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平成28年決算特別委員会 本文 開催日:2016-10-20

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  1. 福岡市議会 2016-10-20
    平成28年決算特別委員会 本文 開催日:2016-10-20


    取得元: 福岡市議会公式サイト
    最終取得日: 2021-05-07
    ↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1  10月20日  午前10時0分開会         〃 11時44分休憩        午後1時10分再開         〃 3時8分休憩         〃 3時20分再開         〃 5時11分休憩         〃 5時25分再開         〃 6時10分閉会 議案審査  議案第142号ないし議案第166号、以上25件を一括して議題とし、審査を行った。  なお、質疑・意見は次のとおりである。 ◯高山委員 博多港について、高島市長就任後の国内外コンテナ年度別受け入れ総量は、2011年90.7万TEU、2012年90.7万TEU、2013年92.7万TEU、2014年97.5万TEU、2015年94.1万TEUであるが、受け入れ能力の限界は90万TEUであり、これ以上コンテナが入らないということか。 2 △港湾空港局長 現在の博多港の処理能力は約90万TEUと認識しているが、運用上、多少前後するものである。現在、C2コンテナターミナルを350メートルから500メートルに拡張工事しているが、28年度中に完成予定であり、それが完成すれば100万TEU前後まで処理が可能ではないかと考えている。 3 ◯高山委員 平成28年9月議会の一般質問において、博多港の国際海上コンテナ取扱量について、過去10年間で全国の6大港は1.2倍、博多港は1.5倍ふえているとの答弁があったが、これ以上受け入れができない状態が5年間続いているのが現実ではないのか。2011年の高島市長就任時から満杯ということであり、発展性のない港と言わざるを得ないが、どうか。 4 △港湾空港局長 28年度末にはC2コンテナターミナルを350メートルから500メートルに拡張し、処理能力は100万TEU程度になるものと思われる。なお、博多港においては、東アジアに近い地理的優位性や陸海空の輸送拠点の集積などの強みを生かして、今度とも航路誘致や集荷活動に努めていきたいと考えている。 5 ◯高山委員 博多港における国際コンテナ船のメーン航路はどこか。 6 △港湾空港局長 現在メーンとなっている航路は、中国航路、東南アジア航路であり、中国航路は12航路、東南アジア航路は11航路となっている。また、韓国航路が12航路となっている。 7 ◯高山委員 市長在任中に欧州航路が撤退するなど、多くの主要航路の寄港が減少している現状は、アジア、世界とのゲートウェイ機能を高め、九州全体の成長を促進するという市長の選挙公約に反していると思うが、どうか。 8 △港湾空港局長 現在就航している北米航路は2航路、週6便である。寄港が減少した理由については、近年の海運不況の中で輸送の効率化やコスト削減のため、コンテナ船が大型化し、大手船社同士の共同運行の拡大等、世界の海運動向を背景に船会社が航路を再編し、寄港地を絞り込む動きが進んだものと考えている。
    9 ◯高山委員 市長公約は九州全体の成長を促進するとなっているが、世界や日本の貨物は全て釜山港に集められ、釜山港で積みかえて、直接九州の各港に向かっている。これは、博多港ではなく、釜山港が九州全体の成長を促進していることになると思うが、市長の公約違反ではないのか。 10 △港湾空港局長 博多港は、九州全体のコンテナ取扱量の約半分強を取り扱っており、九州を支える港であると考えている。 11 ◯高山委員 平成24年10月22日の決算特別委員会において、市長は27年度までに博多港のコンテナ取扱量を10万TEUふやし、34年度に130万TEU体制を整備するために、さらに30万TEUふやすと答弁しているにもかかわらず、10万TEUの整備は28年度に、30万TEUの整備は平成30年代後半にずれ込んでおり、無責任と言わざるを得ないが、どうか。 12 △港湾空港局長 コンテナ取扱量については、国の経済情勢のみならず、世界経済の動向に大きく影響を受けて推移する。平成21年以降、リーマンショックの影響や中国経済の減速などにより、物流の動きが停滞したものと考えている。 13 ◯高山委員 釜山港は、27年度、博多港の21.6倍となる1,945万TEU、上海港は3,650万TEU、シンガポール港は3,100万TEUを取り扱っているが、日本は東京港が最大で490万TEUであり、6大港と博多港を合わせても全部で1,700万TEUしかない。リーマンショックの影響と言うが、メーン航路から外れていることが原因であり、東南アジアの主要港は全て2,000~3,000万TEUを受け入れている。6年前の日経新聞の1面には、「海外勢に敗北、沈むハブ港湾」との見出しで、「日本の港の競争力低下に歯どめがかからない。東アジアでハブ港湾をめぐる競争が激化する中、神戸や横浜港など貨物が通らず、韓国や中国に集められて欧米へ向かう例がふえている」、「北海道や東北の港から横浜港に集まっていた貨物が、横浜ではなく釜山などで大型船に積み替えられ、欧州へと向かう」、「08年のコンテナ取扱量は東京港の24位が最高。基幹航路といわれる北米や欧州に向かう定期便が神戸など日本の主要港に立ち寄る数は、この10年余りで半減した」、「06年に供用を始めた釜山新港を貨物船が利用する場合、費用は日本より4割安になる」、「日本の定期コンテナ便がある62の地方港のうち、今や59港が釜山と結ぶ」、「大型船が入港できる水深の深いターミナルの整備、港の24時間化、港運業者の再編など、これまで踏み込んだ改革をしてこなかっただけに、課題は山積している」とあり、これまで博多港の港湾機能の強化を訴えてきたが、そのたびに国内港との比較に終始し、何ら危機感も示さない。博多港は1,000キロメートル圏内に世界経済の成長を牽引する中国、韓国の主要都市が位置しており、その地理的優位性を生かして、我が国の国際物流、人流の中核を担う拠点港となる潜在力は十分に持っているが、地の利を全く生かしきれていない。現在、日本、ドイツ、台湾、韓国において商船三井等の海運大手5社で世界的なコンテナ界の大再編成が行われているが、把握しているか。 14 △港湾空港局長 物流の交流化やコスト削減のための大手船社同士の共同運行であるアライアンスについては、競争が激化する中で企業活動のグローバル化も加速し、再編が進められていると聞いている。 15 ◯高山委員 来年4月には、5社で世界シェア18%、350万TEUの船腹量、620隻のザ・アライアンスが設立され、コンテナ受け入れ量をふやす千載一遇のチャンスである。しかも、韓国最大の韓進海運も破産しており、博多港にとって最大のチャンスであるが、受け入れ量が満杯ではコンテナが来ても受け入れられない。もはや博多港は九州のリーダー港ではなく、釜山の支線港と化しており、これがこの6年間の高島市長の実績である。市長は平成24年8月に策定した博多港長期構想の中で、「国際海上コンテナ貨物取扱量の伸びに対応して、整備が順次進められてきたが、平成20年10月に使用開始したアイランドシティCコンテナターミナルについては、すぐに満杯になるなど、コンテナ貨物の増加に施設整備が追いつかない状況にある」、「博多港は、今後のコンテナ貨物の増大に適切に対応していく必要がある」と正鵠を得たすばらしい主張を行っている。ところが、市長はアジアの中で輝きを放つオンリーワンの港づくりをするとし、高速RORO船上海スーパーエクスプレスや釜山からのフェリー等の運用を進める港づくりを決定し、コンテナターミナルの整備を後回しにした。週3便あった上海博多間のRORO船はどうなったのか。 16 △港湾空港局長 上海とのRORO船については、平成15年11月から運用していたが、平成27年12月に休止となっている。船会社によると、老朽化した船の代替船の調達が困難であったことが休止の理由と聞いている。 17 ◯高山委員 平成26年9月議会において、私が博多港は500万TEUを目標に掲げて拡張すべき、ターミナルは建設に5~10年かかるため、需要を見込んで整備すべきと質問したのに対し、市長は、コンテナターミナルは需要が生じたときに整備すればよいと答弁した。その結果、世界航路が博多港から撤退し、北米航路も月6便だけになり、コンテナ取扱量は釜山港の4.9%という状況になっている。6年前の日経新聞にあった「海外勢に敗北、沈むハブ港湾」とは博多港のことであり、もっと取り組みを強化されたい。また、2012年10月22日の決算特別委員会において、市長はオンリーワンの港をつくるとし、港湾施設は需要に合わせて整備を進めることが最も大事と言っているが、世界やアジアの流れに合わせ明確に500万TEUを目指すべきである。市長はオンリーワンの港の道を選んだが、その結果、荷物も集まらず、かつて本市の稼ぎ頭であった博多港は発展性のない地方港と化したのである。また、博多港の貿易額は、高島市長就任時の2兆1,538億円から、現在は2兆7,332億円と、年間1,000億円も伸びておらず、福岡空港も年間870億円しか伸びていない。福岡の経済の3割を稼ぎ出す博多港の振興に真剣に取り組むとともに、市は全力で港湾再生や空港対策に尽力すべきである。日本の港湾は、アジアの主要港に比べて主要航路が寄らず、地位が大きく低下してきている。特に、港湾コスト、サービスの競争力低下等が主因だが、コンテナ船の大型化がますます進む中で、博多港へのコンテナ船の寄港がさらに減少することは容易に推察できる。顧客企業は、あらゆるプロセスで在庫削減とリードタイムの短縮を求めているため、大量輸送に加え、定時性の厳守なども今まで以上に必要になっているが、博多港については、この間何もしていないのが実感である。博多港の発展には、D2コンテナターミナルや東航路泊地の早期着工、大型定期コンテナ船入港料無料化クレーン等設備の最新鋭化、博多港ふ頭(株)の完全民営化、競争原理導入のため港湾運送業者の再編成、港の24時間化、コンテナ、トラック、クレーンの自動化が必須であると考える。そして最大のネックは、午前8時半から午後4時半まで、日祝日は休みというコンテナゲートのオープン時間である。また、税関が土日祝日は休業であり、日祝日を休めば年間67日の閉鎖、税関のように土日祝日を休めば119日の閉鎖となり、博多港の物流は機能不全となるが、対策はないのか。 18 △港湾空港局長 コンテナターミナルなどの港湾施設における荷役業務については、港湾運送事業法第4条の規定に基づき、国土交通大臣から港湾運送事業の許可を受けた港湾運送事業者のみができる業務となっている。このため、全国の港湾におけるコンテナターミナルゲートオープン時間については、事業者団体である(一社)日本港運協会と労働者団体である全国港湾労働組合連合会との労使協定により、全国的に日曜日と祝日を除く月曜日から土曜日の午前8時半から午後4時半までと合意されており、博多港においても、港湾運送事業者が荷主等の利用ニーズや費用対効果などを勘案し、同じ時間帯となっている。なお、博多港におけるコンテナ船の岸壁利用やコンテナ積みおろし作業については、元日を除く364日24時間体制で運営している。 19 ◯高山委員 364日24時間でしているのは、船からコンテナヤードにおろす作業であり、コンテナはゲートから出られないため、24時間体制で運営しているとは言えない。博多港は高島市長就任と同時に、コンテナがこれ以上入らない状態が続いている。市長の公約は、選択と集中による戦略的投資の実行、産業基盤の整備、物流、人流等の拠点機能の強化とあり、アジア・九州とのゲートウェイ機能を高め、九州全体で成長を促進するという公約を守り、少しは政治力やリーダーシップを発揮してはどうか。世界の港が365日24時間稼働の時代に、午後4時半にゲートが閉まり、日祝日が休港となるような港には船は寄らない。市長はアジア一の福岡をつくると公約しており、GDPの稼ぎ頭である博多港がこのようなていたらくでよいのか。全て市長の責任であるが、今後どのように対処するのか。 20 △港湾空港局長 高島市長就任以降の博多港のコンテナ取扱量については、平成22年と平成27年を比較すると、国際海上コンテナで17%、貿易額においては27%増加している。今後については、C2コンテナターミナルの延伸が28年度に完了するため、今後とも航路誘致や集荷対策にしっかり取り組むとともに、先進的なITやエコの取り組みなどもアピールしながら、博多港を活用した物流促進を図っていきたいと考えている。 21 ◯高山委員 本市の主力産業の港湾に対して、市長が一言も触れないのが実態であり、このような市長のもとに港が発展するはずがない。6年前の指摘から何も変わっておらず、議会においても答弁をごまかすような姿勢は許せない。次に、発達障がい児問題について質問する。新規に受診した発達障がい児が高島市長就任時の21年度347人から27年度は794人と2.3倍にふえ、市長就任後の22年度から27年度で4,034人ふえている。市長は発達障がい児の原因究明は中央の知見を待つとし、本市としての調査研究を放棄しているが、子どもが生き生きと育ち活躍するまちへ、未来を担う子どもたちをたくましく育むという市長公約はどうなったのか。 22 △こども未来局長 発達障害者支援法第24条においては、国が発達障がいの原因の究明や診断、治療などに関する必要な調査研究を行うこととされており、地方公共団体は第3条において発達障がいの早期発見支援を行うこととされている。そのため、今後とも国などにおいて行われる発達障がいに関する調査研究について情報収集に努めるとともに、科学雑誌や医学雑誌などで最近の知見についても情報収集を行っていく。 23 ◯高山委員 4年前に文部科学省が実態調査を行ったが、全国の普通小中学校の普通クラスに6.5%、推計で61万4,000人の発達障がいの可能性がある児童生徒がいることが明らかになった。厚生労働省は1993年から出産直後に母乳以外は飲ませてはいけないとし、出産した子どもをいち早く母親に抱かせるカンガルーケアを推奨した結果、さまざまな神経障がいが起きている。本市はこれまで中央の知見を待つしつつ、遺伝が発達障がいの主流であるとの答弁もしているが、遺伝が主流であれば、人口に比例すべきではないのか。平成16年のデータでは、札幌市15人、千葉市39人、川崎市56人、横浜市997人、名古屋市579人、京都市400人と地域間で発生率に差がある。また、両親が発達障がいでも遺伝しないケースもあり、一卵性双生児でも分かれることがある。さらに、本市のゼロ歳児から6歳児は、平成元年の10万5,000人から平成19年は9万人と15%減っており、遺伝であれば発達障がい児も15%減るべきであるが、逆にふえている状況をどう説明するのか。 24 △こども未来局長 発達障がいの原因については、遺伝要因、または周産期などの何らかの環境要因、過度のストレスや体重制限など、世界各地でもさまざまなアプローチからの研究が行われているが、現在のところ、その発生原因の大半はまだ解明される段階には至っていないものと認識しており、今後とも、各種の専門的な知見などについて情報収集に努めていく。また、本市において、発達障がい児が増加している要因については、発達障がいの診断基準が医療関係者に普及し、診断機会そのものがふえたこと、また発達障がいが多くの人に認知され、早期療育が効果的であるという理解も徐々に進み、家族からの相談がふえたことなどの要因もあるのではないかと考えている。 25 ◯高山委員 診断技術の発達と言い切るには、この数は余りにも多過ぎる。私が提案しているのは、本市の開業医で2万人の出産にかかわった久保田産婦人科医師の提言を研究してはどうかということである。久保田氏は、出産直後に赤ちゃんを34度の保育器に入れて、1時間後にブドウ糖の入った糖水を30cc飲ませ、温度を30度に下げて1時間後に母親に渡すと、大人の適温である25度の部屋でもスムーズに適応でき、発達障がいが発生しないと提言している。昔は産婆が各自の家に出向き赤ちゃんを取り上げたが、部屋を温め、おけに十分な産湯を沸かして赤ちゃんを入れて温め、産着を着せて体温を保温したものである。また、母乳は産後3~5日間は十分に出ないため、粉ミルクや乳母からお乳をもらうなど、温度管理と養分管理をしていたため、発達障がい児が限りなくゼロに近かった。出生直後から新生児に適切な栄養を与えることで、発達障がいの発生を100%防ぐことができるため、本市も調査研究してはどうかと提案しているが、やる気のない厚生労働省の知見を待つとして腰を上げない。4年前の文部科学省の調査では、普通小中学校で発達障がいの可能性がある児童生徒は61万4,000人おり、そのうちの4割は専門的な支援を受けていないということであるが、厚生労働省は実態調査もせず、発達障がい児を診断しては支援するだけで、根本的な原因の研究が全く行われていない。発達障がいは、産まれたばかりの赤ちゃんの栄養不足等によって起きるとされており、低血糖症や重症黄疸、脱水などが脳にダメージを与え、発達障がいに関係するという調査結果が、カリフォルニア大学の研究チームを初め、世界中で報告されている。市長公約には、子どもや若者が生き生きと健やかに、地域も活力に満ちた安心、安全の都市をつくる、多様な子育て支援とともに強い子どもを育てるとあるが、発達障がいに対する市長の認識を問う。 26 △こども未来局長 発達障がいの原因は早期に究明されていくことが大切だと考えており、諸説ある中で、研究も各方面で行われている。カンガルーケア早期母子接触、完全母乳と発達障がいの関係については、平成25年2月に日本周産期新生児学会日本発達障害学会などに尋ねたところ、4つの学会から早期母子接触や完全母乳の推奨と発達障がいの因果関係があるという科学的根拠はないという見解が示されたが、早期母子接触等については、各方面から安全面での配慮について要望がなされていることから、平成25年5月に福岡市医師会に対して、早期母子接触の安全管理等について会員への周知を依頼したところである。本市としては、発達障害者支援法に定めらた市町村の責務である発達障がいがある児童とその保護者に寄り添った支援を行うとともに、市民に発達障がいについての理解が広まるよう、今後とも取り組んでいきたいと考えている。 27 ◯高山委員 発達障がい児の増加と並行して、児童虐待がふえている。虐待の定義の中に、児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、または長時間の放置は児童虐待になるとある。1カ月前にNHKが特集していたが、母乳が出ないにもかかわらず赤ちゃんがおっぱいを吸っていれば、母親は母乳を飲んだと思い込んでおり、これは一種の虐待になりはしないか。最近の論文では、発達障がいを捉え、特に注意欠陥多動性障害、いわゆるADHDは、虐待を誘発しやすいことを挙げており、発達障がいが虐待のハイリスクの原因となることを強調しているため、これらの対策に取り組むべきである。また、日本医師会の唐澤会長の話では、日本の医療事故訴訟は32%が産婦人科関係であり、そのうち70%が分娩事故と新生児の脳性麻痺や死産であるため、産科がどんどんやめて、婦人科だけになっているとのことである。久保田医師の理論は、温度管理と母乳がほとんど出ない生後3日間の低栄養や脱水を防ぐために糖水やミルクを与えれば、誰も発達障がいにならないというものであるが、本市の施策に取り入れるつもりはないのか。 28 △こども未来局長 母乳育児については、厚生労働省が作成した授乳・離乳の支援ガイドによると、母乳は乳児に最適な成分組成で代謝負担が少ないこと、感染症の発生や重症化の低下につながること、母子関係の良好な形成が図れること、出産後の母体回復の促進が図られることなどの利点があるとされている。しかし、完全母乳について、平成24年7月の助産師会の会員宛ての文書では、母乳育児は子どもの健やかな成長とともに、母子にとっても重要なものだとした上で、完全母乳を推奨する余り、子どもが必要な栄養と水分を十分に接種できないおそれもあるとされている。 29 ◯高山委員 母乳は養分的にも最高であるが、それが出ない危機を厚生労働省は一言も触れていない。子どもも心臓を動かすなどの基礎代謝のために栄養が必要であるが、十分な母乳が出ないリスクなどを踏まえると、生後3日間の対応が重要であり、それらの調査研究について8年も前から提案している。また、本市では、小中学校の不登校等の長期欠席者が現在2,567人おり、障がい者手帳が7万4,000件も交付されているなど、今は健康に産まれてくることが当たり前ではなくなっている。ある本には、今の子どもの5人に1人は、アトピーや発達障がい、ぜんそくや肥満など、何かしらの疾患を持っているとあり、市は虚心坦懐に民間の知見を取り入れるなど、真剣に考えるべきである。次に、市職員の勤務等について質問する。27年度の年間勤務日数は220日、行政職職員の年間平均給与は631万6,000円、国税庁調査の正規社員の民間給与は484万9,000円、市職員の勤務時間は7時間45分である。定年退職後も再任用や再雇用により、27年度は1,262名が再就職をしていると思うが、間違いないか。 30 △総務企画局長 27年度に高齢者雇用制度により雇用した市の退職者は1,262人である。 31 ◯高山委員 220日勤務ということは145日休んでいるということであり、週休にすると2.79日である。また、1日当たりの勤務時間を民間と比べると、市は7時間45分であるが、九州電力(株)は8時間40分であり、1日55分短く、それに220日を掛けると25日になり、145日プラス25日で、民間で言えば170日休んでいるということになる。さらに学校の教員は夏休みの40日、冬休み、春休みがある。給料を幾ら払っても、休みを幾らとっても構わないが、その分はしっかり働くべきであると指摘しておく。次に、2012年7月3日、市長が記者会見で中国公務員等の研修受け入れを発表し、中国外務省と5年間で4,000人、年間800人を3週間受け入れる協定を結んでいるが、27年度はどのように実施したのか。 32 △総務企画局長 中国公務員等の研修の受け入れの実施状況については、平成24年7月6日に覚書を締結したが、その後、平成24年9月に中国で過去最大規模の反日デモが行われ、多くの日系企業や日本人にも被害が及ぶなど、想定を超えて日中関係が緊迫化したことなどから、受け入れは行っていない。 33 ◯高山委員 次に、学校給食について、本市は中国産の食材を全国最多の37品目使用していたが、新潟県と北海道は100%、宮城県は69%が地産地消であり、本市においても地産地消を進めるべきである。また、鮮魚市場の取扱高が1,100億円から470億円まで減っており、新青果市場も苦情が殺到している。住吉小中学校は開校間もなく、34カ所の原初的な建築不備が指摘されている。設計事務所に1億800万円の設計監理料を支払っているが、設計監理と施設整備公社は何のために存在しているのか。バス停のベンチ設置についても、高齢者や社会的弱者のために実行すべきである。また、本市の1,000台当たりの自動車交通事故件数は、高島市長就任以降、政令市で5年連続1位である。さらに、観光政策について、例えば舞鶴公園にしても福岡高等裁判所の横に駐車場を整備するだけで真の政策がなされていない。本市は住みやすいと言われているが、それは過去の遺産によるものであり、その住みやすさを壊しているのが今の市長ではないか。もう少し真剣に市政に取り組むべきであり、このように緊張感のない本市の状況は問題があると指摘しておく。 34 ◯松野委員 公明党福岡市議団を代表して、特別支援教育支援制度の充実について、新しい福岡市道路整備アクションプラン策定に際して、以上2点について質問する。質問に先立ち、27年度の条例予算特別委員会で、特別支援学校の教室不足については学校教育法に基づき設置義務のある福岡県としての責任を果たすよう、我が党も努力をするが本市も継続して福岡県に対し働きかけ続けるよう要望していたが、これに対し市長も特別支援学校への視察を行うといった対応により、今般、福岡県が糸島市や本市近郊に県立特別支援学校を新設すると表明したことで本市の生徒の受け入れ枠も拡大するなど、まずは一歩前進で非常に喜ばしいことであり、この間の市長、本市教育委員会などの関係各位の尽力には敬意を表する。今後も県教育委員会との連携をさらに深めるよう要望する。さて、特別支援教育支援員制度の充実については、平成18年6月に学校教育法等が改正され、平成19年4月より障がいのある児童生徒への教育の充実を図るため、小中学校等に在籍する教育上特別の支援を必要とする発達障がいのある児童生徒に対して、特別支援教育を行うことが明確に位置づけられた。小中学校においては、特別支援学級設置数の増加、18年度より通級による指導の対象となる障がい種別に、新たにLD、ADHDを加えたことなどにより、障がいのある児童生徒数の増加に伴う受け入れニーズも増している。また、文部科学省の調査によれば小中学校の通常の学級に在籍している児童生徒のうち、LD、ADHD、高機能自閉症により学習や生活面での特別の支援を要する児童生徒が約6.5%程度の割合で存在するという結果が出ている。このような状況を踏まえ、文部科学省は障がいのある児童生徒のサポートを行う特別支援教育支援員制度を立ち上げ、19年度からようやく地方に財政措置を行うに至った。さらに、平成28年4月から障害者差別解消法が施行され、その第5条に定める、行政機関は必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない旨の規定により、支援員等の人的配置も重要な環境を整備することになる。我が党では、障がい児と障がいのない子どもがともに学ぶことを目指すインクルーシブ教育の支援体制を充実させるために、支援員の配置促進を掲げており、さらなる人的な整備が必要だと感じている。そこで、本市における特別支援教育支援員制度の充実に向けた取り組みについて、まず、27年度の発達障がいがある児童生徒数及び特別支援教育支援員数、配置に係る決算額について尋ねる。 35 △教育長 27年度の小中学校に在籍する発達障がいのある児童生徒数は2,317人で、特別支援教育支援員等配置事業の決算額は、1億4,876万3,000円余である。 36 ◯松野委員 次に、発達障がいがある児童生徒数の過去5年間の推移についてはどうか。 37 △教育長 過去5年間での推移は、24年度1,374人、25年度1,656人、26年度1,919人、27年度2,317人、28年度2,387人である。 38 ◯松野委員 5年前と比較して1,000人以上も急激に増加しているが、特別支援教育支援員の業務内容はどのようなものか。 39 △教育長 主な業務としては、発達障がいのある児童生徒への学習活動上のサポートや安全確保などである。 40 ◯松野委員 小中学校には、障がいのある児童生徒が多く在籍しているが、近年特に発達障がいのある児童生徒が増加傾向にある。発達障がいのある児童生徒の多くは通常の学級に在籍しており、35人学級などの中でも教員の手が回らず、十分な配慮がされない状況もあると聞いている。過去5年間に予算措置された支援員の人数は何人か。 41 △教育長 過去5年間の支援員の予算上の配置人数は、24年度120人、25年度150人、26年度170人、27年度170人、28年度170人である。 42 ◯松野委員 過去5年間で発達障がいのある児童数は1,000人以上増加しているが、それに対してここ3年間は支援員の配置数は170人のまま推移している。学校の配置希望数はふえていると聞いているが、5年間で50人分の予算増となっているものの、26年度以降はふえていない。この点が問題であるが、どのように考えているか。 43 △教育長 26年度以降、予算措置した支援員の数は増加していないが、予算の執行状況を踏まえ、希望する学校へ可能な限りの配置に努めている。 44 ◯松野委員 学校現場でさまざまな工夫をしながら、できるだけ不用額が出ないように人を配置して工夫をしているとのことであるが、対象者の増加や障害者差別解消法で言う合理的配慮の提供を考慮するならば、支援員の数は明らかに不足しており、さらなる増員を図るべきではないか。 45 △教育長 支援員の増員については、障がいのある児童生徒1人1人の状況に応じた適切な支援が重要であることから、配置対象となる児童生徒数の推移や障がいの特性を踏まえ検討していく。 46 ◯松野委員 特別支援教育支援員の増員を強く要望する。全国の政令指定都市の実態について独自に調査を行ったところ、政令指定都市の中でも、有償ボランティアなども含めて本市が170人であるが、横浜市が906人、札幌市が610人、大阪市が577人、名古屋市が362人、京都市が344人、そして同じ人口規模の神戸市は563人と、その配置人数は本市を大きく上回っている。また、勤務条件についても、賃金が日額4,000円以上で、市によっては日額1万円程度のところもある。本市特別支援教育支援員の任用形態と勤務条件はどうなっているのか。 47 △教育長 支援員については、地方公務員法に基づく臨時的任用職員として任用しており、勤務条件は、1日5時間週5日で25時間勤務、賃金は日額3,945円である。 48 ◯松野委員 非常に苦労が多い仕事にもかかわらず政令市の中でも本市は大変厳しい勤務条件になっている。時給換算をすると、福岡県の最低賃金とほぼ同額、全国平均を下回っており、強く改善を要望しておく。任用期間はどうなっているのか。 49 △教育長 任用期間は、全市的な臨時的任用職員の取り扱いと同様、2カ月以内の任用である。 50 ◯松野委員 支援員が2カ月で交代すると、児童生徒の戸惑いも大きく、適切な支援を継続することが困難であり、この点が非常に現場からのニーズが大きいところであり、同じ政令市の浜松市では、任用形態は本市と同じ臨時的任用職員であるものの、既に学期単位での任用となっている。支援員の人数を確保するため、児童生徒の適切な支援のためのあるべき姿を考慮すれば、臨時的任用職員の任用形態は継続したとしても、せめて2カ月で交代する点については改善すべきではないのか。 51 △教育長 支援員の任用期間については、各学校から延長についての要望をうけており、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する法律、いわゆる障害者差別解消法の趣旨や学校現場の実情なども踏まえ、改善に向け検討を進める。 52 ◯松野委員 先日、本市の成人期の発達障がい者の就労支援を行う施設の会に参加をした時のこと、5周年を向かえるその施設の30名位の卒業者が、市内の名だたる企業に3~4年、継続して立派に勤務を続けており、その人たちが一言ずつ、本当に支援者のおかげで今の自分たちがある、という趣旨の感謝の言葉を述べていたことに非常に感動した。また、同時に自分たちと同じ悩みを抱えている人たちのために、ぜひこれからもがんばってほしい、といったことを言っていた。発達障がい者は、周りが悩み苦しんでいることを理解できないといった特徴を有しているが、障がい者である当事者はそのことが理解できないことで悩んでいる、という思いがにじみ出る言葉であった。原因については諸説あるということだが、専門的な支え方を行うことによっては立派に成長することを、非常に重要な点だと痛感した。発達障がいのある児童生徒が生き生きと学校生活を送るためには、支援員の役割は大変大きく、学校と保護者双方からの改善要望も強い増員と任用期間の延長について、ぜひとも前向きに検討されたい。本市の特別支援教育は、障がいのある児童生徒の多様な学びの場である特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室の設置率、あるいは福岡市特別支援教育連携協議会の設置など、総合的に取り組んでおり、非常に評価も高いが、その中で、インクルーシブ教育を実際に支えている特別支援教育支援員制度が、児童生徒本人や保護者、そして支援員にとって十分とは言えないのが大変残念である。自分を取り巻く環境が大きく、急激に変化するという、その対応が一番苦手な発達障がいの生徒たちが落ち着いて学習に取り組む環境づくりが大変重要である。また、障がいのある児童生徒をサポートする本制度の充実は、障害者差別解消法の趣旨である教育環境の整備と合理的配慮の提供にもかなうものであり、ぜひとも本市こそ積極的に取り組むべきと切望する。県費教員の本市への所管がえを伴うこのときこそ、支援員制度拡充の好機と捉え、増員や勤務形態の改善に取り組まれたい。この問題の最後に教育長の所見を尋ねる。 53 △教育長 小中学校に在籍する発達障がいのある児童生徒は、1人1人異なる認知特性、行動特性があり、それが原因で日常生活に大きな困難を抱えていることから、学習活動などにおいて、より適切な教育的対応が求められている中、特別支援教育支援員を効果的に活用することは、将来の自立や社会参加を実現するためにも必要かつ重要なことであると認識しており、今後とも特別支援教育支援員制度のさらなる充実に努める。 54 ◯松野委員 新しい福岡市道路整備アクションプランの策定に際して尋ねる。本市が総合的な都市の魅力にあふれていることはさまざまな客観的評価が如実に物語っているが、今後さらに人口増が見込まれる本市にとって、雇用の受け皿づくりや地場産業の振興策など、新たな課題も同時に生まれ、市長を先頭に職員が一丸となり、都市機能の充実と向上を目指している。他方、進展著しい高齢社会におけるまちづくりは、地域コミュニティと行政が一体となった取り組みが加速しており、その代表的な事業が地域包括ケアであるが、地域住民の役割をソフトとすれば、行政にしかできないのがハード整備である。地域住民がお互いを支え合って健康寿命を伸ばし、可能な限り自立して社会参加するためにも、地域社会のバリアをさらに低くする必要がある。今回は、住民の暮らしの足元である生活道路と歩道について尋ねていく。基本的なことであるが、道路認定上の区分にはどのような種類があるのか、また、幹線道路と生活道路の定義とそれぞれの延長についてわかりやすく説明されたい。 55 △道路下水道局長 道路の区分については、道路法で、高速自動車国道と一般国道を合わせた国道、県道及び市道に区分されている。国道は政令により指定、県道は県知事、市道は市長がそれぞれ認定する。また、幹線道路と生活道路について、法による定義はないが、本市においては都市の骨格をなす国道、県道及び一定規模以上の集落を結ぶ1級、2級市道を幹線道路とし、延長は平成28年4月1日現在、約802キロメートルである。それ以外を生活道路とし、延長は約3,049キロメートルである。 56 ◯松野委員 比較すれば、圧倒的に生活道路延長のほうが長い。次に、いわゆる幹線道路整備と生活道路整備及び交通安全施設整備における27年度の決算額と国庫補助事業、本市による単独事業の内訳、あわせて福岡市道路整備アクションプラン2016のうち、主な各数値目標とその進捗率を尋ねる。 57 △道路下水道局長 幹線道路整備における27年度決算額については47億7,700万円余、そのうち国庫補助事業は38億2,200万円余で、単独事業は9億5,400万円余である。次に生活道路では25億8,700万円余、そのうち国庫補助事業は9,000万円余で、単独事業は24億9,700万円余である。交通安全施設整備では52億6300万円余であり、そのうち国庫補助事業は22億4,900万円余で、単独事業は30億1,400万円余である。次に、福岡市道路整備アクションプラン2016に定めた主な成果指標の28年度末における目標及び27年度末における進捗状況について、歩道フラット化の割合は31%の目標に対し27.9%で、主要放射環状道路の整備率は85.4%の目標に対し85.3%となっている。 58 ◯松野委員 主要道路の整備目標が85.4%なのに対し歩道のフラット化の目標は31%であり、目標自体が大変低い。続いて、下水道整備の主要事業である浸水対策事業、改築更新事業、合流式下水道の改善における27年度の決算額と、国庫補助事業と本市による単独事業の内訳、あわせて下水道整備計画2016のうち、主な数値目標とその進捗率を尋ねる。 59 △道路下水道局長 浸水対策事業における27年度決算額については91億5,100万円余、そのうち国庫補助事業は72億4,500万円余、単独事業は19億500万円余である。老朽化や地震対策などの改築更新事業では114億2,300万円余、そのうち国庫補助事業は82億5,900万円余、単独事業は31億6,400万円余であり、合流式下水道の改善事業では9億7,100万円余、そのうち国庫補助事業は6億9,600万円余、単独事業は2億7,500万円余となっている。次に、下水道整備計画2016における28年度末の主な数値目標及び27年度末の進捗状況について、浸水対策における重点地区の整備完了数は52地区の目標に対し49地区が完了し進捗率は94.2%、地震対策における管渠の耐震化延長は57キロメートルの目標に対し52.2キロメートルで91.6%、合流式下水道の改善における博多駅周辺地区の分流化完了面積は、300ヘクタールの目標に対し253ヘクタールで84.3%となっている。 60 ◯松野委員 先ほどの道路整備の目標設定と進捗率と比べると下水道事業の方が目標が非常に高く、進捗率も90%内外であり遙かに進んでいる。では、実際に地域での市民生活はどうなのか、27年度現在、本市マスタープランにおける成果指標の中で、ユニバーサルデザインの取り組みへの評価、健康に生活している高齢者の割合、障がいのある人が暮らしやすいまちだと感じている市民の割合、それぞれについて本市の基本計画を策定した当時の初期値と現状値との比較について尋ねる。 61 △総務企画局長 成果指標については、まずユニバーサルデザインの取り組みへの評価では、初期値は23年度の30.5%、現状値は27年度の37.4%である。次に、健康に生活している高齢者の割合では、初期値は22年度の44.0%、現状値は25年度の46.5%である。最後に、障がいのある人が暮らしやすいまちだと感じている市民の割合については、初期値は24年度の33.2%、現状値は27年度の33.3%である。 62 ◯松野委員 評価が低いというよりは、むしろ生活現場の暮らしに関するニーズが依然として非常に高く、整備の進捗が停滞しているのではないか。社会資本整備のうち、道路整備事業に対する国からの交付金事業の数と主な内容について、また、道路整備事業に対する国費活用の考え方について尋ねる。 63 △道路下水道局長 社会資本整備のうち道路整備事業に対する国からの交付金のメニュー及びその数と概要については、道路の新設、改築、修繕または維持に関する事業に対する国からの交付金は2種類あり、防災安全対策のために特に必要と認められる事業は防災安全交付金事業、一般的な事業については社会資本整備総合交付金事業となっており、各自治体が整備計画を策定し、国が交付金を交付する。本市の道路整備においては、防災、安全交付金事業で目的別に三つの整備計画、社会資本整備総合交付金事業でも同じく目的別に三つの整備計画を道路下水道局が策定し、国費を活用した道路整備を行っている。次に、道路整備事業における国費活用の考え方については、国が重点配分を行う通学路の安全対策や道路施設の老朽化対策に加えて、幹線道路の整備や道路拡幅による歩道設置など、比較的規模が大きな事業についても整備計画を策定し、国費を最大限活用できるよう努めている。 64 ◯松野委員 安全対策や防災については、国も真摯に取り組んでおり、本市としても力を入れて国に対する働きかけを行っていることは理解できるが、先ほどの答弁のように、道路と下水道では補助事業の割合など、事業費の確保に差があるが、その理由は何なのか。 65 △道路下水道局長 道路事業については、基本的に市民税や固定資産税などの市税が財源であることから、毎年の市の財政状況や国の動向を踏まえながら、選択と集中を行い、事業を進めているが、下水道事業は、地方公営企業法を適用し、独立採算を原則とする企業会計であり、4年間を計画期間とする財政収支計画に基づき、下水道使用料の徴収や公共下水道事業債の活用など、事業に必要とする財源を適切に確保しながら、水処理センターなどの管理運営を行うとともに、浸水対策事業などの施設整備を推進している。したがって、道路事業と下水道事業は会計や財源などの事業の枠組みが異なり、一概に比較することは難しい。 66 ◯松野委員 下水道がより補助率が高いことを非難するわけではないが、料金収入がある下水道整備とそうでない道路整備では事業費に差が生まれるということなのか。しかし、浸水対策や下水道改築更新、そして幹線道路を含む基盤整備など、都市機能の向上には国の補助金が活用できて、小規模で経済活動に直結していない生活道路整備は本市の一般財源や起債による単独事業であることが、市民の暮らしのニーズが高い歩道の段差解消やフラット化を含む生活道路改善が進捗しない要因ではないか。 67 △道路下水道局長 生活道路の整備については、現地の状況も踏まえた上で選択と集中を行い、予算を効果的に活用するとともに、国費が活用できる事業については最大限国費を活用するなどして整備推進に努めているところである。 68 ◯松野委員 昨年の決算特別委員会で、区役所の維持管理予算の積算根拠に関する質問に対し、財政局長は要求上限の範囲内で見積もりを行うこととしたと答弁した。27年度の道路下水道局の要求上限額の決定はどこで決定され、財政局の調整額は道路下水道局の要求額に対してどの程度だったのか非常に気になるところである。改めて27年度の予算編成の仕組みを尋ねる。 69 △財政局長 市民ニーズを的確に把握し、新たな課題に効果的、効率的に対応していくため、市民ニーズや新たな課題に直接向き合う各局、区の権限と責任において、みずからの意思判断に基づく自立的、能動的な経営資源の活用が求められることから、27年度当初予算編成に当たっては、各局、区において、自律的にビルド・アンド・スクラップに取り組み、優先順位の最適化を図りながら、要求上限の範囲内で予算見積もりを行うこととしたものである。 70 ◯松野委員 もっと具体的な検討過程が知りたいところである。少し角度を変えて、本市のバリアフリーに関連した協議会の設置状況について、局別の名称と協議内容を尋ねる。 71 △総務企画局長 総務企画局所管のバリアフリーに関連した協議会等について、まず、ユニバーサル都市・福岡の実現に向けた市の施策推進に関する助言や先進的な取り組みなどに関する情報共有を行うため、市民や有識者等で構成するユニバーサル都市・福岡推進協議会を設置している。また、ユニバーサルデザインの理念に基づく施策の推進やそのための全庁的な連絡調整を行う本市職員で構成するユニバーサル都市・福岡推進本部を設置している。 72 △保健福祉局長 保健福祉局では、全ての人が安全で快適に利用できるバリアフリーのまちづくりを推進するため、障がい者、高齢者などの利用当時者、学識経験者、交通事業者、国、公安委員会、本市関係局など27人の委員で構成するバリアフリー推進協議会を設置している。 73 △道路下水道局長 道路下水道局では、新しい道路整備アクションプランの策定に当たり、学識経験者や道路利用者などで構成する道路整備懇談会を設置し、道路のバリアフリーも含む道路整備の基本的な考え方や施策などを議論している。 74 ◯松野委員 本市の中に四つの協議会があり、それぞれの協議の場において構成委員より、バリアフリー化への多くの切実な要望の声が上がっているはずであるが、本市政策推進プランでの歩道のフラット化の位置づけはどうなっているのか。 75 △道路下水道局長 歩道のフラット化については、平成25年6月に策定された政策推進プラン、施策1-1、ユニバーサルデザインの理念によるまちづくりにおいて、バリアフリーのまちづくりの推進の中で、道路のバリアフリー化として重点事業に位置づけているところである。 76 ◯松野委員 位置づけとしては一応重点事業ということであるが、それに照らして、次期の道路整備アクションプラン策定に際し、歩道の段差解消、あるいは歩道のフラット化など、道路のバリアフリー化は具体的にどのように位置づけられるのか。 77 △道路下水道局長 道路のバリアフリー化については、道路整備アクションプラン2016において、ビジョンの一つであるユニバーサル都市・福岡を実現する道づくりの主要施策に位置づけ、事業推進を図っている。現在策定中の新しい道路アクションプランにおいても、ユニバーサル都市・福岡を実現する道づくりをビジョンの一つに掲げているところであり、その実現のためにも道路のバリアフリー化は引き続き主な施策として取り組んでいく。 78 ◯松野委員 道路下水道局長は次期道路整備アクションプランに重点事業として位置づけて取り組むということであるが、同じ道路下水道局の下水道事業と道路整備事業について、下水道整備については全体の8割が国庫補助事業であり、2割前後が本市の一般財源や起債によるものとなっている。道路整備においても、幹線道路や交通安全施設整備については、それぞれ6割から8割が国庫補助事業である。国庫補助を多く確保し活用するのは非常にすばらしく、そこに向けて一生懸命頑張っている。問題なのは、生活道路については、全体の事業費が25億8,700万円に対して国庫補助額が9,000万円で、全体の96.5%が本市の一般財源と起債等による単独事業とならざるを得ないことである。したがって、本市は非常に大きく重要なプロジェクトを抱えていることから、それについてはできる限り国庫補助金を獲得し、一般財源については個々の生活道路整備に充当されたい。都市機能の向上という大きな事業は当然すべきことであるが、同時に生活道路整備についても粛々と実施する必要がある。そうでないと、いつまでも地域の暮らしの足元の整備が都市の成長に追いついていかない。したがって、次期道路整備アクションプランに重点事業として位置づけるならば、本市全体で財政面での配慮が欠かせないのではないか。所見を問う。 79 △貞刈副市長 道路のバリアフリー化については、政策推進プランに掲げるユニバーサル都市・福岡の推進を図るため、積極的に取り組みを進め、ユニバーサルデザインの理念によるまちづくりの実現を目指しているところである。今後とも限られた財源の効果的、効率的な活用に向け、政策推進プランや道路整備アクションプランを踏まえ、投資の選択と集中を図り、適切な財源配分に取り組んでいく。 80 ◯松野委員 これまで一貫して生活道路の改善や歩道のバリアフリーの推進について質問を重ねてきたが、例えば、歩道の傾斜が厳しく車椅子ごと転倒しそうで怖い、車道が狭く歩道の自転車走行が大変危険である、杖をついて歩くと歩道が段差だらけで歩きにくい、歩道のバス停には座るベンチや日差しをよける上屋もなくとてもつらい、などといった日常の相談事は、ほとんどの議員が市民より多数の要望を受けているはずである。健康寿命を伸ばすため、地域の人々はさまざまは自助努力を行っているが、一歩外に出ると自分では避けようがない危険と隣合わせでは、社会参加も容易ではなくなる。日本は世界に誇る長寿国となったが、高齢者の年齢と幸福度が比例し、そして障がい者もより安心して社会参加できる社会こそがユニバーサルデザインではないか。最後に、ユニバーサル都市・福岡構築への所見を問う。 81 △市長 本市では、みんなが優しい、みんなに優しいユニバーサル都市・福岡をまちづくりの目標像として掲げて、市政の柱の一つとして進めており、その推進に当たっては、全ての人の安全で快適な移動に資する歩道の新設や、段差解消などの道路のバリアフリー化などハードの取り組みとともに、助け合いの声が自然にかけあえるような心の広がりといった、ソフトの面も非常に重要になると考えている。まちづくりを行っていく上で、ユニバーサル都市・福岡の精神が市民全体に共有できるように、ソフト、ハード両面ともに確実に進めていきたい。 82 ◯大森委員 自由民主党福岡市議団を代表して、都心循環BRT及び西部広域拠点西新のこれから、障がいに関する市独自の条例について質問する。まず、都心循環BRTについて、本市は、平成27年国勢調査の速報によると、人口が153万人で政令指定都市20都市のうち第5位、人口増加率は第1位、さらに本年7月1日時点で人口が155万人を突破するなど、今後も人口の増加が見込まれる全国的にも元気な都市として市民を初め多くの人からさらなる成長が期待されている。特に、本市の成長を牽引する都心部天神地区では国家戦略特区を後押しとしながら新たな空間と雇用を創出する天神ビッグバンプロジェクトに取り組んでおり、またウォーターフロント地区ではMICEやクルーズなど、需要の増加に対する都市機能の供給力の向上とともに、海辺を生かしたにぎわいと憩いの空間を創出し、クルーズ、MICE、にぎわいが融合した一体的なインバウンド拠点の形成に向けた再整備の取り組みが進められている。こうしたまちづくりの取り組み推進の中で重要なのが交通対策であり、これまでも本市では、都心部の渋滞緩和に向けて、パーク・アンド・ライドや地下鉄七隈線の延伸など、さまざまな交通対策に取り組んでいるが、現在の道路交通の状況を見ると、さらなる交通対策の強化が必要であり、天神、博多、ウォーターフロントといった都心3拠点とそれらをつなぐ交通ネットワークの強化が重要である。都心拠点間の交通ネットワークを強化する取り組みの一つとして、27年度より都心循環BRTについての検討が行われており、現在西鉄が連節バスの試行運行を行っているが、ただでさえ渋滞が見受けられる福岡のまち中で、長い連節バスが走ると渋滞を悪化させ、またBRTの走行空間を設けることとなれば、渋滞の原因になるのではと危惧している。そこで、都心循環BRTについては専用走行空間に焦点を当てて質問したい。まず、都心循環BRTの検討に向けた27年度の事業内容、及び決算額は幾らか。 83 △住宅都市局長 都心循環BRTに関する27年度の決算額は2,227万円であり、事業内容は、夜間と昼間に実施した試走において、安全性や一般交通への影響などの調査を実施するとともに、専用走行空間のあり方の検討などを行ったものである。 84 ◯大森委員 ことしの8月から西鉄が実施中の試行運行に必要な夜間と昼間の試走や、専用走行空間のあり方の検討に取り組んだとのことであるが、いまだその趣旨がよくわからない部分がある。改めて都心循環BRTの目的について尋ねる。 85 △住宅都市局長 都心循環BTRは、都心部における道路交通混雑の緩和や都心拠点間の交通ネットワークの強化を図るため、総合的な交通対策の一つとして、マイカーから公共交通への転換や自動車交通の削減抑制に向け取り組んでいるものである。現在、試行運行における検証を進めるとともに、引き続き専用走行空間のあり方やバス路線の再編効率化などの検討を進めているところである。 86 ◯大森委員 確かに渋滞対策への取り組みは重要であり、都心循環BRTがその交通対策の一つになり得る可能性はありうるが、連節バスは通常のバスより長いため、右左折時や車線変更時で渋滞が生じる懸念の声があり、その可能性に対する危惧について尋ねる。 87 △住宅都市局長 連節バスの走行については、運行を担う西鉄が平成27年8月に夜間の試走を実施し、交差点での右左折、停留時における停車、発車などの走行安全性を確認した上で、平成28年3月に昼間の試走を実施し、一般交通への影響などを確認している。その結果、連節バスの特徴の一つである連節部の電子制御などにより、車線変更や右左折が通常の路線バスと大差なくスムーズに行えており、その後の利用者が乗車する試行運行においても渋滞を引き起こすような問題はなかったと認識している。 88 ◯大森委員 現時点においては、連節バスが渋滞に影響を与えていないとのことだが、今後も試行運行における状況を適切に把握されたい。過去、市内には路面電車が走っており、市民の足として重要な役割を担っていたが、モータリゼーションの進展や人口のドーナツ化現象が進む中で、線路敷きを通行するマイカーの多さから渋滞し、路面電車の定時制、速達性が失われ、利用者が減少したため、西鉄の経営環境が悪化し、昭和47年から昭和53年にかけて徐々に路面電車が廃止された。同時期に、市街地拡大への対応や高速性の観点から、路面電車にかわる交通手段として福岡市営地下鉄が整備されたが、路面電車を廃止した目的の一つに、マイカー重視の時代を反映して、渋滞緩和のため自動車交通のための空間をふやすという側面もあり、そのような過去の歴史を顧みると、都心循環BRTにおいて、現在検討が進められている専用走行空間のあり方については、自動車交通のためにふやした空間をバスのために専用化する必要があるのかと心配している。確かに、公共交通の利便性の面からは、バスの定時性、速達性の向上は必要と思うが、専用走行空間によって渋滞が悪化することがあってはならないと考える。現在のBRT専用走行空間のあり方の検討状況について尋ねる。 89 △住宅都市局長 専用走行空間のあり方については、平成27年12月に学識経験者や交通管理者、西鉄、及び本市などをメンバーとした福岡BRTシステム検討会議を設置し、必要性や導入に向けた課題の整理を行うとともに、道路上の具体的な走行空間について、利用者の安全性や利便性を初め、他の自動車交通への影響などを踏まえて検討を進めているところである。 90 ◯大森委員 専用走行空間のあり方の検討においては、他の自動車交通への影響も考慮しているとのことだが、道路はバス以外にもマイカーやタクシーなどさまざまな車両が通行するものであり、利用者が納得できるような道路の使い方を検討されたい。本市においては、現在も時間帯に応じたバス専用レーンやバス優先レーンなどにより、バスの走行性が高められている。そういった状況の中、独立した専用走行空間を設ける必要性については、連節バスを導入している他都市の事例も参考にしながら、慎重に進められたい。先例都市におけるバス専用レーン等の導入状況について尋ねる。 91 △住宅都市局長 国内において連節バスを導入している都市は、千葉市、藤沢市、厚木市、岐阜市、町田市、三田市、新潟市、草津市の8都市であり、そのうち連節バス専用の走行空間を設けている都市はないが交通規制により時間帯を限定したバス専用レーンを指定している都市が町田市と新潟市の2都市、時間帯によりバス優先レーンを指定している都市が千葉市と岐阜市の2都市である。残りの4都市では専用レーンや優先レーンなどの交通規制は行われてない。 92 ◯大森委員 都市の規模や道路状況によって違いはあるものの、連節バスを導入している都市のうち半分の都市でしかバスレーンは導入されていない。バスレーンを導入している都市で、バスレーンにタクシーの乗り入れも許可して、タクシーの定時性、速達性、利用者の利便性を確保している都市もあるなど先行事例もある中、本市においてはバスレーンへのタクシーの乗り入れは許可されてない。平成19年には、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律において、タクシーも公共交通に位置づけられていることから、今後、BRT専用走行空間のあり方の検討を進める中では、市民に身近な公共交通機関であるタクシーについても十分に配慮すべきである。現在のバス専用レーンにおいても、実車タクシーの乗り入れは検討すべきであると考えているが、現在検討を進めている専用走行空間におけるタクシーの乗り入れの考え方を尋ねる。 93 △住宅都市局長 本市においては、大博通りや住吉通りなどにおいて、時間帯を限定したバス専用レーンが交通管理者によって指定されている。福岡県内では、福岡県警より交通混雑の状況を踏まえ、輸送効率の高い路線バスの通行を優先させるため、バス専用レーンへのタクシーの乗り入れを認めていないと聞いている。タクシーはドア・ツー・ドアで移動できる機動性の高い公共交通であると認識しており、専用走行空間のあり方については、バスの利便性にも配慮しながら検討を進める。 94 ◯大森委員 都心部の渋滞緩和の観点からは、バスだけにかかわらずタクシーも含めた公共交通機関全体の利便性を向上させるという視点を持って取り組まれたい。都心循環BRTについては、ことしの8月より西鉄が連節バスの試行運行を開始しており、現在ウォーターフロント地区と天神地区及び博多駅地区との2路線のピストン運行を終了し、平成28年10月末から天神、博多駅、ウォーターフロント地区を循環する運行を開始するが、現在行われている試行運行の状況について尋ねる。 95 △住宅都市局長 西鉄が平成28年8月から開始した試行運行では、運行経路の検討に加え、乗降方法や運賃など、実際に利用者が乗車する中で確認すべき運行上の課題などについて検討を行うもので、まずは、ウォーターフロント地区と天神地区及び博多駅地区との2路線のピストン運行を行い、便によって利用者数の差があったものの、快速運行による速達性や乗降時間も通常の路線バスと比較して遜色がなかったことなどが確認できている。次のステップでは、10月25日から天神地区、博多駅地区、ウォーターフロント地区の3拠点を循環する試行運行により検証検討を進めていく。 96 ◯大森委員 都心循環BRTについては、試行運行により検証や検討を行うとのことだが、連節バスという新しい乗り物自体や専用走行空間が道路交通に大きな影響を与えるのではないかと不安である。また、西鉄がマイカーから公共交通への利用転換を促進し、二酸化炭素の排出抑制を図るという趣旨の環境省の補助金を活用して車両の購入を行っていることを踏まえると、本事業においてマイカーの減少傾向や渋滞緩和していることが確認できなければ趣旨に反することとなり、その観点からも、BRTに関しては、さまざまな懸念や課題に対して適切に対応し、タクシーなどへの影響を十分に把握するとともに、その事業効果を検証し、市民に明らかにしながら、検討を進めるべきと考えるが、今後の都心循環BRTの進め方について尋ねる。 97 △住宅都市局長 都心循環BRTについては、市民にとって便利でわかりやすい公共交通となるよう、その効果や一般交通への影響などの課題をしっかり見きわめることが必要であると考えており、今後とも西鉄と連携しながら試行運行による検証・検討を進めるとともに、専用走行空間のあり方やバス路線の再編・効率化など、一つ一つ段階を重ね、議会の御意見も伺いながら検討を進めていくとともに、都心部においては、過度に自動車に依存しない、人を中心とした歩いて出かけたくなるまちを目指し、道路交通混雑の緩和や都心拠点間の交通ネットワークの強化を図るため、都心循環BRTを初め、都心周辺部駐車場の確保、バス路線の再編・効率化などを総合的に進め、マイカーから公共交通への転換や自動車交通の削減・抑制に取り組んでいく。 98 ◯大森委員 専用走行空間の検討については、他の公共交通機関への影響に十分配慮するよう重ねて要望する。次に、西部広域拠点西新のこれからについて尋ねる。本市の西部広域拠点の中心に位置する西新地区は、天神や博多駅などの都心部へ地下鉄で直結する西部地区交通の要衝地であり、古くは江戸時代より唐津街道として人々の往来でにぎわった歴史を有し、修猷館高校や西南学院大学などが立地する文教地区であることや、交通利便性の高さや住環境のよさなどから、近年においては九州では最も地価上昇率の著しい人気の住宅地となっており、校区の人口構成を見ても30代から40代の子育て世代が多い子育てしやすいまちとして評価を受けている、活気のある地区であるが、これまで地元商店街と共存共栄しながら地域の商業核を担ってきた西新エルモール・プラリバ及びイオン西新店が昨年度から立て続けに閉店したことで、商店街を初め、地域全体における人の流れが変化するとともに、最近は学生などの若年層の姿が少なくなったと感じる。また、地下鉄西新駅の利用者においても、これまでは西新プラリバや商店街につながる駅南側の出入り口を多く利用する姿が見られていたが、大型商業施設の相次ぐ閉鎖に伴い、地下鉄出入り口の利用についても、人の流れが分散化され、まちのにぎわいの衰退につながっているのではないかと危惧している。そのような中、先月末に地下鉄西新駅北側の公共用地において新設エレベーターの利用が開始され、駅北側へのバリアフリー動線が確保されたところだが、このエレベーター設置に関する27年度の決算額とその内容について尋ねる。 99 △交通事業管理者 西新駅のエレベーター新設に係る27年度の決算額は8,303万8,000円で、その内容は、土木工事や建築設計等である。 100 ◯大森委員 新設エレベーターが利用できるようになった一方で、供用開始翌日の10月1日から西新プラリバのエレベーターが使用できなくなり不便になったと地域の声があるが、停止された理由は何か。 101 △交通事業管理者 旧西新プラリバのエレベーターについては、西新駅に新設をするエレベーター供用開始まではプラリバの建てかえ計画に支障のない範囲で利用できるように、早い段階から西新エルモール管理組合へ要請し、利用を継続していたが、10月1日に設備の老朽化とビルの解体工事の準備などのために利用を停止したと事業者より聞いている。 102 ◯大森委員 ビル解体工事の準備等のためとのことだが、西新プラリバが平成27年7月31日に閉店して既に14カ月が過ぎ、まだ解体が始まらないのか不安に思っていたところ、今月11日に近隣住民並びに商店街関係者に対し、事業者から解体工事の説明会が開催され、解体工事は平成28年10月24日から着手予定で、おおむね19カ月を要すると説明されたが、解体工事並びに建築工事を含む建てかえに要する期間を市は把握しているのか。 103 △住宅都市局長 西新プラリバの解体工事並びにその後の建築工事などの建てかえに要する期間については、事業者から現在のところ設計中であり詳細については決定していないが、おおむね平成33年の完成を目指して取り組んでいくと聞いている。 104 ◯大森委員 これまで、既存の西新プラリバの建物内にあったエスカレーターやエレベーターは、地下鉄利用者や商店街利用者などの地上と地下を結ぶ重要な動線経路として利用されてきたが、今月11日の説明会において、建物を東西二つの工区に分け、東工区は全て解体、西工区については一部既存建物の躯体を再利用するとの説明を受けている。また、躯体の再利用において、地域からの要望が多かった4番出入り口及び地下通路については、説明会の中での質問に対し、工事期間中も通行が可能との説明が事業者からあり、安心している。エスカレーターやエレベーターについては、現在建てかえに当たり一時的に使用が不可能となっているが、既存の建物の躯体を再利用するということは、当然建てかえ後の施設内のエスカレーター及びエレベーターもこれまでどおり利用可能と考えてよいのか。 105 △住宅都市局長 施設内のエスカレーター及びエレベーターについては、建てかえ後も設置される予定と聞いており、地下鉄利用者などの利便性向上につながる計画となるよう、事業者へ要請しているところである。 106 ◯大森委員 将来的には、駅の北側、南側ともにエレベーターの動線が確保されることは理解した。これまで西新駅では、西新プラリバの施設を利用してバリアフリー動線を確保していたが、そもそも市が独自のエレベーターを整備するべきではなかったのか。独自のエレベーターによらずにバリアフリー動線を確保している駅がほかにもあるか。現状のバリアフリー動線の確保に関する考え方を尋ねる。
    107 △交通事業管理者 西新駅については、地下鉄開業当初より、駅に接続して整備されたプラリバ内エレベーターを利用してバリアフリー経路を確保してきた。また、現在隣接ビル内のエレベーターによりバリアフリー経路を確保している駅は、天神駅と中州川端駅である。地下鉄の駅におけるバリアフリー経路については、交通局が独自に設置するエレベーターのほか、隣接ビル内で駅の営業時間内で常時利用が可能なエレベーターも活用することで全ての駅で1ルート以上を確保している。 108 ◯大森委員 エスカレーター動線はどうなのか。ホーム階と改札階の間にはどの駅でもエスカレーターがあるが、改札階と地上とを結ぶエスカレーターの設置状況を尋ねる。 109 △交通事業管理者 改札階と地上とを結ぶエスカレーターについては、空港線、箱崎線の17駅のうち8駅で駅内や接続ビル内にエスカレーターが設置されているが、残りの9駅には改札階と地上とを結ぶエスカレーターを設置していない。七隈線では全駅でエスカレーターを設置している。 110 ◯大森委員 改札階と地上とを結ぶエスカレーターが全駅設置の七隈線に比べると、空港線、箱崎線での整備の立ち遅れが見られるが、改善すべきではないか。 111 △交通事業管理者 地下鉄では、全ての駅でエレベーターによるバリアフリー経路が少なくとも1ルート確保されているが、近年、高齢者、車椅子利用者を含め、ますます多くの人が利用している状況も踏まえ、エレベーター、エスカレーターなど、バリアフリー経路のさらなる充実を図る必要があると考えており、特に、空港線、箱崎線については、交通局独自の整備のほか、新たな駅周辺開発等に伴う隣接ビル内の施設の活用なども含めて、今後検討していく。 112 ◯大森委員 改札階と地上とを結ぶエスカレーターがない駅は9駅とのことだが、そのうち乗車人員数が最も多いのはどの駅なのか。 113 △交通事業管理者 27年度の1日平均乗車人員が最も多い駅は西新駅である。 114 ◯大森委員 西新駅は、西新プラリバの閉店により、建物内にあったエスカレーターが使えなくなり、改札階と地上とを結ぶエスカレーターがない9駅の一つになったが、その中で最も利用者の多い西新駅については、特に本市としてエスカレーターを優先的に整備する必要があると考えるが、所見を尋ねる。 115 △交通事業管理者 西新駅については、旧プラリバ建てかえの計画の中で、エレベーターに加えエスカレーターの整備も想定されることから、従前のように地下鉄利用者にも利用しやすい計画となるよう、事業者と協議を行っているところである。 116 ◯大森委員 多くの人が行き交う西新駅において、誰もが安全安心に行き来できるエスカレーター動線の確保は、西新のこれからのまちづくりを考える上でも重要であり、隣接ビルに頼るのではなく、市としての設置の検討を要望する。これまで、西新のまちづくりを進めていく上で、ハード整備について尋ねてきたが、まちの活性化にはハード整備だけではなく、新たな取り組みが必要である。西新のまちづくりを考える上で忘れてはならないのは商店街の存在であるが、地域住民の暮らしを支える買い物の場を提供する地域経済の担い手としての役割を持つとともに、地域の交流、にぎわいの場を提供する地域コミュニティの担い手として重要な役割を果たしており、地域、まちの活性化にも貢献している。このような地域における商店街が果たす役割の重要性を踏まえ、本市は商店街の振興に取り組んでいるが、27年度の商店街振興施策の決算額は幾らか。 117 △経済観光文化局長 27年度の商店街振興施策の決算額は、2,837万6,000円である。 118 ◯大森委員 西新地区における集客の核である西新プラリバ、イオン西新店の相次ぐ閉店に伴い、地元の商店街は大きな影響を受けている。このような状況において、大型商業施設の閉店により変化した消費者の流れを何とか商店街に呼び込もうと、地元商店街では既にさまざまな事業に取り組んでいるが、商店街の取り組みに対し、市はどのような支援を行ってきたのか。 119 △経済観光文化局長 同地区の複数の商店街で構成される西新商店街連合会において26年度から取り組んでいる、地域資源であるサザエさんを活用した回遊性の向上や集客力の強化に向けたイベントの実施に対し、本市では、にぎわいの向上や集客力、販売力の強化に向けた取り組みを支援する商店街活力アップ支援事業により、経費の一部を助成している。また、西新エルモール・プラリバに隣接する西新オレンジ通り商店街組合で、27年度にプラリバ閉店に伴う商店街への影響を把握するため、地域住民と消費者を対象とするアンケート調査については、本市の商店街マーケティング事業により実施されたものであり、現在、この調査結果に基づいて、商店街の活性化に向けた検討が進められている。 120 ◯大森委員 今の答弁にあった取り組み以外にも、地域の活性化と福岡ソフトバンクホークスの必勝祈願を目的として、西新地区の商店街が一体となって地域のさまざまな団体と連携して「勝鷹夢まつり」を長年にわたり実施されているが、地域の方々に親しまれている祭りやイベントを継続していくことに加え、経済環境や消費者ニーズ等の変化に対応し、新たな取り組みにチャレンジすることも必要である。地元商店街が28年度に新たに取り組む事業はあるのか。 121 △経済観光文化局長 西新中央商店街では、近年リヤカー部隊の減少などに伴ってにぎわいが失われつつある危機感により、平成28年9月から新たに集客イベントとして、新鮮な野菜などを販売するワゴンセールが開催されているが、この取り組みは毎月第1日曜日に商店街内に最大20台の移動式ワゴンを設置し、毎月テーマを変えて生鮮食料品を初めさまざまな商品を販売するものである。 122 ◯大森委員 西新地区では、地元商店街や企業等を主な構成員として、西新地区の住民、商業者の利益を守り、将来の発展のための対策を協議することを目的とした西新発展協議会を設立しているが、現在の西新プラリバ、イオン西新店の閉店に伴う商店街への影響に対する西新発展協議会の取り組み内容はどのようなものか。 123 △経済観光文化局長 西新発展協議会では、現在西新エルモール・プラリバ等の閉店後の地域活性化策の一環として、平成28年4月に周辺施設等に訪れている多くの外国人観光客の消費を取り込むことを目的として、地元商店街、企業、近隣大学、自治協議会、公民館やNPO法人など、地域の30を超える団体で構成する西新インバウンド戦略委員会を設置しており、現在多言語による商店街マップや飲食店メニューの作成など、今後の商店街のインバウンド対応に向けた具体的な検討や協議が進められている。 124 ◯大森委員 近年本市を訪れる外国人観光客は大きく増加しており、平成27年には前年比73%増の208万人に達している。外国人観光客は消費額も多く、訪問者数の増加は小売業やサービス業など、第3次産業が総生産の9割以上を占める本市の経済活性化に大きく貢献するものと考えている。今回、数多くの魅力を持った西新のさまざまな団体が連携し、インバウンド対応に向けた具体的な取り組みが進んでおり、地域の発展につながることを期待したい。一方、西新プラリバ跡の新建築物の完成にはまだ4年以上あり、オープンを見据え、西新インバウンド戦略委員会などによりさまざまな取り組みや準備を行うにしても、それまでの間は非常に苦しい期間となることから、新しい拠点としての西新のまちづくりを地域一体となって推進するためには、元気な商店街の存在は必要不可欠であり、今こそ支援が必要である。今後西新インバウンド戦略委員会を初め、地域等からの具体的な提案により地元の商店街が新たな事業に取り組む場合、市はどのように対応するのか。 125 △経済観光文化局長 プラリバ跡の再開発までの間は集客や売り上げに影響が出るものと認識しており、西新地区の商店街において取り組もうとしているさまざまな活性化策、特に、西新インバウンド戦略委員会で取り組んでいる訪日外国人観光客の需要の取り込みについては、新たな顧客の開拓、売り上げの増加につながるものであり、効果的な取り組みにより地元商店街の活性化に大きく寄与するものと考えている。本市としては、先進的な取り組み事例などの情報提供やきめ細やかな相談に努めるとともに、商店街の取り組みに対しては、本市を初め関係機関の商店街振興施策の活用を図り、福岡商工会議所等とも連携を図りながら、しっかりと支援していく。 126 ◯大森委員 今後の西新のまちづくりについては、新しいランドマークの誕生の機会と捉え、バリアフリー動線の確保などのハード整備と商店街を初めとする地域全体の活性化策などのソフト施策が一体となった取り組みが必要であり、市の支援を強く要望する。次に、障がい者にかかる本市独自の条例について質問する。平成25年6月に障害者差別解消法が制定され、約3年間の準備期間を経て、平成28年4月に施行された。法の制定を契機に、各地方自治体においても障がい者関連の条例制定の動きが活発な状況であるが、法施行に伴うこれまでの本市の取り組み状況と今後の本市独自の条例制定の取り組みについて尋ねる。まず、国において障害者差別解消法が制定されるまでの経緯と、あわせて、法の目的や具体的内容などを説明されたい。 127 △保健福祉局長 障害者差別解消法については、障がい者の人権及び基本的自由の共有を確保し、障がい者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的としており、国連の障害者権利条約の締結に向けた国内法制度の整備の一環として制定されたものである。平成23年の障害者基本法の改正において、障がい者に対する差別の禁止が基本原則として明示され、これを具体化するものとして平成25年6月に制定、準備期間を経て平成28年4月に施行されたものである。法の目的は、全ての国民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することとされており、障がいを理由とする不当な差別的取り扱いの禁止、障がいをもつ人への合理的な配慮の提供が規定されたほか、法の実効性を確保するための主務大臣の指導権限、関係機関のネットワーク構築、啓発活動などが規定されている。 128 ◯大森委員 内閣府が作成した障害者差別解消法のリーフレットによると、この法律では、一つ目に障がいを理由とする差別を禁止することとあり、もう一つは障がいを理由とする合理的配慮の不提供の禁止とされているが、どのようなことが該当するのか、詳しく説明されたい。 129 △保健福祉局長 この法律では、国の行政機関や地方公共団体及び民間事業者に対し2種類の差別を禁止しており、そのうちの一つは、例えば障がいを理由としてサービスの提供や入店を拒否するなどといった、障がいを理由とする不当な差別的取り扱いの禁止で、もう一つは、例えば障がいをもつ人から求められた場合に、筆談や読み上げを行う、あるいは車椅子の方の手助けをするなどの対応で障がいをもつ人の助けとなる合理的配慮が規定されているが、その合理的配慮を行わないことで障がいをもつ人の権利、利益が侵害される場合の差別である。合理的配慮については、行政機関及び地方公共団体は法的義務、民間事業者は努力義務となっている。 130 ◯大森委員 合理的配慮とは、内閣府のリーフレットには社会的障壁を取り除くために必要な配慮とあるが、詳しく説明されたい。 131 △保健福祉局長 社会的障壁とは障がいをもつ人が日常の生活の中で不便を感じる施設、設備や制度、障がい者を意識しない慣習、文化、障がい者に対する偏見など、社会生活を送る上で障壁となるものとされている。これは障がいをもつ人が日常生活において制限を受ける原因が、個人の心身機能の障がいのみにあるのではなく、例えば車椅子利用者が通りにくくなる道路の段差など、社会の構造側にあるとする、いわゆる社会モデルの考え方に基づくものであり、障害者差別解消法においてはこの考え方を踏まえ、障がいのある方の状態に応じて社会的障壁を除去するための合理的配慮が求められている。 132 ◯大森委員 社会的障壁とは、まだ余りなじみのない言葉であるが大変重要な考え方である。障害者差別解消法は平成28年4月施行であり、この考え方については本市職員を初めとして、市民全体が理解していくことが重要であるが、本市では、法の施行に向けて、これまでどのような取り組みを行ったのか、27年度の取り組み内容と決算額を尋ねる。 133 △保健福祉局長 27年度は、庁内に福岡市障がい者施策推進本部を6月に設置し、不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮の不提供の禁止について周知徹底するなど、全庁的な取り組みを推進することとした。また、本市職員が差別の解消に向け、特に合理的配慮の提供を適切に行うことができるよう、職員対応要領を作成し、推進本部を通じて全所属に周知するとともに、窓口で対応する職員を中心とした研修を10回実施した。さらに、複数の関係機関が地域における障がい者差別事案について共有し、差別解消の取り組みを円滑に行うネットワークとして、福岡市障害者差別解消支援地域協議会の設置に向けて関係者と協議を行った。なお、27年度の決算額は、これらの取り組みの準備に係る事務経費として86万7,000円余となっている。 134 ◯大森委員 27年度は法施行の準備とのことであるが、法施行後の28年度の取り組みについて尋ねる。 135 △保健福祉局長 28年度は、障がいをもつ人やその家族からの相談に的確に対応するとともに、紛争の防止や解決を図るため、相談窓口を4月に設置するとともに、市民向けの出前講座に障害者差別解消法に関する講座を新たに設け、今まで4回実施するなど、市民への啓発推進を進めており、さらに、障害者差別解消法の円滑な施行や地域における取り組みの促進と機運の醸成を図るため、内閣府との共催で障害者差別解消法支援地域フォーラムを8月に開催した。また平成28年4月に設置した福岡市障害者差別解消支援地域協議会についても、これまで2回開催し、関係機関における相談や取り組みの状況の情報共有、意見交換を行ったところである。 136 ◯大森委員 法の理念を浸透させるための啓発活動については今後とも進められたい。障がい者の差別解消については、市内の40を超える障がい者団体が集まり、本市に障がい者差別禁止条例をつくる会を結成し、条例制定の活動を継続されている。このような状況を背景に、本年3月の代表質疑で我が党から、差別を解消する条例の制定を初めとした対応が必要であると質問したところ、市長から障がいを理由とする差別の解消を目的とする条例の制定に取り組んでいくとの答弁があった。障がい者の差別がいまだにある中で法の施行に加え、独自の条例制定に取り組もうとしている本市の姿勢は評価すべきであるが、独自に制定しようとしている条例と障害者差別解消法の関係について、障害者差別解消法という法律が既にある中で、本市が条例を制定することの意義は何か。 137 △保健福祉局長 本市独自の条例の制定については、市内の40を超える障がい者団体から条例制定の強い要望が出されるなど、障がいを理由とする差別を解消することが障がい者の人権の観点からも施策を進める上で最優先で取り組むべき課題であり、本市による相談対応に加え、助言や指導、勧告の実施などを条例に盛り込むことで法の実効性を高める効果が期待できることに加え、本市が市政の柱の一つとして推進しているユニバーサル都市・福岡にふさわしい効果的な施策を実施することにつながることなどから、条例制定に向け取り組むこととしたものである。 138 ◯大森委員 条例制定の意義や必要性、単独で制定しようとしている意味は理解したが、本市は既に福岡市福祉のまちづくり条例を有している。障害者差別解消法では、合理的配慮の実施が求められており、社会障壁の除去が重要であると謳われているが、社会的障壁の除去という視点では、差別を解消するための条例は、福祉のまちづくり条例と類似するのではないか。 139 △保健福祉局長 道路の段差を解消するなどの社会的障壁の除去という観点からは障害者差別解消法と共通する部分もあるものの、福祉のまちづくり条例は主に多数の人が利用する施設の整備に関する事項、例えばスロープや点字ブロックを設置することなどについて規定しているのに対し、障害者差別解消法は市役所や銀行の窓口などでの対応や電車に乗降する場合の対応、あるいはレストランなどへの入店時の不当な差別的取り扱いの禁止や筆談や車椅子の方への手助けなどの合理的配慮の提供など、障がいをもつ人の状況に応じた個別の対応を主眼に規定されている。このような違いがあるため、福祉のまちづくり条例とは別途定めることとしたものである。 140 ◯大森委員 条例の検討方法と、制定予定時期を尋ねる。 141 △保健福祉局長 現在、条例制定に向けた検討会議を立ち上げ、委員よりさまざまな意見を聴取しつつ条例の原案作成に取り組んでいるところである。平成29年1月ごろを目途に検討会議としての原案を策定し、議会及び保健福祉審議会の障がい者保健福祉専門分科会に報告し、意見聴取後に、原案のパブリックコメントを実施し、その後、保健福祉審議会からの答申を経て、29年度中に議会へ条例案を提出し、一定の周知期間を設けた上で30年度中での施行を目指して取り組んでいるところである。 142 ◯大森委員 条例検討会議の設置目的、構成員はどのようになっているのか。 143 △保健福祉局長 有識者や市民などから幅広い意見を聞くこととしており、構成員は行政法や福祉に詳しい学識経験者などの有識者が4名、障がい当事者が6名、市民団体や民間事業者が8名である。 144 ◯大森委員 幅広い意見を反映させ、具体的な内容について議論するためには十分な検討の時間が必要と思うが、条例検討会議の具体的な進行方法と、現在の進捗と出された意見内容について尋ねる。 145 △保健福祉局長 検討会議は、第1回目を8月30日に、第2回目を9月30日に開催しており、今後も平成29年1月ごろまでの間に月1回、合計で6回程度開催したいと考えている。また、これまで2回開催した会議の中では、国の動向や障害者差別解消法の内容、条例制定を検討するに至った経緯を説明の上、条例の大まかな方向性を確認し、条例の柱となる項目がかたまりつつある状況である。会議で出された主な意見は、障がいに対する理解に加え、合理的配慮については市民の理解が不可欠で、効果的な啓発が重要であることや、差別を解消するための相談あっせんなどの仕組みづくりの検討が必要である、といったものである。 146 ◯大森委員 差別の解消を目的とする条例については、障がいの種別にかかわらず大変多くの障がいをもつ人が期待しており、また大変意義のある条例である。障がいをもつ人はもとより、市民や規制の対象となり得る事業者にも理解を求め、意見聴取を十分に行うことで、市民全体が納得できるユニバーサル都市・福岡にふさわしい条例にされたい。他都市においては、障害者差別解消法の制定などを契機に、障がい者関連の独自条例を制定する動きがあると聞いているが、本市において差別を解消する条例以外に独自条例に関する動きはあるのか。 147 △保健福祉局長 独自条例の制定については、聴覚障がい者の団体の会員などから、手話言語条例の制定を求める請願が平成27年6月25日に提出され、本年4月25日に請願審査が行われたところである。 148 ◯大森委員 4月25日の請願審査における請願理由、また手話言語条例の制定に係る本市の考え方を尋ねる。 149 △保健福祉局長 請願理由については、手話を音声言語と同じように生活のあらゆる場面で使用でき、手話や聾者に対して理解があり、聾者が安心して暮らせる社会となるよう、福岡市手話言語条例を制定するよう求めるというものである。請願審査における本市の考え方については、手話が言語であることや意思疎通のための手段として手話を選択できる機会の確保などの条例制定の主たる目的については、既存の法律等で対応ができていること、手話以外、例えば要約筆記などの聴覚障がい者への支援も包括的に進めていく必要があるとともに、視覚障がい者、知的障がい者、精神障がい者といった方々のコミュニケーション支援との整合性と図りながら施策を進めていく必要があり、他の団体からも様々な要望がある中で、手話についての要望を他の団体のさまざまな要望に優先させることは困難と考えられることから、現段階では市が独自に条例を制定する状況にはないというものである。 150 ◯大森委員 差別を解消する条例も手話言語条例も、障がい当事者の方々から強い期待が寄せられていると認識しているが、同じ任意の条例でありながら、差別を解消する条例は市として制定するとし、手話言語条例は制定する状況にないとする、その違いは何か。 151 △保健福祉局長 差別の解消を目的とする条例については、既存の法律は差別を解消する措置やその支援措置についての基本的な定めであり、市民や事業者に理解を求めながら法の趣旨を踏まえたより効果的な取り組みを進めていく必要があること、さらには、障がいの種別にかかわらず市内のほとんど全ての障がい者団体からの共通した声としての条例制定の要望であることなどを踏まえ、制定に向けて検討を進めている。 152 ◯大森委員 手話言語条例の制定のほか、障がい者団体などからの個別具体的な条例制定や施策の推進への要望は出てないのか。 153 △保健福祉局長 障がい者団体からの要望について、施策に対してはさまざまな要望が出されているが、条例制定についての要望は手話言語条例だけである。 154 ◯大森委員 任意の条例の制定に当たっては、障がい者団体や市民からの要望状況を踏まえ、総合的な対応が必要である。手話言語条例に関しても、そこに特化した条例を個別に制定するのではなく、聴覚障がい者を含む障がい者のコミュニケーション支援等も行う総合的な条例を検討すべきと考える。4月の請願審査では、我が会派からはその旨の意見を述べ、市には検討の猶予時間を与える意味で継続審査とすべきとの意見を出したところであるが、請願審査後の検討状況を尋ねる。 155 △保健福祉局長 現在、本市の障がい者施策において、差別の解消を目的とする条例制定に向けて検討会議を設置し、有識者や市民などからの意見を聴取しているところである。障がい者のコミュニケーション支援等を行う総合的な条例については、障がい者団体にも意見を聞いたところ、差別の解消を目的とする条例制定を優先する必要があるとの意向があった。障がい者のコミュニケーション支援のあり方については、差別の解消を目的とする条例制定における議論の状況なども踏まえた上で検討する必要があると考える。 156 ◯大森委員 みんなが優しい、みんなに優しい、ユニバーサル都市・福岡の実現を目指すために、市民や事業者など多くの人々から賛同を得られるような差別の解消を目的とする条例を制定することを期待する。また、聴覚障がい者を初め、あらゆる障がい者のコミュニケーションや意思決定の支援が行われるような総合的な条例の検討がなされることを要望する。 157 ◯江藤委員 27年度決算歳入歳出全般にわたって質問していくが、項目は多岐にわたっており、それぞれの課題、会派としての意見、要望も含めて討論していく。まず、市税収入は2,841億円余、前年度比20億円余の増で、これは納税義務者増による個人市民税の増と土地評価税の評価額の上昇に伴う固定資産税、都市計画税の増によるものと思うが、27年度法人市民税は20億円の減収で、それを個人市民税が補う結果となっている。本決算は、25年度福岡市総合計画の中期計画で示した政策推進プランの3年目となり、高島市長は都市の成長に国家戦略特区を活用し、精力的に取り組んできていることから、その果実も膨らんでいるものと思われる。そこで、プランを策定した25年度と比較して、どの分野で果実を生み出す成果が上がっているのか説明を求める。 158 △総務企画局長 本市では、多くの市民とともに策定した総合計画において、生活の質の向上と都市の成長の好循環をつくり出すことを基本戦略として掲げ、まちづくりを進めている。これまでさまざまな施策に取り組み、全国的に人口減少が進む中、本市の人口は増加を続け、政令指定都市で5番目の規模となっている。具体的に平成25年と最新の数字を比較すると、約4万7,000人増加し、155万人を超えている。次に、入り込み観光客数は、平成25年は1,782万人、平成26年は1,855万人で73万人の増、国際会議の開催件数は、平成25年は253件、平成27年は363件で110件の増となっており、いずれも過去最高を更新している。また、成長分野や本社機能の立地企業数は、25年度から3年連続で50社を超えており、さらに市税収入は、25年度は約2,761億円、27年度は約2,841億円で80億円の増となり、過去最高を更新するなどの成果が出ている。 159 ◯江藤委員 大変よい数字がたくさん並んでいるが、近年の本市に関連する経済統計は本当によい数字が並ぶようになっている。ここ10年の大きな課題であったアイランドシティの土地売却も24年度から27年度までの特例措置で立地交付金の上限額を30億円まで上げたことなどにより企業誘致が格段に進み、少し先が見えてきたのではないか。この立地交付金は14年度に始まり、27年度決算まで総額53億円余、特例措置を講じた24年度から27年度では41億円余であり、多額の税投資の上に課題をクリアできていることをしっかりと念頭に置いておかなければならない。また、国を挙げて取り組んでいる観光事業については、入り込み観光客数が73万人増とのことだが、この急増は当面は見込めるとしても、どこまで持続可能なのか、見きわめは当然考えておかなければならない。継続性で期待できるのはMICE件数がふえていることで、これは本市の地理的な立地、あるいは都市のイメージが決め手となるため、もう少し磨きをかけてよいと思う。歳入については、一般財源、特定財源別で見ると、その構成比率は前年度に比較して一般財源が0.7%ふえ、これはよい傾向にあると思うが、27年度の地方交付税は304億円に増加しており、一方で臨時財政対策債が地方交付税をことしも上回っている。この傾向はこの4年の特徴で、懸念材料と考えるが、この原因と今後の対応について尋ねる。 160 △財政局長 国においては、財政力の弱い地方公共団体への配慮等の観点から、相対的に財政力が強い地方公共団体の臨時財政対策債の配分割合を高めてきたものと認識している。今後ともほかの政令指定都市と連携しつつ、臨時財政対策債の速やかな廃止を国に求めていく。 161 ◯江藤委員 臨時財政対策債に余り依拠しない財政運営が必要と考えており、市債残高はこの10年、下降ラインをキープして減少傾向にあることは間違いないが、2兆2,000億円余という多額の借金を背負っていることもまた事実である。毎年の公債費は、23年度までは1,000億円台で返済に苦心してきているが、24年度以降は減額され900億円台となり、27年度決算では、前年と同じ961億円である。このような財政運営の中で、臨時財政対策債の増加は懸念材料であるため、改善に一層の努力を求めておく。不納欠損額は14億円余で、前年度比2億円余、17.8%減少しているが、その内訳と決済の基準、考え方を説明されたい。 162 △財政局長 27年度における一般会計の不納欠損額の内訳は、市税が約8億6,800万円、諸収入が約1億1,700万円、分担金及び負担金が約3,900万円、使用料及び手数料が約2,300万円となっている。また、不納欠損については、市税では地方税法の規定に基づき、滞納者に滞納処分をすることができる財産がないなどの要件に該当するとき滞納処分の執行を停止し、この執行停止期間が3年間継続した場合などに不納欠損処理を行うものである。また、税外債権では、債権ごとに適用される法律等が異なっており、例えば債権管理条例に定める債務者の破産や消滅時効期間の経過等の要件に基づき債権放棄をしたときなどに不納欠損処理を行うものである。 163 ◯江藤委員 収入未済額は、27年度決算では91億円弱と前年度比5.9%減になっているが、その内訳及び講じている対策について説明されたい。また、一層の実績向上に向けどのような施策を考えているのか尋ねる。 164 △財政局長 27年度における一般会計の収入未済額の内訳は、市税が約51億1,400万円、諸収入が約28億6,000万円、分担金及び負担金が約9億4,500万円、使用料及び定数料が約1億3,700万円、財産収入が約3,400万円となっている。収納対策は市民負担の公平性の確保に加え、歳入確保の観点からも重要との認識のもと、市税については22年度に福岡市市税収入向上対策本部を立ち上げ、納税環境の整備や納期内納付の推進、滞納整理の強化などに取り組んでおり、平成28年4月からはクレジットカード納付を導入している。また、税外債権については、債権管理条例の運用、訴訟手続の促進等により適正な債権管理の推進や徴収の強化に取り組んでおり、今後とも債権管理マニュアルの活用による研修や助言等を通じて徴収手続の適正実施を推進するとともに、歳入向上推進本部を中心に全庁的な債権管理の推進に取り組んでいく。 165 ◯江藤委員 税や市民負担の公平性の確保を考えれば、この取り組みをしっかりやっていかなければならない。欠損処理や未済は限りなくゼロに近づけばよいが、どうしても生じるものであり、ある意味リスクも覚悟しておかなければならないが、収納対策については当局の努力もあり、成果が見られるようになってきており評価している。大変な業務と思うが、引き続き努力されたい。同じく市民が負担する税である森林環境税は県税であるが、本市の拠出額は年額約4.5億円、還元される額は、27年度決算では荒廃森林対策費などで3,387万円にとどまっており、この配分をふやすことを県に求めるべきである。また、本税は来年29年度までの時限税と聞いているが、財政局としては今後についてどのような見解を持っているのか。 166 △財政局長 一般論で述べると、事業等の推進に当たっては国や県からの補助金等の財源の確保に積極的に取り組むことが必要であり、各補助金等の原資、制度内容、対象範囲、交付期間、補助率等を踏まえ、各所管局等において適切に対応していくことが必要と考えている。 167 ◯江藤委員 この森林環境税の対象は本市の3分の1の面積を占める森林であるが、まだ荒廃森林対策が50%も進んでいないという現実を踏まえると、そこに充てるべき貴重な財源であるにもかかわらず、本市への還元率は非常に低い。財政局としてこのことに関心を持ち、しっかりと対応すべきである。次に、財政調整用基金は10年前から210億円回復してきているが、今後の見通しを尋ねる。 168 △財政局長 財政調整用基金は、決算剰余金が発生した場合などに積み立てを行い、災害により生じた経費の財源や、財源が著しく不足する場合における当該不足額を埋めるための財源などに活用するものである。このため、今後の具体的な残高規模を見通すことは困難であるが、今後とも財政調整用基金がこうした役割を適切に果たすことができるよう、健全な財政運営に取り組んでいく。 169 ◯江藤委員 この基金は、どの程度が適当な金額なのか予測が全くつかないが、少なくとも26年度、27年度と取り崩しが続いており、近年の自然災害は何がいつどこで起きるかわからないことを考えると、適正な措置を講じておかなければならないため、対応を求めておく。28年度から市営競艇事業が企業会計に移行しており、27年度決算で一般会計に15億円の繰り入れとなっている。実質収支は66億円余の黒字決算であるが、これは企業会計移行時の一時的なものなのか。 170 △経済観光文化局長 競艇事業の27年度の実質収支は66億3,579万円余となっているが、このうち基金として管理していた積立金相当額52億5,077万円余及び3月31日で打ち切り決算を行ったため例年と異なる取り扱いになった未払い金等2億8,286万円余、合わせて55億3,364万円余については、企業会計移行に伴い一時的に発生した収支差である。これらの一時的な収支差を除いた実質収支は11億215万円余で、例年と同程度となっている。 171 ◯江藤委員 これまで競艇事業は一般会計に寄与する金額が大変大きな時代もあったが、今でも年間15億円も一般会計に寄与しているのは大変大きなことであり、企業会計への移行後もさらなる一般会計への寄与を期待しておきたい。次に、公有財産に関連する企業会計について幾つか質問していく。市有財産には企業会計が有している公有財産があり、水源涵養林として水道局が有している杉、ヒノキなどの人工林は、曲渕、脊振、長谷などに382ヘクタール余ある。また、農林水産局が所管している市有林約100ヘクタールと国、県などの分収林147ヘクタールも合わせると629ヘクタールとなり、アイランドシティの1.5倍の広さとなるが、それらの人工林の平均樹齢はすでに50年を超えており、立派な成木となっている。水源涵養機能を保持しながら、まずは農林水産局で所管する市有林や山の所有者と契約している分収林を含む市営林での間伐に取り組み、地域産材として活用することで、林業復活と再生可能なバイオマスエネルギー源供給システムの糸口が見えてくると考えている。そこで、市営林における本市の取り組みについて尋ねる。 172 △農林水産局長 木材としての利用期を迎えた森林資源の有効活用を図っていくため、28年度から森林基幹道早良線沿線で林業資源ビジネス化プロジェクトを開始している。この事業はこれまで間伐材の搬出コストが高く、採算が合わずに森林内に残されてきた間伐材の搬出が可能となるよう、最初に沿線を航空レーザで計測して地形や樹木の詳細なデータを収集、解析し、間伐材の搬出に必要な作業道の整備計画を構築するものである。効率的な作業道の整備により、木材生産の低コスト化が可能となるため、今後間伐材のバイオマス活用も含めた木材の利用促進を図っていく。 173 ◯江藤委員 農林水産局で27年度から取り組み、28年度にビジネス化に向けたインフラ整備の事前調査が始まっており、緒についたところだと思うが、ぜひ成果が上がるよう引き続き努力されたい。一方、水道局では平成9年に福岡市水道水源涵養事業基金を設置し、水源地対策に取り組んできており、その成果として市域内で人工林382ヘクタール余の水源涵養林を有しているが、その基金の目的と現在の活動状況について説明されたい。また、成木化した樹木をどのように活用しているのか尋ねる。 174 △水道事業管理者 福岡市水道水源涵養事業基金については、本市の水道水を将来にわたり良質な状態で安定的に確保するとともに、市民に水の大切さや水源地域に対する認識を深めてもらうことを目的として9年度に設置している。この基金を活用し、水道水源涵養機能の向上のため市内水源涵養林整備事業を実施するとともに、市外水源涵養事業への支援を行っている。また、水源地域との連携協力を深めるため、水源地域との交流事業や水源林ボランティア共働事業を行うとともに、福岡都市圏流域連携基金事業へも参画している。なお、水源涵養林整備事業で発生した成木を含む間伐材は近隣市場へ出荷しており、その収入は当該基金事業で活用している。 175 ◯江藤委員 この水源涵養事業基金は大変よいと思っているが、現在基金積み立てを休止しており、基金の運用だけにとどまっている。ぜひ基金積み立てを再開し、水源地である筑後川源流域や市域の周辺も含めた涵養林を保全するためにも基金を増額されたい。私は水源地の涵養林をいたずらに資源活用すべきと言っているのではなく、涵養林の適正な管理と活用により公有財産が再生可能な資源として活用でき、また、公有林から産出された木材は地域産材として一つのブランドにもなり得ると考えており、水源涵養事業基金のより有効な活用策を考えていくべきと考えている。水源涵養林整備事業で発生した間伐材の出荷先は、福岡市森林組合が所有し本市も出資している市内の原田工場ではなく、価格面の理由から浮羽市となっている。今後本市において公共建築物が数多く建設されていく中で、木質化していくための地域産材として活用可能な資源がありながら活用されていない。今後市内産材の活用の仕組みを整えていく必要があると考えており、このことを念頭に置いて取り組まれたい。次に、歳出について質問していく。義務的経費は3,745億円強と前年度比74億円余増加しているが、このうち人件費は4億円余減に対し、公債費がふえている。高齢化や生活保護費による扶助費の伸びや、公債費の微増は理解できるが、人件費は抑制傾向にある。厳しい財政運営の中で、義務的経費はいずれも必要経費として優先確保すべき経費であるが、中でも公債費は27年度に前年より微増はしているものの、23年度まで1,000億円ベースであったものが24年度以降は900億円台に減少している。財政運営上、今後公債費についてはどのように考えているのか。 176 △財政局長 今後の財政運営については、中長期的な市債残高の縮減に向け、事業の費用対効果をしっかりと見きわめるとともに、国や県からの補助金等の財源を最大限活用するなどして可能な限り市債に依存しない財源構成とするなど、市債発行額の抑制に取り組んでいきたい。 177 ◯江藤委員 人件費については、数年前までは公務員の人件費は民間に比べて高いと言われたことから人事委員会勧告もマイナス勧告が続き、かなり抑えられてきたが、この二、三年は消費喚起を底支えするという政府方針もあり、プラス勧告になってきている。団塊世代の大量退職なども始まっているが、ここ5年の総人件費の動向について尋ねる。 178 △総務企画局長 過去5年間の全市の人件費の決算額は、23年度が912億円余、24年度が897億円余、25年度が862億円余、26年度が880億円余、27年度が875億円余となっている。本市における職員の人件費の動向については、人事委員会勧告に基づく給与改定などや、退職者数の変化など年度ごとの状況により増減が生じているものである。 179 ◯江藤委員 正規職員と非正規職員である嘱託員の比率について、過去5年の推移を尋ねる。 180 △総務企画局長 週25時間以上勤務する嘱託員の人数は、平成27年4月1日現在で2,752人であり、この人数と常勤職員の条例定数である9,313人を合わせた人数に対する嘱託員の割合は、約23%となっている。同様に、平成23年から平成27年までの過去5年間の割合を年度ごとに算出すると、おおむね23%となっている。 181 ◯江藤委員 嘱託員と職員数の比率がこれで妥当なのかわからないが、職員、嘱託員の日ごろの努力には敬意を表したい。昨年末電通で起きた新入社員の過労自殺の件で、東京労働局と三田労基局が立件も視野に入れて抜き打ち調査をしたことを先週末に各紙が報じているが、経営者の良識を疑う労働環境がいまだに広く存在している。本市ではあり得ないことと思うが、市民サービスの低下を招くことなく、なおかつ職員が働く意欲を持てる労働環境づくりに努めていくよう強く要望しておく。学校給食現場では夏の酷暑も重なり、市民サービスの低下につながるような過重労働があったことも聞いており、現場によっては正規職員の縮減により、非正規職員に過重負担となっているところもあるのではないか。本市の職員配置の考え方について尋ねる。 182 △総務企画局長 職員の配置については地方自治法に、事務を処理するに当たっては最少の経費で最大の効果を上げなければならないと規定されていることを踏まえ、業務の質と量に応じた適正配置に努めている。なお、職員が働きやすい職場環境については大変重要と認識しており、これまでもその改善に鋭意取り組んできたところであり、今後とも同様に改善に努めていく。 183 ◯江藤委員 子どもたちへの給食サービスに支障が出ないように、公として責任ある体制を組むよう強く要望しておく。次に、高島市長が強く発信している経済成長戦略関連の決算について質問していく。本年当初議会の代表質問でも問題提起したとおり、大型公共施設の更新期とも重なり、財政負担が懸念されるが、まずはこれに関連する27年度決算の内容と金額を尋ねる。 184 △財政局長 27年度の一般会計及び17の特別会計における事業規模の大きな主な公共施設及びその関連決算見込額は、新青果市場が約110億円、香椎副都心公共施設が約47億円、学校給食センターが約9億円などである。 185 ◯江藤委員 次に、27年度の天神ビッグバン関連事業とその決算額について尋ねる。 186 △総務企画局長 天神ビッグバンの関連事業は、快適な公共空間の創出を図るための事業として旧大名小学校跡地のまちづくりや水上公園の再整備、西中洲の魅力づくりなどがある。また、新たな雇用の創出に向けた事業として在留資格取得申請時の要件緩和、スタートアップカフェの運営、さらに公共交通の充実を図る事業として地下鉄七隈線の延伸、都心循環BRTシステムの検討など、民間ビルの建てかえとあわせて、天神地区の人を中心とした歩いて出かけたくなるまちづくりを推進するために必要な施策を関連事業として位置づけ取り組んでいる。次に、関連事業に係る27年度決算額は総額約33億円であり、このうち地下鉄七隈線の延伸に係る事業費が約31億円となっている。 187 ◯江藤委員 天神ビッグバンは、10年というこれから長期にわたる事業であるが、その間開発に伴い、本市が負担することになる公共インフラの整備費用がどのくらいになるのか皆目検討がつかない。民間開発が主体としても、それに伴う公共インフラの整備は必ず求められるし、またセットにならなければ、容積率緩和の誘導策にもならない。公共がどこまで責任を持ち、都心のインフラを整えるという目安がなければ、天神ビッグバンは実現できないと考えており、本市の費用負担がどの程度になるか、議会にも実態が見えるように示してほしいが、所見を尋ねる。 188 △住宅都市局長 都心部における公共インフラの整備については、さまざまな人の交流や活動を支えるため、民間建築物の更新期を捉え、官民が連携しながらそれぞれの役割に応じて進めていく必要があると考えている。現在、天神1丁目南地区においては本市の支援のもと、地下鉄天神駅と市役所を結ぶ新たな地下通路を民間が主体となり整備を進めている。今後必要となる公共インフラ等の事業費については、まちづくりの具体的な進捗の中で整備手法とあわせて整理し、関連予算等の審議を経ながら適切に進めていく。 189 ◯江藤委員 20年前、都市計画費には都心開発や区画整理事業など多額の計画費が計上されていた。その後減少し今はそれほど大きな予算額ではないが、今後はかなりふえてくるのではないか。天神ビッグバンで容積率が緩和されれば、天神の昼間人口は格段にふえてくるが、それに伴う交通インフラについては大変不安を持っている。今年度以降予想される大型公共施設設置、更新、交通インフラ整備事業について、施工中または目前のものを挙げると、総合体育館整備の総事業費が約138億円余、科学館が111億円余、ことしの秋からスタートした美術館のリニューアルが107億円余、地下鉄七隈線の博多駅への延伸は全体事業費が約450億円、拠点文化施設基本計画事業が約200億円、ウォーターフロント整備計画におけるMICE関連施設である第2期展示場は先日事業規模の報告があったが駐車場も含めて94億円、セントラルパーク基本構想については、年内に基本計画をまとめて議会に報告するという話を聞いているが、事業費は幾らかまだわからない。都市高速道路のアイランドシティへの延伸計画は292億円、都市高速道路の福岡空港への延伸計画は約500億円、そして九州大学箱崎キャンパス跡地のまちづくり事業については未定である。そのほか道路下水施設の更新費など入れると、ハード整備の事業費がこれから相当額必要となってくる。その費用総額を想定した財政運営については、PFI事業などで初期費用を抑えていくとしているが、後年どのようにしわ寄せが行くのかわかるような資料を議会に提出されたい。また、今後どのように財政対策を講じようと考えているのか説明を求める。 190 △財政局長 主要な公共施設の整備等については、構想や計画の策定段階で適時適切に事業概要や事業手法などについて議会への報告やパブリックコメントなどを行うとともに、事業実施に先立ち必要な事業費や債務負担行為などについて議会で審議がなされている。今後とも財政規律と投資のバランスを図りながら、健全な財政運営に取り組んでいく。 191 ◯江藤委員 今挙げた大型公共施設の設置、更新、交通インフラ整備事業の事業費を積み上げるとおそらく2,000億円は超えると思われる。それぞれの事業ごとに審議するだけでは、議会も財政運営の検証ができないため、中長期にわたる全体的な事業計画に関する財政運営について、議会にもわかるような資料を提出するよう強く要望しておく。次に、款別、目的別の決算について尋ねていく。まず、こども育成費の27年度予算額と決算額の差額31億円余の内訳と、その発生要因を尋ねる。 192 △こども未来局長 差額31億円余の内訳は、翌年度繰越額が13億2,700万円余、不用額が17億7,500万円余となっている。翌年度繰越額は保育所整備費助成事業において、工期の都合等により園舎の建てかえのうち旧園舎の解体工事の年度内の完了が困難となったものなどである。また、不用額は保育所等への入所児童の延べ人数が見込みを下回ったことによる施設給付費の減や保育所整備費助成事業での契約落差金の発生、留守家庭子ども会の利用児童数が見込みを下回ったことに伴う運営委託費の減などである。 193 ◯江藤委員 待機児童対策として保育所整備等の助成事業が遅滞なく進んでいるか確認のため尋ねたが、幼子を持つ親たちが安心して働けるよう、また次代の子どもたちの育成に本市が最善を尽くせるよう努力されたい。次に、環境費について尋ねる。近年地球温暖化傾向が顕著なことから、里山、里海の保全に人々の関心が集まるようになってきているが、里山、里海保全に対する本市の考え方及び27年度里海保全再生活動の内容と進捗、目標設定について尋ねる。また、環境局以外で所管する里海保全の関連事業はどのようなものがあり、事業の連動性とリーダーシップはどこがとるのか尋ねる。 194 △環境局長 里海、里山の保全は、生き物の生息、生育の場を維持するとともに、豊かな自然の恵みを将来にわたって享受していくため大変重要と考えている。環境局が実施している里海保全再生活動は、多様な生き物の生息の場である今津干潟において、地域住民や大学との共働で貴重種であるカブトガニの保全活動を実施するもので、カブトガニの生息数維持を目標にしており、おおむね目標を達成している。また、環境局以外でも、農林水産局において藻場の保全、再生や海底耕うんなど、港湾空港局においてエコパークゾーンにおけるアマモ場の造成や市民NPOなどとの共働による干潟保全活動などが実施されており、今後とも関連局と連携し、環境局が主導して博多湾の保全を推進していく。 195 ◯江藤委員 ぜひ環境局が強いリーダーシップを発揮し、関連事業をまとめて里海の保全に取り組まれたい。本市は博多湾の保全において、カブトガニの卵や生息数などは24年度を基準値としているが、少なくとも30年前、40年前の博多湾を基準にして取り組むべき課題であり、もう少しハードルを上げて取り組まれたい。博多湾内でとれているアサリ、ノリ、エビ、ワカメなどの新鮮な海の幸が大きく減少していることは間違いないが、博多湾の再生は決して不可能なことではなく、環境局はそれに向けもう少し高い目標値を持ち、事業を推進していくべきである。里海保全再生の名に値する事業にしっかり取り組んでいくよう要望しておく。次に、経済観光文化費について尋ねるが、27年度の立地交付金の交付金額とその効果など、実績について説明されたい。 196 △経済観光文化局長 27年度の立地交付金の交付額は24億532万円余となっている。また、その効果は、交付企業23社の事業計画に基づく資産の合計で、税収が単年度当たり4億3,400万円余、操業当初の雇用者数が1,139人、27年度の経済波及効果が約1,680億円となっている。 197 ◯江藤委員 立地交付金は通算で53億円余にまで積み上がってきており、その成果として経済波及効果が27年度に1,680億円と報告があっているが、市民生活にその実感がどのように出てきているのかわからない。そこで、27年度の新産業の振興と産学連携の推進事業及び観光の産業化・受け入れ環境整備事業のそれぞれの事業費とその実績について、主な事業ごとに説明されたい。 198 △経済観光文化局長 まず、新産業の振興と産学連携の推進に関する事業の決算額等について、主な3事業で答弁する。九州先端科学技術研究所支援等事業は決算額が2億7,500万円余で、実績としては、国や企業から資金を得て行ったITやナノテクノロジー分野等のプロジェクト型研究が44件、広く地場企業への研究成果の普及と技術力向上を図るためのセミナー等の開催が33回で合計1,632人の参加、地場企業等へのコンサルティングが50件などとなっている。ロボスクエアの運営事業は決算額が1億1,500万円余で、来館者数は約18万人となっている。水素エネルギー推進事業は決算額が940万円余で、実績としては水素ステーションなど先進的なプロジェクトに取り組み、新たに国から資金を得て、2件の事業を行うこととなっている。次に、観光の産業化・受け入れ環境整備に関する事業の決算額等について、同じく主な3事業で答弁する。まち歩き観光振興事業は決算額が760万円余で、実績としては観光案内ボランティアによる天神・博多部での定時ツアーや能古島、箱崎、今宿などをめぐる企画ツアーを実施し、観光案内の人数は合計で9,048人となっている。外国語メニュー等を備えた飲食店マップの作成事業は決算額が340万円余で、実績としては本年6月に開催されたライオンズクラブ国際大会等のコンベンション参加者に対し、飲食店約250店舗を掲載した外国語マップを約1万部作成し配付しており、同大会後の店舗向けアンケートによると、今後もこうした顧客を受け入れていきたいと回答した店舗は約90%となっている。都心部観光バス対策事業は決算額が270万円余で、実績としては、競艇場駐車場において、クルーズ客用観光バスの待機場として50台分の駐車スペースを開放し、観光バスの受け入れ環境の改善に取り組んだところである。 199 ◯江藤委員 本市の9割を占める第3次産業をサポートするため、気配りのきいた予算配分を求めておく。また、投資効果の見られる立地交付金となるよう、引き続き交付先の関係企業への働きかけを怠ることなく継続するよう要望しておく。次に、土木費について質問する。土木費のうち生活道路整備及び交通安全施設整備における、27年度を含む過去3年間の決算額の動向及びそれぞれの事業の進捗状況を尋ねる。 200 △道路下水道局長 生活道路整備の決算額は、25年度は25億361万円余、26年度は32億4,700万円余、27年度は25億8,700万円余となっている。交通安全施設整備の決算額は、25年度は64億6,100万円余、26年度は53億1,700万円余、27年度は52億6,300万円余となっており、限られた予算の中で道路の改良や通学路の歩車分離、道路のバリアフリー化など市民生活に密着した道路整備を着実に推進している。 201 ◯江藤委員 土木費、都市計画費に関連して尋ねるが、福岡市内の一般道路における交通渋滞箇所数及び渋滞対策の取り組み状況とその具体例を説明されたい。 202 △道路下水道局長 福岡市内の一般道路における主要渋滞箇所については、平成25年1月に国が78カ所を公表しており、このうち本市が管理する道路は27カ所となっている。渋滞対策については主要幹線道路の整備推進を図るとともに、公共交通への利用転換を促す交通マネジメント施策を推進するなど道路交通の円滑化に向けハード、ソフト両面から総合的に取り組んでいる。整備の具体例としては、本市による都市計画道路屋形原須玖線の整備や国による国道202号中村大学前交差点の改良などがある。今後とも関係機関と連携し、渋滞対策にしっかりと取り組んでいく。 203 ◯江藤委員 もう一つの土木費であり、浸水被害の軽減を図る治水対策のうち、都市基盤河川改修事業は27年度にどの程度進んだのか。また、県の管理下にある2級河川の維持管理、整備について、特に緊急性の高い地点の整備などについては、本市はどのように県に要請しているのか。 204 △道路下水道局長 都市基盤河川改修事業については、周船寺川、水崎川、金屑川の3河川において取り組んでいるところであり、27年度の決算額は10億7,200万円で27年度末での進捗率は71.1%である。また、県が管理している2級河川については、除草、清掃及びしゅんせつなど適切な維持管理と河川改修の促進について、管理者である県に対し毎年要望を行っている。なお、緊急性の高い河川については、流域自治体と連携するなどして個別に要望を行っている。 205 ◯江藤委員 安心して市民生活を送るために優先されるべき事業であり、今後も着実に実効ある予算を組むよう要望しておく。次に、教育費について質問するが、27年度の小中学校空調整備事業の事業費は幾らか。あわせて小中学校の光熱費の27年度決算額と28年度予算額も尋ねる。
    206 △教育長 27年度に実施した小中学校空調整備事業は、小学校は106校、1,966教室を整備し、決算額が33億1,200万円余、中学校は3校、10教室を整備し、決算額が3,900万円余で合計33億5,100万円余である。また、空調設備の運転分を含む光熱費の27年度決算額は、小学校が5億3,800万円余、中学校が1億9,200万円余で合計7億3,000万円余、28年度予算額は、小学校が6億2,700万円余、中学校が2億100万円余で合計8億2,800万円余である。 207 ◯江藤委員 整備した空調設備の維持費等については、27年度に光熱費で7億円余かかっており、今後はこのこともしっかり念頭に入れておかなければならない。次に、一般会計の不用額について、その分析と検討事項について尋ねる。 208 △財政局長 27年度における一般会計の歳出不用額は約260億円で、その主な内訳は、商工金融資金貸付金約61億円、農林水産業金融資金貸付金約21億円、小中学校建設費約17億円などとなっている。貸付金を除く不用額については、主に予算執行過程における経費節減や入札執行等によるいわゆる契約落差等により生じたものと認識している。 209 ◯江藤委員 商工金融資金及び農林水産業金融資金については、利用状況に見合うような予算額を計上し、緊急の際は補正予算で対応できるのではないか。そのほうがより予算、決算の実態を反映できるのではないか。 210 △経済観光文化局長 27年度の商工金融資金は、予算額約962億円に対し、決算額は約901億円、不用額は約61億円で、執行率は93.6%となっている。不用額が約61億円となった理由は、本市として経済環境の急変による資金需要などに迅速かつ的確に対応するため、当初予算で確保している緊急時の融資枠が不用となったことによるものである。この融資枠は、緊急時に迅速かつ的確に対応するため、補正予算ではなく当初予算において確保しているが、この取り扱いは融資の実態に合ったものと考えている。 211 △農林水産局長 農林水産業金融資金には農林業金融資金と水産業金融資金があるため、両資金を合わせて答弁する。予算額は23億8,700万円、決算額は3億702万7,000円、執行率は12.9%、不用額は約21億円であり、その理由は高齢化や後継者不足などにより、資金需要が高まっていないことが挙げられる。農林業及び水産業金融資金は、設備の導入や経営規模の拡大など、経営の安定、向上のための資金として迅速に融資する必要があることや、経済情勢や自然の影響を受けやすい産業であることから、セーフティネットとして一定規模の予算を確保しておく必要があるため、補正予算ではなく当初予算において確保しているものである。27年度においては予算額を見直しているが、今後も執行状況を踏まえながらも、また一方では融資金の目的を果たすことができるよう、適正な予算額を確保していく。 212 ◯江藤委員 商工金融資金は執行率93.6%と高いが、問題は農林水産業金融資金の執行率12.9%をどう見るかである。私は執行率が低いため、不用額を減らすためには予算額をもう少し実態に合わせたほうがよいと述べたが、実は融資実績には産業の活性化の度合いが見られ、これが低いことは借り手にそうした力、エネルギーがないことのあらわれでもある。このことは本市がどのように農林水産業を支援していくか一つのヒントとなるものであり、今後の予算編成においては、農林水産業者が金融資金をもっと活用できるよう努力されたい。最後に、これから本市の目指す都市像をどのように描き、限られた予算を選択と集中でどこに振り向けていくのかについて質疑したい。8年度から27年度まで20年間の款別、目的別の決算状況を見ると、ずっと右肩上がりなのは保健福祉費である。都市計画費は、20年前は都市開発、区画整理事業、筑肥線複線化など多くの事業が実施され、比率が大きくなっていたが、今はかなり小さくなっている。ただ今後はおそらく少しふえてくるのではないかと思う。17年度は災害費が少しふえているが、これは西方沖地震の対策費である。議会費についてはずっとおおむね0.2%で推移している。農林水産業費は一貫して下がってきており、27年度は0.9%となっている。確かに生産額では第1次産業に製造業など第2次産業を加えても、本市では8.9%であり1割に満たないが、都市の機能の基本であり、第3次産業も支えている農林水産業に対する投資がこれでよいのか。子ども施策など必要な施策は右肩上がりでふえており、特に経済観光文化費は大きな伸びを見せている。これも観光客の受け入れなど対策として必要な額と思うが、農林水産業費はこの水準で対策費と言えるのか。農業所得が低く、後継者もいないということで衰退しているように言われているが、実際にそうなのか。本市は圧倒的に就業者も生産高も第3次産業で占められており、これを反映して経済観光文化費の占める割合が高くなっている。だからこそ、もっと製造業や農林水産業を支援していく、第1次産業や第2次産業に投資して稼ぐという、バランスのとれた経済戦略が必要ではないか。現在の生産力から評価すれば、両産業で市域では9%にすぎないが、6次産品を生み出し、大量に消費可能な市場を持っている本市として、自己完結の経済循環型システムを財政支援のベースとすべきである。特に農林水産関連事業費はこの20年間一貫して下降ラインをたどっている。農林水産業は、担い手不足が生産低下を招き、支援対象の減員が決算に反映し、結果として減額になっている。後継者不足がネックとよく言われているが、果たして本当にそうなのか。何が根本的な問題で、どのような支援を行えば再生できるのかを行政を挙げてよく検討すべきである。福岡のまちのブランド力を誇示している魚、新鮮な野菜の供給、緑が近接する環境などは、生産力だけでは語れない付加価値を持っていることは言うまでもない。国の国家戦略特区を使ったスタートアップ事業で、新産業の育成にチャレンジしたり、天神ビッグバンで都心のグレードアップを図ったりすることを一概に否定はしないが、大都市である本市がさらに成長するためには、足元の資源を活用した産業を見直し、大切にする姿勢こそ求められており、選択と集中をもっとその方向に転じていくべきであると我が会派は考えるが、責任ある所見を求める。 213 △貞刈副市長 本市は日本で5番目の人口を誇る大都市でありながら、身近に豊かな自然があり、自然とまちの調和がとれていることが大きな魅力であり、コンパクトで住みやすい都市として、国内を初め世界的に高い評価を受けている。その中で農林水産業は、おいしい食べ物や豊かな自然など本市の魅力を支える重要な役割を担っており、新たな担い手づくりや生産者の所得向上に向けた取り組みを進めていきたいと考えている。本市では、多くの市民とともに策定した総合計画において、都市の成長と生活の質の向上の好循環をつくり出すことを基本戦略に掲げ、まちづくりを進めている。今後ともこの好循環をより確かなものとするため、施策、事業の選択と集中を図り、ビジネスが活発でありながらも歴史や自然に恵まれ、みんなが安心して生き生きと輝ける、人と環境と都市活力の調和がとれた、アジアのリーダー都市を目指し取り組んでいく。 214 ◯江藤委員 コンパクトで住みやすい本市において、生活の質の向上と都市の成長の好循環をより確かなものとするためにこそ、予算配分をもう少し考えるべきであり、未来の本市のあり方を見据えた政治判断が求められる。市長は市政のトップに立ってから6年となっており、我々よりもはるかに情報収集ができ、全体を見渡せる立場にあることに加え、情報の発信力に定評がある。市長のリーダーシップで大都市福岡の農林水産業が再生、復活するよう期待して私の質問を終わる。 215 ◯三角委員 みらい福岡市議団を代表して、27年度決算に関し、緑資産の有効活用について、財政健全化に向けた取り組みについて、以上2点について尋ねる。まず、緑資産の有効活用について、本市では、財政健全化の観点からも、市が保有する公有財産を資産として捉え、あらゆる財産の有効活用を推進するため、その取り組みの指針となる福岡市財産有効活用プランを平成25年10月に策定している。このプランの策定以降、各部局においては、未利用地の売却、行政財産の積極的な貸し付け、駐車場の有料化、施設の維持管理費の捻出など、資産の有効活用を図るためのさまざまな取り組みが推進されている。この取り組みは、本市の財政状況が厳しい中、市民の大切な財産の価値を高めるという点において、大いに推進すべき政策であり、本市における公有財産の中で最も数の多い公園においても例外なく推進すべきと考えている。公園は、都市の魅力を高め、競争力を持った福岡市をつくり上げていくためにも非常に重要な都市施設であり、人々の豊かな生活を生み出していくために、多様な役割を担っていくことが必要である。歳入確保と歳出削減などの財政健全化を見据え、資産の有効活用にさらに力を入れていく必要があると考えるが、公園などの緑資産の有効活用について基本的な考え方を尋ねる。 216 △住宅都市局長 公園や街路樹などの緑資産の有効活用については、限られた財源の中で社会状況の変化や市民の多様なニーズに的確に対応していく必要があるため、これまでのつくる、守るの視点だけではなく、生かす、育てるという観点から、市民との共働や資産価値の向上などを柱とする、福岡市みどり経営基本方針を、平成28年3月に策定した。この基本方針に基づき、公園の管理、運営及び活用のための仕組みづくりや民間活力の導入による利用者サービスの向上などにより、地域コミュニティの活性化、都市のにぎわいや活力の創出などに取り組んでいきたい。 217 ◯三角委員 緑資産の代表ともいえる公園の有効活用に関して、27年度の主な取り組みと決算額を尋ねる。 218 △住宅都市局長 緑資産のうち、公園の有効活用に関する27年度の主な取り組みについては、アイランドシティ中央公園の駐車場の有料化に係る設計及び工事費として1,778万円余、地域による公園の利用ルールづくりに対する支援など361万円余、また、水上公園の再整備に係る調査設計など572万円余となっている。 219 ◯三角委員 公園を緑資産と捉え、有効活用を図るという考え方は、今後の公園のあり方を考える上で非常に重要な視点だと思っている。前半の総会質疑において、先ほどの答弁にあった水上公園に関する当局の答弁が理解しづらかったため、あえて質問する。水上公園は、天神ビッグバンの東のゲートに位置づけられており、今回民間活力を導入し、水辺空間の眺望を楽しむことができる貴重な空間を整備しており、連日多くの市民でにぎわうなど、市民に喜ばれる施設ができたと思っていた。水上公園は大きな公園ではないが、都心における貴重なオープンスペースであり、避難場所確保の観点からも貴重な空間であるが、大きな建物によりオープンスペースが少なくなってしまったという議論がなされた。そのやりとりを聞く中で、幾つか疑問を感じたため、改めて水上公園の区域や面積、公園内に建てられた建物の建蔽率について尋ねる。 220 △住宅都市局長 水上公園については、薬院新川を挟んだ向かいの旧西中洲公園と一体的な水辺の景観を有していることから、平成28年7月に統合し、全体面積は2,058平方メートルとなっている。これに対し、公園内の建物の建築面積は431.73平方メートルで、建蔽率は21.0%となっている。なお、本市において、河川の両側を一体的な都市公園と位置づけている事例は、この水上公園のほか室見川緑地や那珂川緑地、金屑川公園などがある。 221 ◯三角委員 公園はレクリエーションの場、都市景観の向上、防災などさまざまな機能があるが、まずはオープンスペースの確保が最も重要なはずである。そこで、水上公園における公共オープンスペースの必要性と建蔽率の考え方について尋ねる。 222 △住宅都市局長 都市公園における公共オープンスペースについては、公園本来の機能としてその確保は重要であると考えている。そのため、公園施設の建蔽率については、都市公園法に基づき福岡市公園条例で上限を定めている。水上公園における建物は、上部空間全体が高い開放性を有し、ベンチに座っての休息や河川などの水辺の景観を楽しむことができる休養施設であり、特例措置も含め、条例に定める建蔽率の上限22%の範囲内で建築を認めているものである。その結果、水上公園においては、一定の公共オープンスペースを確保しながら、水辺の眺望を楽しむことができる貴重な空間が創出され、多くの市民や来街者などに喜ばれる魅力的な公園が実現できたと考えている。 223 ◯三角委員 水上公園おける建物の建蔽率については、条例に定める範囲内であり、一定のオープンスペースは確保しつつ、市民に喜ばれる空間が創出されたとの答弁である。公園のそばを毎日のように通っているが、屋上部分がオープンスペースになっていることを聞いて、改めて認識したところである。屋上を活用してオープンスペースを確保するというアイデアは非常におもしろいものであり、今後も取り入れられることを期待している。次に、先日の総会質疑では、水上公園の再整備に当たって、水上公園と旧西中洲公園との統合の手続が、水上公園オープンの前日だったとの話であったが、これは手続上適正なのかという疑問を感じた。そもそも河川をまたいだ公園を統合してよいのか、統合できるのであれば事業者募集の前に統合の手続を行うべきではなかったのか、オープンの前日になったのは事業者のために慌てて手続を行ったのではないかなどと疑念を持たれても仕方がない。統合の手続は適正なものであったのか、所見を尋ねる。 224 △住宅都市局長 統合の手続に関しては、まず平成27年2月の事業者募集に際し、直近の西中洲公園を水上公園と一体的な公園として、福岡市公園条例第3条に基づく水上公園の区域の変更の公示を行う予定であるということに加え、建蔽率の上限22%についても、募集要項に明記している。その結果、4グループが応募し、外部委員も含めた選定委員会による審査に基づき、西鉄を代表企業とする共同企業体を選定したものである。水上公園と旧西中洲公園の統合については、都市公園法に基づき供用開始の前までに告示を行っており、適正な手続であると考えている。 225 ◯三角委員 統合の手続が適正であるとの答弁だが、供用開始前であるのは事実であっても、供用開始の前日では疑念を持たれかねない。もっと早く手続を行うべきであり、また、このような事情は説明を聞いて初めてわかることから、議会への丁寧な説明が欠如していると思っている。今後このような事業を進めるに当たっては、市民に誤解のないよう対応するとともに、議会の場でもきちんと説明されたい。次に、事業者が本市に支払う賃料について、1平米当たり月900円は周辺と比較して極めて安いという指摘がなされたが、確かにそのとおりである。通常、市有地を貸し付ける場合は、福岡市公有財産規則により土地の適正な価格の3%が目安と理解していたが、天神と中洲に挟まれたこの水上公園周辺の地価を考えると、非常に安い賃料であることは明らかである。また、市民から、特定の事業者を過度にもうけさせるために本市が特別に配慮しているのではないか、納得がいかないと思われても仕方がない。そこで、この賃料設定の考え方について所見を尋ねる。 226 △住宅都市局長 水上公園において、事業者が本市に払う賃料については、福岡市公園条例に定める公園施設設置等使用料として、1平方メートル当たり月900円としており、これは今回の事業者募集に当たって特別に設定したものではなく、市内一律に定めているものである。周辺の地価を勘案すると安いのではという指摘もあるが、事業者は上部空間全体が高い開放性を有した建物に約3億6,000万円の投資を行い、魅力的な店舗も誘致し、多くの市民や来街者が集い、憩う、魅力的な水辺の公園となったと考えている。しかしながら、市内一律の公園施設設置等使用料については、郊外部の地域では逆に高いという声もあり、指摘の点も踏まえ、今後、公園条例の改正も含め、早急に検討を進める。 227 ◯三角委員 公園などの緑資産の有効活用は、財政健全化の観点からも重要であり、今後、他の公園などでもさらに進めてもらいたいと思っている。新しい水上公園は、以前に比べると多くの市民や観光客が集まっており、その点では成功事例だと言えるが、全市一律の使用料を設定しているのは、市民から見ても納得できるものではないため、特に営利目的の施設を公園につくる場合は土地評価額をもとに算定するなど、早急に見直されたい。また、緑資産の有効活用に当たっては、さまざまな工夫や規制緩和などにより、市民に喜ばれる施設をつくっていくことが重要であり、今後ともチャレンジしてほしいと思っているが、その手続については市民への説明責任を果たし、市民に誤解のないように適切に進めるべきであり、議会に対しては特に丁寧な説明を行うことを強く要望しておく。次に、財政健全化に向けた取り組みについて質問する。本市の決算状況を見ると、連結での実質収支は一般会計の約107億円を含め、約391億円の黒字になっている。また満期一括積立金を除く市債残高も、26年度から280億円の縮減がなされ、約2兆2,159億円となり、16年度のピークから約3,700億円減少している。その結果、実質公債比率は毎年度改善しており、起債について国の許可が必要となる基準の18%を、20年度決算から毎年下回っており、27年度においては、26年度に比べ0.2ポイント改善の12.4%となっている。将来負担比率も早期健全化基準である400%を大きく下回る162.4%となっているが、満期一括積立金を除く市債残高は、市民1人当たり147万円となっており、いまだに高い水準である。また、実質公債比率は年々改善しているとはいえ、他都市との比較を26年度決算ベースで見ると、政令指定都市の中で高いほうから6番目、将来負担比率も同様に6番目となっている。あわせて公債費の額が、14年度以降1,000億円程度の水準で推移している状況などを見ると、27年度決算が黒字ということで本当に喜んでいられるのか。毎年のように黒字を計上しながら、一方でいつも厳しい財政状況であると当局からは説明を受けており、毎年首をかしげているところである。今後は、扶助費を初めとする義務的経費や学校など公共施設の大量更新に要する経費がふえることや、少子・高齢化による生産年齢人口の減少、景気の劇的な持ち直しが見込まれないこと、さらには4年度のピーク時に942億円もあった財政調整用基金残高が307億円にまで減少している状況などを考えると、本当の意味で財政の持続可能性に疑問を持つところである。一層の財政健全化に向けた取り組みが必要であると考えるが、その方策として、さらなる収入増、一方でさらなる経費削減という歳入歳出の両面に取り組む必要がある。いずれの取り組みも重要であるが、まず収入面について尋ねる。収入の増加に向けて特に即効性があると思われるのが、収入未済金の回収である。民間経営の観点から言えば、財務状況が厳しい中で、売り掛け債権など未収金を放っておく経営者はどこにもいない。それは、これらの確実な回収ができなければ、会社は破綻してしまうからであり、民間企業における未収金回収の対応は非常にシビアである。そこで、27年度決算における一般会計及び特別会計全体のそれぞれの収入未済について、その額と調定額に対する割合を示されたい。 228 △財政局長 27年度における収入未済額及び調定額に占める割合は、一般会計は約90億9,000万円、1.1%であり、17の特別会計全体で約176億2,100万円、1.9%である。 229 ◯三角委員 一般会計の収入未済額は、調定額に対して1.1%と少なく見えるが、額としては約90億9,000万円であり、まだまだ改善が必要である。その主な内訳について尋ねる。 230 △財政局長 一般会計の収入未済額の主な内訳は、市税が約51億1,400万円、諸収入が約28億6,000万円、分担金及び負担金が約9億4,500万円となっている。 231 ◯三角委員 市税の51億1,400万円が収入未済額の半分以上を占めているが、最も収入未済額が大きい市税収入について、過去3カ年の収入率の推移を、現年課税分、滞納繰越分、全体ごとに示されたい。 232 △財政局長 市税の収入率の推移については、25年度は現年課税分が99.1%、滞納繰越分が30.4%、全体が97.1%、26年度は現年課税分が99.3%、滞納繰越分が32.5%、全体が97.6%、27年度は現年課税分が99.2%、滞納繰越分が36.1%、全体が97.9%となっている。 233 ◯三角委員 毎年収入率は少しずつ改善しており、行財政改革プランに掲げられた目標値である97.1%を上回っているが、収入率向上に向けた取り組みの具体的な内容について尋ねる。 234 △財政局長 22年度に、副市長をトップとする福岡市市税収入向上対策本部を立ち上げ、納税環境の整備や口座振替の加入勧奨による納期内納付の推進、滞納整理の強化などに取り組んでいるところである。 235 ◯三角委員 収入率向上に向け、当局も努力していることはわかったが、51億円余という金額は余りにも大きい。滞納繰越分については、収入率をさらに高めていくべきと考え、27年度の全体の数値97.9%を下回る収納率の市税項目については、特に取り組みの強化を要望しておく。次に、諸収入の収入未済額28億6,000万円と分担金及び負担金の収入未済額9億4,500万円のうち、それぞれ最も大きな項目とその額について尋ねる。 236 △財政局長 収入未済額の最も大きい項目は、諸収入では生活保護費返還金で約10億8,500万円となっており、分担金及び負担金では保育料等で約6億7,700万円となっている。 237 ◯三角委員 諸収入の収入未済額について、生活保護費返還金とはどのようなものか。また、生活保護費返還金の過去3カ年の収納率の推移を示されたい。 238 △保健福祉局長 生活保護費で返還金が生じるのは、主に2つの場合である。1つ目は、保護受給者が、緊急の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた場合に発生するもので、生活保護法第63条の保護費の費用返還義務による返還金である。2つ目は、不実の申請その他不正な手段により保護を受け、または他人に受けさせた場合に発生するもので、生活保護法第78条による徴収金である。返還金、徴収金の収納率は、25年度が37.8%、26年度が37.6%、27年度が37.1%となっている。 239 ◯三角委員 生活保護費返還金とは、受け取り過ぎた生活保護費を市に返すということだが、当然全額返還が求められるべきであり、収納率の向上を目指すのは当然である。この3年間を見ると、毎年収納率が下がっているが、その要因を尋ねる。 240 △保健福祉局長 収納率は3年間で年々下がる傾向にあるが、その内容を見ると、当該年度に新たに徴収を求めた現年度分は収納率が上がっている状況であるが、以前から徴収を求めている過年度分の収納率が下がっているという結果になっている。これには、徴収金額の決定後に生活保護が廃止となり、居住地が不明となることで、督促や催告が極めて困難となる事例や納付指導に応じない事例がふえ、徴収に至っていないという実態がある。 241 ◯三角委員 収納率が毎年下がっていることに加え、37.1%という数値は余りにも低く、収納率向上に向けた取り組みが不足していると思われる。払い過ぎたものは返還してもらうのが当然であり、そうでなければ市民の理解は得られない。生活保護行政は、納税者の理解が得られないと成り立たない事業であり、多くの市民の理解を得るためにも、今後どのように収納率を向上させていくのか、その対策を尋ねる。 242 △保健福祉局長 収納率向上の取り組みは、特に生活保護の場合、信頼を得るためにも非常に重要だと考えている。生活保護を受給している不正受給者については、まずは本人の同意を得た上で、生活保護費の支給時において徴収金を徴収できるような取り組みを進めている。さらに、これ以外の納付書で支払いを行っている者についても、滞納がある場合には、再度返還に係る趣旨を十分に説明するとともに、保護費支給時に徴収する方法についての利便性等の説明も徹底し、確実に徴収に結びつくよう、今取り組んでいるところである。また、生活保護を廃止になった者については、督促などの納付指導を継続するとともに、特に債務者の居住地把握や死亡時の相続人調査等を強化し、納付指導を徹底しているところである。 243 ◯三角委員 生活保護事業については、さまざまな要素が複雑に絡んでいるとは思うが、しっかりと取り組まれたい。次に、分担金及び負担金の収入未済額について、最も金額の大きい保育料の過去3カ年の収納率の推移を、現年度分、滞納繰越分、全体ごとに示されたい。 244 △こども未来局長 保育料の収納率は、25年度が現年度分98.6%、滞納繰越分9.3%、全体で91%、26年度が現年度分98.5%、滞納繰越分11.4%、全体で91.6%、27年度が現年度分97.9%、滞納繰越分12.4%、全体で91.2%となっている。 245 ◯三角委員 保育料についても、27年度の収納率は前年度と比較して低下しているが、その要因、収納率向上に向けた今後の対策について尋ねる。 246 △こども未来局長 27年度については、新制度移行に伴う膨大な業務の処理に重点的に取り組む必要があったことから、納付勧奨に十分な時間を割けなかったことや、入所者数の増加に伴い新規入所者の口座振替率が低下したことが、収納率低下の要因と考えている。収納率向上に向けた対策として、現年度分については、確実な納付を進めるため、入所決定通知書や保育料決定通知書、納付書へ口座振替依頼書を同封することにより、重ねて登録を促すとともに、児童が入所している保育所を通じての口座振替の勧奨を強化するなど、口座振替率の向上に努めていく。また、滞納繰越分については、長期・高額滞納者対応の専任の嘱託職員を活用し、面接、資力調査、差し押さえ等を積極的に実施する等、納付指導を強化し、収納率の一層の向上に努めていく。 247 ◯三角委員 保育料は元来、収入に応じてその額が決められており、滞納者の大半は、払えるのに払わない保護者で、車や家のローンなどが優先され、保育料の優先順位が低いのではないかと考える。待機児童の問題がまだまだ解消されない中、長期滞納したまま保育所に入所できる状況が続くとすれば、待機している家庭から、保育料滞納者が入所できて、なぜ自分の子は待機しなければならないのか、保育料をきちんと払うことを条件に早期入所はできないのかと言われても、納得してもらえる説明ができないのではないか。滞納者については、口座振替の勧奨強化や督促など納入指導をもっと迅速に行うとともに、現場の園長などから保護者への納付指導や、卒園後も納付指導を行うなど、これまで以上に収納率向上対策を強化するよう求めておく。次に、特別会計の中で、平成28年3月末日を出納閉鎖日として決算を行った市営競艇事業特別会計を除き、収入未済額が多い会計の額とその主な内容について尋ねる。 248 △財政局長 市営競艇事業特別会計を除く16の特別会計において、27年度の収入未済額が多い会計は、国民健康保険事業特別会計及び母子父子寡婦福祉資金貸付事業特別会計である。まず、国民健康保険事業特別会計の27年度の収入未済額は約72億3,700万円で、主な項目は国民健康保険料の約71億4,800万円となっている。また、母子父子寡婦福祉資金貸付事業特別会計の27年度の収入未済額は約27億1,200万円で、全額が貸付金償還金となっている。 249 ◯三角委員 国民健康保険事業については、近年の高齢化の進展等による医療費の増加に伴い、保険料負担が大きくなっている一方で、現下の経済状況、雇用情勢から被保険者の所得の減少などにより、保険料の収納確保にも影響が生じ、その結果、事業の財政状況が厳しくなることが考えられる。そこで、過去3カ年の保険料収納率の推移について、現年度分、滞納繰越分、全体ごとに示されたい。 250 △保健福祉局長 保険料収納率の推移について、現年度分が、25年度は87.71%、26年度は88.81%、27年度は90.09%で、滞納繰越分が、25年度は17.54%、26年度は20.7%、27年度は23.71%で、現年度分と滞納繰越分を合わせた全体分が、25年度は72.57%、26年度は74.23%、27年度は76.22%となっている。なお、現年度分の収納率については、10年度以来17年ぶりに90%に到達したところである。 251 ◯三角委員 国民健康保険料は、国民健康保険事業を維持、運営していく上で根幹となる財源であり、また、きちんと保険料を納めている人との負担の公平を図る必要がある。保険料収納確保は極めて重要な課題であり、市として収納率向上のためどのように取り組むのか尋ねる。 252 △保健福祉局長 従来からコンビニ収納などの納付環境の整備を行うとともに、初期滞納者に対してはコールセンターからの納付勧奨を行い、累積滞納者に対しての文書等による催告や差し押さえなどの滞納処分を行っている。また、確実な収納方法である口座振替の促進のため、平成27年1月よりキャッシュカードを利用して区役所などの窓口で簡単に口座振替の申し込みができる、ペイジー口座振替受付サービスを導入し、さらに同年4月からは、規則の改正により、保険料の納付を原則口座振替としたところである。さらに新たな取り組みとして、分割納付世帯についても口座振替ができるよう、システムの改修に着手しており、今後とも被保険者間の負担の公平を図るという観点から、収納対策の強化に取り組んでいく。 253 ◯三角委員 次に、母子父子寡婦福祉資金貸付事業特会における貸付金償還金について、過去3カ年の収納率の推移を、現年度分、滞納繰越分、全体ごとに示されたい。 254 △こども未来局長 貸付金償還金の収納率については、25年度が現年度分82.3%、滞納繰越分3.7%、全体で16.3%、26年度が現年度分81.9%、滞納繰越分3.4%、全体で15.4%、27年度が現年度分82.0%、滞納繰越分3.4%、全体で14.9%となっている。 255 ◯三角委員 過去から蓄積した滞納を加えた全体の収納率は10%台と依然として極めて低い状況にある。収納率の一層の向上に向け、償還指導の強化が必要であるが、どのような対策を考えているのか。 256 △こども未来局長 収納率向上に向けた対策として、まず現年度分については、口座振替の原則化、償還が開始となる借受人全員に対する債権の確認と償還指導、償還開始直後の滞納者への重点指導を実施している。滞納繰越分については、償還指導員による訪問指導、長期滞納者への重点指導等に加え、27年度から債権回収会社に一部の債権回収を委託するなど、償還指導の強化に取り組んでおり、今後とも収納率の一層の向上に努めていく。 257 ◯三角委員 当該事業は、貸付金事業であるため、償還されなければ効率的、持続的な事業運営はできないはずである。収入未済金について、現年度分に関しては各会計とも少しずつ収納率が上がっているが、ネックになっているのは、滞納繰越分の収納率がなかなか上がらないことだと思われるため、さらに今以上の努力をお願いしたい。歳入の今後の見通しを考えると、権限移譲に伴うものを除き、市税が大幅に増加するとは思われず、一方で地方交付税も近年、臨時財政対策債で肩がわりさせられるなど、国も頼りにできない。したがって、自助努力によって実質的な増収に直結する収入率及び収納率の向上がまさに重要であると考える。収納率の向上は、公平性の観点や財政健全化の観点からも、積極的に取り組んでいく必要があると考えるが、所見を尋ねる。 258 △財政局長 収入率、収納率の向上については、市民負担の公平性の確保に加え、歳入の確保の観点からも重要であると認識しており、債権管理に関する手続や基準を定めた債権管理条例の運用、訴訟手続の促進等により、適正な債権管理の推進や徴収の強化に取り組んでいるところである。今後とも、債権管理マニュアルの活用による研修や助言等を通じて、徴収手続の適正実施を推進するとともに、歳入向上推進本部を中心に、全庁的な債権管理の推進に取り組んでいく。 259 ◯三角委員 財政健全化のもう一つの重要な側面である歳出について、27年度決算における義務的経費の額及び歳出全体に占める割合を示されたい。 260 △財政局長 27年度の義務的経費の決算見込み額は約3,746億円となっており、一般会計歳出に占める割合は48.2%となっている。 261 ◯三角委員 48.2%ということで約半分が義務的経費ということになるが、義務的経費の内訳と額及び今後の見通しについて尋ねる。 262 △財政局長 27年度の義務的経費の内訳は、扶助費が約2,020億円、公債費が約961億円、人件費が約765億円となっている。これらの今後の見通しについては、近年、保育所等入所児童や障がい児・者の福祉サービスの利用者等が増加しており、今後もこうした傾向が続くと見込まれ、扶助費は大きく増加すると見込まれる一方で、権限移譲等に伴うものを除く人件費及び公債費は、当面、引き続きおおむね横ばいで推移していくものと見込まれる。 263 ◯三角委員 義務的経費のほぼ半分を占める扶助費については、国の制度や法律に基づくものが多く、また景気や雇用状況にも左右されることは否めないが、引き続きそれぞれの課題に積極的に取り組み、適正な事業の推進ときめ細かい取り組みを要望しておく。公債費については、過去の借金を30年もの長期間にわたって返済していくものであるが、近年の市債発行抑制の取り組みにより、先々公債費を圧縮していくことはできても、すぐに削減できるものではない。人件費については、大量採用者の退職期のピークは過ぎたものの、人件費を削減するためには、根本的に業務を見直すことが肝要である。義務的経費とはいえ、人件費については民でできるものは民に任せるという基本的な考え方のもと、民営化や民間委託などを推し進め、その分、新規採用職員を抑制することによって、削減効果が期待できる。次に、民間活力の活用の観点から質問する。我が会派は、これまでも議会の中で、民でできるものは民に任せるとの観点から、自動車運転業務、直営ごみ収集業務、学校用務員業務、学校給食調理業務などの見直しについて質問してきたが、これらについて、これまでどのような見直しが行われてきたのか。まず、自動車運転業務について、運転手つきの乗用系車両の集中管理などをさらに進めることにより、運行体制の一層の効率化を図り、24年度から3年間程度で、対象車両の3分の1程度を減車するとの答弁が過去にあったが、現在の状況について尋ねる。 264 △財政局長 自動車運転手つきの乗用系車両については、車両の集中管理などを進め、運行体制の一層の効率化を図り、23年度の48台から31台へと17台減車したところである。 265 ◯三角委員 平成27年までの3年間で、24年度に答弁された以上の減車を達成されたことは一定の評価をしておくが、自動車運転業務については、まだまだ見直しが可能と考えられるため、さらなる減車や集中管理など、一層の効率化に努めていただくよう要望しておく。次に、学校用務員の業務については、従来学校用務員が行っていた学校と教育委員会事務局間での文書連絡業務を見直し、民間に委託し、その後も業務のあり方を検討していくとのことであったが、これまでの見直し状況について尋ねる。 266 △教育長 学校用務員が行う学校の環境整備等に関する業務については、効率的な実施体制となるよう見直しを行い、26年度から、従来の各校1人を基本とする配置から、市内を21のエリアに分け、各エリアの拠点となる学校に複数の学校用務員を配置する拠点校制度に移行している。 267 ◯三角委員 学校用務員の業務については、今後とも児童生徒の安全で快適な学習環境を確保しつつ、効率的な実施体制となるよう業務のあり方、内容について、さらなる検討を行うよう要望しておく。次に、平成27年9月議会において、27年度から開始されたごみ収集における直営業務の見直しについて質問したところ、市の施設から排出されるごみ収集に一部民間収集を導入するとともに、環境事業所の3つの係のうち博多区那珂に配置している第3係を廃止したとのことであった。また、26年度に環境事業所第3係が収集に要した費用についても質問したところ、人件費、施設維持費及び車両整備等で約9,320万円とのことであったが、27年度に一部民間収集に切りかえたことに伴い、要した費用は幾らになったのか。 268 △環境局長 27年度の民間収集に要した費用は約4,160万円である。 269 ◯三角委員 ごみ収集業務に関して、民間委託により生じている課題や問題点があれば、示されたい。 270 △環境局長 収集品目によって収集事業者が異なるため、民間委託を開始した27年度当初は、担当以外のごみを誤って収集するなど一部の混乱はあったが、その後は特に問題なくごみ収集がなされている。 271 ◯三角委員 年間で約5,000万円の財政効果を上げており、業務についても、特に課題や問題点がないということである。今後も、ごみ収集業務における民間委託についてスピード感を持って推進されるよう要望しておく。次に、小学校給食調理等業務の民間委託について、現状及び進捗状況を尋ねる。 272 △教育長 小学校給食調理等業務の民間委託については、栄養教諭等配置校を対象に、24年度からの試行を経て、26年度から本格実施している。26年度は16校、27年度は26校、28年度は36校において委託を実施している。 273 ◯三角委員 民間委託によって生じている課題や問題点があれば、示されたい。 274 △教育長 民間委託開始直後は、給食の仕上がり時間が前後することなどがあったが、経験を積むことで改善され、安全、安心でおいしい給食を提供できている。 275 ◯三角委員 民間委託後の給食に関して、実際に食べている子どもたちの反応はどうか。委託後に子どもたちや教職員を対象に行ったアンケート等があれば、その結果を示されたい。 276 △教育長 民間委託試行時の平成25年5月に実施したアンケートでは、約93%の児童が「おいしい」、約88%が「給食を楽しみにしている」と回答している。また、試行校の教職員に対し、平成25年7月に実施したアンケートでは、給食の仕上がりについて約95%が「良かった」、味つけについても約93%が「良かった」と回答している。味つけや衛生管理など、栄養教諭等による日常的な確認、指導を行っており、これまでと変わらない給食提供ができている。 277 ◯三角委員 先日、和白小学校のエアコンのきいた快適な教室で、子どもたちと一緒に給食を食べたが、全員が給食は大変おいしいと言っていた。その日の給食費243円を納付したが、こんなにおいしい給食がわずか243円で食べられることは、非常によいことである。また、一緒に給食を食べた班の中には、アレルギーがあるためか、弁当を持参している児童がいたが、アレルギーに関する取り組みはどのようになっているのか。 278 △教育長 本市の小学校給食における食物アレルギーへの対応としては、アレルギーの原因となるもののうち、調理の最終段階で除去が可能な鶏卵、マヨネーズ、ゴマ、ゴマ油について、除去した給食を提供しており、民間委託している学校でも、この対応をとっている。 279 ◯三角委員 アレルギーについては、今挙げられた数項目以外にも、さまざまなアレルギーがある。アナフィラキシーショックなど重篤なケースもあるため、さらにきめ細やかな対応を要望しておく。選定された民間事業者は、地場の業者から選ばれたのか。 280 △教育長 事業者の選定に当たっては、地場に限定せず募集し、給食調理業務の受託実績、衛生管理、人員配置、経費などの視点を総合的に評価して決定している。現在5つの事業者に委託しており、そのうち地場の事業者は2者である。 281 ◯三角委員 直営から民間委託に移行したことによる財政効果を尋ねる。 282 △教育長 民間委託の財政効果については、直営で運営した場合の人件費等と比較すると、本格実施した26年度から2年間の合計で、約1億3,300万円の差額が生じている。 283 ◯三角委員 民間委託による財政効果が確実に出ている点を評価するが、まだ100校を超える学校が未実施であり、民間委託を拡大すべきと考えるが、今後も民間委託は拡大していくのか、今後の方針を尋ねる。 284 △教育長 小学校給食調理等業務については、今後も安全、安心でおいしい給食の提供を前提として、順次民間委託を進めていく。 285 ◯三角委員 引き続き、おいしく安全で、しかも民間活力を活用しながら、給食を提供してもらいたい。我が会派は、職員をリストラしろと言っているのではなく、現在の職員の身分を保障することは当然であると考えている。民でできることは民に任せることは、委託を受けた民間業者の企業収益につながり、そのことが市税の増加にもつながるなど効果は非常に大きく、民間での業務委託拡大に伴う雇用創出にもつながると考えている。本市は政令指定都市の中でも厳しい財政状況にあるのは明白であり、引き続き民間活用の可能な職種については、退職補充による新規採用をやめ、再度業務内容を精査し、民間委託を推進すべきと述べておく。経済の劇的な改善が見込めない今日において、市税を初めとする一般財源の増加を待っていても進展はない。こうした状況だからこそ、行政みずからが財政の健全化に向けて収納率の向上に積極的に取り組んでいくべきである。また一方で、歳出の削減、特に増大していく義務的経費の中でも、人件費の削減は財政健全化のために避けては通れない道と考える。最後に、行財政改革プランの計画期間終了後の29年度以降、財政健全化に向けた見直しにどのように取り組むのか、財政運営に責任を持つ高島市長に決意を尋ねる。 286 △市長 本市では、25年度に策定した行財政改革プランに基づき、健全な財政運営のための取り組みを進め、生活の質の向上などに必要な財源を確保するとともに、将来世代に過度な負担を残さないよう、市債残高を着実に縮減させてきた。しかしながら、今後も社会保障関係費の増加や公共施設の改修、修繕等に係る財政需要の増大が見込まれ、本市の財政は依然として楽観できる状況にはない。そこで、投資の選択と集中を図るとともに、歳入の積極的な確保や民間活力の活用などによる行政運営の効率化、既存事業の組みかえなどの不断の改善に取り組んでいきたいと考えている。さらに、中長期的に、都市の成長と生活の質の向上のために必要な施策事業の推進により税源の涵養を図りつつ、超高齢社会に対応する持続可能な仕組みづくりやアセットマネジメントの推進、市債残高の縮減に向けた市債発行の抑制などにより、将来にわたり持続可能な財政運営にしっかりと取り組んでいきたい。 287 ◯倉元委員 日本共産党市議団を代表して、職員懲戒免職をめぐる最高裁判決に対する市長の態度、行財政改革について質問する。まず、最高裁判決に対する市長の態度について尋ねていく。本市が酒気帯び運転を理由に水道局職員を懲戒免職処分にしたことの是非を争った裁判は、本市が地裁、高裁と続けて敗訴し、2015年に上告したが、先月、最高裁はこれを退け、免職処分の取り消しを命じた判決が確定した。高島市長は先月13日、判決を受けて、今回の判断が社会に対して誤ったメッセージを発信してしまうことにならないかと大変危惧しているとのコメントを発表した。市長が言う誤ったメッセージとはどういう意味なのか。 288 △市長 今回の最高裁の判決は、職員の懲戒免職処分を取り消すという福岡高等裁判所の判決を追認するという内容であるが、高裁判決の中では、全国的に飲酒運転撲滅に対する社会的な機運が高まり、福岡市を挙げて取り組んでいる中にあって、厳しい懲戒処分をもって対処するという方針は十分に理解できると示した上で、走行距離が短く、事故を発生させていないことなどから、比較的軽微な飲酒運転であったということが理由として挙げられている。この判決は、法律上の均衡性としては理解できるものの、受け取る人によっては、この判決の一部分のみをもって、距離が短ければ飲酒運転をしてもいい、事故を起こさなければ飲酒運転をしてもいいというように、社会に向けた誤ったメッセージとして捉えられてしまうおそれがあるのではないかと懸念している。飲酒運転が持つ危険性や、悲惨な飲酒運転事故により被害者やその遺族が負った深い悲しみを考えれば、飲酒運転に軽いも重いもなく、たとえ少しの飲酒量でも、少しの距離でも、飲酒運転は絶対にしてはならないと考えている。私のコメントの趣旨は、裁判所の判決の全体は司法機関の判断として尊重しつつも、走行距離が短くても、事故を発生させていなくても飲酒運転をしてはならないということを訴えるとともに、本市として、今後も引き続き飲酒運転撲滅に向けて全市を挙げて取り組んでいき、福岡で飲酒運転により悲惨な事故を二度と起こさせない、飲酒運転を行った職員に対しては、原則免職という厳しい態度で臨むという方針は変えないという決意を改めて示しているものである。 289 ◯倉元委員 市長は判決を尊重しつつと言いながらも全体的には不服があるようだが、判決は当該職員の飲酒運転について、責任非難の程度は決して軽くないと非難している。それなのに誤ったメッセージと述べた市長のコメントは、裁判所があたかも飲酒運転を容認しているかのように誤解されかねず、市長のコメントこそ誤ったメッセージと言わなければならないと思うが、所見を伺う。 290 △市長 私のコメントの趣旨は、裁判所の判決自体は司法機関の判断として尊重しつつも、距離が短くても、事故を発生させていなくても、飲酒運転をしてはならないということを訴えるとともに、本市として、今後も引き続き飲酒運転撲滅に向けて全市を挙げて取り組んでいき、福岡で飲酒運転による悲惨な事故を二度と起こさせない、飲酒運転を行った職員に対しては原則免職という厳しい態度で臨むという方針は変えないという決意を改めて示しているものである。 291 ◯倉元委員 市長は、飲酒運転を根絶することと職員を免職にすることを意図的に一緒にしているので、今回のようなコメントが行われるのである。判決は、懲戒処分の内容を決める際に、飲酒運転の状況や職員のその後の態度、処分歴や日ごろの勤務態度などを考慮し、特に慎重な配慮が求められるべきとして、諸事情を考慮すれば、当該職員を免職にした処分は重過ぎると結論づけ、市長の主張を社会観念上、著しく妥当を欠いて、裁量権の範囲を逸脱して違法と断じたわけである。したがって、市長が下した今回の懲戒免職という処分は重過ぎたと思うが、所見を伺う。 292 △水道事業管理者 本市では、飲酒運転が悲惨な事故を引き起こす危険性が高いことから、市民、県民とともに飲酒運転撲滅に向けて全力を挙げて取り組んでいる。そうした中、当該職員が起こした平成25年9月の飲酒運転について、懲戒処分の指針に定めるとおり、動機、態様及び結果、故意または過失の有無、職員の職責、他の職員及び社会に与える影響などを総合的に考慮した上で懲戒免職としたところであり、この処分については、任命権者の裁量の範囲内での適切な判断だったと考えている。しかし、裁判所は、諸事情を考慮すれば、免職とした処分は処分の量定として重きに失し、裁量権の範囲を逸脱していると判断し、免職処分を取り消す判決が出されたことを踏まえ、改めて処分を検討し、平成28年9月21日に停職1年の処分を行ったものである。 293 ◯倉元委員 本市が行った処分というのは、違法性の程度と懲戒免職という処分のバランスが欠けている。何でもかんでも首を切るというのは許されない。本市公務員倫理審査会でも、免職というのは公務員にとっては死刑と同じだ、慎重にすべきだとの意見が繰り返し出されている。しかし、懲戒処分の指針が改定されて以来、市長は飲酒運転事案の処分は全て懲戒免職を課してきた。市長のやり方が裁判所で裁量権の範囲を逸脱した違法という判決が出た以上、飲酒運転事例が起きれば、一律に懲戒免職というやり方は見直すべきと思うが、所見を伺う。 294 △総務企画局長 懲戒処分を行う際には、懲戒処分の指針に定めるとおり、動機、態様及び結果、故意または過失の有無、職員の職責、他の職員及び社会に与える影響などを総合的に考慮した上で判断している。現在の懲戒処分の指針の妥当性は判決の中でも認められていることからも、今後ともこれらの要素を総合的に考慮した上で、処分量定を決定していく。 295 ◯倉元委員 指針の合理性が裁判で認められたなどと言って、これからも一律に懲戒免職とするというならば、市長は今回の最高裁判決を受けとめていないということになる。判決は、懲戒免職は公務員からその立場を奪うことになるため、濫用を厳しく戒めている。公務労働に詳しい弁護士に話を聞いたところ、一律に懲戒免職にすることは、労働法が禁じる解雇権の濫用に当たるものであり、職員の人権、生存権を剥奪することについては全く考慮していないものだと批判されていた。市長は、福岡市長という行政の長である。その行政の長が、司法の最高判断である最高裁判決に対して批判的な態度をとるというのはいかがなものか。憲法が定める三権分立を全く理解していない。立法、行政、司法が互いに抑制、均衡することによって、権力の集中と濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する仕組みである。司法には行政を抑制する役割がある。これを否定することは憲法違反、独裁政治につながる危険な考えだと言わなければならない。三権分立さえないがしろにする、これは市長のおごりとしか言いようがない。その姿勢を改めなければ、行政の長としての資格がないことを指摘しておく。次に、行財政改革について尋ねていく。本市では、2013年から4年間の行財政運営の指針となる行財政改革プランをもって目標値を掲げ、取り組みを行っており、2015年度末には約9割が実施されたとのことである。しかしながら、その中身は福祉や教育の切り捨てにつながるものも多く、看過することができない。そこで幾つかの分野についてただしていく。まず、生活保護について、生活保護適正化の名前で1年間に保護費を7億円も縮減した取り組みが、いかに保護受給者に影響を与えているのかを見てみたい。就労支援による縮減額について尋ねる。 296 △保健福祉局長 就労支援事業による効果額は、2億3,966万円余である。 297 ◯倉元委員 2015年度に何人の就労を達成したのか。 298 △保健福祉局長 当該事業の活用により就労した人数は、1,301人である。 299 ◯倉元委員 心身が健康であり、就労の意思がある方に対し、こうした支援を行うことは行政の大事な役割である。しかし、私が知るところでは、働ける状態にないにもかかわらず、就労を促されるという事例もある。家がなくて困っていた男性は、精神的にも不安定な状態で住居を定め、生活保護の申請を行った。これで安定が手に入ると安堵した矢先に、担当のケースワーカーは矢継ぎ早に仕事を探せとばかり言ってきたそうである。稼働年齢の人であり、能力の活用を求めてきたのであろうが、まだ保護の決定も出ていない、しかも求職活動が保護の決定の条件のようなことまで迫ってくる。このような事例は、就労の支援というより強制ではないかと思うが、所見を伺う。 300 △保健福祉局長 稼働能力がある方については、生活保護法第4条などにより、保護は利用し得る資産、能力、その他あらゆるものを活用することを要件とするとともに、稼働能力を最低限度の生活の維持のため活用する旨が定められており、速やかに能力を活用するため、求職活動を行っていただくことが原則と考えている。当然、保護の決定は決定として適正に行うが、あわせて能力活用についても、しっかり取り組んでいただくということで、ケースワーカーは本人の状況を適切に把握しながら、就労支援を行っている。 301 ◯倉元委員 この人はケースワーカーから、何の仕事でもいいから早く仕事を決めてくださいとまで言われている。憲法に保障された職業選択の自由を奪うような就労指導は不適切な対応と思うが、所見を伺う。 302 △保健福祉局長 稼働能力の活用については、国の通知により、年齢や医学的な面からの評価だけではなく、その者の有している資格、生活歴、職歴等を把握、分析し、それらを客観的かつ総合的に勘案することとされており、本人の能力に適した就労が実現できるよう支援していくことが基本的と考えている。しかしながら、地域の求人状況には、必ずしも本人の意向と一致するとは限らない場合もある。また、稼働能力の活用の観点から、本人の能力を活用できる機会があれば、早期の就労を促していくことを原則としている。そのため、稼働能力の活用に当たっては、本人の能力や意向を基本としながら、まずは現場における稼働能力の活用を支援するとともに、就労後の状況に応じて、転職による増収の相談を継続するなど、本人の稼働能力をより生かせるよう、効果的な支援に継続的に取り組む必要があると考えている。 303 ◯倉元委員 適正にやっていると言うが、私が出した例に代表されるような無理な就労指導が行われ、多くの保護受給者が悩んでいる例を数多く見てきた。2015年度に1,301人が就労できたとのことだが、就労を働きかけたのは何人か。
    304 △保健福祉局長 就労支援事業を活用した人数は、2,783人である。 305 ◯倉元委員 2,783人の就労支援を受けた人のうち、46%の人しか職につけなかった。この数字は、生活保護受給者を取り巻く厳しい就労の現実をあらわしていると思う。就労できて最低生活費以上の給料をもらい保護制度から自立できたのは、2015年度に何人いるのか。 306 △保健福祉局長 就労支援事業を活用した方のうち、就労支援を経て、生活保護から自立できた方は210人である。 307 ◯倉元委員 就労支援を受けた受給者の7%しか自立できていない。単身者の最低生活費は家賃を含めても一月10万円ぐらいであり、9割以上の人が10万円以下の給料しかもらえない条件で就職したことが推測され、多くが非正規のパート労働と考えられる。就労できる受給者は一定いるが、生活保護受給者を取り巻く厳しい就労の現実の中では生活保護から抜けられないのが実態と思うが、所見を伺う。 308 △保健福祉局長 就労環境を雇用情勢等から見ると、本市における近年の雇用情勢、有効求人倍率等については、21年度の0.43倍を底に、それ以降は上昇しており、27年度は1.29倍となっている。一方、27年度の就労支援事業の実績によると、就労した割合は46.7%、生活保護から自立した割合は7.5%となっており、稼働能力の活用を図っていく中で、自立につながる世帯はその一部にとどまっており、まだまだ課題はある。しかしながら、生活保護については、制度の趣旨からすると、まずは本人の状況に応じて能力の活用を図っていただきながら、さらに増収の努力などを図っていただくことが基本であり、重要なことである。今後も本人の稼働能力について、十分な活用が行われ自立につながるよう、本人の状況を適切に把握しながら、就労支援にしっかり取り組んでいきたいと考えている。 309 ◯倉元委員 受給者をめぐる雇用環境は非常に厳しいものがある。生活保護受給者は働かずに怠けているという論調が一部にあるが、働きたくても自立できるだけの仕事がなかなかないともいえる。何でもいいから就職させれば、もらった給料の分だけ保護費の支給額を減らすことができるから、本市にとってはうれしいことかもしれない。しかし、自立できる人は一握りであり、保護受給者は減らず、根本的な解決になっていかないのである。やはり最低生活費を超える給与が支給される安定した仕事につけてこそ、就労支援というものではないのか。現在の厳しい雇用状況の中で一律にとにかく就職しろと促すのは、受給者の自立しようとする意思を阻害するものであり、無理な指導は改めるべきと思うが、所見を伺う。 310 △保健福祉局長 就労支援に当たっては、本人の能力や意向などを尊重することが基本と考えているが、また一方で稼働能力活用の観点から、早期に就労し、能力活用を図ることも重要である。特に、就労から長期間遠ざかることによって、再度の就労に困難が生ずる事例も多い。そのため、就労カウンセラー、就労支援員、ハローワークなどの専門家による就労支援事業を行うなど、本人と面談を重ね、求職相談や求職情報の提供などを行っている。今後とも本人の特性や状況に応じて、早期に就労が実現できるよう、きめ細やかな就労支援に取り組んでいきたいと考えている。 311 ◯倉元委員 たとえ自立できたとしても、非正規で低賃金であれば、一度、病気でもしようものなら医療費がかさみ生活がままならないというような厳しい現実がある。紹介した男性も、生活保護を受けなくてもいいようになりたい。だから、就職は労働条件をよく見定めて決めたいと言っていたが、片やケースワーカーは、何でもいいから急いで就職してくださいと促されることに苦痛を感じていた。むやみに急がせれば、真の自立は遠のく。本人の意思とかけ離れた無理な就労支援は改めるべきと指摘しておく。次に、医療扶助適正化についてただしていく。2015年度の縮減額を尋ねる。 312 △保健福祉局長 生活保護の医療適正化の取り組みによる効果額については、4億1,935万円余である。主な内訳は、処方医が後発医薬品への変更を不可としていない場合に、先発医薬品から後発医薬品に切りかえを行ったことによる効果額が1億5,634万円余、社会的事情により長期入院している患者の社会復帰促進による効果額が1億2,143万円余、レセプトの内容審査等による効果額が4,263万円余、施術券の内容点検、是正指導による効果額が4,219万円余、頻回受診の是正による効果額が3,927万円余、他法他施策の活用等による効果額が1,748万円余である。 313 ◯倉元委員 医療扶助適正化と言うが、受診を制限する動きも行われている。病院が遠いので近くの病院に変えなさいという指導を受けた人もいるが、長年かかっている病院を変更することは、本人にとって大変不安である。また、病院の数を絞りなさいと指導された人もいる。ケースワーカーは医療の専門家ではないため、数だけで判断して受診を抑制させることは非常に危険である。行革の名のもとに、受給者の医療機関を選ぶ権利を奪い、受診機会を奪い、後発医薬品使用の強制で薬を選ぶ権利を奪うということが頻発している。このような現状は改めるべきと思うが、所見を伺う。 314 △保健福祉局長 医療扶助の適用に当たっては、医療機関の選定など、本人の希望を聞くことが当然であると考えている。一方、生活保護世帯の受診については、同一病名で異なる2カ所以上の医療機関に受診する重複受診や、同じ病院を必要以上に受診する頻回受診といった事例が見られる。医療機関を受診する際、適正に受診が行われないと、医療費の面だけではなく、薬の重複処方による薬の飲み合わせなど、受診者本人の健康面からも大きな課題となることがある。そのため、主治医の意見を踏まえ、必要な受診の確保に配慮しながら、適正に受診が行われるよう、指導に取り組むことが必要であると考えている。また、後発医薬品については、品質や効用、安全性が先発医薬品と同等であるため、国全体で普及促進に取り組んでいるものであり、生活保護の場合においても、厚生労働省の通知により、医師が後発医薬品への変更を不可としていない場合は、後発医薬品を原則として使用していただくこととなっている。 315 ◯倉元委員 命にかかわる問題であり、改善が必要と指摘しておく。次に、生活保護世帯への下水道料金の減免廃止について尋ねる。本件は、ことし6月から実施されたが、行財政改革プランに位置づけられたものである。幾らの縮減額を見込んでいるのか。 316 △道路下水道局長 生活保護受給世帯に対する下水道使用料の減免制度の廃止により、28年度に一般会計から下水道事業会計へ繰り入れる負担金の減少額は、8月から3月までの8カ月分で約2億3,100万円を見込んでおり、年間に換算すると約3億4,500万円である。 317 ◯倉元委員 3億円もの負担が保護受給者に新たにのしかかったことになる。国が生活保護の基準を次々と引き下げる中で本当に大変なことである。この問題については、私も我が党の議員も論戦してきたが、市が減免廃止を進めてきた中で、大きな問題点を今回は二つ取り上げたい。まずは、生活扶助費の中に下水道料金が含まれているという間違った根拠を、減免廃止の理由にしているということである。本市は、生活扶助費の中に下水道料金が含まれており、受給者は、減免分もあわせて二重どりしているかのように描き、議会や市民に理解を求めようとした。しかし、何度でも言うが、これは正しくない。そもそも生活扶助費は、食費が何円、光熱費は何円といったものを積み上げて算定したものではなく、細かい内訳はないのである。しかし、本市は厚労省に、あえて言うならどこに含まれるのかという、答えようのない質問をした。そして、積み上げ方式ではないから言えないが、あえて言うならという極めて限定的なニュアンスで厚労省は本市に回答した。それを本市が都合のよいように、減免廃止の理由に使っているわけである。厚労省の言ったことを自分たちに都合のよいぐあいにねじ曲げて、それを減免廃止の理由にすることは道理がなさ過ぎると思うが、所見を伺う。 318 △道路下水道局長 24年度に厚生労働省に対して、下水道使用料は生活扶助費に含まれると解されるかと問い合わせたところ、下水道使用料は生活扶助基準額の第2類に含まれると解される旨の回答を得ている。 319 ◯倉元委員 まだそんなことを言っているのか。そもそも減免制度というのは、地方税法によって、生活に困窮する者には減免できると定められている。本市がこれまで下水道料金を減免してきたということは、減免しないと生活困窮者は生活できないということである。減免しないと最低限の生活さえ営めないという趣旨で60年間減免制度をやってきたのである。減免を廃止したということは、生活保護世帯の家計に余裕ができたとでも考えているのか。 320 △道路下水道局長 今回の減免制度の廃止については、厚生労働省が下水道使用料は生活扶助費に含まれているとの見解を示したことから、生活保護を理由とした減免は、他の負担者との公平性を欠くということから、負担の適正化を図る観点から実施したものである。 321 ◯倉元委員 法律、通達、どこの文書にもそんなことは書いてない。仕方なく厚労省が言って、市が勝手にそれを引用しているだけではないか。どんなに言いつくろっても、本市が言う全面廃止の理由は破綻している。もう一つ市のやり方で問題なのは、当事者の声を聞こうともせず廃止を検討し、廃止を発表した後、多くの受給者が反対の声を上げたにもかかわらず、耳をかそうとしなかったことである。しかも、社会保障など生活保護に詳しい専門家などにも何のアドバイスも受けていない。このような進め方は余りにも乱暴だったと反省すべきではないのか。 322 △道路下水道局長 今回の減免制度の廃止については、あくまでも負担の適正化を図ること等を目的としたものであることから、特に意見を聞くことはしていない。 323 ◯倉元委員 政策を変えるときに市民の声を聞かなくて当然という態度は何事か。生活保護制度は、次々と基準が下げられて、受給者の生活は本当に苦しいのである。そういう中、減免が廃止になって、どんな声が受給者から上がっているかよく聞いてほしい。小学生と中学生がいる4人世帯の方からは、「上下水道料金が合わせて月8,000円、年間10万円のプラスになった。とても払えない。食べ盛りの子どもたちの食費をセーブしなければならない」。ほかにも、ある男性は、「ふだんでも生活費は足りずに1日2食で我慢している。しかし、月末はお金が足りなくなって水を飲んでしのぐこともある。もし下水道料金が払えずに水道がとめられたらどうしよう、死ねということか」と言っていた。本市が行った減免廃止は、保護受給者から健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を奪っていると思うが、所見を伺う。 324 △道路下水道局長 今回の減免制度の廃止については、あくまでも下水道使用料は生活扶助費に含まれているとの見解が厚生労働省から示されたことに基づき、負担の適正化を図る観点から実施したものである。 325 ◯倉元委員 今まで60年間続けていたのは何であったのかという話になり、新たな負担がふえて苦しんでいる受給者の気持ちをわかろうとしていない。手足の不自由な障がい者は、うまく水道のコックを操作できないため、一般世帯よりも水道料がかさむそうであり、下水道料金も高くなるのではないかと心配している。少しでも水道代を節約しようと、近くの公園にあるトイレで用を済まそうかという人もいる。本市はこんなに切ない、怒りの声を直接聞くべきである。今回の減免廃止の影響を本市は調査して、実態をつかむとともに、減免制度を復活させるべきと思うが、所見を伺う。 326 △道路下水道局長 減免制度の廃止については、下水道使用料の負担の適正化を図ることを目的としたものであり、議会の意見もいただきながら、適切に手続を進めてきたものであることから、調査を行うことは考えていない。また、減免制度復活については考えていない。 327 ◯倉元委員 ぎりぎりの生活費で生きている生活保護受給者からの悲鳴を聞こうとしない、本当に冷たい市政である。冷たいのは生活に困窮している人にだけではない。子どもに対して冷たいのも高島市政である。この間、学校用務員の拠点校方式を市教委は進めてきた。これまで各学校に1人以上いた用務員を減らして集約し、複数の職員で複数の学校を担当するというものだが、このやり方をもって用務員を何人減らしたのか。 328 △教育長 学校用務員の定数は、拠点校制度実施前の25年度が255人、27年度が227人であり、28人の減員となっている。 329 ◯倉元委員 拠点校制度の実施により、用務員が常駐しなくなった学校がどれだけつくり出されたのか。 330 △教育長 28年度に学校用務員を配置してない学校数は112校である。 331 ◯倉元委員 今まで各学校に用務員がいたのになくしてしまっていることで、どんなことが起きているかというと、例えば、ガラスが割れたとする。以前は、用務員が走ってきて、すぐかえてくれていたが、今は常駐していないため、すぐにというわけにはいかず、先生たちが段ボールなどをガラスのかわりに張っているそうである。このような速やかな対応ができない状態になっている。また、専門ではない普通の教員が、なれない作業をさせられることもあっている。各学校に用務員が常駐しておらず、人の数も減って、現場では既に不都合が生じており、拠点校方式を改め、もとの各学校に用務員を配置すべきと思うが、所見を伺う。 332 △教育長 拠点校制度の実施により、学校用務員を配置していない学校については、各学校が拠点校の学校用務員と公用の携帯電話等により連絡がとれる体制をとり、速やかに対応するようにしており、これまでどおり、児童生徒の安全で快適な学習環境を確保できているものと考えている。今後とも、そのような点に配慮しながら、取り組んでいく。 333 ◯倉元委員 否定されたが、実態に目を向けるべきである。校長先生や教頭先生たちに話を聞くと、拠点校方式になって困っているとのことである。用務員は学校指導体制の大切な一員である。先生とは一味違う、相談のできる大人の役割を担っている。作業する姿を見て、子どもたちは憧れを抱くとともに物の大切さを学んでいく。用務員のおかげで先生方が教育に集中できるメリットもある。各校に用務員を配置する意義は大きく、制度をもとに戻すことを要求しておく。用務員の問題と同時に考えなければならないのは、学校の改修にお金を使っているのかという問題である。校舎校地等維持補修費の過去3年間の決算額を尋ねる。 334 △教育長 小中学校における校舎校地等維持補修費の過去3年間の決算額は、25年度が15億5,300万円余、26年度が15億4,100万円余、27年度が15億3,200万円余である。 335 ◯倉元委員 ふえていない。建設職人たちや私たちも参加する公共施設を考える会は、学校施設を調査する学校ウォッチングを毎年行っており、ことし行った学校ウォッチングの中から、特に看過できないものについてただしていきたい。まず、中央区の高宮小学校である。運動場の近くにトイレ排水ますのふたがあるが、学校の説明では2年に1回はふたが吹き上がって、汚物が周りに散らばるとのことである。こんな不衛生な状態を放置しておいていいはずがなく、直ちに改修に着手すべきと思うが、所見を伺う。 336 △教育長 高宮小学校敷地内のトイレ排水管の詰まりについては、ことしの2月に学校から連絡を受け、その日のうちに調査を行い、翌日には修繕を完了している。 337 ◯倉元委員 2月に行われた工事は2年前もやられたそうだが、ことしの2月に再発している。今回、工事に携わった業者も一時的な対処療法と言っており、ますを押し上げる木の根っこを掘り起こすなど、抜本的な再発防止を求めておく。次に、中央区の中央特別支援学校の体育館について、ステージの床下はシロアリにやられていた。このまま使用することは大変危険であり、急いで修理すべきと思うが、所見を伺う。 338 △教育長 福岡中央特別支援学校の体育館ステージ床のシロアリ対策については、現在、業者に改修を発注しており、シロアリを駆除した後、必要な補修を行う予定である。 339 ◯倉元委員 急いでやるべきである。次に城南区にある市立博多工業高等学校において、羽虫が大量に発生し、教室に入ってきて授業に集中できないそうである。殺虫剤をまくと気分を悪くする生徒が出てくるため、大変困られている。通常の授業が受けられるように網戸ぐらいつけるべきと思うが、所見を伺う。 340 △教育長 博多工業高校の網戸については、学校からの設置希望箇所について既に業者に発注しており、網戸の工場製作の後、速やかに取りつけ工事を行うこととしている。 341 ◯倉元委員 早急な設置をお願いしておく。このほかにもいろいろ回収すべき場所はたくさんある。施設の老朽化も進む中で、改修費が現状維持では間尺に合わないと思う。こんな状況を放置することは教育に悪影響を与えるため、大幅に校舎校地等維持補修費を増額して、学校施設の改修をもっと進めるべきと思うが、所見を伺う。 342 △教育長 校舎校地等持補修費については、学校施設の状況を踏まえ、今後とも必要な予算の確保に努めていく。 343 ◯倉元委員 もっと子どもにお金を使うべきである。行革プランに入っていないが、就学援助についてもただしていく。生活保護基準の引き下げに伴い、本市はそれに連動させて就学援助の基準の改悪まで強行した。2015年度の1月から9月までの認定者数を尋ねる。 344 △教育長 平成27年1月から9月までの就学援助の認定者数は、2万6,873人である。 345 ◯倉元委員 2016年1月から9月の認定者数はどうなっているのか。 346 △教育長 平成28年1月から9月までの就学援助の認定者数は、2万5,738人である。 347 ◯倉元委員 基準の改悪で約1,100人も認定者が減っている。この改悪で幾らの縮減額になったのか。 348 △教育長 就学援助の支給額は、通学している学校や学年により異なるが、仮に平均支給額である7万4,000円に1,135人を掛けて試算すると8,399万円になる。 349 ◯倉元委員 学ぶための直接支給制度である就学援助から子どもを締め出して、学校施設改修のお金も出し渋る。子どもに冷たい市政である。福祉と教育について、行革が悪影響を与えていることを見てきた。市長はよく、成長の果実を子どもと高齢者へなどと言っているが、福祉や教育にお金が回っていないというのが現実ではないのか。こういう中、本市は新たな財政運営プランをつくろうとしている。素案が議会に報告されているが、扶助費の見通しについて、どのように考えているのか。 350 △財政局長 財政運営プラン素案においては、平成28年10月時点での制度や社会情勢を前提に、これまでの傾向や人口推計等をもとに算出した大まかな財政の見通しを示しており、この中で扶助費については、近年、保育所等入所児童、生活保護世帯、障がい児・者の福祉サービスの利用者が増加しており、今後もこうした傾向が続くと見込まれることから、扶助費は大きく増加すると見込んでいる。 351 ◯倉元委員 扶助費がふえていくことをことさら強調するが、高齢者がふえており当たり前である。素案にも、伸び続ける社会保障関係費、福祉サービスに必要な扶助費の増加という見出しが躍っている。その一方で、取り組みの方向性として、人件費の抑制、個人給付施策の再構築、受益者負担のあり方の検討といったメニューが並んでいる。つまりこれは、今まで行ってきた市民サービスや教育環境の低下、福祉施策の切り捨てをさらに進めようとするものではないかと思うが、所見を伺う。 352 △財政局長 財政運営プランについては、社会保障関係費が引き続き増加するなど、本市の財政が依然として楽観できる状況にない中にあっても、市民生活に必要な行政サービスを安定的に提供するとともに、生活の質の向上等に向けた重要政策の推進や新たな課題に対応するために必要な財源を確保すべく策定するものであり、今後さらに具体的な検討を進めていくこととしている。また、直近の27年度決算見込み額を行財政改革プラン策定前の24年度決算額と比較すると、教育費は約72億円、約15%の増、保健福祉費は約181億円、約10%の増となっており、教育環境及び福祉の充実に必要な予算の確保を図ってきている。 353 ◯倉元委員 ふやしたと言うが、学校改修や就学援助など困った人たちへの施策はどんどん切り捨てられているのが現状ではないか。今までも切り捨てを行ってきたが、それ以上の市民サービスの切り捨てが行われるということである。本市はいつも財政難だと言って、いろいろなサービスを切ってきた。何かといえば持続可能な制度と言って、市民サービスを削らないと制度が持続せず、崩壊するかのように言って市民を脅し、本決算特別委員会の前半の質疑で社会保障関連費の抑制に取り組むとまで答弁している。こんな方針を行えば、全て自分たちでやってくださいということになって、社会保障制度を崩壊させる、まさに暴論である。市民サービスや福祉施策は必要なものであって、財政難だからといって削減することは許されないと思うが、所見を伺う。 354 △財政局長 将来にわたり持続可能な財政運営に向けて、市民生活に必要な行政サービスを確保しつつ、歳入の積極的な確保や行政運営の効率化、既存事業の組みかえなどの不断の改善に取り組み、また、中長期的には都市の成長と生活の質の向上のために必要な施策事業の推進により、税源の涵養を図りつつ、超高齢社会に対応する持続可能な仕組みづくりなどに取り組んでいきたいと考えている。 355 ◯倉元委員 削っていい福祉政策はない。市民に痛みだけを押しつけようとする一方で、聖域としているものがある。それは大型開発プロジェクトである。都市の成長などと言って、開発と呼び込みの路線では、税金投入と借金増発ばかりとなる。高島市長になって6年間で人工島推進予算は1,000億円近くになった。この間の新たにつくった借金は、5年後、10年後に返済が始まる。この路線では財政を硬直化させることは明らかである。新たな財政運営プランでは、重要施策の推進のために必要な財源を確保するとあるが、さらなる大型開発プロジェクトの財源づくりが目的ではないかと思うが、所見を伺う。 356 △財政局長 重要政策の推進に当たっては、政策推進プランを踏まえ、投資の選択と集中を図るとともに、都市の成長と生活の質の向上の両面にわたり、必要な政策を推進してきている。これまでも行財政改革プランに基づき、歳入の積極的な確保等の取り組みを進め、保育所等の整備、小中学校空調整備、子ども医療費助成の対象拡大、ノンステップバス導入促進などの生活の質の向上に向けたさまざまな施策を推進してきている。 357 ◯倉元委員 大型開発をやりたいがために市民の福祉を犠牲にするやり方であり、反省がない。進めようとしているウォーターフロント再整備を具体化していけば、税金投入と借金を際限なくふやすことになる。例えば、第2期展示場は立体駐車場と合わせて約100億円、当局の試算でも毎年6億円の借金返済を15年間続ける。福岡国際センターも建てかえを否定していない。幾らになるかわからない埋め立ても行うのであろう。天神ビッグバンも幾らの税金投入になるのか明らかにしていないが、莫大な額が注ぎ込まれるであろう。まさに、そういう財源をつくるための行革プランをつくろうとしている。人工島、ウォーターフロント、天神ビッグバンなど開発路線の聖域にメスを入れなければ、本市の財政は破綻に陥るのではないかと思うが、所見を伺う。 358 △財政局長 事業規模の大きいプロジェクトを推進する際には、特に民間投資による事業推進、規制緩和などを活用した民間投資の喚起、さらには民間事業者の資金やノウハウを活用した官民連携事業の活用などにより、本市の財政負担の軽減を図り、財政規律と投資のバランスを図りながら、健全な財政運営に取り組んでいきたいと考えている。 359 ◯倉元委員 お金がないと言いながら大型開発は進めていく。どう見たって破綻である。都市の成長によって税源の涵養を図ると言うが、涵養とは自然にしみ込むように養成することだそうである。ウォーターフロント再整備や天神ビッグバンを進めても税収がふえる見通しはない。東京の大企業にもうけを吸い上げられるし、西鉄など地元財界がもうけても市民には滴り落ちてこない。市民の賃金や収入がふえなければ、税収はふえない。新プラン素案にも、市税収入の大幅な伸びは期待できないと書いてあるが、これまでどおりの路線を続ければ、そうなってしまうのは当たり前である。結局、開発路線を聖域にするから、福祉や教育の切り捨てを永遠に続けるしかないということになる。こんな道に未来はないと思うが、所見を伺う。 360 △財政局長 都市の成長と生活の質の向上の好循環をより確かなものとするため、事業規模の大きいプロジェクトを推進する際には、政策推進プランを踏まえ、投資の選択と集中を図るとともに、民間投資の喚起などにより、本市の財政負担の軽減に取り組み、財政規律と投資のバランスを図っていきたいと考えている。また、市民生活に必要な行政サービスを安定的に提供するとともに、生活の質の向上等に向けた重要施策の推進や新たな課題に対応するために必要な財源を確保すべく、財政運営プランの策定作業を進め、将来にわたり持続可能な財政運営に取り組んでいきたいと考えている。 361 ◯倉元委員 開発路線を温存し、市民生活を破壊する破滅の道を本市は歩もうとしている。市長は、都市の成長と生活の質の向上の好循環が動き始めたなどと強弁しているが、成長したのは大企業だけ、格差と貧困は広がっているのが本市経済の現実である。西鉄や福岡地所などを初めとする地元財界、大企業ばかりもうけさせてやるという高島市長の優遇ぶりは目に余るものがある。そのおこぼれが庶民に回るというトリクルダウンの考えは破綻している。さらに、市民の暮らしにとって関係のないウォーターフロント再整備や天神ビッグバンなど、財界の言うがままに開発路線を進めようとしている。一方で、市民生活には冷酷非情なまでに福祉や教育分野を抑制、削減しており、まさに貧困と格差を広げるものになっている。成長の果実を子どもと高齢者へなどとうその看板を掲げて、実際には市民犠牲、切り捨て路線を進める高島市長のやり方は極めて問題がある。この路線を進めば、財界は天国、庶民は地獄、そして借金まみれの福岡市になるのが必至である。今なすべきことは、大企業ばかりもうける経済政策ではなく、地元中小業者を応援すると同時に家計を直接温めて、地域でお金が回る循環型の経済対策に取り組むことである。高齢化が進む中で扶助費の増加に備えて、むだ遣いの大型開発を改めるべきである。そして、暮らしと福祉対策、教育施策を大幅に拡充すべきである。したがって、高島市長は本市の行革路線を改め、大型開発優先の市政ではなく、暮らし、福祉、教育が優先される市政へと大転換すべきと思うが、所見を伺う。 362 △市長 本市は、多くの市民とともに策定した総合計画において、都市の成長と生活の質の向上の好循環をつくり出すことを基本戦略として掲げ、まちづくりを進めている。超高齢社会の到来に向け、扶助費など社会保障関係費の増加が見込まれる中、市民の生活の質を維持し、向上させていくためには、都市の活力を高め、これに振り向ける財源を生み出していくことが必要である。そのため、歳入の積極的な確保や行政運営の効率化、既存事業の組みかえなどの不断の改善に取り組むとともに、中長期的には都市の成長と生活の質の向上のために必要な施策事業の推進により、税源の涵養を図りつつ、超高齢社会に対応する持続可能な仕組みづくりやアセットマネジメントの推進、市債残高の縮減に向けた市債発行の抑制などにより、将来にわたって持続可能な財政運営に取り組んでいきたいと考えている。今後とも、都市の成長と生活の質の好循環をより確かなものとし、ビジネスが活発でありながら、歴史や自然に恵まれ、みんなが安心して生き生きと輝ける、人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市を目指して、しっかりと取り組んでいく。 363 ◯森(あ)委員 緑と市民ネットワークの会を代表し、災害対策について質疑を行う。初めに、市民局所管の災害対策費に関する過去5年間の決算の推移を尋ねる。 364 △市民局長 市民局所管の災害対策費に関する過去5年間の決算額は、23年度が1億5,349万円余、24年度が1億9,743万円余、25年度が1億5,807万円余、26年度が1億7,544万円余、27年度が1億4,791万円余となっている。 365 ◯森(あ)委員 この決算には、耐震対策等は含まれておらず、避難訓練や研修会、備蓄品、無線等の機器、及び無線機器類の維持管理に要するものなどと聞いている。平成27年の決算額は市民1人当たり100円以下という額であり、近年起きている自然災害の状況、そして人口が155万人と増加している中、果たしてこの額で市民の納得が得られるのか疑問である。4月の熊本地震以降、議会でも災害対策に関する質問が多くなされている。近年は全国的に風水害の威力も頻度も増しており、熊本地震の後に大雨や、先日は火山の噴火と立て続けに災害が起こっている。本市は、訪れる人々も含め180万人ほどの命を預かっていることに加え、日本全体にとっても重要な都市である。人々の命と財産、そして食や文化を守り、被害を最小限に抑えるために、災害に対するさまざまな備えの充実がさらに必要となってくる。そこで、まずは耐震対策について質問する。本市における公共建築物の耐震化率は、博多区役所を除く99.5%とのことであった。日ごろから市民の暮らしや健康を支える重要な施設である区役所や医療施設、学校などの避難施設等の防災関連施設に関し、本市でも西方沖地震のあった17年度から耐震対策には力を入れ、耐震化が進んできているが、民間の建築物に関してはどうか。多くの人が利用するホテルや百貨店など、昨年度末の耐震化率と取り組み状況を尋ねる。 366 △住宅都市局長 本市においては、平成17年の福岡県西方沖地震を踏まえ、福岡市耐震改修促進計画を平成20年3月に策定し、市民への普及啓発や耐震診断、耐震改修の助成制度などにより、住宅を初めとする民間建築物の耐震化に積極的に取り組んでいる。このうち、耐震改修促進法に定めるホテルや百貨店など多数の人が利用する民間特定建築物の耐震化の状況は、建築確認申請のデータなどをもとに推計すると、平成28年3月末現在、対象となる建築物約1万2,200棟のうち、耐震性を有するものは約1万800棟であり、耐震化率は約89%となっている。計画策定にあわせ調査した平成18年時点の耐震化率約76%に比べ、13ポイント向上しており、耐震化の取り組みについて一定の成果が出ているものと考えている。 367 ◯森(あ)委員 その中でも、特に社会福祉施設である高齢者、障がい者等の施設の耐震化対策の状況を尋ねる。 368 △保健福祉局長 2階建て以上、または延べ床面積200平米を超える高齢者、障がい者等の施設に対して調査を実施したところ、対象となった施設計1,200棟のうち、平成28年3月31日現在の耐震化率は約90%である。 369 ◯森(あ)委員 耐震対策は一定程度進んできていることがわかったが、近年の地震発生状況や予測等においては、1割ほど残された箇所の早急な対策が重要である。市民や民間事業者へ向けての啓発や相談など、引き続き耐震対策推進を求めておく。これまで、さまざまな災害の経験をしながら、その対策の充実が図られてきており、過去の経験を十分に生かしていくことが重要である。そこで、本市に直接の被害が発生した西方沖地震と、大きな揺れが立て続けに発生した熊本地震の被害状況や特徴を尋ねる。 370 △市民局長 まず、2つの地震の被害状況については、福岡県西方沖地震では人的被害が死者1名、負傷者1,038名で、建物被害が5,220棟であった。熊本地震では、平成28年10月5日現在で人的被害は関連死も含め死者121名、負傷者約2,450名で、建物被害が約17万2,000棟である。次に、それぞれの地震の特徴は、福岡県西方沖地震は震源地が玄界灘海底で最大震度6弱を観測し、玄界島などの沿岸地域に被害が集中している。一方、熊本地震は震源地が陸域で、最大震度7を2回観測し、気象庁において過去の経験則に当てはまらないと表現され、震度1以上の地震が4,000回を超えるなど、熊本地方から大分県中部にわたる内陸部に甚大な被害をもたらしている。 371 ◯森(あ)委員 どちらにも共通して言えるのは、過去には余り大きな地震が発生してはいなかったことである。西方沖地震の発生当時は、この断層の存在は知られておらず、古文書によるものを含めてもマグニチュード7級の地震は前例がなく、本市及び糸島半島付近では、有史以来最大の地震であった。やや範囲を広げ、福岡県、佐賀県及び長崎県壱岐地方で見ると、約300年ぶりの規模だそうである。そしてその余震域は、志賀島付近を南東端として、そこから北西方向に約30キロメートルにもわたって分布している。余震域周辺には複数の活断層があり、ほぼ警固断層の延長線上にある。地震後に警固断層の関連性が調査され、2007年の地震調査委員会の評価では、この地震の震源域は警固断層そのものではないと断定されているが、断層同士が連動して地震を起こす可能性も示唆されている。熊本地震では、想定外の前震の後、本震、4,000回を超える余震が発生し、地震の範囲もかなり広範囲にわたるなど、これまでに経験したことのない地震活動となっている。西方沖地震と熊本地震の違いは、震源地が海底か陸域かということであり、被害の大きさにも違いがあらわれている。そこで改めて警固断層帯南東部の地震予測及び被害想定を尋ねる。 372 △市民局長 国が実施した活断層の長期評価によると、警固断層帯南東部で今後30年以内にマグニチュード7.2程度の地震が発生する確率は0.3~6%となっており、断層に近い市内中心部で震度6強、市街地の広範囲で震度6弱を想定している。また、被害想定については、福岡県が実施した地震に関する防災アセスメント調査結果によると、本市における最大の被害は、建物の被害が全壊約4,500棟、半壊約3,500棟、人的被害は死者約460人、避難者約2万5,000人とされている。 373 ◯森(あ)委員 想定される範囲の地震だけでも、確率の高いSランクであり、都心部直下型地震である。イベント等開催時などは、被害想定はもっと大きくなると先日の総会質疑でも指摘があっている。さらにこのとき、同時に原子力発電所で放射能漏れが発生した場合の被害はどうなるのか。地割れなどが起こり、逃げ道や逃げ場のない状況で、徒歩帰宅者も帰宅困難者となる。倒壊家屋も多く、屋内退避も困難な状況となる。寄る辺のない帰宅困難者の避難場所の確保も、現時点での想定では2万6,000人分不足している。本市は糸島から9,500人の避難者を受け入れる立場でもあり、2次避難を強いられる可能性もある。これまで幸いにも結果的に原発事故が同時には起こらず、放射能の被害は今のところ免れている。しかし、原発が近くにある以上、防護策をしっかりと備えおく必要がある。そこで、玄海原発再稼働に対する認識と放射能汚染のリスクについて本市の所見を求める。 374 △市民局長 玄海原子力発電所の再稼働についは、国の原子力規制委員会において、新規制基準への適合性審査が厳格かつ徹底して行われることが必要であり、その上で国において広範に住民の理解を深めることが重要であると考えている。また、原子力災害対策については、本市は国が原子力災害対策指針において定める、原子力発電所から30キロメートル圏内の原子力災害対策重点区域には該当していないが、万が一に備え、福岡市地域防災計画原子力災害対策編に基づき、原子力災害避難計画暫定版を定め、屋内退避や一時移転等の防護措置をとることとしている。 375 ◯森(あ)委員 警固断層帯南東部の被害想定から考えた場合、屋内退避では不十分であり、原子力災害対策については福島や玄海原発の実態からリスクを検討した上でぜひ見直されたい。フランス放射線防護原子力安全研究所は、フランスの気象局提供による観測と天気予報、長距離デジタルモデルを使用し、福島第一原発の2011年3月12日から26日間の推定リリースの大気拡散をシミュレートした動画を公表している。この動画を静止画にしたものを玄海原発の位置に重ねれば、風向きによってはプルームのトレーサーは日本列島を覆う状況となる。また、2015年4月15日の原子力規制委員会の記者会見で田中委員長は、基準の適合性は審査するが、安全だということは言わないと述べており、これはテレビでも放映されている。元純真短期大学の森永教授が2015年12月5日の長崎大学経済学部の日本科学者会議九州沖縄地区シンポジウムにおいて発表した資料によると、玄海原発1号機の営業運転開始が昭和50年、1975年であり、2号機の営業運転開始が1981年の3月であるが、それ以降、玄海町と唐津市は白血病死亡率が極端に上がっている。玄海原発では事故やトラブルも発生しており、原子炉4機全てが手動や自動での停止をしたことがあり、通常の点検中には漏えいやひび割れも発見されている。原発1基の中に張りめぐらされた配管の全てを点検するには何十年もかかると聞いている。平成9年7月に営業運転を開始した4号機は、平成23年10月4日に定格出力運転中に腹水真空管低下による原子炉自動停止が発生している。こうした情報は九州電力のホームページに掲載されてはいるが、私たちが日々の暮らしの中で詳しい情報を得ることは困難である。現実を知ることは重要であり、放射能のリスクについてもっと対策を考えていく必要がある。福島の原発事故時には、直ちに影響があるとは思われないとの政府発表であったが、長期的な影響を考え、市民の命と健康を支えるため、正面から向き合うことが重要と考える。また、市民一人一人が原子力災害と向き合い、みずからが被害を最小限に抑えるための一つとして、訓練を何度も経験することが必要である。そこで、27年度に行った原子力災害避難訓練や研修会の実施内容や参加数を尋ねる。 376 △市民局長 原子力災害避難訓練については、福島第一原子力発電所での事故の状況を踏まえ、玄海原子力発電所から50キロメートル圏内にある西区全校区を対象に、25年度から3カ年計画で実施してきている。3年目となる27年度の訓練には、10校区360人の住民などが参加し、校区ごとにバスや船で50キロメートル圏外にある舞鶴小中学校に避難し、スクリーニング検査等を実施している。また、避難訓練に先立ち、福島第一原子力発電所の事故を経験した人による講演会や原子力防災の基礎知識を学ぶための事前研修を行い、参加人数は合わせて801人となっている。 377 ◯森(あ)委員 原子力災害に対応する訓練や研修をぜひほかの区にも広げ、全市民が経験する必要があると考えるため、しっかりと取り組まれたい。自己責任として、最終的に命を守るのは自分自身であり、しっかりと個人個人が意識を持ち、いざというときに備えられるよう訓練や研修を全市的に行っていくよう要望する。次に、原子力事故と地震や風水害などとの複合的な災害時の対策について尋ねる。 378 △市民局長 国の原子力災害対策指針においては、原子力発電所から37キロメートル以上離れている本市では屋内退避が原則とされている。地震や風水害などと原子力災害が複合的に発生した場合は福岡市地域防災計画に基づき、災害の状況に応じ、耐震性を有するなど安全な指定避難所の開設を行うこととしている。また万が一避難が必要となった場合は、国の判断に基づき、適切な避難指示を行うとともに、福岡県警や自衛隊と連携し、適切な交通誘導や規制を実施し、混乱の防止と速やかな避難誘導を実施していく。 379 ◯森(あ)委員 警固断層帯南東部の被害想定を考えても、果たして福岡市内に安全な場所がどれくらい存在し、どれくらいの人が帰宅困難な状況となり、また、避難できるのか懸念がある。もっと綿密な計画をつくり、市民とともに訓練を行うことを要望する。次に、社会福祉施設の防災訓練や防災対策について質問する。まず、高齢者施設及び障がい者施設等の災害対策等をどのように把握しているのか尋ねる。 380 △保健福祉局長 特別養護老人ホーム等の社会福祉施設では、想定される非常災害の種類及び規模に応じた計画を立てるとともに、避難、救出等の訓練を定期的に行うよう条例で義務づけており、実地指導等の際に確認を行っている。 381 ◯森(あ)委員 想定される災害には、原子力災害は入ってないとのことである。原子力災害対策については保健福祉局で把握していないのか。 382 △保健福祉局長 福岡市内の社会福祉施設は、本市が福岡県地域防災計画において避難計画の策定が義務づけられている地域とはされていないため、本市として個々の施設の対応状況については承知していない。 383 ◯森(あ)委員 原子力災害こそ特段の注意が必要である。特に現在は屋内退避が原則の計画となっており、先月質問した学校や保育所と同じく、市民の安全確保のためには施設管理者やそこで働く人々が原子力災害への対応、対策をしっかりと理解しておく必要がある。本市は原子力発電所から37キロメートル以上離れていることから、社会福祉施設等には原子力災害に特化しての災害対策の策定義務はなく、その状況の把握は行っていないとのことだが、昨年9月の荒木議員の一般質問に対し、病院や社会福祉施設に屋内退避や一時移転などの実施方法について検討を求めているところであるとの市民局の答弁であった。また、昨年の決算特別委員会での私の総会質疑では、避難計画策定の相談があった場合には、適宜アドバイスを行うなど対応を行っているとの答弁であった。地震や風水害の対策同様、原子力災害対策に関する認識が共有されていることが重要である。福祉避難所の必要性がある中、84施設が設定されており、いざというときにより被害を拡大させないための対策が図られるよう、行政としてふだん担当している各部署がまずは状況を把握し、災害対策の充実と部局を超えた連携体制を構築するよう強く要望する。次に、本市ではサーベイメーターを所有しているが、その必要性について尋ねる。また、保有台数とその入手時期、維持管理状況を尋ねる。 384 △市民局長 サーベイメーターについては、原子力災害時などにおける市内の空間放射線量率の測定に活用することとしている。本市では、17年度から24年度までに順次整備してきたところであり、現在市民局2台、環境局1台、消防局6台の計9台を所有している。また、維持管理については、各局で定期的に点検を行うなど、常に使用できる状態にしている。 385 ◯森(あ)委員 本市が所有しているサーベイメーターは、平常時にはどのように使用されるのか、具体的に各局に尋ねる。また、災害時の実測値の活用についても尋ねる。 386 △市民局長 市民局が管理するサーベイメーターは、原子力防災訓練における緊急時モニタリング訓練などに使用している。また、実測値の活用については、原子力災害時に本市が所有するサーベイメーターにより測定を行い、その結果を国及び福岡県に対し、防護措置の判断材料として情報提供することとしている。 387 △環境局長 環境局が管理しているサーベイメーターは、原子力防災訓練における緊急時モニタリング訓練のほか、緊急時の参考となる平常時の放射線量測定に使用している。 388 △消防局長 消防局が管理しているサーベイメーターは、災害に備え、日ごろから取り扱い訓練を実施するとともに、放射性物質を保有する事業所などで火災が発生した場合には、必要に応じて活動隊員に配備している個人線量計とあわせて、活動エリアの設定や活動時間及び被曝量の管理など、消防活動における安全確保のために使用することとしている。 389 ◯森(あ)委員 原子力事故などが発生せず、このサーベイメーターを実際に使用することがないことを本当に願うばかりである。福島第一原発の2号機から放射能が放出された3月15日、NHKのディレクターの取材によると、原発から190キロメートル離れた常磐自動車道の守谷サービスエリアで、既にサーベイメーターでは3マイクロシーベルトが検出されており、これは福岡の平常時の60倍ほどである。また、2011年3月の福島の原発事故では、政府は事故後4月の半ばまでチェルノブイリと同じレベル7だとは明らかにしなかった事実がある。ことしの7月に福島県に視察に行ってきたが、本市と同様に原発から50キロメートル圏内にある飯舘村の住民は、原子力災害など無縁のものだと思っていたそうである。3月11日の地震発生後、村では被災者を受け入れる側であったが、放射線に汚染されていることを国から知らされ、1カ月以上もたってから4月22日に全村避難となっている。地震の影響は余りなく、水道、電気、電話等の基本的なインフラ復旧は完了したが、その間水の汚染は検出されたことがある。環境省のホームページでは除染終了とされており、帰還困難区域を除き、宅地の面的除染は終了しているということであるが、実際現地では作業中という旗を立て、多くの防護服を着た人たちが作業していた。南相馬市のある一軒家の裏では、除染のため5センチ程度土を削り取っている。この地域は除染がほぼ終了した場所であるが、線量メーターで測定すると3.37マイクロシーベルトという数値が出ていた。持参したガイガーカウンターで木の枝の間を測定してみても、やはり2.7マイクロシーベルトという高い数値が出ていた。もし本市が汚染された場合、アスファルトやコンクリートの上を除染することが多くなると思うが、浪江町の駅前のフラットなコンクリートの場所では、ブラシを回転させながら除染がなされたものの、その上で測定すると1.45キロカウントパーミニット、1平方メートル当たり50万ベクレル相当という、かなり高い数値になっている。ここは除染が終了し、家屋の解体や水の線量の測定がなされていたり、防護服を着ていない女性が歩いたりしているような場所である。飯館村の話に戻るが、避難指示の解除が平成29年の3月31日に予定されている。200万袋あるフレコンバッグの処分は、今後の大きな課題である。廃棄物処理は、自治体単独処理ができなければ広域連携が必要となるが、調整がなかなかうまくいっていないとのことである。来年度から帰還解除になり、それから5年間は国の地方交付税での補助があるとのことであるが、一部の住民が戻り、その自治体の収入が少しでも発生してくれば、いつまでも補助があるわけではなく、10年後、飯館村が存続しているのかどうか不安であるとの思いを村役場の職員は話していた。住民が暮らしていくためには、多くの課題が残されている。原発から50キロメートルの地域がこのような状況であるが、今すぐ原発がなくなるわけではない。本市がサーベイメーターを所有しているということは、独自に判断できるすべを持っているということであり、市民を守るために活用するよう要望する。次に、安定ヨウ素剤の過去5年間の決算の推移及び今後の備蓄、配備について尋ねる。 390 △市民局長 安定ヨウ素剤の過去5年間の決算額は、23年度が11万円余、24年度が227万円余、26年度が188万円余、27年度が188万円余となっている。なお、25年度は購入していない。今後の備蓄や配備については、国の原子力災害対策指針において本市は安定ヨウ素剤の備蓄は不要とされているが、市民の安全を第一に考え、本市独自の対策として、現在39万7,000人分を福岡市民病院に備蓄している。また、福岡市地域防災計画に基づき、原子力発電所から50キロメートル圏内の全住民の1回服用相当量について、段階的に安定ヨウ素剤の備蓄を行うこととしているが、現在、国が災害時の配備を検討していることから、その結果を踏まえ、今後の備蓄のあり方について検討していく。 391 ◯森(あ)委員 備蓄を決めた当初は、50キロメートル圏内の市民56万人分のヨウ素剤を準備する予定であったが、その数には足りていない。また、人口はふえ、災害のリスクも高まっている中、今年度の安定ヨウ素剤の予算はゼロであった。被曝のリスクを負い、安定ヨウ素剤配布や避難指示誘導、また緊急搬送や移送などを行う人々のためにも、安定ヨウ素剤は事前配布しておくべきと考える。これまでも子どもたちへ早く行き渡るよう、事前配布や配備等を要望してきたが、前線に立ち市民の命と健康を守るために活動する救急隊員を初め、災害対策本部の長となる市長や、現実的に対応に追われる職員にも事前配布が必要ではないか。誰一人として被曝をさせたくないという切なる思いである。現在、重要な役割を担う人は、安定ヨウ素剤を持っているのか。 392 △市民局長 安定ヨウ素剤については、国が服用の必要性を判断し、対象となる区域と服用時期を指示することとなっており、職員についてもその指示に従うものとしている。 393 ◯森(あ)委員 職員は被曝のリスクを負って安定ヨウ素剤を配布しなければならない。放射能に対する防護策として最低限できることが安定ヨウ素剤の服用である。昨年度の決算特別委員会の質疑では、原子力防災対策の充実を図っていくとの市長の答弁であった。市民の命を最低限守るべく、先頭に立って動く人はもとより、全市民にもどこにいても服用できるよう、十分な対策を講じられたい。本市が安全協定を結んだ際、高島市長は立地自治体と差をつけず、立地に関係なく、どれだけ原発に近いかが重要と安全協定の重要性をしっかりと認識していたと聞き及んでいる。その認識のもと、安定ヨウ素剤の事前配布が実現できるよう、ぜひとも検討を進められたい。次に、離島がある本市では、海路、空路等の避難経路が必要であるが、悪天候の場合はどのように対応するのか。 394 △市民局長 原子力災害時の避難については、国の原子力災害対策指針において、原子力発電所から37キロメートル以上離れている本市では屋内退避が原則とされており、万が一、福岡市民の避難が必要となる場合は同指針に基づき、一週間程度の期間内に避難を行うこととなっている。このため悪天候の場合は、天候が回復した段階で避難を行うことになる。 395 ◯森(あ)委員 離島や志賀島では、地震の影響によっては、海路や空路での避難が必要となってくるが、天候によってはそこにとどまらなければならなくなる。可能性は低いとはされているが、緊急防護措置の区域指定を受ければ、一時移転しなければならない。悪天候に見舞われた場合は退避することはできず、屋内退避を強いられる。こうした避難困難な地域には、特にヨウ素剤の事前配布は必要であると、加えて意見を述べておく。陸路の避難経路については、都市の骨格をなす幹線道路の耐震化は進んでいるが、それ以外の市民一人一人の避難に影響する生活道路の維持管理について質問する。本市が管理する道路とそのうち生活道路それぞれの破損等の通報件数の過去3年の推移を尋ねる。また、27年度の本市が管理する道路の主な破損等の通報内容もあわせて尋ねる。 396 △道路下水道局長 過去3年の破損等の通報件数の推移については、25年度は本市が管理する道路全体で約2万6,000件、これに対し、国道、県道、一、二級市道を除いたいわゆる生活道路に関するものは約1万4,000件、以下同様に26年度は全体約2万5,000件に対し、生活道路約1万3,000件、27年度は全体約2万5,000件に対し、生活道路1万2,000件である。主な通報内容は、舗装、側溝、照明等のふぐあいに関するものが多く、速やかに補修を行っている。 397 ◯森(あ)委員 車椅子やベビーカー使用の場合、また歩ける状況でも足腰が弱っている人が非常時に安全に避難ができるよう、平常時から歩道のフラット化の整備が進むことが望まれる。歩道のフラット化のための整備の考え方についても尋ねる。 398 △道路下水道局長 歩道のフラット化については、バリアフリー重点整備地区における生活関連経路の整備を優先的に進めるとともに、そのほかの道路においても地域の要望や道路の老朽化、沿道の利用状況等を勘案しながら整備を行っている。 399 ◯森(あ)委員 フラット化された道路は、歩道のある道路1,552キロメートル中432.6キロメートルで27.9%でしかない。市民にとって毎日の暮らしが安心安全で楽しく出かけられることが、心身ともに健康を保つことにつながる。生活道路に関する通報数の多さは、市民の暮らしに密着していることのあらわれであり、生活道路の整備をもっとしっかりと進めていくよう要望する。通報が寄せられている件数を1日平均すると、土日も含めて60~70件である。1件の対応の大変さを考えると、職員の苦労は並大抵のものではないと思われる。平常時でこの状況では、災害時の対応はかなり困難なものになってくると推測する。これまで発生した大規模災害においても、対応する職員のストレスケアの問題が取り沙汰されてきた。市民を支える職員を支える仕組みの充実が求められる。そこで最後に質問するが、昨年度に検討をまとめ、ことし4月に策定された本市の業務継続計画震災対策編は、大規模な地震災害時にあっても適切な業務執行を行うための計画であるが、熊本地震を受け、どのように見直し等を行うのか尋ねる。 400 △市民局長 熊本地震で得られた教訓を本市の防災減災対策に生かしていくため、現在、地域防災計画の見直しや、新たに支援及び受援に関する計画の策定について検討を進めている。福岡市業務継続計画についても、地域防災計画等との整合を図りながら、より実効性のある計画となるよう見直しを進めていく。 401 ◯森(あ)委員 見直しを進めていくとの答弁だが、今回の質疑で述べてきたように、原子力災害が加わった場合の複合的な対策の充実が重要となってくる。放射能汚染の状況により、業務継続の困難さは変わってくるため、対策の充実に向け検討を求めておく。また、特に私が着目しているのは、本市の課題とされている参集可能の人員と必要人員の人数の差である。災害が発生した参集発動時から約1,000人の不足が想定されており、震災発生後1週間以降は約9,000人の本市職員が全員参集しても不足してしまうという現状である。また、職員が被災してしまうこともある。災害対応が長期化した場合は多大なストレスが蓄積していくが、放射能の問題が加わればなおさらである。職員のストレスの問題については、平常時からの対応に力を入れ、いざというときにマンパワーを発揮できるよう充実を図られたい。業務継続のための人員確保はもちろんであるが、東日本大震災の被災地でも活用された災害時の心理的支援手法を本市でも十二分に活用し、市民にとって頼みの綱となる職員の心のケアをしっかりと行えるよう、整備、検討を要望する。最後に、災害対策が決して十分ではない中での原発の再稼働はあってはならないと意見を述べ、質疑を終わる。 Copyright (c) FUKUOKA CITY, All rights reserved. ↑ ページの先頭へ...