令和5年 9月 定例会 第 7 号 (9月27日) 令和5年 熊本県議会9月
定例会会議録 第7号令和5年9月27日(水曜日
) ――――――――――――――――― 議事日程 第7号 令和5年9月27日(水曜日)午前10時開議 第1 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について) 第2 議案等に対する質疑(第1号から第34号まで) 第3
知事提出議案の
委員会付託(第1号から第34号まで) 第4 請願の
委員会付託 第5 休会の
件 ―――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第1 一般質問(議案に対する質疑並びに県の一般事務について) 日程第2 議案等に対する質疑(第1号から第34号まで)
知事提出議案の上程(第55号) 日程第3
知事提出議案の
委員会付託(第1号から第34号まで及び第55号) 日程第4 請願の
委員会付託 知事提出議案の上程(第56号) 日程第5 休会の件 ――――――○――――――
出席議員氏名(49人) 星 野 愛 斗 君 髙 井 千 歳 さん 住 永 栄一郎 君 亀 田 英 雄 君 幸 村 香代子 君 杉 嶌 ミ カ さん 立 山 大二朗 君 斎 藤 陽 子 さん 堤 泰 之 君 南 部 隼 平 君 本 田 雄 三 君 岩 田 智 子 君 前 田 敬 介 君 坂 梨 剛 昭 君 荒 川 知 章 君 城 戸 淳 君 西 村 尚 武 君 池 永 幸 生 君 竹 﨑 和 虎 君 吉 田 孝 平 君 中 村 亮 彦 君 髙 島 和 男 君 末 松 直 洋 君 前 田 憲 秀 君 松 村 秀 逸 君 岩 本 浩 治 君 西 山 宗 孝 君 河 津 修 司 君 楠 本 千 秋 君 橋 口 海 平 君 緒 方 勇 二 君 増 永 慎一郎 君 髙 木 健 次 君 髙 野 洋 介 君 内 野 幸 喜 君 山 口 裕 君 岩 中 伸 司 君 城 下 広 作 君 西 聖 一 君 鎌 田 聡 君 渕 上 陽 一 君 坂 田 孝 志 君 溝 口 幸 治 君 池 田 和 貴 君 吉 永 和 世 君 松 田 三 郎 君 藤 川 隆 夫 君 岩 下 栄 一 君 前 川 收 君
欠席議員氏名(なし
) ―――――――――――――――――説明のため出席した者の職氏名 知事 蒲 島 郁 夫 君 副知事 田 嶋 徹 君 副知事 木 村 敬 君 知事公室長 内 田 清 之 君 総務部長 平 井 宏 英 君
企画振興部長 富 永 隼 行 君 理 事 小金丸 健 君 企画振興部 球磨川流域 府 高 隆 君 復興局長
健康福祉部長 沼 川 敦 彦 君
環境生活部長 小 原 雅 之 君
商工労働部長 三 輪 孝 之 君
観光戦略部長 原 山 明 博 君
農林水産部長 千 田 真 寿 君 土木部長 亀 崎 直 隆 君 会計管理者 野 尾 晴一朗 君 企業局長 竹 田 尚 史 君 病院事業 竹 内 信 義 君 管理者 教育長 白 石 伸 一 君 警察本部長 宮 内 彰 久 君 人事委員会 西 尾 浩 明 君 事務局長 監査委員 藤 井 一 恵 君 ―――――――――――――――――
事務局職員出席者 事務局長 波 村 多 門 事務局次長 村 田 竜 二 兼総務課長 議事課長 富 田 博 英 審議員兼 濱 田 浩 史
議事課長補佐 ――――――○―――――― 午前10時開議
○副議長(内野幸喜君) これより本日の会議を開きます。 ――――――○――――――
△日程第1 一般質問
○副議長(内野幸喜君) 日程に従いまして、日程第1、昨日に引き続き一般質問を行います。 堤泰之君。 〔堤泰之君登壇〕(拍手)
◆(堤泰之君) 皆さん、おはようございます。熊本市第一選挙区選出・自由民主党の堤泰之です。人生2回目、自民党入党後初の一般質問でございます。1回目より緊張しておりますが、お聞き苦しい点もあるかと思いますが、大きな心で聞いていただければと思います。よろしくお願いいたします。 このたびの内閣改造で、県内選出の3名の国会議員の方々が大臣、副大臣に就任されました。誠におめでとうございます。早速、昨日のお昼のニュースで、
木原防衛大臣が10月に訪米し、
オースティン国防長官と初会合というニュースを見ました。木原大臣のこれまでの活動を見ている者として、本当に胸が熱くなりました。国家の要として、思いっ切りお仕事をされることを期待しております。 私は、これまで20年余り、この熊本の地で不動産の仕事をさせていただいてまいりました。その中でも、近年の菊陽・合志地域の地価の上昇は目をみはるものがあります。熊本市内よりも金額が高いところが出てきている状態です。ということで、県民手帳に載っている菊池郡選出の中村県議の住所地の周辺の地価を調べさせていただきました。 現在、所在地である菊陽町津久礼は、安いところで坪15万、最
高値坪当たり52万円ということで売出しがあっておりました。すごい地価の上昇であります。私も資金に困ったら中村先輩に相談に行こうかと思っておりますが、しかし、よくよく見ると、この住所は、
後援会事務所の住所ということで、中村先輩の所有ではなかったということでした。本当に残念ですが、次の質問までに中村先輩の御住所のことをちょっとお聞きしておきたいと思います。 さて、私は、これまで、不動産業に関わる中で、様々なお客様の悲喜こもごものドラマに立ち会ってきました。県会議員となって1年余り、これからも、県民の皆様の喜びや悲しみの声を県政に届けることを決して忘れずに努めてまいりたいと思っております。 まず最初に、
熊本都市計画区域マスタープランの見直しについて質問をさせていただきます。
都市計画法では、県が
都市計画区域内について基本的な方向性を示すため、
都市計画区域マスタープランを策定することになっており、
政令指定都市である熊本市を含む2市3町から成る
熊本都市計画区域においても、
熊本都市計画区域マスタープランが作成されています。 現行の
マスタープランは、20年後の
人口減少社会に向けて「豊かな自然と歴史を活かし、活力あるエコ・コンパクトな
都市づくり」をコンセプトに、2015年に見直されており、約8年が経過しようとしています。 この間、
熊本都市計画区域では、2つの大きな出来事が発生しました。 1つ目は、熊本地震です。 熊本地震では、応急復旧・緊急活動や
各種支援活動に不可欠な幹線道路の機能喪失、避難路となる生活道路や避難地となる公園、広場の圧倒的な不足、上下水道や電気、通信施設の寸断など、本県における社会基盤やライフラインの脆弱性が露呈したことは記憶に新しいところです。 この課題は、甚大な被害を受けた
熊本都市圏東部地域をはじめ、都市部においても顕著に見受けられました。そして、発災時の避難行動や応急・緊急活動の混乱を招き、さらには、被災者の生活再建や復旧、復興を妨げる大きな要因となりました。 その後、これらの課題を踏まえ、県において、益城町木山地区の
土地区画整理事業や第2次
緊急輸送道路にも指定されている
都市計画道路益城中央線の4車線化の整備が着実に実施されているところです。 また、大きな出来事の2つ目は、世界的な
半導体企業であるTSMCの進出です。
熊本都市圏北部地域においては、
半導体関連企業の集積に伴い、既に様々な変化が生じています。特に気になるのは、人口動態についてですが、
熊本都市計画区域内の2市3町のうち、熊本市の人口は減少に転じておりますが、居住形態としての核家族化や単身世帯の増加などから世帯数は増えている状況です。また、合志市、菊陽町、嘉島町については、全国でも屈指の人口増加率となっています。 このような状況を背景に、
市街化区域ばかりではなく、
市街化調整区域内においても、地区計画や
集落内開発制度により住宅開発が進んでおります。このようなことが、近年の
熊本都市計画区域内の地価の高い上昇率にもつながっているものと考えます。 ここに、これから本格的に
半導体関連企業の集積等に伴う人口増加の影響が加わります。
市街化区域では、御存じのとおり、住宅系や商業系、工業系の用途地域が設定されています。その中でも工業系の用途地域については、主に工場や倉庫等を誘導する地域になり、現在は、この地域にもマンションやアパート等が多数建設されている状況です。そのため、地域に根差した地元企業が事業地周辺に新たな用地を求めようとしても、適正な土地が入手できない状況となっています。 地元企業の従業員さんについては、当然その周辺に住まわれていることが多いことなどから、郊外へ移転することは実質容易ではないと聞いており、その結果、成長が期待される地元企業が事業拡大を断念せざるを得ないこともあるのが実情です。
半導体関連企業の集積に伴い、企業周辺の
社会基盤整備の遅れなどによる通勤時の渋滞や耕作可能な農地の減少など、様々な課題が生じていることは承知しておりますが、私としては、このような地元企業やそこにお勤めの方々に関する
市街化区域の土地利用に関しても課題があると考えております。 今後の
九州シリコンアイランド構想の中心となる
熊本都市圏の発展のためには、今回の
ビッグチャンスを捉えて成長を目指す地元企業の
事業用地不足や通勤時の交通渋滞、
耕作可能農地の減少など、様々な課題を踏まえた
都市計画区域マスタープランの見直しが重要だと考えます。 ここで、次回の
熊本都市計画区域マスタープランの見直しの時期及びその進め方について、土木部長にお尋ねいたします。 〔
土木部長亀崎直隆君登壇〕
◎土木部長(亀崎直隆君)
都市計画区域マスタープランは、都市の将来像を明確にするとともに、その実現に向けて大きな道筋を明らかにするものであり、社会情勢の変化も踏まえ、おおむね10年ごとに見直すこととしております。 まず、1点目の見直しの時期についてお答えいたします。
熊本都市計画区域においては、平成16年度の
マスタープラン策定後、平成27年度に見直しを行っており、その後、熊本地震の発生や世界的な
半導体企業であるTSMCの進出など、大きな社会情勢の変化も踏まえ、次回の見直しは、令和7年度を予定しております。 次に、2点目の見直しの進め方についてお答えいたします。 本区域では、議員御指摘のとおり、人口増加や住宅開発の進展を背景とした
市街化区域内の事業用地の不足に加え、
半導体関連企業の集積による交通渋滞や農地の減少など、様々な課題が懸念されます。 県としましては、このような地域特有の課題を踏まえ、
マスタープランの見直しを進めていくことが重要と考えております。 現在、人口や事業所、従業者数の推移、住宅、商業、工業などの土地利用の状況などについて分析をするとともに、課題を踏まえた適切な
市街化区域の規模を算出する手法等についても検討を進めております。 今後は、住民代表や有識者等で構成する委員会を設置し、その中で、望ましい都市の将来像やその実現に向けた土地利用や道路、下水道等の都市施設、
土地区画整理事業等の
市街地開発事業に関する都市計画の方針等を検討していくこととしております。
熊本都市計画区域の健全な発展と秩序ある整備が図られるよう、
次期マスタープランにおいて、地域の実情に即した都市計画の方針を適切に示し、関係する市や町と連携しながら、
都市づくりを進めてまいります。 〔堤泰之君登壇〕
◆(堤泰之君) 答弁いただきましたように、今回の10年に1度の
熊本都市計画区域マスタープランの見直しは、熊本地震からの復興に加え、100年に1度の
ビッグチャンスと言われるTSMCの熊本進出が重なります。 これからの人口増加等による宅地の不足や住宅問題の解決について非常に重要だと思いますし、今後100年の熊本の将来像を描く上でも大きな意味を持つと感じています。 今後、住民代表や有識者等で構成する委員会を設置するとのことですが、学識経験者に加えて、ぜひ、熊本の市街地の特性や土地利活用に知見の深い不動産の有識者と中小企業の実情に通じた各商工会議所や商工会のメンバーも加えていただきたいと思います。そうすれば、現在の
熊本都市計画区域内の課題と地場企業の成長の可能性について、よい意見が出てくるはずです。 アメリカの
本場シリコンバレーは、半導体産業の集積にとどまらず、アップルやグーグルのような世界で最も成功した企業を生み出しました。TSMCの進出による
新生シリコンアイランド九州構想を日本経済の復活のきっかけとできるか、熊本の都市計画に対する期待は高いと思います。 蒲島県政のかじ取りの下、熊本の未来を確かなものにできるよう、これから議論を重ねていただきたいと思います。微力ながら、私も全力で応援してまいります。 次に、県の今後の道路計画における人材の確保と民間の力の活用について質問をさせていただきます。 政令市中最も深刻と言われている
熊本都市圏の交通渋滞の解消と
JASM工場建設に伴う道路網の整備が早急に求められている熊本県において、計画実現の最速化と今後の公共工事を担う人材の確保は重要なテーマだと思います。 現在の建設業とその関連業界においては、熟練技能者及び技能者の大量退職や長く続いた建設不況期の採用の抑制、少子化の進展による人材難で多くの企業が後継者不足に直面しております。 しかし、建設産業に必要なスキルは一朝一夕に身につくものではなく、長年の経験と熟練技術者からの技術の伝承があって初めて維持されるものです。また、地域に根差して長年経営されている
民間事業者の人脈や信用を計画の実現に最大限生かしていくことが、スムーズな都市計画の実現に重要かと思います。 熊本地震や県南水害の復旧・復興工事が完了に近づく今、今後の設備投資や新規雇用に不安を感じている企業が多いのを感じています。建設業やその関連業種における技術者及び技能者は、いついかなるときに起きるか分からない災害への対応や道路や河川などの
暮らしそのものの質の向上のために、必要不可欠なものであり、特に、公共工事への依存度の高い土木、測量、
コンサルティング業等の
民間事業者の経営意欲や事業承継への決断を後押しするためには、公共工事のほか、業務委託や代行を含めた県の民間企業への中長期の姿勢を示すことが大変重要だと思います。
熊本都市圏3連絡道路による10分・20分
構想早期実現のためにも、施工分野のみならず、道路計画における
用地リスク調査や測量、境界立会い、また、
用地評価等において、可能な限り官民の力を結集し、一日も早い道路網の整備が望まれます。将来への企業の役割ややりがいが見えて初めて各企業の賃金アップや福利厚生の充実がなされ、雇用の促進が果たされるのではないでしょうか。 そこで質問です。 熊本県として、今後の建設業における人材の確保をどのように考えていらっしゃるでしょうか。 また、道路計画をはじめとする公共事業における
用地リスク調査や測量、境界立会い、また、用地交渉等のニーズの高まりに対して、民間からの人材登用や業務の
アウトソーシングのような民間の力の活用についてどのように考えておられるか、土木部長にお尋ねいたします。 〔
土木部長亀崎直隆君登壇〕
◎土木部長(亀崎直隆君) 建設産業は、地域の
インフラ整備の担い手として、災害時には社会の安全、安心の確保を担う地域の守り手として、県民の生活や地域経済を支える大きな役割を担っています。 本県の建設産業における従事者の状況は、全国的な傾向と同様に、高齢化とともに若年就業者の減少が進んでおり、若手人材を確保し、次世代へ技術を継承することが重要な課題だと考えております。 そのため、県では、高校生を対象に、建設産業の魅力を伝えるフェアの開催、
工事現場見学会や実習の支援など、建設産業に対する県民の理解促進に取り組むとともに、ICT工事の導入や週休2日制の拡大による働き方改革等を推進し、働く場としての魅力向上を図っております。 引き続き、建設産業が若者から選ばれるよう、建設業界ともしっかりと連携しながら、必要な人材の確保に努めてまいります。 次に、
用地リスク調査等における民間の力の活用についてお答えいたします。 まず、用地取得の組織体制については、
交通渋滞解消のための道路網整備や
災害復旧工事をはじめ、用地を早急に確保する必要がある事業に用地職員を重点的に配置するなど、状況に応じて柔軟に対応しているところです。 また、民間の力の活用については、従来から
用地リスク調査や測量、境界立会いなど積極的に外部委託を進めており、令和3年度からは、これらに加え、土地評価や
用地補償説明等の業務にも拡大したところです。 このように、
コンサルティング事業者等の専門的知識や豊富な経験を取り入れることにより、
用地取得業務を迅速に進めることができており、加えて、職員の
スキルアップにもつながっております。 民間の力を活用することは、公共事業に係る
用地取得業務において大変有効であると考えております。今後は、新たに、多数相続案件等の処理が煩雑で専門的な知見を要する業務につきましても、委託の可能性を検討するなど、引き続き、
アウトソーシングの拡大を図りながら、官民の力を結集し、迅速な用地取得が可能となるよう取り組んでまいります。 〔堤泰之君登壇〕
◆(堤泰之君) 県の行っておられる建設産業の魅力を伝えるフェアの開催や
工事現場見学会の開催は、日頃
建設技術者や技能者に接することの少ない子供たちにとって、非常によい取組だと思います。 職業人に対する尊敬と憧れの気持ちは、子供たちの人生を正しい努力に導くものだと信じています。地道な
職業教育活動が、県内就職率の上昇や離職率の低下につながることを切に願っています。 また、道路建設をはじめとした公共工事による快適な住環境の創造には、多くのファクターが必要です。中でも
用地取得業務は、二つとして同じ案件がなく、様々な年齢や立場の所有者の方々を交渉相手とするなど、特に豊富な経験と知識が要求される分野だと考えています。 その業務において、
民間事業者の専門的知見を取り入れることにより事業効率を高めることは、時代の要請に合った取組だと感じます。今後も連携する分野を広げていただいて、官民ともに専門人材の育成につなげて、
熊本都市圏の早期の渋滞解消を実現していただきたいと思います。 では、次の質問に移ります。 里親委託の推進について質問いたします。 知事は、本年5月の
こどもまんなかキックオフトップセミナーの中で「あらゆる立場の個人や組織、
コミュニティ等が、子どもや若者・子育て世代の視点に立ち、その最善の利益を第一に考えながら様々な取組みを実施する」
こどもまんなか社会の実現を掲げられました。 これは、子供の貧困や増加するいじめ、子供の自殺などを受けての知事をはじめとする県民全体の思いだと思っています。 児童虐待は、人格の健全な発達と自己肯定感や人への信頼など、社会生活を営む上で必要不可欠な素養を奪います。社会に適応できない不幸な人生を送る子供を発生させるということは、人道的にも、また、
社会的資本喪失という点でも目を背けてはならないものです。 今年4月に施行された
こども基本法の基本理念の中で、子供の養育は、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が
第一義的責任を有するとの認識の下、十分な養育の支援、家庭での養育が困難な子供の養育環境の確保がうたわれています。 また、児童福祉法第3条の2には「児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合にあつては児童が家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう、」「必要な措置を講じなければならない。」とあります。 そのような中、県内の
児童相談所における
児童虐待相談件数は、近年も右肩上がりとなっており、2022年度の対応件数も2,764件と10年前の4倍に達し、幼少期に心身に傷を負う子供たちが後を絶たず、私自身も心を痛めています。 虐待を受けた子供たちへの支援は非常に配慮が必要で、幼少期の愛着形成に何らかの問題を抱えることによって生じる愛着障害は、大人になってからも対人関係や社会生活の問題を抱えやすくすることが知られています。 このような虐待を受けた子供たちへの支援は、これまで乳児院や
児童養護施設などの施設が中心となってきましたが、多数の子供を施設で養育する仕組みだけでは限界があると聞きます。また、現在、乳児院や
児童養護施設の定員は減少傾向となっています。 一方で、
社会的養護の必要な子供たちへの支援の一つに里親制度があります。これは、様々な事情により家族と暮らせない子供を
一定期間里親の家庭で養育する制度で、里親家庭での生活を通じて、子供が成長する上で極めて重要な愛着関係の形成を伴う養育を受けることにより、子供の心身の健全な育成を図る、多くの国において子供の
社会的養護の主流となっている制度です。 そのような中で先月開催された
県社会的養護推進会議において、2022年度の県の取組が公表されました。 スクリーンを御覧ください。(資料を示す) 近年の里親の登録状況の推移です。
里親登録者数は、316世帯と年々増加しています。里親には幾つかの種類があり、養育里親や専門里親は、法律上の親子関係を結ぶ養子縁組を伴うものではありません。里親の大半を占める養育里親には、里親手当のほか、子供を預かると子供の生活や教育に要する費用が支給されるなど、
社会的養護が必要な子供の生活安定を図るための制度となっています。 また、祖父母等も、親が亡くなったり行方不明になったり養育放棄した場合には、親族里親になることができます。親族里親であっても、子供の生活や教育に要する費用が支給されるなどの支援が行われます。 2016年の
児童福祉法改正では、
家庭養育優先原則が明記され、里親委託の推進が掲げられました。 現在、熊本では、
児童相談所ごとに設置された3つの
フォスタリング機関が、
児童相談所と連携を図りながら、里親制度の普及啓発やリクルート、里親への訪問支援、研修を行っています。 次のスクリーンを御覧ください。(資料を示す) 2022年度末時点での
里親委託率は17.5%、委託児童数は114人と、いずれも増加していることは評価できますが、2021年度末時点の全国平均23.5%よりも低く、まだまだ県として力を入れていく必要があると思います。 里親制度は、必ずしも永久的な親権の移転ではなく、里親による一定期間の安定した家庭での子供の養育であることを考えると、県や市町村を通じて養育里親、親族里親についての正しい理解を深めることにより、もっと里親委託を進めることができるのではないでしょうか。社会全体において、これまでの古い社会観念にとらわれない子供中心の考え方が求められます。 そこで質問です。
社会的養護が必要な児童に対して、より家庭的な環境での養育を進めるため、県として里親委託の推進について今後どのように取り組んでいかれるのか、
健康福祉部長にお尋ねいたします。 〔
健康福祉部長沼川敦彦君登壇〕
◎
健康福祉部長(沼川敦彦君)
社会的養護を必要とする子供たちは、虐待等により心身に様々な影響を受けている場合が多く、家庭的な養育環境の中で、信頼できる大人と愛着関係を形成し、落ち着きや自己肯定感を取り戻すことが大事であると考えております。 そこで、県では、令和2年3月に策定した社会的養育推進計画に基づき、
児童養護施設等の小規模化や地域分散化を図るとともに、ファミリーホームや里親への委託を進めることで、より家庭的な養育環境の実現を目指しております。 特に里親委託については、
フォスタリング機関や
児童相談所の職員と
児童養護施設等に配置されている里親支援専門相談員が連携を強化し、里親の新規開拓やマッチング、養育支援のほか、里親家庭の現状把握や相談対応など、継続的な支援に取り組んでおります。 その結果、計画策定時と比べ、
里親登録者数は124人増加し316人に、
里親委託率は4.1ポイント上昇し17.5%となるなど、着実に成果が現れています。 しかしながら、本県の
里親委託率は、議員御指摘のとおり、全国平均23.5%と比較すると、まだ低い状況です。 そこで、里親登録者を対象に、研修会や里親同士の交流を深めるための里親サロンを充実させながら、関係者が連携して養育できる環境整備を進めております。 また、委託経験のない里親に対して、
児童養護施設で暮らしている児童を夏休み等に数日間預かる家庭生活体験事業や児童を短期的に預かるショートステイの利用を促進し、養育力の向上を図るなど、実際の里親委託につながる環境づくりをさらに進めてまいります。 今後も、蒲島県政の基本方針に掲げる誰一人取り残さない社会の実現に向け、
社会的養護を必要とする子供たちのケアニーズを把握しながら、できるだけ家庭的な環境の中で生活できるよう、積極的に取り組んでまいります。 〔堤泰之君登壇〕
◆(堤泰之君) 先日、あるアパートの一室で孤独死がありました。亡くなったのは、私と当時同い年、48歳の男性でした。警察の検視の後、市の福祉課がお身内を捜しましたが、親族関係にある方はどなたもいらっしゃいませんでした。火葬後、御遺骨は、市の担当者が取りに来られ、無縁墓地に納められました。 もし彼が、人生のどこかで、彼の病気や経済状態を心配してくれる方と出会えていたら、養子縁組等で誰かと戸籍さえつながっていたら、人を愛することができて家庭を持つことができていたら、48歳の若さで無縁墓地に入ることはなかった、ともすれば、亡くなることもなかったと思うのです。 また、3年前に孤独死された男性には息子さんがおられましたが、御遺骨の受け取りを拒否されました。息子さんは、子供の頃から精神的に不安定だったお父様から虐待を受けていたそうです。 家族を知らずに生きていく人間には、終生何らかの苦労がついてまいります。また、せっぱ詰まった状況の中で子供に危害を加える家庭を放置すれば、子供だけではなく、家族全てを不幸にします。 将来のそのような不幸な事件を防ぐためには、今孤独と虐待にさいなまれている児童を問題のある状況から速やかに適切に保護することが必要だと思います。 里親として登録された316名の方々の思いが生かされることを願って、次の質問に移らさせていただきます。 次に、コミュニティースクールの現状と子供たちの放課後の居場所づくりについて質問させていただきます。 政府は、本年6月に、第4期となる新たな教育振興基本計画を策定し、計画のコンセプトとして「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」及び「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を掲げました。 そして、今後の教育政策に関する5つの基本的方針の中で、「地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進」のために、持続的な地域コミュニティーの基盤形成に向けて、公民館等の社会教育施設の機能強化や社会教育人材の育成と活躍機会の拡充、コミュニティースクールと地域学校協働活動の一体的推進に向けた環境の整備をうたっています。 教育が社会や時代への新たな対応を迫られる中で、熊本県は、地域とともにある学校づくりを推進するため、以前から、小中学校及び義務教育学校において、法的な要件や権限を緩和した本県独自の「熊本版コミュニティ・スクール」の導入を促進するなど、コミュニティースクールの本格導入に向け、様々な取組を行ってきたと聞いております。 また、コミュニティースクールを導入した学校では、地域と連携した取組として、既に地域学校協働活動が行われているとも伺っています。 これからの学校は、新しい時代において、地域とともに社会課題の解決を自らイノベーションにつなげることのできる人材の育成を果たすことを期待されます。 そこで、教育長に2点質問いたします。 1点目は、コミュニティースクールの現状について、2点目は、放課後の子供の居場所につながる地域学校協働活動について、現在どのように取組が進んでいるか、教えていただきたいと思います。 〔教育長白石伸一君登壇〕
◎教育長(白石伸一君) まず、1点目のコミュニティースクールの現状についてお答えいたします。 コミュニティースクールは、地域住民等と力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる仕組みを導入した学校であり、地域の特色や課題に応じて、防災教室や登下校時の見守り、環境整備活動など、地域と一体となって子供たちを育む、地域とともにある学校づくりにつながっています。 県教育委員会では、平成25年から、コミュニティースクールの設置が進むよう、各学校が実態に応じて要綱を定めることができるなど、国が定める要件等を緩和した本県独自の熊本版コミュニティースクールの設置について、各市町村教育委員会に働きかけてきました。 その結果、昨年度末時点で、県内323校の小中義務教育学校が導入し、その導入率は91%となっています。 次に、2点目の放課後の子供の居場所につながる地域学校協働活動についてお答えいたします。 現在、県教育委員会では、地域学校協働活動として、放課後子供教室、地域未来塾の実施について、市町村教育委員会に働きかけて取り組んでいただいております。 具体的には、放課後子供教室は、33市町村85校で実施され、地域の人材を活用し、放課後に学校の空き教室や体育館で、生け花、絵手紙、琴の演奏などの昔遊びやダンス、スポーツなど、様々な体験活動を行っています。 また、地域未来塾では、30市町村62校で実施され、学習塾がない地域などで、元教員や大学生が指導者となって、無料で学習支援を行っています。 いずれの取組も子供たちの体力や学力の底上げにつながるとともに、地域の方々との交流の場や機会にもなり、放課後の子供たちの居場所として効果的な役割を果たしています。 県教育委員会としましては、今後とも、各市町村や関係部局と連携し、未来を担う子供たちの成長を地域全体で支えることができるよう、コミュニティースクールと地域学校協働活動がさらに広がり、充実するよう取り組んでまいります。 〔堤泰之君登壇〕
◆(堤泰之君) 親や学校の先生以外の多様な人間との出会いの場となるコミュニティースクールの普及や体を使った遊びを含めた様々な体験活動を行う放課後子供教室、学校の学びを助ける地域未来塾の実施は、子供たちの健全育成を図るとともに、地域への愛着を深める大切な取組だと思います。 遊びを通した体験活動は、子供の自尊心と仲間を大切にし、ルールを守る心を育てます。 ボストン・カレッジの心理学教授、ピーター・グレイは、著書「遊びが学びに欠かせないわけ」の中で、現実の世界で生きていくのに、自分の役割や責任、自己コントロール、他者との関係を築くことについて学ぶことは、授業で教えられることより重要ですと述べています。 昔のように地域の空き地や公園ですら自由に遊べない現代の子供たちにとって、コミュニティースクールや放課後子供教室は成長の大きな機会です。 しかし、新型コロナウイルス感染症蔓延により、県内のほとんどの学校施設や公民館等の公共スペースが、3年余り使用不可能な状況が続きました。 その間、学校の先生たちの多くも転勤や退職をされ、地域における人材の中には、加齢や生活環境の変化により、姿を見せなくなった方も実際少なくありません。また、新しい地域人材の育成もまだまだ進んでいません。 県として、各市町村を通じ、放課後子供教室や地域未来塾の現状を把握して、地域人材の育成と体験活動の機会の創出を通して、
こどもまんなか社会の実現につなげていただきたいと思います。 次に、県育英資金の現状と対応について質問させていただきます。 熊本県育英資金制度は、熊本県内に居住する高等学校生、大学生等を対象に、無利子で学資を貸与する制度であり、これまで経済的に厳しい家庭に育つ多くの子供たちに就学の機会を開いてきました。 公立高等学校においては月額2万3,000円を上限、私立高等学校等においては月額3万5,000円を上限として、在籍する期間、毎月学生に貸与されます。 貸与金の返還については、就学終了6か月後より、学生自ら、貸与期間の3倍以内の期間を上限に、毎月返還する義務が生じます。高等学校進学時より利用することができる無利息の奨学金制度として、令和5年度においても400人以上の学生が利用しています。 育英資金貸与者の返還開始年齢は、10代が全体の66%を占め、全体の3分の2の学生が、高校卒業後半年で、最長9年間の育英資金の返還義務を生じます。残りの3分の1の学生は、大学、専門学校終了後、高校分と大学分両方の返済を同時に継続することになります。 そのような中、返還金の滞納が問題となっており、返還猶予者を除いても、年間延べ1,500件程度の滞納が発生しています。 この9月議会においても、貸与金の支払い請求に係る訴えの専決処分の報告がありましたが、親の世代の負債を背負って社会に出る若者たちが多くいることにふびんを感じざるを得ません。 その一方で、現在は、育英資金制度創設時にはなかった国の就学支援金制度が拡充され、公立高等学校の授業料は実質無料、私立高校においても、年収目安が590万円以下の家庭は、年額39万6,000円の授業料相当額が支給されます。ということは、県の育英資金が本来の目的である学費に充てられず、実質貸与者の家族の生活費に消費され、その返還義務を支給開始時に15から18歳だった子供たちが負うという構図が生まれたことになります。 これは、子供たちの経済的自立に対する阻害要因となるだけではなく、貧困の連鎖という面で非常に大きな制度上の課題です。国も、これから奨学金制度の見直しに向けて検討に入ると想像はしますが、県としても、しっかりと現状把握を踏まえて、次の段階を見据える必要があるのではないでしょうか。 県育英資金の現状と対応についてどう考えておられるか、教育長に質問いたします。 〔教育長白石伸一君登壇〕
◎教育長(白石伸一君) 県育英資金の現状等についてお答えいたします。 県教育委員会では、家庭の経済状況にかかわらず、意欲ある全ての子供が安心して教育を受けることのできる環境を整えるため、昭和47年度から育英資金の貸付けを実施してまいりました。 一方で、平成26年度からは、非課税世帯の教育費を支援する奨学のための給付金が国庫補助事業として新たに開始されました。また、公立及び私立高校の授業料を助成する就学支援金も同年に創設され、令和2年度からは、私立への助成額の拡充が図られました。 これらにより、公立、私立ともに多くの世帯が授業料無償化となるなど、高校生の教育費に関する支援環境は大きく変化してきました。 このような中、育英資金の近年の申請件数は減少傾向にあるものの、授業料以外の教材費などの負担もあることから、ここ数年は年400人から500人の方々が申請されています。 近年の高校生の教育に関する現状の変化を踏まえ、今後、育英資金を借りた高校生や保護者へのアンケート調査を実施するなど、実態把握を行い、その結果を踏まえた支援の在り方について検討を進めてまいります。 〔堤泰之君登壇〕
◆(堤泰之君) 教育長からの答弁の中で、育英資金を借りた高校生や保護者へのアンケート等による実態把握を行い、その結果を踏まえた支援の在り方について検討を進めるとの言葉をいただきました。 ちょうど一昨日、こども大綱の中間整理が発表され、6つの基本方針が明示されました。その第1項に「こども・若者を権利の主体として認識し、」「多様な人格・個性を尊重し、権利を保障し、」「今とこれからの最善の利益を図る」とあります。そのタイミングでの高校生に向けたアンケートの実施に大変大きな意義を感じます。ぜひ早期にアンケートを実施していただき、次年度の育英資金の募集に反映させていただきたいと思います。 話は変わりますが、県は、ふるさと創造人材奨学金サポート制度、くま活サポートを創設し、参加企業と協力して、県育英資金をはじめとした奨学金返還支援を行っております。これは、県内に就職する学生、熊ターン人材を対象に、返還する奨学金の返還を県と参加企業が2分の1ずつ負担して、県育英資金等の返還を実質的に肩代わりする制度です。 しかし、その支援対象は、現在、大学院及び4年制大学卒業生が対象となっており、高卒、専門学校卒は対象外です。今のところ、高卒の県育英資金貸与者は、県内のくま活企業に就職をしてくれたとしても、10年近く毎月の返還が続くのが実情です。 知事、そして執行部の皆様にお願いがございます。 くま活サポート制度の高卒、専門学校卒枠の新設と育英資金の契約者を保護者のみでも可能なように制度設計の変更を検討していただけないでしょうか。それが実現できれば、既に育英資金の貸与を受け、従来から返還の義務を負った若者たちにも、同年代と同様のスタートラインに立つことができます。熊本で働くことを決めた若者が、奨学金の返還のために、結婚をちゅうちょするようなことが間違ってもないように、思い切った決断を重ねてお願いいたします。 最後に、解熱鎮痛薬やせき止め等の医薬品の不足問題について質問をさせていただきます。 本年5月に新型コロナウイルス感染症も2類から5類に移行し、我々の生活もやっと非日常から日常へと戻ってきたように感じております。私の周りでも、4年ぶりに地域の祭りや団体の会合が復活し、久しぶりに人々の明るい笑顔を見る機会が増え、とてもうれしく思っております。 しかし、第9波と言われる新型コロナウイルス感染症の拡大に加え、夏場のインフルエンザ等の流行が重なり、全国の小中学校の中には、新学期早々学級閉鎖となったところもあります。 それと同時に、感染症の症状を抑えるために使用される解熱鎮痛薬カロナールやせき止め、炎症止めのトラネキサム酸が全国的に不足し、医療機関や薬局への供給に支障が生じていると聞き及んでおります。 現在、厚生労働省も様々な取組を行っていると聞きますが、今回のような大規模な医薬品不足が発生してからの対応では、状況は改善しないと考えます。 今後、熊本県としても、突発的な感染症拡大に備えて、必要な医薬品に対する措置を検討すべきではないでしょうか。 薬局の現場で働いている方々にお話を聞きますと、感染症の症状を抑えるために使われる解熱鎮痛薬やせき止め、漢方薬等を含む医薬品全般の製造について、ジェネリックメーカーの不祥事に端を発した厚生労働省等の行政指導や製薬会社の社内調査により、医薬品の製造を停止したり商品の回収などが続いており、そこに海外の製薬メーカーや国内の製薬会社の従業員のコロナやインフルエンザ感染が重なって、製造体制に多大な影響が及んでいると聞いております。 そこで、今回のように解熱鎮痛薬等の医薬品の不足状況が続く昨今は、各薬局において、何とか代替となるほかの解熱鎮痛薬やせき止めなどを仕入れて調剤するとのことですが、患者さんには薬に対するアレルギーを持っておられる方もいて、代替薬に不安を感じられる方も多くおられるということです。そうなれば、円滑な病の治療と感染拡大の防止に支障を来してしまいます。 現代は、地球温暖化の進行や世界のグローバル化により、いつ新型コロナウイルスを上回るパンデミックが起きてもおかしくない時代です。 県としても、国に対して医薬品の安定供給に対する措置を講じることを働きかけるとともに、何らかの対策を講じるべきではないでしょうか。 そこで質問です。 こうした緊急時における医薬品の不足問題に対して、県として今後どのように対応されるつもりか、
健康福祉部長にお伺いいたします。 〔
健康福祉部長沼川敦彦君登壇〕
◎
健康福祉部長(沼川敦彦君) 県内の薬局等において、新型コロナウイルス感染症等の症状を緩和する解熱鎮痛薬やせき止め等が不足している状況があることは承知しております。 その背景としては、議員御指摘のとおり、複数の医薬品製造業者が法令違反で出荷停止となったことによる全国的な医薬品の生産減少に加え、7月頃からの新型コロナウイルスやインフルエンザの感染拡大等が考えられます。 国は、現在、薬局等における医薬品の供給不安に対し、医薬品の供給状況調査を行い、その結果を毎月公表しています。また、解熱鎮痛薬等の在庫が少なく業務に支障を来すおそれがある薬局等に対しては、医療用解熱鎮痛薬等110番を介して納入の調整をするなど、安定供給に向けた対応を図っています。 県としましても、不足している医薬品について代替医薬品を調剤する薬局等に対し、患者説明用のリーフレットを作成、配付するとともに、医薬品の安定供給のため、買占めを控えるよう協力をお願いしております。 また、今月、全国薬務主管課長協議会において、厚生労働省に対し、将来起こり得る緊急事態に備えるためにも、一刻も早い事態の改善を図っていただくよう強く要望もしたところでございます。 引き続き、県内の状況を注視するとともに、必要に応じ厚生労働省への要望等も行いながら、医薬品の安定供給に努めてまいります。 〔堤泰之君登壇〕
◆(堤泰之君) 円安と原油高による物流費の上昇により、薬局も製薬会社も、中小企業は厳しい経営環境を強いられていると聞いております。 国の社会保障費抑制を受け、今年も、薬価改定で全体の半数の薬価が引き下げられました。ジェネリック医薬品は特に薬価が低く設定されていることから、原薬や原材料の海外、中でも中国への依存度が高いと聞いております。 熊本も、超高齢化社会に突入した今だからこそ、重症化する可能性の高い高齢者の方々の命を守るためにも、医薬品の安定供給に対して、率先して対策を取ることが大切だと思います。 具体的には、緊急時に必要となる特定の医薬品について、県が、薬剤師会等と連携して、地域医療の調剤を担う薬局に十分なストックをするように促すなど、需要が逼迫してない平常時に対策を講じることが望ましいと思われます。 一案ですが、幸いにも大きな感染が発生しなかった年は、余った医薬品を消費期限前に国などに安く買い上げてもらって、ユニセフ等の協力を得て、グローバルサウスの国々に援助物資として送るなどのシステムの構築を働きかけることはできないでしょうか。 そうすれば、小さな薬局も思い切った医薬品の確保ができますし、日本ですら解熱剤等の流通がままならない状況です。経済基盤が弱い国々は、さらに厳しい状況だと思われます。貴い命が救われるとともに、国際的な支援を通して、日本や熊本の評価も上がると思います。 いずれにしても、健康福祉部におかれましては、国に対して現場の声を真摯に届けていただき、医薬用解熱鎮痛薬等の......
○副議長(内野幸喜君) 残り時間が少なくなりましたので、発言を簡潔に願います。
◆(堤泰之君) (続) 供給相談窓口の設置について周知徹底をお願いいたしますとともに、県民の皆様の生命と健康を何より大切に考え、緊急に備えた施策を講じていただくことをお願いいたします。 以上で通告した6つの質問を終わります。 今回は、前回よりも準備に時間をかけて臨みましたが、よい質問をつくるには、まだまだこれまでの議事録をしっかり読み込まなければならないと痛感いたしました。あわせて、県の職員の皆様の日々の仕事をもっと知るように努めていきたいと思います。 本日は、御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(内野幸喜君) この際、5分間休憩いたします。 午前11時休憩 ――――――○―――――― 午前11時10分開議
○副議長(内野幸喜君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 増永慎一郎君。 〔増永慎一郎君登壇〕(拍手)
◆(増永慎一郎君) おはようございます。上益城郡区選出・自由民主党の増永慎一郎でございます。今回、今度の任期で初めての質問でございます。今度の議会には、4人の新しい先生たちが質問されました。私はもう何回もしていますけれども、皆さん方の質問を見て、やっぱり初心に戻ってやらなければいけないなというふうに思った次第でございます。本当に、はつらつとした、いい質問をされたというふうに思っている次第でございます。 新聞では、表では、誰かがホームランを打ったとか、つないだとか、そういうのが話題になってましたけれども、実は、裏では、あの質問は何点だったというのがささやかれておりまして、自民党の某青年局長が審査委員長で、何か加点方式らしくて、さっきベースの点数は何点やと聞いたら、いや、それは人によって違うということで、先ほどここに来るときに何か拍手が少なかったので、私は最初からベースが低いのかなと。なるべく加点をして点数を上げて、後から、やっぱりさすが増永慎一郎というふうに言われるように質問をしていきたいと思います。 今日は、実は、私は大体2月に予定をしてたんですけれども、山都町を中心に、上益城で7月に大きな災害がありました。それと、皆さん方御承知のように、通潤橋が国宝に指定されました。ですから、今回は、ちょっと順番を早めていただいて、それについて質問をしていきたいというふうに思っております。 それでは、通告に従いまして質問をしていきたいと思います。 本年の梅雨前線豪雨の災害対応について、何点かお尋ねをいたします。 このことにつきましては、知事の議案説明の際にも述べられましたし、少し重複する部分もございますが、私の選挙区である上益城郡が甚大な被害を受けました。それで、今回は上益城郡を中心に質問をしたいと思います。 6月29日から7月3日にかけて、梅雨前線が九州付近に停滞し、熊本県においては、7月3日には線状降水帯が2回も発生するなど、記録的な大雨となりました。 特に、阿蘇の外輪山の南側である西原村や御船町吉無田高原、山都町の大矢地区付近では、7月3日の未明から早朝にかけて、時間雨量70ミリから90ミリを超える雨が続きました。大雨が降ったこの地域は、加勢川や緑川の支川の上流になり、それぞれの川に流れ込んでいきます。その結果、支川の上流域を中心に大きな被害をもたらしました。 家屋への浸水被害、公共土木施設や農業用施設の損壊、農地への土砂流入や山腹の崩壊など、県の公共土木施設で約168億円、農林水産業関係で約100億円の被害が出ています。そのうち公共土木施設被害においては、上益城郡だけで約135億円であり、実に8割が上益城郡に集中をしています。それに加えて、上益城郡内の町工事分の被害が約46億円もあり、合計しますと180億円に上ります。農林水産関係も、上益城郡だけで約62億円、全体の約6割を占めています。 以上、降雨の状況とか、それによる被害金額をかいつまんでお話ししましたけれども、今回の豪雨の物すごさを皆さん方に理解していただけたと思います。 ただ、今回の豪雨被害で、人的被害がほとんどなかったのは不幸中の幸いだというふうに思っている次第でございます。 さて、今回の災害では、県が管理する国道や県道においても数多くの被害が出ています。知事の説明にもございましたように、国道445号に架かる金内橋の落橋による通行止め、これ、テレビでも大きく報道されましたけれども、当時は、24か所の全面通行止めが発生しました。早急に対応していただき、16か所が解消しましたが、いまだに8か所の全面通行止めが残っている状況でございます。 迂回路等で何とか対応ができればいいのですが、その中には、御船町滝尾の県道横野矢部線のように、迂回路である県道稲生野甲佐線も通行できないため、沿線地域の方々にとっては大変不便な状況で、日常生活にも大きく支障を来しているところです。 また、益城町田原の県道熊本高森線についても、主要な道路で交通量も多いため、地元の益城町の方々はもちろんのこと、西原村の方々からも早い復旧の声が上がっています。 そこでお尋ねですが、いまだに全面通行止めになっている県管理の道路において、復旧の見込みはどうなっているのでしょうか。全てをお聞きしたいのですが、国道445号金内橋、御船町滝尾の県道横野矢部線、また、県道熊本高森線について、現在の状況と復旧の見込みを土木部長にお尋ねします。 特に金内橋については、先ほど申しましたけれども、通潤橋も国宝に指定されましたし、山都町の最重要道路でもございますので、復旧時期をなるべく詳しく教えていただきたいと思います。 〔
土木部長亀崎直隆君登壇〕
◎土木部長(亀崎直隆君) 6月29日から7月3日までの梅雨前線豪雨により、上益城地域を中心に、国道445号金内橋の落橋や河川の氾濫による護岸の崩壊など、甚大な被害が発生しました。 このため、本庁及び出先機関から、土木技術職員を上益城地域振興局へ派遣するなど、一日も早い復旧、復興に向けて、全力で取り組んでいるところです。 議員御質問の全面通行止めとなっている国道445号金内橋、県道横野矢部線、県道熊本高森線の現在の状況と復旧の見込みについてお答えいたします。 まず、国道445号金内橋については、落橋により、大型車は美里町を経由する国道218号を、それ以外の車両は近くの町道を迂回路としております。 このため、早期の通行機能の回復に向け、現在の道路の南側に仮橋を含む仮設道路を設置することとしました。 復旧に当たりましては、発災直後から国の支援を受け、仮設道路に必要な用地の借地も完了したことから、8月末には、仮設道路の盛土や橋梁下部工工事に着手しています。施工に当たりましては、両側から同時に工事を始め、工期短縮を図っております。 また、上部工については、国の応急組立橋を活用することとしております。橋梁の部品をあらかじめ現地で組み立て、一つのパーツとし、そのパーツごとに大型クレーンで架設するもので、一般的な仮橋施工に比べ工期短縮を図ることが可能となります。 このように、工事の進め方を工夫しながら、可能な限りの工期の短縮を図っております。今後、下部工等の施工が進んだ段階で、仮設道路の供用時期をお示しできると考えており、早期完成に向け、全力で取り組みます。 あわせて、橋梁の本復旧についても、落橋した橋桁の撤去や橋梁本体の設計を進めており、年内の災害査定を経て、速やかに工事に着手してまいります。 次に、県道横野矢部線についてお答えします。 本路線は、御船町滝尾地区において、路肩が決壊し、全面通行止めとなっております。迂回路に相当する県道稲生野甲佐線も本年5月の豪雨で被災しているため、まずは迂回機能の回復を目指し、この被災箇所の来年2月の完成に向け、本復旧工事を進めてまいります。 県道横野矢部線の被災箇所につきましては、現在、本復旧に向けて、測量、設計を行っているところであり、10月の災害査定を経まして、速やかに工事に着手してまいります。 最後に、県道熊本高森線についてお答えいたします。 本路線は、益城町田原地区において、延長約110メートルにわたって道路が木山川に流出し、全面通行止めとなっております。 迂回路は、近くを通る1車線の町道としており、被災後は津森小学校の通学路にも指定されておりますが、交通量が多く、登下校する児童の安全を早急に確保する必要がありました。そのため、本路線の被災箇所については、応急工事により、段階的に通行機能の回復を図ることといたしました。 具体的には、まず、通学路である歩道部を優先して取り組むこととし、大型土のうとバリケードを設置して、2学期の始業までに歩行者が通行できるように復旧したところです。 次に、車両の通行ができるよう、被災箇所の両側から片側1車線の車道確保に向け応急工事を進めており、10月3日までには片側交互通行が可能となる見込みです。 その後は、2車線の車道を確保するため、護岸等の本復旧工事を進めることとしており、10月の災害査定を経て、速やかに工事に着手してまいります。 これらの路線は、いずれも沿線地域の皆様の日常生活や観光、物流などの経済活動を支える重要な道路であることから、早期の通行機能の回復に向けまして、全力で取り組んでまいります。 〔増永慎一郎君登壇〕
◆(増永慎一郎君) 答弁をいただきました。大変詳しく丁寧に答弁をしていただきまして、ありがとうございました。 実は、7月3日、発災があって金内橋が落橋したということが、上益城地域振興局の土木部から、朝8時ぐらいに電話がありました。私は、実は、金内橋の後ろのほうに、石でできた金内橋というのがございます。通潤橋の前に造られた橋なんですけれども、通潤橋の練習として造られたという話もありますけれども、それが落橋したのではないかというふうに思いました。ところが、国道445号に架かる重要な橋でございました。 そのときから、もう落ちたすぐ後から、土木部の方々には大変いろんな心配をかけて、そして、いろんな手配をしていただきました。おかげで、国が持っている仮橋を持ってきて組み立てて、それを据え付けるということで、本当に早い対応だなというふうに感謝をいたしている次第でございます。 一部、地元の方々は、まだ早くできるのじゃないかという話をされますけれども、私も、今まで議員をさせていただいて、こんなに早く仮橋等ができるというのは、非常に感謝するしかないなというふうに思っております。 これも、熊本地震とか、それから令和2年7月の人吉、球磨の水害とか、そういった部分を受けて、執行部の方々がそれを経験されて、それをちゃんと身につけて、そして対応していただいているのだろうというふうに思っておる次第でございます。改めて執行部の対応には感謝をしたいというふうに思っております。 次に、上益城地域内の河川の復旧と今後の治水対策についてお尋ねをいたします。 今回の豪雨では、河川の護岸が崩れ、河川沿いの町道や農道などの道路への被害、水田への土砂流入、農業用水路や河川内にあるやななどの農業施設の被害を引き起しました。特に、山都町下名連石地区の五老ヶ滝川においては、数キロも護岸の崩壊が連続していて、悲惨な状況です。 護岸崩壊は、これまでに護岸が整備されていない箇所が中心ですが、木山川などにおいては、熊本地震による復旧箇所以外の護岸の崩壊が目立っていたように思います。また、護岸崩壊による農地被害に併せて、越水による被害も多く出ています。 県におかれましては、応急復旧により、これ以上の崩壊を防ぐような対策を取っていただき、日常生活や農作業に支障がないようにしていただいております。本当に感謝をいたした次第でございます。 これから本格的な復旧が進んでいくと思いますが、本復旧においては、非常に難しい面があると考えています。山都町や御船町の河川上流部においては、被災の状況から、まず河川を復旧させないと水田の復旧もなかなかできないのではないかと考えています。 護岸の復旧ができないと、水田の土砂が取り除けない。仮に早く水田を復旧させても、河川沿いの水田管理用の農道が通行できずに、ふだんの農作業に行けない。また、最上流部が町が管理する河川、そのすぐ下流側が県管理の河川といったように管理者が異なるため、復旧においては、いろんなすり合わせ、協議が必要になってくるなど、様々な問題が生じてくるようになってくると思います。 最も大変なのが、農地の復旧において、農家の復旧への意欲の問題です。過去においての大雨の影響による水田への土砂流入、熊本地震によるあぜの崩壊など、幾度も農済を利用した経験上、米を作ってても値段は安いし、こんなに災害で支出が多ければ、後継者もいないので、もう復旧せずに、そのままにしていこうというような声がいろんな地区で聞かれます。 河川災害に対しての備えは、ただ単に護岸を強化する以外に、河川の幅を広くしたり掘削をしたり、堆積物を取り除くといった方法があると考えられます。今回被災した五老ヶ滝のような河川は、護岸は復旧により強化できても、下流部への影響を考えるときに、河川幅を広げるとか、掘削をしたりとかはなかなかできないように思います。 そこで考えられるのが、復旧を諦められた水田を遊水地として使えないかという方法です。いろんなクリアすべき課題があると思いますが、将来の雨の降り方を考慮しながら河川の対策をしていく際には、通常の復旧ではなく、そういった遊水地確保などにも取り組んでいくべきだと思いますが、いかがでしょうか。 実際に、五老ヶ滝川沿いの地区においては、耕作放棄地にならないように、農家の意向を聞きながら取りまとめをして、そういった要望をしていこうという動きがあっています。 今回の河川復旧についての状況と本取組について、また、耕作を断念された水田の遊水地利用について、土木部長にお尋ねします。 続けて、木山川の河川対策についてお尋ねいたします。 木山川は、加勢川の支川の一つで、今回の豪雨災害だけではなく、毎年のように氾濫し、低い土地の住宅への浸水被害や水田の冠水被害をもたらします。 私は、木山川をはじめとする加勢川の支川の河川整備について、何回か質問を重ねてきました。特に、御船町から嘉島町を流れる矢形川については、過去、木山川ほど氾濫はしてませんが、昔との状況が大きく変化している中、将来において大きな被害をもたらすと考えており、今回の木山川の状況を考えますと、加勢川の支川については、早急に対策を取らなければならないと考えています。 過去の質問で、流域治水の考え方で河川整備計画を検討していくと答弁をいただいていますが、現在の状況はどうなったのでしょうか。 今回の豪雨災害を受けて、さらに速度を早めて早急に取り組むべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。 先ほどの質問と併せて、土木部長にお尋ねいたします。 〔
土木部長亀崎直隆君登壇〕
◎土木部長(亀崎直隆君) 上益城地域の河川の復旧と今後の治水対策についてお答えいたします。 上益城地域の河川においては、今回の豪雨による被害が192か所で発生しております。多くは、石積みなどの護岸本体の崩壊や基礎部の深掘れによるものです。 特に、五老ヶ滝川など、山都町や御船町の上流部では、護岸の崩壊とともに、隣接する農地に多量の土砂が流入している箇所もあり、農地の復旧のためにも、早期の復旧が必要と考えております。 現在災害査定を開始しており、年内に全ての災害査定を完了できるよう、集中的に取り組んでいるところです。 災害査定が完了後、順次工事発注を行い、被災された方々の一日も早い生活再建に向け、職員一丸となって全力で取り組んでまいります。 また、議員御指摘の耕作を断念された水田の遊水地利用につきましては、河川の復旧を進める中で、遊水機能を有する土地として利用できないか、検討してまいります。 次に、木山川の河川対策についてお答えいたします。 木山川を含む緑川水系につきましては、流域治水の考えの下、下流域を管理する国と上流域を管理する県が連携し、河川整備計画の策定に向け、検討してきました。 去る8月30日に、学識者の意見を聴く場である学識者懇談会が開催され、気候変動の影響による将来の降雨量の増加を踏まえ、国と県で、上下流一体となった河川整備計画を策定していくこととなりました。 現在、今回の豪雨を含めました浸水被害の発生状況、流域の資産、社会的影響、過去の河川整備の状況や流下能力など、総合的に考慮した整備内容等の検討を進めているところです。 県といたしましては、国、流域市町村と連携しながら、令和6年度早期の緑川水系河川整備計画策定を目指し、スピード感を持って取り組んでまいります。 〔増永慎一郎君登壇〕
◆(増永慎一郎君) 建設常任委員会の災害視察で、山都町の下名連石というところの小さい河川を見に行っていただきました。テレビで報道があった部分だけは皆さん方認識をされてましたけれども、その地区を見られて、やっぱりこれはひどかったねという話を聞きました。それぐらい上流域では、護岸が洗われて、そして水田が、非常に土砂が流入して、もう使えないようになっております。河川の状況を見ながら遊水地として使えるところは検討していただくということでございますので、そういった部分は、その地区の方々とそれから担当する町の職員さんたち、あと、農政のほうと連携を取りながら、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。 また、木山川を含む緑川水系の河川整備計画ですけれども、やっぱりこれはもう待ったなしで早くやっていただかないと、今、上益城の平たん部には、家がどんどんどんどんでき始めていますし、私がいつも質問します矢形川につきましては、大型商業施設等が張りついております。 実は、今回、矢形川の上流に天君ダムというダムがありまして、これは、土木部管轄ではなくて、農林水産部の管轄なんですけれども、いわゆる農地の治水ダムとして造られたダムでございますけれども、そのダムがあったおかげで、家とか道路とかが守られたというふうな形でございます。もう少しで緊急放流をするような形でございましたけれども、非常にそのダムの効果というのが出たのではないかなというふうに思っとる次第でございます。 ただ、そのダムというのが、今ほとんどが手動でいろんな操作をやらなければいけないということで、もう更新の時期にも来てますので、そういった部分、農林水産部が管轄したがいいのか、土木部でやっていただくのかというのがいろいろあると思う。なかなか難しいとは思いますけれども、それはまた次の質問に回して、とにかく河川整備計画を早くつくって、この加勢川水系、緑川水系は、早めにやっていただきたいと思います。 次の質問に移ります。 県立高校の魅力化の状況及び募集定員の見直しについてお尋ねをいたします。 魅力化については、これまでに、私も含めまして、数多くの先生方が質問をされていますが、教育委員会の方向性に少し疑問がございますので、改めて質問したいと思います。 高校再編整備計画が終了し、県教育委員会は、高校教育課の中の高校整備推進室を平成31年に高校活性化推進班とし、県立高校の活性化を進められてきました。 また、それぞれの地域の学校の魅力化を推し進めなければ、特に郡部の高校が存続していかないという観点から、令和2年度より高校魅力化推進室と改編され、現在に至っていると認識をしています。 高校の魅力化については、いろんな地元の会合とかで、保護者や地域住民の方々から、地域の特色が出るような、そして地域に根づくような魅力ある学科の改編や新設を望んでいるという話をよく聞いているところです。 その一方で、県内の私立高校においては、学校ごとにきちんとした建学の精神があり、それに基づいて特色ある学校づくりをされており、それに魅力を感じているという話も聞きます。現に、私立高校においては、授業料無償化の影響もあるとは思いますが、入学する生徒が増えていると伺っています。 これは、あくまでも私の見た目ですが、校舎やグラウンドなどの設備面や部活動などの様子とかにおいても、私立と県立では、かなり開きがあるのではないかと思っています。また、特色ある学科とかも多く、比較すべきことではないですが、結論から言えば、魅力化については、私立高校のほうが私は先んじているように思えてしまいます。 そういう中、県立高森高校にマンガ学科が新設されました。地元や民間と一体となった取組の結果、今年度入試においては、たくさんの生徒が受験をされたと伺っています。 また、それに伴って、高森町自体も以前より活気が出てきたと伺っています。これは、まさしく高校魅力化の成果だと考えていますが、高校魅力化推進室設置以降、ほかの学校においてはどんな取組をされているのでしょうか。直近において、高森高校のような学科新設などを考えていらっしゃるのでしょうか、お尋ねいたします。 また、取組を始めて時間があまり経過していませんが、現状を考えますと、この取組はある程度即効性がなければならないと考えています。 以前、郡部の高校の定員充足率について質問しましたが、現在の県立高校の定員充足率の変化についてはどのような状況なのか、お尋ねいたします。 質問を続けたいと思います。 これも以前質問したことですが、私は、高校の定員充足率が低下することにより、学校が過少評価され、さらなる定員割れにつながっているのではないかと考えています。言い方は悪いかもしれませんが、どうせ必ず合格するような学校に行っても仕方ないとか、大きく定員割れをしているのは学校に魅力がないからだといった声も聞こえてきます。 充足率が低下している高校については、入学者数に見合った数となるよう定員を削減し、定員割れの改善を図るべきだと思います。 以前、定員の見直しについてお尋ねしたところ、一つの例として、特に教職員の配置において、ある程度の定員がないと教職員の確保ができないという話を聞きました。そういうことは、リモート授業とかを活用して、幾つかの高校を連携させればできるのではないかと考えていましたが、当時は、その方法では単位修得に対して問題があり、難しいと回答を受けたように記憶しています。 先日、新聞の記事に、不登校等の生徒に対して、リモートでも単位が修得できるという記事が掲載されていました。病気での長期入院など、何らかの理由で学校に行けない生徒たちにとっては、無理なく進級もできるし、卒業もできる。様々な生徒たちにとって朗報であると感じた次第です。 また、それに合わせて、小規模高校での遠隔授業の際の教員配置条件も変更されるとのことでした。教員の配置条件が変更され、環境が整えば、定員の充足率が極端に低い高校については、募集定員の見直しができるのではないでしょうか。また、それが結果的に魅力化にもつながっていくのではないでしょうか。 定員の見直しについてお尋ねいたします。 最後に、もう1つ質問します。 最近、特に郡部において、これだけ子供の数が減っている状況では、高校再編が再びあるのではないかということをよく尋ねられます。 私の選挙区には、御船高校、甲佐高校、矢部高校と3つの県立高校が設置されています。特に甲佐町、山都町では少子化がかなり進んでおり、甲佐高校、矢部高校においては、定員割れも進んでいます。地元からは、甲佐高校が御船高校に取り込まれて一つの高校になるのではないかとか、矢部高校は廃校になるのではないかといった声がよく聞こえてきます。その都度、そういう話は今出ていませんからというふうに返していますけれども、今の学校の状況を考えますと、私自身、本当に不安を覚えます。 県教育委員会として、県立高校のまたの再編についてはどう考えていらっしゃるのか。 以上、質問が多くなりましたが、4点について、教育長にお尋ねします。 〔教育長白石伸一君登壇〕
◎教育長(白石伸一君) まず、1点目の県立高校魅力化の取組についてお答えいたします。 議員御紹介の高森高校のマンガ学科のように、地元自治体や企業と連携した地域や生徒のニーズに応える学びの導入については、現在、ほかの地域でも取組を進めています。 例えば、天草市では、若者の地元定着に向けて、デジタルアートの島創造事業に取り組まれており、IT産業やゲーム、アニメといったクリエーティブ産業などにおいて、即戦力として活躍できる人材育成を目指しています。 具体的には、県教育委員会、天草市、天草工業高校、株式会社オレンダワールドとの4者で連携し、コンピューターグラフィックのプログラミング技術などを高める新たな学びの創造に向けて、具体的なカリキュラム内容を研究しています。 また、水俣市では、アスカインデックス社と水俣高校が連携し、令和5年度から半導体関連教育を導入しています。 具体的には、同社の研修設備を活用した研修やエンジニアを派遣する特別授業を実施しています。 ほかにも、上天草高校や菊池高校などでも、地元自治体や関連企業と連携した魅力化の取組を進めているところでございます。 2点目の熊本市外の県立高校の定員充足率の状況についてお答えいたします。 令和3年度から始めた魅力化の取組により、熊本市外の県立高校では、令和3年度に63.2%だった定員充足率が、令和4年度には64%、令和5年度には71.1%と、2年間で7.9ポイント改善いたしました。 しかし、依然として熊本市外の定員充足率は低い状況となっており、引き続き、魅力ある県立高校づくりを進めていく必要があると考えております。 3点目の募集定員の見直しについてお答えいたします。 募集定員については、県立高等学校あり方検討会の提言に基づき、学科改編等による魅力化の取組と併せて、1学級相当の40人以上の定員割れが一定期間継続している学校については、入学希望者数等に応じた学級減による募集定員の見直しを行っているところでございます。 そのような中、中学校卒業予定者は、令和9年度までは年間約1万6,000人で推移するものの、10年後の令和19年度には約1万2,000人と、約4,000人の減少が見込まれています。今後急速に進む少子化の状況を見据え、県全体の学科のバランスなどを考慮しながら、募集定員の見直しを行っていく必要があると考えております。 議員御紹介のリモート授業の活用は、小規模校の教育環境の充実に有用であると考えております。県教育委員会では、令和3年度から国のモデル事業を活用し、専門の教員が学校に配置されていない商業や音楽の授業などで、大規模校と小規模校や小規模校同士をつなぐリモート授業に取り組んでいるところでございます。今後、リモート授業のさらなる活用により、小規模校でも充実した教育が受けられるよう取り組んでまいります。 4点目の県立高校のさらなる再編についてお答えいたします。 県立高校の今後の在り方等については、少子化の進行に伴う地方の県立高校が置かれている厳しい現状を踏まえ、地元自治体、保護者、教育関係者と一体となって検討を進めていく必要があると考えております。 そのため、現在、県内全ての中学生とその保護者等へのウェブアンケートを実施するとともに、地元首長や教育委員会と、高校の現状や課題、魅力化や在り方の方向性などについて、意見交換を行っているところでございます。 今後も、学校、県教育委員会、地元市町村が十分に連携しながら、地域に根差した高校教育の充実を推進するとともに、夢への挑戦を支える魅力ある学校づくりに向けて、しっかりと取り組んでまいります。 〔増永慎一郎君登壇〕
◆(増永慎一郎君) 魅力化については、県内、いろんな高校で、今一生懸命に頑張っていらっしゃるということで、2年間で充足率も7.9ポイント改善したということでございますので、一定の効果は出ているのではないかなというふうに思っとる次第でございます。 しかしながら、やっぱり高森高校というマンガ学科というののインパクトが非常に強くて、いろんなところで、うちもそういう学科をつくってくれとかいうような話があります。なかなか難しいとは思いますけれども、例えば、学科をつくるとかよりも、これは御船高校の話なんですけれども、銀行の支店長さんとちょっとお話をしたときに、実は御船高校から就職を採りたいけれども、商業系の子がいないからなかなか採れないんだという話をされました。ですから、そういった形で、リモートとかを利用しながら、総合的に学べるような魅力化あたりも私はあってもいいのではないかなというふうに思っとる次第でございます。 とにかく、こういった魅力化を進めていかない限り、なかなか定員というのが守られないというか、定員ができないということでありまして、定員を減らせば充足率というのは必ず上がるというふうに思いますけれども、やっぱり矢部高校なんか、今1学年120人定員で40人ぐらいしか来ません。そして今、町内で、矢部高校の通学圏内で生まれている子供が50人ぐらいしかいないという現状がありますので、全員来ても定員割れという形になりますから、その辺は、ちゃんとやっぱり早めに見直しをしていただきたいと思います。 また、再編の話は、あんまりこっちから言うと、増永が再編の話したけん再編になったというような形にもなりかねませんけれども、やっぱりそういうふうな不安はいつも抱いています。ですから、きちんと、こじんまりとした魅力ある学校をつくっとけば、再編のときには、いや、この学校はやっぱり残さないかぬよという話になってくると思いますので、それまで準備をきちんとしておいてほしいというふうに思っている次第でございます。 やっぱり高校というと、それぞれの郡部の高校においては、その地域は、その高校がなくなれば疲弊していくというのにつながっていくというふうに思っとります。高森町が今活気が出ているのは、やっぱり高校を軸とした、高森高校にマンガ学科というのができたからだというふうに私は思っておりますので、ぜひその辺も、いい例ができたわけでございますので、また今後とも頑張っていただければというふうに思っとります。 次の質問に移りたいと思います。 通潤橋の国宝指定についてでございます。 今スクリーンのほうに投映されておりますけれども......(資料を示す)山都町といえば、豪快な水しぶきを上げる放水が特徴である通潤橋が全国的に有名ですが、本年6月23日に開催された国の文化審議会で、国宝に指定するように文部科学大臣に答申をされました。そして、おととい25日に、正式に国宝に指定されました。山都町出身の私にとっては誇りであり、本当にうれしい限りです。 今回の国宝指定は、土木構造物としては全国で初めてであり、県内では、10年前に指定をされた人吉の青井阿蘇神社と合わせて2例目、また、九州では9例目になります。 この通潤橋は、人が通るための橋ではなく、水不足に苦しむ白糸台地に農業用水を供給する水を渡すためのかんがい用の施設として、惣庄屋布田保之助の手によって、1854年に築橋されました。通潤橋は、国内最大級の石造りアーチ式水路橋で、その架橋には、橋本勘五郎をはじめ優れた石工が多数携わっており、1960年には、国の重要文化財に指定されています。 また、通潤橋は、周辺の用水施設とともに「通潤用水と白糸台地の棚田景観」として、国の重要文化的景観として選定されており、さらには、2014年には、世界かんがい施設遺産にも登録をされています。 ここで、今回国宝に指定された経緯を御紹介したいと思います。 きっかけは、2016年の熊本地震及び2018年の豪雨で被災をしたことです。2020年に復旧は完了しましたが、町は、その時点で復旧工事報告書を作成し、その工事の中で分かったことやこれまでの研究を基に、翌年から2年間かけて、総合調査報告書を作成しました。それを県を通じて文化庁に具申した結果、今回の国宝指定となったわけです。 その中で評価を得たのは、橋に使われている技法、技術面だけではなく、歴史的背景、特に、建設が惣庄屋が指揮する地域主体の社会資本整備事業であった点だと聞いています。 さて、私は、令和4年2月議会において、当時国指定の重要文化財であった通潤橋の持つ価値についてどのように位置づけ、観光資源としての活用やかんがい用施設としての使用についてどのように認識されているのか、また、地元の声を踏まえて、今後の保存の在り方をどうしていかれるのかという質問をさせていただきました。 いわゆる現状を保ちながら、壊れた部分をその都度修理しながら保存していくのか、または、いつでも水路としてのかんがい用施設として利用でき、観光客には、その雄姿をいつでも見てもらえるように、補強をしながら保存していくのかという質問でした。 その際「県としては、地元の意見をお聞きしながら、通潤橋を次の世代にしっかりと受け継いでいけるよう、山都町と連携しながら、適切な保存と有効な活用に取り組んで」いくとの答弁をいただいています。 いよいよ国宝通潤橋が誕生しました。地元任せだけではなく、保存については、県も本腰を入れて取り組んでいかなければいけない問題だというふうに思っております。 そこで、改めて、保存について、県としてどのような考え方で取り組んでいかれるのか、教育長にお尋ねします。 〔教育長白石伸一君登壇〕
◎教育長(白石伸一君) 通潤橋の保存に対する考え方についてお答えいたします。 このたびの国宝指定により、通潤橋が名実ともに我が国を代表する宝となりましたことは誠に喜ばしく、また、誇りに思います。 県教育委員会では、これまで、山都町主催の通潤橋保存活用検討委員会に委員として学芸員を派遣し、保存のための技術的助言を行ってまいりました。あわせて、今回の国宝指定に当たっては、学識経験者や文化庁との連絡調整役を担うなど、町を支援してまいりました。 また、今回の国宝指定を受けて、10月30日に、県内の文化財関係者を集めて熊本県文化財保護大会を開催し、広く県民や専門家を交え、通潤橋の保存と活用について考える機会を設けることとしています。 県教育委員会といたしましては、通潤橋が次の世代に確実に引き継がれていくよう、保存や活用のための技術面での助言はもとより、県の文化財保護指導委員による毎月の巡視点検に職員が同行するなど、今後とも、山都町と一体となって、しっかり取り組んでまいります。 〔増永慎一郎君登壇〕
◆(増永慎一郎君) 保存に当たっては、壊れたところをきちんと指導の下に直していくという方向しかないというふうに思っております。 今管理されているのが、町とそれから土地改良区あたりが中心になって管理をされておられます。非常に今から先、物すごく何かシビアな要求とかを突きつけられながら管理を多分されて、非常に苦労されると思います。それに伴って、国宝ですから、そういう部分に関しましては、国が必ず絡んでくると思うんですけれども、日頃の管理でなかなか予算的にも山都町あたりも苦しいかというふうに思いますので、県が――予算をくれというわけではないですけれども、県が関与できる部分に関しては関与していただきたいというふうに思っておりますし、やっぱりこれは、私たちの子供とか孫とかそれ以上にも、ずっときちんとした形で保存をしていかなければいけませんので、その部分においては、国宝になって国の宝にもなりましたけれども、県の宝であり、山都町の宝でもございますので、一緒になって、ぜひ保存については頑張っていただきたいと思います。 次に、観光資源としての通潤橋についてお尋ねをしたいと思います。 通潤橋、通潤橋と、なかなか引っかかりそうな言い方でございますけれども、私は地元ですから通潤橋と言い間違いませんので、よく聞いといてください。 通潤橋については、九州自動車道の県境にも通潤橋のモチーフが使われていますし、これまでも、山都町旧清和村の文楽、旧蘇陽町の幣立神宮やそよ風パークなどとともに、山都町観光の目玉として活用されてきました。今でこそ、6月23日の国宝答申を受け、観光客がかなり増えていますが、地震や豪雨で被災した当時は、観光客もまばらで、観光産業を中心に、大きな打撃を受けたところです。 山都町は、人気観光地である高千穂町や五ヶ瀬町に隣接しているため、どちらかというと、メインの観光地ではなく、そこへ向かうときの通過型の観光地として捉えられています。 町としても、通過型だけではなく、周辺の施設などと組み合わせて、滞在型の観光商品開発を模索してきました。しかし、国指定重要文化財というだけではインパクトが非常に弱く、旅行業者などからも、見ていただければ感動されるとは思いつつ、御案内はしているんですけれども、なかなか興味を持ってもらえず、ツアーなどの中に入れ込んでもらうことがなかなかできないといった声も聞かれていました。 今回、国宝通潤橋となれば、話は変わってくると思います。構造物としては国内初、熊本でも2例目の国宝となるわけで、それだけでも目玉の観光資源となり、多くの観光客の注目を集め、それを目当てに訪れていただけるのではないかと考えます。 特に、インバウンドの旅行需要が復活し、今非常に好調である中、外国人観光客には、その壮大さ、豪快さ、迫力には多分圧倒されると思いますし、人気の観光スポットになるのは間違いないと確信をしております。 また、今年度には、九州中央自動車道の山都通潤橋インターまで供用開始となります。熊本市内はもちろんですが、福岡などからのアクセスもよくなり、その相乗効果で、山都町はもとより、熊本県の観光資源として重要な役割を果たしていくと思います。 現在、山都町役場を中心に、観光協会、商工会などが取り組まれていますが、県としても、国宝通潤橋を活用した観光需要、発展に取り組んでいかなければならないと考えます。 そこで、今後、通潤橋を活用した観光需要の取組をどのようにしていかれるのか、
観光戦略部長にお尋ねします。 あわせて、通潤橋周辺の県立公園の整備についてお伺いします。 皆さんはあまり御存じではないかと思いますが、通潤橋の周辺付近は県立公園に指定されており、環境生活部の自然保護課の管轄となっています。通潤橋ばかりが目立っていますが、通潤橋のすぐ下流には五老ヶ滝という大きな滝があり、落差が40メートルほどあり、また、水量も豊富で、五老ヶ滝だけでも見応え十分だと思えるようなすばらしい滝です。 私が子供の頃は、遊歩道がきちんと整備され、滝つぼ周辺まで下りて、景色を見ながら散策できるようになっていました。現在は、途中に山都町がつり橋等を整備され、見学スポットをつくって、通潤橋とセットで観光できるようにしてあります。 しかし、近年、予算の関係からか、遊歩道などの整備状況もあまりいいとは言えない状況になっています。また、通潤橋が最もよく見える駐車場付近にある唯一のトイレは県の所有で、数年前に一部改修していただきましたが、それまでは暗く、汚いトイレで、利用者からも苦情が度々出ていました。 先ほど観光資源としての活用をお尋ねしましたが、ただ単に観光PRとかだけではなく、来られた観光客の皆様方をがっかりさせないような施設整備も重要になってくると思います。もともと通潤橋や五老ヶ滝が存在していたことで、その周辺が県立公園に指定されているのだと思いますが、今度の通潤橋国宝指定に合わせて、県立公園の整備もしていくべきではないでしょうか。 そこで、今後の通潤橋周辺の県立公園についてどのように考えていらっしゃるのか、
環境生活部長にお尋ねします。 〔
観光戦略部長原山明博君登壇〕
◎
観光戦略部長(原山明博君) このたびの通潤橋の国宝指定は、本県観光にとっても強力なコンテンツが誕生したものと受け止めています。 地元山都町においても、国宝への答申がなされた段階から、いち早くポスターやチラシを作成され、隣接する物産館では「祝 国宝答申」と書かれたシールが各商品に貼付されるなど、国宝指定に対する大きな期待感を感じています。 県では、これまでも、通潤橋を本県を代表する観光資源として様々なプロモーション活動を通してPRに努めてきたところですが、国宝指定を契機に、通潤橋が持つ壮大さや豪快さに加えて、石橋の技法や機能、歴史的背景など、その魅力を丁寧に伝え、さらなる誘客に生かしていきたいと考えています。 そこで、ホームページやSNSへの情報発信、旅行会社への説明会等でのPRはもとより、訪れていただく方々に、通潤橋を学び、楽しみ、満足していただけるよう、山都町や観光協会と連携し、観光ガイドの充実を含めた着地型観光の磨き上げを図ってまいります。 さらに、さきに国宝に指定された人吉市の青井阿蘇神社と合わせ、例えば国宝を巡る旅としてPRするなど、相乗効果を高め、県内周遊にもつなげてまいりたいと考えています。 また、通潤橋の国宝指定は、インバウンド誘客に当たっても大きなチャンスであると考えています。 本県のインバウンド重点市場の一つである台湾においては、熊本城などの観光地と合わせて通潤橋をPRしたラッピングバス2台をこの秋から3か月間台湾各地で運行します。 さらに、今月、上質な観光地を紹介する富裕層向けのクルーズ専門誌に通潤橋の特集記事を掲載したところです。 今年度予定されている山都通潤橋インターチェンジの開通によりアクセスが向上することも見据え、こうしたクルーズ船の寄港地ツアーの造成の働きかけも進めてまいります。 今後も、地域との連携を一層密にしながら、国宝通潤橋の魅力を伝える体制を整備するとともに、タイムリーかつ効果的にプロモーションを展開し、山都町や上益城地域、ひいては本県の観光振興につなげてまいります。 〔
環境生活部長小原雅之君登壇〕
◎
環境生活部長(小原雅之君) 矢部周辺県立自然公園は、阿蘇外輪山の裾野に広がる雄大な自然景観を有し、通潤橋をはじめとする名所旧跡が点在する魅力的な地域であることから、昭和32年に県立自然公園に指定されています。 この自然公園の一部である通潤橋周辺は、議員御紹介のとおり「通潤用水と白糸台地の棚田景観」として、国の重要文化的景観として選定されており、通潤橋から五老ヶ滝川に下りていく遊歩道からは、美しい棚田や高さ40メーターから落下する五老ヶ滝の壮観な姿を眺めることができ、人々に感動と癒やしを与えています。 また、通潤橋周辺一帯は、観光客のみならず地域住民の憩いの場として親しまれており、施設の適切な維持管理が重要であると認識しております。 県では、本自然公園の利用促進と利便性の向上を図るため、昭和46年から、駐車場、歩道、トイレ、休憩所などの整備を行い、また、老朽化施設の改修等を継続的に行ってまいりました。 なお、本年7月の大雨により通潤橋や五老ヶ滝周辺の施設が被災したため、速やかに復旧すべく、休憩所の改修や歩道等に堆積した流木の撤去など、自然公園施設の災害復旧に必要となる予算を今定例会に提案しております。 また、地元の意向を踏まえ、今年度は、通潤橋周辺景観の重要な施設となる二の丸橋やベンチなどの改修も予定しております。 このたび通潤橋が国宝に指定されたことにより、観光客の増加や自然公園施設のさらなる利活用が期待されます。県としましては、通潤橋周辺の施設整備等について、山都町をはじめ関係者の皆様としっかりと議論を深めてまいります。 〔増永慎一郎君登壇〕
◆(増永慎一郎君)
観光戦略部長には、非常に前向きで、すばらしい答弁をいただいたと思います。 やっぱりこういったPRとかは、地元である山都町とか、山都町の観光協会とか、商工会さんが主体でやるべきなんですけれども、やっぱり県が持っている今までの観光に対する人脈とか、それから、いろんな――結局プロがやらないと、なかなか難しいというふうに思いますし、今度は、特にインバウンドに関して、台湾でラッピングバスを2台走らせていただける、また、クルーズ船向けの雑誌に特集を組んでくれるというのは、なかなか町自体だけではできませんので、そういった部分で応援をいただけるというのは非常にうれしい限りでございます。 溝口先生いらっしゃいますけれども、青井阿蘇神社、これが先に、10年前に国宝になりました。そのときにどんな観光戦略とかやられたんですかというふうに尋ねましたけれども、そのときには、やっぱり地元が中心になって最初からやられてたみたいでございます。 しかしながら、今ちょうどインバウンド需要とかも多うございますので、ぜひとも、今度青井阿蘇神社と一緒にタッグを組んだPRとかもされるということでございますので、そういった今までやられてきたことを勉強しつつ、ぜひ山都町と一緒になって、熊本県に来られるお客さんを増やす意味でも非常に重要なことでございますので、よろしくお願いしたいと思います。 また、通潤橋周辺の自然公園の整備に関しましては、なかなか予算がないというのはよく分かっている次第でございます。管理においても、土地改良区がボランティアを集めてやられているという部分もかなりありますし、除草作業なんか特にボランティアでやられておられます。できれば、今回国宝になったということで、予算を上げていただいて、そしてきれいな公園整備ということで、ぜひしていただければなというふうに思った次第でございます。 とにかく通潤橋の国宝指定、私も子供の頃から遊び場にしておりました。非常にその日頃見慣れた風景が、そしてその通潤橋が国宝になったということは、本当に喜ばしい限りでございます。あとは、これをどうやって残していくか、どうやって使っていくか、これが一番大事なことでございますので、これに対しては、皆さんの協力を得ながら、私も一生懸命に頑張っていきたいなというふうに思った次第でございます。 これで私が通告していました質問は全て終わりました。何点だったかは後で聞きたいというふうに思いますけれども、これからも一生懸命に勉強しながら、またここで質問できるときまで頑張っていきたいというふうに思っております。 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(内野幸喜君) 昼食のため、午後1時10分まで休憩いたします。 午後0時9分休憩 ――――――○―――――― 午後1時8分開議
○議長(渕上陽一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 緒方勇二君。 〔緒方勇二君登壇〕(拍手)
◆(緒方勇二君) 皆さん、こんにちは。自由民主党・球磨郡区選出・緒方勇二でございます。 今定例会、代表質問から一般質問と続きましたが、最後の一般質問です。しばらくの間、お付き合いください。 あの通潤橋が国宝に認定された。世界かんがい遺産であり、このたびの本当にすばらしい国宝認定だなと思います。 私、20代後半に初めて通潤橋に行かせてもらいました。まさに先人の御苦労の上に、選定されたあの威容な姿を見て、感動いたしました。ちょうどあの黄色い帽子をかぶった児童が、あの棚田に腰をかけてスケッチをされている姿を、新聞で認定を見ながら思い出したところであります。 そういうあの原風景をしっかりと後世につないでいくことの大切さを改めて感じつつ、質問に入らせていただきます。 9月1日、防災の日、この意義ある日に、球磨村買取型公営住宅落成式典が、木村副知事にも出席いただき、挙行されました。津波のようであったと表現された令和2年7月豪雨災害から3年を経て、安心、安全な住まいの完成を見て、入居を待ち望んでおられた被災者の笑顔に、痛みの最小化を見る思いでありました。 この災害で特筆すべきは、関連死が少なかったことだと思います。これも、熊本地震の経験が生きて、雨音でフラッシュバックしないようにとの配慮から、応急仮設住宅には屋根に瓦をふくなど、恒久の住まいかとも思えるような提供をいただき、さらに、被災者に寄り添う手厚い支え合い事業が展開されたことなどが一因にあると思うところであります。 さあ、これから本格的な創造的復興が始まると意を強くいたした落成式典でありましたことを申し上げ、豪雨災害からの創造的復興について質問をいたします。 命と環境を守る緑の流域治水の理念の下に、あらゆる関係者が流域治水事業を展開すれば、多層的、重層的に強靱化が図られ、持続可能な球磨川流域となり、まさに球磨川総合開発になると信じるのであります。 また、被災した球磨川流域では、その土地に寄り添い、復興の種、すなわちイベントや活動や事業に水をやり続ける水の人、被災地に種を運び、常に刺激を与え続ける風の人、そして、そこにい続け、しっかり根を張り活動し続ける土の人たちが存在します。これも、単に元に復するだけでなく、創造的復興の一つの姿と思うのであります。 そして、さらなる熊本の発展につながる種をまく礎を球磨川流域に築く上で、何点か知事にお尋ねをいたします。 1点目、堆積土砂の有効活用についてお尋ねをいたします。 本県では、TSMCの進出を契機に関連産業進出が相次いでいますが、工業団地不足が表面化し、県南八代でも工業団地不足が企業誘致の足かせとの新聞報道がありました。 今後、用地の確保が喫緊の課題だと認識しております。場所にもよりますが、用地の確保ができれば、大量の造成用の土砂が必要となります。そこで、河川掘削した土砂を造成材料として流用できないものかと考えます。 堆積土砂の掘削に伴う土捨場の確保が難しくなる中で、過去の一般質問で、掘削土砂の工事間流用は許されているものの、河川の掘削土砂を河川区域外の仮置場等に搬出し、骨材として利用する場合は、国有財産としての処分が必要となり、利用は難しいとの扱いでありましたが、踏み込んだ協議の末に、砂利採取業者が河川区域内から搬出、利用するのは許されることになっております。 掘削した土砂を造成材料として活用するためには、もっと踏み込んだ取組が必要と考えますが、見解をお尋ねいたします。 2点目、ダム上流域での森林伐採の在り方についてお尋ねをいたします。 知事には、大雨による土砂災害が増えている現状をどう考えておられるのか。気候変動に伴う激烈な降雨による立木を巻き込んだ災害の多発だとお考えなのか、相続未登記の森林が増える中、適宜適切な管理ができていない、いわゆる手後れ森林の増加も一因であるとの考えなのか、あるいは、林業の効率化を図り、林地にある木を全て伐採する皆伐を推進してきたことも要因とお考えなのか、見解をお聞かせください。 さらに、緑の流域治水の推進の中で、治山、砂防による山の再生、強化を図られていますが、山の再生そのものである災害に強い森とはどのような状態を指すのか。 皆伐をして再造林しても、水や土は短期的に流出するので、洪水や土砂災害の被害が大きくなりやすいと言われております。また、木を伐採して再造林しても、温室効果ガスの吸収や固定が短期的には能力も失われてしまうと思います。 そこで、部分的に伐採する択伐を推進するべきではないかと考えております。これであれば、国土保全などの機能も維持できると考えます。過去の質問で、経済林であるので皆伐もやむなしとの見解も理解しておりますが、せめてダム上流域での伐採方法については規制強化すべきではないかと考えます。知事のお考えをお尋ねします。 3点目、遊水地の利活用及び受入れ環境整備についてお尋ねをいたします。 流域治水プロジェクトで、遊水地及び遊水機能を有する土地の確保、保全について、事業計画を策定されて、事業説明会が実施される中、去る8月26日に、相良村国管理区間、球磨川柳瀬地区遊水地事業着工式が、知事も出席されて開催されました。これも、知事が相良村村民に、直接命と環境を守る流水型ダムを含む緑の流域治水と相良村振興への思いを説明されたおかげだと思います。 その際に、住民より、私たちの田んぼを遊水地にしてください、私たちは高台の農地で営農しますからと訴えられてからが早かったと思うのであります。 掘り込み方式、買取り型の遊水地予定地で、地権者の意向も明確で合意形成が図られた予定地では、早期の事業着手が実現すると思うのですが、そのほかにも、掘り込み方式、買取り型、地役権設定の遊水地予定地及び遊水機能を有する予定地があるわけですが、私は、平常時の利活用をどうするかが事業推進の大きな鍵だと思っております。 球磨村渡地区の遊水地予定地では、まちづくり懇談会にも参加し、地元との合意形成に努めているとのことですが、球磨村渡地区は、平地も少ない中で、唯一の山里に広がる農地と集落でした。 新聞報道で、豪雨被災地人口急減、7市町村、3年で8,380人、球磨村に至っては、減少率41.2%、減少人口1,321人との報道でありました。深刻な数字であります。 この渡地区が遊水地事業予定地となり、球磨村より復興まちづくり計画を知事に提出された際にも、遊水地に平常時のにぎわいの場の創出が必要であり、人口流出に歯止めをかける活用の場としての整備が必要ですと、私は申し上げました。 唯一の遊水地の適地でありますが、かつてのにぎわいの場でもありました。再びにぎわいを取り戻すためにも、平時の活用として、にぎわいの場のビジョンを示していくべきと考えますが、にぎわいの場の創出が判然としない状況では、ますます人口が流出するのではないかと思います。知事のお考えをお聞かせください。 また、上流錦町において、地役権設定の遊水地事業に関する説明会がありました。ここは、優良農地が広がる地区であり、多くの農地の担い手が営農にいそしんでおられますが、国土交通省からの事業説明に対して、質疑の中でも、営農に関する質疑が相次いだと聞き及んでおります。 この遊水地は、地役権設定ですから、営農継続してもよいだけでは理解は得られないでしょう。たばこ作が集積する肥沃な農地でありますから、今後対策が必要になると考えます。 また、遊水地を輪中堤で囲むとの説明に、共同活動でくま川鉄道の車窓から見える美しい田園風景を保ってきたと自負を持った農家の方々からは、失望したという声もありましたので、御紹介をいたします。 農地を維持して、農地の持つ防災面での多面的機能を発揮させているのは、農地の担い手である耕作者であり、地役権設定方式の遊水地であっても、耕作者への冠水被害への補償が示されず、営農に対する不安の質疑に答えていただける農政サイドからの出席もなく、農地の担い手は憤慨されております。これでは、あらゆる関係者が多層的に、重層的に関わる流域治水への理解が進まないと思います。 私たちは、令和2年豪雨を受けて、ダムの必要性のみならず、ダム以外でもできる対策を講ずるべきと決意をいたしました。その一つが遊水地であります。それであるならば、不安を払拭する、受け入れていただく環境整備を示すべきだと思います。 一番の不安は、堤防が破れはしませんでしたが、越流して、流木こそ入りませんでしたが、冠水したことであります。この事実を踏まえ、昨年8月に策定された球磨川及び支川の河川整備計画に基づいた堤防強化及び排水対策を示すことが重要だと思います。 素朴な疑問として、球磨川の高水敷を掘削してから遊水地の話をしてくれと言われます。私は、堤防の強化にもつながる堤防管理道路の2車線化についても過去に質問をいたしました。平時は物流道路であり、災害時は避難の道であります。 以上3点について、知事にお尋ねをいたします。 〔知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(蒲島郁夫君) まず、堆積土砂の有効活用についてお答えします。 球磨川流域の県管理河川においては、年間13万立方メートル程度の堆積土砂を撤去するなど、適切な管理を行い、河川の安全度を確保しています。 撤去した堆積土砂については、これまでの河川工事のみならず、住まいの再建に向けた宅地かさ上げや球磨村の被災住宅の移転促進事業の盛土材料として活用する予定です。 さらに、球磨地域の復旧、復興に必要なコンクリートの安定供給のため、昨年度から、人吉球磨砂利協同組合が、県の許可を得て、河川の掘削土砂をコンクリートの骨材として活用する新たな取組も進めています。 引き続き、国や流域市町村とも連携を図りながら、さらなる堆積土砂の有効活用に取り組んでまいりたいと思います。 次に、ダム上流域での森林伐採の在り方についてお答えします。 土砂災害が増えている現状については、昨今の気候変動による線状降水帯を伴う豪雨の増加がその要因の一つであると認識しています。 具体的には、激しい降雨により、樹木の根が届かない土壌の深い層まで雨水が浸透することで、大規模な崩壊が発生します。 また、議員御指摘のとおり、所有者の管理が行き届いていない森林や皆伐が増加していることも、山地の崩壊を防ぐ機能の低下につながります。 議員お尋ねの災害に強い森とは、適切な整備と保全、活用により健全に管理された、防災、減災に力を発揮する森林であると認識しています。 県では、間伐等の適切な整備を通じ、樹木の健全な成長を促し、森林の山地崩壊の防止機能を最大限に発揮できるよう取り組んでおり、これは、緑の流域治水の重要な取組の一つであります。 議員御提言のダム上流域での伐採の規制強化については、本県の人工林の約8割は利用期を迎えています。 そのため、県では、適切な利用を図るため、令和4年度に林地保全に配慮した林業のガイドラインを公表しています。 これにより、崩れやすい地形や地質を考慮した伐採や道づくり、皆伐後の適切な再造林を推進し、災害のリスクを低減させる森づくりを進めています。 今後は、ダム上流域も含め、崩壊の危険性から積極的に保全すべき場所を区分していく手法を検討し、関係者への普及を図ります。 また、このような場所については、森林所有者の理解を得ながら、林地保全に配慮しつつ、皆伐ではなく、部分的な伐採にとどめる択伐などの手法を推進し、災害に強い森づくりに取り組んでまいります。 最後に、遊水地の利活用及び受入れ環境整備についてお答えします。 球磨川流域の遊水地については、緑の流域治水の理念を踏まえ、昨年8月に国、県が策定した球磨川水系河川整備計画に基づき、整備が始まっています。 議員御指摘の球磨村渡地域の遊水地については、令和3年8月、事業者である国から地域の方々に対し、第1回目の説明がなされました。 その後、村では、その利活用について、村民の意見も踏まえ、遊水地公園を整備し、平常時は、野球やグラウンドゴルフ等のスポーツ振興の場としての活用を想定したまちづくり計画を策定されています。 また、現在、村では、渡小学校や特別養護老人ホーム千寿園跡地の利活用の基本計画策定にも着手され、遊水地を含め、それぞれの場所にどのような機能を持たせるのか、今後検討されると伺っています。 議員御指摘のとおり、球磨村は、災害を契機に人口減少が加速化しています。県としては、球磨川流域復興基金を活用するなど、引き続き、遊水地の活用も含め、村が描く復興まちづくりのビジョンの実現に向け、国、村と連携し、しっかりと後押ししてまいります。 次に、遊水地の受入れ環境整備についてお答えします。 議員御質問の錦町の遊水地計画については、本年6月、事業者である国により、第1回目の説明会が開催され、補償や地役権設定、農地の取扱いに関する質問などが出されたと聞いています。 なお、第2回目の説明会が昨日より開催されており、第1回目で出された質問にも可能な限り説明すると伺っています。 また、国の検討が進む中で、農業者の皆様が懸念されている課題、例えば遊水地になることによる営農への影響、収穫期に洪水が発生した場合の補償などについて、丁寧に説明がなされていくものと考えています。 県としても、説明会などに積極的に参加し、国や町と連携して事業の進捗が図られるよう対応してまいります。 遊水地をはじめ、緑の流域治水の取組を迅速かつ着実に進めるためには、流域住民の皆様の御理解、御協力が必要不可欠であります。 引き続き、国、県、流域市町村と一体となって、丁寧な説明を尽くし、命と環境の両立を目指す緑の流域治水の取組を全力で進めてまいります。 〔緒方勇二君登壇〕
◆(緒方勇二君) 御答弁をいただきました。 堆積土砂の有効活用については、今現在、年間13万立方メートルの撤去をするなど、適切な管理を行っていただいておるということでありました。 熱海の土石流災害を受けて規制強化に踏み出されたところであり、今定例会にも、市町村に対して、保全する区域の設定等の議案も上程されているところであります。 ますます規制が厳しくなり、土捨場の確保は難しくなり、適宜適切な土砂の処分については、利活用をもうちょっと広げておくことが非常に大事だろうというふうに思っております。 また、コンクリート骨材として利活用するということは、これはストーリー性のあることでありますから、ずっとこういうことを続けていただければなというふうに思っております。 ある意味、川の恵みであり、副産物でありますこの堆積土砂、公益的な活用をしっかりと広げていただきたいというふうに思います。 ダム上流域での森林伐採の在り方については、知事がおっしゃったように、まさに今後、ダム上流域も含め、崩壊の危険性から積極的に保全する場所を区分して、手法を検討し、森林所有者の理解を得ながら林地保全に配慮し、皆伐でなく、部分的な伐採にとどめる択伐の手法を推進し、災害に強い森づくりに取り組んでまいるということでありました。 まさに、あの緑の流域の根幹をなす森林の、私たちの新たな価値の創出でありますから、しっかりここを踏み行っていただきたいというふうに思っております。 遊水地の利活用についてですが、私、知事が流域治水を全国のモデルにすることを目指す上で、しっかり、私は、全国に広げていく上で、5年に1度なのか、10年に1度なのか、15年に1度遊水地が水につかるようなことは――もちろん、遊水地の役割ですから、そうでありますけれども、平時の活用が全国に流域治水の理念に基づく広がりが見えるんだろうと思います上から、しっかりここはにぎわいの創出の場をつくっていただきたいというふうに思っております。 特に、球磨村が、私は、人吉、球磨にとって表玄関ではないかなというふうに考えております。と申しますのも、国道219が強靱化され、対岸の県道が治水対策後の水位の高さによる強靱化が図られたならば、人吉インターにも近うございます。芦北インターにも近うございます。そして、沖鶴橋の架け替えに伴う工事用道路が県道人吉水俣線になれば、人吉インターに近くもなりますし、さらには、坂本パーキングがもしスマートインターチェンジになりますと、球磨村は4つのアクセスがしっかりと担保できるようになりますので、しっかりこれは――単に球磨村のためだけではなくて、人吉、球磨の表玄関、そして人吉が中座敷、そして奥球磨が奥座敷でありますから、しっかりここの表玄関は、表玄関にふさわしいやはりしつらえが必要だと思います上からの質問でありました。 どうぞしっかりそのことを踏まえた上で、球磨村に寄り添い、人口減少にも歯止めをかけていただきますようよろしくお願い申し上げ、次の質問に入らせていただきます。 幹線用水路の溢水対策についてお尋ねをいたします。 球磨南部地域を東西に流れ、農地約3,300ヘクタールに農業用水を届ける、世界かんがい施設遺産にも認定された幸野溝及び百太郎溝等の幹線用水路は、大雨時には山や集落内の排水を受ける排水路としての役割を担っています。 大雨が予想されるときには、管理者である土地改良区が、事前放流を行って水路の水を落としておくなど、水路の管理とともに治水能力の発揮にも尽力されております。 このように、流域治水に多大なる貢献をしている幸野溝と百太郎溝ですが、2つの問題があります。 1つ目は、水路への土砂の流入です。 幸野溝には、山からの排水によって大量の土砂が流入し、水路の流れを妨げています。その対策のモデルとして、土砂が大量に流出するあさぎり町内の渓流において、隣接する耕作放棄地に県で土砂対策の沈砂池を整備していただきました。 昨年の台風14号災害では、約500立米の土砂を受け止めることで幸野溝への土砂流入を防ぐことができ、溢水防止に効果を発揮したところであります。また、そのほかにも対策を検討いただいていることを承知しております。 もう一つの問題は、排水断面の不足であります。 幸野溝、百太郎溝の溢水対策については、過去に質問をいたしておりますが、その後、幹線用水路の基礎調査をされて、単純に水路の改修のみで溢水対策を行う場合、必要な幹線用水路断面が今の2倍必要との調査結果の報告を受けました。このため、現在、実現可能な対策の検討をされているものと思います。 ただし、幸野溝、百太郎溝の水路断面を大きくし、流下能力が増加すれば、県が管理する河川への負荷がかかるので、慎重に進めなければならないことも十分承知をしております。 このような中、農地の持つ多面的機能である貯水効果を発揮させ、内水被害を軽減する田んぼダムが全国で広がりを見せております。本県でも、田んぼダム実証実験事業に取り組まれており、一定の効果を確認して、今後は全県的に取組を拡大されるとのことです。 私は、平野部の既に貯留機能を有する農地では、田んぼダムの取組は有効な手段だと思います。例えば、佐賀平野では、既に2,200ヘクタールで取組面積が伸びているそうです。球磨郡の扇状地に広がる水田でも有効だと考えます。 一方で、球磨南部の水田地帯は、球磨川から一段上がった河岸段丘の上に広がっています。浅いところでは、地表から2メートルぐらい下に分厚い砂利層が存在します。この分厚い砂利層に雨水を浸透させれば、水路に流れ込む水の量を減らすことができ、内水被害を抑制できると考えます。 県では、球磨郡にあります南稜高校の実習水田において、地下の分厚い砂利層への浸透効果を期待した地下浸透ますを実証実験として設置していただいております。 透水型の下水道マンホールを設置していただいて、経過観察中の昨年、台風14号でも、水田から排水路に排水されることなく、全て地下浸透ますに浸透したと伺っております。もっと広く考えれば、地下の砂利層に浸透させることにより、河川への流出に時間差を与え、洪水防止にもつながると考えます。 そこで質問です。 このように、土砂流入や排水断面の不足という課題がある中、田んぼダムや地下浸透の活用、幸野溝や百太郎溝の改修をはじめとして、球磨地域における農地や農業水利施設等を活用し、短時間大雨時の内水氾濫対策を進めるべきだと思いますが、これに対して県はどのように考えているのか、
農林水産部長にお尋ねをいたします。 〔
農林水産部長千田真寿君登壇〕
◎
農林水産部長(千田真寿君) 幸野溝及び百太郎溝は、球磨南部地域の広大な農地を潤す幹線用水路であるとともに、降雨時には排水路としての機能も併せ持つ、地域の重要な農業水利施設です。 しかしながら、大雨時には、土砂の流入に伴う水路の閉塞や断面の不足により、溢水被害が発生している状況です。 このため、県では、幹線用水路の溢水対策として、排水機能の強化と土砂の流入防止について検討するとともに、沈砂池や球磨南部の砂利層の持つ地下浸透力の効果や課題について、検証を行ってきました。 あさぎり町一ノ木谷に整備したモデル沈砂池では、大雨時に山からの土砂を受け止め、幸野溝への流入の軽減に効果があったことが確認されました。 また、南稜高校の実習水田における雨水の地下浸透に関する検証では、相当の排水効果があることが確認された一方で、浸透ますの目詰まりの除去に要する労力や下流域の農地での利水や生活に使用されている地下水への影響などについて、慎重に考える必要があるとの専門家からの指摘がありました。 溢水対策の実施に当たっては、こうした検証結果を踏まえた幹線用水路の整備計画の策定が必要です。 まず、排水機能の強化については、水路に宅地や道路が近接し、拡幅には限界があることから、水路の流量を調整するための放水路や調整池を組み合わせた整備が考えられます。 なお、地下浸透による排水については、専門家の指摘も踏まえ、活用を検討してまいります。 次に、土砂の流入防止については、これまでに流入が確認された箇所において、想定される流入量を基に、堆積する土砂の撤去に要する労力を考慮した沈砂池の位置や規模の検討が必要です。 なお、田んぼダムについては、水田が雨水を貯留することで水路へ流れ込む排水量のピークカット効果が確認されており、今後も、球磨南部地域において普及拡大を図ってまいります。 流域全体での総合力で安全、安心を実現する緑の流域治水の理念の下、市町村、土地改良区と連携して、農地及び農業水利施設等を積極的に活用し、幹線用水路の溢水対策にしっかり取り組んでまいります。 〔緒方勇二君登壇〕
◆(緒方勇二君) 専門家の指摘も踏まえて活用を検討してまいるというような答弁でございました。 私、攻めの農林水産業を継承された部長の答弁とは思えません。総合力で治水に向かわなければなりませんのに、残念でたまりません。専門家が言われる意味が私には理解できません。 地下水を汚濁、汚染することを懸念されるのであれば、今日までの農地に対する過剰な施肥や過剰な堆肥散布による飲めなくなった浅井戸の水質を問題視しなければなりません。 地下の砂利層は、自然のろ過装置であります。溢水を地下に浸透させることは、希釈につながり、地下水保全になると考えます。取り返しのつかないような水質汚濁、汚染であるはずもありません。白川中流域の台地での積極的な地下水保全の取組との違いに、違和感を覚える答弁でした。 そもそも昔は、この幹線用水路は漏水対策が施されておらず、幹線用水路の水は地下に浸透して、末端まで用水が届きませんでした。このことが、逆に大雨時の溢水対策になっていたと思うのであります。 この球磨南部の幹線水路での土砂を伴う溢水問題が顕在化したのは5年前です。地下浸透施設整備が実施されれば、治水効果を発揮する、地形を利用したまさに地下ダムと呼べるものと考えておりますので、多層的、重層的な治水対策の一つとして、内水氾濫箇所での整備をお願いいたしまして、次の質問に入ります。 地域に貢献する再エネ導入について。 私は、命と環境を守る緑の流域治水の実現には、流域の特性を理解して、持続可能な地域づくりに多層的、重層的に取り組むことが必要との考えから、これまでも、様々な観点から質問してまいりました。今回は、地域に貢献する再エネ導入についてお尋ねをいたします。 球磨川の流域面積の90%は森林です。流域治水として、健全な森林整備、すなわち災害に強い森林の整備が急がれることは言うまでもないことであります。 健全な森林は、木材の生産の場であり、水源を涵養し、土壌を保全し、土砂災害を防ぎ、生物多様性を保全するなどの機能を発揮します。また、大気の浄化など、快適な環境をつくり、二酸化炭素を吸収、固定して、地球温暖化を防止する大切な役割を持ちます。そして、森林は、発電や熱利用に使われる木質バイオマス、森林が涵養する水力、山の稜線が生み出す風力など、再エネのまさに宝庫であります。 森林が多くを占める人吉・球磨地域だからこそ、有効に活用し得るエネルギーとしての、特に導入ポテンシャルが大きいとされる風力発電を中心に、積極的に導入を進めるべきと考えます。 一方で、再エネ施設の事業計画をめぐっては、特に森林に太陽光パネルが設置される場合など、土砂災害や景観、環境への悪影響等への懸念から、住民の反発が強まるケースが全国各地で報告されております。 こうした状況から、宮城県では、今年の7月、一定の面積以上の森林を開発して再エネ施設を設ける事業者に課税するための条例が、全会一致で可決、成立したと承知をしております。 国土が狭く、平地が少ない我が国においては、再エネの最大限の導入と環境保全の両立に向けた取組が不可欠であります。 私は、森林が有する再エネのポテンシャルを理解した上で、自然環境や生活環境への適切な配慮を行い、地域住民の懸念を払拭し、地域に受け入れられ、地域とともに発展する地域共生型の再エネ施設を導入していくことこそが重要ではないかと考えております。 例えば、山形県鶴岡市では、風力発電事業により整備された林道を活用し、自然体験ツアーの実施など、林業と再エネ事業の連携が図られています。また、高知県大月町では、風力発電所建設工事や保守管理での地元雇用や観光協会等の協働による風車見学ツアーや土産物開発など、地域とのパートナーシップの構築が図られています。 人吉・球磨地域においても、例えば風力発電事業者が売電益の一部を活用して林道整備を行うなど、再エネ発電を契機に森林整備を促進することで、エネルギーの地産地消はもとより、健全な森林の維持、そして災害時の多重性確保など、災害に強い森づくりにつなげることができるのではないでしょうか。 そのためには、地域と連携して、地域の課題を解決し、地域から認められる事業者を人吉・球磨地域に呼び込み、地域共生型の再エネ施設の先進事例を創出していくことが必要ではないでしょうか。 県では、これまで、再エネ適地誘導のための立地ゾーニングに取り組んでこられたものと承知をしておりますが、今後、具体的にどのように地域共生型再エネ施設を導入していくお考えなのか、
商工労働部長にお尋ねをいたします。 〔
商工労働部長三輪孝之君登壇〕
◎
商工労働部長(三輪孝之君) 国においては、地域共生型再エネ施設の導入に向けて、地球温暖化対策推進法に基づく地域脱炭素化促進事業制度を昨年度創設しています。 これは、市町村が主体となり、再エネ促進区域を設定し、区域内で再エネ事業者に求める環境保全と地域貢献の取組を、自ら策定する実行計画に位置づけ、これに適合する再エネ事業者の事業計画を認定するものです。 地域に貢献する再エネ施設の誘致につながるもので、議員御紹介の再エネ発電を契機とした森林の整備も期待されます。 本県においても、第2次熊本県総合エネルギー計画の重点的取組に「すべての県民に愛される再エネ施設」を掲げ、地域共生型再エネ施設の導入を進めています。 本県では、先ほど述べました国の制度が、市町村に最大限に活用され、地域共生型再エネ施設の導入につながるよう、地域住民の方々とも連携して、陸上風力発電と太陽光発電を対象に、ゾーニング調査を実施してまいりました。 これは、再エネ発電の導入を進めるエリアと自然環境を保全すべきエリアなどを区分するものでございます。 人吉・球磨地域では、昨年度、陸上風力発電について、地区の代表者、商工団体、森林組合などと県で意見交換や協議を行い、ゾーニングの内容や再エネ事業者に求める地域貢献策について、具体的な検討を行ったところです。 また、球磨村とあさぎり町が環境省の脱炭素先行地域に選定されるなど、人吉・球磨地域は脱炭素の機運が高く、再エネ促進区域の設定について、具体的な検討に着手する自治体もあると聞いています。 今年度は、これまでの検討を基に、陸上風力発電と太陽光発電について、市町村による再エネ促進区域の設定に関する本県の環境配慮基準を作成しました。今定例会の海の再生及び環境対策特別委員会で報告させていただくこととしています。 引き続き、市町村による区域設定の検討に積極的に参画するなど、地域住民の方々の御意見を尊重しながら、地域共生型再エネ施設の導入に積極的に取り組んでまいります。 〔緒方勇二君登壇〕
◆(緒方勇二君) 答弁をいただきました。 人吉、球磨は、本当に脱炭素の機運が高い、そういう意味でも地域共生型の再エネの導入が望まれるところであろうと思います。これもまた、山の価値のアップデートでありまして、山の価値の新たな創出だというふうに思っております。 エネルギーの地産地消で言えば、球磨郡でもバイオマス発電所が稼働を始めます。また、当初貯水型で水力発電を計画された川辺川ダムに向かう送電鉄塔が使われているのか使われていないのか分かりませんが、川辺川右岸に存在いたします。これを有効活用できれば、風力発電の導入が促進できるものになると思いますし、何より地域共生型の再エネ導入により、健全な森林整備、すなわち災害に強い森林整備が促進されることにより、緑の流域治水の理念に沿うことになることを申し上げ、次の質問に入ります。 緑の流域治水の出口戦略としての木材利用促進についてお尋ねをいたします。 岸田総理から、国民病である花粉症克服のため、10年後に杉人工林を2割減少が示されましたが、伐採された山に高い補助率をつけても再
造林率が30%にとどまる現状にあって、にわかに信じ難い記者会見での発表でありました。私は、花粉症対策には林業政策転換が必要であると考えております。 さて、令和2年7月豪雨から3年余りが経過する今、被災地での復旧、復興が関係者の努力により着実に前進しております。さらに、緑の流域治水の理念を具現化するべく、土木、農業、森林など、それぞれの分野で具体的で有効な施策、事業を展開していく段階に入ってきたと感じております。 特に、森林の分野では、森林の持つ多面的機能、例えば土壌崩壊防止機能など最大限発揮できるよう、間伐を中心とした森林整備や伐採後の確実な再造林の実施などが重要であります。 加えて、森林資源の循環利用、すなわち、切って、使って、植えて、育てるという一連の施業が切れ目なく行われることも重要であります。 しかしながら、使うという木材の利活用に関する現状は、一昨年のウッドショック時に比べ、丸太及び製品の価格は下落傾向にあり、また、新設の住宅着工戸数も伸び悩むなど、厳しい状況が続いています。 緑の流域治水を推進する上で、今こそ県は、出口戦略として木材利用促進策を明確に打ち出す必要があると思います。 振り返りますと、住宅分野では、地域工務店が主体となり、施主の皆さんを山林や製材所の現場に案内する顔の見える家づくりの活動が、県の側面支援の下、各地域で展開されてきました。 また、県産木造住宅のPRや需要喚起を目的とした県産材提供事業が、熊本県木材協会連合会との連携により、20年にわたり実施されています。 一方、非住宅分野では、公共建築物が中心になりますが、中大規模施設の木造化、木質化について、知事を筆頭に全庁挙げて取り組まれてきた結果、県内にもすばらしい建築物が完成しております。 住宅、非住宅を問わず、木材を使った建築物は、私たちの生活空間に安らぎを与え、脱炭素社会の実現に寄与するなど、他の建築資材にはない多くの特徴を有しています。 その際、木造を選択した施主や建築士の皆さんが、木材のよさを体感するにとどまらず、林業や木材産業に従事する人々、さらには、森林の持つ役割や緑の流域治水の理念に思いをはせられることを願うばかりであります。 私は、従来から続くこれらの施業や事業に加え、今後、県産材の大口需要が期待される領域を焦点に必要な施策を講じていくことが、出口戦略として重要だと思っております。 具体的には、米松をはじめ、輸入材が主流となっている分野で、県産材の利活用頻度を高めていく対策が必要だと考えます。 例えば、林野庁の資料によれば、木造軸組住宅ではりや桁として利用される横架材は、その大半が輸入材です。また、中大規模施設では、構造計算が必須であるため、強度の高い輸入材が横架材などで多く利用されております。 これら輸入材主流の領域において県産材が利用されるには、JAS認証材の安定供給体制の構築が不可欠だと言われております。 また、森林資源が成熟し、強度の高い大径材が多く出材されていますが、その利活用も輸入材への対抗措置として有効だと思います。 そこで、1点目の質問です。 出口戦略として、今後、どのようにJAS認証材の生産、流通を促進し、県産材の利用拡大につなげていくのか、お尋ねいたします。 2点目に、大径材が抱える課題及びその解決に向けた対策をどのように考えているのか、お尋ねをいたします。 次に、令和3年10月に、公共や民間の建築物への利用促進等を目指す、通称都市(まち)の木造化推進法が施行され、併せて建築物木材利用促進協定制度が創設されました。 本県でも、去る8月10日に、制度創設以来初めてとなる協定が3件締結され、新聞報道等を通じて広く県民に周知をされたところです。 私も、協定締結者の一つである熊本県木材協会連合会の顧問であり、今回の協定内容及び今後の取組については、高い関心を持っております。 そこで、3点目として、全国的にも広がりを見せている新たな協定制度について、県が期待すること及び今後の協定締結の促進策について質問いたします。 以上3点、
農林水産部長にお尋ねをいたします。 〔
農林水産部長千田真寿君登壇〕
◎
農林水産部長(千田真寿君) まず、1点目のJAS認証材の生産、流通による県産材の利用拡大についてお答えします。 木造住宅において、はりや桁等の横架材には、高い強度を持つ米松や輸入集成材が多く利用されています。 コンクリート造や鉄骨造が主流の中大規模建築物では、建築基準法の改正や耐震性、耐火性に優れた新たな木材製品の開発などを背景に、木造を選択される事例が増えてきています。 木造住宅における横架材への利用拡大や中大規模建築物の木造化を促進するためには、確かな品質と性能を有し、強度が明確なJAS認証材を安定的に供給していくことが不可欠です。 しかしながら、供給側からは、JAS認証の取得に手間がかかることや非認証材に比べ生産コストが高くなる一方、認証取得による価格面や需要面でのメリットが乏しいとの意見を伺っており、認証材の供給量は低位にとどまっています。 このため、県では、認証工場に必要な木材強度測定機の導入を支援するほか、建築士や工務店等に対して、認証材利用の働きかけや、製材工場や木材市場等25社が一致団結して設立されたくまもと県産材SCM協同組合の活動支援を通じて、供給可能な認証材の種類や規格、価格等の情報発信を行い、認証材の需要を拡大してまいります。 次に、2点目の大径材が抱える課題及びその対策についてお答えします。 森林資源の成熟化に伴い、原木市場には多くの大径材が出荷されるようになりました。大径材は、直径が大きくなるほど強度が高まる傾向にあり、大きな断面での製材が可能であることから、輸入材に代わり、横架材への活用が見込まれています。 しかしながら、製材できる加工施設が少ないことに加え、製材後に木材が反りやすくなるほか、人工乾燥の方法が確立されていないことなど、設備面や技術面で課題を抱えています。 このため、国庫補助事業の活用により、大径材が製材できる加工施設の整備を促進するとともに、反り対策や乾燥技術を確立するため、国や他県の研究機関との連携を強化し、それぞれの課題解決に取り組んでいます。 最後に、3点目の建築物木材利用促進協定制度についてお答えします。 都市(まち)の木造化推進法の施行後、全国で数多くの協定が締結されています。 本県でも、今年8月10日、知事出席の下、民間建築物への県産材の利用促進を目的として、3件の協定を締結しました。 これらの協定に基づき、品質や性能の確かな県産材の利用が拡大されるとともに、2050年の県内CO2排出実質ゼロの実現に貢献することを期待しています。 県におきましては、社会的評価や認知度の向上など、協定制度のメリットを広く普及することで協定締結を増やし、県産材の一層の利用拡大、さらには、切って、使って、植えて、育てるという森林資源の循環利用につなげてまいります。 〔緒方勇二君登壇〕
◆(緒方勇二君) JAS認証材を安定的に供給していくことが不可欠であり、認証工場に必要な木材強度測定機の導入を支援する、大径材が製材できる加工施設の整備を促進すると答弁いただきました。 私は、成熟した森林資源の良材であるこの大きな大径材が駄木と呼ばれ、低価格で原木市場で取引をされるさまは、まさに忍びなく、切ないものであります。 機械等級区分のヤング係数――強度を表しますけれども外材と遜色なく、強度の関係で外材が使われている構造用部材の領域で県産材が採用されるように促していくことが大事であります。 また、大工さんなどの技能者の高齢化と人材不足は深刻であり、育成にもつながり、木の文化を育むことは、木材輸入自由化により廃れた山の文化の再生、山の新たな価値の創出につながることを申し上げ、次の質問に入ります。 ドローンによる物資輸送の推進についてお尋ねをいたします。 国では、国土形成計画を8年ぶりに策定され、人口減少に直面する中、10万人規模を目安として、デジタル技術とリアルが融合した地域生活圏の構想が打ち出されました。 人口減少で地域の存続も危ぶまれる一方、コロナ禍を経て地方での暮らし方を見直す動きもあっての地域生活圏構想であり、市町村の垣根を越えて、自動運転、ドローンによる物流、遠隔医療、オンライン教育、行政手続のオンライン化などのサービスを受けられるようにするとのことです。 これまでは30万人規模の目安でありましたが、人口減少が加速して、デジタルを活用して10万人規模でも生活の潤いや魅力を高めていけるとされています。 人吉、球磨は、ちょうど10万人規模の目安に当てはまる地域生活圏でもあります。令和2年7月豪雨では、多くの孤立集落が発生しました。道路も寸断されて、人海戦術で道なき道を分け入り、集落に支援物資を届けていただきました。 支援物資が届き、被災状況が把握されれば、災対本部では、孤立集落解消にカウントされるとのことであり、私は、あのときに、平時からドローンによる物資輸送があれば、被災状況把握と支援物資を届けることが容易にできるものであると考えておりました。 そのような中、本年の記録的大雨による被害が出た大分県由布市では、県が大規模な地滑りで孤立した住民に大型ドローンで救援物資を届けていたことを報道により知りました。大分県は、全国でも有数のドローン産業振興県であり、輸送実験が活発な県であり、災害時に生きたものと言えるでしょう。 そこで、人吉・球磨地域で創造的復興を進める中で、誰しもが住み慣れた地域で安心して暮らしていける地域生活圏の維持を図るため、ドローンによる物資輸送を推進していくべきだと考えますが、県としてはどのようにお考えなのか、
企画振興部長にお尋ねをいたします。 〔
企画振興部長富永隼行君登壇〕
◎
企画振興部長(富永隼行君) 人吉・球磨地域の急峻な地形や河川流域に広がる集落の多さなど地域の特性を踏まえると、ドローンによる物資輸送の導入効果は高いと思っております。 また、議員御指摘のとおり、災害発生時におけるドローンの活用は、被災状況の把握や支援物資の輸送等に高い効果が期待されます。 本県では、こうしたドローンの高いポテンシャルを踏まえ、令和2年11月に、熊本県ドローン産業推進協議会と包括連携協定を締結し、災害時における被害状況調査をはじめ、ドローン関連の人材育成や普及啓発等に取り組んでおります。 また、これまで、地域課題の解決に向けて、ドローンを含むICT技術等の活用に取り組む市町村に支援を行っており、芦北町では、災害時の物資輸送用ドローンの整備や操作研修会に取り組まれております。 一方、県外では、日用品や一般用医薬品等の買物が困難な地域の課題解決に向けて、ドローンを活用した実証実験等の取組も行われています。 県としては、まずは、こうしたドローンを活用した物資輸送などの優良事例を市町村に情報提供するなど、地域の実情に応じた取組を支援し、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けていけるまちづくりに取り組んでまいります。 〔緒方勇二君登壇〕
◆(緒方勇二君) 熊本県ドローン産業推進協議会と包括連携協定を締結し、ドローン関連の人材育成等に取り組んでいると、また、ICT技術等の活用に取り組む市町村を支援してまいりますと、また、物資輸送の取組などを支援し、誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるまちづくりに取り組んでまいる等の答弁でありました。 物流となりますと、商業ベースでの話になり、合う合わないの話になりますが、国では、空の道は河川上空を想定しているとも聞いております。まさに球磨川や川辺川の上空がその道に当たるのではないかというふうに思います。 球磨村は、生活支援も視野に入れた森林サービス産業の創出事業に採択されています。球磨川、川辺川の河川上空を行き交うドローンを想像してみてください。誰しもが、どこにいても便益を享受できる社会になると思います。まさに生活支援であります。 以上で本日用意しました一般質問は終わりますが、過日、南阿蘇の震災ミュージアムのKIOKUに総務常任委員会で視察に行きましたら、阿蘇の雄大な自然に溶け込む名建築が誕生しておりました。そこに、知事が提唱された創造的復興の3原則が掲げてありました。1つに、被災者の痛みの最小化を図る、2つに、単に元に復するだけでなく、創造的復興を図る、3つに、創造的復興を熊本のさらなる発展につなげるとありました。 豪雨災害からの創造的復興は、まさに緒に就いたばかりであります。グリーンニューディール政策を知事は一生懸命に訴えられます。冒頭申し上げました球磨川の総合開発であり、持続可能な緑の流域治水であろうと思うのであります。 知事、引退は早うございますことを申し上げまして、一般質問を終わります。 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)
○議長(渕上陽一君) 以上で通告されました一般質問は全部終了いたしました。 これをもって一般質問を終結いたします。 ――――――○――――――
△日程第2 議案等に対する質疑(第1号から第34号まで)
○議長(渕上陽一君) 次に、日程第2、目下議題となっております議案第1号から第34号まで等に対する質疑を行いますが、ただいままで通告はありません。よって、質疑なしと認めます。 ――――――○――――――
知事提出議案の上程(第55号)
○議長(渕上陽一君) 次に、お諮りいたします。
知事提出議案第55号が提出されましたので、この際、これを日程に追加し、議題といたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(渕上陽一君) 御異議なしと認めます。よって、
知事提出議案第55号を日程に追加し、議題とすることに決定いたしました。
知事提出議案第55号を議題といたします。 ――――――――――――――――― 第55号 令和5年度熊本県一般会計補正予算(第4号) ―――――――――――――――――
○議長(渕上陽一君) 次に、ただいま議題といたしました議案に対する知事の説明を求めます。 知事蒲島郁夫君。 〔知事蒲島郁夫君登壇〕
◎知事(蒲島郁夫君) 本日追加提案しました議案について御説明申し上げます。 まず、一般会計補正予算は、豚熱対策の強化や赤潮被害等を受けた養殖業者への支援に要する経費など、18億円を計上しています。 これにより、一般会計は、冒頭提案分と合わせて270億円の増額補正となり、補正後の一般会計予算額は9,505億円となります。 このほか、本日は、人事案件についても併せて提案しております。 これらの議案について、よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。
○議長(渕上陽一君) 次に、ただいま議題といたしました議案第55号に対する質疑を行いますが、ただいままで通告はありません。よって、質疑なしと認めます。 ――――――○――――――
△日程第3
知事提出議案の
委員会付託(第1号から第34号まで及び第55号)
○議長(渕上陽一君) 次に、日程第3、目下議題となっております議案第1号から第34号までにつきましては、さきに配付の令和5年9月熊本県議会定例会議案各委員会別一覧表のとおり、議案第55号につきましては、さきに配付の同一覧表(追号)のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託して審査することといたします。 〔各委員会別一覧表は付録に掲載〕 ――――――○――――――
△日程第4 請願の
委員会付託
○議長(渕上陽一君) 次に、日程第4、今期定例会において受理いたしました請願は、議席に配付の請願文書表のとおりであります。 これを所管の常任委員会に付託して審査することといたします。 〔請願文書表は付録に掲載〕 ――――――○――――――
知事提出議案の上程(第56号)
○議長(渕上陽一君) 次に、お諮りいたします。
知事提出議案第56号が提出されましたので、この際、これを日程に追加し、議題といたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(渕上陽一君) 御異議なしと認めます。よって、
知事提出議案第56号を日程に追加し、議題とすることに決定いたしました。
知事提出議案第56号を議題といたします。 ――――――――――――――――― 第56号 教育委員会委員の任命について ―――――――――――――――――
○議長(渕上陽一君) お諮りいたします。 ただいま議題といたしました議案に対する提出者の説明は省略いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(渕上陽一君) 御異議なしと認めます。よって、そのように取り計らうことに決定いたしました。 ――――――○――――――
△日程第5 休会の件
○議長(渕上陽一君) 次に、日程第5、休会の件を議題といたします。 お諮りいたします。 明28日は、議案調査のため、29日は、各特別委員会開会のため、10月2日から4日までは、各常任委員会開会のため、5日は、議事整理のため、それぞれ休会いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(渕上陽一君) 御異議なしと認めます。よって、明28日、29日及び10月2日から5日までは休会することに決定いたしました。 なお、30日及び10月1日は、県の休日のため、休会であります。 ――――――○――――――
○議長(渕上陽一君) 以上で本日の日程は全部終了いたしました。 次の会議は、来る10月6日午前10時から開きます。 日程は、議席に配付の議事日程第8号のとおりといたします。 本日は、これをもって散会いたします。 午後2時11分散会...