愛知県議会 2019-12-01
令和元年12月定例会(第3号) 本文
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ウィンドウで開きます) 令和元年12月定例会(第3号) 本文 2019-12-06 文書・発言の移動 文書 前へ 次へ 発言 前へ 次へ
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発言者一覧 選択 1 : ◯議長(
神野博史君) 選択 2 : ◯議長(
神野博史君) 選択 3 : ◯六十六番(
佐藤一志君) 選択 4 :
◯建設局長(林全宏君) 選択 5 :
◯経済産業局長(
伊藤浩行君) 選択 6 : ◯知事(大村秀章君) 選択 7 : ◯六十六番(
佐藤一志君) 選択 8 : ◯議長(
神野博史君) 選択 9 : ◯三十四番(
日比たけまさ君) 選択 10 :
◯保健医療局長(吉田宏君) 選択 11 :
◯農林基盤局長(水野康弘君) 選択 12 : ◯教育長(長谷川洋君) 選択 13 :
◯環境局長(森田利洋君) 選択 14 : ◯三十四番(
日比たけまさ君) 選択 15 : ◯四十一番(田中泰彦君) 選択 16 : ◯議長(
神野博史君) 選択 17 : ◯議長(
神野博史君) 選択 18 : ◯副議長(堀嵜純一君) 選択 19 : ◯七番(平松利英君) 選択 20 :
◯建設局長(林全宏君) 選択 21 :
◯経済産業局長(
伊藤浩行君) 選択 22 : ◯知事(大村秀章君) 選択 23 : ◯七番(平松利英君) 選択 24 : ◯副議長(堀嵜純一君) 選択 25 : ◯三十二番(岡明彦君) 選択 26 :
◯保健医療局長(吉田宏君) 選択 27 : ◯総務局長(横井篤史君) 選択 28 : ◯福祉局長(平田雅也君) 選択 29 : ◯教育長(長谷川洋君) 選択 30 : ◯知事(大村秀章君) 選択 31 : ◯三十二番(岡明彦君) 選択 32 : ◯副議長(堀嵜純一君) 選択 33 : ◯二十二番(渡辺靖君) 選択 34 : ◯スポーツ局長(飯田靖君) 選択 35 : ◯教育長(長谷川洋君) 選択 36 : ◯知事(大村秀章君) 選択 37 : ◯二十二番(渡辺靖君) 選択 38 : ◯四十番(寺西むつみ君) 選択 39 : ◯副議長(堀嵜純一君) 選択 40 : ◯副議長(堀嵜純一君) 選択 41 : ◯議長(
神野博史君) 選択 42 : ◯六番(日高章君) 選択 43 : ◯福祉局長(平田雅也君) 選択 44 :
◯保健医療局長(吉田宏君) 選択 45 :
◯経済産業局長(
伊藤浩行君) 選択 46 : ◯知事(大村秀章君) 選択 47 : ◯六番(日高章君) 選択 48 : ◯議長(
神野博史君) 選択 49 : ◯一番(小木曽史人君) 選択 50 :
◯保健医療局長(吉田宏君) 選択 51 :
◯環境局長(森田利洋君) 選択 52 :
◯経済産業局長(
伊藤浩行君) 選択 53 : ◯一番(小木曽史人君) 選択 54 : ◯四十一番(田中泰彦君) 選択 55 : ◯議長(
神野博史君) 選択 56 : ◯議長(
神野博史君) ↑ 発言者の先頭へ 本文 ↓最初のヒットへ (全 0 ヒット) 1: 午前十時開議
◯議長(
神野博史君) 皆さん、おはようございます。
ただいまから会議を開きます。
直ちに議事日程に従い会議を進めます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
日程第一 一般質問並びに第百三十五号議案令和元年度
愛知県一般会計補正予算から第百六十五号議案
あいち朝日遺跡ミュージアムの指定管理者の指
定についてまで及び専決第三十九号不服の申出
について
2: ◯議長(
神野博史君) 第百三十五号議案令和元年度愛知県一般会計補正予算から第百六十五号議案あいち朝日遺跡ミュージアムの指定管理者の指定についてまで及び専決第三十九号不服の申出についてを一括議題といたします。
これより一般質問並びに提出議案に対する質問を許します。
通告により質問を許可いたします。
佐藤一志議員。
〔六十六番
佐藤一志君登壇〕(拍手)
3: ◯六十六番(
佐藤一志君) 皆様、おはようございます。
通告に従い、順次大きく三点、質問をさせていただきます。
最初に、台風等による河川並びに雨水対策についてお伺いをいたします。
本年、令和元年(二〇一九年)は、伊勢湾台風被災以来六十年目を迎えます。九月議会冒頭で本議会でも被災者に対し黙祷を行ったところです。改めて、伊勢湾台風を初め、現在まで数々の自然災害でお亡くなりになった方々や被災された皆様に心よりお悔やみを申し上げるとともに、お見舞いを申し上げます。
伊勢湾台風は、昭和三十四年(一九五九年)九月二十六日、午後六時過ぎに潮岬に上陸した台風十五号です。紀伊半島から東海地方を中心として、ほぼ全国にわたって甚大な被害を及ぼした台風であり、伊勢湾沿岸の我が愛知県、三重県の被害が特に甚大でありました。
本日、議場にも、伊勢湾台風を経験した皆様方もおみえのことと思います。犠牲者五千九十八人、死者四千六百九十七人、行方不明者四百一人、負傷者は三万八千九百二十一人に上り、犠牲者三千人以上を出した台風として、昭和九年(一九三四年)の室戸台風、昭和二十年(一九四五年)の枕崎台風とあわせて、昭和の三大台風に挙げられています。
そのほかの被害として、全壊家屋三万六千百三十五棟、半壊家屋十一万三千五十二棟、流失家屋四千七百四棟、床上浸水十五万七千八百五十八棟、船舶被害一万三千七百五十九隻、被害者は、全国で百五十三万人余りに及び、我が愛知県は約七十九万人、三重県は三十二万人と、当時の県人口の約二割が被災されました。
台風の速度が非常に速く、南寄りの暴風雨で海水が熊野灘、伊勢湾、三河湾の奥部に吹き寄せられ、広い範囲で高潮による浸水が発生し、名古屋市南部では、名古屋港の貯木場から流出した二十万トンに及ぶラワン材等が大量に流出、住宅地を破壊したもので、南区では、およそ千五百人の犠牲者の大部分がこうした流木により倒壊した家屋等で犠牲になったようであります。
また、伊勢湾台風は、雨の継続時間が比較的短かったにもかかわらず、奈良県川上村では、時間雨量百十八ミリ、一日雨量が六百五十ミリという猛烈な豪雨となり、大台ヶ原を水源とする紀の川や櫛田川などの河川では、洪水被害が大きくなり、橋梁の流失四千百六十カ所、堤防決壊五千七百六十カ所などがあったのを初め、山間部では、土石流や鉄砲水により住宅や耕地に大きな被害をもたらしました。
本年に入り、台風や前線の影響で多くの被害が発生したことは、皆様御存じのとおりです。
特に今秋、東日本を襲った、九月九日、千葉県付近に上陸した台風十五号、十月十二日、大型で強い勢力で伊豆半島に上陸した台風十九号、そして、十月二十四日から、北日本の太平洋沿岸に沿って低気圧が進み、この低気圧に向けて南から暖かく湿った空気が流れ込むとともに、台風二十一号からも湿った空気が流れ込んだことによる大雨に見舞われました。
内閣府の発表によりますと、三つの台風等での被害は、台風十五号では、死者一名、家屋の全壊、半壊、一部損壊は四万二千百七十三棟、床上・床下浸水は百九十七棟、台風十九号では、死者、行方不明者八十八人、全壊、半壊、一部損傷は四万七千七百十三棟、床上・床下浸水は四万三百二十二棟、河川の決壊は七十一河川、百四十カ所、台風二十一号では、死者十三人、家屋の全半壊二百九十五棟、床上・床下浸水は二千八百八十七棟であり、十九号台風では、その被害地域が一都一道二府三十四県と、広範囲に被害を及ぼしました。
本年、日本近郊で発生した台風は、気象庁の統計以来最高の二十八号まで発生しています。近年の気象状況は、温暖化のせいか未確定ではありますが、地球の気温の上昇により大きく変化していると感じるのは、私一人ではないと思います。特に降雨による河川災害や土砂災害は、いつ、どこで発生しても不思議ではない状況と思われます。
今回の十九号台風と二十一号台風の影響を受けた低気圧による降雨の状況は、消防庁の報告によれば、台風十九号における各地の降雨量は、一時間雨量として百ミリを超えたところはなかったものの、岩手県普代村九十五ミリ、神奈川県箱根町八十五ミリ、宮城県丸森町八十・五ミリ、静岡県葵区で七十五ミリ等々、各地で時間七十ミリ以上の降雨を観測しています。
また、二十四時間降雨量では、神奈川県箱根町で九百四十二・五ミリ、静岡県伊豆市で七百十七・五ミリ、埼玉県秩父市で六百四十七・五ミリ、東京都檜原村で六百二十七ミリ等々、これも各地で五百ミリ以上の降雨を記録する大雨となってしまい、結果、国土交通省によれば、七十一河川、百四十カ所の堤防が決壊したとのことです。
防災科学技術研究所の解析では、千曲川や阿武隈川流域では百年に一度を上回る極めてまれな大雨だったといいます。こうした影響で、千曲川や荒川など大きな川の上流域では、台風の上陸前から支流が増水し、その後、本流でも水位が上がりました。堤防が決壊した百四十カ所のうち八割は、支流と本流の合流地点から約一キロの範囲に集中しています。支流の水が本流に流れ込めなくなるバックウオーター現象などが発生し、堤防が決壊した可能性が指摘されています。
また、川の水が堤防を越えていないのに浸水したところもあります。河川の水位が上がることで、雨水を河川に排水することができずに起こる内水氾濫で、多摩川下流の都市部などが被害に見舞われたとしています。
また、二十都県で発生した土砂災害は九百五十三件に上り、一つの台風被害としては過去最多を更新し、国土交通省によれば、崖崩れ四百八十六件、土石流等四百二十三件、地すべり四十四件、これによる死者は十六人で、多くの方々が犠牲になってしまいました。
特筆すべきは、車中死が二十二人に上り、浸水で車が水没したり、道路の崩落で川に流されたケースがあったことであります。
以上のように、台風十九号による被害は甚大でありました。
報道によれば、堤防が決壊した河川の九割は県の管理であり、国管理の大きな河川よりも中小の河川で被害が集中したことが見てとれます。
水防法は、流域面積が広く、氾濫などで大きな被害が出るおそれのある河川について、浸水想定区域図をつくるよう国や都道府県に義務づけています。しかし、中小河川は、大きな被害につながりにくいとして義務化の対象から外れているケースも多く、中小河川は水害への備えが手薄になりやすいため、今回決壊した七十一河川のうち三十六河川には浸水想定区域図がなく、いずれも県管理であったとのことです。
このような報道は各紙が報じており、もはや想定外という言葉はなく、いつでも、どこでも災害はやってくると私たち自身自覚し、いち早く垂直避難も含め避難行動に移ることが重要であると再認識させられました。いち早く避難行動に移るためにも、早く的確な河川等の情報を得られるようにしなければならないと感じたところです。
台風時等で、テレビで河川の状況を私たちに伝える監視カメラや水位計があります。今回の台風被害を見ると、監視カメラ、水位計の設置、大変重要と考えます。
そこでお尋ねをいたします。
県管理河川における監視カメラ、水位計の設置状況と今後の取り組みについてお伺いをいたします。
また、その情報をどのように県民に伝達していくのかをあわせてお伺いいたします。
また、十九号台風では車中で被災された方が数多くいます。県管理の道路でアンダーパスの道路はどのくらいあり、降雨時の非常体制のとり方はどのようになっているのか、お伺いをいたします。
次に、航空宇宙産業の支援についてお伺いをいたします。
航空機産業は多くの新技術が集約され、技術への波及効果が大きく、産業構造の高度化に有効な産業とされています。また、世界経済のグローバル化、交流人口の増加など旺盛な需要を背景に、今後二十年間で約三万五千機に上る新たな航空機需要が見込まれる成長産業です。
とりわけアジア太平洋地域の航空機需要は、現在の二・二倍、世界需要の約四〇%を占めるとされており、これまで市場の中心となっていた北米、欧州だけでなく、日本を含むアジア地域に世界の目が向けられ、新たな市場開拓に世界がしのぎを削る状況となっております。
日本においては、ボーイング787型機の主翼、胴体など機体全体の三五%を、777型機では胴体、中央翼など二一%を製造しております。
また、愛知県を初めとする中部地域においては、航空機及び航空機部品の生産額は、我が国全体の五割以上、機体部品に絞れば約八割を占めております。
県内には、三菱重工や川崎重工、スバルのほか、MRJ改め三菱スペースジェットの開発、量産化を目指す三菱航空機、ボーイング787、エアバスA350などに搭載するエンジン部品や三菱スペースジェットのエンジンを製造する三菱航空エンジン、さらには航空機産業の裾野を支える中堅、中小のサプライヤー企業が集積しており、我が国最大の航空機産業の拠点を形成しております。
これを踏まえ、県では、国際戦略総合特区であるアジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区を活用し、航空宇宙産業のさらなる集積と生産能力の向上に努めてきました。
さらに、アメリカのボーイング社の本拠地である米国・ワシントン州、エアバス社の本拠地トゥールーズがあるフランスのオクシタニー地域圏と、連携、相互協力の覚書を締結し、県内企業と海外企業とのビジネス交流や情報の共有を行い、新たな販路開拓のため、環境づくりを着実に進めるとお伺いをしております。
しかしながら、一方で、新聞などでは、日本初の民間ジェット旅客機である三菱スペースジェットについては、ことし十月に、アメリカのトランス・ステーツ・ホールディングス社が百機をキャンセルするという報道がありました。これは、現在開発中の三菱スペースジェットM90、座席数が九十席タイプのいわゆる旧MRJが、米国の航空会社とパイロット組合間で結ばれているスコープ・クローズと呼ばれる協定の基準を満たさないという理由によるものでした。
ここでいうスコープ・クローズとは、航空会社とパイロット組合の契約の一部であり、リージョナル航空路線において、航空機機材の座席、大きさ、重量の制限値を定めています。
アメリカ合衆国の航空業は、基幹路線(ハブ)と各地の小需要(スポーク)をつなぐハブ・アンド・スポーク路線形態がとられており、地域の小需要路線に関して、大手はリージョナル航空会社に運航の委託をしています。ハブ・アンド・スポーク路線形態が拡大していき、リージョナル航空会社の運航及びリージョナル航空会社への運航委託がふえていくにつれ、それらの航空会社が大きな機材、航空機を使用する可能性がありました。
大手航空会社は、地域の小路線の運航は別会社へ委託しているため、大手に所属するパイロットたちは自分たちの職域を、リージョナル路線のパイロット組合は仕事を守るために航空会社へ幾つかの要求を起こし、話し合いにより、リージョナルジェット運航に関する制限事項が定められました。制限は航空会社間で微妙に違いはあるものの、二〇一六年十二月一日に合意された代表的なリージョナルジェットへの制限は、座席数最大で七十六席、最大離陸重量三十九トンというものであります。
航空機メーカーにとって、旅客座席の制限は機体製造後も調整可能なため影響は受けませんが、機体重量の軽減は製造工場レベルでは不可能なため、機体の設計変更を行う必要があり、メーカー側にとってはコストが増大し、さらに航空会社にとって座席制限は収益に影響するため、制限緩和に向けて労使でたびたび交渉が行われていますが、二〇一九年に九十席クラスまで緩和される見通しだった交渉はまとまらず、緩和を見通して新機体を開発していたメーカーに影響が出てくることになり、現在は、三菱スペースジェットM100という座席数が七十席クラスでスコープ・クローズの条件を満たす機体も各社に売り込んでいるとのことであり、米国向けにはこちらをどんどん売り込んでいただきたいと考えています。
また、ことし八月にリサーチ会社から発表された三菱重工業の航空機部門サプライヤー最新業況調査によると、中部五県に所在する三菱重工のサプライヤー六十一社の六割超が減益となり、業績が悪化傾向にあるとしており、調査期間がちょうどボーイングの機種変更の時期と重なり、ボーイング787の量産レートが十分に上がっておらず、受注量が少ない時期でありましたが、製造レートの不確実さを受け、県内中堅・中小企業のサプライヤーの業績についても心配しているところであります。
現在、三菱スペースジェットが最も苦しんでいる型式証明の取得については見守るほかありませんが、本県の航空機産業が競争力を維持し、引き続き我が国の航空機産業を牽引していくためには、県内のサプライヤーが国内市場だけではなく、大きな市場である海外での新たな販路拡大が不可欠となると考えます。
そこでお尋ねをいたします。
県内サプライヤーの海外販路開拓支援について、県はどのように取り組んでいるのか、お伺いをいたします。
次に、航空宇宙産業における人材確保、育成についてお伺いします。
先ほど申し上げたように、航空機産業自体は成長産業となっており、今後の市場は海外を中心に大きく拡大していくと予想されております。
また、航空機の製造については、高い安全性や技術力が要求され、技術者の育成に時間を要する上、部品点数では約三百万点と自動車産業の約百倍となっており、多品種・少量生産であるため、製造に多くの人手が必要となっております。
今後、三菱スペースジェットが量産化していくことや、現在開発最終段階で間もなく量産化されるアメリカ、ボーイングの777Xの量産化が始まると、一気に人材が不足するおそれがあります。
また、三菱スペースジェットが製造されることになれば、愛知県は世界でも有数の完成機メーカーを有する地域となり、部品製造だけではなく、機体設計や生産管理技術者など、製造の多種にわたる技術者が多く必要となります。労働人口が減少していく中での新たな技能者、技術者の養成や県内企業、とりわけ中小企業の人材の確保が非常に厳しく、特に人材確保支援については喫緊の課題となっております。
そこでお尋ねをいたします。
航空機部品等の製造に関する人材育成及び確保について、県はどのように支援を行っているのか、お伺いをいたします。
次に、中部国際空港の機能強化についてお伺いします。
中部国際空港について、国際線は中国便を中心に多くの新規就航、増便が実現し、旅客数、発着回数ともに大きく伸びているところに加え、国内線も順調に推移しております。特に増加する訪日外国人旅客需要を確実に取り込むなど、増大する航空需要に対応するため、空港としての量的・質的拡大に向けた取り組みを積極的に推進しております。
中部国際空港の十月までの旅客数を見ましても、前年同期比一一二%となる八百十四万人となるなど、過去最高の更新を見込む千三百五十万人、発着回数においても、前年同期比一一四%となる六・九万回となるなど、こちらも過去最高の更新を見込む十一・五万回に届く勢いであります。
また、本年九月にオープンいたしましたLCC向けターミナルの開業など、積極的な機能強化を図っているところであります。特にLCC向けターミナルについては、LCCのビジネスモデルに沿った利便性と機能性を追求したターミナルとなっており、今後、LCCを中心に路線のネットワークのさらなる拡大が見込まれております。
こうした状況の中、来年の二月には開港十五周年を迎える中部国際空港ですが、十五年も経過するとさまざまな課題が顕在化してきております。
特に滑走路運用上の課題となっている日中時間帯における滑走路処理容量の逼迫、滑走路のメンテナンス時間の確保や滑走路の大規模改修への対応など、将来的には航空便の受け入れ制限の可能性も出てきております。
また、大規模災害時等に備え、国際拠点空港としてのリダンダンシーを強化するなどの必要性も出てきております。
さらには、リニア開業への対応なども含め、我が国の成長を支える国際拠点空港としての役割を果たすためには、二本目滑走路を初めとする機能強化の実現はもはや必要不可欠な状況にあります。
先月も、大村知事が会長を務める、地元自治体及び経済団体で構成する中部国際空港二本目滑走路建設促進期成同盟会において、中部国際空港の二本目滑走路を初めとする機能強化の早期実現に向けた要望活動を行ってまいりました。
この要望会には、神野会長の愛知県を初め、三県一市の議員連盟、半田市長榊原会長の知多市町会、知多半島の市町議員で構成される、空港を活用した知多地域振興議員連盟会長の加藤常滑市議会議長を初め、私も含め多くの役員も参加してまいりました。地域と連携して、二本目滑走路を初めとする機能強化に向けた検討を行うことや、地域の観光資源を活用したプロモーション事業等、インバウンド旅客の増加に向けた施策を初めとする航空需要拡大の取り組みを推進することなどについて、要望してまいりました。
愛知県の自動車産業はもとより、航空宇宙産業やロボット産業など、世界に誇れる産業拠点として今後も十分な役割を果たしていくためには、中部国際空港の二本目滑走路は不可欠なものであり、二本目の早期実現に向けた取り組みを進めていかなければならないと強く決意を持った次第であります。
そこでお伺いします。
中部国際空港の二本目滑走路を初めとする機能強化の早期実現に向け、今後どのように進めていかれるのか、お聞きします。
以上、大きく三点質問いたしました。理事者各位の前向きな御答弁を御期待し、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
4:
◯建設局長(林全宏君) 台風等による河川並びに雨水対策についてお尋ねをいただきました。
初めに、県管理河川における監視カメラと水位計の設置状況及び今後の取り組みについてであります。
県管理河川においては、流域に人口、資産が集中している主要な河川の中下流部や過去に浸水が発生した箇所などに、五十四基の監視カメラと九十三基の水位計を設置しております。
さらに昨年度から、市町村長による避難勧告等の発令や住民の皆様の避難判断の目安としていただくため、出水時にのみ観測する危機管理型水位計八十八基を設置し、運用を開始するとともに、今年度からは、映像により出水の状況や切迫感を伝える低コストの簡易型河川監視カメラ二十三基の設置を進めているところであります。
今後は、これらの監視カメラ等の運用状況や市町村からの意見等を踏まえ、より有効な活用方法や増設などについて検討してまいります。
次に、県民の皆様への情報伝達につきましては、パソコンやスマートフォン等で閲覧できる愛知県川の防災情報により、カメラ映像や水位等の情報をいつでも確認できるシステムを構築しており、本年十一月には、利便性や操作性を向上させる改良を行ったところです。
さらに、河川の氾濫のおそれがある場合には、洪水予報河川、水位周知河川を対象に、本年五月より、水位情報に五段階の警戒レベルのどのレベルに相当するかを加え、市町村等に通知しております。この情報は報道機関にも提供しており、テレビ、ラジオ等からも広く県民の皆様に伝えられているところです。
今後も河川の情報提供の充実を図るとともに、防災イベントなどさまざまな機会を通じて、カメラ映像と水位情報の確認や活用方法の周知に取り組んでまいります。
次に、県管理道路のアンダーパスについてお答えします。
県の管理する道路において、アンダーパスは二十九カ所あり、そのうち降雨時に冠水が想定されるアンダーパスは二十六カ所あります。降雨時の非常体制については、防災安全協定を結んでいる地元の建設業者とともに、冠水発生時の通行規制に備えております。
具体的には、現地に水位センサーを設置し、水位五センチメートルに達した段階で、現地の情報板に冠水注意を表示し、協定業者へ現場の巡視活動を要請します。さらに、十センチメートルまたは十五センチメートルの通行規制水位に達した段階で、情報板を冠水、通行どめの表示に切りかえ、協定業者に通行規制の開始を指示し、バリケード等を設置するなど、車両がアンダーパスに進入しないよう、通行どめの措置を行います。
従来からこうした対応をとってきたところでありますが、二〇一六年九月の台風十六号による影響で清須市内の古川アンダーパスが冠水し、車で進入した運転者一名が亡くなる事故が発生しました。このため、これを教訓にさらにさまざまな対策に取り組んでおります。
まず、水位が五センチメートルに達していなくても、大雨警報発令と同時に協定業者が現地待機する早期非常体制を導入し、昨今の集中豪雨などにも備えております。
次に、ハード対策として、冠水の深さがわかる路面標示の設置、情報表示板のLED化、エア遮断機による仮封鎖装置の設置を進めております。
また、ソフト対策として、冠水マップの更新、チラシの配布、さらに、リアルタイム状況が把握できるよう、監視カメラの設置を現在進めております。
これらの取り組みにより、二〇一六年以降、冠水事故は発生しておりませんが、引き続きハード、ソフト両面からアンダーパスの安全対策を推進してまいります。
次に、中部国際空港の二本目滑走路を初めとする機能強化の早期実現に向けた今後の取り組みについてお答えします。
中部国際空港における昨年度の航空旅客数は、訪日外国人の増加が大きく、約一千二百三十六万人と開港以来過去最高を記録しました。
議員お示しのとおり、中部国際空港株式会社では、今年度、航空旅客数をさらに記録更新となる一千三百五十万人と予想しています。これまで課題とされてきた需要の拡大や利用促進に向けた取り組みが実を結びつつある状況と認識しております。
現在、中部国際空港沖では、名古屋港で発生するしゅんせつ土砂の処分場が国により計画され、環境影響評価書の手続が進められており、地域としては、将来的にこの土地を二本目滑走路として活用したいと考えております。
一方、国の定めた計画では、中部国際空港の滑走路は一本と明記されていることから、この計画の変更に向け、地元の行政、経済界、空港会社が一丸となって取り組みを強化し、関係方面に積極的に働きかけていく必要があると考えております。
このため、本県を含む三県一市と経済界、空港会社からなる中部国際空港二本目滑走路建設促進期成同盟会では、十一月二十六日、国政与党の国会議員連盟とともに合同集会を開催しました。あわせて、政府や関係方面に対し、五月に続き、今年度二回目となる要望活動を実施したところであります。
県としては、国会議員及び三県一市や知多五市五町の地元議員のお力添えもいただきながら、引き続き関係者が連携し、需要のさらなる拡大はもちろんのこと、地域において、二本目滑走路の実現に向けた具体的な検討を進めるなど、中部国際空港の機能強化に向けてしっかりと取り組んでまいります。
5:
◯経済産業局長(
伊藤浩行君) 航空宇宙産業の支援についてのお尋ねのうち、まず、県内サプライヤーの海外販路開拓に対する本県の取り組みについてお答えいたします。
本県航空機産業の中堅・中小サプライヤー企業は、ボーイング機の主翼や胴体を製造している三菱重工業、川崎重工業、スバルのいわゆる三重工の部品製造を担っており、ボーイング社の発注数により業績が大きく左右される構造となっております。
また、アメリカのボーイング社とフランスのエアバス社との民間航空機の熾烈なシェア争いを受け、受注の面でも厳しい状況にさらされております。
こうした厳しい状況を打開するため、中堅・中小サプライヤー企業の中には、市場を国内から広く海外へ求める動きがあり、本県でもこうした海外への販路開拓を支援しております。
具体的には、まず、海外におけるビジネス環境を整備するため、エアバスの本拠地であるフランス・オクシタニー地域圏政府と相互協力に関する覚書を締結し、中堅・中小企業が自力では入手しにくい完成機メーカー関連企業が求めている技術的ニーズ情報を取得するとともに、現地でのサポート体制づくりに努めました。
また、県が主導して設置したあいち・なごやエアロスペースコンソーシアムが中心となり、本年六月にパリ・エアショー、九月には、エアロマート名古屋などの商談会において、海外企業とのマッチングの機会を提供してまいりました。
なお、商談会に際しては専門家が事前のアドバイスを行うとともに、希望する海外企業とのアポイントメントをとるなど、伴走型の支援を行った結果、パリ・エアショーでは七社が出展し、二百五十一件の商談、エアロマート名古屋では二十四社、一グループが出展し、五百七十一件の商談を行い、そのうちパリ・エアショーでは約三割がその後も商談を継続させるなど、内容の濃い出展となりました。
今後もこうした取り組みを着実に進め、県内の中小・中堅サプライヤーの海外における販路開拓をしっかりと支援してまいります。
続いて、航空宇宙産業の人材育成及び確保に向けた支援についてお答えいたします。
航空機部品の製造には高い品質が要求され、さらに、最近の物づくり人材の不足を背景に、航空機製造に携わる人材の確保が厳しさを増しております。
こうした状況を踏まえ、県では、現在、設計の知識をもとに生産工程等を構築する生産技術者、品質の保持から問題発生時の対応までを担う品質保証技術者及び現場技能者など、昨年度は、合計三十一社、五十二名に対し、航空機製造に関する階層ごとに必要な研修を実施し、企業の人材育成を支援しております。
また、人材確保の面からは、主に県内工業高校の二年生を対象に、春休みの五日間を利用したインターンシップ事業を実施しております。
これは、事前に航空宇宙産業に関する講習を行った上で、県内の中小サプライヤー企業の製造現場を体験してもらい、終了後は、インターンシップの体験を踏まえ、将来の航空宇宙産業と高校卒業後の目標について考えるワークショップを実施するものです。
厳しいグローバル競争の中で、県内中堅・中小企業サプライヤーが今後も継続して発展してくためには、競争力を有する製品を提供していく必要があります。
そのためには、製造人材だけではなく、海外との折衝、契約や一貫生産のマネジメントを担う高度なビジネス人材も育成していく必要があることから、今後は、航空宇宙産業の振興のために設立したあいち・なごやエアロスペースコンソーシアムにこの地域の大学にも参画していただき、地域一体となって、学生から企業社員までを対象とした高度人材育成システムを構築し、航空宇宙産業のさらなる発展につなげてまいります。
6: ◯知事(大村秀章君)
佐藤一志議員の質問のうち、中部国際空港二本目滑走路の早期実現について、私からもお答えをいたします。
この地域に大きなインパクトを与える二〇二七年度のリニア中央新幹線の名古屋開業を見据え、中部国際空港二本目滑走路を早期に整備する必要性につきましては、議員御指摘のとおりであります。
地域として、現在は、エアポートセールスを初めとする需要拡大や、さらなる利用促進に向け、積極的に取り組んでいるほか、国への働きかけについても強力に進めております。
去る十一月二十六日には、議員も御出席をいただきましたが、地域の関係者がそろって、赤羽国土交通大臣、自民党の二階幹事長、公明党の斉藤幹事長を初め、政府関係者、与党の関係者に要望をしてまいりました。
赤羽大臣からは、よく地元でも努力をしていだいている、地元の思いをしっかりと受けとめたい、近々、視察に行きたいとの発言をいただきました。
また、両幹事長からも、力強い後押しのお言葉をいただきました。
中部国際空港が早期に世界標準として複数滑走路を有する真の国際拠点空港になるように、引き続き全力で取り組んでまいります。
7: ◯六十六番(
佐藤一志君) 大村知事からも御答弁いただき、本当にありがとうございます。
それぞれ皆さん方に御尽力をいただいたおかげで、中部国際空港もだんだんよくなってきております。愛知県については、来年、世界ラリーがありますし、二〇二六年にはアジア競技大会も開催される予定です。
また、スカイ・エキスポでは、それぞれが世界的な催し物や協議会を開催する予定も入っているようでございますので、これからやはり中部国際空港のサービス向上に向けて、二本目の滑走路はしっかり築いていかなければならないと、そんなふうに思っております。
どうぞこれからも大村知事を先頭にしていただき、二本目滑走路の実現に向けてさらなる御尽力をいただきますよう要望して、終わります。ありがとうございます。
8: ◯議長(
神野博史君) 進行いたします。
日比たけまさ議員。
〔三十四番
日比たけまさ君登壇〕(拍手)
9: ◯三十四番(
日比たけまさ君) おはようございます。
それでは、通告に従い、質問をいたします。
現在、我が国では、国民の約二人に一人が気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーなどのアレルギー疾患に罹患し、その患者数はこの二十年間で約二倍に増加したとも言われ、重大な問題となっています。
そこで、アレルギー及び健康を害する化学物質に対する本県の取り組みについて、順次質問します。
初めに、アレルギー疾患全般に対する取り組みについて伺います。
近年、アレルギー疾患の対策は国を挙げての取り組みとなっています。平成二十六年六月、議員立法によりアレルギー疾患対策基本法が成立、公布され、翌二十七年十二月から施行されました。そして、平成二十九年三月には、法に基づき、アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針が策定、告示され、同年七月、都道府県におけるアレルギー疾患の医療提供体制の整備について、必要な施策の策定及び実施に努めるよう通知されたところであります。
これに基づき、本県では、昨年十月一日に、県内にアレルギー疾患医療拠点病院が六カ所、名古屋大学医学部附属病院、名古屋市立大学病院、愛知医科大学病院、藤田医科大学病院、藤田医科大ばんたね病院、あいち小児保健医療総合センターに設置されるとともに、拠点病院の関係者、保健医療・福祉関係者、学識経験を有する者、アレルギー疾患医療を受ける立場にある患者や住民その他関係者、関係行政機関の職員で構成する愛知県アレルギー疾患医療連絡協議会が立ち上げられました。
そこで伺います。
アレルギー疾患に対する具体的な取り組みが開始され一年が経過しました。この間の拠点病院、協議会の取り組み内容、活動実績と今後の取り組み方針について伺います。
次に、花粉症への対策について伺います。
日本の森林面積は、国土の約三分の二の二千五百八万ヘクタール、そのうち約四割の千二十九万ヘクタールが人工林で、さらに、その半分弱が杉です。
杉は、日本の代表的樹木として私たちの生活、産業と深く関係し、万葉集には「古の 人の植ゑけむ 杉が枝に 霞たなびく 春は来ぬらし」と詠まれ、古くから親しまれるとともに、建築材、土木材、器具材など、幅広い用途で利用され、重要な樹木として扱われてきました。
反面、杉は、その花粉が原因でアレルギーを引き起こすことが問題となっており、一九六〇年代に初めてスギ花粉症が報告されて以来、花粉症患者は年々増加傾向にあります。
こうした対策として、国立研究開発法人森林研究・整備機構では、都道府県と連携を図りながら、花粉症対策品種の開発に取り組み、平成三十一年三月末現在で、花粉の生産量が一般の杉に比べ一%以下の少花粉スギ百四十六品種、二〇%以下の低花粉スギ十一品種、花粉の生産が認められない無花粉スギ五品種を開発しています。これからは、こうした杉を山に植えていくことが必要と考えます。
そこで、花粉の発生量が少ない杉に関する本県のこれまでの取り組み状況と今後の取り組みについて伺います。
無花粉スギは、一九九二年に、富山県で初めて発見されました。それ以来、日本の各地で無花粉スギの探索が精力的に行われ、これまでに約二十個体が発見されています。
しかし、自然界には、数千本に一本の割合でしか無花粉スギは存在しないと推定されており、探し出すには非常に手間のかかる作業となっています。
杉が無花粉になるのは、遺伝子の変異が原因となって起きることがわかっています。そこで、ゲノム編集により花粉をつくる遺伝子の機能を失わせることで、無花粉スギができるとの考えから、現在、杉のゲノム編集技術の開発が行われているそうです。
ゲノム編集とは、生物の設計図である遺伝子を変える新しい技術のことです。全ての生物は多くの遺伝子を持っており、その遺伝子の一そろいをゲノムと呼びます。遺伝子の正体は、DNAという鎖状の物質で、四種類の塩基、アデニン、チミン、グアニン、シトニンが並んでおり、塩基の並び方によって遺伝子の働きが決まっています。
生物を改良するということは、持っている遺伝子を変えることにほかなりません。従来の改良法では、違った遺伝子を持つ生物同士を交配したり、放射線や薬剤でDNAを変異させることによって遺伝子を変化させ、役に立つ新しい性質を持つ生物がつくられてきました。
ゲノム編集は、変えたい遺伝子だけを変える技術で、狙った遺伝子のDNAを切断し、塩基の欠失、置換、挿入を起こし、遺伝子の機能を変える一方で、変えたくない他の多くの遺伝子を切らないよう工夫されており、現在では、農林水産物の生産量や機能性を高めるため、ゲノム編集による作物、家畜、養殖魚の改良技術が研究され、有効性や安全性が調べられています。
このゲノム編集技術を用い開発した食品について、国は、届け出と食品表示の両面から制度を検討し、本年十月から届け出制度がスタートする一方、食品表示については義務化せずに、任意の表示にすることとなりました。理由として、ゲノム編集技術応用食品は、自然に起こる突然変異や従来の育種技術などによるものと科学的に区別がつかず、義務化は難しいと判断したとのことです。
海外では、米国は特に規制していない一方、EUでは、欧州司法裁判所が遺伝子組みかえ食品と同様に規制すべきだと判断を示しています。
新しく世に出回る可能性のあるこれらの食品に対し、東京大学などが昨年実施した調査においては、食べたくない人が四割以上に上るなど、不安視する声があります。
一方で、この技術を活用し、小児期に最も多い食物アレルギー、卵アレルギーでも食べられる新たな卵が将来的に開発できるのではないかとの期待もされています。
いずれにせよ、広くゲノム編集技術応用食品のメリットとリスクを評価できることが消費者にとっての利益につながるのではないでしょうか。
そこで、ゲノム編集技術応用食品に対する情報発信について、県としてどのような取り組みを行っていくのか、伺います。
次に、食物アレルギーへの対応について伺います。
私は、平成二十八年二月定例会にて、学校における食物アレルギー対応の強化と教職員、児童生徒、保護者への理解を深めるための取り組みについて質問し、教育長からは、平成二十二年に策定した食物アレルギー対応の手引をこのたび改訂し、対象範囲を学校給食にとどめず、食物アレルギー全般として内容を充実させ、教職員、児童生徒及び保護者の理解を一層深めるようにした、また、人権教育上の観点から、全ての児童生徒に食物アレルギーを正しく理解させ、いじめや差別の原因とならないよう指導することも重要な視点として盛り込み、さらには、食物アレルギーに対する取り組みを効果的に実践していくため、全ての教職員を対象とした研修の実施や緊急時の対応のための体制整備など、市町村教育委員会や学校に行っていただきたいことを具体的に示したとの答弁を得ました。
こうした学校側の体制について、アレルギーを持つお子様の保護者からは、食物アレルギー全般への理解、生徒への人権配慮を初め、かなり整備が図られてきたとの話を伺います。
しかし、先生の知識によって生徒への対応に差があるとの声もありますし、逆に学校側からは、保護者の理解がもう少しあるとありがたいとの声も聞きます。
いずれにしても、場合によっては命にかかわる問題でありますので、学校側と生徒、保護者、さらには医師の方とのより一層のすり合わせが重要であると考えます。
そこで、小中学校における食物アレルギー対応について、現状と今後の取り組みについて伺います。
次に、私たちが取り込む空気について取り上げたいと思います。
人間は、食物、水、空気を取り込みますが、食物の約一キログラム、水の約二キログラムと比べて空気は一日約十五キログラムと、圧倒的に多くの量を取り込んでいます。
そして、私たちの生活は九〇%以上の時間を住宅や学校、公共建築物などの室内空間で過ごしていると言われることから、室内空気における汚染物質対策を考える必要があります。
我が国では、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物などの化学物質による住宅室内における空気汚染問題としてシックハウス問題が取り上げられ、極めて大きな社会的関心を呼びました。
一九九七年六月には、当時の厚生省から、異例とも言える速さで住宅室内におけるホルムアルデヒドについての室内濃度指針値が設定されて以降、多くの物質について室内濃度指針値が示されました。そして、建築業界で対策が進められたことなどにより、室内濃度指針値を超過する住宅の比率は減少傾向となっています。
その一方で、こうした室内濃度指針値が設定されている化学物質にかわる新たな化学物質が建築物に使用される、あるいは対策がとられていない木材等を使用した輸入家具が室内に置かれるなど、シックハウスに関する新たな問題が指摘されています。
加えて、化学物質過敏症に対する理解と配慮も必要です。
化学物質過敏症は、微量の化学物質に反応して、種々の症状を訴える病態とされ、頭痛程度の症状を訴える方から、普通に生活することが困難な状況に陥る方まで、個人差が大きく、その進行も多種多様と言われています。
二〇〇九年十月からは、保険診療の病名リストに登録されている一方で、専門医が極めて少なく、一般の病院には、その知識のある医師がいないというのが現状です。
治療や対策としては、汚染原因になる建材や化学薬剤系の生活用品の利用を少なくする、換気、通風を小まめに行い、室内から汚染物質を排出する、日常生活においてバランスのとれた食事及び適度な運動と睡眠をとるように心がけ、身体の免疫力を高めることと言われ、患者数は、全国で百万人とも推計されています。
最近では、香りブームの中、家庭用品に含まれる香料により健康被害を訴える人がふえているとも言われ、健康被害に関する調査研究や香料の成分表示等を求める声が上がっています。
また、少し視点が変わりますが、最近では、健康経営の観点からも、室内空気の問題が重視され、空気清浄機を導入するなど、室内空気の質の改善を図る企業も出始めているそうです。従業員が持つさまざまな疾患が生産性に与える影響を調査した結果、最も影響を与えている疾患がアレルギーであったとの報告もあります。
そこで、快適な空気環境と化学物質について伺います。
まず、本県では、シックハウスへの対応など、快適な居住環境を確保するため、どのような取り組みを展開しているのか、伺います。
あわせて、身の回りにある化学物質について理解促進を図る必要があると考えますが、どのような取り組みを行っているのか、伺います。
これらの質問については、化学物質過敏症への配慮の観点からも答弁願います。
次に、現在取り組んでいるPCB処理への対応について伺います。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは、人工的につくられた、主に油状の化学物質です。特徴として、水に溶けにくく、沸点が高い、熱で分解しにくい、不燃性、電気絶縁性が高いなど、化学的にも安定な性質を有することから、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など、さまざまな用途で利用されてきました。
しかし、一九六八年、米ぬか油の製造過程において、熱媒体として使用されたPCBが混入し、吹き出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状のほか、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振などの健康被害を発生させた食中毒事件、カネミ油症事件が発生。以降、その毒性が明らかになり、一九七二年に製造が中止となりました。
それから、約三十年間にわたり、民間主導で処理施設の立地が試みられましたが、地元住民の理解が得られず、立地には至りませんでした。
しかし、長期に保管すればするほど、紛失や漏えいによる環境汚染の進行が懸念されます。
そこで、PCBの確実かつ適正な処理を推進するため、平成十三年六月に、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)が公布、同年七月から施行され、国が中心となって、日本環境安全事業株式会社、現在の中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)が設立され、平成十六年の北九州事業の操業を初め、全国五カ所に処理施設が整備されました。
PCB廃棄物は、PCB濃度により高濃度PCB廃棄物、PCB濃度が〇・五%を超えるものと、低濃度PCB廃棄物に分類されます。高濃度PCB廃棄物には、高圧変圧器や高圧コンデンサー、安定器などがあり、これらはJESCOで処理を行っています。
しかし、安定器及び汚染物等は二〇二一年三月三十一日まで、変圧器、コンデンサーにおいては二〇二二年三月三十一日までが処分期間となっており、この日から一年後の計画的処理完了期限を過ぎると処理施設を閉鎖し、解体することから、事実上処分できなくなります。残すところ、わずかな期間しかありません。
そこで、現在の県有施設における高濃度PCB及び県内事業者が保有する高濃度PCBの処理状況を伺うとともに、残されたわずかな期間について、どのような取り組みをされるのか、伺います。
次に、PCB含有塗料について伺います。
近年、過去に使用されていた塩化ゴム系塗料の一部にPCBが使用されていたことが明らかになり、調査した結果、当該塗料が塗装された道路橋などの鋼構造物の塗膜からPCBが検出されました。
そこで、環境省は、本年十月に、平成三十一年三月末時点の高濃度PCB含有塗膜調査の進捗状況を公表しました。
公表結果によると、調査対象施設は、橋梁、洞門、排水機場・ダム・水門等、石油・ガス貯蔵タンク、船舶の五分野で、国、地方自治体、民間事業者に分類して調査をした結果、全国で二万五千二百施設、そのうち地方自治体では、一万五千九百五施設が調査対象施設として存在するそうです。
そこで、県有施設においてはどのように調査を行い、結果としてどれくらいの施設が調査対象となったのか、また、対象となった施設については、今後どのような対策をとるのか、伺います。
次に、低濃度PCB処理への取り組みについて伺います。
PCB濃度が〇・五%以下のPCB廃棄物及び微量PCB汚染廃電気機器等については、低濃度PCB廃棄物として適正に処理する必要があり、環境大臣が認定する無害化処理認定施設及び都道府県知事等が許可する施設にて、二〇二七年三月三十一日までに処理を行わなければなりません。
さらに、高濃度PCB使用製品がメーカー名、製造年、型式等から判断できるのに対して、低濃度PCB使用製品は、製造過程でPCBが混入した電気機器などであり、実際に分析しないとPCB混入の有無が把握できません。低濃度PCB処理を行うためには相当な取り組みが必要になると考えます。
過去には、本県を含む多くの自治体で、PCB分析に対する補助金制度が設けられておりましたが、現在、本県ではこうした補助制度がありません。東京都や北海道では補助金制度を設け、早期の処理に対策を講じており、本県でも速やかな対策が望まれます。
そこで、低濃度PCB処理に対し、これまでどのように取り組まれてきたのか、また、今後どのように取り組まれるつもりか、伺います。
以上、理事者各位の前向きな答弁をお願いしまして、壇上での質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
10:
◯保健医療局長(吉田宏君) アレルギー及び健康を害する化学物質における取り組みについての御質問のうち、初めに、アレルギー疾患に対する取り組みについてお答えいたします。
アレルギー疾患対策につきましては、アレルギー疾患に関する正しい知識の普及と人材育成が大変重要であると認識しております。
そこで、県では、患者、家族も構成員である愛知県アレルギー疾患医療連絡協議会の議論を踏まえ、主に拠点病院の医師が講師となって、講演会を三回、研修会を四回開催し、県民への正しい知識の普及、医療従事者の知識、技能の向上、教育現場における適切な対応方法の周知等に努めております。
また、保護者の多くが子供のアレルギー疾患への対応にお困りですので、日常生活におけるアレルギー予防や対策についての情報が記載されたリーフレットを、ことし四月に、市町村を通じて乳幼児の保護者に配布いたしました。
なお、現在、アレルギー専門医等を対象にアレルギー検査や治療、指導方法に関する調査を実施しておりますので、今後、調査結果を評価、分析し、拠点病院を中心とした診療連携体制の充実に向けての検討を進めてまいります。
今後とも、アレルギー疾患を有する人誰もが適切な医療を受けられるようしっかり取り組んでまいります。
次に、ゲノム編集技術応用食品に対する情報発信についてお答えいたします。
県といたしましては、県民の不安を解消するために、正確な情報の収集及び発信が大変重要であると考えております。
そこで、消費者庁が本年度に開催した意見交換会に職員を派遣するなど、常に最新の情報の収集に努めるとともに、県のウエブページに関連情報を掲載したところでございます。
また、消費者代表や学識経験者等で構成する食の安全・安心推進協議会において、最新情報の共有を図っております。
さらに、県民の皆様を対象とした食の安全・安心に関する講習会において、講義内容にゲノム編集技術応用食品の情報を盛り込むことにより、正確な情報の発信に努めております。
県といたしましては、今後とも、県民の皆様の食の安全・安心の確保にしっかり努めてまいりたいと考えております。
次に、快適な居住環境の確保についてお答えします。
住宅の建築材料などから発生する化学物質により目や喉の痛みが生じるシックハウス症候群は、重要な健康課題であると認識しております。
このため、本県では、学識経験者で構成する会議及び庁内関係課で構成する会議を設置して、総合的かつ効果的なシックハウス対策を推進しているところでございます。
また、県保健所等に居住環境に関する相談窓口を設置しておりまして、昨年度は百一件の相談があり、このうち、シックハウスに関する相談が十五件ございました。
保健所では、相談内容に応じまして、原因物質の一つであるホルムアルデヒド濃度の測定を実施し、厚生労働省が定めた数値を超過した場合には、効果的な換気方法などの助言を行っております。
加えて、広く県民の皆様にシックハウスに関する啓発をしていくことも重要であることから、市町村が実施する健康祭りにおいて、保健所が住宅模型を使用したわかりやすい説明を行っております。
なお、化学物質過敏症につきましては、原因物質との因果関係や発症のメカニズムなど未解明な部分が多いことから、引き続き情報収集に努め、居住環境に関する相談等に活用してまいりたいと考えております。
県としましては、今後ともこうした取り組みを継続していくことで、県民の皆様の健康で快適な居住環境の確保を図ってまいります。
11:
◯農林基盤局長(水野康弘君) 花粉の発生量が少ない杉に関する本県のこれまでの取り組み状況と今後の取り組みについてお答えいたします。
スギ花粉症が社会問題化する中、本県では、二〇一三年度に、中部森林管理局や愛知県森林組合連合会などの林業関係団体と連携して、愛知県スギ花粉発生源対策協議会を設立し、少花粉スギの苗木の生産拡大や植栽の促進に向けた検討を進めてまいりました。
まずは苗木の生産体制を整えるために、豊田市下山地区に、二〇一四年度から二〇一七年度にかけて、種を生産する採種園を整備し、苗木の生産量をふやす取り組みを進めてまいりました。
次に、少花粉スギの苗木を植える取り組みを促進するため、切って、使って、植えて、育てる循環型林業を進める中で、伐採後に少花粉スギの苗木の植栽を推奨してきた結果、二〇一五年度から昨年度までの四年間で、杉を植栽した三十一ヘクタールのうち、約五割に当たる十五ヘクタールを少花粉スギに切りかえることができました。
あわせて、本県の少花粉スギにあいちニコ杉という愛称をつけまして、本年、森林公園で開催した第七十回全国植樹祭では、天皇陛下にお手植えをしていただいたところでございます。
本年度からは、新たにあいち森と緑づくり事業において、高齢化した人工林の若返りを図るため、少花粉の苗木の植栽に対する支援を開始したところでございます。
今後の取り組みといたしましては、これまで年間四ヘクタール程度であった少花粉スギの植栽面積を、あいち森と緑づくり事業や公共造林事業などを活用し、約八倍となる年間三十ヘクタールまで増加させることで、花粉の発生量が少ない森林への転換を図ってまいります。
12: ◯教育長(長谷川洋君) 小中学校における食物アレルギー対応の現状と、今後の取り組みについてお尋ねをいただきました。
初めに、現状でございますが、県教育委員会では、毎年、学校における食物アレルギー対応に関する調査を実施しております。
その調査結果では、学校において食物アレルギー対応が必要な児童生徒数は年々増加しておりまして、本年五月一日現在では、名古屋市を除いて、小学校で七千三百人余り、中学校では二千四百人余りとなっております。
また、医師から処方されているアドレナリン自己注射薬であるエピペンを所持している児童生徒数は、二〇一四年度の八百五十六人から、二〇一八年度は千九百十二人と増加をしております。
こうした中、本県では、二〇一五年度に学校における食物アレルギー対応の手引を改訂いたしまして、緊急時の対応のための体制の整備に努めてまいりました。
具体的には、保護者向けリーフレットを配付するとともに、食物アレルギー対応の申し出があった児童生徒には、医師が記載したアレルギー疾患用の学校生活管理指導表を提出してもらい、養護教諭が中心となって、児童生徒一人一人に対応するマニュアルを作成し、校内研修を通じて全職員間で共通理解を図っておりまして、緊急時の体制は整いつつあると考えております。
次に、今後の取り組みについてでございます。
学校における食物アレルギー対応では、まずは、その対応が必要な全ての児童生徒について、学校生活管理指導表を提出してもらい、個別の対応マニュアルが作成されるよう指導をしてまいります。
また、市町村教育委員会におきましては、マニュアル等の作成や研修会の企画などにより、学校への指導、支援を行う食物アレルギー対応委員会、この委員会の設置数が三十市町村にとどまっておりますので、引き続き給食主管課長会議等を通じて、全ての市町村に委員会が設置されるように働きかけてまいります。
13:
◯環境局長(森田利洋君) 快適な空気環境と化学物質のお尋ねのうち、身の回りにあります化学物質についての理解促進についてお答えいたします。
私たちの生活は、例えば洗剤、柔軟剤、化粧品、防虫剤や消臭剤など、さまざまな化学物質からつくられた、便利で役に立つ製品によって支えられております。
一方で、化学物質は、その有害性の程度と体に取り込む量、いわゆる環境リスクの大きさによっては、人の健康などに悪い影響を与えてしまうおそれがございます。
こうした化学物質による環境リスクの低減を図るため、事業者に対しましては、化学物質の環境への排出を管理するよう、年一回の排出物の届け出とともに、立入検査等により自主的な管理の改善を促しているところでございます。
また、県民の皆様に対しましては、化学物質につきまして理解し、正しく使用していただくため、各種製品の使用上の注意を守ることや必要な量だけを使うことなど、私たちがふだん心がけるべきことについて紹介したパンフレットを毎年作成、配布するとともに、県ウエブページで公表するなどの普及啓発を行ってございます。
さらに、化学物質に関する情報をわかりやすく紹介するセミナーを二〇〇五年度から開催しております。昨今の化学物質過敏症のような、健康影響を訴える方々への配慮も意識いたしまして、昨年度は、においや香りとの上手なつき合い方などについて紹介し、今年度は、石けんや洗剤の正しい使い方などについて紹介することとしております。
今後ともこうした取り組みを通じまして、県民の皆様が身の回りの化学物質と上手につき合い、安心して生活できるよう、化学物質についての理解の促進を図ってまいります。
続きまして、PCB処理への対応のうち、まず、高濃度PCB廃棄物の処理についてお答えいたします。
高濃度PCBは、PCB特別措置法によりまして、当地域では、最終で二〇二二年三月末までの処分が義務づけられております。
この期限までに、漏れなく処理が行えますよう、県内事業者に対し、啓発、広報や立入指導に加えまして、二〇一三年度からは、使用、保管している可能性のある事業者を対象とした掘り起こしの調査、これによりまして継続的に保管量の発掘、把握を図りつつ、処理の促進を図っているところでございます。
この調査で明らかになったものを含めまして、本年三月末現在で、本県における高濃度PCB廃棄物は、安定器及び汚染物等が約千百二十六トン、うち約五二%が処理済み、変圧器、コンデンサー等は約三万三千台、うち約九四%が処理済みとなっております。このうち、県有施設につきましては既に全量を把握しておりまして、安定器及び汚染物等は約百四十九トン、うち約七八%が処理済み、変圧器、コンデンサー等は五百八十七台、うち約九五%が処理済みとなっております。
安定器及び汚染物等は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社、通称JESCOの北九州処理事業所において処理されておるところでございますが、これまで優先的に受け入れてきた地元の九州地方等の処理のめどが立ち、今後、東海地方等の処理が促進されますので、計画どおり期限までに処理を完了できる見込みと考えております。
県といたしましては、確実な処理に向けまして、所有事業者に対し、JESCOと合同で立ち入りや説明会を行い、速やかな処理を働きかけるとともに、国及び都道府県が出資いたしましたPCB廃棄物処理基金等を活用しました補助制度によりまして、中小企業者における処理の促進を図ってまいります。
今後とも関係機関等と連携し、事業者に対する周知啓発、掘り起こし調査、さらに立入指導を継続して進めまして、高濃度PCB廃棄物の期限内の確実な処理に向けまして、しっかりと取り組んでまいります。
次に、PCB含有塗料への対応についてお答えいたします。
国土交通省や環境省におきまして、橋梁、洞門、排水機場、燃料タンク、船舶等の鋼の構造物、この実態調査を行った結果、PCB含有塗料の使用、あるいはその可能性が判明したことから、昨年十一月に環境省が高濃度PCB含有塗膜調査実施要領を定めまして、全国で調査が開始されております。
県では、PCB含有塗料が製造、販売された一九六六年から一九七四年の間に建設または塗装された可能性があり、その後、全面塗りかえがされていない橋梁等四百四十六の県有施設を対象に、塗膜のサンプリング、分析調査を順次進めてきているところでございます。
本年十一月末までに、このうち二百四十四施設について調査を完了し、一施設で高濃度PCB含有塗膜が、三十八施設で低濃度PCB含有塗膜がそれぞれ確認されております。
この新たに判明したPCB含有塗料による塗膜など、PCB汚染物等の処理を円滑に行うということで、現在、国におきまして、JESCO北九州処理事業所等のみで処理が可能な高濃度PCB汚染物等につきまして、その一部を、実証実験を経て、民間の無害化処理認定施設で焼却処理できるようにするとともに、処理期限も、低濃度PCB汚染物等と同じ二〇二七年三月末とする関係法令等の改正作業が進められているところでございます。
こうした国の動きもございますが、県としては、関係部局と連携、情報共有を図りつつ、残りの施設について早急に塗膜調査を進めるとともに、確認された塗膜につきましては適正に撤去、処理を行ってまいります。
最後に、低濃度PCBの処理の取り組みについてお答え申し上げます。
低濃度PCB廃棄物には、変圧器、コンデンサー、感圧紙のほか、塗膜などがございます。
このうち、変圧器、コンデンサー等は、本来PCBを使用していないはずのものの中に、微量のPCBに汚染された再生の絶縁油を使用したものが多数存在することが明らかになったものでございまして、二〇〇九年十一月から、微量PCB汚染廃電気機器等として区分されてございます。
これまで事業者に対しまして、県といたしまして、研修会等を通じ、低濃度PCBの確認、処理に係る啓発、指導を行うとともに、電気保安業界に依頼しまして、工場、事業場等の変圧器やコンデンサーの管理を請け負っております電気主任技術者等を通じた働きかけを行ってきているところでございます。
この微量PCB汚染廃電気機器等は、非意図的にPCBが混入したものでございますので、PCB含有の有無の確認には絶縁油の分析が必要となり、メーカー名、製造年から判断できる高濃度PCB使用製品と比べまして、その確認作業に非常に手間がかかるところでございます。
このため、本県では、微量PCB汚染廃電気機器等が民間の無害化処理認定施設で処理することが可能となりました二〇〇九年度から三年間、その分析費用への補助制度を設けまして、事業者の確認作業を、計二千六百三十四件支援してきたところでございます。この分析に係る費用も低廉化が進んでおりまして、また、現在、国において、低濃度PCB使用製品の効率的な把握方法について検討されていることから、県といたしましては、その処理の促進に向けまして、中小企業者の処理を支援する補助制度の創設につきまして、国に働きかけを行っているところでございます。
今後も、二〇二七年三月末の期限までに全ての低濃度PCB廃棄物の処理が確実に進みますよう、関係機関、業界団体等とも連携を図りながら、しっかりと取り組んでまいります。
14: ◯三十四番(
日比たけまさ君) それぞれ御答弁をいただきまして、ありがとうございました。
それでは、要望のほうをさせていただきます。
今回、アレルギーに関する質問を数点させていただきましたが、質問で触れていない点でもさまざまな課題があります。
例えば災害時の食物アレルギー対策として、避難所などにアレルギーに配慮した食料の備蓄を進めていただいていますが、避難所を初めとする炊き出しでは、アレルゲン表示がされていないケースも多く、善意で行動を起こしていただいている方々に対して、中に何が入っていますかとか、アレルゲン表示をお願いしますとお願いすることが難しいとの声を聞きます。
福島県いわき市では、避難所開設時の炊き出しを行う際、原材料表示をすることがマニュアルに反映されているそうです。アレルギーに関する情報発信や啓発活動をより積極的に展開することで、県民の理解がさらに深まれば、こうした負担が軽減できると考えます。
また、食物アレルギー疾患を抱える方は、対面販売や店頭でのはかり売り、飲食店等でのアレルゲン情報の提供を望んでいます。
平成二十五年六月、消費者の立場に立ったわかりやすい食品表示を促す目的で、食品表示法が成立しましたが、対面販売や飲食店での表示義務までには至りませんでした。
しかし、この課題については検討が継続され、平成二十九年六月に作成された外食・中食におけるアレルゲン情報の提供に向けた手引きには、事業者が正確な情報を消費者に提供することは困難を伴うが、克服するためには、行政が主体的に関係業界と連携して、小規模・零細事業者でも取り組めるノウハウや教育、指導を行える体制を整備する必要があると記載されています。
名古屋市では、独自に加工食品の自主的な情報提供ガイドブックを平成二十八年三月に策定し、百貨店やスーパーへ配布するとともに、食品衛生のセミナーなどにも活用していますし、東京都でも、飲食店向けのリーフレットを作成しています。本県においても、こうした動きを研究し、事業者への働きかけを行うべきではないでしょうか。
もう一つ、シックスクール問題と言われる、学校におけるシックハウス症候群及び化学物質過敏症の方への対応についても少し触れます。
学校の空気環境や飲料水などは、学校環境衛生基準に基づき、年一回の定期測定や臨時測定を実施するとともに、適切な状態の維持や換気が行われています。
しかし、先ほど触れた化学物質過敏症の児童生徒の入学や教職員の転入に際しては、さらなる対応、例えば児童生徒が床のワックス、教科書や教材のインク、トイレの芳香・消臭剤、保護者の方の香水や洗濯の柔軟剤に反応し、登校できなくなるということのないよう注意が払われなければなりません。
北海道江別市では、教育委員会がシックスクール対策マニュアルを策定し、関係者への理解促進や環境整備に努めているそうです。
もちろん学校のみならず、幼稚園や保育園を含め、こうした問題についての広い理解が必要であると考えます。
これまで述べてきたアレルギー対策を進めるに当たっては、さまざまな分野への対応が必要となることから、組織の横断による総合的な取り組みが求められます。
そこで、私は、本県におけるアレルギー疾患対策推進計画をぜひ策定いただくことを要望します。
アレルギー疾患対策基本法では、都道府県は、アレルギー疾患医療の提供の状況、生活の質の維持向上のための支援の状況等を踏まえ、アレルギー疾患対策の推進に関する計画を策定することができるとの位置づけにとどまり、義務化はしていません。しかし、近年では、東京都を初め、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、福岡県、兵庫県などにおいて、アレルギー疾患対策推進計画が策定または検討されており、対策を総合的に推進する動きが始まっています。
ぜひ本県も、各分野の有識者や団体の声を幅広く聴取しながら、計画策定を検討いただき、多くの県民が悩みを抱えるアレルギー疾患対策に、より積極的に取り組んでいただきますことを要望して、質問を閉じます。ありがとうございました。
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15: ◯四十一番(田中泰彦君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
16: ◯議長(
神野博史君) 田中泰彦議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
17: ◯議長(
神野博史君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午前十一時二十九分休憩
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午後一時開議
18: ◯副議長(堀嵜純一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
平松利英議員。
〔七番平松利英君登壇〕(拍手)
19: ◯七番(平松利英君) 一宮市選出、自民党一回生の平松利英です。議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、順次質問させていただきます。
十一月十日は何の記念日か御存じでしょうか。肢体不自由児愛護の日ですとか、断酒宣言の日、トイレの日など、さまざまな団体が記念日を策定していますが、平成二十八年十二月に公布された無電柱化の推進に関する法律において、国民の間に広く無電柱化の重要性についての理解と関心を深めるようにするため、十一月十日を無電柱化の日と法律により定められました。一の数字を並ぶ電柱に見立て、それをゼロにするという意味を込めて、十一月十日に定められたようです。
日本はさきの大戦後、焼け野原と化したショックから速やかに復興するため、電線類を架線する電柱が一時的にという名目で立てられました。
その後、高度経済成長期には、白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が一般家庭の三種の神器としてうたわれるなど、電気や電話の需要が急速に高まり、電柱を次々に立てて対応しなければなりませんでした。そして、本来は一時的な予定であった電柱が至極当然、当たり前のものになってしまったのです。そして、現在では、全国で約三千六百万本もの電柱が立ち並んでいます。
電柱には、高圧線と低圧線、そして、電話線やケーブルテレビ、有線放送やインターネット、携帯電話などに用いられる光ファイバーなど多数の通信回線が架線され、多くの役割を果たしています。
しかし、本年の台風十五号や十九号での電線類や電柱への甚大な被害が明らかになるにつれ、電線類を地下に埋設するなどの無電柱化事業に対する関心が非常に高まってまいりました。
無電柱化の大きなメリットとして、災害時の電柱倒壊による家屋の損壊、電線の垂れ下がりによる感電事故、そして、転倒した電柱が妨げとなって救急車や消防車など緊急車両が通行できなくなる事態を防ぐことができます。
電柱には、さきに申し上げたように、電線や幾多の通信回線がかけられており、中には一つ五百キログラムもあるトランスが複数個取りつけられている電柱もあります。つまり、電柱が倒れるということは、一トンを超える重量物が十メートル以上の高さから倒れてくるという、通常考えられない恐ろしい事態が発生することになります。大きな地震、台風が直撃するだけでも大災害ですが、そこに電柱倒壊が重なると、はかり知れない甚大な被害となります。無電柱化推進により災害に強いまちを実現できます。
二つ目のメリットとして、電線や情報通信回線の被害を軽減し、停電による被害を減らし、ネットワークの安全性、信頼性を向上させることができます。
災害発生時に最新情報を得るためには、テレビやパソコン、スマートフォンなどを活用する方が多いことと存じますが、停電してしまえばテレビは映りませんし、通信回線が切断したり、携帯電話の基地局が機能を果たせなくなれば、パソコンやスマートフォンから情報を得ることもかないません。特別警報が発令されようが、避難場所や緊急物資の提供情報があろうが、その情報を得る身近な手段が断たれてしまうことになるのです。
防災の観点以外にも、無電柱化により歩道の有効幅員が広がり、歩行者の安全性が向上し、車椅子やベビーカーなど、いわゆる交通弱者の通行もスムーズになり、安全、快適な生活空間が広がります。
また、電線や電柱がなくなることで美しい町並みが形成され、まちの景観向上に直結します。観光地はもちろんのことですが、地域の活性化にもつながり、その土地の資産価値が向上するという調査結果も出ているようです。
さらには、電柱を伝わって部屋に侵入する犯罪を防ぐことも期待できますし、祭りの際に山車が電線にひっかかり通れないという理由から山車を小型化したり、本来通るべきルートを変更しているお祭りがあると聞きます。無電柱化により歴史を正しく継承し、本来のお祭りやにぎわいを取り戻すことが可能となります。
また、電線や電柱に集まる鳥が落とすふん害や、犬のマーキング等がなくなり、衛生的になりますし、電線周りの街路樹の強剪定が日常化している路線もあります。強剪定を繰り返すことにより樹形が崩れ、貧弱化してしまい、せっかく自然豊かなまちをつくろうとしても、それが電柱、電線のせいで伴っていない場所も見受けられます。
そして、電線やトランスから出る電磁波は、地中に埋設することで低減し、人体への悪影響を抑えられることがわかっています。
以上のように、無電柱化のメリットは多岐に及びます。
しかし、何といいましても最大のメリットは、冒頭申し上げたように、その防災性でしょう。大型台風が毎年のように上陸し、南海トラフ巨大地震がいつ起こるともわからない本県において、まず、防災の観点だけでも無電柱化する意味はあり余るほどですが、地価の向上や地域経済の活性化、そして、安全、快適までも同時についてくるとなれば推進しないわけにはいきません。
近年の状況を確認しますと、国が主導し、数年ごとに無電柱化の計画が発表され、本県も無電柱化工事を行っています。実際に、最も整備延長が多かった国の第五期計画で、一年間に全国で四百四十キロ程度が無電柱化されました。
日本の道路総延長は約百二十万キロメートルありますので、それで割ると、全ての無電柱化が完了するのに約二千七百年もかかる計算になります。日本の建国は、神武天皇が即位されたとされる紀元前六六〇年二月十一日とされています。建国から本年で二千六百七十九年を迎えましたが、今のペースで全国の電柱を無電柱化するためには、この日本建国の歴史と同じ時間がかかる計算になります。
ところが、国も県も無電柱化を推進している状況にあるにもかかわらず、電柱の本数は、全国で毎年七万本ペースでふえ続けています。
海外に目を向けると、ロンドン、パリなどヨーロッパの主要都市や香港、シンガポールなどアジアの主要都市では、無電柱化率が一〇〇%となっています。
しかし、それに対して本県では、現状わずか一・二%しか進捗していません。電線類を地中化する無電柱化の整備については、整備コストが高額であることや時間がかかることが課題となりますから、災害時の避難や復旧に大きな役割を担う緊急輸送道路の無電柱化から集中的に事業を進めるべきと考えます。
また、それと並行し、新たな電柱の新設を禁止する処置が必要でありますし、道路の拡幅工事が行われる際には、あわせて無電柱化を推進するなど、工事にかかる費用を抑制する仕組みを構築する必要があります。
そこでお尋ねします。
本県の防災を目的とした無電柱化対策の取り組みの現状はどのようになっているのか、また、今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
続きまして、二つ目の質問に移ります。
尾張北部の中核都市である一宮市は、再来年、市制施行百周年を迎えます。古くから繊維産業を基盤として栄え、近年では地場産生地、尾州のブランド力強化を進めており、世界三大毛織物産地であるイタリアのビエラ、イギリスのハダースフィールドと肩を並べ、世界中のハイブランドから指名が入り、注文が絶えない生産体制と技術力を誇っております。
また、一宮市の支援制度を活用して、平成三十年には医薬品ラベルの製造工場ができるなど、新たに製造業で五件、運輸業で一件の企業立地があり、企業誘致の推進により産業の複合化が図られている地域であります。
そして、私の地元、千秋町には、野球場、サッカー場、陸上競技場、テニスコート、プールなど総合的なスポーツレクリエーション拠点となる県営の一宮総合運動場があり、さまざまな大会が開催され、スポーツを通じた交流の拠点となっています。
一宮市は、古くは東海道と中山道を結ぶ美濃路きっての宿場町で、交易、文化の交流拠点として栄えてきましたが、現在も高規格幹線道路としての高速道路には四つのインターチェンジがあり、日本の大動脈である東名・名神高速道路と東海北陸自動車道をつなぐ、太平洋側と日本海側の結節点となる重要な地域であります。
さらに、尾張西北部地域には、南北方向に名古屋中心部と岐阜県をつなぐ国道二十二号と四十一号があり、航空宇宙産業など、さまざまな流通の主要ルートとなっています。
その立地環境のよさから、物流施設を初め、工作機器工場が多く立地していますが、尾張北部地域に経済の好循環を生み出すためには、県営名古屋空港周辺を中心に、航空宇宙産業を初めとする次世代産業のさらなる集積を目指していく必要があります。
そのためには、広域幹線道路ネットワークの拡充や、高速道路インターチェンジ、空港、産業集積地などへのアクセス道路の整備が必要です。
現在、国道四十一号におきましては、国が小牧市から大口町、犬山市内において、慢性的な交通渋滞の緩和や高速道路小牧インターチェンジへのアクセス強化を目指して、六車線化拡幅工事に取り組んでいるところであります。
また、国道二十二号におきましては、現在、朝夕を中心に一宮市内の各交差点で発生している渋滞状況や、名神高速道路一宮ジャンクションから一宮インターチェンジ間の多発する慢性渋滞などを踏まえ、国道二十二号の上を通る名岐道路を一宮木曽川インターチェンジまで延伸するべく、優先整備区間と位置づけ、早期整備計画の具体化に向けて取り組んでいるところと聞いております。
さらに、これら国道四十一号と二十二号を補完する名古屋市から江南市に至る尾張西北部の重要な南北軸として、第二次緊急輸送道路に指定されています県道名古屋江南線についても、現在、県により岩倉市内において四車線化整備が進められているところであります。江南市内においては、南北軸整備が完了しており、岩倉市内の整備が終わりますと、その中間で未整備区間となっている一宮市内一・五キロを残すのみとなりますが、その区間の測量が先月から始まり、全線整備完了の日を迎える期待の声が大きくなってまいりました。
一方で、尾張北部地域の物づくり拠点や航空宇宙産業が連携を図り、地域のポテンシャルを高めるためには、これら南北軸の整備にあわせて、東西軸を構成する幹線道路整備も同時に取り組むことが必要であります。
現在、一宮市と小牧市を東西に結ぶ都市計画道路萩原多気線については、岩倉市や一宮市でバイパス整備が進められており、北尾張中央道と呼ばれる国道百五十五号においても、県により整備が進められています。とりわけ国道百五十五号につきましては、周辺にある物流施設からの大型車両が多く通行しており、朝夕の時間帯には、名神高速道路小牧インターへ向かう大型車両などにより著しい渋滞が発生しています。
令和の時代を迎え、今後も引き続き尾張西北部地域が力強く発展していくためには、まずは地域の中核都市であり、伝統ある一宮市と小牧市など市境を越え、強く周辺地域を結びつける国道四十一号と二十二号を連絡する四車線化道路整備が急務と考えます。
都市計画道路として尾張西北部で計画されている主な路線は、萩原多気線、一宮春日井線、北尾張中央道と言われる国道百五十五号の三路線であります。そのどれをとっても重要なバイパスでありますが、中でも国道百五十五号は、国道二十二号との交差点周辺に名岐道路の中間インターが予定されており、名岐道路が延伸した際には、この中間インターと小牧インターを結ぶ国道百五十五号を利用する車両が拍車をかけて増大することが目に見えています。長年の夢であった名鉄犬山線の布袋駅付近鉄道高架事業もいよいよ高架化完了が見込まれ、ボトルネックが解消する今こそ、整備促進を望むものであります。
そこでお尋ねします。
一宮市から名神高速小牧インターへのアクセス道路となる現在事業中の国道百五十五号四車線化事業の進捗状況並びに今後の取り組みについてお伺いいたします。
三つ目の質問に移ります。
本年十月二十七日から十一月三日まで、長江正成団長と青山省三副団長を先頭に、
愛知県議会海外調査団十五名の一員として、アメリカ・ニューヨーク州とカナダ・トロント市を訪問してまいりました。
港湾振興施策、障害者スポーツの普及促進、スタートアップ戦略の大きく三点を重要調査項目とし、各施設等の調査に当たりましたが、私は、その中からスタートアップ戦略に絞って報告し、本県のスタートアップ支援についてお伺いいたします。
そもそもスタートアップとは、全く新しいビジネスモデルにより短期間での成長を目指すという最大の特徴を持ち、イノベーションによって新たな価値を創出し、世の中に役立てるという使命感や理念を持っていることが特徴です。新たなビジネスモデルを実践していくためリスクが高く、大企業が手を出さないような常に不確実性が伴う市場に、使命感を掲げて飛び込んでいく、その創業者の熱意や人間性を見て、多くの投資家たちが投資の判断を行います。
特に昨今は、市場のニーズが目まぐるしく変化していますが、新たな市場は世の中の課題の中に潜んでいます。そこにいち早く目をつけ、常識を覆すような新たな手法で解決していくことこそが、世界を相手に主導権を握り、莫大な利益を生み出すことにつながります。それこそがイノベーションの本質であり、スタートアップ起業家に求められるものであります。
海外調査を行いましたニューヨークのブロンクスビジネスインキュベーターでは、私立大学の施設内に連邦政府と州と市が支援する連邦政府のプログラムとして、起業家、イノベーター、中小企業コミュニティー向けの教育・研究開発・創業支援が行われていました。
ブロンクス区は移民が多く、仕事についていない低所得者層が多いため、その就業支援として新たな仕事を提供していくという使命が背景にあり、ブロンクス区の中で最も大きな雇用先となっているヘルスケア関係や病院などと連携し、その就業支援や新たなビジネスモデルをつくり上げることを目的としていることが大きな特徴でした。
スタートアップの仕組みとして、まず、ビジネスアイデアを学生から募り、大学の法務部所属弁護士が知的財産やコピーライトなどの契約に関する支援を行います。投資家とのマッチメーキングのため、学生によるプレゼンテーションを行い、そこで投資家から選ばれたビジネスモデルには銀行も支援する仕組みになっているとの説明を受けました。
二つ目の調査先となりましたカナダ、州立トロント大学では、スタートアップに特化して取り組んでいるハブ拠点を調査してまいりました。このハブは、学部とは独立した組織で、トロント大学に通う大学生や大学院生を対象にスタートアップ支援を行っています。
ハブの代表者と三名のコーチが指導に当たっていましたが、その指導者らは大学の教授ではなく、起業家として成功をおさめ、ビジネス経験豊富な人材で構成されていることが大きな特徴であります。学生のアイデアをいかに生かしていくかという点に重きを置き、最終的にはビジネスにつなげていくことを目的としています。
美術、教育、化学、医療を初め、ビジネス、経済などさまざまな専攻部門の学生五百人以上が毎年かかわり、その学生の中から毎年二十五社から四十社がスタートアップし、過去五年間で百五十社以上を生み出しています。百五十社のうちの半数は現在も存続し、さらに、その三分の一は株式上場するまでに成長しているとのことでした。統計的に、スタートアップ企業の五年生存率は一五%、成功する確率は七%、上場するなどの大成功する確率は〇・三%とも言われる中で、驚異的な成果を上げていると言えます。
このハブでは、まず、学生から出てきたアイデアをさまざまなワークショップを通じ熟成し、学生たちにビジネスプランの個々の工程を理解させ、練り上げます。目指す顧客対象、商品の持つ突出したアドバンテージ、考えられるパートナーシップなどにつき検討し、試作モデルをつくります。そのビジネスプランや試作品を産官学共同イベントにて学生みずからが披露し、市場で売れる商品であるという実証を積み上げていくなどの工程に及びます。若い学生が集う活気あふれるそのハブで、私たち調査団に向け、実際に学生によるプレゼンテーションが行われました。堂々と自信に満ち、深く練り込まれたそのプレゼンは、調査団から高い評価を得ていました。
これら海外調査により、スタートアップ支援には、単なる場の提供だけではなく、支援するノウハウがとても重要であると感じました。
そこで、本県のスタートアップ支援について二点お伺いいたします。
一点目は、本県は海外連携事業において、先進地の支援ノウハウを吸収していると聞いておりますが、これまでにどういった成果があり、また、今後どのように展開していくのか、お伺いいたします。
一方、本県は製造品出荷額等が四十一年連続で全国一位を誇る物づくり大国であり、世界に通用する自動車や工作機械、航空宇宙産業などが列挙するなど、世界有数の一大拠点を形成しています。優秀な企業や人材に恵まれており、スタートアップ・エコシステムの形成に向け、アドバンテージを有した地域でありますが、昨今の第四次産業革命の中で、県内各地域の産業が着実に成長していくためには、斬新なビジネスアイデアや、革新的な技術を持つスタートアップとの協業こそ大きな鍵になるものと考えられ、そのための支援の仕組みが重要であると思われます。
そこで、二点目は、県内の既存産業とスタートアップとの協業に向けて、現在どのように取り組んでいるのか、また、今後どのように展開していくのか、県の考えをお伺いします。
質問は以上です。理事者からの前向きで明快な答弁を御期待申し上げ、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
20:
◯建設局長(林全宏君) 無電柱化対策についての御質問にお答えいたします。
本県が管理する道路の無電柱化対策は、これまで、主に景観形成の観点から、主要駅周辺など都市中心部において整備を進めてきており、今年度末で約三十二キロメートルの整備を完了する見込みでございます。
全国的にも無電柱化対策は進捗しておらず、全管理道路のうち電柱、電線類のない延長の割合を示す無電柱化率は、全国一位の東京都においても五%弱、愛知県では全国二十一位の一・二%にとどまっております。
これまで無電柱化対策がなかなか進まなかった最大の原因は、道路に電線共同溝を整備しますと、一キロメートル当たり約三・五億円という多額の経費を要することにありました。
しかし、本県は、南海トラフ地震による被害想定区域であることや、本年の台風十五号や十九号による被害の深刻性や社会的影響を目の当たりにし、防災を目的として、重点的に無電柱化対策を推進していく必要があると考えております。特に、被災後、速やかな緊急車両の通行確保が求められる緊急輸送道路における無電柱化対策は重要であります。
電柱をふやさない対策として、道路法に基づき、二〇一八年一月には県が管理する緊急輸送道路、全区間千五百二十四キロメートルについて、新たな電柱設置の占用を認めない区間として指定をしております。
さらに、今後整備を進めていく道路の無電柱化対策を効率的に進めるため、低コスト手法を幅広く検討し、費用の削減を図るとともに、整備区間の優先順位をつけて、重点整備に取り組んでまいります。
県としましては、地元関係者や電線等管理者の協力を得ながら、防災機能の向上に重点を置いた道路の無電柱化を推進してまいります。
次に、一宮市から名神高速小牧インターへのアクセス道路となる現在事業中の国道百五十五号四車線化事業の進捗状況並びに今後の取り組みについてお尋ねをいただきました。
国道百五十五号は、名古屋市周辺の諸地域を結ぶ環状機能を有するとともに、尾張北部の地域においては、名古屋市中心部から放射状に伸びる国道二十二号や国道四十一号などの幹線道路と連絡する重要な路線であります。現在、国道二十二号から国道四十一号の間は暫定二車線となっておりますが、江南市、大口町、小牧市において、名鉄犬山線布袋駅付近の鉄道高架事業とあわせて、延長約四・八キロメートル全線にわたり、四車線化整備に取り組んでいるところであります。
このうち、これまでまとまった事業費を必要とする名鉄犬山線の鉄道高架事業を進めており、二〇一七年六月には上り線の高架化が完了し、現在、下り線の高架切りかえに向け、高架本体の工事を中心に進めているところでございます。
また、江南市内の四車線化整備につきましては、鉄道高架化にあわせ、高架西側に位置する布袋小学校前の横断歩道橋の用地も含め、四車線化整備に必要となる用地は全て取得しております。
今年度は、現況二車線から四車線に拡幅するため、まずは横断歩道橋の改良工事に着手したところでございます。さらに、大口町内においては、都市計画道路愛岐南北線との交差点箇所などの残る用地買収を進めながら、江南市も含めた両市町全域において、埋蔵文化財調査の実施とあわせて、五条川にかかる五条大橋や、五条高架橋の下部工事など、用地取得が完了している全区間で工事に着手してまいります。小牧市内におきましても、今年度より、大口町境から県道小口名古屋線までの延長約〇・九キロメートルの区間について、四車線化整備に向け調査、検討を進めてまいります。
今後も引き続き、一宮市を初めとする尾張西北部の交通円滑化に資する国道百五十五号の整備を着実に進め、名神高速小牧インターへのアクセス強化に向けてしっかりと取り組んでまいります。
21:
◯経済産業局長(
伊藤浩行君) スタートアップ海外連携事業のうち、先進地のノウハウ吸収の取り組みと成果についてお答えいたします。
本県では、世界的かつ先進的なスタートアップ・エコシステムの知見やノウハウの吸収を目的に、アメリカのテキサス大学オースティン校と連携し、本年二月より海外スタートアップ支援機関連携事業を実施しております。
具体的には、ここ愛知で開始したワークショップでは、六十四名が参加した三月の第一回のワークショップを皮切りに、四十四名が参加した第四回まで、当地域の多くのスタートアップやその支援機関等の関係者が研究シーズの事業化の手法や、投資家向けプレゼンテーションノウハウなどを吸収したところです。
また、五月からテキサス大学オースティン校による事業化加速の支援プログラムが実施され、十三社の参加がありました。その後、海外展開ノウハウを習得した後のステージに進んだスタートアップ五社のうち四社が実際にオースティンに渡航し、現地ビジネスパートナーとの商談を行うことで、海外市場展開を促すことができました。
さらに、本事業の一環として、八月に同校から、本県のスタートアップ・エコシステムの強み、弱み、競争優位性等の分析を踏まえたロードマップによる提言をいただいており、この提言が、現在県が進める中核支援拠点、ステーションAiやサテライト支援拠点の基本コンセプトに生かされているところでございます。
続いて、既存産業とスタートアップとの協業についてのお尋ねでございます。
既存の、特に本県の強みである物づくり企業とスタートアップとの融合は、経営革新や新たな付加価値を生み、イノベーションの創出に最も有効と考えられることから、Aichi─Startup戦略では、物づくり融合型の愛知県独自のスタートアップ・エコシステムの形成を基本コンセプトの一つとして掲げております。
具体的には、今年度より、県内物づくり企業と全国のスタートアップとのマッチングを図るスタートアップ連携促進事業を始めたところでございます。この事業は単なる商談会ではなく、事前に物づくり企業側の経営課題とスタートアップ側の革新的ビジネスモデルや技術等を十分にすり合わせた上で企業間マッチングを図ることで、協業への確度を高める内容となっています。十月末までに県内企業十五社、スタートアップは延べ百六十社が参加し、既に十四件のマッチングが成功しております。
今後は、こうした取り組みを着実に進めるとともに、企業の自前主義から協業によるオープンイノベーションへの転換の重要性について理解を促し、既存企業とスタートアップとの協業を促進する施策の充実を図ってまいります。
22: ◯知事(大村秀章君) 平松利英県議の質問のうち、私からは、スタートアップ海外連携事業の今後の展開についてお答えをいたします。
昨年度から開始をいたしましたテキサス大学オースティン校との連携に加え、今年度からは、大学傘下のインキュベーター等による起業支援の手厚い中国・清華大学や、シンガポール国立大学、AI、IoTに強みを持つフランスのIMTアトランティック、スポーツ、観光、モビリティーなどテーマ別に十四のイノベーションハブを備えたパリ・アンド・コー(パリ市経済開発公社)など、県がスタートアップ支援に係る覚書を締結した先進的かつさまざまな特徴を持った地域のイノベーション創出の中核機関である海外の大学やスタートアップ支援機関と、現在具体的な連携事業の構築を図っております。
今後は、これらの海外連携事業の展開を通じて、現在県が進めるスタートアップ中核支援拠点のステーションAiや、県のサテライト支援拠点のネットワーク形成事業の着実な進捗を図っていきたいと考えております。また、新たな海外機関との連携についても、さらに強化、拡充してまいりたいと考えております。
愛知県が産業競争力を維持、強化してくためには、革新的ビジネスモデルや最先端技術を持つスタートアップを起爆剤としたイノベーションの創出が不可欠であります。スタートアップ支援の強化、充実にしっかりと取り組むことにより、本県の産業競争力を引き続き強化してまいります。
23: ◯七番(平松利英君) 大村知事初め、それぞれに御答弁をまことにありがとうございました。
自席から二点、要望を申し上げます。
尾張北部の幹線道路整備について、現状、国道二十二号と四十一号を結ぶ東西幹線道路は、朝晩のラッシュ時などを中心に、大変激しい渋滞を引き起こしています。
その要因の一例を示しますと、岩倉市は南北に名鉄犬山線が通り、東西に分断されていることから、線路をまたぐ立派な高架道路が三路線整備されています。
しかし、その三路線全てが国道二十二号までつながっておらず、隣接する一宮市との市境でミッシングリンクを起こしています。
質問の中でも申し上げましたが、萩原多気線、一宮春日井線、北尾張中央道と言われる国道百五十五号の都市計画道路三路線の整備は、尾張北部地域の物づくり拠点や航空宇宙産業が連携を図り、地域のポテンシャルを高めるために大変重要な広域幹線道路でありますので、早期整備を重ねて要望いたします。
続いて、スタートアップ支援関連について要望いたします。
政府は、スタートアップ・エコシステム拠点都市の選定を行うため、年明けに公募要領を公表し、三月までに拠点都市の選定を行うと報道がなされています。本県がスタートアップ・エコシステム拠点都市として日本の先陣を切るべく、積極的な取り組みをいただきますよう要望いたします。
以上で自席からの要望を終わります。ありがとうございました。
24: ◯副議長(堀嵜純一君) 進行いたします。
岡明彦議員。
〔三十二番岡明彦君登壇〕(拍手)
25: ◯三十二番(岡明彦君) では、通告に従い、質問をいたします。
先月、建設委員会で、西日本豪雨の被災地、広島、岡山両県を訪れました。河川改良復旧事業の現場、静かな川辺に立った私は、倉敷市のまび記念病院のあの日を取材した朝日新聞を思い出しました。
昨年九月二十五日の記事を紹介します。
七月七日、まび記念病院の看護部副主任、馬関順子さんは豪雨を警戒し、朝六時前に出勤した。周囲の田などで、水があふれ始めていた。ただごとじゃない。
まび記念病院は、倉敷市真備町地区唯一の人工透析施設だ。入院、外来合わせて約百人いる透析患者は、週に三日、透析をしないと命に関わる。この日も、午前、午後合わせて約五十人が透析予定だった。
午前七時半には病院一階が浸水し始めた。約一時間後に停電。午前九時過ぎには、人工透析機器を動かすのに欠かせない変電機や中和槽にも泥水が入ってしまった。透析は無理。受け入れ施設を探さなくては。馬関さんはパソコンを開き、透析施設の災害情報ネットワークにアクセスしようとした。県医師会透析医部会が運営するこのネットワークは、災害時に各施設が自院の状況を登録することで、全体状況を把握できるシステムだ。
しかし、インターネットがつながらない。馬関さんは村上和春理事長と手分けして、近隣地区の透析施設と外来患者一人一人に携帯電話で電話連絡をとり始めた。一階ロビーでは泥水が渦を巻き、水に囲まれ孤立した病院から入院患者らを送り出す準備が慌ただしく展開していた。
同日朝、透析施設の災害情報ネットワーク事務局がある西崎内科医院では、西崎哲一院長が気をもんでいた。ネットワークには早朝から次々と県内の透析施設から状況が入った。被災なし、被災なし。しかし、まび記念病院の欄だけ、空白のままだった。
午前九時過ぎ、まび記念病院にようやく携帯電話がつながった。電波状態は劣悪で、途切れ途切れにしか聞こえない中、主要設備が水没し、透析は不能、孤立状態で入院患者らの移送も困難だとわかった。
透析患者は、必ず全員引き受ける。西崎さんは雑音だらけの携帯電話に向かって告げた。中略。
誰がどの施設に行ったか、必要な患者全員が受け入れられたのか、確認するには、まび記念病院側の患者リストが必要だ。だが、同病院の電子カルテは機能を喪失。通信もままならない。どうするか。
被災病院の緊迫した様子が目に浮かびます。では、病院BCPについて質問をします。
東日本大震災をきっかけに、南海トラフ沿いでもマグニチュード九クラスの地震に対する防災対応の必要性が指摘されました。
中央防災会議が発表した最悪のケースの場合、本県の被害は死者約二万三千人、負傷者約十万人、全壊・焼失家屋約三十八万八千棟と推定されています。ライフライン被害も深刻で、停電家屋約三百七十万軒、上水道断水の影響人数約六百八十万人、下水道利用困難人数約四百六十万人、都市ガス供給停止約七十五万戸、固定電話通話不能約百二十万回線と予想されています。
死者数は直接死のみで、関連死を含めるとさらに増大します。東日本大震災で、原発避難を余儀なくされた福島県の関連死は二千二百七十二人であり、直接死者、行方不明者数一千八百十人を上回っています。
南海トラフ地震の一週間後の本県の避難者は約百九十万人と推定されており、劣悪な避難所環境下、抵抗力の低い人を中心に多くの関連死が懸念され、医療従事者は、膨大な死者や負傷者に対して検死や治療を行う必要があります。
本県の約一万六千人の医師の力を最大限に活用し、より多くの命を救うには、周到な準備が必要です。何よりも、通常の医療の力を維持することは最重要で、水、電気、人員、医療施設、設備、医療機器、医薬品、医療器具、ライフライン、情報体制、搬送手段などの保全が欠かせません。
その上で、トリアージなどの優先的な医療行為、DMATなどの被災地支援、被災地外への患者の広域搬送、避難所の回診、医療資源活用の全体最適化が必要となってきます。
季節や時間によっても被害は多様化します。大雪の深夜、台風来襲時、猛暑の休日昼間など、被害は全く異なるからです。医療機関の体制も、休日と平日、昼間と夜間では対応人員に差が出てきます。職員が少なく、入院患者のみの休日夜間と、外来患者であふれ返る平日昼間とでは、受援、支援のバランスが異なってきます。発災後の時間経過の中、医療機関の役割も、初期救急医療から避難所などでの慢性期医療、臨時診療所整備などへと変化していきます。
地域の被災の程度や、医療機関の被災度によっても、病院の対応は変わっていきます。例えば、液状化する海抜下の長期湛水地域では、ライフラインが途絶し、患者の搬送も困難になる。入院患者を上階に籠城させて守る対策をとるか、転院対策を考えるか、決める必要が出てきます。道路閉塞危険度が高い医療機関では、孤立を前提にした対策が必要となるわけです。
また、被災地の広がりや被害程度を早期に把握し、予想される患者数や症状を見積もる必要も出てきます。最大クラスの地震が発生した場合、例えば名古屋市の重軽傷者数は約一万五千人と予想されています。
発災時、最重要な役割を有する災害拠点病院は市内に十一ありますが、その半数以上が津波浸水地域や液状化地域に立地しています。そのため、重軽傷者の受け入れに支障が出ることもあり得、残りの災害拠点病院が全力で診療する責務が生まれます。
しかし、これも医療従事者が病院に確実に出勤することが前提です。さらに、ライフラインや物流の復旧がおくれれば医療行為の継続は難しくなります。
道路復旧が滞れば酸素などの医療用ガスの運搬も困難になる。エレベーターがとまれば患者の上下階の移動が困難になり、緊急階段避難車などの備えが必要になる。電子カルテやタブレットがなければ検査結果の閲覧もできず、医療が成り立たない。情報システムの保全のための停電対策や、インターネット環境の多重化なども重要で、病院BCPは、他のBCP以上にきめ細かさと実効性が求められるわけです。
こと災害拠点病院については、ふくそうする諸課題に対応するより高いレベルのBCPの策定が望まれます。災害拠点病院は災害時、傷病者の受け入れと搬出が二十四時間可能であることが求められる病院で、本県が指定しますが、施設の耐震構造のほか、通常時の六割程度の発電容量や自家発電、受水槽や停電時でも使える井戸による水の確保、DMATの保有などが指定の要件となり、高度な医療体制を保持できる病院として、各医療圏の最重要の医療機関となります。ですから、災害時に起こり得る不都合な事態をできる限り想定し、ボトルネックを見つけ、事前に解消しておくことが災害拠点病院としての責任となります。
そこでお尋ねします。
本県三十五の災害拠点病院は、三月までにBCP策定を終えたと聞いていますが、そのBCPに基づいた訓練の実施率と、そこで見つかった課題、また、災害拠点病院が支える一般病院のBCP策定状況を教えてください。
本県では、湛水により孤立が懸念される災害拠点病院が幾つかありますが、医療関係者の参集の仕方、負傷者の受け入れ方法、入院患者を転院させるのか否かの課題等について、BCP上でどう計画されているか、県の対応も含めて伺います。
県は、県民の命を守るため、愛知県地域強靱化計画や第三次あいち地震対策アクションプランに災害医療活動について掲げています。では、県は、災害拠点病院の災害対応能力を高め、BCPをより実効性のあるものにするため、これまでどう支援してきたか、また、今後どう支援していくのか、伺います。
次のテーマです。
さきに退任した宮本前副知事の本会議答弁は印象に残るものでした。前副知事はこう話されました。
子育て中の母親として、子供に関する施策に対して特別の思いがございました。中略。ダウン症のお子さんのための+Happyしあわせのたねの配布を始めたことは、住民の皆様との距離感の近い県政ならではの施策だったと印象に残っております。今後、全ての愛知の子供たちが笑顔で成長していくことを願っておりますと。
本県では、本年四月二十五日から、ダウン症の赤ちゃんのための子育て手帳、+Happyしあわせのたねの配布をスタート。拝見しましたが、手帳には、ゆっくりと成長するダウン症の子供をほかの子供と比べず、温かく見守りたいとの願いが込められており、全ての愛知の子供たちが笑顔で成長していくことを目指すすばらしい取り組みだと思いました。また、誰一人取り残さないというSDGsの理念に基づくSDGs未来都市あいちらしい取り組みとも言えます。
一方、早産などにより二千五百グラム未満で生まれた子供を低出生体重児といいます。厚生労働省によると、近年、低出生体重児の子供は九・五%前後で横ばいを続けており、平成三十年には、二千五百グラム未満の出生児が八万六千二百六十九人、千五百グラム未満の出生児は六千七百四十二人となっています。
静岡県では昨年度、低出生体重児向けの母子手帳、しずおかリトルベビーハンドブック──以降、ハンドブックと呼びます──の配布を始めました。ハンドブックは、県と県立こども病院で生まれた低出生体重児の親でつくる団体などが共同制作したもので、自治体と市民団体が母子手帳を共同でつくるのは全国初。配布対象は、出生体重が千五百グラム未満、もしくは低出生体重児で支援が必要な子供で、誕生直後から三歳ぐらいまでの成長を記録できます。同県では、県で統一したハンドブックが望ましいとして作成し、誰でも印刷できる電子版も用意しました。
妊娠時に配布される一般的な母子手帳は、国が定めた様式に基づき、市町村が作成しています。妊娠期から幼児期までの健康、成長を記録するツールですが、低出生体重児の場合、手帳に記載されている平均的な身長、体重よりも成長が遅いため、親は、子の成長を実感できず、落ち込んでしまうケースも少なくないようです。
これに対し、ハンドブックは、千五百グラム未満の低出生体重児の発育曲線を掲載するなど、親や医療機関などの意見を広く反映させています。
赤ちゃんの成長、発達を記録するページ「みーつけた!」もその一つで、頭を一瞬持ち上げるなどの反応や動作を四十六項目列挙、その動きを実際に確認した日を記入できるようになっています。
最初の項目は、しかめ顔などの表情をする、ですが、そこには、表情が豊かなしるしです、次は必ず笑いますよと言葉が添えられており、項目ごとに動作の意味や次のステップへの励ましが書いてあります。先輩ママ、パパからのメッセージもあり、経験者の言葉でもって応援していこうともしています。
本年、名古屋市も低出生体重児向け冊子、なごやリトルベビーハンドブックの配布を始めました。関係者からは大変喜ばれていますが、緑区に住むお母さんからこういった話がありました。出産が市外の病院でしたので、ハンドブックをいただくことができませんでした。県内ならどの病院でも配布してもらいたいと。
そこでお尋ねします。
低出生体重児向け母子手帳の普及に向けた課題を県としてどのように考えているか、また、今後の方向性についてどう考えているか、伺います。
次のテーマに移ります。
人口減少社会において、行政運営の一層の合理化が求められる中、AIやRPA(ソフトウエア・ロボットによる業務自動化)の活用が期待されています。
国においては、総務省が昨年七月に公表した自治体戦略二〇四〇構想研究会の報告で、従来の半分の職員で自治体として本来担うべき機能が発揮できるスマート自治体への転換の必要性が指摘されました。
また、令和二年度概算要求においては、AI等の共同利用推進のための補助制度の充実など、積極的な取り組みが見られます。
AIやRPAの分野は技術の進歩が早く、その動向を見きわめつつ導入していくことは、市町村単独では難しい面もあります。
こうした中、本県では、本年一月にあいちAI・ロボティクス連携共同研究会を立ち上げ、県と市町村が連携して、AIやRPAの活用に向けた取り組みを始めました。この研究会は、先月十八日に公表された愛知県次期行革大綱素案にも位置づけられていますが、時宜にかなった取り組みで、評価したいと存じます。
十月に開催された第三回研究会では、来年度から県内の市町村が共同でAIを活用した総合案内サービスと、RPAの活用に向けた業務環境を改善するAI─OCRの二つの取り組みを進めることが提案されたと伺いました。AIを案内に使うことにより、三百六十五日二十四時間いつでも問い合わせに対応できるようになるなど、住民サービスの向上が期待できます。住民の問い合わせ方法として定着するよう知恵を絞り、積極的に取り組むべきと考えます。
また、RPAを導入するためには、業務に使用する情報がデジタル化されている必要がありますが、行政現場は紙の帳票を使用しているところがほとんどです。
そこで、AIを活用し、文字情報のデジタル化を高い精度で実現するAI─OCRは、RPAとセットで運営することで業務効率の改善に向けて大きな効果が期待できます。
そこでお尋ねします。
研究会が提案した共同利用にはどんなメリットがあるか、伺います。
メリットの一つにスケールメリットも挙げられると思いますが、コスト削減効果を大きくするためにも、多くの市町村に参加してもらうことが重要です。今回の提案に対する市町村の参加意向について教えてください。
また、国において、スマート自治体への転換に向けた取り組みが進められていますので、市町村がこうした動きに適切に対応できるよう、県が支援していくことも必要だと思います。
では、今後、県はスマート自治体への転換に向けて、市町村とどのように取り組みを進めていくのか、AIを活用した総合サービスや、AI─OCRの共同利用を含めて伺います。
一方、子育て家庭が子育てに関する行政サービス等の情報を気軽に得られるようになる観点から、AIを活用した総合案内サービスは、子育て支援への活用も期待できます。
そこでお尋ねします。
AIを活用した総合案内サービスの子育て支援分野に、福祉局としてどう取り組まれるのか、伺います。
次のテーマです。
次期行革大綱素案には、新たな財源確保策としてクラウドファンディングが掲げられています。厳しい財政状況を考えれば、県みずからがお金をつくる取り組みは画期的です。事業を行うためには、その経費を予算化することが基本ですが、クラウドファンディングを活用すれば、みずからアイデアを考え計画し、県民の理解を得られれば財源を確保できることとなり、現場発による課題解決型の事業展開が期待できます。
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の個人から小口の資金を集めて事業を行う仕組みですが、私がこの仕組みを身近に感じたのは、日本遺産に認定された緑区有松の取り組みです。まず、この取り組みを紹介します。
江戸時代の面影を残す有松宿では、有松絞りの開祖、竹田庄九郎ゆかりの竹田嘉兵衛商店が、有松・鳴海絞りの店を営んでいます。徳川十四代将軍家茂も訪れた築二百年超の歴史的な建物ですが、ここの離れだった空き家が一昨年二月、NPOによるクラウドファンディング等の活用により、カフェアンドバルとして再生されたのです。なごや歴史的建造物保存活用工事助成(クラウドファンディング活用型)の助成第一号としても注目された事業は、クラウドファンディングで必要額の二分の一以上集めると差額を助成してもらえるもので、約一カ月間で五百万円を集めました。
有松宿は小さな町で、滞留時間がどうしても短くなる。その欠点を補うべく、ゆったりと観光を楽しめるよう、町家の中で食と空気感を味わうことをコンセプトにしたカフェアンドバルは、女性客や観光客の人気スポットになっています。
このようにストーリー性のあるクラウドファンディングは成功する可能性が高く、新たな事業の起点にもなり得ますから、現場の県職員の知恵と発想によっては、成功事例を次々と生み出すのではないでしょうか。
そこで最初の質問をします。
クラウドファンディングについては、本会議でしばしば県教育委員会──以下、県教委といいますが──所管のあいち山車まつり日本一協議会によるものが答弁されています。これは山車の修理のために資金を集めたものと聞いていますが、クラウドファンディングに県教委はどうかかわり、どのように成功に導いたのか、具体的な取り組みと、その結果明らかになった課題について伺います。
続いて、この質問に至るこれまでの調査に触れつつ、県のクラウドファンディングの可能性を鑑み、提案型の質問をしたいと存じます。
では、最初に私の提案を申し上げます。
学校こそクラウドファンディングの挑戦に最も適した県施設だと思います。ゆえに、先進事例や資金調達のノウハウを総務局と県教委が連携し現場に伝え、次期行革の象徴的な成功事例をつくろうということです。
では、ここから、全国の学校における成功事例を紹介します。
まずは、中津川市立阿木高校。今春、約一カ月の募集期間で、百五万円の目標に対して百九十八万五千円の資金を調達。中山間地の農業を守るため、高校生が耕作者不在の水田に挑むことをテーマにしたものです。農場長を務める先生が発案し、草刈りの労力が減少する農機具スパイダーモアと、収穫後の管理作業短縮に資する色彩選別機を購入することが目的です。中山間部の生産効率の悪い農作業を克服したいと訴える農場長と生徒の頑張りに、市長は広報でバックアップをし、同窓会は臨時会議を開くなど、支援の輪は徐々に広がり、クラウドファンディング成功となったとのこと。
八月に同校を訪問しましたが、炎天下の中、先生と生徒が新しい農機具を駆使し、お米甲子園で金賞を受賞した実力をさらに高め、おいしいお米を返礼品にするぞと米づくりに挑戦する姿が印象的でした。
次に、千葉県立浦安高校。今春、約一カ月の募集期間で、百万円の目標額に対して百二十二万円の資金を調達。同校では、昨年度から地元の大学等と連携して、十の分野から成る探求ゼミをスタートしました。このゼミは、生徒が主体的、対話的で深い学びを実現することや、大学の先生等による専門的な授業を受けることで進路選択に役立てることを目的にしています。
しかし、一年間のゼミを経て、探求のためのICT環境整備が十分でないという課題に直面。そこで、熱血漢の校長と、同校支援を目的に設立され、同窓生が代表を務める学習支援センターが協力して、ゼミに必要なタブレット端末を購入するプロジェクトを発足させ、クラウドファンディングに挑みました。
九月に訪れた際、校長先生は、クラウドファンディングによって、生徒指導困難校として知れ渡った本校が、学びに挑戦する学校としてマスコミから注目されたことも成果ですと語ってくれました。
最後に、愛知総合工科高校専攻科です。本県でも先進事例がありました。この夏、約二カ月の募集期間で三十三万八千円の資金を調達、目標額の五十万円には及ばなかったものの、生徒八人が主体的に活動したクラウドファンディングとして特筆できます。生徒が目指したものは、東京モーターショーに出展した、どんな苛酷な環境でも走れる車を、月面を再現する
プロジェクトマッピングを行ったブースで走らせること。指導した先生からは、クラウドファンディングの挑戦によって、生徒たちの姿勢が変わっていきました、その結果、企業訪問時の名刺の渡し方初め、プロジェクトを紹介するプレゼン能力が向上し、教育的効果もありましたとお聞きしました。
クラウドファンディングは、県教委が力を入れている生徒の主体性やコミュニケーション力、プレゼンテーション力の向上に資する取り組みとしても期待できると感じました。
学校クラウドファンディングを支援している日本教育新聞社によれば、成功した学校の共通点を、一、真剣にチャレンジしたいという熱意、二、卒業生や地域の方々、企業の協力、三、学校内管理職、教育委員会の合意、理解、四、活動の定期的な発信と分析しています。また、地域を巻き込み、支援者の心をどうつかむか、プレゼンテーション力もポイントになるとしています。
私は、これらの調査に並行して、本県県立学校の複数の管理職にクラウドファンディングについて話をしました。どの先生も大いに興味を持たれ、我が校で挑戦できないかと具体的なやりとりがありました。
県立学校の新たな魅力づくりが言われて久しいですが、改革や新規事業には当然モノ、カネ、ヒトが必要です。しかし、現場の学校にそれらが潤沢に供給されているとは言えません。ですから、この取り組みが現場発の学校改革や魅力づくりの第一歩になる可能性を感じます。
そこでお尋ねします。
次期行革大綱素案にクラウドファンディングの導入を検討するとありますが、どのような効果を期待し、どのように検討を進められるのか教えてください。
二つの先進事例を有する県教委として、今後の県立学校でのクラウドファンディングをどう考えるか、申し上げたとおり、意欲のある教職員もいます。やる気のある現場をどうサポートするのか、伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。(拍手)
26:
◯保健医療局長(吉田宏君) 災害拠点病院の業務継続計画、いわゆるBCPについての御質問のうち、まず、災害拠点病院のBCPに基づいた訓練の実施率等についてお答えいたします。
災害拠点病院は、災害時に医療救護活動の拠点となる病院であり、BCPの策定が義務づけられております。訓練の実施については、県内全三十五病院が既に実施しており、通信手段の確保や、エレベーター停止時の物資の運搬方法などに課題があったとお聞きしております。
また、その他の病院におけるBCP策定については努力義務とされており、二百八十八病院のうち九十九病院が策定しており、策定率は三四%となっております。
次に、災害拠点病院が湛水により孤立した場合のBCP上の計画と、県の対応についてお答えいたします。
津波や洪水による湛水で、災害拠点病院が孤立した場合も、災害拠点病院はBCPに基づき、活動することになります。各病院のBCPを総括しますと、職員はみずからの安全を十分確保した上で参集し、病院機能の維持に全力を尽くしますが、外来患者については、被災状況に応じて受け入れを制限する場合がございます。
一方、入院患者については、院内の安全が確保された場所で治療を継続します。病院の孤立が長期にわたる場合の患者の外部への避難経路については、ヘリポートが使用可能な場合は空路にて、使用できない場合は水路による搬送を想定しております。
次に、医療機関が孤立した場合の本県の対応でございます。
災害対策本部内に保健医療調整本部を設置し、災害医療に関する卓越した技量を有する医師でございます災害医療コーディネーターを中心に、当該及び近隣の医療機関の被災状況、周囲の交通状況などの情報を収集、評価いたします。その上で、DMATや医療救護班の派遣、医薬品の供給、患者の搬送手段などの調整を行いまして、当該医療機関の活動をしっかり支援してまいります。
次に、災害拠点病院のBCPをより実効性のあるものにするための支援についてお答えいたします。
災害拠点病院が災害対応能力を高めるためには、BCPの見直しも大変重要であると考えております。
県ではこれまで、より実効性のあるBCPとなるよう、訓練の手法や見直しの手順なども習得できる国のBCP策定研修会への参加を積極的に促してまいりました。
また、災害拠点病院の機能強化を図るため、施設や設備の整備に対して支援を行っております。
さらに、BCPの見直しの参考としていただけるよう、新たに湛水時の対応などに関する県内外の好事例を、災害拠点病院も構成員である災害医療協議会などの場におきまして紹介してまいりたいと考えております。
今後もこうした取り組みを継続して実施することによりまして、本県の災害医療体制のさらなる充実を図り、県民の皆様の安心・安全の確保に努めてまいります。
次に、低出生体重児向け母子手帳の普及についてお答えいたします。
低出生体重児の中には、発育がゆっくりなお子様もおられ、御家族が不安や心配を抱くことも考えられます。こうした御家族への支援の一つとして、母子健康手帳とあわせて活用する低出生体重児向け母子手帳は、意義深いものと認識しております。
普及に向けた課題としては、個々のお子さんの状況や家庭環境などに的確に対応し、効果的な支援につながる情報とすること、また、低出生体重児の出生率は全体の一割以下と低く、市町村ごとで作成するのが困難であることでございます。
このため、今後は、記載内容や配布方法等も含め、産婦人科医会、助産師会、市町村などで構成する安心安全な妊娠出産推進委員会において、しっかりと検討してまいります。
27: ◯総務局長(横井篤史君) 市町村におけるAIやRPAの活用についてお尋ねをいただきました。
初めに、第三回のあいちAI・ロボティクス連携共同研究会において提案をいたしました共同利用のメリットについてお答えをいたします。
二〇二〇年度から開始を目指す今回の共同利用は、国や地方自治体専用の閉鎖型のネットワークである総合行政ネットワーク、いわゆるLGWAN上に、ITツールを参加市町村が共同で構築をし、管理、利用する仕組みといたしておりますので、初期導入費やランニングコストの削減ができることに加え、高度なセキュリティー水準を確保することができます。
また、AIを活用した総合案内サービスの構築に当たっては、共同利用に参加する市町村の中に既に導入している団体がございますので、こうした先行団体で作成済みの質問と回答を最大限活用することにより、他の参加市町村の作成作業を効率化することが可能となります。
さらに、共同利用することで、より多くの問い合わせへの対応や文字のデータ化が行われますと、AIの学習効果が高まり、問い合わせへの応答精度や文字の認識精度がより早く向上し、住民の利便性の向上や、市町村の業務の効率化につながります。
このように、県内市町村による共同利用は、費用の削減効果だけではなく、住民の利便性向上など、さまざまなスケールメリットがあると考えております。
続いて、今回の提案に対する市町村の参加意向の状況についてであります。
十二月三日現在で、県内五十四市町村のうち、AIを活用した総合案内サービスについては三十三団体、AI─OCRについては三十七団体に参加意向がございます。特に、人口や業務量からAIやRPAの導入効果が比較的高いと考えられる市につきましては、県内三十八市のうち八割を超える市がいずれかの共同利用に参加する見込みでございます。
今後は、より多くの町村にも参加をいただけますよう、引き続き研究会を通じてしっかりと働きかけを行ってまいります。
次に、クラウドファンディングの導入の効果と今後の進め方についてお答えをいたします。
次期行革大綱では、財源確保の有効な手段の一つとして、クラウドファンディングを新しい自主財源確保策の例示に掲げ、取り組みを進めることといたしております。議員御指摘のとおり、厳しい財政状況が続く中にあって、この手法を活用して確保する財源をもとに県事業を実施することが可能となってまいります。
一方、クラウドファンディングは、ファンド資金募集の際に、仲介業者へ手数料が必要となります。また、募集を直営で行うのか、業者に委託するのか、対象事業をどのようなものとするのか、目標金額をどのように設定するのかなど、さまざまな検討課題もございます。
総務局といたしましては、これらの検討課題について先進的な取り組みを参考にしながら、各局の事業実施のための財源確保に向けた取り組みにつながる適切な運用ができますよう検討を進めてまいりたいと考えております。
28: ◯福祉局長(平田雅也君) AIを活用した総合案内サービスの子育て支援分野での取り組みについてお答えいたします。
共働き世帯の増加や地域社会のつながりの希薄化などにより、子育て家庭を取り巻く環境が大きく変化する中、誰にも相談できず、一人で悩みを抱える子育ての孤立化が社会的な問題となっております。
子育てへの不安を解消し、誰もが安心して子供を産み育てることができる環境をつくるためには、AI等の先端技術を積極的に活用し、子育てに関する相談や情報提供を行っていくことが有効であると認識しております。
こうしたことから、これまで福祉局では、市町村と連携したAIを活用した子育て支援について、熊本県など先進事例の調査研究を進めるとともに、あいちAI・ロボティクス連携共同研究会に参画し、市町村とともに検討を進めてまいりました。
この研究会におきまして、子育て分野を含むAIを活用した総合案内サービスに取り組んでいくとの意向が示されましたことから、福祉局といたしましては、AIを活用した総合案内サービスの共同利用に参画する市町村と、県の子育て支援に関する情報を一体的に提供していくことにメリットがございますので、今後は、AIを活用した総合案内サービスの共同利用を通じて、子育て家庭の利便性の向上を図ってまいりたいと考えております。
このため、引き続き研究会に参画し、子育て支援に関する案内サービスがより充実したものとなりますよう、市町村とともに検討を進めてまいります。
29: ◯教育長(長谷川洋君) クラウドファンディングについてお尋ねをいただきました。
初めに、あいち山車まつり日本一協議会におけるクラウドファンディングについてでございます。
あいち山車まつり日本一協議会におきましては、山車などの保存、修理に必要な資金を確保する方策の一つとして、二〇一七年度からクラウドファンディング活用サポート事業を立ち上げました。
県教育委員会では、この協議会の事務局として、クラウドファンディングの運営会社との調整や、資金を募集するインターネットサイトへの登録、プレスリリース、保存団体へのアドバイスなどを行ってまいりました。
実績といたしましては、二〇一七年度は、津島石採祭車保存会が百二十万円、二〇一八年度には、豊川市の国府祭中町の実行委員会が六十万円の支援金を集め、それぞれ目標額を達成いたしました。目標額を達成できましたのは、保存団体の方が直接募集案内を配り、お祭りの紹介をするなど、大変熱心に広く支援を呼びかけたことにより、地域の方を初め、多くの方に賛同いただいた結果であると考えております。
その一方で、クラウドファンディングはインターネットを通じて行うことから、ふなれな高齢者の方などが簡単に支援を行えるようにすることが課題の一つだと考えております。
次に、県立学校におけるクラウドファンディングについてでございます。
県立学校において、例えば、職業科の高校で新たに商品開発を行うといったような学校独自のプロジェクトを実現するための資金調達の方法として、クラウドファンディングは有効な手段の一つであると考えられます。
また、生徒が主体的にプロジェクトに取り組むことによって、みずから考え行動する力を身につけるといった教育的な効果も期待できるところでございます。
議員から御紹介のありました愛知総合工科高校専攻科の取り組みでは、東京モーターショーという大きなイベントで、生徒たちがみずからの取り組みをプレゼンテーションする体験や、他の技術者との意見交換を通して大きく成長をいたしました。
その一方で、資金提供に御協力をいただいた方の多くが学校関係者に限られておりましたので、今後は、より多くの方に支援がいただけるよう、学校の取り組みを一層魅力あるものにして広く発信し、学校外の多くの方に知っていただく必要があると考えております。
今後、クラウドファンディングを実施しようとする学校につきましては、あいち山車まつり日本一協議会における取り組みから得られたノウハウを生かすとともに、他の成功事例の情報の収集や提供を行うなど、総務局とも連携を図りながら支援をしてまいりたいと考えております。
30: ◯知事(大村秀章君) 岡明彦県議の質問のうち、私からは、スマート自治体への転換に向けた市町村との取り組みの進め方についてお答えをいたします。
近年、多様化する住民ニーズや複雑化する制度改正などに的確に対応しつつ、窓口業務の円滑化や業務の効率化を進めるため、AIやロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の積極的活用は全自治体共通の課題であります。
国におきましても、AI等の技術を駆使して、効果的、効率的に行政サービスを提供するスマート自治体への転換に向けて、業務プロセスの標準化やネットワーク技術を活用した業務システムの共同化などの取り組みが進められておりますが、こうした取り組みは、広域的な枠組みで進めるほうが、経費面や導入・運用ノウハウの蓄積などのスケールメリットがあります。
このため、本県といたしましては、あいちAI・ロボティクス連携共同研究会を立ち上げ、AIを活用した総合案内サービスと、AI─OCRの共同利用の開始に向けて、市町村とともに積極的に検討を進めております。
今後は、共同利用のメリットを生かしつつ、行政のデジタル化による住民の利便性の向上や、市町村の業務の効率化に向けてしっかりと市町村をリードし、支援してまいります。
31: ◯三十二番(岡明彦君) 丁寧な御答弁、ありがとうございました。
では、要望をいたします。
平成二十四年から病院BCPを策定するよう通知をした厚労省は、相次ぐ災害の中、災害拠点病院には三十年度中の策定を義務づけました。本県の拠点病院三十五の策定時期を見ても、三十、三十一の両年が十七病院ありまして、実効性を高めるには、これからが勝負だと思います。
拠点病院の関係者からは、多忙な日常業務の中、BCPの磨き上げは壁が高いとか、BCPのチェックリストはきめ細かさに欠けるとの指摘もあります。拠点病院BCPを実効性のある内容にするための検証、改善を県がフォローするよう要望したいと思います。
一方、一般病院の策定率は四割にも達していません。今週ごらんになった方もいらっしゃると思いますが、首都直下地震をテーマに、NHKが衝撃的な特別番組を放映していますが、南海トラフの地震も同じであります。手おくれにならないように、拠点病院を初め、病院の強靱化を進めるべく、医師会等とも連携した県のイニシアチブに期待をしたいと要望します。
二点目です。
壇上でも申し上げましたが、県がクラウドファンディングを進めるに当たっては、研修会やノウハウ集をつくるなど、丁寧に推進するべきだと思います。資金集めの経験がないが、やる気のある職員を生かすためにも、総務局には、県教委を初め各局が具体的に推進できるよう、しっかりサポートしていただきたいと要望します。
最後に、母子手帳について、現在、母子手帳アプリ等を利用する地域が広がっておりまして、本県でも十八の自治体が導入をしています。スマートフォンなどになれ親しむ子育て世代に評判で、今後、その流れはさらに大きくなると思います。
アプリは拡張性が高く、さまざまな情報を適宜盛り込むことができます。ですから、県が低出生体重児向けの情報を初め、統一した子育て支援情報を用意することで、アプリも充実し、サービスも向上すると考えます。
特に、市町村単独での作成が難しい情報について、先ほどもさまざま答弁がございましたが、母子手帳アプリ等にも活用できるよう、この機に県がしっかりと準備をすることをお願いいたしまして、質問を終わりといたします。ありがとうございました。
32: ◯副議長(堀嵜純一君) 進行いたします。
渡辺靖議員。
〔二十二番渡辺靖君登壇〕(拍手)
33: ◯二十二番(渡辺靖君) 通告に従いまして、一般質問をさせていただきます。
今回は、先ほど平松議員からもお話がございましたように、北米での調査を踏まえまして、二〇二六年愛知・名古屋で開催する第二十回アジア競技大会、現在のところ検討調査を進めているアジアパラ競技大会の開催の考えなどについてお伺いをさせていただきます。
十月二十七日より十一月三日までの期間、長江正成団長、青山省三副団長のもと、総勢十五名で、北米に県議会海外調査団として、在ニューヨーク日本国総領事館、マンハッタンクルーズターミナル、現地企業との意見交換、カナダ・オンタリオ州議会、トロント大学、在トロント日本国総領事館、障害者スポーツ施設などを調査してまいりました。
調査項目につきましては、港湾振興施設、スタートアップ戦略の推進、障害者スポーツの普及促進の調査を目的として、各調査項目別に担当団員を決めて、国内では調査項目のワーキンググループごとに企画、調整の上、事前勉強会や事前調査をして現地調査に臨んでまいりました。
障害者スポーツに関しての調査として、カナダ・オンタリオ州の経済商都、トロント市内のバラエティービレッジという施設を調査させていただきました。
この施設は、慈善団体バラエティークラブが一九五四年に障害者の子供たち専用の学校として開設され、一九八一年には、パラリンピックに参加できるアスリート専用のクラブ、フィールドハウスとして開設されました。
この施設の運営費につきましては、民間企業、財団の基金や政府の補助金、クラブメンバーの利用料で施設運営に取り組んでおられました。参考までに、クラブメンバー六千名のうち五〇%は障害をお持ちの方でございました。
この施設の特徴として、障害者それぞれにスポーツプログラムを提供することにより、子供たちがマルチスポーツの体験をすることができ、施設で包括的に、身体とか知的とか区別なく、全てのお子さんを受け入れておられました。子供によっては、マンツーマンの指導が必要な子供については、御家族の方と連絡をとりながら、最も子供にふさわしい準備をして、場所づくりを提供されておられました。
また、障害者と健常者が一緒になって施設を利用されることにより、利用者にどのような相乗効果がありますかと伺ったところ、特に、障害のない子供たちが、障害者から学ぶことが多いと言われたことが印象に残っております。
次に、二〇一五年、アメリカ州、南北アメリカ大陸の国々が参加して開催されたスポーツの祭典、パンアメリカン競技大会・パラパンアメリカン競技大会の開催都市として、自治体と教育機関が一緒になって建設されたパン・エーエム・スポーツセンターを調査させていただきました。
この施設の建設費は、連邦政府が五六%、トロント市が二二%、大学が二二%の負担割合で建設をされました。競技大会終了後には、トロント市とトロント大学が建物を所有し、運営につきましては、別の機関が受け持っておられました。
この施設は、年間百六十万人の利用者、コミュニティーグループ、スポーツ団体、クラブメンバー、ハイパフォーマンスアスリート等があります。最終的には、利用者のプログラムも障害があるなしで分けることなく、障害者も健常者も本当に溶け込んで、全くわからないようなレベルにしたいと責任者は述べておられました。
なお、この施設は、障害者の障壁の特定、除去、防止を目的とするAODAの基準に基づき、最もパラアスリートに優しい環境を提供する施設として評価されておりました。
アメリカやカナダなど、スポーツ先進国と言われる国々では、既にマルチスポーツに焦点を当てたプログラムやスポーツ施策というものが存在しております。カナディアン・スポーツ・フォー・ライフ・ソサエティー(CS4L)、マルチスポーツにはメリットがあるという科学的なエビデンスを集め、それに基づき広くスポーツにかかわる人々を啓蒙しようという活動にも力を注いでおられました。
今回の調査で、障害者スポーツを積極的に推進していくべきと改めて認識をしたところでもあります。
世界最大の国際競技大会であります二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックもあと二百三十日余り、この大会は、日本の社会や文化にも変革をもたらすイベントであると考えられます。小池東京都知事も、パラリンピックの成功なくして二〇二〇年大会の成功はなしと述べられておられます。
東京パラリンピックでは、二十二競技、五百四十種目が行われ、四千四百名の選手が参加するとされております。パラリンピックの機運も高めてまいりました。参加国については正式に公表されておりませんが、百六十四の国と地域とされております。
パラスポーツのすばらしさは、その人に必要な工夫や支援をすることで、障害のあるなしにかかわらず、スポーツの楽しさを味わい、自分の限界に挑戦でき、全力で競い合えることに加え、ストレスに強くなる、集中力が高まる、意欲が高まるなどのスポーツの持つ効能があると言われております。
文部科学省が策定した第二期スポーツ基本計画では、スポーツ参画人口の拡大と、スポーツを通じた共生社会等の実現を図るため、さまざまな環境整備を通じ、障害者のスポーツ実施率を週一回以上が四〇%程度、週三回以上が二〇%程度となることを目指すとされています。
スポーツ庁では、障害者が生涯にわたってスポーツを実施するための基盤整備として、さまざまな事業の推進を進めております。
本県におきましても、オリンピック・パラリンピック教育の推進事業を初め、障害者スポーツ大会事業、全国障害者スポーツ大会への選手団派遣、社会参加促進事業、障害者スポーツ参加促進事業などの事業の取り組みに力を注いでいただいております。
愛知県、名古屋が開催しますアジア競技大会は、東京オリンピック・パラリンピックの六年後ではありますが、東京大会の盛り上がりをアジア競技大会につなげていくことの期待と、アジアパラ競技大会が同時に開催できることを確信し、次の二点をお伺いいたします。
まず一点目ですが、本県においては、本年一月の日本パラリンピック委員会からの要請を受け、アジアパラ競技大会の開催可能性検討調査を行っているところですが、その調査内容と現状についてお伺いをいたします。
二点目ですが、二〇二六年に開催するアジア競技大会では、障害者の方々にもたくさん観戦していただき、大いに楽しんでいただきたいと思います。このためには、アジア競技大会で使用する競技会場がバリアフリー、ユニバーサルデザインとなっているかが重要になってくると思います。このことについてどのようにお考えになっているか、お伺いをいたします。
質問の三点目は、オリンピック・パラリンピック教育についてであります。
近年では、学校体育として、障害の有無に関係なく、運動、スポーツを楽しむことのできる教育プログラムの開発が進められているようですが、授業に伴うインフラ設備や授業内容、指導方法など課題もあり、学校教育やスポーツイベントなどを通して障害者スポーツに触れ合う機会がふえてきているようですが、定期的な運動習慣を定着させるには至ってないようであります。
そのような中、教育委員会には、スポーツ庁から、オリンピック・パラリンピックの理念に基づくスポーツの価値や効果の再認識を通じて、国際的な視野を持って世界の平和に向けて活躍できる人材を育成し、求められる社会の将来像を実現しようとするための事業として、スポーツ庁から委託を受けているオリンピック・パラリンピック教育の推進事業の取り組み内容と成果についてお伺いをいたします。
以上、壇上からの質問とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
34: ◯スポーツ局長(飯田靖君) まず、アジアパラ競技大会に関する開催可能性検討調査の内容と現状についてお答えをいたします。
アジアパラ競技大会は、過去の大会では約四千人の選手、チーム役員が参加し、そのうちの千人ぐらいの選手が車椅子を利用しております。今回の調査は、こうした大会の特性を踏まえた上で、本県における開催が可能かどうか、競技会場の面を中心に調査をしているところでございます。
また、調査を行うに当たっては、実施する競技を念頭に置く必要がございますけれども、アジアパラ競技大会では、実施する競技があらかじめ決まっていないことから、過去のアジアパラ競技大会や東京パラリンピックの実施競技を参考に、陸上や水泳、アーチェリーなど二十競技程度を想定しまして、調査を進めているところでございます。
具体的には、市町村の競技実施の意向を踏まえた上で、各競技会場候補において競技を実施するのに必要なエリアを設けることができるのか、選手のロッカールームや運営本部といった諸室を確保できるのか、選手が会場内を無理なく移動できるのかなど、さまざまな観点から現地調査を行っているところでございます。
年度末までには現地調査の結果をまとめるとともに、それを参考に、施設の改修や仮設による対応に要する概算費用の算定も行ってまいります。
次に、アジア競技大会で使用する競技会場のバリアフリー・ユニバーサルデザイン化の現状と対応についてお答えをいたします。
アジア競技大会は、過去の大会の例を見ますと、百五十万人を上回る多くの観戦者の方がお越しになられますので、障害のある方や高齢者、そして、家族連れなど誰もが快適に観戦いただけるような環境を、バリアフリーやユニバーサルデザインに配慮しながら整えていくことが大変重要だと考えております。
そこで、大会で使用する競技会場について、国の建築物や公共機関等における高齢者、障害者の移動の円滑化に係る基準を定めましたバリアフリー法、または、本県の人にやさしい街づくりの推進に関する条例などに適合しているかについて、現況調査を昨年度行ったところでございます。
競技会場の中には、これらの関連法令が制定される前に建てられた施設も多くございます。そのため、例えば、車椅子使用者等が利用しやすいトイレの設置や、車椅子使用者用の観客席数の確保などが必要となってまいりますので、アジア競技大会を契機として、基準に合うような改修を行うのか、あるいは仮設により対応をするのか、ユニバーサルデザインの観点も踏まえながら、今後、各施設やアジア競技大会の組織委員会と調整をしてまいります。
多くの方々が障害の有無や年齢にかかわらず気軽に会場を訪れて、大会を楽しんでいただけるよう、関係者とともに努力をしてまいります。
35: ◯教育長(長谷川洋君) 私からは、オリンピック・パラリンピック教育推進事業についてお答えをいたします。
本県では、昨年度からスポーツ庁の委託事業として推進事業を実施しております。具体的には小学校六校、中学校六校、高等学校五校、特別支援学校一校の合計十八校を愛知県オリンピック・パラリンピック教育推進校に指定しております。
教育推進校では、二つの視点からオリパラ教育を実践しております。
一つ目は、オリンピック・パラリンピックそのものについての学びであり、大会に関する理念、歴史、仕組みなどを学ぶとともに、出場経験のあるアスリートの講演などを実施しております。
二つ目は、オリンピック・パラリンピックを通じた学びであり、チャレンジ精神や努力をたっとぶ態度などを学ぶとともに、グローバルマナーを身につけた大会ボランティアの育成に取り組んでおります。また、パラリンピック競技の体験を通じて、障害者スポーツへの理解を深める取り組みも行っております。
こうした教育推進校による取り組みは、実践事例集にまとめ、県内の公立学校へ配付することで成果の共有を図っております。
次に、この推進事業の成果であります。
昨年度、パラリンピック教育の実践を行った中学校の一つでは、事前のアンケートでは、パラリンピックへの興味、関心があるという回答が六一%でありましたが、実践後には八六%まで高まりました。また、生徒からは、障害のある方の苦労や大変さを理解することができた、あるいは、障害の有無にかかわらずスポーツは楽しめるものだとわかったなどの意見が多数挙がり、障害者スポーツへの理解が深まったと考えております。
このような成果を踏まえ、パラリンピック教育に重点的に取り組むなど、実践内容を工夫するとともに、二〇二六年アジア競技大会が開催されることも視野に入れ、引き続きオリンピック・パラリンピック教育の充実に努めてまいります。
36: ◯知事(大村秀章君) 渡辺靖議員の質問のうち、アジアパラ競技大会について、私からもお答えをいたします。
アジアパラ競技大会は、日本の整形外科医である中村裕医師の呼びかけで、一九七五年に始まりました極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会(フェスピック)というものを引き継ぐ大会であります。フェスピックは、障害者スポーツの振興や、スポーツを通じての社会参加などを目的に、二〇〇六年まで九回開催されまして、そのうち第一回大会が大分市、別府市、第五回大会が神戸市で開催されるなど、日本にゆかりのある大会でありました。
そのフェスピックを引き継いで二〇一〇年から始まったアジアパラ競技大会は、二〇二二年に中国の杭州で第四回大会が開催される予定でありまして、二〇二六年の大会は第五回目となります。
四十を超える国と地域から約四千人の選手、チーム役員が参加をし、約一週間にわたり開催されるアジアパラ競技大会は、障害者スポーツの振興に大きく貢献することはもとより、障害への理解促進に大きな役割を果たし、共生社会の実現にも貢献するものと考えております。
特に、東京オリンピック・パラリンピックの開催が来年に迫り、今、障害者スポーツに対する関心は大きく高まっております。アジア競技大会とアジアパラ競技大会は、オリンピックとパラリンピックのように、同一都市でセットで開催するようにはなっておりませんが、実際には、ここのところはずっと両大会、二〇一〇年からずっと同じ都市、同じ時期に開催をされているところであります。
そういうことでありますので、アジアパラ競技大会をこの愛知・名古屋で開催することになりますと、日本の障害者スポーツ界にとって、東京パラリンピックの次なる大きな目標となるわけでありますので、これは名古屋市と連携をし、開催に向けてしっかりと検討をしてまいります。
37: ◯二十二番(渡辺靖君) それぞれ知事、そして、スポーツ局長、教育長から御回答をいただきまして、ありがとうございました。
今、いろいろお話がございましたように、記憶に新しい大会でいきますと、まず、アジア競技大会では、第十八回インドネシア・ジャカルタ、パレンバン大会、この大会では、四十五カ国、地域から選手一万一千人、四十一競技、四百六十五種目で開催されました。そして、日本人のメダル獲得数は、金メダルが七十五個、銀メダル五十六個、銅メダル七十四個、二百五個を獲得された。そしてまた、パラ競技大会では、四十三カ国及び地域で十八競技、五百五十八種目で開催されました。八日間の熱戦で、日本人のメダル獲得数は、金メダル四十五個を含む百九十八個のメダルを獲得され、優秀な成績をおさめられました。まさにこの二大会とも、東京オリンピックの開催の弾みになったと思います。
そして、知事におかれましては、これまで、第二十回アジア競技大会を誘致することに力を注いでいただきましたことに敬意を表し、私ども議会といたしましても、現在、直江弘文委員長のもと、アジア競技大会調査特別委員会として調査研究をいたしております。大会を成功裏に導くことこそが愛知県民の願いと考えております。
また、アジア競技大会、アジアパラ競技大会の開催までには、まだまだ大きく乗り越えなければならない問題もあろうかと思いますが、ぜひとも愛知県民に希望と感動を与えられる大会を目指して頑張っていただきますことを期待申し上げ、私からの要望とさせていただきます。
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38: ◯四十番(寺西むつみ君) 暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
39: ◯副議長(堀嵜純一君) 寺西むつみ議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
40: ◯副議長(堀嵜純一君) 御異議なしと認め、暫時休憩いたします。
午後二時四十二分休憩
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午後三時三十分開議
41: ◯議長(
神野博史君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
通告により質問を許可いたします。
日高章議員。
〔六番日高章君登壇〕(拍手)
42: ◯六番(日高章君) 自民党の日高章でございます。十二月になりまして、ようやく質問の機会がめぐってまいりました。県議会で初めてのこととなりますが、張り切ってやってまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
さて、私の今回の質問は、大きく三つでございます。一つ目は、あいちオレンジタウン構想による認知症施策の推進について、二つ目は、あいち健康プラザの見直しについて、そして、三つ目は、スタートアップ支援拠点整備による産業振興についてでございます。
まずは、一つ目のあいちオレンジタウン構想による認知症施策の推進について伺ってまいります。
我が国では、急速な高齢化の進行に伴い、今後、認知症高齢者の急増が予見されており、認知症施策の充実強化は喫緊の課題となっています。人生百年時代とされる現代において、言うなれば宿命的なこうした課題に対応すべく、厚生労働省は二〇一五年一月、認知症施策推進総合戦略、いわゆる新オレンジプランを取りまとめ、七つの柱となる政策を公表しました。
新オレンジプランでは、認知症の人が住みなれた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けるために必要としていることに的確に応えていくことを旨とし、団塊の世代が七十五歳を超えて後期高齢者となる二〇二五年を見据え、計画が総合的に推進されています。
このようにして、我が国が目指すべき社会を実現するために、私たち一人一人が認知症への理解を深め、つながり、支え合う認知症に理解の深いまちづくりを進めていくことが必要です。
そこで、本県では、保健、医療、福祉の専門機関が集積するあいち健康の森と、その周辺地域が一体となって、認知症に理解の深いまちづくりのモデルとなる先進的な取り組みを始めることとし、地域づくりと研究開発の両面から認知症への対策の新しい取り組みを推進していくためのあいちオレンジタウン構想を策定しました。
この構想は、国の新オレンジプランの目標設定年度である二〇二〇年度までのアクションプランと二〇二五年度までの中長期的な取り組みを定め、対象地域をあいち健康の森を中心とした大府市・東浦町全域としています。
ただし、広域展開可能な取り組みについては全県で展開しつつ、構想の取り組みをともに推進する自治体を募り、全県への波及を図るとしています。すなわち、あいち健康の森周辺のモデル地域における集中的な関係施策の実施と、それにより生じる効果的な要素の全県的展開が、この構想のスキームのかなめとなるわけでございます。
このように、あいち健康の森を中心とした大府市、東浦町が構想の対象地域の中心に指定される理由としまして、当該地域の重層的な社会環境が挙げられます。
本県の管理施設であるあいち健康の森公園は、その名のとおり、健康増進を主眼とした広大な公園設計となっていることを中心的な存在として、その周辺には国内で六つ目のナショナルセンターとして開設され、特に長寿医療や認知症先進医療に重点を置く国立長寿医療研究センター、また、本県の医療機関であり、小児医療の最後のとりでとも言われるあいち小児保健医療総合センター、さらには、認知症介護研究・研修大府センター、特別養護老人ホーム愛厚ホーム大府苑、介護老人保健施設ルミナス大府、あいち健康の森薬草園、JAあぐりタウンげんきの郷、そして、あいち健康プラザなど、健康、長寿、医療、福祉に関する専門機関が高度に集積するという、国内でも極めてまれな地域を形成している地域特性によって、あいちオレンジタウン構想の核となり得ているのでございます。
このように、超高齢社会においても、しっかり認知症に向き合っていこうとする地域性が育まれつつある大府市ではありますが、平成十九年十二月、とても悲しい出来事がありました。大府駅の近くに住む九十一歳の男性が、午後五時ごろ、家族には何も告げずに家を出て大府駅に向かい、改札をすり抜け、名古屋方面に向かう列車に乗り、その後、一駅先の共和駅で列車をおり、そのまま何もないホームの北端に向かい、そこにあった柵の扉をあけ、階段をおりて線路におり立ち、ちょうど向かってきた列車にひかれるという大変痛ましい事故が発生しました。後に、この男性は重度の認知症を患っていたことが判明しました。財布も持たずに、ゆっくりとした足取りで、自動改札を通り抜けることもできないと思われるのに、なぜ一人で列車に乗ることができたのか、真相は今もなおわからないままですが、問題はそこからであります。
その後、鉄道会社側から遺族に対して多額の損害賠償が請求されたのです。悲しみが癒えない中で、遺族の訴訟における長い闘いがそこから始まりました。
一審は、事故で亡くなった男性の妻と、遠く離れて暮らしていた長男に対して、二審では妻のみに対して賠償責任を認めましたが、ついには最高裁で家族は免責になり、逆転勝訴しました。平成二十八年三月の出来事で、全国トップニュースになるほどでしたので、記憶にある方も多いと思います。
しかし、大切な視点はほかにあります。当時、事故に遭うときに男性が身につけていた衣服には、本人が認知症であることが判然とするような、住所、氏名が記載された大きな名札のようなものが縫いつけてあり、どうして誰も声をかけられなかったのかという疑問が浮上するのです。
亡くなった男性の長男が出版した本から引用すれば、徘回に対して手に負えない、危険、怖いというイメージが社会に広まっていることに違和感を持ったとのことで、そのような社会環境では、認知症の方のひとり歩きを誰もとめようとしないのではと指摘する記述には心を震わされるものがありました。
このような事態を深刻に捉えて、大府市では、平成三十年四月に全国で初めて、認知症に対する不安のないまちづくり推進条例が施行され、地域住民と一体となって認知症に理解を深めようとする動きが加速しています。
加えて、鉄道事故被害者の男性の長男の言葉を端緒としまして、大府市では、徘回という言葉を使用しないことを宣言しました。認知症の方の外出の多くは、御本人なりの目的や理由があるとされていますが、徘回という言葉には、目的もなくうろうろと歩き回るという意味があり、認知症の方の外出の実態にそぐわないことや、認知症になると何もわからなくなる、認知症の方は危険といった誤解や偏見につながるおそれがあるからであります。御本人の気持ちを尊重するとともに、介護する御家族の気持ちにも配慮し、ひとり歩き、外出中に行方不明になるなどと言いかえるようになり、その機運は地域に浸透しつつあります。
このような地域の新たな雰囲気のシンボリックな存在として、ちょうど一年前の十二月、大府駅の西口ロータリーには、大村知事の直筆の書を刻んだオレンジリングモニュメントが設置され、地域の共通認識としての認知症に対する思いやりが深まりつつあるのです。
このような中で、本県としましては、当該地域をモデルとしたあいちオレンジタウン構想を積極的に推進するわけでありますが、構想策定から二年が経過した現況において、進捗はどのような状況か確認しておきたいと思います。
また、オレンジタウン構想アクションプランによれば、二〇二〇年を目標年度と定めており、一旦区切りとなり、次期アクションプランの策定に向けた調査及び検討に係る債務負担行為の補正予算案を本議会で提案いただいておりますが、今後、具体的にどのように展開していくのか、とりわけ県下全域へどのように波及させていくのかについて伺っておきたいと思います。まずはこれらの点についてお答えください。
また、厚生労働省が掲げる新オレンジプランでは、いわゆる七つの柱が掲げられていましたが、本年六月、認知症施策推進大綱が閣議決定され、具体的な施策として五つに絞られ、その一つである普及啓発・本人発信支援の項目の主な施策として、認知症サポーターの養成がこれまで以上に強調されています。令和二年度末までに千二百万人のサポーター養成を目指すとしている中で、新たに加わったKPIとして、企業・職域型の認知症サポーター養成数四百万人との指標が浮上してまいりました。
確かに、認知症に優しいまちづくりを推し進めるに当たって、人と接する機会の多い職域で働く人の認知症に対する理解の増進は不可欠であります。そのような考え方を基本として、本県が推進するオレンジタウン構想アクションプランでは、新たな社会資源としての企業の巻き込みを目指して、認知症の人に優しい企業サポーターの育成を挙げています。
本県においても、企業・職域型の認知症サポーターの養成について、改めて大きな期待が膨らむところでありますので、この点についてどのように考えるか確認しておきたいと思います。
さらには、オレンジタウン構想を掲げる本県としましては、認知症施策推進大綱に沿う形で、認知症サポーターの養成に力を入れていく方針であるとは思いますが、同時に、本県独自の政策として、例えば、専門知識を習得するための講座を開催するなどして、一般サポーター以上の役割を果たすことが期待される上級サポーターを養成するなど、考えてもよいかと思います。
これらの点について、本県としては今後具体的にどのようなことを計画しているのか、お答えください。
一方で、あいち健康の森を中心とした専門施設が集積する地域では、そのポテンシャルを生かし、大府市と東浦町が連携して、健康、長寿、医療、福祉に関係する施策を総合的に推進することで、一大コンソーシアムを形成しようとするウエルネスバレー構想が十年以上前から推進されています。この二つの構想、オレンジタウン構想とウエルネスバレー構想の有機的な連携も重要な視点になってくると思われます。この点について、今後どのように連携を図っていかれるのかについてお聞かせください。
次に、二つ目のあいち健康プラザの見直しについて伺います。
一つ目の質問で取り上げてきましたあいちオレンジタウン構想と密接に関係する案件となりますので、頭の中を切りかえずにお聞きいただければ幸いでございます。
ここまで話題にしてきましたとおり、あいちオレンジタウン構想のモデル地域の中心地とされているのがあいち健康の森を中心とした医療・福祉関連施設が集積する地域でありますが、この地域に今後一つの変化が生じることになります。それは、シンボリックな存在であるあいち健康プラザについて、大がかりな改修が計画されていることでございます。
平成二十九年三月に策定されたあいち健康の森健康科学総合センター、通称あいち健康プラザの見直し基本構想によれば、見直しの方向性について、行政コストを縮減するため、省エネ対策を進めるとともに、今後プラザが担う機能に見合った効率的な施設となるよう、減築等の検討を進めるとの基本的な考え方が示されています。
しかし、それに加えて、プラザの強みを生かしながら認知症対策に取り組んでいく、認知症対策とかかわりの深い機能の展開も図っていく、あいち健康の森とその周辺地域を対象とした、認知症に理解の深いまちづくり、オレンジタウン構想とも連携を図っていくとも、基本的な考え方として示されています。
また、機能の見直しについても、長寿研との連携、認知症予防教室の開催、認知症予防リーダーの育成などが挙げられています。
これらについて、プラザの減築と利活用の観点で検討されていることと思いますが、あいちオレンジタウン構想の大局観に立って、構想の中心的拠点として見直しを図るべきではと考えるところでございます。減築という言葉が醸し出すネガティブなイメージにするものではなく、あいちオレンジタウン構想の重要な役割を担うことをポジティブに反映した未来志向のリニューアルとしていくべきと考えます。
この際、見直しを契機に思い切って名称も変更して、例えば、認知症対策総合センター、あいちオレンジタウンプラザなどとすることで特徴づけがなされ、県民にとってもわかりやすい存在になるのではと思います。
そこでお尋ねをします。
あいち健康プラザがリニューアルされることによって、今後、認知症予防対策にどのように取り組んでいかれるのか、具体的な計画についてお答えください。
続きまして、三つ目のスタートアップ支援拠点整備による産業振興について質問してまいります。
本県はこのほど、新市場を開拓するスタートアップ企業を支援するための中核支援拠点、ステーションAiを新設するとして、愛知県勤労会館跡に令和三年度中の開設を目指す計画を発表しました。
物づくり王国である本県にとって、さらに持続可能な産業力を未来に向けて次世代産業を育成していくという観点で大変重要な政策であると捉え、早速、我が党の次世代産業振興議員連盟AI・IoT部会の議員団で、先進の福岡県福岡市へ県外調査に赴き、官民協働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」を視察、研究してまいりました。
そこは、市街地の廃校となった小学校を居抜きにしながらも、現代アートをモチーフにデザインされた空間で、図書館併設のカフェがベースとなっている斬新な雰囲気の中に、ワンストップ相談テーブルが点在し、一見して相談員らしからぬたたずまいの職員が敷居を低くして対応している風景がとても印象的でございました。機能的な特徴としましては、グローバルアクセラレーターとの連携を強化していること、スタートアップファンドによって金融支援を行うこと、事業計画立案や資金調達に関する伴走型育成プログラムを提供すること、製品開発エンジニア育成プログラムを提供することの四つを大きな柱としていて、既に多くの実績を上げている現状を確認してまいりました。
これらの先進事例について調査研究をして、参考にすべきところを吸収しつつ、本県独自のスタートアップ施策を具体化していくべきと考えるところでございます。
一方、本県としましては、平成三十年四月に、あいちスタートアップ推進ネットワーク会議を立ち上げ、集中的な議論を経て、スタートアップ・エコシステムの形成を目的としたAichi─Startup戦略を策定しました。
本戦略は、この地域においてスタートアップが自立的に育まれ、育ち、羽ばたき、そしてまた、この地域に集まってくる新たなエコシステム、いわばビジネスモデルの生態系をつくり上げていくことを目指すものとされています。その具体策として計画されているのがスタートアップ中核支援拠点、ステーションAiの設置であります。
また、中核拠点だけでなく、県内各地域にさまざまな分野に特化したサテライト支援拠点も整備することが発表されました。今後、その候補地や拠点のあり方に関する調査も実施するとのことでありました。
言うまでもなく物づくり王国である本県では、県下全域で先端技術や伝統工芸を生かした産業活動が盛んであり、それを強みとした各分野の次世代産業も急速に伸びつつあります。これらを後押しすることになる全県的展開で次世代産業振興を図るためのサテライト支援拠点について、極めて有効な施策であると考えるところでございます。
この新たな動きに対して、県内各地で興味を示す地域も幾つか出始めているようです。自動車産業が集積する西三河地域、先端技術研究で世界をリードする豊橋技術科学大学がある東三河地域、航空宇宙産業で次世代を開くことが期待される尾張地域など枚挙にいとまがありませんが、詳細については、それぞれの御地元の議員の先生方にお任せをすることといたしまして、ここでは、私の地元、大府市の次世代産業振興について触れておきたいと思います。
それは、やはり初めの話題に戻りますが、オレンジタウン構想の中心地とされるあいち健康の森の周辺地域についてでございます。
ここには、国立長寿医療研究センターを初めとする認知症研究に関係する施設だけでなく、あいち小児保健医療総合センターも存在し、ヘルスケア産業界にとって非常に魅力的でポテンシャルの高い地域となっています。このような強みを背景に、さきにも言及しましたとおり、大府市と東浦町が地元商工会議所、商工会と一体となってウエルネスバレー構想を掲げ、関係団体とともにさまざまな事業を展開しています。
その主要事業の一つが、医療と福祉の現場のニーズを企業に紹介する医工連携、そこに大学と行政の頭脳と力を注ぎ込む産学官交流、そして、関係企業の新たな出会いを創出するビジネスマッチングなどのスタートアップ事業でございます。さらには、開発される新たな商品、サービスをウエルネスバレーブランドと認定する制度もあり、これまでに多くのビジネスモデルが創出されているのでございます。
しかし、一つ決定的に大きな足らないものがあり、それが理由で新しいアイデアやノウハウがあっても生かし切れない、あるいは、ビジネスモデル化されても事業化は東京近郊などの他県に流出してしまうなどの結果を招いていました。すなわち、ここにインキュベーション施設がないことがウエルネスバレーの弱点でありました。これはまさにスタートアップ戦略における分析結果が示す愛知の弱点そのものであり、同時に、戦略で導き出された解決策こそ有効であると考えるわけでございます。
このような事情を踏まえて、このたびのスタートアップサテライト支援拠点について、ヘルスケア産業振興に特徴づける形で設置をすることに、地元の自治体と産業界が強い意欲と協力的な姿勢を示しています。
また、別の側面では、あいちオレンジタウン構想の必要な要素として民間企業の研究開発が挙げられていて、民間企業の地域づくりへの参画を促すとともに、産学官連携による新たな事業の創出を目指すと示されています。すなわち、オレンジタウン構想を推進する上でも、ステーションAiサテライト支援拠点を当該地域に設置する必要性が示唆されているわけでございます。
以上のことを踏まえ、次世代産業の大きな柱の一つとされるヘルスケア産業に特化して、ここにサテライト支援拠点を設置することは極めて有効であると考えるわけですが、これらの点につきましてどのようにお考えになるのか、当局の御見解を伺いたいと思います。
以上で壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
43: ◯福祉局長(平田雅也君) あいちオレンジタウン構想による認知症施策の推進についての御質問のうち、初めに、構想の進捗状況と今後の全県波及についてお答えいたします。
急速な高齢化の進展に伴い、認知症施策の推進は喫緊の課題となっておりますことから、本県では、認知症に理解の深いまちづくりの先進モデルとなるあいちオレンジタウン構想を二〇一七年九月に策定し、地域づくりと研究開発の両面から十一の取り組みを推進しております。
取り組み状況といたしましては、大府市、東浦町の介護保険サービス事業所における実態調査で得られました知見をもとに、事業所の認知症対応力向上研修を進めるとともに、認知症に理解の深いまちづくりに「じぶんごと」として取り組むあいち認知症パートナー企業・大学を募集し、県内六十五の企業、大学等に登録いただいております。
また、二〇一八年度から三年間、県内十市において、地域の実情に応じたモデル事業を実施しており、具体的には、認知症の方だけでなく、障害のある方、ひとり親世帯の方などが参画する共生型認知症カフェの実施や、医師、管理栄養士等が認知症の方の摂食嚥下支援に取り組む、食を通した多職種連携などのモデルに取り組んでいただいております。
さらに、国立長寿医療研究センターの臨床と研究の機能をあわせ持つ新棟整備が始まるなど、構想の取り組みはおおむね順調に進捗しております。
次に、全県への波及につきましては、既に全県を対象としている認知症サポート医などの人材育成は引き続き実施してまいりますが、県内十市で行っておりますモデル事業については、来年度で取り組み期間が終了するため、三年間の成果を発表していただく場を設け、他の市町村の取り組みにつなげるとともに、取り組みの進んでいない市町村に個別の働きかけを行い、全県への波及に取り組んでまいります。
次に、認知症サポーターの養成についてお答えいたします。
本県では、認知症の方と日常的にかかわることが想定される小売、金融などの事業所においては、従業員が認知症への理解をより一層深めていただくための教育が必要であると考え、国の認知症施策推進大綱に先駆け、認知症に優しい企業サポーターの養成に向けた取り組みを昨年度から進めております。
具体的には、認知症の方に安心して買い物などのサービスを御利用いただけるよう、事例に基づくグループワークを取り入れた実践的な研修プログラムを開発しているところです。現在、県内の十七事業所において実証を行っているところであり、来年度から県内の事業所において活用していただく計画であります。
また、これまでも広く一般県民の方々を対象として認知症サポーターの養成を行っており、県内のサポーターの数は昨年度末で五十八万人を超えておりますが、認知症高齢者の大幅な増加が見込まれる中、サポーターの支援も受けながら、認知症の方やその御家族が地域で暮らしていく仕組みをつくることも重要であります。
このため、県では、認知症サポーター養成講座を受講された方を対象に、今年度から、より実践的な内容を習得していただくステップアップ研修を三回開催するとともに、サポーターが地域で活躍できるよう、市町村におけるサポーターの登録制度の創設や、認知症の方の支援ニーズとの調整を行うコーディネーターの配置に向けた市町村の取り組みを支援しているところであります。
県といたしましては、認知症の方やその御家族が住みなれた地域で安心して生活していただけるよう、引き続き認知症サポーターの養成に努めてまいります。
次に、あいちオレンジタウン構想とウエルネスバレー構想の連携についてお答えいたします。
ウエルネスバレー構想は、大府市と東浦町が、あいち健康の森とその周辺地域において、健康長寿の一大拠点の形成を目指すことを目的に、健康長寿に係る関係機関と産業界、行政、大学などが連携して、健康長寿に関する産業の育成と創出、ウエルネスを促す交流やにぎわいづくりなどを進める構想であると認識しております。
一方、あいちオレンジタウン構想は、本県の認知症施策をより一層推進するため、あいち健康の森とその周辺地域が一体となって、認知症に理解の深いまちづくりの先進モデルを目指すための取り組みを示すもので、全県での展開を視野に進めているものであります。
いずれの構想におきましても、取り組みの中心となる地域が同じとなりますので、あいちオレンジタウン構想の推進に当たりましては、ウエルネスバレー構想に参画する機関、団体の皆様にも御協力をいただくとともに、大府市、東浦町と県の関係者がそれぞれの構想推進会議に参画し、情報共有も図っております。
さらに、オレンジタウン構想の取り組みとして、国立長寿医療研究センターが大府市と東浦町の住民を対象に実施しております認知症の簡便なスクリーニング手法の開発を目的としたプラチナ長寿健診は、住民の健康状態の把握につながるとともに、認知症に対する気づきを促すものとなっており、心身の健康が実現できるまちを基本理念の一つとするウエルネスバレー構想の推進にも寄与しているものと考えております。
県といたしましては、保健、医療、福祉の専門機関が集積するこの地域は、あいちオレンジタウン構想の推進において核となる大変重要な地域と認識しており、引き続きウエルネスバレー構想に参画する機関、団体の皆様と連携、協調しながら、認知症施策の先進的な取り組みを進めてまいります。
44:
◯保健医療局長(吉田宏君) 私からは、あいち健康プラザにおける今後の認知症予防対策の具体的な計画についてお答えいたします。
あいち健康プラザでは、二〇一六年度に策定した見直し基本構想において、これまで培ってきた生活習慣病予防のノウハウや市町村とのネットワークといった強みを生かし、認知症予防を中心とした取り組みを展開していくこととしております。
このため、二〇一八年度に認知症に関するナショナルセンターでもある国立長寿医療研究センターとの共同研究を行う連携ラボをプラザ内に開設いたしました。この連携ラボでの研究成果としましては、本年九月に、認知症の指標を取り入れた高齢者健康度評価を開発、実施しております。
さらに、来年一月からは、これまでプラザで養成を行い、現在、地域における健康づくりのボランティア指導者としても活躍していただいております健康づくりリーダーを対象に、認知症予防の知識、技術を身につけていただき、認知症予防リーダーとしても活動していただくための講座を開催する予定にしております。
また、県内全域で認知症予防を普及するため、高齢者向けの運動支援プログラムであります認知症予防プログラムの開発を鋭意進めております。
本県の健康づくりの拠点施設であるあいち健康プラザにおいてこれまで取り組んできた生活習慣病予防対策に加え、国立長寿医療研究センターとしっかり連携し、認知症予防にも積極的に取り組むことにより、健康長寿あいちの実現を目指してまいります。
45:
◯経済産業局長(
伊藤浩行君) スタートアップ支援拠点整備による産業振興についてお答えいたします。
まずは、サテライト支援拠点の検討調査についてであります。
現在、スタートアップ支援に係る取り組みを行っている、またはサテライト支援拠点に関心のある市町村や企業、大学等を中心に面談等による調査を行うとともに、専門機関への委託により、サテライト拠点のあり方、進め方などについて検討しているところでございます。
こうした調査、検討を進める中で、県が単独で取り組むのではなく、地域の市町村、企業、大学等が自主的に関与しながら全県的な広がりを図っていくことが重要と感じているところでございます。
そこで、大府市を中心とするヘルスケア産業に特化したサテライト支援拠点につきましては、あいちオレンジタウン構想やウエルネスバレー構想により、産学官連携による共同研究や産業の育成、創出に取り組まれており、これらの事業とスタートアップ支援プロジェクトとが連携することは、県としても大変有効と考えております。また、大府市もスタートアップ支援に意欲を示されております。
こうしたケースを初め、まずはスタートアップ支援やスタートアップとの連携に関心の高い市町村や関係機関等を中心に調整を行い、サテライト支援拠点の具体化に向け、スピード感を持って進めていきたいと考えております。
46: ◯知事(大村秀章君) 日高章議員の質問のうち、あいちオレンジタウン構想による認知症施策の推進について、私からもお答えをいたします。
二〇一七年九月に策定をいたしましたあいちオレンジタウン構想では、団塊の世代の方々が後期高齢者となる二〇二五年を見据えて、二〇二〇年度までのアクションプランを策定し、各種取り組みを展開しております。
また、昨年の十二月には、認知症施策の基本的な理念や取り組みの方針、県の責務、事業者の役割などを総合的に規定いたしました愛知県認知症施策推進条例を都道府県としては初めて制定をし、認知症施策の推進を図っているところであります。
一方、国におきましては、ことし六月に、共生と予防を車の両輪とした認知症施策推進大綱を新たに決定いたしました。こうした動きを踏まえまして、県としてもさらに認知症施策に係る取り組みを充実、強化するとともに、構想の取り組みの全県への波及を加速させるため、二〇二一年度からの三カ年を計画期間とする次期アクションプランを策定することとし、策定に向けた調査、検討に係る債務負担行為の補正予算を本議会に提案させていただいたところであります。
二〇二五年に向けまして、認知症施策の推進は待ったなしでありまして、県内全域での認知症に理解の深いまちづくりの実現に向けまして、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。
47: ◯六番(日高章君) 知事を初め、それぞれの局の皆様からお答えをいただきまして、ありがとうございました。
私からは、最後に要望をしておきたいと思います。
今回は、大きく三つの質問をさせていただきましたが、これらの課題の根っこの部分は同じでありまして、今後、より深刻さを増していく超高齢化の社会にあって、本県においても、いかにして今ある社会システムの好循環を保っていくかという視点でございます。
それに向けて、山積する課題の中でも、認知症施策の推進と次世代産業の振興は大変重要な要素となるわけですが、一見して領域の異なるこれらの課題も、総合的に施策を動かしていくことによって相乗効果も生まれ、極めて有効な政策となっていきます。このような考え方は、持続可能な社会の実現に向けて開発目標を見据えるSDGsの概念に通じるところでもありまして、今回の場合は、三、八、九のカテゴリーに該当し、これらを包括的に前へ進めていく考え方が重要でございます。そのような政策となり得ると期待されるのがあいちオレンジタウン構想であると言えます。
その実現に向けては、やはりさまざまな場面で民間企業や関係施設、団体との有機的な連携が不可欠となります。オレンジタウン構想が真に有効な政策として県下全域に波及していくためにも、あいち健康プラザの見直しや、スタートアップサテライト支援拠点の設置などについても絶好の機会と捉えて、部局を超えて連携し、効果的に事業を融合させて、相乗効果をもたらすべく取り組んでいただきたいと要望をしまして、私の一般質問を終わります。
48: ◯議長(
神野博史君) 進行いたします。
小木曽史人議員。
〔一番小木曽史人君登壇〕(拍手)
49: ◯一番(小木曽史人君) 新政あいちの小木曽です。通告に従いまして、三つのテーマについて順次質問をさせていただきます。
まず一つ目は、予期せぬ妊娠相談事業についてであります。
予期せぬ妊娠とは、さまざまな事情により、妊婦やそのパートナーが妊娠を継続することや子供を産み育てることを前向きに受けとめられず、支援を必要とする状況や状態にあることを言い、その背景はさまざまありますが、例えば、中高生にあっては学校や地域に知られたくないなど、妊娠したことを誰にも相談できず、一人で悩み、抱え込む場合が多く、最終的には自宅出産や産科未受診の飛び込み出産となり、母体、胎児ともに生命の危険にさらされるケースが多くあると聞いております。
また、予期せぬ妊娠は、妊娠した当人にとって、その後の人生に極めて大きな影響を及ぼすこともある精神的負担であるがゆえ、出生した生後ゼロ歳及びゼロ日の虐待死にもつながる可能性があると指摘されております。
参考までに、厚生労働省子供の虐待死亡事例等の検証等についての報告書によると、平成十七年度から平成二十九年度の心中以外の虐待死総数七百七十九人のうち、ゼロ歳児は約半数の三百七十三人、そのうち生後ゼロ日の死亡は百四十九人に上ります。そして、平成二十九年度単年でいえば、心中以外の虐待死亡事例五十二人のうち、予期せぬ妊娠を理由としたケースは十六人に上り、特に生後ゼロ日死亡では、十四人のうち九人と非常に高い割合を示しています。
こうした虐待死にもつながりかねない予期せぬ妊娠に対しては、一人悩む女性をいち早くピックアップし、安全・安心な出産へ導くのみならず、社会的・経済的解決に向けて、関係諸機関と連携しながら、さまざまな社会資源や制度を活用し、母子ともに迅速かつ確実に支援に結びつけるようサポートしていく相談体制の整備が重要であると考えます。
では、予期せぬ妊娠の相談体制はどうあるべきか。支援を必要とする女性が直ちにつながることができる相談窓口の周知はもちろんのこと、悩みを抱える女性と相談窓口対応者との間に二つの大きなギャップがあると考えられます。
一つ目は、相談窓口対応者の資質に関するギャップです。
相談窓口対応者の多くは医療や保健系の方が多く、相談者の背景にある社会福祉系ニーズにも応えていかなければいけないギャップ。先ほど申し上げたように、予期せぬ妊娠に悩む女性は、複雑に絡み合う社会福祉的な問題を抱えている場合が多いため、ただ単に安全・安心な出産へつなぐのみではサポートとしては不十分で、母子ともに将来に向け希望を持って生きていけるよう、ケース・バイ・ケースで適切なアドバイスが求められます。
具体的には、相談後からの心のケア、妊娠中に受けられる妊婦健診等、出産に向けた経済的支援、住居確保支援、妊娠期の出産費貸付制度や出産後の生活福祉資金貸付制度等の生活立て直しに向けた経済的支援、特別養子縁組や里親制度、乳児院利用等の出産後自分では育てられない場合の支援等々、多岐にわたる行政メニューの知識を有し、地域の中での医療・保健・福祉分野の多機関、多職種と連携しながら迅速かつ確実な支援につなぐソーシャルワークスキルが必要となり、そのためにも、相談を受ける上での専門性と質を高めることが重要であると考えます。
二つ目は、相談受け付けツールに関するギャップです。
ふだんメールやLINE等、SNSでコミュニケーションし、夕方以降に行動を開始することが多い悩める女性に対し、平日の日中電話で相談対応をしているギャップ。学校や仕事のある十代から二十代の女性は、平日の日中に電話をかけて相談することはまれで、学校や仕事が終わる平日十七時以降、もしくは土日祝日にネット上で相談窓口を見つけ、相談する可能性が高いことが予想されます。その時間にメールやLINE等、SNSツールを利用して相談を受け付け、やりとりをするアクセスしやすい体制づくりが必要であると考えます。
こうしたギャップを埋めるための他の自治体の取り組み事例としては、本年三月に厚生労働省の平成三十年度子ども・子育て支援推進調査研究事業の一つとして、全国自治体及びNPO等団体を対象とし調査された、予期せぬ妊娠に対する相談体制の現状と課題に対する調査研究報告書がまとめられ、公表されております。
例えば、アクセスしやすい相談体制の取り組みとしては、特に相談実績が多い自治体等で、相談窓口を特化し、その名称をわかりやすい親しみやすいものにする、相談受け付けツールとして、電話のほか、専用フォームによるメールやLINE等を活用する、相談開設時間として一定程度夜間や休日も充てるといった工夫が見られます。
相談窓口対応者の資質向上の取り組みとしては、相談窓口対応者の研修を定期的に実施したり、マニュアルやスーパーバイザーを設置しているケースが多く見られます。
その他の取り組み事例としては、自治体や関係諸機関につなぐ体制を整備し、地区担当保健師が同行支援を継続的に実施している自治体など、経費やマンパワーを余りかけずに、工夫して丁寧な支援を行っているケースも紹介されております。
厚生労働省の来年度予算概算要求における重点要求の中にも、新規事業として若年妊婦等支援事業が盛り込まれ、具体的には、身体的、精神的な悩みや不安を抱えた若年妊婦等が身近な地域で必要な支援を受けられるよう、SNS等を活用した相談支援等を行うことや、若年妊婦等への支援に積極的で機動力のあるNPOに、同行支援を含むアウトリーチや支援業務の一部及び全てを委託するなどにより、さまざまな地域の実情に応じた支援を今後推進していくと聞いております。
愛知県では、愛知県助産師会への委託事業として、女性健康支援センターを設置し、予期せぬ妊娠相談を含む妊娠、出産、子育てを初めとしたあらゆる女性特有の悩みに関する相談事業を実施しております。
他方、全国的に見ると、一般的な妊娠、出産、子育て等に関する相談事業とは別に、予期せぬ妊娠の相談、支援に特化した妊娠SOS相談事業を実施している自治体も大阪府、三重県、兵庫県、福岡県を初め、現在五十カ所あり、年々増加してきております。
その背景には、貧困、家庭内の複雑な事情、パートナーからの暴力、性産業従事、精神疾患、知的障害、社会からの孤立などの問題が複雑に絡み合い、妊娠して精神的、経済的、社会的に危機的状況にある中で、妊娠を他者に言えない、自分では子供を育てられない等の事情により、産婦人科の受診すらできない、妊娠届出書を出せないでいる女性、つまり、妊娠の届け出から始まる妊娠期から子育て期の切れ目のない支援に初めからつながっていない、助けを必要とする声なき声が数多く存在しているという事実があります。
先ほどの報告書によれば、例えば、妊娠SOS相談事業を実施している福岡県では、予期せぬ妊娠に関する電話及びメールでの実相談人数は毎月約七十人、延べ相談件数は毎月約二百件に上るとも報告をされております。
こうしたことを踏まえ、お尋ねいたします。
先ほども申し上げましたが、愛知県としては、いわゆる予期せぬ妊娠相談窓口としては、愛知県助産師会への委託事業として、思春期から更年期に至る女性を対象とし、身体的、精神的な女性特有の悩みに関するあらゆる相談指導のため女性健康支援センターを設置しておりますが、その相談窓口の周知方法、女性の健康なんでも相談の全実績に対する予期せぬ妊娠に関する相談件数及び相談に対する具体的対応についてお伺いをいたします。
また、相談窓口対応者の資質向上と、今後の取り組みの方向性について、あわせてお伺いをいたします。
次に、二つ目として、未就学児童に対する自然環境教育の推進について質問をいたします。
愛知万博、生物多様性条約第十回締約国会議、いわゆるCOP10、ESDユネスコ世界会議といった国際イベント開催を通じ、学校や企業、地域社会の多くで環境について学ぶ機会がふえ、地球温暖化や大気海洋汚染、生物多様性保全等、県民の環境に対する意識は着実に地域に根づいてきていると感じます。
しかしながら、学び得た環境意識の向上が必ずしも課題解決への具体的な行動に十分つながっているとは言えず、次のステップとしては、学びを具体的行動につなげる力を育む人づくりが重要であることは言うまでもありません。
愛知県は、県民みんなで未来へつなぐ環境首都あいち実現を旗印に、第四次愛知県環境計画及び愛知県環境学習等行動計画二〇三〇、そして、本年八月に策定された愛知県SDGs未来都市計画において、具体的行動につなげる人づくりの取り組みを進めております。
愛知県環境学習等行動計画二〇三〇では、この具体的行動につなげる人づくりを、環境学習が単なる知識で終わるのではなく、自然環境との共生共存を自覚しつつ、みずから考え、協働しながら課題形成し、具体的に解決していくことと捉え直し、年齢や経験等、成長過程に合わせた全ての世代の環境学習の機会の拡充と質の向上を図っていくとされております。
その人づくりの最初の第一歩、入り口となる就学前の幼児期は、感受性豊かで、好奇心に富み、人間形成の基盤がつくられる特別な時期と言えます。この時期に触れた体験や学習は、その後の成長過程に大きな影響を及ぼすため、世界的にも、この段階からの環境教育は重要視され、いわゆる自然体感型のさまざまな具体的取り組みが実施されていると聞いております。
こうした中、愛知県も平成二十七年に県で開催された愛知万博十周年記念インタープリター愛・地球ミーティングを契機として、平成二十八年度から、愛・地球博記念公園内にある環境学習拠点施設もりの学舎を中心に、就学前の幼児期、いわゆる未就学児童向けのインタープリターによる自然体感型環境学習事業が実施されており、幼いうちから五感を使って自然に学び、気づきを得る大変有意義な機会が提供されていると思っております。
ちなみに、インタープリターとは、環境学習の中で自然の価値や自然と人のかかわりを知識として伝えるだけでなく、人が自然を体験したり発見したりすることをサポートし、気づきや自主的な学びにつなげる指導者のことです。
この未就学児童向けの自然体感型環境学習事業は、幼稚園、保育園及び認定こども園を対象に、一日もりの学舎に来て自然を学んでもらう一日もりの学舎ようちえん、未就学児童と保護者の二名一組を対象に、年間六回、四季を通じて自然を学んでもらうもりの学舎ようちえん、県内の幼稚園、保育園、認定こども園を対象に、インタープリターが実際に園に赴き、園庭など身近な自然を使った自然体感プログラムを実施する森の伝道師派遣といった三つのプログラムがあり、いずれも大変好評だと聞いております。
実際に、私も森の伝道師派遣を受け入れた保育園にお邪魔し、子供たちと体験をさせていただきました。インタープリターによるサポートで、子供たちはすぐに園庭にある身近な自然を遊び相手とし、さまざまなアイデアを繰り出し、目を輝かせながら楽しそうに活動しているのがとても印象的でした。保育士の皆さんからも、ふだん何げなく使っている園庭での新たな学び方のよい気づきになり、園内で共有し取り入れていきたいとの声も伺うことができました。
あわせて、愛知県は、幼保事業所での自然体感教育の自前化を目的に、幼稚園教諭や保育士みずからが園庭遊びやお散歩時などで簡単に実践できるような指導者研修を実施しており、先ほどの保育士の皆さんの声にもあるとおり、今後、確実にそのニーズは高まっていくと感じております。
こうした自然体感プログラム事業及び指導者研修の存在とその意義をさらに広く知っていただき、幼児教育の中に積極的に取り入れていただくよう、機会を捉え、県下市町村を初め幼稚園連盟、保育園連盟など関係各所に対し積極的に働きかけながら、幼保事業所での取り組みの自前化、ひいては県下他の環境学習施設や県営公園等を利用した出前事業など、未就学児童向けの環境教育を県内全体に広めていくための工夫を行って、一人でも多くの方々に参加していただくことが大切だと思います。
ただ、先ほどの三つの自然体感プログラム事業は、指導者であるインタープリター不足もあり、平成二十八年度の事業開始以降、応募者多数で抽せんに漏れる対象者も多く、例えば今年度、一日もりの学舎ようちえんは、応募数二十二園に対し実施予定数は十園、もりの学舎ようちえんは、応募数八十二組に対し実施予定数は三十組、森の伝道師派遣は、応募数七十四園に対し実施予定数は十五園と、県民の御期待に十分応えている状況ではありません。
幼児期から自然環境の中で自身が生かされていることを自覚し、自然に触れて、感じて、楽しみながら共存していく感覚を身につけることが、その後の自然環境保護に対する意識向上、具体的行動につながる人づくりの一丁目一番地であると私は考えております。
未就学児童プログラムの周知、インタープリター不足の解消、幼保教育現場での環境教育の自前化促進といった課題に対し、しっかり予算を確保しながら事業を進めていっていただきたいと思います。
あわせて、単に未就学児童向けの学習機会を広げるだけでなく、事業を実施する中で得た気づきや課題を捉え、柔軟にプログラムを見直し、内容を充実させていく、いわゆる質を担保していく視点を忘れてはなりません。未就学児童向けの事業を小中高校生向け、大学生向け、社会人向けといった世代ごとに用意されている環境学習ステップにつなげる実効性あるものとするため、機会の拡充と質の担保という両面で、できる限り数値的指標を持ち、効果測定や事業評価をしつつ、限られた予算の中で最大限の効果を生み出すよう、費用対効果の分析をしながら、PDCAサイクルが回るような計画的かつ継続的な取り組みを進めていくことが重要だと考えております。
そこでお尋ねをいたします。
この未就学児童向けのインタープリター自然体感推進事業を通じた取り組み、今年度四年目を迎えたところでありますが、愛知県として現状をどう評価しているのか、お伺いをいたします。
あわせて、課題をどのように捉え、来年度、さらにはそれ以降の取り組み拡大にどのように生かしていくのか、お伺いをいたします。
最後に、事業承継におけるマッチング支援について質問をいたします。
事業承継がうまくいかず、倒産、廃業となれば、技術や雇用は失われ、メーカーなど大企業にとってもサプライチェーンの崩壊につながる等、物づくり愛知にとっても喫緊の課題であることは言うまでもありません。
国でも本年六月、経済財政諮問会議の答申を経て閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針二〇一九により、事業承継支援策を今後十年で集中実施することとしております。
後継者が決まっている事業者には税制措置等による支援を、決まっていない事業者には気づきの機会の提供、マッチング支援等により後継者探しを支援し、特に親族以外の第三者への事業承継については、株式譲渡時の税負担を軽くするなどの税制改正や補助金等助成制度の拡充を中心に支援を厚くしていくとしております。
愛知県においても、中小企業、小規模事業者の事業承継がスムーズに行われるよう、愛知県中小企業振興基本条例に基づき、あいち事業承継ネットワークを中心に事業承継診断の実施、経営者や後継者を対象とした各種セミナーの開催、コーディネーターや士業専門家による個社支援による経営の磨き上げなど、気づきを促し、計画的かつ着実に事業が承継できる取り組みが進められております。
中でも、マッチング支援という部分において言えば、基本的な考え方として、親族承継及び従業員承継においては、あいち事業承継ネットワークを中心に、後継者の選定と円滑な承継準備を支援し、第三者承継、いわゆるスモールMアンドAについては、より専門的支援が必要であるとして、愛知県事業引継ぎ支援センターの中で士業専門家を活用し、経営改善と実際の後継者不在事業主と創業希望者のマッチングを実施していくと伺っております。
特に、第三者承継への流れが今後加速していくと見込まれる中、国としても、後継者人材バンクというスキームを全国展開し、マッチング支援を実施していくこととしております。
後継者人材バンクは、後継者不在事業主、特に小規模事業主と創業希望者をマッチングすることで、地域に必要な事業を存続させ、創業も支援する事業で、平成二十六年から国が全都道府県設置に向け取り組みを進めており、本年五月時点で、全国三十一カ所の都道府県に既に設置されておりますが、残念ながら愛知県ではいまだ設置されておりません。
後継者不在の事業者にとっては、みずから育ててきた事業を意欲ある後継者に引き継ぎ、従業員の雇用も維持することができる、他方、創業希望者にとっても、生産設備や顧客、取引先等の経営資源と経営ノウハウを引き継げるので、創業に伴うリスクが低減できるという双方にメリットがあります。
とあるスモールMアンドAを多く手がける士業の方に伺ったところ、特に小規模事業者で第三者承継が進まない主な要因として、後継者不在事業主、いわゆる売り手側と創業希望者である買い手側双方の情報不足を挙げておられました。売り手側から見れば、小規模事業者を買いたいと思っている買い手側情報は世の中に出ていない情報であり、買い手を探すこと自体が非常に困難でコストのかかる作業であるため、仲介業者もなかなか手が出しにくく、報酬も高くなってしまうという相関関係にあります。
逆に、買い手側からすれば、MアンドAにより事業を拡大、成長させたい、小規模であれば譲り受けたいと思った場合、できる限り選択肢を広げ、より条件のよい売り手を探したいわけですが、どの会社が譲渡を希望しているのかという情報は点在しており、ベストマッチングな売り手を探すには選択肢が不足しがちになるとのことです。
まずは、後継者不在事業主と創業希望者ともに、ある程度の基本情報をデータベースとして見える化し、売り手、買い手双方の選択肢を広げ、よりスピーディーにマッチングができるよう環境整備を進めることが必要であると考えます。
国も来年度以降、金融機関や士業を中心とするMアンドAアドバイザー等の参画のもと、各都道府県の後継者人材バンクと連携した広域マッチングのためのデータベースの構築を進めていくこととしております。事業承継全体を入り口から出口まで切れ目なく支援していくことが愛知県、そして、あいち事業承継ネットワークの役割だとすれば、第三者承継についても、基本は事業引継ぎ支援センターの事業とは言いつつも、情報交換等、連携を密にしながら、後継者人材バンクの設置及び推進を後押しすべく、よりマッチングしやすい環境整備にも積極的にコミットしていくことが必要であると考えます。
そこでお尋ねをいたします。
改めてということになりますが、親族及び従業員承継であれば、後継者の早期選定と承継に向けた準備と計画立案、第三者承継であれば、MアンドAに向けた経営改善とマッチングに対する支援が重要と考えておりますが、県として、こうした支援をどのように考え、実施しているか、お尋ねをいたします。
あわせて、特に第三者承継における後継者人材バンク事業を含めたマッチングしやすい環境整備についてどのように考え、今後どのように取り組まれていくつもりかお伺いをいたします。
以上、大きく三つのテーマについて伺ってまいりましたが、県当局の前向きな答弁を期待いたしまして、壇上からの質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
50:
◯保健医療局長(吉田宏君) 予期せぬ妊娠相談事業についての御質問のうち、まずは相談窓口の周知方法、相談件数及び相談に対する具体的対応についてお答えいたします。
本県では、女性の健康の保持、増進を図るため、愛知県助産師会へ委託し、身体的、精神的な悩み全般に関する電話相談の窓口である女性の健康なんでも相談を開設し、この中で、予期せぬ妊娠に関する電話相談にも対応しております。
窓口については、県のウエブページに掲載しているほか、市町村及び県保健所にポスターを配布し、周知に努めております。
相談件数といたしましては、二〇一八年度の全体の相談件数は六百八件、そのうち、予期せぬ妊娠に関する相談は十九件となっております。
具体的な対応としましては、専門的な知識や経験を生かして不安の解消に努めるとともに、相談内容によりましては、適切な支援につなげるため、市町村の子育て世代包括支援センターや産婦人科医療機関等の関係機関と密接に連携して対応しております。
次に、相談員の資質向上と今後の取り組みの方向性についてお答えいたします。
まず、相談員の資質向上についてでございますが、予期せぬ妊娠の相談に一層きめ細かく対応するためには、経済的な不安の解消や、生活支援につなげるための幅広い知識が必要でございます。
県と愛知県助産師会では、こうした知識の習得と産後鬱対策などの新たな情報の提供を目的としまして、研修会を年六回ほど開催し、相談員の資質向上に努めております。
今後の取り組みといたしましては、より多くの方に相談窓口を活用していただけるよう、窓口の一層の周知と、メールの活用など、相談手段の拡充が必要であると考えております。
このため、本県では、妊娠、出産にかかわる関係者で構成します安心安全な妊娠出産推進委員会におきまして、具体的な取り組みを検討してまいります。
今後とも、関係機関と連携し、妊娠や出産に関するさまざまな不安を解消できるよう、しっかりと取り組んでまいります。
51:
◯環境局長(森田利洋君) 未就学児童向けのインタープリター自然体感推進事業について、まず、これまでの取り組みの評価についてお答えをいたします。
子供たちを対象とした自然環境教育につきましては、愛知万博で実施された森の自然学校を継承、発展する形で、愛・地球博記念公園内に二〇〇七年三月に開館いたしました。もりの学舎を中核として、インタープリターと呼ばれる森の案内人と一緒に森や水辺をめぐるツアー、あるいは葉っぱや木の実など自然の素材を使った工作教室などの各種プログラムを実施してまいりました。
二〇一五年十月に愛知万博十周年を記念して開催いたしましたインタープリター愛・地球ミーティングにおいて、幼いころに自然を体感することが自然を尊重する自立した人格を育てる一番の方法であると、このメッセージが取りまとめられたのを受けまして、二〇一六年度から新たに対象を未就学児童に特化して自然体感推進事業を実施してきております。
この事業には、未就学児童と保護者を対象に、四季を通じて開催するもりの学舎ようちえん、幼稚園、保育園及び認定こども園の単位で受け入れを行う一日もりの学舎ようちえん、インタープリターが幼稚園等に出向いて行います森の伝道師派遣の三つのメニューがございまして、今年度までの四年間で四千五百九十二名の未就学児童が参加いただいております。
各メニューの実施後の未就学児童の変化につきましては、保護者や保育士等からアンケートをとり、事業の検証、評価を行っているところでございます。
まず、保護者からでございますが、森や公園でのお散歩や、あるいは生き物を探したりするなどの行動がふえ、継続している、保育士等からは、木々の色の変化に気づいて観察する姿が見られた、感じたことを友達や保護者に伝え、皆で話し合い、共感できるようになったなど、体験後の未就学児童において、観察力、意欲が引き出され、様子や言動に変化が感じられるとの評価を得ているところでございます。
また、保護者や保育士等の方々の満足度につきましては、参加して本当によかった、また参加したいなどの声もいただいておりまして、昨年度は、三つのメニューとも大いに満足あるいは満足、これを合わせまして九五%を超えているところでございます。
また、未就学児童が園内や身近な場所で、日常的に自然体感を得られますよう、幼稚園教諭、保育士等を対象として実施している指導者研修は、これまで四百十四名の方に受講いただきまして、自然に関する知識が深まり指導に役立っている、学んだプログラムを園内で実践しているなど、現場での実践につなげていただいております。
このように、未就学児童の自然への興味を喚起し、行動する人を育てていくために、また、幼児期の自然体感の重要性についての認識をさらに広げていくためにも重要な事業であると考えているところでございます。
次に、事業の課題と今後の取り組みについてでございます。
幼児期の自然体感の重要性の認識の高まりから、年々、本事業への応募数はふえてきておりまして、とりわけ親子対象のもりの学舎ようちえん、幼稚園等に出向いて行う森の伝道師派遣では、今年度は受け入れ枠の四から五倍の応募となっているところでございます。
こうした増大するニーズに応えていくことが課題と考えておりまして、今年度は、インタープリターの配置をやりくりするなど、もりの学舎ようちえんについては、予定を上回る受け入れに努めたところでございます。
今後は、本事業の受け入れ枠の拡大とともに、県内各地で未就学児童が自然体感を得られる機会を拡充していくことが重要と考えております。
そのため、まず現在、五十四名登録されておりますインタープリターの増員に向けまして、県内各地で担い手となっていただく方を含めまして、新たな養成を行うとともに、幼稚園教諭などを対象としている指導者研修につきましても、各地の環境学習施設等の職員にも対象を拡大しつつ強化してまいることで、機会の拡充等を図ってまいりたいと考えております。
また、県内各地のフィールドで事業として実践していただくためには、地域の自然環境に応じた環境学習プログラムも必要かと思います。このプログラムの開発、提供についても検討してまいりたいと考えております。
あわせて、未就学児童が多様な自然に触れ合うことのできるよう、県内百八十四の環境学習施設で構成いたしております愛知県環境学習施設等連絡協議会で、通称AELネットでございますが、これを活用いたしまして、自然体験施設等の情報発信を充実してまいります。
未就学児童に対する自然体感推進事業は、未来の愛知への種まきとなる、環境首都あいちを支える人づくりの重要な第一歩でございますので、こうした取り組みを通じまして事業の拡充を図るとともに、県内での機会の拡充に取り組んでまいりたいと考えております。
52:
◯経済産業局長(
伊藤浩行君) 事業承継におけるマッチング支援についてのお尋ねのうち、まず、後継者の早期選定、承継に向けた準備と計画立案、MアンドAに向けた経営改善とマッチングに対する支援についてお答えいたします。
公益財団法人あいち産業振興機構が二〇一七年九月に、県内六十歳以上の中小企業の経営者を対象に実施した事業承継の実態調査によると、後継者がいない、または未定とした企業は三四・三%、事業承継の準備をしていない企業が四〇・八%あったことから、親族、従業員の承継、第三者への承継の実現に向けた支援は重要であると認識しております。
そこで、後継者や譲受企業の選定を含め、事業承継の着手への気づきを促すため、あいち事業承継ネットワークの構成員である商工会、商工会議所や金融機関等が事業承継診断をこれまで約一万三千件実施しているほか、専任のコーディネーターを中心に、士業専門家と連携をして、事業承継計画の立案や第三者承継に向けた経営改善を指導、助言するなどの支援を行っております。
さらに、MアンドAに向けたマッチング支援につきましては、あいち事業承継ネットワークの構成員であり、MアンドAの専門機関である愛知県事業引継ぎ支援センターが中心的な役割を担っており、他のネットワーク機関が実施する個社支援の成果を活用して、より結果に結びつくようなマッチングを実施しております。
今後も、地域の支援機関が一体となって、親族、従業員、第三者いずれの承継の場合においても、気づきから承継までの段階に応じ、総合的な支援に取り組んでまいります。
次に、第三者承継におけるマッチングしやすい環境整備についてお答えいたします。
第三者承継は、事業承継における重要な選択肢の一つであることから、マッチングをしやすい環境の整備は重要であると考えております。
議員御指摘の後継者人材バンクは、創業を目指す起業希望者と後継者不在企業のマッチングを円滑に行うために、国が各都道府県の事業引継ぎ支援センターへの展開を進めるものであり、愛知県事業引継ぎ支援センターにおいても今年度内に立ち上げる方向で検討が進められております。
本県といたしましても、後継者人材バンクの設置は、MアンドAの促進に大変有意義なものであることから、あいち事業承継ネットワークからの譲渡企業情報の提供や、企業価値を高めるための経営改善などを通じて、その設置、運営に協力し、第三者承継におけるマッチングしやすい環境整備につなげていきたいと考えております。
53: ◯一番(小木曽史人君) 丁寧な御答弁ありがとうございました。
私からは、二点について要望をさせていただきます。
予期せぬ妊娠相談事業についてでございますが、予期せぬ妊娠は、母体、胎児ともに、ややもすれば命の危険にさらされる、虐待死につながる可能性がある、現状の相談窓口に届いている声は氷山の一角であるということを再認識する必要があると思っております。
実際の電話相談の中には、電話口で既に陣痛が始まっており、そのまま自宅出産をしたケースもあるようで、このときは電話による的確なアドバイスで何とか事なきを得たそうですが、一歩間違えば母子ともに命を落としたかもしれません。相談事業委託先の県助産師会の方からは、予期せぬ妊娠で悩む女性に対し、もっと早く相談してもらい、積極的なケアができればとの声もいただいております。
先ほどの答弁の中で、メール活用の検討を含め、しっかりと取り組んでいくとの前向きなお話がありましたが、限られたリソーセスの中ではあるものの、ぜひ知恵を出しながら、メールありきではなくSNS等リーチしやすいツールの活用、相談受け付け時間の見直し、さらには、受けた相談に対し、相談者に寄り添いながら迅速かつ円滑に具体的支援につなげる体制について、将来的には予期せぬ妊娠に特化した相談窓口設置も検討の俎上にのせながら、取り組みを進めていっていただくことを強く要望いたします。
もう一つは、事業承継についてです。
第三者承継における後継者人材バンクを愛知県事業引継ぎ支援センターにおいて今年度内に立ち上げる方向で検討が進められていると御答弁をいただきました。
あいち事業承継ネットワークからの譲渡企業の情報提供はもちろんですが、買い手である創業希望者についても、あくまで例えばですが、都心部に就職した人が愛知県に戻り、一念発起、起業したいといったニーズもあるかもしれません。そういった買い手情報もアンテナ高く拾い上げ、マッチングの土俵に上げられるような環境整備をあいち事業承継ネットワークという枠組みの中で、事業引継ぎ支援センターとしっかり連携しながら進めていっていただくことを要望し、質問を終わります。ありがとうございました。
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54: ◯四十一番(田中泰彦君) 本日はこれをもって散会し、十二月九日午前十時より本会議を開会されたいという動議を提出いたします。
〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
55: ◯議長(
神野博史君) 田中泰彦議員の動議のとおり決しまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
56: ◯議長(
神野博史君) 御異議なしと認めます。
十二月九日午前十時より本会議を開きます。
日程は文書をもって配付いたします。
本日はこれをもって散会いたします。
午後四時四十八分散会
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