最初に、簡単に
都市緑化が注目されている背景ということで、
ヒートアイランドと
都市緑化ということで、まず簡単にイントロダクションをお話いたします。
これが、東京の
マップですが、30度以上の時間が何時間あるかどうかを示した
マップで、1981年と1999年の比較で、赤いところが30度以上の時間が夏に多い地域ですが、81年に比べて非常に
高温化が進んでいるということがあります。
皆さん既に御承知かと思いますが、
ヒートアイランドというのは、こういう
温度の等
値線図を書いたときに、周りよりも
市街地に高い
温度の
エリアが島のように出てくると、それで熱の島を
ヒートアイランドと、もともと呼んでいたわけです。ところが、これが島どころか東京などはつながって大陸と化して、埼玉の方までつながっているということがあります。
これは1920年から2020年までの100年間で東京の
気温がどのように変化しているのかを示しています。平均の取り方によって違いますが、大体2度から3度くらい上がっています。
地球温暖化とよく騒がれておりますが、地球の
温暖化というのは100年間で1度も上がっていない。0.6度とか、それぐらいなんですね。そうすると東京の
気温の上がり方は、数倍の
スピードで上がっていると。それでは、仙台はどうかといいますと、仙台も同様に100年で2度から3度上がっているということで、東京だけではなく、
大都市部というのは、地球の
温暖化の数倍の
スピードで
気温が上がっていると。これが大きな問題になっていて、一つは、
東京電力によると、東京などは1度
気温が上がると160万キロワット
電気消費量がふえる。そうしますと中規模の
原子炉2基ぐらいを新たにつくらないといけない。1度上がるということは、それぐらいの大問題ということです。
大気汚染がふえるということは、
温度が上がることで
光化学反応が活性化して、
光化学スモックがふえると。また、今すごく騒がれているのは、
熱中症ですね、屋外を歩いている人が
熱中症になって運び込まれると。市民にとって
東京電力が困っても別にどうってことはないと思うんですが、実際に、自分が歩いていて
熱中症になるというところで、
マスコミや市民が大問題だと騒ぎ出した。この点が非常に大きいと思うんです。
今、
ヒートアイランドというのは、いろいろな角度から、いろいろな人が研究を行っていると。
小泉内閣の
総合規制改革会議の重点6分野で、環境、
都市再生という二つの
テーマがあって、この二つがマッチした
テーマとして、
ヒートアイランドの解消という
テーマが環境の中で取り上げられていると。それに先立って、有名なものですが、東京都は
自然保護条例を改正して、2001年だったと思いますが、
敷地面積が1,000平方メートル以上の
建物は、地上だけではなくて
屋上も
緑化するということを条例で決めてしまったんですね。これが非常にインパクトがあって、多分、他の自治体も追随する動きがあるということです。ここに、ここ数年の流れを書いていますが、この東京都が先鞭をつけて、
屋上緑化の
義務化をし、2001年には
ヒートアイランドを公害の一つだと位置づけたと。それから
学術会議の提言があったり、2004年になりますと政府の関係府
省連絡会議で
ヒートアイランド対策大綱があって、
国土交通省住宅局が
建築設計のためのガイドライン、それから2005年早々に
建築学会の提言を出す予定でおりますが、その案がお手元に配付した資料です。これは、私が主査で、渡辺さんが幹事をしており、
日本建築学会の
都市気候対策委員会がこの提言を策定しております。この提言の中に我々がいろいろ考えたことが盛り込まれておりまして、別添のこの資料は、この提言を出すために行いましたシンポジウムの資料で、各論が詳しく述べられておりますので、後で時間のあるときにごらんください。
それから仙台市におきましても、この
都市緑化の問題でいろいろ取り組まれておりまして、先ほど御紹介いただきましたように、我々が依頼を受けて、2003年に
若林区役所の
屋上緑化の測定、2004年は
ガス局の
屋上緑化と
中心市街地の
街路樹の測定を実施させていただきました。その測定結果について簡単に御紹介させていただきます。
街路樹と
屋上緑化としまして、一口に緑といってもどう違うかということで、昨年8月に行いました実測の結果をまず御紹介いたします。実測の対象は、このように
東二番丁通、定
禅寺通、
広瀬通がありますが、この
エリアの中のいろいろな場所で測定を行いました。
ポイントAはアエルの
屋上、
ポイントBは
ホテル定禅寺の
屋上です。
研究グループは、私と渡辺、それから
東北大学の地理の
グループにも協力いただきまして測定をしました。これは、当日の
気象条件ですが、8月3日、4日とも非常に晴れた日で
気温もそれなりに典型的な夏の日であったということでございます。
街路樹の
効果ですが、これが
広瀬通で、ここが定
禅寺通、
東二番丁通で、星印がついているところが
測定点になります。定
禅寺通と
広瀬通を比べて、同じ方向にある道路ですが、緑の多い道路と少ない道路でどのように違うのか、12時、18時、24時の
気温を示しています。
気温──地上1.5メートルの高さですが、例えば、
広瀬通と定
禅寺通を比べると、定
禅寺通が2度くらい低いということになります。次に定
禅寺通のこのアングルの
熱画像を見ていただきますと、手前の
アスファルトは45度くらいあるのが、この辺に入ると30度とかになっており、劇的に涼しくなっている。
自動車の
表面は高いですが、極めて涼しい空間がつくられていると。
次に
体感温度をお話いたしますが、人間が感じる
温冷感というのは
気温だけではなくて、風速と湿度と放射──周りの壁とか地面の
表面温度が高いと放射で赤外線が直接来るんですが、こういうものを総合して暖かいとか涼しいとかと感じるのですが、この
体感温度がどれぐらい違うのかというのを見ますと、同じ向きの道路ですが、樹木があることによって7度ぐらい
体感温度が下がっていると。7度くらい
体感温度が下がっていると非常に
効果があり、非常にしのぎやすいと。
次に断面で、
ホテル定禅寺と
県民会館を挟んで非常に細かく測定した結果をごらんください。
これは、コンピューターの
シミュレーションですが、日中のパターンを示しておりまして、日中は、南の方から風が吹いて北側の
建物にぶつかって、道路上の
排気ガスは南側の方に流れてくるというような感じになっています。次に
窒素酸化物の測定結果ですが、日中は南側に高い濃度が出て、夜間は、北側に高い濃度が出るということになります。次に定
禅寺通と
東二番丁通で
自動車の
排気ガスから出る
二酸化窒素の1日の
平均濃度を比べたもので、近くの錦町公園は20
パーツ・パー・ビリオン──ppmの1,000分の1ですが、
東二番丁通だと30
パーツ・パー・ビリオン──、定
禅寺通は40
パーツ・パー・ビリオンになると。定
禅寺通の濃度が高めに出るということです。その日の
交通量を見ると、
東二番丁通が多いんですが、定
禅寺通が高く出るということで、やはり定
禅寺通はケヤキがふたをして日差しを遮って熱的には非常に快適なんだけれども、濃度が高めに出るという結果が出ています。
ここまでが
街路樹の
効果ですが、まず、
日射を遮蔽して
歩行者の
体感温度を非常に下げると、
広瀬通に比べて
体感温度が最大7度下がると、一方
空気汚染の
効果は、上がふさがっているので濃度が高く出ると、そのため
風通しというのが大事というのがこの結果になっています。
次に仙台市
ガス局ショールームの
屋上緑化の測定結果を説明します。
ガス局ショールームは、既に
皆さんはごらんになっているようですので、細かい説明は必要ないと思いますが、このように
屋上の部分が
緑化にされています。これは、
渡辺先生の学生がつくられたもので、影がどのようについているかというもので、朝の8時にはまだ影がついていて、10時には完全にひなたになって、3時くらいになるとまた影が差していくと。こういうところで、必ずしも1日中、日が差しているわけではないんですが、そこで測定をしたということです。これが各時刻の
熱画像で、
緑化されたところと、
緑化されていない部分です。グラフで確認しますと日中の一番高い時で
緑化されている部分の
表面温度が15度くらい低いという結果になっています。
次に、
ガス局ショールームの
屋上と
広瀬通の舗道のそれぞれ高さ1.2メートルのところで、どれぐらい違うかを見ますと、午後に1度くらいの差があって
屋上の方が涼しいと、これが
屋上の
効果かと思います。
次に、大気の
加熱量──
屋上の
表面温度が空気よりも高いと、熱が空気に伝わって大気を加熱するわけですね。普通の
屋上は
表面温度が高く、それが
ヒートアイランドの一つの原因になるわけですが、
緑化をすることによって
表面温度が下がるので、空気を加熱する量が減り、
ヒートアイランドを減らすわけですが、その
効果を計算した結果、
緑化をすることによって大体半減していると。
緑化面積1
平米当たり、100ワットくらい大気を加熱する量が減ると。
平米当たり100ワット減らすために
緑化した方がいいかどうかは、なかなか判断が難しいところですが、確かに
効果はあると。
次に、
屋上を
緑化することによって部屋の中に入ってくる熱量がどれくらい減るかと、これは冷房に使う
エネルギーの消費に直接関係することになります。この二つが
ガス局の
緑化をしていない部分で
屋上から部屋の中に入ってくる熱量、
屋上1平方メートル当たり、何ワット入ってくるかで、確かに、
屋上から部屋に入ってくる熱量は少ないということになります。ただ、
ガス局ショールームは、先ほどの図にありましたようにもともと
断熱剤が入っていますので、差はこの程度になっています。もし
断熱剤がない場合には、これぐらい入ってきます。そこで、
断熱剤をしていなものに
緑化をすると熱量は約60%減ります。このようなことで、もともと
断熱効果の悪い
建物を
緑化すると
効果はありますが、
断熱効果が良くなってくると
緑化をしてもその
効果は小さいということがあると思います。
ガス局ショールームの
屋上緑化の
効果としては、
表面温度が低下して大気を加熱する熱量が半減すると、それから
屋上の
表面温度が低下して、
土の層などがあって
断熱性が上がるので、室内へ浸入する熱も約60%減少するというのが
効果です。
今、
街路樹と
屋上緑化の二つの話をしましたが、これは、一般的に、東京都なども
緑化率を20%にするとかと言って、それを同じ緑といっているわけですが、機能が非常に違っており、
街路樹の緑というのは、
日射を遮へいして緑陰を形成して、
歩行者にしのぎやすい空間をつくると、それから樹木からの蒸発によって
気温を下げると。
屋上緑化も2番目の
屋上の緑からの蒸発によって
表面温度を下げるというのは同じだけれども、もう
一つ部屋の中に入ってくる熱を減らして、
冷房用エネルギー消費を下げると。だから機能が違うということです。これを一つの緑ととらえると、ちょっと後での話が混乱するだろうということをまず申し上げたい。それから
屋上緑化については、
二つ目の
冷房用エネルギー消費を削減できるということが非常に強調されることがあるわけですが、これは
断熱性が悪いときは、まったくそのとおりで、
断熱材のない
建物などを改修するときは非常にいいんですが、もともと
断熱材がたくさん入っている
建物に
緑化をしてもあまり
効果はないということです。
三つ目は、
ヒートアイランド対策を良好な
都市環境の実現につなげるためにということで、少し、一般的なお話をさせていただきます。
最初に申しましたように、
屋上緑化は
ヒートアイランドの一環として注目されています。しかし、
ヒートアイランド対策は
屋上緑化だけではないわけです。ほかの手法と比べて
緑化というのは、どのような特徴があって、
緑化の中で
屋上緑化というのはどういう特徴があるかと、このことを理解して、適材適所で
緑化を進める必要があると。そのことについて話をしていきます。
まず、
ヒートアイランドはなぜ起きるのかというと、三つが言われています。
一つは、
高層化、高密度してまちの
風通しが悪くなる。
二つ目は空調です。
エアコンや
自動車からの
排熱がどんどん
都市部でふえると。
三つ目が、
都市の
表面、地表や
建物の壁面の被覆の変化ということです。
三つ目の内容について、最初に簡単に説明させていただきます。分かりにくい図ですが、これが
都市の
表面だとすると、その
表面の
温度はどうやって決まるかというと、まず、
エネルギーの
投入源は
日射です。
日射が入ってきて、ある部分は反射して図のようなやりとりがあって、
日射で入ってくる熱がどれぐらい逃げていくかで
表面温度が決まると。入ってきた熱を逃がす非常に重要な機能として、
水蒸気発生という機能がございまして、もともと
都市化前の地面というのは、裸の
土や緑地、水面だったり、いっぱいあったわけで、
水蒸気がどんどん
発生していたわけです。
水蒸気が
発生すると
気化熱でこの
表面から熱を奪うと。だから
水蒸気が
発生することによって
表面温度が上がらないで済んでいたわけです。それを
都市化するということは、この
水蒸気が
発生する
土や緑、水面を
アスファルトやコンクリートで塗り固めてしまうと。そのため、
気温が上がると。これが
都市の
表面被覆化による
ヒートアイランドの原因の三っつ目です。
このようなことは、
都市をつくればかならず
発生するわけで、まったくなくすことは無理ですけれども、それをいろいろ工夫することによって随分緩和できると。ここに有名な
設計事務所の資料をそのまま持ってきましたが、
建物をつくるとき、どのようなことに配慮すれば
ヒートアイランドが少なくなるかという
メニューが書いてあります。
一つ目が
風通しです。
風通しについて日本の場合に大事だと思うのは、日本の
大都市は、大体海岸近くにある
沿岸都市が多いわけです。東京も大阪も、仙台も海の近くにあるわけです。図は我々が行った
シミュレーションで、矢印が風の流れ、夏の晴れた日の午後1時の風の流れで、色が
温度を示しています。仙台の場合ですと、親潮の流れている涼しい太平洋から冷たい風がふんだんに流れてくるわけです。それが、だんだん中に入ってくることによって加熱されてくると。基本的に、海風はまちを冷やす非常に大事なファクターであります。海風がせっかく吹いてきても低層で密集した
市街地があれば、頭の上を海風が通り過ぎるだけで熱くなるわけです。だから縦長にして、隙間をいっぱい設けて、
オープンスペースをつくって風を通せば、涼しい海風が入って非常に
効果があると。
あと風の向きと
建物の配置も図のような配置をすることが大事だというわけです。東京、汐留の再開発で、密集したビルを建ててしまったので、新橋駅
あたりがものすごく暑くなったとテレビが大騒ぎをしていますが、このようなことで、風の道というのが、非常に注目されています。私自身はちょっと
まゆつばだと思っているんですが、
大変世間を騒がしているというものです。
風通しを考えるときは、周りの状況を考えて、自分の敷地の中にうまく風を通すということが大事ですし、もう一つは他人の迷惑ですね、自分が
建物を建てたために風下に風が通らなくなってしまってはいけないので、自分が
建物を建てても風が後ろに流れるように建てることも大事です。この二つが大事だと。それから形もスレンダーでシャープな形で流れるようなことを考えるのであれば、形を考えるだけでいいと。
次、地面の水と緑、これが
都市緑化で非常に期待されていることで、いろいろな試みがなされているというところです。これは、
都市化したために、なくなってしまった地面からの
水蒸気の
発生を、水や緑を再び地面に戻すことによって呼び戻すということになります。地面から
水蒸気を出したいということですと、最近、
保水性の材料や
透水性の材料などがありまして、なにも緑を植えなくても、隙間のある舗装などにすることによって、
水蒸気が
発生する地面というのはつくれるようになってきたと。こういう工学的な
アプローチもあるということです。
次に、
建物の壁ですが、地面だけではなくて、
建物の壁も
緑化することによって
水蒸気発生が起きるということです。最近非常にこのような先駆的な美しい
建物が試みられているということです。それで、
建物の
表面から
水蒸気を出しましょうということなんですが、
表面温度を下げるためには、
水蒸気発生だけが唯一の方法ではなくて、太陽が来たらそれをはじき返すという
アプローチもあって、早い話が、黒っぽい
建物を白っぽくしただけで随分
表面温度は下がります。
日射の
反射率を上げようというのが、もう一つ注目されていることで、同じもので、
建築緑化のような緑の話だけではなくて材料を工夫することによって
日射の
反射率を上げて、冷やそうと、より
日射反射率の高い材料を使おうという工学的な方法が研究されています。最近、注目されているのが、高
反射性塗料といって
日射反射率の高い塗料が開発されていて、それを塗れば、太陽をはじき返せるということで、
屋上緑化と同じくらい冷えてしまうんですね。そういうことも今開発されています。
最後に、
人口排熱の問題で、空調や
自動車からの
排熱が
都市空間から出るものをどうやって減らすのかという話です。
人口排熱を減らすためには、
建物の
省エネルギーを徹底的にやるということで、それには、ここにあるようないろいろな
メニューがあって、
建物の
省エネルギーを徹底的にやって削減すると。もう一つは、温熱だけの
排熱があったとしても、高いところに出してしまうという話があります。
ここで話をしたいのが、壁掛けの
エアコンで、壁から屋外に熱が出る場合とそれを集中して
屋上からまとめて出す場合と、トータルの
排熱が同じだとした場合、壁から出すと図のようにこの
あたりが非常に熱くなって、
屋上から出せば上がっていってしまう。そうすると一般の市民が感じている
都市環境のいい悪いは、
排熱量が同じでも全然違うんだと、この辺が
まちづくりや
建築計画のよしあしによって、市民が感じる
都市環境は変わってしまいます。同じように
緑化のことを考えると、地面に緑がある場合と
屋上にある場合を考えますと、地面にあれば、地面が冷えて、
屋上にあったら
屋上が冷えると。そうすると市民が普通に感じて
仙台はしのぎやすいとかといっているのは、この辺の話があるわけで、
屋上の場合は市民が本当に行ける場所であれば、本当に涼しいと思うでしょうが、閉鎖されていたら、冷やしても市民は涼しいとは思わないんですね。
一概に
緑化といっても、人間がいる場所が冷えるかどうか、
ヒートアイランド対策といっても人間がいる場所が冷えるかどうか、非常に大事なことだと思います。
あと、以前、
榴岡公園で実測したことがあるんですが、公園があることによってまちの方に涼しい風が流れていくんですが、ここに合同庁舎があって、冷たい空気が来ても、ぶつかって、結局、道路上に流れていって暖まってしまうと。だからせっかく緑をつくったのであれば、それがうまく町中に入っていくように、そうすると
建物の配置と風の流れと緑地を考えることによって
効果もあるし、2倍3倍にもなるし、まったく
効果が見られないこともあるということです。
緑のことでもう一つ申し上げたいのは、しばしば
マスコミが
緑化といっているときに、ここにいろんな緑の
効果を書いていますが、木を1本植えるということは、
温度を下がるけれども、
水蒸気が
発生して湿度が上がるし、
日射は遮へいして照り返しも減るけれども、
風通しは悪くなると。いいことも悪いこともあるというわけです。特に
風通しというのをあんまり考えないと、返って
温熱環境的に問題が出ることもあるということです。
それから、多様な
気候特性、
地域特性という話は、次の渡辺さんの話になりますが、これは、いろんな
都市の気候を比べた図ですが、日本は非常に広くて東京や大阪、仙台も随分気候が違うと、そこにあった
ヒートアイランド対策というのも、いろいろ違うだろうということです。
申し上げたいことをまとめますと、単に
気温を下げるだけであれば、先ほど申し上げましたように
日射の
反射率を上げるとか、工学的な
安上がりでメンテナンスも手間も少ない方法もあると。同様に
冷房用の
エネルギー消費をただ単に下げたいのであれば、
断熱材を厚くした方が
安上がりで手間も少ないと。そうすると
都市気温を下げたり冷房の
エネルギー消費を減らすというような個別の目的を考えると、
緑化というのは、必ずしもコストパフォーマンスのいい手法ではないと。従って
ヒートアイランドや
省エネルギー対策のためだけに
緑化を進めるというのは合理的とは思わない。しかし、
緑化には他の工学的な手法にはない多様な機能──景観、心を癒す、
生態系を回復するとか、単に
ヒートアイランドを減らすとか
冷房用の
エネルギー消費を減らす以外のいろいろな機能があるので、他の多様な緑の機能も有効に活用できるような計画が必要だと。そのためには、市民が実際に見ることができて、触れて、楽しめるような
緑化にしなければいけないということを申し上げたい。
よく
屋上緑化というとすばらしい
屋上庭園のようなものを思い浮かべるんですが、多くの
屋上というのはセキュリティの関係で閉鎖されているわけですね。東京都のように一定規模以上の
建物というと高層
建物で、見えもしないし、閉鎖されていて人が出入りもできない。そういうところにただ緑を植えていると。それも行政で無理やり縛るので、みんなローコストといって、美しくもなんともないコケのようなものがへばりついている。高層で見られないし出入りすることもできないところに、ギリギリ20%にコケがへばりついている。行政で縛ると、そういうことになる。だから、
屋上緑化をやるのであれば、出られない、見られないところに
緑化するのではなくて、アメニティの向上に結びつくような、実際
皆さんが大阪でごらんになったようなすばらいし景観に結びつくような、見られて、出られて、楽しめるような
緑化をやらなければいけないということを考える。仙台の特性をよく考えて、
地域特性に合わせたまちをつくると。
ヒートアイランドを考えた場合、高
反射性塗料とか、人工
排熱の削減などの工学的な手法がありますし、もう一つは、緑とか、水とか、エコロジカルな手法があって、手間がものすごくかかるけれども、ほかに景観とか
生態系とか癒しといったいろいろな機能があるわけですね。これが期待できないとき、ただ熱を冷ましたいのであれば、工学的な手法の方が手っ取り早いということです。
結局、
都市に必要な緑というのは、なぜ、何のために
都市に緑を植えるのかと、単なるコケが生えているような緑ではなくて、みんなが楽しめるような、アメニティが向上するような良質な緑をふやすにはどうしたらいいのか、そのことをぜひ皆様に考えていただきたいと思います。
仙台市の資料に、杜という字はきへんに
土という字を書いています。明らかに仙台の杜というのは、人がつくった人の手による杜だということだと、それは伊達政宗にさかのぼると書いてあるわけですが、単に自然を戻せばいいということではなくて、
都市と調和して、
都市に合った市民のアメニティの向上になるような緑を適した場所に入れると。東京都のように数値目標を立てて20%と決めてやるんではなくて、量的拡大を求めるのではなくて、必要な場所に
都市のアメニティ向上につながる良質な緑を、ぜひ考えていただければ幸いです。
以上で私の担当部分を終らせていただきます。
3: ◯渡辺浩文
参考人 私は、
地域特性に応じた仙台の気候の特長と仙台市全体を俯瞰して、どこにどういう特徴があるのかというところを、これまでの調査等から御説明して、考えるヒントになればというふうに考えている次第です。
仙台市でも年々
気温が上昇しているということで、
地球温暖化とは別の話で、
都市部について集中的に
温度が上がっているということです。一日最低
気温が25度を下回らないことを熱帯夜といいますが、1927年から観測している仙台管区気象台によると、最近その日数が、数日出てきているという顕著な状況であります。
ヒートアイランドという話がありましたが、
都市化によってこれが進んでいるということですが、仙台について
都市化というものは、どう進んでいるのかというものをアメリカの人工衛星ランドサットのデーターを用いて5年ごとに分析しました。例えば、図は、2000年の
都市被覆ということで、いわゆる空からデジタルカメラで地面を撮ったような状態のデーターになっているんですが、その色の特性に応じて土地被覆分類──赤が
市街地や住宅をあらわして、黄色は畑や田をあらわしていて、画面の中央付近が仙台駅
あたりというふうに考えていただければ結構かと思いますが、長町や多賀城、塩釜まで
市街地が連続している。経年変化で具体的に見ると、1980年当時に緑地だったところが10年間で何に変わったのかと、特に緑が
市街地や住宅地に変わったところだけを黄、赤、紫をつけると、きれいにしま状のニュータウン開発の部分が見てとれると。それから、10年前は田んぼや畑だったところで、
市街地、住宅地になったところはどこかということで、色をつけると海の方に
市街地が広がっているということで、この85年から95年で、特に、郊外の市街化が随分進んでいるということが分かってきました。これだけ
市街地が広がると東西南北で大体30キロメートル四方になるんですが、実際の仙台の
市街地の範囲はおよそ10キロメートル圏というような具合になると思います。その10キロメートル圏で
気温の分布はどうなっているのかというと、現在、仙台管区気象台や消防局が、若干はかっているというぐらいで、比較する同一の条件での
気温分布というのはやっていない。それで、研究室で2000年くらいから市内小学校約30カ所から40カ所に百葉箱を借りまして、温室度を10分間隔ではかるということをやっています。具体的には仙台の
市街地に対して、海の方ですと中野小学校や荒浜小学校、町中ですと
東二番丁通小学校、根白石小学校など38カ所ではかるということをやっています。そうすると分布図というのができ上がってきます。きょうは細かな分析結果は持ってきていないんですが、午前10時の段階では、町中というよりは、東の方の部分が──傾斜と傾斜の方位の関係で、太陽の
日射をより受けやすいのかなということを考えていますが、もう一つ注目してほしいのは、海の
あたりは、薄水色になっていますが、昼すぎになっても全然変わらないんですね。一方、町中は
気温が非常に高くなって37度を超えるというような日だったわけですが、かなり暑い日だったという状況です。この後はどうなるのかというと、赤いところは少しずつ左上に動いていくんですね。にもかかわらず海の方は水色のままだということで、これが先ほど持田さんから話があった海風の影響ではないかと考えています。
具体的に、それぞれいくつかの点をピックアップしまして、1日24時間の
気温の変化を表示してありますが、一番都心部の
東二番丁通小学校の測定結果は、夜間も昼間も高いと、しかし、午後過ぎは根白石小学校の方が高くなるということが見てとれます。一方で、海の近くの中野小学校や田子小学校は、ある時刻になると
気温の上昇がぴたりととまってしまう。この辺が海から涼しい風が入ってきていることによって
気温が上がっていないということではないかと。その辺をもう少し定量的に分析しようということで、仙台市環境局で一般大気環境測定局を設置しており、そこでは、
大気汚染物質濃度のほか、風向風速のデーターがありますので、そのデーターと
気温の上昇の変化とを見比べると、海の方からSE成分風速、いわゆる海の方から吹いてくる風のみを数値化したようなイメージでとらえていただければいいのですが、その海風が強くなる時間帯に合わせて
気温の上昇がとまるという傾向が見られました。この
気温の上昇がとまるというところのそれぞれの
測定点での時刻と海岸からの距離をグラフにしますと、海から離れるほどその時間に比例するように遅くなってくると、だんだん海風が中に入ってくるというようなことが分かりました。日によって違いますが、大体、10キロメートルから15キロメートルぐらいまでは入っているのかなということが感じられます。
その結果として、緑がいっぱいあると
ヒートアイランドの緩和ということを考えがちですが、たしかに緑が多い、緑被率──1キロメートルの範囲に緑が何%あるのかという値と緑が多ければ多いほど
気温がどのくらい低くなるのかという関係を数値化したものです。これは、マイナス1に近いほど
気温が若干低くなる傾向にあるということになりますが、夜間はその傾向が言えるんですが、昼間は、海風が入ってくるところが多いものですから、緑の量に必ずしも比例しないという結果が出てくるんですね。つまり、緑といっても、緑を否定することではないが、一方で
風通しということも考えないといけないだろうと。
整理しますと、観測結果によって、町中の夜間は特に暑いと、仙台でも熱帯夜がふえてきている状況を考えますと、もともと仙台は、東京、大阪に比べて非常に涼しくていい所だと思うのですが、そのいいところが崩れつつあると。特に夜間、寝苦しいというのは、人間にとってもっともつらいことの一つでありまして、涼しかったのに冷房をかけるということになると人工
排熱がふえ、ことによるともっと
気温が高くなるということで、非常に憂慮すべきことだと思うんです。話を戻して、夜間は、町中の
温度が高いわけですが、明け方から午前10時くらいまでは、斜面の方向、向きによって
温度が高くなるところがある。しかし、基本的には、午前10時、11時になると町中の
温度が高いことが顕著になるわけですが、そこに海風が入ってきますので、
温度が高いところは内陸の方に限られてくるというようなことがお分かりいただけたかと思います。
気温についても、海の方ほど低いんだけれども、その内陸
温度が高くて、かつ、そこからまちの中心部にかけて
温度が高いところが延びてきているとか、あと先ほど、
体感温度ということがありましたが、海の方は比較的、黄緑から黄色ぐらいの色ですが、非常に
温度が高くなってきているということです。
中間のまとめですが、特徴としては、海風の
効果が非常に大きいということ、緑の
効果は、夜間は顕著ですが日中は相対的には小さいと、ただこの話は、
測定点、百葉箱を中心とした1キロメートル四方の
温度にどれぐらい影響しているのかということですので、その辺は誤解のないようにお願いします。もう一つ、同じ仙台市内であっても気候の特徴は随分異なるということです。さらに、その背景を踏まえた上で、
都市計画上の配慮というものにつながっていくだろうと。つまり、海風の
効果が大きいということであれば、例えば、海の近くであれば田園保全と、先ほどの人工衛星のデーターで田園地帯が住宅地に変わっているというような映像をお見せしましたが、あの辺のところが、海風がちょうど入ってくるというところなわけですね。そういうところに
建物が建つような開発があったと、そういったところを保全すると同時に、何かするとしても
風通しのよい計画といったところで配慮して、その海風がその田園地帯で暖まるのではなく、涼しいまま町中に届くような、そういうような通風の確保。あと、緑地の
効果についてもメリット、デメリットという話がありましたが、
日射の遮へいですとか、局所的には体感上の
効果はあるわけですね。さらにきょうは、海風の吹く日ということで持ってきましたが、気圧配置によって海風が吹かない日という日も当然あります。やはり緑は大事なわけで、
効果もないし、楽しくもないとか、これは避けるべきであろうと。どうしてもローコスト、ローメンテナンスというところに走りがちですので、その辺のところは十分に見極めなければならないだろうと。それから、もうひとつ、同じ仙台市であっても、どうも特徴は異なると。海近くの
緑化と町中の
緑化はちょっと違ってくるのではないかということです。
このように考えていきますと、今の
都市計画にほとんど反映されていない緑や水や風といった環境緩和
効果を生かした環境調和や気候風土といったところに基づいた
まちづくりだとか住まいといった考え方に他ならないのではないかということで、この辺からの話は、少し研究途上の側面がなくはないのですが、こういう考え方を少し整理しようということを今やっています。
このアイデアは、
都市環境気候図とか
都市環境のクリマアトラスという言葉で表現されておりまして、先ほど持田さんから国の動きということで、御紹介ありましたが、その中でも
都市環境気候図なりを各自治体が作成して各種計画に反映させるという文言もちょっと入っていましたが、この話を後半戦でしていきたいと思います。
これは、この
都市なり、地域なりがどのような気候状態にあるのかという気候解析図と、その気候を解析、分析した結果、その場所では、どういうような計画を考えていったらいいのかという二つがセットになっていまして、この本──
都市環境クリマアトラスの中では、環境基本計画とクリマアトラス、
都市環境気候図との関連ということで考察してあったりとか、緑の基本計画ですとか、いわゆる環境アセスメントとの関連であったり、いわゆる町中の普通の
建物にはかかってこないのがほとんどですが、こういった可能性もなくはないだろうと。それから住民参加ですとか、そういったところにも使えるよとういことなんですが、それ以降も検討を進めておりまして、その結果二つの考え方に集約できるのかなと個人的には考えております。
一つは、
都市域の全体を対象とした広域の
都市環境気候図ということで、およそ仙台というのは、こういうな
気候特性にあるので、例えば、この辺はこういうことに配慮したらいいのではとか、町中は、このように配慮をしたらいいのではとか、おおよその目標を決めると、もしくは、目標を示すというような話にとどめておく、もしくは、それを生かせるのであれば、生かした上で、さらに個別の再開発プロジェクトですとか、区画整理ですとか、さまざまな
都市計画事業がありますが、その狭いところで、考えるときにはどうしたらいいのかという二つに分けて考えた方がいいだろうと。
広い方の話については、先ほど御説明したとおりですが、仙台については、町中の
温度が非常に高くなると、特に、夜間、明け方、日中の午前中
あたりに非常に高くなるわけですが、そこに海風がどんどん入ってくれば、この辺のところが大分解消される可能性があると、もちろん内陸の方は、午後
温度が高くなってしまうわけですが、人口比でいれば、町中の影響の方が随分大きいのかなというようなことがあったり、このようなことを通して考えたらいいのではないかと。
それから、測定結果からおよそどの地域はどのような特性をもっているのか、いわゆる統計解析で分析して見ますと、海岸近くから距離に応じて、およその特徴でグルーピングされるわけですが、こういったところに配慮してそれぞれの地域に適した方策を考えていく必要があるだろうと。
それから、狭い範囲でという話は、試行錯誤している段階ですが、一昨年、研究者向けにワークショップをやりまして、リアリティがある方が良いのではということで、地下鉄東西線の八木山駅と荒井駅、町中という
気候特性が違う三つの地区で、例えば、
まちづくり構想などがある程度まとまっているので、そういった土地でどういう
気候特性があって、さらにこういうところでは、こういう配慮をした方がいいのではということを研究者で議論したということです。
例えば、荒井地区というところは、海に近いので、海風がよく入ってくると、そして居久根が少し残っていたりということがあるわけですが、非常に
大気汚染の著しい道路があるところなので、こういったところでは、海風を妨げないような区画道路の通し方ですとか、緑の配置ですとか、そういったところを考えたりですとか、車両基地については、
屋上緑化にするとかという話があるのかもしれない。
私が言いたいのは、私の場合は、仙台市全体を見て適材適所を考えるためのヒントをというぐらいのつもりでいるわけですが、かなり海風の
効果は大きいということと、緑地の
効果は、夜間は顕著で、日中は相対的に小さいということですが、先ほど申し上げたとおり、海風が吹かないときもありますし、人体への影響ということですと無視できない大きな
効果があるということ。
それから、仙台には気候の特性がある──海に近い仙台と、山に近い仙台では違うということです。そういったことが背景にありますので、その気候風土に配慮した
都市の環境計画を考え、さらには、どこがどうなっているのかということをきちんと整理した上で、全体として大きな方向性を見出しながら、この狭い範囲の話は、研究者のディスカッションという話をしましたが、実際の社会では、住民参加というファクターが入ってくるんだろうと考えておりますけれども、こういうことをやるにしても、これだけの議論に耐え得るだけの資料なりが必要だというようなことになるのはもちろんです。
こういうことを考えることができるのも、観測しているからだと。観測しているデータがデータベースになっていて、それが計画したりだとか、アセスメントするときにキチンと使われると、こういう個別の話が必要なことだろうということです。
最後に人工衛星のデータを持ってきましたが、仙台駅に対して中央通、青葉通、定
禅寺通ですが、仙台の町中は、非常に緑豊かな土地柄ではあるんですが、逆に言うと、それ以外のところは何もないんですね。もう一つ、憂慮しているのは、先ほどの海風も観測結果からは、ちょうど町中に届くかどうかという所ですが、駅の東側のところですが、もう少し緑地がつながっているような話になっていたりだとか、
風通しがなんとなくここで遮られているような雰囲気が出てきてしまいます。もう少し
風通しや緑のネットワークのような話、その緑についても町中はもっと
歩行者、人間にとって質の高いというようなところを忘れないようにしないといけないと考えています。
若干、オーバーしてしまいましたが、以上です。
4:
◯委員長 ただいま、持田さん、渡辺さんからお話をいただきました。本当にありがとうございました。
本来1日かけてお話ししていただく内容ですが、1時間にまとめてお話ししていただきました。ただいまのお話について、何か質問等はありませんか。
5: ◯安孫子雅浩委員 持田さん、渡辺さんありがとうございました。
どちらかというと、緑そのものよりも海風をいかに取り入れるかという話もありまして、
気候特性に配慮した
都市環境計画が必要だというような御提言でもあったかと思うんですが、仙台の特徴というのは、
都市は海側につくられてきたということもありますが、広瀬川とか名取川とか大きな川があって、緑が山の方にあって、平野、海があるということで、そういった点から、仙台の可能性といいますか、ほかの
都市に比べれば、風の通り道なんどもつくりやすいといいますかファンダメンタルの面では非常にいいものを本来は持っているという点をちょっとお話いただければと思うんですが。
6:
◯持田灯参考人 今、まさにおっしゃったとおりで、基本的に海風が入りやすくて、山の方から来たときには緑に覆われて、我々が分析した結果、今のまちを見てみると非常に理にかなった緑地の配置になっているんですね。もう一つは、川というのは海風の有効な通り道になっていて、川の上を流れてくる涼しい風をまちの中にうまく入れられると大変いいんですが、その点がちょっと広瀬川は、そのような機能がうまく働いていないのかなという気がしています。
海風が緑より大事だと言っているつもりはまったくなくて、緑は非常にいろいろな機能があって大事なんだけれども、その適した場所に適した緑という観点が、単に量をふやせばいいということだけではなくて、質ということが非常に大事で、その中で、いろんな特徴のある気候があって、さらに
市街地の特長とか古いまち並みや新しいまち並みとか
市街地の特徴が、自然だけではなくて、社会的な特徴があるんですが、そういういろんな特徴があって、どういう緑が求められていて、どうやってそれを
効果的に配置していくかということが大事だと。自然で言えば、緑と風の作用というのが非常に強くてそれをうまく利用できるかどうかで、いろいろな問題が起きたり、うまくいったりするということを申し上げたい。
7: ◯渡辺浩文
参考人 特に川ということで、仙台には広瀬川があるんですが、今、持田さんが、広瀬川がそのような意味でうまく使われているかというのと違うのは、どうしても地形の因子もあると思うんですね。つまり名取川と合流しますが、あのくらい下流に行くと田園地帯、平らなところを川を流れているという状態で、そういう意味では、川が海風の通り道になっている。その風を使いやすい場所ではあるわけですが、逆に、あの場所
あたりは、田んぼが保全されているというところも大事なところです。逆に風がほしいなと思うところ、
中心市街地近くでは大橋、国際センター
あたりを思い浮かべていただければ分かると思うんですが、ちょうどいわゆる川の水面が低い、いわゆる河川の中流域の特徴という表現をするそうですが、どうしても掘り状になっている部分を風が通っているというようなところなので、それを町中にうまく引っ張ろうとしても、それは地形的に厳しいところもあるかなというような感じがします。
ただ、そうは言っても、また少し上流になると雰囲気が変わってくるところもあるので、川だからこうすればいいということではなくて、その場所、その場所で細かく読み取って、うまく使えるものは使ってあげる、保全すべきものは保全してあげるとか、一律にというところがよくないのではと思います。
8:
◯委員長 ほかにございませんか。
9: ◯田村稔委員 渡辺さんの御説明で、風の通り道というと、海岸の方は、夏涼しい、冬も雪のところが雨ということで、仙台のまちは海岸の方が住みやすく、だんだん奥に行くと住みにくいような、そんな感じがするんですが、冬なんかの風の影響はどうなんですか。
10: ◯渡辺浩文
参考人 冬の影響は無視できないと思います。実際、熱帯夜の日数がふえているというのをお見せしましたが、逆に冬日日数──その日の最低
気温が0度を下回る日のことですが、今から70年くらい前には1年間に100日以上あったわけですが、それが今は大体3分の2から半分くらいまでに減っている。要するに暖かくなっているということで、住みやすくなっているということです。昔から仙台に住んでいる人に聞くと、冬が楽になったという話をよく聞くわけで、それは間違いないと思うんですが、ただ、建築だとか
省エネルギーなどの観点から考えると、冬の
温度0度が二、三度上がるという変化と、二十二、三度だったものが、二、三度上がるという変化は、ちょうど、先ほど冷房の話をしましたが、仙台であれば、涼しくて必要なかったんだけれども、それが必要になってしまう、ちょうど境目なのかなと。その辺はまだ定量的に分析しきれていないので、はっきりとしたことは言えないんですが、そういうことも考えられて、かつ、
建物の性能といいますか、例えば、住宅にしても昔は隙間風が吹き込んできて家の中で水が凍るというところが多かったわけですが、最近の住宅は機密性が非常に良くなってきていますので、そういう意味でも冬の
気温の変化の影響よりも夏の
気温の変化の影響の方が大きいのではないのかなと。これは定量的な裏づけがない話でありますが、そのような話があるのかなということを考えております。
11:
◯持田灯参考人 今の
風通しを良くすると、冬が困るのではないのかなという質問かと思いますが、確かに、どこでも
風通しを良くするということになると、冬に困る場所が出てくると思うんです。だから、先ほどの渡辺さんの出された気候区分のようなものがあって、この場所は
風通しを良くしよう、この場所はやめようという選択があって、仙台の中で
ヒートアイランドとなる場所に、夏に風を通すのは有効だと言っただけで、今でも
建物の北西側に木を植えていることが多いと思うんですが、夏ではなくて冬の対策なので、歴史的にもそのようなことが行われているので、そういうことを忘れてはいけないと。冬の暴雨風と夏の
風通しをうまく考えないといけないと。緑の配置もそれを考えて適した場所にやらないといけないということだと思います。
12: ◯庄司俊充委員 今言われた北西部に住んでいるものですが、特にことしなどは、雪が少ないんですね。こちらが多くて意外なんですが、山間部といいますか、上からの気圧の関係もありますよね。冬場になりますとこちらの方は、風がとても強いんですが、夏は穏やかな感じなんです。先ほど根白石小学校が、日中の2時、3時が高いというのは意外な気がしたんですが、その辺をもう少し詳しく教えていただければと思います。
13: ◯渡辺浩文
参考人 なぜなのかというのは、持田さんの数値解析等を踏まえて御説明をお聞きするのがいいと思うんですが、仙台は海の近くという、イメージがありますので、そういう感じで私たちもいるんだと思うんですが、根白石小学校は、割と内陸型といいますか盆地的なところもありますので、きっとそういうようなこともあるのかなと。あと、先ほど海風がありましたけれども、日によって強い日、弱い日がありますので、あれで全てとはもちろん言えないわけです。
14:
◯持田灯参考人 東京で
ヒートアイランドといっても、実は一番熱いところは埼玉なんですね。同じようなことで見ますと、仙台と北西部の関係になっているのかなと思います。
15: ◯鈴木勇治委員 先ほどの
屋上緑化の話ですが、この
委員会で
屋上緑化に絞ってという話があったんですが、意外な話で、正直これからどうしようという思いはあるんです。
屋上緑化のあり方として、かいつまんで言えばどういったものが理想と思っているのか。
16:
◯持田灯参考人 まさに申し上げたいところですが、先ほど申しましたように、
屋上に人間が出られればそこは快適な空間なわけです。そこに美しい
屋上庭園のようなものがあって、そこが市民にとって新しい憩いの場になっていれば、だれも文句は言わないのですが、仮に出られなくても、先ほどいくつかスタジアムなどで、全面が
緑化されて低層の
建物があって、例えば、周りのオフィスで働いている人がそれを見て心が安らげば、それも文句はないんですね。
ガス局などは比較的低層で周りから見えますし、そういう景観の向上ということでは非常によいと思うんです。ただ、見えもしなくて、出ることもできない、そこにローコスト、ローメンテナンスを追求した、へばりついている緑、それは緑をやらなくても別の方法、
ヒートアイランドだけの対策はいくらでもあります。
屋上対策では、まったく
ヒートアイランド対策がないと申し上げているわけではなくて、先ほどの説明しましたとおり
ヒートアイランド対策はあるんだけれども、ただ
ヒートアイランド対策をやりたいのであれば、もっと安くできる方法はありますと。そこに付加価値をどうつけるのかということを、ぜひ委員の皆様にお考えいただきたい。そこで、市民にPRするとか、まちのイメージを上げるとか、あるいは、環境教育とかそれを見ることによってみんなが環境を考えるとか、いろんなことがあると思うんですね。それは、きょうは熱環境の話をしましたが、それだけではなくて、
まちづくりとかの話で何のために手間とお金をかけて
屋上緑化をつくるかということをぜひお考えいただきたい。
17:
◯委員長 ほかにございませんか
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
18:
◯委員長 なければ、以上で終わりたいと思います。
持田さん、並びに渡辺さん、大変貴重なお話をしていただきまして、ありがとうございました。本日いただいた御意見は、当
委員会の調査を進める上において、大変参考になりました。これを契機に今後とも御指導いただければ幸いかと存じます。本日は誠にありがとうございました。
それでは、この際、暫時休憩いたします。
休憩 午後2時30分
再開 午後2時40分
19:
◯委員長 再開いたします。それでは、次に
意見交換に入ります。
これまで、2回の
委員会と本日の
意見聴取及び市内、他
都市視察により、
皆さんと御協議してまいりましたが、
委員会も残すところ本日を含めてあと2回の予定となっております。
前回の
委員会においては、対象とする地域の範囲や
街路樹や公園を含めた
緑化のあり方など多岐にわたり御意見をいただいておりましたが、本
委員会としては、ある程度範囲を絞り込み、仙台駅を中心とした範囲で、
屋上緑化に視点を置きながら、
地球温暖化や
ヒートアイランドに対する
都市緑化のあり方や考え方などについて、
意見交換を行いたいと考えております。
まだ、十分に議論をつくしていないという面もございますが、本日
皆さんからの御意見をいただき、4月に予定されています次回の
委員会において、本
委員会の報告書の骨子案を御提示し、さらに
皆さんに御意見を伺い
委員会としての報告書をまとめていきたいと考えております。
また、報告書の内容については、
皆さんから出た意見をまとめるというスタイルで考えていますが、場合によっては、当局に対する、将来に向けた考え方や、今後の調査、研究の必要性の提言などを織り込むことも一つかと思っています。
つきましては、これまでの検討、他
都市視察、及び本日の
意見聴取を踏まえ、感想や
意見交換をしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
それでは、何か発言等がありましたら、お願いいたします。
20: ◯鈴木勇治委員 きょう新たな視点なのか、前から言われていた視点なのか、
風通しという部分が出てきたわけで、
ヒートアイランドにはかなり有効だというか影響があるということなんですが、当局に伺いたいのですが、これまで、
都市計画や区画整理の中で海風の通り道と言ったの視点での話が出たり、議論になったりしたことがあるのか、あれば伺いたいのですが。
21: ◯
建設局長 私が携わった範囲でということでお断りしますが、海風についての議論については、これまで、いろいろな
都市計画とか線引きとかやってきましたが、話の中で出たのは今回が初めてではないかなと記憶しています。そういう意味ではきょうは大変興味深く話をお伺いしたしだいでございます。
22: ◯安孫子雅浩委員 海として限定しての話はそうなのかもしれませんが、風の通り道という点については、前々から結構、
建設局や
都市整備局でお出しになっていませんでしたか。
23: ◯
建設局長 地区計画などをやる際に、いわゆる風に対してどのような形をとるのがいいのかというのが若干議論になったことはありますし、また、七北田川や広瀬川とかが風の通り道になって、そのことがどういった影響があるかということについて、深く議論されているわけではございませんけども、議論になったことはありますが、それを広く
都市計画上どうかとなりますと、なかなか決め手になるような話というのはないものですから、浅い議論にとどまっているというようなところかなと考えております。
24: ◯八島幸三委員 居久根がありますね。それとこの海風と山風、居久根は
建物の北西部につくっていますよね。たぶん仙台
あたりは海風で涼をとるというよりは、冬の北西の風からどうやって守るのかが中心だったのかという気がしているんです。それは、それとして、いずれにしろきょうの話を聞いて
ヒートアイランドにどれほどの
効果があるのかということが出されたんだけれども、
建物は
断熱材をうまく使う、そして熱を吸収しないような色を選ぶなど工夫があるだろうし、その上で
緑化をすれば、それ以上に熱を発しない
効果があることは、間違いないわけです。一方で、定
禅寺通のように緑がこんもりとしていると、確かに空気の抜けが悪いということで、環境面でどうなんだという問題が前から指摘のあったことで、そのことが、きょうで明らかになったんだけれども、一方で、歩く人からすれば、木陰があるということで、全然暑さの感覚が違うよね。そういう快適性ということからすれば、非常に
効果があるし、そういうものの一つ一つの積み重ねが
ヒートアイランドを抑えていく、しいては
地球温暖化防止にも寄与することにつながっていくだろうし、あまりきょうの聞いたことでがっかりせず、前向きに、どういう
効果を救い上げていくかということを議論していけばいいのかという感じがしました。