平成29年 第1回 定例会-02月23日-02号平成29年 第1回 定例会
平成29年第1回定例会 大田区議会会議録 第2号
2月23日(木曜日)
出席議員(49名)
1 番 田中一吉 2 番 松原秀典 3 番 高瀬三徳
4 番 安藤 充 5 番 岸田哲治 6 番 大森昭彦
7 番 松原茂登樹 8 番 伊藤和弘 9 番 塩野目正樹
10 番 押見隆太 11 番 鈴木隆之 12 番 伊佐治 剛
13 番 深川幹祐 14 番 長野元祐 15 番 渡司 幸
16 番 高山雄一 17 番 松本洋之 18 番 岡元由美
19 番 勝亦 聡 20 番 広川恵美子 21 番 秋成 靖
22 番 玉川英俊 23 番 田村英樹 24 番 大橋武司
25 番 小峰由枝 26 番 椿 真一 27 番 田島和雄
28 番 末安広明 29 番 大竹辰治 30 番 清水菊美
31 番 藤原幸雄 32 番 佐藤 伸 33 番 菅谷郁恵
34 番 黒沼良光 35 番 金子悦子 36 番 福井亮二
37 番 荒尾大介 38 番 山崎勝広 39 番 黒川 仁
41 番 岡 高志 42 番 松原 元 43 番 荻野 稔
44 番 三沢清太郎 45 番 野呂恵子 46 番 犬伏秀一
47 番 奈須利江 48 番 湯本良太郎 49 番 北澤潤子
大田区長 松 原 忠 義
議案の追加送付について
平成29年第1回大田区議会定例会に付議する次の議案を別紙のとおり追加送付します。
第35号議案 大田区職員定数条例の一部を改正する条例
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○大森 議長 質問に入ります。
松原秀典議員、松本洋之議員、福井亮二議員、松原 元議員、小峰由枝議員、椿 真一議員、荻野 稔議員、三沢清太郎議員、犬伏秀一議員、湯本良太郎議員、佐藤 伸議員、渡司 幸議員、長野元祐議員、岸田哲治議員、藤原幸雄議員、黒川 仁議員から通告がありますので、順次これを許します。
まず、2番松原秀典議員。
〔2番
松原秀典議員登壇〕(拍手)
◆2番(松原秀典 議員)
自由民主党大田区民連合を代表して質問いたします。質問が多岐にわたりますが、理事者の皆様方の明快かつ簡便なご答弁をよろしくお願いいたします。
我が国の社会経済の情勢を見ますと、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本としたアベノミクスの取り組みのもと、雇用・所得環境は改善し、緩やかな回復基調が続いております。昨年末に発表された7月から9月期の実質GDPの成長率は、前期比0.3%増、年率換算で1.3%増と3四半期連続のプラス成長となりました。政府は、今後の経済財政運営に当たっても、経済対策の円滑かつ着実な実施により内需を下支えするとともに、民需主導の持続的な経済成長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていくとしております。
しかし、その一方で、企業の設備投資や企業収益は、改善への動きに足踏みが見られるなど、決して楽観視はできない側面があることも事実であります。大田区としましては、こうした足元の社会経済情勢を冷静に分析するとともに、区民一人ひとりが区民サービスの向上を実感できるよう、実効性のある施策を着実に打っていくことが重要であります。
そうした中、これからの大田区政を前進させる推進力となります平成29年度予算案が取りまとめられました。内容としましては、平成29年度大田区
一般会計予算額は2618億円余と、平成28年度当初予算額と比較して約45億円、1.7%の増という過去最大規模の積極予算となっております。
そこで質問いたします。区長は、この平成29年度予算案をどのような想いで編成されたのでしょうか、お伺いいたします。
平成29年度予算案の大きな特徴の一つとして、扶助費が昨年の当初予算額と比べて約45億円、5.7%増と大きく伸びていることが挙げられます。高齢対策、待機児童対策などは区が抱える喫緊の課題であり、その解決に向けて一定規模の予算を投入することは避けられません。また、区民の安全・安心を守る取り組みや子どもたちを取り巻く環境の改善など、速やかな対応を図るべき課題が山積しております。したがって、今後はこうした課題解決のための財源をいかに確保していくかが、非常に重要なポイントになってまいります。平成29年度予算についても、平成28年度当初予算と比べて、特別区税は増加することを見込んでいる一方で、税連動交付金の一部や特別区交付金は減少することを見込んでおります。こうした状況の中で、区長は大変な苦心をされて財源対策を講じられたことと思います。
そこでお伺いいたします。平成29年度予算編成に当たり、どのような財政収支見通しのもと財源確保を図っていくお考えでしょうか、質問いたします。
区は、昨年12月、平成29年度予算編成過程における当初要求状況を公表いたしました。予算編成過程の公表は、区民の予算に対する関心を高め、「区政参画を促すことができる」、そして「予算編成の質の向上を図ることができる」など、多くのメリットがあります。今年度は、昨年度までと比較して公表時期を前倒しし、公表内容も充実させる見直しを行ったことは高く評価いたします。我々としましても、これからの議会質疑の活性化につなげてまいりたいと考えております。
次に、今後の区政推進について質問いたします。
大田区では、平成21年に基本計画である未来プランを策定し、26年には後期計画を策定しています。現在区はどのような課題に直面しており、どのような施策の展開を考えているのでしょうか。松原区長が区長に就任されて策定された未来プランのもと、この間の大田区政が展開されていることを踏まえますと、未来プランはまさに区政推進の方向性を決めてきた羅針盤であります。そうした中、プラン策定後に人口構成や社会経済情勢などが大きく変化しており、様々な新たな課題やニーズも生じております。
現在、区では実施計画を策定しています。この実施計画は区政においてどのような位置づけとなり、区長はどのような想いを持って臨まれているのでしょうか。区を取り巻く社会状況、経済状況といったものは、刻一刻と変化をしております。区はその時々の区政の置かれた状況を敏感に感じ取り、施策に反映していかなければなりません。
そこで伺います。実施計画はどのような計画なのでしょうか。また、今後さらに進む少子高齢社会を見据え、現在区はどのような課題に直面しており、どのような施策の展開を考えているのでしょうか、ご見解をお伺いいたします。
次に、防災対策について質問いたします。
平成28年4月14日、16日の熊本地震では、最大震度7の地震が約28時間の間に2回発生し、深刻な被害が生じました。特にこの地震では、屋外避難された方々の
エコノミー症候群などの健康問題や震災関連死の問題、予定されていた避難所が開設不能になったことなど、多くの課題がニュースで報道され、改めて自然災害の恐ろしさを感じたところでございます。同時に東京においても、いつこのような災害が起きてもおかしくないと言われている今日、事前に備えておくことがいかに重要であるかということを改めて強く感じております。
熊本市内では、5か月という長期間にわたり避難所が開設されたことで、避難生活の長期化に伴う衛生管理と身体への負担も課題として浮き彫りとなりました。また、繰り返しの地震により交通網が遮断されたことや物資の受け入れや輸送が円滑に行われなかったことにより、全国各地から寄せられた支援が避難者に十分行き届かなかったことがマスコミ等でも大きく取り上げられました。区長は8月末に現地に赴かれ、避難所の状況等をご覧になったとお聞きしております。このような大災害となった場合、区内在住の職員も被災者となり絶対的なマンパワー不足に陥ると考えられます。災害対応においては初動体制のあり方が重要と言われております。また発災初期では、重機等の投入も難しく、必然的に人的対応が主な手段とならざるを得なくなります。
そこで伺います。これら熊本での具体的な課題を受け、区では具体的にどのような対策を行ってきたのか、これまでの取組状況についてお伺いいたします。また、災害対応においては行政には限界があり、外からの支援、民間事業者の力を借りることがますます重要となってくると思われます。今後、区はどのような取り組みを進めていくのか、お考えをお聞かせください。
次に、観光・
国際都市づくりについて伺います。
大田区においては、行政と議会で連携をしながら、これまで姉妹都市としてセーラム市、友好都市として朝陽区、
友好協力関係都市として大連市と交流を続け、良好な関係を築いてまいりました。こうした中、これまで築いてきた姉妹都市等との関係をさらに発展させるためには、これまでの成果を踏まえつつ、時代の変化に合わせて交流内容などを見直していくことも重要なことと考えます。3月に予定されている「国際都市おおた宣言」により、大田区らしい地域力を活かした国際都市の実現に向けての姿勢を示していくとのことですが、海外都市との交流についても地域力を活かし、区民と交流相手の市民や外国人区民とが様々な分野で交流を行える環境を整えるなど、今後さらに積極的な国際交流が必要と考えております。
そこで伺います。国際都市おおた宣言後の国際交流の方向性について、さらには、姉妹都市、友好都市以外の都市間交流について、区長はどのようなお考えをお持ちでしょうか、お尋ねいたします。
区長は、大田区のまちづくりのキーワードは「地域力」と「国際都市」としております。大田区を訪れる外国人を対象とした
国際交流拠点都市を目指し、自然環境や文化、歴史など地域資源を活用し、観光都市・ものづくりのまちとしての魅力をアピールしていくとされています。未来プランが始動してから8年が経過いたしました。「大田区の魅力を世界に向けて発信する」という施策目標を区長は着実に推進してきました。さらに、2020
東京オリンピック・
パラリンピック大会の開催を機に、世界に開かれた大田区を目指し、
外国人受け入れ環境の整備を推進する事業を積極的に推進することを掲げております。
そこでお聞きします。未来プラン10年の目標達成に向けて、改めて「おおたの観光」の目指す姿を共有し、その実現に向けてどのように施策を展開させていくのか、区長の想いをお聞かせください。
次に、空港機能強化についてお聞きいたします。
昨年10月から羽田空港国際線においては、新たにニューヨーク、シカゴ、ミネアポリス便が開設され、これまで深夜早朝の時間帯だったロサンゼルス・
サンフランシスコ便が昼間時間帯に移行するなど、国際化の動きがますます進展しております。こうした動きが背景にあり、羽田の国際線利用者は、11月末の時点で昨年1年間の利用客よりも増加しております。国全体においても28年の訪日外国人は2400万人を突破するなど、前年比較で20%以上の伸びを示しており、2020年の訪日外国人3000万人の目標に向けて順調な推移を見せております。このような状況の中、国が2020年の夏ダイヤから、羽田空港における国際線を年間3万9000回の増便を図るべく、羽田空港の機能強化を提案しました。日本の成長戦略を支えるためにも、羽田空港の機能強化は重要な課題であると理解しているところです。
一方で、当時の羽田三町に住んでいた方々の犠牲のもとに羽田空港がつくられたことや、その後の航空機騒音被害などの歴史の重みを考えるとき、国が今回のような提案をするに当たっては、騒音はもちろんのこと、落下物を含む航空機の安全対策など遺漏なくきちんと実行されることが重要です。
区長は従前より、大田区と羽田空港は共存共栄の関係であることを繰り返し表明しております。
そこで伺います。羽田空港の機能強化について区の現在の考え方をお示しください。
羽田空港跡地については、昨年、整備に向けた手続きが進み、いよいよ今年は区民にも具体的な動きが目に見えてくる段階に来ていることと思います。既に第2ゾーンでは昨年6月に国が事業者を決定し、
エアポートホテルをはじめとした大規模施設の建築構想が明らかになりました。区が整備する第1ゾーンでは、昨年10月に
土地区画整理事業の事業認可が決まり、10月末日からは「新産業創造・発信拠点」の形成に向けた、官民連携施設の
整備事業者公募作業を進めているところと思います。羽田空港跡地のまちづくりは、長年にわたる地域の悲願であり、今まさに大きく動こうとしている局面でございます。
そこでお聞きします。
跡地まちづくりの前提になる
土地区画整理事業ですが、空港跡地で行われることの意義と、今後はどのようなスケジュールで、どのように進められていくのか、お聞かせください。
区長は、昨年の第4回定例会開会挨拶で、
官民連携施設整備事業者公募に関して、創造性に富んだ提案を期待していると言われております。区は、平成27年に「羽田空港跡地第1ゾーン整備方針」を定め、跡地における事業コンセプトや五つの基本方針、七つの
重点プロジェクトなどを定めていますから、整備の方向性のイメージはあるものと思います。一方で、公募である以上、事業者の提案にはそれぞれの事業者が持つ様々なアイデアやまちづくりの知見が盛り込まれるものと思いますが、それらが区の整備方針とうまくかみ合っていかなければなりません。当然ながら、区としてもそれらの提案を受け止め、的確に評価していく必要もあります。
そこで質問します。まず、事業者の決定までのスケジュールをお示しください。そして今回の公募に当たり、区が最も事業者に期待しているのはどういうことなのでしょうか、ご見解お聞かせください。
次に、新空港線についてお聞きいたします。
昨年4月に交通政策審議会から、18号答申にかわる新しい答申が発表され、その中で新空港線が高い評価を受けました。その答申の根拠データとして、国土交通省が昨年7月に公表した「
鉄道ネットワークプロジェクトの検討結果」においても、矢口渡から京急蒲田までの先行整備の費用便益比は1.9と試算されています。費用便益比とは「費用に対する便益の相対的な大きさを比であらわす」ものでございます。この数値が「1より大きい場合、社会経済的に見て効率的な事業である」と言われております。今回の答申において、「何々すべき」と記載されたほかの5路線の費用便益比を比べてみますと、
JR羽田空港アクセス線が1.1、8号線(有楽町線)延伸(豊洲~住吉まで)が2.0、12号線(大江戸線)延伸(
光が丘~大泉学園まで)が2.0、
多摩都市モノレール延伸のうち、箱根ケ崎ルートが1.0、同じく町田ルートが1.3となっております。新空港線は京急蒲田までの先行整備であっても1.9と高い数字となっており、このことからも新空港線が社会経済的に見て大変有意義な事業であることがわかります。その新しい答申が発表されて以来、1年が経過しようとしています。
こうした中、29年度の予算の中に、新空港線の整備主体設立に向けて1億8000万円が計上されています。来年度が新空港線整備に向けて大変重要な時期であることがわかります。
そこでお伺いいたします。実現を前に重要な局面を迎えようとしている今、新空港線事業の現在の状況と今後の具体的な動きについてお聞かせください。
次に、
中央防波堤埋立地の帰属について伺います。
中央防波堤埋立地につきましては、昨年12月、東京都が策定した「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン」においても、物流機能強化の視点から言及されております。我が大田区においても、せんだって
パブリックコメントが行われておりましたが、「(仮称)おおた
都市づくりビジョン(骨子)」において、
重点プロジェクトの一つとして
中央防波堤埋立地の将来的な利活用が掲げられており、大田区の空港臨海部の明るい未来に大いに期待するところであります。
この帰属問題の長い歴史の中では、今日の成果を大いに評価するところであります。揺るぎのない毅然たる態度で正式協議を重ねてこられ、また、積極的な広報を通じ、大田区の正当な論拠を世に知らしめています。その一方で、松原区長が江東区長を訪問されてから間もなく1年となります。
そこで質問いたします。私は、一日も早い帰属確定のためには、大田区の空港臨海部と
中央防波堤埋立地の一体性の確保の視点に立った取り組みを進める必要があると考えております。区長のお考えをお伺いいたします。
子どもを取り巻く環境と、これからの子育て・教育政策についてお聞きいたします。
まずは、児童相談所の設置についてお伺いいたします。
児童相談所の設置についてはこれまでも質問し、平成28年第4回定例会における我が党の代表質問に、区長は、様々な前提条件があるものの「法施行後5年を目途に児童相談所を設置したい」とのことでした。これから5年の間に人材の育成や施設整備に加え、費用負担や東京都との協議など、様々な課題について検討し、ぜひとも大田区にふさわしい児童相談所を設置してほしいと思います。子どもたちの未来のためにも大いに期待するところでございます。
そこで伺います。大田区に児童相談所が設置できるまでの間も、児童虐待への取り組みは待ったなしで、迅速かつ的確に行わなくてはならないと考えます。児童相談所の設置を含めた児童虐待対策の今後の方向性についてお考えをお聞かせください。
次に、子どもを産み育てやすい、そして子育てにおける教育環境のあり方についてお聞きいたします。
子どもとその家庭を取り巻く社会的課題が様々顕在化している昨今、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」や「子供の貧困対策に関する大綱」をもとに、子どもの貧困対策に対しまして社会的な関心が向けられており、都内の自治体のおいても生活の実態把握に向けた調査を実施する動きが出始めております。大田区では昨年夏、生活実態調査に着手し、子どもとその家庭状況について分析を行い、「家庭からみた困難」、「子どもの生活からみた困難」、「世帯収入からみた困難」の三つの要素を見出し、独自に生活困難層を定義いたしました。特に、「子どもの生活からみた困難」を要素の一つとして取り入れたことは、世帯収入のみをベースとして子どもの貧困を単に経済的問題と捉える従来の手法ではなく、子どもの発育を妨げる要因として、その成長に必要な環境に着目した区の取り組みの特徴であり、意義があるものと評価いたします。
そこで伺います。このような独自の調査についてどのように総括されているのでしょうか。ご見解をお聞かせください。
子どもの貧困対策法は、社会的に解決すべき課題と位置づけ、教育や生活の支援など子どもの視点から施策に取り組むことが明記され、大変意義のあるものと考えております。しかし、介護保険法や障害者総合支援法などのような福祉サービスの裏づけのあるものではなく、具体的な支援策を生み出すための法律として生活困窮者自立支援法があります。この法律は終身雇用制度や家族のあり方が多様化したことを背景に、地域で孤立している方や複合的な課題を抱えている方に対し、訪問支援を通じた対象者の把握や、チームとして包括的・一元的に対応できる相談支援体制を構築することが規定されております。
そこで質問いたします。区の施策とあわせて、さらに社会福祉法人や事業者、NPOなど民間団体などの多様な活動と有機的に連携し、具体的な取り組み内容を広く社会に理解していただき、子どもたちを支える環境を構築することが、今後期待される区の役割と考えます。ご見解を伺います。
公益財団法人日本財団の推計調査によりますと、15歳の子どものうち貧困の状況にある子どもの高校や大学等への進学率や高校中退率が改善した場合、64歳までに得られる生涯所得の推計額が2兆9000億円を超えるとの推計もあり、社会の担い手となるはずの子どもたちの未来が貧困の世代間連鎖等により閉ざされることは、社会的損失であると考えます。
本区の27年度の就学援助受給率は、区立小学校で20.8%、区立中学校で32.1%となっています。およそ小学校では5分の1の世帯が、中学校では3分の1の世帯が経済的に厳しい状況にあるということであります。就学援助費は、給食費や学用品費をはじめ就学に必要な費用の一部を支給しており、経済的に厳しい家庭には非常にありがたい制度であります。しかしながら、一時的に多額の費用を立てかえるのが困難なご家庭もあります。特に中学校の新入学時期には、制服や体操着、かばんなど、一時的に多くの費用がかかります。また、新入学時期は学用品以外にも様々な費用がかかる時期でもあります。
一方で、就学援助費で支給される新入学用品費は、現在の制度では、所得などの調査をした後、7月末に支給されております。これでは、実際に制服代などを支払う時期と就学援助費の支給時期に大きな開きがあり、家計を圧迫する要因ともなります。教育委員会はこれまで、「受給資格の確認や支給方法、あるいは他自治体への転出入があった場合の二重支給の問題など課題があることから直ちに導入することは難しい」という趣旨のご答弁をしております。しかし、23区の中で、新入学用品費の支給時期を前倒しする自治体も増えており、昨年は1区でしたが、今年度は新たに5区が実施し、合わせて6区が既に実施しております。
そこで伺います。貧困対策においては、経済的に厳しい状況にある世帯を支援することが、今まさに求められているところでございます。他区に遅れをとることなく、中学校の新入学用品費を入学前に支給することについて早急に検討すべきだと考えますが、ご見解を伺います。
私立幼稚園について伺います。
東京都は昨年9月、就学前人口や保育所等利用申込率の増加により、保育サービスの整備をさらに加速し、待機児童の解消に向けた緊急対策を取りまとめました。区における保育サービス基盤の整備状況を見ると、平成29年4月に向け、認可保育所をはじめとする17施設が開設され、保育定員数はトータルで1万4000名を超える整備が見込まれております。また、宿舎借り上げ制度の拡充、保育士等キャリアアップ補助金の実施、保育士実践力研修などを実施し、待機児童解消の課題である保育士確保に向けた取り組みも強化しております。こうした中、さらなる待機児童解消を進めていくためには、育児休業を十分にとるための仕組みとして、育児休業が明けた年度途中からの保育所入所を予約できる「入園予約制度」についても、前向きな検討をお願いいたします。
今年度、区では、3歳から5歳までの人口の約40%が保育園、約54%が幼稚園へ入園しておりますが、こうした取り組みを通して、今後は保育園へ入園する児童はますます増えることが予想されます。将来を見据えると、区内の私立幼稚園もこうした時代のニーズとともに変わっていかなければ、入園児減少により幼稚園の経営が厳しくなり、安定した運営に支障が出る可能性も懸念されます。
国は昨年4月に、「幼稚園における待機児童の受入れについて」を発表し、待機児童問題に対し、幼稚園においても地域の状況を踏まえ、小規模保育事業や一時預かり事業を推進するなど、積極的な対応について求めています。
そこで伺います。今後、私立幼稚園も現在行っている一時預かり事業を今まで以上に充実させるなど、教育的なニーズとともに、増加する保育ニーズに対応していくことが重要です。一方で、そのためにはモチベーションを喚起する施策も必要だと思います。区の見解をお伺いいたします。
次に、高齢者福祉政策とスポーツ、健康について伺います。
人口構成が大きく変化していく中、元気な高齢者の方々の活躍が今後の地域活動、まちづくりには欠かせません。特に高齢者に対する就労支援の必要性については、これまでも区は積極的に取り組んできたと評価いたします。元気な高齢者の方々がさらに増えていただき、様々な分野でご活躍いただくためには、健康長寿を延伸する取り組みが大変重要と考えます。平成29年1月現在、大田区の全人口は約71万7000人、65歳以上の人口は約16万3000人、高齢化率は22.7%になり、大田区は超高齢社会を迎えております。このような中、大田区の平気寿命は平成26年現在、男性80.49歳、女性82.38歳の状況です。高齢者の皆様は健康で長寿でありたいと、健康寿命の延伸を願っていらっしゃいます。
こうした状況の中、スポーツによる健康維持について目を向けますと、今年3月に大森ふるさとの浜辺公園隣接地に、約500名の観客席を有するビーチバレーコートをはじめ、フットサル場、多目的広場が完成します。大森ふるさとの浜辺公園を中心とした「新スポーツ健康ゾーン」では、区民がスポーツに親しみ、体力や技術の向上、健康づくり、家族や仲間との交流など、「スポーツ健康都市おおた」を象徴するエリアとして、施設の改修や水辺を活かしたスポーツ施設の整備が進められています
近年、子どもの体力向上、成人の健康保持、高齢者の健康維持と体力維持など、健康づくりのためにスポーツをしようという区民意識が高まりつつあります。日常生活の身近な場所でできる運動やスポーツの機会の場は、参加者同士の交流を生み出し、生きがいを得る貴重な場ともなります。また、将来に向けた健康、体力への不安を抱えている高齢者が体を動かすことで、介護予防や寝たきりの防止にもつなげていくことができます。
そこで伺います。今後、健康寿命を延伸するためには、スポーツによる高齢者対策も重要と考えます。区として今後、どのような取り組みを推進するのか、お聞かせください。
一方で、今後はますます介護事業の重要性、ニーズが高まってくることは間違いありません。介護保険施設整備の今後の方向性については、高齢者数が増加する中、平成28年9月末時点の要介護認定者数は3万1000人を超え、介護保険施設の充実が求められています。中でも、重度の要介護認定者が入所できる特別養護老人ホームの役割は重要です。第6期介護保険事業計画に基づき、今年度、西馬込二丁目、萩中二丁目、大森西四丁目に特別養護老人ホームが開設されたことは評価しています。しかし、平成28年9月末時点での特養入所希望者数は約1250人となっており、さらに整備を進めていくことが必要であると考えています。特養建設には2000平米程度の土地が必要であり、民有地の活用は困難が伴うことも多く、整備に向けては国有地などの活用も必要と考えます。そうしたことから、この間、西糀谷の国有地の動向にも注視をしてきたところです。
そこでお聞きいたします。特別養護老人ホームの具体的な整備計画については、来年度に策定予定となっている第7期介護保険事業計画の中で決めていくことになりますが、今後の整備の方向性についてお答えください。
最後に、産業政策について伺います。
高度なものづくり産業が集積する大田区において、世界的にも認められている高度な金属加工技術や先端産業の生産性が向上することは、区内経済の活性化はもとより、大田区から首都東京の国際競争力強化を強く発信することになり、ひいては我が国の国益にも寄与するものと考えます。
ものづくり産業への支援は、大田区の政策の中でも最重要課題の一つであります。特に昨今の日進月歩な技術革新の中においては、ベンチャー企業への支援、新規開業や独立創業、新分野への進出や事業の多角化などには、総合的な支援が必要であります。中でも、新製品・新技術開発支援事業などは、まさに引き続き拡充が求められている代表的なものと考えます。一方で、都内で最多数を誇る商店街の存在や若手商人の人材活用など、商店街振興や魅力ある個店創出への支援など、商業支援も大田区産業政策の重要な柱であります。今後も東京を代表する、そして我が国でも屈指の産業集積のまち、そしてにぎわいと交流のまちの大田区であってほしいと願うところであります。
そうした中、大田区の産業の将来を担う取り組みとして、羽田空港跡地で進めている産業交流機能の整備があります。大田区産業の強みは71万区民を擁する自治体であり、内陸部の商業のにぎわいとともに臨海部エリアの高度な産業集積、工業集積があることです。
そこで質問いたします。区長の産業政策に対する思いと今後大田区が進むべき産業政策の方向性についてお聞かせください。また今後、臨海部についてはどのような産業政策を展開し、未来につなげていくのでしょうか、ご見解をお聞かせください。
ぜひ、大田区には我が国の産業を力強く牽引していく機関車として、そして「さすがは大田区」と国内外から注目される自治体になっていただくことを強く期待いたしまして、私の代表質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○大森 議長 理事者の答弁を求めます。
◎松原 区長 松原秀典議員の代表質問に順次お答えをしてまいりたいと思います。
まず、平成29年度予算案の編成に関するご質問でございますが、平成29年度は、「おおた未来プラン10年(後期)」における計画期間の折り返し点を過ぎた中で、区民生活の一層の向上に向け、さらに積極的かつ具体的に事業展開していく必要があります。したがいまして、私は、平成29年度予算編成に当たり、区政を取り巻く様々な課題に積極果敢に取り組むという強い決意をこの予算に込めたところでございます。保育サービス定員700名の拡充に向け、認可保育所等の整備を進めるとともに、子どもの貧困問題に対する総合的な取り組みや、小中学校におけるICT環境の整備など、大田区の未来を担う子どもたちが夢と希望を持ち、健やかに育つことができる環境づくりを進めていきたいと思います。また、少子高齢社会が一層進展する中、区の活力を維持・向上させるためには、元気な高齢者の活躍も欠かせないところでございます。シルバー派遣事業における保育・子育て分野への対象拡大など、元気な高齢者がいつまでもいきいきと暮らせる施策を充実してまいります。区民の安全・安心を守る取り組みにつきましては、避難所における災害用備蓄物品をより一層充実させるとともに、いまだ被害が深刻な振り込め詐欺対策の強化など、実効性の高い施策を推進してまいります。「蒲田-大森-臨海部-羽田空港周辺」の4拠点の連携を核に、特色あるまちづくりを進めることで、大田区全体の魅力向上につなげてまいりたいと思います。特に、新空港線や羽田空港跡地整備につきましては、目指す姿の具現化に向けた取り組みをより一層進めることにより、羽田空港を活かした「国際都市・おおた」の成長を牽引してまいります。私は、本予算に基づき、こうした取り組みを着実に進めることにより、子どもから高齢者まで、全ての区民が安全・安心を享受し、いきいきと暮らせる大田区、地域力と国際都市の魅力あふれる大田区の実現に邁進してまいります。
次に、どのような財政収支の見通しのもと、財源確保を図るのかとのご質問でございますが、平成29年度一般会計における歳入面については、納税者数の増などにより特別区民税の増額を見込んでおりますが、特別区交付金や税連動交付金については、減額と見積もっております。一方、歳出面につきましては、待機児童解消に向けた対策や少子高齢化への対応などにより、全体として歳出額が増加することを見込んでおります。そのため、平成29年度予算編成に当たりましては、これまで以上に「選択と集中」を徹底するとともに、財源対策として、財政調整基金、公共施設整備資金積立基金などからの繰り入れや特別区債を平成28年度当初予算比で増額いたしました。元来、特別区税、特別区交付金等を基幹財源とする区財政は、景気の変動を受けやすい構造を抱えております。そうした中で、区は、少子高齢社会への対応や公共施設の更新など、今後確実に増大する行政需要に的確に応えていかなければならないと思います。先行きを見通すことが困難な状況ではありますが、私は、区政をお預かりする者として、区民の目線に立った事業の見直し・再構築や経常経費の節減、国や都の補助金制度をはじめ、基金、特別区債の効果的な活用等により財源をしっかり確保することで、計画に掲げた事業や区民生活の安定に不可欠な事業に着実に取り組んでまいります。
次に、「大田区実施計画」に関するご質問をいただきました。本計画は平成29年度から3か年を計画期間といたしまして、区がより重点的に取り組む事業を選定し、具体的にお示しするものでございます。この背景といたしましては、「おおた未来プラン10年(後期)」の掲げる各施策の目指す姿に向け、事業をより一層推進していく必要があることに加え、近年新たに生じた課題に対して迅速に対応していかなければならないことから、「大田区実施計画」を策定させていただきました。区では今後、65歳以上の人口がおおむね増加傾向にあると予想されております。持続可能な区政に向けて人口構成や社会状況を注視しつつ、今後の行政需要を見極めた行財政運営を行うことが必要不可欠となってまいります。最少の経費で最大の区民サービスを提供するために、この実施計画に基づき、積極、果敢に取り組み、未来プランの目指す姿を実現し、71万区民の期待に応えてまいりたいと思います。
次に、熊本地震を踏まえた、これまでの区の対策と今後の取り組みについてのご質問ですが、熊本地震においては、避難所開設・運営及び避難生活の長期化にかかる対応、支援物資の受け入れや拠点から避難所に円滑に搬送できなかった問題、初動体制のあり方などの課題が浮き彫りになったと認識しております。私が訪れた昨年8月下旬におきましても、市の総合体育館には、発災4か月で、まだ160人程度の方が避難生活をされておりました。区では、避難所での生活の長期化も想定し、備蓄品の充実を図り、あわせてアルファ米の一部をレトルト食へ、今年度から計画的に切りかえることとしました。また、支援物資の受入・搬出体制につきましては、協定先の東京都トラック協会大田支部と連携し、さらに民間の大手物流会社のノウハウを取り入れた搬送体制が確立できるよう、意見交換を行い、京浜島地区備蓄倉庫敷地内に機能的な倉庫を新たに建設し、物資輸送拠点となるよう取り組んでいます。一方、災害時の本部体制につきましては、地震情報システムや災害時情報共有システムを活用・訓練することで初動期の対応力を強化してまいります。災害時には、絶対的なマンパワーの不足が予想されますので、人的支援の受入体制・受援計画の整備も欠かせないものと強く認識しているところでございます。今後は、区の災対各部のマニュアル等について、実効性の面からさらに検証し、支援を円滑に受ける仕組みづくりを進めてまいります。
次に、「国際都市おおた宣言」後の国際交流の方向性と、姉妹都市・友好都市以外の海外都市間交流についてのご質問でございますが、区はこれまで、セーラム市、朝陽区、大連市のほか、ドイツのブレーメン市、スイスのヴォー州、カナダのプリンスエドワード島州などで、教育交流、産業交流、区民交流を実施し、多様な文化を持つ諸外国との交流を進めてきました。今後は、国際都市おおた宣言を機に、大田区の地域力に支えられた国際都市としての魅力と存在感を各種イベント事業や姉妹・友好都市等の国際交流の場を通して、広く効果的に発信してまいります。さらに、国際交流協会の設立等により、多様な交流スキームを確立し、区民主体で柔軟かつ日常的に国際交流が行えるように環境整備を進めてまいります。また、姉妹・友好都市以外の海外都市との交流につきましては、経済・産業交流、文化・スポーツ交流など目的を明確にして、優先度や必要性、継続性を考慮した都市間交流を行ってまいります。
次に、「おおたの観光」の目指す姿とその実現に向けた施策の展開に関するご質問でございますが、区の観光を世界に発信していく具体的な施策展開として、まず、国際空港を擁し日本の玄関口である本区は、訪日外国人旅行者の受入環境を積極的に整備してまいりました。公衆無線LANや多言語公式観光サイトとともに、京急蒲田駅の観光情報センター、京急品川駅・羽田空港国際線ターミナルの各コーナー開設は、観光インフラの面的整備として、先駆的な取り組みであったと認識しております。観光客へのおもてなしは、外国語講座や外国人対応ハンドブックの策定を通して、ウェルカムショップ、まちかど観光案内所への支援とともに強化してまいりました。一方で、こうした取り組みの認知度を上げるため、観光情報センターやウェルカムショップ等の周知を一層強化するとともに、PR方法の創意工夫や魅力的な企画が必要でございます。また、国際都市おおたの実現には、地域力を核とした観光・多文化共生・産業という観点の展開が不可欠であり、区内にある観光資源を有効活用して、「おおたの観光」を世界に向けて発信いたします。さらに、東京2020大会を見据えて、広域的連携によるにぎわいの創出も重要であり、そのために、多様な主体によるにぎわい創出に資する事業支援に取り組んでまいります
次に、羽田空港の機能強化についてのご質問でございますが、議員お話しのとおり、区では羽田空港との共存共栄を目指して、まちづくりを進めております。しかしながら、現在の羽田空港が成立した経緯や高度成長期を中心とした騒音被害等に思いをいたすとき、今回の国による機能強化の提案は大変重要な問題であると受け止めております。区は区民生活への影響を念頭に置き、空港運用や騒音影響について、機会のあるごとに国に対して要望し、課題解決に向けた取り組みを促すとともに、情報提供を求めてまいりました。機能強化についても同様であり、区の要望を受けて国は、区内でのオープンハウス型説明会の開催場所を増やす等の対応をしております。区といたしましては、安全対策や騒音対策を中心とした丁寧な情報提供を国に求めていくとともに、従前からの課題であった左旋回についても廃止するとの国の明言を得ており、引き続き早期の廃止を強く求めてまいります。
次に、
土地区画整理事業を行う意義と今後のスケジュールについてのご質問でございますが、まず、
土地区画整理事業とは、公共施設を整備・改善し、土地の区画を整え、宅地の利用増進を図る事業でございます。また、
土地区画整理事業を活用することによりまして、道路・公園・各ライフライン施設などの面的整備を総合的に行うことが可能となることから、羽田空港跡地の基盤整備といたしましては、有効な手法でございます。この
土地区画整理事業につきましては、昨年10月に独立行政法人都市再生機構、いわゆるUR都市機構が国土交通大臣から事業認可を取得いたしました。今後のスケジュールといたしましては、現在、仮換地指定等の手続き中でございますが、来年度早々の工事着手を目指しているところでございます。引き続き、平成32年のまちづくりの概成に向けまして、
土地区画整理事業の施行者であるUR都市機構と連携を図りながら事業を推進してまいります。
次に、跡地の事業者決定までのスケジュールなどについてのご質問でございますが、羽田空港跡地第1ゾーンの第一期整備事業の事業者公募につきましては、昨年の10月31日に募集要項を公表し、来月3月24日を提案書提出の締切日としております。提案書が提出された後、学識経験者等で構成する選定委員会において、議員お話しの整備方針等で示しております区の考え方との整合性を含め、提案内容の厳正な審査を行い、今年の5月下旬に事業予定者を決定する予定でございます。跡地での官民連携におけるまちづくりを進めるに当たりましては、事業者の皆様方からの民間ならではのすぐれたノウハウとアイデアを活かした創造性の高い、日本の表玄関にふさわしい提案を期待しております。また、跡地が「新産業創造・発信拠点」を中心に区内等への波及効果を生み、にぎわいを創出するまちとして進化し続けることができるような、スピード感にあふれる提案も期待をいたします。
次に、新空港線の現在の状況と今後の具体的な動きについてのご質問でございますが、答申を受けまして、昨年8月から関係者間で、整備実現に向け、事業計画、事業費、事業採算性などの諸課題について話し合いを進めており、今年度末を目途に一定の整理が図れるよう、鋭意取り組んでいるところでございます。議員お話しのとおり、費用便益比は1.9と、1.0を大きく上回っていることから、新空港線は、社会経済的な見地から大変有意義な事業であることが確認されております。来年度は、合意形成が図られた後、速やかに事業着手できるよう、第三セクターを視野に入れた整備主体設立に向けて、しっかりと取り組んでまいりますので、引き続きご支援をよろしくお願いいたします。
次に、
中央防波堤埋立地の帰属問題に関するご質問でございますが、昨年の3月、私が江東区長を訪問したことを契機に、解決に向けた一歩を踏み出しました。こうした正式協議が行われたことは、44年を迎える帰属問題において初めてのことであります。私の江東区長訪問は、仮にこのまま、
中央防波堤埋立地の未帰属状態が続けば、世界に冠たる羽田空港と
中央防波堤埋立地を含む臨海部の機能が一体的に活用されるまちづくりを行うことができなくなり、東京ひいては日本の国際競争力の減退を招くものではないかと、将来を展望し決断したものでございます。羽田空港周辺は国内外の産業や文化が集い、交流する拠点として、世界中から強い関心を集めております。私は、
中央防波堤埋立地を含む空港臨海部のまちづくりを総合的に進めていく大きな責任を強く自覚しております。大田区の輝く未来に向け、帰属問題の早期解決に邁進してまいります。引き続き、区議会の皆様、区民の皆様のお力添えをよろしくお願い申し上げます。
次に、児童相談所の設置及び児童虐待対策についてのご質問でございますが、児童相談所設置までの間も、児童虐待に対しては、一つの手も緩めることのない対応が求められます。現在、子ども家庭支援センターが区の児童虐待の相談窓口となっておりますが、増加する児童虐待相談に対して、これまで以上に迅速かつ的確に対応できる体制の強化が必要となります。来年度は、虐待対策を担当する係長を増員するとともに、児童相談所派遣職員を2名から3名に増員し、現行体制を強化する予定でございます。また、新たに開設準備担当課長を配置して、児童相談所の設置に向けた庁内推進体制の強化を図り、施設整備に関する方針を平成29年度中に取りまとめる予定です。児童相談所の設置には多くの課題がありますが、71万人の区民を有する基礎自治体として、大田区の子どもたちの明るい未来のために組織一丸となって取り組んでまいります。
次に、「おおた子どもの生活応援プラン」策定に向けた生活実態調査に関するご質問ですが、計画を策定するには、まず、区の実態、とりわけ子どもの状況をできる限り正しく把握することが必要でございます。かなり立ち入った質問も含まれた調査にもかかわらず、多くの皆様から貴重なご回答をいただけたことに、改めて御礼を申し上げます。子どもの貧困は「外からは見えにくい」と言われる中で、この調査により、子どもにとっては新たな学び・体験の機会や、人とかかわる機会の喪失が、自己肯定感に大きく影響することなどが見えてまいりました。また、子どもや家庭の抱える課題は、庁内各部局にかかわるものであり、全庁で横断的に取り組むべきものであると改めて認識をいたしました。このように、様々な角度からの調査は初めてのものであり、その内容は極めて深いものがあります。今後、プランの策定にとどまらず、調査結果をさらに深く分析し、全庁で速やかに取り組んでまいります。
プラン推進に向けた区の役割についてのご質問ですが、子どもの貧困は複雑・多様な要因により生じており、その解決には行政のみならず、区民一人ひとりが「地域共通の課題」として受け止め、地域全体で支援することが必要でございます。現代は、様々な情報が行き交い、個人の生き方が多様化する成熟社会と言われておりますが、そのような中で、子どもの貧困問題は、個人や家庭の努力だけでは解決困難な問題であり、まさに地域ぐるみで対応すべき課題だと考えております。区内には、長年にわたり、子どもを地域の宝として見守ってきた自治会・町会、青少年対策地区委員会、民生委員児童委員、保護司をはじめ、子ども食堂や学習支援などを運営する活動団体がございます。地域の方々に、これまで子どもたちのために尽くしていただけることを、大変ありがたく、心強く感じるとともに、皆様と有機的に連携し、こうした地域の力をさらに高めていくことが区の役割と思います。区民の皆様と手を携えて、全ての子どもたちを温かく包み込むような社会的包摂を実践してまいります。
次に、健康長寿の実現に向けて、スポーツを通じた高齢者対策の取り組みについてのご質問ですが、スポーツは心身の健康の保持増進に重要な役割を果たし、日常的にスポーツに親しむ機会を確保しなければならないと考えております。また、高齢者にとっては、生きがいづくりや様々な人との交流の機会を得ることができる、社会参加の促進につなげます。近年、高齢者の健康志向は非常に高まっており、幅広く運動やスポーツが行われております。今後、さらに高齢者スポーツ事業の指導者養成への取り組みなど、継続してスポーツに親しめる環境づくりに向け、関係する各部と連携を図り、健康寿命を延ばす取り組みを進めてまいります。
次に、特別養護老人ホームの整備についてのご質問でございますが、在宅生活が困難になった高齢者に対し、必要な介護サービスを提供する特別養護老人ホームを整備していくことは重要な課題であります。現在、国においては、介護離職ゼロの実現に向け、介護施設整備に係る国有地の活用を積極的に進めており、区としてもその動向を注視しております。お話のありました西糀谷一丁目の国有地処分につきましては、区内の社会福祉法人が相手方としてつい先日決定され、整備に向けて前進いたしました。今後は、東京都の補助協議に提出できるよう、必要な支援を実施してまいります。特別養護老人ホームの整備の方向性につきましては、昨年実施した高齢者実態調査の結果や要介護認定者数の推計などを踏まえ、在宅サービスとのバランスを十分に考慮し、計画的な整備を進めてまいります。
次に、産業政策に対する想いと、今後の産業政策の方向性についてのご質問でございます。まず、区にとって産業は、大田区産業のまちづくり条例の中にもあるとおり、区民の生活を支え、豊かな文化を生み出すものであり、魅力ある地域づくりを進めていく源泉であります。IoT、AIなどの革新的技術が次々と生まれ、目まぐるしく変化をする社会情勢の中で、区はよりよい産業環境の創造を実現するために、工業、商業・サービス業など、あまねく産業活動において、その時勢を的確に捉え、世界や地域との交流を軸に、新しい産業と技術を創出することで、明るい未来につなげてまいります。次に、臨海部においては、京浜島や城南島などの工業専用地域や、物流、港湾など我が国の産業に欠かすことのできない機能が形成されております。区といたしましては、こうした機能を持つ臨海部を貴重な資源と捉えております。今後、整備が進む産業交流施設や
中央防波堤埋立地の早期解決を図り、臨海部の一体的な開発を進めることによって、地域の発展につながるよう取り組んでまいりたいと思います。私からは以上でございます。
◎津村 教育長 私からは、就学援助費と私立幼稚園に関するご質問にお答えをいたします。
まず、就学援助費における中学校の新入学用品費を入学前に支給することについてのご質問ですが、就学援助制度は、経済的な理由により就学が困難な児童・生徒の保護者に対して、給食費や学用品費、新入学用品費などを支給するものでございます。貧困対策の視点からも、保護者の費用負担を軽減するとともに、児童・生徒の学ぶ機会を保証するといった重要な役割を果たしているものと考えております。子どもの貧困対策につきましては、区長をトップに、庁内各部局が連携して取り組んでいるところでございまして、教育委員会といたしましても積極的に協力して実施いたしました「おおた子どもの生活応援プラン」策定に伴うアンケート調査でも、家計面のやりくりが厳しいという状況が明らかになりました。ご質問の中学校の新入学用品費は、一度にまとまった費用が必要となることから、このアンケート結果を踏まえ、積極的に制度の改善を図る必要があると考えております。実施に当たって課題となっておりました二重支給の問題については、議員お話しのとおり、他自治体の動向から課題克服への道筋が見えてきたところでございます。子どもの貧困対策を進めるためにも、新入学用品費の入学前支給について、前向きに検討してまいります。
次に、私立幼稚園が保育ニーズに対応していくことが重要ではとのご質問にお答えをいたします。昨年12月に東京都が発表いたしました「2020年に向けた実行プラン」では、2019年度末までに保育サービス利用児童数を7万人増やし、就学前児童人口の50%に相当する受け入れ枠を整備するとしております。現在、区内の私立幼稚園では、全園合わせて8834人を受け入れており、これは3・4・5歳児人口の50%を超えております。したがって、今後、保育サービスの整備が進展することにより、私立幼稚園の経営に影響が出てくることが懸念されるところでございます。区では、待機児童対策を目的として、私立幼稚園に保育園並みの長時間保育を委託する「長時間預かり保育事業」を今年度から開始いたしました。しかしながら、保育時間が保育園より短い一時預かり保育を既に実施していることや、保育園並みの長時間保育を行うための職員の確保が困難なこと、また半分以上の園が定員に受け入れの余裕がないこと等の理由により、受託園は1園にとどまっております。「長時間預かり保育事業」については、今年度途中に職員の配置要件など、私立幼稚園が受託しやすいよう制度を見直したところでございます。今後は、私立幼稚園設置者に想定される状況を丁寧に説明し、長時間保育の受託を促すことで、私立幼稚園が安定した経営を行えるよう支援をしてまいります。私からは以上でございます。
○大森 議長 次に、17番松本洋之議員。
〔17番松本洋之議員登壇〕(拍手)
◆17番(松本洋之 議員) 大田区議会公明党を代表いたしまして、当面の区政の重要課題等について質問をいたします。区長並びに理事者の皆様の明快な答弁を期待いたします。
「アメリカファースト」を掲げるトランプ大統領が誕生しました。環太平洋経済連携協定(TPP)からの永久離脱をはじめ、まさに巨大な権限の行使を楽しんでいるかのように大統領令を乱発するなど、トランプ大統領関連の報道が連日されています。そのような中、日本の製造業の先行きを不安視する声が上がっています。トランプ政権が保護貿易主義に傾いた場合、日本の製造業にとって大打撃となる可能性が高いというのがその理由です。こういった先行きが不透明な中ではありますが、本区においては確実に区民生活の向上と安全・安心の大田区のまちづくりの構築をしていくことが重要であります。
本区はこれまで、松原区長の強いリーダーシップのもとに、「おおた未来プラン10年(後期)」に掲げる「5年後のめざす姿」の実現に向けて、様々な施策を力強く推進してこられました。我が党も、区を積極的にサポートし、まさに車の両輪として、ともに区民福祉の向上に取り組んでまいりました。この間、大きな社会問題となっている待機児童を解消するための保育定員や選考基準の拡充をはじめ、さぽーとぴあやJOBOTAの開設、学校防災活動拠点の整備、防災備蓄物品の大幅な拡充、振り込め詐欺被害防止対策の強化など、区民の暮らしに直結する大きな成果を得られたことを、大変高く評価させていただいております。未来プラン目標達成に向け、より一層、積極的かつ効果的取り組みが推進させることを期待いたしているところであります。
一方で、本区を取り巻く社会経済状況が日々変化を続ける中、区民ニーズも多様化・複雑化し、これまで想定していなかった課題や新たな行政需要も生まれております。区は、最も身近な行政機関として、このようなニーズに対しても迅速かつ適切に対応することが求められます。
こうした中、本区においては未来プランで掲げた目標達成に向け、より積極的に事業を推進するとともに、新たな行政課題にも着実に対応していくため、平成29年度から3か年の具体的な取り組みを示す「(仮称)大田区実施計画」の策定を進めております。ぜひとも、区政を取り巻く状況を適切に分析し、区民ニーズを確実に把握した上で、松原区長をはじめ、職員の英知を結集し行政力を発揮し、未来につながるしっかりとした計画をつくり、区民生活のさらなる向上につなげていただくよう、強く要望いたします。
そこでお伺いいたします。区長は、この実施計画をどのような意図、狙いを持って策定することとされたのでしょうか。その思いをお聞かせください。
さて、本定例会においては、この実施計画の内容を着実に推進するためのエンジンとも言うべき平成29年度予算案が上程されております。内容としましては、
一般会計予算額は約2619億円と、平成28年度当初予算と比較しまして約45億円、1.7%の増という過去最大規模の予算となっております。これは区政に立ちはだかる課題の大きさをあらわしているとともに、そうした課題に果敢に立ち向かう区長の強い思いをあらわしていると考えております。
区長は、この平成29年度予算において、現状の区政の課題をどう捉え、どの部分に力点を置いて編成をしたのでしょうか。
また、過去最大規模の予算編成となったわけでありますが、歳入の内訳を見ますと、財政基金繰入金が約71億円と、平成28年度当初予算比で約18億円の増となっております。結果として、平成29年度末の財政基金残高見込みは539億円と、平成28年度末の残高見込みを下回ることになります。当然、予算編成に当たっては、単年度の視点のみではなく、中長期的な視点で編成しなければなりません。先の経済見通しが難しいと言われる中で、基金、いわゆる区の貯金が目減りしてしまうのは、今後の財政需要を考えたときの不安材料の一つであることは申し上げるまでもありません。
平成29年度歳入予算において、財政基金繰入金が増額となり、貯金である基金が目減りいたしますけれども、社会経済情勢、今後の人口構成の変化やそれに対応する行政需要を考えた基金のあり方について区長の認識をお伺いいたします。
区の現状を的確に捉えた実施計画とそれを着実に推進するための安定した財政基盤、そして区長を筆頭に職員の皆さんの熱意、これらが相乗的にかみ合ってこそ、区政は大きく発展し、区民の暮らしのより一層の向上につながってまいります。平成29年度においても、これまでの歩みをとめることなく、新たな対応を含めて施策の着実な実施を要望いたします。
さて、日本は、今や世界に例を見ない高齢社会を迎えております。昨年度、区が公表いたしました「大田区人口ビジョン」における推計によると、区内老年人口は、今後長期的に見れば、ますます増加することが見込まれます。平成29年度予算案におきましても、一般会計歳出予算案を性質別に見ますと、扶助費は、医療・介護などの高齢者対策、または待機児童対策により、平成28年度当初予算比で約45億円の増と見積もられています。さらに、この扶助費の増と連動するように、一般会計から介護保険特別会計、後期高齢者医療特別会計等への繰出金は、平成29年度は、平成28年度当初予算比で約6億円の増と見込まれております。この扶助費と他会計への繰出金を合わせた、いわゆる社会保障関係経費は、人口構成の変化を捉えれば、今後も右肩上がりで増加していくことは確実であります。加えて、区政の課題は高齢者対策だけではありません。防犯・防災、魅力的なまちづくりなど、多様にわたり、それらの課題にも適切に対応していかなければなりません。したがいまして、全ての区民の暮らしの向上を実現するためには、高齢者一人ひとりがいつまでも元気に、若い世代とともに社会を支える一員として、いきいきと活躍できる社会を実現することが、区財政の観点からも非常に重要になってくると考えます。
そこで求められるのが、高齢者の就労対策についてであります。元気な高齢者が、これまで培ってきた知識・技術、人生経験を活かして地域活動、社会活動等に貢献していただくことは、高齢者に生きがいをもたらすとともに、地域社会にとっても大変意義のあるものでございます。元気な高齢者が多くなれば、ご本人とってもすばらしいことであると同時に、結果として介護や医療のお世話になることも減ってくるでありましょう。大田区は昨年より、23区で初の取り組みとして、保育施設または介護施設等への就労を希望する高齢者に対し、大田区いきいきしごとステーションとともに、専門的な講義や実習を行い、ハローワークと連携しながら、就労やボランティア活動につなげる「元気高齢者就労サポート事業」を始めています。一方、大田区シルバー人材センターでは、昨年から労働派遣事業の「シルバー派遣」を本格実施しています。今後、地域の高齢者就労支援の拠点として、これまでの経験や知識を活用したさらなる活躍を期待するところであります。
そこで、「シルバー派遣事業」などの高齢者の就労促進について、区として具体的な取り組みをお聞かせください。
次に、高齢者一人ひとりがいきいきと暮らすための生活の土台となる住まいについてであります。
地域包括ケア体制の構築のためには、医療、住まい、介護、生活支援、介護予防の五つの要素を踏まえたサービスを有機的に提供していくことが必要であり、住まいについては、高齢者が多様なニーズに応じた住まい及び住まい方を選択し、安心して暮らすことができるようにすることが重要であると考えます。本区はこれまで、シルバーピアや高齢者アパートの提供や都市型軽費老人ホーム等の整備を進めるなど、高齢者向け住まいの確保に向けて取り組んでこられました。また、可能な限り自宅での生活を希望される高齢者に対し、高齢者等住宅確保支援事業を実施し、民間賃貸住宅の確保支援をしております。
一方で、住宅の確保の支援が必要な高齢者が増えることが予想される現在、今後シルバーピア等高齢者向け住宅を無尽蔵に増やしていくことは、財政的な面からも困難であると考えます。同時に、民間賃貸住宅の空き室は増加傾向であるという新聞報道もあり、その活用が求められています。しかし、高齢者、特にひとり暮らし世帯や高齢者のみ世帯の方が、民間アパート等賃貸住宅の契約をする際には、様々な困難があるのが現実であります。
今後は、住宅施策と福祉施策の双方からの取り組みにより、民間賃貸住宅を活用した高齢者の住まい確保支援を実施し、自宅で住み続けられる仕組みを構築していくことが必要であると考えますが、本区のお考えをお聞かせください。
さて、子どもたちは大田区の将来を担う宝であります。ここからは、子どもたちを取り巻く環境について、子育て支援、待機児童対策から教育分野まで、幅広い観点から質問をいたします。
まず、大田区において、安心して子どもを産み育てられる環境整備として大変重要な待機児童対策についてであります。
厚生労働省が公表した「平成28年(2016)人口動態統計の年間推計」によりますと、平成28年の出生数が98万1000人と推計され、初めて100万人を割りました。他方で、女性の就業者は90万人以上増加し、特に0歳から3歳の子どもを持つ25歳から44歳の女性の就業者数は6万人増加し、保育を必要とする子どもの人数は増えております。国は、平成28年12月に閣議決定された平成29年度予算案においても、子ども・子育て支援のための予算として1兆1358億円を計上しています。また、消費税率引き上げによる増収分のうち2985億円は、子ども・子育て支援新制度の実施に充てる予定となっております。これらを使って、1、保育の受け皿を増やす、2、保育を多様化する、3、保育人材を確保するの三つの施策を引き続き進めていく予定とのことであります。具体的には、今後さらに女性の就業が進んでいくことを念頭に、「待機児童解消加速化プラン」の目標をこれまでの40万人分から10万人分上積みして、平成29年度末までに50万人分の保育の受け皿を確保することとしております。
東京都においては、「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン」の中で、「ダイバーシティ~誰もがいきいきと生活できる、活躍できる都市・東京~」の八つの政策の柱の一つ、「子供を安心して産み育てられるまち」を掲げております。2019年度末までの待機児童の解消を目標に、保育サービス利用児童数を2016年度からの4年間で7万人分増加することとしております。
このような背景のもと、大田区としましても、これまで以上に待機児童の解消に向けた積極的な取り組みが求められます。
そこで、本区におけるこれまでの待機児童の解消に向けた取り組み及び次年度に向けた取り組みについてお聞かせください。
また、大きな課題の一つに、保育人材の確保があります。保育の受け皿を確保するためには、国全体として新たに9万人程度の保育人材確保が必要と試算されております。保育士の有効求人倍率は高い水準で推移しており、平成28年11月の有効求人倍率は2.34倍、東京では5.68倍となっています。国は、平成29年4月から民間保育園で働く保育士の給与改善を実施予定であり、保育士の給与を平均3.3%、月額1万円程度改善することに加え、キャリアアップの仕組みをつくり、技能・経験に応じて月額5000円から4万円の給与改善を進める予定であります。
本区は、待機児童解消に向けて、新年度予算でも積極的に予算計上され、保育園等の施設整備を進めていきますが、それとあわせて事業者にとって重要な課題となっている保育士の人材の確保、0歳児保育園となれば看護師の確保も必要となるなど、保育人材の確保に向けた新たな取り組みが必要と考えますが、本区はどのようにお考えかお伺いをいたします。
次に、ロタウイルスワクチンの助成についてお伺いいたします。
ロタウイルスは、5歳未満の乳幼児におけるウイルス性胃腸炎の主な原因微生物であり、5歳までにはほぼ全ての小児がロタウイルスに感染し、胃腸炎を発症することが知られています。発症した場合、急速に脱水が進行するため入院治療を要する場合が多く、我が国においても、5歳未満の乳幼児がロタウイルス性胃腸炎で入院する頻度は、40人から60人に1人と高頻度であります。突然、嘔吐や下痢、発熱が生じ、白い下痢便が続く症状で、国立感染症研究所によると「毎年約80万人の乳幼児が病院にかかり、うち1割、約7万8000人が脱水やけいれんなどで入院、まれに死亡することもあります。日本では、毎年冬から春にかけてロタウイルス胃腸炎の流行が認められており、感染力が強く、小さな赤ちゃんほど重症化しやすいと言われています。対症療法のみで確実な治療法はなく、ウイルスが体の外へ出るのを待つだけで、脱水症状を起こさせないように水分補給をするのみで、現時点ではワクチン接種が最も確実な予防法」とのことです。子どもには大変苦しい病気であります。子どもを持つ親からすれば、やはり我が子に苦しい思いをさせないために、ワクチン接種をしてあげたいのが親心であります。
しかし、ここで問題になるのが接種費用であります。このワクチンは定期接種に組み込まれておらず、接種費用が1回当たり1万2000円から1万5000円とも言われています。受けるとなると2回接種が必要となり、合わせて約3万円必要になります。これは子育て世代にとって大きな負担となり、また保護者の経済的基盤によって乳児に接種有無の差異が生じ、乳児の健康を守る意味合いからも問題があると考えます。また、国における試算では、医療費以外の支出や労働損失が発生するとも言われております。労働損失とは、付き添いや通院によるお父さん、もしくはお母さんが仕事を休み、失われた労働力の額で、これらを含めたロタウイルス感染症による1件当たりの経済的負担は、入院治療で約17万円、通院治療で約5万円とされており、総額では年間約540億円にも上ると推定されています。これを大田区の出生数から算出すると約2億8531万円であります。
現段階では任意接種ですが、自治体によっては公的助成を行っているところもあり、接種率は次第に高くなりつつあります。ロタウイルスワクチンの公費助成の状況については、全国227自治体で助成を実施及び予定している状況であります。ロタウイルスワクチンは医学的にも公衆衛生学的にも極めて有用であり、財政面等の問題を勘案しても、早期に定期接種させることが望ましいと考えます。
ロタウイルス胃腸炎ワクチンについて、本区はどのように認識されているのか、お伺いをいたします。また、予防医療を行うことにより子育て世代の負担も軽くなり、また医療費も削減できるというメリットがあるこの助成制度を実施するべきと考えますが、所見をお聞かせください。
続いて、昨今、大きな社会問題となっている子どもの貧困対策に関連して質問を行います。
昭和50年から60年代は、全国的に学校が荒れていたという印象があり、調べてみますと、当時の高校中退者は約10万人に上る状況でありました。中途退学後は、例えば地域の建築現場や商店街のお店番など、今で言う、いわゆる中間的就労のような受け皿があり、地域との接点を通じて生活困窮や貧困といったことは大きな問題とはならなかったように思い返します。しかし、平成に入り、高校中退後5年程度経過すると、最低賃金程度で生活する人も多いという調査結果も見るようになりました。生活困難層の子どもたちは学校が唯一のつながりなのに、中途退学や不登校により、その後の社会とのかかわりに、より支障が生じることが想定されます。
本区では、区内4か所で学習支援事業を実施しており、中学生の学力定着や高校進学支援を行うとともに、社会性向上を目的とした各種イベントも実施しております。また、大学生が中心となって実施しており、若者たちを地域の担い手にする力を引き出す仕組みとなっている側面もあると考えます。平成29年度予算案では、本事業をさらに拡充し、高校入学後の不安や悩みを受け止める居場所として、高校生の卒業支援を実施することとしております。
学習支援事業を利用していた中学生のフォローのほか、学校生活や日常生活の相談に対応する新たな取り組みとなりますが、本事業の目的や狙いをどのように考えているか伺います。
子どもたちにとって、教員の影響力は大きいものがあり、教育現場において、子どもの貧困に関連する生きにくさを緩和し、未来に向かう子どもたちの「生きる力」を育む取り組みがまさに求められております。おおた教育振興プランでは、施策を推進する基本的な視点の一つとして、未来の可能性を伸ばしていけるよう、一人ひとりに向き合うことを掲げ、個性や能力の尊重を通じた自己肯定感の向上に向けた記載もあり、子どもの貧困対策との関連性が極めて高いものと考えております。おおた子どもの生活応援プランは、福祉部が取りまとめをしておりましたが、取り組みに当たっては、子ども家庭部、教育委員会がしっかりと連携し対応していくことが、強く求められるものと考えております。
おおた子どもの生活応援プランを具体化する上で、教育委員会の積極的な取り組みが重要となると考えますが、教育長の見解を伺います。
次に、子どもたちの教育環境面の充実という観点で、何点か質問をいたします。
近年は、インターネットの普及に加え、スマートフォンの急速な普及により、誰もがITを活用する時代になりました。子どもから高齢者まで、ITのメリットを享受して豊かな生活を送ることが期待されています。一方で、情報化・グローバル化は想像をはるかに超えるスピードで進展しており、これからの教育には、変化する時代を生き抜く力やIT社会に順応できる力の育成が求められています。そのためには、小中学校の義務教育段階から発達段階に応じてICT機器に触れながら、情報活用能力を育成することが効果的であると考えます。先の教育委員長の所信表明でも、北糀谷小学校及び蒲田中学校のICT活用推進モデル校において、大田区学習効果測定における期待正答率が向上したとのお話がありましたが、それを裏づけるように、多くの自治体で、ICT機器を積極的に活用することで学力の向上が見られたとの報告がなされております。
そこでお伺いします。ICT活用推進モデル校において、どのような教育的効果を上げたのか、具体的にお聞かせください。
平成29年度予算案では、全小中学校の普通教室に無線LAN環境やスライドレール式電子黒板、書画カメラを導入し、全教員に指導用タブレット端末を配付するほか、学級数に応じ各校に40台、または80台のタブレット端末を配備する予算、金額にして約11億円が計上されています。これは、全小中学校への整備を単年度で同時に進める計画となっており、モデル校の成果をいち早く区内全校に拡大するスピード感のある取り組みであると評価いたします。
財政状況に制約がある中、学校のICT機器の導入に対して、このような多額の予算計上を行った狙い、どのようなことを成果として考えているのか、お聞かせください。
ICTの充実はいいことだと考えております。問題は、それらをいかに教育の場で活用するかであります。学習効果をいかに出せるかが問われていると考えます。あわせて、自然体験やボランティア活動などの社会体験、観察・実験、見学や調査、発表や討論、ものづくりや生産活動など、体験的な学習、問題解決的な学習を積極的に取り入れることを今後とも推進していただきたいと考えます。
ICT機器を区内小中学校に一斉に導入するに当たっては、ICT機器を活用する教員の能力を向上させることが重要な課題となります。いかに最新のICT機器を導入したとしても、教員にICTの特徴を活かす力量が伴わなければ、教育の質の向上は期待できません。
区内小中学校の全ての教員が、ICTを活用した指導力を発揮できるよう、教育委員会として積極的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
また、近年はインターネットの過度な利用により、いわゆるネット依存や不正請求などのインターネット犯罪、不適切な投稿による社会問題化などが頻発しています。若者がソーシャルネットワークに軽はずみな投稿を行い、社会に大きな波紋を広げる報道が後を絶ちません。スマートフォンの低年齢化も進んでおります。
こうした情報化社会に適切に対応するためには、情報化の影の部分についても十分に理解してもらうよう、情報モラル教育を行う必要があると考えますが、教育委員会の所見を伺います。
次に、大田区中小企業の振興について質問いたします。
最近の我が国における医療機器開発について、政府は国民の健康寿命の延伸を掲げた成長戦略を展開しています。高齢化の進展や新興国の国際需要の高まりから、その市場は拡大傾向にあり、大いに期待が持てるものと思います。2013年時点ですが、世界の市場規模は40兆円と言われています。日本の国家予算の40%強の規模であり、大きな市場であることがうかがわれます。しかし、国内に目を転じると、その市場規模は2.7兆円であると言われ、輸出入額にあっては何と7700億円の輸入超過で、海外製品、主にアメリカ、欧州で7割を占め、日本製品は1割に満たない状況です。
こうした実態を踏まえ、国はオンリーワンの世界最先端の革新的医療機器の開発・事業化を加速化することとして、基礎研究を担う文部科学省、臨床研究を担う厚生労働省、実用化を担う経済産業省が連携して、オールジャパンで医療機器開発体制をしいています。具体的には、経済産業省だけでも医工連携事業化推進事業の35億円をはじめ、100億円を超える取り組みを進めています。東京都においても「臨床ニーズから製品開発へ」をキャッチフレーズに医工連携HUB機構を設置しての後押しをしています。
そこでお伺いします。「医療現場からの的確なニーズの把握」、「知的財産権の管理、資金確保、販路確保、ニーズとシーズのマッチング」、「薬事に伴う製品開発の長期ロードマップ」、こういった課題がある中で、大田区でもこうした国や東京都の動きの前から医工連携の取り組みを進めてまいりましたが、その目的と具体的な取り組みや現状の課題を区長はどのように捉えておられるでしょうか。
私は、下町ボブスレーでも広めていただいた「大田区の仲間回しによる高度なものづくり技術」を医療機器開発の点にも活かせるような工夫を考え、大田区中小企業の振興と私たちがいつまでも元気で暮らせるための技術の進歩を望むものであります。これは、医工連携に限らず、あらゆる分野において新たな技術革新の可能性のある事業に対して、柔軟に対応できるようファンドという考え方も視野に入れた取り組みはできないでしょうか。所見を伺うとともに、医工連携に対する区長の意気込みをお聞かせください。
次に、桜のあるまちづくりについてお伺いをいたします。
桜といえばソメイヨシノが代表的な品種ですが、ソメイヨシノが誕生した江戸時代後期よりはるか昔より日本人は桜を愛し、格別な思いを寄せてまいりました。大田区を舞台にした桜に関する歌といえば、福山雅治さんの「桜坂」があまりにも有名です。古くは昭和初期、多摩川に4000本の桜を植え、桜の名所にしようとの運動が起こり、その最初の植樹式では、児童たちが「桜の多摩川」という歌を高らかに歌ったとの記録も残っております。しかし、そうして植えられた桜も、第二次大戦中に多くは切り倒され、薪として使われました。終戦後、焼け野原に辛うじて残った桜の花が爛漫と咲き誇る姿に、戦争で打ちひしがれた人々が癒やされ、復興への気概を奮い立たせることに一役買っていたことも、幾多の証言に明らかです。桜の咲くころはちょうど学校の卒業と入学のシーズンと重なり、希望に満ちた門出を飾るにふさわしい花でもあります。また、桜は平和の象徴として、友好親善の象徴として、全国各地や世界各地に植樹されています。
区内においても、先人たちの努力により、多摩川の堤防、馬込の桜並木、池上本門寺、多摩川台公園、洗足池公園など多くの桜の名所が整備されました。平成27年度に公募した「おおたの名木選」でも桜が選ばれるなど、多くの区民が桜の花を愛でることができるまでになりました。これらの見事な桜は地域資源となっていると言っても過言ではありません。また、多摩川の河川敷に桜の街道をつくろうという理想のもと活動しておられる議員諸氏もいらっしゃいます。本区では、「大田区みどりの条例」や大田区緑の基本計画「グリーンプランおおた」を制定し、緑化を推進していますが、桜の植樹をより積極的に推進していくことも必要ではないでしょうか。例えば、これから本格的な整備が進められる「羽田空港跡地」や、都内で初めての常設ビーチバレーコートも整備される「ふるさとの浜辺公園」などに桜が爛漫と咲き誇ることになれば、飛行機に乗ってやってくる外国人などの来訪者が空からも桜を眺めることができる、まさにグリーンプランおおたの基本理念である「空からも見える豊かで多様なみどり」を実現することができます。
一方、これまで整備されてきた桜も、植樹されて久しい年月が経過したものもあります。桜の中でも特にソメイヨシノは、植えてから20年から30年ぐらいで最も見ごろな状態となりますが、その後は枯れないまでも、枝枯れが目立ち、花つきが悪くなる衰弱したような姿になってしまうことも多いのが実情であります。それらのソメイヨシノは植えかえの必要が生じますが、例えば、桜でもソメイヨシノなど単一の種類に絞るのではなく、バラエティーに富んだ種類の桜を植樹し、より多くの花を、より長い期間楽しめるようにすることも必要ではないでしょうか。
そこでお伺いします。本区における今後の桜を活かしたまちづくりについてお知らせください。
次に、新空港線についてお聞きします。
昨年の第2回定例会において、私が新空港線のスケジュール感と整備に向けた財政確保についてお聞きしたところ、区長は「調整すべき課題はあるが、スピード感を持って関係者協議を進める。財源確保については、引き続き基金を積み立ていくとともに、都市計画交付金や財調の活用など、あらゆる可能性を探ってまいります」とお答えになりました。この間、着実に関係者協議が進められてきた成果として、来年度予算案の中に整備主体の設立に関する経費が盛り込まれていると認識しております。
新空港線は、それ自体での整備区間は短いものの、東急多摩川線を介して東急東横線、東京メトロ副都心線、西武池袋線、東武東上線と相互直通運転することで、渋谷、新宿、池袋といった副都心や川越、所沢、和光市等の埼玉県方面と羽田空港とのアクセスが改善されます。このように新空港線は、東京圏全体に大きな利便を生み出すことから、まさに広域的なプロジェクトであると思っております。このように新空港線の便益が広範囲に及ぶことから、昨年2月の国土交通大臣要望が松原区長を先頭に、都内14区長と埼玉県3市長の連名で行われたわけであります。新空港線の実現に向けては、今後もより一層沿線自治体と連携して進めていくことが必要不可欠であると考えております。国の答申において高く評価され、沿線自治体からの要望も強く、関係者協議が佳境を迎えた今、いよいよ新空港線整備の時期が到来したと感じております。
ここで改めて、新空港線に対する区長の思いをお聞かせください。
続いて、羽田空港関連について質問いたします。
まずは、国が提案しております羽田空港の機能強化についてであります。日本の玄関口として、羽田空港の国際空港としての地位をより高めていくことは、我が国にとっても非常に重要な政策の一つであります。一方で、これまで羽田空港が歩んできた歴史を鑑みれば、より一層の安全対策、騒音対策といったものが必要になると思われます。国においては、国土交通省主催の説明会が行われており、現在もオープンハウス型の説明会が進められていると聞いています。このような影響の大きい事業を進めるに当たっては、空港周辺地域住民は当然として、広く関係する自治体住民に丁寧な情報提供をすべきであり、引き続き国の努力を求めていく必要があります。正確な情報がきちんと行き渡らない中で、一面的な情報ばかりがひとり歩きし、いたずらに住民の不安が高まるようなことがあってはならないと考えます。
ついては、羽田空港の機能強化に関する情報提供について、国によるこれまでの説明会の経過と今後の進め方、さらに区としてどのような点が重要であると考えているのでしょうか、お知らせください。
続いて、羽田空港跡地整備についてであります。
本区は、平成32年のまちづくりの概成に向けて、国、東京都、その他の関係機関と協議・調整を重ねながら、鋭意事業を進めていることと思います。その中でも、まちづくりの重要なピースとなる第2ゾーンについては、防潮堤機能を有した(仮称)多摩川親水緑地に都市計画決定されたと聞いております。
それを受け、区は、この第2ゾーンについて今後どのように整備を進めていくのでしょうか。また、第2ゾーンの建物整備は、今どういう状況でありましょうか。
また、第1ゾーンについては、いよいよ5月に事業予定者が決定いたします。今後、区としてはこれまで以上に具体的に、かつスピード感を持って取り組んでいかなければならないと考えますが、事業予定者が5月に決定した後の展開についてお聞かせください。
最後に、
中央防波堤埋立地の帰属問題について伺います。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会まで、早くも残すところ3年半となりました。我が大田区議会公明党は、昨年の第1回定例会において、大田区への全島帰属を求める決議に賛成し、続く第2回定例会、第3回定例会と繰り返し帰属問題解決のタイムリミットに関する質問をしてまいりました。松原区長からは、「2020年を視野に、法で定められた手続きも含め、時期を失することなく的確に対応する」との答弁もいただいたところであります。2020年を視野にということではありますが、東京2020競技大会が開催される直前に帰属問題が解決しても意義が薄く、大田区がオリンピック・ムーブメントに貢献し得る余地がなくなるのではないでしょうか。
松原区長の江東区長訪問から間もなく1年となる機会を捉え、改めて松原区長の、一日も早い解決、大田区議会が納得できる解決に向けた覚悟を伺います。
帰属問題は非常に根が深く、解決に向けては今後も困難な局面が到来することが予想されますが、我々議会もともに立ち向かっていく覚悟であります。松原区長におかれましては、区民の思いを背負い、引き続き強い信念を持って突き進んでいただくことを切に希望しまして、私の代表質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
○大森 議長 理事者の答弁を求めます。
◎松原 区長 松本議員の代表質問に順次お答えをさせていただきたいと思います。
まず、「大田区実施計画」策定の意図、狙いについてのご質問でございますが、今回策定をいたします「大田区実施計画」は区が直面する喫緊の課題に対応するため、「おおた未来プラン10年(後期)」に掲げている主な事業などから、より重点的に取り組む事業を抽出しております。本計画において、未来プランの実効性をより高めていくことが可能になると考えております。加えて、人口構成の変化や社会経済状況並びに区民ニーズ等を的確に捉え、新たな行政需要に対応するため、保育人材の採用、定着、育成について総合的に支援する「保育士人材確保支援事業」、生活再建・就労サポートセンターJOBOTAを活用した「生活困窮者自立支援事業」、「おおた子どもの生活応援プラン」や児童相談所の設置、「空家等対策の推進」など、未来プラン(後期)策定後に新たに始めた事業についても計画化をしております。本計画の策定により、既存事業と新たに取り組む事業を横断的に区民の皆様へお示しするとともに、多様化、複雑化する区民ニーズや行政課題に対する取り組みを的確に進めてまいります。
次に、平成29年度予算編成についてのご質問ですが、平成29年度は「大田区実施計画」に掲載する事業を着実に実施していくことで、「おおた未来プラン10年(後期)」に掲げた施策をさらに推進していく重要な年となります。このような認識のもとに四つの重点課題を設け、特に優先的に予算を配分いたしました。保育園待機児童解消に向けた対策の強化や、「おおた子どもの生活応援プラン」に基づく各種事業の着実な推進、全小中学校へのICT環境整備など、未来を拓く子どもたちや若者の成長を支えるための予算を重点的に配分しました。「大田区元気シニア・プロジェクト」の推進や、高齢者の皆さんのお力もお借りしたシルバー派遣事業の活用による保育・子育て分野への支援拡大など、誰もが健康でいきいきと活躍できる社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。また、安全・安心の分野では、熊本地震の教訓を生かしたより実践的な体制の整備を進めることで、災害に強く、安全で安心な生活基盤を確立する決意でございます。国際都市おおたの成長を牽引する取り組みにつきましては、新空港線や羽田空港跡地の整備を推進するとともに、魅力あふれるまちづくりを実現してまいります。このような取り組みのもと、大田区の明るい未来に向けて、71万区民とともに「暮らしてよし、訪れてよし、地域力あふれる国際都市おおた」を実現すべく、力強く区政運営を進めてまいります。
次に、基金のあり方に関するご質問でございますが、基金は、特別区税や特別区交付金などの主要な一般財源を補完、調整する重要な役割を担っております。区はこれまで、景気の変動等により歳入が大きく減少した場合においても、将来の様々な行政需要に安定的に対応するため、計画的に基金の積み増しを行ってきました。平成29年度予算編成に当たりましては、税連動交付金や特別区交付金を減額と見積もっている一方で、扶助費は大きく増額となることを見込んでいることから、基金の取り崩し額を増額することで財源確保を図りました。区においては、今後も区財政に大きな影響を与える行政需要が見込まれます。また、特別区税等の基幹財源も大きく増収となることは期待できない状況でございます。区といたしましては、引き続き、事務事業の見直し、経常経費の節減、新たな財源の確保などの内部努力はもとより、中長期的な視点に立って基金を効果的に活用することで、安定した財政運営に取り組んでまいりたいと思います。
次に、高齢者の就労促進についてのご質問でございますが、区は、関係機関と連携し、高齢者の知識や経験等を生かした多様な働き方の支援に取り組んでおります。現在、大田区シルバー人材センターは、平成28年度から労働者派遣事業を開始し、新たな雇用形態による就業を促進しております。平成29年度から、新規事業として東京都と連携した保育・子育て支援事業を展開いたします。また、介護人材の確保が急務である中で、介護補助の担い手につきましても、「シルバー派遣」の拡充を視野に入れ、検討をしてまいります。就労を通して社会的な役割を担い、地域で活躍することが高齢者にとって健康づくり、社会貢献、生きがいの創出につながると考えております。今後も、高齢者の就労を促進し、いきいきと暮らせるまちづくりを推進してまいります。
次に、高齢者の住まいの確保についてのご質問をいただきました。住まいの確保に向けましては、現在実施しております高齢者等住宅確保支援事業や空き家等地域貢献活用事業に加え、新たに物件探しの支援、入居後の見守りや貸し主への相談対応等、高齢者や貸し主に寄り添った支援事業を平成29年度予算案に盛り込み、高齢者の民間賃貸住宅への入居促進を図ってまいります。合わせまして、既存の高齢者住宅における連帯保証人のあり方等、高齢者が入居しやすい仕組みづくりの検討を進めております。こうした取り組みを通じて、高齢者が安心して住まいを探すことができ、貸し主が円滑に住居を提供できる環境を構築し、高齢者が地域で暮らし続けるための基盤を整えてまいります。
次に、区の待機児童の解消に向けた取り組みと次年度の取り組みについてのご質問でございますが、区では、平成24年度からの4年間で約2500名の保育サービス定員の拡充を図ってまいりました。平成28年度は、今回の第4次補正予算分、約100名を加え、最終的には、認可保育所9施設をはじめ、小規模保育所4施設、事業所内保育所2施設、認証保育所1施設を開設し、約700名の定員拡充を図る予定でございます。また、次年度につきましても、依然として増加傾向にある入所申込者数に対応するため、現時点では、今年度と同程度の700名の保育サービス定員の拡充を目標に取り組んでまいります。なお、現在、国において待機児童に関する見直しが検討されており、その状況を注視しながら、今後も適切な整備に努めてまいりたいと思います。
次に、保育人材の確保に向けた取り組みについてのご質問でございますが、区では、平成29年度予算において、区内保育施設に継続して勤務する常勤保育士、約1900名に対して、月額1万円を直接支給する「(仮称)保育士応援手当」を創設いたします。今回の国や東京都の処遇改善とあわせ、区における保育士の確保・定着支援を図ります。また、「保育士宿舎借り上げ支援事業」では、東京都の補正予算を積極的に活用して、採用後5年間という年数要件を撤廃して拡充実施をいたします。これらの対象者につきましては、保育士だけでなく保育補助者、看護師、栄養士にも適用することで、広く保育人材の確保に努めます。今後も、保育施設の充実とともに保育士の処遇改善を図ることで、子育て環境の整備に全力を挙げて取り組んでまいります。
次に、ロタウイルスワクチン助成についてのご質問でございますが、ロタウイルスは2歳未満の小児が感染すると重症化しやすく、これを予防することには意義があると考えます。しかしながら、乳児期後期に接種すると重大な副反応のリスクがあり、複数回の接種をおおむね生後6か月から8か月までに完了する必要があります。また、平成28年10月には、新しくB型肝炎ワクチンの定期接種が加わり、ワクチンの接種スケジュールは過密になっている状況があります。ワクチンの効果や考えられるリスク、他の定期接種とのスケジュールの調整など、様々な事項を念頭に置きつつ、国の動向や他自治体の動きを注視してまいりたいというように考えております。
次に、子どもの学習支援事業に関するご質問でございますが、今年度は、中学生の学力定着及び高校進学を支援してまいりました。一方、本事業を実施する中で、高校入学後の不安や悩みを1人で抱え、中途退学をしてしまう生徒がいることが見えてまいりました。そこで、来年度から新たに高校生の卒業支援に取り組んでまいります。これにより、子どもたちの将来の選択肢の幅を広げ、貧困の連鎖を断ち切る力の強化につながると考えております。全ての子どもたちが輝かしい未来を切り拓くことができるよう、支援を充実・強化してまいります。
次に、ICT機器の予算計上に関するご質問でございますが、平成29年度の予算編成においては、重点課題の一つとして「未来を拓く子どもたちや若者の成長を支える取り組み」を進めるとともに、「選択と集中」を徹底したところでございます。学校のICT機器の導入につきましては、平成27年度から実施した大田区独自のICT活用推進モデル事業において、授業への興味・関心が高まるとともに、学習効果測定の結果でも成績の向上が見られたとの報告がありました。そのため、私といたしましては、このモデル校の成果をいち早く広めるために、必要なICT機器を小中学校全校へ一斉に導入する予算を計上したところでございます。今後とも、総合教育会議の場などを活用しながら、教育委員会と連携を深め、スピード感を持って、子どもたちの未来のための施策を推進してまいります。
次に、医工連携の目的と取り組みの現状、課題についてのご質問でございますが、区では、公益財団法人大田区産業振興協会と連携し、高度な基盤技術を有する大田区企業と医療機関との連携を深めるとともに、医療現場の課題解決や中小企業の技術革新、新分野への進出支援などに取り組んでまいりました。医工連携の取り組みは、自社製品の販売まで到達することが難しい面があります。区といたしましては、国や東京都の新たな動きも踏まえ、区内ものづくり企業による医療機器・器具の開発等の取り組みが進展するよう支援をしてまいります。
次に、あらゆる産業分野に柔軟に対応できるファンドに対する所見と意気込みについてのご質問でございますが、これまで区内のものづくりをはじめとする企業では、技術力と仲間まわしのネットワーク力をいかんなく発揮し、世界に信頼される大田区のブランド形成をしてきたものと考えております。今後も、大田のものづくりの力を世界に発信し続けていくためには、様々な分野と大田区企業との連携の絆を太くし、製品を世に出していくことが重要でございます。その実現方法の一つとして、議員お話のファンドを組成するという考え方も必要であります。区におきましても検討を進めているところでございます。区といたしましては、大田区のブランドを力強く発信する新たな製品が出現していくよう、区内企業のチャレンジを応援してまいります。
次に、今後の桜を生かしたまちづくりに関するご質問についてお答えをいたします。区内には、これまでの先人たちの取り組みにより、多くの桜の名所ができ、春には多くの区民が桜の開花を待ち望んでおります。区では、近年整備した道路の街路樹や公園等において、シダレザクラやカワヅザクラ、ヨウコウザクラなどの新たな品種の導入にも取り組んでおります。これらは、ソメイヨシノと花の豪華さや風情の面でまさるとも劣らず、さらには樹木の寿命が長い品種でございます。区としては、早春の梅の花に引き続き、様々な桜の花を少しでも長い間、楽しめるような桜を生かしたまちづくりの取り組みを、道路、公園等の可能な場所で、区民とともにさらに進めていきたいと考えます。そして、桜だけではなく、区の花「梅」や18色の地域の花々など、美しい花々が咲き誇る大田区を目指してまいりたいと思います。
次に、新空港線に対する思いについてのご質問ですが、新空港線は、区内の東西交通の分断を解消するとともに、広域的な鉄道ネットワークの強化と沿線のまちづくりに寄与することから、大田区のみならず、沿線自治体に大きな便益をもたらす事業でございます。したがいまして、整備実現に向けては、沿線自治体との連携をさらに深めてまいります。この連携の力も生かしながら、財源確保に向けた東京都との協議を進め関係者合意を図ってまいります。整備主体設立に向けて、私が先頭に立って邁進していく所存でございますので、引き続きご支援をよろしくお願い申し上げます。
次に、羽田空港の機能強化に関するご質問ですが、国は、平成27年7月、8月、12月に、区内6会場においてオープンハウス型の説明会を開催しました。全体で1196名が参加しております。国は、平成28年8月に「環境影響等に配慮した方策」を公表しました。これを受けて、この1月14日には、区役所本庁舎でオープンハウス型の説明会を開催し、約70名の方にご参加いただいたと聞いております。また、国は、新飛行経路運航開始までの間、大田区を含む近隣自治体で説明会を開催するほか、「常設型情報発信拠点」を羽田空港国内線ターミナルに設置しております。区といたしましては、より多くの区民の皆さんに正確な情報が届くことが重要と考えております。安全対策や騒音対策を中心に、引き続き丁寧な情報提供を国に求めてまいります。
次に、羽田空港跡地第2ゾーンに関するご質問でございますが、第2ゾーンの多摩川親水緑地につきましては、平成29年度に詳細設計を実施し、平成30、31年度の2年間にかけて整備工事を行う予定でございます。緑地の供用につきましては、地域の皆様からのご要望も踏まえ、早期に実現できるよう努めてまいります。国土交通省で進めております東京国際空港第2ゾーン整備・運営事業の進捗につきましては、開発を行う民間事業者が設立した特別目的会社である「羽田エアポート都市開発株式会社」と国土交通省との間で、事業協定書及び国有財産定期借地権設定契約書を締結したと聞いております。この事業の動向につきましては、引き続き注視をしてまいります。
跡地第1ゾーンの事業予定者が決定した後の展開についてのご質問ですが、5月下旬に事業予定者が決定しますと、第1ゾーン北側のまちの姿が見えてまいります。決定後は、基本協定や事業契約を締結するなど、平成32年のまちづくりの概成に向けて、必要な手続きを着実かつスピーディーに進めてまいります。空港に隣接する第1ゾーンの立地特性を最大限に生かした区内への経済波及効果が生まれる取り組みについて、事業予定者並びに区内企業、商店街などの皆様とともに、連携を深め、新しいまちづくりを進めてまいります。
次に、
中央防波堤埋立地の帰属問題に関するご質問ですが、私の考えは、「
中央防波堤埋立地の大田区への全島帰属を求める決議」に示された正当で説得力に富んだ論拠と全く同様であります。こうした考えに基づき、江東区との正式協議を重ね、私は主張すべきことを正々堂々と主張してまいりました。残念ながら、お互いの主張が平行線をたどっておりますが、大田区の主張にこそ、法的正当性と客観性があると確信を深めております。本件帰属問題は、まさに争論でございますので、しかるべき「そのとき」を見極めながら、法に定められた手続きにより適切に対処してまいりたいと考えております。引き続き、大田区民71万人の熱い思いを背負い、不退転の決意を持って帰属問題の解決に取り組んでまいります。私からは以上でございます。
◎津村 教育長 私からは、おおた子どもの生活応援プラン及びICT教育に関する4点のご質問にお答えをいたします。
初めに、おおた子どもの生活応援プランにおける教育委員会の取り組みについてのご質問ですが、学習面からは、「世帯年収と学力には相関関係がある」との調査結果を踏まえ、学習カルテの作成と学習相談の実施による児童・生徒の学習状況の把握と助言を行い、ドリルプリントなどにより学習内容の定着を図るとともに、平成29年度は、習熟度別少人数指導や放課後補習教室の講師の増員を行うなど、学力低位層への学習支援を充実させる取り組みをさらに進めてまいります。生活面からは、教員が一人ひとりの子どもと向き合う中で、家庭の状況把握に努め、学校全体で組織的に解決に向け取り組むとともに、必要に応じて教育センターのスクールソーシャルワーカーや福祉関係機関との連携を図ることで解決を目指してまいります。
次に、ICT活用推進モデル校におけるICT教育の効果についてのご質問ですが、ICT活用推進モデル校で明らかになったICT教育の効果といたしましては、電子黒板の画像の拡大表示等の機能により、学習課題に対する興味や関心が高まり、長時間、集中力を保ち続けることのできる児童・生徒が増えたほか、双方向の情報通信機能を生かすことで意見発表が容易になり、児童・生徒が主体的に考えようとする態度が養われました。また、大田区学習効果測定において、期待正答率を超えた児童・生徒の割合が、北糀谷小学校では6年生が6.2%、蒲田中学校では2年生が6.4ポイント上昇しております。このことは、ICT機器の導入が一定の成果を上げたものと考えているところでございます。
次に、教職員のICT機器を活用した指導力の向上についてのご質問でございますが、全ての区立小中学校には、民間の専門事業者からICT支援員の派遣を受けて、機器の取り扱いやデジタルコンテンツの活用について助言を行う態勢を整えており、また、授業におけるICT機器の活用については、初任者教員を対象に研修を実施しているほかに、各校では、教員の中からICT活用推進リーダーを指名し、推進リーダーを中心にICT教育を推進しております。今年度は、中学校のICT活用推進リーダーに対し、集合研修を行い、その研修の成果を他の教員に還元する校内研修を実施させています。来年度は、同様の校内研修を小学校に拡大するとともに、ICT支援員を活用した研修も実施して充実を図ってまいります。また、モデル校が作成した活用事例集を広く周知する等の支援も行ってまいります。
最後に、情報モラル教育の重要性についてのご質問ですが、情報モラル教育は、各教科等の指導にも位置づけられており、また、総合的な学習の時間等においてインターネットの学習を行う際に、情報通信の影の部分も含め、トラブルの原因や加害者にならないようにするために具体的な指導をしております。加えて、学校ごとに子どもたち自身にSNSのルールづくりを行わせるなど、インターネットやSNSとのかかわりについて主体的に考える機会をつくることで情報モラルの向上を図っているところでございます。今後も、指導を粘り強く継続することで、情報モラル教育の推進を図ってまいります。私からは以上でございます。
○大森 議長 会議が長くなりましたので、おおむね20分程度休憩といたします。
ついては、お伺いいたします。今後、受け入れ施設数の拡大のため、大田区として、各診療機関への呼びかけなどの努力が必要であると考えますが、いかがお考えでしょうか。
次に、教育現場での外国人生徒への対応についてお伺いをいたします。大田区は、この10年間で外国人登録者数が31.5%増加しており、それに伴い、区内小中学校に通う外国人児童・生徒も増加をしてきております。国際都市おおたを標榜する大田区としては、彼らとよき隣人として共生を図っていかなければなりません。その上で重要なことは、言葉の壁であります。現在、大田区では、60時間の日本語初期指導のもと、その後のフォローが必要な児童・生徒には、2年間、蒲田小学校、蒲田中学校で日本語学級を用意しております。
つきましては、お伺いいたします。現状の60時間プラス最長2年間の日本語学級指導という対応で日本語の習熟を図ることは可能なのでしょうか。また、今後も外国籍の児童・生徒は増加、多様化、多言語化していくことが予想できます。今後、新たな指導員の確保、蒲田小学校・中学校での日本語学級の規模の拡大などの対応が求められることとなるのではないでしょうか。また、児童・生徒だけでなく彼らの両親が日本語に不自由な場合も多々考えられます。その際の対応もお聞かせ願います。
次に、羽田空港跡地についてお伺いをいたします。来年度から跡地整備の新たなステップとして、
土地区画整理事業が施行者であるUR都市機構により着手されるとのことであります。空港跡地第1ゾーンは、かつては空港のB滑走路が存在していた場所であり、通常の道路と比較して厚い舗装版が存置されていると聞いております。この16.5ヘクタールという広大かつ空港跡地という特殊な土地においてスケジュール感を持って着実に工事を進めていくことが求められます。
そこで伺います。どのような点について配慮をする必要があるとお考えでしょうか。また、区はどのような関与をしていきますでしょうか。
羽田空港跡地第1ゾーンについては、昨年7月に事業内容説明会を開催し、10月に募集要項が公表され、「世界と地域をつなぐゲートウェイとして国内外のヒト・モノ・情報を呼び込むとともに、国内外に日本のものづくり技術や日本各地域の魅力を発信する『新産業創造・発信拠点』の形成を目指す」としております。また、今年5月には事業予定者が決定し、具体的な動きについて区民の皆様にお伝えすることができるとも聞いております。既に第2ゾーンでは、昨年6月に国が事業者を決定しております。提案された概要として、約1700室規模のホテルやバンケットルーム、飲食・物販店等の商業施設やバスターミナルなどが国から公表をされております。このように、羽田空港跡地は、これから大きく変わろうとしているところであります。
そこで伺います。第1ゾーンの事業予定者が5月に決定予定であり、その後、まちづくりが進むこととなるとのことでございますが、その中で区が担う役割と事業者が担う役割、それはどのようなものになるでしょうか。また、公表されている募集要項では、この羽田空港跡地第1ゾーンでのまちづくりにおいて、にぎわいの創出につながる取り組みを事業者に求めておりますが、今後、区内企業や商店街はどのように第1ゾーンを活用していくことが考えられますでしょうか、ご答弁を願います。
次に、公共施設の建て替え、効率化についてお伺いをいたします。区の保有する公共施設のうち、約64%が築30年以上経過しており、今後20年間で多くの施設が更新時期を迎えます。その中で最も割合が多く、早急な対処が必要なのは学校施設であります。現在、大田区公共施設整備計画(後期)により、年2校ペースで改築が進められておりますが、このペースでは、今後30年ほどの期間が必要となります。ゆえに、危機感を持ちながらペースアップを図っていく必要性を強く感じます。また、今後、建て替え時に必要となることは、学校以外の例えば出張所や高齢者施設、放課後子ども教室、中高生の居場所などといった機能を持たせる複合化であると考えております。現在、大田区においては、区立小学校・中学校で複合化をされている施設は数少なく、今後、施設の改築の際には、複合化を進めることが大変重要であると考えております。
つきましては、お伺いをいたします。今後も区立学校の改築も随時行われていくかと存じますが、どのような施設との複合化を行っていくご予定でしょうか。例えば、高齢者施設と子ども施設とでは、基本的に利用時間帯が重ならないわけでありますので、積極的にタイムシェアを推進し、建物の有効利用を図るべきであると考えますが、今後の方針をお聞かせください。
また、大田区内には定数ぎりぎりのひっ迫した学校から、児童生徒数に余裕のある学校まで様々ございます。学校の改築は、1校1校が多額の費用と時間がかかる事業でございます。平成27年に文部科学省から「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引の策定について」の通知がなされ、東京都も学級規模の適正化のため、東京都による新しい学校づくり重点支援事業を開始し、統廃合により設置された公立小中学校を対象に教員の加配や統廃合担当教員の時数軽減措置などの人的支援を行っております。
では伺います。大田区といたしましても、今後、行政コストの削減や機能面を鑑みた長期的な見通しを持って行く必要を感じますが、いかがお考えでしょうか。
次に、新空港線について伺います。先の国土交通省諮問第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申にて、新空港線は「矢口渡から京急蒲田までの事業計画の検討は進んでおり、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等についての合意形成を進めるべき。」との評価を得ました。これは、松原区長のおっしゃるとおり、答申案の中で「すべき」と記載されている都内プロジェクトは、新空港線(蒲蒲線)を含め6路線でありますので、相対的に高い評価を得られたものであると考えられます。しかし、同時に、この答申案の評価は、今後の課題についての指摘でもあります。
現在、関係者間での協議が進められているかとは存じますが、費用負担のあり方について区長のお考えをお聞かせ願います。また、従来の計画は東急から空港まで直通できるものでございましたが、京急蒲田地下からの乗り換えに変更がありました。蒲蒲線の実現は多くの区民の長年の願いではありますが、残念ながら、羽田空港までの時間短縮の要素は減少します。費用対効果分析などを再度行うご予定はありますでしょうか、ご答弁を願います。
最後に、働き方改革についてお伺いをいたします。
今、国における働き方改革実現会議での動き、また、電通の新入社員の方が過労自殺するという痛ましい事件もあり、過去これほどまでに働き方改革が論じられたことはなかったのではないでしょうか。日経新聞社と日経リサーチの調査によりますと、上場企業301社の7割以上の企業が「長時間労働の是正」を働き方改革の最優先事業としているとの記事が出ておりました。なお、その際の調査で次いで挙げられた事項は、「女性の活躍」、「子育てや介護などと仕事の両立支援」であります。この中で、働き方改革は、一時的に企業の負担にはなるものの、回答企業の7割は経営にプラスと回答し、「効果的な働き方が生産性を高める」といった意見も出ております。やっと働きやすい環境を整えることが優秀な人材確保につながるという共通認識が企業間で広まってきたと考えることができます。
このような社会情勢の中、去る2月1日、大田区では、松原区長が「大田区スマートワーク宣言」に署名をされました。このスマートワークとは、限られた勤務時間の中で、質の高い仕事を行い、最大の効果を出す働き方のことを「S・M・A・R・T」の頭文字から、Simple(簡素化)、Mind(意識)、Active(積極的)、Result(成果)、Time(時間)の意味を込められたということであります。具体的な内容としては、意識改革、業務の効率化、事務事業の見直しを三つの改革として進め、まず意識改革として、毎日全庁20時退庁と毎週水曜日のノー残業デーなどの取り組みをスタートしたと聞いております。社会情勢を鑑み、地方自治体としても率先して働き方改革に取り組む姿勢は評価されるべきものであると考えますが、重要なことは、その実効性であります。仕事量が変わらずに長時間労働だけを是正しても、そのしわ寄せは結局職員に回ってまいります。また、適正な人員確保の必要性という視点からも一抹の不安を感じます。これから具体的な業務の効率化、業務事業の見直しなどを進めていくかとは存じますが、この大田区スマートワーク宣言を絵に描いた餅にしないためにも、ワークライフバランスの確保を実現すること、それにより職員一人ひとりの能力を生かし、生産性の向上につなげる視点が必要ではないでしょうか。
そこで伺います。スマートワーク実現に向けた区長の熱い思いをお聞かせ願います。以上で私からの質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○大森 議長 理事者の答弁を求めます。
◎松原 区長 松原 元議員の代表質問に順次お答えをしてまいりたいと思います。
まず、補助金の見直しに関するご質問でございますが、区では、平成28年3月に「大田区補助金適正化方針」を定め、全ての補助金の補助目的を明確にするとともに、「補助率の見直し」や「終期の設定」などにより補助金制度の長期化、既得権化の防止及び自立性の確保を図ることとしております。また、交付目的や対象が類似または重複している補助金につきましては、統合やメニュー化などの見直しを行い、「事務事業の見直し」や「業務の効率化」につなげてまいります。現在、全ての補助金につきまして、方針に沿った検証を行い、「見直しの有無」と「見直すべき項目」について明確にしたところでございます。今後は、見直しの進捗状況を毎年度確認するとともに、定期的な検証、見直しを進め、より効率的かつ効果的な補助金制度を構築してまいります。
次に、商店街振興についてのご質問ですが、各補助金は、商店街のにぎわいを創出し、顧客を呼び込む機会として一定の効果があるものと考えております。平成29年度予算においては、補助金を自主的、効果的に活用できるよう、商店街にとってわかりやすく、申請しやすい制度とし、装飾灯の維持管理助成の引き上げをはじめ、サービス向上、売り上げ増進につながるべく、個店支援や商店街への専門家派遣についても拡充を図ります。特に魅力ある個店の育成が波及効果となって商店街振興につながることから、SNS活用等の情報発信の強化や、次世代を担う人材育成などの施策を着実に実施することで、暮らしを支える商いを盛り上げてまいります。
また、次でございますが、ベンチャー企業や創業者に対する支援メニューに関するご質問ですが、新たな時代を切り開き、産業活性化に寄与するベンチャー企業や創業者は、大田区の産業競争力の底上げに大きく貢献する方々でございます。こうした方々の経済活動が円滑に進むよう、区は様々な支援メニューを用意しております。これから事業を始めようと考えている方々には、必要な知識を習得する場として、創業者支援窓口や、公益財団法人大田区産業振興協会によって実施されております。また、「BICあさひ」の提供や、優秀な創業者を発掘するためのビジネスプランコンテストなど、創業後も手厚い支援を行うことで、企業の成長につなげております。一方、大田区産業プラザ内には、中小企業振興公社、産業技術研究センターなどの都の支援機関が立地しており、区と協力しながら企業の成長を支援しております。今後も、区は東京都の支援機能とも十分に連携しながら、手厚いサポートを展開してまいります。資金面でのサポートについてですが、開業資金支援などのメニューをご利用していただいています。基金の設立につきましては、様々な分野と大田区企業が連携し、製品を世に送り出していく実現方法の一つとして、区においても検討を進めているところでございます。今後も引き続き、東京都や国などとも連携しつつ、ベンチャー企業や創業者が大田区でビジネスをしやすい環境を提供し、区内産業の発展に努めてまいります。
次に、病児・病後児保育の拡充についてのご質問ですが、区では、現在6施設、定員33名で病児・病後児保育施設を開設しております。子どもの健康状態に応じた安全な保育に努めております。各施設の利用率は、ばらつきはありますが、平成27年度は平均57%となっております。一方で、インフルエンザなどの流感期に利用できないなどの課題がございます。平成29年度におきましては、既存施設の定員拡充のための予算を計上しております。引き続き、医師会や医療機関のご協力をいただきながら、新規開設に努めるとともに、既存施設の利用率向上に向けた検討を進めてまいります。
次に、児童・生徒の両親が日本語に不自由な場合の対応についてのご質問ですが、区では、日本語での日常会話が困難な保護者等に対して、初級日本語教室を開設し、習得支援するとともに、国際交流団体19団体と連携してボランティア日本語教室によります習熟支援を行っております。また、micsおおたでは、近年、子育て・教育、日本語教育の相談などが増加し、27年度の多言語相談件数は、2年前と比べて1.7倍増加の1811件となっております。このことから、児童や生徒だけでなく、保護者の視点に立った支援ニーズを把握し、適切な対応を行っていく必要があると考えております。そして、現在、ニーズの高い学校への通訳派遣や学校関係書類の翻訳を行う等、多言語対応にも積極的に取り組んでおります。今後も、外国籍の児童・生徒やその保護者をはじめとした外国人区民が、言葉の違いにより、地域や学校生活での不安や不便を感じることがないよう、コミュニケーション支援をさらに充実してまいります。
次に、跡地第1ゾーンにおける基盤整備のご質問でございます。第1ゾーン内には、既存の埋設物として鉄軌道やライフライン施設等が存置されています。工事の施工においては、既存施設に影響を与えないこと、航空法の高さ制限を遵守することのほかに、近隣住民への環境負荷を可能な限り低減することが求められます。また、鉄道・バス事業者やライフライン事業者、関係行政機関との様々な調整も必要になります。
土地区画整理事業の施行者はUR都市機構ではございますが、区といたしましては、将来の公共施設の管理者として、施設構造や占用調整、建築工事との工事間調整等、しっかりと関与してまいります。また、換地の一部及び保留地については、区の用地になることから、UR都市機構と連携を図りながらスケジュール管理も実施してまいります。
次に、羽田空港跡地第1ゾーンのまちづくりにおける区と事業者の役割についてのご質問ですが、第1ゾーンにおける第一期事業は、官民連携で進める事業として、区が事業対象地に定期借地権を設定して、事業者に土地を貸し出し、事業者がその土地において新しいまちを整備するというスキームとなっております。区は、土地を事業者に貸し出すことだけではなく、この場所において区内や都内、ひいては日本国内へと着実に経済波及効果を広げていくことができるような取り組みを展開し、「新産業創造・発信拠点」を形成してまいります。この拠点機能が進化を続けながら、第1ゾーンの魅力向上に通じた区ならではの地方創生を実現していくため、着実に事業を進めてまいります。
次に、区内の企業や商店街はどのように羽田空港跡地第1ゾーンを活用していくのかという質問ですが、今回の事業者公募は、第1ゾーンにおけるにぎわいの創出はもちろん、地域や地元企業等との連携についても、事業者から提案を求めております。事業予定者が決まった後は、平成32年のまちづくりの概成に向けて、必要な手続きを進めてまいります。今後、事業者と区が新しいまちづくりを進めることはもちろんのことですが、一方で、区内企業や商店街など、地域からも相乗効果が生まれる様々な取り組みを事業者とぜひ連携し、実施していきたいと考えております。いずれにしましても、区内企業、商店街、空港跡地のそれぞれが発展していくことができる取り組みを進めてまいります。
次に、施設の有効活用に関するご質問ですが、区は、平成28年3月に将来を見据えた公共施設の適正な配置に向けた基本的な方向性を示すものとして、「大田区公共施設適正配置方針」を策定し、公共施設の整備を推進しております。各学校の改築時においては、地域の状況や特性を十分に踏まえ、教育環境の充実を図ることを基本とした上で、容積等に余裕がある場合は、それを有効活用し、子ども・子育てを支援する機能、地域力を向上させる機能、区民活動を支援する機能などを複合化することにより、地域コミュニティの活動拠点づくりを進めてまいります。また、学校施設の複合化におきましても、タイムシェアを含めた運用なども取り入れ、施設をより有効に活用してまいります。
次に、費用負担のあり方についてのご質問ですが、関係者間で事業費などの諸課題の整理を行っております。新空港線事業は、都市鉄道等利便増進法の活用を想定しており、国が3分の1、地方が3分の1、整備主体が3分の1の負担となっております。地方負担分の都区の割合につきましては、本年度末までに課題を整理した後、速やかに東京都と協議を進めてまいります。新空港線が整備されることによって、東京圏北西部地域など広範囲な便益をもたらすことから、適切な都区負担割合となるよう東京都に求めてまいります。
次に、費用対効果分析についてのご質問ですが、従来の矢口渡から大鳥居まで一体的に整備する場合の費用便益比は1.6と試算されております。また、昨年4月に公表された交通政策審議会答申第198号における費用便益比は「1.9」と基準値「1.0」を大きく上回っており、新空港線整備は、社会的、経済的に有意義な事業であるとされております。この間、関係者間の話し合いで詳細な部分が固まってまいりましたので交通政策審議会で用いられた需要予測モデルにより、改めて需要予測、収支採算性、費用便益比などの算出を進めております。今年末に一定の結果が得られる予定でございます。
次に、スマートワークに関するご質問でございますが、私は、「スマートワーク」をキーワードに、まずはトップみずからが決意を発信していくという思いから「大田区スマートワーク宣言」をいたしました。スマートワークを実現するために必要なのは、職員一人ひとりの意識と創意工夫を引き出す仕組みであると認識をしております。そこで、まず意識を変えるきっかけとして、「20時退庁及びノー残業デーの取り組み」をスタートいたしました。こうした意識改革に加え、「事務事業の見直し」、「業務の効率化」と同時に働きやすい環境づくりを支援することで、改革の実効性を担保してまいります。これらを同時に進め、業務量の総体を縮減し、より成果を意識した事業展開を行うことで、区民サービスのさらなる向上と職員のワークライフバランスを実現してまいります。私からは以上でございます。
◎津村 教育長 私からは、日本語指導並びに学校の適正規模、適正配置に関するご質問にお答えをいたします。
まず、現状の日本語初期指導及び日本語学級指導による日本語の習熟についてのご質問でございますが、日本語の習熟には個人差がございまして、一人ひとりの状況に合わせた指導を適切に行うという課題がございますが、初期指導の成果の一例といたしましては、日常会話すら全くできなかった中学3年生が60時間の指導の後には思ったことをおおむね伝えることや、平仮名、片仮名の読み書きができるようになって、学校生活になじむことができました。日本語学級では、蒲田小学校で、教科のワークテストが全くできなかった児童が、1年後には国語の読解で9割近い正答率となるなど着実に成果が出ております。また、蒲田中学校では、平成27年度卒業生12人のうち、高校進学10人、就職1人、帰国1名となっており、日本語だけでなく、必要な学力を身につけて進路を決めることができております。日本語指導につきましては、習熟に個人差のあることを踏まえまして、子どもたちが不安なく日本での生活を送ることができるよう、今後も努力をしてまいりたいと考えております。
次に、増加する外国人児童・生徒に対する指導員の確保や日本語学級の規模の拡大についてのご質問でございますが、現在、日本語初期指導については、指導の必要な児童・生徒を全て受け入れておりまして、本年度は8か国の言語に対応しております。蒲田小学校の日本語学級におきましては、平成26年度から全学年を受け入れているほか、平成27年度から1学級を増やして3学級としております。蒲田中学校については、学級数の増は行っておりませんが、毎年生徒数の動向に注意を払いながら運営に努めているところでございます。今後とも、外国人児童・生徒の入学状況を見ながら適切に対応を図ってまいります。
最後に、学校の適正配置に関するご質問にお答えをいたします。現在、大田区の児童・生徒数はわずかに増加をしておりまして、大田区人口ビジョンの将来推計でも、平成72年には、途中増減はあるものの、今年度と同程度の児童・生徒数を見込んでいるところでございます。学校の適正規模及び適正配置は、コストの視点を持つことも大切でございますが、学校規模の大小により教育指導のあり方や学校教育の効果に影響を与えることから、何より児童・生徒の教育環境の観点で検討を加える必要があると考えております。具体的には、必要な教室数や校庭面積を確保できるのかという問題はもちろん、学校規模が大きくなり過ぎないか、あるいは学区域が広がることに伴う通学路の安全や距離は適切かなどの問題がございます。いずれにいたしましても、学校改築に当たりましては、地域のマンションなどの再開発状況を見極めながら児童数の動向予測を行い、これを踏まえて適正規模及び適正配置に努めてまいります。私からは以上でございます。
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○大森 議長 本日はこれをもって質問を打ち切り、延会とし、明2月24日午前10時から会議を開き、質問を続行したいと思います。これにご異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大森 議長 ご異議なしと認め、そのように決定いたしました。
ただいまご着席の方々には改めて通知はいたしませんので、そのようにご了承願います。
本日はこれをもって延会といたします。
午後4時59分延会...