香川県議会 2019-09-03
令和元年9月定例会(第3日) 本文
▼最初のヒットへ(全 0 ヒット) 出 席 議 員
大 山 一 郎 君 西 川 昭 吾 君
松 岡 里 佳 君 鏡 原 慎一郎 君
氏 家 孝 志 君 高 木 英 一 君
白 川 和 幸 君 岡 野 朱里子 君
秋 山 時 貞 君 斉 藤 勝 範 君
松 本 公 継 君 山 本 悟 史 君
米 田 晴 彦 君 木 村 篤 史 君
新 田 耕 造 君 佐 伯 明 浩 君
松 原 哲 也 君 谷 久 浩 一 君
樫 昭 二 君 山 田 正 芳 君
香 川 芳 文 君 三 野 康 祐 君
森 裕 行 君 花 崎 光 弘 君
十 河 直 君 高 城 宗 幸 君
有 福 哲 二 君 広 瀬 良 隆 君
辻 村 修 君 石 川 豊 君
高 田 良 徳 君 竹 本 敏 信 君
綾 田 福 雄 君 尾 崎 道 広 君
宮 本 欣 貞 君 山 本 直 樹 君
黒 島 啓 君 都 築 信 行 君
鎌 田 守 恭 君 平 木 享 君
欠 席 議 員
五所野尾 恭 一 君
─────────────────────────────
地方自治法第百二十一条第一項による出席者
知 事 浜 田 恵 造 君
副 知 事 西 原 義 一 君
病院事業管理者 太 田 吉 夫 君
審 議 監 安 松 延 朗 君
政 策 部 長 大 山 智 君
総 務 部 長 東 田 晃 拓 君
環境森林部長 木 村 士 郎 君
健康福祉部長 安 藤 照 文 君
商工労働部長 浅 野 浩 司 君
交流推進部長 新 池 伸 司 君
農政水産部長 国 分 伸 二 君
土 木 部 長 片 山 秀 樹 君
知事公室長 淀 谷 圭三郎 君
危機管理総局長 土 岐 敦 史 君
文化芸術局長 佐 藤 今日子 君
子ども政策推進局長 小 川 秀 樹 君
会計管理者 宮 武 卓 朗 君
病 院 局 長 岡 内 浩 二 君
教 育 長 工 代 祐 司 君
公安委員会委員 溝 渕 香代子 君
警察本部長 岡 部 正 勝 君
代表監査委員 三 谷 和 夫 君
監 査 委 員 亀 井 孝 行 君
事 務 局 長
人事委員会委員 平 尾 敏 彦 君
人事委員会 岡 田 総 一 君
事 務 局 長
労働委員会 山 本 浩 司 君
事 務 局 長
政策部次長 椋 田 那津希 君
─────────────────────────────
議 事 日 程(第三号)
令和元年十月七日(月)午前十時開議
第 一 県の一般事務に関する質問
─────────────────────────────
◯議長(大山一郎君)ただいまから本日の会議を開きます。
本日の日程は、配付のとおりであります。
日程に入るに先立ちまして、諸般の報告をいたします。
職員に朗読させます。
(職員朗読)
諸般の報告
一、監査委員から、
地方自治法第二百三十五条の二の規定に基づく報告一件を
受理いたしました。
◯議長(大山一郎君)以上で諸般の報告を終わります。
─────────────────────────────
◯議長(大山一郎君)日程第一、県の一般事務に関する質問を行います。
新田耕造君。
(新田耕造君登壇、拍手)
◯新田耕造君 それでは、質問をさせていただきます。
最近つくづく思うのですが、少年老いやすく、学成りがたし。令和元年になりまして、昭和は大変遠くになりました。小学生のころ、あるいは中学生のころは、満州とか満鉄とか満州馬賊とか大陸浪人とか、そういうことが話題になることもありました。また、身近に大陸からの引揚者や、かつての兵隊さんや、私の父も中国に召集されておりましたけれども、また、親戚には人間魚雷に乗って米軍の捕虜になった人とか、そういう人がおりました。また、今、祭りがありますけれども、祭りのときには募金箱を抱えた傷病兵の姿もありました。そのころは戦争の記憶というのが人々の身近にあったように思えます。
さて、読書の話でございます。最近読んだのは、船戸与一の「
満州国演義」という全九巻です。敷島家四兄弟が登場して、長男は外交官、次男は満州馬賊の首領、三男は憲兵隊の将校、四男は無政府主義を信奉する早稲田の学生を語り部として、
満州国誕生の前夜から日本の敗戦、満州国の消滅までを書いた小説でございます。舞台は中国、モンゴル、ソ連、
東南アジア、そして張作霖事件、盧溝橋事件、上海事件、
インパール作戦などに彼らを参加させ、
植民地解放闘争や中国大陸における各国の権謀術数、スパイの暗躍など、多くの資料に基づいて書かれた歴史小説です。読む人をその当時にタイムスリップさせてくれます。戦後我々世代が知らない諜報活動を当時の日本もしていただろうということを改めて想像させてくれました。
ここで思うのは現在でございます。私の友人で、もと新聞記者が書いた本があります。「姿なき敵
プロパガンダの研究」であります。筆者は、
プロパガンダとは、特定の政治的目的を持って個人あるいは集団の態度と思考に影響を与え、意図した方向へと誘導する組織的・計画的な
説得コミュニケーション行為と定義し、各国は今もさまざまな方法で自国の国益の追求と国際的地位の向上のため、国際世論に自国の正当性を訴え、一方で、敵と定めた相手国のイメージを悪に染め上げ、孤立させるよう
マイナス情報を巧みに活用した情報戦を日々展開している。この情報戦の主役が
プロパガンダであり、もう一つの戦争と捉えなければならないと言っております。
そこで思い当たるのは韓国です。韓国が最近、いろいろと国際機関に告げ口外交をしているように思いますけれども、これはわかりやすい一つの例であると思います。
プロパガンダの基本形態の一つに、わずかでも相手の非を探し出し、誇張して非難し、自己の正当性を強く、繰り返し繰り返し訴え続ける、それによって、自己の非が多いにもかかわらず、相手に非があるように、相手にも第三者にも思わせるという詭弁法を用いております。同様の手口は、国内の政党でも新聞やテレビでも見られます。また、現在は
インターネットでうそやうわさを流したり、加工された写真や画像をネットにアップしたりと安易な
プロパガンダの方法があります。
我々は、
プロパガンダという虚構、この、先ほど申し上げた姿なき敵が充満した世の中に生きているという認識を持って県民のために働かなければならないと申し上げて質問に入らさせていただきます。
質問の第一点目は、
循環器医療の充実についてであります。
二〇一八年、昨年十二月、健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法が成立いたしました。循環器病に関する国民の理解と関心を深め、どの地域でも等しく、継続的、総合的に循環器病に係るさまざまなサービスを受けられるようにすることが基本理念にうたわれ、都道府県においても
循環器病対策推進計画を策定することが盛り込まれております。この背景には、日本人の死亡原因の一位はがんでございますが、脳卒中、心疾患などの循環器病を合わせると死亡者数はがんに匹敵し、高齢化とともに患者数はふえ続けているものと推計されております。
今年八月、循環器病、特に
不整脈治療に定評があり、
カテーテルアブレーション治療の症例では年間千件と
全国トップクラスの実績を誇る
群馬県立心臓血管センターを、
アブレーション治療の調査を目的に視察いたしました。
アブレーション治療とは、カテーテルを挿入し、心臓内部の不整脈の原因となっている箇所を小さく焼き切る治療法です。開胸手術ではないため身体的負担が小さく、根治が期待され、投薬や通院による経済的負担もなくなります。また、群馬県でそれ以上に取り組んでいると思われるのが
心臓リハビリ治療でした。フィットネスクラブを思わせる専用の施設を設け、屋外には散歩コースなども設けられておりました。NHKのテレビ番組「ためしてガッテン」に出演された
スーパードクターから、
アブレーション治療は所要二時間以内の手術で、もう特別なことではないということや、
心臓リハビリテーションの有用性などの説明がございました。
実は、私も昨年二月、
急性心筋梗塞により救急車で丸亀市の
香川労災病院へ運ばれ、
ステント治療で一命を取りとめました。その後、
不整脈治療では中四国の公立病院中で実績が
トップクラスの我が県立病院で
カテーテルアブレーション治療を行いました。退院後も継続的に運動する必要があると指導されましたが、私の経験で言うと、運動が血管や体によいというのは理解をしておりますが、ではどんな運動をしてよいのか、運動時間や強度はどのくらいが適切なのかと、一度ダメージを受けた体を思うとさまざまな不安があります。その意味でも、通院の
循環器病系の
リハビリ施設の充実は的を射ており、この群馬県の取り組みに感心したのであります。この群馬県の事業の決定に当たっては、当時の知事の強い
リーダーシップがあったようであります。
高齢化に伴い、
循環器系疾患の増加は不可避なものと考えられ、これに対する医療の充実は最重要課題の一つであると思います。平成三十年
人口動態統計によりますと、本県における心疾患・
脳血管疾患による人口十万人当たりの死亡率はいずれも全国平均を超え、特に心疾患は一二七・七%と大きく上回る状況が続いております。
本県には、地域医療の充実と県民への
高度医療技術の提供を目的とした県立病院が設置されております。他県のこうした先進事例や本県の疾患の状況などを踏まえ、まずは地域医療の核である県立病院の医療体制について、今後、どのようにあるべきと考えているのか、
病院事業管理者に質問をいたします。
次に、先進・専門的な取り組みの実行には、行政主導の積み上げではなかなか難しく、トップの
リーダーシップが重要であります。先日の上皇后さまの乳がんの手術では、
静岡がんセンターの医師が入っておりました。このセンターは、当時の静岡県知事の強力な
リーダーシップにより、山口 建先生という当時の
国立がんセンター研究所の副所長を招き設置されたものであり、現在では日本を代表する医療施設となっております。本県も、知事の強い
リーダーシップで
循環器系疾患に対する先進県へ飛躍することを期待するものであります。
知事に対しまして、現在の循環器に係る医療と
リハビリテーションの状況並びに今後の展望について、質問をいたします。
質問の第二点目は、歴史教育の重要性についてであります。
昨今、世界は大きな変動の渦の中にあると言っても過言ではないと思います。ヨーロッパでの難民問題、中東のイラン、サウジアラビア、イスラエルの複雑な関係など、その底流には少なからず歴史問題が遠因となっております。そして、我が国も韓国との間で徴用工判決に端を発した問題など、これだけ見ても世界中のあらゆる地域で複雑な問題が生じております。
日韓関係について少しばかり話をいたしますと、先日県庁のある課長さんと話をしていたところ、「
李承晩ライン」という言葉を知らないということでございました。とても私は驚きました。私たち、旧世代でございましょうけれども、私たちがよく見聞きしたニュースに、日本の漁船が韓国に拿捕されたということがございました。昭和三十年代の日本人は、お茶の間でよく聞いたニュースであると思います。これは、その時代のごく普通の常識も、ある時代ではそうではないということを実感させられる一例でございました。
李承晩ラインというのは、李承晩という当時の
韓国大統領が、日本の主権回復前の昭和二十七年一月、公海上に設定した韓国の
排他的経済水域のことであり、
日韓基本条約が締結され、
日韓漁業協定が成立する昭和四十年までの間、三百隻に及ぶ日本の船舶と四千人近くに達する抑留者が領海内で拿捕されたことであります。昨今、日韓で問題となっている竹島は、そのとき韓国側に取り込まれ、今日まで続く問題となっております。その発端はこの
李承晩大統領の決定であり、韓国で反日を徹底した人物でございます。
もう一人、安重根という人物がいます。一九〇九年、元総理、枢密院議長の伊藤博文をハルピンで暗殺した人物です。現代の韓国の英雄でございます。
韓国独立運動の
シンボル的存在で、ハルピン駅の現場には記念館が建てられておりますが、我々日本から見れば重鎮を殺害した暗殺者です。立ち位置によって見方が異なります。
歴史教育とは、社会や文化の時代的特徴や展開を学び、歴史的なものの見方を育み、お互いの民族の伝統を尊重し、国際協調の態度を養うことを目的に、自国と諸外国の歴史のことを理解する教育でありますが、一方で自分たちと真逆の価値観が存在することを認識することでもあります。歴史とは過去からの瞬間の蓄積であり、未来もその延長線上に存在すると考えますと、情報技術の加速度的な発展により急速に
グローバル化が進展する昨今、正しく歴史の事実、時代背景、目的、その考え方、その後の変遷を正しく教育することは重要で、
グローバル社会を生き抜く上でも大切なことであると考えるのであります。
そこで、歴史教育の重要性についてどのように捉え、学校教育においてどのようにあるべきかと考えているのか、また、どのように取り組むのか、教育長に質問をいたします。
質問の第三点目は、今後の
インバウンドの考え方についてであります。
昨年一年間の
訪日外国人数は、
日本政府観光局の推計で暫定値ではありますが、三千百十九万人と過去最高を更新したとのことでした。二〇一一年の実績が六百二十二万人でしたから、この八年間で実に五倍以上に達しているのであります。
訪日外国人数を国・地域別に見てみますと、昨年は中国から八百三十八万人、韓国からは七百五十四万人近くが訪問をしております。この二カ国で全体の五一%を超えることが示されています。しかし、この傾向にも変化の兆しがあります。観光庁の発表によりますと、八月の
訪日韓国人旅行者数は、前年同月より四八%減り、三十万八千七百人だったようです。
一方、ここ数年、東アジアや欧米豪に加え、ベトナム、タイ、
シンガポール、マレーシアといった
東南アジアの国々でも、着実に
訪日観光客数が増加しております。
東南アジアの国々から訪日客が増加する要因といたしましては、距離的にも比較的近い位置にあるということ、また、親日の人が多く、そして近年の経済発展により所得水準が大幅に上昇しているというのが特徴的な要因だと思います。
海外視察で
東南アジア各国を訪問した際、現地のさまざまな人々と意見交換を行いますが、「日本を体感したい、行ってみたい」と答える人が実に多いことに驚かされます。一番地理的に近く、西欧的な感覚を味わえるのが日本というのが訪日理由のようであります。リピーターもふえており、現地の旅行会社では、団体旅行から個人旅行へとその志向が多様化してきているようであります。ある現地の旅行会社では、ホテルとレンタカーだけを手配し、あとは自由に行動できる旅行商品が売れているようで、
インターネットで評判の店を探して訪れたり、食事を楽しんだりするようです。これは日本の治安のよさと情報が多彩な
カーナビシステムのなせるわざであると思います。
このように日本旅行の楽しみ方が確実に変化してきており、それに対応できる
受け入れ体制、ハラルなどの食事対応や施設の多言語表示、Wi─Fi環境、通訳機器、トイレなどの
インフラ整備などを一層進める必要があると思います。
インバウンドは、今や国のみならず本県の成長においても外せない重要な施策であることは言うまでもありません。現況の本県の
インバウンド施策を見ますと、高松空港に直行便が就航する中国、韓国、台湾、香港を中心とした取り組みとなっておりますが、
東南アジアにももっと注力すべきではないでしょうか。
そこで、安定的に訪日客数を確保するに当たり、観光、交流、交通の全般において、今後、どのように
インバウンド施策を推進していく考えなのか、方向性とあわせ、具体的施策について知事に質問をさせていただきます。これについては、観光協会もいろいろと、新聞紙上で見ますと考えてはいるようでございますけれども、知事としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
質問の第四点目は、警察の安全対策などの取り組みについてであります。
警察官は、地域住民の治安を守り、治安を維持する存在としてこの上ない存在であります。住民にとっては、安全・安心な日常生活において、なくてはならない存在であります。そして、交番や駐在所は、県民ばかりでなく外国人などの相談窓口としての機能も兼ね備え、地域の安全を守る要衝でもあります。本県には四十一の交番と百二の駐在所があり、二十四時間常に地域を守り続けていただいております。
このような地域の安全のかなめである交番で、ことし六月、全国を震撼させる事件が発生をいたしました。大阪の閑静な住宅街にある千里山交番で警察官が襲撃され、拳銃が奪われた事件であります。犯人は防犯カメラなどの情報から後に逮捕されましたが、交番や駐在所で警察官が襲撃される事件は昨年も富山県や宮城県で発生しており、ゆゆしき事態が全国各地で相次いでいると言わざるを得ません。
警察官個人の身に危険が及んでいることに鑑みますと、いま一度安全性の再確認を行い、適切な安全対策が図られるよう注視しなくてはならないと思います。
また、ますます国際化していく社会において、犯罪も国際化していくと思います。すなわち凶悪化であります。冒頭のとおり、交番、駐在所はその最前線であり、危険性を排除できない場面で、言語を含めた多種多様な対応が必要となります。そういった意味では、命がけで業務に励む現場の警察官のニーズをしっかりと把握し、対応していくことが求められていると思います。
また、警察官は男性ばかりではありません。働き方改革などを踏まえ、
女性警察官への配慮も当然のこと必要だと思います。
そこで、昨今の治安情勢に鑑み、交番や駐在所の安全管理をどのように行い、現状の課題をどのように捉え、今後、どう対応しようとしているのか、
警察本部長に質問をさせていただきます。
次に、外国人の増加に対して翻訳機などの専門機材の整備、今後、ますますふえるであろう
女性警察官に対しても、特に現場の
女性警察官に対しても安全性と機能性の両面を兼ね備えた、女性に最適な装備の導入がぜひとも必要であると思います。
警察本部長には、このことをどのように認識し、どのような対応をしているのか、質問をさせていただきます。
最後に、治安を守り、維持するためには警察官のプレゼンスこそが犯罪などへの抑止効果となることから、警察官の身に万一危険が生じないような対応策についても質問し、私の一般質問を終わります。(拍手、降壇)
◯議長(大山一郎君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(
知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)新田議員の御質問にお答えいたします。
まず、
循環器医療の充実についてであります。
本県における
循環器医療の状況につきましては、
急性心筋梗塞などの重篤な患者に対し、
救命救急センターを初めとする
救急医療提供体制を確保するとともに、議員御指摘の
カテーテルアブレーション治療が県立二病院を含む五医療機関で実施されるなど、専門的な医療についても対応しているほか、
循環器病患者の在宅復帰に向けた取り組みを推進するための診療計画書、いわゆる
地域連携クリティカルパスの活用を促進するなど、急性期から回復期、維持期を経て、在宅療養に至るまでの関係機関の
連携協力体制を整備してまいりました。
また、
リハビリテーションの状況につきましては、
急性心筋梗塞や、その手術後の患者などを対象に
リハビリテーションを実施する医療機関が年々増加傾向にあり、先月一日現在で十九施設あるなど、早期の在宅復帰や社会復帰のための
リハビリテーション体制の充実が図られております。
こうした中、昨年十二月に成立した、いわゆる
循環器病対策基本法につきましては、国や
地方公共団体、
医療保険者等の責務を明らかにし、我が国の
循環器病対策を総合的かつ計画的に推進しようとするものであり、この法律を踏まえた対策等を着実に実施していくことにより、循環器病の予防の推進や患者に対する良質かつ適切な
リハビリテーションを含む医療の迅速な提供、循環器病に関する研究の促進等が加速されると考えております。
私といたしましては、循環器病を初め、さまざまな病気に苦しまれている方々の思いに沿いながら、今後、国において策定される予定の
循環器病対策推進基本計画の内容を踏まえ、生活習慣の改善などによる予防の推進や
急性期病床から
回復期病床等への転換による
リハビリテーション機能の充実・強化なども含め、今後策定する県の推進計画の中で検討を行い、
循環器病対策を総合的かつ計画的に推進し、健康長寿かがわの実現に向けて取り組んでまいります。
次に、今後の
インバウンド施策についてであります。
県では現在、高松空港の
定期路線就航先である四カ国・地域を初め、日本での滞在日数が長い
欧米豪地域、さらには台北経由での誘客も期待できるタイや
ASEAN諸国への波及効果も見込める
シンガポールなどを対象として、海外からの誘客活動を実施しております。
議員御指摘のとおり、
外国人観光客の一層の拡大による本県経済の活性化を図るためには、近年、
訪日旅客数が着実に増加している
東南アジア諸国からの誘客に、一層取り組むことが重要であると認識しております。そのため、県では今年度、四国の各県等とも連携し、本県や四国の認知度向上を図るとともに、本県への旅行商品の造成を促進するため、タイにおける
PRイベントへの出展を初め、
シンガポールの
旅行会社等を対象とした
招請ツアーやセミナーなどを実施しており、来月には
四国ツーリズム創造機構や
高松空港株式会社等と連携し、タイの
旅行会社等を対象とした
招請ツアーを実施するなど、引き続き
東南アジア諸国のニーズに合わせた効果的な誘客活動に取り組んでまいります。
また、
外国人観光客の誘客拡大を図る上で効果の高い新規路線の誘致につきましては、高松空港エアライン誘致等協議会で示された、観光、ビジネスの両面からの一定の需要が見込める東アジアや
東南アジアなどへの路線誘致に向けて取り組むという方向性を踏まえ、
高松空港株式会社等と連携し、タイやベトナムなどの
東南アジアにおいても航空会社へのセールス活動などを実施しております。
このような
東南アジアからの誘客活動や路線誘致の取り組みに加え、御指摘の
外国人観光客に対する
受け入れ体制の整備につきましても、今後とも観光案内所での多言語対応や多言語コールセンターによる観光関係施設への通訳・翻訳サービスの提供などに取り組み、安定的な
外国人観光客の誘致に努めてまいりたいと考えております。(降壇)
◯議長(大山一郎君)太田
病院事業管理者。
(
病院事業管理者太田吉夫君登壇)
◯
病院事業管理者(太田吉夫君)新田議員の
循環器医療の充実についての御質問にお答えいたします。
高齢化の進行に伴い増加が見込まれる
循環器系疾患に対する医療の充実は重要な課題であり、新たな基本法の成立も、今後、国として
循環器病対策に積極的に取り組んでいくことが示されたものと考えております。
こうした中、中央病院では、不整脈の治療に有効な
カテーテルアブレーション治療に積極的に取り組んでおり、平成二十九年度の実績は三百九十四件と四国で一位であり、昨年度は四百四十五件と年々増加している状況であります。また、今後の患者数の増加に対応するため、高度な手技を持ち、この治療に秀でたベテラン医師のもと、若手医師二名の育成にも取り組むとともに、本年六月には、患者の身体的負担をより一層軽減するため、患部へのピンポイントでの治療が可能な最新のカテーテルアブレーション装置を導入し、個々の患者の症状に的確に対応した治療を行っております。
さらに、心筋梗塞、狭心症などの手術後等の患者の早期回復や心機能の低下防止に有効である
心臓リハビリテーションについても積極的に取り組んでおり、入院中はもとより、退院後の一定期間、
心臓リハビリテーション指導士である医師や理学療法士が看護師、管理栄養士等と協力して運動と生活習慣についての指導も行っております。リハビリの実患者数も、平成二十八年度の五百二十九人が三十年度には六百人と増加傾向であることから、本年四月から理学療法士を一名増員し、
心臓リハビリテーションの充実に努めているところであります。
このほか、白鳥病院でも、カテーテルアブレーションなど循環器系の先進的治療に早くから取り組むとともに、
心臓リハビリテーションも実施しており、高齢化が進む地域の医療ニーズに対応してきたところであります。
病院局といたしましては、全国に先駆けて高齢化が進む本県において、地域医療の核である県立病院が、引き続き
循環器系疾患の治療に積極的に取り組み、県民の医療ニーズに応えていくことで、県民医療の充実・向上に努めてまいりたいと考えております。(降壇)
◯議長(大山一郎君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)新田議員の歴史教育についての御質問にお答えいたします。
本県の将来を担う児童・生徒が社会の変化に対応し、国際社会で活躍していくためには、日本の歴史や文化、伝統を理解するとともに、世界の動向を横断的に捉え、過去と現在、そして未来へのあり方を考察することが求められており、その中で歴史を学ぶことは大変重要であると考えております。そのため、学校教育においては、歴史的な事象を教えるだけでなく、現在とのつながりを考えさせたり、現代的な諸課題との関連に着目させたりすることで、歴史を学ぶ意味を感じ取らせ、社会のあり方を考察・構想する学習活動を行う必要があると考えております。
令和四年度から実施される高等学校の新しい学習指導要領においても、これまで日本史は選択科目でありましたが、新設の歴史総合が必履修科目となり、全ての生徒が世界と日本の近現代史をしっかりと学習することとなります。今後は、世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉えるとともに、近現代史の中でも特に現代的な諸課題にかかわる内容に重点を置いて学習を行ってまいります。
また、義務教育段階においては、小学校から中学校への学習内容の系統的な接続・発展を重視するとともに、中学校においては、我が国の大きな歴史の流れを理解するために、地理的分野と公民的分野との関連を図りながら、より幅広い観点から歴史の学習を行ってまいります。
県教育委員会といたしましては、新しい学習指導要領も踏まえ、変化の激しい時代の中で、児童・生徒が歴史的なものの見方や考え方を通して、さまざまな視点や立場から事実を認識する力を育めるよう、歴史教育の一層の充実に努めてまいります。(降壇)
◯議長(大山一郎君)岡部
警察本部長。
(
警察本部長岡部正勝君登壇)
◯
警察本部長(岡部正勝君)新田議員の警察の安全対策等の取り組みについての御質問にお答えいたします。
議員御指摘のとおり、犯罪情勢や社会構造が大きく変化する中で、パトロールや巡回連絡等さまざまな活動を通じて住民の意見・要望に応えるべく、現場で活動する交番・駐在所の警察官の存在は、地域住民の安全・安心のよりどころであります。
交番・駐在所の安全対策について県警察では、交番等襲撃事案を重く受けとめ、発生防止に向け、複数勤務体制の構築や装備資機材の整備のほか、カメラを設置するなど、交番・駐在所のセキュリティー強化等の取り組みを進めております。
他方、香川県を訪れる外国人や在留外国人の一層の増加が見込まれ、日本語を解さない外国人への対応の重要性も認識し、外国人との意思伝達を支援するため、多言語に対応するタブレット型翻訳機の導入や、警察への相談や通報の内容を絵で表現したコミュニケーション支援ボードの配備のほか、警察施設への外国語表記、交番等不在時案内板への外国語翻訳文の表記等を進めております。
また、地域の安全を守るべく最前線で活動する警察官の装備品につきましては、装備品を改良・強化し、有効に活用することが必要であると認識しております。県警察では、交番等の狭小空間でも使用できる操作性の高い透明小盾や、特に
女性警察官が取り扱いやすいよう小型・軽量化した警棒や刺股、体型に合わせた耐刃防護衣の着装等、利便性にも配慮した装備資機材を導入しております。
さらに、警察官への襲撃等の凶悪犯罪に的確に対処できる精強な執行力を確保するため、柔道剣道、逮捕術等の術科訓練に加え、事案を想定した実戦的な訓練の充実・強化を図っているところであります。
県警察といたしましては、今後とも地域の安全・安心の確保のため、交番・駐在所のセキュリティー強化、国際化への対応や
女性警察官にも配慮した装備品の改善に努めるとともに、地域警察官の運用面の検討や訓練の反復等、ハード、ソフト両面での取り組みを推進してまいります。(降壇)
◯議長(大山一郎君)一般質問を続行いたします。
松岡里佳さん。
(松岡里佳君登壇、拍手)
◯松岡里佳君 議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、質問をさせていただきます。
まず初めに、ひきこもり支援等についてお尋ねいたします。
ことし、内閣府の調査により、全国で六十一万三千人にも上ることがわかった中高年のひきこもり。これまで若い世代の問題として広く認知されてきましたが、いよいよひきこもりの長期化・高齢化が深刻な状況であることを多くの方が認識されたのではないでしょうか。本県の実態調査においても、ひきこもり状態にある方が七百二十六人との結果が出ました。しかし、ことし三月に内閣府が四十歳以上のひきこもり者数の調査結果を発表した際、内閣府の分析官は、十五歳から六十九歳全体では百万人以上となるとの見方を示しており、この人数から考えると、本県でも発表された七百二十六人を大きく超える方々が、現在ひきこもり状態にあると予想されます。
内閣府の調査では、四十歳からのひきこもりが五七・四%。大人が引きこもる社会とも言われる中、国の調査対象では、家事手伝い、育児中の女性、専業主婦などに区分されている、一見わかりづらく見落としがちな女性のひきこもりの実態も把握しなければなりません。女性のキャリアアップ、女性活躍などの言葉がうたわれる中、多くの女性が出産、子育て、仕事に介護と、その両立に悩んでいます。そして、それができない自分を責め、自信をなくし、ひきこもりになる方も少なくありません。
多様化する現代のひきこもりは、特にこの半年、さまざまな事件により、ますますネガティブなイメージとなってしまいました。研究者の中には、ひきこもりはいけないことなのかとおっしゃる方もいます。人との交わりを避ける場所でしか生きることのできない人たち、あるいは生きるために引きこもる選択をしている人たち。引きこもる行為は、皆それぞれ自分の価値観を守るためであり、生き続ける道として選択したものだとも考えられます。まずは、いま一度、社会におけるひきこもりへの理解と認識を深めるべきではないでしょうか。
私も先日、県が行っているひきこもりサポーター養成研修の見学に行ってまいりました。これは、ひきこもりについての理解を深め、より身近な地域でひきこもりに悩む当事者や家族を早期に発見し、適切な支援につなぐため、その人材を育成する研修の場です。
これまでの支援といえば、その多くが就労を目的としていました。社会に適合させる訓練をし、復帰させることがゴールとしてきたのです。しかし、現実は四十歳以上のひきこもりの多くが就労経験者であり、働きづらさを解決できないままの人に対し、就労をゴールにしてきた今のやり方では、支援になじめなかった人も多いはずです。その結果、相談に来ても途中で連絡が途絶える途絶になるケースも少なくないと伺いました。
今回の研修で特に重要な課題となったのが、本当の支援とは何かということです。その人が困ったときに助けるのが支援であり、そのためにも助けられる仕組み、受け皿をつくらなければならず、さらには、その仕組みづくりをする人を育成する必要があるということでした。
県にはさらに、支援に必要な情報の提供・共有・発信をするためのネットワークづくりの強化、また、早期発見や支援につなげるための体制、安心して相談できる窓口や居場所づくりの充実が求められていると思います。
相談したいと思ったときには、どこにどんな施設があるのか、わかりやすく書き記した「香川県 ひきこもり 社会資源マップ」というアンダンテ作成の冊子もあります。そのひきこもり社会支援マップでは、現在本県には、ひきこもり地域支援センターアンダンテを初め、保健所、民間機関も含めると、全部で二十二の支援機関が記載されています。そのほか、市町などでも支援が行われており、この数が多いのか少ないのか、それは今後、さらなる実態を把握する必要があります。先ほどのサポーター研修も踏まえ、県全体で支援の輪を広げるさまざまな取り組みもなされておりますが、さらなるひきこもり支援の環境整備や、つなぐ先の連携強化を行う必要があるのではないかと考えます。
加えて、最近では新しい問題として、心が弱った親御さんにつけ込んだ悪質業者がふえているとのことでした。後に高額請求されることもあり、消費者庁も注意喚起を行っております。県として、これらふえるであろう新たな問題をしっかり把握し、県民にも注意喚起をすべきと考えます。
以上、ひきこもりについて、一人一人に寄り添うことは容易ではなく、支援の難しさもありますが、県として、今後、どのような取り組みをされていかれるのか、知事にお伺いいたします。
次は、防災対策についてお尋ねいたします。
県は、自助・共助・公助の連携を基本理念とする防災対策基本条例に基づき、災害に強い県づくりに取り組んでおり、阪神・淡路大震災、東日本大震災、昨年七月の西日本豪雨など、近年の災害発生状況や県の地震・津波の被害想定なども踏まえ、県民への防災・減災意識の啓発、自主防災組織や消防団の機能強化、備蓄物資の整備など、南海トラフ地震・津波対策行動計画などに沿って防災・減災対策を推進しています。
そのような中、先日、千葉県を襲った台風十五号。今もなお、復旧活動に追われていますが、私の知人からは、その初動対応に対する不満や疑問の声が上がっております。一方で、改めてお互いの助け合い、コミュニティーの大切さを痛感しているとの声も入りました。これは決して人ごとではなく、いつ本県にも似たようなことが起こるかもわかりません。想定外という言葉はもはや通用しなくなりつつあります。災害に対し、いかに事前準備をし、迅速かつ冷静に行動すべきかが大切であり、防災意識を周知徹底させるべきと考えます。
そこで、防災に関連しまして二つ質問をいたします。
一つ、高松市生島町の備蓄倉庫の安全性についてお伺いいたします。
突然の災害が起こったとき、まずは自分の身を守り、安全なところに避難します。そして、その直後から必要になるのが物資です。本県が管理している備蓄倉庫は高松市生島町にある消防学校の敷地内にあり、海抜三メートルのところに設置されています。東日本大震災よりも以前、まだまだ津波に対し県民の危機意識も低い平成十八年に設置されたため、その安全性を危惧する声が上がっています。その後、平成二十五年に出された津波浸水想定図においては、浸水や津波による心配は要らないとのことではありましたが、そもそも、その想定図が専門的な知見や多くの基礎資料により作成され、私たちには理解が困難であり、その信憑性がどこまでのものかがわかりません。あわせて、もし備蓄倉庫自体が無事であったとしても、その周辺の一部地域が浸水想定されており、被災地への輸送ルートの確保が懸念されます。つまり、多くの備蓄品がすぐに使えない可能性があるのです。
先日、総合防災対策特別委員会の視察で熊本県に参りましたが、本来かかっていたはずの橋や道路が壊れ、寸断されていた当時の様子や、今でも工事中の現場を見聞きすると、あらゆる限りの事前の想定が必要と考えます。
そこで、県管理の備蓄倉庫をなぜあの場所に設置したのか、その理由を教えていただき、そして、現時点での安全性についてどのような認識をされておられるのか、知事にお伺いいたします。
また、被災時にこの場所の備蓄物資が活用できなくなる場合に備え、備蓄場所としての妥当性や分散管理体制についても再度検討する必要はないのか、あわせてお答えください。
次に、ハザードマップの活用等についてお伺いいたします。
災害の報道では、被災に遭われた方々の悲痛な叫びや姿が映し出されます。「まさか、ここに住んでいてこのような災害が起こるとは思わなかった」、「危険を伴う場所だと事前に知らせていてくれたら、ここに家を建てなかった」など、災害には台風や豪雨のように事前にある程度予測可能なものと、地震のようにまだ正確な予測ができないものがある中で、事前の情報収集と備えがいかに大切であるかを教えてくれます。自分の住んでいる場所にどのような危険が潜んでいるのか、常に危機意識を持っておくことが命を守ることにつながると考えます。
各自治体には、それぞれに作成している防災ハザードマップや浸水想定ハザードマップなどがあり、最大限活用されるべきさまざまな事前情報がそこに記されているにもかかわらず、なかなか家庭に浸透していない現状があります。そのような中、ハザードマップの活用につながる取り組みを行う自治体も出てきました。
先日、丸亀市では、災害時にとるべき行動を時系列で整理した防災行動計画タイムラインの個人版であるマイ・タイムラインの作成支援を行うとのメディア報道がありました。三豊市でも、地域の防災意識の向上や逃げおくれゼロを目指し、マイ・タイムラインの出前講座で啓発を促しました。これは、二〇一五年九月の関東・東北豪雨をきっかけに始まった取り組みで、自分が災害時にとるべき行動を事前計画し、それを見える形にしていきます。
自分や家族が避難をするタイミングを整理できるだけでなく、暮らしている土地の成り立ちや地域を知ることにもつながり、災害リスクを認識できる大切な作業であるとし、防災の専門家も非常に推奨されておられました。また、作成時においては、既に各自治体が配布している防災ハザードマップや浸水想定ハザードマップなどの活用についても周知ができ、災害時の適切な避難行動につながります。県もぜひ、このような取り組みを参考にしていただき、また、市町の地域防災力を高める取り組みに対する支援を引き続きしっかり行っていただきたいと思います。
さて、県が各自治体に促し作成しているマップの中は、ため池に関するものが三種類あります。香川県は、ため池の数が一万四千六百十九個あり、日本で三番目に多く、県土面積に占めるため池数が日本一です。昨年七月の西日本豪雨を受け、防災重点ため池として再選定されたものを対象としたマップを各自治体が作成中です。しかし、再選定されてからマップができるまで、防災重点ため池の名称や所在地などの情報は公表されていません。住民にとっては、今もし災害が起こった際に、備える情報がない状態です。ため池多数県でありながら、また、防災意識を高めようとしている中で、この空白期間の対応は極めて問題なのですが、一方で、公表することに対して、「不安をあおるだけだ」、「そこに人が住まなくなってしまうのでは」などの声も一部にはあるようです。しかし、リスク情報を速やかに開示・公表し、県民に広く周知啓発することは、突然起こり得る災害に備えるまず第一歩であります。住民の安心・安全、さらに命を守るべき県としては、直ちに決断すべきと考えます。
以上のことを踏まえ、今後、各種ハザードマップの周知と活用を県としてどのようにしていくのか、あわせて、防災重点ため池については新たな選定情報の住民への速やかな周知についてどのように考えているのか、知事にお伺いいたします。
次に、病院の再編・統合等に関する議論の進め方についてお尋ねいたします。
厚生労働省は、全国の公立・公的病院、およそ千五百カ所のうち、四百二十四の病院に対して再編や統合などを含めた議論が必要とし、その病院名を初めて公表しました。県内では、「車で二十分以内の近隣に似たような実績の病院がある」や「特に診療実績が少ない」などの理由から、さぬき市民病院、香川県済生会病院、滝宮総合病院、国立病院機構高松医療センターの四カ所が対象となりました。これに対し、滝宮総合病院のある私の地元、綾川町では、「突然の話で戸惑っている。利用者の多い病院であり、地元自治体としては受け入れがたい。県全体の医療構想の中で位置づけや役割を議論すべき話だろう」との副町長の言葉が先日新聞にも掲載されました。このほかにも、さぬき市民病院は、先日、分娩の取り扱いがなくなり、知事も六月議会の一般質問で重く受けとめているとの答弁をされています。地元の方は再開を願い、また、戸惑いがある中で、さらに病院そのものがなくなるという乱暴な話があっていいのでしょうか。
厚生労働省は今後自治体に通知し、都道府県が設ける会議などで再編や統合を議論して、来年九月末までに結論を出すよう求めるとしています。また、今回の分析の対象から外れた公立病院や民間病院についても、診療実績を公表して、再編などの議論を求める予定であるとの報道もあります。
国は、高齢化と人口減少が進む中、限られた医療資源で効率的な医療サービスを提供する体制を整備するためには、病院の再編などの検討が必要と説明しています。このため、各都道府県に対しては、七十五歳以上の人口が大きくふえる二〇二五年度に必要なベッド数などを定めた地域医療構想を二〇一六年度末までに策定させ、急性期のベッド数や総ベッド数を削減して、介護や回復期、在宅医療への転換を促すよう要請しています。これによれば、全国では昨年時点で五・五万床が過剰、本県でも千四百床余りが過剰ということになり、国の立場からすれば、都道府県の取り組みが不十分であるということだと思います。
国は、今回の発表は再編の方向性を機械的に決めるものではないと説明しているようです。しかし、私には、このたびの国のこのような対応、やり方は、地域の医療サービスの確保より医療費の削減を優先するために、個別の病院名を公表することで、その病院とつながりの小さな人たちの危機感をあおって世論を分断し、国の方針を推し進めようとしているとしか思えません。
自治体は、現状を見ながら動いています。これまでも県が設ける会議にも加わり、将来像を議論してきたはずです。何もしていないわけではありません。財政面や人材確保が厳しい状況の中で、何とか地域の医療を維持させようと悩みながら頑張っています。二〇二五年度の問題も大切ですが、しかし、地域の実情を無視した統廃合は決してしてはなりません。断片的で一律の基準に基づく実績や数字だけで結論を出すのではなく、さまざまな観点から、その病院が地域でどのような役割を果たしているのか、地域の実態を踏まえて、慎重に議論していく必要があると考えます。
これから、県でも地域医療構想調整会議の中で、関係者が集まり情報交換や話し合いが行われると伺いました。ある全国紙には、「県内では十年前から病院の再編・統合が進んできた実情がある。(中略)これ以上の再編・統合を進めるかどうかは関係者と慎重に考えていきたい」との医務国保課のコメントが紹介されていました。総務大臣も、「地域の実情を十分に踏まえた議論が行われることが重要だ」と言っています。ぜひ知事にも、厚生労働省の一方的な押しつけには屈せず、今回対象となった病院や地域の話を聞いていただき、地域のさまざまな実情を十分に把握した上で、関係者が納得できるよう慎重に議論していく姿勢で臨んでいただきたいと思います。
以上のことに対し、知事としては、今後どのようなスケジュールのもと、どう取り組んでいかれるのか、そのスタンスをお伺いいたします。
最後に、生物多様性の保全についてお尋ねいたします。
日本ほど、四季折々、これほどまでに多くの美しい表情を持った国はほかにあるでしょうか。南北に長く、起伏に富んだその地形は、世界的に見ても生き物や生態系の種類が多い国であり、本県もまた、多様な植物や動物が共存した、いわゆる生物多様性が保全された豊かな自然に恵まれています。生き物たちはさまざまな環境で互いに見事なつながりを持ち、支え合って生きており、私たち人間の命もまた、そこにあることを忘れてはなりません。
私の地元、綾川町には、全長約三十八キロメートル、高松市塩江町に源を発し、長柄ダム、府中ダムを経て、坂出市林田町から瀬戸内海へと注ぐ清流綾川があります。以前は水車が幾つもあり、地域の産業として根づき、また、水利の便と肥沃な土壌から、古来より稲作が盛んに行われ、主基斎田にも選ばれるほどの環境の整った地域でありました。河川やため池には、コイ、フナ、アユ、ウナギ、ドジョウ、シジミなどが生育し、初夏には蛍の乱舞も見られたと地域の諸先輩方から伺いました。
懐かしさを感じるような風景は、人と自然がともに生き、上手に歩んできた歴史でもあります。先人は皆、生物多様性などと言われずとも、この自然に生かされているのだと肌で感じ、心で感じ、その自然の恵みに感謝し、時には水田やため池、里山といった生態系を創出しながら、たゆまぬ努力でそれぞれの土地を守ってこられたのだと思います。
しかし、社会の発展、生活環境の変化から、その面影を残しつつも、いつの間にか気がつかない間に生存競争が行われ、本来その土地に長く生息し、環境を守ってきた生物が消え去ろうとしています。人が便利な暮らしを求めた結果、どの時代よりも速いスピードで多くの生物が絶滅しようとしているのです。いつか、私たち人間も絶滅のふちに立たされるのでしょうか。
さて、本県のホームページにも掲載されています、五月から七月にかけて、道路や河川などで鮮やかに咲く黄色い花オオキンケイギクは、今、日本固有の自然に重大な影響を及ぼすおそれがある植物として環境省が特定外来生物に指定し、栽培、運搬、販売や、野外に植えたり種子をまいたりすることを禁止しています。その可憐さから、特定外来生物だということを見落としがちですが、強靱な性質のため、全国的に野生化し、しばしば大群落をつくるということで、生態系への影響が危惧されています。ほかにも、近年ではブラックバスやアライグマなどの外来生物が県内に侵入してきており、本県に生息していた在来の野生生物の生息そのものを脅かしているのではないかという心配もしております。
このような中、先日、県と関係機関が連携をして、県の指定希少野生生物であるシコクカッコウソウの保護に取り組み、この植物の個体数がふえてきたというお話を伺いました。生息場所が極めて限られている植物を守っていく上では、このような県全体の取り組みの積み重ねが非常に重要であると考えます。
生物多様性が私たちの生活にどのようにかかわっているのかを実感することは難しいかもしれません。しかし、今後、子供たちに希少生物のすばらしさや生物多様性、生きとし生けるもの、ともに生き、支え合うことの大切さを知ってもらい、また、県民の皆様にもそうした保全活動に参加していただけるような取り組みを進めていただきたいと思います。
そこで、県として、生物多様性の保全を図っていくために、希少野生生物の保護や外来生物対策にどのように取り組んでいるのか、次世代を担う子供たちへの取り組みも含め、知事にお伺いさせていただきまして、私の一般質問を終わらせていただきます。(拍手、降壇)
◯議長(大山一郎君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(
知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)松岡議員の御質問にお答えいたします。
まず、ひきこもり対策についてであります。
ひきこもりは、家族、友人、地域等の本人を取り巻く環境の問題などが複雑に絡み合っているものと考えられ、個人や家族の力だけでは解決することが困難であることから、社会全体で支援していく必要があると認識しております。
県ではこれまで、精神保健福祉センター内に設置したひきこもり地域支援センターにおける相談や居場所の提供、ひきこもりサポーターの養成・派遣、民生委員・児童委員などに対する研修、県民の皆様への正しい知識の普及啓発を行っており、対策の検討や実施に当たっては、福祉、教育、労働関係機関や当事者団体などを構成員とするひきこもり対策連絡協議会において関係機関の連携を図るなど、各市町や関係機関と協力しながら進めてきたところであります。
こうした中、本年一月から二月にかけて本県のひきこもりの実態調査を実施したところ、七百二十六人の方がひきこもりの状態にあり、そのうち三七・六%の方が支援を受けていない状況にあることから、その対策が必要であると考えております。このため、先月、ひきこもりサポーター養成研修を開催し、これまでの二十四名に加え、四十二名の方からサポーターとして登録の申し込みがあったことから、今後、このサポーターを活用することにより、家庭訪問などの個別支援の充実を初め、各市町の相談機能の強化など支援環境の整備に取り組むとともに、ひきこもり対策連絡協議会などを通じて、早期発見や適切な支援につなぐための連携強化を引き続き図ってまいりたいと考えております。
なお、議員御指摘の悪質業者の問題につきましては、ホームページの活用などにより、県民の皆様への注意喚起を行ってまいります。
私といたしましては、今回の実態調査で得られたニーズや課題を踏まえ、引き続き各市町や関係団体と連携しながら、ひきこもり対策に積極的に取り組んでまいります。
次は、防災対策のうち、ハザードマップの活用等についてであります。
ハザードマップは、地震、津波、洪水などの地域の災害リスクや避難場所、防災関係施設の位置などを表示した地図であり、災害に備えて迅速かつ的確に避難を行うために非常に有効なツールであります。このため、各市町においてそれぞれの災害リスク等を示したハザードマップを作成し、住民の方々に配布しているほか、県においても、県民の皆様にハザードマップについての理解を深めていただけるよう、広報誌やマスメディアを活用した広報を行うとともに、出前講座などの機会を活用し、ハザードマップを県のホームページで確認できるかがわ防災GISを積極的に紹介しているところであります。
また、県におきましては、現在、自主防災組織が中心となって行う地区防災計画や防災マップの策定を支援しているところであり、こうした地域における防災活動の取り組みにおいて、ハザードマップの活用が一層促進されるよう努めるとともに、議員御指摘のハザードマップを生かすための先進的な取り組みにつきましても、各市町と情報共有を図ってまいります。
次に、防災重点ため池の住民の方々への周知につきましては、今年度末をめどに、ため池の名称や所在地、貯水量等を記載したため池マップを作成することとしており、各市町において、来年度の早い時期にホームページへの掲載等により住民の方々に周知されることとなっておりますが、被害軽減につながる情報として、できるだけ早く、防災重点ため池の名称と所在地を、まず県のホームページに掲載したいと考えております。
私といたしましては、県民の皆様一人一人がお住まいの地域の災害リスクを正しく知り、正しく判断し、正しく行動できるよう、引き続き各市町等と連携してハザードマップの一層の周知啓発を行い、それぞれの地域において活用が図られるよう努めてまいります。
次は、病院の再編・統合等についてであります。
先月二十六日、厚生労働省は、高度急性期や急性期を担う公立・公的医療機関等について再編統合等の再検証を求めるとして、全国四百二十四の具体的な病院名を公表し、本県では四つの医療機関が再検証の対象とされたところであり、再編統合を伴わない場合は今年度中に、再編統合を伴う場合は来年九月までに結論を得るよう求められております。今回の公表について、国は、再編統合等の方向性を機械的に決定するものではないとしておりますが、事前に十分な説明のないまま、地域の個別事情を踏まえず、全国一律の基準による分析のみで病院名が公表されたことは極めて遺憾であります。
私としては、全国知事会社会保障常任委員長である平井鳥取県知事に、直接、国への対応を求めたところでありますが、各地からもさまざまな声が出る中、地方三団体と厚生労働省、総務省による地域医療確保に関する国と地方の協議の場が新たに設けられることとなり、今月四日に、その第一回会議が開催されました。
一方、本県において再検証の対象とされた高松医療センターは、難病や結核医療の中核的な医療機関であり、その他の三つの医療機関についても二次救急病院や災害拠点病院、僻地拠点病院等として地域医療を支える重要な役割を担っている医療機関であると認識しております。
今後は、医師会や中核医療機関、市町などで構成する地域医療構想調整会議において、これらの医療機関がそれぞれの地域で担っている役割等について丁寧にお聞きし、協議を行った上で、その検証内容を国に報告することになると考えております。
私といたしましては、引き続き各市町や関係団体と緊密に連携し、地域の実情を十分に踏まえながら、良質かつ適切な医療が持続可能な形で提供される体制を構築してまいりたいと考えております。
なお、そのほかの御質問につきまして、担当部局長よりそれぞれお答え申し上げます。(降壇)
◯議長(大山一郎君)土岐危機管理総局長。
(危機管理総局長土岐敦史君登壇)
◯危機管理総局長(土岐敦史君)松岡議員の防災対策についての御質問のうち、県の備蓄倉庫についてお答えいたします。
県の備蓄倉庫については、消防学校の整備にあわせ、平成十八年に高松市生島町の県有地に整備したものであり、交通の利便性や防災活動拠点施設としての十分な敷地面積の確保等の観点から、現在の場所を選定したものであります。
生島町の備蓄倉庫については、耐震対策や液状化対策を講じているところであり、その敷地及び前面道路は県の地震・津波被害想定において津波浸水想定区域に該当しておらず、安全性は確保されていると認識をいたしております。
なお、万が一、倒木などにより周辺道路が寸断された場合などにおいては、自衛隊等の防災関係機関と連携し、障害となる倒木等の処理や道路の優先啓開などを行い、速やかに備蓄倉庫の機能を回復してまいります。
また、備蓄物資については、県内七十二カ所の県有施設や市町有施設に分散備蓄しており、主食で言えば全体の約八六%が生島町以外の施設に備蓄されております。
県といたしましては、大規模災害発生時に必要な物資が避難所等に迅速かつ的確に届けられるよう、各市町等と連携し、備蓄物資の適切な管理に万全を期してまいります。(降壇)
◯議長(大山一郎君)木村
環境森林部長。
(
環境森林部長木村士郎君登壇)
◯
環境森林部長(木村士郎君)松岡議員の生物多様性の保全についての御質問にお答えいたします。
議員御指摘のとおり、本県は多様な植物や動物が共存した、いわゆる生物多様性が保全された豊かな自然に恵まれており、私たちはさまざまな恩恵を受けているところであります。一方、本県においても、開発や里地・里山の荒廃などによる自然環境の悪化や外来種の侵入などにより多くの野生生物が絶滅の危機にさらされていることから、希少野生生物の保護や外来生物の拡大防止、生物多様性の保全に向けた普及啓発などが重要と考えております。
このため、県では、県内の希少野生生物の状況を明らかにするための香川県レッドデータブックを作成しているほか、香川県希少野生生物の保護に関する条例を制定し、特に保護を図る必要があると認められるものを指定希少野生生物に指定しているところであります。また、各市町が実施するアライグマなど外来生物の捕獲を支援するとともに、本県の貴重な動植物の調査や保全に関して指導的役割を担う人材の育成に取り組んでいるほか、昨年度からは、子供たちを初め幅広い世代が香川の豊かな自然とその保全について考えるきっかけづくりとなるまちかど生き物標本展や、生き物に触れて体験できるフィールド講座を開催しているところであります。
今後は、県内の生態系などに悪影響を及ぼすおそれのある侵略的外来種の生息状況や特性等を明らかにするリストを作成し、優先度を踏まえた防除等について検討するほか、平成二十七年度から実施している絶滅のおそれのある希少野生生物の現状調査の結果に基づき、来年度、県レッドデータブックを改訂し、保護対策の推進につなげてまいりたいと考えております。
県といたしましては、今後とも人と自然が共生する豊かで美しい香川を目指して、生物多様性の保全に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。(降壇)
◯議長(大山一郎君)一般質問を続行いたします。
松本公継君。
(松本公継君登壇、拍手)
◯松本公継君 議長のお許しを得ましたので、通告に従い、私からは四点、一般質問をさせていただきます。
質問の第一点目は、関係人口の創出・拡大についてであります。
平成三十年度に、進学や転勤による転入を除いて県外から移住した人は、前年度より三百二十二人多い千六百九十七人となり、過去最高を更新しました。移住者の年齢層を見てみますと、二十から三十歳代が全体の五割超を占め、若い世代が多く移住しており、これまでの移住促進の取り組みが一定の功を奏した結果だと思います。
一方、本県人口の社会増減を見てみますと、平成三十年は六百五十五人の転出超過と、平成二十七年以降三年連続で減少しており、依然、関西圏や関東圏への人口流出は続いています。また、本県人口の自然減は年々増加傾向にあり、人口全体では平成十一年以降、約二十年連続で減少が続いているため、人口減少対策、地域活力向上は本県にとってまさに最重要課題であり、人口減少を少しでも食いとめるためには、移住・定住促進の取り組みをより一層強化する必要があります。
国においては、ことし六月、地方創生の第二期となる二〇二〇年から二〇二四年度の方向性を示すまち・ひと・しごと創生基本方針二〇一九が閣議決定されました。基本方針では、都市住民と地方の交流を促進し、定住には至らないものの、地域イベントなどへの継続的な参加や、副業、兼業として地域にかかわるなど、関係人口の創出・拡大を図ることが、地域課題の解決や将来的な地方移住に向けた裾野を広げるものとして重点施策に新たに盛り込まれました。
関係人口とは、移住した定住人口でもなく、観光に来た交流人口でもない、地域や地域の人々と多様な形でかかわる人々を指すものであり、人口減少・高齢化により地域づくりの担い手不足という課題に直面している地方にとっては、関係人口と呼ばれる地域外の人材が、地域づくりの新たな担い手となってくれることが期待されております。
他県の先進事例としては、北海道と五市町村が連携し、各地域とつながりのある都市部の住民等を対象に、地域イベントや地域づくり活動に参加・参画してもらい北海道とのつながりを深める取り組みや、島根県邑南町では、廃線となった鉄道路線を地域資源と捉え、鉄道ファンと地域住民との交流機会を提供し、力を合わせ地域課題解決に取り組んでいるなど、地域によっては既にさまざまな取り組みが進められています。
先ほど御紹介した島根県邑南町には、委員会の県外視察で私も昨年訪問させていただきましたが、A級グルメのまちとして、地元の豊富でおいしい農畜産物を地域の強み、個性として捉え、単に食材を都会へ売り込むのではなく、地域で最高級の食を提供することで食を通して人々を呼び込み、地域の誇りにつなげていく取り組みも進められていました。また、こうした最高級の食を提供できる人材を育成して地域でお店を開いてもらうことで、A級グルメの広がりが生まれており、中国山地の自然に囲まれた里山という地理的条件にもかかわらず、視察の際にも多くの観光客が訪れていて、そうした点でも大変参考になったところであります。
本県では、現在開催中の瀬戸内国際芸術祭において国内外から多くの観光客にお越しいただいておりますが、加えて、こえび隊としても県外から多くのボランティアの方々に参加いただいています。これはまさに、本県が今求めている貴重な関係人口であり、芸術祭でのつながりが契機となって移住した方も多くいると聞いていますので、こうしたつながりを大切にした関係人口の取り組みは、地域の課題解決や本県への移住・定住促進を図る上でもとても重要であり、これからも大いに取り組んでいただきたいと思います。
また、ふるさと納税を契機に寄附者に対して地域と継続的につながる機会を提供する取り組みや、本県の三木町や三豊市などでも行っているふるさと住民票の取り組みなども、効果的な関係人口の取り組みの一つだと考えております。
県では、現在、来年度から五年間の次期かがわ創生総合戦略の策定作業を進めているところでありますが、先般示された骨子案の中には、新規施策として地域課題の解決に向けた関係人口の創出・拡大が盛り込まれております。私は、今だからこそ、より一層この関係人口の創出・拡大に向けた施策に全力を尽くさなければならないときが来ているように思います。
そこで、県は関係人口創出・拡大についてどのように捉え、今後、どのように取り組んでいくお考えか、知事にお伺いいたします。
質問の第二点目は、災害時における防災情報の収集と伝達についてであります。
本県は、瀬戸内の温暖な気候で、南には四国山地と讃岐山脈、北には中国山地が壁となり、台風の豪雨や冬の豪雪の影響が少なく、自然災害の少ない県と言われてきました。総務省消防庁の消防白書において公表された自然災害による都道府県別被害状況では、過去に年間の被害額が一番少ない県となったこともありましたが、近年では少ない方から十番前後となっており、平成二十九年も少ない方から十二番目となっています。
ことしは西日本を中心に梅雨入りがおくれましたが、六月下旬以降、全国的に局地的な大雨や台風の襲来などが相次ぎ、各地に甚大な被害をもたらしています。千葉県では、台風十五号が先月九日早朝に上陸し、島嶼部を除いて関東地方で観測史上一位となる最大瞬間風速五十七・五メートルを記録するなど、猛烈な風の影響により電柱の倒壊が相次いだほか、送電線をつなぐ鉄塔が倒れるなどして大規模な停電が発生しました。千葉県の大規模停電は、結果的に二週間以上もたってようやくほば復旧したところですが、多くの住民が電気のない生活を余儀なくされ、停電から数日は猛烈な暑さも重なったことから、冷房が使えず熱中症になる人が続出するなど、二次被害も広がりました。対応に当たった東京電力の復旧見通しの発表が、当初早期に復旧できるとの見通しだったものの、その後、日を追うごとに復旧見通しが後ろ倒しになったため、住民の方々に不安が広がり、被害状況の把握の甘さや対応のおくれに批判が集まりました。
また、千葉県の対応についても、東京電力の復旧見通しの甘さの影響もあったとは思いますが、「被災市町に連絡員、いわゆるリエゾンを派遣するのがおくれ、速やかな被災状況の把握ができていなかった」、「住民の方々に必要な情報が入って来ず、混乱を招いた」などの指摘も報道されているところであります。
今回のような停電時の情報伝達においては、さまざまな通信障害もあり、情報収集や伝達が困難な状況もあったと思いますが、災害時における迅速かつ的確な災害対応を行うためには、被害状況の把握や情報収集が必要不可欠であり、時々刻々と変わる状況の変化に応じて、住民にとって必要な情報を適宜、正確に伝えることが非常に重要であります。こうした台風や局地的な大雨による災害は、近年頻発化、甚大化しており、いつどこで起きるかわからず、近隣においても大規模な自然災害が発生していることから、本県においても大変心配されるところであります。
近年は、
インターネットやスマートフォンが急速に普及し、情報の発信者や情報収集手段が多様化する中で、大きな事故や地震などの災害が発生すると、
インターネット上ではメールやSNSなどで、被災状況や被災者支援のための情報などさまざまな情報が大量に飛び交い、住民が正確な情報や防災上重要な情報を取捨選択することが難しくなってきているとも感じます。そのため、県民が信頼して災害情報や避難情報などを一元的に入手することができるサイトを準備しておくことも必要ではないでしょうか。
また、災害時には不安な状況が続くこともあり、情報が錯綜し、デマや誤った情報が拡散しやすくなります。災害時における県民の不安を少しでも和らげるため、また、冷静な判断や行動を促すための情報として、知事みずからがホームページやSNSなどを利用し、県民に対するメッセージを発信することも非常に大切なことではないかと思います。
災害時における被災情報や避難情報などの収集や伝達は、災害対応のかなめであると考えますが、県では災害時の情報収集と伝達について、どのように取り組んでいくつもりなのか、今年度更新している防災情報システムの利活用も含め、知事にお伺いいたします。
また、システムが整備されているだけでは、十分な情報収集や伝達が行えるとは言えません。日々の訓練や関係機関との連携が整っていなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。
そこで、この点について知事はどのようにお考えなのか、あわせてお伺いいたします。
質問の第三点目は、県道太田上町志度線バイパスなどの道路整備についてであります。
我が国では一九六〇年代後半以降、高度経済成長を背景に自動車が各家庭で急速に普及し、私たちの生活に自動車はなくてはならないものとなり、こうしたモータリゼーションの進展を支えるため、これまで全国的に道路整備が進められてきました。
本県においても、道路は県民の生活や経済活動を支え、活力ある地域社会の形成に欠くことのできない最も重要な社会基盤であることから、体系的な道路ネットワークの整備や安全で安心な道路づくりに取り組んできたところであります。平野部が多い地理的な特性もあり、本県の一平方キロメートル当たりの道路実延長は千三十二メートルと全国四位の道路密度を有しており、道路舗装率は九九・九%と、こちらも全国四位の舗装率を誇るなど、道路環境は他県と比べ大変すぐれており、私たちの生活は便利で豊かなものとなっております。
現在、旧高松市南部地域の東西を結ぶ重要な道路である県道太田上町志度線バイパスの整備が進められています。この道路は、産学官連携による研究開発や新規産業創出の拠点である香川インテリジェントパークへのアクセス道路であるとともに、沿線には防災拠点施設である高松南警察署や高松土木事務所、広域物資輸送拠点に指定されているサンメッセ香川など、災害対策の拠点施設が集積しており、緊急輸送道路としても大変大きな役割を果たしています。また、高松市内の道路は、長距離にわたって南北に抜けている道路は多くありますが、高松の中部区間や南部区間において東西の道は意外と少ないため、並走する国道十一号や県道三木国分寺線などの交通の円滑化にも資するものであり、地域住民にとっても、この道路整備の重要性はますます増しているところであります。
現在、東は六条工区の一部が暫定二車線、西は国道百九十三号までの太田工区が四車線で開通しています。今後、ことでん琴平線太田・仏生山駅間に新駅が整備される予定であり、県道太田上町志度線バイパスは、その新駅へのアクセス道路ともなることから、国道三十二号からさぬき東街道までの道路整備とともに、新駅を含めた周辺整備をしっかり行うことで、広域での地域間交流による活性化にもつながるため、国道百九十三号から西の国道三十二号に向けての早期整備に大変期待が寄せられています。
そこで、県道太田上町志度線バイパスの六条工区の進捗状況と今後の整備予定について、また、国道百九十三号から国道三十二号までの整備のお考えについて知事にお伺いいたします。
加えて、高松西インターチェンジと高松空港を結ぶ空港連絡道路についても、現在整備が進められています。高松空港は、上海線や台北線などの国際定期路線が新たに就航し、近年の
インバウンド需要などもあり、利用客数が年々増加しており、昨年度には開港以来初の二百万人を突破しました。一方、他の地方空港でも国際定期路線などの開設が相次いでおり、地方空港間の競争は激化している中で、高松空港が瀬戸内ナンバーワンの拠点空港として発展していくためには、空港の整備はもとより、航空ネットワークを支える空港へのアクセス機能の強化や定時性の確保が大変重要であります。
そのため、高速交通体系の整備効果を生かした空港連絡道路の早期整備は喫緊の課題であります。高松西インターチェンジから県道岡本香川線までの中間工区については、暫定二車線での高架橋の整備と、高架橋以外については側道を含む四車線での平面整備が行われ、昨年三月に供用が開始されたところであります。また、県道岡本香川線から高松空港までのおよそ六キロメートルの香南工区については、地元関係者の方々への説明会など、早期整備に向けて鋭意進めていただいているところであります。
そこで、空港連絡道路の香南工区について、現在の進捗状況と今後の整備方針について知事にお伺いいたします。
質問の第四点目は、不登校傾向の子供に対する支援についてであります。
夏休み明けの九月は、学校生活に悩む子供たちにとって気持ちが落ち込みやすい時期でもあり、不登校傾向にある子供たちにとっては、なおさらであると思います。
日本財団が昨年、現役の中学生六千五百人に行った不登校傾向にある子供の実態調査によりますと、「毎日学校へ行きたくないと思っていた」との回答が四・四%、「給食登校や保健室登校など定期的に通常どおりの授業を受けなかった」が四・〇%、「けがや病気以外で一週間以上学校を休んでいた」が一・八%と、いずれかの条件に該当した中学生が合計で一〇・二%に達したとのことでした。また、日本財団によれば、不登校傾向の中学生は推計で約三十三万人。中学生の約十人に一人が不登校傾向にあり、教室に居場所がないと感じているようです。
文部科学省が毎年度行っている児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査によりますと、不登校の児童・生徒数は、全国では平成二十五年度以降五年連続で増加しており、本県においても、平成二十八年度まで五年間ほぼ横ばいで推移していたものの、平成二十九年度は前年度に比べ、小学校が三十八人増加の二百四人、中学校では二十五人増加の二百二十八人で、小学校においてはやや増加傾向が顕著になってきています。
不登校になる要因としては、学校の勉強についていけない、同級生になじめていない、家で甘えていたい、休みなれして学校に行くのが面倒くさいなど、子供によってさまざまであります。それゆえ、新たな不登校を生まないよう、日々の授業で勉強についていけない子供をなくす取り組みや、仲間外れをつくらず、誰もが自信を持って発言でき、物事に積極的に取り組むことができる学校の環境づくりが大切であると考えます。
また、子供が発するさまざまなSOSのサインを、家族を初め周囲の大人が見逃さず、子供が抱えている悩みにいち早く気づいてあげることも大切です。そのためには、私は日ごろからの親子のコミュニケーションが何より大切であると考えています。
最近では保護者の中には、子供とどのようにかかわってよいのかわからない、仕事や家事などが忙しくて子供に接する時間が持てない、子育てを学校任せにしてしまっているなど、親子のコミュニケーションが不十分な家庭がふえているように思います。親子のコミュニケーションについては、何も特別で難しいことをする必要はないと思います。子供との時間を三十分でもいいのでつくり、きょう一日の学校での出来事や友達の話、授業の話など子供の話に耳を傾け、頑張っているときには褒めてあげ、何か悩んでいるときには話を聞いて一緒に悩んであげるだけでも、その子供にとって安心感が生まれ、子供のちょっとした変化にも早く気づいてあげることができると思います。
また、現在不登校の状態にある子供やその傾向を示す子供についても、基本的には保護者と学校が連携し、その子の抱える悩みや問題にしっかり寄り添い、一緒になって一つずつでも解決することで、学校に気持ちが向くよう支えてあげる必要があると思います。ただ、不登校は甘えとの考えから自分を過度に追い詰めてしまう子供に対しては、学校が全てではないということも教えてあげるなど、子供の状況に応じてケース・バイ・ケースでの対応が必要であり、セーフティーネットとして教育支援センターなど、学校以外の居場所づくりも大切であります。
最近、このような活動を目にしました。それは、大学生数人で無料の学習教室を開き、小・中学生の勉強に付き添う活動でした。学習でつまずいた子供に、もう一度勉強の面白さを実感してもらい、小さなできたを積み上げてほしいとの思いで活動を始めたそうです。学習教室に通うある子供は、担任と折り合いが悪く不登校になってしまったそうですが、この学習教室は、不登校の子供に限らず、勉強したい、宿題を見てもらいたいと思うさまざまな子供が集まっており、代表者は、「学校や塾以外にも勉強できる場所があるのを知ってほしい」と訴えていました。
また、あるNPO法人は、学校でも自宅でもない居場所を提供しようとフリースペースを開設し、訪れた子供たちにはゲームや料理づくり、おしゃべりなどを楽しんでもらい、自由に過ごせるようにしたとのことでした。少しずつではありますが、子供たちの居場所がつくられ始めました。
平成二十八年十二月に公布された義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律、いわゆる教育機会確保法にも示されておりますが、不登校の子供に対しては、社会的な自立を日指して、不登校児童・生徒一人一人の状況に応じて、教育支援センター、不登校特例校、フリースクールなどの民間施設、ICTを活用した学習支援、多様な教育機会など、必要な支援が行われるようにすることが重要であります。
そこで、不登校の状態にある子供や不登校傾向の子供に対して、家庭での親子のコミュニケーションの大切さも含め、県教育委員会としてどのように対応し、支援していくお考えか、教育長にお伺いをいたしまして、私の一般質問を終わります。(拍手、降壇)
◯議長(大山一郎君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(
知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)松本議員の御質問にお答えいたします。
まず、関係人口の創出・拡大についてであります。
県では、人口の社会増への転換に向け、移住・定住の促進や大学の魅力づくりによる若者の県内定着などに取り組んでいるところでありますが、本県人口の現状は、若者の大都市圏への流出に歯どめがかからず、出生数も毎年減少を続けるなど依然として厳しい状況にあり、人口減少対策により一層積極的に取り組んでいく必要があります。
また、人口減少対策と並行して、人口減少社会に適応し、持続可能な地域をつくっていくことが必要であると考えており、本年三月に実施した県民意識調査の結果によると、地域団体の活動や運営面の課題として、「担い手の不足や高齢化」とする回答が最も多く、地域づくりの担い手を育成することなどが課題であると存じております。
こうした中、本県においても、瀬戸内国際芸術祭が契機となり、島と継続的にかかわる関係人口がふえ、元気を取り戻していると実感できる地域も出てきているほか、他県においては、外部の人材が地域等にかかわり、新しい視点やアイデアにより、地域の活性化につなげた事例もあると伺っております。
私は、こうした関係人口を創出・拡大することは、地域づくりの担い手として地域課題の解決に向けた取り組みが促進されるなど、地域の活力を取り戻すことにつながる一つの有効な取り組みであると考えております。
このため、次期かがわ創生総合戦略の骨子案に、地域課題の解決に向けた関係人口の創出・拡大を盛り込んだところであり、今後、各市町とも連携し、地域の実情を踏まえつつ、具体的な取り組みを検討してまいりたいと考えております。
次に、災害時における防災情報の収集と伝達についてであります。
災害時において、災害情報等を迅速に収集するとともに、県民の皆様に対して信頼性のある情報を的確に伝達することは、被害を最小限に抑え、適切な災害応急対応を行う上で大変重要であります。
このため、災害情報の収集につきましては、発災時に県から被災市町等へ災害時連絡員を速やかに派遣するとともに、警察、消防、自衛隊などのほか、電力会社等のライフライン事業者とも相互に連携して、正確な情報の迅速な入手に努めることといたしております。
また、県民の皆様への情報伝達につきましては、現在整備を行っている次期防災情報システムにおいて、緊急速報メールや登録制の防災情報メールなどに加え、新たに防災アプリを導入し、スマートフォンの位置情報を活用して、適切な避難行動を支援する情報や避難所情報などを提供できるシステムを構築しているところであります。あわせて、災害時の防災情報を一元的に入手できるかがわ防災Webポータルについても、スマートフォンへの対応や多言語対応などの改善を行い、よりわかりやすい情報提供を行ってまいります。加えて、大規模災害時においては、県民の皆様により安心していただけるよう、私のメッセージをツイッター等を通じて発信することも検討したいと考えております。
このような情報収集・伝達体制については、議員御指摘のとおり不断の準備が必要であることから、今後、次期防災情報システムの活用や関係機関との一層の連携を図るための訓練の充実にも努めてまいりたいと存じます。
私といたしましては、今後とも各市町や防災関係機関と連携し、災害時における情報収集や県民の皆様への情報伝達が迅速かつ的確に行えるよう体制整備に努め、防災・減災対策に万全を期してまいります。
次に、県道太田上町志度線バイパスなどの道路整備についてであります。
県道太田上町志度線バイパスのうち、議員御指摘の六条工区、延長約九百六十メートルにつきましては、昨年四月に起点側の香川インテリジェントパークから現道の県道太田上町志度線までの約百三十メートル区間を暫定二車線で供用開始しているところであります。また、昨年度から、春日川にかかる橋梁工事を進め、今年度は橋脚と右岸側の橋台の工事を行うこととしており、来年度には上部工に着手する予定であります。現在までに面積ベースで約八三%の用地を取得しており、用地買収が完了したところから順次工事を実施し、六条工区の早期完成に努めてまいります。
また、国道百九十三号から国道三十二号までの約一・四キロメートル区間につきましては、県道太田上町志度線バイパスと接続し、高松市中部地域の東西アクセスを向上させるとともに、並走する現道や県道三木国分寺線の交通の円滑化にも資する道路であることから、六条工区の事業の進捗や周辺の交通状況を見ながら、財政事情を踏まえつつ、事業化の時期について検討してまいりたいと考えております。
次に、地域高規格道路である空港連絡道路のうち、県道岡本香川線から高松空港までの香南工区約六キロメートルにつきましては、まずは空港までのわかりやすいルートを確保するため、高松市道香川綾南線以北のバイパス区間約一キロメートルにおいて、昨年度、測量・設計を行い、今年度から用地買収に着手しているところであります。今後は、用地買収が完了したところから順次、境界構造物等の工事を進めてまいります。
私といたしましては、地元関係者の皆様の御理解と御協力をいただきながら、引き続き県下の道路ネットワークの整備に積極的かつ着実に取り組んでまいりたいと考えております。(降壇)
◯議長(大山一郎君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)松本議員の不登校傾向の子供に対する支援についての御質問にお答えいたします。
本県における不登校児童・生徒数は近年増加傾向にあり、不登校はどの児童・生徒にも起こり得るという認識のもと、社会全体で取り組むべき重要な課題であると考えております。
このため、各学校においては、児童・生徒が不登校となる予兆を見逃さないよう、保健室を利用するようになるなどのサインを察知したり、理由が明確でない欠席をした場合は、一日の欠席であっても家庭訪問をしたりするなど、早期発見・早期対応に努めているところです。
また、不登校は、家庭の状況等が複雑に絡み合い、学校だけでは解決できない場合も多いことから、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを積極的に活用し、不登校児童・生徒やその保護者に寄り添うことや、家庭環境への働きかけ、医療・福祉等の関係機関との連携を一層進め、組織的に対応しております。
さらに、県内には、学校以外の居場所としての役割を果たしている教育支援センターが十六市町に十七カ所設置されており、個々に応じた学習や集団での体験など、社会的自立に資する活動を行っています。
議員御指摘のとおり、子育てに不安を抱えている保護者も多くなっていることから、小学校入学前に「子育てハンドブック」を、中学校入学前に「さぬきの子育て 思春期サポートブック」を配付するとともに、親子のコミュニケーション等について保護者同士で話し合う家庭教育推進専門員によるワークショップを実施するなど、家庭教育の大切さや子供へのかかわり方について学習する機会を提供してまいります。
県教育委員会といたしましては、今後とも不登校児童・生徒への早期対応と専門家等との組織的対応、家庭教育への支援等を一層充実し、総合的に進めてまいります。(降壇)
◯議長(大山一郎君)理事者の答弁は終わりました。
暫時休憩いたします。
午前十一時五十一分休憩
午後 一時 七分開議
─────────────────────────────
出 席 議 員
西 川 昭 吾 君 松 岡 里 佳 君
鏡 原 慎一郎 君 氏 家 孝 志 君
高 木 英 一 君 白 川 和 幸 君
岡 野 朱里子 君 秋 山 時 貞 君
斉 藤 勝 範 君 松 本 公 継 君
山 本 悟 史 君 米 田 晴 彦 君
木 村 篤 史 君 新 田 耕 造 君
佐 伯 明 浩 君 松 原 哲 也 君
谷 久 浩 一 君 樫 昭 二 君
山 田 正 芳 君 香 川 芳 文 君
三 野 康 祐 君 森 裕 行 君
花 崎 光 弘 君 十 河 直 君
高 城 宗 幸 君 有 福 哲 二 君
広 瀬 良 隆 君 辻 村 修 君
石 川 豊 君 高 田 良 徳 君
竹 本 敏 信 君 尾 崎 道 広 君
宮 本 欣 貞 君 山 本 直 樹 君
黒 島 啓 君 都 築 信 行 君
平 木 享 君
欠 席 議 員
大 山 一 郎 君 五所野尾 恭 一 君
綾 田 福 雄 君 鎌 田 守 恭 君
─────────────────────────────
地方自治法第百二十一条第一項による出席者
知 事 浜 田 恵 造 君
副 知 事 西 原 義 一 君
病院事業管理者 太 田 吉 夫 君
審 議 監 安 松 延 朗 君
政 策 部 長 大 山 智 君
総 務 部 長 東 田 晃 拓 君
環境森林部長 木 村 士 郎 君
健康福祉部長 安 藤 照 文 君
商工労働部長 浅 野 浩 司 君
交流推進部長 新 池 伸 司 君
農政水産部長 国 分 伸 二 君
土 木 部 長 片 山 秀 樹 君
知事公室長 淀 谷 圭三郎 君
危機管理総局長 土 岐 敦 史 君
文化芸術局長 佐 藤 今日子 君
子ども政策推進局長 小 川 秀 樹 君
会計管理者 宮 武 卓 朗 君
病 院 局 長 岡 内 浩 二 君
教 育 長 工 代 祐 司 君
公安委員会委員 溝 渕 香代子 君
警察本部長 岡 部 正 勝 君
代表監査委員 三 谷 和 夫 君
監 査 委 員 亀 井 孝 行 君
事 務 局 長
人事委員会委員 平 尾 敏 彦 君
人事委員会 岡 田 総 一 君
事 務 局 長
労働委員会 山 本 浩 司 君
事 務 局 長
政策部次長 椋 田 那津希 君
─────────────────────────────
◯副議長(西川昭吾君)再開いたします。
一般質問を続行いたします。
岡野朱里子さん。
(
岡野朱里子君登壇、拍手)
◯
岡野朱里子君 お許しをいただきまして、一般質問をさせていただきます。
まず最初に、児童虐待についてお伺いをいたします。
目黒区で虐待により亡くなった結愛ちゃんの両親、結里被告と雄大被告の裁判が続いていて、きょう雄大被告には十八年の求刑がありました。結里被告の裁判では、夫である雄大被告からの精神的・暴力的支配などのDV、ドメスティック・バイオレンスにより物事の判断ができなくなったことを理由に刑の軽減を求めています。
そこで、今回は児童虐待対策として三点お伺いをいたします。
まず、一点目。報道でも裁判でもたびたび言及されている夫から妻へのDVについてです。
子供に身体的・精神的暴力を行う夫が、妻には何もしないとの想定はなかなかできず、そこには必ず有形無形のDVがあるという前提で児童虐待対策が必要です。もちろん結里被告にもその兆候があることは認識していたと思いますが、香川県児童相談所が想像していた以上の精神的支配を受けていて、夫から結愛ちゃんを守るゆとりが全くない状況にあったということでしょう。
この結愛ちゃんのケースは、西部子ども相談センターが担当していました。香川県においては、女性相談を受け付けるのは高松の子ども女性相談センターだけになっていて、西部子ども相談センターにおいて取り扱われる児童虐待案件において、子供支援に力が注力され、母親支援の力が高松子ども女性相談センターに比べ弱い可能性もあると思います。
そこで、お伺いいたします。
今回のような事件を再び繰り返さないために、西部子ども相談センターにも女性相談の担当者を配置するお考えについてお聞かせください。
次に、児童養護施設などに措置をする際の入居費用負担についてお伺いします。
今回、結愛ちゃんは何度も児相や警察がかかわるケースでした。なので、もちろん児童養護施設への入所、いわゆる措置を被告らに相談をしていました。一時は結愛ちゃんの入所に対して前向きであった彼らが、最終、結愛ちゃんの入所をやめた一因には、入所に際して費用負担があることがあったと言われています。非課税世帯など費用負担を免除される家族もありますが、その収入に応じて費用負担が発生する家族もあります。
私は、全国の女性議員の仲間に、虐待による措置について、命にかかわるかもしれないときには保護者の自己負担をなくせるよう国に働きかけませんかと提案したところ、自治体によっては柔軟な運用をしているところがあると御意見がありました。また、措置される子供の保護者による自己負担があっても、なかなか支払われず、滞納されているケースが本県でも多く、かえって児童相談所職員が忙しい合間に督促を行わなければならず、負担になっている状況もあります。
そこで、知事にお伺いいたします。
児童虐待が認められ、子供を守るために児童養護施設入所が適当と思われるケースについて、入所費用の保護者負担がその弊害になることはないのか。また、入所費用の保護者負担のあり方を御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
最後に、私を含め、同会派の山本県議や新田県議などが、一時保護所の新設についてたびたび質問をしています。しかしながら、数をどうするかという問題と同時に、どんな一時保護所をつくるべきかという議論も必要です。
先般、東京の一時保護所が、人権に対する配慮がなく、本来子供の権利が守られるべき一時保護所で人権侵害の状況があるとの報道がされたところです。このような一時保護所の持つさまざまな課題を背景に、国では平成二十九年度から一時保護所における第三者評価の受審費用を創設し、一時保護所の第三者機関、外部評価に積極的に乗り出しました。その前から取り組んでいる自治体も、例えば横浜市、川崎市などたくさんございます。
そこで、質問いたします。
子供の権利を守るべき一時保護所ですが、なかなか実態が追いついていないとも言われ、大変閉ざされた世界となっています。新設するかしないかは別として、一時保護所が子供たちにとって真に守られる場所となるよう、国の制度を活用するなどして第三者評価を受けるべきと考えますが、いかがでしょうか。
次に、新型出生前診断についてお伺いをいたします。
新型出生前診断とは、お母さんの血液検査によっておなかの赤ちゃんの染色体異常の可能性がわかる検査です。検査でわかる染色体異常は本来、十三トリソミー、十八トリソミー、二十一トリソミーといわれるダウン症候群の三つに限定されています。染色体異常の赤ちゃんは、生まれてきた際、心臓病や白血病など深刻な合併症がある場合も多く、出産したとしても長くは生きられないケースもあります。検査は、学会では三十五歳以上の高齢出産もしくは遺伝的な背景を持つ妊婦に限られていて、妊娠十週から受けることができ、検査で陽性の反応が出たら、一般的には確定検査である羊水検査を受けなければいけません。そして、母体保護法により定められている妊娠二十一週と六日までに中絶するかどうかを決断しなければいけません。
日本では二〇一三年から研究診療として実施され、二〇一八年から一般診療となりました。この間、検査を行い、赤ちゃんに染色体異常があるとわかった方のうち、約九五%が中絶を選択しています。この検査は常に命の選択になるなど議論が起こりますが、私はそのことについて今回は触れません。
現在、新型出生前診断の認可医療施設は全国に九十二しかありません。その認可要件は厳しく、遺伝カウンセリングや御家族の心に寄り添う専門職の配置、また、確定検査となる羊水検査の実施などが必要です。
先日、香川県で唯一新型出生前診断をしている四国こどもとおとなの医療センターに行き、お話を伺いました。御家族が本当に本当に苦しい決断をされていること、障害のある子供を育てる環境が整っていない社会環境が苦しい選択をする一因となっていること、また、中絶という選択をしたお母さんや御家族も、ずっとずっとその選択が正しかったのかどうか悩まれるというお話でした。センターでは、その選択に至るまで約一カ月半ほど御家族に寄り添う治療を行います。しかしながら、それでもまだ不十分だという医療従事者の声もあります。一般的に産婦人科で検査や中絶手術を行うため、術後のお母さんの苦悩にまでケアが届かないということです。特に、妊娠中期の中絶手術は、赤ちゃんがおなかの中で大きく育っているだけに、精神的にかなり大きなダメージがあることが想像できます。
一方で、学会から認可を受けない施設で検査をすることも違法ではありません。産婦人科を標榜している必要もありません。つまり、どこの医療機関でもこの検査を受けることが可能です。手軽であることや年齢制限がないこと、学会で認められている三種類の染色体異常以外も検査対象になること、羊水検査をしなくてもよいことなど、さまざまな理由で認可外の医療機関で検査を受けている妊婦さんは年々ふえています。しかしながら、認可のない医療施設で検査をした場合、結果が単に郵送されるだけなど、お母さんや御家族に寄り添う支援は行っていません。晩婚化による高齢出産ケースの増大、また、さらに手軽な検査方法が導入される可能性を考えると、検査を受ける妊婦のさらなる増加が予想されます。
そこで、知事にお伺いいたします。
まずは、一般的に心のケアをできる医療関係者がいないと言われている認可を受けてない医療施設などで検査を受ける御家族はもちろん、認可施設で検査を受けた御家族でも、さまざまな問題に対応できる相談窓口の設置についてのお考えをお聞かせください。
次に、障害のあるお子さんを出産されたお母さんたちからお話を聞くと、妊娠期から、障害のある子供ができた場合、どんな支援があるのか、どんな将来が描けるのか情報を聞きたかったというお話をいただきます。また、ダウン症のお子さんを育てる友人が、「わが子がダウン症と告知された八十一人の「声」」という冊子をつくっています。この冊子を読むと、もし、ダウン症や障害児支援について正しい情報をできるだけ多く知り得ることができたなら、産むか諦めるかの判断が少し変わるのではないかとも感じました。しかしながら、障害のある子供を産むことを断念する背景に、私たち行政が、まだまだ共生社会を十分につくり切れていないことも認めざるを得ません。
このようなことから、以下、知事に質問いたします。
妊娠期に、もし赤ちゃんに障害があることがわかり、出産する、しないを選択する際、行政などの支援が充実してきていることを理解してもらう正しい情報提供が必要だと思うが、いかがでしょうか。
また、今度改定される次期健やか子ども支援計画において、障害のある子供たちもしっかり行政の支援を受け、楽しい未来を創造できるようなものにしていただきたいと思います。
加えて、四国こどもとおとなの医療センターの医師によると、障害のある子供がいた場合、お母さんが働けないことがネックになることが多いとも言われています。その課題に対する配慮もしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
最後に、センターの医師が、「中絶を選択したお母さんや御家族が悪であるような認識を払拭してほしい。簡単に答えを出す御家族は一組もいない」と何度も強調されていました。私たちは、常にその御家族の理解者でありつつ、一方、障害があってもなくても自分の生きたい人生を生きられる社会をつくるよう、みんなで努力を続けていきたいと思います。
次に、障害のある方の在宅就労についてお伺いをいたします。
現在、厚生労働省では、障害のある方の在宅就労を支援する施策をたくさん講じています。平成二十七年度からは、それまで対象がA型・B型事業所だけだったものが、就労移行支援施設においても在宅就労が認められました。それらの施設から、在宅の一般就労につなげる狙いがございます。
しかしながら、香川県では在宅就労可能な施設などは高松市にA型事業所が一カ所あるのみです。先日、見学に行かせていただきましたが、CAD等を使い建造物の構造チェックをするなど、大変高度な仕事をしていらっしゃいました。精神障害や発達障害の方が多く、在宅可能なので、香川県内さまざまなところから就労がなされていて、大変将来性を感じる作業所でした。
他の都道府県を見ても、ICTを活用したテレワークが多いのですが、やはり難しいのは、仕事の一部を事業所に切って出す仕事を継続的に見つけられるかどうかということです。また、県内のある地域でA型事業所を運営する方の話によると、支給を決定する市や町が、この仕組み自体を知らない可能性もあるということでした。
さて、国では、障害者雇用促進法、障害者雇用納付金制度に基づき、自宅や福祉施設などで就業する障害のある方へ仕事を発注する企業に、特例調整金や特例報奨金を支給する在宅就業障害者支援制度を設けています。障害のある方に直接発注する場合だけでなく、在宅就業支援団体等を介して発注した場合にも、この調整金等は支給されます。
ただ、残念なことに、平成二十九年度に厚生労働省が出した在宅就業障害者マッチング事例集によると、香川県においては、障害者雇用促進法に基づく在宅就労支援団体や、登録団体以外で支援活動をしている団体が一つもありません。障害のある方が直接仕事を発注してもらうことが難しいであろうことを想定すると、この状況を放置していたままでは、香川県内の障害のある方の在宅就労は始まらないということではないでしょうか。
隣の徳島県においては、支援団体が障害のある方や施設と協力して、事業者として徳島県や徳島市とをつなぎ、県や市が、まずは率先して在宅障害者就労支援の取り組みを行っているようです。
この状況は本県のみに限らなくて、厚生労働省では、在宅障害者が能力等に応じて活躍できる支援体制を構築することを目的として、実施主体を都道府県とした在宅障害者に対するICTを活用した就業支援体制を構築するモデル事業を行っています。
そこで、知事にお伺いいたします。
障害のある方の働き方の多様性について及び在宅就労についての御所見をお聞かせください。また、本県においても障害のある方の在宅就労が進んでいない現状を鑑み、事業者や市や町への在宅就労に関する情報提供の徹底、また、国のモデル事業などを使い、県が率先して障害のある方の在宅就労を応援するお考えについてお聞かせください。
次に、人工乳房の自主回収についてお伺いをいたします。
折しも今月は乳がん月間です。三年前のある日、友人から、「乳がんになり、場所が悪くて全摘しないといけない。再建手術もしないといけないかもしれない」という電話がありました。結局、彼女は中央病院で全摘手術をした半年後、二〇一三年から保険適用が認められた人工乳房、インプラントを使っての再建手術を受けました。がんだけでもショックな上に、胸を全摘し再建手術を行うことは女性にとって本当に大きな心身の負担です。それでも何とかその後、元気に生活をしていました。
そうしたやさき、ことしの七月末、「どうしよう、私が使ったインプラントに発がん性があり、自主回収になったらしい」という電話がありました。そして、抜去する手術をまた、しなきゃいけないのかどうかという不安な声がありました。調べてみたところ、米国の食品医薬品局が、乳がんの治療後の乳房再建や豊胸手術のために使用している人工乳房、インプラントが原因と見られる特殊なリンパ腫で死亡した方が三十三人、発症した方が五百人以上に上ると発表し、そのうちの大半を製造するアラガン社に自主回収を求めた結果、同社は世界で販売を停止し、自主回収することを公表したという経緯でした。
日本でも七月二十五日に自主回収が公表され、アラガン社製のインプラントしか日本では保険適用がされていないため、以来、乳がん治療後のインプラントによる乳房再建手術は行われていません。インプラントを入れるためには、事前に同社のエキスパンダーを約半年間胸に挿入する必要があり、自主回収以降、エキスパンダーを入れたまま待機をしている方が少なくとも全国に三千五百人以上いらっしゃいます。県立中央病院でも、彼女のように再建手術を受けた方は三十七人、待機中の方が六人いらっしゃいます。
アラガン社及び学会、また、厚生労働省によると、このリンパ腫の発生確率が〇・〇三%と低いこと、平均発症が挿入後約九年で進行が遅いタイプであることから、インプラントの破裂等の異常がない場合は抜去は推奨しないし、診療自体も急ぐことなく、定期検診時で大丈夫というお話でした。しかしながら、本当にそんな対応でいいのか私は疑問です。何といっても、がんで手術をした患者さんが、本人は何の落ち度もないのに、その手術のためにさらに別のリンパ腫になる可能性がある状況にさらされているのです。現在、県立中央病院にはたびたびお願いをし、取り組みを進めてもらっていますが、ほか県内で同様の手術を行える四病院では、その対応がまちまちになっています。また、厚生労働省に問い合わせると、あくまで製造メーカーの自主回収であるし、保険適用した際にリンパ腫の可能性について添付資料に記載をしているので、厚生労働省としては、ほかのインプラントの保険適用を急ぐぐらいのことですと、その責任はないというような立場をとっていますが、そう簡単な話ではないような気もします。
今回、日本はアメリカの動きを受けて七月二十五日に自主回収を行いましたが、本年四月、フランスを含むヨーロッパ諸国、五月には
シンガポールとカナダで販売停止になっていて、六月には日本でも発症例が一件報告され、結果、六月七日、厚生労働省からアラガン・ジャパン株式会社に対し、インプラントの使用上の注意に対する改訂を求め、同じタイミングで日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会のホームページで、本学会を含む日本形成外科学会、日本乳癌学会、日本美容外科学会の共同文章として、「乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA─ALCL)についてよくある御質問」という文章を掲載しています。その中の自前の一問一答で、「BIA─ALCLは知っておくべき情報ですか?」という問いに対し、「すべての乳房インプラント手術を受ける前に正しい情報を知っておくことが必要です。BIA─ALCLを発症することは稀ですが、正しい情報を知らなかったために、治療が遅延してしまう可能性があります。これにより、負担の大きい治療が必要となるケースや、場合によっては重篤な結果に至ることも考えられます。」という回答があります。
当該学会に御連絡したところ、六月のタイミングで保険適用インプラント再建が認められている全医療施設の責任者には周知をしているとのことでした。
国内外で懸念の声が広がる中、この間もインプラントによる再建手術や、インプラントを挿入するためのエキスパンダー挿入処置が続けられてきました。県内にも、手術を受けるためにエキスパンダーを入れたまま待機している患者さんもいます。その方が今回の件を受け、インプラント挿入をやめると判断し、エキスパンダーを除去することになったら、その費用は誰が負担するのか。また、もし今、入れているインプラントが破裂などして取り出さなければいけなくなったとき、さらにはインプラントによりリンパ腫になったときの治療費負担や心身の損害賠償はどうなるのか。
先ほどの学会にも、この費用負担や損害賠償についてお伺いしたところ、同様の問い合わせは殺到しているが、アラガン社からも、厚生労働省からも回答が出てこないとのことでした。
そこで、知事にお伺いいたします。
この問題における現状についての御認識と県内患者の実態把握、医療機関に対し適切な対応を求めること、また、県内におられる該当する方々の不安を取り除くためにも、県としてその方々の立場に立ち、国に対し、先ほど述べたような事態が発生したときにどう対応するのか検討を求める必要があると考えますが、いかがでしょうか。
また、県立中央病院で、手術前の同意をもらっていたのかどうか、そして、今後、患者の方に病院から適切なタイミングで情報提供と患者の不安に寄り添った診察をすることについて、具体的にどのように対応するおつもりか、
病院事業管理者にお尋ねいたします。
最後に、不登校対策についてお伺いをします。
本県の義務教育課程における不登校の状況にある子供たちは、平成二十九年度、公立小学校で二百四人、中学校で八百二十八人で、その数は平成三十年度、増加傾向にあるようです。
さて、二〇一六年十二月、教育機会確保法が成立し、不登校対策は大きな施策転換を行いました。それまでは不登校指導の目的は学級復帰となっていたのが、それ以後は本人の社会的自立の促進となりました。そして、教育委員会には、これまで以上に学校以外の学びの場を積極的に提供することが求められています。
しかしながら、本年、法施行三年目を機に実態調査を国が行ったところ、法の趣旨がまだまだ地域に十分落とし込まれていない実態が明らかとなりました。特に、教育委員会とフリースクールの連携、また、夜間中学の設置が進んでいないということで、来年度の文部科学省の概算要求には、それらの対策費が新たに盛り込まれました。
今回は、教育委員会とフリースクールの連携についてお伺いをしたいと思います。
先ほどの実態調査によると、教育機会確保法施行後も、約八五%の自治体では教育委員会とフリースクールの連携ができていないと報告されました。学校とフリースクールの連携がなければ、教員が子供たちの身体、そして学習状況の把握ができていないことにもなるため、改善が求められています。また、現在、不登校の状況にある子供たちがフリースクールに通った場合、それを在籍校で出席扱いにするかどうかはその学校長の判断によるものとなっています。しかし、香川においては、なかなか出席扱いと判断する事例が少ないのが大きな課題となっています。フリースクールに通うことが出席扱いにならなければ通学定期がつくれないという問題もあり、かねてから、香川県内でもフリースクールの関係者の方々が、出席扱いとなるような運動をしてこられました。例えば、尼崎市のように、学校長の判断ではなく、教育委員会の判断として、フリースクールに通えた日は一律出席扱いとするとしているケースもあります。
それも一つの方法ですが、今回、国は、都道府県と各政令市の教育委員会に一人ずつ不登校対策のコーディネーターを配置する新たな施策を展開します。コーディネーターは、学校、市町教育委員会、フリースクール、保護者をつなぐかなめとしての役割で、正しい情報の提供や不登校対策協議会などの運営を行います。フリースクールは県内外どこにでも通うことができる広域性があることや、市や町によってフリースクールの活用に差が出て、子供の不利益になるのを防ぐために県教委に配置されるものと思われます。
また、先日、本県におきましてもひきこもりの実態調査が行われました。その数自体は疑問が残りますが、ひきこもり状態の長期化や本人と御家族の高齢化の実態が明らかになりました。ひきこもりは、不登校の長期化の結果、その状況に至ることもあることから、ひきこもり防止対策として、不登校の子供を中学卒業後も継続的に支援をするため、教育委員会と県の福祉部門との連携の必要性も指摘されています。例えば、京都府では、府と府教育委員会が連携し、情報共有をして早期から対策をとるなどしています。そのような先進的な取り組みを参考にして、国も来年度、都道府県に学校や教育委員会、福祉機関などの関係者でつくる不登校対策協議会の設置を求めています。
そこで、教育長に質問いたします。
本県において不登校の状況にある子供たちが増加傾向にあることの受けとめと、県は国の方針を受けて、高どまりしている深刻な不登校問題への対策、そしてそこからのひきこもりの防止のため、県教委への不登校対策コーディネーターの配置と関係者でつくる不登校対策協議会の設置をすべきと考えますが、いかがでしょうか。
以上で質問を終わります。(拍手、降壇)
◯副議長(西川昭吾君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(
知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)岡野議員の御質問にお答えいたします。
まず、児童虐待についてであります。
本県では、背景にDV、ドメスティック・バイオレンスが疑われる児童虐待事案に対しては、児童相談所の児童福祉司と子ども女性相談センターの女性相談員が連携して支援を行っており、西部子ども相談センターにおいてDVについての支援が必要な場合には、女性相談員が出向くなどして対応しているところであります。
西部子ども相談センターへの女性相談員の配置につきましては、母親支援の強化が期待できる一方、保護等に当たっての判断体制や保護した後の支援の進め方について検討する必要もあることから、効果的な職員配置のあり方について、さらに研究してまいります。
お尋ねの、児童虐待が認められ、施設への入所が適当と思われるケースについて、保護者が費用負担を理由に抵抗を示す場合においても、丁寧な説明を行い、理解が得られるよう努めているところであります。保護者の費用負担については、やむを得ない事情がある場合には、一部または全部の免除を行った上で、当該世帯の所得に応じ、国が定める基準に沿って徴収しているものであり、国の基準と異なる取り扱いを行うことについては、慎重に検討する必要があると考えております。
また、一時保護所の支援の質の向上に関しては、本年六月の児童福祉法改正により、来年四月から児童相談所が行う業務の質を評価することが努力義務とされたことから、御指摘の第三者評価の実施についても検討する必要があると考えておりますが、評価方法などの課題もありますことから、まずは県みずからが評価を行い、その結果や他県の実施状況等を踏まえた上で、第三者評価の実施に向けた具体的な検討を進めてまいります。
私といたしましては、今後とも虐待の未然防止・早期発見や、虐待を受けた子供への支援の充実に全力で取り組んでまいります。
次は、新型出生前診断等についてであります。
母体血を用いた出生前遺伝学的検査、いわゆる新型出生前診断に関する検査につきましては、県内で唯一、日本医学会による認定を受けている四国こどもとおとなの医療センターにおいて実施しているほか、御指摘のとおり、妊婦の採血により極めて簡便に検査ができるため、認定施設以外でも実施が可能であります。
お尋ねの相談窓口につきまして、県では保健福祉事務所や委託先である県助産師会において、妊娠・出産に関するさまざまな相談に対応しておりますが、出生前診断に関する専門的な助言が必要な場合には、認定施設以外で検査を受けた方も含め、専門医や臨床心理士等により、遺伝に関する相談や医療面、心理面での丁寧なサポートを行っている四国こどもとおとなの医療センターに、その対応をお願いすることがより適切であると考えており、現時点では、新たな窓口の設置については考えておりません。
妊娠期における正しい情報提供につきましては、各市町が母子保健対策として切れ目ない支援に取り組んでおり、県としても市町と緊密に連携を図り、早期療育や経済的支援、医療・福祉サービス等について、必要な情報の提供に努めてまいります。
また、障害がある子供たちが健やかに成長できるように、これまでも地域の療育支援体制の充実や特別支援教育の推進などに取り組んでおり、次期健やか子ども支援計画においても障害児施策の充実を位置づけ、さらに取り組みを進めてまいります。
さらに、障害のある子供を持つ母親の就労の課題につきましては、地域の中で不安を抱えたまま孤立しないよう、引き続きライフステージのそれぞれの場面で相談支援を行う体制整備を図るほか、各市町と連携して、保育所、放課後児童クラブや放課後等デイサービスの利用を進めることで支援してまいりたいと考えております。
次に、障害者の在宅就労についてであります。
障害者にとって、就労は社会参加や自立のための重要な柱になるものであり、障害者が能力を十分に発揮して働くことができるよう、その特性に応じた多様性のある働き方が求められており、中でも在宅就労は、障害特性により通動に困難が伴う場合においては、障害者の就労を進める上で有効な手段であると考えております。
こうした考え方のもと、県では、障害者の在宅就労に向けた取り組みとして、かがわ総合
リハビリテーションセンターにおいて、在宅ワーカー育成事業によりICT活用支援などの研修を実施しており、今年度も既に三十五回開催し、延べ九十六人の障害者が参加しているなど、障害者の在宅就労を支援する取り組みを進めております。
また、在宅就労を含めた就労支援に関する制度につきましては、市町担当者会議や障害福祉サービス事業所等を対象とした集団指導を通じて、各市町や事業者に周知を図ってきたところでありますが、今後、先進事例なども含め情報提供を徹底し、在宅就労が進むよう努めてまいります。
また、議員御指摘の在宅障害者に対するICTを活用した就業支援体制を構築するモデル事業の実施につきましては、既に取り組んでいる他県の状況などを、まずは調査してまいりたいと考えております。
私といたしましては、在宅就労を積極的に支援することにより、障害者の就労をより一層促進し、「障害者が住みなれた地域でいきいきと安心して暮らせる香川」の実現を目指してまいります。
次に、人工乳房の自主回収についてであります。
人工乳房は、乳がん患者の乳房再建などで使われる医療機器で、いわゆる医薬品医療機器等法において、副作用や機能障害が生じた場合のリスクが大きいことから高度管理医療機器に分類されており、その品質や有効性、安全性に関し、国が承認を行っております。
今回の自主回収につきましては、本年七月にアメリカ食品医薬品局からの自主回収の要請を受け、製造販売業者が日本国内での自主回収を決定したもので、出荷先の医療機関に対し、回収や患者へのモニタリング等を依頼するなどの対応を行ったと伺っておりますが、患者の皆様にとって不安であることから、国や製造販売業者が対応をとることはもちろん、医療機関においても患者の皆様に対し、適切な説明を行う必要があると考えております。
お尋ねの県内の患者の実態につきましては、人工乳房手術実施認定施設となっている県内の五つの医療機関に問い合わせたところ、先月末現在で、再建手術を受けた方が八十九名、待機中の方が十一名との回答がありました。
また、今月一日に国から各都道府県に対し、患者等に対する情報提供についての協力要請があり、これを踏まえ、県において対象となる医療機関に対し、患者等への適切な相談対応を依頼するとともに、県民の皆様に対しても、県のホームページなどにより情報提供を行ったところであります。
なお、インプラントによるリンパ腫になった際の治療費や損害賠償等の負担につきましては、厚生労働省の担当者からは、現時点では政府として特別な対応を行う考えはないと伺っております。
私といたしましては、今回の事案について、まずは、国や製造販売業者において適切に対応されるべきと考えておりますが、県民の皆様の安全・安心の観点から必要な場合には、国等に対し、対応の検討を求めてまいりたいと考えております。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)太田
病院事業管理者。
(
病院事業管理者太田吉夫君登壇)
◯
病院事業管理者(太田吉夫君)岡野議員の人工乳房の自主回収についての御質問にお答えします。
アラガン社が販売するこのゲル充填人工乳房は、乳がんにより乳房切除となった患者が乳房再建に使用する場合に保険適用となる旨が厚生労働省より通知されてから、広く乳房再建に使われてきました。中央病院におきましても、この製品を用いた手術を行ってまいりましたが、自主回収されることになり、手術を受けられた方や手術を待たれている方は、大きな不安を感じていることと思います。
こうした中、中央病院では、人工乳房挿入患者及び挿入予定患者に対し、受診の際、この製品が自主回収となった理由を御説明するとともに、人工乳房挿入患者に対しては、異常などの早期発見のために二年に一回の診察とMRI検査のための定期受診を御提案し、人工乳房挿入予定患者に対しては、自家組織による乳房再建術の実施か、別の人工乳房を国が認可するまでの間、待機いただくかを御提案しております。
また、中央病院のホームページで日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の、この製品の自主回収等の情報を発信しているところであり、今後も最新の情報をお知らせすることで、不安な思いを少しでも払拭できるように努めております。
なお、手術前には、手術を行う上でのリスク、後遺症の可能性等を説明した上で、手術への同意をいただいておりますが、その際、発生の可能性が非常にまれなリスクにつきましては、患者が最適な治療方法を選択する妨げになることも考えられますから、説明はしておりません。
お尋ねの乳房再建手術の際の同意については、こうした理由で県内外の他の病院と同様に、このリンパ腫発生のリスクについて説明しなかったものであり、今後とも、患者に対し適切な説明に努めてまいります。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)岡野議員の不登校対策についての御質問にお答えいたします。
不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童・生徒にも起こり得るという認識のもと、学校、家庭、地域が児童・生徒に寄り添い、共感的理解と受容の姿勢を持って取り組むべき重要な課題であると考えております。
不登校の児童・生徒やその保護者を支援するため、本県においては県内十六市町に教育支援センターが十七カ所設置されており、約五十名の小学生と約百六十名の中学生の合計二百十名程度が通っています。そこでは個人に応じた個別の活動の場が提供されており、集団での活動、体験活動も重視されています。また、教育相談や保護者懇談会、カウンセラーを招いた親の会を実施しているところもあります。
議員御指摘のとおり、文部科学省は、不登校児童・生徒の支援体制を整備するために、不登校児童生徒支援協議会等の設置やコーディネーター等の配置の例を挙げて、令和二年度の概算要求をしています。
不登校の背景には、さまざまな要因が複雑に絡み合っており、学校だけでは解決できないケースも多いことから、不登校支援に係る関係機関の連携の窓口の設置やコーディネーターの配置は有効であると考えております。
協議会設置の一例として、京都府では、ひきこもり対策の視点から不登校を捉え、先進的な取り組みがなされており、福祉部局と教育委員会が連携して、中学校在籍時から継続した支援が行われていると承知しています。
県教育委員会といたしましては、不登校児童・生徒とその保護者への支援として、引き続き教育相談体制等の充実を図るとともに、今後、国の動向を注視しながら、協議会の設置やコーディネーターの配置について、幅広く研究を進めてまいります。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)再質問の通告がありますので、発言を許可いたします。
岡野朱里子さん。
(発言する者あり)
(
岡野朱里子君登壇、拍手)
◯
岡野朱里子君 お許しをいただきましたので、再質問させていただきます。
児童虐待対応についてです。
(発言する者あり)
◯副議長(西川昭吾君)発言を許可しておりますので、どうぞ。
◯
岡野朱里子君 虐待対応についてですが、児童虐待が認められ、子供を守るために児童養護施設入所が適当と思われるケースについて、入所費用の保護者負担が弊害になることはないかということに対して、知事は説得をしていくというふうにおっしゃいましたが、説得できないケースが今回のようなケースだったということは明らかになっています。それでも、国の方針と違うことはしないということは、子供たちの命がどうしても入所によって守られなければいけない場合に、これからも説得をし続けて、子供を家に置き続けるという見解でよろしいのでしょうか。説得がうまくいかないケースが多いということを前提にお答えをいただきたいと思います。
そして、最後に指摘だけさせていただきますが、
病院事業管理者に指摘をさせていただきます。
六月に学会から、事前に、手術前に必ず説明をするような提案がなされた後も術前の説明をしていなかったことを指摘をして終わります。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)再質問に対する理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(
知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)岡野議員の再質問にお答えいたします。
お尋ねの、児重虐待が認められ、施設への入所が適当と思われるケースで保護者が費用負担に抵抗を示す場合に、当方としても丁寧な説明を行い、理解が得られるよう努めているところでありますと御答弁申し上げましたが、なお理解が得られない場合について、どのように対処していくのか、各自治体等の事例も御指摘がございましたが、そういったことも含めて、今後はまた、検討してまいりたいと考えております。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)一般質問を続行いたします。
広瀬良隆君。
(広瀬良隆君登壇、拍手)
◯広瀬良隆君 議長のお許しをいただきましたので、早速私の一般質問を始めます。
最初の質問は、本県中小企業のSDGs経営の推進についてであります。
国連が二〇三〇年に向けて世界が目指すべき共通目標として掲げている持続可能な開発日標SDGsは、先月には国連総会にあわせてSDGs首脳級会合が開かれました。ここでは、貧困や飢餓、気候変動など「多くの分野で進展が遅い」と、行動を加速する政治宣言が採択されたところです。
日本国内では、産業界、とりわけ全企業数の九九%、雇用者数の約七割を占める中小企業、小規模事業者へSDGs経営を浸透させる取り組みが急がれているといいます。
SDGs経営とは、SDGsの理念を経営に取り入れ、持続的成長を果たしていこうとするもので、日本でそうした企業がふえることがSDGsの推進につながるし、これからは企業が競争を有利に進めるためにもSDGs経営が求められてきます。日本では人口減少や少子高齢化が進み、社会構造も大きく変化しています。なかなか事業環境の先行きが見通せない中で、企業経営においてSDGsを行動の指針として活用すれば、将来の進むべき方向性が見え、事業拡大につなげられると言われています。
今、環境・社会・企業統治に配慮した経営を評価するESG投資の流れが加速し、大企業の企業戦略でも、目先の利益ではなく、事業の持続可能性に価値を置く動きが広がってきています。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の三つで、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す三つの観点が必要とされます。一方、ESGの観点が薄い企業は大きなリスクを抱えた企業であり、長期的な成長ができない企業とみなされます。ESGの観点は、企業の株主である機関投資家の間で急速に広がっていて、投資の意思决定において、従来型の財務情報だけを重視するのではなく、ESGも考慮に入れることが広まっています。
かつて社会的責任投資(SRI)という言葉が使われていた時代がありました。社会的責任投資というと、何か通常の投資とは違う、強く社会や環境を意識した倫理的な投資手法だと受けとめられていました。当時、この考え方には否定的な見方も多く、社会や環境を意識した投資は財務リターンが低く、有効な投資手法ではないと見る向きが一般的でした。しかし、昨今、社会や環境を意識した投資は、同時に財務リターンも高く、また、投資リスクが小さいという実証研究が、大学研究者や金融機関実務者から発表されるようになったといいます。この新たな考え方は、企業経営においてもサステーナビリティーという概念の普及を促し、社会や環境を意識したSDGs経営を行う企業の企業利益や企業価値向上につながると言われています。
ESG投資を後押ししているのが国連責任投資原則(PRI)と呼ばれるものです。国連責任投資原則とは、国連機関が推進しているもので、ESGの観点を投資の意思決定に組み込むことを提唱する原則で、これに基づき、多くの年金基金などアセットオーナーや運用会社がESG投資を推進していくことを自主的に署名し、参加を表明しています。
世界最大の年金基金である日本のGPIF、年金積立金管理運用独立行政法人も、二〇一五年九月に署名をしました。GPIFは一兆円規模のESG投資を二〇一七年に開始し、今後、三兆円までふやす予定と言われています。「年金事業の運営の安定に資するよう、専ら被保険者の利益のため、長期的な観点から、年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする」というGPIFの投資原則に沿って、受託者責任をESG投資によって果たそうとするGPIFのやり方が、ESG投資の評価をさらに高めているとも言えます。今やESG投資は、特殊な投資手法という位置づけから、一般的な投資手法、メーンストリームへと変貌を遂げたといいます。
ESG投資に国連がお墨つきを出し、後押しする世界的潮流の中で、日本の企業としてもSDGs経営で投資対象となっていく取り組みが必要です。本県においても、中小企業等にSDGs経営への意義・効果を示し、世界の潮流に沿った事業経営を促す県の取り組みが求められます。
現在、自治体のSDGs経営への関心は確実に高まっているといいます。神奈川県では、SDGsを推進する企業と協定を締結し、その取り組みを紹介しているほか、長野県でもSDGsに取り組む企業を認定し、応援する制度を始めました。今後、SDGsという指標を通じて中小企業の取り組みを見える化し、企業同士のマッチングを後押ししたり、融資制度を設けたりといった支援策が行政に求められているともいいます。
そこで、知事にお伺いいたします。
まず、企業が取り組むSDGs経営に対する知事の御認識をお伺いするとともに、県内中小企業のSDGs経営の推進に、県としてどう取り組まれるのか、御所見を伺います。
次は、地域循環共生圏に関する本県の取り組みについてであります。
昨年四月、政府は、環境施策の今後の展開を示す第五次環境基本計画を閣議決定しました。環境基本計画とは、環境基本法第十五条に基づき、環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱等を定めるもので、計画は約六年ごとに見直されています。今回の基本計画の中では、基本的方向性として、地域資源を持続可能な形で活用するために、地域が自立・分散型の社会を形成し、地域資源を補完し支え合う地域循環共生圏の創造を目指すことが新たに盛り込まれました。
地域循環共生圏は、各地域がその特性を生かした強みを発揮し、地域ごとに異なる資源が循環する自立・分散型の社会を形成しつつ、それぞれの地域の特性に応じて近隣地域等と共生・対流し、より広城的なネットワーク、すなわち森、里、川、海の連関などの自然的なつながりや、人、資金などの経済的つながりを構築していくことで新たなバリューチェーンを生み出し、地域資源を補完し、支え合いながら農山漁村も都市も生かすという考え方です。
再生可能エネルギーの導入や地産地消等を通じて地域の収支が改善されれば、地域の自立性がより高まることになります。また、地域の自然資源を持続可能な形で活用することにより、農山漁村から都市に食料や水が供給され、都市からはエコツーリズム等、自然保全活動への参加や地域産品の消費等により、農山漁村への人と金の流れが発生することになります。
現在、日本の地域内総生産の約一割に相当する金額が、電気や重油といったエネルギー資源の購入等の代金として地域外、ひいては海外に流出していると言われています。環境省がウエブサイト上で提供している地域経済循環分析を活用すると、市町村単位でエネルギー代金の流出を含む、地域の経済循環構造を定量的に把握することができます。風力や木質バイオマスといった地域の再生可能エネルギーを活用することで、エネルギー代金の流出が抑えられるだけでなく、地域における新たな雇用も生まれ、地域経済循環を拡大させることが可能となります。既に各地で、環境対策を出発点として、地域の経済社会課題の解決にチャレンジしているさまざまな取り組みが始まっています。いわば、地域循環共生圏の実現の萌芽とも言える取り組みが始まっています。
例えば今、全国各地で、地域主体で出資して地域エネルギー会社を設立し、地域の再生可能エネルギーを用いて地域に販売する地産地消に取り組む事例がふえており、現在三十社以上が存在しているといいます。米子市のローカルエナジー株式会社は、米子市と地元企業五社の協同出資により二〇一五年に設立され、二〇一九年現在では米子市のおよそ一割の世帯と契約を結ぶなど、成長を続けています。
森林バイオマスを出発点としたものとしては、北海道下川町の例があります。我が国は国土の三分の二が森林であり、戦後植林した木が伐採期を迎えていますが、林業が衰退し、有効活用されていない実態があります。下川町では、広大な町有林を六十年間で循環利用するために六十分割し、毎年六十分の一を計画的に伐採、植林しています。また、木材のカスケード利用に加え、バイオマス発電熱供給を行い、市街の中心地に地域熱供給を軸にしたコンパクト拠点をつくるなど、木質バイオマスの積極的な活用を進めています。
我が国が抱える環境・経済・社会の課題は相互に連関・複雑化してきており、二〇三〇年までの国際社会共通の目標となる国連の持続可能な開発目標SDGsや、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」等の国際協定がある中で、これからは地域資源を持続可能な形で活用することなどを通じて、地域循環共生圏の創造を目指すことが大切になってくると考えます。
本県においても、本県の環境政策を展開する上で、地域循環共生圏の形成を意識しつつ、環境保全に資する地域づくりを推進する必要があると考えますが、これにどのように取り組んでいこうとされるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
次の質問は、発達障害児の療育体制の充実についてであります。
子供の発達障害は、疑いのある子を早期発見・診断し、発達障害とわかったら、適切な医療と障害の特性に応じた教育をあわせて行う療育を早期に受けさせることが極めて重要とされています。しかし、総務省が平成二十九年一月に発表した「発達障害者支援に関する行政評価・監視」の結果報告書によると、調査の対象となった全国二十七の医療機関で、発達障害の初診まで平均三カ月以上かかるところが全体の半数以上に上ったといいます。最長十カ月のケースもあったようです。全国の専門医療機関で数カ月の受診待ちの状況は珍しくないとも聞いています。背景には発達障害の専門医不足等があるといいます。
発達障害の発見がおくれ、適切な療育が行われないとどうなるか。さきの総務省の報告書の事例から抜粋すると、「保育所での気づきはないまま、小学校に入学した児童について、入学後、突然、友達を突き飛ばすなどの行動が見られるようになり、三年生時からは突発的に乱暴な行動を起こすことがふえ、友達にけがをさせることも出てきた。また、授業中に大声で叫ぶ、忘れ物が多いなどの状況も見られ、医療機関で注意欠陥多動性障害と診断された。」「乳幼児健診等での指摘はないまま、幼稚園、小学校と進学した児童について、小学校四年生時から不登校となった。本人は学校に行きたいが、夜は眠れず、朝起きるのがつらいため学校に行けないと訴え、広汎性発達障害と診断された。」などの記述があります。これらのケースは、就学前に発達障害が発見されずに小学校に入学し、かなり症状が悪化して発達障害と診断されたケースです。重要なことは、早期に発見し、早期に療育を始めることです。それにより、発達障害児がなりやすいひきこもり、不登校、鬱など二次的な重い症状が抑制されるといいます。発達障害の子への虐待事案も多く、その抑制にもつながります。
発達障害は生まれつきの脳機能障害であり、症状は個々に違います。しかし、おのおのの特性に合わせて適切な療育を受けることで、その症状は改善し、社会へ適応する力を伸ばすことができます。発達障害児を早期に発見・診断し、早期に適切な療育が受けられる環境を提供することは、行政の重要な役目です。
そうした中、本県では、これまで療育事業を行ってきた県立中央病院で、近くこれを廃止するため、現在、療育事業を縮小化していると聞きます。これまでの経緯があり、療育を担ってきた中央病院ですが、急性期医療に、より特化しなければならない状況の中でいたし方ない対応とも言えますが、その穴理めがどうなるのか気になるところであります。
療育を行っている民間の医療機関も県内に幾つかありますが、現在のところ、国の制度として療育にかかわる診療報酬は低いこともあり、公的機関こそが療育を担うべきという声も聞きます。全国には療育センターの名称のもと、公的機関が療育専門拠点を設け、対応しているところが少なからずあります。こうした拠点に人材が集結し、技能が蓄積し、共用され、人材の育成もできれば効果的であるし、地域の個々の療育事業所への支援拠点にもなれば、県下の療育体制の強化にもつながると考えます。
また、介護施設や医療機関でも作業療法士、言語聴覚士など療育を担う人材が不足しているとも聞きますが、発達障害児の療育体制にも欠かすことのできないそうした人材を県として積極的に輩出するため、県立保健医療大学などがそれを担ってもいいのではないかと考えます。
本県の発達障害児の療育体制のさらなる充実を図るために、療育センターのような支援拠点に人材が集結し、ノウハウが蓄積されている状態が望ましいと考えますが、本県の療育機関のあり方、療育に関する人材の輩出・育成のあり方についてどのようにお考えになるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
最後の質問は、歩行者優先の交通社会構築に向けた取り組みについてであります。
先月、県内では月初めの九日間で交差点等での歩行者、自転車等の被害が相次ぎ、七件の交通死亡事故が発生。浜田知事は、交通死亡事故多発緊急事態宣言を発出し、さまざまな媒体を使った注意喚起や県下一斉緊急キャンペーン等を行ったところです。本県における交通死亡事故撲滅の取り組みは、依然として喫緊の課題であります。
警察庁の調査によると、過去五年間の自動車対歩行者の交通死亡事故は、その大半が道路横断中に発生しており、信号機のない横断歩道での交通死亡事故では、自動車の横断歩道手前での減速が不十分なものが多発していたことがわかったといいます。こうした状況を受けて警察庁は、昨年十月、信号機のない横断歩道における歩行者優先の啓発・指導の強化を各都道府県警に通達しました。横断歩道を渡っているか、または渡ろうとしている歩行者がいる場合、歩行者を優先し、車は一時停止しなければならないと道路交通法に定められています。これに違反すると横断歩行者妨害となり、反則金は普通車で九千円、違反点は二点です。しかし、現実には信号機のない横断歩道で、渡ろうとしている歩行者がいても一時停止しないドライバーが多く、車の流れが途切れるのを歩行者が待っているケースが大半ではないでしょうか。
昨年十月に日本自動車連盟、JAFが発表した全国調査の結果によると、信号機のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車の割合は、全国平均でわずか八・六%といいます。百台中八台しか一時停止しないというのが実態です。香川は六・一%。全国平均を下回り、全国二十八番目の悪さです。ちなみに全国一この割合が高いのは長野県で五八・六%。二位の静岡県は三九・一%ですから、長野は断トツの一位です。なぜ長野は横断歩道での停止率が高いのか。一説によると、とまってくれた自動車に歩行者がおじぎをするなど、感謝の気持ちをあらわすマナーが行き届いているからだといいます。
横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいても一時停止しない車のドライバーの言い分は、「自分がとまっても対向車がとまらなかったら、かえって歩行者が危険だから」とか、「信号もなく交差点でもないところで一時停止したら、自分が後ろから追突される危険があるから」等が考えられます。横断歩道で停止することによって事故を誘発してしまうよりは、早目に通過して、その後歩行者には安全に横断してもらったほうがいいと考えるドライバーが多いのかもしれません。これは、横断歩道前での減速あるいは一時停止が一般化していない現状では、無理のないことのようにも思われます。しかし、交通法令に従った動きをすると、かえって事故を誘発するという事態は何とか解消しなければなりません。近い将来、自動運転の車が一般道を走るようになったら、自動運転車は当然、人が立っている横断歩道では停車するわけですから、そうした社会への移行をスムーズに実現するためにも、今から横断歩道に関係する交通ルールを遵守する、県民、ドライバーの心構えを整えていかなければなりません。
歩行者が優先されるべき状況は、横断歩道でのみあるわけではありません。例えば、横断歩道のない交差点では歩行者の横断が優先されなければならないし、歩道のない道路を歩行者が歩いているとき、その横を通過する車の安全間隔保持や徐行の義務など、歩行者の安全を確保するために歩行者が優先されるべき状況はさまざまあります。
国土交通省によると、交通事故の状況を国際比較した場合、日本は歩行中と自転車乗用中の死者の合計が全体の五二%に上っており、欧米に比べ格段に高いといいます。東京オリンピック・パラリンピックが一年後に迫っている今、歩行者優先が定着している海外からの来訪者を守るためにも、歩行者を優先するドライバーの意識の醸成と、歩行者の安全を確保する対策が徹底されることが望まれます。
そこで、
警察本部長に伺います。
自動車対歩行者の交通死亡事故は、その大半が道路横断中に発生しているという事実に鑑み、本県での信号機のない横断歩道にかかわる交通ルールの遵守等、歩行者の安全を確保するための歩行者優先のルールがしっかり守られる香川としていくため、警察本部としてどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
また、とりわけ横断歩道に関しての車の交通ルール遵守意識が希薄な現状においては、ルールに従うことによって新たな事故を誘発してしまうかもしれないというドライバーが抱いている不安、いわば遵法と安全のジレンマを払拭するための方策について、警察本部の見解あるいは本部長のお考えをお聞かせください。
また、横断歩道は歩行者を優先するために重要な役割を持つものであり、いつもドライバーから視認されやすい鮮明なものでなければならないと考えますが、これを維持するための警察本部の取り組みについてお伺いいたしまして、私の一般質問を終わります。(拍手、降壇)
◯副議長(西川昭吾君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(
知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)広瀬議員の御質問にお答えいたします。
まず、県内中小企業のSDGs経営の推進についてであります。
持続可能な世界を実現するために、幅広い分野で目標を掲げるSDGsについて、県内企業が経営に取り入れることは、その社会的責任を果たすことはもとより、企業価値の向上やビジネス展開の拡大につながることが期待されることから、SDGs経営の認知度が高まり、県内企業にその取り組みが広がるよう図っていく必要があると考えています。
このため、内閣府の地方創生SDGs官民連携プラットフォームに参画し、他の自治体や民間企業等の取り組みの情報収集や意見交換を行うとともに、四国経済産業局が先月立ち上げた四国SDGs研究会にオブザーバーとして加わり、県内企業への支援のあり方について関係機関と情報共有を図ってまいります。また、県内企業のすぐれたSDGsの取り組みを顕彰するため、高松青年会議所が、来月初めて開催するかがわSDGsアワードに対し、後援と知事賞の交付を行うこととしています。
今後、かがわ産業支援財団と連携して、SDGsへの理解を深めるための講演会を開催するとともに、ジェトロ香川の協力も得て、海外でのビジネスチャンスの拡大にもつながるSDGsの取り組みに関するセミナーを行うなど、SDGs経営の普及・啓発に取り組みたいと考えております。
SDGsの推進につきましては、県内経済団体や労働団体からも御提言をいただいておりますが、私といたしましては、SDGs経営が、中小企業にとって企業イメージの向上や新たな取引の拡大、人材の育成や雇用の確保などにつながることが期待できることから、国やジェトロ香川などの関係機関や、SDGs経営を資金面から支える金融機関とも連携しながら、県内企業のSDGs経営が広がるよう努めてまいります。
次に、環境保全に資する地域づくりの推進についてであります。
地域循環共生圏は、各地域がその特性を生かした強みを発揮し、地域ごとに異なる資源が循環する自立・分散型の社会を形成しつつ、近隣地域等と補完し、支え合うことで、環境と経済・社会をともに向上させる新たな概念であり、生活の質を高めることなどに資すると考えられております。
この地域循環共生圏につきましては、御指摘の鳥取県米子市や北海道下川町の取り組みを初め、食品廃棄物を飼料化し、養鶏農家で利用して得られた卵を販売する山口県の取り組み、クリ林の自然観察や植樹活動を通じて里山の価値の維持・活用、町と里の交流を進める大阪府吹田市能勢町における取り組みなど、さまざまな地域でその特性を生かした独自の取り組みが進められています。
一方、本県では、日照時間が長いという特性を生かし、住宅用太陽光発電設備等の設置への補助を通じ、エネルギーの地産地消に寄与するとともに、里山整備で発生した広葉樹材をまき等の木質バイオマスとして活用することにより、地域の所得向上や雇用創出を促し、地域の活性化を図るほか、都市と農山漁村の共生と広域的なネットワークづくりの観点から、山・川・里(まち)・海をつなげて支える仕組みである里海づくりに取り組むなど、持続可能な地域づくりや、それらを担う人材の育成を推進しております。
このような中、地域循環共生圏の形成は、地域課題の克服や雇用の創出など、地域活力の向上につながる可能性があると考えられることから、引き続き他県の先行事例等の情報収集に努めてまいります。
私といたしましては、今後、地域循環共生圏の考え方も意識しながら、地球温暖化対策、廃棄物の適正処理、有害鳥獣対策、生物多様性の保全など、広域化、多様化している本県の環境に関する課題に的確に対応し、豊かで美しい香川づくりを進めてまいりたいと考えております。
次は、発達障害児の療育体制の充実についてであります。
発達障害児やその疑いのある児童への支援につきましては、発達障害を早期に発見し、早期に支援していくことが必要であり、障害のある子供に対する療育の充実は重要であると考えております。
療育機関のあり方につきましては、議員御指摘のとおり、人材やノウハウを有する拠点機関が療育事業所を支援する状態が望ましいことから、本県におきましては、療育センターという名称ではありませんが、かがわ総合
リハビリテーションセンターに医療型児童発達支援センターと医療型障害児入所施設を設置し、作業療法士や言語聴覚士などによる療育を行っていることに加え、発達障害者支援センターアルプスかがわを設置し、各市町等に対する相談・助言や研修、困難事例の支援を行うなど、かがわ総合
リハビリテーションセンターが療育の中核的・専門的機関としての役割を担っているものと考えております。
また、療育を担う人材の育成につきましては、国の調査によると、平成二十九年における県内の作業療法士や言語聴覚士の人口十万人当たりの人数は、いずれも全国平均を上回っていることなどから、現時点では、県が保健医療大学で養成することは考えておりませんが、県内に二カ所ある作業療法士の養成機関との連携を緊密なものにし、その理解と協力のもと、必要な人材の養成確保に努めてまいります。
私といたしましては、発達障害児への支援に当たっては、各市町や福祉、医療、教育、労働などの関係者で構成する香川県発達障害者支援連携協議会での情報共有や意見交換などを通じて連携強化に努め、療育体制の充実を図ってまいりたいと考えております。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)岡部
警察本部長。
(
警察本部長岡部正勝君登壇)
◯
警察本部長(岡部正勝君)広瀬議員の歩行者優先の交通社会構築に向けた取り組みについての御質問にお答えいたします。
本県において平成二十六年から三十年までの五年間に発生した人対自動車の死亡事故九十三件のうち、道路の横断に係るものは六十四件で、その人口当たりの発生件数は全国ワースト上位であることから、歩行者の安全対策は重要な課題であると考えております。
横断歩道で一時停止すると事故を誘発する等という声があることは承知しておりますが、横断歩行者の保護は基本的な交通ルールであり、ドライバーが横断歩道で減速することや、十分な車間距離をとることで交通事故は防止できると考えております。県警察では、これまで歩行者優先等対策強化日等を設け、ボランティア等と一体となった広報活動を行うとともに、ドライバーに対しては、運転免許更新時講習等の機会を通じて歩行者保護の重要性を指導し、高齢者等には、セーフティアドバイザー等から横断歩道の利用を呼びかけているところであります。また、昨年から横断歩行者等妨害の違反取り締まりを強化しており、本年九月末現在で、昨年同期の約二・三倍の二千二百件余りの違反を検挙しております。このほか、近くに押しボタン式信号機があるのに、これを利用せず交通事故に遭うという課題に対応するため、歩行者を押しボタン式信号機まで誘導するための道路標示を、現在、試験的に整備し、その効果を検証中であります。
最後に、横断歩道等の道路標示の摩耗劣化は、ドライバーの運転行動に大きな支障を来すことから、日常の警察活動や業者による点検だけではなく、県警察ホームページの「標識ボックス」等により、広くドライバーからの情報を集約し、緊急性の高いものから更新するなど、適正な維持管理に努めております。
県警察といたしましては、引き続き、こうした取り組みを一層強化し、交通死亡事故の抑止に努めてまいります。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)一般質問を続行いたします。
高木英一君。
(高木英一君登壇、拍手)
◯高木英一君 新しい御代、令和となってはや五カ月余がたちました。令和新時代となった今、日本は少子高齢化、人口減少、自然災害の多頻度化、経済・社会の
グローバル化、空き家・廃屋問題等々の課題を抱え、幕未、明治維新期、昭和二十年からの戦後復興期に次ぐ、第三の大きな転換期にあると思います。
幕末維新期、終えんを迎えつつあった江戸幕府は、イギリスに留学生を派遣していました。その留学生が帰国するとき、イギリスの友人が贈ったのがサミュエル・スマイルズの「自助論」でした。当時のイギリスは自助・自立の精神が旺盛で、島国から脱却すべく、世界に多くの植民地を獲得するとともに、ワットの蒸気機関発明による動力革命で、鉄道や工業生産のスピード化が飛躍的に向上し、世界一の大国になりました。「天はみずから助くる者を助く」で有名な「自助論」は、日本では「西国立志編」として翻訳出版され、総人口三千万人余であった日本で、何と百万冊以上売れる大ベストセラーになりました。
明治の日本人は、イギリスと同じく自助・自立を重んじ、みずから学び、みずから汗をかき、自助・自立の精神で働いたがゆえに、日本は欧米列強の植民地となることなく大発展し、近代日本の礎が築かれるとともに、欧米列強の仲間入りをすることができました。
自助・自立による日本の急速な発展は、一八五三年、ペリー提督率いるアメリカ艦隊が浦賀にやって来たとき、日本も不平等条約等、苦難を経験したものの、それから二十二年たった一八七五年には、朝鮮半島の西海岸で水路調査をしていた日本の測量艦雲揚号が陸地から砲撃を受け応戦するという江華島事件が発生しました。日本は、列強の支持を得て強硬策をとり、李氏朝鮮と交渉し、日本に有利な日朝修好条規を結ぶまで成長しました。
今、日本は、世界のどの国も経験したことのない少子高齢化や人口減少という課題を抱えるとともに、地球温暖化に起因する自然災害に見舞われています。しかし、自助・自立の精神を失わない限り、必ずや、その課題を乗り越えられるし、自然災害にも耐えられる国づくり、県土づくりができると思います。
それでは、一般質問させていただきます。
大きな第一点目は、太陽光発電二〇四〇年問題についてであります。
資源エネルギー庁は、役割を終えた太陽光発電パネルが一斉に廃棄時期を迎える二〇四〇年問題に警鐘を鳴らしています。
太陽光発電は、二〇一二年にFIT、固定価格買取制度が導入されて以降、加速度的にふえました。この太陽光パネルは、製品寿命が約二十五ないし三十年とされています。そのため、FIT開始後に始められた太陽光発電事業は二〇四〇年ごろには終了し、その際、大量の太陽光パネルを含む廃棄物が出ることが予測されています。太陽光を初めとした再生エネルギーを長期的に安定した主力電源にしていくためには、こうした廃棄物問題を避けて通ることはできません。
太陽光発電事業は、ほかの発電事業と同じく長期的に行われる事業ですが、その一方、ほかの発電事業とは異なる幾つかの特色があります。一つは、参入障壁が低いため、従来の発電事業者だけでなく、さまざまな事業者が参入しやすく、なおかつ、事業の途中で事業主体が変更されることが比較的多くあるということであり、二つ目は、太陽光パネルの種類によって異なる有害物質が含まれているということであります。このような特性を持つことから、将来の太陽光発電設備の大量廃棄をめぐっては、一、太陽光パネルが適切に廃棄されず、放置・不法投棄されるのではないか。二、太陽光パネルの種類によっては、鉛、カドミウムなどの有害物質が含まれていますが、その情報が廃棄物処理業者に伝わらずに処理され、有害物質が流出・拡散するのではないか。三、使用済み太陽光パネルの年間排出量が産業廃棄物の最終処分量の六%に及ぶとの試算があり、一時的に最終処分場が逼迫するのではないかという問題があります。
資源エネルギー庁が、今検討している太陽光パネルの適正な廃棄を促す取り組みは、一、FITの再エネ買い取り価格には、廃棄に必要な費用を盛り込む形で設定されていることから、事業者がきちんと廃棄できる仕組みづくり、二、情報不足を解消して、有害物質を適切に処理する、三、太陽光パネルのリユース・リサイクルの促進により、不法投棄や有害物質の流出・拡散を防止するとしているものの、「将来的な廃棄を想定して、廃棄・リサイクル費用の確保をしているか」との問いに対して、「積み立てやそれ以外の方法で確保している」のは全体の二六%ないし四一%となっており、「積み立てしていない」との回答が過半数となっています。このデータから、本県においても豊島問題が終了しつつある今だからこそ、国や市町とも連携しながら、太陽光発電二〇四〇年問題が、二〇四〇年に問題にならないよう取り組むべきと考えます。
それでは、お尋ねさせていただきます。
質問一、太陽光発電二〇四〇年問題に対する認識について、知事にお伺いさせていただきます。
質問二、豊島の轍を踏まないために、本県として太陽光発電二〇四〇年問題をどのようにクリアしようとされているのか、具体的施策をお聞かせください。
大きな二点目は、
インバウンド増時代の到来に備えた課題への取り組みについてであります。
観光公害という言葉があります。オーバーツーリズムなどと呼ばれることもあります。その意味は、過度な観光客の集中によって観光地への負荷が懸念される事態が生じることを指します。具体的には、観光客を対象にした開発に伴う環境や景観破壊、文化財や遺跡への悪影響、交通渋滞や大気汚染、現地住民にとっての生活環境の悪化やプライバシーの侵害など、大小さまざまな弊害を指します。
住環境や交通手段などの生活基盤が損なわれた一部地域では、観光への忌避感が広がりつつあることも指摘されています。スペインのバルセロナでは、市民約百六十万人に対して、年間約三千二百万人という人口の二十倍近い観光客が訪れています。そのため、騒音問題や民泊でアパートの空室が減ることによる賃貸料上昇など、市民生活への支障も出ているとのことであります。イタリアでも、ベネチアで観光客向けのホテル需要が要因となる地価や住宅価格の高騰、ホテルの増加による住宅エリアの縮小化などが発生しています。最近では、日本人にも人気の高いオーストラリアのエアーズロックが、来月から観光客向けの登山が禁止されることになりました。観光客による不法投棄や落書きなどが、先住民族にとって聖地であるこの山を汚す行為であると考えられ、そうした先住民族への配慮が禁止の理由の一つと言われています。日本でも、急増した中国人観光客のマナー問題が報道されたり、京都市では、舞子さんへのつきまとい、無理な接触、写真撮影といった、その地ならではの問題も生じています。
これらの公害は、特に知名度や人気の高い観光地ほど、被害が顕著であります。本県にも、屋島、栗林公園、こんぴらさんといった歴史ある観光地のほか、世界中から人々が訪れる瀬戸内国際芸術祭、最近人気が増している父母ヶ浜があります。また、来年にはオリンピック・パラリンピックも開催され、国内外から本県への多くの観光客の来訪が見込まれています。本県における観光公害は、まだそれほど顕在化していないものの、観光客の誘致に力を入れれば、いずれはその反動として観光公害の問題に直面することは、他の有名観光地の例を見れば明らかであります。
観光庁の持続可能な観光推進本部が六月に発表した「持続可能な観光先進国に向けて」では、全国的な傾向として、現時点においては、他の主要観光国と比較してもオーバーツーリズムが広く発生するには至っていないとされています。一方で、地域社会における経済利益や、旅行者・コミュニティー・文化資源・環境に対する利益の最大化、悪影響の最小化などにより、持続可能な観光先進国を実現していく必要があるとされています。また、そのために、京都等の代表的な観光地において、関係地方自治体と協力して、混雑やマナー違反対策等に関するモデル事業等を実施し、観光庁で収集した国内外の先行事例とともに全国に横展開していくことや、各地方自治体や観光地域づくり法人(DMO)が多面的な現状把握の結果に基づき持続可能な観光地経営を行うよう、国際基準に準拠した持続可能な観光指標を開発・普及していくとしています。
本県としても
外国人観光客の誘致には注力しているところでありますが、今後、
外国人観光客が増加していけば、それによる交流人口の拡大、経済効果といった利益だけでなく、観光公害という負の影響からも目を背けることはできないと考えます。文化財、芸術作品、景観といった観光資源を守ることはもちろんですが、観光地周辺に住まわれている住民の皆様の生活環境を守ることも重要ではないかと考えます。
それでは、質問させていただきます。
オーバーツーリズムについてどのように認識されているのか、また、その抑制にはどのように対応したらよいと考えておられるのか、お伺いさせていただきます。
大きな三点目は、里海の再生と活性化についてであります。
二〇一七年に日本財団により発表された海と日本に関する意識調査によりますと、十代の四二・五%、二十代の三六・三%の若者が、「海への親しみ」を感じていないとのことであります。また、十代の三八・四%、二十代の三一・九%が、「小学校の六年間、数日ないし一度も海に行ったことがない」という結果が出ています。海水浴、潮干狩り、釣りなど、海はそこに住む人たちの暮らしの中で、身近な場所でした。しかし、今の子供たちを含め、若者にとって海は遠い存在になりつつあります。
本県では、「人と自然が共生する持続可能な豊かな海の実現」を目指して、平成二十五年にかがわ「里海」づくりビジョンを策定し、かがわ「里海」づくり推進事業に取り組んでいますが、この事業の中に、食を通して里海の課題を考えるリーフレット「里海の幸」があります。私の地元、志度湾のことでん志度線に接する海岸は遠浅で、昭和三十年代、四十年代には引き潮時、多くの住民が潮干狩りに来ていました。しかし、志度湾沿いの上流域は農業地帯で、農業用水を確保するため、JR高徳線の南側の川の多くに水門が設置され、常時、ため池にポンプアップされているため、森のミネラルが志度湾に流れ込まず、そのため貝の生息が減るとともに、以前生息していた小魚もほとんど見られなくなっています。
このような現象は九州の有明海でも起きており、有明海沿いの熊本、福岡、佐賀、長崎の四県のアサリ漁獲量は、一九七七年に六万五千トンありましたが、一九九〇年以降は一万トン以下に落ち込みました。その原因は、生育に欠かせない砂の流入が河川のダム建設や砂利採取で落ちた上、下水処理施設の普及で、餌の植物プランクトンの栄養源となるフルボ酸鉄が減少したことに原因があるそうです。フルボ酸鉄は、山の落ち葉や枝が腐食してできるフルボ酸が土中や水中の鉄と反応してできる物質で、ヘドロ化した泥まじりの干潟の浄化に役立ちます。福岡大学の渡辺教授らは、下水処理場で発生する汚泥・下水残渣と間伐材の木くず、食品廃棄物などを発酵させてつくったフルボ酸鉄と、鉄鉱石に含まれるシリカをまぜたフルボ酸鉄シリカを開発、一平方メートル当たり五、六個しかアサリがとれなかった干潟にフルボ酸鉄シリカ資材を置いたところ、半年後に二百ないし三百個のアサリがとれるまでに漁獲量が回復したとのことです。
現在、「海の復権」をテーマとした第四回瀬戸内国際芸術祭の秋会期が開催中です。瀬戸内国際芸術祭が大成功している大きな要素は、会場の島々やサンポート高松に芸術を盛り込んだことにあると私は考えています。その瀬戸内海の、昔、アサリ、マテガイなどが豊富にとれた海岸・干潟を、有明海のように豊かな海岸・干潟に復活させれば、本県における真の「海の復権」になると考えます。
ところで、本県では毎年約四万トンの下水汚泥・残渣が発生しています。そのうち約二万トンは、先月視察研修させていただいたさぬき市の株式会社森づくりさんが、下水汚泥・残渣に木くず、草刈り後の草をまぜ発酵させ、石炭火力の二分の一となるバイオマス燃料のハンポストを製造し、燃料として活用し、本県における約一%のCO2排出削減に寄与されています。
そこで、質問させていただきます。
質問一、本県においても、フルボ酸鉄シリカを志度湾など県内の海岸に設置することで、アサリ、マテガイ等、潮干狩りが可能な海岸の復活に取り組むべきと考えますが、知事のお考えをお聞かせください。
質問二、本県では、山・川・里(まち)・海をつなぐ施策を総合的に進めることとし、里山の再生を目的に木質バイオマスの利用促進などに取り組んできましたが、現在の利用状況への認識と、今後、利用促進にどのように取り組んでいかれるのか、お伺いさせていただきます。
大きな四点目は、県立学校における地球温暖化対策への取り組みについてであります。
国連の気候変動に関する政府間パネル、IPCCがまとめた特別報告書によりますと、温暖化ガスの排出削減が進まなければ、北極海の氷が解けるなどして、今世紀末までに海面が最大一・一メートル上昇すると予測されています。また、勢力の強い熱帯低気圧がふえるほか、降水量が多くなり、高潮などのリスクが増加するとともに、海水温の上昇などにより海の生態系に深刻な変化が生じ、魚介類の減少や海岸の侵食、観光業の衰退といった悪影響が予測されるとのことです。
IPCCはこれまで、地球温暖化による海面上昇は八十センチメートル程度と予測していましたが、今回大幅に増嵩修正されるとともに、山岳地帯の米河も今世紀末までに少なくとも五分の一が消え、ヨーロッパの一部地域では氷河の八割が失われるとのことであります。このような予測の中、地球温暖化対策として何をすべきか、何をしておくべきか、今を生きる私たちの大きな責務だと思います。
東日本大震災における東京電力の福島第一原子力発電所の事故以来、多くの原子力発電所が停止し、日本の発電の多くは、CO2削減にとっては芳しくない石炭火力に依存しているのが現実です。そのような現実の中、地球温暖化の影響か、本県における気温も上昇し、今夏も含め、真夏日が大幅にふえています。そのため、学校、幼稚園、保育所を含め、多くの教室や公共施設でエアコンが設置されているのが現状です。しかし、エアコンの設置と稼働は、とりわけ発電の多くを石炭火力に依存している現実からいえば、地球温暖化防止のためのCO2削減に対しては悪影響となります。
そこで、私は、地球温暖化防止に向け、本県においても積極的に自然エネルギーを活用すべきと考えます。特に、県立学校においてこれらに取り組むことは、環境教育の面からも有意義であると考えます。
具体的施策を申し上げれば、第一点目は、ミストの活用であります。牟礼町の保育所、幼稚園、小学校、中学校を初め高松市内の教育施設には井戸が設置されています。その井戸水を活用して定期的にミストを散布すれば、気温上昇を抑えることができます。第二点目は、窓を複層ガラス化することです。これにより断熱性能を高め、室温の維持を図ることが可能となります。この二点については、比較的早期に取り組むことが可能ではないでしょうか。
また、そのほかにも、本県における地中熱ポテンシャルマップによれば、本県ではほぼ全域が地中熱活用可能エリアとなっていることから、地中四ないし五メートルであれば、ほぼ常時十三ないし十四度Cである地中熱を冷暖房に活用することも考えられます。さらには、校舎、体育館の屋上や側壁に太陽光パネルを設置し、建物との間に空間をつくり、建物の温度上昇を抑え、室内の気温上昇を軽減するとともに、蓄電池を設置し、余剰電気を売電し、長期的観点からコスト削減を図るといったことも、今後、検討に値すると考えます。
そこで、質問させていただきます。
質問一、本県の県立学校において、井戸やミスト噴霧器を設置し、定期的に噴霧するなどの取り組みにより、地球温暖化対策を推進していくことが環境教育の観点からも有効と考えますが、こうした取り組みについて教育長のお考えをお伺いさせていただきます。
質問二、県立学校における窓の複層ガラス化は、断熱効果が高く、ひいてはCO2削減にもつながり、夏・冬ともに即効性の効果が見込めることから、窓の複層ガラス化等に取り組む考えについて教育長のお考えをお伺いさせていただきます。
最後の質問は、地方創生に寄与する高校と学科の再編についてであります。
我が会派の高城議員の県立高校のあり方についての代表質問に対し、教育長は、これからの県立高校においては、郷土への理解、郷土を愛する気持ちを大事にしながら、
グローバル社会に対応し、新しい価値を創出することができる資質・能力を育成することが重要であると答弁されました。また、高校や学科の再編整備等を適切に実施し、教育環境の充実を図っていくこと、さぬき市の石田高校、志度高校、津田高校の三校については、農業科、家庭科、工業科、商業科、普通科の特色ある教育を生かし、これらをさらに発展させるため統合し、新たな高校を設置したいと考えていることも答弁されました。
文部科学省は、高校生が地域資源を知り、見直し、活用してまちづくりやビジネスを提案し、その取り組みを地域で応援し支えていく地域ビジネス創出事業、SBPに力を入れようとしています。昨年六月十五日に閣議決定されたまち・ひと・しごと創生基本方針二〇一八の中の「地方創生に資する高等学校改革の推進」において、一、高等学校は、地域人材の育成において極めて重要な役割を担うとともに、高等学校段階で地域の産業や文化等への理解を深めることは、その後の地元定着やUターン等にも資する。二、このため、高等学校が、地元市町村・企業等と連携しながら、高校生に地域の課題の解決等を通じた探究的な学びを提供するカリキュラムの構築等を行う取り組みを推進するとともに、進路決定後の期間を利用したインターンシップの充実等を通じて地元の魅力に触れられる取り組み等を推進し、地元に根差した人材の育成を強化する等の内容が盛り込まれています。
この基本方針に接し、本県における今後の高校再編、とりわけ石田高校、志度高校、津田高校の再編整備においては、東かがわ・さぬき地域の今後の中学校卒業者数の減少とともに、全体的な人口減少も予測されることから、卒業生の地元定着やUターン等にも資し、地域の課題解決や地域ビジネス、すなわち働きの場の創出につながり、地域の活性化に貢献するために、新たな学科としてSBPを取り入れるべきと考えます。
日本国内における先進事例では、福島県立喜多方桐桜高校に、喜多方市にある食文化・伝統工芸・歴史文化・生活文化等を題材に、地域の人とともに地域の資源、すなわち地域の魅力を探求し、育て、かつ生かすという実践的学習を通じて、積極的に地域を生き生きとさせる人を育てるエリアマネジメント科が設置されています。また、石川県立能登高校には、能登の自然・文化・産業を学び、これからの地域の創造・発展に寄与する人材を目指して、農業系・水産系・商業系・福祉系コースから成る地域創造科が設置されています。
そこで、質問させていただきます。
質問一、本県においても、地域の魅力を探求し、地方創生につながる学科を新設することが必要と考えますが、教育長の御所見をお伺いさせていただきます。
質問二、地方創生につながる教育を実施するには、それに対応できる教員の確保が必要であり、人材育成や民間からの採用等も考えられますが、どのように確保していくのか、教育長にお伺いさせていただき、私の質問を終わらせていただきます。(拍手、降壇)
◯副議長(西川昭吾君)理事者の答弁を求めます。
浜田知事。
(
知事浜田恵造君登壇)
◯知事(浜田恵造君)高木議員の御質問にお答えいたします。
まず、太陽光パネルの適正処理についてであります。
太陽光発電事業では、二〇一二年に固定価格買取制度が導入されており、太陽光パネルの製品寿命から考えると、議員御指摘のとおり、本県においても二〇三〇年ごろから二〇四〇年ごろにかけて、太陽光パネルを含む廃棄物が大量に排出されることが見込まれております。このため、県では、アルミやガラスを含む太陽光パネル等の回収と再利用が、いわゆる静脈産業全体でしっかりと取り組めるよう、国に対して太陽光パネル等の発電設備について管理及び撤去・処分が確実に行われる仕組みを構築するよう要望しております。また、本年四月に国に設置された太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループにおいて、地方自治体の意見として、廃棄費用の積み立ての金額水準の提示や外部の第三者機関への早期積み立て、設備に含まれる有害物質の情報開示が必要と申し上げたところであります。
太陽光発電事業者に対しては、本年四月から運用している香川県太陽光発電施設の設置等に関するガイドラインや国のガイドラインに基づき、設置する設備における有害物質の使用情報を入手しておくことや、廃止届の提出に際し、適正に廃葉物が処理されたことを示すマニフェストの添付が義務づけられているほか、最終処分の減少につながるリサイクルやリユースに関する技術的な情報を提供し、それらを推奨しております。
私といたしましては、将来的に廃棄物の不法投棄等につながることのないよう、国や県のガイドラインや廃棄物処理法等に基づく適正な処理やリサイクルの促進について四国経済産業局と連携し、さまざまな機会を捉えて、発電事業者や廃棄物処理業者に対するより一層の周知に努めてまいります。
次は、持続可能な観光の実現に向けた取り組みについてであります。
近年、世界遺産などの有名観光地において、旅行者が過度に集中することにより、地域住民の生活環境や日常的な社会経済活動、また、自然環境や文化財等の保護に悪影響をもたらす、いわゆるオーバーツーリズムが発生しており、報道等においても取り上げられるようになっております。具体的には、観光地や公共交通機関の混雑、マイカーや観光バス等による交通渋滞、騒音やごみの投棄による住環境の悪化、また、ごみや排水による観光資源の毀損などの弊害が生じており、オーバーツーリズムへの対応は、旅行者と地域の共存・共生を図り、持続可能な観光を実現するための重要な課題の一つであると認識しております。
その抑制策としては、地域住民の生活環境等を保全するため、旅行者の少ない時期・時間帯や近隣観光地への誘導による旅行者の分散、旅行者に対するルール・マナーの周知徹底などを図るとともに、自然環境等の保護には、マイカー乗り入れ制限などの交通規制や事前予約制などの入場規制、立入禁止区域の設定などの取り組みが行われているところであります。
また、議員御指摘のとおり、オーバーツーリズムが発生するに至っていない有名観光地においては、先を見越した対応も重要であることから、オーバーツーリズムを未然に防ぐため、観光地で生じている課題を早期に認識し、重大な問題に発展する前に対処することも大切であると考えております。
いずれにいたしましても、オーバーツーリズムにつきましては、訪日外国人旅行者が増加傾向にある中、自治体や民間事業者等の関係者の連携のもと、旅行者と地域の共存・共生を常に念頭に置きながら、持続可能な観光の実現に向け、適切に対応策を講じていくことが重要であると考えております。
次は、里海の再生と活性化についてであります。
瀬戸内海に生息するアサリなどは、里海を身近に感じることができる食材であるものの、本県のアサリの漁獲量は二十年ほど前から激減し、近年はほぼゼロの状況となっております。このため、県では平成二十八年度から、香川大学と共同でアサリ資源回復に向けた取り組みに関する研究を進めており、志度湾等におけるアサリの発生状況の把握や成長に適した生育環境の研究などを行っているところであります。
御提案のフルボ酸鉄シリカの海岸への設置につきましては、有明海で干潟に堆積したヘドロを分解する底質浄化手法の一つと伺っておりますが、瀬戸内海でのアサリの減少につきましては、底質環境の変化のほかにも、ナルトビエイなどの食害などさまざまな要因が考えられることから、引き続き詳細な情報収集や香川大学との共同研究を進めてまいります。
また、木質バイオマスの利用促進につきましては、近年、まきや炭の利用が見直されつつあることから、県では、平成二十七年度から里山林整備で発生した広葉樹材を、まきなどの木質バイオマスとして利用する取り組みなど、地域が行う独自の里山資源利用活動を支援しており、これまで東かがわ市の五名活性化協議会など四団体に対し、まき割り機の購入や作業場・貯蔵施設の整備などを支援するなど、里山資源活用の拠点づくりを推進することにより、地域の活性化を図っております。
私といたしましては、今後とも国を初め各市町や香川大学等と連携し、瀬戸内海の自然環境の保全に取り組むとともに、里山再生の観点から、木質バイオマス利用促進等の里山資源利用活動の支援に努めるなど、山・川・里(まち)・海をつなげる香川ならではの里海づくりを進めてまいりたいと考えております。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)工代教育長。
(教育長工代祐司君登壇)
◯教育長(工代祐司君)高木議員の御質問にお答えいたします。
まず、県立学校における地球温暖化対策への取り組みについてであります。
近年、地球温暖化が原因とも言われている異常気象や自然災害などが頻発し、私たちの生活や産業にさまざまな影響が出てきていることから、地球温暖化対策を社会全体で推進していくことは重要であると考えております。
県立学校においては、環境教育の一環や省エネルギー対策としてさまざまな取り組みを行っており、教室内の温度を下げるため、ゴーヤを育てて校舎にグリーンカーテンをかけるなどの活動に取り組むとともに、校舎の改築等にあわせて照明設備のLED化を順次進めているほか、太陽光発電設備を高等学校、特別支援学校を合わせて十七校に設置しております。また、十九校で井戸水をグラウンドや農場への散水などに利用しているところです。
議員御提案の学校内の井戸水を利用してミストを噴霧する取り組みは、暑さ対策として児童・生徒がその場で直接効果を体感することができるものであり、環境教育の観点からも有用な取り組みの一つであると考えております。
また、複層ガラスについては、断熱性能が高く、冷暖房設備の使用電力を削減するなどの効果が期待できるものと承知しておりますが、校舎等への導入については、施設全体の断熱対策等を総合的に検討する必要があり、費用面も含めて研究してまいります。
県教育委員会といたしましては、持続可能な社会の実現を目指す開発目標SDGsの考え方などを踏まえ、施設整備と環境教育の両面から、県立学校における地球温暖化対策の取り組みが推進されるよう努めてまいります。
次に、地方創生につながる高校と学科の再編についてであります。
議員御指摘の文部科学省が推進する地域ビジネス創出事業、いわゆるSBPは、高校生が地域の方々とともに地域の課題解決を目指す取り組みであり、高校生の主体的な学びの推進とともに、地方創生の観点からも有効な教育活動であると考えております。
県立高校においては、三木高校と地元営農組合や企業が連携した三木町小蓑地区の活性化プロジェクトや、高松工芸高校クリエイティブ7による香川漆器の魅力発信、多度津高校海洋生産科によるハマチを使ったレトルト食品の開発等、SBPと同様の取り組みを数多く行っているところです。また、昨年度から高校の枠を超えて県内高校生の参加を募り、地域課題解決学習のモデル事業として、イノベーションサマープログラムや瀬戸内アートサマープログラムを開催しております。
現在策定中の県立高校の在り方を示す次期計画においては、こうした地域と協働した取り組みを全ての県立高校において推進し、郷土愛やイノベーションを創出する力等を育むこととしており、各高校で地域課題に主体的に取り組む体制を確立するとともに、新しい学科やコース等の設置の際には、地方創生につながる学びの観点を含めた検討を行ってまいります。
また、これらの取り組みを推進する上で必要な人材については、研修等により教員の資質向上を図るとともに、高校の多様な教育活動に、地元の自治体や大学、企業等の各分野の専門家が参加できる体制を整えてまいりたいと考えております。
県教育委員会といたしましては、郷土への理解、郷土を愛する気持ちを大事にしながら、
グローバル社会に対応し、新しい価値を創出することのできる資質・能力の育成に、SBPを初めとする地域課題解決学習の方式を積極的に活用してまいります。(降壇)
◯副議長(西川昭吾君)理事者の答弁は終わりました。
本日の一般質問を終局いたします。
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◯副議長(西川昭吾君)以上で本日の日程は、終了いたしました。
次会は、十月八日午前十時本会議を開きます。なお、議事日程は、追って報告いたします。
本日は、これをもって散会いたします。
午後三時零分散会
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