日本全体が少子高齢社会に向かっている状況が指摘されてから、久しいものがあります。大都市圏と比べ、地方になればなるほど、人口減少と高齢化の進みぐあいは加速度的であり、熊本県内においては最大の人口を有する熊本市ですが、人口減少、高齢化の傾向は明らかであります。
そうした本市の今後20年、30年といった10年単位の人口動態を考えると、まちづくりの重要な分野である公共交通網の整備も待ったなしの状況です。
高齢者ドライバーの運転による交通事故のニュースが報じられるたびに、代替手段である公共交通網の未整備もあわせて指摘されます。そうした指摘は、本市の今後の公共交通網の整備に対する課題と全く同じです。本来、公共交通網の整備計画を考えるとき、バスと路面電車は重要な分野です。しかし、本市のバス分野は全て
民間バス会社に路線を譲ってしまい、残されているのは路面電車の分野だけです。
ところで、電動車椅子はバッテリーを積載しており、総重量が80キロほどあることを皆さん御存じでしょうか。人が乗ると、軽く100キロを超える重さになります。電動車椅子を利用している仲間たちが、
公共交通機関を利用することにためらいを感じ、時間がかかっても電動車椅子で自走で目的地に移動することが多々あると言います。こうした電動車椅子を利用している人たちが、安心していつでもどこへでも移動ができる公共交通網の整備計画をどのように考えておられるのか、これから順次お尋ねしてまいります。
まず初めに、路面電車についてのお尋ねです。
熊本市内に35カ所ある路面電車の電停は、全て今後
バリアフリー化するとの整備計画が打ち出されており、整備が進められております。直近では、乗降客が一番多い通町筋電停では、
下通アーケード側の電停の
バリアフリー化が完成し、現在は上通側電停の工事が進められております。
このように、
バリアフリー化された電停がふえてはきましたが、電動車椅子で全ての電停で乗降できるわけではありません。電停幅が狭い電停は、私の地元の呉服町電停や祗園橋電停のほかにも味噌天神電停など、まだまだほかにも多くあるのが現実です。5年後、10年後に電停がどういった状況になっているのか、私は大変懸念しております。今後取り組む電停の改良計画をお示しください。
さらに、電停の整備と同時に、電動車椅子でも乗車できる車両がふえることも大変重要です。このことは、交通局の車両更新計画としてだけではなく、本市としての公共交通網を考える上で極めて重要なことです。また、バス分野の整備についてはどのように考えておられるのか、ノン
ステップバス車両の台数が少ないことで乗車ができなかったり、時間帯のダイヤの関係で、その日の計画は立てられないという車椅子の方もおられます。社会参加の機会が制限される状況が出てきております。
公共交通網整備の観点で、ノン
ステップバスの増車についてはどのように考えておられるのか、方向性をお示しください。
次に、市電の延伸についてお尋ねいたします。
市民病院は、名前に市民の2文字がついているように、熊本市が運営する公的病院であり、近年においては、広域な地域に対してもさらに重要な役割を担っている総合病院です。あらゆる地域、あらゆる市民に対して果たすべき自治体病院としての役割は、被災前の湖東時代でも同様でした。
湖東時代のエピソードですが、こんなことがありました。一度の受診で複数の診療科を受診しないといけない電動車椅子の方から、あるとき、神水交差点電停で乗り降りできたら、低床電車が利用できるのでとても楽なんだけども、それができなくてとても残念だと言われたことがあります。結局その人は、近所にある医院は
バリアフリーでないため、その当時往復に1時間以上かけて、湖東の市民病院に通っているとのことでした。
その話を聞き、私は低床電車で神水交差点電停で降りてみました。私の今乗っている自走用のこの車椅子は、コンパクトで横幅が55センチしかありませんが、フェンスにつかまってやっと移動ができたほどですから、横幅が65センチの電動車椅子では、なおさら利用することができないと思います。
湖東時代、その方は何とか電動車椅子で通院されておりましたが、今回市民病院が東町に移転したとなると、さすがに電動車椅子では通えません。市民病院までの延伸が実現すると、新
バリアフリー法が適用され、電停は
バリアフリー化されます。市民病院へのアクセス方法は、さまざまな条件の人たちが今後ふえる高齢社会を想定すれば、方法や手段が多ければ多いほどよいと思います。その面では、定時性がある路面電車はとても効果的です。いつまでに路面電車の延伸が実現するのでしょうか。電停の
バリアフリー化とノン
ステップバスの増車については
都市建設局長に、市電の延伸については市長にお尋ねいたします。
〔
田中隆臣都市建設局長 登壇〕
◎田中隆臣
都市建設局長 私からは、公共交通についての2点のお尋ねにお答えいたします。
まず、電停の
バリアフリー化についてでございますが、本市では、電停改良計画に基づき電停の
バリアフリー化に取り組んでおり、本年度は河原町や通町筋の下通側で、電停の拡幅やスロープ、屋根の設置を行ったところでございます。
現在、全電停35カ所のうち20カ所で車椅子の利用ができる状況となっており、次年度以降も、現在設計を進めております通町筋の上通側、辛島町、
動植物園入口の改良に取り組むこととしております。本市の
基幹公共交通であります市電を、誰もが安心して御利用いただけますよう、今後とも未改良の電停については順次
バリアフリー化を進めてまいりたいと考えております。
次に、ノン
ステップバスの増車についてでございますが、
バス事業者各社においてその導入が進められており、導入率は5年前の平成26年の24%から、本年4月には53%に上昇しており、今後も車両更新とあわせ、順次導入が進んでいくものと考えております。
本市では、ノン
ステップバスや超低床電車の導入促進について、
地域公共交通網形成計画にも掲げているところであり、今後とも交通事業者と連携しながら、
車椅子利用者や高齢者など、誰もが安心して公共交通を利用していただけるような環境づくりに努めてまいります。
〔
大西一史市長 登壇〕
◎大西一史 市長 公共交通の充実は、本市のまちづくりを進める上で大変必要不可欠なものでございまして、将来にわたり、誰もが安心して移動できる環境を構築していくことが重要であると考えております。
このような中、現在市電延伸を検討しております自衛隊ルートにつきましては、沿線に新市民病院や東区役所など、多くの公共施設が立地しておりまして、高齢者や
車椅子利用者の方々も多いことが想定されます。このため、十分な対応が必要だと考えております。
先日訪問いたしましたフランスにおきましては、全車両が低床電車で運行されておりまして、高齢者や
車椅子利用者も含め、多くの方々に利用されておりました。本市でも延伸の検討とあわせまして、誰もが安心して市電を利用できるよう、電停の
バリアフリー化はもとより、低床車両の増車等についても検討してまいります。
市電の延伸の実現時期についてでございますが、まずは本年度から実施いたします基本設計で具体的な整備形態を検討し、整備費やスケジュール、費用対効果等も含め、お示しさせていただきたいと考えております。その上で、市民の皆様や議会の御意見を伺いながら、できるだけ早く実現できるよう取り組んでまいりたいと考えております。
〔35番 村上博議員 登壇〕
◆村上博 議員 路面電車の延伸の時期については、具体的な整備形態を検討し、整備費やスケジュール、費用対効果も示したいとのことです。できるだけ早い実現を目指して取り組んでいただきますように、強く要望しておきます。
また、電停の
バリアフリー化については、現在35カ所ある電停のうち20カ所で車椅子でも利用可能な状況となっているそうです。そして、来年度以降は通町筋電停の上通側、辛島町、
動植物園入口の
バリアフリー化工事の具体的なスケジュールができているそうです。確実に利用可能な電停がふえていきそうであります。
しかしながら、私が低床電車を利用して地元の呉服町電停で降りようとしたとき、運転手さんからとめられたことがあります。私は強引に降りたわけですけれども、運転手さんが心配されたように、狭い電停でこの車椅子で直角に曲がるのは、正面にフェンスもあるわけですから、必ずしもスムーズではありませんでした。低床電車が運行していても、利用できない狭い幅の電停がまだ15カ所残っているということになります。車椅子でも安心して安全に乗降できる電停は、全ての人にとっても、乗降できやすいということになります。高齢社会の公共交通には、電停の
バリアフリー化は不可欠ですので、重要施策として取り組んでいただくことをお願いいたします。
ノン
ステップバスの導入に関しては、
民間バス会社と十分協議しながら取り組んでいただきますようにお願いいたします。
市長は、この前のヨーロッパで路面電車が全て低床電車ということで、その路面電車がまちづくりに果たす役割というものを実感されてこられたと思いますが、私も94年、96年の2回ヨーロッパに行ったときに、誰の手伝いもなくこれだけ楽々と好きなときに好きなところへ行けるという、その低床電車の威力、そしてまちに人があふれている。後で聞きましたところ、路面電車に公共交通網を変えたところからまちが蘇ったというふうにも説明を聞きました。
何とかこういった路面電車を使ってのまちづくり、これからの高齢社会には絶対必要になってくると、市長もお感じになったんだろうと思います。これからもいろいろと議論、意見をしながら、熊本のまちをそんなまちにしていけるように、私も頑張りたいと思います。
続きまして、熊本城の今後の観光についてお尋ねいたします。
先日荒川議員が、熊本城の復興に関する詳細な質問をされました。一部重なる部分もありましたが、また違った視点から熊本城について質問させていただきます。
熊本地震のとき、誰もが何事が起きたのかと、恐怖とともに大きな混乱の中におりました。熊本地震発災前まではそこに当たり前のようにそびえ立っていた熊本城が、無残にも崩れ落ちていくさまを、テレビ局の固定カメラが克明に録画しておりました。天守閣のしゃちほこや瓦が轟音を立てて崩れ落ちる様子を、地響きで揺れるテレビ画面の中の熊本城を、多くの市民、県民が目撃しました。無残にも崩れ落ちていく熊本城の様子を見て、私たちは自分の身に起きた出来事の深刻さをさらに実感すると同時に、気持ちが重く沈み込みました。
その後、熊本城は復興のシンボルとして、復興を願う全国の人たちから多くの浄財が寄せられました。復興のシンボルとして、発災から3年8カ月、熊本城が全国に紹介されてきましたが、全国からの多くの支えにより、熊本はさまざまな被災状況からやっと日常の生活を取り戻す、復興への道筋が見えてきたんだと思います。
ところが、熊本地震以降、全国各地では自然災害による被害が続出しております。特に、ことしは台風15号、19号、21号による大雨の影響で、これまでにない多くの河川が決壊し、二、三メートルも水浸しになったり、まち全体が水没し、電気やガスが使えない生活が半月以上続いたという地域もあります。さまざまな自然災害による被災地が全国各地にふえ、大変な状況の被災者の方々がおられます。いつまでも熊本地震の被災地として支援を受ける立場ではなくなってきております。
私たちは、被災したからこそわかる被災地の人たちの気持ちに寄り添い、被災地に目を向けるといった時期、立場に来ております。熊本城の完全な復興までには、石垣が完全復旧する20年の歳月が必要と言われております。石垣の完全復旧まで20年の歳月が必要ですが、復興途上の熊本城ではありますけれども、本市にとってはやはり大きな観光資源であります。
本年10月に、復興第一弾として日曜日と祝日限定の特別公開が始まり、来春には第二弾として
特別見学通路が完成します。この見学通路が完成すると平日でも入場できるようになり、さらに、復興工事が進められているすぐ近くの様子を見ることができるようになります。この
特別見学通路は仮設ながら、完全に復興するまでの20年間を予定して建設されます。さらに、車椅子の障がい者や高齢者、ベビーカーでも復旧工事の様子を間近で見学できるように、
エレベーターや多機能トイレが設備されております。
この
特別見学通路を計画するに当たっては、
熊本城総合事務所と障がい者団体とで3回にわたる意見交換会が行われ、そのときのさまざまな障がい者団体の声も設計に反映されております。この
特別見学通路の設置の経緯を考えると、あらゆる人たちに熊本城の復興の様子を見てもらおうという、
熊本城総合事務所の並々ならぬ意気込みを強く感じます。この
特別見学通路は、観光資源である熊本城の今後の観光戦略としての重要なツールになります。
さらに、第三弾として本丸天守閣が復興すると、
エレベーターが設置され、車椅子の人でも天守閣から熊本の眺望を眺めることができるようになります。熊本城には、特別公開第一弾からアシスト機能がついた車椅子が6台常備されております。足腰が弱いと言われている高齢者の方にも大変人気で、常にあきがないほど利用されているそうです。さらに、今後の第二弾、第三弾で、
エレベーター設置と合わせると、これまで高齢者や障がい者が御家族におられて、長距離での家族旅行に二の足を踏んでいた方々にとっても、熊本城を見るために熊本へ行こうという、大きな動機づけになるのではないかと思います。
私は、熊本市最大の観光資源であり復興のシンボルでもある熊本城が復興する姿を全国の方々に見ていただくためには、さらなる情報発信の工夫が必要だと思います。先日の答弁の中では、熊本城の復興に関する情報発信については、第一弾においてCMや新聞広告、
インターネット広告など、マスメディアを活用した情報発信を行っており、これを継続するとのことでしたが、私はそれに加え、県人会や県外にある大学、高校の同窓会など、熊本のえにしを活用した口コミでの情報発信の方法もあると考えます。
特に、関西以西の人たちであれば、新幹線で乗りかえなしに熊本まで来られるというメリットもあります。熊本駅から低床電車で町並みを楽しみながら、熊本城電停で下車し、熊本城まで周りの風景を見ながら行けば、久しぶりの帰郷でも熊本を満喫できるのではないかと思います。そこで、今後の特別公開第二弾、第三弾に向け、熊本城の復興に関する情報発信で特に工夫されたい点について、
経済観光局長にお尋ねしたいと思います。
〔
平井英虎経済観光局長 登壇〕
◎平井英虎
経済観光局長 熊本城に関する情報発信についてお答えいたします。
今後の
熊本城特別公開第二弾、第三弾に向けたプロモーションといたしましては、テレビCMや新聞、
インターネット広告等のメディアの活用や、旅行代理店への
ツアー商品造成に向けた働きかけの強化に加え、議員御提案の、熊本とのゆかりを活用したきめ細かな情報発信も有効と考えております。
特に、全国各地の熊本県人会や同窓会に対しましては、これまでも総会へ出席するなど本市情報の発信に努めてきたところでありますが、熊本への郷土愛や会員同士の結びつきが強く、高い集客効果が期待できますことから、今後も、関西以西を初めとする全国各地の県人会等に向けた情報発信の強化に取り組んでまいります。
また、情報発信に当たりましては、
特別見学通路や天守閣への
エレベーターの整備、見学コースの段差解消など、高齢者や障がいのある方を初め、誰もが安心して訪れていただける
バリアフリーの対応についても、積極的に伝えてまいりたいと考えているところでございます。
〔35番 村上博議員 登壇〕
◆村上博 議員 全国各地の熊本県人会や同窓会など、熊本とのゆかりに着目していただいて、具体的な取り組みを考えられているとのことでありました。新幹線に乗って熊本城へ来ていただける方がますますふえることで、取り組みに期待しておきます。
ところで、来春には
特別見学通路が完成することを、私もあちこちでお伝えしているわけでありますけれども、名古屋の電動車椅子を利用する知人が、3月中旬に熊本を訪問するというような連絡がありまして、ホテルの予約も済ませたということでありました。
残念ながら、その時分にはまだ
特別見学通路が完成しておりませんので、すぐ近くまで近づいて見るということができないんでありますけれども、それでもその方は、被災した直後にも熊本城を見にきておられるほど、熊本が大好きだというふうに言っていただいております。熊本に来ることを楽しみにしているということで、私も再会を期待しているわけですけれども、誰もが安心していただける
バリアフリーの
特別見学通路は、特にこれから先の熊本城の大きな観光上のポイントになるのではないかと思いますので、全国各地への発信をよろしくお願いしておきます。
続きまして、
まちづくり条例についてお尋ねしてまいります。
熊本県には、平成7年に制定された通称やさしい
まちづくり条例があります。その条例の目的の中には、高齢者や障がい者を取り巻くさまざまな障壁を取り除き、自立と社会的活動への参加を果たせる社会を築くこと。すなわち、やさしいまちづくりを目的として、ハード、ソフト両面における各種施策に取り組んできたと条文にも明記されております。
さらに、そのやさしい
まちづくり条例の特徴として、項目の中に
バリアフリーの重点化が挙げられております。その中で、本格的な高齢社会の到来に伴い、やさしいまちづくりの必要性は高まっているため、高齢者や障がい者等の自立と社会的活動への参加を妨げるさまざまな障壁除去のための取り組みに重点化し、具体的な推進方向として5つの分野を設定、63施策に重点的に取り組むとなっております。
この、県のやさしい
まちづくり条例が目指す方向は、今後確実な高齢社会の到来を見据えた方向性であり、至極当然な認識だと私も思っております。しかしながら、私が1年前に質問させていただいた市役所と
下通アーケード街の真ん中ほどにあるテナントビルは、道路とビルとの間に20センチほどの段差があります。腕の力が強い私でも、さすがに乗り上げることはできません。私は10センチまでの高さだと自力で乗り上げることができるんですけども、さすがにこの段差は私でも無理であります。
しかも、その段差の数メートル先には、皮肉なことに車椅子マークのシールが張られた
エレベーターがあるわけです。県の条例は、社会情勢の変化に応じてその都度改正されてきております。しかしながら、この条例に決められているオーナーや設計側と行政との事前協議を経ても、建築基準を満たした場合には建築確認が下ります。このビルは、計画段階からやさしい
まちづくり条例が求める行政との事前協議をクリアしており、全く違法建築ではないのです。しかし、現実には車椅子を頑として拒否しているかのような、20センチの段差のビルができ上がっているのです。
この原因は、まちづくりを面としてではなく、敷地内の建物だけで見ているからにほかなりません。私は、県条例が目指している方向性は全く間違っていないと思いますが、熊本城の足元を観光客がリピーターとして訪れたくなり、また安心して歩ける、そして歩きやすい町並みなど、本市のこれからのまちづくりを考えたとき、まちを面として捉えた新たな視点の都市計画のルールが絶対に必要だというふうに思います。そのためには、政令市熊本にふさわしい新たな
まちづくり条例、都市計画のための条例が必要だと思います。上質な
生活都市熊本をまちづくりの基本理念とされる市長の見解を求めます。
〔
大西一史市長 登壇〕
◎大西一史 市長 本市では、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、いわゆる
バリアフリー法や、熊本県高齢者、障害者等の自立と社会的活動への参加の促進に関する条例、通称熊本県やさしい
まちづくり条例でございますが、これらに基づき、高齢者、障がい者等を取り巻くさまざまな障壁を取り除き、自立と社会的活動への参加を果たせる社会を築くことを目的に、ハード、ソフト両面における各種施策に取り組んでおります。
ただ、議員御指摘のとおり、中心市街地においては、建築物やその敷地のみならず、接道や歩道などを含めた全体的なエリアの
バリアフリー化には数多くの課題があり、一体的、連続的な
バリアフリー環境の実現に向けたさらなる取り組みが重要と認識しております。
今後ともやさしいまちづくりへの意識高揚を図り、市民や事業者の参画を積極的に促すとともに、他都市の事例を参考にし、必要な
ルールづくりなど、議員御提案の条例制定を見据えた検討を行ってまいりたいと考えております。
また、昨日山本議員にもお答えいたしましたように、災害に強く魅力と活力ある中心市街地の再生に向け、
まちなか再生プロジェクトを推進することとしておりますが、これに合わせ、建物の
バリアフリー化がさらに進んでまいりますよう取り組んでまいりたいと考えております。
〔35番 村上博議員 登壇〕
◆村上博 議員 大西市長は、本市の中心市街地の現状については数多くの課題があること、一体的、連続的な
バリアフリー環境の実現に向けた取り組みが重要であるとの明確な認識を示されました。その明確な認識をもとに他都市の事例を参考にし、必要な
ルールづくりなど、また、
まちなか再生プロジェクトの観点からも、
まちづくり条例制定を見据えて今後取り組まれるとのこと、大変に意を強くしたわけであります。一日も早い条例の制定を強く期待しております。
続いて、教育問題について幾つか質問させていただきます。
まず最初に、SSW、スクールソーシャルワーカーのことですけれども、SSWのモデル校配置の検証についてお尋ねしたいと思います。
次代を支える市民である子供たちは、私たちにとってかけがえのない存在であります。成長過程にある児童・生徒たちは、心身ともに大きく変化すると同時に、精神的にも大きく揺れ動く世代でもあります。そんな子供たちを取り巻く状況や子供たちの環境は、近年ますます複雑になってきております。そんな子供たちは、さまざまな支援を必要とする存在でもあります。
私はこれまで何度となく、困り事を抱えている子供たち自身や家庭を含めた子供たちへの支援策として、また、セーフティーネットの一つとして福祉的視点を持つスクールソーシャルワーカーのかかわりの重要さと、SSWの存在と活動は必要不可欠だと訴えてまいりました。直近の報道でも皆様御存じのように、かけがえのない子供たちの命が奪われる事件がたびたび発生しております。そしてまた、虐待件数もずっとふえ続けております。いわば本市で起きてもおかしくない事件が、全国各地で起きていると言えます。
そうした状況は、子供たちにとって非常事態の状況とも言えますし、そうした非常事態に、事件が起こらないように、未然に対応する関係機関と協議し対応するのがSSWの存在なのです。ですから、SSWの体制整備は緊急を要していると思っており、市長も教育長も、子供たちが置かれている状況については共通認識をお持ちだと思います。
前回の質問の折、SSWをより効果的に活用するためには、これまでの派遣方式ではなく、学校配置が最も効果的であり、SSWの学校配置への転換を質問してまいりました。それに対し教育長は、錦ヶ丘中学校と西原中学校において3年間のモデル事業として取り組むとの答弁があり、その後モデル事業が始まりました。中間年に当たる両校でのモデル事業の検証結果はどうなっているでしょうか。
私が、3年間のモデル事業の中間年でなぜ検証結果をお尋ねするのか。それは、3年後にその後の方向性について検討するのでは遅いからであります。冒頭で、子供たちは成長期であり、年々歳々身体的にも精神的にも大きく変化する存在であることを申し上げました。ですから、中間年での検証により、3年後以降の方針を今から検討しておく必要があると思うからです。そうした意味合いから、今後のSSW事業の展開についてはどのように考えておられるのか、教育長にお尋ねいたします。
〔遠藤洋路教育長 登壇〕
◎遠藤洋路 教育長 スクールソーシャルワーカー、SSWは、いじめや不登校の問題を初め子供や保護者が抱えるさまざまな課題に対し、学校、家庭、関係機関等と連携をとり環境の改善を図るなど、課題の解決に重要な役割を担っております。議員御案内のとおり、平成30年度から不登校児童・生徒が多い2つの中学校区にSSW、スクールカウンセラー、不登校対策サポーターを配置し、不登校対策モデル事業を行っております。
〔議長退席、副議長着席〕
この事業では、学校によって成果の違いはありますが、中学1年生で新たに不登校となる生徒がゼロであったり、出席日数が大幅にふえたりするなど、改善が多く見られております。これは、配置型にしたことで学校や家庭からの要望に対し迅速に応えられ、子供が抱える課題に対して早い段階から支援できたことが成果につながっていると考えます。また、学校の組織対応の活性化や教員の負担軽減にもつながっていると考えております。
現在、拠点となる学校から依頼のあった学校に、SSWを派遣するような活動形態を検討しているところであります。これによって、SSWがより学校に身近な存在になるとともに、学校や家庭からの依頼に少しでも早く対応でき、さらに活動時間の効率化が図られるものと考えております。
今後もSSWが子供や家庭に対して、より効果的な支援ができるよう、体制づくりに取り組んでまいります。
〔35番 村上博議員 登壇〕
◆村上博 議員 私は、これまで子供たちへのいち早い支援とかかわりを持つ上で、SSWの学校配置の効果性を訴え、そういった方向への転換を求め続けてきました。今回の教育長の答弁で、錦ヶ丘中学校と西原中学校におけるモデル事業の検証結果を受け、大変好結果が出ているというふうにお聞きしました。学校の先生たちの負担も軽くなり、また子供たちに対しても不登校の子供たちが出席日数がふえる、いろいろな面で効果が出ているという報告でした。
先生たちの負担も軽くなりますし、また、先生たちもSSWの人たちが身近におられることで、いろいろなことで尋ねることができ、教育現場の中で福祉的な視点がふえていくということ、これは大変に子供たちにとってよいことだろうというふうに思います。来年度から学校配置へ向けた取り組みとして、拠点校配置に取り組まれるとのことです。このことは完全な学校配置を見据えた取り組みであり、大きな前進と理解したいと思いますし、評価したいと思います。さまざまな困り事を抱えた子供たちへの支援策の充実として、今後に大いに期待しております。
続いて、教育問題についての2つ目、医療的ケア児童の就学についてお尋ねいたします。
医療的ケアを必要とする子供たちの、教育を受ける権利についてお尋ねいたします。さきの参議院選挙で、重度の障がいがあるお二人と、岩手県選挙区で車椅子の国会議員が誕生しました。今まさに立法府の最高機関である参議院で、同時に3人の障がい者の国会議員が誕生したことは、全国的に大きな話題となり、既に皆さんも御存じだろうと思います。私は、障がい当事者議員を中心とした障害者の政治参加をすすめるネットワークという団体の事務局を担っております。
8月の東京大会の折、参議院会館に出向き、舩後靖彦氏、木村英子氏のお二人にお会いして意見交換を行いました。そして、今後の活動について連携していくことを確認することができました。これまで重度の障がい者は一くくりにされ、就労を前提としない福祉制度の中で、社会参加の権利を奪われてきたと言っても過言ではありませんでした。今回の選挙結果は、障がい者の社会参加のあらゆる面で大変に大きな示唆に富んでおり、私は大きな関心を持っております。
私は、1970年代から障がい者の自立生活運動にかかわってきましたが、障がい者の社会参加は国際的には大変大きな潮流であり、日本国内でも世界の潮流に後押しされ、障がい者施策はノーマライゼーションが基本となっております。2006年12月16日に国連で障害者権利条約が採択されたときには、私はちょうど一般質問のときでありました。私は、この演壇から当時の同僚議員に、日本も賛成して採択されたことをお知らせしました。そして、採択から7年後の2014年1月20日、日本政府も障害者権利条約を批准し、その批准を受けて、国内法の整備として2016年4月、障害者差別解消法が施行されたのです。
このように法的には大きく前進しましたが、全国で発生するさまざまな事象、事例を考えると、社会の側がまだまだ多くの課題を抱えていると私は感じております。しかしながら、そのような中ですが、本年3月に文部科学省より、学校における医療的ケアの今後の対応についてという通知が出されました。この通知は、超党派の国会議員で組織された永田町子ども未来会議等の要望により、2017年10月に設置された検討会議で1年半の論議を経て通知されたものであります。重度と言われる子供たちが、地域の学校でともに学ぶための対応について、画期的な内容を含んでおり、その対応について全国的にも大変注目されております。
熊本市での対応を振り返ってみますと、実に感慨深いものがあります。私は当時、2期目の議員として市民連合の先輩であり、同僚議員だった東すみよ市議とともに、医療的ケアが必要な児童の地域の小学校入学の相談を受けました。
当時、熊本市では初めてのケースでもあったことから、受け入れについて教育長以下担当部署と協議の場を持ち、何回もの検討を重ねた結果、看護師を配置することで、熊本市では初めての地域の小学校への医療的ケアを必要とする児童の入学が実現しました。これは熊本市にとっては大変に画期的だったと、今でも強く感じております。その後、医療的ケアを必要とする子供たちの地域の学校への就学の願いがかなえられ、現在では11の学校に看護師が配置されております。その熊本市の取り組みの成果は県内外にも広がっており、県内でも多くの学校に看護師配置が実現しております。
加えて、私は昨年、福岡市の医療的ケアの必要な子供さんの本年度の入学についての相談を受けたことがあります。それまで実現が危ぶまれていたケースでしたが、熊本における看護師配置の経緯を伝えたところ、福岡市でも本市の先進的な取り組みを参考にされ、今年度10名の看護師配置が実現し、相談をされた本人と保護者の入学の夢がかない、現在元気に地域の学校に通学しているとのことです。
これまで先進的に取り組んできた熊本市ですが、この学校における医療的ケアの今後の対応についての通知を受け、今後も安心して学校生活が送れるような取り組みをお願いします。
そこで具体的には、1、9月議会の一般質問で山内議員から提案されたバックアップ体制を整え、始業から終業まで、親の付き添いなしに学校生活が送れる看護師の配置体制を確立すること。2、校外学習等宿泊を伴う行事においても、親の付き添いを求めることなく参加できるよう、看護師の勤務体制を整えること。3、また、市民病院の看護師の再雇用において、働く場の有効な活用方法を検討すること。採用についても、今後市民病院とも連携し、安定した学校配置の看護師の雇用のあり方を検討すること。
以上、この3点については教育長にお尋ねいたします。
そして、医療と福祉と教育制度が連携して、熊本市としての総合的な支援制度の構築について、市長にお尋ねしたいと思います。
舩後靖彦氏と木村英子氏が夏の参議院選挙で当選されたことで、議員活動を保障する介護の面において、国会では大変大きな論議が巻き起こりました。すなわち、障がい者の就労に関する移動支援、訪問介護は、長期間にわたり私たち障がい者の社会参加の重要なテーマとして、多くの障がい者や障がい者団体たちが、その実現を国や自治体に求め続けてきていたからです。
舩後、木村両議員については、当面参議院が負担するという形になりましたが、実は教育を受ける権利の面でも、重度障がい児の通学支援制度の実現がこれまで長期間にわたり問題提起されてきました。障がい児を抱えた保護者は、さまざまな社会参加の機会が奪われてきました。こうした状況を変える上で、舩後、木村両氏の参議院当選を受け、医療と福祉と教育制度が連携した本市としての総合的な支援制度の構築を考えてほしいと思います。
参議院選挙の結果は、国や自治体の制度の内容についても大変大きなインパクトを与えたというふうに思います。市長はどのような見解あるいは今後についての構想をお持ちでしょうか、お聞かせください。
〔遠藤洋路教育長 登壇〕
◎遠藤洋路 教育長 医療的ケアを必要とする児童・生徒の就学についてお答えいたします。
医療的ケアを必要とする児童・生徒が在籍する学校には、看護師を各1名、現在配置しております。また、本年度から教育委員会内に看護師資格を有する主任主事を配置し、看護師が休みのときに代行できる体制づくりを行ってまいりました。
宿泊を伴う行事についても、看護師が同行できる体制を整えており、保護者に対しては全ての場合において付き添いを求めているわけではありません。ただし、児童・生徒の安全の確保が前提であることから、児童・生徒の健康状態、医療的ケアの内容や頻度、想定される緊急時の対応などを踏まえ、必要に応じて保護者の付き添いも含め、学校や教育委員会、主治医や保護者などの連携や協力が必要であると考えております。
また、市民病院からの専門性の高い看護師の人材確保については、安定した医療的ケア実施の面から有効であると考えております。
今後も関係局との協議を行い、児童・生徒が安心して学校生活を送るために必要な看護師の確保に努めてまいります。