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平成27年冬季五輪招致・スポーツ振興調査特別委員会−12月07日-記録

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  1. 札幌市議会 2015-12-07
    平成27年冬季五輪招致・スポーツ振興調査特別委員会−12月07日-記録


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    平成27年冬季五輪招致スポーツ振興調査特別委員会−12月07日-記録平成27年冬季五輪招致スポーツ振興調査特別委員会  札幌市議会冬季五輪招致スポーツ振興調査特別委員会記録            平成27年12月7日(月曜日)       ────────────────────────       開 会 午後1時     ―――――――――――――― ○長谷川衛 委員長  ただいまから、冬季五輪招致スポーツ振興調査特別委員会を開会いたします。  報告事項でありますが、伊与部委員からは、欠席する旨、連絡がありました。  それでは、議事に入ります。  冬季オリンピックパラリンピックの招致についてを議題といたします。  本日は、早稲田大学スポーツ科学学術院の原田宗彦教授を参考人としてお招きしております。  本日の委員会の進め方としては、最初に原田教授にお話をいただいた後、各委員から質問を受けたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  委員会を開催するに当たりまして、一言、御挨拶を申し上げます。  原田教授におかれましては、大変多忙な中、本委員会への出席にご快諾をいただき、心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。  本日の議題であります冬季オリンピックパラリンピックの招致につきまして、本市においては、2026年大会の招致に向けた開催概要計画策定のために、原田教授が委員長を務める検討委員会で大会のコンセプトを中心に議論がなされており、本市議会においても、これまで、招致に関する報告を受けての議論や市内のスポーツ施設などの調査を行ってきたところであります。原田教授には、過去のオリンピックパラリンピックの招致活動にご尽力されてきた経験を踏まえ、お話を伺いたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。  それでは、原田教授にお話をいただきますけれども、最初に略歴についてご紹介させていただきます。  昭和52年に京都教育大学教育学部をご卒業され、筑波大学大学院ペンシルバニア州立大学博士課程を修了された後、大阪体育大学大学院の教授を経て、現在は早稲田大学スポーツ科学学術院の教授を務められております。また、サッカーJリーグの理事のほか、日本スポーツマネジメント学会会長など、さまざまな公務を務められる一方、先ほど申し上げましたが、本市の開催概要計画検討委員会の委員長も務められており、オリンピックパラリンピックスポーツマーケティング等に関して深い見識をお持ちでいらっしゃいます。  それでは、原田教授、よろしくお願いいたします。 ◎原田宗彦 参考人  こんにちは。  ただいま、ご紹介にあずかりました原田でございます。
     きょうは、このような貴重な機会を設けていただいて、ありがとうございました。  今から60分の予定でお話をさせていただき、後で質疑応答に移るということで、よろしくお願いいたします。  それでは、時間も限られておりますので、早速、私の話から入っていきます。いつも、講義では立ってやりますので、きょうも立って話をしたほうがアドレナリンの回転がよくて話しいいのかと思います。  最初に、皆様のお手元にある資料に沿ってお話しさせていただきます。  まず、オリンピックとはというそもそも論のところから入りたいと思います。  間違いなく世界最大のスポーツイベントで、この五輪マークを見せると、世界の94%の人がオリンピックだとわかるぐらい認知度が高いです。これは、メルセデスベンツのスリーポインテッドスター、赤十字のレッドクロスをしのぐ知名度になっています。オリンピックは、卓越、エクセレントですね、それから友愛、フレンドシップ、尊敬、リスペクトを軸とする世界最強のブランドと言われています。  かつて、オリンピックはのどかな大運動会だったのです。それが、適者生存の戦いに勝ち残ってイベントをつくり上げていったという著しい進化の過程があります。世界的な注目、膨大な企業協賛金、高額な放送権料、これは、いろいろな類似イベントとの生存をかけて長い熾烈な戦いの中で勝ち取ったオリンピックだけに許される特権だということで、IOCが持つ権利というのは非常に大きなものになっています。  例えば、これが、The Olympic Partner、略称TOPと言うのですが、TOP1、1985年、88年の9,600万ドルが四半世紀で約10倍の額になっています。左にあるのがトップスポンサーで、世界の名立たる企業がありますが、その中にパナソニックが入っています。パナソニックは、1社で2017年から2024年まで8年の契約で、350億円から400億円ぐらいの契約を早々に結んでいます。ということで、平成26年のプログラムは全く決まっていないのが現状です。  さらに、喜ばしいことに、ここにブリヂストンとトヨタが世界最強のイベント、TOPのカテゴリーに名を連ねることになりました。ブリヂストンが2024年まで、トヨタは2017年から世界でマーケティングと、再来年からは世界中でトヨタがオリンピックマークを使ってマーケティングをするようになります。これまで、自動車産業というのはいろいろな国にあったので、IOCはこのカテゴリーはだめだということで認めなかったのですが、初めてトヨタがTOPスポンサーになったということです。  今のお話をまとめますと、3社がワールドワイドパートナーという最上位のTOPのスポンサーで、今、当国のゴールドパートナーが、実は東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会についている協賛企業です。その下が当国のオフィシャルパートナーで、額は若干安くなるのですが、これだけの企業がついていて、今、2,000億円を超える協賛金が集まっています。これは、史上最高で、北京オリンピックをもしのぐ物すごい額です。さらに、このカテゴリーを分けたり、もう少しふえるのではないかと言われていますが、ご存じのように、エンブレム問題や新国立競技場問題で、準備が滞っているのが現状ですけれども、盤石の体制でオリンピックに臨むことも不可能ではないという状況です。  一つ、オリンピックマーケティングで気をつけなければいけないのは、権利を保有しない企業や個人が権利者の許可を得ずに権利を利用する便乗広告というマーケティングテクニックです。ですから、2020年の東京では、スポーツをイメージしたような看板とかバナーとかが出始めるとアンブッシュマーケティングに引っかかるということで厳しく規制されます。ロンドンのときは、ゲームズとか、2012年ロンドンの夏のスポンサーは、メダルの金銀銅というのはNGで使えなくなりました。今も、我々が勝手に五輪マークを店の前にどんと出したりするのはNGです。ということで、商標法というもので制限されます。  左下に見えるのが1998年の長野のときの事件だったのですが、長野名物のおやきを地元の人がどうぞ食べんしゃいという感じで選手に配ったら、スポンサーのマクドナルドが、いや、これは日本のマクドナルドだろう、ビッグマックだろう、だめだということで、せっかくの地元の好意がだめになったということもありました。  右は、カフェオリンピックというものがロンドンにあるのですが、オリンピックはだめだということで、ちょうど「O」のところが隠されて、カフェリンピックになったのです。もちろん、オリンピックが終われば大丈夫です。それから、ベーグルショップは、ベーグルで五輪マークをつくって前に出すというのもアウトみたいな規制が引かれるということなので、いささか窮屈な状況になるということも現状です。  これを見ていただくと、これは億円なので金額は大体わかっていただけると思うのですが、オリンピック大会の放送権料というのは加速度的にふえています。毎回、もう無理だろう、ここまでだろうと言われているのに、さらに上がっています。2018年の平昌と東京は、多分、5,000億円になるだろうと。ただ、その半分が組織委員会におりてきますので、オリンピックをするほうにとってはこれは非常に大きな収入源になります。ただ、見ていただきますと、東京オリンピックは5億円なので、1,000倍に価値がふえています。消費者物価指数の伸びを見ていても、物やサービスの価格が1,000倍に上がることはないです。オリンピック大会の放送権料というのは、今、法外な値段にふえつつあります。それだけスポーツの価値が高まっているということです。  これは、全然別の資料ですが、イングランドのプレミアリーグも放送権料が非常に伸びています。69億ユーロなので、1兆円近いお金になっています。1試合当たり、大体1億円ぐらいの放送権料です。日本が大活躍したラグビーのワールドカップも同じように、放送権料は非常に低かったのですが、2015年のイングランド大会からどんとふえまして、さらに2019年はふえると言われています。ラグビーの場合は、オリンピックと違って日本の組織委員会には放送権料が一銭も入りません。チケット収入だけという厳しい状況です。それを変えようという動きも今はありますが、IOCとはまた違う仕組みでやっていまして、放送権料の伸びだけはオリンピック並みにふえてきているということです。かように、スポーツに対する注目度は高まっています。  2020年東京オリンピックパラリンピック大会の意味なのですが、巨大なステークホルダーを擁するオリンピックシステムが東京をビジネスのプラットホームにして動き出すということで、先ほどお見せしたようなさまざまなスポンサーも含めて、非常に世界の注目を集める2カ月間になりますから、それにうまく乗って日本の経済や観光をどう活性化するかという仕組みづくりも求められています。  この本は、去年、私が翻訳した本で、「オリンピックマーケティング」というものです。今、アマゾンの中古品で買えますので、もしご興味があれば、ワンクリックで一度注文していただければと思います。  今のがオリンピックに関する情報提供でして、ここから本題に入っていきたいと思います。  スポーツ産業の進化と多様化するスポーツの役割ということです。  これは、フランスのシャモニーでやっていて、バットマンスーツで飛び出して、物すごいスピードで駆け抜けていくスポーツですけれども、従来のスポーツでは、地域経済の活性化は非常に困難です。例えば、体育などの身体教育、あるいは健康教育、余暇教育、競技力向上などは公金投入が妥当、すなわち税金でやるべき仕事です。非常に重要な領域です。ところが、スポーツに地域を動かす力が備わってくるわけですね。それが、アマチュアイズムからいわゆるビジネスイズムへの大きな転換、パラダイムシフトというものがあったわけです。  そこで何が起きたかというと、スポーツ産業ハイブリッド化グローバルビジネス化です。ハイブリッドというのは、よくハイブリッド米と言いますよね。冷害に強い米をつくるために、異種混合米というのですか、いろいろなものをかけ合わせてつくるハイブリッド米というものが有名ですが、スポーツ産業が異種混合産業になってこれがさらに大きくなったという意味です。  それを図で見ていきたいと思います。  1980年代以前はこういう感じでした。例えば、スポーツ用品産業のミズノは、実は創業110周年に近づいていまして、世界で一番古いスポーツ用品産業で明治時代からありました。もちろん、スポーツ施設産業ということで昔からラグビー場をつくったりテニスコートをつくったりする業者はいたし、アサヒスポーツというのは、大正時代に創業されていて、今の「Number」みたいな本もありましたし、そういった産業もあったのですが、全てがばらばらに存在していました。私が学生のころの1970年代後半は、スポーツ産業という概念はないわけですね。スポーツ用品屋が日常生活用品、スポーツ施設産業は建築業界の話で、こっちはメディア業界の話でした。  ところが、時代が進みまして一つが大きくなっていくと複合領域が生まれるわけです。それがスポーツ関連流通産業スポーツ施設空間マネジメント産業、そしてスポーツハイブリッド産業です。ここで非常に大きな発展が生まれます。例えば、大店舗規制法というものが撤廃されますので、非常に大きなメガストアというものが生まれます。そういう中で、小売業のチェーン化による多店舗展開、例えばゼビオドームですが、今、日本中にありますね。昔は、ああいうものはつくれなかったです。それから、スポーツ用品製造小売業の垂直統合ということで、生産、直販で卸売みたいな中間マージンをとるようなシステムがなくなりました。あるいは、並行輸入で輸入品のスキー板が非常に安くなった、オンライン優先権利ビジネスです。一番すごかったのは、ライセンス商品です。例えば、アディダスのマークがついているシャツとついていないシャツでは価格が5倍ぐらい違いますが、みんなは、どちらを買うかというと、こちらのほうが格好いいということでマークがついたものを買います。そういったブランド化というものが大きく進展するわけです。シューズなんかは特にそうです。普通に買えば何千円のシューズが2万円ぐらいするというわけではないのですが、そこに付着する記号とか文化とかファッションとかライフスタイル、いろいろな意味が付着してスポーツ用品がつくられています。今、ナイキが3兆円産業です。アディダスが2兆円ぐらいでアシックスが4,000億円産業になっていますので、ここの領域で産業規模が非常に拡大しています。  1980年代の初めには、まだフィットネスクラブというものはなかったです。会員制度とかアスレチック、リハビリテーションやスポーツ医学などが入って、インストラクターができて、フィットネスビジネスが生まれるわけです。これが、今、日本で4,000億円市場に育っています。レッスンビジネスというのは、スキースクールテニススクールスイミングスクールですね。施設運営ビジネスというのは、指定管理者みたいな運営委託業者なんかのビジネスもできましたし、そこに人材を派遣するビジネスも生まれています。権利ビジネスとしての施設命名権というものも大きな市場です。  こういった全く新しい産業が生まれたというのも過去30年ぐらいのことで、きょうのテーマの冬のオリンピックもそうですが、全て、ど真ん中にありますスポーツハイブリッド産業の中で起きています。メガスポーツイベントは、FIFAワールドカップもそうだし、ラグビーワールドカップもそうだし、プレミアリーグもそうだし、Jリーグもそうです。この中で起きているハイブリッド産業というのは、非常に大きなパワーを持っています。スポーツツーリズムとか権利ビジネススポンサーシップ全般というものがここに入ります。先ほどのオリンピックスポンサーシップもここに入ります。  今後、これがどうなるかといいますと、食、アミューズメント、観光、ファッション、健康、アート、医療、そしてICT、インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジーです。今、パナソニックは、2020年に向けて自動翻訳機というものをつくっておりますけれども、ICTも大きくなるし、さらに、パラリンピックとの関係で福祉と介護です。ものづくり系の技術なんかがこれから非常にふえていきます。最先端の義足とかウィルチェアスキーとか、そういった技術開発もここで起きたことなので、周辺領域を巻き込みながら、今後さらなる発展が期待できるというのがこれからのスポーツ産業ではないかと考えます。  もう1点、おもしろい事例をご紹介すると、青い棒は、年間に1世帯で使うお金の額です。大体300万円とか200万円前後ですが、2011年にどんと下がります。あれは、東日本大震災です。その前にリーマンショックなんかがあって下がりぎみだったのが、最近また上がるというように、結構でこぼこします。  ところが、折れ線グラフスポーツ関係費です。つまり、スポーツをしたり、ジョギングシューズを買ったり、テニスのラケットを張りかえたり、子どものお稽古事に払うお金というのはほぼ一定しています。特に、東日本大震災で家計がどんと落ちるのに、反対にスポーツ関係費がふえているとか、非常に不況に強い産業です。大体、人のライフスタイルというのは余り変わらないですね。不況でもテニスをする人はするといった話になると思います。  3番目のテーマは、オリンピックレガシーとスポーツツーリズムの発展ということで、徐々にきょうの本題に触れていきたいと思います。  これは、オリンピック・レガシー・キューブというものです。レガシーというのはオリンピックで残す遺産という意味です。もちろんネガティブな遺産もありますし、ポジティブな遺産もありますし、有形、無形、計画的あるいは偶発的と分けますと、大体、色がついているところが計画的にポジティブに残す形のある遺産です。特に、オリンピックでつくった施設をどうするといった話がそこになります。  きょう、皆さんにお話ししたいスポーツツーリズムというのはここです。ポジティブで計画的なのですが、形がありません。ツーリズムなので、物で残るのではなく、経験で残るといった新しいビジネス領域になります。  白くてちょっと見にくいのですが、これは何を示すかというと、ロンドンオリンピックの観光客の対前年比です。前の年に比べて何%上がったとか下がったという折れ線グラフです。一番落ち込んでいるところは、実はオリンピックのときです。第3クオーターなので、7、8、9月のちょうどオリンピックパラリンピックのときにロンドンに来たのは68万5,000人で、前年比マイナス4.2%です。考えたら、ホテルが5倍ぐらいになったり、テロの危険性があったり混雑したりで、普通にロンドン観光に行く人はちょっとやめておこうということで引いていったわけです。ですから、東京オリンピックのときには観光客がわんさか来るとよく言いますが、あれは恐らく正しくないです。APAホテルが1泊8万円とか10万円ぐらいしますので、ちょっと行けないですね。  ところが、何が起きたかといいますと、五輪を主目的とする訪英外国人旅行者スポーツツーリストですが、その平均支出額は約26万1,000円であり、同時期に多目的で訪英した外国人旅行者の約2倍になります。ということで、スポーツツーリストというのは、チケットも買いますし、結構裕福な方が来て長い期間泊まりますので、たとえ落ち込んでも外国人の消費額はそれほど変わらない、あるいは、ふえることになります。  もっとすごいのは、オリンピックの1年前の観光客は1.7%です。ところが、オリンピックが終わった後は6.2%にふえるわけです。一番ふえたときで12.1%です。ですから、東京もそうですし、もし仮に北海道でオリンピックが開かれた場合、札幌の観光にはこういう効果が期待できますし、これを計画的にどうつくっていくかというのが実はオリンピック計画のレガシープランの中で重要な位置を占めることになります。そういうことで、今、オリンピックとツーリズムというのは、不即不離の関係といいますか、分けては考えられない時代になってきました。  それでは、スポーツツーリズムというのは一体何なのだろうかということです。  本当に簡単に言うと、スポーツで人を動かす仕組みをどうつくるかということになります。これは、四季を通じてつくれます。この写真は、四国の吉野川のリバーラフティングで、私が学生と一緒に行ったときに撮ったものです。何もなければただの川なのですが、そこでリバーラフティング業者がたくさんのビジネスを展開します。そうすると、遠くから若い人が来て、泊まって地元にお金を落とす。別に、スタジアムをつくる必要もないし、アリーナをつくる必要もない。施設整備は一銭もなしです。今ある自然を使うわけですね。そこにビジネスが発生する。すなわち、こういう隠れた資源であるスポーツを旅行商品化し、見る、する、支えるスポーツ、新しい旅の目的の需要創出、こういうおもしろい観光の一つの形態です。  重要なのは、来る理由をつくることです。なぜそこに行かなければいけないのか、なぜ吉野川なのか、リバーラフティングなのだ、こういうアトラクションとしてのスポーツイベントの重要性がここで問われることになります。  非常にシンプルなのです。黄色いのがスポーツツーリストです。旅行者がJRや飛行機やバスでスポーツアトラクションに移動し、移動した場所でサービスが提供されます。そして、ホテル、旅館、飲食、ギフト、お土産と、ここで経済的な効果が起きます。そうした旅行情報が旅行ガイドに載せられてスポーツツーリズムが伝えられます。  スポーツアトラクションというのは、何でもいいわけです。マラソン大会でもいいし、子どもたちの野球の大会でもサイクリングのイベントでもいいし、スキーでもいいということです。要は、誰がそれをするのだということなのですね。従来、日本には社会体育課とかスポーツ振興課がありましたが、仕事は非常にたくさんありまして、スポーツツーリズムに特化してやる組織がなかなかなかったということで、日本スポーツツーリズム推進機構という官公庁からスピンオフした一般社団ですが、今、そこがスポーツコミッションを全国につくろうという動きをしています。札幌市にも来年つくられる予定ですが、そういった組織が中心になってスポーツイベントを誘致したり、つくったり、スポーツで人が動く理由をつくります。駆動力としての地域スポーツコミッションの役割ということになりますが、そういう組織が重要になってきます。  日本というのは、山が高くて、谷が深くて、川の流れが速くて、昔はアウトドアスポーツに向いていないのではないかと言われていました。ところが、今や、それがすごいアドバンテージに変わっています。見ていただいたらわかりますとおり、平地だと、ウオーキング、マラソン、ツーリング、トライアスロン、あるいは、泳ぐのはオーシャンスイム、潜るのはスキューバダイビングなど、いろいろなことが出てきます。流れるのはリバーラフティングで、滑るのはスキー、山スキー、滑空するパラグライダー、飛び込むのはキャニオニングというスポーツがありまして、滝つぼに飛び込むようなスポーツです。それから、落下するのはバンジージャンプで、さらに飛翔する気球と、高低差を利用したアウトドアスポーツの可能性が高いわけです。北海道全土を見ても、多分、全ては開発されていないと思います。いろいろな可能性を持つ場所があるのではないかと考えるわけです。  まちづくりにおけるスポーツの役割ですが、簡単に言いますと、さらによい生活が送れるように、道路やまち並み、景観といったハード部分と、歴史、文化、芸術、スポーツ等のソフトの両面から改善を図ろうとするプロセスとして、生活改善創出としてのスポーツの役割というものが世界的に注目されてきております。それを、今、スポーツによるまちづくりと呼んでいます。  スポーツツーリズムに関する関心の高まりを示しているのがこの数字です。実は、2005年に私自身がやった数字ですけれども、グーグルでスポーツツーリズムを検索するとわずか211件しか出ませんでした。それが、去年の年末では130万件です。つい先月の末にやってみると2,460万件でした。すなわち、スポーツツーリズムという固有名詞がネット上を飛び交うソースを示していますが、非常に話題に上ることがふえてきているということです。  それでは、スポーツツーリズムの需要というのは本当にあるのかということです。  三菱UFJリサーチコンサルティングによると、2014年の調査で、大体50%がスポーツを目的とした観光旅行に行ったことがあるということでした。その中の27.8%がスポーツ大会や競技会に参加し、42%がスポーツ観戦を行っています。さらに、全体の45%が今後もスポーツを目的とした観光・旅行の意向を持つと回答していますので、かなりの潜在需要があります。これは日本人だけですので、これを世界に広げていくと非常に大きな需要につながります。  今、日本のスポーツイベントの増加ということも非常に注目に値します。フルマラソンは、1万人以上が走る大会だけで197あります。他のランニングイベントを入れると、全国で約2,000大会が開かれています。トライアスロンは、1.5キロ泳いで、40キロをバイクで走って、さらに10キロをランニングしますが、そういった苛酷な大会が、今、290大会開かれています。これもすごいですね。ほぼ1日1回はどこかでやっている。それから、クロスカントリースキー的に山道を走るようなトレイルランというスポーツは、今、270大会です。これ以外にも、自転車で坂を上るヒルクライムレースとか、さまざまな耐久性スポーツのイベントが開かれています。なぜこれだけふえたかというと、県外参加者をたくさん集めて、そこで経済効果を生むのだという姿勢が明確になってきたからです。スポーツで人が動く理由をつくり始めたという現状で、それが全国のマラソン大会の数になっています。  これまで、日本人を対象にこういったスポーツイベントをやってきましたが、海外からの引き合いもふえています。東京マラソンは大体30万人以上が応募して3万人が走るというすごい大会ですが、今回は外国人枠を5,000人と設定したのです。すると、1万5,000人の外国人が応募してきて、その内訳がこんな感じです。台湾、アメリカ、中国、香港と、非常にバラエティーに富んでいます。中国からも510人が参加します。中国人は爆買いしかないみたいなイメージですが、実はかなりスポーツをやり始めています。多分、リピーターで何回も来るうちに、団体旅行から今度は個人手配の旅行になって、かつて日本人がたどったように、スペシャルインタレストツーリズムという特定目的で日本に来る中国の方もふえてくるのではないかと思います。  2011年から2013年にかけて、北海道を訪れた外国人観光客は57万人から115万人へと倍増しています。その中で、オーストラリアのスキーヤーは2万人から3.5万人とふえました。ほぼニセコだと思うのですが、現在は日本らしさを求めて白馬や野沢といった本州のスキー場に流れています。今、野沢温泉のスキー場は、何と全スキーヤーの3割が外国人で、その7割がオーストラリア人です。さらに、驚くべきは、私の研究室で野沢、白馬を調査しましたが、平均世帯年収が約2,050万円です。共働きなので1人1,000万円を稼いでいるような人たちが3万5,000人来まして、1家族が大体30万円を野沢温泉に落としています。そういったことは余り知られていませんが、実は非常に大きなパワーを持った消費者です。特に、冬のスポーツツーリストはすごいですね。2014年に北海道を訪れた外国人は154万人で、2015年は、今、数字を持っていませんが、さらにふえることが予想されて200万人に近づいているはずです。  これは、共起ネットワークという分析ツールで、何で野沢に来たのか調査してみますと、大体こんな感じです。これは、インタビューの答えを文脈の中で分析していくのですが、雪、パウダー、食事、文化、ラブリー、ビューティフルとか安い、夜、ナイトライフはすごく大事です。彼らはオールナイトでやりますので、夜がないと来ません。あとはフレンドリーです。こういう仕組みがわかってきましたので、今後、スノーリゾート開発にとってこういったものは非常に重要なポイントになると思います。ことしは、できればニセコで同じような調査をしたいと考えています。  それでは、スポーツツーリズムがなぜこれだけ盛んになったか、その政策的な流れです。  2007年に観光基本法ができて、それにのっとって2008年に観光庁が生まれました。2010年にスポーツツーリズムが提唱され、その推進連絡会議が開かれました。たまさか、私がそこの座長を務めましたので、この流れで国交省と文科省の中に公式な文言として埋め込まれまして、スポーツツーリズムの推進基本方針が策定され、観光庁からスピンオフした一般社団として日本スポーツツーリズム推進機構、JSTAというものが生まれました。この機構を中心に、今、全国にスポーツコミッションをつくって、スポーツイベントで地域を活性化してもらおうという動きに努めております。  JSTAの役割は非常にシンプルです。自治体、企業、スポーツ団体といったネットワークを形成し、カンファレンスというものを年に1回やり、コングレスを年に2日間やります。去年は沖縄でやりまして、来年1月末には飛騨高山で行います。あとは、月1回セミナーをしながら啓蒙しています。それから、今言いましたように、地域にスポーツコミッションをどんどん組織化していこう、そしてインバウンド観光を促進しよう、今、そういう流れの中でJSTAを運営しております。  では、スポーツコミッションというのは具体的に何をやるところだろうということですが、ここに出ているのは新潟の文化・スポーツコミッションです。新潟は、ご存じのように、アルビレックス新潟とか、野球の独立リーグとか、剣道とか、意外とスポーツの盛んな地域です。ここは、文化とスポーツのコミッションというものをつくって新潟を元気にしようとしています。  一言で言うと、スポーツによる地域活性化の司令塔、スポーツと観光の融合、やはり、地域が真水の経済効果を得るには、域外からの来訪者による消費誘導効果が必要になります。例えば、ある地域ですごく大きなイベントをやり、たくさん人が来て、飲んで食って物すごい消費が出たとしても、それは地域内で限ると経済効果はゼロです。きょう飲み過ぎたからあした控えるぞ、きょうはお金を使い過ぎたからあしたはちょっとやめようねみたいな感じでゼロ・サム・ゲームをやっています。真水の経済効果を得るには、域外から人を呼び込んでお金を使ってもらうということで、日本で言うと、海外から来てもらうということが重要になります。  スポーツイベントの合宿の誘致、隠れたスポーツ資源の開発、イベントの主催、誘致ということです。これは、レッドブルのモトクロスのイベントですが、これも施設をつくる必要はないです。公道とか広場の使用許可等で、そういったプロモーションで人が集まります。こういったアーバンスポーツ的なイベントも今後盛んになるのではないかと思います。  スポーツコミッションの役割は、観光振興の視点では、アトラクションとしてのスポーツイベントの誘致開発、経済効果を狙った域外からスポーツツーリストの誘客、そして地域資源を最大活用したアトラクションの創造ということで、スポーツ振興の視点では、既存のスポーツイベントや地域密着型プロスポーツの支援、地域独自のスポーツ文化の育成、例えばメッカづくりです。あるいは、健康・長寿社会の対応というところで、これも、まさに今の政府が進める地方創生の推進に乗った政策になっております。  現在のところ、設置されたスポーツコミッションはこういう形です。一番最初にできたのがさいたまスポーツコミッションです。さいたま市は、浦和市や大宮市や与野市など幾つかが合併してできた人口120万人ぐらいの市です。浦和と大宮と言うと、Jリーグのチームがあって非常にライバルですが、清水勇人市長は、それを一体化していきたいということで、スポーツだと。さいたま市というのは、住民の民度は非常に高いのですが、温泉も海も山も雪も何もないので、スポーツでまとめようということで2011年に設置されました。その後、新潟、十日町、松本、宇部、札幌市も来年に予定されています。あとは三島です。県では、佐賀、愛知、岐阜、沖縄県が既につくっていますし、広域エリアでは、関西エリア、あるいは、盛岡8市町村で、来年に国体が開かれますので、それを契機に盛り上げようとつくっています。それから、静岡県も非常に熱心です。西部、中部、東部と広いのでそれを分けつつやっています。鳥取県も平井知事が非常に熱心にこれを動かされています。北京の世界陸上でジャマイカの合宿をやって、多分、2020年もジャマイカが合宿するようで、言質はとったというようなことをおっしゃっていました。ジャマイカが来るとすごいですね。そのときにはボルトはいないと思うのですが、もしスターが出ていれば、世界中のメディアがオリンピックの直前に鳥取県に来るので、ホテルは大丈夫かなと今から心配しますが、そういうことも今はやっています。  これがさいたまスポーツコミッションです。今、5名の専従スタッフで多くのイベント誘致に成功しています。こういった日英のパンフレットをつくりまして、誘致活動に行くわけです。ですから、コミッションの人は、全国を飛び回っていろいろなところでイベントを誘致しています。できて3年半の時点で経済効果を測定しました。誘致したイベントでは、必ず簡単なアンケートを配って、幾ら使ったかをはかって経済効果を測定します。すると、3年半で233.6億円という数字になりまして、スポーツコミッションがなければ、さいたま市ではこういった経済効果は起きていないということです。  さらに、クリテリウムという周回レースです。ツール・ド・フランスというのは、フランスじゅうを周り、自然豊かな景色が有名ですけれども、クリテリウムは、都会の環境の中でぐるぐる回る周回レースで、半日のイベントです。これを誘致しまして、この観客が20万人です。この経済効果を我々の研究室で測定しましたが、約28億円から30億円になりました。大成功です。それから、市としては非常に珍しく複数年契約のイベントです。議会の承認をいただいてできるようになったということで、来年と再来年に開くことが決まっています。ですから、先ほどの233.6億円に30億円、30億円の60億円を加えると、大体300億円の経済効果が生まれています。ここにはツールの数字はカウントされていません。  これがことしのパンフレットです。毎年、いろいろなところを改善しながら、いいイベントになります。  これは余談ですが、ツール・ド・フランスをやっているASOという会社があって、そこが世界のいろいろなところにさいたまクリテリウムのニュースを配信するのですが、そのシティセールス効果が36億円あると試算されています。そういうことで、シティセールスの視点からも重要なイベントになっております。  ちょっと見にくいのですが、これは、佐賀県スポーツコミッションのホームページの一つになっていて、全てがゼロ円です。何がゼロ円かというと、スポーツ施設練習場の予約確認、使用手続のお手伝いがゼロ円、合宿地周辺施設のご紹介がゼロ円、お住まいの住所から佐賀県までの移動、ご案内がゼロ円、地元の人しか知らない佐賀県内のお勧めスポットの紹介がゼロ円、ややこしい補助金申請、割引情報提供、コストカット支援がゼロ円です。要は、電話一本ください、全部をお手伝いします、それがスポーツコミッションなのです。ですから、やはり行政の中にないとだめですね。道路の使用許可とか、お弁当の手配から、ボランティアの手配から、合宿所の案内までできます。ただ、こういうサービスがないと、単に合宿だけを呼んでも、一回来て、はあみたいな感じでなくなる可能性もあります。これを国際的なところでやっていくことも今後は重要になってきます。こういったスポーツコミッションというものが動き出しています。  佐賀県も、北京の世界陸上に合わせてニュージーランドの陸上チームを呼んで合宿をやっています。いろいろとノウハウを仕込んでいますね。例えば、嬉野温泉でオランダの女子野球の合宿をやったときには、どうぞ温泉につかってリラックスしてくれと言うと、コーチが、いや、体調が狂うから温泉には入ってはだめとか、あるいは、非常に身長があるのにテーブルが低いとか、そういった合宿を誘致してみないとわからないようなノウハウも少しずつ積み重ねている状況です。  世界の観光産業ですが、今、観光産業の市場規模は600兆円です。世界のGDPの9.3%です。世界の10人に1人が観光産業に従事して、2012年に10億人、2020年に13.6億人が海外旅行をするだろうと予測されていますが、大体、毎年、この数字は裏切られて大きな方向に振れていっています。ひょっとしたら、13.6億人以上の人が海外旅行をすることになると思います。  これは、皆さんもよく知っているように、日本に来たインバウンドの外国人の数ですが、2003年から2012年まで800万人以下です。1,000万人に届かなくて、2013年に初めて1,000万人を突破して、当時の観光庁長官の久保さんと、やりましたね、すごいね、これを減らしてはいけないよねみたいな話をしたことを覚えています。ところが、2014年は1,340万人で、2015年は恐らく2,000万人に近い数字になるだろうと思います。政府は2020年に2,000万人という数字を立てているのですが、大きく裏切られまして、2020年には何人になるのだろうと非常に興味が湧きます。これは個人的な意見ですが、どれぐらいかかるかはわかりませんけれども、3,000万人まではふえるのではないかなと思います。もちろん、テロとか地震とか病気がなければの話ですが、3,000万人ぐらいのキャパは日本にあるだろうと思っています。実際に、人口が日本の半分のイギリスの観光客は3,500万人なので、そこまで伸びる可能性も否定できないなと考えています。  さらにすごいのは、外国人旅行者の消費額です。2014年に前年比43.3%の2兆300億円、GDPの0.4%を獲得しております。これは、自動車産業を上回ります。2015年は、7割増の3.5兆円が視野に入りました。これがこのままいくと5兆円、うまくいくと7兆円ぐらいに積み上がる可能性を否定できません。先のことはわかりませんが、今はすごい勢いで伸びているということです。  何で日本に来るのでしょうかということなのですね。これはよく聞かれます。ビザの発給要件の緩和、円安、あるいは国際プロモーションという三つがありますが、それ以外にも、他に類を見ない文明と他に類を見ない自然です。安心と安全、円安、訪日プロモーション、SNSの発展です。ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、こういったSNS、それから個人手配です。京都もそうだし、熊野古道もそうだし、ニセコもそうだし、こういうものはないのですね。それは、最後のほうでお話ししたいと思います。  これは、政府の官僚はみんな読めと言われているサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」という本に書いてありますが、ハンチントンは、世界の文明を九つに分けています。詳しい説明は省きますが、青いのがアメリカ、カナダの西洋文明というものです。紫が南アメリカのいわゆるラテン文明です。茶色はアフリカ文明、斜線が入っているのがイスラム文明で、赤いのは中華文明になります。中華文明に染まっている国としては、韓国、ベトナム、シンガポールなど、大体、中国語が通じるような場所は赤く染まっています。しかし、日本だけがどこにも染まっておりません。よく言えば、非常に強固な文明を維持している、悪く言えば友達がいない寂しい国です。日本語がしゃべれる人は1.28億人しかいませんから、どこの国に行っても日本語が通じません。  だから、これを見ていろいろなことを思うのですが、日本に来ないと経験できないものがいっぱいあります。例えば、シェラトンとかヒルトンとかマンダリンオリエントホテルというのは世界中にありますよね。ところが、日本の和風旅館のおもてなしは輸出できないのです。これは、日本に来ないとだめです。そういうものが徐々に世界でわかってきたというようなこともこの図を見ていると思うわけです。  それでは、今後、マーケットはどうなるかということですが、これは、実は人口を面積で表示した図です。左のちょっと上の赤の薄いのがカナダです。国土がでかいのにあんなに薄い。中国の左に黄色いのが小さく見えますね。あれがロシアです。政治的には物すごくパワーがあるのに、人口で言うとあれだけの大きさしかないと。翻って、中国とインドのパワーはすごいです。日本もかなり大きいです。インドネシアは2.8億人なので、結構大きいです。アフリカはかなり小さくなります。  これから何が起きるかというと、ことし、世界の39%のGDPがアジアに集中しています。2050年には51%が集積しますので、すごいことになります。何がすごいかというと、中産階級が勃興しています。中産階級というのは、年2,000ドルとか3,000ドルぐらいを超えるとか、車を所有しているとかいろいろな定義がありますが、例えば、中国沿岸部の1,000万円以上の所得者だけで日本の人口を超えています。1億人以上います。あるいは、ベトナムとかラオスとかカンボジアあたりで、ある一定の収入を超えると、まずやるのは海外旅行だそうです。ですから、アジアにはかなりの潜在的なパワーがあります。もっと言いますと、みんなLCCで来られる距離なのです。6時間前後で来られるので、格安航空で日本に来ることが可能になります。  これは、日本政策投資銀行でやった調査です。アジア8地域の訪日外国人旅行者の意向調査で、どこに行きたいかをインターネットで調査していますが、1位が52%で日本で、2位のオーストラリアを10ポイント離していて、3位が韓国です。ただ、海外旅行先を決める理由は、やはり和食とか温泉が主で、登山、ハイキング、マリンスポーツ、ウインタースポーツはまだまだ低いです。これは、多分、伸び代があるのだろうというふうに考えるのが妥当だと思います。つまり、高い訪日旅行のニーズがあります。  よって、スポーツツーリズムには将来的な可能性がある。しかし、その一方で、まだ、ほとんどプロモーションしていないのですね。知らないということが非常に多い。ただ、先ほどのマラソンの例のように、PM2.5ではないのですが、向こうではマスクをしながらマラソンをやっているような大会もありますから、ぜひ日本で走りたいという潜在需要が非常に強いです。そして、北海道に来る訪日外国人来道者数は、2014年には154万人、2015年には200万人に近づくような数字になっております。  これが最後になります。札幌市に求める新しいスポーツ都市戦略ということです。  スポーツコミッションをつくるときに我々がアドバイスするのは、その都市が持っている資源を一度棚卸しましょうと。意外と気がついていないすごい資源がありますねと。  私は、北海道に非常に詳しいわけではなく、旅行者として何回か来ている程度です。これも後で説明しますが、190万都市でこれだけ雪のある都市は、実は世界にないのです。札幌だけですし、まち中までサケが上がってくるようなすごい自然が残されている都市というのも非常に珍しいのではないかと思います。  今、北海道だけではなくて、全ての日本の地方都市は人口減少と過疎化、高齢化で、例の増田レポートでは896自治体が消滅可能性都市ですし、イオン現象でまちの中心部が衰退と、同じような問題がいろいろなところで起きております。今後、スポーツコミッションが中心になってやっていかなければいけないのは、スポーツでまちを元気にすることで、地域イノベーションの源泉です。  そこで、地域活性化とは何か。  下に3枚ある写真は、アメリカのインディアナポリスという都市です。1980年代のオイルショックで、本当にまちが荒れてスラム化したのです。そこで、彼らは、スポーツで都市を再活性化するということで、プロスポーツとかアマチュアスポーツとかいろいろなことをやりまして、今、都市格でトリプルAをとるような都市に復活しました。自転車専用道もあるし、右にライトとありますが、あれはジョギング専用道です。自転車専用道、ジョギング専用道、歩道、車道です。広いからできるのですが、スポーツをする、見る、かかわるということがここまで活性化しています。  もう一つ、地域の人口減を補う方法が観光にあるということで、定住人口が1人減ると121万円の消費減になりますが、外国人観光客が7人来ればその消費減を補える、国内観光客22人、日帰りで77人ということなので、観光に求められる期待値が非常に高くなっています。  札幌冬季五輪招致の意義ですが、検討委員会でもいろいろな話題が出て話しておりますが、人口減少する中で、新しいポストモダンな産業をどうつくるかということです。日本は、ものづくりが非常に得意ですね。しかし、同時に、ことづくり産業、すなわちツーリズム産業をどう育成していくかというのは非常に現代的な課題になってきます。私は、個人的に、アジアの富裕層向けスノーリゾートをどうつくるかというのが北海道に与えられた世界的な使命ではないのかなという感じがします。同じ委員会で副委員長をやっていただいている小林先生は、創造都市さっぽろという概念を掲げられていますので、まさにここに次世代の札幌が向かうべき方向性があるような気がいたします。  ちょっと余談です。  これは大倉山シャンツェですが、世界のジャンプ台を見ても、大体無用の長物化しています。実は長野もそうです。国際大会を開けないで鎮座しています。ところが、ここは年間4万5,000人の観光客が訪れますので、1972年のレガシーが最も理想的な形で具現されている施設であり、世界に誇れるオリンピックレガシーの一つになっています。  メガスポーツイベントには、社会資本を蓄積する効果、都市の知名度を上げる効果、地域の連帯感を上げる効果、消費を呼び込む効果というものがあります。長野では、終わった後、ボランティアが中心になって、東京マラソンよりも早く長野マラソンという市民マラソンを始めて現在も続いています。そのように、目に見えない、しかし計画的なレガシーというものは残っています。  今後、国全体で考えても、スポーツイベントを誘致する国家マーケティングが必要ではないかと思います。実際に、ラグビーのワールドカップオリンピック、2021年には関西でワールドマスターズゲームズが開かれ、さらに2026年度と、こういうメガスポーツイベントのカレンダーがあると国が発展していく過程を示すことができるということです。  ロンドンがすごいのは、2012年の後にすぐにコモンウェルスゲームズという英連邦大会、そして2015年のラグビーワールドカップというように、オリンピックの後にこのようなメガイベントの招致を計画的にやっております。実は、日本がやらなければいけないのは、2020年で全てが終わるのではなく、その後、どうやって発展させていくかということなので、そういうことを考えると2026年のオリンピック招致は絶対にやらなければいけない国家的なマーケティング課題ではないかと考えております。  時間が迫ってまいりましたが、これは、北海道教育大学の山本先生にいただいた資料です。ちょっと見にくくなっていますが、北緯43度に札幌があります。ずっと延ばしていくと、イタリアとか南フランス、ニースとかモナコとか、アメリカでは五大湖があるシカゴとかサンフランシスコあたりです。つまり、世界の文明の中心が北緯43度と60度の中に固まっているわけです。名立たる文明が勃興している場所ですが、その中で都市全体に雪が降るという都市は札幌だけです。ニースでスキーはできませんので、そういう非常に特異な自然条件です。これまでは、これがディスアドバンテージといいますか、雪かきが大変ということがありました。しかし、アジアの都市で雪の降る都市はありません。氷が張る都市はいっぱいあります。北京もそうだし、平昌もそうですが、ああいうパウダースノーは降りません。それも、定期的に雪が降る都市はありません。これをディスアドバンテージと見るか、アドバンテージと見るか。私は完全に後者だと思います。雪というのは実は隠れた資源で、アジアのいろいろな国にはない最大の観光資源ではないかと思います。  ご存じのように、シンガポールのGDPは500万円を超えています。今、日本は360万円ぐらいでしょうか。日本よりも豊かな国なのに、そういう国から見ると何てうらやましいのだろうというような状況です。  ただ、冬のオリンピックに関しては、レガシー問題ではなくて、これはソチですが、私はことし4月に行きましたけれども、6兆円を投じたと。夏のオリンピックにもたくさん予算をかけて、終わってみればこんな感じです。何もない。ロシアの悪口は言いたくないのですが、うまくいっていません。中国とかロシアがやる国家イベントというのはかなり近代的で、我々のような成熟社会にある脱近代の都市とはまた違うやり方でやりますが、後利用がうまくいっていません。  実際に、夏のオリンピックの開催立候補都市の推移なのですが、今、減ってきています。次のオリンピックも、パリ、ローマ、ロサンゼルス、ブダペストの4都市です。かつて11都市ぐらいあったのですが、4都市に減ってきて、徐々に人気がなくなってきています。冬はもう少し顕著で、1998年に5都市、2002年で9都市ぐらいありましたが、ソチが余りにも莫大な予算をつけてしまったので、今はなくなってきていて、直近では北京ともう1都市はアルマトイになりました。いずれまた回復するとは思うのですが、実は競合都市が少ないです。まだ先の話ですが、2026年も、ひょっとしたらスイスが出るかぐらいで、世界中で、さあ、ここをとりに行くぞというようなムードにはまだなっていない現状です。こういった検討委員会を開いていますが、これは来年3月に正式な答申が出る予定です。  最後に、札幌市におけるウインタースポーツ実施率の推移と青少年への影響です。  数字が非常に低いです。こういったことを考えても、やはり、オリンピックというような目標がないとウインタースポーツの参加者はなかなかふえないのだろうと思いますので、ここもオリンピックを誘致する意義の一つです。さらに、ウインタースポーツをやって健康になるとか、青少年教育にとっても重要な目標になるのではないかと思います。WINTER Olympic GAMES FOR Kidsというような標語も出ていますので、ここも考慮しなければいけません。  これが最後になります。  増大するスポーツのパワーです。価値が高まりました。スポーツで人を動かすにはどうするか、スポーツと観光の融合とその仕組みをどうつくるか、スポーツコミッションへの期待、最後に、冬季五輪招致の意義と戦略ということでまとめさせていただきました。  私の話は以上になります。ご清聴ありがとうございました。(拍手) ○長谷川衛 委員長  原田教授、ありがとうございました。  それでは、今、教授からいろいろなお話をいただきましたが、参考人に対する質問を行いたいと思います。 ◆村山拓司 委員  原田先生、貴重な講演をありがとうございました。  私から質問ですが、最近、星野リゾート・トマムを中国資本が買収したということでございます。また、先ほど原田先生からニセコの話も出ておりましたが、ニセコにも外国資本が入っております。オリンピックパラリンピック招致に伴って外国資本がさらに入ってくることが予想されますが、それは北海道の経済活動にどのような影響があるのか、お伺いいたします。 ◎原田宗彦 参考人  お答えします。
     星野リゾートの中国資本ですが、運営は星野リゾートがやるということですので、サービスの質が一気に変わることはないと思います。  それから、外資が入ってくるのはどうかということですが、実は、ロンドンオリンピックのときに、バッキンガム宮殿ではないですけれども、近くの非常に美しいところでエリザベス女王が世界各国の資本家を集めてパーティーをしています。特に中東ですが、ぜひイギリスに投資してください、経済を活性化しましょうということですので、私は大歓迎です。もちろん、水資源や鉱山などを買い占められるとあらぬ方向に疑念が膨らみますが、リゾートに外国資本が入るということは、そのリゾートは、我々は一銭も出さずに更新されてインフラが整備されていくことになります。私は、歓迎していいのかなと思います。もちろん、北海道全土が買われるとまずいと思いますが、局地的な投資に関しては大歓迎かなというふうに考えております。 ◆村山拓司 委員  もう1点、オリンピックパラリンピックを札幌に招致するに当たっての課題とオリンピックパラリンピックの活用方法をお伺いしたいので、お願いいたします。 ◎原田宗彦 参考人  お答えします。  課題というのは、アジアで連続して続きますので、そこには非常に大きな問題があるのかなと思います。ただ、先ほどお見せしましたように、冬のオリンピック招致をする都市の数がふえないというか、ないのですね。私は、恐らく札幌市の動きはIOCにとっては大歓迎だと思います。こんなに立派な都市が冬のオリンピックをやってくれると彼らはほっとしていると思います。もちろん、いろいろなところが出てくれば、そこはそれで招致合戦になると思いますが、重要なのは、東京がそうであったように、1回の招致でとりに行くのはなかなか大変ですけれども、2回目で成功されることは不可能ではないということなので、2026年と2030年でとりに行けばいいと思います。2026年が別なところで開かれると、2030年の可能性はさらに膨らむと思います。そういった長期の招致計画を立てるのがいいのかなと思います。  オリンピックの活用方法です。私は、おととい、韓国の学会に行きました。実は、私たちの大学時代の仲間が文化スポーツ観光省の副大臣をやっていて、ちょっとお話をしたのですが、やはり平昌はなかなか厳しいと。というのは、空港がない、ソウルから高速道路も高速鉄道も通らない、人が余りいないということです。もちろん表向きの話ではなくて、我々学者仲間の話になったのですが、非常にレガシー活用が難しいと思います。しかし、札幌市の場合は、国が運営する第1種空港がありますし、190万人という都市なので、観光客が来ていろいろなことをするインフラが整備されているということなので、冬のオリンピックは札幌のさらなる発展につながると私は思います。  規模は夏の3分の1ですので、そんなに莫大な投資も要りません。特に施設の計画等も、今から入念に準備すれば、次世代の札幌の発展に資するいい大会になるのではないかと思います。 ◆松原淳二 委員  貴重なお話をありがとうございました。  私から、2点ほどお伺いしたいと思います。  オリンピックパラリンピック開催に当たって、札幌が世界から注目されるような都市となるためにはどういった戦略が必要か、また、札幌でオリンピックパラリンピックが開催できたとすると、観光やスポーツ振興などの効果を札幌だけではなくて道内に波及させるにはどのような戦略が必要なのか、そういった点をお伺いさせていただければと思います。 ◎原田宗彦 参考人  まず、札幌市が世界から注目されることが重要だと思います。オリンピックをやるから札幌が注目を浴びるのではなくて、札幌が注目を集めているから自然にオリンピックが札幌に行くというような形をつくるということなので、シティセールスあるいは都市のマーケティングの戦略をどうつくるかということが殊さら重要になると思います。  いろいろな方法がありますが、今来た外国人にいい思い出を持って帰ってもらう、あるいは、現地に来たら、どこに行ってもフェイスブック、ツイッターで情報が発進できるように、これは一銭もお金がかかりませんので、Wi−Fiの仕組みを全てのところにつくることが優先順位としては一番高いと思います。それから、四季のめり張りが非常にきいていますので、年間を通じた通年型のリゾートシティーにどう持っていくか。今は冬の話が多いのですが、秋と春を含めた通年型のリゾートシティーに持っていくことは十分に可能ではないかと思います。  それから、北海道全体への波及効果ということですが、私は、札幌がゲートウエーシティーになればいいと考えます。ゲートウエーというのは、そこに入って、北海道全土に入って、また札幌に戻ってきてもらう、そういった波及効果も期待できると思います。ただし、例えば、空港から都市まで40分ぐらいというのはちょっと時間がかかり過ぎですので、新しい高速道路や新しいハイスピードトレインなど、そういったものに注目すればいいと思います。  ロンドンは、ヒースロー空港から市内まで15分で行くヒースローエクスプレスというものがあります。4,000円ぐらいしますので高いのですが、そういうものがあると非常に輸送力が増します。残念ながら、JRによれば、今の鉄道の状況では120キロ以上のスピードを出せないということになっていますが、そういった輸送の改善とWi−Fiの施設が大きな課題で、そこが解決されるとさらに飛躍的に観光客を受け入れる体制が整うのかなと思います。 ◆わたなべ泰行 委員  本日は、貴重なお話をまことにありがとうございました。  私から、パラリンピックについて、2点質問させていただきます。  まず、1点目は、札幌でパラリンピックを開催させて成功させるためには、運営面についてどのようなところに配慮していけばよろしいかというのが1点目でございます。  2点目は、札幌でパラリンピックを開催したときに、一体どのような効果が生まれるかということをお伺いさせていただきます。 ◎原田宗彦 参考人  お答えします。  パラリンピックが成功するには、都市全体のバリアフリー化というものが優先順位として来るのではないかと思います。特に、冬の雪あるいは凍った道を車椅子で自由に動けるためには、それなりのインフラ投資が必要になると思います。  それから、パラリンピックの効果ということですが、これは実際に東京オリンピックでも議論されておりますけれども、非常に最先端の義手、義足あるいはウィルチェアスキー等、ものづくりの発展にパラリンピックを何とか結びつけられないかということです。ですから、実際の競技だけではなくて、競技の環境づくり、まちづくりとものづくりといったところについて、パラリンピックを使ってさらなる成熟都市を目指すことは不可能ではないというふうに考えます。 ◆田中啓介 委員  私からも、2点ほど質問させていただきたいと思います。  先ほど、ソチオリンピックの話の中で、冬季オリンピックが抱える負の遺産、問題点を紹介されていました。日本で言うと長野オリンピックですが、長野でも、インフラ整備した道路において車が全然走らないということがあったりとか、象徴的なエムウェーブも負の遺産として市民、県民の負担になっていると聞いております。  そこで、実際に札幌市で行ったときに負の遺産を出さないために、原田先生のご見識を何かお聞かせいただければと思います。 ◎原田宗彦 参考人  お答えします。  私は検討委員会でも少し発言しましたが、オリンピックがもし決まれば施設整備に入りますけれども、その施設はオリンピックが終わった後も有効に活用できる、もっと言えば、黒字が出るような、税金の負担にならないような施設をまずつくって、それを逆算してオリンピック用の施設につくりかえる、すなわち仮設とかテントですが、そういうふうに逆から考えて計画をつくっていったほうがいい施設ができるような気がします。  この施設へのアクセスや使い勝手、こういうイベントを入れて年間何日はこの施設を使う、そうするとどれぐらいの収入があって、例えばネーミングライツをとったりとか、そういう収支計画もつくれるはずなのです。これを決めてからオリンピック用に建てかえて計画に戻すというようなやり方をすると、エムウェーブのようなことにはならないと思います。  それから、今おっしゃった長野のオリンピック道路ですが、こんなものをつくって無駄だったよねということでした。しかし、最近、外国人スキーヤーが成田に来て、直接、その道路を使って白馬に来るようになりましたので、二十何年たってからようやくレガシーが生きてきたというちょっと皮肉な事例ですけれども、今、長野のオリンピック道路は有効に活用されています。 ◆田中啓介 委員  紹介していただいた中で経済効果の話がありまして、今、長野は20年を超えてという部分だったと思いますが、札幌で行われた1972年のオリンピックでは、それによって札幌というまちができてきたと思います。ただ、一気にインフラ整備がされたので、実は、そのしわ寄せが今来ていると感じています。その一つは、水道管が99%整備されましたが、その都市に合わせるような形で整備されたので、今、一気に更新時期に来ていて、今、原田先生が話された逆算の考え方も一つは必要だと思います。  あわせて、経済効果を見るときに、確かにすごく大きな効果がありますが、どうしてもいっときという感じに見えてくるのです。やはり50年、100年後を見据えることがすごく大事ではないかと思うのですが、長期という単位で、100年先を見据えた考え方をお聞かせいただければと思います。 ◎原田宗彦 参考人  この問題に関しては、的確なお答えができるかどうか、自信がないのですが、東京でも同じ問題が起きていて、1964年のオリンピックのときに一斉につくった首都高でも、今、インフラ整備が求められております。ですから、東京オリンピックが国家のバックボーンをつくる大きな突貫工事のオリンピックだとしたら、今はインフラ更新のオリンピックだと言う方もいらっしゃいまして、スケールは違うにせよ、札幌でも同じような問題は出てくると思います。ただ、1972年は、北海道で初めてセントラルヒーティングが行われて今の原型がつくられました。そういった大きなイノベーションを起こすにはいい機会だと思います。  将来的にどういうまちづくりを目指すかというのはこれからの札幌の課題ですが、もし仮にスノーリゾート的な都市づくりを目指すならば、交通インフラと観光インフラの整備に特化していく必要があると思いますので、それこそ50年、100年先のまちの発展を見据え、今、この10年間で何をしなければいけないかということを考えながらやっていくことが大事です。今はそういう時間的な余裕がありますので、ぜひ、札幌市の英知を集めてそういう計画をつくっていけばいいのかなと思います。 ◆松浦忠 委員  ご苦労さまでございます。  お尋ねしたいのは、私は、札幌オリンピックをやるとすれば、パラリンピックオリンピックを同時開催、同じ期間内に開催することが歴史的な意義になるのではないかと考えて、このことを提起しております。  そこで、経費の関係で言うと、今、先生からお話がありましたように、IOCは大変大きな利権を持っております。しかし一方、パラリンピックのIPCのほうは、どの程度、どうあるのか、話題になったこともないし、いろいろ調べてみたのですが、よくわかりませんので、IPCの大会のときに集まるお金の規模はどの程度なのか、そして、その規模の中でパラリンピックができる仕組みになっているのかどうか、これを教えてください。 ◎原田宗彦 参考人  最初のお話ですが、パラリンピックに集まる協賛金というのは、実は東京でも公表されておりませんし、パラリンピックの協賛企業というのは、先ほどお示しした図の中に出ておりませんので、正直言いまして、私にもわかりません。  それから、パラリンピックオリンピックの同時開催です。実は、2008年のオリンピックのときに、国内では横浜と大阪が選考されまして大阪が代表になりましたが、そのときの横浜のプランでは、パラリンピックを先にやろう、そしてオリンピックをやったほうが話題づくりになっていいという案が出ました。しかし、JOCから、それはIOCの考え方に合わないので考え直してくれということで廃案になったと聞きました。  オリンピックパラリンピックの同時開催というのは、一つは前例がないことと、統括団体が全く別ですから、恐らくIOC理事会で採択されないという感じがいたしますので、実現するのは難しいのではないかと思います。 ◆松浦忠 委員  障がい者と健常者が共生していくというのは、歴史が非常に浅いです。したがって、なかなか大変かと思います。  しかし、昨今、人間ばかりではなくて、動物も含めて、共存しなければということが世界的な機運になってきています。こういうことからすると、札幌で冬季オリンピックを開くことを市民に理解させるための一つの大きな意味として、開会と閉会という一つの競技期間の中でパラリンピックオリンピックも開催する、札幌でこういうことを実現して、初めて、いわゆる歴史に残るオリンピックではなくて、記憶に残るオリンピックになるのではないかと思って私は提起しているのです。  私は、今の先生の話を聞いて、IOCは、人間の身体機能による差別的な考え方がどうも抜け切っていないのかという感じがしているところです。そこで、札幌の招致に当たっては、本当の意味での共生社会を実現するために大会も一緒にやる、そして、財政面でも、オリンピック委員会として協賛企業からお金を集めて、それらの中でパラリンピックも賄っていく、私は、そういう考え方に向けた取り組みをしていくことが大事ではないかと思うのです。結果としてどこに落ちつくか、それはやってみなければわからないことです。しかし、そういう取り組みをしていくことによって多くの共感が得られていくのではないかという気がしております。  そのことについて、先生は検討委員会の委員長をされていて、今、私が申し上げたようなことについてどのように受けとめて、今後、委員長としてこれをどう生かしていくのか、それとも、先ほど、なかなか難しい、だから余り面倒なことはやめて安直に行こうとお考えになるか、その辺の先生の考え方を聞かせていただきたいと思います。 ◎原田宗彦 参考人  今、松浦委員のお話はよく理解いたしました。  確かに、障がい者と健常者、いわゆるバリアフリーからユニバーサルフリーへ発展していく考え方としては非常に理想的ですが、実は、現在のオリンピックは、先ほど申しましたように、非常にビジネス化されておりますし、権利の配分が非常にしっかりと区分けされています。IPCとIOCというのは全く違う統括団体でして、IOCで発生した放送権料にパラリンピックの放送権料を付加できるかどうかというのは、不可能ではないと思うのですが、調整にはすごく時間がかかりますし、果たしてそれを許すような形で動くのかどうかというのは私にはちょっと予想がつきません。すなわち、IOCのビジネスは余りにも巨大化し、あるいは細分化されましたが、それを制度的にどう組み合わせるかということが現実的な議論の中に乗ってこないと、IOCとIPCのイベントを一緒にするというのは非常に難しいと考えます。  多分、サッカーのワールドカップとラグビーのワールドカップを一緒にやるよりも困難があるのかなというような懸念はいたします。 ◆松浦忠 委員  私は、サマランチさんが会長のときに拝金主義のほうにオリンピックを持ってきたと記憶しています。やっぱり、お金中心主義でやっていくと、必ずまた行き詰っていくと思います。私は、この辺で少しかじを切るような問題提起をしていくことが大事ではないかと思っているので、ぜひひとつ、そんな方向も検討いただきたいと思います。  それから次に、今、お話を聞いていると、スポーツがバラ色だという話一色に聞こえたのですが、札幌オリンピックの後、先生もご存じのように、札幌でも、スケートの競技場となったアイスアリーナ、あるいはまた、開会式の競技場となったところなど、後の維持管理に大変お金がかかって苦慮しているのが現実なのです。ソチの絵がここに出ておりますが、スポーツ施設をその後に活用して収支が合うようにすること自体、私は難しいものだと思っています。国内でも、戦後に始まった国民体育大会をやった県では、施設をつくって、そして、その後の施設の維持管理に四苦八苦しているのが現実なのですね。ですから、札幌でやるにしても、先ほど先生が言われたように、後活用、後の維持管理を考えて、オリンピックは仮設の施設で収容人員とかスタンドを間に合わせていくような考え方に転換していかないと、いずれの国がやっても長くやり切れないと思うのです。  したがって、私は、もうそろそろサマランチさんが提案した拝金主義的なオリンピックを少し軌道修正していかないと、オリンピックそのものをもち切れなくなるのではないかと懸念をしております。そういう意味で、札幌の冬季オリンピックの招致に関し、先ほど私が提起したようなことについてぜひひとつ留意して、働きかけに生かしていっていただきたいということを先生にお願いして、終わります。 ◆林清治 委員  私からも、2点質問させていただきたいと思います。  先ほどのお話で、スポーツツーリズムを推進していく中で、スポーツコミッションの役割が大事だというお話がありまして、新潟が大変うまく進んでいるのではないかというお話もございました。札幌としても、来年、スポーツコミッションを設立して、その後、さまざまなスポーツ大会招致や産業化も目指していますが、その秘訣というか、どういうところを札幌の力にしていくべきか、アドバイスがあればお願いします。  それから、今、世界的にも新しいスポーツが出てきていて、また、北海道でも高低差を利用したスポーツの可能性が高いのではないかというお話もありましたが、その部分でもアドバイス的なものがあれば聞かせていただけるとありがたいと思います。 ◎原田宗彦 参考人  お答えします。  スポーツコミッションの役割は、実はオリンピックと密接に関係しております。先ほど松浦委員からもお話がありましたが、施設の後利用ですね。冷たい鉄板に幾らいい肉を置いても焼けないのは自明の理ですが、鉄板を温かくするといろいろな料理ができます。スポーツコミッションの役割は、その鉄板を温める役割で、さあ、何でも来いという状況をつくるということです。すなわち、いろいろなイベントがあって、いろいろな人が札幌を訪れる、オリンピックがあって、施設ができて、先ほど話したロンドンのように観光客がさらにふえる、そういう仕組みをつくる、鉄板を温める役割がスポーツコミッションではないかと私は思います。  実際に施設をつくって、すぐに解体されて倉庫になったとか、そういう事例は山ほどあります。それは、オリンピックをやるためだけに計画をつくってやってしまったおかげで、施設が無用の長物化するというケースであります。今回、まだ時間がありますので、未来に向けた投資につながるような計画をつくり、スポーツコミッションが札幌市全体のスポーツ振興に資するように、そしてスポーツツーリズムを活性化していくと、おのずと大会後の施設利用はかなり見込めるのではないかと考えます。 ◆林清治 委員  先ほど来、施設のお話もいろいろと出ていたのですが、アジェンダ2020が示された中で、オリンピック委員会としては、仮設などを多用したお金をかけないオリンピックという部分が示されてきております。先ほど来の原田先生のお話でも、後利用から逆算して施設をつくることでしっかりとした計画ができるのではないかというお話もございました。その部分は、札幌市の責任として市民にも理解を求めていく、そして招致への機運を高めていくことが必要ではないかというふうに思います。  そして、2019年には招致の山場を迎える形になりますが、札幌市民に対する機運醸成の部分で、一番注意していかなければいけないこと、力を入れるべきだというようなアドバイスがあればいただきたいと思います。 ◎原田宗彦 参考人  夢を語るのは非常に簡単です。ただ、地に足のついた計画を市民の皆さんにわかっていただき、札幌が向かうべき方向性が示せるような計画づくりが肝ではないかなというふうに考えております。2019年を考えると、実は時間があるようでないのですが、アジェンダ2020で示されたような分散開催ですね。札幌市もそうだし、北海道、ひょっとして圏外に広げる可能性も全部検討しながら、オールジャパンで機運を盛り上げていくのが成功の秘訣ではないかというふうに考えております。 ○長谷川衛 委員長  ほかに質疑はございませんか。  (「なし」と呼ぶ者あり) ○長谷川衛 委員長  なければ、参考人に対する質問を終了いたします。  本日は、原田教授にご出席いただきまして、大変有意義な委員会になったことに感謝を申し上げます。  原田教授、本当にありがとうございました。(拍手)  以上で、委員会を閉会いたします。     ――――――――――――――       開 会 午後2時35分...