(副委員長) 細 野 弘 康
(委員) 佐 藤 豊 美 栗 原 学 皆 川 英 二 深 谷 成 信
美の よしゆき 高 橋 哲 也 小 林 弘 樹 飯 塚 孝 子
松 下 和 子 串 田 修 平
〇参考人
新潟医療福祉大学副学長 丸 田 秋 男
以上のてんまつは会議録のとおりであるので署名する。
少子化調査特別委員長 五十嵐 完 二
○
五十嵐完二 委員長 ただいまから
少子化調査特別委員会を開会します。(午前9:58)
本日の欠席者はありません。
本日は,先日の当委員会で決定したとおり,新潟県
少子化対策モデル事業効果検証委員会の委員長を務められた
新潟医療福祉大学副学長の丸田秋男氏から,
少子化対策として必要と考えることについてお話をしていただきたいと思います。
なお,本日使用する資料はお手元に配付してありますので,御確認ください。
それでは,丸田教授,席にお着きください。
本日は,御多用のところ本委員会に御出席いただき,まことにありがとうございます。本日はよろしくお願いします。
また,お話の後,委員の質問についてもお答えできる範囲で御回答いただきたくお願い申し上げます。
それでは,よろしくお願いいたします。
◎丸田秋男氏 余り形式張らないで,日ごろ考えていることや,県の
モデル事業を通して得た知見などについても,率直にお話をしたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
40分ほど時間をいただいて,その後委員の方からぜひ質問をいただきたいと思っております。
少子化対策として必要と考えることということで,委員会からいただいたテーマで資料を用意し,お手元に配付しました。
2ページに問題意識を書きました。今年,2019年の出生率が90万人を割り込み,過去最少となることについて,既に御承知おきいただいていると思いますが,86万人程度になることについてどう受けとめていくのか,こういう視点が要るのではないかと考えております。
それから,国が目指している
希望出生率1.8の実現を阻む隘路が随分あるのではないかと考えています。言葉の上では,非婚化や婚姻率の低さ,晩婚化,晩産化とよく言われますが,それは本当の原因ではなく,あくまでも生じている現象で,そのような現象を引き起こしている本当の原因がどこにあるかという視点が要るのではないかと考えています。したがって,出産,育児と仕事の両立がしやすい環境を整えないと出生率は上昇しないという指摘は,指摘として理解はできるのですが,果たしてそれは正しいコメントなのかと疑義を持っています。繰り返しになりますが,本当の原因は何かという視点と,その視点に基づいた議論をしていく必要があるのではないか,このような問題提起もしたいと思います。
安倍総理大臣においても,次元を超えた
少子化対策が必要であるとか,少し表現が変わり大胆な
少子化対策とおっしゃっていますが,では次元を超えた,あるいは大胆な
少子化対策とはどのような対策をいうのかも議論していく必要があるのではと考えています。後ほど申し上げますが,政策資源の
投入規模の増大を含めた対策の必要性について,国においても,
地方公共団体においても議論していく必要があるのではないか,このような認識を持っていますので,3点目として,今申し上げたような問題提起をします。
このような問題意識に基づいて,新潟県
少子化対策モデル事業の検証結果をどう評価するかについても,きょう投げかけたいと思います。そして,本市における
少子化対策のあり方については,どのように議論していけばいいのか,その議論の方向性についてもきょう私の意見を述べたいと思っています。
次に,3ページ,委員の方は御承知おきいただいているとおり,
社会保障給付における
児童家庭関係給付費がGDP比の2%程度になれば,
合計特殊出生率も2%に近づくとの試算が既に行われています。現状についてデータを整理してきました。2017年度の
社会保障給付費は120.2兆円です。
児童家庭関係給付費については8.7兆円,国内総生産に対する比率については1.6%といった状況です。ここを2%程度にまで増大させていくと,金額からすれば10.9兆円,あるいは11兆円近くになっていくだろうと思います。
次に,4ページ,今申し上げたような視点で,では次元を超えた
少子化対策はどの程度の規模になっていくのかをイメージしたもので,少し乱暴な試算かもしれませんが,新潟県
少子化対策モデル事業の例をとり,第1子に対して50万円の出生一時金,第3子に対して200万円の出生一時金を支給するという前提で少し数字をいじってみました。ここに書いてある人数は,平成30年の
人口動態統計による第1子の出生人数と第3子の出生人数を基礎にしています。
全国レベルで捉えると,第1子は2,000億円で,第3子と合わせて4,500億円くらいの予算規模になるのか試算してみました。
それを新潟県で見てみると,第1子,第3子合わせて73億円程度の予算規模になると算定してみました。さらに,新潟市の場合はどうかと。第1子,第3子の人数に対して新潟県の
モデル事業の出生一時金の額をそれぞれ掛けてみると,今ごらんいただいているような規模になると思っています。
この予算規模,あるいは政策資源の
投入規模がどのようなウエートを占めているか,5ページに参考で試算してみました。先ほどお伝えした国の4,526.6億円の政策資源の投入に関しては,国の
社会保障関係費の1.3%程度になるようです。国税に関しては,私が興味があり載せただけですので,説明は省略させてください。
新潟県の73.1億円の
投入規模がどのようなウエートを占めるかについては,県の
福祉保健費の約4%程度に相当すると思います。
新潟市のところに私の算定間違いがありました。27.7億円は,民生費にどれぐらいの計数を掛ければいいかというところを0.023に訂正いただけますでしょうか。民生費の2%程度の
投入規模になると算定してみました。
では,このような2%という
投入規模がどうかということですが,最近新聞紙上にも報道されましたが,東かがわ市が
子育て支援金の制度を大きく変えました。第1子に対して30万円,第2子に対して50万円,第3子以降については100万円を
子育て応援金として予算化したとの報道がありました。東かがわ市の一般会計の予算や民生費の予算を分母として,どの程度を占めているか算定したら民生費の2%程度です。したがって,3万人程度の小さな
地方自治体ではあるのですが,民生費の2%程度を
子育て応援金として資源を投入していると理解すると議論の糸口になると思っています。あくまでも参考数値として捉えていただければと思います。
次に,6ページからは新潟県
少子化対策モデル事業の概要について説明します。2015年から3年間にわたり事業が実施されました。その内容は,①型から⑥型まであり,仕事と
子育て両立支援型に関しては,1法人に対して150万円を支給するタイプで①型です。2つ目は,第3子からの出産に対して200万円の出生一時金を支給するタイプで②型です。③型については,第1子に対して50万円を支給するタイプです。④型については,時間
的ゆとり支援と第3子に対する出生一時金を支援するという時間
的ゆとり支援と
経済的ゆとり支援をあわせた形の事業です。⑤型について,間違いがありました。⑤型を時間
的ゆとり支援と第1子からの
経済的ゆとり支援の
同時達成型に訂正いただけますでしょうか。時間
的ゆとり支援と第1子からの
経済的ゆとり支援が⑤型になります。⑥型に関しては,地域で行う
子育て支援で,
NPO法人などが地域で
子育て支援を行っている場合に150万円の支給をして,地域で子育てに対する安心感を高めてもらうことが出生率に影響するかどうかを検証してみたいということで事業を起こしています。
次に,7ページ,3,実施結果です。第3子からの出産に対する出生一時金と,時間
的ゆとり支援と第3子からの
経済的ゆとり支援をあわせた②型と④型,それから第1子からの出産に対する出生一時金である③型と時間
的ゆとり支援をあわせた事業の⑤型の中でどのような出生件数があったかを取りまとめました。
平成28年度においては111件,平成29年度においては119件,平成30年度においては103件,合わせて333件となっていますが,これは県の立場から一時金を支給した件数と御理解いただければよろしいと思います。したがって,子供の人数に置きかえれば333人の出生があったと御理解いただきたいと思います。その分母は,県が公募して,その公募に対して応募していただいた61法人となっています。
4,
効果検証のための調査については,主なものを列記しておきましたので,質問がありましたら後ほどお願いしたいと思います。
次に,8ページに
効果検証の結果を要約しました。まず,1,
実施事業者における出生数の推移がどうだったかですが,出生数の減少率で検証しました。そうしたところ,国や新潟県の減少率よりも,この事業に応募していただいた
実施事業者における出生数の減少率が小さいということがデータであらわれました。また,比較群として協力企業からもデータをとり,協力企業における減少率よりも
実施事業者における減少率が低いということが明らかになりました。
一橋大学の山重先生の力をおかりしながら統計的な有意差を検証したところ,統計的な有意差は確認がとれました。この事業については,出生数を押し上げるまではいかないものの,底支えする可能性があることが示唆されました。
次に,2,一時金と出生との関係ですが,一時金によって
予定子供数をふやした出生の割合は,50万円支給型で4.1%というデータが得られ,200万円支給型では11.7%というデータが得られました。このことから,出生一時金がもう一人子供をふやすことを後押しする一定の効果を持つものと考えられるというのが
検証委員会での意見の集約でした。
また,50万円,あるいは200万円という支給がどのように使途されているかについては,
学資保険等の形で将来の
子育て資金として貯蓄されていることも確認をとることができました。
次に,3,
職場環境の変化です。時間
的ゆとり支援に対して一定の150万円という事業費を支給して,各事業所から取り組んでいただきましたが,事業の取り組みにより,
就業関連規則や休暇の
取得状況等の変化が確認されました。仕事と子育てを両立しやすい
職場環境が着実に整備されてきているという事実も
効果検証の中で確認されましたので,そこに添えておきました。
次に,9ページ,4,意識調査から見えてきた少子化の原因です。冒頭で本当の真の理由は何なのかという検証の視点がありましたが,そこに関して,次の3つの不安が大きく作用していることが見出されました。1点目は,子供を育てる所得を十分得られるだろうかという経済的不安,2点目が,子育てや仕事の時間を十分確保できるだろうかという時間的な不安,3点目が,自分は子供を育てられるだろうかという精神的な不安です。この3つの不安が少子化の大きな要因で,言葉をかえると真の要因ではないかというのが
効果検証委員会での結論です。
次に,5,「
経済的ゆとり支援」が
予定子ども数を高める効果です。
経済的ゆとり支援が
予定子供数を高める効果があるか分析を行ったところ,一時金の金額がふえるほど,子供をもう一人持ちたいという気持ちになる人はふえます。また,比較的少額の一時金であっても,子供をもう一人持ちたいという気持ちになる人は間違いなく存在していました。それから,今仮に2人お子さんがいる家庭が,もう一人子供を持ちたいという気持ちになるためには,やはり必要な一時金が増加するという傾向も見られました。その一方で,一時金が幾らであっても
予定子供数をふやそうとは思わないという回答があったことも事実です。
次に,10ページ,6,「時間
的ゆとり支援」が
予定子ども数を高める効果です。時間
的ゆとり支援のため応募していただいた事業所に対して150万円の助成を行いながら取り組んでもらいましたが,時間
的ゆとり支援が
予定子供数を高める効果があるかどうかも検証してみました。男女ともに
特別休暇制度が導入されていること,育児に関する休暇,休業がとりやすいこと,子育てを応援する雰囲気がある職場であること,子供の病気などの急用が入ったときに職場で柔軟な対応ができること,これらを高く評価する人は
予定子供数が多くなる傾向も確認されました。
次に,7,地域の
子育て支援の効果です。150万円の助成をしながら,地域の
子育て支援が
少子化対策になるのではないかという仮説から検証を行ったものです。ここは,正直,こういうことなのかと委員の中で再認識させられた検証でした。地域の
子育て支援への参加を通じて子育てに対する体力,気力を回復することができた,子育てへのストレスを減らすことができた,子供がいなければできない体験をすることができたという項目への回答の値が大きくなれば大きくなるほど,もう一人子供を育てたい,育てられるという気持ちにつながることを統計的に検証することができました。
さらには,ここもポイントかと思いますが,地域の
子育て支援への参加を通じて子育てに対する体力,気力を回復することができた,子育てへのストレスを減らすことができた,子供がいなければできない体験,喜びを体験することができた,自分の子育てが地域から支えられていると思った,実感したことから将来に対する経済的不安も何とかなるかもしれないと思った,というような回答がありました。確かに経済的な不安を解決していくという大きなテーマはあるのでしょうが,その一方で,地域における
子育て支援を通して子育てしている方々の体力,気力の回復,それからストレスの減少,さらには子育てすることによって得られる楽しみや喜びの体験,そして身近な地域において具体的に支えられているという実感が持てれば,将来に対して経済的な不安があったとしても,それは何とかなるのではないかという気持ちを引き起こす強い要因になっていることも統計的に検証することができました。
次に,11ページ,8,
少子化対策のあり方についてです。総論的になってしまいますが,
経済的ゆとり支援,時間
的ゆとり支援,
精神的ゆとり支援を地域,企業,市町村,都道府県及び国がそれぞれの役割を明確にして,連携,協力しながら
子育て支援に取り組んでいく
社会づくりが必要となるというのが1点目です。
2点目は,適切な表現かどうかはお許しいただきたいと思いますが,
経済的ゆとり支援については,我が国の
少子化対策において欠いていたという認識を持たざるを得ませんでした。出産,子育てのための一時金が
予定子供数を
理想子供数に近づける政策として有効となる可能性が示唆されましたので,既に述べた政策資源の
投入規模について議論していく視点が要るのではないかというのが2点目です。
3点目に,時間
的ゆとり支援については,女性は,子育てのための時間を確保できる安心感を得られる
職場環境を,男性は,子育てに参加しても職場での評価が下がらない安心感を得られる
職場環境を評価する傾向が見られました。ここに対する具体的な施策が展開されていけば,出生率を高めていく効果があるのではないかと理解いただいてよろしいのではないかと思います。
最後に4点目,
精神的ゆとり支援についてですが,地域の
子育て支援の取り組みに参加し,子育てのストレスを解消してくれる活動や,自分の子育てが地域から支えられていると感じること,子供を持つ喜びを経験することで,子育てに対する不安が緩和され,出生意欲が高まることが示唆されました。
地方自治体が地域の
子育て支援の取り組みを政策的に支援して,
子育て支援ネットワークが充実することで,子育てに関する不安の軽減,出生意欲の高まりにつながることが期待できるということが
検証委員会での最終的な意見の集約でした。
次に,12ページ,視点を変えて,ここからは私の意見になります。私の大学では,県からの要請もあり,若い人たちが
人口減少社会にどのように立ち向かっていけばいいのかという視点から,
学生たちとの議論を行ってきた経過があります。そのような若者の声を反映させた意見を私なりに整理してみました。お叱りを受けるかもしれませんが,素直に,率直に,若者を大切にする
まちづくりはどういう方向性なのか述べたいと思います。
4点あります。まず,高校卒業であれ,
専門学校卒業であれ,大学卒業であれ,新潟市に就職する若者に対する
リスペクトと,具体的な
ソーシャルサポートがあっていいのではないかと考えています。
矢印は,稚拙な具体例になってしまうのですが,例えば,私どもの大学を卒業して新潟市に就職する看護人材,介護人材,福祉人材,あるいは
リハビリスタッフの人材に対する市長からの感謝状があったらうれしいというのが
学生たちの素朴な声です。
学生たちは,本当にいろいろなニーズを抱えていて,我々大人が考えるニーズと若い
学生たちが考えるニーズには大きなずれがあることもうかがえました。若者の声を聞き,彼らにとって必要な情報を提供する
仕組みづくりを検討してもよいのではないかというのが1点目です。
次に,新潟市に就職して1年たちます,あるいは3年たちます,5年たちます,7年たちますなど,
新潟市民として新潟市で市民税を納めながら頑張ってくれている若者に対する
リスペクトと,具体的な
ソーシャルサポートがあっていいのではないかというのが2点目です。感謝状については省略します。
また,結婚したいと思える人との出会いの機会がないと
学生たちも実感しているようです。私が結婚したいと思える人とどこでどのように出会えばいいのかという率直な意見がありました。具体的にどうしていけばいいかは,これからの議論になろうかと思いますが,大人が考える仕組みではなくて,若い人たちがどういうニーズを持っているのかきちんと把握した上で,彼ら,彼女らが結婚したいと思える人との出会いの機会をどう提供していくのか,ここも検討があっていいのではないかというのが2点目です。
次に,既に新潟市においては取り組んでいただいているのですが,
新潟市民として結婚して新しい生活をスタートする若者はたくさんいますが,
新潟市民として新潟市で結婚する若者たちに対する
リスペクトと
ソーシャルサポートがあっていいのではないかということです。稚拙ではありますが,結婚式のときに市長から祝電が届くだけでも
学生たちはうれしいと感じるようです。
家賃等補助については,既に新潟市で取り組んでいただいています。ここも後ほど議論したいのですが,その一方で,多様性を受け入れる
職場環境づくり,若者たちが望んでいる多様な働き方,あるいは多様な休み方がどういうことなのかをもう少し検討しながら,それらが受け入れられる
職場環境づくりがあっていいのではないかというのが3点目です。
次に,高校や専門学校,大学を卒業し,
新潟市民として就職し,結婚して子供を産み育てる若者に対する
リスペクトと
ソーシャルサポートがあっていいのではないかというのが4点目です。例えば,印鑑のような記念品や先ほど述べた新潟市の財政規模で投入できる資源を活用した出生一時金,子育てや生活全般に関する
ワンストップ相談窓口の設置ですが,これに関しては,子育てなんでも
相談センターきらきらとの関係で後ほど説明します。
ここでいう
ソーシャルサポートですが,安心感を持ったり,喜びを感じたり,楽しいと感じるのは,まさに情緒の部分ですので,情緒的な支援の必要性について改めて認識していく必要があるかと思っていますので,
ソーシャルサポートとは,情緒的な支援,情報的な支援,具体的な
道具的支援と説明しました。
次に,13ページ,これからの
少子化対策のあり方の議論に向けてということで,サブタイトルをつけました。子供を産み育てたいと思う人を大切にする
まちづくりを
新潟市民と一緒になって考えていくプロセスが必要ではないかと考えていますので,これからの議論の方向性に向けて幾つか意見を述べたいと思います。
先ほども言ったように,未婚化や晩婚化や晩産化は,あくまでも症状にしかすぎませんので,それを引き起こしている3つの不安が真の原因になっていることについて,きちんとした議論をしたいというのが1点目です。例えばと書きましたが,将来の子育てに関する経済的な不安をカバーしてくれる可能性がある地域の
子育て支援への参加を後押し,あるいは保障する時間
的ゆとり支援の施策を創設する。
イメージが委員に届くかどうかわかりませんが,例えばある区における健診の場面などを見てみると,
お母さんたちが早く会場に来て,少しでも早く健診を受けて,健診を受けた後は直ちに職場に戻っていく実態があります。全部休暇制度という形がいいのかどうかはよくわかりませんが,願わくば,少なくとも健診のときには1日お子さんと一緒に健診の会場に来て,育児やしつけに関する相談ができ,その後用意されている遊びの場で,ほかの
お母さんたちと安心して子育てして一日過ごすことができるようなまちであることを実現していくための時間的ゆとりを生み出すための支援策の検討があってもいいのかと思っています。
県の
モデル事業でも,一事業者に対して150万円の助成を行って,その150万円を活用しながら,若いお母さんや
お父さんたちが子育てしやすい
職場環境をどうつくるか検討して,具体的に取り組んでいただいたことが,子供の出生に大きな影響を与えていることもわかってきましたので,具体的な施策を検討できたらいいというのが1点目です。
次に,極めて困難性が高いと思いますが,未来への投資という考え方や,未来への投資という価値を市民,地域,行政,企業と共有する
プロセスづくりについて議論できないかというのが2点目です。例えば行政,企業,地域,市民等が一緒になって,一体となって
子育て支援の費用の支出を増大するための
まちづくり施策はどういったものなのかイメージしていくようなチャレンジができればという思いで,2点目として意見を述べました。
次に,14ページ,3点目です。先ほど
リスペクトという言葉をたくさん使いましたが,子供を産み育てることを社会がもっと
リスペクトするような
まちづくりが必要ではないかと思っています。子育ての喜びや地域の中で支えられているという実感を持てれば,少子化の克服に向かう可能性があることは県の
モデル事業でも検証できました。そのことを評価して,新潟市においても,このような視点でどのような施策に取り組めるか議論したいという思いを書いてみました。
例えば,安心して子育てできる
コミュニティ感覚,センス・オブ・コミュニティーを高めていくために新潟市のオリジナルな取り組みを展開するという視点があってもいいと思います。例えば,子供の笑顔があふれる
ストリートづくり,あるいは市役所の中や市の公共施設の中に,お母さんやお父さんと子供の笑顔がいっぱいのフォトをたくさん並べ,子供とお母さん,お父さんのすてきな笑顔がどこに行っても写真などを通して目に触れることができるような情緒的な支援,あるいは
情緒的支援と
道具的支援の合わせわざのような取り組みがあってもいいのではないかという視点で述べました。
最後に,新潟市からいただいた少子化克服に向けた取り組みについては大きく評価したいと思います。その取り組みの全体像の中に横展開していく具体的な方策を議論したいというのが4点目の意見です。今お手元に子育てなんでも
相談センターきらきらのパンフレットがありますが,年間で1,700件くらいの相談があります。主たる相談は,電話,メール,ファクシミリで,必要があればコーディネーターが各区や学校に出向いてお母さんの不安や悩みを解消するための具体的な仕事をしています。子育てなんでも
相談センターきらきらのパンフレットの中にもありますが,ワンストップの総合相談機能,それから横展開していくためのコーディネーター機能,さらには横展開に必要な情報を関係者と共有していく機能,そしてその取り組みの中から
お母さんたちが安心感を得たり,ストレスを解消したり,地域の方々から支えられているという実感を持つことが新潟市における
少子化対策についてどのような効果を及ぼしているのか,こういったことについての調査研究機能を持っていますが,そこを何とか拡充していく考え方が持てないかと思い,そのように書きました。
既に,子育てなんでも
相談センターきらきらに関しては,8年間における取り組みの成果について中間報告書を出しています。そのことをベースにして,新潟市医師会の研究助成事業に応募しました。2019年から2021年までの3カ年で,子育てなんでも
相談センターきらきらが有している機能が新潟市の子育て施策,あるいは
少子化対策に対してどのような効果を持っているか,もう少し実証的に研究しようということで,今取り組んでいます。既にこの委員会の中でも議論があったようですが,妊娠・子育てほっとステーションをつないでいくような役割,さらには育ちの森やドリームハウス,中央区の親とよいこのサポートステーションはっぴぃmamaはうすの活動などをネットワーキングし,子育てしている若いお母さんやお父さんからの相談と安心を確実に保障していくようなコーディネート機能について引き続き議論していってもよいのではと考えて述べました。
以上,少しまとまりがないといいますか,率直過ぎるかもしれませんが,説明させていただきましたので,ぜひ活発な意見を交換できればと思っています。
○
五十嵐完二 委員長 大変ありがとうございました。
ただいまのお話についてお聞きすることはありませんか。
◆飯塚孝子 委員 貴重な意見をどうもありがとうございました。2ページのはじめで先生は,非婚,晩婚,晩産について現象と捉えて,本来の原因は別の角度できちんと捉えるとおっしゃいましたが,私もこれはとても必要なことだと思います。現在の少子化の現象としては,団塊の世代の第1次ベビーブームがあって,第2次ベビーブームがあり,本来であればその世代が次の第3次ベビーブームという3段目の膨らみをつくってしかるべきなのに,それが全くない状態になっています。その分析はどのようにしているか,最初に伺います。
◎丸田秋男氏
検証委員会の中での分析はそこまではいっていません。ですが,今委員がおっしゃったように,その世代の子供を産み育てたいと思っている方々の所得の低さがあるのではないかとの問題意識で分析する視点は持ちました。ですが,残念ながらそこをきちんと説明するだけの検証作業までは届きませんでした。私自身の認識だけではなくて,他の研究者のデータなどを見ても,若い方々の所得の低さは出生と大きく関係があるのではという指摘は妥当ではないかと考えています。
◆飯塚孝子 委員 私もそう思います。市の調査でも出ているのですが,その所得の低さの背景に,正規か非正規かがあり,将来設計が立てられるかどうかがあると思います。ちょうど今就職氷河期の問題がクローズアップされていて,30代後半から40代半ばぐらいの世代の就職も大事だと思うのですが,産む時間に限りがあることからすると,就職氷河期のときに政策的に非正規の派遣労働の大改悪が行われた影響は大だと思っているのですが,先生はいかがでしょうか。
◎丸田秋男氏 同じ認識です。国民生活基礎調査をごらんいただいてもわかるように,子供たちのいる世帯の平均年収が700万円ぐらいです。一方で貯蓄の額は極めて少なくて,借金の平均が1,000万円を超えています。子供を産み育てる世代の方々は夫婦共働きでの平均所得が700万円ぐらいだとしても,分布をとっていくと実はもう少し議論ができるのかと認識しています。委員のおっしゃるような視点で,新潟市の現状がどうなっているのか,データで分析できるかどうかはわかりませんが,議論していく大事な視点ではないかと考えています。
◆飯塚孝子 委員 現時点での話で,本市の職場を考えたときに,教育委員会の資料で,同じ仕事だが,正規職と臨時の学期雇用があり,20代から30代の方たちを抽出し,その方たちが産休,育休がとれているかを見たとき,常勤の方はきちんと産休も育休もとれたが,そうでない不安定雇用はそういうことができないとあらわれてしまったので,まずは雇用形態がとれない理由だと私は思い,
職場環境は極めて大きいと思うのですが,いかがでしょうか。
◎丸田秋男氏 実は
検証委員会の中でも法定休暇の視点ではなくて,事業主が,正規であれ,非正規であれ,特別休暇をどのように整えてくださっているのか,それから法定休暇の中であっても1時間で年休がとれるなど現状がどうなっているかという観点から検証していく必要があるのではという議論になりました。十分な分析ができていませんが,問題意識としては,非正規であれ,正規であれ,子供にとって休みたいときに休める,そういう時間
的ゆとり支援を生み出すような施策に対する取り組みは重要であると考えます。
◆飯塚孝子 委員 最初の子育てできつい,大変だと学習すると,2番目は頑張れないというしぼみがあるので,県の一時金の
モデル事業では最初の支援をきちんとする仕掛けで,第1子は50万円,第3子以降は200万円となっているのかと思いますが,これは,第1子はそれなりにで,第3子は大変だから200万円ということで出た数字でしょうか。
◎丸田秋男氏
モデル事業を設計するときは,おっしゃるように,第1子がとても重要なので,第1子からの支援が必要だろうとなりました。出生一時金をどの程度支給できるかという別の議論もあり,考え方として第1子がとても重要で,第1子に対する安心感と喜びのようなものをうまくサポートできれば,きっと第3子につながっていくだろうということです。将来の高校進学や大学進学につながるような投資を第3子から投入していくことでどんな効果が出るかというのが設計段階での考え方でした。
◆飯塚孝子 委員 仕事をしている立場からすると,地域の支援も重要ですが,職場の風土も大事だと思います。私も30年の経験しかないのですが,前の仕事をしていたときに,ある職場は出生数が平均3人でしたが,ある職場は1人という数値が出ていました。先輩たちが最初に3人産むと,次の世代も3人ぐらい産めるのですが,マタニティードレスも着ないで切迫流・早産で入院するような職場や,不妊治療しながらではだめな職場など最初でつまずく職場があり,
職場環境や風土はとても大事で,企業の認識やレベルを上げていくことはとても大事だと思うのですが,いかがでしょうか。
◎丸田秋男氏 賛成です。同意見です。
◆美のよしゆき 委員 ありがとうございました。当委員会は少子化がなぜ起こっているかについてしっかり調査していかなければいけないと思っていた中,学術的見識かつ具体的なデータが整っていて,正直我々のやるべきことの半分は先生がお話ししてくださったというぐらいのデータを提供いただけたと思います。その中で前から委員長にお願いしているとおり,我々は調査研究にとまることなく,新潟市政の政策展開まで持っていきたいところですが,今回いただいた資料の後ろ2ページに,要因となっている問題について具体的に議論すべき論点が整理されています。また,その1つ前のページには政策的な対応についても具体的に示されています。せっかく先生が来られていますので,委員長の計らいの中で,後ろ2ページの各項目についてそれぞれ委員の考え方などを取りまとめていただくことによって,今後の委員会の進め方がよりいい形になると思います。そのような進め方をしていただくことはできますか。1個1個について今質問していくと続かないので,この4つの項目の順番で先生と議論を進めることが許されますか。
○
五十嵐完二 委員長 皆さん,どうでしょうか。
◆皆川英二 委員 この4点の中に,未婚化や晩婚化,晩産化とあります。いろいろな関係があるので,ただ結婚すれば子供ができるわけではないと思うのですが,結婚しても子供を産まない夫婦もいますし,結婚しても25%ぐらいが離婚しています。子供なしで離婚する人もいるし,第1子を設けて離婚する人もいて,そうすると,例えば第2子,第3子が欲しくてもつくれないなど,いろいろな問題があるので,なかなか難しい問題ですが,私はひとつの原因としてそのような離婚問題もあると感じるのですが,いかがでしょうか。
◎丸田秋男氏 必要な視点だと思っています。ですが,そのことと具体的な出生,または第2子,第3子の出生との関係に関する分析はまだ手がけられていません。先ほど委員から御指摘があったように,庁内の担当課の分析や,庁内の横断的なタスクフォースやワーキングチームの分析を超えてでも,委員会の中で私どもも活用しながらデータの分析をしたり,今おっしゃったように欠けている視点があり,データ分析がないようであれば,特別委員会のもとで市民や我々も参画ができる分析や政策づくりに関する議論の場をぜひ用意いただきたいというのが私自身の個人的な本音です。
○
五十嵐完二 委員長 先ほど美の委員が今後の議論について提案された,先生が提起された視点での議論は,きょうこれからという意味ではなくて,今後の特別委員会の中でこういう視点に基づいて議論していったらどうかと受けとめてもいいのでしょうか。
◆美のよしゆき 委員 きょうもう少し時間があるのであれば,まず先生がいらっしゃるうちにこの4つの部分について個々の委員の考えをしっかりと確認し,先生のアドバイスをいただいた上でと思いますが,とても大きなテーマですので,時間が必要であればデータを整理してから次回でも,もちろん結構だと思っています。
○
五十嵐完二 委員長 時間もあるのですが,今いきなりというのは大変かと感じるのですが,いかがでしょう。
◆美のよしゆき 委員 では,その件で進めてもいいでしょうか。
○
五十嵐完二 委員長 はい,どうぞ。
◆美のよしゆき 委員 最初に先生がおっしゃった1項目め,少子化の真の原因は何でしょうということについて,先生は経済的不安,時間的不安,精神的不安という3点をお示しになっています。そして,その下の提案で,経済と時間,その他の関係の中で,働いている女性が多いと企業にアプローチしていくことが非常に重要で,さらに,企業に対してアプローチする中では,少子化が社会に与えるダメージの大きさを企業から理解いただき,かつ行政的には企業に対しても支援していくぐらいの進め方をしなければいけないという論点で進まれていると思うのですが,この点で確認してもよろしいでしょうか。
◎丸田秋男氏 今委員のおっしゃったとおりです。そういう認識です。
◆細野弘康 委員 先生,ありがとうございました。地域で子育てする視点があると,出生率を含めて押し上げるというお話だったのですが,先ほど子育てなんでも
相談センターきらきらの話もありましたが,民間,NPOなども含めて,これはどういったものを指しているのかもう少し具体的に教えていただければと思います。
◎丸田秋男氏 まず,今回の
モデル事業の検証におけるデータの基礎になっているのが,
子育て支援の取り組みに参加された若いお母さん方,若いお父さん方からのアンケート,意識調査です。したがって,意識と実際の出産に向けた行動が一致しているかどうかは,実は確認がとれていません。ですが,意識レベルにおいては,身近な地域の中で相談に行ける場所,それから親子一緒に参加できる遊び場,さらには若いお母さん方同士で交流が持てる場などがあって,子供を持った喜びを自分だけの自覚ではなくて,他者からも評価してもらえるプロセスが地域の中にあれば,もう一人子供を産んでもいい,それから将来に向けた経済的な不安が少しあっても,それは何とかなるかもしれないと思っている若い方がいることが,間違いなく確認されました。
それを一つのエビデンスとして具体的な施策を考えていくときには,新潟市には大変豊富なソーシャルキャピタルがあると思っています。この委員会でも話題になりましたが,育ちの森であったり,ドリームハウスや,よいこの小児科さとう,それから双子,三つ子をお持ちの方々の集まりなど,たくさんのソーシャルキャピタル,社会資源があるのですが,そこをつなぎ合わせていく仕組みがあるようでないのです。市社会福祉協議会ではそこをつないでいく必要があるので,ネットワーク化に取り組んでいきましょうということで,子育て応援,
子育て支援をしていただいているNPO,あるいは民間団体との情報交換と,若い
お母さんたちがそこで交流できるような場づくりは進めてきているのですが,なかなか拡大できない状況にあります。これは,私の認識ですが,ぜひ委員からもその辺の検証をしていただいて,
お母さんたちが安心して子育てできる地域づくりには,何を整えて,システムとしてどのように整えていけばいいのか,研究していく必要があるのではという意見です。