ア、明らかになった事実関係
市職員は、4月15日の被
申立人との面談において、本庁舎において2人目の
感染者が判明した4月8日以降には、
保健所から
人事課職員全員の
自宅待機が望ましいとの発言があったが、その前にはなかったと述べている。これに対し、
保健所次長は、4月4日と4月8日に広く
周囲職員の
自宅待機を要請したと述べており、
市職員の説明と一致しない。この点、実際に4月4日と8日にそのような要請があったのであれば、何らかの記録が残っていてもおかしくないが、そのような記録は存在せず、
保健所が提出した経過記録にもそのような記載は見当たらない。また、
疫学調査を実施していない4月4日に
保健所が
人事課職員の
自宅待機を求めることができたのか疑問がある。したがって、
保健所が
人事課職員の
自宅待機について、何らかの発言をしたことは認められるが、それがいつどのような表現によって伝えられたのかについては、客観証拠に照らしても明らかではない。また、
市職員と
保健所の連携が不十分であったとか、
保健所の指導を市が無視したというような事情は
保健所次長の証言に照らしても認められず、両者間の不一致は、
市職員による隠蔽などではなく、単なる記憶違いあるいは
保健所の発言についての捉え方の違いにすぎないものと考えるのが自然である。
確かに、
保健所の指導内容に関する
西岡人事課長や
古川危機管理室長の説明には、一貫しない部分が幾つか認められた。例えば、
西岡人事課長は、4月13日の
事情聴取においては、4月6日に
保健所と面談をしたと述べていたが、それ以降、4月16日に
保健所次長の説明を聞くまでは、4月6日に面談したことを忘れて4月7日に初めて会ったことを前提として回答していた。
また、
西岡人事課長は、4月14日の面談において、
保健所から
人事課職員全員の
自宅待機を要請されたことは4月7日以降もそれ以前にもなかったと述べているが、
古川危機管理室長は、4月15日の
事情聴取になって初めて、2人目の
感染者の存在が判明した以降に
人事課職員全員の
自宅待機が望ましいと
保健所から言われたと認めている。
一方、被
申立人や
西田府議においても、記憶間違いや伝達ミス、確認漏れによる誤解が複数認められた。例えば、被
申立人や
西田府議は、4月16日の面談の時点で、
市職員が、
保健所からは
自宅待機が望ましいということは聞いていない。
保健所とは会ってもいないと述べていると認識していたようであるが、
西岡人事課長は、4月13日の面談において、4月6日に
保健所と面談したと述べているし、前述のとおり4月15日の時点で、
古川危機管理室長は、2人目の
感染者の存在が判明した以降に
人事課職員全員の
自宅待機が望ましいと
保健所から言われたと被
申立人に述べたことがある。
また、被
申立人や
西田府議は、
保健所が
市職員に
人事課全員の
自宅待機を4月4日と4月8日に要請したことについては、記録があるものと認識し、
市職員に対し、本当に
保健所から要請がなかったのであれば、大阪府がうそをついたことになるとか、
文書改ざんになるなどといって、
市職員を責め立てているが、前述のとおり、実際にはそのような記録は存在していなかった。
イ、
調査事項の
問題点と
委員会の判断
被
申立人は、
事情聴取が連日に及んだのは
市職員が
保健所次長から4月4日と4月8日に
人事課職員全員の
自宅待機について要請を受けていたことを認めず、うそにうそを重ねた結果であるとの意見を述べているが、前記のとおり、この要請そのものが行政上の要請と言えるものであったとは認定できず、要請とは受け取れなかったことを前提とする
市職員の説明がうそであったとか隠蔽していたとは認められず、単なる記憶違い、捉え方の違いにすぎないものと思われる。よって、これについて、
市職員による隠蔽あるいはうそであると感情的に騒ぎ立てて、連日の
事情聴取を行う理由はなかったと考える。確かに、
市職員の説明には一貫性を欠く点も認められ、それによって被
申立人が困惑した点はあったと思われるが、一方、被
申立人や
西田府議においても、
西岡人事課長や
古川危機管理室長の発言を忘れ、
保健所からは
自宅待機が望ましいということは聞いていない。
保健所とは会ってもいないと
市職員が述べているものと思い込み、また、
保健所に記録が存在するものと誤解し、
市職員が
保健所による要請の存在を隠していると決めつけるという落ち度があり、行政の円滑な遂行や
市職員の心身への負担に配慮しつつ、双方より丁寧な意思疎通や事実確認がなされるべきであったと考える。
(6)総括
以上のとおり、被
申立人による
市職員に対する連日の
事情聴取や
市職員に対する言動は、
市議会議員としての正当な行動であったとは到底言えない。
被
申立人は、
繁忙状況により
心身ともに疲弊していた
市職員に対して、連日、
事情聴取を行い、心理的な圧迫を加えて、退職を口に出さなければならないほど追い詰め、意に反する謝罪を強いた。
かかる被
申立人の行動が
市職員に与えた精神的負担は相当なものであり、
市議会議員による
市職員に対するハラスメントに該当すると言わざるを得ない。また、被
申立人は、
ツイッター上で不正確な情報を発信することによって、それを見た市民に
保健所がうそをついていると誤解させ、それによって府や
保健所に対する批判を招いたばかりか、
市職員や副市長の謝罪や
人事課職員の
自宅待機を求めた背景には、このような自ら招いた批判を鎮静化させるという目的もあったものと考えられる。かかる目的によって、
市職員や副市長に謝罪させ、
人事課職員の
自宅待機を直接求めることによって、行政の人事に過度に介入したことは議員の権限を逸脱したものであり、身勝手極まりない不合理なものであり、到底許容できるものではない。
3、結語
以上の被
申立人による行為について、被
申立人は本
委員会の調査において、自らの行為を顧みることなく、かえって
市職員に対する批判を述べる等、行為を正当化する言動に終始している。
このような態度は、被
申立人が自ら行ったハラスメント、
虚偽情報の発信及び災害時における議会のルール、さらには議員の権限を逸脱した人事への過度な介入等の
問題点に対する基本的な理解を欠くものであって、議会の一員としての議員が職務を全うすることにより、行政との協働において市政の発展に貢献するという
市議会議員に本来求められる適格性を著しく欠くものと言わざるを得ない。
よって、本
委員会は、被
申立人に対し、議員の辞職を勧告することが相当であると判断した。
なお、この結論は、
委員会の全会一致ではなく、杉本悦子委員においては、今回の一連の行為は、
申立人及び被
申立人が記憶違いや思い込みの下で行われたことにより拡大されたものである。早い段階で、
保健所からどのような要請もしくは指示があったのかを検証しておれば、連日にわたる
事情聴取も部長や副市長をも巻き込んだ大きな問題に発展しなかったものである。今後、双方が事実に基づいて真摯に対応し、意思の疎通を図ることが強く求められることから、辞職を勧告することが相当であるとの結論にはくみしないというものであるので、この点を付記する。
以上で朗読は終わりました。
それでは、
調査報告書、この案について、御意見をお受けしたいと思いますが、何かございますでしょうか。ないですか。
(「はい」の声あり)
それでは、これより討論に入ります。
○(杉本委員)
私は、本報告案に同意することはできません。以下、その理由を述べます。
本
委員会は、市長の
新型コロナウイルスに係る
緊急対策遂行中における貴
市議会特定会派・議員における
不適切活動についての申立についてを受け、本市議会として事実関係を明らかにするために調査を行うこととしたものです。
まず、最初に申し上げておきたいのは、報告書原案作成の助言を受けた弁護士さんは、議員辞職勧告までは言えないと述べられていましたが、最初のたたき台には、辞職を勧告することが妥当であると考えられるとの文言が書かれてありました。私は、9月24日の懇談会で、なぜこの文言が入ったのかと質問しました。弁護士さんは、
委員長から辞職勧告の文言を入れてほしいと電話があったと答えられました。
委員長は、1人は反対だが辞職勧告は妥当だとの意見があったので入れてほしいと電話したとの説明がありました。少なくとも私は
委員長からそのことについての意向を尋ねられたことはありません。全員が参加した懇談会の発言と異なる報告案が作成されたことについて、非常な憤りを禁じ得ません。厳しく抗議するものです。
さて、申立書には、①
市職員を長時間拘束し、
行政事務を妨害した。②執拗に
感染者を特定しようとしたとされること。③権限を逸脱した
自宅待機命令をしたとされること。④再三にわたる
謝罪要求を行ったとされることなどが
問題点として提起されています。それぞれの点については、前回の懇談会で詳細に申し上げましたので、ここでは繰り返すことはしませんが、このうち
市職員を長時間拘束し、
行政事務を妨害したことについては、刑法で言うところの公務執行妨害罪に相当し、小項目での
心理的圧迫を与える
聴取態様であったとされることはハラスメントに該当するとされていますが、脅迫、侮辱、名誉毀損などの刑法に相当するものです。ここではっきりしておかなければならないのは、証拠によって事実を認識しなければならないということです。証人の証言が相対立した場合は、憶測や推論ではなく証拠によって事実を明らかにすることができない場合、疑わしきは被告人の利益にという刑法の大原則を適用しなければならないということです。さらに言えば、被
申立人は維新市議団ではなく、土江俊幸議員、坂元正幸議員、梅村正明議員、嶋田英史議員という独立した個人なのです。
したがって、当然一人一人について、どの被
申立人がどの職員をどれだけの時間、拘束したのか、どのようなハラスメント行為を行ったのか、権限を逸脱した
自宅待機命令を出したのは誰なのか、どのようにして謝罪を要求したのかなどを具体的に一人一人立証しなければならないものです。
ところが、この報告書は、被
申立人あるいは被
申立人らと一くくりにして述べています。被
申立人、一人一人がそれぞれの事案に対して、ある部分では実行行為を分担しなかったりして、関与の強弱があるにもかかわらず、一蓮託生と言わんばかりに結論として全員に議員の辞職を勧告することが相当であると判断したと、市民から選出された議員に対して、議員として失格だと決めつけ、死刑にも等しい罰を与えようとすることはあまりにも乱暴です。前回懇談会でも申し上げましたように、早い段階で
市職員と被
申立人らの間に意思の疎通を図り、お互いが真摯に対応していれば、このように問題が大きく広がることはなかったもので、今後、議会と執行部が節度ある対応と真摯な説明を行っていくように強く求めて、反対討論とします。
以上です。
○(小
鍛冶委員長)
ほかにはございませんか。
○(竹嶋委員)
提出された
調査報告書の内容は、我々が委員として、ここまで調査してきた内容が反映されたものであり、これを今回の特別
委員会の調査報告とすることに賛成いたします。
なお、被
申立人に今回の行為を全く反省する気持ちがなく、以後の市政運営の大きな妨げになりかねないことから、被
申立人には早急な処分が必要であるということを付言して、賛成討論といたします。
○(小
鍛冶委員長)
ほかにはございませんか。
(「なし」の声あり)
では、ないようですので、討論を終結をいたします。
これより
調査報告書案を採決いたします。本案を原案のとおり可決すべきものと決することに賛成の方は挙手を願います。
(賛成者挙手)
賛成多数であります。よって、
調査報告書案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
杉本委員に申し上げます。少数意見の留保はされますか。
○(杉本委員)
いたしません。
○(小
鍛冶委員長)
それでは、ただいま御決定をいただきました本
委員会の
調査報告書案について、議長に提出をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
また、9月30日の本会議において、私から
委員長報告をさせていただきたいと思いますが、
委員長報告の作成については、正副
委員長に御一任願いたいと思いますので、よろしく御了承お願いいたします。
次に、記録の返還についてでございます。地方自治法第100条第1項に基づき、関係者から提出を求めた記録については、調査が終了しましたので、提出者に返還したいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
(「はい」の声あり)
それでは、そのように決定させていただきます。各委員に配付させていただいております記録の写しにつきましては、
委員会終了後、事務局が回収いたしますので、よろしくお願いいたします。
本日の案件は以上であります。
署名委員は水原委員にお願いをいたします。
委員の皆様方には、長時間、また長期間にわたる調査、誠に御苦労さまでございました。本
委員会におきましては、これをもって終了いたしますが、委員皆様方には何かと
委員会運営に御協力をいただき、感謝を申し上げまして、
委員会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。
それでは、本日の
委員会を閉会させていただきます。御苦労さまでございました。
(午前10時57分閉会)...