↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1 ◯議長(香原 勝司君) おはようございます。ただいまから本日の会議を開きます。
日程に従い一般質問を行います。順次発言を許可いたします。吉田浩一君。(拍手)
*吉田(浩)議員質問
2 ◯四十七番(吉田 浩一君)登壇 皆様、おはようございます。
自民党県議団の吉田浩一でございます。通告に従い、野生動物の捕獲管理について質問いたします。
今年の暑さは異常な暑さでした。この異常な暑さによる生息地の餌不足のせいかもしれませんが、北海道や東北、さらには中国地方において野生の熊が住宅地に出没し、人を襲うなどの人的被害が多発しております。
皆様も御存じのとおり、本県においてはイノシシや鹿による農作物被害も多く発生している状況で、イノシシ、鹿は福岡県第二種
特定鳥獣管理計画により捕獲の推進等が進められ、適正な生息状況を目指す努力が行われています。
このような中、本県では令和三年に福岡県
ワンヘルス推進基本条例を制定しました。この条例では、人と動物及びこれを取り巻く環境は、生態系の中で相互に関連し、影響し合う一体のものであることから、何人も、これらを
ワンヘルスとして守り、次世代につなげることを基本理念としています。
ワンヘルス推進基本条例の理念を見事に体現しているものとして、人と野生動物とのすみ分けを図り、農作物の被害を軽減するための里山における緩衝帯、いわゆる
バッファゾーン設置の取組が挙げられています。
この人と野生動物のすみ分けについては、
鳥獣保護管理法、
外来生物法など、複数の法令が存在します。今回は、これらの法令に焦点を当てて質問していきたいと思います。
外来生物法が適用される外来生物問題については、既に我が会派において、昨年六月の定例会の代表質問において
桐明和久議員が質問したところです。県が実施する
特定外来生物の防除の具体的な取組について尋ねたところ、知事からは人の健康や生態系への影響、
農林水産業への被害状況を勘案し、緊急度の高い種から優先的に防除する、専門家の意見を踏まえ、
防除対象種の選定を行う旨の答弁がありました。
その後、
防除対象種を
アライグマとしたこと、専門家や市町村、関係団体の意見を踏まえ、福岡県
アライグマ防除実施計画が年度内に策定することなどが
ワンヘルス・
地方分権調査特別委員会において、執行部から報告がありました。
そこで、まず、この
アライグマ防除実施計画の策定の趣旨、県や市町村の役割分担、参加する市町村の現時点での見込みについてお尋ねいたします。この
アライグマの防除については、今回の計画に参加する市町村では、狩猟免許をお持ちでない方でも捕獲に参加できると聞いています。県内の様々な方が生態系等に悪影響をもたらす
特定外来生物アライグマの根絶に向けて協力していくという考え方は、大いに共感できることです。
一方で、狩猟免許をお持ちでない方が参加することについて、一抹の不安もあります。
アライグマと似た中型の哺乳動物として、タヌキやアナグマなどのほか、ハクビシンなどが挙げられます。お互い似たような動物で、素人の方にとって判別は難しいのではないかと聞いております。
ところが、今回の
アライグマ防除実施計画によって捕獲できるのは、
アライグマだけです。タヌキ、アナグマ、ハクビシン、どれも
鳥獣保護管理法上は許可がなければ捕獲できないことになっています。
アライグマ以外を錯誤捕獲した場合は、違法になるわけです。
そこで、次にお尋ねします。狩猟免許をお持ちでない方が間違って
アライグマ以外の動物を捕まえないようにする、この違法状態を回避するために、県としてどのような対策を取っていくのか。また、錯誤捕獲を回避できず間違えて捕まえてしまった場合の対応について、お答えください。
最後に、
特定外来生物と有害鳥獣それぞれの
被害防止対策の連携についてお尋ねします。野生動物の被害については、生態系等に対する被害防止を目的とした
外来生物法以外にも、主に
農林水産業への被害防止を目的とした
鳥獣被害特別措置法が大きな役割を果たしています。二つの法律は目的が異なるため、国レベル、県レベル、
市町村レベルでもそれぞれの所管が異なることが多いのが実情です。
本県も例外ではなく、
外来生物法は環境部、
鳥獣被害特別措置法は
農林水産部が所管しています。我が会派の渡辺勝将議員も昨日質問されましたが、関連部局の連携が必要とされるところです。
そこで、お尋ねします。来年度から実施する
アライグマの対策について、関連部局においてどのように連携を図るのかお伺いします。
以上で私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
3 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。
*知事答弁
4 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 皆さん、おはようございます。御答弁を申し上げます。
アライグマ防除実施計画についてお尋ねがございました。本計画は、
アライグマに関する生息状況、被害状況を踏まえ、県が市町村、
防除従事者、地域住民と連携して効果的な防除を推進するために策定するものでございます。
この計画において、市町村は地域の
防除従事者と連携した捕獲、地域住民との連絡調整、
被害予防対策を担うことといたしております。県は捕獲した
アライグマの処分、防除の担い手を育成するための講習会の開催、
アライグマ完全排除に向けた生息状況の把握分析などを担うことといたしております。
現時点では、三十八の市町村が県と連携して防除に取り組む意向を示しておられまして、これを踏まえ、県が今月中にこの計画を策定し、計画に記載の事項のうち防除の目標、期間など、
外来生物法が定める事項を公示する予定でございます。
錯誤捕獲対策についてでございます。
アライグマの防除に当たっては、錯誤捕獲を防止する観点から、計画に参加する市町村に無償貸与いたします
アライグマ専用捕獲器を購入するための経費を今議会に提案させていただいております。この専用捕獲器は、
アライグマや他の動物の習性、能力、体型などを勘案して設計されておりまして、既に導入しております地域においては錯誤捕獲が発生しなかったということが確認されております。
さらに、
防除講習会において、足跡、尻尾、体毛の特徴など、
アライグマと他の動物との判別のポイントを解説し、実際の捕獲現場において
防除従事者が適切に対応できるように努めております。
錯誤捕獲がもし発生した場合には、原則として捕獲した鳥獣はその場で逃がす必要がございます。例外といたしまして、アナグマなどの有害鳥獣につきましては、
鳥獣保護管理法に基づく
被害防止計画を定める市町村においては、農地など、自らが管理する土地で捕獲する場合にあらかじめ当該市町村から捕獲許可を受けることで捕獲が可能となります。このため、今後、
防除講習会などにおいて
防除従事者に対し、必要に応じ許可を取るよう促してまいります。
アライグマ対策における関連部局の連携についてでございます。この計画の策定に当たりましては、環境部と
農林水産部が緊密に連携を行い、生息状況を分析するための捕獲データを収集いたしますとともに、農業団体や猟友会、市町村などからの御意見をお伺いし、農業被害等の実態把握を行ってきたところでございます。
アライグマの完全排除に向け、両部がそれぞれ取得した野生動物の捕獲日、地点などの情報を登録、集積し、重点的に捕獲を行う地域を分析するシステムを導入することによりまして、
アライグマの効率的な捕獲を進めていくことを考えており、必要な予算につきまして今議会に提案させていただいておるところでございます。
今後とも環境部と
農林水産部が緊密に連携し、
アライグマの推定生息数や農業被害額の推移を検証しながら、完全排除に向けたさらなる取組を進めてまいります。
5 ◯議長(香原 勝司君) 坪田晋君。(拍手)
*
坪田議員質問
6 ◯十三番(坪田 晋君)登壇 皆様、改めましておはようございます。
民主県政クラブ県議団、坪田晋です。通告に従いまして、
食品衛生法改正に当たっての
営業許可制度についてお尋ねします。我が国の食を取り巻く環境の変化や国際化、食のニーズの変化に対応し、また二〇一二年に札幌市の食品会社が製造した白菜の浅漬けによるO157の集団食中毒によって百六十九人が発症し、八人が亡くなった事件が起こり、食の安全を確保するため二〇一八年六月に
食品衛生法が改正され、二〇二一年六月に施行されました。
食品衛生法の改正により、新たにめんたいこやウナギの素焼き、アジの開きといった
水産製品製造業、鶏卵から卵殻を取り除いたものの製造を行う液卵製造業、高菜漬けや山汐漬けといった
漬物製造業などが追加され、営業許可が必要なのが三十二業種となりました。
新たに追加された業種について、営業継続を希望する事業者は
改正法施行日から三年後に当たる本年五月三十一日までに営業許可を取得する必要があります。営業許可には、基準を満たした施設、
食品衛生責任者の設置、HACCPに沿った衛生管理の実施などが必要となり、事業者によっては大規模な施設の改修などが求められることとなります。
とりわけ
漬物製造業においては、高齢の方が自宅で製造しているものを販売しているケースも多く、許可を取るために設備改修にかかる多額の費用負担が困難で、漬物づくりを断念するしかないという声を多く聞きます。
野菜の生産から漬物の製造販売まで行う業者や、野菜を仕入れて漬物の製造販売をする事業者とあり、私の地元博多区にある吉塚商店街では野菜を仕入れて
漬物製造販売を行っているお店が三軒あり、うち二軒は新たな施設基準への変更に対応できず、廃業を検討しています。
漬物はこれまで、届出をすることで製造販売が可能でした。本年二月末時点では、福岡県域での届出は三千六百五十二件、一方で許可取得は三百十九件。福岡市の届出件数は令和三年六月時点のものですが百五十三件、許可取得は五十五件。北九州市は、法令改正以前の届出は任意によるものになります。届出三十一件、許可取得は三十二件。久留米市は届出三百十三件、許可取得は三十六件となっております。
届出件数については二〇一三年からの延べ件数ということでしたので、中には廃業の届出をされていない方もいるかもしれませんが、それでも届出件数と許可件数に大きな開きがあることは明らかです。期限まで三か月を切った今、営業許可を取った事業者は県域において一割にも達しておらず、手だてを打たなければ、この件を引き金に多くの事業者が廃業してしまうおそれがあります。
融資を受けて整備を行ったとしても、高齢を理由に返済の見通しが立たないと相談も断念されている方や、改正の内容について詳しく知らないという声すら聞こえてきます。このままだと、道の駅や商店街から多くの漬物が姿を消し、県民の皆さんがなれ親しんだ味や日本の食文化が失われ、高齢の方のなりわいや生きがいさえ奪いかねません。
そこで、知事にお尋ねします。法改正に伴い、新たに
営業許可対象となった
漬物事業者に対して、どのような周知の取組を行ってきたのか、お伺いします。
二点目に、許可申請に当たって具体的にどのように施設を整備する必要があるのか、お教えください。
福岡県では、
農林水産部の来年度予算案に漬物を製造する農家らがグループをつくって共同で使用する加工室や給排水設備などの改修費に対して、上限を百五十万円として二分の一を補助するための関連費、約四千五百万円を盛り込んでいます。この予算案には、個人の方や農林業者以外の
製造販売者は含まれていないと聞いています。
新たな施設基準の設定に当たり、家族経営などの
小規模零細事業者の事業継続に支障を来すことが想定されるとして、国は都道府県に対して事業者の事業継続への配慮を求め、地域の実態に合わせた基準の弾力的な運用を可能としています。また、許可取得の意向があるものの期限内に施設の改善が難しい場合には、将来的な計画を含めて許可を行うことを可能としています。隣の山口県では、事業者から寄せられた声から実態調査を行った上で、施設基準の一部緩和措置を行い、
小規模零細事業者の事業継続へ配慮したとも聞いています。
最後に、今後、許可取得に向けた事業者からの相談に対しどのような対応が考えられるか、お聞きします。
以上、御答弁よろしくお願いいたします。(拍手)
7 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。
*知事答弁
8 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁申し上げます。
食品衛生法改正に当たって、
営業許可制度が設けられました。これについての事業者への周知についてお尋ねがございました。平成三十年六月に
食品衛生法が改正されまして、
営業許可業種の見直しが行われました。その後、令和元年十月に同法施行令が改正をされ、これまで届出制でございました
漬物製造業が新たな許可業種として追加されたところでございます。この許可を取得するに当たっては施設の整備が必要でございますことから、既存の事業者に対しては猶予期間が今年の六月まで設けられたところでございます。
県では、令和二年三月に条例で施設基準を規定をいたしました。その後、
食品関係団体、あるいは直売所など約三千六百の既存の事業者等に対し許可が必要なこと、あるいは許可を取得するに当たっては施設の整備が必要なことなどの改正内容をまとめたチラシを配付したほか、直売所等が主催します講習会での説明、あるいは
県ホームページへの掲載などにより、広く事業者の皆様に周知してまいりました。引き続き、新たな許可制度について事業者の皆様への周知を行ってまいります。
営業許可取得に必要な施設整備についてでございますが、県では福岡県
食品衛生法施行条例において、この施設基準を定めております。具体的には、主な施設基準として製造室は住居や他の食品を取り扱う場所と区分けをし、四方が壁で囲われ、床と天井を備えた構造であることといたしております。
また、製造室の床は土間や畳ではなく、清掃、洗浄ができる素材とすることや、製造室には手洗い設備としてレバー式またはセンサー式などの蛇口を設置することといたしております。
許可取得に向けた御相談への対応についてでございます。今回の法改正、これは議員からも御紹介がございましたが、過去に死者を出す大規模な食中毒事件の発生や、食中毒の
発生リスク等を踏まえまして、
漬物製造業が食品衛生上の配慮を特に要するものとして新たに許可業種に追加され、これを受け、県条例で施設基準を定めたものでございます。この施設基準は、県民の皆様の命と健康を守り、安全で衛生的な漬物をつくるための基準でございまして、事業者はこれに基づき施設を整備する必要がございます。県といたしましては、事業者からの施設の改修や必要な設備についての御相談には事業者の皆さんの意向をお聞きしながら、できる限り費用をかけずに施設基準を満たすことができるよう、助言、指導を行っているところでございます。今後とも事業者に寄り添ったきめ細かな助言、指導を行ってまいります。
9 ◯議長(香原 勝司君) 坪田晋君。
10 ◯十三番(坪田 晋君)登壇 知事より御答弁をいただきました。県域においては、平成に入った一九八九年以降、漬物に起因した食中毒は確認されていないと聞いています。
そこで、知事に三点要望させていただきます。
一点目に、施設基準を地域の実情に合わせ、緩和をはじめとした弾力的な運用を行うこと。
二点目に、来年度予算で
農林水産部が漬物製造を行う
農林事業者らがつくるグループへの支援を検討されていますが、対象など、柔軟な対応で広く制度活用できるようにすること。
また、三点目に、六月一日以降も状況や事業者の声を基に本県の実情に応じた対応を柔軟に行うことで、漬物の製造販売をなりわいにしている事業者の生活も取り残されないよう要望しまして、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
11 ◯議長(香原 勝司君) 永島弘通君。(拍手)
*
永島議員質問
12 ◯十番(永島 弘通君)登壇 公明党の永島弘通です。通告に従いまして、若者支援策、
奨学金返還支援制度について質問をいたします。
本制度につきましては、我が会派の壹岐、松下両議員も質問を通じこれまで執行部に求めてきたところでございますが、時代の大きな変化に伴い、いま一度質問いたします。
日本学生支援機構が行った令和二年度
奨学金実態調査では、大学生の約半数が何らかの奨学金を受けながら学んでいる状況です。また、大学生の収入額は前回の調査に比べ減っており、全体として親の仕送りの減少が見受けられました。その背景には、物価高騰による国民生活の圧迫の影響が容易に推察でき、不足分を穴埋めするためにアルバイトや奨学金で補填をしている現状があります。
民間企業が大学四年生及び新卒三年目までの社会人に対して行った二〇二二年度アンケートでは、奨学金の返済を不安に思うと答えた方は五一%と半数を超え、社会人においては返済の負担感があると答えた人は七二%でした。奨学金は、通常、数百万円単位に上り、支払い期間は最長二十年です。
日本学生支援機構によれば、平成二十七年度からの五年間の奨学金の
年間延滞発生件数の平均は七・二%で、返済できない事情をアンケートで聞くと、「本人の低所得」が六二%に上りました。
また、仮に奨学金の返済が三か月以上滞っていわゆるブラックリストに載った場合は、クレジットカードやローンの契約が難しくなります。リストから名前が消えるのは掲載から五年から十年後ということから、毎月の返済の負担に加え、完済後の人生設計に多大な影響を及ぼします。
先日、身近な先輩から息子さんの話をお伺いしました。奨学金の返済を十年続け、三十二歳にして三百二十万円残っており、将来が描きづらいから結婚はしないと言っていた息子さんが彼女を連れてきた。先輩は結婚祝いの前払いだと息子さんに告げ、肩代わりしてあげたらしいのですが、親の支援がなければ希望ある将来を閉ざさざるを得ない若者も少なくないとの一例を実感を持って語られました。
そもそも、教育を受ける学生間の格差をなくすための奨学金制度が、コロナや物価高騰など、時代の大きな変化もあるとはいえ、卒業後の人生設計の足かせとなっては本末転倒です。
ここで知事にお伺いをいたします。
国では
給付型奨学金を増やしつつある中、県も歩調を合わせ、若者の
経済的負担感を減らすための
奨学金返還支援制度を行うべきと考えますが、それが先々の少子化対策につながるとの観点も含め、知事の御所見をお伺いいたします。
国は、若者の地方定着を後押しすべく、
奨学金返還支援制度を導入した自治体へ財政支援を行っています。また、勤務先企業が従業員に代わって奨学金を返済できる制度を
日本学生支援機構が二〇二一年四月からスタートしたこともあり、現在、多くの自治体や企業が導入を進めています。企業が従業員の代わりに
日本学生支援機構などに直接支払いが可能になったことで、企業と従業員双方に新たなメリットが生まれました。
まず、従業員側では、返済額の全額または一部を会社が支払ってくれることで、
実質手取り額がアップします。以前は、会社の支援策として従業員の給料に上乗せするしか方法がありませんでしたが、これでは本当に返済に充てているのか担保されない上、上乗せ分には所得税がかかり、負担増となっていました。しかし、この制度で所得税が非課税となり、支払う税金がなくなります。
企業側では、支払った従業員の奨学金分を損金算入することで法人税を減額でき、
賃上げ促進税制の対象にもなるなど、税務上のメリットが発生します。また、制度を導入した企業は
日本学生支援機構の
ホームページに名前が掲載され、大学側へも紹介がなされることで、人材への投資に手厚い企業として会社のPR効果が期待をできます。
現在この制度を導入する都道府県は三十六都府県で、人口が集中する東京都も含まれています。令和四年に策定をした県の
人口ビジョンでは、他県との転入出の動向が年齢層別に示されておりますが、入学時期の十五歳から十九歳は転入超過であるのに対し、二十歳から二十四歳の就職時期は転出超過です。
また、最新のデータである令和五年
住民基本台帳人口移動報告でもトレンドは同じで、県全体は転入超過、二十代のみ転出超過、地域別に見ても、二十代は東京圏に六千三百九十四人の転出超過となっております。
つまり、現状でも就職などによる東京圏への若者流出に歯止めがかかっておりません。私は、その対策として本制度の導入が県外流出に一定の効果を上げると思いますが、知事の御見解をお伺いいたします。
一方、本県では、医師、看護師、介護福祉士、保育士等を目指す学生を対象とした
修学資金貸付金制度を実施していると伺っております。この制度は、学校卒業後に県内の病院や施設に
一定期間勤務をすると貸付金の返済を免除するというもので、これは大変すばらしい施策と評価をいたします。しかし、本県のほかの業界には同様の制度はないと伺っております。
そこで、知事にお伺いいたします。
人材不足は現在どの業界でも同じかと理解をしておりますが、今後このすばらしい制度の対象の業種を広げるお考えがないものか、お聞かせください。
今、日本経済は空前の物価高騰、株価も史上最高値を更新、大企業を先頭に過去最高のベア要求に、いよいよ今後は中小企業がそれに続いていけるかという大きな転換点にあります。
一方、企業が業績を上げるには人手が必要なことは言うまでもなく、中小企業はその人材獲得競争の原資確保に必死です。
奨学金返還支援制度そのものは、若者の県内定着、若者支援の立てつけではありますが、競争に何とか打ち勝とうとする中小企業対策の側面もあると考えます。知事の御見解をお聞かせください。
また、仮に制度を導入した場合、例えば県内の人口流出が大きな課題となっている地域の企業には、都市部に比べ支援額を手厚くするなど工夫をすることで県境の問題や過疎地域の人口流出を止める一手にもなり得ます。その意味では、地域対策としての一定の効果もあるのではないかと考えます。
最後に知事にお伺いをいたします。
奨学金返還支援制度は、若者の県内定着、中小企業の人材確保支援、地域支援と一石三鳥のすばらしい制度と思います。特に、若年層におきましては即、手取りアップの即効薬となります。
あわせて、行政がこのような支援に取り組むこと自体が、民間もそれに続こうという機運の醸成につながると思います。
奨学金返還支援制度の創設をいま一度検討すべきであると考えますが、知事のお考えをお聞かせください。(拍手)
13 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。
*知事答弁
14 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 御答弁を申し上げます。
若者の経済的負担を軽減するということを目的とした奨学金の返還支援についてでございます。我が国では、主として独立行政法人
日本学生支援機構が奨学金の貸与や給付を実施しているところでございまして、現在多くの学生の皆さんが奨学金を利用して大学や専門学校などに進学をされております。
一方、これらの学校への進学には決して少なくない学費が必要となります。このため、各御家庭ではその費用を奨学金を利用すること以外にも学資保険や預貯金で準備をされたり、あるいは
教育ローンをお借入れになったり、あるいは学生本人がアルバイトで捻出をされたりと、様々に対応されておると承知をいたしております。
また、奨学金の利用を見てみますと、御家庭の収入の多いか少ないかということにかかわらず、幅広く普及をしているところでございます。経済的な理由から結婚や出産をちゅうちょする若者に対する支援、これは少子化対策の観点からも必要でございます。このため、県では若者就職支援センターにおける就職の支援や病児保育の無償化など、子育ての支援を実施しているところでございます。
しかしながら、議員御質問の若者の経済的負担の軽減を目的とした
奨学金返還支援制度を導入することにつきましては、大学に進学した方の中でも奨学金以外の方法で学費を捻出された御家庭やあるいはアルバイトで学費を工面された方などとの公平性というものを十分に考慮する必要がありまして、その導入には課題があると考えております。
若者の県外流出対策としての
奨学金返還支援制度についてお尋ねがございました。昨年、国が実施をいたしました意識調査によりますと、地方圏から東京圏へ移動した理由といたしまして、二十代前半では就職や進学等の回答が多く、二十代の後半では転勤や転職などが多くなっております。
また、大学卒業者等が就職する割合の高い専門的、技術的な職業が東京圏に多いということが東京圏への移動の要因の一つと考えられるとの分析がなされているところでございます。
加えまして、大学生の地元就職に関する民間の意識調査によりますと、大学生は就職先を考えるに当たって奨学金返還支援の有無よりも仕事の内容、あるいは労働条件といった企業の魅力というものを重要視する傾向がございます。
このため、県といたしましては地域の経済と雇用を支えていただいております中小企業への支援や国内外からの企業誘致などによりまして、県内各地に魅力ある雇用の場、就業の場を創出していくことが重要であると考えております。
修学資金貸付制度の対象拡大についてでございます。県では、大学や専門学校で専門分野について詳しく学び、国家資格の取得が必要な職種のうち、県民の皆様の生命、健康、子育てに必要不可欠な医療や福祉サービスを担う看護師あるいは保育士等の確保が喫緊の課題であると認識をいたしております。
このため、こうした職種を目指す方を対象に修学資金の貸付けを行っておりまして、卒業後一定期間、福岡県内でこの業務に従事する等の条件を満たすと返還を免除するという制度を設けております。
本県では、こうした職種のほかにも人手不足が深刻な業界を支援する取組を進めておりまして、年代別、対象別就職支援センターでは、人手不足分野の企業の魅力の発信や仕事への理解を深めるためのセミナーを実施いたしております。
また、紹介予定派遣の仕組みを活用いたしましたマッチングの支援や合同就職面談会を実施をいたしまして、人手不足分野への就職支援を強化をいたしております。こういった支援によりまして、一月末現在で約千二百人の方が人手不足分野に就職したところでございます。
さらに、高等技術専門校では建築士や介護福祉士等の資格取得に向けた職業訓練を行いまして、今年度は約五百十人の人材を育成しているところでございます。
次に、中小企業対策としての
奨学金返還支援制度の効果と制度の創設についてお尋ねがございました。民間企業が実施をいたしました大学生の就職活動に関する調査によりますと、学生の最終的な企業選択の理由の上位三つは、仕事内容、職場の雰囲気、勤務地となっておりまして、その後に給与や福利厚生などの待遇面が続いております。
一方で、昨年度県が行いました技術系人材の不足が喫緊の課題となっております半導体、電子機器、自動車といった製造業の県内企業百十八社へのヒアリング調査において行政に期待する役割として上位三つを占めましたのは、合同会社説明会の開催、UIJターン人材の確保、企業情報の発信となっておりまして、奨学金の返還支援とお答えになった企業は二社にとどまっております。
また、中小企業の支援機関でございます商工会議所連合会や中小企業団体中央会等の商工団体からも、奨学金返還支援を補助する制度の創設を求める具体的な御要望はいただいていないところでございます。
奨学金返還支援を実施する中小企業への補助は、厳しい経営状況の中、人材確保、定着に苦悩する事業者にとって一助となり得ると考えます。しかしながら、中小企業は収益を上げ、事業を継続し、雇用を確保するためには持続的な賃上げを実現することが重要でございまして、県としては価格転嫁の円滑化や生産性向上に向けた取組を進めているところでございます。
また、中小企業にとって売手市場でございます労働市場で人材獲得競争に勝ち抜くためには、人材の採用、育成、評価といった人事制度の確立、休暇制度の充実といった取組が必要でございます。このため、県では中小企業における人材確保を支援するということを目的といたしまして、正規雇用促進企業支援センターにおいて、中小企業の採用力の向上支援と正社員への転換を通じた定着支援を実施をいたしております。
来年度の当初予算案におきましては、このセンターを改組いたしまして、中小企業における人材の確保から定着、育成までを支援するためのセミナーでありますとか相談対応等に要する経費をお願いしているところでございます。
15 ◯議長(香原 勝司君) 永島弘通君。
16 ◯十番(永島 弘通君)登壇 知事に再質問いたします。
先ほど知事からいただいた四番目の御答弁で、昨年度、県が行った企業ヒアリング調査では、行政に期待する役割として奨学金の返還支援と答えた企業は少数にとどまっているとございました。
私は、制度自体が二〇二一年度に始まり、県のヒアリングが二〇二二年でしょうから、制度自体やそのメリットがまだ世間的に広く周知をされていないのではないかと考えます。
そこで、知事に二点お伺いいたします。
まず、本県がどのような状況かお示しをください。
二点目に、既に導入をした企業や他県に導入の効果をヒアリングをされ、今後よく研究をされてはどうでしょうか。
知事の前向きな御答弁に期待をし、私の質問を終わります。本日はありがとうございました。(拍手)
17 ◯議長(香原 勝司君) 服部知事。
18 ◯知事(服部 誠太郎君)登壇 企業が行います奨学金代理返還制度の普及状況についてお尋ねということでございます。この制度は、企業、従業員双方に税制上の優遇措置などがございますほか、企業のイメージ向上、あるいは採用市場における他社との差別化、社員の離職防止といった効果が期待できるものであると認識をいたしております。一月末現在で、県内における代理返還制度の導入企業数は七十社と、徐々に増加しているところでございまして、県では制度を利用する企業が増えますよう、商工団体を通じて制度の周知を行っておりますほか、県の
ホームページや合同会社説明会の場で制度を利用している企業のPRを行っております。
議員から御提案ございました企業、あるいは導入しております他県の導入状況、あるいはその効果の調査分析、こういったことでございますが、日頃から商工団体と意見交換を行う場も数々ございます。また、他県との会議で意見交換を行うこともやっておりますので、このような場も活用しながら、引き続き情報収集に努めてまいります。