その中で県からは、民間企業の誘致、消費者との交流を創出する拠点化、最先端農業技術の実証や研修機能、安城農林高等学校とのコラボレーションなどのアイデアを示してきた。
安城市からは新しい循環型社会のモデル的な取組、市民が参加できる開放型のイノベーション創出拠点などの構想を聞いている。また、JAあいち中央からは、地域の農業振興につながるよう活用したいと聞いている。安城市は、来年度中に種鶏場跡地の具体的な活用方法を取りまとめたいとの意向があるため、県としてもしっかりと支援する。
5: 【
今井隆喜委員】
かつて安城市は日本のデンマークと言われた地域で、安城農林高等学校は全国から注目される学校だったと聞いている。昨年、創立120周年を迎え、農業の歴史が地域に引き継がれている。昭和40年代までは名古屋大学の農学部も近くに立地しており、日本の農業の中枢と言っても過言ではない地域だったと感じている。
今後の未来型の農業を考えていく上では、この地域で高校と大学が連携して高大連携に取り組んでいけるとよい。今の日本の農業で重要なことは、将来農業をやりたい子供や若者がたくさん出てくる教育となるように力を入れていくことである。実際に安城農林高等学校の昨年度の卒業生は、約半分が就職し、就職した生徒のうち6割から7割が製造業に就職している状況であり、こうしたところに県がしっかりと力を入れていくことが重要である。安城農林高等学校で学んだ生徒が大学に進学しても研究を続け、日本の農業の将来を担っていける仕組みづくりを地域でつくっていければ、それが発展してイノベーションにつながり、新たな農業が生まれていくと思うので、そうした観点で安城市の周辺地域一体での取組を検討するよう要望する。
6: 《一般質問》
【
日高 章委員】
有機農業を推進するために生産技術の安定が特に重要になると考えるが、昨年6月定例議会の本委員会で、化学肥料の高騰対策について質問したところ、中長期的な対策として、農業総合試験場等において、有機農業の研究開発を進めるとの答弁があった。その後、研究開発を進めてきた中で、どのような研究が進められ、成果が上がっているのか。
7: 【
農業経営課長】
本県では、有機農業を環境と安全に配慮した農業の特徴的な取組の一つに位置づけて推進しており、農業総合試験場で化学肥料や化学合成農薬を減らす技術の開発研究に取り組んできた。
具体的には化学肥料を減らす技術として、家畜ふん堆肥などを利用した有機質肥料の窒素成分の効き方を予測する技術、キャベツ栽培における緑肥を活用して化学肥料を削減する技術などの開発に取り組んできた。
また、化学合成農薬を減らす技術としては、天敵昆虫や水圧などを利用して化学合成農薬に頼らずに害虫を防除する技術、AIによる画像識別及びDNAレベルで迅速に病害虫を診断する技術の開発にも取り組んできた。
また、縞葉枯病や穂いもちに強い稲のあいちのかおりSBL、縞萎縮病に強い小麦のきぬあかりなど、病害虫に抵抗性を持つ品種をこれまでに24品種開発してきた。
8: 【
日高 章委員】
研究成果の実用化が進むとよいが、生産者が栽培方法を変えるのは難しいと聞いている。
そうした中で、県内でも有機農業に取り組んでいる事例が増えてきている。大府市でも女性が十数人でチームを組み、一昨年から有機農業で連作を始めている。
その人に話を聞くと、肥料としては兵庫県の肥料メーカーが作っている魚粉を発酵させて作った、こつぶっこという肥料を使っているだけで、一般的な化学肥料よりも単価は安く、女性でも簡単にお米が完全に無農薬かつ無化学肥料で作れたようである。
大府市では本年度、そのお米を社会実験的に保育園の給食で提供しており、取組の参考にしてもらいたい。
次に、2021年5月に策定されたみどりの食料システム戦略について、国は耕作面積に占める有機農業の取組面積を現在の2.4万ヘクタールから、2030年度の目標では6.3万ヘクタールに大幅に増加させるとしている。最新の本県の耕作面積に占める有機農業の取組面積は356ヘクタールとなっており、耕作面積全体に占める割合は0.49パーセントと少ない状況である。これまでの愛知県有機農業推進計画は、有機農業の取組面積を目標としていなかったが、本年1月に改正した愛知県有機農業推進計画は、なぜ有機農業の取組面積を目標に設定しているのか。
9: 【
農業経営課長】
本年1月に改正した愛知県有機農業推進計画においては、有機農業の推進の目標として、有機農業に取り組む面積を2030年に900ヘクタールに増やす目標を設定した。この目標は国のみどりの食料システム戦略との整合性を取りながら設定したもので、本県の現在の有機農業取組面積356ヘクタールの約2.5倍に相当する。
10: 【
日高 章委員】
面積が大幅に拡大することになるが、今後どのように有機農業を推進して耕作面積拡大をしていくのか。具体的な手法を伺う。
11: 【
農業経営課長】
今後の有機農業の推進については、栽培技術の開発普及、有機農業者の定着支援、消費者等の理解促進、モデル産地の育成及び推進体制の整備の五つに重点を置いて進めていく。
具体的には、栽培技術の開発普及としては、あいち農業イノベーションプロジェクトなどにより有機農業に活用できる新技術、新品種の開発と社会実装を進めるとともに、除草作業の省力化などに活用できるスマート農業の普及に取り組んでいく。
有機農業者の定着支援としては、有機農業を目指す新規就農者がしっかりと定着できるよう、県の農起業支援ステーションと有機農業者の組織とが連携して、研修先を紹介するなどのサポートを実施する。
消費者等の理解促進としては、有機栽培の農産物の販売拠点マップづくりに取り組むとともに、新たな需要の開発や販売方法の多様化を進める。
モデル産地の育成としては、東郷町と南知多町が本年度から取り組んでいる有機農業産地づくりの取組を進めるとともに、他の市町村にも広めていく。
推進体制の整備としては、愛知県環境と安全に配慮した農業推進協議会の中に、新たに大学教授などの有識者を構成員に加えた有機農業推進部会を設けて、本県の有機農業の推進方策などを検討する。
これらの取組を総合的に推進することにより、有機農業の取組面積の拡大に努めていく。
12: 【
日高 章委員】
農家から有機農業に必要な肥料を安定して調達するための情報をなかなか知ることができないと聞く。このような情報の提供を含め、供給体制をどのように確立していくのか。
13: 【
畜産振興監】
一番多く使われているものが家畜ふん堆肥であり、有機農業の推進には家畜ふん堆肥の利用が肝要である。
県では有機農業に取り組む農家が家畜ふん堆肥を入手しやすいように、愛知県家畜ふん堆肥マップを作成して、県のホームページに掲載している。
愛知県家畜ふん堆肥マップは、県内の家畜ふん堆肥を供給する52の農場、それから堆肥センターについて、受け渡しの場所や住所、電話番号、堆肥の荷姿、価格といった情報のほか、利用者がニーズに合わせて
選択できるよう水分率、窒素、リン、カリ等の肥料成分の量、もみ殻やおが粉といった使用している副資材の情報を掲載している。
県としては、今後も引き続き愛知県家畜ふん堆肥マップの周知を図り、有機農業の推進に役立てたい。
14: 【
日高 章委員】
生産者の経営が安定していくことが第一であり、そのためには農家が生産した有機農産物が適正に取引されることが必要である。有機農産物のマーケットを拡大するには、地道に啓発を行って消費者の考え方を徐々に変えていく必要があるが、劇的な変化は期待できない。そこで、公共調達で買い上げることが重要になると考える。学校給食の食材として、有機農産物を使ってもらうよう、市町村の教育委員会に積極的に働きかけることが重要になる。
働きかけるだけでは、仕入価格が高くなる部分を誰が負担するのかという話になるので、実施する市町村に対して農業水産局からの支援をお願いしたい。
また、農家が有機農業への移行にためらう大きな理由は、有機農業は始めてからJAS認証に必要な土壌になるために数年かかり、その間はJAS認証されないためである。有機農業を始めて3年後に認証されると聞くが、その移行期間にJASマークをつけて販売できないと価格面で一般の農産物と差をつけて売ることができない。移行期間の3年間、有機農業に移行していく農家に対する支援をお願いする。
15: 【竹上
裕子委員】
昨年12月に豊橋市で発生した鳥インフルエンザについて伺う。
本年1月6日に移動制限が解除となってから、約2か月が経過したが、2農場の経営再開状況はどうか。
16: 【
家畜防疫対策室長】
昨年12月5日に発生した1例目の採卵鶏農場は、国の防疫指針に基づき、家禽舎等の消毒及び実験的に導入した家禽のウイルス検査等で陰性が確認できたことから、本年2月13日から同一経営の育成農場で育成された親鳥、約4万3,000羽を数日間にかけて導入しており、経営は既に再開している。それに伴い、鶏卵の出荷も少しずつ始まっている。
通常、採卵鶏経営においては、月齢の異なる鶏の群れを数ロット飼育することにより、年間を通じて生産量を平準化している。
したがって、今後は1か月から2か月間隔で、計画的に約4万羽強の親鳥を導入して、本年12月には発生前の約33万羽の規模に戻る見込みである。
また、昨年12月8日に発生した2例目のアイガモ農場は、昨年12月22日に別の場所で農場を開業し、アイガモ約3,000羽が飼育されており、出荷が始まっている。
17: 【竹上
裕子委員】
次に、昨年12月補正予算で計上された発生農場及び卵や鶏肉等の出荷を制限された周辺農場等への支援策の進捗状況はどうか。
18: 【
家畜防疫対策室長】
発生農場への支援は、現在、家畜防疫員が殺処分した家禽等の補償に相当する手当金を精査しているところであり、今月中には発生農場から国への手当金の申請書を提出し、その後手当金が発生農場へ交付される見込みである。
また、移動制限等により家禽の出荷制限を受けた周辺農場は、現在、東三河農林水産事務所の職員を中心とする調査員が影響額を調査している。
その調査の結果、鶏卵についてはほぼ影響がなかった。しかし、鶏肉として出荷されるはずだった名古屋コーチンやブロイラーが通常どおりに出荷できずに処分、あるいは出荷延期により、えさ代のかかり増し経費がかかったため、七つの家禽農家に対して、影響額に相当する金額を農家経営支援費補助金として交付する予定である。
さらに、防疫活動により被害を受けた二つのキャベツ農家についても影響額を調査し、影響額に相当する金額を農家経営支援費補助金として交付する予定である。
19: 【竹上
裕子委員】
来年度予算について、発生農場等に対する支援策はどうなっているのか。また、発生を予防するための農場対策の支援はどうか。
20: 【
家畜防疫対策室長】
来年度予算における発生農場に対する支援は、高病原性鳥インフルエンザ緊急対策資金貸付金利子補給補助金等を予算措置している。
また、発生を予防するための農場対策は、新たに鶏舎等を整備する農場を対象とした家畜飼養衛生管理強化対策費補助金を計上し、飼養衛生管理基準を遵守するために必要な野生動物侵入防止柵や防鳥ネットの設置に対して支援する。
なお、既存の鶏舎等については、こうした支援策を活用し、既に2021年9月までに本基準が遵守されている。
21: 【竹上
裕子委員】
被害を受けた農場において卵の生産量が減少しており、以前の生産量に回復するには約1年かかる。その間に農場経営者は経営を維持し、従業員の雇用を守る必要がある。現在、飼料、光熱費の値上げが進んでおり、経営の維持は大変な時期であるため、支援をお願いしたい。
22: 【
今井隆喜委員】
明治13年の通水開始から碧海台地を潤し続けてきた明治用水の流れが昨年5月に突然止まった。田植シーズン真っただ中であり、1週間もしないうちに田んぼはひび割れ、さきに植えた苗はしおれ始め、これから植える苗は苗箱の中でどんどん伸びていく。当時の農家の心境をおもんぱかると、相当の衝撃であったと考える。
未曽有の事態であったが、本県では補助制度の創設や人的な支援など、国を始めとした関係機関と一丸となって対応したことで、実りの秋を迎えることができたことに感謝する。
また、漏水事故への対応について、昨年12月定例議会の代表質問において、知事から本復旧工事を確実かつ速やかに進めるため、国、県及び地元が連携して取り組む旨の答弁があったことも心強く感じている。
そこで、現在、国が行っている復旧対策の状況について伺う。
23: 【農地計画課長】
復旧対策の状況は、現在、復旧対策の施工スペースを確保するために、明治用水頭首工左岸側の上下流を仮設矢板などで囲っている。
上流側では止水を強化するための矢板を打設しており、矢板を岩盤に50センチメートル程度食い込ませることで、より確実に止水することができるようになる。また、パイピングにより、上流エプロン部が崩壊した最も左岸側の堰柱周辺については、空洞拡大防止及び堰柱保護のため、昨年、仮設矢板で囲い、コンクリートで蓋がされた状態である。この部分は上下流の止水対策が施される来年度以降に復旧対策がされ、今期工事では、水位を確保するための仮設構造物の再設置が行われる。
一方、下流側はパイピングにより下流エプロンの下が空洞になった部分の撤去、復旧を今期工事で完了するように進められ、併せて対策工法を検討するために必要な調査などが行われている。本年2月28日と3月1日に、明治用水頭首工復旧対策検討委員会の委員が漏水箇所の現地調査を行い、委員長から、堰本体には問題となる変状は確認されなかったとの
発言があった。
こうした現地調査の結果などを踏まえ、明日3月14日に第5回復旧対策検討委員会が開催され、漏水発生のメカニズムと原因の分析、本復旧に係る対策工法の検討が行われるため、この状況を注視していく。
24: 【
今井隆喜委員】
本格復旧までには数年かかるため、農家から本年の用水は大丈夫なのかと心配する声がある。1か月後には取水が始まるが、本年のかんがい期における用水確保の見込みはどうか。
25: 【農地計画課長】
本年のかんがい用水の見込みは、現在、上流側に設置した仮設矢板により水位が維持されており、4月及び5月に必要な用水は確保することができる。
しかし、6月から10月までは、河川の水量が増える出水期であるため、河川内を締め切ることができなくなる。上下流の仮設矢板は撤去することになるが、この間は昨年と同様に左岸上流部に堰柱を保護する大型土のうなどの仮設構造物を再設置して、これにより水位を上げて取水することになる。
国からは、仮設構造物に頼ることとなるものの、今期工事で対策が進んでいることから、水位は昨年のかんがい期に比べて高くできるようになるため、本年のかんがい期は自然取水により、必要な用水量を確保できると聞いている。
県としては引き続き、国や地元関係者と連携し、復旧対策が迅速かつ的確に進むよう協力するととともに、工事期間中においても必要な用水量が確保されるようしっかりと対応する。
26: 【
今井隆喜委員】
今回の明治用水頭首工での事故に限らず、基幹的な農業水利施設の機能不全に起因する事故は各地で発生している。基幹的な農業水利施設は営農活動を支える主軸であり、事故が起これば影響は計り知れない。万が一、事故により機能が損なわれた際に、影響を軽減するための代替施設、例えば、他の用水との相互利用を可能にする緊急連絡水路などの整備が必要であると考える。
広域かつ甚大な影響を与えることを踏まえると、今後の施設整備に当たっては、地震や豪雨といった対策に捉われることなく、将来にわたり施設の機能が十分に発揮できるよう、防災減災対策を踏まえた総合的な整備を実施していくことが望まれる。
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