文化部長に伺います。
改めて、
防空指揮所の
文化的価値について、札幌市として見解があればお教えいただきたいと思います。
◎浅野
行政部長 私から、この施設の
保存経費のご質問についてお答えをいたします。
去る8月下旬に、私どもの
建築部などの協力を得て調査を行い、これに基づいて
改修経費について
見積もりを行ったところでございます。この施設を展示場として活用することを想定のもとに、建築、
電気設備、
機械設備の各工事につきまして積算いたしましたところ、設計費を除きましても、合計で約5億円という
見積もりになりました。さらに、
耐震強度の測定につきましては、より専門的な調査が必要ということで、その結果によってはさらに数億円単位の費用が追加されるということでございます。また、この建物は、築後60年以上を経過しておりまして、老朽化が相当進んでいることから、これらの改修を行ってもなお10年から20年程度で建てかえが必要な状況が予想されることがわかっております。
なお、この改修費の
見積もりにつきましては、先ほど委員がお話しされましたように、仮に残すとした場合のお話でございます。札幌市といたしましては、この土地・建物を取得することは困難でありますし、また、国に保存を要請することも難しい、こんなふうに考えている次第でございます。
◎塩澤
文化部長 文化財的価値のお尋ねについて、私からお答えいたします。
防空指揮所が
文化庁の
近代遺跡に係る
詳細調査の対象とはならなかった。これは、平成14年に札幌市から
文化庁へ
調査依頼をいたしましたけれども、
詳細調査の対象とはならなかったということでございまして、このことにつきましては、これまでも
委員会の中で
行政部長からご答弁申し上げてきたところでございます。このことは、国としては
文化財指定の対象とはとらえてないものと考えられます。
本市といたしましては、この施設が、市内の数少ない
軍事施設の一つであり、その時代を物語る
歴史的建造物であると認識しておりますけれども、
文化財としての価値を調査するためには、全国の他の遺跡との
比較検討が不可欠でございます。
文化庁によって進められております
近代遺跡に係る調査に関する報告書は、現在のところまだ取りまとめられていないところであり、こうした
比較検討が難しいことから、現時点では当施設の価値について
比較調査できる状況にはないと考えております。
◆しのだ江里子 委員 展示場として活用する前提では、
改修費用だけで5億円以上の経費がかかるということで、市としては、国に要請することにちゅうちょすることも理解できます。
陳情者は、視察後には、外観だけを残すことはできないかとも要望されています。先ほどの
産業考古学会の
評価書もあります。この札幌に、さきの大戦に深くかかわった施設があり、また多くの方々がかかわっていたという事実を後世に伝えていくことは、
平和教育を推進していくために大変重要なことだと思います。
このような見地から、再度、市として国に何らかの
働きかけを行うことはできないでしょうか。
◎浅野
行政部長 しのだ
委員お話のとおり、本市としても、戦争に係る歴史的事実を後世に伝えていくということは重要なことと考えているところでございます。私どもといたしましても、建物の保存は困難といたしましても、何かできることはないかと考えているところでございます。例えば、かつて
北部軍の
司令官官邸として使われておりましたつき
さっぷ郷土資料館等の施設に保存するため、
防空指揮所に係る資料とか写真を本市に提供してもらうとか、また、
防空指揮所があったという事実を残すためのものを設置してもらうことなどにつきまして、国に要請するといったことを現在検討しているところでございます。
◆しのだ江里子 委員 国や市が保存することができればよいのは本当に事実です。しかし、諸般の状況から困難であるということもまた事実です。ぜひ、市として、今の答弁にありましたように、国に
働きかけを行っていただきたい。
防空指揮所があったという事実を残すものについても、例えば、残されていた門扉をリリーフとして残していただくとか、写真や資料等についても後世まで残すことができるように、展示、保管をきちんと考えていただき、今後とも市として
平和都市宣言の理念のさらなる
普及啓発に努めていただくことを強く要望いたします。
◆
伊藤理智子 委員 私からも、何点か質問させていただきます。
陳情第3号の
陳情者は、
建物そのものを保存してほしいという気持ちに変わりはないとのこと、さらに、きょう、新たに陳情第10号、第11号が出されました。
私は、この
防空指揮所は、まるで
SF映画に出てくる要塞か、
コンクリートの塊のように見えました。分厚い
コンクリートの壁を見ると、どんな攻撃に遭っても壊されない建物の中で戦争の指揮が行われたことがわかります。周りの民家がすべて燃え尽くされ、吹き飛ばされても、戦争を遂行するための機能だけは守ろうとしていたことが感じられます。
現地調査で実物を見ましたが、建物の異様さが迫ってきて、本当に恐ろしくなりました。
沖縄にはガマが残され、地上戦が行われた悲惨さを伝えています。広島では、
原爆ドームがあります。長野県には
松代大本営の地下壕があり、一部公開されているそうです。これらは、すべて修学旅行で訪れた生徒などが平和を考えるための貴重な戦跡となっています。
北部軍司令部防空指揮所は、
東京以北、千島、サハリンまでを管轄する北の大本営と呼ばれた施設で、
北海道には
戦争遺跡が少ないこともあり、一層貴重で重要なものだと思います。
そこで、質問ですが、戦跡という
文化財としての価値についての認識を伺います。
まず、
文化財としての価値についてしっかりと調査すべきですがいかがか、伺います。
◎塩澤
文化部長 先ほどしのだ委員にも答弁いたしました
文化財的価値についての調査でございますが、全国の他の遺跡との
比較検討が不可欠であり、
文化庁の
調査報告書が取りまとめられていない中ではこうした
比較検討が難しいことから、現時点では当施設の価値について
比較調査できる状況にはないと考えております。
◆
伊藤理智子 委員 全国の遺跡との
比較調査をすることが難しいと。先ほどの
やりとりでも、2002年に札幌市が
文化庁に調査を依頼したけれども、選ばれなかったというような
やりとりがあったと思います。
私は、年内に
防空指揮所を壊すという予定がわかってから、国会の方とも連携して調査を行ってきたのですよ。それで、
文化庁、
財務省と、
参議院議員の紙智子さんの秘書が、この
北部軍司令部の
防空指揮所を保存できないかという
話し合いを行ってきました。
文化庁とは、10月16日に、
文化財部記念物課調査係の
本間係長と
文化財史跡部門の
山下文化財調査官に説明、
話し合いをして、市が調査するなら協力するという意思を示していると聞いております。
文化庁へは、先ほどの
やりとりにもあったように、2002年12月に、札幌市は、地域の
連合町内会からも
近代遺跡として
詳細調査をしてほしいという要望があって、この
北部軍司令部防空指揮所について
近代遺跡の
詳細調査の候補として申請を行ったと聞いています。全国の
比較調査をしなければどういう価値があるか判断は難しいというご答弁だったのですが、
北部軍司令部防空指揮所についての
歴史的文化的価値があったからこそ、2002年当時、そういう地域の
連合町内会の要請も受けて、
文化財課として国に要請してきたのではないかと思うのですけれども、この点についていかがか、伺います。
さらに、
財務省とは、10月18日に、
財務省理財局国有財産調整課の
瀬川正志課長補佐と
紙智子参議院議員の秘書が
話し合いを行いました。当該地に
国家公務員宿舎を建てるとしながら、戦跡を保存してほしいという
市民運動が起こっていることもご存じで、年内に何としても取り壊さなければならないという強固な姿勢はとっていないということです。自治体の考えを尊重するということですので、時間をかけて、戦跡としての価値の調査や、どうやったら保存できるのかを検討するために、国に
防空指揮所の解体を延期することを求めるべきだと考えますがいかがか、伺います。
◎塩澤
文化部長 平成14年、2002年に行いました
文化庁への
調査依頼についてでございますが、本市といたしましては、数少ない
軍事遺跡の一つであるという認識はしておりますけれども、その価値の判断は本市では困難であることから、
文化庁において行っている全国的な
詳細調査の対象とするよう依頼をしたものでございます。
◎浅野
行政部長 私どもは、ことしの2月の
総務委員会で、本市として、この施設を購入する意思がないことを明らかにしたところでございます。このため、
陳情者の皆さんは、今回、陳情の趣旨を国に保存するよう要請してほしいということに内容を変更いたしまして、再度、提出されたところでございます。そして、前回の
総務委員会で、私どもは、補修に多額の費用がかかることが明白な施設の保存を国に要請することは難しい、そういうことを申し上げてきました。さらに、念のために、9月27日の
総務委員会の視察に先立ちまして
建築部の協力を得て
補修費用を積算したところ、やはり5億円以上という多額の費用がかかることが判明したわけでございます。
先ほど、財務局から
取り壊しを急いではいないといったような話がありました。私どもではそれは特に聞いておりませんけれども、仮に委員がおっしゃるようなことがあったとしても、
補修費用が高額であることには変わりがございませんので、我々としては、取得することは困難である、難しい、こんなふうに考えております。
◆
伊藤理智子 委員
文化財課としては、
近代遺跡としての価値があるかどうか判断がつかないから国に調査を要請した、こういう趣旨だったと思います。
それならば、改めて、今回の
取り壊しの予定が出されてから、国会でも
やりとりをして、札幌市が調査したいというふうに考えているのであれば
文化庁としては協力していきたいというふうに言っておりますから、改めて、
近代遺跡としての価値があるかどうかについてしっかりと調べるべきと考えますがいかがか、伺います。
今、お金の話をして、残せないというようなことを言っておりますけれども、私どもとしては、
財務省は何としても年内に取り壊さなければならないということでこの
委員会も開かれたというふうに思うのです。
しかし、やはり、お金がないから残せないのだということが先にありきではなくて、この戦跡が本当に価値があるものなのだということは、前段の
陳情者の説明でも、さらに
産業考古学会の
評価書で専門的な報告がなされたと思うのですよ。きょう、本当に大事にしていかなければならないことは、札幌市は、お金がないから、この戦跡を保存することを国に要請することもできないし、調査もできないというふうに切り捨てることではなくて、まず、文化的な価値について、札幌市と市民、皆さんの中で認識を一致させることが大事だというふうに思うのです。それをするために、札幌市はお金がないから、今すぐ買えないから保存できないという判断を下さなくてもよいのではないか。
財務省としては年内に取り急ぎ壊さなくても、札幌市が戦跡についてどういうふうに考えていくのかということを待つというふうに私は受けとめているのです。
陳情者の皆さんが、後世に残す大切な
歴史的価値がある、
文化的価値もある、そして、
平和教育を広めていく上でも本当に大切な価値があるのだということをこれだけ主張しているにもかかわらず、そうした気持ちを受けとめないで、お金がないという一点張りにしてそういう対応をしていいのかというふうに思うのですけれども、いかがか。
特に、
財務省は、札幌市が購入するのであれば反対するものではないとも言っています。また、購入の仕方についても、長期的に計画を立てて払ってもらうことも可能だと配慮を示しています。私は、国は柔軟な姿勢と配慮を見せていると思っています。問題は、本市の態度ではないでしょうか。
長期的支払いなど、財政面で検討の余地があると思います。まず、国と相談すべきと思いますがいかがか、伺います。
この重要な戦跡を十分な調査もしないで解体させてしまうということは、
国家的損失であり、
歴史的損失だと思うのですが、そのように認識されているのかどうか、伺います。
さらに、
陳情者から、
参考資料として、
北海道産業考古学会及び
産業考古学会の
評価書が出されていますが、この内容についても質問いたします。
評価書では、
北部軍司令部防空指揮所遺構について、
北海道で最大の
単一戦時土木遺産であるとし、
表面剥離も少なく、立派な原型をとどめているとした上で、以下のように評価しています。
戦時軍遺産として
アーチ式コンクリート天井を有する
土木構造は多いが、堅牢な壁材に支えられた
平面天井を持つ形式は、現存する
戦史遺構の中では全国的にも珍しい貴重な遺構である、
近代遺産の
保存対象が
明治時代のれんが構造物に限定されてきた中で、
コンクリート構造物評価も高まっている現在、建設60年以上を経たこの
指揮所遺構は十分な
文化財的価値を持つものである、さらに、
内部調査では、地表からの深さ10メートルに達する
地下構造の、堅牢な、現代の
土木構造物に見られない独特の形式であるなど、保存すべき
文化財だという内容で高い評価がなされています。
これらの評価について、本市はどのように受けとめられているのか、伺います。
また、このように
専門的立場で
戦史遺構の
文化財としての評価をしている
北海道産業考古学会及び
産業考古学会とは、これまで十分に
意見交換などをしてきたのかどうか、伺います。
今後、公聴会を開くなどして
専門家の意見をしっかりと聞いていくべきだと思いますが、そのような考えがあるのかどうかについても伺います。
◎浅野
行政部長 質問が多岐にわたっておりますので、あるいは答弁が漏れているかもしれませんが、その場合はまたご指摘を願いたいと思います。
お金がないから、ただそれだけで断るのかといったようなご質問が最初にあったかと思います。
ご存じのように、札幌市の財政は、これはもちろん札幌市だけに限らないと思うのですが、今、非常に厳しい状況にございます。歳入の確保とか支出の削減とか、いろいろな手だてをして、我々は、何とか来年度の予算に向け、あるいは
再来年度の予算に向けていろいろ努力をしている中で、この5億円、そのほかに
維持管理の経費も当然想定されるわけでございます。それは、やっぱり何としても重い金額である、そういうふうに考えております。
そして、それで知らないというわけではございません。我々としては、それにかわるものとして、映像とか
データ記録の保存とか、あるいは、あの月寒のところにああいう
指揮所が存在したのだということを示すようなものを何かできないか、これから国の方に要請しようと考えております。決して、何というのでしょうか、軽視しているというような理解をされてもらうのは心外でございます。
それから、先ほどの土地・建物についてお話がありましたけれども、また繰り返すかもしれませんが、土地・建物の取得をしたとしても、保存のためにはそれだけにとどまらず改修費、
維持管理費がかかるわけでございます。やはり、そのことによって私たちは保存についてちゅうちょせざるを得ないといったような状況でございます。
◎塩澤
文化部長 北海道産業考古学会及び
産業考古学会との
意見交換についてでございますが、現在までのところ、
意見交換などはしたことがございません。
ただ、先ほど拝見いたしました資料によると、10月20日付の要望書が、
札幌市長あてということになっておりますので、これが提出されましたら、私どもは、当然、要望の趣旨等について伺うことになるだろうと思っております。
それから、この施設の調査についてでございますが、
行政部長からお答え申し上げましたように、このまま残すことは非常に難しい状況でございますけれども、本市といたしましては、国から
各種文献とか写真、
平面図等の資料の提供を受けるとともに、
文化部として施設の現況を調査し、
文化庁並びに
歴史的建造物等の
専門家の助言をいただきながら、
各種記録の保存及び公開を行ってまいりたいと考えております。
◆
伊藤理智子 委員 その
文化庁が、札幌市が調査するなら協力するという先ほどの私の質問についてはどうですか。
◎塩澤
文化部長 今、答弁で申し上げましたように、
文化庁及び
歴史的建造物等の
専門家の助言をいただきながら調査をしたいと思っております。
◆
伊藤理智子 委員 お金がないから残せないということを軽視しているととらえられるのは憤慨するというふうに言われたんですけれども、私はそういうふうに受けとめていないのですね。お金がないということは私もわかっているんです。でも、本当に、歴史的な価値、文化的な価値、教育的な価値があって、この札幌市で
平和事業に取り組む上でも本当に大切な戦跡だと。しかも、札幌市だけではなくて、全国的にも本当に
文化財としての高い評価がなされるような建物であることがこの
考古学会の評価にも書かれていまして、先ほどの
陳情者の方も、今出されたのは遅いくらいだと言っています。こういう建物については、戦跡としてだけの価値ではなくて、
建築構造物としても本当に価値があるものだというふうに言っていますから、これから戦跡についてしっかりと調査して認識を一致させていくことはできると思うのですよ。
財務局では何が何でも年内に
取り壊しをしなければならないから、早急に私たちが決断しなければならないと、私も最初はそういうふうに受けとめていました。しかし、そうではなくて、札幌市の考え方、札幌市の
姿勢一つで待ってもらえるということです。財政が厳しいことはわかっていますが、お金のことが先にくるんじゃなくて、待ってもらって、
歴史的価値、
文化的遺産、
教育的遺産としての価値がどうなのかということをもっとしっかり調査すべき、市民の皆さんにも納得していただくような調査を行うべきだというふうに考えるのですけれども、いかがですか。もう一度、お伺いしたいと思います。
◎浅野
行政部長 いわゆる
歴史的遺産であるとか、
教育価値であるとか、私たちはそういったことを否定するつもりはございません。ただ、これはまたお金の話になるかもしれませんが、現実的な問題として、そういう戦跡、
歴史的遺産というものを教材として使っていくために、それを維持するにはやっぱりお金がかかるといった場合には、やはり、それにかわるもの、経費がそれほどかからないようなもの、例えば、先ほども国に要請することを言いましたけれども、記録とかデータとか、そこに施設があったことを示すもの、そういったものを使って教材としてやっていく。そのことによって、
平和教育とか
普及啓発事業の目的を達成できるというふうに我々は考えておりますので、何というのでしょうか、現物を残すことが必ずしも必要だとは思っておりません。
◆
伊藤理智子 委員 文化的、歴史的、
教育的価値は認めているというふうにおっしゃるのであれば、それは本当に大事なものだということを
専門家にもしっかりと調査していただいて、札幌市にお金がないから残せないという状況になっているけれども、全国に対してそれでいいのだろうかという投げかけもできると思うのですよ。また、国の方でも長期的な計画で購入することを考えてもいいと言っているわけですから、お金がないということで切り捨てるのではなくて、まず、歴史的、文化的、教育的な価値についてしっかりと調査をして、札幌市としても残すべきものだということを認識した場合には、その後のお金についても、どういう方法があるかと。
先ほど陳情者の皆さんからも、お金がかかるだろうけれども、残せるということであればいろんな協力はしていきたいというお話がありました。今まで、全国的にも、
文化遺産の
取り壊しが決まっていた中で、市民の皆さんが運動して、
取り壊しをやめて
文化遺産として保存している自治体もあるというふうに聞いています。そういう立場から、お金が先にありきではなくて、まず、歴史的な価値についてしっかりと調査していくべきだというふうに思います。
これ以上やってもきっと平行線で同じ回答だというふうに思いますが、1トンの爆弾が落ちても破壊されないようにつくられたという
北部軍司令部の
防空指揮所のこの分厚い
コンクリートを見たときに感じる威圧感は大変なものであり、戦争を進めていった建物があったという事実に本当に驚く戦跡だと思います。映画を見たり文章を読んだりするのとは違う圧倒的な迫力を感じ、平和のとうとさを感じることができると考えております。
平和教育、平和の大切さを普及する上では絶好の教材であるという点で、
教育的価値もある戦跡だというふうに思っています。
当初の話では、
道財務局が何としても年内に
取り壊しを行うので札幌市の考え方を示さなければならないということでしたが、
財務省の話を聞くと、保存してほしいという
市民要望があること、自治体の判断にゆだねることなどの考え方を示しています。まず、しっかりと調査を行うこと、
専門家による保存のための公聴会を行うこと、そのために年内の解体は延期することを
財務省に求めることは難しいことではないと考えます。
最後になりますが、9月29日、沖縄県の宜野湾市で教科書検定意見書撤回を求める県民大会が開かれ、11万人の県民が参加しました。参加者は、高校教科書検定で、政府が沖縄戦での集団自決が日本軍と無関係かのように書きかえたことに怒りの声を上げました。日本の行った戦争を美化する動きがある中で、戦争の事実を正しく後世に伝えていくことはますます重要さを増しているのではないでしょうか。私は、戦争を繰り返さないためにも、また、歴史的、文化的、そして
教育的価値を有する
北部軍司令部防空指揮所を保存することを強く求めて、今の
やりとりをしっかり受けとめていただいて、財政難で切り捨てるという立場をとらないでくださいということを求めて、質問を終わらせていただきます。
◆堀川素人 委員 今いろいろな
やりとりを聞いて、結論的に言ったら、何も難しいことじゃない。今、伊藤(理)委員から言ったように、財務局の方では、急ぎたいのでしょう、急ぎたいけれども、札幌市の出方によってはそれは待ってもいいんだよと、わかりやすく言えばね。そう言っている、それを前提にして、もう一つは、文化的な価値がどうあるのかという点検が全部終わっていないという現実なわけだ。そうするならば、それを終えるための時間を一定確保する。それは、国でも待ってくれるならば、札幌市にとって何の不都合もないのかなということなんだね。
それが、
行政部長の話によれば、金がないと。イトトンボ、ああいう種というものを守らなければならん、残さなければならないと、こう言っても。これは、今の経済的価値観から言うならば余り価値がない。でも、別な面、種の保存、多様な生物の存在ということから、我々、地球に生きるものすべてにとって必要なんだとなったとき、何としてでも残さなければならん、残すためにどうするかといって、みんなが知恵を絞るじゃないですか。
今みたいに、時間は多少とれるならば、中途半端になっている
文化的価値を、国レベルでも、それから札幌市でも、いろんなところから情報を集めて、これはどうなんだと。まず、そういう観点で資料を全部集めて、いや、これは残さなければならん、こういうふうになったとしますか。でも、もう一つは、経済的側面からいったならば、それを残すだけの金がない。こういうところでもってぶつかり合って初めて結論が出てくるんじゃないですか。
今、二つとも中途半端ですよ、極端に言ったら。金がないなんていうのは、5億円の金があるかないかといったら、あなた方は聞きづらいかもわかんないけれども、札幌市は、寒冷地手当一つ取り上げたとしても、国や道なんかから見て、特別に年間13億円の金を札幌市では多く市民負担させているわけだ。そういうことを考えて、正常に戻したならば、今の5億円だとかなんとかという形も、それに比較したら必ずしも多い額だとは思わないですよ。
まず、この
文化的価値というのは、一回、これを壊したならば復元できない。壊してもいいものとすれば、壊してもいい。でも、その結論が出るには、もう少し調べなければならんと札幌市でも言っているわけだ。それから、
文化庁でもってやっている全国のそういう施設との比較の中で、残すべきものなのかどうかというのはまだ結論が出ていないと。こういう中でもってね、金が、金がと言うこと自体おかしいし、僕は今の
やりとりを聞いて、若干、何というのかな、悪いけれども、浅野部長の見識がどこにあるかと考えた場合に、このような問題を話しするレベルじゃないのかなと、こう疑うね。金の問題じゃないですよ。今やれるんだから、時間が多少あるんだから、その時間を最大に生かしてどう残すか。お金があったならば、それでまた、残す価値が少なくともあるんだから、残せたならば残した方がいいんですよ。すべて残せたら残した方がいいんですよ。ところが、いろんなお金の問題もあるから、どこかで線を引く。この線引きが明確に科学的に分析された結果じゃなくてそれをするというのは、あなた、おかしいじゃないですか。そのことについてどう思うか。
◎塩澤
文化部長 文化財的な調査の関係についてお答え申し上げます。
先ほどもお答え申し上げましたけれども、
文化庁で行っている現在の
近代遺産の調査で、
戦争遺跡については、全国から550カ所の申請がありまして、そのうち、さらに詳細に調査すべき、すなわち
文化財として指定されると想定されるものが50カ所選定されております。しかし、その中にはこの
指揮所は入っていないという状況がまずございます。
それから、
文化部といたしましては、
文化財として保存すべきかどうかというのは、通常の近代の遺跡もそうですし、それから埋蔵
文化財、古代の住居跡というものもそうでございますが、購入の費用、改修の費用、維持の費用、それから持ち主の意向、それらを総合的に勘案して、これを残すことが可能かどうかという判断をするところでございます。そういった観点から、行政部、私ども
文化部とも協議いたしまして、これは数少ない
戦争遺跡、当時を物語る遺跡ではありますけれども、残すことは難しいという判断に立ったところでございます。そういう古代の遺跡も含めて、残すことが難しい
文化財につきましては、記録保存という形でしっかりと残して市民の方々に公開していくということでございます。
ですから、まず、いわゆる第1級の近代の遺跡としては選定されなかったという事実を踏まえて、それから、総合的に勘案した上で、これをそのまま残すことは現状では難しいという中で、
文化庁、
専門家の意見も聞きながら記録保存という形でやっていきたいというのが
文化部の立場でございます。
◎浅野
行政部長 この陳情に関して私どもがかかわっているのは、
平和都市宣言の
普及啓発事業をやっているという面からだと思っております。我々は、戦争の悲惨さ、平和のとうとさというものをソフト面から啓発する事業をやっていて、そのことによって札幌のまちづくりとか発展に寄与しようという考えでやっているわけでございます。ご存じのように、我々の事業は、全体から言うとそんなに大きくない経費で創意工夫しながらやっているわけでございます。ですから、まず、私どもの方で
平和事業をやっている観点から重要なのは、何を後世に伝えるかということで、今の件であれば、つきさっぷ郷土資料館にそういった資料の保存とか、あるいは、先ほど
文化部長が言いましたように、現物ではないにしろ、記録とか資料、それから、そこにあったという事実を示すもの、そういったものをやっていくというのが我々所管というか、そういう気持ちでおります。
◆堀川素人 委員 今、500何カ所のうちの50カ所が1級でもって既に選ばれているんだと。その中には含まれていないということなんだね。
文化庁の最終的な意向を確認していますか。
今、共産党の伊藤(理)委員からは、自分の同志、仲間の議員を通して
文化庁の意思を確認した結果、札幌市がそういう気になるならば
文化庁としても協力してその価値について判断する、一緒になってやっても構わないんですということが示されていると言うんだけれども、今、そのことを確認していないのですね、
文化庁の意向を、きょう現在。
◎塩澤
文化部長 私どもは、この件について、以前に
文化庁とも折衝しております。その中で……(「以前とはいつだい」と呼ぶ者あり)
9月3日だと記憶しております。
この50カ所に選ばれなかったということは事実でございますが、各自治体において、選ばれなかった、選ばれた、それぞれあるかと思いますけれども、それぞれの戦跡、その他の遺跡について調査する場合は
文化庁としてもさまざまな形で協力をするということは聞いております。私どもとしては、今後、記録保存のための調査の協力をお願いしていきたいというふうに考えております。
◆堀川素人 委員 実は、僕は、ことしの夏に森町の鷲ノ木遺跡というところに行ってきましたよ。そこでも、それを残すかどうかと。新幹線が通る真上にあったわけです。そして、それを残すか残さないかという中で、結論的には、
文化庁の大変な熱意ある人がこれは1級の遺跡としての価値がある可能性があると言って、こうやって保存が決まったわけです。1級であるかどうかというのは、大変専門的な知識を持った人じゃなければなかなか判断できないことだと思います。今、僕がこうして議論するのも、僕にとって、今そういうものを判断して後世に禍根を残さないか。将来の子ども方に、大人の人でもいいですが、そういう人方に我々のやった行為が問題のある行為であるという評価を受けないかどうか、心配ですよ、正直に言いまして。
今、
産業考古学会からこういう資料が出てきました。これを残すか残さないかとするならば、札幌市とすれば、ありとあらゆる方法をとって、後世に対して我々の行為が評価されるように、やはり手を尽くしてこういうことをやるのが本当だったんじゃないかと。これは10月20日付でもって出てきていますからと。こういうことだけではなく、こういう意見があったものが今まで眠っていたなら、それを掘り起こしてどうなのかという努力、
文化的価値というものはそれぐらい気を遣わなければ保存していけないんじゃないですか。
僕は、正直に言いまして、あの建物を見て、これはどういう
文化的価値があるのか、僕の知識の中では評価できないですよ。そうするならば、あなた方は、
専門家を頼りながら、出てくる資料だとか、それから、今、最も
専門家と言われる
文化庁のこういう話をしっかり聞きながら、まずは基本的に残すという立場に立たなければだめなんですよ。そして、調べ上げる。調べ上げた結果、今、
浅野行政部長が言った、お金との関係の中ではどうなるのかと、これが最終的に話されなければならん。今やっていることは逆だもの。金がないからやれないんだと言う。そうじゃないんですよと、これは。金の前に残すべきなのか、残さないべきなのか、まずこれを話し合う。でも、現実にはお金が動いていて、こうやってみんなが生きている。その中で、最終的には金とかかわりなく決めるわけにはいかないのかもわからない。でも、考える順番が逆ですよということですよ。
局長、これについてあなたはどう考えているのかな。
◎生島 総務局長 まず、第1点目は、先ほど
文化部長から話がありましたように、国としては一義的な選別は終わっていると。ですから、先ほどの
文化庁の話というのは、今、耳で聞いただけですけれども、地方が考えるのであれば、国はそのお手伝いをしますよ、こういうふうに言っているわけですね。ということは、国としてはやらないけれどもということが前提になっているということです。(発言する者あり)
○
細川正人 委員長 静粛に願います。
◎生島 総務局長 したがって、超1級とか、そういうことではないんだろうなと。何というか、国においては1次的な選別をしているわけですからね。その時点で、一つ、国としての評価が終わっていて、あとは地方がそう考えるのであれば協力しますよというふうに言っている。
文化庁がそういうふうに言うのは当たり前ですよね。地方がいろんなことを考えてやるときに、専門機関として協力するのは当たり前ですから、
文化庁としては。そういうふうにおっしゃるのは、そういう意味なのかなというふうに私は理解しております。
それから、時間的な余裕があるかどうかについては、我々は、国からは特に大丈夫ですよという話は聞いておりません。それで、以下、推測というか、いろんな事実を考えていきますと、国がなぜ
国家公務員宿舎をあそこに集約しようと考えているかというと、今、いわゆる交通利便の地に国家公務員の宿舎があって、国が、多額の負債を抱えている中では、そういう土地はみんな財源として活用しよう、売り払おう、それで、もう少し市街地から離れたところに宿舎を集約しよう、こういう考えなんですね。そういった意味では、国の方も財政的に非常に厳しい中で、本当にそれほど時間的余裕があるのかどうか。我々はそういう話を聞いていない、こういうことでございます。
それで、札幌市も、過去の歴史を考えていくと、たくさんのものを惜しいなと思いながら失ってきた事実はあると思います。それは、戦跡もあるだろうし、いろんな民間の方が持っている古い建物でも、これは惜しいよなと思いながらも、やはりそこに税金を大量に投入して保存していくという判断はそれぞれの時点で非常に難しかったろうというふうに思うんですね。そういう流れの中で考えると、まず一つは、国の方は、基本的には国がお金を出して保存してということはきっと考えていないでしょうから、やるんであれば、
文化財的に価値があれば、札幌市が自分の費用を持ってやりなさいよと、こういうお話です。そのことについて、今、私自身、我々が責任を持って、それであればそういうふうにできますねという自信があるかどうかと問われると、今まで申し上げた流れの中でいくとそれは難しいだろうなと、こんなふうに思っているということであります。
◆堀川素人 委員 私の想定ではと、想定で話したならば想定なりの根拠がなければならん。あなたは、いつどこに行って、どういうことで今の想像をなしたのか。例えば、公務員宿舎の話についても、きょうここでもって
総務委員会が開かれるなら、確定的な国の態度だとか国の方針だとか、こういうものをきちっと聞いておかなければならん。例えば、札幌市がこれを残すべきだという意思を出した場合に、本当にその時間をくれるんですかと。実際には、そういうようにして時間をかけてもいいよという話まで出てきている。やっぱり、その確定的なことをちゃんと調べるべきだね。今は、私は想像すると言って、自分の想像でもってここで話すことじゃないんだ。事実が何であるのか、それが待てるものなのか待てないものなのか、時間で言うならば。
それから、
文化的価値があるというのは、文化的側面としてどういう価値があるのか。例えば、今のところは1級の価値は認められていないとしても、その後の調査で1級の価値というものが出てくる可能性だってないわけじゃない。それから、2級のものだったら残さなくてもいいのかといったら、そういう基準もない。これは、国では残さないけれども、札幌市として残すのはどうなのか、残す必要はないと言うには調べ方が足りないんじゃないですかということを僕は言っているのです。
僕は、さっき言いましたように、これについての僕の判断というのは大変迷います。僕自身にそれを判断しろと言われたならば、できれば判断から遠ざかりたいですね。遠ざかりたいですよ。だから、
専門家とかそういう意見を満遍なく調べて、残すか残さないかということについて、残す価値があるかないかということについて突き詰めていくべきなんじゃないですか。そして、最後に金がどうなのかということでもって判断する。
だから、二つの判断の仕方がある。今の判断の仕方は逆の判断の仕方である。金がないから、価値がないみたいな、価値があるとは言っているけれどもね。でも、逆じゃないですか。価値があるかないか、そして、あるとするならば金をどこまでかけられるのか、こういうことじゃないですか。
もう、大体そういうことでしょう。それ以外のものはないでしょう。時間があると言っているんだから。だから、時間があるならば、もう一回、時間をかけて調べてみようや。どうも今の話を聞いたら、札幌市の調べは十分じゃないような気がする。そういう意味では、僕も本当に迷っていましたけれども、今の札幌市の回答の中では、調査が十分じゃない、それから、金のことから言うならばまさに時期尚早、その価値があるかないかを先に調べるべき、以上、終わります。
○
細川正人 委員長 ほかに質疑はございませんか。
(「なし」と呼ぶ者あり)
○
細川正人 委員長 なければ、質疑を終了いたします。
それでは、陳情3件の取り扱いについてお諮りいたします。
取り扱いについていかがいたしましょうか。
(「継続」「採決」と呼ぶ者あり)
○
細川正人 委員長 継続、採決、二つの声が上がっておりますので、それでは改めてお諮りいたします。
陳情第3号、第10号及び第11号を
継続審査とすることに賛成の委員の挙手を求めます。
(賛成者挙手)
○
細川正人 委員長 賛成少数であります。
よって、陳情第3号、第10号及び第11号は、本日、結論を出すことといたします。
それでは、陳情3件について、一括して討論を行います。
討論はございませんか。
(「なし」と呼ぶ者あり)
○
細川正人 委員長 なければ、討論を終了いたします。