平成57年 6月 定例会┌──────────────────┐│ 第 四 号(六月十四日) │└──────────────────┘ 昭 和 五十七年 熊本県議会六月
定例会会議録 第四号――
―――――――――――――――――――――――――昭和五十七年六月十四日(月曜日
) ―――――――――――――――――――― 議事日程 第四号 昭和五十七年六月十四日(月曜日)午前十時開議 第一 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について
) ――――――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第一 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について
) ―――――――○―――――――出席議員(五十四名) 西 岡 勝 成 君 深 水 吉 彦 君 阿曽田 清 君 橋 本 太 郎 君 松 家 博 君 岩 下 榮 一 君 下 川 亨 君 林 田 幸 治 君 三 角 保 之 君 岩 永 米 人 君 児 玉 文 雄 君 山 本 秀 久 君 古 本 太 士 君 渡 辺 知 博 君 八 浪 知 行 君 杉 森 猛 夫 君 鏡 昭 二 君 高 田 昭二郎 君 柴 田 徳 義 君 広 瀬 博 美 君 浜 崎 三 鶴 君 古 閑 一 夫 君 魚 住 汎 英 君 馬 場 三 則 君 木 村 健 一 君 平 川 和 人 君 北 里 達之助 君 金 子 康 男 君 荒 木 斉 君 井 上 栄 次 君 竹 島 勇 君 今 井 洸 君 米 原 賢 士 君 古 閑 三 博 君 井ノ上 龍 生 君 永 田 悦 雄 君 宮 元 玄次郎 君 甲 斐 孝 行 君 八 木 繁 尚 君 幸 山 繁 信 君 池 田 定 行 君 小 材 学 君 岩 崎 六 郎 君 沼 川 洋 一 君 水 田 伸 三 君 杉 村 国 夫 君 今 村 来 君 浦 田 勝 君 小 谷 久爾夫 君 橋 本 盈 雄 君 増 田 英 夫 君 倉 重 末 喜 君 中 村 晋 君 酒 井 善 為 君欠席議員(なし
) ――――――――――――――――――――説明のため出席した者 知事 沢 田 一 精 君 副知事 藤 本 伸 哉 君 出納長 松 下 勝 君 総務部長 原 田 富 夫 君
企画開発部長 岡 田 康 彦 君
福祉生活部長 山 下 寅 男 君 衛生部長 清 田 幸 雄 君 公害部長 山 内 新 君
商工観光労働 部長 八 浪 道 雄 君 農政部長 坂 本 清 登 君
林務水産部長 大 塚 由 成 君 土木部長 梅 野 倫 之 君
有明地域開発 局長 伴 正 善 君
公営企業管理者 松 永 徹 君
教育委員会 委員長 本 田 不二郎 君 教育長 外 村 次 郎 君
警察本部長 廣 谷 干 城 君
人事委員会 事務局長 下 林 政 寅 君 監査委員 緒 方 隆 雄 君 ――
――――――――――――――――――事務局職員出席者 事務局長 川 上 和 彦
事務局次長 衛 藤 成一郎 議事課長 小 池 敏 之
議事課長補佐 辻 璋 主幹 山 下 勝 朗 参事 光 永 恭 子 ―――――――○――――――― 午前十時二十四分開議
○議長(幸山繁信君) これより本日の会議を開きます。 ―――――――○―――――――
△日程第一 一般質問
○議長(幸山繁信君) 日程に従いまして日程第一、一昨日に引き続き一般質問を行います。林田幸治君。 〔林田幸治君登壇〕(拍手)
◆(林田幸治君)
日本社会党の林田でございます。通告に従いまして、
日本社会党を代表して一般質問を申し上げさせていただきます。 第一は、農政の諸問題ということにおきまして、
自給飼料対策、そして養豚対策についてお伺いをしてまいりたいと思います。 アメリカを中心としたわが国に対する農産物の
輸入自由化または
輸入枠拡大の攻撃の本質と、これに対するわれわれの対応については、本議会の
代表質問等を通してつぶさに論議されてきたところであります。その点では、私のこれからの質問は重複する点は避けられないというふうに思います。しかしながら、私の数少ない体験の中で、私なりに今日の農業問題を受けとめたその一つ二つに触れながら質問を申し上げてまいりたいと存ずるわけであります。 私
ども社会党県本部では、去る五月二十八日に熊本市で熊本県食糧会議を開催いたしました。それには来賓として
県農協中央会や県農政部からも御参加をいただきながら、農民組合、労働組合、そして
消費者代表など八十名程度で
パネルディスカッションを行ったわけであります。 私どもは書物を通して、日本農業の実態というか現況というものに触れながら、頭の中では一定の整理がついたような顔をしているわけであります。しかし率直に言って、素人の私どもに、本当の農業の、そして農民の苦しみなどわかるはずはありません。やっぱり実際に働いている農民あるいは農協その他関係者のリーダーの話に触れて、話し合いの中から、わがことのような感じに打たれるものであります。つまり、私は、この食糧会議を通して、改めて日本農業の危機的現状をはだに触れて理解できたわけであります。 日本農業は、穀物の自給率が三三%と言われております。先進工業国の中で最低の水準であります。食用穀物の自給率は、米の一〇〇%に支えられて、西ドイツや
イギリス並みの水準を維持しておりますものの、飼料穀物は二%の自給率しかない。このことを本当に国民すべてが理解できているんだろうか、理解してもらうための努力をもっともっとやっていかなければならないと、会議を通してしみじみと感じ取ったわけであります。飼料穀物の九八%を輸入に依存している。そこで、もし輸入飼料が入ってこないことになれば畜産は成り立たない、国民は肉が食えなくなる。いや、肉が食えなくなるというだけでなくて、わが国では全面的に輸入食糧がストップした場合三千万人の餓死者が出る、このような実態を理解することができたわけであります。 さらに、農畜産物の
全面自由化を求めるアメリカの最終戦略が、いまはガットで対象になっていないわけですけれども、米麦の自由化を求めてくる展望にあることも知ったわけであります。
県農協中央会の
農政対策部長が、この会議で提言された「日本で必要な食糧は日本で生産しよう」という言葉が強く印象として刻まれておるわけであります。何としても日本農業を守ること、それは国民的課題であるということが明らかになったわけであります。まさに日本農業を守ることは、いま問題とされておるところの、国民の足である国鉄地方線を守ろうとすることと全く軌を一にするものだと私には理解されたわけであります。 さて私は、そういう中で、つい先日、専業農家の知人と話し合う機会を持ちました。その知人は、八反の水田と二百頭の養豚経営で複合農業に携わっているわけであります。「農家経営でいま一番の問題は、君の場合何だろう」というふうに聞きますと、「やっぱり減反問題だ」と言うのであります。彼の場合、
市街化区域内に十六・九アール、調整区域内に六十四・一アールの耕作を行っているわけであります。ことしの
減反割り当ては、
市街化区域が三六・四六%、調整区域が二五・四六%になっておりまして、ことしは合わせて二三・二アールの減反を実施しなければならぬと、こういうことを話してくれたわけであります。そして十アール当たり六万円の転作奨励金をもらったとしても、米をつくった場合の三割にしか当たらない、米をつくったら農機具の代金も安心して払えるとこぼしているわけであります。そして米が余っているので減反はしようがないとすれば、えさ米をつくれるようにしてほしいとこもごも訴えるのであります。 そうして彼は、さきにも触れましたように、二百頭の繁殖肥育の養豚を経営しているわけでありますが、そのえさ米を自給飼料としたらずいぶんと楽になるのではないかと言うわけであります。いま使っている輸入飼料にしても、その中身は八割ぐらいがフスマで、トウモロコシや
大豆かす等は二割ぐらいになっている。そしてこの飼料代金で、素畜費を除くと生産費の七割は食ってしまうと言うのであります。畜産の現状は、努力しても努力しても赤字というのが現状で、畜産の輸入規制もぜひ行ってほしいと切々と訴えるのであります。 さきに
マスコミ等でも報道されておりましたが、県の農協中央会が畜産農家の経営内容を調査された、つまり「負債、
固定化負債実態調査」によりますと、畜産農家の九割以上が借入金を抱え、しかも一戸平均千二百八十九万円にも達している。その上、償還期間が来て一年以上経過した
固定化負債を抱える農家が五九・二%、
借入金農家の三分の二、一戸当たりの固定額も七百二万円に達しているというふうに言われておるわけであります。私の知人の場合も全くそのとおりで、これまで三世帯共同で行ってきた養豚も、赤字に次ぐ赤字で、一人去り、また一人、いまでは彼一人で営んでいるわけであります。共同の赤字は水田を売って償却してきたという実態も、それとなく話してくれました。これからは一人で五百頭ぐらいに伸ばしたい、そうすれば何とか展望が開けるのではないかというふうに語ってくれたわけです。 くどくどと申し上げましたが、このような実態の中で、私は、次の二点について質問を申し上げ、見解を承りたいわけであります。 まず第一点は、現在えさの輸入量は年間一千六百万トンにも達していると言われております。この中で国内の畜産農家は、高い輸入飼料に依存して苦しい経営を行わざるを得ない、このような状態は異常と言えないでしょうか。えさを輸入に頼らず、畜産とえさの生産を一貫させた農業を確立する道筋がとれないものであろうか。えさ米にしても、水田の高い生産力を利用するという観点から、国はもっともっと積極的に取り組むべきではないかと考えるわけであります。 さらに、これとあわせて安定した畜産経営を確立するためには、飼料の自給率の向上がきわめて重要であります。したがって、低利用の土地や水田裏作など
自給飼料生産の方途を確立するため積極的に取り組む必要があろうと考えるわけであります。 二つ目には、養豚農業の現状は、すでに申し上げたとおりであります。さきに触れた私の知人は、二年据え置き十年返済ぐらいの低利の貸し付けを受けられるような特別の手だてがとれないものか、こんなことを述懐しておりました。養豚農家の共通した心情としてあるものと私は思考します。このような厳しい養豚事情を踏まえて、県ではどのような対策を考えておられるのか、あわせて農政部長にお伺いをいたしたいと存じます。 〔
農政部長坂本清登君登壇〕
◎農政部長(坂本清登君) まず、
自給飼料対策についてお答えを申し上げたいと思います。 わが国の畜産は、御説のとおり、できるだけ輸入飼料の依存度を低めて飼料の自給率を向上させることが最大の課題であると考えております。県内の粗
飼料作付面積は、この十年間で年率三・九%の伸びを示しまして二万六千七百ヘクタールとなっております。しかし、今後の畜産振興は、需要に即した生産を行いながら、畜産物の質の向上と
生産コストの低減を図ることがきわめて重要でありますので、特に大家畜経営では自給飼料の確保とその効果的利用の推進を図る必要があります。 このため、県といたしましては、五十七年度から新たに
畜産総合対策の中で、
主要畜産地域の市町村につきまして
畜産振興計画の策定を指導することにしておりますが、市町村ごとに、この計画に基づき家畜の生産に見合った自給飼料の生産体制の確立を図る所存でございます。具体的には、水田転換、未利用地、野草地等を利用した飼料作物の作付や機械施設の整備等を行うことによりまして、粗
飼料自給率の向上を積極的に進めてまいりたいと考えております。 特に、水田転作における飼料作物の作付面積は五十六年度約七千ヘクタールとなっており、本県の畜産振興へ多大の寄与をしているところでございます。今後さらに、これら
転作飼料作物の有効利用を図るため、耕種農家と畜産農家との結合を深め、生産から流通までの組織づくりを推進し、県内に
飼料自給率の向上を図っていきたいと考えております。 なお、飼料米の
基本的考え方につきましては、十一日の中村議員の代表質問に知事がお答えしたところでございますが、国におきましては、超多収品種の開発や栽培技術の
確立等試験研究がなされているところでございます。県では、外国稲を含む品種の開発や家畜への飼養試験を行っております。 また、青刈り稲につきましては、
水田利用再編対策の中で、遅植えによる機械化の
省力栽培体系の確立やホールクロップサイレージの利用等について、市町村、農業団体とともに、
農業改良普及所を中心に
自給飼料化への方策を実験展示することといたしております。 今後、飼料米の諸問題につきましては、その早期解明につきまして国においても積極的に取り組むよう強く要望してまいりたいと考えております。 次に、養豚対策についてお答えいたします。 わが国における養豚は、海外からの輸入量の増大と、需要の伸びを上回る生産の増加から、需給の不均衡を生じましたので、五十五年以降生産調整が実施され、その結果、養豚経営は非常に厳しい情勢にあることは御指摘のとおりでございます。この間、豚価の低迷によりまして経営不振に陥った養豚農家に対しましては、従来から、経営安定のため、まず
飼養管理技術改善の指導とあわせまして資金対策を講じてまいったところでございますが、この厳しい情勢を踏まえまして、
農家経営安定資金制度を延長いたしまして引き続き実施してまいることといたしました。 また、国におきましても、五十七年度から新たに
肉畜経営改善資金が創設されることとなりましたので、今後この
割り当て枠の確保に努めてまいる所存でございます。 最近、デンマークにおける口蹄疫の発生や、計画生産の成果等によりまして、需給動向が好転いたしてはおりますものの、今後養豚経営の安定推移を考えますと、やはり品質のすぐれた肉豚をより低いコストで生産していくことが最も必要と考えますので、県といたしましても、五十七年度から新たに
優良系統豚造成推進事業を実施いたしますほか、種豚の計画的交配及び
肉豚生産技術の改善についての指導を徹底し、同時に、
養豚関係団体で組織する
養豚経営安定推進会議と密接な連携をとりながら養豚経営の安定を図る所存でございます。 〔林田幸治君登壇〕
◆(林田幸治君) それぞれお答えをいただきました。冒頭にも申しましたように、日本農業のいまやまさに大きな危機的状況の中で、これからの経済運営と申しますか、そういう面では工業優先から農業と工業の調和のとれた国家として、経済力をいわゆる世界平和のために使っていく、そういう面で経済政策の転換の時期をいま迎えているのじゃないかというふうにしみじみ思います。工業製品の輸出偏重でなくて、もっともっと内需を拡大し、そうして経済政策の体質を変えていく。こういうことがない限り、これからの日本農業だけでなしに日本経済全体の問題として大きなデッドロックに乗り上げていくのではないかというふうに思います。そういう面で、もちろんこれは国の政策課題であるというふうに思いますけれども、それぞれの自治体の中で、直接働いている農民とのかかわりが最も強いわれわれの立場としてみれば、いま農政部長からこもごもお話がありましたけれども、自給飼料の今後の検討にいたしましても、さらには養豚農家の当面の課題として、品質向上の課題と同時に
農家経営安定資金等の
貸し付け等についても継続して検討していこうという形などなど、本当に心に触れる行政をぜひひとつ進めてほしいというふうに思います。次に移ります。 第二番目は、免許運行の適正化と交通秩序の確立についてということで
県警本部長にお伺いをいたすわけであります。 自動車台数、
運転免許所有者は年々急増している中で、昨年までは交通事故は減少してきました。当然のことながら、県警その他
交通安全対策に取り組む機関は、それぞれの施設の整備、安全意識の高揚、
取り締まりの強化などの施策がとられてきた結果として評価されると、こういうふうに言っているわけであります。ところが、本年に入りまして、全国的な傾向としてではありますけれども交通事故が多発してまいっておるわけであります。 具体的に数字を挙げてまいりますと、六月十日現在、死亡事故が全国では三千六百八十九人、昨年に対しまして二百六人、五・九%の増加ということになっておるようであります。九州では四百九人、昨年よりも十八人ふえている。率にして四・五%。熊本は六十三名の死亡者であります。昨年が三十六名でありまして、つまり増加の二十七、パーセントにしまして七五%、異常な死亡事故の増加であります。 どうしてだろうか。何かの原因がもちろんあるはずであります。しかし、その原因は、絶対にこれだと言う人は恐らくいないだろうというふうに思います。やるべきことは、お互いにいままでやってきた対策を骨身を惜しまずやっていくこと、そして運転する個人も改めて事故防止を意識する、道を歩く人々にも事故防止を意識させる手だてを高ずることだと、あたりまえのことだけに私はそういうふうに思います。 と同時に、私は、世の中が不景気になって、特に運送業に携わる業界も、そこに働く労働者も、利益を上げるために過酷な労働の中で競争させられているからではないかというふうに思うわけであります。それは県下でも、修学旅行生のバスに
大型トラックが正面衝突したとか、自衛隊の演習帰りのトラックが球磨川に転落するとか、それを引き揚げに行ったトレーラーに別のトレーラーが接触して球磨川に転落をする。本州方面では、熊本県の業者のトラックが
居眠り運転で三重衝突したなど、交通事故の多発と大型化という異常な状態が続いているのであります。 そこで、私は、日ごろから熊本県の
交通関係労働者の組合が県警本部にも要請をしている事柄でありますが、白バス、白タク、白トラ、過積み、過労運転の
取り締まりを強化するとともに、使用者に対しても厳重なる指導が必要ではないかというふうに思うわけであります。 運輸省の調査資料によりますと、
トラック運送の認可業者は、八〇年末で、路線免許三百五十六業者、区域免許三万四千二百七業者、そのほかに荷主契約の限定免許があるわけでありますが、区域免許は前年度より五百七十四業者増加しておるわけであります。そして区域免許全業者の八〇%が保有台数五両から二十両以下という零細業というのがその実態であります。熊本県の場合でも四百を上回る運送業者が過当競争に駆り立てられているわけであります。 ですから、五十五年十二月二十七日付基発第六百四十二号で通達されましたつまり二七通達でありますが、その基本は、
自動車運転者の労働時間等の労働条件の改善を図り、あわせて交通事故の防止に資するため、
自動車運転者の労働条件の最低基準を定めた、つまり二七通達でありますが、これが守られていないという事態が明らかになっているのであります。最も違反率の高いのが、四時間以上の連続運転がなされているということであります。
路線トラックの四五・一%、
区域トラックの三九・五%が四時間を超えて連続運転をさせられている、させている、企業利益のために追い立てられているのが目に見えるような気がするわけであります。ここに、過労運転が行われ過積みの行われる原因があると私は思います。 また、乗客輸送につきましても、厳しい審査と指導によってバス、タクシーの運行がなされているわけでありますが、最近の傾向として、冠婚葬祭をとり行う会館を初め、ホテル、クラブ等において、営業利益を目的とした
白バス運行が幅をきかせておるわけであります。夜間ともなりますと、酔客の
車両持ち帰りと称する営業運行が行われているわけであります。これは明らかに
白タク行為というふうに私は思います。トラック、バス、タクシーがなぜ免許運行であるのか。それは交通秩序を守る必要があることと、国民の生命、財産を交通面から守る必要性から免許制として、公による厳しい監督下で運行管理を行わせているのであります。 このような見地に立って見るとき、今日のような無秩序の状態では、そのほとんどが中小零細な輸送業者としては企業防衛の手段として違法な行為をとらざるを得ないという形になってくるわけです。その結果が、
労働基準法違反となり、あるいは陸運各法の違反となってくるわけであります。 そこで、
県警本部長にお伺いをするわけでありますが、まず第一点として、白トラ、白バス、白タク等に関する具体的な
取り締まりの対策についてあれば伺いたいと思うわけです。 二つ目に、運輸業界における労務、安全対策なり運行管理について。これは本部長の所管ではないかと思いますけれども、やはり行政全般としてはかかわってまいることでもあろうというふうに思いますので、できればこれからの取り組みの方向性を含めましてお答えいただければ幸いだというふうに思います。 三つ目に、
交通安全対策の強化と過積み調査の徹底について、どのように対応なされてきているのか、これからまたどう対応されようとするのか、お伺いをしたいと思います。 〔
警察本部長廣谷干城君登壇〕
◎
警察本部長(廣谷干城君) 交通問題につきまして三点の御質問でございますので、順次お答えをいたします。 まず、白トラ、白バス、白タク等に関する
取り締まりの問題でございますが、御承知のとおり、白トラ、白タクあるいは白バスと申しますのは、運輸大臣の免許を受けませんで貨物あるいは旅客の運送を業として行う行為でございます。これは輸送秩序を乱すということばかりでなく、交通事故防止の面からも看過できない問題でございまして、これらの行為につきましては常日ごろから強力な
取り締まりを心がけておるものでございます。 白トラ行為につきましては、昨年中八件、本年に入りまして二件を検挙いたしておりまして、さらに、これにつきましては陸運事務所におきまして車両の使用禁止処分もあわせて行われておるような状況でございます。 白バス行為につきましては、旅館、飲食業者等が通常のサービス行為の範囲を超えまして有償で客の送迎を行うというようなことになりますと、これは当然のことながら違法でございますので、これらの行為につきましても強力な監視を行っていきたいというふうに考えておる次第でございます。 また最近、運転代行行為が全国的に普及をする傾向にございまして、本県におきましても、現在こういう行為を行います業者三業者を把握いたしております。これらの代行者の車両に酔客等を乗せまして有償で輸送するということになりますと、いわゆる白タクの行為になるわけでございまして、これらにつきましても陸運事務所等関係機関と連携を十分保ちながら十分な監視を行ってまいっておりますし、またこれからもそういうふうな方針でいきたいというふうに考えております。 御質問の第二点でございますが、トラック、タクシーなど営業用車両による交通事故も実は増加をいたしておりまして、本年四月末現在で調べてみますと、本年に入りましてから百九十件発生をいたしておりまして、昨年に比べますと約一八%の増加となっております。 事故全体から見ました構成率は八%ということではございますが、警察といたしましては、少なくとも営業用の車両はプロとして交通秩序の確立のための核となっていただかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございまして、陸運事務所、労働基準局など行政関係機関と連携のもとに、安全運行に関する指導を徹底してまいりたいというふうに考えておりますし、御指摘のような過積載運転あるいは過労運転などの違反がございます場合には、運転者はもちろんのことでございますが、使用者の責任追及及び当該違反にかかわる自動車の使用制限などの措置を強化してまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。 御質問の第三点でございますが、まず過積載の問題でございます。 過積載は、御承知のように、車両の安定性や制動効果を低下させるということで交通の危険を生じさせる可能性が非常に大きいわけでございますし、その上に路面の損傷の原因や荷崩れ、あるいはタイヤのバーストが生じるなど各種の交通障害の要因となるものでございまして、これらの行為につきましては
取り締まりを強化いたしておるところでございます。ちなみに、昨年中におきます過積載違反の
取り締まり件数は千六百八十九件検挙を見ております。また本年は五月末現在で七百九十三件の検挙を見ておるところでございます。 なお、この過積載の問題につきましては、ただ単に運転者だけの問題ではございませんで、使用者等によって助長されるおそれのあるいわゆる構造的な違反でございます。したがいまして、それらの背後責任につきましても強力にこれを追及することといたしておるわけでございまして、昨年使用者等の責任を追及いたしました事案は百三件に上っております。また、本年六月中を雇用者の背後責任追及強化月間に指定をして、現在
取り締まりを強化いたしておるわけでございますが、六月十日現在、過積載の検挙が百六十四件ございまして、そのうちで雇用者等に対する両罰規定の適用をいたしましたものが百二十七件出てきております。なお、今後とも関係業界等における過積載の自主的抑制を図るために、関係機関とともに強力な指導を行っていきたいと、かように考えております。
交通安全対策の強化の問題についてでございますが、御指摘のとおり県内におきます交通事故は大変多発をいたしておりまして、増加率では全国一、二を争う記録となっておりまして、警察の組織を挙げて事故防止に取り組んでおるところでございますが、要は県民一人一人の安全意識をいかにして高めるかということでございまして、そのために、現在、市町村及び各種団体に対する積極的な働きかけ、広報活動の積極的な推進、シートベルトの着用、二輪車の昼間点灯、ヘルメットの着用等を通じました自己防衛意識の啓発活動を重点に、じみではございますが幅広い運動を展開しているところでございます。 なお、交通指導
取り締まりにつきましては、交通事故に直結する交通違反を重点とした指導
取り締まりを行うとともに、交通安全施設等の整備につきましても、交通事故の発生率が高い交差点及びカーブあるいは横断歩行者の安全対策を重点にその整備充実を図っている次第でございます。 お話にもございましたように、大変当県の交通情勢は厳しいものがございます。諸先生方の御指導を心からお願いを申し上げる次第でございます。 〔林田幸治君登壇〕
◆(林田幸治君) それぞれ御答弁をいただきました。異常に熊本県の場合は交通事故が多発をしているという点では、
取り締まりなりさらには指導に直接当たられる県警関係各位の皆さんの御苦労は大変だろうというふうに思います。と同時に、もっともっと秩序ある交通あるいは運輸産業と申しますか、そういうものがなければならないにもかかわらずいろいろな隘路が山積をしているわけでありまして、白トラなり白タクなりその他の違法行為に対する摘発、指導というものも、好むと好まざるとにかかわらず続けていかなければならないことだろうと思います。そういうことが成功することによって初めて、いわゆる交通事故というものが減少していくのではないかと思います。大変でしょうが、精いっぱいひとつ、より御努力を賜りますようにお願いを申し上げて、次に移りたいと思います。 次は、県道六嘉秋津新町線及び秋津川の改修についてお伺いをしてまいりたいと思います。 本議会冒頭の代表質問の中で永田先輩から、秋津、若葉その他の湛水問題なども含めて基本的には加勢川の改修にある、もっと積極的に進めろという代表的な御意見がありました。それにもかかわることなんでありますけれども、私は五十五年七月の定例議会で質問した課題であります。 当時、私は、広木・若葉・秋津地区の浸水問題を中心に伺ってまいりました。これに対して、当時の藤村土木部長は、この地区の浸水対策については、いまも申し上げましたけれども、基本的には加勢川の大六橋下流の河川改修事業を促進することにあるとしながらも、秋津川の改修については、熊本市の東部及び益城町の宅地開発並びに圃場整備によって洪水流量が急激に増加して、従来の河道では対応できなくなったので、小規模河川改修事業として改修工事を行っている、最も障害となっている中無田ぜきについては、現在計画中の秋津地区圃場整備事業計画とあわせて、せき位置の変更、ポンプ取水など総合的に検討しており、なるべく早く着工できるよう努力したいとこういうふうに答えられておるわけであります。また、県道六嘉秋津新町線については、木山川の間島橋から秋津川の野間橋間約三百四十メートルについては、間島橋、野間橋の改築を含めて五十六年度から整備に着手する計画であると言われております。そこで、そういう経緯を踏まえて端的に質問を申し上げるわけであります。 確かに秋津地区圃場整備も進められております。秋津川の改修工事もそれなりに進められているようであります。しかしながら、私ども地元住民の目からすれば、さらにはこの県道を絶えず利用している県民の目からすれば、遅々として進んでいない感じに打たれることもまた理解してほしいと思うわけであります。 そういうことで、この県道六嘉秋津新町線と秋津川の改修について、予算措置等を含めまして計画の概要と現状、さらに完成見通しについて、この機会に明らかにしてほしいと存ずるわけであります。 〔土木部長梅野倫之君登壇〕
◎土木部長(梅野倫之君) お答えいたします。 県道六嘉秋津新町線は、上益城郡と熊本都市圏とを結ぶ生活幹線道路といたしまして重要な役割りを果たしていることは私が言うまでもございません。間島橋から野間橋間が未改良のため、年々増加する交通量に対処できず、交通の隘路となっていることは御指摘のとおりでございます。 本工区につきましては、河川改修事業及び圃場整備事業との関連があるため、その調整を図りながら昭和五十六年度から未改良区間の六百三十四メーターの事業に着手し、現在国庫補助事業により整備を進めているところでございます。 まず、特殊改良一種事業でございますが、全延長四百七十八メーター、昭和五十六年度は圃場整備の用地買収を行ったところでございます。本年度は、残りの用地補償と一部本工事を実施する計画でございます。 次に、橋梁整備事業でございますが、この区間には間島橋、野間橋、裏川橋の三橋がございます。間島橋については、本年度末には下部工を完了する予定にしております。また野間橋については、昭和五十八年度に着手できるように河川改修との調整を進めているところでございまして、裏川橋については本年度実施の予定であります。しかしながら、五十八年度以降も多額の経費を必要とするため、現在の厳しい財政環境の中では早期完成はなかなか困難と思われますが、今後とも本路線の重要性にかんがみ整備促進に努めてまいりたいと考えております。 次に、秋津川の改修でございますが、秋津川の改修は昭和四十四年度から小規模河川改修事業として進めております。その計画概要は、延長が、木山川合流点を起点といたしまして上流は、鉄砂川合流点付近まで四千七百メーターでございます。これまでに投資した金額は約十億円でございまして、その進捗率は全体の約六〇%程度でございます。 また、改修の現状についてでございますが、橋梁についてはさきに述べたとおりでございまして、築堤工については橋梁等の構造物と並行いたしまして実施しておりますが、地盤が非常に軟弱でございまして、急速な盛り土は地盤沈下等を起こすおそれがありまして、やむなく緩速盛り土で実施しております。 本河川の改修上の障害となっている中無田ぜきでございますが、現位置では仰せのとおり改築がなかなか困難なため、ポンプ取水に切りかえ、本年度にその補償工事に着手することにしております。しかしながら、旧ぜきの撤去につきましては、代替施設の完了する昭和五十九年度に予定しております。河道整備についても、これとあわせて実施してまいりたいと考えております。 最後に、完成の見通しでございますが、基本的には加勢川本川の改修状況とのかね合いがあり、これとの整合性を保ちながら効果的な改修の促進に努めてまいりたいと考えております。 以上でございます。 〔林田幸治君登壇〕
◆(林田幸治君) 一言で言えば、積極的に進めていくつもりであるけれども、なかなか予算の関係などもあって早急にというわけにはいかない、しかし精いっぱい努力をしていくと、いわばこういう回答のようでありました。今後ともひとつ積極的な取り組みを期待申し上げながら、次に移らせていただきます。 次は、高齢者労働能力活用事業・シルバー人材センターについてお伺いをいたします。この問題につきましても、私は一昨年十二月議会で提起したわけであります。一年半経過いたしました今日なお実現を見ていないわけであります。したがって改めて伺ってまいりたいと思います。 シルバー人材センター設置につきましては、高齢者の就業機会の増大と福祉の増進を図るとともに、高齢者の能力を生かした活力ある地域社会づくりに寄与することを目的として、労働省の施策として全国的に設置、運営されることになったものであります。その概要は、二十万人以上の地域を単位として、その地域に居住するおおむね六十歳以上六十五歳未満の健康な高齢者で、常用雇用でなく何らかの補助的あるいは短期的な仕事につくことを希望する方々を会員とした公益団体を、会員みずからが自主的に設置し運営するものであります。そして留守番や文書の清書や簡易な修繕など、一般家庭や事業所や官公庁から有償で引き受けて、会員に仕事を行わせ、仕事の内容と就業の実績に応じて報酬を得るというものであります。 当時の私の質問に対して八浪
商工観光労働部長は、熊本市が設置の対象となるということで再三打ち合わせを重ねているところであり、今後なるべく早く設置されるよう熊本市と折衝を続けてまいりたいと、このように答弁をされております。しかしながら、冒頭に申し上げましたように今日なお具体化されていないわけであります。 私どもの調査によりますと、鹿児島、宮崎、長崎の三市ではすでに発足しているようであります。これには、そこで組織されている高齢者退職者協議会の会員が、会員登録の指導から、センターの民主的な運営への発言力を高めるなど協力をする中で、その実績が評価されているというふうに聞いているわけであります。 熊本の現状はどうなっているのか、端的にここで明らかにしていただきたいと思うわけであります。 〔
商工観光労働部長八浪道雄君登壇〕
◎
商工観光労働部長(八浪道雄君) お答えいたします。 高齢化の進展します中で、シルバー人材センターは高齢者対策の一つとして有意義なものであると考えまして、熊本市におきましても設置がなされるよう折衝する旨、一昨年十二月県議会でもお答えをしたところでございます。その後も、県市事務連絡会議等機会あるごとにシルバー人材センターの設置につきまして熊本市に働きかけてきたところでございます。 熊本市におきましては、すでに設置を見ています他県の先進市の視察を行い、設置についての検討が慎重に進められているところでございます。しかしながら、運営基準にあります仕事量の三分の二以上を民間事業所や家庭から確保することの可能性、それから発注されました仕事に対します会員の遂行能力の存否など、なお調査検討すべき課題が残っている旨聞いておるところでございます。 ところで、九州各県の設置状況は、先ほどお話がございましたように、長崎市、宮崎市、鹿児島市、それに久留米市においてもすでに設置がなされておりまして、さらに二、三の市におきましても設置の準備が進められていると伺っておるところでございます。今後、熊本市における設置につきましては、市みずからが取り組むべき事柄ではございますが、県としましても設置が図られますよう今後とも折衝してまいりたいと、このように考えております。 〔林田幸治君登壇〕
◆(林田幸治君) 熊本市が主体で行っていくということであるわけですけれども、いまお答えいただきましたように、他県の実情等も十分調査をしながら一日も早くそれが実働に移っていくように今後ともお互いに協力をし合いながら進めていきたいと。ぜひひとつ、そういうことで一日も早く日の目を見ますように御努力をさらに要請したいというふうに思います。 ともかく日本の実情は、世界の中で最も早い勢いで――何ですか世界の平均の四倍を超える勢いで高齢化社会を迎えてきているというふうに言われているわけであります。そういう面では、これからいろいろな面で高齢者問題が問題になっていくことは否めないと思います。本議会の代表質問の中でも、わが党の中村議員が高齢者の雇用問題について真摯に問いただしていたわけですけれども、厳しい高齢者の就職問題等につきましては、このごろ新聞その他マスコミの中でも、つとに取り上げられておるわけでありまして、ぜひひとつ前向きの取り組みを要請したいと思います。 続いて、熊本県基幹交通体系基本計画策定について申し上げてまいりたいと思います。 私は、県が熊本県基幹交通体系基本計画の策定を計画され、いまその作業が進められていることを高く評価するものであります。計画によりますと、五十六年度に交通体系の問題点と課題の検討が行われ、五十七年度中に基本計画の策定が行われるというものであります。私は、昨年十二月議会で一定の要望を申し上げていたわけでありますが、この機会に若干の問題について質問してまいりたいと存ずるわけであります。 これまでの県の交通計画といえば、昨年制定された八〇年代熊本県総合計画の中で、豊かな生活を支える産業の振興のための基盤として、基幹的交通体系の整備がうたわれておりました。しかし、今回のこの計画は、いままでにない言うならば画期的なというか、県政始まって以来の総合的な交通体系、政策の確立として私は受けとめたいのであります。私は、この立案なり作業に当たられる関係者の精進に期待すると同時に、次の諸点についてただしてまいりたいと存じます。 まず第一点は、各部門ごとあるいは地域ごとの整備計画の策定につきましては、整備の方向、施策の内容について可能な限り目標年次等を明らかにしてほしい。そして策定に当たっては、学識経験者なり各界代表等の意見を聞く機会をつくり、その基本計画が県民に期待される実現性を持ったものとして策定されねばならないと、こういうふうに考えるわけであります。 第二点は、公共的大量輸送機関、つまりバスとか電車軌道などですけれども、その維持、整備図ることについてであります。このことは、さきの三月議会で、地域における公共交適確保に関する意見書を採択いたしましたことで、いまさら申し上げることもないとは思いますが、改めて申し上げておきたいわけであります。 それは、昨年七月、運輸大臣の諮問機関である運輸政策審議会が、公共交通の補完、代替として自家用車やレンタカーの活用を提言いたしました、つまり「長期展望にもとづく総合的な交通政策の基本方向」というものを答申したわけであります。その中身は、たとえば人口五万人以下の中小都市あるいは農山漁村では、鉄道や定期バスを廃止して、相互扶助の立場から、自家用車を使用する者と、その利用を希望する者を、地域的組織の力、たとえば町役場とか農協とかによって結びつける自家用利用の導入を検討するとしているのであります。農山村等の地方のバスや鉄道などの公共交通を、マイカー中心の交通体系に変更するという答申であります。交通を利便機能だけでとらえているわけであります。公共交通が持っております存在機能を全く無視したものです。いま私たち県民が問題にしている高森線等地方ローカル線の廃止と同様に、効率の悪いものは廃止をし、その犠牲は、すべて地方自治体とマイカーを利用することのできないお年寄りなど交通弱者に覆いかぶせるという答申であります。私は絶対にこれを容認できないと考えております。したがって、県計画策定に当たっては、あくまでも公共輸送機関を維持し発展させていくという視点を貫いてもらいたいと考えるわけであります。 第三点は、熊本市を初め県内主要な都市部における総合的な交通対策と、熊本空港や九州縦貫道インターチェンジ等の交通拠点を結ぶアクセス道路の整備をどのように進めるか大きな課題だと考えるわけであります。この点についても、目標年次などを含めて計画策定に当たってほしいと思うわけです。 すでに取り組まれてきている課題でもあります以上の三点について、その考え方と計画策定の現状について明らかにしてほしいと考えるわけであります。 続いて、六番目の関係もあわせて御質問申し上げたいと思います。それは熊本空港の国際線運航の現状と将来展望についてであります。 御案内のように、去る六月二日、熊本空港で国際線ターミナルビル建設の起工式が行われました。まことに喜ばしいことであります。国際線ビルの内容は、鉄筋コンクリート二階建て、延べ四千八百八十七平方メートル、税関、検疫、出入国管理のCIQ施設と日本航空が入居し、完成予定は来年三月二十五日の予定だというふうに聞いております。 そこで、今日までの熊本空港における国際線運航の経過を見ますときに、五十四年九月、日航と大韓航空による各週二便運航が国際線のスタートになるわけであります。その後、韓国の政情不安などもありまして利用客の増加が望めず、大韓航空は昨年十二月、二度目の運航休止となり、現在もなお運休の状態にあるわけであります。そして現状は、日航による週一便の往復で利用等も四四・一%、昨年同期の半分というふうに言われているわけであります。率直に申しまして、きわめて厳しい現状にあると言わなければなりません。 県は、唯一の国際線であるソウル線の振興のために大変な努力を払ってこられました。いまもなお、熊本空港国際線振興協議会等を通じて、ソウル線の振興はもちろん、新規路線の開拓、相手国の調査、要望を行うことなど検討が加えられているようであります。私は、それぞれの関係者の努力に敬意を表しながら、国際線ビル着工というこの機会に、全県民的な運動として国際線振興を図っていかなければならないと考えるわけであります。そのためには、熊本国際空港の宣伝、PRがもっともっと強められることに大きなポイントがあるように思われます。 そこで、熊本空港の国際線運航状況、そしてその振興策、さらに新しい路線開拓の展望について、あわせて明らかにしてほしいと思うわけであります。 〔
企画開発部長岡田康彦君登壇〕
◎
企画開発部長(岡田康彦君) お答えいたします。 まず、熊本県基幹交通体系基本計画の策定についてでございますが、今後ますます交通手段に対する県民の要求も高度化、多様化すると考えられますので、新しい時代に対応した基幹交通体系の整備を総合的かつ計画的に推進する必要があると考えております。また、産業の振興という観点から見ましても、その基盤となる交通体系の整備を積極的に進めることはきわめて重要なことであります。このような認識に立ちまして、現在熊本県基幹交通体系基本計画の策定に取り組んでおるところであります。 この基本計画の策定スケジュールとその内容でございますが、作業手順の関係もございまして若干時間的なスケジュールも変わっておりますが、具体的には、五十六年度につきましては、交通体系及びその利用の現況を総合的に把握し、これに基づきまして問題点及び課題の検討をいたしました。五十七年度は、五十六年度のこういう検討結果を踏まえまして、六十五年度を目標とする本県の総交通量の予測と、さらには各交通機関別の需要予測を行いまして、来年度五十八年度には、その予測に基づきまして基幹交通体系の整備の方向を定める、そして主要な施策を策定するという計画になっております。 お尋ねの第一点は、この基本計画の策定に当たりまして学識経験者や各界代表の意見を聴取する機会をつくり、県民に期待され実現性を持ったものを策定すべきだという御意見でございましたが、これにつきましては、学識経験者を初め、建設省あるいは運輸省等の国の出先機関、さらには交通業界、産業界、市町村の実務担当者に参加いただきまして、基幹交通体系基本計画策定協議会を設置しております。広く各界の意見を聴取しつつ作業を進めておるところでありまして、御意見に沿った運営がなされておると考えております。 お尋ねの第二点でありますが、公共交通の重要性につきましては、地域住民の足を確保する責務を担う地方公共団体といたしましては、これら公共的大量輸送機関の維持発展につきまして適切な施策を講ずべき立場にあることはお説のとおりでありまして、この観点から三月議会におきましても御指摘の意見書の採択が行われたものと承知しております。今回の計画策定に際しましても、これらの趣旨を生かしまして、関係方面の御意向を十分承りながら、将来の交通需要に適合した交通体系の確立を図るようにしたいと考えております。 ただ、この点に関連しまして若干付言させていただきますれば、御説には全く同感でありますが、他方、経済合理性も全く無視することはできないという問題がございます。したがいまして、公共輸送機関の維持発展のためには、県民が積極的にこれらの機関を利用していただくことが重要であると考えております。言いかえれば、鉄道やバス等を自分たちの足として積極的に利用していただきたいということであります。 さて、お尋ねの第三点は、県内都市部における総合的な交通対策や交通拠点間のアクセス道路の整備についてでございますが、空港とのアクセスあるいは高速インターとのアクセス等々の問題につきましては、これまでも検討を進めて整備も目下進めておるところでございます。御指摘のとおり重要な課題でありますので、さらに県庁内関係部局はもちろんのこと、建設省、運輸省などと十分協議を行い積極的に取り組んでまいりたいと考えております。 お尋ねの二点目は、熊本空港の国際線運航の現状と将来展望についてであります。 御指摘のとおり熊本空港は、五十四年九月に韓国との間に国際定期航空路が開設されまして、本県における国際交流の拠点施設として重要な役割りを果たしておるところであります。また、五十六年度から始まりました国の第四次空港整備五カ年計画に基づきまして国際線ターミナルビルの建設が着工されるなど、国際空港としての施設の整備と機能の充実が図られているところであります。 お尋ねの第一点は、熊本空港における国際線運航状況についてでありますが、まず熊本―ソウル線の利用実績は、五十四年九月の開設から今年の五月までに約二万六千七百人に達しておりまして、五十六年度は五十五年度に比べ四〇%増の一万三千三百人でございました。 現在就航中の日本航空の利用率についてでありますが、御指摘の数字は冬期一月から四月までのものでございまして、その後五月は五六%と向上をしてきておりまして、六月は九二%の予約状況となっております。さらに九月までの予約の状況も好調である旨の報告を受けております。 一方、国際線チャーター便の実績を見てみますと、昨年までに便数は三百六十八便、旅客数は約四万七千人に達しております。本年も五月まで二十七便、月平均五便となっておりまして、九月まで四十九便の予定がありまして、これは昨年の二倍という数字になっております。 そこで、このような国際線の利用実績を踏まえまして、熊本空港における国際線の振興策でございますが、まず第一に、唯一の国際定期路線である熊本―ソウル線が衰退の一途をたどるというようなことでは新規路線の開拓もむずかしいと考えられます。ソウル線の振興につきましては、熊本空港国際線振興協議会等を中心に広く県民の方々の御理解と御協力を得まして、本県と韓国との幅広い国際交流を基本に、路線の振興と定着化を図ってまいりたいと考えます。 この路線の振興を図るためには、全県民的な運動と強力な宣伝、PRがポイントであるという御指摘でございますが、国際線振興協議会を中心に、本年度もすでに、新しい韓国旅行のポスターや産業視察のちらし等を作成いたしまして、関係機関に配布してPRに努めているのを初め、新聞、テレビによる宣伝も進めております。また、日本航空、県内一般旅行業者、大韓民国の国際観光公社等の参加を求めまして、共同で県内キャンペーンや九州各県等へのキャンペーンを行うことにしているところであります。特に、これからは韓国の渡航制限の緩和が見込まれておりますので、今後は、これまでのように本県からの交流にウエートを置いたものではなく、韓国からも本県へ多くの方々に来ていただくような相互交流が重要であると考えます。そのために、新たに韓国の旅行業者を対象にいたしまして本県の紹介とPRを行うように計画しておりますほか、さらに文化、教育、スポーツ等多岐にわたる相互交流の実施に努力してまいる所存であります。 第二点は、新規国際線の展望についてでありますが、特に熊本空港の持つ地理的優位性を踏まえまして、九州の他空港が持つすでにある路線と競合しない新規路線の開拓に努めていきたいと考えております。去る五月二十日の中国広西壮族自治区との友好提携の調印式後、議長を代表とする代表団が中国民航等を訪問し、新規開設の要望書を提出するなど誘致対策を進めているところでありますが、今後とも新規国際線導入を図るため、当面、中国、グアム、東南アジアに的をしぼりまして、相手国に対して積極的に要望活動を展開するとともに、日本航空、運輸省航空局へも積極的に働きかけをしてまいりたいと、かように考えております。県議会の皆さん方の御支援をよろしくお願いいたします。 〔林田幸治君登壇〕
◆(林田幸治君) それぞれ御回答をいただきました。お話のように大変厳しい状況にそれぞれあるわけですけれども、熊本空港唯一の国際線ソウル線の振興を初め新しい路線の開拓等について、執行部だけでなしに議会の私どもも、もちろんもろ手を挙げてこれから努力をしていかなければならぬというふうに思いますが、より一層の精進を期待したいと思います。 次に、県のベンツピレン対策について、これは要望を申し上げたいと思います。 芦北郡田浦町の「田浦漁業を守る会」が、田浦湾内のアサリ、アナジャコを日本食品分析センターに依頼して分析した結果、高濃度の発がん性物質三・四ベンツピレンが検出されたと発表したことを受けて、県が本年四月二十二日、同湾内の魚介類十三検体、底質八検体を採取し、県衛生研究所において分析したところ、明らかに高濃度のベンツピレンが検出されました。県は、その結果を五月二十七日の公害対策特別委員会に報告すると同時に、当面の対策について了解を求め、その内容が翌二十八日の新聞に掲載され、地元住民を初め県民にショックを与えたことは御承知のとおりであります。 検査結果の詳細については、ここでは省きますが、当面の措置として、県が地元漁協に対し、採捕の自主規制を指導した地点のアナジャコのベンツピレンの含有率が七九〇ppb、カキ三七〇ppb、アサリ三五ppb、さらに、頻繁に食用に供しないよう指導している地点のオオノガイは九・八ppbないし二七ppb、カキ一一ppb、アナジャコ二・九ppb、アサリ一・八ppbとなっておるわけであります。 ベンツピレンの発がん性については、責任者の公害部長が初めて知ったということですから、私どもにわかるはずはありません。それに国の水質汚濁防止法の規制対象になっておらず、したがって規制の基準も全くないわけであります。しかし、県民の命と健康を守る立場から考えると、県がとった当面の措置は一応やむを得ないと考えます。 ところが、県のとった措置の中で不可解なことがあるわけであります。それは、この発表と同時に、参考資料として国立公衆衛生院の白石麗子、高畑英悟、東京家政大学の白鳥つや子三氏による分析の結果、検出された「国産食品中の三・四ベンツピレン含有率」の資料が添付されております。さらにまた、諸外国の各種実験例に基づき、世界保健機構の機関である国際がん研究所の作業部会が一九七二年にまとめた「各食品中における三・四ベンツピレン含有率」が添付されているわけであります。いずれも昭和五十年六月十日付で、文部省体育局学校給食課が発表したものであります。 この資料によりますと、私どもが日常食卓に親しんでいる食品の中に、高濃度のベンツピレンを含有しているものが多くあって驚いたわけであります。たとえば、食事の際だけでなく、一日何回となく飲んでいるせん茶が四・七ないし一六ppb、ノリ一・六ないし三一・三ppb、魚の薫製三七ppb。外国の例では、キャベツが一二・六ないし四八・一ppb、ステーキ五〇・四ppb、肉の薫製は二三ないし一〇七ppbとなっているわけであります。 ここで問題なのは、一・八ないし二七ppbのオオノガイ、アナジャコ等発がんのおそれがあるから頻繁に食用に供しないよう指導している県が、なぜそれより濃度の高い食品について何らの手を打たないかということであります。添付資料にある食品が問題ないというのなら、田浦湾の魚介類を頻繁に食用に供しないように指導しているのは誤りではないかという疑点が残るわけであります。田浦湾の魚介類は、漁民の皆さんから指摘されたから、あわてて調査をし規制の指導をした。ほかのものについては、だれも指摘しないから調査しなかったでは、県民の命と健康を預かる執行部の責任はどうなるのか。県の指導は、国立がん研究センターの河内副所長のコメントに基づいて行われたと聞きますけれども、その時点で、より濃度の高い食品については何らかの手を打つべきではなかったのか。田浦湾の魚介類と同様の調査をして、その結果を県民に公表すべきであるという意見があるわけであります。国立公衆衛生院なり国際がん研究所の調査による、いわゆる魚介類以外の日常われわれが食している身近な物質の中に多くのベンツピレンが含有されている事実が明らかであるだけに、そういう議論に発展することもまた否定できないと私は思うわけであります。 しかしながら、現状においては、国においてもベンツピレンの規制についての明確な基準も定められていない。そして学会においても、最近になって研究課題になっている問題だと聞きました。そういう問題ですから私はあえて答弁を求めようとは思いませんが、しかしながら言えることは、県民の健康を守り、県民の不安を除去し、県民が安心して生活が営まれるように日常的に配慮することは行政の責務であります。一方に偏ったと言われることのない、弱者と言われる県民の立場に立った公正な行政、それが県民の信頼をかち得ることだと私は考えます。 公害の原点とも言われる水俣病問題を抱える県行政として、環境、公害問題には何よりも神経が使われていることを承知いたしております。ベンツピレン対策については、魚介類の許容基準や底質除去基準などの設定について関係省庁に要請することなど幾つかの対策が立てられているようでありまして、一応理解をいたしております。ただ、前段で申し上げましたように疑点があるだけに、県行政が各般にわたり、きめ細かな配慮を払いながら対応してほしい、そのことを特に要望しておきたいと思うわけであります。 以上、私の質問並びに要望について終わりました。終始熱心におつき合いを賜りました議員各位にお礼を申し上げながら、執行部のこれからの御健闘に心から期待を申し上げながら終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
○議長(幸山繁信君) 昼食のため午後一時まで休憩いたします。 午前十一時四十九分休憩 ―――――――○――――――― 午後一時四分開議
○副議長(井ノ上龍生君) 休憩前に引き続き会議を開きます。三角保之君。 〔三角保之君登壇〕(拍手)
◆(三角保之君) 自民党の熊本市から選出をいただいております三角保之でございます。過去三回にわたって質問の機会を与えていただきましたけれども、まだ未熟者でございまして、ローカル的な問題のみにとどまり県政の飛躍に貢献することのできなかった私に、四たび目の質問の機会をお与えいただきました各位に対して心から感謝申し上げる次第でございます。しかし、今回の質問も、過去のおさらいを中心にお尋ねをしてまいる所存でございますので、余り変化もなく、お退屈でございましょうけれども、しばし時間をお与えいただきたいと思います。特に、きょうは月曜日の午後ということでお疲れでございましょうけれども、七問質問をさせていただきます。県政順に執行部の皆さんに登壇をしていただきまして、ずっとこっちから順番に行きまして最後が教育長になっておりますので、その辺お含みおきをいただいておつき合いをお願いしたいと思うわけでございます。 まず第一問は、過去におきまして、熊本都市圏における諸整備、また産業構造のあり方等についてお伺いをしてきたところでありますが、社会情勢の変化も著しく地方自治の責務も大変厳しくなってまいりましたので、今回は、経済社会における熊本都市圏の整備、また九州全体から見ました位置づけ等について、今後の知事のお考えをお伺いしたいと思うわけでございます。 八〇年代の二年目を迎えて、地域社会を取り巻く条件、環境には大きな変化が出てきております。今後は、これらの変化を踏まえて新しい視野に立った県政の運用が求められてくると思います。 その変化の第一は、経済成長の鈍化であります。わが国は、高度成長を経て世界的にも経済大国となり、国民総生産は昭和五十五年度で二百四十兆円で、自由世界第二位、国民一人当たりの所得も第七位となりました。住はともかくといたしまして、衣、食は世界のトップ水準となってきたのであります。昭和四十八年の第一次石油危機もうまく乗り切り、その後、低成長経済へと移り、また第二次石油危機も昭和五十五年において結末を告げ、創造的活力を求められる発展段階に入ってまいりました。しかしながら、国際化が一段と進行し、わが国が経済大国となればなるほど国際貿易摩擦を生じ、欧米各国から厳しい指弾を浴びることになってきたわけでございます。ゆえに、これからのわが国経済は、特に国際間の協調を図っていく必要が出てきて、当然のことながら地方自治、地域経済にも大きな影響を及ぼすことになると思います。 第二の変化は、エネルギーと資源の制約が表面化してきたことであります。通産省の長期エネルギー需給見通しによりますと、昭和五十五年度のわが国における全エネルギーの石油依存率は六六・四%、石油の輸入率は九九・八%でございます。鉄鉱石、食糧など、その他の重立った資源についても、ほとんどが大きく輸入に依存をしております。特に、最近のように複雑な国際政治の中で、エネルギーや資源が不安定となり大きな制約条件となってきたと言えると思います。 次に第三の変化は、国民の価値観、生活意識の多様化が言えると思います。わが国は、いまや世界でも指折りの豊かな経済先進国となり、個人所得も大幅に向上して、国民の生活目標も個性化、多様化、創造性を求める風潮が強くなってまいりました。 第四の変化は、高齢化社会の到来だろうと思います。高齢者の人口は、五十五年国勢調査の一%抽出調査では九・一%に達しており、老齢化のスピードはヨーロッパ諸国の約四倍の速さであり、このままの推移ですと二十年後の二十一世紀には一四ないし一五%になると想定されており、急速な高齢化社会の到来が予想されております。このように人口の高齢化は全国的傾向ではありますが、本県においては昭和五十五年の国勢調査では、高齢者人口の割合が一一・七%と全国より早いテンポで高齢化社会を迎えようとしております。 以上申し上げましたほかにもいろいろと地域社会を取り巻く環境の変化があるかと思いますが、これらの大きな諸状況の変化によって、総合的な地域経営を進めるべき県の責務はますます重大なものとなってきていると思います。また、九州ブロックという広域的な視点から、このような経済社会環境の変化に対応するという態度も必要となってくると思います。 そのような中にありまして、九州における熊本都市圏あるいは南九州における熊本都市圏の位置づけは、本県の将来の発展を大きく左右する大変重要な意味を持つものと思います。特に九州においては、水資源などの制約から、北部九州における都市集積の拡大に限界が見え始めてまいりました。熊本都市圏は将来ますます中枢管理拠点都市としての役割りが期待されるものと思われます。現在でも熊本市は、広域的な機能を持つ国の出先機関が多く所在しているところでありますが、今後、熊本空港の整備、新港の整備、高速道路網の整備、新幹線の整備などが進んでまいりますと、地理的中心性のメリットは一段と高まり、物流面、情報面における結節点としての位置づけが強まってくるものと思われるわけであります。 そこで、県都である熊本市の位置づけについての基本的な考え方を知事にお尋ねいたします。特に、先ほども申し上げましたが、社会条件、環境の変化を踏まえた中で、熊本都市圏の広域拠点都市としての機能の発展拡充に対し、どのような位置づけをし、今後の具体的な施策についてどのようにお考えか、お尋ねをいたします。 〔知事沢田一精君登壇〕
◎知事(沢田一精君) ただいまの御質問にお答えを申し上げます。 経済社会情勢が大きく変化しつつあるという前提のもとに、いろいろと所感を交えて御質問があったわけでありますが、私も、そういった状況の変化ということを前提にいたしまして、熊本都市圏の将来というものを考えてみます場合に、まず御質問の中でお述べになりましたように、従来、九州の産業経済あるいは文化――行政と言ってもいいかもしれませんが――中心が北に偏り過ぎて、福岡市あるいは北九州市に重点が置かれておったということは過去の否めない事実でございます。しかし、最近におきましては大きな条件の変化が起こりつつある。それは、いまお述べになりましたように、北九州、福岡地区におきましては、何としましても土地が狭隘である、あるいは過密の弊害がそろそろ出始めてきておる。また、決定的な要因は、水がいずれにしましても不足をいたしておるといった、人間の集積に必要な生活条件、快適な生活を保障するためのいろいろな前提条件にすでにいろいろ問題が出てきておることは、いまお述べになったとおりであります。飛行場の問題一つを考えましても、福岡空港がすでにああいった飽和状態に近づいておるという状況にもあるわけであります。 もう一つは、やはり立地的に福岡、北九州は北に偏り過ぎておると思います。これからは私は九州の時代が到来すると、こう思うわけでありますが、特にいままで開発がおくれております南九州がこれから大いにピッチを上げて開発を促進していかなければならぬ、そういう時代だと思います。これは国際的な条件からいたしましても、中国あるいはASEAN諸国に最も近いといったような九州の持つ優位性というものからいたしましても、今後、南九州を中心として九州全島がバランスのとれた開発を遂げていかなければならぬとこう思います。そういうことになりますとこのへそのところに当たりますのが熊本市でございましてちょうどど真ん中に位置しておるわけでございます。私は近い将来におきまして、いままで福岡、北九州に優位を譲っておりましたが、九州の拠点都市として、中枢管理都市として熊本都市圏が大きく浮かび上がる時代が必ず来るというふうに確信をいたしておるわけであります。 そのための前提条件としてどういうことを考えなければならぬか。これは、一つはやはり九州全域に対しまする交通ネットワークを早く整備をしなければならぬ、これはもう申し上げるまでもございません。陸海空にわたります高速交通体系をより一層整備をするという必要があろうと思います。特に高速自動車道を早く完成をさせなければならぬ。南北だけではなしに東西にわたっても、やがて結ばなければならぬという問題があるでございましょうし、また飛行場の問題になりますと、国際空港としての熊本空港の立場というものをより強固なものにしていく必要がある。単に旅客だけではなしに、やはり将来は航空貨物時代の到来が予測されるわけでございますので、貨物流通基地としての熊本空港の役割りというものも考えなければならないと思います。あるいは臨調等との絡みで大変むずかしいわけですけれども、新幹線を早く通さなければならぬという問題があります。また、熊本都市圏としてどうしても必要なことは、りっぱな港を早くつくるということだろうと思います。 こういう基盤整備を急ぐことによりまして、九州全域における熊本都市圏の中心性、優位性というものを確固たるものにしていく必要がある。人だけではなしに物流の面におきましても、やはり九州全体を対象にした流通の基地にしていかなければならぬとこう思います。 幸い、いま御質問の中にもありましたように、政府の出先官庁と申しますか、九州財務局を初め熊本にかなりの集積があります。ことに、私がこれからの時代を展望いたします場合に非常に大きな要素として考えておりますことは、やはり九州電気通信局を中心といたします電波行政と申しますか、その中心的なメリットでございます。何と申しましても情報ネットワークの中心として、熊本都市圏がこれから情報産業のセンター的な役割りを果たしていく必要があると、こう考えるからでございます。 第二番目には、熊本都市圏、特に熊本市が県の首都として、やはり必要最小限度の近代的な都市的機能を早く整備をする必要がある、こういうことで今日まで努力をしてまいったわけであります。現在鋭意建設中の県の施設といたしましても、たとえば伝統工芸館、県立劇場あるいは総合体育館等があります。すでに完成したものといたしましては、美術館や市の博物館があるわけでございます。また、続きまして県立図書館あるいは国際交流センターといったようなものを計画をしていきたいと、こう考えておるわけでございますが、そういったどこの都市にも負けないすぐれた文化的、教育的な施設が総合して熊本市に立地をするということが、市としての品格を一層高め、そこに人々の集積を呼ぶ一つの根源にしたいと、こう考えておるわけであります。 熊本都市圏を考えます場合に、私はやはり大事にしたいと思いますことは、土地の広さ、それから美しい水が豊富にあるということ、あるいは自然環境に恵まれた立地条件でございます。そういうものを今後とも人間の住む都市として快適な条件をいつまでも大事にしていきたい。と同時に、その周辺に広がります広大な土地に、テクノポリス構想を初めといたしまして活力ある先端産業を誘致育成し、地場産業とそれを密接に結びつけることによりまして付加価値を高めていくというふうな施策をとってまいりたいとこう考えるわけでございます。 熊本市の現状からしまして、いささか反省を交えて、おくれておるなとこう考えますことは、やはり必要な場所におきまする区画整理事業等をもっともっと大胆に積極的にやっていかなければならぬ。これは県も市も考えなければならぬことだと思いますけれども、熊本駅を中心とする一帯の都市再開発事業とか、あるいは市が計画しておられます熊本市南部の土地区画整理事業、これは私は大変ユニークな結構な計画だと思いますが、県も極力応援をいたしまして、そして早く完成させていく必要がある。そのほか、旧態依然とした市街地の状況――これは道路の整備にも関連がありますけれども、そういったいままでおくれております近代都市としての脱皮と申しますか、そういうことをひとつ今後は大いに県、市協力してやっていくべき時期になってきたなという気がいたします。 そういうことを着実にやりますと、私は、さっき冒頭にお答え申しておりますように、やがて九州における中枢都市として、熊本の時代が必ずくるというふうに確信をいたしておるわけでございます。そういうことを目指しまして努力をしていきたいと考えております。 〔三角保之君登壇〕
◆(三角保之君) 大変積極的な知事の取り組みの姿勢がうかがわれてほっとしたところでございます。いつもならば答弁書そのまま朗読というふうな形に終わるわけでございますが、きょうは本当に頭の中で考えられておった日ごろのことをいろいろ披瀝していただきました。今後、私も懸念をしておりまして――九州全体をながめてみますと、やはり福岡、北九州に劣って、その辺ではおくれをとるので、南九州の親分に甘んじようというふうな考え方ならばと少少心配をしておったわけです。熊本都市圏といたしましても百万の人口を抱えておりますし、熊本県全体百八十万の潤いにもつながってまいりますし、いまの知事の答弁にもありましたように、九州の中枢的な都市として都市づくりが行われますと、九州各県の中心地としての交通網の整備、そういった形になりますと熊本県全部が潤ってまいるわけでございますので、この辺大変期待をしていきたいと思うわけでございます。特に、ここにおいての皆さん方からも、市と県は仲が悪いんじゃないかというふうなお話をたびたび聞くわけでございますけれども、今後いろいろな取り組み方の中で、先ほど知事の答弁にもありましたように、連携をとりながらというふうなことを承りまして安心をいたした次第でございます。 知事の答弁の中にも出てまいりましたテクノポリスの問題でございますけれども、次に、そのまま引き続きテクノポリス関係について質問をさせていただきたいと思います。 テクノポリス、最近新聞紙上を大変にぎわしておるわけでございますけれども、一体何のことだと言われる方もたまにはおられるわけでございますが、テクノポリスは、日本語では高度技術集積型田園学園都市というふうな訳の仕方をされております。関東に筑波大学がございますけれども、あそこは学園研究都市という形で母都市から離れたところに都市をつくった、それに産業を結びつけた、母都市から近いところに五万人ぐらいの都市をつくろうというのが最初の通産省のテクノポリスの考え方でございますけれども、そういった都市づくりをやっていこうというのがテクノポリス構想だと思うわけでございます。 私は、昨年の六月県議会において、テクノポリス構想に取り組む県の基本的な姿勢についてお伺いをいたしました。その後の推移を見てみますと、県民のこの構想に寄せる期待は大変大きなものがあります。特に産業界の期待は大変なものがあります。なぜテクノポリス構想が県民のこれだけの関心を集めることになったのかということを考えてみますと、私がかねてから主張しておりますように、これまで一次産業を中心に据えてきた本県の産業構造のあり方を根本的に見直さなければならないような内外の経済情勢の変化が進行しているという時代的背景が第一にあるからだと思います。すなわち、いま本県県政に求められている最大の課題は、雇用の拡大と安定ということであると思いますが、そのためには時代の流れに即応した新しい成長産業に積極的に取り組む必要があるという認識が県民の間に定着してきたからであると思います。 さて、本県のテクノポリスは、昨年六月に、通産省から全国二十カ所の調査候補地域のうちで開発構想に取りかかってよいとされた八カ所の一つに選ばれました。これを受けて建設構想起草委員会が発足し、何回も討議が重ねられ、本年一月末、全国に先駆けて熊本テクノポリス建設基本構想が策定されたのであります。通産省ではテクノポリス委員会を設け、各地域の基本構想を審査するとともに、今後の進め方、特に国としての助成策、建設候補地点の選定基準を検討中と伺っております。六月中には、開発構想をつくる地域を選択する第二次試験の結果が発表されるとのことですが、いま県民は挙げて、本県のテクノポリス建設基本構想が国の高い評価を受けて、いわば合格点を取ることができるかどうか重大な関心を持って見守っているところであります。 昨年、私の質問に対しまして、当時の金野
企画開発部長は、調査地点に選ばれることは第一次試験に合格するということにすぎず、テクノポリスを実現するためにはすぐれた基本構想をつくり上げることが最大のポイントだ、県民のコンセンサスを得て全国で模範となるような創意にあふれた基本構想をつくると決意のほどを述べられました。この熊本構想は、ほかの候補地の案と違って、地元独得の機関である財団法人熊本開発研究センターを使って構想したという点と、県内企業研究機関に対する詳細な調査を行い、すばらしい構想をつくり出されたようです。これは全国で注目され、もっぱら熊本方式と呼ばれて大変有名になっているようです。 余談ですが、財団法人熊本開発研究センターは、知事が十一年前、知事になられてすぐ手がけられた仕事で、いまから思いますと、先見の明のあった大変すばらしい事業だったなと敬意を表するわけでございます。 さて、そこまで認められつつありますので、今後とも地元が主体性を持つという基本姿勢を貫いて開発構想の策定に取り組んでいただきたいと希望するものであります。こういう姿勢と開発構想の内容が相まって、本県のテクノポリスは実現への道を一歩一歩前進するものであると考えますし、また、そのことが本県の構想を国の計画の中に位置づけることにつながると思うのであります。 そのような地元からの取り組みの方向として、私は二つの点を
企画開発部長にお尋ねをしたいと思います。 第一は、先端企業の誘致と地域産業の活性化の問題であります。テクノポリス構想実現のために、先端技術産業の誘致に努める必要のあることはもちろんですが、ただ企業の誘致だけでは地域産業の幅広い発展には不十分ではないかと思うわけでございます。先端技術産業の立地によって地元産業の技術の向上が進展し、生産が拡大するというような体制、つまり進出企業と地元企業の連携が必要であり、それによって初めてテクノポリス建設構想の理念が実現できると思います。そこで、先端技術型企業の誘致の前提として、県内企業の技術水準の向上と活性化のためにどのような施策を進めておられるか。 第二は、研究開発機能の拡充策についてであります。テクノポリス構想では研究開発機能の集積を重要視しております。このためには優秀な頭脳が地元に定着できる体制を整えることと、次の時代を担う若い頭脳を育てる体制づくりが必要であると考えます。現在では、たとえば熊大工学部で育った優秀な若者の一割程度しか地元に残れない状況にあります。いまや企業の技術革新のテンポはきわめて早い速度で進んでおります。今後の地域開発のためには、技術革新に対応できる人材づくりと雇用の場の確保が最も緊要の課題であると考えるのでありますが、いかに考えておられるか、お伺いをいたします。 〔
企画開発部長岡田康彦君登壇〕
◎
企画開発部長(岡田康彦君) 熊本テクノポリス建設基本構想につきましては、構想の内容もさることながら、県、市町村、地元学界あるいは経済界一体となった積極的な取り組みにつきまして、中央においても各方面で高い評価を受けていると申し上げていいと思います。県議会を初め県内各界の方々の有形無形の御支援、御協力のたまものと、この場をかりて深く感謝申し上げる次第であります。 さて、第一の先端企業の誘致と地域産業の活性化についてでありますが、今日飛躍的な伸びを見せ始めている熊本県工業生産の現況をつぶさに見てまいりますと、御指摘のとおり県内への有力企業の立地が、地元企業の技術水準の向上、新しい事業分野への企業活動の拡大といった形で地域の活性化に与えた波及効果ははかり知れないものがあると思います。したがいまして、先端技術産業の誘致は、雇用の場の確保という観点だけではなく、地元企業に活力を与え、地域経済の質的向上や自立的発展の基盤づくりにつながるという観点からも積極的に進めてまいりたいと考えております。 さらに申し上げれば、いま申しましたように、進内企業からのインパクトによって県内地元企業の技術が向上し、生産の拡大が期待できるという面と同時に、忘れてならないのは、地元企業の技術向上そのものが先端先進企業誘致を容易にするという面もあるということだと思います。こうした両面がありますので、進出企業と地元企業の有機的な連携を確保するための受けざらの整備を進めていきたいと考えます。技術情報であるとか、市場情報の整備や、あるいは共同研究開発体制の推進を図りまして、地元企業の体質を強化しながら企業誘致を進めていく必要があると考えております。 テクノポリス基本構想策定のため、七百社近い県内企業の調査を実施いたしました財団法人熊本開発研究センターによりまして、現在県内企業の技術状況に関する調査が実施されているところでありまして、近日中に取りまとめられます成果を踏まえまして、地元企業の技術水準の向上と活性化のための具体的な施策を検討し、テクノポリス開発構想をより実りのあるものにしていきたいと思っております。 なお、テクノポリス構想を一つの契機といたしまして、県内の学界、産業界の共同で研究を推進する半導体応用技術研究会やバイオテクノロジー研究推進会等の新しい試みが行われていることは、熊本県における技術水準の自立的な向上のためにきわめて有意義でありまして、県といたしましてもできるだけの協力を行ってまいりたいと考えております。 次に、研究開発機能の拡充についてでございますが、御指摘のとおり、県内大学卒業者のうち県内に就職する者の数が少ないことにつきましては、県産業の将来の発展にとって重大な問題だと考えております。テクノポリス建設に際しまして最も重要な課題は研究開発機能の充実でありまして、そのことが県産業の活性化につながると同時に、郷土の有為の若者が地域にとどまり、郷土のために活躍する場を確保することになると考えております。さきの知事答弁にもありましたように、母都市である熊本都市圏の総合的な機能の拡充を図りながら研究開発機能の集積を高めてまいりたいと考えております。 今回の構想を契機といたしまして、たとえば民間ソフトウエア開発企業の立地の動きや、化学及び血清療法研究所いわゆる化血研の研究所拡充構想など、民間における具体的な動きが活発化してきておることは、今後における研究開発機能拡充の大きな足がかりになるものと期待しているところであります。また、基本構想にも掲げましたが、電子応用機械技術研究所構想につきましても、熊本大学等地元大学関係者や県内企業代表者の協力を得まして、構想具体化のための検討を進めているところであります。 最後に、現在のわが国の企業誘導制度におきましては、民間の研究開発機関等の誘致に対する措置が必ずしも十分整備されていない状況にありますので、これら制度の見直しを行い、必要であれば県独自の具体的な措置を検討するとともに、国に対しましても、民間研究開発機関の地方誘導施策の充実や、国の試験研究機関の分散立地についても強力に働きかけをしていきたいと思っております。 テクノポリス構想実現のためには、今後とも県議会の皆様方の絶大な御支援をお願いいたしまして答弁といたします。 〔三角保之君登壇〕
◆(三角保之君)
企画開発部長の答弁でいろいろ御努力をいただいておることは十分わかるわけでございますけれども――基本構想の策定のときは大変熊本県はおくれをとっておりましたけれども、その次の開発構想等についてはやはり一番乗りだったというふうなことで、中央でも大変いろいろ評判になっておるところでございます。 中央でのうわさでございますけれども、テクノポリス構想は大変いろいろな面で注目を浴びてきたと、そういった中で各省庁が通産省に対して少しやっかみ半分のところが出てきたというふうなことで、通産省の机上の空論になりかねないのじゃなかろうかというふうな懸念も出ておるわけでございます。そういう面で、わが県にも知事を中心とする起草委員会、副知事を中心とする専門委員会、またそのほか
企画開発部長を中心とするいろいろな調査部門があるわけでございますが、知事を中心とする構想委員会等については、なるべく早く国の一大事業だというような格づけをしていただきながら、やはりそれにはそれ相当の予算も知事会等のいろいろなお力添えをいただきながら取って、国の構想だと、各省庁にまたがって一生懸命やっていくんだというふうな取り組み方をしていただくような動きをしていただきたいものでございます。そういう面で、先ほどの第一番目の質問、テクノポリスの質問、この辺については、行政そのものの進め方だけでなく、やはり政治的な動きも大分かかわってくる問題でありますから、知事は行政が五割、大政治家的な要素が五割というふうなことで、大ロマンを持ってひとつお当たりいただきたいと思うわけでございます。 大局的な質問はこのぐらいにいたしまして、いろいろ生活の諸問題について入らせていただきたいと思います。 まず第一番目に、婦人問題についてお尋ねをいたします。 婦人問題について国際的な動きを見てみますと、一九七九年の国際連合総会におきまして、婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約が採択され、翌一九八〇年のコペンハーゲンにおける婦人問題世界会議においては、日本を含め七十九カ国がこれに署名しましたが、昨年九月には中国など二十一カ国が批准しまして、この条約が発効しております。これは社会のあらゆる分野に存在する婦人問題の解決を重要課題としてとらえ、国際的レベルで男女平等社会の実現を目指して、それぞれ各国で実情に合った行動を進めるということであります。しかしながら、世界の国々では、国情の違いや、風俗習慣あるいは宗教など多くの違いがあって、まだ批准に至らない国が少なくないようであります。わが国でも批准のために国内法制化等諸条件の整備がいま図られております。 私たちの周囲を見てみましても、多くの婦人に対する問題が見受けられます。日本では憲法に、国民は個人として尊重され、法のもとに平等であって、性による差別を含めあらゆる差別をされないと定めてあります。しかし、現在でも不平等な取り扱いが残っておりますし、家庭や社会のしきたりなどには、男は仕事、女は家庭という伝統的な固定観念によって、女性が多くの分野で差別されている現状であります。 ところで、婦人の平均寿命を見てみますと、昭和十五年では四十九・六歳でありましたが、現在では七十八・三歳となり婦人の一生も長くなっております。また、一番末の子供が結婚をする年齢は五十四・七歳となり、夫が死亡するまで夫婦二人で暮らす年数は十五・八年であると言われ子供が独立したあとの生活も人生の三分の一を占めるということであり、婦人のこのようなライフサイクルの変化による対応が大変重要になってくると思います。 女子の高校進学率が九割を超え、また短期大学や大学に進学させようという親の意識も強くなって、学校での生活期間も平均四年も伸びており、婦人の高学歴化が見られます。また子供の数も、戦前は三人か四人であったのが、現在では一人か二人であり、婦人が四十歳前後になるともう子供に手がかからなくなっております。一方、家事にあっても、電化製品の普及や住宅様式の近代化、さらには食生活の変化等によって婦人の家事における負担も軽減されてまいりました。婦人が家事を離れて自由に過ごす時間がふえ、この余暇をどのように過ごすかは、人生の生きがいとして、また社会的な問題として大変重要なことであります。しかし、これとは別に、婦人が政治や行政の分野など政策方針を決定する場に進出しているのは少数でありますので、今後はあらゆる場に進出し、男性と平等な立場で社会を形成していくことが大切であろうと思います。また、働く婦人を見てみましても、昭和五十五年の国勢調査では、熊本県の労働力は三十六万九千八百四十八人と、前回五十年より労働力率で〇・六%増加し、婦人の役割りも多く、また一層重要になっております。 このように婦人のあらゆる分野への進出に対して、母性を保護しながら十分に活躍できるよう対策を講ずるとともに、今後の高齢化社会の到来の中にあって老後の生活の安定を図ることを考えなければなりません。これらの婦人についての諸問題解決のため、国においては昭和五十二年に国内行動計画を閣議決定し、各県ともその後それぞれこれに対応してきているようでございます。 本県は、この計画づくりのための取り組みが大変おくれているようでありますけれども、昨年十一月に婦人問題懇話会が設置されて、現状分析や問題解決への意見交換や討議がなされておりますが、現在どのような考えのもとに取り組んでおられるのか、また、いつこれらの案が成立の運びになるのか、
福祉生活部長にお尋ねをいたします。 〔
福祉生活部長山下寅男君登壇〕
◎
福祉生活部長(山下寅男君) お答えを申し上げます。 婦人の社会参加、婦人の地位向上等、婦人問題の解決を促進いたしますため、お述べになられましたように、国際的には昨年の九月、婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約が発効いたしておるわけでございます。また、国におきましては、すでに婦人問題につきましての国内行動計画が策定されまして、問題解決に現在取り組んでおるところでございます。 本県における婦人問題につきましての取り組みは、御指摘にもございましたが、従来出おくれたきらいがあったわけでございますが、一昨年の十月、副知事を会長とし、関係の各部長等で構成いたします婦人問題行政推進会議を設置いたしまして、国の行動計画等を踏まえ、県の婦人問題につきましての基本計画の策定につきまして目下鋭意検討を進めているところでございます。 また、これと並行いたしまして、お触れにもなられましたが、広く県民の意向を把握いたしまして計画に反映させようということで、昨年の十一月に、学識経験者を初め婦人団体など各界各層の代表二十名の方々で構成します婦人問題懇話会を設置いたしまして、この中に雇用部会、福祉と健康部会及び教育部会の三つの専門部会を設けまして、総合的に、また専門的にいろいろと御意見を拝聴してまいっているところでございます。すでに今日まで十二回にわたりまして御審議をいただいているわけでございますが、現在までの御意見等を御参考までに要約をしてみますというと、以下のとおりでございます。 戦後、経済の発展、平均寿命の伸び、婦人のライフサイクルの大きな変化、核家族化の進行など経済社会環境が変化します中で、婦人としての生活や意識の多様化が見られ、一方では、あらゆる分野への婦人の進出意欲の高まりとともに、その意見や能力が次第に発揮できるようになり、新しい婦人像が形成されつつあります。しかしながら、現在なお婦人の能力や適性に対する偏見や、古くからの男女の役割り分担意識がまだ根強く残っておりますし、婦人の方々の御自身の自覚や努力不足、そういうようなことと相まちまして、まだ婦人の地位向上までには至っていないというのが主ないままでの御意見の内容でございます。 県といたしましては、このような懇話会の御意見も踏まえまして、次のような方向で現在計画の素案づくりに取り組んでいるところでございます。 一つには、婦人の社会参加の促進を図る必要があると考えております。内容といたしましては、婦人の公的機関等への参加の拡大や、社会活動の促進、国際交流の推進などをこの中に盛り込むようにいたしたいと考えておるわけでございます。 第二番目といたしまして、雇用の促進と労働条件の整備を図る必要があると考えております。御婦人の方々が経済社会の発展に果たします役割りがきわめて大きくなってまいっております。このため、雇用における男女平等の推進や雇用機会の拡大、労働条件の整備などが必要であると考えておりますし、こういうようなことをこの中に内容として盛り込んでまいりたいと考えております。 第三番目といたしまして、生活の安定と福祉の向上を図る必要があると考えております。家庭婦人や自営業あるいは勤労婦人の方々の福祉の向上、母子及び寡婦家庭等の福祉の向上、さらには老後生活における福祉の向上など問題になると考えておりますので、こういうことを内容として盛り込むようにいたしたいと考えております。 第四番目といたしまして、母性の保護と健康づくりの促進が必要であると考えております。御婦人の方々の健康の問題はもちろんでございますが、次代を担う子供の健康を守りますために母性保護の充実が必要でありますし、健康づくりの促進が必要であるというように考えております。 第五番目といたしまして、婦人教育の推進でございます。婦人の方々が、その個性と能力を十分に発揮いたしまして社会に貢献し、充実した人生を送ることができますように、学校教育の推進はもとよりでございますが、家庭教育、社会教育の推進など生涯を通じての教育の推進を図る必要があると、そういうことを内容として盛り込まなきゃならぬのじゃないかと考えておるところでございます。 今後も引き続き婦人問題懇話会の意見を拝聴しながら、婦人問題行政推進会議による審議をお願いいたしまして、計画を詰めてまいりたいと考えております。 なお、本年度内できるだけ早い機会に成案を得るよう努力をいたしたいと考えておりますので、今後とも諸先生方の御指導のほどをよろしくお願い申し上げたいと思います。 〔三角保之君登壇〕
◆(三角保之君) この問題は、長年の習慣、風俗に培われてきたものもあるようでございまして、進め方として大変いろいろむずかしい問題があるかと思います。ひとつ御努力をお願いいたしたいと思います。あわせて、やはり家庭教育、初等教育、幼児教育、中等教育の中で、この辺の問題を取り上げていただくことが肝要かと存じますので、教育長さんの方にもよろしくお願いをいたしておきたいと思います。それでは次に進ませていただきます。 次に、環境衛生同業組合の育成指導についてお尋ねをいたします。 環境衛生関係の営業は、県民の日常生活にとって最も身近な営業だけに、広く一般大衆に対し、衛生的で、しかも多様な需要にこたえ、よりよいサービスを提供する重要な社会的使命を有していることは当然のことであります。 しかし、本県の場合、経営基盤の脆弱な中小企業者がほとんどであります。最近における社会情勢の変化の中で、環衛業の経営安定化対策は、わが国の経済が高度成長から安定成長へと移行し、不安定な国際情勢等により、その先行きは明るいものとは言えません。このような中での環境衛生関係営業界を取り巻く諸情勢を見るとき、飲食業界に見られる外食産業など、近年大企業者の環衛業分野への進出が目立ち、中小企業者の経営が圧迫され、ますます厳しさを加えていると思われます。これら中小の関係営業者の経営の安定を図るため、個々の営業の体質改善を図り、経営の安定化、合理化対策を推進する必要があると思われます。 なお、環境衛生関係事業の経営の健全化を通じて、その衛生水準の向上を図り、あわせて利用者または消費者の利益の擁護を図る一面、消費者のこれら営業に関する正しい認識も必要であります。そのため、昭和五十四年四月に関係法律が一部改正され、国は県に対し環境衛生営業指導センター等を設置するよう指導をしてきたと思いますが、これに伴い全国で二十九の都道府県で指導センターの設立がなされていると聞いております。 環境衛生関係営業については、科学技術の進歩、国民の生活水準の向上、利用者または消費者の態様の変化に伴い営業の形態、内容も変わってきており、それぞれの環境衛生同業組合においては、消費の低迷に対する対応、営業者の増加に伴う経営対策等の問題点があり、また県に組織されている十一の環境衛生同業組合に共通した問題として、組合組織の強化、アウトサイダーに対する組合加入の促進等問題点も数多くあると思われます。 このような諸問題の解決並びに営業者の経営の健全化等の指導を、より一層充実した相談業務を行う指導センターを設立するに当たり、県はその対応をどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。 どうも環衛の十一業種については、町の商店街の中にありながら、商工会とはちょっと違うといったような感じが見受けられるところも県内に一部あるようでございます。それはやはり、商店は
商工観光労働部、環衛は衛生部と、その指導内容についても大変違いがあるのじゃなかろうか。この辺についても、やはり商店経営と相まって、いろいろ同じく努力を重ねていかなければならない、指導をしていかなければならないと思うわけでございますので、その辺の指導センターの内容についてお聞かせをいただきたいと思います。 〔衛生部長清田幸雄君登壇〕
◎衛生部長(清田幸雄君) 環境衛生同業組合の育成指導につきましてお答えを申し上げます。 お説のとおり、営業店舗の増加あるいは大型外食企業の進出等に伴いまして、経営基盤の脆弱な業界を取り巻く諸情勢は大変厳しいものがございます。そこで、これらの関係業者の経営の近代化、合理化を促進しますとともに、その健全な発展と公衆衛生の向上を図るため、国、県の補助事業といたしまして、県環境衛生同業組合連合会に環境衛生営業相談室を開設いたしまして、店舗の新築、改築、設備改善等に必要な相談並びに各種申告事務、帳簿の記帳、税務、経理、金融等の面につきましての指導業務を行うため、専門の経営指導員二人を配置いたしますとともに、各環同組合員の中より組合の指導的立場にあります方五十六人を推薦させまして、十八時間の所定の講習を実施し、特別相談員としまして業務の委嘱を行いまして、会員に対するきめ細かい相談指導の推進に努めてまいっているところでございます。 いまお尋ねの環境衛生営業指導センターの設立につきましてでございますが、環境衛生営業の経営の健全化を通じまして、その衛生水準の向上を図り、あわせて利用者または消費者の利益の擁護を図る目的から、五十四年の四月に環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の一部改正が行われまして、国から指導センター実施要綱が示されたわけでございます。その要綱の中に、昭和五十五年度から三カ年間に各県に環境衛生営業指導センターの設立をするようにとの要望がなされておるわけでございます。 このセンターにつきましては、ただいま最後にお述べになりましたが、すでに商工サイドで実施されております業務まで行うものではございませんけれども、そのような制度の紹介等を含めまして広く相談指導を実施しまして、業界の経営安定と振興を図るものでございます。これを速やかに実現するために、本県におきましては、県環境衛生同業組合連合会に設立準備委員会を設置いたしまして、センター設立のための素案の作成を終わりまして、本年三月二十六日の理事会で指導センター設立につきましての決定がなされておりまして、その後、各環境衛生同業組合単位の総会におきまして設立につきましての了承が得られておるところでございます。 したがいまして、県としましては、今後五十八年の四月一日発足を目標としまして、同指導センター設立委員会及び理事会におきまして、商工行政とも十分タイアップできるよう機構、事務、運営内容等の詳細な計画につきまして検討を重ねさせまして、営業者からもまた一般消費者からも期待が持たれます充実した指導センターを設立されるように今後とも指導してまいりたいと考えております。 〔三角保之君登壇〕
◆(三角保之君) 環衛業者に対しては商店街のような指導はできないというふうな事柄が答弁の中で出てまいりましたけれども、後では、その辺のことも十分含んでというふうな答弁になったので安心をしたわけですけれども、その辺が環衛業者にとって大変いままで脆弱な一面だと思うわけです。補助金等につきましても、設備資金の関係では環境衛生関係各課の方でいろいろな措置を講ぜられておったわけですが、運転資金とかそのほかの面について相談の持っていきどころがないというふうな一面があったわけです。飲食業関係では飲食業会館等につきましても、やはり環境衛生課との相談のほかに、中小企業振興課あるいは職業訓練課、その辺にいろいろな場面からの補助金とか手助けができるわけでございますので、センターの業務内容といたしまして、そういった行政全般にわたっての連携をとった指導ができるセンターにしていただきたいというふうなことを申し上げたわけですけれども、答弁の中で、そのように努力するというふうなお答えでございましたので安心をいたしました。よろしくお願いを申し上げます。 それでは次に、ローカル的な問題になりますけれども、これも前のおさらいになるわけでございますが、ちょうど知事の提案理由説明の中にも出てまいりましたように、県内伝統的工芸品産業の育成、振興の拠点として熊本県伝統工芸館が来る八月に開館の運びとなりました。このことについては、私は多くの伝統工芸品が生まれている川尻町に住んでいる一人といたしまして大変喜んでおるところでございます。この伝統工芸館に対しては、伝統的工芸品の生産者はもちろんのこと、消費者である県民の期待は大変大きいものがあると思います。 本県内には、肥後象眼や川尻刃物、川尻おけ、小岱焼、高田焼など、その土地の気候、風土、歴史的特性に裏打ちされ、祖先から受け継がれてきた多くの伝統的工芸品があります。これらの伝統的工芸品は、私どもの生活に心豊かな潤いを与えるものであり、これが維持発展を図り次の時代に継承していくことは、現代に生きる私どもの責務であると思います。特に、私が住んでおります川尻町は、昭和の初期ごろまでは、かじ屋さん、おけ屋さん、家具屋さん、染め物屋さんなどが軒を並べて、文字どおり職人の町、伝統工芸の町であったのですが、戦後の経済社会生活の変動に伴い、現在では数軒が伝統の灯を絶やさないよう一生懸命がんばっておられます。しかしながら、零細な家内企業であり、資金力も弱く、また後継者にも困り細々と経営を維持されているのが現状であります。私は、このような業界に活力を入れ、地域産業の振興を図ることが伝統工芸館の使命と考え、伝統工芸館に大いに期待するものであります。 しかしながら、せっかく多額の県費を使い建設をいたしました工芸館が県の中央部にあり、ただ美術館的要素または観光ルートと、一つの名所的扱いのみにとどまらないよう危惧をしているところであります。産地のそれに携わっている人々は、指定産地に小さくてもいいからそれぞれ特色のあるやかたをつくってもらいたい、そして現地を理解し、販売と育成に直接役立たせたいという声も以前あったかのように記憶しているところであります。私も、起工式のときから建設中もしばしば現場に行きましたが、見にいくたびにそのことが思い出されますので、次のことを
商工観光労働部長に質問をしておきたいと存じます。 伝統工芸館は、どのような機能を持ち、その施設内容はどのようなものがあるのか。今後、基本的にどのような運営をされるのか。また、伝統工芸館と県指定伝統的工芸品及び産地との結びつきはどのように考えておられるのか。この三点についてお伺いをいたします。 〔
商工観光労働部長八浪道雄君登壇〕
◎
商工観光労働部長(八浪道雄君) お答えいたします。 伝統工芸館は、いまお話がございましたように、県内伝統的工芸品産業の育成振興の拠点として、本年三月に建物の完成を見、現在、八月初句の開館に向けまして、展示品の収集、陳列などの最終的な作業を進めているところでございます。ここに至るまでの県議会を初め関係各位の御指導、御支援に対し深く感謝申し上げる次第でございます。 まず、お尋ねの伝統工芸館の機能、施設内容についてでございますが、伝統工芸館は、専門家から成ります熊本県伝統工芸館建設委員会の提言に基づきまして、生産と生活文化形成のセンター機能を持つものとして建設したものでございます。その一つは、県の伝統工芸品の育成振興事業を推進する総合指導センターとしての機能、二つには、伝統的工芸品をつくる人と使う人との触れ合うコミュニケーションの場としての機能、三に、熊本城を中心に、美術館、博物館、監物台植物園等と有機的に結びついて、県民並びに外来者への文化的な観光、憩いの場としての機能を持つものでございます。 これらの三つの機能を果たす施設といたしまして、一階には、伝統工芸品のインフォメーションコーナー、企画展示室、技術研修工房を、二階には、本県指定の伝統的工芸品の完成品及びその生産工程等を展示しました常設展示室、それから資料閲覧室を、地階には、県内の焼き物を使用しての生け花展、茶の湯等に利用できる和室を設けております。 次に、お尋ねの第二点の伝統工芸館の運営方針でございますが、伝統工芸館の管理運営に当たりましては、現下の厳しい経済社会情勢にかんがみまして、行政の効率的かつ適正な執行を確保することが必要と考えております。そこで、民間のエネルギー及び感覚を持ちまして、より効果的運営を図りますため、県及び民間関係団体をもちまして構成する財団法人熊本県伝統工芸館を設立いたしまして、伝統工芸館の管理運営を委託することといたしております。 なお、伝統工芸館運営の基本的事項につきましては、県内の伝統工芸に造詣の深い有識者によって構成されております熊本県伝統工芸振興デザイン会議など広く県民各層の意見の反映に努めまして、本館の機能を十分に果たしますよう総合的、効果的な運営を図っていく考えでございます。 次に、伝統工芸館と県指定伝統的工芸品及び産地との結びつきについてでございますが、昭和五十三年度に全国に先駆けまして、生産者の
生産意欲を高め、品質の向上を図り工芸品の普及をねらいといたしまして、伝統工芸品の指定制度を設けたところでございます。現在、六十四品目、百九企業、八団体が指定されております。伝統工芸館におきましては、これらの伝統的工芸品を地域産業として発展させますため、品目、産地の特性に対応した産地づくりを推進することといたしております。 まず第一に、伝統工芸品の生活への利用普及対策としては、常時工芸品を展示しまして、インフォメーションコーナーにおきまして、来館者の注文に応じ直ちに生産者の方に連絡し、消費者と生産者の仲介を行うこととしております。また、企画展示室におきましては、産地ごとの展示即売会、たとえば川尻の伝統工芸品展、人吉、球磨の木工芸品展、荒尾小岱焼展等を実施することによりまして、産地と消費者の結びつきを深めまして販路の拡大を図ることとしたいと考えております。 第二に、伝統的工芸品の製造技術、品質の向上改善のため、たとえば川尻刃物につきましては、刃こぼれを防ぎ品質の均等化を目的といたしました硬度、焼き入れ技術の研修会、あるいは人吉・球磨地区の木工芸品につきましては、塗装の改善を図りますための塗装技術講習会、あるいは陶磁器につきましては新しいデザインの指導などの事業を行うことといたしております。 第三に、小規模零細な伝統的工芸品生産者の経営の安定を図りますため、関係機関と連携をいたしまして、企業の診断、産地全体としての振興を図りますための産地診断、あるいは若い後継者を育成します研修事業を行うなどいたしまして、県下の伝統的工芸品産業の育成振興を積極的に推進してまいる所存でございます。 〔三角保之君登壇〕
◆(三角保之君) せっかく数十億かけてつくります伝統工芸館でございますけれども、その伝統工芸品をつくる人がおらなければ何にもならないわけでございます。その辺で、昔から腕のいい職人は大変商売が下手だというふうなことで、つくるばかりならいいわけでございますけれども、やはり販売をしながら生活をしていかなければならないというふうなこういう状況でございまして、こういったすばらしい職人さんたちを絶やさないようにやっていただきたいと思うわけです。肝心なところに補助金、助成金というふうなものはやはり出していただかなければならない。大きな目を見開いて、本当に必要なところに補助金、助成金をひとつお願いいたしておきたいと思います。 次に、下水道事業整備促進についてお尋ねをいたします。昨年の七月、下水道課が本県にもできたわけでございますけれども、県庁に下水道課ということで不審に思われる方々もおられると思いますので、あえてお伺いをいたすわけでございます。 大自然からの恵みである河川は、祖先から代々引き継がれた貴重な財産であります。これを守り、清らかなそして豊富な水として二十一世紀の子孫へ引き継ぐのは、私ども現代に生きている者に課せられた責務であると考えます。先般、県公害部から発表されました水質調査の結果を待つまでもなく、県内の河川を含む公共用水域の汚染は年々進んでおります。言うまでもなく、河川は地下水とともに、農業用水、水道用水、工業用水として貴重な資源であり、利用目的に適合した水質を保全する対策が強く望まれるところであります。ゆえに環境基準を維持達成するための方策としては、工場排水の規制などとともに下水道の整備が急務であると思います。 下水道は、水質の保全、雨水の排除、便所の水洗化とその役割りは多方面にわたっており、いまや都市部はもちろん農山漁村に至るまでひとしく望まれているところであります。上水道が動脈とするならば、静脈である下水道にはどう対処するか。下水道の普及度が文明の進捗を占う意味から、文化のバロメーターとさえ言われているので、現代ではことさら重要であります。ヨーロッパでは紀元前七百年、すでに古代ローマに下水道があって、七つの丘に囲まれているフォーラム谷の排水と各戸を結び水洗トイレとして利用していたことは有名な話であります。近代では、イギリスが下水道に着手したのは一八四七年、フランスは一八四二年であります。 ところが、わが国では一向に進んでおらず、下水道の普及率は昭和五十六年度で全国三一%、わが県内においては一五%ときわめて低い状況に置かれておりますが、わが熊本県は、豊かな美しいふるさとづくりを基本として諸施策を講じてきたわけであり、市町村の公共下水道の整備、また本年度から県が実施する流域下水道の建設のために取り組んでいるわけでありますが、現在までの下水道事業の実施状況、今後の下水道事業についての計画、取り組みについて、どのように考えておられるのか所見を承りたいと思います。 なお、参考までに次の三点について御説明を願います。 まず第一点は、下水道事業は都市部のみで事業を実施していますが、県内全域では実施しないのか。下水道事業の対象範囲はどこまでになるのか。 第二に、昨年七月、県には下水道課が新設されましたが、その業務内容について伺います。 最後に、下水道事業については専門的な技術を要するわけですが、技術者の養成または研修の場として日本下水道事業団がありますが、その性格というか設立目的について御説明を願いたいと思います。 〔土木部長梅野倫之君登壇〕
◎土木部長(梅野倫之君) お答えいたします。 下水道事業の促進でございますが、下水道事業は、生活環境の整備、水質汚濁の対策、また美しい環境づくりを推進する上からも重要なことは言うまでもございません。 県下の下水道は、昭和二十三年に熊本市で初めて着工されて以来、現在まで二十一市町で実施されております。その中で処理開始をしているところは九市町でございます。下水道の普及率は、遺憾ながら全国平均の三一%に比し一五%と低位にあることは御指摘のとおりでございます。しかしながら、最近市町村においても事業の重要性が認識されまして積極的に取り組んでおられます。昭和五十七年度の総事業費は、九州各県及び政令都市に比べますと本県が最高の額になっております。五十六年度を初年度といたします県下下水道五カ年計画があるわけでございますが、これは総事業費千百四十七億円でございます。昭和六十年度を最終年度にしておりますが、施行都市数は十一市十九町村でございます。下水道の普及率は二四%となる予定でございます。 県におきましても、堀川、坪井川の水質汚濁対策といたしまして、流域に当たる熊本市、北部町、合志町、菊陽町の一市三町約三千ヘクタールの区域におきまして、昭和五十七年度から総事業費三百二十六億円で熊本北部流域下水道事業として着手したところでございます。 次に、下水道事業の対象範囲でございますが、建設省で所管する下水道事業は、人口密度が一ヘクタール当たり四十人以上で千人以上が居住している市街地を対象とし、都市環境の整備を目的としております。 次に、昨年七月に下水道課を設置いたしましたが、県下の下水道事業の総合整備計画の策定を行い、市町村事業の促進を図っているところでございます。市町村で実施される事業は、公共下水道と都市下水路の二つに大別されまして、公共下水道事業は熊本市ほか十市七町でございまして、都市下水路事業は五市四町で実施しております。全体の事業費は本年度は二百六億円でございます。 県は、市町村事業の企画と調整及び実施に当たっての指導、監督、技術職員の育成を行っております。県事業といたしましては、さっき申しました熊本北部流域下水道事業を計画し、本年度より事業に着手しているところでございます。 質問の第三点でございますが、下水道事業団についてでございます。 下水道事業の推進に当たりましては、多額の経費と高度の専門的な技術を要することはお説のとおりでございまして、近年地方都市における事業の必要性が高まり、技術者の不足が問題となってきましたので、昭和四十七年に国、県、市町村の出資によりまして日本下水道事業団が設立されたものであります。その事業内容を申しますと、下水道の根幹的施設の建設及び維持管理、技術的援助、また技術者の養成、技術開発及び実用化を図ることによりまして下水道の整備を促進することになっております。 以上、いろいろと申し述べましたが、下水道の実施に当たりましては住民の方々の理解と協力などが必要でございますので、今後とも県議会の御指導を得ながら下水道の普及に積極的に努めてまいりたいと考えております。 〔三角保之君登壇〕
◆(三角保之君) 先ほども述べましたように、下水道の整備状況が文化のバロメーターと言われております。環境整備こそ真の行政、大変やりがいのある取り組みがいのある行政の仕事だろうと思いますので、ひとつ奮励努力をいただきますようによろしくお願いをいたします。 それではいよいよ最後の質問になりました。視聴覚ライブラリーの充実についてお伺いをいたします。 現在の社会の変動はまことに急激であり、人々はこの激しい変化に対応するため、生涯の各時期に応じた新しい生活課題を解決しなければなりません。このため、生涯教育という言葉を聞くようになりました。たとえば青少年育成協議会とか環境浄化委員会とか、社会教育の場が到来したとも言えるでしょう。 そういった状況の中で、県下の各市町村や団体等では各種の研修会や学級講座などが数多く開設されるようになり、同時に、これらの学習活動をより効果的に行うため、映画フィルムを利用した学習が年々盛んになってきております。人々に大変親しみやすい映画フィルムや、学習を近代的、効率的なものにするための視聴覚機材、教材の活用は今後ますます重要になってくるものと思われます。 そのような視聴覚機器や教材を集中的に管理し、人々の要求に応じて貸し出し、また指導をするところとして視聴覚ライブラリーが設置されておりますが、本県の市町村における視聴覚ライブラリーの実態は、その設置率がわずか二〇%にすぎず、全国の平均設置率六〇・二%を大きく下回っております。また、九州各県と比べてみても、九州各県の平均設置率は五八・七%となっており、本県が最もおくれております。さらに、本県の場合、視聴覚ライブラリーが設置されてはいても、その内容が貧弱で名ばかりのライブラリーもあります。十六ミリのフィルムがたった三本しかないというふうなライブラリーもあるわけでございます。 国では、視聴覚教育の重要性にかんがみ、市町村に対して視聴覚ライブラリー教材充実費補助として映画フィルム購入の際の補助を行っているということですが、この補助制度を活用している市町村はわずか二、三町村にすぎないということであります。 一方、全県的な立場からあらゆる指導的役割りを果たさなければならない県の視聴覚ライブラリーは、県庁地下二階の一室に設置されておるようですが、その存在すら余り知られておらず、機能を十分発揮しておりません。また、年々の教材購入費も、調べてみますと、わずか年間二百万円だそうでございます。フィルムは安いもので二十万円、普通ので三十万円から五十万円、高いフィルムは一本百万もするそうでございますので、この程度の予算ではどうすることもできません。また十六ミリの映写機は、熊本県の視聴覚ライブラリーにはたった一台しかないわけでございまして、全く貸し出せないような状態でございます。さらに、全国の状況を見ますと、視聴覚ライブラリーばかりでなく、研修室、演習室、スタジオなど設備の完備した視聴覚センターがすでに二十三カ所も設立され、視聴覚教育を進めるための条件が整備されていることを思うとき、本県の視聴覚教育のための条件整備は、以上申しましたようにまことに不十分、お粗末なものでございます。 しかしながら、視聴覚ライブラリーは、公民館、図書館、博物館などと比べると人々の間に十分理解されていないことも事実であり、このことが設置をおくらせている原因ともなっております。このような実態を乗り越え、人々の理解を取りつけ視聴覚ライブラリーの設置を促進していくためには、まず県が範を示すべきであります。ちょうど県立図書館の建設が進められており、その中に視聴覚ライブラリーを併設するというふうな話も聞いておりますが、この機会こそこれまでのおくれを取り戻すチャンスではなかろうかと思います。 以上のことから、県
教育委員会では、視聴ライブラリーの充実及び利用の促進について、また市町村をどのように指導し、県としてどのような方策を立てておられるのか、教育長にお尋ねをいたします。 〔教育長外村次郎君登壇〕
◎教育長(外村次郎君) お答えいたします。 社会教育におきまして、視聴覚媒体の持つ教育機能が大きな役割りを担うという御意見、また日ごろ多くの社会教育活動にじかに御尽力、御指導をいただいております御経験から、本県のこの面はおくれているではないかとの御指摘がございました。 御指摘のように、本県の場合、市町村の視聴覚ライブラリーが現在二十カ所でございまして、その設置率あるいは内容面におきましても低調であることは否定できませず、御指摘のとおりであるというふうにとらえております。各市町村の認識も深まっておりまして、近年視聴覚ライブラリーの設置や映画フィルムの購入などについては相当に前向きの機運が高まっておりますが、いまだ不十分でございまして、県としても、さらにこの面の努力を要するものと承った次第でございます。 現在のところ、視聴覚ライブラリー充実のための国の補助につきましては、条例あるいは規則で設置されたライブラリーに対してのみ補助を行うという制度でございますので、この辺PRが足らない面もございます。県といたしましても、しかるべく条例、規則で措置をして、国の補助を受けられるよう市町村を指導してまいりたいと思っております。 また、市町村が現在保有しております映画フィルム等を相互に交換利用したり、広域的に利用するなど効率的な利用を進めるよう指導しておるところでございます。さらには、視聴覚の指導者研修の実施、あるいは十六ミリ映写機の操作のための技術者の養成等にも力を入れてまいらなければならないと考えております。今後は、さらにこれらの状況を再点検いたしまして、少しでも御趣旨に近づくようさらに努力してまいりたいと思います。 なお、県の視聴覚ライブラリーも、その施設設備の状況は不十分でございますが、現状を申し上げますと約一千百本のフィルムを保有いたしております。年間の貸し出し本数が約五千百本、視聴人員が約三十万人というような状況でございます。 現在、新しい県立図書館の建設計画を進めておるところでございますが、これには県の視聴覚ライブラリーを併設する計画でございます。お述べになりましたように、現在までのおくれを取り戻すためにも、関係方面と十分連絡調整をとりまして、その充実を図り機能を発揮できるものとなりますよう最大の努力を払ってまいりたいと考えております。 なお、たまたま本年度は「くらしに生かす放送利用」という九州地区の放送教育研究大会が熊本で開催されることになっております。視聴覚教育に対する認識を深めるよい機会にいたしたいと、
教育委員会といたしましても全面的に協力いたしたいと考えております。今後ともよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。 〔三角保之君登壇〕
◆(三角保之君) 私が申し上げましたフィルムの値段の問題についてはカラーフィルムの値段でございまして、いま千何本あるとおっしゃいましたけれども、七割、八割が白黒フィルムでございます。一般社会の中で、もう最近白黒フィルムはどうもなじみが薄いわけでございまして、できればカラーにしていただきたい。子供たちの中にも、ただいまはテレビによる視聴覚教育も盛んではございますけれども、家庭内でのテレビの接触率が非常に高いというふうなことで、いきなり本に目を向けなさいというふうなことより、やはり一段階置きまして、フィルムを見させ視聴覚教育をやって、その次に本に入るといったようなぐあいに、社会の中で、大人の世界の中でもそういった傾向にあるわけでございますので、何はともあれ、人が講義するとか本を見ろとかいうふうなことよりフィルムによる学問が一番頭に入るような気がいたしますので、一般の図書館と同等にはいきませんけれども、今後は、そういう一般の図書館に近づいたような視聴覚センターが必要になってくるかと思うわけでございます。教育長さんの答弁の中には金の話は余り出なかったわけでございますが、知事初め総務部長さん、予算査定の面では、その辺もよくお考えをいただいて充実を図っていただきたいというふうに思うわけでございます。 大変つじつまの合わぬ内容のない質問に終わったわけでございますが、知事さん初めいろいろ積極的にすばらしい御答弁をいただきましてまことにありがとうございました。議員各位におかれましては、大変お疲れのところおつき合いをいただきましてありがとうございました。今後、百八十万県民のために、執行部も議会の皆さん方も、ひとつより一層期待にこたえるように努力をいただくことを心から祈念を申し上げまして、一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(井ノ上龍生君) 以上で本日の一般質問は終了いたしました。 明十五日は午前十時から会議を開きます。日程は、議席に配付の議事日程第五号のとおりといたします。 本日はこれをもって散会いたします。 午後二時二十四分散会...