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  1. 宗像市議会 2019-12-20
    宗像市:令和元年第4回定例会(第6日) 議事日程 開催日:2019年12月20日


    取得元: 宗像市議会公式サイト
    最終取得日: 2021-08-31
    ▼最初のヒットへ(全 0 ヒット) ◎ 議 事 日 程(第6号)  日程第 1  第74号議案 機構改革に伴う関係条例の整備に関する条例について  日程第 2  第75号議案 宗像市一般職の職員の給与に関する条例及び宗像市一般職の任期付職員の                採用等に関する条例の一部を改正する条例について  日程第 3  第76号議案 市長等の給与及び旅費に関する条例及び宗像市議会の議員の議員報酬、費                用弁償等に関する条例の一部を改正する条例について  日程第 4  第77号議案 赤間小学校(第1、第2、第3)学童保育所指定管理者の指定について  日程第 5  第78号議案 宗像市一般住宅管理条例の一部を改正する条例について  日程第 6  第79号議案 漁業集落排水処理施設事業地方公営企業法適用に伴う関係条例の整備に                関する条例について  日程第 7  第80号議案 宗像市観光物産館指定管理者の指定について  日程第 8  第81号議案 宗像市漁港管理条例の一部を改正する条例について  日程第 9  第82号議案 令和元年度宗像一般会計補正予算(第2号)について  日程第 10 第83号議案 令和元年度宗像国民健康保険特別会計補正予算(第2号)について  日程第 11 第84号議案 令和元年度宗像後期高齢者医療特別会計補正予算(第2号)について  日程第 12 第85号議案 令和元年度宗像介護保険特別会計補正予算(第2号)について  日程第 13 第86号議案 令和元年度宗像渡船事業特別会計補正予算(第1号)について  日程第 14 第87号議案 令和元年度宗像漁業集落排水処理施設事業特別会計補正予算(第2号)                について  日程第 15 第88号議案 令和元年度宗像下水道事業会計補正予算(第2号)について
     日程第 16 所管事務調査報告について(総務常任委員会)  日程第 17 所管事務調査行政視察)報告について(社会常任委員会)  日程第 18 所管事務調査行政視察)報告について(建設産業常任委員会)                                      令和元年12月19日 宗像市議会  議長 花田 鷹人 様                                      総務常任委員会                                       委員長 森田 卓也                    所管事務調査報告書  本委員会は、下記のとおり所管事務調査を行ったので、報告します。                        記 【調査期間】  令和元年9月~令和元年12月 【調査事項】  妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援について 1 調査の背景、目的  急速な少子高齢化、全国的な人口減少の中、本市においても、順調に右肩上がりを続けてきた人口の伸 びは緩やかに勢いを失い、定住化等の施策による回復を期待するまでに至っている。本年10月には、国 の少子化対策である幼児教育・保育の無償化が始まるなど、子どもを産み、育てるための環境整備が急速 に進められ、市民の生活や意識にも変化が見え始めている。折しも本市では、令和2年度からスタートす る第2期宗像市子ども・子育て支援事業計画の策定に向けた作業が進められており、新しい時代にふさわ しい子ども・子育て支援施策を再構築する節目の年となっている。総務常任委員会では、所管する事務の 中から「子育て支援」を本市の重要施策と捉え、本年5月「住みよいまち」として全国的に評価の高い石 川県能美市を視察し、その恵まれた子育て環境を実感したことから、8月には本市の施策との比較を題材 にした勉強会や、地域で子どもを見守る主任児童委員との懇談会を開催するなど、継続した調査研究を行 ってきた。その過程で、子どもと子育てを取り巻く環境の変化と、子育て世帯が抱えるさまざまな問題や 個々のニーズにきめ細かく対応する視点において、「子育て世代に選ばれる都市」を目指す本市の子育て支 援施策には、さらなる充実が必要であるとの認識が高まったことから、委員総意のもと、所管事務調査を 実施するに至ったものである。本調査において得られた知見が、これからの本市の子育て支援の充実と、 子育て環境の向上、さらには本市の発展に寄与するものとなることを強く望むものである。 2 調査経過 (1)福岡県宗像児童相談所取り組みについて (2)宗像市子どもの未来応援計画について (3)本市の子ども家庭相談等の実態とその対応について (4)議会報告会での市民意見について (5)本市の子ども・子育ての現状と今後の事業計画について (6)太宰府市のファミリーサポートセンター事業について 3 調査で明らかになった主な事項 (1)福岡県宗像児童相談所との連携、子ども家庭相談等の現状と課題  宗像児童相談所は、中間市、宗像市、古賀市、福津市、宮若市、糟屋郡新宮町、遠賀郡4町、鞍手郡鞍 手町の5市6町を所管し、相談の対象となる18歳未満の人口は平成30年4月現在で約7万2千人。児童 福祉司、児童心理士が24時間体制で対応に当たっている。平成30年度の相談件数は全体で1,790件。 中でも本市は相談件数が最も多い地域である。本年1月、本市庁舎の隣接地に移転したことから、市内に 居住する相談者には、これまでよりも迅速な対応が可能となっている。  一方、本市では平成30年4月に子ども相談支援センターを創設し、子ども家庭相談室を中心とした子 どもの教育と福祉に関する相談において、窓口の一本化と連携の強化を図っている。特に児童虐待の通告 等に対しては、48時間以内に子どもの安全確認を行うなど、児童相談所と連携した迅速な対応が求めら れており、高い専門性とスキルを有した職員の尽力により、数多くの事案の発生や深刻化が未然に防がれ ている。子ども家庭相談室における相談件数は年々増加傾向にあり、平成30年度の延べ件数は、子ども 家庭相談員8,669件(うち児童虐待に関するもの2,339件)、スクールソーシャルワーカー1,491件 である。この状況を見るに、現在の限られた人員体制で、児童虐待通告等緊急事案を含む全ての事案に 対し、常時最善の対応が可能であるか、行政として慎重な検討と判断が求められている。また、平成30年 3月に策定した宗像市子どもの未来応援計画では、実態調査等の分析から本市の子どもと子どもを取り巻 く環境の課題として、経済的に厳しいため「普通」とされる生活を享受することができない子どもが存在 し、またひとり親世帯の中に子どもの学習環境生活環境等に関する課題を抱えた家庭が比較的多く存在 することが確認されている。このほかにも、不登校の問題等への早期対応も求められており、保健・医療・ 福祉・教育などの専門機関が連携し、子どもを取り巻く環境の改善に継続して関わる必要があることから、 これらの支援をつなぐ鍵となるスクールソーシャルワーカーの配置については、さらなる拡充が必要とな っている。 (2)妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援の現状と課題  母子保健事業では、母子手帳の交付時に保健師や助産師が対面し、妊婦の抱える不安や問題に寄り添う ことから始まり、産後の訪問や主任児童委員による見守りなど、あらゆる機会を活用した切れ目のない相 談体制が整備されており、この点では、担当職員主任児童委員等のたゆまぬ努力を高く評価するもので ある。しかし、5月の行政視察を含む本調査において、本市の子育て支援施策を他市と比較した結果、次 のことが明らかになった。石川県能美市では、産後の体調不良や育児不安のある妊産婦、家族の支援が受 けられない子育て世帯に対する具体的支援として、産後ケア事業、産前産後子育て応援ヘルパー派遣事業子育て応援弁当などのメニューが用意され、その実績からも、市民がこれらの支援を積極的に利用してい ることがうかがえる。一方、同様の事業で本市が唯一導入している産後ケア事業の実績は、平成30年度 の利用が0件である。産後ケア事業は、産後のうつ等を予防する取り組みとして福岡県でも導入する自治 体が増えている。詳細に見ると、県内では申請期間が産後4カ月、支援内容は宿泊とデイケアの選択が一 般的であるのに対し、本市は申請期間が産後20日間と短く、支援内容も宿泊のみである。参考までに能 美市では、申請期間が産後12カ月と長く、宿泊、デイケアに加えアウトリーチも整備され、最も利用が 多いデイケアの平成30年度利用件数は77件。宿泊、アウトリーチを加えると105件になる。能美市 の人口は約5万人であり、利用件数の差は単に地域性の違いとは言い難く、積極的な利用を前提に、利用 者の利便性が十分に考慮された制度設計がされているかという、子育て支援に対する姿勢の違いであると も考えられる。 (3)子ども・子育ての現状と課題、議会報告会での市民意見について  第2期宗像市子ども・子育て支援事業計画の策定に当たり平成30年度に実施した就学前の子ども、小 学生を持つ保護者を対象とするアンケート調査の結果から、平成25年時と比較し、育児休業制度の利用 が進むなど保護者の就労意向が増加していること、就学後は子どもの年齢が上がるにつれて専業主婦の割 合が減少し、特にパート・アルバイトの割合が増加していること、幼児教育・保育の無償化後は、定期的 保育の利用意向がさらに増えることが明らかになった。これに対し、本市における就学前の子育て環境の 満足度において「仕事と育児を両立しやすい環境」では、「満足」と「やや満足」を合わせた割合は26.9% と、他の施策の満足度と比べて低く、「子育てをする上で周囲からどのようなサポートがあればよいか」と いう問いでは、一時保育や一時預かりを要望する意見が最も多いことが分かった。これは議会報告会にお いて、女性が子育てしながら働くための環境整備や、子育てが終わった世代の人材を活用した地域での子 育て支援について意見や提案があったことと一致した結果であることが確認できた。なお、就学前の保護 者アンケートでは「宗像市で今後も子どもを育てたいと思うか」という問いに91.5%が「思う」と答え ているのに対し、本市の子育て支援に対する総合的な満足度は51.9%であった。この意識の差について
    は、その原因が何であるか、市としてさらに踏み込んだ調査が必要であり、この差を少しでも埋めていく ことが、今、本市の施策に求められているのではないかと考える。第2期宗像市子ども・子育て支援事業 計画の策定及び実施に当たっては、仕事と育児を両立しやすい環境整備を中心に、子育て世帯のニーズに 応じた事業の充実を図り、施策に対する満足度をさらに引き上げることが喫緊の課題となっている。 (4)太宰府市のファミリーサポートセンター事業について  太宰府市では、地域における子育ての相互援助活動の支援として平成17年からファミリーサポートセンター事業を実施している。平成31年3月末現在の会員数は782人。託児を専門とするNPOがア ドバイザー業務を受託し「お願い会員」と「お助け会員」の間を取り持つことで、安定した事業運営が行 われている。支援の利用者は、共働き家庭や親族等の支援を受けられない家庭が多く、一方、支援の提供 者は、11項目延べ24時間の研修義務があることや退職年齢の高齢化などから登録が増えないことが課 題となっている。また、幼児教育・保育の無償化によるニーズの変化への対応や、安全・安心な事業運営 の強化等が求められている。 4 提言  全5回の調査を行い、妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援というテーマにおいては、第1期宗像市子 ども・子育て支援事業計画の5年間で確立した切れ目のない相談体制に加え、仕事と子育ての両立等に必 要な子どもの一時預かりなどのより細かい個々のニーズや、相対的貧困などの各家庭が抱える個別の問題 等に対する支援の在り方を強化する必要があるとの見解に至った。総務常任委員会ではこの課題に対し、 市民のニーズと利便性を追求した事業運営と、本市が有するあらゆる資源を有機的につなぎ、支援の体制 を再構築することで、子どもの健全な育ちと子育て環境の充実を図ることが可能であるとの認識に立ち、 第2期宗像市子ども・子育て支援事業計画において推進するべき施策や支援体制について、以下のとおり 提言する。 (1)持続可能な子育て環境の構築  少子高齢化が進み、人口が減少する時代にあっても、安定した生活基盤経済基盤のもとに子どもを産 み、育てることができる社会であるためには、一人一人の仕事と生活の調和の実現に向け、地域社会全体 で取り組む、持続可能な子育て環境の整備が喫緊の課題である。地域が子育て世帯に関心をもち、子育て を地域で支え、子どもの成長を地域全体で喜び合える社会、そしてそのつながりが、次の世代へと受け継 がれていく社会を理想とし、以下について求める。  1)地域で子ども・子育てを見守る体制づくり   すでに一部の地域では「地域の子どもは、地域で育てる」という意識のもと、学習支援などの具体的  な取り組みが始まっている。子育て世帯の多様化するニーズや子どもの貧困等の課題には、公的支援で  は対応に限界があり、地域の豊かな人的資源を活用した柔軟で多様な取り組みが期待される。地域と子  育てをつなぐ施策を推進し、地域の取り組みを行政がバックアップすることで、相互に助けあう関係性  や、今の時代に適した地域の新しい多世代交流が生まれ、共生によるまちづくりへと発展することを期  待する。  2)虐待被害を生まない社会の創造   本市でも虐待に関する相談は増加傾向にあり、親の養育力の低下等に対し、体罰によらない子育ての  推進等の対策が急務となっている。児童虐待等の事案に日々直面している現場の職員たちは、起きてし  まった事案に対応する多忙な日々の中、虐待被害を生まない社会に一歩でも近づくためには何ができる  かという問いに対し、真摯に向き合おうとしている。現場の職員たちが十分に議論し行動を起こせるよ  う人員体制の強化等の施策を要望する。  3)定住促進に向けた施策と連動した子育て支援の拡充   平成30年度は、若い世代を対象とした家賃補助等に505件の利用があり、728人が転入してい  る。今後も定住化施策の強化等により継続した人口の流入が予想されるのであれば、第2期宗像市子ど  も・子育て支援事業計画における教育・保育事業等の量の見込みと確保は、定住化施策による子育て世  帯の増加を考慮した適切な見込みと確実な確保策を講じなければならない。待機児童入所待ち児童へ  の対応は当然のことながら、血縁や地縁もなく本市に移り住んだ世帯の子育てに対する新たな支援策も  必要となる。本市を選んで移り住んだ家族の期待を裏切らないよう、子育て世代に選ばれる都市にふさ  わしい支援体制の整備を求める。  4)仕事と育児を両立するための環境整備と充実   少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少が進む中、仕事と育児の両立が可能な環境を整備し、働く意欲  のある子育て世代の女性の就労を促進することは、持続可能な地域社会を実現する上での課題である。  本市でも、仕事と育児を両立しやすい環境整備に対する市民の期待は大きく、その基盤ともいえる幼児  教育・保育の量の確保と質の向上は、本市の子育て環境の満足度を高めるための必須条件であると考え  る。安定した質の高い保育サービスの提供により女性の就業率の向上を図ることで、生活基盤の安定や  経済の発展、さらには良好な生活環境を背景とした出生率の上昇も期待される。将来にわたってまちの  活力を生み出す循環の起点として、仕事と育児を両立するための環境整備とその充実を求める。 (2)誰一人取り残さない支援体制の確立  第1期子ども・子育て支援事業計画の5年間では達成できなかった子育て環境の充実を全うするために は、子育てにおいて誰一人取り残さない支援体制の確立を目指さなければならない。核家族化ひとり親 の増加、地域のつながり希薄化等により、家族や地域の支援が低下する中、育児に不安があっても相談 する相手がいない、困ったことがあっても助けを求める相手がいないなど、不安と孤独の中でストレスを 抱え、疲弊しても休むことが許されない、現代社会の子育ての過酷さは「ワンオペ育児」などの造語にも 表れている。また、相対的貧困と呼ばれる格差により、食べることや寝ること、学習することなど、「普通」 とされる生活を享受することができない子どもの存在から目を背けてはならない。一人一人が個人として 尊重され、夢や希望のある生き方が可能となるよう、以下のことを求める。  1)妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援の充実   本市の子育て支援は、切れ目のない相談、見守りの体制を整備する施策に重点が置かれ、他自治体と  比較すると、子育て世帯の多様なニーズに対応するための支援体制の整備には消極的であり、子育て環  境の満足度が伸び悩む一因となっている。きめ細かい相談から満足度の高い支援へとつなぐ体制の整備  を求める。  2)ひとり親世帯、問題を抱える世帯への支援の明確化   宗像市子どもの未来応援計画で明らかになった相対的貧困等の課題については、第2期宗像市子ど  も・子育て支援事業計画でも引き続き解消に取り組む必要がある。計画の推進に当たっては、子どもの  貧困の背景にさまざまな要因があることを踏まえ、それぞれの事業において格差の解消に向けた支援の  目的を明確にし、適正な進行管理、効果の検証等により着実な課題解決に努めることを求める。  3)転入者へ配慮した子育て支援施策の拡充   定住化等の施策により新たに市民となる子育て世帯に対しては、孤立を防ぎ、子育てを積極的に支援  する施策が必要となる。支援の対象として相談しやすい関係性を築くとともに、身近な親族等の支援が  得られない子育て世帯が気軽に利用できる支援の整備を求める。 (3)子育て支援として今後推進すべき事業  前述の、持続可能な子育て環境の構築、誰一人取り残さない支援体制の確立を実現するため、以下の事 業や取り組みについて積極的な推進を求める。  1)ファミリーサポートセンター事業調査研究   本事業は、一時預かりや送迎、家事支援など、子育て世帯の多様なニーズへの柔軟な対応と、本市の  豊かな人材の有効な活用を促す効果が期待できる。事業を通じて、子育て世帯地域住民が知り合い、  支え合う関係性を築くことができれば、子育ての孤立を防ぎ、将来的には支えられる側だったものが支  える側になるなど、持続的な世代間交流への発展も期待される。すでに多くの自治体が導入し、活動形  態や支援の内容もさまざまである。本市における詳細なニーズの把握と、安全で安心な事業運営や本市  に適した利便性の高い仕組みづくり等について調査研究を求める。  2)放課後子ども総合プラン事業に取り組む地域の拡大と充実   一部地域では、寺子屋事業など、地域の大人たちによる地域の子どもの育成が行われている。地域と  子どもが結びつくことで、その保護者との関係も生まれ、子どもを中心とした世代を超えた地域の交流  へと広がりを見せている。地域によっては遊びの要素を加えたり、食事付きで開催するなどの工夫によ  り、貧困世帯の子どもにも質の高い学習の機会と温かい食事等の団らんを提供する取り組みとなってい  る。また、地域のさまざまな人々との出会いは、将来に夢と希望を持つきっかけとなることも期待され
     る。これらの取り組みの成功例を他の地域とも共有し、新たな地域で新たな取り組みが生まれ、やがて  は子育て支援を基盤とした地域のまちづくりへと発展することを期待する。  3)県と連携した里親制度の理解の促進   里親制度は、児童福祉法に基づき里親として登録されたものに、家族と離れて暮らす子どもの養育を  県が委託するものである。児童相談所では一時保護施設の定員を超える子どもを保護し、児童養護施設  等に保護を委託することもあるという。一時保護を余儀なくされた子どもの生活の安定を確保するため  に、本市でも啓発の機会を設けるなど、里親制度について市民の理解と協力を得るための取り組みが必  要ではないか。温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境のもとでの養育を提供する本制度の推進は、  虐待被害のない社会の創造への第一歩にもつながるものであると考える。  4)産後ケア事業の制度の充実   県内他市に先駆けて導入したが、利用が少ない状況にある。積極的な利用を前提に、申請期間の延長  やデイケアの導入など、利用者の利便性の向上や選択の幅を広げる工夫などの検討を行い、支援の対象  となるものが気軽に利用したいと思える事業となるよう改善を求める。  5)産前産後や問題を抱える家庭への生活支援ヘルパー派遣事業の創設   事実上、家族等の支援が得られず、ひとりで子育てを行っている世帯において、産前産後の体調不良  や病気療養などの理由により、一時的に子どもの養育の支援が必要となることは容易に起こり得る。ひ  とり親世帯を対象とした同様の事業は一般的に整備されており、さまざまな理由で支援を必要とする子  育て世帯が利用する制度として、導入の検討を求める。 (4)子育て支援施策を推進するための体制強化  支援を必要とするものに必要な支援を適切につなぐことで、限りある資源を有効に活用し、福祉の向上 と、子育て環境の充実を図ることを目的とし、以下の体制強化を求める。  1)社会福祉士スクールソーシャルワーカー等の拡充による、支援をコーディネートする力の強化、事   業連携や組織間連携の強化   社会福祉士は、問題を抱える子どもの環境改善に必要な事業や組織の連携を図るコーディネーターと  して重要な役割を果たしている。中でもスクールソーシャルワーカーは福祉と教育をつなぐ調整役とし  て、これまでも人員の拡充を図ってきたが、2人の職員が全学校区を所管する現状では、週に全ての学  校を巡回するまでに至っていない。不登校などの問題に対し十分な支援を行うためには、中学校区ごと  に専任のスクールソーシャルワーカーの配置が必要であると考える。早急な対応として、少なくとも週  1回は全ての学校で支援の対象となる子どもの見守り、教員との情報交換等が行われるよう人員体制の  強化を求める。  2)保健師、助産師、社会福祉士等専門職員による早期介入アウトリーチの拡充   子育てのあらゆる機会において、保健師、助産師等専門的知識を有する職員が相談者に寄り添い、  場合によってはアウトリーチにより安全を確認するなど、早い段階での介入を基本とした相談体制が整  備されたことは心強いことである。定住化施策等により、支援が必要な子育て世帯の増加も予想される  ことから、子育てに不安や問題を抱える相談者には、一人一人に対し十分な時間が確保できるよう適正  な人員配置を求める。また、不登校の問題に対しても、家庭訪問相談指導員等によるアウトリーチの充  実により、不登校兆候の段階から早期介入が可能となるよう支援体制の強化を求める。  3)幼児教育・保育に係る総合的施策の推進を可能とする組織・人員体制の強化   幼児教育・保育の無償化以降、保育の利用意向に伸びが見られるなど、幼児教育保育事業の充実に  対する市民の期待はますます大きくなるものと考える。これに対し、保育士の確保策等の強化による一  時保育を含む保育の全般的な受け皿の整備や、保育コンシェルジュ等を活用した多様な働き方に対する  適切な保育の提案、保育サービスの利用者の期待や不安に寄り添い、解決を図る相談体制の充実、定期  的な巡回訪問等による教育・保育施設の健全運営の支援、幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続を推  進する保幼小連携の推進など、幼児教育保育事業の充実を図るための総合的な施策の推進を可能とす  る組織、人員体制の整備を求める。  4)SNSを活用した即時性、信頼性、共感性の高い情報発信の検討   若い子育て世代に最も身近な情報入手手段は、スマートフォン等を利用したインターネット検索やS  NSによる情報共有である。このSNSを活用し、窓口の相談と同様にきめ細かい支援が可能となれば、  外出が難しい妊産婦や、人との関わりが困難な要支援者であっても、不安を解消し孤立を防ぐことがで  きると考える。さらに双方向性のあるツールを活用すれば、支援の緊急性なども予測でき、アウトリー  チにより適切な支援につなぐことも可能ではないか。また、仕事と子育ての両立のために必要な情報は、  職場復帰や就労を希望するものにとって、働き方や生活設計に大きく影響するものであり関心も高い。  情報の不足は不安や不満の原因となり、反対に信頼性の高い情報が容易に手に入る環境では安心感が高  まり、就労への意欲にもつながると期待される。本市の子育て支援に適した新しい情報発信の在り方の  検討と体制整備を求める。                                      令和元年12月19日 宗像市議会  議長 花田 鷹人 様                                      社会常任委員会                                       委員長 岡本 陽子                 所管事務調査行政視察)報告書  本委員会は、下記のとおり行政視察しましたので、報告します。                        記 1 期 日   令和元年10月15日~10月17日(3日間) 2 視察地及び調査事項 (1)東京都練馬区(10月15日)   ・地域包括ケアシステムについて (2)静岡県富士市(10月16日)   ・ユニバーサル就労について (3)静岡県富士山世界遺産センター(10月17日)   ・世界遺産センターについて 3 調査内容   概要は以下のとおり。資料は議会事務局に保管。 ◆東京都練馬区(人口73万5千人、面積48.08km2[H31.4.1現在]) 【市の概要】  東京都23区の北西部に位置する。武蔵野台地に属しており、起伏の少ないなだらかな地形である。東 京市が35区制になった昭和7年に練馬地区を含む板橋区が成立したが、昭和22年8月に板橋区から独 立し23番目の特別区となった。都心へのアクセスも良好で、交通の利便性の高さと緑豊かな環境が両立 する住宅都市として発展している。  平成31年度(令和元年度)一般会計予算:2,712億8,885万円 【調査事項】 〔地域包括ケアシステムについて〕 1 現状と課題  ・練馬区には1,000を超える介護事業所があり介護サービスが充実している。また、地域活動も活発   で、さまざまな団体やボランティアが高齢者を支える活動を展開している。
     ・練馬区の課題は介護人材の確保・育成。さまざまな事業を展開するとともに練馬介護人材育成・研修   センターを設置し、関係機関とも連携して課題解決に取り組んでいる。 2 介護人材の育成・確保・定着支援の充実 (1)育成  ・出張型研修・インストラクター養成研修の実施(練馬介護人材育成・研修センターと連携)  ・外国人介護職員に対し日本語や文化・風習に関する研修を実施(同センターと連携)  ・介護職員初任者・実務者研修受講料、介護福祉士取得費用助成(区内での一定期間就労が条件)  ・ケアマネジャー資格更新研修助成(資格更新研修受講料を助成)  ・ケアマネジメント体制強化事業(スキルアップ研修の実施) (2)確保  ・区独自の介護サービス従事者研修(研修を修了すれば区内でのみ有効な資格を取得可能)  ・求人・採用活動等支援業務(ハローワークと連携、区内介護事業所の求人活動支援セミナーを開催)  ・元気高齢者による介護施設業務補助事業(シルバー人材センターと連携) (3)定着支援  ・ICT機器等の導入支援(記録業務の効率化や情報共有を図るICT機器等の導入費用を助成)  ・ハラスメント相談窓口の整備(24時間365日の相談窓口機能を拡充し相談支援体制を整備)  ・キャリアパス作成・運用支援(公益財団法人介護労働安定センターと連携) 3 練馬介護人材育成・研修センター (1)練馬区社会福祉事業団が運営。区内事業所1,137カ所のうち878カ所が登録。 (2)主な事業  ・人材育成・定着(区内介護サービス事業所で働く職員を対象に研修を実施。23区で唯一、無料)  ・人材確保(ハローワークと連携して区内介護サービス事業者との就職相談・面接会を開催)  ・相談支援(外部専門機関による電話相談、対面カウンセリングなどを実施) 4 介護予防と高齢者の社会参加の推進 (1)はつらつシニアクラブ  ・区が実施主体。体力測定会を実施し、測定結果の個別説明・アドバイスや地域団体の紹介等を実施。 (2)食のほっとサロン  ・NPOなどの地域団体が行う住民主体の通所サービス。  ・区は実施団体に補助金を支給。利用者は食事代相当を実費負担。現在は13団体が実施。 (3)街かどケアカフェ  ・高齢者が気軽に集い、介護予防や健康について学習・相談できる地域の拠点。  ・区分は区立施設型、連携協定型、出張型の3種類。区立施設型と連携協定型を合わせた数は、平成   28年度の1カ所から今年度は23カ所と大幅に増加。 5 ひとり暮らし高齢者を支える取り組み (1)ひとり暮らし高齢者等訪問支援事業(平成30年度開始)  ・区内25カ所の地域包括支援センターの訪問支援員が、ひとり暮らし高齢者・高齢者のみ世帯の自宅   を訪問し、生活実態や心身の状態を把握し必要な支援につなげる。  ・30年度事業実績は、訪問実人数13,279人、うち介護保険サービスに1,367人、区の福祉サ   ービスに1,223人、地域の見守りに432人つなげた。 (2)練馬区高齢者見守りネットワーク事業  ・電気、水道事業団体など36団体(令和元年9月末現在)と高齢者見守りネットワーク事業協定を締   結。地域で事業を行う民間事業者等の協力を得ることで、見守りの層を拡充・強化。 (3)高齢者在宅生活あんしん事業  ・緊急通報システム等の見守り事業や配食サービス、緊急時の駆けつけサービスを一体的に提供。 6 N-impro(ニンプロ) (1)N-improとは  ・コンビニ店長や店員の立場で認知症の方への対応を考えるカードゲーム形式の研修プログラム。  ・地域包括支援センターが介護事業者等と連携し、研修会や体験会、認知症相談会等で活用。 (2)N-improの3つのねらい  ・認知症についての知識や対応方法を“学ぶ”  ・ゲームを通して地域の支援者や関係機関と“つながる”  ・高齢者が置かれるさまざまな状況への対応や違う立場を想定して対応を“考える” (3)N-impro活用の効果  ・地域包括支援センターとコンビニ等との接点ができ、地域で顔の見える関係づくりができる。  ・認知症サポーター養成講座や訪問支援協力員(区の見守りボランティア)などの連絡会で実施するこ   とで、認知症理解の啓発や活動の参考となる。 【所 感】 ・確実に高齢者が増えていくことが予測される中、介護予防は重要な取り組みである。地域包括ケアシス  テムについては地域で高齢者を支援する負担感を訴える声を聞くことも多いが、練馬区での元気な高齢  者による住民主体の取り組みなどを見ると、それが生きがいになると同時に介護予防にもつながってお  り、非常に効果的だと実感できた。住民主体の支援の強化に必死で取り組んでいる本市においても参考  になると感じた。 ・介護人材の確保については、研修や資格取得費用助成、相談窓口の拡充など介護現場の課題を補うよう  な予算編成がなされていた。行政が現場の実情を十分に把握し、ニーズに合った課題解決に取り組もう  としている姿勢を感じた。 ・地域性や区民の特性などを生かした地域包括ケアシステムを構築できているのは、行政と地域の連携が  密であることと、高齢化に対する住民の意識醸成という2つの要素が整っているためだと感じた。 ・練馬区は介護人材に関する施策が充実していると感じた。区内介護事業所の求人支援や介護スタッフ研  修最終日に開催される就職相談会など、資格取得から就職へ切れ目のない支援が行われており、積極的  に事業の充実を図っていたことに感銘を受けた。 ・はつらつシニアクラブや街かどケアカフェ、N-improなど、介護や認知症の予防、社会の認知症理  解に向けてさまざまな取り組みを行っており参考になるものばかりであった。今後の本市の施策につな  げていきたい。 ・高齢者見守りネットワーク事業では、電気や水道事業者、金融機関に加えてコンビニなどとも協定を締  結している点は興味深い。本市でも可能ではないか。 ・短期間の研修を修了すれば区内で有効な資格が取得でき、短時間でも働ける体制を整えている。これま  でに530人以上が受講していることはスタッフの層の厚さを示している。ただ、介護スタッフと利用  者が顔見知りの場合もあり、利用しにくいという声もあるようだ。本市でも同じような状況があると聞  く。 ・街かどケアカフェの出張型として、今年度からはコンビニのイートインスペースや薬局の待合室などで  も事業が実施されており、より高齢者が気軽に立ち寄れる工夫をしているところは本市でも参考になる  と感じた。 ・練馬区では住民主体の通所型サービスが非常に充実したものとなっているようだ。その要因は行政効率  の差であろう。宗像市の約40%の面積の所に宗像市の約7倍の人口が居住する東京都練馬区は極めて  行政効率が良いと思われる。財政規模についても練馬区は宗像市の約11倍(一般会計ベース)である  ので財政的にも余裕がある。さらには人的資源も豊富である。本市に練馬区のような住民主体による活  動を求めることは簡単なことではないと感じた。 ・練馬区はベッドタウンであり、都会らしさと地域のつながりが両立しているとのこと。介護予防に力を  入れており、要介護率が低いのはそういうまちの特徴の影響があるのかと感じた。高齢者が気軽に通え  る場をつくることで介護予防のきっかけにすることや、元気な高齢者に活動意欲をもって高齢者を支え  る側の人材になってもらう取り組みなどは、本市でも見習うべき点だと感じた。 ・人材確保の課題に対して研修や資格助成、ICT活用などで対応している。今年度から新規事業として  外国人介護職員向けの研修も実施しており、まだ成果は出ていないが先行事例として注目したい。 ・住み慣れた地域で暮らし続けるために、人材の確保・育成に行政が力を入れていく必要性を感じた。介
     護従事者は不足しており、2025年にはさらに不足するといわれているので、練馬区のような資格取  得助成やスキルアップしやすい仕組みなどを参考に本市でも考えていく必要があると感じた。 ・歩いて行ける場所で、参加したくなる魅力的な取り組みを行うことで社会参加が進む。それが介護予防  につながり、元気な高齢者が健康で暮らし続けられる。本市でも地域に積極的に働きかけ、そういう拠  点をつくらなければならないと思った。また、認知症サポーター養成講座だけではなくN-improな  どの研修も導入して認知症を知るきっかけをつくるなどさまざまな方法で啓発を行い、地域全体で高齢  者を見守り支え合うまちづくりが必要だと感じた。 ◆静岡県富士市(人口25万3千人、面積244.95km2[H31.4.1現在]) 【市の概要】  静岡県の東部に位置する。昭和41年11月、当時の吉原市、富士市、鷹岡町の2市1町が合併し、人 口16万5千人の市となった。平成20年に富士川町を編入し、現在の市域を形成。東名・新東名高速道 路や東海道新幹線、田子の浦港などをもつ交通の要衝であり、近代製紙産業が集積する「紙のまち」とし て発展してきた。  平成31年度(令和元年度)一般会計予算:936億円 【調査事項】 〔ユニバーサル就労について〕 1 富士市ユニバーサル就労推進条例について (1)条例制定までの経緯  平成26年11月 「ユニバーサル就労を広げる親の会」が19,386筆の署名を添えて、市長へユニ           バーサル就労に積極的な企業の誘致及び支援を求める要望書を提出。    27年 2月 富士市議会ユニバーサル就労推進議員連盟を設立。議員36人のうち、会派を越え           て33人が参加。        6月 議会改選後、議員32人のうち30人で富士市議会ユニバーサル就労推進議員連盟           を設立。市内外の企業、就労支援施設、関係行政機関などの現状調査を行う。    28年 4月 議連総会で「ユニバーサル就労推進条例制定」と「モデル事業提案」を28年度の           活動の柱とすることを決定し、それぞれのチームに分かれて検討を進める。行政側           は「ユニバーサル就労促進検討委員会」を設置。議連と意見交換などを行う。       11月 議会で「ユニバーサル就労の推進に関する条例検討委員会」(特別委員会)設置。           全会派から委員に就任。    29年 2月 「富士市ユニバーサル就労の推進に関する条例」が全会一致で成立。 (2)3つの「初めて」  ・「全国初」のユニバーサル就労推進条例  ・「富士市議会初」の政策的な議員提案条例  ・「富士市初」の議会と行政が協働して取り組んだ条例・事業検討 2 富士市ユニバーサル就労推進事業について (1)対象  ・「働きたいのに、働きづらさを抱えている全ての富士市民」  ・既存の就労支援事業では年齢や障害者手帳の有無など対象者が限定されていたが、そういった条件に   は合わず既存事業を利用できない人も含め、働きづらさを抱えている全ての市民が対象。 (2)ユニバーサル就労の就労支援  ・ユニバーサル就労の就労支援とは、ユニバーサル就労支援センターを含む、富士市で就労支援を行っ   ている全ての窓口(事業所)の就労支援のこと。  ・ユニバーサル就労相談窓口(市生活支援課、くらし・しごと相談窓口(社会福祉協議会))で相談を受   け、相談者に合った適切な窓口(事業所)を案内。  ・既存の就労支援事業に加え、既存事業では対象外となってしまう人を支援するための新しい就労支援   としてユニバーサル就労支援センターを開設。  ・条例制定前は、それぞれの就労支援機関がそれぞれ活動しており連携できていなかったが、条例制定   後はユニバーサル就労という概念ができたことにより各支援機関の横のつながりができた。 (3)富士市ユニバーサル就労広報室  1)ユニバーサル就労サポーターの募集  ・全ての市民にユニバーサル就労を理解してもらうことを目的として、サポーターを募集。  ・市広報紙の配布は自治会加入が条件であることが多いが、自治会などに加入していない人にこそ情報   を届けたいので、口コミなどで情報を広げてもらう狙いがある。  ・サポーター登録数は424人(平成31年3月末現在)。  2)4半期に1回、ユニバーサル就労情報紙「はたらくきずな」を発行。  3)その他、市民向け啓発チラシの全戸配布、プロモーション動画公開、研修会や講演会の実施など。 3 富士市ユニバーサル就労支援センターについて (1)業務内容  ・株式会社東海道シグマに委託。  ・誰もが働きがい、生きがいを感じて過ごせる地域づくりを目指して、一人一人に合わせたオーダーメ   イドの支援、協力企業の開拓、業務分解の推進、企業がユニバーサル就労に取り組むための支援など、   利用者支援と企業支援を事業の両輪として取り組んでいる。 (2)利用者支援  ・就労準備→就労体験→無償コミューター→有償コミューター→就労の5段階を設定。  ・できること・できないことを確認し、実際の現場でステップアップをしながら就労が定着するよう支   援する。必ずしも順番どおりではなく、利用者に合わせて対応。  ・「何時間働けるか分からない」「職場環境に馴染めるだろうか」などの不安を解消するため、有償・無   償コミューターの段階を設定。雇用契約は交わさず、コミューター確認書、個別支援計画書に基づき   3日~1週間程度、実際に職場に通い就労を経験する。  ・就労後もセンター支援員が企業・利用者双方と定期的に連絡をとり、双方の合意をもって支援終結。 (3)企業支援  ・企業の理解を得るためセンター支援員が経営層・管理職や現場スタッフなどに事業の説明を行う。  ・多種多様な利用者と企業をマッチングするため、業務分解(社員の業務内容を「PC入力作業」「人と   接する仕事」などに分類すること)を依頼。就労支援利用者にもできる業務をまとめることで、利用   者には仕事を、社員には新たな業務が可能な時間を作り出す。  ・企業からは、改めて業務を把握するきっかけになった、今までの選考方法では見逃していたような人   材に出会うことができたなどの声があり、社会貢献、業務改善・作業効率化、人材不足改善、社員の   意識改革につながっている。 (4)実績(令和元年9月30日現在)  ・企業支援 企業説明会参加企業数208社、業務分解実施企業数10社、認定協力企業数122社  ・利用者支援 利用申込者数131人、就労決定者数70人 【所 感】 ・富士市議会ユニバーサル就労推進議員連盟や特別委員会を設置し、議員提案により日本で初めての「富  士市ユニバーサル就労の推進に関する条例」を制定している。「会派を越えて議会がまとまった場合の強  さを実感」「やるんだったら会派を越えた議論を」という、当時の議連会長であった小池議員の説明が印  象に残った。政策を実現するための議会の在り方を示唆する内容であった。この条例が、市民、議会、  行政が目的を一つにしてつくり上げたということに大きな価値があると感じる。 ・ユニバーサル就労の対象者はさまざまな事情を抱えている。それぞれの背景や個性を“働けない”と周  囲が勝手に判断しないよう、ユニバーサル就労に理解を示し、緻密に熱心にかかわってくれる企業の役  割は大きいと考える。 ・本市でも「どこに相談に行けばよいかわからない」という声がある。そういう人の実態把握が必要であ  り、支援体制を整えるために、就労を目的とした、議会、行政、市民、企業連携の在り方、就労に関係  する部署の連携などを検討する時期に来ていると感じる。人口規模や企業の数などの違いがあるものの、  ユニバーサル就労の考え方を取り入れることで、本市の働きづらさを感じている市民の支援につなげて
     いきたい。 ・「ユニバーサル就労を広げる親の会」の要望を議会が受け止め、議会から行動したことで条例の制定につ  ながったことや、議会がまとまった場合の強さに非常に興味を惹かれた。 ・ユニバーサル就労の就労支援には、一人一人に合わせた支援や細やかに対応できる体制が必要であり、  不安を抱えている市民に寄り添い、手厚くかかわっていくことが重要だと感じた。 ・企業側に受け入れ体制を構築してもらうことで、社会貢献はもとより業務の改善・作業の効率化、社員  の意識改善につながるなど多くのメリットを生み「Win-Win」の関係になってきているのは事業  の成功を物語っていると感じた。 ・学ぶべきは、さまざまな苦労を乗り越えて議員提案による条例を成立させたことである。条例の内容は  理念的なものだが、行政と議会が目的を一つにして取り組みを進めていることに感銘を受けた。 ・引きこもりの人や障がいを持つ人の就労には一定の困難があり、受け入れ側の理解が大切との説明は納  得できた。この条例とその実践を通じて、富士市民の人間的な優しさを感じた。 ・富士市が全国で初めてユニバーサル就労に取り組んだことには意義があると思う。市議会と市が協力し  てユニバーサル就労の推進に取り組む姿を知り大変感動した。関わった人々の情熱がこの事業の成功を  生んでいる大きな要因だと感じた。稀に見る成功事例の一つだと思う。本市も富士市のように早くユニ  バーサル就労に取り組んでいかなければならないと感じた。 ・働きたくても働けない人全てを対象にすることで、相談窓口へ行くハードルは下がる。相談者の特性を  見つけて企業にオファーするのは多大な労力や時間がかかると思われる。まさにオーダーメイドの作業  であり、担当者のスキルが重要になると感じた。 ・人は社会参加をし、その中で自分の存在を確認し、生きがいを感じて生きている。しかし、ひきこもり  状態にある人が110万人いるといわれているこの時代に、働きたくても働くことができない全ての市  民を対象とする就労支援は必要だと強く感じた。 ・業務分解という手法には感心した。就労支援利用者のために新たな仕事を生み出すのは容易なことでは  ない。しかも、民間企業ともなれば利益を生まなければ成り立たない。しかし、業務分解は元々ある仕  事を分解し仕分けることで仕事の効率を上げるというもので、素晴らしいと思う。就労支援利用者にと  っても現場の体験ができることは大切なことだと思う。また、窓口の一本化も重要である。本市でも当  事者に寄り添った取り組みができるような体制を整える必要があると感じた。 ◆静岡県富士山世界遺産センター 【施設の概要】  平成25年6月にユネスコ世界文化遺産に登録された「富士山‐信仰の対象と芸術の源泉」を後世に守 り伝えていくための拠点施設として、平成29年12月23日に静岡県富士宮市に開館。地上5階建、最 高高さ18.56m、敷地面積約7,000m2、延床面積約3,410m2。設計は坂茂氏。 【調査事項】 〔世界遺産センターについて〕 1 センターについて (1)組織・施設概要  ・世界遺産の根拠となる世界遺産条約(国際条約)に規定されている、世界遺産を「保護し、保存し、   整備し及び将来の世代へ伝えることを確保する」拠点施設であり、学術調査機能などを併せ持つ。  ・館長(非常勤)、参与(非常勤)、副館長兼学芸課長、企画総務課長兼教育普及班長の下、企画総務班   と教育普及班を設置。大学教授、准教授、研究員を加え、非常勤を含む17人で組織を構成。  ・総事業費約40億6千万円(うち建築費30億5千万円)。全額を静岡県が負担。 (2)センターの役割とコンセプト  1)役割  ・富士山に係る包括的な保存管理の拠点であるとともに、富士山の自然、歴史、文化に加え周辺観光等   の情報提供を行うなど、訪れる多くの人々のニーズに対応する拠点。  2)コンセプト  ・永く守る…価値の次世代への継承(保護・管理)  ・美しく伝える…多彩な価値の伝達(展示・情報発信)、「楽習」機会の提供(学習支援)  ・広く交わる…富士山を通じた交流機会の創出(交流促進)  ・深く究める…価値の探求(調査研究) (3)施設の特徴  ・フロアは193mのらせんスロープになっており、疑似登山が体験できる。また、6つのゾーンに分   け、富士山と人の関わりや信仰、美術や文学への影響、生態系などを紹介。  ・ガラス張りの展望ホールでは、周辺の構造物に遮られない富士山の眺望を確保。  ・265インチの大画面に4K映像を上映するシアターを備え、雄大な富士山の自然や文化を紹介。  ・館内には5言語(日本語、英語、中国語〔繁体、簡体〕、韓国語)に対応したタッチパネルとオーディ   オガイドを設置。 2 新ビジョン(総合計画)について (1)新ビジョン「富国有徳の美しい“ふじのくに”」(2018-2027)  ・毎年度の来館者数目標を30万人と設定。コンテンツの質・量の充実、情報発信力の向上、快適な施   設設備の運営、誘致促進の積極展開の4つの機能が好循環を生むことを目標達成に向けた誘客戦略と   している。 (2)来館者数  ・来館者数 平成29年度 16万5,605人、平成30年度 45万2,066人  ・来館者数推移想定では、令和2年度までは目標の30万人を達成できるがそれ以降は未達成になると   想定しており、対策が必要。 3 今後の課題  ・山梨県立富士山世界遺産センターとの連携。静岡県富士山世界遺産センターは静岡県の直営で運営し   ているが、山梨県立富士山世界遺産センターは指定管理者制度で運営しており、その違いも影響して   連携には至っていない。 【所 感】 ・世界中に圧倒的な知名度を持つ富士山は、女神にまつわる神話を有することや、信仰や人々の祈りなど  目に見えない価値を伝えていることなど、本市の世界遺産と類似した点があった。その価値を後世に残  すため、センターが果たす役割、センターの機能が持続可能なものなのか興味をもって視察に臨んだ。  世界文化遺産は、登録後にその価値を継承する不断の努力が必要で、それがいかに重要で大変な責務で  あるかを感じた。今回の視察により世界遺産センター設置の効果と課題を知ることができた。 ・館長は遠山敦子元文部科学大臣であり、歴史、信仰、芸術、美術などに造詣が深い専門職を配置してい  る。センターの設置や組織編成には歴史や文化の継承のためのしっかりとした理念、永い展望に立った  目標設定、県・国の協力、予算確保、人材確保が必要であると感じた。 ・開館時からみると来館者数は緩やかな減少傾向にある。宿泊や観光といった地元に経済効果をもたらす  要素は富士五湖周辺(山梨県)に充実していることもあり、同センターだけでの誘客は困難だと感じた。  また、富士山の価値の継承、環境保全という目的を中心に置きながら、いかにして地元への経済効果を  もたらすかという視点も大切である。 ・沖ノ島から出土した8万点の文化財も、上陸できない沖ノ島の価値を後世に伝えるため重要な役割を果  たすものであると思う。仮に展示をするとなると、必要な財源や人材の確保などハードルが高く、市単  独で世界遺産センターを建設するのは負担が大きいことを実感した。 ・富士山世界遺産センターは世界遺産登録から4年後に開館していることから、今後の施設の建設には慎  重な検討が必要な本市にとって、そのプロセスを確認することができる施設としてさまざまな気づきが  あった。また、建設費や運営費など本市の財政状況を考えると不安な部分もあった。 ・山梨県にある世界遺産センターとの連携など、世界遺産である以上、国が主導権をもちグランドデザイ  ンを考えて大きな視野で施設の差別化などが必要だと感じた。今後本市においても、国や県がしっかり  主導権をもち、本市や福津市だけでなく大きな視野で考えていかなければならないと思った。 ・年間のランニングコストは2億3千万円だが、観覧料収入は目標来館者数を超えた年でも6千万円程度  と、収支だけを見るとバランスは悪いように感じる。全て県費で運営されており、今後の施設のランニ
     ングコストや修繕費等を考慮すると、このまま県税だけに依存することへの疑問が残った。 ・富士山の魅力を伝えるためのさまざまな工夫が凝らされていた。富士山が一望できるという展望デッキ  も設けられていたが、視察当日は富士山が見えず残念だった。天候の悪い時も来館者が楽しめるような  工夫が必要だと感じた。 ・建設費や維持費には多大な経費がかかっており、世界遺産センターを立派なものにする必要があるかど  うかは疑問が残った。 ・大画面の4K映像でさまざまな富士山の情景を見せることによって、富士山に行かずともこのセンター  に行けば富士山の魅力を十分に感じることができる。本市の沖ノ島は立ち入り禁止であるから、なおさ  らこのセンターのような「見せる展示」をするべきだと思う。現在の海の道むなかた館の展示では、な  かなかそこまでの迫力ある世界遺産の情景を見ることは厳しいと感じるので、このようなセンターを新  設することはますます必要であると感じた。 ・施設を見学することで、富士山を自然としてではなく、信仰と文化という視点でみることができた。た  だ、誘客が日帰り客をターゲットにしているとのことで地域への恩恵は少ないと感じた。生まれ育った  風土として信仰の意識が高く、観光への意識が低いという点は本市と共通しているところもあり、観光  消費額を上げる仕組みづくりが必要だと感じた。 ・外観がとてもインパクトがあり、何のための施設なのかが一目でわかるものだった。館内ではQRコー  ドからアクセスするだけで多言語の施設案内を聞くことができ、非常に良いガイダンスシステムだと感  じた。観光ボランティアでは対応できない言語でも、こういったシステムがあると難しい内容もきちん  と伝わり楽しめると思う。世界遺産の何を伝えるのか、どう見せていくのか綿密に組み立てられており、  富士山のいろいろな面を見ることができ、富士山について学べる場であった。世界遺産のガイダンス施  設とはどういうものかわかった。                                      令和元年12月19日 宗像市議会  議長 花田 鷹人 様                                      建設産業常任委員会                                       委員長 安部 芳英                 所管事務調査行政視察)報告書  本委員会は、下記のとおり行政視察しましたので、報告します。                        記 1 期 日   令和元年10月16日~10月18日(3日間) 2 視察地及び調査事項 (1)大阪府吹田市(10月16日)   ・産業振興条例(商工振興ビジョン2025)について (2)兵庫県姫路市(10月17日)   ・観光戦略プランについて (3)大阪府八尾市(10月18日)   ・創業支援について 3 調査内容   概要は以下のとおり。資料は議会事務局に保管。 ◆大阪府吹田市(人口37万1千人、面積36.09km2[H31.4.1現在]) 【市の概要】  大阪府の北部に位置し、南は川を隔て大阪市に隣接している。古くは西国と京都を結ぶ交通の要所とし て発達した。昭和30年代に千里ニュータウンの建設が始まり、急速に人口が増加。今後も住宅の建てか え等により人口は増加する見込み。また、昭和45年の日本万国博覧会の開催により交通網の整備が促進。 商業・業務施設や学術研究施設の集積が進み、大阪市に隣接した新しい都心として発展している。令和2年 に市制施行80周年を迎え、中核市に移行予定。  平成31年度(令和元年度)一般会計予算:1,268億9,385万円 【調査事項】 〔産業振興条例(商工振興ビジョン2025)について〕 1 商工業の現状及び特徴  ・事業所数1万2,270事業所、従業員数14万4,593人【平成28年経済センサス-活動調査】  ・従業者規模1~4人の事業所数が全体の半数以上を占める。  ・卸売業の年間商品販売額1兆6,354億円、大阪府内第2位。奈良県の約2倍にあたり、滋賀県や和   歌山県を上回る。  ・事業所開業率6.5%、大阪府内第3位。 2 条例制定までの経緯  平成7年頃から地域の経済団体等による条例制定に向けた運動が開始され、平成8年に吹田市商工振興 ビジョンを策定。平成11年の中小企業基本法改正による中小企業施策における地方自治体の役割の変化、 地方経済の疲弊による中小企業の危機感の高まりが背景となり、条例制定の動きが本格化。平成13年に 市議会において産業振興条例制定の質疑、平成18年地元経済団体からの商業活性化に関する条例制定の 要望提出などを経て、平成21年に「吹田市産業振興条例」が施行され、地域経済の循環と活性化の方針 が掲げられた。  ・平成 7年 地域の経済団体等による条例制定に向けた運動の開始  ・平成 8年 「吹田市商工振興ビジョン」策定  ・平成18年 商店街連合等による商業活性化に関する条例制定の要望         「吹田市新商工振興ビジョン」策定  ・平成19年 商工振興条例の検討開始  ・平成21年 「吹田市産業振興条例」施行 3 制定後の主な取り組み (1)起業家交流会の開催    起業家や起業を志す人などの情報交換や学びの場 (2)実態調査の実施    市内事業者の実態やニーズの把握 (3)企業誘致の推進    吹田市成長産業特別集積区域(成長特区)の優遇税制(大阪府と連携)、企業立地促進奨励金 (4)産業振興条例に基づく補助金の創設    地元企業等共同研究開発事業補助金、地元雇用促進補助金、地元企業発注促進補助金、企業定着型   環境配慮事業補助金など (5)吹田市中小企業ホームページ作成事業補助金の創設    ホームページの新規作成を行った中小企業に対する補助金 4 課題 (1)条例の目的と理念の具体化に向けた産業振興施策の推進 (2)条例の理念と事業者、経済団体、市民の役割についての周知
    5 「吹田市商工振興ビジョン2025」の策定  前身である「吹田市新商工振興ビジョン」の検証及び総括、課題を踏まえ、平成28年「地域経済の循 環及び活性化による都市活力の創造」を基本理念とした「吹田市商工振興ビジョン2025」を新たに策 定。このビジョンのもと、限られた予算を効果的に配分し、商工振興施策を推進している。  また、現在ビジョンの中間見直しに着手しており、見直しにあたって市内中小企業が抱える課題を把握 するため、中小企業を訪問し、事業実態や具体的なニーズ、課題の把握を行っている。同時に市内約 2,600事業所を対象にした大規模な商工業実態調査も実施し、大枠でのニーズや課題の把握も行うこと としている。 【所 感】 ・吹田市の産業振興条例は、市内経済団体から条例制定の運動が起きたこと、また、商工業振興対策会議  による長年の研究が継続して行われた上で制定された経緯がある。条例の中で「地域経済の循環を図る  こと」「調査を行うこと」が明文化されており、行政はそのことを根拠として市内経済団体や事業所の協  力のもとに、域内循環に関する調査分析を地域経済分析システム(RESAS)や経済センサス等のデ  ータを活用して独自に行っている。本市においても、産業振興の実態や事業効果をより把握、確認する  ために経済動向調査を行うことや、その根拠となる条例についても、市内経済団体や事業者の理解と協  力を受けながら制定を目指す必要が大いにあると感じた。 ・鉄道駅が15駅、大阪大学をはじめ数多くの大学や関連施設が立地し、高層マンションが林立するなど、  大阪市に隣接する都市としてのポテンシャルが高いことを背景に、商工振興ビジョンの策定については、  経済活動が民間ベースで主体的に進んでいるように思われる。 ・吹田市のシティプロモーションは、市外に発信するのではなく市民に向けて「吹田はこんなにいいまち  ですよ」と発信しているとのこと。発想の転換が必要かもしれない。 ・条例制定後に策定した「吹田市商工振興ビジョン2025」においては、条例制定前のビジョンと比べ、  商工振興施策の役割をより明確にした上で、その範疇の中で実現すべき基本理念及び基本方針を掲げて  いる。施策推進のためのアクションプランとして、各年度における目標値等を示すとともに事業成果及  び進捗管理を可視化させ検証を行うことを可能にしたことは重要であり、本市でも参考にすべきである。 ・企業立地に関する支援事業では、新たに立地した企業の地域内における企業間取引や地域住民との交流  など、地域とともに発展していくための支援を行政が行っている。本市においても見習いたいところで  ある。 ・吹田市では成長特区を設け、大阪府と連携し成長産業の優遇税制等の支援を行っている。行政が産業の  中でも重点支援を明確化しており、本市でもそういった体制、取り組みの検討が必要と感じた。 ・「吹田産業フェア」を実施しているとのことだったが、本市においても市民に地元産業を知ってもらうた  め、同様な取り組みを商工会等と連携して行ってほしい。 ・この条例は他市をまねすることなく、何のために必要なのかを議論し尽くした上で制定されており、こ  の点は見習う必要があると感じる。 ・大阪府が吹田市の一部を成長特区として指定し、税制の優遇等がなされており、そのことがさらなる企  業誘致施策を後押ししていたが、本市の産業においても、例えば土地の利用における制限等に関し、こ  のような特区構想を県や国から引っ張ってくるような努力が必要であると感じた。 ・吹田商工会議所が行っている「すいた経営革新支援センター(サビック)」と吹田市が連携し、補助金や  起業家交流会、融資についてワンストップでサポートできている点は見習いたい。また、起業の前段階  から相談に乗ることで新ビジネスのアイデアも授けてくれることが、開業率府下3位という実績を支え  ているのかもしれない。 ・目指す方向を市民、中小企業・大企業、経済団体と共有し、実現に向けた取り組みを進めている点は本  市においても見習いたい。また、担当部署が命題として掲げている「地域産業を活性化させ、以て、雇  用促進を図る」ことにより、市内の企業、住民が元気になり、税収が増加し、住民福祉の増進につなが  っていることを、職員が常に意識して事業を推進していると感じた。 ◆兵庫県姫路市(人口53万人、面積534.35km2[H31.4.1現在]) 【市の概要】  兵庫県南部に位置し、山岳、丘陵、平野、島嶼からなり、自然豊かな生活環境に恵まれている。一方、 臨海部は重厚長大型企業が立地している。平成26年に連携中枢都市のモデル都市に選定され、以降、近 隣の7市8町と連携協約を締結し、播磨圏域全体の経済成長の牽引、高次都市機能の集積に取り組む。ま た、平成5年に日本初の世界文化遺産に登録された姫路城など文化遺産も多数有し、自然資源とあわせ、 多様な魅力を国内外に発信することで国際観光都市として発展している。  平成31年度(令和元年度)一般会計予算:2,215億円 【調査事項】 〔観光戦略プランについて〕 1 プラン策定の背景、目的 (1)背景   ・姫路市の観光を取り巻く状況の変化   ・姫路市文化コンベンションセンターの建設   ・東京オリンピック・パラリンピックの開催 (2)目的    文化やスポーツ、産業等の多様な資源が市の魅力となり、次代の観光を担う資源となる。また、観   光は人やものの交流を生み出し、経済活性化と都市成長に欠かせない分野であることから、変化し続   ける観光の情勢をしっかり分析し、戦略的な観光施策を進めていくため、平成29年、観光戦略プラ   ンを策定。 2 プランの概要 (1)基本政策(施策)   ・観光客の受け入れ環境の充実   ・滞在型観光の推進   ・インバウンド観光の推進   ・MICEの推進 (2)推進するためのキーワード    基本政策を着実に実施するため、姫路市の観光を取り巻く大きな潮流に着目し、各施策を加速させ   るための推進エンジンとして、「東京オリンピック・パラリンピック」「グローバルな視点」「スポー   ツ・文化」をキーワードに設定。このキーワードを基本政策に反映させることで、総合的な施策を展   開。 (3)数値目標(実績)   ・姫路市総入込客数【年間1千万人以上】    (平成30年度:915万人、平成29年度:987万人)   ・姫路城の外国人入場者数【年間40万人以上】    (平成30年度:38万7千人、平成29年度:34万4千人)   ・市内宿泊施設の客室稼働率【概ね月平均70%以上】    (平成30年度:75.0~82.2%、平成29年度:68.1~84.4%) 3 主な取り組み (1)滞在型観光の推進   ・夜間公開イベントや朝型観光、特別公開などを通じ、姫路城を拠点とした着地型旅行商品の検討   ・姫路城を中心に食や体験などの多様な要素を観光資源として活用する「姫路城プラスワン」作戦の    推進   ・広域観光周遊ルート「美の伝説」「せとうち・海の道」など広域連携プロモーションの実施   ・インセンティブツアー、クルーズ、教育旅行など大規模集客の受け入れ環境の充実 (2)シティプロモーションの推進   ・オンライン旅行社を活用した誘客プロモーション   ・ゴールデン・スポーツイヤーズや大阪・関西万博の機会を捉えた情報発信
      ・訪日外国人観光客に向けた体験プログラムの効果的な情報発信 (3)MICEの推進   ・市内事業者を対象にした「姫路MICEセミナー」の定期開催   ・姫路城等を活用し、特別感や地域特性を生かした演出ができる「ユニークベニューHIMEJIプ    ラン」の推進 (4)世界遺産コンウィ城との交流推進   ・国際交流都市として、英国・北ウェールズのコンウィ城との姉妹城(友好城)提携に向けた協議 (5)特別史跡姫路城跡の文化的価値の活用   ・姫路城を起点とした周遊性向上に寄与するような休憩施設整備の検討   ・「リビングヒストリー」(生きた歴史の体験プログラム)の作成(大名行列の再現など) 【所 感】 ・姫路市では観光動向調査を300万円の予算を投じて1,637人(内313人が外国人)に対面式アン  ケートで行っており、その調査結果をもとに観光戦略(マーケティング)を行っている。姫路市の観光  入込客数は年間約915万人であり、本市は年間約650万人となっているので、単純計算すれば本市  でも200万円の予算を投じることは妥当ということになる。早期に観光動向調査を行って実態の把握  をし、観光事業予算の費用対効果を詳細に分析する必要があると考える。 ・観光戦略プラン策定の目的に、「観光は人やモノの交流を生み出し、経済活性化と都市成長に欠かせない  分野」であると定義しているが、まちづくりの観点では一分野に過ぎないことを明確にしておく必要が  ある。 ・姫路城観光という圧倒的に優位な観光資源だけで満足せずに、観光戦略プラン策定の背景として、1)姫  路市の観光を取り巻く状況の変化、2)姫路市文化コンベンションセンターの建設、3)東京オリンピック・  パラリンピックの開催をあげ、変化し続ける観光の情勢をしっかり分析し、戦略的な観光施策を進めて  いく必要性があるとしており、担当職員の積極的な姿勢を感じた。また、平成31年度の施策として、  滞在型観光の推進を展開しており、特に、夜間公開イベントや朝型観光、特別公開などを通じ、姫路城  を拠点とした着地型旅行商品を検討している点は本市においても参考になると感じた。 ・訪日外国人観光客向けに体験型メニューをブラッシュアップしているとのことだが、本市でも刀剣作り  や「三女神」体験、「宗像人」の航海術体験など、特徴ある体験プログラムが欲しいところである。 ・外国人観光客は、展示を見るだけでなく展示物の背景にあるものについて知りたいというニーズがある  とのことだった。本市は上陸できない「神宿る島」沖ノ島が世界遺産であることから、個人旅行の観光  客をターゲットとし、民泊した観光客が夕刻一つの施設に集まり、悠久の世界をボランティアガイドに  語ってもらうのも一つのツアーとして成り立つのではないかと感じた。 ・世界的に知名度のある姫路城を有する姫路市においても、日帰り客が多く宿泊客が少ないとの課題を抱  えており、本市と共通するものであった。この課題解決の一つとして、姫路市では「姫路城から朝日を  望む」と題し、早朝の朝日を大天守から見てもらうことで宿泊客獲得に力を入れていた。これは今視察  に先立って行われた岬地区での議会報告会でも、市民から同様の提案がなされた。岬地区の場合は、朝  日ではなく漁場の荷さばき体験がそれにあたる提案であったが、宿泊施設の環境が整えば、十分に実現  可能なものであると感じた。 ・姫路市と本市の世界遺産を中心とした観光における違いは、実体験を伴うのか否かという点で決定的に  異なる。特に外国人をターゲットとした場合にはその違いは非常に大きい。姫路市においては「姫路だ  から」ではなく「日本だから」体験できるものを求めて来られる観光客が多く、忍者、侍、甲冑、鍛冶、  お抹茶などの体験がそれにあたる。外国人にとって、本市の世界遺産は分かりやすい日本の体験ではな  いため、ここにターゲットを当てるのは今すぐには難しいかもしれない。まずは、本市の世界遺産の価  値を理解してもらいやすい国内観光客にある程度ターゲットを絞る必要があると思われる。 ・姫路市の外国人観光客で目立ったのは欧米の外国人であったが、実態調査では台湾からの観光客が最も  多い。これは、一昨年に視察に行った同じく世界遺産を有する岩手県平泉市でも同様であったことから、  本市においても台湾の観光客を取り込むことは可能かもしれない。また、姫路市であっても単独での観  光客誘致は難しいと考えており、国と県との連携によって活路を見出そうとしていた。本市ももっと国  や県及び近隣自治体と連携してPRルートを強化すべきだと考える。 ・姫路城を中心とした構成資産の保存管理や警備職員の配置、消防法に基づく姫路城の消防計画など管理  体制がしっかり整っていることを感じた。 ◆大阪府八尾市(人口26万7千人、面積41.72km2[H31.4.1現在]) 【市の概要】  大阪府の中央部に位置し、西は大阪市、北は東大阪市に隣接している。古くは大阪と奈良を結ぶ中継地 として栄えた。昭和23年、5つの町村が合併し市制を施行。その後も合併を繰り返し、平成30年4月 に中核市に移行。日本でも有数のものづくりのまちとして、地場産業であるブラシなどを中心とした製造 業が成長。また、工場誘致にも積極的に取り組み、住宅と産業を併せ持つ大阪の近郊都市として発展して いる。  平成31年度(令和元年度)一般会計予算:992億3,142万円 【調査事項】 〔創業支援について〕 1 中小企業地域経済振興基本条例の制定 (1)背景    市内に約1万3千の事業所があり、総人口26万7千人のうち、半数にあたる約12万人が市内事   業所で働いている。業種は多岐にわたるが、従業員数50人未満の中小企業が9割以上を占め、さら   にそのうち従業員数が5人未満の事業所が6割を占めている。   このため、八尾市では市民、事業者、市が協力して中小企業を盛り上げることでまちをさらに「元気」   にしていくことを目的に、平成13年「八尾市中小企業地域経済振興基本条例」を制定した。 (2)条例制定までの経緯   ・平成 9年 8月 第1回中小企業都市サミット   ・平成10年 5月 八尾市産業振興会議の設置   ・平成11年 3月 市議会において「政府・大阪府に地域経済振興対策の充実を/八尾市に基本条             例制定を求める決議」が全会一致で可決   ・平成13年 1月 産業振興会議において「中小企業地域経済振興基本条例に関する提言書」を了             承、市長への提言を行う   ・平成13年 4月 「八尾市中小企業地域経済振興基本条例」施行   ・平成23年 6月 同条例の改正案が可決、7月施行 (3)条例改正    平成13年4月の条例施行から約10年が経過し、経済環境の変化や後継者育成の必要性など中小   企業や産業集積を取り巻く環境が大きく変化していること、また総合計画との整合性を図ることから   条例を全面的に改正。これを契機に、改めて条例の意義について市民に周知を図るためパンフレット   を作成し、全自治会に回覧。 (4)条例の意義   ・条例により自治体がスタンスを明示することで「地域全体」が中小企業の重要性を認識し、中小企    業振興に取り組む契機となる。   ・地域に即した産業振興・中小企業施策を実施していく上での根拠となる。   ・予算面も含め、継続的な中小企業振興を担保できる。 2 創業支援の概要、体制  八尾市では、前述の条例に担保された形で経済振興施策の一つとして創業支援を推進しており、年間 151件の創業、年間308件の創業希望者または創業者の支援という目標を設定している。支援体制と して八尾市、八尾商工会議所、日本政策金融公庫、大阪シティ信用金庫、関西みらい銀行及びりそな銀行 などその他金融機関と連携しており、目標の実現及び創業後まで含めた複合的な支援を行っている。また、 関係機関との連携を密にするため、八尾市の担当部署と商工会議所を一つのフロアに設置し、スムーズな 橋渡しを行っている。 3 創業支援の主な取り組み
    (1)環山楼塾    八尾イノベーション促進プログラムとして、市内に事業所をもつ経営者・経営幹部・後継者を対象   に、イノベーションを創出する力を身につける人材育成として、有名企業の社長などを講師に招き、   事業課題解決セミナー等を実施。 (2)やお創業ゆるっとカフェ    市内の先輩起業家の体験談を聞き、参加者同士の交流が気軽に「ゆるっと」できる場を提供。漠然   と起業を考えている人に対し、ゼロからのアドバイスを提供するだけでなく、同じく起業を考えてい   る仲間との出会いの場にもなっている。参加者には主婦もおり、圧倒的に女性が多い。 (3)みせるばやお    創業支援の発展形として、新事業促進のため、市内企業を中心に大企業・行政が官民協働でローカ   ルイノベーションを推進する拠点として、平成30年8月に開業。企業同士また市民と企業が日常的   に交流を繰り返す中で生まれるつながりを可視化させている。 (4)女性の職業生活における活躍推進事業    女性が働きやすい求人の開拓とライフステージに応じた就労支援を目的として、女性活躍推進員を   配置。また、求人情報検索サイト「八尾市おしごとナビ」の開設や、女性の「働き」応援リーフレッ   トとして「学生編」「再就職編」「就労継続編」「事業所編」の4つの対象別に作成するなど多角的に   支援している。 【所 感】 ・八尾市では女性の職業生活における活躍推進事業を男女共同参画の視点を併せ持って展開していた。本  市にも男女共同参画推進課があるので、商工観光課など庁内各課と連携して女性の起業支援メニューの  共有やセミナー事業の一本化、また市内の事業所で働いている女性たちの活躍する姿を既存発行物の中  で取り上げ発信を行うなど、予算を増やすことなく男女共同の推進、就労の支援、女性活躍の啓発、市  内企業のPR、雇用の確保、経済活性化に寄与できるのではないかと考える。 ・中小企業支援、創業支援について、体制、システム、ソフト面の充実、職員の能力向上など、学ぶべき  多くのものを感じられた。特に、中小企業サポートセンターの設置と機能が大きな役割を果たしており、  参考になった。 ・条例制定後に中小企業サポートセンターの設置をはじめ、市内企業の情報発信、セミナーの開催、助成  制度の充実など様々な中小企業支援を実施している。担当職員が使命感に燃えて生き生きと楽しんで中  小企業の支援に取り組んでいる様子がうかがわれ、本市においても職員の姿勢として参考にしてほしい  と感じた。 ・単に補助金を交付するだけでなく、その補助金をどのように生かすのか経営者(補助金申請者)ととこ  とん話し合うことで補助金を最大限に活用し事業成長につながるよう、担当職員が事業者に寄り添って  いる様子がうかがえた。 ・八尾商工会議所の中に八尾市立中小企業サポートセンター等があり、創業をトータル的に支援できる体  制が整っている。また、八尾市が運営する事業者に貸し出すためのスペース(インキュベートルーム)  があり、その中で経験豊富なインキュベートルームマネージャーが事業プランの作成、相談対応等創業  者の支援を行っており、支援体制の充実が感じられた。 ・八尾市は外国人労働者も多く、その中でも特に多いベトナム人との交流が進んでいるように見受けられ  た。少子化の中、また産業の多角化の中、外国人労働者の存在は本市においても近い将来必要不可欠と  なる時代が到来するものと考えられる。早い段階で八尾市のような特定の外国との交流を推し進める施  策も考えてはどうかと思う。外国人が住みよい環境を整える自治体が、労働者不足時代に生き残れる自  治体となるのではないか。 ・「産業振興会議」を定期開催することにより、市の職員が市内事業者と意見交換をする機会が必然的に多  く、自分の知識が乏しければ、企業側から相談をしてもらえないとの気づきから、自らの知見を高めて  いた。また、自分たちの仕事は、企業の問題を全て解決することではなく、あらゆる情報と人脈を提供  することで、人と人とを結ぶことが最も重要な責務であるとの言葉が印象的であった。そのために、経  済情報だけでなく先端科学の情報も含めた最新の時事情報を自ら収集する姿勢には学ぶべきものがあっ  た。 ・市内の製造業の実態調査として、約3,500件の事業所を職員自ら回ったという話があったが、徹底し  て、事業者と同じ目線に立つという精神が根付いていると感じた。事業者と同じ目線に立つからこそで  きる指導・助言は価値が大きい。 ・雇用という側面からは、八尾市は隣接する柏原市と合同で企業説明会を行っていることも参考になる。  市民にとっては八尾市で働くのも、柏原市で働くのも同じであり、他市との競合だけでなく連携した施  策が必要であるとの説明があった。本市においても、宗像市単独での施策だけでなく、まずは福津市と  の連携を密にした施策が一層必要である。 ・人材雇用について、八尾市では女性だけを雇用している企業があり、その全員が希望時間のみ働くこと  ができるとのことであった。人材不足の問題をよく耳にするが、それは多くの場合、雇用側と被雇用側  のミスマッチによるものであり、フレキシブルな労働環境を整えさえすれば労働者は必ず集まってくる  ことを証明しており、これが本当の意味での働き方改革であると感じた。 ・創業希望者の情報を連携する機関で共有することを重視しており、それにより創業段階に応じた適切な  支援メニューの提供を可能にしていると感じた。 このサイトの全ての著作権は宗像市議会が保有し、国内の法律または国際条約で保護されています。 Copyright (C) MUNAKATA CITY ASSEMBLY MINUTES, All rights reserved....