昭和59年12月
定例会┌──────────────────┐│ 第 二 号(十二月十一日) │└──────────────────┘ 昭 和 五十九年
熊本県議会十二月
定例会会議録 第二号──────────────────────────昭和五十九年十二月十一日(火曜日
) ―――――――――――――――――――― 議事日程 第二号 昭和五十九年十二月十一日(火曜日)午前十時開議 第一
代表質問(議案に対する質疑並びに県の
一般事務について) ――――――――――――――――――――本日の会議に付した事件 日程第一
代表質問(議案に対する質疑並びに県の
一般事務について
) ―――――――○―――――――出席議員(五十四名) 前 畑 淳 治 君 野 田 将 晴 君 荒 木 詔 之 君 島 田 幸 弘 君 島 津 勇 典 君 大 西 靖 一 君 倉 重 剛 君 山 本 靖 君 中 島 絹 子 君 中 島 隆 利 君 小早川 宗一郎 君 三 浦 哲 君 藤 川 俊 夫 君 花 籠 幸 一 君 舟 津 正 光 君 西 岡 勝 成 君 阿曽田 清 君 橋 本 太 郎 君 三 角 保 之 君 岩 永 米 人 君 堀 内 常 人 君 永 田 健 三 君 山 本 秀 久 君 深 水 吉 彦 君 八 浪 知 行 君 杉 森 猛 夫 君 鏡 昭 二 君 髙 田 昭二郎 君 大 森 豊 君 魚 住 汎 英 君 柴 田 徳 義 君 林 田 幸 治 君 広 瀬 博 美 君 馬 場 三 則 君 木 村 健 一 君 平 川 和 人 君 北 里 達之助 君 金 子 康 男 君 米 原 賢 士 君 井 上 龍 生 君 久 保 一 明 君 永 田 悦 雄 君 宮 元 玄次郎 君 甲 斐 孝 行 君 今 井 洸 君 八 木 繁 尚 君 幸 山 繁 信 君 池 田 定 行 君 小 材 学 君 岩 崎 六 郎 君 水 田 伸 三 君 今 村 来 君 小 谷 久爾夫 君 酒 井 善 為 君欠席議員(一名) 古 閑 一 夫 君 ――
―――――○―――――――説明のため出席した者 知事 細 川 護 熙 君 副知事 藤 本 伸 哉 君 出納長 山 内 新 君
総務部長 蓼 沼 朗 寿 君
企画開発部長 田 谷 廣 明 君
福祉生活部長 松 村 敏 人 君
衛生部長 清 田 幸 雄 君
公害部長 田 嶋 喜 一 君
商工観光労働 部長 道 越 温 君
農政部長 田 代 静 治 君
林務水産部長 古 閑 忠 治 君
土木部長 福 島 正 三 君
公営企業管理者 大 塚 由 成 君
教育委員会 委員長 本 田 不二郎 君 教育長 伴 正 善 君
警察本部長 浅 野 信二郎 君
人事委員会 事務局長 樋 口 清 一 君
監査委員 北 川 信 俊 君 ――
――――――――――――――――――事務局職員出席者 事務局長 衛 藤 成一郎
事務局次長 錦 戸 十三夫
議事課長 小 池 敏 之
議事課長補佐 岩 井 祐二郎
調査課長補佐 兼
議事課長補佐 山 下 勝 朗 ――
―――――○――――――― 午前十時四分開議
○議長(小材学君) これより本日の会議を開きます。 ――
―――――○―――――――
△日程第一
代表質問
○議長(小材学君) 日程に従いまして日程第一、
代表質問を行います。発言の通告があっておりますので、これより順次質問を許します。 なお、質問時間は一人九十分以内の質疑応答でありますので、さよう御承知願います。
自由民主党代表甲斐孝行君。 〔
甲斐孝行君登壇〕(拍手)
◆(
甲斐孝行君)
自由民主党の
甲斐孝行でございます。党を代表して久方ぶりの質問でありますが、よろしくお願いを申し上げます。 ことしも余すところ二十日余り、慌ただしい年末を迎えましたが、政府・国においては、例年のように新年度の
予算編成に向けて始動が始まっております。県においては、本定例会は六十年度当初
予算編成あるいは政策に反映させていただくよい機会でもありますので、どうか知事の明快なる御答弁を期待してやみません。 知事は、就任以来、すぐれた識見と若々しい行動力で、
地域経済の活性化あるいは新しい特色ある
地域文化の創造といった今日的課題に意欲的に取り組んでこられました。私は、知事の就任以来の所信表明や
議会答弁等を一通り目を通してみました。
テクノポリス、
ニューメディアコミュニティーセンターの指定、積極的な
企業誘致、緑の三倍増計画、県産品の
販路拡大等々答弁された事柄はまさに言行一致、すべてが実現し、県政も大きく前進しておると思います。そして今や、県内各地で、また県民各層の間において、さまざまな方面における進取の機運が高まってきており、大変頼もしく思う次第でございます。 さて、知事は先般、
県政運営の指針である「熊本・明日への
シナリオ」を公表され、今後十年間にわたって精力的に取り組むべき課題を提示されました。
自由民主党としては、この
シナリオを基礎として繰り広げられる
各種施策の着実な展開を支持し、期待するものであります。そこで、我が党といたしましても昭和六十年度が
シナリオの実質的な初年度に当たるということで、去る十一月九日、知事に対し、
県政推進に当たっての
基本的事項について幾つかの御要望を申し上げたところであります。私は、冒頭にこれらの点につきまして知事の所信をお伺いしたいと思います。 まず初めに、来年度の
地方財政対策についてお伺いをします。 国、地方を通ずる
財政危機という状況のもとで、
本県財政も近年とみにその厳しさを増しており、
国庫補助金や
地方交付税などの財源の確保が喫緊の課題となってきております。先ほども申しましたとおり、昭和六十年度は
県政運営の指針である「熊本・明日への
シナリオ」の実質的な初年度に当たりますが、この
シナリオに示されました諸施策の円滑な推進を図りますためには何よりも財源の確保がその基本となってくると言わざるを得ないのであります。 ところが、昭和六十年度の国の
予算編成に当たりましては、聞くところによりますと、国が
国庫補助負担金の
整理合理化の方策として、
生活保護費、
補助金等の
高率補助に係る
国庫補助負担率の一律引き下げや
直轄事業負担率の見直しなどにより、国の
財政負担を軽減し、
地方公共団体への負担の転嫁を図るというようなことが検討されておるようであります。このような単なる地方への転嫁は何ら行革に資するものではなく、ただ、国と地方との間の
財政秩序を乱すのみであり、到底受け入れることができるものではありませんが、万一これが現実に実施されることとなった場合には極めてゆゆしき問題であります。 このような大変厳しい状況のもとではありますが、
シナリオに示された諸施策の推進を図るための財源をどう確保していかれるのか、また国からの一方的な
負担転嫁に対してどのように対処されるおつもりか、知事のお考えをお尋ねする次第であります。 次に、
行政改革の推進についてお伺いをいたします。 我が国の
経済社会情勢は現在大きな転換期に直面しており、国、地方を通じて行財政のあり方を抜本的に見直し、簡素にして効率的な行政を確保することが緊要な課題となっておることは御案内のとおりでございます。このような状況のもとで、国における
行政改革については、
臨時行政調査会の答申、新
行政改革大綱等に基づき
行政改革関連法等の成立を見るなどその推進が図られているところであります。 本県におきましても、昭和五十八年六月に民間の
各界代表者から成る
行政改革審議会が設置され、同年十一月に第一次
中間報告、本年六月には第二次
中間報告がなされ、
行政サービスのあり方を初め
行政機能の
活性化方策や
事務事業の
改善合理化等について数多くの提言がなされております。県ではこれらの提言について、直ちに実行できるものについては既に実施に移すなど
行政運営の改善に積極的に取り組んでおられることは十分承知しているつもりでありますが、当面する行財政の現状を直視するとき、今後とも
行政改革のより一層の推進を図る必要があると考えるものであります。 我々といたしましては、県民に対する
サービスの向上、充実を基本としつつ、地域の実情にも十分な配慮を行いながら実のある
行政改革を進めていただきたいと考えるわけでありますが、この点について知事の御所見を伺いたいと存じます。 三番目に、「
くまもと日本一づくり運動」の推進についてお伺いをいたします。 今日の厳しい
財政状況の中で、それぞれの地域が
地域間競争に勝ち抜き二十一世紀に向けて発展していくためには、創意と工夫を凝らした
地域づくりがどうしても不可欠であり、この点、知事が提唱しておられる「
くまもと日本一づくり運動」はまことに時宜を得たものとして賛意を表するものであります。 先般、県におかれては、副知事を本部長とする
くまもと日本一づくり運動推進本部を設置され、全庁的な
取り組みをスタートさせられたところと聞いておりますが、今後この運動の力強い推進を期待しておるわけでございます。しかし、このような運動が所期の目的を上げることができるかどうかは、市町村を初め各地域の住民の方々が知事と同様な認識に立って自発的にこの課題に取り組むことができるかどうかにかかっておると言っても過言ではないのであります。
日本一づくり運動の積極的な推進のため、どのような方策を考えておられるのか、この点について知事の所見を伺いたいと思います。 最後に、県土の均衡ある発展と
過疎対策についてお伺いをいたします。 知事は、かねがね力強い熊本をつくるための
基盤づくりを目指し、
農林水産業の振興を初め
生活環境の整備、
教育文化施設の整備、また、
企業誘致による雇用の増大あるいは地域の特色を生かした諸振興策を推進するなど、バランスのとれた
地域発展に意を注ぎ、県土の均衡ある発展を図ると言っておられます。まことに同感、意を強くするものであります。しかし、大きな過疎地を抱えている本県の場合、県土の均衡ある発展を図るということは、よほど年月をかけ強力な施策を講じなければ、言うべくして極めて難しい課題ではないかと思われます。 本県は、過疎の比率が極めて高く、
過疎市町村は全国で第九位、その面積は六三%に及んでおりますし、
過疎地域の振興は全県的最重要課題と言っても過言ではありません。現在着々と進行している
テクノポリス建設や
企業誘致は、知事の積極的な
取り組みと、極めて的確、すぐれた施策、対応と、県民の理解ある協力により、必ず成功し、県勢も大きく伸展することは疑いありませんが、さて、過疎地に及ぼす波及効果はどうだろうかと見るとき、過疎地の地理的、経済的諸条件等に制約されて余り期待はかけられないのではないかと思います。それに過疎地は、
公共事業、
生活環境の整備、
農業生産基盤整備のおくれに加えて、
基幹産業である
農林漁業情勢の厳しさ等から、
地域経済も停滞し、他地域との格差は依然として縮まっていないのが現状であります。
過疎対策については、長年にわたり法に基づくほか、もろもろの対策を講ぜられ、相当の成果をおさめたものと評価はしておりますが、最近の傾向として、
過疎対策の予算も減り続け、行革に伴う出先機関の整理統合が俎上に上るなど過疎地の悩みは深刻で、人口の減少こそ鈍りはしましたものの、過疎化は依然として進行しております。しかも若年層の定住化あるいは老齢化の進展など新たな問題が提起されております。しかし、
過疎地域には、都市に見られない
地域特有の美しい自然、香り高い文化、風土など魅力あふれる可能性を秘めた大いなる遺産がたくさん存在しております。今日、
地域間競争の中にあって、これらを生かした
地域づくりの
取り組みこそが、これからの
過疎地域の振興に大きな役割を果たすものと思っております。 幸い、産業興しや
観光開発をベースにした都市との交流など地域の活性化のための試みが行われるなど、
地域住民の自助努力による地域の盛り上がりの芽が育ちつつあることはまことに喜ばしいことであります。今提唱されております
日本一づくり運動も
地域住民の英知と力を醸成するものではなかろうかと思っております。 先刻も申しましたように、本県の大半を占めるこの
過疎地域の振興は、県土の均衡ある発展の上からも避けて通れない重要な課題であります。そこで、知事には積極的に思い切った対策を講じていただきたいのでありますが、県土の均衡ある発展との関連におきまして、今後の
過疎地域振興対策をどのように考えておられるのか、その基本的な
取り組みについてお尋ねをいたします。 御答弁をまちまして再登壇をいたします、 〔
知事細川護熙君登壇〕
◎知事(
細川護熙君) 六十年度
予算編成に当たっての基本姿勢につきまして数点にわたってお尋ねでございました。 まず、
地方財政対策につきましてでございますが、「熊本・明日への
シナリオ」に示された諸施策の推進を図るための財源をどう確保し、また国からの一方的な
負担転嫁に対してどのように対処するのかというお尋ねでございますが、御承知のとおり、国の六十年度
予算編成も大詰めを迎えまして、高率の
国庫補助金の一律削減の問題は
予算編成に当たっての最大の問題になるものと考えております。
地方公共団体は、この問題につきまして、一致結束して反対の意向を表明してきたところでございまして、既に地方自
冶確立対策協議会を通じまして、「
国庫補助負担引き下げによる
地方負担転嫁反対に関する緊急要望」あるいはまた、十月三十一日には、地方六団体による地方への
負担転嫁反対に関する決議を踏まえての要望等を行ってきているところでございます。 これらの補助金の削減が実施をされるということになりますと、これが直ちに
地方負担の増加になり、今後の
推移いかんでは
地方団体の
財政運営に重大な影響を与えることになるわけでございまして、県としては、今後なお一層強力に
全国知事会等を通じまして、
国庫補助金の一方的一律削減の阻止に向けて努力をしてまいりたいと思っております。 いずれにしても、厳しい
財政状況下ではございますが、県としては、指針に示しました諸施策等の円滑な推進を図りますために、従来以上に
行財政運営の全般にわたって
事務事業の見直しを行いますとともに、事業の実施に当たりましても、事業の優先的、重点的な選択を行う等財政の効率的な運営に努めてまいりたいと思います。また、歳入面におきましても、県税の
適正確保等による自主財源の強化に努めますほか、主要財源である
地方交付税や
国庫支出金につきまして、その確保に最大限の努力を払ってまいりたいと思っております。県議会におかれましても一層の御支援、御協力を賜るようにお願いを申し上げる次第でございます。 それから次に、
行政改革についてのお尋ねでございますが、御案内のように、今日国や地方を取り巻く行財政の現状はまことに厳しいものがありまして、今後の
地域づくりにおきましては、従来のように国の財政的な支援に多くを期待するといったことは非常に難しい事態になってきております。先般から機会あるごとに申し上げておりますように、これからの
地域開発、
地域づくりといったものは、それぞれの地域がみずからの力で推進していく自立自助の時代ということでございまして、今や地方の
知恵比べの時代、
地域間競争の時代に入っているということが言われるわけでございますが、そうした認識に立ちまして、十年後、二十年後の強い強い熊本を決める大きな要素は、今申し上げたような
地域間競争の時代であるという認識をしっかりとしてかからなければならないということではなかろうかと思っております。 本県の
行政改革も、このような時代の趨勢を認識をして進めるものでございまして、急速な環境や時代の変化の中にあって、従前のまま見過ごされてきた組織、機構等について見直しを行い、効率的な
行政執行体制の確立を目指すものでございます。このようなことから、
行政改革は、活力、個性、そして潤いのある
地域づくりを積極的に推進するためには避けて通ることのできない課題であると認識をしているわけで、その意味におきまして、ただいま
行政改革に対する深い御理解と御鞭撻をいただきまして大変心強く思っております。 ところで、これまで
行政改革審議会から二次にわたって御提言をいただいたわけでございますが、それらの内容につきましては実施できるものから逐次実施してまいりたいという考えで、既に九月の議会でも御答弁を申し上げましたように、ことし四月と七月におきまして一部実施に移してきたところでございますが、さらに現在総合的な視点から鋭意検討を進めているところでございます。 今後の
行政改革の推進に当たりましては、先ほど述べましたような大きな時代の流れを認識しながら、県全体の歩みをより望ましい方向に進めていこうという観点から、県民の皆様に対する
サービスの低下を招かないよう配慮することはもちろんのこと、従来からの
事務事業に対して見直しを引き続き実施することによりまして、新規の
行政需要にかかわる新たな
サービス面につきましても積極的に対応してまいりたいと思っております。今後これが実施に当たりましては、議会にも御相談を申し上げ、また関係各方面の御理解を得ながら進めてまいりたいと考えているところでございます。 それから、
日本一づくり運動推進のための方途についてのお尋ねでございますが、「
くまもと日本一づくり運動」につきましては、去る九月二十七日に「
くまもと日本一づくり運動推進要綱」を発表いたしますとともに、
運動推進本部を発足させ、実施に移したところでございます。 この運動のねらいにつきましては、六月の県議会でも御答弁をしているところでございますが、厳しい
財政状況や行革の中で、県下各地域が持つすぐれた条件を生かしながら、地域みずからが創意と工夫を凝らして、今何を行うべきかを考え、それを実践することにより地域の活性化を図っていこうとする運動でございます。 また、現代はまさに地方の
知恵比べの時代であり、競争の時代であると言われているわけで、このような時代を乗り切るためにこの運動を提唱したところでございますが、御指摘のとおり、何よりもまず市町村あるいは地域の方々が、今なぜこのような運動が必要なのかという認識を持っていただくことが必要であろうと思っております。 幸いにして、県下には既にそのような考え方に立って
地域づくりに取り組んでおられる地域もあるわけでございまして、最近では、球磨のユニークな
森林観光施設も完成をいたしましたし、あるいはまた、水上村の桜の
里づくりというものも進められておりますし、阿蘇の野焼きも日本一のイベントにしようというようなことで計画が進められております。いろいろなアイデアが今寄せられて、また着々と計画がそれぞれの地域において進められているわけでございまして、大変結構なことだと思っております。 昭和六十年度におきましても、このような地域の
取り組みに対しましては、これをさらに助長しながら、県下全域にこの運動を拡大し、意識の高揚を図ってまいりたいと考えております。各
県事務所ごとに設置をする
運動推進支部というものを中心にいたしまして、総合的な相談なり指導なり助言を行いますとともに、セミナー、シンポジウムなどの
普及啓発活動を実施するなど県としてもいろいろな角度から支援を行ってまいる考えでございます。 それから四番目は、県土の均衡ある発展と
過疎地域振興対策への基本的な
取り組みについてのお尋ねでございました。 かねてから私は、強い熊本をつくるために、県下各地域が持つそれぞれの特性を生かしながら、活力に満ちた他の地域にない個性のある県土の創造を目指して県政に取り組んでいるところでございます。 御承知のとおり、現在本県には全市町村の半数を超える五十三の
過疎市町村があるわけでございますが、県土の均衡ある発展を図る上で
過疎対策は極めて重要な課題でございますので、今日まで国、市町村と一体となってその振興に努めてきたところでございます。 昭和五十五年度から五年間の全
過疎地域振興計画の実績を見ますと、全体ではやや計画を下回っておりますが、
地域振興を図るための基盤である
市町村道等の整備につきましては計画をかなり上回っているものもございます。しかし反面、若年層の域外流出でありますとか老齢化が進んでいることとか、今後取り組むべき課題も多く残されているのが実情でございます。本年度はちょうど昭和六十年度から始まる
後期過疎地域振興計画の策定の時期に当たっておりますが、この計画の中では、
過疎地域における若年層の
定住条件整備を中心にその策定作業を進めているところでございます。 今後は、この計画の基本的な目標に従って、
農林漁業の近代化を初め地域に適した企業の導入による就業機会の増大、さらには
過疎地域の持つすぐれた資源あるいは特性を生かした地場産業、
観光産業の
振興策等を推進していかなければならないと考えているところでございます。また
高齢者対策につきましても、高齢者の方々が積極的に社会に貢献をし、そのことに生きがいと誇りを持てるような「
くまもと高齢者社会参加計画」を進めてまいりたいというふうに考えております。 また、現在行っている
過疎地域振興調整事業につきましては、
過疎地域の振興を図る上で重要な施策と考えているわけでございまして、今後とも
財政事情の許す限り継続をしてまいりたいと考えているところでございます。 〔
甲斐孝行君登壇〕
◆(
甲斐孝行君) ただいまの知事の御答弁には十分了解もし信頼を寄せているものでありますが、この際、特に知事にお願いいたしたいと思いますのは、
日本一づくりでは、大変これは県勢の発展に効果的であると思いますけれども、ただいま一億円の予算が計上されておりまして、
過疎対策では極めて効果的であり、非常に待望しております過疎調整費が一億九千万円、この二つが
過疎対策を兼ねての唯一の県の単県予算でございます。ほかに多少ございますけれども、どうか、この二つの予算を重点的に来年度は倍にしていただきたい。倍にいたしましてもわずか三億円でございます。私は、非常に効果的であると思いますし、またその成果も期待されると思います。どうぞよろしく御高配をいただきますようお願いを申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。 次に、熊本港についてお尋ねをするわけでございます。 人口の増大とともに、ますます拡大していく熊本都市圏は、有明海に面していながら、港湾がないために、輸送費用など流通面で著しく不利な条件を抱えており、ひいては中枢管理都市としての機能整備や県勢の発展に大きな障害となっております。熊本新港は、このような障害を打開するため、昭和四十九年に計画が策定されたことは既に御承知のとおりであります。 先般公表された「熊本・明日への
シナリオ」を拝見いたしましても、「活力と個性ある郷土」のページに、物流の拠点である熊本港の整備を進め、かつ熊本港などの交通拠点へのアクセス道路の整備を進めますと明確に記載されております。私は「熊本・明日への
シナリオ」を読んでみまして、熊本港は、物流面の機能ばかりでなく、もっと多くの役割があり、熊本を九州における人、物、情報の活発な交流拠点とするためにも
地域間競争の有力な武器となるものと確信する次第でありまして、熊本新港の必要性は十年前同様現在でも全く変わっていないと考えます。 先日の熊日の報ずるところによりますと、漁業補償交渉も最後の大詰めを迎え、合意の見通しがついてきたようであります。今議会には熊本港建設に伴う漁業補償費が提案されております。これを機に今後本格的に工事が促進されるものと予想されるわけでありますが、現在までの状況及び今後の整備の進め方についてまずお尋ねいたします。 第二の点は、港の規模に関する点でございます。 港が使えるのはまだまだ先の将来のことであろうと漠然と考えておりましたが、県の実施計画によると、あと一年ちょっとで、三百トンから五百トンと小型ではございますが船舶が入ってくる予定でありますし、いよいよ熊本港の建設は間近な問題となってきたと思うのであります。さらに、昭和六十五年には五千トン級船舶の入港が可能となり外国貿易を行う港湾を目指しているわけでありますが、この程度の船舶で果たして外国貿易ができるのか、小さ過ぎるのではないかという疑問を感ずるわけであります。 一方、現在の熊本港の計画は昭和四十九年に計画が策定されたものですが、当時は石油ショック直前の高度経済成長時代で大きな計画でありましたが、その後の低成長や経済構造の変化を考えますとき、量的観点及び質的観点の双方から熊本都市圏が求める真に適正な港の規模はどのようなものか、この点について見解をお尋ねをいたします。 〔
知事細川護熙君登壇〕
◎知事(
細川護熙君) 熊本港建設についてのお尋ねでございますが、熊本港は、昭和五十四年に連絡橋と物揚げ場の建設に着手をいたしまして、昭和六十年度に概成させる予定で鋭意工事を進めているところでございます。この連絡橋と物揚げ場に係る補償につきましては、昭和五十六年に地元沖新漁協と妥結をしたところでございます。 その後、流通港湾として機能するために必要な施設の工事に伴う第二次漁業補償につきまして、直ちに交渉を開始いたしまして、これは地元沖新漁協を初め影響が予想される周辺八組合との間の困難を伴う交渉でございましたが、このたび漁業関係者との合意のめどが立ちまして、関係者の皆様には心から感謝を申し上げる次第でございます。 補償の内容は、地元沖新漁協に対する工事海面の漁業権の消滅等に係る補償を八十六億円とするとともに、八漁協を対象に、工事の実施に伴う潮汐流の変化あるいは地盤面の変化等による補償で一律三億円を支払い、工事の了解を得て昭和六十二年度までに精算補償を行うというものでございます。このことによりまして、今後必要な公有水面埋め立て等の所要の手続をとることにより、昭和六十年度には本格的に着工できる見通しになりました。 次に、港湾の規模に関するお尋ねでございますが、熊本港の全体計画は、県議会の議決を得た上で、昭和四十八年国の港湾審議会の議を経て定められたものでございます。現在熊本港の整備は、この全体計画の範囲内におきまして、その後の経済的、財政的情勢の変化を勘案しつつ、段階的に整備を進めることとし、当面、昭和六十五年度までの実施計画を立てまして建設を進めていることは御承知のとおりでございます。 五千トン級の船舶で果たして外国貿易が可能であるかという御指摘でございますが、確かに外航海運の状況を見てみますと、船舶の大型化、専用船化の傾向が進んでいる中で、特に欧米航路や世界一周の航路におきましては、一万五千トンとか二万トンとかいうような大型船の時代になってきております。しかし、当面予想される中国、韓国などの近隣諸国や東南アジア諸国との貿易には、このクラスの船型でもそれなりの対応は可能ではなかろうかと考えているところでございます。 いずれにせよ、全体計画につきましては、策定以来既に十年以上を経過しておりまして、御指摘のとおり、その後の情勢変化も大きいことから、港湾計画の見直しを図る所存でございまして、その作業の中で、ただいまの御意見も十分参考にさせていただき、将来を見通してしっかりと機能するような港にしていかなければならないと考えているところでございます。 現在は航空機の時代というふうに言われますが、船の価値というものが船舶技術の高度化あるいは保冷技術の革新などによって見直され、いま一度船の時代がやってくるというようなこともないわけではなかろうと思いますし、そうしたことも踏まえまして、また八代港であるとか三角港であるとか、そうした港との関係なども十分念頭に置きながら、整備、促進を図ってまいりたいというふうに考えております。 〔
甲斐孝行君登壇〕
◆(
甲斐孝行君) 熊本港のような大きなプロジェクトは地元の合意形成に多大の困難を伴うものでございますが、周辺海域漁業者並びに関係職員が長い間精魂を傾けて努力してこられたことに対し、心から敬意を表する次第であります。 熊本港建設の目的の一つに西部地区開発の戦略的プロジェクトとしての位置づけがあります。港の利用が間近になってきました今、この地区の土地利用なり交通網の整備が計画的に行われることがぜひ必要であると思います。この点についても強く要望いたしまして、次の農政問題についてお尋ねをいたしたいと思います。 本年は、一月十八日から十九日にかけて三十九年ぶりという大雪に見舞われ、大変心配しておりましたけれども、その後は、天候にも比較的恵まれ、農業生産額もかなり伸びておるようでございますし、先日は「くまもと'84農林水産博」も好評のうちに終了し、農業者の喜びもひとしおかと考えていたところであります。ところが、つい先日、みずから農業を営みながら、農村の指導的立場にある方々と親しく語り合う機会を持ちましたところ、そこではいろいろな意見が出てまいりましたけれども、それを一言で申し上げますと、農業の将来についての不安と他用途利用米制度への不信が非常に高まってきているということで、久しぶりの豊作も何か影が薄くなっているようでありました。 今さら言うまでもありませんが、本県の農業は、全国有数、西日本随一の農業県としての地位を確立しておりますけれども、本県の農業でさえ毎年所得が減少するという、まことに厳しい状況にあるわけでございます。 このような状況において、最近熊本県は知事のリーダーシップの発揮により、全国的にも注目される
テクノポリスの建設や
日本一づくり運動等に特に力を入れておられることから、ややもすると農業軽視というふうに受け取られておるようであります。もちろん、知事は就任以来、農業を本県の基幹的な産業として位置づけし、先般明らかにされた「熊本・明日への
シナリオ」にも農業を一番最初に取り上げ、生産から流通に至るまでの高能率システムを確立し、足腰の強い高生産性農業づくりを目指すこととされており、また、
日本一づくりの中でも農業を大きく取り上げられておりまして、私自身は大変心強く思っているところであります。 一方、他用途利用米制度につきましては、我が国の主食である米の消費量が年々減少している中で、主食用のみに依存した米の対策にはおのずから限度があり、我が国特有の高い生産力を持つ水田を主食用以外の米の用途に有効に活用することは重要な課題であります。しかしながら、農業者側の意見を聞いてみますると、現在の他用途利用米制度に対しては厳しい批判があります。この批判は、韓国から米の緊急輸入を実施したことに対する怒りが爆発したという一面もありますけれども、制度そのものに問題があるようでございまして、その最大のものは二重米価であるということに極論されます。現行制度では、主食用米も他用途利用米も同じ水田で同じ品種で生産されており、出荷段階において初めて加工用として契約されたものが安い価格で販売されるわけであります。二重米価による政府の経費負担の軽減を代償としてこのような悪制度を設け、ごうごうたる農政不信の種をまくということはまことに残念であり、農政の貧困極まれりと言わざるを得ません。 ところで、現在の農業関係諸制度は、その多くが食糧増産時代につくられたものであり、最近のように過剰の時代になってくると実情に沿わない点が目立つようであります。例えば生産者米価の決定にしましても、制度上は生産費所得補償方式により決定される建前となっておりますが、現実には米価を決定した後でつじつまを合わせておるという状況であります。また、先ほどから取り上げました他用途利用米制度にしても、基本となるべき食糧管理法上の位置づけも十分検討がなされないまま実施されておる場当たり的悪制度と言わざるを得ません。しかし、他用途利用米制度は現に実施されておりますし、契約農家の実情等を考慮し、知事の政治判断による今回の助成措置は十分理解され評価さるべきであり、賛意を表するものであります。 ともあれ、他用途利用米制度を含めた米対策については国民的課題として各界のコンセンサスを得ることが必要でありますが、ともすれば、転作重視の行政が中心となり、豊作を素直に喜べないこれまでの政策に対し、農業者の不満、焦燥感はかなり高じております。何はともあれ、基本的には、国の主導、責任において、諸制度の見直しと諸条件の整備を図るべきでありますし、豊作を農業者ともども喜び合える農政に向かって国に対し強く働きかけていただきたいと思います。 知事は、これまでの議会においても農政に取り組む姿勢を披瀝されましたが、この際、改めて他用途利用米制度等の見直しを含めて農政に取り組む決意をお伺いしたいと思います。 〔
知事細川護熙君登壇〕
◎知事(
細川護熙君) 農政に取り組む姿勢についてのお尋ねでございました。 御指摘のとおり、農業を取り巻く情勢は大変厳しいものがあるわけでございますが、かねてから申し上げておりますとおり、本県の農業が今までどおりあるいはそれ以上に健全な産業として発展していくことによって初めて、本県経済は均衡のとれた好ましい産業構造が保たれ、県経済の安定と成長が実現できるわけでございまして、今後とも農業を県産業の重要な柱として位置づけてまいりたいと考えているところでございます。 農業の発展のためには、明日への指針でも明らかにいたしましたとおり、本県の有利な生産条件を生かして、革新的な技術の開発、導入を図りながら、経営規模の拡大を促進をし、生産から流通に至るすべての過程において能率の高いシステムを確立をしていくことによりまして、内外の産地と十分競争のできる足腰の強い高生産性農業づくりを目指すことにいたしているわけでございまして、今後これの実現のためにさらに努力を傾注してまいりたいと思っております。 次に、他用途利用米制度等の見直しについてでございますが、現在の制度の中には、食糧増産時代につくられましたために、最近のような農業情勢を考えた場合、必ずしも実情にそぐわず農業者の理解と協力を得ることが難しくなっているものも見受けられるのは御指摘のとおりでございます。 そうした制度のうち、特に御指摘の他用途利用米制度は、転作の限界への対応あるいは水田の有効利用、みそ、せんべい、米穀粉、しょうちゅう用等の加工原材料用米の安定的な供給確保等のもろもろの事情を踏まえて、本年度から水田利用再編第三期対策の一環として制度化されたものでございます。しかし、この制度につきましては、主食用と全く同一の米を安い価格で出荷をしなければならないことや配分が一律的に行われたこと、さらには韓国米の輸入問題等が生じたこと等によりまして、生産者の御理解を得がたい状況になっていると受けとめております。 このようなことから今回所要の措置を講ずることとしたところでございますが、特に米問題は国の制度として広くコンセンサスを得て推進される必要がございますし、現在の制度につきましても、価格の面や規格の面、さらに備蓄による活用等関係機関でも種々検討がなされていると聞き及んでおります。 いずれにいたしましても、御指摘のとおり、他用途利用米制度のみならずその他の諸制度につきましても、時代に即応し、農業者の理解と協力が得られるような制度へ見直しを行うことが必要でありまして、市町村、農業団体等関係団体とも緊密に連携をとりながら、今後とも国に対し必要な改善等を強く要望をしてまいりたいと考えているところでございます。 〔
甲斐孝行君登壇〕
◆(
甲斐孝行君) 私は、農政問題について知事に非常に強くいろいろとお願いをいたしましたが、これは全く国の責任でございますので、知事さんには先進農業県として熊本県を引っ下げてひとついろいろ制度の改廃に御努力をお願い申し上げたいと思うわけでございます。農政は、よく英語のイエス・ノーの「NO」何にもない「ノー政」などと冷評されております。私は農政部の皆さんをいつも冷やかしておるわけですが、枕木は腐って、さびたレールの上を、おんぼろ機関車に乗って田代
農政部長が一生懸命やっておる、農政部の皆さん一生懸命後押しをしておる、この漫画と同じようなのが今の農政の仕組みであるんじゃないかというようなことを申し上げておるわけです。農政の手かせ足かせになっておりますこういう諸制度あるいは諸仕組み、これを変えなければ本当の農政はやっていけない非常にやりにくいということを私はかねがね考えておるわけでございます。 さて、次にチッソ県債についてお伺いをいたします。 先ほど知事から総額二十四億四千二百万円のチッソ県債の御提案がありましたが、私は、このチッソ株式会社に対する金融支援措置につきまして昭和六十年度以降どうなされるお考えなのか、知事にお伺いをいたしたいと思います。 水俣病の原因企業であるチッソ株式会社に対する県債発行による金融支援措置については、昭和五十三年十二月の県議会において、患者に対する補償金支払いに支障が生じないよう配慮し、あわせて
地域経済社会の安定に資するためにはまことにやむを得ないとの結論が出され、八項目の附帯決議を付して議決されたことは御承知のとおりであります。以来、チッソ県債の問題は県政の重要課題として論議が続けられてまいりました。 御案内のとおり、昭和五十三年十二月にチッソ県債の発行を行うに当たって、その期限は昭和五十六年度補償金支払い分までとされておりましたが、昭和五十六年十一月に国から、昭和五十九年度補償金支払い分まで継続発行してほしいと要請され、本議会において慎重かつ真剣に討議を重ねた結果、チッソ株式会社の経営の現状からして国の要請を受け入れることはまことにやむを得ないという結論を得るに至ったことはいまだ記憶に新しいところであります。以来、今日までチッソ県債の発行は続けて行われ、今議会に提案されている第十三回分の二十四億四干二百万円を加えますと実に三百十億円の巨額に上ることになるわけであります。その間の関係者の並み並みならぬ御苦労に対して心から敬意を表する次第であります。 県議会におきましても、執行部ともどもチッソ県債の問題に関し、国に対し繰り返し陳情要請を続けてまいりました。昨年五月には、関係国会議員の御支援、知事の並み並みならぬ御努力もありまして、いわゆる国の実質一〇〇%保証についても環境庁長官から得られたようなことで、その成果も上がってきておりますが、いよいよ昭和五十九年度補償金支払い分までという県債発行によるチッソ株式会社に対する金融支援の期限が間近に迫ってまいりました。 今回提案されているチッソ県債の発行については、現在の同社の経営状況、補償金支払い状況等からしてやむを得ないものと思われますが、六十年度以降のこの問題については、チッソ県債がもともと異例の措置として始められたこと、既に六年間も発行されその額もただいま述べましたように巨額になっており、今後の同社に対する金融支援についてどうすべきかが当面の県政の重要課題であろうと考える次第であります。去る十一月七日には公害対策特別委員会の関係各位が、関係国会議員、関係省庁にこの問題について早急に検討の上具体的な対策を講じるように要望され、先月二十七日の同委員会においてもチッソ県債の問題について活発な議論がなされたようであります。そこで、私は、この重要な時期に当たり知事に対し次の点についてお伺いをいたしたいと思います。 六十年度以降のチッソ株式会社に対する金融支援措置についての国の方針は五十九年度中に検討を行うとされておりますが、現在国ではどのような検討が行われておるのか、その経緯と見通しについて、また知事はこの問題についてどのように対処されるおつもりなのか、知事の基本的な考え方をお伺いいたしたいと思います。 次に、今さら申し上げるまでもなく患者への補償責任は原因企業であるチッソ株式会社にあるわけでありまして、何といっても一日も早く同社が立ち直り患者補償を自力で行えるようになることが必要であり、同社の真剣な自助努力、経営努力が強く求められるところであります。最近同杜の経営状況が好転してきたと承っておりますが、その内容と見通し、さらに今後の経営努力についてあわせてお伺いをいたします。 〔
知事細川護熙君登壇〕
◎知事(
細川護熙君) チッソ県債について、六十年度以降どう対応するのかというお尋ねでございますが、その前に県政の重要課題である水俣病対策につきまして、議会におかれましては、かねてから特段の御尽力を賜っていることに対しまして改めて感謝を申し上げる次第でございます。 六十年度以降のチッソ株式会社に対する金融支援措置につきましては、昭和五十三年の関係省庁間覚書が五十六年度改正されまして、五十九年度中に国の方針が検討されることになっているところでございますが、これを受けまして、九月以来環境庁を中心に、大蔵、自治等の関係省庁におきまして、昭和五十三年当時の基本的な考え方に立ち戻って、いわば原点に立ち返って鋭意検討、協議が重ねられているところでございます。 御指摘のように、国としては五十九年度中には何らかの結論を得るということでございますが、県としてはできるだけ早急に結論を出してもらうように要請をしてきたところでございまして、国もこれも受けて、この議会開会中も精力的に検討を続けていただいているところでございますが、現在のところ結論を得るには至っていないというのが実情でございまして、引き続き検討を急ぎ、できるだけ早く国の方針が示されますように今後とも努力を重ねてまいりたいと思います。 ところで、患者補償につきましては、原因企業であるチッソ株式会社がみずからの力で責任を持ってこれを行うのがPPPの原則からしても当然のことと思っておりますが、しかし、現在のチッソの経営状況のもとでは、患者補償金の支払いに支障を来さないようにするとともに、水俣・芦北地域の安定、振興を図るためには、反面、チッソに対する何らかの金融支援は必要であると考えているわけでございます。 この問題につきましては、国における対応も含めて、これまで幾たびとなく県議会において論議されているところでございまして、このような経緯等は十分国に対して説明をし、それを踏まえて検討が続けられており、私としては国の検討結果をまって県議会と十分御協議し、対応してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。 次に、チッソ株式会社の経営状況でございますが、五十八年度下期以来、石油化学業界の景気好転やチッソ自身の合理化等の努力によりまして、五十九年度上半期におきましてチッソは七億四千万円の経常利益を上げております。しかし一方では、患者補償金の支払い等特別損失が相当額に上りますために、累積赤字は五十九年九月末で八百六十億円に達しておりまして、経営は依然として厳しい状況に置かれております。 経営強化を図るために、チッソは、肥料や塩化ビニール等の不採算部門の合理化を促進するとともに、成長部門であるファインケミカル関係の生産強化や磁性材等の新規事業の開発にも取り組んでおりますが、今後は、そうしたものにはそれなりの収益が期待されているところでございますが、私としては、チッソに対し、なお一層経営努力をするように要請をするとともに、国に対しましては、チッソに対する一層強力な経営指導なり関係金融機関による金融支援を強く要請をしてまいりたいというふうに考えております。 〔
甲斐孝行君登壇〕
◆(
甲斐孝行君) チッソ県債とこれに関連します諸問題は、県政のがんとも言われ、重要で難しい問題をはらんでおります。何とも、いら立たしさ、歯がゆさ、もどかしさを覚えるわけでございます。知事初め関係各位の御心労は大変なものだと推察をいたしますが、事態の推移には細心の注意を払いベストを尽くして善処していただきますようお願いをいたします。また、チッソの企業努力については、他力本願で甘えがあるのではないかとの一部批判がありますので、チッソを挙げて一層の奮起、努力をされるように強く要望するものでございます。 続いて、大型イベントの開催と国際園芸博の誘致についてお尋ねをいたします。 昨年度は
テクノポリスフェア、ことしは農林水産博と大型イベントを開催し、人々の心を鼓舞し、自信と誇りを持たせる試みは一〇〇%成功をおさめたと思います。さらに来年度以降は、くまもとフェア、全国植樹祭、全国都市緑化フェアなど計画されておりますが、今回の予算に熊本フェアの開催が挙げられております。これは、従来の観光物産展の枠を超えたいわば熊本の持つ強さ、豊かさといった面をそれぞれの分野ごとに展示し、より多くの人たちに真の熊本を理解してもらい、商品開発、販路拡大、さらには企業や観光客の誘致を通じて
地域開発に役立てようとするものであると理解をいたしております。
地域間競争が激化していく昨今の情勢の中で、まことにタイムリーなイベントであると考えます。 〔議長退席、副議長着席〕 しかしながら、この種の事業は、特に県民の理解の上に立って進めることが必要であり、また民間企業の協力を必要とすることは申すまでもないことでありますが、さきの九月県議会において社会党の中島議員からお尋ねがありましたように、民間企業と提携して施策の展開を図ることについていろいろな御意見をお持ちの方もおられるだろうと思います。そこで、まず今回、熊本フェアを行うに当たっての知事の基本的な考え方についてお伺いをいたしたいと存じます。 次に、国際園芸博の誘致についてお尋ねをいたします。 去る八月二十四日の熊本日日新聞は、その一面トップで、国が国際園芸博覧会を日本に誘致する方針を固め、日本での開催地の選定など具体的な検討に入ったと報じておりました。その後、十月に入って知事は、国際園芸博の水俣市誘致の方針を発表され、積極的に誘致運動を展開していく考えであることを各方面で表明されております。これまで水俣市及び芦北地方については、水俣病によってもたらされた暗いイメージからの転換を図り、活力のある地域社会としての再建を図るため、水俣・芦北
地域振興計画に基づく振興策を初め各般の施策が講ぜられてきておるところであります。しかしながら、県のこのような努力に加えて、さらに水俣・芦北地域の浮揚にとっていま一つ何か効果的な対応はないかと模索されていたところであります。水俣・芦北地域に再び活力をよみがえらせるということは、これまでの経緯等にかんがみ、一地域の問題としてのみとらえるべきではなく、県全体の課題として新しい思い切った対応が必要であろうと考えていたところであります。 「花と緑」を主題とした国際園芸博覧会の水俣誘致という今回の知事の構想は、水俣・芦北地域のイメージアップにとってまさにこれにかわるものはないであろうと考え、満腔の賛意を表する次第であります。しかし、構想の実現という観点から考えるとき、例えば水俣への交通アクセス一つ取り上げてみても解決すべき課題が容易ならぬものがあることもまた一方の事実であります。 さらに、この国際園芸博については、大阪、京都などにおいても強い誘致の意向があるやに聞き及んでおりますが、今後、これらの地域に伍して全県的な盛り上がりのもとで誘致運動を展開していくためにも、水俣での国際園芸博覧会開催についての知事の具体的な考え方あるいは先ほども申し上げました開催誘致に伴う課題への対応等について、お答えをいただきたいと思います。 〔
知事細川護熙君登壇〕
◎知事(
細川護熙君) まず、熊本フェアの開催に当たっての基本的な考え方についてお答えを申し上げます。 先ほど来申し上げますように、今各地で自立自助の
地域づくりの機運が高まっておりますが、このような時代を生き抜くために、本県の持つすぐれた条件を十分に生かして特色のある
地域経済の確立を図っていくことが必要でございまして、地域の皆さんが創意と工夫を凝らして個性ある
地域づくりに取り組まれるように、先ほども話が出ました
日本一づくり運動等を推し進めているところでございます。 幸い、各地でそれぞれそうした
取り組みが始まっておりますが、
地域開発を進めていくに当たりましては、付加価値の高い産品の開発や流通経路の開発に加えまして、伸展しつつある現状を含めた熊本の真の姿というものを、全国的な規模でより多くの方々に理解をしていただくということが最も肝要であろうと考えているわけでございまして、そのような課題を解決していくためには、経験のある民間の知恵と力をかりて進めることがより現実的で効果的な方法であろうと考えているわけでございます。 そこで、
地域開発の推進に当たりましては幅広く民間の協力を得ながら進めてまいりたいと考えているところで、別にそれはどこでもいいわけでございますが、特に西武流通グループは、独自の調査によりまして、県内の文化、風俗、資源、産品等の現状をよく理解をしており、今後に期待される産品の発掘や付加価値を高めるための改善指導等もやっていただいているところでございます。また西武デパートが、その売り場面積、売上高等の面におきまして全国一の規模であり、さらには若者を対象とした経営戦略がヤング層に最も人気を得ているところでありまして、以上のような点を考慮の上、今回の熊本フェアを西武デパートの協力を得て行うことにいたしたわけでございます。 このフェアの開催に当たりましては、過去の観光物産展とは異なり、文化、風俗、資源、産業、産品等の幅広い分野で、本県の持つ特徴を、大消費地である関東地区を中心に多くの人々に理解してもらうことを主眼として開催をするものでございまして、また、会期終了後におきましても継続して消費者情報の交換、商品開発、観光資源の活用等の協力が期待できるので、本県の将来にとって必ずや発展の大きな足がかりになるものと確信をいたしているところでございます。 明年三月東京で開催するこの熊本フェアが、県民の皆さんの御理解のもとに、関係機関や関係団体の御協力を得ながら、それが成功裏に実現の運びとなるように今後とも努力をしてまいりたいと思っております。 それから、国際園芸博の水俣開催の基本的な考え方等についてのお尋ねでございますが、水俣・芦北振興のため地域全体のイメージの転換を図って生き生きとした明るい地域社会の再創造という観点から、これまでの単なる各種事業の実施ということにとどまらず、地域の方々の創意を集め、一丸となって
取り組みを進めるような画期的な施策が強く求められていることは御指摘のとおりでございます。 ところで、水俣では、現在公害防止事業によりまして、昭和六十五年完成をめどに汚染海域約五十八ヘクタールの埋立工事が実施をされておりますが、この埋立工事による造成地の利用に当たりましても、環境の復元を記念するような利用計画や事業等を推進する方向で、これまで種々な角度から検討を加えてきているところでございます。 このような検討を進める中で、現在まで主としてヨーロッパで開催されてきております国際園芸博覧会の日本誘致が国等で検討されていることを知り水俣での開催誘致を考えた次第でございます。この国際博が開催されるということになれば、環境汚染に対する反省の上に立った環境復元のモニュメントとし、また環境問題をめぐる歴史の中で世界的に注目を浴びた水俣での開催ということで、博覧会が備えるべき国際性という観点からも十分理解が得られるものであると考えているところでございます。今後、実現へ向けまして関係方面のコンセンサスが得られるよう、積極的に働きかけを行ってまいりたいと考えております。 一方、このような国際イベントを遂行するためには、交通アクセスを初めもろもろの施設設備、そうした多くの問題や解決しなければならない課題があることも事実でございます。これらにつきましては、水俣・芦北地域が備えているあらゆる条件を総合的に検討する中で、現実的な対応を進めますとともに、地元と一体となって実現へ向けて
取り組みをしてまいりたいと考えているところでございます。それとともに、この構想を推進していく過程で、これまで水俣・芦北地域にとって懸案とされてきているプロジェクトにつきましても実現への可能性を生み出していくことができるのではないかと考えている次第でございます。 いずれにしても、このような博覧会を水俣で開催することの国家的な意義というものを強調しながら、水俣のイメージの転換を図り、水俣・芦北
地域振興の新たな出発点、起爆剤とする方向で取り組んでまいりたいと考えておりますので、各位の御理解と強い御支援をこの上ともお願いを申し上げたいと存じます。 〔
甲斐孝行君登壇〕
◆(
甲斐孝行君) いろいろ今まで開催された実績からいたしましても、こういう大きなイベントは次から次へと波紋を広げ、熊本を知ってもらうよいチャンスになっております。熊本を知りフアンがふえることは県勢の発展に大きくつながると思います。経費はかかりましょうとも思い切り意表をついた盛大なイベントにしてほしいと思います。また国際園芸博は、水俣・芦北地方にとっては起死回生の世紀のイベントになりましょう。ぜひとも実現するよう強力に誘致していただくようお願いをいたします。 以上で私の
代表質問を終わりますが、時代はまさに日に新たに日に進む日新日進の時代であります。地域社会も激動激変の渦中にあります。このような時代に県勢の浮揚を図るためには、県の適切なる対応、かじ取りが何よりも必要であります。細川知事は短期間に期待される役割を十分に発揮され、県民の負託にこたえられているところであります。しかし、県政全般から見れば、一部見直しあるいは再点検を要する分野もあることは否めません。例えば新産都市計画の経緯を振り返り今日的意義について総括しておくことが、
テクノポリス計画の着実な運営にとって大きな糧となることと信じます。また企業一つを見ても既に百億円以上の累積赤字を出しております。このままでは今後累増することは避けられません。時代とともに転換しあるいは改廃すべきものがあればちゅうちょすべきでないと思います。 知事は、県政「熊本丸」の船長として、難しいかじ取りに英知を傾け万全を期していただきたいと、老婆心ながら念願するものでございます。また我が党といたしましてもともに責任を全うしなければならないと決意を新たにするものであります。知事の熱意あふるる真摯な御答弁に敬意を表し心からお礼を申し上げます。また議員各位には長時間にわたり御清聴いただき深く感謝申し上げます。昭和六十年度の輝かしい新年を、ともども元気でお迎えされますようお祈りを申し上げ、降壇をいたします。ありがとうございました。 (拍手)
○副議長(米原賢士君) 昼食のため午後一時まで休憩いたします。 午前十一時十九分休憩 ――
―――――○――――――― 午後一時五分開議
○議長(小材学君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 日本社会党代表林田幸治君。 〔林田幸治君登壇〕 (拍手)
◆(林田幸治君) 日本社会党の林田でございます。党を代表して当面する県政の諸課題について通告に従い順次質問を申し上げてまいりたいと存じます。なお、
代表質問ということで、午前中の自民党代表甲斐議員の質問と重複する点がございますけれども、党派の違いから観点の違いもあるわけであります。私なりに真摯に申し上げてまいりたいと存じますので、細川知事の明快な回答を期待し、また議員各位の御協力を願いながら、早速質問に移らせていただきます。 まず第一に、六十年度
予算編成に当たっての所信についてお伺いをしてまいります。 知事は、六十年度熊本県当初予算の編成については、
総務部長名における財第三〇六号において編成方針を示され、知事部局はもちろん教育庁など関係各部局も含めた予算要求書を集約されている模様であります。その編成方針によりますと、 第一に、国の財政は昭和五十九年度末には公債の発行残高が百二十兆円を超える見込みであり、国は財政改革をさらに推進する方針のもとに、五十九年度に引き続き経常部門経費について一〇%削減、投資部門経費についても五%削減という極めて厳しい方針である。 第二に、地方財政もまた五十年度以降累積した地方債残高と交付税特別会計借入金残高の合計額が五十九年度末には五十四兆円に達する見込みで、その償還が今後の地方財政に大きな負担となる。また国の試算発表によると、六十年度の地方財源不足額は一兆五千億から二兆円に達するものと見込まれ、地方財政もまた厳しい情勢が続く。 第三に、本県においても、国、地方を通ずる厳しい
財政状況のもとで、県税、
地方交付税の大幅な伸びは期待できない。
国庫支出金の伸びも引き続きマイナスとなることが予想され、大幅な財源不足が見込まれる。 第四に、しかし、このような中にあっても、生活関連施設の整備、各種福祉施策の充実など県民の多様なニーズにこたえる。特に
県政運営の指針である「熊本・明日への
シナリオ」の趣旨を踏まえた諸施策を推進していく。 第五に、そのために六十年度は所要財源の確保に最大限の努力を傾注すると同時に、
行財政運営の全般的制度、施策の見直し、経費の節減、そして財源の重点的、効率的配分に努めていかなければならない。以上のような六十年度県
予算編成方針で進められているようであります。 私は、この方針の一般的、概念的なものとしては受けとめることができます。しかし、御案内のように政府は、今十二月二十八日ごろの政府原案決定に向けて六十年度国家
予算編成作業を進めております。それによりますと、補助金カット、交付税の抑制、給与改定及び人員抑制、
公共事業の抑制、社会保障、教育の抑制、消費者米麦価の引き上げ、国鉄運賃、授業料、入学金、自賠責保険料など公共料金の値上げ等によるまさに勤労国民泣かせの予算が示されるのではないかと心配をされておるわけであります。中でも、行革審意見を受けて八月三十一日締め切られた政府予算概算要求の最大の問題は、厚生省の
生活保護費負担金、老人ホームや保育所の措置費、文部省の義務教育学校施設費、労働省の失業対策事務費など、国が五〇%を超えて負担している負担金を一律に一割カットし、その分を地方自治体に転嫁する内容となっていることであります。その金額は、五十八年度決算ベースで見ると二千二百九十五億六千九百万円に達し、本県に与える影響の試算によると、県関係二十八億一千八百万円、市町村関係三十億九千万円、合計すると五十八億二千七百万円と言われております。 申すまでもなく、六十年度では一層多額になることが予想されるわけであります。熊本県に与える影響額二十八億一千八百万円は何と五十九年度県予算の中における労働費三十五億円に比較してその八〇%を占める額であります。我が党は、この一割カットは、極めて不当な地方への
負担転嫁であり、絶対に容認できません。 これまで我が党は、民間大企業等に対する補助金も含めて、国民の立場に立った補助金制度の改革を主張してきました。しかし、今回、政府が臨時行革審意見をてこに行おうとしている補助率の削減、地方への
負担転嫁は補助金制度の改革とは無縁のものであります。 この問題について、住民自治を推進し、県民の暮らし、福祉を増進する立場にある細川知事は、あらゆる面にわたって地方への
負担転嫁が進められようとしているこの現状について、どう認識され、またどのように対処されようとしているのか、知事の所信をお聞かせください。 次に、本十二月議会に提案されております補正予算の中から、六十年度
予算編成に絡むものとしてお伺いをいたします。それは、水田利用再編転作等定着化緊急対策推進事業としての他用途米対策助成費八千二百万円についてであります。 御承知のように、生産者米価は、減反政策下で昭和五十三年以来、米過剰を理由に抑制され、この間、生産資材等の上昇によって、米の生産費は三五%以上も増加しております。加えて、米政策の破綻によって米不足等を招き、外米の輸入さえ行われる中で決定された米価は、生産者団体が生産費所得補償方式に基づいてぎりぎりの要求として掲げていた七・七%に対し、政府はこれを大きく下回る一・四五%の引き上げを米審に諮問を行いました。そして自民党は農民の不満をそらそうとして二・二%引き上げという政治結着で決定いたしました。こういう状況で決定された本年の低米価は、米作農民の生産意欲の減退にさらに拍車をかけるものだと言わざるを得ません。したがって私は、生産農民の立場からすると、他用途米対策助成費として措置された知事の配慮についてはうなずけるわけであります。しかしながら、もともとこの他用途利用米制度は、政府の米政策の失敗から米不足を招き、それを糊塗するためにとられた二段米価制度であり、農民としては絶対に許される制度ではなかったわけです。しかし、政府は、外米の輸入をちらつかせながら、米作農民に犠牲を強いる条件を押しつけ、それが受け入れられない場合には外米輸入もやむなしという二面作戦をとってきたわけです。 その後、政府は、他用途利用米の主食転用について、農業団体の要求で転用するとし、それによって不足する加工用米は輸入するとのいわゆる第二次輸入論を持ち出し、農業団体に二者択一を迫ってまいりました。農業団体は、これを内部検討し、第二次輸入に反対という立場から、農家の自助努力で加工米の確保を図ることにしたといういきさつがあります。 以上のような経過がありますから、先ほど申し上げましたように、知事が他用途利用米対策助成の措置をとられたことについて、農業県熊本としてうなずける措置ではあろうと思うわけであります。しかしながら、かねてから知事が言っておられる財政の効率化、財源の重点的配分という考えからすると甚だ矛盾するものであり、疑問を感ずるわけであります。 結論を申しますと、国の制度施策として進められている政策に対してなぜこの費用を県が負担しなければならないのか。一度負担をすれば来年度も当然県が負担せざるを得ない道をあけてしまったと言えないのか。食管制度は国の責めに帰するものではないのか。だとすれば国の負担を明確にさせる必要があるのではないかということであります。私に言わせてもらいますならば、今回の知事のこの問題に対する措置は、国の負担を地方に転嫁する方針をより助長し道を開くことになり、今後の
財政運営をますます困難なものにするのではないかと心配するわけであります。この点についての知事の見解をお示しください。 次に、この道が開かれるとすれば、県職員の給与つまり
人事委員会勧告は県の責任でなされることです。今さら
人事委員会勧告の法的拘束力を云々する必要はないと思います。憲法に定められた労働基本権を奪った代償として
人事委員会の勧告は絶対的なもののはずです。一昨年は完全凍結、昨年は大幅抑制、ことしこそは完全実施すべきだと考えますが、いかがでしょう。 知事が提唱される活力と個性と潤いに満ちた強い熊本づくりの原動力となるのは人です。今やどうなるかを問う時代ではない。何ができるか、どうするかを考え実行するときであるという細川知事の理念が今県庁舎内に息吹始めたと言われております。今こそ意欲に燃える県政を確立するためにも思い切った決断があってもよいのではないかと思いますが、いかがでしょう。 次に、二十一世紀ふるさとづくりについて伺います。 知事は、活力と個性ある郷土を築くために、住民と行政が一体となってそれぞれの地域特性を生かしながら、民間の活力を積極的に取り入れつつ、創意と工夫を凝らした
地域づくりに取り組むとされ、「
くまもと日本一づくり運動」を提唱され、展開されております。私どももその意は十分理解されるところであり、百八十万県民挙げての運動として発展させなければならないと考えているところであります。 そこで、率直に申し上げるわけでありますが、民間活力を生かしていく視点は大いに結構だと考えますが、このところ知事の施策の中に、ひがみかも知らないが、中央の特定資本の活用というか動きが目立ってきているような気がいたします。 確かに、知恵で築くあすの
地域づくりのためには、すぐれた民間活力を導入することの必要性はあるでしょう。
地域間競争の時代、他に一歩先んじることが勝利をもたらすものかもしれません。しかし、急がば回れということわざもあります。私は、せっかくできたテクノ財団に結集される地元企業資本の知恵で築くあすの
地域づくりもあるのではないかと思うわけであります。 本議会の補正予算で出されております熊本の味フェア、熊本フェア開催事業なども結構でしょうが、これまでの「くまもとの観光と物産展」などと比較して余りにも離れ過ぎた感のある企画が、それも聞くところによると、企画開発部、
商工観光労働部、農政部、林務水産部、教育庁の五部局十五課の大型企画が、あたふたと補正予算の中で出てくるなど私には奇異な感じがいたします。やれ
行政改革、合理化、効率化という今日の行革フィバーの中で、一夜にして一千五百万円もの県費が熊本の味を賞味する形で、熊本で消費されるならまだしも東京で吹き飛ぶという感じです。また熊本フェアー関係事業に六千万円を費やす計画ですが、これらの企画はまさに県民の県費節約の意識を逆なでする企画であると言われても私はやむを得ないと思うわけであけます。 知事は、この一連のフェア事業でどれだけのメリットがあると考えておられるのか、投資額に対比して見返りメリットの額も含めて明らかにしていただきたいと思います。また、熊本フェアを東京・西武デパート池袋店に設定されているようでありますが、数あるデパートの中で西武デパート池袋店に設定された理由は何かを聞かせてください。 さらに、これと関連して、西武鉄道グループによる阿蘇郡阿蘇町での総合観光レクリエーション開発をめぐっての阿蘇国立公園の線引き見直し問題がマスコミで取り上げられています。つまり、国立公園の特別地域をゴルフ場等に転用することについて、線引き見直しを県が環境庁に打診しているというものであります。 このところいろんなところで中央依存というか、それも特定資本との提携が印象づけられます。それにはそれなりの理由があるでしょう。県民の理解を得るために知事の所見をお聞かせください。 〔
知事細川護熙君登壇〕
◎知事(
細川護熙君) 六十年度
予算編成に当たっての所信について数点にわたるお尋ねでございましたが、まず、国からの一方的な
負担転嫁に対してどう認識をし、どのように対処するのかということでございました。 国の昭和六十年度
予算編成作業は、現在年内編成に向けて作業が進められている段階でございますが、御指摘のとおり、社会保障、義務教育、
公共事業等につきまして、地方に対する
国庫補助金等の補助率を引き下げて地方に
負担転嫁を図ることが検討されているようであり、私としても国、地方を通ずる財政制度の根幹にかかわる重大な問題として受けとめているところでございます。 国の
財政負担を軽減するため、国、地方の間の機能分担のあり方を根本的に見直すことなく、
国庫補助負担率を一律に引き下げ一方的に負担の転嫁を図ろうとすることは、現下の国家的課題である国、地方を通ずる
行政改革の理念にもとるものであり、国と地方との
財政秩序を乱すのみであってまことに遺憾なことであると受けとめております。
国庫補助金の一律引き下げが実施されますと、直ちに
地方負担の増加になり、現在編成作業を進めている本県の六十年度予算にも重大な影響を与えることになりますので、県としては、午前中甲斐議員にもお答えを申し上げましたように、
国庫補助金の一方的な一律削減につきましては、今後とも引き続き
全国知事会等を通じまして国に対して強く是正を求めていく考えでございます。県議会におかれましても一層の御支援、御協力を重ねてお願いを申し上げたいと存じます。 それから次に、他用途利用米制度につきましては、本年度から水田利用再編第三期対策の一環として新たに導入されまして、転作の限界への対応、加工原材料用米の安定供給の確保あるいは水田生産力の有効利用などの諸事情から制度化されたものでございますが、この制度の実施に当たりまして、他用途利用米の価格が同一品位規格の主食用米と比較をして低水準であること等から、生産農家の十分な理解が得られていない状況にあると受けとめております。 米の需給の不均衡が今後とも長期にわたる見通しのもとでは、転作の定着化を図ることを基本に需要の動向に対応した生産性の高い農業を確立することが重要な課題であるというところから、本県として既に契約されております他用途利用米の出荷を促進するため所要の措置を講じたものでございます。 なお、他用途利用米制度を含めまして水田利用再編対策につきましては、県としても、市町村や農業団体等と連携をとりながら、生産者の合意が形成されるように、必要な制度、条件の整備等を国に対して強く要望してまいりたいと思っております。 それから三つ目は、
人事委員会勧告を完全実施することについてのお尋ねでございました。 給与改定に係る
人事委員会勧告制度の意義につきましては、これまでも申し上げているとおり十分理解しているところでございますが、しかし、御承知のとおり昨年、一昨年と給与改定の抑制をせざるを得ない状況が続いており、本年も政府は、現下の諸情勢を総合的に勘案した上で、三・四%内の給与改定をする旨の閣議決定をしたところでございます。 本県職員の給与改定につきましては、県勢浮揚のために日夜職務に精励しておられる職員の皆さんの気持ちも十分理解できるところではございますが、地方公務員法の規定からいたしましても、国の取り扱い、他県の状況等を勘案する必要がございますし、また財政上も県独自の給与改定には莫大な財源を必要とすることにもなりますので、国、他県と異なる措置をとることはなかなか容易ではないと考えているところでございます。 なお、本年度の給与改定につきましては、国の給与法案の取り扱いがおくれておりまして、今後とも職員団体と具体的な話し合いを精力的に重ねていくことになるわけでございますが、遺憾ながら現状では国に準じた取り扱いで御理解を求めざるを得ないのではないかと考えているところでございます。 それから次に、熊本フェアの開催についてのお尋ねでございますが、この問題につきましては午前中の甲斐議員の質問にもお答えをしたところでございますが、まず、そのメリットにつきましては、この熊本フェアを開催する趣旨は、
地域間競争の時代を勝ち抜くための
地域開発を進めていく上で、本県の弱点ともいうべき付加価値を高める技術、流通経路の開発あるいはPR等の面を、消費者の情報やニーズというものを十分に把握をして豊富な経験を持つ民間企業の知恵と力を活用して行政が積極的に支援するとともに、大きく変わりつつある熊本の姿について多くの人たちの理解を得ようとするものでございます。 また、熊本の味フェアにつきましても、熊本フェアと趣旨を同じくするもので、その前夜祭的なものとして、各界で活躍されている方々に味覚や視覚を通じて熊本のすばらしさを知っていただき、今後何かと熊本の力となっていただくことを期待をいたしているところでございます。 大きく進展している今日の情報化社会の中にありまして他の地域と競争しながら
地域開発を進めていくためには、情報の集積を図ると同時に、多くの人々に熊本についての情報を提供していくということが大変重要でありますし、そのような観点から、この二つのフェアを通しまして、本県の持つよさというものを大消費地における少しでも多くの方々に御理解をいただけるならば、本県産品の流通なり、あるいは観光客の誘致なり企業の誘致なり、本県の
地域開発にとりましていろいろな面でメリットがあるのではないかと考えているわけでございます。 それから、西武デパート池袋店選定の理由でございますが、さきにも申し上げましたとおり、特に西武デパートが本県の置かれている現状を最もよく理解をしておりまして、既に有望産品の発掘でありますとか付加価値を高めるための改善指導を手がけていただいているところでありまして、今後におきましても商品開発、販路の拡大あるいは観光資源の活用等の面で有効な示唆が期待できること、さらには若者層に最も人気のある特質等を考慮いたしまして、今回、フェアの目的を達成する上で最も適切であると考え選定をいたしたところでございます。したがって、従来の観光物産展と異なり、会期終了の後におきましても継続して協力が期待できるものでございまして、本県の
地域づくりの推進に役立つものと考えております。 なお、阿蘇国立公園における特別地域の線引きの見直しについてでございますが、本年度はちょうど五年に一度の公園区域の定期的点検の時期に当たっておりますので、調査を行った結果、一部に特別地域と普通地域の線引きが不明確になっている箇所がございますために、これを明確にするよう現在環境庁と事務的に作業を進めているところでございます。 〔林田幸治君登壇〕
◆(林田幸治君) 補助金カットなど地方への
負担転嫁の問題については、知事も言われるように、国だけが行革を進めているわけではないわけでありまして、今回とられようとするこの措置は国の横暴として絶対許してはならない、こういうふうに思います。言われますように、全国知事会なりその他あらゆる団体を通して最善の努力を傾注されるように改めて要請しておきたいと思います。 他用途利用米の対策助成費の問題でありますが、知事が言われますように、契約された多用途利用米の出荷を促進するための措置である、これからの利用米制度を含めて水田利用再編対策について生産者の合意が得られるように制度、条件の整備を国に要望していきたい、こういうことでありました。私の質問に対して的確な答えにはなっていないという感じがいたします。 私は、この他用途利用米の問題については、制度導入から今日まで協議が行われて一応制度が、先ほど申しましたような経緯を含めて認められてきたことだというふうに理解をいたします。それを地方が負担するということは、みずからが政府の地方への
負担転嫁を認めたということにならないのか、こういうふうに思うわけであります。改めて国の負担を強く求めていくことを申し上げておきたいと思います。
人事委員会勧告の完全実施につきましては、職員の気持ちはよくわかるが、国や他県と異なる取り扱いをすることは困難である。まさに言われることは毎年同じことであります。ことしは三年目なんです。活力と個性と潤いに満ちた人々が何ができるかを考え、実行するときだと知事が言われるならば私は決断があってもいいのではないかというふうに思うんです。この問題については、あすまた一般質問で私どもの柴田議員から申し上げることにいたしております。 熊本の味フェア、そして熊本フェアの関係につきまして、豊富な経験を持つ民間企業の知恵と力を活用すること、そして熊本県の持つよさを代表し、東京の皆さんに知ってもらうこと、それを通して県産品の流通、観光客の誘致、企業の誘致など本県の
地域開発にとってはかり知れないメリットがある、金銭でははかれないものだと、こういうお話でありました。また、西武デパートでこれを行うという関係については、西武が本県の置かれている実情というものについて最もよく理解をしている、既に有望産品等の発掘その他手がけてきており、これまた全国一の規模を持つ若者に人気がある、そしてフェアに適切なものとして選定をしたというお話でありました。それなりに言われることは私にもわからぬではありません。 ただ、私はここで言っておきたいのは、質問の中でも急がば回れということわざもあるということを申しました。今、県の中堅職員等の気持ちの底流に次のようなことがあるというふうに聞いております。一つは、知事は物事を急ぎ過ぎるのではないか。二つ目に、知恵を出せというのもわかる、アイデアも評価するが、余りにもトップダウン方式、つまり知事が東京で決めて部下に押しつける――押しつけるというのはちょっと語弊があるかもしれませんけれども、ともかくトップダウン方式というのが多いのではないか。三つ目に、もっと腰を据えて地に着いた仕事をしたいという気持ちが多いというふうに聞いております。こういう職員の気持ちを大切にして県政を進めることもまた大事なことではないか、こういうふうに思うわけであります。 阿蘇国立公園の線引き見直しの関係については、不明確な点があるという形で、環境庁阿蘇国立公園事務所の諮問によって資料を提供したというお話のようでありました。しかし、新聞各紙の報ずるところによりますと、私は特定資本という形で申し上げましたけれども、その施策が県の施策に絡みつくような、そういう行政が目立っているような感じがするわけであります。西武のレジャーランド、線引き見直し、たまたまそこに合致をしたというふうに言われていますけれども、私は県民のすべてが理解をし協力をしていくそういう体制というものを、急かば回れではないけれども努力をすることも大事じゃなかろうか。そして御存じのテクノ財団では、当初十五億の民間の寄付を仰いでいた。しかし、もう二十億を突破するという協力の関係にあるわけであります。地元の資本、その熱意というものを生かしていく、そういう努力もあわせて考えてもらわなければならないことではないか、こういうふうに申し上げておきたいと思います。 続いて次の質問に入らせていただきます。チッソ水俣の諸問題についてであります。 環境公害の原点とも言われる水俣病が、公式に発見されて三十年を経過しました。この間、水俣病問題は県政の最重要課題として何にも増して真剣に取り組まれてまいりました。しかしながら、三十年の長い年月を経てもなお解決への展望を見出すことのできない、何かやりきれない、しかし、何かすっきりした解決の場はないのかと、その都度、苦悩しながら同じことを繰り返してきている、そんな気さえ私にはいたします。しかしながら、県政が続く限り現実には避けて通れない課題として、また再びこのような公害が繰り返されないような、そういう行政が続けられることを肝に銘じて対処しなければならない、日本社会党はそう考えております。 さて、五十三年十二月議会の第一回県債発行から数えて今議会への第十三回県債発行額二十四億四千二百万円が認められるとすれば、総額三百十億四千八百万円の莫大な貸し付けがチッソという一民間企業に貸し付けられることになるわけであります。それは五十九年度県予算の六%に当たり、総務費と労働費と議会費を合計してもおつりがくると、このように見れば大きさが実感として伝わる気持ちがいたします。しかし、それだけではないのであります。
水俣湾堆積汚泥処理事業つまりヘドロ県債は、これまで八回、計百十九億一千七百万円が立てかえとして発行されており、これを合計すると四百二十九億六千五百万円にもなるわけであります。加害者であるチッソが、当然のこととして、PPPの原則、原因者負担の原則により、水俣病患者補償やヘドロ処理を行うべきものを、企業経営の危機的状況から、閣議了解はあったにしても、六年間も県が県債発行で、患者救済とチッソの再建、それを通して雇用を維持し、水俣・芦北地域の基盤確立に努めてきたことは、県政史上に異例のこととして残るものではないだろうか私は思います。しかし、この六年間、絶えずチッソに不測の事態が起こったらどうするのか、それが議会のそして執行部の苦悩であったわけで、これからも今の状態が続けばそれを避けることができない、それが今の姿ではないのか。したがって、県債に対する我が党の今の立場は、原点に返る、緊急避難的な措置として附帯決議八項目で、第一回の支援に踏み切ったその原点に返って国が明確な態度を示す、そのこと以外に解決の道はない、こういうふうに考えるわけであります。 政府が六十年度以降、チッソ県債を継続発行に踏み切るとすれば、五十三年の県議会附帯決議八項目に沿って明確な態度を示すこと、少なくとも、環境庁長官と細川知事との国が一〇〇%保証するという覚書の締結、現行六割の資金運用部資金の充当率を引き上げる、チッソヘの金融支援で水俣工場の活性化を図るなど明確にするときだと考えるわけであります。午前中の質問にお答えになりましたけれども、改めて政府折衝の現状なり知事の見解を伺いたいと思います。 次に、ヘドロ処理の問題であります。 昭和四十九年にスタートして六十四年度に至る四百三十億円の
水俣湾堆積汚泥処理事業、つまりヘドロ処理事業も裁判での中断はありましたが、今順調に進み五十九年度までの進捗率は六二%と聞きます。 御承知のように、今回ヘドロ処理事業の見直しが行われあわせて監視体制の緩和が行われました。我が党はかねてから、ヘドロ処理工事による二次公害を絶対に起こしてはならない、そのための監視体制を強化することを要請し続けてまいりました。したがって、今回の監視体制の緩和、見直しについては、当該漁協、患者団体とともに反対の立場をとりましたが、いわゆる監視委員会は附帯決議をつけることを確認し、答申を行ったわけであります。要するに二次公害は絶対に起こさないということであります。監視体制の緩和、見直しをされた背景について、住民の不安を解消するために知事の見解を求めたいと存じます。 次に、水俣病患者の認定業務の促進についてであります。 五十九年十月末現在の患者申請数は一万四百三人となっているようであります。処分済み数が五千三百七人、未処分数が五千九十六人、大体半分半分です。処分済み数の中で、患者に認定された数が一千六百四十四人――これは昭和四十五年から五十九年の十月までです。棄却数が三千六百六十三人となっております。また未処分数の中で、未診査数が三千八百五十九人、答申保留者が一千二百三十七人こういうわけであります。しかし、調査してみますと、棄却された人が再申請される――大体六〇%から七〇%程度が再申請されるということでありまして、これまでの申請数一万四百三人の中で実人員は八千二百九十一人と大体の調査が出ているようであります。問題は、今日なお五千九十六人の未処分の患者がおられるということであります。 この未処分患者が水俣病であるかどうか、それを決めるのはいわゆる水俣病認定業務の促進以外にはその道はない、これが現実であります。今、県では細かな努力を続ける以外に道はないということで、百五十人検診・百三十人審査体制に沿って、患者に対して検診センターから二週間前にはがきを出す、そして出席の可否を尋ねる、穴があけばその穴を埋める努力をする、あるいは拒否者には手紙を出して、いつなら検診を受けられるか、受けられない理由は何かなど、まさに手の込んだ、いや、心を込めて細かな努力が続けられているようであります。関係者の御労苦に改めて感謝を申し上げたいと思います。しかし、これまでのところその実が上がっているとは言えない。 そこで、我が党の意見でありますが、私どもはこれまで幾度となく現地水俣や芦北を訪れ、市長や患者の各団体を含めた諸団体とも話をしながら解決の道を探ってまいりました。御案内のように、ことしも六月の四日、日本社会党熊本県本部・熊本県労働組合総評議会合同水俣病問題調査団をもって調査に当たりました。そして「水俣アピール 五つの提言」をまとめ内外に明らかにすると同時に、国政を初めそれぞれの部署で懸命な努力を行っているところであります。 そこで、なぜ関係者の大変な努力にもかかわらず水俣病認定業務がおくれるのかということであります。その基本は行政に対する患者団体の不信がある、それが検診拒否にも通ずるということであります。したがって、認定促進の道はこの不信を取り除くことであります。その道は、私どもとしては調査の結果を踏まえ、次の四点に集約できるのではないかと考えております。 まず第一点目は、認定業務のおくれは行政の怠慢で違法とした昭和五十一年の判決を遵守し、不作為違法の状態を解消すること。 二つ目に、処分のおくれは故意過失で損害を賠償せよとした昭和五十八年判決を不服とした控訴審を取り下げること。 三つ目に、認定業務についての五十三年環境庁次官通知を撤回し、四十六年次官通知に戻し、患者と話し合い、患者の理解と協力を得て検診認定業務を促進すること。 四つ目に、長期の医学的判断の保留者は、法の迅速に救済する趣旨に基づき行政で認定する方向で処分すること。我が党は、以上の四点が実行されることによって、認定業務の促進は可能であると考えるわけであります。この点についての知事の所見をお聞かせください。 〔
知事細川護熙君登壇〕