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2009-03-09 平成20年度予算特別委員会(第2日) 本文
2009-03-09 平成20年度予算特別委員会(第2日) 名簿

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    トップページ 検索結果一覧 使い方の説明 (新しいウィンドウで開きます) 平成20年度予算特別委員会(第2日) 本文 2009-03-09 文書・発言の移動 文書 前へ 次へ 発言 前へ 次へ ヒット発言 前へ 次へ 文字サイズ・別画面表示ツール 文字サイズ 大きく 標準 小さく ツール 印刷用ページ(新しいウィンドウで開きます) 別窓表示(新しいウィンドウで開きます) ダウンロード 表ズレ修正 表示形式切り替え 発言の単文・選択・全文表示を切り替え 単文表示 選択表示 全文表示 発言者表示切り替え 全 5 発言 / ヒット 0 発言 すべての発言・ヒット発言表示切り替え すべての発言 ヒット発言 選択表示を実行・チェックの一括変更 選択表示 すべて選択 すべて解除 発言者一覧 選択 1 : ◯跡田参考人 選択 2 : ◯吉野参考人 選択 3 : ◯浅原参考人 選択 4 : ◯木内参考人 選択 5 : ◯村田参考人発言者の先頭へ 本文 ↓ 最初のヒットへ (全 0 ヒット) 1: 6 会議の概要  (1) 開会  午前10時34分  (2) 記録署名委員の指名  (3) 理事会決定事項の報告    1) 総括審査の日程    2) 配席について    3) 発言時間の計測    ア 委員長席及び質問席の残時間表示計により、持ち時間が終了すると、質問席ランプが点滅する。    イ 原則として、ランプが点滅したときをもって、発言を中止する。    ウ 持ち時間を超過した時間については、理事会に諮って、翌日以降の同一会派の持ち時間から差し引く。    4) パネルや資料等の使用は、事前に申し出て理事会で了承を得ること。    5) 参考人発言順位  (4) 各常任委員会に調査を依頼した各会計予算の調査結果  (5) 休憩  午前10時37分   (再開に先立ち、委員長が、参考人に対し、あいさつを行った。)  (6) 再開  午前10時38分  (7) 参考人意見 ◯跡田参考人 おはようございます。  ただいま御紹介いただきました跡田でございます。現在、大阪大学大学院医学系研究科というところで医療経済経営学寄附講座特任教授をさせていただいております。まず、このような機会をお与えくださいました広島県議会関係各位皆様方に厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございます。  私は、現在55歳でございますけれども、約30年、古くは財政学、ちょっと新しい、私ぐらいの年代の人間からは公共経済学という言い方をする分野を専門といたしまして研究・教育に携わってまいりました。本日は,この経験に基づきまして広島県の来年度予算及び県の財政運営むしろ今後の財政運営につきまして若干お話をさせていただきたいと思っております。
     内容といたしましては、まず政府、これは国も地方も同じでございますが、政府の役割という考え方から来年度予算につきまして大きく2点お話をさせていただきます。その後、もう一つは国、地方あわせました政府の財政運営という観点から広島県の今後の財政運営のあり方につきまして2点、大きくは合計4点につきましてお話をさせていただこうと思っております。  まず、専門的な領域でございますが、経済学というものが一体どういうことを考えているのかという点からお話をさせていただきます。若干専門的で申しわけございませんが、基本定理というものが我々経済学の世界では2つございます。ペアで学生に教えてきたところでございますけれども、1つは完全な競争市場、完璧な競争市場ということでございますが、こういうものが維持できれば最も効率的な資源配分、そして人々が一番ハッピーな状態になれるということを1つの定理として持っております。これを数学的に、かつ理論的にとうとうと教える、これが大学1年生のときにやる作業でございますが、大体学生はその時点で嫌になってドロップアウトしていくというのが常でございますけれども、一番大事な定理ではございます。そしてもう一つ、それを支える裏側の定理という意味で第2定理というのがございまして、こういう競争市場ではどうしても所得の高い層が有利になってしまいます。ですから、やはり所得の再分配を必ず行う必要があるということをもう一つの定理が教えております。この2つで経済学の基本的な考え方が成り立つわけでございますが、本日はどちらかというとこの第1定理のほう、競争市場を維持できれば最も効率的な資源配分が達成できるという点、まず強調したいのはこの点でございます。この定理を十分に勉強しなかった方々が経済学部出身でもかなりたくさんいるわけですけれども、そういう方々はしばしば私どもを市場原理主義者と呼んでくださいます。余りいい言葉ではないと、原理主義というところまで言われるのは心外だとは思うのですけれども、基本的にはこれはこの定理の理解を間違えているということが申し上げたい点でございます。  本来この定理が持っております意味というのは、国でも地方でも、政府が何をすべきかを明確にする点にあるわけなのです。市場で競争すればいいということを教えているわけではなくて、完全な競争市場というものであればという前提条件がついておりますから、その完全な競争市場というものの意味をとらえてもらわないといけないわけです。簡単に申し上げるならば、完全な競争市場というものは現実の世界にはあり得ないものでございます。完全ですから、価格情報はすべての人が同じ状態で持っている、つまり、鹿児島から稚内までどこで何を売っているか、どういう価格で売っているかということまでを全部知っているというような極端な前提条件でございますから、あくまでも理論的な世界のものであって、現実には存在し得ないものでございます。市場がない場合もまたある。これは最近の世の中、近代になってからは少なくなっておりますけれども、一番いい例は、明治の当初を考えていただくと、郵便というものは市場がなかったわけです。もちろん小口の庶民金融というものもなかった。ですから、前島密翁がつくられた郵政のシステム、それから郵便貯金というものは政府が経営する意味があったわけでございます。市場がない場合にそういうことを考える必要がありますし、市場があったとしてもうまく動かないケースがある。これは今の株式市場でもそうですし、逆に考えると今の不況というのはほとんど市場がうまく動いていないという状況にあるにもかかわらず買う人たちが買ってくれない、売り手の方が倒産していくような,市場が崩壊していく状態が今の状態であり、市場がうまく動いていないということもあります。また、うまく動いていても,突然,妙な経営者があらわれたり妙な企業があらわれたりして市場を混乱させる可能性もあります。  こういういろいろなケースが考えられて、完全な競争市場というものは成り立っていないということです。ですから、市場がない場合に政府がみずからプレーヤーとして参加するということも必要でございますし、一時的にうまく動いていないという状況であるならば、そこに政府が是正を図るということが必要になります。うまくいっている状況でも、当然ある程度のお金と人を使ってモニターをしておくということも政府の役割になると思います。これが経済学が教えている本来のこの第1定理の意味でございます。市場を自由に任せればいいなどということは決して経済学は教えてはおりません。経済学が持っているものは、理想はこうですが、それに近づくために政府がやるべきことはあるのですということを教えております。  先ほど委員長からお話がありましたように、今日、日本のマクロ経済は瀕死の状況にございます。そして広島経済も恐らく同様の状態にあると思われます。数字を少し見せていただきましたが、かなり厳しい状況にあります。これは、先ほども申し上げましたように、あらゆる市場がうまく動いていない状態と考えられます。したがって、こういう状況においては政府、国もそうですし、広島県、もちろん県下の市町も積極的に市場に介入して、その市場ができるだけうまく動くように正常化を図っていくということが必要でありますし、積極的にお金も人もつぎ込んでいい状況なのではないかと思います。  では、どういうふうにかかわっていくべきかという点でございますが、経済規模は、日本経済の規模もそうですし、広島経済の規模もかつてから比べれば非常に大きく拡大してきております。そういう今日において、政府が従来型の一般的な公共投資を巨大に膨らませて需要をつくるという形で景気回復を図るということは、昭和30年代、40年代に期待されたほどの景気効果を持つとは考えられない。効果はゼロではありません。ですから、全くやる必要がないということではなくて、やはりある程度はやりながらも、それのみに頼る、そこに傾き過ぎるというのは少し考えたほうがいいのではないか、効果は限定的なもので、90年代の日本の経済政策がそれを実証したわけでございます。巨大な公共投資をほぼ10年間続けて、結果としては巨大な債務を抱え、景気を回復することはできなかったわけです。ただ、デフレスパイラルをとめるという形、下支えをした可能性はあります。ですから、先ほども申し上げたように、やらないでいいということではないのですが、そこに余り力を入れ過ぎるのは危険ですということを申し上げたかったわけでございます。  では、どういう形がいいかといいますと、むしろより直接的に個々の市場に介入していくことを考えた方が今日的にはいいのではないかと思います。最も緊急を要する市場というふうに考えて2つ挙げさせていただきますと、やはり労働市場金融市場ということになるのではないかと思います。企業の倒産、人員削減等で失業が大量に発生しております。数字を見せていただきますと、広島県でも恐らく現在、この3月期、4月期になりますと4%を超えるレベルで失業が発生しているのではないかと思われます。大体全国的に見て、平成19年半ばぐらいに一番失業率が低下した数字が出ております。広島でも多分3.6%ぐらいになっていたのではないかと思います。ですから、この状態から見ますと、現在までの間に、統計上の数字から逆算すると広島県では9,000人を超える失業者が新たに発生しているのではないかと考えられます。ですから、この方たちが新たな仕事につけるように導いていくこと、ないしは失業期間をできるだけ短くするような対応、これが政府ないしは広島県の最重要な役割ではないかと思っております。来年度予算でかなり積極的な雇用対策を組まれてはいると思いますが、訓練定員の見込みについて数値目標が載っていて、予算として考えると非常にいい予算が組まれているわけですが、数字的には2,252人ということで、先ほど申し上げた9,000人というレベルに比べますとちょっと弱いのではないかと、財政が苦しい折にかなりの対策は組まれているわけですけれども、もう一踏ん張りしていく必要がある、ないしは必要が出てくるのではないかと考えております。国でも既に21年度補正予算ということが本予算が通る前に出ております。こちらの県議会でも今、予算が通ろうとしている段階だと思いますが、直近の経済状況をさらにごらんいただいて、さらなる雇用対策ということも検討を開始する必要があるのではないかと考えております。  もう一つのうまく動いていない市場である金融市場でございますが、これに対しましては、予算の中で中小企業への190億円の融資枠を設定されているということでして、この考え方、やり方というのは、私は今の経済情勢の中では非常に有効な施策ではないかと思います。今回の不況が信用の収縮、銀行がお金を貸し出すところの収縮に始まっておりますから、最も大きな被害を受けるのは中小零細事業者と考えられます。ですから、こうした方々の運転資金がショートしないように小口の融資を受けられるような無担保の保証制度、こういうものをつくっていかれるのがいいのではないか。190億円の融資枠の中身はいただいた予算書や資料ではつかめなかったのですけれども、むしろこういう保証制度で信金・信組という地元に密着した金融機関と連携して、我々の用語ではリレーショナルバンキングと言っているわけですが、要するに人を見て、日ごろから接触のある、よく知っている人たちが困っているところに地域の金融が無担保でお金を貸せるようにする、その信用保証を政府、県がやるというシステムを構築されることをお考えいただくのが必要な段階ではないかと思っております。  リスク評価というものが異常に高まってしまった中小零細事業者向け融資市場というものをうまく機能させる、これがこの側面で特にお考えいただきたいところであり、予算措置としてはさらなるものを、恐らくこの3月から5月までの間は一層厳しい状況が出てまいりますので、その辺の追加措置もお考えいただけたらと思っております。  もう一つの基本定理ということで再分配の重要性をお話しいたしましたが、これは所得への累進課税とか生活保護障害者福祉政策というものが相当するものでございます。これにつきましては、実は県が予算の中でみずから身を削って出す部分、直接的な予算というのは余りございません。むしろ国がやるべきことであり、そして実施主体はどちらかというと市町村になってまいります。県は仲介するという形になります。ですから、業務としては存在いたしますが、予算措置としてはそれほど多くのものを掲げる必要性はないのではないかと思っております。医療関係予算がついております。ただ、これは医療のマーケットをうまく動かすための措置でございまして、再分配的な医療という形でとらえていく必要はないのではないかと思っております。  また、多くの方々が過疎対策というものも所得再分配政策の中に入れて議論することがございます。100%間違いだとは申しませんけれども、むしろ過疎地というよりも、ここでは稼得能力が十分でない方がいらっしゃるならば生活保護なり種々の社会保障政策というものを実施すべきでございますが、過疎地にいて健常な方であるならば再分配政策というのは適用されません。むしろ重要なのは市場へのアクセスの悪さ、市場動向の情報がつかみにくい、地理的な高コスト構造、そして面積の狭さということでの生産量の制約という問題を抱えていらっしゃるわけですから、こういう場合にはやはり十分な収入が得られない状況を回避してあげるという政策で、実際予算の中にもございますけれども、過疎地への道路整備、そして技術革新のための研究支援、これはまだ余り予算の中で明確には見えてまいりませんけれども、やはり新たな製品開発、そしてコストを安くするための手法の開発、そういったことに県が積極的にかかわっていかれるのがいいのではないかと、むしろ市場化政策ととらえて、マイナスのイメージでの過疎対策ということではなくて、積極的に市場を広げていく、生産者を強化していくという政策として位置づけてやられたらいいのではないかと思います。  こうした点から見ますと、新規事業では合理的な予算がつき始めているというふうに私自身は見させていただきました。しかし、広島県の地勢的な状況を拝見いたしますと、どうも農業が予算では中心になっておりましたけれども、林業や水産業にも同じような形で生産者を支援するための予算をさらに追加的にやられるというのもいいのではないかと、今後そういう点をお考えいただきたいと思っております。  全般的にはかなりしっかりした予算になっていると思いますけれども、内容を見させていただきますと、予算という性格上かもしれませんが、これが広島県の予算であると言われても、隣の県とか大阪府の予算であると言われても余り大項目を見る限りでは違いがない、細かいところはいいところ、オリジナリティーもあるかもしれませんけれども、全般的に見ますとどうも予算にオリジナリティーというものは少ないかもしれないと申し上げておきたいと思います。ただ1点、どこにもないすぐれているところというのは、やはり地方分権改革ということで予算立てをされて重点施策に盛り込まれている、ここは恐らく日本の中で唯一の予算の設計になっているのではないかと思います。ですから、ほかの側面のほうをさらなるオリジナリティーといいますか、広島県の独自性というものを出すような形で今後お考えいただけたらと思います。  さて、来年度予算の個別評価はこのぐらいにさせていただきまして、次は、財政運営のあり方について意見を述べさせていただきたいと思います。  基本的な財政運営の指針というものは、中長期的には財政の健全化を進めながら県経済の活性化を図っていくことにあるというふうに、明確に経済の再生と財政再建ということを目標にお持ちになっておられます。以下、ではこの両面を達成させるために必要な財政運営における公会計と公共経営、パブリックマネジメントという、この両面での新たな展開についてお話しさせていただきながら財政運営のあり方を少しお話しさせていただきます。  まず、財政健全化指針関係についてですが、歳出規模の推移を見る限りでは、平成14年以降、着実に歳出削減を実施されております。そして実質的な債務残高、これは県が返済しなければいけない債務残高でございますが、これも増加を食いとめて、近年は規模から見れば少しずつ減少する、削減するということにも成功されております。ですから、並々ならぬ決意のもとに歳出削減を実施されてきたこと、この点については敬意を表するところであります。多くの県が存在する中で、ここまで財政再建を達成されているところは余りないのではないかと思います。しかし、現下の経済危機は未曾有のものでございまして、21年度補正予算が必要になるのも、ほぼ確実だろうと思っております。また、再来年度の税収は来年度以上に厳しいものになることが予想されます。こうしたとき、財政調整基金が既に25億円まで減少しております。こういう点では、財源調達手法が非常に難しいものになってまいります。といいますか、予算を組むこと自体が非常に難しいことになるのではないか、これはまた広島県だけではなく全自治体がそうだと思われますが、広島県でも恐らく一層の歳出削減か借り入れという手法に頼らざるを得ないだろうと思って見ております。  こうした状況を踏まえまして来年度予算を見渡しましたところ、やや違和感を持ちましたのは、退職手当の支出が増加している点でございます。現役職員の給与はかなり大規模に削減をされております。しかし、退職者への支払いは338億円という数字が計上されております。この数字のために現役の給与の削減効果を減殺させて、むしろ人件費全体ではプラスになってしまうということも起こり得る状況になっております。退職金を受け取る立場、私もあと5年ぐらいしたら本来なら退職の年齢になりますから、この立場からすると当然もらえるものがあるわけでございますけれども、それにしてもやはり1人当たりの受取額がかなり民間より大きくなっているのではないかということが懸念されるところでございます。私も国家公務員をやっておりまして退職金を2度受け取ったことがございますけれども、私学と比べると、勤務年数に比べて結構高い退職金を受け取ったことがございますので、こういうことを少し申し上げておきます。ですから、どういうことが必要なのか、民間では、退職金というものに対して事業者はその人の入社時から積み立てをしております。しかし現金主義、しかも単年度主義を貫いております公会計の中では、退職金に対してこういうことを全くやっておりません。そうはいいましても、今日起こっておりますこの退職金の支払いは、いわゆる団塊の世代の退職が始まっていることと関係しております。この時期にこれだけの退職金が必要になることは、財政担当者だけでなく多くの方が20年以上前からわかっていたことではないかと思います。しかも、それにもかかわらず対策が講じられていなかった。これは、国もそうですし、すべての自治体で言えることで、広島県だけがたるんでいると言うわけにはいかない問題ではございますけれども、実際にこの退職金を退職債という名前の地方債で賄うわけでございますから、財政再建の足を引っ張ることになるのは明らかでございます。この問題は、労使でやはり真剣に考えて、新たな政策をとっていく必要がある問題ではないかと考えております。  中長期的な視野を持った財政運営がこういう点でも十分になされていないということでございます。この側面を補うために、一昨年、総務省は全自治体に財務諸表を3年以内に作成するように指示を出しております。私がこの勉強会の座長をやっておりましたのでこういうことをよく情報として知っているということもございますが、バランスシート、行政コスト計算書、資産増減計算書、現金収支報告書の4表から成る財務報告書の作成を要求している段階でございます。県でも平成18年3月末のバランスシートを普通会計ベースと連結ベースで作成されてホームページに掲載されております。ただ、なかなか見つけにくいところにございました。私の年のせいかもしれませんが、こういう新しい情報はもう少し前面に出していただけたらと思います。  このホームページを見ていただきますと、退職給与引当金、これはバランスシート上ですから、今の全職員に対しての引当金、固定債務という金額が載っております。実に2,484億円という数字が出ております。これだけの金額が今後必要になる、今、全員を解雇した場合にこれだけの退職金を支払わなければいけないということで、債務を持っているわけでございます。この数字は1年前、平成18年ですから多分昨年出ているはずでございます。そうしますと、1年前に認識されていたわけですけれども、こういうバランスシートから出てくる数字に対して何ら対策が考慮されていない、考えられていない、当然打ち出されてもいないということになります。ですから、退職金の算定手法というものを今後やはり大幅に見直していくということ、さらには見直しの中で、少なくとも広島県の職員ですから、広島県の民間企業の退職金と同じレベルにしていくということぐらいは検討を早急に始める必要があるのではないかと見ております。さらに申し上げるならば、現在が苦しいわけですね。来年度300億円近く財源不足がやはり出ると思われます。恐らくもっと出るのではないかと思われます。ですから、そういう点では300億円を超える退職金の支払いを単年度でやるのは非常に苦しいわけですから、少し退職者に我慢していただいて、10年の分割払いというような方法も考えられるわけです。実施するのは法律上かなり難しいところはあると言われておりますけれども、しかし緊急を要する場合、労使で相談をされてやるということもお考えいただければと思っております。  発生主義会計の導入、これは現金主義だけではとらえられないものですから、発生主義での財務状況を把握すること、そしてそれに基づいていろいろな対応策を講じていくということが必要な段階に来ていると思われます。新しい公会計制度への対応というものも、またそしてその利用という面についても現在、広島県ではまだ十分に対応ができていないように思われますので、早急な対応をしていただければと思います。  さらに申し上げると、新公会計制度では、債務状況だけではなくて資産項目についても主要なものを注記して内容を明らかにしなさいと申し上げております。これは売却可能な資産がどのぐらいあるのかとか、あるいは売却不可能でも経済発展に寄与する資産がどのぐらいあるのか、資産内容をきちんと広島県民にわかるように説明をする、一般の人でもわかるような形で公表をしていくことが必要であり、それを実施するように求めているものでございます。さらに連結で財務諸表も行政コスト計算書も作成するように指示しておりまして、こういうものをつくれば人件費、三セク等の外郭団体との合計した人件費がわかりますので、真の人件費、その実態が白日のもとにさらされることになります。会計監査は民間企業では非常に厳しいものが行われますが、今後の行政府というと、民間と同じような行政監査、財務監査というものが必要になってくると思われますので、十分な対応をお考えいただけたらと思います。  最後の点に移りますが、公会計制度の改革と同時にほとんどすべての先進国で導入されておりますのが新しい公共経営と言われるもので、ニューパブリックマネジメントという考え方でございます。これに従った財政運営というものが多くの国で実施されております。これが本日最後に指摘しておきたい点でございます。もう少し言葉を置きかえますと、いわゆるPDCAサイクルという考え方でございます。Pと申しますのはプラン、これは予算を作成するということでございます。そしてDがドゥーで実施する、予算を執行するというのがDであり、そしてCがチェックでございます。評価をするということでして、そのチェックした結果に基づいてプランの見直しをする、アクションをするということでAが出ております。PDCAサイクルというような政策循環メカニズムがこの新しい財政運営の中では強調されております。翻って見ますと、日本ないしはこの広島県におきましても、PとDに関しましては法令、条例に従いまして異常なほど厳格に実行されております。これは他の国々に比べて圧倒的な厳密さ、厳格さをもってやってまいりました。多少の不正というものは出てまいりますけれども、諸外国のずさんさに比べれば、明確に日本はここの部分では進んでおります。しかしチェックのところ、評価のところは非常に不十分である。さらに、評価が不十分でございますから、アクションの部分というものはほとんど行われていないということに等しいと思われます。これは日本の場合、予算主義というものが長年しみついてしまったといいますか、はびこってしまったというところがございます。予算というインプットにだけ神経質になってまいりました。そのために、その予算が持っている目標が一体何であるのか、つまり成果を余り重視してこなかった、むしろ決めていないということの方が実態ではないかと思います。そのために評価ができない、予算を実行しても一体何を目標にしていたのかが最初に明確にされていないために評価ができないという事態に陥っているということではないかと思います。  近年、何百何千という事務事業について評価をし始めた自治体もあるようでございます。膨大な作業をされております。そこに私どものような財政を専門に研究してきた者を入れて外部の委員会をつくって評価をしていますというわけですが、はっきり申し上げて、我々にも全くそんなことができる能力はございません。我々は、学者ですから少し時間があると考えていただいて、一月もかければ100個ぐらいは見られるかもしれませんが、何千という事務事業を短期間で評価をしろと言われても、できることではございません。恐らく広島県でも事務事業を整理すれば1,000を超える事業がおありだと思います。むしろこういう事務事業評価は役所の中の部内管理をするための作業でございまして、できれば課長クラスの人たちで内部のコスト管理をするためにやっていただきたい。さらにその事務事業を集めて1つの束にしたような施策、施策評価が次の段階で必要になります。これが恐らく部長クラスでやっていただくべき作業で、その施策をまとめた形で政策評価ができてまいりまして、これが自治体の首脳がやっていただくもの、ないしは議会がやっていただく、自治体の首脳から報告があって、それを議会が評価する、この段階では政策評価というのは恐らく20個から30個ぐらいにまとまった政策になるのではないかと思うのです。これならば我々が専門性を持って評価することができる。もちろん末端の事務事業は全く見なくてもいいというわけではございませんけれども、政策評価という大きな枠の中で評価をしていくということ、これが今求められていることでございます。  この政策、施策、事務事業の3階層に区分してそれぞれの段階で評価をしていく、これはそれぞれの段階でやはり数値目標を立てておくわけです。数値目標は立てにくいということはよく言われますけれども、強引にでも数値目標をつくって、まずはやり始めるというところが必要ではないかと思います。この各段階での評価をして、そして最終的に予算全体を評価していく、どの程度までそれぞれの目標、政策目標が達成されたかということで評価ができ上がるということでございます。  しばしば評価はこれで終わり、この評価をしたら終わりということになるわけですが、本来の評価というのはさらに次のステップ、特に議会でやっていただきたい点、これはこの目標を立ててどこまで達成できたかという数字があるわけですが、100%達成できているといったら、はい、合格ですというだけではないわけです。100%達成できたということは、ひょっとしたら最初の目標が低過ぎるのではないのかというところをまずチェックしていただきたい。目標設定が妥当か否かということを再検討する必要があります。もし、次に目標が達成できなかった場合があるとすると、その原因がどこにあったのかをチェックする必要があります。ひょっとしたら予算が足りなかったのか、ないしはやり方が間違っているのではないか、ないしは担当者がサボっているのではないかというような形での評価をしないといけない。これを各政策についてじっくりとやっていただくというのがこの政策評価、PDCAサイクルの中でやらなければいけないことでもあり、ぜひとも議会で今後検討していただけたらと思っております。  こうした評価ができ上がれば、アクション、見直しという段階に、それを次年度の予算に反映したいということになってまいります。しかし日本の場合、この予算の執行から結果が出てくるまでにはどうしても1年間はかかってしまいます。早く見ても年度末、もう一つ早くして年末にある程度の効果が出てきているかもしれませんが、そこから検討を始めても評価結果は翌年度になってしまいます。ですから、評価というのは予算に反映する場合には次年度予算ではなくて次々年度、2年後の予算に反映する形になりますから、昨年認めた部分は一たん翌年度も認めておかないといけないということになってまいります。ですから、予算の複数年度化ということもある程度考慮に入れながら、このPDCAサイクルというものを導入といいますか、お考えの中に入れていただければいいのではないかと思います。この政策循環サイクルが完全にでき上がりましたら、いわゆる成果主義予算ができ上がってくるわけでございます。これからの日本の予算は、すべからくこういう形でつくられていく必要があるのではないかと思っております。  こうした公共経営の観点から考えますと、広島県の予算には、ちょっと申しわけないのですが、今のところ成果主義という明確な考え方を持った形での予算というものはどうも見受けられない。ただ、来年度予算の説明資料では具体的な数値目標が、雇用支援効果として、ここに3,900人程度と訓練定員が2,552人ということが明確に載っておりました。その他、数カ所には目標数値が入っております。こういうふうな数字でございますので、いわゆるアウトプットの数値はある程度出始めておりますが、まだアウトカムが認識されていない、成果目標というものが明確には持たれていないのではないか、訓練することが目標ではございませんし、ここで雇用支援効果が実際に雇用創出につながっている数字であればいいわけですが、この雇用関係でいうならば成果はあくまでも雇用創出、実際に職についた数が何人かということが最終的なアウトカム目標になると思います。ですから、そういうところまで政策の中できちんと書いて、そこで予算の検討をしていっていただけたらと思います。PDCAサイクルの考え方というのは、予算における政策、施策、事務事業の提示の仕方においてもまだ余り理解されていないと申し上げざるを得ないと思います。とりわけ活性化関連予算でも、中枢拠点性強化関連については金額も余り大きくはないのですが、成果目標が何であるのかさえよくわからないものになっているようなところがございます。もしおやりになるならば、できればもっと大胆に明確な数値目標を立てられて積極的に実施するということを考えられたらいかがなものかと、活性化がちょっと弱いという気がいたしました。広島経済にとって経済の活性化はぜひとも達成しなければならない重要な課題であろうと思いますので、財政健全化のためにもこれは不可欠な政策だと思っております。  それから、他県との違いという点で広島県が東アジアの中核になる、西日本の中心、ないしは中国地方の中心ということももちろんですけれども、よりグローバル化の中での広島県ということで考えるならば、東アジアの中核となる産業育成というような視点からの産業政策も考えていかれたらいかがでしょうか。未曾有の財政危機に直面している今だからこそ、コスト管理のための事務事業評価、ゼロベースからの事務事業を見直すための施策評価、そして議会での予算だけでなく決算も含めた審議の質的向上及び県民へのわかりやすい予算解説のためでもある政策評価、これらの実施体制をぜひとも早急に整備していただけたらと考えております。  本日は、前半では来年度予算の個別問題といたしまして、かなり麻痺している労働市場の是正策としての雇用対策と、同様に萎縮してしまって機能不全に陥っている金融市場の是正策としての中小零細事業者への信用保証制度の拡充、こういった点の必要性重要性というものを取り上げさせていただきました。後半では発生主義会計に基づく財務諸表による財政状況の把握がおくれていること、また新しい公共経営の考え方の導入もかなりおくれているのではないかということを指摘させていただきました。先ほども申し上げましたが、広島県だけがおくれているということを申し上げたかったわけではございません。むしろ地方分権改革の側面においては、私の知る限りでは最先進県だと思っております。また、フロー面での財政再建には見事に成功されております。これだけの進歩的な対応をされている県、議会でございますから、ぜひとももう1歩、さらには2歩も前に進んでいただきたいということで若干辛口のコメントをさせていただきました。お耳ざわりな点が多々あったのではないかと思われますが、今後広島県がより一層発展され、そして自治体として日本の中でトップをいく、静かな主張の中でトップを走っていかれるという姿を期待させていただくということで私からのお話を終わらせていただきたいと思います。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手) 2: ◯吉野参考人 東友会協同組合理事長の吉野でございます。本日は、広島県予算特別委員会におきまして参考人意見を述べる機会を与えていただき、まことにありがとうございます。  私ども東友会協同組合は、マツダ株式会社と取引を持つ広島県内の企業が昭和27年に東友会という任意団体を立ち上げ、昭和42年に協同組合として認可を受け、鋳・鍛造、機械加工、組み立てを行っている1部会、板金プレス加工、組み立てを行っている2部会、インパネやバンパー等の内外装部品及び金型装置の製造を行っている3部会、計67社で構成され、組合員の相互研さん、情報交換を中心に活動しています。  ところで、一昨年のサブプライム問題、昨年のリーマンショックに端を発したアメリカの景気後退は世界経済に大きな影響を及ぼし、輸出産業に頼る日本経済は大きなダメージを受けています。自動車産業にとっても例外ではなく、自動車各社が輸出在庫を抱え、在庫正常化のため急激な生産調整、大幅減産を行っている折、東友会協同組合の参加企業は過去にない厳しい経営状況となっています。このような状況の中で、中小企業支援を目的に広島県が「BUYひろしま」運動の一環としてデミオ200台を前倒し購入していただいたことが引き金となり、広島市、呉市、三次市、廿日市市や他の市町へと広がり、さらには商工会議所や金融機関を巻き込んでの中小企業支援へとつながっていきましたことをこの場をおかりして深く感謝申し上げます。  それでは、まず自動車業界の現状からお話しさせていただきます。  この図は広島県の県内総生産を産業別に示したグラフですが、平成18年度の県内総生産、約13兆円のうち製造業が約3兆5,000億円で全体の27%を占め、産業別で最多となっています。また、製造業の中では自動車産業を含む輸送用機械が約8,800億円で製造業の25%を占めています。このことから、自動車産業は生産面で広島県の基幹産業であると言えるのではないかと思っています。  次に、マツダ株式会社の年次別国内生産台数と自動車・同附属品製造業の出荷額を示したのがこのグラフです。マツダの生産台数は平成3年、バブル期には140万台でしたが、その後、バブルの崩壊やマツダの経営不振により平成7~8年には約77万台にまで減少し、しばらく低迷期が続きました。しかし平成14年、2年ぶりの新車となる新型アテンザが発表されて以来、次々とヒット車種が発売され、徐々に生産台数を伸ばし、昨年は平成5年以来15年ぶりに100万台を突破しました。ただし、月別に見ると昨年の11月以降は生産調整により急激に生産台数がダウンしており、この件については後に述べさせていただきます。また、ここには示していませんが、自動車・同附属品製造業の出荷額もマツダ生産台数とほぼ同様な推移となっています。  次に、これは広島県の就業人口を産業別に示したグラフでございます。平成18年の事業所企業統計による産業別の就業人口から見ると、全就業人口、約135万人のうち製造業に従事する人は19%の24万人となっており、卸売小売業に次いで多くなっています。そのうち自動車、同附属品製造業に従事するのは約3万5,000人で、製造業の業種別では最も多くなっています。このことからも、自動車産業は雇用面からも広島県の基幹産業であると言えると思っています。  これは広島県の自動車関連就業人口を示したグラフです。前のスライドでは自動車及び部品を製造する業務に従事する人、3万5,000人を示していましたが、このスライドでは、社団法人日本自動車工業会がホームページに公開しているデータを参考にして、自動車の製造販売、利用等にかかわっている人の数を推計したものです。このデータによりますと、およそ10人に1人が自動車関係に従事していることになります。製造部門とは自動車・同附属品製造業に従事する人、利用部門とは自動車を利用して業務を行う人、トラックやタクシー、自動車を利用するための業務、レンタカーや駐車場業務に従事する人、関連部門とはガソリンスタンドや車関係の保険業務等に従事する人、資材部門とは車を製造するために必要な資材や機械等の製造に従事する人、販売・整備部門とは自動車の販売や整備に従事する人を示しています。  このグラフは広島県内自動車メーカー、マツダの昨年1月からことし1月までの国内販売台数を示したものです。このグラフから見ておわかりのとおり、マツダ社の国内での販売台数は低迷しています。特に昨年10月以降は、10月14.9%減、11月28.0%減、12月20.3%減、1月29.1%減、2月36.1%減と前年比10%以上の減少が続いており、ことしになりましてもこの厳しい状態が続いています。  これは広島県内自動車メーカーの昨年1月からことし1月までの月別輸出台数を示したものです。マツダ株式会社は国内他社に比べ輸出比率が80%強と高いことから、海外市場の冷え込みの影響から、1月の輸出台数は前年比72%減の2万207台と急激に減少しています。  これは広島県内自動車メーカーの昨年1月から本年1月までの月別生産台数を示しています。昨年11月以降、景気悪化に伴う生産調整により生産台数が急減しています。特に1月の生産台数は前年比で66%減の3万1,130台まで落ち込みました。5番目のスライドで説明いたしましたとおり、平成7年、8年には年間生産が77万台にまで落ち込みましたが、このときでも平均すると1カ月当たり約6万5,000台を生産していた計算になり、今回1月の生産台数はその半分にも届いていない厳しい状況となっています。  御参考までに、平成19年、20年度における広島県の有効求人倍率の推移を示すグラフですが、昨年6月以降7カ月連続で悪化しており、昨年9月には1.0倍を下回り、12月には0.83倍になっている状況です。  これは平成19年、20年、輸送用機械の製造、修理に従事する人の有効求人倍率の推移を示したグラフですが、平成19年12月には3.73倍と求人難、人手不足の状況であったものが、平成20年に入りやや低下傾向となり、それでも9月時点では2倍を超える倍率でした。しかしながら、12月には0.74倍と、1倍を下回る状況に急変しているのがおわかりいただけると思います。  それでは次に、不況に耐えてきた広島県自動車産業について御説明します。  1960年代のモータリゼーションの波に乗り、地場産業も順調に成長してまいりました。しかしながら、1975年のオイルショック、1991年のバブル崩壊、さらには円高による国際競争力の低下をカバーするために世界最適調達が始まり、これらの事象は地場企業にとっては厳しい試練であり、大変な状況を経験してきましたが、その都度、マツダ株式会社の協力もあり、まさにワンマツダで生産合理化や他自動車メーカーへの販路拡大活動を展開して乗り切ってまいりました。しかしながら、今回は過去に例がないほどの厳しい減産を経験しています。バブル崩壊後の状況も厳しいと感じていましたが、今振り返ってみますと、合理化や販路開拓等、マツダ株式会社とも一体となった改善活動で何とか乗り切ってきたのが広島の自動車産業でした。不況に強い広島の地場産業として、過去の経験を生かして、あきらめず、投げ出さずにやっていけば必ず活路は見出せると確信しております。  広島地場自動車産業が過去不況を乗り切れた理由として、1、呉工廠時代からの集積した技術力、2、マツダ本社工場から70キロ区域に隣接した製品製造拠点、3、ワンマツダで行った改善活動、4、部品取引先の協力会である洋光会や材料、装置、金型取引先の協力会である洋進会に加えて、古い歴史を持つ当協同組合の存在による行政及びマツダ株式会社とのパイプ役としての活動、さらに加えて5番目に、行政の御支援があったからと思います。今後とも行政の力強い御支援、御指導をよろしくお願いをいたします。  それでは次に、今後のトレンドと展望についてお話をさせていただきます。  1996年にフォード社がマツダ株式会社への出資比率を33.4%に引き上げたことから、両社の車両共同開発が開始し、マツダとフォードとの部品共有化が始まりました。その結果、日本の自動車部品メーカーの技術力がいや応なく問われることになりましたが、日本の大手自動車部品メーカーに限らず中小自動車部品メーカーも決して欧米の部品メーカーに負けない競争力を持っており、何とか頑張ってまいりました。頑張ってこられたのは、日本の自動車産業の構造は、自動車メーカーを頂点として、その下に1次部品メーカー、2次部品メーカー、さらに零細企業、家内工業を巻き込んで品質、価格、納期が成り立っており、すべての面で欧米の部品メーカーに負けない技術力を長年にわたり培ってきたことがあり、中小企業の何とかしなければという頑張りズムがあったからと思います。これが欧米と大きく異なることであり、この構造が崩れない限り、欧米には決して負けないであろうと信じています。しかしながら、地場企業は経営基盤が欧米の部品メーカーに比べて弱く、グローバルに製品を供給できる企業が少ないこと、またIT技術がないことが弱点になるかと思っております。  さらに、開発途上国の価格競争ですが、韓国の部品メーカーとの生産技術格差は正直言ってなくなってきています。加えてウォン安、円高が日本の企業には重くのしかかってきていますが、彼らには負けない生産技術力の強化、さらには製品によってはその構成部品を韓国から調達し部品としての付加価値を高める工夫を行ってしのいでいきたいと思います。また中国ですが、この国への対応も厳しいものがありますが、自社のコア技術をしっかり見据えた上でこれらの流出を防いでいきたいと、考えております。  さらに、九州地区への対応ですが、九州地区でのトヨタ、日産、ダイハツの生産台数は100万台まで成長し、東友会にとっても魅力的な市場ととらえております。九州地区での部品の現地化率51%を70%にしていきたいというのが自動車各社のねらいと聞いております。しかしながら、九州地区の企業は部品メーカーとして品質や価格、納期面でまだまだ現地化が思うように進んでいないのが現状だと聞いております。九州地区にも近い当協同組合の企業にとっては販路拡大のチャンスとも言えるかと考えております。  次に、カーエレクトロニクス化への取り組みについてお話しさせていただきます。  素形材加工、組み立て産業が中心の広島県のものづくりは、カーエレクトロニクス産業の集積が薄く、今後の自動車開発に予想される新規システムの90%がエレクトロニクス関連システムと言われている中で、組み立て産業と低付加価値部品が残り、高付加価値部品は地域外から流入するといったものづくりの空洞化の危機を迎えています。同様の危機感は浜松地区に、また新たなビジネスチャンスにしようという動きが九州や東北地区に出ており、カーエレクトロニクスへの対応が今後のかぎを握っているものと思われます。エンジンの機械加工領域は今後エレクトロニクス化が最も進む領域であり、現在中国地域の機械産業集積を背景として地域内からの調達領域ではありますが、今後エレクトロニクス化が進み対応がおくれると、調達構造に相当の変化が起こり、地域外からの調達が増加し、地域産品に大きな影響が出ると思われます。これらのアイテムは、内容によっては高い技術が要求されますが、克服すれば日本車は必ず勝てると思っています。マツダ株式会社では現在量産されていませんが、業界全体を見てみると、既にハイブリッド車や電気自動車の分野では完全に日本がリードしています。県外への流出を防ぐためには、エレクトロニクス化アイテムの中で地場でできるものはないのか、マツダ株式会社、大学との連携を強めて開発、実用化できるよう頑張っていきたいと考えております。  次に、過去に東友会協同組合並びに組合員企業が国、県の支援の中から活用させていただいた支援等について御説明いたします。  まず、資金繰りに関する支援につきましては、原油・原材料価格高騰対策特別資金ですが、ここ数年、原油・原材料価格が急激に値上がりしましたことに対し、個別企業レベルで活用させていただきました。また、経営支援金も同様に個別企業レベルで活用させていただきました。  次に、雇用安定化支援について御説明いたします。人材確保推進事業は過去2度にわたり活用させていただき、組合員企業の雇用環境や作業環境の改善やホームページの作成などを行い、雇用確保に大いに活用させていただきました。また、教育訓練助成金、雇用対策特別資金、雇用調整助成金、さらにはセーフティーネットについては昨年11月以降、自動車大幅減産対策として組合員企業へもPR活動を行い、現在も活用させていただいております。しかし、先の見えない世界的不況の中で、広島県として同様の助成金制度の設立、雇用調整助成金の3年間200日の日数延長、さらには休日を利用しての教育訓練実施時の教育訓練助成の支給について国への働きかけ等を御検討いただければと思っております。  次に、技術開発支援についてお話しさせていただきます。  まず、特定中小企業集積競争力開発事業について御説明いたします。国、県の補助を活用させていただき1998年から実施いたしました特定中小企業集積競争力開発事業は10年間で、自動車関係が中心ではありますが、東友会補助を活用した開発物件を含めて延べ51件の新技術、新製品の開発に取り組み、35件が実用化に成功し、地場企業の技術力向上と販路拡大に大いに役立ちました。実用化された中から2~3例を挙げますと、株式会社キーレックスが取り組んだ2段式スポットウェルドガンの開発、株式会社音戸工作所が取り組んだ高強度ディファレンシャルギアの開発などがありますが、特筆すべきは、デルタ工業株式会社の三次元ネットを使用した自動車用シートの開発は自動車分野だけでなく軽量化を目的に航空機のシートにも展開されようとしています。  次に、今年度活用させていただきました広島県地場産業ものづくり力支援補助事業ですが、技術経営の改善を目的とした研究会と経営者・技術管理者を対象に6回のセミナーを実施、経営幹部の意識改革に大いに参考となりました。開発技術力が弱点と言われている地場産業にとっては、今後大いに役立っていくことと思っております。  次に、戦略的研究開発補助事業でございますが、軽量化分科会、エレクトロニクス化分科会、リサイクル分科会の3分科会を広島県が中心となって立ち上げていただき、それぞれの分科会に地場企業も参画し、鋭意努力をしているところでございます。  次に、モジュール開発助成金の活用についてお話しいたします。ここにはマツダ株式会社が取り組んだモジュールの例を示しています。広島県で平成13年度から5年間のモジュール開発助成金に加えて平成15年度、地域の部品サプライヤーを中心に産学官連携によるモジュールシステム化研究会を立ち上げ、1年半にわたり情報収集、相互研修と今後の技術課題の抽出を行い、共同研究体制の確立、新商品の導入など大きな成果を残すことができましたことを深く感謝申し上げます。これらは既に実用化され、地場産業の技術力向上と販路拡大に役立たせていただいております。  続きまして、人材育成支援についてお話しいたします。当組合では、1998年から2000年と2006年から2008年の2回に延べ6年間にわたり人材確保推進事業補助金を受けて人材確保のための諸活動を行ってまいりました。その結果、経営者の意識改革、職場の環境、労働環境の改善、さらには大学、高等学校等と意見交換を通じて採用方法の改善等に大いに役立てることができました。これは当協同組合加盟企業の労働災害件数の推移を示したグラフですが、1990年には年間300件を超えていた災害件数は、最近では100件を下回る状況となってまいりました。組合員企業独自の活動の効果もあったとは思いますが、人材確保推進事業で行った職場改善セミナー等による経営者、監督者の意識改善や職場環境の改善によるところが大いに貢献していると思っております。  次に、販路開拓支援事業ですが、ここに示すとおり、株式会社キーレックス、富士機械工業株式会社、広島アルミニウム工業株式会社ほかが自動車以外の製品の拡販を目的に展示会へ出品させていただき、自動車以外の販路拡大、企業PRに活用させていただきました。  それでは、今後の課題について説明させていただきます。  これは地場企業67社の開発技術の保有状況を示したグラフです。開発型企業の割合が25.4%、生産技術開発を中心とした技術力を持っている中間企業が15.3%、それ以外の賃加工型の企業が59.3%、大半が賃加工型の企業が主体となっております。我々として賃加工型企業は中間企業へ、中間企業は開発型企業に、開発型企業はさらに進んだ開発ができるよう成長していくことをねらって平成5年に新技術委員会を立ち上げ、組合員企業への新技術、新製品開発のための情報提供活動や開発資金の補助等の支援を行っております。  次に、後継者問題ですが、中小企業にとって頭の痛いところです。今は何が起こってもおかしくない時代です。我々中小企業として激動の社会を生き抜くためにも、後継者の育成をしっかりやっていきたいと思います。今年度は3年前から開始した次世代ビジネス研究会と経営者向けのセミナーを実施してまいりましたが、雇用調整助成金をいただいている企業は、休日の補助金を使って教育訓練を残念ながらできないことになっています。東友会として苦しいときの人づくりを継続して実施していきたいと思っておりますので、側面からの御支援をお願いしたいと思っております。  次に、コスト競争力の強化ですが、グローバル化が進んでいく中、世界の部品メーカー、特に発展途上国部品メーカーを意識したコスト競争力が激化し、競争力の強化が大きな使命となっています。当組合で実施している生産合理化委員会活動を強化し、作業分析、時間分析等の手法を学ぶIEマンの養成をしっかり行い、品質、コスト、納期の面で競合メーカーに決して負けない企業群へと成長していく所存でございます。  最後になりますが、東友会では、マツダ社応援宣言の中で、年間9,000台という自主拡販目標を掲げてマツダ社拡販支援活動を行っています。販売なくして製造なし、まさにそのとおりの状況になってしまいました。今回の「BUYひろしま」運動は自動車産業に直接かかわる当協同組合にとってまことにありがたいことで、改めて深謝申し上げる次第であります。  ピンチをチャンスに、厳しい時期ではありますが、フル生産時にやりたくても忙しさの余りできなかったこと、そのまま放置してきたことをやるチャンスと思っています。東友会協同組合及び組合員企業が金をかけずに知恵を出して人材育成、生産合理化をさらに経営基盤の強化につながる活動を行い、景気回復後にはスタートダッシュができるよう取り組んでいく所存です。  今後も行政やマツダ株式会社との情報交換を密にして会員の相互研さんを行い、さらなる努力をしていく所存です。引き続き御指導、御鞭撻をよろしくお願いいたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)  (8) 休憩  午前11時57分  (9) 再開  午後1時2分 3: ◯浅原参考人 御紹介いただきました広島大学の浅原と申します。よろしくお願いいたします。  先ほど参考人の方たちと昼食をさせていただきまして、議長、委員長もおいでになりました。今、日本が経済の問題で非常に大変な危機に陥っている、国民の生活が脅かされているという現状の中で、私は地域医療の問題をお話しさせていただきたいと思います。限られた時間ですので意を尽くし得ないかと思いますけれども、最後までお聞きいただきたいと思います。  経済の問題に比べると医療や教育は基本的には直接経済の発展に結びつくものではございませんけれども、後ほど申し上げますが、私は基本的には国のインフラであると思っていますし、そこの部分をきちんと手当てをしていかないと10年先、20年先あるいは50年先に日本の国が危うくなるという危機感を持っております。  これは日本の医療についてWHO世界保健機構という機関がある程度評価していることを示したスライドです。日本の平均寿命は世界一で、よく知られたことです。そして新生児の死亡率も世界で最も低い。これらは一部ですけれども、これらに代表されるように、我が国の医療は世界で最高レベルにあると思っています。しかしその背景には、医療費が非常に少ない、特に公的医療の負担が少ないことが特徴にあります。医療費そのものを見てみますと、イギリスも余り医療費にお金をかけていたわけではないのですけれども、イギリスにも抜かれ、もうG7の中では最も少ないという形になっています。医師の数も少ない。御存じのように3時間待ち3分診療、そして小児科、産科医療等の専門医が不足しているという現状がございます。  このスライドは、患者負担が多い日本の医療費ということで、栗橋病院の先生の資料をちょっと借りたのですが、ドイツ、カナダ、フランス、イタリア、英国と比べてみても日本の医療費の個人負担はずば抜けて多いわけであります。先進国では全額免除とか給付とか、さまざまな形で国民に医療費への補助をしています。  これは1つの例です。例えば盲腸、急性虫垂炎の手術をした場合に、アメリカでは医療費が非常に高いです。アメリカの医療は今ほとんど崩壊しています。ヒラリー・クリントンがこれに対してさまざまな手当てをしたいと思っているところですけれども、見ていきますと盲腸の手術は200何万円とありますけれども、日本は34万円、しかも自己負担がこの済生会栗橋病院で手術しますと10.4万円となっていまして、これだけの医療に10万円も負担している国はほとんどないわけであります。もちろんアメリカの私的保険は別ですけれども、これは高い医療費でお金を出しさえすればすばらしい施設でいい医療が受けられるということになっています。  これも栗橋病院の先生の資料を借りており、私は又聞きですけれども、高速道路の緊急電話がありますが、これは1台250万円だそうです。本日は、高速道路を通ってきましたが、確かに両わきに置いてあります。高速道路の緊急電話は100キロメートルの間に、200台あるそうです。今、携帯電話が発達した時代にこの高速道路の緊急電話がどれだけ使われているかということは極めて疑問に思うわけであります。この高速道路の電話の代金に比べて日本の医療の費用は、先ほど申し上げました盲腸の手術をして34万円、胃がんの手術をして120万円、お産は30万円、大病院はもう少し少ないのですけれども、この程度の医療費、そしてこの程度の緊急電話の費用です。国民にとって何が大事かということを改めて認識しておかなくてはならないと思います。  これは1995年ですから14年前ですけれども、先進国の公共事業費を比べたのですが、サミット6カ国合計より日本一国の公共事業費の方が多いということを示したスライドです。  ここで今、現場で起こっている医療崩壊の原因について改めて確認しておきたいと思います。  一つはコンビニ診療です。私は、臨床医になって5年目に、平日の勤務を終えた後、夜、当直に行きました。次の日も勤務があるのですが、生活のために当直に行かなくてはいけないのです。準夜帯という夕方から午前0時にかけては結構患者さんもおいでになりますが、午前4時に、救急車で若い男性が眠れないといって来られました。「どうぞ、起きていてください」と私は言いました。眠れないからといって救急車で来るような、そういう手厚い日本の医療です。これがコンビニ診療の象徴だと思います。  3番目は、偏った報道といいますか、これも数年前に私がある新聞記者と話をしたときに、「先生、医療事故は記事になるのです、医療過誤は記事になるのです」と言って、どんどん記事にされる。真実は報道していただかないと国民も理解できません。しかし、過剰報道になっていると思います。福島県立大野病院でのお産で前置胎盤剥離中の出血多量で亡くなった事件があり、あれ以来、産科を希望する医者は急減いたしました。そういう報道は実は非常に重要であって、国民の生活に大きな影響を与えるものであろうと思います。余談になりますけれども、朝出てくるときにテレビを見ます。朝、明るいニュースをどんどんしてもらって、さあ、きょうも元気に働こうという報道であれば私はいいと思うのですが、NHKでさえ、どこどこで殺人があったとか、傷害があった、火事になったとかばかりで、それは夕方でいいと思うのです。明るいニュースを朝報道していただいて、国民が元気で働ける一日をスタートできるようにしていただきたいと思います。報道の影響は大きいのです。  4番目に、医療人の自覚の問題。これは新医師臨床研修制度が始まって若い医師が都会に集まってしまった。特に首都圏に集まってしまった。彼らはやはりそういうところで働きたい。もちろん病院の環境がいいということもありますけれども、そうではなく、自分の生活がいろいろと楽しめるということをやはり中心に考えています。それが20年前、30年前と同じかというと、私は多少は変化があるのではないかと思います。  そして、最も大きいのは、この5番目の医学・医療の進歩に対応していない制度です。例えば、麻酔科の医者は従前は手術室で麻酔をかけていただけですが、今はそれに加えてペインクリニックをしています。そしてがん患者さんの緩和ケアもしています。痛みを取ることについて一生懸命です。つまりどんどんテリトリーが広がっているわけです。そういう中にあっても、日本の医療施設の医師の配置基準は昭和23年にできたもので、改まっていません。そういうことも含めて、私は最後に一番上の話をしたいと思うのですけれども、制度の改善がなされていないということです。6番目の、国の医療政策の問題です。私たちは長年いろいろな形で医療を行ってきたわけですけれども、将来的なちゃんとした計画があって、それに沿って人的資源の手当てをし、施設の改善をし、制度を改めていくというのが本来の姿ではないかと思いますが、それが十分なされていないと思います。  きょうもう一つお話ししたいのが、7番目の医師不足です。私は、38歳で広島大学の正職員になりました。私はちょっと遅かったのですけれども、しかし多くの方は大学を卒業して22歳で正職員です。今でも大学病院の中に30歳を過ぎても日々雇用の非常勤医師がいます。県病院は今度それをなくされるということなのですけれども、大学病院には間違いなくいます。そういう中で、労働時間について月曜から金曜までで終わればいいのですけれども、夜もありますし、土曜日、日曜日もあります。患者さんの家族に説明するためには家族の都合に合わせないといけませんから土曜日に来られる、日曜日に来られる、ということに対応している医師が日々雇用の医師です。したがって、そういう環境に耐え切れずにどんどん大学病院から医師がやめていくわけです。  広島県の地域医療を考えてみますと、広島県というのは、中国山地がありまして、瀬戸内の島嶼部もカバーしている、このあたりの地域医療と都市部の地域医療という2つの面があると思うのですが、根本的には余り変わらないと思います。せんだって東京で2歳の女の子が頭を打ったのに、結局数カ所の病院で受け入れてもらえず、最後は総合病院で受け入れたのですけれども、まだ今、意識不明と聞いています。都市部であったとしても、この山間部や島嶼部の地域と同じようなことが起こっているわけです。一般に地域医療の問題点は病院まで遠いとか専門医がいないとかといった問題があります。しかし、広島県はそれに加えて多い無医地区、登録医師数の減少という特殊要因があります。  厚生労働省の統計で、北海道に次いで広島県は無医地区が多いのです。  地域医療の現状を改めて考えてみますと、やはり医師不足というのは大きな問題です。そしてよくたらい回しと言われるのですけれども、たらい回しではないのです。受け入れられないのです。今、医療をしている、手術をしている、重症患者を診ているから、来られても診られないのです。これは医師不足なのです。それをたらい回しというふうに報道されます。あたかも病院が悪い、医師が悪いという言い方です。基本的に医師が足りないのです。たらい回しには決してしていません。そういう余裕はないわけです。  日本の医師会が調べて記者会見し発表したデータなのですが、地域別の供給医師数の増減ですが、5年前と比較して、大学や公的病院からの医師供給数が減少したかどうかを病院長に聞いたものです。最も減少したのは中国・四国地区で56.4%、次が東北地区、そして中部地区となっています。いずれも50%を超えています。これは実数ですので、本当に減ったわけです。供給医師数が減ってきた。供給医師数が減ったというのは、やめても大学の医師も減っているから大学から医師を派遣できないのです。これはよく新聞で引き揚げと書かれています。引き揚げではないのです。その病院の医師がやめたときに、理由はいろいろあるでしょうけれども、いないから補充できないのです。そのことを理解していただきたいと思います。  医師不足を理由にして、外来の閉鎖、休止、縮小、病棟の閉鎖、病床縮小、夜間等の救急対応休止、こんな問題が起こるわけです。どうしても医師が減ってくると対応できなくなってきます。これは大阪府の箕面市に大きな病院が3つありまして、これらの病院で毎日、小児救急を受けていたわけです。しかし、それぞれ小児科医はたくさんいるわけではありません。せいぜい3人か4人か5人です。毎日3つの病院が受けていて、例えば小児科医が3日に1回の当直とか4日に1回の当直で、もうやめたいと言われたので、箕面市の病院が協議をしまして、それでは当番にしよう、きょうはこの病院がする、次はこの病院、例えば3日に1回回ってくるようにすればいいという話があったのですが、結局小児救急センターを1カ所つくったのです。そこに張りつけるようにすると、1カ所に患者さんが集まるわけで、小児科医も休みができるわけです。これは小児科医に非常に好評で、この箕面市の試みは非常にいい試みで、全国に紹介され、またうまくいったわけです。そういうことを工夫していかなくてはいけないと私は思っています。  病院長が医師不足感をどのように感じているかを調べたのですが、ここもやはり東北と中国・四国が最も多くて、8割ぐらいの病院長が5年前と比べてやはり医師が足りないというふうに思っているわけです。  これは日本医師会のまとめですけれども、病院医師は47都道府県のうち42で、335二次医療圏のうち281で不足していると都道府県医師会は考えている。病院医師も診療所医師も不足している二次医療圏が最も多い。産婦人科、小児科、救急、麻酔科で特に医師が不足していると考えているのです。  そして地域別では、医師数が減少した病院の割合が特に多いのは東北地区と中国・四国地区である。診療科別では、ここはちょっと深刻なのですが、内科と産科婦人科である。内科はいわゆる病院という一つの診療施設を考えたときに中心になる診療科です。内科の医者が減ってくるということは、基本的に病院が成り立たなくなるということを示していると思うのです。実は最近、内科の医者も減少しています。私たちはこれはもう極めて深刻な問題だと思っています。  医師不足についてもう少し踏み込んだ話をしていきたいと思います。医学・医療の急速な進歩があるから医師不足が起こった。先ほど申し上げました、新しい医学・医療の出現により機能がどんどん細分化していって、それに対応する医師が必要になってくるわけです。したがって、相対的に医師は減ってきます。特に専門化し、内科でも循環器、呼吸器、消化器、内分泌代謝、リウマチ科とかがどんどんふえていくと、専門化していい医療を受けられるかもしれませんけれども、例えばこれは広島県内のある病院で起こったことなのですが、きょうは内科の先生が当直しているが循環器内科の先生であり、おなかが痛いという患者さんが来たけれども、専門化してしまっているから診られないのです。これは大きな問題です。医学教育でも考えていかなくてはいけないと思うのです。そして患者さんや家族への説明です。今、入院したら、まず説明しないといけません。検査する前にも説明しないといけません。検査をしたら、また説明しないといけません。手術する前にも説明しないといけません。手術が済んだら説明しないといけない。退院する前にも説明しないといけない。医師の労働時間の中で説明にとられる時間が随分ふえているのです。実際に、これももちろん医療のうちですから否定するわけではありませんけれども、そしてまた院内会議がふえています。医療の安全をいかに保つかということでさまざまな会議があるわけです。それにしょっちゅう出なくてはいけない。つまり医学・医療が進歩したおかげで仕事量は絶対的にふえています。  そして、2番目の平成16年からの国立大学の法人化と新医師臨床研修制度です。これは2年間の鳴り物入りで導入された研修制度ですが、私は正直なところ、役に立たなかったと思います。というのは、3カ月外科に来られても、外科の何も教えることはできません。1カ月精神科に行かれても、何も覚えることはできないと思うのです。研修制度はもっと考えていかなくてはいけない。とかく不評のありました医局の医師派遣機能がこれでなくなったわけです。そして法人化しましたので経営負担が随分かかってきて、どんどん臨床に割く時間がふえてくる。後でちょっと説明いたしますが、これは後で大きな禍根を残すことになると思います。  3番目は、自由に選択できる診療科です。今の制度の中では、職業選択の自由で、どの診療科でも自由に選択できます。したがって、きつい、汚い、危険、こういった職場はだれも嫌います。外科系、特に一般外科は最も嫌われた方で、日本外科学会の統計で、あと7年すると日本で新しく外科医を志望する人間がいなくなるということです。  これは広島大学病院の勤務医数と人事交流医師数の推移です。人事交流をしている数は、どんどん減ってきており、これは大体150人ぐらい減っています。広島大学病院の医師も50人減っています。  最近入局する数もどんどん減ってきています。研修医数は余り変わっていないのですけれども、入局する数が減っている。  これは非常に深刻で、医師の数は広島県自体も減っているのですが、広島市がもっと減っているのです。  そこで、広島大学では平成16年にひろしま地域医療協議会というものをつくって、広島の医療のあり方、医療貢献に関する事項、医療人育成に関する事項、そして最後に医療人の配置に関する事項について協議することにいたしました。これは広島大学のスタッフを中心に広島県、広島市、医師会を含めたメンバーでスタートしたわけですけれども、実は私も、最初にかかわっておりまして、この大きな問題は、はっきり言えば幾ら病院が集まっても病院長は自分の病院のことしか考えられないのです。自治体、首長は自分のところの病院しか考えないのです。これでは幾ら話をしても進まなかったのです。今後もう少し考えて工夫をしていかないといけないと思っています。
     医師不足問題の対応として、広島県に昨年11月「ひろしまドクターズ・ナビin東京」をしていただきました。広島県医師養成奨学金もつくっていただきました。ふるさとドクターネット広島もやりました。恐らくこれだけ積極的に取り組んだ自治体は余りないと思います。  地域医療の課題への対応ですが、一つはやはり初期診療機能を確保することだと思います。つまりどこにいてもまずだれかが診てくれる、そして重症であればきちんとその基幹病院に送れる仕組みができるということが大事だと思います。  次に、医師不足の背景には低医療費政策があります。  そこで私は、この地域医療の課題への対応としまして、医学教育を見直すべきだと思います。医師臨床研修制度を改めるべきです。特に学士課程、いわゆる医学部の教育との連動で、この中にできれば組み込んでやるべきだと思いますし、そのためには学生に免許証がない段階で患者さんに触れることができるシステムが必要でしょう。次に地域医療の義務化です。今みたいに卒業してすぐ地域に行っても余り役に立ちませんし、勉強にならないと思うのです。私は卒業して8年から10年ぐらいで3年間は地域医療を義務化する、これは県の指導で自治体でやっていただいていいと思うのです。そこまでは大学で一生懸命教育し、そこでやってもらって、またもとに戻ればいい。専門医そのものも今みたいに自由に選べるのではなくて、国全体で、例えば眼科医は2万人とか、外科医は5万人とか、制限すべきだと思います。何よりもしていただきたいのは、場当たり的な対応ではなく、診療報酬そのものを変えてもらう。特に急性期医療については、余りにも薄過ぎます。たくさんの人手がかかって危険があるのに急性期医療は余りにもひど過ぎる。これを中心とした診療報酬の大幅見直しが必要だと私は思います。  これは国立大学が法人化いたしまして、先ほど申し上げました経営の負担がふえた、診療の負担がふえた結果、臨床医学研究の論文数の推移を示しています。黄色いのは世界の論文数です。2003年から2006年にかけて7%ふえています。日本の国立大学は10%下がっています。もうここで17%差がついています。これは来年すぐ、この臨床研究の差が出るわけではないのですが、必ず10年、20年、30年先に出てくるわけです。日本の医学研究が世界をリードしてきたものであったとしても、30年後には後塵を拝するようになると思います。このことは私たちの責任ですし、もっと深刻に考えて早目に改善策を打ち出していかなくてはいけないと思います。  古代ローマ帝国では医療や教育にかかわる者は国籍、肌の色にかかわらず、すべて市民権を与えるとされていたそうです。千数百年続いた、あの古代ローマ帝国で教育と医療がいかに大事だったかということをあらわす言葉ではないかと思います。私は医療や教育は国のインフラだと思います。先ほど申し上げましたように、これは直接経済の発展にはつながりません。しかし、国そのものを支えるインフラだと思います。イギリスはサッチャー首相のときに医療費を抑制しました。医療が崩壊し、その後、ブレア首相を初めとして国策として医療費の増額をしたのですけれども、まだ立ち直っていないと思います。医療費を1.5倍ぐらいふやして、もっとふやしたかもしれませんが、イギリスは立ち直っていません。つまり日本が今すぐ手当てしたとしても立ち直り、医療崩壊から脱却するには何年もかかるわけです。医療や教育には規制緩和や競争原理はそぐわないと思います。そういう目で医療や教育を見ていただきたいと思います。  最後に、やはり地域医療の課題、対応3と書いてありますが、国民の医療への理解は、これはもう絶対的に必要なことだと思います。最初にコンビニ診療のお話をいたしましたが、自分の健康はやはり自分で守っていくという気概が大事だと思います。それで不可能なものは、それは医療機関にかかっていただければいいという仕組みにしないと、今の医療崩壊を防ぎ、再構築することはできないと思います。  以上で私の発表を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手) 4: ◯木内参考人 このような機会を与えてくださいまして、本当にありがとうございます。大変光栄でございます。  非常に乱暴な題でございますけれども、今の世の中をどう見るか。目につく広島、先を行く広島、日本初の広島になろうではありませんかという提案をさせていただきます。  最初に、私と広島との御縁でございますけれども、たまたまきのう広島出身の妻と44年目の生活が終わって、きょうから45年目の生活が始まっております。妻は広島出身の海軍の軍人の娘でございまして、昭和16年生まれで44年前の3月8日に結婚したのです。後で話が出てきますけれども、かなり長いアメリカ生活その他を経験している者でございますが、原爆の話になりますと、いまだに我が家の妻は震えます。怒ります。本当に彼女のおいごさんもめいごさんも跡形もなく消えたのですね。そういう原爆に対する彼女の本当の思いは経験した者でなければ決してはかり知ることのできないものだということを44年の間に何度も見て、これは非常に大事なことだと思っております。  私は三菱関係の会社に40年近くいたのですけれども、たまたま海外での、特にアメリカでの生活が長かったために、会社員生活をしながら自分の思いというものをかなり実現することができました。その思いが今御紹介にあずかりました、小さな会社ですけれども、イースクエアという会社です。これはアメリカにいるときに、我々企業は先へ行くことばかりを考えているが、後にどういう社会を残すかということにもっと配慮して企業経営をしようではないかということを言い出した人がいました。1995年でございますが、ロッキー山脈のふもとで、日本人は私一人でしたが,マスコミ、学校の先生、企業人、もちろん民間、NPO、NGOを交えて、63人の集まりが、そういうことを議論して、NPOを起こしました。それを数年後NPO法ができたころに日本へ持って帰ってきて日本でやろうと思ったのですけれども、そのときにNPOがやっていけるように税制を2年以内に変えると、あの経団連の大きな会議室でそういうことを約束されたのを本当に覚えています。しかし10年たっても、我々のように、本当に草の根のNPOをやっている人間にとっては曙光が見えてきません。少しはございますけれども、まず見えてきません。  そこで、しようがないので、今からちょうど9年前にそのNPOの思いを、株式会社にしてやろうではないかということで、イースクエアのイーはエコノミーのE、経済のEとエコロジー、エンバイロンメント、環境のEを合わせてEの2乗、イースクエアという会社を興しました。そのスクエアというのは、まさにきょうはこのスクエアだと思うのだけれども、広場という意味もございます。日本にはみんなが議論する広場が余りにも少ないのです。ですから、外国の方が見えても本当にヒット・アンド・ランと彼らは言っているのですけれども、来て話をして大きなお金をもらって帰るが、一体日本の人たちはどういうことを考えているのか、私たちの考え、言ったことをどういうふうに理解しているのかを十分に理解しないまま自分たちは帰っていくので、そういう議論をする広場をつくってほしいという声も聞きまして、イースクエアという会社を9年前に興し、今25人の部隊だけれども、7年目からお金を出してくれた70人の方に配当しております。決して大きな配当ではございません。しかし、そのお金を出してくれた70人の方を集めた一種の株主総会は、私が長い間勤めた会社の株主総会とは大違いです。何とか君らは成功してくれ、成功するために我々に何をしてほしいのか、どうしてほしいのか、何をすればいいのか、そういう株主総会で、すばらしいです。ますますそれは圧迫感を覚えますが、それで7年目から、わずかでございますけれども、とにかく御恩返しの配当をすることにしております。小さな会社で配当している会社というのは本当に少ないです。  それで、自然環境、環境の修復・保全、あるいは今問題になっておりますいけいけどんどんで行くとこの人間社会というのはあと何年やっていけるのか、これは皆さんが思っているより、はるかに短いのです。日本に対して皆さんが言っていることは、あの1億2,000万人の国民は10年後、15年後にどういう世界がやってくるかということを本当に知っているのか、どうしてあんなに無関心でいられるのかと言われているのが我々、日本国民です。  企業の社会責任の問題は今、CSRと言っている。CSRと言わないで企業の社会責任と言いましょう。そうしないとわからないです。環境の問題をやっていますと、自然に農業の問題が出てきます。士農工商というのはよく言ったものです。国を守ることが大事だ。その次は農業です。農業がきちんとしていなかったら工業も商業も土台がないみたいなものです。よく考えてみますと、戦後この60数年間、第1次産業を踏み台にして我々は工業化に走ったのではございませんか。今、例えば前川リポートというものを読んでみると、そんな昔ではございませんが、あのときでも農業、林業、牧畜業、漁業といった、本当に大事な1次産業からどんどん人を引き抜いて、もちろんみんな行きたくて行ったのだけれども、それで工業化をして今日のこの日本ができ上がって大問題を提供しているのが今の状態だと思います。  私たちは自分たち小さな部隊だけではできませんので、全世界に82人のコンタクト先がございます。有名な人、全く無名な人、研究所で働いている人、大学院で研究をしている人、実業界にいる人、そういう人82人とネットワークを組みながら仕事をしています。実は、昨日もこの時間に私は北京におりました。なぜ北京に木曜日の夜から行っていたかというと、今、全国人民代表大会が北京で開かれています。いろいろな人が集まっています。そのときの北京の様子、あるいは知っている人に会うために行っておりましたけれども、そういうことをやりながらイースクエアというのを経営しております。  今の世の中をどう見るか。非常に乱暴な言い方で、生意気だと思っていただいてもしようがないのですけれども、これはもう身から出たさびだと思って、甘んじてその御批判をお受けします。しかし、幾つか申し上げたいと思います。  これまでの延長線上に未来はございません。今までの続きがきょう、きょうの続きがあしたということで、この先、今までのいろいろな問題がVの字形に回復して、まだまだいけいけどんどんが続くなんてことを絶対に考えないでいただきたいというのが一つです。GDPが上昇した。景気が上向いたといった経済の展開に関心が集まる時代から、社会の転換、社会の発展が優先される21世紀になると私は確信しております。私とそういう考え方を進める、その82人というのは実に大半の人が同じことを考えております。  今まで親しんできた損か得か、もうかるかもうからないかといった利己主義的な判断基準に頼っていた間にあらゆるものが商品化し、貨幣が世界を駆けめぐりながら増殖し、人間の心を食い荒らす経済が生まれ、そして破綻したのです。その破綻から何を導き出すかを本当に皆さんと一緒に考えたい。私は、今のこの大問題は全貌が見えるのに1,000日近くかかると思っています。平成23年、2011年、ようやくこうだったのかということで一人一人我々は反省を深めて、考えつくのがそのころではないかと思っております。  きょうの私の提案は、皆さん、等身大の世界を考えましょうということです。そのようなことは今まで会社で言ったらばかか、等身大ではないのだ、どんどんやって大きくなるのだ、そんな小さなことを考えてはいけないということを言われ続けてきたのですけれども、いよいよ等身大の世界が評価される時代になる、そういう時代をつくろうではないですか。等身大の世界をつなぐ、そのことによって生命の活動が感じられる世界をつくり出そうではないですか。自然の力、人々の力、地域の力、そしてそれらが結び合うときに生まれる力、ここにこそ私たちの社会がつくられていると実感できるのです。今まで実感できなかったことが多過ぎます。実感できる等身大の世界をつくることが私たちの課題で、そういうことに目を覚ましましょうというのが私の提案です。等身大の世界というのは体の大きさではございません。等身大というものを和英の辞典で引きますと、暮らし、生活のサイズだというのが英語の訳ですが出てきます。いいではないですか。サイズ・オブ・ライフ。暮らし、生活のサイズなのです。体の大きさではないのです。私はそう思います。  そこで、これからあと半分の時間を使って、皆様に、目につく広島、先を行く広島、日本初の広島ということを、広島の、そして日本の政治を預かる皆様に大変生意気ですけれども提案申し上げたい。きょうの私を除く4人の参考人の方はちょっと棚に上げておいて、皆様、本当にいろいろな方のお話をお聞きになって、この人の話は説得力がある、一言一句本当に聞き漏らしたくない、そういうお話を1年間に何度お聞きになりますか。かつてそういう人がたくさんいたとは言いません。しかし、私のこの74年間の人生でも、あの人の言ったことはすごい、決して忘れてはいけないと思ったことが幾つもございます。また機会があったらぜひそういうことを皆様と共有させていただきたいのだけれども、しかし今、魂に、心に訴える話、あの人の言ったことは絶対に聞き漏らしてはいけないと、この情報の洪水の中でみんなあっぷあっぷしているのです。いかに皆様がその情報をまじめに聞いておられないかという一つの証拠は、こういうことが必ず起こると何年も前からたくさんの人が言っているけれども、御自分の資産、御自分の財産について、それをきちんと少なくとも2年前ぐらいからこの機に備えているという方がこの会場に何人おられますか。あれよあれよという間にチャンスを失して今日に至っているという方がいかに多いかと私は思います。それは原体験が大事だということを見逃しているのです。  外務省に地球環境問題担当大使という方がおられます。偉い方です。日本を代表して方々に行かれるのです。それでは、あなたがおっしゃっていることに関するその分野でどんなことをしていらっしゃるのか説明してくださいと言うと、ほとんど答えが出てきません。私がその人から得た言葉は、いや、大したことはしていない、自分の部屋の電気をつけたり消したり前より頻繁にやっているというお話です、大体皆さんそんなものです。けしからぬです。ではそういう大きなことを言っている木内個人は何をやっているか。私は自分の家庭が出す二酸化炭素をきちんとオフセットしています。毎年2万数千円のお金を払っています。東京の中の小さなうちですけれども、その屋根に太陽光パネルを張って再生可能エネルギーを得ることはこのことなのだ、これだけつくれば月末に東京電力がこれだけお金を支払ってくれるのだ、それでは倹約しよう、倹約するとこれだけお金をくれるのだということを家族と語り合いながら、そういうことが体験できます。きょうも飛行機で来ました。きのうも北京へ飛行機で行きました。海外へ行くときを中心に飛行機に乗りますが、飛行機というのは物すごく悪いのです。大変な汚染をしているのです。その二酸化炭素をちゃんとオフセットするようにお金を払っています。74歳にしては行き過ぎと思えるほど、物すごく、猛烈に何でも歩きます。自転車で通います。公共の交通機関に乗ります。自動車にほとんど乗りません。それが私の原体験でございます。皆様、ぜひ原体験を大切になさってください。  もしも県議会の65名の議員の皆様が、例えばこれから申し上げるようなカーボンオフセットというものをやってくださったら、世界で初めてです。日本は当然だれもやっていません。大したことではないのです。もしも65名の議員の皆様がそれを始めていただけたら、皆様の先輩、皆様の御努力で広島という名前は大変な力を持っていますが、この力の背後に、あそこの議員65名は一人残らず週300円、月にその4倍、年にすると1万5,000円ぐらいをきちんと払っているのだ、そういう議員が広島をつくっているのだ、ということをやりましょう。太陽光エネルギーはちょっとお金がかかりますけれども、私の場合を含めて、200万円ぐらいの投資をされると皆様の毎月のお使いになる電力ぐらいはそこできちんとつくってくれます。それは南向きがどうだとか、いろいろございます。しかし、大体そんなものです。飛行機に乗られたとき、広島-東京は、片道で1,300円ぐらいです。もしも65名の方が全員そういうことを漏らさずやられたら、これは世界に対する強いメッセージになります。そういうことから原体験が生まれて、それをもとにするから先ほどの地球環境問題担当大使みたいに自分の部屋の電気をつけたり消したり頻繁にしているなどという、そんな生半可なことではなくて、力のあるメッセージになると私は思います。  それから、2つ目は、だれかがこう言っているなんていうのではなく一人称で語りましょう。私はこうしている、僕はこうしているという切り口で言えるようにぜひ考えていただきたい。ガンジーは自分の言葉なんて聞かなくていい、自分の一日一日が自分のメッセージだということをおっしゃったのです。いいではないですか。「My everyday is my message.」と、このレジュメに書かせていただいたのだけれども、お一人ずつが私の一日一日が、私の皆様へ言いたいことなのだ、こう言える自分、これは迫力があります。しかし、そういう人が余りにも少な過ぎます。キング牧師も、「I have a dream.」と言ったのです。自分はこういう夢を持っているのだということで人種差別の問題に大変な功績を残された方です。これですよ。「I have a dream.」であり、「my everyday」の「my」です。ですから、ぜひ自分でつくる自分流の原体験をもとにして聞く人の心に刻まれるような言づてを発信していただきたいというのが私のお願いです。  私たちは自然の一部です。それでは、私たちは自然についてどのくらい知っているのですか。自然の一部である私たちは自然に対する理解が欠けているのではないか。だから、いけいけどんどんでやってきて今日に至っている。先ほどのガンジーがもう一つ言ったのは、人間というのはほっておくと7つの罪を犯すと言いました。それがネールに受け継がれ、ネールが娘に語る世界の歴史などというところに出てきます。人間はほっておくと7つの罪を犯す。その1つ目が原則なき政治と言っています。この7つはすべてなかなかすばらしいと思うのですけれども、人格なき教育とか道徳なき商業、人間性なき科学、労働を伴わない富。きちんと働いて富を築くのだったらいいと、汗水たらさないで築き上げた富というのは罪だ等々のことをおっしゃった。これをぜひ考えて、人間は自然の一部なのだということをよく考えていただいて、それでは自分の考える自然の法則とは何だろうということを考えようではないですか。  私は全く手づくりの自分の法則というのが17ございます。いつでもそれを眺めながら、これはちょっと余りよくないからこういうふうにしようとか、いろいろなことを考えています。  自然のおきて、自然の法則を理解し、それに従おうではないかという強い心を持っております。自然は壊れても自分で修復します。私たちはけがをして包帯を巻いてそれを治す。いろいろな方が病気になって医者へ行って薬をもらったりいろいろなことをする。しかし実際は自然の体の治癒力、これがその奥にあって、自然に治してくれるのです。私たちはその自然の治癒力を助けているのです。残念ながら、先ほどの浅原先生がお席を立ってしまったのでここのお話を十分にすることができないのですけれども、そういうふうに考えます。  自然は自分で処理できないものはつくりません。だから自然にはごみがないのです。ボルネオのサラワクへ行って、そこで数週間生活したときに、はっと気がついたのは、ここにはごみがない。いろいろなものが死んだり、いろいろなことをしますが、全部次のものに循環しているわけです。人間が来るからごみが出るのだ、人間がすべての問題の発端なのだということに気づきました。  自然は複雑な支え合いでできているのだ、だから私たちは競争で人を出し抜くばかりではなく、お互いにどうやって一緒に働いていくかということにもっと意欲を燃やさなくてはいけないのではないかと思います。  自然は一つのことに集中しないので、非常に多様です。自然は環境に適応しないものを排除します。自然は常に変化し、そして進化を続けています。最後の2つで大事なのは、自然は人間がすることに必ず反応します。いいことでも悪いことでも、大体悪いことが多いのですけれども、いかに自然がそれに対応しているか。最後の決め手は、自然は38億年の検証を経ているのだ、自然は38億年それをやっているのである。人間は産業革命以来わずか250年です。自然はすごいのです。そんなことを考えて、ぜひ皆様は今の状態は人間の活動が温暖化ガス、二酸化炭素を猛烈な勢いで排出しており、それが自然の回復力をオーバーしているということをよく知っていただきたい。そして、この広島県が最初の県になりましょう。ローカーボンソサエティーということが最近よく言われています。しかし、まずこの県庁の事業による二酸化炭素の排出を例えばこれだけ減らすということを本当に皆様で理解し支援して、そして広島県が非常に二酸化炭素の排出が少ない県になりましょう。豊かな森というお話がございます。ここからカーボン、二酸化炭素のクレジット、これだけこの静かな森からこういういいことが行われているのだということをきちんと皆様とその知識を共有して発信できる広島県になろうではないですか。  広島における活動、先ほど申したように65名の皆様が自分はこうやると、それは1週間300円で始まるのです。年に1万5,000円ぐらいで立派なメッセージになるのです。そういう広島県にぜひなっていただきたいし、していただきたいと、そのために私たちのイースクエアは、何も会社の説明ではないのですけれども、もしもお役に立つのだったらどうすればいいのか、メルボルンという都市はどうしているのか、アムステルダムは何をしているのか、地域にしても市にしても、そういうところがどのようなことをやっているということを、私どもはそのことを十分に知っている研究機関などと一緒に作業をしておりますので、皆様の役に立つ、そういう情報を御提供することは本当にやぶさかではございませんし、ほかの会社、あるいはほかの県、ほかの自治体とやっていますように、皆様のパートナーとして世界をよくするということに貢献できたら本当にありがたい、うれしいと、そういうふうに思っています。  どうも30分間、本当に御清聴ありがとうございました。(拍手) 5: ◯村田参考人 御紹介いただきました村田でございます。よろしくお願いいたします。  国立大学を法人化しまして、大学の中での研究・教育のみならず地域社会貢献というのが課題になっておりまして、いずれの大学も、名前は少し違うかもしれませんが、社会連携推進機構といったようなことで、私は愛媛県のとりわけ南予地域、ミカン農業から養殖漁業、真珠養殖、いずれも苦難に陥っているところの地域活性化に貢献しろということで学長から特命教授に任命された時間雇いの教授であります。きょうは、今、農業、農村はどうなっているか、自治体に何が期待されているかということで30分間お話しさせていただきます。  しまなみ街道を隔てて、また広島港、呉港から松山観光港まではジェット船であれば1時間15分ほどで来られるという向かいの県で、よく似ております。私は、これまで何度か広島県下、とりわけ県北の県境あたりに入らせていただき、田んぼがない、この県は大変だということで、我が国の農業の抱えている、農村の抱えている問題のやはり先端地域であり、先ほどの地域医療の問題で中国・四国は大変だというお話があって、なるほどそうなのかと、地域問題ということを一緒にしっかり考えなければならないのだと今さらながら思います。  農業、農村の危機の原因はどこにあるかとレジュメに書きましたけれども、WTO世界貿易機関の自由貿易体制は1995年に始まってもう10年余りになったのですけれども、このもとでの低価格農産物輸入増大、これが国内農産物の消費減、価格破壊と生産減の最大の原因であります。WTOの自由貿易体制というのをわかりやすく言えば何かといいますと、これは世界最大の穀物生産輸出国であるアメリカが、穀物生産の需要供給管理を放棄します、ということは市場任せにします、したがって国際価格が変動すること、これはもう当然のことにするということです。ただしアメリカ国内の穀作農業、とりわけ大規模な穀作農業に関しては直接支払いと、それからトウモロコシのバイオ燃料原料化によって事実上、国内価格を支えることによって国内農業は支えます。世界的に見れば、これはもう市場原理でいきましょうという、これがWTOの自由貿易体制なのです。この影響をもろに受けるわけであります。  お手元の資料に、「農業協同組合新聞」の特集で、愛媛県温州ミカン産地の危機という私の新聞記事のインターネット判をコピーしてもらいました。これを執筆して2年近くたつのですけれども、この3ページ目に生果・果汁別かんきつ消費量という表がございます。これを見ていただきますと、かんきつ農業の持っている問題、日本の果樹農業が深刻であるということがよくわかります。生果でかんきつ消費量全体として111万トン、そのうち国産温州ミカンは99万トンです。かつて300万トンを超える温州ミカンの生産があったのです。そのとき愛媛県がトップにいったときには60万トンを超え、この広島県でも大長ミカンを初め瀬戸田から島嶼部にかけて大変な農業部門だったわけですけれども、国産温州ミカンは90万トン台です。輸入生鮮オレンジすなわちバレンシアオレンジが12万トンです。ところが、果汁が117万トン消費されており、国産温州ミカン果汁は11万トンで輸入オレンジ果汁が106万トンです。つまり輸入オレンジは生果とこの果汁を加えると温州ミカンの生産量を超えてしまった、消費量を超えてしまったのです。  そして、この輸入オレンジ果汁は、5倍濃縮で主としてブラジルから輸入されます。圧倒的に冷凍で輸入されます。ところが、1985年のプラザ合意後の価格は、生果に換算すると何と1キログラム5円の水準なのです。わずか5円。この1キログラム5円という価格水準が国内産の温州ミカンの加工原料価格を決めてきたのです。これでは農家は、立ち行きません。  したがって、表のあるページのミカンの写真のすぐ下に、「同時にブラジル産・米国産オレンジ果汁(5倍濃縮)の輸入価格が1リットル当たり200円前後にまで低下したことは、国産ミカンの加工仕向け価格の引き下げ圧力を加えたのである」とありますが、これが生果に換算すると5円というところです。これに対して1988年に開始された「果汁原料用柑橘価格安定対策事業」で、加工仕向け価格は91年までは1キログラムに対して35円から40円、92年から2000年までは18円から24円で支えられました。ところが、この加工用助成制度が廃止されて生食用市場価格補てんの経営安定対策に一本化されて以降は、何と上に見たように10円を切って、ミカン農家にとっては情けない水準に落ち込んだのであるとあります。1キログラム5円という水準では、農家にとっては摘み捨てする以外ないのです。これをコンテナに入れて共選場に運んで加工用になったとしてもガソリン代さえ出ないという状況の中、この1割から2割出る加工原料をどう支えるか、つまりこの加工原料のところで需給管理をやる。表年で、これは生果で出荷する量が多いというときには加工原料の割合を少し高めて加工仕向けに向ける、裏年であれば、これは生果で東京を初めとする中央卸売市場に出荷する量をそれなりにふやしても、価格は何とか出る。需要供給管理を加工原料仕向けでどれだけきちんとやるかということが果樹農業のポイントなのです。つまり需要供給管理を放棄している、これはまさにWTO対応型の農業政策なので、これが今日の日本の農業を苦難に追い込んでおります。  さて、金融危機・世界同時不況が国民生活を直撃し、国産農産物の消費と価格を抑える事態がこれに加わりました。実は去年、自動車が一挙に売れなくなるその直前、夏場段階でおかしくなって来たのが野菜でした。卸売市場で野菜価格が落ち込みまして、消費者が先に買い控えをやりました。そして去年の年末から今、来ているのは花です。花卉、切り花市場を見てください。もう無残な状況になっています。ことしになって、野菜や花、こういったものを見たときに、何が問題になるかというと、食料品や生鮮農産物の価格を生産者や農協は決められません。中央卸売市場も価格形成機能を持っておりません。完全に量販店支配になりました。大手量販店の言うがまま、大手量販店のそれぞれの店舗の戦略のまま、この店舗ではどれぐらいの水準の野菜を売るのだという、その店長なり、そのスーパーマーケット資本の思いのまま価格形成されていきます。ここに来てディスカウント店をずっとふやしていくという中で、農業関係者は、これから3年は非常に深刻な農林水産物の価格状況を予測せざるを得ないということだろうと思います。  図1は、この基礎データとでもいいますか、食用農水産物の生産・輸入から最終消費に至る流れで、今、日本の農業、水産業がどのような国際環境、グローバリズムの中に置かれているかという非常にわかりやすいデータです。  一番左に食用農水産物、国内生産が12兆1,000億円となっています。これに生鮮品の輸入が3兆2,000億円。そしてこれがこのまま直接消費向けに行く部分、それから加工向けに行く部分、外食向けに行く部分、そしてその真ん中のところに1次加工品の輸入5,000億円、最終製品の輸入1兆9,000億円。そうしますと、生鮮品と1次加工品と最終製品を合わせれば5兆6,000億円が輸入されている。国内の生産は12兆1,000億円でしたから、カロリー自給率の40%よりはましですが、金額で見てもこれだけの海外依存だということがわかるわけであります。  そして、右端の飲食費の最終消費額80兆3,000億円、これが生鮮品、加工品、外食と見たときに、今日の我々国民の食生活のありようがよくわかるわけです。生鮮品等の部分は15兆1,000億円です。18.8%でしかなくなっているのです。加工品、外食ですが、これは産業連関表に基づく分析でありまして、大変なデータを処理するものですから、この食用農水産物の流れについては、もう古い2000年のもので、農林水産省は、これを分析する統計の予算がありません、申しわけないけれども、更新できていない、済みませんと言った話です。農林水産省の「食料・農業・農村白書平成20年版」という一番新しいものには出ておりません。平成19年版に出ているのです。これを更新していけば、またもっと深刻な状況がわかるはずなのですけれども、こういう状況の中で国内の農業や農村の問題があるということです。  そういう中で、農林業が農家の暮らしを支え切れないわけであります。農業従事者の高齢化、担い手不足が深刻化しているわけであります。アメリカのようなあの大平原で、オーストラリアの1,000ヘクタールを超える経営が当たり前であるような、そういう国土資源とは違います。にもかかわらず、1億2,700万人の人口を、この温帯アジアモンスーン地帯の夏場に集中して雨が降る、この水を利用しての水田農業を展開することによってこれだけの国民を養う。しかしそれは、水田農業は非常に効率的に水をうまく使いながら、そして水源の涵養をしながら、地下水を涵養しながら、環境に優しい形で農業を行う。機械化前には家族労働力だけでは1町歩の稲作はやれなかったわけです。今でこそ、平たん地であるならば5ヘクタール、10ヘクタール、20ヘクタールも家族労働力でやれるでしょう。しかし広島県北の棚田地帯で頑張って集落法人をつくってやっても、そこで発揮できる労働生産性たるや限られています。そこに水田を維持し、あの水田を畑にしてしまわないで水田で維持することこそ、この温帯モンスーンアジアの環境適応型農業ができるわけであります。そういう農業をやる中で、それが効率的でない、もっと法人型でやれるはずだというような攻撃にさらされながらも、現場からすればそんなことにはならないということで高齢者が頑張ってきている中で、残念ながら国土破壊とも言うべき農地・里山・牧野放棄と鳥獣害が広がっているわけです。これをどう逆転していくのかということが今問われています。  残念ながら、日本の農林行政は、また国土政策は、日本列島という人間環境の管理に成功していないわけです。何で今、山がおりてくる現象を我々は経験しなければならないのですか。鳥獣害はすごいではないですか、この平成21年度の広島県の予算でのイノシシ駆除計画。3万頭を3,000万円かけて駆除するという計画です。愛媛県は、8,400頭のイノシシと1,300頭のシカを捕獲した。これはおととしのデータです。そして愛媛県は新年度予算で鳥獣害対策として狩猟肉を特産品にしようということです。シカが南予地域を鬼北町から南宇和、愛南町からどんどん北上してきます。イノシシ被害とシカの被害は、また全然違うのです。シカは深刻なのです。里山を何とかしようということで、今、ユズが足りませんのでユズを植栽してやったら、新芽は食べるし、幹をはいでしまいますからユズが枯れてしまうのです。新しい林地の管理にとってシカというのはもう厄介なものなのです。  南予のミカン地帯も高さ1メートルまではイノシシに全部ミカンが食われてしまいます。イノシシは、若木を押し倒します。必死になって電気牧さくでミカン園を防がねばならないという状態です。一昨年でイノシシ8,400頭、ニホンジカ1,300頭ですから、これは食べられません。もう大変です。みんな地元ではイノシシやシカを食べ飽きています。イノブタ鍋や高知県もシカジャーキーを開発しながら、西予市の奥はいいロッジがありまして、イノシシのソーセージ、ハムがいいのです。しかし加工賃がキロ2,000円かかる。うまいとはいえ1キロ5,000円のイノシシハム、これはダメですね。これに補助金が必要なのです。何とかもっと地元の地産地消型でイノシシやシカを食べようと、愛媛県内の市町は、イノシシについては1頭1万円、シカについても1万円、猿については1万5,000円の捕獲補助金を出しています。何で猿が1万5,000円かといったら、猟友会は猿を撃つのを嫌がるのです。それはそうです。猟友会といってもみんな70歳以上なのです。高齢化している。猟友会のメンバーが高齢化する中でどういうふうにして管理するのか。里山の管理を失敗しているわけですから、奥山と里山の区別がつかなくなって里地との境がなくなってきたのですね。里山にとり残したカキの木があればいろいろ、そこでちょっとずつシイタケの栽培もしているわ、これから孟宗竹林、竹やぶがふえていますから春先はもうタケノコがいっぱいなわけです。年2回出産するイノブタにとってみれば、この春先の食料は大変です。これは何のことはない、自然環境ではないのです。日本列島は人間環境なのです。人間がつくった、食物連鎖のトップに人間があるわけです。その中で管理に失敗しているからこういう状態になるわけです。  さて、それではどうするのか。差し当たり必死に駆除をしながら、その駆除したものを何とか有効に使ってこれで自給率を上げようと。イノシシとシカを食べて自給率を上げようというのもいい比喩ではないかもしれませんけれども、そういうことをやりながらということです。残念ながら今の日本はグローバリゼーションに押されて、しかも外需依存型です。これからこの大不況から逃れていくうえで、自動車産業を初めとして、一挙に外需依存から内需経済に転換するのは困難です。そんな生易しい日本経済ではないというか、外需依存度は骨絡みになっていますから、それは80%のマツダの外需依存を何とかこの転換の中で70、60に落とすにしても50%以上はやはりアメリカや中国市場頼りになります。そうなると、残念ながらドーハラウンドも農業にはつらい妥結を迫られます。これはどういう政権であろうと迫られます。これを農業サイドからいったら貧乏くじです。残念ながらドーハラウンドで完全に農産物自由化を阻止する形で妥結できるような力は、日本にはないのです。そうすると、農産物輸入自由化圧力が弱まらない中で、農業・農村危機に対して緊急のセーフティーネットを張ることが是が非でも必要であります。  主食用米の生産調整は、基本的に継続せざるを得ません。もしそれを選択的生産調整としてやるならば、平場で選択的生産調整をやってほしいのです。麦、大豆を、やってほしいのです。この県北を初めとして中山間地域は米がおいしいわけですから、中山間地域は主食用米を100%つくってよろしい。平場でこそ必要な転作をしよう。もう1杯、御飯を食べようという全国消費者運動、県民運動をやりたいのですけれども、それでも主食用米の生産調整はやらざるを得ない。その場合に飼料米、これをやはり拡大していく。麦、大豆等転作作物等の助成を強化するとともに主食用米の生産者米価にコスト補てんのセーフティーネットを張る必要があります。何とか手取り1万4,000円であれば販売農家の中で平均的経営には赤字にならずにすむと考えられます。これは広島県の農家では1万4,000円で赤字でない経営はごくわずかなのですけれども、これは全国的な水準でいって平均規模3~4ヘクタールの稲作経営であれば1万4,000円の生産コストを補てんしようではないか。東京の入札センターで1万6,000円から1万6,500円、つまり1俵当たりの流通経費2,000円から2,500円、これを差し引いて1万6,000円水準を割り込んだら、全銘柄について1万4,000円との差額を1,000円でも1,500円でも販売農家に全部補てんしていく。これであるならば、集落法人は維持できます。個別農家も維持できるけれども、集落法人を維持するためには、この主食用米の価格を下支えする以外ありません。これを国に何とかやらせる必要があるのです。  さらに、その上に例えば県が特定地域について、この集落法人にこれだけの予算をかけていくわけですから、この集落法人で頑張る以外に広島県の中山間地域の農地は守り切れません。価格分野での下支えをさらに県としてどれだけやれるかということをぜひ検討いただきたいし、そういう中で耕畜連携で農地・里山保全をしていく。そういうことだろうと思います。その中でぜひとも考えてほしいのは、農地・里山保全、鳥獣害対策で森林組合、農協、市町が共同して、県もバックアップして、耕作放棄地の復旧、牧野開発、鳥獣害駆除の法人をぜひとも組織してくれないかということです。それぞれの地域で株式会社、例えば三次グリーン、安芸高田グリーンだとか、私が勝手に名前をつけますけれども、地域の中で何とか耕作放棄地の復旧と牧野開発、鳥獣害駆除の会社組織を立ち上げてくれないかと。これは個々の農家に任せたり、単に駆除だけをやっているだけでは展望は開けないです。そういうふうに思います。  そういう中で環境保全型の農業を推進しながら広島県のブランドを環境保全ブランドと結びつけていく。地産地消推進に価格安定基金制度、加工原料価格補てん、これがぜひとも必要です。島嶼部のミカン地帯、ぜひ私が先ほど言った1キログラム5円ではなくて県と市町と農協と生産者が3分の1ずつ出し合って、広島県かんきつ加工価格補てん制度があってもいいのだろうと思います。そういう中で何とか内需拡大、地域経済の再生、活性化で大不況を脱出する以外にはないわけであります。  第1次産業と食品産業を初めとする地場中小零細企業や協同組合を支えるということです。コミュニティービジネスの立ち上げを支援する。むらづくりとまちづくりに一体的に取り組むということです。さらに食とエネルギーとケアの自立だとかコンパクトな町などいろいろ書きましたけれども、これから広島県における、内需中心型の地域経済の循環をどう立ち上げていくか。広島県経済にとって、基幹産業の自動車産業を手放すわけにいかないのだけれども、この中でどのようにして広島県地域循環型経済をつくっていくかというときに、ぜひともそれぞれの地域で食とエネルギーとケアの自立、地域医療制度ですけれども、地域の介護保険事業の問題を考えていただきたい。  私は今、松山市の道後温泉のすぐ上のマンションに住んでおりまして、松山の町の中でも高齢者がいっぱい住むようになっているのです。きょう広島大学の学長さんは内科がなくなったら大変だと言われましたが、ペットクリニックが必要です。高齢者が住む中で、野良猫にえさをやるなという東京荒川区が厳しい条例をつくって全国的に問題になっていますけれども、もう猫も15年は生きるようになっていますから、もう自分より猫が長く生きそうですから、私も66歳になって今から子猫は飼えないわけです。そうしたら、野良猫にえさをやりましょう。しかし地域の中でしっかり管理しましょう、避妊手術をちゃんとしよう、去勢手術しよう、これには獣医さんで1万5,000円かかるのです。松山市は今、1匹当たり1,500円の補助金を出してくれています。広島市はどうなっているでしょうか。  子育て世代と高齢者が一緒に住める地域はどういう地域かということで、広域の、この平成の大合併をした市町のところでイメージをする中で、まず一番大事なのは食とケアです。エネルギーも頑張りたいのですけれども、食とケアを一緒にやる。そして町の中心部に第1次都市機能、市役所と並んで中央病院、図書館、それから何とか郊外に配置したショッピングセンターも都心部に引き入れてくる必要がある。都心部で生活が成り立つ。郊外に高齢者が車に乗って買い物に行って事故を起こす、そういう都市ではだめなわけです。  パーソントリップという言葉があります。これからのまちづくりはパーソントリップを小さくしようということです。車に乗って郊外のショッピングセンターに買い物に行かなければならない、そして喫茶店にアクセルとブレーキを踏み間違えて突っ込んだ85歳なんて、あれは本人の責任であるよりも85歳の人が車に乗らなかったら生活できないというまちづくりをしていることにこそ責任がある。  合併した広島県内の地方都市の中、映画館はなくなっていませんか。私は愛媛大学のうわじまサテライト長として宇和島市長に注文をつけているのです。市長、映画館がなくなっていることを何と考えるのだと。若い世代もみんな大洲市のシネマコンプレックスまで行かねばならないという、地方都市の中で映画館がないという、つまり文化がなくなったことに危機感も持っていないのは許しがたいといって市長を責めているのですけれども、この広島市はともかくとして、県都に次ぐ第2、第3以下の都市の中心街がしっかりしていますか。至るところでシャッター街がふえて、町の中が住みにくくなっていっているのではありませんか。これを何とか逆転させていく必要があります。そういう中で広域自治体としての県がどういう貢献をしていくのかが問われます。  私は、最後に一つだけ提案をしたいのは、県と市町共同で、県、市町行政と現場での住民運動の間をつなぐコーディネートの役割を果たすアドバイザーなり専門員というのをつくってもらえないかということです。農村で国と県の共同事業であった農業改良普及事業、これが、国がけしからぬわけですけれども、どんどん各県とも今、農業改良普及センターの縮小と普及指導員の数を減らさざるを得ない中、内需型というのは住民運動に期待しないといけないのです。それと行政は直接はなかなか難しい。この間に立って、50%ボランティアでいいと思います。年齢を問わず公募をして、議員さん、落ちたらみんなこれに応募してほしいわけだけれども、私らは定年になったらみんな応募して我々の持っている力でむらづくり、まちづくりアドバイザー、そして住民運動と行政の間をつなぐという、そういう役割が今、非常に期待されていると思います。  私はうわじまサテライト長で、農協の女性部のおばちゃんたちが、いや、アコヤガイの肉をつくだ煮にしたいと言ってきたり、アグリ工房で立ち上げていい焼き肉のたれをつくってきた、これを何とかしようというときに、任意団体のままになっている。私は何をやっているかというと、中小企業団体の専門家に来てもらって、ぜひとも企業組合にせよと、法人化しろとか、そういう取り組みを今やってきているということを、私の経験から最後に申したかったのです。例えば、任期5年制の特任制度でアドバイザーなり専門員制度をやったらどうか。1人当たり年間の保障は200万円でいいと思います。これで定年組もいいし、若い世代もアドバイザーになれる。そうしたら自治体の職員や農協の職員や企業のOBもみんな持っている力でこれに参画できる。これを平成の合併前の旧市町村に最低1人ずつ配置する。昭和の合併前の旧村まで持っていくのはしんどいでしょうから、今回の合併の旧町村のところまで1人ずつ配置するというようなことでいかがであろうかと思います。  御清聴ありがとうございました。(拍手)   (閉会に当たり、委員長が、お礼のあいさつを行った。)  (10) 閉会  午後2時35分 発言が指定されていません。 広島県議会 ↑ 本文の先頭へ...