戦後、日本は
民主主義国家として出発しました。その
民主主義国家の根幹をなす教育は戦前のそれとは大きく変わり、その理念は憲法及び
教育基本法に明記されております。その趣旨は、明治以来の中央集権的な教育制度を改め、
地方分権化と教育の国家からの独立と自由を目指すものでした。当時の教育委員は公選制であり、市民の直接選挙で選ばれていました。予算の提案権も
教育委員会にあったことからしてもうかがい知ることができます。一人一人の価値や人格形成を大切にする、すなわち個性を大事にする民主的な教育と国家の実現という目標を掲げ、戦前の
国家主義教育から個人を尊重する教育への転換がなされました。
しかし、日本が米ソの冷戦体制に組み込まれ、政治も教育も時代の流れの中に振り回されるようになります。政治は
中央集権化が進み、教育は国家統制を受けるようになります。
教育委員会制度も公選制から任命制に変わり、教育の自治と独立という理念も、国家機構が中央統制を強める政治的な流れの中で、教育も無縁のものでなく、その指導内容はもちろんのこと、教科書の選定、校舎の建設、教員の身分や給与に至るすべての面で中央統制が強化され今日に至っています。
しかし、戦後五十年間世界の政治の枠組みであった米ソの冷戦体制が、ソ連邦崩壊とともに終わりを告げ、新たな世界秩序に向けた新しい時代を迎えようとしています。日本も世界の動きとともに、政治、経済、教育などあらゆる面で大きな時代の変革の波にさらされ、社会構造の根本的な問い直しが迫られています。二十一世紀に向けたよりよい改革が図られるべき重要な時期であり、知恵が求められていると言っても過言ではありません。
政界再編、産業の空洞化、オウム教に代表される社会不安、人口の少子化と高齢化、いじめ、不登校等の教育問題など、連日新聞紙上をにぎわわせています。特に、二十一世紀に向かう日本が世界に類を見ない速さでいや応なく直面する少子化、高齢化は、日本の社会構造に大きな変化をもたらすことであり、私たちは今こそ英知を結集し、人間本位の社会実現に向けた社会構造をつくり上げることが急がれます。
このように、
社会システムの大きな変革が求められているときに、教育においても問い直しが行われるのは当然のことであり、将来に禍根を残さないように問題点を論議し、教育改革が進められなければなりません。
日本の学校教育は、これまでに義務教育はほぼ一〇〇%達成し、
高校進学率九五%以上、
高等教育機関への進学率六〇%以上に達するなど、他の国に例を見ない高学歴者の量的拡大をしました。しかし、反面では病理的とも言える教育荒廃の現状を露呈しています。国民の間にも学歴主義の横行、受験戦争、
偏差値偏重と点数による
輪切り教育など、人間性より点数重視の傾向に疑問を投げかけています。
これらの弊害が、具体的に、学校現場ではいじめ、荒れ、不登校などの憂慮すべき事柄が多発しています。これらの現象は、子供自身や親、学校だけの責任にするべきものではなく、現代社会のひずみを反映したものであり、日本の社会構造や教育のあり方に警告を発しているとも言え、私たちはこの現実を真摯に受けとめ改善に向けて努力することが大切です。
教育現場に勤務していた者として感じますのは、多過ぎる教科内容、消化できずに無気力と学習意欲をなくす子供の増加、親の子供のしつけに対する自信のなさ、過度の学校への期待、保護者や地域の教育力の低下、多様化する価値観、日常的な雑務や子供の対応に追われる先生たち、先生同士の連帯感の希薄さ、さらに追いうちをかける管理体制の強化など、学校を取り巻く環境は子供たちにとっても、先生たちにとっても、ますます楽しくない学校になりつつあると言っても過言ではありません。
これらのことが複合していじめ、不登校などの社会的にも問題となっている病理的現象を生み出していると言えます。これらの問題に対して、カウンセラーの派遣、相談室の設置、各級機関との連携強化などの対策が講じられていますが、対症療法的な対応であるとしか言えず、抜本的な解決策は見出し得ないでいます。社会や教育の構造にメスを入れて抜本的な改革を行うことが求められています。
そこで、
教育委員長にお尋ねします。今まで述べましたように、日本社会は大きな構造改革が迫られ、教育のあり方も問い直されています。このような社会の変革期の中で、教育のあるべき方向性とでも言いましょうか、教育の理念なり教育観、さらに教育行政のあり方などお聞かせください。
〔
教育委員長 大橋綾子君 登壇〕
◎
教育委員長(大橋綾子君) 中松議員に教育及び教育行政のあり方に関する見解についてお答え申し上げます。
今日我が国の社会は大きく変動しておりますが、この変化に対応して二十一世紀を展望した教育のあり方が強く問われておりますとともに、いじめを初めとするさまざまな教育上の課題に直面しておりますことは、議員の三十四年にわたる貴重な御経験に基づく御指摘のとおりでございます。
私の教育に対する基本的な考え方は、
教育基本法の精神にのっとりまして、中立性、安定性、継続性を確保し、時代の進展に対応し得る教育改革やさまざまな改善方策を強力に推進していくことを根本にしております。
次に、教育行政のあり方につきましては、熊本市の特性を踏まえながら、学校教育の充実や生涯学習体制を整備し、さらに市民のニーズの多様化や教育問題に迅速に対応する体制を強化し、
教育委員会の活性化を図ることが重要であると考えております。
本市教育委員会はこのような方針に基づきまして、二十一世紀を担う人づくりを再重点課題といたしまして、子供たちが心豊かにたくましく育つような学校教育の充実や
環境づくり、それから生涯学習の推進に鋭意努力中でございます。その具体策として、例えばさきの文部省通達に先んじまして実施いたしましたいじめの総点検を初め、学校、家庭、地域と連携して実施する心豊かな
学校生活確立推進事業など、熊本市独自の教育、事業を推進し、成果を上げておりますとともに、学力の充実の面では、新学力観に基づいた
授業づくりを展開いたしているところでございます。
本市教育委員会は、全国に誇り得る熊本の教育の構築に向けまして、教育の本質に根差し、時代に先んじた施策を今後も展開してまいる所存でございます。議員各位の御理解と御支援を切にお願い申し上げる次第でございます。
〔九番 中松健児君 登壇〕
◆九番(中松健児君)
教育委員長の前向きで積極的なお考えを拝聴し、救われた気持ちです。国家百年の計は教育にあると言われています。目先にとらわれることなく、大きな視野に立って教育行政を推進されますようお願いいたします。
次の質問に移ります。
先月、文部省による平成六年度の
学校基本調査が発表され、その中で、全体の児童・生徒数が減少する中で、小中学生の
登校拒否者が過去最大の数に達したことが報告されています。熊本市の実態も全国の動きと大きな差はないかと思われます。今、学校においては
登校拒否者増加というだけにとどまらず、いじめや自殺、校内暴力、万引きや窃盗、飲酒、喫煙、
不純異性交遊等の非行、さらに
保健室登校や無気力な授業への参加など、枚挙にいとまがありません。教師側にも、子供たちへの暴力行為、無気力で形式的な授業と権威主義、自己中心的な子供たちへの指導などが指摘されています。これらを生み出している原因は多岐にわたり、その解決に向けて、学校現場、行政は試行錯誤の連続ですが、学校で起こるさまざまな子供たちの行動に対して、教師や行政は積極的に予防し解決していかねばならない義務と責任があります。
私は以前、県下で一番荒れていたと言われる高校に八年間勤務いたしました。この学校が荒れているとは知らずに赴任したのですが、着任早々から厳しい対応を迫られ、当時今までの教員経験二十年は何だったのかと自問自答しながら、体を張って生徒にかかわったことを思い出します。
振り返ってみますと、この学校での経験が教師としての視野を広め、自分なりに成長させられたのだなあと実感しています。荒れた子供たちとの対応の厳しさは、直接かかわった者しかわかりません。まさに毎日が闘いと言っても過言ではありません。この学校の正常化に向けて、職員、保護者、地域の人が一丸となって取り組み、現在では学力も向上し、地域の評価も高まり、志願者も増加しています。私は、子供たちとのかかわりの中で、教育とは何か、教師は何をなすべきかを身をもって学んだような気持ちです。学校や教師の権威がいかに無力なものか、最後に人を動かすのは子供と先生の心の触れ合い、信頼関係であると痛感いたしました。教師は意識的か無意識のうちか、権威の中に安住しがちですが、子供たちとともにあるのだということを常に自覚し、日々の教育活動に当たらなければいけないと思っています。教師は理屈より行動です。山本五十六という
連合艦隊長官が「やってみせ、言って聞かせ、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ、学ぶは真似ぶに通ず」と述べていますが、まさに人間教育の至言だと思っております。
子供たちは大人の常識を超えた行動をしますが、基本的には学校で楽しく過ごしたいと思っています。この単純な気持ちを大人である私たちがこたえきれないでいると言えます。そのためには、保護者、教職員、行政が主体的に障害を取り除く努力が必要です。特に子供たちと直接かかわっている教職員はその責任が重大です。子供たちは学校から逃げ始める何らかのシグナルを発します。その第一の兆候は、授業がわからない、授業がおもしろくないと思うこの時点からが要注意です。子供たちは、授業がわかりたい、向上したいという気持ちを持っているのですから、この時点における適切な指導やかかわりが大切です。学力不振が学習意欲を失わせ、無気力を呼び、非行や学校拒否という悪循環となっている面があります。
先生方は何が問題かを十分把握されて毎日の教育実践をされているとは思いますが、今実践している教育活動が万全であるというわけではありませんので、常に反省しながら、さらに質の高い教育実践を行うことが大切です。行政も現場の声に耳を傾け強く支援していく必要があります。
私は
学力不振児をなくし、基礎学力をつけるためにどうすればよいかということで校内で徹底的に論議し、先生個人はもちろん、組織的に対応する体制ができれば、子供たちも学校も変わっていくと思います。具体的には、毎日の授業の工夫、個別指導、家庭との連携、教師相互の連帯と経験交流など、学校で実践できるものは実行するという努力を重ねていくうちに、子供たちとの心の交流、信頼関係も強固なものとなり、子供たちにとっても楽しい学校に変質し、不登校、非行、荒れなどの防止に寄与すると思います。
また管理職や行政は、先生方が教育活動に専念できるように学校の体制の条件整備が必要です。例えば毎日の雑務排除と環境整備、職員間の意思の疎通と相互理解、職員が意欲を持って働ける自由な雰囲気の醸成と組織の活性化、職員の適正配置と研修の保障など、子供たちに全力を注げる学校現場をつくることが必要です。
一つの組織をリードし施策を推進していくためには、管理職の人間としての
リーダーシップと資質が問われます。子供たちのことを中心に据え、みずからが率先して活動し、職員から人間として信頼される人材が
リーダーシップをとれば大きく学校も変わると思います。今までに学校現場の実態を述べながら、先生方のやる意欲の醸成、管理職の指導性、行政のあり方など申しました。
ここで教育長にお尋ねします。
一点目は、
学力不振児や登校拒否などの子供たちに対して、先生方、学校、または行政がどのような
具体的取り組みをしておられるのか。
二点目は、管理職の資質はどうあるべきか、また実際に管理職の任用はどうなっているか。
以上二点について御答弁をお願いします。
〔教育長 後藤勝介君 登壇〕
◎教育長(後藤勝介君) 中松議員にお答えを申し上げます。
大変すばらしい御意見をお伺いしまして、答弁することにいささかちゅうちょを感じておりますが、お許しをいただきたいと思います。
まず、
学力不振児や不登校児童・生徒への指導、あるいはこのような子供たちをなくすためにはどうすればよいのかという点についてお答えを申し上げます。
学力不振児と申しますか、学習のおくれがちな児童・生徒に対しましては、各学校におきまして個人的にかかわり合いながら指導したり、日程表の工夫を行うことによりまして個人指導の時間を確保するなどの配慮を行っております。
また不登校の児童・生徒につきましては、早期発見、早期治療に努め、家庭訪問や電話などで常に連絡をとり、子供の悩みや心の動きを温かく受けとめる努力を重ねております。このほか、
教育センターにおきましても、個別や小集団での適応指導やメンタルフレンドの派遣による訪問指導などを行っております。
現在、以上のような対応を行っておりますが、このような子供たちをなくすためには、児童・生徒が喜んで登校し、教師との温かな信頼関係のもとで楽しく学習できる学校生活を確立することが急務であると考えております。そのためには、わかる授業を行うことが第一であり、各学校においてそのような授業の実践に日々努力しているところでございます。
具体的には、
児童・生徒同士が教え合い、励まし合うことができる温かな
学級集団づくりに努めますとともに、個別学習や
グループ学習など指導方法の工夫改善に努めております。今後とも各学校において、わかりたいと思う子供の心に寄り添うような教育指導を行い、児童・生徒と教師との触れ合いを深め、
教育相談体制を充実していくことが学力の向上、ひいてはいじめや不登校などの生徒指導の諸問題の解決にもつながっていくものと考えております。
教育委員会といたしましても、校長会や
各種研修会等を通しましてさらに努力をしてまいりたいと考えております。
次に、管理職の資質はどうあるべきか、また管理職の任用はどのようにされているのかという点についてお答えを申し上げます。
ただいま議員から詳しくお触れになりましたように、社会がさまざまな変化をします中で、子供たちも大きく変わっているのが現状でございます。そのような中で、方向を誤らないように、広く明確な
教育的識見を持つ管理職が求められております。その管理職の資質について、一つには、学校組織と運営を機能させる力強い
リーダーシップを発揮し、責任感を持ち、判断力、決断力にすぐれ、
危機管理能力を持つことが必要であると思いますし、また一つには、学校教育の基盤は
教職員相互間に深い信頼と尊敬の念が通い合うことであり、あるときは教師の先輩として、また
最高責任者として恥じない豊かな人間性を身につけ、同僚や児童・生徒や保護者の信頼にこたえることが肝要であると思います。そのためには、まず管理職みずからが教育者としての人格を磨くことが大切ではないかと考えております。
なお、管理職の任用につきましては、
県教育委員会の異動方針にありますように、人物、
教育的識見、学校経営の能力、指導などに配慮しながら実施しているところでございます。これからも
県教育委員会と協調して、児童・生徒があすも行きたいというような
学校づくりに努力してまいりたいと考えております。
〔九番 中松健児君 登壇〕
◆九番(中松健児君) 教育長の前向きで子供を愛する気持ちをお聞きしありがたく思っております。先ほども申しましたように、教育は国民の一番期待することです。ぜひ教育行政を子供たちの立場に立って推進されるようにお願いします。また学校現場を預かる管理職は、管理者としてよりも教育者であるという自覚を持って学校運営をされるように御指導をいただきたいと思いますし、
教育的視点を大切にする人格、識見ともに豊かな人を県に管理職として具申されるように重ねて要望します。
また学校現場の実態を把握されるに当たっては、管理職からの報告だけではなく、直接子供の指導に当たっておられる現場の先生の声を聞く機会を設けてほしいということも要望しておきます。
次の質問に移ります。
七月中旬、
慶徳小学校新
校舎落成式に出席させていただき、その折に施設設備を見学してまいりました。広々とした空間、近代技術を駆使した施設設備、さらに社会教育の場としての機能を持つ諸施設など、従来の学校建築の常識を超えたユニークな校舎など、学校も変わりつつあるなと実感しました。学校建築といえば、今までは、どちらかと言えば安っぽくて
最小必要限度の施設設備しか建築されなかったのが、行政も学校建築に国の基準を超えた施設設備にお金を注ぐようになった点を評価しながらも、既存の学校との格差、さらに、新
校舎建築費捻出のため既存の施設の改善費が抑制されているのではないかと懸念もしました。しかし今や学校は地域とかけ離れた存在ではなく、生涯教育の一環として位置づけられ、地域のスポーツ、文化、福祉の拠点としての役割を担う場として脚光を浴びています。
慶徳小学校が地域の
コミュニティーセンターとしての機能を持ち、将来の方向性を示すモデルケースとして建設されたものと理解しています。
文部省も学校開放の方向を示しています。新設、既設を問わず、学校の施設設備の開放に向けて人的、物的な条件整備を図ることが肝要です。学校開放に対する
教育委員会の考え方についてお聞かせください。
次に、学校建築についてですが、昭和三十年代からの
ベビーブーム時代に集中的に建設された小中学校の校舎や体育館が全国的に建てかえの時期に来ていると思われます。
教育委員会としても十分に認識され、その建てかえ計画を策定してあるかと思います。そこで、熊本市の現状とこれらの学校の建てかえ計画についてお知らせいただきたいと思います。なお、校舎等の建てかえに当たって、次の二点について要望します。
一点は、阪神・淡路大震災における教訓として、地域防災の拠点として学校の果たした役割は大きなものがありました。地域防災の視点と耐震性を高めた建てかえを進めていただきたい。
二点目は、近い将来学校がスポーツ、文化、生涯学習の場として地域の中心的な役割を担うという観点に立ち、計画段階から地域住民や学校現場の意見を取り入れるような組織をつくり、地域の声が反映するようにしていただきたい。二点の要望をしましたが、教育長のお考えを聞かせてもらえれば幸いです。
次に、新設学校と既存の学校との施設設備の格差の是正です。
学校の建てかえのため既存の学校の改善が放置されたり削減されたりしますと、施設設備にさらに大きな格差が生じます。多くの学校において
施設設備改善の要望があります。例えば校舎の床の張りかえ、便所の改善、水道管の取りかえ、子供や職員の机、いすの老朽化による買いかえ、事務機器やAV設備の購入等の施設設備の改善要望です。これらの施設設備の改善要望をどの程度把握し、要望にどのようにこたえようとしておられるのか、お尋ねします。
さらに、学校の運営費、特に旅費についてお尋ねします。
先生方にとって研修や経験交流は子供の指導にとって不可欠であり、かつ重要なことです。狭い枠の中での自己研修だけでは先生の資質向上になりませんし、ひいては子供たちにとって大きな不幸です。例えば不登校の子供にかかわるに当たって、先生方はその子供の置かれた立場や背景、
児童心理学や医学的な側面、今までの教育経験など総合的に判断しながら子供にとってよい方策を見出す努力をするわけですが、やはり先生の経験や学識的な深さなどが要求されます。
しかし、そのための研究会や各種の研修講座への出席は厳しく制限されており、県外への研修に至ってはほとんどないと言われています。教員は研修こそ基本であるわけですが、旅費の予算が少ないために研修の機会が与えられないのは問題であります。各校に配分される旅費の大半は、行政主催の会議、子供の引率、管理職の出張などに多くを使われ、一般の先生方への旅費は少額であるのが現実です。ぜひ
研修旅費等について一考していただきたいと思います。
また、中体連等で優秀な成績をおさめ、その活躍は喜ばしいのですが、県外への遠征のため、支出が一般の先生方の旅費を圧迫するとも言われています。これらの特別支出に対する何らかの措置ができないかと思います。御検討ください。
何点かについて質問しましたが、教育長の御答弁をお願いします。
〔教育長 後藤勝介君 登壇〕
◎教育長(後藤勝介君) それでは、ただいまの質問について順次お答えを申し上げます。
まず学校の建設についてどのように考えているのかということでございますが、基本的には児童・生徒数の増加に伴います新設校の開設、あるいは老朽化が進んでおります校舎等の改築を進めながら教育環境の整備を進める必要があると考えております。そういう中で、ただいまお話がございましたとおり、昭和三十年代のベービーブームに対応して建設されました校舎や体育館が建てかえの時期を迎えておりまして、大変頭の痛い問題でもございます。この改築に当たりましては財源の確保というのが大きな課題になるわけでございますが、そのためには国の補助事業に乗せるということが一つの大きな要因でございます。この国の補助事業としての採択基準を見てみますと、
鉄筋コンクリートづくりの校舎では建築後六十年、
鉄骨づくりの体育館は建築後四十年の経過年数が必要とされております。
したがいまして、
教育委員会といたしましては、国の基準に沿いまして計画的に施設の改築を図っているところでございますが、その間の校舎の保全につきましては、必要性及び緊急性の高い学校から大
規模改造事業を活用し、校舎のリフレッシュに努めているところでございます。ただいま地震対策あるいは地域との関連を含めまして改築に当たってのさまざまな御提案をいただきましたが、その趣旨を十分踏まえながら計画の推進に努めてまいりたいと考えております。
次に、新設校と既設校との施設面での格差是正についてお答えを申し上げます。
確かに、新設校と比べまして、既設校の施設は年数がたちました分だけ格差が生じておりますことは現実でございます。したがいまして、先ほど述べました大
規模改造事業あるいは改築事業を進めまして、その格差是正に努めているところでございます。
また、その他の施設設備及び備品等の改善要望につきましては、学校からの申請によります現地調査や定期的な学校訪問等により、学校側の意見を拝聴しながらその対応を図っているところでございます。今後とも十分配慮してまいりたいと思います。
いずれにいたしましても、子供たちがよりよい教育環境で伸び伸びと学校生活が送れますよう努力してまいりたいと考えております。
次に、教職員の研修旅費、あるいは部活動引率旅費等の拡充についてお答えを申し上げます。
最近の教育課題解決のためには何よりも教職員の資質の向上が急務であると考えますので、そのための各種研修の充実に努めているところでございますが、その中で学校を一歩離れた研修、例えば県外での、あるいは国外での長期、短期の研修は教職員の資質の向上に特に役立つものと思われます。しかしながら、ただいまお話がございましたとおり、学校の現場におきましては旅費の執行に苦慮されているのが実態でございます。
教職員の
研修旅費等につきましては基本的には県の負担によるべきだと思いますが、熊本市といたしましては市単独の予算措置を行いまして、国内での長期、短期の研修あるいは国外への派遣研修に取り組んでいるところでございます。今後より多くの教職員に研修の機会を与えますために、また部活動のさらなる推進を図りますため、旅費の確保について県に対し要望してまいりたいと考えております。
〔九番 中松健児君 登壇〕
◆九番(中松健児君) 校舎等の改築に当たっては膨大な財源を必要といたしますので、十分長期的な展望に立って早目に計画を策定され遺漏のないように増改築等が進められますように希望いたします。
私は、施設設備費や旅費等に絞って予算の増額を質問いたしましたが、ほかに一般需用費、図書費、学校教材費、学校運営費など全般的に不足しております。保護者からの援助で学校運営が補完されている面も多く、父母負担軽減の立場からも、厳しい財政状況とは思いますが、公費を増額されるようにお願いいたします。
なお、このほかの学校現場にかかわる問題については常任委員会で質問させていただきます。
次に、第二
教育センター建設について提案いたします。
学校五日制の進行、多様化する学校など、社会は大きく変革しています。教師も時代の変革に対応するために研修や経験交流等の研さんを深める必要があります。そのためには研修の拠点となる場が必要です。現在の
教育センターは余りにも敷地も狭く、施設設備も不足しています。急速な技術革新と社会変革が進行する中で、学校教育の中身も変わり、子供への指導も多様化し、教師の大学での学習内容や経験や勘だけでは変革に対応できません。そのためには視聴覚やマルチメディアの施設設備、理科や家庭科のための実験、学習室の設置、研究活動に必要な資料や専門書の整備、各種の研修講座の開設など、その機能を充実させ、教師が自主的に自由に研修する場としての研修センター、さらに生涯教育の一環として一般の人の利用できる社会
教育センターとしての機能の充実、また将来熊本市が政令指定都市として発展するに対応するための施設など、将来を展望した研修センター建設構想です。
教育長にお尋ねします。一点目は教員の研修のあり方について、今も言われましたが、基本的にどのようにお考えなのか。
二点目は、行政として教員の研修を推進し、どのように保障しようとされるのか。学校では、研修に出ようとしても出張の機会が制限されます。そういう意味の保障をどうされようとするのか。
第三点目は、第二
教育センター建設構想についての教育長のお考え、以上三点について御答弁をお願いします。
〔教育長 後藤勝介君 登壇〕
◎教育長(後藤勝介君) 教育の問題についてお答えをさせていただきます。まず順序が先生の御質問と若干変化するかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。
まず、教職員の研修の件でございますが、今おっしゃいましたとおり、時代の変革に対応できる資質を養うための研修をしなければならないと私どもも考えております。そのために
教育委員会といたしましては、校長、教頭を初め教職員を対象といたしました合宿研修や、長期、短期の県外、海外研修などを行っておりますほか、
教育センターにおきましては学校教育関係講座、コンピューター研修講座、学校・社会教育連携研修講座などを年間計画を立てながら実施をいたしております。今後もこの充実に努めながら、そしてまた先生方がこの研修に参加しやすいような方法を考えていかなければならないと考えております。
それから、第二
教育センターの建設についてでございますが、御承知のとおり現在の
教育センターは昭和六十二年に開設されまして以来九年目を迎えております。しかしながら議員御指摘のとおり、敷地が狭いこと、四町合併によります教職員の増加、新学習指導要領の実施に伴います研修内容の多様化、教育相談の量の増大などによりまして施設設備機能などの面で不備を来し始めております。したがいまして、二十一世紀を展望しますときに、新たな需要に対応する
教育センターの建設を検討する時期に来ているのではないかと考えております。ただいまの御提案を踏まえながら、また今後市議会の御意見を十分お伺いしながら検討してまいりたいと考えております。
〔九番 中松健児君 登壇〕
◆九番(中松健児君)
教育委員長、教育長には、教育の理念から子供たちへの指導のあり方、学校建築や運営費にかかわる公費の増額、管理職の任用と資質、教員の研修と第二
教育センター建設など幅広く質問いたしましたところ、いずれの質問にも前向きに丁寧に御答弁いただき感謝申し上げます。
今日ほど、学校内外で多発する子供たちの諸問題に対し国民は憂慮し、学校教育のあり方を含め、人間教育のあり方が問われている時期はありません。
教育委員会としてもこの現実を厳しく受けとめ、真に子供の立場に立つ教育行政を推進されるようにお願いいたします。
次に福祉問題の質問に移ります。
我が国が急速に高齢化社会に移行しつつあることは、現時点で高齢化率一四%を超え、二〇二〇年には二三・六%となり、国民の四人に一人は高齢者になるというのは厚生省の人口動態調査統計が示しています。高齢化の進展は日本社会のさまざまな分野に影響を与え、社会、経済全体を大きく変えることは確かです。今こそ私たちは、高齢化社会にふさわしい
社会システムの構築に向けて英知を結集し、実働に取り組む重要な時期と言えます。
総理府が八月に発表した国民生活に関する世論調査の結果でも、政府への要望の第一は「医療、福祉、年金の充実」が五五%という高率を示し、関心の高さを示しています。福祉の充実は国民的課題です。福祉問題について政府は、長寿、福祉社会に向けての福祉ビジョンを示しています。その中で二十一世紀高齢化社会を悲観的にとらえるのではなく、現実を直視して前向きの視点で諸施策を実行するように提言しています。
三角市長におかれましても高齢化率がピークに達する二〇二〇年には八十歳となられるわけですが、高齢化する社会をどのように受けとめ、政府の推進しようとする諸施策に対する市長の考えや熊本市の福祉政策の進め方など、市長の所信といいますか決意のほどをお伺いします。
〔市長 三角保之君 登壇〕
◎市長(三角保之君) 高齢者の福祉についてのお尋ねの中で、福祉政策に取り組む市長の考え方ということでございましたけれども、福祉問題全体ということになりますと大変幅の広いきめ細やかな考え方を申さねばなりませんので、高齢者福祉を中心にということで少し考え方を述べさせていただきたいと存じます。
急速な少子化、高齢化が進む中、労働力人口の減少や若年世代の負担の増加など、さまざまな問題が指摘され、二十一世紀には社会経済全体の活力が低下するのではといった懸念の声もあるようでございますが、私は、高齢化が活力に結びつく社会の実現に向けて、社会経済全体のシステムを高齢社会にふさわしいものにつくりかえていくことが重要であろうかと考えておるところでございます。
今各町内を見てみましても、自治会あるいは社会福祉協議会、防犯協会、青少年健全育成協議会等々の役員をしていただいております方々もほとんど大先輩の方々ばっかりでありまして、今までの経験あるいは公を思う気持ちの豊かさからこのボランティアが成立をしておるというふうに思うわけでございます。
そういった中で、きのうもテレビに出ておりましたが、伝承遊びというふうなことでありましたけれども、大先輩方が子供たちに指導していただくその遊びの中で、あの子供たちの生き生きとした目、そしてまた自然の中からつくり出される日本の古来の伝承遊び、そういったことを次の時代に継承していただくのはやはり高齢者の皆さん方であります。
その高齢者の皆様方がお持ちのお力を社会の活力として十二分に生かしていただかなければならないと思うわけでありまして、高齢者の皆さん方が元気である限り、働き、楽しみ、いわゆる生涯現役というふうな言葉を私は使わせていただきたいと思うわけでございますけれども、社会に御貢献いただける体制づくりと、自立が困難になった場合に、行政のみならず地域近隣を含めた社会全体で支援し、サポートしていく体制づくり、いわゆる地域福祉体制の充実が必要でなかろうかというふうに思うわけであります。
まず、高齢者の方々がいつまでも働くことができ、その多様で自由なパワーを最大限に発揮していけるようにすること、そのためにはあらゆる人間活動の源泉である健康を維持していくことが不可欠であると思います。若いころからの健康づくりや保健医療サービスの充実を通じて生涯にわたる健康を確保し、そうした健康の土台の上に仕事の確保や社会文化活動の拠点づくりといった、豊かで生きがいに満ちた生活のための
環境づくりを進めていかなければならないと考えております。
そして、こうした高齢者の健康や仕事、生きがいといったことと同時に、老後の最大の不安は寝たきりや痴呆となったときの介護の問題であります。自立困難となった場合に、生活を支え得る介護サービスの基盤整備といったことも大きな政策課題であろうと思うわけであります。
今後、老人保健福祉計画の推進により、二十四時間ホームヘルプの実現を初めとして、在宅、施設を通じた介護サービスの拡充を図るとともに、地域住民の方々が主体となった地域福祉活動を積極的にバックアップし、いわゆる社会的弱者と言われる人たちが、地域の支え合いの中で一人の人間として人権を尊重され、安心して生き生きと暮らしていけるまちづくりを推進していきたいと考えておるところでございます。
言うまでもなく、福祉社会はひとり行政のみで実現できるものではありません。私は常々、家庭の延長に地域があり、地域の先に都市があると申し上げてまいりましたが、家庭のきずなを大切にして、この家庭を核として、お互いに助け合い支え合う地域社会を築いていくこと、このことこそが都市化の進展の中で希薄化してしまった地域コミュニティーの復権につながるものであると思うわけでございます。
◆九番(中松健児君) ただいま都市局長には前向きの御答弁をいただき感謝しております。一日も早く都市計画道路が整備されることを祈念しております。まちの活性化の基盤は道路網の整備にもありますので、よろしくお願いいたします。道路網の整備は、市民の気持ちとして総論賛成、各論反対と言われるように大変な苦労があると思います。誠実に対応され事業の円滑な進展を期待します。
次に福祉タクシー利用についてお尋ねします。
なお、質問通告には市道の整備についてと書いておりましたが、都市計画道路整備にかかわっての市道整備の意味でしたので、前段で質問しておりますので削除します。
障害者等の皆さんに対する福祉の一環として、タクシーの利用に対して運賃の一部を助成する制度を設けて援助しているわけですが、このようなきめ細かい配慮をしていくのが政治だと思います。この制度の充実を図る視点から質問します。
福祉タクシー利用についての基準は、一、車種により四百五十円、一千八十円、一千三百五十円の三種の利用券を一人年間三十六枚交付する。二、交付基準は身障者手帳一級、二級で所得税が非課税の者となっており、この数年年間二千三百万の予算が計上され、その執行額は予算額を上回り、利用の多さを感じますし、利用者にとっては大変ありがたいことだと感謝されています。普通のタクシー乗車では一回四百五十円の助成がなされていますが、この額は当時の初乗り料金を基礎に算出されています。事業開始後三度ほどタクシー運賃が改定され、現在初乗りは五百五十円となっておりますので、ぜひ五百円ぐらいまでに助成額を引き上げられないかと思います。
また、障害者が病院や各種の施設に出かけるわけですが、これらの方が乗降しやすい停車スペースや駐車スペースが設置してあると、他の車に迷惑をかけずにゆっくりと乗降できます。市民会館、黒髪のカルチャーセンターにはこれらのスペースが確保されています。市役所等の公的機関にぜひ整備してほしいと思います。病院、ホテル、会議場等の民間施設にも要望してほしいと考えます。
以上二点、助成額の引き上げ、乗降用の駐停車スペースの確保について市民局長の御見解をお願いします。
〔市民局長 野田雅水君 登壇〕
◎市民局長(野田雅水君) 福祉タクシーに関する二点のお尋ねでございます。まず助成額についてお答えいたします。
現行の助成額は一回当たり四百五十円でございますが、議員仰せのとおり本年六月料金改定がございましたので、年度が改まります来年四月から所要の改定を実施してまいります。
第二点は乗りおりの際の駐車スペースの確保についてでございます。
議員申されましたように、障害者の方々が福祉タクシーを利用される際に御苦労なさいますのは乗りおりのときでございます。障害がありますので乗りおりのときに大変時間がかかりがちでございますが、そんなときに雨の日には余計にぬれたりいたします。また常に周りの人に気兼ねをされるというのが現実であろうかと思います。モラルの問題でもございまして、みんなが理解し合えばある程度解決するのではないかと思うわけでございます。したがいまして、やさしいまちづくりの展開の中で啓発活動も進めてまいりたいと思います。と同時に、スペースの確保につきましても何らかの形で実現ができますように、その方策を種々検討してまいりたいと存じます。
〔九番 中松健児君 登壇〕
◆九番(中松健児君) ただいまは実現に向けて前向きの御答弁をいただきありがとうございました。
市民局は市政の窓口として施策も多岐にわたり、大変なことだと思います。市民のニーズにこたえ、さらなる市民生活向上のため頑張ってください。
その他の項について、市民税の超過徴収についての質問を予定しておりましたが、牛嶋議員より同趣旨の質問があっておりますので削除いたしますが、今後、二重、三重のチェック機構の強化を図り、二度とこのようなことが起こらないよう強く要望しておきます。
本日は、冒頭申しましたように、私の公約でありました教育と福祉の充実という視点から質問いたしましたところ、執行部の皆様には誠心誠意前向きの御答弁をいただき感謝いたしております。
教育や福祉の問題は、建造物や道路建設とかのように大きく市民の目に触れるでもなく多額の予算を必要とします。財政が厳しくなると一番の削減の対象となりがちです。しかし市民の一番の関心は福祉の充実であり教育への期待です。また政治の視点は、支えを必要とする人に光を与え希望を持たせることだと思います。今後とも、市民の立場に立った公平公正な市政を遂行されますようにお願いします。
また、議員の皆様には長時間にわたり、新人で要領を得ない面もありながら御清聴いただき、心から感謝申し上げます。これをもちまして私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
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○議長(荒木哲美君) この際、議事の都合により休憩いたします。
午後二時に再開いたします。
午後零時一分 休憩
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午後二時三分 再開
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○議長(荒木哲美君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
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○議長(荒木哲美君) 質問を続行いたします。坂田誠二君。
〔三番 坂田誠二君 登壇 拍手〕
◆三番(坂田誠二君) 自由民主党熊本市議団の坂田誠二でございます。
四月の統一地方選におきまして議席を得たばかりでございますが、早速質問の機会を与えていただきました先輩議員並びに同僚議員に感謝を申し上げる次第であります。
初めての質問でございますので、ふなれな点も多々あろうかと思いますが、三角市長を初め執行部の明快な御答弁をよろしくお願い申し上げます。
それでは、通告と一部順序を変更しまして質問に入らせていただきます。
まず最初に、熊本都市圏における総合交通対策、特に幹線道路網の整備についてお尋ねいたします。
平成三年の四町合併により本市の都市規模は飛躍的に拡大し、現在では人口六十五万人を有する全国十四番目の都市へと発展し、現在、本市議会において同意議決いたしました来年四月の中核市移行に向けて着々とその準備が進められているところでございます。
中核市になりますと、県から多くの事務が移譲され、より一層市民サービスの向上が図られるとともに、市独自の個性豊かなまちづくりを進めることができるようになるのではないかと思いますので、県及び県議会の同意を得て、一日も早く正式に決定されるよう期待申しております。
さて、私は、本市が今後中核市として、あるいは県都としてさらなる発展を志向するには、どうしても広域都市圏として周辺市町村との連携を強化し、九州の中心であるという地理的特性を生かしつつ、県内の他圏域や隣県とのネットワークを広げ、福岡、北九州と並ぶ九州の拠点都市としての機能を高めていくことが必要であり、そのためには、何と申しましても都市基盤整備、特に道路網の整備を積極的に推進しなければならないと思うのであります。
生活圏、経済圏の拡大と都市機能の一極集中に伴い、周辺市町村からの人、物の流入がますます増大しつつある現在、環状道路等の整備がおくれているため慢性的な交通渋滞を引き起こし、交通事故の増加、低速走行中の排気ガスによる大気汚染、あるいはバスなどの公共交通機関の定時性が保てなくなるなどの問題が生じております。
そこで、骨格となる二環状八放射を中心とする幹線道路網及びその補完道路等の整備は、熊本市民のみならず周辺市町村の住民にとっても一日も早い完成を期待をしているところでございます。
環境問題が叫ばれる中、道路網の整備はさらなる自動車の増加を促し、環境破壊につながるのではないかという懸念の声もありますが、私は、公共交通機関の利便性を向上するためにも道路整備は不可欠であり、きちんとした道路整備がなされて初めてマイカーから公共交通機関へのシフトが実現するのではないかと考えるものであります。
また一方では、昨年十二月に、建設省の地域高規格道路の候補路線の一つに熊本都市圏環状道路が指定されました。地域高規格道路は、地域の経済や文化圏を強化するために、空港、港湾、インターチェンジなどの拠点を結ぶ幹線道路を、拡張あるいは立体交差化するなど改良し、高速道路並みの機能を持たせるものであり、実現すれば本市交通の大動脈となることは間違いなく、私も大いに期待をしているところであります。
都市圏の総合交通問題については現在、建設省、知事、市長による交通問題の検討委員会や、県、市、民間の三者が協力して、広域的に取り組むべき諸問題について論議を重ねられております熊本広域都市圏創造会議の交通部会等においても、さまざまな観点から活発な論議が繰り広げられていると伺っております。
そこでお尋ねいたしますが、二十一世紀に向けて本市がさらなる飛躍を遂げるための必須条件とも言える熊本都市圏の道路整備への取り組みについて、三角市長はどのようなお考えをお持ちかお聞かせ願いたいと思うのであります。
〔市長 三角保之君 登壇〕
◎市長(三角保之君) 坂田議員にお答えをいたします。
去る八日の本会議におきまして先議案件として議決をしていただき、本日県議会に提案をしていただき同意を求めております中核市でございますけれども、県の同意、そしてまた国から認めていただくことができますならば来年の四月からいよいよスタートするわけであります。そうなりますと、自治権の拡大とともに、みずからの都市はみずから経営するという責任が増大をしてくるわけでございます。
このような意味におきましても議員御指摘のとおり、本市が未来をしっかりと見据えた総合的な交通政策を持つことなくしては都市の発展はないと、私も考えているところでございます。
交通とは人や物の移動でありますから、地域内を網羅する道路や電車、都市と都市を結ぶ鉄道、高速道、空港、港湾がいずれも相互に結節連絡し、安全性や定時性、さらには快適性が確保されて初めて都市交通機能と言えるものであります。
また、時代の変遷、都市の拡大発展とともに、交通機能はより高速化を求められております。例えば、九州自動車道の人吉-えびの間の開通や熊本空港の新型計器着陸装置カテゴリーⅢAの導入、あるいは熊本港においては大型高速船接岸に向けての整備が進められておりますし、本市にとって長年の念願であります九州新幹線の建設も、政、官、財、市民、県民を挙げての運動の結果、本年博多-八代間のうち熊本駅整備調整事業の起工式でスタート地点に立ったところであります。
一方、都市圏内の道路に視点を移しますと、本市の大動脈の一つであります国道三号線と国道五十七号東バイパスは、通過交通と域内交通が合流するために慢性的な渋滞が発生し、特に北部地域においては流れを分散するバイパス道路が未整備であるために渋滞は深刻な状況でありまして、定時性の確保ができないことも認識をいたしておるところであります。
そこで、このような熊本都市圏の道路交通の問題点を解決する方策を探るため、国、県、市で平成六年から熊本都市圏交通計画検討委員会を設置いたしまして、本市北部と西南部をつなぐ西環状道路の必要性等、さまざまな検討をしておるところであります。
以上のことを踏まえまして、私の総合的交通政策の考えを述べさせていただきますと、まず第一に、都心を通過せずに目的地へ到達できる外環状道路と、その環状線から都心に向かう道路を含めた八放射の幹線道路網の整備により都心へ向けての渋滞の解消を図ること。
第二に、空港、市街地、熊本駅、熊本港を連絡する高速交通機関が必要であること。
第三に、近隣市町村を含め、バス、電車等の公共交通機関網の再編により、自家用車の利用を減少させ環境保全に努めること。
第四に、歩行者、自転車が安全で安心して利用できる道路形態の整備を進めること。
最後に、すべての交通機関や交通施設が市民に安全で快適であること。
そしてまた、特に坂田議員は長年消防団活動に活躍をしておられるわけでございますけれども、その消防団員としての経験から通じて、都市域内の安全確保に対する道路網の整備というふうなことも常日ごろ訴えられているところでございますけれども、私もその点を含めて目標にしておるところでございます。
しかしながら、これらのインフラ整備には膨大な事業費と期間を要しますので、緊急を要するもの、長期的なものを区分し、一歩一歩着実に整備を進めていくことが肝要であると考えております。
議会の御理解、御支援をいただきながら、環境にやさしく、市民が使いやすい、総合的な交通体系を確立してまいる所存でございますので、よろしくお願いを申し上げます。
〔三番 坂田誠二君 登壇〕
◆三番(坂田誠二君) 答弁、どうもありがとうございました。
三角市長の道路網の整備にかける決意を披瀝いただいたわけでございますが、本市のさらなる飛躍発展のためには都市圏交通の円滑化が不可欠であると思うのであります。今後、幹線道路網の整備に積極的に取り組んでいただきますようくれぐれもお願いいたします。
次の質問に移らせていただきます。
続きまして、新たな段階を迎えた新幹線に関する問題についてお尋ねいたします。
九州新幹線鹿児島ルート博多-八代間の整備につきましては、本年四月、整備新幹線駅整備調整事業の一環として、新幹線熊本駅に係る工事実施計画が運輸大臣認可を受けたことにより、全線整備に向けて大きな第一歩を踏み出しました。
またさらに、ありがたいことに五月三十一日、熊本駅整備調整事業起工式後の記者会見の中で、当時の亀井運輸大臣が十年以内の開通を言明されております。後任の平沼運輸大臣におかれても、整備新幹線の未着工区間については、来年をめどに全体構想を早期に固め、九年度から予算化したい、国民的要求が高い分野なので、前年を下回らないだけの事業費を確保したいとの積極的な姿勢を示されております。
このような運輸省トップの整備新幹線に対する意向を伺いますと、新幹線博多-八代間の全線整備に大きな希望の光が見えてきたと感じているところであります。これもひとえに、政、官、民一体となった新幹線誘致運動のたまものであり、これまでの関係各位の熱意あふれる取り組みに対しまして深く敬意を表する次第であります。
しかしながら整備新幹線は膨大な事業費を要するプロジェクトであり、新聞等では、未着工区間の整備新幹線に対する大蔵省のガードもかなりかたいものがあると報道されております。また、北陸、東北、北海道の整備新幹線計画との競争も熾烈なものがあると伺っております。
このような中、来年に予定されている基本スキームの見直しに際して、博多-八代間が優先的に位置づけられるためには、これまで以上に誘致運動を盛り上げていくことはもちろんのこと、新幹線整備促進のため、沿線住民の合意形成に努めていくことが肝要と思われます。そのためには、これまでの新幹線県民運動本部や期成会と別に地元住民を取り込んだ推進母体をぜひとも早急につくる必要があるかと思うのであります。既に、市当局ではこのような観点から組織の立ち上げを考えておられると聞き及んでおりますが、そこで、いつ、どのようにして設立されるお考えかお尋ねいたします。
次に、新幹線に関連する熊本駅周辺のまちづくりについてお尋ねいたします。
御承知のように、新幹線は地域開発の大きな契機となる事業であり、連続立体交差事業とまちづくりとが一体となって進められなければならない事業であります。新幹線の足音がそこまで近づいてきた今、また、平成十一年の国体の陸の玄関口となることを考慮しますと、沿線開発の中でも特に副都心として位置づけられている熊本駅周辺のまちづくりをどのように進めていくかが急務の課題であると考える次第であります。
熊本駅周辺のまちづくりに関しては、過去において都市局長が、平成二年度に県市合同で策定された熊本駅周辺地域整備構想に沿って、その整備方針を答えられております。それによりますと、駅周辺を六地区に分け、それぞれに再開発や土地区画整理事業などを進めていくとのことでありますが、現状では、私どもにその姿が一向に見えてこないと感じているところであります。まちづくりの諸事業が膨大な事業費と時間を要することは理解いたしておりますが、事業を進めるに当たっては、長期的な視野に立ち、段階的に一歩ずつ進んでいくことが何よりも重要であると常々考えるものであります。
そこでお尋ねいたします。副都心として、また西南部地域の発展のため、今後どのようにして熊本駅周辺のまちづくりを推進していかれるおつもりか、以上二点について都市局長の御答弁をお願いいたします。
続いて、熊本市北部地区の幹線道路の整備計画等についてお尋ねいたします。
これまで本市の交通渋滞の解消に向けての都市交通網の整備につきましては過去に多くの先輩議員が論議を展開されておりますことから、私は、近年、市域外から特に車の流入が増大している北部地区の幹線道路に焦点を合わせてお尋ねいたします。
御案内のとおり、この地区の骨格となります国道三号は、九州北部から本市へ流入する自動車交通を一手に担っておりますことから、朝夕の通勤通学時の交通渋滞は既に限界に達しているところであります。そのため、幹線道路を避けた車が周辺の市道、農道に進入し、通学の子供たちは交通事故の危機にさらされておりますので、地域の住民は早急な渋滞緩和策を望んでいるのであります。
この国道三号の植木インターから四方寄町に至る区間につきましては特に交通量が多く、慢性的な渋滞となっておりますので、この区間のバイパスの建設が必要となり、昨年国道三号植木バイパス建設促進期成会が発足し、早期建設に向けて活動されていると聞き及んでおりますが、どのような活動をされているのかお伺いいたします。
また、四方寄町から市内中心部にかけての交通渋滞解消対策につきましては、市内中心部への通過交通を分散する必要があり、現在、建設省で国道三号北バイパスの工事を進められておりますが、四方寄町から下南部町間の全面開通にはまだまだ時間がかかると伺っております。現在の進捗状況と今後の見通しについてお聞かせください。
次に、国道三号の交通渋滞の影響を大きく受けております県道熊本鈴麦線の渋滞緩和に向け、熊本市西里校区西回り道路建設促進期成会が結成されました。平成六年二月二十一日に熊本市西回り道路建設の陳情書を市長初め関係部局に提出しておりますが、その中で市域の拡大に対応して、四方寄町から西里地区を通り西回りバイパスへ連結する新たな都市計画道路ができないかをお願いしております。
先般、七月十二日、熊本都市圏交通計画検討委員会で、通称西回りバイパスの西側に新たに外環状道路を建設する必要があると報道されておりました。私たちが陳情しておりました新たな幹線道路計画が検討されているということに住民は勇気づけられておりますが、この外環状道路がいかなるものなのか、また、その道路がどのような効果をもたらすものかをお聞かせください。
以上、北部地域の渋滞緩和に向けた新しい道路整備計画への取り組みや、今後の見通しについて三点、都市局長の御答弁をお願いいたします。
〔都市局長 本田吉継君 登壇〕
◎都市局長(本田吉継君) 新幹線整備と熊本駅周辺のまちづくりにつきまして坂田議員にお答えいたします。
まず第一点目の、新幹線沿線地域の合意形成を図り、新幹線整備を進めていくための推進母体についてお答えいたします。
坂田議員の御質問にありましたように、新幹線整備推進のためには、新幹線を受け入れる地元の組織、これが必要でございます。したがいまして、今議会終了後にも、経済界、地域住民、JR、県、市で構成いたします鹿児島本線沿線まちづくり協議会を設立したいと、このように考えております。この協議会を設置することによりまして、現在県、市で策定中の熊本駅周辺整備及び鉄道高架化に関する基本計画に地元意見を反映させることにいたしておりますし、その計画を実現するための合意形成を図らんとするものでございます。さらに、この協議会の下部組織といたしまして、熊本駅周辺を初めといたします沿線主要地域に地域別の協議会を設けまして地域の声をきめ細かく酌み上げながら、新幹線、連続立体交差事業、面的整備を進めていくことにいたしております。
次に、熊本駅周辺のまちづくりについてであります。
本市の副都心としての熊本駅周辺の整備は喫緊の課題であります。したがいまして、本年の四月、新幹線、連続立体交差事業、面整備を担当します熊本駅周辺整備部を設置いたしました。現在この部を中心に駅周辺整備に全力を挙げて取り組んでいるところであります。本年中にはこの熊本駅周辺整備部の事務所を熊本駅前に移転いたしまして、地元の皆様と一緒になってその整備を着実に前進させたい、このように思っております。
整備スケジュールとして日程に上っておりますものを申し上げますと、駅東地区市街地再開発事業成立のかぎを握りますキーテナントの誘致活動、これらの活動が積極的に動きますようにその支援をしていきたいと思っておりますし、平成十一年の熊本国体に向けて本市の玄関口にふさわしい駅前広場、それに都市計画道路熊本駅北部線、通称熊本駅前通りでございますが、その整備がございます。さらには、連続立体交差事業と新幹線誘致に必要な駅の裏側、いわゆる西地区について土地区画整理事業の国の補助採択に向けて働きかけをすることにいたしております。
これらの事業はいずれも既成の市街地内での事業でありますので、まことに厳しい事業となりますが、地域住民の御協力をいただきながら、県と市と一体となりまして頑張ってまいります。今後とも議員各位の御支援、御協力をお願い申し上げます。
次に、北部地区の幹線道路の整備計画について三点のお尋ねでございます。
まず第一点目は、国道三号植木バイパス建設促進期成会についてであります。
熊本市を南北に縦断いたします国道三号の交通量は、昭和四十六年六月九州縦貫自動車道植木インターが供用開始になっておりますが、それとともに飛躍的に交通量が増加いたしております。特に植木インターから四方寄町にかけましては、議員御指摘のように上下各一車線の道路に一日約三万五千台もの車両が通過しておりまして、交通渋滞が慢性化いたしております。これからも増大することが予想されます交通需要への対応と、激化する交通渋滞の緩和を図るために、この区間にバイパスの建設が必要でございます。
したがいまして、平成六年六月に本市を含めまして植木町などの沿線十二市町で構成いたします植木バイパス建設促進期成会を設立したところでございます。期成会では、これまで植木バイパス建設の早期実現に向け、県選出国会議員や建設省、大蔵省など関係機関への陳情活動を行ってまいりました。今後とも、一日も早い事業着手に向けての働きかけを積極的に行ってまいりたいと考えております。
次に、国道三号北バイパスの進捗と今後の見通しについてでございます。
国道三号北バイパスはもう御存じのとおり総延長七・六キロメーターでございまして、昭和五十六年から建設省の直轄事業として四つの工区に分けて第四工区から事業が進められております。
その第四工区の東バイパスの新南部町から龍田町陳内までの一キロメーターにつきましては既に供用を開始いたしております。
続く第三工区の龍田町陳内から清水町麻生田の三・二キロメーターにつきましては、熊本国体開催時までの完成を期して事業が進められております。
第二工区の清水町麻生田から西合志町須屋までの一・六キロメーターにつきましては事業説明は既に終わっておりまして、用地買収に取りかかっておるところでございます。
最後に第一工区の西合志町須屋から四方寄町までの一・八キロメーターにつきましては、現在検討中の地域高規格道路であります熊本環状道路や国道三号植木バイパス、これも緒についたところでございますが、それとの調整が進められているところでございます。