鹿児島県議会 2019-03-01
2019-03-01 平成31年第1回定例会(第6日目) 本文
↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1 午前十時開議
△ 開 議
◯議長(柴立鉄彦君)ただいまから、本日の会議を開きます。
本日の日程は、配付いたしております議事日程のとおりであります。
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議 事 日 程
一、開 議
一、一般質問
藤 崎 剛 君
鶴 丸 明 人 君
ふくし
山ノブスケ君
鶴 薗 真佐彦 君
一、散 会
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2 △ 一般質問
◯議長(柴立鉄彦君)一般質問であります。
通告に従って、順次発言を許可いたします。
藤崎剛君に発言を許可いたします。
[藤崎 剛君登壇](拍手)
3 ◯藤崎 剛君 おはようございます。
平成三十一年第一回定例会に当たりまして、
自由民主党県議会議員団の一員として質問いたします。
かねてより鹿児島の歴史を自分なりに研究している私としましては、昨年の明治維新百五十年は気合いの入った一年でありました。鹿児島市薬師には、西南戦争直後の焼け野原から立ち上がった教育関係の団体があります。
一般財団法人自彊学舎という団体でございますが、平成十九年に
認証かごしま地域塾にも指定されている団体です。歴史を研究し、伝統行事を継承している団体の一員としておりますと、昨年の県のイベント、
プロモーション事業についてさまざまな会話が飛び交いました。薩摩の精神性と合致してこれは歓迎できるなという話、また、これはちょっともう一工夫必要だったな、ちった違和感があるよねといった舎の先輩方の話がありました。
また、歴史を検証する講演会など数多くあり、新たな歴史的事実が多く掘り起こされたのは大変よいことでありました。将来、歴史のドラマや検証番組をつくるのに必ず役立つと思います。一方で、確かに、講演会などを苦手とする方には、フェスなどが有効だったのかもしれません。これをきっかけに歴史に興味を持っていただければ、幸いなことでありました。
大河ドラマ「西郷どん」が終わってしまい、私自身は緊張感から解き放たれ、気の抜けた一カ月でございました。明治維新以降の近代史は、私たちの生活、暮らしの変化に直結しています。鹿児島の多くの青年の血が流れて明治維新がなし遂げられたこと、また、西郷は、思いがけなくいただくことになった戊辰戦争の功労金をほぼ
学校建設資金に使ったことなど、歴史の中で、これも映像に欲しいなと思った場面も数多くありました。
ここでお尋ねします。
鹿児島は歴史を生かした観光が得意でありますが、明治維新百五十年と
大河ドラマの放映が重なり、大きな追い風になりました。明治維新百五十年であった平成三十年を振り返り、鹿児島の歴史的な遺産を基盤として観光振興につなげていった平成三十年の成果について、知事の見解をお伺いします。
また、平成二十八年度より行われていた
若手研究者育成事業の成果により、多くの歴史が掘り下げられ、鹿児島の近代史の中でこれまでわからなかったことが明らかにされました。また、その
研究発表会には全国から駆けつけた方を含め、多くの
歴史ファンが集まりました。この
若手研究者育成事業の成果もお示しいただきたいと思います。
また、今回提案の平成三十一年度当初予算案の中には、この
若手研究者育成事業の予算は計上されていなかったと理解しておりますが、確認させていただきたいと思います。
歴史を生かした観光振興を実現する、あるいは歴史番組の制作に協力するには、かねてからの調査研究の基盤が必要でありますが、ことしからは
通常ベースでの研究体制になるかと思います。黎明館を中心にした歴史の研究と発表体制についてお示しいただきたいと思います。
次に、
鹿児島中央駅西口についてお尋ねします。
今議会では代表質問、一般質問にて、
鹿児島中央駅西口への
県総合体育館の立地について活発な質疑が行われています。これまで聞かれた部分とできるだけ重複を避けながら、私も質問いたします。
昨年二月に、大
規模スポーツ施設の
在り方検討委員会の提言書が提出されました。二月の
提言書提出の発表に対し、六月に最適地の発表という非常に短い期間での発表になりました。
今議会での答弁で印象的なのが、慎重かつ丁寧な、という言葉であります。
前知事時代の
総合体育館構想とそれに続く
スーパーアリーナ構想が、場所の問題で頓挫したのを見ていた者として、この場所の選定方法につきましては、より慎重かつ丁寧な手順を期待しておりましたので、発表が意外でありました。
一方、慎重かつ丁寧な場所選定の例でいえば、現在進行中の鹿児島市が行っている
サッカースタジアムの
立地候補地の
絞り込み作業があるかと思います。時間はかかりますが、条件を明示しながら絞り込まれていく過程がいわゆる見える化されています。
また、突然の発表でありながら大きな議論にならず、みんなが納得いった例もあるかと思います。鹿児島市南部の
特別支援学校の設置場所についてであります。鹿児島市南部という場所、しかも、現在、近隣に学校が立ち並ぶ文教地区になっている遊休の県有地でしたので、衆目が一致して異論なく場所選定が進んだかと思います。
このようにケース・バイ・ケースで、決め方に対する県民の受けとめ方が異なりますので、場所選定は十分気をつけるべきではないかと思います。
ここでお尋ねします。
県の
総合体育館の立地場所について、慎重かつ丁寧な
絞り込み作業はできなかったのか、お示しください。
また、なぜ急いだのかについてもお示しいただきたいと思います。
議会答弁を決める際には、恐らく複数回にわたり、知事と部長、担当部局まで入った政策協議があったものと思われますが、
鹿児島中央駅西口の
県工業試験場跡地が最適地ということは、いつ、どの場面で意思形成されていったのか、お示しください。
昨年十二月に下鶴議員の質問に対して、
日本郵便株式会社とは、現在、土地の
譲渡方法等について引き続き協議を行っているところであり、土地の鑑定評価や建物等の調査等を進め、
用地補償等について具体的な協議を行いたいと考えておりますと答弁されています。
また、今議会では、日本郵便との交渉状況について、既に、土地の鑑定評価や用地測量、建物等の調査を踏まえ、具体的な協議を行っているところですと答弁されています。
日本郵便との協議について、これまでの交渉回数と協議内容をお示しください。
また、次回協議の日程が決まっているのかもお示しください。
昨年十二月の
自民党代表質問に対しまして、中央駅西口の交通量の予測分析について、あくまでも客観的・定量的に分析したものでございまして、現実問題としてどのような状況になるかということは、
市道管理者である鹿児島市とも詳しく話をしてみなければならない問題だと考えておりますと答弁されています。
現実問題としてどうなるかについて、
市道管理者である鹿児島市との詳しい話はその後できたのか。できたのであれば、その内容についてお示しいただきたいと思います。
中央駅西口につきましては、
総合体育館の
立地候補場所と発表する以前から、もともとバスが渋滞していたことから、昨年十二月に、
西口広場バスプールの効率的な運用を図るため、今月一日から二十五日まで、駐車時間を短縮する試験運用を実施しているところでありますと答弁されていますが、この試験運用はどのような方法で行われたのか、お示しください。
また、今後、試験運用の結果を踏まえて、どのように対応していくのかもお示しください。
昨年九月の
企画観光建設委員会での質疑におきまして、我々は撤退する勇気も持っておりますので、いずれかの段階でそういう形で土地の譲渡の協議の状況、それから施設の内容、それをお示しした上で、また是非を判断していただいて、その上でこちらのほうでまたいろいろ考えさせていただくと答弁がありました。
撤退の判断をせざるを得ない場合の構成要件と、要件の順位についてお示しください。
また、昨年九月の
総務委員会の議論を踏まえ、
調査委託費について、
大久保委員長が
委員長報告で触れています。「土地鑑定・
建物等調査について、土地の協議は相手があり難しい側面もあることから、我が県が厳しい財政状況にあることにも留意しつつ、計画的かつ効率的に行い、今後も、協議の熟度を見ながら、必要なものから執行していただきたい」という意見をつけたところであります。
また、今回提案されました
補正予算案の
繰越明許費の中に、
総合体育館基本構想策定事業について三千八百九十九万円余りが計上されています。関係機関との調整に不測の日数を要したことによる繰り越しということで、相手があることですので当然のことと思いますが、この意見を踏まえた予算の執行状況についてお示しください。
繰越明許費の内容についてもあわせてお示しいただきたいと思います。
平成二十三年にまとめられた
総合体育館等整備基本構想の策定過程を振り返りますと、平成二十一年度に競技団体や利用者にアンケートを行い、調査結果の中に盛り込まれております。さらに、案がまとまった段階で
パブリックコメントにて再度意見を伺っており、慎重に慎重を重ねて丁寧にプロセスを積み上げています。
十二月議会の最中、複数の競技団体にお伺いし、私がヒアリングしたところ、「あっ、そのような案ができているのですか」という反応がありましたので、あっ、説明はまだだったんだ、これから行われるんだと感じました。
平成二十三年に
総合体育館等整備基本構想を策定する際、各競技団体がヒアリングで答えた内容を、今回、全団体がそのまま答え、それをもとに機能を網羅して調整すると、
鹿児島中央駅西口の土地ではおさまらないようになるのではないかと心配いたします。
十二月以降の競技団体への説明状況についてお示しください。
駐車場に関しまして、知事は十二月議会で、中央駅西口の「環境への負荷の軽減を図る観点からも、
県地球温暖化対策推進条例にもありますように、自動車、特に自家用車の使用にかえて、
公共交通機関を利用していただくことが望ましいと考えております」と答弁し、同条例を
公共交通機関利用の論拠にしておられます。
私は、
新幹線沿線地域の
競技団体長さんにお話を聞いてみました。例えば、薩摩川内市から
鹿児島中央駅まで在来線で大人片道九百四十円、往復が千八百八十円であります。子供だと片道四百七十円、往復九百四十円であります。計算しやすいように、大人の往復を二千円、子供の往復を千円としますと、応援を含めて大人二人・子供二人だと六千円、これに例えば祖父母が加わると一万円になってきます。「これまでは車で家族で応援に行っていたけれども、お金がかかると、ここまでぞろぞろついていくわけにはいかんな」というのが率直な声でございました。
また、バスで試合会場に着いて、近接の駐車場にとめる場合があるかと思いますが、「季節によっては、そのバスの車内は、試合と試合の間の休憩場所として使うこともあるよ」というお話も聞けたところであります。
現在、バスを退避させる
バスプールや駐車場等について調査を進めているようですが、なかなか近隣には広い土地はなく、県有地・市有地・その他の公共用地・民有地などの土地について、交渉が必要かと思います。民有地を借り上げあるいは取得ということも考えられますが、交渉に当たる条件と交渉の
優先順位等についてお示しください。
これで、第一回目の質問を終わります。
[知事三反園 訓君登壇]
4 ◯知事(三反園 訓君)鹿児島の
歴史的基盤を生かした観光振興の成果についてであります。
本県の先人たちは、幕末という大きな変革期にあって未知の時代を切り開き、明治維新をなし遂げました。
平成三十年は、明治維新から百五十周年の節目となる記念すべき年であり、
NHK大河ドラマ「西郷どん」の放送もあり、国内外から鹿児島が注目を集めた年でもありました。
県では、この効果を最大限に生かすために、明治百五十年記念式典、秋の祭典を初めとするかご
しま明治維新博、
大河ドラマのパブリックビューイングなど、官民一体となって県内外で五百を超えるイベントの開催、
各種メディアを活用したPRなどに努めたところであります。
また、維新ドラマの道を初めとする
西郷どんゆかりの地の整備、
ボランティアガイドの育成などに取り組み、鹿児島を訪れた観光客の方々にまた来たいと思っていただけるよう、
受け入れ体制の充実を図ってきたところであります。
これらの取り組みの成果もあり、昨日公表された観光庁の
宿泊旅行統計調査によりますと、平成三十年の
延べ宿泊者数は、速報値でおよそ八百三十万人、
外国人延べ宿泊者数はおよそ八十万人で、どちらも過去最高となりました。
このような結果を得ることができたことは、何よりも、鹿児島の観光業に携わる全ての方々の御尽力のたまものであり、深く感謝申し上げます。
県といたしましては、ことしも、
オール鹿児島で昨年以上のイベント、より効果的な
プロモーションを実施するなど戦略的な取り組みを展開することにより、本県の基幹産業である観光産業の振興を図り、どんどん輝く鹿児島の実現に向けて、積極的に仕掛けてまいります。
5 ◯PR・
観光戦略部長(川野敏彦君)明治維新百五十周年
若手研究者育成事業についてでございます。
この事業は、明治維新百五十周年を迎えるに当たり、
明治維新期の薩摩藩に関する研究の深化や活性化を図ることを目的として、平成二十八年度から三カ年間実施したものであり、専門家の審査会を経て、これまで延べ九名の
若手研究者に対し、研究経費を助成したところです。
研究テーマは、
明治維新期の薩摩藩におけるイギリスとの外交関係や藩の財政改革、海防強化のための洋学研究など多岐にわたっており、いずれも、国内外に残る
薩摩藩関係の史料を丁寧に分析したものとなっております。
専門家からは、薩摩藩を研究する県内外の
若手研究者の掘り起こしができ、また、国内外の史料の確認が進んだことは大きな成果であるといった高い評価が得られております。そのほかにも、これらの研究が、地域の
郷土史研究会や
まち歩きガイドで活用されるなどの成果も見られるところであります。
このように、本事業は、予定しておりました三カ年間において、所期の目的を十分達成できたものと考えております。
6
◯県民生活局長(迫 貴美君)黎明館を中心にした歴史の研究と発表体制についてでございます。
黎明館では、郷土の歴史や
文化遺産等に関する資料の収集や調査、展示等に取り組んでおり、本県の歴史・文化を広く情報発信しているところでございます。
具体的には、本県に関する膨大な歴史資料が、多くの
歴史研究者や県民の研究・教育資料として活用されますよう、学芸員等が県内外の有識者と連携しながら、鹿児島県史料の編さんを行っております。
また、鹿児島の古代から現代に至るまで、学芸員等が新たな調査研究に取り組んでおり、その成果を
企画特別展や講演会、各種講座などにおきまして展示・発表するとともに、昨年の
NHK大河ドラマ「西郷どん」など歴史番組の制作に当たりましては、資料提供を行っているところでございます。
今後も引き続き、黎明館を中心に鹿児島の歴史の調査研究に取り組み、県民の文化活動及び学術研究の寄与に努めてまいります。
7
◯企画部長(古薗宏明君)
総合体育館の立地場所の選定方法についてであります。
新たな
総合体育館につきましては、一昨年の六月から昨年一月にかけて、丁寧な議論を重ねていただいた大
規模スポーツ施設の
在り方検討委員会の提言において、本県の
スポーツ振興の拠点としての機能に加え、多目的な利用による交流拠点としての機能を有することにより、交流人口がふえ、にぎわいの創出、
経済波及効果など
地域活性化とともに、施設の収益性にも寄与するとされております。
このような効果を最大限に発揮させるという観点、また、国のスタジアム・
アリーナ改革指針や
日本政策投資銀行の調査報告において、
地域活性化や収益性の確保等の観点から、利便性の高い場所に立地すべきとされていることなどから、主な県有地は、
県工業試験場跡地、県庁東側の土地、
県農業試験場跡地などしかないわけであり、庁内で比較検討を行い、議論を積み重ねた結果、
総合体育館については、鹿児島の陸の玄関口であり、県内の交通の中心である
鹿児島中央駅に隣接する
県工業試験場跡地のほうが明らかに最適地であり、施設の規模等を考慮すると、隣地もあわせた整備が望ましいとの考えに至ったところであり、このような考え方について、昨年の第二回
県議会定例会において表明したところであります。
最適地を決めるまでの
意思形成過程についてであります。
新たな
総合体育館につきましては、大
規模スポーツ施設の
在り方検討委員会の提言の中で、本県の
スポーツ振興の拠点としての機能に加え、
多目的利用による交流拠点としての機能を有する、いわゆる
アリーナ的概念の施設が望ましいとされ、これらの機能を有することにより、交流人口がふえ、にぎわいの創出、
経済波及効果など
地域活性化とともに、施設の収益性にも寄与するとされております。
新たな
総合体育館の
整備予定地につきましては、提言に示されているこのような効果を最大限に発揮させるという観点などから、議論を積み重ね、
県工業試験場跡地が最適地であるとの考えに至り、昨年の第二回
県議会定例会において、県の考え方を表明したものであります。
日本郵便との協議についてであります。
昨年七月に、
日本郵便株式会社に対しまして、土地の譲渡について協議の申し出を行い、これまで同社と断続的に協議を行ってきているところであります。
十月からは、土地の鑑定評価や用地測量、建物等の調査について、同社の御協力もいただきながら進めているところであり、現在、これらの調査等を踏まえ、同社と具体的な協議を行っているところであります。
鹿児島市との協議についてであります。
県におきましては、昨年十二月に鹿児島市を訪問し、新たな
総合体育館の施設の規模、構成等や交通への影響分析結果、自動車の流入を防ぐ必要性などを説明し、道路の拡幅や送迎バスの乗降場所の確保などの課題について、意見交換を行ったところであります。
また、本年一月二十八日に開催した県・
市意見交換会におきまして、新たな
総合体育館の整備については、
鹿児島中央駅西口地区において、鹿児島の陸の玄関口としてふさわしい新たな魅力の創出や都市機能の充実が図られるよう、県と市が緊密に連携しながら、諸課題の解決を含め協議・検討を進めること、同地区においては、JR九州の開発計画もあることから、同社とも連携を密にして進めることについて合意したところであります。
鹿児島中央駅
西口広場バスプールの運用についてであります。
鹿児島中央駅西口広場を所管する鹿児島市におきましては、同広場の混雑対策の一つとして、
バスプールの駐車時間短縮による
回転率向上の可能性を検証するため、現在、三十分以内で駐車可能なバス車両に対し、二十分以内での出庫を促す試験運用を行ったところであります。
試験運用に当たりましては、
駐車場管理の受託業者が出庫状況を確認し、二十分で出庫できない場合にはその理由の聞き取り等を行ったと聞いております。
また、試験運用の結果については、今後、関係者間で、今後の対応について意見交換を行うとのことであります。
県といたしましては、引き続き、
鹿児島中央駅西口広場の混雑の緩和に向けて、西口広場を所管する鹿児島市やJR九州と連携を図ってまいりたいと考えております。
撤退の要件についてであります。
新たな
総合体育館の
整備予定地につきましては、これまで繰り返し御答弁申し上げているとおり、県議会の御意見もいただきながら、
日本郵便株式会社との協議を進め、整備に向けた条件が整った段階で決定することになると考えております。
県といたしましては、引き続き、県議会での御論議を初め、
屋内スポーツ競技団体や地元住民の方々などの御意見もお聞きし、
道路管理者である鹿児島市やJR九州などの関係者とも緊密な連携を図りながら、基本構想の策定に向け、慎重かつ丁寧に協議・検討を進めてまいりたいと考えております。
予算の執行状況と
繰越明許費の内容についてであります。
日本郵便株式会社の土地の鑑定評価や用地測量、建物等の調査につきましては、同社と土地の譲渡について協議を進めるために必要不可欠な調査であり、昨年十月下旬に着手し、必要な調査を進めてきているところであります。現在、これらの調査等を踏まえまして、同社と具体的な協議を行っているところであります。
また、
繰越明許費につきましては、
総合体育館基本構想策定事業に係る今年度予算のうち、既に支出を行った金額を除いた金額を計上したところであります。
基本構想策定支援業務につきましては、基本構想の策定に当たって、県議会での御論議を初め、さまざまな方々の御意見を十分にお聞きしながら、慎重かつ丁寧に協議・検討を進めていく必要がありますことから、引き続き、同構想の策定に向けた作業を行うことを想定し、また、用地測量、
建物等調査についても、今後、
日本郵便等との協議の過程において、改めて調査等を行う必要が出てくる可能性も想定し、
繰越明許費を計上したところであります。
屋内スポーツ競技団体への説明状況についてであります。
屋内スポーツ競技団体に対しましては、昨年十二月と本年一月に、新たな
総合体育館の施設の規模、構成等や交通への影響分析結果、自動車の流入を防ぐ必要性などを説明したところであり、同団体からは、施設の運営に当たっては、まずはスポーツでの利用を優先させてほしい、柔道場・剣道場については、必要に応じてどちらの種目でも使用できるようにしてほしい、全国規模の大会にも対応できるよう諸室を確保してほしい、交通事情が悪い地域からは、競技者だけでなく観客がバスで来ることも考慮してほしいなどの御意見をいただいたところであります。
県といたしましては、引き続き、
関係団体等に対し丁寧な説明を行い、御意見をお聞きしてまいりたいと考えております。
バスプールの確保についてであります。
大型バス等の待機場所としての
バスプールにつきましては、現在、複数カ所について具体的に検討を進めているところであります。
8 ◯藤崎 剛君 一点だけ再質問させていただきたいと思います。
調査結果を踏まえて、日本郵便と今、話をされているということですが、調査結果を踏まえてということは、もう調査結果がある程度、形としていろんなデータも含めて出て、それが手元にあるという状況なんでしょうか。
9
◯企画部長(古薗宏明君)少なくとも、具体的な協議を進めるに当たっての調査結果はいただいております。
10 ◯藤崎 剛君 その調査結果の中身はどのようなことが書いてあるのか、金額なのか、データなのか、その辺を教えてください。
11
◯企画部長(古薗宏明君)今現在、まさに日本郵便との協議を進めている過程でありますので、具体的な協議を進めるに当たって必要なデータなり、金額なりはいただいておりますけれども、その中身については、今後の相手との信頼関係等々を考えますと、お答えすることは差し控えたいと考えております。
[藤崎 剛君登壇]
12 ◯藤崎 剛君 それぞれ御答弁いただきました。
日本郵便との協議については、調査が行われて、それなりに金額も含めた調査結果がもう手元に来ていて、それをもとに今、交渉しているということがわかりました。
それと、立地場所の選考プロセスに関しましては、部長の答弁では、庁内で協議した結果ということでしたので、この決め方に関しては、鹿児島市がやっている、見える化された選考過程と大きな差があるなと感じるところでございます。
それでは、また質問を続けてまいります。
鹿児島港本港区についてお尋ねいたします。
この件につきましても、既に多くの皆様から質問が出されておりますので、絞って質問いたします。
一月二十二日、鹿児島商工会議所が企画した、鹿児島のまちづくりに関する県議会議員との意見交換会が行われ、鹿児島港本港区エリアまちづくりグランドデザインに対する
パブリックコメントについて、商工会議所は、常議員会で意見集約したものを意見として出したということで、その内容の説明を受けたのであります。
提案は二部構成になっており、問題点の指摘と提案になっています。問題点の指摘には、禍根、経過不明、慎重に検討がなされていないなどと非常に厳しい言葉が並んでおりました。また、県と市の関係につきましては、鹿児島市とのすり合わせが不足している、県と市の協議が不十分であるなどとも指摘しています。
先般出されたグランドデザインに対する意見等の概要と県の考え方の中で、鹿児島商工会議所からの提案項目とおぼしきものもありましたが、○○などに含まれていると考えております、いただいた御意見を参考に、という答えが多くなっておりました。グランドデザイン案の文章とパブコメ後の文章が、情報発信の項目が一項目ふえただけで変化がなかったことが、また関係者で話題になっているところです。
さて、知事は就任以来、鹿児島市長とはほぼ毎月意見交換されている旨の御答弁もありました。さまざまな課題が定期協議されることで、より意思疎通やすり合わせが進み、前知事のときより政策協議が円滑化し、進捗が早くなるものと期待しておりました。ホームランとまでは言いませんが、ヒットの連発を期待していただけに、少し空振りの印象が強いです。
毎月行われている鹿児島市長との意見交換の場について、毎月のテーマは決まっているのか、議事録があるのか、また、意見交換を受けての各部への指示があるのかをお示しください。
鹿児島市からは、
サッカースタジアムの立地場所として注目している県有地があることなどが、直接的な表現あるいは間接的な表現により、話の節々に出てきたはずと思います。
鹿児島市が
サッカースタジアムの立地可能性のある場所として絞り込まれた三カ所のうち二カ所に、県有地があがったことに対する知事の見解をお聞かせください。
毎月の鹿児島市長との意見交換の場の集大成として年に一回の、両トップが部下を同行して行うのが、先月二十八日の意見交換になるかと思います。その成果は発表をお伺いしましたが、具体的なすり合わせがこれから始まるものと期待しているところです。
さて、鹿児島県・鹿児島市の関係で象徴的な場面があります。
県立球場・県立陸上競技場は、昭和四十三年の当時の金丸知事と鹿児島市の末吉市長との間の覚書によって、市有地の無償貸与を受けて、県が上物をつくり、長年運営しています。金丸知事は自民党公認知事、末吉市長は社会党出身の市長という関係でありました。現在より党派色の強い出身母体を持つ県と市のトップが、将来の鹿児島のために決断した経緯があります。
県・市間の協議を進め、大きな判断をするには、担当部署のみの視点ではなく、長いスパンにわたる経緯や大局を踏まえ、事務方とも調整する必要があります。鹿児島市からの長年の無償貸与は県として大変ありがたいものと思いますが、このような県・市の両トップによる大きな決断の事例について、見解をお聞かせいただきたいと思います。
また、この鹿児島港本港区について、先日の地元紙に鹿児島銀行の上村頭取の発言も掲載されていました。こういった経済団体からの意見・発言をどのように受けとめているのか、お示しください。
次に、急傾斜地崩壊対策事業についてお尋ねします。
全国各地で相次ぐ土砂災害を受けて、これまで崩れたことのなかった山でも心配する声が聞こえてまいります。
私の地元の鹿児島市の伊敷地区は、平成五年の八・六水害における被災地であり、甲突川の激特工事や急傾斜工事など、その後に多くの整備が行われ、安心・安全なまちができてきました。しかし、一部では、その当時に地権者の同意を得られなかった山が、工事ができないままで残されています。先祖伝来の資産価値の高い山をそんな簡単に寄附できるものかという意識が高かったものと思われます。
そのような背景も一因となって、県内の土砂災害危険箇所のうち要整備箇所四千九百五十二カ所の整備率は三六%となっています。
ところが、山という財産に対する意識の変化もあり、自分が所有する山が災害を起こしたらどうなるのかとか、自分の代までは山の管理をするけれども、次の世代は関心がない、かえって厄介に思っているようだとのことで、今まで同意しなかった部分について、考え方を変えようとする兆しがあります。このチャンスを上手に生かす必要があるかと思います。
特に、未整備箇所のうち、要配慮者利用施設である幼稚園や病院などの施設のある箇所については、できるだけ早急に整備されるべきだと思います。
国は、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策を打ち出し、一般公共事業費を前年度比約一・三倍にふやし、来年度の鹿児島県予算案では公共事業の砂防事業の中で、平成三十年度の九十九億六千三百万円から、前年度比一三四%の百三十三億八千万円と増額になっております。急傾斜地崩壊対策事業単独で見ますと、二十四億六千六百万円から三十億二千六百五万円へ前年度比一二二%と増額となっていて、これはこれで喜ばしいことかと思います。
私は、既に事業採択された鹿児島市の中福良四地区の事業箇所について、小野四丁目の要配慮者利用施設である幼稚園を含むエリアの中福良町内会の皆様と協力して、同意の印鑑を集めた経験がありますので、実務を御紹介いたします。
町内会の皆様に言わせると、これまで何回も取り組んだが、いずれも途中で頓挫したとのことでありました。地元の悲願でありました。町内会の執行部の交代や、印鑑を押してもらうときの説明が難しかったりと、そういうところから事業化へたどり着けなかったものと思います。
私がかかわる以上は何としても事業化にこぎつける、そういった強い信念と緊張感を持って、地元の町内会の皆様と打合会をつくりました。平成二十七年十二月のことであります。
工事を希望する山の土地の寄附を取りつけるため、同意の必要な地番とその所有者、土地は寄附しないものの隣接として、工事に同意する印鑑の必要な地番と所有者の一覧と、字図をにらめっこしながら、自分なりに同意書集めセットをつくり、町内会での役割分担を決めて、聞かれたことにこう答えるとよいですよというマニュアルをつくりました。地権者が地元にいる方半分、いない方半分。
平成二十八年四月に印鑑集めをスタート、そして十月に印鑑がそろいました。おかげさまで、最初の打合会から十一カ月後でありました。書類を地番ごとにきちっとそろえ、インデックスをつけて町内会長さんに渡し、会長さんの手で平成二十八年十一月に鹿児島市河川港湾課へ提出、鹿児島市の審査を経て、平成二十九年度、鹿児島市から鹿児島県へ要望書が上がりました。平成三十年度に事業化され、測量が始まり、現在に至っています。
無償提供の同意書の印鑑は三十二名、工事をする土地の周りの地権者の工事協力の同意書八十二名分が集まりました。
無償提供の同意書につきましては、土地の無償提供であることを念押しした上で、印鑑を押したらすぐに所有が移るわけではありませんよと丁寧に何度も説明し、押した後からでも疑問点は確認ができることを何度もお伝えいたしました。
この間、事業採択に該当する山かどうかの現地調査、印鑑を集める前に現地と字図を確認するための現地調査、事業化に向けて予算を組むための現地調査、事業化されて工事するための現地調査と、たびたびの調査がありました。
調査が行われるたびに、それを見かけた住民の方の中には、工事が決まったかのように勘違いする方がいまして、そのたびに、一連の手順の中の調査であり、本決まりでないことを説明しかたでした。なかなかこの説明は難しいものがありました。
なるほど、この説明の難しさから、言葉の表現一つで理解から不信感に変わったりして、印鑑を集める方も善意のボランティアでやっていますので、言われた言葉に傷ついたりして情熱が失われ、話が頓挫していったんじゃないかなとも感じたところであります。
寄附の同意を得られた山の地番のうち、一筆で未相続のまま地権者が六人にわたるものもありました。六人は七十代から八十代のいとこ同士、何とか連絡がとれました。この世代のいとこ意識はなかなか強いもので、おかげさまで助けられた感があります。
私の経験をお話ししましたように、急傾斜地崩壊対策事業は、予算がついたからといって、急傾斜工事あすからスタートというわけにはいきません。事業採択に向けこつこつ、やるべきことを積み上げる必要があろうかと思います。
ここでお尋ねします。
急傾斜地崩壊対策事業について、平成三十一年度当初予算の内容をお示しください。
二番目、優先される要配慮者利用施設を保全する急傾斜施設の整備状況についてお示しください。
三つ目、事業採択までは相当の時間がかかりますので、当面は土砂災害に係るソフト対策が重要になりますが、県としてのソフト対策の取り組みについてお示しください。
以上で、二回目の質問を終わります。
[知事三反園 訓君登壇]
13 ◯知事(三反園 訓君)鹿児島市長との意見交換についてであります。
森市長とは、知事就任以降、ほぼ毎月一回のペースで直接お会いして、さまざまな分野について、知事と市長というトップ二人で率直な意見交換を行っているところであります。
鹿児島市は、本県の県都として、経済や文化の中心的役割を担うことが期待されておりまして、県と市のトップ同士が直接会って、
地域活性化に向けて話し合っていくことは非常に重要であり、意見交換を受けて、私から各部局に対し、必要に応じて指示を行っているところであります。
また、私と市長とで話し合い、一月二十八日に県と市の幹部も同席した意見交換会を開催し、連携・協力して対応することで合意したところでもあります。
今後とも、森市長と積極的に意見交換を重ねながら、県政を推進してまいりたいと考えております。
14 ◯土木部長(渡邊 茂君)鹿児島港本港区が
サッカースタジアムの候補地になったことに対する見解についてであります。
サッカースタジアムにつきましては、サッカー等スタジアム整備検討協議会が、三つの候補地に絞った上で鹿児島市長に報告書を提出したところであります。
鹿児島港本港区エリアについては、すばらしい錦江湾や桜島の景観を生かしたまちづくりの目玉スポットとして、国内外の幅広い観光客や県民が三百六十五日訪れるような観光地にしたいという考え方に基づいて、これまで、ドルフィンポート敷地に
サッカースタジアムは考えていないと申し上げてきているところであります。
住吉町十五番街区についても、国際的な観光都市にふさわしい、来て見て感動する観光拠点の形成を図るための活用を検討してまいりたいと考えているところであり、その考えに変わりはないところであります。
続きまして、経済団体からの発言・意見についてであります。
鹿児島港本港区エリアまちづくりについては、同エリアまちづくり検討委員会を設置し、さまざまな方々から御意見を伺ったほか、県政モニター等へのアンケート調査や周辺商店街等の関係団体に対する聞き取り調査を行うなど、幅広い意見聴取に努めたところであります。
これらの御意見等や議会での御論議、
パブリックコメントの結果を踏まえ、今般、グランドデザインを策定・公表したところであります。
地元紙に掲載された地元経済界の方々の御意見等は、それぞれの立場や考え方に基づくものであると受けとめております。
鹿児島港本港区エリアにつきましては、これまでも重ねて申し上げてきているとおり、すばらしい錦江湾や桜島の景観を生かしたまちづくりの目玉スポットとして、国内外の幅広い観光客や県民が三百六十五日訪れるような観光地にしたいと考えております。
今後の事業化へ向けましては、既存の中心市街地との回遊性に配慮するとともに、中心市街地との共存が図られ、同エリアを含む地域全体に相乗効果が及ぶように取り組んでまいります。
続きまして、急傾斜地崩壊対策事業についてのうち、急傾斜地崩壊対策事業の平成三十一年度当初予算についてであります。
急傾斜地崩壊対策事業は、崖崩れによる土砂災害から住民の生命を守るため、擁壁工やのり面工などの急傾斜地崩壊防止施設の整備を行うものであります。
本県におきまして、土砂災害危険箇所のうち急傾斜地崩壊対策事業で整備を要する箇所は二千七百七カ所で、整備率は三八%となっております。
来年度においては、国の、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策等を踏まえ、土砂災害から避難所を保全する施設の整備等に取り組むこととしており、当初予算において、前年度に対し約六億円を増額し、整備を進めることとしております。
続きまして、要配慮者利用施設を保全する急傾斜施設の整備状況についてであります。
本県における急傾斜地崩壊防止施設の整備に当たっては、危険性・緊急性及び地元要望等を総合的に判断し、要配慮者利用施設等を保全する箇所の重点整備を図ることとしております。
急傾斜地崩壊対策事業で整備を要する箇所のうち、要配慮者利用施設に土砂災害の影響が及ぶおそれがある箇所は、平成二十九年度末時点で二百二十二カ所あり、整備率は五〇%と、本県全体の整備率三八%に比べ、一二ポイント高くなっているところであります。
今後とも、地元や関係市町村と調整、協力しながら、要配慮者利用施設に係る急傾斜地崩壊防止施設の整備を推進してまいります。
続きまして、土砂災害に係る県としてのソフト対策の取り組みについてであります。
県では、土砂災害のおそれのある区域について、危険の周知、警戒避難体制の整備等のソフト対策の推進を図るため、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等の指定に必要な基礎調査を行っており、県民への周知を図るため、ホームページなどで調査結果を速やかに公表しているところであります。
また、大雨による土砂災害発生の危険度が高まったときに、県と気象台が共同で土砂災害警戒情報を発表するとともに、補足する情報として、県の河川砂防情報システムで土砂災害の危険度に関する情報提供を行っております。
さらに、庁内を初め、出先機関や市町村において、福祉部局や教育部局等で構成する連絡会を設置し、要配慮者利用施設等を対象とした警戒避難体制の充実・強化に取り組んでいるところです。
今後とも、ハード・ソフト両面から、土砂災害による被害の防止・軽減を図ってまいります。
15 ◯教育長(東條広光君)鴨池公園についてであります。
鴨池公園については、議員から御紹介がありましたように、昭和四十三年に、当時の県知事と鹿児島市長との間において、市は県に対し、与次郎ヶ浜埋立地のうち、約十九万五千平方メートルを国体関連運動施設の敷地として無償貸与する、県は敷地内に陸上競技場、野球場、テニスコート及び補助競技場を建設する、これらの施設の維持管理は県が行う旨が取り決められ、その後、施設の建設が行われて、現在に至っているところであります。
この間、同公園は、県民の体育・スポーツ等の振興を図るための施設として、鹿児島市民を含め、広く利用されてきているものと認識いたしております。
[藤崎 剛君登壇]
16 ◯藤崎 剛君 それぞれ御答弁いただきました。
グランドデザインに関しましては、
パブリックコメントも含めさまざまな御意見を踏まえて決めさせていただいたということでありましたけれども、案の時点から一言一句言葉が変わらず、情報提供に努めるという部分が新しく加わっただけで、中身に関しては、全部含まれていますという言葉で収れんされていまして、その辺が、
パブリックコメントに意見を出した方々はもやもや感があるんじゃないかなと思います。
続いて、次の質問に入っていきたいと思います。
世界文化遺産と外国人観光客についてお尋ねします。
明治日本の産業革命遺産の県内構成資産における外国人観光客への対応についてお伺いいたします。
平成二十七年七月に世界文化遺産に登録された明治日本の産業革命遺産は、世界遺産登録から丸三年以上が経過しました。
この明治日本の産業革命遺産は、本県の構成資産である旧集成館、寺山炭窯跡、関吉の疎水溝を初め、八県十一市にまたがる二十三の構成資産で世界遺産としての価値を有するものであり、登録に当たっては、本県が中心となって十年にわたって取り組み、推薦書と管理保全計画で千百ページを超える書類をつくり上げて、登録に至ったものであります。
世界遺産は、世界に認められた価値を未来に継承していくことが必要ですが、その価値を人々に認識していただかなければ、遺産の保全への理解は得られないかと思います。また、その価値を広く人々に知っていただくことで、国内外での鹿児島の認知度が上がり、それによって地元住民が地域に誇りを持ち、地域を愛することにもつながろうかと思います。
中でも県内の構成資産は、幕末に西洋列強の脅威をいち早く感じた薩摩藩が、島津斉彬公のもとでいち早く近代化に着手し、鉄製大砲の製造のための反射炉や溶鉱炉の建設、蒸気船の製造といった防備の強化から、薩摩切子、紡績、教育、出版といった国を豊かにするための民生事業まで幅広い産業の振興に取り組み、後に集成館が日本最初の工業地帯となるまで発展した重要な歴史を示す遺産であり、本県が世界に誇り得るものと思っています。
世界の人々にとっても価値のあるこれらの遺産群の価値を認識していただくためには、何といっても国内外の多くの方に訪ねていただき、理解していただくことが重要です。
特に、外国人観光客への案内については、団体客は通訳ガイドが同行することが多いものの、増加している個人客に外国語で説明できるガイドは限られていると聞いております。世界遺産に来訪された外国人観光客に十分に対応できない状況は、大変もったいないことではないかと思います。
先日の答弁によりますと、本県の
外国人延べ宿泊者数は、近年の国際定期路線やチャーター便の就航などにより着実に伸び、平成三十年は、過去最高を記録した平成二十九年の約七十四万四千人をさらに上回るペースで推移しており、また、平成三十年のクルーズ船観光客数も県全体で約三十万人、うち鹿児島港で二十七万人となり、ともに過去最高を記録しているとのことでありました。
このような状況を踏まえ、お尋ねします。
まず、世界遺産登録以降、明治日本の産業革命遺産の県内構成資産への来訪者の状況、中でも外国人観光客の状況はどうなっているのか、お示しください。
次に、外国人観光客に対する通訳ガイド等の
受け入れ体制はどうなっているのか、お示しください。
最後に、来年度予算の中で、県内構成資産について英語で専門的に案内できるガイドの認定・登録を行うとされていますが、具体的にどのような制度なのか、また、この制度によりどのような効果を期待しているのか、お示しください。
最後に、県道坂元伊敷線についてお尋ねします。
国道三号の下伊敷交差点から始まり、県道鹿児島蒲生線までの間を結ぶ県道坂元伊敷線は、別名県道二百八号とも言われ、全長三・四キロメートル、鹿児島市内の北部の大型団地から国道三号へアクセスする重要な路線であります。もともとこの道路については市道であったものが、昭和三十三年に県道に昇格したものであります。伊敷ニュータウンや玉里団地、薩摩団地など、山の上に造成された団地と団地の谷合いを通る道路で、この県道に沿って二級河川の山崎川が流れております。
この県道は、全長三・四キロメートルのうち、一番幅の広いところで十八メートル、狭いところで四・七メートルしかなく、その幅に大きな差がある道路であります。国道三号との結節点である下伊敷交差点から坂元方面に向かって三百二十メートルの部分については、平成六年に国土交通省と鹿児島県が交差点改良事業に着手し、拡幅部分に当たる地権者四十五名の協力により、土地を買収して事業を実施することができました。国道三号に向かって出口の道幅が、従来の六・八メートルから十八メートルへ大幅に拡幅され、利便性・安全性が向上しました。
県道坂元伊敷線については、鹿児島市交通局の市営バスが走っております。市営バスの路線を調べてみましたが、バスが離合できない区間が一番長いのはこの県道の坂元伊敷線であるとのことでありました。安全確保のために、離合するときにどのようにしていますかと聞きましたところ、道路幅に応じて安全速度で通行し、大型の対向車を認識したら双方譲り合っていますとのことでした。
県道坂元伊敷線の拡幅については、これまで地元から何度も陳情が出されているとのことであります。近年、道路の沿線の個人住宅にて空き地が散見され、また大手コンビニチェーンが一帯を大規模に再開発し、開店するなど、これまで全く動かなかった沿道沿いの土地利用に変化が見られます。
このような現状についてどのように認識され、その整備についてどのように考えているのか、お示しください。
17 ◯PR・
観光戦略部長(川野敏彦君)明治日本の産業革命遺産に関するお尋ねのうち、まず、世界遺産登録後の観光動向についてでございます。
明治日本の産業革命遺産の県内構成資産への来訪者数は、有料施設である旧集成館地区については設置者が把握しておりますものの、寺山炭窯跡や関吉の疎水溝については、冬場を除く土・日曜日と祝日に駐在しております
ボランティアガイドがカウントしているところであります。
これらの数字によりますと、遺産への来訪者数は、平成二十七年の世界遺産登録を機に増加しており、特に平成三十年は、
大河ドラマ「西郷どん」の放映や明治維新百五十周年などで注目を浴びたことなどから、前年に比べ、全体では五割程度の大幅な伸びを示しております。
また、外国人観光客数については、正確な数字は算出されておりませんが、旧集成館地区にある仙巌園によりますと、年々割合が増加してきており、平成三十年は全体の三割近くを占めているとのことであります。
次に、外国人観光客の
受け入れ体制についてでございます。
外国人観光客の増加に対応するため、県では、鹿児島市や旧集成館を所有する企業などと連携して、多言語によるパンフレットや案内板などを作成・設置するとともに、平成二十九年度から今年度にかけて、当時の様子をコンピューターグラフィックスで再現した多言語対応のスマートフォンアプリを開発するなどの取り組みを行ってきております。
外国人観光客の通訳ガイドについては、団体客にはツアーを主催する旅行会社等が手配する添乗ガイドが対応する場合が多いものの、増加しております個人観光客に対しては、遺産所有者が配置している外国語で案内できるスタッフだけでは、十分対応できていない状況であると伺っております。
次に、英語で専門的に案内できるガイドの認定・登録についてでございます。
来年度予算案に計上しております、明治日本の産業革命遺産等次世代への継承事業では、先ほど述べました通訳ガイドの現状等を踏まえまして、英語で専門的に案内できるガイドの認定・登録に取り組むこととしております。
現在、国に通訳案内士法で定める地域通訳案内士の育成計画を申請しているところであり、同意を得られ次第、受講生の募集に向けて、制度の周知・PRを始めたいと考えております。
県としては、この地域通訳案内士を積極的に周知・広報し、活用を促すことにより、外国人観光客に世界遺産としての価値についての理解を深めていただけるものと期待しております。
18 ◯土木部長(渡邊 茂君)県道坂元伊敷線の整備についてであります。
県道坂元伊敷線は、周辺に住宅団地が立地しており、交通混雑が生じていることなどから、これまで、特に渋滞が著しい国道三号との結節点である下伊敷交差点の改良を行い、渋滞緩和に努めてきたところであります。
残る未整備区間につきましては、土地利用状況に一部変化が見られるものの、依然として沿線には人家が密集し、多くの家屋移転が必要となること、地形が厳しく多額の整備費用を要することなどから、県の厳しい財政状況を踏まえますと多くの課題があると考えております。
19 ◯藤崎 剛君 地域通訳案内士について、一点だけ確認させていただきたいと思います。
新年度、制度が始まって受講生の募集等をするということですが、最速で地域通訳案内士が育成されたとして、デビューを飾るのはいつになるでしょうか。
20 ◯PR・
観光戦略部長(川野敏彦君)現在、国に申請書を出しておりますので、その同意の時期がいつになるのかによります。
同意を得られた後、制度の周知を図り、受講生を募集して、研修を受講していただくというスケジュールで考えておりますので、明確なことは申し上げられないんですけれども、新年度中には何とか実際に仕事についていただけるような形で進めたいと考えております。
[藤崎 剛君登壇]
21 ◯藤崎 剛君 それぞれ御答弁いただきました。
鹿児島中央駅西口、それから鹿児島港本港区、いずれも県民・市民が注目している案件でございます。引き続き、慎重かつ丁寧な作業をお願い申し上げます。
さて、
大河ドラマ「西郷どん」の最終盤の主役は、西郷菊次郎でありました。この西郷菊次郎は、伝記になっておりますが、年表でも空白になっていて、伝記でもわかっていない明治二十四年十二月の外務省退職から明治二十八年四月に陸軍大本営付になるまで、鹿児島にいたことはわかっているんですが、何をしていたのかわかっていませんでした。
平日、夜九時まで県立図書館があいていますので時々行っているんですが、発見がございました。大正七年に発行された本の中で、西郷菊次郎が衆議院選挙の応援に駆り出され、民党が強かった鹿児島県の政治地図を、吏党に塗りかえることをしていました。明治二十五年の第二回衆議院選挙では主に応援弁士をしていましたが、明治二十七年の第三回衆議院選挙では、菊次郎本人が鹿児島五区から出馬して、残念ながら落選しておられます。落選をきっかけに役人の世界にまた戻ったようでございます。
要は、西郷菊次郎は、政治的な決着のつけ方として、十七歳のときに武力による決着の西南戦争と、三十三歳のときに言論による決着である選挙を両方経験した生き証人ではなかったかなと思います。また研究が進むことを期待しております。
また、島津義弘公没後四百年の御紹介もございました。義弘は御正室と仲がよかったことで知られていますが、戦場からやりとりした手紙も残っています。
実はこの御正室の生まれ在所は、現在の鹿児島市伊敷地区の中福良であります。義弘は、二十代の青年時代に二年間だけ現在の鹿児島市内にいたことがあり、そのときに鷹狩りに来て、川で大根を洗っている娘さんを見初めて、正室にしました。園田清左衛門という武将の娘であります。その園田家は、義弘の父、貴久の少年時代の命を救った家でもあります。
鹿児島は歴史が満載であります。まだまだ掘り起こすべき事象もあろうかと思います。
義弘公の人生を変えた土地を地元として活動することを重く受けとめ、来る合戦に誠心誠意臨んでまいりたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
22 ◯議長(柴立鉄彦君)次は、鶴丸明人君に発言を許可いたします。
[鶴丸明人君登壇](拍手)
23 ◯鶴丸明人君 皆さん、改めましておはようございます。
二月二十七日の一般質問で大先輩の田之上議員が、発展する霧島市の事業や歴史・文化を紹介されました。知事は答弁で、霧島市の限りない発展の可能性に触れていただきました。私は、この霧島市・姶良郡区選出の鶴丸明人です。
ただいま、藤崎議員が若い感性で切り口の鋭い緻密な質問をされました。余韻を残す質問も一部ありました。私の質問が冷めたものにならないよう工夫しながら、本日の質問をさせていただきます。
知事は、都合が悪くなると首を振ったり、かしげたりする姿がよく見受けられますが、本日はどうか穏やかで、にこやかな答弁を期待しながら、質問に入ります。
加納久宜知事没後百年慰霊式典が去る二月十六日、旧県庁跡地の県政記念公園に建立されております加納知事頌徳碑前で行われました。
私は、勧業知事、教育知事として知られた加納元知事の没後百年の慰霊式典を実施し、鹿児島の先人たちの志や行動力など明治の精神を学び、次世代に継承すべきではないかと申し上げてまいりました。
五十年前、当時の金丸三郎知事が、奉賛会の会長として没後五十年祭を催行されています。
五十年祭が催行されたのは昭和四十四年の二月二十六日、私が県庁で仕事をするようになって二年目のときでした。そのとき出版された「鹿児島の勧業知事 加納久宜小伝」というタイトルの冊子をいただき、読ませていただきました。私財まで投じて産業教育の振興に尽くされた、すぐれた知事が鹿児島におられたという印象が強く残っておりましたので、没後百年を迎えるに当たり、ただいま申し上げた趣旨の発言をさせていただいたところでありました。
実現に英断いただいた三反園知事及び、実現に御尽力いただいた柴立議長並びに関係職員の方々に敬意と感謝を申し上げます。
五十年前の祭典のときは、柴立議長のお父様が当時の議長として参加しておられます。御縁の不思議さを見た思いでもありました。
ところで、今回の慰霊式典において加納家の御子孫の方から、加納知事について、不偏不党、清廉潔白、課題は現場にあり民の声を聞くという信条で県政に取り組まれた先祖ということが家伝に残されているというお話を伺いました。改めて深い敬意を持たせていただきました。
三反園知事は今回、実行委員会の会長としてこの慰霊式典の開催に取り組まれたところであります。
そこでお伺いいたします。
知事は、この式典を終えて、加納知事に対してどのような所感をお持ちになったのか、また、次世代にこの偉業をどのような形で継承しようとお考えになっているのか、お示しいただきたい。
次は、鹿児島空港の整備についてであります。
鹿児島空港は、昭和四十七年の鹿児島国体開催の年に現在地─霧島市溝辺町─に開港いたしました。
私はこれまで、二〇二〇年の二巡目の鹿児島国体を迎えるタイミングを節目として、鹿児島空港の新時代活性化に取り組むべきであると申し上げてまいりました。
二〇四〇年、鹿児島県の人口が約四十万人減少するという予測の中、アジアの人口は拡大を続け、世界のGDPは、アジア地域が世界の半分以上を占めるようになると予測されています。このような中、アジア地域の成長を取り込み、アジアからのインバウンド、アジアへの農林水産物の輸出に取り組むことが、鹿児島の活性化が維持されるための最低条件であると思っております。このかぎは鹿児島空港にありと申し上げてまいりました。そのために、鹿児島空港の民間への運営の委託、九州におけるハブ空港化、運用時間の二十四時間化など一定の方向を示すべきことを、この議場で再三申し上げてまいりました。
県においては、平成三十一年度予算案に、今年度の鹿児島空港将来ビジョン検討調査事業に引き続き、新たに、鹿児島空港の将来ビジョン策定に伴う事業費を計上されたところであり、大いに評価させていただくところであります。
そこでお伺いいたします。
第一点目は、鹿児島空港のあり方検討委員会で検討されている内容について、その基本となる将来の航空需要予測も含めてお示しいただきたい。
二点目は、鹿児島空港将来ビジョン策定に係る委員のメンバー及び今後のスケジュールについてお伺いいたします。
次は、かごしま黒豚の維持・拡大及び安定的な供給対策についてであります。
私は、ブランドとは、日々に積み重ねた信用の対価であり、その取り組みが認知されることで信頼を得て愛着を持たれ、期待を裏切らないことであると考えております。
かごしま黒豚の肉につきましては、国内産の白豚や輸入豚に比べて、甘みやうまみを感じさせるアミノ酸量が圧倒的に多く、おいしさを科学的に示す研究成果が公表されています。また、最近、高齢者の体力向上や認知症の予防・改善など、味だけでなく健康機能性の面でもすぐれているということを示す研究成果も公表されたところであります。
これらのことは、全国で銘柄豚がふえ、産地間競争が激化する中、また、今後大幅に増加する外国人客の声を通しても、本県かごしま黒豚の優位性をさらに高めるための追い風になると考えています。
私は、このかごしま黒豚の維持・拡大及び安定的な供給を図るためには、今から三十年前に設立された鹿児島県黒豚生産者協議会が果たしてきた役割と今後の取り組みがさらに重要になってくるのではないかと考えております。
そこで、次の三点についてお伺いいたします。
第一点目は、鹿児島県黒豚生産者協議会の会員の要件及び、県内の黒豚農家における同協議会会員の占める割合についてであります。
第二点目は、これまでの系統豚の造成と今後の第五系統豚造成に向けた取り組みについてであります。
第三点目は、かごしま黒豚が地理的表示保護制度いわゆるGI登録されれば、さらにブランドの確立とイメージアップが図られると考えます。GI登録に向けた対応についてお伺いいたします。
以上で、一回目の質問を終わります。
[知事三反園 訓君登壇]
24 ◯知事(三反園 訓君)加納久宜知事に対する所感についてであります。
加納知事は、明治二十七年から三十三年までの六年七カ月にわたり本県知事を務められ、西南戦争により疲弊した明治の鹿児島において、産業基盤の復興・近代化や人材育成等に尽力されるなど、勧業知事、教育知事として知られております。
特に、県政の最重点施策を農業に置き、農業基盤の整備、農業組織の強化等により、県産米の品質や生産性を飛躍的に向上させるなど、本県の基幹産業である農業の基礎を築かれ、また、農林水産業を中心にさまざまな分野においてみずからの私財を投じるなど、公私の両面から鹿児島の発展に寄与されました。
また、ひたすらに現場主義を貫かれた方でありまして、あらゆる場所を視察し、県民の声に耳を傾け、できるものから即座に実行に移されるというその姿勢は、私自身、知事就任以来、県民が主役の県政を実現したいとの思いから一貫して心がけていることでもあり、県政を預かる知事の姿勢として、尊敬しております。
去る二月十六日には、加納知事の御親族や加納知事にゆかりの団体の関係者など、およそ百四十名の御参列のもと、加納久宜知事没後百年慰霊式典を開催したところでありまして、県民を初めさまざまな方から、加納知事というすばらしい方がいたことを知った、加納知事の頌徳碑を改めて見学したといった声も寄せられております。
加納知事没後百年を契機として、その功績や人柄、行動力などを改めて見詰め直すことは、今を生きる我々にとっても大きな示唆を得られるものと考えておりまして、鹿児島の先人の志や行動力など明治の精神に学び、次の世代に継承してまいりたいと考えております。
25
◯企画部長(古薗宏明君)加納知事の功績等の次世代への継承についてであります。
加納知事の功績等につきましては、加納知事没後百年慰霊式典の開催はもとより、加納知事についてまとめたリーフレットを作成し、かごしま県民交流センターや黎明館等で配布しておりますほか、県ホームページを活用した情報発信にも取り組んでいるところであります。
また、昭和十七年には、故加納知事功績顕彰会により、各種団体からの寄附金等をもとに、現在のかごしま県民交流センター内に頌徳碑が建立され、県におきましても、平成十五年、この頌徳碑付近に、加納知事の功績等をわかりやすくまとめた副碑を整備したところであります。
今後とも、この頌徳碑等も活用しながら、次世代を担う子供たちを初め、県民への周知・啓発、理解の深化に努めてまいりたいと考えております。
鹿児島空港の整備についての御質問のうち、鹿児島空港将来ビジョンの検討内容についてであります。
鹿児島空港のあり方検討委員会につきましては、八月に第一回検討委員会を開催し、鹿児島空港の現状と課題に係る意見交換を行いました。
十一月に開催した第二回検討委員会におきましては、同空港の将来ビジョンの策定に向けて、南九州の拠点空港や、魅力ある空港ターミナルビルなど七つのテーマと、労働力人口の減少による空港運用への影響や、利用者利便性と持続可能な二次交通のあり方など十八の論点について事務局から説明するとともに、国内人口の減少や訪日観光客の増加等を見込み、二〇一七年度時点で約五百七十万人の旅客数が、二〇三〇年度には約六百三十万人に達するという航空需要予測についても説明を行いました。
これに対して委員からは、「地域航空を発展させるため、パイロット養成や機体整備の拠点機能を強化すべきである」、「今回の国際線の需要予測については控え目で、上方修正すべきである」など、さまざまな意見をいただきました。
これまでの委員の意見を踏まえ、今月中に開催予定の第三回検討委員会に向けて、現在、航空会社や空港ビル会社等の実務者で構成されるワーキンググループにおきまして、航空需要予測の精査や対応方策の方向性に係る協議・検討を行っているところであります。
鹿児島空港将来ビジョン検討委員会の構成等についてであります。
鹿児島空港将来ビジョン検討委員会につきましては、将来ビジョンの策定に当たり、必要な助言をいただくため、施設を所有・管理する国や空港ビル会社等の関係者を初め、航空産業について知見を有する専門家や経済団体の代表者等を構成員として設置いたしました。
先ほど御答弁申し上げましたとおり、今年度は三回の開催を予定しているところであり、来年度におきましても、引き続き、二回程度開催することといたしております。
今後、検討委員会における委員の意見も踏まえ、県議会を初め、関係者の皆様方の御意見も十分お聞きしながら、鹿児島空港の目指すべき将来像やその実現に向けて必要な施策等について検討を行い、年内を目途に同空港の将来ビジョンを策定することといたしております。
26 ◯農政部長(本田勝規君)鹿児島県黒豚生産者協議会の現状についてでございます。
鹿児島県黒豚生産者協議会は、安全でおいしい豚肉生産の促進と、かごしま黒豚の銘柄を確立することを目的に、県内の黒豚生産者に加え、飼料会社や食肉会社、
関係団体等を会員として、平成二年に設立されたところであります。
同協議会の会員要件は、肥育後期にカンショを一〇から二〇%添加した飼料を六十日以上給与すること、出荷日齢はおおむね二百三十から二百七十日齢であること、血統の明らかな種豚を飼養していることなどとなっております。
県内の黒豚飼養農家数は、平成三十年二月現在で二百二十二戸となっており、そのうち、同協議会の会員は百戸で、全体の四五%を占めております。
次に、かごしま黒豚系統豚の造成と今後の第五系統豚造成に向けた取り組みについてでございます。
県においては、かごしま黒豚の安定した品質と斉一性を持った種豚の供給を図るため、これまで、昭和五十八年にサツマを造成して以来、ニューサツマ、サツマ二〇〇一、クロサツマ二〇一五の四つの系統豚を造成してきており、味のよさで高い評価を得ております。
このような中、第一系統豚のサツマは、造成後三十二年が経過し、血縁関係の高まりによる発育不良等が懸念されたことから、平成二十七年に廃止されたところであります。第二系統豚ニューサツマについても、造成後二十七年が経過し、同様の懸念があることから、県畜産試験場において、約十年後の完成を目指して、新たな第五系統豚の造成に着手することとしており、来年度は、そのもとになる種豚の導入等の経費を当初予算に計上しているところであります。
県といたしましては、かごしま黒豚のブランドの維持・向上を図るため、生産者や消費者のニーズを踏まえ、産肉能力等にすぐれた第五系統豚の造成に取り組んでまいります。
次に、かごしま黒豚のGI登録に向けた対応についてでございます。
地理的表示保護制度、いわゆるGI制度につきましては、地域で培われた特別な生産方法や気候、風土などの生産地の特性により、高い品質と評価を得ている産品の名称を知的財産として保護する制度であります。
かごしま黒豚のGI登録に向けては、県黒豚生産者協議会において、国の助言や指導を受けながら、品質や生産方法の基準、その確認体制等について検討を進めているところであります。
県といたしましては、このGI制度の活用を促進することにより、かごしま黒豚のさらなる差別化が図られ、ブランド力の向上に資するものと考えておりますが、GI登録に当たっては、国から、県黒豚生産者協議会への加入率の向上や類似名称の整理などの課題を指摘されているところであり、県黒豚生産者協議会や関係機関・団体と一体となって、これらの課題解決に向けて協議を行っているところでございます。
[鶴丸明人君登壇]
27 ◯鶴丸明人君 それぞれ御答弁いただきました。
知事が、現場主義を大事にされた加納知事に学ぶことは多かったということをお話になりました。どうか有言実行で今後の県政運営にぜひ生かしていただきたいと思います。
鹿児島空港につきましては、将来展望を踏まえて、活発な議論が交わされていることがよく理解できました。鹿児島は、離島の空港を有するという特性があります。今後のビジョン策定に当たりましては、鹿児島空港の民営化についてもぜひ議論を深めていただきたいということを御要望しておきます。
かごしま黒豚につきましては、それぞれ前向きな答弁をいただきました。
経済性の低い豚として当時見向きもされなかった黒豚の改良を決断された金丸元知事の英断、逆風の中、改良に取り組んでこられた歴代関係職員の並々ならぬ熱意と努力、また、生産者協議会の会員の皆様方の尽力により、今日を迎えていると思います。関係の方々に心から敬意を表します。
今後とも、黒豚生産に携わる皆様が会員として入会され、初心忘れずの気持ちで、GI登録を含め、生産者協議会の目的に則したさらなる活動がなされることを要望いたしておきます。
引き続き質問に入ります。
政治姿勢についてであります。
本質問は、これまでの議会で質問、答弁されたことも踏まえ、新たな県立体育館、本港区エリアまちづくりについて、これでよいのか、取り組みはといった視点でお尋ねいたします。
知事とはこれまでこの議場で、リーダーとしての資質について議論を交わしてまいりました。
知事は平成二十九年三月議会で、リーダーとしての資質について、「積極的に現場に赴いて、現場の声を聞くとともに、県議会の皆様や県民の方々、県職員などさまざまな意見を伺うことが不可欠であると考えております。また、さまざまな意見を踏まえた上で最終的な判断を示すこと、いわゆる決断力、その上で、判断したことについて信念を持って推進していくこと、信念と行動力が、リーダーにとって必要なものではないかと考えている」と答弁されています。二年前のことであります。当時私は、すばらしい見識をお持ちの知事、さすがマスコミに携わった人の見解だと思ってお聞きいたしました。
このことを踏まえ、まず、次の三点について伺います。明快なお答えをいただきたい。
一点目は、鹿児島港本港区エリアまちづくりのプロポーザルや民間提案公募において、スポーツ施設を除いた理由。
二点目は、世界的な
サッカースタジアムは、年間三百六十五日、県内外の幅広い観光客と県民でにぎわい、国際都市にふさわしい、来て見て感動する観光拠点を形成する施設には該当しないのか。
三点目は、知事のこれまでの発言を踏まえますと、市の協議会が
サッカースタジアムの候補地として挙げた三つの地点のうち、二つの地点が本港区エリアですので、物理的に残りの一地点、現在民間が所有するバス車庫しか考えられないということになります。このバス車庫が知事の考えということになりますが、そのように理解してよいかということであります。頭を振らないでいてくださいよ。よく最後まで聞いてくださいよ。
知事の行動力─調整力─に関連して伺います。
先ほど質問させていただいた鹿児島空港及び黒豚については、いずれも金丸三郎鹿児島県元知事の先見性と決断力、とりわけ行動力によるものであると承知しているところであります。
鹿児島空港の整備に当たっては、当時その候補地が南薩地域、鹿屋地域、鹿児島地域、そして現溝辺地域であった中、最も調整が困難であろうと予測された現在地に決断し、その後、県内屈指の農業地であった同地の住民の方々の説得に日夜みずから足を運び、整備着手にこぎつけたと聞いています。
また、黒豚について、当時白豚に比べ経済性が低い豚として見向きもされなかった黒豚の改良を英断されたのは、金丸元知事でありました。豚の黒白問題として知事と生産者との間で激しく、また厳しい論争が展開されたことが、本県の黒豚生産史の中に記されております。これも、決断したことはみずから動いて調整してまとめるという行動力を示すものだと言えます。
これらに比べますと、三反園知事の、新たな
総合体育館や鹿児島港本港区エリアまちづくりについての鹿児島市等との調整は、代表質問や一般質問を伺いながら、これでよいのかと思われてなりません。知事が、「毎月鹿児島市長と会っていろいろな話をしている」と言われておりますが、結果がこうです。何を話してこられたのか疑問を持たざるを得ません。
我が自民党の代表質問でも、異例の要望がなされています。すなわち、これらについては、「今後、事業導入に向けてのさまざまな課題について、鹿児島市及び関係者との具体的な協議を真っ正面から、実質的かつ集中的に進めていくこと」という要請がなされました。これはとりもなおさず、知事の汗かきの努力が足りていないということであると私は思わせていただいております。
先ほど私は、決断と実行力で見事に事業を成就された先輩知事の二つの例も申し上げました。
新たな
総合体育館の整備と鹿児島港本港区エリアまちづくりは、知事のマニフェストであります。他の何よりも知事が行動されることが求められるものであると思います。知事の信念と行動力が県民に問われる課題だと思います。
そこで伺います。
知事がこの二つの案件を、残り一年数カ月の知事の任期中にどう実現していこうとされているのか、どう実現していきたいのか、強い決意を改めて明快にお聞かせいただきたいと思います。
[知事三反園 訓君登壇]
28 ◯知事(三反園 訓君)
総合体育館の整備と鹿児島港本港区エリアまちづくりについてであります。
この二つの事業は、知事就任後初めての平成二十九年度当初予算において、新しい力強い鹿児島の船出に向けた重点施策として位置づけており、これまで全力で取り組んできております。
特に、この二つの事業と
サッカースタジアムの整備につきましては、県と鹿児島市が連携・協力していく必要がある課題の中でも、喫緊の課題であり、去る一月二十八日に、幹部職員も交え、県・
市意見交換会を開催し、それぞれについて合意事項を取りまとめたところであります。
私としては、鹿児島市との合意をもとに、同市と緊密な連携を図るとともに、県議会の皆様の御意見に十分に耳を傾けながら、実現に向けて全力で取り組んでまいります。
29 ◯土木部長(渡邊 茂君)鹿児島港本港区エリアにおけるスポーツ施設の可能性についてであります。
鹿児島港本港区エリアは、錦江湾や桜島の景観を望む絶好の場所であり、このすばらしい景観を最大限に生かすことが、魅力的な港、感動を与える観光地の形成につながるものと考えております。
このため、県といたしましては、昨年度、鹿児島港本港区エリアのグランドデザインの調査・検討を行うに当たって、
サッカースタジアムは検討対象としなかったところであります。
続きまして、鹿児島港本港区エリアまちづくりと
サッカースタジアムについてであります。
鹿児島港本港区エリアのまちづくりにつきましては、民間活力の導入を基本に、年間三百六十五日、国内外の幅広い観光客や県民でにぎわい、国際的な観光都市にふさわしい、来て見て感動する観光拠点の形成を図ることを開発のコンセプトとしております。
鹿児島港本港区エリアは、錦江湾や桜島の景観を望む絶好の場所であり、このすばらしい景観を最大限に生かすことが、魅力的な港、感動を与える観光地の形成につながるものであると考えているところであります。
そのためには、例えば錦江湾や桜島を眺めながらお茶や食事ができたり、若い人たちが遊べるアミューズメント的な場所やホテルなどを含めた総合的な観光スポットにできればよいのではないかと考えており、ドルフィンポート敷地に
サッカースタジアムは考えていないところであります。
住吉町十五番街区につきましても、国際的な観光都市にふさわしい、来て見て感動する観光拠点の形成を図るための活用を検討してまいりたいと考えているところであり、その考えには変わりのないところであります。
30
◯企画部長(古薗宏明君)
サッカースタジアムの候補地についてであります。
サッカー等スタジアム整備検討協議会から鹿児島市長に提出された、サッカー等スタジアム立地に関する報告書におきましては、三つの候補地に絞った上で、各候補地での検討を進めるに当たっては、地権者の意向を踏まえた上で取り組みを進めていただきたい、また、地権者との協議が調わない場合は、改めて他の候補地を検討することとしており、今後、鹿児島市において候補地の絞り込みが行われるものと考えておりますが、一月二十八日に開催した県・
市意見交換会におきまして、サッカー等スタジアムの整備に当たっては、今後とも、整備場所の選定を含め、県と市が連携を図りながら、実現に向けて、
オール鹿児島での取り組みを進めていくこととすることで合意したところであり、この鹿児島市との合意をもとに、
オール鹿児島で取り組んでまいりたいと考えております。
31 ◯鶴丸明人君 自席から質問いたします。
まず一点目、知事、世界的な
サッカースタジアムは、来て見て感動する観光施設ではないんでしょうか。
32 ◯知事(三反園 訓君)これは、この議会でも、記者会見でも何度となく述べていることであります。
錦江湾があって桜島がある。こんなすばらしいところは、私も世界あちこち行ってきましたけれども、この鹿児島にしかないわけであります。この錦江湾と桜島を生かすまちづくりをすることによって、将来にわたりたくさんの方が訪れる観光スポットにして、将来の子供たちにバトンタッチしてあげる責任があるのではないかという思いで今、取り組んでいるわけであります。
33 ◯鶴丸明人君 お答えいただきましたが、最大の問題点、なぜスポーツ施設をこの地につくらないのか、サッカー施設は、来て見て感動する施設であるのかないのかということについて不明確なことに加えて、私はこう思うんですよ。どうしてこの地にスポーツ施設をつくらないのかと、以前の経緯もあって、ここを生かしたいと、それはそれでいいんです。
サッカースタジアムは余りここになじまないと、これも一つの考えでしょう。ただ、知事は、そう言われるだけで、来て見て感動する施設とは何ぞやと、どういう施設かということについては、食事したり、ホテルがあったり、総合的な観光スポットと、これだけではイメージが湧かないんですよ。ですから議論になる。
そうじゃなくて、例えば、国内ではどこに見られるような、世界でいえばどこにあるようなと、こういった例示を含めて、知事は語ったことはないじゃないですか。私どもに伝わってきておりません。
だから、今申し上げましたように、知事が、鹿児島市とだけじゃなくて在外の人たちともしっかりとそのことを含めて明確に語る。こういうものを私はイメージしておりますと、そこを明確にしていないのが私は問題の大きなポイントだと思います。きのう宝来議員も話をされましたね、知事。
じゃ、知事がおっしゃるイメージのものはどこを想定しているのか、言っておられることで結構です、教えてください。
34 ◯知事(三反園 訓君)順序立てて申しますと、
サッカースタジアムに関しましては、市の協議会が候補地を三つに絞ったわけですよ。三つに絞って、それを鹿児島市に提言として報告書を出したわけですね。それを鹿児島市がどうしようかと今、検討している最中であります。だからこそ、二十八日に鹿児島市との間で意見交換会を開いて、
オール鹿児島で
サッカースタジアムをつくるべくみんなで検討しましょうねということで合意したわけでありますよね。そこを御理解ください。
本港区エリアのまちづくりに関しては、私のほうから鹿児島市の幹部にも、森市長に対しましても経緯を説明しております。この本港区エリアに関しましては、以前からずっと、桜島、錦江湾を生かした観光スポットにしていこうじゃないかということで取り組んでいると御説明しております。
あの場所に関しては、
サッカースタジアムができることによって桜島が見えなくなるのではないかという議論もあるわけですよ。さまざまな議論があるわけです。そのあたりも踏まえながら、私としては、食事ができて、ショッピングができて、ホテル機能があって、アミューズメントがあって、そして夜はライトアップして県民の方々が憩いの場として歩けたり。インバウンドの方々から、鹿児島市はなかなか夜歩くところがありませんね、という声もたくさん聞かれるわけですよ。だから、夜、ライトアップして歩けるような観光スポットにしたいということであります。
そういう場所は、シドニーもありますし、サンフランシスコもありますし、サンタモニカもありますし、ナポリもありますし、そしてシンガポールもそうですよね、必ず観光スポットというのは一カ所あるわけです。それがあることによってリピーターとして来ていただけるわけですから、そういうリピーターが、鹿児島はよかったなと、もう一回行ってみようと思うような観光スポットにして、子供たちにバトンタッチしてあげたい。そういう思いでいっぱいであります。
35 ◯議長(柴立鉄彦君)鶴丸明人君。
同一議題につきましては、三回を超えて質問できませんので、次の質問にお願いいたします。
36 ◯鶴丸明人君 知事の今後の取り組みについてはまだ明確な答えが来ておりませんので、そのことについてお尋ねいたします。
知事がマニフェストで掲げた体育館、本港区エリアまちづくりについての取り組みは、今回の施政方針を聞いても、また答弁を伺っても、少しトーンがダウンしたのではないかと思えてなりません。
きのう、宝来議員が質問いたしましたが、そのときの、公募が不調に終わったときはどうされるんですかという質問に対して、私が知事だったら怒りますね。今まさにこういうことをしている段階ではございませんかと言われるのかと思っていましたが、どうもそのこともぴんとこない状況でございました。答えておられませんので。
それから、ドルフィンポート施設撤去後、国体を踏まえた駐車場の活用について、かいま見える答弁もあったような気がいたします。
知事、何をいつまでにやりたいのかと私はお聞きしました。一年数カ月の任期中に、どこまで真剣にこのマニフェストの問題に取り組まれるのか、そのことは一切答弁の中で聞こえません。
再度お聞きします。知事、やり切ってもらわないと困るんですよ。どういう覚悟で取り組まれるんでしょうか、道筋を示してください。
37 ◯知事(三反園 訓君)全力で取り組んでまいります。
[鶴丸明人君登壇]
38 ◯鶴丸明人君 ただいま、「全力で取り組みます」という一言で最後は片づけられました。
知事の本日の答弁は、私にとりましてはまことに歯切れの悪い答弁にしか聞こえませんでした。特に、みずからが汗をかくという姿勢を感じることができませんでした。「全力で取り組んでまいります」という知事の言葉はむなしく聞こえました。誰のために、何のためにと思わざるを得ませんでした。知事の県政に、とりわけマニフェストに掲げた政策に取り組む姿勢については、今回の答弁をお聞きした限りでは、残念ながら、私はただいま申し上げた感想でした。皆さんはどうお思いになったでしょうか。
体育館及び本港区エリアのまちづくりについては、再生の取り組みについては、最終的には来年の知事選で県民の判断に委ねられるものだと思っております。これ以上申し上げません。今後の知事の取り組みを期待しながら、見守りたいと思います。
次からの三つの質問は、視点を変えまして、地域に関連する質問でございます。
ことしは、十二支でいえばいのしし年であります。いのしし年は、政治・経済・災害の三つに関して特徴があると言われています。火山帯の上に国土がある日本は、昔から地震や火山の噴火にたびたび見舞われてきましたが、なぜかこのいのしし年は地震が多く、いのしし年は災害に備える年と言われています。ざっと挙げますと、一七〇七年富士山宝永噴火、一九二三年関東大震災、一九九五年阪神・淡路大震災などがあります。
本県では、ちょうどこのいのしし年、一七七九年、二百四十年前に桜島の大噴火、いわゆる安永の大噴火が起きています。この噴火は、一四七一年の文明大噴火、一九一四年の大正大噴火とともに、桜島で最も大きな噴火の一つとされています。
このときの噴火では、桜島北側の錦江湾内での海底噴火により、燃島など八つの島が出現したと言われています。その後、四つの島は結合あるいは水没し、残る燃島は、沈みゆく島として知られながら、多いときには約二百五十人が居住し、学校等の施設もございましたが、二〇一三年─平成二十五年─にはとうとう無人の島になっています。この火山噴火に伴うそのときの現象は、地震、灰・石降り、海中が燃え溶岩流出、新島出現、津波襲うという状況で、湾奥でも高い津波が見られたという記録も残されています。
鹿児島湾奥は、鹿児島市から国道十号等が姶良市、霧島市を東西に走っております。昔は国道十号沿いが海岸線と言われていましたが、現在は、国道十号を越えて前面の海岸線に沿って住宅が密集して建てられています。大きな津波が発生すると、大災害が生じるのではないかと懸念しているところであります。
災害をできるだけ少なくするためには、防災対策や予兆対策が必要であります。湾奥には既に、大規模噴火発生の予兆を捉えるために、京都大学防災研究所が、姶良カルデラの外縁部分に地盤の上下動を観測するための観測機器を設置しているところであります。
しかしながら、防災には限りがありません。これで十分とは言えません。このため、私ども桜島火山活動対策議会協議会では、現在の観測機器とは別に、桜島へのマグマ供給源である姶良カルデラの湾内海底に、地盤の隆起を観測するための、イタリアで先行事例がある新たな観測機器設置の検討を国に対して昨年十月に要望したところであります。
これらを踏まえて、次の二点についてお伺いいたします。
一点目は、この要望に対するその後の国の状況等はどうなっているのか。
二点目は、海底噴火を想定した津波予測データの策定と湾奥関係市での活用状況についてであります。
次は、森林づくりについてであります。
昔から、森は海の恋人と呼ばれるように、山づくりと自然豊かな海は密接な関係があると言われております。また、地球温暖化防止、CO2対策として、森づくり、山づくりが世界的な課題として挙げられています。
県においては、新たな森林環境譲与税導入による事業への取り組みが始まってまいります。
このような中、本県のスギを中心とする人工林資源は利用期を迎え、木材需要の増加に伴って木材の生産活動が活発化し、伐採面積も年々増加しており、伐採跡地の再造林が大きな課題となっています。
人工林の伐採跡地については、傾斜が緩やかで生産力の高い森林は、再造林を行い、次の世代に引き継ぎ、また、人工林に不向きな森林は、広葉樹林等へ誘導していくことが必要ではないかと考えております。
再造林につきましては、森林経営計画の対象となっている森林は、計画的に再造林などの施業が行われることになりますが、それ以外の森林は森林所有者の意向に任されており、不在村化の進行や経営意欲の減退などから、再造林されない森林がふえるのではないかと懸念いたしているところであります。
また、再造林を推進するに当たりまして、重要になるのが苗木の確保であります。今後、森林の伐採が進み、再造林面積も増加することが予想される中、再造林に必要な苗木が不足するのではないかといった声も聞かれます。そのため、優良な苗木を安定的に生産・供給する体制づくりが急がれるのではないかと考えます。
そこで、次の二点について伺います。
森林経営計画に基づかない伐採箇所の再造林を進めるため、どのような取り組みを行うのか。
再造林に必要な苗木を安定的に生産・供給するため、どのような取り組みを行うのかということでございます。
次は、広域市町村連携構想についてであります。
四年前、国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計人口をもとに、日本創成会議が、人口減による自治体消滅の可能性を指摘いたしました。
国において、人口減少が進む中、地域の住民サービスを維持し、満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するかというテーマで総務省内に有識者研究会を設置し、平成三十年七月に新たな自治体行政の基本的方向性等を内容とした、自治体戦略二〇四〇構想研究会の報告書が公表されたところであります。
この中に、新たな広域連携として、複数の市町村でつくる圏域が、人口減少が進む地域の住民サービスを維持するための行政運営を行う構想が含まれております。これは、これまでの行政サービスの充実を図る現行の連携中枢都市圏あるいは定住自立圏とは異なるものであります。
私は、今後、我が国が経験したことのない人口減少社会を迎えること、また、外国人労働者を受け入れることによる多文化共生社会や、自治体を含む行政のデジタル化等が進展する中、圏域内で同一水準のサービスが維持できることや観光の振興、また都市計画や交通基盤の整備など、圏域単位でいろいろな事業を構築しやすくなるといったことから、この構想については一定の評価をしているところであります。
現在、この問題については、昨年七月に設置された第三十二次地方制度調査会に政府が諮問し、二年以内に具体案の答申を受け、必要な法整備を図る方針だと承知いたしているところであります。
先日、共同通信社が行ったアンケート調査結果も報道されていましたが、今後、それぞれの市町村でも議論が始まっていくものと考えております。
そこで、次の点についてお伺いいたします。
将来展望を踏まえた、圏域における行政運営等については、総務省の研究会の報告の後、地方制度調査会での議論に移っておりますが、同調査会での議論の状況と県の対応についてお示しいただきたい。
以上で、三回目の質問を終わります。
39 ◯危機管理局長(木場信人君)桜島火山爆発に対する取り組みのうち、まず、姶良カルデラ海底への観測機器の設置についてであります。
カルデラ噴火等を予測するための海底観測については、現在、その手法等が確立されておらず、また、多大な経費を要することから、日本においては実施されていないところであります。
このような中、国において平成三十一年度から、鹿児島湾奥の姶良カルデラを対象に、カルデラ内の海底で地殻変動等基礎的なデータを取得する常時観測手法を検討・確立するための調査研究事業が実施される予定と聞いております。この研究は、火山噴火に係る基礎研究につながる前段階の調査とされています。
県といたしましては、これまでも、火山防災に資するため、火山観測・研究体制の充実について、県開発促進協議会等を通じ国へ要望しているところですが、今後とも、より一層の充実・強化が図られるよう要望してまいります。
次に、湾奥の海底噴火を想定した津波予測データの策定と活用状況についてであります。
鹿児島湾奧の海底噴火を想定した津波予測については、県において、平成二十四から二十五年度にかけて調査を実施したところであります。
この調査では、桜島の安永噴火における海底噴火を参考として、火山活動に伴い海底が隆起するなどの条件により噴火が発生する噴火モデルを作成し、津波の高さや到達時間等の予測を行っております。
調査結果については、県のホームページ等で公表し、市町村にも提供しておりまして、津波避難計画や防災マップ等に活用されております。
県といたしましては、湾奥の関係市や専門家も構成員となっている火山防災協議会等において、海底噴火の条件、兆候等について情報を正しく共有し、津波からの迅速かつ確実な避難など、防災対策が実施できるよう努めてまいります。
40 ◯環境林務部長(藤本徳昭君)森林づくりについてお尋ねがありました。
まず、再造林の推進についてであります。
県におきましては、市町村や林業事業体等で構成する再造林推進連絡会を核として、森林所有者に対する再造林の重要性の啓発や、伐採者と造林者の連携による伐採から植栽までの一貫作業の取り組みを強化してきたところであります。
また、森林所有者の負担軽減を図る観点から、再造林に要する経費や苗木などの資材費等に対する助成も行ってきております。
この結果、再造林面積は年々増加し、平成二十九年度は五百十二ヘクタールとなったものの、再造林率は四五%と依然として低い水準にあります。
今後とも、伐採面積の増加が見込まれる中、現在改定作業を進めております県森林・林業振興基本計画では、十年後の再造林面積を千二百ヘクタールとする目標を設定し、さらに取り組みを推進していくこととしております。
来年度は、これまでの取り組みに加え、森林経営計画の認定要件を満たさない森林所有者が行う再造林に要する経費の助成、林業経営に適さない人工林の広葉樹林等への誘導手法の検討などにも取り組むこととしております。
次に、苗木の確保対策についてであります。
県におきましては、優良苗木の生産拡大と安定供給を図るため、成長が早く花粉が少ないなど、すぐれた特性を持つスギの採穂園の整備、植栽の省力化につながるコンテナ苗を生産するための施設の整備等に取り組んできたところであります。
また、生産者と需要者による需給連絡協議会を開催し、苗木需給のマッチングを図っているところであります。
さらに、来年度におきましては、国の森林環境譲与税を活用し、新たに、新規生産者を対象とする育苗技術習得のための実践講座を開催するとともに、苗木生産指導員による技術指導に取り組むほか、育苗施設の整備や品種の明確な造林地等からの穂木採取に対する支援を拡充することとしております。
県といたしましては、今後とも、関係者と一体となって、再造林を積極的に推進するとともに、優良苗木の確保対策に取り組んでまいります。
41 ◯総務部長(平木万也君)地方制度調査会での議論の状況と県の対応についてでございます。
第三十二次地方制度調査会においては、人口減少が深刻化し、高齢者人口がピークを迎える二〇四〇年ごろから逆算し、顕在化する諸課題に対応する観点から、圏域における地方公共団体の協力関係、公・共・私のベストミックスその他の必要な地方行政体制のあり方について、調査・審議を行うこととされております。
これまで、関係省庁や地方公共団体から、人口や医療・介護、まちづくり・インフラなど、分野別にヒアリングが行われ、二〇四〇年にかけての諸課題や現状の取り組み等が整理されたところであります。今後は、追加のヒアリングや現地調査を行うとともに、取りまとめに向けた議論を行っていくこととされております。
県といたしましては、人口減少社会において、限られた資源を有効に活用するためには、地域の実情に応じて、地方公共団体間の広域連携による行政サービスの提供を進めていくことが重要であると考えており、今後とも、地方制度調査会における議論の動向を注視してまいりたいと考えております。
[鶴丸明人君登壇]
42 ◯鶴丸明人君 それぞれ答弁いただきました。
桜島火山噴火予兆対策の一つである錦江湾内海底の観測機器の設置につきましては、原子力規制委員会でも話題にされたこともあります。お話をお聞きいたしましたが、今後、県におきましても、国の動向を的確に踏まえていただき、適切な要望など積極的な取り組みを要望しておきたいと思います。
森林づくりにつきましては、いろいろと前向きな取り組みをお聞きいたしました。
今後、市町村においても、森林環境譲与税導入に伴う効果的な事業への取り組みが始まると思います。取り組みに対する県の的確・適切な指導を要望いたします。
広域市町村連携につきましては、今後、第五世代移動通信システムなどの進展も含めて、議論が高まってくるものと思います。避けて通れない課題だと思います。県においても情報の把握に努め、適時適切な対応をよろしくお願いいたしておきます。
私の一日は、日新公のいろは歌の日めくりから始まります。きょうは三月一日でございます。日新公のいろは歌は、「いにしえの道を聞いても唱えても、我が行いにせずばかいなし」であります。この歌を見ながら、きょうはこの議場に参りました。
さて、この四年間、私は一期目の議員として、二元代表制の議員としての自覚を持ちながら、地域と県のパイプ役として、また是々非々の立場で、これまでの経験を生かしながら、地域や県政の課題等について質問させていただきました。
この間、同僚議員、また知事を初め職員の方々の御指導をいただき、心から感謝申し上げます。
これからの時代、国・地方は速いスピードでその仕組みも大きく変わると思います。人口減少に伴う地方自治体のあり方、情報化時代を反映した第四次産業革命、外国人労働者受け入れによる多文化共生社会の到来など、私どもの社会生活を一気に変えるほどの大変革期が訪れると思います。昨日の米朝トップ会談は不調に終わりましたが、世界のグローバル化も一段と進むと思います。
このようなときが来れば来るほど、私は、日本人の心に宿る、互いを立て合う精神、利他の心がより強く求められる社会が、日本はもとより世界にも来ると信じております。そうあってほしいと願っております。
もとより私自身、政治の究極の目的は、人がともに生き、仲よく暮らしていくための地域社会をつくることだと考えています。今後とも、このような思いを持ち、県議会議員の職責を果たしてまいりたいと考えております。
以上で私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
43 ◯議長(柴立鉄彦君)ここで、休憩いたします。
再開は、午後一時十五分といたします。
正 午 休憩
───────────
午後一時十五分再開
44 ◯議長(柴立鉄彦君)再開いたします。
ふくし
山ノブスケ君に発言を許可いたします。
[ふくし
山ノブスケ君登壇](拍手)
45 ◯ふくし
山ノブスケ君 県民連合の一員として一般質問を行います。
児童虐待防止対策については、県民連合の代表質問でもお尋ねいたしましたが、東京都で子供への虐待防止条例案が都議会に提案されたことや、森鹿児島市長が児童相談所を設置することを決め、新年度予算案に関連事業費を提案していることなど、虐待防止に並々ならぬ決意が見られることなどから、本県の現状や取り組み等についてさらにお聞かせいただきます。
千葉県野田市の小学四年の女児が死亡した事件では、虐待リスクを認識しながら十分に対応しなかったとの批判が児童相談所に集まっています。虐待から子供を救うために関心が高まって事案等の掘り起こしにつながるのはよいことですが、さらに職員負担が増し、十分な対応ができるのか危惧されるところであります。
まず、本県の現状について知事の認識を伺います。
本県における平成二十九年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数は、前年度に比べ二三〇%を超えています。全国の都道府県、指定都市、児童相談所設置市で二〇〇%を超えているところはありません。このような状況についての見解と、その要因についてどのように分析されているのか、お聞かせください。
また、大幅増加に対し、この一年、児童相談所の職員配置を含め、どのように対応してこられたか。児童虐待の通告・相談件数は平成二十九年度が千百五十件に上っているのに対し、対応に当たる児童福祉司の数は三十四人で、一人当たり三十四件を抱えることになります。児相における相談に対し、十分な対応ができる体制にあると考えているのか、伺います。
児童福祉司など、相談への対応で一人前になるには最低五年の経験が必要で、難しい虐待事例の対応には十年の実務経験が求められるとも言われています。児童相談所に勤務している児童福祉司の平均経験年数については、六・四年とのことですが、児童福祉司の勤務年数について、一年未満、一年以上三年未満、三年以上五年未満、五年以上十年未満、十年以上の人数をそれぞれ示してください。
また、児相勤務の児童福祉司の異動については配慮が必要だと考えますが、現状はどうなっているか、あわせてお聞かせください。
県は二月十二日、児童虐待防止対策会議を開催しています。出席した関係機関からは、取り組みの報告や、児童虐待防止対策のさらなる徹底・強化に向けたさまざまな意見が出されたとのことでありますが、現状において不十分、あるいは強化すべき点として何があるのか、また、今後の取り組みとして確認がなされたことについて示してください。
また、同日付で、児童虐待に係る児童相談所と警察の相互連携に係る協定を締結していますが、これまでの連携のあり方との違いを含め、具体的協定内容と、情報の共有についてはどの程度まで踏み込んだものになっているのか、明らかにしてください。
平成十六年度から、児童虐待防止法が施行された十一月を児童虐待防止推進月間と位置づけ、広報・啓発活動を行っています。オレンジリボンツリーの設置や街頭キャンペーンなどの取り組みですが、効果として、児童相談所全国共通ダイヤル一八九─いちはやく─の認知度の向上も期待されます。しかし、認知度がいまだ十分とは言えないと思われますが、現状についてお聞かせください。
ちなみに、全国の児童相談所での虐待相談の経路別件数を十年前と比較してみますと、警察等が約六千件から六万六千件へと大きく増加しており、そのほか、近隣知人、家族、学校等からの通告がふえています。本県においても同様の傾向にあるようですが、そもそも警察への主な通報経路はどうなっているか、示してください。
さて、東京都子供への虐待の防止等に関する条例案が先般、東京都議会に提案され、条例の概要が明らかになっています。
児童虐待の防止等に関する法律に規定する地方公共団体の責務を踏まえ、子供を虐待から守る環境整備を進め、子供の権利利益の擁護と健やかな成長に寄与することを目的としています。
そして、保護者等の責務として、体罰その他の子供の品位を傷つける罰を与えることの禁止を盛り込み、虐待の未然防止や虐待の早期発見及び早期対応、その他、虐待を受けた子供とその保護者への支援等、里親制度の啓発活動などによる虐待を受けた子供の社会的養護の充実等、虐待の防止に関する専門的な知識等を有する職員の育成等が盛り込まれています。
現在、九府県で児童虐待防止に関する条例が施行されているようですが、家庭内の、しつけと称した体罰が虐待につながりかねないとして、暴言なども含めた体罰の禁止などを盛り込んでいることなどが特徴となっており、体罰禁止の規定は都道府県で初めてとのことであります。小池知事は、「都の責務として体罰によらない子育てを推進する」と説明しています。
知事に伺います。
今回の東京都の条例案に体罰禁止条項が盛り込まれていることについての評価をお聞かせください。
また、マスコミ等でも取り上げられているさまざまな虐待事案を受け、自治体の責務を全うしようとする東京都の姿勢についての見解。
さらには、児童虐待相談対応件数が全国一高い伸び率を示したことも踏まえ、鹿児島市は任意にもかかわらず児童相談所の設置を決めていますが、三反園知事の虐待防止への取り組みの決意は具体的にどのような形でお示しになるのか、お聞かせください。
国会でも与野党から、児童虐待防止法に体罰を禁止する規定を新たに設けることや、親が子供を戒める民法の懲戒権の規定の見直しを求める声が出ています。身体的虐待の大半は、しつけの名目で行われる体罰がエスカレートしたもので、懲戒権が虐待の口実に使われているという指摘もあります。
子供の権利を守るという姿勢を明確にし、発信することの意義は大きいと思いますが、これらの動きに対する知事の見解をお聞かせください。
さて、千葉県野田市の小学四年生が死亡した事件で、傷害容疑で逮捕された父親は、長時間立たせたりしたことを「しつけのつもりで、悪いことをしたとは思っていない」と供述しており、昨年、東京都目黒区で五歳の女の子が両親から虐待を受け死亡した事件でも、両親は「しつけの一環だった」と話しています。
子供支援専門の国際NGOであるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが二〇一七年、国内で実施した、しつけにおける体罰等に関する意識・実態調査で、子供のしつけのための体罰を容認する人が五六・八%に上り、決して体罰をすべきではないという人は四三・三%にとどまっています。
体罰については、この二月に県教育委員会が、生徒への体罰により公立学校の教諭二人を減給などの懲戒処分としていることから、教育長にこの件を伺います。
私は、二〇一三年の第一回定例会で体罰問題について議論いたしましたが、しつけと称した体罰が容認されることがないように、体罰で万が一にも子供の命が奪われるようなことがないように、再び議論させていただきたいと思います。
私自身もかつては、体罰容認論を完全に払拭することは困難ではないかと考えていましたが、二〇一二年に出会った一冊の本によって、体罰によらない教育が可能であると確信いたしました。その本は、一九八九年に出版された江森一郎氏の著書「体罰の社会史」であります。
内容は、日本に来た外国人、例えば一六二〇年ごろのイエズス会士ルイス・フロイスや幕末のシーボルト、イギリス外交官のオールコックなどが、日本では子供に対する体罰がほとんど行われないことを書き記していること。明治十二年に制定された教育令には体罰禁止規定が明文化され、伝統思想の中に、国民の性格や習性として体罰を残酷と見る見方が定着していたこと。体罰が肯定されるようになるのは日露戦争前後が一つの節目で、体罰の乱用に決定的影響を与えたのは帝国陸海軍の教育方法で、軍隊が教育の場のモデルとなったこと。
そのようなことから考えると、「子供には厳しくするほうがいいという考えは、もともと日本の伝統とは違うんだということを知るべきだと思う」という内容になっています。
体罰は、そもそも我が国の伝統にはないという指摘を踏まえ、決して体罰を容認することなく、体罰によらない教育が可能であるということを皆がひとしく認識することが重要だと考えます。
学校教育法で体罰はできない旨明記されているにもかかわらず、残念ながら、学校現場での体罰がなくなりません。過去五年間の年度別の件数と懲戒処分などの実態についてお示しください。
また、いまだ残る体罰容認論に対する見解。学校教育における体罰防止の取り組みは保護者等への啓発にもつながると思いますが、今後の体罰防止への取り組みについて、教育長の決意をお聞かせください。
国際NGOであるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが、先ほど紹介した調査の中で、たたかない、どならない子育てについての意識を質問しています。子育て中の回答者の約六割が、体罰等によらない子育てをしたいが、実践は難しいと感じる。あるいはそのような子育て方法を知りたいと考えていることがわかりました。
体罰が子供の成長に悪影響を及ぼすことは幾つものデータで明らかになっており、必要なのは、たたかず、どならず子育てができるよう、保護者への支援を強めることだと考えます。家庭環境などさまざまな理由によって、保護者が体罰という手段を選択しないようにするためにも、親の育児負担を軽減する方策を充実させることが必要であり、親を孤立させない、孤立状態を放置しないことが重要であります。
知事は、子育て支援を重要施策と位置づけています。東京都のように条例に体罰の禁止条項を盛り込む取り組みと同時に、子育てしやすい環境整備が必要だと思いますが、現在、保護者に対する支援としてどのような取り組みがなされているか。また、虐待を受けている子供の保護とともに、虐待を繰り返してしまう親に対する対応・支援が必要ですが、どのような取り組みがなされているのか。また、課題として何があるか示してください。
以上で、一回目の質問といたします。
[知事三反園 訓君登壇]
46 ◯知事(三反園 訓君)児童虐待防止に向けた決意についてであります。
本県も含め、児童虐待の認定件数が年々増加し、全国的に重篤な児童虐待事件も後を絶たない状況でありまして、私としては、児童虐待防止については、子供の命が失われることがないよう、社会全体で取り組むべき重要な課題であると考えております。
県内において重篤な事件が起きることがないように、児童虐待防止に向けた関係機関の連携強化、情報共有、適切な対応、さまざまな取り組みを進めていく必要があると考えております。
このため、二月十二日に、関係部局、教育庁、警察本部、児童相談所、県医師会、市町村関係者から成る児童虐待防止対策会議を開催いたしました。児童虐待の発生予防や早期発見・早期対応のための取り組み報告、関係機関や児童相談所の連携強化に関する意見交換を行うとともに、速やかな情報共有やさらなる連携強化を確認したところであります。
あわせて、児童相談所と警察の迅速かつ確実な情報共有を図るために、児童虐待に係る児童相談所と警察の相互連携に関する協定を締結いたしました。
さらに、現在進めております緊急安全確認等が終了した時点で、再度、児童虐待防止対策会議を開催いたしまして、安全確認等の結果を踏まえた対応等を協議することとしております。
また、児童虐待防止に向けた新たな取り組みとして、平成三十一年度から、中央児童相談所の児童虐待などへの対応を行う相談部に相談判定第三課を新設し、児童虐待に対する相談・援助体制を強化することとしておりまして、それに伴う児童福祉司等の増員を図ることとしております。
鹿児島の未来を担う子供たちのために、今後とも、関係機関との緊密な連携のもと、児童虐待防止に向けて全力で取り組んでまいります。
47 ◯子育て・高齢者支援総括監(地頭所 恵君)虐待防止の取り組みのうち、まず、児童虐待の急増についての見解と要因についてでございます。
全国の児童相談所の児童虐待の認定件数は、昨年度が十三万三千七百七十八件で、前年度に比べて九・一%増加しています。
本県の児童相談所の認定件数は、昨年度が七百八十一件で、前年度比一二一・九%増加しており、全国と比べ大きく増加していますが、人口千人当たりの認定件数で比べると、本県は〇・四七件であり、全国平均の一・〇五件より大幅に低く、全国で三十四位であります。
昨年度の本県の認定件数について、増加の内容を分析すると、虐待の種類は、心理的虐待が百七十二件から三倍以上増加して、五百四十件となり、認定件数に占める心理的虐待の割合が約七割となっています。通告先の区分は、警察からの通告が百五十九件から三倍以上増加し、五百三十二件となり、認定件数に占める警察からの通告の割合が約七割となっています。
このようなことを踏まえると、増加の主な理由としては、児童が同居する家庭の配偶者やきょうだいに対する暴力がある事案、いわゆる面前DVなどを含む心理的虐待の相談対応件数の増加、警察による通告の徹底などによるものと考えています。
次に、児童虐待通告・相談件数の増加に対する児童相談所の職員配置等についてでございます。
県では、これまでも、児童相談所の専門職である児童福祉司などの増員や警察官OBの非常勤職員の配置など、児童相談所の体制強化を行ってきたところです。平成二十九年度以降の取り組みとしては、中央児童相談所への家庭復帰支援班の設置や、弁護士である非常勤職員の配置などを行うとともに、児童相談所の補完的な役割を担う児童家庭支援センターが運営を開始し、児童に関する家庭などからの相談を受け、訪問や必要な助言等を行っています。
また、新たな取り組みとして、来年度から、中央児童相談所の相談部に相談判定第三課を新設し、児童虐待の相談・援助体制を強化することとしており、それに伴う児童福祉司等の増員を図ることとしています。
具体的な来年度の児童福祉司等の配置については、改正児童福祉法等の規定を踏まえ、適正な配置を行ってまいりたいと考えております。
次に、児童福祉司の児童相談所勤務年数等についてでございます。
本県の児童相談所の児童福祉司の平成三十年度末時点における勤務年数ごとの内訳は、一年以上三年未満が十三人、三年以上五年未満が四人、五年以上十年未満が十二人、十年以上が八人となっています。
また、児童相談所の児童福祉司については、職員の経験、専門性、資格等を踏まえて配置しているところです。
次に、児童虐待防止対策会議で出された意見等についてでございます。
二月十二日に開催した児童虐待防止対策会議では、医療機関における出産段階からの子供の状況確認が必要である、健診や予防接種を受けていない子供のフォローが重要である、学校に派遣するスクールサポーターの活用を進める必要があるなどの意見が出され、その上で、関係機関における速やかな情報共有やさらなる連携強化を確認したところです。
児童相談所と警察においては、これまでも、国の指針等に基づき、迅速かつ確実に情報共有を行ってきましたが、協定を締結したことで、共有する情報の基準や内容、子供の安全確認ができない場合の対応、家庭の転居に関する情報の共有等が明確化されたところであります。
引き続き、児童の安全確保に向けて連携して取り組んでまいります。
全国児童相談所共通ダイヤル一八九─いちはやく─についてでございます。
全国児童相談所共通ダイヤル一八九─いちはやく─は、虐待などについて適切に相談できるよう、地域の児童相談所に直接つながる全国共通の電話番号です。
この番号は、自動的に地域の児童相談所につながる仕組みであり、この番号を使用した通話の件数は把握できませんが、運用開始以降、毎年十一月のオレンジリボン・キャンペーンなどを通じて周知広報に努めており、児童相談所への通告・相談件数の増加を考慮しますと、番号の認知度も含め、児童虐待に関する県民の意識が向上しているものと考えています。
次に、東京都の虐待防止条例案についてでございます。
東京都では、目黒区の虐待死事案を契機に、東京都児童福祉審議会における審議を進めてきたものであり、体罰禁止の規定は、体罰や暴言が子供に及ぼす影響に関する専門家の意見や、目黒区の事案を受けた都の検証部会報告書の提言等を踏まえて、設けたとされています。
また、痛ましい事例が二度と起こらないよう、事例を生かしながら条例化の検討を進め、体罰によらない子育ての重要性の啓発に努めることも含め、虐待死を防止するさまざまな工夫をされた結果として、都道府県では全国初の踏み込んだ規定が設けられたものになっていると考えております。
次に、体罰禁止規定と懲戒権の見直しについてでございます。
体罰の禁止については、厚生労働大臣は記者会見で、今国会に提出予定の児童福祉法等の改正案は、体罰禁止の議論も踏まえ、民法の懲戒権との関係整理等も含めて、法務省とも協議しながら検討する旨を表明しています。
この体罰禁止や懲戒権の見直しは、平成二十八年五月の児童福祉法等の改正で、親権者は、児童のしつけに際して、監護・教育に必要な範囲を超えて児童を懲戒してはならない旨が明記されたことを受けて、講ずるべき措置として、子供に対する有形力の行使を不適切として、体罰によらない子育てを啓発する、懲戒権の行使のあり方を検討するとした国会の附帯決議と同様の趣旨のものであり、児童虐待防止対策のさらなる強化につながるものと考えています。
次に、保護者支援についてでございます。
育児中の保護者の不安や負担を和らげるには、多様な視点からの取り組みが重要であると考えています。
このため、県では、育児に関するさまざまな助言・指導などを行う地域子育て包括支援センターの設置促進、多様な保育サービスの充実、子育てに関する専門的な相談体制の確保など、子供の発達段階に応じた子育て支援に努めております。
また、妊娠期から子育て期の切れ目のない支援を行うため、今年度から、かごしまウェルカムベビープロジェクトとして、商業施設で出前女性健康相談を実施するなど、妊産婦が相談しやすい環境づくりなどに取り組んできました。
今後とも、育児中の保護者の子育てに関する負担の軽減に向けて、市町村等と連携しながら、子育て支援の充実に努めてまいります。
次に、虐待を行った保護者の支援についてでございます。
児童相談所では、虐待の再発防止を図るため、国のガイドラインを踏まえ、保護者が虐待の事実に向き合うよう必要な援助を行っています。
具体的には、子供を在宅で生活させながら援助を行う場合、家庭訪問等により、児童虐待の理解、子供との接し方等に関する指導等を継続して行っています。
子供が児童福祉施設に入所している場合は、初期段階で保護者の問題解決に向けたカウンセリング等を行い、保護者の問題点をみずから克服できるよう支援しています。
さらに、問題点が克服された状況に応じて、親子の面会、外泊等を段階的に実施するなど、家庭復帰に向けて、親子の良好な関係が築かれるよう支援しています。
このような支援に当たっては、関係機関の連携が重要であることから、児童相談所、市町村、医療機関、学校、警察などで組織する要保護児童対策地域協議会において、それぞれの役割に応じて継続的な訪問等を行うなど、適切な保護者支援に努める必要があると考えています。
48 ◯警察本部長(大塚 尚君)児童虐待事案の主な通報経路についてでございます。
県警察が平成三十年中、児童相談所に通告した児童数は千二十一人でありますが、その内訳は、一一〇番通報や警察署等への通報が約六割であり、そのほかは相談受理や関係機関等からの情報提供などとなっております。
49 ◯教育長(東條広光君)学校における体罰の件数等についてであります。
県内の公立学校における体罰については、平成二十六年度八件、平成二十七年度十二件、平成二十八年度六件、平成二十九年度十三件、平成三十年度はこれまでに五件の報告を受けております。
このうち懲戒処分を行ったものは、減給八件、戒告二件であり、これら以外については訓告としているところであります。
次に、体罰に対する見解と防止の取り組みについてであります。
体罰は、学校教育法において禁止されている違法行為であるのみならず、児童生徒の心身に深刻な影響を与えるとともに、力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの連鎖を生むおそれがあり、いかなる場合も体罰は行ってはならないと考えております。
また、児童生徒に対する暴言等による不適切な指導についても、児童生徒を精神的に追い詰めることにつながりかねず、懲戒権の範囲を逸脱した行為であり、あってはならないと考えております。
こうしたことから、県教委としては、新たに、教育振興基本計画においても、体罰や不適切な指導等の根絶を掲げて取り組むこととしており、教職員の意識向上を図るため、仮称ですが、体罰根絶マニュアルの作成や、怒りを抑制するための研修などを行いながら、粘り強く指導してまいりたいと考えているところであります。
50 ◯ふくし
山ノブスケ君 自席からお尋ねいたします。
お尋ねいたしますというか、私の質問にきちっと答えていらっしゃらないですね。私は取材も受けたんですよ。取材を受けて、私の質問の趣旨については十分に伝えたつもりです。余り申し上げると、取材に来た皆さんにいろんなことが及ぶといけませんけれども、相談対応件数が倍以上にふえたりしたことについて、それはどういう要因があるのかと。
それから、人口千人当たりの児童虐待の認定件数は全国でも低いですよと、本当にそんな考えでいいんですか。少なかったものが倍にふえた、ほかよりも増加率が高かった。そのことに危機的な意識を持たないといけないんじゃないですか、危機意識を。
私は、要因は何かと聞いた。これは取材ではっきり申し上げてあります。面前DVなど心理的虐待が多くなったとかそういうことではないんです。なぜそういったことが起きたのか、なぜそういったことがふえているのか、そこについての分析がないと、虐待への対応はできるけれども、防止はできないですよ。ちゃんと答えてください。
51 ◯子育て・高齢者支援総括監(地頭所 恵君)児童虐待が急激にふえていることの分析についての重ねての御質問でございます。
先ほどお答え申し上げましたが、平成二十九年度の認定件数が前年度に比べて一二一・九%増加と全国と比べて大きく増加しているということについては、非常に危機感を持って対応すべきことだと考えております。
要因につきましては、先ほど申し上げましたように、家庭の配偶者とかきょうだいに対する暴力があった場合に、これまでは心理的虐待とか、直接暴力を受けていない子供については、件数として上げていなかったわけですけど、そういったものについて全て、きょうだいも含めて心理的虐待を受けているという取り扱いになり、そしてまた、警察からも通告が非常にふえてきている、通告の徹底がしっかりなされてきているということがございます。
そしてまた、家庭の皆様とか地域の皆様が、児童虐待に対する認識を非常に強く持っていただいて、何か問題がありそうなことを感じたときには速やかに通告していただいていることによって、こういう虐待事案が発見されやすくなってきていると考えております。
52 ◯ふくし
山ノブスケ君 いや、そういうことではなくて、先ほど、子育てしやすい環境整備をどうすればいいのかということで御答弁いただきましたよね。子育てに不安がある、これを和らげる必要がある。それから保育サービスの充実とか相談対応、いろいろ多様化しているのでそういったことが必要だというようなことをおっしゃったじゃないですか。
じゃ、原因は何だったのか、そのことを分析しないと。虐待が起きたときに速やかに対応するとか、間違った対応をしない、正確に迅速にやる、このことはきちっと詰めてやればいいわけです。しかし、あってはならないわけです、本来は。防止対策にどうやってつなげるかということが大事だと私は申し上げているわけです。だから、その分析をしないと、防止対策はきちっとできないんじゃないですかと申し上げている。
知事にも東京都の問題とか伺いました。一連の流れとして、知事は先ほど決意を申し述べていただきましたけれども、例えば鹿児島市は、昨年のうちに検討委員会を立ち上げて、早速、新年度に基本計画をつくることを予定しています。そういったことが大事じゃないのかと申し上げているわけです。
ですから、その構えが大事です。腹をくくって、虐待だけは絶対起こさせない。起きた場合には、子供たちの命を奪われるようなことがないように最大限努力する。当然じゃないですか。もう一度答えてください。
53 ◯子育て・高齢者支援総括監(地頭所 恵君)虐待の原因につきましては、それぞれの事案に応じてさまざまな要因があろうかと思います。議員おっしゃったように、育児の不安でありますとか、そういうものが虐待につながった事例も確かにあると思いますので、そういったものにつきましては、相談しやすい体制、以前と違って、地域で相談するのがなかなか難しい面もございますので、市町村の施設でありますとかそういったものがしっかり整備されて、気軽に相談できる体制をつくっていくことが一つの防止対策になるのではないかと考えております。
[ふくし
山ノブスケ君登壇]
54 ◯ふくし
山ノブスケ君 いろいろ御答弁いただきましたけれども、私はきょうは、虐待が発生したときというよりはむしろ、虐待をどうやって防止するのか、そのことに少し重きを置いて考える必要があるということを申し上げたかったということです。十分にそのことはお伝えしたつもりでしたので、正確にお答えいただきたいということだけ申し上げておきます。
専門家と言われる方のお話をちょっと紹介いたします。
どの親も子供を虐待する可能性を持っている。しかし、それを抑える何かがその人に備わっている。そう考えたほうがいい。専門用語でレジリエンスというそうであります。これは弾力ですね。
例えば、シングルマザーで非正規雇用というリスク要因を持っている人がいるとします。同時に、その人が子育てに協力的な祖父母やいい友達を持っていたり、保育所の先生と良好な関係を続けていたりすると、彼女をプロテクト─保護─する要因になるわけです。プロテクト要因がリスク要因を上回っていれば総合的にレジリエンスは高まり、リスクが高ければ虐待になるのではないということを言っています。
福祉関係者はリスクだけで語りがちですけれども、児童相談所が行うリスクアセスメント、これにもプロテクト要因は入っていません。なぜなら緊急性で動くから。今この瞬間に対応できないと、その間に子供が亡くなったらえらいことだから、リスクだけをリストにする。親が持っている強みはなかなか評価できない。
しかし、その人がどれだけ自分を支えるものを持っているか、世の中がそれを準備できているか。虐待防止施策はそういう見方で構築していくほうがいいのではないかと思っているというような内容であります。
つまり、親を支えるものを社会の側がどれだけ用意できるかということも問われていると思います。
新しい質問に入ります。
現在、鹿児島県水道ビジョンを策定中で、
パブリックコメントが行われています。本県水道のあるべき姿を示し、ライフラインである水道が、将来にわたり安心・安全な水を安定的に供給できるようにということを趣旨としてビジョンを策定するとのことですが、基本的なことについて伺ってまいります。
昨年十二月に、水道法の一部を改正する法律が成立いたしました。改正水道法は、水道の基盤強化を前提にはしていますが、公共施設等運営権方式、いわゆるコンセッション方式の導入を容易とするものでもあります。そのようなことから、水道法は、これまでも幾度か大きな改正を行っていますが、今回のように与野党の対立法案となったのは初めてと言われています。
確かに、海外では一九九〇年代まで水道事業の民営化が進められ、政府と巨大水企業との癒着構造や不透明な資金の流れ、水道施設に十分な投資がなされないことにより市民生活に影響を及ぼすなど、さまざまな問題が続出し、現在では再公営化が進んでいます。国会審議でも水企業の癒着構造が露呈するなど、改正法のたてつけそのものに問題があるという印象は否めません。
しかし、今回の法律改正の趣旨は、人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図るため、所要の措置を講ずることとされており、あくまでも、事業基盤の強化をどのように図っていくか、方法論も含めて冷静に判断していくことが重要だと感じています。
国交省によりますと、世界で水道水が安全に飲める国は十五カ国ほどで、アジアでは日本とアラブ首長国連邦だけであります。日本の水道水の水準の高さは定評がありますが、安全・安定・低廉という水道の基本原則を堅持し、市民生活や企業活動を支える社会的基盤としての水道を守り、発展させていくため、水政策への取り組みは極めて重要な時期を迎えていると考えます。
そこで伺います。
今回、県の水道ビジョンを策定する目的と、今年度策定の理由について、改めてお聞かせください。
国は、平成二十五年に新水道ビジョンを策定していますが、国のビジョンにおける県の役割、責務について示してください。
また、県ビジョンにおける県の役割として何があるのか、具体的な取り組み内容もお聞かせください。
ビジョン案策定に当たって、県下の水道事業者を初め、水道の現状把握をされていますが、直面する課題は何か、明らかにしてください。
今回の案を拝見しますと、圏域については、本土圏域と離島圏域の二圏域に設定されていますが、本来であれば、将来に向けて事業者間の意識の共有や連携策の検討を促進しやすい圏域設定にすべきではないかと考えますが、圏域設定の考え方についてお聞かせください。
県水道ビジョンの第七章、理想像の設定とその実現方策で、課題、目標、実現方策として一定の方向性が示されていますが、計画期間が十年、当面の計画目標年度を平成四十年度としており、国会でも、喫緊の課題と位置づけて法改正まで行ったのですから、少なくとも、十年後における具体的な目標、実現方策、スケジュール等を示す必要があると思いますが、見解をお聞かせください。
この問題の最後に伺います。
今回の法改正やビジョン策定によって、少なくとも、水道事業に関し直面する課題の根本・本質について、市民・県民全体が認識を深く持つということにつなげなくてはなりません。市民・県民が水道事業の現状を知り、事業の将来に対してしっかりと関与することができる枠組みを構築することが重要だと考えますが、見解をお聞かせください。
以上で、二回目の質問といたします。
55 ◯くらし保健福祉部長(中山清美君)鹿児島県水道ビジョン策定に関連して、まず、水道ビジョンの策定の目的及び理由についてでございます。
水道事業を取り巻く全国的な状況は、人口減少に伴う水需要の減少、水道施設の老朽化等の問題が指摘されており、本県も同様の傾向にあります。
国においては、水道の理想像を示し、取り組みの目指すべき方向性やその実現方策を明示した新水道ビジョンを平成二十五年に策定し、都道府県にも、広域的見地から地域の水道のあり方などを示したビジョンを策定し、事業者間調整などの役割を果たすことを求めております。
このため、県では、本県の水道のあるべき姿を示し、将来にわたり安心・安全な水を安定的に供給できるよう、鹿児島県水道ビジョン案を策定しております。
国は、今後、市町村が国庫補助事業を活用し、水道事業の広域化を図る場合には、県のビジョンに基づく圏域での広域化を要件の一つとしており、同事業の有効活用を図るためには、遅くとも平成三十一年度までに県のビジョンを策定する必要がありますことから、今年度に策定することとしたところであります。
国の新水道ビジョンに示された県の役割及び県としての具体的取り組みについてでございます。
国の新水道ビジョンでは、県は、県内の水道事業者が策定した水道事業ビジョンに沿った事業が行えるよう助言等を行うことや、複数の市町村間の広域的取り組みを支援するなどの役割が求められております。
県水道ビジョン案では、本県の水道の現状分析・評価を行い、課題を抽出した上で、その解決に必要な施設の更新計画の策定や、広域的な連携の検討などの実現方策を示しており、市町村の取り組みを促進するため、必要な助言や情報提供などを行うこととしております。
水道事業の直面する課題についてでございます。
本県の水道事業は、平成十八年度から十年間で約八万人の給水人口が減少しており、また、本県は、山間僻地や多くの離島を有し、管路の総延長が長く、施設整備に多額の経費を要するため、耐震化がおくれ、老朽化が進んでおります。
このような中で、本県の水道サービスの持続性を確保するためには、適切な資産管理の徹底や効率的な更新計画の策定などの取り組みを促進する必要があると考えております。
次に、水道ビジョンの圏域設定の考え方についてでございます。
県水道ビジョン案では、国のビジョンに基づく圏域の設定要件を踏まえますとともに、本県の地理的要因や各種水源の分布状況等を総合的に勘案し、圏域を本土圏域と離島圏域に設定しているところでございます。
今後、各水道事業者の広域的な事業統合や具体的な施策等の検討状況を踏まえ、必要に応じて圏域の見直しを検討することといたしております。
次に、十年後における具体的な目標、実現方策、スケジュール等についての見解でございます。
水道事業の主体である市町村では、財政状況や給水人口、施設の整備状況等が異なりますことから、県水道ビジョン案では、一律の目標やスケジュール等を設定しておりませんが、県といたしましては、県水道ビジョン案に定める方策の実現に向けて、各市町村の取り組みを支援してまいりたいと考えております。
次に、市民・県民が関与するための枠組みについてでございます。
県内では、水道事業等の合理的かつ健全な経営を図るため、住民代表者などが参画する審議会等を設置し、住民等の意見を反映させている市町村があるほか、広報誌等で水道事業の実情について周知を図っていると伺っております。
今後、市町村が水道事業の取り組みを行っていくに当たり、住民はもとより、広く関係者間でその実情について情報を共有し、理解を得ながら推進することは重要なことと考えており、県といたしましても、必要な情報提供等に努めてまいりたいと考えております。
56 ◯ふくし
山ノブスケ君 答弁ありがとうございました。
再質問ですけれども、国の新水道ビジョンの第八章、ここには関係者の役割分担が示されています。都道府県の役割として、リーダーシップを発揮した助言等を行う役割、これをきちっと書かれているわけですけれども、そこにさらに、広域的な事業間調整機能として、事業統合、財政問題、技術基盤、人材確保など、個々の水道事業者では乗り越えられない課題の解決において、他の複数の水道事業者との広域的な対応が有効な場合にあっては、認可権限等の枠組みにとらわれることなく、その調整役としての役割を果たす役割が期待されています、となっているわけですね。
細かくはほかにもたくさんあります。時間がありませんのでもう紹介申し上げませんけれども、以上のように、極めて重要な役割を果たしていかないといけないということになっているわけです。
知事にお伺いしますけれども、今申し上げましたように大変大事な水道の問題であります。ただ、今の組織でこれだけの役割を担えるのかどうかという心配があるわけですね。そのことについては、直ちにということにはならないのかもしれませんが、一定の考え方を持っておられたらお聞きしたいと思います。
57 ◯くらし保健福祉部長(中山清美君)ただいまの質問は、法改正に関連してのことだと思います。
人口減少に伴う水の需要の減少とか、水道施設の老朽化等に対応するためには、水道の基盤の強化を図る必要があると考えております。
広域連携についてもリーダーシップを発揮せよとのお話がございましたけれども、広域連携について、事業統合でありますとか、経営の一体化とか管理の一体化とか、さまざまな形態が考えられております。大事なことは、地域の実情に応じて連携の方法を検討することであると考えております。
県では、平成二十八年度から、市町村と共同で水道事業の広域連携に関する検討会を設けております。その中で、地域の実情に応じた広域連携の推進等の検討を行っておりますので、私どもといたしましても、必要に応じて情報提供でありますとか助言等をしてまいりたいと思っております。
[ふくし
山ノブスケ君登壇]
58 ◯ふくし
山ノブスケ君 水道ビジョンに関連して伺いました。
水道を取り巻く時代の転換点、そういったところにあるのかなという気がいたします。
新水道ビジョンの第二章には基本理念も示されています。そういったことを念頭に、しっかりと県としての役割を果たしていけるように御努力をお願いしておきたいと思います。
次に、入札・契約制度の充実についてであります。
私はこれまでも、入札・契約制度の充実について質問してまいりました。執行部の御努力により一定の前進を見たものもありますが、いまだ納得しがたい点について、今期最後の一般質問の機会でもありますので、改めてお伺いいたします。
今回は、二〇一五年六月に厚生労働省から都道府県知事に通知された、ビルメンテナンス業務に係る発注関係事務の運用に関するガイドラインに関連してお尋ねいたします。
ガイドラインは、その前年度に改正された、公共工事の品質確保の促進に関する法律で、基本理念の一つとして、公共工事の品質は、完成後の適切な点検、診断、維持、修繕その他の維持管理により、将来にわたり確保されなければならないと掲げるなど、公共建築物は、その新たな建設のみならず、建設後の維持管理の重要性が増しているとの認識から、公共建築物の維持管理を継続的に適切に行うためには、日常の建築物の維持管理業務を担うビルメンテナンス業について、ダンピング受注の排除、担い手の中長期的な育成・確保の促進を通じて、健全な育成を図っていくことが不可欠な状況となっていることから、通知されたものであります。
通知では、ダンピング受注の排除、担い手の中長期的な育成・確保の促進をと、ただいま申し上げたようになっているわけですけれども、そのうち、現場条件等を踏まえた適切な仕様書等の作成と、適正利潤の確保のための予定価格の適正な設定について絞って伺います。
昨年の九月議会において私の質問に対し、仕様書等の作成については、業務に必要な全ての事項を精査し、毎年度、仕様の見直しを行ってきていると答弁されました。しかし、行政庁舎に限らず、警察庁舎、議会庁舎、黎明館など調査した範囲では、仕様書の見直しがあったとはいえ減額等となっています。
再度、仕様書の現状と課題について、答弁いただきたいと思います。
官公需法に基づく、平成三十年度中小企業者に関する国等の契約の基本方針において、最低賃金額の改定に伴う契約金額の見直しとして、特に人件費比率の高い役務契約であって人件費単価が低い業務に関し、年度途中に最低賃金額の改定があった場合は、適正な価格で契約金額の見直しが行われるよう検討し対応するように努めるものとするとされていますけれども、このことについては、改めて検討していく必要があるかと考えていると、以前答弁されております。
どのように検討されたのか、お聞かせください。
労務単価について伺います。
昨年の九月議会における答弁で、予定価格の積算については、最新の国の建築保全業務労務単価に基づき、本県の最低賃金を考慮して人件費を積算し、経費等を加算した設計額をもとに予定価格を設定しているとのことでしたが、労務単価が明らかにされているのは、北海道や東京を初め全国で十都道府県だけで、九州では福岡、沖縄の二県であります。
本県における労務単価についての考え方と、なぜ明らかにできないのか、明確な理由をお聞かせください。
また、応札する側はどのように労務単価を設定して積算しているのでしょうか。労働集約型であるだけに労務単価が正確に判断されなければならないと考えますが、お答えいただきたいと思います。
以上で、三回目の質問といたします。
59 ◯会計管理者(伊村秀己君)入札・契約制度の充実のうち、庁舎清掃等に係る仕様書の現状と課題についてでございます。
庁舎清掃業務の仕様書につきましては、施設の使用状況等を点検し、清掃業務実施状況を検証するとともに、業務に必要な全ての事項を精査しながら、毎年度、見直しを行っているところであります。
このような中で、県庁舎は建築後二十年以上、また黎明館は三十五年以上が経過するなど、維持管理の重要性が増してきていることから、今後とも、衛生的で快適な庁舎環境の確保などを図るため、清掃業務を含め、適切な維持管理に努めていく必要があると考えております。
最低賃金の改定に伴う契約金額の見直しについてでございます。
清掃業務等に係る年度途中の契約金額の見直しにつきましては、昨年十月の富山県の調査によりますと、福岡県において、長期継続契約している施設で契約金額を変更している事例があり、単年度契約につきましては事例はなかったところです。
本県の行政庁舎の清掃業務委託は、単年度契約でありますが、最低賃金改定に伴う年度途中の影響額が契約条項に定める著しい変動に該当するかなど、検討すべき課題があると考えております。
県としましては、先進県の今後の効果・課題などを注視するとともに、最低賃金法の遵守状況確認調査の結果も踏まえながら、検討してまいりたいと考えております。
次に、労務単価の明確化についてでございます。
清掃業務委託に係る労務単価につきましては、国の建築保全業務労務単価に基づき、本県の最低賃金を考慮して算出しており、来年度の清掃等業務委託の執行に当たっても、最新の労務単価を適正に反映するよう各部局に対して通知したところであります。
算出した労務単価の公表につきましては、本県においては、清掃など人件費率が高い労働集約型の業務に係る契約であるため、労務単価を公表した場合、予定価格の積算根拠が類推されるため公表していないところであり、九州各県においても、同様の理由で公表していないと聞いております。
60 ◯ふくし
山ノブスケ君 ただいまの労務単価についてお尋ねいたします。
九州各県といっても、福岡、沖縄は明確に示されています。
労働集約型であるために予定価格が類推しやすいと。しかし、土木等公共事業においては明確になっているわけです、明確に。労働集約型だからこそ労務単価がはっきりしているということが大事じゃないですか。それで適正な入札ができているんでしょうか。再度お聞かせください。
61 ◯会計管理者(伊村秀己君)ただいま御説明申し上げました労務単価の公表についてでございますけれども、請負工事関係につきましては、人件費のほか、それぞれの資材等の積算が考慮されているところでございます。
議員おっしゃるように労働集約型の清掃業務委託でございますので、人件費の比重というのが非常に大きゅうございます。そういったものについて公表いたしますと、先ほど申しましたように、予定価格の積算根拠が類推されることから公表していないということでございます。
62 ◯ふくし
山ノブスケ君 それは、類推して皆さん、積算するわけですよ。公共事業は明確になっているじゃないですか。公共事業は類推されてもいい、業務委託については類推されてはいけない、そういうことですか。
63 ◯会計管理者(伊村秀己君)済みません、もう一回繰り返しますけれども、労働集約型の業務に係る契約でございます。先ほど申しましたように、予定価格の積算根拠が類推され、適正な競争の阻害が想定されると、他県でも同様の理由で公表されないところでございます。
64 ◯議長(柴立鉄彦君)ふくし
山ノブスケ君。
同一議題につきましては三回を超えて発言できませんので、次の質問に移ってください。
[ふくし
山ノブスケ君登壇]
65 ◯ふくし
山ノブスケ君 御答弁いただきました。
大変恐縮ですが、答弁の準備もいただいたことと思いますが、この後の項目につきましては、時間の都合で割愛させていただきたいと思います。
実は、児童憲章について見てみました。昭和二十六年五月五日に宣言されています。「われらは、日本国憲法の精神にしたがい、児童に対する正しい観念を確立し、すべての児童の幸福をはかるために、この憲章を定める」として、十二項目にわたって宣言されているわけですけれども、幾つか御紹介申し上げたいと思います。
すべての児童は、家庭で、正しい愛情と知識と技術をもって育てられ、家庭に恵まれない児童には、これにかわる環境が与えられる。
すべての児童は、就学のみちを確保され、また、十分に整った教育の施設を用意される。
すべての児童は、虐待・酷使・放任その他不当な取り扱いからまもられる。あやまちをおかした児童は、適切に保護指導される。
すべての児童は、身体が不自由な場合、または精神の機能が不十分な場合に、適切な治療と教育と保護が与えられる。
これは一部ですけれども、不変の宣言ではないかなと思っているところです。
今期での一般質問は今回が最後となります。私は、皆様の御指導をいただきながら、この議会での活動をさせていただきました。心から御礼申し上げます。
私の常とする姿勢は、振り向いたきのうに恥じないように、仰ぎ見るあしたに恥じないように、ついてくる世代に恥じないように、届かない世代に恥じないように、そういった決意で議会での活動をさせていただいております。
いよいよ選挙が迫ってまいりましたけれども、再びこの議場でお会いできることをお互いに期待して、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
66 ◯議長(柴立鉄彦君)次は、鶴薗真佐彦君に発言を許可いたします。
[鶴薗真佐彦君登壇](拍手)
67 ◯鶴薗真佐彦君 一般質問も三日目でございます。最終でございます。
皆さん、時節柄、朝は早くから辻立ち朝礼、昼は県議会、夜は県政報告など、世の中、働き方改革が叫ばれている昨今、大分お疲れのようでありますが、小一時間おつき合いいただきたいと思います。
県議として知事と対等に渡り合えるのは、この本会議場であります。平成七年初当選以来、三反園知事を含め、歴代四名の知事に、代表質問五回、一般質問二十九回の機会を得、今回が一般質問三十回目、新しい元号が話題になる中、議員生活をつなぐ平成結びの三十五回目の記念すべき登壇となりました。
議会人として、一歩離れ、二歩離れずの距離感を忘れず持ち続け、知事初め執行部と対峙し、質問、提言してきたつもりであります。実現したもの、継続中のもの、まだまだ訴え続けなければならないものとさまざまでありますが、県政の課題、地域の課題を通告に基づき質問させていただきます。
まず、今回、県が策定することとしている中山間地域等の集落活性化の指針についてであります。
私は、前期空白の四年の間、現場を見、聞き、中山間地域での生活にどっぷりつかる中、地域の生産力・体力が想定を超えて落ちてきている。高齢化・過疎化の中でも、自助、共助、公助と行政は簡単に言ってのけるが、特に共助の機能が急速に弱くなりつつあることを実感し、今期、このままではいけない、何とか再構築できないものかという思いで、中山間地域の振興、生産基盤を維持するための課題に取り組んでまいりました。
特に、本県の特徴を生かす政策として評価すべき県単事業の地域振興推進事業、特定離島ふるさとおこし推進事業などの柔軟な活用を訴えてまいりました。
平成二十八年第四回定例会一般質問では、自民党本部で中山間地域振興の検討が具体化しつつある動きも紹介し、いち早く国の流れを捉え、中山間地域の振興の検討を進め、本県に特化した課題を国計画の中に盛り込むべきと提案もさせていただきました。しかしながら、答弁はいつものとおり、国の動きを注視し、というものでありました。
その後、県議会で、平成二十九年度県議会政策提言としてまとめていただき、県に申し入れを行い、県において平成三十年度、中山間地域等集落活性化推進本部を設置し、指針の策定作業を進めてこられました。
昨年、自民党県連主催のセミナーで石田総務大臣の講演を聞く機会に恵まれました。所管大臣であり、地方への思いも強いところもありますが、「今後の情報社会の構築は地方から進めなければならない。そのことによって次世代格差の短縮効果が出てくる」という講演でありました。
十二月議会の所管委員会では、骨子案の議論に参画させていただき、みずからの感想、意見も披瀝させていただいたところです。また、一昨日の全協的勉強会では、地方こそ情報社会を先取りする必要性が望まれているとの話を聞きました。
そこで、知事にお尋ねします。
第一点は、この指針を策定するに当たっての、知事の思いを聞かせてください。
また、昨年、県が設置されたかごしま幸せプロジェクト委員会での意見はどのようなものがあり、本指針の策定に当たって参考として生かされたものがあるのか、お答えください。
第二点は、三十四市町村で開催された知事と語ろう車座対話や、知事みずからスピード感を持っていろんなところへ出向かれ、見聞された県民の生の声について、指針の策定に当たって、具体的に事務方に指示され、検討されたものがあるのか、披瀝ください。
第三点は、地域政策課内に集落活性化推進監を今回設置される狙いと、指針に基づき、新年度に具体的に進められるものがあれば、教えてください。
第四点は、中山間地域等の情報化に当たり、地方創生の観点からも、次世代の情報通信である第五世代移動通信システム、いわゆる5Gの地方での整備が重要であると考えますが、どのように地方へ展開されることになっているのか、お示しください。
[知事三反園 訓君登壇]
68 ◯知事(三反園 訓君)中山間地域等の集落活性化の指針策定に係る所感についてであります。
人口減少、少子高齢化等によりまして、特に、中山間地域等の集落においては、地域コミュニティーの崩壊、農地・森林の荒廃、さまざまな課題に直面しており、速やかな対応が必要であります。また、県議会の皆様方から、過疎・中山間地域の地域力強化についての政策提言もいただきました。
このようなことから、中山間地域等の集落において、将来にわたって安心して暮らし続けることができるような仕組みづくりに取り組まなければならないと思いました。そのためには、地域リーダーが育ち、NPOなど多様な主体が地域の担い手となり、それぞれが連携・協力して支え合うことによりまして、おのおのの地域の特性を生かした地域の活性化策に取り組むことが必要であると考えております。
中山間地域等の活性化なくして鹿児島の活性化はありません。中山間地域等の未来というものを何とかしたいという思いで、中山間地域等集落活性化推進本部を設置したところであります。有識者等との意見交換も行い、地域リーダーの育成、専門家を交えた住民の話し合い活動の必要性などの御意見をいただいたところであり、市町村や県民、各種民間団体など多様な主体との協働によりまして、地域の実情に即した施策に取り組んでいくための基本となるものとして、中山間地域等の集落の活性化に係る指針を策定することとしております。
また、かごしま幸せプロジェクト委員会においても、県内外の有識者から、幸せな地域をつくるためにはリーダーの育成が必要であると、人材育成が重要であるとの御意見を多数いただきました。
これまで、車座対話などさまざまな現場に行き、県民の皆様方から、人口減少、少子高齢化から来る不安の声、子育てや人材育成に関する御意見、農業、空き家、鳥獣被害に関する御要望など、生活に寄り添った多くの御意見、御要望を直接聞かせていただいております。中山間地域等の集落活性化がいかに必要かということを肌で感じてきました。
このような県民の皆様方や有識者等の御意見、県議会の皆様方の御意見などを踏まえまして、中山間地域等集落活性化推進本部を中心に検討を重ね、具体的には、共生・協働の地域社会づくり、地域リーダー等の育成、子育て支援、高齢者の生き生き支援、情報通信基盤の整備促進、空き家対策の推進、鳥獣被害対策、地域文化の継承、スマート農業の推進、移住・交流促進等に関する施策の基本的な方向性を指針に盛り込みたいと考えております。
また、集落の活性化をより一層推進するためには、それぞれの地域の特性を生かしながら、きめ細かな対応を行うことが必要だと考えております。新たに、集落活性化推進監を設置し、集落対策・過疎対策の推進、移住・交流の促進等に取り組んでいくこととしております。
県といたしましては、鹿児島に生まれてよかった、住んでよかった、そう実感できる鹿児島の実現を目指し、地域の主体的な取り組みを基本に、市町村等とも密接に連携を図りながら、集落の活性化の実現に向けて、各般の施策に総合的に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
69
◯企画部長(古薗宏明君)5Gの地方への展開等についてであります。
第五世代移動通信システム、いわゆる5Gは、超高速、超低遅延、多数同時接続などの特性を持ち、建設機械の遠隔操作や遠隔医療など、地域課題の解決や地方創生への活用が期待されているところであります。
5Gの展開につきまして、国は、全国への広がり・展開可能性、地方での早期サービス開始、サービスの多様性などについて評価する指標を設け、都市部・地方を問わず、需要の見込まれる地域での早期の5G展開の促進を図ることとしており、具体的には、ことし四月に予定されている周波数の割り当て後、二年以内に全都道府県でサービスが開始されることを見込んでおります。
県といたしましては、5Gの展開の前提となる光ファイバーの整備促進に取り組むとともに、中山間地域等にもきちんと5Gが展開されるよう、事業者の開設計画などの情報収集を行い、市町村と連携して、国や事業者に対し、早期整備について要望してまいりたいと考えております。
[鶴薗真佐彦君登壇]
70 ◯鶴薗真佐彦君 中山間地域の振興に関する指針の策定に当たっての知事の熱い思いを聞かせていただきました。
この問題は、県議会、執行部、共通して大きな課題と捉まえている本県の重要な政策の一つでございます。ぜひこの指針がしっかりと、今、過疎地、中山間地域に住んでいる、今後も住み続けなければならない宿命にある方々に大きな希望の光となるよう期待しておきたいと思います。
次に、エコパークかごしまについてお伺いします。
本県には、過去長い間、産業廃棄物の管理型最終処分場がなく、隣県に依存していました。この間、市町村、企業、企業団体などから、最終処分場の設置を望む強い要望を受け、公共関与による管理型最終処分場の検討が始まりました。
県議会でも全ての会派が、公共関与型施設整備の必要性を訴え、県内で発生する廃棄物は県内で処理するという基本的な考え方は、県民、県当局、県議会ともに共有されていました。これを受けて、県内で発生する廃棄物のみを受け入れる、廃棄物の県内完結型の施設としてエコパークかごしまが建設され、現在地で運用されているものと思っています。計画時目標は、年四万トン、十五年間で六十万立方メートルと記憶しております。
ごみ搬出も、リサイクルが日々進化し、当時と状況が変わってきていると思われる中、立地自治体の薩摩川内市を初め、離島の一般廃棄物の受け入れも行い、双方持ちつ持たれつの関係が出てきていると聞いています。
八年前、県議選告示を前にして東日本大震災が発生しました。津波被害による福島原発の惨状が日々刻々と報道される画像に便乗して、管理型最終処分場も危険なものであるかのようにあおった方々がいました。真正直な大衆を惑わす、大変残念な行為であります。
私は昨年十月、久しぶりにエコパークかごしまを訪問し、現状説明を受けました。強く印象に残っているのは、職員の皆さんが、地域への気配り、景観対策を絶えず念頭に置き、業務を行い、エコパークかごしまが運用されていることであります。
また、市外、県外の視察者が多く、特に、環境問題で課題山積の東南アジアからの視察もあることにびっくりしました。環境学習を含めた観光視察地になれるのではないかと思うことでした。なってほしいものです。県の考えを披瀝いただきたいと思います。
廃棄物処分場に関し、世界の処分技術を研究され、この道の権威者である樋口壮太郎福岡大学教授は、「最終処分技術」という著書の中で、エコパークかごしまを世界に誇れる施設として紹介されています。国内でも数少ない屋根つきの管理型最終処分場ともお聞きします。これらの評価をもっと売りにしていくべきと思います。
しかしながら、今日に至るまで、公共関与による最終処分場建設は、その必要性、重要性は認められつつも、県内候補地については、地域の方々の理解がなかなか得られず三転四転し、やっと現在の場所に落ちついた経緯があります。
十二年前の県議選終了後、突如として候補地として発表されたこともあり、川永野自治会を初め、周辺四自治会の皆さんからすれば寝耳に水、産業廃棄物という言葉から湧くイメージは迷惑施設であり、不安な中、地域で賛否両論入り乱れる中で説明を聞き、県外視察も実施し、理解しながら建設が進んでいった経緯があります。
私自身、旧川内市を含めた合併で、候補地場所も自治会名も全然わからない状況でした。ただ、その経緯の中、ある住民の方が、「ここは、人口一万人ぐらい住む大きな隈之城コミュニティーの中で、一番小さい地区であるけれども一番まとまりのある地域でした」と話された言葉は、今でも記憶に鮮明に残っています。この言葉を紹介しながら、県当局に地域振興策を求める質問もしました。
県議会に在職している限り、この重い言葉は背負っていくつもりであります。なぜなら、私自身生活しているコミュニティーは、薩摩川内市四十八コミュニティーの中、二番目に小さい、住民百名を切った中山間地域のコミュニティーであり、共助を自他ともに認めるまとまりのある地域に住み、共助の重要性を肌感覚で理解しているからであります。
県は、約束した地域振興策は、関係する基金を流用してでも早急にやるべきではないですか。喉元過ぎれば熱さ忘れの感覚ではいけない。早く地域振興策を完成させるべきと思います。
迷惑施設と思われたエコパークかごしまが、関係者の努力で先ほど紹介しましたような施設に今日、生まれ変わっています。まさに災い転じて福となる地域に仕上げたいものです。
そこでお尋ねします。
第一点は、エコパークかごしまの搬入状況について、目標、実績、廃棄物の種類、一般廃棄物の受け入れ、その相乗効果などを示してください。
第二点は、開業以来のエコパークかごしまへの視察の状況、PRの取り組みを示してください。
第三点は、エコパークかごしまの安心・安全への取り組みと、その評価をどのように生かす考えか、伺います。
第四点は、エコパークかごしまに関連した地域振興策の実施状況と今後の決意をはっきりとお答えください。
71 ◯環境林務部長(藤本徳昭君)エコパークかごしまについてお尋ねがありました。
まず、搬入状況についてであります。
エコパークにおきましては、埋め立て期間の十五年間で六十万トンの廃棄物を受け入れる計画であり、本年一月末までに燃え殻や汚泥、瓦れき類など、約十二万八百トンを受け入れております。
県環境整備公社が設定いたしました今年度の搬入予定量約三万七千トンに対し、一月末までの搬入量は、産業廃棄物約二万七千トン、市町村の燃え殻等約九千六百トン、計約三万六千六百トンとなっており、受け入れ予定量を確保できる見込みであります。
また、県廃棄物処理計画においては、本県における平成二十七年度の管理型最終処分場での処分量を三万五千トンと推計しており、この推計値をもとに単純に直近三年間、具体的には平成二十八年四月から本年一月までの期間でありますが、この間のエコパークの受け入れ割合を試算いたしますと、八割ということになります。
なお、エコパークでは、地元の薩摩川内市、離島に所在する喜界町、十島村及び三島村からの要請に基づき、それぞれの地域における個別の事情やエコパークの埋立容量などを総合的に勘案した上で、平成二十八年度から燃え殻等を受け入れているところであります。
この受け入れは、各市町村における一般廃棄物の処理や、県外処分場までの長距離輸送に伴う環境負荷の低減等はもとより、公社の安定した運営にも資するものであると考えております。
次に、視察状況とPRについてであります。
エコパークでは、地元を初め、多くの方々に先進的な機能を備えた安心・安全な施設であることを御理解いただくため、積極的に視察を受け入れております。平成二十七年一月の開業以来、視察者数は延べ五千二百人に及び、中国や韓国など海外からの視察もあったところであります。
視察者からは、よく考えられたすばらしい施設である、空気がきれいで処分場のイメージが変わった、小・中学生の若い人たちにも見てもらいたいなどの感想をいただいております。
また、施設の建設や維持管理等について助言いただいております専門家からも、管理型最終処分場としては全国でも数少ない覆蓋施設を有するほか、多重の遮水工を初めとする安全のためのさまざまな構造を有しており、国内はもとより、世界でも最先端の施設であるとの評価をいただいております。
公社においては、こうした感想や評価も踏まえ、今後、先進的な機能を備えた安心・安全な施設であることをわかりやすく解説した資料を作成し、積極的なPRに努めることとしております。
また、薩摩川内市教育委員会との連携による小学生を対象とした講座の開催を計画するなど、環境学習の場としての活用も図りたいとしております。
安心・安全な運営を行うための取り組みについてであります。
県におきましては、エコパークに関して、地域住民の方々の安全確保及び生活環境の保全を図ることを目的として、関係自治会の代表、学識経験者、薩摩川内市を構成員とする安全監視委員会を平成二十三年五月に設置しております。
この委員会におきましては、建設工事の段階から、その施工状況等を説明いたしますとともに、開業後においては、廃棄物の埋め立て状況や地下水の水質調査結果等を報告し、御意見をいただいているところであります。
委員からは、「施設の維持管理は問題なく運用されている」、「細かい配慮をしながら運営を行っている」などの評価をいただいております。
県におきましては、今後とも、公社に対し、同委員会での御意見やアドバイスを踏まえた安心・安全な施設運営を行うよう指導してまいります。
最後に、地域振興策についてであります。
地域振興策については、地元の要望等を踏まえ、これまで、エコパーク周辺の道路や河川、上水道の整備などを進めてきております。
このうち、搬入路につきましては、これまでに約千八百メートルの改良を終えており、未整備区間の約百メートルについては、近日中に工事に着手することとしております。
準用河川阿茂瀬川の改修については、現在、阿茂瀬橋周辺部の整備を進めているほか、上流部においては用地買収等を行っているところであります。
また、周辺部の県道について順次工事を進めているほか、旧国道三号と市道をつなぐ大型車両迂回路については、薩摩川内市が用地交渉を行っているところであります。
県といたしましては、エコパークの安心・安全な運営はもとより、地域住民の方々のよりよい生活環境の整備が重要であると考えており、今後とも、薩摩川内市とも連携を図りながら、地域振興策の推進に取り組んでまいります。
[鶴薗真佐彦君登壇]
72 ◯鶴薗真佐彦君 エコパークかごしまについては、前向きにどんどん取り組む姿勢が伝わる答弁をいただきました。どうぞスピード感を持って進めてください。
ただ、地域振興策については、県が主体的に実施する事業、薩摩川内市が実施する事業に県が補助を出してやる事業がございます。薩摩川内市が実施する事業が若干おくれているような感じがいたしております。先ほど申しましたように、エコパークかごしまでは薩摩川内市の一般廃棄物を受け入れ、市はエコパークかごしまを県と持ちつ持たれつの関係の中で活用されているわけですから、市にも事業の促進を求めて、一日でも早く、当時計画された地域振興策が完成するように努めていただきたいと思います。
県も、県民も必要性は十分理解した施設であります。状況も、環境もよい方向に変わりつつあります。元号も変わり、新たな時代を迎えます。県民と県がボタンのかけ違いで争っていてもどうしようもありません。双方新たな目標に向かって、ともに一歩下がって二歩進む努力をされるようお願いしておきます。
次に、農林水産物の輸出促進等について伺います。
国際的な経済連携協定、TPP11協定が昨年十二月三十日に、また、日EU・EPAが二月一日に発効しました。日米物品貿易協定、いわゆるTAGの交渉が今後開始される見通しであるなど、急速に進展している状況にあります。
県では農林水産物輸出促進ビジョンを策定し、成長著しいアジア諸国、アメリカ、EUなどの重点国・地域に対する鹿児島黒牛やかごしま黒豚、ブリ、カンパチなどの鹿児島の素材の輸出拡大を目指し、
オール鹿児島で取り組みを進める攻めの農業を展開されているところであります。
こうした中、さきの地元紙に、鹿児島の黒シリーズ、黒さつま鶏を活用した生ハムスライスが、二〇一八年度優良ふるさと食品中央コンクールにおいて、最高賞の農林水産大臣賞を受賞した記事が掲載されていました。今後、香港の富裕層向けに輸出も計画されているようであります。
知事は施政方針で、輸出拡大に向けた取り組みを強化するため、「農政部に新たに、かごしまの食輸出戦略総括監を設置し、あわせて同部に、かごしまの食輸出戦略室と、かごしまの食ブランド推進室を設置する」と述べられました。攻めの農業を具現化するための機構改革と評価するものであります。
一方で、生産基盤の強化など、守りを固めることも述べられておりますが、国内では、昨年、岐阜県で発生した豚コレラが終息するどころか隣県に拡大し、野生イノシシにワクチンを投与という歴史上初めての状況をつくるまでになってしまいました。
私は、今回、県段階での家畜防疫体制に問題があることが如実に出てきたと思っています。知事は、畜産県鹿児島のトップとして、この現状を憂い、ほえなきゃいかんと思います。本県の家畜防疫体制は全国トップであります。自信を持って国に言うべきことは言ってもらって、かち取るものはかち取っていただきたいのであります。
岐阜県とは長年、姉妹県であります。このようなときにこそ本県の得意とする分野の交流を図って、家畜防疫体制などの取り組みを参考にしてもらう、そういった取り組みをすべきではないですか。
昨年九月議会で指摘し、質問したことと同じような内容になりますが、今回も、本県畜産の防疫体制のかなめと言える姶良家畜保健衛生所の移転改築の検討が、予算としてどこにも出てきておりません。守りを固めるということはどういうことなのか、具体的に説明していただきたいのであります。
また、我が国の知的財産とも言える和牛の精液が海外へ流出するというところで摘発され、相次いで中国人観光客の手荷物土産品の中から豚肉加工品が発見され、アフリカ豚コレラのウイルスの遺伝子が確認されました。アフリカ豚コレラや口蹄疫などの発生源が持ち込まれたら大変なことです。国は新年度、出入国防疫の強化を図る予算を措置するようであります。
そこでお尋ねします。
第一点は、かごしまの黒シリーズ、黒さつま鶏の生産振興、地鶏としての評価、輸出促進に向けた取り組みを教えてください。
第二点は、農政部に新設される、かごしまの食輸出戦略総括監、かごしまの食輸出戦略室とかごしまの食ブランド推進室のそれぞれの役割、目指すべきところを具体的に教えてください。
第三点は、国内で発生した豚コレラによる黒豚肉輸出への影響、終息しない豚コレラ対策で、野生イノシシへのワクチン投与により懸念される問題を説明してください。
第四点は、知事が「守りを固める」と言われる中で、畜産防疫体制のかなめであり、会派を超えて質問されている姶良家畜保健衛生所の移転関係予算が見送られ続ける理由及び、本県の港や空港における水際防疫の取り組みについてお答えください。
次に、水田フル活用の取り組みについて伺います。
啓蟄を迎え、あちらこちらで田んぼの作業が見られるようになってきました。日本は瑞穂の国とよく言ったもので、私たちに春夏秋冬の移りとともに、すばらしい季節の景観を当たり前のように、ひとしく自然の癒やしを与えてくれるのは水田農業です。日本列島どこでも営まれている農業です。
細川政権で米の自由化に踏み切ったものの、自民党政権下にあっては、国益として対外経済交渉から守ってきました。長い間の減反調整の米政策にかわり、平成二十六年から水田フル活用の取り組みが始まりました。この中で飼料用米の制度が始まりました。
本県は、米の消費県ですし、年間八万トン、現在では年十万トンの消費量減が続く中、水田フル活用の飼料用米への取り組みが本県の主要な農業政策となり得るのか、長続きしない政策という疑問の声も聞かれました。
私は、水田を水田としていつでも利活用できる状況下における、しかも、本県の和牛子牛生産や肉用牛肥育と連携できる政策である。本県特有の耕畜連携政策として強力に進めるべきであると、当局に求めてまいりました。みずからセミナーの開催にも取り組んでまいりました。
主産県を中心に全国的にも飼料用米の取り組みは進められ、米の価格も安定してきたように思えるわけです。この事業は、今後も国益を維持していくための政策として継続していかなければなりません。
一方で、高齢化、農業従事者の不足の中、これまで、水土里サークル活動など農家や地域の共同作業の中で実施してきた、用水路や井堰の管理も難しくなりつつあります。このため、水管理の労力を軽減するための用水路のパイプライン化や、井堰の自動化などを早急に進めなければ、治水機能の維持や、二千年来続いてきた農村の景観を保つことのみならず、担い手への集積すら厳しくなりつつあります。
民主党政権でばっさり削られた国の農業農村整備事業予算も少しずつ増額され、補正予算なども含めた総額では回復したものの、当初予算では回復するまでに至っていません。
地域を回ると、将来のためにも、担い手への集積や基盤整備を進めなければいけないと意欲を持っている高齢者の方々が、農業に従事されています。ここ数年が勝負だと強く感じております。
昨年十月に自民党県議団有志で構成するかごしま農業農村整備・水土里の会が、農林水産省との意見交換会を開催し、私も参加して、こうした地域の実情について訴えてきたところです。
そこでお尋ねします。
第一点は、本県では、これまでどのように水田フル活用に取り組んでこられたのか、水田の利用や荒廃農地の状況とあわせてお示しください。
第二点は、全国の水田フル活用の取り組みにおいて、主食用米の作付状況と主食用米の価格を対比した推移をお示しください。
第三点は、米の直接支払交付金が廃止されたところでありますが、今後とも、棚田など中山間地域を含む、本県の水田農業の維持を図るための取り組みについてお示しください。
第四点は、水管理の省力化に向けた基盤整備の取り組みについて示してください。
73 ◯農政部長(本田勝規君)黒さつま鶏の振興と、地鶏としての評価についてでございます。
黒さつま鶏は、生産性が高くブロイラーより食味がすぐれる地鶏として、平成十八年度に県畜産試験場において開発したところであります。平成二十三年三月から出荷が始まり、平成二十九年度の出荷羽数は約二十一万羽となっております。
県におきましては、黒さつま鶏の安定的な生産を図るため、県畜産試験場において飼養している原種鶏の横斑プリマスロックを増羽するとともに、年間四十万羽のひな供給が可能となるよう、県内二カ所の種鶏場の整備を支援してきたところであります。
また、畜産試験場の研究成果をもとに、黒さつま鶏飼養マニュアルを改訂し、飼料用米の給与による食味性にすぐれた地鶏肉の生産を推進しております。
黒さつま鶏の認知度向上を図るため、平成二十九年度から、県地鶏振興協議会と連携して、大消費地である東京や大阪での食品展示会・商談会に参加し、試食宣伝などを行ってきたところであり、バイヤーからは、地鶏は歯ごたえがあってかたい印象だが、やわらかくてジューシーだ、生ハムやジャーキーなどいろいろな商品があり、おもしろいなど、高い評価を受けております。
次に、黒さつま鶏の輸出促進についてでございます。
県におきましては、これまで、県内の食肉輸出事業者等から成る県食肉輸出促進協議会と連携して、香港での食品展示会や商談会に参加し、黒さつま鶏のしゃぶしゃぶ等の料理の提案やPR活動をするなど、黒さつま鶏の海外における認知度向上に努めるとともに、香港、マカオ、台湾において、黒さつま鶏のロゴマークの商標登録を取得しております。
黒さつま鶏の輸出につきましては、平成二十九年度から、南九州市の食鳥処理施設が香港向けに輸出しており、さらに、霧島市の食鳥処理施設において、昨年八月に香港向けの輸出認定を新たに取得し、本年三月中の輸出に向けて準備を進めております。
今後とも、県農林水産物輸出促進ビジョンに基づき、県地鶏振興協議会や関係機関・団体と一体となり、黒さつま鶏の海外での認知度向上と輸出促進に努めてまいります。
次に、農政部に新設される総括監及び室の役割等についてでございます。
かごしまの食の輸出促進やブランド力の強化等の取り組みを戦略的に進め、競争力をさらに高めていくため、新年度新たに、かごしまの食輸出戦略総括監を設置することとしております。
あわせて設置するかごしまの食輸出戦略室では、TPP11協定発効等を踏まえ、農林水産物輸出促進ビジョンに基づく本県農産物のさらなる輸出拡大に向けた取り組み等を戦略的に推進することとし、かごしまの食ブランド推進室では、かごしまブランドの推進、食品加工、六次産業化、食の安心・安全の取り組み等を行うこととしております。
今後、かごしまの食輸出戦略総括監が中心となり、販売力の強化に向けた戦略的な取り組みを関係機関・団体一丸となって、
オール鹿児島で進め、稼げる農林水産業の実現に向けて努めてまいります。
次に、国内で発生した豚コレラによる黒豚肉輸出への影響についてでございます。
本県の黒豚肉につきましては、これまで、シンガポール、香港、台湾、マカオの四つの国や地域に向けて輸出されております。平成二十九年度の黒豚肉の輸出量は四十三トンで、輸出額は約五千万円となっております。
国内における豚コレラの発生に伴い、現在、台湾への輸出が停止されておりますが、県内輸出事業者からは、輸出できない黒豚肉を国内流通に仕向けるなどの対応により、特段の影響はないと聞いております。
しかしながら、その措置が今後も継続した場合、輸出先との取引が輸出再開後においても継続できるか懸念され、国が実施している台湾との二国間協議の進展を注視してまいります。
次に、野生イノシシへの豚コレラワクチン投与の懸念される問題点についてでございます。
野生イノシシへの豚コレラワクチン投与につきましては、国が、豚コレラウイルスの拡散防止対策のため、野生イノシシの感染が確認された地域に限定して散布することを決定したところであります。
野生イノシシにワクチンを投与しても、農場の飼養豚が野生イノシシと適切に分離されていれば、清浄性の認定に影響しないとされており、豚肉輸出への影響はないものと考えております。
次に、姶良家畜保健衛生所の移転関係予算についてでございます。
家畜保健衛生所につきましては、昭和四十年代前半までに整備され、約五十年以上が経過し、施設の老朽化や周辺の宅地化などが進んできていることから、平成十三年度には
鹿児島中央家畜保健衛生所、平成二十一年度には肝属家畜保健衛生所の移転整備を行ったところであります。
姶良家畜保健衛生所につきましては、特に周辺の宅地化が進んできていることから、隣接地との障壁を設置したり、検体をできるだけまとめて焼却し、焼却炉の稼働日数を減らすなど、周辺環境への配慮に努めるとともに、機能強化を図るため、必要な検査機器の整備を行っているところであります。
県といたしましては、現在、家畜保健衛生所の現状と課題について整理しながら、検討を行っているところであります。
また、国に対して、肉用牛振興対策推進全国協議会を通じて、バイオセキュリティー機能の高度化、疾病診断の迅速化等を確保するための施設整備への支援などを提案しているところであり、引き続き、県の財政状況なども踏まえながら、家畜保健衛生所の移転整備について検討してまいります。
次に、県内の港や空港での水際防疫の取り組みについてでございます。
中国等では、口蹄疫やアフリカ豚コレラなどが続発していることから、国においては、国内への侵入防止を図るため、港や空港での入国者の靴底消毒、ゴルフシューズ等の手荷物消毒、動物検疫カウンターでの携帯品検査、家畜防疫官による口頭質問など、水際防疫を強化しております。
県では、鹿児島空港において、国と連携しながら、海外渡航者に対してチラシを配布し、農場などへの立ち入りを控えることや、肉製品の国内持ち込み禁止などを啓発しているところであります。
今後とも、関係機関・団体と一体となってこれらの取り組みを進め、海外悪性伝染病の侵入防止対策に万全を期してまいります。
次に、本県における水田フル活用の取り組み等についてでございます。
県では、需要に応じた米の生産や水田の有効活用を図る観点から、県水田フル活用ビジョンに基づき、売れる米づくりに加え、飼料用米、加工用米等の生産拡大や、水田における野菜などの産地づくりに取り組んできたところであります。
特に、飼料用米、加工用米の生産拡大に向け、生産コストの低減や多収性品種を普及・拡大するための実証圃の設置、地域の合意形成に基づく圃場の団地化・規模拡大の取り組み支援、県段階で設定できる産地交付金の活用、生産者と実需者のマッチング支援など、さまざまな取り組みを推進してきたところであります。
これらの取り組みにより、平成三十年産の作付面積は、平成二十六年産と比較して、飼料用米が約二・七倍、WCS用稲が約一・五倍、加工用米が約一・三倍と増加しているところであります。
水田の荒廃農地につきましては、重点的に解消を進めることにしている農用地区域内において、平成二十六年から二十九年までの四年間で、四百五十七ヘクタールが農地に再生されている一方、高齢化の進行等により六百四十五ヘクタールが新たに発生しております。
このような中におきましても、水田で飼料用米やWCS用稲等を作付することは、荒廃農地の発生防止・解消にもつながっていると考えており、今後とも、このような水田フル活用の取り組みを推進してまいります。
全国における平成三十年産の主食用米の作付面積は百三十八万六千ヘクタールと、平成二十六年産に比べ八万八千ヘクタール減少し、平成三十年産米の平成三十年十二月の全銘柄平均価格は、六十キロ当たり一万五千六百九十六円と、平成二十六年十二月に比べ、三千六百円程度上昇しております。
次に、中山間地域を含む水田農業の維持に向けた取り組みについてでございます。
人口減少等により米の消費の減少が見込まれる中、県では、主食用米につきましては、需給バランスを確保するため、地域ごとに設定する生産の目安等の情報を提供するとともに、収量・食味にすぐれるあきほなみ等の作付拡大による、売れる米づくりを推進しているところであります。また、中山間地域では、寒暖差が大きく、山水や湧水など良質な水資源を豊富に有するという自然条件を生かした、特色ある米づくりなどを支援しております。
地場産業から需要の高い加工用米や飼料用米については、引き続き、産地交付金を活用した生産拡大を図るなど、水田フル活用の推進にも取り組むこととしております。
今後とも、関係機関・団体と一体となり、需要に応じた米づくりや水田の高度利用を推進し、稲作農家の経営安定と本県の特色を生かした生産性の高い水田農業の確立に努めてまいります。
最後に、水管理の省力化に向けた基盤整備についてでございます。
水稲栽培におきましては、水路の土砂上げ、草刈り、見回り等の水管理に多大な労力を費やしており、生産性の高い水田農業の確立を図るためには、水管理の省力化を進めることが必要であり、これまで、各種農業農村整備事業を活用しながら、用水のパイプライン化や自動給水栓の設置、取水堰の自動化等の基盤整備を進めてきたところであります。
今後、高齢化が一層進む中で、将来にわたって地域の水田農業を維持していくためには、さらなる事業推進が必要であり、県といたしましては、関係機関・団体と一体となって、県開発促進協議会などを通じ、国に対し予算の確保を要望してまいります。
74 ◯鶴薗真佐彦君 農政部長に一点、今回、設置されるかごしまの食輸出戦略総括監について、輸出問題は、単に農政部所管のみならず、ブリ、カンパチを含め他の部門にも関係するものがあるわけですが、この総括監は、そこも含めた輸出戦略を任される形の機構改革と理解すればよろしいですか。
75 ◯農政部長(本田勝規君)今回設置されます総括監の担当につきましては農畜産物になっておりますが、農林水産物輸出促進ビジョンに基づいて推進本部が設置されておりますので、横の連携をとってやっていきたいと思っております。
76 ◯鶴薗真佐彦君 知事にも質問しますが、海外経済交流促進等特別委員会で、特にこの輸出問題は、どうしても県は縦割り行政の中で、部が所管した中で取り組みが進められ、他部署との連携、情報交換がなされていないんじゃないかというのが、再三各議員からも指摘されておりました。新しく設置される総括監でありますので、ぜひそこには一工夫、二工夫入れて。
オール鹿児島というのは、知事、こういうことをいうんですよ、今はオール農政部、オール商工労働水産部、そういうことなんですよ、議員から見ればね。
だから、そういう取り組みをぜひしていただきたいと思います。
あと、九月議会で家畜保健衛生所の問題を質問したときに、知事に、家畜保健衛生所に行かれたことはありますかという問いかけをさせていただいたんですが、これまで、家畜保健衛生所に出向かれて職員とお話しされたことがあるのかないのか、その一点だけ。
77 ◯知事(三反園 訓君)今、調整中でございますので、必ず近いうちに訪問させていただき、現状を把握するとともに、築五十年ということでありますが、畜産というのは鹿児島の宝でございまして、輸出促進に取り組むためにも必要だと思いますので、さまざまな面について検討させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
[鶴薗真佐彦君登壇]
78 ◯鶴薗真佐彦君 知事には嫌な質問を。前もって秘書課長から、調整して必ず行きますという説明は受けておりました。
私がここであえてそれをお聞きしたのは、この豚コレラの状況について、畜産課の職員と語れば危機感を持っているんですよ、担当職員ですから。ただ、部長の答弁を含めて、本当に危機感を持っているのかなと。ワクチンを打つということは、抗体を打つということなんです。そのイノシシがもし鹿児島に来るようなことになれば、豚コレラの抗体を持ったイノシシがその辺で動くということなんですよ。これは大変なことです。
私が、これを県段階でやることに問題があると申し上げたのは、鹿児島県はちゃんと、畜産県だから、それなりの意識も持って防疫対策もやっているんです。全国のいろんな畜産関係の人たちと話をすると、よその県には、畜産を営みながら畜産課がない県もあるんですよ。レベルが全然違うんです。意識が全然違うんです。
だから、岐阜県は、鶴丸城の御楼門建設に当たってケヤキをいただいたり、長い間、姉妹県であるけれども、それはそれとして、鹿児島県のノウハウをすぐ岐阜に行って教えるべきではないのという意味を込めて、九月議会で質問したんですよ。
誰が見ても、完全に初動対応を間違ったんです。今回愛知県は、豚コレラにかかっている豚を出荷しているんですから。それが大阪とか隣県に派生しているわけです。とても考えられない状況が起こって、農水省も慌てて、つい先日、報告義務を強化する通達を出したんです。それぐらいの状況下にあるということをしっかりと意識を持って取り組んでいただきたいと思っております。
それを知事、中央に行って物申せるのは知事なんですよ。ですから、家畜保健衛生所の職員から生の声を聞いて、それを自分のものとして農水省に行って、全国を鹿児島の水準に合わせるぐらいの意気込みを持ってもらいたいという思いから、行ってくださいと、今回も行きましたかと言ったんです。
私は、昨年の九月、鹿屋で養豚経営されている女性の経営者を集めて、懇談会をしました。すばらしい意見を持っていました。その方が言われたことですが、大隅半島は、経営者によっては宮崎にも農場を持っている方もおられるんです。ですから、宮崎の農場は宮崎の家畜保健衛生所の指導管轄になるんです。鹿児島は厳しいと言われましたよ、きついと。だけど、それが今の鹿児島の畜産を守っているんだという自負を持ってもらいたいということであります。
さて、三月を迎え、二十九日には、新しい時代に向けた私どもの県議会議員選挙が告示されます。今回御勇退を表明された柴立議長、永田議員、持冨議員、新たな挑戦に臨まれるまつざき議員、大変御苦労さまでした。
また、長年職員として県民のためにお勤めいただき、三月をもって退職される、議場におられる職員の皆様はもちろんのこと、この瞬間も現場でしっかりと県民に向き合って頑張っておられる県職員、教職員、警察官の皆様、本当に御苦労さま、ありがとうございました。
これからもますますの御健勝にて御活躍されることを祈念申し上げ、私の全ての質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
79 ◯議長(柴立鉄彦君)これで、本日の日程は終了いたしました。
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80 △ 日程報告
◯議長(柴立鉄彦君)三月四日は、午前十時から本会議を開きます。
日程は、一般質問及び議案の委員会付託であります。
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81 △ 散 会
◯議長(柴立鉄彦君)本日は、これで散会いたします。
午後三時十五分散会
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