平成57年 6月 定例会┌──────────────────┐│ 第 五 号(六月十五日) │└──────────────────┘ 昭 和 五十七年
熊本県議会六月
定例会会議録 第五号――
―――――――――――――――――――――――――昭和五十七年六月十五日(火曜日
) ―――――――――――――――――――― 議事日程 第五号 昭和五十七年六月十五日(火曜日)午前十時開議第一
一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について
) ――――――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第一
一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について
) ―――――――○―――――――出席議員(五十四名) 西 岡 勝 成 君 深 水 吉 彦 君 阿曽田 清 君 橋 本 太 郎 君 松 家 博 君 岩 下 榮 一 君 下 川 亨 君 林 田 幸 治 君 三 角 保 之 君 岩 永 米 人 君 児 玉 文 雄 君 山 本 秀 久 君 古 本 太 士 君 渡 辺 知 博 君 八 浪 知 行 君 杉 森 猛 夫 君 鏡 昭 二 君 高 田 昭二郎 君 柴 田 徳 義 君 広 瀬 博 美 君 浜 崎 三 鶴 君 古 閑 一 夫 君 魚 住 汎 英 君 馬 場 三 則 君 木 村 健 一 君 平 川 和 人 君 北 里 達之助 君 金 子 康 男 君 荒 木 斉 君 井 上 栄 次 君 竹 島 勇 君 今 井 洸 君 米 原 賢 士 君 古 閑 三 博 君 井ノ上 龍 生 君 永 田 悦 雄 君 宮 元 玄次郎 君 甲 斐 孝 行 君 八 木 繁 尚 君 幸 山 繁 信 君 池 田 定 行 君 小 材 学 君 岩 崎 六 郎 君 沼 川 洋 一 君 水 田 伸 三 君 杉 村 国 夫 君 今 村 来 君 浦 田 勝 君 小 谷 久爾夫 君 橋 本 盈 雄 君 増 田 英 夫 君 倉 重 末 喜 君 中 村 晋 君 酒 井 善 為 君欠席議員(なし
) ――――――――――――――――――――説明のため出席した者 知事 沢 田 一 精 君 副知事 藤 本 伸 哉 君 出納長 松 下 勝 君 総務部長 原 田 富 夫 君
企画開発部長 岡 田 康 彦 君
福祉生活部長 山 下 寅 男 君 衛生部長 清 田 幸 雄 君 公害部長 山 内 新 君
商工観光労働 部長 八 浪 道 雄 君 農政部長 坂 本 清 登 君
林務水産部長 大 塚 由 成 君 土木部長 梅 野 倫 之 君
有明地域開発 局長 伴 正 善 君
公営企業管理者 松 永 徹 君
教育委員会 委員長 本 田 不二郎 君 教育長 外 村 次 郎 君
警察本部長 廣 谷 干 城 君
人事委員会 事務局長 下 林 政 寅 君 監査委員 緒 方 隆 雄 君 ――――――――――――――――――――
事務局職員出席者 事務局長 川 上 和 彦
事務局次長 衛 藤 成一郎 議事課長 小 池 敏 之
議事課長補 佐 辻 璋 主幹 山 下 勝 朗 参事 光 永 恭 子 ―――――――○――――――― 午前十時二十五分開議
○副議長(
井ノ上龍生君) これより本日の会議を開きます。 ―――――――○―――――――
△日程第一
一般質問
○副議長(
井ノ上龍生君) 日程に従いまして日程第一、昨日に引き続き
一般質問を行います。
広瀬博美君。 〔
広瀬博美君登壇〕(拍手)
◆(
広瀬博美君) おはようございます。公明党の広瀬でございます。公明党を代表しまして
一般質問を行います。知事初め執行部の明快なる答弁を期待しまして早速質問に入らせていただきます。 まず最初に、
地熱発電所の立地促進についてお尋ねいたします。 わが国は、
エネルギーの約七〇%を石油に依存し、その九〇%以上を海外から輸入しています。しかも、その輸入先は、イラン・
イラク紛争で政情不安な中近東に偏っています。今後、一時的な石油の需給緩和はあっても、長期的には石油の確保はますますむずかしくなることが予想されます。このような厳しい
エネルギー情勢に対処するためには、石油にかわる
エネルギーの開発、特に純
国産エネルギーの開発は、国、地方を問わず積極的に進めなければならない問題だと思います。
国産エネルギーの中で、特に原子力に次ぐ第四の火として注目されているのが
地熱エネルギーの開発であります。地球の内部から地表を通って宇宙空間へ放射される
地熱エネルギーの量は、
太陽エネルギーの五千五百分の一で、人類の一年間に使用する総
エネルギー量の五・五倍に相当すると言われております。
地熱エネルギーは純国産で、しかも豊富な
エネルギーです。わが国には六十五の火山があり、それを含め二百カ所以上の地熱地帯があります。
地熱包蔵量に恵まれているわが国としては、地熱はきわめて有利な
国産エネルギーであり、安定性もあり、利用率、経済性にすぐれています。 わが国における
地熱開発の歴史は、大正七年、
山内万寿治海軍中将が、動力、燃料の将来に備えるための
地熱開発を企画、日本各地で火山や温泉の実地調査を行い、翌大正八年、別府市で
ボーリングに成功したことに始まります。その後、本格的な地熱の開発は、昭和二十三年に
工業技術院が別府市で試錐に成功、これを利用して昭和二十六年には三十キロワットの発電に成功しております。 一方、本県の
地熱開発は、昭和二十六年、小国地方を主体に、南阿蘇を含めた阿蘇全域の観測を通産省の指導で実施したのが始まりです。その後、本格的な地熱の開発は昭和四十年から行われました。その間十四本の
ボーリングに成功しております。その結果、小国町の岳の湯、はげの湯地区において
地熱開発がきわめて有望であるという貴重なデータが得られたわけであります。 そのデータを紹介しますと、まず
地熱発電についてでありますが、五十六年度に
地熱発電所調査井掘削事業を行いました。この事業は、小国町岳の湯地域における地熱賦存の広がりを把握し、
地熱開発の
規模決定等に資するため、約一億七千万円の事業費で千五百メートルの
ボーリングを実施したところ、坑底温度二百二十三度の優勢な蒸気熱水の存在が確認されたわけであります。四月十四日現在、蒸気量一時間に八・五トン、熱水量一時間に二十トンとなっています。 次に、GSR三号井の場合は、十年間も噴出を続けていましたが、蒸気の衰えは全く見られないとのことです。また環境に対しても特に問題はないと報告されているところであります。調査の結果は、この地域の発電規模としては一万キロから二万キロの発電所が立地可能だと報告されております。 次に、熱水の有効利用についてでありますが、水産養殖ではウナギとテラピアの養殖に成功、将来は
アルゼンチンタニシの養殖をしたいとしています。農業では、桑苗の生産試験と
ハウス園芸に成功しています。そのほか、地域暖房として、老人憩の家に給湯を行っています。利用法は実に多岐にわたっております。 ここで、他県の地熱利用の実例を紹介しますと、岩手県の松川の場合、生産井からの蒸気を湧水と熱交換し、七十度の熱水を造成し、付近の旅館及び六キロ離れた旅館、別荘の暖房、浴用に利用されています。大分県の大岳、八丁原でも、やはり発電に伴って生産される熱水を河川水と熱交換し、七十度の熱水を造成し、一キロ離れた旅館街の暖房、浴用に利用されています。また、北海道の定山渓では、温泉街の市道約千二百メートル、八千五百平方メートルの地下にパイプを埋設し、道路融雪に利用されています。そのほか、北海道、鹿児島、静岡県では、ウナギ、コイ、アワビの養殖、ワニの飼育なども行われています。また温室暖房として、トマト、キュウリ、バナナ、メロン、
パパイヤ等の栽培は日本各地で行われています。また外国においても、多くの国で地熱の直接利用が実施されています。アイスランドでは、全
エネルギー需要の八割を地熱で賄っており、
首都レイキャビクでは地熱による地域暖房と給湯が九九・五%まで普及していると言われています。
太陽エネルギーの不足分を地熱でカバーしているということであります。地熱は、発電だけではなく、このように多目的に利用できるのが大きな特長であります。本県の場合も、
地熱発電を初めとして、低温倉庫とかあるいは冷房、さらには
観光事業等への利用など、温度の変化に応じて効率的な利用が期待できるところであります。 また、これまでの調査の総括として、
地熱開発調査資料総合解析調査は、次のように結論を出しています。一、岳の湯、はげの湯地区においては有力な
地熱貯留層の存在が確認された。二、生産井は深度八百メートル前後のもので比較的低廉な蒸気が得られる見通しである。三、当面一万キロ級の
地熱発電を目指すのがよいとしています。 以上の点から考えても、岳の湯、はげの湯地域においては調査の段階からすでに開発の段階に入ったと思います。
地熱発電については、すでにアメリカを初め十七カ国、二百四万八千キロ、国内では大分県の
八丁原発電所を初め八カ所、建設中を含めて二十一万五千キロと成功した実績があります。 次に、
地熱発電の特色としては、まず稼動率が高いことであります。これは水力が四五%に対して地熱は九〇%と言われております。二つ目には、発電原価が石炭火力よりも安いことが挙げられております。石炭の場合は外国から輸入しなければならないが、地熱は純国産で、しかも豊富な資源であります。このように貴重な資源をいつまでもほうっておくのはもったいないと思うのであります。
エネルギー開発は県政の重要課題であります。知事は、地元小国町の意見も十分聞きながら、地域振興、
電力自給率の低い本県の
エネルギー確保対策という観点からも積極的に進めるべきだと思います。 企業局では、いままで確かに有料道路、工業用水をつくって赤字を出してきました。その関係で、知事もまた赤字になるのではないかという不安感があると思います。しかし、いままでの調査結果から見ても、
地熱発電所の場合、失敗は少ない事業だと思います。すでにアメリカ、イタリア、
ニュージーランド等で
商業地熱発電としてりっぱに成功しています。また国内においても、隣りの大分県の八丁原、
大岳発電所を初め八カ所で成功した実績があります。さらに北海道では、現在第三
セクター方式で建設中と聞いております。私は、これだけ成功した実績がある
地熱発電所は十分県営でもやっていける事業だと思います。 これは参考まででありますけれども、この建設期間も、水力、火力になりますと十年から二十年はかかりますが、
地熱発電所は五年ぐらいの短期間でできるのがまた特徴でもあります。それから、ここに発電所を建設した場合の試算がございますが、建設をして六年までは、建設費、金利の返済で赤字になりますが、七年目からは黒字に転換をします。熊本県で仮に二万キロの発電所を建設した場合ですが、一年間に一億五千七百六十八万キロの電気ができます。これに一円の事業利益を見られたとして、一年間の利益は約一億五千万となるわけでございます。専門家も、地熱資源の開発は、これを発電に使用した場合、初めの投資は高額であるが、経済面について見る限り決して不利な事業ではない、むしろ有利な事業であると言っております。企業局にとってこんな有望な事業はないと、このように思います。 地元小国町からも、ぜひ県営でやってほしいという陳情も出ていますので、
地熱発電所を建設する条件は整ったと思います。知事の率直な意見をお伺いしたいと思います。 〔知事沢田一精君登壇〕
◎知事(沢田一精君)
代替エネルギーの開発は、国家的な大きな課題であり、県といたしましても積極的に国とタイアップして今後進めてまいらなければならない重要な課題だと受けとめております。 特に
地熱開発につきましては、御指摘のとおり、ただ単に発電のみにとどまらず、発電によって生ずる余剰熱水の有効利用による関連地域の開発、振興といういろいろのメリットがあるわけであります。したがいまして、県としましても、国産資源の有効活用の観点から、他県に先駈けて地元の協力を得、また通産省との密接な連携のもとに今日まで調査を進めてきたところであり、
わが国地熱開発に関する
技術的進展にも大きく寄与してきたものであると自負いたしております。しかし、これを直ちに事業化するにつきましては幾つかの問題があると存じております。 第一に、
調査ボーリングで成功いたしましても、
生産井段階で成功するかどうかは、現在の技術では断言できず、相当のリスクを覚悟しなければならないと考えます。 第二に、生産井の経年変化に伴う寿命の予測がむずかしいと考えられておるようであります。一時的には成功いたしましても、果たしてどの
程度永続性があるかという問題であろうかと思います。 第三に、熱水利用の段階におきまして、本地域特有の熱水中に含まれますシリカ、珪酸分が原因となる配湯管の目詰まりの問題等、技術的に未解決の部分もあるわけであります。 次に第四点としましては、何と申しましても生産井の
ボーリング一本につきまして数億円の費用を要するということであります。
発電所建設自体に相当多額の資金が必要でありまして、自治省ともよく相談をいたしておりますが、現在までこの種発電所の建設について起債の対象として取り扱われた例がない等の問題があるわけでございまして、今後解決さるべき問題だと思うわけであります。 また、御承知のように、周辺地域では国が大規模な深部地熱の
開発調査を目下急ピッチで進めておる現状でございます。この国が中心となって行っております大
規模深部地熱の
開発調査の進行ぐあいを見ながら、その調査結果について総合的な調整を行う必要があると考える次第でございます。 いずれにいたしましても、このままほうっておくつもりはございませんが、いま申し上げました幾つかの問題点にめどをつけなければならないという問題と、国がせっかく大
規模深部地熱の
開発調査をやっておるわけでございますので、その調査結果を見ながら総合的な調整のもとに今後この
地熱開発は積極的に推進してまいりたいと考えております。通産省からも、調査を終結し開発体制への移行を求められておりますので、国の大
規模深部地熱開発調査結果との調整、リスクヘの対応、資金調達の方法等の諸問題に一応の見通しをつけまして、その上で地元の意向も踏まえ、関係者と慎重な協議を行って、できるだけ早く開発についての結論を出してまいりたいと考えております。 〔
広瀬博美君登壇〕
◆(
広瀬博美君) いま
地熱発電について知事から慎重にというような答弁もありまして、確かに不安な材料も、いまおっしゃったようなこともあるわけですが、たとえばこういう方法もあるわけですね。蒸気だけを電力会社に売ると、こういう方式をとっているところも現に日本にございます。だから要は――慎重に対処したいということもわかりますが、消極的になってはいかぬと思います。いずれにしても結論を出すときだと思っております。地元小国町からもぜひ県営でやってほしいという要望も出ていますので、どうか
地熱発電所の立地については今後もひとつ積極的な取り組みをお願いしたいと、このように思います。 次に移りますが、次の問題は、熟年一一〇番の設置についてお尋ねをいたします。 熟年という言葉は、毎日の新聞やテレビで耳にしない日はないというほど聞きます。熟年とは何歳から何歳までを言うのかはっきりしないようですが、四十から六十までと言う人もいれば、六十までが壮年、六十から八十までを熟年と呼び、八十歳以後を初めて老人と呼べばよいという説もあるようです。 家族制度の崩壊とともに、
都市化現象の中で核家族化が進み老人だけの世帯が急増しています。昭和五十五年度
厚生行政基礎調査によると、本県の
高齢者世帯は、夫婦のみの世帯で二万五千六百十六世帯、また
一人暮らしの世帯は五十六年四月一日現在で一万二千三十九世帯となっています。特に本県の場合、二年間で千四百人も
一人暮らし老人がふえています。このように進む
高齢化社会にあって老人問題が切実になってきています。 五十六年二月発表されました「
熊本県民意識調査」によると、老後の不安について、六十歳以上の人で「不安を持っている」と答えた人が六五%を占め、そのうち一番多かったのは「健康が不安である」と答えた人が三八・七%、次いで「生活費が不安」が二五・四%、次に「住居が不安」の順になっています。この調査で示すように、三分の二近くの老人がこのような不安を持って生活を送っているということであります。 また、このような不安を反映して、最近全国的に熟年一一〇番という電話相談が繁盛しております。東京都の場合、一番相談が多いのは、家族間の人間関係のトラブル、年金、財産、生きがいの順になっております。また、感情をそのままあらわし、遠慮なく悩みをぶつけてくる老人もあるということでございます。一方、民間の熟年一一〇番で多いのは、夫婦問題、家族問題、法律相談、健康問題、経済問題の順になっています。 平均寿命が八十歳に近くなった現在、この熟年層は働き盛りであり、六十、七十代でもまだまだ現役。人生の中で最も活力にあふれ、思慮深く経験も豊かな年代であるべき世代に種々の問題が生じているわけであります。かつて不惑と言われた世代であったが、いまでは惑い多き世代、悩み多き世代と言える現在、そこに共通している問題は、人間関係の希薄化と自立心の欠如ではないかと思います。このような老人問題に対処していくためには、やはりきめ細かな行政の手だてがぜひとも必要だと思うわけであります。 そこで、質問の第一点は、人間関係の希薄化、家庭不和などで悩みや心配事があってもだれにも相談できないで困っている、そういうお年寄りのために、悩みや相談事を電話で気軽に相談できるような熟年一一〇番といったような
老人相談電話をぜひ設置してほしいと思います。電話をかけたからといって問題がすぐ解決するとは思いません。しかし、少しでも不安が軽減されればそれは大成功だと思います。人間悩んでいることを人に話せば、すっきりして気が楽になります。また気持ちを持ち直すこともできます。いつでも困ったときに電話で気軽に相談できるという安心感があればまた生きがいも出てくると思います。どうか老人の不安を少しでも軽くし、熟年を楽しく生きていただくためにも、きめ細かな福祉行政をさらに進めなければならないと思います。 また、あわせて考えていただきたいのは、
高齢化社会に対応するために
老人相談員制度を設置して、各地の
福祉事務所にこの
老人相談員を配置し、各種の相談に応じられるような体制をつくってもらいたいと思います。 以上の件については
福祉生活部長の答弁を求めます。 〔
福祉生活部長山下寅男君登壇〕
◎
福祉生活部長(山下寅男君) 老人福祉問題に関しまして二点についてのお尋ねでございます。いずれも、お年寄りの方々のいろいろな悩み、相談事にどう対応するかという関連する問題でございますので、あわせてお答えを申し上げたいと思います。 昨年の十一月、
厚生省人口問題研究所が発表いたしました「将来人口新推計」によりますというと、わが国の六十五歳以上の老齢人口は、昭和三十五年の五百三十九万八千人に対しまして、五十五年の
国勢調査時点におきましては一千五十七万四千人となっておりまして、二十年間に約二倍の増加になっておるわけでございます。さらに、二十年後の昭和七十五年におきましては、そのまた約二倍になるという見通しでございまして、この時点では二千万近く、老齢化率で見まして一五・六%に達するであろうというように推計をされておるところでございます。 このような中にございまして、全国に十年早い形で高齢化が進んでおります本県にとりましては、老人福祉問題はきわめて重要な課題でございます。このため、従来から、老人医療の問題でございますとか、あるいは福祉施設の整備など各面にわたりまして、いろいろその施策の推進に努力をしてまいっておるところでございます。 御意見の、老人の方々が気軽にいろいろな心配事あるいは相談ができるような窓口体制の整備ということは、きわめて今後重要な問題になってくると考えておるところでございます。現在各
福祉事務所におきましては、
老人福祉担当の専任職員を配置いたしております。各市町村とも緊密な連携をとりながら、ときには現地に出向きましていろいろな相談に応ずるなど、お年寄りの相談やお世話に当たっておるところでございます。このほか、御案内のように、
市町村社会福祉協議会におきましても、窓口といたしまして、こういうような問題に対応いたしているところでございます。また、県の社協におきましては、熊本市に
中央心配ごと相談所を、それから市町村の
社会福祉協議会に現在五十四カ所でございますが、
心配ごと相談所というのをそれぞれ設置をいたしまして、老人の相談あるいは悩み事につきましても適切な指導、助言が行えるようなそういう体制をとっておるところでございます。 また、御案内の
寝たきり老人、
一人暮らし老人の安否を確認をいたしましたり、ときにはいろいろの相談事にも応ぜられるような福祉電話でございますが、これは昭和四十八年度制度が創設になりましてから、ことしの三月末までの間、延べ四百四十四台を県内に設置をいたしておるところでございます。しかしながら、今後高齢化がさらに進んでまいりますというと、さらにこれらの体制整備の強化を図っていくことはきわめて必要なことだと存じております。御提言の熟年一一〇番の電話設置につきましても、今後そういう観点から前向きに検討してまいりたいと存じております。 次に、
老人相談員制度についてでございますが、御指摘のこの相談員制度というのは、母子家庭の相談員あるいは児童についての相談員、これは家庭児童相談員と称しておりますが、そういうようなもろもろの相談員が設置をされております。老人問題につきましては、ただいまもお答え申し上げましたように、
福祉事務所におきましては専任の県の職員がこれに当たっておるわけでございます。 しかし、高齢化の今後の進行を考えますというと、このような相談体制をさらに強化していくことが必要でございますので、当面、現体制下における
福祉事務所の老人福祉相談機能の充実について、どういうように充実が図れるかを目下検討いたしておるところでございます。また、市町村の社協あるいは
心配ごと相談所等における相談機能につきましても、今後十分その機能が発揮できますようにさらに指導に力を入れてまいりたいと存じております。 御提言の
老人相談員制度につきましても、国の方とも今後いろいろ相談をしながら検討させていただきたいと考えておりますのでよろしくお願いを申し上げます。 〔
広瀬博美君登壇〕
◆(
広瀬博美君) ただいま
福祉生活部長から、熟年一一〇番の設置については前向きに検討しますと非常に積極的な答弁をいただきました。この熟年一一〇番の設置については、ひとつ早く設置方をお願いしたいと思います。 それから
老人相談員の制度については、いまいろいろ答弁がございまして、今後もひとつ充実をしていただきたいと、このように思っております。 次に、痴呆性老人対策についてお尋ねいたします。 痴呆性老人、いわゆる恍惚の老人は、
高齢化社会を迎え次第にふえていると言われています。東京都老人総合研究所の柄沢博士の調査によれば、およそ老人人口六十五歳以上の五%前後、約二十人に一人の割合で発生している、ただし、より若い老人には少なく、七十五歳を過ぎたより高齢の老人に多く出現すると言っています。本県の場合、実態調査をしたことがないのではっきりした実態はわかりませんが、出現率の五%で計算してみますと、本県の六十五歳以上の老人が二十一万三百七十人ですから、痴呆性老人が約一万人はいると推定されます。 この病気が深刻なのは、まだ治療法が確立されていないということでございます。病気としての老化性痴呆には、大きく分けて二種類のタイプがあると言われています。その一つは、脳血管性痴呆と言われる病気です。これは脳の血管が破れるか詰まるかして、結果として脳実質がだめになり痴呆に至るという病気であります。この脳血管性痴呆の予防には、高血圧と動脈硬化の予防や治療が不可欠であるとされています。対策としては、早期発見、早期治療しかないと言われています。 このような脳血管性痴呆に対して、老年痴呆と呼ばれる病気がありますが、この病気は、有吉佐和子氏の「恍惚の人」で有名になりましたが、目下のところ高齢者に好発するというだけで、原因はほとんどわかっていません。現在わかっている予防法としては、気力を持たせる、頭を使う等の生活を心がけるということだけです。 いずれにしても、痴呆性老人の多くが寝たきりになったり、反対の方向もわからず出歩いたりして、家族の苦労も並み大抵のものではありません。出現率五%という数字は決して小さなものとは言えないと思います。入院も断わられたり老人ホームも引き受けてくれないなどから、家庭で在宅のまま介護しているケースが多く見られます。いまのところ治療方法、介護の仕方等もわからない状態で家族は大変困っています。どうか
高齢化社会における老人対策の一環として、この問題に本格的に取り組んでいただきたいと思います。 質問の第一点は、痴呆性老人の保健、医療を初め、指導、介護の方法などについて総合的に調査研究するため、医療関係者など専門家による痴呆性老人対策研究会などを設置して取り組んでいただきたいと思います。 二番目には、痴呆性老人の実態がまだわかっておりませんので、ぜひこの際、実態調査を実施していただきたいと思います。 また三番目には、介護者が疾病、出産、事故等で介護が困難となった場合、一時的に特別養護老人ホームに保護してもらうような痴呆性老人のための短期保護事業をぜひつくっていただきたいと思います。これも
福祉生活部長に答弁をお願いします。 〔
福祉生活部長山下寅男君登壇〕
◎
福祉生活部長(山下寅男君) お答えをいたします。 痴呆性老人対策研究会の設置についてでございますが、痴呆性老人の症状は、徘回、物忘れ、異食などで老人が正常な社会生活を営んでいくことが困難でございまして、その家族の方々の御苦労は御指摘にもございましたように大変大きいわけでございます。 一般に痴呆性老人の出現率は、お述べにもなられましたが、六十五歳以上の老齢人口の約五%程度と推計をされております。本県における昭和五十六年六月末の調査によりますというと、精神病院に在院をいたしております患者さんだけでも八百二十八名に上っているわけでございます。今後の老齢化の急速な進行に伴いまして、痴呆性老人はさらに増加をしていくものと考えておるわけでございます。したがいまして、今後の老人福祉問題を考えます場合、この痴呆性老人対策はきわめて重要な問題になってくると考えておるところでございます。 国におきましても、全国的な問題といたしまして、公衆衛生審議会におきまして、ただいま老人精神衛生対策の一環として専門的な調査研究がなされていると聞き及んでおりますので、それらの審議結果もにらみながら、今後県といたしましては、福祉、医療両面から、その対策につきましていろいろと研究、検討を進めてまいりたいと考えております。 次に、実態調査についてでございます。従来、この種の調査につきましては、人権問題などとの絡みもございまして、組織的な調査というのは実施をされていなかったわけでございます。現在国会で審議されております老人保健法案が成立をし、保健事業が行われることになりますというと、漸次この種の痴呆性老人の方々の把握もできていくのではなかろうかと考えておるところでございますが、ただいまも述べましたように、国におきまして痴呆性老人問題についての研究が進められておりますので、その結果も踏まえながら、衛生部とも今後相談をして検討してまいりたいと考えております。 次に、痴呆性老人の短期保護事業の創設についてでございます。 痴呆性老人の短期保護事業でございますが、介護しております家族の方々が病気をしたり、あるいは旅行に出かけたりいたしまして、一時的に介護が困難となります場合は、医療施設なりあるいは福祉施設のサービスが必要になってくると存じております。 現在、県内には二十八の特別養護老人ホームがございまして、自宅で介護が困難な二千五百名のお年寄りの方々をお世話いたしておるところでございます。この二千五百名の方々の中には痴呆性老人も含まれているわけでございます。また、昭和五十三年度から制度創設になりました
寝たきり老人短期保護事業におきましても、痴呆性老人もその対象にするということになっておるところでございます。 しかしながら、この短期保護事業につきましては、必ずしも十分な活用がなされていないのが実態でございます。そこで、国におきましては、本年度から特別養護老人ホーム及び養護老人ホームに入所をいたしております痴呆性老人に対する処遇充実のため、精神科の専門医の嘱託制度を新たに設けたところでございます。したがいまして、特別養護老人ホームで対応してもらうことになります痴呆性老人の短期保護事業につきましては、今後積極的に、そうした関係の皆さん方、施設の皆さん方がこの制度を活用していただきますよう指導してまいりたいと考えておるところでございます。 〔
広瀬博美君登壇〕
◆(
広瀬博美君) いま部長より答弁をいただきました。痴呆性老人問題は、老人福祉対策で最後に残された問題だと言われております。治療法、介護の仕方などまだわかっておりませんし、総合的に調査研究をする必要があると思います。ぜひ私が提案申し上げました痴呆性老人対策研究会といったようなものをつくって、ひとつ本格的な取り組みをしていただきたいと、このように要望しておきたいと思います。 短期保護事業については、いま
寝たきり老人の短期保護事業がございます。これも制度ができてもまだPR不足もあってなかなか利用率が悪いわけでございます。こういった制度も、どうかひとつ多くの方に利用していただけるように今後もPR方をお願いしたいと、このように思う次第でございます。 次に、新設高校の開校問題についてお尋ねいたします。 熊本市及びその周辺地域における高校進学の生徒増加に対処するために、県教委は、熊本市清水町楡木に五十八年四月開校の計画を進めております。計画では、五十六年十二月までに用地買収を完了して、敷地造成を五十七年三月までに着工、五十七年度に校舎建物の第一期工事を完成させ、五十八年四月開校となっておりますが、聞くところによりますと一部用地買収がおくれていると、そういうことであります。五十八年四月の開校が心配されるわけでございますが、いまから順調に進んでも、基本設計に二カ月、実施設計に三カ月、本体工事に七、八カ月かかります。完成は来年の七月ごろとなり計画は大幅におくれることになります。 新設校については、すでに中学校では五十八年度高校進学の進路指導の中に入っているわけですから、仮設の校舎を建ててでも五十八年四月開校に間に合わせないと大変なことになるわけでございます。予定どおり五十八年四月開校は間違いないのか確認をしたいと思います。これは教育長の答弁を求めます。 〔教育長外村次郎君登壇〕
◎教育長(外村次郎君) お答えいたします。 熊飽地区の高校新設の問題につきましては、ただいまお述べになりましたとおり、昭和五十五年に昭和五十八年四月開校の方針を定めまして、諸般の準備を進めておるところでございます。その後、当議会におきましても何人かの先生方から、この問題についての御質問がございました。これに関連しましてお答え申し上げましたとおり、既定方針すなわち五十八年四月開校の所存でございます。開校までにはいろいろと問題の処理がございますが、そのように考えておりますので御了承をお願い申し上げます。 〔広瀬博美君登壇〕
◆(広瀬博美君) ただいま教育長から、五十八年四月開校間違いないと、こういう答弁がございました。ひとつよろしくお願いしたいと思います。 次に、住宅行政についてお尋ねします。 わが国には、ウサギ小屋からの脱出を夢見る住宅困窮者は、昭和五十三年住宅需要実態調査で全国に一千二百五十六万世帯、全世帯の三八・九%と言われております。熊本県の場合も十五万七千世帯、三〇・四%が住宅困窮を訴えております。最近、アパート、借家の空き家が多くなり、県民の住宅は満たされているのではないかという声が聞かれますが、これはとんでもない認識で、多くの人たちが三十平方メートルぐらいの狭い借家、アパートでがまんしているのが実情でございます。 最近の県営住宅における空き家の募集状況を見ますと、最近五年間の平均競争率は七・二三倍となっております。このように多くの方々が住宅に困っておるわけでございます。県は、こういう人たちが、いま何を求め何を援助してもらいたいのか、県民のニーズを明確にとらえた住宅政策を進めなければならないと思うのであります。 そこで、質問の第一点は、建てかえによる高額家賃問題についてお尋ねします。 県は老朽住宅の建てかえ計画を進めています。計画によりますと、昭和五十六年から六十年度までに、八島団地、帯山団地など合計五百七戸を建てかえる予定であります。この事業を進めるに当たって一番問題になってくるのが、建てかえ後の家賃の高騰であります。受益者負担の原則で、建てかえ費用を家賃に反映させるために高くなってくるわけであります。たとえば、建てかえ前に平均四千円だった八島団地の場合は、建てかえ後には七・五倍の二万六千円になっております。 県では緩和措置として、毎年二、三割ずつ上げ五年後に三万円とする傾斜家賃方式を導入していますが、それでも入居者にとっては大変な高負担になります。特に母子家庭、老人家庭、身障者家庭には、さらに大きな負担になります。たとえば母子家庭の場合を考えてみますと、本県の母子家庭の平均月収は九万円未満が約七割です。月収九万円の母子家庭の家計に占める家賃は二四%になります。これでは生活はできません。また、老人家庭、身障者家庭でも同じ状況でございます。 公営住宅における家賃負担の限度は一五%以下であると聞いております。低所得者の人が高額家賃を払うという住宅行政は不合理でありますので、ぜひ母子家庭、老人家庭、身障者家庭に対しては家賃の減免措置を考えていただきたいと思います。 また、最近新築された八反田住宅の場合も同じであります。母子家庭向け住宅の家賃は二種で二万一千円ですから、家計に占める家賃は二三%になります。これについても、あわせて減免措置を考えていただきたいと思います。そのほか、入居者の収入が著しく低額であること、入居者が疾病にかかったとき、入居者が災害により著しく損害を受けたとき、このような入居者に対しても減免措置を講じていただきたいと思います。 土木部長の答弁をお願いします。 〔土木部長梅野倫之君登壇〕
◎土木部長(梅野倫之君) お答えいたします。 建てかえによる高額家賃の問題でございますが、公営住宅はもともと低額所得者を対象として、家賃は非常に低廉にしております。しかし、建てかえ後の家賃と被建てかえ住宅の家賃に差が生ずるため、被建てかえ住宅の入居者の家計に及ぼす家賃の負担を考慮いたしまして、お説のとおり五カ年の傾斜家賃制度を導入して軽減を図っているところでございます。 なお、身障者、母子並びに老人世帯に対しまして減免措置をとれということでございます。このことにつきましては、熊本県営住宅条例第十二条で、一つ、入居者の収入が著しく低額な世帯、それから入居者の方が病気にかかっている世帯、三番目に、入居者が災害により著しい損害を受けた世帯等につきましては、家賃の減免または徴収猶予ができるようになっておりますので、これに当てはまる身体障害者につきましても、これにより措置してまいりたいというふうに考えております。 〔広瀬博美君登壇〕
◆(広瀬博美君) いま土木部長より、建てかえによる高額家賃問題について答弁がございました。いままで条例はあったけれども、こういった事例について適用があっておりません。どうかひとつ今後、条例もあるし、その実施要綱をおつくりいただいて、いま私が申し上げました母子家庭、老人家庭、身障者家庭について、ひとつ早く減免措置を講じていただきたいことを要望しておきます。 次に、入居制度の見直しについてでございます。 現在、入居方法は公募抽せんの方式で行われていますが、これは県民の困窮度等住宅ニーズを全く無視したもので実情に合っていないと思います。住宅困窮度、登録期間の長さに応じ入居できるよう、現行の公募抽せん方式を改め、ウエーティングリストに基づいて入居する登録入居制度をぜひ採用していただきたいと思います。 〔土木部長梅野倫之君登壇〕
◎土木部長(梅野倫之君) 入居制度の見直しでございますが、県営住宅入居者の選考方法は、現在、公募の上、公開抽せん方式をとっているわけでございます。最近の募集状況は、年一回、新築住宅で七百名から八百名の募集でございます。それから、年二回の補充募集では千三百名から千四百名の申込者があっておりますし、いずれも倍率といたしましては三倍から四倍でございます。本県においては、公平が期されるという利点からこの方法を採用しておりますが、なお補充募集については、希望団地の選定ができるように要領を改正しており、申込者の要望に対応しているところでございます。 ただいま御提案の点数制度でございますが、短期間に相当数の実態調査を必要としますため、全国でも数県――たしか三県だったと思います――の事業主体が採用しているところでございます。しかしながら、公開抽せん方式は住宅困窮の実情が考慮されていない面もございますし、今後入居希望者の要望に対応できるよう十分検討してまいりたいというふうに考えております。 〔広瀬博美君登壇〕
◆(広瀬博美君) 土木部長より答弁をいただきました。これはあくまでもやはり公平というのが原則でございます。ただ私が申し上げましたように、やはり困っておられる方、それから待っておられる期間が長い方、こういう人たちの気持ちもどうかひとつ取り入れた入居制度を今後ぜひ考えていただきたいと、このように思います。 次に、保健所医師の確保対策についてお尋ねをいたします。 県内に十四の保健所がありますが、現在、荒尾、宇土、菊池の三つの保健所で、所長が死亡、退職などで一年以上欠員が続いています。いまのところ隣接の所長などの兼務でしのいでいるということですが、あとの所長の補充については現在のところ全く見通しは立っていないということです。このほか定年を間近に控えた所長も数人おられると聞きます。後継者難は五十九年度以降さらにひどくなりそうであります。治療医学から予防医学という第二の波が押し寄せている現在、一段と保健所の機能を充実強化していかなければならないときに所長がいないというのはまさに保健所の非常事態であります。 最近は保健所の業務も年々多くなっていると聞きます。所長は、一切の事業を指揮監督する責任者であると同時に、医師として検診業務全般についてみずから担当するわけであります。したがって、所長の欠員は、事務全般、さらには保健所本来の仕事である健診業務に支障を来すことになります。衛生部でも人選について努力をされていると伺っておりますが、なかなか見つからなくて困っておられるようであります。 所長になり手がない理由として、一つは給料が安いこと、二番目には自分の専門の研究ができないこと、三つ目には学会に出席できないこと等が考えられております。もっと職場環境を改善しないと医師の確保はできないと思うのであります。今後の医師の確保について衛生部長の考えをお聞きしたいと思います。 〔衛生部長清田幸雄君登壇〕
◎衛生部長(清田幸雄君) 保健所に勤務する医師につきましては、いまお述べになりましたが、昭和三十五年三十二名、昭和四十五年には二十三名、昭和五十五年には十四名、現在では十一名と逐年減少しておりまして、現在十四保健所の中で、御指摘になりましたように三保健所は兼務で対応しております状況でございます。さらに、年齢的にも平均年齢が五十八歳と高齢化しておりまして、本庁勤務の医師を含めまして、公衆衛生に従事する医師の充足及び後継者の確保につきましては、日ごろから私も大変腐心しておるところでございます。 保健所医師の確保が困難である問題点としましては、医師を志す多くの人が最初から臨床医を目指していることが多く、また医師の教育につきましても、その方向が臨床医養成に偏っているというきらいがあります。したがいまして、卒業後も臨床医の道を選ぶ者が多く、加えまして公衆衛生に従事する医師に対します社会的な評価あるいは経済的な条件も必ずしも十分ではございません。さらに、公衆衛生の仕事は、疾病の予防、早期発見のための各種健診、健康管理業務と、近年その必要性が強調されてまいりました積極的な健康の維持増進のための技術の提供、行政の推進等でございますが、この仕事は医師として大変重要な業務であるということにつきましては異論がないわけでございまして、漸次これらの点につきましての認識が深まりつつあるわけでございますけれども、その使命感を強調するだけでは、前に申し述べましたような状況もありますほかに、価値観の多様化した現在の社会環境のもとでは、この道に医師を勧誘することはまだ大変困難な現状であると考えております。しかし、今後は医師数も年々増加していくことでもございますので、医師確保の条件整備ということにつきましては今後とも努力していかなければならないと考えておるわけでございます。 県といたしましては、これまでも、医師につきましては関係学会研修会への派遣、海外研修あるいは修学資金の貸与、処遇の改善等につきまして特に配慮してまいったほかに、公衆衛生医確保のためのパンフレットを作成しまして配布いたしましたり、大学医学部等関係方面への協力の依頼、縁故による勧誘等に努めてまいったところでございます。しかしながら、冒頭に述べましたような現況にあるわけでございますので、従来の施策に加えまして、新規卒業者を含めました医師の確保を図るための諸施策について、いまお述べになりましたような点も含めまして具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。 また、現在建設を予定しております総合保健センターの建設に際しまして、中央保健所を併設することといたしておりますが、これはセンターと保健所を有機的に運営することによりまして医師の魅力ある職場といたしまして、医師確保の門戸としたいという考えを持っておるわけでございまして、今後とも実効が上がるように努力してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。 〔
広瀬博美君登壇〕
◆(
広瀬博美君) いま衛生部長より答弁をいただきまして、なかなか医師の確保が困難であるという状況もよくわかるわけでございますが、若い先生方はやはり自分の専門の勉強をしたいと、そういう希望が強いそうでございます。現段階で、そういった先生が勉強あるいは研究できるそういう制度をつくって職場環境を改善し、そして保健所においても医師を充足していくと、そういう御努力をひとつお願いしたいとこういうふうに思います。 次に、小児がん対策についてお尋ねします。 正式な病名は神経芽細胞腫と言われ、小児がんの一種で、白血病、脳腫瘍に次いで多いと言われております。神経芽細胞腫は、主に腹部、特に副腎にできる腫瘍で、初期には腹部のふくらみ、貧血、関節部の痛みなどを起こし、病気が進むと肝臓や頭蓋へ骨転移するもので、死亡率はきわめて高いと言われています。沢田淳京都府立大助教授の研究例によると、一歳未満のうちに発見し、患部を摘出すれば七二%が二年間以上生存できるが、二歳以上になって発見されると、この率は一二%に下がることが判明しています。したがって、この病気を治す最大の決め手は早期発見にあります。 現在実施している神奈川県では、保健所で行う乳児の三カ月検診の際、保護者に尿検査用のろ紙を渡し、生後六カ月目にそのろ紙を尿に浸して、県衛生研究所に返送してもらい検査するという方法をとっています。すでにこの方式を導入している京都市では八年間に五人、名古屋では五年間に二人の患者が発見されています。また横浜市では、昨年四月以降に四人が発病し、五十六年十二月現在で十三人の子供が治療を受けています。 どうか本県においても、神経芽細胞腫を早期発見するために、六カ月児の集団検診をぜひ実施していただきたいと思いますが、衛生部長の答弁をお願いします。 〔衛生部長清田幸雄君登壇〕
◎衛生部長(清田幸雄君) 小児がん、特に神経芽細胞腫につきましてのいまの問題提起につきましてお答えを申し上げます。 近年、がんによる死亡は、御承知のとおり年ごとに増加をいたしておりまして、死因別でも昨年からトップになってまいりまして、がん制圧は保健衛生上の大きな課題となっております。しかし、がんの発生等の本態がなお究明されていない今日、がん対策は早期発見、早期治療が最も有効な決め手になっておるわけでございますが、がんの種類や発生部位によりましては早期に発見することが困難なものも多くございまして、がん対策推進上の大きな障害となっておるわけでございます。 御指摘の神経芽細胞腫につきましては、お述べになりましたような症状でございますが、小児がんの中で約一割を占めておりまして、本県では昭和五十年から五十六年までの七年間に十六名の方が発生いたしておりまして、小児慢性特定疾患治療研究事業の中で治療を行ってまいってきたわけでございますが、その中で十二名の方が亡くなられております。 この疾患は、主としまして、お述べになりましたように副腎髄質を中心に発生いたします交換神経系のがんでございまして、大半がホルモンを分泌いたしまして、そのホルモンの代謝産物を尿から検出して診断する方法が京都府立医科大学によりまして研究、開発されておるわけでございます。すでにお述べになりましたように、一部の都道府県でこの診断方法を採用されておるわけでございますけれども、類似反応や検出漏れなどもございまして必ずしも一〇〇%の診断確立ではないようでございまして、なおいま少し検討の余地もあるのではないかと考えております。 本県におきましては、現在、これらの疾患を含めまして各種の障害児の発生を未然に防止し、早期発見、早期療育体制の確立を図りますために、関係機関によります協議会を設置いたしまして、乳幼児正常発達総合システムにつきましての調査研究を進めておるわけでございますけれども、その中で神経芽細胞腫対策につきましても早急に前向きに検討してまいりたいと考えております。 〔
広瀬博美君登壇〕