現在,本市が掲げる200万人
広島都市圏構想は,現状約230万人いる
圏域内人口が,2060年においても200万人を割り込むことがないように,まちの活力を維持し,必要となる税収を確保することができるようにすることを目指すものですが,対応を誤ると,地域の活力を喪失し,圏域全体の衰退につながるという負のスパイラルに陥ることが懸念されます。この件につきましては,先日開催されました
大都市税財政・
地方創生対策特別委員会の中でも,この構想の目的でもある
圏域経済の活性化,
圏域内人口200万人超を維持することに照らし,現在,近隣の23市町とどのような連携をされているのか,またその効果についても現状をしっかり検証すべきではないかという意見を述べさせていただきました。
そうした観点に立ったとき,まず一つ目として,増大する
福祉ニーズへの対応が適切か否かは,極めて重大です。人は誰しも年を取れば衰え,介護・医療でお世話にならざるを得ません。また,核家族化や女性の
社会進出が一般化した状況の下では,出産・育児から教育まで,子育てを社会全体で支援していくことの必要性は,ますます高まっています。今後の
福祉施策への期待は,障害のある方へのサービスなども含め,誰一人置き去りにしない方向を目指し,高まることはあっても低下することはありません。平成20年度と30年度の過去10年間で比較しても,要支援・要
介護認定者数は4万1014人から5万6378人に,
後期高齢者医療の被保険者も9万7740人から14万1637人にそれぞれ約1.4倍に増加しています。この結果,
介護保険給付費も555億円から818億円と約1.5倍に,
後期高齢者医療の
療養給付費負担金も65億円から105億円と約1.6倍に増えています。また,障害者の自立支援のための給付費についても114億円から255億円と約2.2倍に増えています。今の
地方税財政制度の下で今後このような期待に応えられるような
福祉施策をどのように展開し,その財源をいかに手当てしようとしているのか,分かりやすく説明をしてください。
二つ目は,
圏域内人口200万人超を目指すとしても,公共投資については,人口が減少していくという事実を踏まえ,その在り方についての検証をしておくということが欠かせません。総務省が先日発表した
人口移動報告によれば,令和元年1年間の
人口流出は,広島県が8,018人と全国最多であるとの報道がありました。そうすると,
広島広域都市圏からの
人口流出も,必然的に多くなります。
インフラ整備は長期にわたるものであり,またその多くが経済成長,すなわち人口の増加を前提に取り組んできているものです。このことから,人口減という状況の下にあっては,異なる前提条件の下で,改めてその必要性を点検しておく必要があると思います。確かに住み続けたい,移り住んでみたいと思ってもらえる魅力的な
まちづくりは,
人口流出の防止,
人口流入の誘導に不可欠ではありますが,いわば身の丈に合った
まちづくりなのか,さらなる
インフラ整備はどこまでが真に必要となるのかといったことを常に念頭に置いて点検をしておく必要があるのではないでしょうか。
令和2年度当初予算においては,
サッカースタジアムの建設や広島駅南口広場の整備,西広島駅における
南北自由通路の整備や
土地区画整理事業,西風新都の
都市づくりなどの整備が行われることになっていますが,今申し上げたような観点に立った点検は行われているのでしょうか。行われているとすれば,どのように行われているのですか。
三つ目として,近年広域的な災害が頻発しており,今後もこの傾向が続くとするならば,各市町が単独で災害対応することには限界があるのではないでしょうか。災害への
対応そのものを根本から見直すことが必要になっているのではないかと考えます。
周知のように,本市は,平成26年8月
豪雨災害,平成30年7月
豪雨災害と,二つの大きな災害に見舞われてきましたが,
近隣市町も大きな被害を被りました。また,全国で毎年のように大雨などの被害が発生し,国民の生命・財産が危険にさらされています。本市の住民が安心して暮らせるまちをつくるためには,本市のみならず,
近隣市町を含め,地域全体として安全・安心を確保できる状態になっておくことが欠かせません。そのためには,本市が
近隣市町と連携し,また
広域都市圏の中核として復旧・復興,防災の
まちづくりに向けたイニシアチブを取ることが求められているのではないでしょうか。
これらの課題への対応は,決して容易なことではなく,例えば
インフラ整備を軽視してでも
社会保障や
福祉サービスに重点を置きさえすればいい,あるいは,防災のための
インフラ整備を先行すればいいといった処理方針を採用すれば済むといったものではなく,この広島というまちの将来を見通した持続可能な
市政運営こそが絶対に必要であると考えます。我々は,
持続可能性と将来性を見据え,今やるべきことをしっかりやることが求められていると思います。
以上,今後の
市政運営に対する私の
問題意識を述べさせていただきましたが,こうした点についてどのように考えておられるのか,市長のお考えをお聞かせください。
次に,
地域活動の持続的な
仕組みづくりについてお聞きします。
人口減少,
少子高齢化が叫ばれる昨今,全国で健康寿命の延伸に向けた取組が行われ,人生100年時代を見据えながら,これからの時代にふさわしい形で,高齢者を含めた住民が社会参画する持続可能な
地域社会の構築が求められています。
そうした中,本市の
推計人口は,近年少しずつ増加をしておりましたが,直近の1年間を見ると,わずかですが,減少をしています。特に中
山間地域においては
人口減少が著しく,地域によっては
地域活動を継続していくことが困難な地域も出始めています。
一方,都市部においては,
町内会等の加入率が低下し,役員になる人の不足だけでなく,
地域活動の継続についてもこの先不安を抱かざるを得ない状況となり,
都市部特有の
地域コミュニティーの希薄化が大きな課題となっています。当然,
地域活動を継続していくためには,一定の人数の確保が必要ですし,新たな人が入ってこなければ,今の人たちが固定化され,一部の人たちに負担を強いることになります。さらには活動についても今行っている活動を
例年どおり,あるいは縮小しながら行っていくのが精いっぱいで,新たな活動を行うことは難しいといった状況ではないでしょうか。
しかしながら,私は,仕組みを工夫することでこれらを解決し,これまでよりも充実した
地域活動を行うことも可能ではないかと考えています。具体的には,
定年退職をした方々に
地域活動を行う一員になってもらうこと,
子供たちが
地域活動に関わることができる機会を取り入れること,そして,
地元企業が
地域活動に参加するようになることが鍵になるのではないかと考えています。
定年退職をした方々についてですが,多くの団塊の世代が再雇用等で働く期間を終えている,あるいは終えつつある中,この方たちに
地域活動を行う一員になってもらうことで,一定の人数の確保を図ることができるのではないかと考えています。団塊の世代も既に高齢者になっており,難しいのではないかといった意見もあると思いますが,人生100年時代といった考え方も出てきており,誰もが長生きできる社会になっています。そういう意味では,70歳前後の団塊の世代は,まだまだ元気な世代であると言えます。私の地元,湯来町でも,
人口減少,
少子高齢化が加速度を増す中,これまで地域の担い手として最前線で
地域活動に奔走してこられた方々が,高齢ということもありますが,体調不良や家庭の事情等により
地域活動への参加が難しくなり,例年当たり前のように行われてきた
地域活動も,人手不足により,これまでと同様に
地域活動を継続していくことが困難になってきた地域も出始めています。
また,次世代の地域の担い手である若い世代も,進学や就職を機に既に地元を離れている者も多く,私自身,衰退していく地元を目の当たりにしながら,年々危機感を感じるようになってきました。
一方,これまで地元に住んでいながらも,子育てや仕事が忙しく
余り地域活動に関わりを持てなかった方々や,進学や就職の関係でやむを得ず地元を離れていった方々が,
定年退職を迎えたことを契機に,少しずつ
地域活動の一員に加わるといった動きも見られるようになってきています。
そこでお聞きします。こうした
定年退職を迎えた方々が
地域社会に参加しやすくするために,これまで本市としてどのような取組を行ってきたかお聞かせください。
それから,これと併せて,
子供たちが
地域活動に関わる機会を取り入れることが重要であると考えています。将来,地域を担っていく存在となり得る
子供たちには,地域に愛着を持ってほしいと思うわけですが,そのためには
子供たちも
地域活動に関わる機会が必要であり,
地域活動を通じて,親だけではなく,地域の方々からもいろいろと教わることで,自分は地域に育ててもらっていることを実感でき,それこそが地域への愛着につながっていくことになるのではないでしょうか。
また,子供が
地域活動に関わると,親世代や
おじいちゃん,お
ばあちゃん世代まで一緒に活動に参加しようといったことにもつながるのではないでしょうか。これが非常に大事なことで,仕事などでなかなか時間が取れない親世代が参加するきっかけにもつながると思います。これにより,今現在,
地域活動を担っている
おじいちゃん,お
ばあちゃんの世代──
定年退職者等の世代から,次を担う親の世代へ伝え,将来を担う
子供たちはそれを見ながら
地域活動の大切さを認識し,地域への愛着を深めていく。こうした継承のサイクルを回していく必要があると思いますが,本市では
地域活動に
子供たちが関わることができる機会をつくるため,どのような工夫をされていますか。お聞かせください。
次に,
地元企業の
地域活動への参加についてですが,これには二つのことが重要であると考えています。
まず,1点目は,企業に
地域活動に参加することの意義を知ってもらうことです。企業は当然本業があるわけですから,
地域活動まで参加するのは大変であるというイメージを持っているところもあると思いますが,
地域活動に参加することで,新たな仕事につながることもあるでしょうし,地域の人から人材を紹介してもらい,人材確保につながるケースもあるでしょう。そして,何より
地域住民の
企業活動への理解が深まるといった意義があること,ある意味,自分たちの最も身近なところに対する広報になり得ることなど,
地域活動に参加することは,企業にとっても様々な意義があることを認識してもらうことが重要ではないでしょうか。
2点目は,地域と企業をつなげる場をつくることです。企業は
地域活動に参加しようと思ってもどうすればよいのか分からなかったり,あるいは地域の人が企業に何を協力してほしいと望んでいるのか見えなかったりします。そうした企業と地域の思いをつなげる場があれば,企業も参加しやすくなるのではないでしょうか。そして,企業が
地域活動に参加し,できる範囲の中で,時には企業が持つ
専門的ノウハウを使って協力すれば,地域が行うことができる活動の幅もより広がるといった効果が見込めるのではないかと考えています。
そこでお聞きします。企業が
地域活動に参加しやすい
仕組みづくりについて,本市としてどのように考えているのかお聞かせください。住民,企業,行政,それぞれが広島市という自治体の構成員です。昔のように構成員がどんどん増えていく時代でなくなった今,住民同士の協力に加えて,企業との連携を図っていくこと,つまり住民と企業が顔の見える関係になることが,
地域活動を継続させていく上で必要不可欠になってくるのではないかと考えます。行政にはそのつなぎ役としての
仕組みづくりが求められていると思いますので,関係課にはぜひとも御検討のほどよろしくお願いいたします。
それから,最後に,これに関連して,東京大学が神奈川県で行っている
高齢社会を持続可能な社会へと組み替える取組について,昨年末,知見を得る機会がありましたので,参考に御紹介します。
神奈川県では,平成29年度から,かながわ人生100歳
時代ネットワークというプラットフォームを立ち上げ,県民一人一人が生き生きと充実した人生を送ることができる社会を実現するために,
地域住民を学びの場から活動の場へつなぐ仕組みをつくり出すことに取り組んでいます。その
ネットワークには,市町村・大学・企業・NPO等の多様な主体が参加し,様々な議論を交わしながら,現代の
地域社会の課題の洗い出しを行っており,今は高齢者と多
世代交流,高齢者の働き方,高齢者と
地域社会の3点をテーマに
モデル地区での取組を進めようとしておられます。
一つ目の高齢者の多
世代交流は,
子供たちを主役とした
地域活動を行うことにより,子供の地域への愛着や
自己肯定感を育み,また高齢者にその活動に協力してもらうことで,
地域社会に対する
当事者意識と,自分が役に立つという感覚を持ってもらおうというものであります。具体的には,
子供向け参加型イベントに高齢者や子供の親世代,大学生などの多くの世代に参加してもらうことで,
世代間交流を生み,それを
地域活動の
世代間継承につなげるというものです。
二つ目の高齢者の働き方は,定年後何をしてよいのか分からず,したいことも見つからないまま過ごしている
高齢者向けに,
セカンドライフの様々な選択肢を示し,希望する選択をスムーズに行える支援をする取組です。具体的には,現役世代のうちに,NPO,
ボランティア,協同労働,企業,
在宅ワークなどの多様な活動の仕方を提示して,その
活動団体の紹介や
ボランティア活動体験講座などに参加してもらうといった内容になっています。
三つ目の高齢者と
地域社会とは,まさに
地域コミュニティーに関わる高齢者を増やしていこうという取組です。具体的には,地域との関わりが特に薄い
定年退職後の男性をターゲットに,緩やかな地域との関わりを得る仕組みを立ち上げ,参加者を地域の活動に引き込もうという取組です。
東京大学が神奈川県で進めているこれらの取組は,まだモデル的に進めている取組ではありますが,
高齢社会が進む中,それを悲観的に考えるのではなく,そうした方々が持つ経験と知識を地域の活動に役立ててもらい,さらにはそれを次世代へと引き継ぐことで地域を持続させていこうという取組です。その考え方は,今後の本市においても大いに参考になるものであり,こうした先進事例をしっかりと研究し,有識者の意見も参考にしながら,
高齢社会に対応した持続可能な地域づくりに向けてしっかり取り組んでいただきたいと思います。
最後に,湯来地域の学校適正配置についてお聞きします。
平成の大合併により,湯来町が広島市と合併をして約15年の歳月が経過しました。その間,合併建設計画の推進により,道路整備を中心に事業が進み,まだ道半ばではありますが,市内中心部からのアクセスも格段に向上し,各シーズンの様々なイベントを目的に,多くの方に訪れていただくようになりました。
一方で,全国的に
人口減少,
少子高齢化が進展する中,中
山間地域湯来町も急激な
人口減少に加え,
少子高齢化が加速度を増し,平成17年に広島市と合併したときの人口は7,631人,高齢化率29.1%と言われていた数値が,平成31年には人口5,662人,高齢化率48.3%と,あっという間に超高齢化社会へと突入していきました。加えて,次世代の地域の担い手である子供や若い世代が,進学や就職,また転職を契機に町外へ転出し,年齢階層別人口の割合も大きく変化をしました。
そうした中,湯来地域内にある小・中学校の児童生徒数も年々減少をしていきました。特に合併時から学校の統合問題が議論されてきた湯来中学校区,中学校1校,小学校2校においては,小規模化が加速度を増し,一気に児童生徒の数が減少し,湯来中学校では平成15年に74名在籍していた生徒が,平成31年には27名に,湯来東小学校では,平成15年に78名在籍していた児童が,平成31年には20名に,また湯来西小学校においては,平成15年に25名在籍していた児童が,平成31年にはついに1桁台の8名にまで減少しました。
合併以降,学校の統廃合については地域でも様々な議論があり,母校がなくなることは心情的に反対だとか,学校は地域のよりどころであるため,それがなくなることは地域としても寂しいので,なくさないでほしいという統合に反対の意見や,一方で,お孫さんを抱えた方からは,1学年四,五人では義務教育の中でできないことが多過ぎて孫がかわいそう,統合を進めてほしいという統合に賛成の意見や,当時中学校入学前のお子さんを抱える保護者からは,部活動の選択肢がなく,自分のやりたいクラブがないので子供が悩んでいる等の,私自身も様々な御意見を聞かせていただきました。
それと同時に,教育委員会も,地域の実情を踏まえながら,様々な検討をしていただいていましたが,平成22年1月に作成・公表した広島市立小・中学校適正配置計画(素案)において,湯来地域の学校については,小学校間の距離が大きく離れていることから,統合後の受皿となる校舎の新築が必要とされるため,費用面を考慮し,学校統合の対象から当面見送ることとなりました。その後,平成27年1月に文部科学省が,公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引を公表し,この手引の中で,標準規模を下回る学校について,教育的効果という視点だけではなく,学校が有する
地域コミュニティーの中核機能を重視し,学校が存続する場合も想定し,その対応策について検討する必要があるという新しい視点が示されました。
そこでお聞きしますが,上記に述べられた状況を踏まえて,平成27年度から広島市立小・中学校適正配置計画(素案)の見直しに向けた検討を進めるために,各小・中学校長,PTA,学校協力者会議,連合
町内会等と4年間で21回の協議を続けてこられましたが,各意見交換の場で出された主な意見や要望についてお聞かせください。
また,教育委員会として,これまで協議を通じて現状をどのように認識しておられるのか,併せてお答えください。
先ほども申し上げましたとおり,平成22年に湯来地域が学校統合の対象から当面見送られることとなり,既に10年という歳月が経過しました。当初は湯来中学校を受皿とした小・中連携校が望ましいのではないかという関係者の意見も多くありましたが,校舎の建てかえや改修に多額の費用がかかること,さらには校舎の一部が土砂災害特別警戒区域──レッドゾーンに指定されたことを受け,安全対策等についても検討が必要となってきました。しかし,一番の問題は,我々の想像をはるかに超えるスピードで小規模化が進み,本来,学校統合の受皿である湯来中学校が,義務教育の目的を達成するために必要な教育環境の維持が困難になってきており,授業,学級活動,生徒会活動,学校行事,部活動,PTA活動,あらゆる分野で
子供たちに少人数の影響が生じてきました。学校長をはじめ,教職員の皆様には,
子供たちがこれからの社会を生きるために重要な確かな学力,豊かな心,健やかな体という生きる力を育むために,様々な工夫をしながら最大限の努力をしていただいていますが,昨今の現状を鑑みると,限界も感じざるを得ません。
最後にお聞きしますが,これまでの検討を踏まえて通学条件等の様々な課題がありますが,湯来中学校区のみではなく,砂谷中学校区も含めた統合の検討を早急に行うべきであると考えますが,教育長の御見解をお聞かせください。
以上で私の
総括質問を終わります。長時間の御清聴,誠にありがとうございました。(拍手)
○
山田春男 議長 市長。
〔松井一實市長登壇〕
◎松井一實 市長 宮崎議員からの御質問にお答えします。
今後の
市政運営についての御質問がございました。
私は,市長就任以来,この広島を世界に誇れるまちとすることを目指して,その実現に向けて,まちが持続的に発展するためのシステムを構築することこそが私の使命だと心得て,市政に取り組んでいるところであります。議員の御指摘は,いずれも市の持続的な発展を期する上での根幹に関わる問題提起であり,私自身もそうした問題を常に意識しながら
市政運営を行ってきているところであります。
まず,1番目の指摘である,増大する
福祉ニーズへの対応についてですが,社会福祉や
社会保障などは,国がその向上及び増進に努めるべきものであることが憲法に規定されており,それに関わる事業は国において全国的な視点に立って実施されるべきものであります。したがって,基礎自治体は,国がその役割を果たすことを前提に当該自治体に特有の課題解消などに必要となる役割を果たしていくことが基本であると考えています。
私は先般,政令指定都市市長会の厚生・労働部会で,こども医療費補助制度について,こうした観点に立って制度のあるべき姿を示すよう国に求めることを提案したところでありまして,引き続き政令指定都市市長会として
社会保障費に関わる自治体間での格差解消に向けて,国に対し制度の変更を求めてまいります。
また,自助・共助・公助の適切な組合せによる持続可能な地域福祉を構築するという考え方の下,地域共生社会の実現の一環として,高齢者いきいき活動ポイント事業に取り組んでいるところであり,引き続きこのような医療費,介護経費の増加を抑制する施策や民間活力の利用によるサービス向上とコスト削減を図る取組を積極的に進めることとしています。
さらに,こうした取組について,定期的な点検と所要の見直しを適切に行っていくことで,増大する
福祉ニーズに的確に対応していきたいと考えております。
次に,2番目の指摘である,
人口減少局面での
インフラ整備の在り方については,まずはUIJターンの促進など若者の
地元企業への就職・定着を促すためのソフト施策の徹底と歩調を合わせて,人口の減少幅を抑制していくという視点に立って
インフラ整備を進めていく必要があると考えております。すなわち,ソフト施策によって動機づけされた人々が,移り住んでよかった,住み続けたいと思ってもらえる魅力的なまちにするために,例えば生活環境の改善が確実に行われる地域であることを実感してもらえるようにするという視点に立って,
インフラ整備を着実に進めていくことが必要不可欠であると考えています。
また,人口の減少幅が拡大しないうちに,すなわち経済活動という視点から見て体力のあるうちに,防災対策を含め,将来を見通した都市インフラの整備を積極的に進め,現時点で見て明らかに不足している都市機能を事前に確保しておくことによって,今後ますます高まる
社会保障や
福祉サービスへの需要を支えるための財源の涵養に着手しておかなければならないとも考えています。
私はこのような観点に立って
インフラ整備に取り組んでいるところであり,その実施に当たっては,市民との対話を通じて吸い上げたニーズを踏まえつつ,合意形成を図った上で,市としてのビジョンを提示し,それを具体化するということに意を用いてきていることから,多くの市民にとって納得のいく事業の選択・実施ができているものと考えています。
同時に,必要となる財源確保については,国・県の財政支援制度を活用することで市債への依存度を引き下げるとともに,選択と集中による
インフラ整備事業の進度調整などを行うことによって,年々の投資可能枠をできる限り圧縮しているところです。こうしたやり方によって,実質的な市債残高を削減し,将来世代への過大な負担を軽減することを行いながら,広島駅南口の再開発や南道路の整備など,複数のプロジェクトを同時並行的に実現してきているところです。今後も同様なやり方によって実現すべき
インフラ整備をしっかりと進めてまいります。
最後の指摘である災害の復旧・復興,防災の
まちづくりに向けた
広島広域都市圏でのイニシアチブの発揮については,近年広域的な災害が頻発しており,議員御指摘のように,これまでの各市町による単独での対応を根本から見直す時期に来ていると認識しています。平成30年7月
豪雨災害の対応の際にも,近隣自治体に人的な支援を行いましたが,今後はそれに加え,本市の防災
まちづくり事業のノウハウを提供したり,防災力を高める改良復旧を重視した復旧事業を広めるなど,本市が様々な面でリーダーシップを発揮し,
広域都市圏全体の災害対応力の向上を図っていきます。
今後とも広島としてのあるべき姿を見据え,社会資本整備等の裁量的な支出と
社会保障のための義務的支出のバランスの取れた財政運営を行っていくことで,また,広域的な視点に立って
まちづくりを推進していくことで,
人口減少,
少子高齢化の下にあっても,これに打ちかち,持続可能な
市政運営を行っていきたいと考えております。
その他の御質問については,関係局長から答弁いたします。
○
山田春男 議長
企画総務局長。
◎及川享
企画総務局長 地域活動の持続的な
仕組みづくりについての3点の御質問にお答えいたします。
まず,
定年退職を迎えた方々が,
地域社会に参加しやすくするために市としてどのような取組を行ってきたのかについてです。
知識・経験とも豊富な
定年退職者の方々は,地域にとって貴重な人材であることは,本市としても認識しているところでございます。一方,これらの方々は,現役の時代には仕事に追われ,
地域活動に深く関わっていない方も多いことから,本市としては,まずは
地域活動への理解を深め,参加・協力の意欲を高めてもらうことに取り組んでいます。具体的には,“まるごと元気”地域コミュニティ活性化補助事業の中に,プラチナ世代,リタイア世代等の地域デビュー支援というメニューを設けまして,これまで
地域社会との関わりの薄い
定年退職前後の人材を地域に呼び込むため,地域にデビューするきっかけとなるサロンの実施や,菜園づくりを通した交流促進など,今年度は15件の取組に対して補助を行っております。
また,
ボランティア活動などの活動実績に基づき奨励金を支給する高齢者いきいき活動ポイント事業では,その効果検証で,高齢者の社会参加の促進や地域団体の活動の活性化に資するとの結果が出ており,本年9月から対象年齢をこれまでの70歳以上から65歳以上に拡大を図ることとしております。
さらに,市職員の退職者の
地域活動への参加促進を図るため,退職者向けの会報や退職を間近に控えた職員を対象にした講演会の中で,
地域活動への参加を呼びかけております。
次に,
地域活動に
子供たちが関わる機会をつくるため,市としてどのような工夫をしているのかについてです。
地域活動に関わる意欲は,自らの地域への愛着と誇りが土台となって築かれるものです。このような意欲の醸成には,子供のときから数多くの
地域活動に参画することが重要であると考えており,本市では
子供たちが
地域活動に関わる取組を積極的に推進しているところでございます。
具体的には,先ほども御紹介しました“まるごと元気”地域コミュニティ活性化補助事業のメニューの中に,平成29年度より
子供たちの思い出づくりの取組を加えており,これを活用した地域では,
子供たちの企画によるスポーツ交流会や
子供たちを対象とした防災キャンプの実施,子供みこしを高齢者の協力により製作し,地域の方々と祭りで練り歩くなどの
地域活動が新たに生み出されています。
また,市立中学校では,平成24年度より,まちぐるみ「教育の絆」プロジェクトを実施しており,今年度は市内40校で,生徒と地域の方々との協働による地域清掃活動や,敬老会などの地域行事において
ボランティア活動などを実施し,
子供たちの中に地域との絆を醸成する取組を行っています。
最後に,企業が
地域活動に参加しやすい
仕組みづくりについて,市としてどのように考えているのかについてです。
地域活動の担い手不足が深刻化する中,これからは町内会・自治会などの地域団体の役員だけでなく,
地元企業や協同組合,NPO法人,
ボランティア団体など,多様な主体が関わり合いながら
地域活動に取り組むことが重要であると考えています。特に様々なノウハウや資源を有している企業との連携は,本市としても必要であると考えており,新年度において企業に焦点を当てた
地域活動の担い手確保のための取組に着手することとしています。
具体的には,まず地域貢献活動に意欲がある企業と
地域コミュニティーを結びつけ,地域の行事や清掃活動へ従業員を派遣するなど,企業が
地域活動に積極的に参加できる仕組みをつくりたいと考えています。また,企業に対し,従業員がこうした
地域活動に従事するための休暇制度の導入についても働きかけることとし,これにつきましては,労働局などの関係機関との連携を図りながら進めてまいりたいと考えています。さらに,様々な
地域活動に取り組む企業について,企業イメージの向上を図り,より地域からの信頼獲得につながるよう顕彰制度を設けるなど,一層企業の
地域活動への参加意欲が高まるような
仕組みづくりについても検討してまいりたいと考えています。
以上でございます。
○
山田春男 議長 教育長。
◎糸山隆 教育長 湯来地域の学校適正配置について,これまでの学校関係者や連合町内会長等との意見交換会の場で出された主な意見や要望は何か,教育委員会としてこれまでの協議を通じ,現状をどのように認識しているのか,湯来中学校区のみでなく砂谷中学校区も含めた統合の検討を早急に行うべきと考えるがどうかという御質問にお答えをいたします。
議員お尋ねの地元との協議状況については,これまで出された主な意見として,少人数であることから学校が一人一人にきめ細かな指導を行ってくれるものの,子供が集団の中で切磋琢磨することが困難になっている,湯来西小学校と湯来東小学校を統合して湯来中学校の位置で小中一貫教育校としてほしい,より多くの子供がいる中で学校生活を送らせることも考えてはどうかといったものがありました。
これらの意見は,湯来中学校区内の
地域住民の方々が,今後の地域の動向を考えたときに,
子供たちにとってよりよい教育環境にするためには統合を含めた学校の在り方について根本的な対策が必要になっているとの実感があることが背景にあるものと受けとめております。湯来中学校区内の二つの小学校と,湯来中学校の在り方については,湯来地域全体の今後のあるべき姿を見据え,砂谷中学校区までも視野を広げた上で考えていくべき重要課題であると認識しております。
また,議員御指摘の砂谷中学校区を含めた湯来地域全体で学校の在り方を検討することは,教育面での課題解決のみならず,湯来地域全体の活性化に向けた有効な方策を検討していくことにつながるものと考えております。これまで教育委員会では,湯来中学校区,砂谷中学校区とそれぞれに意見交換を行い,学校の在り方を検討してきたところですが,今後は湯来地域全体の
まちづくりについて合意形成を図っていく上での重要な柱を立てるという視点に立って,教育委員会だけでなく,区役所及び本庁も参加する形で地域と協議する場を設け,その中で目標年次に沿った具体的な取組を明確にするための作業などを行えるようにしていきたいと考えております。
以上でございます。
○
山田春男 議長 29番宮崎議員。
◆29番(
宮崎誠克議員) ありがとうございます。今回の質問は,
人口減少,
少子高齢化というキーワードの中で質問をさせていただきました。とりわけ,私が中
山間地域に住んどるもんですから,
地域活動へ携わる中で,本当に年々,
地域活動がままならない状況を本当に目の当たりにしながら,本当にこのままでいくと,地域がどんどん衰退していくんじゃないかという危機感が生まれてきて,今回の質問になりました。
その質問をする中で,いろんな数字を調べる中で,今回出されております
財政運営方針ですよね。その中で,今後4年間で110億円の
収支不足を見通されております。これを各年度で的確に歳入を確保して,歳出を削減して,調整していくということが書かれていました。一方で,松井市長は,もう初当選以来,本市が遅れていました
インフラ整備,中四国の発展をリードする都市として,そのふさわしい
まちづくりに全力投球をしてこられて,私はそれ自体はすごく評価をしております。
ただ,やはりこの超高齢化社会の中で,これだけ
福祉ニーズが増大してきて,それでなおかつまだまだ多くの
インフラ整備を残している中で,本当にこのままで本市の財政というのは大丈夫だろうかという思いで質問をさせていただきました。本来財政運営という観点で質問をさせていただければよかったんですが,広域連携の問題とかインフラ,災害の問題がありましたんで,
市政運営という形で質問させていただきましたが,松井市長の今の様々な課題に対応する思いというのを,本当に熱いものを受けましたし,一方で,やはりこういうときだからこそ,やはり今やっとかにゃいけん。今だからこそやらなければいけないという熱い思いもよく分かりましたんで,今後,持続可能な
市政運営になるように,松井市長にはリーダーシップを発揮していただきたいと思います。
それと,持続可能な地域づくりについてですが,先ほど申し上げましたように,私は中
山間地域でその地域の担い手の不足という,確保をどうしていったらいいかという中で,これはもう全国的な大きなテーマだと思います。一方,都市部においても,本市も旧市内の先生方に話を聞いても,消防団に入り手がおらんとか,PTAの中で地域にもお世話になっておるんで地域に協力していこうやといったら,保護者の役員から,何で地域のことをせんといけんのんやと。そういう言葉が出たりとか,それぞれ都市部は都市部なりのそういう
地域コミュニティーの希薄化が軒並み出てきているように思います。
そうした中で,たまたま東京大学が
高齢社会に向けた持続可能な地域づくりについて研究をされていることをお聞きし,実際,昨年12月に,山路議員と東京大学のほうへお邪魔をして,今の東京大学の取組についてお聞きしました。今現在は,先ほど御紹介した神奈川県でプラットフォームを立ち上げて,
高齢社会に対応する課題の洗い出しをして,これから
モデル地区をやっていくと。その一方で,全国のそういう自治体に地域活性化の支援をするために,いろんなアドバイスをしたり,助言をしたりされているんです。ただ,今の東京大学がされている助言をしている都市というのは,割と中小規模の都市で,今,政令市はないんですね。ただ,やはり本市としても,中
山間地域,都市部,その中でやっぱり持続可能な地域づくりの仕組みっていうのは,これからつくっていかんと間に合わんだろうと思いまして,今回そういう質問をさせていただきましたんで,今後しっかり,そういった他都市の事例等もありますんで,そういったことをしっかり踏まえながら,
仕組みづくりに向けて頑張っていただければと思います。
最後に,湯来地域の学校適正配置の問題ですが,この問題はもう私が平成17年に市議会へ出させていただいたときからずっとありました。最初はもう厳しくやられました。おまえは統廃合の問題については賛成か,反対かと厳しくやられましたが,平成22年に対象から外れて,その間も教育委員会としてはずっと地域の方と協議を続けてこられました。
私はこの学校の適正配置の問題というのは,これはもう我々がそんなに口を出すことじゃなくて,教育委員会がリーダーシップを執ってやるべきだという思いがありましたんで,私はこの件については1回も質問をしたことはないと思います。ただ4年間協議をされてきて,最近になりますと,教育委員会が2年ぐらい前に聞きに来たんじゃけど,あれから何も言うてきてないんじゃけど,どうしよう思うとってんかなと。それで,今回私が質問しようと思ったのは,その中で,自然消滅を待ちよるんじゃないかという言葉を言われたんです。いや,そんなことはありませんと。教育委員会はちゃんと,
子供たちの教育を守るために今一生懸命検討しよりますんで,そんなことはありませんと。そういう思いがあったんで,今回あえてこの問題を本会議に出させていただきました。
教育長は現地も見ていただいておるとお聞きしております。やはり私もいろんな保護者の人とか地域の人と話すんですけど,やはり方向性が見えない,イメージできないというのはよくないなと思います。今から子供を通わせる親が,学校がどうなるか分からんという。その中で私が怖いのは,この湯来町の中でちゃんと教育を受ける環境がないと判断されたときは,地域を離れるんですよ。それが怖いんです。だから,地域の意見もいろいろあるかも分かりませんけど,やはりまず子供です。
子供たちについて一番いい環境はどうなのかということを教育委員会がリーダーシップを持ってやってほしい。今回,教育長のほうから,湯来地域の学校の在り方については目標年次に沿った具体的な取組を明確にする作業を行うと言っていただきました。もうこれまでも意見交換会もたくさんしておられますし,この間も意見交換会があって,私も出させていただきました。もうある程度方向性も恐らく決まっているんじゃないかと思います。そういう部分でいうと,ある程度具体的なスケジュール,方向性について,教育委員会のほうから地元の人に示していただいて,ちょっとでも早く
子供たちが安心して教育を受けれる環境を整えてやってほしいことを要望して終わります。
○
山田春男 議長 次に,42番元田賢治議員。
〔42番元田賢治議員登壇〕(拍手)
◆42番(元田賢治議員) おはようございます。
自民党・保守クラブを代表して質問させていただきます。
まず,旧陸軍被服支廠についてお聞きいたします。
旧陸軍被服支廠は,日露戦争の中,明治38年に洗濯工場として建築され,宇品港が大陸に物資を送る拠点となっていたことから,明治40年に軍服や軍靴を中心に軍事関係の衣服や雑貨類を製造する,東京,大阪に次ぐ,3番目の被服廠となり,現存する4棟,10から13号倉庫は大正2年に竣工されたものであります。爆心地から約2.7キロの距離にあり,原爆投下時も倒壊を免れ,負傷者を収容する臨時救護所となりました。戦後は広島大学や県立広島工業高校の校舎などに転用されましたが,次々と取り壊されてまいりました。現存する旧陸軍被服支廠は,広島大学の学生寮や日本通運の倉庫等に使用されていたことを記憶しております。その後は使用されることもなく現在に至っており,広島県が3棟,1から3号棟,国が1棟,4号棟を所有しております。広島市の被爆建物台帳にも登録されておりますが,まずこの登録に至った経緯,また登録された被爆建物の保存に向けての市の基本的なスタンスや財政的な支援についてお答えください。
また,この旧陸軍被服支廠については,2016年,平成28年9月から国・県・市で協議の場を設けていると聞いておりますが,その目的,内容等についてお答えください。
湯崎広島県知事は,被爆建物である旧陸軍被服支廠に係る安全対策等の対応として,県所有の3棟のうち,爆心地に最も近い1棟,1号棟を外観保存し,2棟,2号棟,3号棟は解体撤去することとし,令和2年度から順次実施する方針を昨年12月に示されました。その方針に対して,被爆団体や市民グループなどからも,保存を求める要望書の提出や,解体に反対する署名活動が行われています。また,広島県がこの方針について実施したパブリックコメントでは,2,000件を超す多くの回答が寄せられ,そのうち反対が60%,賛成が30%という速報結果と聞いております。
松井市長は記者会見で,広島県の方針に対し,これまでもできる限り全棟を保存していただきたいということを県へ伝えているとされており,このことに対し,湯崎知事は記者会見で,市の登録被爆建物としてより積極的な保存策の打ち出しについても検討してほしい,活用面では積極的に関与してほしいと述べられ,また国や市の考えを聞いた上での総合的な判断をすると説明されています。また,松井市長は,有効活用するか否かの議論が十分に行われているとは受け取れない状況,利活用の在り方をしっかり議論する中で決めていくのがいいのではないかとも述べられています。さらに,湯崎知事は,県議会とも議論をして最終的な方向性を定めたいと述べられ,安倍首相は衆議院本会議で,広島県の今後の議論を見守り,国として対応したいと答弁されております。
湯崎知事は,平成29年8月6日の平和記念式典の中で,広島県としても国際平和拠点ひろしま構想に基づき,核兵器廃絶に向けて世界の知恵を集め,世界の指導者に被爆地訪問を呼びかけるなど,できる限りの行動をとってまいりますと,令和元年8月6日には,核兵器を廃絶し,将来世代の誰もが幸せで心豊かに暮らせるよう,我々責任ある現世代が行動していこうではありませんか,広島市としても被爆75年に向けて具体的行動を進めたいと思いますと挨拶されております。
被爆から70年以上が経過し,被爆者の高齢化が進む中,被爆の実相を伝えていくことが困難な時期に差しかかっています。被爆建物は,被爆の実相を伝える物言わぬ証人として重要な役割があり,失うと二度と取り戻すことができません。そういった意味で,旧陸軍被服支廠は,国や広島県の所有ではありますが,本市にとっても貴重な財産でもあります。
県においては,解体の先送りといった話も出ているようでありますが,調査では,震度6以上の地震で倒壊または崩壊する危険性が高いとされており,
地域住民としては早急な安全対策が喫緊の課題です。このことからも旧陸軍被服支廠の保存に関する議論について,県に任せっ放しではなく,市として積極的に,かつ強く関わっていく必要があると思います。
また,議論の際には,活用面で私からも提案があります。この旧陸軍被服支廠は,RC造り,鉄筋コンクリート造りが普及するきっかけとなった関東大震災の前に建てられたRCとれんがの併用という,それ以降にない特徴を持った建物であります。他都市に目を向けますと,北九州市では,明治時代のれんが構造物の建築物で国の登録有形文化財建造物である旧九州鉄道本社は現在は九州鉄道記念館として,旧サッポロビール工場事務所棟及び組合棟や北九州市旧大阪商船などは,資料の展示や飲食店などの観光施設として有効に活用されております。小樽市では,市の指定歴史的建造物である小樽倉庫は現在は小樽市総合博物館運河館として,旧共成株式会社は小樽オルゴール堂として,旧篠田倉庫は小樽運河レストランとして有効活用されています。他都市の一部の事例を申し上げましたが,歴史的建造物を保存し,有効活用している事例はたくさんあります。こうした事例を参考にしながら,旧陸軍被服支廠の保存策や活用策について,市として積極的に広島県の議論に関わり,共に検討していくべきだと思いますが,いかがでしょうか。お答えください。
次に,防災・減災費用保険についてお尋ねします。
広島県の各市町村は,今日まで何度も大きな災害に見舞われております。遡れば,大正15年9月の集中豪雨,昭和20年9月の枕崎台風,昭和26年10月のルース台風,昭和42年7月,昭和47年7月,昭和63年7月の
豪雨災害,そして私が当選させていただいた平成11年6月の集中豪雨では,最大時間雨量81ミリを記録し,行方不明者32名にも及ぶ大規模な災害となり,その被害総額は166億9330万円とも言われ,一瞬に多くの尊い命や貴重な財産が失われました。この6.29災害が契機となり,土砂災害防止法が制定されました。その後においても,台風による災害や
豪雨災害は頻発しております。こうした自然災害の発生そのものを防止することができれば,それにこしたことはありません。私たちにそれができない以上,被害を最小限にとどめ,その拡大を防止する事前の対策を講ずることが何より求められていると思います。