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平成30年 第3回定例会−09月05日-02号
平成30年  9月大都市税財政制度調査特別委員会-09月05日-01号

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  1. 川崎市議会 2018-09-05
    平成30年  9月大都市税財政制度調査特別委員会-09月05日-01号


    取得元: 川崎市議会公式サイト
    最終取得日: 2021-05-06
    平成30年  9月大都市税財政制度調査特別委員会-09月05日-01号平成30年 9月大都市税財政制度調査特別委員会 大都市税財政制度調査特別委員会記録 平成30年9月5日(水)   午後2時00分開会                午後3時34分閉会 場所:602・603会議室 出席委員:橋本 勝委員長、かわの忠正副委員長斎藤伸志、末永 直、矢沢孝雄田村伸一郎、      河野ゆかり、渡辺 学、宗田裕之、片柳 進、堀添 健、木庭理香子松井孝至各委員 欠席委員:なし 出席説明員:(参考人立教大学 関口智 経済学部教授 日 程 1 大都市における税財政制度の諸問題に関する調査・研究について     2 その他                午後2時00分開会 ○橋本勝 委員長 ただいまから、大都市税財政制度調査特別委員会を開会いたします。  お手元のタブレット端末をごらんください。本日の日程は、大都市税財政制度調査特別委員会日程のとおりでございますので、よろしくお願いいたします。  それでは、日程第1の「大都市における税財政制度の諸問題に関する調査・研究について」を議題といたします。  本日は、立教大学経済学部教授関口智氏を参考人としてお招きいたしまして、「大都市における税財政制度の諸問題について」、御意見をお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  なお、関口先生の経歴等を掲載いたしましたプロフィールを配付しておりますので、御参照いただければと思います。
     それでは、ただいまから関口先生の御講演をいただきますけれども、その前に委員長として一言御挨拶をさせていただきたいと思います。  関口先生、本日は御多忙のところ、本当にありがとうございました。私は、委員長を務めさせていただいております橋本勝でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  先生におかれましては、東京都税制調査会委員、そして総務省地方財政審議会地方法人課税に関する検討会特別委員など、数々の要職につかれておられまして、国と地方のそれぞれの実情に非常に精通をされ、地方税制制度の現状と課題、そのあり得べき姿について精力的に御考察を展開されておられると心より承知をいたしております。  本日は、「大都市における税財政制度の諸問題について」お話をいただきますけれども、本市の財政状況と本市が抱える課題等を踏まえて、大都市にふさわしい税財政制度というものがどうあるべきなのか、このようなことについて先生のお話をお聞かせいただいて、今後の委員会活動に議論を深める参考とさせていただきたいと思っておりますので、重ねてよろしくお願い申し上げたいと思います。短い時間となりますけれども、先生の貴重な御意見を拝聴し、しっかりと勉強させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、これ以降は関口先生のほうでよろしくお願いいたします。 ◎関口 参考人 ただいま御紹介にあずかりました立教大学の関口と申します。よろしくお願いいたします。  きょうお話しさせていただきます内容は、「日本の地方税制改革財源保障」という題名にさせていただきました。とりわけ近年の変遷がどんな視点から行われてきたのかということを整理したいと考えております。  私がこのお役を引き受けたときに、恐らく私に対する御要望は、こういったことを紹介することだろうと考えました。1つ目は、国での地方税制改革の動きというのが一体どういうことになっているのかということを紹介することであります。2つ目は、都道府県レベルでの地方税制改革の動きというものが一体どういうことになっているのか。3つ目は、とりわけ川崎市さんにもかかわる市町村レベルでの地方税制改革というものがどういう動向にあるのか、これら3つを一体的に紹介するということであります。  そこで、これら3つのレベルでの税制改革を体系的に捉えてみたときに、市町村の税というものがどう位置づけられているのかということをお話しすればいいのではないか、と考えたわけであります。きょうの最後にその方向性に関してもお話ししたいと思いますが、初めは地方税制改革の背景の話をした上で、これまでの税制改正がどんな視点から行われてきたのかということを述べ、その後、望ましい歳入構造という形でお話をさせていただきたいと思います。時間も限られていますので、適宜お話をスキップしながら、最後に質問の時間がとれれば、そこで川崎市さんのお話ができればと考えております。  まず、きょうの報告の基本的な視点というものをスライドでお示ししています。基本的に地方税の話をするときに非常に重要なことは、財政需要をどう捉えるのか、ここから出発していくわけであります。大きく分けて3つのステップが財政を考えるときには重要になってくるものです。ここにお示ししましたとおり、1つ目は、まず財政需要というものを捉える、2つ目ステップとして、その財政需要に対してどういう財源で賄っていくのか。これは課税力という言い方をしますが、財政需要に対応する形の課税力というものを考える。これがある意味、支出に対する収入というのを考えるステップであります。地方税あるいは地方財政というのを捉えていくに当たって、財政需要課税力との間にギャップが生じます。その場合に何を考えていくのかという議論が3つ目ステップでありまして、財政調整あるいは財源保障ということで議論を進めていくわけであります。  1つ目財政需要事務配分と、2つ目課税力税源配分というところで一般的に議論になるのはどんな議論かというと、これは受益と負担の対応という言い方で捉えられるものであります。地方税の議論をするに当たっても、受益に対して負担がどうなのかという形で、まずは受益を捉えて、そこから負担を考えるという流れになっております。こことの対応関係課税自主権の行使ということもよく議論されているところであります。  2つ目の部分は税源配分であります。この税源配分のところで議論になるのが、偏在性が少なくて、安定性がある税収が地方税として望ましいんだという議論であります。偏在性が少なく、安定性がある税収というものが一体どういうものとして議論されてきたのかということを、既に先生方も御案内のところだとは思いますが、後ほど少し御紹介したいと思います。  3つ目の部分は、財源保障財政力格差の是正ということであります。先ほどの2番目の偏在性が少なく、安定性がある税収と言っているときには、税収の格差という言い方で税収の偏在性の議論をいたします。それに対して第3段階は、やはり財政力の格差という言い方で、これまでとられてきた財政需要課税力とのギャップをいかに埋めるのかという観点で財政力格差是正という言葉を使うことになります。  これまでの税制改革、特に2000年代以降の地方税制改革の中で、大枠を非常に大ざっぱに捉えると、地方消費税の拡充が行われたことは非常に大きな動きであったと言えます。それに対応する形で、実は地方法人2税の改正が行われていることを強く意識することで、昨今のさまざまな地方税制改革の大枠がつかめると考えておりますし、きょうもその関連の話を1ついたします。これが課税力の話であります。  もう一つは、財政調整財源保障の話です。これは、昨今の改正の中でさまざまなことがなされてはいるんですけれども、財政調整機能地方交付税に一本化するのかどうか、ということが問われている感があります。  つまり、きょうお話をする税制改正の流れの中で、1つは地方消費税地方法人2税という話が出てまいります。その上で、最終的な財政調整あるいは財源保障をどういう形で行っていくのかという議論が加わっています。そして、昨今の税制改正あるいは財政の中での改正を見るに当たり、財政調整財源保障の機能を地方交付税に一本化するのか、あるいは、ほかの手段で財政調整を行うのかとか、そういったことが今、ホットイシューになっている。このことを初めに基本的な視点として指摘しておきたいと思います。  さて、今話したものは、国と地方の間での話としても行われてきたものです。これまでどちらかというと、国と地方との間でこういった議論がなされてきたわけですけれども、非常に大事なところは、近年は、地方政府内部租税体系がどうあるべきなのかといったことも議論の対象になってきているということであります。川崎市さんからすると、神奈川県との間の話をどういうふうに考えるのかということも当然のことながらあるということですし、ほかの地方自治体さんにとっても県との間でどういう租税体系が望ましいのかを本格的に考えていく時期に来ていると言えると思います。今のようなお話をやや詳細にしていくのがこれからの話になります。時間の制約もありますので、適宜スキップしながらお話をさせていただきたいと思います。  日本の地方税制改革の背景というスライドで、1つ、これは非常に大きなことを指摘しておきたいと思います。それは、従来の政府の機能と比べてその機能が変化してきているということであります。政府機能が変化してきたという背景が、どういった別の言葉で表現されるのかというと、少子高齢化です。これをもう少し経済学の立場、あるいは社会学的な立場で捉えると、家族機能が変化したり、企業の企業保障の機能というのが縮小してきたというところにあるわけです。今まで家族という形で、家族の中でそれぞれの役割を果たすという形で行われてきた機能が縮小してしまった。あるいは、企業の中で言えば、終身雇用制度の中で職業訓練、これは従業員の教育という言い方でもいいと思うんですが、従業員の教育を社内でやっていたものが、社内ではやらなくなってきたということ等、そういった保障機能が縮小したことに伴って財政需要が増加してきたということであります。言い方をかえれば、家族や企業が行ってきたというサービスを代替する機能を政府に求めている部分も出てきた、ということであります。これは、政府が行っている範囲が拡大しているということであります。国際比較をしてみれば明らかなんですが、ここでは数字を出してはおりませんが、日本はどちらかというと、実は政府がいろんなサービスを提供している範囲は狭くて、民間のレベルに頼ってきた部分というのが歴史的には非常に多いのであります。そういう中で、家族と企業の機能が縮小したという状況の中で、政府部門に求められる機能が拡大しているということであります。  理論的な議論も、そういう政府の機能の変化に対応する形で行われてきました。これは余り時間がありませんので、あっさりと申し上げると、やはり地方政府が果たす役割が拡大してきているということが、理論の中でも捉えられています。特にこれまで地方政府が行うサービスというのは個人に分割しにくい、どれだけ個人が受益を受けたのかというのはわかりづらいサービス、これは公共財と言うわけですけれども、そういったものを供給すればいいんだという立場で議論されてきたわけですけれども、最近は、そういった政府機能の拡大というものを捉えながら、割り当て可能な対人社会サービス政府部門が供給すると。これは、言い方をかえれば、福祉なり医療なり介護なりという形で、個々人がどれだけのサービスの提供を受けるのかというのがある程度わかるものに対しても、政府がその役割を果たしていくんだということを理論の中でも捉えているということであります。  こういった中で、まず重要なものは財政需要であります。日本の事務配分の特徴ということで、ここには国と地方、地方の中でも都道府県市町村に切り分けて示しています。国際比較をするに当たって、やはり事務配分というのを捉えておかないと、各国の数字と日本の数字の違いという部分も理解を間違ってしまう部分がございます。きょうは、ほかの国についていろいろ御紹介することはできないわけですけれども、日本の特徴を一言で申し上げれば、重層的な事務配分をしているということであります。重層的というのはどういう意味かと申し上げますと、例えば道路で捉えると、道路はどこかの政府部門が1つで全部やっているという形ではなくて、国道は国が持っている、県道は県がやっている、市道は市がやっているという形で、同じ道路というサービスを提供するにしても、そのサービスを提供する主体というのが折り重なっているような状況だということであります。同じように、教育に関しても、国が教育を全部担当するとか、都道府県が教育を全部担当するという形ではなくて、国は大学レベルのことをやり、都道府県高校レベルのことをやり、市町村小中学校レベルのことをやるという形で、国と地方の間でそれぞれ事務を配分しているということが一つの特徴なわけです。  それに加えて、地方の事務という意味では、事務配分が非常に多いということが日本の特徴でもあります。ですので、財政需要を捉えるに当たって、どこに財政需要があるのかというのをサービスと結びつける形で捉えると、市町村レベルのところ、あるいは都道府県レベルのところで求められる財政需要というのは非常に多い状況にあるというのが日本の事務配分の特徴であります。  これに対して課税力はどうなのかということが次に問題になってくるわけです。課税力の特徴というのも、ここに掲げておりますとおり、国と地方があって、地方には道府県と市町村があるわけです。この中で、先ほどの財政需要に対して課税力が対応しているのかどうかということが、1つこの意識として捉えなければならない視点であるわけです。例えば税源配分を見ますと、国と地方で大体6対4ぐらいの歳入構造になっている。ここでは金額が示してありますが、トータルは90兆円ぐらいの値の中で国税は54兆円で、残りが地方だと。これを比率で出してみると6対4ぐらいの状況で、このような歳入の状況に対して地方が行っているサービスがどれぐらいなのかということを問うた場合、そこにギャップがあるので、財源保障を行ったり、財政調整を行う。こういった姿が日本の姿になっているということであります。ですので、極端な話、事務配分に応じて課税力があるのであれば、財源移転は極めて少ない形で捉えることができます。  今の話を図式化しているものが次であります。国と地方の間での収入が6対4に対して、最終レベルの支出で事務配分を捉えた場合には、国と地方が4対6とねじれている。このねじれている状況をならすものが財政移転なわけです。ここにあえて、やや古目のものを掲げたのは、1990年代以降、地方分権推進というものが極めてホットイシューになって、実際に国から地方への税源配分も行われた。これは個人住民税を使ってということでありますけれども、それ以前の国と地方の税源配分と比べて、税源移譲した後の国と地方の税源配分というのは、当然地方のほうにやや厚くなる形で行われたということをこのスライドで示しました。非常にわかりにくい数字ではあるんですが、地方にやや厚目に地方税が入るようになったということをここの図で示しています。この姿というのが地方の支出と地方の税収との乖離という形で捉えられる部分であります。  難しいのは、一般的に税源移譲をするとなると、どういった問題が起きてくるのかということにも着目しなければいけないので、少しお話をしておきたいと思います。基本的に、国と地方の間で税源移譲を行うというのをマクロで見た場合には、国から地方に税源が移譲されたということで地方に税収が多く来るという姿が出てきます。ただ、その後、問題があるのは何かというと、その税収が地方内部のどこの地域におりていくのかということは別の問題で、これは税目によって非常に違うということであります。ですので、三位一体改革の中で税源移譲を行ったわけですけれども、その行った税目を見てみると、できるだけ税源移譲した後の偏在がないような税目をその時点では選択しているということも、後でもう一度お話をしますが、個人住民税というのは、どちらかというと、総体的に見ると、偏在が少ない税目を選んで税源移譲したということになります。  実際問題、今申し上げたことを地方税トータルで見たときの偏在度というので見てみますと、偏在度が高いものは法人2税で、偏在度が低いのは消費課税となっている。ですので、基本的に地方税偏在度というもの、地方税内部を考えていくと、トータルで見て税収がふえたとしても、各地方間でどれだけのばらつきがあるのかというところは地方全体として見ないといけないということになります。それと、例えば法人2税、あるいは地方消費税、これらの税目を財政調整の財源に使うべきなのか、そうではないのかということも少し議論になるところではあります。今のような問題意識のもと、どんな改革案が述べられ、どういった実際の改革がなされたのかということを次にお話ししたいと思います。  お示しします改革案スライドは、2006年時点のころに改革案として私どもが1度出したことがあるものです。結論から申し上げますと、ここで話した中身というのが、実はこれからお話をする、実際になされた改革の方向性に極めて近い方向で行われたということも御紹介したいということで示しています。左側が2006年ぐらいの国と地方の租税体系、あるいは税や保険料の項目です。その状況に対して、改革後、どういった改革がなされるべきなのかということを議論したものであります。いろいろ書いてありますが、まとめて言うと、2006年時点のちょうど小泉内閣のころで、消費税を凍結すると言っていたころの議論であります。消費税法人住民税を交換したらいいんじゃないかということを1つ申し上げています。さらに、所得税の機能を回復すべきだと。同時に住民税も拡充していったほうがいいということを言っている中身であります。  それをこの中に図式化してお見せしますと、地方消費税を少し厚くしたほうがいいんじゃないかということをここでは言っているというのが1つ。もう一つは、法人住民税を国税のほうに上げていくと。上げていって、その後が問題になるわけですが、それをした結果、財政調整をちゃんとしていくべきだと。どういった発想でそれを捉えているかというと、各地方間でばらつきがあるような税目を地方交付税の財源として入れて、変動性があるような税収を使いつつ、財政調整を行う。そういう姿が1つあるんじゃないかということを申し上げたものであります。ですので、ここにお示ししてある図にアスタリスクがついているもの、特に国税のほうですが、これは、地方交付税の原資になるものであります。この地方交付税の原資になるものとして、変動性が高いものを地方交付税の原資に入れる。その発想は、各地方間でのばらつきをならすことが地方交付税の役割の一つとしてあるので、そういった観点からできないかということを申し上げたわけです。  もう一つは、相続税贈与税についても、地方交付税の原資に入れるということも考えられるんじゃないかといった中身の話をいたしました。  以上の話をした上で今の話をまとめますと、安定的で偏在度が少ない地方税体系の構築ということを考えていて、これは、偏在度が高い法人所得課税偏在度が少ない消費税をターゲットにしながらいろいろ考えていくべきなんじゃないかというのが1つ。もう一つは、地方の歳入構造を意識するというのはどういうことかというと、一般財源レベルで安定的な財源を確保する。それは、財政調整を使う形でやったほうがいいのではないかということをこの時点でお示ししていたわけです。  次のスライドが、実際に行われた税制改正であります。2008年ぐらいからの改正として、2016年までの税制改正の一連の流れとして捉える必要がございます。それぞれの年度の税制改正というのを横に見てもいいんですが、やはり縦に見る形で意識をする必要がありますし、それと同時に、ほかの税目の動きも一緒に見ないといけないということで、ほかの税目も絡める形で、ここでお示ししたいと思います。  取っかかりの地方税制の改正としては、平成17年に外形標準課税というものを都道府県レベルのところで入れたというあたりから始まります。法人事業税の改革の流れの一環で、法人事業税の一部を国税に持っていくというのが始まり出します。この法人事業税を国税に持っていって何をするかというと、発想は、法人事業税偏在度がやや高目にあるので、その偏在度をならす発想です。どういった形でならすかというと、地方法人特別税譲与税という形で国税として取った上で各地方に配分するというスタイルであります。配分するとしても、大事になるのはどういう配分基準で配分するのかという部分です。ここは結果として、人口と従業員数で配分をしました。人口と従業員数で配分した結果、大きく見てどういう配分になったかというと、東京都のようなところから、ほかの道府県に対して税収が移転しました。これは石原都知事のころであります。  これは一時的な状況だというので、この状況を戻す作業が入ってきます。戻す作業は、平成26年度の税制改正でまず縮小して、一部を復元するということをやります。さらに、平成28年度の税制改正でこれを廃止して戻していく、復元するということになっています。復元した上で外形標準課税という形でもう少し拡充するというのもございます。これが一つの法人、いわゆる地方法人2税と言われる一方の法人事業税の流れであります。この流れだけ見ても、余りよくわからない。  そこでもう一つの流れもこのスライドで御紹介いたします。それを見てもまだ余りぴんとこない可能性がございますが、一応紹介をいたします。法人住民税の流れです。法人住民税の一部充当ということで市町村さんも矢が放たれた。先生方も平成26年の税制改正のあたりは非常に注意して、いろんなことをごらんになっていたと思います。法人住民税を一部充当して今度は地方法人税という形にして、この地方法人税地方交付税の原資にすると。地方交付税の形で財源が配分されるような仕組みを基本的には設定したということであります。そして平成28年になるとさらに地方法人税を拡充するということになっていました。ですので、この話というのは、地方法人2税の中だけで捉えれば、初めは法人事業税の話として話をしていたんだけれども、それが次第に法人住民税も加わっていくプロセスの中で、都道府県だけの話ではなくて、市町村のほうも関係することになったということであります。  私がここから御説明したいのは、こういった改正が行われた背景は、もう一つの重要な税目との兼ね合いで捉えないといけないということであります。それが何かというと、消費税なわけです。2008年のころの消費税はまだ5%の時代で、4%が国税で、1%が地方税で、1%の半分が市町村に流れてくるという形のものでありました。それが、平成26年の税制改正のときは、消費税を引き上げるということがついてきているわけです。消費税を引き上げるというのは、同時に地方消費税の割合も引き上げるという形として動いているものでありますし、今度10%になるときも国税の消費税を引き上げるとともに、地方消費税を引き上げているという形です。財源という面で非常に遠くから見れば何をしたか、ということを申し上げると、地方法人2税系のものと地方消費税との間でやりとりをしている姿が大枠で見てとれるということであります。  スライドでは今お話ししました内容が言葉で示してあります。1つ目は、法人住民税消費税というのを交換しているような感じで、これが市町村にも影響を与えるようになってきたということであります。2つ目は、地方公共団体全体としては安定的な一般財源を獲得するという意識でこの改正が行われてきているわけです。しかし、3つ目としましては、地方交付税の考え方を見ますとわかるとおり、地方交付税を通じて産業が集積している地方公共団体から、その他の地方公共団体へ税収の移転を伴うということになるわけです。それは、川崎市さんからすると、川崎市さんの税収がほかの自治体に移転される面があるんじゃないかと捉えられている局面になりますが、それはトータルで見ると、こういった流れの中で説明ができるということであります。  そこで問題となるのは、どこまで是正するんだというところになると思います。この是正の水準についてはある一定の合意が必要になるわけですけれども、実際に是正の水準をどこまで持ってくるのかということが明示的に示されているわけではないというところが非常に難しいところであります。議論の中でもこんな指標がいいんじゃないか、あんな指標がいいんじゃないかということはいろいろ積み重ねられてはいますが、複数を組み合わせるしかないという状況です。  以上がこれまでの地方にかかわる税制改正の実質的な内容でありました。  次が、なぜ市町村法人住民税に突然矢が放たれたのかということであります。これはいろいろな説明の仕方があると思いますが、先ほどの説明の仕方の流れの中で捉えますと、法人2税の中で法人事業税偏在性が高いんじゃないかということでやや問題になって、その結果として偏在是正措置がなされた。それが地方法人特別税譲与税というものだった。このスライドに示しておりますのは、法人事業税法人住民税の動きであります。法人事業税法人住民税の動きは極めて似ているんですけれども、特にかつては非常に近い動きで動いてまいりましたが、法人事業税外形標準課税を入れることによって住民税と動きがやや違ってきたというのが1つです。もう一つは、法人事業税地方法人特別税譲与税という形で変えたことによって、偏在度というものが非常になくなってきた。これは、縦軸がジニ係数という偏在度で、上に行けば行くほど偏在度が高くて、下に行けば行くほど偏在性が低いというものです。ですので、法人事業税はここから下がっていった、偏在性を少なくしている。  それに対して法人住民税というのは景気の変動を非常に受けるわけですけれども、この景気の変動が非常に大きいと、法人住民税も同じように動いて、法人事業税の動きと離れ出してきたということがございます。ですので、今これが法人事業税の改革によって偏在性をやや少なくした一方で、法人住民税はまだこういう大きな動きをとっている。偏在性が非常に高い状況だと。そこで法人住民税のほうにも矢が放たれたということがございます。矢が放たれたことによって、今まで地方法人課税の改革の中で余り関係ないと思われていた市町村のほうにも影響が出てくるようになったということであります。ですので、焦点は、偏在性をどこまで問題視するのかということであるとともに、ほかの財源を得るための方策はないのかということを考えていく必要があるであろうということであります。  ということで、望ましい歳入構造ということを考えていきたいと思います。この辺からは、去年お話をされた原田先生も同じような話をされている部分もあると思いますので、そういった部分ははしょりながら話をしたいと思います。  地方税を考えるに当たって、地方税原則というものがございます。一般的には5つぐらいの原則で捉えられるわけです。私が申し上げておくのは何かというと、全ての原則を満たす単一の地方税でというのは残念ながらないと。ですので、ある税目を組み合わせることによって、それぞれの長所を生かすというやり方しかない。これはタックスミックスという言い方をするわけですが、そういうやり方でしか合意を得ることは難しいということであります。  タックスミックスを考えたときに日本はどういう状況にあるのか。基本的に税金の特徴を考えるときにいろんな切り口があるわけですけれども、ここでは所得を得るとき、それを消費するとき、ストックとして持つときという形で、所得課税、消費課税、資産課税という経済循環の中で捉えた税目の割合、租税体系を考えてみたいと思います。スライドを見ていただくとおわかりのとおり、各国ばらばらなんですね。各国ばらばらだという状況は税制のところだけを見ていては余りわからない感じもありまして、先ほど言いましたが、事務配分が全然違うので、どれだけでどういうもので賄えるのかというのが違うわけです。その上で日本はどういう特徴があるのかというと、地方税全体で見たときには非常にバランスがとれている租税体系にはなっています。経済循環というのは御案内のとおり、所得を得て、それを消費して、消費しないものはストックとして持つ、これを繰り返すわけですから、それぞれの段階で課税ポイントを持っている。言い方をかえれば、それぞれの経済行動のところで課税ポイントを持っているということでありますので、そういう税目を持っている地方というのは、ほかの国と比べていろいろやりようはある状況にございます。ほかの国は、例えばイギリスなんていうのは、固定資産税しか持っていないという状態ですから、支出の決定もその範囲でしかできないという状況であります。  これを紹介するとますます日本の地方税全体としての租税体系は、所得を得る段階、所得を使う段階等でバランスがとれているということがわかります。確かにバランスがとれているんですが、やはり考えるべきところはどこかというと、都道府県市町村という地方政府内部租税体系というものを考えないといけない。なぜなら事務配分がそれぞれ違いますので、地方の内部でどんな事務配分になっているのかということを踏まえながら、それに対応する形で地方税内部租税体系というものを考えていく必要が出てくるわけです。市町村租税体系を考えるときに非常に難しいのは、都道府県間に比べて市町村間のほうが税源の偏在というのは非常に大きいことですね。さらに、財政力の格差というのも非常に大きいという状況がありますので、議論をすると非常に難しい。けれども、やはり正面から議論をしないといけないところだと言えるわけです。  市町村地方税の特徴を考えていくと、主な税収の税目としては、固定資産税、個人住民税法人住民税が非常に多くなっているわけです。ですので、財政需要に対してどれだけの税を賄うのかを考えるときに、基本的には、まずはこれらの基幹税をどうすべきかというのを考えるのが出発点であるということは否めないところであります。その上で確認をしますと、市町村税を考えるときにもできるだけ偏在度が少なくて安定的な財源は何かということを捉えていくと、固定資産税――このスライドはジニ係数で示してあって、左側の座標軸の下に行けば行くほど安定的である、地方間でばらつきが少ない。上に行けば行くほどばらつきが大きいというものです――は、非常に偏在度が少ないものだと。次に、個人住民税偏在性が少ない。やはり法人住民税というのは、偏在性という意味では、非常に偏在してしまいがちな税目だというのは否めないということであります。  このスライドでは、個人住民税と固定資産税の話を少ししたいと思います。各団体別の構成比であります。これは、市町村の中を見るということもせざるを得ないと思いますので、各団体別の構成比が書かれております。団体別の構成比を非常に大ざっぱに見ても、やはり固定資産税と個人の市町村民税が非常に大きな割合を占めているということは言えるわけです。その上で大都市である川崎市さんから見れば、さらに法人の市町村民税の割合が高い。もう一つ言うと、都市計画税も割合が多い。割合が多いというのは、規模別で見たときに言える一つの特徴であります。ですので、これらのいわゆる基幹税と言われる固定資産税、市町村民税をどう捉えるのかということと同時に、今、改正がなされたのは法人の市町村民税のところ。大都市にとっては非常に割合の高い税目が改正になったというところであります。  まず初めにお話をするのは市町村民税です。ここはごく簡単にお話をしたいと思います。何かと申し上げますと、ふるさと納税の話で、このふるさと納税によって大都市は非常に減収の状況にあるということは御案内のとおりだと思います。減収の状況であるということに対して気にしなければいけない部分というのはいろいろあるとは思いますが、2つぐらい個人的な意見を申し上げます。1つは返礼品に関するものであります。基本的には、考え方としてはやはり寄附行為なので、寄附行為のものに対して返礼品を与えるということ自体にやや違和感があります。それと、返礼品というのは、基本的にただで与えるわけではないので、支出面のところで出てくるものが住民の方々にも合意されるようなものなのかどうかというところも、支出面の統制のところで考えるべきであると思います。これが1つ目です。  2つ目は、これは非常に重要なところだと思うんですが、この改正によって、遠くから見るとどういう状況になるかというと、地方全体としての税収は減るんですね。実際にやりとりしている額を開始する前と比べて、やりとりをした結果、減ってしまうということが起こり得ます。これは国税の分を地方税のほうの控除で行ってしまうというところがあるがゆえですが、そこをどう考えるか。当然、簡素さを捉えてワンストップにして、それを重視するということもあるとは思うんですけれども、国と地方の間という観点で捉えたときに、その制度を入れることによって地方が減収になっている、地方全体として減収になり得るものが果たしていいものなのかどうかという部分は、地方全体として論じる必要性が高いと申し上げておきたいと思います。  次からは固定資産税であります。固定資産税は、やはり市町村にとっては非常に重要な税目であるんですけれども、いろいろな措置があるがゆえに、なかなか議論にのりにくいものであるとも言えます。しかしながら、やはり議論をしないといけない税であると考えますので、釈迦に説法だと思いますが、一応御紹介をしておきたいと思います。  1つ目は、固定資産税というのは3つの資産、土地と家屋と償却資産に対してかけている税だということは御案内のとおりだと思います。基本的には、評価額に対して税率をかけるという考え方で固定資産税はできています。ここに掲げてあるとおり、評価額というので土地、家屋、償却資産を見てみますと、必ずしもそれぞれで評価の仕方は同じではないんですが、一応、評価額を基準に捉えますと、土地が6割ぐらいのシェア、家屋と消却資産で4割ぐらいのシェア、これが評価額レベルでのシェアです。それに対して税額のシェアがどうなのかというと、税額はそうなっていないということであります。税額のシェアを見ていただきますと、土地は、評価額で6割だったのが4割のシェア、家屋と償却資産は、評価額で4割だったものが6割のシェアという形になっています。これはどういうことかと申し上げますと、一番下のところに評価額に占める税額の割合をお出ししています。家屋は1.34%、償却資産は1.28%という割合です。固定資産税の標準税率は1.4%なので、税率と同じです。若干いろんな措置が償却資産にはあったりしますが、一応、そういう感じです。それに対して土地の部分というのは、標準税率は1.4%ぐらいなわけですけれども、0.53%という形になっています。そうなっていることをいいとするか悪いとするかは別として、こういう仕組みになっていることは、やはり理解を深めておかないといけないものです。とりわけ土地の部分を申し上げますと、住宅用地、商業地等、その他というふうに分けていますが、住宅に関しては0.26%、商業地は0.94%、その他が0.87%という形になっているという事実です。こういうこと自体も実は学生とやりとりをしたりすると、余りわかっていないということがありますが、これは、見方によっては減税措置なんですね。減税されているということ自体がわかっているかどうか。そういう意識は希薄な方が多いんじゃないか。当たり前のものになっている。しかし、法律の枠組みから見ると、これは特例の措置を設けた上で減額をしているということですので、そこが住民・国民にわかるような形に意識的に開示するというのも、あるべき姿なのではないかと思います。  今話した中身をスライドを使って確認します。土地に関して申し上げますと、課税標準の算定の簡素化が必要で、受益の意識も希薄だというのは今申し上げたことなんですが、仕組みとしては、こういう仕組みになっているからだというのが一応書いてあります。基本的に課税標準額に税率をかけるというふうにはなっているんですが、その課税標準額を出すに当たって、ここにいろんな措置が入っているわけです。このいろんな措置がそれぞれの理由があって入っているもので、特例措置として入っているものなんですけれども、そういった事情のもとで税を減額しているというのは、見方を変えれば受益なんですね。事務的にできるかどうかは別の問題ですが、減税は税で取って配るということと同じなんですね。税で取ったものを渡しますという行為と減税をするという行為は、形上は同じなんですね。しかし減税をされているという状況が余り見えていないと、そこから受益を得ているということが見えていない。見えなくなってしまうという残念な結果になりがちです。実は固定資産税は、そういう減税措置がいろいろある。つまり、減税により受益を受けている措置というのがいろいろあるのですが、ちょっと見づらくなっているということがございます。確かに減税額は幾らかというのを算出するのが難しいということが現実問題としてある。しかしながら、先ほど申し上げましたとおり、市町村にとっては非常に重要な財源であり、その財源を減少させることを通じて住宅政策等に使っているわけです。今は住宅政策等に使っているということが見えにくくなっている面が多いので、それを表に出すということは、1つのあるべき姿であると思います。  ちょっと違った形で出したのが、次のスライドです。これは、今話した土地に関する措置がデータとして入っていないものですが、ここで問題にしたいのは何かというと、新築住宅特例であります。今度は家屋の部分でありますけれども、家屋に関する新築住宅特例の減税額に占める割合というのは、土地の特例を除くと多いんですね。その状況が人々に認識されているかどうかがわかるアンケートをお示しています。結論から言うと、特例によって減税されているという意識が極めて希薄だという状況であります。  このアンケートは川崎市さんも入っている結果に基づいて、これは下に書いてありますが、18の政令市でとったアンケートです。左側の①新築された翌年から3年間、固定資産税が半分となる制度を知っていたかどうか。「全く知らなかった」が54%です。措置を知らない。知っている方も当然いらっしゃるんですけれども。  ②は、新築住宅に対する固定資産税が3年間半分となる制度は住宅を購入するきっかけになったか。「きっかけとならなかった」が92%です。そうすると、この措置は何のための措置なんだと。もともとの目的というのは新築住宅の取得を促進するためにつくられたはずなんですけれども、使っている側はそんな意識は余りない。促進できているかどうかというのもよくわからない。少なくとも買った本人は、この1,600人のアンケート上は余り知らないよという感じになっている。そういった措置が必要なのかどうかということもやはり問われると思います。これも受益の意識が希薄な一例です。この減税による受益という意識というのが、住民なり国民なりにないと、租税負担というのもなかなか受け入れられません。税はやはり負担なので非常に嫌がられる。ですので、減税による受益というのをいかに示していくのかということも、税の議論をする場合には大事になってくるということで少し紹介をさせていただきました。  今まで話したのは住民税と固定資産税の話でありました。次のスライドでお話をするのは、課税自主権の行使です。新たな税目をつくるというやり方が課税自主権の行使の一つですし、もう一つは、今与えられた課税ベースのもとで税率を上げ下げするというやり方であります。前者は、いわゆる法定外税という形で、自治体さんによっては個別の法定外税をつくられていると思います。これは地方分権推進の一環で、法定外税を法律上つくりやすくしたということもあってほかの自治体さんでいろいろ検討されて、実際に導入されたところもありますし、導入されなかったところもあるというものであります。もう一つの例は、昔からあると言えばある超過課税というやり方で、これは税率を上げるというものであります。税率を上げるといったときにどんな税目に対して税率を上げているのかというのを少し確認してみようというのがここにお示ししたものであります。道府県と市町村を両方挙げておりますが、市町村のところだけ見ますと、超過課税をしているのは、法人住民税の法人税割のところが大半であります。川崎市さんもそうだと認識をしています。違っていたら後で教えていただければと思いますが、法人住民税の法人税割に超過課税をしているというものであります。ほかの自治体さんで法人住民税以外に超過課税をやっているものはというと、固定資産税のところで超過課税をしている。個人住民税も基幹税であるというのは、先ほど御紹介したとおりなんですけれども、個人住民税を上げるのは、どの自治体さんもなかなかできていない。これはいろんな難しさがあるというのはわかった上で、数としてそうだということを申し上げておきたいと思います。  ですので、基本的に基幹税というもので財源をとっていくという姿、財源を調達していくという姿を考える場合、固定資産税なり個人住民税なりというのは基幹税ですので、それらの課税自主権を行使する選択肢がとり得るか、とり得ないのであればなぜかとか、そういったことを考える必要があると思います。あるいは、特有の需要が何かあって、それに対応するものが必要だとなれば、枠組みとしては法定外税という形のやり方もあるということであります。ただ、これらのやり方を見ていただきますと、おわかりのとおり、超過課税と法定外税による財源の調達が一体どれぐらいの割合できているのかという観点で見ますと、一番右下のところに1.59%と書いてあるんですが、全体の税収に対して1.6%ぐらいしか取れていないというか、そのぐらいの税収しか調達をし得ていないものであるので、もっと取れる余地があると捉えるか、そのぐらい難しいものだと捉えるのか、いろんな捉え方があるとは思いますが、そういう状況にあるということを申し上げておきたいと思います。ですので、基本的に財源調達をする場合には基幹税で行うのが筋ですが、基幹税の中でできるものは何かというのを考えることが重要だと思います。市町村単独でできるものというのは、それはそれで限られていますが、この課税自主権の行使の部分というのは一応単独でできるものとして捉えることができますし、地方全体で基幹税をどうするかという議論もあってしかるべきところだと申し上げたいと思います。  今までは基本的には基幹税の話をしてまいりました。とりわけ財政需要に対応するだけの課税をするに当たって、税収を獲得できる能力がある税目というのはやはり基幹税だという意識でお話をしてまいりました。ここから話を広げていきますのは、今まで取り上げた固定資産税と個人住民税の話に加えて、地方の市町村にとって重要な歳入、収入になり得るものを次のスライドでお示ししたいと思います。  ここに掲げておりますものは、先ほど国と地方の間でのところで取り上げた税制改正を、今度は地方の中の動きとして捉えたものであります。ですので、見ていただきますとおわかりのとおり、道府県のところで地方消費税を引き上げ、法人事業税はもとに戻して外形標準課税と言われる付加価値割と資本割を拡充する。その一方で、法人住民税地方交付税の原資にしたという流れです。この流れは先ほど御案内したとおりであります。この流れの中に市町村さんも当然入っていますが、先ほど紹介をしたのは法人住民税のところだけ、法人住民税地方法人税となり、その地方法人税となった財源は地方交付税の形で戻すということだけ、申し上げました。実は、これに並行する形で、市町村の財源に影響を与える改正が当然組み込まれていたわけです。  1つは、地方消費税です。消費税を上げるということが、市町村にとっても財源になってくるのが、今の制度の枠組みであります。非常に大ざっぱに申し上げると、地方消費税の2分の1は市町村に交付金として流すというふうになっているものであります。ですので、地方消費税の税収が全部都道府県になるというものではなくて、その半分は市町村に交付金として流すというふうになっているので、当然、消費税地方消費税を引き上げるときの改正は、市町村の収入に影響を与える。名前が税ではないので注意して見ていないと見過ごしてしまうものではありますが、地方消費税交付金という名前で出てきているものであります。この地方消費税交付金の金額は、当然5%のときから8%になったことによって非常にふえている、各自治体にとってもふえているというのは、御案内のとおりだと思います。  もう一つは、法人事業税です。これは過渡的な措置だというふうに言われていたとは思いますが、法人事業税の改正をするに当たって、市町村に対して法人事業税の交付金を流すというふうになっている。ですので、その分の収入がふえていくという形で市町村に影響を与えるというものであります。  私がここで指摘をしておきたいのは、まず道府県と市町村の間で財源の配分がマクロレベルでなされる。問題となるのは、今度は市町村におりてくる金額がそれぞれの地方自治体でどういう形でおりてくるのかというところを議論しておかないといけない。マクロレベルで見れば確かに市町村にはおりてくるんです。しかし、市町村の内部で見てみると、その収入がどこに行くのかというのを意識していないと、算定されたとおりでいくと。その算定されたとおりというのは、配付基準のとおりということです。地方消費税はそれを人口と面積で配分している。人口と面積で配分すること自体をどういうふうに捉えるのかというのは、それぞれの自治体さんの考え方があると思います。ですので、この人口と面積がいいのかどうかとか、そういうことも市町村さんのレベルでは何らかの議論があり得るところだと思います。これに対して、法人事業税交付金は従業員数で配分するというふうにはなっています。ですので、従業員数が多い少ないとか、いろんな状況によって各自治体さんに与える影響というのが一様ではないので、そういった意味では、ここもやはり議論の俎上に上がってくるであろうということであります。  今話した中身というのをちょっと金額の規模で見ておきましょう。今、市町村全体では税交付金は3.1%ぐらいになっていて、そのうち地方消費税交付金が圧倒的な割合を占めているわけです。もし消費税を上げていくというふうになったら、この圧倒的な割合を占めているもののボリュームがどんどんふえていく感じなんですね。どんどんふえていった上で、その税収をどの市町村に配分するのかというのを、もし意図的に考えるとすると、その配分の基準で実現するということがあり得ます。これはそうすべきとか、そうすべきではないとか、いろんな考え方があるとは思いますが、一応、そういう可能性が眠っている。考えようによっては、国から都道府県に流す税のやり方と同じように、市町村でも同じようなやり方をやったらどうだという考え方もあるかもしれません。言い方をかえますと、地方消費税と入ってきたものを都道府県の間でどうやって配分するかという清算基準の議論があるわけですね。その配分の基準と、市町村の間で地方消費税を配分している配分の基準というのは、現状では同じではない。同じではないということをどういうふうに考えるか、説明の仕方もいろいろあると思います。ということで、ここは今後を考えると、税交付金の構造とか配分の基準をどこかの段階で議論をするというのは、市町村さんにとっては大事なところであるということは少なくとも言えるので、ここでは指摘をしておきました。  これまで話をしてきたことは、主に財政需要課税力についてでした。初めに申し上げました財政需要に対してどれだけ課税力を対応させるかという話がまず基本にあるということをお話ししました。そして、もしもそれら2つにギャップがあるのであれば、財源保障財政調整という考え方がある。  最後にお話をするのは、その財源保障とか財政調整に関してです。考え方としてどういう考え方があり得るか、という選択肢を少しお話したいと思います。最終的に、私が初めに申し上げた観点で財政調整というのを考えると、地方交付税というものが、日本の制度として財源保障なり財政調整の機能として、これまで使われてきたものであるというのがまず言えると思います。もしも地方交付税の役割がやや不安だとなった場合というか、今現在、非常にそのようになっている状況かもしれません。そういう状況のときにどういう発想で議論がなされるかということを申し上げておくと、地方交付税財政調整する前の段階で調整してしまおう、という発想です。これは、地方交付税に対してやや不信感があると、そこでは調整されないかもしれないという意識が非常に多いと、そんな最後の段階で調整するんじゃなくて、もう少し前の段階で調整できないかとの議論になる。それがこのスライドで書いてある、地方税内部での調整という意識です。  例えば地方消費税とか、法人事業税とか、法人住民税というものがある。基本的な考え方としては、経済活動を行われている地域に税収は帰属しているべきだと言っている限りでは、理論的な考え方で税が発生したところにその税収が帰属すべきだとなります。そこには財政調整の考え方というのはないんですね。しかし、そこから一歩先に進んで地方消費税自体を財政調整の財源に使うという発想は、地方消費税の清算基準というものをある意味恣意的にいじって大都市から地方に流れるようにするというものです。あるいは、法人事業税とか、法人住民税には分割基準がございます。仮に本来は大都市に帰属しているものをあえて分割基準を変えて経済活動をしていないような地域のほうにもし持っていくとなると、それは財政調整をしているということになるわけです。  つまり、こういった発想が出てくる背景は、3番目の地方交付税のところでの財政調整というものが不安であればあるほど、前の段階のところで何か調整をしたくなってくるという人間の心理が出てきがちであろうと。同じように、もし税のところで財政調整みたいなものをしないような感じで捉えているとすると、まだ調整する余地がある。それが譲与税というもので、この譲与税の基準を変えることによって地方の各地域に対する配分の割合は変わり得るというものであります。  市町村にとっての譲与税的なものという観点で捉えれば、先ほど申し上げた税交付金です。これを例えば税収が発生した帰属地にちゃんと配分すべきだという考え方もあるでしょうし、そうではなくて、ある程度財政調整的な発想で税交付金の譲与基準を考えるという考え方もあるかもしれません。従来は余りこの辺をすごく意識して議論をしてきている状況ではないと思います。ですが、道府県と市町村の間のやりとりを意識すると出てくる議論で、自治体によっても考え方の濃淡が非常に出てくるところです。川崎市さんは多分非常に重要だと思われていろいろ御主張されているところだと思いますが、全体を横串で通して、どういう意識で税交付金や譲与税の議論をするのかということ自体について考えることも、今後の議論を喚起するという意味ではあり得るところではないかなと考えています。  ということで、地方交付税は税の偏在性の是正とかを議論するときにも重要であり、最終的に地方交付税でどうなるのかという話になる。それは、先生方はもう御案内のとおりだと思います。そうだとすると、地方交付税の仕組み自体と実効性があるかとか、地方交付税にどんな限界があるかとか、そういった部分をやや詰めて把握した上で、地方交付税ではできないようなことを何らかの措置でやるとか、そういった議論の取っかかりにもなると思います。少なくとも現状は地方交付税に対する不安感が非常に出ていて、その不安感のもと、地方交付税に行く前の段階の税源のところで、やや恣意的な議論が出てきている部分もあると認識しています。  今お話ししましたことをそれぞれの団体種類別で市町村の中を見てまいりますと、川崎市さんは大都市のところにあるわけでありますが、地方税は当然基幹税ですので非常に大事だと。次に、地方交付税は、不交付団体にもなる川崎市さんからすると、ここはほとんどないじゃないかとか、あるいは地方交付税自体に何か問題があるんじゃないかというところで、いろいろ議論されているところだと思います。私が今回少し申し上げました税交付金のところも、大都市にとっては一般財源の中での比率という意味では意外と高いほうなんですね。これが地方消費税とか、もし消費税をもっと基幹税にしていくという議論なったときには、この税交付金の割合というのは高まっていく可能性もございます。きょう話をしましたのは、地方税にとっては安定性と普遍性という議論をしているということですし、税交付金の構造や配分基準の議論が必要だということも申し上げました。さらに、地方交付税の部分、特に基準財政需要と基準財政収入という財政力指数を出す数値の基礎の部分のところは極めて注意をしながら、その発想とか、考え方を見ておく必要があると思います。地方自治体全体にとっては地方財政計画というものが実は非常に重要で、地方財政計画の重要さというのは交付税のほうに来るわけですけれども、交付税自体の仕組み、イコール地方財政計画の構造となっていますので、きょうは税の話を基本的にはお話ししましたが、財政需要を捉えてから税の議論をすべきだと言っているのは、地方交付税の議論をもう少し深めた上で税の議論をしていく必要があるのではないかと思っています。  最後のスライドです。先ほど財政力格差を是正するとなったときに、いろんな指標があるというお話をいたしました。一般的な指標という意味では財政力指数がございます。これは基準財政需要と基準財政収入の比率で出して、1以上かどうかとか、そういう議論をいたします。それをとったときも、例えば右側にある東京都は突出している。今回お出ししたのは、標準財政規模に対して留保財源とか、財源超過額がどれぐらいの割合を占めているのかという別の切り口から見た指標を示しています。標準財政規模は、標準的に見た財政規模は大体このぐらいですねという数値として、どの自治体でも持っている数値です。留保財源も財源超過額もどの自治体も持っている数値です。この基礎となるのは、交付税の算定のところなわけです。この数値で各団体のものをとって比較をすると、川崎市さんは左上のところにございまして、やはり総体的に見て、この数字で見る限りは財源は裕福だよねということが示されています。注意しなければいけないのは、地方交付税で考えている財政需要というのは、どの自治体にもあり得る財政需要という意識で捉えているものなので、特有の財政需要地方交付税で面倒を見ようという仕組みではない。となると、特有の事情がこれだけあるというものを何か述べるときには、それを地方交付税の中に入れるという発想で議論をしていくのか、いや、そうではないところで何か議論しているのかということは、少なくとも射程に入れておかないといけないところであります。ですので、先ほど申し上げたとおり、地方交付税の考え方から出てくる数値が、意外と財政力格差とかの説明や議論をするときの基礎になっている側面があります。ですので、その中身をどういうふうに捉えて議論していくのか、という点は非常に大事だということを申し上げておきたいと思います。  本講演の最後になりました。スライドではおわりにということで、まとめを5つ挙げておきました。第一番目は繰り返しになりますが、地方内部での租税体系を考えていく必要が出てきているのだと。とりわけ市町村地方税というふうにひっくるめて議論するのではなくて、市町村租税体系としてどういう租税体系が望ましいのかを考えることが、まず出発点にあって、その上で大都市特有の租税体系はどういうものがあり得るのか。基本的な発想は、どういう財政需要があって、その財政需要のもとでどんな経済活動を地域でやっているかということを捉えて税の網をかけるというものです。  2番目は、安定的な偏在度が少ない地方税の体系ということを基本的には意識する。それが安定的な財政運営ということにもつながり得るところであります。  3番目は、地方交付税の実効性、地方交付税の役割はどういうものであるのか、そして、その限界というのはどういうところにあると捉えるか。それを捉えた上でほかの手法で財政調整していいものなのか、しないほうがいいのかというところにも関係するところだと思います。  4番目は、財政調整をすればするほど受益と負担の関係というのは希薄になっていってしまうということがございます。だから、どれぐらいのレベルで受益と負担の一致というのを捉えるのかというのも非常に難しいところです。ただ、一方で受益と負担だと言いながら財政調整をするとなると、その受益と負担がやや希薄になる部分というのはやむを得ないところがございます。そことの兼ね合いをどういうふうに捉えるのかというところは、それぞれの自治体さんの中でとり方が違うと思いますので、それぞれの自治体さんの考え方というのを踏まえつつ行っていくと。個人的には、大都市の場合は課税自主権の行使によって、財政需要に対して税を取っていくんだという形が取りやすい。ほかのところよりもこんな需要に応えていると説明し、その負担をできる能力がある人々が総体的に見て多いとは思います。  5番目ですが、受益の希薄さが負担を回避させる悪循環というのはやっぱりあると思うんですね。きょうお話をしたとおり、受益があるということをなかなか認識できない制度上の状況というのも制度の中には幾つかあると思うので、そこをなるべく受益を得ているということ。実際に受益があるはずなので、そこを説明するということと同時に負担を求めるということをしないと、負担だけが出てきてしまって、受益というのは実際はあるんだけれども、感じていないので、あたかもないかのように捉えてしまうということが起きる。ですので、税で捉えて言えば減税している措置というものをいかに説明するか、説明できるような減税なのかどうかということもやはり問われるところだろうと思います。  済みません、ぎりぎりになってしまい、あと5分しかありませんが、これでお話を終わりにさせていただきたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手) ○橋本勝 委員長 先生、どうもありがとうございました。  時間の関係もありますけれども、ただいま先生からの御講演をお聞かせいただきましたので、若干の時間、質疑ということにさせていただきたいと思います。質疑がある委員の方は、どうぞよろしくお願いいたします。 ◆河野ゆかり 委員 先生、大変にありがとうございました。いろんな角度から大変に勉強になりました。  先生の今のお話の中でも、それぞれの自治体の特性を生かしながら、事前にしっかり考えながらという御指摘もあったかと思っているんですけれども、その中で、やっぱり川崎市といたしましては、3年連続で不交付団体というのが非常に大きいところで、これはただ単純に、先ほどあったように、人口と面積の割合だけでそういう状況になっているとかということではないと感じています。とはいえ、すごくそこから来る、いろんなことを考える中でダメージが大きいということは痛感しているところではあるんですが、ただ、一般的な、単純に税収額というところから見ると、政令市20市ある中で川崎市は第3位の様子で、そのほかの状況の中で他の政令市さんがいろいろな面で交付税として受けているというところからいくと、川崎市はさらに順位を下のほうに落としていくという状態なんです。  そこで、どういう指標のあり方でそれが決定づけられているのかというのは非常に気になるところなんですが、先生はいろんなところで委員をお務めということでありますので、事前に改めて考えて意識を持ってという中では、何か先生のお考えの中で御指摘をいただけたらなと思うんですけれども。 ◎関口 参考人 御質問ありがとうございました。やはり財政需要をどう捉えるのかというのが議論の出発点であり、そこが勝負どころであると思います。標準的な財政需要と特有の財政需要、この2つの区分というのが、やってみるとなかなか難しいというのがございます。今現在の仕組みからすると、標準的な財政需要に対して川崎市さんの税収というのは、そこから見ると足りているではないかという形で出るため、不交付団体という形になる仕組みであり、東京都はそれが突出しているとされています。これに対して東京都もいろいろ言っているわけですけれども、標準的な財政需要というのが標準かどうかを問うこと、これが1つ目です。  2つ目は、特有の財政需要が生じているのであれば、その特有の財政需要に応じて税収を取るような仕組みはどういうものがあるかというところはやはり見ておくべきところだと思います。ただ、特有の財政需要というのは、今のところ、交付税の中で見るという制度の仕組みをとっていない。そうすると、先ほど述べたように特有の需要というのを標準的な需要なんだというふうに持っていくかどうかという感じの議論になってくるわけです。しかし、もしも特有の需要だとなれば、超過課税をしたらどうかとか、目的税ができるじゃないかとか、多分そういう言い方でいろいろされてきたところはあると思います。例えば都市計画税というのを非常に大事な財源として持っていますので、都市計画税をかけ得る余地というのは大都市のほうがあり得ると。ただし、使い勝手が悪いというのはあり得るもので、都市計画税の使い勝手の悪さというのを、使い勝手をよくするとか、そういう発想で都市計画税もやっぱり特有の需要というのを説明し、その上で取るという感じのものになっていると思いますので、そういう対応でいくか。そうでなければ、やはり地方交付税で、これは全体の話だという形で地方財政計画のほうにも載せてやっていくというスタイルをとるのか、というところに行き着いてしまうんですね。  だから、非常に難しい問題ではあるんですが、税の議論をするのであれば、やはり満たされる財政需要が負担に対してどういうものなのかというところをある程度捉えないといけない。追加的な税収を求めるときには、やはりそれが説明できないと困るというのもあると思います。そういった面でどんな需要が満たされていないか、あるいは満たされるべきなのか等を地道に――これは私も学生を相手にしていると、道路を使っているとか、満たされている需要に対する意識が希薄なんですね。税金でつくったインフラだという感じのことも、説明を言い続けないと理解が余り深まっていないということがありますので――、地道に満たされる財政需要等を説明していくところから始めるしかないのかなと思います。 ◆河野ゆかり 委員 ありがとうございます。地道に頑張るしかないんですね。 ○橋本勝 委員長 ほかにいかがでしょうか。  では、ちょうど時間ということもありますので、以上で「大都市における税財政制度の諸問題について」の調査研究を終わりたいと思います。  関口先生、本日は大変参考になるお話をいただきましてありがとうございました。改めて御礼申し上げる次第でございます。この特別委員会といたしましても、本日お聞かせいただきました内容を大いに参考にさせていただいて、今後における委員会の調査研究活動、これからいわゆる青本に基づいて党派別要望行動なんかも皆さんに実施をお願いするわけでございますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。  関口先生、本当にありがとうございました。どうぞ御退席をお願いいたします。(拍手)                ( 関口参考人退室 )         ───────────────────────── ○橋本勝 委員長 次に、今後の委員会日程でございますが、改めて御相談させていただきたいと思います。なお、詳細につきましては、事務局から連絡をいたします。  その他、委員の皆様から何かございますでしょうか。                  ( なし ) ○橋本勝 委員長 それでは、以上で本日の大都市税財政制度調査特別委員会を閉会いたします。                午後3時34分閉会...