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令和 2年  9月大都市税財政制度調査特別委員会−09月30日-01号

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  1. 川崎市議会 2020-09-30
    令和 2年  9月大都市税財政制度調査特別委員会−09月30日-01号


    取得元: 川崎市議会公式サイト
    最終取得日: 2021-05-06
    令和 2年  9月大都市税財政制度調査特別委員会−09月30日-01号令和 2年  9月大都市税財政制度調査特別委員会 大都市税財政制度調査特別委員会記録 令和2年9月30日(水)   午後2時00分開会                午後3時28分閉会 場所:602・603会議室 出席委員青木功雄委員長浜田昌利委員長野田雅之本間賢次郎各務雅彦川島雅裕、      春 孝明、織田勝久押本吉司、林 敏夫、渡辺 学、後藤真左美小堀祥子各委員 欠席委員:なし 出席説明員:(参考人一橋大学国際公共政策大学院大学院経済学研究科 佐藤 主光 教授 日 程 1 大都市における税財政制度の諸問題に関する調査・研究について     2 その他                午後2時00分開会 ○青木功雄 委員長 ただいまから大都市税財政制度調査特別委員会を開会します。  お手元のタブレット端末を御覧ください。本日の日程は大都市税財政制度調査特別委員会の日程のとおりでございます。  それでは、日程第1の「大都市における税財政制度の諸問題に関する調査・研究について」を議題といたします。  本日は一橋大学国際公共政策大学院大学院経済学研究科の佐藤主光氏を参考人としてお招きさせていただきまして、大都市における税財政制度の諸問題について御意見を拝聴させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  なお、佐藤先生経歴等を掲載いたしましたプロフィールをタブレット端末のほうに掲載しておりますので、御参照いただければと存じます。
     それでは、佐藤先生がお越しでございますので、一言御挨拶をさせていただいて進めさせていただきたいと思います。  改めまして、こんにちは。本日はお忙しい中、川崎市の特別委員会にお越しいただきまして誠にありがとうございます。正副議長もいらっしゃいますし、今日は予想どおりといいますか、予想以上にたくさんの議員も傍聴に来させていただきました。先ほど正副議長と正副委員長で少しお話をさせていただきましたが、タブレット端末を見ていただければわかるとおり、ふるさと納税の件と消費税の件とか、我々に最も身近なところから先生に話に入っていただいて、約60分お話をくださるということでございましたので、そのほか十分に質問時間も30分取らせていただいていますので、委員の皆様には質問していただいて、なければ先生は幾らでも話すことはたくさんありますよと言っていただきましたので、話をしていただこうと思います。  私から重ねて先生のお話をすることもないですけれども、昨年、経済学会石川賞も取られていますし、先生の恩師でございます一橋大学の学長でございました石先生も、もともと小泉純一郎元総理のときの政府税制調査会の会長でございますし、先生自体も税調の委員ということで、税制のことでも様々に御活躍をされているということでございました。近いところで言いますと、町田市、船橋市も今、御担当をされて様々なアドバイザーをされているということでございました。  先ほど話していて1つおもしろいなと思ったのは、ふるさと納税は、フランス人のようにデモをするわけではなくて、静かな市民、納税者の意見なのだ、納税している側としてはちゃんと納税をしているかどうかということをチェックしているわけで、それが外に出ているということは一つの現れなのではないかという厳しい御意見もいただきました。今日は先生に少し厳しいことも言っていただきながら、ざっくばらんに税調の話を聞かせていただいて、我々の次の川崎をつくるためにお力を貸していただけるように正副議長もお話をしてくださいましたので、今日はしっかりと話を聞いて川崎市につなげていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。今日はありがとうございます。 ◎佐藤 参考人 よろしくお願いいたします。本日はお招きいただきましてありがとうございます。一橋大学の佐藤です。私はいろいろ肩書を持っているのですが、いろいろな組織に所属しているからであります。年齢とともに、こういうふうに肩書だけは増えていく、そんな感じでしょうか。  今御紹介がありましたとおり、私、今日は大きく3つの話をすると思っていただいて結構です。1つはふるさと納税ですね。講演としては、つかみというものだと思うのですが。  2つ目が中長期的な課題としての消費税の話になります。もちろん消費税は国税ですし、地方消費税都道府県税でありますけれども、そうはいっても交付金という形で川崎市を含めて市町村にもお金は流れていますから、全く無縁というわけではないということです。  3つ目は、最近コロナでも露呈していた地方税の課題ということで、法人課税に対する依存度の高さや、個人住民税の前年所得課税が問題だと。ちょっとテクニカルに聞こえるかもしれませんが、これはいずれも今回、コロナの中で大きくクローズアップされている課題ということになるわけです。  そんな感じの3本立てであると思っていただければよろしいかと思います。  改めて自己紹介ということではありませんが、私、必ず地方関係の仕事をするときに、私は東京の人間じゃないということを強調することにしまして、そうでないと都会人が勝手なことを言いやがってと思われるので。一応私は秋田県の秋田市生まれでありまして、大学から東京に来ているということになっております。  今御紹介にありましたとおり、実は私、基本的には国の仕事をしています。政府税制調査会とか財政制度等審議会。最近の話題は規制改革推進会議でありまして、そこで例のはんこレスの話とかデジタル・ガバメントについての議論をさせていただいております。  それから地方関係ですと、東京都の税制調査会であるとか、奈良県とか滋賀県の税制調査会というのがありまして、そこへ出ていって、奈良県の税制調査会は基本的には知事と茶飲み話をする感じになっているのですけれども、でも知事がわざわざ出てきて、今の県の税制の在り方について議論する、そんな感じです。あとは今御紹介がありましたとおり町田市であるとか船橋市とか、立川市とか、そういったところでも行政関係委員会に入っております。  さて、ふるさと納税ということでありまして、これはこの間の一番最近のネタになりますけれども、ふるさと納税泉佐野市が逆転勝訴をしたということであります。当初、新しいふるさと納税制度対象自治体から大阪府泉佐野市をはじめ4つの自治体が外されていたわけですが、それを不法であるということで泉佐野市が訴えていたわけですね。高裁は国が勝ったのですけれども、最高裁高裁判決が破棄されて逆転勝訴ということになったわけであります。  ただ、ここで重要なのは、むしろ裁判官の方の御意見でありまして、法理論的に法律の観点から見れば、この判決は当然だけれども、ただしと彼は居心地の悪さという説明をしていますけれども、泉佐野市のやり方は果たしてフェアだったのか、本来のふるさと納税の趣旨に反していたのではないか、そういう問題提起をされているということになっております。  実際、こんなことをやっていたわけですから、泉佐野市ってすごいんですよ。そこが正直、大阪人はすごいなと思うのですが、こんなことをやっていて本当に大丈夫なのというぐらいキャンペーンをやるのですね。「最大で最後の大キャンペーン!」ということでありまして、返礼率30%。ギフト券を入れたら50%、60%は当たり前みたいな、そういう返礼キャンペーンを打ち出して多額なふるさと納税をかき集めたわけであります。ピークにおいてはふるさと納税全体の1割が実は泉佐野市に集中していた、そういう状況にもなっているわけです。  御案内のとおり、泉佐野市というのは別に何があるまちでもないのですけれども、全国から返礼品をかき集めて、それをリストアップさせて、ふるさと納税を集めていたという状況になるわけです。これが要するに裁判官の方の居心地の悪さということになるわけです。  今回のふるさと納税は、ある意味どっちもどっちという話でありまして、よく学生さんから、これはどっちかが正しかったのですかと言われると、私はどっちもどっちと言うのですけれども、手続論的に言えば、川崎市さんも国からたくさん通知をいただくと思うのですが、通知というのにどこまで法的拘束力があるんだという話になるわけです。その通知に反したからといって、しかもそれを遡及してペナルティを科すということが果たしてあっていいのかどうか、これは法的な妥当性が問われる。恐らく最高裁はここを重視したわけなのですね。平たく言うと、遡及措置というのは後出しじゃんけんになりますので、法的安定性にも反するわけです。そういうところから、手続論の観点から見れば、やはり総務省には非があるということになるわけです。  ただ、先ほど申し上げたとおり、制度の趣旨ということで言えば、本来ふるさと納税というのは、私も含めてですが、都会に出てきた人間たちふるさとのために、まあふるさとじゃなくてもいいんです。自分が応援したい、そういう自治体に対して、見返りを求めたら寄附金ではないので、見返りを求めることなく自治体に対して寄附を行う、これが本来のふるさと納税だったのですが、それが実際は返礼品がありますから見返りを伴う納税になってきたわけです。見返りを伴うような行為になってきて、しかもそれを乱用するという形になってしまったということになりますので、そういう意味ではフェアプレーではなかった。  泉佐野市をみんなブーブー言うのは、実際はこの前の段階で、まさに通知で総務省は、返礼率は3割までだよとか、地場商品でなければだめだよ、地元産のものでなければだめだよと、そういうことを出していたわけで、通知は怖いですから、ほかの自治体はそれに即して返礼品を見直していたにもかかわらず、泉佐野市はキャンペーンをやったわけですよね。これは競争としてはフェアではない。  もちろん地方分権の時代ですから、自治体間、地域間の競争というのはあってしかるべきなのですが、競争はフェアでなければいけないわけで、同じルールのもとでやらなければいけないわけですけれども、一人ルール違反をしていると、それというのは果たしてよいのかということは問われるわけですね。ですから、ある意味どっちもどっちというのは、手続論として見れば総務省には非があるし、制度の趣旨をゆがめたという点においては泉佐野市にも非はある、こういう構造になっていたのかなと思うわけであります。  ここは念のために、ふるさと納税はどこが特徴かというと、まさに特例控除という部分でありまして、住民税所得割のところを、納めている住民税の2割が限度ではありますけれども、結果的に特例控除という形で、実質的には負担は2,000円で済むような形になっています。自分の持ち出しは2,000円のまま高額な返礼品を受け取ることができる、そういう仕組みになってしまっているわけであります。  もちろん寄附控除というのはあるのですよ。どんな団体、例えば赤十字であれ、いろいろなNPOとかに寄附をすると通常の寄附控除というのはあるわけですから、ただ、それに上乗せした形の特例控除というのが極めて手厚いわけでありまして、結果として見て、ふるさと納税をする人たちは2,000円の持ち出しで済むようになっている。それによってふるさと納税を喚起したかったというのが政策的な意図なのですが、結果として喚起したのは返礼品競争になってしまったというのが落ちなのだと思います。  趣旨は正しいけれど結果が伴わないというのはよくある話でありまして、いろいろな制度というのは、もちろんある目的があってやるのですけれども、思いがけない副作用を伴うこともあるわけで、ふるさと納税も趣旨が悪いとは私は必ずしも思わないのですね。だけど、出てきた結果が地方を支えるとか、自治体がやっているいろいろな仕事に対して共感して、そのサポーターになって寄附をするという、本来あるべき寄附の姿から大きく外れて、いわゆる官製通販化してしまっているということです。特例控除を通じて、官製通販という形で返礼品が過熱化していった、そういう構造になって、それが結果であるということになるわけです。  実は例の新しい制度が始まったこともあって、ふるさと納税はちょっと頭打ちではあるんです。そうは言いましても5,000億円近いお金が動いているというのは間違いないわけであります。  ただ1つ、ふるさと納税は非常に使える面があるとしたら、これは災害のときなのですね。東日本大震災のときにふるさと納税がかなり使われましたし、熊本の地震のときもそうだし、九州北部豪雨やいろいろな災害のときに、その自治体を助けるという意味でふるさと納税が使われているので、伸びているきっかけのもう一つは、返礼品だけではなくて、そういう災害があるたびにふるさと納税が伸びている、そういう面も確かにあるということです。  どこがたくさん持ち出しをしているかとか、どこの自治体から多くお金が流出しているかと言えば、川崎市さんは上から4番目ということになるわけですね。これは私、ワイドショーで取材を受けたことがありまして、あのときはたしか50億円でみんな大騒ぎしたのですが、今は60億円を超えてしまっています。やはり増えています。当たり前ながら、全体的に大都市からお金が流れている。その意味においては、格差是正には寄与しているのではないかという評価はあるのですが、ただし受け取る側が、泉佐野市も含めてですけれども、必ずしも貧しい自治体ではないというところが問題でありまして、一部の返礼品が充実した自治体に寄附が集中しているということなので、お金は確かに豊かな自治体から出ているかもしれないけれども、本当に困っているところを助けていることになっているかと言われると、恐らくふるさと納税はそうはなっていないということなのだと思います。  そこで先ほど御紹介のあった話です。もちろんふるさと納税については、大都市自治体からすると、返礼品はけしからんと。東京都はそれでこの制度から外れたわけですから。都会の自治体からすれば、今のふるさと納税の制度に対していろいろと言いたいことがあるのは間違いない。ただ、自分たちを振り返ってみたときにということで、先ほどお話があった果たしてどうしてこんなにお金が地方に出ていくのだろうということは少し考えてみたほうがいいと思うのですね。  つまり、ふるさと納税というのは、ある意味、静かなる納税者の反乱、そういう顔もあると思うんです。フランスであれば、自分たちの税金の使われ方に不満があれば、皆、デモをするわけです。路上に出てデモをして、俺たちの税金を何に使っているんだ、無駄遣いをするな、市長は首だとか、そういう話になるわけです。あるいは減税しろとかですね。ところが、日本人は基本的にはデモはしない。おとなしいという言い方が正しいかどうかわかりませんけれども、ほかにやることもあるので、あまりデモはしないわけであります。  ところが、自分が自治体、国に対して税金を払っている、でも自分がそこからあまり受益を感じていないというときに、どんな行動をとるかというと、それならふるさと納税をしたらいいんじゃないのというふうに考えたりするわけなのですね。つまり、何のために僕はこんなに税金を納めているのだろう、こんなお金を地元に払うのだったら、おいしいお米をもらえる、あるいはお魚がもらえる、そういう自治体のほうに寄附したほうがまだましじゃないか。まだましという言い方のほうが正しいと思うのですが、そういう認識というのはどうしても出てくるし、あともう一つ重要なのは、ふるさと納税をする人たちは、先ほど紹介したように特例控除みたいな強いインセンティブがあるので、金銭的に見てもふるさと納税をするインセンティブはあるわけですね。  ところが、もう一つ考えるべきは、ふるさと納税をしているのはほんの一部の金持ちなんです。所得割の2割までが上限ですから、たくさん税金を納めていないとできないことです。だから、ふるさと納税は誰が受益しているかというと、富裕層なんです。ところが、そのことに対して一般の納税者は憤っていないんです。  BEPS問題というのを御存じですかね。多国籍企業が節税をして税金を納めなかったという話があって、例えばスターバックスイギリスで税金を納めていなかったというのでイギリス人は物すごく怒ったんです。アンフェアなことをしていれば、普通の納税者なら怒るはずです。だけど、日本でふるさと納税は、今申し上げたとおり一部の富裕な人たちふるさと納税をたくさん享受している、そのことに対して一般の納税者は何も感じていない。なぜかというと、一般の納税者自身も受益をあまり感じないし、自分たちも機会があったらやりたいなと思っているわけだし、俺たちの行政サービスのために税金を払っているんじゃないのかと、そういう認識も富裕層に対してはないわけです。所得の高い方々に対してはあまり持っていない。所得の高い人も、あるいはそうじゃなくても普通に納税している方々も、自分たちがどんな公共サービスを受益しているのかということがあまり見えていない、そういう面があるので、くどいようですが、高所得者は率先してふるさと納税をするし、一般の納税者もそんな高所得者に対して憤ることもないわけなのですね。どこかで、この税金は何に使っているのかわからないしねと思っているからです。  実は問題はそこだと思うんです。大きな自治体側からすると、一般の人たちが受益が見えていないんです。そもそもないという言い方はあまり正しくなくて、当然我々一般の地域住民は、川崎市なら川崎市が提供している公共サービスから受益をしているわけです。だって、ごみの収集だって、道路、教育、福祉だって、ただじゃないわけです。当然そこに自分たちが払った税金が使われているという現実があるけれども、でも受益と負担の関係が見えていないんです。そうなると、税金って払い損だよね、機会があったらふるさと納税でもしたいよねと、そういう方向にマインドが行ってしまう、社会の風潮が行ってしまうというのは否めないかなという気はしています。  なので、もしふるさと納税のような形での税の流出を抑えるということであれば、もちろんふるさと納税の制度を変えていくということも一つのステップではあるのですが、もう一つ考えなければいけないのは、納税者が納めてくれた税金がどんな使われ方をしていて、それがどんな形で住民に還元されているのか、そのプロセスをちゃんと見える化させていくことだと思うのですね。  ここが最近テレビが説明しているEBPMという証拠に基づく政策形成という考え方と関わるのですが、一般論はだめなんです。皆さんの払ってくれた税金のおかげでお年寄りが元気になりましたと言っても、元気は測れないですからね。であれば、高齢者施設がこれくらい充実しました、健康寿命がこれくらい伸びました、元気なお年寄りがこれくらいふえて、そういう方がこんな形でボランティアとか社会活動をしています、こういう形で具体的な数字で見せていく、これがエビデンスなわけです。一般論を言っても、それはあくまでも一般論にすぎないので、自分たちで払っているお金は具体的な金額なのです。自分たち納税額は具体的なのだから、自分たちの受益も具体的な数字で出さなければだめということは否めないと思うのですね。そういう形でちゃんと受益と負担を皆さんの間で見える化させる。  もちろん住民だって全体という考え方もあるわけですから、自分が受益できていないから嫌だと言うかというと、そこまでのむげな人はそんなに多くないと思うんですね。自分たちの地域の中で、地域社会のお年寄りでも子どもたちでも、そういう人たちにちゃんと還元されているのだということがわかれば納得感が出てくると思うわけであります。なので、この辺はちょっと考えなければいけないことなのですが、くどくど言いましたが、要は受益の見える化というのをやらないといけないかなという気はしています。  さて、次に消費税の話になります。今こういう話が出ているわけですね。消費税を減税するべきではないかという議論です。国民一律に10万円給付してしまったので、今度は何か一律に国民にいいことをしてあげようと思うと、消費税の減税があるのではないか。特に消費の落ち込みを考えたときに、しばらくインバウンドも期待できない状況を考えると、地方経済を支えるという観点から、あるいは飲食業を支えるという観点から見れば、消費税を今、永久にと言う人はめったにいないので、時限つきで減税したらどうか、そういう議論がちらほらと出ている。今のところ菅総理はその気はないのですけれども、ただ、与党の中にもそういうのをサポートする方々はいらっしゃいますし、ちまたでもそういうのをサポートする学者さんも少なくはないわけであります。  なので、これから消費税についてはまた議論になるのかなと思います。ただ実態を言わせてもらうとということなのですけれども、コロナの影響というのは、御案内のとおり業種によって一律ではないのですね。アマゾンは過去最高の収益を上げているわけでありますし、スーパーが復活したのです。家飲みがふえたので酒屋さんはもうかっている、それは事実です。したがって、業種によって減り方も増え方も結構ばらつきがあるというのが実際のところです。あとドラッグストアもふえています。そういったところで結構なばらつきが生まれているということですね。そのばらつきがある中で一律に消費税を減税して何かいいことがあるのかというのは、1つ問われる部分なのです。  もう一つ重要なのは、全ての家計が同じ影響を被っているわけではないのです。これは一律10万円のときにも言われたのですけれども、全ての国民が10万円分損失を被っているわけではなく、守られている、給料の減らない、収入の減らない家もあれば、フリーランスや非正規雇用の方々のように大きく収入を失った人たちもいるわけなので、そもそも影響は一律ではないので、コロナの影響というのは家計の間、あるいは人々の間、業種の間でもばらばらなのに、一律に消費を喚起することは果たしてどこまで意味があるのかというのは、経済政策的には考えないといけないことなのだと思うのです。  それだったらGoToトラベルがいいかどうか、私は若干疑問なのですけれども、ある程度業種を絞った優遇政策はあってしかるべきだし、業種を絞った支援政策はあってもいいのかなとは思います。  あともう一つ重要なことは、実は消費税というのは平時の社会保障の重要な財源でありまして、過去の経験を踏まえると、一旦減税すると元に戻すことが難しい。それで皆さんはよく、イギリスではやったじゃないか、ドイツでは減税しているではないかと言いますけれども、あれはあらかじめ時限措置として組んでいるんです。だから何もしなければ今年いっぱいで終わりなんです。  ところが、日本というのはそういうつくり方はできないはずなんです。結局、消費税を下げると言ったら法案を通して消費税を下げる。上げるとなれば改めて法案を通して上げるということになってしまうので、減税するにも手間がかかります。だから、もし仮に今日、減税するぞと決めたとしても、実現するのにはあと2か月ぐらいはかかるのではないですかね。しかも予算委員会は毎回いろいろなことでもめる。しかも増税するぞとなったらもっとかかるわけなんです。移行プロセスで周知もしなければいけない。いきなり明日から10%に戻しますと言ったら、事業者の方々はびっくりしてしまいますから。システムも変えなければいけないので、そういう周知期間というのもありますので、増税もすぐできるわけではないのですね。決めるのにも時間がかかるし、実行するにも時間がかかるわけです。そういった意味においては、なかなか柔軟な対応は難しいということもあると思います。  そういった点において議論はここで分かれるのですけれども、もし消費税を平時の社会保障の財源ということにするのであれば、コロナ対策の話と消費税の話とは切り離していかなければいけないのではないかと私は思っています。  実はこれは意外と大事なポイントで、川崎市は来年度の予算はどうされるかわかりませんが、国の概算要求は、御案内のとおりこの段階で100兆円を超えているわけですね。さらに膨らみます。金額を定めない要求事項がふえているからなのですね。その中にはコロナ対策のような一時的な支出もありますが、そうでもない支出が紛れ込んでいたりで、玉石混交状態なのです。震災のときもそうだったのですけれども、震災復興を口実にして全然関係ない事業がその中に潜り込んでいたというのはよくある話なわけで、今回もその可能性は否めないわけです。  そうなってくると、むしろ我々はコロナ対応のための財政と、コロナ以外の、つまり平時の財政というのは本来切り分けて考える。具体的には例えば別勘定にするとか特別会計で切り分けるとか、そういうやり方にしていかないと整理がつかないと思うんです。そのときに消費税は何ですかというと、コロナ対応ではなくて平時の財政対応です。コロナコロナで別途、将来的な財源確保は考えましょう。赤字国債を出していますので、これはいずれ返さないといけませんから、そのとき何で返すのだという議論は当然出てきますので、それはそれでまた別途考えましょうよということです。そういう整理はどこかでしなければいけないかなという気はしています。  地方との関係でいけば、御案内のとおり、今や地方消費税というのは都道府県にとってみれば3番目、地方全体で見ても主要な税源の一つということになるわけですね。これは平成30年度ですから2年前の決算額でありますけれども、地方税収が40兆円だとすれば、そのうちの5兆円弱は実は地方消費税だったということになります。もちろんこれはさらに上がっていくわけですね。したがって、消費税の一部は地方消費税ですから、地方消費税というのは地方の基幹財源になってきているということは否めないわけであります。  念のために申し上げると、消費税減税というときに国の消費税だけ減税するなどということはあり得ないわけですので、当然、地方消費税もとばっちりを食らうことになりますので、そうなると、地方にとっての安定財源をどうするかというのは課題になってくるのだと思います。  格差ということも考えると、地方消費税というのは法人2税とかに比べると比較的格差の少ない税金なので、自治体から見れば安定的で税配分が公平なのは地方消費税ということになってくるのだと思うのですね。後で申し上げるとおり、税源が不安定で、かつ地域間での偏在性が著しいのはむしろ法人2税ということになってくるわけであります。そういう点で、もしこれから自治体としまして安定財源を求めるということであれば、その活路はやはり地方消費税、つまり消費税にあるということにならざるを得ないのだと思います。  コロナだけが危機ではないというのは、これまでの危機はデフレ経済だったわけであります。実はこれは少しずつ解消し始めていたのですね。さすがに物価の上昇率2%とまではいかなかったけれども、ゼロを超えるようになってきたので、デフレから日本は徐々に脱却しつつあったのだけれども、それがこのコロナでまた逆戻りの可能性があるということなんです。  デフレがこれまでの危機、コロナが今の危機だとすると、社会の高齢化というのがこれからの危機ということになってくるわけです。もちろん最近、災害も増えていますので、今の危機はコロナだけではないのかもしれません。自然災害全体が今の危機になっているのだとは思うのですが、そういう意味において、これから日本の財政、それから恐らく自治体の財政運営で問われるのは危機管理なのです。その危機というのは、困ったことに長く続く危機なんです。  コロナも短期決戦で終息すると多分国は最初見込んでいたと思うのですね。だからあんな水際政策を一生懸命やっていたのだと思うのですが、蓋を開けてみれば、ワクチンもすぐできるとは見込みがわからないので、結局は長期戦にならざるを得ない。ウィズコロナなんてうまく言ったものですけれども、要はコロナとは長期戦にならざるを得ない。温暖化の影響もこれから長く続く。毎年毎年これまでにない台風が来ると言うけれども、それはしばらくずっと来るわけですね。とすれば、この自然災害というのも長期戦なんです。  ましてや社会の高齢化というのは今世紀の課題になるわけです。日本が高齢化のピークを迎えるのは恐らく2040年代ぐらいなのですね。その後は大きく人口が減少していくというプロセスになりますので、恐らく日本の社会の高齢化、人口減少というのが今世紀の危機ということになりますので、いずれも長期戦にならざるを得ない。長期戦に取り組むためには短期決戦とは全く違う思考が必要なわけです。それは何かというと、構造の強化、構造改革です。  短期戦であれば、カンフル剤を打って、その場で一生懸命頑張ればいいだけですけれども、長期戦になれば持久戦ですから兵たんが物を言うわけです。兵たんということはつまり体力です。経済の体力、財政の体力がちゃんとしていないと、こういう長期戦にはなかなか打ちかてないということになってくるわけなのですね。  なので、アベノミクスでよく言われますけれども、構造改革があまりうまくいかなかったというのは非常に大きな課題だったと思うのです。今の危機、これからの危機に立ち向かうに当たっては、日本の経済、財政の在り方そのものを変えていくという必要性も本当はあったのだと思います。この話はまた後で触れたいと思います。  念のためなのですけれども、最近、みんな財政出動するべきだと言うものですから、何となくちまたでは、やはり反緊縮派と言うか、MMTと言うべきか、財政出動をこれまでもずっと唱えてきた人たち、彼らが勝ったのだ、勝利したのだ、彼らが正しかったのだという論調もあるのですが、違うんです。今は非常時なのです。非常時なので、私は主流派の側ですが、主流派だろうと反緊縮派だろうと財政出動を求めているのは当たり前。今は、状況は非常時だから。ただ、出口は違うのですね。我々財政学者は、出口はちゃんと財政は健全化させなければいけないと思っていますし、反緊縮派の方々は平時においても財政健全化は必要ないと言っているわけなので、今の主張は似ていたとしても、見据えている出口が違う。そういう意味で同床異夢なのだよということにはなると思います。  先ほど私、平時の財政と非常時の財政は分けたほうがいいよねと言ったのは、まさに出口を見据えてです。非常時の財政はおのずと危機、コロナが終わればなくなるものなんです。平時の財政は残っていくことになるわけですから、こういう形でちゃんと切り分けませんかというのは出口における財政の健全化を見据えればこそということになるわけです。  消費税をめぐる誤解ということを申し上げなければいけないので、消費税は問題の原因ではないのです。私は本当は消費税を増税ではなくてもいいと思っているんです。消費税を増税しなくていいのだったら、ほかにどうやって社会保障の財源を確保するのかということが問われるわけです。問題は社会保障なんです。社会保障が今増えている。人口が高齢化しているわけですから当たり前です。その中において財源をどうするかという問題が起きているわけで、その解決策の一つが消費税の増税だったということでありますので、問題の原因は何ですかと言われたら、それは社会保障の増加であり、消費税の増税は結果にすぎない。  もちろん世の中には選択肢があっていいと私は思うんです。別に消費税増税が嫌だというのであれば、それは社会保障を切り詰めればいいだけです。いわゆる小さい政府を志向すればいいだけになります。あるいはほかの税金を上げてもいいですよ。社会保険料を上げてもいいです。ただ、念のために申し上げると、社会保険料は雇用に対しても悪影響だし、所得の低い方々にとっても負担が大きいので、実は一般に思われるほどいい税金ではないですよね。  所得税、法人税は経済成長との見極めが必要になってくるので、経済活動とのバランスもある。もちろん消費税もそうなのですが。ただ特に今、グローバル化とかデジタル化が進んでいる中において、法人税や所得税を私は取るなとは言っていないです。所得税や法人税はむしろ強化したほうがいいとは思っていますけれども、ただし、取り方に工夫が要るということですね。そうしないと、思いがけない副作用を経済に及ぼす可能性があるからです。  つまり何を言っているかというと、消費税増税は選択肢の一つです。ただ問題は、消費税を増税すれば問題が消えるわけではないということです。この社会保障をどうするのかという問いかけに答えなければいけないということです。  なぜ消費税かという話はちょっとテクニカルな話なので、ここは割愛しますけれども、皆さんが思うよりも消費税はまだましな税金ということです。広く薄く、全ての世帯でみんなが負担する。言い方を変えると、所得税とか社会保険料というのはどうしても勤労者に負担が集中しやすいのです。それに対して、消費税は全ての世帯が広く負担をしてくれるので、比較的世代間の公平という観点ではかなっているということ。  テクニカルになるのであまり言いませんけれども、国際競争力という観点から見ても消費税のほうがいい。当たり前なんです。消費税というのは国内の消費に対する課税ですから、輸出品とかは関係ないです。特に日本みたいな貿易をやっている国からすると、自分たちの国際競争力を損なうような税金というのはあまり望ましくないのですね。  世界的なトレンドでもあるわけでありまして、消費税を上げたり下げたりというのは、景気の動向において今回もドイツやイギリスは一時的に下げたりしていますけれども、でも全体のトレンドを見れば、やはり上げていくわけでありますので、よく聞かれるのは、では何%ぐらいまで上げるのですかねと言われると、OECDとかIMFとかいろいろなところの試算を見ると、大体15%と20%の間ではないかと言われています。何もしなければもっと高いと言う人もいるのですが、でも最大で20%ぐらいで、うまくやれば15%。あと5%はやらなければいけないよねということにはなってくるのだと思います。ちなみにデンマークとかに行くと25%とかありますが、ここまで行くとさすがにちょっときついですよね。  さて、消費税をめぐってはある種の悪循環が起きているのです。というのは、もともと消費税に対しては国民はあまり好きじゃない。増税に反対と。増税に反対があるので、結果的に税負担の緩和措置をしようとして、今回がそうですね、例えば軽減税率を入れてみたり、あとはプレミアム商品券とかマイナポイントでもいいのですけれども、要するに経済対策を追加したりするわけです。すっかりコロナで吹っ飛びましたけれども、もともと消費税の負担緩和政策として2兆円規模の財政出動をしていたわけです。そういった形で、コロナの前から手厚い経済対策を打っていたわけです。  でも、それは蓋を開けてみると、それって結局はばらまきだよねということになるし、軽減税率はやったらやったで複雑だよねということになってしまって、ますます消費税に反対する理由がふえていってしまうのですね。消費税なんてやったって制度が複雑じゃないか、軽減税率を見てごらん、みんな大混乱しているじゃないかとか、消費税を増税したら、「何?ばらまくの?君たちお金」「社会保障に使うと言っていなかった?」「そんなのじゃなくて、結局みんなばらまいているんじゃないか」と、つまり新たな反対する理由がふえてしまっているんです。そういう形で、なぜか消費税というのはある意味悪者になってしまっているのが今の現状なのだと思います。  ただ、くどいようですが、我々はとにかく社会保障の財源をどうするかを考えないといけない。実際的に言えば扶助費の問題ですね。扶助費をどうするかということを考えなければいけない。そのときの安定的で地域間での偏在の少ない税金というと、消去法になってきますけれども、消費税にならざるを得ないのだということで、我々経済学者からすると、先ほど申し上げたとおり、ほかの税金と比べると消費税のほうがまだ成長と親和性が高い。  もちろん増税をしたときには、一時的な景気の落ち込みがあるのはわかっているのですけれども、長い目で見たときには、ほかの税金を上げるよりは、ましてや社会保険料を上げるよりは、雇用に対する影響、日本の国際競争力に対する影響、成長力に対する影響はまだ消費税のほうが軽いということです。もちろん増税ですから経済にとってみれば負担なのは間違いないのですけれども、それはほかの税金に比べるとどうかという判断になるわけです。  ここまでが消費税のお話でした。  さて、ここから地方税の課題。今回のコロナで露呈した地方税の課題について、まず大まかに2点ほど紹介したいと思います。  細かい話に行く前に、今回コロナでよくわかったのは、これはマスコミでもさんざん言われますけれども、いろいろな日本の構造の遅れなわけです。デジタル化の遅れなんて言いますよね。実は天災、災害というのは新しい問題をつくるというよりは、社会の中にあった矛盾を露呈するという面があるわけです。今回それを露呈したのがデジタル化だったわけです。あともう一つ、さっき言いましたフリーランスや非正規雇用の収入の不安定さです。こういったものが露呈してきたということになるわけです。  そういった意味において、我々、実はこんな問題を抱えていたのだと。普通、臭いものに蓋をするじゃないですか。見て見ないふりをしていたのだけれども、蓋が取れてしまいますので、そうはいかなくなってしまったというのがいろいろな課題として出てきている、現れてきているわけで、地方税も実は例外ではなかったということです。  そんなに驚くほどのことではないのですが、1つは法人2税への依存問題です。くどいようですが、法人2税への依存というのは2つの大きな課題を生み出したわけです。1つは偏在性の問題ですね。法人2税というのは何といったって3大都市圏だけで4割強集めている。そのうちの半分以上は東京都ではあるのですけれども、でも3大都市圏の中で法人2税が多く集められている、そういう状況がある。つまり、これは偏在性の問題。これは平時の課題と思ってもいいです。これはコロナとは関係なく、平時からこの偏在性が地域間での不公平をもたらすねという意味での課題だったわけです。  ところが、今回わかったのは、もう一つは不安定さです。平時はたくさん法人2税を受けている、もらっている、集めている自治体であっても、いざ非常時になると大きく税収が落ち込むわけです。この落差は金融危機のときの話でありますが、このとき東京都は1兆円、税収を失っているのですね。何かが起きると大きく税収が落ち込む、そういう不安定性がこの法人2税に依存していると起きやすいということであります。  これは東京都の財政調整基金の残高ですけれども、なくなりそうということなんですね。今、コロナ対策で既に1兆円強、投入してしまったものですから、これは財政調整基金なので、東京都は残り1兆円の特定目的基金があるので、別に破産はすることはないと思うのですけれども、しかし財政調整基金が大きく落ち込んでしまっているわけであります。  それは2つの理由があって、1つはコロナ対策に1兆円使ったからということもありますが、もう一つは、これから出てくる大きな課題は、法人2税の税収が大きく落ち込んでいるという問題があるということです。となれば東京都も財政危機から無縁ではない。いずれ彼らは財政的に行き詰まる可能性は否めないのですね。  結局、法人2税というのは経済がいいときには確かにおいしい税金なのです。東京都もバブルのときに箱物をたくさん造りましたよね。ただ、一旦経済が下降してしまうと一気に税収がなくなってしまいますので、かつての青島都知事のときではありませんけれども、急に財政危機宣言を出すような、そういうところに一気に追い込まれるわけなんですね。法人2税に依存するということは平時においては地域間の格差という不公平をもたらし、リーマンショックであれコロナであれ、非常時においては税収の不安定という財政危機に転化するような問題を、特に都市圏の自治体に突きつけるということになるわけです。なので、これを何とかしたほうがいいよねと。  そこでさっきの地方消費税というのは、消去法なのですけれども、地方消費税の話に戻ると、それなら地方消費税のほうが平時においても偏在性は少ないし、非常時においても安定的だよねという点で考えれば、法人2税よりはましではないですかという話に結局なってくるわけです。  もう一つ、意外と忘れられている課題が住民税の前年課税です。これは現年課税化と書いていますが、それは目指すべき方向であって、今の個人住民税は御案内のとおり前の年の所得、前年の所得を基準に決まってきます。そうしないと税務が回らないからねというのがこれまでの話だったのですが、実はこれが今回のコロナで大問題を引き起こすのですね。なぜかというと、先ほど申し上げたとおり収入が不安定な人たちです。彼らは去年、2019年は多分普通に稼いでいる人たちです。今年の住民税は2019年の所得に課税されてしまうのです。では今年はどうですか。2020年、あなた、お金はありますかと言われたときに、フリーランスや自営業やああいう人たちは多分収入が大きく落ち込んでいるはずなのですね。でも、税金は払わなければいけないんです。もちろん納税の猶予というのは今自治体などで認めていますので、別に今払えとは言われないかもしれないけれども、でも払わなければいけないわけです。なので、実はこの収入が不安定な人がふえているというプロセスの中において、果たして前の年の所得に応じて課税をするというこの仕組みがいいのかということなんですね。  これは、これまでのように正規雇用を前提に、年功序列的に収入が安定的な、あるいは右肩上がりな人たちを前提にした制度だと思うんです。だから今年収入が増えていく人たちであれば、去年の所得より今年のほうが所得は高いわけだから、去年の所得に応じて税金を払うというのはそんなに負担ではないわけですね。問題が起こるのは退職したときだけですけれども、そういうある意味で高度成長を前提にした仕組みだったと思うんです。  ところが、今のようにアップダウンの激しい時代において、去年豊かだからといって、今年たくさん税金を納めろと言われても困ってしまいますよね。ましてやこういうことというのは予見できないです。退職は予見できるので、よほどあれじゃなければ、来年に備えて、今年は使わないでおいて税金をちゃんと払おうねと思うかもしれないけれども、コロナなんて誰も予見していないわけですから、そんな予見していないような危機が起きたときに、去年の所得が高かったから高い税金を納めろというのはむげであり、無理でもあるということなのだと思うのです。  もう一つ問題なのは、市民税の業務についても実は前年所得課税のほうが大きな問題を引き起こすということです。総務省住民税の現年課税化についての検討会のようなものをやって、そのときに報告書を出しているのですが、あの中で住民税を現年課税化すると自治体の業務の負担が増える、なぜかというと年末調整というプロセスがあるからなのですけれども、自治体の業務がふえるから大変なのだよねということを書いているのですが、実は前年所得のほうが本当は大変かもしれない。  何でと言われると、申告納税と賦課課税の違いです。所得税は申告納税です。ところが、固定資産税もそうですけれども、住民税は賦課課税です。何が違うかというと、税額を誰が計算するかの違いですよね。申告納税であれば、税金は払う人が計算するわけです。もし間違えていたら、それは申告した人の責任です。なので、もう一回やり直してねというだけのことですね。  賦課課税というのは、幾ら払うべきかを決めるのは自治体側です。もし納税額を間違えていたら自治体の責任です。これは町田で聞いたのですけれども、結構、確定申告の書類が間違えているケースがあるらしいのですね。それで、それに基づいて計算すると、実は間違えた納税通知を出す可能性がある。だからすごく調べるのですって。税務署まで行って元の資料を見せてもらったりするために、ある時期、行ったり来たりするみたいなんです。ちょうど3月から4月にかけてのある特定の期間に繁忙期があるらしくて、そのためだけに結構な人手を確保しておかなくてはいけないとか、そんなことを現場の人がブーブー言っていたのですが、それであればいっそのこと住民税も現年課税化してしまえば集めるほうは楽なんです。申告だから、間違えたらあなたの責任だというだけなんです。  年末調整がああだこうだ言うのですけれども、今、ICTの時代でありますので、紙ベースでやり取りするというのは困るかもしれないけれども、多分ICTを使えばすぐできるんです。  なので、結果的に見ると、今のデジタル化、だからこそデジタル・ガバメントだという話にもなるのですけれども、デジタル化を前提にしてしまうと、実は現年課税化というのはそんなに難しい話ではないはずだし、今申し上げたとおり、払う側からすれば今年の所得に応じて払うわけですから、今年お金がなければ払わなくていいわけですし、集める側からすれば、申告納税ですから基本的には税金を確定するのは納税者の責任なわけですから、それまで待っていればいいだけの話で、自分たちが計算を間違えたらどうしようということは考えなくてもいいわけなので、そういった点において実は現年課税化したほうがいいのではないかという議論が出てきているということになります。  それからもう一つ、今回、一律10万円の特別定額給付金のときに課題になりましたよね。マイナンバーの活用。この話というのは、実は税務と関わるのです。つまり住民税を含めて、税金を払うプロセスの中で所得情報が集まっていくわけです。実は自治体は給与支払い報告書というのを事業者からもらって、前の年ではありますけれども、住民の所得を捕捉しているわけなのですね。ところが、それをマイナンバーでひもづけないと給付に使えないわけであります。  今、マイナンバーでそれをやろうとはしているのですが、今回の一律10万円の場合、何か問題だったかというと、まずマイナンバーは使えなかったんです。したがって、所得情報というのは結局使えなかったわけです。所得情報が使えないから、一律10万円にならざるを得ないわけですね。逆に所得情報の細かいのがないから、非課税世帯ならと、そういうざっくりとした区分で給付の基準を決めなければいけないということも時としてあるわけで、それが消費税増税のときに出てきた簡易な給付措置というものなのですけれども、結局、所得情報をうまく給付とひもづけることができないと、一律10万円になるか、あるいは課税世帯ですか非課税世帯ですかという、そういうざっくりとした区分けでやるしかないということになるわけです。つまり給付はきめ細かくならない。  これもデジタル化の遅れという形で露呈した問題ではあるのですけれども、マイナンバーを使うことによって、税を取るという話と給付をするというところをちゃんとつなげてあげる。それからもちろん口座番号とつなげないと、どこに振り込んだらいいかわからなくなるので、銀行口座とひもづけるという形で、税と給付、給付と口座、これを全部マイナンバーでひもづけないと、きめ細かい迅速な給付というのはなかなかできないということにもなってくるのだと思います。  海外ではこれはできているんです。もっとすごいのは、海外では前の年の所得ではなくて、前の月の所得に応じて給付を決めることも可能なのですね。イギリスなどではそういう仕組みを入れているわけなんです。デジタル化で源泉徴収の情報は全部一元的に集まってくるからです。もちろん自営の方は自分でやらなければいけないので、源泉徴収してもらっている方についてですけれども、それはアルバイトも含めて、源泉徴収を受けている人たちは、あとマイナンバーがあれば名寄せできますので、結果的にそれぞれが前の月にどれぐらいの収入があったかというのを見て、収入がない人については給付をしましょう、収入がある人については税金は取るけれども給付はしないよとか、そういったことができるようになるわけです。  アメリカなどでも、ああでもないこうでもないと言って、アメリカの国民に対して給付をしました。日本ほど手厚かったかというと、そうでもないのですけれども、給付をしましたが、あれも多分2週間ぐらいで全部払っているのです。マイナンバーでひもづけているから、しかも所得情報を持っているのでできるんです。  イギリスに至っては、あなたには給付を受ける資格がありますということを国から通知するのですって。申告ではないんです。日本は申請主義なので、申請しなかったらないわけですが、イギリスの場合は、あなたには給付を受ける資格がありますという通知が来て、後で幾らかということがまた通知が来るみたいです。それはなぜそんなことができるかというと、リアルタイムで所得情報を集めているからなのですね。  結果的にこういう形でネットワークで、これはIT化、デジタル・ガバメントにつながる話ではあるのですけれども、ちゃんと所得情報を税金と給付、両方に使えるようにする。しかもそれをできるだけ直近の所得情報を使えるようにする、そういう仕組みをつくっていくということをやらないと、今回のコロナのようなときには対応できないということになるわけです。  そういう意味で、日本は世界に冠たる技術を持っていると言っている割には、今回本当に世界に対して恥ずかしいことをしているんです。世界でどう報道したのかなと思ってしまうんです。海外から見たら本当に笑い話ですよ。もちろんお隣の韓国だってマイナンバーはありますし、彼らも普通に振り込むんです。迅速にというか、普通に給付は振り込んでいます。所得に応じて払うこともできます。なので、日本のようにあそこまでアナログなことをやっているのは多分先進国の中ではひょっとしたら日本と、あと何か国あるかなぐらいのことですね。  大体これで私の言いたかったことは終わりなのですが、最後にもう一つだけ、これはこれから川崎市さんにとっても問題になるかどうかわからないのですが、固定資産税についてということになります。これは社会の高齢化と関わる話であります。なぜかというと、固定資産税の話というのは、実は空き家問題につながるからなのですね。固定資産税というのは、市町村にとってみると大きな基幹税になります。市町村にとってみれば一番大きな税目でありますよね。  固定資産税というのは,そういう意味で市町村の大事な税金ではあるのですが、そのつくり方がいろいろと問題含みだと言われ始めているのが、例の小規模住宅に対する優遇措置だったりするのです。これが実は空き家問題を助長しているのではないかという指摘はあるわけです。もちろん空き家問題のまず第1は高齢化で、住む人がいなくなってしまった。その人が死んでしまったら、誰も住む人がいなくなる、そういう問題でもあるのですが、しかしもう一つは、その家は使っていないのだから空き家を取り壊して更地にすればいいのにと。ところが、それを空き家のまま持っていれば、例の固定資産税の評価額が6分の1に抑えられるということがあるので、はっきり言うとぼろ屋でもいいから家をそのままにしておいたほうが税金の負担が安いわけですね。更地にしてしまうと6倍に跳ね上がるということになってしまいますので、そういったことが空き家というものを生み出していくという話にもなりますし、どうしても小さい住宅ばかりができてくる、そういう問題にもなるわけであります。  川崎市の場合、タワーマンションも多いですが、タワーマンションがよく節税の道具に使われるという、その一つの理由としては、あれも固定資産税があったわけです。土地の占有面積が狭くなりますので、しかも前は階数によっても一律だった。今は高層階のほうの評価を重くしていますけれども、前はどの階でも土地の評価は一律だったので、土地の面積の狭い、でも高い高層マンションは固定資産税の負担が安かったわけです。  こういったところが住宅の在り方、空き家とかを含めた古い住宅への対応を結構難しくしている、そういう面も否めないということであります。これはずっと言われていることでありまして、固定資産税をもう少し適正化したらどうかという話はずっと言っているのですが、なかなか前へ進まない、そういう話にはなるかなと思います。  これで最後にしますけれども、税というのはその国の文化を変えるというのは有名な話でありまして、これは本当かどうかはあれなのですけれども、イギリスとかヨーロッパは昔、窓に税金をかけていた、だから窓が小さいのだという話とか、京都に行けばうなぎの寝床で家が細長いんですよね。あれは昔、間口に応じて税金をかけたからだという話があるんです。結果として細長い家をつくったということです。つまり税というのは文化をつくってしまうのです。  もしかしたら、日本の家をうさぎ小屋にしたのは固定資産税かもしれない。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、でもそのぐらいのインパクトがあり得るわけでございます。  しかも都市計画を考えたときに、固定資産税が都市の在り方、住宅の在り方をゆがめてしまうというのは避けたほうがいいだろうということ、これも考えなければいけないことなのですね。もちろん消費税もそうだし、法人2税もそうなのですけれども、税というのは財源確保というだけではなくて、税が社会、経済、まちの在り方に与えるインパクトというのも考えなければいけないということにはなってくるのかなと思います。このあたりも恐らくいろいろと課題山積かなと思います。最後の話は長期的な話としてさせていただきました。  大体予定していたお時間になりましたので、私の話は以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)
    青木功雄 委員長 佐藤先生、どうもありがとうございました。  それでは、御講演が終わりましたので、委員の皆様からただいまの件に質疑、御意見等がございましたらお願いいたします。 ◆織田勝久 委員 先生、ありがとうございました。政府税制調査会のお立場にありながら、かなり率直な御意見もいただけたかなと思いまして大変参考になりました。また、自分の学生時代の講義を懐かしく思い出したり、そういう楽しい時間を過ごさせていただきました。  幾つかお聞きしたいのは、制度設計のお話もいただいたのですけれども、そもそもこの委員会自体が大都市税財政制度調査特別委員会という名称でありますように、今先生が御指摘いただいたような課題を前提としつつ、政令市である川崎市が、さっきおっしゃった今回のふるさと納税個人住民税から控除される課題とか、本来、市民の皆さんの税金をどう行政サービスに還元するかというその財源の議論が川崎市はいろいろな意味で割を食っている。そういうことの中でこういう特別委員会をつくっていこうというのがそもそもの発端だったのですね。  それで1つは、ふるさと納税の課題なのですけれども、川崎市においては残念ながらこの制度がいい形で利用される、そもそもの制度の目的も含めてなのですが、そういう課題があると思うのですが、今後のふるさと納税の方向性として、川崎市が抱えているような財政問題の視点からの改善点みたいな、そういう御議論をしていただける余地というのがあるのかどうか。また、政府税調の中でそういう議論がされる可能性があるのか、お聞かせをいただければと思います。 ◎佐藤 参考人 ありがとうございます。まずふるさと納税についての改善点ですが、平たく言うと、返礼品はやめたほうがいいと思うのですね。これは自治体のためにもなりません。金の切れ目が縁の切れ目ならぬ、物の切れ目が縁の切れ目になってしまうんです。結局みんな飽きるわけです。こっちでおいしい果物があったからこっちへふるさと納税しよう。あっ、あっちでは牛肉があると、そっちへ行っちゃうわけでしょう。だから安定的なサポーターになってくれないんです。今日寄附してくれた人が明日も寄附してくれるという保証がない。  でも、本来ふるさと納税というのは自治体のサポーターをつくるはずだったのですね。東京の方でよく毎年沖縄に旅行に行くという方がいて、私は沖縄に強いアタッチメントがある。だから沖縄を応援したい。特に沖縄のビーチをきれいにするという環境保全の事業に対して私は応援したいんだということで、その人はずっと寄附してくれるわけです。あと夕張市なんかのファンもいますよね。そういう形で安定的なサポーターを得るということであれば、物でつってはだめなんです。自分たちのまちの魅力を発信しなければいけないわけなので、そういった意味においては返礼品というのは本来あるべき姿ではない。  しかも不公平ですよね。金持ちが2,000円で物をもらっているのですよ。牛肉をもらっているんですよ。やっぱりおかしいでしょう。それも考えると、本来は返礼品はだめと言うか、やるとしたら1人1回限りにするか、あとは返礼品の部分は特例控除の対象から外す。もし私が1万円寄附して5,000円の返礼品をもらったら、私の寄附は1万円ではなくて5,000円であると。だって、あなたは5,000円物を買ったのでしょうということになるからですね。私の純粋な5,000円の寄附に対してだけ特例控除を認めるとか、そういうやり方のほうが妥当なのだと思います。そういう意味においては、ふるさと納税は長い目で見れば返礼品の在り方は抜本的に考えざるを得ないと思います。  あともうちょっと皮肉を言うと、ふるさと納税で一番もうかっているのは多分楽天とかふるなびとか、あれは東京資本なのです。これはかつての公共事業に近いですよね。地方を活性化させるという公共事業で一番もうかったのはゼネコンでしょうというわけです。東京が本社であるということになりますので、実は中央資本がもうかっているということになってしまうわけなのですね。そういう意味ではふるさと納税はこの段階で非常にゆがんでいるのです。そこは見直していくしかない。返礼品は長い目で見ればやめたほうがいいなと私は思っています。それが1つ目、改善点です。  さて、政府税制調査会で議論するかという点ですが、2つの理由で多分難しい。1つは、総務省が議論したがらないだろうということで、アジェンダとして上げたくないだろうなというのと、御案内のとおり菅総理が発案者なのでポリティカリーにタブーかなと、そういったこともありますので、しばらくは難しいかなと。  ただ、もうちょっと前向きに考えて、もっと寄附金税制を充実させたらどうかというのは議論できると思うんです。ふるさと納税の話は横に置いておいても、この国というのはもう少し寄附文化があっていいと思うんですね。例えば今回のコロナでもそうなんですけれども、自治体をサポートしたければふるさと納税があるけれども、そうじゃない、私がいつも行っているあのラーメン屋さんをサポートしたいんだ、私がいつも行っているあのホテル、旅館をサポートしたいんだということであれば、クラウドファンディングっぽい話ですよね。あるいは劇団とか。私はファンの劇団があって、今は行けないけれども、劇場を残してほしいから寄附してサポートしたい。それは軽くクラウドファンディングです。こういったものを促すのであれば、もう少し通常の寄附税制というのは手厚くしてもいいのではないかということはあると思うのですね。  川崎市さん的に言えば、川崎市の中にある各種公益団体、NPOとか各種団体に対する支援を促すように自分たち寄附金税制を拡充するとか、そういったやり方はあってしかるべきだと思います。日本ではもう少し寄附金というのを活用する余地はあるのではないかと思います。 ◆織田勝久 委員 ありがとうございます。それから次に、さっき見えない受益と納税者の反乱というお話をいただいたのですけれども、これはやはり大きな問題。先生もお話しになったけれども、そもそも源泉徴収制度。本来は申告制度なのだけれども、事実上は天引きされてしまっている、そういう制度。それからもう一つは、何といっても戦後の日本の教育の中で税に対してということを全然教えてこなかった。これは社会保障制度も連動していると思いますけれども、そういう部分の課題はあると思うのですね。  それで私ども、ありがたいことに4年に1回、海外に視察に行く機会が与えられるんです。それで北欧などへ行きますと、こういうことを言われるのですね。我々の感覚だと税金は取られるという感覚なのだけれども、そうではなくて、税金は社会投資なのだ、自分たちの生活に対する投資なのだと。結局それに不満があれば、すぐ議員に言うなり首長に言えば変えてくれるんだ、そんなようなことを言われて、すごく衝撃だったのですけれども、政治と市民の皆さんとの距離の近さというものももちろんありますが、何よりも教育ですよね。どういう制度、仕組みになっているのかという、もちろん私ども自治体、議会の情報をしっかり出していくという努力ももっとしなければいけないと思いますけれども、基本的には税や社会保障に対する制度設計に対する教育を通しての、あえて言えば啓蒙という言葉を使わせてもらいますが、それがこの時期だからこそすごく必要だと思うのですが、政府税調の中ではそういう御議論というのは特にないのですか。 ◎佐藤 参考人 それはあります。実はこの間の中間答申にも書いてあったと思うのですが、租税教育はもっとちゃんとやらなければいけないということは言われています。もちろん租税だけではない。税金を取るだけではあれなので、社会保障。使い道を問われますから、皆さんからいただいた税金がどんな使われ方をしているのかについては、もっと子どもたちに早い段階で伝えていく必要はあるだろうというのはもちろん言われていますし、そこは考えなければいけないことだと思うのですね。  あともう一つは、大人の方、お父さん、お母さんの教育もしないといけなくて、子どもは学校で教育すればいいですけれども、大人の方々にはどういう形で発信していくのかということ、これは考えないと、しかも御案内のとおり今、ネットではいろいろなとんでも情報も攪乱するわけなので、間違えた情報が――もちろん思想統制しようとするんじゃないんです。消費税反対でもいいんです。私は別に思想統制をしたいわけではなくて、正しい情報を伝えたい、事実を伝えたいわけでありますので、そういった意味においてはもっと積極的な発信、メディア発信というのを政府の側、自治体の側はやっていかなければいけないかなと思います。放っておくと、国民は知らないのではなくてミスガイドされてしまうと思うんです。今のネットのこの情報の氾濫を見ると、ミスリーディングされてしまうと思うんですね。そういったものに対応するためにも、大人向けの話としては何らかのメディア戦略というのが必要になってくる。 ◆織田勝久 委員 ありがとうございます。最後に1つだけ、先生、とにかくこれから先の日本を考えて、社会保障の財源をどうするんだと、その議論もいただきました。それで、どうしても消費税の問題が出てくると思うんですけれども、例えばデンマークが25%と。これはちょっと高過ぎるということをおっしゃいましたけれども、逆に私ども現地に行って得た知見でいきますと、結局、高齢者になっても貯蓄は要らない。それは全部社会保障で、高い消費税の中で全部対応してもらえるんだと。結局、個人の貯蓄がなくても老後は安心して生活ができるんだという社会保障制度自体の制度設計と税との関係が明確であって、しっかりしているんですね。だからみんな高い税金を納得して払うんだと。そういうふうな話を聞いてきましたけれども、そういう御議論とセットで消費税の話をしっかりしていただくと、また国民サイドも違った意味での誤解もないし、消費税の論議が進むように思うのですが、そこは今、税調の中ではどういう御議論でしょうか。 ◎佐藤 参考人 ありがとうございます。2点申し上げるべきことがあって、1つは、そもそも何で消費税を上げるか。もともとは社会保障と税の一体改革だったので、政府としては社会保障を支えるための増税ですよと。結果として財政も健全化するので、財政、社会保障の持続性を確保できるんですよと、そういう姿だったんだけれども、消費税を段階的に上げていくというプロセスの中で社会保障が消えてしまったのですね。しかも、いいか悪いかはともかく、全世代型社会保障への転換とかなんか、方針自体が当初から変わっていったので、結局、税と社会保障の関係が見えづらくなったということがあります。そういった点においては、社会保障消費税をつなげるのはもともとの意図だった。だけど、それがどこかで切れてしまったのかなという気はします。  デンマークやスウェーデンのように、貯蓄ゼロで行くのは私は危ないとは思うのですけれども、でもそういう安心感があるというのは制度が持続可能だからですよね。今の若い人から見ると、率直に言って、人生の中での最大のリスクは社会保障です。だって、「年取ったときに本当に年金をもらえるの?」「年取ったときに医療はあるの?」ということが今問われているので、実は国民に安心を与えるはずの社会保障が今、国民、特に若い人に不安を与えてしまっているんです。それはなぜかというと、持続可能かどうかが問われているからなのですね。そこをちゃんと担保できるかどうかというのが1つ。  今気前のいいことを言うのは、続かないので私はあまりよくないと。継続は力なりでありますので、持続性というのはやはり、いつも社会保障は高い低いの水準ばかり議論するのですが、そうではなくて、これは続けられるかどうかということ、それをどう担保するか。それは消費税であろうが社会保障保険料であろうが、続けられるかどうか、そこにもっと目線があっていいのかなと思います。  2つ目の話、税調とのことで、これはすごく大事な御指摘でありまして、実は我々はできないのです。なぜか。我々は政府税制調査会で税の話しかしてはいけない。でも、それっておかしいんです。例えば、もうすっかり忘れられてしまっていますけれども、配偶者控除の見直しをしたときに、ある委員の方が、多分これが一番真っ当なのですが、配偶者控除をやめませんかと。それでは増税じゃないかと。いや、給付すればいい。所得の低い、まだ子どものいない夫婦世帯に対して給付を行うような措置をしたほうが、より困っている人とか本当に支援が必要な人にターゲットを絞れるじゃないですか。だから配偶者控除なんて満遍なくやるのではなくて、それは全部やめて、浮いた財源を使って給付にすればいいじゃないですかという議論が出たんです。それって、ある意味イエスなんですよね。ところが、結果的に最後の答申というか、中間報告の中ではそれは落ちているんです。なぜかというと、給付というのは我々のスコープじゃないということなんですね。  最近では給付付税額控除。所得税の改革をするときがそうですよね。所得税でも控除なんかで改革したって、あれは税金を払っている人しか減税を受けられないんです。一番困っているのは税金を払っていない人たちなので、もし再分配の強化というのであれば、税金を払っていない人たちにどうやって給付をするかということ、その視点が重要なのだけれども、結局、給付の話は税調のスコープではないので、結果的には給付は厚生労働省の管轄ですとなってしまうので、話はまた違うところへ行ってしまうのです。  海外は違いますよね。海外を視察されたら出てきたと思うのですが、給付付税額控除とか、そういう形で税制の枠の中で給付のやり取りもしていたりするのです。給付と税がちゃんと連動しているんです。制度的にも連動しているし、執行面でも連動しているわけです。ロジスティック的にも連動しているわけです。  だけど、日本というのは制度的にも分かれているし、ロジに至ってはホープレスに分かれているわけなのですね。執行面もやっている人が違うので分かれてしまうのです。そこが税と給付の一体改革が本来は必要だというのは間違いないと思います。 ◆織田勝久 委員 どうもありがとうございました。今後の先生の御活躍を期待しております。 ◆押本吉司 委員 今日は御講演をいただきましてありがとうございました。今、織田委員のほうからふるさと納税について中長期での改善点と、政府税調での現在の課題というのを御指摘をいただいたのですが、今、短期的な部分で言いまして、コロナ禍の農林水産省の助成金を使って、返礼品の3割が支払いの部分に充てられて、倍ぐらいの形の返礼品を実際に売り出しているポータルサイトが続々と最近出てきている。新制度は農水産品のある自治体が有利な側面があるというのは、先ほどの御講演のとおりなのかなと思っているのですけれども、第二次返礼品競争が始まったのではないかと私すごく危惧をしていて、コロナにおいてのこういった制度については、特に10兆円の国からの予算がありますから、コロナの影響があればあるほど、こういった制度は続いていくのかなと危惧をしておりまして、本来の目的、趣旨からはかなり逸脱をしている現状があるのかなと思っているのですけれども、そこについての所感をぜひともお聞かせ願いたいと思います。 ◎佐藤 参考人 もちろんその問題と、農林水産省のほうの助成事業はもともとは農林水産を活性化させたいだけであって、返礼品を活性化させたいわけではないので、本来は目的外使用だった。もちろんお金に色はないので組み合わせることは可能なのはわかるのですけれども、目的外使用だと思うのですね。今回、返礼品は3割とか、地元製品に抑えるとかと言いましたけれども、ループホールというか逃げ道は幾らでもつくれるわけでありまして、特に地元産と言うときに、農産物はいいのですけれども、加工品はどうなのよという話があって、有名になったのは、釜石市でエアガンが返礼品として出てきたのですって。どうやら有名な会社があるらしい。でも、エアガンというのは釜石の特産物と言っていいのかと言われると、つくっているのはそこかもしれないけれども、材料はほかから集めていますよねということもあり得るし、特産物と言うときに、貿易問題みたいですけれども何%までが現地でなければいけないのかとか、そういった話もあるんです。だから、逃げようと思ったら幾らでも逃げられると思うのですね。加工品だったら原材料を外から全部調達して、自分たちだけで組み立てて出すということは可能ですからね。  そうは言っても、総務省のために百歩譲って言うと、彼らの肩をちょっと持つと、少なくとも過熱化していたので、それをちょっと抑え込んだということはあります。ただ、御指摘のとおりこれで返礼品競争が終わるということではなく、しかも人間というのは悪いほうに頭が行くもので、必ずループホールを探す。その頭をもっと違うことに使えばいいのにと私はいつも思うのだけれども、うちの学生を見ていてもそうなのですが、人間の頭というのはどうしてもそっちへ行くんです。サボるほうに思考が行きますので、なので第二の泉佐野が出てくることは多分否めないかなと思います。 ◆押本吉司 委員 ありがとうございます。あと先ほどの改善点の中で様々な御指摘をいただいたのですが、川崎市のほうでは、2割の割合というよりも額面で上限を設けたほうがいいのではないのか、そういった御指摘も国のほうにさせてもらっているところなのですが、それについて所感をいただいてもよろしいですか。 ◎佐藤 参考人 それはいいと思います。ただ、その場合、少額の寄附のときにどうするのかという話になってくるので、恐らくどっちか低いほうというものですね。寄附額の2割か、一定額、例えば2万円までとか、その低いほうのどちらかに抑え込むというのはあっていいと思います。  たださっきのループホール、抜け道という形でいくと、実は5万円するものを3万円補助を出しておいて2万円で仕入れることも可能ですよね。もちろん普通にマーケットで売られているものを比較すれば明らかですけれども、特産物によっては比較対象がなかったりすると意外と難しいですよね。あと価格というのは変動するので、特に農産物の価格は変動しますので、魚などは昨日まで2万円だったものが今日3万円になりましたということもあり得るわけです。そこのところは執行面で少し留意がいるのかなという気はしているのですが。 ◆押本吉司 委員 今後もいたちごっこが続くのかなとすごく今危惧をしています。 ◎佐藤 参考人 この種の話というのはいたちごっこをして、そこにみんなのエネルギーが行ってしまうわけですけれども、抑えようとする都会の自治体も、何とかかき集めようとする田舎の自治体も、いたちごっこに労力を使うというのは、これ自体が実は無駄なのですね。もっと生産的なことに人間の頭というのは使うべきなので。残念なことに、どうもそこがこの制度のまずいところかなという気はします。 ◆押本吉司 委員 ありがとうございました。  あとちょっと話は変わるんですけれども、先ほど給付金の話があって、これからまた第2波、第3波という中で、もしかしたらそういった政策の選択をしていく可能性があるという中で、以前、最初のほうは10万円給付ではなくて、減収世帯に対して30万円給付というような制度をやろうとしていたのですが、それをやったときにはこういった混乱が起きなかったのか。私としてはそういった混乱はきっと起きたのだろうなと思っているのですけれども、その制度の違いというか、もしそれをやった場合にどういった問題点が起きたかということをわかっている範囲で教えていただきたいと思います。 ◎佐藤 参考人 ありがとうございます。問題は、収入の急減をどうはかるかだったと思うんです。実は同じ問題は持続化給付金とかにも言えるんですよね。前年に比べて一定割合下がるということなので。ただ、事業者の場合は、それがうそだったら話にならないのですけれども帳簿を持っていますので、それに応じて判断をするということになります。ただ、それは結局手間ですよね。だから持続化給付金も結構最初は手間だったし、雇用調整助成金に至ってはもっと手間だったわけです。したがって、もし収入を証明しろと言われると、適正にやろうとすると申請する人も負担になる。それを今回、簡素化してやってみたら詐欺行為が出てきたということになるので、ちょっと困るんです。  恐らくあのまま30万円でやっていたら、できないとは言いませんけれども、結構申請に手間がかかって、時間がかかり過ぎたかなという気はしています。  ただ皮肉なことに、一律10万円で時間がかからなかったかというと、対象者も多かったですからこっちも違う意味で時間がかかってしまったので、どっちが長く手間だったかと言われると、自治体の方からすると、10万円のほうが手間だったでしょうね。やはり対象者が多過ぎますものね。  では、どうしたらいいか。これは実は私、売り込んでいたアイデアがあって、ずっといろいろなところへ売り込んでいたのですが、一律にあげてしまえばいい。それで後で回収しよう。だって、年末になればその人の所得はわかるではないか。確定申告の欄に、あなたは幾らもらいましたかと聞いて、そこで計算して、所得が結果として高かった人からは返してくれと。結果として所得が少ない人は、いいです、そのまま持っていてくださいと。  これは何かというと、融資と給付のハイブリッドです。つまり、今は無利子無担保で融資をしているわけじゃないですか。売上げがなければ、場合によっては返せない可能性がありますよね。だから売上げが伸びなければ返さなくていいよという制度をつくればいいということです。そうすると、結果として救われた人たち、結果として後で挽回して所得を得た人は、それはそれでいいわけじゃないですか。所得があるのだから返す余地もあるわけでしょう。結果的に所得のなかった人は、そのまま持っていればいいわけですから、それはそれで彼の生活を支えてくれるわけなので、事後調整の仕組みを入れたらと、そういうアイデアを実はあちこちで出したんです。  ただ、これは多分できない。なぜできないか、わかるんです。これはなぜかというと、官僚の無謬性という問題です。つまり間違いがあってはいけない。最初に給付額を確定しなければいけない。事後調整して後で決めますよというのは、官僚の頭ではできない。結果的に見ると予算もどれぐらい出るかわからないので、別途の支出がどれぐらいになるかもわからないので、彼らの頭の中では多分なかなかやりにくいのだと思うんです。これは今の日本の官僚制度の問題かなという気もしているのですけれども、ただ、アイデアだけ言えば、今言った事後調整をやればいい。  実はこれに似ているのが、所得連動型の奨学金というのがあるじゃないですか。要するに勉強している間、学生時代はお金をあげますよ。働きながら返してねと。もしあなたの所得が少なかったら繰延べしてあげますよ、場合によっては免除してあげますよと、そういう制度です。あれも後払いなんです。所得に応じて返済額、あるいは返済のタイミングが決まってくるので、実はこういう制度が全くないわけではないんです。なので、やろうと思ったらできなくはないのかなとは思っているのですが、官僚からすると、新しい大きな発想の転換になってしまうので、なかなか難しいのかなとは思っています。 ◆押本吉司 委員 ありがとうございました。引き続きの御活躍をよろしくお願いします。 ◆渡辺学 委員 どうもありがとうございました。先生に聞きたいのが、先ほど消費税がいわゆる社会保障の財源ということでお話しされたのですけれども、一方で例えば京都大学大学院教授の藤井聡先生が、消費税のパーセントを下げて、そのことによって消費の拡大が図れるということで、消費をすることによって経済が回っていくという中で税収がふえていくのだ、そうした考え方でいろいろお話しされているのも聞いているのですが、その辺については先生はどのようにお考えなのかを伺わせてください。 ◎佐藤 参考人 ありがとうございます。藤井さんとはよく議論するのでわかります。それは実はラッファーカーブという考え方なんです。ラッファーさんという人の名前なのですね。実は遡ること今から40年前のレーガノミックスのときにこのアイデアがあったんです。第一次レーガン政権ですけれども、あのとき彼らは所得税の減税をやっているのです。どうしてかというと、減税すればまさに経済が活性化する。経済が活性化すれば、みんな所得を稼ぐようになるので、税率を下げたとしても結果的には税収は上がるのではないか、そういう壮大な実験をやってみたのですね。結果は双子の赤字をつくってしまったんですけれども、思ったようにはいかなかったということです。  否定はしないです。多分消費税を下げれば消費は増えるでしょうね。一時的かもしれないけれども増えるかもしれない。だけど、それが税率の下げた分を挽回するほど増えるかと言われたときに、多分答えはノーだろうという感じなのですね。  同じことは所得税にも言えるわけです。富裕層の所得税を下げましょうよ、そうしたら彼らはもっと頑張って働くじゃないのと。イエスかノーかわからないですよ。でも、働くじゃないか。あるいは脱税をやめる、節税とかをやめるじゃないか。結果的に課税所得がふえて、税率を下げた分が挽回できるじゃないかということを言う方もいらっしゃるのですね。でも、実際それに成功した国があるかと言われると、多分ないんです。  あえて言えば、途上国では税率を下げることによって、ただでさえみんな脱税ばかりしているので、少しは税金を払うようになってくれるので挽回したという例はあります。ただ、それは途上国の問題ですよね。日本みたいに成熟してしまった経済において、税率を下げてかえって税収が上がるというのは、よほどミラクルがないと、なかなかないかなと思います。もちろん一時的な増収はあるかもしれませんが、それはなかなか続かないだろうということも言えるかなと思いますね。やってみなければわからないというのは、答えの一つではありますが、多分楽観的過ぎると思います。そこまでのリバウンドをするほどの消費が増えるという見通しが多分つかないということになると思います。  藤井さんたちを含めて、もともと財政再建に反対する方々というのはいらっしゃるので、彼らはどっちかというと、とにかく成長さえすれば、おのずから税収がふえて財政赤字がなくなるのだと、そういうロジックで来るけれども、そのための成長というのは、多分2%では済まないと思うのですね。4%とか5%とか、中国ばりに成長したらもちろん答えはイエスですけれども、中国ばりで成長できない経済において、減税して税収をかえってふやすというこのモデルはなかなか成立しがたいかなとは思います。  念のために申し上げると、だからこそ本当は増税をするとき、消費税を上げるときに一方的に上げても困るわけです。経済がダメージを受けたら困るじゃないですか。だから本当は税を増税するときに、社会保障の問題だから増税はやむを得ないけれども、同時に経済の体力をつけていかなければいけないんです。経済の体力というのは、例えば高齢者や女性の方の就労を喚起するとか、もっと中小企業の生産性を上げるとか、そういう形での成長力をつけてあげなければいけないというのは事実だと思います。私は財政学者なので増税しろと言うけれども、増税だけやっていていいわけではないんです。あわせてちゃんとした成長戦略を組んでいかないと、ただでさえ低成長の国ですから、増税に耐えられないということになりかねないので、増税に耐えられるだけの体力をつくる。そのための構造改革、そういう側面はあるかなという気はします。 ○青木功雄 委員長 ほかに委員の皆様、もしくは少しだけお時間がありますので、昨年は委員以外の議員の皆様からも御質問をいただいたのですけれども、何かあれば。  議長、よろしいですか。 ○山崎直史 議長 大丈夫です。 ○青木功雄 委員長 それでは、長時間にわたりまして大都市における税財政制度の諸問題についての御講演を佐藤先生にしていただきました。改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  これが青本とか、今日の特別委員会の委員の皆様に党派別のお願いをさせていただくようになると思いますので、今日の御議論も含めて、来週も委員会がございますので、皆さんにはそれぞれまとめていただけたらと思いますのでよろしくお願いします。  ここで、佐藤参考人の退席となっております。どうもありがとうございました。(拍手)                ( 佐藤参考人退席 )         ───────────────────────── ○青木功雄 委員長 次に、その他として今後の委員会日程につきまして御協議をお願いいたします。   協議の結果、10月8日(木)に開催することとした。         ───────────────────────── ○青木功雄 委員長 その他、委員の皆様から何かございますでしょうか。                  ( なし ) ○青木功雄 委員長 それでは、以上で本日の大都市税財政制度調査特別委員会を閉会します。                午後3時28分閉会...