このように、まさに国の内外にわたって厳しい状況下でありますが、私はかかるときにこそ、国を支える基礎的自治体である都市が、この不況の波の防波堤となって地域経済の防衛と市民生活の安定を図っていくべきであろうと存じます。
折しも本市では、九州一の地下駐車場の完成や海の玄関口熊本港の一部供用開始など大変喜ばしい出来事が相次いでおり、これらは今後の本市の飛躍発展の基盤として大きな役割が期待されております。また、旧飽託郡四町との合併を記念し、新生熊本市の自然、文化、産業を全国に向けて発信する火の
国フェスタ・くまもと’93がいよいよ本年十月に開催される運びになり、時あたかも不況の真っただ中にあって、このフェスタの開催は絶好の景気対策として波及効果大なるものと喜んでいる次第であります。
いずれにいたしましても、今こそ新熊本構想に基づく新たな町づくりを軌道に乗せ、厳しい
社会経済環境のもとではございますが、二十一世紀に向けた意欲的な町づくりを着実に展開していく必要があります。
そこでお尋ねでありますが、新年度の重点施策はもとより、将来を展望した上での田尻市長の今後の町づくりの基本的考え方をお聞かせいただきたいと存じます。
次に、財政問題について具体的にお尋ねをいたします。
このような積極的な町づくりを推進していくためにはそれなりの財源も必要となってまいりますが、一方で、先ほど申しましたように我が国は不況の真っただ中にあり、財政環境は国、地方とも大変厳しいものがあります。特に歳入の大宗をなす税収には期待が持てず、例えば国の平成五年度の当初予算案では、対前年度マイナスの税収見込みとなっており、予算総額も対前年度〇・二%増という超緊縮型であります。また
地方財政計画においても、対前年度伸び率二・八%増という昭和五十九年以来の低い伸びとなっており、まさに景気低迷が国、地方を問わず歳入に直接大きな影響を与えていることがうかがえるのであります。
その反面、景気回復対策といたしまして特段の措置も講じられております。国はその歳入不足を補う手段として建設国債の限度枠いっぱいの発行を予定し、この結果、公共投資については対前年度伸び率五・八%増を確保し、また
地方財政計画においても、
地方単独事業の伸び率を対前年度一二%増に設定をしているところであります。言いかえれば、財源を国債等の借り入れで確保しながら、国、地方一体となって景気回復に向け全力で取り組む姿勢を強く打ち出しているのが新年度財政の大きな特徴なのであります。中でも地方は、過去の公共事業の実績を見てもその事業の七五%以上を担っており、景気対策の面でも地方財政の果たす役割は大変大きいのであります。
しかし私は、ある意味では、このようなときこそが地方にとっては絶好のチャンスではないかと考えるものであります。といいますのも、従来の国の補助事業に頼っていた町づくりでは画一的で個性も魅力もない都市をつくりがちであり、これからは地域の特性を生かし、その都市の個性に合った独自性のある町づくりを展開する必要があると思うからであります。今回、幸いにして、地方がその創意と工夫により実施する
地方単独事業については、
地方交付税等の特段の財源補てんを講じた起債事業が従来にも増して措置されていると聞き及んでおります。
さて、こうした国、地方の財政環境のもとで、本市では、予算総額三千五百八十億円のうち一般会計一千七百九十九億円、対前年度七・一%増と、
地方財政計画の伸び率を大きく上回る平成五年度の当初予算案が提出されております。この内容を簡単に見てみますと、歳入面では特に市債が一六・四%と大きく伸び、また歳出面では、
普通建設事業費の中でも
地方単独事業費が一五・四%増と大きく伸びているのが特徴となっております。
そこで、総務局長にお尋ねをいたします。まず新年度を考える前提として、特に本年度は地下駐車場や新清掃工場の建設など大型事業がメジロ押しであったことでもあり、これらの財源確保は順調であったのか、その辺も含めまして本年度の収支見込みについてお尋ねをいたします。
また、起債を積極的に活用いたしますと当然借入残高も多額に上り、健全財政の目安ともなります公債費比率がどのようになるのか気にかかるところであります。このことも含め、第二点として平成五年度の財政見通しについてお尋ねをするものであります。
〔市長 田尻靖幹君 登壇〕
◎市長(田尻靖幹君) 荒木議員にお答えをいたしたいと思います。
ただいま特に
国際交流事業につきまして、今回、
クリントン政権の主要閣僚となられました
ヘンリー・シスネロス長官に対しまして大変な賛辞をちょうだいいたしたわけでございます。これひとえに
市議会議員各位の大変な御支援のもとに
国際交流事業が進められたわけでありまして、私からも厚く荒木議員初め議員各位に対しまして心から感謝を申し上げる次第でございます。
日米関係、まことにぎくしゃくいたしております。異常なほどの円高問題等も含めまして我が国の経済はまさに多難であると、このような認識に立ちまして、微力ではございますけれども、日米親善あるいはまた経済の友好関係の締結、こういう問題につきましては私
ども地方自治体、この立場からでもさらに友好を促進してまいりたいと、かように決意を新たにいたしているところであります。
さて、御質問の問題点でございますが、地方財政、経済政策に対します荒木議員のまことに御見識の高い御質問でございました。私からその問題点につきましてお答えをさせていただきたいと思うわけであります。
今回私ども、この多難なる経済情勢の中で、各自治体の担当者はこの予算編成の取り組みに大変苦慮いたしたわけでございます。と申しますのは、戦後の我が国の地方財政の中で、私も多少ではございますけれども経験を持つ一人でありますが、今回ほど、予算編成の見通し、これから先の町づくりというものをどのように進めなければならないか、実は率直に申し上げまして大変苦労をいたしました。事務方を務めました財政担当は大変苦慮いたしたわけでございますが、私は荒木議員の御指摘のとおりに、今我が熊本市は二十一世紀に向けて新しい飛躍を遂げなければならない、このように極めて重要な時期であると判断をいたしまして、あえて健全財政を維持しながら積極的な財政の編成と、このことに心がけたつもりでございます。
そういたしまして、その第一点といたしましては、やはり景気の回復、これはまさに今日の至上命令であると私は思うわけでありまして、特に
経済波及効果の大きい火の国フェスタ’93、この大成功を期して、本年は全力を挙げて取り組んでいきたいと、かように考えたわけでございます。幸いにいたしまして、大変関係者の御協力をいただいておりまして、出店参加につきましては既にすべて終了いたしました。いよいよ基盤造成に入ってまいります。この火の国フェスタは、観光事業あるいはまた中小企業育成、そしてまた都市農業の振興と、まさに地場振興の総合的な政策の結集でございまして、ぜひともこの際、景気の回復、これを主眼といたしまして成功させていきたいと、このように決意をいたしております。
次に、荒木議員御指摘のとおりに社会資本の整備、これは今日地方経済への波及効果等を考えますと、さらに私ども全力を挙げて取り組まなければならない問題であると、このように認識をいたしております。公園、住宅、道路、公共下水道、すべての点におきまして今や我が熊本市は六十四万都市にふさわしい、しかも海外の一流都市に比較いたしましても決して引けをとらない、そのような社会資本の整備に全力を挙げる時期であると、このように考えまして、これまた積極的に新年度予算の取り組みといたした次第でございます。
さらに、新熊本構想の実現でございます。四町合併というまことにすばらしい平成の大合併が実現をいたしました。この機をとらえまして、我が熊本市は歴史的にも伝統的にも、あるいはまた地域文化の問題等を含めまして、さらに地域の再開発に取り組みまして、その整備に全力を挙げていかなければならないと、このように考えております。例えば先ほどお触れになりました
都心地域公共駐車場の完成であります。このことによりまして、比較的層の薄かった新市街を中心といたします都心の整備がぐっと引き締まってまいりました。あるいはまたまだ未完成ではございますけれども、多年の懸案でございました熊本駅周辺の整備が着実に進んでまいりました。今回また議会におきましてお許しをいただいております上熊本駅の電車基地を中心といたしました周辺整備であります。さらには今議会に御提案を申し上げております歴史的な南熊本駅周辺の再整備、さらに健軍地域の再整備、あるいはまた水前寺駅周辺の整備と、いよいよこの地域の再開発を通じまして、ふるさとづくりの原点としての新しい出発点としたいと、このように考える次第であります。
次に、大都市にふさわしい福祉、環境あるいはまた人づくり、特に先ほどの議会におきまして御提案ございました人づくりのための市立大学の設置等につきましては、今後積極的に取り組ませていただきたいと思うわけであります。さらに国際交流につきましても、いよいよ来年の春には待望の国際交流会館も実現するわけでございまして、今後人づくり、特に二十一世紀を背負って立つ若い人々の教育問題に私どもは全力を挙げて取り組ませていただきたいと、このように考える次第でございます。
そしてまた、多年の宿題を果たすことができました熊本港であります。四町合併というまことに革命的な合併が、この港によりまして理論づけが明白にされたわけでございまして、港の周辺、背後地、この一帯につきましては、新しい発展に私どもは取り組んでいかなければならないと、このように考えるわけでございます。さらに空港、新幹線あるいは高速自動車道のさらなる整備と、このようなことによりまして、熊本市はまさに二十一世紀を目指しまして新しい飛躍に備えていかなければならないと、このような要素を含めました予算編成に努力をいたしたつもりでございます。
この予算につきましては、今後議会におきましていろいろと御審議を賜りまして、そして新しい熊本の出発にふさわしい予算になりますように心からお願いを申し上げまして、一応御説明にかえさせていただきます。
〔総務局長 野田晃之君 登壇〕
◎総務局長(野田晃之君) 平成四年度並びに平成五年度の財政状況についてのお尋ねにお答えを申し上げたいと存じます。
最初に、平成四年度の収支見込みから申し上げます。
景気の低迷が長期化する中で、国、地方を問わず、財政を取り巻く環境が大変厳しいものになっておりますことはただいま御指摘になられたとおりでございます。このような中で本市の平成四年度の財政見通しでございますが、歳入歳出両面とも現段階ではなお不確定の部分というものがございますけれども、現時点で大まかな試算として申し上げますと、お尋ねの
各種大型事業についての特定財源については、現時点でほぼ計画どおりといいますか確保できる見込みでございます。
一般財源ベースで申し上げますと、歳入面では市税が、法人市民税の落ち込みなどもございまして全般に伸び悩んでおりまして、この結果、対前年度の伸び率が四%程度、総額七百六十億円台になるものと見込ませていただいております。また地方交付税でございますが、本年度は
国保財政安定化支援事業等の新たな算入と、環境、福祉、都市計画等の分野での財源措置の拡充が図られたこともございまして、普通交付税につきましては対前年度の伸び率が二〇%を上回ります三百十五億円強を確保できる見通しでございます。このような状況で、その他の財源も合わせますと、現時点で一千二百六十億円を超える一般財源が確保できると考えているところでございます。
また歳出面でございますが、東部清掃工場第二期
建設事業等大型プロジェクト事業に対します
財政調整基金の活用を初め、
景気対策事業に対しましては起債を活用させていただくことといたしておりまして、そのような財源対策を講じました結果、本年度の
所要一般財源は現時点で一千二百六十億弱になるものと見込ませていただいております。この結果、なお流動的な要素もございますが、現時点では十億円をやや上回る実質収支の黒字が見込めるのではないかと考えているところでございます。
次に、新年度──平成五年度の財政見通しでございますが、私どもも、国、地方を取り巻く財政環境は本年度にも増して厳しさが募るのではないかと考えております。現時点で国の予算あるいは
地方財政運営の指標となります
地方財政計画等を勘案しながらマクロ的に申し上げますと、歳入面では、市税は景気の低迷の中で現年度に引き続きまして伸び悩むものと予測いたしております。また地方交付税につきましては、我が国全体の状況として、地方に配分されますいわゆる出口ベースの交付税が十五兆四千三百五十一億円、対前年度マイナス一・六%と、昭和五十九年度以来のマイナスの伸びという設定がなされている状況の中で、本市独自の算定上の特殊要因はございますものの、そういう状況下では大きく伸びるということは期待しにくいのではないかと考えているところでございまして、歳入全般にわたり厳しいものと考えております。
歳出面でございますが、先ほどお触れになりましたけれども、厳しい財政状況の中ではございますが、国は公共事業については対前年度五・八%増という景気配慮型の予算を編成いたしております。
地方財政計画でも、これも先ほどお述べになりましたように、
地方単独事業を一二%の伸びと設定いたしているところでございます。
このように新年度は、基本的に言いますと、歳入の大宗をなします市税、交付税が伸び悩む状況の中で、一方では景気との兼ね合いを含めまして公共事業の推進に大きな期待が寄せられるという、実務面から考えますと財政運営の難しい年になるのではないかと受けとめているところでございます。しかしながら、提案理由の中でも市長が申し上げ、ただいまもお答え申し上げましたように、新年度は本市にとってその発展にますます加速度を加えなければならない極めて重要な年に当たると私どもも認識いたしております。したがいまして、新年度の予算編成に当たりましては、景気浮揚対策を含めた事業の執行に支障を来すことのないよう、財源の確保、涵養に全力を挙げると、このことを基本に、重点施策課題を中心に可能な限り優先的に財源を配分いたしたところでございます。この結果、一般会計当初予算で申し上げますと、対前年度伸び率は七・一%、中でも
普通建設単独事業は対前年度一五・四%の伸びとなるなど、現在の情勢下としてはかなり積極型の予算を組ませていただいたところでございますが、その財源確保につきましては特に地方債を積極的に活用させていただきたいと考えております。
具体的に申し上げますと、現在国におきましては、景気浮揚に向けましての
公共事業推進の必要性もありまして、地方の
主体的町づくりの推進を期待いたしております。したがいまして、地方債の活用につきましてもむしろ積極的な姿勢を示しているところでございます。このような中で、財政といたしましては、低金利という時代の背景もあり、ここ数年間は積極的にその活用を図らせていただきまして、町づくりの一層の推進に努めさせていただきたいと存じております。この地方債の活用の中で、特に後年度元利償還に交付税の優遇措置が設けられている制度がございますが、このように有利な制度をできるだけ多く活用させていただきまして、その償還が将来の財政負担につながらないように配慮をいたしてまいりたいと考えております。
これらを前提といたしまして、新年度の財源見通しを申し上げますと、歳入面では、先ほど申し上げましたように市税、交付税は伸び悩むと見込んでおりますものの、現時点では
一般財源ベースで一千二百九十億円程度が確保できるものと見込んでいるところでございます。
歳出面につきましては、極力冗費の節減に努めながら、各種事業に起債その他の特定財源を充当することとした結果、当初予算における
所要一般財源に従来の補正ベースにおきます
所要一般財源を加味して、試算いたしますと、
所要一般財源は同じく一千二百九十億円程度になると見込ませていただいておりまして、新年度におきましては、現時点では、
財政調整基金に特に依存しなくても一応収支の均衡は保てるのではないかと考えているところでございます。
なお、公債費比率につきましては、このように地方債の積極的な活用を図りますと、後年度は現在よりも若干高目の数値で推移することが予測されますが、さきに申し上げましたとおり、ただ単にその償還を一般税源に頼るということではございませんで、交付税措置のある地方債を積極的に活用することによりまして、後年度償還に当たって、これが将来の財源の硬直化につながらないよう十分注意しながら運用してまいりたいと、このように考えておりますので、御理解を賜りますようにお願いを申し上げます。
〔二十五番 荒木哲美君 登壇〕
◆二十五番(荒木哲美君) ありがとうございました。
二十一世紀に向けた町づくりにかける田尻市長の熱い思いが伝わってくるようであり、まことに心強く感ずる次第でございます。景気回復はもとより、本市のさらなる発展のために一層意欲的な町づくりに取り組んでいただきたいとお願いするわけでございます。
また、財政についてはるる総務局長からいただいたわけでございますが、市債等によって財源の確保をしながら、積極的に単独事業等も展開するということが不可欠であります。私は、結果的には多少なりとも公債費比率の上昇があっても、かかる経済的窮状にありやむを得ないと思うところであります。新年度予算案は健全財政の維持にも配慮し、
財政調整基金を取り崩すことなく積極型予算を編成してあり、野田総務局長の金庫番としての御人格もあわせて、何とか運営ができるのではなかろうかと思う次第でございます。
次に、将来に向けた都市整備の問題について何点かお尋ねをしてまいりたいと思います。
さて、戦後、我が国において大都市として発展した都市のほとんどは、将来を見通した大胆な都市計画のもとで、
幹線道路整備、土地区画整理、あるいは都市再開発などの
都市基盤整備事業を強力に推進し、それが今日の都市発展の先導役となったことは皆さん御承知のとおりであります。言いかえますと、長期的な都市戦略の一環としてまず
都市基盤整備が優先的に推進されてきたものであり、そのことは我が熊本市におきましても、例えば大正期の市電、上水道、二十三連隊移転のいわゆる三大事業をなし遂げたことがその後の本市の輝かしい歴史の発展につながっており、歴史が証明をいたしていると思うのであります。
田尻市長におかれましては、一昨年策定されました新熊本構想の中で、二環状八放射を骨格とした
幹線道路網整備や鉄道、バスなどの
公共交通機関の強化による
総合交通ネットワークの確立、また一点集中型から多核的な都市構造へと転換を目指した拠点整備の推進など、将来発展の基盤となる都市整備について非常に意欲的に打ち出されているところであります。私は、これらの取り組みをまさに時宜を得たものとして高く評価しますとともに、その着実な推進に大きな期待を寄せているものであります。
そこでまず、交通体系の整備について私見を交えながらお尋ねいたします。
本市における
自動車保有台数の推移を見てみますと、昭和五十五年には十八万二千台であったものが、平成二年には二十九万一千台と、実に一・六倍の伸びを示しており、今後とも保有台数は大きく伸び続けるものと推測されます。一方、その受け皿であります
道路整備状況はといいますと、平成三年度末の
都市計画道路整備進捗率はわずか五五・五%にとどまっておりまして、外環状道路の一部を構成する野口清水線を初め、全線の整備完了までにはかなり長期間を要するものと思われ、事業の推進を強く望むものであります。さらに、現在本市の基幹道路となっている国道五十七号東バイパスや国道三号は、一日平均交通量が五万台を超えて交通容量の限界に達しており、特に朝夕には大きな交通渋滞が起きていることは既に皆様御承知のとおりであります。
ところで考えてみますと、現在の交通渋滞の大きな原因は、道路整備の総体的おくれはもちろんですが、いわゆる平面道路の宿命にあるのではないかと思うのであります。国道五十七号東バイパスがその典型的な例であります。まず第一には交差点による交通の流れの阻害、第二には新しい道路ができても沿線にいろいろな商業施設などが立地し、そこに出入りする交通量がかなりの割合を占めるようになること、この二点によって速く大量に交通をさばく幹線道路本来の機能は大きく低下してしまうのであります。これらの点をクリアできなければ、道路は幾ら整備してもすぐまた渋滞という悪循環を繰り返すのではないかと危惧されるわけであります。
このようなことを考慮しますと、長期的観点に立って円滑な自動車交通を確保していくためには、二環状八放射の骨格道路の整備はもとより、高架や地下など立体的な道路整備が不可欠ではないかと考える次第であります。
新熊本構想におきましても、交差点の立体化や地上・地下空間を活用した道路整備などがうたわれており、その認識は同じであると存じます。もとより、建設省が整備した国道五十七号東バイパスは、将来の立体化も計画に入れ対応できる構造になっていると聞き及んでおります。また、県警が交通問題専門家等を集めて開催している交通懇話会からは、東バイパスなど主要幹線道路の立体化、高規格化の提言がなされております。これらを考え合わせますと、本市におきましても、連続立体道路や高規格道路等の整備に向けていよいよ本格的に取り組みを始めるべき時期に来ているのではないでしょうか。
そこで、かかる当面の課題に今後本市としてはどのように取り組まれるおつもりか、当局の積極的なお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
続けて、交通問題の二点目として
公共交通機関の整備についてお尋ねします。
現在、本市には
公共交通機関として、バス、市電あるいは鉄道等がありますが、都市においては本来基幹的交通手段であるはずの軌道系の交通機関がその役割を十分に果たしておらず、大部分はバスまたはマイカーに頼っているのが現状であります。そのことが本市の道路、特に都心部やそこに至る道路に余分な負担をかけ、朝夕の交通混雑をより複雑で激しいものとし、ひいては都市機能の低下を招いているわけであります。これを解決するには、さきにも述べたような立体的な道路整備とともに、自動車利用をいかに
公共交通機関に乗りかえさせるかが大きなポイントであります。そのためには、
公共交通機関相互の結節の強化とともに、二十一世紀にも対応できる新しい交通システムの導入などにより、安全で便利な公共交通ネットワークの確立に早急に取り組む必要があると考えるのであります。
ところで、先般新聞で、現在県市共同で研究されております新交通システム導入の可能性について報道されておりました。有力ルートとして、熊本駅、市役所、県庁、熊本空港インター、熊本空港を結ぶ約二十キロメートルの区間が考えられており、最終的には熊本駅から熊本港まで延伸させる構想もあるとのことであります。また新しいシステムの候補としては、リニアモーターカー、モノレール、デュアルモードバス、AGTの四つの種類が想定されるとなっております。しかしながら、報道されたルートをよく考えますと、長年市民の足として親しまれ、交通のかなめとして大きな役割を果たしてきた市電のルートと重複しております。ルートの選定、システムの方式等については、市民のコンセンサスを得られることが何よりも大事であり、その手続も含め今後さらなる調査検討を行う必要があろうと存じます。
そこでお尋ねでありますが、この県市共同の新交通システムについての研究会が現在どういった状況にあるのか、また今後、本市としてどのように取り組むおつもりか、お答えをお願いいたします。
以上、交通体系整備について二点、関係局長に御答弁をお願いします。
〔都市局長 本田吉継君 登壇〕
◎都市局長(本田吉継君) 荒木議員にお答えいたします。
本市の道路交通の実態は、議員御指摘のとおり交通需要に道路整備が追いつかず、本市の各所におきまして交通渋滞が発生いたしております。この交通渋滞対策といたしまして、都市計画道路の整備を急ぐことはもとより、本市における都市の骨格を形成する放射環状道路等において複数の交差点の連続的な立体交差化を検討する時期に来ていることは議員と同感であります。
時あたかも、国におきましては第十一次道路整備五カ年計画が平成五年度からスタートいたします。この中に、全国的な高規格幹線道路網と一体となって、地域の連携、交流の促進のための地域高規格道路の整備促進が盛り込まれております。この地域高規格道路は先ほど申しましたように、複数の交差点を連続的に立体交差化したり、道路の中央分離帯連続化による交通交差道路のアクセスコントロールを行って、定時性、速達性、安全性、快適性を確保しようとするものであります。したがいまして本市といたしましては、平成五年度に熊本県が設置することにいたしております主要幹線道路の高規格化のための検討会に参加いたしまして、その早期実現化について要望をしてまいりたいと、このように思っております。
〔企画調整局長 竈 啓一郎君 登壇〕
◎企画調整局長(竈啓一郎君) ただいま県市共同で検討いたしております新たな交通システムにつきましてお答えを申し上げたいと思います。
議員御案内のとおり、熊本都市圏への人口の集中、あるいはモータリゼーションの進展によりまして、本市の行動圏域の広がりは九州でも有数の伸びを示しているわけでございまして、その結果といたしまして本市への自動車の流入増、こういったものによりまして幹線道路の交通混雑を来しているところでございます。そのため、ただいま議員御指摘いただきましたとおり、平面的な道路網の整備だけではなくて、道路の立体的な活用あるいは
公共交通機関の整備、結節点の強化、こういった総合的な交通体系の整備が求められているところでございます。
したがいまして、さきに策定をさせていただきました新熊本構想におきましても、安全で快適な都市基盤の整備の一環といたしまして新しい交通システムの導入を検討するとさせていただいたところでございます。そのため、新総合計画のスタートの年に当たります平成四年度から、熊本都市圏交通問題研究事業といたしまして県市共同で調査研究を実施させていただいているわけでございますが、ただいま御質問の中でも触れられましたような市電と競合するルートに限定するものではございません。これはケーススタディーといたしまして、混雑の顕著な東部方面と都心部を結ぶ幾つかのルート、これに新たな交通システムを導入すればどのような姿になるかということで、平成四年度におきましては自動運転の軌道交通機関いわゆるAGTでございますが、ガイドウエーバスあるいはリニアモーターカー、モノレール、こういったシステムの導入可能性について検討をさせていただいているわけでございます。
さらに、新年度におきましては新交通システム導入の必要性、概略の輸送需要の推計などについて検討を加えることとしており、あわせまして市電のLRT化あるいは高規格道路につきましても研究をさせていただきたいというふうに考えているわけでございます。
いずれにいたしましても、今回のケーススタディーの内容につきましては、今後市議会の御論議をいただくことはもちろんでございますけれども、さらに関係機関、団体の意見を踏まえながら詰めさせていただきたい、そのように考えているわけでございます。
〔二十五番 荒木哲美君 登壇〕
◆二十五番(荒木哲美君) お尋ねいたしました二点の問題につきましては、立派な都市機能を果たす本市のためにも大きな課題であろうと思うわけであります。
いずれにいたしましても、道路網の整備あるいは新交通システムの導入にしろ熊本都市圏の一体的な発展の中でとらえなければならないと思うわけでございます。そのためには県あるいは市町村との連携が肝要であります。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
また、言葉に節目というのがありますが、平成十一年の熊本国体が熊本市の都市づくりの一つの目安になろうかと思いますので、そのあたりもひとつ頭に置いて、新しいシステムあるいは高規格道路についても十分検討していただきたいと存じます。
次に、拠点開発についてお尋ねいたします。
このことにつきましては昨年の第一回定例会において取り上げたところでございますが、その後わずか一年間で、例えば健軍地区や南熊本駅周辺では具体的な動きも見られており、多核的な都市構造を実現していくという田尻市長の御決意のあらわれと深く感服いたしているところでございます。この多核的な都市構造の実現は、大げさな言い方かもしれませんが、清正公の熊本城を中心とした町づくりを四百年ぶりに変革する政策であり、政令指定都市の実現に向けた都市再整備の重要なステップであると私は考える次第であります。
そこで本日は、まず最初に大江地区についてその整備促進をお願い申し上げ、拠点としての南熊本駅周辺と健軍地区、さらにはほかのところもお尋ねしたいと思っている次第でございます。
まず大江地区、中でも現交通局用地に関してでありますが、皆様御案内のとおり、現在交通局においては上熊本駅に隣接した清算事業団用地に局舎と車両基地の移転が計画されておるところでありますけれども、本議会に用地取得費が計上されており、昨日補正の先議で議決されたところであります。大江の交通局用地は面積約一万一千平方メートル、電車通りに面する一等地でありますだけに、ここが早晩、新たな拠点施設の用地としてその活用が可能となるわけであります。
そこで、昨年の質問では、例えば国などの行政機関と民間テナントが同居する超高層ビルのようなものはいかがかと、一案を示しながら市長にその活用策をお尋ねしたところでございます。田尻市長には、今後は大江地区の中心となる交通局の活用によってさらに熊本市の発展に結びつけていきたいとのまことに心強い御答弁をいただいたところであります。
九州の一大雄都を目指す本市のいわゆる都心部が福岡市のわずか九分の一にすぎないという現状からしましても、本市の都心部を拡大する方策の一つとして、ぜひこの交通局用地を生かしていただきたいと強く願うものであります。早急に具体的な整備プランを作成していただくとともに、早期事業化に向けた積極的な取り組みをお願い申し上げるものであります。
さて、南熊本駅周辺地区の整備についてのお尋ねであります。
御承知のとおり、この地区はかつて木材産業でにぎわい、御船鉄道──後の熊延鉄道でありますが、この鉄道と豊肥本線が乗り入れ、しかも熊本市電が通っていた、まさに交通の要衝として栄えたところであります。しかしながら、熊延鉄道や市電の廃止とともにこの地区は次第にその拠点性や特性を失ってきております。都心までわずか二キロという恵まれた場所にあり、基盤整備により本市南部と都心を結ぶ役割が強く求められるところであります。幸いなことに駅周辺地区には清算事業団用地が約一・七ヘクタール、また駅南側には今後土地利用の転換が期待される企業用地が約四ヘクタールほどございます。こうした土地を利用し、駅北側と駅南側とを結ぶ交通基盤施設を整備し公共施設を誘導できますならば、まさに南熊本駅周辺は本市の南の玄関口として名実ともに拠点性を回復できると思うのであります。しかも既成市街地の再整備は幾分時間を要しますが、本市においてはいまだ経験のない大変な事業の一つであろうかと思います。まさに田尻市長の二十一世紀へ向けた基盤整備にかける強い意欲のあらわれであり、私どもも大いにその実現を願うところであります。
そこで、この南熊本駅周辺地区の整備推進に向けた田尻市長の決意のほどをお聞かせいただきますようお願いいたします。
引き続き、本市東部の拠点である健軍地区の整備についてお尋ねします。
本議会でもたびたび論じられているとおり、健軍地区は、健軍商店街を中心とした商業機能、国や県の行政機能、そして交通の要衝として都市圏東部の核として大きな役割を果たしているところであります。田尻市長にあってはいち早くこの地区の活性化に取り組まれており、既に健軍アーケードの建てかえを終え、現在、文化施設や地下駐車場、駐輪場の建設、さらには住宅密集地の再整備などにも努力しておられるところであります。こうした取り組みにより、にぎわいを失いつつあった健軍商店街は早速活気を取り戻しつつあります。また一部の地区にあっては、再開発等、町並み整備へ向けた関心も大変高まっていると聞いております。今後はこうした地元住民の町づくりに対する積極的な機運と地域の長所を十分に生かしながら、周辺の住宅密集地区も含めた健軍地区全体の整備プランの策定が期待されるところであります。
そこでお尋ねでありますが、現在、健軍商店街を対象とした商業集積整備基本構想も策定中であると聞き及んでおりますが、あわせてこの目玉ともなっている商店街文化施設建設計画について、また新たに打ち出されました健軍地下駐車場、駐輪場の建設構想の概要について関係局長にお尋ねをいたしたいと思います。
以上、南熊本駅周辺地区及び健軍地区につきまして御答弁をお願いいたします。
〔市長 田尻靖幹君 登壇〕
◎市長(田尻靖幹君) 荒木議員にお答えをいたしたいと思います。
ただいま大江地区の整備につきましていろいろと御見解を賜ったわけでございます。さらに南熊本駅周辺の問題もそうでございますが、この地域はいずれも今から七十一年前、大正十年、まさに大正の大合併によりまして市に合併、そして大変な発展を遂げた歴史と伝統に輝く地域であるわけでございます。特に南熊本駅周辺地区は当時から県南地区の集散地、まことに重要な物産の集散地でもございました。荒木議員御指摘のとおりでございまして、当時豊肥本線あるいは御船鉄道が既に乗り入れておったという歴史的な事実があるわけでございまして、昭和三年には御案内のとおりに早くも熊本市電が南熊本駅前に乗り入れておりまして、鉄道を利用した木材あるいはまたガス、石油会社、このような企業が進出いたしてまいりました。さらには農産物を中心といたしました、あるいはまた樹芸、花卉の栽培、このような地場産業が数多く立地をいたしまして繁栄をきわめたわけでございまして、私どもも少年時代、その記憶がよみがえってくるわけでございます。そして御指摘のように時代の変化とともに地域の活力がだんだん失われてきたと、まことに残念なことでございます。しかしながら、近年に至りまして南部第一土地区画整理事業のまさに大成功、あるいは西日本におきまして代表的な流通団地が完成を見まして、それによりまして道路の整備が進んでまいりました。そのことによりまして、南部地域は今や我が熊本市の各地域の中で最も期待される、そして市街化の進展が予想を超えて進んでいるところでもあるわけでございます。
このような情勢の中におきまして、地域の皆様方の大変な御熱意によりましてこの再開発に対する盛り上がりが近年急速にほうはいとして沸き起こっているところでございます。私どももそのような観点から、南熊本駅周辺の再開発には今後市政の重要な政策課題といたしまして全力を挙げて取り組んでいこうと、このように決意をいたしております。幸いにいたしましてこの駅前駅裏には広大な国鉄清算事業団の用地もございますし、また駅裏には規模の大きい企業用地もございます。地域の皆様が大変熱心に希望しておられる、このような三拍子そろった地域でございます。今後新都市拠点の形成ということを目指しまして努力をいたしてまいりたいと、かように考えております。
〔中小企業局長 木村和臣君 登壇〕
◎中小企業局長(木村和臣君) 荒木議員にお答えを申し上げます。健軍地区商店街文化施設建設計画の概要についてでございますが、まず健軍地区商業集積整備基本構想についてでございます。
東部地域の中心である健軍地区の拠点性を高めていくため、その基本方針としてにぎわいの核づくり、交通結節機能の強化や市街地の活性化、あるいは商業の面的広がりを持つ歩いて楽しい町づくりなどを掲げ、その具体的展開を図るため健軍文化施設建設を計画しているものでございます。この施設は、地域住民のコミュニティー施設建設の要望が極めて大きいことに加え、健軍商店街に劇場あるいはホール等の文化性の高い集客拠点施設がないことから、商店街活性化のための戦略的プロジェクトとして位置づけております。基本的には、現在の健軍商店街の主要客層である主婦層と若い層が生き生きと集うような生活、文化の拠点施設としたいと考えております。
具体的な施設の内容といたしましては、演劇、コンサート、講演会等と幅広く対応でき、ゆとりあるステージを持つ三百人程度収容の多目的ホールをメーン施設といたしまして、料理教室や各種サークル活動ができるパーティールーム、絵画等の作品展示ギャラリー、イベント広場、会議室等を設置する予定であります。
また、住民票などの証明書発行窓口やCDコーナー等のサービス機能も付加していきたいと思っており、延べ床面積二千平米程度の施設で、平成五年十月着工、平成六年十一月完成を目指しております。
〔都市局長 本田吉継君 登壇〕
◎都市局長(本田吉継君) 健軍地下駐車場、駐輪場の建設構想の概要についてお答えいたします。まず地下駐車場建設について申し上げます。
この事業は、自治省所管の都市生活環境整備特別対策事業と駐車場整備事業との合併施行方式によって行うものでありまして、これらの事業の目的は、良好な都市生活環境の形成を支援するものであります。いずれも起債による事業ではありますが、この事業は後年度における元利償還に交付税の優遇措置が講じられる有利なものであります。建設予定地は、通称自衛隊通りの地下でございます。収容台数は約四百二十台を計画いたしております。事業スケジュールといたしましては、平成五年度に予備調査と基本設計に着手いたしまして、平成九年度完成を目指すものであります。
次に、地下駐輪場建設について申し上げます。
この事業は建設省所管の補助事業で行います。建設予定地は駐車場と同じ自衛隊通りの地下でございまして、駐車場と併設いたします。収容台数は約一千台を計画いたしております。事業スケジュールは、平成五年度に自転車駐車場整備計画策定に着手いたしまして、平成九年度完成を目指します。
以上でありますが、この事業によりまして健軍商店街の活性化はもとより、健軍地区における商業、業務機能の集積促進が期待できるとともに、交通結節機能の強化が図られ、市電やバスへの乗りかえを促し、本市中心部の交通混雑緩和なども期待できる、このように考えております。
〔二十五番 荒木哲美君 登壇〕
◆二十五番(荒木哲美君) ありがとうございました。南熊本については市長のすばらしい構想を拝聴いたしたわけでありますが、我が党の矢野議員を初め地元も万全の体制で取り組まれておるところであります。これから実現に向けて大きく前進するものと思う次第であります。
なお、健軍地区については御答弁のとおり文化施設あるいは地下駐車場、駐輪場もスケジュールが既に決まり、拠点整備としての大きなインパクトとなるものと確信し鋭意促進を願うものであります。
次に白川改修についてお尋ねをしてまいりたいと思います。
とかく自然現象や気象異変は予測しがたいものであります。一昨年六月、小雨降りしきる中、暗雲が垂れ込めたかと思いきや突然やみ夜に変わり、真っ黒い降灰をかぶったのが二百年ぶりの雲仙・普賢岳の噴火であります。また、その年九月、かつて経験したこともない、屋根屋根のかわらを吹き飛ばし、街路樹から山林までなぎ倒し、多くの電柱を折損したのが台風十九号であります。しかし昨年の梅雨期には、気象台によりますと熊本地方は雨量が少なく、大雨洪水警報の発表も昭和四十五年以来二十五年ぶりにゼロであったそうであります。風倒木処理や砂防治水工事がままならぬ状態の中でひとまず安堵をした次第であります。「災害は忘れたころにやってくる」ということわざがありますが、西日本大水害と命名された昭和二十八年の六・二六水害から今年ではや四十年目を迎えることになります。このような節目のときにこそ防災意識を高める論議も必要かと存じ、白川改修についてお尋ねをするものであります。
この白川は、日ごろは清流をたたえ、川岸の緑は市民に憩いの場を与え、安らぎと心の豊かさを与えてくれ、まさに肥沃な熊本平野をはぐくみ、私たちの生活と文化に深くかかわる、いわば熊本市の母なる川であります。とはいえ、議員各位御案内のとおり、あの大水害は、県中部一帯の梅雨前線により雨が降り続き、既に湿潤状態であったところに、二十五日から二十六日にかけてさらに大雨が降ったため、白川はまたたく間に増水、はんらんし、熊本市内は一夜にして泥まみれの町と化したのであります。記録によりますと、その被害は、死者・行方不明者四百二十二名、家屋の全半壊及び流出九千戸余り、当時の人口の実に八三%に当たる二十四万五千人が被災し、熊本市の全体面積の約三分の二が水没するという未曾有の大惨事でありました。
これを契機として、昭和三十一年から国の直轄河川となり、建設省では白川水系改修基本計画を策定し、河口から小磧橋間の十七・三キロメートルについて改修工事がなされてきたところであります。平成三年度までに四百八十四億円を投じて改修が進められており、その間、本市におきましても、建設省との連携のもと、用地取得や家屋移転等積極的に取り組まれており、その御努力に対し衷心から敬意を表する次第であります。
もとより白川の改修計画は、昭和二十八年の大水害のとき市街地部を流れたと推定される毎秒三千四百トンの流量を計画目標として、うち三千トンを河道改修によって流下させ、残りの四百トンを長陽村立野に建設予定の立野治水ダムで調整しようとするものであります。しかしながら、堤防の整備状況は全延長の約三分の一にすぎず、最終目標の三千トン達成のためには約一千八百億円が必要とのことであり、現在の予算ベースでいきますと五十年から六十年はかかるであろうと言われております。
また、平成三年六月、建設省が作成いたしましたはんらん区域図によりますと、六・二六水害当時の雨量で仮に白川がはんらんしたと想定した場合、その被害規模は本市の総面積の約四〇%に当たる八十八平方キロメートル、人口では三八%に当る二十四万人が被災し、下通などの繁華街や隣接する坪井、寺原地区、あるいは田迎、画図、御幸、飽田、天明地区、さらには下流域では小島、城山地区などが含まれ、水深はJR熊本駅では二・七メートル、ここ市役所においては三メートルを超えると予測されております。
今や熊本市は中枢機能都市として、当時とは比較にならないほどの管理機能、交通・運輸機能、そして情報機能等が集積しており、それらが被災した際の影響は本市だけでの問題ではとどまらないと思う次第であります。
ただ、幸いにいたしまして、四十年目という節目の本年一月、長年の懸案でありました立野ダム周辺整備計画案が国、県と長陽村との間で合意され、本市を含む受益三市町も含んで協定書が調印されたところであります。実に、同ダム建設は計画から十四年目で実質的にゴーサインが出たことになり、その間、白川改修期成会会長として、また立野ダム建設促進期成会会長としてたゆまぬ努力を重ねられました田尻市長に対し、心から感謝を申し上げますとともに改めて敬意を表する次第であります。
〔議長退席、副議長着席〕
さていま一つ、白川改修の重要な課題として白川の拡幅計画と緑の景観保全が各方面で論議を呼んでいるところであります。すなわち、白川改修計画をそのまま進めた場合、川幅は百二十メートル程度必要となり、特に川幅の狭い大甲橋−明午橋間の約七百メートルの区間については、白川改修計画を進めた場合、大幅な引き堤が必要だと言われております。そのために鶴田公園を初め両岸の緑が影響を受けるため、文化団体などを中心に計画見直しの声が上がっているわけであります。
確かに一帯には、両岸にイヌマキ、イチョウ、楠、桜並木などの樹木が茂り、白川の川面と背後の立田山とも調和し見事な緑の景観を呈しており、森の都として熊本らしい自然をなしている場所であります。その緑が姿を消すとなると、市民にとってかけがえのない財産として残せないのかという声が上がるのも至極当然であります。県、市からも可能な限り緑を残しながら治水効果が上がる改修を国に要望されているところであります。そこで建設省でも平成二年の溢水を機に、暫定的対策といたしまして、当面の流下能力の目標を二千トンとして、大甲橋上流左岸の新屋敷に約八メートル拡幅し、さらに樹木の移植や補植で緑を保とうとする緊急改修計画に着手されているところであります。また、関係行政機関や専門家、一般市民を含め、さまざまなフォーラムや検討会を重ねる中で、今日では、緑の保全か生命の安全性確保かという二者択一論議から一歩進んで、市民とコンセンサスをとりながら改めて改修しようという機運が高まっております。
私は、景観への配慮も大切でありますが、防災対応は、整備の面でも非常時の対応、心構えの面でも決しておろそかにしてはならないものと考えるわけであります。特に白川は、六十三万都市の中心部を貫流する一級河川であると同時に、性格的にも他の河川と違い流域の大半が天井川であり、阿蘇山のヨナを含んだ濁流が一気に都心を流下し、一たんはんらんするとなかなかもとに戻らない危険な川であります。
流域に住む多くの市民の皆さんの日常生活の安全性確保はもとより、都市の発展に伴い、建造物の地下の活用や電線類の地中化を初め、その他社会資本の多くが地上や地下を問わず集積されている中、治水は最重要課題であると思います。統計上の百五十年に一度とか二十五年に一度とか言われる確率は決して定期的なものではなく、気象次第では今年起こるかもしれないのであります。四十年前のあの忌まわしい六・二六水害を思い起こし、二度とあの惨事を繰り返してはならないと、一日も早い実効ある改修を願うものであります。
そこで、お尋ねでありますが、まず一点目に、白川改修基本計画における進捗率はどのようになっているのか。
二点目に、平成二年七月の出水を契機に進められている暫定的緊急改修計画はどのようになっているのか。
三点目に、警報時等の対応はどのようになっているのか。
四点目に、立野ダム建設促進へ向けての取り組みはどのようになされているのか。
五点目に、最も川幅の狭い大甲橋−明午橋区間の改修については、今後どのように対応されるのか。
以上、白川改修につきまして建設局長にお尋ねをいたします。
さらに、白川に関連しましていま一つお尋ねをしたいと思います。
長年の懸案でありました保田窪放水路、保田窪堤から白川に至る一・五七キロメートルの区間でありますが、今年の梅雨期までには完工する運びとなりました。上流部の藻器堀川改修工事を含めて、総事業費百二十二億をかけ、昭和四十七年の着手以来二十年の歳月を経ましたが、その間、地権者、地元住民の方々の御協力、そして担当されました執行部の御苦労に深甚なる謝意を表する次第であります。
この放水路は、これまで一雨降るたび繰り返されてきました藻器堀川流域の保田窪本町から帯山、水前寺周辺、出水三丁目にかけての床上浸水や道路冠水による交通麻痺、いわゆる都市型水害を防止する大きな役目を持つものであります。そして藻器堀川の増水時には、保田窪ゲートを開き、最大時には毎秒九十五トンの流量をカットすることができ、大きな治水効果が期待できるわけであります。と同時にまた、その白川への放水は白川の増水を早めることにもなりかねず、大変懸念されるところであります。
そこで、ゲートの開閉時期あるいは放水量には高度な判断技術が必要となると思います。今後、その分水放水の管理をどのようにされるのかお尋ねをしたいと思います。
あわせて建設局長の御答弁をお願いいたします。
〔建設局長 木下實也君 登壇〕
◎建設局長(木下實也君) 白川改修についての御質問にお答えをいたします。
御案内のとおり、本市の市街地を貫流する一級河川白川は、昭和二十八年六月二十六日の大水害を初め五十五年、五十七年及び平成二年と幾度となく大きな被害を本市にもたらしてきました。そこで、国におきましても代継橋で毎秒三千トンの流下能力を目標に直轄事業として改修に取り組んでおられるところでございますが、市民の生命財産を災害から守ることは行政の第一の責務でありますがゆえに、白川改修事業につきましては長年全力を傾注してまいりました。
例えば、昭和三十九年に流域市町による白川改修期成会を結成して、市長を期成会の会長として毎年事業の促進を国に働きかけてきたところでございます。特に昨年、一昨年は、田尻市長に九州治水期成同盟連合会会長をお引き受けいただき、直接建設大臣を初め各省庁に幾度となく赴かれ、白川を初めとする九州の河川整備促進を国等に要請されてきたところでございます。この結果、平成三年度は二十九億三千万円であった白川改修の事業費が、平成四年度は一挙に三十二億八千万円と大幅に増額されたことは議員御案内のとおりでございます。
一方、白川沿線には沖新地区、日吉地区及び薄場、上ノ郷、力合地区の三地区に白川改修促進協力会が設けられ、事業への協力が行われているところでございますが、本市でも直轄事業にあわせて、古くは白川改修対策室や白川激甚災害特別対策室、平成二年十月からは白川・加勢川対策室といった改修促進のための専任組織を設置して事業用地の取得を中心とした対応を積極的に展開してきたところでございます。
また長年建設促進を働きかけてきた立野ダムも、懸案でありました立野ダム建設に伴う地元長陽村地域整備事業と建設促進のための協定書の調印が、市長を初め建設省、熊本県及び関係町村長出席のもと、去る一月二十七日締結されました。これによってダム建設も新たな促進の段階に入り、その進捗に大いに期待しているところでございます。
このように、本市といたしましてはさまざまの角度から白川改修の促進に全力で取り組んできたところでありますが、議員も申されましたように、本年が昭和二十八年の大水害から数えてちょうど四十年の節目を迎えることでもございますので、決意を新たに事業の促進に努力してまいる所存でございます。
そこで、お尋ねの第一点目の白川改修における進捗率でございますが、建設省の直轄事業として進められている区間は、有明海河口より小磧橋までの十七・三キロメートルでございます。そのうち完成している堤防の主な箇所は、平成三年度までに小島橋周辺の両岸三・二キロメートル、八城橋左岸一・六キロメートル、新世安橋より泰平橋間の両岸二・七キロメートルなど十・九キロメートルとなり、堤防整備延長三十五・六キロメートルに対し、その整備率は三〇・六%でございます。
第二点目の、平成二年の出水を契機に進められている暫定緊急改修計画でございますが、平成二年七月二日の出水は、白川流域で七月一日深夜からの集中豪雨に見舞われ、時間最大雨量で五十三ミリの降雨となったため、川端町など十三カ所から溢水し、市街部に流入し住宅等に浸水被害が発生をいたしております。これを契機といたしまして、建設省では、現況の流下能力毎秒一千五百トンを毎秒二千トンまで引き上げるよう暫定緊急改修計画の策定をされたところでございます。この計画の内容は、平成三年よりおおむね十年間で用地取得、高潮対策、堤防工事、河床掘削、橋梁のかけかえなど、その事業費総額は約四百五十億円が見込まれております。
第三点目の警報時の対応についてでございますが、大雨警報や洪水警報などは重大な災害が起こるおそれがあると予想される場合に気象台から発表されますが、警報が発表されますと、本庁三階に水防本部情報連絡室を設置いたします。また同時に各総合支所及び東西土木事業所にも職員を配置しており、白川流域におきましては、昨年四月に発足いたしました、建設省、気象台合同の発表による白川洪水予報など情報の収集を行いますとともに、事前の対策といたしまして防災訓練等を通じて市民への水防意識の高揚を図り、万全の措置を講じてまいりたいと思っております。
第四点目の立野ダムの建設促進についてでございますが、立野ダムの建設につきましては白川の基本高水のピーク流量毎秒三千四百トンのうち四百トンをカットするもので、昭和五十八年から建設事業が進められており、下流の河川改修と並行して早期に完成させる必要がございます。本市といたしましては、昭和五十七年に流域市町──熊本市、大津町、菊陽町による立野ダム建設促進期成会を発足させ、建設省に対し事業の促進を働きかけてきたところでありますが、冒頭で申し上げました協定書の調印に基づき、私ども受益市町は、熊本県とともに長陽村の支援措置として財団法人白川水源地域対策基金を設立したところであります。この対策基金は総額十億円で、そのうち本市の負担額は約五億円であり、今後ダム完成までに地元長陽村地域整備事業の一端を支援していくものであります。これを機に、国においては平成七、八年をめどにダム本体の建設に着手される見込みで、今後のダム建設事業の進捗が水害の解消、軽減につながるものと、その完成に大きな期待を抱いているところであります。
第五点目の大甲橋より明午橋の改修についてお答えをいたします。御質問の区間は今まで御意見がいろいろありますことは議員御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては学識経験者、文化人、関係機関及び地元住民の意見を反映させながら論議したいと考えているところでございます。
それから、最後の御質問の保田窪放水路でございますが、議員各位のおかげをもちまして白川合流部の用地が解決し、ただいま工事を実施いたしているところでございます。梅雨入り前には何とか供用開始の運びとなりましたので、厚く御礼を申し上げます。
御質問の保田窪放水路のゲートの件でございますが、白川の河川管理者であります建設省及び放水路の管理者である熊本県と水門操作規則について最終的な詰めをただいま行っているところでございます。なお、放水路の管理につきましては県と管理委託契約を結び、本市において水門の操作管理を行ってまいります。
議員もお述べになりましたように、四十年前のあの六・二六水害の惨事を繰り返してはならないとの思いは同感でございます。今後とも、白川の改修促進については、建設省に対して白川改修期成会と連携してさらに強力に働きかけていくとともに、白川の河川環境の適正な創造を図るための白川水系河川環境管理基本計画も策定されており、その方針に沿って整備を進めていただくよう要望してまいりたいと思いますので、議会の御支援、御協力を切にお願い申し上げる次第でございます。
〔二十五番 荒木哲美君 登壇〕
◆二十五番(荒木哲美君) ただいま建設局長には詳しく御答弁をいただいたところであります。白川について多岐にわたってお尋ねをしたわけは、いずれも私たちにとって大事なポイントと思うからお願いをいたしたような次第でございます。もとより建設省の直轄河川でありますが、御答弁のとおり、田尻市長を初め本市でも大変な努力をされていることも高く評価したいと存じます。
私は、市立図書館で、あの六・二六大水害の被災記録「熊本市水害関係写真集」をつぶさに見てまいりました。また現在の教育センターの前身であります熊本市教育研究所が出しております生々しい記録「六・二六水害と熊本」も読ませていただきました。その一節に、「五十余の児童生徒の生命の喪失をはじめ、校舎や施設の被害、その他児童生徒の家族や家庭環境どれひとつとっても教育上の被害でないものはない」と教育的見地からも書かれております。また、「この水害によって被った傷痕は消し難く癒し難いものである」というようなことも書かれております。十年前の昭和五十八年に、もし六・二六と同じ被害に遭えば、被害総額八千億円にも上ると言われておりまして、今日の熊本市の集積度からいたしますと推して知るべしであろうと、決して二度と水害に遭ってはいけないというようなことも強く思うわけであります。
このように一たんはんらんすれば限りなく大きな影響を与える白川の防災を論じることは、まさに本市の都市づくりを論じることと同じであろうと思います。したがって、緑の問題についても、私は、緑を論ずる人にも防災を論じてほしい、また改修に携わる人にも緑を考えてほしい。そうすればおのずと答えは近づくはずであると思うわけでございます。早急な実効ある改修を願ってやまないものであります。
次に福祉についてお尋ねをいたします。
近年、福祉を取り巻く環境は、人口構造の高齢化、市民意識の多様化、個性化、核家族化等により大きく変化をしてまいりました。本市におきましても、昨年は福祉公社ヒューマンライフの設立、全国初の歯科診療所を併設する長寿の里デイサービスセンターの事業開始、また本年四月には南部在宅福祉センターの開所、六月には心身障害者のデイサービスセンターの竣工が予定されるなど、いわゆる在宅福祉の三本柱と言われますデイサービス、ショートステイ、ホームヘルプサービスの充実を目指した田尻市長の積極的な福祉対策の展開に心から感謝をいたす次第であります。
私は、昨年の第一回定例会におきまして、たんぽぽの会の事例を挙げながら、行き場がなく在宅を余儀なくされている重度の精神薄弱と重度の身体障害をあわせ持つ、いわゆる重症心身障害児・者の対策について質問をさせていただきましたが、これまた田尻市長には早速心身障害児・者対策検討委員会を設置され、具体的に検討されていますことに深く感謝を申し上げる次第であります。
また、制度的にも恵まれないお母さん方が実情を訴えられ、我が党、本市議会、そして田尻市長への陳情がなされているところであります。田尻市長におかれましては、会の現状とお母さん方の要望や熱意に御理解をいただき、また大変前向きのお約束もしていただき、むしろ田尻市長みずからの温かいお励ましの言葉に対し、たんぽぽの会のお母さん方が感涙をされた姿を見て、私も目頭に熱きものを覚えた次第であります。新年度にその所要の措置が講じられているやに聞き、心から感謝を申し上げる次第であります。
もとより心身障害者対策につきましては、はなぞの学苑、平成学園の整備充実、希望荘デイサービスセンターの建設を初め、優しい思いやりの心を持って推進されているところでありますが、本日は、市長と同じ思いを持つ者として、再度重症心身障害児・者対策についてお尋ねをしたいと思います。
私は、重症心身障害児・者の問題は二点あると思います。
まず一点は、就学前の重症心身障害児の療育ができる施設が熊本市にはないということであります。現在、保育園の御協力により障害児の統合保育がなされておりますが、特に重症心身障害児の統合保育は専門知識が必要であり、また保母さんの負担が大きく保育園での受け入れが非常に難しく、どうしても在宅にならざるを得ないことであります。
二点目には、養護学校を卒業した後の問題であります。昭和五十四年から養護学校も義務化され、重度の障害児も全員就学することができるようになりました。しかし問題は、養護学校卒業後、障害が重いためどこへも行き場がなく、再び在宅で家族だけの生活に戻らなければならないという現実であります。そのために重症心身障害児・者をお持ちのお母さん方は自分たちで会をつくられ、励まし合い、子供たちの健康と社会性や生活習慣を維持するため、県の身体障害者センターや希望荘で療育訓練をされておりますが、いっときも目が離せず、二十四時間の介護が必要であり、その負担は大変なものであります。
そこでお尋ねでありますが、重症心身障害児・者のための生活指導や機能訓練のできる場、それと介護者の負担軽減対策を早急に考えていただけないか。また公的な重症心身障害児・者の通所療育施設の制度化について国へ働きかけていただけないものか、お尋ねをするものであります。
引き続きまして老人福祉の問題についてお尋ねいたします。
急速な高齢化が進む中、二十一世紀を展望しますと、寝たきりや痴呆に陥りやすい七十五歳以上のいわゆる後期高齢者が今まで以上に増加することが予想されます。実際、本市の昨年十月現在の高齢者数約八万のうち、その約四割、三万三千三百人が後期高齢者となっており、これを五年前と比較しますと一万人近くの増加となっております。
このことから、今後特に寝たきり、虚弱、痴呆といった援護を要する高齢者への対策が大きな課題となるわけであります。御存じのように、こうしたケアの必要なお年寄りに対しては、従来施設福祉を中心に対応がなされたところでありますが、近年、ノーマライゼーションの考え方の普及やニーズの多様化等により、在宅福祉の充実が不可欠となるとともに、施設ケア、在宅ケアの連携、両者のバランスのとれた体制の整備へと転換が図られてきているところであります。しかも核家族化により家庭での介護能力が著しく低下している現在、ホームヘルプ等の家庭訪問サービスだけでは対応できなくなっている状況であります。したがいまして、今後、施設と在宅の中間的形態である通所型のサービスがますます重要となり、中でもデイサービスがこれからの福祉の中核となるサービスとして大きな期待が寄せられているものであります。デイサービスではいろいろな動作訓練や生活指導を受けながら給食や入浴サービスも受けられる、家族にとっては介護負担から一時的にせよ解放される、心身をリフレッシュできるなど、双方に大きな効果、メリットをもたらし、よりよい家庭介護へとつながるのであります。現在本市では約百五十人の利用待機者がいると言われており、老人デイサービス事業の早急な普及拡大を強く望むものであります。
ところで、老人デイサービス事業の制度としては、対象となる老人の状態、地域性等に応じて五つのタイプがあるわけでございます。現在本市では寝たきりや虚弱老人を対象とした標準型であるB型のデイサービスのみしか行われていないのが現状であります。さきにも申しましたとおり、高齢化の進展に伴い、今後痴呆性老人の急増が予想されております。昨年、厚生省が調査してまとめたところによりますと、痴呆性老人の出現率は、六十五歳以上の四・八%、八十五歳以上になりますと二〇・九%、つまり五人に一人が痴呆性老人になると言われております。痴呆の原因はアルツハイマー病など医学的にも原因の解明ができておらず、したがって痴呆が治るということは余り期待できない場合が多いと言われております。
こうした痴呆性老人を抱える家族の御苦労は並み大抵のものではなく、徘回していっときも目が離せない、夜中に起きて騒ぐので眠れない、所構わずおしっこや排便をする、火の不始末が怖い等々、問題行動に困惑し切った御家族の話を最近いろんなところで聞くわけであります。介護に当たる御家族の負担はまことに大きく、長期になると共倒れの危険さえあるわけであります。そういうことから、痴呆性老人を抱える家族に対し、情報提供や相談はもとより、デイサービス、ショートステイなど、介護負担軽減のための具体的な支援策が大変重要になってきていると思うのであります。
そこでお尋ねであります。残念ながら痴呆性老人対策はまだ緒についたばかりであり、その対策の充実を図る一環として、まず痴呆性老人が毎日通うことのできる、いわゆるE型のデイサービス事業に積極的に取り組まれるお考えはありませんでしょうか。ぜひ前向きのお答えをお願いしたいと思います。
以上、福祉問題について二点、市民局長に御答弁をお願いします。
〔市民局長 野田雅水君 登壇〕
◎市民局長(野田雅水君) 荒木哲美議員にお答えを申し上げます。ただいまは田尻市長の積極的な福祉対策へのお取り組みに対しまして、まことに心のこもったお言葉をちょうだいいたしまして、福祉を担当いたします私にとりましても大変な励みであり、また光栄に存ずる次第でございます。
お尋ねの重症心身障害児・者の対策は最重点の福祉の課題でありまして、昨年の九月に設置いたしまして目下審議中であります重症心身障害児・者対策検討委員会の中におきましても重要なテーマとなっております。重度の肢体不自由と知的障害をあわせ持つ重症心身障害者の方は、るる荒木先生お述べになりましたように、一人で食事をとることも食べることも困難な方々でありまして、このような重い障害を持つために、せっかく養護学校を卒業いたしましてもその後の行き場がないという現状につきましては議員御指摘のとおりでございまして、大変切実な問題でございます。介護に当たられる御家族の負担は大変なものであると存じます。
このような現実を踏まえまして、その対策といたしましては、毎日毎日の生活の中における療育訓練のための活動場所の確保が先決であろうかと思います。あわせてまた医療の専門スタッフの体制づくり等も必要でございまして、このような具体的な方策を検討するためにその調査費を今議会にお願いをいたしているところでございます。重い障害をお持ちの皆様方の幸せを願いまして、介護に当たられる御家族の負担を少しでも軽くすることができますように全力を傾注して取り組んでまいりたいと存じます。制度化に向けての国への働きかけも進めてまいります。
〔副議長退席、議長着席〕
次に痴呆性老人の対策についてでございますが、痴呆性老人の処遇につきましては、老人ホームへの入所など施設ケアによる対応が一般的に見受けられるところでございますが、できますことなら住みなれた環境の中で、身近な御家族が温かく家庭的に処遇していくとしますならば痴呆の病状にも好影響をもたらすのではないかと言われております。したがいまして、家族による在宅ケアを支援していく体制の整備が必要であろうかと存じます。痴呆性の老人を専門に昼間お預かりするという御指摘のE型デイサービスは、この要請にマッチするものと考える次第でございます。もとより痴呆性老人対策につきましては、保健、医療、福祉一体となった総合的な取り組みが必要であろうかと思いますが、御提言を踏まえまして、まずは痴呆性老人対策の一環といたしましてこのE型デイサービス事業に取り組んでまいりたいと存じます。
〔二十五番 荒木哲美君 登壇〕
◆二十五番(荒木哲美君) ありがとうございました。
いきいきとした市民福祉都市の実現のためには、地域福祉の推進、高齢者・障害者にやさしいまちづくり、高齢者・障害者の福祉充実など幅広い分野にわたる施策が必要でありますが、本日は二点に絞りお尋ねしましたところ、いずれも前向きの御答弁をいただき、心から感謝を申し上げる次第であります。
重度心身障害児・者については積極的に対応するとのことで、よろしくお願いを申し上げます。
また、痴呆性老人のE型デイサービスについてもぜひ新年度から実施していただきたいと思うのであります。
さて次に、熊本市民病院の問題及び医療交流についてお尋ねをいたします。
皆様御承知のとおり、先般、市民病院において患者を取り違えて手術を行うという前代未聞の医療事故がありました。本市において高度医療を担うまさに中核的病院の一つである市民病院において、このような医療ミスが起きたということに、皆様ももちろんのことと存じますが、私も大変な驚きを覚えたわけであります。患者の生命を預かる病院において決してあってはならないことであり、この患者さん及び御家族の心痛はいかばかりかとお察しするとともに、心よりお見舞い申し上げる次第であります。
今回の事故につきましては、田尻市長みずからたびたび陳謝されておりますが、私は改めて市民病院に対し、事故の責任を明らかにするとともに、今後二度とこのようなことが起きぬよう、万全の対策のもと徹底した診療体制の見直しと患者さんへの細心の配慮を強く要望するものであります。
そこで、市民病院長にお尋ねいたします。このような重大な医療事故がなぜ起きてしまったのか、その経過と再発防止に向けた今後の取り組み、また今回の事故に関しての処分を早期に実施すべきではないか、以上の点、お答えをお願いいたしたいと存じます。
もとより市民病院には公的医療機関として、不採算部門を初め、高度化し多様化する患者のニーズに的確に対応しなければならないという大きな使命があります。この使命を達成するため、今回の事故を大きな教訓として、今後一層努力していただきたいと思うのであります。
くしくも、この四月には小児心臓外科が新設されるとのことであり、患者さんを持つ家族にとって大変な朗報であります。そのほか、心臓血管外科や腎臓科なども開設されるとのことであり、複雑多岐にわたる病気に適切に対応できるものと大いに期待しているところであります。
加えて、現代における主要な死亡原因となっているがん治療に関しても、その医療レベルの一段の向上が望まれておりますが、このような中、昨年友好都市となりましたドイツのハイデルベルク市と今後医療交流が展開される予定と聞き及んでおります。医療の分野において世界のトップレベルにあるハイデルベルク市との交流を展開していくことはまことに有意義なことであると考えます。
そこで私の提案でありますが、今後の交流を図る上で、例えば医療交流基金の設立も必要ではないかと思うのであります。その基金をもとに、がん研究の世界的権威であるムンク教授を初めドイツの医療スタッフとの交流が深まれば、今後の市民病院におけるがん治療はもとより、さまざまな分野の医療向上に大いに寄与するものと期待されるところであります。
そこで保健衛生局長にお尋ねいたします。今後、このハイデルベルク市との医療交流を積極的に展開するため医療交流基金を設立されてはいかがか、お考えをお聞かせいただきたいと存じます。
以上、二点について御答弁をよろしくお願いいたします。
〔市民病院長 志摩 清君 登壇〕
◎市民病院長(志摩清君) 荒木議員にお答え申し上げます前に、今回、患者さんを取り違えて手術を行うという大変な事故を起こしましたことにつきまして、患者さんを初め御家族の方、またきょうまで市民病院を信頼していただきました市民の方々、並びに議員の皆様にも多大なる御迷惑をおかけいたしましたことを衷心よりおわび申し上げます。
それでは、事故の経過とその対応につきまして御説明申し上げます。
既に保健衛生委員協議会で御報告を申し上げたところですが、平成四年十一月二十六日、二名の患者さんの確認が不徹底のまま取り違え手術が開始されたものでございます。手術の途中で患者取り違えに気づき、直ちに患者さんとその御家族へ状況説明とおわびを申し上げたところでございます。また病院として、患者さんと御家族へ誠心誠意対応し、一日も早い御回復に向け全精力を挙げて取り組んでまいりました。その後、平成四年十二月に本来の手術を行い成功裏に無事終了し、両患者さんとも再手術後の経過は順調で、平成五年一月中旬には退院され、以後当院外来に通院治療中でございます。病院では事故発生後直ちに事故調査委員会を設置し、その原因究明に当たるとともに、あわせて医療改善委員会で事故発生防止の検討を重ね、その結果、ストレッチャーに氏名、血液型を記入したテープを張り、申し送りの際患者の手に張る方法を行っております。さらに、主治医と同行して手術室に入室するなどの改善を図ったところでございます。今後はさらに、危機管理委員会を設置し各部署における医療業務の定期的確認を行うなど、あらゆる角度から再発防止に向け万全の体制をとっていきたいと考えております。
患者さんの生命をお預かりいたしております病院といたしまして、このような事故は決してあってはならないことであり、深く反省し、二度とこのような事故が起きないよう、病院職員一丸となって意識改革を図り、医療の原点に立ち返って、尊厳たる命をお預かりしているという深い自覚を持って患者さんの診療に当たってまいりたいと考えております。
なお、処分問題につきましては、ただいま申し上げました諸対策を講じながら、私自身も含めてけじめをつけたいと考えております。今後は全職員総力を挙げて信頼回復に取り組んでまいりたいと存じます。
最後に、今回の大失態につきましては重ねて陳謝申し上げます。
〔保健衛生局長 工藤 磐君 登壇〕
◎保健衛生局長(工藤磐君) ただいま、今回の医療事故の発生につきまして市民病院長からおわびを申し上げたところでございますが、保健医療行政を推進し市民の健康を守るという保健衛生局の立場におきましてもその責任の重大さを痛感しており、議員各位並びに市民の皆様方に深くおわびを申し上げる次第でございます。二度とこのような事故が発生しないよう、保健衛生局としては県衛生部とも歩調を合わせ、病院における管理体制の強化と職員教育の徹底について、市民病院を含む医療機関に通知いたしたところでございます。なお、市民病院の今後の対策につきましては、保健衛生局としても積極的に支援してまいりますことをお誓い申し上げます。
それでは、ハイデルベルク市との医療交流について荒木議員にお答え申し上げます。
議員御案内のとおり、本市が友好都市を締結したハイデルベルク市は、一千年の歴史を誇り、創立六百年を数えるハイデルベルク大学はドイツ最古の大学であります。医療研究施設においても、このハイデルベルク大学医学部を初め国立がんセンターや市立病院などドイツ医学の一大中心をなしていると聞き及んでおります。特にまだ克服できないがんやエイズウイルスなどの研究、さらには小児医療などのすばらしい医療環境が整備されているそのハイデルベルク市と熊本市が友好都市を締結したことは、本市の医学医療の向上という面からも大変意義深いことであると確信いたしております。
この友好都市締結を契機にハイデルベルク市の高レベルの医学を学び、市民病院を初めとして本市の医療の質的向上につなげるため、医療交流についても鋭意推進してまいりたいと考えております。そのためには、ハイデルベルク市の医学関係者が、市民病院を初めとする本市との交流に積極的に参加できるよう支援していくことも必要ではないかと考えております。ただいま議員から御提案がありました医療交流基金の設置につきましては、早速具体的に検討をし議会の御指導をお願いしたいと考えております。
〔二十五番 荒木哲美君 登壇〕
◆二十五番(荒木哲美君) 責めを負わせ過ぎたかとも、私も胸の痛む思いがするわけでございます。志摩院長には心労大きく、心から健康を気遣う一人であります。ほかの議員各位も全く同じであろうと思います。今後ともひとつ鋭意頑張っていただきたいと思います。
市民病院におかれましては、今後、失われた信頼回復に全力を挙げられるとともに、熊本都市圏の中核病院として、これまで以上に市民から頼りにされる存在となるよう、さらなる御精進、御努力を重ねられますよう心から祈念申し上げる次第であります。
また、ハイデルベルク市は特に医療、環境等の面で世界で最も先進的な都市であり、特色ある国際都市交流を進める一環としても、ぜひ医療交流基金を設立すべきであると考えます。早急なる実現を心からお願い申し上げます。
さて、最後になりましたが、佐藤議会事務局長におかれましては、今議会を最後に三月末をもって御勇退されると聞き及んでおりますので、一言感謝と御慰労の言葉を申し上げたいと存じます。
佐藤局長は、昭和三十三年に市役所に入庁以来、今日まで、実に三十五年の長きにわたり市民福祉の向上と市勢の発展のために御尽力をいただいたのであります。
市役所採用後、最初の十年を議会事務局議事部に勤務され、その後、秘書課、人事課、教育委員会庶務課等に在籍され、昭和五十四年からは管理職として観光課長、事業課長、市民相談課長、文書課長、職員研修所長等、主に経済関係や管理部門等を歴任され、昭和六十三年一月に議会事務局次長に就任されております。その後請われて産業局付参事として競輪業務の適正化に取り組まれた後、平成二年四月に三たび、議会事務局長として戻ってこられました。
市役所生活の最初と最後を議会事務局に御勤務されたのでありますが、ややもすれば紛糾、混乱しがちな議会にあって、二郎さん、二郎さんと愛称で呼ばれる佐藤局長の気さくな人柄と行動力でもって、円滑な議会運営に努めてこられましたその功績は衆目の一致するところであります。まだまだ気持ちもお体の方も若々しく、議会のために御尽力願いたいところでございますが、後進のためとのことであり、やむを得ないものと存じます。本当に長い間御苦労さまでございました。
どうぞ御退職後もお元気でお過ごしになり、これまで同様、市政あるいは私どもに対しまして御指導、御助言を賜りますようお願い申し上げますとともに、御退職後の第二の人生が実り豊かなものになりますことを心から御祈念申し上げまして、私の感謝の言葉といたします。
さて本日は、厳しい財政環境のもとではありますが、平成の大合併後のヒューマンシティ・くまもとづくりを着実に前進させ、二十一世紀に向けた本市の飛躍的発展を図る立場から、財政問題はもとより、交通体系や拠点整備、防災対策、福祉問題等々、町づくりの重要課題について質問をさせていただきました。田尻市長初め執行部各位におかれましては、心のこもった前向きの御答弁をいただき深く感謝申し上げる次第であります。今後とも、積極的な町づくりの展開に全力を挙げて取り組んでいただきますようお願い申し上げ、私も微力ではありますが、力の限りお手伝いをさせていただく決意であります。
議員各位、また傍聴の皆様方には長時間にわたり御清聴いただき大変ありがとうございました。心から感謝を申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。まことにありがとうございました。(拍手)
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○議長(嶋田幾雄君) この際、議事の都合により休憩いたします。
午後二時に再開いたします。
午前十一時五十六分 休憩
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午後 二時 三分 再開
○副議長(西田続君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
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○副議長(西田続君) 質問を続行いたします。佐々木亮君。
〔五十七番 佐々木 亮君 登壇 拍手〕
◆五十七番(佐々木亮君) 公明党の佐々木でございます。ただいまより質問を行わせていただきます。市長以下各局長におかれましては簡潔明快なる御答弁をよろしくお願い申し上げます。
それではまず、当初予算が計上された議会でございますので、財政問題についてお尋ねしてまいりたいと思いますが、ここ数日来巨額な脱税事件が次々と暴露されております。皮肉なことに今日本列島至るところで不景気風が吹き荒れ、どこに行ってもだれに会っても不況にまつわる話ばかりが話題に上ります。
また、それに追い打ちをかけるかのように、企業活動の冷え込み、あるいは四月就職内定者の内定取り消しなどが毎日報道され、不景気ムードに一層拍車がかかっていることは各位御承知のとおりであります。しかし、こういう状況にまでなるとはだれが予測したでしょうか。単なる一時的な不況と安易にとらえていた向きも多かったのではないかと思います。
振り返って見ますと、我が国の経済は、一昨年夏ごろまでイザナギ景気を超えたと言われる平成景気が長期間にわたり継続したところでありますが、一昨年の十月から十二月期の国民総生産の実質成長率を見てみますと、対前期比で〇・一%の減、内需においても前期比〇・六%に減少するなど、このあたりから景気減速傾向に転じてきているところであります。その後、株価の暴落、土地価格の下落、さらにこれに追い打ちをかけるかのような金融不祥事等が相次ぎ、いわゆるバブル崩壊につながったところであります。そしてこれを境に個人消費の冷え込み、企業の設備投資の停滞、今日の超円高傾向等々、もっともここ一両日株価はやや反騰の兆しを見せておりますが、景気動向は大変厳しい局面を迎えるところとなっております。
このような我が国の現状に対し、これまで国はどのような対策を講じてきたでしょうか。各位も御記憶のことと存じますが、昨年二度にわたって経済対策を講じてきたのであります。最初がちょうど一年前の三月末、緊急経済対策として、公共事業の施行促進や個人消費、住宅投資の促進、中小企業対策を講じたところでありますが、これは全く景気対策と呼べるものでなく、いかに安易な対策であったか、これも各位認識されているところでございます。そして半年後に、この対策では景気浮揚効果につながらないと気づくありさまで、やっと八月末に総合経済対策と称し総額十兆七千億円に上る財政措置を講じ、公共投資等の拡大、公共用地の先行取得、金融対策の機動的運用等の対策を講じたところでありますが、まさに遅きに失した感を免れることはできないものであります。
今回の不況は風邪に例えればまさに悪性のインフルエンザであり、少々の治療では完治しないほど底深いものであり、総合経済対策の効果がまだあらわれてきていないとの見方もあるようでありますが、景気回復の兆しは一向に見えず、ますます落ち込んでいるというのが実感ではないでしょうか。ごく最近の景気指標を見てみましても、実質国民総生産あるいは内需はいまだ減少傾向にあり、企業の設備投資も戦後初めて二年連続で減少するなど、加速度的に景気が落ち込む懸念があるとされております。
さてこのような中、平成五年度の予算編成が終わり、現在、国や地方の各団体において新年度の予算審議が行われているところでありますが、このような景気の動向を踏まえ、厳しい予算編成となっていると聞き及んでいます。それは何といっても国、地方の最たる財源である税収が、景気の影響を敏感に反映し大変厳しい状況にあることからもうかがえるところであります。
平成五年度の国の予算を見ましても、国税収入は、平成四年度補正予算におけるおよそ五兆円に上る減額予算措置を踏まえ、前年度に比べ約一兆二千億円の減という見通しを想定、予算総額の伸びを対前年度比においてわずか〇・二%の増と設定しており、また地方公共団体の指標となる
地方財政計画においても、地方交付税交付金の特例減額措置四千億円等の要因はあったものの、対前年度伸び率二・八%という低い伸び率で設定されたところであります。
反面、景気対策として国の公共事業関係費は五・八%の増、
地方財政計画における
地方単独事業については一二%の大幅な伸びを見込んでおりますが、この財源として、国は建設国債の限度額いっぱいまでの発行等を、また
地方財政計画においては、地方税並びに地方債によりその財源を確保する考えのようであります。
このような状況の中で、市長も提案理由で申されましたように、本市は平成三年二月、旧飽託郡四町との平成の大合併を実現、これを契機に本市百年の大計に立った新総合計画を策定、いよいよこれを具体化すべくさまざまな事業に取り組んでおられるところであります。
そしてその三年目を迎える平成五年度は、今議会に御提案されましたとおり、公共事業の推進等を柱とした一般会計の当初予算額が一千七百九十九億円と、対前年度伸び率七・一%の大幅な伸びを確保されたところであり、この伸び率は国、
地方財政計画のいずれをも大幅に上回る積極的な予算編成になっているところであります。
私も、このような不況下にあっては、財政が積極的に出動し、公共事業の推進等、地域経済の活性化を図っていかなければならないと考える次第であり、田尻市長の積極的な姿勢に対し一応の評価をいたすものでありますが、この編成に当たって、市長の基本姿勢とその考え方についてお尋ねをいたしたいと思います。
〔市長 田尻靖幹君 登壇〕
◎市長(田尻靖幹君) 佐々木議員にお答えをいたしたいと思います。ただいま、我が国の経済情勢、極めて深刻な事態になっていると、このような御見解を承ったわけでございますが、まことに同感でございます。
先ほど正午のニュースにおきましても「経済企画庁 景気極めて深刻」と、このような観測を出しております。その中におきまして特に個人消費が振るわない、このことを強く指摘をいたしておったわけでございます。佐々木議員の言われますとおりに、金融の面あるいはまた個人消費の面、いろいろの対策が今日まで講じられてまいったわけでございますが、なかなか景気回復のきっかけをつかめないというのが日本経済の現状であると、このように考えるわけでございます。先般公定歩合の引き下げ、あるいはまた今国会におきましては減税問題が非常に強く論議されてまいったわけでございまして、もう一つはやはり公共事業のさらなる投資によって経済に波及効果を及ぼしていくと、このようないろいろの手だてが講ぜられているわけでございます。それを受けまして私どもは熊本市の経済の発展そしてまた財政の安定、このような角度におきまして、今回の予算におきましても全力を挙げて取り組んだわけでございます。
ただいまの御指摘等も私ども十分意を体しまして、積極的なしかも健全財政を維持しながらこれをやっていこうと、このように決意いたしまして取り組ませていただいたわけでございます。ここに至るまで事務方担当の財政当局も大変苦労いたしましたけれども、各局におきましてもただいまの佐々木議員の御意向等を十分考慮に入れまして、積極的な施策展開に今後とも努力をしてまいりたいとこのように考えているわけでございます。
午前中もお答え申し上げましたけれども、やはり何と申しましても平成五年度は景気の回復と、このことが私どもの予算編成におきまして最も念頭に置いたところでございます。その第一点といたしましては、地域の経済に強い波及効果をもたらすであろう火の
国フェスタ・くまもと’93を大成功に導いて、地場産業振興、特に中小企業あるいは観光事業、あるいはまた都市農業の振興を図っていきたいと、かように考える次第でございます。
次には社会資本の整備であります。佐々木議員御指摘のように、熊本市は社会資本の整備におきましてこの数年間おかげさまで随分伸びてまいりました。これひとえに議員各位の変わらざる御支援のたまものであります。特に公園、住宅、道路、公共下水道、このような社会資本の整備にはさらに全力を挙げて取り組み、しかもなお単独事業、このことに意を用いた次第でございまして、この点につきましては後ほど総務局長から御答弁をさせたいと思うわけでございます。
さらには、二十一世紀を目指して、特に飽託四町合併三年目という一番大事なときであります。やはり私どもはこのような地域の再開発にもっと力を入れていこうと、あるいはまた環境、福祉、人づくり、あるいはまた国際交流と、それぞれの分野におきましてそれなりの実を上げていこうとこのように考えまして、それぞれ予算の展開に努めた次第でございます。
このような財政の出動によりまして、必ず私は平成五年の後半におきまして熊本市の経済は大変回復していくのではないかと、これは希望的な観測でなくて私どもの長い間の経験を通しての実感でございます。特に食品産業等につきましてはこの不況時にもかかわらず大変敢闘している、これは日銀の観測でございます。そういう意味におきまして本年秋に開催されます火の国フェスタ、これをぜひとも成功させていかなければならないと思うわけでございまして、議員各位の一層の御支援を賜りたく存ずる次第であります。
なお、私どもにとりまして朗報がございますのは熊本港の開港でございます。明治十四年と申しますと百十二年前でございますが、そのころ有明海に港をつくろうとこのような先人の願望があったわけでありますが、一世紀を超えて初めてここに私どもはこの宿願を果たすことができたわけでございまして、ちょうど平成三年に飽託四町の合併、ここで海岸線が従来の六キロから二十二キロまで延びたと、そういう中にありましてその中心核となります熊本港がここに実現したと、そして既に三月一日からフェリーが島原から往復していると。このようなことを考えますときに、今後この港を中心にして、さらに私どもは流通問題あるいはまた真の意味の貿易問題に取り組んでいかなければならないと、かように考える次第でございます。
さらには新幹線の問題、あるいはまた全天候性の空港がもう間もなく実現と、あるいはまた高速自動車道路の整備、こういう積極的な取り組みによりまして今後熊本市の発展にさらなる努力をしていきたいと、そういう願望を込めまして予算の編成を展開いたしたわけでございます。
以上、説明を終わらせていただきます。
〔五十七番 佐々木 亮君 登壇〕
◆五十七番(佐々木亮君) 市長からるる答弁をいただきましたとおりで、このまま行けば大恐慌につながるというような非常に深刻な不景気の状況であろうかと思います。私も市民の一人としてフェスタを初め市の総事業が大成功に終わることを祈っております。あと、社会資本の整備を中心として景気対策に情熱を注いでおられるという姿勢はよく理解するところであります。いずれにしましても、このような状況下、今ほど市政の運営において頭脳と知識が必要なときはないと。幸いにして現在は市長以下、助役、収入役、総務局長、担当局はむろんのことすべて財政通がそろっておりまして、歴史上珍しいことではないかと思っておりますが、そのような英知を結集されての今回の予算であろうかと思います。
いずれにいたしましても、景気対策に向けての予算については数値の上では十分理解できるところであります。基本的には、本市の置かれている現状や将来の発展を考えますとき、本市将来のあるべき姿を想定、長期的視野に立っての計画的執行が不可欠であると考えられます。このためには基本的には総合計画に沿った予算の編成、そしてその執行を行っていかなければならないと思う次第であります。
このような考えのもと、私は、去る平成三年の十二月議会の基本構想提案時において私の考えを提示いたしたところであります。現下の経済状況の中で、景気対策が最重要課題であるということは認識いたしておりますものの、景気対策にばかりとらわれると事業間におけるバランスの欠如等も生じてくることが予想され、加えて、一時的とはいえ事業費の上積みにより相当の財政負担にもつながり、このことが結果的には、中長期の計画である総合計画そのものの見直しにまで影響しかねないと心配いたすものであります。言うまでもなく、中長期的な展望に立って予算の編成を行うのが財政のセオリーであり、当然そのあたりを考慮の上、平成五年度予算も編成されていることと思います。
このことを踏まえてお尋ねいたすものでありますが、前回の質問に対し、総合計画の事業規模は総額一兆円を超えることとなるが、今日の投資水準からして、その達成は十分可能であるとのお答えをいただいているところであります。新総合計画の事業計画期間十カ年のうち既に二年が経過し、三年目を迎えようとしているところでありますが、この二年間の事業の進捗状況はどうであったか。また、今後の事業の展開をどのように考えておられるのかお尋ねいたすものであります。
景気対策についてお尋ねいたしたいと思います。
先ほども触れましたように、景気回復へ向けての対策が今回の最大の焦点と言っても過言ではありません。国、地方もこのための予算措置に大きなウエートを置いて編成されているところでありますが、特に
地方財政計画においては国と呼応した地方公共団体の景気対策として、投資的経費の一般単独事業費が一二%の伸び率という極めて高い設定がなされているところであります。本会議冒頭の市長の提案理由説明や午前中の論議にもありましたように、本市の場合もこれを踏まえた積極予算になっているところであります。
具体的に申しますと、例えば一般会計の目的別集計を見ましても、昭和四十五年度以来実に二十三年ぶりということでございますが、土木費が民生費を抑えてトップに立っていることからも理解できるところであります。
そこで、二点目のお尋ねでありますが、大型プロジェクトの進捗状況、普通建設事業の伸び、そのうちの単独事業の伸びとその主な具体的事業等、予算から見た景気対策の内容を示していただきたいと存じます。
〔総務局長 野田晃之君 登壇〕
◎総務局長(野田晃之君) 財政関連の二点のお尋ねにお答えを申し上げたいと思います。
まず、一点目は新総合計画の進捗状況と言いますか、平成三年度、四年度におきます財政的な面から見ました進捗の度合いでございますが、本市の新総合計画につきましては平成三年の三月に基本構想を御議決いただきまして、その後基本計画の決定を見ておりますが、この計画期間は平成三年度から平成十二年度までの十カ年でございまして、先ほどお触れになりましたように二カ年が経過いたしております。
そこで、お尋ねのこの二カ年におきます状況でございますが、平成三年度を見てみますと、一般会計の
普通建設事業費決算額で約五百三億円でございます。特別会計、企業会計の主要事業を押さえてみますとこれが二百四十億円、さらに開発公社の用地に関する投資で約六十六億円、合計で八百九億円となっております。平成四年度につきましては補正予算等で特に景気対策を講じさせていただきましたこともございまして、同じように一般会計、特別会計、開発公社等合算いたしますと合計が一千億円を超える見込みとなっております。先ほどお話がございましたように、先般、この計画の目標額と言いますか所要経費が一兆円を上回る規模となると、当時の水準からいたしましてその達成は可能であるというお答えを申し上げているところでございますが、この二年間の投資実績を見てみましても、逆に投資額は当時の試算を、景気対策ということもございます関係でむしろやや上回るペースで推移いたしております。このことから考えましても、健全財政の基調を堅持しながら計画の実現を期していきますことは財政的に十分可能であろうと、このように考えているところでございます。
二点目は、予算面から見た景気対策の内容というお尋ねでございます。
御承知のように、本市の場合、景気対策といたしまして現年度におきましても積極的に補正措置を講じさせていただいておりますが、新年度予算におきましては、ただいま市長からも申し上げましたように景気対策が急務と、このような認識のもとに、財政といたしましても公共事業の推進に重点的に財源を配分させていただいたところでございます。この結果、今回一般会計予算の特徴を見てみますと、その目的別分析におきましては、ただいま御指摘もございましたように土木費が二十三年ぶりに当初段階から民生費を抑えてトップに立っております。また性質別分析の方で申し上げますと、普通建設事業の伸び率が対前年度比八・三%、特に単独事業費は
地方財政計画の一二%を上回る一五・四%の伸びとなっております。
なお、普通建設事業の伸びでございますが、本市クラスの財政規模の場合、例えば今回普通建設補助事業が東部清掃工場第二期建設工事の影響で対前年度マイナスという数字になってあらわれておりますように、予算的に大規模の事業が、数十億単位の事業が出てまいりますと、これに大きく左右されるという側面がございます。平成四年度、平成五年度におきましては、このような大型事業として、ただいま申し上げました清掃工場建設のほかに、平成四年度におきます三の丸史料公園整備、あるいは五年度におきます国体プールの用地取得等があるわけでございますが、仮にこれらを特殊なものとして除いて試算をいたしますと、
普通建設事業費で一七・五%、うち補助事業が一六・五%、単独事業が一八・一%の伸びとなります。さらに、単独事業の主なるものといたしましては、市道、用排水路整備等継続的に推進いたしております事業のほかに、国体プールの用地取得あるいは環境総合研究所、健軍文化施設、子ども文化施設等新たな施設建設の着手、こういうものが挙げられると思っております。
〔五十七番 佐々木 亮君 登壇〕
◆五十七番(佐々木亮君) 御答弁いただきましたが、特別なものを前年度では除いて今年度は加えるというふうな意味にもとれましたけれども、詳細はともかくといたしまして、一応担当局においては財政運営のバランスを持っていらっしゃるようでございます。
それでは続きまして、これらの事業を支える財源面についてお尋ねいたします。
平成五年度の税収見込みについては大変厳しいことが予測できるところでありますが、第二の財源と言われる地方交付税はどうでありましょうか。この地方固有の財源でもあります交付税が、出口ベースすなわち全国の地方自治体への配分額でありますが、国税収入の伸び悩み、あるいは特例減額措置等の影響により、対前年度伸び率マイナス一・六%と、このように聞き及んでおります。
平成四年度の交付税についてはかねてからの都市自治体の主張が相当盛り込まれ、環境、福祉、都市計画等の分野での財源措置の拡充、また新たに国保財政に対する安定化支援事業が需要額に算入されるなどの大幅な改正がなされた結果、本市の地方交付税についても四年度については大幅にふえる見込みと聞き及んでおりますが、平成五年度については、申し上げましたように、国の予算措置の状況から見てその伸びについてそう期待できないと思うわけであります。
しかし、お尋ねしてまいりましたように、総合計画の推進、あるいは今日的課題であります景気対策は避けては通れない問題であります。むしろ積極的にこれを推進しなければならないと思うのでありますが、そのためには多額の財源を要することも事実であります。平成四年度は東部清掃工場第二期建設事業や三の丸史料公園整備等、大型のプロジェクト事業の推進に対し
財政調整基金の活用も図られたところであります。五年度も、最終年度となります東部清掃工場第二期建設事業や
景気対策事業とも関連いたします環境総合研究所、健軍文化施設、子ども文化施設等の建設事業に加え、平成十一年開催に向けての国体プール建設事業に着手されるなど、相次いで大型事業が進展してまいります。
しかしながら、四年度と違って、これらの事業に対して
財政調整基金の活用はなされておりません。事業の主たる財源となります市税、あるいは交付税に期待が持てない状況にありながら
財政調整基金の活用もなく財源確保をお考えのようでありますが、どのようにして収支の均衡を図られるおつもりか改めてお尋ねをしておきたいと思います。
なお、ここであえてつけ加えさせていただきたいのは公債費比率の問題でございます。一応御答弁をいただいた後にと思いましたが、公債費比率につきましては御承知のとおり、その分母に標準財政規模、分子に公債費充当一般財源から繰り上げ償還額を引いたもの、そしてそれぞれの分子分母から災害復旧等の交付税算入額を引くわけでございます。確かに公債費率は一つの公的な基準となる数値であり無視できないものでありますが、公債費比率のみで財政の健全性を論じることは的を射ていないわけであります。
平成三年度、四年度の公債費比率を見てみますと、平成三年度一六・四、平成四年度の見込みで一五・五前後と聞いておりますが、むしろ平成四年度の方が事業は伸びております。いわゆる国の各種の、ただいま申し上げました交付税対策による交付税の増加によって分母の数値が大きくなっているためであろうと思いますが、ともあれ不況というこのような状況にあっては公債費比率そのものに余り神経質にならずに、思い切った事業の拡大推進を図るべきであろうかと考えます。むろん起債制限比率という実質的な指標がありますので、おのずから一定の枠内での目いっぱいの拡大ということになろうかと思います。財源対策債による減債基金等の積み立て分も余裕といえば余裕であり、安定材料の一つであろうとも考えられます。
以上を踏まえた上で、収支のバランスについての内容とお考えをお尋ねしたいと思います。
〔総務局長 野田晃之君 登壇〕
◎総務局長(野田晃之君) ただいまのお尋ねにお答え申し上げます前に、先ほど説明が不十分で申しわけございませんでした。特殊要因を除くと申し上げましたが、当然に平成四年度、平成五年度双方からこれを差し引いておりまして、大型事業を、例えば清掃工場の場合、四年度分も五年度分も差し引いた試算でございます。例えば四年度においては三の丸を差し引き、五年度においては国体プールを差し引いたと、このような意味で申し上げましたので御理解をいただきたいと存じます。
続きまして、いわゆる財源対策についてのお尋ねでございますが、これにつきましては、ただいま御指摘ございましたように、財政サイドといたしましても、いわゆる歳入の大宗をなします市税、交付税がともどもに伸び悩むであろうと、このように受けとめているところでございます。しかしながら、幸いにいたしましてといいますか、国におきましてはこの不況の問題がございまして、いわゆる
地方単独事業に期待するという側面が非常に強いわけでございます。したがいまして、起債の運用については現在かなり弾力的な姿勢を示しております。本市といたしましては、低金利という時代背景もございますし、さきに市長から申し上げましたように、財政的に可能な限り積極的に事業を推進すると、このような趣旨もございまして、この際、より積極的に起債を活用させていただきたいと考えております。
いま少し具体的に申し上げますと、一つは、不況対策として、都市の財政事情によるわけでありますけれども、四年度に引き続きまして国が特別に起債の充当率アップを認めることといたしております資金手当債というものがございますが、その活用でございます。いま一つは、これは必ずしもここ平成四年、五年だけということではございませんが、地方の創意と工夫に基づきます主体的な単独事業の推進につきまして起債を活用し、後年度における元利償還に交付税の優遇措置を認める地域総合整備事業債という制度がございますが、この両者を併用して活用させていただきたいと存じております。特に後者につきましては、起債とはいいながらも、その交付税優遇措置によりまして実質的な財源確保につながるものでございまして、先ほど申し上げました単独事業の国体プール、環境総合研究所、健軍文化施設、子ども文化施設建設、あるいは継続事業として推進いたしております道路環境整備事業、公園リフレッシュ事業、こういう事業についても起債を活用しまして、後年度交付税で優遇してもらうというような制度を活用させていただくことといたしているところでございます。
平成五年度予算では、ただいま御指摘ございましたように、
財政調整基金につきましては現段階でその活用をお願いいたしていないところでございますが、このように起債の活用、それも後年度の財政負担の極力少ない、できるだけ有利な制度の活用を図ることによりまして収支の均衡に努めてまいりたいと、このように考えておりますので、御理解をお願い申し上げたいと存じます。
最後に、公債費比率の問題でございますが、公債費の場合、後年度負担につきましてはおのずと一定の限界がございますし、財政サイドといたしまして常にこれに留意しなければならないのは当然のことだと考えております。しかしながら社会資本の整備を通じまして地域経済活性化を図り、都市の活力を増強しながら将来の財源涵養にも資すると、このような視点に立ち、しかも地方債の場合、地方自治法あるいは地方財政法等の規定によりまして、現行制度では国、県の許可に基づきます適債事業に限られていると、このようなことを考えますと、起債の活用というものもある程度図らざるを得ず、特に現在の不況下におきまして公共事業をより積極的に推進しようとすれば、その一段の活用が必要となってくると考えております。
ただいまの御質問も、現下の情勢のもとではある程度起債の活用もやむを得ないと、このような趣旨に立っての御発言であったと受けとめておりますが、今後公債費比率の問題につきましては長期的な視点に立ちまして、その極端な上昇を招くことのないよう十分留意しながら、短期的には不況克服の趣旨からも、私どもも従来以上に起債の活用を図らせていただき、公共事業を積極的に推進させていただきたいと、このように考えておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。
〔五十七番 佐々木 亮君 登壇〕
◆五十七番(佐々木亮君) ただいまの御答弁によりますと、まず修正の分については理解いたします。双方から特定事業を引いたということでございます。そして一七・五%の伸び率を実質的には保っていると、このような意味であろうかと思います。
いずれにしましても起債の活用、特に後年度交付税での優遇措置のある起債といいますか、これを有効に利用していくということでございます。後年度の負担増について懸念される面がありまして、公債費比率の論議も展開したところでございますが、ただいま答弁をいただきましたような、そのような方法で財政運用が推移できるならば、それはそれで結構であろうかと思います。
いずれにいたしましても、熊本市は生活消費都市といいますか、地下水、平野、陸海空の交通機関の状況、あるいは産業、工業の度合い、地理的位置、こういったものを考慮していただきたいし、その特性を生かした財政の運用、ひいては市の経営に当たってほしいと思うわけでございます。手数料や料金の値上げが今議会にも提案されておりますが、一つの市の経営ということになりますと全国的に自治体とのバランスということもありましょうが、そういった特性を考えてみますと、例えば一つの公共料金で熊本市が一番安い、値上げしても一番安い、それは結構じゃないかと思うのです。熊本市の特性、熊本市はこういう生活消費都市なのだ、工業都市でもない、このような財政状況なのだ、その中で住みよい熊本市を目指す、胸を張って熊本市はこんなに住みよいのだと、このように誇れるような市の運営を心から期待する次第でございます。
財政問題の詳細につきましては委員会の方に譲ることといたしまして、ほかの問題に移らせていただきたいと思います。
福祉問題について二点ほどお尋ねをいたします。
まず第一点、市長にお伺いいたしますが、児童の歯科いわゆるう歯処理対策事業と申しますが、歯の治療事業についてでございます。
子供は未来からの使者という言葉がございます。子供たちが心身ともに健やかにはぐくまれていくことは、我々大人の重大な責務であります。まして、この少子化社会におきましてはなおさらのことであろうかと思われます。二〇二五年、ちょうど老齢化社会のピークに達すると言われるときでございますが、小学校一年生の方が四十歳前後になろうかと思います。そういうことから考えますと、まさに現在の子供たちは二十一世紀を担うその子供たちでございます。
私どもの体の中で歯の状況が体全体の健康状態に与える影響は想像以上に大きいものがあるそうであります。端的に申し上げましても、歯が丈夫な人は内臓も健康を保持しているし、内臓疾患の人は比較的少ないのだそうであります。その歯が第一回目の試練を受けますのが乳歯から永久歯へかわる時期であり、この時期の治療、処置をしっかりしていれば大人になってからの歯の健全な保持が非常に良好であり、ひいては体全体の健康維持にも大きくかかわってくると言われております。
このような点にかんがみ、京都市、滋賀県大津市等々、我が市議団においてはつい先だって、一昨年でございましたか、市議団複数によりまして現地の調査をしてきたところでございます。一部の地域でございますが、全国的にはかなりの都市で行われているというふうにも聞いております。本市の将来を担って立つ子供たちのために、このう歯対策事業についての市長の御見解を賜りたいと思います。
次に、福祉事務所の多所制について市民局長にお尋ねいたします。
福祉事務所は、いわゆる障害福祉課、老人福祉課、そして保護課、保育課等々、市民生活に最も大きな分野でございます。しかも大まかな数において、この福祉事務所の方にいろいろとお訪ねになります方々というのは、どちらかといえば社会的弱者の方が多くおられます。健軍から、川尻から、あるいは合併しました飽託の方から直接福祉事務所の方に参上しなければ解決できない、相談できないような問題も多々あるというふうに伺っております。大変な中から電車賃やバス賃を何百円か使って時間をつぶして、なかなか休暇もとれないような勤務状況の中で通ってこられます。もし福祉事務所がその拠点拠点にありましたならば、いかばかりか市民の方々は助かるものであろうかと思います。この福祉事務所の分割あるいは多所制につきましては十年以上も前から論議されてきているところでありますが、その後、当局の考え方、状況はどのようになっておりましょうか、お伺いをいたしたいと思います。
〔市長 田尻靖幹君 登壇〕
◎市長(田尻靖幹君) 佐々木議員にお答えをいたしたいと思います。ただいま子供の歯科治療の助成についてのお尋ねでございます。
今回の御提案はまことに時宜を得たものと、このように認識をいたす次第でございます。佐々木議員御指摘のように、やはり少子化社会の極めて急を要する大きな課題の一つとして子供たちの健康を守っていくと、このことはだれよりも私どもの責務でもあるわけでございます。かねて教育委員会におかれましては、特に学校給食の一層の効果を高めると、こういうことで非常にいろいろと配慮してこられたわけでございますが、まさに歯の治療こそがこれから先さらにその教育効果をもたらすものであるということを確信いたしております。したがいまして、歯の治療の助成につきましては、今後関係当局力を合わせまして前向きにそれを検討させていただきたいと、このように考える次第でございます。
〔市民局長 野田雅水君 登壇〕
◎市民局長(野田雅水君) 佐々木亮議員にお答えを申し上げます。
福祉事務所の多所制についてのお尋ねでございますが、人口増と高齢化の進行によりまして、福祉の第一線の行政機関であります福祉事務所の業務も一段と質的に量的に増加しておるところでございますが、同時に福祉のニーズも多様化いたしまして、佐々木議員申されましたように、なるべく住民に身近な形で実施される公的サービスの充実が福祉事務所に求められておる状況下にございます。また、これから迎えます長寿社会に対応していくためには地域福祉のネットワークづくりが不可欠でございますが、その核となるのが福祉事務所でございます。このようなことを考え合わせまして、福祉事務所の複数化に向けた調査検討を現在続けておるところでございます。さきに策定されました本市の基本計画の中におきましても、福祉事務所の多所制への移行が明示されておるところでございます。
福祉事務所の複数化を進めるに当たりましては五つの条件整備が必要でございます。福祉地区の設定──地区割りでございます。それからまた事務所の位置の決定、建物の確保、組織の整備、人的体制、こういった条件整備が必要でございますが、これらの諸条件をつぶさに検討いたしまして、具体的な方針を確定いたしますためには、これからさらに詳細な調査分析と一定の法的な手順を必要といたします。また整備すべき問題点もあるわけでございまして、例えば一極集中型の本市の交通体系の中で、市民の利便性を考えながら、どのように地区割りや事務所の位置を考えていったらいいのかといった問題等は大変重要でございます。
このほか保健所や市民センター等の他の公共機関との連携の問題、地域ごと、校区ごとの福祉需要の実態分析、あるいは事務を進めるに当たりましての電算システムの開発など、整備すべき課題が関連して種々ございます。要は市民福祉サービスの向上につながる福祉事務所の多所制でなければならないと考えております。今後とも関係部局との協議など具体的な検討を重ねてまいりますとともに、市議会の御指導をいただきながら鋭意計画を進めてまいりたいと考えております。
〔五十七番 佐々木 亮君 登壇〕
◆五十七番(佐々木亮君) 二年前に市長に実施していただきました三歳未満児の医療の無料化、市民には大変な喜びをもって受け入れていただいたようでございます。熊本市は大変都市がきれいになったとよく言われます。その半面、またそのような生活の中に思いやりのある福祉の体制をどうかよろしくお願いいたしたいと思います。
なお、福祉事務所の多所制につきましては、先ほど申し上げましたようにかなり以前からの検討課題でございます。どうか早急に討議して実現を期待したいと思います。
続きまして、教育の問題をお尋ねしたいと思います。
まず、文部省が昨日公式に発表し、都道府県のそれぞれの担当官に発表いたしました業者テストの即時追放といいますか、禁止条項についてお尋ねをいたします。
文部省の方の見解といたしましては、「業者テストの結果で高校入試の合否を決めたり、志望校を受けられないといった不合理さをよく認識し、全国一丸となって新しい進路指導の第一歩を踏み出して欲しい」というふうな趣旨で始められております。また校長会や公益法人による公的テストについても「偏差値を出すのは好ましくなく、生徒の弱いところをつかみ、教育活動に役立てるものに限る」と、極めて限定的な考え方を発表しておりますし、この業者テストを即時廃止ということで猶予期間は考えていないとはっきりと表明をしております。一部の自治体には、これまで蓄積したデータが四、五年は使える、試行錯誤が続くだろうとか、公的テストだけは今後も続けていくとかいうような自治体もあるようでございますが、本市におかれましては、これをどのように受けとめておられますか。
折しも県が個人学習診断テストという問題を提示をしております。このことを踏まえて、今後のこういったテストに対するお考えはどのようになっているのかお尋ねしたいと思います。
教育問題に関しましてもう一点、これは財政問題とも関連するわけでございますが、今回自治省は小中学校の大規模改造事業に対しまして従来の三分の一の文部省の補助制度に加えまして、自治省の方では七五%の起債、そしてそのうちの五〇%の交付税による元利償還といいますか、交付税で手当てをするという新しい制度を発表しております。いずれがよいのか、いろいろな条件もついておるようでございますので、そのケース・バイ・ケースということになろうかと思います。しかしながら本市の大規模改造を要します小中学校は非常に多くの数に上ります。順序は不同でございますが、身近なところから城東小学校、健軍、西原、城西中、飽田中、さらに健軍、尾ノ上、帯山、健軍、尾ノ上、御幸小──学校が幾つも出てまいりますのは、同じ学校に大規模改修を要する棟が幾つもあるということでございます。ですから、この数は延べにして現在で約五十五棟でございますか、一億円以上を要する大規模改修の必要な教育施設の数でございます。このような自治省の制度、文部省の制度、併用されまして、早急に教育施設の充実を図ってもらいたいと、このように思うわけでございます。
その他の問題に入らせていただきます。
電算機のシステムと申しますか、電算機の設備の充実についてお尋ねをいたします。
現在の土木積算システムというのは平成二年四月に本稼働をしております。当時としては最先端の新しい設備でございまして、これはメーカーが開発し、本市の状況に合わせてまた改造を加えた機種でございます。これによって設計、見積もりを行っているわけでございますが、残念ながら電算機の本体の方が、やはり時間外になりますとどうしてもインプットの時間が必要になります。毎日毎日の転入転出、結婚、死亡、そういったものをインプットしなければなりません。その間電算機の積算機能はなくなるわけでございまして、何とかこれを整備しないと、将来は業務の推進に非常に支障を来すというふうなおそれがあると聞いております。当局において、これにどのように取り組んでおられるのか、また今後の可能性について専門の立場からお答えをお願いしたいと思います。
続きまして女性問題でございます。