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平成16年少子化対策・青少年育成調査特別委員会−02月04日-記録

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  1. 札幌市議会 2004-02-04
    平成16年少子化対策・青少年育成調査特別委員会−02月04日-記録


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    平成16年少子化対策青少年育成調査特別委員会−02月04日-記録平成16年少子化対策青少年育成調査特別委員会  札幌市議会少子化対策青少年育成調査特別委員会記録            平成16年2月4日(水曜日)       ────────────────────────       開 会 午後1時 ○勝木勇人 委員長  それでは,定刻でございますので,ただいまから,少子化対策青少年育成調査特別委員会を開会いたします。  報告事項でありますが,柴田委員猪熊委員から欠席の旨,連絡が入っております。  それでは,議事に入ります。  青少年育成策についてを議題といたします。  本日は,間宮正幸さん,宮武良徳さん,山田大樹さんをお招きいたしております。  最初に,皆様にお話をいただいた後,委員の皆さんからの質問をお受けしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。  委員会を開催するに当たりまして,一言ごあいさつを申し上げます。  本日,お招きいたしました皆様におかれましては,お忙しい中を快く本委員会への出席を承諾していただきまして,心より厚く御礼申し上げます。  本日の委員会は,札幌市内青少年育成にかかわる活動をされている方をお迎えし,現状や課題,ご意見などについてお話をお伺いしたいと思っております。  それではまず,北海道大学大学院教育学研究科助教授でいらっしゃる間宮正幸さんにお話をいただきますが,最初に,私の方から略歴を紹介させていただきます。  間宮さんは,病院勤務を経て大学教員となられ,教育臨床心理学の研究をされておられます。また,北海道子ども虐待防止協会代表,それから北海道臨床心理士会子育て支援担当理事も務めておられます。  それでは,間宮さん,ひとつよろしくお願いいたします。 ◎間宮 参考人  私は,今,ご紹介にあずかりましたように,20年余りにわたり,主に子供たちの生存,成長の困難にかかわる諸問題の相談活動を主としてやってまいりました。具体的に申し上げますと,障がいを持つお子さん,あるいは不登校やいじめの被害に遭ったお子さんたちの相談,虐待の被害者の相談等々,今日,社会的にもいろいろ取り上げられております諸問題について二十数年やってまいりました。  5年前,ご縁を得ましてこちらに参りまして,実は,最近関心を持っておりますのは,そういった子供たちの諸問題にかかわって,地域社会の環境をどういうふうにつくっていくのか。もちろん,そこには学校を含めまして,学校を初めとする地域社会の環境をどういうふうにつくっていくのかということが私の一番の関心になっております。そのような観点で,来道いたしましてから,ご縁を得て幾つかの自治体に参りまして,子供たちの成長していく環境についていろいろ考察する機会がございました。本日は,そういうデータをもとにお話をさせていただきたいと思っております。  札幌市少子化対策青少年育成調査特別委員会の発足の目的を拝見いたしますと,本市の置かれている少子化の現状にかんがみ,その対策について検討するとともに,乳幼児期から青少年期を通じて,次代を担う子供たちが心豊かに育つために必要な事項を調査する,これを目的とするとございます。実は,私が調査活動を行っております趣旨は,この目的と全く同一でございます。とりわけ,地方自治体に行きますと,統計上明らかなように,目に見えて総人口が減り,そして子供が減っているということに直面するわけでございます。これは,やはり大変なことで,ひしひしと,この特別委員会の目的に関して具体的にどうするかということを考えなければならないなと思っております。したがって,今回,ご招聘いただきましたので,一も二もなく,少しでもお役に立てればと思ってやってまいりました。
     お手元のレジュメをごらんいただきたいと思います。  そのような私自身の問題意識は,恐らく,ご参列の皆様のお気持ちと同一のものかと存じます。全部は無理としても,道内市町村の各域を回ってみますと,実際,本当に統計上で厳しい状態があります。たまたまご縁を得まして,私どもは,道南檜山支庁の上ノ国町教育委員会のご協力を得まして,平成11年から継続的に調査活動を行っております。上ノ国町さんの人口は,私どもが初めてお邪魔しました平成11年は7,450人ぐらいありましたが,平成16年現在,7,030人にまで減っております。お邪魔して4年弱で,もう既に400人の人口が減っている,この間,子供たちもそれに伴って減っているという状態です。  あるいは,せんだっても,たまたま大学の公開講座がございまして士別市にお邪魔しました。ここでも,少子高齢化社会の子育てというようなテーマでお話しさせていただく機会がありましたが,お集まりになった地域住民の皆様は,市存続の危機感を大変感じていて,このテーマは重要であると言っておられて,手ごたえを感じた次第であります。  士別市の場合は,生涯学習による街づくりなどを市総合計画の第4の柱に据えておられて,子育て支援の対策も少しずつやっておられ,合計特殊出生率も1.4をちょっと上回るぐらいの数字になっていて,若干でありますが,本市よりはやや高いような状態を保っておられるようです。  本日,私が主にお話したいのは,この問題を考えるときに,私たちもちろん大人の責任ではあるのですが,将来の主体者である子供たち自身がこの問題をどういうふうに考えているのかということであります。そこで,私どもが2000年度と2002年度に行いました子供たちの人生展望,子供の人生イメージ調査というものを少しご紹介したいと思います。これはレジュメのゴシック2のところでございます。  2000年度は檜山上ノ国町で,2002年度は本市札幌市で,総勢二十数名の学生を連れてやりました。対象となっている子供の数自体は極めて少のうございます。これは,大量調査でできる性質のものと,大量調査ではできない性質のものがあろうと考えております。大量調査になりますと,どうしてもイエス,ノー,あるいは5件法で1番,2番,3番に番号を嫌々ながら打つようなことがありまして,本人たち自身が本当にどういうふうに考えているかがなかなか伝わらないところがあります。私たちは,1人の子供に90分使いまして,関係をつくって丁寧に聞いていく,そして,そのデータをそれなりに学術的な方法でまとめていったものでございます。  本市は,道内すべての自治体との総合連環で成り立っている街であるというふうに考えられます。したがって,道南の一小さな街ですが,ここの街の子供たちの思いというのは,札幌市の子供たちの思いとどういう違い,差があるのかということを調べたいと思いました。  まず,上ノ国町さんの子供たちの様子であります。対象となったのは,小6,中3と,あのときは行事がありましたので高校2年生を対象にしました。結論から申しますと,私どもの研究代表者の田中がまとめておりますように,そこでこんなことがわかりました。  第1点は,この地域の住民の生活は,長期にわたる第1次産業の切り捨ての政策と構造的不況のもとで極めて厳しいものとなっている。その中で育っている子供たちは現在と未来の生活に大きな不安を抱いている。これはそうだと思います。  2点目は,しかし,同時に,この地域では子供を支えるための住民同士の協力,住民と教職員や諸専門家たちの協力,それを支える行政関係者の努力が自発的に展開されている。それに支えられて,子供たちは地域への強い愛着を持ち,生活の基底に安心の感情をつくり出していることがうかがえる。  3点目は,子供たちの多くは不安と安心の交錯する複雑な生活環境を形づくっている。そして,競争の先に何があるのだろうかと競争的価値観を疑い,生まれ育った地域で仕事につき,生活して,普通の幸せを得たいと望んでいる。しかし,地域には青年の働き口は極めて少なく,彼らはそれはどうにもならないことなのかと考えたいと思っている。  ここまでが,小,中,高校生のインタービュー調査から得られる,私どもで集約された言葉でございます。  したがって,4点目は,この地域の住民や教師,援助している人たちに求められていることは,こうした子供,青年の声や生き方への問いを,どういうふうに受けとめ,どう発展させればよいのかを深く考え合っていくことであろう。実際には,働き口の問題,若者の働き口の問題というのが大きく基盤に横たわっているのは事実です。しかしそれに対して大人たちはどういうふうに答えを出していくのかということであろうかと思います。  2003年には,そういう問題意識のもとに,地域住民の方々,教師,保育士,福祉援助者といった方々にも,同じように時間をかけた調査的面接をもとにした研究を行いました。これを分析してみますと,それに対して大人たちの答えは,対極的に二つの流れがあったかと思います。一つは,簡単に言えば子供たちが地域から外に出ていく,具体的には函館や札幌に出ていくような教育の方向を目指さざるを得なくてやっていく方向に行くか,あるいは,普通の幸せという言葉の意味を深くとらえて,自分たちふるさとを愛する子供たちに普通の幸せに見合うような地域生活をどう保障するかを考えていくような行政や教育を考えるかということであろうかと思いました。もちろん,それは一人の人の中にも複雑に交錯しており,対極的,対立的にとらえることではありません。大変複雑であることは言うまでもないように思われます。  これに対して,札幌の子供たちは,数は大変少ないのですべてと言うことは大変危険ですが,やや違った答えがあったように私たちには思われました。大変目立っているは,札幌の子供たちはほとんど全員がと言ってもいいと思いますが,自分の街を好きであると答えます。そして,道内のほとんどの子供たちが北海道を愛しているというのは間違いないのですが,札幌の子供たちもまた札幌が好きである,そして,札幌,北海道に住みたいと答えるのです。これは,ほとんど100%であります。  しかし,本日のテーマにかかわって,私どもの質問は少子高齢化対策のためにやったのではないのですが,たまたま結婚をどう考えるかということが質問項目に入っておりました。これはなかなか厳しいものがございまして,札幌の子供たちの29名中20名ですからごくわずかの子供ですが,結婚したいと思っている,将来,家庭をもうけて子供を育てたいと思っているのはわずか半分ぐらいです。これをどう見るか。少なくとも,これは,将来,結婚して子供を育てていくことが当然視されているのではない時代に入っていることをうかがわせます。  私どもの札幌の子供の調査から,この二つのことだけは言えそうです。札幌を愛し,北海道に住みたいと思っている。しかし,子供をもうけてここで子供を育てていこうという気持ちになってくると,やや揺らぐ,ここがしっかりしたものにはならない。これは,札幌の子供というより,我が国全体に及ぶものかと思いますが,この辺をどういうふうに考えるかということでありましょう。  本日のテーマにかかわって申し上げられるのはそのようなことですが,それに対して,私ども研究グループとしてはこんなことを考えております。北海道,札幌市の合計特殊出生率が極めて厳しいのは皆様もご承知のとおりだと思います。そして,これは,今申し上げたように,過疎地域に行きますと本当に厳しいものがあり,地域住民の方は真剣に考えようと思っていらっしゃることがわかります。  それに対して,本日のテーマにかかわって,どうしたらいいのかということです。私の趣旨は,それを考える主体は子供たち自身にあるのではないかということであります。外から,「君たち,家庭をつくり,子供を産みなさい」と言っても,彼ら自身の主体の心の中でそのように考えなければ,それは実現いたしません。子供たち自身が将来に展望を持ち,希望を持って子供を育てていくような状態にしなければなりません。  そうしますと,例えばどんなことが考えられるか。順番は不同でアトランダムに申し上げます。  さっき委員長のご紹介がありましたように,私は,今たまたま子どもの虐待防止協会の代表を仰せつかっております。会員は全450名,全道に支部がございまして,それなりに活発な活動をしているつもりです。  虐待の問題が1件発生しますと,青少年に大変大きな影響を与えるのではないかと思います。これは,私は,今,たまたま大学に所属して学生教育に携わっておりますが,学生も,今般,起きました大阪での事件等に非常に強い関心を示します。これは,理系,文系問わずそうであります。したがって,虐待防止対策というのは,少子化との課題ともかかわって非常に重要な問題であろうと思います。もちろん,この問題は,これまでの委員会の公聴会でも,ほかの先生方が言っておられると思いますが,私の立場から申し上げても,やはり,この問題への対策はきちんとしないといけないと思います。  2番目は,これは,2番目というより,実は私が一番申し上げたいことです。私たちは,やはり,子供に人生の希望をはぐくむ教育を考えねばならないだろうなと思います。今般,このお話をいただきましてから,私は,たまたまことしは1年生から大学院まで全部のゼミナールを持っているものですから,所属する学生に慌てていろいろヒアリングをしてみましたが,やはり人生の希望を抱けないのではないかということを若者たち自身が申しております。  このことをどういうふうに考えるかであります。私は,時々,いろいろな相談のことで学校に訪問調査に出かけますが,小学校などへ行きますと,何か非常に昔懐かしくとなってしまいますが,それだけではなく,学校に行くとハッピーな気持ちになることがあります。校長先生に,きょうは大変ハッピーでしたと言って帰ってくることが大変多いのです。これは,札幌市内の学校でもそういうふうに感じます。ですから,人生をこの街で過ごしたいと考える子供たちが多いのは大変貴重なことでありまして,その子供たちに,自分のふるさとは札幌であるということをしかと刻みつけるような,広い意味での教育ということになりましょうけれども,それは一体何なのだろうかということだと思います。  定点観測している上ノ国町では,ふるさと教育ということを大変盛んにやっておられて,出ていくはよし,しかし,サーモン・カム・バックで,いつか帰っておいでというようにも教育長は言っておられましたが,ふるさとを愛する教育に力を入れておられます。これはいろいろな考え方がありましょうけれども,もちろんそのこと自体に異論はありませんので,私はふるさとを愛する教育を重視したいと思います。  そのためには,やはり,学校がハッピーなところであることは非常に重要であると考えます。もちろん,幼児教育の場である保育所,幼稚園なども同じようなことが言えるかと思います。あるいは,地域社会の公園です。士別では,ある住民の方が公園をもっときちんとつくってほしいと言っておられましたが,公園がハッピーな場所であることがふるさと感覚につながるということも大事かと思います。  3番目に,もっと具体的に申しますと,地域社会の共同の子育てですが,前回のヒアリングでどなたかが申し上げておられるかもしれませんけれども,やはり共同の子育ての思想と実践をもっと広められないか。どこの地域住民の方も,少子高齢化の問題は重要な問題だと考えておられます。だから,私も力になれることであればなりたいとおっしゃっています。こういう方々の力を結集して,共同の子育てをどういうふうに広げていくかということをやっていく必要があるだろうと。札幌は大都市としては随分とやっておられると私は認識しておりますが,これは非常に重要であると思います。  以上,4点申し上げましたが,こういうことを考える際に,やはり若者自身,将来の主体者,地域住民の主体者となる子供たち自身が何を考えているか,もう少ししっかりと,ゆっくりと,丁寧に聞いていく,そして,君たち自身が将来の札幌市の主人公なのだという立場に立つ必要が今こそあるだろうというふうに私は最終的には思いました。札幌市では子供を育てることが楽しいのだってというような,子供たちになるということです。  先ほど,学生にちょっと聞いたと申し上げましたが,例えばこんなことも言っておりました。学生は若者の代表の一人でありますから,学生たちの声を集約して,それを代弁いたします。1番目は,いろいろな職場で保育所をつくってほしい,これは,女子学生の声であります。2番目に,非常に大きいのは,子育ての経済的負担を考えるとおいそれと子供はつくれないと私たちは感じているという学生の声です。これは非常に多かったです。それから,3番目は,学生は大変具体的な提案をしておりましたが,実は,私たちが二十数年こうやって育ってくる間に子供と接する機会が非常に少なかったのだというのです。だから,具体的に子供と接することができる機会を何らかの形で入れる必要があるのではないだろうか。自分たちが普通に小,中,高,大学と来ている二十何年かの人生の中で,本当に小さな子供たちと触れることがなかった,これでは,自分が,将来,家庭を持つという希望につながらないのではないかというようなことも言っておりました。大変重要な意見を3点言っていたと思います。  とりあえず,以上でございます。また,ご質問がありましたらお答えしたいと思います。 ○勝木勇人 委員長  間宮さん,どうもありがとうございます。  次に,元少年アシストセンター少年育成指導員宮武良徳さんにお話をお伺いいたします。  宮武さんは,長年,中学校教員を勤められた後,札幌市少年アシストセンター少年育成指導員を務められ,相談・指導業務,センター主催の講座の講師などをされた方です。  それでは,宮武さん,よろしくお願いいたします。 ◎宮武 参考人  今,委員長からご紹介がありましたとおり,私は,長年,相談業務を担当しておりまして,その中で,困った行動をとる子供や悩みをたくさん抱えている子供たちを中心に仕事をしてきたつもりです。学校は多様な仕事がありますが,主にそうした経験則にのっとったお話をさせていただきます。  お手元にレジュメをお届けいたしまして,最初の項目に少子化のことを書きました。これは,この委員会で既に何回も話し合われていることがわかりましたので,軽く触れて,非行の問題から入らせていただきます。  まず,「少子化社会は,誰が,どのように『困る』社会なのでしょうか」と書かせていただきました。私自身も,日本の国が少子化になって人口がどんどん減っていく,ご存じのとおり,21世紀から100年がたった22世紀末には7,000万人を切る総人口になるような時代の中で,どんなものなのだろうかと。そのとき,所得税を払う人はいるのだろうかとか,年金はどうなるのだろうかとか,いろいろな不安がたくさん出てまいります。それは別にしまして,ちょっとカメラを引いた後ろから見ますと,そこに書きました1,2,3のような疑問もまた出てきます。少子化対策というのは,そこには極端に書きましたが,人間の生き方そのものを問われていると。日本の国の社会の家庭像といいますか,子供像といいますか,そういう大きい哲学的なものを含んだ問題ですので,どのような方向に持っていくかという道筋は非常に難しい問題ではないかと感じております。  たまたま今月発売されました雑誌の中に堺屋太一さんが書いた文章があって,おもしろい視点でしたので,ちょっと紹介させていただきます。  イタリアでは,1400年から1500年まで100年間かけて人口が約4割減った時代がありまして,900万人ぐらいの人口が500万人ちょっとになりました。お隣の今で言うドイツでも同じように人口が減りました。ところが,人口が半分ぐらいに減ってしまったイタリアでは,ご存じのとおり,15世紀にイタリアルネサンスが起こり,文化が栄え,商業が栄え,非常に豊かな国になっています。しかし,隣のドイツの国は衰退したと。これは,社会構造の違いからなのですが,そんな例を引きながら,堺屋太一さんは,少子高齢社会を楽しい社会にしましょうと,他の方が書かないような論文を書かれていまして,そうか,こういう視点もあるな,しかし,大変大きい問題を抱えているものでもあるなと痛感した次第でございます。  少子化の問題についてはそのぐらいにします。ただ,私自身が今まで実践的に感じてきた子供像や親の姿を見ていて,今起こっている非行や不登校の問題は少子化の問題と非常につながっています。しかし,どうつながっているかというのはなかなか見えない部分でもありますが,現代の不登校の問題,非行の問題にも影を落としている大きい問題であることも少子化の特色でございます。  非行化の問題は,その2番目に,「青少年の育成に関して」として「現在の子供の…一断面…」という形でデータを載せております。  今の子供たちは悪い子ばかりでなく,大半の子供たちはすてきな子供たちです。私たちの世代に比べれば,いろいろな面ですぐれていると思います。ご存じのとおり,単純にスポーツの面を考えても,国内ぐらいで活躍していた私たちの世代が,今やもう世界の中でトップで活躍する子供たちがいっぱいおります。それから,文化においても芸術においてもそうですが,グローバルに活躍する日本の子供たちがたくさんおりまして,子供たちというのは必ずしも悲観的な存在ではありません。  ただ,ハイテンションの面で心配な部分と,テンションを失ってローテンションになっている子供たちの存在がありまして,その二つの子供たちに,私たちがこれからどういう救いの手をいいますか,支援の手といいますか,自立へ向けての手を差し伸べていくかということになるかと思います。  例としまして,そこに道警による子供たちのデータを載せました。刑法犯,特別法犯,虞犯少年として平成14年度に検挙された北海道の子供たちですが,13年度が5,547人,14年度が5,539人でほぼ同じ数ですが,ここ10年近く5,000人台という数値で推移しております。昭和58年までさかのぼりますと,その数が1万9,885人で3倍以上の時代がありまして,昭和58年度のころは荒れた時代でした。その時代に比べれば,今は安定している時代だと思います。ただ,新聞報道その他で目につきますのは,私たちからするとびっくりするような残酷なといいますか,残虐な行為をする,事件を起こすために,今の子供たちにスポットを当てて非常に悪いのではないかということがあります。  もう一つは,普通の行動をとる子供たちの中で,社会性が非常に低くなっている,公共モラルが落ちているのではないかというご指摘があります。これらは,私は子供が悪いとは思いませんで,大人の方が悪いから子供がそれをまねしていると。  データはお示しできなかったのですが,今,日本の国の犯罪件数,刑法犯などを年齢別に上げたら,恐らく一番多いのは40代後半から50代の真ん中ぐらいで犯罪率が上昇しているはずです。団塊の世代のちょっと下です。その人たちがいろいろな事件を起こします。つい先日の岸和田の虐待事件のご夫妻の年齢もまさにそのとおりです。そういう親に育てられてきた子供たちです。また,そういう大人も,堺屋さんとは違う方の意見ですが,団塊の世代のすぐ下の犯罪を犯している世代は,小さいころからずっと犯罪率の高い年代であったと。ですから,そういうものの影響を受けている余波もあると考えると,大人の考え方を変えていく,また大人の行動規範を変えていかないと,子供の非行は救えない部分がたくさんあります。  ですから,アシストセンターにいるときの職員の合い言葉がございました。非行の問題でも不登校の問題も,これを解決していく,助けていく合い言葉は,「大人が変われば子供は変わる」と。子供は,なかなか相談施設へ来られません,家に閉じこもっております。しかし,ご両親にお会いして,ご両親の雰囲気や考え方が変わるだけでも子供は大きく変わってきます。やはり,日本の国は大人の姿をもう少し変えていかないと,こういう非行の問題は変わっていかないのだろうなと思います。  それから,この問題もマスコミ等々でたくさん言われていますので簡単に述べますが,家出のような昔では大きな大騒ぎする問題が,今だと,プチ家出という形で気楽に家出をする。それから,携帯電話の問題等々で,私たちから見ると重たいと思う非行が,本人たちは軽く感じるような軽い社会になってきています。  先ほどの間宮先生のお話にちょっと関連しますと,札幌の若者たちとお話ししていると,こういう傾向があります。若者に,「君,結婚するの」と言いますと,私の目の前にあらわれた女の子は,「わからない」と言います。男の子は「したい」といいます。ただし,男の子と女の子の大きな違いは,男の子は恋愛から逃げる,女の子は恋愛をしたいと言う。男の子は恋愛しないで結婚したいと言う。恋愛をすると面倒くさいと言うのです,心が揺れ動くことが面倒であると。しかし,結婚しないと一人前として認められないという概念を持っていまして,結婚一つとっても,今は若者の物の考え方がすごく変わってきているし,男女間でも変わってきているように思います。  もう一つ,次に不登校のお話をさせていただきます。  私の後にお話しされる山田さんがまさに不登校の最前線にいらっしゃる方で,レジュメにも非常に細かなデータをお示しされていて,ダブるところがあるかもしれませんが,お許しいただきたいと思います。  不登校の出現率がそこに書かれていますが,もう既にご存じだのことだと思います。  ただ,このデータを取り始めてから,全国的にも,北海道としても,札幌市としても初めて小学校,中学校の不登校の生徒が減りまして,これは画期的なことだと私は思います。これまでグラフがずっと右上がりでしたが,初めて,ほんのわずかですけれども,下がったということは,私が関係していた学校の先生方や相談機関の皆さんが頑張った成果であればいいなと思ってます。引き続き,来年以降もこのまま下がっていってくれればうれしいなとひたすら念じております。  ただ,この不登校のデータをいつも自分で調べながら,講演などで呼ばれたときに気になるのは,高校生以上のデータがないということであります。アシストセンターには,高校生の親,または高校生から,不登校に関する相談がたくさんあります。それぞれのセクションでは高校生の不登校のデータを持っていらっしゃると思うのですが,義務教育のように,全国レベル,都道府県レベル,市町村レベルできちんとまとめて公表していませんので,高校生以上はどうなっているのかなと気になります。  なぜかといいますと,中学校の3年生ぐらいから,重い不登校ですと,形だけ高校へ進学できたとしても,相変わらず不登校状況が続いておりまして,高校を卒業しても引きこもりという形になっていきます。そういう人たちがどのぐらいいるかというと,これも正確なデータがないのですが,ある説では,全国に20歳から30歳ぐらいで家庭に引きこもっている人数は80万から120万人ぐらいいるのではないかと言われています。また,厚生労働省の中のある研究団体が調べたものでは,何らかの形で不登校,引きこもりの子供を抱え込んでいる世帯が日本に41万世帯あるのではないかと言われています。もし,全国に100万人いますと,大体,札幌市は人口比から言っても全国の1%は存在しますから,もし全国に100万人いれば,札幌市に1万人の引きこもりの方がいることになります。  去年の夏ごろに受けた相談の中に,お母さんも70歳近い方でしたが,息子が引きこもっているので力をかしてほしいというお電話をいただきました。「幾つですか」と言ったら,42歳と。いつからですかと言ったら,大学を卒業した次の年からと。23歳から42歳までずっと家に引きこもっているわけです。こういう人が札幌にいます。20歳前後の若い引きこもりの方もきっとふえてきているのではないかと思います。したがいまして,そういう子供たちのためにも,小学校,中学校のときに不登校をもっと解消しなければいけないと思います。  経験的にお話させていただきますが,資料1という横向きのグラフをお届けしております。  これは,心理学専門の間宮先生に見られると恥ずかしいのですが,まさに現場的発想でつくった表で,子供が誕生してから18歳ぐらいになるまでの子供の心の動きを書いたつもりです。ゼロ歳のところから上がっていってBというのがあり,6歳ぐらいで下がっていって,また,反抗期2で上がっている線ですが,これがスタンダードな子供の育ちです。  学校で子供たちの様子を見たり話したり,またアシストセンターでたくさんの子供たちや親と話をしていて感じたのは,最近の突っ張っている子供にも不登校の子供にも似たような傾向がありまして,両方とも反抗期をパスしている傾向があります。特に不登校傾向の子供は,この1と2,両方の反抗期をパスしています。先日も,大学2年生の子供ですが,家庭内暴力があって,家じゅうめちゃくちゃにしているというSOSが入ってお話を聞きましたけれども,本当な優秀な学年トップクラスで小,中,高と進んで大学に入ったのですが,大学に入ってから暴れているのです。その子も,よく聞きますと,一度も反抗をしていない,反抗期をパスしています。  もう一つは,反抗期を大人の力で押さえ込んでいる。ご存じのように,特に,最初の第一反抗期を若いお母さんが押さえ込んでしまう。これが,力で押さえ込むなら虐待になります。逆に,おじいちゃん,おばあちゃん,おじいちゃん,おばあちゃん,お父さん,お母さんと6人の大人が大事に大事に先取りしていきますから,反抗する暇がないというか,反抗する口実がないといいますか,そういう形で反抗期をパスしてしまう。こういう2種類の子供が出てまいります。  この子たちは,本当は小学校6年生になると心理学的には人間の一番安定期に入っていきますが,そのときに既に不安定要素をたくさん抱え込んでしまっている子供がふえているということが言えます。その不安定傾向を症例のレベルで考えると,実際のときに外向きに出す子が1のグラフで,非行の方へ走っていく傾向の子供です。それから,情緒の安定期の中でさらにストレスを中へため込み,第二反抗期に向かっていくエネルギーが出てこないで,そのまま内向きにため込んでしまった子が不登校であり引きこもりです。  また,下の方に「アルコールによる影響」とか「ゲーム脳の始まり」と書いております。ご存じのとおり,確定した説でございませんけれども,お母さんが妊娠したとき,妊娠に気づくのは普通3カ月目ぐらいですが,1カ月目,2カ月目のころにお母さんがたくさんアルコールをとりますと,胎児はアルコール分解能力を持っていなくてそのときに脳に何らかの損傷を受ける可能性がある,その脳の損傷の後遺症的な部分が思春期を過ぎた以降に出てくるという研究が進んでまいりました。ですから,私は,中学生の女の子に,結婚するときに赤ちゃん産もうと思ったらお酒はやめなさいということを繰り返し言ってきておりますが,そういうこともすごく大事なことであります。  それから,小さい子供さんにテレビを見せっ放しにする。これは,ご存じのように,今,ゲーム脳という問題が多く出てきております。ご存じのとおり,ゲーム脳が深くなっていくと,人間らしさを発揮する前頭葉の発達がおくれてきて,これが社会性,公共性がちょっと欠けている子供たちの共通事項であります。こういうことが,子供たちの小さいときから遠い原因として起こっているわけです。  中学生ぐらいになりまして,不登校の相談で,「学校でいじめられて,うちの子は不登校になった」と苦情を言ってくる親がたくさんいます。私は,そういうお母さん方に,学校でいじめられたのは事実かもしれませんが,それは不登校になるきっかけにすぎないと。学校の先生もきっと一生懸命にいじめを直してくれると思いますから,そのきっかけは解決しても,きっとおたくのお子さんは登校できませんと言います。事実,そうです。学校の場からいじめを消しても,不登校の子供というのは,今申しましたように,小さいときからストレスをいろいろな形でため込んでいますから,根源的なところを解決しないと立ち直れないということが言えます。  それから,もう1枚の資料2をごらんいただきたいと思いますが,現場用につくったモデル図です。  登校している子供が,グレーゾーンで登校しぶりという状況に入りまして,混乱期になってきて,昼夜逆転をします。そして,アシストセンターの相談の中で強く感じたのですが,昼夜逆転した後に家庭内暴力を起こす子の確率が非常に高いように思われます。冷蔵庫の中のものをすべてぶちまける,おしょうゆとかソースとかマヨネーズを全部床にぶちまける。食器のなべや茶わんを全部外に投げてしまって,お母さんは料理ができずにインスタントラーメンを食べている,どうしたらいいでしょうというような相談もあります。もちろん,壁に穴をあけるとか,お父さん,お母さんに暴力で立ち向かっていくケースもあります。家庭内暴力というと,昔からあるのですけれども,こういう不登校の流れの中で,どういうストレスの中でどの辺から発展してくるか,どう対応するか。一見,外から見ると非行に見えますが,それは不登校というストレスの中でローテンションの子が起こすハイテンション現象といいますか,不思議な状況があります。こんなことについても解決していかないと,思春期が終わっても,青年期に入っても生き生きとしていけない子供が続きます。  また,心因的な不登校の子供たちは,本当に賢い子が多いと思います。能力的には非常に高い,ただし,精神的には猛烈に幼稚なものを引きずっております。つい先日,「蛇にピアス」で芥川賞をとりました女性の方も不登校で,リストカッターでした。そして,17歳で同棲している。でも,物すごい能力を持ってますから,ああいう文章を書いて,あの年齢で芥川賞をとるというすごい方です。あの方は生きるすばらしいものを手に入れたので幸せだなと思っておりますが,多くの不登校の子供たちは,生きるものを手に入れるのに時間がかかっていきます。  そこで,小さな提言ということで,対策を三つ書かせていただきました。  一つは,先ほど間宮先生もおっしゃいましたが,一人の子供を一人で育てる時代ではなく,やはり大人たちが共同で育てていく必要があります。ネットワークファミリーの試みということで,非行の子供や不登校の子供たちに共通しているのは人間関係調整能力が非常に弱いことです。ネットワークファミリーということで,スタートは子供にテレビを見せない日をつくろうということでした。子供だけではなく,大人も家族みんなでテレビを見ない日をつくろうと。ところが,1軒でやるとなかなか長もちしない。お母さんが破ったり,お父さんが破ったりで,なかなか長続きしない。そこで,仲間を集めたのです。1週間に2日間ぐらい,テレビを見ない日をやってみませんかと呼びかけたら,少し手を挙げていただいて,それに大学の社会学の先生にアシスタントとして加わっていただき,月に二,三回,丸ごと家族で朝から晩までつき合う。テレビとかゲームとか携帯から離れる日と。子供同士は異年齢の家族,家庭とつき合う。そういう経験をしながら,家族が大きくなったようなものですが,そんな例が全国のあちこちでできかかっております。その例を聞きますと,なかなか成果が上がっているように思います。札幌の街でも,ボランティアの方に力をかしていただいたり,また,間宮先生のような方々に,サポート役といいますか,アドバイス役をお願いしたりしながら広めていって,こうしたネットワークが増殖していくときっといい社会になるかなと思います。  それから,二つ目に,子供を育てることに関する相談機関はたくさんございます。非行であれば,北海道警察の少年サポートセンターを初め,いろいろたくさんの相談機関がございます。しかし,どこも面会でございます。教育委員会が持っています教育センターの教育相談室なんかは非常に効果を上げて,不登校の子供の回復率も非常に高い成果を上げていらっしゃいますが,でも,予約をしたら3カ月先になってしまう。早くても1カ月先ぐらいでないと空きがないぐらい込んでいますし,回数もそんなに多くできません。児童相談所は本当に大変で,通告のあった家へ訪問するのもなかなか大変ではないかと思います。  おまけに,私がアシストセンターにいたときの経験でもありますが,今,ご両親が働いていらっしゃる方が多いので,夜,相談に乗ってくれないか,あるいは,土曜,日曜日に相談に乗ってくれないかというお話があります。しかし,公的な相談機関は,今は夜も土・日も休みです。私などは,もう年ですから,いいですよと,土曜,日曜日にホテルのロビーでお父さんと会ってお話をするようなことを繰り返しました。それから,お盆のときに単身赴任のお父さんが帰ってくるというので,そのときに2時間ぐらい都合をつけてもらって会わせていただいたりしたこともありました。いずれにしましても,札幌市は,お父さん,お母さんも含めて,もう少し子育てのケアをする相談員をふやしていく必要があるのではないかと思います。  最後に,非行や不登校のデータを並べましたが,思春期に入るころから表面に出てくることが多いのです。そこで,もし可能であれば,お金の問題もありますけれども,小学校5年生と中学校3年生は30人学級にしていただければいいのではないかと思います。あわせて,6年生と中学1・2年生は35人学級にして,一番頻度数の高いところで先生方にケアをしていただく,これが高校生以降の対応策かなと思います。ただ,これは人件費が非常にかかるので,逼迫している札幌市ではなかなか難しいかもしれません。二つの実施ができなければ,せめて中学2年生の35人学級と中学3年生の30人学級の編制ができればと。しかも,気にする学校と,気にしない学校もあると思うのです。学級の人数が減ったら,かえって学級がやりづらいと,余り小さくなったら困るという学校は希望しなくていいわけです。  けさの新聞で拝見しましたが,札幌市では,今度,教育大学の学生による指導補助派遣制度ということでご紹介があり,読ませていただいて大変いいことと思いました。ああいう方々が小学校の各校に入る。ただ,中学の場合は厳しい部分もありますから,ああいうボランティアの方も含めて,もっと正規職員が配置され,定数が改善されたら,子供たちの幸せにつながるのではないかなと思う次第です。 ○勝木勇人 委員長  ありがとうございました。  貴重なお話をいただきました。  最後に,訪問型フリースクール漂流教室代表の山田大樹さんにお話をいただきます。  山田さんは,塾講師を経て,平成14年6月から,訪問型フリースクール漂流教室の代表をされておられます。ご自身が代表を務められておられます訪問型フリースクール漂流教室は,家庭訪問をして,在宅学習支援などを行う形態のフリースクールだそうです。  それでは,山田さん,ひとつよろしくお願いいたします。 ◎山田 参考人  訪問型フリースクール漂流教室で代表をしております山田と申します。  まず最初に,レジュメの最後の米印のところで,私は,今回ここでお話するに当たって,どういうお話を議員の皆さんが聞きたいのでしょうかということを坂本副委員長にお尋ねしました。しかし,どうもこういうお話が聞きたいというのはないみたいだ,何を話すのだろうと非常に疑問に思っていましたが,同時にお話をなさる間宮先生,宮武先生という方の経歴などをお聞きしておりまして,恐らく,不登校の子供がどのように過ごしているかとか,あるいは,データ的な面はそちらの方が話すのではないかなと考えていました。ただ,そういう点は僕が思っていたほどにはお話の中になかったので,できればこの後の質疑応答の中でそういった点についてもお話ししたいと思います。  そこで,私は,約20分の間で何を話そうと思ったかというと,フリースクールの置かれている現状についてです。我々フリースクールという団体は,道内で全部で大体二十五,六カ所ありますが,特に札幌市,あるいは北海道という中で,これまで行政からどのように扱われているのか。そして,行政の方として,今回,少子化対策青少年育成調査特別委員会では行動計画を策定するという目的でございますが,そんな中で,今,不登校をどこに位置づけているのかということを自分で調べ,提言したいことをまとめてみました。  まず,レジュメのもとに行きますけれども,不登校の問題について,今回の行動計画を策定するに当たって,一体どういった点に結びつけるのかということを疑問に思ったので,調べてみました。  四角の枠内は,厚生労働省のホームページから引いたものですが,次世代育成支援に関する当面の取り組み方針の中で,基本的な施策,子育てしているすべての家庭のためにというところ,それから,家庭教育への支援等の充実というところに,多分,不登校の問題を入れることもできるのではないかなと思います。ただ,この取り組み方針の中では不登校という話は出ていないです。この部分は,何度も見たのですけれども,どうも次世代育成の中で,今回,不登校の問題に携わる者として話をしているわけですが,僕ら自身の抱えている問題,子供たちの抱えている問題は,少子化対策の中では一体どこに位置づけられるのかというところをはっきりさせておいた方がいいかなと思います。  四角の方になりますが,母子保健計画と,次世代育成支援についての市町村の行動計画については,もう既にある母子保健計画を踏まえることが適当というふうにして厚生労働省は認めています。既存の青少年育成計画と申しますと,不登校については,昨年4月に,文部科学省の方で今後の不登校への対応のあり方という報告をまとめています。今後,少子化対策の中で,次世代育成推進の中で不登校について考えるときも,まず,基本はこの文章になっていくのではないかなと思います。特に,文科省の報告書の第7章ですが,ここに官民の連携ネットワークの整備の推進ということで,下に四角で抜粋していますが,文科省の方から3点について提言がなされております。  実は,この文科省の報告というのは,各地の自治体の教育委員会の方におりてきまして,スクールサポートネットワークと。不登校の問題について,こうしたネットワークを組んで対応しなさいということで,予算の配分ももう既になされています。ところが,札幌市の予算編成のプロセスは,このたびホームページ上から見ることができるようになりましてとても興味深く見ておりますが,教育委員会の平成16年度の予算編成の事項の中には,スクールサポートネットワークの構築についての予算配分が見当たらなくて,ここは一体どうなっているのかなと思っていました。ただ,不登校については,こういったネットワーク構築をしなさい,あるいは,モデルとしてこういうのがあると出ているので,まずはそのネットワーク構築をより早く進めて,それを次世代育成の方が取り込む形で計画の策定をなさるといいのではないかなと思いました。  実際に,スクールサポートネットワークの方でどういった民間との連携が考えられるのかです。ほかの政令指定都市になりますが,例えばこんなことを考えているという例を3点ばかり挙げて見ました。  まず,仙台市ですが,教育局の方に業務マネジメント表というのがありまして,それがホームページ上で見られます。その中で,こういうふうに進めていくという業務計画の一つに,不登校の児童生徒に対してボランティアによる適応指導が受けられるように,市の教育局としてボランティア養成講座を開催するとか,あるいは,ボランティア団体との協働を行うであるとか,明確に何をするかの行動レベルにまで落とし込んだ形で目標が設定されています。横浜の方は,不登校対策として,適応指導教室,相談指導学級の充実など,これはありきたりかなと思いますが,一番下の方で,はっきりと民間の不登校対策施設との連携を検討すると出ています。神戸の場合も,スクーリング・サポート・ネットワークというふうになっていますけれども,SSNについて触れています。  恐らく,市の教育委員会の方でも,今,鋭意こちらの計画について策定中なのだろうと思いますが,ぜひ,少子化対策青少年育成特別委員会の方でも,どういった状況にあるのか,一度お調べになるのがよろしいのではないかなと。市教委の方とお話する機会もつい先日ありましたし,ホームページなどで見ることもできますし,実際に直接行ってお話しすることもなかったわけではありません。それについて聞きに行ったのは昨年ですが,詳しいことはまだわかりませんと言われるだけなのです。ぜひ,ここについては,どういうふうになっているのかなとお聞きしたいなとも思いますので,議員の皆様もどうぞお調べになってください。  それから,次世代育成推進の中で不登校と絡むものとして,もう既に存在する教育などにかかわる計画だと,レジュメの下になりますが,保健福祉局の方で青少年育成計画というものをつくっています。これも,多分,次世代育成の中で不登校のことを考えるときに,こういった既存の計画も包含していく必要があるのではないのかなと。もっと言うと,最後になりますが,精神保健福祉センターの方で,精神疾患によって不登校になる,あるいは不登校の状態の中で精神疾患を抱えていくような子供たちへの対応も苦慮しているところです。そういった点も,保健福祉の面から不登校をとらえることも必要だろうと思います。  今回の次世代育成の推進は,厚生労働省だけではなく,文部科学省や総務省などのいろいろなところと協力してやっていくように,国自体がそう動いていますので,ぜひ,札幌市の方でも既存のいろいろな動きをどのように連携させていくのかと。新たに,何か計画をつくっていくぞというより,例えば不登校に関して言えば,もう既にそれぞれの専門分野の中でいろいろ見ている人たちがいますので,それを結びつけるような形で議員の皆さんが動いていただけると非常に助かるなと思います。  今まで政策みたいなことを考えてしまったので,少し聞きづらかったのではないかと思いますが,もう少し自分がかかわっているところに結びつけてお話しさせていただきます。  私は,訪問型フリースクールということで,このお仕事をして2年とちょっとぐらいになります。これまでの間,札幌市の中で,教育委員会あるいは市議会の方々などが,我々のような民間の不登校に対応している施設に対して,どのような視点で臨まれているのか,若干ながらそれを感じとる機会もありました。きょうは,まずその点について,ちょっと誤解であるとか,あるいは,認識の面でそれは違いますとか,こういうふうにとらえていただけると私たちとしてはうれしいということをお話ししたいと思います。  レジュメの3枚目ですが,札幌市教委が私たちフリースクールをどのようにとらえているかということです。  ここに,年末の新聞報道にもありましたが,市教委製作の「生徒指導第13章,不登校への対応」という各学校の教員の方々にも配付された冊子があります。この中から,指導体制の充実,あるいは関係機関,地域の連携という項目を少し引き抜きました。2番のどのように指導を行うかですが,スクールカウンセラーや心の教室相談員等との連携協力ということで,まずそういった方々と連携をしていこうと。それから,項目は全く別個になって,不登校に対応する際に,関係機関,地域と連携をしていこうということをうたっています。  そして,四角の三つ目になりますが,市教委は連携ということを考えていますけれども,ここで市教委の射程に入っている機関は,相談指導学級,市教委の教育センター教育相談室が大きな二つになります。この2カ所は,不登校になった子供の状態を見きわめて,学校の体制による対応を行った後に,もし学校に登校できなくて個別の対応が必要だと判断すれば,市教委の教育相談室に行って教育相談を受けてくださいと。学校には登校できないけれども,ほかの場所なら行くことができるという意思がある場合には,相談指導学級の方に子供さんをやって指導してくださいという位置づけになっております。  それ以外の関係機関というところ,先ほど宮武先生のお話の中で子育てに関する相談機関の充実,相談機関は今,手いっぱいですと言っていたような相談機関ですが,市教委の冊子の中では以下に挙げられているところがあります。児童相談所,アシストセンター,道警の少年サポートセンター,医療機関,精神保健福祉センター,育成指導室,それから区役所内の家庭児童相談員,主任児童委員,民生委員,児童会館と。これを何度見返しても,フリースクールという文言は一切出てきません。実は,これ以外に,大項目でもなく,ぽこっと民間施設等というふうに書いてあるところがあります。どうやらフリースクールはそこに入るらしいのですが,民間施設等の中にはどういう施設があるかについては一切書かれていません。  1月23日に,市教委と,それから私たちのような北海道内のフリースクールの有志でつくる北海道フリースクール等ネットワークという懇談会を持ちました。市教委の認識では,フリースクールは不登校の問題について一定の役割を果たしているというふうにお話しいただきましたが,その一定の役割というのは何ですかと,どういったものですかというお話では,ちょっとそこまではと詳しい話は聞けませんでした。これについては,昨年末から,市教委の方々に非常に動いていただいて,各フリースクールに市教委の担当の職員の方が訪問して,実情とかどういった活動をしているのか視察なさっていますので,今後,市教委が私たちをどういうふうにとらえているのかという点についてはもっとはっきりするのだろうと思います。  札幌市には,この裏面になりますが,フリースクールだけではなく,不登校の児童生徒を支援する団体ということで名前を挙げましたけれども,例えばこれぐらいあります,11校です。下の二つのコンフォタブルパワーと楽しいモグラクラブは,フリースクールではなく,どちらかというと支援団体です。どちらにしても,10くらいの団体が不登校の児童生徒を支援しようとしています。  それから,親の会の名称を少し挙げました。連絡先はあえて書きませんが,こういった親の会もあります。トポスの会,次は北途待夢――ホットタイムと読みます。ナナカマドの会,アーベルの会と。  札幌市の考えている対策の中で,相談指導学級というのがありました。これは,不登校になった児童生徒が,学校には通えないが,別の場所に行って学習したい,あるいは,学校に復帰するまで少しなれるために指導を受けたいという場合に通うところですが,今のところ市内に3カ所です。来年度は1カ所ふえまして4カ所になりますが,ちょっと考えただけでも足りないことがおわかりになると思います。
     データの面から見ますと,前のページに札幌市の不登校の数を載せました。宮武先生のお話でも,不登校の数が出ていました。簡単に言って,平成14年度で札幌の不登校は約1,500人です。現状,小学校の不登校生対象の相談指導学級が1カ所,中学生対象が2カ所です。人数の割合で言えば,平成14年度で不登校小学生が286人いる,1教室に286人来たらどうするつもりなのでしょうか。中学校の不登校が1,239人いる。1割で123人ですから明らかに足りないです。先ほど資料として同じ政令指定都市の仙台,横浜,神戸を挙げましたが,それぞれ6カ所,9カ所,8カ所としっかりと施設をつくっています。これは,ゆゆしき事態なのではないかなと思うわけです。  市は,そういうふうな対策をしてしっかりやっているのだと言っていますが,フリースクールはそれに比べて10カ所近くあります。現状で,漂流教室では25軒ぐらいの家庭を訪問しています。私たちがどれだけ毎日やっているのかということについて,数の上からだけですが,ちょっと把握できるのではないかと思います。ところが,札幌市の教育委員会の冊子の中では民間施設等と書かれるだけで,一定の役割とは一体何なのかと言っても答えも返ってこない状況です。  札幌市のみならず,全国的に,スクールカウンセラーが不登校対策の切り札であるかのように言われています。スクールカウンセラーですが,先ほどもありましたホームページ上の予算要求を見ると,16年度で,現在の33校から48校へと増員される予定です。札幌市の中学校は,分校も含めて全部で99校ありますので,これで約50%に配置されることになります。そして,実際に不登校の数は減ったというふうに言われています。  しかし,それは果たしてスクールカウンセラーの配置によって減ったのかという私の疑問は非常に強くあります。もし,それがスクールカウンセラーの効果であるというならば,数の上からだけではなく,どのようなカウンセラーがどういった指導を行い,子供がどのように変化したのか,恐らくそういう調査が必要です。量ではなくて,質の面からの把握がなければ,お金のむだ遣いになりかねません。  学校復帰の数をもってして,不登校児童生徒の苦しみの解消,自立の達成という方程式が成り立つかのような認識の人がいますが,それはあり得ません。百人百様の不登校という考え方でいていただいた方がいいと思います。学校に戻ったからといって楽になる,あるいは問題がすべて解消したかというと,そうではないです。先ほどの宮武さんのお話でもありましたが,高校入学後の不登校もあります。これは最終的には高校中退の数として出てきますけれども,そちらの方の統計を見ても,減ったからといって安心しているのはちょっとおかしいです。  こういうふうに見ていった場合,不登校に関してはフリースクールも頑張っているぞ,端的に言うとそういうことになるかと思いますが,結局,札幌市教委の考えるところと,私たちフリースクールの考えるところは共通の面があるのです。何かというと,不登校の子供にかかわる関係機関などが効果的かつ効率的な連携を図り,支援の充実を図ることが大切ですという言葉です。ここは,全くもって同じ認識です。学校もスクールカウンセラーも相談指導学級も,とにかく扱える不登校というのは百人百様ある以上,ごく一部でしかありません。だからこそ,ネットワークの構築が必要なのです。  私たちは,訪問型フリースクールということで訪問しています。ただ,私たちの会える,そして,私たちが指導して効果のあるというか,ありがたいなと思っていただける不登校の子供たちは,まだ外に出ることもままならない,例えば対人恐怖であるとか視線恐怖であるとかといった点が非常に強いお子さんです。少しでも外に出るようになっていけば,別の指導体制,別の機関,ほかのフリースクールでも構いませんし,あるいは,学校の中の保健室登校のような形もあるかと思いますが,そういった形でまた別の指導機関に引き渡していくようになります。それを,この不登校の対応の中を見ていると,すべてを学校が一人で背負おうとしているのです,それは大変だろうと思います。この文章の中で,不登校の子供への対応は学校が主体となって進めていくものであると言いますけれども,フリースクール側としては,学校にはそんなに荷物を背負わせないでくださいと言いたいです。私たちがやっていることを見てくださいということであります。  さて,今までは市の教育委員会の考えることと私たちのとらえ方でしたが,レジュメの最後で,それでは,市議会の方では私たちをどういうふうにしてとらえているのかという点について若干述べます。  先ほどもありました北海道フリースクール等ネットワークの方で,一昨年来,私たちは私たち自身のことを,社会教育法の第10条の文言に基づいて社会教育団体であると認識しております。その認識のもとで,支援などの陳情を市議会に対しても行ってきています。ただ,これまでのところは,先ほど申し上げたような活動をしているにもかかわらず,フリースクールは社会教育とみなすこともできないであるとか,殊に,支援に関して言えば,それは憲法違反であるといった言葉が聞かれるぐらいです。昨年1月の市議会における陳情などについて,市教委の担当者の報告では,フリースクールに通う生徒は全市で32名ですというふうに報告があったのです。これは,明らかに事実を見ておりません。この時期は,もう既に漂流教室で活動してましたが,当時でも15軒は訪問していたはずです。ましてや,下にある10近くのフリースクールにどれだけの子供たちがいるか,少しお考えになっただけでもわかると思います。  さらに言えば,このうちの幾つかの団体はNPOの法人格を取得しています。NPOの法人格を取得する際には,どういった分野で活動するのかということをこちらから提出するわけですが,子供の健全育成ということで認められて,どこからも異議はついていません。NPOの法人格というのが認められていながら,社会教育団体ではないというふうに言われるのは,これはどうなのでしょうか。そう言う人の神経を疑います。  フリースクールというところがこのように活動しているという具体像について申し上げる時間もなくなりましたが,もともとこういったことを訴えたいなと思っていたので,最後になりますけれども,少しお話しておきましょう。  毎日,10軒近くのフリースクールがどういった活動をしているのかといいますと,それぞれ団体ごとにいろいろな特色があります。例えば,うちは訪問していると先ほど申し上げました。あるいは,学習面での支援がすごく得意なところもあります。最初は,学習塾を始めていたけれども,不登校の子供たちに接していく中で,不登校専門でやっていくようになったようなところです。あるいは,高卒資格を取得できるように,そういったサポート体制をしっかりと構築したところもございます。それから,小学校の先生を退職なさった方が開いているフリースクールもあって,ここは特に小学生の子供を中心に受け入れています。それから,芸術教育,芸術活動を通じた教育に主眼を置いているところもあります。とにかく,いろいろな人材がいろいろな面から子供たちにかかわっています。  私たちは,もう既にそういったニーズがあるからこそ活動しています。次世代育成支援の行動計画を策定する中で,ニーズの調査が入っていると思います。調査しなくても,我々のようにそういったニーズを満たすために活動している団体があることをまずご存じになってください。そして,その力をより発揮することを望んでいます。  例えば,先ほど言いましたが,適応指導教室は数が少ないです。そういった話をすると,教員が足りないのだと言ってきます。ぜひ,フリースクールのスタッフたちを採用してあげてほしいと思います。3年ぐらい持たせて,それで成果がないと判断すればやめさせればいい話です。僕は,それはとても現実的な話ではないかなと思います。我々には,そういったことに対して,いきなりやってくださいと言われてもやるだけのノウハウもあれば,人材もいると思っています。  最後になりますが,不登校という現象は,もはや学校教育という面からだけでは把握できない現象です。最初に,どこに位置づけるのかという話がありましたが,厚生労働省的な面からも精神保健福祉といった面からの取り組みも必要です。さまざまな力を持った人たちが集まらなくてはいけないということで,既存の計画も含め,議員の皆様方には,ぜひ,フリースクールという団体にいる人たちが次世代育成支援についてどういうことをしてもらえる人たちなのかということをよりよく見てもらえればと思います。 ○勝木勇人 委員長  山田さん,どうもありがとうございました。  フリースクールを運営されている方々が,市教委もしくは市議会に対して大分ストレスをためておられるという部分はよく理解させていただきました。  それでは,委員の皆さんからの質問をお受けいたします。  この場合,質問する方の氏名を特定してお願いいたします。 ◆宮川潤 委員  宮武先生にちょっと教えていただきたいことがあります。  小学校5年生と中学校3年生を30人学級に,それから,小学校6年生と中学校1・2年生の35人学級ということで提言されていますけれども,少人数学級の期待される効果についてはどのようにお考えになっているのか。  それから,教科によっては少人数授業をやっているところもあるそうです。そうした少人数の授業ではなくて,あえて少人数学級を提案されたのは,授業と,学級そのものを少人数にするという点では違いがあるというふうにお考えになっていらっしゃるのか。そのあたりを教えてください。 ◎宮武 参考人  私の主張の中心になるのは,子供の困った行動や悩みが一番外に出てくる時期に学級編制を少し緩やかにしてくだされば,担当する先生方が子供とじっくり話し合うこと,親と話し合うこと,保護者の方々と話し合うこと,また,山田さんからありましたけれども,関係機関の方々と話し合う時間的ゆとりが生まれてまいります。  私の経験で,私の勤務した学校の中学3年生で,1年間で200軒以上,毎日2軒から3軒,延べ日数にして200日以上も夜に家庭訪問し続けてくれた先生がいらっしゃいました。ですから,そうすれば,かわりの休みの日を与えることもできます。また正規の学級や授業を持っていますから,その学級の子供が5人減るだけでも,その先生に対する負担は大幅に減りますし,そのエネルギーを少しでも子供たちのために使えます。先ほど,山田さんの言葉にありましたが,不登校といいましても百人百様です。アプローチの仕方,会話の内容,方向性もさまざまですから,大変なエネルギーと時間を要します。そういう部分に教師のエネルギーを少しでも割いてあげることができればと。  特に,義務教育の間に何とか解決の道を開いてあげなければ,高校生以降,高校生になりますと登校しなければ退学で終わりです。ケアしてくださる方が本当に減ってしまいます。ですから,何とか義務教育の間に不登校的な部分の解決のめどを立てて卒業させてあげたい。そのためには,一番エネルギーが必要な学年を担当する先生方の負担を少しでも減らしてあげることができたらいいかなと思います。ただし,お金のこともありますから,ボランティアの方でも結構かと思います。  それから,教科における少人数の効果といいますが,これは,各学校の学級編制を教科のときにどう組むかという工夫の一つだと思います。当然,小さいグループにすれば,担当する先生の数をふやさなければいけませんから,多少,1週間の時数が4時間や5時間は多くなっても構わないから,子供のグループを小さくして効果を上げよう,それでもつくろうというお考えの学校で,そこの先生方の取り組みでなさっているのではないかと思います。ただ,無条件で,それをすべての学校ですぐやりなさいというのは無理なことだと思います。 ◆堀川素人 委員  3人の方のお話を聞かせていただきました。  間宮先生のお話では,ふるさとに対する愛着心というのでしょうか,そして,子供を育てるにはやはり希望が大切である,また,学生からお話を聞いたときに,現実的な問題として保育所が足りないと。今,待機児童がたくさんいるという現実も知っておられてのお話だと思いますし,子供一人を育てるのに経済的な負担ということがよく言われまして,これは大変大きな問題で実際にあると思います。  それから,大変に目新しい話の中で,子供と接する機会の多い社会というお話を聞きました。これは,この間もテレビで見たのですが,やはり人間というのは学習をしなければなかなか発達していきません。これはチンパンジーの話で見たのですが,そう考えますと,本当に子供と接しなければ子供を愛することもできない,また,かわいいしぐさを見て本当にかわいいなと思ったり,そういうふうに接する機会が大変大事なのだなということを聞かせていただきました。  それから,宮武先生の話では,大変なご活躍をされておりますが,やはり大人が変わらなければ子供が変わってこない。子供が悪い悪いといいますけれども,そのかがみになっている大人の社会があるのだということを今聞かせていただきました。  それからまた,山田さんの方では,フリースクールの件ですけれども,フリースクールについて札幌市の教育委員会の認識が極めて低いというのは全く同感であります。実は,おとといも,公教育とは何なのかという概念規定から質問をいたしましたけれども,そこの部分さえ十分にわかっていない状況の中で,フリースクールが今担っている公教育で,学校または学校法人がやる学校からはみ出る部分,この大事な部分を皆さんがやってくださっています。篤志家と言われるのでしょうか,学校の先生をやっていて退職され,これは必要だということでやっている多くの人に接しますと,今の札幌市の教育委員会の基本的なフリースクールに対する考え方は極めておくれていると思います。中央のフリースクールに対する考え方は,札幌市よりもずっと前進した考え方を実際に持っています。そういう面では,山田さんが幾つか言った中で,本当にストレスがたまっているなということがわかりました。  きょうは,質問ということではなく,大変参考になり,ありがとうございました。 ◆三宅由美 委員  山田さんにお伺いいたします。  3ページ目に,学校復帰イコール不登校児童生徒の苦しみの解消,自立の達成という方程式がいつも成り立つわけではないということで,現在のスクールカウンセラーの方々の役割に対して疑問を呈しているのだと思います。やはり,児童生徒が悩みを解消し,自分の世界観なり価値観なりをつくり,人とのつながりを獲得していく,自分なりにどういうやり方で獲得していくかということが一番大事で,自立の達成につながっていくと思うのです。心の問題ではなく,そういう実践的な,不登校の生徒に会って,自宅を訪れ,どういう実践をしていらっしゃるのか,どういう効果を上げているのかも含めて,詳しくお聞きしたいと思います。 ◎山田 参考人  まず,実践の話の前に,スクールカウンセラーの役割,効果についての疑問です。そちらについては,ここでもありますけれども,疑問はそれほど抱いておりません。ここで問題にしているのは,スクールカウンセラーの配置に効果がある,それを進めるというならば,その効果のほどは,量ではなく質の面からはかれということです。  実践については,どういったお話がお聞きになりたいのでしょうか。 ◆三宅由美 委員  特徴的な事例でも,その生徒とどういうふうにかかわりを持ったのか,わかるようにお願いします。 ◎山田 参考人  どういうお話をお聞きになりたいのか,漠然としているのですが,こんな例があります。  うまくいかなかった例ですが,私一人でやっているわけではなくて,ボランティアのスタッフ,それから常勤でやっているのがもう一人います。その常勤でやっている一人が初めて訪問したころ,訪問を初めて1カ月ぐらいのころですか,少し関係が進み,訪問して,それまで茶の間でお話をしていたところが,きょうは私のお部屋に来てというふうに言われてすごく浮き浮きしながら行ったのです。お部屋に入って座ってお話を始めるわけですが,お部屋の中にあるものを見ると,お人形とか置いてあるわけです。これはかわいいねと言って手にとってみたりしながらお話をして,1時間ほど過ごして帰りました。戻って来たら,もうやめますという電話がかかってきました。  何がいけなかったと思いますか。その子は,実は部屋に招き入れるというのは物すごく決心をしてやったことだったのです。そのために,きっちり掃除もして,お人形の配置とかも考えてやっていたのですが,まさか,そうやって丁寧に準備したものを,そして大事なお人形をいじられるとは思っていなかったというのですね。何げなしにやっていることでも,そういうふうに子供と会っていて傷つけることがあるのだなと。始めたばかりのころだったので,今になってみると,当然,そういうときにそういうことをしたらあかんわなという感じですけれども,非常に印象に残っている話です。  うまくいった話ではこういうことがあります。  全く話さない子というのがいました。場面緘黙と言われる形で,家族以外には一切口を開かないのです。それで,訪問したときに,どういうふうにお話をしましょうかと。お話できないので,仕方ないからこちらから語りかけるばかりになるのですけれども,質問したときに,できるだけ細かく,うなずくか,首を振るぐらいで答えられる質問を繰り返ししていきました。これも,僕ではなくて,もう一人のスタッフです。言葉で語るより,気持ちの面での動きをつくっていこうということで,なるべく楽しく笑いが持てるような,そういう雰囲気をつくり上げて,実際に笑わそうというふうに活動をしていったのです。半年ぐらいたったころに,やはりやめますという電話が来ました。何かと思ったら,もう訪問している人だけではなく,ほかの人とも会って話をしてみたい,ついては,ほかのフリースクールを紹介してくれないかということでした。  漂流教室は,基本的には,私たちのところでそういう形でエネルギーを補給するというか,復活させ,次の動きに出るまでがうちにいる期間だととらえています。その次の機関が学校であってもいいし,ほかのフリースクールでもいいということでやっております。 ◆大嶋薫 委員  先ほど宮武先生のお話の中に引きこもりの事例がありました。これは,以前から引きこもりの問題が指摘されていながら,全国的な実態はまだ明らかにはされていないのですが,引きこもりの状態にあるだろうと推測される人たちがいるということは,一般的な常識と言ったらおかしいけれども,ようやく社会的な合意を得る数字になってきているのかなという気がしています。これは,先生がおっしゃったように,ある意味では不登校からの継続の場合もあるでしょうし,青年期に入ってからの何らかの理由で,就職に失敗するとか,いろいろな形で引きこもり状態になると思うのです。  引きこもりの問題については,間宮先生の研究の範疇でもいろいろな場所で議論されることもあるかなと思うのです。この取り組みもまだ始まったばかりですが,親と子の関係等々含めて,これに対する大きな理由とか原因等について,もし先生の範囲で何かお答えできる部分があればお伺いします。  それから,山田さんには,漂流教室で訪問している人の中で,学齢期ではなく,青年期に達している方での引きこもりの事例などがもしあれば,お伺いしたいと思います。 ◎間宮 参考人  引きこもりにつきましては,私どもは非常に大きな関心を持っております。私は,平成13年,14年と北海道の心の健康推進協議会議長ということで,この問題について道の精神保健福祉センターの先生方と一緒にずっと議論をし続けてまいりました。そのようなことからも,申し述べたいことがございます。  一つは,不登校の問題との関連ですが,これはきちんとした統計をとることは非常に難しい。したがって,ある人はこう言い,ある人はこう言うというそれぞれの調査の範囲ですけれども,実は,割合は恐らく思うほど高くなかろうと。つまり,不登校,引きこもりと直接的に行くのは,調査によって違いますが,2割とか3割,せいぜい4割ではないかというふうに私の記憶では出ておりました。したがって,これはほかのお二人の方がおっしゃったことにつながります。  しからば,なぜこんなにということになりますが,恐らくこれは,先ほど宮武先生がおっしゃった反抗期云々という図がありましたが,自分というものを成立せしめていく,私たちの言葉では,自己形成とか自我形成といっておりますけれども,自分というものが成り立っていくために,他者とかかわり合い,または集団といいますか,人々との間で自分が成り立っていくわけです。これは,社会性と言ってもいいかもしれません。他者とかかわって自分が形成される,この自分の形成過程に非常に弱さを持って生きている若者たちの発生だと思うのです。したがって,どんなように対応したらいいのかということですけれども,やはり,他者とかかわる場,時間の豊かな設定,新たな設定ということになるだろうと思います。  そういう意味では,ご質問のお答えから外れるかもしれませんが,さっき宮武先生がおっしゃった小集団学級,小学校5年と中学校3年生について具体的な提案がありましたけれども,あれは大変理にかなっていると私は思います。現実的な制約の中でどのような効果的な対応をするかといった場合に,具体的に言えば本当に小学校5年と中学校3年だと思います。ほかは35人でいいというわけではありませんが,これは実に大きな提案だと思って拝聴いたしました。  それから,具体的に,不登校から引きこもりへ発展する割合はそう高くはないということですけれども,やはり累積していくわけですから,この対応は非常に重要だと思います。そういう意味で,きょう山田さんがおっしゃった幾つかのフリースクール,フリースペースのご活躍は大変重要な役割を果たしておられます。これを抜きに具体的な手だてを考えることは簡単ではないと思います。したがって,きょうの山田氏のご発言に対する具体的な対応,応答は,引きこもりの問題ともかかわり合って,何とか欲しいところだなと思っております。  さらには,私は,地域社会で子育てをする環境づくりに一番関心を持っておりますが,これは引きこもりの問題でも同様です。すなわち,学校あるいはご活躍のフリースクールの方々の健闘だけでは,恐らく焼け石に水であろうと。したがって,地域社会で生活する方々は,先ほど申し上げたように,士別でも上ノ国でもみんな少子高齢化社会を大変懸念しておられますから,これらの人々の力も結集して,きょうの本特別委員会の結成の趣旨にもあるように,将来を担う子供のサポートをどうするか,いろいろな人の知恵を寄せ集めてやれば,現段階の社会的資源でも何らかの手を打てるのではないかと思います。  具体的に言えば,過疎地に行くとよくわかるのですが,学校だけに負担をしていただくのではなく,今は大変厳しいのですけれども,組織を持っているという点では農協とか,生涯教育で勉強なさった地域の方々とか,いろいろな組織をこの問題とリンクさせて,わかっていただいて,お力添えいただく,これは具体的にはできるのではないかという手ごたえは持っております。 ◎山田 参考人  具体的な例ということですが,漂流教室の方に問い合わせの電話として高校卒業以降の方からお電話をいただいたことがございます。ただ,1回程度は説明訪問に伺ったりしたのですが,その後,引き続きということはなかったです。  また,直接,本人とお会いしているのではなく,お母さんと,もともとは週1ぐらい,今は月1程度でお話しさせていただいている引きこもりの方の家庭はございます。そちらの方は,実践例というか,本当に親御さんのサポートということになりますが,非常に家庭内での暴力が激しかったので,これについては,札幌市の精神保健福祉センターの職員と相談いたしまして,どういった対応をしたらいいのかという指導を仰いだ上で少し対応しました。  漂流教室は,もともと小学校から高校卒業,20歳ぐらいまでの青少年を対象としていますので,そういった点では,どうしても自分の手に余る部分が出てきますから,ほかの機関との連携を図っていこうということで対応しています。 ◆坂ひろみ 委員  この委員会におきましても,今まで札幌市がエンゼルプランなどで行われていましたように,少子化対策というところでは子育て支援が今までもメーンでした。今まで勉強してきた委員会の中身でも,仕事を持ちながら働いているお母さんへの支援,それから在宅で子育てをしているお母さんたちへの支援といったところで,子育て支援がメーンになって話し合われてきましたが,先日の委員会で,青少年育成計画が今回の次世代に盛り込まれるということで,青少年についても理事者側からお話を聞いたところなのです。ですから,青少年というところでは,まだまだ議論がちょっと足りないのかなと,きょうの3人のお話を聞いて実感いたしました。  今,本当に急増している引きこもりとか不登校,それから虐待の問題とかいじめの問題など,これからまだまだふえてくる可能性があると思うのです。私も,実際に今,中学生の子供がいますので,決して不登校の子供も珍しい問題ではないですし,学校にスクールカウンセラーの先生がいらしても,子供たちが実際にスクールカウンセラーの先生に相談をするかといったら,そうではないということも自分の子供の学校で実際に聞いています。  そういう中で,少子化対策という本当に大きな問題の中で,解決策というか,どうしたらいいのかなと広く大きく考えたときに,子供たちが地域の中で本当に安心,豊かで,そして,心身ともに健やかに子供たちが育っていける,そんな社会が少子化対策にも一番の効果を発揮するのではないか,そこに答えがあるのではないかなと考えるのです。ですから,今のこういった青少年の問題は,山田さんが怒っていらっしゃいましたけれども,解決していくために,フリースクールの位置づけなども十分緩和していかなければならない問題だなと感じました。  私なりに考えたときに,解決策というのは難しくて私もよくわかりませんが,今,札幌市では上田市長が子供の権利条例を策定しようとしておりますが,子供の権利の確認を充実させていくことが必要だなと思います。性教育も含めまして,今,学校現場でもCAPなどの導入が進められておりますけれども,性教育を含めたこうした自分の身を守る権利とか,嫌と言える権利,自分で自分を守る権利があるのだということを子供たちには教えていく必要があるなと感じています。  また,私もけさの道新で拝見しましたけれども,教育大の学生が入るといったように,子供たちが学ぶ場に異年齢,異学年の子供たちの交流とか,先生ではない大人の人たちが入ることで,学習面だけではなくて,いろいろな部分で子供たちの支えになる部分があるのではないかなと感じます。  また,小学校までは,児童会館などがあって,地域の中でも子供たちの行き場というのはまだあります。しかし,中学校,高校に入った子供たち,青少年の子供たちが地域の中で生きる場所がないのです。集う場所がない,触れ合う場所がないといったところでは,中学生や高校生も行けるような児童会館のような場所があったらいいなとか,また,そこの場所の運営をフリースクールの方たちと連携しながら,子供たちの意見も聞きながらその運営もやっていくというような,本当に地域に根差したところでそういう交流ができていくことも必要ではないかなと感じます。  今,この委員会としても意見表明を出そうというようなこと,また,推進協議会の方でも提言書を出そうということで,具体的に動き出しているところで3人の方に質問ですけれども,きょう,皆様の方から大きな課題,提言はいただきましたが,より具体的に,札幌市が行政としてできること,また,行政が市民や民間やNPOや,さまざまな活動をしている市民団体と一緒に連携してやっていけるところ,実際に地域の中でやっていける青少年に対する支援策というところで,もし具体的なものがおありでしたら,アイデアでも結構ですので,ご意見をお聞かせいただけたらと思うのですが,いかがでしょうか。 ◎間宮 参考人  今のご意見は,私としても全くそのとおりだとお伺いいたしました。  最後のご質問ですが,きょう,私が議員の方に一番聞いていただきたかったお話は,やはり子供たち自身が将来の主人公なのだということは忘れられない事実だということなのです。私も,教師になりましたが,あなたたち勉強しなさいと幾ら威張って言っても,それでやるものではありません。これは,恐らく,きょうの特別委員会の主題にかかわることだと思います。したがって,子供,青年たち自身自分たちの将来をどう考えるのかということを丁寧に聞き出し,大事にするような,そういう場をつくることが大事なのだろうと思います。  具体的ということですので,一つ,私どもの調査活動の中から得られた事例をご紹介したいと思います。  70年代は青年団と言ってましたが,今の若者にとっては,ロックバンドを編成するとか,そういう文化的な要求を満たす場はあるかもしれませんが,青年が集う場が全国的に非常に減ってきています。これは,私より皆さんの方が知っていらっしゃることかと思いますが,たまたま昨年,長沼町で,不思議な講座があるので講師として来てくれないかと言われました。それは,青年たちが自主的に青年学級というものを開いて,二十数人の青年が自分たちでいろいろな話をしておられました。その中の一つに,今,虐待の問題がかまびすしいということで,青年たち自身が,虐待のことと家庭をどうつくったらいいかについて話してもらいたいというから,喜んで行きました。社会教育の一環としてやっていると言えばそう言えるのでしょうけれども,何よりも,青年たち自身がそういう講座を自主的に開いているということに大変関心を持ちました。  いざ,行ってみますと,大変驚きましたが,長沼町では青年の館というのがあります。今,坂委員がおっしゃった児童館で中学生というよりちょっと年齢は越していますが,18歳から30歳ぐらいの青年たちのために,町が,全額かどうかは調べておりませんけれども,補助をしていると思います。その青年の館を根拠地に,そういう勉強会とか,自分たちが卒業した中学校が荒れたときに,その通りに花壇をつくるような活動をしていました。青年心理学に関心がある人にこのことを知らせたら,早速,調査に行きたいと言っていましたけれども,これは大変まれなことだと思います。  そのぐらい,今,どの地域に行っても,若者は一体どうしているのか見えない。上ノ国町でも,中学校を卒業してしまうと全然見えなくなってしまうと教育長が言っておられます。青年に地域社会でどのように生活してもらうのか,この辺はやはり次の課題だろうと思います。 ◎宮武 参考人  子供たちのための施策とか事業は,全国的には非常にたくさんあると思います。私は,その一つ一つが非常に大事なことだと思いますが,そういうことを行うときに,そのベースとして,先ほど間宮先生がおっしゃっていましたけれども,子供の自我の成長を見守る,育てる,支援するという感覚を持って運営していただかないと,ただ時間が流れるだけだと思います。  もう一つは,今,地域的に子供たちに弱まっているのは,人間関係調整能力です。小学生の子供たちに,友達が3人ですと聞くとぞっとします。きっと,この子供には友達3人の悲劇がやってくる。3人の悲劇の説明はできませんけれども,友達の数が少な過ぎるのですね。  もう一つは,友達同士,親子,夫婦,学校の先生と子供,子供同士の会話の時間が絶対的に少ないと思うのです。1週間に10分でも伸びたら,僕は変わると思っています。家庭の中,学校の中,地域社会でも結構ですが,会話をもっとふやすことと一人一人の子供の自我をもっと大事にしてあげる取り組みが一番ベースにあるのではないかという気がいたします。 ◎山田 参考人  具体的な施策という点で言うと,まずは何よりも,今,策定途中のSSNの中できょういろいろと挙げられた社会的な資源をきちんと位置づけること,これに尽きるのではないかなと思います。  あと,札幌市として独自にこういうことがあるといいなと私が思っていることは,不登校及び引きこもりについて,国でもやったことのないような実態についての基本的な調査をできないでしょうか。できれば継続して,例えば5年ぐらいとか10年ぐらいで,子供たちがこの都市社会の中でどのように生きているのかというところを見るような調査がもしここで行われるとしたら,一つのモデルケースとして全国的にもすばらしいものになるのではないかなと思います。  また,いろいろな話の中で,子供が,地域の子供ではないという話がありました。この間,精神保健福祉センターの所長とお話ししている中でも,子供が地域の子供にならずに学校の子供になっている,学校に行っていない子供はヒッキーかヤンキーでしかないと。ヒッキーというのは,引きこもりを指す俗語みたいなものです。  今までのお話を伺っていても,地域の子供と考えるときに,必ずそこに学校が絡んでいるのではないでしょうか。学校を全く無視して子供を考えたときに,では,大人はどれだけ子供と会える時間があるのでしょうか。すごく少ないと思うのです。中学校へ入って部活をしていれば,朝練の始まる6時くらいから夕方4時,5時ぐらいまでやっているわけです。大人は,その間は働いています。それで,地域の子供にならないと言って嘆いていても始まらないのではないかなと。大人が変われば子供も変わると先ほどありましたけれども,そういう面も確かにあると思います。それでは,大人が休むというのはどうですか。休めるようにしていくといいのではないでしょうか。 ◆小谷俵藏 委員  私からも,端的にご質問し,意見を述べさせていただきたいと思います。  今,3人の先生からそれぞれの立場でお話を伺いまして,また資料もちょうだいしております。  私は,我々自身もさらに深く掘り下げなければならないと感じるのですが,それは,現状がこうだからどうするか。こうする,ああすると。しかし,その結果,こういうすばらしい結果が生じた,だから,こうすればこうなるということは余り公表されないのです。  そのこととあわせて,現状は,どういう背景,どういう最近の社会の中からこういう現象が起きてきたか。これをもっと掘り下げながら,その現状を解いていく。そして,解決策を模索していく。そのストーリーというものが非常に大切ではないかなと思います。確かに,少子化の問題もそうでしょう。子供を取り巻く環境も,家庭ではないものが学校ではある,学校であることに期待しているけれども,学校の先生が一生懸命努力をしているうちに,先生の教え方が悪い,指導の仕方が悪いと親がどんどん言う。そうすると,学校や教育委員会に,例えばAという先生のことについて大きな厳しい批判が来る。そうすると,もう子供のことを真剣になってやっても,こんなことだったらと,事なかれ的に構えた調子でやっていた方が無難だという社会に実際になってきていると私は思うのです。  ですから,やはり,人と人,社会という中にあって,子供たちが,小さいときからその年齢,年齢に合わせてどうやって社会性を身につけていくか,そういうことをいま一度しっかりと求めていかなければ,これは大変なことになってしまう。論ずるはやすし,行うはかたしで,その行いをしっかりやっていくことが必要だと思いますが,3人の先生方からそれぞれ見解を承りたいと思います。 ◎間宮 参考人  今のご意見は,私たちが1993年に北大の教育学部に教育臨床心理学講座が設けられたときの趣旨そのもので,それを考えなさいということで新設されました。その場合に,やはり,今日起こっているもろもろの生存,成長の困難を前提にして考えなさいということであります。私どもはずっと考えてきたつもりですけれども,問題が複雑で,大変厄介で,そう簡単には鮮やかに述べることができません。  ただ一つ,きょうもお話ししましたように,強いて言えば,地域社会の中で子供が育つような環境をつくるということになるのだろうと。それで,お許しいただきたいと思います。 ◎宮武 参考人  小谷委員から大変大きいご質問でしたので,どうお答えたらいいかと思っているのか本音でございます。  やはり,単に教育の問題ばかりではなく,経済改革にしても政治改革にしても社会改革にしても,小谷委員がご指摘の部分がベースにあって,その上に各事業が成り立っていくのだろうと思います。そういう意味で,そのとおりであると私も受けとめております。  ただ,教育の問題をどう分析するかというと,大変時間が長くかかります。まだ足りない面がありますのでちょっと遠慮させていただきますが,やはり大きい視点を持ってやっていくことが大事だと思います。  ちょっとずれますけれども,私などは,小泉首相が着任したときに,米百俵の話が一番先に出てまいりまして,不景気の日本なのに,ありがたい,教育予算だけは大事にしてくれる日本になるのだなと期待しておりますし,これからもしていきたいと思います。 ◎山田 参考人  今,小谷委員からお話があったような中身は,つい最近,市教委の方で,教育改推進会議ということで有識者が集まって今後の札幌市の教育改革をどう進めていくかというお話の中間報告が出ておりますが,その中にあることともすごく絡むのかなと思います。今,小谷委員の話では,学校の先生に対して非常にきつい言葉を投げかけて,指導が難しくなってしまうような例があるとか,私もそれは聞いたことがあります。あるいは,そちらの中間報告の中には例えばこんなことを書いています。家庭環境も変化し,家庭の小規模化,孤立化,価値観の多様化等により,子供たちに対するしつけのできない家庭が多くなってきており,その教育力の低下が問題となってきていますとか,子供たちの友人関係が希薄になっていることや,粘り強く頑張り,歯を食いしばってつらさを耐えるという経験が欠けていること,感動したり努力したりといった体験が不足していること,失敗に対する過剰な不安,保護者からの過度の期待,社会に無関心で社会性が欠如していること等が課題として挙げられていますと。  恐らく,こういった言葉で代表されるような社会状況は,委員の皆様方もいろいろと不安に思われているところもあると思われますが,私は,その点に関して余りそうは思っていないのです。例えば,粘り強さとありますが,粘り強さとは何かと思うのです。歯を食いしばってつらさに耐えると。不登校の子供と会っていれば,どれだけの状況の中で不登校を粘り強く続けているかというのがわかります。もし,それは違うだろう,方向が違うだろうというのであれば,粘り強さそのものを,ない,あるというふうに見ているのではなくて,その方向に沿っているかどうかで判断を下していることになります。そうであれば,私は,むしろどういう粘り強さを是とするのか,あるいは非とするのか,その見えない隠れた基準を暴き出したい。粘り強さというのは,間違いなく子供は持っていると僕は思います。  家庭の教育力云々では,こんな話があります。ある幼稚園の先生から聞いた話ですが,幼稚園の回す水道を使えない子供がいたと。何でだろうと思ったら,自宅の水道は,うちもそうですけれども,レバーで押したり出したりして使う水道になっている。子供にそういう力がなくなっているのではないだろうかと非常に不安がっていましたけれども,何のことはない,環境が変わればそれに合わせて力をつけていくだけです。例えば,50年ぐらい前の人をタイムマシンか何かに乗せて連れてきたとして,この水道を使ってみろと言われて,いきなり水を出せるのかというと,そうではないと思います。  だから,ちまたでよく言われているような課題がありますが,そうした課題について,それはいけないのだともし言うのであれば,これがいけないところなのだというときに,その奥に潜んでいる,先ほど述べたような,例えば粘り強さを是とするのはなぜであるかとか,不登校がいけないのはなぜであるか,そう基準をはっきりと語り合うことができるようになる方が重要ではないかなと僕が思っています。 ◆小形香織 委員  間宮先生に伺いたいと思います。  先生がお話しされていた,どうしたらいいのかを考える主体は子供たち自身なのだということを私は非常に印象深くお聞きしました。  子どもの権利条約がありまして,日本はちゃんと条約を守っていないということで勧告を受けております。先日いただいた資料の中で,札幌市では小学校1年生から高校3年生までの9,700名に対して青少年基本調査を行いましたが,これに,子どもの権利条約について知っていますかという設問があって,中学生で知っていると答えた人が27%ぐらい,聞いたことはあるけれども,詳しくは知らないが40%弱,そして,知らないという人が32%ちょっと,高校生になると,聞いたことはあっても詳しく知らないというのが57%ぐらいでした。私は,この権利条約の中身をもっと知らせていくべきだろうと思うし,札幌市でも,これを札幌市版にしたようなものをつくりたいなという気持ちがあります。  先生は,この数字を聞かれて,どうお感じになったか,その辺を伺いたいと思います。  それから,別の件ですが,同じ調査の中で,悩み事をまずだれに相談しますかという設問がありました。中学生は,友達に相談するというのが42.1%,2番目に,だれにも相談しないという人が31.1%いるのです。だれにも相談しないという中学生の31%が非常に多くて,小学生は18%だったり,高校生も18%だったりします。やはり,友達やお母さんなどに相談するのが最も多いのですが,2位にだれにも相談しないという回答が入っている中学生というのは,思春期だからなのか,そうだとしてもこの数は非常に大きい数字なのではないかなと私は思ったりしています。だれにも相談しないという思春期に入っている子供たちに,具体的にどのような援助をしたらいいとお感じか。または,数字そのものについて何か感じられることなどがあれば,参考までにお聞かせいただきたいと思います。 ◎間宮 参考人  二つとも,私どもが日ごろ仰せつかっている研究テーマに近いものですから,お答えできる範囲でお答えしたいと思います。  まず,子どもの権利条約の問題ですが,札幌市の子供たちで知っているのは27%ぐらい,3分の1だと。これは,数字そのものは今初めてお伺いしましたが,現状としては恐らくそうであろうと思います。  ただ,私が先ほど申し上げましたように,虐待防止協会の代表を仰せつかっていて,そしてまた,今日,重要な問題として市民の皆さんの関心が高いところですが,このように,虐待についての関心が高まってきた一つの背景には,日本の歴史を考えますと,実態そのものがふえてきたこともありますけれども,戦前の文献等々で数字を洗ってみますと,子供の虐待は厳然としてありました。それが,1990年代になって児童相談所に通告される例が10倍,20倍となってきました。その背景には,80年代の子どもの権利条約をめぐる議論,あるいは人権をめぐるいろいろな議論の高まりがあったのだろうと思われるのです。それをもとに,本来守られるべき子供が,保護されるべき子供が守られていないことに対して,市民が,一定程度,怒りを持ったり,疑問を持ったり,あるいは悲しみの感情を持ったりしているのだろうと思われます。  つまり,積極的に言えば,日本の国でも,そういう子供の権利に関する議論がようやく高まってきたのだ,意識が高まってきたともとらえられるのではないかと思っております。もちろん,地域社会での連帯がなくなったとか,いろいろな他の事情も背景にありますけれども,積極面を見ればそういうことになるだろうと。
     したがいまして,私も思うのですが,ことし,特に批准10年目で,子どもの権利条約をどういうふうにとらえ直すか,これは重要な課題だろうと思います。少なくとも子供に関係している専門家の集まりである北海道子ども学会とか,あるいは,教育関係者,心理の関係者等々で,子どもの権利条約問題についてことしは見直そうと声を上げたいと私自身は思っております。  そういうことで,大人の中には一定の根づいてきている側面がありますけれども,成長途上の子供たち自身がどれほど自覚しているかとなると,これは恒常的に議論をしていかなければこうした数字になるのだろうなと思います。ですから,これはまた,一つの課題だろうというふうに思います。  二つ目のご質問は,悩み事の相談の具体的なことでありました。この数字も,全くそうだろうと実感として自覚しています。これは,学生の卒業論文研究等々の調査でほとんど一緒の数字が出ていますから,やはりなと思っております。  友達に相談するのが約42%,しかし,だれにも相談しない中学生が3割いる,このことをどう考えるかということです。これは,きょうお隣の宮武先生がご指摘のように,私は余り抽象的なことを言っているのではなくて,少子化問題等々に関して,当特別委員会設立の趣旨に基づいて,具体的に,できることならば中学の1学級の人数を減らすとか,学校に教育大学生が入るとか,そういう機会があれば私どもの大学でも喜んで学生を出したいと思いますけれども,そういうふうにやれる範囲でいろいろやることです。もちろん受験の問題が背景にありますけれども,とりあえず,宮武先生がおっしゃったように中学3年生のクラスを30人にするというのは,大変具体的な提案ではないかと思って,再び申し上げます。そして,学生を配置するなどというのは新しい考え方であり,そういう具体的にやれることを,当の子供たちに聞いて,いいと思うということであれば,やられたらどうかなと思っております。 ◎山田 参考人  ちょっとしゃしゃり出てくる感じですが,今,子供が自分の悩み事を相談しないのは第2位で3割とありました。どうも,お話の内容も,そして委員の皆様方の表情からして,それは問題であるというふうなとらえ方なのかなと思いました。  しかし,こうもとらえられます。そういう子たちは,一人で悩みを持って,自立しようと頑張っている。今,まさに忍耐力がつこうとしている瞬間かもしれません。ですから,それが問題であるから援助しなくてはという前に,それを問題とするのはなぜかということをはっきりと認識する必要があると思います。  それから,間宮先生のお話の中でも出てきたことで,ちょっと別件ですが,教育大の学生が学校に入れるのでしたら,同じように,教員免許がなくても,フリースクールでやっている人も入れてください。 ○勝木勇人 委員長  ほかにございませんか。  (「なし」と呼ぶ者あり) ○勝木勇人 委員長  ほかになければ,質問を終了いたします。  本日,ご出席いただきました皆様のおかげで,大変有意義な委員会となりましたことを心より感謝申し上げます。  本日の成果につきましては,今後の委員会活動に生かしていきたいと考えております。  本日は,まことにありがとうございます。  以上で,委員会を閉会いたします。     ──────────────       閉 会 午後3時20分...