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2021-09-28 令和3年第3回定例会(第6日目) 本文
2021-09-28 令和3年第3回定例会(第6日目) 名簿

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  1. 鹿児島県議会 2021-09-28
    2021-09-28 令和3年第3回定例会(第6日目) 本文


    取得元: 鹿児島県議会公式サイト
    最終取得日: 2024-09-10
    ↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1  午前十時開議    △ 開  議 ◯議長(田之上耕三君)ただいまから、本日の会議を開きます。  本日の日程は、配付いたしております議事日程のとおりであります。       ━━━━━━━━━━━━━  議 事 日 程  一、開  議  一、一般質問    日 高   滋 君    鶴 丸 明 人 君    中 村 素 子 君    鶴 薗 真佐彦 君  一、散  会       ━━━━━━━━━━━━━ 2    △ 一般質問 ◯議長(田之上耕三君)一般質問であります。  通告に従って、順次発言を許可いたします。  日高滋君に発言を許可いたします。
       [日高 滋君登壇](拍手) 3 ◯日高 滋君 皆さん、おはようございます。  質問に入る前に、通告の順番を入れ替えましたので御報告させていただきます。  一番目はそのままでございますが、二番目を県管理道路の維持管理及び整備の在り方について、三番目を屋久島空港整備に関連して、四番目を離島生活の安定確保について、五番目に三つの世界遺産を生かした観光振興についてと、この順序で質問させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。  まず最初に、家族が地域で生き抜くための養護学校の分校・分教室の設置についてであります。  初めに、ここに、ある御夫婦の思いを書いた文章がありますので読ませていただきます。  地域で生きていくために。  私が屋久島に来たのは、今から九年前の五月です。夫と結婚して、屋久島と鹿児島で離れて暮らしていましたが、双子を授かり大学病院で出産をし、その半年後にここ屋久島で暮らし始めました。そして二年後には三男が生まれ、慌ただしく生活をしていました。  その頃から、双子の言葉が気になり、発達外来で広汎性発達障害と診断をされました。脳の障害で、双子の二人の息子たちは一般的な自閉症であります。コミュニケーションや社会性に問題を抱えていて、見た目では分かりません。そして、一生治ることもありません。ずっとこの問題を抱えて生きていくことになります。  そんな二人の子供たちに、少しでも自分の意思や気持ちを人に伝える手段を身につけてほしい。そして社会の中で役立つ人材に育ってほしいとの思いで、応用行動療法を学び、子育てに生かすため、つくば市へ実家の母と共に十か月行ってまいりました。  帰って来たとき、私が三十二歳、双子が四歳、三男が二歳でした。  療育の効果により、双子の二人もトイレに行きたい、何々が食べたいなど、要求を少し話せるようになり、質問に答えたり、幼稚園の年中から幼稚園へ通い、現在は小学校で支援学級に所属し、小学四年生になりました。私も毎日が慌ただしい中、子供たちと楽しく幸せな日々を過ごしています。  さて、ここからが本題です。  屋久島で障害者が暮らしていくこと、それは昔はとても困難なことであったと思います。いろんな方々が様々な思いを抱え、動き、活動してきたおかげで、現在は大人になっても暮らしていくことができます。しかし、障害を持った子供を抱えて親が暮らしていくことはまだまだです。  小学校入学前に養護学校進学を勧められますが、屋久島にはありません。中学校でも養護学校は屋久島にはありません。高校は三年前に中種子養護学校屋久島分教室ができました。多くの保護者は、小学校や中学進学のタイミングで島外に出る選択をします。それは、親も一緒だったり、子供だけだったりであります。  もちろん、健常児でも、島外へ親と一緒、もしくは子供だけで島外に出る選択をする人は多くいます。その人たちとの違いは、選択肢があるかないかということだと私は感じております。  我が家も例外でなく、双子の息子には養護学校がよいと私に言ってくる方もたくさんおります。確かに、中学校を考えると不安も多く、そうなんだろうなあと感じることもあります。  そして私は、このような問題に直面するのは我が家だけではないことを知りました。養護学校が屋久島に必要なのは我が家だけではなかったのです。  ということで、屋久島に養護学校の小学部と中学部を創設してもらう活動に取り組むことにいたしました。様々な方からいろんな意見を聞きながら、まだまだ取組を始めたばかりで手探りでありますが、前進していこうと決意しております。皆様どうぞ応援よろしくお願いします。と結んであります。  教育長、どのように思われたでしょうか、感想をお聞かせください。  そこで、幾つかお伺いいたします。  なお、この関係の質問につきましては、平成十五年九月県議会をはじめとして、私は何度も繰り返し取り上げさせていただいておりますが、その当時からすると取組がどのように変わったのか、併せてお答えください。  次に、屋久島町では、小・中学校入学時に教育委員会から特別支援学校が適応であると勧められても、島内に通うことができないことから、町立の小・中学校特別支援学級へ通っている子供たちがおりますが、現在の県内の特別支援学校の地域別設置と離島での設置状況について伺います。  また、特別支援学校整備に対する県の考え方も併せて伺います。  次に、今ある特別支援学級の現状と特別支援学校の違いであります。  特別支援学級でありますが、現在の現場の教職員の皆様のインクルーシブ教育への取組に対しましては、限られた条件の中で、日々大変な努力を頂いております。しかしながら、限られた人員での特別支援学級での今の取組の中では、専門的な障害に対する個々への配慮が求められる本来の教育の目的は達成できないものだと考えております。このような中において、新しい学校、学年へ進学しても不登校となる生徒が出てくる状況であります。  屋久島町に住む障害児の保護者の多くは、子供だけを島外の施設へ入所させて特別支援学校へ通う選択をするか、もしくは家族全員で引っ越したり、両親が離れ離れとなる引っ越しなど二重生活の選択も求められております。  今の状況下での対応では、特別支援学校と同じ効果を求めることを特別支援学級で実現することはとても難しいと考えております。  ここで、特別支援学校と一般的な小・中学校特別支援学級との大きな違いを幾つか申し上げてみます。  一つ目に、特別支援学校は、小学部から高等部への連続性と一貫性があるということであります。  二つ目に、卒業後の進路実現への取組方が違うということであります。  三つ目に、生涯スポーツや陶芸、木工、料理、絵などの生涯学習への取組も違うということであります。  四つ目に、スクールバスやスポーツ、学習の設備への取組も違うということであります。  五つ目に、将来的な自立に向けた社会参加への取組での違いがあると考えております。  知事、そして教育長、当たり前の家庭環境から、家族が、親子が離れ離れにならなければならない現状教育がどうにかならないかとの思いと、障害児教育のさらなる充実のために、現在閉校されている校舎を活用して、屋久島に小学部、中学部の分校・分教室の設置を、小・中・高と一貫性のある障害児教育を実現することこそが、この子供たちへの責任ある本県の目指す本来の教育の姿ではないでしょうか。  この状況を県としてどのように捉え、対応しているのか、見解を伺います。  また、特別支援学校の分校・分教室設置の要望がこれまでにもあったと思いますが、その現状を示すとともに、全国と本県との設置状況についても併せて伺います。 4 ◯教育長(東條広光君)特別支援教育の充実につきまして、屋久島で、障害のある子供さんの子育てに懸命に取り組んでいらっしゃる御家族の話がありました。  県教委では、これまで、障害のある児童生徒が、住む地域にかかわらず、障害の種類や程度に応じ、自立と社会参加に向けた適切な支援が受けられるよう取り組んできているところであります。  私としましては、お話を伺い、改めて特別支援教育の充実にしっかりと取り組んでいかなければならないと強く感じたところであります。  特別支援学校設置状況等についてのお尋ねであります。  現在、県内には十六校の県立の特別支援学校があります。地域別には、県内一円を対象としております鹿児島盲学校鹿児島聾学校鹿児島高等特別支援学校を含め、鹿児島市内に七校、姶良地区に二校、指宿地区、南薩地区、西薩地区、北薩地区、大隅地区、熊毛地区、大島地区にそれぞれ一校を設置しております。離島の熊毛地区は種子島に、大島地区は奄美大島本島に設置しております。  本県の特別支援学校は、従前、全県下を対象として障害種別に鹿児島盲学校鹿児島聾学校鹿児島養護学校を設置しており、その後、昭和五十四年の養護学校の義務化に向けまして、昭和四十八年から、一定数の児童生徒が入院・入所していた各地の医療機関や児童福祉施設に近接して、中種子養護学校加治木養護学校などを順次開設し、昭和五十四年には十四校となりました。  その後、平成十二年に、児童生徒数が各学年おおむね一学級、標準学級の場合で各学年六名を超えると見込まれるとして、北薩地区に出水養護学校を設置しています。  また、平成二十四年には、軽度の知的障害者を対象に職業教育を中心とした教育を行う学校として、鹿児島高等特別支援学校を設置し、現在に至っているところであります。  次に、特別支援学校の分校・分教室についてであります。  特別支援学校の分校・分教室の設置要望につきましては、現在、県議会に陳情書が提出されております伊佐市のほか、これまで、屋久島などの離島や志布志市への設置について、県教委に要望書が提出されたり、県議会で議論が行われております。  また、現在、本県では分校・分教室は設けておりませんが、特別支援学校のない離島において、中学校卒業後に地元で高等部相当特別支援教育を受けたいという要望に応え、高等部支援教室という名称で、県立高校の校舎を活用した訪問教育を行っているところであります。  全国では、都道府県によりその形態や規模は様々でありますが、令和二年四月現在、本校は九百八十校、分校は百十六校、分教室は百二十四教室が設置されております。  次に、屋久島における特別支援教育についてであります。  屋久島における特別支援教育については、地元からの要望も踏まえ、平成二十四年度に中種子養護学校に高等部を設置するとともに、平成三十年度には屋久島高校内に本校と授業時数を同じくした中種子養護学校高等部屋久島支援教室を設け、訪問教育を開始したところであります。  また、小・中学校特別支援学級に対しては、中種子養護学校特別支援教育コーディネーターが各教室を巡回し、児童生徒への関わり方などについて、具体的な助言や研修を行ったり、保護者等の相談に応じるなどしたりして、児童生徒に対する教育の質の向上を図っております。  県教委としては、引き続き、こうした取組を進めるとともに、地元教育委員会と連携し、中学校の特別支援学級卒業後の進路に関する説明会や巡回教育相談における保護者等との面談の機会を活用して、地元の意見も聞きながら、特別支援教育の充実に取り組んでまいりたいと考えているところであります。    [日高 滋君登壇] 5 ◯日高 滋君 知事、教育長、この御夫婦はごく当たり前のことを言っているのであって、特別な無理難題を言っているわけではありません。子供たち、家族と一緒に生活をしたい、暮らしたい、そして子供たちの成長を見守りたいとの当たり前の思いであります。知事も日頃から、どんな地域にいても格差のない生活、教育が保障される社会の建設を言われているではありませんか。  特別支援学校を設置できない原因を聞くと、子供たちの人数が少ないことをよく理由に挙げております。子供たちの数だけで考えていいのでしょうか。一方では、本土に一極集中してきたがために生徒が多くなり、新たに特別支援学校をつくることになったり、また、各地域においても、特別支援教育の充実のための学校設置の要望が出てきている状況であります。  今まさに特別支援教育の在り方が問われているところであります。本県のような多様な地域がある中で、基本的に集中化を進めてきたことへの反動から生まれているのが、今の状況であります。一般の学校では、一人の生徒であっても、その地域で最後まで教育を受ける場があるではありませんか。なぜ特別支援教育を受ける子供たちにはその機会がないのでしょうか。  これだけ教育の充実が言われる中、この御夫妻当事者にとっては歯がゆくて、残念でならないことであります。島や離島に住むなと言われているように感じております。それぞれの地域で、家族でみんな生活していく上では最低限必要なことではないでしょうか。  知事、教育長、皆さんも当事者の立場に立って考えてみてください。  私も中種子養護学校への高等部設置のために取り組み、設置することはできましたが、その後、保護者の方から、別の島や別の地域にどんなにすばらしい学校ができても、私たちにとっては何も変わってないんですよと言われたことを思い出しました。特別支援学校を私たちの地域にもつくってほしいと思うのは当たり前の思いではないでしょうか。  時代も流れ、子供たちも、保護者も、環境も常に大きく変わっていきます。特別支援学校設置には様々な課題もあることも十分承知しているつもりです。それでも、知事、教育長、誰しも教育の平等を言うならば、今取り組むことは、一歩でも前に進めるために、皆さんが現地に赴き、意見や思いを聞く機会を実現することが、今取るべき誠意ある姿勢ではないでしょうか。ぜひ一日も早い実現をお願いいたします。  次に、県管理道路の維持管理及び整備の在り方についてであります。  まず、道路の管理整備について伺います。  現在の道路事情を見るにつけ、県管理道路の維持管理及び安全対策として道路整備工法を考えるべき時期に来ているのではないかと考えております。今日の維持管理を見ると、歩道及び道路上の雨水対策や土砂等が排出されにくい整備状況となっているのではないかとの思いがあります。このことは、昨今の豪雨災害の状況からして申し上げているわけではありません。日頃からの思いであり、これまで感じていたことであります。  現在の歩道や道路の排水構造は、水や土がスムーズに排出しやすい状況だとは到底思えません。雨水がたまり、あふれた土砂が道路と歩道の間に堆積し、雑草の生えやすい環境がつくられるなど、除草作業についても、いたちごっこの状況になっているものと考えております。まさに負の連鎖であります。このことは屋久島だけのことではありません。県内一円の課題であります。  対策として、例えば、道路構造の基準を満たした上で歩道と車道の間にある側溝や縁石を改善し、雨水や土砂等を排出しやすい工法が求められます。また、街路樹や雑木が茂り、日光が当たらない箇所にはコケやノリが生え、緑のじゅうたんとなり、滑りやすい危険な状態で、人の往来もなく利用度が減り、負の連鎖に陥った滑りやすい危険箇所が増え続けており、適切な維持管理が必要と考えます。  県管理道路の除草対策についても、県においていろいろな手法が取り入れられているようであります。安価な方法の一つとして除草剤の散布もありますが、世界自然遺産の島・屋久島では使用を控えなければならない状況です。  このような中、最近では屋久島においても、県道脇ののり面をコンクリートで覆う防草対策、いわゆるメンテナンスフリーになる工法が実施されております。初期投資はかかるようでありますが、その後の除草は不要となり、ライフサイクルコストを考えると安価なものになっていくと思っております。気候が温暖で雨の多い屋久島では草木の成長が特に早いので、一つのよい方法と思われます。  このような道路を土砂がたまりにくい構造に見直すことやメンテナンスフリーの取組を進めるなど、地域の実情に応じた道路の維持管理が必要だと考えますが、県の見解を伺います。  また、街路樹が茂ったり、雑草が生えるなど、歩道を歩ける幅が狭くなっていることや、街路樹の枝が観光バスに当たったりするところが県内各地にあります。島の九割が森林である屋久島においても、街路樹の必要性を問う意見も多数寄せられております。今後は、環境に適した、地域に合った街路樹の植栽、管理が求められております。  維持管理費の低減を図るためにも、植栽の在り方や不要な箇所の街路樹の撤去も検討すべきではないかと考えますが、現在の検討状況及び県の見解を伺います。  次に、屋久島一周道路の安全対策及び西部林道の整備についてであります。  まず、屋久島一周道路の安全対策についてであります。  御存じのように、屋久島を一周する道路は一本しかありません。観光地を巡るときも同じ場所を移動しなければならない地域であります。そしてまた、どこよりも雨の多い地域です。  屋久島では、令和元年五月に記録的な大雨が降り、縄文杉へ通じる県道は、のり面崩壊や路肩決壊により通行止めとなり、三百数十名の登山者が孤立状態となりました。このニュースが全国に流され、安全性の面から観光客は激減し、観光の島・屋久島は大きな痛手を負うこととなりました。  地球温暖化と思われる影響により、八月には長崎や佐賀、そして本県も一週間も大雨が降り続け、いつどこで災害が発生するか分からない状況であったと考えます。地形上から見ても、昨今の豪雨災害が屋久島で発生すると、一本しかない県道はすぐさま寸断され、各集落が孤立する状態となります。  そこで、今日の各地の豪雨災害を目の当たりにして、現在の屋久島の道路状況をどのように捉えているのか、知事の見解を伺います。  次に、西部林道の整備についてであります。  一八九七年に建てられた屋久島の最西端永田岬にそびえる屋久島灯台が、町内で初めて、このたび国の登録有形文化財に登録されました。  屋久島町では、この機会を新しい観光スポットと捉え、隣接する世界自然遺産地域の景観と人工的な洋風建築の美しさを持つ景勝地として生かすため、県道から灯台までの狭い町道を安全性も考え改良することとしております。  一方、県道上屋久永田屋久線通称西部林道は、いまだに未改良区間が残されており、急峻な地形で幅員が狭く、車が離合できず安全が確保できていない状態であります。  これまで、西部林道については何度も要望してまいりましたが、そのたび屋久島一周道路整備検討委員会の提言書なるものが示され、これを盾に今日まで要望する安全・安心な道路整備に至っておりません。  平成十一年三月に出された世界自然遺産の島を守るための屋久島一周道路整備検討委員会の提言書はもちろん尊重しますが、今日のように環境や気候変動が起こり、各地で豪雨災害が毎年のように起きる中、従来の安全対策だけで済ませていいのでしょうか。  私は、この屋久島一周道路の提言書も時代や環境に合った取組を求めているものと考えております。今日の気候変動を見るにつけ、西部林道の安全対策が心配で心配でなりません。しかし、いまだに整備の動きはありません。あってはならないことですが、西部林道で災害、事故などが発生した場合、責任が問われるのではないでしょうか。  国も防災・減災の国土強靱化を推進している中において、いつ大きな災害が起こるか分からない西部林道の未改良区間が今日まで残されております。  そこで、国の登録有形文化財に登録された屋久島灯台を活用した観光振興を図るためと、安全面の観点から見て、世界自然遺産にふさわしい西部林道の改良について再考すべきときが来ていると考えますが、知事の見解を伺います。 6 ◯土木部長(兒島優一君)県管理道路の維持管理及び整備の在り方についてのうち、地域の状況に応じた道路の維持管理についてであります。  県が管理する道路の維持管理につきましては、定期的にパトロールを行い、道路の異状や草木の繁茂状況等を把握し、補修や伐採等を行っております。  御指摘のような箇所につきましても、状況に応じ路面清掃などを行っておりますが、今後、路肩に土砂が堆積しにくい側溝など、新技術・新工法についても注視してまいりたいと考えております。  また、草刈り・伐採作業につきましては、毎年度の維持管理予算も限られておりますことから、作業の効率化、コスト縮減の観点から除草剤の使用拡大やメンテナンスフリーに取り組んでいるところでございます。  県といたしましては、引き続き、地域の状況を踏まえながら、効率的な維持管理手法を検討してまいります。  植樹帯の在り方や不要な街路樹の撤去についてであります。  道路における街路樹は、沿道の景観形成や歩行者の横断防止などの道路利用上一定の役割を果たしている一方、繁茂による視認性の低下などにより、安全で快適な交通の確保に支障が生じていることから、樹木の剪定を定期的に実施しているところでございます。  樹木の剪定に当たりましては、主要幹線道路や通学路などを優先的に実施しておりますが、場所によっては、道路の建築限界の確保が困難となったり、根張りによる歩道の損傷が生じ、道路管理上支障となる場合もありますことから、周辺環境との調和や地域の御意見を伺いながら、部分的な撤去について取り組んでいるところでございます。  引き続き、街路樹の役割も確認した上で、地元市町村と協議し、街路樹の撤去も含め適切な植栽管理を行ってまいります。  屋久島一周道路の安全対策についてであります。  屋久島を一周する道路につきましては、延長約九十六キロメートルの道路であり、世界自然遺産区域内の約九・四キロメートルの区間を除き、おおむね二車線改良済みとなっております。  島内の集落間におきましては、県道しかない区間もあるものの、急峻なところが多いなど地形的な制約もあり、新たな道路を整備することは難しいと考えております。  屋久島一周道路につきましては、定期的なのり面等の点検を実施するとともに、現在、一湊地区においてのり面の防災対策を行うなど、道路利用者の安全確保に努めているところでございます。  次に、西部林道の整備についてであります。
     県道上屋久永田屋久線の永田から瀬切間、いわゆる西部林道につきましては、その整備問題を契機として、世界自然遺産に登録された島の自然環境を保護し、後世に伝えていくことのできる道づくりを目指すため、学識経験者等から成る検討委員会を立ち上げ、地元の意見も十分聞いた上で慎重に審議を重ね、平成十一年、「西部地区は自然環境を保護し、後世に引き継ぐこととして、道路整備については維持管理を基本とし、必要最小限の範囲で防災対策を図る」との提言を受けたところであります。  西部林道は、世界自然遺産地域に含まれ、海岸部から山頂部まで人の手が関わっていない森林が垂直に分布するなど、現在におきましても貴重な自然環境であることには変わりないと考えており、同区間の整備は困難であると考えております。    [日高 滋君登壇] 7 ◯日高 滋君 道路の維持管理につきましては、現在いろいろと検討もなされているようでございますが、維持管理がなされて初めて鹿児島県の県道でございます。予算も人員も少ない中でありますので、しっかりと計画性を持って道路事業を進めていただくことを要望しておきます。  また、屋久島の一周道路の安全対策と西部林道の整備については、今回も水戸黄門のように、これが見えぬかと拒否されたようなことでございますが、時代は変わり、環境も変わっております。そういう意味では、これからもしっかりと管理しながら取り組んでいただきたいと思います。  知事には、屋久島には選挙後まだおいでいただいていないと思っております。一日も早く訪問していただき、そして視察もされ、実情を把握され、また新しい考えの下に取り組んでいただければと思っておりますので、おいでいただくことを心からお待ちしております。  次に、屋久島空港整備に関連して質問いたします。  まず初めに、島民の皆さんの要望を受け、日夜、屋久島空港のジェット空港建設に向け御努力いただいておりますことに感謝申し上げます。  このような中でありますが、幾つか関連して伺います。  島民の皆様からは、空港整備は今後どのような計画となっているのか、いつできるのかとよく問われております。  そこで、改めて伺いますが、ジェット空港整備に向けた現在の手続等の進捗状況と供用開始までのスケジュール、そして計画をお示しください。  また、国への申請手続を開始するに当たり、県や屋久島町が特に取り組まなければならない事項は何なのか、島民の皆さんに御理解いただけるようにお答えください。  次に、空港ターミナルビル建設に当たっては、地杉材を活用するべきとの考え方から伺います。  屋久島町は、世界自然遺産の島として、屋久島らしさをアピールする事業として、令和元年五月に屋久島産地杉を全面活用した庁舎を建設いたしました。これまでに令和元年十一月の内閣総理大臣賞をはじめ、ウッドデザイン賞を受賞いたしております。この十年間で木材利用の機運も広がり、木造建築物が各地に増えてきております。  先日も、学校、体育館、病院など人が集う施設を木の香りが包む街や人と調和する現代の美しい木造建築を選ぶ、日本経済新聞NIKKEIプラスワンの何でもランキング、現代の木造建築美しき意匠で、屋久島町の庁舎が、まるで屋久島の原生林にいるような建物として評価され、ランキング四位に選ばれております。このようなこともあり、地杉で建築した庁舎は、現在では多くの人々が訪れる観光スポットの一つとなっております。  また、国においても、木材産業、林業振興を図るために公共建築物への木材利用促進を進める法律を制定しており、今般、この法律は、民間建築物を含む建築物一般で木材利用促進を図るための法律、脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律として、さきの国会で改正されたところであります。林野庁も毎年、優れた木造建築や木製品をウッドデザイン賞で表彰し、地域振興にも役立つ木材利用を促しております。この法律の目的と本県の公共建築物への木材活用の取組状況について、まず伺います。  国の木材利用脱炭素社会促進が進められている今こそ、本県が現在進めている、二度とないであろう屋久島空港滑走路延伸整備に伴う旅客ターミナルビル建築を、屋久島を強く印象づける地杉材を活用した施設整備をすべきではないでしょうか。まさに地域を盛り上げる今の時代に合った、的を射た事業ではないでしょうか。本県としても積極的に取り組むべきだと考えます。  この取組は、地域を生かし地域に合ったこれからの屋久島の林業振興、観光振興、木育の振興につながるものであります。屋久島という大きなフィールドを生かした、まさに世界自然遺産の島にふさわしい空の玄関口として、大きな感動とインパクトを呼ぶ屋久島新空港になるはずであります。知事の見解を伺います。  また、これまでのジェット空港ターミナルビル整備においては、応分の出資をもって県が経営に参画しておりますが、屋久島空港ターミナルビル整備についても、これまで開港された空港と同様に出資され、県として経営に参画されることになると思いますが、県の考え方を伺います。  次に、離島生活の安定確保についてであります。  交通機関の長期欠航による影響と対策について伺います。  さきの台風六号の停滞の影響等により、これまで私も経験したことのない、一週間という長きにわたり離島へのフェリー等の欠航が発生し、各島々の流通が止まり、スーパーの陳列棚から食料品が全てなくなるという状況が発生してしまいました。それは誠に見事に消えました。  島に直接台風が襲来したとか、災害が起きたわけではありません。遠く離れたところからの影響です。今回のような状況や被害は、今日の異常気象からすると、これからも度々発生するだろうし、災害と重なり長期欠航の状況が発生し、流通が止まることを日頃から考えておくべきであります。  これらの状況を踏まえて、幾つか伺います。  まず初めに、屋久島でもフェリー等の長期欠航がありましたが、今回の各島々の長期欠航はどの程度続いたのか、過去の欠航状況についても伺います。  また、欠航期間において、フェリー等に代わる物資輸送の代替手段を県が把握していればお答えください。  今回のような離島におけるフェリー等の長期欠航の発生状況を県としてどのように受け止めているのか、伺います。  二つ目に、日常必要な医療薬品や生活必需品、そして農林水産物の流通についても影響があったと考えますが、離島ごとの物品流通の把握状況について伺います。  また、これからの離島の生活安定・充実を考える上で、今後の課題と対応についての見解を伺います。  次に、口永良部島の農協出張所廃止に伴う影響と対応であります。  屋久島の中の離島である口永良部島の農協出張所が令和四年三月末をもって廃止されることになりました。自給自足率の高い島ではありますが、農協の金融機関や島で唯一の店舗である小さな購買店舗がなくなるとのことで、これから生活していく上で島民に大きな影響を与えることになります。  島民は、これまでも島の噴火にも耐え、現在、若者を中心として、屋久島国立公園、屋久島・口永良部島ユネスコエコパークを活用した観光の島づくりに励んでおります。  そこで伺いますが、県として、島の形態と人口、交通機関、産業、店舗、金融機関、教育、医療等の口永良部島の暮らしの現状をどのように把握されているのか、まず伺います。  さきにも申し上げましたが、令和四年三月末をもって農協出張所の廃止に伴い、店舗、金融機関も全て廃止される予定と聞いておりますが、島民の生活への影響と今後の対応及び支援について、見解を伺います。  次に、三つの世界遺産を生かした観光振興についてであります。  奄美大島・徳之島の世界自然遺産登録がユネスコ世界遺産委員会で七月二十六日決定され、誠に喜ばしいことであります。  今回の登録決定は、国、県、地元市町村、関係機関を挙げての取組であり、大変御苦労いただいたわけでありまして、待ちに待った登録だっただけに、今度はこの機会を私どもがどのように生かしていくかにかかっていると思っております。  奄美大島の市町村では、既に七月二十六日を世界自然遺産の日と設定するなど、様々な取組が始まっております。  この件につきましては、代表質問、一般質問等いろいろございましたので、四つほど質問するようにしておりましたが、一つ目と二つ目は割愛させていただき、三つ目について、世界自然遺産として平成五年に屋久島の登録がありましたが、今後、奄美での取組を進めるに当たっては、さきに登録された屋久島での様々な教訓や取組、経験を生かすべきと考えますが、屋久島の教訓を生かした奄美での取組を伺います。  四つ目でありますが、コロナ禍の中での観光事業について伺うようにしておりました。時間の関係で要望にさせていただきます。知事も発言されておりますが、九月三十日をもって緊急事態宣言、まん延防止等重点措置、全面解除というような方向で進んでいるようであります。こういう中で、この関係事業者は大変な状況になっております。もう潰れてしまう、何とかしてくれと、そういう状況だと思っております。それらも含めてしっかりと状況を把握していただいて、これからもこの鹿児島県で、それぞれの地域でしっかりと仕事ができるように御支援賜りますようお願いしておきたいと思います。  以上で、三回目の質問を終わります。    [知事塩田康一君登壇] 8 ◯知事(塩田康一君)屋久島空港旅客ターミナルビルの地杉材を活用した整備についてでございます。  これからの屋久島の振興のためには、世界自然遺産としての価値を損なうことなく、将来にわたり屋久島の自然環境を継承しながら、一方で、奄美の世界自然遺産登録を好機と捉え、屋久島と奄美の二つの世界自然遺産の連携による誘客拡大を図る必要があると考えております。  県では、交流人口の拡大による地域経済の活性化や観光振興に大きく寄与するものとして、屋久島空港の滑走路延伸の早期事業化に向けた取組を進めているところであります。  県が管理する空港の旅客ターミナルビルにつきましては、空港ビル会社が整備し、所有していることから、屋久島空港の滑走路延伸に伴う旅客ターミナルビルについても、空港ビル会社において整備が行われるものと考えております。  旅客ターミナルビルへの屋久島の地杉材の活用は、屋久島の観光振興や地域の林業・木材産業の振興に寄与するものであり、また、木材との触れ合いを通じた木育の推進などにもつながる取組であると考えております。  県としては、今後、屋久島空港の滑走路延伸の事業化が決まり、新たな旅客ターミナルビルの整備について検討が進められる中で、屋久島の地杉材の活用について空港ビル会社に働きかけを行うとともに、木材利用の促進が図られるよう地元屋久島町などとも連携を図ってまいります。 9 ◯土木部長(兒島優一君)屋久島空港の滑走路延伸に向けた取組の進捗状況等についてであります。  屋久島空港につきましては、滑走路二千メートルへの延伸の事業化に向けた取組を進めているところでございます。  これまで、パブリック・インボルブメントの実施や基本計画の策定を終え、環境影響評価の手続に着手しており、現在、環境現況調査の実施や準備書を作成するとともに、空港施設の変更許可のための基本設計を行っているところでございます。  事業化までには、これらの手続のほか、ジェット機就航の見込みが必要でありますことから、各航空会社と意見交換を行っているところであり、引き続き、屋久島町とも連携し、関東方面からのジェット機の就航を航空会社に働きかけてまいりたいと考えております。  また、工事につきましても、空港を使用しながらの整備になることから、供用開始までには相当の期間を要すると考えておりますが、県としましては、まずは早期の事業化に向けて着実に取り組んでまいります。  屋久島空港旅客ターミナルビルの整備に伴う出資についてであります。  県では、ジェット機の就航可能な奄美、種子島、徳之島の三空港の空港ビル会社に対しまして、地元市町村や民間企業とともに出資を行っているところでございます。  屋久島空港におきましては、まずは、滑走路延伸に係る早期事業化に向けて着実に取り組み、新たな旅客ターミナルビルの整備に伴う出資や経営への参画につきましては、地元屋久島町をはじめ関係者の意見を伺いながら、検討する必要があると考えております。 10 ◯環境林務部長(松下 正君)脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律の目的等についてでございます。  この法律は、木材の利用促進に取り組む対象を公共建築物から民間建築物にも拡大し、林業・木材産業の持続的かつ健全な発展を図ることなどにより、脱炭素社会の実現に資すること等を目的としております。  県では、県公共建築物等木材利用促進方針を定め、木造化・木質化を図ることとしており、県や市町村が整備する公営住宅はもとより、民間の社会福祉施設などへの利用を積極的に推進しております。  令和二年度は、公民館や診療所など二百十七棟の公共建築物が木造で整備され、非木造建築物の内装材も合わせた木材使用量は、約七千立方メートルとなっております。  今後は、法改正を受けて、関係機関・団体等との連携をさらに強化し、非住宅建築物等の木造化などをより一層働きかけることにより、公共建築物や民間建築物への木材の利用拡大に取り組んでまいりたいと考えております。  三つの世界遺産を生かした観光振興についてのうち、屋久島の教訓を生かした奄美での取組についてでございます。  屋久島においては、世界自然遺産登録により知名度が大きく向上し、観光客の増加などの効果をもたらした一方で、観光客が山岳地域に集中したことにより、縄文杉ルートの混雑、登山道やその周辺植生の荒廃などの課題が生じたことから、利用ルールの設定、木道の整備などの対策を進めてきたところであります。  屋久島での事例を踏まえ、県では平成二十八年に奄美群島持続的観光マスタープランを策定し、保護上重要な地域である奄美大島の金作原などについて利用ルールの運用を行うとともに、利用の分散を図るため、奄美自然観察の森や世界自然遺産奄美トレイルの整備・活用を進めているところであります。  県としては、引き続き、国、地元市町村、地域住民、関係団体等と連携を図りながら、自然環境の保全と利用の両立に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。 11 ◯地域政策総括監(房村正博君)離島生活の安定確保についての御質問のうち、フェリーの長期欠航状況等についてでございます。  台風六号の影響により、鹿児島・奄美・沖縄航路では七月十八日から八日間、鹿児島・屋久島航路では七月十九日から六日間、フェリーの欠航が続いたところでございます。また、過去三年間におきましても、台風等の影響により、例えば、十島航路においては令和元年に十日間、屋久島・口永良部島航路においては平成三十年に八日間欠航した事例がございます。  今般の台風六号の期間中、屋久島では、高速船は全便、航空機は六割以上の便が運航を継続していたことから、いずれにおいても、荷物の取扱い量が通常よりも増えていたと伺っており、フェリーが欠航していた影響があったものと考えております。  県といたしましては、運航事業者の安全な運航上、天候の影響による欠航はやむを得ないものではありますが、市町村などと連携して、厳しい離島の生活環境等の改善に向けて必要な支援に努めてまいりたいと考えております。  続きまして、台風等の影響による物流の把握状況と今後の課題・対応についてでございます。  奄美を含む離島における本年七月の台風六号の影響につきましては、市町村によると、水産業では大きな影響は確認できなかったものの、船舶の欠航などにより、スーパー等の食料品などの品薄や、果実の出荷等への影響が発生したとの回答が多く、中には、医薬品の不足があったとする団体もございました。  県におきましては、昨年、関係市町村、海上保安庁、海上自衛隊、旅客船協会などと台風時における離島の物流対策について意見交換を行うとともに、課題の整理や対応策の検討を行ったところでございます。  その検討結果を踏まえ、当面の措置として、関係機関に対し、緊急時の輸送支援、フェリーの臨時便運航、医薬品など重要物資の優先輸送等について要請を行うとともに、市町村と連携し、広報誌や防災行政無線等を活用して、住民に対し、備蓄する物資の量や目安などについて普及啓発を行ってきたところでございます。  また、県では、農産物の出荷対策について、これまで、農業団体等に対し、国の補助事業等を活用しながら予冷施設等の整備を支援してきたところであり、これらの施設を利用した一時保管も行われているところでございます。  台風など荒天時における離島の物流対策は重要であることから、今後とも、中長期的な視点を踏まえながら、関係機関や市町村と連携し、意見交換などを行ってまいりたいと考えております。  口永良部島の暮らしの現状についてでございます。  口永良部島につきましては、屋久島町によると、人口は本年八月末現在で百十八人、交通アクセスについては屋久島と結ぶ町営フェリーが一日一往復、主な産業は畜産業と水産業となっております。  また、店舗や金融機関については、食料や雑貨品も取り扱っている農協の出張所、簡易郵便局などがあり、他の機関としては、金岳小中学校、町立診療所などがございます。  口永良部出張所廃止の影響と対応についてでございます。  農協の口永良部出張所につきましては、金融・共済業務のほか、食料品・雑貨の販売を行っているところであります。  出張所の廃止後は、農協の金融等の窓口だけでなく、食料品などを購入できる店舗がなくなることから、島民への生活への影響は大きいと考えております。  出張所の廃止に当たり、簡易郵便局においては、送金の取扱い実施に向けた調整が進められているほか、農協において、共済の各種手続の郵送対応や肥料などの注文販売を行うと聞いております。  また、地元集落におきましては、食料品などの販売組織を立ち上げられないか検討を行っているとのことであります。  現在、屋久島町において、出張所廃止による住民生活への影響低減に向けて、集落の意向を確認しながら検討するとしており、県といたしましても、町と意見交換しながら、必要な助言等を行ってまいりたいと考えております。 12 ◯日高 滋君 自席より知事に伺います。  知事は口永良部島に行ったことがございますか。交通機関としてフェリーがありますが、なかなか安定的に往来できる島でもありません。私どもの議会も行政視察で、そして執行部の皆さんも渡るために、今日は船が出ない、天候が悪いということで先延ばしになる。そしてなかなか、渡っても今度は帰ってこられないというような島であります。  そういう中ではありますが、人々は住み続けております。国も県も、国土・県土を守るために島で頑張ってくれと、我々も支援するからと、そのようなことを言ってきながら今日まで来たと思っております。しかし、先ほどからありますように、現実は衰退の一途をたどっているのが現状であります。  そこで、今日このことを申し上げましたのは、島の方々に元気を出してもらいたいという思いで、なかなか知事が口永良部島に来ていただくことはございません。噴火のとき、前知事が一度おいでいただきましたが、ヘリコプターで来たのであります。どうしても塩田知事には訪問いただいて、島民の皆さんの思いと現状を確認していただきたいと思います。そして、知事の訪問は島民にとって何よりの力になると思っております。ぜひ口永良部島への訪問を実現していただきたいと思いますが、知事の思いを伺います。よろしくお願いします。 13 ◯知事(塩田康一君)まだこれまで口永良部島には足を運んだことがございませんが、ぜひ機会を見つけてお伺いしたいと思います。また、島民の皆さんともぜひ、大変厳しい生活環境にあると思いますけれども、実態についても生の声をお伺いする機会を頂ければ大変ありがたいと思っております。 14 ◯日高 滋君 ぜひ知事には実現していただきたいと思います。    [日高 滋君登壇] 15 ◯日高 滋君 先ほどの空港整備に関連いたしまして、空港の整備のスケジュール、私もこれまで何度も聞いてきました。計画についてなかなかお答えは頂けません。いつになったらお答えを頂けるのでしょうか。私は帰るたびに、島に入るたびに島民の皆さんから聞かれて、もうどうしようもありません。工事をしているわけでもありません。本当にできるのか、やっているのかとそのような状況でございます。  私は、事業を進める上では、計画、スケジュール、そして目標設定がなされて、これらに沿って進められていくものだと思っておりますが、大まかなスケジュール、予定も示さないとはどういうことでしょうか。これでは島民の理解と期待も薄れていくことを申し上げておきたいと思います。  空港ターミナルビルへの地杉材の活用については、知事の強いリーダーシップを持って実現していただきたいと思います。また、空港ターミナルビル整備には、民間だけに依存するのではなく、県も応分の出資をされ、県管理空港として参画することを改めて要望しておきます。  世界遺産のお話をさせていただきましたが、これは私の教訓ということで聞いていただきたいと思います。  先ほど申し上げました西部林道の整備も、平成四年か五年だったと思いますが、私も当時、町議会議員でありました。県から自然環境に配慮した整備計画及び図面が示され、私どもも同意し、整備されるものだと思っておりましたが、世界自然遺産登録間近とのことで、自然保護の観点から白紙撤回となり、現在に至っております。  また、空港整備についても、平成十三年、須賀知事時代でありましたが、空港を延伸し、ジェット空港を進めようとのことで皆様の声を聞くことになりました。当時は世界自然遺産の島として来島者が多く、入島制限を図るべきとか、ジェット空港は世界自然遺産の島にはふさわしくないということもあり、同意が得られませんでした。反対の声は、地元島民というより島外の方々からの意見が多かったように思われました。今思うと、この二つが実現できず残念でなりません。後悔の一念であります。  このようなことから、奄美の皆様方には、時の状況だけにとらわれず、長期的展望を持って、後世に悔いの残らないように、必要と思われるものは取り組んでいただき、魅力ある安全で安心な地域をつくっていただくようお願い申し上げたいと思います。  今日はいろいろと申し上げてまいりました。特別支援学校のことにつきましては、何とかならないかなとの思いであります。今、この本土においても新しい支援学校ができるということで羨ましいな、そのことはよく言われます。これも本当に私も聞くたび難儀なことであります。どうかそういう意味で、均衡の取れた県土づくりということを言っておりますので、この教育についても、そして、どんな地域に住んでも同じように生活ができると、その機会があるということを実現していただきたいなと思っております。  いろいろと嫌なことも申し上げましたが、私の思いでございますので、これからもこの思いを持って議会活動を続けてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
     ありがとうございました。(拍手) 16 ◯議長(田之上耕三君)ここで、休憩いたします。  再開は、午前十一時十分といたします。        午前十一時一分休憩       ───────────        午前十一時十分再開 17 ◯議長(田之上耕三君)再開いたします。  次は、鶴丸明人君に発言を許可いたします。    [鶴丸明人君登壇](拍手) 18 ◯鶴丸明人君 おはようございます。  多様性と調和をテーマとした東京パラリンピックが九月五日に閉幕いたしました。肢体不自由や視覚障害、知的障害などの障害のある選手の活躍に、さきに閉幕した東京オリンピックより私は声援を送る時間が多くなりました。  一九六四年、五十七年前に開催された東京オリンピック・パラリンピックのとき、私は大学の一回生でした。このときはオリンピックでの日本人の活躍に声援を送ることに夢中で、パラリンピックには正直、目を向けることはありませんでした。  本県では、第一回目の身体障害者スポーツ大会が昭和三十八年に開催されています。私が県の職員として初めて仕事に携わったのは、障害者の福祉に関わるものでした。第五回目の鹿児島県身体障害者スポーツ大会の担当者でした。五十三年前のことになります。知事はまだ三歳の頃になられるのではないかと思いますが、手足の不自由な、また目の見えない選手の皆さんが自由に走ったり、泳いだりする姿を目の当たりにして、大変な衝撃で深い感動を覚えたことを鮮明に記憶しています。  以後、あらゆる人が違いを認め合い、生活できる共生社会の一日でも早い実現をとの思いを私の活動のテーマの一つとして取り組み、今日を迎えているところであります。  質問に入ります。  ただいま日高議員からあった、屋久島に特別支援学校の分校等の設置についてという質問がまだ頭に残っているところでございますが、重なる部分もあるかもしれませんが、伊佐市への特別支援学校の設置について質問させていただきます。  伊佐市への新しい特別支援学校の設置につきましては、保護者の皆さんが二〇一六年、五年前に、伊佐市に新しい特別支援学校をつくる会を結成されたのがスタートであります。その後、学習会や意見交換会等を毎年開催するなど積極的な活動が行われ、昨年の十一月には県議会に陳情書が、知事へは要望書が提出されているところであります。  一方、伊佐市議会におきましては二〇一七年に、また湧水町議会では今年、それぞれ特別委員会等が設置されてきているところであります。さらに、去る七月三十一日に、伊佐市に新しい特別支援学校をつくる会の保護者の皆さんと、伊佐市・湧水町議会議員の皆さんが一緒になって、新たに、伊佐・湧水特別支援学校誘致協議会を設置し、その活動に拍車がかかっているところであります。  また、国におきましては、特別支援学校の教育環境を改善するため、今年五月に特別支援学校設置基準案が公表されたところであります。  このような中、去る八月七日に湧水町で知事とのふれあい対話が開催されました。この席で、先ほど申し上げました伊佐・湧水特別支援学校誘致協議会の保護者のメンバー五人の方々から、出水市の特別支援学校に通う児童の実態等について切実なお話と、伊佐市の高等学校等の空き教室を使った分校の設置についての要望が出されたところであります。  その後、私も、参席された皆様から、その会では発言し切れなかったお話も直接伺う機会を設けさせていただきました。この席には、湧水町の伊佐・湧水特別支援学校誘致協議会の副会長にも同席いただいたところであります。  知事とのふれあい対話や私との意見交換、また、昨年出された知事への要望書、県議会への陳情書の主な内容は次のようなものであります。御紹介いたします。  学校までの通学時間がバスに乗車後九十分と長いことによる問題点であります。  子供たちへの負担が大変大きい。車椅子を使用している生徒はずっと同じ体勢でいることから、体幹への負担が非常に大きい。  てんかん等、持病を抱えている子供が数名おり、発作がいつ起こるか分からない中、長時間バスに乗ることへの不安。  長時間通学により、肢体不自由や意思を伝えることができない、また言葉を発することが難しい子供たちは、トイレを我慢し、バスを降りた途端に漏らして膀胱炎を繰り返すなど、心身への負担も大きい。  始発が七時十五分と早いため、気持ちの調整ができずにバスに乗車できない場合は、保護者が直接学校まで自家用車で送らなければならない。  学校で体調が悪くなったり発熱がある場合は、迎えに行くまで九十分、具合の悪い子を学校に待たせ、また九十分かけて連れて帰ることになり、保護者の負担が大きい。  通学路が伊佐市から出水市にかけては山越えになることから、悪天候や土砂崩れ等により通学バスが急な運休や迂回運行になることが毎年のようにあり、保護者としてはここの通学路にとても不安があると、こういったことでありました。  一方、三十分近くで通うことができる伊佐市に特別支援学校ができた場合の期待として、一つ、通学時間が短くなり、通学路の危険も減ることから、子供たちの負担も減り、親も安心して通学させることができる。  二つ、放課後時間が充実し、地域の方々との交流機会が増える。  三つ、災害時、緊急時の迎えなどの対応がすぐにできる。  四つ、支援学校と連動した放課後デイサービス施設の活用ができる。  五つ、日頃からの地域とのつながりにより、卒業後の就労や生活のための選択肢が増えるといったことなどでありました。  今回の質問に当たって、私は、通学バスの乗車時間が九十分と県内の養護学校の中でも最も長いとされるバス路線を車で走行し、実体験をさせていただきました。  これらを踏まえ、以下、次の七点について質問いたします。  一つ、特別支援学校在籍者数の推移と今後の見通しについて。  二つ、特別支援学校への通学バス路線数及び乗車時間別人員について。  三つ、出水養護学校の開校時の児童生徒数及び現在の児童生徒数について。  四つ、出水養護学校に伊佐市及び湧水町から通学している児童生徒数と今後の見通しについて。  五つ、特別支援学校の児童生徒数の適正規模、適正通学時間についての考え方。  六つ、令和三年五月に示された特別支援学校設置基準、これは案が取れて、この九月二十四日に正式に制定されたところでありますが、この設置基準制定の趣旨を踏まえた教育的環境─長時間通学時間等─の改善のために、空き教室を活用した分校や分散配置型分校の設置についての考え方。  七つ、伊佐市への出水養護学校分校の設置についてであります。  これで、一回目の質問を終わります。 19 ◯教育長(東條広光君)伊佐市への特別支援学校の設置に関しまして、まず、特別支援学校在籍者数の推移等についてであります。  今年五月一日現在、県内十六の特別支援学校に在籍する幼児・児童生徒数は二千五百二十二人で、この五年間で三百五十人増加しております。また、少子化が進行する中で、特別支援学校の在籍者数が毎年増加していることを勘案しますと、今後しばらくはこの傾向が続くのではないかと考えております。  通学バスについては、現在は新型コロナウイルス感染症対策の観点から、二十四路線を増便して運行しておりますが、通常は十二の特別支援学校で四十四路線を運行しております。  乗車時間は、通学バス利用者千六百八十五人のうち、三十分までが四百八十四人、三十分を超え六十分までが八百四十五人、六十分を超え七十分までが二百七人、七十分を超え八十分までが百三十一人、八十分を超え九十分までが十八人となっております。  出水養護学校の児童生徒数等についてであります。  出水養護学校は、県北部地域の知的障害と肢体不自由の児童生徒を対象として、平成十二年四月、小学部四十三人、中学部二十四人、高等部三十二人の計九十九人で開校しました。  今年の在籍者は、五月一日現在、小学部九十三人、中学部六十三人、高等部八十一人の計二百三十七人で、このうち、伊佐市からは三十七人、湧水町からは二十人の計五十七人が通学しております。  伊佐市及び湧水町からの通学生については、今後しばらくは五十人程度で推移するのではないかと考えております。  次に、特別支援学校の適正規模及び適正通学時間についてであります。  特別支援学校に関する幼児・児童生徒数の規模や通学時間についての基準や目安は定められていないところであります。  なお、先日制定されました学校教育法に基づく特別支援学校設置基準においては、特別支援学校を設置するのに必要な最低の基準として、学科、編制、施設及び設備についての基準が定められました。  出水養護学校を含む特別支援学校の教育環境改善に向けた取組についてであります。  出水養護学校における伊佐市等からの通学時間の課題については、地元からの要望を踏まえ、県教委では、これまで、通学バスの増便や路線の見直しを行い通学時間の短縮に取り組み、また、学校の分置に関しましては、小・中学校等の余裕教室を活用した他県の取組事例等の調査なども行ってきております。  国はこのほど、特別支援学校の教育環境を改善する観点から、特別支援学校設置基準を定めたところであります。この基準は、特別支援学校を新たに設置または増築する場合に必要な最低の基準として、在籍者数に応じた校舎や運動場の面積等を定めているところであります。  県教委としては、新たに制定された基準の趣旨を踏まえつつ、出水養護学校における伊佐・湧水地区の通学時間の課題等も含め、県全体の特別支援学校の教育環境の改善として、各学校の状況を勘案しながら、既存施設の改修や学校の分置なども含めて検討し、優先順位を定めて計画的に対応していきたいと考えております。 20 ◯鶴丸明人君 自席から、知事に再質問させていただきます。  ただいま教育長から、特別支援学校の教育環境の改善につきましては、国の今回の設置基準等も踏まえ、全体的な見直しを行い、地域の見直し等も含めて今後取り組んでいくといった趣旨のお話があったところであり、私としても一定の理解はできますが、長時間通学の児童を抱える地域につきましては特段の配慮が必要ではないかと考えております。  知事は、八月七日に湧水町で開催された知事とのふれあい対話で、保護者の皆さんから、私が先ほど申し上げたようなお話等を直接お聞きになったところであります。  私は、この通学バスの路線を走行してみました。湧水町から伊佐市までの二百六十八号線は走りやすい平たんな道ですが、伊佐市から出水市までの四百四十七号線は峠を越える山また山の殺風景な道のりで、ところどころには崩落や落石注意といった標識も見られました。また、途中トイレ休憩できるような場所もなく、毎日この道を往復三時間かけて通う児童を持つ保護者の皆さんの思いを重く受け止めたところであります。  この通学路線を通う児童数は横ばいというお話をされましたが、増えてくるであろうというお話もあります。保護者の皆さんの切なる願いは今後もさらに増え続けるものと私は思っております。  ところで、隣の宮崎県では、同じような教育環境改善に早くから取り組んでおられるところであります。えびの市、小林市から都城市にある養護学校に通っていた児童の長時間通学の解消を図るため、小林市の小学校・中学校・高等学校の空き教室を活用した分散配置型の分校を平成十七年度に開校しておられます。昨年の四月からはこれらを小林高校に統合して、在校生五十四名の小林養護学校として新たなスタートをしているところであります。  私は、このような例も参考に、湧水町については、他の養護学校に見られない長時間通学に置かれている特殊性を考慮して、伊佐市への分校の設置について、先ほど教育長からお話がありました見直しと並行ということではなく、先行してでもその改善に取り組むべきと考えますが、知事の見解をお聞かせください。 21 ◯知事(塩田康一君)今、議員から御紹介がありましたように、八月七日の湧水町と伊佐市での知事とのふれあい対話において、先ほどは湧水町の皆さんの御意見が紹介されましたけれども、伊佐市においても同様の御意見を頂いたところであります。  知事とのふれあい対話では、全体発言者十五人、地元の自治体からの推薦が五人、あと公募で十人ということでありますが、公募した中でも半分ぐらいが、伊佐・湧水の特別支援学校の設置を求める方というのが大変多くいらっしゃって、先ほどのような非常に切実な声を頂いたところであります。  また、地域の思いが非常に熱いものがあり、地元の自治体の皆さんも一緒になってこの実現に向けて取り組まれているということで、地域の思いというのはしっかりと受け止めなければならないと思っております。  教育長から答弁がありましたけれども、今、文部科学省からの設置基準というのが示されているということでございますので、この基準を踏まえることは必要でありますけれども、分校の設置などいろんな手段も含めて、早急に検討するよう教育委員会には求めているところであります。    [鶴丸明人君登壇] 22 ◯鶴丸明人君 それぞれ答弁頂きました。  私は、今回、特別支援学校の教育環境の改善については、伊佐市への特別支援学校設置、分校に特化して質問させていただきました。教育の環境改善については、教室等施設整備はもとよりですが、長時間通学の改善がさらに大事なのではないかとの思いがあったからであります。  私との意見交換で、ある保護者の方がお話をされた次の言葉が今も耳に残っております。今、子供たちが学校に通っていますが、卒業してからのその子の一生が心配でたまりません。このまま時間が止まってくれればと思うことが何回もあります。子供たちの長時間通学が解消され、近場の学校に通い、できるだけ地域の方々と交流の時間を持つことで、日頃から地域の皆さんとのつながりがより深くなり、卒業後の就労や生活のための選択肢が広がることを期待し、願っていますと。このような保護者の皆さんの切なる思いを形に変えていくためには時間の猶予はありません。早急な取組が必要であると思います。  ただいま知事から、前向きとも受け止められる答弁をお聞きいたしました。伊佐市への特別支援学校分校の設置については、一日も早く具体的な取組を進めていただくよう強く要望させていただきます。  次の質問に入ります。  次は、太陽光発電所の設置に関する条例の制定についてであります。  昨年の九月議会で、福岡のシフトエナジージャパンという米国企業の子会社が霧島市田口・大窪地区に計画している、約百三十五ヘクタールの急傾斜地に約二十六万枚のソーラーパネルを敷き詰めた八十メガワットの大規模な太陽光発電所事業を計画していることについて、資料をお示しし、また、霧島市長、霧島市議会は既に建設反対の意向であることもお話しして質問させていただいたところであります。  九月議会時点では、環境アセスメントの手続の中の一つである方法書に対する知事意見を八月十二日に経済産業省に提出したということでありました。  そこでまず、環境アセスメントの手続の現状と今後の見通しについて伺います。  次は、太陽光発電施設の設置規制区域を定めた条例の制定についてであります。  太陽光発電施設の設置に関する条例の制定については、これまで数人の議員の方から質問されていますが、昨年九月の私の質問以降、次のように大きく六点にわたり状況の変化がありましたので、これらを踏まえ、県としては条例を制定すべきではないかという視点で質問するものであります。  一点目は、昨年九月に地元霧島市では、霧島のいのちと自然文化を守る会がスタートし、冊子やパンフレットを作成し、建設反対の署名活動の取組が始まっております。この運動は、長野県の霧ヶ峰高原百九十六ヘクタールの土地に、出力八十九メガワット太陽光発電所を建設する計画でありましたが、多くの市民の反対の声で、手続の途中で事業者が撤退した例を参考にスタートされたものであります。署名者が数か月ごとに広がりを見せ、現在その数が二万人を超え、今後もさらに賛同者が増える見込みであります。  二点目は、奈良県北西部の平群町に建設計画されたメガソーラーの例であります。規模は、山の中腹に四十八ヘクタールを造成して五万九千枚のソーラーパネルを敷き詰めるものであります。この建設計画の事業主はアメリカの投資会社であり、全国各地で進むメガソーラー建設計画の多くが外国ファンド主導が多い中の一つの例でもありました。この計画は、環境アセスメントの手続を終えて、今年の二月に工事が始まり、予定地の山腹に広がる山林は全部伐採されている状況にありました。  この計画に反対していた平群町の有志でつくる、平群のメガソーラーを考える会は、四月に原告千人の訴訟を提起したものの、工事は進行し、行政手続は全て終えていたので、勝てる見込みのない訴訟となりつつあったところであります。  しかし、このような中、令和三年六月の奈良県議会で、申請された設計内容に意図的と思える誤りがあったとの質問を受けた知事は、工事の停止を指示し、現在工事が中断しているところであります。また、住民と業者の間でトラブルが相次いでいることから、メガソーラー設置に関する県独自のガイドラインを今年度中に策定する旨の発言を知事がされたことが報道されているところであります。  三点目は、今議会自民党の代表質問において、熱海の大規模土石流災害を踏まえ、本県の地理的また厳しい自然的条件を踏まえた建設残土等の規制に関する条例化についての質問がなされ、知事から、今後検討していく旨の前向きな答弁がなされているところであります。  四点目は、改正地球温暖化対策推進法が五月二十六日に参議院本会議で成立いたしました。これは、二〇五〇年までの脱炭素社会の実現に向けて再生エネルギーの導入を内容とするものであります。  太陽光につきましては、市町村が促進区域を設定し、その取組を進めることになりますが、環境省では、傾斜地など崖崩れや土石流が発生すれば、住民に災害が及ぶおそれのある土砂災害区域などは促進区域から除外する方針を示しており、今後その具体案が検討されると伺っているところであります。  五点目は、それ以前になりますが、令和元年九月、林野庁においては、太陽光発電に係る林地開発許可制度の一層の適正な運用が求められているという昨今の状況から、太陽光発電に係る林地開発許可基準の在り方に関する検討会を設置し、その報告書が取りまとめられているところであります。  六点目は、県におけるメガソーラー建設を規制する条例の制定に関する動きであります。県レベルでは平成二十九年に兵庫県、平成三十年に和歌山県、令和元年に岡山県が、また、山梨県では今年─令和三年─十月から施行する条例を制定しているところであります。それぞれ勉強もさせていただきましたが、最新の山梨県の例では、条例名を山梨県太陽光発電施設の適正な設置及び維持管理に関する条例として、維持管理の点まで明記しているところであります。  この条例では、設置規制区域として、地滑り防止区域、急傾斜崩壊危険区域、土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域、砂防指定地の区域のほかに、地域森林計画の対象となっている民有林の区域等も規制区域としているところであります。これなど、ただいま申し上げました改正地球温暖化対策推進法の施行に当たり検討される、促進区域を除外する区域を先取りしている条例ではないかと私は受け止めているところであります。  ただいま申し上げましたように、状況の変化を踏まえた場合、私は、市町村レベルの条例ではなく、土砂災害警戒区域の指定や林地開発の許可審査に当たる県において条例を制定することが、より適切ではないかと考えているところであります。  太陽光発電施設に関する条例─設置の規制区域を定めた条例─の制定についての県の考え方をお聞かせください。  これで、二回目の質問を終わります。 23 ◯環境林務部長(松下 正君)霧島市田口・大窪地区メガソーラー発電所事業の環境アセスメントの現状と見通しについてでございます。  当該事業に係る方法書に対しては、令和二年十一月四日付で経済産業大臣が事業者に対し、環境影響評価の項目や手法について勧告を行ったところでございます。  勧告後、事業者は、調査を行うとともに、環境影響の予測や評価を行い、その結果を取りまとめた準備書の公告・縦覧、住民説明会を行い、住民意見の概要と事業者の見解を経済産業省及び県へ提出することになります。  県は、霧島市長への意見照会を行った上で、百二十日以内に知事意見を経済産業大臣宛てに送付し、経済産業大臣は、事業者に対し、必要な勧告をすることができるとされております。  その後、事業者は、評価書を作成し、経済産業大臣は、評価書の変更が必要であれば変更命令を発出し、変更の必要がなければその旨を事業者に通知することにより、評価書が確定し、確定した評価書を事業者が一か月間、公告・縦覧することにより、環境アセスメントの手続は終了することになります。
    24 ◯地域政策総括監(房村正博君)太陽光発電施設の設置に関する条例についてでございます。  再生可能エネルギーの導入については、防災・環境上の懸念等をめぐり事業者と地域住民との関係が悪化するなどの問題が顕在化したことなどから、国は、平成二十九年四月、再生可能エネルギー発電事業計画の認定制度を創設し、事業者に対し、国が指導・助言や改善命令、認定取消しを行うことができるとしたところでございます。  また、国は、本年五月に地球温暖化対策推進法を改正しておりまして、市町村は、実行計画において、地域の自然的社会的条件に応じた再エネ利用促進等の施策の実施目標と再エネの促進区域を定めるよう努めることとされたところであります。  促進区域につきましては、環境保全に支障を及ぼすおそれがない区域で設定できることとなっており、今後、国において、設定に関する基準等が示されることとなっております。  一方、県においては、太陽光発電など再生可能エネルギー施設の設置については、これまで、森林法などの個別法令や県土地利用対策要綱等に基づき、防災面を中心とした指導・助言を行ってきているほか、環境影響評価の実施に当たっては、地域住民等に対し、積極的に情報公開や説明を行うことなどの意見を述べているところでございます。  太陽光発電施設設置に関する条例の制定につきましては、国の促進区域に係る基準の内容などを注視しながら、その必要性など様々な角度から検討する必要があると考えております。 25 ◯鶴丸明人君 再度、この席から確認、質問させていただきたいと思います。  これまで、今議会を含め、数人の方々が景観、環境、災害という視点で質問されておられましたが、それを踏まえ、執行部の答弁は、先ほどお話がありましたように、再生可能エネルギー固定価格買取制度の創設により国が指導・助言を行う。あるいは県におきましては、森林法などの個別法令や県土地利用対策要綱に基づき指導・助言を行っていることから、条例の制定の検討は特別必要はないという答弁をずっとしてきておられるわけですが、ただいまのお話をお伺いいたしますと、国の動向等を踏まえ、条例制定についての検討もすると受け止めてよろしいか、確認させていただきます。 26 ◯地域政策総括監(房村正博君)条例の制定の件についての質問でございます。  先ほど答弁でも申し上げましたように、国の促進区域に関する具体的な内容というのがまだ明らかになっていないところでございます。つくってはならないところを除外するといった考え方も例としては示されておりますが、最終的にどういう形になるかよく分からないというところもありまして、可能性としては、議員がおっしゃっているような条例に近い形のようなゾーニングというのも、この促進区域でできる可能性もあるのかなと思っているところでございます。いずれにしても、条例の制定につきましては、そういう状況も含めながら検討する必要があるということでございます。 27 ◯鶴丸明人君 再度お伺いいたします。  山梨県では、国がFIT制度を導入されたわけですけれども、これとは別の視点で、地域の実態を踏まえ、県の条例として太陽光発電施設の設置、維持管理及び廃止に至る全般について、地域環境を保全し、また災害を防止する方法をより適切に実施するための設置規制区域を定めているところであります。また、制度の趣旨は、地域と共生する太陽光発電事業の普及により、太陽光発電事業と地域環境との調和、安全で安心な県民生活を図るためのものであることが示されているところでありまして、今回制定された改正地球温暖化対策推進法の促進区域と促進区域から除外すべき区域を、国より先行した形で取り組んだ条例ではないかと思っているんですが、この条例をどのように受け止めておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。  あわせて、知事には、恐らくこの条例、十月一日から施行でございますので、詳しく目を通しておられないのではないかと思いますが、もし目を通しておられるようであれば御感想をお聞かせください。 28 ◯地域政策総括監(房村正博君)山梨県の条例についてでございます。  山梨県の条例におきましては、議員からありましたように設置規制区域を設けているところでございまして、地球温暖化対策推進法の改正内容にあります促進区域との関係性ということについては、今後整理されていくことになるのではないかなと思っているところでございます。先ほど申し上げましたように、条例の制定については様々な角度から検討させていただきたいと思います。 29 ◯知事(塩田康一君)山梨県の条例というのは、ただいま議員のお話をお伺いしたというところで、詳細をまだ承知しておりませんけれども、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入というのは、大変重要な課題であると思っております。一方で、自然環境への配慮あるいは地域との共生といったことも、同時に大変重要なポイントだと思っておりますので、国の制度もいろいろございますけれども、こういった条例の必要性についてもしっかりと検討してまいりたいと思います。    [鶴丸明人君登壇] 30 ◯鶴丸明人君 それぞれ答弁頂きました。  太陽光発電所の設置に関する条例の制定につきましては、私は、山梨県が国の動向を先取る形で制限区域を設けており、評価できるものと思っておりますし、また、このような条例を制定することにより、外国人が事業主体となり、ファンド資金を集め、建設計画を進める手法の抑制効果の側面もあるのではないかと思っております。  山梨県、知事御案内のとおり、コロナ禍でグリーン認証制度を全国に先駆け始められたり、熱海の土石流災害を踏まえ、国に先駆けて早い段階で県独自の基準で盛土の確認作業に取り組み、また、先ほど申し上げました太陽光発電設置に制限区域を設けた条例の制定に取り組まれるなど、大変ユニークな活動をされております。  太陽光発電施設の設置に関する条例については、総合政策部のみならず、土木部、環境林務部の所管に関わるものと大変関連がございます。今後、この山梨県の条例や国の動向等を踏まえ、お話があったように検討していただくことを強く要望させていただきます。  次は、DMO─観光地域づくり法人─による稼げる観光地づくりについてであります。  一点目は、DMO推進のための取組状況についてであります。  知事のマニフェストの一つである稼げる観光地を推進するため、その主体として、私は、DMO─観光地域づくり法人─がその一つであるとの認識の下、令和二年九月、また令和三年三月議会で、具体的な取組方策等の質問をしたところであります。  これに対し、県としては、今年度から、稼げる観光地域づくり推進事業を創設し、観光地経営の手法などを学ぶ研修や、地域連携DMO等への専門家の派遣・指導等を実施し、組織力の向上及び中核となる人材の育成を図ることとしている旨の前向きな答弁を頂いたところであります。  本年度の予算執行に当たっては、コロナの対応のため大変厳しい状況にあると思いますが、これまでの取組状況や今後の取組について、まずお伺いいたします。  広大な静穏海域と雄大な桜島、優れた自然環境を有し、県人口の約半分の人々が生活している錦江湾は、本県が世界に誇ることができる最大の稼げる観光資源また財産であると考えているところであります。  錦江湾みらい総合戦略関係や錦江湾のリゾート地としての活用などについては、これまで同僚議員数名による質問、提言がされているところでございます。  私は、錦江湾の観光資源の活用については、過去を振り返り、現状を見て、未来を思考するという観点で、今回は質問、提言させていただきます。  錦江湾につきましては、この資源、財産を未来に向けて活用したいという思いで、過去三回、その方向性が策定されているところであります。  第一回目は、約五十年前に策定された県政発展計画や県政推進計画であります。これらの計画では、錦江湾そのものよりも、霧島、桜島、指宿など錦江湾周辺の観光地帯を本県の基幹観光として整備しようとするものでありました。  第二回目は、平成三年、三十年前になります。錦江湾ウォーターフロント整備基本構想であります。この構想は、錦江湾を鹿児島臨海ゾーン、湾奥ゾーン、西岸ゾーン、東岸ゾーンの四つのゾーンに区分して、主としてハード面の整備を中心に行おうとするものでありました。この整備目標として、自然環境の保全、ヨット等海洋性レクリエーションメッカの形成、多様な交流の場の形成、海と触れ合うまちづくり、物流・産業の充実、こういったことについて具体的な整備目標を掲げたものでありました。  第三回目は、平成十一年、約二十年前になりますが、錦江湾みらい総合戦略推進協議会が策定した錦江湾みらい総合戦略と錦江湾みらい総合戦略推進計画であります。この推進計画は、海洋レクリエーション活動の拡大、子供たちの夢を育む体験学習の拠点づくり、浜辺のにぎわいと潤いの創出、水産資源を生かした産業の振興と食文化の形成、魅力ある観光拠点の形成、学術的・文化的な交流の促進、未来に引き継ぐ自然環境の保全と活用、こういった点について具体的な方策を示しているものであります。  この計画の特徴は、錦江湾みらい総合戦略推進計画を策定した錦江湾みらい総合戦略推進協議会、現在の県及び鹿児島市、鹿屋市、垂水市、霧島市、姶良市、錦江町、南大隅町の七市町及び鹿児島県商工会議所連合会、鹿児島商工会連合会、県漁連、観光連盟、鹿児島青年会議所、県旅客船協会、県セーリング連盟で構成されておりますが、この協議会が策定した計画を毎年見直し、更新し、その進行管理を行ってきているところであります。二十年にわたり、その推進が図られてきているところであります。  私は、このような計画等への取組で、錦江湾を観光資源として活用するための基盤整備や資源の磨き上げがかなり進んできているものと考えております。  鹿児島港を含む鹿児島臨海ゾーンについては、クルーズ船の寄港を踏まえたマリンポートかごしまの岸壁等の整備や、離島との人流や物流の利便性を図るための鹿児島本港区の整備が進んできているところであります。また、港湾の物流・人流の円滑化を図るための臨港道路の整備も進みつつあります。  さらに、ドルフィンポート跡地等を活用した鹿児島港本港区エリアまちづくりについても、知事のマニフェストにあるコンベンション・展示機能を備える施設の整備や、サッカー場等体育施設の整備についての議論が深まってきているところであります。  このように、知事のマニフェストの錦江湾のリゾートとしての活用については、スーパーヨットや湾内のクルーズ船や海上タクシー等の係留ができる浮き桟橋の整備など、一部を残していますが、これまでの計画でほぼ取組が終わってきているものと考えております。今後は、これらの施設の総合的な活用を図り、観光地経営の視点に立った取組が重要になってくるものと考えています。これからは、いよいよ知事がマニフェストに掲げる、錦江湾のリゾート地としての活用、稼げる観光地づくりを推進するときであると思います。  現在、知事は、かごしま未来創造ビジョンの見直し作業に取り組んでおられますので、このかごしま未来創造ビジョンの中に、錦江湾のリゾート地としての活用を明示し、取り組むべきではないかと考えているところであります。  御案内のとおり、DMOとは、観光地経営の視点に立った観光地域づくりのかじ取り役として、多様な関係者と協働しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための法人とされているところであります。  知事は、稼げる観光地づくりを進めるためには、観光客のニーズに的確に対応できるようにデータを客観的に分析・検討し、観光客はもとより観光消費額の増を図るとともに、交流人口の増加を地元の雇用にしっかりつなげる。すなわち「稼ぐ力」を引き出すために地域全体で地域資源の発掘・磨き上げや地域の観光資源・食を中心とした幅広い関係者が連携した観光地づくりが必要であり、これを推進するための主体としてのDMOの役割は大きいものと考えている旨、答弁されているところであります。  これらを踏まえて、以下質問いたします。  一点目は、錦江湾みらい総合戦略推進協議会及び錦江湾みらい総合推進計画の成果と今後の取組についてであります。  二点目は、新たな錦江湾リゾート推進計画の策定とDMOによる稼げる観光地域づくりの推進についてであります。  以上で、三回目の質問を終わります。    [知事塩田康一君登壇] 31 ◯知事(塩田康一君)DMOによる稼げる観光地域づくりの推進についてであります。  錦江湾は、桜島や開聞岳などの雄大な景観や広大な静穏水域などに恵まれた、国内外の観光客を魅了する本県を代表する観光資源であります。  マリンスポーツに関するイベントも多く開催されているほか、湾内を巡るクルーズでは、自然体験や船上からのすばらしい景観により、国内外からの多くの観光客に楽しんでいただいております。  県としては、将来的なDMOとの連携も見据えつつ、まずは、関係市町村や事業者、観光関係団体などと連携して、錦江湾の魅力を生かした体験メニューの開発や景観整備などに取り組み、錦江湾のリゾートとしての活用を進めることで、国内外からの観光客の増大を図り、本県の基幹産業である観光関連産業の振興につなげてまいりたいと考えております。 32 ◯観光・文化スポーツ部長(悦田克己君)DMO推進のための取組状況についてでございます。  稼げる観光地域づくり推進事業につきましては、当該事業業務委託の公募型プロポーザルを実施し、応募があった三者からの企画提案書等を審査した結果、株式会社リクルートに委託したところでございます。  同事業につきましては、自律的かつ継続的な観光地経営ができるノウハウの習得・活用を図ることを目的とした人材養成講座の開催や、県内の登録DMOへの専門家派遣、観光ガイドの自立化を目的とした研修を行うこととしております。  なお、県内の登録DMOへの専門家派遣は既に開始しているところでございますが、人材養成講座につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初の八月末からの開催を十月からに延期したところでございます。また、観光ガイド研修につきましては、今後実施することといたしております。 33 ◯地域政策総括監(房村正博君)錦江湾みらい総合戦略推進計画等の成果と今後の取組についてでございます。  錦江湾みらい総合戦略推進協議会におきましては、これまで、錦江湾の魅力を広く発信するため、錦江湾マリンスポーツ大会や錦江湾クリーンアップ作戦、子供を対象としたクルージングなどを実施するとともに、SNSなどを活用して効果的に情報発信を行うなど、戦略の推進に努めてきているところでございます。  推進計画については、毎年度見直しを行ってきており、戦略の基本理念に基づき、マリンポートかごしまや臨港道路など鹿児島港の整備、関係自治体や民間団体等による錦江湾の特性を生かしたイベント開催など、様々な取組が展開されてきたところであります。  これらの取組を通じ、県民一人一人が錦江湾の魅力等に関する理解を高め、錦江湾に対する愛着や誇りの醸成につながってきているものと考えております。  今後とも、戦略や取組について効果的な情報発信を行うとともに、各団体等と連携を図り、交流人口の拡大などにつながる取組が促進されるよう努めてまいりたいと考えております。    [鶴丸明人君登壇] 34 ◯鶴丸明人君 それぞれ御答弁頂きました。  今回の質問に当たり、私は、平成二十一年三月に制定された観光立県かごしま県民条例に基づき策定されました鹿児島県観光振興基本方針の最新版─令和二年三月策定─についても読ませていただきました。  本県全体の地域の特性を生かした観光地づくりという視点で、この指針は振興局単位で七つの地域を設定し、それぞれの施策の方向を示しており、大変すばらしい観光振興方針であると思っております。これに基づく取組を積極的にお願いし、期待しているところであります。  一方、錦江湾につきましては、知事の答弁もございました。また、これまで申し上げたとおり、成果を踏まえて、今後はリゾートとしての活用あるいは稼げる観光地づくりとして、DMOも視野に入れたさらなる展開の取組を期待しているところであります。  最近、テレビ等でSDGs、カーボンニュートラル、デジタル化社会といった言葉を耳にする機会が増えてまいりました。ポストコロナと相まって、あらゆる場面でこれまでの生活や習慣から転換が求められてくるのではないかと思います。しかしながら、どのような社会、時代になろうとも、安心・安全のある生活、潤いと未来のある生活、そして先祖やふるさとを敬い、家族と楽しく生きる生活が一番ではないかと思います。  九月二十四日は西郷南洲翁の命日でした。今年も墓参りをさせていただきました。人が共に生き、仲よく暮らしていくための筋道、目には見えなくとも社会を全うする上で確かに存在する筋道を倫理と言うそうであります。西郷南洲翁は、これを天理という言葉を使い、筋道の大事さを諭しておられます。  私は、今回の県政だよりに、うそに追従、政治家の二枚舌、寝業師は厳禁事項ですと書き添えて配布させていただきました。だんだん年を重ねてくるといろんな言葉を深く受け止めるようになってくる気がします。人生に偶然はない、起きることは全て必然であるという言葉や、政治屋は次の選挙のことを考え、政治家は次の世代のことを考えるという言葉もその一つの例であります。  これからも声なき声に耳を傾け、しっかりと県政に届け、与えられた職責の一端を果たしてまいりたいと考えております。引き続き、御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。  これで、私の質問の全てを終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手) 35 ◯議長(田之上耕三君)ここで、休憩いたします。  再開は、午後一時二十五分といたします。        午後零時  十分休憩       ────────────        午後一時二十五分再開 36 ◯副議長(吉留厚宏君)再開いたします。  中村素子君に発言を許可いたします。    [中村素子君登壇](拍手) 37 ◯中村素子君 阿久根市・出水郡区の中村素子です。  新型コロナウイルス感染症との闘いが二年近くに及んでいます。長引くコロナ禍の中、今年五月には阿久根市の飲食店でクラスターが発生すると、その影響等を受けた数件の店舗が廃業を決めました。もともとそう多くない街の灯が、一つまた一つと消えていくことに心を痛めております。  最近も、地元事業者の方々から、重く苦しい胸のうちを伺う機会が多く、七十歳を前に一億円近い借金をしました。私は死ぬまで働いて、これを返していかなければなりませんという声や、まん延防止の措置がこれ以上続くとうちの商売は終わる。解約した生命保険を老後の蓄えに残しておいたけれど、従業員の生活を守るために切り崩しているという声などに触れると、必死に歯を食いしばっている県民の皆様が背負った借金を返せるよう、安心して老後を過ごせるよう、稼ぐ環境を早急に整えていかなければならないという思いを強くするところです。  では、通告に従い、質問に入ります。  まず、中小企業支援について伺います。  コロナ禍が長引く中、県内企業が受けたダメージは、今後、ボディーブローのように深く長く我が県経済に影を落とすのではないかと危惧しています。  先日、我が党は、県中小企業団体中央会や商工会連合会の皆様と意見交換を行いました。当面の需要や売上げの回復が期待しづらい中で、長期的な支援を求める声が大きい一方で、コロナとの共生を前提に新たな取組を始める動きもあり、社会経済の変化に対応するための事業再構築の支援の声も上がったところです。  県も、昨年、コロナ禍の影響により経営に支障を来している中小企業等を対象に、新型コロナウイルス関連緊急経営対策資金を創設し、原則として、直近一か月の売上高等が前年度同月比で一五%以上減少、その後二か月の売上高も同様に減少が見込まれることを条件に、運転資金、設備資金として六千万円を限度額に金融機関が行う貸付けについて、三年間の利子補給をするなどして、中小企業の経営を下支えしてきました。  そこでまず、この新型コロナウイルス関連緊急経営対策資金の融資実績についてお伺いするつもりでしたが、先日のおさだ議員の質問と重複しますので、割愛いたします。  この資金創設以来、私も経営が急速に悪化する事業者の方々からの御相談に、県が利子補給する融資がありますので、ぜひ活用してくださいと紹介してきました。しかし、先行きが全く不透明な中においては、無利子であっても借金は借金、返済できるかどうか分からないと、融資を受けるのに慎重な事業者が多かったというのが実感です。  貸付け開始から一年が経過し、いよいよ返済が始まろうとする時期において、一年前に多くの事業者が案じていたとおり、経済はなお厳しい状況が続き、好転の兆しも見えておりません。  業界団体からは、今後さらに資金繰りが悪化することが予想されるとして、条件が不利になることなく、元金据置きが延長できるよう求める声などが上がっています。  そこで、新型コロナウイルス関連緊急経営対策資金について、保証承諾された件数のうち、条件変更を行った件数をお示しください。  また、業種別件数についてもお示しください。  さて、さきの中小企業の皆様との意見交換の中では、事業承継が大きな課題であるという声も伺いました。  全国的に、中小企業において経営者の高齢化が進む中で、国も円滑な事業承継を推進するため、様々な支援策を展開しています。一方、全国の後継者不在率は高い割合で推移し、事業承継のスタイルとしてMアンドAの件数が近年増加傾向で推移していることに加え、今般、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、二〇二〇年の廃業件数が過去最多を記録している状況等も踏まえ、中小企業庁は、改めて、足元の中小企業の経営環境に合った事業承継を推進するため、五年ぶりに事業承継のガイドラインを改定する検討会をこの九月一日に行ったと承知しています。  我が県は、企業全体の九九・九%が中小企業であり、経営者が高齢化する中で、円滑な事業承継を促進することが喫緊の課題です。特に、コロナ禍の影響でこのまま廃業を選択する高齢の経営者が増加することも考えられ、県経済への影響が危惧されるところです。  そこで伺います。  本県の中小企業の経営者の平均年齢、後継者不在率を含め、本県における事業承継に係る現状についてお示しください。  また、事業承継に係る県の取組についてもお示しください。  次に、デジタル推進について伺います。  我が国のIT戦略は、平成十二年に成立したIT基本法に基づき、平成十三年のe─Japan戦略から始まり、主に超高速ネットワークインフラの整備とIT利活用の推進を図ってきました。その後、平成二十五年の内閣情報通信政策監の設置や、平成二十八年の官民データ基本法の成立、令和元年のデジタル手続法の成立等により、データの利活用とデジタルガバメントの実現に向けて動いてきたところです。  しかしながら、新型コロナウイルス感染症の対応において、国、自治体のデジタル化の遅れや人材不足、不十分なシステム連携に伴う行政の非効率、煩雑な手続や給付の遅れなど、住民サービスの劣化、民間や社会におけるデジタル化の遅れなど、デジタル化について様々な課題が明らかになりました。
     これらの課題を根本的に解決するには、行政の縦割りを打破し、大胆な規制改革を断行する必要があり、そのための突破口として、九月一日にデジタル庁が発足したところです。その人材募集において、民間から大規模な採用をするなど、早くから国民の注目を集めています。  デジタル庁では、国民に対する行政サービスのデジタル化の推進、暮らしのデジタル化の推進などを目標に掲げ、国、自治体のシステムの統一・標準化や、マイナンバーカードの普及促進、スマホによる行政手続のオンライン化などを進めるとともに、オンライン診療やデジタル教育等の規制緩和を行うなど、国民が当たり前に望んでいるサービスを実現し、デジタル化の利便性を実現できる社会の構築を目指すということです。  そこで、まず伺います。  デジタル庁の設置により進められるデジタル化は、県民生活にどのような変化をもたらすのか、お示しください。  本格的な人口減少や少子高齢化の進行などとともに地方の疲弊が深刻化する中、しっかりと地方活性化に向けた取組を進める必要があります。  一方、新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワークや二地域居住など、新しい働き方・暮らし方が広がったことは人々の意識変化につながっており、地方回帰の機運が高まっております。  地域活性化に向けた取組を進めるためにも、本県が地方回帰の受皿となるためにも、あらゆる分野でのデジタル化を進め、デジタル社会の実現に向け、しっかりと取り組んでいくことが大事です。  県では、県全体のデジタル・トランスフォーメーション、いわゆるDXに係る企画・総合調整及びデジタル関連施策の推進を図るため、今年度、新たにデジタル推進課を設置するとともに、年度内に鹿児島県DX推進戦略─仮称─を策定することとし、五月には第一回目の県デジタル推進本部会議を開催されたところです。  そこで伺います。  県が今年度策定予定の県DX推進戦略ではどのような方向性で整理する予定か、お示しください。  県でデジタル化、DXを進める上では、デジタル人材の確保・活用が重要です。昨年十二月に示された自治体のDX推進計画においても、自治体でDXを推進するに当たっては、ICTの知見を持った上で、現場の実務に即し、技術の導入の判断や助言を行うことのできるデジタル人材を確保することが必要であると示されています。  一方、本年七月三十日に公表された総務省の情報通信白書では、デジタル人材の不足を感じる国内企業が五割を超えており、特に四分の一の企業が、DXの主導者や新たなビジネス企画の立案者など、デジタル人材の中でも特にリーダーとなる人材が大いに不足していると感じるなど、デジタル人材不足が深刻化している状況です。  そこでお伺いします。  県では、デジタル人材の確保・活用の観点から、DX推進体制がどのようになっているのか、お示しください。  続いて、肥薩おれんじ鉄道活性化対策について伺います。  三月議会で答弁を御準備いただきながら割愛いたしましたので、今回、続きを伺いたいと思います。  肥薩おれんじ鉄道に関しては、さきの議会で、知事より、「実際に乗車してみて、改めて同鉄道の魅力を認識するとともに、観光面でのポテンシャルの高さも感じた、観光事業者、地域住民など、幅広い関係者と連携して沿線地域の魅力向上に取り組むことで、地域の活性化にもつながると強く思った」との御答弁があったところです。  県の政策の中でも、知事が感じた肥薩おれんじ鉄道の魅力を、マイクロツーリズムやワーケーション等、新しい旅行形態や働き方で需要が見込まれる層に訴求し、利用促進と地域活性化につなげていただきたいと、改めてお願い申し上げます。  さて、この六月、肥薩おれんじ鉄道では社長の交代があり、熊本県庁OGである古森氏が初の女性社長として御就任されました。  私たち肥薩おれんじ鉄道活性化議員連盟も、六月議会の際に古森新社長をお招きして、実際にお話を聞かせていただきました。大変厳しい経営を引き受けてくださることに感謝するとともに、明るく気力みなぎるお姿に、肥薩おれんじ鉄道の新たな展開を期待する気持ちが膨らんだところです。  これまでの出田社長は、在任中に、映画「かぞくいろ」の撮影や台湾鉄路、屏東線、南廻線との姉妹線締結のほか、SNS等による情報発信の強化に大変御尽力されました。  こうした取組を基礎に、今後、古森社長の下、女性の視点を加えた企画等でさらなる発展につなげていただきたい。そして、私たち議員連盟もその活動をできる限り後押ししていきたいと考えております。  とはいえ、足元の経営状況は厳しさを増しており、平成十六年度に設置され、平成十九年には五億円を超えて造成されていた経営安定基金の残高も、今年三月現在、七千六百万円となっているとのことです。  コロナ禍で不要不急の外出自粛等による利用減少に加え、度重なる豪雨での被災や運休等が追い打ちをかける状況です。コロナ禍が長引けば経営に大きな影響が出るのは必至で、経営安定基金の残高も減少する状況にあっては、県のさらなる支援策で同鉄道を支える必要があると考えています。  そこで伺います。  肥薩おれんじ鉄道について、コロナの影響と支援策についてお示しください。  また、平成二十九年度から令和三年度にかけて中期経営計画が策定されていますが、これまでの計画の進捗状況についてお示しください。  さらに、次期計画について現在策定中であると承知しています。次期計画の基本的な考え方についてお示しください。  これで、一回目の質問を終わります。    [知事塩田康一君登壇] 38 ◯知事(塩田康一君)デジタル化による県民生活の変化についてでございます。  デジタル庁では、子育てや引っ越しなどの様々な行政手続や各種手当の給付などが、役所に行くことなく、オンラインで簡単にできる社会を目指し、市町村ごとに個別の仕様となっている情報システムの統一や手続の標準化、マイナンバーカードの普及等に取り組むこととしております。  また、オンライン診療など、日常生活が便利になり、地方にいても都会と同じような生活ができるよう、社会のデジタル化と制度の見直しを進めることとしております。  産業面では、新産業を創出し、雇用と投資を生み出すため、公的機関が有する基本的なデータをビッグデータとして広く共有し、利活用する取組を進めることとしております。  国は、こうした取組を通じ、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル社会の実現を目指しております。  本県は、多くの離島や中山間地域を有しており、また、台風や豪雨などによる自然災害が発生しやすいという地理的特性を有しております。  このような立地環境を踏まえると、本県におけるデジタル化の推進は、リモート医療や遠隔授業の普及、行政手続のオンライン化のほか、防災情報の一元化による迅速な災害対応を可能にし、さらには、ICT環境の充実により、本県の地域資源を生かしたサテライトオフィスやワーケーションの拡大、雇用機会の創出にもつながることが期待されると考えております。  このように、本県においても、デジタル化の進展を図ることにより、県民の暮らしの利便性向上や新たな産業の創出、地域の活性化につなげることができるものと考えております。 39 ◯商工労働水産部長(平林孝之君)中小企業支援における新型コロナウイルス関連緊急経営対策資金の条件変更の状況についてでございます。  新型コロナウイルス関連緊急経営対策資金については、令和二年四月一日から令和三年五月三十一日までに約一万六千四百件が保証承諾されております。  そのうち、元金の返済開始を延ばす据置期間の延長や、月々の返済額を減額する返済猶予など、貸付け条件の変更を行った件数は、令和三年八月末現在で約百八十件となっており、本年四月以降増加しております。  業種別では、小売業が約八十件で最も多く、次いでサービス業が約四十件、建設業が約三十件となっております。  次に、県内中小企業の事業承継に係る現状や県の取組についてでございます。  民間の信用調査機関の調査によりますと、本県における令和二年の社長の平均年齢は六十・六歳となっており、年々高齢化が進行しております。業種別で見ると、不動産業が六十四・二歳と最も高く、次いで小売業が六十一・〇歳、製造業が六十・九歳となっております。一方で、後継者が確保できていない県内企業は約五割に上っております。  事業承継が行われず廃業した場合、当該企業の雇用や技術、ノウハウが失われ、地域経済への影響が危惧されます。  経営者は、それまで培ってきた人や事業用資産、経営理念など、多岐にわたる経営資源を後継者に承継することが必要であるため、早い段階から事業承継に取り組むことが重要でございます。  また、後継者未定が五割の現状を踏まえると、国が示していますとおり、今後は、親族以外の第三者による承継を後押しすることも極めて重要になると考えております。  事業承継に係る県の取組については、これまで、商工団体や金融機関、行政等で構成するかごしま中小企業支援ネットワークにおいて、個々の中小企業のライフサイクルの中で生じる経営課題に応じた切れ目のない支援を行えるよう、具体的な支援内容についての情報共有や意見交換等を行っているところでございます。  さらに、今年度から新たに、経営者等を対象に、事業を承継するに当たって生じる課題を解決するためのプログラムセミナーの開催のほか、第三者承継を促進するに当たり、自社の企業価値を把握するために必要な専門家委託や調査等に係る経費の助成を行っております。  一方、後継者等を対象に、代替わりを契機とする事業の磨き上げのための伴走型支援を実施するため、かごしま産業支援センター及び県商工会連合会に専門人材を配置し、企業訪問による相談対応を行っているところでございます。  県としては、国が鹿児島商工会議所に設置しております鹿児島県事業承継・引継ぎ支援センター等の関係機関とも連携し、今後とも円滑な事業承継の促進に努めてまいりたいと考えております。 40 ◯総合政策部長(前田洋一君)県DX推進戦略の方向性についてであります。  県では、デジタルテクノロジーを活用し、社会に変革をもたらす、いわゆるDXの推進に向けた課題と基本的な方向性を明確にするため、今年度、推進戦略を策定することとしております。  DXを進める上では、まずは、行政や民間のデジタル化を進め、デジタル化の成果として得られるデータを幅広く活用できるよう公開し、蓄積、分析、活用を進めていくことが重要であると考えております。  あわせて、県民のICT理解の向上、デジタル人材の育成・活用、国の各種支援制度の活用など、DXの推進基盤を強化していくことが必要だと考えております。  県としては、DXが新産業の創出や県民の暮らしの質の向上につながるよう、社会全体として取り組める戦略の策定を目指すこととしております。  なお、戦略の策定に当たりましては、実効性あるものとするため、今後、県内企業等におけるデジタル人材の確保・育成策や、市町村における標準化・共通化、オンライン化の取組状況に関する実態調査などを実施したいと考えております。  次に、県のDX推進体制についてでございます。  県では、本年四月、DX推進に向けた取組を進めるため、デジタル推進課を設置したところであります。  取組を進めるに当たりましては、専門的な知識を有する民間の人材を活用することが必要であることから、オープンデータやマイナンバーの専門家、AIを活用したサービスを提供する企業の経営者など、様々な分野の有識者六名の方を県DX推進アドバイザーに委嘱しております。  これまで、戦略策定に係る助言・提案のほか、地方税や児童手当など市町村の情報システムの標準化等に関する説明会での講演、県や民間とのデータ利活用に向けた対話の場での助言等を行っていただいたところでございます。  また、デジタル化の推進には、デジタル機器の導入やITサービスの活用など、実務的なサポートが必要となることから、今後、IT企業からの人材派遣などの協力体制を構築することとしております。  県としては、引き続き、専門的知見を有する各分野の有識者による助言、提案を頂くとともに、IT企業による組織的なバックアップを得ることで、デジタル人材を多層的に活用し、県DX推進戦略の策定をはじめ、県全体のデジタル化を推進することとしております。 41 ◯地域政策総括監(房村正博君)肥薩おれんじ鉄道活性化対策のうち、コロナの影響と支援策についてでございます。  肥薩おれんじ鉄道につきましては、令和二年度の輸送人員は前年度比二五%減の八十万人、旅客運輸収入は前年度比三八%減の一億九千九百万円となるなど、感染症拡大の影響等を大きく受けたところでございます。  同鉄道では、こうした状況下でも、国の新型コロナウイルス感染症対策に係る基本的対処方針に基づき、地域の生活や経済活動等を支える観点から、運行を継続してきたところでございます。  県といたしましては、熊本県と連携し、昨年度においては、同鉄道に対し、新型コロナウイルス感染症対策として、車内の密度の上昇を回避するために、輸送人員が減少しても運行便数を維持する経費について支援を行い、本年度においても、同様の支援を行ったところでございます。  引き続き、熊本県や沿線自治体とも連携して利用促進策にも取り組みながら、同鉄道の安定的な運行が図られるよう努めてまいりたいと考えております。  続きまして、中期経営計画の進捗状況についてでございます。  肥薩おれんじ鉄道は、現行の中期経営計画において、安全運行の確保、収支の改善、地域との連携強化の三つの目標を掲げており、これらを実現するための施策として、老朽化が著しい線路設備等の施設の計画的な更新などのほか、ダイヤの見直しや企画列車の運行、フリー切符の充実、サイクルトレイン運行による新たなマーケットの開拓、駅を中心としたまち歩きマップの作成などに積極的に取り組んでいるところでございます。  同鉄道の年間輸送人員は、平成二十九年度と三十年度は目標である百十万人を超えておりましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大や豪雨災害等の影響により、直近の令和二年度の実績は八十万四千人となり、これに伴い、同年度の旅客運輸収入は、目標である三億五千百万円を大きく下回る一億九千九百万円となるなど、厳しい経営状況にございます。  続きまして、次期経営計画の考え方についてでございます。  次期中期経営計画の策定に向けては、同鉄道及び鹿児島、熊本の両県、沿線自治体等で構成する肥薩おれんじ鉄道経営安定化対策委員会が昨年十二月に設置されたところであります。  この委員会を中心に、現行計画の進捗状況や成果等について検証を行うとともに、同鉄道を取り巻く環境や経営上の課題等について、調査・分析等を行った上で、経営目標や収支計画、マーケティングの充実、ランニングコストの削減などの具体的な改善策等について検討を行っているところでございます。  肥薩おれんじ鉄道は、地域住民の日常生活に欠かせない交通手段であるとともに、貴重な観光資源であり、また、基幹物流ルートとしても重要な役割を担っていることから、県としては、引き続き、熊本県や沿線自治体とも連携し、経営安定化に向けて次期中期経営計画の策定を支援してまいりたいと考えております。    [中村素子君登壇] 42 ◯中村素子君 それぞれ御答弁頂きましたが、コメントは最後にまとめていたしたいと思いますので、質問を続けます。  まず、水産振興についてです。  三月議会で知事に水産部の設置を提案いたしましたが、設置の考えはないとのつれない御答弁でした。失意の中、地元に戻り、漁協関係者にその話を伝えましたところ、水産部は必要だと思うとの声が上がりましたので、現場の声を再度知事にお伝えし、今回も、県の水産振興について伺いたいと思います。  さて、この間に商工労働水産部長として新たに経済産業省御出身の平林部長が御就任されました。おめでとうございます。経済産業省からの視点と消費地である東京からの視点を併せ持ち、これまでとは違った新たな角度からの我が県水産振興に取り組んでいただけるものと大いに期待いたしております。  そこで、平林部長に伺います。  鹿児島県の水産業の現状と課題をどのように認識しておられるのか、お示しください。  それを踏まえて、今後、我が県の水産振興にどのように取り組んでいくおつもりか、抱負と併せてお示しください。  今年はモジャコが歴史的不漁だと聞きます。地元関係者も、長く養殖をやっているが、ここまでの不漁は経験がないと首をかしげます。  モジャコ採捕の漁師に聞きますと、今年は流れ藻が極端に少なかったとか、流れ藻の発生時期が例年より早かった等の話が出てきていますが、その原因は分からず、今回の不漁が一過性のものなのか、あるいは今後も続くおそれがあるのか、先が見通せないという不安の声が聞かれています。  そこで伺います。  県内の充足率をお示しください。  また、今年のモジャコ不漁の原因をどのように分析しておられるのか、お示しください。  こうした不漁時の担保として、人工種苗生産の果たす役割はますます重要です。養殖業者も県が委託している公益財団法人かごしま豊かな海づくり協会からの供給に期待を寄せています。  そこで伺います。  現在の人工種苗の生産状況と今後の生産計画についてお示しください。  コロナ禍の影響は水産分野にも大きく影を落としています。外食産業や観光業の落ち込みによる販売不振については、国や県の支援である程度持ちこたえていますが、状況は依然厳しく、経営コストをいかに切り詰めるか、死活問題となっています。  これまで、県は、漁業近代化資金により漁業経営の下支えを行ってきています。漁業近代化資金とは、資本装備の高度化と経営の近代化を図るために必要となる資金が長期かつ低利で漁業者に融通されるよう、県が系統融資機関に利子補給を行う目的で創設されたものです。  県漁連によれば、当該資金については、従前から老朽化等による漁業設備の取得・更新に係る需要等により、予算の倍額以上の借入れ希望があり、枠内に収まるよう公平に減額調整するなどして、ほぼ一〇〇%の消化率となっているということで、融資枠拡大の要望が以前から出されています。  そこに、昨年以降は、コロナ禍の販売不振による餌代の負担圧力が重なり、近代化資金へのニーズが一層高まってきている状況です。  そこで伺います。  当該近代化資金の直近三年の融資実績及び主な資金使途についてお示しください。  現在の融資枠は二十六億円、融資率は原則融資希望額の八〇%と聞いていますが、従前からの漁業者の借入れ希望が旺盛であること、また、コロナ禍による経費負担が重く、経営に苦慮する漁業者が増えていることに鑑みれば、コロナ禍に対応するために、時限的にでも融資枠を三十億円に拡大し、融資率を一〇〇%に引き上げることを検討すべきと考えますが、県の考えをお示しください。  さて、我が県の漁業者は高齢化が急速に進み、その数が急激に減少しています。現在、県下には四十二の沿海地区漁業協同組合がありますが、漁民の高齢化と減少は組合に加入する組合員の高齢化と減少に直結しています。  県漁連によれば、各単協において、高齢化による組合員数の減少、漁協経営の収益減少による職員の人員削減等で、漁協機能の低下が続いているとのことです。現在は、県下四つの漁協が財務状況について要改善指定を受け、改善計画に取り組んでおり、こうした状況を克服し、漁協事業の活性化を図るために、組織全体で自助努力を続けておられます。
     その努力の一環として、県漁連は県一漁協合併を掲げ、県下四十二の漁協を一つにまとめることで、迫り来る高齢化・後継者不足による弱体化の波を乗り切ろうとしていると伺います。  漁協の弱体化は、すなわち漁業の弱体化となり、全国第五位の水産県である我が県経済の弱体化につながると考えています。  そこで伺います。  県一漁協合併に関する課題をお示しください。  県一漁協合併に向けた県の支援状況についてお示しください。  次に、土木行政について伺います。  まず、交通誘導員不足について伺います。  少子高齢化に伴い、あらゆる業界で人手不足が深刻化しております。地元の建設業関係者等との意見交換では、人材募集をしても一人も応募がなかったというお話を聞くこともあります。  そうした中で、建設業界等から、工事に際して交通誘導員の人手不足も深刻で、その確保に大変苦慮していると伺います。一、二時間で作業が完了する現場においても、交通誘導員の確保ができなければ、工事自体が進められないこともある。また、特に十二月から三月の工事が集中する繁忙期には交通誘導員の取り合いとなり、手配がつかず、工事に入れないケース等もあるという声があり、自家警備などによる交通誘導員不足の解消の要望が出されています。  ただ、一方では、交通誘導は車両等の誘導など、安全確保のため、専門的な知識を持って行っていただく必要があります。  このように、交通誘導員不足により工事に入れないケースが増えれば、県の事業執行に支障を来すと危惧します。  そこで伺います。  現道工事等での交通誘導員不足について、県がどのような認識でおられるのか、お示しください。  交通誘導員不足解消に向けての県の取組についても、併せてお示しください。  次に、北薩横断道路建設について伺います。  北薩横断道路は、現在整備が進められている南九州西回り自動車道等の高規格幹線道路を補完し、北薩地域における広域的な幹線道路ネットワークの形成を図る重要な路線です。また、広域的な物流や人流を支える道路であり、観光振興や農林水産物の輸送に寄与する道路であります。特に、農林水産業が盛んな阿久根市や長島町などの特産品を鮮度を保ち、鹿児島空港や県内外に輸送し、販路の拡大を担う道路でもあります。  沿線の自治体等で構成する北薩空港幹線道路整備促進期成会においては、関係者や地元住民と一体となって、要望活動や整備促進大会を開催し、一日も早い全線開通に期待を寄せています。  これまでに、高尾野インターからさつま泊野インター間、及びさつま広橋インターから野坂インター間が供用されており、供用区間が延びるにつれ、阿久根・長島地区から空港や霧島地区へのアクセスのよさを実感しています。  本年四月には、唯一の未事業化区間であったさつま泊野インターからさつま町広瀬までの約十キロメートルが宮之城道路として新規事業化されたところです。  阿久根市折口付近の国道三号から高尾野インターを結ぶ阿久根高尾野道路約九キロメートルについては、平成二十八年四月に事業着手されました。  阿久根高尾野道路は、着々と整備が進む南九州西回り自動車道に接続する重要な区間であり、その進捗が気になるところです。  そこで伺います。  阿久根高尾野道路の現状及び今後の取組についてお示しください。  また、折多地区については、過去の大雨により折口川が氾濫した経緯があり、地元住民からは、道路構造について地域の浸水状況を考慮してほしいとの声も聞かれます。  折多地区の検討状況についてお示しください。  最後に、教育行政について伺います。  去る七月、県教委が来年三月、中学校を卒業する生徒を対象に行った進路希望状況調査の結果が公表されました。この調査結果で、公立高校六十八校百十七学科のうち、五十七校九十四学科が定員割れであることや、県内公立高校への進学希望者が過去最少であることが明らかとなりました。  十月上旬には来年度の募集定員が公表されるとのことですが、少子化による生徒減少で、県立高校には小規模校が多くなってきているのが現状です。  そうした中にあっても、県立高校の生徒たちは、それぞれの学校で特色ある教育を受けながら、生き生きと学んでいます。特に、昨今は、高校生が地域課題の解決に向けた取組を提案するなど、地元と連携して地域振興の要となる事例も多く見られます。  私の地元の鶴翔高校でも、廃棄ウニやジビエを利活用する取組を通じて、生徒が地元の農家や漁業者等と深い関わりを持ち、地域に根差す活動をしています。  こうした事例を見ると、県立高校は、定員割れや小規模校であっても、子供の学びの場として、また、地域創生の牽引役として残していかなければならないと感じています。  国においても、本年一月、中教審の新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ等が取りまとめた答申において、中山間地域や離島等に立地する高等学校においては、少子化の進行に伴い小規模校が増えていることを踏まえ、小規模高等学校においては、地域社会との連携・協働によって当該地域ならではの学びを実現するとともに、ICTも活用して、複数の高等学校が教育課程の共通化・相互互換を図るなど、様々な教育資源を活用することによって、小規模高等学校単独ではなし得ない特色、魅力ある教育に取り組むことが求められる、こうした学校間ネットワークを構築し、複数の高等学校を、いわば一つの大きな学校として捉える試みについて研究開発を進め、質の高い学びを実現するための措置を講じる必要があるとしています。  また、高等学校は持続的な地方創生の核としての機能を有するとして、各設置者においては、その意識を持ちつつ、地元自治体をはじめとする地域社会の関係機関との丁寧な意見交換を通じて、地域における高等学校教育の在り方に関する検討を行い、教育水準の維持とさらなる向上に向けて、高等学校への伴走支援に取り組むことが必要であるともされています。  さらに、各高等学校の設置者が各学校やその立地する自治体等の関係者と連携しつつ、在籍する生徒の状況や意向、期待に加え、地域の実状を踏まえ、また、二十年後、三十年後の社会像、地域像を見据え、各高等学校の存在意義や期待されている社会的役割、目指すべき高等学校像をスクール・ミッションとして再定義することが必要であるとも述べられています。  こうした答申を見ますと、小規模校について、これまでのように統廃合を進めるのではなく、地域との連携・協働の中で地域創生の核としての役割を持ち、複数の学校間連携によって持続的で魅力ある学校教育を継続することが今後目指すべき姿であると理解いたします。  このような中で、県教委においては魅力ある県立学校づくりに向けた懇話会を設置し、先月、第一回の会議を開催したとのことです。この会議において、魅力ある県立高校づくりに向けてどのような意見交換がなされるのか、大いに関心を寄せております。  そこで伺います。  まず、この懇話会の設置目的についてお示しください。  次に、この懇話会では魅力ある県立学校づくりが議論されると思いますが、小規模化した県内公立高校の活性化についてどのように進めていかれるおつもりか、県教委の考えをお示しください。  先ほど、県内公立高校について定員割れや小規模校が多くなっていると申し上げましたが、我が地元の鶴翔高校はいずれにも該当します。先日発表された来年度の進路希望状況調査の結果で、鶴翔高校は、農業科、総合学科それぞれ八十人定員のうち、農業科三十二人、総合学科二十二人と大きく定員割れをしていることが分かり、大変残念な思いをしております。  鶴翔高校の学習は大変充実しており、早い時期から三年A組という名で農産物のブランド化を行い、地元漁師が処理に困っていた廃棄ウニの活用研究は、内閣総理大臣、文部科学大臣、環境大臣、総務大臣からそれぞれ表彰を受けており、農家を悩ます有害鳥獣をジビエとして活用した製品も内外から高い評価を受けています。  また、農業技術やビジネス関連の技術を磨き、各種検定の合格者も多数輩出しています。部活動も、陸上部や女子バレーボール部等には県内各地から生徒が集まり、強豪校として各種大会で優秀な成績を収めています。卒業後はほとんどの生徒が地元に残り、地域社会の発展に寄与しています。  このように、生徒たちの努力と先生方の熱心な教育活動で地域に根差した大変魅力的な学校であるにもかかわらず、少子化の影響等もあり、生徒募集には大変苦戦し、毎年定員割れが続いています。このまま生徒減少に歯止めがかからなければ、行く行くは廃校ということになるのではないかと案じています。  そこで、鶴翔高校の生徒確保策の一つとして、寮を整備してはいかがかと提案したいと思います。  鶴翔高校は、阿久根、長島にあった三つの高校が一つになり誕生しました。長島町の中心部からは車で五十分ほどかかり、通学には時間がかかる上、このエリアには離島である獅子島も含まれています。現在、獅子島から一人の生徒が下宿生活をしています。  また、陸上やバレーボールをするために遠方から入学する生徒もおり、現在は、さつま町、大口、喜界島等からの生徒が十三名おります。  阿久根市内にはそもそも下宿が少なく、校長先生に伺うと、こうした遠方からの生徒たちは住居を探すのに大変苦慮しており、現在は学校や顧問教員の協力で何とか見つけている状況とのことです。  寮を設置して、離島をはじめ遠隔地域からの生徒の受皿をつくることで、生徒募集の幅が広がり、生徒確保の大きな助けとなるのではないかと考えます。  そこで伺います。  生徒募集の観点から鶴翔高校に寮を整備することについて、県はどのように考えるか、見解をお示しください。  もちろん、寮の新設は財政負担が大きいことは理解しています。そこで、民間施設を借り上げて寮として活用する方法などもありますが、そうした手法についてどのように考えるか、併せて県の見解を伺います。  これで、二回目の質問を終わります。 43 ◯商工労働水産部長(平林孝之君)本県水産業の課題と今後の方向性についてでございます。  着任から半年が過ぎましたが、これまで本県を代表する各漁協及び漁業関係者を訪問し、現場の方々の声を聞くことから始めてまいりました。  本県の海面漁業産出額は、約七百六十三億円で全国第五位、生産量では、養殖ブリ、養殖カンパチ、ミナミマグロが全国一位であり、そのほか、養殖ウナギやかつおぶしの生産量も全国一位であるなど、本県水産業の競争力は高いと認識しております。  また、本県の農林水産物の輸出額でございますが、令和元年度で約二百二十五億円、このうち水産物は約百三億円と、全体の約四六%でございます。  昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、現状では回復を見せており、さらなる販路拡大に取り組んでいることから、今後の輸出拡大が期待されているところでございます。  このように、本県水産業は県の「稼ぐ力」を牽引する重要な産業であり、ブリやカンパチ等の養殖業をはじめ、高い潜在成長力を有していると考えております。  今年度より、鹿児島県水産業振興基本計画に基づき、適切な資源管理、スマート水産業の導入・普及による生産性の向上、担い手の育成・確保、輸出拡大等を進めておりますが、従来からの課題に加えまして、今年のモジャコの不漁や輸出先が特定の国に依存していることがコロナ感染症により明らかとなったことなどから、新たな課題も認識したところでございます。  このため、人工種苗の技術を早期に確立させて、安定的な種苗の供給を図るとともに、SDGsへの取組が求められる中、稚魚から製品、販売におけるトレーサビリティーの見える化を促進することで、国内外にその付加価値を認識させていきたいと考えております。  次に、ICT等を活用して得られたデータの蓄積・解析による海況予測モデルの開発や、赤潮発生の予察・監視システムの構築などを前進させて、スマート水産業の推進による生産性向上にも力を入れてまいりたいと考えております。  輸出についても、生活様式の変化により新たに生まれました消費者ニーズに適切に対応していくため、マーケットインの考え方に基づいて、新商品開発を進めるとともに、輸出市場の多様化を進め、流通体制を強化していきたいと考えております。  例えば、養殖ブリはアメリカ中心でございましたが、メキシコやドイツに向けた輸出チャネルの確立をジェトロと連携して進めているところでございます。  今後とも、これらの取組を通じて水産業の「稼ぐ力」を引き出し、漁業者の所得向上に努めてまいりたいと考えております。  次に、モジャコ漁業の不漁に関する分析及びブリ人工種苗の生産計画についてでございます。  ブリの稚魚を採捕するモジャコ漁業は、今期、過去最長の六十八日間の採捕期間でございました。しかしながら、採捕計画が約六百八十六万尾に対して、実績は約三百六万尾、充足率は四五%と、これまでにない不漁でございました。  不漁の要因といたしましては、モジャコが付着する流れ藻やそれに付着するモジャコの尾数が少なかったこと、漁期中の海水温が例年より高めで、操業に適した水温帯が形成されず、漁場探索が困難だったことなどが考えられております。  国立研究開発法人水産研究・教育機構では、ブリの資源量は多いと評価しております。しかしながら、流れ藻の状況や漁期中の海水温がモジャコ漁業に大きく影響することから、県モジャコ生産漁協協議会と連携して、漁期前のモジャコ来遊調査結果等の情報を関係漁協へ迅速に提供してまいりたいと考えております。  本県のブリの養殖業は、生産量が全国第一位で「稼ぐ力」を有する基幹産業ではございますが、国内消費量の減少や種苗の確保が不安定なことなどから、経営が厳しい状況にございます。  このため、消費マーケットが拡大している欧米等海外への展開が必要不可欠であり、その販路拡大等を推進していくためには、生産履歴が明らかであることが高付加価値につながることから、人工種苗の生産に取り組んでまいりたいと考えております。  現在、ブリの人工種苗については、公益財団法人かごしま豊かな海づくり協会が十月から十一月に採卵し、十二月から一月に種苗を供給しておりますが、今年度はモジャコの不漁もあり、令和二年度の実績値である二十四万尾を上回る供給を計画しております。  現在、養殖業者等がトレーサビリティーの強化や種苗の安定確保の面で、人工種苗の増産を強く期待していることから、今後の種苗生産計画の在り方を業界関係者と連携して、検討を進めてまいりたいと考えております。  次に、漁業近代化資金の実績及び融資枠等に対する県の考え方についてでございます。  漁業近代化資金の融資実績につきましては、平成三十年度が百八十六件、二十五億九千万円、令和元年度が百八十二件、二十五億七千万円、昨年度が百六十四件、二十五億三千万円でございました。資金使途は、養殖漁業者の種苗や餌の購入が八割以上を占めております。  融資枠については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた漁業者への資金繰り支援として、国が農林漁業セーフティーネット資金で無利子融資枠を設けており、そうした国の支援策の動向を注視しつつ、過去の融資実績や漁業者等の需要を踏まえ、必要な融資枠の確保に努めております。  また、融資率については、一定の自己資金を確保することが望ましいことから、原則八〇%以内としておりますが、国のガイドラインの基準を満たす場合には、その率を超えることも可能でございます。今後とも、必要な支援に努めてまいりたいと考えております。  漁協合併に関する課題及び県の支援状況についてでございます。  県内漁協は、組合員数の減少や漁獲量の減少、魚価の低迷等により厳しい経営環境にございます。そのため、県漁連では、平成二十八年に県一漁協合併基本構想を策定し、漁協の合併を推進しているところでございますが、それぞれの漁協における固定化した債権や欠損金の解消などへの対応が課題でございます。  県においては、漁業者の生産活動を支え、経営の安定化を図るためには、経済事業等を実施する漁協の経営・事業基盤を強化する必要があると考えております。そのため、これまで県漁連が行う合併推進の活動経費や、合併に向けて財務改善に取り組む漁協に対する借換え資金の保証料の補助などを行っているところでございます。  今後とも、関係団体と連携しながら、漁協の合併推進や経営基盤強化に向けた取組を支援してまいりたいと考えております。 44 ◯土木部長(兒島優一君)土木行政についてのうち、交通誘導員不足についてであります。  公共工事の施工に当たっては、技術者・技能労働者の確保や資機材の調達に加え、交通誘導警備の適切な実施が重要である一方、交通誘導員の確保が円滑な施工上の課題の一つとなっております。  このことから、県では、交通誘導に係る費用の適切な積算、適切な工期の設定や施工時期の平準化に努めるとともに、警備業協会や建設業協会等の関係団体と交通誘導員に関する現状や課題を共有し、その円滑な確保に向け、意見交換を行っているところでございます。  また、今年一月には、交通誘導員の資格要件について、関係団体との意見交換や国の要件緩和を踏まえまして、見直しを行ったところでございます。  県といたしましては、今後とも、施工時期の平準化などに努めるとともに、関係団体と意見交換を行いながら、交通誘導員の確保に向けた対策を検討してまいります。  北薩横断道路─阿久根高尾野道路─の整備状況等についてでございます。  北薩横断道路の阿久根高尾野道路につきましては、高尾野インターから国道三号までの約九キロメートル区間を平成二十八年度から事業に着手しております。  同道路におきましては、昨年度の補正予算から措置された「防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策」を含め、約二十億円の配分があり、現在、高尾野インターから県道荒崎田代線までの約四キロメートル区間において、改良工事や橋梁工事など鋭意進めております。  残る国道三号までの区間につきましては、一部区間の用地買収を行っており、今後、工事に着手したいと考えております。  また、阿久根市折多地区につきましては、現在、地元の意見も踏まえながら、道路構造等の検討を進めているところでございます。  北薩横断道路は、南九州西回り自動車道と一体となって、広域的な幹線道路ネットワークを形成する重要な道路でありますことから、早期完成に向け、引き続き、重点的な整備に努めてまいります。 45 ◯教育長(東條広光君)魅力ある県立学校づくりに向けた懇話会の設置目的等についてであります。  少子化等の影響により、特に、通学手段の限られる中山間地域や離島等の学校では小規模化が進んでおりまして、こうした学校では、近年、地域振興の核としての役割も期待される中、教員数や学校施設などの教育資源に限りがあり、生徒の多様なニーズの全てに対応した指導体制を単独で確保することは難しくなってきております。  また、少子化等に伴う学校の小規模化は全国的な傾向であり、今年一月の中教審答申では、小規模校単独ではなし得ない魅力ある教育に取り組むため、学校間ネットワークを構築し、複数の学校をいわば一つの学校として捉え、様々な教育資源を効率的に活用することの必要性が示されたところであります。  こうした状況を踏まえ、県教委では、現在、小規模校を含め、県立高校における課題を解消し、その魅力を向上させる方策について検討しており、大学や民間企業、私立学校の関係者、PTA代表などから幅広く意見を伺うための懇話会を設置したところであります。  県教委としては、中山間地域や離島等の小規模化した県立学校の活性化については、地理的な制約を超えて教育資源を効果的に活用する方策を整える必要があると考えており、ICTを活用した遠隔授業などをはじめ、グループ化、キャンパス化などの学校間連携を含め、懇話会での意見や他県の取組等を参考にしながら、本県の子供たちにとって望ましい高校づくりについて検討してまいりたいと考えております。  次は、鶴翔高校への寮の整備等についてであります。  鶴翔高校については、現在、下宿して部活動に励んでいる生徒がいるほかは、ほとんどの生徒が学区内から列車やバス、自転車などを利用して自宅から通学しております。  新たな寮の整備については、財政負担もありますことから、そのニーズを十分見極める必要があると考えております。  議員から提案のありました民間施設を寮として活用することについては、他県においては旅館を寮として活用している例があります。また、南大隅町や瀬戸内町などでは、地元高校への県外からの入学を促進することを目的に、旅館等を改修し、寮を設置している例があります。
     県教委としては、鶴翔高校への進学希望者で自宅から通学困難な生徒については、学校や地元自治体とも連携して、こうした方式について、調査、検討を行うとともに、下宿や間借りの開拓等に努め、生徒の希望に対応できるよう努めてまいりたいと考えております。 46 ◯中村素子君 自席から一点、知事に再質問させていただきたいと思います。  今、教育行政について、鶴翔高校の寮の設置を御提案したところです。鶴翔高校は、阿久根市、長島町、この地区にたった一つの高校です。私が提案しました寮の設置については、高校教育という観点からのみならず、今後の地方創生をどのように考えるか、その中で、県立高校をどう位置づけて、どのような役割を持たせるか、そのために小規模校をどう残していくかという観点から検討する必要があると考えています。  塩田知事が、鹿児島県の中山間地域や離島の未来をどう描いておられるか、地域政策の在り方が問われているのではないかと考えています。ぜひ、県庁の中で、横断的な課題として前向きな議論をしていただきたいと思いますが、知事の考えをお示しください。 47 ◯知事(塩田康一君)少子化が県内各地で進んでいく中で、中山間地、あるいは離島における高校教育の在り方として、こうした小規模校の問題というのは避けて通れない大きな課題になってきていると思っております。  そうした中で、寮を設置するというのも一つの方策だと思いますし、ICTを活用した様々な連携を図っていく、いろんなやり方があり得ると思っておりますので、そういったことについては、教育委員会とも連携しながら、しっかりと検討してまいりたいと思います。    [中村素子君登壇] 48 ◯中村素子君 それぞれ御答弁頂きました。  中小企業の支援についてでございます。  冒頭も申し上げましたとおり、大変大きな借金を背負ったというお話もあります。事業者の皆様方が背負った借金を返していけるよう、徹底的な経済対策が必要です。県の経済政策はこれからが勝負だと言っても過言ではございません。引き続き、知事を先頭に、県庁を挙げて取り組んでいただきますようお願いいたします。  冒頭で申し上げました廃業した店舗がございます。後継者がいればもしかしたら廃業しなかったかもしれないという思いがございます。事業承継が進むか進まないかというのは、小さな町においては非常に大きな影響がございます。引き続き、推進に力を入れていただきますようお願いいたします。  デジタル推進についてでございますが、行政の効率化と利便性の大転換を図る、いわば時代を変える一大事業です。優秀な人材を確保して間違いのないシステムの構築を行っていただきますようお願いいたします。  肥薩おれんじ鉄道の活性化についてでございます。  マーケティングの充実等を図っていくというようなお話がございました。ウィズコロナで旅のスタイルが変わると言われております。ぜひ、このチャンスを生かして、利用活性化につなげていただきたいと思います。  水産振興については、部長の抱負を聞かせていただきました。  これから、ぜひ生産現場に何度も立って、また、鹿児島県の水産物もたくさん召し上がって、海から陸、地方から消費地への流れが、太く強いものになるよう、効果ある施策をどんどん展開して、漁業者の所得向上につなげていただきますようお願いいたします。  土木行政についてですが、北薩横断道路の折多地区について、住民の意見を十分聞き取って丁寧に進めていただいているということでございます。大変感謝申し上げます。引き続き御尽力くださいますようお願い申し上げます。  教育行政についてです。  知事にも伺いました。地方創生とも絡む話だと思います。未来の鹿児島をどういうふうに描くかということも含めて、ぜひ全庁的な検討を、前向きな議論を行っていただきたいと思います。  なお、鶴翔高校の同窓会の会長からも、ぜひよろしくお願いしたいとのメッセージを預かってきましたので、申し添えたいと思います。  さて、コロナ禍で窮屈な日々が続いていますが、それでも季節は巡り、この秋も海からの恵みが揚がっています。皆様、阿久根市では伊勢えび祭りが始まっております。十月中旬までの開催です。また、長島町では、商工会女性部が持ち帰りできるお店とメニューを紹介した長島テイクアウト情報誌を作成しました。肥薩おれんじ鉄道に乗って阿久根でイセエビを食べる旅と、長島をドライブして青く澄み切った海に浮かぶ天草の島々を眺めながらテイクアウトしたお弁当を食べる旅を提案いたします。  ぜひ、北薩方面の旅で大きく息を吸っていただきたい、訪れる皆様を元気にする地域づくりに今後も邁進することを誓って、私の質問を終わります。  御清聴、ありがとうございました。(拍手) 49 ◯副議長(吉留厚宏君)ここで、休憩いたします。  再開は、午後二時三十五分といたします。        午後二時二十六分休憩       ────────────        午後二時三十五分再開 50 ◯副議長(吉留厚宏君)再開いたします。  次は、鶴薗真佐彦君に発言を許可いたします。    [鶴薗真佐彦君登壇](拍手) 51 ◯鶴薗真佐彦君 天の恵みでもある河川水を利用して育った国道三百二十八号線沿いの棚田は、実りの秋を迎え、日々黄金色に濃くなってまいりました。四季のすばらしさを実感できるふるさとの原風景は本当にありがたいものです。  質問に入ります。  初めに、知事の政治姿勢についてであります。  コロナ禍で見えてきた新たなる地方分権と地方創生について伺います。  平成七年、地方分権推進法、平成十一年、地方分権一括法が成立し、時代の流れとして、市町村合併を進めてまいりました。  平成十八年、地方分権改革推進法成立、平成二十三年、国と地方の協議の場に関する法律が成立し、令和三年、第十一次一括法が成立しております。この間、国から県へ権限移譲がされてきました。その件数と主な内容を教えてください。  また、県から市町村への権限移譲プログラムに基づき、県独自に市町村に移譲している件数と主な内容を教えてください。  平成二十六年からは、提案募集方式の導入も始まりました。本県からも提案されていると伺っております。九州地方知事会との共同提案になったものも含め、提案の件数、主な内容、その結果についてお示しください。  これまで、地方分権の流れを地方六団体、とりわけ全国知事会が牽引してきたことは間違いありません。コロナ禍の中で、知事会の開催はリモート会議で頻繁にタイムリーに行われ、新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律の協議過程で全国知事会の役割は大きかったと評価しております。  平常時の知事会の開催、コロナ禍での開催の数、主な内容について教えてください。  この二年余り、国、地方自治体ひとしくコロナ対応に追われてきました。国際ニュースを見る限り、我が国のワクチン接種や対策など、それなりに国、地方自治体がそれぞれ連携して役割を担い、うまく対応できているほうではないでしょうか。これには、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の仕組み、分権社会を進めてきた背景が功を奏した部分もあるかもしれません。  コロナウイルス感染症という事態は、一方で、リモート会議によって、九州地方知事会、全国知事会でもフランクに情報交換ができること、知事が重点的にコロナ対策を要請する本県市町村長ともタイムリーに協議ができるようになったこと、東京一極集中の是正を唱えながら、宿泊旅費、時間を割いての霞ヶ関陳情の在り方など、地方分権が描いていた方向に進めてくれました。  地方交付税から交付金化への財源移動、これらの動きは、今後、分権提案の在り方にも変化が出てくるかもしれません。  コロナ禍という特殊な状況を踏まえ、県は、地方創生に向けて取組をどのように進めていくのか、お示しください。  かごしま未来創造ビジョンの見直しにつきましては、知事の目指しておられる鹿児島の将来像に、バックキャスティングの考え方を取り入れながら、知事のマニフェストの「稼ぐ力」をより具体的に感じるような見直しになるよう要望しておきます。  次に、カーボンニュートラルの流れと森林行政について伺います。  カーボンニュートラルは、日本では脱炭素社会とともに使われる言葉であります。地球温暖化の主な原因となる二酸化炭素排出量を抑制するための概念であり、二酸化炭素の生産などによる排出量と植物の光合成などによる吸収量を同量にカウントして、実質的な二酸化炭素排出量をプラス・マイナス・ゼロにすることを目指すのが基本的な考え方であります。これはCO2だけに限らず、メタン、一酸化窒素、フロンガスを含む温室効果ガスを対象とするものです。  なかんずく、吸収量をカウントする過程の中で、植林を進めることにより光合成に使われる大気中のCO2を集め、吸収量を増やすという視点であります。  森林・林業を所管する部は以前は林務水産部でありました。地球温暖化の流れや世界自然遺産登録への取組などの動きを受け、環境林務部として行政活動を行うことになりました。  本県独自の森林環境税、現みんなの森づくり県民税を創設するときも、環境の好循環という視点からも県民の皆様に御理解頂いて、今日に至っております。おかげさまで、この税を活用して、毎年本県独自の事業も行い、その事業を企画実施する過程において林務職員を育てる機会にも貢献できていると思います。  また、私ども県議会では、国の森林環境譲与税の動き、伐期を迎えた森林、輸出やバイオマス発電に活用が増えてきた状況などから、皆伐の後に、植える、育てる、使う、植えるという森林資源の循環利用を促進し、森林の有する機能をしっかりと果たす役割の必要性を感じ、平成二十九年十二月、森林資源の循環利用の促進に関するかごしま県民条例、通称かごしまみんなの森条例を議員提案でつくりました。作成過程の中で、市町村の役割の条文も検討しましたが、同じ地方自治体として対等の関係にある市町村の項目を書き込むことは難しい結論になりました。  国も山の不在地主や相続財産の未登記から生じる問題なども含め、国民みんなで山の持つ効能を共有する意味からも、森林環境譲与税を創設し、人工林面積などから算出される譲与額を県に二割、市町村へ八割交付することで、それぞれに役割を担ってもらうこととしており、今年度が三年目に入っております。それぞれ使途の公表も求められているところです。  残念なことに、過去の実績を見ると、基金に積まれている市町村もあります。税の目的からしても、国民の理解を頂けるのか心配しております。少ない財源ではありますが、県も市町村と一緒になって施策の推進を図ることも考えていいのではないでしょうか。  そこで知事にお尋ねします。  第一点は、カーボンニュートラルの流れの中で森林資源の循環利用を促進することが重要であると考えますが、今後の森林・林業の取組を示してください。  第二点は、市町村の森林環境譲与税についてはさらなる活用の促進を図るべきと考えますが、県はどのような取組を行うのか、お伺いします。  鹿児島県過疎地域持続的発展方針について伺います。  県は、過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に基づき、八月、鹿児島県過疎地域持続的発展方針を策定しました。今後、同方針に基づき、県及び関係市町村においては、過疎地域持続的発展計画が策定されていくことになります。申すまでもなく、過疎地域は、日本が高度経済成長期に地方から都市に人口がどんどん流出していく中、過疎という言葉が行政の中でも使われ、遅れている過疎地域の生活インフラ整備を主眼に置き、対策の必要性が求められてまいりました。  昭和四十五年、時限立法としてスタートした特別措置法ではありましたが、一向に歯止めがかからず、五次にわたり法制定がなされました。現在においても課題が山積しております。  今回の法制定により、本県においては県内四十三市町村のうち四十一市町村、九五・三%が過疎地域となっており、新たに、いちき串木野市と霧島市の旧霧島町が加わったところであります。県議会でも、過疎対策特別委員会をつくり議論を深め、陳情団を送り込んだ時代もあったやに聞いております。特に、対象地域の市町村は、自主財源である地方税の割合が低く、依存財源の割合が高く、財政力の弱い市町村であります。事業実施に当たっては、有利な過疎債・辺地債を可能な限り活用されるわけでありますから、両起債の安定的確保が最も重要であります。  そこで伺います。  これまでの過疎債・辺地債の全国枠及び県内市町村の発行状況についてお示しください。  また、市町村の計画要望に応えられる起債が認められる状況になっているのか、今後の過疎債・辺地債の安定的確保に向けて、県はどのように取組をされるのか、お答えください。  過疎地域における情報化の促進について伺います。  県民生活における情報化の推進は、今日、最も大事な施策の一つであります。  情報化の遅れが格差の中に格差を生む流れをつくりつつあると言っても過言ではありません。  コロナ禍の中、ワクチン接種の申込みをとっても、格差が証明されました。リモート会議やテレワークの奨励、教育の場においても、平等な環境になっておりません。地域間の格差を是正する上では、情報基盤の中でも、特に光ファイバーの整備が重要です。  ついては、過疎地域を含め、本県の光ファイバーの整備状況について示してください。  辺地共聴施設の修繕等に関する国からの財政支援制度の創設について伺います。  テレビ放送は災害時における情報取得のライフラインとなっているところですが、度重なる大雨や台風等の自然災害により辺地共聴施設にも被害が発生し、施設の修繕や改修工事などの維持管理費用が問題になっています。  また、共聴受信組合加入者の高齢化に伴い、加入世帯数が減少することや、設備の改修更新で多額の費用負担が発生することにより、運営自体ができなくなる状況が危惧されているところです。そのほかにも、共聴施設の長寿命化対策、共聴施設を光ケーブル化する際の改修工事など、共聴施設の修繕等には多くの課題があります。  テレビ放送は、コロナ禍にあって、日常生活の中で高齢者には特に一番の娯楽や情報源であります。これから国が進める在宅介護においてもしかり、さらには、地域における災害時の確実かつ安定的な情報伝達の手段を確保することは危機管理上も重要です。  ついては、辺地共聴施設の修繕等に関する国からの財政支援制度の創設に向けた県の考え、取組を示してください。  持続可能な農業の取組について伺います。  最近気になる報道があります。我が国の農作物の延べ作付面積が田畑合計で、二〇一六年以降減少幅が毎年二万ヘクタールを超え、二〇二〇年度も前年比二万八千ヘクタール減の四百万ヘクタールを割り込んだこと、中でも、水稲は前年比七千ヘクタール減の百四十六万二千ヘクタールであります。  我が国の優良政策の一つである中山間地域等直接支払制度も要件緩和を行い、向こう五年間五期目が始まったわけですが、二〇二〇年度交付面積が四%減少、協定数で八%減ということであります。  農家の高齢化や人口減少、今後五年間、営農を続ける自信がないという理由などからこのような状況になっているわけですが、生産基盤が弱体化して、集落の維持にも関わる重大な問題であります。  こうした中、稲作農家にとって今一番の問題は、二〇二一年産米の概算金・買取り価格が全国的には前年度から二、三割下がるなど、生産意欲の減退が懸念されることです。  行政は、担い手に農地を集積し、農業生産の維持向上を進めておられますが、既に担い手自身が高齢化しているわけですから、守るべきは生産基盤であります。少なくなっていく担い手が利用しやすい条件整備を、健全な農地・国土を維持するという立場に立って、しっかりと国民的理解を求め、公費をつぎ込み、早急に進めていかなければなりません。  少し明るい話題として、農研機構などが、水田の水管理を通年で省力化するシステム実証を山形県河北町で始めた、遠隔操作による水管理や冬季湛水に加え、水の流出を抑える田んぼダムも組み合わせ、水害防止や生物多様性保全機能の発揮につなげるというような記事を見ました。  実演会では、集約された複数圃場の水管理が一括してできるシステムを紹介、配水ゲートの自動化と高さ調整が不要な堰板を組み合わせることで低コストで水管理ができる、スマートフォン上で各圃場の水門を開閉できるシステムも紹介した、大雨時に水をため、水害防止につなげる田んぼダム機能も発揮できる、農作業の省力化だけではなく、地域の防災・減災や生物多様性の見える化で農村地域の活性化につなげたい、こういう内容でありました。  水田は、私たちの主食用米の生産だけでなく、洪水の調整機能など公共的な役割を担っていることから、今後とも水田をつくり続けていくことが重要であります。  そこで伺います。  第一点は、本県における水田の活用状況についてお示しください。  第二点は、水田の持つ多面的機能についての認識をお示しください。  鹿児島県農林水産物輸出促進ビジョンは、前知事時代、平成三十年に策定されております。その後、SDGsやカーボンニュートラルの考え方がより濃く世界的潮流になりつつあります。これらの価値観が付加されたものが将来求められてくると思います。野心的目標を持って御検討されるよう要望しておきます。  これで、第一回目の質問を終わります。    [知事塩田康一君登壇] 52 ◯知事(塩田康一君)森林資源の循環利用を促進する森林・林業の取組についてでございます。  森林は、県土を守り、清らかな水や美しい景観を提供するとともに、生物多様性を保全し、地球温暖化の主な原因とされる二酸化炭素を吸収・貯蔵する働きを有するほか、木材をはじめとする林産物を供給するなど、安心・安全な県民生活になくてはならない県民共通の財産であります。  特に、地球温暖化防止については、昨年十一月、県においても、二〇五〇年までにカーボンニュートラルを目指す旨を表明したところであり、二酸化炭素の吸収源として貢献する森林の役割がますます期待されております。  これらの森林のうち、先人たちが長年にわたる努力により育成してきたスギ・ヒノキの人工林は本格的な利用期を迎えており、この豊富な森林資源を循環利用することにより、林業の成長産業化と森林の公益的機能の発揮を図ることが重要であります。  このため、県では、議員提案による森林資源の循環利用の促進に関するかごしま県民条例や、県森林・林業振興基本計画に基づき、各般の施策を積極的に展開しているところであります。  具体的には、担い手となる人材の確保・育成や森林施業の集約化を図りながら、計画的な間伐や再造林等の森林整備を推進し、多様で健全な森林づくりに努めるとともに、市町村が仲介役となり、森林所有者と林業経営者をつなぐ森林経営管理制度の円滑な推進を図っております。  また、路網の整備や高性能林業機械の導入等による木材の安定供給体制づくりや、木材加工流通施設等の整備による木材産業の競争力強化、公共施設等の木造化・木質化、付加価値の高い製材品等の輸出促進、CLTの普及等による木材の利用拡大など一体的に取り組んでおります。  今後は、こうした取組をより一層推進するため、成長の早い優良苗木等の生産体制の整備、先端技術を活用したスマート林業の普及、県産JAS製材品の生産体制の整備や非住宅建築物への木材利用の拡大などに取り組むこととしております。  県としては、引き続き、市町村や関係団体等と連携しながら、林業の成長産業化の実現や、「稼ぐ力」の向上を図ることにより、森林資源の循環利用を促進してまいります。 53 ◯総務部長(山本 周君)まず、国から県への権限移譲等についてでございます。  国から都道府県等への権限移譲につきましては、平成二十六年の第四次地方分権一括法の成立以降、本格的に推進されているところでございます。平成二十六年以降、地方分権一括法に基づきまして、看護師など各種有資格者の養成施設等の指定・監督等の事務・権限や、農地転用許可に係る事務・権限など、五十三の法律に基づく事務・権限が国から都道府県に移譲されているところでございます。
     県から市町村への権限移譲につきましては、平成十七年度に県独自に策定いたしました権限移譲プログラムに基づき、住民に身近な事務は可能な限り住民に身近な市町村で処理することが望ましいとの考え方の下、市町村と協議が調ったものから順次実施してきているところでございます。  具体的には、旅券法に基づくパスポートの発給申請・交付等の事務や特定非営利活動促進法に基づくNPO法人の設立認証の事務など、本年四月時点で五百三十九事務が移譲されているところでございます。  平成二十六年度からは、国におきまして、個々の地方公共団体等から、事務・権限の移譲や規制緩和など、全国的な制度改正の提案を広く募集する提案募集方式が導入されているところでございます。この提案募集方式では、本県といたしまして、九州地方知事会との共同提案となった十件を含めて、十五件の提案を行っており、先ほど申し上げました農地転用許可に係る事務・権限の移譲など八件について、提案が認められているところでございます。  次に、過疎債・辺地債の発行状況等についてでございます。  過疎債及び辺地債の全国枠につきましては、過疎債は平成二十二年度の二千七百億円が令和三年度は五千億円となり、辺地債は平成二十二年度の四百三十三億円が令和三年度は五百二十億円となっており、それぞれ増加傾向にございます。この間の県内市町村の発行額につきましては、過疎債は平成二十二年度の百四十九億円が令和元年度は二百十九億円となり、辺地債は平成二十二年度の三十八億円が令和元年度は五十六億円となっており、全国枠と同様、増加傾向にございます。  なお、平成二十二年度から令和二年度までの間、ほとんどの年度で全国の要望額が全国枠を超えておりましたことから、市町村の事業計画に対して平均で一割程度の減額調整が行われている状況でございます。  過疎地域と辺地の振興を図るためには、引き続き市町村の財政基盤の確立を図る必要がありますことから、今後とも県開発促進協議会等を通じて、過疎債及び辺地債の全国枠の確保と地方交付税による財政措置の堅持につきまして、引き続き国に要望してまいりたいと考えております。 54 ◯総合政策部長(前田洋一君)初めに、知事会の開催状況等についてでございます。  全国知事会及び九州地方知事会では、通常年二回、国への提案要望事項等を決定するため、定例の知事会議が現地開催されているところです。そのほか、適宜、臨時会が開催されております。  令和二年度及び三年度につきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大により現地開催が困難となった場合は、ウェブ会議が開催されているところです。そのほか、全国知事会においては、令和二年二月に新型コロナウイルス緊急対策本部が設置され、国への緊急提言などについて議論されているところです。これまで二十八回開催され、うち二十四回はウェブ会議での開催となっております。また、九州地方知事会においては、新型コロナウイルス感染症対策を議論するため、令和二年度に六回、令和三年度はこれまで二回、臨時にウェブ会議が開催されているところです。  次に、コロナ禍を踏まえた地方創生の取組についてであります。  新型コロナウイルス感染症の拡大により、人の移動に制約がある中で、テレワークなどの活用・定着が進み始めたことは、人々の意識変化につながっており、地方回帰の機運がさらに高まっております。  この地方回帰の流れをしっかりと逃すことなく、地域の魅力を一層高めていくため、地域資源の磨き上げはもとより、テレワークや二地域居住などの新しい働き方・暮らし方の広がりや、人々の価値観の変容を踏まえた住みやすい地域づくり、より多くの人材に選んでもらえる地域づくりに取り組む必要があると考えております。  また、地域に仕事をつくり、地域への人の流れをつくっていくためにも、あらゆる分野でのデジタル化をはじめとするデジタル社会の実現に向けて、しっかりと取り組む必要があると考えております。  県としては、時代の流れを的確に捉え、このような新しい取組を通じて、地方創生の実現を図ってまいりたいと考えております。  過疎地における情報化の促進についてであります。  情報化の促進につきましては、あらゆる分野でのデジタル化をはじめとするデジタル社会の実現のため、地域間で格差のない情報化の環境づくりを進める必要がございます。  地域間の情報格差を是正するため、必要不可欠な基礎的インフラである光ファイバーの整備につきましては、民間通信事業者による整備が進められてきましたけれども、これまで、過疎地などではその多くが不採算地域であるとして、民間事業者による整備が進まなかったところでございます。そのため、国は、令和元年度に新たな補助事業を創設いたしました。現在、各市町村において、この補助事業等を活用しながら整備が進められておりまして、今年度中には、全ての市町村で整備が完了する見込みとなっております。  次に、辺地共聴施設の修繕等に関する国からの財政支援制度についてであります。  市町村等が実施する共聴施設の整備・改修につきましては、過疎対策事業債や地域活性化事業債などの活用が可能であり、その起債の元利償還金について、交付税措置が講じられているところです。  一方、共聴施設の維持等に対する国の財政支援制度の創設につきましては、県としても重要な課題と考えております。これまでも、県開発促進協議会などを通じて国に要望を行ってきたところです。引き続き、あらゆる機会を捉え、国に対して要望してまいりたいと考えております。 55 ◯環境林務部長(松下 正君)市町村の森林環境譲与税の活用についてでございます。  森林環境譲与税は、森林整備を促進し、森林の有する公益的機能の維持増進を図ることを目的に令和元年度に創設され、市町村は森林整備等に関する費用に、県は市町村への支援等に関する費用に充てるとされております。  譲与税の創設当初は、基金に積み立てる市町村が多かったものの、現在は、森林経営管理制度を推進するための森林所有者への意向調査や間伐、路網の維持補修等の事業に充当されるなど、有効活用が図られてきております。  この間、県では、令和元年度から地域振興局に市町村支援職員を配置し、地域連絡会議等により、全国の先進的な活用事例を提供しているほか、地域の課題への対応策について、譲与税の積極的な活用を助言しております。  また、本年度からは、森林・林業に関して一定の知識を持ち、市町村業務の支援を行える地域林政アドバイザーの育成・確保を図ることとしており、これらの取組を進めながら、譲与税のさらなる有効活用を促進してまいりたいと考えております。 56 ◯農政部長(松薗英昭君)水田の活用状況についてであります。  本県では、水田面積約三万四千ヘクタールのうち、約七割に当たる約二万四千ヘクタールで主食用米や加工用米、飼料用米などが作付されており、約一割に当たる約三千ヘクタールで大豆や野菜、飼料作物などが作付されております。このほか、残り約二割に当たる約七千ヘクタールでは、次期作に向けて地力を高めるレンゲやイタリアンライグラスなどの緑肥作物の栽培、水田の機能を維持するための保全管理などが行われております。  次に、水田の持つ多面的機能についてであります。  水田は、米などの生産活動を通じて、雨水を一時的に貯留し、洪水を防ぐなどの国土の保全や、かんがい用水や雨水が地下に浸透し、地下水をつくるなどの水源の涵養、多様な生き物のすみかになる自然環境の保全、豊作を願う祭りなど伝統文化の伝承、良好な景観の形成、暑さを和らげるなど、様々な機能を有しており、水田の持続的な利活用を図り、これらの機能を将来にわたって維持・発揮することは重要であると考えております。  県としては、引き続き、多面的機能支払交付金などを活用し、地域ぐるみで行われている水田や水路などの保全活動を支援してまいります。 57 ◯鶴薗真佐彦君 一点だけ、再確認させていただきます。  令和三年度で、鹿児島県下全ての市町村で光ファイバーの整備が完了するということで御答弁頂きましたが、これは、県下全域、あまねく活用ができる状況にあると認識すればいいのか、あるいは市町村の中心的所在地での対応になっているのか、そこをもう少し詳しく教えていただけませんか。 58 ◯総合政策部長(前田洋一君)県内の光ファイバーの整備状況についての再度のお尋ねでございます。  詳しく申し上げますと、国の補助事業は、高度無線環境整備推進事業と申しますが、令和二年度の補正予算で多額の予算措置をしていただきまして、一部未整備の地域も含む全ての市町村で現在整備中でございます。  結果といたしましては、例えば、瀬戸内町の請島、与路島も無線のブロードバンドで飛ばすということで、全ての市町村において交換局までは光ファイバーが届くということになっております。これは、今年度末の予定でございますので、今、鋭意工事中であると御理解頂きたいと思います。 59 ◯鶴薗真佐彦君 私どもも、それぞれ、地域でその動きを伺っているわけですが、交換局までということで、過疎地域とか、先ほど御紹介させていただきました山形県河北町の事例、水田の機能を高めるための水管理をする、そういう施設等のある地域というのは、ほとんど対象地域から外れていくと。しかし、全国では既にITの流れを利用しながらいろんな分野に取り組んでおられるわけで、私ども鹿児島県とそうした先進県の取組の格差をどんどんどんどん生んでいくんじゃないかと懸念しているわけですが、知事は、こうした大きな動きの中で、どのように考えておられるか、通告はしておりませんでしたけれども、感想だけでもお聞かせください。 60 ◯知事(塩田康一君)コロナ禍におきまして、テレワーク、リモートワーク、そういういろんな地方回帰の流れがある中で、この光ファイバーの基盤をしっかりと整備していく、そしてまたそれを実際に使えるような形で人材の育成等も図りながら普及させていくということが、この地方回帰の流れを捉える上で大変重要だと思っておりますので、そういった前提となる光ファイバーの基盤整備についてもしっかりと取り組んでいく必要があると考えております。    [鶴薗真佐彦君登壇] 61 ◯鶴薗真佐彦君 地方分権の推進につきましては、昨年九月議会で、私は、質問ではありませんでしたが、「元知事は、本県の財源を地方交付税に着眼され、本県の財政立て直しに努力されました。塩田知事におかれましては、今後、国の交付金制度を活用し、本県の行政需要を交付金、国の支出金に先に入れ込むぐらいの努力をしてほしい」。そうした取組を要望いたしました。  基準財政需要額を財政基盤とした地方交付税は、一般財源として、自治体のトップには政策遂行上の裁量権が若干与えられておりますが、交付金の性格上やむを得ませんが、ややもすると交付金は柔軟な対応が難しいような気がいたします。  お聞きしますと、第十二次地方分権の議論は本年十月頃から始まるようでありますが、法令によって、地方に義務づけられている計画策定に関し、策定や変更の義務づけを廃止すべき、複数の計画を一つにまとめて作成できるようにすべき、策定手続を簡素化すべき、このような観点で調整が進められるようであります。  霞ヶ関では各省庁たくさんの課があり、それぞれ意義ある法令や計画策定を進めていますが、市町村は一つの課でたくさんの現場事務をしながら複数の計画策定の事務を負わされている状況であります。  逆三角形の構造で現場の負担が大きくなっており、計画づくりよりも大事なのは、きちんと実際の仕事をすることです。過疎債・辺地債、これは計画の一割減しか認められていないような御答弁を頂きましたけれども、やはり、開促協で運動はされていますけれども、こうしたところにもしっかりと、本県の知事として強く申入れをしていただきたいと思います。塩田知事の行政経験を生かした現場からのさらなる提言をお願いしておきます。  離島行政について伺います。  離島活性化交付金制度の拡充についての質問は取り下げさせていただきます。  特定有人国境離島地域社会維持推進交付金の拡充及び有人国境離島地域の保全に係る施策の推進について伺います。  平成二十九年四月に、特定有人国境離島地域社会維持推進交付金が創設され、同年九月に鹿児島県特定有人国境離島地域の地域社会の維持に関する計画を策定し、各般の施策が実施されています。  交付金については、これまでどのような事業に活用されているのか、また、計画については五年が経過し、見直しがあると思いますが、どのように対応するのか、お伺いします。  有人国境離島地域の保全や地域社会の維持を図るため、交付金の拡充も含め、県としてどのように取り組むのか、お伺いします。  特定離島ふるさとおこし推進事業について伺います。  本県が離島政策で全国に最も誇れる政策であります。  薩摩川内市は、十七年前、一市四町四村の対等合併であり、甑四村の離島を含めての合併は全国でも珍しく、関係者の並々ならぬ努力と知恵で県下第一号として誕生しました。甑地域の人口の減少を、交流人口を増やすということによって活性化を図ろうと、薩摩川内市単独事業、また特定離島ふるさとおこし推進事業等を活用して取組を行ってまいりました。中でも、半世紀以上の悲願でありました甑大橋も完成しました。これからというときに、いずこも同じコロナ禍の状況であります。薩摩川内市では、これまで、旧四村に四支所を置いていましたが、十月一日から一振興局一支所、二サービスセンターになります。これまで以上に島民により身近なところからコロナ後を見据えた政策提言もあろうかと期待しております。  県として、特定離島ふるさとおこし推進事業の役割をどのように考えているのか、見解を伺います。  最後に、繰り返される豪雨災害の対応について伺います。  本年七月九日から十日昼前にかけて、梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、県北部を中心に線状降水帯が発生、薩摩川内市など県内三市二町に大雨特別警報が発表されました。川内川の上流域では降水量が五百ミリメートルを超え、七月の月間降水量に匹敵する大雨となり、特に、川内川の支川で越水による河川氾濫や内水による冠水が発生し、住家や田畑への浸水被害は大きなものでありました。薩摩川内市街地の中心市街地を流下する県が管理する春田川周辺においても大規模な市街地冠水が発生し、百四十二棟の建物などに浸水被害が及んでおります。  当時、川内川本川の水位が急激に上昇したことから、春田川下流にある排水機場にある樋門を閉め、ポンプ排水を行いましたが、排水ポンプ二台のうち一台にトラブルが発生し、約二時間半作動しなかったとのことです。私も、翌日、被害調査に伺い、炎天下の中で後始末作業に追われている被災者からは、内水管理についての大変厳しい多くの御意見を伺いました。トラブルの原因については、国、県、薩摩川内市で検討中と聞いておりますが、先週十九日に検証委員会が開催されましたが、いまだ明らかになっていません。  そこでお伺いします。  今回の内水被害への対応状況について説明してください。  次に、災害復旧の在り方について伺います。  令和二年に続いて、令和三年も北薩地域は豪雨災害に見舞われました。関係職員の皆様は、コロナ禍の中で休みも返上して、残業もしながら、災害査定への対応に当たっていただいております。  知事も、炎天下の中、七月十四日には被災箇所の現地調査をしていただきました。赤澤内閣副大臣、宮内農林水産副大臣にも、それぞれ被災箇所の視察をしていただきました。私も同被災地に五回行きました。現地で、知事にも両副大臣にも、被災復旧査定の在り方を要望させていただきました。  それは、被災箇所の原因となった箇所が昨年も災害に遭い、五月、完成検査が終わったばかりだと、長年現場で水の流れを見ている経験から、少し延長した復旧をお願いしたことなど、被災者から聞かされていたからです。  昨年も別な河川で五月に完成検査が終わったばかりの場所が災害に遭っていました。災害復旧は原形復旧の原則論は知っております。想定外の豪雨がこうも頻繁に繰り返される状況の中で、災害復旧採択基準の見直しも検討されていいのではないかと思うところです。  そこでお尋ねします。  災害関連事業の制度はいつ頃定められたのか。また、その基準はどのようになっているのか。前年の河川災害件数、本年の件数及び災害関連事業の件数も併せて示してください。  流域治水の取組状況について伺います。  近年は、毎年のように過去の水害時を上回る豪雨が発生しており、気候変動の影響による降雨量の増加等に対応するためには、流域全体を俯瞰し、あらゆる関係者が協働して取り組む流域治水という考えが進められております。  治水対策については、堤防整備や河道掘削等、これまで行ってきた取組をこれまで以上に加速化することが必要とされており、県においては、「防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策」において、既に取組が進められていることは承知しております。  私の地元である薩摩川内市の河川においても、河道掘削や伐採が実施され、今年七月と八月の大雨のときでも、流下断面が確保されていたことから、川があふれることなく、安全度が向上したと地元の方も喜んでいたところです。  しかしながら、地域の安全度を向上させるためには、河川改修などに加え、流域全体で雨水等を貯留する対策などを効果的に組み合わせていく必要があります。  そのうちの有効な手段の一つとして田んぼダムがあります。マスコミ報道でもよく紹介されるようになりました。  例として挙げるのはふさわしくないかもしれませんが、これまでの河川災害でも上流域、中流域があふれたことによって下流域が守られた例があります。  水田はもともと治水機能があるものの、恣意的に貯留機能を求めるにはそれ相当の理解を得る努力を具体的に行う必要があると思います。毎年繰り返される豪雨への対応、待ったなしの対応が求められています。  そこで伺います。  第一点は、本県の流域治水への取組状況について伺います。  第二点は、田んぼダムの考え方と他県の取組状況及び今後の取組について伺います。 62 ◯地域政策総括監(房村正博君)特定有人国境離島地域社会維持推進交付金に係る活用事例及び今後の取組等についてでございます。  同交付金につきましては、特定有人国境離島地域の地域社会の維持を支援するために創設されたものであり、例えば、甑島地域においては、航路運賃の低廉化やキビナゴ・マグロ・サツマイモなど農水産物の輸送コストの支援のほか、宿泊と体験がセットになった旅行商品の造成・販売などの滞在型観光の促進、飲食店や宿泊施設等の創業・事業拡大に伴う設備投資の支援などを行ってきているところでございます。  有人国境離島地域の保全や地域社会の維持に向けた取組については、市町村から交付金制度の拡充や港湾等の施設整備の要望もあることから、県といたしましては、今後とも、市町村と連携を図りながら、必要な予算の確保や対象事業の拡充、地元負担の軽減などについて、県開発促進協議会等を通じて、国に対し、要望してまいりたいと考えております。  鹿児島県特定有人国境離島地域の地域社会の維持に関する計画については、その根拠法である有人国境離島法において、国の基本方針に基づき策定するよう努めることとされており、本県は平成二十九年度に令和三年度末までの五か年計画として策定したところでございます。  本計画は、今年度が最終年度となっていることから、現在、人口の動態や新型コロナウイルス感染症拡大等による社会・経済情勢の変化等も踏まえ、市町村や庁内関係部局などとも連携しながら、見直しに向けた作業を進めているところでございます。  続きまして、特定離島ふるさとおこし推進事業についてでございます。  特定離島ふるさとおこし推進事業は、特に地理的・社会的に厳しい条件下にある甑島や三島村、十島村などの特定離島地域において、国庫補助事業の対象にならない、住民生活に密着したきめ細かな事業を実施し、それぞれの島の活性化を図るものでございます。  本事業により、例えば、甑島においては、林道、簡易水道、消防車両、医療機器、恐竜化石展示室の整備など、生活基盤の整備や産業の振興などの面で大きな成果を上げているところであり、本事業は、特定離島地域の活性化において、重要な役割を果たしていると考えております。  本県の離島は、各島の特色ある独特の自然、文化、伝統、多様なコミュニティーなど、多様性を有しており、鹿児島の宝であると考えております。  県としては、今後とも、それぞれの島の特性を生かしながら、個性豊かな地域づくりが図られるよう、特定離島地域の振興に努めてまいりたいと考えております。 63 ◯土木部長(兒島優一君)繰り返される豪雨災害の対応についてのうち、春田川周辺の浸水被害についてであります。  本年七月の梅雨前線豪雨により、薩摩川内市の春田川周辺におきましては、浸水被害が発生したところであります。  春田川は、一級水系川内川の支川で県が管理する河川でありますが、川内川との合流部にある向田排水機場は国が管理し、国から委託を受けた薩摩川内市が排水ポンプなどの操作を行っております。  県におきましては、昭和五十二年度から平成六年度にかけまして、河道拡幅など約二キロメートルの整備を行っており、令和元年度には、全川にわたり寄洲除去を行うなど、維持管理に努めているところでございます。  今回、市街地部における広範囲な浸水被害が発生したことを受け、国・県・市において、防災・気象の専門家や地元住民で構成される検討会を設置し、ポンプ運転などにおける課題の抽出や改善策の検討を行い、年内には結果を取りまとめるということになっております。  災害関連事業についてであります。  災害関連事業は、再度災害を防止するため、被災していない箇所を含む一連区間において、災害復旧費に改良費を加え、改良復旧を行う制度で、昭和二十九年に定められたものでございます。  採択基準につきましては、改良復旧を行う総工事費のうち、改良費が五割を超えないもの、一か所の改良費が県工事にあっては、二千四百万円以上の規模のもの、事業効果が大きなものとなっております。  昨年の県管理河川におきましては、三百八十一か所、約六十七億円の災害が発生しており、このうち、七月豪雨により被災した伊佐市の山野川及び薩摩川内市の百次川、勝目川の三河川について災害関連事業を申請し、一定計画に基づき、河道拡幅や堤防のかさ上げなどの整備を進めているところでございます。  今年は、八月末現在、三百二十六か所、約四十八億円の災害が発生しておりますが、現在のところ、災害関連事業の採択基準に該当するような災害は発生していないところでございます。  流域治水の取組状況についてであります。  県が管理する二級水系につきましては、全百六十水系のうち、事業中河川の三十水系について、今年度中に流域治水プロジェクトを策定することとしております。  このうち、万之瀬川などの四水系につきましては、モデル的に先行して取り組んでおり、現在、プロジェクトの策定に向け、関係機関で構成する協議会で調整を行っているところでございます。
     プロジェクト策定に当たりましては、河川管理者が進めてきた河道拡幅などのハード対策や水位情報の提供などのソフト対策だけではなく、河川管理者以外が行う対策を組み込むため、これまで治水対策に直接関わってこなかった関係者に協力を求めていくことが重要であると考えております。  今後とも、協議会において関係機関と調整を図りながら、プロジェクトの策定に取り組んでまいります。 64 ◯農政部長(松薗英昭君)田んぼダムの取組についてであります。  田んぼダムは、国による防災・減災、国土強靱化への対応として位置づけられた流域治水の対策のうち、農業の有する多面的機能を活用した取組の一つであります。  具体的には、水田の排水口に流出量を抑制するための堰板を設置して、農地の雨水貯留能力を高めることにより、河川や水路の水位の急上昇を抑え、下流域の湛水被害を軽減させるものであります。  他県の取組状況といたしましては、新潟県において、大雨に伴う洪水被害を軽減するため、約二十年前から取り組まれており、本年度からは、全国八か所において国の事業を活用して実証に取り組んでいるところでございます。  田んぼダムにつきましては、今後、国において、実証事業の取りまとめがなされ、普及に向けた課題の抽出や普及拡大に向けた手引の作成などが見込まれることから、県といたしましては、その結果や他県の状況などを踏まえ、対応について検討してまいりたいと考えております。 65 ◯鶴薗真佐彦君 知事に、一点だけお尋ねいたします。  知事も災害現場を訪ねられて、被災者から、ここは昨年も同じように被害があったんです。もうちょっと改良復旧していただければよかったのになと。改良復旧していても今年災害に遭ったかもしれません、それはですね、結果論ですから。ただ、そういう小さな河川箇所が全然改良復旧の該当に当たらないということなんですね。そして、昭和二十九年にできた法律なんですよ。その後、若干の見直しはされておりますが、ほとんど昭和二十年代とか、三十二年ぐらいで、もうあれから何十年たって、今こういうゲリラ豪雨がしょっちゅうあるわけです。  ですから、ここらあたりで済んでいることについての感想を聞かせていただければありがたいと思います。 66 ◯知事(塩田康一君)私も現場でブドウ農園の方にそういうお話をお伺いして、現場も見たところで、出来上がったコンクリートと、土の土手の境目が、ちょうどカーブしているところで、水がそこに当たって、継ぎ目のところで今回の災害に至ったということでした。そこも併せて、今年の災害の可能性を予見できれば、そういうところも含めて、改良復旧といいますか、やっておけばよかったんではないかという声をお伺いして、確かにそういうところはあるんじゃないかということで、政府の赤澤副大臣と宮内農水副大臣が来られたときにもそういう声があるということはお伝えしたところであります。  そういったことが政府全体として進むことで、かえって、全体としての災害対応が強化されるということについては、できたら非常にいいことだとは思っております。 67 ◯鶴薗真佐彦君 時間がありませんので、ぜひ、知事会もフランクに、いろんな知事会がこのリモート会議でできるようになりましたから、それぞれ九州各県、災害に遭っておりますので、先ほどの田んぼダムの問題も含めて、あるいは災害査定の在り方についても、意見を出し合って、国に提言して、災害は国全体で動かしていく、対応していくと、こういう取組をお願いして、質問を終わります。時間をオーバーして、すみませんでした。(拍手) 68 ◯副議長(吉留厚宏君)これで、本日の日程は終了いたしました。       ───────────── 69    △ 日程報告 ◯副議長(吉留厚宏君)明日は、午前十時から本会議を開きます。  日程は、一般質問及び議案の委員会付託などであります。       ───────────── 70    △ 散  会 ◯副議長(吉留厚宏君)本日は、これで散会いたします。        午後三時三十六分散会 鹿児島県議会 ↑ ページの先頭へ...