今回の補正予算は百二十一億五千余万円と過去最高額であり、
普通建設事業八十九億三千五百万円のうち単独事業は五十四億三千四百万円と、一定の景気対策への配慮が認められます。さらにこれを実効あるものにするために、生活関連の公共事業の推進、とりわけ最も経済への波及効果が大きいと言われております公営住宅五百戸建設という目標を断固達成していただきたいと思うのであります。また、仕事量の減少が著しい中小、特に零細企業に対する融資対策や
信用保証制度、下請代金の
支払い遅延防止などの援護策も必要かと思われます。これらの施策とともに忘れてはならないものが直接市民生活を支える福祉政策への気配りであります。さらに、地場経済を支える意味で、次の議会でも景気対策への一層の配慮が必要かと思われます。
そこでまず、景気対策を含め地場経済の浮揚に取り組む田尻市長の基本的な考え方を承りたいと思います。
また、財政当局にお尋ねをいたします。国は、本年度の公共事業の
前倒し発注率七五%を目標として設定し推進しております。本市の現在までの
前倒し発注率はどの程度でしょうか。また、その支払い済みの金額はどの程度でしょうか。前年度との比較も含めてお答えをいただきたいと思います。
さらに、現在までの法人及び個人市民税の状況はいかがでしょうか。前年に比較しかなり落ち込んでいるのではと推測をいたしますが、いかがでございましょうか。また、それに基づく税収の見込みはいかがでしょうか。総務局長の答弁を求めます。
〔市長 田尻靖幹君 登壇〕
◎市長(田尻靖幹君) 西議員にお答えをいたしたいと思います。
ただいま我が国の経済、特にまた地方経済の危機につきましてるるお話を承ったわけでございますが、御案内のとおりに我が国の経済は、いわゆるバブル経済が崩壊いたしまして、すさまじい外圧も受けておるわけでございます。かつて日本経済をリードしてまいりました自動車、家電あるいはハイテクの分野でも今大変収益が悪化いたしてまいりまして、経済の低迷が非常に顕著になってきたところでございます。この点につきましては先日も申し上げましたように、政府は大幅な公共投資の追加あるいは
金融安定対策等を柱にいたしまして、総額十兆七千億円の
総合経済対策を決定いたしましてこの不況を乗り越え景気浮揚に取り組んでいきたいと、このような姿勢を示しているところでありまして、私
ども地方自治体、これを受けまして、議会とともに新しい本市の町づくりを今後積極的に進めなければならないと、その必要性を痛感いたしているところでございます。
本市の場合は御案内のとおりに、大都市圏ほどのバブル経済の崩壊の影響はただいまのところ強くないと私は思っております。それは、昨日でございますか、オフィスビルの入居率も新聞で拝見いたしますと、福岡は非常に減ってきていると、熊本は若干ながら伸びていると。これは熊本市の経済の腰の強さが幾らか表現できているのじゃないかと、このように考えるわけでございます。ただ、さきの台風十九号の災害等が本市経済に及ぼした影響も大変大きいものでございまして、例えば歳入の面につきましても法人市民税の動向、これは経済の低迷がこれから先大きく影響してくるのではないかなという一つの懸念を感じているわけでありますが、幸いにいたしまして先般御報告申し上げましたように、平成四年度の
地方交付税法の改正によりまして、本市はかなり安定した財源を拡充することができました。これをてこといたしまして、今後果敢なる、そして積極的な財政政策に取り組みまして、特に中小企業の防衛、あるいはまた多くの市民の皆さんの期待にこたえるために社会資本の整備に全力を挙げていかなければならないと、このように考えまして、ただいま西議員御指摘のとおりの過去最大の積極的な補正予算の編成に努めたところでございます。特にその中におきましても、中小企業あるいはまた地場産業に非常にすそ野の広い広がりを持つと言われます、いわゆる波及効果の高い市営住宅の建設、五百戸建設でありますが、これをぜひとも達成したいと、このように考えておりまして、建設局を中心にいたしまして、この問題につきましては積極的な取り組みをいたしてまいりたいと、このように考えているわけであります。
なお、当初予算の適切な運用とともに、中小企業局、産業局、きめ細かな地域産業の経営動向と、あるいはまた金融政策を含めました経営指導と、このような問題を含めまして産業経済の活性化に万全を期してまいりたいと、このように考えております。
このほか、流通拠点都市の核としての流通センター、
国際コンベンション協会、あるいはまた先ほど、大変皆様方の御協力によりまして中心的な商店街の整備がだんだん進んでまいりまして、非常に多くのお客さんが訪れておられると、このようなことを考えますと、さらに地域商店街に対しまして整備を進めていかなければならないと考えるわけでございます。そのほか食品工業団地の建設、あるいはさらなる都市農業の振興と、こういう全般的な経済施策に配慮をいたしまして、公共事業の推進とともに、私どもは今後、いわゆる生活を重視していく時代、経済を優先した時代から生活を重視する時代に切りかえていかなければならないと、このように考えているところでございます。西議員のますますの御理解を賜りたいと思います。
〔総務局長 野田晃之君 登壇〕
◎総務局長(野田晃之君) 景気問題に関連いたします財政面のお尋ねにお答えを申し上げたいと存じます。
お尋ねの第一点でございます公共事業の前倒し発注の問題でございますが、これにつきましてはただいま御紹介のとおり、国におきましては上半期における公共事業の施行促進という視点から、公共事業等の契約率を七五%ということで目標を設定いたしておりまして、
地方公共団体に対しましても同様の協力要請が行われているところでございます。
このような状況下、本市におきましても、公共事業の前倒しにつきましては関係各課に対しまして要請を行っておりまして、その結果、上半期でございますので九月末でございますが、現時点ではこれより一月早い八月末時点のデータでございますけれども、その契約率は四五・三%、予算額に対します支払い率が一七・七%となったところでございます。この契約率を昨年度と比較いたしますと、昨年は四半期ごとにとっておりますので同一時点になりませんけれども、昨年の九月末のデータとの比較では、昨年九月末が契約率三九・一%、支払い率一六・四%でございますので、一月の誤差はございますが、本年が契約率で六%、支払い率におきましても昨年を上回る結果となっているところでございます。ただいま申し上げましたように、なお一月余が残されておりますので、本議会に提案いたしております
工事請負契約案件等を含めますとさらにこの数値は上昇いたすものと考えておりますが、ただ地方の場合、国の補助内示の問題、あるいは農業用水との絡みによります工期の設定等の事情もございまして、若干七五%という目標とは乖離する面もあろうと思っております。したがいまして、今後補正予算の執行の問題も含めまして、関係各局とも十分連携を図りながら早期の事業推進に一層の努力を重ねてまいりたいと考えているところでございます。
第二点目といたしまして、市税の動向でございますが、まず現況から申し上げますと、本年七月末におきます市税の現年調定額でございますが、六百八十億円余りとなっておりまして、これを昨年同期と比較いたしますと、昨年同期の調定額が六百四十億円余りでございますので、額にいたしまして約四十億円の増、伸び率は六・一%となっているところでございます。具体的に、個人市民税につきましては本年度二百九十三億円余りの調定でございまして、対前年度六・九%の伸び、法人市民税が五十三億円余りで、これにつきましては
伸び率マイナスの一一・八%となっております。固定資産税は二百六十一億円余りで伸び率八%でございます。このように個人市民税、固定資産税については堅調な伸びを示しておりますが、法人市民税につきましては、景気の動向もありまして対前年度の調定額を下回っているところでございます。
なお、この法人市民税につきましては通年分ではございませんで、七月時点での調定額でございまして、今後下期分の
調定額いかんによってさらに市税収入の伸びに変動が生じるものと予測いたしているところでございます。したがいまして、本年度の税収見込みでございますが、この
法人市民税等不確定な部分もございますけれども、現時点で大まかに試算をいたしますと、市税収入総額では七百六十億円台、伸び率にして四%台になるものと見込ませていただいております。
なお、不況対策といたしまして、より一層今後の前向きの対応が必要ではないかという御指摘もございましたが、これにつきましては市長からもお答え申し上げたとおりでございますけれども、現在国の
公共事業補正との絡みにおきまして各分野で事業推進についての意向打診等も行われております。今後財源の問題、工期の問題等考慮すべき課題も多々ございますが、景気対策と本市の町づくりの推進という視点から、可能な限り積極的に対応を進めさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
〔三十二番 西 泰史君 登壇〕
◆三十二番(西泰史君) 生活を重視する時代との田尻市長のお答えをいただきましたが、一層生活者へ配慮しながらの経済運営をお願いするものでございます。
また、
前倒し発注率四五・三%、低過ぎるのではないでしょうか。
また、公共事業の工事代金の支払い、これもなるべくスムーズにお願いしたいと思っております。
いずれにしても本年度は市税の伸び率の低下が予想されるようであります。景気対策との兼ね合いも含めて財政面での的確な取り組み、また景気対策をよろしくお願いいたしておきます。
次に、
市民サービスの向上と行政事務の簡素化という観点から、一番身近な各種書類への押印の省略という問題を取り上げてみたいと思います。
市民生活と役所との接点ともいうべき、各種申請書や届け出書類などのあらゆる場面に登場するのが日本式の判こ主義、押印という慣例であります。考えてみますと、宅配便の受け取りから郵便物の受領印などに始まり、役所のあらゆる書類、会場の申込書から各種申請書、届け出書類に至るまで判こは必ず必要なものと思い込んでおりました。しかし改めてなぜ必要なのか、法律的な裏づけがあるのかと問いかけてみると、余り明確ではないようであります。以前、私自身も会場の申し込み等を行う場合に、手続をしようとした時点で、自分の印鑑だけでは間に合わず組織の代表者の印鑑まで必要なことが初めてわかり印鑑を取りに返ったということもありました。役所への届け出などでついうっかり印鑑を忘れてしまい、急いで売店や近所の文房具屋に走り、いわゆる三文判を買ってきたことなど、身に覚えのあるのは私一人ではないと思います。私たちにとってほとんど日常化された判こ主義とはいえ、案外煩わしいものであります。
そこで提案ですが、この際、各種書類への押印そのものが本当に必要なのかどうか検討されてはいかがでしょうか。そして、印鑑が本当に必要なものと、そうでないものとに区分し、必然性が薄いものについては、
市民サービスの向上という意味から思い切って押印の廃止に踏み切ってはいかがでしょうか。
既に押印を大幅に廃止しているところに埼玉県川口市があります。ここでは、各部門の
若手係長クラスで構成する
行政事務改善委員会があり、毎年一つのテーマを研究課題として
市民サービスや庁内事務の改善に取り組んでおり、昭和六十二年度のテーマとして押印の課題を取り上げたそうであります。そこで、市民から市に提出される書類一千十一件のうち、国と県に提出するものを除いた六百九十件を対象に、不正を行う可能性がないか、申請者等を特定する必要があるかどうかなど八項目を基準に検討した結果、二百十三件の書類の押印を省いても問題がないという結論に達し、六十三年度から押印の廃止に踏み切ったそうであります。
押印が廃止された主なものを拾ってみますと、就学願、
社会教育関係団体登録申請書、
税務証明交付申請書、
公民館使用申請書、
保育所入所申請書などがあります。押印の廃止は市民にも定着してきており、役所としてのマイナスは特にないということであります。この川口市の例は、役所の慣例や隣合より市民の立場を優先させた英断というべきではないでしょうか。この押印廃止は川口市にとどまらず、昨年四月からは仙台市でも、市民会館や
青年文化センターなど約百二十カ所の市施設の利用申込書が署名で済むようになっております。このほかにも神奈川県が全体の約二割に当たる書類から押印を廃止、同じく東京では豊島区と品川区、神奈川県川崎市、山口県下松市、九州内でも北九州市や長崎市などが、市施設の使用申請書を初め、保育所や幼稚園の入所申請書、職員採用試験の
受験申込書等、一部書類の押印廃止を実施しております。特に品川区では、区の固有事務に関する申請書六百四十八種類のうち四四・三%に当たる二百八十七種類、国や都の委任事務を含めた全申請書一千二百四十五種から見ても二三%に及ぶ大幅な押印廃止を行っております。
数多くの事例を紹介いたしましたが、いずれもやってみれば市民には好評であり、あわせて行政事務の簡素化にもつながっております。
そこで、これらの事例を踏まえながらお尋ねいたします。
まず、市民が提出する申請書や届け出書類など、全体でどの程度の種類と件数になるのでしょうか。国や県の委任事務と本市の固有事務とに立て分けてお答えください。
さらに今後、庁内に検討委員会などを設けて研究し、将来、可能な限りの押印廃止を実施するおつもりはございませんか。当局の明快な答弁を求めます。
〔
企画調整局長 出田四郎君 登壇〕
◎
企画調整局長(出田四郎君) 西議員にお答え申し上げます。
市民サービスの向上と行政事務の簡素化という観点から、各種書類への市民の皆様の押印を省略してはどうかというようなお尋ねでございますが、押印につきましては法令、条例、規則及び
個人情報保護の観点などから本人確認の手段としてお願いしているところでございますが、確かに慣例的になっているものもあるのではないかというふうに考えております。
そこで、改めるべきは改めるということで、一部とはいえ
社会体育施設の申し込みにつきましては平成二年度に廃止しているところでございます。今後、押印を必要とする文書の種類及び必要な根拠などの実態調査を行いまして、議員御提案のとおり押印についての検討委員会などを設け見直しを進めてまいりたいというふうに考えております。
それから、御質問の中で種類を明確にというお話でございましたが、まだそこまでの作業をやっておりませんので、その辺は今後いたしたいというふうに考えております。
〔三十二番 西 泰史君 登壇〕
◆三十二番(西泰史君) 印鑑の追放に向けまして検討委員会を設けていただくということでございますので、その結論に期待をしておきたいと思います。
次に、熊本の福祉増進に大きく寄与するであろう
福祉公社ヒューマンライフについてお尋ねをいたします。
この福祉公社につきましては、去る平成元年の第一回定例会におきまして、先進地である武蔵野市等への我が党議員団の現地視察をもとに、熊本版の
福祉公社設立を提案申し上げたところでございます。また、熊本市
長寿社会対策研究会の平成元年七月に提出されました中間提言にも、具体案の冒頭に熊本市おせわ公社として福祉公社の設立が提言されております。これらの提言から、準備期間を経て本年四月に
熊本版福祉公社ヒューマンライフが設立の運びとなったわけでございます。その
ヒューマンライフが五カ月に及ぶ準備も整い、いよいよこの九月一日から実動を開始しております。
そこで、登録ヘルパーの申込状況など、設立から今日までの準備内容と市民からの反響、去る一日より提供が開始された
福祉サービスの内容、そして
ヒューマンライフの将来像をお示しをいただきたいと思います。
続きまして、
ホームヘルパーの問題についてお尋ねをいたします。
今後の高齢者福祉を担ういわゆる福祉の三本柱として
ホームヘルパー、ショートステイ、
デーサービスの拡充が図られているところです。特に
ホームヘルパーについては、
高齢者保健福祉推進十カ年計画いわゆるゴールドプランによれば、一九九九年には十万人の確保が目標とされております。本年度は、国として四万九百五人から四万六千四百五人へと五千五百人の大幅増員を行う予定であり、各市町村に対しても格段のホームヘルプサービスの充実が求められているのであります。
そこで、本市の
ホームヘルプ事業の現状を踏まえながら、今後の取り組みについてお尋ねと要望をいたしたいと思います。
まず、我が党が先般行ったヘルパーに対する
アンケート調査でも、「社会的な認識が低い」六七・三%、「給料が安く、責任に対して待遇が低い」四三・四%、「身分保証が十分でない」四二・八%と、複数回答ながら厳しい仕事の割には社会的な認識が低い、給料や身分の面での不満が寄せられております。また、ヘルパーの仕事に対して「つらい」二八・五%、「生きがいを感じる」六四・九%、「職業だから仕方がない」一四・三%と、厳しい仕事ながらも使命感を持って取り組んでいる様子が浮き彫りにされております。さらに資格に関する質問では、今後、資格取得を望む人は七七・三%と、ヘルパーという仕事に対する意欲の強さを物語っております。
本市の場合もこれまでは、どんなに一生懸命ヘルパーとしての使命を果たしたとしても、給料は月十三万から十四万程度であり、嘱託という不安定な身分とあわせて、重要な仕事の割には社会的な認識が低いのが現状のようであります。もちろんボーナスや退職金制度、介護加算など本市独自の
待遇改善対策も講じられていることは十分承知しておりますが、それでも十分とは言えないと思います。例えば長野市では、福祉を担う大切なマンパワーの確保のために、
ホームヘルパーの待遇を平成元年度から抜本的に改善し、給与やボーナスなどを委託先の
社会福祉協議会の職員と同じにしたところ、採用試験に一挙に八十人が応募、四十二人の採用となり、それまで二、三人の増員が限界であったものが、事態は一変したと聞いております。
福祉マンパワーの確保のためには、いかに待遇改善の効果が大きいかというあかしであろうかと思います。
そこで、国が本年度に予定しておりますヘルパーの大幅な待遇改善策を、どう本市で取り込んでいかれるのか、項目ごとにお答えをいただきたいと思います。
まず、給料の増額と退職金制度の一層の充実であります。現行の家事型と介護型とを一本化し、国の試算では、それぞれ平均百六十八万円、二百五十三万円であったものが、一本化しての平均が三百十八万円へと、画期的な上げ幅であり、これが国の補助基準額となるようであります。本市として、家事型、介護型の一本化問題とともに、国の基準額の大幅アップをヘルパーの給与にどう反映していくつもりでしょうか。また給与に関し、現在の、勤務年数が五年増すごとに三千円程度を増額するという微々たる
年功序列型賃金体系も、ベテランがもっと意欲を持てる見直しをされてはいかがでしょうか。退職金制度の拡充についてもお考えをお示しください。
同時に、社会福祉士、介護福祉士の国家資格が誕生し、頑張って取得された人や、これから取得したいと張り切っている人もおります。中には看護婦等の資格を持っている人もいると聞きますが、これらの有資格者に特別手当などその努力を評価する制度を導入するお考えはございませんでしょうか。
またチーム方式を導入すれば、チームとしての責任の明確化とともに、お互いの切磋琢磨による資質の向上、ケースに即応した
福祉サービスの提供などサービス内容の充実が期待されます。このチーム方式とその主任への手当制度も採用されるのでしょうか。
さらにまた、資質の向上対策として、研修会に参加する場合も手当を支給できることも明記されております。この推進はどう取り組まれるのでしょうか。
引き続き、現在の問題点とその解決策についてお尋ねをいたします。
ヘルパーとしてケースにどう対応していいものか悩んだときには、個人で自主的に同僚や先輩ヘルパーに相談しているのが現状のようであります。これらの仕事上の悩みなどを軽減する体制づくりがぜひとも必要かと思われます。例えば地域別の編成を生かして定期的なミーティングを実施するなど、ヘルパー同士の情報交換の場を持てる体制づくりができないものでしょうか。また、ヘルパーに対し専門的なアドバイスとカウンセリングができる体制づくりも大事な問題であります。これらの点についての対策をお示しください。
次に、他の医療、保健、
福祉サービスとの連携と調整、ケースマネジメント体制の整備も重要な課題であると思います。これもケースによって、必要な場合はヘルパーが自主的に保健婦と連携をとるなど個人の努力に任された状態でありますが、これらもシステムづくりが必要ではないでしょうか。現在本市に調整チームがあることは承知しておりますが、メンバーが社会的に重要な立場の方々であり、個々のケースについて検討するなどとてもできない状態であると聞きます。ケースマネジメント体制をどうされるのか、明確にお答えをいただきたいと思います。
さらに今後、
社会福祉協議会のホームヘルプサービスと福祉公社との連携はどうされるのでしょうか。
また、派遣先で在宅の障害者や高齢者を入浴させる場合、どうしてもヘルパー一人では体力的にも安全性の面からも大変厳しいケースもあると聞きました。当局はあくまでもヘルパーの派遣は一人体制ということにこだわり、二人体制を認めようとしないとのことであります。本市独自ででも上乗せするなど、必要なケースには二人体制での派遣も実施できないのでしょうか。場合によっては、福祉公社の登録ヘルパーとの連携プレーも考えられないものでしょうか。
さらに、移動手段の明確化であります。遠隔地を担当する場合、公共交通機関ではとても間に合わない地域もあり、各人の車やバイクをやむを得ず使用しているようであります。これを公用車もしくは公用のバイクを導入するか、または基準を明確にして任意保険への加入を援助することなどができないものでしょうか。
ホームヘルパーの問題について、数多くの要望も交えて申し上げましたが、厚生省の資料によれば、
ホームヘルプ事業の運営に当たっては、常勤、非常勤、登録ヘルパーについて、固定的な位置づけや既成の概念にとらわれることなく、どのような形態が地域の実情に照らして住民に最良のサービスを提供できるかという観点に立って再構築を図られたいと、各市町村にホームヘルプサービス事業の格段の充実を求めており、そのためにかなり柔軟な姿勢が見受けられます。これら国の対応の変化も踏まえながら、高齢化社会の福祉を担うかけがえのない人材である
ホームヘルパーの待遇改善について、当局の明快な答弁をお願いいたします。
続けて移動入浴車派遣事業についてお尋ねをいたします。
これは詳しく申し上げる必要もないと思いますが、移動入浴車二台、簡易入浴車一台、計三台で、入浴が困難な寝たきりの老人百十二世帯、常時介護が必要な体の不自由な人二十八世帯、計百四十世帯に対して入浴サービスを行っております。この入浴サービスも、今月一日現在で十名の待機されている方がおり、最も長く待っている人は三カ月にもなります。二カ月が四人、一カ月が三人、一カ月未満が二人と、おふろに入れるのが今か今かと待っているのであります。こうして待っている方と同時に、現在、移動入浴車が派遣されている家庭でも、先月の統計によりますと、月一回が六十七世帯、月二回が五十六世帯であります。全体を平均すると一世帯当たり月一・四一回、わかりやすく言うと二カ月にわずか三回ということにしかなりません。特に夏場の不快感は当事者にとっては耐えがたいものがあり、入浴回数の増加を望む切実な声が寄せられております。それは、
デーサービスで実施されている入浴サービスも週一回であり、これに準じて、せめて一週間に一回程度の移動入浴サービスが提供されることを、当事者とその家族は祈るような思いで実現を期待いたしております。同時に、待機者の解消も焦眉の課題であります。
昨年二月、四町と合併し大熊本市として新たな出発をした六十四万都市としては、寄贈された入浴車がわずか三台、しかも一台は昭和五十九年の相当古いものであり、余りにも寂しい限りではないでしょうか。早急に移動入浴車の追加導入と体制づくりを行い、待機者の解消と週一回の入浴サービスの実施を強く望むものであります。当局の明快な答弁を求めます。
〔市民局長 野田雅水君 登壇〕
◎市民局長(野田雅水君) 西議員にお答えを申し上げます。
三点の御質問でございますが、まず熊本市
福祉公社ヒューマンライフにつきましては、ただいま西議員御指摘のような経緯を経まして今月一日から事業を開始いたしました。まず設立から事業開始までの経緯でございますが、四月一日に事務局を開設いたしまして、五月一日には専任
ホームヘルパー二十五名の委嘱を行いまして、六月二十日までにヘルパー全員、厚生省の定めますヘルパー養成研修二級課程を終了いたしました。さらに七月からは、主として家事援助サービスを担当していただきます時間単位の登録
ホームヘルパーにつきまして、校区民生委員児童委員協議会の御協力をいただきながら募集を開始いたしまして、九月現在百五十九名の登録をいただいておるところでございます。
さて、実動に入りましたサービスの内容でございますが、当面
ホームヘルプ事業の拡充を中心に、議員御指摘のとおり公的サービスの受託からスタートいたしますが、その回数、時間数、時間単位につきまして、柔軟に対応できますように改善いたしましたのが福祉公社の特色の一つでございます。
福祉公社ヒューマンライフでは、おおむね朝八時から夜の八時までの時間帯の中でサービスに当たることにいたしております。現に事業開始の初日に当たりました今月一日には夜八時までのサービスが早速一件ございました。ナイトヘルプは二人でやることにいたしておりますけれども、ヘルパーさん二人が夜の八時までのサービスを提供いたしまして、福祉公社には八時四十分ごろ帰着をいたしました。このケースは年齢は若いのでございますが、車いす生活のひとり暮らしのお宅でありまして、一日の仕事を終えて帰ってからの夕食の支度に苦労するというケースでございまして、これが
福祉公社ヒューマンライフが手がけましたナイトヘルプの第一号でございます。
最後に、福祉公社の将来像についてのお尋ねでございます。
二十一世紀が間近に迫りました今、新しい視点に立ちまして超高齢社会に対応し得るより強固なサービスシステムを構築しておく必要がございます。
福祉公社ヒューマンライフはこのような長寿社会の基盤整備の一環として発展していかなければならないと考えております。何分スタートしたばかりでございまして、しばらくは試行錯誤を繰り返しながら一歩一歩前進してまいります。人間味豊かなサービスを目指してまいりたいと存じております。
次に
ホームヘルパーの処遇改善についてのお尋ねでございます。
御案内のように国におきましては、優秀な人材の確保と良質のホームヘルプサービスの提供といった観点から、今年度
ホームヘルパーの大幅な処遇改善策を示してきております。改善の内容は西議員御指摘のとおりでございますが、今回の国の改善は単なる補助基準額の大幅なアップということだけではございませんで、従来本俸部分のみ補助対象としていたものでございますけれども、ボーナス等の諸手当、社会保険料等の事業主負担分につきましてもまた補助の対象にしようという内容でございます。今後こうした国の考え方も踏まえまして、例年どおりであれば十二月ごろに示される国からの正式通知を待って処遇改善に取り組んでまいる所存でございます。
次に、賃金体系の見直しにつきましては、先進都市の実態等も調査しながら今後検討してまいりたいと思います。
退職金の拡充につきましては、
ホームヘルパーの人材確保、処遇の改善といった観点から、先般加入が認められました社会福祉施設職員等退職共済制度への加入も含めまして前向きに検討してまいりたいと存じます。
次にチーム方式の導入につきましては、定期的なミーティングあるいはカンファレンスつまりケースの検討、こういったものを行うことはサービスの質を確保する上で極めて重要なことでございまして、ソーシャルワーカー、あるいは保健婦さん、指導的なヘルパーなどの人材の確保、他の保健医療サービスとの連携のありようなど十分な検討が必要でございますので、今後有資格者に対する評価制度の導入、処遇の改善、ヘルパーに対する専門的なアドバイスや、申し上げましたような悩みを十分に聞いて解きほぐすといったいわゆる心の相談、そういったこともできる体制づくり、在宅入浴サービスの二人体制といったこと等あわせて検討してまいりたいと存じます。
また、
ホームヘルパーの資質の向上のためには、今まで以上に研修を充実したものにしていかなければならないと考えております。先般、八月の初旬におきましては、
社会福祉協議会のヘルパーさんを対象にいたしまして接遇研修を実施したところでございます。
次にケースマネジメント体制につきましては、サービス調整機能をその本来機能として持っております在宅介護支援センターに、例えば
ホームヘルパーや保健婦、地域の医師の皆さん方、施設の職員、民生委員の皆さん等が参加したサービス調整チームの設置をしますとか、そうした試みの中で現場関係によるカンファレンス体制を充実させることによりまして、ヘルパーの資質の向上とサービスの対象者に対する保健、医療、
福祉サービスの総合的な提供を図ってまいりたいと考えております。
社協と福祉公社の連携につきましては、現在の社協の体制の中で実施困難な部分をうまく連絡をとり合って、相互に補完しながら、競い合いながら、また特性を生かしながら、それぞれ役割分担のもとに進めてまいりたいと考えております。
次に移動手段の明確化につきましては、ヘルパーさんが活動しやすいようにする、万が一の事故にも対応できるようにするといったことを基本にいたしまして、実態に即した対応をしてまいりたいと考えております。
三点目は移動入浴車派遣事業についての御質問でございます。
入浴サービスは寝たきり老人の皆さん方の清潔の保持、あるいは心身機能の維持、そういったお年寄り、介護を要する方々の生活の質を確保する上で極めて重要でございます。御指摘の待機者十名につきましては既に派遣決定はなされておりまして、近日中に派遣ができる見込みでございます。また、週一回の入浴サービスを実施できないかとのお尋ねでございますが、今後入浴車の増車問題やその効率的運営といったことも考え合わせながら、入浴サービスの回数増に向けた体制整備を検討してまいりたいと考えております。
なお、本年度中に長寿の里
デーサービスセンター、あるいはまた本年度末に予定しております(仮称)南部在宅福祉センター、その中に
デーサービスセンターも予定をいたしておりまして、さらにはまた民間法人におきましても一カ所、
デーサービスセンターの開設が予定をされております。こういった
デーサービスセンターにおける入浴サービスも大いに活用していただきたいと考えております。
〔三十二番 西 泰史君 登壇〕
◆三十二番(西泰史君)
福祉公社ヒューマンライフにつきましては、当面公的サービスの受託からスタートするようでありますが、市民の期待が大きいだけに、公社にしかできない特徴ある
福祉サービスを提供していただくことを要望いたしておきます。
ホームヘルパーの問題につきましては、数項目にわたっておりますので一つ一つ申し上げませんが、福祉を担う大切なマンパワーであります。真剣な対応を重ねてお願いをいたしておきます。
移動入浴車の体制充実は、一日も早い結論を、これまた重ねて要望いたしておきます。
続きまして、ふるさと健康長寿のまちづくり基本計画についてお尋ねをいたします。
いよいよ迎える二十一世紀の本格的な高齢化社会に向けて、一人一人が、青壮年期だけではなく中高年期も含めて、生涯を通じ安心と生きがいを持って暮らせる地域社会の形成を促進する必要があります。つまり高齢者にとっては、これまで生活し活動してきた地域社会において、健康で生きがいを持って安心して住み続けることが何よりも重要であり、そのためには単に個々の福祉施設を設置するだけでなく、高齢者の生活を総合的に支援するための各種施設の面的な整備が求められております。
本市も国の指定を受け、平成三年度事業としてふるさと21健康長寿のまちづくり基本計画の策定に取り組んでおります。そこで、この熊本市ふるさと健康長寿のまちづくり基本計画の内容を明らかにしていただきたいと思います。
次に、この基本計画に基づき具体的な実施計画の策定と、その実現をどう進めていかれるのかお示しいただきたいと思います。
また先般、高齢者・障害者にやさしいまちづくり調査が行われ、早速公共施設等の改善が行われ、本年度も調査とともに改修工事が予算化されております。この調査で、手すりの設置や車いすでも動けるように段差の解消、スロープの勾配の改善などが図られております。これらの貴重な調査結果を町づくり指針として集大成されてはいかがでしょうか。
例えば名古屋市では、高齢者や障害者を初め市民だれもが生活しやすい快適環境の町づくりのために、福祉都市環境整備指針を策定いたしております。これは人にやさしい快適環境の町などを基本理念としており、高齢者や障害者がハンディを感じることなく生活できるように、公共建築物、公園、交通機関等の都市施設のエレベーターやトイレ、駐車場などについて具体的に設計と施工上の基準を詳細に示したものであります。東京都も同様の町づくり指針を持っております。ノーマライゼーション社会の構築を現実化すべき時代に即応した、熊本版の人にやさしい町づくり指針を策定し、バリアフリーに積極的に取り組むべきであると思いますが、いかがでしょうか。当局のお考えをお示しください。
次に、緊急通報システムと老人福祉課の人的体制についてお尋ねをいたします。
このペンダント型の緊急通報システムは、いざというときに安心と、特にひとり暮らしの病気がちなお年寄りには大変好評であります。先月中旬のこと、知り合いの、体調が悪くて心細いというひとり暮らしの高齢の御婦人にこの緊急通報装置の話をいたしましたところ非常に喜んでいただき、早速申し込みたいと手続をとられました。まず、この緊急通報システムの有効性を実証するような事例がありましたら、プライバシーに配慮しつつ御紹介をいただきたいと思います。
また、現在までの申込状況はいかがでしょうか。既に当初の計画台数を超えて申し込みがあると聞きますが、そうであれば次の補正ででもすべて設置できるよう配慮すべきと思いますが、当局のお考えをお聞かせください。
また、田尻市長が力を入れておられる高齢者福祉が充実するにつれ、老人福祉課の仕事量も格段にふえているようであります。例えば
デーサービス施設も現在六カ所、今年度中には九カ所にまでふえる予定であります。また、ホームヘルプサービスの派遣世帯も、四年前からいたしますと二倍以上になっており、ほとんどの施策やその利用者が格段に増加をしております。こうしてみますと、老人福祉課の人的配備は現在のままで大丈夫でしょうか。当局のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
続きまして、日帰り人間ドックの助成についてお尋ねをいたします。
この日帰り人間ドックへの助成制度は、国民健康保険の被保険者を対象に昨年度から開始された事業であり、費用の約半額に当たる一万五千円を補助するというものであります。この助成制度を、本年度は受け付けを九月一日から九月末まで、そして受検期間が九月一日から十一月末までの三カ月間で実施することになっており、既に一日より受け付けが開始され、一日に約三十人の方が申請に見えていると聞いております。ところが、この計画そのものにずさんな面があり、予定の一千名の受検が可能かどうか非常に心配であります。まず、申し込みと受検開始が同じことであります。御案内のとおり、人間ドックは受検日のかなり前から予約が可能であります。受検が九月から開始されるのであれば、予約期間を考えてせめて一カ月以上前から受け付けを開始するなどの工夫が必要かと思いますが、いかがでしょうか。
また、熊本市民病院の受検可能数は年間三百名以上、この三カ月間の受検可能数は九十六名でありますが、保険課がこの計画を打診した段階で多くの予約が入っており、国保関係として予約できたのが五十名分であります。しかし市民病院の予定は百二十名で計画されており、当初の計画段階から七十名が市民病院の予定枠からはみ出すことになります。これを見ても、計画そのものが最初から破綻しているとしか言いようがございません。この消化できない予定枠をどう扱うつもりでしょうか。当局のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
もっと言えば、なぜ三カ月間に期間を限定したのか意味がわかりません。受検する市民の立場に立てば、仕事が幾分暇な時期など、一年を通して一番都合のよい時期に人間ドックを利用できた方がどれだけ便利であるかわかりません。しかし、本年度の受け付けは既に始まっており、当面その推移を見守る以外にありませんが、万一全体の予定枠より申し込みが少なかった場合など、事が計画どおりに運ばなかった場合はどう対応されるつもりか。
あわせて、来年度は計画の段階から、市民が年間を通して人間ドックの受検ができるよう大幅な計画の見直しを求めるものでありますが、当局の明快な答弁を求めます。
あわせまして、国民健康保険に関連し助産費の支給方法の改善をお願いするものです。御案内のとおり、国保の助産費は十三万円から一挙に二十四万円にと本年度より大幅にアップされ、出産をされる市民の方々には、ほとんど出産費用が賄えると大変喜んでいただいております。
この助産費は、保険課に申請し約一カ月後に口座に振り込まれるのが普通であります。つまり、出産費用は退院の際に一たん自分で支払わなければなりません。ところが、出産費用もおよそ二十万から三十万程度と、若い夫婦にとってはその費用負担は大きなものがあります。共働きの方に聞いてみますと、先般、育児休業法が施行されたとはいえ、休業補償は何もありませんし、出産のために仕事をやめて妻の収入がなくなった分だけ大変とのことであります。
また、ただいまございました学校給食会の財団法人化と積立金の処置については、市民の皆さんの納得が得られるよう早急な結論を強く要望いたしておきます。
以上をもちまして私の質問を終わらせていただきます。舌をかまない程度に急いだつもりでございますが、大変長時間にわたってしまいました。議員の皆様には御清聴まことにありがとうございました。また、お忙しい中をおいでいただきました傍聴の皆様にも心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)
──────────────────
○副議長(西田続君) この際、議事の都合により休憩いたします。
午後二時に再開いたします。
午前十一時五十二分 休憩
────────────
午後 二時 三分 再開
○議長(嶋田幾雄君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
──────────────────
○議長(嶋田幾雄君) 質問を続行いたします。田辺正信君。
〔九番 田辺正信君 登壇 拍手〕
◆九番(田辺正信君) どうもお疲れさまでございます。
日本社会党の田辺正信でございます。
今回二回目の質問でございますが、質問の機会を与えていただきました先輩議員及び同僚議員各位に対し心から御礼を申し上げます。また、私自身まだまだ勉強不足で、おわかりにくい点も多々あろうかと思いますが、執行部の皆様の明快な御答弁をお願いいたしまして、質問通告に従いまして質問に移らせていただきます。
まず、地下水の保全についてお尋ねいたします。
限りある地球の資源の保全は、自然環境の回復と共に人類共通の課題であり、水資源についてもその例外ではない。
古来、わが熊本市は豊かな緑と清冽な地下水に恵まれた自然の下生々発展を遂げて来たが、今日における無秩序な地下水の開発と自然環境の破壊は、今や地下水の汚染をはじめその枯渇さえ憂慮される状態にある。
よって、本議会は市民の総意を結集して自然環境の回復、保全をはかり、貴重な水資源を後世まで守り伝えていくことを誓い、ここにわが熊本市を地下水保全都市とすることを宣言する。
これは、昭和五十一年三月に宣言されました地下水保全都市宣言の全文でございますが、この宣言以降、五十二年に地下水の保全を図ることを目的に熊本市地下水保全条例がつくられ、五十三年には熊本市地下水保全条例施行規則が定められております。また、昭和六十三年十月一日には熊本市環境基本条例が制定されております。
このような中で昭和五十二年に水道局総務部に地下水保全対策室が設置され、機構改革により、保健衛生局、企画広報部、保健衛生局となり、本年四月より環境保全局が新設され、地下水保全部で事業の推進に向け努力がなされているところであります。またこの間、熊本市上水道事業研究会により熊本市及びその周辺の地下水について量、質両面から考察されたものをまとめられた熊本市及びその周辺の地下水についての報告があり、また、地下水についてさらに知見を深め全容を把握するため熊本県、熊本市との共同で二年間にわたって調査が行われ、六十一年三月熊本地域地下水調査の報告がなされております。
また、熊本市の地下水を取り巻く環境が、量、質両面にわたって厳しい状況になっていく中で、水資源、特に地下水資源を量、質ともに保全しこれを後世に長く守り伝えるためには、行政はもとより市民一人一人がみずからの問題として認識しその解決に向かって取り組む必要があるとの観点から、各界の代表、学識経験者及び行政機関から成る熊本市水問題推進懇談会が昭和六十二年八月に設置され、平成三年に地下水保全のための提言が行われております。また、昭和六十一年には熊本市地下水保全対策協議会が設置され、全庁的にも積極的な対策がなされてきているものと考えております。
そこでお伺いいたしますが、これまで述べてまいりましたように、地下水の保全に向け、これまで積極的に事業展開が図られてきているものと思いますが、これまでどのような対策が展開されてきたのか、その成果及び問題点について明らかにしていただきたいと思います。
〔環境保全局長 後藤勝介君 登壇〕
◎環境保全局長(後藤勝介君) 田辺議員にお答えを申し上げます。昭和五十一年に行われました地下水保全都市宣言以降今日までの展開あるいは問題点等についてお尋ねでございました。
本市の地下水保全の対策につきましては、今日まで、市議会のいろいろの御協力のもとに執行を行っているわけでございますが、今いろいろと説明がございましたとおり、執行体制の整備を行いますとともに、地下水保全条例の制定あるいは地下水汚染実態調査、大口利用者に対します合理化指導、水源涵養林の造成、雨水浸透ますへの補助、さらには雨水利用施設等の設置等を行っているところでございまして、地下水保全部はもちろんでございますが、各局の御協力をいただきながら取り組んでまいったところでございます。
そういう中でこれまでの成果でございますが、いろいろ考えられますけれども、その最たるものといたしましては、昭和五十三年度から実施してまいりました地下水保全条例に基づく地下水採取状況におきまして、昭和五十三年度の採取量が全体量で年間一億四千三百万トンございましたものが、平成二年度には一億二千七百万トンとなりまして、量において一千五百三十万トン、率にして約一〇%減少したということがございます。これは主として都市活動用水の分野での水使用合理化指導の結果があらわれたものと判断しておりますけれども、総合的な評価につきましてはなお長期的に見る必要があると考えております。
また一方、問題点といたしましてはこれもいろいろあると思いますけれども、一般家庭におきます一人一日当たりの水の使用量が平成三年度で、例えば福岡市の二百八リットルに対しまして本市は二百六十七リットルと約三〇%も多いという事実がございます。これは先日も申し上げたわけでございますけれども、福岡市では昭和五十三年に二百八十七日間にも及ぶ制限給水がございました。このことが今日この数字の差となってあらわれているのではないかと考えております。さらにまた土地利用の状況いわゆる本市の水源の涵養域という面から考えまして、本市の涵養域のほとんどが阿蘇山の西ろくを中心とした市域外にございます。したがいまして、その保全への取り組みが、市域を越えるということもありましてなかなか難しいという点も問題点ではなかろうかと考えております。
〔九番 田辺正信君 登壇〕
◆九番(田辺正信君) 今御答弁いただきましたが、地下水保全のための啓発、地下水合理化、監視観測体制、人工涵養などについて取り組まれ、一定の成果を上げていることは評価するところでありますが、熊本市水問題推進懇談会の報告書の中で、地下水収支のバランスが崩れて地下水位が低下し、湧水量が減少する等、地下水は憂慮さるべき状態となったと指摘されていますように、抜本的な対策までには至っていないのではないでしょうか。これまでの対応を見てみますと、対処療法的なものであったような気がいたします。これからの取り組みについてはもう一歩踏み込んだ予防療法的な積極的なものでなければならないのではないでしょうか。
そのような立場から、本日は地下水の量及び質の保全についてお尋ねすることにしておりましたけれども、時間の都合もあり、量の保全に的を絞り込み私見を交えお尋ねいたします。
まず一つには、地下水の総合的な調査の実施についてであります。
これまでの施策の基礎資料は五十九年から六十年にかけて県市合同で行われた熊本地域地下水調査によるもののようであります。調査から六年たっており、熊本市周辺の市町村も市街地や宅地の拡大、工場建設などの開発が進む中で大きく環境が変わりつつあります。地下水保全の抜本的な対策を行うために、一日も早い総合調査の実施を強く求めるものであります。
二つには、地下水の保全についてであります。
さきに述べました熊本市水問題推進懇談会の提言の中で、熊本市に進めてもらいたいこととして、水利用の合理化、地下水の涵養、水資源の確保、地下水汚染対策、地下水監視体制の確立、市民意識の高揚など、また、県や他の市町村の協力を得て進めてもらいたいこととして、地下水涵養域における土地保全、地下水の人工涵養の検討、農薬、肥料等による地下水汚染問題、産業廃棄物処理施設等の指導などについて、さらには国の指導や支援のもとに進めてもらいたいこととして、代替水源の開発、地下浸透ダム建設促進などそれぞれについて述べられております。これらの問題についてはすべて熊本市総合計画でも触れられているところではございますが、今後の取り組みに大きく期待を持つものであります。
そこでお尋ねいたします。地下水保全の中長期計画及び年次実施計画についてはどのようにお考えなのかお伺いいたしたいと思います。
また計画の中で各部門ごとの対策、例えば小学校を対象とした節水教育推進校の指定や五福小学校や長嶺小学校、中学校などでの雨水利用による中水道施設の整備、あるいは地下水涵養対策、また楡木小、清水中などへの浸透ますの設置、渡鹿、保田窪本町一号線道路改良工事、大津町真木の水源涵養林の造成事業などと各局において取り組まれておりますが、庁舎、市民センター、事業所などの施設や都市公園、市営住宅など各公共施設について、さらには各部門で事業を進める中で節水、保全を目的とした諸施策の検討を積極的に進めるべきではないかと考えるところでございます。このことについては熊本市地下水保全対策協議会で全庁的な検討が行われているかと思いますが、これからの取り組みについて明らかにしていただきたいと思います。
次に、地下水保全に関連して地下水の涵養域の問題についてお尋ねしたいと思います。
熊本市の地下水を考えるにあたっては、託麻台地上に広がる水田と、白川より導水している上井手堰に代表される農業用水路の役割りについてとくにふれる必要がある。──この白川沿いの農業用取水堰により導水された潅漑用水は、水田面から大量に地下へ浸透し、地下水となって前述の古加勢川に沿って南下し、水前寺・江津湧泉群の一大涵養源としての役割りを果たしている。
上井手は、大津町上井手土地改良区が管理する四二五Dの水田をうるおす潅漑用水路である。現在、潅漑用水として常時八H/秒、最大一四H/秒、日量にして約七〇~一二〇万Hを白川から取水している。この取水量は、一般的な水田の日減水深二〇~三〇㎜と比較した場合にはきわめて過大な量であり取水量を潅漑面積で割った同水田の日減水深は一六五~二八五㎜にも達する莫大な量となる。
この理由は、水田の位置する託麻台地が極めて大きな透水性に富む託麻砂礫層によって形成されているからで、このために大量の農業用水が地下へ浸透し、普通の水田と比べはるかに多量の潅漑用水を必要とするわけである。──仮に水田面からの蒸発散、あるいは地表流出による損失量を半分とすれば、実に日量一〇〇万m3を越える潅漑用水が地下水に転化していることになる。
以上述べたように、潅漑期における水前寺・江津湧泉群の最大の涵養源は、白川に設けられたいくつかの農業用取水堰によって導水された託麻台地上の水田であると結論できる。
少し説明が長くなりましたけれども、今申し上げましたのは、昭和五十五年に出されております熊本市水道局の調査報告書の中の上井手水路の役割として述べられているものでございますが、熊本市の地下水を考える場合非常に重要なことではないかと思います。この調査は十年以上前の調査でありますが、その後の市街化の進展に加え大津町周辺は、国道五十七号バイパスの開通や企業の進出により大きく変貌しております。その結果、山林、畑、水田などの涵養地は減り続けております。また政府の減反政策により大津町では平成三年度の耕地面積八百八十ヘクタールのうち実に四〇%が減反または転作の対象とされるなど、水源としての役割も低下しつつあります。このような状況を見るときに、熊本市民への影響を考えると早急な対策が求められているのではないでしょうか。
千葉県市川市では水田の大切さに目をつけ遊水機能保全対策事業を取り入れ、治水対策とともに地下水の涵養に役立てようとする事業が進められております。すなわち田や畑を持っている農家と保全協定が結ばれ、埋め立てや盛り土をしないことを条件に、農家に対し、水田で一平方メートルにつき年間五十五円、一反にいたしますと五万五千円の補助金が出されており、ちなみに畑の場合は一平方メートル四十五円。現在田が四十一ヘクタール、畑が六ヘクタールの広さの土地が保全され、ここにためられる水量は実に十三万四千トンと計算されております。さきに農林水産省が発表した資料によりますと、水田の洪水防止効果及び地下水涵養などの働きを金に換算いたしますと、洪水防止効果が一年間に一兆二千三百十億円、水資源涵養効果が五千九百五十三億円等と膨大な経済効果があると指摘しておりますし、このほか水田の果たす役割は、生態系の維持、大気の保全、景観の保持等々極めて大きな経済効果があると考えるものであります。熊本市としましても、これまで熊本地域地下水保全対策会議において各市町村との対応がされてきていることとは思いますが、先ほどから述べておりますように、大津町、菊陽町、西原村、益城町など、水田、畑地の保全について早急な対策が必要であります。そういう意味からも市川市の事業は本市としても学ぶことは大であるのではないでしょうか。
この問題は広域にわたることから県の行政指導が特に必要になりますし、各市町村の協力を抜きには考えられない問題であり、かなりの時間がかかる問題であろうかと思いますが、どのように対応されていこうとしているのかお聞かせいただきたいと思います。
次に、地下水合理化の関係から地下水対策協議会についてお尋ねいたします。
これは地下水源の保全を目的につくられているもので、企業や商工会議所、医師会、農協、行政など一定以上の揚水施設を有する事業所や当該関係団体で構成されているものであります。熊本の場合は、八代市、荒尾・長洲において協議会がつくられているようでございます。本市地域においても、工業用水の使用を合理化するための具体的方策を定めることにより、工業用水の使用合理化を体系的に推進し、もって当該地域の地下水位の低下等地下水障害の防止と水需給の安定に資することを目的とした熊本地域における工業用水使用合理化指導準則により、用水の再使用の指導が行われ、地下水採取状況での工業、建築物、家庭用、その他の採取量は、旧市域で見てみますと、昭和六十年度約三千八百六十三万トン、平成二年では約二千六百九十三万トンと減少しております。一定の効果が出ているようでございますが、さらにその輪を広げるためにも地下水利用対策協議会の設置についても考えてみてはいかがでしょうか、お尋ねいたします。
次に、地下水の保全に関連して受益者としての経済的負担についてお伺いいたします。
水問題推進懇談会全委員の総意で、市民への一石を投じたいとして、一トン一円運動で地下水涵養をといった提言がされているわけでありますが、真剣に考えなければならないことではないでしょうか。市民の飲料水を確保していくためにはどれだけの地下水への浸透量が必要なのか、また、涵養域を保全しなければならないのか、そのための資金はどうなさるのか。これまで十分に検討を進めて取り組まれてきたことではありますが、経済的な負担について求めていくことは行政としても考えなければならないことではないかと思いますが、いかがでしょうか。
最後に代替水源の開発についてお尋ねいたします。
このことにつきましても熊本市総合計画の中で、七滝ダムの建設促進として触れられていますが、将来にわたって地下水に頼っていく私たちにとって、地下水の質、量関係からいかなる問題が生じるかわかりません。そういった意味から検討が進められてきたものと考えますが、今後の見通しについてお尋ねいたしたいと思います。
また、飲料水のすべてを地下水に依存しております本市の上水道にとって、この代替水源の検討は最優先されるべき問題と考えております。この点について水道事業管理者としてどのような対策を考えておられるのかお尋ねいたします。
以上、地下水の保全について申し上げてまいりましたが、関係局長の御答弁をお願いいたします。
〔環境保全局長 後藤勝介君 登壇〕
◎環境保全局長(後藤勝介君) 地下水に関連いたしまして私の方から六点ほどお答えを申し上げます。
まず、地下水の総合的な調査と中長期的な計画という点のお尋ねであったかと思います。
地下水の総合調査につきましては、ただいま田辺議員から御指摘がございましたとおり、前回の調査から期間も相当経過しておりまして、土地利用状況等の変化、また前回の調査以降これまで蓄積されましたデータもございますので、将来の方向性を見出すための総合的な調査が必要であろうと認識をしているところでございます。しかしながら地下水の調査は広域に及びますことから、県を初め関係市町村の理解と御協力を得る必要がございます。今後、地下水の量及び質の保全に係る予防的な対策の検討を含めまして、できるだけ早い時期に調査ができますよう努力をしてまいりたいと考えております。その結果を踏まえまして、中長期的な計画あるいは実施計画を作成してまいりたいと考えております。
次に、地下水保全事業について全庁的な取り組みを今後どうしていくのかというお尋ねであったかと思います。
この件に関しましては庁内に熊本市地下水保全対策協議会を設置いたしておりまして、地下水保全に係ります具体的な事業の推進について総合的に協議を重ねてまいっているところでございます。したがいまして今後も、新熊本構想あるいはその実施計画、さらには財政の長期的な見通し等との整合性も図りながら、地下水保全に係ります積極的な事業を推進してまいりたいと考えております。
それから、地下水涵養についてでございます。ただいまいろいろ詳しく御指摘がございましたけれども、水田や畑などの農地は地下水の涵養に大きな役割を果たしております。特に地層的に透水性の高い託麻台地及び大津、菊陽地域等は熊本市の地下水にとりまして大切な涵養地域となっております。したがいまして、この地域の動向につきましては極めて強い関心を持っているわけでございます。
このような意味も踏まえまして、去る六月一日国土庁長官の出席のもとに本市で開催されました国土庁主催の国土行政に関する地方懇談会におきまして、特に田尻市長から発言を求められ、地下水の量、質の保全のためにはその涵養域の保全が大切であること、そのためには広域的な土地利用の適正化が不可欠であり、国土利用計画など土地利用計画の策定に当たっては、例えば水源涵養保全地域の指定などについて検討していただきたい旨の意見を述べられたところでございます。
御承知のとおり本市におきましては、これまで産業局におきまして大津町真木地区において水源涵養林整備事業を行いますとともに、平成二年度に設立をいたしました財団法人熊本地下水基金におきましても、本市周辺市町村での水田涵養のための諸事業に取り組んでいるところでございます。さらにまた農地を利用しました水源涵養事業として、平成二年度と三年度の実験をもとに、涵養効果の高かった連棟式ビニールハウスの雨水浸透施設につきまして本年度から事業に取り組んでいるところでございます。
いずれにいたしましても、地域の発展とともに農地の宅地化や開発が進みます中でかんがい期、非かんがい期を通して農地が確保されますことは、地下水保全という意味からだけではなく自然保護という面からも極めて重要なことであると考えております。したがいまして議員御提案の助成制度につきましては、今後十分検討いたしますとともに、県当局あるいは関係市町村とも協議をしてまいりたいと考えております。
次に地下水利用対策協議会についてでございます。
ただいま田辺議員から御指摘ございましたとおり、本県内には八代市と荒尾・長洲地域に設立されております。この協議会は工業用水のほか、都市活動用水、上水道用水などの地下水利用者で構成され、地下水を保全するため、節水、合理化、雑用水の再利用等に自主的な取り組みがなされておるものでございます。水資源のほとんどを地下水に依存しているという熊本地域の特殊性を考えますときに、将来の地下水保全のために市民の節水に対する努力はもとよりでございますけれども、事業所、企業その他いろいろの都市活動における地下水利用者においても地下水の保全対策に自主的に取り組んでいただく必要があるというふうに考えております。そういうことで、地下水利用対策協議会の設立は今後積極的に取り組むべき課題であると考えておりますので、県を初め関係市町村あるいは関係企業や団体とも連絡を図りながら取り組んでまいりたいと考えております。
次に、地下水の保全と受益者負担という点についてのお尋ねであったかと思います。
地下水利用者の地下水保全に対します経済負担につきましては、私どもが承知しております範囲では神奈川県の秦野市、京都府の長岡京市などにおきまして大口利用者から協力金を徴収しておられるようでございます。地下水利用者の経済負担につきましては、地下水に関する総合的な法規制が存在していない現時点では、地域内のどの範囲を対象とするのか、どのような内容にするのかなど難しい問題もあるようでございます。しかしながら利用者としての社会的責任の面から、また受益者負担としての面からも検討する必要があると考えますので、先ほどお答えを申し上げましたが、地下水利用対策協議会等が設立されますならばそういう中で十分論議しながら取り組んでまいりたいと考えております。
次に、代替水源の開発についてお答えを申し上げます。
ただいまお話もございましたように、現在建設省におきましては緑川水系御船川の七滝ダムを多目的ダムと位置づけまして、昭和四十八年から各種の調査を実施されております。また平成三年度からは実施計画調査が行われているようでございます。一方また、本市の新熊本構想の中でも代替水源の確保を推進することを掲げております。御承知のとおり代替水源の開発につきましては、代替水源を何に求めるのか、その時期はいつからか、その費用はどのくらいかかるのか、あるいはまたその費用をだれが負担するのかなど、というようないろいろと解決すべき問題がございます。したがいまして、本市といたしましてはこの七滝ダムの計画の推移も十分見守りながら、今後の地下水保全対策の計画等も踏まえまして慎重に対応してまいりたいと考えております。
〔市長 田尻靖幹君 登壇〕
◎市長(田尻靖幹君) 田辺議員にお答えをいたしたいと思います。
ただいま、地下水の保全関係の問題につきましては局長より詳細に御報告申し上げました。環境問題が非常に世界的な論議を呼んでいる中におきまして、特に我が熊本市の地下水問題につきましてお取り上げいただきまして深く敬意を表する次第であります。私どもは、まさに命の水であります地下水の保全につきましては、今後市議会議員各位とともに政策のすべてをかけて守り通していかなければならないと、このように強い決意を持っております。今後とも御指導いただきたいと思います。
〔水道事業管理者 境 三子夫君 登壇〕
◎水道事業管理者(境三子夫君) ただいま水源の確保につきまして環境保全局長より御答弁がありましたが、上水道の使命であります水の安定給水を行う立場から、今後の水源の確保につきまして田辺議員にお答え申し上げます。
水源の確保につきましては、現在まで地下水を基調としてまいってきておるわけでございますが、しかし議員御指摘のとおりに現在までの状況を考えてみました場合に、地下水を取り巻く環境につきましては、量、質ともに非常に厳しい状況にあるということは十分認識しておるわけでございます。しかしながらダムなどいわゆる表流水からの取水につきましては、将来の水需要と供給の関係、あるいは地下水の収支、経営状況や水利権の問題などを総合的に勘案した上で判断されなければならない大きな問題でございまして、水道事業といたしましても慎重に対応しなければならないというふうに考えておるところでございます。
したがいまして、さきの議会でも申し上げましたが、学識経験者で構成されております上水道水源研究会を設置いたしまして、具体的な水源の確保につきまして現在御審議をいただいておるところでございまして、平成五年の末には御答申をいただく予定になっております。したがいまして、この結果を踏まえまして、今後関係部局と十分連携を図りながら水源の確保に努めてまいる所存でございます。
〔九番 田辺正信君 登壇〕
◆九番(田辺正信君) ただいまは田尻市長より地下水は命の水であると、守り通すといった力強い決意をお伺いいたしまして、私も非常に意を強くしたところでございます。宣言文にもありますように、市民の総意を結集して自然環境の回復、保全を図り、貴重な水資源を後世まで守り伝えていかなければならないのではないでしょうか。そういう立場で今御答弁をいただいたわけでありますが、まず調査の件でありますけれども、一日も早く調査の実施をしていただきたい。調査が終わった段階での中長期計画ということでありますから、そのことを考えましても強く御要望申し上げたいと思います。
また、全庁的な節水、地下水の保全対策につきましては、私たちが日常的に考えてみましても、本庁舎につきましてもすべてが上水道に頼っている。また市営団地につきましても、具体的にはまだそこまでの施策には至っていないというようなこういう問題一つ考えましても、各局に関します施策というものはかなり膨大のものになるのではないかというふうに考えるところであります。そういった意味では、各局におきますこういった具体的な施策につきまして協議会の中で十分論議をされまして、一日も早くその具体的施策を市民の前に差し示していただきたい。このことも要望しておきたいというふうに思います。
また助成金につきましては、先ほど申し上げました市川市の場合は四十七ヘクタールでございますから、二千数百万になろうかと思います。そういった意味では、大津周辺の水田を考えますと五億から八億ぐらいかかるのではないかと思いますけれども、しかし命の水という立場から考えましても決して私たちの投資として高いものではないと、このように考えるところでございます。そういった意味では、助成金の問題につきましてもぜひ真剣に検討をしていただきたい、このように考えるところでございます。
また協議会につきましては先ほども申し上げましたように、こういった問題につきまして広範囲にわたって協議をする場というのは私たち自身も求めてきたことでありますし、一日も早く設置されることを切に望むものであります。
ただいまの答弁を受けまして、今御要望を申し上げましたけれども、大津周辺における水田、畑、山林などの保全、また地下水の人工涵養、節水対策、汚染防止など積極的な対応を強く要望いたしまして次の質問に移らせていただきます。
同和行政についてお尋ねいたします。
部落解放基本法制定のために本市としても行政の立場から御努力をいただき、改めてこの場をおかりいたしまして御礼を申し上げたいと思います。基本法については制定するところまでには至りませんでしたが、地対財特法が五年延長されることになりました。今後も引き続き、基本法制定に向けて本市として御奮闘いただきますよう要請をしておきたいと思います。
さて、ことしは、全国水平社が一九二二年三月三日に結成をされて七十周年を迎えております。結成大会において採択された水平社宣言と綱領は人間の尊厳を高くうたっております。それ以降、部落差別の解消に向けた努力が各方面において進められ、一九六五年には同対審答申として結実しております。
この答申を踏まえて、本市においてもいわゆる同和行政が進めてこられ、昨年十二月定例市議会における私の質問に対して、当時の坂西市民局長は次のような答弁をされております。「今日まで特別措置法をよりどころとしながら鋭意地域改善対策事業の推進に努めてまいりました。その結果、生活環境の整備等の物的な面につきましては、ただいまお触れになりましたように一定の改善が見られるに至っております。しかしながら、現行の地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の期限切れを目前に、対象地区の生活実態面におきましてはいまだ格差があり、かつ悪質な差別事象の発生が後を絶たないなど、同和問題解決のためには取り組むべきいろいろな課題が残されています。同和問題を根本的に解決していくにはこれまで以上に啓発や教育を初めとする各種施策を進めていく必要がございます。」このように述べられておりますが、これからの五年間は、同和行政を進めていく上で極めて重要な五年間になるのではないかというふうに思います。
そこで、部落差別の完全解消を実現するための行政の決意と、これからの具体的取り組みについてお伺いいたしたいと思います。
一つは、昨年十二月の地対協の意見具申についての本市としての評価についてであります。
二つには、地対財特法五年延長に対する評価及び五年後の失効後における本市としての同和行政のあり方についてであります。
三つには、本市としての同和行政の成果と課題についてどのようにお考えになっているのか。またそれに基づく中長期にわたる事業計画及び総合年次実施計画について、環境改善、産業の振興、就労保障、社会教育(啓発活動)、学校教育等について明らかにしていただきたいと思います。
さらには、法延長時における附帯決議の中の実態調査の実施については、いつ、どのような内容で行われるのか。また、それぞれの課題について審議する、例えば学識経験者や関係者などによる審議会の設置を考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。関係局長にお尋ねいたします。
〔市民局長 野田雅水君 登壇〕
◎市民局長(野田雅水君) 田辺議員にお答えを申し上げます。お尋ねの第一点は地域改善対策協議会の意見具申についてでございます。
同和問題の早期解決を目指しまして、改めて国民的課題として重要性を強調しておりますこの意見具申の中で、物的事業につきましては相当進捗してきたが、引き続き残事業を実施するとともに、これからはさらに就労対策、産業の振興、教育啓発など非物的な事業に重点を置いた施策の積極的な推進が重要な課題であるというようにこの意見具申で述べられております。本市では基本的にこの地域改善対策協議会の意見具申の精神を尊重いたしまして同和行政を推進してまいる所存でございます。
次に、地対財特法の問題でございます。
法の五年延長につきましては、国におきまして地域改善対策協議会の意見具申を尊重し、問題の早期解決を図るためには、地対財特法の趣旨を踏まえ平成四年度以降においても真に必要な事業に限って国の財政上の特別措置を講じ、その円滑かつ迅速な遂行を図ることが必要であるとされております。本市におきましても、残された事業につきましてより迅速かつ計画的な実施に努めまして早期解決を目指し努力してまいりたいと存じます。
法の失効後につきましては、啓発活動を中心に推進を図りますとともに、個人施策等につきましては一般施策への移行を原則といたしながらも対象地域の実態を踏まえて推進すべきであると考えております。
次に、本市の同和行政の成果と課題についてでございます。
本市におきましては同和問題の早期解決を目指し国及び県の施策に歩調を合わせながら昭和四十七年度から種々の事業を実施してまいりました結果、事業開始年度から平成三年度までの事業費総額は約八十二億円余りでございます。この結果、一定の成果をおさめつつあるわけでございますが、しかしなお就労対策、産業の振興、教育問題等一般地域との格差が残されております。したがいまして、国民的課題としての同和問題を初め、人権問題につきましては行政の責務として取り組みますとともに、市民一人一人が正しく認識し、みずからの課題として受けとめ、その解決に当たりましては行政、市民が一体となった総合的見地からの施策の推進が必要でございます。総合実施計画につきましては、地域改善対策協議会の意見具申の趣旨を踏まえ、市民の基本的人権の確立を念頭に置きまして、真に差別のない明るい社会建設に努力を傾注してまいる所存でございます。
啓発活動につきましては、国際的に人権尊重思想が普及いたします中で、心理的差別の解消に向けての努力を重ねていくことが以前にも増して重要となっております。このため市民一人一人が人権問題について一層理解を深め、みずからの意識を見詰め直しますとともに、みずからを啓発していくことが大切であると思っております。本市におきましても、市政だよりによる啓発、パンフレットの作成、映写会、講演会等を積極的に進めまして、市民啓発を初め企業職場内研修、市職員の研修、学校教育の場での研修、こういった取り組みに努めておりますが、さらにまた創意工夫を凝らしまして啓発活動をより積極的に推進してまいる所存でございます。