移行支援事業1人、自立訓練1人、未定1人となっている。20年度は、卒業生29人のうち就職24人、就労移行支援事業2人、未定3人となっている。21年度は、卒業生28人のうち就職22人、就労移行支援事業5人、未定1人となっている。平成22年9月段階の就労継続者は、19年度卒業生では、就職者25人中23人が継続で、定着率は92%、20年度卒業生では、就職者24人中22人が継続で、定着率は92%、21年度卒業生では、就職者22人全員が継続している。 93 ◯松野委員 博多高等学園を卒業した障がい者のうち、一たん就職して、その後短期間で離職した者のその後の進路については、実態調査しているのか。 94 △教育長 学校において青年学級の場で本人からその後の状況を聞き取ったり、保護者と連絡をとったりすることで実態の把握に努めている。 95 ◯松野委員 障がい者への支援策強化のためにも、教員の意識と技能の向上が必要だと思うが、障がい者施設と学校教員との交流や研修事業は行われているのか。 96 △教育長 各特別支援学校では、長期休業中の職員の研修として障がい者施設で体験研修を行っている。また、進路研修の一環として障がい者施設より講師を招聘して研修会を開催している。さらに、高等部生徒の職場実習の際に、指導支援の方法を施設の職員から学んでいる。このような交流、研修事業などを通して、各特別支援学校においては児童生徒の自立のための指導や支援の向上に生かすようにしている。 97 ◯松野委員 21年度の「高等学校における発達障害支援モデル事業」について、県下の指定校では、どのような取り組みや報告がなされているのか。また、本市の見解はどうか。 98 △教育長 21年度は西日本短期大学附属高校が文部科学省の「高等学校における発達障害支援モデル事業」の指定を受け、22年度までの2年間実施している。これまで発達障がいのある生徒に対する支援のあり方、特に通常クラスと発達支援クラスの連携についての研究、個に配慮した教育課程、指導内容、方法についての研究などが行われており、先進的な取り組みであるという認識を持っている。 99 ◯松野委員 健常者の高校生でも就職が厳しい時代に、障がい者の就職や雇用のマッチングの厳しさは言うまでもない。特に義務教育を終えた途端に何の支援もなく社会の現実と向き合わざるを得ない障がい者の置かれた環境を考えると、もう少し本市の支援のもとで療育や社会訓練を受ける期間が必要だと思われる。本年行われた文科省所管の「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」では、高等学校における特別支援教育に関し、キャリア教育、就労支援への体制と支援の強化についてどのような意見が出されているのか。 100 △教育長 文部科学省が特別支援教育のさらなる充実を図るため設置した「特別支援教育に関する調査研究協力者会議」では、高校においてはとりわけ発達障がいのある生徒への指導支援が課題であるとされており、個々の障がいの状況に応じたきめ細かい指導支援のもとで、適切なキャリア教育、職業教育を行うことが重要であること、特別支援学校のセンター的機能を活用し就労の支援を行うこと、地元経済団体や商工会議所などと教育委員会が連携調整を行うこと、あわせて卒業後も一定期間、就労に向けた支援を継続する仕組みを検討すべきなどの意見が出されている。 101 ◯松野委員 障がい者は、いずれの障がいであっても、将来の選択肢は非常に狭く、特に進学については、卒業後の就職先の選択が難しいために、何を学ぶかという点で特に厳しい実態がある。普通高校へ進学できない生徒は、公立では博多高等学園、あるいは特別支援学校高等部に限られており、普通高校についても、一部の高校を除く私学では発達障がい者は療育を受ける機会はほとんど失われてしまう。その意味において、公立高校への進学の機会をふやすため、本市の市立高校において特別支援学級を開設し、本市の関与を強化すべきと願っている。そのためには受験に関する一定の配慮も必要であると思うが、「特別支援教育に関する調査研究協力者会議」において指摘された内容はどのようなものか。 102 △教育長 「特別支援教育に関する調査研究協力者会議」においては、発達障がいのある生徒に関し、高等学校入学試験における配慮や支援、教育課程の弾力的な編成や障がいの特性に応じた教科指導の配慮や工夫、多様な評価方法やテストにおける配慮などを行うこと、さらには、校内挙げての支援体制の整備などが指摘されている。 103 ◯松野委員 高等学校における特別支援教育について、国の動向や他都市の状況はどうなっているのか。 104 △教育長 国においては、教育課程の編成等についての実践研究、成果普及や高校における発達障がいのある生徒への支援体制の強化を進めている。また、西日本短期大学附属高校のように文部科学省のモデル校指定を受け、発達障がいのある生徒への具体的な支援のあり方についての実践的な研究を行っている高校が全国に25校ある。そのほか、大阪府では、ノーマライゼーションの理念のもと、高校に知的障がいのある生徒が進学できるコースを設けたり、特別支援学校の分教室を高校に設置するなどの取り組みを行っている例がある。 105 ◯松野委員 先日、本市に居住する障がいが重複する子どもの保護者からとても切実な相談があり、懇談する機会があった。その子どもは、中学校でいじめに遭ってから不登校になり、高校進学のきっかけをなくし、その後一定の期間を経て通信教育制の高校に進学し、現在単位取得に励んでいる。卒業後は本人は進学を希望しているが、義務教育も修了し、通信制の高校となった今、卒業後の進路について身近に相談できる先生や専門家もいない。パソコンなどの職業的技術も持たず、体力面でも厳しく、置かれている環境は大変厳しい、孤立無援の状態である。同じ境遇の生徒たちが社会に巣立つまで、できるだけ長くさまざまな市の支援が必要であり、博多高等学園の卒業生の就職率と定着率の高さから考えても、高等学校3年間の指導、療育が障がい者のその後の人生に与える影響の大きさは明白である。その意味からも、本市の市立高校に特別支援学級を開設することについて教育長の決意を伺う。 106 △教育長 市立高校のあり方については、第2次福岡市立高等学校活性化検討委員会において現在検討を行っている。高校における発達障がいのある生徒の受け入れ、支援については、全国的にも重要な課題であると認識しており、本市においても、特別支援学級も含め高校での特別支援教育のあり方について、国や他都市の動向を見守りながら調査検討していく。 107 ◯松野委員 次に、アイランドシティのまちづくりとアジア戦略について尋ねる。本市の人口は従来の予測を超える速さでふえており、今後しばらくは増加傾向にあることから、若年人口は今後も増加すると思う。近い将来、本市の人口は神戸市を上回るとの予想もある。そのような中、本市で働き、生活する市民にとって、本市のアイランドシティ事業が近い将来どうなるのか、新しい産業が生まれるのか、だれもが興味を持ち注目しているところだと思う。特にアジアと本市を結ぶ経済戦略に今後アイランドシティがどのような役割を果たすのかという観点から質問していく。まず、21年度のアイランドシティまちづくりエリアにおける港湾局関連の決算額及び事業内容について尋ねる。 108 △港湾局長 アイランドシティの博多港開発(株)工区のまちづくりに関連する決算は、基盤整備として、まちづくりの骨格となる都市計画道路の用地取得及び舗装工事に約6億9,300万円、道路整備への補助に約3,100万円、合計約7億2,400万円を執行している。また、市5工区も含めたまちづくりに係る経費として、約3,200万円を執行している。具体的には、ふくおか健康未来都市構想の推進や知識創造型産業などの新産業分野を初めとする国内外企業の誘致活動を進めるとともに、市5工区を中心に、国内トップレベルの低炭素型都市を目指すため、そのモデルとなるCO2ゼロ街区を設定するなど、先進的なまちづくりに向けた取り組みを推進しているところである。 109 ◯松野委員 まちづくりエリアの土地分譲について、全体計画から見た21年度の達成率はどうなっているのか。 110 △港湾局長 まちづくりエリアのうち博多港開発(株)工区の土地分譲について、21年度の実績としては、同社は住宅用地、産業用地及び道路用地等、合計で約2.3haを分譲した。また、同社が土地分譲を開始した13年度から21年度までの累計では約61.6haを分譲しており、計画上の分譲面積約80haに対し、約77%まで進捗している。 111 ◯松野委員 アイランドシティのまちづくりは、世界的な不況を背景に、遅々として進んでいないような印象を受けているが、市長が言うように真に市民の財産にするためには、今後どのような具体的な方策を検討しているのかを尋ねていく。まず、アイランドシティでは、最先端医療、福祉のまちづくりが行われてきたが、ふくおか健康未来都市構想について、21年度までの推移及び進捗状況はどうなっているのか。 112 △港湾局長 ふくおか健康未来都市構想は、アイランドシティをフィールドに、生涯を通してだれもが健康で生き生きと暮らすことができるモデル的なまちづくりを進めるため、健康で快適な居住環境の形成と健康・医療・福祉分野の研究開発ビジネス拠点の形成を図るものである。進捗状況については、平成21年5月には構想実現の中核となる整形外科病院が開院し、平成22年10月1日には特別養護老人ホームが開設されている。また、アイランドシティを拠点に活動しているNPO法人などと連携し、海外からの高齢者関連施設等への視察受け入れを行うなど、アジア高齢社会プラットフォーム構想を推進する取り組みも進めている。 113 ◯松野委員 アジア高齢社会プラットフォーム構想とはどのようなものか。 114 △港湾局長 平成17年に九州大学アジア総合政策センターより政策提言を受けたことをきっかけに、高齢化に関する産学公連携の複合的な機能をアイランドシティに導入しようとするものである。具体的には、高齢化が最も早く進む我が国の高齢化に関する知識やノウハウを活用して、今後アジア諸国でも進む高齢化問題の解決に向け、知的・人的交流拠点、人材育成拠点、産業育成拠点などの形成に取り組んでいくこととしている。
    115 ◯松野委員 ふくおか健康未来都市構想とアジア高齢社会プラットフォーム構想の違いは何か。 116 △港湾局長 ふくおか健康未来都市構想は、子どもから高齢者まで、生涯を通してだれもが健康で生き生きと暮らすことができるまちづくりを進めるための構想である。この構想の中で特に高齢者に特化した取り組みを行うのがアジア高齢社会プラットフォーム構想である。 117 ◯松野委員 どちらの構想も現状からは格段進捗しているように見えない。このままいくと両構想が共倒れするのではないかと危惧するが、所見を伺う。 118 △港湾局長 アイランドシティにおいては、既に整形外科病院や特別養護老人ホームが開設されており、また、現在、高齢者専用賃貸住宅などの高齢者住宅事業やそのほかの機能の導入についても、関心のある事業者と協議を進めているところである。また、今後、本市の新病院が整備されると、一層の機能の集積が図られると考えている。さらに、アイランドシティに立地するNPO法人や医療法人、社会福祉法人などと協力・連携して「アイランドシティ生涯すこやかタウン協議会」を設立するなど、両構想の実現に向けて一層の取り組みを進めているところである。 119 ◯松野委員 港湾局では先日、「アイランドシティ生涯すこやかタウン協議会」の設立を記者発表した。今後、アイランドシティを単なる企業誘致や分譲地として終わらせるのではなく、アジアの高齢化を見据えた戦略拠点としての機能を持たせるためには、アジア高齢社会プラットフォーム構想を大きな柱として、民間と力を合わせて強力に事業推進すべきと考える。「アイランドシティ生涯すこやかタウン協議会」の構成団体に、NPO法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター(AABC)があるが、この団体の設立目的と事業内容について尋ねる。 120 △港湾局長 「アイランドシティ生涯すこやかタウン協議会」は、アジア高齢社会プラットフォーム構想を実現するため、既に立地している事業者及び構想の推進に関心を持っている事業者等を構成員として、平成22年9月27日に設立されたものである。この協議会の事業内容は、会員団体が協力・連携して実施する高齢化に関する調査研究や共同事業、広報活動などである。この協議会の活動により、事業者単独では困難な課題にも取り組むことができ、地域とも連携して、まちの機能や魅力を高めることが期待されている。一方、同協議会の事務局を務めているNPO法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター(AABC)については、高齢化問題を専門とする学識経験者や高齢者関連団体の代表者などにより構成され、平成20年に設立されている。同法人の設立目的は、産学公が連携し、アジアの国々が共通して取り組まなければならない高齢化問題の解決に寄与することとされ、その目的のため調査研究や国際会議の開催、海外視察研修派遣受入などに取り組んでいる。 121 ◯松野委員 AABCは、高齢社会に関するエキスパート集団である。国内外においてさまざまなイベントの開催や高度な調査研究事業を通じて、今後急速に高齢化するアジア地域の課題をにらんで、高齢化に関する情報発信を行っている。また、AABCは、福岡で生まれた国際会議「アジア太平洋アクティブエイジング会議」(ACAP)の事務局として、韓国やハワイのパートナー団体とともに各地で会議を開催し、どちらかというと国内より海外で高い評価を得ている。インドネシア国立大学では、アジアの高齢者問題に関する研究機関として、東京の国立大学、有名私大とともにAABCをリストアップしているほどである。本年10月に本市で開催される健康未来都市国際シンポジウム「アジア太平洋アクティブエイジング会議2010」においては、高齢者問題の世界的権威である国連国際高齢化研究センター所長のジョセフ・トロイシ教授本人から基調講演を行いたいとの申し入れもあったと聞いている。それほど人材、ノウハウ、人脈ともにアジアの高齢者問題に精通するAABCを本市の財産として大いに活用しない手はない。本市のAABCへの認識を伺うとともに、AABCの人材、知的財産など数多くの蓄積について今後どのように活用する考えなのか。 122 △港湾局長 AABCについては、高齢化問題に関するノウハウとネットワークを有している専門組織であり、アイランドシティがアジアの高齢化対応のモデル都市となるよう、先進的なまちづくりを推進する主体となるものであると認識している。本市としては、AABCが持つノウハウとネットワークを最大限に生かしながら、アイランドシティにおけるアジア高齢社会プラットフォーム構想の実現に向け、同法人と共働で取り組んでいきたいと考えている。 123 ◯松野委員 アジアの共通課題である高齢化という問題について、アジア諸国から日本の介護事業の研修や介護施設の視察の受け入れ、あるいはフィリピン、インドネシアから看護師・介護士を受け入れるEPA(経済連携協定)も盛んになりつつある。今後、アイランドシティにおいてアジアとの連携、貢献を念頭に置いた研究や事業展開も検討すべきと思うがどうか。 124 △港湾局長 本市は、これまでAABCと連携し、国際シンポジウムや海外からの高齢者施設等への視察・研修受け入れなどを実施しており、アジアに貢献する取り組みを行ってきている。実際に、AABCによると、海外エイジング視察コーディネート事業として、21年度に23組326人を受け入れている。今後はさらに、アジアに向けた介護福祉人材の養成やエイジングビジネスの研究開発拠点の形成などを図るための取り組みを進め、アイランドシティにおける機能の充実を図っていきたいと考えている。 125 ◯松野委員 先日、アイランドシティに高齢者関連施設がオープンした。また、これに先立ち平成21年5月には杉岡記念病院が開院し、海外からの研修医受け入れなども行っているそうだが、両施設はアイランドシティにおける未来都市構想づくりにおいてどのような役割を担っているのか、現状と今後の方向性について尋ねる。 126 △港湾局長 アイランドシティに立地している整形外科病院は、高齢者に多い関節の疾病に対する高度な医療を提供するとともに、地域医療や疾病予防に向けた取り組みを行っている。また、国際交流やアジアへの貢献を目的として海外の医師の研修受け入れも行っており、将来はその内容の高度化や充実を図りたいとの意向も持っている。また、特別養護老人ホームは、周辺の海辺や緑に恵まれた環境を生かし、高齢者が心安らぎ暮らせる施設になるものと期待される。両施設はふくおか健康未来都市構想における中核となる機能を担っていくものであり、今後ほかの施設の立地を図っていく中で、これらの施設との協力連携による相乗効果を期待している。 127 ◯松野委員 ふくおか健康未来都市構想をより具体的なものにするためにも、今後、国に対してアイランドシティにおける事業に関連した特区申請を行うべきではないか。 128 △港湾局長 国が新成長戦略に基づき新たに実施する総合特区制度の提案募集に対し、ふくおか健康未来都市構想の実現に向けて、アジアを初めとする海外の人材が日本で看護や介護の技術やノウハウを収得しやすくなるよう、また、海外から診療目的による入国が容易となるよう、在留資格や入国査証の要件緩和などの提案を行っているところである。来年度の特区申請に向け、これらの提案が実現できるよう、国と協議を進めていく。 129 ◯松野委員 全国の自治体では、職員から事務改善やサービス向上、政策提案などを広く募り、現実の政策に反映する事業提案を行っているが、19~21年度の3年間に本市で行われた事業提案制度について、決算額、募集内容、応募件数、提案内容、主な実施事例、事業効果はどうなっているのか。 130 △総務企画局長 事務改善に関する職員提案制度については、決算額は、19年度36万5,000円、20年度はゼロ、21年度4万2,000円である。募集内容については、事務改善に関する提案で、市民サービスの向上、事務の効率化、経費削減または収入増加が期待できるものなどである。応募件数は、19年度36件、20年度28件、21年度20件である。提案内容及び主な実施事例については、税務証明の休日交付、本市が所有する知的財産について特許を取得する仕組みづくり、契約用図面のA3サイズへの縮小化、夏休みに職員の子どもが職場を見学するこども参観日の実施などがある。事業効果については、市民サービスの向上、事務の効率化に加え、職員の改革意識を引き出すことに寄与しているものと考えている。 131 ◯松野委員 本市の場合は主に事業改善について募集しているようだが、他都市では、事業の改善だけではなく、政策・施策の立案、研究も募っている例や、ほかに高額報奨や人事評価に反映させるなど独自の顕彰制度などの取り組みも多々ある。京都市では、平成21年の職員からの提案数は1,074件あり、そのうち採用数は142件と全体の1割以上が実施されている。事業提案に対する外部評価でも、「提案数は平成19年から大幅に増加し、職員の意識向上については一定の成果を上げている。今後も一層の職員の意欲向上を目指し、取り組みを進めていくべき」とされ、職員のモチベーションの向上に大いに寄与している。本市においても、今後同制度を拡充すべきだと思う。本市のアイランドシティ事業は既に全庁的な取り組みを行っているが、今後、アイランドシティ事業に特化して職員から幅広く事業や施策のアイデアを募ってみてはどうか。財政が厳しい時代だからこそ、全職員の知恵を結集すべきと思うが、所見を伺う。 132 △港湾局長 アイランドシティ整備事業は、本市の成長戦略の一つであり、全庁挙げて取り組んでいくべき課題と認識している。事業の推進については、市長を本部長とし、関係局長をメンバーとしたアイランドシティ整備事業推進本部会議において、適宜、事業の進捗状況や課題の協議を行っている。また、関係部署間での協議や職員研修の時期を活用した現地での事業説明など、全庁的な連携を図りながら進めている。昨今の厳しい事業環境にあって、時代のニーズにこたえつつ将来を見据えた施策をアイランドシティにおいて先導的に展開していく上で、全職員の知恵を結集すべきとの意見は重要な指摘であると認識している。指摘いただいた内容も踏まえ、今後とも全庁挙げて本市の成長戦略である本事業を推進していきたいと考えている。 133 ◯松野委員 次に、本市のアジア戦略について尋ねる。今、全国の自治体が将来の成長戦略において特にアジア地域との連携を模索している。現在、国が進めている観光立国に向けたツーリズム事業に沿って、21年度に本市が行った観光戦略の事業内容はどのようなものか。 134 △経済振興局長 本市における観光戦略については、20年度に民と官で「福岡にぎわいのまちづくり戦略2011」を策定し、その中でアジアからの集客拡大を柱の一つに位置づけており、外国人来訪100万人、本市全体での年間観光消費額4,000億円を目標に事業を展開している。国では、観光立国推進基本計画において、地域に密着した体験交流型のニューツーリズムを推進しており、本市においても集客戦略の一つとして21年度から福岡ならではの体験型観光商品「福たび」の開発支援に取り組んでいる。21年度は、食やまち文化体験、歴史・自然紹介などのテーマで49プログラムを延べ105回実施し、1,182人の参加があった。 135 ◯松野委員 本市におけるアジアを対象とした観光プロモーション事業の内容と具体的成果について尋ねる。 136 △経済振興局長 アジアへのプロモーションについては、釜山広域市との共同プロジェクト「釜山・福岡アジアゲートウェイ2011」などの中で取り組んでいる。中国に対しては、北京、上海、大連等における観光説明会、上海でのクルーズコンベンションへの出展や船会社へのプロモーション、また、中国の大手旅行業者やマスコミを招請するツアーなども実施している。韓国に対しては、ソウルにおいて市長によるトッププロモーションを実施するとともに、釜山国際観光展でのPR等を行っている。このほか、九州観光推進機構と連携して、シンガポールでの修学旅行誘致セミナー等も行っている。成果としては、世界不況等により平成20年以降減少していた外国人観光客が、平成22年上半期にはピークであった平成19年の水準に戻ってきており、また、海外のマスコミに福岡、九州が取り上げられる機会もふえている。さらに、中国発着のクルーズ客船の来航回数も平成21年の24回から平成22年は60回を超えるなど大幅に増加し、その経済波及効果は約29億円と試算されている。 137 ◯松野委員 アジアからの観光集客に向けたハード・ソフト両面の基盤整備の現状及び今後の課題はどうなっているのか。 138 △経済振興局長 観光振興のための基盤整備については、ハード面においては、国内外からの観光客への利便性の向上やおもてなしの観点から、観光案内所の再整備や多言語に対応した観光案内板の整備を進めている。また、港湾局でも、博多港国際ターミナルにおいて交通広場の拡張や博多らしさを演出した内装改修等の整備を行っている。ソフト面では、観光案内所における外国語対応者の拡充、観光情報ウェブサイト「よかなび」の外国語コンテンツや多言語のガイドブック、マップの充実、通訳ボランティア「ウェルカムサポーター」による通訳支援などを進めている。今後の課題については、観光地や商業施設における多言語による案内機能を強化していく必要があると考えている。今後とも外国からの観光客に福岡のまちを快適に楽しんでいただけるよう努力していく。 139 ◯松野委員 各種プロモーション活動を推進しているが、本市の観光の魅力向上への取り組み状況はどうなっているのか。 140 △経済振興局長 平成23年3月には九州新幹線が全線開業となり、九州域内のみならず、西日本やアジアからの交流人口の増加が期待されている。これを好機ととらえ、豊かな歴史、伝統文化、自然、食など福岡ならではの魅力を提供する体験型観光商品「福たび」の充実を図るとともに、博多部の歴史ある寺社仏閣を魅力的に紹介する「御供所・冷泉ライトアップウォーク」などを実施している。さらに、平成23年春には「博多町屋」ふるさと館の近隣に「はかた伝統工芸館」も開館する予定となっている。今後とも、福岡の伝統文化等を活用しながら、福岡・博多のさらなる魅力向上に努めていく。 141 ◯松野委員 例えば、外国人観光客が市役所前で観光バスを乗降する際にスタンプラリーのように捺印してもらい、スタンプがたまったら市からオリジナルの缶バッジや携帯ストラップなどの記念品を贈呈するなど、お金をかけないで行う集客対策もあると思うので、ぜひ検討していただきたい。アイデア次第では話題づくりにつながるかもしれない。今、各都市は、水道、スポーツ、医療などそれぞれの分野でビジネスモデルづくりを進めている。東京、大阪、川崎、神戸、北九州市においては、いち早く環境の分野に着目し、その分野では本市を一歩も二歩もリードしている感がある。また、10月1日付の西日本新聞では、北九州市がカンボジアで水道事業の本格的なビジネスモデルづくりの実証実験を始めると報道されていた。これから新たな雇用の創出や生き残りをかけた都市間競争が激化する中、本市がどの分野で成長を図り、アジアと連携を強化し、雇用を創出するかという、的を絞った戦略が極めて重要だと思う。中国やネクストイレブンに代表されるような経済新興国を抱え成長が期待されるアジアは、同時に、急速に高齢化するという厳しい現実も抱えている。ここ数年、アジアからの日本の介護事業の視察数が相当数に上ることから考えても、世界に例を見ない速さで高齢化が進展した日本のノウハウは、アジア各国にとって大いに参考になると思われる。高齢社会プラットフォーム構想にあるように、高齢社会をキーワードとして本市をアジアにおける高齢社会問題の中心拠点として積極的にアイランドシティにおける機能性の確立を図るべきではないか。例えば海外から研修医の受け入れ、EPAの受け入れ者の研修事業、アジアからの介護施設研修視察の調整、本市からアジアへ進出する介護事業者への情報提供などを行う中心センターや高齢者問題研修センター等を設置し、AABCが中心となってビジネスモデル事業を展開する中で、民間企業と関係を強化し、アジアから人、物、情報、企業を集積させ、その果実として本市の雇用創出や税収増を図るべきではないか。先日、本市在住の研究者と懇談した折に、ある上海市の関係者との意見交換の際に、「中国も高齢化に対する問題意識は高く、既に北欧や欧米型福祉の研究もしているが、中国が目指すべきは日本型の福祉である」と言われたという逸話を紹介してくれた。例えば高齢問題の拠点都市として、福祉や高齢問題に関する研究会、研修会をアイランドシティで開催し、各国から参加者に宿泊してもらい、終了後は長崎や大分で温泉に入り、帰りにまた本市でお土産を買って帰っていただくような観光集客を行えば、九州ツーリズムにも本市が貢献できるのではないかと思っている。今、経済や外交の停滞による閉塞感が本市や日本を覆っている。若い世代も就職難などの現実に直面し、将来の夢さえ語れなくなっているように感じる。本市も財政難により将来構想や未来への投資環境は十分ではないが、戦略的投資抜きでは本市の将来もしぼんでしまう。資金が十分でなくとも、人や知恵を総動員して実現しなければならないのが新しい産業と雇用の創出である。他都市を調査して感じることは、地方都市は若年人口が減り、産業も非常に厳しく、それこそ「どげんかせんといかん」と民と官が一緒になって地元経済の振興のために汗をかき、必死に知恵を絞っている。財政難により少なくとも本市職員の気持ちが萎縮してしまわないように願っている。アイランドシティは、健康未来都市構想だけではなく、もともと学術研究都市という位置づけもあったはずである。韓国では2008年に李明博大統領が、4兆ウォンをかけて、すべての高校生が英語を話せるような教育を目指して整備している施設がある。既に11カ所程度整備しているそうだが、そのうち最近オープンした施設が釜山のグローバルビレッジである。これは韓国でも初めての都市型と言われるような施設であり、言ってみれば天神の真ん中にあるような施設であるが、施設内に飛行機の機内やホテルのロビー、ショッピングセンターのレジなどのブースが実際につくってあり、そこにそれぞれ先生がいて、ここで子どもたちが生きた英語を学ぶというようなシステムであり、小中学校の英語教育のカリキュラムに既に組み込まれている。長期休暇中には海外から研修旅行を募って、高いお金を取って研修しているが、自国の子どもたちはほぼ無料で利用できるようになっている。韓国では年間に塾などの教育費が1兆7,000億円程度かかっていると言われているが、外国で語学を勉強したり、研修を行ったりするような疑似体験を国内で行えるということで、教育費を軽減でき、経済的な英語力の格差をなくすための留学疑似体験ができるような施設となっている。海外からの視察は非常に厳しくてなかなか受け入れてくれないが、それぐらい外国を意識しながら、国の将来に資する英語教育を進めている。本来のアイランドシティの学術研究都市という観点からも、このような取り組みをぜひ本市でも研究していただきたいと思っている。人と知恵が集まるところに活気が生まれ、企業も集まる。これから本市のポテンシャルを最大限に発掘し、生かすためにも、今こそあらゆる力を集めるべき時ではないか。最後にこの質問に関する市長の所見を求め、私の質問を終わる。 142 △市長 アイランドシティについては、リーマンショックにより、なかなか厳しい局面が続いているが、何としてもやり遂げて、市民の財産にしなければならないという気持ちで取り組んでいる。急速な高齢化を迎えるアジアを対象とした取り組みについては、ふくおか健康未来都市構想の中で、AABCを中心に高齢化への対応について盛んに調査研究が行われ、国際会議も多く開催されており、その分野では高い評価も得ている。さらにその機能を強化するために、国際戦略の中で国の総合特区制度も活用し、アイランドシティにおいて特区制度を認めてもらえるよう強力に働きかけていきたいと考えている。釜山のグローバルビレッジは、私も見学したが、大きな学校の中に施設が何十もあって、多くの学生が施設を循環して生きた英語を学べるようになっており、英語そのものに対する国策の違いのようなものを感じた。これは英語教育の例だが、介護や福祉などの分野でも先進的な施設がアイランドシティにできるような研究も行って、その実現に向けて取り組んでいきたい。 143 ◯冨永委員 九州大学移転に伴う学術研究都市づくりの推進について、地下鉄七隈線の延伸について及び市長の市政運営方針について質問する。まず、九州大学移転に伴う学術研究都市づくりの推進について、本市の西部地域においては、九州大学統合移転事業が計画的に進められており、平成17年10月の伊都キャンパス第1期開校から、この秋でちょうど5年が経過したところである。平成21年4月には六本松キャンパスの全学教育が移転し、既に1万人を超える学生や教職員が伊都キャンパスで活動しており、31年度の移転完了時には、学生と教職員合わせて約1万8,700人になると聞いている。また、九州大学移転を契機として、周辺地域においても、学生向けの住宅や生活利便施設、西部地域交流センター(さいとぴあ)や大型量販店などの立地が進んでおり、九州大学を核とした西部地域の活気あふれるまちづくりが進行している。一方、隣接の糸島市を含め福岡都市圏西部地域を主な対象エリアとして、地元産学官により九州大学学術研究都市構想が策定され、平成16年10月には産学連携の推進や企業・研究機関誘致などを目指し、地元産学官が一体となって、財団法人九州大学学術研究都市推進機構を設立し、構想実現に向けた取り組みが行われている。そこで、九州大学学術研究都市構想に係る21年度の決算額や九大学研都市の玄関口で行われている伊都土地区画整理事業の進捗状況、区画整理事業地区の人口増加に伴う小学校の新設、九州大学との連携や交流の状況などを中心に質問していく。九州大学学術研究都市構想については、本市においても重点事業に位置づけ、ソフト・ハードの取り組みが行われているが、学術研究都市構想の推進を担当している住宅都市局所管の九州大学学術研究都市構想に係る21年度の決算額と事業内容はどのようになっているのか。 144 △住宅都市局長 九州大学学術研究都市構想に係る21年度の決算額、事業内容ついては、まず、同構想の実現に向け、関係者と設立した財団法人九州大学学術研究都市推進機構が実施する産学連携や企業誘致活動等に対する補助金で3,379万1,000円余、このほか関連するまちづくり事業費として、移転に伴う西部地域のまちづくりに関する調査調整のための経費で197万円余、平成20年に完成した産学連携交流センターの用地取得等に要した経費で2億7,933万4,000円余、伊都土地区画整理事業の21年度事業費で35億5,482万9,000円などがある。 145 ◯冨永委員 次に、伊都土地区画整理事業について尋ねる。130haに及ぶ伊都土地区画整理事業は、九州大学学術研究都市構想における学研都市のメーンゲートとして、また、本市西部地域の核としてのまちづくりが期待されている。これまで伊都土地区画整理事業地区においては、17年度にJR筑肥線の新駅である九大学研都市駅が開業し、翌18年度には西警察署、大型ショッピングセンターがまちづくりを先導するように立地し、さらに平成22年7月20日には、西部図書館、西部出張所、体育館、ホール等々が一体的に整備された、さいとぴあの供用が開始されるなど、着々とまちの形成が行われてきているが、伊都土地区画整理事業の全体としての進捗状況並びにまちの骨格となる道路などのインフラの整備状況はどうなっているのか。 146 △住宅都市局長 伊都土地区画整理事業については、西部の新たな拠点として、九州大学学術研究都市の玄関口にふさわしいまちづくりを目指し、計画的な市街地整備を進めている。地区内において、JR筑肥線の九大学研都市駅の設置や、西警察署、大型商業施設及びさいとぴあなどの誘致に取り組んできており、既にこれらの施設の実現を果たしている。伊都土地区画整理事業の現在の進捗状況については、事業費ベースで、21年度末約74%、22年度末では80%を超える見込みである。また、まちの骨格となる道路の整備状況については、都市計画道路11路線、延長7,000mを計画しているが、そのうち74%、約5,300mの供用を開始している。あわせて、九大学研都市駅の駅前広場の整備も行っており、既に九州大学伊都キャンパスや西浦方面へのバスの発着地点としても機能している。 147 ◯冨永委員 伊都土地区画整理事業については、インフラなどの整備が進められ、事業が着実に進捗していることがよくわかる。九大学研都市駅周辺においては、既に商業施設やマンションなどが立地するなど土地利用が盛んに行われているが、事業区域内全般における土地活用の状況はどうか、また、将来の人口増をどう見込んでいるのか。 148 △住宅都市局長 伊都土地区画整理事業地区内の土地利用の状況については、地区内の道路、公園などの公共用地及び保留地を除いた約78.8haの土地に対して、21年度末までに約38.2ha、約49%の土地について地権者が建築等の利用ができる状況となっている。建物の立地状況については、平成22年8月末時点において、賃貸住宅が2,445戸、分譲住宅が309戸、戸建て住宅が95戸、合計2,849戸が建築または予定されている。将来の人口増については、地区内の計画人口として約1万3,000人を見込んでいる。 149 ◯冨永委員 土地利用も進みつつあり、相当数の住宅が既に張りついていることがわかる。なお、新聞報道によると、学生のアパートに限って言えば、需要と供給のバランスについて取りざたされているようなので、土地の利用主体である地権者へ九大移転の情報提供をお願いしておく。一方で、新たに住宅が相当立地し、将来かなりの人口増が見込まれるが、学研都市のメーンゲートにふさわしい良好な住宅地を形成し、魅力的なまちづくりをさらに進めるためには、事業区域内の小学校などの教育施設の立地が大変重要となる。伊都土地区画整理事業では教育施設への対応をどのように考えているのか。 150 △住宅都市局長 伊都土地区画整理事業地区については、西部の新たな拠点地域であることや計画人口による人口増を踏まえ、関係局とも協議の上、地区内に新たな小学校が必要になると判断し、小学校用地として約1.5haの用地を確保している。 151 ◯冨永委員 伊都土地区画整理事業地区内には、計画人口約1万3,000人を見据えて、小学校をつくれるよう用地を確保しているとのことだが、教育委員会としては、どのような条件が整えば学校を新設するのか。 152 △教育長 伊都土地区画整理事業地区は既に通学区域を指定している地域であるため、新設校をつくる場合には既存校からの分離新設となる。学校の分離新設については、住宅開発の動向などを十分に把握し、児童数の長期的な推計を行い、30学級を超える状態が長期的に見込まれ、周辺校の状況も含め、将来にわたって学校が必要となる場合に行っている。 153 ◯冨永委員 直近では姪浜小学校、内浜小学校を分離して新しく姪北小学校を新設した例があるが、全く更地のところに今から家が建っていくところに新しい学校をつくるわけであり、大規模化するまでの間が大変問題である。伊都土地区画整理事業地区内での学校新設については、土地区画整理事業を推進するという観点に立ち、大規模になってから分離新設を行うという、これまでの考え方にとらわれることなく検討してほしい。いい例としてアイランドシティの照葉小学校がある。子どもの数は少なかったが、照葉小学校を新設したから住宅の張りつきが早くなったとも考えられる。とにかく、子どもに影響がないようお願いしておく。ところで、現在の伊都土地区画整理事業地区の通学区域はどこの小学校区になるのか。 154 △教育長 伊都土地区画整理事業地区は、今宿小学校、周船寺小学校、玄洋小学校の三つの小学校の通学区域にまたがっており、そのうち約6割の地域が周船寺小学校の通学区域となっている。 155 ◯冨永委員 今宿小学校、周船寺小学校、玄洋小学校のそれぞれの児童数、学級数及び教室数はどのような現状にあるのか。また、伊都土地区画整理事業地区の中学校区はどこで、その中学校の生徒数、学級数及び教室数の現状はどうか。 156 △教育長 三つの小学校の児童数、学級数、教室数の現状については、それぞれ平成22年5月1日現在で、今宿小学校が684人、22学級、26教室、周船寺小学校が839人、28学級、仮設教室2教室も含め29教室、玄洋小学校が660人、22学級、22教室となっている。また、伊都土地区画整理事業地区の中学校区は、周船寺小学校が元岡中学校区で、今宿小学校と玄洋小学校が玄洋中学校区となっている。生徒数などについては、元岡中学校が765人、23学級、仮設教室3教室を含め23教室、玄洋中学校が700人、20学級、23教室となっている。 157 ◯冨永委員 周船寺小学校や元岡中学校では、既に教室が不足し仮設教室を設置している。さらに、25年度の区画整理事業終了後間もなく、計画人口約1万3,000人が見込まれており、そのころには中学生も含め多くの子どもが暮らしているものと思われる。このような状況の中で、小学校新設のための用地は確保されているが、中学校の生徒数の増加にはどう対応するのか。 158 △教育長 伊都土地区画整理事業による生徒数の増加への対応については、伊都土地区画整理事業地区を抱える元岡中学校、玄洋中学校に隣接し、小規模校化が進み、学校規模適正化実施方針の第1次計画対象校としている北崎中学校も含め、西部出張所管内全体の教育環境整備として、中学校の配置も含めて検討を行っていく。 159 ◯冨永委員 西部地域には、北崎小学校、今津小学校、今宿小学校、玄洋小学校、元岡小学校、周船寺小学校の6校区があり、これに新設校ができれば7校区となり、この7校区を三つ中学校で賄うことになるが、北崎小学校と今津小学校は児童数が減ってきているので、このあたりのバランスも考慮した上で、中学校の配置を早急に検討してほしい。伊都土地区画整理事業地区では今後住宅が急増し、子どもが急激にふえてくることは明らかである。小学校については、新設校ができるまで、周船寺小学校はプレハブで過ごさなければいけないが、新設校をつくって校区が分離されれば児童数が減るので、新しい教室がつくれないのは理解できるが、早くプレハブから出してやらなければいけない。土地区画整理事業の本来の目的である良好な住宅地を形成し、魅力的なまちづくりを進めるためにも、教育委員会には、今までと同じような単なる学校の分離新設ではなく、新しいまちに新しい小学校をつくり、新しい校区をつくり出すという考えに立ち、早急に新しい小学校をつくるよう強く要望しておく。財政が非常に厳しいということはよくわかるが、子どもたちをプレハブで辛抱させるのは忍びない。また、中学校についても、地元から生徒数の増加を心配する声を多数聞いているので、早急に対応策を検討し、地域に説明をするよう要望しておく。平成21年4月の六本松キャンパスからの移転により、九州大学伊都キャンパスの学生、教職員の数はそれまでの2倍の1万人を超える規模に膨らんでいる。学校新設のポイントは人口増がまず第一とのことだが、糸島市においては、市内に学生が1人住むことになると、衣食住で年間約100万円の経済効果があるとのことで、不動産業界も含め、入試の前後には学生や親御さんへのPRをしっかりと行っている。また、人口をふやすことだけにとどまらず、産業政策面での取り組みも活発である。つまり、どのように九州大学の知的財産を地域に取り込むかということである。このような取り組みの成果として、ことしになってから、県が造成している糸島リサーチパークには、県の水素エネルギー製品研究試験センターの開設、同じく県の半導体先端実装研究評価センターや先端社会システム実証研究センターの建設が相次いでいる。また、糸島市や地元商店街を中心に、九州大学が開発したICカードによる社会保障サービスや地域電子マネーサービスの利用の実証実験や、農業、水産業を軸とした糸島地域の創造と活性化を図るために、糸島地域の農業者やJA、九州大学、糸島市、県などが連携し、糸島農業産学連携推進協議会(アグリコラボいとしま)を設立し、共同研究や活動の展開など地元産学官の連携、交流が盛んに行われている。このような事業に対して、糸島市も補助金を出していると聞いている。これらの糸島市の積極的な取り組み状況について把握しているのか。 160 △住宅都市局長 糸島市と九州大学との連携状況の把握については、本市からも職員を派遣している財団法人九州大学学術研究都市推進機構が中心となり、本市を初めとした関係自治体、九州大学、経済界による会議を定期的に開催し、各団体の取り組み状況等について情報交換を行っている。この会議の中で、県からは糸島リサーチパークにおける水素、半導体関連の研究施設等に関しての情報が、また、糸島市からはICカードの実証実験や農業に関する産学官連携の取り組みについての情報が提供されている。なお、JAや地元などが直接、九州大学の各学部の先生や研究室と連携して行っているような取り組みもあり、周辺都市との共同のイベントについては本市も参加している。 161 ◯冨永委員 糸島市は市長みずからが先頭に立って、九州大学が移転したことを最大限に生かそうと取り組んでいる。県の施設にしても、糸島市が県に積極的に働きかけて誘致したものである。また、糸島市は、ソフト面での取り組みだけでなく、企業誘致の受け皿として、前原インター周辺や九州大学伊都キャンパス南側の泊地区に工業団地や研究開発団地をみずから造成して受け皿を用意し、企業誘致に向けPRが行われている。一方、本市に目を向けてみると、九州大学伊都キャンパスの門前町となる元岡地区に、産学連携交流センターを開設したところまではよかったが、その後の動きが見えてこないというのが素直な感想である。九州大学伊都キャンパスの直近のまちづくりとして進められている元岡土地区画整理事業の進捗状況はどうなっているのか。 162 △住宅都市局長 元岡土地区画整理事業については、学生向けの住宅や九州大学と連携した研究開発施設等の受け皿として、九州大学伊都キャンパスに隣接する16.2haの区域を市街化区域へ編入し、地元地権者による土地区画整理組合が設立されている。平成21年9月に事業計画の認可を受け、現在、造成工事が進められており、平成23年9月の工事完了予定となっている。平成22年3月より保留地の処分も始まっており、本市としても、九州大学直近のまちとして風格とにぎわいのあるまち並みや良好な住環境の形成を図るため、都市景観形成地区指定に向けたルールづくりについて、地元協議を進めるなど、まちづくりの推進に努めている。 163 ◯冨永委員 元岡地区は、九州大学伊都キャンパスの門前町として、九州大学学術研究都市の形成実現に向け、企業の研究部門や国等の研究機関の立地により、研究開発機能の集積を促進させるべきである。それを実現させるためには、企業が進出する際に必要となる入居施設や立地用地などを準備すべきと認識している。元岡地区において、そうした受け皿の準備はどうなっているのか。また、以前、元岡地区へのダイハツ九州の進出表明などの報道があったが、研究開発機能の立地に関して、現在はどのような状況になっているのか。 164 △経済振興局長 九州大学学術研究都市づくりに向けた研究開発機能の受け皿については、伊都キャンパスのメーンゲート直近、元岡土地区画整理事業地区内に、その先導的施設として、レンタルラボ、レンタルオフィスを備えた産学連携交流センターを平成20年4月に開設している。同センターは、開設当初から化学メーカーや光学機器メーカー等に加え、ベンチャーや公的研究機関が入居し、満室の状態で推移しており、成果も生まれつつある。さらに、企業の研究部門や国等の研究機関等の立地を目指すために、同センターを核とした周辺4.3haを元岡土地区画整理事業の土地利用計画において研究開発施設用地に位置づけている。この研究開発施設用地内には、既にダイハツ九州が用地を取得し、開発センターの整備を準備しており、今後さらなる立地促進に努めていく。 165 ◯冨永委員 ダイハツ九州が用地を取得したことは、土地区画整理事業にとっては大きな前進だと思うが、研究開発機能の集積に弾みをつけるためには、目に見える形として早期の建築着工が望まれる。当局においては、県とも密に連携を図り、引き続きダイハツ九州への働きかけを行ってほしい。一方、産学連携交流センターは開設から2年半が経過したが、これまでの取り組みとその成果の内容はどうなっているのか。 166 △経済振興局長 産学連携交流センターについては、企業と大学の共同研究・共同開発の場の提供、研究成果の実用化・事業化支援、産学交流の場づくりを3本の柱に産学連携に取り組んでいる。共同研究・共同開発の成果として、基幹研究室に入居する九州大学の研究者が、有機ELの分野で内閣府の最先端研究開発支援プログラムの中心研究者に採択されるなど、国等の大型研究開発プロジェクトの獲得や日本学術振興会賞の受賞などがある。また、研究成果の実用化・事業化の支援により、医薬品開発の基礎技術を生かした化粧品の商品化や入居企業も含めた特許出願等、成果が上がっている。産学交流の場づくりについても、セミナー等による最先端の情報提供のほか、地域住民の施設見学会や夏休みの小中学生向けの科学体験イベントなどの開催を通じ、市民の科学理解増進に努めている。 167 ◯冨永委員 有機ELなどの九州大学が展開する最先端分野の大型研究開発プロジェクトは、研究開発機能の立地を促進していくために、大きなポテンシャルを有していると認識している。そうしたプロジェクトの推進に関して、本市はどのように支援していくのか。 168 △経済振興局長 有機ELなどの最先端の大型研究開発プロジェクトについては、本市が目指す産学連携を基盤とした新産業の創出にとって、絶好の機会ととらえており、本市が中心となり設立した財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT)による共同研究や産学連携コーディネートを展開するとともに、有機ELのプロジェクトについては、ISITに派遣する本市職員が運営面での支援も行っている。 169 ◯冨永委員 産学連携交流センターに入居している九州大学の先生方が、世界に誇る最先端の研究開発を行っていることを、地元西区住民の大部分は知らないのではないか。あらゆる機会をとらえてしっかりPRすべきである。西区における九州大学と地域の連携・交流事業については、どのような取り組みが行われているのか。 170 △住宅都市局長 西区における九州大学と地域の連携・交流事業については、区の重点事業として、大学と地域との連携・交流促進事業が実施されている。21年度の主な事業内容としては、夏休み科学教室や学生によるミニコンサートの開催、大学と地域の祭りである伊都祭の開催支援のほか、九州大学の施設利用や出前講座などのメニューをまとめた“活かそう!九大”便利帳の作成などがある。住宅都市局としても、西区役所と十分連携し、九州大学と地域との連携・交流を図っていく。 171 ◯冨永委員 糸島市では九州大学の知的財産を積極的に取り込んできているが、西区ではミニコンサートや九州大学の施設利用、出前講座などであり、もっと本市も九州大学の知的財産をしっかり活用すべきである。今後、移転事業の進捗により、文科系や農学部などの学生がやってくれば、九州大学を身近に感じてもらうさまざまな展開が考えられるが、九州大学移転の今後のスケジュールはどうなっているのか。 172 △住宅都市局長 九州大学の今後の移転スケジュールについては、26年度に理学系、29~30年度には法学部などの文系、事業最終年度である31年度には農学系が順次移転していく予定となっている。 173 ◯冨永委員 次に、九州大学伊都キャンパスまでの動脈である36m道路、学園通線の整備について尋ねる。平成21年4月の六本松キャンパスからの移転により、学生、教職員が大幅に増加し、通学路となっている福岡志摩線や千里太郎丸線などキャンパス周辺では、自動車、バイク、自転車などの交通量が増加しており、今後もますます交通量は増加していくと予想されるが、学術研究都市のメーン道路である学園通線の21年度の決算額と21年度までの整備状況はどうなっているのか。また、大学移転に伴う交通量の増加への対応だけでなく、大学の周辺に研究開発施設の立地を促進させる観点からも、学園通線を早期に全線供用すべきと考えるが、今後どのように取り組んでいくのか。 174 △道路下水道局長 学園通線の21年度の決算額については、3億3,362万円余となっている。整備状況については、伊都土地区画整理区域内を除く計画延長4.4kmのうち、21年度までの整備済み延長は2.5kmで、進捗率は57%となっている。また、学園通線の全線供用については、21年度より桑原工区の用地買収を、また、田尻工区の測量、調査に着手しており、28年度の全線供用を目指して取り組んでいく。 175 ◯冨永委員 本市は大変厳しい財政状況にあるが、アイランドシティや九州大学学術研究都市というまちづくりに関する東西のプロジェクトを推進することは、本市の発展のためにも重要である。中でも学術研究都市の実現に極めて重要な役割を担う学園通線については、できるだけ前倒しして、早期完成に努めるよう要望しておく。これまで、いろいろと述べてきたが、本市は九州大学という宝をもっと活用すべきである。今後、農学部などの移転により、北崎地区など西部地域の農業や水産業の分野においても、地域事情や地域資源を生かした産学官の連携や地域交流が大いに期待できる。このような取り組みが進んでいけば、学術研究都市構想に位置づけられている分散型地域核(ほたる)の誘導にもつながり、西部地域はもとより糸島半島全体が活性化してくる。本市は糸島市に負けずに、ほたるの光をともし、また、中心にある九州大学にスポットライトを当てるべきである。これは市長のやる気が大変重要である。具体的に言えば、本市は九州大学が移転したことの意義、学術研究都市づくりの理念をもっと広くアピールし、市民を巻き込みながら学術研究都市の実現に向け、スピード感を持って努力すべきである。本市の重点施策である九州大学学術研究都市構想のさらなる推進と九州大学の移転を本市の発展や地域経済の活性化などに生かすため、今後どのように取り組んでいくのか、市長の所見を伺う。 176 △市長 学術研究都市づくりは、本市にとって大変に重要な事業である。ダイハツ九州が開発センターの整備を準備しており、自動車関連の新しい産業が生まれてくるためのバックアップをする必要があると考えている。また、有機ELのプロジェクトは、ノーベル賞にも関連するような研究であり、あらゆるメーカーが関心を持っているので、間違いなく大きな産業拠点になっていくきっかけになるのではないかと思っている。今後も九州大学が有する豊富な知的資源や優秀な人材を生かして、学術研究都市づくりをさらに強力に進めていきたい。 177 ◯冨永委員 次に、地下鉄七隈線の延伸について尋ねる。七隈線の都心部区間のあり方については、交通対策特別委員会の場を中心に検討されてきており、平成22年2月に、優先して実現していくべきルートとしては、天神南~博多駅ルートが妥当であるとの報告に基づき、調査・検討を進めていく必要がある旨の中間報告が行われている。この天神南~博多駅ルートはもともとの地下鉄計画になかったルートである。その上で、この中間報告で長期的視点に立って検討していくとされた二つのルート、具体的には、もともと計画にあったルートである薬院~博多駅ルート、天神南~中洲川端~ウォーターフロントルートについても、本市の都市戦略を考える上で、非常に重要なルートであると考えており、今回はこのような観点で質問していく。まず、地下鉄七隈線の現在の利用状況について、近年の急速な少子高齢化の進展、就業構造の変化、マイカー利用の増加等の影響により、公共交通を取り巻く環境はますます厳しくなっているが、このような状況の中で、七隈線の乗車人員はどうなっているのか。 178 △交通事業管理者 七隈線の乗車人員については、開業当初の17年度は1日約4万4,000人であったが、その後毎年着実に増加しているところであり、21年度については、景気低迷の中、また、九大の六本松キャンパスの移転があったが、前年度比2.2%増、1日約6万1,000人のお客様が利用している。また、22年度については、4~8月までの状況ではあるが、前年同期比3.6%増、1日約6万4,000人のお客様が利用している。 179 ◯冨永委員 開業後は着実に増加しているようだが、空港線やJRなどとのネットワークが不十分であることから、利用者にとってはまだまだ使い勝手がよいとは言えない状況である。こうした状況に対して非常に効果のある対策は、七隈線の延伸と考えているが、交通対策特別委員会では、開業までに最短でも10年かかるとの答弁であった。10年もかけてはいけないし、早く完成しなければいけない。CO2排出量が総じて多いマイカー利用を抑制するためには、公共交通の利便性を向上させ、その利用を促していく必要がある。また、そのことにより地下鉄の利用者がふえることは、長期的な経営の安定にもつながるが、本市の公共交通の基幹となる地下鉄については、どのような利用促進に取り組んでいるのか。 180 △交通事業管理者 地下鉄の利用促進については、交通局としても積極的に取り組んでおり、地下鉄のICカード乗車券はやかけんについて、平成22年3月13日から、JR九州、西鉄、JR東日本との相互利用や電子マネー機能の導入を開始している。また、環境に優しい地下鉄のPRの強化を初め、エコちかキップ等の販売、サブウェイダイエット事業の展開を行い、地下鉄の利用促進に努めている。さらに、22年度からは、地下鉄に関する各種相談に対応するお客様サービスセンターの開設、はやかけんを活用したみまもりタッチ事業の本格実施や区役所・公共施設窓口における手数料等の電子マネー決済の導入推進など、諸施策の展開を図っている。 181 ◯冨永委員 国内の産業別CO2排出量統計を見ると、運輸部門における排出量削減は立ちおくれており、マイカーなどに比べて環境負荷の小さい、環境に優しい公共交通の利用を促すことは重要なことである。公共交通の利用は、環境問題への貢献にとどまらず、都心の渋滞緩和、来街者の移動手段の確保、将来に向けた公共交通機関の維持など、幅広い効果があり、地下鉄の利用促進について、今後もしっかりと取り組んでほしい。こうした現在の公共交通の利用促進に向けた取り組みに加えて、長期的な取り組みについても、しっかりと検討を進めていく必要があるが、とりわけ重要なのは地下鉄ネットワークの強化である。つまり、七隈線の延伸は、公共交通の利便性を向上させ、ひいては増客増収にもつながると考えているが、21年度は七隈線の都心部区間について、交通局としてどのような調査・検討を行ったのか。 182 △交通事業管理者 21年度の七隈線都心部区間に関連する調査・検討については、都心部内の各ルートを対象に、費用対効果及び交通や環境面などに与える効果を把握するため、整備効果の調査を行うとともに、七隈線がより利用しやすい地下鉄となるよう、営業区間及び都心部の延伸について幅広く市民の声を聞く市民アンケートを行っている。こうした調査・検討の内容については、平成22年1月の交通対策特別委員会へ報告し、同特別委員会において中間報告が行われている。 183 ◯冨永委員 私は交通対策特別委員会の委員ではないが、21年度の委員会資料を見たとき、市民アンケートの回答率が非常に高く、これは延伸に対する市民の関心の高さや期待の大きさが数字にしっかりとあらわれていると感じたところである。こうした調査・検討の結果に基づいて、平成22年2月に交通対策特別委員会の中間報告が行われたが、その内容は大きく二つにくくれると思う。一つ目は、都心部区間の検討ルートの中で優先して実現していくべきルートとしては、天神南~博多駅ルートが妥当であるとの報告に基づき、調査・検討を進めていく必要があること、二つ目は、天神南~中洲川端~ウォーターフロント及び薬院~博多駅の二つのルートについては、将来のまちづくりの進展などを見据えて、長期的視点に立った検討を進めていくべきということである。この中間報告に基づき、22年度にどのような調査・検討を進めているのか。 184 △交通事業管理者 22年度の七隈線都心部区間に関連する調査・検討については、21年度の交通対策特別委員会の中間報告を踏まえ、天神南~博多駅ルートについて、技術的な検討として、地質調査や地下埋設物等の現況調査を行っている。 185 ◯冨永委員 交通対策特別委員会の中間報告を踏まえ、天神南~博多駅ルートを優先して実現していくということで調査を行っているとのことだが、市長の口からいまだにこのルートでやるという言葉は聞いていない。市長の所見を伺う。 186 △市長 七隈線の延伸については、鉄道の利便性の向上、全市的な交通課題、環境問題など含め、大変重要であり、交通対策特別委員会の中間報告を踏まえ、本市の財政状況、地下鉄の経営状況、公共交通体系の確立など、さまざまな課題を十分に勘案しながら、検討を進めていきたい。 187 ◯冨永委員 予想どおりの答弁である。財政状況はあると思うが、これは長期的に料金収入で賄える設備投資であり、早くやってこそ価値がある。早く決定をし、早く着手し、早く市民の公共交通の利便性を高めてほしい。天神南~博多駅ルートの技術的な調査・検討を行っているとのことだが、市民アンケートの期待にもこたえられるようにしっかりとやってほしい。その一方で、中間報告の内容の二つ目にある残りの二つのルートも、本市の都市戦略上非常に重要である。20世紀は欧米が中心の時代であったが、21世紀は間違いなくアジアの時代となる。福岡市が生き残って、活力あるまちになるためには、海に開かれたアジアの交流拠点都市を目指すことが、一つの大きな目標となる。つまり、物流都市として、人、もの、情報を集積し、発展していくべきである。そのために最も重要となるのは、アジアとの玄関口としての役割をより強化することである。福岡には空、陸、海の三つの玄関があり、それぞれの玄関としての機能を充実し、また、そこへのアクセスの確保が重要となってくる。まず、空の玄関としての福岡空港については、本来24時間利用が理想であるが、諸般の事情により滑走路の増設になっている。しかしながら、空港へのアクセスという点においては、国内で唯一地下鉄が乗り入れていることもあり、非常に利便性の高い空港である。次に、陸の玄関としての博多駅については、平成23年春の九州新幹線の全線開業や新博多駅ビルの開業等により、博多駅を中心とする博多のまちは大きく変わろうとしている。この博多駅と天神という二つの拠点を結ぶ天神南~博多駅ルートは、大いに意味があると思うが、その博多駅に結節する薬院~博多駅ルート沿線には、歴史的価値のある住吉神社や、アジア的な雑踏やにぎわいを有する柳橋連合市場が位置しているとともに、九電ビルの建てかえを初め、渡辺通や薬院などの沿線のポテンシャルが高まってきている。九州新幹線の開業により、さらにそのポテンシャルが高まりつつある状況を踏まえると、薬院~博多駅ルートについては、長期的な視点というよりも中期的な視点に立ってしっかりと検討すべきである。また、陸のほうでは、鉄軌道のほかに、都市高速道路が整備され、外環状道路も間もなく完成することから、結節が大変よくなると思っている。最後に、海の玄関としての博多港については、近年の中国を初めとしたアジア各国の経済成長によって、現在、アジアが世界経済の中心地となっている。最近、天神かいわいでは、以前よりも中国や韓国を初めとするアジアからの観光客の姿をよく見かけるようになった。福岡と釜山との間では年間約100万人の往来があり、このうち海路での渡航者は約80万人に上るなど、現在の海路による往来は、釜山との交流が中心となっている。さらに、22年度に博多港に寄港が予定されている中国発着のクルーズ船は、前年の倍以上の66隻に上ると言われており、今後は中国の大きな市場を背景に、観光やビジネス等で多くの人が訪れることが予想される。ウォーターフロントには、こうした国際的な玄関口としての機能だけでなく、市民や来街者の憩いの場、コンベンション機能等の展開が期待されており、アジアに誇れる顔づくり、魅力づくりが重要である。ここからが大事なことであるが、こうした将来性も踏まえると、空港線、箱崎線との結節駅となる中洲川端を経由する天神南~ウォーターフロントルートも非常に重要である。このルートを実現することで、中洲川端は市内外の各方面からのアクセスが格段に向上し、まさに結節のキーステーションとなる。つまり、改札を出ずに1号線、2号線、3号線に乗りかえることができるのである。現時点では、採算性などにより実現性に問題があるようだが、例えば、中洲川端までは七隈線を延伸し、中洲川端から海辺空間一円に機能が展開するであろうウォーターフロントへは、小回りのきく新交通システムの導入も視野に入れるなど、幅広く、中期的な視点に立ってしっかり検討すべきである。まとめになるが、本市の歴史やポテンシャルを生かしつつ、アジアの活力をしっかりと受けとめるという観点から、本市のさらなる発展のために、都市の成長の牽引力ともなる地下鉄について、都心部での延伸を検討することは非常に重要である。なお、行政の効率化の観点から、一つの提案として、地下鉄事業の民営化の可能性についても検討されるよう要望しておく。次に、市長の市政運営方針について尋ねる。市長は、21年度は主にどのようなことに取り組んできたのか、また、市長就任後のこれまで4年間に、どのような姿勢で取り組んできて、どのように評価されているのか。 188 △市長 21年度は、子育てや福祉など市民生活に身近な課題に対応するとともに、将来の都市の成長を見据え、保育所の定員増、不登校・ひきこもり対策などの子ども施策に力を入れ、また、環境面では、太陽光発電設置や電気自動車の導入などを行ってきている。また、アジアとの関連では、福岡・釜山超広域経済圏の形成を初めとするアジア全体との経済交流の促進などに力を入れて取り組んできている。これまでの4年間は、市民の声を聞きながら開かれた市政運営に努め、財政の健全化に取り組むとともに、福岡市2011グランドデザインを策定し、厳しい財政状況の中で所要の財源を確保しながら、重点施策を着実に進めてきたと思っている。これらの取り組みによって、今後の福岡のまちづくりの土台ができ、暮らしの安心と新たな成長への第一歩を踏み出すことができたのではないかと考えている。 189 ◯冨永委員 ことしの3月議会において、我が会派の議員の質問で、この3年間の点数を問われたときに、点数は市民がつけると市長は答弁されたが、先月の9月議会において、民主・市民クラブの議員は、大変よくやったということで80点ぐらい、共産党の議員は、公約違反ばかりで20点ぐらいという点数をつけていたと思うが、我が会派としては、可もなく不可もなくということで、大きい失点はなかったと思っている。ただし、市長のこの4年間を見ていると、進藤市長、桑原市長のときの貯金を食いつぶしてきているという感じがしており、まだ本市は元気があると言われているが、もうそろそろ食いつぶすのではないかという気がしている。先週、我が会派の議員がこども病院の質問をした際にも感じたのだが、公立病院がなぜ必要とされているのかということを、市長は本当にわかっていないのではないか。本市には、大学病院や国立病院があり、民間病院もしっかりしており、非常に医療が充実しているのだが、それでも不足している医療がある。その不足している医療を担う病院をつくることに価値があるのであり、市長はこども病院だけをアイランドシティに移転し、市民病院は地域医療として使うと言われたが、地域医療を市立病院でする必要はなく、民間に任せておけばいいのである。我が会派を中心に決議を出したが、不足している医療である、小児・周産期医療、成育医療、超急性期の脳血管疾患等の高度医療などに特化して行うことが市立病院に求められている。そこをしっかり理解した上で説明しなければいけない。今度の市長選でも、ただ便利が悪い等々だけが争点になっている。市長には、なぜ市立病院をつくるのかということをしっかりと腹に据えて、強く主張してほしい。ところで、立候補に際し、前回に続いて民主党本部の推薦を受けられたようだが、もし再選された場合、推薦母体の意向を酌んだ市政運営をされるのか、それとも首長は中立であるという考えで市政をやられるのか、また、国政選挙には、推薦母体が推す候補者の応援マイクを持たれるのかを確認したい。 190 △市長 これまでの4年間、私なりに、議会を初め、広く市民の声を聞きながら、開かれた市政運営を行ってきたところである。今度の選挙においても、財政規律をしっかりと守りつつ、市民の暮らしの安心を確保し、その上で都市の成長の実現に向けて頑張るということを訴えていきたいと思っている。市民生活に揺るぎない安心を創造するということを申し上げているが、本市がもう一段も二段も住みやすく風格のある都市に躍進できるチャンスが今来ていると思っており、そういう私の思いを理解してもらえる方々とは、本市の発展につながる政策をしていくために連携を深めていくという考えで臨んでいきたい。 191 ◯冨永委員 昨年、市長が裁判を起こした用地買収に絡む不正に関して、不正を働いた者に対しては当然厳しい態度で臨むことは当たり前であり、弁済してもらうことも当然であるが、今回の事件は担当係長の故意の不正によるものであり、不正を見抜けなかった上司に対してまで、いきなり裁判を起して弁済しろというのは、どう見ても異常である。これでは、今まで部下を信頼して印鑑を押していた上司は、今後は自分が現場に行って確かめるまで印鑑は押せなくなるし、故意の不正に対して上司は対抗できなくなる。職務放棄と言われても今後は印鑑を押さないという職員まで出てきており、職員の士気が明らかに下がっている。大変残念な話だが、このような職場環境が、既に一部の職場で出ていると言われている。また、市長は、イメージダウンを招かないように、市民等からの損害賠償請求が行われる前に、先手を打って職員に対する裁判を起こしたという人もいる。今後、市民のための市政発展が、市長の独断ではなく、職員の意見もよく聞き、職員の士気が下がらないように進められるよう強く要望して、質問を終わる。 192 ◯飯盛委員 地域商店街の活性化支援について、美術館のリニューアルについて及び本市の公共事業について質問する。まず、地域商店街の活性化支援について、地域商店街への支援策には中小企業の経営支援という側面もあったり、いろいろな支援がある。その中で商店街を地域の中のコミュニティの担い手としてどのように支援していくのかということに特化して質問する。昨今、我が国の経済状況は厳しいと言われながらも、景気の回復基調が伝えられている。しかし、日銀は、緩やかな回復と言いながら、実質的なゼロ金利政策を行い、株価は反応があったものの、為替の円高はまだまだ進んでおり、日本経済は不安定である。中小企業、特に小売業やサービス業では、消費の持ち直しの実感はなく、依然として厳しい経営状況から抜け出すことができないのが現状である。これまでの地域の疲弊はさらに深刻となり、地域の商店街では、店主の高齢化や後継者難などの課題を抱え、個々の商店の魅力の維持が難しい状況に加えて、消費者の購買意欲の低下が直接的に経営に影響を及ぼし、大変厳しい状況が続いている。今も昔も地域の商店街は、地域住民の暮らしを支える買い物の場であると同時に、地域の人々が集うコミュニティの場としての役割も担っており、まちのにぎわいや活力と深い関係がある。元気な商店街のあるまちは活気にあふれたまちとなる。活力のあるまちの復活には地域商店街の活性化が不可欠であり、市政においても重要な課題であるが、21年度の商店街への支援施策の決算概要はどうなっているのか。 193 △経済振興局長 21年度の商店街支援に係る決算額は2,185万4,000円で、20年度と比較すると347万6,000円の増加となっている。 194 ◯飯盛委員 どのような内容の支援策を実施したのか。 195 △経済振興局長 21年度は、商店街が自主的に取り組む独自の事業などを助成する商店街活力アップ支援事業において、16団体の活用があり、地域の課題解決のためのまちづくり活動や集客の拡大、販売力の強化に取り組んでいる。具体的には、商店街を紹介するマップや情報誌の制作、地域住民と一緒に取り組むイベント事業などを支援している。また、空き店舗解消への取り組みや商店街の活動を担う人材育成のために、出前型セミナーの開催、活性化に向けた勉強会への専門家派遣を行うなどの支援を実施している。さらに21年度には、新規事業の商店街活力アップカルテ事業によって、商店街の実態調査を実施している。 196 ◯飯盛委員 21年度に新規実施した商店街活力アップカルテ事業の具体的な内容はどのようなものか。 197 △経済振興局長 商店街活力アップカルテ事業については、商店街の代表者に対する郵送によるアンケートと訪問聞き取りによって、商店街の実態調査を初めて行っている。市内全域の商店街に対して、会員数や空き店舗の状況、商店街活動の状況など基礎的なデータを収集している。この結果については、平成22年2月末に福岡市商店街実態調査報告書として公表している。 198 ◯飯盛委員 市内の商店街の実態を把握することは、地域商店街の復活に向けた活性支援策を検討する上で重要なことである。商店街活力アップカルテ事業による調査結果はどのようなものか。 199 △経済振興局長 調査結果によると、市内で活動中の商店街数は162団体で、約8割は任意に組織された団体となっている。商店街の規模については、会員数が40人未満の比較的小規模な商店街が全体の約6割を占めている。また、約7割の商店街には、商圏内に大型店があり、そのうち大型店が会員となっていると回答した商店街は約3割となっている。空き店舗の状況については、約6割の商店街に廃業などによる空き店舗が存在しているとの回答があり、空き店舗となった原因の多くは、経営の悪化と後継者の不在が挙げられている。また、商店街の課題は何かという問いに対し、商店街役員の担い手不足が最も多い回答となっているが、役員や担い手が不足する状況下においても、共同宣伝などの事業を初め、祭りや清掃活動、防犯、防災などの地域に貢献する活動に取り組む商店街の実態が明らかとなっている。 200 ◯飯盛委員 商店街衰退の象徴とも言える空き店舗の状況について、調査結果からは約6割もの商店街に空き店舗があるとのことである。商店街内に空き店舗がふえていくと、シャッター通りと言われる状況へ進んでいくことが危惧される。初めは1~2店舗の空き店舗でも、一たん商店街からにぎわいが失われ始めると、一気に寂れていくことは容易に想像される。商店街が寂れていくことは、地域のにぎわいや活力が失われ、地域そのものの衰退へとつながっていく。まちの活力を維持し続けるためには、空き店舗解消へ向けた支援も重要だが、21年度における空き店舗に対する支援の実績はどうか。 201 △経済振興局長 21年度においては、空き店舗等活用事業と空き店舗再生事業の二つの事業により、商店街内の空き店舗を継続的に賃借し、にぎわいの創出となるよう活用する場合に、賃借料、改装費の一部を助成している。商店街、NPO法人などの公益活動団体、学校等を対象とする空き店舗等活用事業については、21年度は、前年度より継続して商店街内にコミュニティスペースなどを設置しているNPOの団体等、2団体に支援を行っている。また、21年度からモデル的に実施している空き店舗再生事業では、商店街の役員や近隣の自治会役員などで構成する空き店舗再生協議会によって、商店街が主体的に新規出店希望者を募集し、これに応じた出店者が支援対象となるが、21年度には新たな1店舗が商店街内に出店している。 202 ◯飯盛委員 空き店舗等活用事業が2件、空き店舗再生事業が1件とのことだが、予定どおりの活用数なのか、それとも思ったより多いと考えているのか。この実績をどのように分析しているのか。 203 △経済振興局長 16年度から空き店舗に対する支援を行っているが、活用数が多いとは言えない状況である。21年度予算では、空き店舗等活用事業3件、空き店舗再生事業3件を予算計上をしていたが、空き店舗活用等事業が2件、空き店舗再生事業が1件の活用となっており、空き店舗の解消には十分な成果が得られていない。商店街内の空き店舗は、経営不振、後継者不足、好立地場所への店舗の移転、大家の意向等さまざまな要因によって生じるものと考えている。商店街組合においても、空き店舗が発生することにより活力が失われることを危惧しているが、現実的には個店が抱える個々の問題や店舗所有者の方針に立ち入ることの難しさなどがある。現在、空き店舗対策の施策として、非営利活動法人等が空き店舗を活用する場合に支援する商店街空き店舗等活用事業と、民間事業者が空き店舗を活用する場合に支援する商店街空き店舗再生事業を実施しているが、これらの施策を積極的に案内するとともに、商店街の立地条件や周辺環境等を総合的に勘案し、きめ細やかな支援を行っていきたい。また、来街者が増加して商店街がにぎわえば、その商店街に出店を希望する新規出店者があらわれることで空き店舗の解消も期待できることから、あわせて商店街活力アップ支援事業や商店街と顧客・地域との関係強化事業の活用を働きかけ、総合的な施策の活用を推進していきたいと考えている。 204 ◯飯盛委員 空き店舗になった原因に廃業が大きな割合を占めているとの調査結果であったが、これは近隣への大型店出店の影響なども考えられるのではないか。最近5年間で市内に大型店がどれだけ出店しているのか。 205 △経済振興局長 小売店舗部分の面積の合計が1,000m2を超える大型店舗を新設する際には、店舗設置者に大規模小売店舗立地法に基づく届け出が義務づけられており、17~21年度までの5年間の新設届け出件数は合計で34件となっている。 206 ◯飯盛委員 大型店が商圏内にある商店街は7割に達しているとの調査結果が出ているが、地域によっては、大型店が複数出店し、激しい価格競争に対して商店街が苦境に立たされることも多いと聞いている。大型店の出店が商店街に与える影響について、どのように分析しているのか。 207 △経済振興局長 実態調査の結果では、商店街の近隣に大型店が出店する場合、また、退店する場合のいずれにおいても、商店街の来街者数や売上にマイナスの影響が出ているとの回答が大部分となっている。これは、共働きや単身世帯の増加、消費行動の変化などの市民生活の多様化やニーズの変化が著しい中にあって、こうした変化をとらえた大型店へ顧客が流れていることが考えられる。商店街には消費者や地域住民のニーズにこたえる魅力ある商店街となることが期待されており、本市としても活性化に向けた支援施策の充実に努めていく。 208 ◯飯盛委員 大型店の与える影響が大きいのは、単なる商圏だけの話ではない。地域の中での地元行事や防災・防犯活動などの地域の一員として地域社会に大型店も同じように貢献することが求められている。大型店の地域社会への貢献を促すために、本市ではどのような取り組みを行っているのか。 209 △経済振興局長 大規模小売店舗立地法に基づく届け出手続の手引きに、まちづくりや地域社会の貢献に係る項目を設け、その中に商店街組合への加入、地域行事への参加、協力等の取り組み例を示すとともに、新設届出書に大型店が実際に行う地域貢献活動等について記載するよう求め、積極的な取り組みをお願いしている。 210 ◯飯盛委員 地域に密着した商店街にとっては、地域に貢献する活動は昔から当然のこととして取り組まれている。厳しい経営環境の中にあっても、地域のために社会貢献活動に取り組み、地域のコミュニティの担い手となっている地域の商店街は、活力ある元気なまちのために大変重要な存在であると強調しておく。実態調査の結果、どのくらいの数の商店街が、地域においてどのような社会貢献活動を行っているのか。 211 △経済振興局長 調査結果からは、商店街において地域活動を実施していると回答したのは81団体である。最も多い事業は祭りやイベント、次に清掃やリサイクルなどの環境美化活動、続いて地域における防犯・防災活動となっている。 212 ◯飯盛委員 このような社会貢献活動を行う商店街に対して、本市はどのような認識を持っているのか。
    213 △経済振興局長 商店街が行う祭りやイベントは、地域住民にとって身近で楽しい交流の場として期待されている。また、まちの清掃活動や花いっぱい運動などの美化活動、防犯・防災活動への取り組みは、安全、安心のまちづくりのためにも地域に果たす役割は大きいと考えているが、商店街がこのような地域社会に貢献する活動に積極的に取り組んでいることが、地域住民に十分知られているとは言えない状況がある。本市としても、商店街が行う活動をホームページで紹介するなど、PR活動への支援を強化していく。 214 ◯飯盛委員 地域の商店街の活動が地域の住人に余り知られていないということは大変残念なことであり、地域の商店街の存在を積極的にPRをしていくことは大変重要である。市内の商店街については、会員規模の大小、店舗構成の特徴、立地場所の特徴、大型店の出店などによる近隣の環境変化、史跡や名物の存在など、それぞれの置かれている状況が多種多様であることから、その抱える課題や悩みも多種多様であり、さまざまな問題に対して、きめ細やかに支援できる工夫を凝らす必要がある。商店街活力アップカルテ事業による調査結果を、今後の商店街支援策にどのように生かしていくのか。 215 △経済振興局長 調査結果からは、商店街の抱える問題点として、活動を担う人材不足、また、活性化へ向けた勉強会開催の希望が多くあったため、商店街人材育成事業やお悩みアドバイス事業などの事業内容や活用促進のPRを強化していく。あわせて、できるだけ多くの商店街が課題解決へ取り組むことができるよう、希望する商店街の実情に応じて、夜間講座を出前型にするなど、参加者増加への工夫に努めていく。また、22年度からは、地域の声や消費者ニーズを調査し、商店街が行う活動も同時にPRする地域・顧客との関係強化事業を新たに実施し、地域住民にとって魅力的な商店街づくりを支援していくなど、今後とも、それぞれの商店街の特徴や課題に応じ、きめ細やかな支援に努めていく。 216 ◯飯盛委員 地域・顧客との関係強化事業をやるとのことだが、その具体的な調査方法はどのようなものか。 217 △経済振興局長 商店街と地域・顧客との関係強化事業は、この事業実施を希望する商店街近辺の住民や来街者の要望などを本市が調査し、その結果を商店街に提供することによって、商店街がより効果的な事業に取り組めるように支援するものである。22年度は五つの商店街において、それぞれ調査したい項目を議論してもらった上で、順次アンケート調査を実施している。なお、このアンケート用紙の配布にあわせて、それぞれの商店街のPRチラシを配布することにより、商店街の活動を地域住民にも理解してもらうようにしている。 218 ◯飯盛委員 アンケートの質問項目をどのように設定しているのか。 219 △経済振興局長 商店街が抱えている課題や問題点等がさまざまあるので、商店街と打ち合わせをしながら、項目を決定している。 220 ◯飯盛委員 商店街の担い手がいない、役員になったり、進んで商店街のために一生懸命汗をかこうという人がいないとの答弁であったが、せっかく行政のほうで予算を計上し、いろいろな支援策のオプションを用意してもらっても、それが結果として活用しにくい状況になっている。商店街が地域のコミュニティの一端を担っていると認識し、行政としても商店街という組織を支援していくのであれば、もう一歩踏み込んで商店街の立場に立って、いろいろな施策を考えてほしい。今後の地域の商店街支援について、市長の所見を伺う。 221 △市長 商店街は身近な買い物の場であるとともに、地域の人と商店街の人が心のやりとりをする場であると思っている。商店街の皆さんには、地域で安全、安心のまちづくりも含めていろいろな活動をしてもらっており、支援策について、いろいろなメニューを考えているが、少しミスマッチになっているところがあるのかなと感じている。これからは商店街が、行政も含めて、地域と一緒になってやっていけるような環境づくりが非常に大事ではないかと思っている。商店街の元気がなくなるということは、地域の元気がなくなるということであり、後継者難、資金不足などの課題はあるが、個店及びその集合体である商店街が、どうすれば魅力を持てるかという視点に立って一緒に頑張っていきたい。 222 ◯飯盛委員 商店街というのは単に商売をする中小零細が集まっている場ということではなく、商店街は商店街なりに地域貢献、当然お客様に対するサービスということも含めて頑張っている。ぜひもう一歩踏み込んで、本当に商店街という組織をどう支えていくのかを、行政、職員が考えていくよう強く要望しておく。次に、美術館のリニューアルについて尋ねる。まず、観覧者の推移及び市民ギャラリーの利用状況について、21年度の美術館の総観覧者数とその内訳、また、近年の増減傾向はどうなっているのか。 223 △教育長 21年度の美術館の総観覧者数は46万380人で、内訳としては、常設展約6万人、特別企画展約15万人、市民ギャラリー等を使用した貸し会場展約25万人であり、20年度より各展とも減っており、全体で6万人ほど減少している。また、近年の5カ年で見た場合についても、横ばいか、やや減少傾向にある。 224 ◯飯盛委員 観覧者は減少しているようだが、市民ギャラリーなどの貸し会場の観覧者は25万人と非常に多いと思っている。美術館は、昭和54年の開館当時から市民ギャラリーの貸し出しを行い、非常に多くの美術団体等が作品を発表していると聞いているが、21年度はどれほどの借用申請があり、そのうちどれほどの利用が許可されたのか、また、近年ではどのような状況にあるのか。 225 △教育長 市民ギャラリーについては、21年度は234団体が申請を行い、約7割の151団体に利用を許可している。近年の5カ年で見た場合についても、申請団体の約7割に利用を許可している。 226 ◯飯盛委員 21年度も約7割、151団体しか利用ができていない。美術館に作品を展示することを目標に頑張っている市民が多く、また、自分で丹精込めてつくった作品を展示できなかった市民はさぞ残念な思いをされているのではないか。どのような理由により、約7割、約150団体だけしか許可ができなかったのか、また、利用できなかった市民が展覧会を開催できるよう何か支援をしているのか。 227 △教育長 市民ギャラリーは4室あり、1週間単位で貸し出しているため、1室当たり年間で約50団体の貸し出しが可能で、4室で最大計200団体が限度である。なお、1団体が複数の部屋を借りる場合は200団体より少なくなる。また、美術館を利用できない団体には、福岡アジア美術館や福岡県立美術館等を紹介するなど、展覧会がなるべく開催できるよう配慮している。 228 ◯飯盛委員 簡単に言うと、申し込みが多く、部屋が足りないということである。市民の作品発表の場を十分に確保し、市民の創作活動をもっと支援すべきである。市民ギャラリーの増設について、どのように考えているのか。 229 △教育長 市民ギャラリーの増設については、現状の施設規模では限界があり、困難であると考えている。 230 ◯飯盛委員 現状では増設は困難とのことだが、今般策定された福岡市アセットマネジメント計画では、大規模改修に向けて検討を進めていくとの記述があった。大規模改修の時に市民ギャラリーを増設すればいいのではないか。市民の作品発表への十分な対応や、より快適な美術鑑賞の場づくり、貴重な美術品の保存のためにも、早期に改修を実施すべきと考えるが、美術館は一般の建物より高度な施設・設備管理が要求されると聞いている。具体的にはどのような高度管理が必要なのか。 231 △教育長 美術館の施設・設備管理については、作品保護のため、漏水、冠水は起こってはならず、また、所蔵品の適切な保存や国内外の他の美術館等から作品を借用する際に課せられる厳しい許可条件を満たすためには、展示室や収蔵庫等は、恒常的に一定の温度・湿度である、20度と55%を保持することなどが必要なことから、24時間の連続運転や細かい空調管理を求められるなど、一般の建物より極めて高度で複雑な施設管理が要求される。 232 ◯飯盛委員 非常に厳格な施設管理が要求されている中で、既に30年以上が経過している。外観は立派で美しいが、見えない設備は老朽化が進み、修繕も多いと考えているが、現在、施設・設備はどのような状況にあるのか。 233 △教育長 美術館の施設については、老朽化が著しく、雨漏りが一部に発生したことがあるほか、身障者用トイレとエレベーターが狭く、バリアフリー化が不完全である。また、電気・空調・衛生設備は大半が耐用年数の2倍の期間使用しており、漏電等の不具合により、近年では年平均で15カ所の修繕を行っている状態であるが、市民の安全、快適な利用及び世界的にも貴重な美術品の適切な展示、保存のために、細心の注意を払って維持管理に努めている。 234 ◯飯盛委員 年に15カ所を修繕ということだが、21年度はどのような修繕を行い、幾ら経費がかかったのか。 235 △教育長 21年度の主な修繕については、雨漏りの発生に伴う屋上の防水工事や排水管からの漏水の発生に伴う修理などの応急的な処置を行い、約1,000万円の経費を支出している。 236 ◯飯盛委員 美術館が要請される厳しい施設管理からすれば、起きてはならない雨漏り、漏電、漏水などが現に発生しており、市民の安全な施設利用や美術品の保護のため、適切な施設管理が行われることを強く要望しておく。現在改修に向けて、何か検討を行っているのか。 237 △教育長 大規模改修については、施設・設備の現状から早期実施が必要と考えているが、これを契機として、美術館としての機能や魅力の向上を図っていくことも同様に重要であると認識している。このため、22年度より教育委員会内にミュージアム魅力向上委員会を設置し、総合的なミュージアム施策を展開する中で、美術館のあり方や施設に精通している専門家とも協議を重ね、大規模改修の基本的な考え方、魅力ある施設のあり方など、美術館のリニューアルの方向性について検討している。 238 ◯飯盛委員 リニューアルの基本構想を考えていくとのことだが、それだけではなく、集客、観光の観点など、都市戦略としての視点を持って美術館というものを考え、本市だけではなく、地元の企業などと連携し、共同で事業推進を図れば、さらに多くの来館者でにぎわうことになる。来館者もより楽しめるような美術館を目指すべきと思うが、現在、企業とどのような連携をとっているのか。 239 △教育長 企業などとの連携については、例えば、ことし5月に実施した第2回福岡ミュージアムウイークの中で、地元企業との連携による福岡シティループバスぐりーんを使ったミュージアム3館をめぐるガイドツアーや、毎年10月にNHK福岡放送局との共催によるNHKハートパーク事業で障がい者の絵の展示などを実施し、市民の好評を得ている。今後は、今以上に企業、商店街等、地域との連携を深め、文化芸術のさらなる振興と集客の強化に努めていく。 240 ◯飯盛委員 平成23年3月には九州新幹線が全線開通となり、美術館も観光拠点として、海外を含めて多くの人が来館されるよう、大規模改修においても、美術館の基本理念に沿った魅力向上が図られ、また、市民が喜ぶリニューアルでなければならない。リニューアルの基本的な考え方、今後の方向性について尋ねる。 241 △教育長 美術館のリニューアルについては、現在、福岡市文化芸術振興ビジョンで掲げられた総合的なミュージアム施策の展開を目指す中で、美術館は本市の文化創造拠点及び国内外の集客交流施設としての役割を積極的に担い、その魅力向上を図っていくことが必要である。今後は、近年中には必要となる大規模改修、そしてリニューアルに向けて、専門家等に意見を聞きながら、施設のあり方などについて、さらに検討を進め、21世紀をリードする美術館として、新たな施設形態や機能を備えることにより、市民や国内外からの来訪者でにぎわう都市型観光の拠点として注目され、魅力あふれる美術館を目指していく。 242 ◯飯盛委員 最後に、本市の公共事業について尋ねる。22年度は予算ベースで国は18%削減されたものの、単独事業については、県では15%の増、本市でも10%増の予算を組んでいるが、21年度決算ベースでは、公共事業費の割合は前年度と比較してどのようになっているのか。国、県、市の決算状況はどうか。 243 △財政局長 国の21年度一般会計決算における公共事業の割合は8.3%であり、前年度の8.2%に対して0.1%の増、県の21年度普通会計決算における公共事業の割合は16.5%であり、前年度の16.3%に対して0.2ポイントの増、本市の21年度普通会計決算における公共事業の割合は12.4%であり、前年度の11.8%に対して0.6ポイントの増となっている。 244 ◯飯盛委員 20年度に比べ、21年度の公共事業の割合は若干ふえているようだが、この程度のものなのか。市長は、21年度は緊急経済対策として、国の政権与党だった自民党に同調して公共事業をふやしたはずだが、市民は市政の対応に不満を持っている。かなり足りなかったのではないかと思うが、所見を伺う。 245 △財政局長 経済・雇用対策として21年度に行った公共事業の対応については、当初予算に加え、新たに創設された交付金制度など国の経済対策と連携を図りながら、6月から2月の各補正予算に総額で200億円を超える公共事業を切れ目なく追加し、事業量を確保できたものと考えている。また、執行に当たっても、工事等のスピーディーかつ途切れのない発注の推進、分離・分割発注の推進、工事代金の支払い手続のスピードアップ、前金払制度の活用の促進など、できる限り迅速に対応することにより、地域経済の下支えとして、公共事業の確保・執行に積極的に取り組んだところである。 246 ◯飯盛委員 今の政権与党である民主党は公共事業に反対の立場で予算を減らしているが、本市は22年度予算も公共事業をふやしている。市長は民主党のコンクリートの公共事業削減について反対の立場なのか。今現在の気持ちはどちらなのか、イエスかノーで返答されたい。 247 △市長 公共事業については、21年度については、リーマンショック以降の極めて厳しい経済・雇用情勢を踏まえ、国の経済対策と連携を図りながら、積極的かつ切れ目なく補正予算を追加し、地域経済の下支えをしてきたところである。22年度当初予算においても、地域経済や雇用環境の見通しは余りよくない状況を受けて、公共工事に対しては21年度を上回る事業費を確保している。基本的な考え方としては、市民生活の安心や将来の成長を考えると、必要な公共投資はきちんと行うべきだと思っており、また、地域経済の下支えをするという意味でも、公共工事の確保は必要だと考えている。 248 ◯飯盛委員 公共事業については、事業量の確保もさることながら、事業の内容が地場中小企業向けであることなど、その中身が非常に重要である。21年度は、地域密着という観点から一体どのような事業を追加したのか。主なものとその経済対策としての効果について尋ねる。 249 △財政局長 21年度の補正予算で追加した公共事業の主なものとしては、学校施設の耐震化に約42億円、道路・街路の整備に約40億円、公共下水道の整備に約16億円、公園の整備に約9億円、河川の改修に約5億円などとなっており、いずれの事業についても地場中小企業向けの発注が中心となるものであり、このような事業を年度当初から切れ目なく予算計上し、迅速な執行に取り組んだところである。なお、これらの公共事業の追加を初め、さまざまな経済・雇用対策に取り組んだことなどにより、市内の企業倒産件数と負債総額は、民間調査機関の調べによると、20年度の207件、1,510億円から、21年度は158件、591億円と減少している。また、地場企業の景況判断指数についても、福岡商工会議所の調査結果によると、平成21年1月から3月期がマイナス67.1であったのに対し、平成22年4月から6月期はマイナス33.1へと改善しており、本市が行った経済・雇用対策は地域経済や地場企業に対する有効な支援、下支え策になっているものと認識している。 250 ◯飯盛委員 先日、市長は1期目の成果として、市債残高を1,000億円縮減したことが最大の成果であり、2期目の公約として、さらに1,000億円縮減すると発表されている。しかし、市長は今、事業費は確保しており、一定程度の公共工事の確保は必要、公共工事は全体的に必要であると答えている。市長は財政規律を重んじると言っているのか、それとも財政出動を重んじると言っているのか、一体どちらが大切だと言っているのかわからない。はっきりと返答されたい。 251 △市長 財政規律をきちんと守り、返すべきものはしっかり返していきつつ、必要な公共工事については確保する、この両方をやっていくことが一番大切な基本的な姿勢であり、考え方だと思っている。どちらか一方ということではなく、両方きちんと最大限の努力をしていくことである。今どれが必要な公共工事で、どれが必要でないかというのは、なかなか議論があるが、特に暮らしを支えていくのに必要な公共工事は、しっかりやっていくということに尽きると思っている。 252 ◯飯盛委員 本年度の結果はまだわからないが、単独事業の予算ベースでは、県のほうが15%増と多く、比べて本市のほうは10%増ということでインパクトがなく、県よりも当然に市のほうが市民にとって近い行政であるということを考えると、まだまだ足りない。民が元気なときは当然官は後ろに引いていいと思っているが、民が前に進めない、元気が出ないというときこそ、官で下支えをしていくという姿勢が大事である。最後に、金額の大小もあるかもしれないが、使い道や見せ方など、市長としてのリーダーシップをもう少し発揮すべきであったということを指摘して、質問を終わる。 253 ◯高森委員 近年、急速な勢いで高齢化が進み、平成20年には高齢化率が21%を超え、5人に1人が高齢者となり、高齢社会に突入した。先日参加した七隈校区の敬老祝賀会での社会福祉協議会の実態調査では、5年前の高齢化率19.5%から、ことしは21.4%と、地域によっては高齢化が進んでいる。本市では、21~23年度までの3年間、持続可能な高齢者保健福祉施策の総合的な推進と介護保険制度の円滑な実施を図り、老人福祉計画と第4期介護保険事業計画を一体とした福岡市高齢者保健福祉計画が策定された。まず、本市の65歳以上の高齢者数及び、在宅高齢者数と介護保険3施設の入所者の総数を尋ねる。 254 △保健福祉局長 本市の65歳以上の高齢者数と在宅高齢者数については、住民基本台帳登録人口及び平成17年の国勢調査のデータに基づいた推計で答える。平成22年8月末現在、高齢者数24万5,041人、在宅高齢者数22万6,900人である。また、介護保険3施設と呼ばれる特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の入所者数の総数は、平成22年4月現在7,030人である。 255 ◯高森委員 19年度に実施された本市高齢者実態調査によると、心配事や悩み事は自分の健康状態という回答が最も多く、また、行政に特に力を入れてほしいことは自宅に住み続けながら受ける介護保険サービスという回答が44.7%と最も多いことがわかっている。高齢者保健福祉計画の基本理念は、高齢者一人一人が生きがいを持ち、尊厳を保ちながら、住みなれた地域で自立した生活を安心して続けることができる地域社会の形成としている。ひとり暮らしで、食事や身の回りのことができなくなり、自宅で暮らすことが困難な場合、介護を必要とする状態に応じて高齢者が施設を選択できる体制を整え、充実させることが求められている。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の介護保険3施設それぞれの入所者数を尋ねる。 256 △保健福祉局長 平成22年4月現在、特別養護老人ホーム3,447人、介護老人保健施設2,518人、介護療養型医療施設1,065人である。 257 ◯高森委員 介護療養型医療施設は国の医療制度改革により平成24年3月で廃止されることとなっていたが、現在、廃止期限の延期を含めて検討中である。今後は老人保健施設への転換が進められる。特別養護老人ホームへの利用申込者は毎年増加しており、22年度は7,517人でした。その中で、申し込みをしても施設の人からあと何年待ってもらうかわかりませんと言われ、施設に入れず困っているとの声を多くの人から聞いている。本市では、今後高齢化が進む中で、特別養護老人ホームの整備計画と整備状況を尋ねる。 258 △保健福祉局長 特別養護老人ホームの整備目標量等については、第4期介護保険事業計画において、21~23年度までの各年度整備目標量を定めるとともに、26年度の利用者数を見込んでいる。整備目標量については、21年度末3,560人分、22年度末3,680人分、23年度末3,800人分である。また、26年度末の利用者の見込み数は4,680人としている。整備状況については、21年度末3,502人分整備し、22年度末3,786人分、23年度末3,994人分の整備を予定している。23年度末目標を194人分上回る前倒し整備である。 259 ◯高森委員 特別養護老人ホームへの入所希望者は、家族の介護と介護保険サービスの利用だけでは生活が困難なので、入所できないことは非常に切実な問題である。そこで、入所要件や基準、介護度によって優先的に入所できるのか、また、その基準は市が決めたものか、あるいは施設ごとに違うのか尋ねる。 260 △保健福祉局長 特別養護老人ホーム入所基準等については、入所決定過程の透明性、公平性を確保し、必要性が高い人の円滑な入所を図るため、平成15年1月に福岡市老人福祉施設協議会と本市で福岡市特別養護老人ホーム入所指針を策定し、この中で入所評価基準もあわせて定めている。また、この評価基準は、要介護度など本人の状況や介護者等の状況及び個別の事情等を加えた総合評価の方式としており、これに基づき入所優先順位名簿を作成し、評価合計点数の高い順に入所案内をすることとしている。 261 ◯高森委員 特別養護老人ホーム入所者の介護度別の割合について尋ねる。 262 △保健福祉局長 平成22年4月1日現在、要介護1が148人、4.3%、要介護2が372人、10.8%、要介護3が751人、21.7%、要介護4が1,048人、30.4%、要介護5が1,128人、32.7%、合計3,447人である。 263 ◯高森委員 入所者の中で介護度が高い要介護度4~5の人が63%を占め、要介護1~3の人が37%で、身体状況はさまざまである。身体機能が衰えていく不安の中、年をとっても安心して暮らせる施設の充実が求められている。厚生労働省は、平成14年からユニット型個室を特色とした小規模生活単位型の特別養護老人ホームの整備を進め、平成24年までに70%以上にする整備目標を掲げている。一部屋に複数の人が利用する相部屋、いわゆる多床室による大型施設での画一的な介護に対するさまざまな反省から、宅老所や認知症対応型グループホームが注目されるようになり、個人の生活を尊重した施設環境づくりをする動きの一つがユニットケアである。少人数の家庭的雰囲気の中でケアを行い、食堂や談話スペースなどの共用部分を設け、顔見知りのスタッフやグループとの交流ができる仕組みである。また、ユニット型個室は、利用者の自立した生活を尊重し、プライバシーの保護を実践することができる。本市での1人当たりの個室面積の基準を尋ねる。 264 △保健福祉局長 22年度の募集分までは、従前の特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準等のとおり、内のり有効面積13.2m2、約8畳以上である。 265 ◯高森委員 個室の広さは8畳程度とされているが、入所者はなれ親しんだ家具などの私物を持ち込むことが可能で、自宅と同じ雰囲気で過ごせる空間はとても重要である。ことし7月、厚生労働省の諮問機関、社会保障審議会において、ユニット型個室面積の基準が引き下げられ、1人当たり個室面積を6畳程度とすることが了承された。この基準の緩和は、入所者の自己負担軽減がねらいだと言っている。本市における特別養護老人ホームの箇所数、定員全体に占める多床室数とユニット型個室数、その割合について尋ねる。 266 △保健福祉局長 21年度末における状況については、施設数46カ所、定員3,502人分である。その内訳は、多床室等2,367人分、67.6%、ユニット型個室1,135人分、32.4%である。 267 ◯高森委員 ユニット型個室の整備状況は32%と低く、多床室が68%を占めている。高齢者の多くは、できる限り住みなれた自宅や地域で暮らし続けたいと願っている。しかし、ひとり暮らしの不安などさまざまな事情から施設に入らざるを得ない。そのため、できるだけ身近な場所での施設入所を望んでいる。身近な地域に個室と多床室の施設がある場合、空き状況によっては多床室に入らなくてはならない状況である。多床室の問題点として、まず、みずから選んだ人ではない人と同室にならなければならない。2番目に、他人のおむつ交換時ににおいが気になる。次に、会話も筒抜けで、家族が来たときに気兼ねなくしゃべれない。また、起きる時間や寝る時間も自由にならないなどプライバシーがないことや、インフルエンザなど感染症が施設内で発生した場合、対応が十分できないことが指摘されている。多床室を希望する人は、個室ユニットは費用が高いためと答えており、好んで多床室を選んでいるわけではない。横浜市では、特別養護老人ホームの整備については、個人の尊厳やプライバシーが配慮された全室個室ユニット型であるべきとの方針が示されている。横浜市は、平成15年に個室・ユニットケアが導入され、ケアの質の向上のために一部でも多床室から個室ユニットに転換してほしいという趣旨である。一部ユニット施設は暫定的な形態であり、これから建設する施設はあくまでも全室個室ユニットが原則であるべきで、将来を見つめた対応が必要である。低所得者が入れないから多床室をつくるということを続けていては、いつまでたっても個室ユニットの割合はふえていかないと述べている。特別養護老人ホームは、高齢者にとってついの住みかとしての生活の場である。平成14年の国の基準どおり入居者の個室・ユニットケアを進めるべきと考えるが、所見を尋ねる。 268 △保健福祉局長 特別養護老人ホームの整備については、本市では、15年度以降、国の指針どおりすべてユニット型個室としている。 269 ◯高森委員 個室の居住費の経済的負担が大きいため、やむなく多床室を希望する高齢者が多いと聞いているが、本市の多床室と個室の利用者が払う居住費の所得段階別の自己負担額は幾らで、本市の施設居住費の負担軽減は、多床室と個室はそれぞれどうか。また、21年度の決算では施設居住費負担軽減総額は幾らか尋ねる。 270 △保健福祉局長 特別養護老人ホームの居住費の利用者負担額については、いずれの利用者負担段階の基準費用額も、月額の概算で多床室1万円、個室6万円である。また、特定入所者介護サービス費の支給による居住費の利用者負担の軽減については、月額の概算で、利用者負担第1段階は多床室1万円、個室3万5,000円の軽減、利用者負担第2段階は多床室は軽減なし、個室3万5,000円の軽減、利用者負担第3段階は多床室は軽減なし、個室1万円の軽減となっており、21年度決算における特別養護老人ホームの居住費利用者負担の軽減額は2億8,900万円余である。 271 ◯高森委員 人間にとって、一人一人の個性が尊重され、また、他人との関係が営まれることも大切である。高齢者一人一人の個性と生活リズムを生かすための個室、また、入所者が互いに社会的関係を築ける場としてのリビング、こうしたユニットケアを行うためのハード面の構造が必要であることは財団法人医療経済研究機構が行った実証研究で示されている。ある施設では、多床室から個室にかわって、入所者の日常生活動作能力の高さや低さにかかわらず、個室に自分の家具や絵、写真を飾るなど個人的領域が形づくられている。入所者はプライバシーが守られ、心が安定したことで、ベッドに寝たきりにならず、むしろ積極的にリビングで過ごし、他人との交流がふえ、さらに、1人当たりの食事量も増加し、ポータブルトイレの設置台数が減るなどの効果があり、入所者の生活が大きく改善している。利用者の経済的負担については、低所得者の負担軽減策も社会保障審議会の介護給付費分科会で検討されているが、国民年金受給者や所得が低い人にとっては厳しいとの声がある。例えば第3段階で年金が80万円をわずかに超える人は、月収に換算すると約6万7,000円で、ユニット型個室に入所した場合、一月の居住費に加え食費負担額を加えると自己負担額は6万8,700円で、月収を上回る計算になる。これは年金が80万円以下の第2段階の負担額3万6,300円の2倍に当たる。第3段階は年金額であれば80万円から非課税限度額である155万円まで幅があり、80万円をわずかに超えるような人にとってはそもそも支払い自体が困難な状況にあり、入所をためらう人が多くいる。横浜市では、本年10月から、格差を少なくするため、第3段階で単身世帯の年収150万円以下など一定の要件を満たす人に月額1万円の助成をすることを始めた。高齢期はだれもが迎え、その長い高齢期をどのように過ごすかは、個人にとっても、社会にとっても大きな課題になっている。人生の最後まで個人として尊重され、その人らしく暮らしていくことはだれもが望んでいる。そうした思いにこたえるために、介護保険は高齢者が介護を必要とするときに、できる限り自立した生活を送るための支援をするもので、その根底にあるものは尊厳の保持である。今後、20年、30年後を見通し、個室・ユニットケアを進め、また、低所得者が個室に入れるように助成を検討すべきと考えるが、市長の所見を尋ねる。 272 △市長 特別養護老人ホームの個室及びユニットケアの整備については、国において参酌標準の廃止や居住費の利用者負担軽減のための居室面積引き下げ及びユニット型に多床室を併設した特別養護老人ホームの整備などの制度変更が現在検討されている。今後とも国の動向等に留意しながら、23年度に策定する第5期介護保険事業計画の中で、整備のあり方について検討したいと考えている。利用者負担の軽減策については、介護保険制度の中で一定の低所得者対策が実施されているが、今後とも低所得者の利用者負担軽減の拡大を図るなど必要な措置が講じられるよう、全国市長会などを通して国に対して要望していく。 Copyright (c) FUKUOKA CITY, All rights reserved. ↑ ページの先頭へ...