委 員 太 田 秀 子 委 員 田 中 啓 介
委 員 松 浦 忠 委 員 坂本 きょう子
委 員 中 山 真 一
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開 議 午後1時
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○こじまゆみ 委員長 ただいまから、第二部決算及び
議案審査特別委員会を開会いたします。
報告事項でありますが、飯島委員からは欠席する旨、また、村松委員からは松井委員と交代する旨、それぞれ届け出がございました。
それでは、議事に入ります。
最初に、議案第2号 平成27年度札幌市
病院事業会計決算認定の件について質疑を行います。
◆わたなべ泰行 委員 私からは、
市立病院における
がん治療の取り組みについて、何点か伺います。
ご承知のとおり、日本では、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなると言われており、
がん対策は国民の生命と健康にとって重大な問題であります。
そこで、我が会派は、以前から、健診受診率の向上、
ピロリ菌対策や
受動喫煙防止によるがん予防、がん教育の普及など、
がん対策の推進に力を注いでまいりました。
先月29日、代表質問の場において、我が会派の前川議員から、札幌市の
がん対策を進めるため、市長のリーダーシップについて伺ったところ、秋元市長からは、全庁一丸になって取り組むという力の入った答弁をいただき、大変心強く思ったところでございます。
市立病院は、
地域がん診療連携拠点病院として、専門的ながん医療の提供や地域の
がん診療の連携体制の構築などの役割を担っていると認識しております。最適な治療を行うためには、初めに確かな診断を行うことが必要となります。
そこで、重要なものの一つに画像診断があります。これは、疑われている病気の有無、病変の状況や広がり、治療効果、再発や転移の有無などをCTなどで検査して画像で診断するものです。病気の早期発見、早期治療、また、適切な治療が行われるためには、この画像診断が充実した体制のもと、的確に行われることが強く望まれるところです。
そこで、質問ですが、
市立病院では、画像検査や診断について、機械類や医師などどのような体制で行っているのか、伺います。
また、最近特に力を入れていることをあわせてお伺いいたします。
◎関
病院事業管理者 まず、委員がご質問の第1点目ですが、当院では、専門的な
がん治療を行うとともに、地域の医療機関からの依頼に応えるため、320列CTと3テスラのMRIなど、高規格の最先端の医療機器を備えております。これに加えまして、ことし4月からはPET−CTも稼働させておりまして、より高精度の診断を行い、質の高い
がん治療のために役立てております。また、年度内をめどに3Dの
マンモグラフィーを導入する予定でありまして、これによって、より詳細な画像が得られ、乳がんの早期発見や治療に役立つことを期待しているところでございます。
次に、画像診断に当たる
放射線診断科医師につきましては、現在、常勤医が5名おりまして、うち3名は
日本医学放射線学会放射線診断専門医の資格を持っておりまして、質の高い
画像診断レポートを提供しております。
2点目としまして、最近力を入れていることというご質問でしたが、特に総合病院の強みを生かして、ほかの診療科の医師との連携のもと、高精度かつ速やかな診断を行っており、ことし9月にはより迅速な画像診断の体制を整えまして、
画像診断管理加算2の施設基準を取得したところでございます。
◆わたなべ泰行 委員 やはり、患者にとっては、検査結果や診断を待つ間はとりわけ不安です。今後とも、正確さに加えて、素早い診断も継続的に行っていただけるよう、体制を維持していただきたいと思います。また、今、お話がありましたように、PETや今後導入されます3Dの
マンモグラフィー等、多くの高度な医療機器があるということなので、地域の医療機関にも利用していただくことも含めて、十分に活用していただきたいと思います。
次に、がんの治療についてお伺いいたします。
市内にはがんの治療に携わっている病院が幾つもあり、
都道府県がん診療連携拠点病院である
北海道がんセンター、そして、
地域がん診療連携拠点病院も
市立病院のほかに6カ所ございます。その他にもがんの診療に力を入れている病院が幾つもあり、自院の得意分野などを積極的に打ち出しているところもあります。
例えば、
北海道大学病院では、
陽子線治療のように、高度で先進的な医療などに強みを持っているところもあります。まずは、自院の強みを把握して、また、強みをつくっていって、それをPRしていかなければ、今の時代、公立病院だからというだけでは地域の医療機関や患者から選んでもらえないのではないかと考えます。
そこで、質問ですが、
市立病院の
がん治療について、どのようなことが強みだと考えているのか、お伺いいたします。
また、今後はどのようなことをさらなる強みとして強化していこうと考えているのか、お伺いいたします。
◎西川
病院局理事 まず、診断に関しては、
病理診断科については、常勤医4名、非常勤医1名という充実した体制で、がん等の病理診断を行っており、当院のみならず、他院からの診断依頼も多く受け入れ、地域医療に貢献しております。
次に、治療面では、がんの3大治療と言われている手術、薬物療法、
放射線治療のいずれも当院で実施することが可能で、患者の病状、年齢、希望等を考慮して、総合的に判断して治療方法を決めています。
また、32の診療科があり、全国的にも極めて幅広い病気を見ている病院であることから、合併症を抱える治療の難しい患者、例えば、透析が必要な
がん患者や、精神疾患あるいは認知症のある
がん患者も多く受け入れております。このように、
精神医療センターを含む複数の診療科の専門医が治療に当たらなければならない患者に対応できることも大きな強みだと考えております。
さらに、手術後の肺炎などの
合併症予防を目的とする
歯科口腔外科による
周術期口腔機能管理や診断後の早期から患者を支える
がんリハビリの実施など、患者の治癒力を高め、生活の質を向上するための取り組みも積極的に行っております。
今後、さらに強化していきたいこととしては、当院の総合力、
チーム医療を生かしてこのような取り組みをさらに重ねていくことであり、それによって医療の質を向上させ、
がん患者によりよい医療を受けていただけるよう努めていきたいと考えております。
◆わたなべ泰行 委員 今後、さらなる高齢化が進むに従って、合併症を持つ
がん患者もふえてくると思いますので、ほかの病院では難しいと思われる患者にもしっかりと対応していただければと思います。
最後に、
がん患者の心のケアについて尋ねます。
治療方法が進んでいるとはいえ、やはり、がんは恐ろしい病気であるというイメージは残っており、がんだと告げられるのは衝撃的なことだと思います。そして、告知だけではなくて、治療中でも化学療法をやっているときに副作用があるのではないか、また再発するのではないかという不安もあると思います。そのようなとき、
医療従事者の皆様には、患者やご家族の方の心に寄り添って、よく患者の声に耳を傾けて、治療方針なども納得いくまでお話をしていただいて、治療に当たっていただきたいと切に願っております。
緩和ケアとは、病気に伴う心と体の痛みを和らげることですが、これは、決して終末期だけではなく、がんと診断されたときから
がん治療と同時に行われる必要があり、国は、全ての
がん診療にかかわる医師が研修等により緩和ケアについての基本的な知識を習得することを目標としていると掲げており、我が党の政策としても推進しているところでございます。
そこで、質問ですが、
市立病院では、
がん患者の心に寄り添って治療に当たるという点から、緩和ケアの研修等についてどのように取り組んでいるのか、お伺いします。
◎西川
病院局理事 緩和ケア研修会につきましては、
がん診療連携拠点病院では定期的に開催することとされており、当院でも年1回、2日間の
プログラムで実施し、院内だけではなく、地域の医師の受講も受け入れております。
研修の内容は国の指針に準拠しておりますが、例えば、ロールプレイングによる患者への悪い知らせの伝え方の演習など、患者とのコミュニケーションにかかわる
プログラムを重視しております。
当院では、
がん診療に携わる医師全員が研修を修了することを目標に、計画的に受講を進めております。また、看護師についても、がん看護にかかわる各種研修の実施や、がんに関連する
認定看護師の育成等を行っており、患者やご家族の方々の気持ちに寄り添った治療、看護に努めているところです。
◆わたなべ泰行 委員 本日は、
地域がん診療連携拠点病院である
市立病院が
がん治療についてさまざまな取り組みや努力をされていることをお伺いいたしました。
国では、平成18年に施行された
がん対策基本法に基づき、
がん対策推進基本計画を策定し、総合的な
がん対策を推進して、昨年12月には、
がん対策加速化プランによってさらに強化しているところであります。また、本市におきましても、今年度中には
がん対策推進プランを策定する予定であるとも伺っております。
冒頭でも申し上げましたが、秋元市長が
がん対策には全庁一丸となって取り組むと決意表明を示しております。今後も、専門的で質の高いがん医療の提供を行っていただき、やはり、一番は患者の気持ちに寄り添いながら、市民の命と健康を守る病院としての役割を果たしていただくよう、また、地域のモデルケースとなるよう、
がん治療に対してますますの尽力をしていただくよう要望して、終わります。
◆
村上ひとし 委員 私は、DPCについて質問いたします。
質問の第1は患者への影響について、第2は職員の働き方と病院収益への影響について、第3は改善すべき点と今後の対応についての大きく三つ質問させていただきます。
DPC制度は、2003年4月に、大学病院など、いわゆる
特定機能病院を対象に導入された
急性期入院医療を対象とする
診療報酬の
支払い制度です。DPCの導入が開始されてから対象病院は段階的に拡大され、ことし4月段階では1,667病院、ベッド数では約49万床となり、既に全一般病床の約55%を占めています。
市立病院は、2006年度から準備病院となり、2008年度から本格的に
DPC対象病院として稼働しております。
この
DPC制度とは、簡単に言いますと、病名によって1日当たりの
診療報酬が定額制とされ、その額は、患者の入院期間、すなわち
在院日数が長くなると段階的に低くなる仕組みであります。ですから、手術やリハビリは定額制とは別に計上することができますが、それ以外の検査、投薬、処置などは基本的に包括とされ、定額の
診療報酬に全て含まれるという扱いになります。
DPC最大の問題点と言われているのは、入院中にどんなに薬剤を使用しても、検査を実施しても、あるいは処置しても、定額制のため、コストを算定することができず、病院の持ち出しとなること、また、患者の
在院日数が長くなると、入院収益が上がらない、つまり、病院にとって減収となる仕組みになっていることであります。そこで、さまざまな問題点が指摘される中、
市立病院にDPCが導入され、どのような影響が出ているのか、議会でも検証していく必要があると思います。
まず、患者への影響についてお尋ねいたします。
1点目は、
DPC導入前と導入後の
平均在院日数の変化と患者への影響についてお伺いいたします。
◎蓮実
経営管理部長 まず、
平均在院日数につきましては、導入前の平成17年度では17.2日、導入後の27年度では11.3日でございます。
この
在院日数の短縮の要因は、患者の体に負担の少ない手術など医療技術の進歩や、医療の標準化等によるものであると考えており、患者への影響につきましては、一様には申し上げられませんが、早期の在宅復帰、社会復帰に結びついていると認識しております。
なお、退院に当たりましては、患者が安心してご自宅に戻れるよう、また、適切な地域の医療機関への転院ができるよう、丁寧な支援に努めていきます。
◆
村上ひとし 委員 患者にとって負担の少ない手術など、技術が進歩したこともその背景にあるということでした。17.2日の
平均在院日数が11.3日に短縮され、実に3分の2に減少したということであります。この
在院日数が短くなったことで、入院中に患者の
精神的負担、あるいは、
体力的疲労はないのか、そして、退院後の受け皿の問題や家族への負担の増加などが懸念されるところであります。
そこで、
DPC導入によって治癒していない退院、つまり、完全によくなっていないのに退院しているケース、あるいは、再入院がふえているのではないかと思いますが、こうした点は全国的に議論されているのかどうか、お伺いしたいと思います。
◎蓮実
経営管理部長 平成26年12月に行われた
中央社会保険医療協議会の
診療報酬基本問題小委員会におきまして、退院時にちゅうちょされた割合が減少し、予期せぬ再入院がふえているというデータについて委員からの指摘があり、昨年の
DPC評価分科会にて議論されています。しかし、治癒や予期せぬ再入院につきましては、医療機関や各医師によって解釈が異なっており、また、臨床現場の感覚とマッチしていない場合もあるとしてデータの調査項目が見直されることとなり、結論には至っていない状況にございます。
なお、分科会の場では幾つかの病院にヒアリングをしていますが、いずれの病院も、
在院日数などの変化により治癒率が低下したことはないとされております。
◆
村上ひとし 委員 最近、病院関係の話を聞く中で、入院中に症状を言っても検査をしてくれない、つまり、入院してからこういう体のぐあいの悪いところがあるのだと看護師や医師に患者あるいは家族が告げるわけですが、医師によっては、それは退院後に行いましょうと言われて、家族や患者にとっては、どうせ入院しているのだから入院中に全て検査してくれたほうが楽なのにという内容の話を聞くことがよくあります。このように、今の
DPC制度が患者や家族の要望に応え切れずに、不安に感ずる部分というのはあるわけです。
2008年6月に
日本医師会の
定例記者会見で示された資料を見ますと、治癒率の問題が記載されておりました。医師会の立場で、治癒率の低下は著しい、2004年度の対象病院では3%台しか治癒していない、これを率直に反省すべきである、急性期として適切な医療、質の確保という点で不適切だ、また、再入院の割合は、2004年度から2007年度にかけて、2003年度対象病院では1.2倍弱、2004年度の対象病院では1.1倍強と短期間で顕著に増加しており、患者にとって危険な状態を強いていないのか、緊急に実態を把握する必要があるとしています。
さらに、
急性期病院では、軽快をもって退院させるという意見もありますが、
DPC導入後、治癒率が下がり、再入院の割合が上がっていることは制度の問題もあるのではないかと指摘しております。ですから、特に高齢者やその家族にとっての不安を
医師会自体が懸念を示しているわけであります。
そこで、3点目は、高齢化の進展によって
入院患者数はふえる見込みでありますが、その大半は、がん、心疾患、
脳血管疾患などの高齢者に多い疾病や合併症、認知症や終末期への対応が一層必要となります。しかし、高齢者は、合併症を抱える場合が多く、手術後に予期せぬ事態が生じる可能性も高く、快復力も十分でないため、看護の必要度も高く、当然、治癒する時間もかかり、結果的に
在院日数の増、すなわち、入院期間が延長となる場合が多くなると思います。
そこで、本市では、高齢化の進展に伴い、合併症も増加する傾向にあると思いますが、DPCにおける高齢化と合併症の評価について
市立病院ではどのように考えているのか、お伺いいたします。
◎蓮実
経営管理部長 おっしゃるとおり、高齢化の進展に伴い、合併症の患者がふえることが想定されます。入院の必要な疾患に加えまして、糖尿病や認知症などの合併症をお持ちの患者には、より難しい治療が必要になるにもかかわらず、
DPC制度では、必ずしもその評価が十分ではない面も見受けられると考えております。
今回の
診療報酬改定では一部の疾患につきましても改善が図られましたが、当院には合併症のある患者の入院も多いことから、さらなる充実が望まれるところであります。
◆
村上ひとし 委員 札幌圏の今後の医療情勢を考えますと、医療需要はますますふえると
市立病院自体が分析されておりますし、その傾向の一つが高齢化と合併症を抱える患者が飛躍的にふえてくるといったことで、民間ではなかなか治療が難しいという患者が
市立病院を頼ってくる状況はますます強まってくるというふうに思うわけです。ですから、糖尿病があったり、認知症もあわせて持っているとなれば、難易度の高い治療あるいは看護というものが当然必要になってくるわけです。
そうした点で、この
DPC制度を見てみますと、DPCの環境下では、同じ診断であれば、年齢や合併症の有無に関係なく
診療報酬は基本的に同じでありますが、実際には高齢者ほど高コストになる傾向が顕著にあらわれてきます。国は、DPCによって、医療の標準化を進め、効率化が図られると言われておりますが、包括払いのもとでは、病院が患者にとって必要な医療を行っても、きちんとそれを評価してもらえない仕組みは否定できません。ですから、医療を経済性と効率性のみで追及しようとするならば、高齢者への医療提供は病院にとって明らかに不利になる仕組みであると言わざるを得ないのです。
また、医師、看護師を初めとする
医療スタッフは、患者の命を預かる緊張感のもと、今でも日々忙しく働いていると思います。入院日数の短縮が進むたび、治療や看護が濃密になり、次から次へと患者が入れかわる中、ますます厳しい環境下で働かなければならないのではないでしょうか。その結果、患者や家族に向き合う時間の確保もさらに困難になると思います。
そこで、次に、職員の働き方と病院収益への影響についてお尋ねいたします。
1点目は、
DPC導入によって職員の働く環境にはどのような影響があったのか、特に医師と看護師をサポートする具体的な対策についてお伺いいたします。
◎蓮実
経営管理部長 DPCを導入した平成20年度以降、
在院日数の短縮化に伴いまして、医療現場におきましては、一人一人の患者に対して短期間に密度の濃い医療を提供できる体制が求められてまいりました。それに伴いましてスタッフの繁忙度も高くなりますので、さまざまな対策を講じてきたところです。
主な対策としましては、
DPC制度導入と同時に、7対1の看護体制を構築し、
看護職員数を増員して、
マンパワーの確保に努めております。また、医師や看護師ができる限り治療に専念できる体制を構築するため、医療業務に関しては
医師事務作業補助員を、また、看護現場では
看護補助員や
看護事務補助員を配置し、増員を図ってきております。さらに、直近では、
入退院支援センターを設置しまして、入退院に伴う病棟における事務負担を軽減するなど、病院全体の業務分担の見直しも進めてきたところであります。こうした取り組みを通しまして、多忙な現場環境でありながらも、質の高い医療を提供できる
体制づくりを進めており、看護職員の満足度も年々向上しているところであります。
◆
村上ひとし 委員 短期間で患者に十分説明して安心な医療を提供していく、これは、入院期間が短縮すればするほど、そういう配慮、体制の構築が必要になるということだと思います。DPCにおいて、各病棟や外来での
クリニカルパスの充実は必須であると思います。この
クリニカルパスとは、一定の疾患や検査ごとに患者が目指す最適な状態に向けた医療の介入内容をスケジュール化したものであり、DPCには不可欠な要素の一つであります。
病院によりましては、
クリニカルパス専任の看護師長を配置し、全病院にパスの充実を図っているところもあると聞いております。
市立病院では、
先ほどお答えの中でありましたけれども、医師が行う業務のうち、
電子カルテや診断書の代行入力、あるいは、退院時予約の作成補助、
医学会用資料の準備あるいは作成など、医師業務を事務的な部分でサポートする
医師事務作業補助者が配置され、看護部門では
看護事務補助者や
看護補助者が配置されているということでありました。
DPC導入によって、
平均在院日数が17.2日から11.3日に短縮され、3分の2まで減少したということですから、医師や看護師を初め、職員は非常に高速回転の業務が求められる職場環境へと変化が求められ、それに対応するためにさまざまなポジションでサポートを行う新たな職種も必要になってきたということであります。
また、DPCには、
診療報酬上で各種の加算を積極的に取得することも必須条件の一つになってきます。加算の取得には、医師、看護師を十分に集める、先ほど7対1の看護加算を取るということで、看護師を多く配置するという話もありました。この加算の取得によって機能分化あるいは標準化や効率化に取り組むことになりますが、そのことによって、人的体制の充実など、病院として新たな投資が求められることになるわけであります。
そこで、2点目は、患者数は減少傾向であるが、
診療報酬上の各種加算を積極的に算定することにより、
診療収益自体は増加しておりますけれども、一方で経常費用の増加が診療収益の伸びを大きく上回っていることで、最終的な収支は悪化しております。
診療報酬はこうした要因にどのような影響を与えているのか、お伺いいたします。
◎蓮実
経営管理部長 加算の取得に当たりましては、
高度急性期病院として医療の質が向上することによる効果や、得られる収益と費用等を総合的に検討の上、積極的な取得に努め、収益の確保には一定の効果を上げているところです。
しかし、新
入院患者数はふえているものの、
DPC制度に対応した
在院日数の短縮の幅が大きく、結果的に延べ患者数が減少して、
診療報酬による収益が期待しているほど伸びていないことが
診療報酬が収支に影響を与えている要因として上げられます。
◆
村上ひとし 委員 札幌にある
急性期病院は、人材を集めるという点では非常に恵まれているというふうに聞いております。地方にある病院にとって、医師や看護師などを確保するのは非常に大変だということで、結局、加算の取得ができないというようなことも聞いております。そういう意味では、DPCという制度そのものが都市部にある病院に患者を集中させるし、そして、集中している病院の医療機能は高速回転が求められるということであります。
市立病院のステージアッププランの中には、経営基盤に関する現状と課題の中で、当院では、入院日数が長くなるに応じて
診療報酬が段階的に下がる
DPC制度のもと、
平均在院日数の短縮を進め、入院単価は上昇している、しかし、新
入院患者数は
平均在院日数の短縮を補うほど伸びていない、その結果、延べ
入院患者数は減少傾向にある、これが先ほどのご答弁の内容だと思いますが、こういうことが記載されており、結果として入院収益の伸び悩みにつながっているのだということであります。
今後も、制度上、
平均在院日数の短縮を進めていかなければならないが、これまで以上に集患力を強化し、新入院患者を確保することで収益をふやしていく必要があるとステージアッププランの中に記載されております。つまり、さらなる
平均在院日数の短縮に向かうということですから、なお一層の職員の高速回転に対応した仕組みづくりが求められるということであります。私は、DPCによってこれ以上の入院期間の短縮を図ることは、患者や病院、あるいは、在宅介護や介護施設に対してどのような影響を与えるのか、今、真剣に考えなければならない時期だと思います。
そこで、最後に、改善すべき点と今後の対応についてお尋ねいたします。
1点目は、医師の裁量権として必要と判断される検査や治療が行える、そして、患者にとって満足度が高い仕組みが求められると思いますけれども、この辺の認識についてお伺いいたします。
◎関
病院事業管理者 現在、当院では、必要な検査や治療に関しましては適切に行っているというふうに考えております。そして、今後につきましても、患者にとって必要な医療がしっかりと受けられるようにすることが必要であるというふうに認識しております。
◆
村上ひとし 委員 必要な医療を適切に行っているということであります。しかし、この制度の仕組み自体が入院期間を著しく短縮していく、そのことによって医療を管理していくということでありますから、
市立病院がそれをできていても、全国的に全ての病院が医師の裁量権をきちんと尊重してできるのかというと、私はそうは思わないのです。
医師が患者にとって必要と考える検査や治療を行えるというのは、医療の根本というか、基本だと思います。診察室に入ってきた患者がいろいろな話や訴えをしますが、それを全面的に受けとめて、その患者にとってどういう検査や治療がいいのか、医師みずからが責任を持って、裁量権を持って判断して治療に当たることがどうしても必要であると思います。特に、高齢化や合併症の患者が急増する状況のもと、DPCでは求められる医療が実施されないケースもあります。そもそも、
診療報酬の抜本的な引き上げが必要であります。
そこで、2点目として、高齢化が進む本市として、現在のDPCの仕組みを実態に合ったものにしていくことが市民の要望に寄り添う医療の提供につながると思います。この実態というのは、高齢化あるいは合併症の増加のことであります。
市立病院として、国に対してあらゆる機会を通じてDPC評価の改善を要求すべきと思いますけれども、この点についてどのようにお考えか、お伺いいたします。
◎蓮実
経営管理部長 DPC評価にかかわる改善の要望につきましては、提供している医療を正しく評価していただくために、当院が参加しております全国自治体病院協議会などを通じて病院同士で必要に応じて、随時、情報交換を行っていきたいと考えております。
◆
村上ひとし 委員 きょうは、DPCの患者への影響、あるいは、職員の働き方や病院の収益という観点から質問させていただきました。患者への影響という点では、札幌の高齢化率はまだまだ上がっていきますし、それに伴って認知症の方もふえるでしょうし、当然、合併症の方も
市立病院をたくさん受診することになります。求められる医療がきちんと提供されるという点で、今のDPCの制度の中でも、高齢化に配慮するとか、あるいは、合併症の評価を引き上げるという対応は今すぐにでも必要だと思います。そして、このDPCを、社会保障費削減のための経済誘導であったり、あるいは、
医療従事者の裁量権を無視した管理医療に利用するのは問題であると言わざるを得ません。
そこで、市立札幌病院が政策医療として他の病院で治療が困難な患者に今後も十分な医療を提供していくという意味でも、DPCについては、さらに
市立病院の中でどういう問題と改善点があるのかを引き続き検証していただきたい、このことを求めて、私の質問を終わります。
◆松浦忠 委員 今の質問でもいろいろと出ていましたが、いわゆるかかりつけ医を持とうということで、通常の病気についてはその人の身体の特徴などをよくわかっている近所のかかりつけ医が適切な治療をする、そして、手に余るものについては大病院を紹介するという仕組みになってきております。そういう中で、
市立病院について私が心配していることは、
市立病院に紹介状を持っていってかかった人は
市立病院の診療について本人の負担分だけ払えばいいです。ところが、紹介状を持たないで行ったら、初診料に加算されまして、今度、それがまたさらに上がります。
そこで、いわゆる加算の制度をとったことによって、加算以前の状況と比べて、外来の人数はどういう増減があったか、これを比較して示していただきたいと思います。
それから、二つ目は、この増減によって収入はどのぐらいの増減があったか、まず、これをお示しください。
◎蓮実
経営管理部長 まず、委員がおっしゃった初診者の定額負担ですが、平成14年8月1日に1,000円から始めております。しかしながら、この14年は、データが古過ぎて把握し切れていないので、次に2,000円に値上げした平成18年4月前後のお話から入りたいと思います。
平成18年4月の前の1年と後の1年で比べますと、新たに外来の患者となった方は、平成17年度の1年で4万1,267人、それに対して、導入後の18年4月から1年間で3万9,631人で、マイナス約3.9%となっております。さらに、外来の単価を比べてみますと、導入前の1人当たり1万464円が導入後の1年間平均では1万631円となりまして、1.56%弱上がっておりますので、収入的には差し引き若干のマイナスでございます。
その次に、この10月1日から、健康保険法等の条例を改正いたしまして、これまでの2,000円が法律で定める最低額の5,000円に値上げになったばかりでございますが、これは10月1日からですので、10月1日から7日までの1週間と直前の9月1日からの7日間を比べますと、9月は合わせて300人、10月は292人ですので、期間が短いですけれども、2.6%ほど下がっております。
なお、単価につきましては、直近の計算がまだできておりませんので、今の5,000円になった影響はしばらく様子を見る必要があると思います。
◆松浦忠 委員 戦後の医療を見ると、医師会が医療制度のあり方に大きな影響力を行使してきたことは間違いありません。国民皆保険も、医師会が一生懸命に運動に取り組んで、そういうことが成立していきました。
そういう中で、私は、
市立病院は札幌市にとって市民が最も安心できる病院だと思っています。この安心できる病院が、このことによって患者数が減っていく。減ったものは減ったように対応すればいいのですが、収入も総額が減っていきます。そうすると、今の形を維持していくのに、総額が減ればお金が足りなくなるわけですね。そこで、
市立病院を維持する上で、今のような政策を続けていったときに私は経営的に大変になると思うのですが、それに対して病院経営としてどう対応すべきと考えるか、この点についてお尋ねしたいと思います。
◎蓮実
経営管理部長 外来の収入については、先ほど申し上げたとおり5,000円の影響はまだ読めませんが、平成26年度と27年度の決算を比較しますと、実は2億4,000万円上がっております。ただ、今回の5,000円の影響はしばらく様子を見なければならないと思っております。
また、外来につきましては、
高度急性期病院ということで、原則、15診療科で予約紹介制をとるなど、今、松浦委員がおっしゃったかかりつけ医との役割分担を進めるという方針でやっております。ですから、外来の人数自体は一定程度の縮小傾向にありますが、今申し上げたように収入については大きく下がらないようにしておりますので、そのことにより、収入的あるいは経営的な問題に一定の影響がないように何とかやれていると評価しております。
◆松浦忠 委員 いずれにしても、私は、
市立病院をなくすわけにいかないと思っています。今も事務委託をしたりいろいろなことをして努力をされていますが、いよいよ内部努力でも経営的に厳しくなってきたときには、市立札幌病院として、一般会計からきちっと繰り入れをする、場合によっては、維持管理などを含めて、病院の建物そのものを一般会計が全て受け持つ、あるいは部分的に受け持つとか、そういうことを含めて札幌市がちゃんとやるべきだと思うわけですよ。
これは、院長にはそういう気持ちが十分にあると思いますが、市長の考えがあってのことですから、市長の代理で出ている板垣副市長にお尋ねします。札幌市はそうあるべきだと思うのですけれども、いかがですか。
◎板垣 副市長 病院事業は、ご存じのとおり、企業経営を導入したところでございまして、基本的には、病院の独立採算の中で、企業努力の中でしっかり経営していくべきだというのが原則であります。しかし一方で、委員がおっしゃられたとおり、
市立病院という他の民間病院とは違う特殊性もあると考えておりますので、そのバランスの中で
市立病院をきちんと維持する方策を考えるべきかなと考えております。
◆村山拓司 委員 松浦委員の内容と少し重なる部分もありますが、私から、病院の経営状況について、何点か伺います。
病院事業会計の平成27年度決算の経常収支は13億円の赤字となっておりますが、その前年の平成26年度は10億円ほどの赤字でありました。診療収益では、平成26年度の180億円に対し、平成27年度は185億円と5億円も収益をふやしていながら、前年度より赤字がふえている状況であります。これは、平成27年度の医業費用が前年度と比べて8億円ほどふえているためでありますが、このような経営状況についてどのように考えているのか、まず、お伺いします。
また、現在の収支状況については、平成27年度より改善されているのか、あわせてお伺いいたします。
◎蓮実
経営管理部長 平成27年度決算についての認識と現在の収支状況についてお答えいたします。
平成27年度は、診療収益のほうは、延べ
入院患者数や患者単価の増加などにより増収となっておりますが、給与費や材料費、減価償却費の増加をカバーできず、平成26年度に比べて赤字幅が増加したものであります。このため、これまでも増収対策や経費節減対策に努めてきたところでありますが、今後は今まで以上に効率的な運営に取り組まなければならないと考えております。
また、平成28年度の状況につきましては、診療収益は27年度と比べて増収となっておりますが、医業費用も27年度と比べて増加する見込みであり、依然として厳しい状況でありまして、引き続き増収対策や経費節減対策に努めているところであります。
◆村山拓司 委員 経営状況については、依然として厳しい状況であることがわかりました。これまでもいろいろな対策をされてこられたと思いますが、その成果がなかなか経営状況の大きな改善につながっておらず、かなり苦しい状況だと思います。
平成27年度決算では、資金残が10億円ほどとなっておりますので、平成28年度の収支状況によっては、資金状況がかなり厳しい状況だと思います。資金状況が悪化すると、人を雇ったり、医療機器に投資したりすることができなくなるおそれがありますが、今後の病院の経営を維持していくためにどのような対策を講じるつもりなのか、伺います。
◎蓮実
経営管理部長 経営の改善につきましては、病院機能に即した施設基準の取得や各種加算の算定など、これまでも対策を行ってまいりましたが、委員ご指摘のとおり、収支好転に至るまでは成果が出せていない状況であります。
また、先ほど少し出ましたが、仮に現況のままの収支状況が今後も推移した場合には、一般会計からの支援等についても関係機関に協議を求めることを考えなければなりませんけれども、地方公営企業として、まずは、経営内容全般において、病院の各部門の代表に病院経営に詳しい外部の専門家を加え、そのメンバーによって院内に会議を立ち上げまして、収益はもとより、経営の節減などについてさらに改善を推し進めるべく、具体策を協議してまいりたいと考えております。
◆村山拓司 委員 さらに対策を進めるということですが、市立札幌病院だけに限らず、各自治体病院の経営状況につきましては、多くがなかなか厳しい状況にあると聞いております。
そこで、全ての自治体病院が赤字となっているわけではないと思いますが、黒字となっているほかの自治体病院などについて調査研究は行っているのか、お伺いいたします。
◎蓮実
経営管理部長 ほかの自治体病院のうち、政令指定都市の同規模病院や道内同規模病院などの経営状況は、より参考になるものと考えております。
決算状況等を見てみますと、経常黒字となっている病院は、新潟市、横浜市、さいたま市、釧路市などであります。地域の状況は一様ではございませんが、いずれもより効率的な運営によって診療収益を確保しているということになります。
当院におきましても、これら他の自治体病院の運営を参考にしながら、さらに経営改善に努めていく所存であります。
◆村山拓司 委員 最後に、要望ですが、これから取り組む経営改善策については、他都市の改善事例なども参考に、収支好転につながる実効性のある対策をとることが必要であります。
私は、
市立病院は市民にとってはなくてはならないものだと思っておりますので、収支改善に向け、さらに有効な対策を推進し、経営への改善を図っていただくことを要望し、質問を終わります。
◆松原淳二 委員 私からも、これまで種々議論がございました市立札幌病院の取り組みについてお伺いさせていただきたいと思います。
これまでの議論の中で、
高度急性期病院としての役割に起因する課題であったり、収支状況などについて質疑がございました。
私は、1点目に、病床利用率の点からお伺いしたいと思います。
2015年度の決算を見ますと、病床利用率が2014年度の65.9%から68.6%と2.7ポイント上昇しております。昨年の病床再編の効果により、798床から747床と51床減ったことが大きな要因の一つだと思っております。しかしながら、延べの入院患者についても増加しているやに聞いております。決して病床再編だけではなくて、それ以外の効果も出ているのではないかと思っています。そこら辺についてお伺いしたいと思います。
ここ数年で結構ですので、病床利用率の推移についてはどのようになっているのか、また、今回、病床利用率が2.7ポイントですが、増加していることについてどのように捉えているのか、お伺いいたします。
◎蓮実
経営管理部長 まず、平成23年度から平成27年度までの過去5年間で申し上げますと、病床利用率につきましては、平成26年度までは減少傾向にありました。新
入院患者数につきましては、23年度、24年度は前年度を下回ったものの、25年度以降、現在までふえ続けております。一方で、
平均在院日数は、大幅な短縮が平成26年度まで年々進んでおり、結果として延べ
入院患者数が減少し、病床利用率も減少しておりました。
これに対しまして、平成27年度につきましては、
平均在院日数については11.3日と26年度とほぼ同数であったところ、26年度に比べて新
入院患者数を400人以上ふやすことができましたので、延べ
入院患者数の増加となったところです。
このように、
平均在院日数が現状と同程度であれば病床利用率が向上すると考えておりますが、今後もさらに新
入院患者数をふやしていく必要があると考えております。
◆松原淳二 委員 新
入院患者数が平成25年度からふえ続けているのはよい傾向だと思います。また、先ほど来あります
平均在院日数が減っていることに関しても、必要な治療が適切に行われ、患者の病状が早期に安定して、地域の病院、在宅、あるいは社会復帰が図られているのであれば、
高度急性期病院としての役割を果たしている成果だと認識するところです。一般的には、病院経営において収支が均衡する病床利用率は80%程度と言われているやに聞いています。まだ10ポイント以上の差がありますので、さらなる向上を図り、何とかこれを改善していかないといけないと思っています。先ほどもあったように、今のままでいったとしても、
平均在院日数の改善が必要だという状況は続くと思いますので、さらなる向上を目指して取り組んでいただきたいと思います。
さて、市立札幌病院は、2013年度に地域医療支援病院の承認を受けて以降、地域医療支援病院は、
高度急性期病院の位置づけのもとで、かかりつけ医からの紹介患者の受け入れ、そして、救急患者の受け入れが大きな役割の一つとなっています。その関係をいかに築いていくのかがこれから大事なことだと思います。
そこで、これまでの紹介患者数及び救急患者数の推移についてどのようになっているのか、お伺いいたします。
◎蓮実
経営管理部長 紹介患者数及び救急患者数の推移についてです。
平成25年度からの推移を申し上げますと、紹介患者数につきましては、25年度は1万716人、26年度は1万393人、27年度は1万1,769人であり、救急自動車搬入患者数につきましては、平成25年度は1,820人、26年度は1,738人、27年度は2,093人でありました。このように、紹介患者数、救急患者数ともに、26年度は25年度より減少したものの、27年度は盛り返しまして、25年度と比較しても、紹介患者は1,000人ほど、救急患者数は200人ほど増加いたしました。
また、平成28年度につきましても、4月から8月までの合計での比較ではありますが、紹介患者数、救急患者数ともに27年度よりも増加しております。
◆松原淳二 委員 今ほど、平成25年度からの推移を確認させていただきました。やはり、地域の医療機関とのパイプを太くして、また、救急に関しては、関係機関との信頼関係を構築していくことなどについて、軌道に乗っているとまではいかないかもしれませんが、乗りつつあると思います。平成26年度は少し下がっている経過がありますので、一概には言えないかもしれませんが、平成27年度、28年度に至っては増加傾向にありますので、乗りつつあると評価してもいいのかなと思っています。
そんな中で、命を預かる医療機関としての性質上、また、
市立病院としての性質上、経営状況ばかり見るのはいかがなものかなとは思うのですが、2015年度の決算の状況を見ると、先ほど来お話があるように、経営については芳しくない状況が続いています。患者数を伸ばし、病床利用率を上げて、収益を伸ばしていきながら収支改善をしていくことが第一だと思います。そのことが
市立病院、
高度急性期病院としての役割を果たし、市民がいい環境を享受する第一歩だと思います。
先ほど、支出の見直しについても検討していく旨の答弁がございました。今後の収支改善について、先ほど委員会を立ち上げるという話もございましたが、どのような考えで臨むのか、お伺いしたいと思います。
◎蓮実
経営管理部長 新
入院患者数は増加し続けておりまして、また、医療需要につきましても今後増加していくという統計がありますことから、ご指摘のとおり、病床利用率を向上させ、収益を増加させていく取り組みは引き続き強化してまいりますが、同時に、市立札幌病院としての医療の質には十分配慮しつつ、効率化できるところは効率化して支出を抑え、早期に収支の状況を改善させてまいりたいと考えております。
◆松原淳二 委員 支出抑制の話がございましたが、市立札幌病院として積み上げてきたここ数年来の医療の質、そして、地域から得た信頼を決して落とすことのないよう、検討の上、実行に移していただきたいと思います。
また、医師や看護師、薬剤師などの定数確保にも苦慮しているやに聞いておりますので、そういった状況も踏まえながら、人員の確保といった課題についても引き続き取り組むようお願い申し上げたいと思います。
先ほど来ございますが、
高度急性期病院とかかりつけ医との役割分担について、市民の皆様にしっかりと理解していただきながら、
市立病院の役割、立ち位置をあらわしていただきたいと思います。とはいえ、高齢化や合併症など、
急性期病院としての役割以外にも本当はやらなければいけないことがございます。かかりつけ医との連携、患者、市民に理解を求めながら、
高度急性期病院としての役割をしっかり果たしていただく環境づくりに向けてこれまで以上に取り組んでいただきたいということを最後にお願い申し上げて、私からの質問とさせていただきたいと思います。
◆坂本きょう子 委員 私からも、質問いたします。
2013年8月、自治体病院として道内初の地域医療支援病院の承認を受けたということで、それからほぼ3年が経過しております。これまでのやりとりの中でも、機能分化や、市立札幌病院の役割、機能強化について議論されてきましたが、市立札幌病院の地域における役割や、どういう機能を果たしていくのかということについても、これからの将来を見据えて大変重要な観点だと思いますので、そこにかかわって何点か質問したいと思います。
市立札幌病院は、これまで、市民のための病院として、民間の医療機関では提供が難しい政策医療の分野や地域医療のさまざまな場面で、医療における市民の安全・安心を守っていくという大切な役割を果たしてきたと思っております。しかし、国においては、医療提供体制の再構築と病床の整理を進めようという動きの中で、
市立病院は高度急性期医療を担う機能が求められております。また、それに伴い、地域医療機関との連携を強化し、地域医療機関とともに地域での医療の充実に取り組まなければならない状況になっていると思います。
そこで、指定され、承認を受けてから3年ということもございます。地域医療支援病院として、この間、地域医療を支えるためにどのような取り組みを現に行ってきたのか、そしてまた、現在はどういうところに力を入れて取り組みを行っているのか。やはり、この間、地域医療支援病院としての役割の重大さを随分感じていらっしゃると思いますので、そういう観点に立ってどういう取り組みを行ってきているのか、伺いたいと思います。
◎関
病院事業管理者 地域の医療機関を支える仕組みについてお答えいたします。
当院では、地域完結型医療の中核を担う地域医療支援病院として、地域医療の充実に貢献するさまざまな取り組みを行っております。具体的に申し上げますと、地域医療支援病院の役割の一つに救急医療の提供がありますが、当院は3次救急医療機関として重度の救急患者を24時間体制で受け入れています。また、身体合併症を持っている精神科救急の患者や周産期母子の救急対応も24時間体制で行っております。さらに、小児への対応は、地域のクリニックの診療支援として、平日は午後8時まで、土曜日・日曜日・祝日は午前9時から午後7時まで、当番医体制をとって入院の依頼に対応しております。そのほかにも、循環器系、消化器系、小児系、けが、災害の2次救急輪番に参加しているほか、地域の医療機関からの要請によりまして、脳神経系や泌尿器系の専門分野の救急対応も行っております。また、かかりつけ医と当院の医師が共同して診療を行う開放病床を5床設置しているほか、当院の医療機器等を提供し、診療に役立ててもらうといった共同利用も行っております。
◆坂本きょう子 委員 救急や精神、また小児などにかかわって、時間帯もそうですし、技術的にも地域の医療機関では受けとめ切れないところについて、市立札幌病院が支えになっているという取り組みについて、今、お話があったかと思います。また、救急、精神、周産期等の医療というのは、この間、議会でもさまざまな議論がありましたが、なかなか収支をとることができず、不採算な医療です。しかし、市民にとっては欠かすことのできない医療ですから、今後とも確実に継続していかなければならない分野だと思います。
一方で、2015年度の札幌市公営企業会計決算審査意見書というものが札幌市の監査委員から出されておりまして、この中でも病院経営の安定に努力すべしという厳しい言及、指摘があります。これに対して、国の医療制度の改革ということですが、前段に申し上げたように、地域医療支援病院ということで、地域医療機関との機能分化、連携推進などに取り組むことにより、いわゆる大病院である当院の役割分担のために外来患者数が減少することはある程度やむを得ない、一方、
入院患者数に目を転ずると、当年度は、前年度との対比で年間総数が2.3%、新
入院患者数は2.7%とそれぞれ増加しているとして、この数字は、すなわち、地域医療機関との連携推進による成果のあらわれだということが監査委員の意見書の中でも明らかにされております。そういう意味では、さまざまな苦労、困難があろうかと思いますが、ここはしっかりとやっていただきたいところだと思っています。
そういう中で、地域医療機関との連携や地域医療支援病院となりますと、かた苦しいといいますか、とりわけ利用される患者や札幌市民の皆さんには、なかなかわかりづらいというイメージがあろうかと思います。医療連携の強化ということで言いますと、頼みやすいとか相談しやすい、あるいは話しやすいと。先ほど検査のことについて云々というお話がありましたが、いろいろなことを忌憚なく聞けて相談もできる、そういう環境づくりが大変重要だと思いますし、地域との親密な連携、顔の見える関係づくりは欠かせないと思っています。
この間、市立札幌病院のホームページを何回かのぞかせていただいておりますが、市民向けの講演会や医療関係者向けの講習会などもたびたび開催されているようです。そのほかにも、地域の医療機関との連携強化に取り組まれておりまして、地域とのさらなる連携強化対策として新たな努力が求められていると思いますけれども、現にどのような取り組みを行っているのか、そして、その結果、どのような効果が得られているのか、その点について伺いたいと思います。
◎関
病院事業管理者 地域とのさらなる連携強化対策とその効果といったご質問でございました。
本年1月には、地域医療情報ネットワークシステム、すずらんネットというICT連携を目指したものを本格稼働して、当院に受診歴のある患者の診療情報について、かかりつけ医等の登録医療機関が参照することで診療に役立てていただくことが可能となっております。また、昨年末に緊急性の高い患者を積極的に受け入れるための臨時入院病床を設けてさまざまな診療科で対応しております。それ以外にも、よりスムーズに紹介患者を受け入れるために、ことし8月には地域の医療機関の医師から当院の医師につなげるドクター・ツー・ドクターの専用ダイヤルを新設いたしました。さらに、地域の医療機関や介護施設の職員向けの講演会、セミナーを他職種との共同で企画して教育支援に努めており、昨年度は66回の研修を公開して、院外から延べ637施設、1,070名の参加がありました。これらの広報を行うとともに、顔の見える連携に努めるために、地域連携センターを初め、各診療科なども含め、病院一丸となって地域医療機関に対する病院訪問活動も積極的に行っているところであります。
その結果、紹介患者に関しまして、ことし9月末現在、前年度同月比570名増加して、紹介率は昨年の67.4%から74.0%まで上昇しております。
◆坂本きょう子 委員 呼びかけをして、足で歩きながらやっていると思います。本当に、ふだんから顔を合わせて話をして、いざというときに医療機関として頼みやすい、相談しやすい、そのような連携をつくっていくことはとても重要なことだと思います。国が決めてしまった制度ですから、公立病院としてそこでいかに役割を果たしていくのか、そして、先進的な事例をつくっていく牽引役としてとても大切な役割が託されていると思いますので、そこはしっかりと対応していっていただきたいと思います。
セミナー等についても、他職種にわたって行われていて、66回、637施設、1,070名の参加ということでした。他職種ということですから、医療機関だけではなくて、専門職も含めて、社会福祉の分野の方たちも参加されていると思いますので、そこの連携はしっかりとって、引き続き努力していただきたいというふうに思います。
そこで、先ほどからもお話が出ておりました
平均在院日数の短縮の問題です。
技術も上がっているし、精度も高くなっているので、退院に向けての日数が短くなっているのだというご答弁がありましたが、2015年度の
平均在院日数が市立札幌病院全体で11.3日、一般病床では10.7日ということで、大変短いものになっているという印象は拭えません。急性期の病院を退院するということですから、退院ということになりますと、患者や患者のご家族にとっては治療が一段落する印象があるかもしれませんが、そこで終わらないというのが今の国を挙げての医療、社会保障の政策だと思いますので、やはり、そこに寄り添っていかなければならないと思います。
団塊の世代の約800万人が後期高齢者となり、医療・介護需要の増大が見込まれる2025年問題にも対応しながら、病院の機能分化が求められているのだろうと思います。病気が治っても後遺症が残る、ご高齢であれば身体機能が弱くなっていく、もとの状態に戻ることがあるというより、ないことのほうが多いのではないか、こういう厳しい状況があります。退院はするけれども、在宅での医療が必要になって、それは地域のかかりつけ医だけでは賄えなかったり、緊密な連携が必要だったり、介護との連携が必要だったり、そういうこともしばしばあると思います。このように、治療が一段落しても医療、介護の提供が必要な患者が多いわけですから、そういった患者が退院あるいは転院することになっても、生活に不安を抱くことのないように、しっかりと次のステップにつなげていくことが必要です。
そこで重要になるのが、退院に向けた支援だと思います。そこで、病院が積極的に患者、家族にかかわり、患者が新たな生活を主体的にイメージし、築いていく場面を提供していくことが大事だと思いますので、患者が安心して退院、転院できるよう、現在はどのような取り組みを行っているのか。理事者の座席表が私たちの手元に配られておりますが、今の市立札幌病院の中には地域連携・入退院支援課というのが一つの機能として確立されておりますので、どのような取り組みを行っているのか、また、今年度、特に強化すべきと考えて取り組んでいる中身があれば、その取り組みについても伺いたいと思います。
◎阿部 医療品質総合管理部長 地域連携センター長も兼ねておりますので、回答させていただきます。
まず、当院では、地域連携センターが病棟と連携し、適切な医療機関等への転院や退院調整を行っております。特に、ひとり暮らしの高齢者の方々が退院後に安全に自宅で生活が送れるように、訪問看護や在宅医療の導入、福祉用具の調整などを行っております。
それから、転院につきましては、既に、脳卒中、大腿骨骨折などは継続した診療計画である地域連携パスを用いてスムーズな連携を構築しており、いずれも、転院や退院前には、地域の医療・介護担当者とカンファレンスを行って、必要な医療処置等の情報の共有や確認を行っております。
それから、今年度に強化した取り組みに関しては、病棟ごとに退院支援の専門職員として退院調整看護師や医療ソーシャルワーカーを配置いたしました。これにより、退院困難な患者につきましては、入院前に入退院支援係が得た情報をもとに入院早期に把握し、患者、ご家族と面談した上で他職種と連携した介入を行っております。その結果、今年度は、昨年度より2割以上多く、1カ月当たり約120名の患者に退院支援を行うことができました。短い
在院日数でも、患者が安心して地域の医療機関に転院または退院できるように今後も努めてまいりたいと思います。
◆坂本きょう子 委員 患者のニーズにしっかりと応えながら、そしてまた、退院した後の地域でしっかりと医療を受けられ、あるいは、介護にもつないでいくことが市立札幌病院としてできることは、とても大切なことだと思います。まさに、これから高齢になっていく私たちは、地域包括ケアという枠組みの中で生きていかなければなりません。医療機関、介護、そこには行政も入ってまいりますが、一つ一つの機関が独立して役割を担っていくと同時に、きちんと連携をとりながら、高齢者あるいは患者の生活、医療、介護サービスを複合的、総合的に丸ごと提供できる枠組みをつくっていかなければならないと思います。やはり、介護施設の方たちなどからも、医療機関とどう連携をとったらいいのかというようなことを聞かれますし、とりわけ高齢福祉、障がい福祉のところでも、医療職と介護職の専門職同士のセミナーやさまざまな勉強会を重要視して、お互いの専門職の苦労もわかりながら、さらにカバーできるように力を発揮できる枠組みをどうやってつくるのか、今、まさに試行錯誤しながらやっている時代だというふうに思うのです。
市立札幌病院は、地域医療支援病院として、機能分化の中で公立病院の役割を果たしていくということですが、そういう中だからこそ、市立札幌病院が退院支援をして地域に帰すときに、それは元気な状態で帰るのが一番いいことですけれども、そこに地域のかかりつけ医の力やさまざまな福祉機関、サービスの連携をつくりながら、一人一人が元気に最期まで過ごすことができる手助けをしっかりと担っていくことが大切だと思います。そのことによって、市立札幌病院が全国のいい例として残っていくような取り組みをぜひやっていただきたいというふうに思うのです。
先ほど、一般会計で面倒を見てやれという話がありました。不採算部門の話が最初に出てまいりましたが、そういうところも含めて、私は、一般会計からきちんとそこにお金を入れてあげることが公立病院としての役割を担保することだと思います。そして、そのことが、札幌市あるいは北海道全体の医療水準の底上げになり、とりわけ高齢者の医療水準の引き上げにつながっていくというふうに思います。紹介率、非紹介率など、めどになるいろいろな数字が出てまいりますが、頼って病院に来られた方、入院された方たちの面倒を最後まで見ていく、対応していく、そういうことを粘り強く続けていただきたいと思うものですから、あえてこの問題を取り上げました。
市立病院として、市民や地域医療機関からの理解や信頼に応え、質の高い医療を提供し続けていく、そのためにも健全で安定した経営基盤の確保が不可欠であるという監査委員からの言葉がありますが、市民や地域医療機関に資する病院経営をしっかりとやっていただきたい、医療体制もしっかりと整えていただきたいということを求めて、終わります。
○こじまゆみ 委員長 以上で、病院事業会計の質疑を終了いたします。
ここで、理事者交代のため、委員会を暫時休憩いたします。
――――――――――――――
休 憩 午後2時29分
再 開 午後2時32分
――――――――――――――
○こじまゆみ 委員長 委員会を再開いたします。
次に、第3款 保健福祉費 第1項 社会福祉費の質疑を行います。
◆太田秀子 委員 障がい者交通費助成について質問いたします。
障がい者交通費助成は、外出のきっかけづくりとして、障がいのある方に交通費の一部を助成するものです。外出機会を確保し、社会参加を促進することを目的として行われており、通院治療を欠かせず、デイケアや作業所でのリハビリを必要とする障がいを持つ方だけではなくて、そのご家族にとっても救済となっています。
その障がい者交通費助成ですが、2017年4月にICカードに移行するため、今、準備を進めております。ICカード移行に伴い、重度の方を対象にした福祉乗車証は現行の磁気カードからICカードに切りかわり、中度の方を対象とした助成用磁気カードは、市販されているICカードSAPICAを利用者が用意し、そこにチャージをする助成方法となります。
そこで、質問いたします。
助成方法や使い方が変わるために利用に当たって混乱される方もいるのではないかと思いますが、ICカード移行後も、希望すればこれまでと同じ助成カードを選択することができるのか、伺います。
◎嶋内 障がい保健福祉部長 平成29年4月からのICカードの移行後も、これまでと同じように、磁気カードである助成利用カードを選択することはできないのかというご質問でございます。
ICカードにつきましては、地下鉄の改札機などに触れるだけでスムーズに通過でき、障がいのある方にも優しいカードであると考えております。カードは、繰り返し使え、環境にも優しく、紛失した場合の再発行も容易に行えるなど利点が多く、全国的にも磁気カードからICカードへ置きかわっている状況がございます。
また、各交通事業者の磁気カードにかかわる機器の老朽化も進んでおり、磁気カードの利用を続けることは困難な状況にございますので、磁気カードである助成利用カードを平成29年4月以降も存続させ、選択制とすることは困難であることをご理解いただきたいと思います。
◆太田秀子 委員 障がい中度の方は、必ずSAPICAを用意しなければ助成が受けられないというお話です。
中度の障がいを持つ方でB型作業所に通っている方がいますが、工賃は1時間100円で、1日500円です。SAPICAを用意するための2,000円というのは4日分の工賃になるわけで、決して安い金額ではありません。既にSAPICAをお持ちの方も多いかもしれませんが、これから用意するのに自己負担がかかって不安だと感じ、混乱するような方もいるのではないかと思っています。
そこで、質問いたしますが、SAPICAを持っていない方に対してどのような対策を考えているのか、伺います。
◎嶋内 障がい保健福祉部長 現在、SAPICAをお持ちでない方に対してどのような対策を講じているのかというご質問でございます。
来年4月のICカードへの移行に向けて、現在、SAPICAをお持ちでない方につきましては、本年7月から今年度の助成用カード3,000円分として2,500円がチャージされたSAPICAを受け取ることができるサピカ引換証を希望する方にお渡しし、自己負担なくSAPICAを所持していただく対応を講じているところでございます。
なお、SAPICAには、デポジット500円が含まれます。これは、将来、SAPICAが不要になった場合に利用者に戻る性質のものでございまして、チャージ分2,500円とデポジット分の500円分、計3,000円を同額の助成用カードと交換するものでございます。
なお、引換証の対応ですが、本年7月から9月末までの3カ月間で744名にご利用いただいているところでございます。
◆太田秀子 委員 SAPICAを用意する方法としては、2,000円で購入するのか、今お話があった、デポジット500円と2,500円のチャージ分の3,000円で交換するか、どちらも可能だというお話でした。
そこで、質問ですが、購入する場合の2,000円、助成カードとの引きかえは3,000円、この違いは何なのかということと、ICカードへの移行は、複雑で理解するのが難しいと感じます。各区の窓口では既にSAPICA引換証の交付が始まっております。ICカード移行についての説明はされていることと思いますが、利用される方に十分伝わっているのか、心配の声はどのようなものがあるのか、伺います。
◎嶋内 障がい保健福祉部長 1点目の、通常、市民がSAPICAを購入する場合は2,000円で、今回、私どもの障がい者交通費助成事業としての交換が3,000円となっているのはどうしてなのかというお尋ねでございます。
現行の助成カードにつきましては、障がいの種別に応じて、1,000円券をお渡しする場合と3,000円券をお渡しする場合がございます。このため、1,000円券と3,000円券のどちらの券種でも交換できるという観点と、区役所、交換窓口となる交通局の定期券発売所の一連の事務手続を簡素化させるために、SAPICA引換証につきましては、3,000円分の1種類とさせていただいたところでございます。
2点目のICカード移行にかかわる説明についてでございます。
ICカード移行後の制度の概要につきましては、本年7月から各区の窓口で申請に来られた方に個別に丁寧な説明を行っているところでございます。多少時間がかかる場合もあると聞いておりますが、窓口でのトラブルはなく、ご理解いただいていると考えております。また、機会を捉えて障がい当事者の団体や障がい者支援施設等にも説明に伺わせていただきまして、本日までに説明会を20回程度実施しており、今後も引き続き実施してまいりたいと考えております。
なお、今後は、広報さっぽろ11月号に制度の概要及び平成29年度分の申請にかかわるお知らせを掲載するとともに、11月中旬には対象となる方に個別に案内文書をお送りする予定でございます。移行をスムーズに進めるために、引き続き丁寧な周知に努めてまいりたいと考えております。
◆太田秀子 委員 今年度の助成分の残りが少なくて3,000円のSAPICAと交換できないとか、やはり2,000円で購入できないという場合は、例えば、ご本人の希望を聞いてでしょうけれども、来年度の助成額から本市が2,000円のSAPICAを用意して、残る交通費助成額とあわせて交付するとか、今年度中に引きかえの手続がどうしてもできなかった方とか、また、他市から転入してきて交通費助成を活用したいという方もおられますでしょうから、4月以降も柔軟に対応するのが大事だと思います。
そのような配慮が必要かと思いますけれどもいかがか、伺います。
熊本地震発生から約半年という短期間で、まだまだ検討中の事柄も多いと思われますが、福祉避難場所の拡充及び人的応援体制の確立に向けた現在の状況について伺います。
◎白岩 総務部長 まず、1点目の福祉避難場所の拡充についてであります。
札幌市では、社会福祉施設等の関係団体などと災害時における要配慮者の緊急受け入れについて協定を締結しており、さらなる拡充を図るため、現在、市内の特別支援学校や宿泊施設を福祉避難場所として使用できないか、関係団体等と協議を進めているところです。
次に、2点目の人的応援体制の確立についてであります。
福祉避難場所の開設に向けた施設の人員不足を解消するため、要配慮者の生活支援などに携わる学生等のボランティア協力について、市内に七つある看護系などの大学と協定締結に向けた協議を進めているところです。
また、一般社団法人北海道介護福祉士会と応援体制の確立に向けた協議を始めたところであり、他の福祉関係団体との連携も検討しております。
◆岩崎道郎 委員 次に、熊本地震においては、市民への周知不足、行政職員の認識不足などにより、迅速な支援につながらなかったとの指摘もありました。例えば、近隣の一般住民が福祉避難場所に殺到してしまい、福祉避難場所としての機能が果たせなかったとか、福祉避難場所での受け入れ体制が十分に認知されておらず、要配慮者であっても福祉避難場所へ行くことをためらってしまったケースなどが報じられております。
こうした課題の解消に向けてどのように取り組みを進めているのか、お伺いいたします。
◎白岩 総務部長 まず、1点目の市民への周知不足への対応についてであります。
市民へのさらなる周知を図るため、本年9月1日に札幌市のホームページを更新し、福祉避難場所の役割や災害時の避難の流れを掲載するなど、内容の充実を図ったところです。また、イラストなどを用いて福祉避難場所について説明した市民向けのチラシを作成し、今後、区役所やまちづくりセンター等で配布するほか、地域の防災訓練でこれを活用していただくことなどを通じて一層の周知を図ってまいりたいと考えております。
次に、2点目の行政職員の認識不足への対応についてであります。
職員の福祉避難場所に対する認識を深めるため、今年度から、避難所運営を担う区保健福祉部職員などを対象に福祉避難場所の研修を実施いたしました。さらに、要配慮者支援を円滑に行うため、各区で実施している災害対策本部訓練等に福祉避難場所の開設に関する内容を盛り込んでおります。
今後も研修や訓練の充実に努め、職員の災害対応力の強化を図り、災害時に市民の皆様に少しでも安心していただけるよう努めてまいりたいと考えております。
◆岩崎道郎 委員 ホームページは、もともとは非常に小さいスペースだったものがかなり大きくなったという印象がありますので、今後、そういったものを見ていただけるような取り組みも進めていただきたいと思います。
4月に発生した熊本地震、また、2011年3月に発生した東日本大震災などの大規模災害時には、多くの方たちが困難な避難生活を送られ、とりわけ、障がいのある方、高齢の方などについては苛酷とも言える避難生活を送られたところであり、報道等を通してこうした状況を見た市民の皆さんからは多くの不安の声が寄せられております。
あわせて、今回の質問をするに際して、私もさまざまな報道や情報を得て原局の皆さんと協議、質問などをさせていただきましたが、私が心配していたことに対しては今の札幌市の体制で十分な想定をしているというお答えだったので、そのことについては非常に配慮がなされていると改めて感心し、評価させていただきたいと思います。とはいえ、同時に、災害というのは想定外のことが起きるときに大規模になっていきますし、さまざまなことを想定しながら、より深い想定をしていただけたらよいと思っております。
このように、大小さまざまな課題がありまして、直ちに全てを解消することは非常に難しいのだろうとは思いますが、今後も着実に進めていただいて、市民の皆さんの不安解消に努めていただくことを強く求めておきたいと思います。
次に、障害者差別解消法の観点から質問させていただきます。
去る7月26日に、相模原市の知的障がい者施設において、入所者19名のとうとい命が失われるという大変痛ましい事件が発生いたしました。新聞報道等によりますと、この事件の容疑者が障がいのある方の存在を否定するかのような趣旨の発言をしたと聞いております。私は、この事件を契機に、障がいのある方に対する偏見等が助長されてしまうのではないか、また、施行後半年が経過した障害者差別解消法が目指す共生社会実現へ向けた歩みが後退してしまうのではないかとも危惧しているところですし、実際にネット上では容疑者に同調するような声も見られております。このことに関しては、決して見過ごすことはできない、許されることではないと感じております。
そして、共生社会の実現とは、究極的には人々の内面に訴えかけなくてはならないという非常に難しい課題であると考えております。したがって、まずは、この法律の趣旨を、障がいのあるなしにかかわらず、市民全体へ広く周知していくことが大変重要であり、我が会派においても、本年1定の代表質問において市長にお考えをお聞きしたところ、民間事業者を含めた市民全体への普及啓発は極めて重要であり、各取り組みを通じて共生社会の実現を目指していくという答弁をいただいたところです。こうした市民等への周知は、一過性で終わらせることなく、継続して取り組んでいくことが重要と考えます。
つきましては、札幌市におけるこの間の法の周知、啓発に係る取り組み状況及び今後の予定についてお伺いいたします。
◎嶋内 障がい保健福祉部長 障害者差別解消法の周知、啓発にかかわる取り組み状況などについてお答えします。
共生社会の実現のためには、市民お一人お一人の障がいに関する知識や理解の不足などを解消していく必要があると認識しております。札幌市では、法の施行前から市民説明会を開催するとともに、公式ホームページ上での特設ページの開設、パンフレットを作成し、各区役所への配付、市の登録業者約6,000社への送付などを行い、その後も広報さっぽろやラジオ番組などを活用して周知啓発を行っているところでございます。こうした取り組みに加えて、新たに、子どもにもわかりやすい内容のパンフレットの作成や、改めて法の施行を広く市民にお知らせするため、札幌市立大学にデザイン面での協力を得て、ポスターの作成に着手したところでございます。
これらを本年12月の障がい者週間を契機に、市有施設だけではなく、スーパー等にも広く配布して掲示等に対して協力を依頼するとともに、北海道との共催による障害者差別解消法に関する道民フォーラムを札幌市において開催する予定となっております。
こうしたさまざまな取り組みを通じて、引き続き、より多くの市民や事業者への周知を図ってまいりたいと考えております。
◆岩崎道郎 委員 そういった取り組みを引き続きお願いしたいと思います。
市民、事業者へ向けた取り組みに加えて、市職員についても、市民等に率先した取り組みが期待されているところでございます。
市職員は、公務員として、一般市民よりもさらに高い規範意識が求められるだけではなく、行政機関に従事し、実際に障がいのある方へ行政サービスを提供する者として障害者差別解消法の内容を十分に理解しておく必要があることは言うまでもありません。このことは、日ごろ、障がいのある方と接する部署の職員だけではなく、全ての市職員に徹底されなければなりません。
そこで、この間の札幌市職員に対する研修等の取り組み状況及び今後の予定についてお伺いいたします。
◎嶋内 障がい保健福祉部長 職員に対する研修等の取り組み状況などについてお答えいたします。
札幌市職員に対する研修等の取り組みにつきましては、法施行前に、市長、副市長を含む全局長職を対象とした研修、さらに、全ての部長職、課長職を対象にそれぞれ実施しております。この中では、法の趣旨及び法施行を踏まえた札幌市の対応方針に関して理解の徹底を図ったところでございます。また、この4月には、新規採用職員に対する研修を実施した上で、現在、各局、各区役所等の職員に対して、職場単位で行う研修のほかにも、職員が各自のパソコンで学べるよう、庁内システムによる学習環境を整備するなど、全職員の理解促進に努めているところでございます。
今後、各職場へ寄せられた相談事例の蓄積に加えて、国や他都市、民間企業における事例等の情報も収集して、こうした研修の場を通じて共有を図るなどして、札幌市として組織全体での対応能力向上をしっかりと図ってまいりたいと考えております。
◆岩崎道郎 委員 特に、区役所においては、市民の皆さんと触れ合う機会が非常に多いと思いますので、そういったところを皆さんにしっかり徹底していただけるよう、重ねてお願いしたいと思います。
次に、障がい者の情報保障やコミュニケーション支援の観点から質問いたします。
(仮称)手話・障がい者コミュニケーション促進条例については、同じく本年1定の代表質問で取り上げたところですが、この条例は、情報取得やコミュニケーションに困難を抱える障がいのある方が等しく社会参加できる環境の整備を促進することで共生社会の実現を図ろうとするものとの答弁があったところです。障がいのある方の情報取得やコミュニケーションの方法は、障がいの種別や程度により多種多様であることから、さまざまな観点からの検討が必要と私は認識しております。
本市では、視覚障がい、聴覚障がいのある方や、言語表出ができないALS患者など、情報取得やコミュニケーションが難しい当事者の方々や、知的障がい、精神障がいのある方々の支援者及び学識者の13名で構成する手話・障がい者コミュニケーション検討委員会で議論を行っていると伺っています。
そこで、これまでの検討委員会でどのような検討、議論が行われてきたのか、伺います。
◎嶋内 障がい保健福祉部長 (仮称)手話・障がい者コミュニケーション促進条例についての検討状況等についてお答えいたします。
手話・障がい者コミュニケーション検討委員会につきましては、第1回目の委員会を本年1月に開催して、これまでに4回開催しております。
これまでの委員会の中では、障がいの種別や程度により情報の取得やコミュニケーションを図る上で課題があることや、条例に盛り込む内容などについて活発に議論がなされております。具体的には、手話による意思疎通が可能な環境の整備について明記してほしいといったご意見や、札幌市は観光客や留学生が多いので、国内外から訪れる障がい者も対象になるような条例とすべきではないかといったご意見をいただいております。また、全ての障がい者を対象とした幅広い内容とすべきといった意見や、言語である手話は、一つの文化であり、権利であることから、福祉施策とは別に考えるべきではないかといった意見をいただいております。さらに、既に条例を制定した自治体の状況を聞く機会を設けるなど、十分に時間をかけて議論を深めるべきといった提案もございました。
このことから、8月の第4回目の委員会では、全国初の手話言語条例を制定した鳥取県と手話言語・障害者コミュニケーション条例を制定した兵庫県明石市から、それぞれ、行政委員と聾唖の方をお招きして、検討の過程や条例の趣旨、内容などについてお話を聞かせていただきました。
会議後、委員の方々からは、条例制定の経緯などがよく理解できた、条例を制定することでどのような変化が起こるのかがイメージできるようになったなどの感想をいただいております。
◆岩崎道郎 委員 これまでの検討委員会で、さまざまな課題について、そして条例に盛り込むべき内容について検討、話し合いが進められたということでございます。
全国的には、聾者を対象とした手話言語のみの条例を制定している自治体が多いと伺っておりますが、最近では、今お話があった、コミュニケーションが困難な障がい者全体を対象とした総合的なコミュニケーション条例を制定または検討している自治体も多くなっているとお聞きしております。
北海道においても、障がい者のコミュニケーションに関する条例の制定に向けて、ことし2月に部会を設けて検討を行っていると伺っておりますが、新聞報道によりますと、全ての意思疎通手段を同じ条例で公平に扱うべきだとする意見のほか、今、お話がありましたように、手話を言語として位置づけることを重視し、コミュニケーション手段の支援とは分けて考えるべきだといった札幌市の検討委員会と同じような意見が出ているようでございます。
本市の検討委員会では、十分に時間をかけて議論を深めるべきだとの意見を受けて、第4回の検討委員会で、先行して条例を制定した、今お話があった鳥取県、兵庫県明石市から職員と聾唖の方をお呼びし、お話を伺う機会を設けたとのことでした。このように、委員の方々の意見を尊重して議論を進める姿勢は大いに評価できますし、札幌市にふさわしい条例をつくる上で極めて重要なプロセスであったと思いますし、私としては、今後もそのような姿勢で取り組んでいただきたいと考えております。
さて、この条例については、当初は平成29年4月の施行を目指すと伺っていたところです。そこで、条例の制定に向けて今後どのように進める予定なのか、伺います。
◎嶋内 障がい保健福祉部長 条例制定に向けて今後どのように進める予定かというお尋ねでございます。
当初、検討委員会での議論を経た後、年内にパブリックコメントの実施など所定の手続を経て、平成29年4月の条例施行を目指すこととしていたところでございます。一方、先ほどもご説明させていただきましたように、検討委員会におきましては、十分に時間をかけて議論を深めるべきとのご意見をいただいております。
このことから、当初予定のスケジュールにこだわらず、今後も委員会での議論を重ねることにより、札幌らしい特色のある条例の制定に向けて検討を進めてまいりたいと考えております。
◆岩崎道郎 委員 最後に、要望です。
言うまでもなく、障害者差別解消法の目的は、全ての国民が障がいのあるなしによって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することであります。
冒頭に申し上げたとおり、障がい者に対する偏見やそれに起因したことが疑われるような事件が起こっていることは看過できませんし、それに同調するような声が上がること自体大きな問題であり、解消すべき課題であると考えております。こうした中、今回ご答弁いただきましたように、さまざまな取り組みを通じて広く市民等へ周知を図っていただくという点はとても有効であると評価する一方で、こうした取り組みに終着点はないことから、引き続き行政による不断の努力が必要と考えますので、頑張っていただきたいと思います。
また、障がいのある当事者間においても、お互いの障がいの特性を理解し、尊重し合うことが重要であると私は考えております。条例の検討についても、このような考えに基づいて進めていることがわかりましたので、今後も、障がい当事者、委員の方々の意見を尊重し、時間をかけて丁寧に議論を進めることで共生社会の実現を目指す札幌市にふさわしい条例となるよう要望して、質問を終わります。
◆好井七海 委員 私からは、市民後見推進事業についてと臨時福祉給付金について、順に質問いたします。
初めに、市民後見推進事業についてですが、認知症高齢者やひとり暮らしの高齢者の増加に伴い、成年後見制度の必要性は一層高まってきており、その需要はより一層増大していくことが見込まれております。その潜在的な後見ニーズに弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職後見人が対応し切れないのではないかという懸念から、財産管理などの専門性がない案件について、日常的な見守りの延長で対応できる市民後見人の養成が急務とされてきたところであります。
平成24年4月に老人福祉法が改正され、市民後見人を養成することが市町村長の努力義務とされ、札幌市では平成26年度から市民後見人の養成を開始いたしました。
そこで、質問ですが、札幌市における市民後見人候補者の養成状況と市民後見人の受任状況についてお伺いいたします。
◎白岩 総務部長 まず、1点目の市民後見人候補者の養成の状況についてであります。
札幌市では、札幌市社会福祉協議会に委託し、平成26年度と平成27年度にそれぞれ市民後見人養成研修を実施したところです。研修の実施に際しては、市民後見人に求められる役割や養成までの流れをご理解いただくための事前説明会を開催いたしましたが、平成26年度は485名、平成27年度は269名と大変多くの市民の皆様にご参加いただいたところです。その後、研修受講申し込みの手続、選考、研修を経て、平成26年度は43名、平成27年度は36名の一般市民の方々に市民後見人候補者として登録していただいたところです。また、登録者の中には転居などを理由として登録削除となった方もいらっしゃいますが、平成27年度末時点では74名が市民後見人候補者として登録されております。
次に、2点目の市民後見人の受任状況についてであります。
これにつきましては、昨年12月に第1号となる市民後見人が誕生しております。その後は2件受任しておりまして、現在の受任件数は合計3件となっております。
◆好井七海 委員 平成26年度と27年度の事前説明会には合計約700名を超える参加者があったということで、成年後見制度や市民後見制度への市民の皆様の関心が高いということだと思います。市民後見人候補者については74名が登録され、受任件数も3件と少しずつふえているということですが、今後、市民後見制度が円滑に活用され、持続可能な制度となっていくためには、専門職や関係機関との連携が欠かせないものであると考えます。
そこで、質問ですが、市民後見推進事業を推進していく中で、専門職や関係機関との連携を強めていくためにどのように取り組んでいるのか、お伺いいたします。
◎白岩 総務部長 専門職や関係機関との連携強化に関する取り組みについてであります。
市民後見人が適切かつ円滑に貢献業務を実施できるよう、市民後見推進事業では、弁護士、司法書士、社会福祉士、その他有識者等をメンバーとする札幌市市民後見推進事業運営委員会を設置しております。当委員会では、市民後見人候補者の選考、受任調整や対応が難しいケースについての助言といった活動支援を行うほか、各専門機関が抱える課題等についての情報交換も適宜行っているところであります。
また、当委員会のメンバーと後見開始の審判を行う家庭裁判所等を交えた連絡会議を別途行うなど、市民後見制度の適切な運営に向けて日ごろから積極的に連携強化に取り組んでいるところであります。
◆好井七海 委員 今後、高齢化がさらに進んでいくにつれて、認知症高齢者やひとり暮らしの高齢者が一層増加していくことは明らかでありますが、こうした方々を地域で支えていく仕組みづくりが重要になっていきます。
札幌市では、既に福祉のまち推進事業による地域での見守り活動を進めております。その一方で、成年後見制度は、認知症高齢者の財産、権利を法律面で支援する仕組みであり、今後一層の活躍が望まれますが、その利用は低調であるとの報道もなされております。
そこで、質問ですが、札幌市では成年後見制度の利用促進のためにどのような取り組みを行っているのか、お伺いいたします。
◎白岩 総務部長 成年後見制度の利用促進のための取り組みについてであります。
札幌市では、需要が高まる成年後見制度を幅広く普及啓発するため、札幌市社会福祉協議会に委託し、ことし12月に、札幌市社会福祉総合センターにおいて、定員250名規模の一般市民向けセミナーを開催いたします。
また、来年1月には、成年後見制度の利用対象となり得る方と接する機会の多い地域包括支援センターや、障がい者相談支援事業所などの高齢・障がい福祉に携わる方に、成年後見制度の手続等について理解を深めていただくための関係者向けセミナーを開催することにより、制度利用の促進を図ってまいりたいと考えております。
◆好井七海 委員 市民後見人は、単に専門職後見人の不足を補うという存在ではなく、地域住民の新たな支え合いの手法として、同じ地域に住む住民が判断能力の不十分な状態にある高齢者などを支える共助の精神に基づいた活動を展開するものであると考えます。
ことし4月には成年後見制度利用促進法が成立し、9月には内閣府に成年後見制度利用促進会議が設置されるなど、今後、利用促進のための方策が具体化されていくことが期待されるところであります。札幌市としても、今後とも国における検討の動向などを注視しながら、成年後見制度の利用促進に向けた方策を講じていただくとともに、市民後見人の役割が広く認知され、正当に評価されるようにPRするなど、しっかりと応援していただくことを要望して、ひとまずこの質問を終わります。
次に、臨時福祉給付金について質問いたします。
ことし8月に政府は第2次補正予算による経済対策を発表し、この中で、臨時福祉給付金について、平成29年4月から31年9月までの2年半分を一括して給付することが盛り込まれました。臨時福祉給付金は、消費税が所得の低い方ほど負担が重くなる、いわゆる逆進性の対策として公明党が導入を求めて実現したものであります。また、今回の政府の発表では、平成31年10月より、消費税引き上げ後の低所得者対策、逆進性対策として我が党が導入を求めてきた軽減税率を導入するとされており、これにより臨時福祉給付金事業は終了すると明記され、いよいよ臨時福祉給付金が完結することになったわけであります。
本市におきましても、我が会派では、この臨時福祉給付金の趣旨に鑑み、対象となる方に漏れなく給付金が行き渡ることを目指す観点から、これまでも質問や指摘をしてきたところであります。今回は、事業の完結が見えたことから、これまでの取り組みを総括し、今後にしっかりと生かしていただく趣旨で幾つか質問したいと思います。
まず、昨年度の実績について質問いたします。
決算資料によりますと、平成27年度の事業費総額が33億8,700万円となっておりますが、昨年度の最終的な給付率はどうだったのか、また、これまで我が会派が求めてきた給付率向上策について、どのような取り組みを行い、その効果はどうであったのか、あわせてお伺いいたします。
◎白岩 総務部長 臨時福祉給付金の給付実績等についてお答えいたします。
まず、平成27年度の最終的な給付実績ですが、臨時福祉給付金と子育て世帯臨時特例給付金を合わせた給付人数の合計が57万4,000人で、給付率は、概数値ですが、94%となっており、前年度の81%から向上させることができました。
次に、給付率向上のための取り組みですが、主な内容は3点ございます。1点目は、申請期間を前年度の3カ月間から5カ月間へと長期化したこと、2点目は、専用のコールセンターに加え、各区役所等に申請支援のための相談窓口を設置したこと、3点目は、未申請者に対して申請を勧奨する文書をダイレクトメールでお送りしたことでございます。
昨年度は、事業実施2年目となり、対象となる方に給付金に対する認識が広まったものと考えられますが、これに加えまして、給付率向上のための取り組みにより、一定の成果が得られたものと認識しております。
◆好井七海 委員 ただいま答弁にありましたように、昨年度は、給付率向上に向けた取り組みをしっかりと実施していただき、その結果として給付率がかなり向上しております。大変結構なことでありますので、ぜひこの取り組みを今後にも生かしてほしいと思います。
そこで、今後の事業について伺います。
今年度、本市では、9月上旬から平成28年度臨時福祉給付金、給付額3,000円の申請受け付けを行っております。また、今後は、冒頭に申し上げた経済対策臨時福祉給付金、給付額1万5,000円の給付事務を実施することになりますが、本市では、対象者に速やかに給付を行うため、この10月下旬から申請受け付けを行う予定であると聞いております。特に、この経済対策臨時福祉給付金については、対象期間がこれまでで最も長い2年半分を一括して給付することとなるため、これまで以上に申請漏れをなくす取り組みが重要になってくると思います。
そこで、質問です。
平成28年度臨時福祉給付金と経済対策臨時福祉給付金の二つの給付金については、申請期間が重なりますが、申請者に混乱がないように事務を進め、申請漏れをなくす取り組みをしっかりと実施していくべきと思いますけれども、どのように取り組むのか、お伺いいたします。
◎白岩 総務部長 今後の二つの給付金の事務の進め方等についてお答えいたします。
今回追加となります経済対策臨時福祉給付金につきましては、給付対象が平成28年度臨時福祉給付金の対象者と定められましたことから、既に送付をしております平成28年度給付金の申請案内の対象者に対して、10月下旬から申請案内文をお送りすることとなります。申請される方の混乱防止のためには、案内文に事業の趣旨や申請手続をわかりやすく明記することはもちろんですが、疑問を持たれた方への対応のために、昨年度同様、専用のコールセンターに加え、各区役所等に専用の相談窓口を設置いたします。
次に、申請漏れをなくす取り組みについてです。
これにつきましては、申請書送付後、一定期間が経過したことし12月及び来年1月に、未申請者に対して申請を勧奨する文書をダイレクトメールでお送りいたします。
なお、これに加え、申請書送付時期や申請勧奨文の送付時期には、各種広報活動を重点的に行うことといたします。
以上の取り組みにより、申請者の混乱防止や申請漏れ対策に万全を期してまいりたいと考えております。
◆好井七海 委員 最後に、要望ですが、政府の社会保障と税の一体改革が平成26年度から実施され、その財源として、現在、消費税が8%になっているわけでありますけれども、生活費の支出に負担を感じる人は実際のところ多いようであります。臨時福祉給付金はこうした方の負担を軽減するための事業ですが、私たちのほうにも、給付金を受け取った方から、大変ありがたい、助かるという声が寄せられており、大変重要な施策であると感じでおります。
今後は、いよいよ最後の臨時福祉給付金事業となりますので、ただいまご答弁いただいた申請漏れ対策などを強化し、対象となる方全てに給付金が行き渡ることを目指してしっかりと取り組んでいただくことを求めて、私からの質問を終わります。
◆松井隆文 委員 私からは、障がい福祉サービス事業所等に対する指導強化について質問させていただきます。
札幌市の障がい福祉サービス事業所は年々増加しているところでありまして、平成24年4月に約1,000カ所であった事業が、ことし4月には1,600カ所と1.6倍に増加したと聞いております。一方で、これらの事業所の中には、従業員の人数や資格要件が基準を満たしていないものがあるなどの話も耳にするところです。
このような基本的なルールを守っていない事業所に対しては、行政がしっかりと指導し、サービスの質を確保していく必要があり、特に、新規に指定を受けた事業所については、知識や経験がまだ十分でないこともあり、他の事業所とは別に、基本的なところに重点を置いた特別な指導を行う必要があると思われます。
また、生活保護から自立できた体験、経験を検証して、広げるネットワークづくりをアシストしていくのが本市としての役割だと思いますがいかがか、伺います。
◎大野 保護自立支援担当部長 生活保護から自立した後の支援ということでございます。
稼働により、あるいは増収その他の理由によって生活保護を脱却する方に対しては、その後の生活状況等の変化により生計の維持が困難となる場合、改めて保護課へ相談いただくよう助言を行っております。
また、生活保護の相談のほか、札幌市が実施している生活困窮者自立支援事業の相談機関ステップにおいてもさまざまな相談に応じております。例えば、世帯主の稼働によって自立しましたが、ひきこもっていて働けない方がいる場合など、なお世帯の方の支援が必要な方、あるいは、廃止後も、債務整理等に対する手続のフォローアップが必要な世帯、それから、雇用保険あるいは年金等の受給により、一旦、生活保護が廃止になったけれども、まだ就労したいというご希望がある世帯については、相談機関ステップへ引き継ぐこともあり得ることから、本人の意向に応じて適切な支援を得られるように助言していくことに努めてまいりたいと考えております。
また、もう一つご質問がございましたが、自立したことの体験についての共有ということでございます。
生活保護受給中に求職活動をして就職に至るまでは、個々の方の状況によって違い、かなりの時間と労力を要する方もいらっしゃいます。一般的な求職活動が難しい方については、就労ボランティア体験事業等の利用によって規則正しい生活ができるようになったとか、求職活動に向けた意欲が高まったなどの声を同じ事業に参加した方からお聞きする機会がありました。
このように、同じような方々が同じ場で体験を広めていくことは意義があると思いますが、保護を自立した方、保護を廃止された方の活動を民間団体が行う場合においても行政として直接支援していくことはなかなか難しいものと考えております。NPO等の法人や民間団体が具体的にどのような活動を行うかについては、今後注視してまいりたいと思っております。
◆田中啓介 委員 自立した後も将来にわたって働き続けられるように、また、挫折してしまったとか離職してしまったときに、もう一回来ていいのだよということだったり、先ほどの質疑であったステップなど、さまざまな方法で支援していくことも引き続き周知して支援していただきたいと思います。
あわせて、今、大野部長がおっしゃったように、生活保護から経済的に自立していく、就職にたどり着くというのは、時間がかかる場合もありますので、苦労されている経験をぜひ成功体験として生かしていただきたいと思います。今、例としてNPO法人を挙げておりましたが、市として、そういうところに対し、直接的な支援ではなくて、アシスト的な役割を果たしていただきたいというふうに思っております。
また、生活保護から自立したというだけではなくて、実際に、今現在、働いているけれども、生活できるだけの所得ではないので、働きながら生活保護を受けている方は、もっと収入が高い職につきたいと思っておりますし、生活保護から自立したいと思っています。また、ケースワーカーから、もっと収入の高い仕事に変えたらどうかと言われることもあると聞いております。こういうときに、本人は、今ついている仕事をやめてしまったら次の仕事はすぐに見つかるだろうかという不安を抱えながら働いたり就職活動を続けていると思います。
そこで、質問ですけれども、就労支援を行うに当たっては、被保護者個々の実態を把握することはもちろん、本人の納得が前提で行わなければならないと思いますがいかがか、伺います。
◎大野 保護自立支援担当部長 生活保護受給者の就労、増収指導についてでございます。
生活保護を受けている方の就労、増収の指導については、個々の対象者の就労意欲や稼働阻害要因等の状況を十分に考慮した上で、就労支援相談員の活用やハローワークなどの求職活動等、さまざまな選択肢の中から、対象者に最も適した支援、指導を行っているところでございます。
実際に稼働中の方に対して転職やかけ持ちでの仕事を探してもらうことに当たっては、本人の現在の稼働状況により、日中の求職活動が困難な場合があることから、個別の事情に応じて求職活動に向けた支援を行っております。
具体的な就労支援に当たっては、対象者とも十分な相談を経た上で行っており、今後も引き続き、生活保護受給者それぞれの状況に応じた就労支援・指導に取り組んでまいりたいと考えております。
◆田中啓介 委員 国は、生活保護実施の態度として、七つの点について留意するよう求めています。その一つに、被保護者の個々について、性格や環境を把握、理解し、それに応じた積極的な援助をたゆまず行うよう努めることとあります。このことを全ての実施機関で徹底していただくことを求めて、質問を終わります。
◆中山真一 委員 私からは、子どもの学習支援事業について伺います。
私は、昨年の決算特別委員会においても本事業について質問させていただき、大阪市で採用されている教育バウチャー制度の導入について提案させていただきました。
前回は、大野担当部長より、この制度について慎重に検討していくことが必要だと考えているとの答弁があり、実現に向けてしっかりと検討していくことを要望いたしました。本日は、その後の検討状況とあわせて、参加者をふやすための当面の取り組みについても伺います。
本市の子どもの学習支援事業は、5年目に入りました。関係の皆さんのご尽力により、生活困窮家庭の子どもたちの自立を支援する施策として一定の役割を果たしていると評価したいと思います。
私は、昨年、麻生総合センターにお邪魔して、学習の様子を拝見させていただきました。子ども15人ほどに対し、5名ほどのボランティアの皆さんが大変親身になって対応されていらっしゃいました。子どもたちが本当によい表情をして熱心に机に向かっている姿が大変印象的でありました。一人でも多くの子どもたちが参加できる仕組みにすることが大切だと、改めて意を強くいたしました。
申し上げるまでもありませんが、子どもの機会平等の実現は、政治や行政の責任であります。その責任を果たしていくためには、経済格差を生む大きな要因となる学力格差につながる学校外教育格差の是正と子育て世帯の経済的負担の軽減が必要であります。加えて、将来世代に過度な負担を残さないために、将来、社会の支え手となる市民をふやし、支えられる側となってしまう市民を減らしていくことが大変重要であります。
今の中学3年生は、5年後には二十歳になります。今、どういう手を打っていくかによって、それが5年後から大きな差となってあらわれ始めます。本市子どもの学習支援事業は、本年度より事業規模を拡大して実施されております。8月末時点の数字で見ますと、対象者となる子ども9,529人のうち、参加している子どもは594人、参加率は6.2%となっております。今後も、これまで以上に参加者をふやし、一人でも多くの子どもを支援していくことが必要であると考えます。
そこでまず、札幌市として、この学習支援事業の今後の事業規模などをどのように考えているか、伺います。
◎大野 保護自立支援担当部長 子どもの学習支援事業の今後の事業規模などについてでございます。
この事業は、生活保護受給世帯及び就学援助世帯の中学生を対象に、みずから考え、学ぶことの大切さを教えるとともに、学習習慣を定着させ、基礎的な学力の向上を図ることにより、高校進学を促進することを目的とするとともに、子どもの居場所づくりの役割を担っております。
今年度は、定員数を450名から600名、会場を30カ所から40カ所に拡大して実施しておりますが、8月末現在の参加者数は594名、定員充足率は平均で95.8%となっております。現時点では、規模を拡大して1年目であること、定員充足率も全体的に受け入れ余地があることから、来年度の事業についても今年度と同規模、同内容での実施を想定しております。
今後は、この事業を効果的に実施するための適正な規模を見きわめ、参加者をふやす取り組みについて十分検討してまいりたいと考えております。
◆中山真一 委員 今、ご答弁の中で、今後の状況を見きわめながら参加者増に取り組んでいくというお話がありました。
いざ事業規模を拡大するとなりますと、予算やボランティア確保の面などで制約があることは承知しております。現状、参加者をふやして、一人でも多くの子どもを支援していくための方策としては、生活保護世帯に対しては、担当のケースワーカーが働きかけを強めていくといったことを地道に行っていくしかないのが実情であると思います。ケースワーカーの負担をこれ以上ふやすことにも限界があります。複雑な事情を抱えたご家庭も多く、子どもの教育に対しての考え方もさまざまある中、参加を促すことには常に困難を伴います。
昨年、問題提起をさせていただきましたが、今の事業モデルでは、対象世帯の親御さんや子どもに参加したい、参加させたいという気持ちになってもらうことが容易ではなく、早晩、参加者をふやすことは限界を迎えるのではないかと懸念しております。
本事業スタート時の議会答弁によりますと、当初は、対象者の3分の1、33%ぐらいの参加率を想定されていたようですが、実際の参加率の推移を見ますと、生活保護世帯だけを対象とした3年間では、1年目から13.8%、13.2%、8.9%でした。就学援助世帯も加わってからは、5.0%、6.2%ですし、生活保護世帯だけの実績を見てもここ2年間の参加率は7.0%、8.9%と、想定と比べてかなり低位で推移しております。しかしながら、ただ手をこまねいていても、目の前の今の中学生はどんどん卒業していってしまいます。手おくれになる前に、今の事業モデルの中でも参加できる子どもをふやすため、最大限の取り組みを実施することが必要だというふうに考えます。
この学習支援になかなか参加してもらえないという悩みは、多くの自治体に共通の課題であります。他都市では、学習支援に参加したほうがよいと思われる子どもを学校や地域のかかわりの中で特定し、その子どもたちに参加を促すべく、さまざまな工夫を凝らして積極的なアプローチを行っております。
ここで重要なのは、学校現場や教育委員会の役割であります。学校は、子どもたちに対し、圧倒的に大きな接点を持っております。ここの子どもたちについても多くの情報を持っており、家庭の状況も一定程度把握しているというふうに思います。学校現場での子どもへのアプローチは、大変有効であります。
実際に、平成26年の厚生労働省の子ども・若者の貧困防止に関する事業の実施・運営に関する調査・研究事業報告書によりますと、学習支援に参加を促すために実施している方法として、1位のケースワーカーの働きかけ、2位の案内はがき等の個別送付に次いで、3番目に学校の教員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーによる働きかけが挙げられております。
一方で、本市においては、現状、学校とのかかわりは、年度初めに各中学校を通じて就学援助世帯に事業案内文を配付するといったことに限定されていると伺っております。子どもの学習や貧困の問題は、学校現場にとっても共通の課題です。子どもたちを支援したいという思いは共通のはずであります。子どもがよい方向に変化していくことで、先生方の負担軽減にもつながります。
実際、教育現場との連携が既に進んでいる自治体では、先生方から、業務負担の軽減につながったという声や、気になりながらも手を差し伸べてあげられなかった子どもへの支援につながるなどの声が多く聞かれ、学校現場では、この事業があってよかったという意識が定着しつつあります。
例えば、スクールソーシャルワーカーは、子どもの抱える問題に対し、学校と各種専門機関をつないで教員と一緒に解決に当たる福祉の専門家ですが、この事業に対しても意識を深めてもらい、個々の子どもの状況に応じて活用してもらうなども考えられると思います。一方、生活保護世帯についても、学校現場とケースワーカーがより有機的に連携することで、子どもに対して、きめ細やかかつ包括的な支援が可能になると思います。
加えて、教育委員会との連携が深まることで、別のメリットもあります。学習支援ではボランティアの確保が課題になっておりますが、退職教職員のシニアボランティアとしての活用が進んでいる自治体も少なくありません。
そこで、伺います。
今後、この事業の参加者をふやして、一人でも多くの子どもを支援していくためには、教育現場との情報共有やさらなる連携が必要だというふうに考えますが、どのように取り組んでいくのか、伺います。
◎大野 保護自立支援担当部長 情報共有などの連携についてでございます。
現在、子どもの学習支援事業については、学校を初め、関係部局との間で参加者に関する情報交換をするといった直接の機会は余りございません。今後、個人情報の保護という観点に配慮しながら、情報共有を図る仕組みをつくり、この事業へ参加してもらうことが適当と思われる世帯に対して積極的な働きかけができないか、検討してまいりたいと考えております。
◆中山真一 委員 今、個人情報などにも配慮しつつ、積極的に情報共有しながら共有できる仕組みをつくっていくというご答弁をいただきました。
この事業は、5年目に入っております。この事業をもう一歩進めるためには、子どものさまざまな事情や状況に合ったきめ細やかなアプローチが必要です。ぜひ、積極的に教育委員会との連携を進めていただきたいというふうに思います。
一方で、私は、こういう事業は、やる気のある子どもだけが来ればいいというものにしてはいけないというふうに考えます。それよりも、今はまだそこまでの意欲や意識に至っていない子どもや、親御さんをその気にさせること、そのきっかけを与えることこそがこの事業の本質だというふうに思います。そこにこそ、この事業の一番の意義があると考えます。そのためには、対象世帯の子どもが自発的に参加したい、子どもに参加させたいと思うような参加するインセンティブがより働く事業に変えていくことが重要だと思います。
昨年も提案させていただきましたが、生活保護受給率日本一の大阪市では、いわゆる教育バウチャーと言われる仕組みによる塾代助成事業を実施しております。この事業は、月額1万円を上限としたカードを交付して、学習塾を初め、スポーツや習い事など、学校外教育に幅広く利用できるようにするものであります。平成24年度から実施されてきましたが、この手法の有効性や費用対効果の高さを踏まえ、5年目となる本年度からは、生活保護世帯、就学援助世帯という枠を外し、一定の収入要件を設けた上で、対象世帯を拡大して実施されております。
対象となる子ども3万1,468人に対し、本年1月次点で候補者は1万8,299人、参加率は58.2%となっております。アンケートを拝見しますと、参加率が高い主な要因として、さまざまな分野から通いたい先を選べることや、友達と一緒の塾に通えるといったことが挙げられています。友達のグループの中で、自分一人だけ同じ塾に通えなかったが、通えるようになったというのは、子どもや親にとって大変切実な思いだというふうに思います。
この事業の昨年度の予算額は19億円、対象が拡大した本年度は26億円と決して少ない金額ではありません。しかし、大阪市では、道義的な観点や福祉政策的な観点だけではなく、将来にわたっての社会的投資としての費用対効果を見きわめた上でこの事業を実施しております。あわせて、子育て世帯に子ども1人当たり月1万円を交付することにより、その分の可処分所得をふやし、それが消費されることによる子ども1人当たり年間12万円、全体でおよそ20億円を超える真水の経済効果も見越した上で予算が計上されております。大阪に次いで生活保護受給率の高い本市としても、このような教育バウチャーの仕組みを導入すべきというふうに考えます。
この制度につきましては、冒頭に申し上げましたとおり、前回、本市として慎重に検討していくことが必要との答弁がありましたが、実際にその後どのような検討がなされたか、お聞きしたいと思います。
そこで、子どもたちの自発的な参加を促し、一人でも多くの子どもを支援していくために、教育バウチャーという仕組みは有効な手段であるというふうに考えますが、その後の検討の結果と制度導入への検討を改めて伺います。
◎大野 保護自立支援担当部長 教育バウチャーの有効性ということでございます。
大阪市の実施状況等を確認してみたところ、大阪市で行われている教育バウチャーの形態の取り組みは、利用者が自由に学習塾やその他の学校外教育機関を選択できるという利便性の観点、対象者となる方の参加率も高く、参加者数をふやすという観点からも、子どもの学力や学習意欲を伸ばすための効果的な一手段であることは推察されます。
しかしながら、国から示されている生活困窮者自立支援制度における学習支援事業は、金銭給付よりも人的支援を基本とし、単に勉強を教えることにとどまらず、居場所の提供や生活相談が重要であるとされています。実際、生活困窮者自立支援法上の制度にはこのバウチャー制度は乗らず、大阪市の単費ということになっております。
札幌市としては、現在の子どもの学習支援事業を通して、子どもの学力を向上させる目的のほか、子どもの自尊感情や自己肯定感を持てるような居場所を提供することで、自分たちの明るい将来を思い描くことができるような支援を実施することを大きな目的としているところです。
繰り返しになりますが、札幌市が実施している子どもの学習支援事業は、国から示されているとおり、金銭給付よりも人的支援を基本とし、生活困窮者自立支援制度において示された目的を実施するための事業であることから、大阪市において子育て・教育環境の充実施策として実施されている教育バウチャー制度を札幌市の子どもの学習支援事業の一環として導入することは難しいと考えるのが正直なところでございます。
◆中山真一 委員 今、居場所と国の施策等の観点から導入が難しいというお答えがありましたが、大変残念だと思います。担当の方々は、それぞれ、熱意と使命感を持って業務に取り組まれている方も少なくありませんが、残念ながら、正直、今の札幌市にこういった大局的な判断がなかなか難しいと思わざるを得ません。
今出ました予算規模で考えても、この事業を子ども1人1カ月当たりの費用で見ますと、年度途中から参加されるお子様もいらっしゃるので、大枠の計算になりますが、札幌市は約6,300円、大阪市は8,800円です。この差をどう考えるかですが、そこまで大きな差があるわけではありません。加えて、教育バウチャーは、子育て世帯の可処分所得の増加による消費効果と、教育提供元であるさまざまな分野の民間企業の売り上げ増にもつながります。どちらが効果的・効率的な税金の使い方かを合理的に判断すべきだというふうに思います。
先ほどもるる質疑がありましたけれども、本市でも、生活保護受給者、生活困窮者に対してさまざまな就労支援の事業を行っております。それぞれ大変意義のある取り組みだというふうに考えますが、その中で、就業につながった方1人当たりにかかった費用で見ますと、子どもの学習支援の数倍となっております。一旦困難な状態になった方を自立に向けて支援していくには、比較にならないほど莫大な費用と手間暇がかかってしまいます。将来世代に向けてツケを回すのではなく、未来の責任をしっかりと果たしていく、先ほどもありましたが、子育て世帯を支援するという点から、この事業についてもより大局的な観点からご判断いただくことを求めて、私の質問を終わります。
○こじまゆみ 委員長 以上で、第4項 生活保護費の質疑を終了いたします。
以上で、本日の質疑を終了いたします。
次回は、明後日10月14日金曜日午前10時から、保健福祉局関係のうち、高齢保健福祉部、保険医療部、保健所及び衛生研究所の質疑を行いますので、定刻までにご参集ください。
本日は、これをもちまして散会いたします。
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散 会 午後6時12分...