愛知県議会 2023-02-01
令和5年2月定例会(第4号) 本文
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ウィンドウで開きます) 令和5年2月定例会(第4号) 本文 2023-03-06 文書・発言の移動 文書 前へ 次へ 発言 前へ 次へ
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発言者一覧 選択 1 : ◯副議長(
佐藤一志君) 選択 2 : ◯副議長(
佐藤一志君) 選択 3 : ◯二十二番(
村瀬正臣君) 選択 4 : ◯教育長(飯田靖君) 選択 5 :
◯建設局長(道浦真君) 選択 6 :
◯建築局長(成田清康君) 選択 7 : ◯知事(
大村秀章君) 選択 8 : ◯二十二番(
村瀬正臣君) 選択 9 : ◯副議長(
佐藤一志君) 選択 10 : ◯五十五番(西久保ながし君) 選択 11 :
◯労働局長(日高啓視君) 選択 12 :
◯県民文化局長(伊藤正樹君) 選択 13 :
◯建設局長(道浦真君) 選択 14 :
◯警察本部長(鎌田徹郎君) 選択 15 : ◯知事(
大村秀章君) 選択 16 : ◯五十五番(西久保ながし君) 選択 17 : ◯副議長(
佐藤一志君) 選択 18 : ◯四十三番(成田修君) 選択 19 :
◯経済産業局長(
矢野剛史君) 選択 20 :
◯観光コンベンション局長(武田光弘君) 選択 21 :
◯経済産業局長(
矢野剛史君) 選択 22 : ◯四十一番(山田たかお君) 選択 23 : ◯副議長(
佐藤一志君) 選択 24 : ◯副議長(
佐藤一志君) 選択 25 : ◯議長(須崎かん君) 選択 26 : ◯八番(平松利英君) 選択 27 : ◯教育長(飯田靖君) 選択 28 : ◯スポーツ局長(成瀬一浩君) 選択 29 : ◯八番(平松利英君) 選択 30 : ◯議長(須崎かん君) 選択 31 : ◯三十三番(嶋口忠弘君) 選択 32 :
◯建設局長(道浦真君) 選択 33 : ◯都市・交通局長(金田学君) 選択 34 : ◯知事(
大村秀章君) 選択 35 : ◯議長(須崎かん君) 選択 36 : ◯六十一番(近藤裕人君) 選択 37 :
◯県民文化局長(伊藤正樹君) 選択 38 : ◯教育長(飯田靖君) 選択 39 :
◯経済産業局長(
矢野剛史君) 選択 40 : ◯知事(
大村秀章君) 選択 41 : ◯六十一番(近藤裕人君) 選択 42 : ◯四十番(南部文宏君) 選択 43 : ◯議長(須崎かん君) 選択 44 : ◯議長(須崎かん君) 選択 45 : ◯副議長(
佐藤一志君) 選択 46 : ◯六番(杉浦正和君) 選択 47 : ◯農業水産局長(矢野浩二君) 選択 48 :
◯経済産業局長(
矢野剛史君) 選択 49 : ◯知事(
大村秀章君) 選択 50 : ◯副議長(
佐藤一志君) 選択 51 : ◯三十九番(樹神義和君) 選択 52 : ◯防災安全局長(坂田一亮君) 選択 53 :
◯県民文化局長(伊藤正樹君) 選択 54 :
◯経済産業局長(
矢野剛史君) 選択 55 : ◯知事(
大村秀章君) 選択 56 : ◯三十九番(樹神義和君) 選択 57 : ◯四十一番(山田たかお君) 選択 58 : ◯副議長(
佐藤一志君) 選択 59 : ◯副議長(
佐藤一志君) ↑ 発言者の先頭へ 本文 ↓最初のヒットへ (全 0 ヒット) 1: 午前十時開議
◯副議長(
佐藤一志君) おはようございます。
ただいまから会議を開きます。
直ちに議事日程に従い会議を進めます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
日程第一 一般質問
2: ◯副議長(
佐藤一志君) これより一般質問を行います。
通告により質問を許可いたします。
村瀬正臣議員。
〔二十二番
村瀬正臣君登壇〕(拍手)
3: ◯二十二番(
村瀬正臣君) おはようございます。
それでは、通告に従いまして、一般質問を始めます。
一点目、教育現場の諸課題について質問をいたします。
初めに、養護教諭の現状についてお伺いをいたします。
私が小学・中学・高校時代のときは、保健室を利用する児童生徒はそれほど多くなかったですし、私自身も十二年間で保健室を利用したのは数える程度であったと記憶しております。
二〇二三年一月一日、中日新聞に掲載のあったロストチャイルド 第一部 保健室からの記事が五回にわたり掲載をされ、また、一月二十八日には総集編として特集が組まれました。その紙面には、養護教諭一人だけでは限界、子の悩み多様化、自治体が独自に増員と大きく紙面を飾るものでした。
では、養護教諭の仕事とは具体的に何なのか。二〇〇八年の中央教育審議会答申では、その役割として、一、救急処置、健康診断、疫病予防などの保健管理、二、保健教育、三、健康相談活動、四、保健室経営、五、保健組織活動と幅広く、特に三、健康相談活動は、児童生徒の様々な訴えに対して、常に心的な要因や背景に念頭を置いて、心身の観察、問題の背景分析、解決のための支援、関係者との連携など、心や体の両面への対応を行うものとされております。
私はこの質問をするに当たり、小学校一校、高等学校二校の現地調査を行いました。
高等学校では、二校ともに、一日に多いときには二十人ぐらいの多くの生徒の利用があると言われました。また、新型コロナウイルス感染症感染防止のため、生徒、教師の動線の変更の段取りや検温などの業務も増え、コロナ禍であるがゆえの業務の増加、生徒たちの悩みもあり、相談件数も増えたそうです。
また、現代の子供たちはネットやLINEなどを通じて人とつながっており、対面して人と話すコミュニケーション能力が低いと感じられており、なかなか他人に相談できずにいる生徒が多いと養護教諭は言われました。
中には、二人の生徒が同時に早朝より涙を流しながら相談に来室することもあるそうで、一人の養護教諭では対応に困ることもあるそうです。
親が仕事のため、昼、夜の食事を一人で取る生徒もいるとのこと。昼休憩には、特に用事もないのですが、三、四人の同じ生徒が毎日のように保健室を訪れるそうです。
相談やその問題の内容によっては、警察や児童相談所への連絡ややり取りなど、その業務は多岐にわたるそうです。
そのような中、子供たちの問題は多様化し、時間をかけて寄り添わないと解決できない相談も多く、養護教諭の業務が多様化、多忙化し、不足している現状を踏まえ、国の基準である複数配置は、小学校八百五十一人以上、中学校の生徒八百一人以上であるが、愛知県独自基準はどのように運用されているのかお伺いいたします。
私の地元江南市では、小学校では七百人以上、中学校では五百人以上に対して、常勤養護教諭のほか、会計年度任用職員の養護教諭を加配しており、二人体制で対応していると聞いていますが、県として、今後、養護教諭配置に対してどのような対応を考えているのかお伺いいたします。
続いて、教員の時間外勤務と業務改善の取組について質問いたします。
二〇二二年九月の二〇二一年度教育に関する事務の点検・評価報告書、あいちの教育ビジョン二〇二五実施状況報告書によりますと、学校における働き方改革と教員の資質向上に、勤務時間外の在校時間の上限一か月四十五時間、年間三百六十時間を超過した割合の報告がありました。二〇二一年度の在校時間の条件を超過した教員の割合は、小学校三四・五%、中学校四六・六%、高等学校一九・二%、特別支援学校が六・〇%であり、特に小中学校での割合が多く、まだまだ、時間外在校等時間の削減に向けて取組はしているものの、あまり効果が現れていない状況であります。
二〇二二年六月九日の中日新聞紙面に、「先生が足りない 行事や業務 負担見直し こつこつ改革 残業減らす」の掲載がありました。
この記事は、地元江南市立布袋小学校の取組の特集でありました。以前は何人もの教員が月八十時間を超える残業をされていたそうですが、その状況に危機感を持ち、働き方改革を進められ、三年かけて進めた負担軽減策により、二〇二一年度において残業八十時間超えの教員はゼロになりました。そして、文部科学省が上限としている月四十五時間以上も、延べで僅か五人に減少となりました。
この布袋小学校の早川浩史校長にお話を伺うことができました。
初めに早川校長が話をされたのが、考え方を大きく変えないと目指す学校像は実現できないということで、目指す学校像を、一、児童にとって学びたくなる学校、二、保護者にとって通わせたくなる学校、三、教員にとって勤めたくなる学校とされたそうです。この三つは三位一体であると考え、徹底的に教員が勤めたくなる学校を教員と共につくっていこうと考えたそうです。
教員にとって勤めたくなる学校づくりのポイントは、大変をなくすことであると言われました。その手だてを大変を減らす五つの手だてとして考えられ、一、教員個人が工夫して減らす、二、学校組織全体が一致団結して減らす、三、市町村立学校全体が同一歩調で減らす、四、地域や保護者の理解や支援で減らす、五、行政などと連携をすることで減らす。特に注意されたのが、教育活動本来の目的を忘れず、見栄えや体裁などを気にせずに徹底的に効率化を図られたそうです。
また、教員だけでなく地域住民や保護者で構成する学校運営協議会は、二〇一九年に教員を手伝うボランティア組織を設立、会員の九十三人が行事の受付、年末年始の学校見回りや餌やり、校舎内外の清掃などの活動を手伝い、担っています。
このように改善の取組を進めていくと、教員自ら改善に取り組む提案が多く出されるようになり、そして、各週一回の定時退校日は、管理職の先生からは教員を帰らせる日であり、先生方からすれば管理職に帰らされる日という考え方から脱却するために、定時退校日を二年前から廃止されたそうです。
教員の大変を減らす取組の成果もあって、教員の負担は軽減され、教員本来の仕事に集中ができていることになります。その大きな成果として、教員と児童の触れ合う時間が多く取られるようになって、児童が楽しく勉強する、学校を好きになる児童の割合が増えたことで、不登校児童の大幅な減少へつながっていかれたそうです。
また、来年度より宿題をなくしていき、児童が学びに向かう力の育成をしていきたいとおっしゃってみえました。まだまだ新しいことに取り組まれていくそうです。
そこでお伺いいたします。
愛知県では、民間のコンサルタントを活用して、県立高校において業務改善モデル校を選定し、各教員の勤務実態の分析や業務改善を進めるための取組を実施、検証し、その成果を学校における業務改善ハンドブックとして取りまとめ、各市町村教育委員会に配付されましたが、小中学校における教員の時間外在校等時間の状況はどのように変化しているのかお伺いいたします。
私は、各学校長がリーダーシップを発揮して時間管理や業務改革に取り組むことが、教員の働き方改革だけでなく、児童生徒の楽しい学校への登校意欲にもつながっていくと考えますが、学校の業務改善を進めるため、学校経営の長である校長の改善意識を高めるよう、どのような取組をしているのか、今後どのような取組を行っていくのかお伺いいたします。
続いて、通学路の安全対策についてお伺いいたします。
県が管理する横断歩道橋の維持修繕の取組状況と今後の進め方についてお伺いをいたします。
横断歩道橋は、交通量の多い道路を歩行者が安全に渡る上で、極めて、極めて重要な施設であります。
私の地元江南市にある横断歩道橋ですが、小学校の通学路にもなっており、建設から五十五年が経過し、欄干の塗装が剥がれ落ち、老朽化の進行が見受けられました。このまま放置すれば、塗装だけでなく、横断歩道橋本体の修繕や更新の必要を生じ、維持管理費が増大していくことが懸念されることはもちろんのこと、通学路として横断歩道橋を渡る子供たちも非常に危険であります。
また、私もその横断歩道橋を渡ってまいりましたが、足元の欄干の隙間から容易に下の道路が見え、渡ることに対しての不安を覚えました。通学路として利用する児童も同じような不安を抱えていると保護者の方から聞いたことがあります。
欄干の隙間に、最近の横断歩道橋でよく見られる足元を隠す板、すなわち裾隠し板が設置してあれば、本来の設置目的に加え、渡る際の不安も解消されるのではないかと考えます。
横断歩道橋の維持管理において、その機能に支障が生じないよう構造の安全性を確保していくことは最優先の課題でありますが、今後は利用者の目線に立ち、通学路で使用する生徒児童にとってもより安全・安心な歩行空間を確保していくことも重要と考えます。
そこで、県が管理する横断歩道橋の維持修繕の取組状況と今後の進め方についてお伺いをいたします。
続いて、市街化調整区域内の空き家対策と開発基準の見直しについて質問をいたします。
近年、人口減少や既存住宅の老朽化などに伴い、空き家が年々増加しています。総務省が実施する住宅・土地統計調査によると、二〇一八年十月一日時点における全国の空き家の総数は八百四十九万戸であり、賃貸用の住宅及び売却用の住宅、別荘等の二次的住宅を除くその他の住宅に属する空き家の総数は三百四十九万戸で約四一%となり、この二十年間で約一・九倍に増加している状況です。
二〇一五年には、空家等対策の推進に関する特別措置法──以下、空家法と言います──が施行されています。空家法では、空き家の管理責任は所有者にあることを原則としつつも、空き家対策に取り組む行政の主体を市町村と定めています。
そして、空き家対策に取り組むための空家等対策計画も策定されるも、空き家の増加の状況から鑑みれば、様々な対策は講じているとは思いますが、まだまだ多くの課題があると思います。
本県からすると、空き家問題は、原則は市町村の問題という考え方があるかもしれませんが、市町村には専門的な職員の不足やノウハウがないことからも大変苦戦している状況であることを踏まえ、県として空き家対策の現状と実績はどのような状況なのか、また、市町村に対して、今後の空き家対策をどのように支援していくのかお伺いをいたします。
次に、今後も増加すると予想される一戸建ての空き家です。
市街化区域に建てられた戸建て住宅は、不動産管理会社を通じ、売却や賃貸用の住宅として活用が可能となりますが、特に市街化調整区域──以下、調整区域と言います──にある、例えば地元江南市であれば、昭和四十五年十一月二十四日以降に建てられた既存宅地の権利を持たない線引き後の宅地の土地に建築された建物は、都市計画法の運用指針や開発審査基準等に縛られ、利用が永遠に制限されているのが現状でございます。
ここ二十年で増加しているその他の住宅の空き家をどのようにしてなくしていくのか。特に、調整区域の利用制限が多い住宅を空き家になる前にどう活用していくのか。開発基準等の見直しも含めて質問をしていきます。
地元江南市の二〇一六年(平成二十八年度)の江南市空家等実態調査によりますと、市内の空き家分布状況では、調整区域の空き家件数の割合は六二・〇%で、そのうち既存宅地の権利を有しない線引き後の昭和四十六年以降の割合は五〇・三%と、用途変更に制限がかかる空き家が約三〇%となっています。
つまり、これらの空き家を再利用するには、市街化区域の空き家と比べて制限が多くなり、調整区域内の制限が空き家を助長することになっていると思います。
そもそも調整区域とは、都市計画法第七条により定められている区分であり、第七条第三項に市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域とするとあります。
つまり、調整区域は土地開発や建物を建築するという行為に制限があり、自分の土地にもかかわらず、新しい建物を建築する際には厳しい制限がかかる区域となります。
また、二〇〇七年から建築できなくなったとお聞きしましたが、店舗併用住宅であっても、厳しい条件を満たさないと、そのままの状態では自己用の住宅として住むことも都市計画法では違反になるほどの厳しい制限となるそうです。
開発審査基準には、やむを得ない事情の用途変更には、原則として十年以上適正に利用されたという時限的原則があり、十年以上の適正利用がなければ用途変更はできないルールになっています。
それでは、建物の建て替え、売買の視点からお伺いをいたします。
例を挙げてお聞きいたします。
例えば、一九七五年(昭和五十年)に建築された店舗併用住宅があるとします。建築後の十年間は地域のお菓子屋さんとして店舗と住宅としても利用していましたが、その後、経営に行き詰まり店舗を閉店せざるを得ない状況になりました。
その後、四十年が経過したので、老朽化のため店舗併用住宅を専用住宅に建て替えし、新築しようとしましたが、当時の営業をしていた一九七五年から一九八五年の十年間の営業を証明するものがない場合には、適正に使用された証明がないとのことで、用途変更の専用住宅としての新築の建て替えは許可が下りないとお聞きいたしました。つまり、四十年も前の営業を証明する帳簿や店舗などの写真など証拠書類が必要で、証明ができなければ許可が下りないことになります。
次に、所有者Aが十年間適正に自己の居住用の専用住宅として使用した後に、友人Bに売買をいたしました。その友人Bは、三十年居住した後に、築四十年が経過したので老朽化のため新築に建て替えをしようとしましたが、購入時に所有者の用途変更がされていないとのことで、友人Bには新築の建て替えの許可は下りないとのことです。
参考に、開発基準では、所有者が替わることを所有者の用途変更と言われるそうです。
友人Bが、住宅の売買のときに、都市計画法違反となる所有者の用途変更が必要であると知らない善意の第三者であっても、永久に建て替えや転売の許可は下りないとお聞きしました。当然、許可が下りないので建て替えもできません。転売もできません。その結果、新居を求め、引っ越しを余儀なくされるということも想像ができます。
次に、調整区域内における建物の賃貸借の見直しについてお伺いいたします。
調整区域内にも都市計画法第三十四条第一項で許可されたコンビニエンスストアの店舗はどこにでもあると思います。過当競争が厳しいこの業界で何十年にもわたって経営を維持していくことは並大抵ではないと思いますが、経営に行き詰まり閉店を余儀なくされた際に、例えば新たに美容院として建物を使用したい場合は、美容院の経営者がその建物の所有者になる前提でないと許可が下りないとのことで、賃貸による建物では美容院の経営はできないこととなります。
そこでお伺いいたします。
初めに、前段の店舗併用住宅の事例も、閉店後に四十年以上も居住して使用していたならば、新築の建て替えは私は許可するべきだと考えますし、後段の友人Bが自己の居住用として原則の十年以上使用していたならば、相当期間、適正に利用された十年と判断するなどして建て替えや転売の許可をするなど、緩和措置を新規適用していく開発基準等の見直しも検討するべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。
また、時限的原則として十年以上適正に利用された店舗等については、賃貸などを可能とするような緩和措置があってもよいのではないかと思います。
今後、高齢化が進む地域では、クリニックや社会福祉施設が地域にとって身近に必要な施設になることからも、賃貸としての建物の有効活用には柔軟な対応が必要であると考えますが、御所見をお伺いいたします。
私は、民法にも消滅時効というものがあるように、この建築許可の分野にも、消滅時効とは言わないまでも、使用年数に応じた一部を救済する措置を開発基準に追加する方針はあってもいいと思います。
最後に、市町村の職員は県の基準に従っているので、県の職員は国の基準に従っているのでと言われます。これらの開発基準等は国が定めるものなのか、本県が定めるものなのか、また、本県独自の開発基準等は定めることができないのかお伺いいたします。
以上で壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
4: ◯教育長(飯田靖君) 教育現場の諸課題のうち、初めに、小中学校における養護教諭の配置についてお答えをいたします。
養護教諭の配置につきましては、国の基準に沿って、小学校は児童数八百五十一人以上、中学校は生徒数八百一人以上在籍する場合に複数配置をすることを基本としております。
こうした中、児童生徒数の減少により国の基準を下回る場合であっても、子供たちへのきめ細かな対応や一貫した指導体制が維持、継続ができるよう本県独自に、減少幅が二十人以内であれば、二年間を上限として複数配置を継続するという緩和措置を行ってまいりました。
しかしながら、養護教諭の配置につきましては学校現場からの要望が強く、二〇二二年度、今年度からでございますけれども、減少幅が五十人以内であれば、複数配置を維持できるよう拡充をしたところでございます。
こうした本県独自の基準によりまして、今年度は小学校で五人、中学校で二人、合わせて七人を国の基準を上回って配置しているところでございます。
次に、今後の対応についてでございます。
学校現場では、生活習慣の乱れやアレルギー疾患の増加、虐待や貧困など、子供たちの健康課題は多岐にわたっております。さらに新型コロナウイルス感染症により、子供たちの心身の健康管理はもとより、学校の衛生管理や手洗い指導など、保健教育を担当する養護教諭の業務は、これまで以上に増大をしていると認識しております。
また、小中学校における養護教諭の複数配置につきましては、他県からもその充実を求める声を聞いておりまして、本県だけでなく全国共通の課題でありますので、国における制度改善が必要であると考えております。
これまでも国に対して、養護教諭の複数配置の拡大について、特段の措置が講じられるよう要請をしているところでありますけれども、引き続き他県とも連携を図りながら、国に粘り強く求めてまいります。
次に、小中学校における教員の時間外在校等時間の状況についてお答えをいたします。
小中学校の教員の時間外在校等時間につきましては、服務監督を行う市町村の教育委員会が管理をしているところでございますが、県全体で小中学校の教員の働き方改革を進めていく必要があることから、状況調査を実施しております。
健康障害のリスクが高いとされる月八十時間を超える教員の割合は、五年前の二〇一七年十一月時点では、小学校は九・六%、中学校は三二・九%でしたけれども、二〇二二年十一月時点では、小学校は三・一%、中学校は一四・三%で、この五年で半分以下まで減少をしてきているところでございます。
一方で、健康障害のリスクが徐々に高まるとされる月四十五時間を超える教員の割合は、二〇二二年四月から十一月の平均で、小学校では三六・〇%、中学校は五〇・一%でございました。二〇二一年度と比較をいたしますと、小学校は一・九ポイント、中学校は〇・三ポイント減少と大きな変化がないことから、時間外在校等時間の縮減に向けて早急な対策が必要だと認識をしております。
次に、学校の業務改善を進めるため、校長の改善意識を高める取組についてお答えをいたします。
業務改善を進め、時間外在校等時間を縮減させるためには、教員が本来やるべき業務と外部に任せることができる業務を区分けし、外部人材を積極的に活用するほか、市町村の教育委員会、校長、教員が業務改善の目的を共有し、改善に向けた取組を積み重ねていくことが重要でございます。とりわけ業務改善の鍵となるのは、学校運営の責任者である校長が改善意識をしっかりと持ってリーダーシップを発揮していくことでございます。
そこで、毎年度、学校における業務改善ハンドブックに加えまして、全市町村を対象とした業務改善アンケート調査の中から効果的な事例を取り出して、校長や市町村の教育長に紹介をし、積極的な取組を促しているところでございます。
来年度は、そうした事例の中から特に効果の高い取組につきまして、県の担当者が直接学校を訪問して、その要因をヒアリング、分析をして、改善のポイントを分かりやすくまとめた事例集を作成いたしまして、全ての学校で効果的な取組が行われるよう働きかけてまいります。
さらに、時間外在校等時間が月四十五時間を超えている教員の割合が高い学校に市町村と県の教育委員会が直接訪問をし、状況分析や改善に向けたアドバイスをするなど、積極的に校長の意識改革を促す取組を新たに実施してまいります。
これらの取組により、校長の改善意識を一層高めていくことで、全ての学校が業務改善の実効性を高め、教員が本来業務に専念をし、子供たちと向き合う時間を確保し、子供たちが生き生きと学校生活を送ることができるようにしてまいります。
5:
◯建設局長(道浦真君) 横断歩道橋の維持修繕の取組状況についてであります。
本県が管理する横断歩道橋は四百十六橋あり、五年に一回の法定点検において、構造上重要な桁や柱の腐食などの損傷を確認するとともに、年一回の歩道点検では、舗装や欄干など、利用者の安全性に関わる損傷を確認しております。
点検の結果は、健全な状態の区分Iから機能に支障が生じ通行止め等を伴う緊急措置段階の区分IVまでの四段階で評価しており、これまでの点検で区分IVと判定された歩道橋はありません。
現在は、速やかな修繕が必要となる早期措置段階の区分IIIの修繕を集中的に進めており、二〇一四年度から二〇一八年度の五年間で実施した一巡目点検で確認された区分IIIの三十七橋については全て修繕が完了しております。
また、二〇一九年度から二巡目点検に着手し、昨年度末までの三年間で三百九十四橋を点検した結果、区分IIIが六十六橋確認され、これらについては、速やかに設計に着手し、次回点検までに修繕が完了するよう取り組んでおります。
修繕に当たっては、腐食箇所の修復や耐久性の高い塗装への塗り替えなどを実施し、長寿命化を図るとともに、老朽化した舗装については、滑りにくい樹脂系舗装への打ち換えに取り組んでおります。
さらに、議員お示しの裾隠し板については、歩道橋本体の修繕に併せての設置に加え、今後は利用者の視覚的な不安の解消のため、幅員の狭い歩道橋から優先的に設置することで、安心して御利用いただけるように取り組んでまいります。
6:
◯建築局長(成田清康君) 市街化調整区域内の空き家対策と開発基準の見直しについてのうち、まず、本県の空き家対策の現状と実績についてでございます。
本県では、二〇一五年に施行された空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく取組として、法施行前の二〇一二年度から市町村空き家対策担当者連絡会議を設置し、市町村間相互の連絡調整を図るとともに、法律や不動産、建築などの専門家に参加いただき、参考となる事例や専門的立場からの見解を御紹介いただくなど、情報提供に努めてまいりました。
また、市町村担当者の参考となるよう、二〇一四年度には空き家相談マニュアル、二〇一六年度には空き家バンクの物件登録等に関するガイドライン、さらには、二〇一七年度には空家等対策計画の作成に関するガイドラインを取りまとめたほか、市町村における空家等対策計画の策定に当たっては、職員が出向いて技術的な助言を行うなど、様々な支援を行ってまいりました。
加えて、二〇一七年度には愛知県空家等対策推進事業費補助金制度を創設し、空き家などの除却や改修に要する費用の一部を市町村に補助する財政上の支援を行っております。
こうした取組の結果、空家等対策計画を策定した市町村は四十六、民間事業者等と連携して進める協議会を設置した市町村が四十二、相談窓口を設置した市町村は五十四、空き家バンクを設置した市町村は四十七、さらに県の補助制度活用実績は昨年度末までの五年間の累計で八百七十五件に達しているところでございます。
市町村に対する今後の支援につきましては、引き続き補助制度の活用による取組を進め、先進的な取組事例等の情報提供、技術的な助言を行うとともに、国に対しても補助制度の拡充や法的な整理が必要なものの改善などの働きかけを行ってまいります。
次に、市街化調整区域の開発基準の見直しについてであります。
議員お示しのとおり、市街化調整区域は都市計画法により市街化を抑制する区域とされ、建築物の建築等においては開発許可等を要することとされております。
また、この開発許可等は、市街化調整区域に建築した建築物を居住者や建築物の用途等、許可の内容どおりに活用することが必要不可欠であることが前提となっております。
したがいまして、御質問いただいたような店舗としての用途で許可がされた場合、その用途が許可の要件となるため、まずは店舗として活用することが前提となります。
また、住宅については、一九九八年に適正利用期間を許可要件として新たに追加いたしましたが、住宅という用途だけではなく、どなたが住むかも含めての適正利用の判断がされることとなります。
いずれにしましても、市街化調整区域の開発許可等におきましては、法の趣旨を踏まえた運用が必要であると認識しております。
続きまして、市街化調整区域内の既存の建築物の賃貸による有効活用についてであります。
開発許可等においては、建築物の用途とその許可の内容どおりの活用が必要不可欠であることが前提となっております。
したがいまして、用途が定まっていない賃貸として活用するのではなく、必要不可欠な用途であることを要件とする改めての許可の手続を経ることが適切であると認識しております。
次に、本県独自の開発基準等を定めることについてであります。
市街化調整区域における開発許可等は、都市計画法に何が許可できるかが決められている制度であります。
また、県が開発許可等の権限を有することから、許可等の具体の運用の詳細を示す開発基準等は、法制定、改正における運用の考え方を示す国の技術的助言を参考に、政令市や中核市を除き、県が定めております。
一方で、県が定める開発基準等は、県が開発許可等を行う市町村においては一律に適用されることから、都市計画法においては、それぞれの市町村やその中の地域、地区の個別の状況に応じてきめ細やかな運用ができるような仕組みが用意されており、市町村からの申出により建築物の用途と区域を県の条例で指定することで開発許可等をすることを可能とするものもございます。
県としては、こうした仕組みを活用するなど、市町村と連携して開発許可等の適正な運用にしっかりと取り組んでまいります。
7: ◯知事(
大村秀章君)
村瀬正臣議員の質問のうち、空き家対策について、私からもお答えいたします。
空き家対策は、空家等対策特別措置法により市町村が主体となって取り組むこととされており、状況は地域、地区により様々であることから、市町村がそれぞれ状況に応じて適切に対応することが求められております。
こうした中で、県は、これまでにも空き家に関する担当者会議を開催して、市町村の現場の声を酌み取り、各種マニュアル等の作成と提供、さらには財政的支援など、空き家対策に取り組む市町村に対して様々な支援をしてまいりました。
さらに、地域活力の維持、向上を図るため、来年度からは地域特性に応じた空き家の利活用について重点的に取り組むこととし、それぞれの市町村における空き家の状況を踏まえながら、開発基準の解釈など県のノウハウを提供することで、きめ細やかな支援に努めてまいります。
市町村、さらには法律や不動産等の各種関係団体等と連携をいたしまして、こうした空き家対策にしっかりと取り組んでまいります。
8: ◯二十二番(
村瀬正臣君) それぞれ答弁をいただきました。ありがとうございました。また、知事からも答弁いただきました。ありがとうございます。
一点、要望させていただきます。
市街化調整区域内の空き家対策と開発基準の見直しについてでございます。
リモートワークなど、新しい働き方や生活様式が進む中で、社会は大きく変化しております。田舎で起業したい、子供たちが生活しやすい環境の中で、新しい生活のスタイルを幅広く受け入れる事務所併用型の住宅などを今後は開発基準等に追加するなど、調整区域内の既存建築物にも時代に即した考え方を適用していただきたいというふうに思います。
また、一月三十日には、総務省より、再び一転して東京圏への流入が活性化し、本県を含む名古屋圏は転出超過が進んでいるとの発表がありました。
いま一度、移住促進の一つの政策として調整区域の既存の建物の規制を緩和する、今、知事からの答弁も御検討いただけるといただきました。空き家になる前に再利用する発想の転換も御検討いただくようにお願い申し上げまして、質問を終わります。
9: ◯副議長(
佐藤一志君) 進行いたします。
西久保ながし議員。
〔五十五番西久保ながし君登壇〕(拍手)
10: ◯五十五番(西久保ながし君) それでは、通告に従いまして、三項目について質問をしてまいります。
初めに、産業人材の育成について伺います。
モノづくりを語る上で欠かせないものにAI、デジタル、ロボットなどの最先端技術があります。こうした最先端技術はモノづくりに欠かせないものですが、最近、少しその最先端技術に頼り過ぎて、モノづくりの本質が薄れていくのではないかと危惧しております。
私もモノづくりに携わった時期がありますので、モノづくりの難しさは体感しています。例えば、一台の車を作り上げるには、最先端技術を使いこなしても、プレス、溶接、組立てなど、約十八時間かかります。さらに、その前段階としても、工場に入るまでには、企画、設計、試作など、三、四年前からスタートしています。これらの過程においては、特に試行錯誤、悪戦苦闘の連続であります。そうした状況においても、最先端技術を使いこなしながら、最後は多くの人の知恵と工夫、そしてチーム力を結集させ、やっと一台の車が完成をいたします。
私が尊敬する先輩でモノづくりを極めた方がよく言われることを少し紹介いたします。
昨今はロボット化が進んでいるから、そのうち人間は要らなくなるんじゃないかなんてことも言われますが、冗談ではありません。物を作っているのは人だし、物を進化させるのも人、この事実は変わりません。ロボットが自ら考え、進化することはできません。人が進化して、道具として使いこなすことが大切です。技能と技術が常にスパイラルアップしながら、もっといい車作りに生かすことこそが大切だと考えていますとおっしゃっていました。私もそのとおりだと思います。
モノづくりは、人づくりであります。何事も深く考え抜き、最先端技術等を道具として使いこなすことができる人づくりが重要だと考えます。
こうした先輩方の教えを請いながら、一人一人が技能、技術を磨き、高め、強固なチーム力を生み出し、我が国屈指のモノづくり愛知を築いてきたのだと思います。
昨年、本県は県政百五十周年を迎えました。知事が言われるように、こうした先人たちのたゆまぬ努力、英知を受け継ぎ、さらなる発展に向けて、引き続き県民の皆様と力を合わせ、将来世代へしっかりつないでいくことが肝要であります。
そのためには、まずはモノづくりへの関心を深めることはもちろん、基本となる技能、技術をしっかり学ぶことが必要であります。
本県では、子供たちを対象にモノづくりを見る、聞く、体験することを通じてモノづくりの楽しさや大切さを学ぶあいち技能プラザ、プログラミングやロボット製作を競うアイチータ杯、技能五輪やアビリンピックに対する興味、関心を喚起することを目的にモノづくり魂浸透事業など、積極的に取り組んでいます。
また、本年十一月には技能五輪全国大会、全国アビリンピックが愛知県で開催されます。技能五輪は、モノづくりのシンボリック的なものであります。モノづくりの魅力、大切さを将来世代へつないでいくためには絶好のイベントでもあります。
先日、自民の石井団長の代表質問答弁で、二四年、二五年の愛知県開催が決定したとのことであり、選手OBとしても大変うれしく思っています。
ぜひ、この際、以前も申し上げましたが、高校野球の聖地甲子園のように、技能五輪の聖地アイチ・スカイ・エキスポと呼ばれるよう、常時開催を目指し御努力願います。
そこで伺います。
先人たちが築いてきたモノづくりの基本、技能、技術の大切さ、伝統などを伝えていくため、技能五輪全国大会の本県開催をどのように活用していくのか伺います。
次に、中小企業のデジタル人材の育成について伺います。
昨年の秋の臨時国会において、岸田首相がリスキリングの支援に今後五年間で一兆円の予算を投じる方針を示しました。
リスキリングとは、様々な解釈があるようですが、リカレント教育のように単なる学び直しではなく、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために必要なスキルを獲得する、あるいは獲得させることであります。
その必要なスキルとは、マーケティングスキル、デザインスキル、マネジメントスキルなど、業種によって様々だと思います。
本日は、リスキリングの中でも近年特に重要となっているデジタル関連のスキルに焦点を当て、中小企業のデジタル人材の育成について伺ってまいります。
現場でのモノづくりをさらに進化させるためには、現場全体のデジタルスキルアップは当然必要ですが、まずは現場を牽引しているチームリーダーがデジタルスキルを身につけることが先決だと考えます。
昨年末、デジタル人材をどのように育成しているのか、地元の中小企業数社で話を伺ってきました。
優れたモノづくり企業として愛知ブランド企業の認定を受けているある企業では、かなり前から既に社内にDXプロジェクトをつくり、積極的に取組を進めていました。
一方で、何からやればよいのか分からない、やらせたいが適切な人材がいないなどの理由から取組が進んでいない企業も多くあり、企業により千差万別でした。
様々な話を伺う中で、大切だと感じたことが三点あります。一点目は、まずは経営者、トップが理解し、主体的に取り組むこと。二点目は、やはり仕事全体が分かるリーダーが積極的にチャレンジ、習得し、社内へ広げること。三点目は、企業が費用面で心配なく取組を進めることができるよう支援を行うことであります。
これらのことは、デジタル人材の育成に限らず、企業が成長、発展していくためには必要不可欠なことではないでしょうか。
先ほども申し上げましたが、モノづくりを進化させていくためには、リーダーがデジタルスキルを身につけ、社内に広げ、それを使いこなしてこそ成果につながります。
そこで伺います。
経営者や現場リーダーなどを対象に研修等を行っているようですが、どのような内容なのか、実績はどのようになっているのか、課題は見えてきたのか、また、次年度に向けて新たな取組は考えているのか伺います。
最後になりますが、本県は日本及び世界のモノづくりを牽引していると言っても過言ではありません。そして、ここまで成長できたのは先人たちのたゆまぬ努力の積み重ねの成果にほかなりません。私たちはそのことをよく知り、将来世代へつないでいく責任があります。
昨年十二月にあいち県民の日条例が制定され、来年度は初めてのあいち県民の日及びあいちウィークを迎えます。県民の注目度が高まるこの機会に、先人たちが築いてこられたモノづくりの歴史を一度顧みることが必要かと思います。
例えば、モノづくりを極めた方たちによるモノづくりの歴史や未来へのメッセージを伝える講演会や、そうした方たちと若者たちが議論を交わす討論会など、インパクトのある、夢が膨らむ、そして将来へつながる企画をぜひ検討してほしいと願います。
そこで伺います。
あいちウィークではどのような取組を考えておられるのか伺います。
次の項目に移りますが、矢作川カーボンニュートラルプロジェクトについて伺います。
この項目については、先日の公明党、木藤団長の代表質問と重なる部分がありますので、少し整理して伺いたいと思います。
矢作川は、西三河地方を北から南に貫流する川で、延長百十八キロメートルに及びます。
矢作川カーボンニュートラルプロジェクトは、その沿川においてカーボンニュートラルの実現を目指すプロジェクトであります。
そして、昨年三月には、具体的な施策案二十八項目から成るプロジェクトの全体像が示されました。私も概要を確認しましたが、様々な観点、視点から独創的で斬新なアイデアが多く、期待感が膨らむものでした。
その一方で、気になる点は、二十八項目の中には施設の設置や大規模な工事が伴うものもあり、完成までに長期間を要したり、莫大な経費がかかるなど、課題も多いのではないかということであります。
そして、何よりCO2排出量の削減との費用対効果を考えたとき、採算性が取れるのか少々危惧いたします。
また、実施に向けては、当然、土地所有者、施設管理者、森林所有者、利水関係者、地域住民等との調整や環境面の配慮といった課題もあると思います。
このように様々な課題はありますが、大きな事業を成し遂げるには、そうした課題を克服していかなければなりません。
そこで伺います。
矢作川カーボンニュートラルプロジェクトの主な課題をどのように捉え、どのような推進体制で進めていかれるのか伺います。
次に、二十八項目の中の一つであります遊水地を利用した太陽光発電施設の設置について、私の地元にも関連しますので具体的に伺いたいと思います。
太陽光発電は、手軽に取り込める再生可能エネルギーであり、今後もまだまだ増えていくと認識をしています。
東京都では、二〇二五年四月から、都内に新築される住宅に太陽光パネルの設置を義務化するための条例が制定をされています。
このように再生可能エネルギーの主役と期待される太陽光発電ですが、一方で課題もたくさんあると思います。最近特に気になるのが、森林を切り開いての太陽光パネルの存在であります。
当たり前の話ですが、森林を伐採すればCO2は吸収されなくなります。森の木は切って、使って、植えて、育てる、それが森林資源の正しい循環利用であります。
また、森林の中にメガソーラーを建設するには、広大なスペースを必要とするため、大規模な森林伐採を伴います。そのため、環境面においても、周辺の生態系への悪影響や自然災害のリスクが高まるなどが懸念されます。さらには、景観への悪影響も心配をされます。
こうしたことから、自治体によっては、太陽光発電施設等の適正な設置と自然環境との調和を図るため、規制をすることを目的とした条例を制定しているところもあります。太陽光発電の拡大に伴い、条例制定の動きは活発となり、年々増えてきています。令和五年一月の時点で、地方自治研究機構の調査では、都道府県条例は六条例、市町村条例は二百十八条例となっています。
こうした流れの中で、今後、太陽光発電施設を新設するには、適正な設置場所を決めなくてはなりません。そういう意味からすると、自然災害や生態系、景観への悪影響の少ない遊水地を利用するというのはよい選択だと思います。
既に、私の地元幸田町では、県の事業として菱池遊水地の整備が進んでおり、令和八年には完成予定となっています。完成しますと面積二十四ヘクタール、ナゴヤドーム五個分の広さとなります。
この広大な土地の平常時の利活用について、幸田町では議論が進んでおり、従来の公園に加え、太陽光発電施設の設置も検討されています。
昨年八月には、町から県に対して、活用方法のほか、整備方法や維持管理、アクセス道路の在り方など、整理すべき課題も多いものの、引き続き検討を進めていくので御指導を願いたい旨の要望がありました。
そのほかにも検討しなければいけないこととして、例えば、遊水地に太陽光発電施設を設置する場合、洪水時に流入する以外は陸地でありますので、陸地と水上、水陸両用の太陽光パネルの設置の検討や、発電した電気を売電するのか、地産地消で地域に還元するのか、また、遊水地完成と同時にスタートできるのかなどなど、検討項目は多いと思います。
先日の知事の答弁では、菱池遊水地において太陽光発電施設の設置を進めていく旨の答弁がありました。今日まで県は幸田町と何度か議論を重ねてきたと聞いています。
そこで伺います。
菱池遊水地を利用した太陽光発電施設の設置について、どのような検討が行われているのか、具体的に伺います。
最後の項目となりますが、AIを活用した交通渋滞対策について伺います。
今、自動車産業は歴史的大変革期を迎え、それをチャンスと捉え、イノベーティブな産業構造への転換を目指し、挑戦をしています。近年ではEV、PHV、FCV等の電動化や自動運転などに全力を注いでいます。
その一方で、信号機など、道路交通の環境整備は少々立ち後れ感があり、県内各地で慢性的な交通渋滞が発生をしています。
本県は、自動車産業をはじめ、日本一のモノづくりの拠点であります。そのモノづくりにとって大切なことの一つに、必要なものを必要なときに必要な分だけ供給する仕組み、ジャストインタイムがあります。これを成し遂げるためにも渋滞対策は必須であります。
また、自動車の保有台数や道路実延長が全国トップクラスにある本県では、渋滞を引き起しやすい環境下でもあります。道路の渋滞対策は、本県産業の物流面の改善だけでなく、地域住民の生活環境の改善、さらには交通安全や脱炭素にもつながる大変重要な取組だと考えます。
これまで本県では、国交省中部地方整備局が中心となり、警察本部や愛知県、トラック協会、バス協会、タクシー協会などを構成員とする愛知県道路交通渋滞対策推進協議会を立ち上げ、渋滞の解消等に全力で取り組んでいただいております。
同協議会から昨年九月に公表された県内の主要渋滞箇所は七百七か所となっています。
この協議会では、主に信号機や交差点改良などを中心に渋滞緩和に努めていただいております。
また、近年では、道路交通の整備だけでなく、VICS等、渋滞情報などをカーナビで把握し、ドライバー自ら渋滞を避ける取組も進んできていますが、渋滞はなかなか減少しないのが実態であります。
現在、日本国内に設置されている多くの信号機では、道路上の車両検知センサーが計測した交通量と渋滞長に基づいて、各交通管制センターから最適な青信号の時間を制御しています。特に渋滞長を計測するためには、道路上に数百メートルごとに車両検知センサーを設置することが必要であり、高い維持管理コストも課題となっています。
私も最近気になってよく交差点付近を見るのですが、超音波式車両感知器や光ビーコン等、かなり多くの車両感知器が設置をされています。
そこで、まず伺います。
本県では、交差点での具体的な交通渋滞対策をどのように行っているのか、警察本部長に伺います。
次に、国内外の取組について少し触れたいと思います。
以前から渋滞対策に関心があった私は、五、六年前に海外の状況をインターネット等で調べたことがあります。そのとき、既に中国の杭州市では、AIを活用したスマートシティ構想を発表し、取組がスタートしていました。当時、杭州市はIT都市として急激な発展を遂げており、人口が約九百二十万人と増大し、中国の中でも渋滞ワーストスリーに入るという最悪な状況でした。
そこで、二〇一七年からAIを用いた都市交通管理システムを導入した結果、渋滞レベルは一年間でワーストスリーから八十七位まで大きく改善したとのことです。同様の取組は、米国・オハイオ州など世界各国で行われています。
五、六年前、この話題を取り上げようとしましたが、残念ながら当時は時期尚早、議論の俎上にのせることはできませんでした。
しかしながら、現在では国内でもAIを活用した信号制御の実証実験を行っているところがあります。その一つに、国立研究開発法人NEDOと、新交通管理システムに関する調査、研究及び開発を行っているUTMS協会が中心となり進めている実証実験がありますが、今回、NEDOを訪問し、話を伺ってまいりました。
まず一つ目の実証実験は、先ほども申し上げましたが、現状の方式では車両検知センサーが数多く必要となり、渋滞に加え、高い維持管理コストが課題となっています。
こうした課題を解決するために、岡山県警の協力の下、岡山県警交通管制センターに導入したAIで推定した渋滞長を活用する信号制御と、従来の車両検知センサーの計測結果を活用する信号制御とを比較した結果、同等の性能であることが実証できたということであります。
この実証実験の結果、現在、一交差点に十四機ある車両検知センサーをAIによる渋滞予測に必要な車両検知センサー七機に半減しても従来と渋滞状況に変化はなく、信号制御の性能を維持できることが確認できたということであります。
このことから、車両検知センサーの削減によりインフラコストを低減できるとともに、車両検知センサーが少ない交差点でも適切な信号制御が可能になるなど、交通渋滞の減少、それに伴う脱炭素への貢献ができるということであります。
もう一つは、静岡県警の協力の下、AI技術を使ったスマート信号の実証実験で、もうしばらくすると結果を公表できるということです。
この実証実験は、従来のような集中制御システムではなく、AIユニット搭載の交通信号制御機を十二か所の交差点に設置し、AIにより最適な制御を行う自律・分散型の交通管制システムを活用するというものであります。
これにより、その時々の交通量に応じて柔軟に信号を制御するなどし、広域において渋滞を減らし、より効率的、円滑的な交通の流れを目指すとともに、自動運転や高速大容量通信の実現をはじめとするソサエティー五・〇時代に求められる交通管制システムの確立を目指しているとのことであります。
期待される効果としては、まずは、一定の区間を車両が走行した場合の平均旅行時間は、現状の信号機に比較して、シミュレーション上、一五%から二〇%程度の短縮が期待されるということであります。全国約二十万か所の交差点について、仮に二〇%の時間を短縮できた場合、時間便益は年約五兆五千二百億円、CO2削減量は年約五百五十万トンに相当すると推計をされております。
こうしたAIを活用した信号制御に関する実証実験は、将来の渋滞緩和、コスト低減、脱炭素等に大きな効果を発揮するものと期待しています。
愛知県は車は多いが渋滞は少ないなと言われるような、日本一の道路交通環境へと大変革を遂げてほしいと願っています。車の進化同様、待ったなしのタイミングに来ていると思います。
そこで伺います。
AIを活用した信号制御について、どのように取り組んでいかれるのか警察本部長に伺い、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
11:
◯労働局長(日高啓視君) 産業人材の育成についてお答えいたします。
本県は、自動車産業はもとより、繊維や窯業から航空宇宙産業に至る多様で厚みのある産業集積を有し、高い技術、技能に支えられたモノづくり県であることから、その重要性を学び、次の時代を担う若者に伝えていくことは、とても重要であると認識しております。
今年十一月に技能五輪全国大会が本県で開催されることは、子供たちにモノづくりや技能者への憧れや興味、関心を呼び起こす絶好の機会だと考えており、今後、教育委員会や市町村と連携し、多くの子供たちに見学してもらえるよう働きかけてまいります。
大会の周知を図るため、競技実演やミニ競技大会を行う百日前イベントを開催するほか、見学バスツアーを実施する予定です。
また、大会当日には、アイチ・スカイ・エキスポに見学に来た子供たちに技能や競技を理解してもらうため、高校生や技能士による競技解説ガイドを配置するとともに、モノづくり体験や本県の産業、物産、観光の展示PR、地元グルメの提供などを内容とした併催イベントを開催いたします。
今後、技能五輪全国大会が三年連続愛知県で開催されることから、毎年大会の改善を図るとともに、メダリストを活用した啓発事業を積極的に展開し、県内の技能尊重機運の醸成につなげてまいります。
次に、中小企業のデジタル人材の育成についてお答えします。
デジタル化が急速に進展する中、中小企業のデジタル化を促進するには、経営者の理解とデジタル人材の育成が不可欠です。
そこで、本県では、今年度、中小企業の経営者を対象に、デジタル技術が求められる背景やリスキリングの進め方などを学んでいただく経営者育成塾を開催しました。
また、中小企業の従業員に対しては、階層ごとに研修を実施しております。現場リーダーには、デジタル人材の育成手法や指導方法、デジタル技術を活用した新事業創出手法の研修、一般社員にはデータを分析、活用するスキルの研修などを実施しました。
受講者からは、他の社員にも勧めたいといった声があり、現在、一部の研修をアーカイブで配信しております。
一方で、デジタル技術の導入の必要性を感じていない企業や、費用と時間の面で不安を抱えている企業が多いことなどが課題であると感じております。
そこで、来年度は、産業人材育成情報を一元化、見える化したポータルサイト、ひと育ナビ・あいちにおいて、新たにデジタル化やDXに関する企業の取組事例を発信し、認識を深めていただくとともに、新たな研修メニューとして、プログラミングの知識がなくてもアイコンを使った簡単な操作で低コスト、短時間でアプリ等の開発ができるノーコードツールの研修を実施します。
デジタル技術の有効活用は生産性の向上に資することから、モノづくり愛知をさらに進化させるため、今後とも中小企業のデジタル人材の育成支援にしっかり取り組んでまいります。
12:
◯県民文化局長(伊藤正樹君) 産業人材の育成についてのお尋ねのうち、あいちウィークにおける取組についてお答えをします。
本県では、昨年十二月に県政百五十周年のレガシーとして、十一月二十七日をあいち県民の日として創設し、毎年十一月二十一日から二十七日をあいちウィークとしました。
あいちウィーク期間中においては、県民の皆様が地域の自然、歴史、風土、文化、産業等についての理解と関心を深め、愛知への愛着及び県民としての誇りを持っていただく契機となるよう、あいち県民の日の趣旨にふさわしい様々な取組を実施することとしております。
その取組の一つとして、県の歴史や魅力についての講演会や若者などによる討論会を開催しますが、先人たちがモノづくりを通して愛知県を成長させ、製造品出荷額等日本一になるまでに育ててきた歴史を振り返り、未来に継承していけるような視点を取り込むなど、議員お示しのモノづくりの歴史もテーマに含めた内容としてまいりたいと考えております。
また、県内には、産業観光としてモノづくりの現場を紹介している市町村や民間の施設も数多く存在することから、そのような施設においても、様々な取組を積極的に実施していただくよう働きかけてまいります。
あいち県民の日、あいちウィークでの取組を契機として、未来を担う若者たちをはじめ、多くの県民の皆様に本県のモノづくりへの関心を持っていただけるよう、しっかりと取り組んでまいります。
13:
◯建設局長(道浦真君) 矢作川カーボンニュートラルプロジェクトについてであります。
本プロジェクトは、水循環をテーマにしたこれまでにない新しい取組であり、関係者間での調整に加え、技術面、制度運用面などの課題を克服していく必要があります。
例えば、再生可能エネルギーの創出のうち、水力発電の増強については、治水と利水を両立させることが課題であり、遊水地などの公共施設用地を活用した太陽光発電については、公共施設本来の機能に支障がないよう発電施設を設置するために、技術面、制度面の課題があります。さらに、発電に共通する課題として、事業者選定方法、発電した電力の利用方法があります。そのほかにも、採算面や周辺環境への配慮など、様々な課題があると想定しています。
これらの課題を克服し、各施策を推進していくため、昨年八月に矢作川カーボンニュートラル推進協議会及び再生可能エネルギー分科会をはじめとする四つの分科会を設置し、専門的見地から具体的な検討を行っているところです。
例えば、国管理の矢作ダムにおいて発電量を増加させる取組については、最新の気象予測技術などを活用し、洪水調節に支障のない範囲で実施する必要があるため、この運用の施行に向け、関係者間で調整を図っております。また、矢作川浄化センターにおいては、使用電力に応じた発電規模の検討などを行っております。
加えて、個々の分科会では解決が難しい課題をはじめ、相互に連携を要する施策などについては、合同で分科会を開催するなど、施策の実現に向け、分野横断的な検討を進めてまいります。
次に、菱池遊水地を利用した太陽光発電施設の設置についてであります。
菱池遊水地では、地元の幸田町において平常時に公園として利用する構想を持っており、こうた凧揚げまつりをはじめとする公園の利用を想定し、太陽光発電施設の配置の検討を行っております。
また、発電施設の構造については、架台方式やフロート方式などの複数案を想定し、遊水地の洪水調節機能との両立、除草や洪水時に流入する土砂、草木の撤去など、維持管理面に加え、流入水に対する発電施設の安全性などについて検討を行っております。
今後、発電施設の設置主体の在り方や発電した電力の利用方法、民間事業者が参入する場合の河川占用など法制度面での課題の整理、透明性、公平性を確保した公募手法などの検討を進めてまいります。
今後も、菱池遊水地の完成に合わせて、公園利用と調和を保ちつつ、太陽光発電施設が導入できるよう取り組んでまいります。
14:
◯警察本部長(鎌田徹郎君) 初めに、交差点での交通渋滞対策についての御質問にお答えいたします。
県警察では、刻々と変化する交通量等の情報を収集し、これに応じた柔軟な信号サイクル調整を行うなど、交通渋滞の緩和や交通事故の抑止を図っております。
具体的には、二〇二一年度末現在で、県内の主要幹線道路を中心として合計一万四千二十九機の車両感知器を設置し、収集した交通量や走行速度等を分析し、警察本部交通管制センター等において交通状況に応じた信号制御を行っております。
議員お示しの愛知県道路交通渋滞対策推進協議会におきましては、県警察や道路管理者等が一体となって渋滞緩和対策を講じており、二〇一二年度に公表された県内の主要渋滞箇所は七百二十三か所ございましたが、今年度には七百七か所に減少しております。
しかし、依然として県内においては慢性的な交通渋滞が数多く発生しているところ、その状況に応じたきめ細やかな信号制御を行うためには、信号交差点ごとに複数の車両感知器が必要であり、その維持管理には一定の経費を要することからも、費用面とのバランスを考慮しながら交通渋滞対策に取り組んでいるところでございます。
続きまして、AIを活用した信号制御についての御質問にお答えいたします。
二〇二一年度、県警察と企業が連携し、日進市内において、車両感知器に代わるものとしてAIを活用した信号制御の実証実験を行いました。
この実験は、信号交差点に設置した一台のカメラにより、全方向の車両台数をAIが分析し、その結果に応じ青信号時間を調整することにより渋滞の改善を図ろうとするものでございます。
具体的には、右折車線の渋滞が課題となっている信号交差点においてAIを活用した信号制御を実施したところ、右折待ちの車列の長さが一定程度改善するなどの成果が見られたところでございます。
こうした成果につきましては、昨年九月、アメリカのロサンゼルスで開催されました高度道路交通システムの普及による交通問題の解決等を図ることを目的とした第二十八回ITS世界会議におきまして、当県の警察官が論文発表を行うなど、県警の先進的な取組について、広く世界に発信しております。
今後も、AIをはじめとした新たな技術を用いた、より効果的かつ経済的な交通渋滞対策の導入に向け、各種実証実験への参加など、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
15: ◯知事(
大村秀章君) 西久保ながし議員の質問のうち、技能五輪全国大会の本県開催について、私からもお答えをいたします。
二〇二三年度に続き、二〇二四年度、二〇二五年度の全国大会も本県で開催されることとなりました。
アイチ・スカイ・エキスポでの開催は、開業から七年間で五回となりまして、まさに技能の甲子園と言えると思います。
本県は、技能五輪全国大会におきまして全国最多の選手が参加し、十八年連続最優秀技能選手団賞を受賞しているなど、技能五輪全国大会の開催地に最もふさわしいと考えておりまして、今後も本県で継続的に開催できるよう国に働きかけてまいります。
技能五輪全国大会の連続開催を通じて、将来の愛知のモノづくりを支える人材の育成、確保につなげ、人が輝く日本一元気な愛知の実現を目指してまいります。
16: ◯五十五番(西久保ながし君) 一点だけ警察本部長に要望したいと思います。
AIを活用した信号制御についてですが、これ、間違いなく近い将来、実用化が進んでくると思います。
先ほど申し上げた岡山とか静岡での実証実験の結果が今後どのようにそれぞれの地域に浸透してくるのかというのはよくまだ分かりませんけれども、こうした取組というのは、県単独ではなかなか難しいというふうに思いますので、ぜひ、国や警察庁、あるいはNEDOとかUTMS協会などと連携を密にしていただいて、とにかく実用化に向けて積極的に取り組んでいただきますように要望して終わります。
17: ◯副議長(
佐藤一志君) 進行いたします。
成田修議員。
〔四十三番成田修君登壇〕(拍手)
18: ◯四十三番(成田修君) それでは、通告に従い、二点質問させていただきます。
まず初めに、中小企業のM&A支援についてお伺いいたします。
近年、後継者不足に加え、デジタルトランスフォーメーション(DX)や持続的成長目標であるSDGsに向けた取組の加速、新型コロナウイルス感染症拡大によるビジネス環境の急変など、中小企業の経営環境が一段と厳しさを増しております。
とりわけ地方圏では、中小企業が付加価値額で七割、雇用の八割を占め、都市圏に比べ中小企業への依存度が高く、中小企業が地域経済の運命を握っております。
経済産業省は、二〇二五年までに七十歳を超える中小企業、小規模事業者の経営者は二百四十五万人となり、その約五割で後継者が未定と予想しており、六十二万社が黒字倒産の危機に瀕している、いわゆる二〇二五年問題と言われる大廃業時代がすぐそこに迫っていると警鐘を鳴らしております。それは、少子化に加え、家業を継がない子供が増加することが背景にあります。
これらの会社が廃業すれば、六百五十万人の雇用の喪失と二十二兆円の国内総生産が失われる可能性を秘めております。
では、今回、私が中小企業の事業承継の中でもM&Aを取り上げるきっかけとなった事案について、少しお話をさせていただきたいと思っております。
皆さんは岡野工業という会社を御存じでしょうか。無論、まちの小さなプレスメーカーですので、御存じの方は少ないと思います。しかし、痛くない注射針を開発した企業との問いかけには、多くの方々が知っているとうなずいていただけるのではないでしょうか。テルモの糖尿病患者の方々向けの注射器が痛くない注射針となったとのテレビコマーシャルが一時期常に流れており、御記憶にあったと思います。
その岡野工業が後継者がいないために廃業予定であるとの記事を数年前に見かけ、その後、本当に廃業してしまい、ショックを受けたことがきっかけとなりました。
幾ら高い技術があったとしても、また、超優良企業であったとしても、後継者が見つからなければ廃業に追い込まれてしまうんだなと私は痛感したわけであります。現在、コロナ後の中小企業の経営が厳しさを増す中、いかに生き残っていくかが喫緊の課題となっております。
こうした状況の下、国は、中小企業を活性化するため、経営課題の解決や企業戦略の実現の有効な手段の一つとしてM&Aを推奨しております。
しかしながら、年々増加しているとはいえ、M&Aという手段を活用する企業は、それにより事業継承や事業変革などが期待できると考える企業の数を大幅に下回っております。このままでは、経営状況が厳しい中小企業の多くが保有する経営資源を第三者に引き継ぐことなく廃業に至ることになるわけであります。とりわけ地方においては、地方経済の中心的な主体である中小企業の衰退は、域内の雇用や経済環境の悪化につながることが懸念されており、廃業回避への取組が期待されるところであります。
では、M&A推進手法などについて、具体的に検証してまいります。
初めは、M&Aを実施することによる期待効果についてであります。
効果の第一は、経営資源の散逸の回避であります。後継者不在や昨今のビジネス環境の変化を受け、廃業を検討する企業の中には、従業員、ブランド、サプライチェーンなど、有形、無形の貴重な経営資源を有する企業が少なくないとされております。
効果の第二は、生産性などの向上であります。シナジー効果により、単独での実施に比べ、事業の再編、コア事業の強化、拡大、新規事業の創出、新たなビジネス分野への参入など、生産性向上に資する戦略を早期に実現することが可能になります。
効果の第三は、創業リスクや、コストの低減であります。買手は、売却企業の保有する人材である従業員、知的財産、市場である顧客、生産設備などの経営資源を引き継ぐことで、ゼロからスタートするよりも雇用や免許取得などに要するコストや時間のほか、市場開拓などのリスクが軽減できます。さらに、こうした効果が欧米諸国に比べ低いとされる我が国の開業率を上昇させることも期待されております。
次に、事業承継の具体的な内容を見てまいります。
民間調査機関の調査によれば、事業承継先で最も多いのが親族に継がせる親族内承継で三四%、次に社員による承継が三四%であり、M&Aによる承継は二〇%にとどまっております。
M&Aを実施する目的を見てみますと、買収では、売上げ、市場シェアの拡大を選択した企業が七割以上と多く、新規事業開拓、異業種への参入などは五割以下にとどまっております。
一方、売却では、従業員の雇用の維持が五三%や、後継者不在の四七・九%など、事業の継続や経営の立て直しといった目的が中心であります。
次に、M&Aの推進をバックアップする施策について見てまいります。
中小企業のM&Aが企業戦略を実現する手段であるとする認識の下、事業承継に対する主な支援施策は、支援体制の整備、優遇税制、補助金の新設の三つであります。
支援体制の整備については、国は、二〇二一年四月に安定した支援体制の確保、継続的な支援を一元的に実施することを目的に、それまで親族内承継を支援した事業承継ネットワークとM&Aを支援した事業引継ぎ支援センターを事業承継・引継ぎ支援センターとして統合し、各都道府県に一か所ずつ拠点を設置いたしました。
同センターを中核機関として、地域金融機関、M&Aを支援する民間の事業者、弁護士や公認会計士、税理士などの士業などが連携し、相談受付、アドバイスから両社の経営統合までのシームレスな支援を提供する体制の整備が図られております。
税制については、二〇一八年度から二〇一九年度にかけ、十年間の特例措置として、株式や事業用資産の取得に関する贈与税、相続税の納税猶予措置が創設されるとともに、不動産取得にかかる登録免許税、不動産取得税の減税に加え、二〇二一年度税制改正において、経営資源の集約化による生産性向上などを目的に、M&Aを実施した中小企業を対象にした設備投資に対する減税である設備投資減税、リスク対応のための準備金の損金算入である準備金の積立てが導入されております。
補助金については、二〇二一年度に、それまでの事業承継補助金と経営資源引継ぎ補助金が事業承継・引継ぎ補助金に統合されました。新たな事業承継・引継ぎ補助金は、M&Aの仲介料や財務、法務などの調査、デューデリジェンスの費用、M&Aの設備投資や販路開拓費用を補助対象として、旧補助金制度に比べ上限額が引き上げられました。
今後、企業がM&Aを含む事業承継をさらに円滑に進めていくためには、こうした様々な支援策を有効に活用しながら、それぞれの企業の実情に沿って取り組むことが何よりも肝要となります。
経済産業省の資料によれば、事業承継・引継ぎ支援センターにおける相談件数は、二〇一一年度の二百五十件から、二〇二〇年度には一万千六百八十六件に、成約件数はゼロから千三百七十九件へと大幅に増加しています。
また、中小企業庁の資料によれば、民間のM&A仲介大手三社による成約件数が二〇一三年の百八十二件から、二〇二〇年度には七百六十件と四倍以上になっております。国内全てのM&Aの総数をまとめたデータはありませんが、大手三社以外にも民間支援事業者も増えており、M&A成約件数もそれにつれて伸びていると考えられます。
しかしながら、M&Aに対するかつてのネガティブなイメージや、高度な専門知識が必要となることに加え、事業承継の問題は、取引先との関係や企業の信頼性に関わる性質上、水面下で交渉されることもあり、事業承継を希望する企業や後継者に悩む企業全体から見れば、M&A成約に至った企業は決して多くありません。支援機関に関する聞き取りでは、M&A支援を依頼した企業の成約率は、多くが五%前後にとどまり、最も高い機関でも一〇%との調査結果もあります。
さらに、中小企業、とりわけ小規模企業では、多くの場合、経営に関する相談先は、所属する商工会、商工会議所、取引する地域金融機関、顧問の税理士や公認会計士など、身近な支援機関となっており、こうした機関のネットワークにより、企業の状況に応じて的確に支援していくことが求められます。
県ではこれまで、あいち産業振興機構や事業承継・引継ぎ支援センター、商工会、商工会議所、業界団体、地域金融機関、士業団体と連携して、セミナーや講習会の開催のほか、専門家派遣、税制優遇の認定事務、県融資制度による資金繰り支援など、事業承継の促進に取り組んできております。
一方で、先ほど私が申し上げた二〇二五年が目の前に迫っております。二〇二五年問題と言われる大廃業時代が現実となってしまわないように、県内の多様な支援機関と連携し、さらなる支援を展開することが肝要と私は強く思うわけであります。
そこでお伺いいたします。
これまでの取組により、支援実績はどのようになったのでしょうか。また、今後、事業承継・引継ぎ支援センターはじめ、他の支援機関と連携してより効果的なM&Aの支援を行うため、どのように取り組んでいくかお伺いいたします。
次に、ポストコロナにおける観光振興についてお伺いいたします。
新型コロナウイルスは、世界経済に極めて大きな打撃を与えました。とりわけ深刻な影響を受けているのが観光分野であります。
観光の前提は人が動くことであり、ステイホームでは観光は成り立たないわけであります。観光産業は、恐らく前と同じような状況には戻らないと考えられます。なぜならば、この危機は、社会の在り方を変え、経済構造を変化させ、観光客の意識も変えてしまい、この産業を取り巻く環境そのものが大きく変容したからであります。
そこで、コロナ後、観光産業が再び輝くためには、これまでとは発想を変える必要があります、と私は強く思うわけであります。いまだこの危機の結末は見えない状況でありますが、まず、コロナ危機直前の我が国の観光の状況を振り返ってみたいと思います。
今までの観光戦略を一言で言うと、数の追求とインバウンド観光の重視でありました。インバウンド、訪日外国人の旅行者数は二〇一九年までの十年間に約四・七倍と、極めて大きな伸びを見せておりました。数の追求という面では、成果は確実に出ていました。政府のインバウンド旅行者数の目標は、今や幻かもしれませんが、二〇二〇年には四千万人、三〇年には六千万人であり、二〇一九年には三千百八十八万人を達成していました。
全国各地では、観光客誘客キャンペーン、インバウンド団体観光の誘致、大型クルーズ船の誘致など、盛んに進められておりました。インバウンドの団体観光が増え、クルーズ船が来訪すれば、観光客数は伸びていきますが、そこで問題点も顕在化してまいりました。
第一は、数は稼げても地元が稼げないという問題であります。
例えば、大型クルーズ船が誘致できれば、インバウンド旅行者数は格段に増え、数的には成果があります。しかし、クルーズ船は船内で泊まるため、地元に落ちる宿泊費はほぼゼロであります。船内で食事をするため、地元ではほとんど食事をしません。買物場所は、免税店や全国チェーン店が中心であり、滞在時間が絞られるため、一気にやってきて一気に去っていく状況であります。
第二は、オーバーツーリズムの問題であります。
過剰な観光客がもたらす弊害が一部の地域で現実化し、観光客数の増加が地域の豊かさや地域の人々の幸福につながらないという状況が生じました。
第三の問題は、日本人の観光離れであります。
これは、京都も札幌も、観光地と呼ばれるところは外国人が多過ぎてもう行きたいとは思えなくなってしまいました、行きたくない観光地は京都、外国人だらけで宿泊費は暴騰し、予約が取れないといった言葉に象徴されます。事実、インバウンド旅行者数は急増する一方で、日本人について言えば、海外旅行も国内旅行も伸びていない状況であります。
コロナが終息したからといって、観光客誘致を進め、観光客数をV字回復させよう、そういった話を観光関係者から聞くことがありますが、数の減少を数で補うという発想は危険であり、コロナ後の観光は発想を変える必要があります。大切なのは、数の減少を数で補うのではなく、数の減少を質の向上に変えることであり、遠くを見るのではなく足元を大切にしていくことであります。
具体的には、数の観光から質の観光へのシフト、愛知県に関して言えば、アジアを中心としたインバウンド重視から欧米を中心とした富裕層の一層の観光客誘致と県外客の誘致へのシフトであります。
それでは、まず、欧米を中心とした富裕層の観光客受入れについて、意外な国とはなりますが、中東、イスラエルについて考えてみたいと思います。
私は、昨年十一月にイスラエル訪問団の一員として渡航いたしました。
日本とイスラエルの渡航者の二〇一九年度実績においては、日本人二万九千人に対し、イスラエル人四万四千人となっております。
では、なぜ日本人がイスラエル観光へ行かないかといいますと、やはり安全ではないという先入観からであります。しかし、訪問してみますと、確かに一部の地域では今でも紛争が継続しており、ミサイルは飛んでくるかもしれませんが迎撃するので大丈夫ですと迎えのバスで説明を受け、冷やりとしたものの、他の欧米の国と変わらず安全な国でありました。との印象であります。まさに、見ると聞くとでは大違いとはこのことであります。
一方で、イスラエルの方々の印象でありますが、親日的でもあり、もっと日本を訪れる方が増えてもいいのではないかと強く感じた次第であります。
日本への一般の観光客が増えない原因の一端は、杉原千畝氏の功績がイスラエルの方々には充分に認知されていないのだと考えられます。
その理由として考えられるのが、杉原千畝氏の功績は日本人であれば誰でも知っておりますが、イスラエルの方々には多分正しく伝わっていないのではないかという出来事があったからであります。
それは、イスラエルのホロコースト記念館であるヤド・ヴァシェムにおいて、杉原千畝氏の功績の展示がされていないばかりか、迫害された負の遺産だけが強調された展示であったことであります。唯一、博物館の外にある記念植樹の前にネームプレートが飾られていただけでありました。
恩の押売をする必要はありませんが、正しい歴史認識を持っていただくことで、より親日の方々を増やし、その結果、ビジネスとともに愛知県への観光を目的に訪れてもらえるようにすべきであると私は強く強く思うわけであります。
そのためには、愛知県を訪れるビジネス客をはじめとするインバウンド旅行者に、県立瑞陵高校の「杉原千畝広場 センポ・スギハラ・メモリアル」を訪問いただき、正しい歴史を学ぶきっかけに役立てていただく必要があるのではないかと思います。
例えば、愛知県が進める「ツウ」リズムのルートの中に組み込んでいくことも必要ではないか、そして、こうした取組がユダヤに何らかのルーツを持つ欧米を中心とした富裕層にも広がり、本県へのインバウンドにつながるものと考える次第であります。
さらには、こうした富裕層の滞在地として本県が日本の中で選択されるためには、高級ホテルの充実も不可欠であります。ある宿泊施設の関係者に話を伺ったところ、スイートルームといった高価格帯の部屋の稼働率が高い状況を維持しているとのことでありました。そうした点においても、本県の受入れ環境の質の向上が求められると認識しているところであります。
次に、県外客の誘致について考えてまいります。
上質な滞在環境を実現するには、宿泊施設、飲食店、土産物店などの整備や老朽化した施設の整備などを行い、エリア全体の景観改善や滞在時の利便性向上に取り組むことが重要であります。
政府は、令和二年度第三次補正予算において、既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業に五百五十億円を投入し、施設改修補助、負担二分の一で地域の観光拠点の整備支援を実施いたしました。また、宿泊施設の経営革新などについて、専門家の支援を受けられる支援制度や融資制度も大幅に拡充されました。
宿泊施設や飲食店の老朽化や事業者不足は、多くの地域を悩ませる重要課題であります。そんな状況においても、既存施設の魅力を向上させ、新たな価値を付加する策としては、自治体や地域観光づくり法人であるDMOが観光拠点の再生計画を策定し、宿の事業承継や統合、複数の宿が一つのホテルとして運営する取組を後押しすることが挙げられます。
また、国立公園や文化施設などの運営に民間のノウハウを導入し、カフェなどを併設することも、観光拠点を再生する策の一つであります。
旅行者一人当たりの消費額を上げるには、滞在日数を延ばすことが最も有効であると私は思います。その具体策として、ワーケーション誘致が注目されております。
ワーケーションの受入れのためにまず地域がすべきことは、宿泊施設やコワーキングスペースなど、快適なテレワーク環境を整備することです。施設の整備に当たっては、地域課題である空き家問題と掛け合わせて、古民家や廃校をコワーキングスペースにリニューアルする取組も増えております。
ワーケーションを推進する企業には、働く場所を変えることで従業員の気分転換を図り、生産性を高める狙いがあります。企業がワーケーションの受入れ地に期待する気分転換のニーズに応えられるよう、既存の観光拠点やアクティビティーなど、バケーション部分の磨き上げも同時に検討する必要があると私は考えます。
そこでお伺いいたします。
インバウンドの誘客には様々な取組が必要だと思いますが、とりわけ富裕層の観光客受入れに資する高級ホテルの誘致について、今後の取組をお伺いいたします。
あわせて、県では、ワーケーションへの対応を含め、宿泊施設の高付加価値化に関してどのように考えているのか、県の御所見をお伺いいたします。
以上で、壇上での質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
19:
◯経済産業局長(
矢野剛史君) 中小企業のM&A支援についてお答えをいたします。
中小企業は、地域の経済や雇用の基盤を支える重要な存在である一方、経営者の平均年齢の高齢化などを背景として、円滑な事業承継に向けた高齢者の確保や事業譲渡の促進が課題となっております。
このため、県では、二〇一七年、あいち産業振興機構を中核として、あいち事業承継ネットワークを立ち上げ、県内の各支援機関と連携して、事業承継に関する気づきから手法の検討、後継者の育成、専門家派遣など、段階に応じた切れ目のない支援に努めてまいりました。
さらに、二〇二一年度からは、議員御指摘のとおり、国の方針により、事業承継ネットワークを統合し、専門家が常駐する愛知県事業承継・引継ぎ支援センターがワンストップ支援窓口として名古屋商工会議所内に設立され、支援の強化が図られております。
これまでの支援実績として、二〇一七年度からの累計で、経営者に事業承継の準備状況をヒアリングする事業承継診断を四万六千百一件、経営改善のための専門家派遣を千八十九件、延べ百八十五人を対象とした後継者育成塾の開催などに取り組み、三百七十一件の事業承継を実現し、このうちM&Aによる事業の承継は二百九十六件という成果を上げております。
M&Aについては、近年、成約件数が大幅に増加するなど、後継者不在に伴う事業承継の選択肢として、あるいは企業規模拡大の有効な手段として、中小企業にとっても身近な存在になりつつあります。
一方、その普及に向けては、支援機関による潜在的なニーズの掘り起こしやマッチング機能強化が課題とされています。
このため、県では、来年度、中小企業の最も身近な相談先である税理士、商工会や商工会議所、金融機関などを対象としてサポート力の底上げを図るセミナーを新たに開催してまいります。
さらには、あいち産業振興機構に配置するマネジャーが支援センターのコーディネーターを兼務し、把握したM&Aの支援ニーズを的確につないでいくことで、個々の企業の承継課題に沿った適切な支援を提供できるよう体制の強化に努めてまいります。
県としましては、こうした取組を通じて、地域の支援機関が一体となった総合的な支援体制の充実を図り、県内中小企業の円滑な事業承継を後押ししてまいります。
20:
◯観光コンベンション局長(武田光弘君) ポストコロナにおける観光振興のうち、初めに高級ホテルの誘致について、今後の取組をお答えします。
本県では、ハイレベルな国際会議の開催や海外の富裕層旅行者などの誘致に資するとともに、地域のブランド力向上を図るため、名古屋市と連携し、高級ホテルの新設に対する補助制度を二〇二〇年度から設けております。
本制度は、二〇二六年におけるアジア競技大会及びアジアパラ競技大会の開催を見据えたものであり、これまでに三件の事業認定を行いました。本年七月の第一号を皮切りとして、二〇二六年夏までに順次開業する予定となっております。
認定申請の新規受付については、今年度末をもって終了しますが、認定した三件のホテルの開業により、名古屋市内における高級ホテルのスイートルームの数が倍増するなど、一定の効果があったものと認識しております。
補助制度における新たな事業認定については、今後のMICEやインバウンドの誘致に向けた取組を進めていく中で、アジア競技大会及びアジアパラ競技大会の開催後における高級ホテルを取り巻く状況等を踏まえ、改めて判断していきたいと考えております。
続いて、ワーケーションへの対応を含めた宿泊施設での高付加価値化についてお答えします。
ポストコロナを見据えた観光振興に当たっては、ワーケーション、ブレジャーといった新しい旅行スタイルやユニバーサルツーリズムへの関心の高まりなど、旅行者の変化に的確に対応していく必要があります。
そのための取組として、宿泊施設における滞在環境の上質化や新たなサービスの提供などが重要と考え、昨年十一月に、国の交付金を活用して、宿泊事業者が実施するワーケーションスペースの設置や露天風呂つき客室への改修など、施設の高付加価値化を支援する補助制度を新たに設けました。
現在、県内各地の旅館やホテルから交付申請のあった事業計画について審査を進めており、今月末までには交付決定することとしております。
この取組を通じて、旅行者の新たな需要を掘り起こし、県外からの誘客拡大や滞在の長期化を促していくことで観光関連産業の活性化につなげてまいります。
21:
◯経済産業局長(
矢野剛史君) すみません。私、先ほど、中小企業M&A支援に関する答弁の中で、中小企業は、経営者の平均年齢の高齢化などを背景として、円滑な事業承継に向けた後継者の確保や事業譲渡の促進が課題となっておりますと言うべきところを、高齢者の確保と言い間違えておりました。大変失礼いたしました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
22: ◯四十一番(山田たかお君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
23: ◯副議長(
佐藤一志君) 山田たかお議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
24: ◯副議長(
佐藤一志君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午前十一時五十分休憩
━━━━━━━━━━━━━━━━━
午後一時開議
25: ◯議長(須崎かん君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
平松利英議員。
〔八番平松利英君登壇〕(拍手)
26: ◯八番(平松利英君) 一宮市選出、自由民主党の平松利英です。
今日は、通告に従いまして、大きく二つの項目について順次質問をさせていただきます。
質問の第一点目は、県立全日制高校における給食の導入についてであります。
この質問をするに当たっては、背景から御説明したいと思います。昨年六月、自民党愛知県議員団では、山下智也総務会長を座長に、十名の議員で構成する、あいちの魅力向上プロジェクトチームを設置いたしました。
今から四年前にも、我が党はプロジェクトチームを設置し、提言を行っておりますが、令和の新時代を迎えたことから、愛知のポテンシャルを最大限に生かし、夢と希望、魅力と夢あふれる愛知を創造するため、改めてプロジェクトチームを設置し、提言書を取りまとめました。
私もプロジェクトチームに参加させていただき、ユニークかつ新しい切り口を打ち出すべく、半年間でおよそ十回にわたり勉強会や企業を招いたヒアリング、視察調査を重ねてまいりました。
この新たなプロジェクトチームでは、本県が情報発信やトレンドの形成の先導役を担い、日本の中心、首都になることを目指して、幾つかのキーワードを基に、四つの目指すキャッチフレーズを設定する形で提言書を取りまとめ、昨年十二月に新しいあいちの魅力向上に関する提言として、知事に提言書を手交いたしました。
そして、その提言書には、今回、質問項目として取り上げております県立全日制高校への給食導入についても含まれております。
私は、県立全日制高校の給食導入について、保護者の負担軽減、子供の貧困対策を含めた栄養面からもその必要性を強く申し上げたところであり、改めてお考えをお伺いしたいと思い、質問させていただきます。
そもそも、給食はいつから始まったのでしょう。諸説あるようですが、一八八九年に開校された山形県鶴岡市の私立忠愛小学校が、昼食を持ってくることができない恵まれない家庭の子供たちのために無償で昼食を支給したことが学校給食の始まりと言われているようです。
一九二〇年代以降、子供たちの栄養不足を改善するため、給食を提供する学校が増え始めました。特に一九三一年の昭和恐慌により、満足な食事を取ることができない家庭が増えたことから、国は翌年に学校給食臨時施設方法を制定し、改善に向かうこととなりました。
しかし、その後、日中戦争や第二次世界大戦などにより食料事情が悪化、深刻化し、残念ながら学校給食の中断が相次ぎました。
第二次世界大戦終結後は、諸外国からの食料援助もあって、徐々に給食が再開され始め、そして、一九五四年に学校給食法が制定され、現在の体制へと充実していくこととなりました。
現在、学校給食法では、義務教育課程である小中学校の給食導入を努力義務と定め、また、特別支援学校の幼稚部及び高等部や夜間課程を置く高校へは特別法が制定されているため、ほぼ全国的に給食導入が進んでいます。しかし、全日制高校においては、努力義務等を定めた学校給食法はありません。そのため、全国の全日制高校を見渡しても、学校給食を提供している高校は非常に珍しく、ほんの数校が存在するのみという状況であります。
今後も全日制高校への給食は必要ないのでしょうか。法律で努力義務が課されていませんが、愛知の魅力向上の一環として給食導入への努力をすることは大いに意義がある事業だと私は考えています。
学校給食法が制定された当時と比べ、世の中は大きくさま変わりしています。政府の統計を見ますと、高校進学率は制定当時おおよそ五〇%でしたが、その後、一気に進学率が上がり、一九九〇年に九五%を超えて以降、高い水準を維持しています。就労状況については、調査が開始された一九八〇年には、専業主婦世帯は全国で千百十四万世帯、共働き世帯は六百十四万世帯でありましたが、二〇二一年には、専業主婦世帯は五百六十万世帯と半減、共働き世帯が千二百四十七万世帯と倍増するなど、完全に逆転しています。
高校進学率も共働き世帯も倍増しているこのような時代の変化により、毎日の高校生へのお弁当作りが家庭の負担になっていることは明らかです。
そこで、私たちプロジェクトチームは、全日制高校で給食導入を始めた石川県立志賀高校を調査してまいりました。
志賀高校では、志賀町の助成を受け高校給食が実施されています。志賀町は、志賀高校生の栄養、健康管理、保護者の負担軽減の観点から、志賀町として小中児童生徒に提供している給食を高校生にも提供できないか検討し、志賀町及び志賀高校、石川県教育委員会との間で協議、調整を重ね、平成三十年四月から志賀高校生徒の希望者への昼食提供を開始されました。
ここで疑問が生まれます。なぜ県立学校が志賀町の助成を受けているのでしょう。また、なぜそれが可能だったのでしょうか。
志賀高校は町内唯一の高校であり、県立であるものの、これまでも町として通学費補助、バス代替運行、進路指導強化などに対する補助金を支出するなど支援していました。しかし、少子化が進み、また、町外への高校進学などで志賀高校の生徒数は年々減少していました。町内唯一の高校が廃校になってしまうのは食い止めたい。そこで、さらなる支援として考案されたのが昼食の提供です。
町では学校給食共同調理場を有しており、近年の少子化が進む状況において、その設備能力は小中学生に加えて高校生への提供も十分可能であり、調理、配送、保管庫、食器類などは全て町が負担しています。料金については、学校給食の考えと同様に、食材費相当額を利用者の保護者から徴収するのみとしており、一食二百五十円で提供されています。
導入直後の昼食利用者はおおよそ生徒の半数だったそうですが、温かく栄養バランスのよい食事を取ることができると評価され、今では九〇%を超える生徒が利用しています。生徒はもちろん、親御さんからも高い評価を得ており、昼食があるからという理由で志賀高校に進学したとの声も実際に聞くことができました。魅力向上により生徒数減少に歯止めをかけることに成功した好事例と言えます。
さきにも述べましたが、全国の全日制高校で学校給食を提供している高校は非常に珍しく、ほんの数校しか存在しません。しかも、それぞれに特殊な事情があり給食導入に至っておりますが、都道府県教育委員会として給食導入を検討している事例は、私が調べる限り、見つけることができませんでした。
食育意識が高まった現代では、地産地消、エシカル消費など、持続可能な生産・消費形態の確保も求められています。学校給食はそれらの実践につなげることができます。温かい食事、格差是正の観点、成長期にある生徒たちの栄養の偏りも是正でき、ネグレクトへも対応できることと思います。そして、何より保護者の負担が減ることにより働きやすくなるなど、少子化対策へも寄与します。給食導入のメリットを挙げれば枚挙にいとまがありません。愛知の魅力向上に資する県立全日制高校への給食の導入をぜひとも御検討いただきたいと思います。
そこで質問いたします。
提言書では、二〇二五年以降に開校する県立中高一貫校の中学校で給食が始まることを契機として、まずは中高一貫校の高校への試験的な給食導入、将来的には全日制高校への給食導入を図られたいとしましたが、この提言に対してどのように考えるのかお答えください。
また、一部の県立高校においては、民間業者が提供する弁当を導入していると聞いていますが、保護者負担軽減のため、給食提供が困難な場合は民間業者を活用した昼食の提供に取り組む方法もあると考えますが、教育長の考えをお伺いいたします。
続いて、二つ目の質問項目、愛知県一宮総合運動場の整備、改修についてお尋ねします。
愛知県では、スポーツ基本法に基づき、二〇一三年三月にいきいきあいちスポーツプランを策定し、子供のスポーツ機会の充実やライフステージに応じたスポーツ活動の推進、住民が主体的に参画する地域スポーツ環境の整備、競技力の向上など、豊かで活力に満ちたスポーツ愛知の実現に向けた様々な取組を長期的な展望の下に推進してきました。
このいきいきあいちスポーツプランの計画期間が今年度末で終了するため、二〇二三年度からの五か年を計画期間とする今後の本県のスポーツ振興に向けた次期愛知県スポーツ推進計画を策定することとしており、間もなく策定されると聞いております。
先月二十日の愛知県スポーツ推進審議会からの答申を見てみますと、この計画は、アジア・アジアパラ競技大会を活かし、すべての人がともにスポーツを楽しみ、スポーツの力で豊かで活力ある愛知の実現を基本理念に、その目指すべき姿を、すべての人が生涯にわたりスポーツに関わり、スポーツにより人と人とがつながる愛知などとしています。
こうした目指すべき姿を実現するためには、スポーツ人口の裾野拡大に向けたSNS等を活用した情報発信、あいちトップアスリートアカデミーにおける地元出身選手の発掘、育成をはじめ、様々な取組を展開する必要がありますが、その一つとして、スポーツに関わることができる環境を整備することもとても大切であると思います。
今週、三月九日から東京ドームでワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の一次ラウンドが始まります。日本代表メンバーには、尾張旭市出身で中日ドラゴンズの高橋宏斗投手が選出されております。
また、来週、三月十二日に行われる名古屋ウィメンズマラソンには、豊橋市出身の鈴木亜由子さんが招待選手として参加することが発表されております。
さらに、私の地元一宮市出身の車椅子テニスプレーヤー、小田凱人選手は、昨年の秋にオランダで開催された車椅子テニスの年間王者を決めるNEC車いすテニスシングルスマスターズ二〇二二を大会史上最年少で優勝し、先月末にお会いしたときには、今年はグランドスラムで優勝したいと意気込んでおられました。
こうした大きな舞台に地元愛知の選手たちが出場し、戦う姿を見ることができるのも、練習や試合、大会を開催することができる野球場や陸上競技場などのスポーツ施設があってのことだと思います。
スポーツ施設の中には、口論義運動公園、熱田神宮公園野球場などの県営の施設もあり、私の地元一宮市にも、野球場、サッカー場、テニスコート、プール、陸上競技場、ゲートボール場のほか、多目的グラウンドを有する愛知県一宮総合運動場があります。
二〇一五年四月からは、一宮市に本店を置くいちい信用金庫が施設のネーミングライツ権を取得しており、いちい信金スポーツセンターという愛称で地域に浸透しているところです。
また、地元のボランティアグループが地域の企業などにも参加を呼びかけ、運動場敷地内にある遊歩道沿いの桜並木を桜の名所にを合い言葉に、落ち葉拾いなどの清掃活動を行っており、昨年十一月に行われた活動には、百九十名もの方々に参加をいただくなど、地域の皆様方に親しまれ、支えられている運動場であります。
また、地元の老人クラブがグラウンドゴルフなどで多目的グラウンドを利用しているほか、運動場の遊歩道などを利用したウオーキング大会が開催されるなど、地域の健康づくりの場としても欠かせない運動場となっております。
一方、一宮総合運動場は、名古屋高速一宮東出口から約五分、名神高速道路の一宮インターチェンジから約十分と車での交通アクセスが非常によく、優れた立地条件にあり、野球やサッカーなどの愛知県大会の開催にもってこいの運動場であります。特に陸上競技場は、日本陸上競技連盟の第三種公認陸上競技場であり、尾張陸上競技協会が主催する競技大会や記録会などが開催されるなど、多くの競技者にも利用いただいております。
私は、この一宮総合運動場に宿泊できる施設を準備、整備していただきたいと考えておりまして、そうすれば、この交通アクセスのよさもあって、より広域的な活用とともに、連続した利用が見込まれるなど、利用者の増加につながり、それが地域のスポーツ活性化にもつながるのではないかと思っております。
今後とも一宮総合運動場を多くの方に利用していただくためには、利用者のニーズに応じた施設の整備が必要であると考えます。
そこで、県一宮総合運動場の改修等の状況と、今後の一宮総合運動場の整備、改修の考え方についてお伺いします。
次に、水泳プールについてお尋ねいたします。
一宮総合運動場には、五十メートルプール、二十五メートルプール、幼児用と、三つの屋外プールがあります。
屋外プールであるため、毎年営業は夏季の七月、八月の二か月間ではありますが、二〇二二年度は約九千人が利用しております。
また、一宮総合運動場のプールで開催されている小学生を対象としたちびっこ水泳教室はとても人気が高い教室となっています。子供たちが学校以外で行っている習い事について様々な調査がされていますが、どの調査を見ても水泳が一位であり、体力づくりや運動能力の向上につながるということからとても人気があります。
このように子供たちに人気の水泳ですが、少し前にスイミングクラブの関係者と話をしたところ、愛知県内には二十五メートルの短水路水泳競技大会を開催できるプールがほとんどない。加えて、多くの観客を収容できるプールは全くなく、今は三千人の観客を収容可能な浜松市のプールまで行って大会を開催している。ぜひ愛知県内に多くの人が観戦できるプールを造ってほしい。そして、その際には、例えば五十メートルの長水路プールの短辺を二十五メートルの短水路として併用できる五十メートル掛ける二十五メートルのプールがあるとうれしい。そうすれば、短水路プールが二面取れることになり、さらにアップ用の予備プールが一つあれば大規模大会が開催できる。この様式は最近のはやりで、静岡県内には三つ、三重県にも一つあるが、水泳人口の多い愛知県には一つもない。一宮総合運動場プールは、規模的には似ていますが、屋外プールであるため夏場しか利用できず、かつ、観客席が整備されていないことや短水路の公認を取っていないことなどが悔やまれる。とおっしゃっていました。
また、水泳連盟の方からも、もしそのようなプールがあれば、競技大会や練習などで週末を中心に年間を通して利用したいというお話を伺いました。
日本水泳連盟が公式競技会または公認競技会に使用する競技場として適格と認めるプールの基準や手続を定めているプール公認規則がありますが、現在、規則に基づき公認プールとして認定されているのは、県内では五十メートルの公認プールは七か所、その内訳は、公営のプールが六か所、大学のプールが一か所となっております。二十五メートルプールは八か所が認定されており、その内訳は、公営のプールが二か所、大学のプールが二か所、私立高校のプールが三か所、民間のスイミングクラブが一か所となっております。特に二十五メートルの公認プールは、公営のプールでは二か所のみであり、そして観客席も少ないため、スイミングクラブの関係者が話していたとおり、短水路の水泳競技大会を県内で開催することは難しい実態があります。
また、近年、学校のプールが老朽化や維持管理費がかかることなどから、学校プールを廃止し、地域の公営プールや民間のスイミングクラブのプールを利用して水泳の授業を行う動きがあります。
しかしながら、スポーツ庁が実施している体育・スポーツ施設現況調査によりますと、公共スポーツ施設のうち屋内水泳プールは全国で、平成二十年調査では千八百か所あったものが、平成三十年調査では千七百十二か所と、八十八か所減少しております。
また、屋外水泳プールにあっては、全国で、平成二十年調査では二千五百十二か所あったものが、平成三十年調査では千八百七十四か所となっており、六百三十八か所も減少しています。この調査の平成三十年以降も老朽化などにより廃止、休止している県内の公営プールもあり、地域の方々が泳げるプールはさらに減っているのではないかと思います。
一方、昨今の健康ブームもあり、水中ウオーキングやアクアビクスなどにより健康や体力づくりに取り組む方々が増えております。
プールは、子供から高齢の方まで、気軽に健康や体力づくりに取り組める場としてとても人気があります。今後、多くの皆様が利用できるよう、県営プールの維持管理を行うだけでなく、大会が開催できる短水路二十五メートルプールの整備、そして、市町村がプールを整備する際にはぜひ県も支援してほしいと思っております。
そこで、スポーツ局所管のプールの現状と、今後のプールの整備及び管理、運用の考え方についてお伺いします。また、競技大会が開催できるようなプールを市町村が設置する場合、県はどのように支援に取り組んでいくのかお伺いします。
質問は以上です。理事者からの前向きで明快な答弁を御期待申し上げ、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
27: ◯教育長(飯田靖君) 県立全日制高校における給食の導入についてお答えをいたします。
小中学校、特別支援学校、夜間定時制高校では、学校給食法等に基づいて給食を実施しておりますが、全日制高校の生徒は、家庭で用意をした弁当や登校途中で購入をした弁当やパンなどを持参しております。
議員お示しのとおり、共働き世帯の増加により、毎日の弁当作りを負担に感じる割合も増加していると考えられますので、保護者の負担軽減は重要であると認識をしております。
二〇二五年度から開校する中高一貫校の中学校におきましては、地元市町村の給食センターや民間業者から提供を受ける方向で検討を進めております。中高一貫校の高校につきましては、給食センターに余力がある場合や民間業者から提供が可能であれば、希望する高校生に提供することを検討してまいります。導入校において好評であれば、将来的には他の全日制高校にも広げてまいります。
今回、御提案をいただきました民間業者の活用につきましては、現在、県立の愛知商業高校や犬山南高校などで行っております。愛知商業高校では、導入に先立って生徒会の役員が試食をし、メニュー構成や栄養バランスを確かめて業者に意見を伝えるなど、生徒が主体となって導入がされました。希望する生徒はスマートフォンのアプリで四種類のメニューから選んで注文することができ、利用する生徒からは好評を得ていると聞いております。
こうした好事例を他の全日制高校に推奨して、生徒や保護者の選択肢を増やし、子供たちが安心して栄養バランスの取れた昼食を楽しめるようにしてまいります。
28: ◯スポーツ局長(成瀬一浩君) 愛知県一宮総合運動場の改修状況と今後の整備、改修の考え方についてお答えします。
一宮総合運動場は、野球、サッカー、テニス、水泳、陸上と様々なスポーツができる総合運動場であり、年間十七万人を超える皆様に利用されております。
一九六七年四月の開場から五十五年が経過しており、その間のスポーツ施設を取り巻く環境や利用者のニーズの変化に対応するため、陸上競技場の全天候化やテニスコートの人工芝への改修、トイレの洋式化を実施するなど、より利用しやすく、かつ、安全に使っていただけるよう施設の改修を進めてまいりました。
今年度は、野球場の防球ネットの整備や場内にある遊歩道の舗装整備のほか、熱中症対策として日差しを遮る休憩施設を多目的グラウンドに整備するなど、野球やテニスなどの施設利用者はもとより、日々、ウオーキングやジョギングで御利用いただいている近隣にお住まいの皆様の声も取り入れながら施設の改修を進めております。
今後も、引き続き、利用者の声に丁寧に対応するとともに、国民体育大会やインターハイの愛知県予選会などが開催できる第三種公認陸上競技場として整備を続けるなど、愛知県、特に尾張地域のスポーツ振興の拠点にふさわしい施設として必要な施設の整備、改修を行ってまいりたいと考えております。
次に、スポーツ局所管のプールについてお答えします。
スポーツ局が所管するプールは、愛知県一宮総合運動場のほか、愛知県口論義運動公園、愛知県体育館にございます。
一宮総合運動場には、日本水泳連盟公認の五十メートルプールのほか、二十五メートルプール、幼児用プールがあり、五十メートル公認プールでは、西尾張地域の中学生の大会などが開催されております。
口論義運動公園には、日本水泳連盟公認の五十メートル及び二十五メートルの屋内温水プールがあり、水球の愛知県大会や競泳のインターハイの予選会などが開催されているほか、水球日本代表合宿でも利用されております。
愛知県体育館には、二十五メートルの屋内温水プールがあり、幼児から高齢者まで幅広い世代を対象とした水泳教室などに利用いただいています。
愛知県体育館のプールは、愛知国際アリーナへの建て替えに伴い廃止予定ですが、一宮と口論義のプールにつきましては、本県の水泳競技の普及、振興に大きな役割を果たしていることから、プールの機能維持や公認の継続に必要な整備を行ってまいります。そして、引き続き、施設の指定管理者の協力の下、大会や教室の開催など、県民の皆様が広く水泳に関わる機会をつくってまいりたいと考えております。
また、市町村がプールを整備する場合には、国の交付金が活用できるよう国に働きかけるなどの支援を行っているところです。
さらに、今後、小中学生の愛知県大会などが開催できるプールを市町村が整備するような場合には、プールの公認取得に向けた助言やスポーツ振興くじ助成金の活用支援など、市町村に寄り添った対応をしてまいりたいと考えております。
29: ◯八番(平松利英君) 全日制高校に給食を試験的に導入という、まず初めの第一歩を踏み出していただけるという大変前向きな答弁をいただきましてありがとうございました。
プールについて、要望を申し上げます。
現在主流となっている二十五メートル・五十メートル併用の公認プールとは、プールの長辺が五十メートル、短辺が二十五メートルのことを言います。五十メートルの長水路大会時には、一レーンが二・五メートルですので、五十メートルの大会には十レーンを確保でき、逆に二十五メートルの短水路大会時には、スタート位置を縦と横を逆転することによって、そしてまた、さらに半分に仕切ることにより二面取ることができ、それぞれが十レーン、計二十レーンを利用した大規模大会が開催できます。その二十五メートル・五十メートル併用プールが現在国際的なスタンダードになっていますが、その設置数について申し上げます。
三重県には、スポーツの杜鈴鹿に二十五メートル・五十メートル併用の公認プールがあり、観客席は約二千席。静岡県には、壇上でも申し上げたとおり、三施設ありまして、浜松市総合水泳場に二十五メートル・五十メートル併用の公認プールがあり、観客席は三千席。静岡県富士水泳場にも同様のプールがあり、観客席は同じく三千席。そして、静岡市の静岡県立水泳場にも二十五メートル・五十メートル併用の公認プールがあり、観客スタンドは二千八百人収容となっています。
一方、愛知県にはそれがなく、現在、長寿命化改修工事を実施中の愛知県口論義運動公園プールは、二十五メートルが僅か五レーンしかありません。それとは別に五十メートルプールがありますが、横幅が二十メートルほどで八レーンのプールとなっており、縦、横を逆転しても二十五メートルプールになりません。
なお、二十五メートルプールが五レーンありますが、水深が浅いので飛び込みができないんです。そのため、記録大会として利用することが厳しいプールとなっています。観客席は僅か三百七十三席です。
水泳人気の高まりから、水泳大会の規模も拡大しています。また、ターン技術の向上により短水路のほうが記録を伸ばすことができるため、短水路公認記録大会の人気が高まっています。しかし、県立の口論義運動公園プールは、大規模な大会が開催できません。また、選手控室がないため、選手は貸切りバスの中で寒さに耐えながら待機する、これでは記録が伸びるわけがありません。
例えば、尾張地区を中心に参加者が集うASCAアクアサイドチャレンジ水泳記録会は、コロナ前には選手二千名、競技役員百八十名、各スイミングクラブの指導員や父兄などを合わせると五千名を超える関係者が参加されていました。しかし、尾張地区大会であるものの、県内にそれを開催できる場所がなく、十年以上、浜松や鈴鹿に行って開催しているんです。大会参加者は、食事は当然ですが、遠方であるため宿泊も必要になるなど、その経済効果はとても高く、他県にお金を落とし続けることを主催者は疑問に感じてみえます。
このままでは、中京圏で最大の水泳人口を誇る愛知県がこれから先も三重県や静岡県へ出向いて大会を開催しなければなりません。愛知県の大会は愛知県で開催できるよう、長・短水路併用プール、そして、それに見合う観客席を付設した施設を県内にまず一か所設置していただくよう強く要望いたします。それが実現できれば、他県へ頭を下げて施設を借りることはなくなるでしょう。
需要がどれほどあるか水泳関係団体にヒアリングしたところ、年間を通じて毎週末水泳大会の開催希望で日程が埋まると聞きました。とても需要のあることも分かったのです。
また、その規模のプールを市町村が主体となって設置する向きがあれば、それは愛知県にとってチャンスであります。県下の水泳選手が熱望し、健康長寿社会に寄与する温水プール設置に当たり、県民のために、ぜひとも県として協力体制を構築していただき、資金面でのバックアップをしていただくよう要望して、質問を終わります。
30: ◯議長(須崎かん君) 進行いたします。
嶋口忠弘議員。
〔三十三番嶋口忠弘君登壇〕(拍手)
31: ◯三十三番(嶋口忠弘君) 通告に従い、本県のモノづくり愛知を支える幹線道路整備について、国際物流を支える名古屋港の機能強化並びに脱炭素化に向けた取組について、大きく二点について質問してまいります。
中部圏の道路網における大きな出来事として、二〇二一年五月に名古屋第二環状自動車道──以下、名二環と言いますが──全線開通し、これに合わせて高速道路料金体系の改定が実施されました。
愛知県を中心とした中部圏はモノづくりで日本経済を牽引しており、中部圏の日本経済への貢献は大きいにもかかわらず、中部圏の道路や港湾といったインフラは整備途上であるのが現状であり、今後も中部圏が引き続き日本経済を牽引していくためには物流の効率化が不可欠で、そのためのインフラ整備が必要だと考えます。
また、新型コロナウイルス感染症の発生や脱炭素に向けた急加速な動き、自動車業界で重要視されているトレンドの一つのCASEやDXの進展、災害の激甚化、インバウンドの増加といったインフラに大きな影響を与える状況が発生していることから、これらを考慮した上で、中部圏としてのインフラ整備の在り方も考えていく必要があります。
中部圏における愛知県の具体的なインフラ整備として、日本最大のゼロメートル地域や、モノづくり拠点である三河地域とセントレアなどを結ぶ新たな環状道路や名古屋港の機能強化、さらに人手不足対応、自動運転対応のためのインフラ整備、名二環全線開通、料金体系改定による課題対応、インフラ整備における脱炭素への取組、老朽化インフラへの対応や防災のためのインフラ整備など、多くの課題に対する取組が求められています。
そこで、具体的に幾つかの課題について触れたいと思います。
初めに、激化する企業の国際競争についてであります。
総務省の令和三年度情報通信白書では、より短い時間でどれだけの成果を生み出せているのかを定量化した指標である時間当たり労働生産性の国際比較では、G7各国の中で日本は最下位となっています。
その要因の一つとして、インフラ分野での渋滞損失が挙げられており、あるメーカーからは、製造過程においてコスト削減しても道路が渋滞しているとコスト削減の効果が無駄になるという声が聞かれ、中部圏が我が国の経済をモノづくりで引き続き牽引していくためには、中部圏で渋滞解消することが必要と言われています。
次に、少子高齢・人口減少社会の進展についてですが、人口構成は、少子高齢、人口減少が進展すると予測されています。さらに、新型コロナの流行が結婚行動や妊娠活動に少なからず影響を及ぼした可能性があるとの指摘もあり、この場合は、現在の予測を上回るペースで少子高齢、人口減少が進展することになり、十五歳以上六十五歳未満の生産年齢人口も減少し、インフラに関するところでは、トラック運転者や土木・建築部門の労働者が減少し、人手不足への対応や担い手確保の困難、インフラ利用者の減少への対応も必要になると予測されています。防災面では、高齢者などの避難行動要支援者に対する避難支援者が減少することへの対応も必要と言われています。
加えて、最近の新たな状況として、新型コロナの発生や脱炭素に関する動きなど、インフラに大きな影響を与える状況も発生しています。
二〇二〇年初めに発生した新型コロナウイルスの感染拡大は、国民の生活様式や産業、物流、サプライチェーン等の変化などにより、インフラにも大きな変化を与えることになりました。
例えば、感染予防のための新しい生活様式やテレワークの拡大から働き方や住まい方といった生活様式にも変化が生まれ、このことがインフラ整備の考え方にも影響を与えることが予測されています。
また、物流が制限を受けることで、グローバルサプライチェーンの脆弱性が露呈し、必要なときに必要なものが手に入らないなどの問題も生じました。
この問題を受けて、近隣有志国との連携の強化のみならず、サプライチェーンの海外にある工場を国内に戻す国内回帰への対応の必要性も認識されてきています。
経済産業省のサプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金では、二〇二一年度の二次公募では二百八十件、約三千百十八億円の応募があり、百五十一件、二千九十五億円が採択されています。二〇二二年度の三次公募では二百五十六件、約二千四百五十二億円の応募があり、八十五件、約九百七十四億円が採択されています。
このサプライチェーンの国内回帰対応のためには、輸入に頼っていた荷動きの一部を国内で対応する必要が生じることから、これを支える道路や港湾整備が必要となります。
次に、脱炭素の取組については、政府は、二〇二〇年十月に、二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言するとともに、二〇五〇年に向け、技術革新を通じて今後の成長が期待される十四の産業において高い目標を掲げた上で、現状の課題と今後の取組を明記したグリーン成長戦略を発表しました。
また、二〇二一年五月に、二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現を法律に明記した地球温暖化対策推進法の改正が成立し、さらに二〇五〇年までのカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて、政府は二〇三〇年度の温室効果ガスの排出削減目標を二〇一三年度比で四六%減とすることを決定しました。この二〇一三年度比で二六%減としていた従来の削減目標から大幅な上積みとなるものであり、このように、脱炭素に向けた急加速の動きはインフラにも影響を与えるものであり、移動やインフラ整備の脱炭素や物流効率化による脱炭素の必要性が生じることとなっています。
次に、デジタル化の加速、デジタルトランスフォーメーション(DX)についてです。
デジタル技術の進展と、あらゆるものがインターネットにつながるIoTの発展により、様々な経済活動等を逐一データ化し、ビッグデータとしてインターネット等を通じて集約した上で、分析、活用することや、AIにビッグデータを与えることにより、単なる情報解析だけでなく、複雑な判断を伴う労働やサービスの機械による情報提供が可能となるなど、新たな経済発展や社会構造の変革を誘発することが期待されています。
これらは第四次産業革命とも呼ばれ、十八世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の機械化である第一次産業革命、二十世紀初頭の分業に基づく電力を用いた大量生産である第二次産業革命、一九七〇年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた一層のオートメーション化である第三次革命に続く技術革新とされており、これらを活用してビジネスモデルの産業構造そのものを進化させることがDX(デジタル変革)とされます。
既に、インフラの維持管理においては、老朽化対応における画像による損傷状況判断や、ドローン活用による点検、国土交通省が所有するインフラに関する利用などのデータをオープンデータ化し、研究分析に使用することなどが取り組まれています。
一方、インフラ整備においても、財政制約の下、例えば、既存の道路網を活用するために、交通状況を基にした最適な信号制御を行い、道路整備を行わずに道路容量を増加させるDXによる物流効率化も期待されています。そのほかにも、災害の激甚化、インバウンドの増加などでインフラ整備の必要性が重要となっています。
そこで、本県における新たな環状道路について、名二環は二〇二一年五月に全線開通済みであり、東海環状自動車道では、開通済みの東回り区間で沿線への資本ストック効果が見られ、西回り区間でも、将来の全線開通を見越して企業立地などが進んでいます。
現在、名古屋都市圏の道路ネットワーク強化のための取組が着々と進む中、その効果を広域に波及させ、物流ネットワークの強化や交流、連携を促進するためには、名古屋都市圏から各方面をつなぐ広域道路ネットワークの形成が必要です。
その中でも、私の地元である安城市を通り、本県の主要な広域道路ネットワークの一角を構成する名豊道路は、名古屋都市圏から西三河地域を東西に横断し、自動車輸入港である三河港などと接続するなど、非常に重要な役割を担っており、二〇二四年度に予定されている全線開通に向けて着々と整備が進められる中、一日も早い全線開通を心待ちにしているところであります。
しかしながら、全線開通による経済の一層の活性化に期待する一方で、西尾東インターチェンジより東側の区間は暫定二車線での整備にとどまっており、全線開通後に想定される交通量の増加により交通の停滞が懸念されることから、全線開通による効果を最大限発揮するためにも、県当局においては、暫定二車線区間の四車線化について、引き続き国への働きかけをお願いいたします。
さらに、生産拠点が集積する豊明市内から安城市内にかけては、名豊道路は四車線で整備されているものの、慢性的な渋滞が常態化しているため、全線開通後にさらなる混雑の発生が危惧されております。また、事故等による通行止めのときには、名豊道路の機能を代替する道路がなく、物流が停滞する懸念もあります。さらに、一般道路についても、衣浦港を渡る橋梁が限られるために交通が集中し、渋滞や事故などの影響が生じております。このため、当地域において新たな広域道路ネットワークを構築し、名豊道路の機能を補完するとともに、地域の交通課題の解決を図っていくことが必要であると考えています。
そこでお尋ねします。
昨年三月に、生産拠点が集積する西三河南部地域と物流拠点である名古屋港とをつなぐ名古屋三河道路について、名豊道路から西知多道路までの区間を優先整備区間とし、県が路線検討を行うことが国土交通省より示されました。
名古屋三河道路の整備により、高規格道路の空白地帯である西三河南部地域の広域道路ネットワークの充実強化が図られ、サプライチェーンの効率化による産業競争力の強化とともに、交流、連携の活性化が見込まれることから、地元においても、その実現に対する期待が大変高まってきており、本県が路線検討を行う、名古屋三河道路の優先整備区間である西知多道路から名豊道路の区間における現時点での検討状況について伺います。
次に、国際物流を支える名古屋港の機能強化についてお尋ねします。
名古屋港の二〇二二年の総取扱貨物量は二〇〇二年から二十一年連続の日本一となることが見込まれており、さらに貿易黒字額は一九九八年から二十五年連続日本一となっており、名古屋港は中部圏の自動車、工作機械等のモノづくり産業をはじめとする企業のグローバルサプライチェーンを支えており、今後とも国際競争力の維持、強化を図り、世界に選ばれる港湾の形成を目指すことが不可欠です。
名古屋港では、東南アジア航路に就航するコンテナ船が大型化しており、東南アジア向けコンテナ貨物を取り扱う飛島埠頭東地区において、岸壁の増深工事と耐震化が進められており、早期の整備完了が必要であります。
また、現状、自動車輸出台数が日本一の名古屋港では、モータープールが金城埠頭、弥富埠頭等に点在し、横持ちが発生するなど非効率な状況にあり、さらに大型の自動車運搬船の入港隻数が増加していますが、水深不足による喫水調整が行われている状況であると聞いております。
一方、先進的な取組として、名古屋港飛島埠頭南側コンテナターミナルでは、コンテナの自動搬送台車が国内で初めて導入をされ、また、遠隔操作での荷役作業を可能とするラバータイヤ式ガントリークレーンも世界に先駆けて導入されており、また、港内のコンテナターミナルを一元管理する名古屋港統一ターミナルシステムを導入するなど、荷役作業が効率化されていると聞いております。
加えて、飛島埠頭における集中管理ゲートの運用により渋滞発生が抑制され、交通の円滑化に寄与しております。しかし、国は、さらなる港湾労働人口の減少と特殊技能を有する熟練労働者の高齢化を踏まえ、良好な労働環境と世界最高水準の生産性を確保する、ヒトを支援するAIターミナルの実現や港湾に関する諸手続を電子化し、港湾物流の生産性向上を図るサイバーポートに取り組む中、名古屋港がモノづくり産業の国際競争力強化を引き続き物流面で支えていくためには、港湾施設の整備や情報通信技術を活用した物流の効率性向上に向けた取組が必要不可欠であると思います。
そこで、二点お尋ねいたします。
一点目として、名古屋港におけるコンテナと主要貨物を取り扱う港湾施設の整備状況についてお伺いいたします。
二点目に、情報通信技術を活用したさらなる港湾物流の効率化について、現在の取組状況についてお伺いをいたします。
次に、名古屋港における脱炭素化に向けた取組についてお尋ねします。
我が国の港湾は、CO2排出量の約六割を占める発電、鉄鋼、化学工業等の多くが立地する臨海部産業の拠点、エネルギーの一大消費拠点です。
現在は、これらの産業で利用される化石燃料等が港湾を利用して輸入されていますが、今後は化石燃料に代わる脱炭素エネルギーに転換していくことが想定されています。水素、燃料アンモニア等の活用等によるCO2削減の余地が大きい港湾地域において、脱炭素化に向けた先導的な取組を集中的に行うことは、我が国の二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に効果的、効率的であると考えられています。
そこで、国土交通省港湾局では、国際物流の結節点であり、また、産業拠点でもある港湾において、水素、燃料アンモニア等の大量、安定、安価な輸入、貯蔵等を可能とする受入れ環境の整備や、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化、集積する臨海部産業との連携等を通じて、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとすることを目指すカーボンニュートラルポートを形成し、我が国全体の脱炭素社会の実現に貢献することとしています。
中部地域のモノづくりや暮らしを支える名古屋港の背後地は、世界を代表する自動車産業の高い技術力を誇る地場産業など、モノづくり産業の拠点であり、その産業集積を背景に、カーボンニュートラルに向けた次世代エネルギーの需要ポテンシャルは非常に高いと考えられています。
また、名古屋港は、地域のモノづくり産業を強力に支援する国際拠点港湾として、日本経済の持続的な成長に寄与する港づくりに取り組んでいることや、これまで石油や天然ガスなどのエネルギーの供給において重要な役割を果たしてきたことを踏まえ、関係者と連携の下、水素等サプライチェーンの拠点としての受入れ環境の整備を通じて、モノづくりとカーボンニュートラルの両立に貢献できる新たなモデルを提示、推進に取り組んでいく必要があります。
この名古屋港では、これまで関係者が連携することにより、いち早く情報化、自動化、遠隔化等の施策を展開し、世界初や日本初の取組を実現してきております。現在、脱炭素化の取組は世界規模で進められている状況であり、ロサンゼルス港では官民一体となった先進的な取組が行われており、姉妹港である名古屋港と協力関係にあると聞いております。
また、水素の利用促進に取り組む民間企業から構成される中部圏水素利用協議会が二〇二〇年三月に立ち上がり、名古屋港における大規模な水素利用の可能性も検討されているところであり、二〇二二年一月には、中部圏における大規模水素社会実装実現に向けた提言書が大村知事に提出をされ、二〇二二年二月には、愛知県、岐阜県、三重県、名古屋市、名古屋商工会議所、中部経済連合会、中部経済同友会及び中部圏水素利用協議会において、中部圏における大規模水素社会実装の実現に向けた包括連携協定が締結され、また、この取組を推進するための中部圏大規模水素サプライチェーン社会実装推進会議が設立をされ、同年十月には、水素に加えてアンモニアについても検討の対象としていくことから、会議名が中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議に改められるなど、二〇五〇年のカーボンニュートラルの達成に向けた動きが活発となっています。
さらに、名古屋港におけるカーボンニュートラルポートの形成に向け、同港の臨海部に立地する民間事業者等により構成される名古屋港カーボンニュートラルポート検討会が、二〇二二年六月に検討会の成果として名古屋港カーボンニュートラルポート形成基本構想を取りまとめており、同構想では、名古屋港におけるカーボンニュートラルポートの実現に向け、港湾地域の面的、効率的な脱炭素化や、水素、アンモニア等のサプライチェーンの拠点としての受入れ環境の形成を目指すこととされております。
そこでお尋ねします。
二〇五〇年のカーボンニュートラル達成に向けた動きが様々なところで活発になってきておりますが、名古屋港における脱炭素化に向けた現在の取組状況についてお伺いをいたします。
以上で壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
32:
◯建設局長(道浦真君) 名古屋三河道路の検討状況についてであります。
名古屋三河道路は、伊勢湾岸自動車道とダブルネットワークを形成する重要な路線であり、境川渡河部周辺など、知多・西三河地域の交通混雑緩和に向け、西知多道路から名豊道路までの優先整備区間について、今年度より本県が構想段階評価に着手いたしました。
構想段階評価は、都市計画や環境影響評価の手続に着手する前に、沿線住民や道路利用者の皆様に幅広く意見を聞きながら、概略ルート帯やインターチェンジの配置、道路構造などの概略計画を段階的に取りまとめるものです。
なお、検討の過程では、昨年十二月に立ち上げた名古屋三河道路有識者委員会において、客観的な観点から助言を得ることとしております。
現在の取組状況としましては、今月から、名古屋三河道路に求められる役割について、沿線住民の方などへのアンケートや道路を利用する事業者へのヒアリング、パーキングエリアや道の駅などで行う一般ドライバーへのインタビュー調査などにより幅広く意見聴取を行っているところです。
また、あわせて、概略ルート帯の検討に向けて、最新の航空測量結果などを活用し、沿線の土地利用や自然環境、将来の開発動向などの基礎的な調査を進めております。
今後とも、国や沿線自治体などと連携を取りながら、計画の早期具体化に向けてしっかりと取り組んでまいります。
33: ◯都市・交通局長(金田学君) 初めに、名古屋港の機能強化と脱炭素に向けた取組のうち、整備状況と港湾物流の効率化についてお答えいたします。
まず、港湾施設の整備状況につきましては、世界的に大型化が進むコンテナ船に対応するため、シンガポールやバンコク航路などを中心に利用されている飛島埠頭東側コンテナターミナルのR1及びR2岸壁において、耐震化と水深十五メートルまで掘削する事業を進めております。
現在のところ、R1岸壁については昨年十月に完成し、供用開始しており、R2岸壁についても引き続き整備を進めてまいります。
また、金城埠頭では、完成自動車取扱機能のさらなる集約・拠点化を図るため、新たなモータープールの整備を進めており、今年度中には耐震強化岸壁が概成し、今後は用地の埋立て、造成を進めていく予定です。
次に、情報通信技術を活用した港湾物流の効率化に関する取組状況についてです。
議員お示しの名古屋港統一ターミナルシステムについては、現在、鍋田埠頭において、トレーラーがターミナル到着前に貨物に関する情報を送受信することでコンテナの受渡し等を効率的に行うことができるよう、システム改修の検討を進めております。
また、荷役作業の効率化に向け、遠隔で操作する荷役機械の導入を進めており、これまでに四十基のうち十基の運用を開始し、来年度には残る全ての荷役機械の導入を完了する予定です。
今後とも、中部圏のモノづくり産業を物流面で支える名古屋港のさらなる国際競争力強化に向け、港湾施設の整備や情報通信技術を活用した物流の効率化に着実に取り組んでまいります。
次に、脱炭素に向けた取組状況についてお答えいたします。
名古屋港には、コンテナ貨物などの物流施設だけでなく、製鉄所、化学工場、火力発電所など多くの産業が立地し、中部圏のモノづくり産業を物流面だけなく生産面やエネルギー供給の面でも支えております。
また、石油、自動車、金融など様々な分野の企業により設立された中部圏水素利用協議会においても、名古屋港を水素の有力な受入れ基地として提言しており、次世代エネルギーのサプライチェーンの拠点となることが期待されております。
こうした動きを踏まえ、二〇二二年六月に、国をはじめとする関係者により策定されました名古屋港カーボンニュートラルポート形成基本構想に基づき、現在は、学識経験者、関係企業や行政機関などで構成する協議会において、名古屋港カーボンニュートラルポート形成計画の検討を進めており、今月中の策定、公表を予定しているところです。
今後は、モノづくり産業の成長とカーボンニュートラル実現の両立に向け、地元自治体や関係企業などとも連携しながら、この計画に基づいた脱炭素の取組をしっかりと進めてまいります。
34: ◯知事(
大村秀章君) 嶋口忠弘議員の質問のうち、私からも、モノづくり愛知を支える社会基盤整備についてお答えをいたします。
圧倒的な産業集積を誇る本県が、今後も日本のフロントランナーとして我が国の経済を牽引していくためには、名古屋港などの物流拠点の機能強化や、サプライチェーンを支える強靱な道路交通網などの構築により、高い国際競争力を維持、強化していくことが必要であります。
また、中部国際空港の第二滑走路の整備による交流連携基盤の強化やリニア大交流圏の形成は、人や情報、知見を本県に呼び込んで、モノづくりの根源である人づくりを進めていく絶好の機会であり、そうして培われる多様な人材は、本県が有する高度な技術力と融合してイノベーションを生み出すものと考えます。
経済、産業の活性化と人づくりの進展は、相乗効果によって地域をさらに元気にすることから、この好循環を促すため、産業集積地や空港、港湾との連携を強化していくことが極めて重要であります。
こうした中で、嶋口議員よりお尋ねのありました名古屋三河道路につきましても、早期実現に向けまして、沿線市町や経済界などとも一丸となって全力で推進してまいります。
今後も愛知の価値を高めるとともに、日本の成長をリードしていくため、産業首都あいちの根幹となる社会基盤整備を着実に進め、日本一元気な愛知をつくってまいります。
35: ◯議長(須崎かん君) 進行いたします。
近藤裕人議員。
〔六十一番近藤裕人君登壇〕(拍手)
36: ◯六十一番(近藤裕人君) 国際戦略について質問を始める前に、少子化に関して少し述べさせていただきます。
先月、二月二十八日の報道で、二〇二二年に国内で生まれた子供の数が八十万人を割り込むことが確実になったとの報道がありました。これは、厚生労働省が、二〇二二年の人口動態統計で、外国人を含む出生数が統計のある一八九九年以降初めて八十万人を割り込み、七十九万九千七百二十八人となったとの公表を受けての報道でした。
マスコミによっては危機的だとの論評もありましたが、こうした公表を想定していたかのように、岸田総理は異次元の少子化対策を打ち出しておられ、具体の施策は今後明らかになると思いますが、国が示している希望合計特殊出生率一・八、これは二〇一五年秋に戦後初めて政府が公式に掲げた出生率目標であり、全国の自治体に達成を呼びかけているものです。
しかし、この目標に対しまして、全国千七百四十一自治体のうち、一・八を達成したのは僅か百四十四の自治体で、愛知県もこの目標に向かって施策を打ち出しておられますが、なかなか思惑どおりには進んでいない現実があると思います。
少子化対策については、ある説によれば、人口を維持するには出生率二・〇六から二・〇七が必要とされており、仮に国の目標である出生率一・八を達成したとしても、人口が劇的に回復するわけではなく、人口減少の速度が少し遅くなるだけで、人口は減り続けるということをまずは認識することが必要だと思います。
先週の代表質問で我が党の石井団長が質問したように、愛知県の人口は、二〇一九年の七百五十五万余人をピークに三年連続で減少し、現在は七百五十万人を割り込んでおり、大変心配な状況だと思います。
一方で、在留外国人数を見ると、二〇一九年の二十八万千百五十三人から、二〇二〇年は七千三百六十九人減少の二十七万三千七百八十四人であり、三年間の愛知県の人口減少は、コロナ禍、また、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う物価高、円安の厳しい状況から在留外国人の転出が進んだのではないかと思うところです。
私の地元日進市で外国人数の推移を見ますと、二〇一八年に千七百九十六人だった外国人数は、二〇一九年には千六百五十人で百四十六人の減少、さらに二〇二〇年には千六百十三人と三十七人の減少となっております。
東郷町についても見てみますと、データの取り方が少し違うので分かりづらい部分がありますが、二〇二〇年四月に千三百八十六人であった外国人数が、その翌年度に千百九十四人と減少しています。
しかしながら、日進市の昨年、二〇二一年十月一日の外国人数はというと、二百七十人増えて千八百八十三人、東郷町は、今年、二〇二三年一月のデータによりますと、千三百十三人と、マックスの人数には届いていないものの、回復にあることが分かります。そうしたことを考えましても、愛知県も今後、コロナの終息によって外国人は戻ってくるのではなかろうかと私は思います。
ということで、改めて愛知県の外国人の受入れについて注目をしてみます。
二〇一八年の住民基本台帳を基にNHKが調査をしました外国人の増加で総人口が増加した市町村ランキングというものがございます。その四十位までをランクしたものでありますが、一位が豊田市、そのほかに、三位に西尾市、十八位に豊明市、十九位、碧南市、二十四位、蟹江町、二十六位、東浦町、三十六位が飛島村と七市町村がランクインしたことからも、その自治体の産業構造等によるとは思いますけれども、外国人労働者が増えていることで人口減少に歯止めがかかっている、その要因となっていることが分かります。
今年一月に厚生労働省の愛知労働局が発表しました愛知県の外国人雇用状況によれば、昨年十月現在における外国人労働者は十八万八千六百九十一人で、前年と比べて一万九百二十二人の増加、平成十九年以降、過去最高を更新し、対前年増加率は六・一%となっております。そのポイント数でいいますと、前年の一・五%から四・六ポイントが増加しているということになっております。外国人を雇用する事業所数で見ますと、二万三千八百五十か所と、前年と比べ千二百十一か所増加となっております。
こうした状況を見ても、愛知県が製造品出荷額の全国一位の座を譲らずにいられたのも、これまで製造業の売上げが好調で比較的高い賃金によって外国人人材が確保できたことにほかならず、今後もますます外国人人材の活用を進め、さらなる海外との連携をし、より国際化に力を入れなければならないと思います。
日本での人口減少が叫ばれる一方で、全世界の人口はというと、既に八十億人を突破し、二〇八〇年には百四億に達すると言われております。特に人口増加が著しいと言われるインドやアフリカ諸国からの人材の受入れがこれから期待されると思います。
しかし、現在、日本では、移民と外国人労働者は別物と区別されております。二〇一八年に政府は、外国人労働者の受入れ拡大に向けた出入国管理及び難民認定法、いわゆる入管法の改正に際して、政府としては、いわゆる
移民政策を取ることは考えていない、つまり
移民政策は取らないというスタンスでありますけれども、外国人労働者は受け入れるとしました。それは、労働者としての外国人は認めるが、その在留期間を制限し、家族の帯同を認めないというものであります。
翌年の二〇一九年四月から施行された改正入管法には、技能実習資格で三年以上の実習を経験した者に、新たな在留資格である特定技能一号を与え、さらに最長五年間の滞在を認める改正をしました。
この改正は、少子・高齢化、人口減少への対応に悩む日本として、外国人を受け入れざるを得ないということを示すものだと思います。いよいよ
移民政策を議論する時期にあるのだと考えます。
今後、さらなる少子・高齢化の進展により労働人口減少は着実に進み、昨今の人手不足、賃金のアップは続くと考えられます。愛知県の産業を支える外国人の受入れについて、少子化対策と外国人県民との多文化共生の課題を並行してしっかりと議論すべきであると述べ、前置きが長くなりましたが、本題の愛知県の国際戦略についての質問に入らせていただきます。
愛知県の国際戦略について、これまでの取組を振り返ってみますと、県は、国際化に関する施策を進めるに当たり、二〇〇八年に、まず、あいちグローバルプランを策定しました。当時、リーマンショック、円高、ヨーロッパでの信用不安、領有権に関連した隣国との関係悪化など、国際情勢が大きく変化したことにより、その国際情勢に対応して施策を展開するために、世界と闘える愛知に向けて目指すべき愛知の姿をイメージ、それを実現するための国際戦略としてあいち国際戦略プランを策定しました。その後、あいち国際戦略プラン二〇二二を経て、昨年末にあいち国際戦略プラン二〇二七が策定されたところです。
新しく策定されたあいち国際戦略プラン二〇二七では、愛知県の現状を強みと課題に整理し、強みとしては、英語教育の着実な成果、外国人人口の集積、多様な魅力の存在、モノづくり産業の集積を挙げて、一方、課題としては、デジタル人材の不足、高度外国人材の受入れの遅れ、国際的な認知度の低さ、デジタル化の必要性を挙げ、それらを前提に目指すべき愛知の姿を世界と行き来するヒト・モノ・カネ・情報により成長を続ける愛知としたところで、それを実践する戦略、施策の方向性が示されました。
今回は、それらの方向性のうち、若者のグローバル人材としての育成、仕事、生活の充実による外国人の活躍、定着の促進、愛知型成長モデルによる産業の国際競争力強化について、順次質問をしてまいります。
まず、仕事、生活の充実による外国人の活躍、定着の促進についてです。
愛知県の特徴でもあるモノづくり製造業に関していえば、外国人の存在はとても大きく、県では、古くは海外移住者子弟留学生受入事業がありました。その後、グローバル人材の活躍の場を増やし、人材を流入、集積するため、県内の外国人留学生が卒業後も当地域で活躍できるように、愛知のものづくりを支える留学生受入事業、また、留学生地域定着・活躍促進事業を進めてこられました。
私も、名古屋の大学が受け入れた留学生の知り合いがおりまして、今も当時の日本人学生仲間と交流を続け、愛知県との関わりを持ちながら活躍していることを大変うれしく、頼もしく思うところで、そうした外国人への日本語教育、また、彼らの生活環境の整備について、愛知県として様々施策を進め、また、市町村レベルでも国際交流協会と協力をして外国人との共生を進めていただいているものと承知をしております。
二〇一九年に導入した特定技能の外国人労働者数も増加しており、こうした外国人材への対応を迫られていると思いますが、私は今回の質問をするに当たり、技能実習生を介護人材として受け入れている小規模介護施設、いわゆるグループホーム、また、電子製品の組立て作業を担う外国人を受け入れている電子機器メーカー、さらに外国人高度人材をシステムエンジニアリングとして雇用するIT企業を訪問して、そこで働く外国人が日本で生活する上で大変苦労していることや、事業者にとっても雇用する外国人のための環境整備に関する問題をお聞きいたしました。
訪問した企業の担当者の話によれば、業種によっては、日本人同等あるいはそれ以上の報酬を提示すれば、最近はSNSなどにより比較的外国人を雇用できるとのことですが、一方で、外国人労働者を求めても人材がなかなか集まらない、得られない業種、特に建設、建築、介護、農業などといった最近の日本人が敬遠しがちな分野については、ますます外国人材への期待が高まっていると思います。
そこでお伺いいたします。
こうした外国人に対する日本語教育や生活環境の整備について、県としてどのように取り組んでいるのかお伺いをいたします。
続いて、若者のグローバル人材としての育成についてお聞きをいたします。
二〇一三年に策定されたあいち国際戦略プラン二〇一七では、海外へ留学する日本人学生の数は二〇〇四年をピークに減少しており、二〇〇九年には五万九千九百二十三人と五年間で二七・八%減少しております。特に米国の大学に在籍する日本人学生が大きく落ち込んでおり、グローバル化が進展する世界にあって、日本人の若者の内向き志向が課題だと指摘されています。
また、コミュニケーションを図る上で基本となる英語の重要性がますます高まっていると言われるにもかかわらず、二〇一〇年におけるTOEFL成績の国別ランキングでは、我が国は百六十三か国中百三十五位、アジア三十か国中で二十七位と低迷しております。また、中高生の時期から、早期の海外体験、日本のTOEFLの平均スコア向上がグローバル社会に対応していく上では大きな課題とされていますが、これらの解決のため、学校教育における生徒の英語力を英検準二級相当程度以上である生徒の割合を増やすため、県立高等学校の先進的英語教育の拠点校として、あいちスーパーイングリッシュハブスクールの設置をし、成果を上げておられます。その事業を継続することで、一定のレベルに達した生徒の数を増やし、ハブスクール以外の学校にも広げていくとされています。
今回の国際戦略プラン二〇二七では、若者のグローバル人材としての育成に関する施策の方向性として、国際感覚の醸成を挙げておられますが、高校生の相互派遣をはじめ、若い世代の交流の充実を図り、県立高校においては国際的な視野を持つグローバルリーダーとなる人材の育成を目指すとしているところで、これまで長年進められた施策によって英語力が上がったなど、一定の成果があると評価できると思います。
今後も児童生徒全体の英語力の底上げが必要であることも理解できますが、例えばスポーツでいうところのトップアスリートを育成するようなアカデミーのような、本当に若者の海外志向を高め、英語力、国際感覚の優れた人材を育てる必要があると思います。
そこでお伺いいたします。
県立高校における若者の留学支援の強化、国際探究科の設置、津島高校での国際バカロレア導入についてどう進めていくのか、どのような成果を期待するのかお伺いいたします。
また、近年、愛知県では外国人児童生徒も増えておりますけれども、県立高校における外国人生徒への支援についての課題と対応はいかがか。それをお伺いいたします。
最後に、愛知型成長モデルによる産業の発展についてお伺いをいたします。
私は、昨年の六月議会で、愛知県の成長戦略の一つであるSTATION Aiについて質問をし、愛知県が二〇一六年にインドのニューデリーにインド愛知デスクを設置し、愛知県企業のインドの進出に伴う課題や進出後の事業活動、労務、税務等に関する相談を受け付けていることに触れ、スタートアップに関する新たな海外連携先として、成長著しいインドも視野に入れるべきと質問したところ、経済産業局長からは、本県の連携先として大いに期待できる国であると認識しているとの答弁をいただいた経緯があります。
あいち国際戦略プラン二〇二七に、愛知県の弱みとして挙げられているデジタル人材の不足、高度外国人材の受入れの遅れについていえば、インド人が世界中でそうした理系の分野で活躍している実績があり、インドIT・デジタル人材獲得プラットフォームで実証実験としてインド工科大学十校と連携、中でもインド工科大学ハイデラバード校とMOUを締結し、日本企業二十社をトライアル募集したという企業があるということを知るにつけ、また、介護の特定技能実習生としてインドからの人材の受入れが始まっていることや、今後、農業の特定技能人材としての受入れが始まりそうな話を聞くと、インドは、スタートアップ拠点としてのみならず、愛知県の企業への外国人人材派遣国として大変期待できるというところで、ぜひそうした意味でも検討を進めていただきたいと考えます。
そうしたことも念頭に、あいち国際戦略プラン二〇二七に記載されている施策の方向としてのイノベーションの創出、国際ビジネスの拡大支援、外国企業等の誘致とあり、当局においてはそれぞれ施策を進められていると思いますが、国際ビジネスの拡大支援について、本県の産業が今後も力強く発展し、日本の成長をリードしていくためには、県内企業がグローバル市場を獲得していくことが求められており、愛知県の支援が欠かせないと思います。
そこでお伺いをいたします。
今後の成長が期待されるインドをはじめとするアジア地域の国における愛知県内企業の海外事業活動の支援について、県はどのように取り組んでいかれるのかお伺いをいたします。
以上、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
37:
◯県民文化局長(伊藤正樹君) 外国人に対する日本語教育や生活環境の整備についてお答えいたします。
本県の外国人県民数は、二〇二二年六月末時点では二十八万九百十二人で、東京都に次いで全国で二番目に多くなっております。国籍別では、ブラジルが最も多く、ベトナムやネパール等の増加も顕著で、多様化しております。
外国人県民の方々が円滑な日常生活や社会生活を送るためには日本語の習得は不可欠であり、誰もが日本語学習の機会が得られるよう支援する必要があります。このため、本県では、二〇一九年六月に施行された日本語教育推進法に基づき、二〇二〇年四月に県民文化局内にあいち地域日本語教育推進センターを設置し、市町村が主体となってNPOや関係機関と連携しながら、日本語教育に取り組む体制づくりを推進しております。
昨年十二月に策定した第四次あいち多文化共生推進プランでは、地域日本語教育の推進体制づくりを重点的な取組の一つとして掲げており、来年度はほとんど日本語が分からない方を対象としたオンラインによる初期日本語教室も実施してまいります。
また、愛知県国際交流協会内に設置をしているあいち多文化共生センターでは、十四言語で対応可能な相談窓口を設置し、医療、福祉などの日常生活に関することから在留手続や労働に関する専門的な相談まで幅広く対応し、生活環境の整備、充実に取り組んでおります。
コロナ禍以降の社会経済活動の正常化が進む中、製造業を中心とした産業や地域を支える人材として、今後も多くの外国人の受入れが進むと見込まれることから、日本語教育や生活環境の整備に向けて引き続きしっかりと取り組んでまいります。
38: ◯教育長(飯田靖君) 初めに、県立高校における留学支援、国際探究科の設置、津島高校への国際バカロレアの導入についてお答えをいたします。
海外への留学支援につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響でこの三年ほど実施ができておりませんが、各学校では海外姉妹校とのオンライン交流などに力を入れて、生徒の国際感覚の醸成を図ってまいりました。
来年度は、男女共同参画の先進事例について学ぶ短期の海外派遣や、専門学科で学ぶ生徒が海外でインターンシップを体験する海外派遣を再開するなど、生徒の目をリアルな世界に向けさせて、留学についての機運も高めてまいります。
国際探究科の設置につきましては、まずは、英語教育や国際理解教育に力を注いできた刈谷北高校に二〇二三年四月──今度の四月になりますけれども──に設置をし、刈谷市内のグローバル企業や海外の姉妹校との連携により、生徒が国際的な視野を持って取り組む探求的な学びを推進してまいります。また、二年後の二〇二五年四月には、刈谷北高校の取組を参考にしながら、国際バカロレアを導入いたします津島高校にも国際探究科を設置してまいります。
津島高校への国際バカロレアの導入につきましては、二〇二五年度の併設中学校の開校の時点で中学生を対象とするバカロレアのカリキュラムを導入し、その生徒たちが高校に進む二〇二八年度から高校段階のカリキュラムを導入いたします。あわせて、バカロレアの指導ができる教員の研修にも取り組んでまいります。これにより、世界で通用する探求力を育成し、国際的に認められる大学入学資格の取得を目指してまいります。
こうした様々な取組によりまして、子供たちの国際性を育み、国際人として夢を持ってグローバルに活躍ができる人材を育ててまいります。
次に、県立高校における外国人生徒に対する支援の課題と対応についてお答えをいたします。
県立高校における日本語指導が必要な外国人生徒は近年増加傾向にありまして、日本語での日常会話がままならない生徒から学習言語としての日本語の習得に励んでいる生徒まで、日本語の能力は様々でありまして、各学校が実情に応じた支援を行ってまいりました。
こうした中、今年度からは、日本語教育の専門的なスキルを持つ支援員による日本語教育を、まずは外国人生徒が比較的多く在籍をする県立高校五校において、授業の前後の時間を活用して始めたところでございます。来年度は十二校に拡充をするとともに、さらに、日本語を学ぶための選択授業を設けて日本語教育の充実を図ってまいります。
また、生徒が自らの文化的背景やアイデンティティーを強みとして前向きに成長していけるよう、母語や母国の文化にも焦点を当てた教育プログラムの研究にも取り組んでまいります。
こうした取組を通して、外国人の子供一人一人の潜在的な能力を引き出しながら、母語と日本語をうまく使いこなし、自信を持って日本の社会で生きていけるよう支援の充実を図ってまいります。
39:
◯経済産業局長(
矢野剛史君) 愛知県の国際戦略についてのお尋ねのうち、県内企業の海外事業活動の支援についてお答えをいたします。
愛知県からアジア地域に進出している企業は、二〇二一年末現在で九百四社、二千八百六十一拠点となっております。そのうちインドは九十五社、百四十二拠点となっており、インドへの進出企業数はこの十年間で一・四倍に増加していることなどから、今後も大きな成長が期待される国であると認識をしております。
このため、県では、県内企業のインドをはじめとした海外展開を支援するため、あいち国際ビジネス支援センターをウインクあいちに設置しまして、相談対応や情報提供、専門家による伴走型支援などをジェトロ等と連携を行っており、今年度は既に約五百件のアジア進出に関する相談に対応しております。
また、海外における支援拠点として、中国の上海とタイのバンコクには県の職員を派遣して、海外産業情報センターを直接運営するとともに、民間企業等に委託する形でインド・ニューデリーのほか、中国・江蘇省、ベトナム・ハノイ及びインドネシア・ジャカルタにサポートデスクを設置しております。
これらの海外拠点では、議員御指摘のとおり、法務、労務、税務等の相談対応のほか、進出企業等との意見交換会を開催し、ビジネス上の課題把握や企業間のネットワーク形成の促進に努めております。今年度は、十二月末現在で二百二十五件の相談に対応するとともに、意見交換会を六回開催しております。
私自身、今年一月にインドを訪問し、県内企業の事業活動を支援するインド愛知デスクやジェトロ、県内企業の現地工場等への訪問を通じ、インドの活力や成長力を肌で感じてまいりました。その一方で、ビジネス習慣の相違など、現地の県内企業が直面している様々なビジネス上の課題等をお聞きし、改めて県内企業への継続的な支援の必要性を認識したところであります。
今後も、これら国内外の支援拠点を通じ、引き続き県内企業の海外事業活動支援にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
40: ◯知事(
大村秀章君) 近藤裕人議員の質問のうち、私からも本県の国際戦略についてお答えをいたします。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、オンライン交流が急速に普及するなど国際交流の在り方に大きな変化をもたらしました。一方、厳しさと複雑さを増す国際情勢が様々な分野の国際交流に影響を及ぼしております。
こうした中で、地方自治体の国際関連施策には、相手との信頼関係を醸成し、友人と呼べる関係性を築いていくことが求められており、地方政府間の交流による信頼が生まれることで、民間レベルの交流促進も期待できます。
また、特に若い世代が交流により関係を深めることは、将来にわたり良好な関係が継続されることにつながります。さらには、幅広い地域と良好な関係を構築することは、不確実性の高い時代における国際社会の分断や、金融、経済の変化などによるリスクの分散にもつながります。
こうしたことを念頭に置きながら、今後の五年間の国際関連施策の指針として、昨年十二月に新たにあいち国際戦略プラン二〇二七を策定いたしました。このプランに基づいて、本県がこれまで幅広い地域との間で築いてきた提携関係を生かしながら、文化、教育、経済、観光など様々な分野で多層的な交流を展開していくことで、プランの目標とする世界と行き来するヒト・モノ・カネ・情報により成長を続ける愛知の実現を目指してまいります。
41: ◯六十一番(近藤裕人君) 再発言、要望させていただきます。
教育委員会さん、それから県民文化局さんにおかれては、それぞれ外国人の皆様への様々なことをしていただいて、大変すばらしい、ありがたいというふうに思っております。
この質問冒頭でさせていただいたようなお話ですけれども、このそれぞれのぎりぎりの線、これは県として面倒を見てあげたほうがいいんだろうかどうかという、そういう微妙なところが随分あると思うんです。そうした部分について、特に県が単独で進めている事業があるということは、やっぱりこれは国にも理解してもらわないといけないんじゃないだろうかということを思うところで、先ほど県民文化局長の答弁で、外国人県民数が東京都に次いで全国二位だということでありますけれども、地域事情と言われるかもしれませんけど、これはやっぱり愛知県としては、産業を引っ張って、日本を引っ張っているということも自負心を持って、この外国人移民者をしっかりとフォローするということを訴えて、こういったことを進めていただきたいというふうに思います。
プランの中身についてお話しさせてもらいますが、教育委員会においては、英語力を高めて、そして、やる気のある学生さんをさらにレベルアップするんだと、そういう施策をバカロレアや、それから国際探究科を進めていただいているわけで、これを本当に突き詰めて、幅広くもちろんやっていただくことも必要だと思うんです。これは予算措置のかなう限りでということだと思います。どうしても満遍なくやっていると成果が出にくいということがありますので、先ほど壇上での質問でも言いましたが、スポーツでいうとトップアスリートを育てるような形で、英語力を高め、国際力のある人材を県として育むんだと、そういうことで事業を改めて検討いただければとお願いしたいと思います。
それから、経済産業局の関係ですけれども、海外進出については承知をしております。随分進めていただいておって、特にスタートアップについても、これまでも様々な拠点、海外とも連携していただいています。
私がなぜインドにここまでこだわるかというと、もちろん皆さんよく御存じのことですが、いよいよインドは世界で一番の人口を誇っているということになっています。昨年の十一月には中国を抜いたという報道もあったと思います。十四億千七百万人。こうした大変人口が多いということは、当然、市場としてまず魅力があるということでもありますし、それから、壇上でもお話ししたように、インド人のイメージとしては、理系、算数に強いんだと、だから、我々が今求めているところが、非常に手が届く、そういう段階に来ているんじゃないかということと併せて、それこそ申し上げましたが、介護人材やら農業に向けての人材派遣もインドとして考えているという動きがあるということを承知しています。そういったことも研究していただいて、これは経済産業局さんではないですが、インドを連携先とすることによって様々な交流が深まっていって、愛知県が発展することに資すると思います。
つい先日、知事は駐日インド大使と面会されたというふうに承知していますけれども、こういったインドとの関わり、スタートアップのプレ・ステーションAiでも、もう既にインドのジェトロさんが向こうの企業を連れてきて、ぜひスタートアップに参加してよという動きもしてもらっているというふうに聞いています。
インドは、アメリカとかと一緒で大きいので、やはりどこかの州を我々の、愛知県の連携先にすべきだというふうに思います。そうした中で提案をずっとしているのはハイデラバードでございまして、インド工科大学のハイデラバード校は、先ほども話したように、MOUを結んでいる企業があったり、あるいはJICAが日印の産学連携推進を目指したインド工科大学ハイデラバード校日印産学研究ネットワーク構築支援プロジェクトを立ち上げておったりもします。もう既に日本とのパイプが相当あるわけでありますので、これを生かさない手はないのではないかということで提案をさせていただいております。ぜひ前向きに御検討いただいて、なかなか、あまり手広くやっちゃっても成果が出るまでどうだということがあると思いますけれども、手つかずのところに手を突っ込んでいって、そことの連携を深めるということも一つの手だというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
それから、先ほどの質問の中ではちょっと控えましたけれども、戦略プランの弱みの中で、国際的な知名度の低さというのが載っています。議員の皆さん、もう御覧になったと思いますけど。これについて言うと、ジブリができたことによって大きくこれは改善されたと思います。今後、コロナが終息するとなれば、愛知県に来られる多くの外国人が当然のことながら増えるわけでありまして、そういった方々が愛知県に定住なり、就職するなり、そういったきっかけとなってくると思いますので、これは全庁を挙げて知恵を絞って取り組んでいただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
42: ◯四十番(南部文宏君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
43: ◯議長(須崎かん君) 南部文宏議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
44: ◯議長(須崎かん君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後二時三十九分休憩
━━━━━━━━━━━━━━━━━
午後三時二十分開議
45: ◯副議長(
佐藤一志君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
杉浦正和議員。
〔六番杉浦正和君登壇〕(拍手)
46: ◯六番(杉浦正和君) 通告に従いまして、一般質問をさせていただきます。
本県の農業支援について。
昨晩、後継者のいる農家の方からこんな話をされました。
お昼に息子と仕事を中断して一時間ぐらい話をした。息子が農業を辞めると言ってきた。資材や肥料の高騰で、どんなに一生懸命仕事しても赤字になるんじゃ続けていけない。夢がない。こう言うんだ。農業を何とかしてくれ。
私にこう訴えてこられた方は、地域でも平均以上に面積を耕作し、工夫を重ねながら頑張っている農家さんであります。そうした農家でさえ悲鳴を上げているのです。
このような現状を踏まえて、それぞれの質問に入っていきたいと思います。
まず初めに、農産物の輸出についてお伺いいたします。
農学栄えて農滅びる。これは、私の地元の大先輩の伴哲夫元市議、年齢は今年百一歳になりますが、その方が若い頃、東京農業大学のトイレに書かれていた落書きについて教えていただいた言葉であります。
農学が進歩する、農産物の生産量が上がる、需要と供給のバランスが崩れる、農産物が安くなる、農業者がもうからなくなる、ついに農業が滅びる。
農産物の市場流通の特徴は、どんな作物でも市場に持っていけば値段がつくといったことにありますが、逆にどんなにいいものであっても安い値段で買い取られることがあるとも言えます。
また、農産物の値段は、個別で売るか、契約販売で流通させるなどの市場流通を通さない場合を除き、自分で値段を決めることはできません。
現在、農業の現場で起きているのが、そうした値段を決められない農業経営体が、肥料や資材、人件費の高騰によって収益を確保できなくなるといった現象であります。冒頭でのお話はこのような背景があります。
こうした課題を解消するためにはどうしたらいいのか、いろいろと考えてみえましたが、その一つはマーケットを広げることだと思います。
マーケットを広げるといっても、国内のマーケットについては、販売促進を重ねた上で価格が低迷しているわけでありますから、供給が需要を上回っていると言えます。まだまだ開拓されていないマーケットといえば海外、つまり輸出によるマーケットの拡大が必要なのではないでしょうか。
政府は二〇一三年、農業、農村の所得倍増計画を発表いたしました。これは、農業生産額を二〇一三年の九兆円強から十二兆円に回復させ、農業所得を十年間で倍増させるといった内容であり、この計画の三つの方策の一つとして、農林水産物、食品の輸出額を一兆円にといったことが掲げられております。
実際に、先月の四日の中日新聞には、農林水産省が三日に発表した二〇二二年の農林水産物、食品の輸出額は、前年比一四・三%増の一兆四千百四十八億円となり、十年連続で過去最高を更新したと報道されており、十年を待たずしてその目標は達成されたのであります。
では、これによって農業所得は増えたのでしょうか。そのような実感はないというのが農業者の本音だと思います。
その最大の理由は、金額ベースで四割と最大の比率を占める加工食品の輸出が国内農業の振興に直結しないからであります。原料の多くを海外からの輸入に頼っているので、その輸出額が増えたところで、国内の農業者はほとんど潤わないといったことになります。
加工品の中にはもちろん国産原材料もあります。日本酒などは米を原料として使いますから、国内の農業に寄与していると言えますが、みそやしょうゆなど、様々な加工食品の原料となる大豆はほとんど輸入に頼っています。菓子の原料となる小麦についても同様のことが言えます。また、加工食品の原料となる野菜や果物も海外産の比率が高い傾向にあります。加工業務用に使われる野菜のうち輸入は三割を占め、果物の加工品に至っては九割が海外産であります。
加工食品以外にも、国内農業と結びつかない輸出品が含まれています。例えば、輸出額の品目別一覧表にある穀物等という項目、米が五十九億円なのに対し、米も含めた穀物等はその十倍近い五百六十億円。輸出できるほど生産の盛んな穀物は米くらいしかなく、それ以外に穀物を五百億円以上輸出しているとは考え難い。種明かしをしますと、穀物等は、パック御飯のほかに小麦粉や即席麺をはじめとする麺類などを含んでおり、小麦粉や麺類の原料は輸入小麦が主で、国内農業とは関係しないと言えます。
農政に資する調査や研究を行う農林水産政策研究所が二〇一九年三月に公表した世界の飲食料市場規模の推計によれば、国内における飲食料の市場規模は、人口減と高齢化の進展で減少する見込みであります。
国内の食料支出の総額は、二〇一〇年を百とすると、二〇三〇年には九十七になると予測しており、一方、世界を見渡しますと、人口の増加と食生活の変化により食料の需要は増加する見込みであります。
海外における飲食料の市場規模は、二〇一五年に八百九十兆円だったのが、二〇三〇年には千三百六十兆円と一・五倍になると予測されています。地域別に見ますと、著しい成長が見込まれるのは一人当たりGDPの伸びが大きいアジアで、同期間中に四百二十兆円から八百兆円と一・九倍に拡大すると予測されています。そんな海外市場に食い込むことができれば、国内、そして県内農業を大きく成長することも夢ではないと思います。
輸出は食料安全保障の観点からも重要であり、輸出により販路を確保できれば、非常時に国民を食べさせるだけの農地を維持しやすくもなります。だからこそ、国内、ひいては県内農業に本当に資する農産物の輸出を考えるべきだと考えます。
そこでお伺いいたします。
これらの状況を踏まえて、これまでの県による県産農産物の輸出促進に向けた取組と現在の輸出状況はどのようなものか。さらに、現在の状況を踏まえた上で、今後どのような取組を通じて県産農産物の輸出を促進していくのかお伺いいたします。
続いて、スマート農業の普及についてお伺いいたします。
農業従事者は、御存じのように、毎年減少していきます。二〇一九年現在、愛知県の総農家数は七万三千八百三十三戸で、全国第六位です。また、愛知県では、全国に比べて農産物をほとんど販売しない自給的農家の割合が多くなっており、農業就業人口は全国と同様に半数以上が六十五歳以上で占められており、高齢化が進んでおります。
まずは、これからも農業従事者や農家といったものが減少していくことを認める、このことから始めなければいけないと思います。その上で、どのような政策を施していくのか、これが課題であります。
単純に従事者が減少するのであれば、その分の生産性を上げればよい。このことは一経営体当たりの利益増にもつながります。生産性を上げる手段、手法は様々ありますが、今回はスマート農業についてお伺いしていきたいと思います。
愛知県は昨年三月、愛知県スマート農業普及推進計画を策定いたしました。この計画は、二〇二二年度から二〇二五年度までの四年間を期間とし、本県農業の課題及び農業者などのニーズを踏まえて、めざす姿を、データの分析と精密な栽培・飼養管理により、動植物の持つポテンシャルを最大限に引き出し、収量や品質を向上するデータ駆動型農業を推進しますとあります。
データ駆動型農業とは、経験や勘などではなく、農業施設内部の環境データや選果場の集出荷データなどのビッグデータとその解析結果を基に、意思決定や課題解決等を行い、栽培環境や労務管理の見直しを行うことで収益の向上につなげていく農業を指します。
また、その目標として、二〇二五年度までに担い手ほぼ全てがデータを活用した農業を実践すると掲げられております。
農林業センサスが五年に一度の更新のため、現状値は二〇二〇年のものしかありませんが、二〇二〇年当時でデータを活用した農業を実践しているのは全県で一六・七%と非常に低い割合であり、私の周りを見渡しても、二〇二五年に担い手ほぼ全てがといった状況には程遠いと感じます。
これらには幾つかの要因があり、考察してみますと、その一つには、スマート農業の学習機会が不十分ということが挙げられると思います。
農業従事者の中には、スマート農業に興味はあるけど、種類が多過ぎて自分の農業に適した技術が分からないという人も少なくありません。機械やデータ管理アプリなど、多種多様な技術が実用化されていますが、スマート農業に対する学習機会が少ないため、使いこなせていないのが現状です。
特に長年農業に携わってきた熟練の農業従事者たちは高齢な方が多く、新しい機械やソフトウエアの使い方を覚えるのにも時間がかかってしまいます。かく言う私も、農業をしていた頃に圃場管理などのソフトウエアを導入してみたこともありましたが、どの程度経営にメリットがあるのか分からず、継続を断念した経験があります。
そもそも農業者のITリテラシーの低さもその課題に拍車をかけているとも言えますし、データを読み取り、理解した上で改善につなげていく、こうした能力も同時に必要とされるのであります。
もう一つ要因を挙げるとすれば、農業現場とスマート農業に生じたギャップというものもあるのではないでしょうか。
どのスマート農業製品がいいのかを正確に選ぶことができても、それが農業現場で実際に使える機能、単価であるとは限りません。例えば、収穫作業を自動化する技術が導入されたとします。使用する圃場が狭小で不整形であったり、集約化が進んでいないと、積み下ろしや移動などの作業ばかりに時間がかかってしまい、結局生産性は上がりません。また、施設内であっても、地面が平たんでない場合や通路が狭い場合なども、自動収穫機がスムーズに稼働しないことが予測されます。
さらに、スマート農業製品の単価も課題として挙がります。二〇一九年度の農業構造動態調査によりますと、日本の農業経営体の八八・五%が売上げ一千万円未満であり、高額なスマート農業製品を導入するとはとても思えません。
高額なスマート農業製品がリリースされる背景には、その設定価格にしなければ企業が投資回収し切れないという現状があります。また、潤沢な資金がないようなスタートアップ企業では資金調達が必須になり、継続性という観点から信頼が得にくい状況なのも事実であります。
一番スマート農業製品を使ってほしいのは経営規模拡大期にある農家でありますが、月額一万円するようなサービス導入や一台百万円もするような農業製品を導入するとなりますと、スマート農業に踏み切るハードルは高くなってしまいます。結果、スマート農業製品は普及することが難しくなり、製品価格の値下げを抑制することにもつながります。
そこでお伺いいたします。
以上のような課題があるスマート農業の普及でありますが、本県としてどのような取組によりスマート農業を普及拡大していくのかお伺いいたします。
続いて、新エネルギーの創出についてお伺いいたします。
冬季の省エネ・節電にご協力ください。これは、昨年末の資源エネルギー庁のホームページのタイトルです。
今冬の電力需給は、全国で瞬間的な需要変動に対応するために必要とされる予備率三%以上を確保しているものの、厳しい見通しです。また、大規模な発電所のトラブルが発生した場合、安定供給ができない可能性が懸念されます。加えて、ロシアのウクライナ侵略により、国際的な燃料価格は引き続き高い水準で推移しており、燃料を取り巻く情勢は予断を許さない状況です。
そのため、政府、電力会社においては、引き続き供給力の確保に最大限の努力をしてまいります。国民・事業者の皆様におかれましては、需給ひっ迫時への備えをしっかり講じつつ、無理のない範囲での節電へのご協力をお願いします。
と続いております。
夏に続いて、またも節電。これは、電力不足の構造的な課題が解決できていないからであります。
電力の安定供給には、需要に対する供給の余力が最低限三%必要。政府が五月段階で示していたこの冬の余力は、東電管内が一月、二月がマイナスと、即停電という危機的な状況を予測。これは、再エネが思うように増えず、原発の稼働も進まない中、脱炭素や自由化で大手電力が採算の悪い火力発電を毎年数基、休止や廃止して、電力の供給力が大幅に低下したことが背景にあります。
そこで、政府は、廃止予定の老朽火力の再稼働を呼びかけたり、点検で止める時期もずらしてもらうなどした結果、停電という最悪の事態は避けられましたが、綱渡り状態であったことに変わりはございません。
あーっ、やっぱり大丈夫なんだ、節電の必要はないんだと思うかもしれませんが、最近は安心できない事情がございます。
冒頭の資源エネルギー庁の呼びかけにもありましたが、まず、老朽火力頼みの急場しのぎなので、トラブルで発電所が止まるリスクがあること。二つ目は、コロナなどの感染症の拡大でおうち時間で電力使用が増え、最大需要の予測を上回るケースがあること。そして三つ目に、ウクライナ危機で、ロシアの出方次第で火力発電の燃料となるLNGの供給不安もあります。
これらは現在起きている電力不安でありますが、将来的にも、EVの普及をはじめ、身の回りでも電化が進んでいることから、人口減少や省電力化などの条件を加味した場合でも、二〇五〇年には国内電力需要は二〇一三年比一・二倍にまでなるとの試算もあります。
このような状況下で、さらにカーボンニュートラル、こういったものが進められるわけでありますから、自前での発電の必要性が増してくることは必然であります。
火力発電は温室効果ガス削減の観点から増やすことはできない。原子力発電にしても、現状維持の可能性はあるにしても、大幅な増設は見込めない。では、どうするかでありますが、やはり再生エネルギーの電源構成を増やしていくことが必然、必要となってまいります。
国は、二〇三〇年の再生可能エネルギーの電源構成を、二〇一九年の一八%程度から三六から三八%まで増やそうと計画をしております。うち、再生可能エネルギーの構成の詳細につきましては、太陽光が一四から一六%、風力が五%程度、水力一一%程度、地熱一%程度、バイオマス五%程度であります。
ここで私が注目するのは風力発電であります。この風力発電に限って言えば、二〇二〇年度現在、全構成電力の〇・九%ですので、その二〇三〇年度には約五倍強、中でも国内のこれまでの洋上風力導入量はごく僅かでありますが、政府はこれを再生可能エネルギー主力電源化への切り札と位置づけ、二〇四〇年までに三千万キロから四千五百万キロワット──これは原発三十基から四十五基分──に拡大する方針とのことであります。
洋上風力発電については、国内初となる大型の洋上風力発電所が秋田県の秋田港と能代港で商業運転を始めるなど、各地で動きを見せています。こうした動きの背景には、洋上風力発電による経済効果が大きいことも挙げられます。
洋上風力は、発電機などの基幹設備だけで一万から二万点と自動車並みの部品が使われます。基礎工事や輸送、施工、運転、保守など産業の裾野が広く、参入できれば地域への経済効果は絶大であります。先述した秋田、能代両港のプロジェクトは施設の総事業費が計三十三基で十四万キロワット、これで一千億にも上ると言われています。
雇用面の期待も大きなものがあります。経済産業省によりますと、洋上風力先進国デンマークのエスビアウ市では、関連企業の誘致に成功し、約八千人の雇用が生まれたでありますとか、研究開発や製造の拠点があるドイツでは関連雇用が二万人以上に及ぶと言われています。
また、風力発電は、自動車関連産業の技術と親和性が高いところも注目する点です。風車は精密加工が必要な歯車や軸受、発電機や電力変換装置など多数の部品から成る回転機械でありますが、中でもベアリングや増速機に使用される歯車などの主要部品は、自動車部品と重なります。
今後、EV化が進み、自動車の部品点数が三万点から二万点へと減少することは頻繁に語られてきたことでありますが、風力発電がその減少した部品産業の受皿にもなり得るのではないでしょうか。
さて、これまで洋上風力発電の必要性と経済効果をお話ししてまいりましたが、洋上風力発電にも設置する条件があります。
まずは安定した風速がなければなりません。条件としては、常に風速が年平均で毎秒七メートル以上あれば、発電量を十分見込めます。
そして、洋上風力発電の設置方式は着床式と浮体式とありますが、浮体構造物を建設し、海底に固定したアンカーにつなぎ止める方法の浮体式に比べ、基礎を直接海底に固定して建設する着床式は、水深五十メートルよりも浅いところでの利用が経済的及び技術的にも有利とされています。
そして、愛知県においてこれらの条件を満たしている海域は、豊橋、田原の南に広がる表浜沖であります。
海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域指定ガイドラインでは、各地域における促進区域指定のニーズに関する情報等、様々な情報を収集した上で、早期に促進区域に指定できる見込みがあり、より具体的な検討を進めるべき区域を有望な区域と位置づけています。
また、都道府県が協議会の設置を希望し、利害関係者との調整に着手しているなど、将来的に有望な区域となり得ることが期待される区域を一定の準備段階に進んでいる区域と位置づけています。
一定の準備段階に進んでいる区域は、利害関係者の特定及び調整や系統確保について、一定程度の見通しがつくなどの条件が整った場合、有望な区域として整理されることが見込まれます。
そこでお伺いいたします。
本県において、洋上風力発電の創設に向けて検討していくおつもりはないかお伺いいたします。
以上、私の一般質問とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
47: ◯農業水産局長(矢野浩二君) 農産物の輸出についてのお尋ねのうち、初めに、輸出促進に向けたこれまでの県の取組と輸出状況についてであります。
県産農産物の新たな需要を拡大し、持続可能な農林水産業を実現するためには、海外の需要を積極的に取り込むことが必要であり、これまでにも様々な輸出促進の取組を展開してまいりました。
二〇一二年度から五年間は、香港などアジア諸国で販売促進会や商談会を行う愛知フェアを開催し、加工品を含め、毎年百件近い商談が行われました。
しかし、輸出への意欲があっても、海外での商談会への参加にちゅうちょする産地や事業者も見受けられたことから、二〇一七年度からは、海外の商談会に加え、海外のバイヤーが参加する国内の商談会への出展支援を行っております。さらに、今年度からは、オンライン商談会におけるスキル習得の支援や産地と海外展開している量販店とのマッチングに取り組んでおります。
加えて、産地や商社、国、ジェトロ等を構成員とするプロジェクトチームを設置して、輸出先ごとの市場動向や検疫、輸入規制等の情報共有を図るなど、意欲ある産地等の輸出経験に応じた様々な支援を行っております。
こうした取組や事業者独自の販路開拓により、現在では、抹茶をはじめとする緑茶が主にアメリカ、ヨーロッパへ、洋蘭などの鉢物類が主に香港、シンガポールへ輸出されております。野菜では、キャベツやハクサイ、オオバが香港をはじめとするアジア地域へ輸出されるなど、主な県産農産物の輸出額は増加傾向にあります。
また、レンコンやバラなど、新たな品目の輸出に取り組む産地も出てきておりますが、今後輸出を拡大していくためには、まとまった数量を継続的に確保できる産地を育成していくことが課題であると考えております。
次に、輸出促進に向けた今後の取組についてであります。
今後、県産農産物の輸出を拡大するためには、既に輸出に取り組んでいる産地の強化を図るとともに、新たな産地の掘り起こしを行う必要があります。
このため、既に輸出に取り組んでいる産地の強化に向けて、各産地がプロジェクトチームで共有した情報を生かし、相手国の需要に応じた生産に取り組み、商社や量販店などと連携して輸出を拡大できるよう、きめ細かくフォローしてまいります。
加えて、複数産地が共同で実施する輸送や販売、同一品目のリレー輸出など、産地間が連携する取組を促進するとともに、輸出に必要な施設整備に助成を行うなど、産地に寄り添った支援を行ってまいります。
また、新たな産地の掘り起こしに向けて、県内各産地へのヒアリングを実施し、輸出に対する意向や要望を把握してまいります。あわせて、輸出に関する様々な情報を一元的に入手できる県独自の支援サイトを新たに立ち上げ、輸出にチャレンジする産地に必要な情報や先進地の取組などを紹介することで、輸出に向けた機運を高め、テスト的な輸出へとつなげてまいります。
このように、輸出に対する産地の熟度に応じてきめ細かに支援を行うことで、県産農産物の輸出促進に努めてまいります。
続きまして、スマート農業の普及拡大についてお答えをいたします。
本県では、昨年三月に愛知県スマート農業普及推進計画を策定し、スマート農業の普及拡大に取り組んでおります。
スマート農業の普及に当たっては、指導者の育成を進めるとともに、産地の関係者や農業者と現状を十分に把握し、経営体の規模や発展段階に応じた技術や機器の導入を推進する必要があります。
そのため、県では、昨年度から、県の普及指導員を対象として、データ解析や画像解析を行うための研修を実施しており、今年度末までに四十五名が修了するなど、指導者の育成に取り組んでおります。
また、県の普及指導員とJAの営農指導員が一緒になって、農業者に対して、衛星画像を用いた生育診断や環境モニタリングデータの解析などに基づいた技術指導を行うとともに、研修会を開催するなどして、スマート農業技術の啓発に努めてまいります。
一方、スマート農業機器の導入に当たっては、各産地において実証実験を行い、実情に応じた最適な技術や経営規模に見合った機器を推奨しており、また、あいち型産地パワーアップ事業の採択基準を見直し、機器の導入による省力化等に取り組む産地や農業者を積極的に支援してまいります。
さらに、機器の導入効果を最大限に発揮するため、担い手への農地の集積・集約化や農業水利施設、農道等の基盤整備を計画的に推進するとともに、レンコン産地で取組が始まった病害虫防除のためのドローンの共同利用など、導入コストを低減するための取組を推進してまいります。
こうした取組を県内に広げていくことで、各産地においてスマート農業技術の理解を深めていただくとともに、簡易なものから高性能なものまで、産地や農業者の状況に応じたスマート農業機器の導入を支援することにより、スマート農業の普及拡大を推進してまいります。
48:
◯経済産業局長(
矢野剛史君) 洋上風力発電の創設に向けた検討についてお答えをいたします。
カーボンニュートラルの実現に向けた動きを加速するためには、着実に再生可能エネルギーの拡大を図っていくことが不可欠であります。
このため、本県では、再生可能エネルギーのさらなる拡大に向け、現状の把握や課題の整理などを行っており、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札として位置づけられている洋上風力発電についても、調査、検討を行っております。
本県における洋上風力発電の現況につきましては、県東部を中心とした近海において、強い風速や安定した風向きなど風況が発電に適しており、また、日本一のモノづくり県として、多くの電力が必要となることから、高い導入ポテンシャルが見込まれております。
一方で、発電施設の設置による、景観や希少生物といった自然環境面への影響や、実際に海域を利用している漁業への影響、さらには船舶の運航など、社会経済面から詳細に検討すべき課題が存在しているものと考えております。
洋上風力発電は、本県の電力需要を支える再生可能エネルギーを創出することができ、また、高い経済波及効果も期待されることから、洋上風力発電の設置について、引き続き課題も含めまして、調査、検討を進めてまいります。
49: ◯知事(
大村秀章君) 杉浦正和議員の質問のうち、スマート農業の普及拡大について、私からもお答えをいたします。
農業者の高齢化や担い手の減少が進む中で、本県農業を発展させていくためには、農業生産の高度化、効率化のためのスマート農業の普及が大変重要であると考えております。
昨年九月には、未来へつなぐあいちのデジタル人材をテーマとして、各分野で活躍されている皆様と意見交換をした際に、西尾でキュウリを生産している農業者の方から、環境測定データに基づいた生産への取組や勉強会を行ったところ、産地全体へのスマート農業機器の導入が急速に進み、担い手の育成にもつながったと大変有意義な御意見をいただきました。
本県は、日本一の産業県であるとともに、中部地区の最大の農業県でありますので、スマート農業でも日本をリードしていけるようにしっかりと取り組んでいく必要があると考えます。
本県では、STATION Aiプロジェクトの一環として、二〇二一年にあいち農業イノベーションプロジェクトを立ち上げて、農業総合試験場が大学やスタートアップと連携をして、スマート農業技術をはじめとした新技術や新品種の開発と社会実装に取り組んでおります。
また、スマート農業機器の導入を支援するため、従来のあいち型産地パワーアップ事業を拡充して、十二月議会において補正予算を措置するとともに、来年度の当初予算においても大幅に増額し計上をしたところであります。
今後も引き続き、スマート農業技術の研究開発に取り組むとともに、機器の導入を進めることにより、スマート農業の普及拡大に努めてまいります。
50: ◯副議長(
佐藤一志君) 進行いたします。
樹神義和議員。
〔三十九番樹神義和君登壇〕(拍手)
51: ◯三十九番(樹神義和君) 豊田市選出の樹神です。
通告に従い、大きくは二点について質問させていただきますが、まず初めに、大規模自然災害発生時の基幹的広域防災拠点の運営と情報の共有化について伺います。
さて、先月六日未明、トルコ南東部で大規模地震が発生し、トルコとシリアで多くの方がお亡くなりになるという災害が発生したばかりですが、今年は我が国にとって関東大震災の発災から百年という大きな節目の年となります。
また、間もなく東日本大震災の発災から十二年が経過しようとしていますが、この地震がいかに大きな被害をもたらしたかを改めて振り返ってみたいと思います。
東日本大震災は、二〇一一年三月十一日十四時四十六分に発生した東北地方太平洋沖地震による災害、及び、これに伴う福島第一原子力発電所事故による災害であり、大規模な地震災害であることから大震災と呼称されています。
地震発生時は、ここ愛知も大きく揺れ、私は当時、市議会議員として豊田市役所の七階におりましたが、あまりに大きな揺れのために開催中であった会議は途中で中止となり、参加者全員が地震の規模等の確認のためテレビに駆け寄りましたが、震源地が遠く離れた東北地方であったことに驚くとともに、その後に発生した津波等による被害をリアルタイムで見ながら、自然の猛威に対して人はいかに無力であるのかを痛感させられたことを今なお鮮明に覚えています。
なお、この地震による東日本各地での大きな揺れや大津波、火災などにより、東北地方を中心に十二都道府県で約一万八千五百名の死者及び行方不明者が発生しましたが、これは明治以降の日本の地震被害としては、さきに申し上げた関東大震災、そして明治三陸地震に次ぐ三番目の規模の被害となっており、スマートフォンなどの普及で数々の映像や写真が克明に記録され、沿岸部のまちを津波が襲来し、破壊し尽くす様子や福島第一原子力発電所におけるメルトダウン発生は全世界に大きな衝撃を与え、いまだに私たちに大規模自然災害の恐ろしさを痛感させると同時に、災害への備えの重要さを再認識させる大地震として、皆様の記憶にも残っていることと存じます。
改めて、震災でお亡くなりになられた皆様の御冥福をお祈りしますと同時に、被災された地域の中にはいまだ復興には至ってはいない地域もございますが、早期復興を願う次第であります。
東日本大震災の発災により、従前の想定を大きく上回る規模の地震となったこと、広域にわたって様々な被害が発生したこと、行政が機能停止に陥ったこと、避難所の運営、物資の供給、廃棄物の処理等、被災者の支援が円滑に進まなかったこと、津波により多数の死者や建物、ライフラインの壊滅的な被害が発生したことなど、これまでの災害対策では十分に対応できない災害が起こり得ることが明らかになり、我が国においては災害発生規模の見直しを余儀なくされ、本県でも、こうした東日本大震災の教訓や、直近では三十年以内の発生確率の算定根拠に信憑性を疑う声はあるものの、いつかは必ず発生し得る南海トラフ地震に係る新たな被害想定、南海トラフ地震に対する国の対策の考え方などを踏まえ、災害から県民の生命、財産を守る強靱な県土づくりを目指して第三次地震対策アクションプランを二〇一四年十二月に策定し、以降、二〇一八年九月、北海道胆振東部地震や、二〇二〇年から世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス感染症への対策、国の方針等を踏まえ、アクション項目を追加するなど、都度見直しが行われ、現在に至っております。
さらに、本県では、県政百五十周年記念事業の一つとして選定された愛知県基幹的広域防災拠点の整備事業が、二〇二五年度の完成を目標として県営名古屋空港の隣接地で整備が進められていますが、この基幹的広域防災拠点は、災害支援に集まる自衛隊、緊急消防援助隊、警察災害派遣隊、TEC─FORCE、DMATなど、現場部隊のベースキャンプとなるとともに、隣接する県営名古屋空港の輸送機能を生かし、被災地外からの空輸等による緊急支援物資、資機材の集積と物流を担うロジスティクス拠点としても機能するものと伺っています。
また、基幹的広域防災拠点の整備に合わせ、築四十年以上が経過し、建物の老朽化による機能更新を検討していた愛知県と名古屋市の両消防学校を集約・共同設置し、基幹的広域防災拠点の中核施設として整備される予定であり、新たな消防学校では、消防職員等に対し、消防、防災に関する教育訓練を実施する以外に、消防機能を生かし、本部機能として二十四時間の危機管理体制を確保することや、平時には消防学校を地域に開放し、訓練施設等を活用した小中学生、自主防災組織、企業等に向けた防災教育、人材育成を行うことも検討されていると承知をしております。
このほか、支援部隊のベースキャンプ機能や支援物資の集積場としての有事のための機能を、平時においては都市公園として、多目的広場や屋内運動施設といった県民が利用可能な施設として開放するとともに、災害に備えることを目的として整備する施設を利用し、平時には防災啓発のイベントや訓練をはじめとした様々な分野のイベントを開催することで、豊山町が整備するエリアと一体となり、地域の活性化やにぎわいづくりといったまちづくりの視点でも計画が進められていると伺っており、県民の安全・安心の確保の上でも大いに期待するところであります。
その一方で、愛知県基幹的広域防災拠点の整備計画決定前に遡りますが、東日本大震災の発生により大きな被害が出たことから、中部圏でも大規模地震に備えるために、有識者、国の関係機関、地方公共団体、地元経済界等を構成員とした東海・東南海・南海地震対策中部圏戦略会議が中部地方整備局により設立され、二〇一二年には、防災拠点施設の整備に向けた具体的な動きとして、有識者、国の機関、そして、愛知県を含む中部五県と中部圏の政令指定都市の防災部局の職員を構成員とし、防災拠点のネットワーク形成に向けた検討会が開かれ、中部圏地震防災基本戦略が取りまとめられました。
また、翌二〇一三年度には、内閣府と中部地方整備局が事務局となり、有識者と愛知県、静岡県の防災担当部局の実務者を構成員とした中部圏広域防災拠点ワーキンググループにより、具体的な計画となる中部圏広域防災ネットワーク整備計画が策定され、広域防災拠点の配置場所として、愛知県では司令塔機能を担う三の丸地区と、高次支援機能を担う名古屋港、県営名古屋空港が位置づけられました。
その後、本県では、三の丸地区をはじめとした三か所の拠点の整備を国に要請したところ、二〇一四年度に広域大規模災害時の司令塔として位置づけられた三の丸地区において、名古屋合同庁舎第二号館の三階大会議室に政府現地対策本部が整備されましたが、名古屋港及び県営名古屋空港については国による整備は実現せず、いつ起こってもおかしくない南海トラフ地震が迫っていることを踏まえ、二〇二〇年度に本県で独自に、豊山町青山地区に基幹的広域防災拠点を整備することとしたところであります。
なお、名古屋港については引き続き整備の要請を行っており、現在に至っていると承知をしております。
従来、基幹的広域防災拠点とは、東京の有明の丘や大阪の堺泉北港の例にあるように、国が整備するものと考えられており、本県においても、国が中心となり、三の丸地区の指揮命令の下、名古屋港、県営名古屋空港が一体的に運営され、県は国に対し連携、協力する立場でありましたが、今回、基幹的広域防災拠点を県独自に整備することとしたことから、この拠点については県自ら中心となって運営する必要があるのではないかと考えられます。
余談となりますが、私は以前に、東京都の有明の丘地区にあります国が整備した東京湾臨海部基幹的広域防災拠点に調査のためにお邪魔させていただいたことがございますが、本施設の本部棟には防災体験学習施設のほかに緊急災害現地対策本部のためのオペレーションルーム等の司令機能、実際に大規模災害が発生した際の広域支援部隊のベースキャンプ等の機能を併せ持っており、国と地方公共団体が協力して運営していく予定であると伺っています。
そこでお尋ねしますが、整備中の基幹的広域防災拠点は、機能として、救援物資の中継拠点や、警察、消防、自衛隊等の活動要員のベースキャンプ、さらには災害医療の広域搬送センター等が備えられ、国、県の災害対策本部との連携の下、後方支援活動を実施することが期待されるわけでありますが、この拠点を最大限に活用するために、どのように運営されていくおつもりなのか伺います。
続きまして、災害発生時の各市町村との情報共有と連携についても伺いますが、私は今年度、警察委員会と安全・安心対策特別委員会に所属をしておりますが、偶然にも、両委員会とも県外調査は大規模災害時の避難方法確保や治安維持活動、さらには対策本部の運営等の調査のため、東日本大震災の被災地へ行かせていただきましたが、そこで感じたことは、大規模自然災害発生時は、まずは最悪の事態を想定し、個人個人それぞれができ得る最大限の避難行動を行うこと。また、避難所等にたどり着けたとしても、その場所が必ずしも安全な場所とは限らないため、例えば、津波被害が想定される場合は、最上階へ避難するなどの対応を迅速に行うことの重要性を痛感させられました。
さらに、被災経験者の皆様からのお話の中で、東日本大震災の発災時は、正確な情報を入手することができず、避難所運営等について、どのような対応を取ればよいのか分からなかった、また、いつ頃、救援物資や救助隊が到着するのか分からず非常に心細かったとのお話もあり、改めて、国、県、市町村の各災害対策本部が早期に正確な情報を入手し、そして、各避難所等へ伝達し、指示を出せるかが重要であることを再認識させられました。
そこでお尋ねしますが、東日本大震災の教訓を踏まえ、津波避難計画の策定や避難訓練の実施などの対策が講じられてきたことは承知をしておりますが、災害発生から被害情報の把握、救出、救助、避難所の運営までの各段階における市町村の災害応急対策が的確に実施されるためには、県と各市町村の間の情報伝達が確実に行われ、情報共有が図られることが前提となると考えますが、県はどのように対応されるのか伺います。
続きまして、この項最後の質問となりますが、災害時の外国人県民への迅速な情報発信と情報の共有化についても伺いますが、本県で暮らす外国人は、二〇〇八年末時点では全国で三番目に多い約二十一万人でしたが、直近の二〇二二年六月末現在では約二十八万人まで増加し、東京に次いで全国で二番目となっており、県の総人口に占める割合は約三・七%と、永住化、定住化も進んでいます。
その一方で、言葉や文化が異なる国で暮らす外国人県民にとって、日本語によるコミュニケーションや、医療、災害、防災などの生活に必要な情報へのアクセスには困難が伴うことが予想され、実際に県が行った外国人県民アンケート調査結果でも、現在不安なこととして二一・五%の人が地震や台風など災害を挙げておられ、さきに申し上げたとおり、災害発生時はただでさえ情報入手が困難である中、日本語によるコミュニケーションに不安を感じる外国人県民に対しては、情報発信において特段の配慮が必要と考えます。
そうした中、県におかれましては、昨年十二月に策定された第四次あいち多文化共生推進プランにおいて、今後の課題の一つとして、災害対策として、平時においては多言語のガイドブック等を活用した防災教育に取り組み、大規模災害発生時には、愛知県災害多言語支援センターにおける多言語での情報発信等の体制を強化していく必要があり、災害時に外国人を直接支援する市町村等と情報提供における連携の強化が求められると問題提起をした上で、重点的な取組の方向性の中で、災害発生時には外国人県民の状況把握や迅速な情報発信が行えるよう、県、市町村、関係団体等が相互に連携、協力して情報の共有や発信を行う仕組みを構築すると明記されております。
そこでお尋ねをしますが、本プランで掲げられた災害時の外国人県民への迅速な情報発信と情報の共有化について、災害発生時の外国人県民への情報発信や市町村との情報共有を行う仕組みづくりに向け、今後どのように取り組まれていくのか伺います。
続きまして、大項目二点目として、経済安全保障への取組について伺ってまいりますが、皆さんは経済安全保障と聞いて、どのようなイメージを抱かれるでしょうか。
一般的に、安全保障といえば、他国からの攻撃を防いだり、攻撃を受けた場合の迅速な対処など、軍事的な防衛力や外交政策に関連する問題でありますが、しかし、その頭に経済という言葉がつくと全く異なる意味を指し示すこととなります。
実際に、経済安全保障とはという言葉をインターネット等で検索すると、経済的側面で国家安全保障上の課題への対応を強化することであり、具体的には、産業政策としての特定分野における研究開発、設備投資の支援に加え、輸出管理や投資審査、政府調達などの対外政策を通じた重要技術や基幹インフラなどの保護といった対策が取られるとの説明文等が出てきますが、解説している私自身、何を言っているのか分からないほど難しい問題であることは理解ができました。
ただ、さらに詳しく調べていくと、この経済安全保障とは、経済的手段によって安全保障の実現を目指すことを意味し、分かりやすく言えば、国民の生命、財産に対する脅威を取り除き、経済や社会生活の安定を維持するために、エネルギー、資源、食料などの安定供給を確保するための措置を講じ、望ましい国際環境を形成することであるということが分かりました。
では、なぜ、今回、経済安全保障への取組を質問テーマとして取り上げたかというと、グローバリゼーションの進展を背景とした供給網の多様化により、各国で供給ショックに対する脆弱性が増大しています。
また、現在のコロナ禍では、医療関連物資や自動車部品、電子部品の供給が不足するなど、重要な物資の安定供給を図るためのサプライチェーン強靱化が喫緊の課題となっており、さらには軍事転用可能な技術も含めた我が国の先端技術情報の漏えい・流出問題など、経済安全保障への取組の必要性は高まっています。
こうした背景の下、国においては昨年五月に経済安全保障推進法が成立しましたが、日本一のモノづくり地域である愛知としても、サプライチェーン強靱化や技術情報管理をはじめとする経済安全保障を推進する必要があると考えたからであります。
ちなみに、経済安全保障推進法は大きく四つの制度の創設を目指しており、一つ目は、国民の生存や国民生活、経済活動に甚大な影響のある重要物資の安定的な供給の確保に関する制度。二つ目は、電気、ガス、水道に加え、金融やクレジットカード等も含めた基幹インフラの重要設備に対し、国外からの妨害行為を防止することを目的とした基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度。三つ目は、先端的な重要技術の研究開発の促進と、その成果の適切な活用を目的とした先端的な重要技術の開発支援に関する制度。そして、最後の四つ目が、安全保障上機微な発明の特許出願について、公開や流出を防止するとともに、安全保障を損なわずに特許法上の権利を得られるようにすることを目的とした特許出願の非公開に関する制度であります。
なお、本法律は、公布後六か月から二年以内に段階的に施行することとされており、例えば一つ目の重要物資の安定的な供給の確保については、昨年十二月に特定重要物資が政令指定されました。具体的には、県内のモノづくりが深く関係する工作機械、産業用ロボットや航空機の部品、半導体、蓄電池をはじめ十一物資が特定重要物資として指定されており、今後、それら物資の安定供給確保に取り組む民間事業者の支援を通じてサプライチェーンの強靱化を図ることとしています。
また、本法律に基づく事務を担当する組織として、内閣府に経済安全保障推進室が設置されたと承知をしておりますが、この経済安全保障というのは課題が多岐にわたり、かつ複雑化しており、受け手となる企業サイドとしては、法制度に関する情報収集、分析に加え、材料や部品の輸入、輸出、情報セキュリティー、投資、開発といった事業活動の様々な分野におけるリスク管理が必要とされることから、かなりの負担を強いられることとなります。
ただ、グローバルに活躍されている大企業においては、既にこうした部門を整え、経済安全保障に積極的に取り組まれておりますが、その一方で、我が国の経済と産業を支え、サプライチェーンの根幹をなす中小企業においては、世界市場の獲得につながる先端技術や多様な地域資源を活用した技術を保有する企業が数多く存在するものの、資金、人材等の課題により経済安全保障の対応が困難であることも推察されます。
しかしながら、昨今のサプライチェーン攻撃の実例を見ても、セキュリティーが手薄になりがちな中小企業をターゲットとした、あるいは中小企業を経由しての大企業への攻撃事例も発生していることから、中小企業における経済安全保障への取組を促進することは非常に重要と考えます。
こうした状況を受け、本県においては、経済安全保障推進法の施行に伴い、昨年十月に第一回愛知県経済安全保障に関する協議会が開催され、十一月下旬には、私も参加させていただきましたが、愛知県経済安全保障に関するフォーラムが行われるなど、具体的な活動を既にスタートしております。
そこでお尋ねしますが、愛知県経済安全保障に関する協議会を設立した目的、及び、今後、経済安全保障に関して、中小企業への支援を含め、どのように取り組んでいくのか伺います。
以上、大きくは二項目について質問を行ってまいりましたが、県当局の明快な答弁を期待いたしまして、壇上からの質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
52: ◯防災安全局長(坂田一亮君) まず、基幹的広域防災拠点の運営についてお答えをいたします。
南海トラフ地震など大規模災害が発生した場合、国が三の丸合同庁舎に設置する緊急災害現地対策本部と県庁自治センターに設置します県の災害対策本部が連携して、被災状況の情報共有を図り、派遣される活動要員や支援物資の受入れについて調整することとなります。
また、県の災害対策本部では、国との調整と並行して、被災市町村からの被害情報の収集、分析を行い、派遣する活動要員や支援物資の配分に関する方針を決定いたします。
この方針を受け、基幹的広域防災拠点においては、全国から派遣される活動要員のベースキャンプ開設や支援物資の受入れ体制を整えるとともに、県内約百三十か所に設置される防災活動拠点や被災地への活動要員の派遣、支援物資の供給のための後方支援を行うことになります。
具体的には、自衛隊、消防、警察など救出・救助機関の各部隊の活動状況、道路の通行可否情報等の情報共有、燃料や資機材の補給等を行うとともに、トラック協会や物流事業者と連携を図りながら支援物資の効率的な受入れ、仕分、配送を行います。
また、災害医療については、隣接する名古屋空港を活用し、重傷者を被災地外の病院に移送する広域医療搬送の機能を担います。
現在、有識者、防災関係機関、市町村を構成員とする検討会におきまして、具体的かつ実効性のある活動計画の策定を進めており、この基幹的広域防災拠点の円滑な運用が図られるよう取り組んでまいります。
次に、県と市町村間の災害情報の伝達、共有についてであります。
災害時において、人的被害や建物被害、インフラ被害、被災者数等の情報は、災害救助法の適用や自衛隊等の派遣要請など、県の対策立案の判断材料となります。また、住民に正確な情報を伝え、住民の適切な避難行動などにつなげるためにも、県と市町村間の正確かつ迅速な情報の伝達、共有は極めて重要であります。
県では、愛知県高度情報通信ネットワークを介しまして、市町村との間で迅速に情報伝達、共有できる仕組みを構築しているところであり、また、何らかの理由でそのネットワークでの情報共有が遅延する場合でも、県職員による先遣・情報収集チームが市町村の災害対策本部に出向き、直接被害の状況把握や県の対応状況の伝達など、情報を共有できる体制を取っております。
こうして県と市町村間で共有された災害情報は、市町村から住民に向けて、同報無線、緊急速報メール、広報車等により伝達されることになりますが、県においても、テレビに表示されるデータ放送や愛知県防災Web等によりまして県民の皆様に直接お伝えし、災害情報の伝達に万全を期してまいります。
また、実際の災害発生時に住民の皆様がスムーズに災害情報を得られるよう、防災週間に発行する広報あいち、防災フェスタなどを通じまして、災害情報へのアクセス方法を広く周知しております。
引き続き、災害情報の円滑な伝達、共有に向けまして、市町村、防災関係機関と連携して取り組んでまいります。
53:
◯県民文化局長(伊藤正樹君) 外国人県民への迅速な情報発信と情報の共有化についてお答えをします。
大規模災害が発生した場合、日本語能力や生活習慣、文化の違いから不安を感じる外国人県民の方も多数おられ、そうした方に対する特段の配慮が必要と考えます。
また、大規模災害時の他県の例によりますと、各国の大使館などからの安否情報の問合せが多数寄せられることが想定され、その対応も求められます。
そうしたことから、本県では、大規模災害発生時に愛知県災害多言語支援センターを設置し、愛知県国際交流協会と共同で、外国人県民に対する情報発信や被災市町村に対する支援を行うこととしております。
具体的には、防災安全局と連携し、ホームページを通じて災害情報の多言語による発信を行うとともに、市町村が地域の外国人県民に向けて災害情報を発信する際に必要な翻訳支援を行ってまいります。
また、避難所を設置、運営する市町村が、外国人県民の状況を正確に把握し、適切に対応できるよう、市町村向け対応マニュアルの見直しを行うとともに、市町村職員等を対象として、外国人県民の支援を行う実践的な講座や、情報伝達手順の確認を行う訓練を実施してまいります。
市町村や関係機関と連携して、大規模災害発生時に迅速に情報発信や情報共有できる仕組みづくりを進めることにより、外国人県民の方に少しでも安心して暮らしていただけるよう取り組んでまいります。
54:
◯経済産業局長(
矢野剛史君) 愛知県経済安全保障に関する協議会を設立した目的及び今後の取組についてお答えをいたします。
昨今、半導体をはじめとする先端的な製品や技術の国際的な覇権争いが激化する中、我が国の製造業を牽引する当地において、経済安全保障に関して実効性のある地域の備えを構築するため、昨年十月に、愛知県経済安全保障に関する協議会を創設いたしました。
経済安全保障に関する取組は多岐にわたり、また、多くの関係省庁がそれぞれ取組を進めていることから、本協議会では国の関係機関に参画していただき、県の関係課や県内経済団体等と共に関係法令や各種制度等の情報共有を図っております。
今後も、本協議会を年複数回開催し、新たな国の施策に加え、技術情報流出の状況や対応策等について、情報共有や意見交換を行うことによって協議会の参画機関相互の連携を深め、それぞれが関係する企業等に普及啓発を行ってまいります。
また、来年度には、中小企業に経済安全保障の重要性や各種対策を理解していただくため、技術情報の流出事例や相談先リストを盛り込んだ分かりやすいパンフレットを作成して周知を図るとともに、中小企業向けのテーマを取り上げたシンポジウムを開催いたします。さらには、個別の課題を有する中小企業に対しては、協議会の参画機関と共に課題解決に向けたきめ細かな具体的サポートを実施いたします。
こうした取組を通じ、県内企業が安心して事業活動を行い、持続的な成長を実現できるよう、地域を挙げて経済安全保障への機運を醸成してまいります。
55: ◯知事(
大村秀章君) 樹神義和議員の質問のうち、県と市町村との災害時での情報共有について、私からもお答えをいたします。
災害発生時には、県と市町村が連携した正確かつ迅速な情報共有が何よりも重要であります。
県では、県、市町村、自衛隊など防災関係機関との間で、災害時に双方向の通信を確保できる高度情報通信ネットワークを整備し、防災気象情報の伝達や、市町村からの被害状況の報告等に活用をしております。
このネットワークは、整備後二十年が経過するとともに、昨今の災害現場の画像などのデータの大容量化にも対応していく必要があることから、新たなネットワーク整備を進めているところであります。
今年度は基本設計を行っておりまして、設備が堅牢であること、高速、大容量でふくそうも生じないことなどの基本的な考え方とともに、信頼性の高い民営の有線回線を活用することも検討いたしております。
また、災害拠点病院や通信事業者等を新たにネットワークに加えるなど、きめ細かく、かつ迅速な情報共有を可能としてまいります。
今後は、この新たな情報通信ネットワークの一日も早い整備完了、供用開始を実現し、災害時の情報共有に万全を期すことにより、災害に強い愛知の実現に全力で取り組んでまいります。
56: ◯三十九番(樹神義和君) それぞれ御答弁をいただきましたけれども、一点要望させていただきます。
ただいまの御答弁を通じまして、県として、大規模自然災害発生時の基幹的広域防災拠点の運営と情報の共有化に向け、様々なケースを想定して対策を講じていただいていることはよく理解をいたしましたが、一方で、いざ災害が発生した際にやはりよく耳にするのが想定外というキーワードです。
したがって、今後もさらなるケースを想定しての防災拠点の運営方法の検討と情報の共有化に取り組んでいただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
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57: ◯四十一番(山田たかお君) 本日はこれをもって散会し、明三月七日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
58: ◯副議長(
佐藤一志君) 山田たかお議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
59: ◯副議長(
佐藤一志君) 御異議なしと認めます。
明三月七日午前十時より本会議を開きます。
日程は文書をもって配付いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時二十八分散会
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