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  1. 岐阜市議会 2016-03-01
    平成28年第1回(3月)定例会(第1日目) 本文


    取得元: 岐阜市議会公式サイト
    最終取得日: 2021-06-06
    トップページ 検索結果一覧 使い方の説明 (新しいウィンドウで開きます) 平成28年第1回(3月)定例会(第1日目) 本文 2016-03-03 文書・発言の移動 文書 前へ 次へ 発言 前へ 次へ ヒット発言 前へ 次へ 文字サイズ・別画面表示ツール 文字サイズ 大きく 標準 小さく ツール 印刷用ページ(新しいウィンドウで開きます) 別窓表示(新しいウィンドウで開きます) ダウンロード 表ズレ修正 表示形式切り替え 発言の単文・選択・全文表示を切り替え 単文表示 選択表示 全文表示 発言者の表示切り替え 全 17 発言 / ヒット 0 発言 すべての発言・ヒット発言表示切り替え すべての発言 ヒット発言 選択表示を実行・チェックの一括変更 選択表示 すべて選択 すべて解除 発言者一覧 選択 1 : ◯議長(竹市 勲君) 10頁 選択 2 : ◯議長(竹市 勲君) 10頁 選択 3 : ◯議長(竹市 勲君) 349頁 選択 4 : ◯議長(竹市 勲君) 349頁 選択 5 : ◯議長(竹市 勲君) 349頁 選択 6 : ◯議長(竹市 勲君) 349頁 選択 7 : ◯議長(竹市 勲君) 349頁 選択 8 : ◯議長(竹市 勲君) 349頁 選択 9 : ◯議長(竹市 勲君) 349頁 選択 10 : ◯市長(細江茂光君) 349頁 選択 11 : ◯議長(竹市 勲君) 372頁 選択 12 : ◯議長(竹市 勲君) 374頁 選択 13 : ◯20番(井深正美君) 374頁 選択 14 : ◯議長(竹市 勲君) 375頁 選択 15 : ◯議長(竹市 勲君) 375頁 選択 16 : ◯議長(竹市 勲君) 376頁 選択 17 : ◯議長(竹市 勲君) 376頁 ↑ 発言者の先頭へ 本文 ↓ 最初のヒットへ (全 0 ヒット) 1: 開  会  午前10時1分 開  会 ◯議長(竹市 勲君) ただいまから平成28年第1回岐阜市議会定例会を開会します。             ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 一 諸般の報告 2: ◯議長(竹市 勲君) 日程に入るに先立って諸般の報告を行います。  監査結果報告書及び岐阜市包括外部監査報告書並びに報第3号、報第4号及び報第5号専決処分事項の報告については、お手元に配付しました報告書によって御承知を願います。            ───────────────────         監査結果報告書及び岐阜市包括外部監査報告書提出一覧                     平成28年第1回(3月)岐阜市議会定例会 例月現金出納検査結果報告書(平成27年10月分~平成27年12月分) 監査結果報告書 ・定期監査及び行政監査   (平成27年度4月~10月分 必要に応じて平成26年度分)  ・市民生活部  ・都市建設部  ・基盤整備部 ・定期監査及び行政監査   (平成27年度4月~11月分 必要に応じて平成26年度分)  ・柳津地域振興事務所
     ・農林部  ・農業委員会事務局  ・教育委員会  ・子ども未来部  ・福祉部 工事監査結果報告書(平成27年度分)  ・(仮称)岐阜市長良川防災・健康ステーション建設建築主体工事 岐阜市包括外部監査報告書(平成27年度)  ・岐阜市の生活保護            ───────────────────  検査の種類    例月現金出納検査  検査の対象    一般会計、特別会計、基金及び企業会計                (平成27年10月出納事務)  検査の期間    平成27年11月30日~平成28年1月18日 1 歳入歳出実績表及び試算表等の計数を各会計諸帳簿と照合したところ、正確であるこ  とを認めた。 2 月末現金預金現在高を預け入れ金融機関残高証明書と照合したところ、正確である  ことを認めた。 3 その他証拠書類等を検査したところ、おおむね適正に処理されているものと認めた。   なお、軽微な事項については、別途指示した。            ───────────────────  検査の種類    例月現金出納検査  検査の対象    一般会計、特別会計、基金及び企業会計                (平成27年11月出納事務)  検査の期間    平成27年12月28日~平成28年1月26日 1 歳入歳出実績表及び試算表等の計数を各会計諸帳簿と照合したところ、正確であるこ  とを認めた。 2 月末現金預金現在高を預け入れ金融機関残高証明書と照合したところ、正確である  ことを認めた。 3 その他証拠書類等を検査したところ、適正に処理されているものと認めた。            ───────────────────  検査の種類    例月現金出納検査  検査の対象    一般会計、特別会計、基金及び企業会計                (平成27年12月出納事務)  検査の期間    平成28年1月28日~平成28年2月19日 1 歳入歳出実績表及び試算表等の計数を各会計諸帳簿と照合したところ、正確であるこ  とを認めた。 2 月末現金預金現在高を預け入れ金融機関残高証明書と照合したところ、正確である  ことを認めた。 3 その他証拠書類等を検査したところ、適正に処理されているものと認めた。            ───────────────────  監査の種類  定期監査及び行政監査  監査の対象  市民生活部         (平成27年度4月~10月分 必要に応じて平成26年度分)  監査の期間  平成27年12月1日~平成28年1月18日  証拠書類の一部を抽出して、関係諸帳簿と照合したところ、おおむね適正に処理されて いるものと認められた。しかしながら、次のような事項が見受けられたので、改善に努め られたい。  なお、軽微な事項については、別途指示した。 [指摘事項] 1 適正な事務執行について   岐阜市事務決裁規則別表第1では、手数料の減免については部長の専決事項とされて  いる。   しかしながら、住民基本台帳カード交付手数料について、申請書が提出された場合、  即時に減免を決定する必要があることから、部長の決裁を受けることなく、事後に市民  課長または事務所長の決裁を受けていた。   住民基本台帳カードの交付は、平成27年12月28日で終了しているが、今後、手  数料の減免を実施する場合は、適正な事務執行となるよう努められたい。 2 国民健康保険料及び国民健康保険税の収納率の向上について   国民健康保険料及び国民健康保険税の収納率は、平成26年度決算において、72.  20%で前年度比0.62ポイントの増であった。   しかしながら、平成27年10月末現在の滞納繰越分に係る収入未済額は2,634,  434,739円である。   今後とも、滞納繰越分の早期回収に努めることはもとより、現年賦課分の回収につい  ても、滞納繰越が生じないように努力し、収納率の向上を図られたい。            ───────────────────  監査の種類   定期監査及び行政監査  監査の対象   都市建設部          (平成27年度4月~10月分 必要に応じて平成26年度分)  監査の期間   平成27年12月1日~平成28年1月26日  証拠書類の一部を抽出して、関係諸帳簿と照合したところ、おおむね適正に処理されて いるものと認められた。しかしながら、次のような事項が見受けられたので、改善に努め られたい。  なお、軽微な事項については、別途指示した。 [指摘事項] 1 交通事故の防止について
      平成26年11月から平成27年10月までの間に、公用自動車による事故が2件発  生した。   職員の交通事故防止について、一層の指導徹底を図られたい。とりわけ、後退時の安  全確認の励行について指導されたい。            ───────────────────  監査の種類   定期監査及び行政監査  監査の対象   基盤整備部          (平成27年度4月~10月分 必要に応じて平成26年度分)  監査の期間   平成27年12月1日~平成28年1月26日  証拠書類の一部を抽出して、関係諸帳簿と照合したところ、おおむね適正に処理されて いるものと認められた。しかしながら、次のような事項が見受けられたので、改善に努め られたい。  なお、軽微な事項については、別途指示した。 [指摘事項] 1 適正な事務執行について   岐阜市事務決裁規則別表第2では道路及び水路の占用が、別表第1では使用料の減免  が、部長の専決事項とされている。   しかしながら、道路または水路の占用の決裁及び使用料の免除の決裁について、専決  者である部長の決裁を受けていないものがあった。   今後は、岐阜市事務決裁規則を遵守し、適正な事務執行に努められたい。 2 適正な財務会計事務の執行について   歳入の調定について、岐阜市会計規則第32条第1項では、「収入命令者は、歳入を  徴収しようとするときは、次に掲げる事項を調査し、直ちにこれを調定しなければなら  ない。」と規定されており、同規則第33条では、「収入命令者は、事前に調定をしが  たい歳入金については、現金を収納した後において、関係書類に基づいて前条の規定に  よる調定をすることができる。」と規定されている。   また、公金の払込みについて、岐阜市会計規則第41条第2項では、「会計管理者、  現金出納員又は現金取扱員において納入者より直接徴収金等を収納したときは、納入通  知書に領収済通知書等を添え、即日(即日の払込みを困難とするものにあっては、指定  金融機関又は収納代理金融機関等の翌営業日)指定金融機関又は収納代理金融機関に払  込みしなければならない。」と規定されている。   しかしながら、平成27年4月から10月の間に収納した公文書複写代について、最  長で3週間以上経過した後に調定及び払込みをしている事例が見受けられた。   今後は、岐阜市会計規則を遵守し、適正な財務会計事務の執行に努められたい。 3 未収金の回収について   道路占用料の収入未済額は、平成26年度末で1,157,057円である。平成2  7年10月末現在では、過年度未収金が645,055円である。   また水路占用料の収入未済額は、平成26年度末で1,426,070円である。平  成27年10月末現在では、過年度未収金が1,083,917円である。   今後とも、過年度未収金の早期回収に努めることはもとより、現年度分の回収につい  ても、滞納繰越が生じないように努力されたい。 4 交通事故の防止について   平成26年11月から平成27年10月までの間に、公用自動車による事故が1件発  生した。   職員の交通事故防止について、一層の指導徹底を図られたい。 5 事故の防止について   平成27年5月に、排水機場敷地内の除草作業中に飛び石が発生し、付近の道路を走  行していた車両に対する物損事故が発生した。   施設管理におけるリスクを再点検し、リスクの低減を図るなど、安全管理を徹底され  たい。            ───────────────────  監査の種類   定期監査及び行政監査  監査の対象   柳津地域振興事務所          (平成27年度4月~11月分 必要に応じて平成26年度分)  監査の期間   平成28年1月4日~平成28年2月12日  証拠書類の一部を抽出して、関係諸帳簿と照合したところ、おおむね適正に処理されて いるものと認められた。しかしながら、次のような事項が見受けられたので、改善に努め られたい。  なお、軽微な事項については、別途指示した。 [指摘事項] 1 適正な事務執行について   岐阜市柳津生涯学習センター条例第4条第1項では、センターを使用しようとする者  は、あらかじめ市長の許可を受けなければならないと規定されている。   また、岐阜市事務決裁規則別表第1では、使用料の減免については部長の専決事項と  されている。   しかしながら、柳津生涯学習センター及びもえぎの里生涯学習センターにかかる使用  許可及び使用料の減免について、決裁を受けていなかった。   今後は、岐阜市柳津生涯学習センター条例及び岐阜市事務決裁規則を遵守し、適正な  事務執行に努められたい。            ───────────────────  監査の種類   定期監査及び行政監査  監査の対象   農林部          (平成27年度4月~11月分 必要に応じて平成26年度分)  監査の期間   平成28年1月4日~平成28年2月12日  証拠書類の一部を抽出して、関係諸帳簿と照合したところ、おおむね適正に処理されて いるものと認められた。しかしながら、次のような事項が見受けられたので、改善に努め られたい。  なお、軽微な事項については、別途指示した。 [指摘事項] 1 交通事故の防止について   平成26年12月から平成27年11月までの間に、公用自動車による事故が2件発  生した。   職員の交通事故防止について、一層の指導徹底を図られたい。            ───────────────────
     監査の種類   定期監査及び行政監査  監査の対象   農業委員会事務局          (平成27年度4月~11月分 必要に応じて平成26年度分)  監査の期間   平成28年1月4日~平成28年2月12日  証拠書類の一部を抽出して、関係諸帳簿と照合したところ、おおむね適正に処理されて いるものと認められた。  なお、軽微な事項については、別途指示した。            ───────────────────  監査の種類   定期監査及び行政監査  監査の対象   教育委員会          (平成27年度4月~11月分 必要に応じて平成26年度分)  監査の期間   平成27年8月11日~平成27年8月25日、          平成27年12月3日~平成27年12月17日及び          平成27年12月28日~平成28年2月12日  証拠書類の一部を抽出して、関係諸帳簿と照合したところ、おおむね適正に処理されて いるものと認められた。しかしながら、次のような事項が見受けられたので、改善に努め られたい。  なお、軽微な事項については、別途指示した。 [指摘事項] 1 適正な事務執行について (1)岐阜市立学校等の体育施設の開放に関する規則第8条第2項では、開放施設の使用   承認は、教育委員会が行う旨が規定され、岐阜市教育委員会事務委任規則第1条では、   教育委員会の権限を教育長に委任する旨が規定されている。さらに、岐阜市教育委員   会事務決裁規則第4条第2項の規定により、岐阜市事務決裁規則別表第1における行   政財産の目的外使用許可の例により市民体育課長の専決事項とされている。    しかしながら、学校等の体育施設の使用承認について、市民体育課長の決裁を受け   ていなかった。 (2)ア 岐阜市教育委員会に対する事務委任規則では、市長は教育委員会の所管に属す     る公の施設の使用料及び行政財産の目的外使用に係る使用料の減免について、教     育委員会に権限を委任する旨が規定され、岐阜市教育委員会事務委任規則第1条     では、教育委員会の権限を教育長に委任する旨が規定されている。      しかしながら、敷地占用料の免除の決裁について、教育長の決裁を受けていな     いものがあった。    イ 上述アのとおり、教育委員会の所管に属する公の施設の使用料の減免について、     教育長にその権限が委任され、さらに、公民館使用料の減免の一部については、     岐阜市教育委員会事務決裁規則第9条第1項第4号において、社会教育課長の専     決事項とされている。      しかしながら、公民館使用料の免除の決裁について、教育長の決裁又は専決者     である社会教育課長の決裁を受けていなかった。    今後は、岐阜市教育委員会事務委任規則及び岐阜市教育委員会事務決裁規則を遵守   し、適正な事務執行に努められたい。 2 適正な財務会計事務の執行について (1)岐阜市会計規則第15条第2項では、別表に掲げる職にあるものは、その在任期間   中現金出納員に任命されたものとされ、同条第4項では、別表に掲げる部署に勤務す   る職員のうちからその部署の長が現金取扱員を指定する旨が規定されている。    しかしながら、現金出納員に任命されていない部署の長がその部署の職員を現金取   扱員に指定し、公文書複写代に係る現金の出納及び保管の事務を処理させていた。 (2)岐阜市予算規則第13条第1項では、「使用料及び賃借料」、「負担金、補助及び   交付金」について支出負担行為として整理する時期は、使用料及び賃借料においては   「契約を締結するとき」、負担金、補助及び交付金においては「指令をするとき」とそ   れぞれ規定されている。    しかしながら、岐阜市立中央図書館展示用新聞記事に係る権利等使用料の契約につ   いて、平成27年8月20日に締結されているにもかかわらず、平成27年11月1   7日に至るまで支出負担行為書が起案されていなかった。    また、平成27年度岐阜市立特別支援学校生徒指導対策行動費補助金について、平   成27年4月22日に指令が発出されているにもかかわらず、平成27年12月3日   に至るまで支出負担行為書が起案されていなかった。    昨年度の定期監査においても、補助金についての支出負担行為書の起案遅れを指摘   したところである。    今後は、岐阜市会計規則及び岐阜市予算規則を遵守し、より一層適正な財務会計事   務の執行に努められたい。 3 交通事故の防止について   平成26年12月から平成27年11月までの間に、公用自動車による事故が4件発  生した。   職員の交通事故防止について、一層の指導徹底を図られたい。            ───────────────────  監査の種類   定期監査及び行政監査  監査の対象   子ども未来部          (平成27年度4月~11月分 必要に応じて平成26年度分)  監査の期間   平成27年12月28日~平成28年2月19日  証拠書類の一部を抽出して、関係諸帳簿と照合したところ、おおむね適正に処理されて いるものと認められた。しかしながら、次のような事項が見受けられたので、改善に努め られたい。  なお、軽微な事項については、別途指示した。 [指摘事項] 1 適正な事務執行について   岐阜市ドリームシアター岐阜条例第4条の4第1項において、「使用料の徴収及び減  免に関する業務」は指定管理者が行う業務とされている。また、同条例第6条において  「指定管理者は、市長が公益上その他特別の理由があると認める場合は、使用料を減免  することができる。」と規定されており、岐阜市ドリームシアター岐阜条例施行規則第  8条第1項各号において、使用料を減免する場合とその減免割合が規定されている。   しかしながら、岐阜市ドリームシアター岐阜条例施行規則第8条第1項各号に定めら
     れていないものについて、市長に協議することなく、指定管理者の判断により使用料が  免除されていた。   今後は、指定管理者に対して、岐阜市ドリームシアター岐阜条例及び岐阜市ドリーム  シアター岐阜条例施行規則を遵守し、適正な事務執行に努めるよう指導されたい。 2 未収金の回収について   母子父子寡婦福祉資金貸付金の収入未済額は、平成26年度末で99,032,44  9円であり、平成27年11月末現在では、過年度未収金が93,024,329円で  ある。   また、育英資金貸付金の収入未済額は、平成26年度末で33,091,260円で  あり、平成27年11月末現在では、過年度未収金が30,818,010円である。   今後とも、未収金の早期回収に努めることはもとより、現年度分についても、滞納繰  越が生じないように努力されたい。            ───────────────────  監査の種類   定期監査及び行政監査  監査の対象   福祉部          (平成27年度4月~11月分 必要に応じて平成26年度分)  監査の期間   平成27年12月28日~平成28年2月19日  証拠書類の一部を抽出して、関係諸帳簿と照合したところ、おおむね適正に処理されて いるものと認められた。しかしながら、次のような事項が見受けられたので、改善に努め られたい。  なお、軽微な事項については、別途指示した。 [指摘事項] 1 適正な事務執行について (1)介護保険法施行令第45条の7第1項では、「保険料の収納の事務を私人に委託し   たときは、その旨を告示しなければならない。」とされている。しかしながら、介護   保険料の収納事務を私人に委託しているにもかかわらず、告示をしていなかった。    また、岐阜市会計規則第53条第2項では、「収納の事務を私人に委託したときは、   当該私人に収入事務受託者である旨を証する書類等を交付しなければならない。」と   されている。しかしながら、収入事務受託者に、収入事務受託者証を交付していなか   った。    今後は、介護保険法施行令及び岐阜市会計規則を遵守し、適正な事務執行に努めら   れたい。 (2)岐阜市事務決裁規則別表第2では、介護保険料の減免については部長の専決事項と   されている。    しかしながら、介護保険料の減免の決裁について、専決者である部長の決裁を受け   ていなかった。    今後は、岐阜市事務決裁規則を遵守し、適正な事務執行に努められたい。 2 未収金の回収について   介護保険料の収入未済額は、平成26年度末で202,189,860円である。平  成27年11月末現在では、滞納繰越分にかかる収入未済額が190,584,230  円である。   後期高齢者医療保険料の収入未済額は、平成26年度末で46,577,400円で  ある。平成27年11月末現在では、滞納繰越分にかかる収入未済額が37,629,  900円である。   今後とも、滞納繰越分の早期回収に努めることはもとより、現年賦課分の回収につい  ても、滞納繰越が生じないように努力されたい。 3 交通事故の防止について   平成26年12月から平成27年11月までの間に、公用自動車による事故が7件発  生した。   職員の交通事故防止について、一層の指導徹底を図られたい。            ───────────────────             平成27年度 工事監査結果報告書 1 監査の対象   (仮称)岐阜市長良川防災・健康ステーション建設建築主体工事 2 監査の期間   平成27年10月5日から平成28年2月19日まで 3 監査の方法   平成27年度において施工中の工事のうち、建築工事1件を抽出して、工事の計画、  調査、設計、仕様、積算、契約、施工管理、監理(監督)、試験、検査等が適正かつ効  率的に執行されているかについて調査するため、平成28年1月18日に現地で監査を  執行するとともに、関係職員に対して説明を求めた。   なお、工事技術面の調査については、協同組合 総合技術士連合との工事技術調査業  務委託契約に基づき、技術士の派遣を求め、書類調査及び現場施工状況調査を行った。 4 技術士の「総評」「所見」の概要 (1)総評    工事関係書類はよく整理されていた。    提示された書類を検分し、疑問点は関係者に確認し、当工事の計画・調査・設計・   仕様・積算・契約・施工管理・試験検査・監理・監督等の各段階における技術的事項   の実施態様について吟味した。    その結果、適切に施工されていた。 (2)所見   ア 書類調査における所見   (ア)計画について      本工事は、洪水時は水防活動の拠点、平常時には市民の健康づくりの拠点とし     て多くの市民に活用される施設として、建設するものである。   (イ)設計について      基礎杭工法、建物仕上げ材について工法比較・選定がなされていた。   (ウ)積算について     a 積算とその基準       公共建築工事積算基準によっていた。設計数量の積算は委託設計事務所の算      出した数量を、市の担当者がチェックし、その妥当性を評価されているとのこ      とであった。     b 単価       最新の刊行物5点を基本とし単価を採用している。
          単価表にない場合は3社以上の見積りをとり、最低価格に低減係数を掛けて      決定しているとのことであった。       主要工事について重点的にチェックした結果、問題となる点は見当たらなか      ったので、全体として適切な積算方法と内容であると判断した。   (エ)契約について     a 入札の経緯       一般競争入札を実施している。2企業体の応札があった。     b 契約書類一式の整備状況       契約に必要な書類(契約書、内訳書、着工届、工程表、現場代理人届、監理      技術者届等)は完備しており、その内容は適正であった。       監理業務は、指名競争入札により設計者である(株)デザインボックスに委      託していた。     c 諸届けと保険類       諸届けや保険関係書類が整備されていた。   (オ)施工管理について     a 施工計画書       施工計画は総合施工計画を始め、杭工事、土工事、鉄筋工事、型枠工事、コ      ンクリート工事、鉄骨工事等の施工計画書が整理されていた。       時間的な関係から、全ての計画書を細部まで目を通すことはできなかったが、      全体的に目次、ページもあり、分かりやすく良い施工計画書であった。     b 工事記録(日報、議事録、記録写真)       工事記録(日報、週報)、工事写真、納品伝票等が整理されていた。   (カ)使用材料及び試験検査について     a 使用材料       使用材料の品質保証確認は定例の打ち合わせ時にサンプル等で確認されてい      るとのことであった。     b 試験検査       コンクリート強度試験やまだ固まらないコンクリートの諸試験、検査にも立      会っているとのことであった。   (キ)監督員記録の整備状況      監理・監督は委託先の監督員と市担当者ほかにより実施されており評価できる。      工事監理に際しての定例会議は毎週実施され、指示・報告・承認はこの会議で     実施されていた。   イ 現場施工状況調査による所見   (ア)工事施工状況について     a 整理整頓       工事は仕上げ工事の途中であったが、現場はよく整理されていた。     b 出来栄え       コンクリートの打設面はジャンカ等が少なく、コンクリート打設時の監理が      徹底されていたと思われる。     c 標識掲示       施工体制、管理者等の標識掲示は整備されていた。   (イ)安全管理について      工事は安全に進行しているように見受けられた。   (ウ)工程について      建築工事の進捗状況は12月末時点では63.3%とのことであり、計画通り     に進行していた。 5 監査の結果   現地監査並びに技術士の総評及び所見を踏まえ、監査を実施した結果、対象とした工  事は、適正に執行されているものと認められた。 対象とした工事の概要 (1)工事名   (仮称)岐阜市長良川防災・健康ステーション建設建築主体工事 (2)工事場所  岐阜市早田地内 (3)工事内容    平成25年度に国が盛土造成した敷地における建築一式工事   ・(仮称)岐阜市長良川防災・健康ステーション             鉄骨造 2階建て 延1,167.03m2   ・自転車置場    鉄骨造 平屋建て 延   15.22m2 (4)設計委託  株式会社デザインボックス (5)工事監理  株式会社デザインボックス (6)工事費   請負金額 251,100,000円(消費税及び地方消費税を含む。) (7)入  札  平成27年5月15日          一般競争入札(総合評価落札方式 簡易型)          (入札参加数 2者、入札回数 1回) (8)工  期  平成27年6月29日~平成28年2月29日 (9)受注者   市川・東特定建設工事共同企業体          現場代理人:寺澤 雄輔 (資格:二級建築施工管理技士)          監理技術者:澤田 敦  (資格:一級建築施工管理技士) (10)工事進捗率 計画出来高74% 実施出来高73%          (平成28年1月18日現在) (11)工事監督員 総括監督職員 まちづくり推進部公共建築課建築3係長  今薗 司          一般監督職員 まちづくり推進部公共建築課建築3係主査 岩田 信吾            ───────────────────                  平成27年度               岐阜市包括外部監査報告書
                    平成28年2月                岐阜市包括外部監査人                弁護士 芝  英 則                  目   次 序章……………………………………………………………………………………………… 1  第1 包括外部監査の概要………………………………………………………………… 1   1 外部監査の種類……………………………………………………………………… 1   2 選定した特定の事件………………………………………………………………… 1   3 事件を選定した理由………………………………………………………………… 1   4 包括外部監査の方法………………………………………………………………… 3   5 外部監査の期間……………………………………………………………………… 5   6 外部監査人及び外部監査人補助者………………………………………………… 5   7 利害関係……………………………………………………………………………… 6  第2 報告書の構成………………………………………………………………………… 6   1 全体の構成…………………………………………………………………………… 6   2 個別の構成…………………………………………………………………………… 7   3 巻末資料……………………………………………………………………………… 8 第1章 生活保護制度の概要………………………………………………………………… 9  第1 はじめに……………………………………………………………………………… 9  第2 制度の目的、基本原理及び基本原則……………………………………………… 9   1 制度の目的-最低限度の生活保障と自立の助長………………………………… 9   2 制度の基本原理……………………………………………………………………… 9   3 制度の原則……………………………………………………………………………11  第3 生活保護の種類と範囲………………………………………………………………12   1 保護の種類……………………………………………………………………………12   2 保護の範囲……………………………………………………………………………13   3 保護費支給の具体例(岐阜市)……………………………………………………14  第4 被保護者の権利と義務………………………………………………………………15   1 はじめに………………………………………………………………………………15   2 被保護者の権利………………………………………………………………………15   3 被保護者の義務………………………………………………………………………15  第5 扶養義務者の義務……………………………………………………………………16  第6 生活保護制度の仕組…………………………………………………………………16  第7 検査・監査制度………………………………………………………………………17   1 会計検査院の検査……………………………………………………………………17   2 厚生労働省の施行事務監査…………………………………………………………17   3 県の施行事務監査……………………………………………………………………18  第8 生活保護法の改正……………………………………………………………………18   1 はじめに………………………………………………………………………………18   2 主な改正点……………………………………………………………………………19   3 最後に…………………………………………………………………………………20 第2章 岐阜市の生活保護の現状……………………………………………………………21  第1 はじめに………………………………………………………………………………21  第2 岐阜市の生活保護受給者の現状……………………………………………………21   1 岐阜市の被保護世帯、被保護人員、管内人口、保護率…………………………21   2 岐阜市の世帯類型別被保護世帯数及び割合………………………………………22   3 岐阜市の保護申請件数、開始(世帯、人員)、廃止(世帯、人員)の   件数…………………………………………………………………………………………24   4 岐阜市の保護開始の理由、世帯類型別世帯数……………………………………25   5 岐阜市の保護廃止の理由、世帯類型別世帯数……………………………………26  第3 岐阜市の生活保護事務の現状………………………………………………………27   1 はじめに………………………………………………………………………………27   2 実施体制………………………………………………………………………………27   3 保護費、保護施設事務費及び委託事務費、就労自立給付金の推移……………32   4 事務にかかる根拠規定………………………………………………………………34   5 生活保護施設…………………………………………………………………………36 第3章 岐阜市の生活保護事務の概要………………………………………………………37 第4章 相談から保護開始決定・通知に至るまでの事務…………………………………40  第1 事務の流れ……………………………………………………………………………40  第2 要保護者発見・把握のための備え(体制)………………………………………40   1 概要……………………………………………………………………………………40   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………41   3 住民に対する生活保護制度の周知…………………………………………………41  第3 相談(面接)…………………………………………………………………………42   1 事務の概要……………………………………………………………………………42   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………42   3 申請資料の教示………………………………………………………………………43   4 面接記録票の記載状況………………………………………………………………43   5 申請意思の確認………………………………………………………………………44   6 申請に至らなかった面接記録票の整理……………………………………………45   7 面接記録票の承認の改善……………………………………………………………45   8 面接の効率化の実施…………………………………………………………………46   9 面接相談室……………………………………………………………………………47   10 面接段階での個人情報利用…………………………………………………………47   11 面接事務の質の確保…………………………………………………………………50  第4 相談(柳津分室)……………………………………………………………………51   1 事務の概要……………………………………………………………………………51   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………51   3 柳津分室の事務分担に関する根拠規定……………………………………………52   4 生活福祉一課・二課との連携体制…………………………………………………52   5 「申請に必要なもの」と題する書類………………………………………………53  第5 申請……………………………………………………………………………………54   1 事務の概要……………………………………………………………………………54   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………54   3 生活保護申請書その他の提出書類の代筆…………………………………………55   4 資産としての敷金返還請求権………………………………………………………55  第6 訪問調査………………………………………………………………………………56   1 事務の概要……………………………………………………………………………56   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………56   3 申請後1週間以内の訪問調査の実施………………………………………………56  第7 資産及び収入の調査…………………………………………………………………57
      1 事務の概要……………………………………………………………………………57   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………58   3 資産処分の確認………………………………………………………………………58  第8 扶養義務調査…………………………………………………………………………59   1 事務の概要……………………………………………………………………………59   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………61   3 重点的扶養能力調査対象者に対する調査…………………………………………61   4 扶養照会の発送時期…………………………………………………………………62   5 仕送りの収入認定……………………………………………………………………62  第9 扶養義務者に対する通知……………………………………………………………63   1 事務の概要……………………………………………………………………………63   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………63   3 生活保護法第24条第8項の通知を行うか否かの判断……………………………63  第10 要否判定・援助方針の策定…………………………………………………………64   1 事務の概要……………………………………………………………………………64   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………65   3 ケース診断会議の記録化……………………………………………………………65   4 保護台帳兼世帯名簿の様式…………………………………………………………66   5 援助方針についての記載……………………………………………………………66   6 ケース格付基準の策定………………………………………………………………66  第11 保護の決定・通知……………………………………………………………………68   1 事務の概要……………………………………………………………………………68   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………69   3 申請から原則14日以内の決定通知…………………………………………………69   4 決定通知書の理由明示………………………………………………………………70   5 保護決定通知書写しの記録への添付………………………………………………71   6 保護決定通知書の作成日付…………………………………………………………72   7 決定の通知方法………………………………………………………………………72  第12 申請の取下げ…………………………………………………………………………73   1 概要……………………………………………………………………………………73   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………73   3 取下げ意思能力………………………………………………………………………73   4 取下げの任意性………………………………………………………………………74   5 ケース診断会議の開催………………………………………………………………75  第13 申請の却下……………………………………………………………………………75   1 概要……………………………………………………………………………………75   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………75   3 ケース診断会議の記録方法…………………………………………………………76 第5章 地区担当現業員の事務………………………………………………………………77  第1 事務の概要……………………………………………………………………………77  第2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………78   1 書類監査………………………………………………………………………………78   2 ヒアリング……………………………………………………………………………79   3 訪問調査………………………………………………………………………………79   4 ケース診断会議(処遇判定会議)…………………………………………………79  第3 ケース処遇(援助方針)……………………………………………………………80   1 はじめに………………………………………………………………………………80   2 援助方針やケース格付の変更………………………………………………………80   3 市外の施設入所者についてのケース格付…………………………………………80  第4 訪問調査活動…………………………………………………………………………81   1 訪問調査活動の概要…………………………………………………………………81   2 訪問調査の実施状況…………………………………………………………………84  第5 実態把握(訪問調査以外の調査)…………………………………………………87   1 はじめに………………………………………………………………………………87   2 資産の実態把握………………………………………………………………………87  第6 自立支援………………………………………………………………………………95   1 自立の意義……………………………………………………………………………95   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………97   3 就労自立支援…………………………………………………………………………97   4 日常生活自立支援……………………………………………………………………98   5 社会生活自立支援……………………………………………………………………98   6 自立助長のための相談及び助言……………………………………………………99  第7 助言指導・指導指示…………………………………………………………………99   1 概要……………………………………………………………………………………99   2 保健指導………………………………………………………………………………101   3 文書指導………………………………………………………………………………101   4 停止期間中の指導……………………………………………………………………103  第8 ケース記録……………………………………………………………………………103   1 ケース記録の記載内容………………………………………………………………103   2 ケース記録の記載時期………………………………………………………………104   3 ケース記録に綴じる書類……………………………………………………………105   4 ケース記録の綴じ方…………………………………………………………………106  第9 引継……………………………………………………………………………………106   1 新規担当現業員から地区担当現業員の引継………………………………………106   2 地区担当現業員から地区担当現業員の引継………………………………………107 第6章 就労自立に向けた事務………………………………………………………………109  第1 事務の概要……………………………………………………………………………109   1 はじめに………………………………………………………………………………109   2 主な指針………………………………………………………………………………110   3 本章の構成……………………………………………………………………………111  第2 就労可能対象者の判断と分類………………………………………………………111   1 就労可能対象者の判断………………………………………………………………111   2 就労可能対象者の分類………………………………………………………………114  第3 就労自立支援プログラムを利用する就労可能者に対する事務…………………115   1 制度の概要……………………………………………………………………………115   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………115   3 就労支援プログラム…………………………………………………………………115   4 生活再生雇用事業……………………………………………………………………117   5 キャリアカウンセリング事業………………………………………………………118   6 就労体験事業(農業体験)…………………………………………………………120  第4 就労自立支援プログラムを利用しない就労可能対象者に対する事務  …………………………………………………………………………………………………122   1 事務の概要……………………………………………………………………………122   2 自立活動確認書の未作成……………………………………………………………123   3 就労活動促進費………………………………………………………………………124   4 求職活動状況・収入申告書の提出状況……………………………………………125   5 収入申告書、求職活動状況・収入申告書の保管状況……………………………125   6 就労・求職状況管理台帳の作成状況………………………………………………126
     第5 就労自立の事務全般…………………………………………………………………126   1 就労指導の実施………………………………………………………………………126   2 就労自立全般に関する事務マニュアル……………………………………………128  第6 就労自立給付金………………………………………………………………………128   1 概要……………………………………………………………………………………128   2 岐阜市の就労自立給付金支給状況…………………………………………………130   3 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………130   4 就労自立給付金の周知………………………………………………………………130   5 就労自立給付金の申請………………………………………………………………131   6 就労自立給付金の算定………………………………………………………………132 第7章 保護費…………………………………………………………………………………135  第1 概要……………………………………………………………………………………135  第2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………135  第3 保護費の支給手続……………………………………………………………………136   1 概要……………………………………………………………………………………136   2 書類の控え……………………………………………………………………………138   3 小口現金の取扱い……………………………………………………………………139  第4 医療扶助………………………………………………………………………………140   1 概要……………………………………………………………………………………140   2 運営体制………………………………………………………………………………141   3 医療扶助審議会の未開催……………………………………………………………141   4 嘱託医の勤務状況……………………………………………………………………142   5 タクシー券の交付及び管理状況……………………………………………………145   6 タクシー会社との契約………………………………………………………………151  第5 医療扶助の適正な実施………………………………………………………………156   1 概要……………………………………………………………………………………156   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………156   3 長期入院………………………………………………………………………………156   4 頻回受診………………………………………………………………………………159   5 向精神薬の重複処方…………………………………………………………………162   6 後発医薬品の使用促進………………………………………………………………164   7 総括……………………………………………………………………………………165  第6 レセプト点検等業務委託契約………………………………………………………165   1 事務手続の概要………………………………………………………………………165   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………167   3 設計金額………………………………………………………………………………167   4 予定価格………………………………………………………………………………168   5 単価契約の「契約締結伺」の事務決裁……………………………………………169   6 少額による随意契約と単価契約との関係性………………………………………170   7 複数単価契約における契約者の選定方法…………………………………………171   8 契約方法………………………………………………………………………………173   9 仕様書…………………………………………………………………………………174   10 業務処理状況の調査…………………………………………………………………176   11 契約の履行確認………………………………………………………………………177  第7 葬祭扶助と遺留金品…………………………………………………………………178   1 制度の概要……………………………………………………………………………178   2 岐阜市の葬祭扶助の現状……………………………………………………………180   3 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………181   4 現状保管されている遺留金品への対応……………………………………………181   5 今後の遺留金品に関する事務対応…………………………………………………184 第8章 保護の停止及び廃止…………………………………………………………………188  第1 概要……………………………………………………………………………………188   1 はじめに………………………………………………………………………………188   2 事務手続の流れ………………………………………………………………………189  第2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………189  第3 岐阜市の現状…………………………………………………………………………190   1 保護の廃止……………………………………………………………………………190   2 保護の停止……………………………………………………………………………191  第4 保護の停止及び廃止の決定…………………………………………………………191   1 文書指導………………………………………………………………………………191   2 決定時のケース診断会議……………………………………………………………192   3 決裁手続………………………………………………………………………………193   4 辞退……………………………………………………………………………………194   5 保護停止決定通知書・保護廃止決定通知書の様式・記載………………………195   6 停止期間中の管理……………………………………………………………………195  第5 免除……………………………………………………………………………………196   1 はじめに………………………………………………………………………………196   2 免除の判断……………………………………………………………………………197  第6 ケース記録の管理・保存……………………………………………………………199   1 ケース記録の管理……………………………………………………………………199   2 ケース記録の保存期間………………………………………………………………199 第9章 費用返還及び徴収……………………………………………………………………201  第1 法第63条の費用返還と法第78条の費用徴収………………………………………201   1 両制度の内容及び相違点……………………………………………………………201   2 主な手続の流れ………………………………………………………………………203   3 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………203   4 法第63条の決定理由…………………………………………………………………204   5 資力発生時点から決定通知までの期間……………………………………………205   6 資産処分と法第63条…………………………………………………………………206   7 保護廃止と法第63条…………………………………………………………………207   8 法第78条の決定理由…………………………………………………………………208   9 法第78条の適用判断…………………………………………………………………209   10 資力の認定……………………………………………………………………………211   11 決定手続………………………………………………………………………………212   12 一括返済と分割返済…………………………………………………………………213   13 納付方法………………………………………………………………………………217   14 被保護者死亡後の対応………………………………………………………………218   15 債権管理………………………………………………………………………………219   16 不正受給対策…………………………………………………………………………220  第2 法第77条第1項の徴収………………………………………………………………222   1 制度内容………………………………………………………………………………222   2 調査結果の活用………………………………………………………………………222   3 扶養義務者への資産の移動…………………………………………………………223   4 手続規程の整備………………………………………………………………………224 第10章 施設……………………………………………………………………………………225  第1 保護施設………………………………………………………………………………225
      1 概要……………………………………………………………………………………225   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………225   3 岐阜市の生活保護施設の現状………………………………………………………226  第2 無料低額宿泊所………………………………………………………………………227   1 概要……………………………………………………………………………………227   2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………228   3 前提事実-岐阜市内に無料低額宿泊所が存在すること…………………………228   4 無料低額宿泊所にかかる分掌事務…………………………………………………229   5 事業開始届出時の資料………………………………………………………………229   6 暴力団排除条項………………………………………………………………………231   7 調査実施状況…………………………………………………………………………232   8 義務履行状況の確認…………………………………………………………………235   9 民生委員の関与………………………………………………………………………237 第11章 不服申立て……………………………………………………………………………238  第1 概要……………………………………………………………………………………238   1 制度……………………………………………………………………………………238   2 事務手続の流れ………………………………………………………………………238  第2 監査の観点及び監査手続……………………………………………………………239  第3 不服申立ての教示……………………………………………………………………240   1 教示の確認……………………………………………………………………………240   2 様式の整備……………………………………………………………………………241   3 教示誤りの回避策……………………………………………………………………241  第4 不服申立ての情報共有………………………………………………………………242   1 情報把握の現状………………………………………………………………………242   2 業務改善に向けて……………………………………………………………………243 第12章 査察指導員の事務……………………………………………………………………244  第1 査察指導員について横断的に検討する意義………………………………………244  第2 査察指導員の事務……………………………………………………………………244   1 事務の概要……………………………………………………………………………244   2 査察指導員の業務マニュアル………………………………………………………246   3 現業員に対する査察指導機能………………………………………………………246 第13章 ケース診断会議………………………………………………………………………251  第1 ケース診断会議を単独の章で取り上げる意義……………………………………251  第2 岐阜市のケース診断会議の現状……………………………………………………251   1 岐阜市が開催を必要としているもの………………………………………………251   2 岐阜市の実施状況……………………………………………………………………251   3 ケース診断会議の未開催……………………………………………………………252   4 ケース診断会議の記録化・根拠資料………………………………………………253   5 ケース診断会議の積極的な開催……………………………………………………254   6 開催要綱の不存在……………………………………………………………………255 終章………………………………………………………………………………………………256  第1 監査を終えての所感…………………………………………………………………256  第2 現状の課題……………………………………………………………………………256  第3 提言……………………………………………………………………………………256   1 組織的な対応体制の確立……………………………………………………………256   2 職員の適切な配置……………………………………………………………………258   3 提言の意味……………………………………………………………………………259  第4 最後に…………………………………………………………………………………259 巻末資料…………………………………………………………………………………………260  指摘及び意見一覧表…………………………………………………………………………260  平成27年度 包括外部監査の日程…………………………………………………………290  各種様式………………………………………………………………………………………294 序章 第1 包括外部監査の概要 1 外部監査の種類  地方自治法第252条の37第1項に基づく包括外部監査 2 選定した特定の事件 (1)外部監査のテーマ  岐阜市の生活保護 (2)外部監査の対象期間  原則として、平成26年度。ただし、必要に応じて他年度。 3 事件を選定した理由 (1)岐阜市の生活保護の現状 1)生活保護費の金額  岐阜市の生活保護費は、平成26年度決算で合計116億1,786万8,651円で ある。生活保護事務は、国からの法定受託事務であり、生活保護費については、 4分の3が国庫負担金で賄われるとはいえ、岐阜市単独の支出としても多額で ある。岐阜市の財政に占める割合は少なくない。外部監査は、財務に関する事 務の執行を対象とするものであるところ、金額の点からみて、岐阜市の生活保 護事務を選定することに意味があると考えた。 2)被保護世帯数及び被保護人員数  平成27年3月31日現在、岐阜市における被保護世帯数は5,178世帯、被保 護人員は6,493人である(岐阜市提供資料による)。同日現在の岐阜市管内の 世帯数は、17万4,490世帯、管内人口は41万4,382人であることからすれば、 世帯数でみると100世帯中約3世帯が、人数でみると1,000人中約15.67人が 生活保護を受給していることになる。  外部監査は、岐阜市民に対する影響という観点も重要であるところ、被保護 世帯及び被保護人員数の点からみても、岐阜市の生活保護事務を選定すること に意味があると考えた。 3)岐阜市の生活保護患者の向精神薬多剤処方の割合が高いという結果が出た こと  岐阜市の生活保護費116億1,786万8,651円中、55億8,592万5,819円(平 成26年度決算)を医療扶助費が占めている。生活扶助は8種類あるが、医療 扶助費の金額が最も高く、全体の半分近くを占める。  ところで、医療扶助に関連することであるが、平成26年11月に、プレスリ リースされた一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究
    機構の研究成果報告によれば、生活保護患者の向精神薬多剤処方(3剤以上同 時に処方)割合は、岐阜市は兵庫県西宮市に次いで、全国で2番目に高いとい う結果であった(主要都市107地域を対象として実施)。同報告によれば、人 口あたりの生活保護受給者数が多い地域、精神病床を有する病院が少ない地域 が、割合の高くなる可能性が指摘されており、この割合の高さのみをもって、 岐阜市の生活保護事務に問題があると評価することは決してできない。しかし ながら、この報道に触れたことは、監査テーマ選定の一つの契機となった。  医療扶助費の保護費全体に占める割合や金額の大きさからみても、特に、岐 阜市の医療扶助事務について検証することには意味があると考えた。 (2)岐阜市民の関心  格差の問題がクローズアップされる時代であり、格差をテーマにした著書の 売れ行きも好調のようである。厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、相 対的貧困率(国民を所得順に並べて中央値の所得の半分に満たない世帯の割合) は16.1%という結果が出ており、かかる結果からすれば、実際に生活保護を 受給していなくても貧困に苦しむ市民は多く存在すると思われる。  また、現在は貧困という状態でないとしても、老い、病気、怪我、死別、倒 産、失職など誰でも貧困に陥る可能性はある。自分がならなくても、親や子が なる可能性もある。その場合の「最後のセーフティネット」が生活保護である。 生活保護は市民の誰にとっても全く無縁の問題ではない。  さらに、平成24年4月、有名芸能人の母親の生活保護受給報道があり、生 活保護が社会問題となった。この事案自体を不正受給と評価できるかは別とし て、生活保護費は税金で賄われることから、不正受給に対する市民の目が厳し くなることは当然である。  以上より、岐阜市の生活保護事務の実態は、岐阜市民にとっても関心のある ことであり、選定することに意味があると考えた。 (3)弁護士の特性を活かせるテーマであること  生活保護事務については、憲法第25条の理念に基づく生活保護法を中心と した生活保護法関係法令、厚生労働省の各種通知など、事務執行にあたり規範 となるべき根拠類が多数ある。また、生活保護事務に関しては、申請、停止・ 廃止、費用返還など、事務の執行にあたっては適法性が問題となることが少な くない。  監査人は弁護士であるが、弁護士は、日頃の業務から、事実を踏まえ、法令 等の規範に照らした判断を行っており、生活保護事務は、その性質上、弁護士 の特性を活かせるテーマであると考えた。 (4)平成26年度に生活保護法の改正があったこと  改正生活保護法は、平成26年7月1日に施行された(一部は同年1月1日 施行)。平成26年度は、改正前と改正後、双方に基づく事務執行が行われてい ることになる。岐阜市において、法改正に従って、適切に事務執行ができてい るかを検証できるという意味で、平成26年度を対象とする監査は時宜にかな うものであると考えた。 (5)過去の包括外部監査との関係性  岐阜市は、平成11年度より包括外部監査を実施しているが、これまで生活 保護が正面からテーマとして取り上げられたことは一度もない。したがって、 活用度が高いと考えた。 (6)結語  以上、主に5つの理由から、本年度は、「岐阜市の生活保護」を監査テーマ とした。 4 包括外部監査の方法 (1)外部監査の対象部署  岐阜市の生活保護の財務事務の執行に関与している部署を対象とした。  生活保護事務については、福祉部 福祉事務所 生活福祉一課・二課の所管 であるが、生活保護事務に関与する部署も広く対象とした。  具体的には、以下の部署である。    福祉部 福祉事務所 生活福祉一課・二課        同     柳津分室    福祉部 福祉政策課    同   指導監査課    行政部 行政課    同   契約課    同   管財課    同   人事課    同   情報政策課    財政部 行財政改革課    市民生活部 国保・年金課    子ども未来部 子ども支援課 (2)外部監査の観点  岐阜市の生活保護事務の執行は、適法性、そして、有効性、経済性、効率性 の各観点に照らして適切か。特に適法性の観点に重点を置いた。  それぞれの語句の意味について、以下のとおりである。 ┌───┐ │適法性│ └───┘  法律による行政の原理という言葉があるが、行政は法律等の根拠に従って事 務執行される必要がある。特に、生活保護事務は、国からの法定受託事務であ り、法令等、岐阜市が従うべき根拠類が多数存在する。法令等の根拠に照らし、 岐阜市の生活保護事務が適切に執行されているかを検証した。 ┌───────────┐ │有効性、経済性、効率性│ └───────────┘  外部監査は、地方自治法第2条第14項(住民福祉の増進、最小の経費で最 大の効果)及び第15項(組織及び運営の合理化、規模の適正化)の趣旨を達 成するためになされる(地方自治法第252条の37第1項)。  そこで、岐阜市の生活保護事務の執行が、 ○ 事務・事業の遂行及び予算の執行の結果が、所期の目的を達成しているか、  また、効果を上げているか(「有効性」) ○ より少ない費用で実施できないか(「経済性」)、 ○ 業務の実施に際し、同じ費用でより大きな成果が得られないか、あるいは   費用との対比で最大限の成果を得ているか(「効率性」)、  といった観点からも市の生活保護事務が適切に執行されているかを検証した。 (3)外部監査の手続
     主な手続きは、以下のとおりである。  巻末資料の監査日程においてヒアリング等の詳細をまとめた。 ┌───────┐ │関係資料の収集│ └───────┘  文献等関係資料を収集し、検証した。 ┌──────────────────┐ │関係部署に対するヒアリング・書面照会│ └──────────────────┘  関係部署に対し、事前に書面にてヒアリング依頼をした上で、ヒアリングを 実施した。また、適宜、関係部署に対する書面照会という手法を用いて事実確 認をした。 ┌──────────┐ │提出された書類の閲覧│ └──────────┘  関係部署から必要書類の閲覧を求め、閲覧した。原本があるものは原本を確 認した。 ┌────┐ │現地視察│ └────┘  監査執務は、基本的には、外部監査室で行い、必要に応じて、岐阜市役所南 庁舎1階 生活福祉一課・二課内で行ったが、以下、現地視察も実施した。  「柳津分室、岐阜市内 無料低額宿泊所、方県倉庫、三輪第一書庫」 ┌──────────┐ │ケース診断会議の傍聴│ └──────────┘  保護開始決定段階、保護受給段階の2種類のケース診断会議を傍聴した。 ┌───────┐ │訪問調査の同行│ └───────┘  現業員が実施する被保護者の訪問調査に同行した。 ┌─────────────────────┐ │関係人調査(地方自治法第252条の38第1項) │ └─────────────────────┘  地方自治法第252条の38第1項では、「監査のため必要があると認めるとき は、監査委員と協議して、関係人の出頭を求め、若しくは関係人について調査 し、若しくは、関係人の帳簿、書類その他の記録の提出を求め、又は学識経験 を有する者等から意見を聴くことができる。」とされている。  本監査において、同項に基づき、監査をする必要性があると考えた事務があ り、監査委員との協議を経て、関係人調査を実施した。  具体的には、生活保護法の医療扶助等にかかるレセプト点検業務の受託業者 に対する調査である(第7章 第6)。 ┌───────────────────────┐ │生活活保護に関与する弁護士等に対するヒアリング│ └───────────────────────┘  被保護者側の立場で活動する弁護士やNPO法人の方の話も聞いた。  適切な生活保護事務の執行という目的で活動を行っている点は、岐阜市側と 異ならないはずであり、被保護者側の立場で現場を知る人からお話を聞くこと で、片面的な見方をしないことを心がける契機とした。 5 外部監査の期間  平成27年6月1日~平成28年2月19日 6 外部監査人及び外部監査人補助者  本監査において、監査人は、監査の事務に際し、監査人補助者による補助を 受けている(地方自治法第252条の32第1項)。監査人を含め弁護士が6名、 公認会計士が1名、税理士が2名の合計9名体制である。多角的・専門的視点 からの監査とすべく、補助者はかかる構成とした。  包括外部監査人 芝 英則(弁護士)  同補助者    堀 雅博(弁護士)  同補助者    和田 恵(弁護士)  同補助者    竹中雅史(弁護士)  同補助者    平松卓也(弁護士)  同補助者    渡辺俊介(弁護士)  同補助者    後藤久貴(公認会計士)  同補助者    後藤 聡(税理士)  同補助者    米津覚登(税理士) 7 利害関係  選定した特定の事件につき、地方自治法第252条の29の規定により記載す べき利害関係はない。 第2 報告書の構成 1 全体の構成  序章  第1章 生活保護制度の概要  第2章 岐阜市の生活保護の現状  第3章 岐阜市の生活保護事務の概要  第4章 相談から保護開始決定・通知に至るまでの事務  第5章 地区担当現業員の事務  第6章 就労自立に向けた事務  第7章 保護費  第8章 保護の停止及び廃止  第9章 費用返還及び徴収  第10章 施設  第11章 不服申立て  第12章 査察指導員の事務  第13章 ケース診断会議  終章
     巻末資料1 指摘及び意見一覧表  巻末資料2 監査日程  巻末資料3 各種様式  第1章では、生活保護制度の概要を記載した。生活保護法の目的等であるが、 この点は、本監査を実施し、判断を示すに際しての基礎となる部分である。  第2章では、岐阜市の生活保護の現状を記した。岐阜市の生活保護受給者の 現状と岐阜市の生活保護事務の現状を、データを用いて紹介し、監査における 重点の意識付けとした。  第3章では、岐阜市の生活保護事務の概要を図示した。第4章以下の報告は、 基本的には事務手続の流れに沿っているが、その全体像を「ヒト」「モノ」「流 れ」の3つの角度から示すものである。  以上の第1章から第3章は、第4章以下の報告の導入部分としての位置づけ である。指摘及び意見の記載はしていない。  第4章では、生活保護決定・通知までの事務を、第5章から第11章では、 生活保護決定・通知以降の事務を取り上げている。  第12章では、査察指導員の事務を、第13章では、組織の意思決定の場であ るケース診断会議を単独で取り上げた。いずれも、事務の様々な場面に関わる ものであるが、全体像を最後にまとめた。  このように、本監査においては、岐阜市の生活保護事務の「入口」から「出 口」までを網羅的に取り上げ、監査している。  監査をする過程で、問題点があると考えた項目は掘り下げをした。  また、本監査においては、「なぜそこを監査するのか」という必要性、そし て、「なぜその判断をするのか」といった説得性を意識して、監査を実施した。  本報告は、記載においても必要性を意識するとともに、監査人の思考及び監 査過程をできる限り、明確に表現することを心掛けた。  終章では、課題を踏まえた監査人の提言を述べた。 2 個別の構成  本報告書では、事務の項目ごとに、概ね次の構成で記載することとした。 ┌──┐ │概要│ └──┘  制度を説明し、事務手続の流れについて図を使うなどして概要を示した。  ↓ ┌───────────┐ │監査の観点及び監査手続│ └───────────┘  当該項目において意識した監査の観点と実際に実施した監査手続を記載し た。  ↓ ┌───────────────┐ │事実関係の適示(【事実関係】)│ └───────────────┘  事務ごとに、監査にて把握した【事実関係】を明記した。事実関係は、判断 の前提となるものであることから、認定根拠を意識し、正確性を心がけた。  ↓ ┌───────────────────────┐ │適用が問題となる法律等根拠類の適示(【規範】)│ └───────────────────────┘  判断の前提として、その事務について適用となる根拠類をできる限り明示す ることとした。生活保護事務については、法律、施行令、各種通知、条例など 根拠類が多岐にわたることから、表現としては【規範】(よって立つべき基準 の意味)とした。  ↓ ┌─────────────┐ │判断(【指摘】と【意見】)│ └─────────────┘ 【指摘】及び【意見】の意義は次のとおりである。 ┌────┬──────┬─────────────────────────┐ │ 指摘 │べきである │違法又は不当であり、是正・改善を求めるもの    │ ├────┼──────┼─────────────────────────┤ │ 意見 │のぞましい │違法又は不当ではないが、是正・改善を求めるもの  │ └────┴──────┴─────────────────────────┘  【指摘】、【意見】の記載について説明をする。  まず、昨年度の監査報告に引き続き、対象課を明示した。  また、【規範】に反しているものは、【指摘】方向という考え方を用いている。  【指摘】、【意見】の結論は、簡潔にすることを心掛けたが、結論に至る過程 については、できる限り具体的に記載した。併せて、できる限り、積極的かつ 具体的な改善策も提案した。  以上の記載は、【指摘】や【意見】については、岐阜市が具体的に検討する 契機になるものでなければならないという意識が監査人に強くあることによ る。  なお、本監査は、平成26年度の事務執行を対象としているものであるとこ ろ、岐阜市が自主的に、あるいは、監査の過程を踏まえて改善を実施している 場合には、改善報告という形で明記した。 3 巻末資料  検索の便宜から、指摘及び結果一覧表を添付した。指摘と意見部分だけを適 示しても必ずしも意味がとれないと考え、指摘及び意見の欄の一番上にそれぞ れ指摘及び意見の対象項目を記載した(【 】部分)。  また、本年度は、監査日程の一覧を添付した。どのような監査を実施したの かについて透明化を図る趣旨である。さらに、本報告で引用する様式を一部掲 載した。 第1章 生活保護制度の概要 第1 はじめに  本監査報告にあたり、まず、生活保護制度の概要を述べる。本章の記載部分 は、事務執行の基礎となるべき事項であり、本監査にあたって重要ではある。  ただし、本監査は、あくまで「岐阜市の生活保護事務」を対象とするもので あり、制度の概要は一般論であるので、報告の前提として必要と考える限度の 説明にとどめた。 第2 制度の目的、基本原理及び基本原則 1 制度の目的‐最低限度の生活保障と自立の助長
     日本国憲法25条は、第1項で国民の生存権を、第2項で国の生存権保障義 務を規定する。 ┌──────────────────────────────────┐ │ すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。  │ │2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の│ │向上及び増進に努めなければならない。                │ └──────────────────────────────────┘  日本国憲法第25条を受けて制定された生活保護法第1条は、生活保護制度 の目的を規定する。 ┌──────────────────────────────────┐ │ この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮 │ │するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その│ │最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とす │ │る。                                │ └──────────────────────────────────┘  生活保護法は、憲法第25条の理念に基づき、生活に困窮するすべての国民 に対し、「最低限度の生活を保障すること」及び「自立を助長すること」の2 点を目的としていることになる。  本監査においては、岐阜市の生活保護事務の執行が、生活保護法の2つの目 的に照らして適切であるかを意識することとなる。 2 制度の基本原理  生活保護法では、生活保護制度を運用するにあたり、4つの基本原理を明記 している(第1条乃至第4条)。法律の解釈及び運用は、すべてこの基本原理 に基づいてなされなければならないとされており(第5条)、その意味で重要 である。 ┌─────────────┐ │国家責任の原理(法第1条)│ └─────────────┘  生活に困窮する者の保護は、国の責任であるという原理である。憲法第25 条の規定から導かれる。かかる責任を担保するものとして、生活保護法第11 章で不服申立て手続が定められている。 ┌──────────────┐ │無差別平等の原理(法第2条)│ └──────────────┘  法の要件を充足する限り、国民は法による保護を無差別平等に受けることが できるという原理である。旧生活保護法(昭和21年9月9日法律第17号)第 2条では、「能力があるにもかかわらす勤労の意思のない者、勤労を怠る者そ の他生計の維持に努めない者」と「素行不良な者」については、保護されない とされていた。現行の生活保護法により、生活保護は国民の権利であり、困窮 に至った原因にかかわらず現在の経済状態で保護を行うものとされた。 ┌─────────────┐ │最低生活の原理(法第3条)│ └─────────────┘  生活保護法で保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持 することができるものではなければならないとする原理である。「健康で文化 的な」という文言があることから、単に生存を保障するということではなく、 人間に値する生活を保障するものである。 ┌────────────┐ │補足性の原理(法第4条)│ └────────────┘  生活保護は、生活に困窮する者がその利用し得る資産、能力その他あらゆる ものをその最低限度の生活のために活用することを要件とし、また、民法に定 める扶養義務者の扶養および他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による 保護に優先して行わなければならないとする原理である。  生活保護が「最後のセーフティネット」と言われるのは、この補足性の原理 による。  岐阜市の生活保護事務の執行においては、重要な原理であり(例えば、開始 決定の際に問題となる)、一般に誤解されがちな部分があると考えるので、以 下、説明を加える。 <資産、能力等の活用> ○ 資産の活用  現金、預貯金、不動産や自動車、保険の解約返戻金などの資産がある場合、 これらの資産を最低生活維持のために活用しなければならない。  具体的には、所有している不動産や自動車があれば、これを売却して売却代 金を生活費に充てるということなどである。ただし、自宅や自動車などの資産 を保有していても保護が認められる場合はある。 ○ 能力の活用  例えば、現実に稼働能力があり、就労可能な職場があるのに働かない者に ついては、補足性の要件を欠くことになろう。働いている場合には、生活保護 を受給できないということではない。収入額が最低生活費に満たなければ、最 低生活費と収入額の差額について生活保護を受けられる可能性がある。 <扶養義務者の扶養>  扶養義務者(例えば親に対する子)の扶養は生活保護に優先するということ である。ただし、この意味は、扶養義務者が高収入であれば、本人が生活保護 を受けられないということではない。例えば、扶養義務を負う子が親に実際に 仕送りをしていればそれを本人の収入として認定するが(生活保護に優先する ということ)、仕送り額が最低生活費に満たない分は、親は生活保護を受給し うることとなる。 <他法他施策活用>  年金、児童手当・児童扶養手当などは「他法」による給付の一例であり、か かる給付が生活保護に優先される。例えば、母子家庭において、児童手当、児 童扶養手当を受給しているが、受給があってもなお最低限度の生活基準に達し ない場合、まず、児童手当、児童扶養手当が優先され、最低限度の生活基準に 満たない額が生活保護費として支給されるということである。 3 制度の原則  生活保護法では、第2章において、制度を具体的に実施する場合の保護の原 則が4つ定められている(第7条から第10条)。 ┌────────────┐ │申請保護の原則(第7条)│
    └────────────┘  本人や扶養義務者、同居の親族の申請に基づいて保護を開始することが原則 である。ただし、申請者がいなくても急迫した状況では、福祉事務所が職権で 保護する旨の規定がある(生活保護法第25条)。  現行の生活保護法においては、生活保護は権利であることから、申請が必要 とされる。いわゆる行政が申請を受け付けないという「水際作戦」が問題とな るのは、この原則に関わる。申請については、第4章にて報告する。 ┌──────────────┐ │基準及び程度の原則(第8条)│ └──────────────┘  保護の実施は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を 基として、そのうちその者の金銭または物品で満たすことのできない不足分を 補う程度において行うという原則である(同第1項)。その基準は、要保護者 の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事 情を考慮した最低限の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これ をこえないものでなければならないとされる(同第2項)。  具体的には、生活保護法による保護の基準(昭和38年4月1日厚生省告示 第158号)に規定がある。  基準額は、別表第9で定められる地域の級地区分により異なるものがあり、 地域の級地区分は、1級地の1~3級地の2まで6段階がある。岐阜市は2級 地の1であり、6段階中上から3段階目に位置づけられる。 ┌────────────┐ │必要即応の原則(第9条)│ └────────────┘  保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必 要の相違を考慮した上で、有効かつ適切に行われるべきとする原則である。  例えば、障害者加算などの加算は、この原則にかかるものである。 ┌────────────┐ │世帯単位の原則(第10条)│ └────────────┘  保護の要否や程度を世帯単位で判定して実施するというのがこの原則であ る。世帯とは、同一の住居に居住し、生計を一にしているものの集まりを指す。 例えば、両親、子2人の4人家族を1世帯として捉えれば、この世帯を単位と して判定実施するということである。ただし、稼働能力がありながら働く努力 をしない者が世帯にいる場合など、世帯分離して、その者を切り離して保護す ることがある。 第3 生活保護の種類と範囲 1 保護の種類  生活保護の種類は、生活保護法第11条第1項1号から8号に規定される次 の8種類である。要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる(同条 第2項)。 一 生活扶助 二 教育扶助 三 住宅扶助 四 医療扶助 五 介護扶助 六 出産扶助 七 生業扶助 八 葬祭扶助 2 保護の範囲  各扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持できない者に対して行われる もので、生活保護法第12条から第18条によると下表の範囲内で行われる。 ┌──────┬───────────────────────────────┐ │  種類  │             保護の範囲             │ ├──────┼───────────────────────────────┤ │生活扶助  │一 衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの     │ │(法第12条)│二 移送                           │ ├──────┼───────────────────────────────┤ │教育扶助  │一 義務教育に伴って必要な教科書その他の学用品        │ │(法第13条)│二 義務教育に伴って必要な通学用品              │ │      │三 学校給食その他義務教育に伴って必要なもの         │ ├──────┼───────────────────────────────┤ │住宅扶助  │一 住居                           │ │(法第14条)│二 補修その他住宅の維持のために必要なもの          │ ├──────┼───────────────────────────────┤ │医療扶助  │一 診療                           │ │(法第15条)│二 薬剤又は治療材料                     │ │      │三 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術        │ │      │四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護│ │      │五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護 │ │      │六 移送                           │ ├──────┼───────────────────────────────┤ │介護扶助  │一 居宅介護                         │ │(法第15条 │二 福祉用具                         │ │の2)   │三 住宅改修                         │ │      │四 施設介護                         │ │      │五 介護予防                         │ │      │六 介護予防福祉用具                     │ │      │七 介護予防住宅改修                     │ │      │八 介護予防・日常生活支援                  │ │      │九 移送                           │ ├──────┼───────────────────────────────┤ │出産扶助  │一 分べんの介助                       │ │(法第16条)│二 分べん前及び分べん後の処置                │ │      │三 脱脂綿、ガーゼその他の衛生材料              │ ├──────┼───────────────────────────────┤ │生業扶助  │一 生業に必要な資金、器具又は資料              │ │(法第17条)│二 生業に必要な技能の修得                  │ │      │三 就労のために必要なもの                  │ ├──────┼───────────────────────────────┤ │葬祭扶助  │一 検案                           │ │(法第18条第│二 死体の運搬                        │
    │1項)   │三 火葬又は埋葬                       │ │      │四 納骨その他葬祭のために必要なもの             │ └──────┴───────────────────────────────┘ 3 保護費支給の具体例(岐阜市)  最低生活費の計算方法は次のとおりである(一例)。  岐阜市内に居住する保護世帯については、平成26年4月現在、次のとおり の生活保護費の支給が考えられる。世帯のモデル自体は、保護のてびき平成 26年度版(第一法規)の48頁、68頁、69頁の具体例を参考とし、岐阜市の 支給額を示した。  なお、以下は、就労収入や扶養義務者などの収入充当を全く考慮していない ものであり、世帯の状況によって必ずしも同じとはならないことを念のため述 べる。 【高齢者単身世帯(68歳) 合計10万4,900円】  生活扶助7万2,900円と住宅扶助3万2,000円(岐阜市1人世帯 上限額) 【高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)合計15万0,950円】  生活扶助10万9,350円と住宅扶助4万1,600円(岐阜市2人世帯 上限額) 【夫婦子2人世帯(35歳、30歳、9歳、4歳) 合計23万6,330円】  生活扶助16万5,260円、児童養育加算2万0,000円、教育扶助9,770円、 住宅扶助4万1,600円(岐阜市4人世帯 上限額) 【母子2人世帯(30歳、4歳) 合計17万5,680円】  生活扶助10万2,520円、児童養育加算1万0,000円、母子加算2万1,560 円、住宅扶助4万1,600円 合計20万2,930円 【障害者を含む2人世帯(65歳、25歳(障害者) 合計20万2,930円】  生活扶助11万0,370円、障害者加算2万4,880円、重度障害者加算1万4,180 円、重度障害者家族介護料1万1,900円、住宅扶助4万1,600円(岐阜市2人 世帯 上限額) 第4 被保護者の権利と義務 1 はじめに  生活保護法第10章(法第56条~63条)に、被保護者の権利及び義務が定 められている。生活保護の受給は国民の権利であるが、生活保護費は税金で賄 われており、被保護者には義務がある。義務違反については、指導がなされ、 保護の停止・廃止であるとか、費用徴収といった効果がありうる。  義務違反の効果にかかる部分については、第8章、第9章で報告する。 2 被保護者の権利 ┌──────────────┐ │不利益変更の禁止(法第56条)│ └──────────────┘  被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を不利益に変更さ れることがない。 ┌──────────┐ │公課禁止(法第57条)│ └──────────┘  被保護者は、保護金品を基準として租税その他の公課を課せられることがな い。 ┌──────────┐ │差押禁止(法第58条)│ └──────────┘  被保護者の生活保護費は差し押さえられることがない。 3 被保護者の義務 ┌──────────┐ │譲渡禁止(法第59条)│ └──────────┘  被保護者は、保護又は就労自立給付金を受ける権利を譲り渡すことはできな い。 ┌────────────┐ │生活上の義務(法第60条)│ └────────────┘  被保護者は、常に能力に応じて勤労に励み、自ら健康の保持及び増進に努め、 収入、支出その他の生計の状況を適切に把握するとともに、支出の節約を図り、 その他生活の維持及び向上に努めなければならない。 ┌───────────┐ │届出の義務(法第61条)│ └───────────┘  被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があったとき、又は、 居住地若しくは世帯の構成に異動があったときは、すみやかに、保護の実施機 関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。届出を故意に怠った りすると、不正受給として返還が必要となる場合がある(法第78条)。 ┌──────────────┐ │指示等に従う義務(法第62条)│ └──────────────┘  保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的 達成に必要な指導又は指示をすることができることになっている(法第27条)。 被保護者は、これに従う義務があり、これに従わない場合、実施機関は、保護 の変更、停止又は廃止をすることができる(同第3項)。 ┌────────────┐ │費用返還義務(法第63条)│ └────────────┘  被保護者は、急迫した事情などのため、資力があるにもかかわらず、保護を 受けた場合は、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内の額を返還しなけ ればならない。
    第5 扶養義務者の義務  扶養義務者が十分な扶養能力を有しながら扶養をしなかった場合などには、 その扶養義務者の義務の範囲内で、保護のために要した費用の全部又は一部を 徴収されることがある(法第77条)。  岐阜市の生活保護事務において、同条は、実際に適用された実績がないとの ことである。  この点に関しては、第9章で報告する。 第6 生活保護制度の仕組  生活保護は国の法定受託事務であり、市の生活保護事務執行については、国 及び都道府県の関与がある。  生活保護制度の仕組の概要は、概ね次で示す図のとおりである。  岐阜市が新人職員研修用に作成した岐阜市生活保護事務の手引き(平成26 年7月)の記載を参考に作成した。  国が事務を都道府県に委任する場合と市に委任する場合があり、市に委任す る場合には、さらに、市は、福祉事務所に事務を委任し、福祉事務所は民生委 員との協力において、生活保護事務を執行する。  生活保護法第22条において、民生委員は生活保護事務の執行に協力する立 場にある。 第7 検査・監査制度 1 会計検査院の検査  生活保護事務は国の法定受託事務であり、生活保護費は国庫負担金が4分の 3交付される。そのため、生活保護事務は、会計検査院法(昭和22年4月19 日法律第73号)に基づく会計検査院検査の対象である。平成26年度、岐阜市 において実地検査が実施された。テーマは、年金受給権についてであった。  同法第34条により、会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法 令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又 は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し 及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができるとされてい る。例えば、不正受給に対しては、生活保護法第78条の費用徴収があるが、 自治体が督促をしないまま、5年の時効にかけたにもかかわらず、不納欠損処 理をしていた場合には、自治体に返還措置が講じられる可能性が出てくる。 2 厚生労働省の施行事務監査  生活保護法第23条に基づく監査である。平成26年度、岐阜市において、東 海北陸厚生局の監査が実施された。テーマは、向精神薬の重複処方の改善状況 と人工透析療法に係る自立支援医療の適用状況についてであった。 3 県の施行事務監査  生活保護法第23条に基づく監査である。  市町村長の行う法律の施行に関する事務については、国の法定受託事務とし て、都道府県知事の指定する職員による監査が実施される。「生活保護法施行 事務監査の実施について」(平成12年10月25日社援第2393号厚生省社会・ 擁護局長通知)、「生活保護法施行事務監査実施要綱」に監査に関する規定があ る。  岐阜市では、毎年度、岐阜県による施行事務監査が実施されている。岐阜県 による施行事務監査に際して作成された資料は、岐阜市の生活保護事務の現状 を知ることのできる資料であり、本監査にあたり参考にした。本文中、「岐阜 県施行事務監査資料」としているのはかかる資料を指す。 第8 生活保護法の改正 1 はじめに  平成26年7月1日、改正生活保護法が施行された(一部は平成26年1月1 日施行)。現在の生活保護法は、昭和25年に制定されたものであるが(昭和 25年法律第144号)、制定後、最大の改正である。保護の基本的な考え方は維 持しつつ、今後とも生活保護制度が国民の信頼に応えられるようにすることが 改正の趣旨である。  「生活保護法の一部を改正する法律の施行について」(平成26年1月1日施 行分 平成25年12月25日社援発1225第1号厚生労働省社会・援護局長通知) 及び「生活保護法の一部を改正する法律の施行について」(平成26年4月18 日社援発0418第359号厚生労働省社会・援護局長通知)に改正の趣旨・内容 等が記載されている。  主に、次に示した4点の改正であり、それぞれの概要と岐阜市の状況を述べ る。 ┌───────────────┐ │1)就労による自立の促進    │ │2)健康・生活面等に着目した支援│ │3)不正・不適正受給対策の強化 │ │4)医療扶助の適正化      │ └───────────────┘ 2 主な改正点 1)就労による自立の促進  生活保護法第8章として、就労自立給付金制度が創設された(第55条の4、 5)。保護からの脱却のためのインセンティブを強化し、脱却直後の不安定な 生活から、再度保護に至る事態を防止することを意図する制度である。上限は 単身世帯で10万円、多人数世帯で15万円である  岐阜市では、平成26年10月以降、就労自立給付金の支給がなされている。  第6章にて報告する。 2)健康・生活面等に着目した支援(平成26年1月1日施行)  生活保護法第60条にかかわる部分である(上記第4の3)。改正前の法第 60条においても、能力に応じて勤労に励むこと等を被保護者自身の生活上の 義務として定めていたが、受給者の自立に向けて、自ら、健康の保持及び増進 に努め(自立助長を図る基礎)、また、収入、支出その他生計の状況を適切に 把握することを法第60条に規定し、受給者の責務として位置づけた。  受給者の健康管理を支援する取組みと本人の適切な家計管理を支援するた めの取組がある。例えば、本人の自立支援の観点から必要と判断したものにつ いては、受給者の状況に応じてレシートまたは領収書の保存や家計簿の作成を 求めることも可能となった。 3)不正・不適正受給対策の強化
     生活保護受給の不正事案に対しては、適切な保護の実施や制度への国民の信 頼を確保すべく、次のとおり対策が強化された。 <福祉事務所による調査権限の拡大>  「資産及び収入」に限定されていた調査事項について、就労や求職活動の状 況、健康状態、扶養の状況等が追加された(生活保護法第29条第1項)。そし て、調査対象者に過去に保護を受給していた者を追加した(同項)。また、福 祉事務所が行う官公署等への情報提供の求めに対して回答を義務付けるよう にした(生活保護法第29条第2項 新設)。 <不正受給の罰則の引上げ及び不正受給に係る返還金の上乗せ>  不実の申請等不正受給については、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金 から3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に引き上げられた(生活保護法第 85条第1項)。また、不正受給に係る返還金について100分の40を乗じた金 額を上乗せすることを可能とした(生活保護法第78条第2項)。 <不正受給に係る返還金の保護費からの徴収>  被保護者からの申し出を受け、保護の実施機関が最低限度の生活の維持に支 障がないと認めたときは不正受給にかかる返還金と保護費と調整することを 可能とした(生活保護法第78条の2)。 <扶養義務者に対する報告の求め>  福祉事務所が必要と認めた場合には、その必要な限度で、扶養義務者に対し て報告するよう求め得ることとした(生活保護法第28条第2項)。  岐阜市では、平成27年3月に不正受給防止マニュアルを策定するなどした。  また生活保護法第78条の2に基づき、不正受給に係る返還金と保護費と調 整するようにしている。ただし、徴収金の加算の実績はない。第9章で報告す る。生活保護法第28条第2項の適用が検討された事例があったが、結果的に は適用されなかった。第4章にて報告する。 4)医療扶助の適正化(一部平成26年1月1日施行)  医療機関の不正事案に対しては厳正な対処が必要であることから、指定医療 機関制度の見直し、指定医療機関への指導体制の強化が図られた(平成26年 7月1日施行)。また、医療全体で後発医薬品の使用促進に取り組む中、医療 保険に比べて医療扶助においては、使用割合が低いといった状況から、後発医 薬品の使用促進の規定を制定した(生活保護法第34条第3項 平成26年1月 1日施行)。  岐阜市では、法改正に伴い、後発医薬品の使用促進の取組み等を実施してい る。第7章にて報告する。 3 最後に  岐阜市が法改正に従い適切に事務執行しているかについては、本監査を選定 した一つの理由であり、改正部分をできる限り意識して監査をし、各項目にお いて詳細を触れた。 第2章 岐阜市の生活保護の現状 第1 はじめに  本監査は、岐阜市の生活保護事務の執行を対象とするものである。そこで、 本章においては、岐阜市の生活保護受給者の現状(受給側の立場)及び岐阜市 の生活保護事務の現状(支給側の立場)をそれぞれ明らかにする。数字の面等 から岐阜市の生活保護の特徴を検証し、監査の重点を意識することとした。 第2 岐阜市の生活保護受給者の現状 1 岐阜市の被保護世帯、被保護人員、管内人口、保護率 (1)岐阜市の推移  平成17年度から平成26年度までの直近10年間における岐阜市の被保護世 帯数、被保護人員、管内人口及び保護率の推移については、次のとおりである。  いずれも月平均値である。被保護世帯及び被保護人員については、単位はそ れぞれ「1(世帯あるいは人)」であり、保護率については、「‰(パーミル: 管内人口1,000人あたりに占める被保護者の数)」である。  なお、「第2」で述べる数値は、いずれも、平成27年6月8日、包括外部監 査用として生活福祉一課・二課から提供を受けた資料による(以下、「岐阜市 提供資料」という)。                    単位:1(世帯あるいは人) ┌─────┬────┬────┬────┬────┬────┐ │     │17年度 │18年度 │19年度 │20年度 │21年度 │ ├─────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │被保護世帯│  2,520│  2,633│  2,770│  2,953│  3,597│ ├─────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │被保護人員│  3,165│  3,286│  3,455│  3,654│  4,508│ ├─────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │管内人口 │ 414,018│ 423,279│ 422,979│ 421,995│ 421,264│ ├─────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │ 保護率 │ 7.65‰│ 7.76‰│ 8.17‰│ 8.66‰│ 10.70‰│ └─────┴────┴────┴────┴────┴────┘ ┌─────┬────┬────┬────┬────┬────┐ │     │22年度 │23年度 │24年度 │25年度 │26年度 │ ├─────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │被保護世帯│  4,314│  4,807│  5,053│  5,118│  5,174│ ├─────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │被保護人員│  5,503│  6,132│  6,435│  6,484│  6,496│ ├─────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │管内人口 │ 420,157│ 419,522│ 418,502│ 416,626│ 415,486│ ├─────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │ 保護率 │ 13.10‰│ 14.62‰│ 15.38‰│ 15.56‰│ 15.63‰│ └─────┴────┴────┴────┴────┴────┘                        (岐阜市提供資料) (2)全国の推移  平成23年度から平成26年度までの全国の被保護世帯数、被保護人員、保護 率の推移については、次のとおりである。  厚生労働省被保護者調査による(平成23年度は福祉行政報告例)。平成23 年度から平成25年度は確報値である。平成26年度については、確報値として は公表されておらず、平成26年12月の速報値を掲載した。
     被保護世帯数及び被保護人員については、単位はそれぞれ「1(世帯あるい は人)」であり、保護率については、「%(パーセント)」である。  岐阜市の推移では、「‰(パーミル)」という単位を用いたが、全国の数値に ついては、厚生労働省発表の「%」を用いた。                    単位:1(世帯あるいは人) ┌─────┬─────┬─────┬─────┬──────┐ │     │平成23年度│平成24年度│平成25年度│平成26年12月│ ├─────┼─────┼─────┼─────┼──────┤ │被保護世帯│ 1,498,375│ 1,558,510│ 1,591,846│  1,618,196│ ├─────┼─────┼─────┼─────┼──────┤ │被保護人員│ 2,067,244│ 2,135,708│ 2,161,612│  2,170,161│ ├─────┼─────┼─────┼─────┼──────┤ │ 保護率 │  1.62%│  1.67%│  1.70%│   1.71%│ └─────┴─────┴─────┴─────┴──────┘ (3)まとめ  岐阜市は、直近10年間で管内人口はほとんど増えていないが、被保護世帯、 被保護人員、保護率のいずれも2倍以上に増加している。平成20年のリーマ ンショック以降は、特に増加が著しい。  増加傾向にあることは全国的な傾向と合致する。  保護率は、全国平均を若干下回る推移である。 2 岐阜市の世帯類型別被保護世帯数及び割合 (1)岐阜市の推移  平成25年度から平成27年度の直近3年間の世帯類型別被保護世帯数及び割 合は次のとおりである。いずれも当該年度3月の値である。  単位は「1(世帯)」である。  割合については小数点以下第2位を四捨五入している。                           単位:1(世帯) ┌─────┬──────┬──────┬──────┐ │     │平成25年3月│平成26年3月│平成27年3月│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │高齢者世帯│    2,662│    2,834│    2,998│ │     │ (52.0%)│ (54.6%)│ (57.5%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │母子世帯 │     205│     206│     190│ │     │  (4.0%)│  (4.0%)│  (3.6%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │障害者世帯│     465│     460│     465│ │     │  (9.1%)│  (8.9%)│  (8.9%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │傷病者世帯│    1,090│    1,134│    1,178│ │     │ (21.3%)│ (21.9%)│ (22.6%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │その他世帯│     694│     548│     381│ │     │ (13.6%)│ (10.6%)│  (7.3%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │ 合計数 │    5,116│    5,182│    5,212│ └─────┴──────┴──────┴──────┘                    (岐阜市提供資料)  世帯分類については、次のとおりである。 1)高齢者世帯:65歳以上のみで構成されている世帯か、これらに18歳未満  の者が加わった世帯。 2)母子世帯:現に配偶者がいない65歳未満の女子と18歳未満のその子のみ  で構成される世帯。 3)障害者世帯:世帯主が障害者加算を受けているか、障害・知的障害等の心  身上の障害のため働けない者である世帯。 4)傷病者世帯:世帯主が入院(介護保険施設入所を含む)しているか、在宅  患者加算を受けている世帯、もしくは世帯主が傷病のため働けない者であ  る世帯。 5)その他世帯:上記以外の世帯。 (2)全国の推移  平成25年3月、平成26年3月、平成27年3月における世帯類型別被保護 世帯数及び割合の推移は次のとおりである。  厚生労働省の被保護者調査による。  単位は「1(世帯)」である。  平成25年3月と平成26年3月は確定数である。割合については、小数点以 下第2位を四捨五入している。                     単位:1(世帯) ┌─────┬──────┬──────┬──────┐ │     │平成25年3月│平成26年3月│平成27年3月│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │高齢者世帯│   704,500│   744,219│   786,634│ │     │ (44.8%)│ (46.7%)│ (48.7%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │母子世帯 │   111,776│   108,399│   105,442│ │     │  (7.1%)│  (6.8%)│  (6.5%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │障害者世帯│   179,254│   183,017│   187,628│ │     │ (11.4%)│ (11.5%)│ (11.6%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │傷病者世帯│   287,932│   272,191│   258,177│ │     │ (18.3%)│ (17.1%)│ (16.0%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │その他世帯│   288,472│   286,003│   276,801│ │     │ (18.4%)│ (17.9%)│ (17.1%)│ ├─────┼──────┼──────┼──────┤ │ 合計数 │  1,571,934│  1,593,829│  1,614,682│ └─────┴──────┴──────┴──────┘
    (3)まとめ  前掲の岐阜市資料によると、岐阜市は、全国よりも高齢者世帯の割合が高く なっている。平成26年度(平成27年3月)は、2,998世帯であり、高齢者世 帯が全体の57.5%を占める。また、そのうち、単身者世帯は2,716世帯であり、 高齢者世帯の90.6%を占める。他方、貧困の連鎖の問題となりうる母子世帯 や、就労という点で問題となりうるその他世帯の割合は全国の割合を下回る。 3 岐阜市の保護申請件数、開始(世帯、人員)、廃止(世帯、人員)の件数  平成24年度から平成26年度の直近3年間の推移は次のとおりである。                   (岐阜市提供資料) ┌───────┬─────┬─────┬─────┐ │       │平成24年度│平成25年度│平成26年度│ ├───────┼─────┼─────┼─────┤ │申請件数   │    782│    617│    566│ ├───────┼─────┼─────┼─────┤ │保護開始世帯数│    770│    623│    553│ ├───────┼─────┼─────┼─────┤ │保護開始人員数│    999│    827│    686│ ├───────┼─────┼─────┼─────┤ │保護廃止世帯数│    662│    557│    523│ ├───────┼─────┼─────┼─────┤ │保護廃止人員数│    775│    659│    616│ └───────┴─────┴─────┴─────┘  直近3年間の推移をみると、申請件数は216件、保護を新たに開始した世帯 数は213件、保護人員で313人それぞれ減少している。  ただし、毎年度、保護開始世帯数・保護開始人員数が保護廃止世帯数・保護 廃止人員数を上回っているため、結果として、被保護世帯数及び被保護者人員 は、年々増加の傾向にある。 4 岐阜市の保護開始の理由、世帯類型別世帯数  平成24年度から平成26年度の直近3年間の保護開始の理由別世帯類型別世 帯数の推移は次のとおりである。                        (岐阜市提供資料) ┌────────────┬─────┬─────┬─────┐ │            │平成24年度│平成25年度│平成26年度│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │高齢者世帯       │    252│    215│    223│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │母子世帯        │    23│    27│    25│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │障害者世帯       │    161│    141│    152│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │傷病者世帯       │    38│    32│    38│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │その他世帯       │    262│    186│    103│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 合計         │    736│    601│    541│ ├────────────┴─────┴─────┴─────┤ │【保護開始の理由】                     │ ├────────────┬─────┬─────┬─────┤ │世帯主の傷病      │    131│    127│    88│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │世帯員の傷病      │     6│     9│     8│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │急迫保護で医療扶助のみ │    35│    25│    23│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │要介護状態       │     0│     4│     1│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │働いていたものの死亡  │     1│     1│     0│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │働いていたものとの離別 │     6│    11│     8│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │定年自己都合による   │    23│    22│     9│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │勤務先都合(解雇)による│     6│    13│     6│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │老齢による       │     4│     4│     0│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │事業不振・倒産     │     2│     2│     4│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │その他の働きによる収入減│    114│    41│    10│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │社会保障給付金の減少  │    18│     7│     1│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │貯金等の減少・喪失   │    338│    284│    355│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │仕送りの減少・喪失   │    29│    27│     8│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │その他の働きによる収入減│    23│    24│    20│ ├────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 合計         │    736│    601│    541│ └────────────┴─────┴─────┴─────┘  保護開始の理由としては、直近3年度のいずれにおいても、「貯金等の減少・ 喪失」が最も多く、全体の5割程度を占めている。高齢者世帯が多いことから も、蓄えてきた貯金が老後になって尽きた結果、生活保護開始決定となったと いう事案も多くあるのではないかと思われる。その他では、「世帯主の傷病」 が多くなっている。 5 岐阜市の保護廃止の理由、世帯類型別世帯数  平成24年度から平成26年度の直近3年間の保護廃止の理由別世帯類型別世 帯数の推移は次のとおりである。                      (岐阜市提供資料) ┌──────────┬─────┬─────┬─────┐
    │          │平成24年度│平成25年度│平成26年度│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │高齢者世帯     │    215│    207│    241│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │母子世帯      │    34│    22│    31│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │障害者世帯     │    134│    124│    104│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │傷病者世帯     │    45│    40│    39│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │その他世帯     │    155│    106│    73│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │          │    583│    499│    488│ ├──────────┴─────┴─────┴─────┤ │【保護廃止の理由】                   │ ├──────────┬─────┬─────┬─────┤ │世帯主の傷病治癒  │     4│     0│     1│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │世帯員の傷病治癒  │     0│     0│     0│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │死亡        │    212│    191│    210│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │失踪        │    68│    44│    27│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │働きによる収入の増 │    112│    120│    96│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │働き手の転入    │     2│     3│     3│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │社会保障給付金の増加│    31│    22│    15│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │仕送りの増加    │     3│     0│     3│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │親類縁者等の引き取り│    36│    29│    30│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │施設入所      │    12│     6│    10│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │医療費の他方負担  │     8│    10│     4│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │その他       │    95│    74│    89│ ├──────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 合計       │    583│    499│    488│ └──────────┴─────┴─────┴─────┘  保護廃止世帯も高齢者世帯が多く、理由としては、「死亡による廃止」が最 も多くなっている。就労によって収入が増加して廃止になる場合もあり、この ようなケースの増加につながる事務執行が期待される。特に稼働年齢層が多い とされるその他世帯が、就労によって減少することが期待されている。 第3 岐阜市の生活保護事務の現状 1 はじめに  本章では、岐阜市の生活保護事務の現状について、「実施体制(組織)」、「保 護費(カネ)」、「事務にかかる根拠(ルール)」、「施設(モノ)」という観点か ら整理する。  事務の流れの概要については、別途、第3章で図示する。 2 実施体制 (1)全体像  平成27年度、岐阜県施行事務監査提出資料によれば、平成26年9月1日現 在、岐阜市において、生活保護事務を直接担当する部署は、「福祉部 福祉事 務所 生活福祉一課・二課」であり、その構成は次のとおりである。  なお、ここには挙げていないが、福祉事務所柳津分室においても、生活保護 相談業務を行っている。  同分室に関しては、第4章にて述べる。                          (平成26年9月1日現在) ┌───────────────────────────────────┐ │福祉部長                               │ ├───────────────────────────────────┤ │福祉事務所長                             │ ├──────┬──┬─────────┬────────────┬──┤ │生活福祉一課│課長│生活困窮担当係員 │住宅確保・就労支援嘱託員│2名│ │      │  │         ├────────────┼──┤ │      │  │         │教育支援嘱託員     │1名│ │      │  ├─────────┼────────────┼──┤ │      │  │管理係長     │経理・医事・庶務係員  │6名│ │      │  │         ├────────────┼──┤ │      │  │         │嘱託医         │2名│ │      │  ├─────────┼────────────┼──┤ │      │  │保護1係長(SV)│現業員         │8名│ │      │  ├─────────┼────────────┼──┤ │      │  │保護2係長(SV)│現業員         │8名│ │      │  ├─────────┼────────────┼──┤ │      │  │保護3係長(SV)│現業員         │5名│ │      │  │         ├────────────┼──┤ │      │  │         │面接相談嘱託員     │1名│ ├──────┼──┼─────────┼────────────┼──┤ │生活福祉二課│課長│保護4係長(SV)│現業員         │7名│ │      │  │         ├────────────┼──┤ │      │  │         │就労支援嘱託員     │2名│ │      │  ├─────────┼────────────┼──┤ │      │  │保護5係長(SV)│現業員         │8名│ │      │  │         ├────────────┼──┤ │      │  │         │就労支援相談嘱託員   │1名│ │      │  ├─────────┼────────────┼──┤ │      │  │保護6係長(SV)│現業員         │7名│ │      │  ├─────────┼────────────┼──┤ │      │  │保護7係長(SV)│現業員         │5名│ │      │  │         ├────────────┼──┤ │      │  │         │不正受給対策      │2名│
    │      │  ├─────────┼────────────┼──┤ │      │  │保護8係長(SV)│現業員         │8名│ └──────┴──┴─────────┴────────────┴──┘  岐阜市事務分掌条例(昭和42年7月28日 条例第25号)第2条では、福 祉部の分掌事務として、福祉事務所に関する事項(子ども未来部が分掌する事 項を除く。)が掲げられている。そして、岐阜市は、岐阜市福祉事務所長委任 規則第1条第1項及び同第2項により、生活保護業務を岐阜市福祉事務所長に 委任している。以下、岐阜市福祉事務所については、「福祉事務所」と表現す る。  福祉事務所の組織については、社会福祉法第15条第1項に規定がある。  具体的には、福祉事務所においては、所長のほかに、少なくとも、指導監督 を行う所員(第1号)、現業を行う所員(第2号)、事務を行う所員(第3号) を設置する必要がある(ただし、第1号は例外あり)。 (2)職員数及び任用形態  平成19年度以降の生活福祉一課・二課(前身は生活福祉課、生活福祉室) の職員数及び職員の任用形態は、次のとおりの推移である。  本監査にあたり人事課から提供を受けた資料による。  平成19年度から平成26年度にかけて職員数は2倍になっている。職員数の 増加に伴い、平成25年度より、生活福祉課は、生活福祉一課・二課とされた。  平成19年度から平成26年度にかけて、臨時的任用職員が1名から27名に 大幅に増加していることは特徴的である。この間、正職員も、37名から50名 と13名増加はしているが、臨時的任用職員の増加率は高い。  臨時的任用職員は、その大半が現業員として勤務する。  嘱託職員については、教育支援員、就労支援員、就労支援相談員、専任面接 相談嘱託員、住宅確保・就労支援員としての勤務である。  社会福祉法第16条では、社会福祉事務所の職員定数については条例で定め るものとするとあるが、岐阜市福祉事務所設置条例(昭和48年10月1日条例 第39号)においては定数の定めがない。岐阜市職員定数条例(昭和61年4月 1日条例第8号)別表第2条関係 市長の事務部局の職員に含まれるとのこと である。 (3)現業員の現状  社会福祉法第15条第4項によれば、現業員は、援護、育成または更生の措 置を要する者等の家庭を訪問し、又は訪問しないで、これらの者に面接し、本 人の資産、環境等を調査し、保護その他の措置の必要の有無およびその種類を 判断し、本人に対し生活指導を行う等の事務をつかさどるとされている。  現業員は、「ケースワーカー」といわれ、生活保護事務の中心となる所員で ある。  平成26年9月1日現在、岐阜市には56名の現業員がおり、その内6名は生 活保護受給者の担当を持たない新規担当現業員である。新規担当現業員は、保 護申請から保護開始決定までを担当する。新規担当現業員の事務については、 第4章で報告する。 【現業員1人あたりが受け持つ世帯数】  過去5年度分については次のとおりである。岐阜県施行事務監査資料による。  社会福祉法第16条第2号では、現業員は80世帯に1人を標準としている(保 護世帯数が240以下は3 80増すごとに+1との記載)。標準からすると、過 不足数は改善しているものの、いまだに不足の状態が継続している。なお、平 成12年4月1日施行の改正社会福祉法において、それまで「法定数」であっ たものが「標準数」とされており、数を充足しないことが即法律違反というこ とではない。  平成26年4月1日現在において、現業員1人あたり91.9件ほどの担当とな るが、詳細を見ると異なる評価となる。すなわち、上述したとおり、現業員の 中には、新規担当の現業員が6名おり、これらの現業員は被保護者の担当を持 たない。  そうすると、平成26年4月1日現在においては、実際には、地区担当現業 員50名で5,150件を担当することになり、その結果、1人あたりの平均担当 件数は、103件となる。120件を超える担当を持つ現業員も複数いた。  平成27年4月1日現在においては、5,178件を52名が担当していることと なり、1人あたりの平均件数は99.5件ほどである。 【現業員の経験年数】  過去4年度分の現業員の経験年数別人数については次のとおりである。岐阜 県施行事務監査資料による。  平成26年度においては、1年未満が全体の30.4%、3年未満でみると73.2% である。経験年数に乏しい現業員が多いという結果である。  平成27年度は若干経験値が上がっている。 【現業員の社会福祉主事の資格の有無】  判明している過去2年度分についての現業員の社会福祉主事の資格の有無 は次のとおりである。岐阜県施行事務監査資料による。  現業員は、社会福祉主事でなければならないとされているが(社会福祉法第 15条第6項)、平成26年度において、資格が有る者は約53.6%である。  なお、社会福祉主事に関しては、社会福祉法第19条に規定があり、20歳以 上の、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の増進に熱意があり、かつ、同 第1号から同第5号で定められる者から任用されるとされている。 【まとめ】  岐阜市の現業員は、経験年数の浅い者、社会福祉主事の資格がない者が多数 含まれており、また、雇用形態も臨時的任用職員が多くいる。他方、担当件数 は、社会福祉法の定める標準数より多い。厳しい現状がうかがえる。 (4)査察指導員の現状  社会福祉法第15条第3項によれば、査察指導員は、現業員の指揮監督をつ かさどるとされる。岐阜市においては、平成26年9月1日現在、査察指導員
    は8名である(係長 SV(スーパーバイザー))。8名すべてが正職員である。  8名中2名は、新規担当の査察指導員である(保護3係と7係)。新規担当 の査察指導員の2つの係には、新規担当現業員6名と面接相談員5名が配属さ れている。 【査察指導員1人あたりが受け持つ現業員数】  過去5年度分の査察指導員1人あたりが受け持つ現業員数は、次のとおりで ある。岐阜県施行事務監査資料による。  現業員と異なり、社会福祉法上に標準数の規定はないが、現業員の標準数(1 名あたり80世帯)を7で除して得た数を標準数とすると上記のとおりである (厚生労働省による都道府県・指定都市に対する生活保護施行事務監査にかか る資料の提出について(平成12年10月25日社援監第18号厚生労働省社会・ 援護局監査指導課長通知)に基づき提出する「福祉事務所関係基礎資料データ」 の被保護者調査入力要領及び審査要領に記載する際の説明資料で記載される 考え方)。直近3年度は、不足が1名のまま推移していることが判る。 【査察指導員の経験年数】  判明している4年度分の査察指導員の経験年数については次のとおりであ る。岐阜県施行事務監査資料による。  なお、ここでいう経験年数は、査察指導員としての経験年数であり、生活保 護業務自体の経験年数ではない。  平成26年度担当の査察指導員8名の中には、生活保護業務の経験がないま ま査察指導員になっている職員が含まれている。 【査察指導員の社会福祉主事の資格の有無】  過去4年度分の査察指導員の社会福祉主事の資格の有無については、次のと おりである。岐阜県施行事務監査資料による。  社会福祉主事の資格がない査察指導員が複数名いる。 【まとめ】  査察指導員については、社会福祉主事の資格がない者や経験年数の浅い者が おり、標準となる件数にも不足している。  平成26年9月1日現在でみると、新規担当の査察指導員を除く査察指導員 6名で地区担当現業員50名を管理監督するということであり、現業員に対す る指揮監督が厳しい現状がうかがえる。 (5)事務スペース  生活福祉一課・二課は、岐阜市役所南庁舎1階にて事務を執行している。  約360m2の広さの中に、平成26年度でみれば、85名の職員が勤務している (常駐していない福祉事務所長は除く)。  相談やケース診断会議で用いる面接室は2つあるが、いずれも市民が自由に 立ち入ることができない職員執務スペース内にある。  生活保護相談者専用の面接室はない。職員の事務スペースも狭く、効率性の 観点から改善が必要と感じるが、岐阜市の他の部署においても同様な面があろ う。  事務執行という意味では、新庁舎の早期完成が待たれるところではある。  しかし、相談に来る市民という観点からみると、完成まで待つという話では ない。  プライバシーを確保できる常設の面接室が少ないことは課題であると考え る。 3 保護費、保護施設事務費及び委託事務費、就労自立給付金の推移  岐阜市における保護費、保護施設事務費及び委託事務費、就労自立給付金の 過去5年度分の推移は下表のとおりである。  保護費、保護施設事務費及び委託事務費は、生活保護法第75条第1項第1 号、同第2号において、国庫負担が4分の3ある。  なお、岐阜市の生活保護事務にかかる費用はこれがすべてではない。  例えば、職員の人件費は岐阜市が負担する部分であるが、下表には含まれて いない。 【保護費、庇護施設事務費及び委託事務費、就労自立給付金の推移】                                         (単位:円) ┌────┬───────┬───────┬───────┬───────┬───────┐ │ 種類 │ 平成22年度 │ 平成23年度 │ 平成24年度 │ 平成25年度 │ 平成26年度 │ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │生活扶助│ 3,481,013,828│ 3,896,917,655│ 4,020,864,919│ 3,910,226,658│ 3,961,594,688│ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │教育扶助│  34,977,519│  37,829,100│  38,619,385│  38,316,473│  38,826,713│ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │住宅扶助│ 1,357,850,797│ 1,540,416,110│ 1,614,465,075│ 1,627,085,279│ 1,660,062,731│ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │医療扶助│ 4,699,863,400│ 5,333,514,343│ 5,276,020,019│ 5,428,441,107│ 5,585,925,819│ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │介護扶助│  221,818,728│  258,582,068│  285,426,451│  306,851,222│  318,982,841│ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │出産扶助│    684,535│      -│    822,045│    191,533│   1,151,944│ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │生業扶助│  13,520,655│  14,156,019│  15,583,769│  18,682,611│  18,377,623│ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │葬祭扶助│  34,593,953│  32,366,989│  33,683,516│  30,734,244│  32,946,292│ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │小計  │ 9,844,323,415│11,113,782,284│11,285,485,179│11,360,529,127│11,617,868,651│ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │就労自立│      -│      -│      -│      -│   1,263,127│ │給付金 │       │       │       │       │       │ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │保護施設│  10,049,031│   9,587,664│  10,071,600│  12,066,156│  16,791,756│ │事務費等│       │       │       │       │       │ ├────┼───────┼───────┼───────┼───────┼───────┤ │合計  │ 9,854,372,446│11,123,369,948│11,295,556,779│11,372,595,283│11,635,923,534│ └────┴───────┴───────┴───────┴───────┴───────┘
    【主な扶助費の推移】 【扶助費の構成】  上記のとおり、岐阜市では、扶助費全体が年々増加する中で、平成26年度 において、医療扶助費の割合が全体の約48%を占めており、医療扶助費の増 加が全体に与える影響が大きくなっている。医療扶助費の削減は切実な問題で あることが判る。医療扶助については、第7章にて報告する。 4 事務にかかる根拠規定  岐阜市の生活保護事務にかかる根拠類は多数にわたるが、以下では、生活保 護事務に直接かかわるものを挙げる。序章でも述べたとおり、監査の判断(指 摘あるいは意見)の前提として、【規範】(判断のよるべき基準という意味)と して引用している。 ┌─┐ │国│ └─┘  生活保護事務は国の法定受託事務であり、岐阜市の生活保護事務に際しても、 事務の規範となる部分である。生活保護関係法令通知集(中央法規)などにま とめられている。具体的には、憲法、生活保護法関係法令(生活保護法、生活 保護法施行令、生活保護法施行規則等)、生活保護法関係通知(事務次官通知、 局長通知、課長通知等)がある。 ┌───┐ │岐阜県│ └───┘  岐阜県から各福祉事務所長宛に部長・課長通知がなされる場合がある。監査 の過程で県通知の確認の必要性が生じたことから、岐阜市に提示を求めたが、 生活福祉一課・二課においては、1年しか保管していない状態であった。確認 の必要なものは、岐阜県から取り寄せでもらうことなどで対応した。 ┌───┐ │岐阜市│ └───┘  以下、生活保護事務に直接関連する根拠規定は、次のとおりである。 ◎岐阜市福祉事務所長委任規則(昭和53年6月1日 規則第40号)  生活保護事務について、岐阜市は福祉事務所長に委任している。 ◎岐阜市福祉事務所設置条例(昭和48年10月1日 条例第39号)  福祉事務所の名称及び位置、所務、組織等が定められている。岐阜市福祉事 務所設置及び所員定数条例(昭和26年条例第45号)の全部が改正されて制定 されたものである。 ◎岐阜市福祉事務所設置条例施行規則(昭和48年10月1日 規則第43号)  岐阜市福祉事務所の組織、分掌事務の詳細が定められている。別表にて、生 活福祉一課・二課の事務決裁について定められている。 ◎岐阜市生活保護法施行細則(平成8年3月29日 規則第22号)  生活保護法、生活保護法施行令及び生活保護法施行規則の施行に関し必要な 事項を定めるもので(第1条)、面接記録票など各種書類の様式が定められて いる。 ◎岐阜市救護施設、更生施設、授産施設及び宿所提供施設の設備及び運営に 関する基準を定める条例(平成24年12月25日 条例第72号)  現在、岐阜市には上記に該当する保護施設はなく、同条例の適用はない。 ◎岐阜市生活保護法医療扶助審議会条例(平成8年6月28日 条例第28号)  同条例に基づき、医療扶助審議会が設置されている。開催実績は確認できな い。 ◎各種マニュアル類  生活保護不正受給防止マニュアル(平成27年3月)、経理関係や就労関係な ど各種マニュアルが存在する。監査にあたって提供を受け、参考とした。 ○岐阜市生活保護事務の手引き(平成26年7月とあるものが最新)  岐阜県の手引きを参考に作成されたものである。本監査当初、生活福祉一 課・二課に対して、生活保護事務のマニュアルとなるものの閲覧を求めたとこ ろ、同課からは、この手引きの提出があった。平成23年4月と記載があるも のと平成26年7月とあるものである。ヒアリングによれば、あくまで新人職 員研修用に作成されたというものであった。  新しい手引きには、「平成26年7月」と記載されており、当該月は、改正生 活保護法施行月であったことから、同月から手引きの適用があると考えていた ところ、作成されたのは平成27年度に入ってからということであった。  現業員が使用することを前提にはしており事務の詳細について記載がある が、必ずしも手引きに基づいて事務執行されているわけではなく、実際の事務 と異なる事務執行がなされている場合がある。また、記載に誤りが生じている ものがあった(第11章 不服申立ての報告参照)。職員は、生活保護手帳(中 央法規出版)を前提に事務をすることになっているとのことであったが、この 手帳は900頁近くあるもので、知識・経験に乏しい新人職員がよって立つこと は容易ではないと思われる。 5 生活保護施設  岐阜市内には、生活保護法第6章に規定される保護施設(救護施設、更生施 設、医療保護施設、授産施設、宿所提供施設)は一つも存在しない。岐阜県内 で見ても救護施設が1つあるのみである。岐阜市は、県内あるいは県外救護施 設に被保護者を入所させ、保護を行っている。この点については、第10章に て報告する。 第3章 岐阜市の生活保護事務の概要 【岐阜市の生活保護事務(「ヒト」の観点から)】
    ○ 面接相談員は、相談者の面接を実施する。 ○ 現業員(ケースワーカー)中、新規担当は、査察指導員の指導・監督のも  と、申請から保護開始決定段階までの事務を担う。 ○ 保護開始決定後は、地区担当現業員が査察指導員の指導・監督のもと、被  保護者の担当となり、訪問調査等の事務を行う。 ○ 現業員の実施した活動はケース記録に記載することとなっている。 ○ 課長、査察指導員、現業員の構成でケース診断会議を実施し、重要な処分  等の判断をする。 【岐阜市の生活保護事務(「流れ」の観点から)】 上記は、面接から廃止に至るまでの事務の流れを図示したものである。 【第3 岐阜市の生活保護事務(「カネ」の観点から)】 ○ 矢印の方向はお金の出入りの方向である。 ○ 岐阜市は、被保護者に対し、8種類の生活保護費を支給する。生活保護費  の4分の3は、国庫負担金で賄われる。 ○ 岐阜市は、被保護者が生活保護法第63条、同第78条に該当する場合は、  当該被保護者より、費用返還・費用徴収を受ける。 ○ 岐阜市は、医療扶助に関して、病院、タクシー会社、レセプト点検等業務  受託業者、嘱託医に金員を支払っている。 【最後に】  上記3つの図は、「ヒト」が、「カネ」を使い、「流れ」に沿って、生活保護 事務の執行していることのイメージ図である。 第4章 相談から保護開始決定・通知に至るまでの事務 第1 事務の流れ  本章で報告するのは、相談から保護開始決定・通知に至るまでの事務である。 事務の流れは、概ね次のとおりである。  以下、上記事務の流れにそって、報告する。 第2 要保護者発見・把握のための備え(体制) 1 概要  生活保護は申請主義を原則としていることから(生活保護法第7条本文)、 生活困窮者が生活保護制度を知らない場合には、要保護状態にあっても申請に 至らず保護を受けられない可能性がある。また、要保護者が急迫した状況にあ るときは、申請がなくても、職権により保護が開始されることになるが(生活 保護法第7条但書、同法第25条第1項)、保護の実施機関が要保護者の存在を 覚知しない限り、職権による保護は不可能である。  そのため、保護の実施機関としては、要保護者の発見・把握のために、住民 に対して生活保護制度を周知するとともに、関係機関と連携して要保護者の早 期発見に努めることで、要保護状態にある人が生活保護を受けられるようにす る必要がある。  なお、厚生労働省の推計によれば、低所得世帯数(生活保護基準未満の世帯 数)のうち、被保護世帯数(生活保護を受けている世帯数)の割合は32.1% に止まるとされている(平成19年国民生活基礎調査特別集計による推計。平 成22年4月9日厚生労働省社会・援護局保護課「生活保護基準未満の低所得 世帯数の推計について」)。 2 監査の観点及び監査手続  岐阜市における生活保護制度の周知及び要保護者の発見・把握に関する取組 みの状況を監査するため、岐阜市生活福祉一課・二課職員に対するヒアリング を実施した。 3 住民に対する生活保護制度の周知 (1)パンフレット等の配置 【事実関係】  生活福祉一課・二課には生活保護概要を記載したパンフレット等の配置がな されていない。 【規範】  平成20年10月31日地国第830号(岐阜県部長通知)によれば、各福祉事 務所窓口に生活保護概要を記載したパンフレット等を配置し、住民に対し生活 保護制度の周知を図ることとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  上記の県部長通知に従い、生活福祉一課・二課の窓口にパンフレット等を配 置すべきである。 (2)周知方法 【事実関係】  住民に対する生活保護制度の周知については、岐阜市役所全体で「くらしの ガイド」という冊子及び「広報ぎふ」という広報誌を作成しており、それらの 中で生活保護制度に関する説明を行っている。「くらしのガイド」については、 岐阜市役所市民課、各事務所の窓口で希望者や新規転入者に配布される。「広 報ぎふ」については自治会を通じて各世帯に配布されるほか、市内の郵便局や 農協、コンビニエンスストアに配置される。  しかし、上記冊子及び広報誌における生活保護に関する記載はごくわずかな 紙面が割かれているのみであるし、広報誌に生活保護に関する記事が掲載され るのは年に数回のみである。  岐阜市のホームページ上では、生活保護の意義、生活保護の手続、保護の種 類、生活保護受給者の義務などの説明文を掲載されているほか、上記冊子及び 広報誌を閲覧することが可能である。
    【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)第9-2によれば、要保護者の発見・把握のため に、保護の実施機関に対して、住民に対する生活保護制度の周知に努めるべき とされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  高齢の生活困窮者の場合には、インターネットを利用していない人もいるも のと思われることから、現状の取組みが生活困窮者に対する周知の方法として 十分であるかといえるかについては検証の必要があろう。  現状の取組みに加えて、例えば生活保護制度に関するパンフレットを市の関 与する施設に配置するなどの方法により、生活困窮者が生活保護制度を知る機 会を増やすことが望ましい。 第3 相談(面接) 1 事務の概要  保護の実施機関は、要保護者(現に保護を受けているといないとにかかわ らず、保護を必要とする状態にある者をいう。生活保護法第6条第2項)の 求めに応じて生活保護に関する面接相談を実施し、相談者の状況把握、他法 他施策の活用等に関する助言、生活保護制度の説明、保護申請意思の確認及 び申請手続の援助指導を行っている。平成27年度岐阜県の施行事務監査で提 出された資料によれば、平成26年度における面接相談の件数は延べ1,834件 であり、そのうち申請に至った件数は566件、保護開始に至った件数は530 件である。 2 監査の観点及び監査手続  本事務においては、相談者の申請権を侵害するような事務が行われていない かが特に問題となる。昨今、生活保護費の増加が問題視されており、市町村に よっては申請書を交付しないなど、いわゆる「水際作戦」を展開することで生 活保護費のカットを行っているという報道もある。  そこで、かかる観点から岐阜市の事務執行が適切になされているか、平成 27年度面接相談を担当する面接相談員5名全員に対するヒアリングのほか、 平成26年4月分及び平成27年3月の申請に至らなかった面接記録票を通査し た(平成26年4月分 55件、平成27年3月分 63件)。 3 申請資料の教示 【事実関係】  生活福祉一課・二課では、相談者に対し、「申請時の必要書類」と題する書 類を交付し、申請時に持参すべき資料を教示している。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日 社保第34号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)第9問3によれば、相談 段階で、資産及び収入の状況等が確認できる資料の提出を求めること自体は申 請権の侵害に当たるものではない。ただし、「資料が提出されてからでないと 申請を受け付けない」などの対応は適切でないとされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  「申請時の必要書類」という表現は、相談者に資料の提出が申請の要件であ るとの誤解を持たれかねない表現であるから、例えば「申請の際に持参して欲 しいもの」等の表現に変更することが望ましい。 4 面接記録票の記載状況 【事実関係】  岐阜市が相談時の面接で使用している面接記録票は、岐阜市生活保護法施行 細則第2条 様式第1号に定められている。A4版で、表と裏がある(巻末資 料3に添付)。  平成26年4月及び平成27年3月の申請に至らなかった面接記録票を通査し たところ、必要項目に対し記載がないものや内容が読み取れないものがあり、 面接に立ち会った面接相談員それぞれ独自の方法で記載されていた。特に裏面 の文字が書いてある部分については、非常に読みづらく、作成者に確認しない 限り、内容が一目でわかるような状況にないものがあった。 【意見 生活福祉一課・二課】  面接では、相談者の生活状況を把握し、保護を受ける要件等を説明し、最終 的には保護申請の意思を確認しなければならない。その内容を記入した面接記 録票は、保護申請に至る場合はその後の調査の前提として、保護申請に至らな い場合であっても市の対応の妥当性を確認するために必要となる重要な書類 である。この役割から考えると、基本的には全ての項目について、ヒアリング 結果を、漏れなく、丁寧に記載しなければならない。  今後は、面接記録票の重要性を再認識し、記載項目は漏れなく全て記載する とともに、誰が見ても読みやすく記載することが望ましい。 5 申請意思の確認 【事実関係】  面接記録票では、申請意思の欄に「有」と「無」があり、面接相談員が○を つけている。  面接を行ったが申請にまで至らなかった面接記録票(平成26年4月55件と 平成27年3月63件の合計118件)の記載を検証したところ、次のとおりの結 果であった。               (単位:件数) ┌────┬──┬──┬──┬──┬──┐ │    │有 │無 │・ │空欄│合計│ ├────┼──┼──┼──┼──┼──┤ │H26年4月│ 11│  1│  3│ 40│ 55│ ├────┼──┼──┼──┼──┼──┤ │H27年3月│ 18│ 18│ 19│  8│ 63│ └────┴──┴──┴──┴──┴──┘  「・」というのは、「有」と「無」の間にある「・」に○がつけられていた ものである。  「有」に○がつけられていたにもかかわらず申請に至っていない件数は、118 件中29件(24.6%)であった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)によれば、保護申請の意思が確認された者に対し ては、速やかに保護申請書を交付することとなっている。
    【意見 生活福祉課一課・二課、福祉政策課】  生活保護の適用については、申請者の申請意思が尊重され、申請する意思が あれば、申請書を交付・受領し、調査を実施し、最終的な要否判断を行わなけ ればならない。  しかしながら、申請意思があるにもかかわらず申請に至っていない件数が 24.6%あるという結果からすると、申請権を侵害しない対応ができているか疑 義をもたれかねない。  例えば、岐阜市生活保護法施行細則様式第1号(第2条関係)を改定するこ とにより、面接記録票に「申請書の交付をしたか否か」「申請書の交付をしな かったのであればその理由」を記載する欄を設けるなどし、面接記録票に面接 結果を記載することが望ましい。なお、他の自治体においては、申請にかかる 事務執行の適正を担保するため、面接記録票の様式を工夫しているので参考に されたい。 6 申請に至らなかった面接記録票の整理 【事実関係】  平成26年4月及び平成27年3月の申請に至らなかった面接記録票の綴り (月ごとにファイリング)を確認したところ、綴られた個々の面接記録票がす ぐに検索できる状態ではなかった。なお、別途、エクセルの表で、相談日、相 談者名等は一覧化されていた。 【規範】  岐阜市文書取扱規則第37条第1項によれば、文書は、常に整理してその所 在及び処理状況等を明確にし、あらゆる事態に対処して臨機の処置がとれるよ う整備しておかなければならないとされている。 【意見(改善報告)生活福祉課一課・二課】  面接を複数回重ねる相談者もいる。その場合、面接記録票をすぐに取り出せ る状態にしておくことが効率的である。  相談日、相談者名等が一覧化されたエクセルの表があることから、面接記録 票の綴りに日づけごとにインデックスを付けるなど、面接記録票の整理方法を 検討することが望ましい。  この点、平成28年1月分の申請に至らなかった面接記録票のファイルを確 認したところ、既に改善されていたことは評価できる。 7 面接記録票の承認の改善 【事実関係】  申請に至らないケースについても、どのような内容であったか、また、面接 相談員の対応が適切であったかを把握するため、課長が面接記録票を確認し、 問題なければ承認することになっている。  平成26年4月と平成27年3月の申請に至らなかった面接について、その記 録票の承認状況を確認したところ、平成26年4月は月に1回まとめの承認で あったが、平成27年3月では基本的に毎日承認されていた。  しかし、承認印は、面接記録票1枚ずつではなく、1日ごとに取りまとめた ものの一番上の面接記録票にしか押されていなかった。 【規範】  岐阜市文書取扱規則は、次のとおり定める。 ┌──────────────────────────────────┐ │                                  │ │ (決裁の回議)                          │ │第23条 文書は、次の各号に定める順序により回議しなければならない。 │ │(1) 課内にあっては、係長を先にし、上司を後にする。         │ │3 回議を受けた者が、その起案文書について承認したときは、文書管理シ │ │ステムによる回議を行う場合にあっては承認の登録を行い、紙による回議を│ │行う場合にあっては承認の認印をしなければならない。         │ │(決裁済み文書の取扱い)                      │ │第26条 決裁が完了したときは、事務担当者は決裁が完了した文書(以下 │ │「決裁文書」という。)が紙文書の場合に限り、決裁年月日を記入しなけれ│ │ばならない。                            │ │                                  │ └──────────────────────────────────┘ 【指摘 生活福祉課一課・二課】  面接記録票は、1枚1枚が独立した「文書」であるので、1枚ずつ承認しな ければならない。  1枚ずつ承認したことを明確にするため、承認印は1枚ずつ押すべきである。 8 面接の効率化の実施 【事実関係】  面接相談員5名にヒアリングしたところ、面接自体に時間をかけており、生 活保護を検討するに至った経緯や扶養者との関係が複雑である場合などは、2 人で2~3時間かけて行っている場合もあるとのことであった。ちなみに、平 成26年度においては、1年間で1,834件の面接相談を5名で対応している。 土日祝日は休日であることからすると、1日あたり、平均8件程度の面接相談 に対応していることとなる。 【意見 生活福祉課一課・二課、福祉政策課】  面接の性質上、時間を区切るであるといった対応が好ましいとは考えないが、 5名という少人数で年間1,800件を超える面接に対応する必要があり、事務の 効率化の必要性もあろう。  効率化を意識するために、岐阜市生活保護法施行細則様式第1号(第2条関 係)を改定し、面接記録票に面接にかかった時間を記入する欄を設けて記入す るなどにより、現状を把握することが望ましい。 9 面接相談室 【事実関係】  来訪者の面接は、生活福祉一課・二課入口の受付で実施されることが多く、 この場合、周囲から見ることのできる状況で面接が実施されている。  面接室は存在するが、職員の事務スペース内に設けられており、ケース診断 会議などに使用されることから、面接専用のものとなっていない。 【意見 生活福祉一課・二課】  生活保護にかかる相談は、個人にとっては重要なプライバシーの問題が生じ るものであり、来訪者の気持ちを和らげ、できる限り現状全てを話してもらう 必要があるので、そのような空間づくりが重要である。市民の保護という観点 からすれば、担当課では、あくまで、専用の面接室での対応を原則形態とする ことを目指す必要はあろう。なお、新庁舎では専用の面接室が確保されるとの
    ことであるが、面接は新庁舎の完成を待たずに日々実施されるものである。も っとも、現状の事務スペースに物理的な問題があることは理解できる。  そこで、管財課に専用の面接室設置の要望をすることが望ましい。また、専 用の面接室の常置が困難であったとしても、例えば、別の課の空いているスペ ースを借りる等、できる限りプライバシーが守られた空間の確保を管財課に相 談することが望ましい。 10 面接段階での個人情報利用 (1)情報利用の範囲の問題 【事実関係1)】 ┌────┐ │ケース1│ └────┘  平成26年4月と平成27年3月の申請に至らなかった面接について、面接記 録票の綴られたファイルを確認したところ、申請前の面接の段階で、本人、同 居の親族のほか、相談に訪れていない扶養義務者の配偶者の税務情報を閲覧・ 印刷しているケースがあった。 ┌────┐ │ケース2│ └────┘  保護が開始されているケースの記録に綴られた面接記録票及びその添付資 料についても確認したところ、知人である要保護者のために生活保護の条件等 の質問をした相談者(住所等は秘匿していた)について、総合行政情報システ ムで当該相談者の宛名照会、世帯情報照会、市県民税個人課税台帳、個人照会 を行っているケースがあった。 【事実関係2)】  岐阜市生活福祉一課・二課は、面接の段階で、面接に訪れた者の世帯情報、 個人情報(本籍、住所、氏名)、所得状況、資産保有状況を確認するために、 岐阜市が保有する世帯情報、個人情報、税務に関する情報(市県民税、固定資 産税に関する情報)を利用している。具体的には、総合行政情報システム端末 及び福祉総合システム端末を用いて上記情報を閲覧・印刷し、記録に綴ってい る。  当該個人情報利用のため、生活福祉一課・二課は、岐阜市個人情報保護条例 第10条第2項、同施行規則第5条及び岐阜市税務情報利用に関する取扱要綱 に従って、年度ごとに、岐阜市市民課長、介護保険課長及び子ども家庭課長に 対して「保有個人情報利用提供申請書兼諾否書」(岐阜市個人情報保護条例施 行規則様式第1号。巻末資料3に添付)、岐阜市税制課長に対して「税務情報 利用申請書」(岐阜市税務情報利用に関する取扱要綱様式第1号)、「総合行政 情報システム税務情報利用申請書」(同第3号)、「福祉総合システム端末税務 情報利用申請書」(同第4号)を提出し、それぞれ承諾を得ている。  子ども支援課にヒアリングをしたところ、「情報提供に同意した場合、目的 外の情報利用(アクセス)をしているかどうかついて確認することができない し、ブロックすることもできない。」とのことであった。 【規範】  岐阜市個人情報保護条例第10条第2項によれば、利用目的以外の目的のた めに保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる場合として、(1) 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき、(4)法令又は条例の定め に基づいて行う事務の遂行に関連するときとしている。  生活保護法第29条第1項によれば、保護の実施機関及び福祉事務所長は、 保護の決定若しくは実施又は第77条若しくは第78条の規定の施行のために必 要があると認めるときは、要保護者やその扶養義務者の氏名、住所、資産及び 収入の状況等につき、必要な書類の閲覧等をすることができるとされている。 【指摘(一部改善報告) 生活福祉一課・二課】  上記各利用申請書及び承諾書の記載によれば、生活福祉一課・二課が行う世 帯情報、個人情報、税務に関する情報の利用については、上記のうち、「本人 の同意があるとき」(岐阜市個人情報保護条例第10条2項第1号)、又は「法 令(生活保護法第29条)・・・の定めに基づいて行う事務の遂行に関連すると き」(同項第2号)に該当するものとして行われているものと解される。                  ┌────┐  しかし、【事実関係1)】において、│ケース1│では、相談に訪れていない扶養                  └────┘                          ┌────┐ 義務者の配偶者の同意を得たということはあり得ない。│ケース2│では、相談                          └────┘ に訪れた要保護者の知人から個人情報の目的外利用につき同意を得たことは 記録上窺われない。  また、生活保護法第29条により保護の実施機関及び福祉事務所が調査を行 うことができるのは、要保護者又は被保護者であった者及びそれらの者の扶養 義務者に限られており(同条第1項)、扶養義務者の配偶者や要保護者の知人 は、これに当たらない。  上記各ケースにおける個人情報の利用は、「本人の同意があるとき」にも、 「法令・・・の定めに基づいて行う事務の遂行に関連するとき」にも該当せず、 岐阜市個人情報保護条例第10条第2項に違反している。  面接時における個人情報の利用に際しては、岐阜市個人情報保護条例第10 条第2項を遵守すべきである。  なお、生活福祉一課・二課においては、本監査の過程で上記条例違反の事実 が判明したことから、職員に対し、面接相談の時点で利用する情報は要保護者 本人及び同居の親族に限るように指導し、平成28年1月時点では当該指導に 沿った運用がなされているとのことである。 【事実関係】  市民課長宛の「保有個人情報利用提供申請書兼諾否書」(岐阜市個人情報保 護条例施行規則様式第1号)においては、利用する保有個人情報の内容(項目) は「世帯情報、個人情報(本籍、住所、氏名、個人コード)」と記載され、個 人情報の利用目的は、「生活保護法第29条に基づく保護申請者の調査」と記載 されている。                  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  また、「税務情報利用承諾書」(岐阜市税務情報利用に関する取扱要綱様式第 9号)、「総合行政情報システム税務情報利用承諾書」(同第10号)、「福祉総合 システム端末税務情報利用承諾書」(同第11号)においては、税務情報利用の 根拠として、「利用できる法的根拠(生活保護法第29条)があること」、「本人 (持主)からの同意書があること」が記載され、利用が必要な理由として、「生                                     ̄ 活保護受給者の所得、資産保有状況(福祉総合システムについては所得状況)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ を調査するため」と記載されている。 【指摘 生活福祉一課・二課】
     面接の段階において個人情報の利用を行うのであれば、市民課長宛の「個人 情報利用提供申請兼諾否書」の利用目的を、「生活保護法第29条に基づく保護                                   ̄ ̄ 申請者の調査」ではなく、「生活保護法第29条規定の要保護者の調査」と変更  ̄ ̄ ̄                      ̄ ̄ ̄ ̄ すべきである。  また、「税務情報利用申請書」、「総合行政情報システム税務情報利用申請書」、 「福祉総合システム端末税務情報利用申請書」の利用が必要な理由として、「生                                     ̄ 活保護受給者の所得、資産保有状況(福祉総合システムについては所得状況)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ を調査するため」ではなく、「要保護者の所得、資産保有状況(福祉総合シス                ̄ ̄ ̄ ̄ テムについては所得状況)を調査するため」と変更すべきである。  なお、職権保護の対象ではない相談者一般を「要保護者」に含めていいかと いう問題があることは念のため指摘する。 (2)情報利用権限者の範囲 【事実関係】  「税務情報利用申請書」、「総合行政情報システム税務情報利用申請書」、「福 祉総合システム端末税務情報利用申請書」及びこれらに対する承諾書に添付さ れた「税務情報利用職員届」(岐阜市税務情報利用に関する取扱要綱様式第2 号)には、税務情報利用職員として、生活福祉一課・二課の両課長以下、職員 (不正受給対策担当、嘱託員を除く)の氏名が記載されており、記載されてい る各職員が税務情報を利用することができることとなっている。  ヒアリングによれば、その理由は、税務情報利用の必要性は保護の開始決定 までの段階だけではなく保護継続中にも生じうることから、これらの職員が税 務情報を利用する可能性があるためとのことであった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  税務情報の違法な利用を予防するため、システムを利用する職員を限定すべ きである。 (3)情報利用の監査体制 【事実関係】  情報政策課にヒアリングしたところ、端末利用により情報利用をした場合、 アクセスログは、残っているとのことであった。 【意見 生活福祉一課・二課】  定期的にアクセスログをたどり、個人情報の違法な利用がなされていないか どうか、課長・係長による内部監査をすることが望ましい。 (4)本章で問題となることは、開始決定後の事務においても問題になりうる ことは念のため述べる。 11 面接事務の質の確保 【事実関係】  面接相談については、上述したとおり、本来利用することができない個人情 報を利用するなどの問題があった。面接相談員の事務のマニュアル類はないし、 課内の研修制度についても、採用時にのみ手引きについての研修が行われ、そ れ以降は研修らしい研修もないとのことである。 【意見 生活福祉一課・二課】  面接相談員には、来訪者が話しやすい環境を作り、機械的にならないように 気をつけながら、他法他施策の活用可能性なども検討しながら、面接記録票の 項目を漏れなく聞き取る必要があるため、生活保護に関する知識と、話を聞き 出す能力、経験が必要とされる。  組織として、面接事務の質の確保をすることが必要である。  面接相談員用の事務のマニュアルを作成し、面接記録票の記載から個人情報 の取扱まで、面接全般に係る研修を定期的に実施していくことが望ましい。 第4 相談(柳津分室) 1 事務の概要  岐阜市では、岐阜市福祉事務所柳津分室(以下「柳津分室」という。)にお いてもまた、生活保護に関する相談業務を行っている。柳津分室は、平成18 年に岐阜市と旧柳津町が合併したことに伴い、合併前に旧柳津町が行っていた 福祉サービスを継続するために創設された。  柳津分室が入る柳津振興事務所内の案内板にも、柳津分室の業務のひとつと して、「生活保護制度の説明・相談」が明記されている。  柳津分室の体制は、分室長1名(地域市民課長が兼務)、係長1名、副主幹 1名、嘱託員1名の計4名であり、うち1名(係長)は、生活福祉課(現在の 生活福祉一課・二課)における業務経験を有する職員であった。  柳津分室の生活保護に関する相談業務の内容は、相談者の困窮状態の把握と 生活保護制度の説明を行い、申請意思がある相談者を生活福祉一課・二課につ なぎ、同課に面接に行ってもらうというものである。柳津分室には保護の要否 判定の権限がないことから、相談者が保護の要件を充足するか否かについては 判断していない。  柳津分室特有の業務マニュアルは存在しないが、参考の意味で、生活福祉一 課・二課で利用している「岐阜市生活保護事務の手引き」をもらっているとの ことである。 2 監査の観点及び監査手続  柳津分室の生活保護相談業務の具体的内容、柳津分室と生活福祉一課・二課 との事務分担、柳津分室の生活保護相談業務の成果等について把握するため、 平成27年7月31日、岐阜市柳津地域振興事務所内の柳津分室の視察、同分室 職員に対するヒアリングを実施した。 3 柳津分室の事務分担に関する根拠規定 【事実関係】  岐阜市福祉事務所設置条例施行規則第4条によれば、柳津分室の分掌事務は、 身体障害者手帳所持証明書の交付その他の別に定める窓口事務に関すること とされており、柳津分室が行っている生活保護相談業務は、同規則にいう「別 に定める窓口事務」に含まれることになるはずである。  しかし、「別に定める窓口事務」にいう別の定めは存在しないとのことであ った。 【指摘 福祉政策課】
     今後も、柳津分室において生活保護相談業務を行うのであれば、要綱等、事 務の根拠規定を制定すべきである。 4 生活福祉一課・二課との連携体制 【事実関係】  柳津分室での生活保護に関する相談の方法は、窓口での相談及び電話相談で ある。  平成26年度における相談の件数は18件であり、うち半数が電話による相談 である。  柳津分室には面接記録票(岐阜市生活保護法施行細則第2条1号(様式第1 号))の備え付けがなく、相談内容を記録することもしていない。記録してい るのは相談件数のみである。  また、少なくとも書面の形で生活福祉一課・二課に引き継がれることはない。  ヒアリングによれば、電話による相談において、相談者に申請意思がある場 合には、電話を生活福祉一課・二課に転送し、相談者に直接生活福祉一課・二 課とやりとりをさせるようにしているとのことであった。 【意見 柳津分室 生活福祉一課・二課】  これでは柳津分室における相談の成果が生活福祉一課・二課における面接相 談以後の手続に反映されにくいものと思われる。相談者の立場からすれば、柳 津分室で相談した内容と同一の内容の相談を、再度生活福祉一課・二課でしな ければならないことになりかねない。  相談結果の適切な引継ぎによって、問題点の早期把握や聴取項目の重複防止 が可能となり、生活福祉一課・二課における面接相談の効率化が図られるもの と考える。  柳津分室においても面接記録票を利用するなどして相談内容を記録し、当該 相談票をファクシミリで送信するなどの方法で生活福祉一課・二課に引き継ぐ ことが望ましい。 5 「申請に必要なもの」と題する書類 【事実関係】  柳津分室では、窓口での相談において申請意思がある相談者に対し、申請時 に持参すべき資料の一覧を記載した「申請に必要なもの」と題する書類を交付 している。  当該書類は、申請に必要なものとして、印鑑、通帳、年金関係の書類、年金 照会回答票、健康保険証、介護保険証、身体障害者手帳、生命保険証書、家賃 のわかる書類、生活歴を書いたもの、親族関係の氏名や連絡先、給与明細が列 挙されており、表題の下に「必ず揃えて下さい!」との注意書きがなされてい る。 【規範】  保護の開始申請にあたり、通帳、年金関係書類等の挙証資料を提出すること は必要とされていない(生活保護法第24条第1項、第2項、生活保護法施行 規則参照)。  「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日 社保第34号厚生省社会局保護課長通知)によれば、資料が提出されてからで ないと申請を受け付けないなどの対応は適切ではないとされている。 【指摘 柳津分室】  確かに、申請時に当該書類に列挙された資料が揃っていれば、生活福祉一 課・二課における面接及び申請後の調査の効率化が図られ、速やかな保護開始 決定につながる可能性があることから、挙証資料を列挙した書類の交付自体は 相談者にとって有益な行為ともいえる。  しかし、柳津分室において相談者に交付している書類には、「申請に必要な もの」との表題の下に、「必ず揃えてください!」との注意書きがなされてお り、生活福祉一課・二課に面接に行くまでに当該書類を必ず揃える必要がある と受け取られかねない表現となっている。  上記のとおり挙証資料の提出は保護申請時に必要なものではないため、相談 者に挙証資料の提出が申請の要件であるとの誤解を持たれかねない表現は、改 めるべきである。  例えば、表題を「申請の際に持参して欲しいもの」とした上、注意書きにつ いては削除するか、または、「申請時までに必ず揃える必要はありませんが、 申請後の速やかな調査のために、できる限り揃えて下さい」といった表現に変 更することが考えられる。 第5 申請 1 事務の概要  保護の開始を申請する者は、原則として、要保護者の氏名及び住所又は居所 等を記載した申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。ただし、当 該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない (生活保護法第24条第1項)。  そして、申請書には、原則として要保護者の保護の要否、種類、程度及び方 法を決定するために必要な書類として厚生労働省令で定める書類を添付しな ければならないとされている(生活保護法第24条第2項)。  岐阜市では、生活保護の申請時に、生活保護申請書のほか、収入申告書、資 産申告書、生活保護法第29条の調査に対する同意書(以上、岐阜市生活保護 法施行細則第4条第2項)、地代・家賃の証明書類及び「生活保護法第61条に 基づく収入の申告について(確認)」と題する書類を提出させている。  なお、生活保護法第24条第1項及び同第2項は、平成26年7月改正により 設けられた規定であるところ、厚生労働省「生活保護法改正の概要」によれば、 この法改正によって、申請事項や申請様式をはじめ、事情がある方について認 められている口頭申請についても、現行の運用を変えるものではないと説明さ れている。 2 監査の観点及び監査手続  生活保護は申請保護を原則としており(生活保護法第7条本文)、要保護者 が急迫した状況にある場合の職権保護を除き、申請がなされない限り生活保護 は開始されない。  一方で、申請がなされると、保護の実施機関には審査・応答義務が生じる。 保護の実施機関は、要保護者の資産等の調査を行って保護の要否、種類、程度 及び方法を決定し、決定の理由を付して、原則として申請から14日以内に、 申請者に書面でこれを通知しなければならない(生活保護法第24条3項、4 項、5項)。  このように、申請は生活保護の手続的要件であるとともに、保護の実施機関 に審査・応答義務を生じさせるという重大な効果をもつものである。  そこで、生活保護申請に係る事務が適切に処理されているかどうかを監査す るため、平成26年度に保護開始決定がなされたケースのうち、平成26年4月 及び平成27年3月に保護開始決定がなされたケースの一件記録79冊を閲覧す るとともに、主に申請受理後保護開始決定までの手続段階を担当する現業員
    (以下「新規担当現業員」という。)に対するヒアリングを実施した。なお、 平成26年4月及び平成27年3月に保護開始決定がなされたケースの記録を閲 覧対象として抽出したのは、平成26年7月の生活保護法改正による影響の有 無を確認することを意図したものである。 3 生活保護申請書その他の提出書類の代筆 【事実関係】  要保護者が認知症であるため、長女の代筆により申請書類を作成したが、申 請書類には代筆である旨の記載がないというケースがあった。  また、要保護者が解離性障害(ケース記録の記載による。医療要否意見書に よれば統合失調症)のケースで、提出書類のうち「生活保護法第61条に基づ く収入の申告について(確認)」と題する書類のみを代筆者名を要保護者との 連名で記載しており、それ以外の提出書類にも筆跡から代筆であることが窺わ れるもの(生活保護申請書、収入申告書、資産申告書、生活保護法第29条の 調査に対する同意書(2通のうち1通)、口座振替依頼書、日本放送協会の確 認行為に対する福祉事務所の回答に関する同意書)があるものの、それらの書 類には代筆である旨の表示がなされていなかった。ケース記録上にも代筆をさ せた旨の記述はなかった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  要保護者本人に十分な意思能力がないと疑われる場合には、要保護者の扶養 義務者又は同居の親族を申請者とするか、生活保護法第25条により職権をも って保護を開始することを検討すべきである。 【指摘 生活福祉一課・二課】  各書類を申請者以外の者に代筆させる場合には、各書類において、代筆であ る旨及び代筆者名を記載させるとともに、ケース記録において、代筆をさせた 理由、代筆者名及び申請者と代筆者との関係を記録すべきである。 4 資産としての敷金返還請求権 (1)申告書の様式 【事実関係】  申請時に申請者から提出を受けている「資産申告書」(岐阜市生活保護法施 行細則様式第13号 巻末資料3に添付)には、賃借不動産の敷金の記載欄が 設けられていない。 【意見 生活福祉一課・二課、福祉政策課】  敷金は、賃貸借契約が終了し、不動産を明け渡す際に、未払賃料等があれば それに充当した上、残余があれば借主に返還されるものであり、申請者の資産 といえるものである。  敷金が申請者の資産であることを確実に認識するため、岐阜市生活保護法施 行細則の改正により「資産申告書」に敷金の記載欄を設けることが望ましい。 (2)添付書類 【事実関係】  申請時の添付書類に賃貸借契約書の写しがついていないケースがあった。 【意見 生活福祉一課・二課】  敷金返還請求の可否及び額を明らかにするため、賃貸借契約書の写しの提出 を求めることが望ましい。 第6 訪問調査 1 事務の概要  保護の実施機関は、申請者が生活保護の要件を充足するか否かを調査すると ともに、要保護者の生活上の問題点を把握して最も適切な給付を行うために、 申請者の家庭の訪問調査を行う。 2 監査の観点及び監査手続  開始決定前の訪問調査は、申請者が生活保護の要件を充足するか否かを調査 するとともに、要保護者の生活上の問題点を把握して最も適切な給付を行う (必要即応の原則。生活保護法第9条)ために行われる重要な業務である。  当該調査が適切に行われているかどうかを監査するため、「第5 申請 2」 で述べたのと同様の監査手続を実施した。 3 申請後1週間以内の訪問調査の実施 【事実関係】  閲覧したケースの多くは申請後1週間以内に訪問調査が実施されていたも のの、訪問調査が申請13日後となったケース、申請9日後となったケースが あった。  いずれのケースについても、訪問調査が遅れた理由は記録上不明であった。  ヒアリングによれば、申請者側の都合により1週間以内の訪問調査が実施で きない場合があるとのことであった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)によれば、保護の開始申請のあった場合は、申請 書等を受理した日から1週間以内に訪問し、実地に調査することとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  訪問調査は、要保護者の生活状況等を把握し、保護の要否判定及び要保護者 の援助方針決定の判断資料を収集するために行うものである。保護の決定通知 は原則として申請のあった日から14日以内にしなければならないとされてい るところ(生活保護法第24条第5項)、訪問調査の成果を保護の要否判定及び 要保護者の援助方針決定に適切に反映させるためには、訪問調査後要否判定ま でにある程度の時間的余裕が必要となる。  申請書等を受理した日から1週間以内に訪問し、実地に調査すべきである。 【指摘 生活福祉一課・二課】  仮に申請者側の都合により遅延するとしても、遅延の理由が記録されていな ければ、紛争化した場合に当該事情を証明することは困難である。  仮に1週間以内の訪問調査を行うことができなかった場合には、その理由を 記録化しておくべきである。 第7 資産及び収入の調査 1 事務の概要  生活保護法第4条は、保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、
    能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用すること を要件とし、また、民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助 は、すべて生活保護法による保護に優先して行わなければならないと定めてい る(保護の補足性の原理)。  上記の資産活用要件を充足するか否かを確認するために、保護の実施機関は、 以下の方法により資産及び収入の調査を行う。  すなわち、保護の実施機関は、保護の決定のため必要があると認めるときは、 要保護者の資産及び収入の状況を調査するために、当該要保護者に対して報告 を求めることができる(生活保護法第28条第1項)。  当該報告徴求にあたっては、要保護者に対して預貯金通帳、生命保険等の保 険証書、自宅不動産の権利証、給与明細、年金・手当証書、年金・手当額支給 額決定通知、障害者手帳などの挙証資料の提出を求めることになる(「生活保 護行政を適正に運営するための手引について」(平成18年3月30日社援保発 第0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知I3)、「生活保護の適正実 施の推進について」(昭和56年11月17日社保第123号厚生省社会局保護・監 査指導課長連名通知1))。  また、保護の実施機関及び福祉事務所は、保護の決定のために必要があると きは、要保護者及びその扶養義務者の資産及び収入の状況その他政令で定める 事項について、官公署、日本年金機構若しくは国民年金法第3条第2項に規定 する共済組合等に対し、必要な書類の閲覧若しくは資料の提供を求め、又は銀 行、信託会社、要保護者及びその扶養義務者の雇主その他の関係人に、報告を 求めることができる(生活保護法第29条)。  岐阜市生活福祉一課・二課では、上記規定に基づき、要保護者に資産及び収 入の状況に関する資料の提出を求めるとともに、岐阜市生活保護法施行細則第 7条第1項ないし第3項に定める様式により、保護の申請後2日~3日までの 間に銀行、生命保険会社、年金事務所等へ照会を行っている。 2 監査の観点及び監査手続  資産調査は、保護の補足性の原理(生活保護法第4条第1項)に基づき、要 保護者に適切な保護を受けさせると同時に、要保護状態にない者に保護を受け させることがないようにするために必要不可欠なものである。  そこで、岐阜市において資産調査が適切に行われているかどうかを監査する ため、「第5 申請 2」で述べたのと同様の監査手続を実施した。 3 資産処分の確認 【事実関係】 ┌────┐ │ケース1│ └────┘  要保護者に対して普通自動車の処分を指示し、所有者名義が他の者に変更さ れた車検証を徴収していたが、車検証上、使用者として要保護者の名前が残っ たままの状態となっており、それ以上の指導や使用実態の確認がなされた形跡 がなかった。 【規範】  「生活保護問答集について」(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局 保護課長事務連絡)第3の問3-20によれば、生活保護における資産の保有と は、その資産について所有権を有する場合だけでなく、所有権が他の者にあっ ても、その資産を現に占有し、利用することによってそれによる利益を享受す る場合も含まれることから、自動車の使用は、所有及び借用を問わず原則とし て認められないとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  車検証に要保護者が使用者として登録されている場合には、要保護者による 使用継続が疑われる。  車検証については所有者欄だけでなく使用者欄も必ず確認するとともに、使 用実態を確認すべきである。 【事実関係】 ┌────┐ │ケース2│ └────┘  要保護者が軽自動車を所有していたため処分を指導したが、処分の証拠とし て領収書を徴収したのみで、登録名義が変更されているかどうかを確認してい なかった。  ヒアリングによれば、業者に対しても処分の事実を確認した可能性があると のことであったが、当該事実は記録上明らかではなかった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  領収証だけでは処分の事実の確認として不十分である。  要保護者から車検証の写しの提出を受けるなどして処分の事実を確認し、そ の結果をケース記録に記載すべきである。 第8 扶養義務調査 1 事務の概要  民法に定める扶養義務者の扶養は生活保護に優先するものとされており(生 活保護法第4条第2項)、保護の申請があったときは、保護の実施機関は、「生 活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚 生省社会局長通知)第5の1、2記載の方法により要保護者の扶養義務者の存 否の確認及び扶養能力の有無を調査する。  同通知を踏まえた扶養義務調査の流れの大枠は次のとおりである。 ┌───────────────────────────────────┐ │扶養義務者の存否の確認(保護者の申告又は戸籍謄本等)         │ │  ↓                                │ │扶養能力の調査                            │ │ その職業、収入等につき要保護者その他により聴取する等の方法により、扶│ │養の可能性を調査。その結果、「扶養義務の履行が期待できる」と判断される│ │者に対しては、以下の方法により扶養能力調査を行う。          │ │【重点的扶養能力調査対象者(1)生活保持義務関係にある者、2)1)以外の親子 │ │関係にある者のうち扶養の可能性が期待される者、3)1)、2)以外の、過去に当│ │該要保護者又はその世帯に属する者から扶養を受ける等特別の事情があり、か│ │つ、扶養能力があると推測される者】                  │ │ 保護の実施機関の管内に居住する場合には、実地につき調査する。    │ │ 保護の実施機関の管外に居住する場合には、まずその者に書面により回答期│ │限を付して照会する。回答期限までに回答がないときは、再度期限を付して照│ │会、なお回答がないときは関係機関等に対して照会を行う。        │
    │                                   │ │【重点的扶養能力調査対象者以外の扶養義務者のうち扶養の可能性が期待さ │ │れる者】                               │ │ 原則として書面により回答期限を付して行う。判断により電話連絡により行│ │うことも差し支えないが、連絡がとれないときには再度の照会又は書面による│ │照会を行う。                             │ └───────────────────────────────────┘  岐阜市では、書面照会により、扶養義務調査を行っている。  岐阜市は、岐阜県施行事務監査資料として、扶養義務調査の結果を集計して いるが、その内容は、以下のとおりである。 【扶養義務調査の結果】 ┌─────────────┬─────┬─────┬─────┐ │開始年度ごとの実施状況  │平成24年度│平成25年度│平成26年度│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │開始世帯数(実数)    │  770世帯│  598世帯│  530世帯│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │扶養義務者数(延べ数)  │  1,830人│  2,093人│  1,686人│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │聴取等の方法による扶養の可│  1,733人│  1,967人│  1,585人│ │能性調査数        │     │     │     │ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │直接照会が適当でない又は │   226人│   236人│   296人│ │扶養義務の履行が期待できな│     │     │     │ │い者           │     │     │     │ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │直接照会の実施対象者数  │  1,507人│  1,731人│  1,289人│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │重点的扶養能力調査対象者数│   983人│   775人│   548人│ │(合計)         │     │     │     │ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │重点的扶養能力調査対象者数│   302人│   277人│   205人│ │(管内居住)       │     │     │     │ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │重点的扶養能力調査対象者数│    0人│    0人│    0人│ │(実地調査)       │     │     │     │ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │重点的扶養能力調査対象者以│   524人│   956人│   741人│ │外の者          │     │     │     │ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │重点的扶養能力調査対象者以│   518人│   945人│   732人│ │外(文書照会)      │     │     │     │ └─────────────┴─────┴─────┴─────┘  扶養義務者の調査は、保護の申請があったときだけではなく、保護開始決定 後も毎年度実施される。 2 監査の観点及び監査手続  扶養義務調査が適切に行われているかどうかを監査するため、「第5 申請 2」で述べるのと同様の監査手続を実施した。 3 重点的扶養能力調査対象者に対する調査 (1)実地調査の不実施 【事実関係】  平成26年度、岐阜市では、管内に居住する重点的扶養能力調査対象者が205 人いるが、実地調査は全く行われていない。ヒアリングによれば、実効性がな く、苦情など扶養義務者とのトラブルが発生することから、実施しておらず、 新規担当現業員に対して実地調査の指導もしていないとのことであった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)第5の2(2)アによれば、重点的扶養能力調査 対象者が保護の実施機関の管内に居住する場合には、実地につき調査するとさ れている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  この点については、岐阜県の施行事務監査でも指摘されていたとのことであ る。  実地調査が直ちに扶養に結びつかないことも少なくないため、現業員の負担 を考えると、実地調査までは行わず書面照会で足りるとしていることも、理解 できなくはない。  しかし、保護の実施要領が実地調査を要求している以上、実地調査を一律行 わないとするのは相当ではない。  個々のケースに照らし、実地調査を検討し、その判断および理由をケース記 録に明記すべきである。 (2)重点的扶養能力調査対象者の認定 【事実関係】  ヒアリングによれば、重点的扶養能力調査対象者のうち、2)の「扶養の可能 性が期待される者」に該当するか否かについては明確な判断基準はなく、個々 の新規担当現業員の判断に委ねられているのが実態である。 【意見 生活福祉一課・二課】  生活保護法による保護の実施要領においては、重点的扶養能力調査対象者に 該当するか否かによって扶養能力調査の程度に差を設けている。しかし、現状 では重点的扶養能力調査対象者に該当するか否かの判断が個々の新規担当現 業員に委ねられており、運用の統一が図られていない可能性がある。  重点的扶養能力調査対象者該当性について、統一的な判断基準を設けるか、 ケース診断会議に諮るなどして、個々の現業員による判断の不統一を防止する ことが望ましい。 4 扶養照会の発送時期 【事実関係】  保護の要否判定を行うケース診断判定会議の時点で扶養義務者の住所が判 明していたにもかかわらず、扶養照会書の発送が保護開始後1か月以上経過し た時期になされているケースがあった。  照会書の発送が遅れた理由は記録上不明であった。 【指摘 生活福祉一課・二課】
     扶養義務者による扶養の有無・程度は、保護の継続及び収入認定に影響する。  扶養義務者の住所が判明した場合には速やかに扶養照会を行うべきである。 5 仕送りの収入認定 【事実関係】  扶養照会に対し、保護開始決定後に扶養義務者から毎月金銭を仕送りすると の書面回答があったものの、その後も収入認定されていないケースがあった。  これらのケースは、扶養義務者からの回答を踏まえ、仕送りの有無を確認す べき旨がケース記録又はケース覚書に記録されている。  しかし、その後も収入認定はされておらず、また、申請者及び扶養義務者に 対して仕送りの有無が確認された事実は少なくとも記録上には表れていない。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発 社第123号厚生事務次官通知)第8の3の(2)イによれば、社会通念上収入 として認定することを適当としないもののほかは、すべて収入として認定する こととされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  扶養義務者から仕送りをする旨の回答があった場合には、要保護者及び扶養 義務者に対して仕送りの有無を確認し、仕送りをしていた場合には、収入認定 すべきである。 第9 扶養義務者に対する通知 1 事務の概要  保護の実施機関は、知れたる扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行 していないと認められる場合において、保護の開始の決定をしようとするとき は、厚生労働省令で定めるところにより、要保護者に対し、要保護者の氏名及 び保護の開始の申請があった日を記載した書面を作成し、要保護者に保護の開 始の決定をするまでの間に当該扶養義務者に対して通知しなければならない (生活保護法第24条第8項、生活保護法施行規則第2条)。平成26年7月施 行の改正生活保護法により追加されたものである。  この通知を行うべき場合については、生活保護法施行規則第2条第1項及び 厚生労働省の通知において、厳格な要件が定められている(下記規範部分参照)。 2 監査の観点及び監査手続  改正に従って適切に事務執行がなされているかを監査するため、ヒアリング により適用事例の有無を確認した。  平成26年度中に保護が開始されたケースのうち生活保護法第24条第8項に よる通知を行ったケースが1件あるとのことであったので当該記録を閲覧し た。 3 生活保護法第24条第8項の通知を行うか否かの判断 【事実関係】  上記ケースは、申請前の面接の段階で、申請者からの聞きとりにより、妻と 20年近く別居していることが判明していたが、ケース診断会議において、当 該妻に対し、生活保護法第24条第8項に基づく通知を行うとともに、扶養義 務の履行についての照会に対し、扶養不可との回答が届いた場合には、生活保 護法第28条第2項に基づく報告を求めることが指示されたケースであった。  その後、妻に扶養義務履行の可否を調査するために管外扶養調査を実施した ところ、申請者と妻との夫婦関係が破綻していることが判明したため、生活保 護法第28条第2項に基づく報告要求も行わないこととした。 【規範】  生活保護法施行規則第2条第1項によれば、生活保護法第24条8項の通知 は、次のいずれにも該当する場合に限り、行うものとされている。 1)保護の実施機関が、当該扶養義務者に対して法第77条第1項の規定による  費用の徴収を行う蓋然性が高いと認めた場合 2)保護の実施機関が、申請者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等  に関する法律第1条1項に規定する配偶者からの暴力を受けているもので  ないと認めた場合 3)前各号に掲げる場合のほか、保護の実施機関が、当該通知を行うことによ  り申請者の自立に重大な支障を及ぼすおそれがないと認めた場合  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)第5の3によれば、生活保護法第24条第8項の 通知は、「明らかに扶養義務を履行することが可能と認められる扶養義務者」 が、民法に定める扶養を履行していない場合に通知されることとなっている。 また、「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月 1日社保第38号厚生省社会局保護課長通知)第5問5によれば、上記局長通 知における「明らかに扶養義務を履行することが可能と認められる扶養義務者」 とは、扶養調査の結果、1)定期的に会っているなど交際状況が良好であること、 2)扶養義務者の勤務先等から当該要保護者に係る扶養手当や税法上の扶養控 除を受けていること、3)高額な収入を得ているなど、資力があることが明らか であること等を総合的に勘案し、扶養義務の履行を家庭裁判所へ調停又は審判 の申立てを行う蓋然性が高いと認められる者をいうとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  上記ケースでは、申請前の面接の段階で、申請者から、妻とは長期間別居し ており、居所も知らないとの申告があり、また、生活保護法第24条第8項の 通知を行う時点で妻に資力があることが明らかであるという事情も、ケース記 録上、うかがうことはできなかった。上記局長通知及び課長通知に従えば、妻 は「明らかに扶養義務の履行が可能と認められる扶養義務者」に該当せず、生 活保護法第24条第8項による通知の対象者にはならない可能性が高い。  生活保護法第24条8項による通知の適用については、上記規則の要件及び 「明らかに扶養義務を履行することが可能と認められる扶養義務者」に該当す るかどうかを確認し、その過程を記録すべきである。 第10 要否判定・援助方針の策定 1 事務の概要  申請後、新規担当現業員において、「第6」以下で記載したところにより行 った各種調査の結果を踏まえて保護台帳兼世帯名簿を作成し、生活福祉一課・ 二課長又は査察指導員により構成されるケース診断会議を開催して、保護の要 否判定、扶助額の決定、ケース援助方針(巻末資料3に添付)の決定及びケー ス格付の決定を行う。ケース診断会議において保護の要否判定がなされると、
    新規担当現業員において保護決定調書を作成し、同調書及び保護台帳(ケース) について福祉事務所長の審査・決裁を受ける。 2 監査の観点及び監査手続  要否判定は、申請者の生存権に直結する重要な判断である。  岐阜市の要否判定手続が適正になされているかを検証すべく、「第5 申請 2」で述べたのと同様の監査手続を実施した。また、平成27年10月23日、 ケース診断会議の傍聴を行った。 3 ケース診断会議の記録化 【事実関係】  ケース診断会議は、生活福祉一課・二課の課長及び各課の査察指導員のうち 3名と、対象ケースの担当者である新規担当現業員によって構成される。  課長及び査察指導員は持ち回りでケース診断会議を担当しており、必ずしも 関与した新規担当の査察指導員が判定会議に入るわけではない。  ケース診断会議の際、新規担当現業員から課長・査察指導員に配布されるも のは保護台帳兼世帯名簿の写しのみである。  新規担当現業員が申請の経緯、調査の内容及び援助方針等につき口頭で説明 を行う形がとられている。なお、保護の決定通知は原則として申請があった日 から14日以内に行うものとされているところ(生活保護法第24条5項本文)、 生活保護法第29条による調査及び扶養義務調査に対する回答が到着するまで には一定の期間を要する場合があることから、要否判定は、ケース診断会議の 時点までに得られた調査結果をもとに行われることになる。新規担当現業員の 説明に現れた問題点を重点的に協議する。気になった点は、新規担当現業員が 持参するケース記録をその場で確認する場合もあるとのことであった。  上記配布資料・説明を踏まえて協議を行い、保護の要否等を判定する。  しかしながら、会議の議事録は作成されていなかった。また、ケース記録上 もごく簡潔な記録(「判定会議にて保護要と判断される」等)となっている場 合が大半であった。 【規範】  保護の要否判定、保護の決定にあたっては、要保護者への調査指導を徹底し、 未処理のないよう留意するとともに、ケース診断会議を適宜活用し、援助方針 等を明確にする。特に、援助困難ケースについては、その後のケース援助に重 大な影響を及ぼすことになるので、自立阻害要因を的確に把握し、ケース診断 会議における検討を行う等により組織として当該被保護者の状況に応じた援 助方針を樹立するよう徹底する。 【指摘 生活福祉一課・二課】  ケース診断会議における判断の過程が記録上把握できない状態となってお り、ケースの引継を受けた現業員による経過把握や、不服申立てがあった場合 の立証に不都合が生じる可能性がある。  そこで、会議において検討すべき事項を記載した議事録の書式を定め、当該 書式に沿って議事を進行し、会議の経過や判断根拠となる資料を議事録に記録 すべきである。 4 保護台帳兼世帯名簿の様式 【事実関係】  岐阜市の保護台帳兼世帯名簿の様式(岐阜市生活保護法施行細則様式第2号。 巻末資料3に添付)には、賃借不動産の敷金の記載欄が設けられていない。 【意見 生活福祉一課・二課、福祉政策課】  敷金は、賃貸借契約が終了し、不動産を明け渡す際に、未払賃料等があれば それに充当した上、残余があれば借主に返還されるものであり、申請者の資産 である。  敷金を申請者の資産として確実に把握するため、岐阜市生活保護法施行細則 を改定し、保護台帳兼世帯名簿に敷金の記載欄を設けることが望ましい。 5 援助方針についての記載 【事実関係】  援助方針について、「治療専念」などのように、四文字熟語が記載されてお り、抽象的でその具体的内容が不明確なものも散見された。 【規範】  「生活保護問答集について 事務連絡」(平成21年3月31日厚生労働省社 会・援護局保護課長通知)問12-1 援助方針策定上の留意点(2)によれば、 方針はできるだけ具体的に記載すること。いわゆる四文字熟語で終わるような 方針は極力避ける必要があるとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  援助方針については、その後のケース処遇の根本となるものであるから、世 帯個々の実情を踏まえて、できるだけ具体的に記載すべきである。 6 ケース格付基準の策定 【事実関係】  生活保護法第1条にある「最低限度の生活の保障」と「自立の助長」に向け て、援助方針が策定され、訪問調査等のケース処遇がなされる。生活保護法に よる保護の実施要領について(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局 長通知)第12 調査及び援助方針等によれば、把握した要保護者の生活状況 を踏まえ、個々の要保護者の自立に向けた課題を分析するとともに、それらの 課題に応じた具体的な援助方針を策定することとあり、生活保護法による保護 の実施要領の取扱いについて(昭和38年4月1日社保第34号厚生省社会局保 護課長通知)では、訪問調査における訪問基準の策定について述べる。  岐阜市においては、被保護世帯について、ABCDEにケース格付され、訪 問調査の頻度が区別されている。  ケース格付の分類については、概ね、以下のとおりである。 ┌────────────────────────────┐ │1)Aケース 1か月に1回、訪問調査する。        │ │      自立援助。要指導。就労可能な世帯が多い。  │ │2)Bケース 2か月に1回、訪問調査する。        │ │      生活、収入状況が不安定。          │ │      阻害要因があるものの、就労可能な世帯が多い。│ │3)Cケース 3か月に1回、訪問調査する。        │ │      生活、収入状況が安定。就労不能な世帯が多い。│ │4)Dケース 6か月に1回、訪問調査する。        │ │      6か月以上の施設入所者等。         │ │5)Eケース 1年に1回、訪問調査する。         │ │      6か月以上の市外施設入所者等        │ └────────────────────────────┘
     ケース診断会議では、課長及び係長のうち3名が、上記ケース格付基準を用 い、担当現業員と協議して、組織的に、ケース格付や援助方針を決定している。  このケース格付基準は、「岐阜市生活保護事務の手引き 平成26年7月」に ある「訪問計画の世帯分類(ケース格付)基準表」を簡略したものとなってい るため、判断が簡易である反面、高齢世帯をCランクに固定しがちであるなど 柔軟なケース格付ができない状態になっている。  平成27年10月23日に傍聴したケース診断会議においても、過去の生活態 度に問題があり就労したばかりの被保護者(その他世帯)であったが、Cラン ク「収入、病状、生活が安定しており特に問題がない」か、Aランク「生活態 度に問題があり、指導を要する」に該当するかという二者択一的な選択を判断 するというような議論となっていた。なお、Bランクでは、「現に治療中で、 就労できない」「治療のかたわら就労している。」となっていた。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日 社保第34号厚生省社会局保護課長通知)では、訪問調査における訪問基準の 策定について、以下のとおり、述べられている。 ┌───────────────────────────────────┐ │【訪問調査における訪問基準の策定について】              │ │問(第12の1)実施機関において、被保護世帯の世帯類型や助言指導の必要 │ │性等に応じた統一的な訪問基準を作成し、それに基づいて訪問計画を策定す │ │ることとして差しつかえないか。                    │ │答 訪問調査については、1)生活状況の把握、2)保護の要否及び程度の確認、│ │ 3)自立助長のための助言指導などを目的として実施することが考えられる │ │ ところであるが、これらの訪問目的を達成するために考慮された訪問基準で│ │ あれば、お見込みのとおり取り扱って差しつかえない。なお、上記の訪問基│ │ 準の設定を行った場合であっても、被保護者の個々の状況に応じて、適宜、│ │                  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄│ │ 必要な訪問調査の実施に留意されたい。                │ │  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                │ └───────────────────────────────────┘ 【意見 生活福祉一課・二課】  ケース格付基準のあてはめに拘らず、ケース診断会議において、被保護者の 個々の状況に応じたケース格付等の対応を検討することが望ましい。先ほどの 事例では、Bランクにすることを検討することはあり得たと思われる。 第11 保護の決定・通知 1 事務の概要  ケース診断会議により保護要と判定されたケースについては、現業員が保護 決定調書(岐阜市生活保護法施行細則様式第3号)を起案し、所長の決裁を受 けた上で、決定通知書(同第17号)により申請者に通知する。  保護の実施機関は、原則として、保護の開始の申請のあった日から14日以 内に、保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもっ てこれを通知しなければならない(生活保護法第24条第3項・第5項本文)。  これは、生活保護を申請する人は生活困窮状態にある人であるから、早期に 生活困窮状態を解消するために、速やかに保護を決定しこれを申請者に通知す べきとするものである。  例外的に、扶養義務者の資産及び収入の調査に日時を要する場合その他特別 な理由がある場合には、これを30日まで延ばすことができるが(同条第5項 但書)、この場合には通知書に理由を明示しなければならない(同条第6項)。 2 監査の観点及び監査手続  申請者の生存権保障という見地からは、保護開始決定は可及的速やかになさ れる必要がある。かかる事務手続が適切になされているか検証すべく、「第5 2 申請」で述べたのと同様の監査手続を実施した。 3 申請から原則14日以内の決定通知 【事実関係】  閲覧したケースには14日を超過したケースが多数含まれていた。  具体的には、次のとおりである。 1)申請から決定通知までの期間 ┌────┬────┬────┬────┐ │ 総数 │14日以内│14日超過│30日超過│ ├────┼────┼────┼────┤ │   73│   26│   47│    0│ └────┴────┴────┴────┘  期間を確認できた78件からケース分離の5件を除いた73件のうち、14日 を超過したケースが47件あった(なお、決定通知の日付が記録上不明である ため、申請から決裁日までの期間を基準としている)。  14日を超過したケースのうち、23件は申請から要否判定・保護決定調書起 案(両者はほぼ同日に行われる)までの期間が14日以内であるものの、決定 通知までの期間が14日を超過しているケースであった。  閲覧したケースの中には、申請から保護決定の通知までに30日を超過した ケースはなかった。 2)延長理由の内訳 ┌──────┬───────┬───────┬────────┐ │理由記載あり│扶養調査に日時│資産調査に日時│その他調査に  │ │件数    │を要したため │を要したため │日時を要したため│ ├──────┼───────┼───────┼────────┤ │     15│      10│       4│        1│ └──────┴───────┴───────┴────────┘  14日超過47件中、延長理由が記載されていたのは15件であった。このう ち、「扶養調査に日時を要したため」が10件、「資産調査に日時を要したため」 が4件、「その他調査に日時を要したため」が1件であったが、ヒアリングに よると、実際には多忙のために遅延する場合もあるとのことであった。  なお、決定はケース診断会議を経た上でなされるところ、ケース診断会議に かけるタイミングは新規担当現業員が、資産調査の回答を待つ必要性の程度、 手持ち金の有無・額、支給日(毎月5日、15日、25日)までの日数などを踏 まえて個別に判断しているとのことであった。 【規範】
     生活保護法第24条第3項及び第5項によれば、保護の実施機関は、原則と して、保護の開始の申請のあった日から14日以内に、保護の要否、種類、程 度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもってこれを通知しなければなら ないとされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  生活保護法が申請から14日以内の書面による決定通知を原則としているの は、保護決定は申請者の生活に直結する問題であり、緊急性を有するものであ ることから、速やかに保護を決定しこれを通知すべきものとしたものと解され る。  閲覧する資料の限りでは、岐阜市の現状では、14日を超過したケースが閲 覧したケースの半数以上を占めており、原則と例外が逆転した状態となってい る。  延長理由に正当性がある場合はやむを得ないが、あくまで14日以内の通知 に努めることが望ましい。  なお、14日を超過したケースの半数は、申請から要否判定・保護決定調書 起案までの期間は14日以内であるというケースである。これは、申請から要 否判定・保護決定調書起案までの期間が14日以内であれば適法であるとの認 識に基づくものである可能性がある。しかし、生活保護法第24条第5項にお いて申請のあった日から14日以内にしなければならないとされているのは、 要否判定・保護決定調書の「起案」ではなく、保護の決定の書面による「通知」 であるから、この認識は誤りである。 4 決定通知書の理由明示 【事実関係】 1) 決定通知書への延長理由記載の有無 ┌──────┬──────┬──────┬───────┐ │14日超過件数│理由記載あり│理由記載なし│通知書添付なく│ │      │      │      │  不明   │ ├──────┼──────┼──────┼───────┤ │     47│     15│     29│       3│ └──────┴──────┴──────┴───────┘  申請から決定通知までに14日を超過した場合には、保護決定通知書(巻末 資料3に添付)にその理由を記載しなければならないところ、通知書に理由が 記載されていたものは15件にとどまり、決定通知書の添付がないために理由 記載の有無が不明である3件を除く他の29件は、保護決定通知書に理由の記 載がなかった。 2) 延長理由不記載の原因 ┌────────┬───────────┬──────────┐ │理由記載なし件数│申請から要否判定・保護│申請から要否判定・保│ │        │決定調書起案までの期 │護決定調書起案まで │ │        │間が14日以内であるも │の期間が14日を超過 │ │        │の          │しているもの    │ ├────────┼───────────┼──────────┤ │       29│          23│          6│ └────────┴───────────┴──────────┘  理由の記載がない29件のうち、23件は申請から要否判定・保護決定調書起 案(両者はほぼ同日に行われる)までの期間は14日以内であるものの、決定 通知までの期間は14日を超過しているケースであり、6件は申請から要否判 定・保護決定調書起案までの期間が14日を超過しているケースであった。 【規範】  生活保護法は申請から14日以内の決定通知を原則としており、特別な理由 があって通知が14日以内に決定を通知することができない場合には、当該理 由を決定通知書に記載し、申請のあった日から30日以内の通知がなされない 限り違法となる。 【指摘 生活福祉一課・二課】  生活保護法第24条第6項に従い、申請から保護の決定通知までに14日を超 過する場合には、その理由を明示すべきである。 5 保護決定通知書写しの記録への添付 【事実関係】  上記41)で述べたとおり、記録に保護決定通知書写しの添付がなく、理由記 載の有無が不明であるものが3件あった。 【規範】  岐阜市文書取扱規則(文書の整理)第37条第1項によれば、文書は、常に整 理してその所在及び処理状況等を明確にし、あらゆる事態に対処して臨機の処 置がとれるよう整備しておかなければならないとされ、同第2項によれば、文 書の整理は、ファイリング・システムによって行うとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  保護決定通知書写しは、上記規則の「文書」に当たるため、その添付漏れは 岐阜市文書取扱規則第37条違反であると考える。  申請者に対して決定を通知した事実、延長の場合には決定通知書にその理由 を記載したことを記録化することで、事後の手続上の過誤を防止することがで き、また不服申立てがあった場合の証拠となる。  保護決定通知書写しを作成して記録に添付しておくべきである。 6 保護決定通知書の作成日付 【事実関係】  閲覧したケースの中には、保護決定通知書の作成日付が、保護決定調書の決 裁日よりも前の日付となっているものがあった。 【規範】 保護決定通知書作成の前提として、保護決定調書の決裁がなされていること が必要である。  岐阜市福祉事務所設置条例施行規則別表においては、保護開始決定の決裁権 者は福祉事務所長である。 【指摘(改善報告)生活福祉一課・二課】  保護決定は福祉事務所長の決裁事項であり、保護の決定時点は保護決定調書 を所長が決裁した時点と理解されることから、保護決定通知書の作成日付が保 護決定調書の所長決裁日(=保護決定日)よりも前の日付となることは、本来 あり得ないことである。  上記のような事態が生じるのは、保護決定調書の起案日を入力すると、自動 的に保護決定通知書の作成日付にも同日の日付が入力されてしまうという福
    祉総合システム上の問題が原因とのことであるが、決定と通知の先後関係に疑 念を生じさせる状態となっており、是正すべきである。  なお、以上は福祉総合システムの変更以前の問題である。システム変更後の 平成28年1月時点では、保護決定通知書の作成日は決裁後に記入していると のことであり、上記の問題は是正されたとのことである。 7 決定の通知方法 【事実関係】  申請者に対する保護決定通知書の交付方法は、普通郵便による郵送または手 渡しで行っている。 【意見 生活福祉一課・二課】  保護の決定に対する審査請求期間は申請者が決定を知った日の翌日から起 算されるところ、上記の通知方法によると、申請者が決定を知った日(郵送の 場合は到達日、手渡しの場合には交付日と解される)につき客観的な証拠資料 が残らず、審査請求期間の起算点の立証が困難となる。  保護決定通知書の交付にあたっては、手渡しによる場合は交付した日付を、 郵送の場合には発送した日付を、ケース記録に記載することが望ましい。 第12 申請の取下げ 1 概要  保護の開始を申請した者(以下「申請者」という。)はその意思を取り下げ ることができる。  申請が取り下げられると、申請に対する応答義務がなくなり、決定がなされ ないこととなる。 2 監査の観点及び監査手続  以上のとおり、申請の取下げがなされた場合には、当該申請に対し応答する 必要がなくなるという重大な効果をもたらすものである。  そのため、申請に対する取下げ意思が、申請者の真意に基づくものであった か、すなわち、1)申請者自身の意思に基づくものか、2)取下げが、強制ではな く、「任意」になされたものであった否かという点が、問題となりうる。  また、取下げが重大な効果をもたらすため、取下げ意思の確認については、 一人の担当者レベルで判断すべきではなく、組織としての確認・対応がなされ ていることが重要となる。  以上の問題意識に基づき、平成26年度に申請が取り下げられたケースのう ち17件の一件記録を閲覧するとともに、生活福祉一課・二課職員に対するヒ アリングを実施した。 3 取下げ意思能力 (1)認知症の疑いがある者の取下げ 【事実関係】  申請者が、その日が何日であるか認識できておらず、また、一日前に交わし た約束すら覚えていないという状態であり、申請者の知人によれば、認知症の 症状が見受けられると供述しているケースがあった。  財産調査の結果、生命保険解約返戻金の存在が判明したことから、申請者に 対して取下げを促したところ、前記のような状態の申請者が記載した取下書が 取り付けられた。 【指摘 生活福祉一課・二課】  少なくとも記録上は、取下げが意思能力をもった状態でなされたとはいえな い。申請者本人の意思能力を有しない状態でなされた取下げは無効(申請者本 人にその効果が帰属しない)である。そうすると、理論的には、(その申請自 体が有効であったかはともかくとして)申請がなされてから、岐阜市がそれに 対して応答をしていないという状態が継続していることになりかねない。  申請者の意思能力に疑念が生じるような場合には、申請者の意思能力の有無 を確認し、意思能力がないと判断されたときは、却下すべきである。 (2)取下書の代筆 【事実関係】  申請者は、会話に反応はするが、ほぼ会話ができる状態ではないため、申請 段階から、親族が申請手続に関わっていたところ、その親族が申請者本人を援 助していく決意をし、保護開始申請を取下げるという決断したケースがあった。  この際に取り付けられていた取下書は、当該親族が申請者名義で代筆したも のであった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  取下書が代筆によってなされている場合、申請者の取下げ意思を確認し、そ の意思を確認した旨の記録を確実に残しておくべきである。  取下げ意思が確認できた場合、取下書において、代筆である旨及び代筆者名 を記載させるとともに、ケース記録において、代筆をさせた理由、代筆者名及 び申請者と代筆者との関係を記録すべきである。 4 取下げの任意性 【事実関係】  財産調査により、申請者名義の預金口座が判明したため、申請の取下げを促 したところ、申請者が取下げは自発的に行うものであるのに指示を受けてから するというのはおかしいと不満を述べていたにもかかわらず、その当日に記載 された取下書が提出されていたケースがあった。  記録上、申請者が「納得した」などの記録は残されていなかった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  申請者自身が真正面から、取下げは自発的に行うものと述べていたものであ り、担当者から相当な説得がなされた上で、取下書の徴求がなされたものと思 われる。しかし、説得を受けた後の、申請者の様子・動向は記載がなされてい ない以上、申請者の取下げに任意性があったかはかなり疑問が残るケースであ る。  取下げを説得して納得の上で取下書が提出されたのであれば、申請者の様 子・動向など納得に至る経過を記録すべきである。  納得が得られないような場合には、無理に取下げを説得するのではなく、却 下にて対応すべきである。 5 ケース診断会議の開催 【事実】  平成26年度に取下げされたケース17件につき、ケース診断会議がなされた とする記録は何も残されていなかった。 【規範】  岐阜市には、いかなる場合にケース診断会議を開催するかについて定めた規
    定はない。ただし、岐阜市が岐阜県の施行事務監査の際に提出している資料に おいては、申請がなされた場合に、取下にて対応を終了する場合には、ケース 診断会議が全件必要とされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  前記のとおり、取下げにより、申請に対する応答が不要になるという重大な 効果を有することから、取下げが有効であるか否かの確認は、岐阜市にとって も重要なことである。そうしたことから、取下げにより対応終結する場合には、 全件、ケース診断会議にかけられることとしているはずである。  平成26年度取下げ終結事案について、記録上ケース診断会議にかけられた とする記録が残されていないという結果が、前述の指摘意見である取下げ意思 の確認及び任意性の確認が疎かになった事案につながっていたとも考えられ る。  取下げ事案については、全件ケース診断会議に付した上、その記録化をすべ きである。 第13 申請の却下 1 概要  保護の申請がなされたときには、保護の要否等を決定し、申請者に対して書 面をもって、これを通知しなければならない(生活保護法第24条第3項)。そ して、この通知は、原則として申請のあった日から14日以内にしなければな らない(同条第5項)。  すなわち、保護開始要件を満たさないときには、申請取下げがなされない限 りは、期限内に申請を却下しなければならない。 2 監査の観点及び監査手続  保護開始要件を満たさない場合の処理としては、前述の取下げとともに却下 の手続が考えられるところ、取下げと却下は表裏一体の関係にあると思われる。 すなわち、保護開始要件を満たさない場合には、取下げが可能な場合(すなわ ち、意思能力に問題がない場合)には、取下げの勧告をひとまず行ったうえで、 強制にならない限りにおいて、取下書を徴求し、それ以外のケースが却下対応 ということになる。  そうすると、却下に至った事案としては、取下げ勧告には応じたくなかった 申請者の事案などが予想され、そうした事案について適正な事務がなされてい るか監査する必要があると考えた。  以上の問題意識に基づき、平成26年度に申請が取り下げられたケースのう ち4件の一件記録を閲覧するとともに、生活福祉課一課・二課職員に対するヒ アリングを実施した。 3 ケース診断会議の記録方法 【事実】  却下終結事案については、記録上、ケース診断会議を行ったとの記録は残さ れているものの、ケース診断会議が行われた日時や出席者、議論状況などの記 録化はなされていない。 【意見 生活福祉一課・二課】  却下事案については、意思能力が認められない申請者の場合のほか、任意の 取下げには至らなかった事案も予想されるところ、一般論として、後日紛争に なる可能性がある事案が一定数存在するものとも考えられる。  却下事案については、ケース診断会議を行ったことの記録だけでなく、その 日時や出席者、議論状況など具体的な記録をすることが望ましい。 第5章 地区担当現業員の事務 第1 事務の概要  本監査において確認された地区担当現業員の事務手続の概要は、以下のとお りである。 ┌────────────────────────────────────┐ │1)援助方針及び訪問計画の策定                      │ │ 地区担当現業員は、新規担当現業員から、ケースの引継を受け、次の業務  │ │を行う。新規における業務内容については、第4章を参照。         │ │ 新規担当現業員において策定された援助方針や課題をもとに、被保護世帯  │ │訪問計画及び実施計画(巻末資料3に添付)を作成する。          │ │                                    │ │2)訪問調査                               │ │ 地区担当現業員は、被保護者の住居や入所先、入院先を訪問する。     │ │ 訪問頻度については、AケースからEケースへと区分され、A(1月に1  │ │回)、B(2月に1回)、C(3月に1回)、D(6月に1回)、E(1年に1│ │回)とされる。                             │ │ 生活状況を把握し、保護の適正な実施及び自立更生のために、助言や必要  │ │な指導(口頭)を行う。                         │ │ 査察指導員と同行することもある。                   │ │                                    │ │3)復命・起案・審査                           │ │ 現業員は、訪問調査の結果などをもとに、ケース記録を記載し、査察指導  │ │員の決裁を受ける。                           │ │ また、現業員は、保護の変更等決定伺を行う。              │ │ 査察指導員は、ケース記録を審査し、保護決定の審査を行うほか、現業員  │ │に、指導監督をする。                          │ │ 査察指導員は、査察指導票に、訪問調査の状況等を記録する。       │ │                                    │ │4)実態把握(新規担当については第4章参照)               │ │ 被保護者(就労収入がある者)に、収入申告書の提出を毎月行わせる。   │ │ 就労可能な被保護者には、求職活動報告書・収入申告書を提出させる。   │ │ 被保護者に対して、資産に変化があれば、報告するよう、指導する。    │ │ 課税台帳の突合、扶養義務調査を毎年行う。               │ │ 訪問調査などで、収入や資産の申告に疑問がある場合、勤務先や金融機関  │ │等に法第29条調査を行う。                        │ │ 実態把握の結果、法第63条決定、法第78条決定がありうる(第9章参照)。 │ │                                    │ │5)指導及び指示等                            │ │ 保護者の生活態度等に問題があれば、口頭で指導及び指示をする。     │ │ 改善がなされない場合や悪質な場合は、文書指導等をする。        │ │ 文書指導により改善されない場合、保護が停止されたり、保護が廃止され  │ │たりすることもある。                          │
    │                                    │ │6)ケース診断会議                            │ │ 法第63条決定及び法第78条決定、文書指導、保護の停止や廃止等の問題   │ │点があれば、ケース診断会議に諮る。                   │ │ ケース診断会議は、処遇判定票の回覧による書面決裁で代替されている場  │ │合と、課長及び係長のうち3名と担当現業員と協議する場合の2つがある。  │ │ 保護の停止、廃止については、第8章参照。               │ │ 法第63条決定や法第78条決定については、第9章参照。          │ │                                    │ │7)援助方針及び訪問計画の評価及び策定                  │ │ 毎年3月に、1年間の援助方針及び訪問計画を評価し、翌年度の援助方針  │ │及び訪問計画を策定する。                        │ │ 援助方針及び訪問計画は、「最低限度の生活を保障」することと、「自立を │ │助長すること」を目的として、策定される。                │ └────────────────────────────────────┘ 第2 監査の観点及び監査手続 1 書類監査  ケース番号「下一桁」を「5」とし、年代ごとに抽出したケース記録66件 (A19件、B22件、C20件、D3件、E2件)を閲覧することで、各ランク のケースを書類監査し、ケース記録の内容や岐阜市における生活保護事務の概 要を把握した。  その後、平成26年度に、法第63条及び法第78条の適用があった252件の ケース記録のうち、2つの係のケース記録を中心に50件を抽出して、閲覧し た。法第63条及び法第78条の適用がある事案は、生活保護事務に問題点があ った可能性が高いと考えたからである。その後、法第63条適用及び法第78 条適用のケース記録のうち、返還金額が多額のものについては、生活保護事務 における問題点が深刻である可能性が高いと考えた。そのため、法第63条及 び法第78条の返還金額50万円以上のケース記録のうち、法第78条案件につ いては全件、法第63条案件については分割返済となっている案件など、合計 30件を抽出し、閲覧した。  また、岐阜市生活保護事務の手引き(平成26年7月)、岐阜市生活保護事務 の手引き(平成23年4月)や不正受給防止対策マニュアル(平成27年3月)、 法第63条及び法第78条の適用一覧表、平成27年度資産台帳(土地・家屋)、 求職活動状況・収入申告書、収入申告書、稼働年齢対象者リスト、被保護世帯 等訪問計画および実施表、扶養義務調査票、扶養能力調査の結果について(報 告)などを閲覧した。  その他、岐阜県の施行事務監査資料(平成25年度~平成27年度)、厚生労 働局の施行事務監査資料、審査請求の資料(ケース記録)を閲覧した。 2 ヒアリング  地区担当現業員の事務は範囲が広いこともあり、横断的に、ヒアリングを実 施した。 3 訪問調査  訪問調査活動は、地区担当現業員の最も重要な活動であり、継続ケースの取 扱いにおいても、中心となる業務である。そのため、訪問調査の現場を知るこ とが重要であると考え、以下のとおり、訪問調査に同行した。  Cランク(その他世帯)のケースを5件(平成27年10月28日実施)、Aラ ンク(無料低額宿泊所)のケースを2件(平成28年1月8日実施)、Dランク (施設)のケースを4件(平成28年1月14日実施)である。 4 ケース診断会議(処遇判定会議)  ケース記録の閲覧及びヒアリングを通じて、岐阜市の生活保護行政において は、法第63条決定や法第78条決定など組織的判断をする場面において、ケー ス診断会議を開くなどして、組織として意思決定をしていないか、不十分では ないかという疑問が生じた。  そこで、ケース診断会議について、以下のとおり、新規案件の場合と継続案 件の場合と、2つの場面について傍聴した。  新規案件を3件(平成27年10月23日実施)、継続案件を2件(平成27年 12月10日実施)である。 第3 ケース処遇(援助方針) 1 はじめに  第4章では、開始決定段階におけるケース処遇(援助方針)について述べ た。本章では、開始決定後継続段階でのケース処遇(援助方針)の問題点に ついて述べる。 2 援助方針やケース格付の変更 【事実関係】  援助方針は開始決定後も毎年度定めるものである。また、開始決定後、ケー ス格付の変更が行われることもある。これらは、現業員と査察指導員の協議に よっており、ケース診断会議を開催することはない。  そのため、統一的な判断となっていないのではないかと思われるようなケー スが散見された。例えば、傷病のため、現時点では働けないが、回復すれば働 ける可能性がある場合、あるケースではCケースとなっており、別のケースで はAケースのまま変更されないものもあった。  また、ケース記録には、ケース格付を変更する場合の理由が記載していない もの、格付の根拠が抽象的で不明確なものも散見された。 【指摘 生活福祉一課・二課】  ケース診断会議を開くなどして、組織的に、統一された基準で、ケース格付 変更を行うべきである。 【指摘 生活福祉一課・二課】  訪問計画策定時において、ケース格付の見直しを適切に実施するために、ケ ース格付の判定根拠資料について、ケース記録やケース診断会議録などに明示 すべきである。 3 市外の施設入所者についてのケース格付 【事実関係】  被保護者が、薬物治療のため、東海地方や関西地方のダルク(薬物依存者の 回復支援施設)など各地のダルクへ入所したケースがあるが、実施機関は岐阜 市福祉事務所のままであった。  そのため、1年に1回、施設担当の現業員以外の現業員と手分けして、各地
    のダルクなど県外の居住施設を訪問調査するとのことであった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発 第123号厚生事務次官通知)によれば、「保護の実施責任は、要保護者の居住 地又は現在地により定められるが、この場合、居住地とは、要保護者の居住事 実がある場所をいうものであること。なお、現にその場所に居住していなくて も、他の場所に居住していることが一時的な便宜のためであって、一定期限の 到来とともにその場所に復帰して起居を継続していくことが期待される場合 等には、世帯の認定をも勘案のうえ、その場所を居住地として認定すること。」 とされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  現在、居住しているダルクなどの施設が県外にある場合、担当現業員等が、 被保護者と連絡等をすることが困難となる。  訪問調査の頻度を多くしなければいけない被保護者についても、訪問調査の 頻度をEランクとして、1年に1回程度しか訪問できなくなる。岐阜市福祉事 務所の現業員等の負担も大きくなる。  被保護者が他市の施設へ移った場合は、帰来意思や移る期間も考慮した上で、 実施機関が岐阜市福祉事務所のままでよいのか、移送の必要がないのか、ケー ス診断会議等で組織的に検討することが望ましい。  なお、この場合、被保護者が居住している地域の福祉事務所と協議する必要 があろう。 第4 訪問調査活動 1 訪問調査活動の概要 (1)訪問調査活動の意義  訪問調査活動は、調査と指導を目的とするものであるが、調査と指導はいず れも、1)健康で文化的な最低限度の生活の保障及び2)自立の助長という保護の 目的達成上、極めて重要な業務であり、効果的かつ適正な保護の実施は、訪問 活動の内容如何にかかっているともいえる。  被保護世帯の状況は多種多様であって、ケースの生活実態によって訪問の必 要度は担当の差異があるので、福祉事務所の対応の仕方も訪問基準表を機械的 に当てはめるのではなく、ケースの実態に応じて、合理的かつ効果的に行う必 要がある。 (2)岐阜市における訪問調査活動 ア 岐阜市 福祉部 福祉事務所 生活福祉一課・二課において、継続ケース  (地区担当)を取り扱う係は、平成26年9月1日時点では、保護1係、保  護2係、保護4係、保護5係、保護6係、保護8係であり、査察指導員6  名、現業員50名が、継続ケースにおける訪問調査を担当している(第2章  参照)。 イ 岐阜市では、被保護世帯について、ABCDEに格付され、訪問調査の頻  度が区別されている。  ケース分類については、概ね、以下のとおりである。 ┌────────────────────────────┐ │1)Aケース 1月に1回、訪問調査する。         │ │      自立援助。要指導。就労可能な世帯が多い。  │ │2)Bケース 2月に1回、訪問調査する。         │ │      生活、収入状況が不安定。          │ │      阻害要因があるものの、就労可能な世帯が多い。│ │3)Cケース 3月に1回、訪問調査する。         │ │      生活、収入状況が安定。就労不能な世帯が多い。│ │4)Dケース 6月に1回、訪問調査する。         │ │      6か月以上の施設入所者等。         │ │5)Eケース 1年に1回、訪問調査する。         │ │      6か月以上の市外施設入所者等        │ └────────────────────────────┘ ウ 過去3年間における現業員の活動状況は、次のとおりである。いずれも、  岐阜県施行事務監査資料による。 1)訪問基準別構成割合及び月平均家庭訪問状況 ┌───────────┬─────┬─────┬─────┐ │区分         │H25.9.1  │H26.9.1  │H27.9.1  │ ├───────────┴─────┴─────┴─────┤ │訪問基準別世帯数                     │ ├───────────┬─────┬─────┬─────┤ │Aケース(年12回)  │  9.91%│  6.97%│  7.43%│ │           │  499世帯│  361世帯│  386世帯│ ├───────────┼─────┼─────┼─────┤ │Bケース(年6回)  │  12.43%│  10.86%│  11.82%│ │           │  628世帯│  561世帯│  614世帯│ ├───────────┼─────┼─────┼─────┤ │Cケース(年4回)  │  58.69%│  58.08%│  60.16%│ │           │ 2,966世帯│ 3,001世帯│ 3,126世帯│ ├───────────┼─────┼─────┼─────┤ │Dケース(年2回)  │  17.47%│  21.82%│  19.70%│ │           │  882世帯│ 1,127世帯│ 1,024世帯│ ├───────────┼─────┼─────┼─────┤ │Eケース(年1回)  │  1.50%│  2.27%│  1.00%│ │           │  76世帯│  117世帯│  46世帯│ ├───────────┼─────┼─────┼─────┤ │合計         │ 5,051世帯│ 5,167世帯│ 5,196世帯│ ├───────────┼─────┼─────┼─────┤ │地区担当現業員1人当た│  31.15回│  35.19回│  33.16回│ │り1ヶ月平均家庭訪問数│     │     │     │ ├───────────┼─────┼─────┼─────┤ │1世帯当たりの年間平均│  3.85回│  3.76回│  3.68回│ │家庭訪問回数     │     │     │     │ ├───────────┼─────┼─────┼─────┤ │地区担当現業員1人当た│     │     │     │ │りの1ヶ月平均家庭訪問│  8.31日│  9.36日│  9.02日│ │日数         │     │     │     │
    └───────────┴─────┴─────┴─────┘ 2)過去3年間の家庭訪問等件数(計画と実績)  いずれの年も、前年9月~当年8月までの合計数 ┌────┬───────┬───────┬───────┐ │区 分 │平成24年~25年│平成25年~26年│平成26年~27年│ ├────┼───────┼───────┼───────┤ │計 画 │    23,760│    23,059│    22,903│ ├────┼───────┼───────┼───────┤ │実 績 │    19,440│    19,424│    19,101│ ├────┼───────┼───────┼───────┤ │査察指導│      353│      288│      298│ │員同行 │       │       │       │ └────┴───────┴───────┴───────┘ 2 訪問調査の実施状況 (1)訪問計画と異なる訪問調査の実態 【事実関係】  上記2)によれば、平成26年9月~平成27年8月においては、計画22,903 件 実績19,101件であり、実施率は、約83.4%である。  実際、ケース記録を閲覧すると、年間訪問計画(格付)どおりに、訪問がで きていないケースが散見された。  例えば、Aケース(1月に1回)であるにもかかわらず、生活福祉一課・二 課に来課するため、被保護者と面談ができていたことから、自宅への訪問調査 を1年以上怠っていた事案があった。当該事案では、不正受給があって、発見 されるまで1年以上経過した。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)によれば、訪問の実施にあたっては、訪問時の訪 問調査活動を明確にし、それを踏まえ、年間訪問計画を策定のうえ行うことと 定められている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  被保護者の実情に応じて支援を行うことによって早期の自立を促す観点か ら、現業員による訪問調査は生活保護業務の中でも特に重要な業務である。  現業員は、ケース格付に従って策定された年度訪問計画に従い、訪問調査を 行うべきである。 (2)訪問調査の実質化 【事実関係】  訪問調査を実施したものの、2回連続で、不在連絡票を置いておくに留まり、 形式的に、訪問調査を実施したに留まっている事案が散見された。 【指摘 生活福祉一課・二課】  岐阜県の施行事務監査でも指摘されていることであるが、訪問調査時に被保 護者が不在の場合は、不在連絡票を置くだけでは足りない。  現業員から電話連絡をし、次回の面談予定日を決めておくなどすることで、 訪問調査において、確実に面談できるようにすべきである。  就労により、なかなか面談できない被保護者については、特に、面談予定日 を決めておく必要性が高い。なお、次回の面談予定日を決めてしまうと居住実 態の有無や未申告就労の可能性など実際の生活状況を正確に把握できないお それがあるとのことである。しかし、不在連絡票を置くことを継続するよりは、 次回の面談予定日を決めて会う方が実態把握に役立つと考えられる。また、予 約なしの訪問に拘泥することは被保護者に監視されている感覚を植え付け、被 保護者との信頼関係を損なう可能性もあることから、面談できない場合は、次 回の予定日を決める必要性が高いと考えられる。 (3)査察指導員の同行 【事実関係】  上記2)過去3年間の家庭訪問等件数(計画と実績)においては、平成26年 9月から平成27年8月まで査察指導員(SV)の同行は実績1万9,101件中、 298件であり、その割合は、約1.56%であった。  このように、そもそも、訪問調査において、査察指導員が同行する場合は少 ないが、同行する場合の基準は明確ではない。  具体的には、ある査察指導員によると、被保護者の個性が強く、現業員が対 応に苦慮している事案や、生活福祉一課・二課において保護費支給などにおい て手続ミスがあったことから、過払返還などの手続を説明する必要がある場合 などに、同行することがあるようである。しかし、生活福祉一課・二課におい て、同行する基準や目安は設けられていないとのことである。 【意見 生活福祉一課・二課】  査察指導員が、現業員の訪問調査に同行する基準や目安を決めることが望ま しい。  現業員も、基準や目安があれば、査察指導員に、必要以上に遠慮せずに、訪 問調査への同行を求めやすくなり、問題のある事案等について、組織的な対応 を取ることが可能となる。また、査察指導員と現業員との訪問調査の同行が行 われやすくなることで、両者の間において、情報共有を図ることが可能となる。 (4)訪問調査活動結果の記録化 【事実関係】  訪問調査活動の結果は、ケース記録に記載する。ところが、査察指導員に対 して、訪問調査活動を記したケース記録を、訪問調査の直後に提出していない ケースが多くみられた。中には、訪問調査活動の後3か月以上経過してから、 査察指導員に提出しているケースもあり、適時適切な査察指導員の管理や現業 員に対する指導ができない状態となっている。 【規範】  ケース記録は、岐阜市文書取扱規則第2条(1)の「文書」であり、同規則 第4条第2項によれば、即日処理を原則として迅速に取り扱わなければならな いとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  訪問調査の結果を査察指導員が適時に把握することで、査察指導員も、現業 員に対して、ケース進行管理をし、指導監督できる。  訪問調査後は、原則として当日中に、ケース記録を記載し、速やかに査察指 導員に提出すべきである。
    (5)訪問調査時の資料確認 【事実関係】  就労などについて届出をせず、未申告収入の発見までに1年以上経過してい る事案があった。 【意見 生活福祉一課・二課】  上記事案は、訪問調査時に、預貯金等の確認ができていれば防ぐことができ たケースではないか思われる。  訪問調査の際には、本人に通帳や給料明細書など一定の資料の提出を求める などして確認し、確認した内容は、少なくとも、ケース記録に明記することが 望ましい。 【意見 生活福祉一課・二課】  ヒアリングによると、現業員が、被保護者との信頼関係を気にして、訪問調 査時に通帳等の確認をすることに心理的抵抗を感じる場合もあるとのことで あった。  規則やマニュアルで、組織的に、訪問調査の際の資料確認を義務付けること が望ましい。 (6)訪問調査の水準確保 【事実関係】  訪問調査に数件同行した結果、次のとおりであった。  訪問調査については、現業員の最も重要な活動であるものの、準拠すべきマ ニュアル等がなく、現業員個々人の方法に委ねられており、現業員によって、 訪問の予約、メモの取り方、被保護者との面談における聴取方法、聴取内容、 訪問調査の人数等が大きく異なる。 【意見 生活福祉一課・二課】  訪問調査活動は、要保護者や被保護者により対応等が異なる個性的なもので はあるが、現業員にとっても、共通する心構えや注意点、最低限実施すべきこ と、遵守すべきことがあるはずである。  訪問調査のマニュアルや準則等を策定し、その上で、毎年、訪問調査につい ての研修(新人に限らない)や意見交換会を実施することが望ましい。  なお、「岐阜市生活保護事務の手引き 平成26年7月」においては、訪問調 査での注意点を具体的に記載しているため、参考になると思われる。 第5 実態把握(訪問調査以外の調査) 1 はじめに  訪問調査が実態把握の重要な調査方法であるが、それについては、第4で 述べた。それ以外の実態把握のための調査として、資産の実態把握、就労状 況等の実態把握、扶養義務者の実態把握がある。これらの実態把握の手段と して、法第29条による調査がある。  ただし、就労状況等の実態把握については第6章で、扶養義務者の実態把 握については第4章について詳細を報告している。  本項では、資産の実態把握について報告する。  また、実態把握の結果、法第63条の費用返還決定や法第78条の費用徴収 決定に至る事案が考えられるが、法第63条、法第78条については、第9章 で詳細を報告する。 2 資産の実態把握 (1) 概要  生活保護法第4条第1項では、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し 得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活 用することを要件として行われる。」と規定されている。すなわち、資産を保 有している者は、その資産を活用することが求められている。  これを受けて、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4 月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知)「第3 資産の活用」について 定めがある。 ┌──────────────────────────────────┐ │第3 資産の活用                          │ │  最低生活の内容としてその所有又は利用を容認するに適しない資産は、│ │ 次の場合を除き、原則として処分のうえ、最低限度の生活の医事のために│ │ 活用させること。なお、資産の活用は売却を原則とするが、これにより難│ │ いときは当該資産の貸与によって収益をあげる等活用の方法を考慮する │ │ こと。                              │ │1 その資産が現実に最低限度の生活のために活用されており、かつ、処分│ │  するよりも保有している方が生活維持及び自立の助長に実効があがっ │ │  ているもの                           │ │2 現在活用されてはいないが、近い将来において活用されることがほぼ確│ │  実であって、かつ、処分するよりも保有している方が生活維持に実効が│ │  あがると認められるもの                     │ │3 処分することができないか、又は著しく困難なもの         │ │4 売却代金よりも売却に要する経費が高いもの            │ │5 社会通念上処分させることを適当としないもの           │ │                                  │ └──────────────────────────────────┘ (2)監査の観点及び監査手続  資産の活用については、1)不動産(土地建物)、2)現金、預貯金、有価証券、 生命保険、3)その他の資産(自動車)のほか、4)敷金、5)交通事故等に基づ く損害賠償請求権について、検討した。その理由は、以下のとおりである。  資産申告書(岐阜市生活保護法施行細則第4条第2項第2号には、1)不動 産(土地建物)、2)現金、預貯金、有価証券、生命保険、3)その他の資産(自 動車)が記載されている。  ケース記録を閲覧したところ、1)不動産保有ケースと3)自動車保有ケース で、売却指導や廃車指導に従わないなどの問題事例が散見された。また、不 動産の売却により法第63条の適用が問題となる事例が散見された。  2)現金、預貯金、有価証券、生命保険については、保護費のやり繰り等に よって生じた預貯金のケースや法第63条の適用が問題となるケースのほか、 預貯金や生命保険等を被保護者が申告しないケースなど法78条の適用が問 題となるケースがあった。また、資産を現金化したことにより、法63条の適 用が問題となる事案があった。4)敷金については、敷金返還請求権という債 権であるにもかかわらず、査察指導員、現業員及び被保護者に、資産として の意識が薄いことから、転居などにおいて、被保護者に対して敷金の返還を 指導するなど対応していない事案が多数見られた。  5)交通事故等に基づく損害賠償請求権については、法第63条の適用が問題
    となるケースのほか、無申告による法第78条の適用が問題となるケースがあ った。  上記1)~5)を中心に検討することにより、岐阜市における生活保護事務の 問題点が、より明確になるのではないかと考えた。  そこで、監査を実施した資産のうち、1)不動産(土地建物)、2)現金、預貯 金、有価証券、生命保険、3)その他の資産(自動車)のほか、4)敷金、5)交 通事故等に基づく損害賠償請求権について検討した。 (3)不動産 ア 資産保有台帳の整備 【事実関係】  不動産保有ケースについて、岐阜県の生活保護法施行事務監査資料には、保 有容認件数(299件)、保有否認件数(54件)、要保護世帯向け不動産担保型生 活資金対象件数(0件)などの登載件数(353件)を記載した表がある。  しかし、日々の業務のために利用する資産保有台帳を、平成26年度までは、 作成していなかった。不動産などの資産保有案件の一覧表がないことから、不 動産保有案件については、担当現業員と担当査察指導員しか把握できない状態 となっている。そのため、担当現業員が変更となった場合に、新現業員に引継 ぎがなされず、また、生活福祉一課・二課として把握していない。  ケースファイルを閲覧したところ、不動産の処分について、引継が十分にな されなかった場合、知らない間に、親族に、無償譲渡されたり、保有を事実上 認めてしまったりしているケースが散見された。 【規範】  「年金制度及び不動産等の資産の活用の徹底等について」(平成23年3月 31日社援保発0331第3号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)の2 不動 産等の資産活用の徹底について【保護の実施機関における取組】1)では、生活 保護受給世帯が所有する不動産等の資産の状況等について別添4の様式を参 考に適時適切に把握の上、別添5により組織的に管理されたいとされている。 別添4の様式とは、資産保有台帳(個票)であり、別添5とは、資産(不動産) 保有台帳(一覧)である。 【指摘(改善報告)生活福祉一課・二課】  不動産保有ケースを把握するための台帳を整備すべきである。  この点、不動産保有ケースについて、平成27年度より、「資産保有台帳」を 整備したことは、評価できる。今後は整備された資産保有台帳を活用し資産の 活用等図っていくよう努める必要があろう。 イ 土地家屋等資産管理台帳の編綴 【事実関係】  ヒアリングによると、資産保有台帳(土地・家屋)の作成担当者は、土 地家屋等資産管理台帳(ケースごとの個別のシート)について、各ケース 記録に綴じるように、各査察指導員、各現業員に、指示したとのことであ る。しかし、各ケース記録には、資産保有台帳(土地・家屋)に綴じられ ている各不動産の土地家屋等資産管理台帳(個別シート)が綴じられてい なかった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  各ケース記録にも、当該不動産についての土地家屋等資産管理台帳(個 別シート)を綴じるべきである。  各ケース記録に綴じることで、各現業員が、各不動産の土地家屋等資産 管理台帳を活用し、期限を区切った不動産処分の指導・指示を意識するな ど、有効に活用できるはずである。 ウ 資産処分の指導 【事実関係】 ┌────┐ │ケース1│ └────┘  亡父の土地につき、遺産分割を行うよう指導されており、土地の処分が なされた後に、法第63条を適用することになっていたが、何ら動きが無い まま、約5年後に被保護者の死亡により保護廃止となったケースがあった。 被保護者に対して、どのような指導がなされたか、ケース記録上、明確な 記載はなかった。 ┌────┐ │ケース2│ └────┘  被保護者が不動産(固定資産評価額約540万円)を所有しており、売却でき たら法第63条適用により廃止をする予定として保護の開始決定がなされたが、 売却がなされないまま、2年間が経過し、被保護者の死亡により廃止となった ケースがあった。  いずれのケースも、資産の処分がなされたら法第63条の適用が予定された が、処分されないまま死亡により保護廃止となったことから、法第63条が適 用されていない。いずれのケースも、ケース記録からは、資産処分を促すよう な指示・指導があったかどうかは明らかではなかった。 【規範】  生活保護行政を適正に運営するための手引きについて(平成18年3月30 日 社援発第0330001号厚生労働省社会援護局保護課長通知)において、「II 指導指示から保護の停廃止に至るまでの対応」では、以下のとおり、述べられ ている。 ┌────────────────────────────────────┐ │4 履行期限を定めた指導指示                      │ │(1)指導指示を行う場合には、口頭、文書を問わず、長期的に漫然と行わず、│ │  指導指示の内容、履行期限等を具体的に明示して行うことが重要となる。 │ │(3)口頭指導による指導指示に十分対応していないと判断される場合には、 │ │  さらに組織として対応を協議し、必要に応じ、個別ケースに即して適切な │ │  履行期限を定めたうえで、法第27条に基づく文書による指導指示を行う。 │ └────────────────────────────────────┘ 【指摘 生活福祉一課・二課】  処分すべき資産がある場合には、ケース診断会議で資産処分の目標時期を設 定するなどして、積極的に指導すべきである。  口頭指導による指導指示に十分対応していないと判断される場合には、ケー ス診断会議に諮り、文書指導を積極的に活用すべきである。 (4)預貯金 【事実関係】  被保護者が施設に入所しているが、施設基準の変更により保護費を変更する ことを忘れ、預貯金が貯まっていることに気がつかない事案があった。
     また、親族等が通帳等を預かっている場合に、通帳等を確認していないこと から、預金が6ヶ月程度貯まっており、停止・廃止となったケースがあった。 【意見 生活福祉一課・二課】  施設に入所しており、施設が通帳等を管理しているケースについては、施設 から、訪問調査時を含めて、定期的に、通帳の写しを提出させることを検討す ることが望ましい。  また、親族が通帳等を管理している場合にも、訪問調査時を含めて、定期的 に、通帳の写しを提出させることを検討することが望ましい。 (5)自動車 ア 処分指導 【事実関係】  自動車については、事故防止及び資産の活用の観点から、売却や廃止処分を することが原則である。  しかし、就職活動や通院等のため、例外的に、自動車の保有を認められる場 合もある。  岐阜県施行事務監査資料による被保護者の自動車の保有状況(過去3年度末 時点)は、以下のとおりである。  保護開始決定時において、自動車の処分を援助方針の一つと決定しているに もかかわらず、自動車を保有している被保護者について、処分されないまま1 年以上経過しているものが散見された。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日発社第 123号厚生事務次官通知)によれば、最低生活の内容としてその所有又は利用 を容認するに適しない資産は、原則として処分する旨が定められている。  「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日 社保第34号厚生省社会局保護課長通知)第3の問9の2では、概ね6ヶ月以 内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者であって、保有す る自動車の処分価値が小さいと判断されるものは、その処分を最長1年間保留 することができるとされている。  また、「生活保護行政を適正に運営するための手引について」(平成18年3 月30日社援保発第033001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、 指導指示を行う場合には、口頭、文書を問わず、長期的に漫然と行わず、指導 指示の内容、履行期限等を具体的に明示して行うことが重要となるとされてい る。 【指摘 生活福祉一課・二課】  自動車の処分を援助方針の一つとしている場合は、保護開始決定時から遅く とも1年経過するまでに自動車を適切に処分するよう指導すべきである。  口頭指導による指導指示に十分対応していないと判断される場合には、ケー ス診断会議に諮り、文書指導を積極的に活用すべきである。 イ 自動車保有台帳 【事実関係】  自動車を保有しているケースについての一覧表は、岐阜県施行事務監査資料 としては、存在する。しかし、不動産の保有台帳のように、日々の業務のため に利用する自動車についての資産保有台帳は存在しない。  また、岐阜県施行事務監査資料のために作成した作成した自動車の保有台帳 について、日々の業務に活用されていない。  そのため、担当現業員しか把握していない状態となっている。  自動車の処分について、引継が十分になされなかった場合、知らない間に、 親族に、無償譲渡されたり、保有を事実上認めてしまったりしているケースも 散見された。 【規範】  「年金制度及び不動産等の資産の活用の徹底等について」(平成23年3月 31日社援保発0331第3号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、 生活保護受給世帯が所有する不動産等の資産の状況等について、資産保有台帳 (個票)により適時適切に把握の上、資産(不動産)保有台帳(一覧)により 組織的に管理されたいとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  速やかに、資産保有台帳において、日々の業務に活用するための自動車保有 台帳を作成するか、岐阜県施行事務監査資料として作成した自動車保有台帳を 活用すべきである。 【意見 生活福祉一課・二課】  自動車保有台帳を査察指導員が確認し、自動車の処分ができていない状態が 1年以上経過しているケースについては、その状態や理由を確認することが望 ましい。 ウ 自動車の価値の判断 【事実関係】  ケース記録からは、被保護者が親族に自動車を無償譲渡している案件があっ た。ヒアリングによると、自動車の価値について判断する基準はないとのこと であるし、実際に、判断基準を示す資料も存在しない。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発 社第123号厚生事務次官通知)によれば、最低生活の内容としてその所有又は 利用を容認するに適しない資産は、売却代金より売却に要する経費が高いもの などを除き、原則処分(売却が原則)が必要となるとされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  自動車の価値の判断基準を定めることが望ましい。判断基準がなければ、親 族への無償譲渡を認めてよいかどうかの判断できないからである。  例えば、破産事件における考え方を参考にすると、軽自動車では登録5年以 上、普通自動車では登録7年以上を無価値とする基準などが考えられる。軽自 動車では登録5年未満、普通自動車では登録7年未満のように、登録年数が新 しい自動車の財産的価値の確認は、自動車業者の見積を取ることが考えられる。 (6)敷金 【事実関係】  敷金返還請求権は、「第4章第5の4」などで述べたとおり、資産と評価 できる。転居などで部屋を明け渡すときに、返還を受けうる。
     しかしながら、書類監査の結果、転居時の敷金の処理について、ケース 記録に何ら記載がなされておらず、どのような処理がなされたか不明のも のが多くみられた。  例えば、保護継続中、指導により、旧住居(旧賃貸)から新住居(新賃貸) へ転居した後、さらに、新住居から老人ホームに入所したが、後に、死亡によ り廃止となったケースがあった。このケースの旧賃貸借契約書によれば、解約 時保証金約13万円が返還されることとなっていた。転居後の新賃貸借契約書 においては、約6万円の敷金が支給され、解約時には約3万円の返金がなされ ることになっていた。しかし、旧賃貸及び新賃貸のいずれにおいても、敷金が 収入認定された形跡がなく、実際に、敷金が返還されたのかどうか、記録上は 不明であった。上記ケースにおいては、新住居への転居の際に約13万円が、 老人ホーム入所時に約3万円の敷金が返還される可能性があった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日 社保第34号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、転居等により、 保護継続中の者に対し敷金が返還される場合、この返還金の扱いについては、 当該月以降の収入として認定すべきとされている。ただし、実施機関の指導又 は指示により転居した場合においては、当該返還金を転居に際して必要とされ る敷金等に当てさせて差しつかえないとされている。  少し、説明を加える。敷金は、住宅扶助の一内容として、被保護者が、病院 や施設から退院・退所するに際して、帰住する住居が無い場合や、実施機関の 指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも低額な住居に転居する 場合など、転居に際して敷金を必要とする場合に、家賃限度額の3倍以内の範 囲で支払われる。 <岐阜市家賃等扶助額(上限) 平成27年7月> ┌────┬──────┬─────┐ │世帯人数│家賃等上限額│敷金上限額│ ├────┼──────┼─────┤ │1人  │  32,000円│ 96,000円│ ├────┼──────┼─────┤ │2人  │  38,000円│ 114,000円│ ├────┼──────┼─────┤ │3~5人│  41,600円│ 124,800円│ ├────┼──────┼─────┤ │6人  │  45,000円│ 135,000円│ ├────┼──────┼─────┤ │7人以上│  50,000円│ 15,000円│ └────┴──────┴─────┘ 【指摘 生活福祉一課・二課】  被保護者の転居の際には、旧契約の敷金返還請求権について確認し、確認状 況をケース記録に残すべきである。 (7)交通事故等の損害賠償請求権 【事実関係】  平成23年、被保護者(主)の子が交通事故の被害者となったが、加害者と の間で示談が難航し、その後、働き手の転入により、平成26年度に廃止とな ったケースがあった。ケース記録には、平成25年4月、「示談難航」、同年12 月、「子の示談未了」との記載があったが、上記交通事故につき、どのような 処理がなされたか、明確な記載はなかった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  被保護世帯に損害賠償請求権を有する者がいる場合、その支払いの有無を定 期的に確認し、確認状況をケース記録に残すべきである。  なお、今後は、生活保護法76条の2により、求償権の行使により、保険会 社や加害者に対して直接交渉することが可能となった。そのため、今後は、交 渉過程を記録化することが必要となろう。 第6 自立支援 1 自立の意義 (1)はじめに  生活保護法では、「最低限度の生活の保障」とともに、要保護者及び被保護 者の「自立を助長すること」を目的としている。  生活保護の実務においては、「最低限度の生活の保障」にやや大きく重点が おかれてきたところではあるが、「自立の助長」についても、積極的に取り組 むように転換しようとしている。  「平成17年度における自立支援プログラムの基本方針について」(平成17 年3月31日社援発第0331003号厚生労働省社会・援護局長通知)において、 自立支援プログラム導入の趣旨として、以下のように、述べられている。 ┌───────────────────────────────────┐ │                                   │ │「今日の被保護世帯は、傷害・障害、精神疾患等による社会的入院、DV、虐│ │待、多重債務、元ホームレス、相談に乗ってくれる人がいないため社会的なき│ │ずなが希薄であるなど多様な問題を抱えており、また、保護受給期間が長期に│ │わたる場合も少なくない。」                      │ │「一方、実施機関においてはこれまでも担当職員が被保護世帯の自立支援に取│ │り組んできたところであるが、被保護世帯の抱える問題の複雑化と被保護世帯│ │の増加により、担当職員個人の努力や経験等に依存した取組だけでは、十分な│ │支援が行えない状況となっている。」                  │ │「経済的給付を中心とする現在の生活保護制度から、実施機関が組織的に被保│ │護世帯の自立を支援する制度に転換することを目的として、自立支援プログラ│ │ムの導入を推進していくこととしたものである」             │ │                                   │ └───────────────────────────────────┘ (2)自立の意義  「平成17年度における自立支援プログラムの基本方針について」(平成17 年3月31日社援発第0331003号厚生労働省社会・援護局長通知)では、自立 支援プログラム導入の趣旨において、自立の意味について、以下のように、述 べられている。 ┌────────────────────────────────────┐ │                                    │ │ 全ての被保護者は、自立に向けて克服すべき何らかの課題を抱えているもの │ │と考えられ、またこうした課題も多様なものと考えられる。このため、自立支 │
    │援プログラムは、就労による経済的自立(以下「就労自立」という。)のため │ │のプログラムのみならず、身体や精神の健康を回復・維持し、自分で自分の健 │ │康・生活管理を行うなど日常生活において自立した生活を送ること(以下「日 │ │常生活自立」という。)、及び社会的なつながりを回復・維持し、地域社会の一│ │員として充実した生活を送ること(以下「社会生活自立」という。)を目指す │ │プログラムを幅広く用意し、被保護者の抱える多様な課題に対応できるように │ │する必要がある。                            │ │                                    │ └────────────────────────────────────┘ (3)自立支援に向けて  自立支援に向けて、生活保護法では、以下のような規定がある。 ┌───────────────────────────────────┐ │                                   │ │ 生活保護法27条の2(自立支援のための助言)             │ │ 保護の実施機関は、要保護者から求めがあったときは、要保護者の自立を助│ │長するために、要保護者からの相談に応じ、必要な助言をすることができる。│ │                                   │ │ 生活保護法第27条(生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指示 │ │又は指導)                              │ │1 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目│ │ 的達成に必要な指導又は指示をすることができる。           │ │2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最小限度に止め│ │ なければならない。                         │ │3 第1項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るもの│ │ と解釈してはならない。                       │ │                                   │ └───────────────────────────────────┘  生活保護法第27条の2においては、被保護者の自由や被保護者の意思を尊 重していることから、要保護者(被保護者を含む。)からの相談に応じて、必 要な助言をすることとされている。  また、生活保護法第27条では、「被保護者の自由を尊重し、必要の最小限度 に止めなければならない」、「被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得 るものと解釈してはならない」との限定があるものの、保護の実施機関は、被 保護者に対して、「生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は 指示をすることができる」とされている。  自立支援プログラムは、生活保護法上の助言や指導・指示の一つと考えるこ とができる。 2 監査の観点及び監査手続  以上のとおり、「自立」には3つの自立があるが、本章では、3つの自立中、 日常生活自立及び社会生活自立に向けた取組についての概要について触れた 後に、助言、指導・指示について、岐阜市の生活保護事務に改善すべき点がな いか検討した。ヒアリングを実施した。 3 就労自立支援  第6章において、報告している。 4 日常生活自立支援 【事実関係】  日常生活自立支援プログラムが実施されていない。 【規範】  「自立支援プログラム導入のための手引(案)について」(平成17年3月 31日 事務連絡厚生労働省社会・援護局保護課長)別添1では個別支援プロ グラム例として、高齢者健康維持・向上プログラム、生活習慣病患者健康管理 プログラムなどが挙げられている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  「高齢者健康維持・向上プログラム」「生活習慣病患者健康管理プログラム」 など、日常生活自立支援のためのプログラムを実施すべきである。  被保護者に対してこれらのプログラムに取り組むことは、「被保護者は、常 に、能力に応じて勤労に励み、自ら、健康の保持及び増進に努め、収入、支出 その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り、その他生活の 維持及び向上に努めなければならない。」という被保護者の生活上の義務(生 活保護法第60条)を果たすように助言、指導又は指示していることにもなる。 5 社会生活自立支援 【事実関係】  岐阜市においては、就労支援と重なるものの、社会生活自立支援に向けての プログラムとしては、「農業体験」が実施されている(農業体験については、 第6章を参照。)。しかし、「農業体験」以外に、社会生活自立支援に向けたプ ログラムは実施されていない。 【規範】  「自立支援プログラム導入のための手引(案)について」(平成17年3月 31日事務連絡厚生労働省社会・援護局保護課長)別添1では個別支援プログ ラム例として、社会参加活動プログラムなどが挙げられている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  社会生活自立支援のためのプログラムを実施すべきである。  例えば、「自立支援プログラム導入のための手引(案)について」の個別プ ログラム例としては、社会福祉協議会を通じた公園清掃などの「社会参加活動 プログラム」が例示されているが、このようなプログラムを実施することが考 えられる。  また、被保護者が自主的に取り組んでいる公園清掃などのボランティア活動 について、継続させることなども考えられる。 6 自立助長のための相談及び助言 【事実関係】  相談及び助言について、ケース記録に、記載していないものもある。 【規範】  岐阜市生活保護法施行細則第2条第5号においては、福祉事務所長は、被保 護者につき、ケース記録票を作成し、常にその記載事項について整理しておか なければならないとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  相談及び助言をしたことについては、例え、毎回、同じ内容であったとして
    も、必ずケース記録に記載すべきである。  現業員としてなすべき業務を行った証拠となるものであるし、毎回同じ助言 をしても改善されない場合、指示・指導につながる可能性もあるからである。 第7 助言指導・指導指示 1 概要  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)によれば、以下のとおり、助言指導、指導指示を 行うこととされている。 ┌─┬──────────────────────────────────┐ │助│保護の受給要件並びに保護を受ける権利と保護を受けることに伴って生ずる│ │言│生活上の義務及び届出の義務等                    │ │指├──────────────────────────────────┤ │導│自らの資産能力その他扶養、他法等利用しうる資源の活用        │ ├─┼───────┬──────────────────────────┤ │ │稼働能力の活用│傷病その他の理由により離職し、又は就職していないかっ│ │ │(第6章)  │た者が傷病の回復等により就労(そのために必要な訓練等│ │ │       │につくことを含む。)を可能とするに至ったとき    │ │ │       ├──────────────────────────┤ │ │       │義務教育の終了又は傷病者の介護もしくは乳児等の養育 │ │ │       │にあたることを要しなくなったため就労が可能となった │ │ │       │とき                        │ │ │       ├──────────────────────────┤ │ │       │現に就労の機会を得ていながら、本人の稼働能力、同種の│ │ │       │就労者の収入状況等からみて、十分な収入を得ているもの│ │ │       │とは認めがたいとき                 │ │ │       ├──────────────────────────┤ │ │       │内職等により少額かつ不安定な収入を得ている者につい │ │ │       │て、健康状態の回復、世帯の事情の改善等により転職等が│ │ │       │可能なとき                     │ │ │       ├──────────────────────────┤ │ │       │就労中であった者が労働争議参加等のため現に就労収入 │ │ │       │を得ていないとき                  │ │ ├───────┼──────────────────────────┤ │指│資産・扶養・他│上記に掲げる場合のほか、資産、扶養、他法他施策による│ │ │法他施策の活用│措置等の活用を怠り、又は忌避していると認められるとき│ │導│(第9章)  │                          │ │ ├───────┼──────────────────────────┤ │指│収入申告、法61│次官通知第8の1による収入に関する申告を行わないと │ │ │条の届出の懈怠│き                         │ │示│(第9章)  ├──────────────────────────┤ │ │       │世帯の変動等に関する法第61条の届出の義務を怠り、こ │ │ │       │のため保護の決定実施が困難になり、又は困難になるおそ│ │ │       │れがあるとき                    │ │ ├───────┼──────────────────────────┤ │ │医療機関・施設│主治医の意見に基づき、入院、転院又は退院が必要である│ │ │の入退院・入退│と認められるとき                  │ │ │所など    ├──────────────────────────┤ │ │(第7章)  │施設に入所させ、又は退所させる必要があると認められる│ │ │       │とき                        │ │ │       ├──────────────────────────┤ │ │       │施設入所者が施設の管理規程に従わないため、施設運営上│ │ │       │困難を生じている旨当該施設長から届出があったとき  │ │ ├───────┼──────────────────────────┤ │ │その他義務違反│上記に掲げる場合のほか最低生活の維持向上又は健康の │ │ │又は保護の目的│保持等に努めていない等被保護者としての義務を怠って │ │ │達成の必要(本│いると認められるとき                │ │ │章・第6章・第├──────────────────────────┤ │ │9章)    │その他、保護の目的を達成するため、又は保護の決定実施│ │ │       │を行うため、特に必要があると認められるとき     │ └─┴───────┴──────────────────────────┘ 2 保健指導 【事実関係】  現業員及び査察指導員からヒアリングによると、保健指導については、訪問 調査の際に、体調管理について声をかけるほかは、特に何もしていないとのこ とである。 【意見 生活福祉一課・二課】  保健指導にあたっては、専門的なケース診断が必要となる場合には医師など の専門家の意見を求めるなどして、ケースを的確に把握し、その上で、指導の 実施状況について経過観察と結果の確認をし、ケース記録に記載することが望 ましい。 【意見 生活福祉一課・二課】  ケースによっては、医師や看護師、保健師などの専門家と同行訪問する等し て連携することが望ましい。 3 文書指導 (1)ケース診断会議の記録 【事実関係】  現業員や査察指導員からのヒアリングによると、文書指導については、ケ ース診断会議を開催して、実施しているとのことである。記録上も、文書指 導をする場合は、ケース診断会議を実際に開催しているようである。しかし、 ケース診断会議の議事録は作成されていない。 【指摘 生活福祉一課・二課】  文書指導は、行政処分であるから、組織的判断が必要であるが、その組織的 判断が合理的であったことを示すためにも、議事録が必要である。  ケース診断会議において、文書指導を決定した判断過程を残すため、議事録 を残すべきである。  なお、ケース診断会議の議事録の書式については、平成28年1月29日時点 において、作成中とのことである。 (2)文書指導の活用   ケース診断会議の件数から見た文書指導の状況については、以下のとおり
     である。岐阜県施行事務監査資料による。 ┌─────┬──────────────────────────┐ │ 年度  │         27条文書指導指示         │ │     ├────┬─────┬─────┬──────┬──┤ │     │就労指導│自動車に関│収入申告書│日常(生活・│合計│ │     │    │する   │提出   │療養態度) │  │ ├─────┼────┼─────┼─────┼──────┼──┤ │平成24年度│   6│    2│    2│     2│ 12│ ├─────┼────┼─────┼─────┼──────┼──┤ │平成25年度│   3│    5│    2│     1│ 11│ ├─────┼────┼─────┼─────┼──────┼──┤ │平成26年度│   8│    4│     │     10│ 22│ └─────┴────┴─────┴─────┴──────┴──┘  平成26年度における法第78条適用案件のうち、複数回、法78条の適用を 受けた事例もあった。  平成26年度における訪問調査の格付Aケースが386件、Bケースが614件 あったところ、就労指導、自動車に関する指導、収入申告書の提出、日常生活 に関する指導など、文書指導が実施された事例は22件だけであった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)によれば、法第27条による指導指示は、口頭に より直接当該被保護者(これによりがたい場合は、当該世帯主)に対して行 うことを原則とするが、これによって目的を達せられなかったとき、または 目的を達せられないと認められるとき、及びその他の事由で口頭によりがた いときは、文書による指導指示を行うこととされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  不正受給により法第78条の適用を受けた受給者については、保護の停止・ 廃止を検討するなどして、再発を防止する必要があるため、文書指導を積極的 に活用すべきである。 【意見 生活福祉一課・二課】  訪問頻度が多いAケース・Bケースの件数が1,000件近くあるのに対し、文 書指導が22件しか実施されていない。  就労指導に従わない被保護者などに対する文書指導の積極的な活用を検討 することが望ましい。 4 停止期間中の指導 【事実関係】  停止期間中に、助言指導等を行っていないケースが散見された。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日厚生省社 会局長通知)よれば、保護停止中の被保護者についても、その生活状況の経過 を把握し、必要と認められる場合は、生活の維持向上に関し適切な助言指導を 行う等、所要の措置を講ずることとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  保護停止中の被保護者についても、生活状況の経過を把握し、助言指導等を 行うべきである。  特に、就労指導に従わない者や不正受給により法第78条の適用を受け、文 書指導を受けているのに従わない者について停止をした場合は、その後も継続 して指導をする必要が高い。  停止後に廃止に移行する場合は、当然、弁明の機会を与えているようである が、弁明の機会を設けることと、指導指示することは、別であり、弁明の機会 を与えることで、指導指示をしたことにはならない。 第8 ケース記録 1 ケース記録の記載内容 【事実関係】  ケース記録(巻末資料3に添付)の記載方法が統一、整理されていない。  現業員によっては、事実のみならず、自分の感想や評価を記載しているも のもあった。反対に、訪問調査の四文字の押印や記載があるだけで、具体的 にどのような訪問調査活動があったのか不明なものもあった。  ケース記録の中には、格付変更の根拠などが分からないものも多数あった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  「岐阜市生活保護事務の手引き 平成26年7月」にある具体的な記載例を 参考にするなどして、5W1Hを意識して、正確に記載すべきである。  この記載例に忠実に従うことで、より、目的を意識した訪問調査を心がける ことができる。  例えば、訪問調査について、以下のとおり、例示されている。 ┌────────────────────────────────────┐ │                                    │ │ 1 世帯訪問                             │ │   (・・・のため世帯訪問、○○と面接)               │ │   (1)生活状況                          │ │      主:・・・であり・・・。                  │ │      妻:・・・・・・さらに悪化している。            │ │   (2)主の稼働状況について                    │ │     ・・・・・・・やや積極的になってきており、・・・。      │ │     ・・・・稼働日数も若干増えている。              │ │   (3)家屋補修について                      │ │      ・・・・・・雨漏りがする・・・・・・/           │ │      補修する必要がある。                    │ │   (4)指導(助言)事項                      │ │     ・妻に対し、食事に気を配り・・・専念すること。        │ │     ・主に対し・・・であり・・・と思われるのでもっと努力すること。│ │     ・家屋補修申請手続をとるよう・・・。             │ │ 2 病院訪問                             │ │   (○○病院訪問、○○主治医および妻と面接)            │ │    別紙調査表のとおり                       │ │   ・稼働能力について(○○主治医)                 │ │    病状は・・・であり、・・・程度の仕事であれば可能である。    │ │    退院後は、ハローワークへ同行する等強力に就労指導を実施する。  │
    │   ・手持金累計額が○○○○円だったので○月から○○加算を削除す   │ │    る。(計上する。)                       │ │                                    │ └────────────────────────────────────┘ 2 ケース記録の記載時期 【事実関係】  援助方針において、ケース格付の変更が行われているケースもあるが、その 援助方針の日付とケース記録に記載されている日付が一致しないものもあっ た。中には、援助方針に記載されている理由とケース記録に記載されている理 由が一致しない、整合しないものもあった。処遇判定票との関係についても同 様のことであり、ケース記録と日付が一致しないケースが多々あった。ケース 記録の中には、異なる日時の出来事を、一括して、1日の日時の中で記載して いるものもあった。  そのほかにも、訪問調査の結果を打ち出すのが、3か月以上も後になってい るケースがあった。また、格付が「C」であるにもかかわらず、半年以上、中 には、1年以上、ケース記録に記載のないケース記録も散見された。そのため、 記録について、正確性を欠く状態となっている。また、訪問調査した日付につ いて、月しか記載せず、日にちを記載していないものもあった。 【規範】  岐阜市生活保護法施行細則第2条5号によれば、福祉事務所長は、被保護者 につき、次に掲げる書類を作成し、常にその記載事項について整理しておかな ければならないとされている。そして、岐阜市文書取扱規則第4条第2項によ れば、文書は、即日処理を原則として迅速に取り扱わなければならないとされ ている。 【指摘 生活福祉一課・二課】 ケース記録は、原則として、訪問調査等があった当日に記載すべきである。  処遇判定票や援助方針と記載の齟齬が生じるのは、ケース記録、処遇判定票、 援助方針について、決定した後に、すぐに、記載しないためである。記載が遅 れれば、記憶も薄れ、正確性を欠く記載となる可能性が高い。  また、適時に、査察指導員に、ケース記録を回覧することができず、査察指 導員との間で、情報の共有を図ることができなくなる。  さらに、記憶等が新鮮なうちに記録をすることが結果的には、ケース記録の 記載等事務処理の速度を上げることになる。 3 ケース記録に綴じる書類 【事実関係】  ケース記録に綴じる書類について、現業員によって異なる状況であった。  保護開始決定通知の写しや法第63条決定通知、法第78条決定通知について、 現業員により、綴じてあったり、綴じていなかったりしていた。  また、査察指導票の写しを綴じて、訪問調査の計画を明確にしている現業員 のケース記録もある一方、査察指導票のような記録がないことから、訪問調査 の計画が不明なケース記録もあった。 【規範】  岐阜市文書取扱規則第37条第1項によれば、文書は、常に整理してその所 在及び処理状況等を明確にし、あらゆる事態に対処して臨機の処置がとれるよ う整備しておかなければならないとされ、第3項によれば、未処理の文書又は 懸案中の文書は、懸案フォルダに収納する等の方法により一定の箇所に整理し、 文書の所在を明らかにしておかなければならないとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  決定通知など現業員として作成に携わる書類は、ケースファイルにすべて綴 じるべきである。 【意見 生活福祉一課・二課】  訪問調査の計画が分かる書面(査察指導票)など書類については、ケースフ ァイルに綴じることを検討することが望ましい。 4 ケース記録の綴じ方 【事実関係】  ケース記録については、大まかに、3つに分類されて、綴じられている。  しかし、大まかな3つの分類以外は、現業員によって、ケース記録への書類 の綴じ方、綴じる順番が異なる。そのため、ケース記録のどこに、どのような 書類が綴じられているか、必ずしも明確ではないケース記録が散見された。 【意見 生活福祉一課・二課】  ケース記録に綴じる文書のチェックリストについて、綴じるべき順番を記載 することが望ましい。また、決定通知書など重要書類について、付箋を付ける など検索性を高めることが望ましい。 第9 引継 1 新規担当現業員から地区担当現業員の引継 (1)引継ぎのタイミング 【事実関係】  ヒアリングによると、新規担当現業員から、地区担当現業員に引き継ぐタイ ミングは、原則として、初回の保護費の窓口支給時に引継をしているとのこと である。しかし、複雑な事情があるケースについては、ある程度、整理をした 段階で引継をするとのことである。複雑なケースかどうかの判断基準や整理を して引継をする段階については、具体的に決められていない。 【意見 生活福祉一課・二課】  法第28条調査、法第29条調査が、終わった段階で、新規現業員から地区担 当現業員に引き継ぐように、具体的な事務処理ルールを統一化することが望ま しい。 (2)引継書類 【事実関係】  新規現業員から地区担当現業員が引き継ぐ場合に、引継書を使用しているも のの、自由記載方式となっており、チェックリストを使用した方式となってい ない。 【意見 生活福祉一課・二課】  自由記載方式の引継書の場合、不動産や自動車の保有ケースや年金、転居に 伴う敷金の回収など、個別に注意すべき事項について、地区担当現業員によっ
    ては、引継が漏れてしまう可能性もある。  個別のケースごとに使用される引継書については、チェックリスト方式にす ることで、引継事項、注意事項の漏れをなくす工夫をすることが望ましい。 (3)訪問調査の同行 【事実関係】  新規現業員から地区担当現業員が引き継ぐ場合、新規現業員が訪問調査に同 行していない事例が見受けられた。 【意見(改善報告) 生活福祉一課・二課】  新規現業員が訪問調査に同行することは、有効な引継方法の一つであるし、 それにより地区担当現業員が被保護者との信頼関係を築きやすくすることが できる。  新規現業員は、地区担当現業員の最初の訪問調査に同行することが望ましい。  この点に関して、「岐阜生活保護事務の手引き 平成26年7月」48頁「3 ケースの引継」においても、「ケースの引継に当っては、新しい担当者がケー スに対し継続した指導を行い、又円滑な事務処理ができるよう事務引継を行う とともに、新旧担当者同行で世帯訪問し、現地引継を行うこと。」と記載され ている。  平成27年度より、日程調整ができない場合を除いては、新旧現業員が同行 するように努めていることは、評価できる。 2 地区担当現業員から地区担当現業員の引継 (1)引継書類 【事実関係】  地区担当現業員から地区担当現業員が引き継ぐ場合に、引継書を使用してい るものの、自由記載方式となっており、チェックリストを使用した方式となっ ていない。 【意見 生活福祉一課・二課】  自由記載方式の引継書の場合、不動産や自動車の保有ケースや年金、転居に 伴う敷金の回収など、個別に注意すべき事項について、地区担当現業員によっ ては、引継が漏れてしまう可能性もある。  個別のケースごとに使用される引継書については、チェックリスト方式にす ることで、引継事項、注意事項の漏れをなくす工夫をすることが望ましい。 (2)訪問調査の同行 【事実関係】  現業員の異動や被保護者の転居などにより、地区担当を変更する場合、旧地 区担当現業員が訪問調査に同行していない事例が見受けられた。 【意見(改善報告)生活福祉一課・二課】  旧地区担当現業員が訪問調査に同行することは、有効な引継方法の一つであ るし、それにより新地区担当現業員が被保護者との信頼関係を築きやすくする ことができる。  旧地区担当現業員は、新地区担当現業員の最初の訪問調査に同行することが 望ましい。  「岐阜生活保護事務の手引き 平成26年7月」48頁「3 ケースの引継」 には、「ケースの引継に当っては、新しい担当者がケースに対し継続した指導 を行い、又円滑な事務処理ができるよう事務引継を行うとともに、新旧担当者 同行で世帯訪問し、現地引継を行うこと。」と記載されている。  なお、平成27年度より、日程調整ができない場合を除いては、新旧現業員 が同行するように努めていることは、評価できる。 第6章 就労自立に向けた事務 第1 事務の概要 1 はじめに  本章では、就労自立に向けた事務手続について報告する。  これまで述べてきたとおり、生活保護法第1条でいう「自立」は就労自立に 限るものではないが、「自立」の中でも就労自立に向けた事務は特に重要であ ると考え、独立した章として構成した。就労自立に向けた事務手続の流れは、 概ね次のとおりである。  なお、就労可能者においても、就労自立のみが問題になるということではな く、その前提等として、日常生活自立及び社会的自立に向けた活動は必要とな るが、以下は、あくまで就労という観点で整理した図である。 2 主な指針  就労自立に向けての事務に関しては、以下の3つの厚生労働省社会・援護局 長通知が主な指針となる。 ┌──┬──────────────┬──────────────────┐ │  │      通知      │       対象者        │ ├──┼──────────────┼──────────────────┤ │I │「平成17年度における自立支 │就労自立に関する個別支援プログラム │ │  │援プログラムの基本方針につ │(就労自立支援プログラムなど)につ │ │  │いて」           │いては、就労可能な被保護者であり、 │ │  │(平成17年3月31日社援発第 │かつ本人に支援を受ける意思がある者 │ │  │0331003厚生労働省社会・援護 │                  │ │  │局長通知)         │                  │ ├──┼──────────────┼──────────────────┤ │II │「就労可能な被保護者の就労 │保護の実施機関が就労可能と判断する │ │  │及び求職状況の把握について」│被保護者(高校在学、傷病、障害等の │ │  │(平成14年3月29日社援発第 │ため就労が困難な者を除き、現に就労 │ │  │0329024厚生労働省社会・援護 │している被保護者を含む。)     │ │  │局長通知H17.3.31改正)   │                  │ ├──┼──────────────┼──────────────────┤ │III │「就労可能な被保護者の就  │保護の実施機関が就労可能と判断する │ │  │労・自立支援の基本方針につ │被保護者(高校在学、傷病、障害等の │ │  │いて」           │ため就労が困難な者を除き、現に就労 │ │  │(平成25年5月16日社援発第 │している被保護者を含む。)であって、│ │  │0516第18号厚生労働省社   │就労による自立に向け、本支援が効果 │ │  │会・援護局長通知)     │的と思われる者(保護開始時点では就 │ │  │              │労困難と判断された者がその後就労可 │ │  │              │能と認められるようになった場合には │
    │  │              │その者も含む。また保護から早期脱却 │ │  │              │が可能となる程度の就労が直ちに困難 │ │  │              │と見込まれる場合であっても本支援を │ │  │              │行うことが特に必要と判断した場合に │ │  │              │はその者も含む。)         │ └──┴──────────────┴──────────────────┘  実施機関により就労可能と判断された被保護者中、就労自立支援を受ける意 思のある者は「I」の就労支援プログラムの対象となり、それ以外の者は「II」、 「III」の対象となる。「III」の対象者でない者は、「II」の対象者となる。ただ し、「II」「III」の対象となる者であっても、本人が支援を受ける意思を表明す るなど、後の事情変化により、「I」の対象となりうる。 3 本章の構成  以上の整理を踏まえ、まず、「第2」にて、就労可能対象者の判断・分類に かかる事務を報告した上で、「第3」にて、就労自立支援プログラムを利用す る就労可能者(「I」の対象者)に対する事務を、「第4」にて、就労自立支援 プログラムを利用しない就労可能者(「II」、「III」の対象者)に対する事務を 報告する。  「第5」では、平成26年7月1日の生活保護法改正により新たに創設され た就労自立給付金にかかる事務を報告する。 第2 就労可能対象者の判断と分類 1 就労可能対象者の判断 【事実関係】  岐阜市では、平成25年度と平成26年度に「稼働年齢対象者リスト」を作成 している。  地区担当現業員ごとに作成するもので、稼働年齢対象者(15歳から64歳ま で)について、「ケース番号・該当者」、「世帯類型」、「保護開始年月」、「年齢」、 「世帯人数」、「就労(就労中であれば○)」、「就労支援(就労支援中であれば ○)、「就労阻害要因の程度(0~5)」「就労阻害要因(ア~カ)という項目が リスト化されている。  高齢者世帯を除く世帯(母子世帯、障害者世帯、傷病者世帯)が記載された リストである。  年に1度作成されている。  「その他世帯の稼働年齢対象者調査分析表」として、岐阜市より提供された 集計結果は次のとおりである。 <その他世帯の稼働年齢対象者調査分析表> ┌──────┬─┬──────┬───┬───┬───┬───┬───┐ │      │年│保護開始から│就労 │就労支│阻害要│要指 │合計 │ │      │齢│の期間   │中  │援中 │因あり│導  │(人)│ ├──────┼─┼──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │平成25年度 │15│~1年   │   4│   2│   3│   5│  14│ │(11月調査)│~├──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │      │39│1年~   │  26│   4│  27│  35│  92│ │      ├─┼──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │      │40│~1年   │  15│   1│  32│  30│  78│ │      │~├──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │      │64│1年~   │  116│  21│  118│  210│  465│ │      ├─┴──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │      │   合計   │  161│  28│  180│  280│  649│ ├──────┼─┬──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │平成26年度 │15│~1年   │   5│   3│  11│   6│  25│ │(11月調査)│~├──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │      │39│1年~   │  10│   3│  23│  26│  62│ │      ├─┼──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │      │40│~1年   │  45│  14│  24│  31│  114│ │      │~├──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │      │64│1年~   │  77│   4│  54│  196│  331│ │      ├─┴──────┼───┼───┼───┼───┼───┤ │      │   合計   │  137│  24│  112│  259│  532│ └──────┴────────┴───┴───┴───┴───┴───┘  「就労支援中」というのは、「第3 就労自立支援プログラム」の利用者で ある。  平成26年度でみると、「就労中」、「就労支援中」、「阻害要因あり」以外の者 は「要指導」と分類されているが、「要指導」は、全体の48.7%である(532 名中259名)。  岐阜市としては、特に、「要指導」の対象者に対する就労自立に向けての事 務が重要となろう。  「その他世帯の世帯数分析」として、岐阜市より提供を受けた集計結果は、 次のとおりである。 <その他世帯の世帯数分析> ┌──────┬─────┬─────┬─────┐ │      │その他世帯│内就労世帯│未就労世帯│ ├──────┼─────┼─────┼─────┤ │平成25年9月│    546│    112│    434│ ├──────┼─────┼─────┼─────┤ │平成26年9月│    417│    108│    309│ └──────┴─────┴─────┴─────┘ 【規範】  平成17年度における自立支援プログラムの基本方針では、管内の被保護者 の把握については、次のとおり方針を示している。 ◎管内の被保護者の把握について  実施機関においては、管内の被保護世帯全体の状況を概観し、被保護者の 状況やその自立阻害要因の状況を把握する必要がある。  この際、被保護世帯を年齢別、世帯構成別、自立阻害要因別等に類型化す るとともに、必要と考えられる自立支援の方向性を明確化する。  自立支援プログラム導入のための手引(案)によれば次のとおりである。 ┌───────────────────────────────────┐
    │1 被保護者の自立阻害要因等の実情の把握               │ │1)自立意欲                              │ │2)身体的及び精神的な健康状態                     │ │3)稼働能力活用の状況                         │ │ 「稼働能力の有無」、「稼働能力を活用する意思があるか」、「稼働能力を│ │ 活用する就労の場があるか」                     │ │4)その他の自立を阻害する要因等                    │ └───────────────────────────────────┘  就労に関していえば、稼働能力活用の状況の把握が重要である。  この点、生活保護法第4条第1項では、「保護は、生活に困窮するものが、 その利用しうる・・・能力・・・を、その最低限度の生活の維持のために活用 することを要件として行われる」(生活保護法第4条第1項)と規定されてい る。  これを受けて、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4 月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知)では、「要保護者に稼働能力が ある場合には、その稼働能力を最低限度の生活の維持のために活用させること」 と規定されている。  稼働能力を有しているか否かについては、「生活保護法による保護の実施要 領について(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知)」において、 以下のような判断基準が示されている ┌────────────────────────────────────┐ │1 稼働能力を活用しているか否かについては、1)稼働能力があるか否か、2) │ │  その具体的な稼働能力を前提として、その能力を活用する意思があるか否 │ │  か、3)実際に稼働能力を活用する就労の場を得ることができるか否かによ │ │  り判断すること。                          │ │   また、判断に当たっては、必要に応じてケース診断会議や稼働能力判定 │ │  会議等を開催するなど、組織的な検討を行うこと。           │ │2 1)稼働能力があるか否かの評価については、年齢や医学的な面からの評価 │ │  だけではなく、その者の有している資格、生活歴・職歴等を把握・分析し、│ │  それらを客観的かつ総合的に勘案して行うこと。            │ │3 2)稼働能力を活用する意思があるか否かの評価については、求職状況報告 │ │  書等により本人に申告させるなど、その者の求職活動の実施状況を具体的 │ │  に把握し、その者が2で評価した稼働能力を前提として真摯に求職活動を │ │  行ったかどうかを踏まえ行うこと。                  │ │4 3)就労の場を得ることができるか否かの評価については、2で評価した本 │ │  人の稼働能力を前提として、地域における有効求人倍率や求人内容等の客 │ │  観的な情報や、育児や介護の必要性などその者の就労を阻害する要因をふ │ │  まえて行うこと。                          │ └────────────────────────────────────┘  岐阜市が新人職員研修用に作成した岐阜市生活保護事務の手引き(平成26 年7月)には、就労可能者及び就労可能者になる可能性がある者について次の とおり記載されている。参考までに報告する。 ┌──────────────────────────────────┐ │ア 稼働年齢層にあって、健康でありながら就職していない場合     │ │イ 稼働年齢層であって、外来治療を受けてはいるが、稼働能力があり就労│ │ していない場合                          │ │ウ 心身障害者等で就労についての意欲、能力があると認められる場合  │ │エ 家事等に従事していて稼働阻害要因が排除できる見込みのある場合  │ │オ 能力に対して就労日数又は収入が客観的にみて少ない場合      │ │カ 転職、転業により能力活用を十分に図ることのできる見込みのある場合│ │キ その他勤労意欲に乏しい場合                   │ └──────────────────────────────────┘ 【意見 生活福祉一課・二課】  被保護者に応じた必要な支援を組織的に実施するためには、被保護世帯全体 の状況を把握することは必須である。稼働年齢対象者のリストは実態の把握と いう点からは有用であるが、岐阜市の被保護者世帯の半数を超える高齢者世帯 はリスト化されていない。高齢者世帯であっても、就労可能な者は存在するは ずである。高齢者世帯であるから就労自立は無関係ということにはならない。  稼働年齢対象者だけではなく、被保護世帯全体を踏まえた就労可能対象者の リストを作成することが望ましい。  リストは可能な限り早く事実を反映させるものとし、被保護世帯の類型化と 具体的な支援方法の決定に役立てることを検討する必要があろう。 2 就労可能対象者の分類 【事実関係】  岐阜市では、「就労支援について」と題する書面にて、就労可能対象者(就 労可能者になる可能性がある者を含む)を就労意欲別に次の3つの類型に分類 している。 ┌──────────────────────────────────┐ │1)就労意欲があり、自ら求職活動ができる者              │ │ 現業員が、被保護者の自宅等を訪問した時に、求職活動に関して適切な │ │指導及び助言を行う。ただし、一定期間、自らの求職活動では成果が得ら │ │れない場合には、期限を設けて「2)」へ誘導する。           │ │2)就労意欲があり、就労支援を必要とする者              │ │ 就労阻害要因がない、または若干の阻害要因はあるが、本人に就労意欲 │ │があり、就労支援を希望する者については、就労支援員(※)に支援を依 │ │頼する。この場合、担当現業員は、「個人票(就労支援員プログラム用)」│ │に必要事項を記入し、担当就労支援員に支援を依頼する(65歳以上の方で │ │も就労意欲が強い方は支援可能。)                  │ │3)就労意欲が認められない者、就労阻害要因が大きく、すぐには就労する │ │ ことが難しいと判断される者                    │ │ 阻害要因を分析して、個々のケースについて担当現業員、査察指導員に │ │より検討し、方針を決める。                     │ └──────────────────────────────────┘ ※就労支援員とは、生活保護法に規定する被保護者のうち、稼働能力を有する 者に対し、就労支援を充実させることを目的とし、現業員が就労指導を行う際 に、専門的な立場から助言、および協力を行う者を指す。  こうした分類の内、「2)」に分類された者に対しては、就労自立支援プログ ラムが実施されることになる。 第3 就労自立支援プログラムを利用する就労可能者に対する事務 1 制度の概要
     岐阜市では、平成26年度、「就労支援プログラム」、「生活再生雇用事業」、 「キャリアカウンセリング事業」、「農業体験」という4つの就労自立支援プロ グラムが用意され、事務の執行がなされた。 2 監査の観点及び監査手続  岐阜市の就労自立支援プログラムの事務執行が適正にされているか、効果を 挙げているかという観点で、実施されている4つの就労自立支援プログラムご とに関係書類の記録を閲覧し、ヒアリングを実施した。 3 就労支援プログラム (1)事務の概要  就労支援プログラムとは、就労可能者の求職活動を支援していく事業である。 岐阜市における同プログラムの事務手続の流れは、概ね次のとおりである。 (2)利用状況  平成26年度における就労支援プログラムの利用状況は次のとおりである。 【平成26年度における就労支援プログラムの利用状況】 ┌───┬────┬─────┬────┐ │   │ 人数 │内継続人数│就職人数│ ├───┼────┼─────┼────┤ │4月 │   34│    33│   10│ ├───┼────┼─────┼────┤ │5月 │   29│    21│    7│ ├───┼────┼─────┼────┤ │6月 │   24│    18│    4│ ├───┼────┼─────┼────┤ │7月 │   32│    17│    5│ ├───┼────┼─────┼────┤ │8月 │   42│    26│    8│ ├───┼────┼─────┼────┤ │9月 │   43│    34│   10│ ├───┼────┼─────┼────┤ │10月 │   48│    29│   12│ ├───┼────┼─────┼────┤ │11月 │   47│    34│   10│ ├───┼────┼─────┼────┤ │12月 │   46│    33│    7│ ├───┼────┼─────┼────┤ │1月 │   54│    34│    8│ ├───┼────┼─────┼────┤ │2月 │   56│    42│   10│ ├───┼────┼─────┼────┤ │3月 │   52│    41│   12│ ├───┼────┼─────┼────┤ │合計 │   507│    362│   103│ ├───┼────┼─────┼────┤ │実人数│   148│    148│   89│ └───┴────┴─────┴────┘ (3)事業の効果 【事実関係】  就労支援プログラム利用状況によれば、平成26年度における参加者は148 名(実人数)であり、そのうち就職者は89名(実人数)であった。就職人数 の合計(103名)と実人数の数(89名)に差があるのは、一度は当プログラム によって就職した者が、退職等の理由によって、再度当プログラムを利用して 就職する者がいるために生じているものである。 【意見 生活福祉一課・二課】  参加者のうち60.1%の者が就職するという結果となっている。自立支援の 意思がある意欲のある者が利用していることもあろうが、当プログラムは一定 の成果をあげていると思われる。  就労可能者であって就労支援を必要としていない者(例 自分で就職活動を している者)についても、当プログラムの意義を説明するなどして理解をして もらい、できるだけ当プログラムに参加してもらえるように助言することが望 ましい。 4 生活再生雇用事業 (1)事務の概要  生活再生雇用事業とは、市が被保護者をアルバイトとして雇用する事業であ り、就労意欲が高くても対人を苦手とする者、前回就労時から何年にも渡る空 白期間があることでハローワーク等への求職活動だけでは就職に結びつきに くい者、高齢のため意欲はあっても就労機会に恵まれない者に対して、将来の 自立につながる雇用機会を与えることを目的としている。  なお、本事業をきっかけとして将来の自立を目指す制度の趣旨から、雇用期 間は当該年度の1年間限り(なお、公園クリーンアップ事業及び中心市街地ご み出し実態調査は6ヶ月単位で募集)である。  平成26年度における生活再生雇用事業の利用状況は、次のとおりである。 【平成26年度における生活再生雇用事業の利用状況】 ┌───────────────┬────┬────┬──────┐ │               │面接者数│採用者数│ 就職者数 │ ├───────────────┼────┼────┼──────┤ │公園クリーンアップ事業(前期)│   10│   5│(自立廃止)│ │               │    │    │     1│ ├───────────────┼────┼────┼──────┤ │公園クリーンアップ事業(後期)│   11│   5│     0│ ├───────────────┼────┼────┼──────┤ │学校校務員補助事業      │   7│   4│(継続中)2│ ├───────────────┼────┼────┼──────┤ │中心市街地ごみ出し実態調査  │   6│   4│(継続中)1│ │(前期)           │    │    │      │ ├───────────────┼────┼────┼──────┤ │中心市街地ごみ出し実態調査  │   4│   3│     0│ │(後期)           │    │    │      │ ├───────────────┼────┼────┼──────┤ │      合計       │   38│   21│     4│ ├───────────────┼────┼────┼──────┤
    │      実人数      │   24│   12│     4│ └───────────────┴────┴────┴──────┘ (2)事業の効果 【事実関係】  生活再生雇用事業の利用状況によれば、平成26年度は、公園クリーンアッ プ事業、学校校務員補助事業、中心市街地ごみ出し態調査などで12名(実人 数)が雇用され、そのうち就職により自立廃止に至った者は1名であり、自立 廃止には至らずとも本事業をきっかけに他業への就職や求職活動を継続して いる者も多くみられた。ただし、参加人数(延べ人数)が少ないことや参加者 が固定化されていることなどが問題となっている。 【意見 生活福祉一課・二課】  自立廃止に至る者、あるいは、自立廃止に至らずとも本事業がきっかけとな って、他業者就職できた者がいる。  本事業の目的及び対象者からすれば、就労自立に直接つながらなくても効果 がないと即断してはいけないと考えるが、参加人数(延べ人数)が少なく、参 加者が固定されている上、就職に結びついた者は約33.3%である。  効果という観点などから現状を分析し、実施内容の改善を図ることができな いか、場合によっては、実施の継続の有無について、検討することが望ましい。 5 キャリアカウンセリング事業 (1)事務の概要  キャリアカウンセリング事業とは、生活保護法に規定する被保護者のうち、 稼働能力を有しているが長時間就労していない者、または就労しても長続きし ない者等に対し、稼働能力、学力、体力、職歴、年齢、資格その他の特性に着 目しつつ就労にかかるカウンセリングを行うことにより、就労意欲の向上を図 り、もって就労自立の一助とすることを目的とした事業である。  当事業においてカウンセリングを行う者がキャリアカウンセラー(1名)で あり、担当現業員が就労指導を行う際に、専門的な立場から助言および協力を 行う。例えば、被保護者の心の悩みを聞きその悩みが解決できるようなアドバ イスを行うなどである。  この事業で改善がみられた者は、上記「3」で述べた就労支援プログラムに つながれる。平成26年度におけるキャリアカウンセリング事業の利用状況は 次のとおりである。 【平成26年度におけるキャリアカウンセリング事業の利用状況】 ┌───┬────┬────┬────┬────┬────┬────┐ │   │申請者数│当月支援│内支援開│支援終了│延べ回数│就職者数│ │   │    │者数  │始者数 │者数  │    │    │ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │4月 │   1│   9│   1│   0│   18│   0│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │5月 │   0│   9│   0│   3│   15│   0│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │6月 │   0│   6│   0│   0│   10│   1│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │7月 │   2│   7│   1│   1│   17│   0│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │8月 │   2│   8│   2│   1│   15│   0│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │9月 │   0│   8│   1│   1│   15│   1│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │10月 │   1│   8│   1│   0│   11│   0│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │11月 │   0│   8│   0│   1│   11│   0│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │12月 │   0│   7│   0│   1│   13│   0│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │1月 │   1│   7│   1│   1│   15│   0│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │2月 │   0│   6│   0│   1│   11│   2│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │3月 │   0│   5│   0│   5│   10│   1│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │合計 │   7│   88│   7│   15│   161│   5│ ├───┼────┼────┼────┼────┼────┼────┤ │実人数│   6│   14│   6│   14│   14│   4│ └───┴────┴────┴────┴────┴────┴────┘ (2)事業の効果 【事実関係】  キャリアカウンセリング事業の利用状況によれば、平成26年度における参 加者は14名(実人数)であり、そのうち就職者は4名(実人数)であった。 就職人数の合計と実人数の数に差があるのは、一度は当事業によって就職した 者が、退職等の理由によって再度当事業を利用して就職する者がいるため、生 じているものである。なお、就職者数については、当事業を継続中に就職した 人数である。 【意見 生活福祉一課・二課】  本事業の目的及び対象者からすれば、就労自立に直接つながらなくても効果 がないと即断してはいけないと考えるが、就職に結びついた者が約28%強で ある。効果という観点などから現状を分析し、実施についての改善を図ること がないか検討することが望ましい。 6 就労体験事業(農業体験) (1)事務の概要  就労体験事業(農業体験)とは、生活保護受給者世帯の自立を支援するため、 要就労指導ケースで未就労が長期化している者や就労に不安があり就労でき ない者に対し、農業体験を通じ将来に向けて社会参加を促すとともに、就労意 欲の喚起を図ることを目的とする事業である。  当事業は、特定非営利活動法人に一者随意契約にて業務委託されている(地 方自治法施行令第167条の2第1項第2号)。  なお、平成26年度の当事業は、その100%が岐阜県住まい対策拡充等支援 事業費補助金の対象となっていたため、当事業に対する岐阜市の負担はゼロで ある。  平成26年度における就労体験事業(農業体験)の利用状況は次のとおりで ある。 【平成26年度における就労体験事業(農業体験)の利用状況】
    ┌───┬────┬──────┬────┐ │   │開催回数│ 参加人数 │就職者数│ │   │    │(延べ人数)│    │ ├───┼────┼──────┼────┤ │4月 │   5│     21│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │5月 │   4│     14│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │6月 │   4│     9│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │7月 │   5│     10│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │8月 │   4│     10│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │9月 │   4│     14│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │10月 │   5│     15│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │11月 │   4│     8│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │12月 │   4│     12│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │1月 │   4│     8│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │2月 │   4│     8│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │3月 │   3│     5│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │合計 │   50│     134│   0│ ├───┼────┼──────┼────┤ │実人数│    -│     7│   0│ └───┴────┴──────┴────┘ (2)設計金額 【事実関係】  当契約は平成25年度から単価契約となっており、平成26年度契約における 単価については1人当たり4,200円となっていた。業務委託契約伺書添付の就 労体験事業(農業体験)業務委託 設計内訳書において、設計金額については、 4,300円×7人×52週×100%(参加率)という数式で積算されている。参加 予定人数の設計と実際の参加人数(延べ人数)が大きく異なったことから、予 算の執行率は50%を下回っている。 【意見 生活福祉一課・二課】  補助金で事業費の100%が賄われるにしても、前年度の単価や参加率を考慮 し、できるだけ正確に設計金額を算定することが望ましい。 (3)事業の効果 【事実関係】  当該事業の過去3年間の参加人数(延べ人数)は、平成24年度が211人、 平成25年度が233人、平成26年度が134人である。しかしながら、就労体験 事業(農業体験)の利用状況によれば、平成26年度における参加者は7名(実 人数)であり、そのうち就職者は0名であった。  就職による自立廃止に至る者がいないだけでなく、当事業をきっかけに他業 への就職や求職活動を継続している者もいない。参加人数(延べ人数)が少な く参加者も固定されている。 【意見 生活福祉一課・二課】  参加人数(延べ人数)が少なく参加者も固定化されており、就職者数もゼロ である。  本事業の目的及び対象者からすれば、就労自立に直接つながらなくても効果 がないと即断することはできないが、結果が出ていないことは事実である。  現状把握、分析をし、当事業の継続については再検討することが望ましい。 (4)事業評価シート 【事実関係】  本事業については就職者数がゼロである。そこで、効果について担当課がど のような検証をしているのか確認をすべく、事業評価シートの提出を求めた (平成26年度 岐阜市包括外部監査報告書 92頁以下参照)。岐阜市におい ては、委託契約において事業を実施した場合、担当課が事業の概要、評価等を 記載したシートを作成することになっている(平成28年2月3日現在 平成 25年度までは岐阜市行財政改革課のホームページで公表)。  そのところ、生活福祉一課・二課からは、「ない」との回答であった。そこ で、事業評価に関し所管する行財政改革課に対し書面照会をし、事業評価シー ト作成の必要性を尋ねたところ、事業評価シートの作成対象とはなるが、対象 となる事務事業の洗い出し過程で抽出漏れがあったことにより、作成されてい ないとの回答があった。 【規範】  岐阜市は、事業評価シートの作成要領にて、事業評価シートを使用せず評価 する事務事業として、次の事業を挙げている。  1 単年度で完結する事務事業  2 内部管理的な事務事業  3 事業実施に関して市に裁量の余地のない事務事業  4 10万円未満の加入団体負担金 【指摘 生活福祉一課・二課】  就労体験事業(農業体験)は、事業評価シートを使用せず評価する事務事業 には該当しない以上、事業評価シートを必ず作成すべきである。  そうでなければ、市民に公表されず、担当課がその事業の効果を測定し、場 合によっては、見直しを図ることの契機とならない。  まずは、就労体験事業(農業体験)が事業評価シートの作成対象として抽出 されなかった原因を明らかにし、今後は、作成漏れが起こらないよう徹底する ことが必要である。 第4 就労自立支援プログラムを利用しない就労可能対象者に対する事務 1 事務の概要 (1)はじめに  「本章第1の2」で述べた II「就労可能な被保護者の就労及び求職状況の
    把握について」(以下、本項目においては、「平成14年通知」という)、もしく は、III「就労可能な被保護者の就労自立支援の基本方針」(以下、本項目にお いては「平成25年通知」という)のいずれかにより事務執行がなされるはず である。 (2)事務手続の流れ  「平成14年通知」と「平成25年通知」によれば、事務手続の流れは概ね次 のとおりである。 2 自立活動確認書の未作成 【事実関係】  平成25年通知では、「就労による生活保護からの早期脱却に向けて保護の実 施機関が求職活動内容を予め本人と共有し、的確な支援を行うことを目的とし て、被保護者が主体的かつ計画的に行う取組を確認するため」として、自立活 動確認書の作成を求めている。  ヒアリングによれば、岐阜市においては、平成25年通知のあった平成25 年度には作成されていたとのことであるが、被保護者本人や現業員が記入方法 を知らないことを理由に、徐々に作成されることがなくなり、現在では一切作 成を求めていないとのことである。 【規範】  平成25年通知は、3 自立に向けた被保護者主体の計画的な取組の確認の 項において、被保護者が主体的かつ計画的な取組を確認するため次の取組を行 うとして、自立活動確認書の作成を求め、本人の同意及び署名を得て、双方が 原本と写しを保管することで、内容を共有し、自立活動確認書に基づき、集中 的な支援を行うこととされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  平成25年通知の適用においては、被保護者による自立活動確認書の作成は 出発点である。  組織として自立活動確認書の作成を一切求めないということになると、岐阜 市において平成25年通知に基づく事務執行はなされないことがその帰結とな ろう。  本来、自立活動確認書は、被保護者の就労自立に向けた主体的な取組のため に作成が有用であると考えられているもののはずである。  被保護者に自立活動確認書の作成を強制することはできないのは当然では あるが、少なくとも、現状のように一律作成しないという扱いには疑問がある。  自立活動確認書の作成を一切求めていないという現在の事務執行を今後も 継続することが妥当であるか早急に検討すべきである。 3 就労活動促進費 (1)事務の概要  平成25年8月1日施行の生活保護法改正において、就労活動促進費の制度 が創設された。  被保護者において、積極的に就職活動をする者が一定の支給要件を充たした 場合に、月額5,000円、原則6か月以内で支給されるものである(生活保護法 による保護の実施要領について(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会 局長通知)第7 最低生活費の設定 2(9)。)就労自立を助長する制度であ る。 (2)岐阜市の現状-支給実績がないこと 【事実関係】  岐阜市では就労活動促進費が支給された実績はない。 【規範】  生活保護法による保護の実施要領について(昭和38年4月1日社発第246 号厚生省社会局長通知)「第7 最低生活費の認定 2(9)ア(イ)a」に よれば、就労活動促進費の支給は、自立活動確認書に基づき求職活動を行って いることが要件とされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  上記第4の2で述べたとおり、確認書が作成されていない岐阜市においては、 支給要件に該当する者はいないことになろう。  上記「第4の2」で述べた確認書の作成に対する岐阜市のスタンス次第では あるが、確認書を作成するということがあれば、利用を検討することが望まし い。 4 求職活動状況・収入申告書の提出状況 【事実関係】  岐阜市において、平成14年通知にて定められた別紙2に準拠する求職活動 状況・収入申告書が導入されている。就労可能者中、就労していない者の中に、 毎月求職活動状況・収入申告書を提出していない者がいた。 【規範】  平成14年通知では、求職活動状況・収入申告書について、3(2)にて、 就労可能な被保護者のうち就労していない者に対しては、毎月、別紙2を参考 にして求職活動状況・収入申告書を提出させることとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  稼働能力の活用状況を毎月確認するためにも、求職活動状況・収入申告書は 毎月提出させるべきである。 5 収入申告書、求職活動状況・収入申告書の保管状況 【事実関係】  被保護者から提出を受けた収入申告書(巻末資料3に添付)、求職活動状況・ 収入申告書は、個別のケース台帳にファイリングされていない。多数の被保護 者の、収入申告書、求職活動状況・収入申告書を個別ケース台帳とは別のファ イルにて月ごとにファイリングし保管している。  ヒアリングによれば、分量が多くなることがその理由であるとのことであっ た。また、その月別に集めた求職活動状況・収入申告書のファイルについて、 決裁印がないことから、査察指導員や課長が見たことを確認できない。 【規範】  平成14年通知には、「4 就労・求職状況管理台帳の整備」において、被保 護者から提出された申告書等については、個別のケース台帳において保管する こととなっている。 【指摘 生活福祉一課・二課】
     提出を受けた収入申告書、求職活動状況・収入申告書は、ケース台帳ごとに 整理すべきである。  そうしなければ、例えば、求職活動状況・収入申告書の記載から、その者の 求職活動の実施状況を具体的に把握することができず、有効な訪問調査を検討 したり、査察指導員が決裁においてチェックしたりすることができない。 6 就労・求職状況管理台帳の作成状況 【事実関係】  担当現業員ごとに作成する訪問計画表のファイルに就労・求職活動状況管理 台帳が綴じられている。ケース番号、氏名、稼働能力活用に係る処遇方針、月 別稼働能力活用状況、停廃止年月日を記入するようになっている。  収入申告書、求職活動状況報告書の提出があれば、「収」、「求」を○で囲み、 就労日数、収入額並びに求職日数を記載することとなっている。  無作為抽出にて、平成26年度の台帳を確認したところ、「稼働能力活用に係 る処遇方針」欄が空欄のもの、「収」・「求」に○が全く囲まれていないものが あった。 【規範】  平成14年通知の「6 就労・求職状況管理台帳による管理」によれば、保 護の実施機関は、対象者の稼働能力の活用状況について、これを把握するため、 (通知の)4により申告が必要な被保護者ごとに、別紙4を参考として作成さ れる「就労・求職管理台帳」により管理することとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  稼働能力活用の状況把握に必要な台帳である。活用把握をした上で自立支援 プログラムを推奨するであるとか、就労指導をするであるとかといった対応を 検討することになるからである。  査察指導員を中心に、どのような目的で作成する書面であるかを担当現業員 に周知した上で、担当現業員にて確実な記載をすべきである。 第5 就労自立の事務全般 1 就労指導の実施 【事実関係】  ヒアリングやケース記録によると、就労能力があるにもかかわらず、就労活 動をしない者については、口頭による就労指導を行っているとのことであった。  平成27年度岐阜県施行事務監査資料によると、平成26年度において、ケー ス診断会議を開催して文書指導指示を行った件数は22件であるが、そのうち 就労指導に関する文書指導指示の件数は8件とされている。文書指導違反によ る廃止は1件もなかった。なお、「その他世帯の稼働年齢対象者調査分析表」 によると、平成26年度においては、「要指導」とされている対象者は259名と されていた。 【規範】  生活保護法第27条第1項では、保護の実施機関は、被保護者に対して、生 活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示を行うことができ るとされている。  「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて」(平成18年3月 30日社援保発第0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、 一定期間、口頭による指導指示を行ったにもかかわらず、目的が達成されなか ったとき、又は達成されないと認められるときに文書による指導指示を行う。 文書による指示を行っても正当な理由なく文書指示に従わない場合には、さら にケース診断会議に諮る等組織的に十分検討のうえ、弁明の機会を与える等法 第62条第4項による所定の手続きを経たうえで保護の変更、停止又は廃止を 行うとされている。  平成14年通知によれば、「5 活動能力の活用状況に対する対応」という項 で稼働能力の活用が不十分な者、求職活動の方法について改善を図る必要があ る者については、要因を分析し、自立支援プログラムへの参加推奨を行うなど 必要な助言を行うこととされ、「7 申告を行わないものについて申告を行う よう指導」という項で、指導を3か月程度継続してもなお、正当な理由もなく これに従わない場合には、法第27条に基づく文書指導・指示を行うこと、さ らにこれに従わない場合には、所定の手続きを経た上で保護の変更、停止、廃 止について検討することとされている。  また、平成17年度における自立支援プログラムの基本方針においては、「第 3の6 支援の見直し及び指導指示の手続」の項で、口頭での指導指示→改善 が見られない場合等には、文書による指導指示→文書による指導指示を受けた にもかかわらず、全く取組に改善が見られず、稼働能力の活用等、保護の要件 を満たしていないと判断される場合については、保護の変更、停止又は廃止を 検討するとされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  上述のとおり、各種通知では、指導指示の検討順序が具体的に定められてい るので、これに従い、順序を踏まえて、就労にかかる指導指示を適切に実施す ることが望ましい。  文書による指導指示を躊躇せずに実施し、文書による指導指示も従わない場 合には、弁明の機会を与えた上で、最終的に保護の停止又は廃止を検討するこ ともやむを得ないものであると考える。  これに対して、廃止したとしても、再度、申請があった場合は、受理をしな ければならないこと、他市町村に移動して申請することもあることから、停 止・廃止にしても、あまり意味が無いという考え方もあるかもしれない。また、 再度、申請してきたときに、受理して対処しなければならないことから、事務 手続きの負担等が大きいという考え方もあるかもしれない。  しかし、求職活動等をしていない者は、本来、稼働能力の活用という保護要 件を満たしていない。  また、保護受給者の自立を妨げる結果ともなるし、受給できればいいという 姿勢を生むことになり、不正受給の温床ともなりかねない。岐阜市や他市町村 で申請してきたとしても、時には、過去の経緯と反省状況から、稼働能力など の保護要件を満たしていないとして却下するということも考えられる。また、 再度の申請の際に、稼働することの誓約書を徴収するなど、申請者や保護者に 対して、強い意識付けをすることも可能となる。 2 就労自立全般に関する事務マニュアル 【事実関係】  就労に関する事務については、新人職員研修用に作成された岐阜市の生活保 護事務の手引きや「就労支援について」という書面(A4用紙(2枚))など に記載はあるが、就労自立にかかる事務の全体像を踏まえて作成された事務マ ニュアルはない。 【意見 生活福祉一課・二課】
     現状では、担当の現業員が就労自立に向けてどのように動けばよいのか不明 確であると思われる。就労自立に向けての事務執行は、本監査で報告した流れ が筋のはずである。  就労自立に向けた事務執行がより組織的・効率的に行われるようにするため にも、就労自立に向けた事務全般を示したマニュアルを作成することが望まし い。 第6 就労自立給付金 1 概要 (1)制度  生活保護法の一部を改正する法律が、平成26年7月1日から施行されるこ とに伴い、就労自立給付金を支給する制度が生活保護法第8章(第55条の4、 5)に創設された。  生活保護から脱却すると税・社会保険料等の負担が生じるため、こうした点 を踏まえ、生活保護を脱却するためのインセンティブを強化するとともに、脱 却直後の不安定な生活を支え、再度保護に至ることを防止することが重要であ る。そのため、被保護者の就労による自立の促進を目的に、安定した職業に就 いたこと等により保護を必要としなくなった者に対して就労自立給付金を支 給する制度が創設されたものである。 生活保護法第1条の目的に照らせば、まさに「自立の助長」を目的とする制 度である。 2 岐阜市の就労自立給付金支給状況  岐阜市作成資料によれば、平成26年度における就労自立給付金の支給状況 は、次のとおりである。 <平成26年度における就労自立給付金の支給状況> ┌──┬─────┬─────┐ │  │ 件数  │金額(円)│ ├──┼─────┼─────┤ │4月│    -│    -│ ├──┼─────┼─────┤ │5月│    -│    -│ ├──┼─────┼─────┤ │6月│    -│    -│ ├──┼─────┼─────┤ │7月│    -│    -│ ├──┼─────┼─────┤ │8月│    -│    -│ ├──┼─────┼─────┤ │9月│    -│    -│ ├──┼─────┼─────┤ │10月│    5│  332,917│ ├──┼─────┼─────┤ │11月│    2│ △112,938│ ├──┼─────┼─────┤ │12月│    4│  182,403│ ├──┼─────┼─────┤ │1月│    5│  484,172│ ├──┼─────┼─────┤ │2月│    4│  255,377│ ├──┼─────┼─────┤ │3月│    2│  121,196│ ├──┼─────┼─────┤ │合計│    22│ 1,263,127│ └──┴─────┴─────┘ ※月別は支給起案月で集計。10月の2件に計算間違いがあったため11月で組 戻し、12月に再度起案。 3 監査の観点及び監査手続  就労自立給付金は、自立の助長促進のための重要な制度である。  そこで、かかる給付金が岐阜市おいて適正に支給されているかを検証するた め、岐阜市における現状をヒアリングするとともに、就労自立給付金を支給し ている16ケースのケース記録の閲覧を行った。なお、岐阜市に提出を求めた ケースファイルは、就労自立給付金を支給している22件全てであったが、そ の内提出されたケースファイルが16件であったため、16件のケースファイル を監査したものである。 4 就労自立給付金の周知 【事実関係】  ヒアリングによれば、岐阜市では、就労自立給付金が創設されたときの研修 と平成27年度の新人職員研修にて説明がなされたとのことであった。  実際の適用の判断は、担当現業員による。 【規範】  生活保護法による就労自立給付金の支給について(平成26年4月25日社援 発0425第3号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)においては、2 保護 の実施機関は、就労支援を実施する被保護者を中心に給付金の周知に努め、就 労による保護脱却を働きかけることとされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  就労自立給付金は、その趣旨からも明らかなように生活保護を脱却するため のインセンティブである。被保護者が事前にその存在を知らなければ就労自立 給付金がインセンティブとして働くことはない。  毎年1回は必ず研修を実施するなどして、就労自立給付金を確実に周知でき る体制を構築することが望ましい。 5 就労自立給付金の申請 【事実関係】  就労自立給付金の支給要件は次のとおりである(生活保護法第55条の4、 生活保護法施行規則第18条の3)。 ┌──────────────────────────────────┐ │一 被保護者が事業を開始し、おおむね6月以上最低限度の生活を維持する│ │ ために必要な収入を得ることができると認められること。       │ │二 就労による収入がある被保護世帯において、当該就労による収入の増加│ │ により、おおむね6月以上最低限度の生活を維持するために必要な収入を│
    │ 得ることができると認められること。                │ │三 就労による収入以外の収入を得ている被保護世帯において、当該世帯に│ │ 属する被保護者が職業(前条に規定する安定した職業を除く。)に就いた│ │ ことにより、おおむね6月以上最低限度の生活を維持するために必要な収│ │ 入を得ることができると認められること。              │ └──────────────────────────────────┘  岐阜市において、支給要件をどのように確認しているのかを検証すべく、就 労自立給付金の申請書類を確認したところ、被保護者から提出された申請書が あるだけであり、支給要件が確認できる書類の添付はなかった。そこで、ヒア リングを実施したところ、そうした書類の提出を被保護者に求めたことがない とのことであった。 【規範】  生活保護法施行規則第18条の4では、次のとおり規定されている。 2 支給機関は、前項に規定する申請書のほか、就労自立給付金の支給の決定 に必要な書類の提出を求めることができる。 【意見 生活福祉一課・二課】  就職先の確認や受給履歴を世帯単位で確認するなど、支給要件の確認は慎重 に行う必要がある。  支給要件の確認に必要な書類の提出は義務ではないが、支給の決定に必要が あると考えた場合は躊躇することなく、書類の提出を求めることが望ましい。  被雇用者であれば、賃金、労働時間、労働契約の期間、就業の場所、従事す べき業務内容等が記載された労働契約にかかる契約書(これらの事項を証明で きる書類を含む)事業を営む者であれば、売上げ等の収入金額や仕入れや必要 経費に関する事項を記録した帳簿等が考えられる。 6 就労自立給付金の算定 (1)概要  就労自立給付金の支給額は、算定対象期間における各月の就労収入額に対し、 その各月に応じた算定率を乗じて算定した額と上限額とのいずれか低い額と する。なお、支給対象世帯において、2人以上の世帯員が就労に伴う収入を得 ている場合には、それぞれの者について算定した額を合算し、合算した額と、 上限額とのいずれか低い額を支給額とする。 1)算定対象期間  保護を必要としなくなったと認めた日が属する月(保護を必要としなくなっ たと認められた日が月の初日である場合、その前月)から起算して前6月(当 該期間中に法第26条の規定に基づき月の初日から末日までの期間にわたって 保護を停止した場合は、当該期間を含まない6月)を算定対象期間とすること。 ただし、法第27条第1項の指導又は指示に従わず、又は法第28条第1項の報 告をしないなどにより保護を停止した期間については、算定対象期間に含むも のであること。 2)就労収入額  就労自立給付金の支給対象世帯の世帯員について、保護の実施機関が、「生 活保護法による保護の実施要領について」第8によって収入として認定した就 労による収入額とすること。 3)各月に応じた算定率  生活保護法施行規則第18条の5の規定に基づき厚生労働大臣が定める算定 方法(平成26年4月18日 厚生労働省告示第224号)の「二」に記載がある。  算定率は、保護の廃止に至った就労の収入認定開始月を起算点とし、1月目 から3月目までは30%、4月目から6月目までは27%、7月目から9月目ま では18%、10月目以降は12%とする。 4)支給額の上限額  単身世帯は10万円、複数世帯は15万円とする。 (2)算定の具体例  例えば、月額76,800円の就労収入のある者が6ヶ月間積立て、脱却した時 点で一括支給した場合、(収入認定額(A)=76,800円-基礎控除21,200円 =55,600円)、次のとおり、保護廃止決定の際に95,706円が支払われる。 ┌──────────────┐ │1ヶ月目 A×30%=16,680円│ │2ヶ月目 A×30%=16,680円│ │3ヶ月目 A×30%=16,680円│ │4ヶ月目 A×27%=15,012円│ │5ヶ月目 A×27%=15,012円│ │6ヶ月目 A×27%=15,012円│ │    積立額合計=95,076円│ └──────────────┘ (3)算定の誤り 【事実関係】  就労自立給付金の算定は、各現業員に任されており、支給金額については現 業員が厚生労働省から支給されたソフト(現在はシステムで計算)に収入認定 開始月、保護廃止年月日等を入力することによって計算されているが、平成 26年10月の計算に誤りがあることが現業員によって発見され、次月に組戻し の手続を行い、12月に再計算を行った。  誤りが発見されたのは2名であり、誤りの原因は、収入認定額を計算する際、 基礎控除を控除し忘れたことにある。  そのため、支給金額が、正しくは60,411円であったところ、112,938円と して計算されてしまったとのことであった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  ソフトやシステムによって支給金額が計算されるとしても、そこに入力され る元データが間違っている場合、支給金額が正しく計算されることはない。  担当現業員の責任において正しく入力するようにし、各現業員に計算を任せ るのではなく、査察指導員など、他の職員がチェックする体制を整えるべきで ある。  特に、入力されている元データのチェックは必要であろう。 (4)文書の整理 【事実関係】  上述した算定誤りは支給前に発見されたとのことであるが、支給調書の決裁 後のことである。誤った支給金額で起案・決裁された書類については残ってい ないとのことであった。
    【規範】  岐阜市文書取扱規則第37条では、文書の整理について次のとおり定める。 第37条 文書は、常に整理してその所在及び処理状況等を明確にし、あらゆ  る事態に対処して臨機の処置がとれるよう整備しておかなければならない。 2 文書の整理は、ファイリング・システムによって行う。 3 未処理の文書又は懸案中の文書は、懸案フォルダに収納する等の方法によ  り一定の箇所に整理し、文書の所在を明らかにしておかなければならない。 4 処理の完結した文書(文書管理システムにより保存されているものを除  く。)は、文書分類表(第14号様式)の区分に従い、文書分類番号を付して該  当のフォルダに整理しなければならない。 5 文書の分類基準は、文書管理システムにより管理する。ただし、文書分  類表は、行政課長の承認を得て各課において作成する。 【指摘 生活福祉一課・二課】  岐阜市文書取扱規則第37条違反である。例え、誤った文書であったとして も、決裁文書については、ケース記録中に整理すべきである。 第7章 保護費 第1 概要  生活保護費の種類と範囲については、第1章・第3で、岐阜市の生活保護費 の現状については、第2章・第3・3で述べたとおりである。  改めて、岐阜市における生活保護費の過去5年間の推移を述べると、次のと おりである。 〔岐阜市における生活保護費の過去5年間の推移(再掲)〕                              (単位:千円) ┌────┬─────┬─────┬─────┬─────┬─────┐ │ 種類 │平成22年度│平成23年度│平成24年度│平成25年度│平成26年度│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │生活扶助│ 3,481,013│ 3,896,917│ 4,020,864│ 3,910,226│ 3,961,594│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │教育扶助│  34,977│  37,829│  38,619│  38,316│  38,826│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │住宅扶助│ 1,357,850│ 1,540,416│ 1,614,465│ 1,627,085│ 1,660,062│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │医療扶助│ 4,699,863│ 5,333,514│ 5,276,020│ 5,428,441│ 5,585,925│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │介護扶助│  221,818│  258,582│  285,426│  306,851│  318,982│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │出産扶助│    684│    -│    822│    191│   1,151│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │生業扶助│  13,520│  14,156│  15,583│  18,682│  18,377│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │葬祭扶助│  34,593│  32,366│  33,683│  30,734│  32,946│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │合計  │ 9,844,323│11,113,782│11,285,485│11,360,529│11,617,868│ └────┴─────┴─────┴─────┴─────┴─────┘ 岐阜市においては、医療扶助費が最も高い金額である。高齢者世帯が半数以上 を占める岐阜市においては、今後も医療扶助費の増加が懸念されるところであ る。  また、昨今、高齢者の単身世帯が増えたことによる、孤独死の問題が取り上 げられている。岐阜市においては、高齢者世帯の多くは高齢単身者世帯であり、 葬祭扶助にて葬儀を行うケースの増加が懸念される。 第2 監査の観点及び監査手続  本章では、各扶助の検討に入る前に、まず被保護者への保護費の支給手続に ついて、適切に処理されているかを監査した。経理事務等の不祥事が未然に防 止される体制になっているかという観点から、関係部署(生活福祉一課・二課) へのヒアリング及び関係書類の閲覧を実施した。  各扶助については、第1で述べた考察から、医療扶助と葬祭扶助の2点につ き、監査を実施することとした。  監査方法として、医療扶助については、市の医療扶助運営体制と医療扶助の 実施状況を確認し、医療扶助費削減の方向性を探る観点から監査を実施した。  具体的には、運営体制として、医療扶助審議会、嘱託医について、また、実 施状況として、タクシー券の管理、レセプト点検等業務委託契約、医療扶助の 適正な実施に向けての取組みについて、関係部署(生活福祉一課・二課)への ヒアリング、関係書類の閲覧及び地方自治法第252条の38第1項の関係人調 査を実施した。  葬祭扶助については、主に遺留金品について監査を実施した。遺留金品は葬 祭扶助費に充当されるものである。その前提として、遺留金品の適切な確認・ 保管・処理の必要がある。そこで、岐阜市の遺留金品の管理状況を確認するた め、関係部署(生活福祉一課・二課)へのヒアリング、関係書類の閲覧及び現 地視察を実施した。  以下、これらの監査結果をもとにその事実関係と指摘・意見事項を報告する。 第3 保護費の支給手続 1 概要  保護費支給までの事務処理について、経理担当者に対するヒアリングを中心 に、生活保護システムにおける事務処理の確認、「口座一覧表」「窓口一覧表」 等関係資料の閲覧により監査を実施した。 〔決裁までの流れ〕  保護費の支給は、被保護者からの保護申請に対して査察指導員から所長まで の決裁がなされた後、経理担当者が保護システムにおいて決裁処理を行った後 に開始される。 ┌───────────────────────────────────┐ │現業員が保護システムにおいて「保護決定調書」を作成する        │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │査察指導員が保護決定調書の内容を確認し押印する            │
    └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │課長が保護決定調書の内容を確認し押印する               │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │所長が保護決定調書の内容を確認し押印する               │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │経理担当者が所長決裁後の保護決定調書の内容確認(保護費の検算等)を  │ │行い、押印して、生活保護システムにて決裁処理を行う          │ └───────────────────────────────────┘ 〔支給までの流れ〕 ┌──────┬────────────────────────────┐ │1)定例支給 │毎月原則1日に被保護者の口座に振り込む         │ │      │なお、支給開始月については、随時、保護費の支給を行う  │ │      │必要があるため、「定例以外」となる。          │ ├──────┼────────────────────────────┤ │2)定例以外 │ア 毎月5日、15日、25日に口座に振り込む        │ │      ├────────────────────────────┤ │      │イ 現金により窓口で支給する              │ └──────┴────────────────────────────┘ 1) 定例支給 ┌───────────────────────────────────┐ │ 生活保護システムに入力された定例支給データにつき、         │ │ 支給月の前月20日をめどに、当該データの確定処理を行う        │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │ 当該データを会計課に送信する                    │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │ 会計課が送信されたデータをもとに振込処理を行う           │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │ 被保護者の口座に振り込まれる(毎月1日)               │ └───────────────────────────────────┘ 2) 定例以外 ┌───────────────────────────────────┐ │ 生活保護システムに入力された定例支給データにつき、         │ │ 各支給日の10日前をめどに、当該データの確定処理を行う        │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │ 当該データをもとに、口座振込分の資料として「口座一覧表」を、    │ │ 窓口支給分の資料として「窓口一覧表」を作成する           │ └───────────────────────────────────┘ ア 口座振込分 ┌───────────────────────────────────┐ │ 「口座一覧表」をもとに「振込依頼書」を作成する           │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │ 振込依頼書を銀行へ持参する                     │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │ 被保護者の口座に振り込まれる(5日、15日、25日)          │ └───────────────────────────────────┘ イ 窓口支給分 ┌───────────────────────────────────┐ │ 「窓口一覧表」をもとに「金種表」と「個人内訳書」を作成する     │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │  現金支給分については、金種表により銀行から総額を引き出す     │ │  ・5日支給分については、件数が多いため前日に引き出し、      │ │   被保護者ごとに現金を仕分して袋詰めし、金庫にて保管する     │ │  ・15日、25日支給分については、支給日当日に引き出し、       │ │   支給前に被保護者ごとに現金を仕分して袋詰めする         │ └───────────────────────────────────┘       ↓ ┌───────────────────────────────────┐ │ 個人内訳書(保護者控え分(上部)と領収書(下部)から成る)をもとに、│ │ 査察指導員と現業員が保護費を支給し、領収書を預かる         │ └───────────────────────────────────┘ 2 書類の控え 【事実関係】  生活福祉一課・二課は、5日、15日、25日窓口支給およびそれ以外の窓口 での随時支給に対応するため、会計課より事前に資金の提供を受けている。 これを「資金前渡」という。直近3ヶ月の資金前渡金額の平均額をもとに、 昨年度のデータを勘案し、これに1.5倍(平成25年度までは1.3倍)程度を 掛けた金額を毎月会計課に申請している。  生活福祉一課・二課は、月に2回(上期、下期)、上述の「口座一覧表」と 「窓口一覧表」及び小口現金(ホームレス支給等、次項で記載。)を元に「随 時分扶助費精算明細書」を作成し、会計課に報告することにより、資金前渡
    の精算をする。  口座振込の際の「振込依頼書の控え」及び窓口支給の際の「領収書」は、と もに資金前渡精算の際に会計課に送付され、生活福祉一課・二課には何も残ら ない。 【意見 生活福祉一課・二課】  例えば、現金支給や口座振込について被保護者から問い合わせがあった場合 など、それぞれの処理の確認が必要となった場合、会計課に問い合わせない限 りこれらを確認することができない。  効率化の観点からも、被保護者と直接事務処理を行う担当課として、振込依 頼書の控えや領収書の写し等の資料を、保護費支給の証拠書類として残すこと が望ましい。 3 小口現金の取扱い  小口現金の取扱いについて、経理担当者に対するヒアリングを中心に、「ホ ームレス領収書ファイル」「金庫(随時払)管理簿」「扶助費精算明細書」等関 係書類の閲覧、小口現金用手提げ金庫の現金実査により監査を実施した。 【事実関係】  生活福祉一課・二課は、課内にある大金庫に、小口現金130万円ほどを保管 している。これは、ホームレスに臨時的に窓口支給する扶助費に備えるために 保管しているものである。  「居宅生活可能なホームレスに対する生活保護の適用について」(平成21 年2月2日付地国第1089号岐阜県健康福祉部地域福祉国保課長通知)による と、当面の生活資金として生活扶助費2万円と定住先確保のための保証金・敷 金等の住宅扶助費(実費)の支給を速やかに行うこととされている。このため、 ホームレスに臨時的に窓口支給する金額は、保証金・敷金等により差はあるが 20万円前後となっている。  小口現金の管理は、経理担当のパソコン上で「ホームレス領収書ファイル」 というエクセルファイルにて行われている。平成25年度まではこのファイル に残高を表示する欄が無かったが、平成26年度から最終記録日の残高のみ表 示されるようになった。エクセルファイルを紙で出力して保管することはして いない。  経理担当は、この他に「金庫(随時払)管理簿」を作成し、1日の収支合計 と残高を記載している。毎日の業務終了後、この帳面と現金残高を確認し、経 理担当が押印した後、管理係長がこれを確認し押印している。  現金自体は、経理担当が管理する手提げ金庫により保管されている。経理担 当は、毎朝、生活福祉一課・二課の大金庫から手提げ金庫を取り出し、経理担 当の机の中に入れ、業務終了後、大金庫に戻す作業を繰り返している。  小口現金の取扱いについて定めた規定はない。 【指摘 生活福祉一課・二課】  現金の収支の動きを表す「ホームレス領収書」は、パソコンの故障等不測の 事態に備えるため、紙で出力して保管すべきである。 【指摘(改善予定)生活福祉一課・二課】  不正経理防止のため、小口現金の処理規程を早急に作成すべきである。  なお、岐阜市によれば、平成28年1月28日現在、作成中のことである。 【意見 生活福祉一課・二課】  ホームレスへの支給のうち保証金・敷金等の支給は、生活保護の決定前に行 われるため、不正受給が行われていた場合の返還金・徴収金の遡及ができない。  特に保証金・敷金等の支給は高額となるため、支給に際しては、ホームレス 及び不動産仲介業者の審査等を厳格に行うことが望ましい。 第4 医療扶助 1 概要  岐阜市の医療扶助費は、平成26年度において、5,585,925,819円と保護費 の総額11,617,868,651円の約48%を占めており、今後も医療扶助の増加が懸 念されている。  直近3年間の医療扶助費の内訳は以下のとおりである。 (上段:件数、下段:金額)               (単位 上段:件、下段:千円) ┌─────┬─────┬─────┬─────┬─────┬─────┬─────┐ │ 年度  │ 医科  │ 歯科  │ 調剤  │訪問看護 │その他※ │ 合計  │ ├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │  81,148│  10,688│  49,477│    286│  12,312│  153,911│ │平成24年度├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │ 4,195,558│  177,559│  839,118│  20,394│  43,388│ 5,276,020│ ├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │  83,844│  11,227│  52,668│    267│  11,704│  159,710│ │平成25年度├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │ 4,270,164│  178,195│  918,580│  16,462│  45,038│ 5,428,441│ ├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │  85,162│  11,596│  54,777│    417│  13,206│  165,158│ │平成26年度├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │ 4,378,677│  185,988│  948,176│  30,288│  42,795│ 5,585,925│ └─────┴─────┴─────┴─────┴─────┴─────┴─────┘ ※「その他」は福祉事務所支払分であり、治療材料費、施術費、移送費が主な  項目である。  医科、調剤の医療扶助費が年々増加している。医科については3年間で 4,014件、183,119千円(4.4%)の増加、調剤については3年間で5,300件、 109,058千円(13.0%)の増加となっている。  このような医療扶助費増加の対策として、生活保護法においても、平成26 年7月1日施行の「生活保護法の一部を改正する法律」による主な改正内容と して、「医療扶助の適正化」が挙げられている。 ┌ 医療扶助の適正化 ───────────────────────┐ │1)指定医療機関制度について、指定(取消)に係る要件を明確化するとと│ │ もに、指定の更新制を導入する。                 │ │2)医師が後発医薬品の使用を認めている場合には、受給者に対し後発医薬│ │ 品の使用を促すこととする。                   │ │3)国(地方厚生局)による医療機関への直接指導を可能とする。    │ └─────────────────────────────────┘  また、医療扶助費増加の一因として挙げられる、頻回受診や重複受診、薬剤 の多剤処方や重複処方、長期入院等については、「生活保護レセプト管理シス テム」が平成24年10月より強化されたことにより、それまでと比べて、指導
    対象者の抽出が容易にできるようになった。さらに、同システムの平成25年 3月改修により、請求が他と比較して特徴のある医療機関の抽出も容易にでき るようになり、各自治体におけるシステムの有効活用が今後の医療扶助費削減 に大きく貢献するものと期待されている。  以上、医療扶助費の増加と医療扶助適正化に向けた観点から、市の医療扶助 運営体制と医療扶助の実施状況を確認し、市の医療扶助の問題点について検討 する。 2 運営体制 【事実関係】  医療扶助にかかる岐阜市の運営体制は次のとおりである。医療事務担当者が 2名、医療系のキーパンチャー1名(委託職員)、庶務1名、臨時職員1名の 合計5名と、嘱託医2名を配置している。                   (平成26年度) ┌───────────────────────┐ │      市の医療扶助運営体制       │ ├───────────────────────┤ │  ┌医療事務担当者 2名(介護担当含む)  │ │  ┤その他職員   3名(委託職員1名)  │ │  │一般嘱託医   1名          │ │  └精神科嘱託医  1名          │ └───────────────────────┘ 3 医療扶助審議会の未開催  医療扶助審議会の実施状況について、「岐阜市生活保護法医療扶助審議会条 例」をもとに、管理係、医療事務担当者に対するヒアリングにより監査を実施 した。 【事実関係】  平成8年6月28日に制定された「岐阜市生活保護法医療扶助審議会条例」 に基づき、医療扶助審議会が設置されている。  しかしながら、ヒアリング及び岐阜市に残存する資料からも、医療扶助審議 会の開催を確認することはできなかった。平成26年7月に生活保護法の一部 改正が行われ、医療扶助の適正化への改正として、指定医療機関について更新 制の導入や後発医薬品の使用促進が明文化された。このような重要な改正時に も、開催されなかった。  医療扶助審議会において一度も審議が行われていないことについて、生活福 祉一課・二課に、その理由を質問したところ、審議する事項がなかったとのこ とであった。  なお、大阪市では、毎月第一月曜日に審議会が開催され、10件程度の案件 について審議されている。 【規範】  「医療扶助運営要領」によると、医療扶助その他保護の決定実施にあたって の医学的判断等を的確に行うことのできる体制を確保しなければならないと され、これらの医学的判断その他医療扶助に関する諮問に答えるため等の附属 機関として、医療扶助審議会を設置することが望ましいとされている。  「岐阜市生活保護法医療扶助審議会条例」においては、医療扶助審議会の構 成及び運営等について、以下のように定められている。 ┌───────┬───────────────────────────┐ │審議事項   │1)法による要保護者の入院医療の要否に関すること    │ │(第2条)   │2)医療の給付に関すること               │ ├───────┼───────────────────────────┤ │組織     │委員10人以内                     │ │(第3条)   │指定医療機関の医師及び医師である職員のうちから、市長が│ │       │委嘱又は任命                     │ │       │※平成26年11月1日現在 8名              │ ├───────┼───────────────────────────┤ │任期(第4条) │2年 再任されることができる              │ ├───────┼───────────────────────────┤ │部会     │1)    精神部会                  │ │(第7条)   │2)    一般部会                  │ └───────┴───────────────────────────┘ 【指摘 生活福祉一課・二課】  医療扶助審議会が機能していない状況である。法改正時はもとより、最近で は頻回受診、長期入院、向精神薬の重複処方の点検等、適正受診の徹底が国を 挙げて進められている中でも、審議会が開催されていないということは、これ らの実態把握や問題解決に向けての医学的判断や諮問機関としての意見が何 ら参照されていないことになる。  医療扶助の適正化の実現に向けて、最低でも年に1回、医療扶助審議会を開 催すべきである。 4 嘱託医の勤務状況  嘱託医の勤務状況について、「岐阜市福祉事務所嘱託医設置要綱」をもとに、 管理係、医療事務担当者へのヒアリング、「嘱託医事務処理状況日計表」「平成 26年度嘱託医事務処理状況」等関係資料の閲覧により監査を実施した。 (1)勤務実態 【事実関係】  「医療扶助運営要領」の定めに従い、一般の嘱託医1名、精神科嘱託医1名 が設置されている。  一般嘱託医の勤務時間に、生活福祉一課・二課にて、実地監査をした際、一 般嘱託医は退所したとのことであった。  医療事務担当者に理由を質問したところ、実質は2時間の勤務をしているが、 都合により前後することがあるとのことであった。  このため、医療事務担当者が作成する「嘱託医事務処理状況日計表」の記載 方法を確認したところ、医療要否意見書の処理件数やその他処理件数は、実績 に応じて入力するが、嘱託医の勤務時間は、実績とは関係なく、所定の勤務時 間をそのまま入力するとのことであった。 【規範】  嘱託医は「岐阜市福祉事務所嘱託医設置要綱」により設置、勤務条件等を定 められている。これらの主要な部分を抜粋すると以下のとおりである。 ┌─────┬───────────────────────────┐ │任期   │原則として1年 再任されることができる         │ │(第4条) │                           │ ├─────┼───────────────────────────┤
    │職務   │1)医療扶助に関する各申請書、各給付要意見書等の内容の検│ │(第5条) │ 討に関すること                   │ │     │2)要保護者についての調査、指導又は検診に関すること  │ │     │3)診療報酬明細書等の審査に関すること         │ │     │4)医療扶助以外の扶助についての専門的判断並びに必要な │ │     │ 助言及び指導に関すること              │ │     │5)医療扶助審議会に関すること             │ │     │6)指定医療機関の個別指導に関すること         │ ├─────┼───────────────────────────┤ │勤務日  │一般嘱託医  月、水、金曜日 午後2時から4時     │ │勤務時間 │精神科嘱託医 水曜日 午後2時から5時         │ │(第9条) │                           │ ├─────┼───────────────────────────┤ │勤務の記 │福祉事務所長は、出勤簿等により嘱託医の勤務の実績につい│ │録    │ての記録をしておかなければならない          │ │(第11条)│                           │ └─────┴───────────────────────────┘  「非常勤の特別職職員の報酬及び費用弁償に関する条例」の第2条第2項に は、「正規の勤務時間(任命権者がその職について別に定める勤務時間をいう。 以下同じ。)が定められている職にあるものが勤務しない場合は、規則で定め るときを除き、その勤務しない1時間につき規則で定める勤務1時間当たりの 報酬額を減額して支給する」と規定されている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  嘱託医の勤務時間は、要綱どおり勤務させるべきである。  なお、現状として要綱どおりの勤務が難しいのであれば、要綱を変更するな どして対応する必要があろう。 【指摘 生活福祉一課・二課】  嘱託医の実際の勤務時間を把握した上で報酬を支給するため、嘱託医事務処 理状況日計表には実際の勤務時間を記録すべきである。 (2)処理件数と勤務時間 【事実関係】  嘱託医の平成26年度事務処理状況は、下表のとおりである。                                       (単位:件) ┌──┬───────────┬───────────┬───────────┬───┐ │  │医療要否意見書(入院 │医療要否意見書(入  │その他の要否意見書  │合計 │ │  │外)         │院)         │等          │   │ │  ├───┬───┬───┼───┬───┬───┼───┬───┬───┤   │ │  │精神 │その他│総数 │精神 │その他│総数 │精神 │その他│総数 │   │ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │4月 │  160│ 1,639│ 1,799│  36│  138│  174│  42│  166│  208│ 2,181│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │5月 │  156│ 2,430│ 2,586│  27│  248│  275│  33│  250│  283│ 3,144│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │6月 │  164│ 1,916│ 2,080│  30│  212│  242│  47│  215│  262│ 2,584│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │7月 │  148│ 1,817│ 1,965│  36│  179│  215│  45│  177│  222│ 2,402│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │8月 │  148│ 1,956│ 2,104│  28│  178│  206│  54│  187│  241│ 2,551│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │9月 │  157│ 1,870│ 2,027│  22│  131│  153│  50│  164│  214│ 2,394│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │10月│  186│ 2,200│ 2,386│  20│  202│  222│  55│  236│  291│ 2,899│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │11月│  182│ 1,768│ 1,950│  22│  156│  178│  30│  175│  205│ 2,333│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │12月│  171│ 2,041│ 2,212│  17│  212│  229│  46│  185│  231│ 2,672│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │1月 │  167│ 2,086│ 2,253│  26│  178│  204│  50│  208│  258│ 2,715│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │2月 │  138│ 1,955│ 2,093│  36│  208│  244│  39│  193│  232│ 2,569│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │3月 │  173│ 2,026│ 2,199│  20│  178│  198│  52│  180│  232│ 2,629│ ├──┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤ │合計│ 1,950│23,704│25,654│  320│ 2,220│ 2,540│  543│ 2,336│ 2,879│31,073│ └──┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘  上記表において、その他の要否意見書等には、診察料、検査料、請求書の確 認が含まれる。また、平成26年度においては結核の処理数が0であったので 表から除外した。  例えば、平成27年3月の場合、嘱託医別の処理件数及び1件当たりの処理 時間は、下表のとおりである。 ┌──────────┬────┬────┬─────────┐ │    担当    │処理件数│勤務時間│1件当たり処理時間 │ ├──────────┼────┼────┼─────────┤ │一般嘱託医(1人) │ 2,629件│26時間 │   35.6秒   │ ├──────────┼────┼────┼─────────┤ │精神科嘱託医(1人)│  245件│12時間 │   176.3秒   │ └──────────┴────┴────┴─────────┘  この処理時間は、前述の嘱託医設置要綱の職務1)から3)に該当し、4)から6) の職務については考慮されていないため、実際は、さらに短い処理時間となっ ている。ちなみに、平成26年3月発表の会計検査院の随時報告によると、全 国158福祉事務所における平成24年3月1カ月間の要否意見書の検討枚数は 以下のとおりである。 ┌────┬─────────────────────────────────────────┐ │    │           嘱託医1人当たりの要否意見書の検討枚数            │ │    ├──────┬──────┬──────┬──────┬──────┬──────┤ │    │100枚    │100枚以上  │300枚以上  │500枚以上  │1,000枚   │計     │ │    │未満    │300枚未満  │500枚未満  │1,000枚未満 │以上    │      │ ├────┼──────┼──────┼──────┼──────┼──────┼──────┤ │事務所集│     27│     57│     28│     30│     16│     158│ ├────┼──────┼──────┼──────┼──────┼──────┼──────┤ │ 割合 │   17.1%│   36.1%│   17.7%│   19.0%│   10.1%│    100%│ └────┴──────┴──────┴──────┴──────┴──────┴──────┘
     この表からもわかるように、市の一般嘱託医の処理件数は、最も構成比が低 い1,000枚以上(10.1%)に属しており、全国的に見ても処理件数が多いと言 える。 【意見 生活福祉一課・二課】  嘱託医の主要な職務は、「医療要否意見書」に記載された内容の妥当性の判 断である。医療行為の必要性の判断は現業員では難しいため、嘱託医の判断が 重要となる。医療扶助費の削減に向けて、嘱託医の役割は大きく、医療要否意 見書の処理はもとより、長期入院や頻回受診等について検証するのは重要な職 務である。  より綿密な医療要否意見書の検討や要保護者に対する調査・指導を行うため にも、一件あたりの処理時間を多く確保する必要があると考えられる。  まず要綱どおりの勤務時間で職務を行うことを前提に、勤務時間の延長等の 対応を検討することが望ましい。 5 タクシー券の交付及び管理状況  タクシー券の交付及び管理状況について、経理担当者、現業員へのヒアリン グ、「タクシーチケット発行簿」「移送申告書」等関連資料の閲覧、実際のタク シー券とタクシー会社からの請求書の確認により監査を実施した。 (1)概要  タクシー券は、医療扶助の中で移送費として被保護者に現物支給されている。  直近3年のタクシー券の使用金額は以下のとおりとなっている。 【タクシーの利用状況】 ┌───────────┬─────┬─────┬─────┐ │           │本人払い │タクシー券│ 総数  │ ├─────┬─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │件数(人)│   6,754│   2,995│   9,749│ │平成24年度├─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │総額(円)│ 7,938,638│ 4,759,560│12,698,198│ ├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │件数(人)│   6,144│   2,534│   8,678│ │平成25年度├─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │総額(円)│ 7,490,524│ 3,598,930│11,089,454│ ├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │件数(人)│   6,812│   3,325│  10,137│ │平成26年度├─────┼─────┼─────┼─────┤ │     │総額(円)│ 8,650,065│ 5,591,310│14,241,375│ └─────┴─────┴─────┴─────┴─────┘  平成26年度に移送費が大きく増加しているが、タクシー券の利用増が影響 していることがわかる。 (2)タクシー券の交付 【事実関係】  現業員に対するヒアリングによると、被保護者が通院の途中で買い物に利用 するなどタクシー券を不正な使用をしていたため、指導したケースがあったと のことである。 【規範】  「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和36年9月30日社発 第727号厚生省社会局長通知)によれば、移送の給付ついては、個別にその内 容を審査し、療養に必要な最小限度の日数に限り、傷病等の状態に応じて経済 的かつ合理的な方法及び経路により移送を行ったものとして算定される最小 限度の実費を支給することとされており、その内容と原則として事前の申請や 領収書等の提出が必要であることを要保護者に周知することとされている。  「医療扶助における移送の給付決定に関する審査等について」(平成20年4 月4日社援保発第0404001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、 事前申請の場合には、対象となる被保護者に対して、以下の点について、周知 徹底を図ることとされている。  また、給付に際しては、通院する医療機関において必要事項の記載を受けた 通院証明書を事後的に福祉事務所に提出させるよう指示することとされてい る。 ア 移送の給付については、福祉事務所が経済的かつ合理的な経路・手段と  して認めたものに限り給付を行うものであり、福祉事務所が認めた以外の  経路・手段を用いたことにより余分にかかる交通費については、給付の対  象と認められないこと。   また、休日・夜間等における急病等の場合を除き、事前に申請のなかっ  たものは、給付の対象とならないこと。 イ 給付の対象となる範囲は、療養に必要な最小限度の日数に限られるもの  であり、容体の急変などやむを得ない理由がある場合を除き、当該日数を  超えた受診にかかった交通費については、移送費の給付対象として認めら  れないこと。 ウ タクシー等の利用を認めた場合については、タクシー等を利用した際に  領収書(レシート)をもらうとともに、後日、福祉事務所に領収書(レシ  ート)を提出すること。領収書(レシート)の無いものについては給付対  象として認められないこと。 エ タクシー等の利用について、受診している時間の待機料については原則  として給付対象とならないこと。 【指摘 生活福祉一課・二課】  通院回数が多い場合は、被保護者がタクシー代を支払うことができず、タク シー券を交付せざるを得ないという実情は理解できなくもない。  しかし、移送費は、本来、被保護者が立替払いし、後日医療扶助として支給 されるものである。上記通知も、領収書を提出したものについてのみ移送費の 支給を認めることとしており、タクシー券の交付による移送費の給付を、想定 されていないと考えられる。  全国的にもタクシー券の使用が減少しているし、タクシー券は、不正使用の おそれがあり、厳重な管理が必要となるものである。  医療扶助における移送費の不正受給を防ぐためにも、タクシー券の交付は極 力避けるべきである。 (3)手続規程・審査基準の不存在 【事実関係】
    〔現業員が経理担当にタクシー券の発行を求めるまでの流れ〕 ┌──────────────────────────────────┐ │主治医が「医療要否意見書」に移送費が必要である旨を記載する     │ └──────────────────────────────────┘     ↓ ┌──────────────────────────────────┐ │生活福祉一課・二課の嘱託医が移送費の必要性を確認する        │ └──────────────────────────────────┘     ↓ ┌──────────────────────────────────┐ │現業員がこの結果をもとに「保護決定調書」にて移送費の保護決定伺を行う│ └──────────────────────────────────┘     ↓ ┌──────────────┐ │課長決裁          │ └──────────────┘ ┌──────────────────────────────────┐ │被保護者が移送費の立替払いができない場合、             │ │現業員が経理担当に一冊(20枚)ずつタクシー券の発行を求める     │ └──────────────────────────────────┘  タクシーの利用及びタクシー券の交付の適否についての審査基準もなけれ ば、交付にかかる手続規程もない。  そのため、現業員の間でも取扱いが異なっている。  市ではタクシー券の新規発行(これまでタクシー券の発行がなかった被保護 者への発行)は行っていないとのことであるが、上記表のとおり使用金額は増 加している。 【規範】  「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和36年9月30日社発 第727号厚生省社会局長通知)によれば、移送の給付について、被保護者から 申請があった場合、給付要否意見書(移送)により主治医の意見を確認すると ともに、その内容に関する嘱託医協議及び必要に応じて検診命令を行い、福祉 事務所において必要性を判断し、給付の対象となる医療機関、受診日数の程度、 経路及び利用する交通機関を適正に決定することとされている。移送の際に利 用する交通機関については、地域の実態料金や複数事業者の見積等により検討 を行った上で、最も経済的な交通機関を福祉事務所において決定することとさ れている。  「医療扶助における移送の給付決定に関する審査等について」(平成20年4 月4日社援保発第0404001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、 給付対象となる交通機関の適否について、一般世帯の通院手段と被保護者の病 状・障害等の状況等に照らして判断することが基本となり、タクシー等の利用 については、病状・障害等の状況からタクシー等を必要とする真にやむを得な い理由があるか検討を行うこととされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  タクシー券の交付を継続するのであれば、タクシー利用及びタクシー券交付 の適否を審査するための基準と手続規程を早急に作成すべきである。  その際には、岐阜市生活保護医療扶助審議会を活用するなど組織的に検討で きるようなものにすべきである。 (4)タクシー券の納品と管理 【事実関係】  生活福祉一課・二課は、必要に応じてA社一社のみにタクシー券(一冊20 枚綴り)を発注している。発注の際、特に冊数を伝えることは無く、A社が毎 回一定量を納品しているとのことである。納品された際、冊数、タクシー券の 連番の確認・記録は行わず、生活福祉一課・二課の大金庫に収納している。そ の後、必要分だけ取り出し経理担当の手提げ金庫において小口現金と同じく保 管されている。経理担当は、一度に納品されるタクシー券の冊数や番号も把握 していない。 【指摘 生活福祉一課・二課】  これではタクシー券を紛失しても、誰も気づかない可能性があり、厳重な管 理を行うことはできない。また、管理が十分でない状況が現業員等に蔓延する と、タクシー券の不正使用の温床となる恐れがある。  納品の際の冊数、チケット番号を記載する管理簿を速やかに作成すべきであ る。 (5)タクシーチケット発行簿による管理 【事実関係】  現業員から経理担当に要求があると、経理担当は、基本的に1冊ずつ、以下 の手順を経て、現業員に手渡す。 〔タクシー券の発行手順〕  1) タクシー券に「自宅⇔病院」というスタンプを押す。  2) 受給者番号を記入する。  3) 「タクシーチケット発行簿」に、発行年月日、チケット番号、被扶助   者(被保護者)氏名、乗車区間、用途、担当者(現業員)名を記載する。  タクシーチケット発行簿は、具体的には以下の形式の帳簿となっている。  平成24年度から平成26年度までの3年間のタクシーチケット発行簿の内容 を確認したところ、以下の問題点が発見された。 (タクシー券の行方不明)  ・平成24年4月頃において、チケット番号95781~95800が不明  ・平成25年度において、チケット番号94001~94200、94221~94240、94321   ~94340が不明 (記載漏れ・重複)  ・平成26年3月6日発行のチケット番号301~320について   扶助者名から右欄の記載がない  ・平成26年9月25日発行のチケット番号56761~56780について   扶助者名の記載がない  ・平成27年1月29日発行のチケット番号57421~57440について   扶助者名の記載がない
     ・チケット番号57601~57620について   発行年月日の日付の記載がない  ・平成27年3月26日発行のチケット番号57661~57680   重複して記載されている (番号と発行年月日の齟齬)  ・平成24年3月頃に納品したとみられるチケット番号99801~99820   平成25年11月6日に発行されている。  ・全体的に発行年月日の推移とチケット番号の推移が一致していない。  以上のように、タクシー券の連番号が翌年に飛んでいたり、空欄箇所があっ たりするなど、タクシーチケット発行簿の管理が適切に行われていなかった。  ちなみに、チケット番号が不明な箇所について、経理担当者に問い合わせた ところ、タクシーチケット発行簿への記入漏れと、タクシーチケット発行簿自 体が1ページ紛失しているとのことであった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  タクシーチケット発行簿に会計担当の確認する項目がないため、記載項目が 欠落した場合もそのままの状態になると推測される。  タクシーチケット発行簿に会計担当の確認欄も設けるべきである。 【指摘 生活福祉一課・二課】  タクシー券を一冊ずつ番号順に発行することにより、タクシー券の管理状況 を明確化すべきである。 (6)タクシー券の使用状況の管理 【事実関係】  経理担当から現業員に手渡されたタクシー券は、現業員から被保護者に渡さ れる際、現業員の印鑑がタクシー券に押印される。  被保護者は、通院の際の移送費を記録する「移送申告書」を作成し、実際に 医療機関で診察を受けたときに、医療機関から移送申告書に確認印を押印して もらう。  現業員は、この移送申告書と使用されたタクシー券とをチェックして、診療 日以外の使用がないか、あるいは自宅と医療機関の距離に適した料金であるか を確認する。  毎月末締めでA社から使用されたタクシー券についての請求書が送付され てくる。請求書には、被保護者ごとの内訳書や使用したタクシー券が同封され てくる。経理担当は、移送申告書(被保護者作成する移送費の使用状況)とこ れらを照合して不正な使用が無いかを確認する。 【意見 生活福祉一課・二課】  タクシー券の使用状況について、経理担当はチェックしているものの、形式 的なチェックで終わっており、使用そのものが適正であったかどうかは、現業 員が確認しなければ分からない。  現業員が経理担当と連携し、医療目的外に使用されるなどの不正使用が行わ れないよう被保護者に指導する体制を強化することが望ましい。 6 タクシー会社との契約 (1)書類の保管 【事実関係】  当初の生活福祉一課・二課に対するヒアリングでは、いつからタクシー券が 利用されていたか判然としなかった。その後の生活福祉一課・二課及び契約課 に対するヒアリングや書面照会の回答によると、A社のタクシー券は、昭和 52年から利用されていたようである。生活福祉一課・二課及び契約課による と、昭和52年の利用開始時には、発行依頼書や利用申請書など担当課とA社 との間で、契約行為に類するやり取りがあったのではないかと推測されるが、 当時の書類が保存されていないことから、その事実を確認することができない とのことであった。 【規範】 ┌───────────────────────────────────┐ │文書取扱規則第38条(文書の保存期間)                 │ │1 完結文書の保存期間は、永年、10年、5年、3年及び1年とし、次に定 │ │ める基準により設定しなければならない。ただし、市長が特に必要があると│ │ 認める場合は、保存期間を別に定めることができる。          │ │(1)永年                              │ │  シ 金銭及び物品の出納に関し重要なもの              │ │  ソ 契約書類のうち重要なもの                   │ └───────────────────────────────────┘ 【指摘 生活福祉一課、二課】  利用開始時、タクシー券の発行依頼書や利用申請書など契約行為に類するや り取りがあったのであれば、以後、それが、38年以上にわたり継続されてき たタクシー券の発行及びタクシー料の支払の根拠となる書類となるため、契約 書類のうち重要なものに該当する。  タクシー券の発行依頼書や利用申請書など契約行為に類する書類を作成す る場合は、当該書類を永年保存すべきである。 (2)契約の方法 【事実関係】  生活福祉一課・二課がタクシー券を発注しているのはA社のみである。A社 との間のタクシー券によるタクシー利用契約について、実態としては一者随意 契約を行っている状況が38年以上も継続している。随意契約理由については、 何ら書面等で何も残っていないことから、不明であった。  この点、随意契約に該当する場合の根拠について契約課に照会したところ、 運賃等はあらかじめ国土交通大臣の認可を受けたものであるため、「タクシー 会社の決定にあたっては、料金の競争の余地がなく随意契約(地方自治法施行 令第167条の2第1項第2号)に成らざるを得ませんが、業者の選定理由は明 確にする必要があると考えます。」との回答であった。 【規範】 ┌───────────────────────────────────┐ │地方自治法第234条                           │ │1 売買、賃貸、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契│ │ 約又はせり売りの方法により締結するものとする。           │ │2 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当│ │ するときに限り、これによることができる               │ │地方自治法施行令第167条の2第1項第2号                │ │1 地方自治法第234条第2項の規定により随意契約によることができる場  │ │ 合は、次に掲げる場合とする。                    │
    │ 二 契約の性質又は目的が競争入札に適さない場合           │ └───────────────────────────────────┘ 【指摘 契約課】  地方自治法において、契約は、入札が原則である。例外となる随意契約にお いては、その理由は明確でなければならない。  随意契約というのであれば、その理由を、書類上で明確にすべきである。  なお、契約課の回答では、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号の「契 約の性質又は目的が競争入札に適さない場合」に該当するとしている。  しかし、その回答によっても、なぜ、「契約の性質又は目的が競争入札に適 さない場合」に該当するのか、なぜ、A社でなければならないのか不明である。  なお、生活福祉一課・二課以外の岐阜市の課においては、タクシー券の利用 実績があるが、共通タクシー券か複数社のタクシー券で対応しているとのこと であった。 【規範】 ┌─────────────────────────────────┐ │岐阜市契約規則第29条                       │ │ 随意契約によるときは、なるべく2人以上の者から見積書を徴さなけれ│ │ばならない。                           │ └─────────────────────────────────┘ ┌─────────────────────────────────┐ │「医療扶助における移送の給付決定に関する審査等について」(平成20年│ │4月4日社援保発第0404001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)  │ │(イ)給付対象となる交通機関の適否                │ │   一般世帯の通院手段と被保護者の病状・障害等の状況等に照らして│ │  判断することが基本となる。タクシー等の利用については、病状・障│ │  害等の状況からタクシー等を必要とする真にやむを得ない理由がある│ │  か検討を行うこと。                      │ │   地域の実態料金や複数事業者の見積り等を踏まえ、経済的かつ合理│ │  的な経路及び方法となっているか確認すること。         │ └─────────────────────────────────┘ 【指摘 生活福祉一課・二課】  A社の料金が特別安いなど一者随意契約を締結する特段の理由がないので あれば、A社との一者随意契約を継続する必然性はない。  タクシー会社との随意契約は、諸条件を提示するなどして、複数のタクシー 会社から見積りを徴収して、契約締結するタクシー会社を選定している他の自 治体も存在するし、そうすることでタクシー会社の選定において自治体として 公平性を保つことができる。  タクシー券を利用するのであれば、複数の見積りを徴収すべきである。 (3)契約書が作成されていないこと 【事実関係】  A社にタクシー券を発注するに当たって、契約書は作成されていない。  タクシー券によるタクシー料金の支払いは、タクシーの1回ごと使用でみる と、50万円を超えないが、1年間のA社に対する支払いでみると、560万円ほ どになる。  契約課に対して、契約書を不要とする場合の根拠について照会したところ、 「「使用料及び賃借料」についてですが、機器の賃貸など、一定期間、定まっ た数量を使用することが分かっている場合には、あらかじめ契約書を作成して おりますが、タクシー乗車賃については、通常、利用するにあたり距離や時間、 回数などを見込めず、請求書などの書類をもって支払い処理を行っており(岐 阜市会計規則第64条第1項第13号)、また、その都度事前に契約書を作成す ることも困難であると考えます。」との回答であった。  前述のとおり、タクシー券の連番号が翌年に飛んでいる、空欄箇所があるな ど、タクシー券管理簿の管理が適切に行われていない事案が散見された。この ような場合、タクシー会社に問い合わせをしたり、場合によっては、照会等の 調査を実施したりすることが必要となるが、生活福祉一課・二課及び契約課に よると、現状は、タクシー会社の任意の協力により、不明点や疑問点を確認し ているとのことである。 【規範】 ┌──────────────────────────────────┐ │岐阜市契約規則第8条                        │ │                                  │ │ 競争入札により落札者を決定したとき、又は随意契約により相手方を決 │ │定したときは、契約の目的(工事の場合には工事の種類、執行の方法)、契│ │約金額、履行期限、契約保証金額、監督及び検査、契約違反の場合におけ │ │る契約保証金の処分、違約金、損害金、危険負担、かし担保責任その他必 │ │要な事項を記載した契約書を作成しなければならない。ただし、次に掲げ │ │る場合においては、これを省略することができる。           │ │                                  │ │(1)一般競争契約又は指名競争契約若しくは随意契約で、契約金額が50 │ │  万円を超えないとき                       │ │                                  │ │(4)第1号に規定する以外の随意契約について、市長が契約書を作成す │ │  る必要がないと認めるとき。                   │ └──────────────────────────────────┘ 【指摘 生活福祉一課・二課】  岐阜市契約規則上、契約書の作成を省略できる場合は、限定的に列挙されて いる。この点、年間50万円を超えない契約であると組織的に判断した決裁資 料は残っていないか、最初から作成していないようである。そのため、岐阜市 契約規則第8条(1)(4)に規定する契約書を省略できる場合に該当するか は根拠が不明確である。  また、現状は、タクシー会社の任意の協力により、不明点や疑問点の確認が 行われているが、あくまでも、タクシー会社の任意の協力が前提である。タク シー移送費の不正受給が問題となった北海道滝川市の事件のように、被保護者 とタクシー会社が共謀して不正受給するような事案は考えにくいのかもしれ ないが、不明点や疑問点を確実に調査や照会をするためには契約書の存在が必 要である。  タクシー券の交付を継続するのであれば、タクシー会社との間で、監督及び 検査や調査条項など岐阜市がタクシー券を管理するための条項を盛り込んだ 契約書を作成すべきである。  なお、レセプト委託契約についても、1回あたりの業務については50万円 を超えないが、単価を決めて、予定数量を決めることで、契約書を作成してい る。同様に、タクシー券の利用に基づくタクシー利用契約についても、年間の タクシー利用料が予定できることから、契約書の作成は可能である。契約課も、 照会に対する回答において、「今回の事例のように、年間を通じてある程度の
    利用者数(回数)、利用距離などが予定数量として見込める場合には、あらか じめ単価契約などの契約書の作成が可能と考えます。」と回答している。 第5 医療扶助の適正な実施 1 概要  医療扶助の適正な実施に向けて、平成23年度より各自治体で本格運用とな ったレセプト管理システムの効果的な活用が期待されている。これにより、不 適切な受診行動(長期入院、頻回受診等)が疑われる事例の把握が効率化され、 適正受診に向けた取組みが効果的に行われるようになったためである。また、 平成22年4月に発覚した生活保護受給者による向精神薬の大量入手を契機に、 向精神薬の重複処方についても各自治体が実態を把握し、その改善への取組み が要求されている。これに加え、後発医薬品の使用促進や指定医療機関への指 導強化が医療扶助の適正な実施に効果があるとされている。(以上、平成23 年度から平成26年度「厚生労働省社会・援護局関係主管課長会議資料」によ る。) 2 監査の観点及び監査手続  長期入院患者や頻回受診者に対する適正な受診指導や、向精神薬の重複処方 に係る適正化や後発医薬品の使用促進に向けた取組みが適切に行われている かについて、それぞれ関係部署(生活福祉一課・二課)へのヒアリング及び関 係書類の閲覧により監査を実施した。 3 長期入院 【事実関係】  「医療扶助における長期入院患者の実態把握について」(昭和45年4月1 日付社保第72号厚生省社会局保護課長通知)によると、医療扶助による入院 患者であって、その入院期間が180日を超えた場合は、当該入院患者を実態把 握対象者名簿に登載し、嘱託医の書面検討、主治医等との意見調整、長期入院 患者の実態把握、その結果に基づく措置といった手順やそれらの方法・内容を 示し、被保護者の実態に即した適切な措置を講ずることとされている。  岐阜市は、以下の流れで長期入院患者の把握と指導を行っている。  平成26年度から、調査票の作成が省略され、医療事務担当者が直接現業員 に内容を口頭で伝え、結果のみを実態把握対象者名簿に記載している。  直近3年間の長期入院対象者の書類検討及び措置状況は以下のとおりであ った。          〔長期入院患者の書類検討及び措置状況〕                                (単位:人) ┌─────┬────┬──┬──┬────┬───────────┬─┐ │     │    │1) │2) │ 3)  │4)(3)のうち措置状況)│5)│ │     │    │日書│調1)│た入2) ├───────────┤ │ │ 年度  │ 項目 │を類│整の│も院の │ 退院又は移替え等  │3)│ │     │    │超検│をう│のの結 ├──┬──┬──┬──┤の│ │     │    │え討│行ち│ 必果 │ 小│ 居│ 施│ そ│う│ │     │    │た総│っ主│ 要医 │ 計│ 宅│ 設│ の│ち│ │     │    │ 数│た治│ が療 │  │ 保│ 入│ 他│未│ │     │    │患(│も医│ な扶 │  │ 護│ 所│  │措│ │     │    │者入│の等│ い助 │  │  │  │  │置│ │     │    │数院│ と│ とに │  │  │  │  │の│ │     │    │)百│ 意│ さよ │  │  │  │  │患│ │     │    │ 八│ 見│ れる │  │  │  │  │者│ │     │    │ 十│  │    │  │  │  │  │数│ │     │    │  │  │    │  │  │  │  │ │ │     │    │  │  │    │  │  │  │  │ │ │     │    │  │  │a(b+c)│ b│  │  │  │c│ ├─────┼────┼──┼──┼────┼──┼──┼──┼──┼─┤ │     │小計  │ 122│ 18│   10│  9│  3│  6│  0│ 1│ │     ├────┼──┼──┼────┼──┼──┼──┼──┼─┤ │平成24年度│精神疾患│ 80│  9│    5│  4│  3│  1│  0│ 1│ │     ├────┼──┼──┼────┼──┼──┼──┼──┼─┤ │     │その他 │ 42│  9│    5│  5│  0│  5│  0│ 0│ ├─────┼────┼──┼──┼────┼──┼──┼──┼──┼─┤ │     │小計  │ 142│ 43│    8│  4│  2│  2│  0│ 4│ │     ├────┼──┼──┼────┼──┼──┼──┼──┼─┤ │平成25年度│精神疾患│ 92│ 25│    6│  2│  1│  1│  0│ 4│ │     ├────┼──┼──┼────┼──┼──┼──┼──┼─┤ │     │その他 │ 50│ 18│    2│  2│  1│  1│  0│ 0│ ├─────┼────┼──┼──┼────┼──┼──┼──┼──┼─┤ │     │小計  │ 109│ 34│    9│  6│  6│  0│  0│ 3│ │     ├────┼──┼──┼────┼──┼──┼──┼──┼─┤ │平成26年度│精神疾患│ 70│ 14│    6│  3│  3│  0│  0│ 3│ │     ├────┼──┼──┼────┼──┼──┼──┼──┼─┤ │     │その他 │ 39│ 20│    3│  3│  2│  0│  0│ 0│ └─────┴────┴──┴──┴────┴──┴──┴──┴──┴─┘  各件数を検証するため、2)/1)(主治医等と意見調整/書類検討総数)、 3)/2)(入院の必要が無いとされた者/主治医等と意見調整)、5)/3)(未 措置の患者数/入院の必要がないとされた者)の各割合の推移と平成25年 度の全自治体平均を以下に比較する。 ┌───────┬──────┬──────┬──────┐ │       │2)/1)の割合│3)/2)の割合│5)/3)の割合│ ├───────┼──────┼──────┼──────┤ │ 平成24年度 │   14.8%│   55.6%│   10.0%│ ├───────┼──────┼──────┼──────┤ │ 平成25年度 │   30.3%│   18.6%│   50.0%│ ├───────┼──────┼──────┼──────┤ │ 平成26年度 │   31.2%│   26.5%│   33.3%│ ├───────┼──────┼──────┼──────┤ │全自治体平均※│   61.7%│   13.7%│   26.3%│ └───────┴──────┴──────┴──────┘  ※全自治体平均は平成25年度の調査による  以上の表から、市において書類検討総数に占める主治医等と意見調整を行う
    割合(2)/1))が低いことがわかる。他の同規模の中核市において、この割合 が100%である自治体も少なくない(横須賀市、金沢市、豊橋市等)。  また、未措置の患者数割合(5)/3))は全自治体比較して高い。上記同様に この割合が0%である自治体も少なくない(横須賀市、豊橋市、高槻市等)。 【意見 生活福祉一課・二課】  レセプト管理システムにより抽出された書類検討事案全てについて、主治医 等との意見調整を行っている自治体も少なくない。また、市では主治医等との 意見調整後に入院の必要が無いとされた割合が高いことから、主治医等との意 見調整件数を増加させることにより、長期入院の削減が期待できる。  主治医等との意見調整件数を増やすことが望ましい。 【意見 生活福祉一課・二課】  調査票の省略により、正確な履歴が残らず適切な措置が出来なくなる恐れが あるため、調査票は作成することが望ましい。 4 頻回受診 【事実関係】  被保護者のうち診療日数が過度に多い外来患者(以下、「頻回受診者」とい う。)に対しては、「頻回受診者に対する適正受診指導について」(平成14年3 月22日社援保発第0322001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)に基づ き、福祉事務所は適正な受診回数を把握した上で指導援助を行い、頻回受診者 の処遇の充実を図るとともに、適正な保護の実施を確保することとなっている。  頻回受診者とは、医療扶助による外来患者(歯科を除く。)であって、同一 傷病について、同一月内に同一診療科目を15日以上受診している月が3ヶ月 以上続いている者をいう。頻回受診者の選定については、通院台帳や頻回受診 者指導台帳を整備するとともに、主治医の意見を聴取する必要性があるかにつ いて嘱託医と協議し、必要性があると判断された場合は、当該外来患者につい て主治医から適正受診日数等に関する意見を聴取することとなっている。そし て、その意見をもとに、当該受診状況把握対象者が頻回受診者と認められるか 否か再度嘱託医と協議を行い、頻回受診者と判断された者に対しては、速やか に訪問指導することとなっている。  岐阜市は、以下の流れで頻回受診者の把握と指導を行っている。  平成26年度から、調査票の作成が省略され、医療事務担当者が直接現業員 に内容を口頭で伝え、結果のみを頻回受診者指導台帳に記載している。  岐阜市における直近3年間の頻回受診者に対する適正受診指導結果は以下 のとおりであった。  頻回受診者に対する適正受診指導については、全自治体平均に近い効果を出 していることが分かる。  また、比較検証のため、平成25年度の全自治体の指標を最後に掲載する。        〔頻回受診者に対する適正受診指導結果〕 ┌─────┬───┬─────┬────────────────┐ │     │   │指導対象外│指導対象            │ │     │   │     │    ┌───────────┤ │     │   │     │    │ うち改善された者  │ │     │   ├─────┼────┼──┬──┬──┬──┤ │     │   │     │    │  │(1│(1│D効│ │     │   │     │    │  │効人│効人│/果│ │     │   │     │    │  │果当│果当│C月│ │ 年度  │受診状│     │    │  │月た│日た│ ・│ │     │況把握│     │    │  │数り│数り│ 1│ │     │対象者│ 人数  │ 人数 │人数│計平│計平│ 人│ │     │数  │     │    │  │)均│)均│ 当│ │     │   │     │    │  │ 効│ 効│ た│ │     │   │     │    │  │ 果│ 果│ り│ │     │   │  A  │ B  │  │C月│D日│ 効│ │     │A+B│     │    │  │ 数│ 数│ 果│ │     │   │     │    │  │  │  │ 日│ │     │   │     │    │  │  │  │ 数│ ├─────┼───┼─────┼────┼──┼──┼──┼──┤ │平成24年度│  78│    71│    7│  7│  6│ 57│  9│ ├─────┼───┼─────┼────┼──┼──┼──┼──┤ │平成25年度│  70│    66│    4│  2│  7│ 79│ 11│ ├─────┼───┼─────┼────┼──┼──┼──┼──┤ │平成26年度│  62│    55│    7│  4│  6│ 89│ 14│ ├─────┼───┼─────┼────┼──┼──┼──┼──┤ │全自治体 │ 16526│   12514│  4012│1844│ 5.5│ 60│10.8│ │ 合計※ │   │     │    │  │  │  │  │ └─────┴───┴─────┴────┴──┴──┴──┴──┘  ※全自治体合計は平成25年度の調査による。以上の表から、市の効果月・  1人当たりの効果日数(D/C)が年々増加しており、全国自体平均よりも  高い数字となっている。 【意見 生活福祉一課・二課】  調査票の省略により、正確な履歴が残らず、情報伝達が欠落し適正な指導が 出来なくなる恐れがあるため、調査票は作成することが望ましい。 5 向精神薬の重複処方 【事実関係】  「生活保護法の医療扶助の適正な運営について」(平成23年3月31日社援 保発0331第5号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)において、福祉事務 所は電子レセプトの活用等により被保護者が同一薬を複数の医療機関から重 複して処方されていないか確認を徹底するとともに、向精神薬の処方について は、処方した診療科名、処方量、種類等について的確に実態把握を行うことと なっている。そして、複数の医療機関から重複して向精神薬を処方されている 場合や、定められた用量を超えた処方がされていると認められる場合には、主 治医等への確認や医療機関と協力して適正受診指導の徹底を図ることとなっ ている。市では向精神薬の重複処方を改善すべく、以下の流れで現状の把握と 指導を行っている。  直近3年間の向精神薬の重複処方の改善状況は以下のとおりとなった。な お、この状況は平成24年度より東海北陸厚生局の監査を受けている。また、
    比較検証のため、平成25年度の全自治体の指標を最後に掲載する。 〔向精神薬の重複処方の改善状況〕 ┌──────┬─────┬──────────────────┬──┐ │      │     │  不適切な受診であった者(人)  │  │ │      │     ├──────┬─────┬─────┤  │ │      │適切な受診│被保護者へ │被保護者へ│保護廃止等│  │ │  年度  │であった者│指導を行い、│指導中の場│により指導│合計│ │      │(人)  │既に改善し │合    │するに至ら│  │ │      │     │た場合   │     │なかった場│  │ │      │     │      │     │合    │  │ ├──────┼─────┼──────┼─────┼─────┼──┤ │平成24年度 │     4│     43│    32│     7│ 86│ ├──────┼─────┼──────┼─────┼─────┼──┤ │平成25年度 │     2│     19│     5│     7│ 33│ ├──────┼─────┼──────┼─────┼─────┼──┤ │平成26年度 │     8│     24│     4│     0│ 36│ ├──────┼─────┼──────┼─────┼─────┼──┤ │全自治体合計│   1648│    3497│    976│    704│6825│ │  ※   │     │      │     │     │  │ └──────┴─────┴──────┴─────┴─────┴──┘ ※全自治体合計は平成25年度の調査による。  平成24年度は不適切な受診者であった者が80名以上と多くみられたが、同 年において改善された人数が多かったため、平成25年度以降は減少している。 ただし、重複処方患者の殆どが不適切な受診者であった者に変わりなかった。  また、「不適切な受診者であった者の中」に占める、「被保護者への指導中の 場合」の割合は、平成25年度は16.1%、平成26年度は14.3%で、全自治体 合計18.9%より低いため、不適切な状況が改善されずに指導中である場合が 特に多い状況ではない。 6 後発医薬品の使用促進 【事実関係】  平成26年改正の生活保護法第34条第3項では、医師等が医学的見地に基づ き後発医薬品の使用を認めている場合には、被保護者に対し可能な限り後発医 薬品の使用を促すことを規定している。 ┌──────────────────────────────────┐ │法第34条第3項                           │ │ 前項に規定する医療の給付のうち、医療を担当する医師又は歯科医師が医│ │学的知見に基づき後発医薬品(省略)を使用することができると認めたもの│ │については、被保護者に対し、可能な限り後発医薬品の使用を促すことによ│ │りその給付を行うように努めるものとする。              │ └──────────────────────────────────┘  また、これに先駆けて「生活保護の医療扶助における後発医薬品に関する取 扱いについて」(平成25年5月16日社援保発0516第1号)により、指定医療 機関である薬局において一般名処方による処方せん又は銘柄名処方であって 後発医薬品への変更を不可としていない処方せんを持参した受給者に対して、 原則として後発医薬品を調剤する取組みを行っている。  このような取組みにより、院外処方に関する生活保護における後発医薬品の 使用割合は、医療全体の後発医薬品の数量シェア54.5%(最近の調剤医療費 (電算処理分)の動向(平成26年5月診療分))に対し、生活保護分は61.0% (医療扶助実態調査(平成26年6月審査分))となり、医療全体と比較して 6.5%上回っている。なお、院内処方の数量シェアについては51.6%にとどま っていることから、平成27年度以降に後発医薬品の数量シェアが75.0%に達 していない医療機関等に対し、後発医薬品の使用促進を要請する動きがある。 〔後発医薬品の使用割合(数量シェア)〕 ・院外処方に関する生活保護と医療全体の比較 ┌────┬───────┬───────┬─────┐ │    │生活保護(A) │医療全体(B) │差(A-B) │ ├────┼───────┼───────┼─────┤ │平成25年│  47.8%  │  46.7%  │ +1.1% │ ├────┼───────┼───────┼─────┤ │平成26年│  61.0%  │  54.5%  │ +6.5% │ └────┴───────┴───────┴─────┘ ・生活保護における院外処方と院内処方の比較 ┌────┬────┬────┐ │    │院外処方│院内処方│ ├────┼────┼────┤ │平成25年│ 47.8%│ 49.2%│ ├────┼────┼────┤ │平成26年│ 61.0%│ 51.6%│ ├────┼────┼────┤ │伸び分 │ +13.2%│ +2.4%│ └────┴────┴────┘  岐阜市においては、平成26年度より後発医薬品の使用促進に関するリーフ レットを作成し、現業員から保護者に渡している。また、指定医療機関にはそ の旨を通知し、医師会には後発医薬品の使用促進を要請している。  なお、岐阜市の生活保護における後発医薬品の数量シェアは院外処方で 58.5%(医療扶助実態調査(平成26年6月審査分))となっており、全自治体 平均を下回っている。 【意見 生活福祉一課・二課】  全ての指定医療機関に対して通知回数を増やしたり、通知方法の改善等を行 い、後発医薬品の使用促進を積極的に働きかけることが望ましい。例として、 前述の医療扶助審議会や、指定医療機関制度の見直しの機会を活用することが 考えられる。 7 総括 【事実関係】  医療扶助の適正な実施に向けた取組みとして、不適切な受診行動に対する市 の対応を監査してきた。レセプト管理システムにより、不適切な受診行動の抽 出自体は効率的に行われるようになったが、それを現場にフィードバックして 実際にこれらを減少させていく取組みは十分ではない。それは長期入院につい て主治医等との意見調整件数が少ないことや、調査票の省略といった事実に現 れている。また、これらの取組みは、国や地方厚生局への報告を第一の目的と
    して行われている印象であった。 【意見 生活福祉一課・二課】  長期入院患者や精神科に関わる患者についての指導が非常に困難であるこ とは理解できるが、現業員の能力向上、医療扶助審議会の活用等を含めて、不 適切な受診行動を抽出した後の対応について再考することが望ましい。 第6 レセプト点検等業務委託契約 1 事務手続の概要  岐阜市は、生活保護法による医療扶助等のレセプト点検等について、外部業 者に業務委託をしている。  ここに生活保護法によるレセプト点検業務とは、1)主に被保護者の診療報酬 明細書(以下、「レセプト」という。)を対象に診療内容等の点検を行い有効か 否かの審査と再審査請求書類の作成を行うことである。この他に、2)4月、7 月、10月、1月にレセプトの縦覧点検を行い、上記同様、有効か否かの審査 と再審査請求書類の作成を行う業務、そして、3)介護給付費公費受給者別一覧 表と介護券交付処理簿との突合点検を行う業務が委託されている。  平成26年度の生活保護法による医療扶助等のレセプト点検等業務委託契約 (以下、「本件委託契約」という)の事務手続の流れと各事務の担当課は、次 のとおりである。 2 監査の観点及び監査手続  序章の監査テーマ選定の理由でも述べたとおり、生活扶助における医療扶助 の占める割合及び金額と岐阜市における多剤処方の割合にかかる報道から、医 療扶助にかかる事務執行に関しては、当初より重点的に監査することを考えて いた。  本件委託契約は、医療扶助事務の適正化を目的とするもので、医療扶助にか かる事務執行において特に重要な位置づけとなるはずのものである。  そこで、本件委託契約事務が適正に執行されているかを確認すべく、同契約 の手続書類を閲覧し(必要が生じたので、同種の他年度の委託契約も閲覧)、 関係各部署(生活福祉一課・二課、福祉政策課、契約課)に対し、ヒアリング を実施した。  また、監査の過程で、必要性を認めた部分について、地方自治法第252条の 38第1項の関係人調査を実施した。  以下、問題点ごとに詳細を述べる。 3 設計金額 【事実関係】  業務委託設計書兼施行伺書(事務手続1))には、「生活保護法による医療扶 助等のレセプト点検等業務委託設計内訳書」(以下、「内訳書」という。)及び 「生活保護法による医療扶助等のレセプト点検等業務委託仕様書」(以下、「仕 様書」という。)が添付されており、内訳書において金額が設定されている(以 下「設計金額」という)。  下で示す表中、実際の内訳書には金額の記載がある。  設計担当者に対するヒアリングによれば、「平成24年度のレセプト点検等委 託契約における設計金額は、2社から提出された「参考見積」を参考に設定し た。平成25年度以降の契約においては、「参考見積」を全くとっていない。  前年度枚数の実績から項目ごとの予定処理件数を確定し、金額が予算の範囲 内に収まるように処理項目ごとの単価を決定し、設計金額を算出した。」との ことであった。  平成24年度から平成27年度のレセプト点検等業務委託契約の内訳書記載の 単価を確認したところ、いずれも、前年度の契約実績(契約金額としての単価 という意味)と大幅に乖離する金額であった。  なお、後述するとおり、各年度で仕様書の記載内容はほぼ同一である。 【指摘 生活福祉一課・二課】  ヒアリングからすれば、設計担当の生活福祉一課・二課において、前年度の 契約金額(単価)の実績を踏まえることなく、また、業者から参考見積りをと ることなく、積算していることが大幅な乖離の原因ではないかと考える。  今後、同種契約を設計する際には、設計金額について、前年度実績を踏まえ、 また、参考見積もりをとるなどして、適正な積算をすべきである。 【規範】  岐阜市処務規則第3条の分掌事務にて、福祉政策課は、(4)部内の財務及 び庶務に関すること、(5)福祉事務所の業務(福祉部が分掌する事項に限る。) の調整に関することが掲げられている。業務委託設計書兼施行伺書には、福祉 政策課担当、福祉政策課長の押印がある。 【指摘 福祉政策課】  福祉政策課は、処務規則上、生活福祉一課・二課担当者が起案した設計書兼 施行伺書の内容を確認する義務がある。  本件委託契約に関しては、同種の契約が複数年継続しているのであるから、 当該書面だけをみて、設計金額が形式的に予算の範囲内に収まっているか否か のみを確認するだけではなく、前年度の契約実績などと対比して、生活福祉一 課・二課において適正な積算がなされているかを確認すべきである。 4 予定価格 【事実関係】  本件委託契約の予定価格は(事務手続2))、設計金額と全く同額である。  他年度も確認したところ、平成24年度、平成25年度及び平成27年度も同 様に設計金額と予定価格は全く同額である。 【規範】  岐阜市契約規則第28条の2においては、「随意契約によるときは、あらかじ め第20条の規定に準じて予定価格を決めなければならない。」とされている。  そして、第20条は、「競争入札に付する事項の価格を当該事項に関する仕様 書、設計書等によって予定し、その予定価格を記載した書面を封書にし、改札 の際これを開札場所におかなければならない。」と規定する。また、同規則第 21条第2項においては、「予定価格は、契約の目的となる物件又は役務につい て、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短 等を考慮して適正に定めなければならない。」とされている。  岐阜市事務決裁規則「別表第2 契約課に関する事項3」によれば、予定価 格の決定は、契約課長が専決者である。
    【意見 契約課】  いわゆる一者随意契約(見積りを複数業者からとらない形態での随意契約) については、契約課は、一者随意契約理由書を担当課に作成させている。  かかる理由書の中で、積算の根拠、積算が適正であるという理由、そして、 毎年度同様の契約が締結される場合には金額の推移を記載させるなどして、契 約課にて内容を確認するという流れとなっている。  しかし、本件は、相見積りをとる形での随意契約であったことから(岐阜市 契約規則第29条第1項)、そもそも一者随意契約理由書が作成されていない。  このため、契約課において、予定価格を決定するに際し、担当課の積算が適 正になされているかを実質的に確認することは困難であろうと考える。  今後は、相見積りをとる形での随意契約であっても、一者随意契約理由書な どを参考として、予定価格決定に際し、担当課における積算の根拠を契約課が 確認できるような措置を講じることを検討することが望ましい。 5 単価契約の「契約締結伺」の事務決裁 【事実関係】  本件委託契約は、複数単価契約の方法で締結されているものである。本件委 託契約にかかる契約依頼書兼執行伺書(起票者 福祉政策課担当者)(事務手 続2))には、福祉部長印がない。  契約課に事務決裁区分を確認したところ、「本件委託契約は、契約課所管の 単価契約ではない。そして、業務委託設計書兼施行伺書が岐阜市事務決裁規則 『別表第1 財務に関する事項 ア 支出負担行為等に関する事項 単価契 約』の『契約締結伺』であるということで、福祉部長が専決者であり、福祉部 長の決裁印があり問題はない。」との回答であった。 【規範】  岐阜市事務決裁規則 「別表第1 財務に関する事項 ア 支出負担行為等 に関する事項」中、単価契約の「契約締結伺」の決裁区分は部長となっている。  ただし、備考欄にて、「契約課所管の単価契約を除く」とある。  同規則別表第2「個別専決事項」契約課所管の単価契約についての明記はな く、「契約締結伺」の決裁区分も明記されていなかった。 【指摘 契約課】  監査人としては、以下の3つの理由から、契約課の回答には疑問があった。  1つ目には、本件委託契約書にかかる業務委託設計書兼施行伺書には、契約 方法についての定め(随意契約 施行令第167条の2第1項2号)が何も記載 されていないことである。契約締結を検討するに際して、契約方法は重要な要 素と考えるが、その記載がないものを事務決裁規則上の「契約締結伺」と評価 することには疑問がある。  2つ目には、昨年度の外部監査にて外郭団体を取り上げたが、その中で、委 託契約は一者随意契約とされており、業務委託契約伺書には、契約方法の定め (随意契約 ○号)が記載されていたことである。かかる扱いとの比較からし ても疑問がある。  3つ目には、岐阜市事務決裁規則「別表第1 財務に関する事項 ア 支出 負担行為等に関する事項」の委託料の箇所では、「設計伺書を伴うもの」と「そ の他」に分けられ、後者において、別途「契約締結伺」という文言があること である。「設計伺」と「契約締結伺」を別の概念として扱っているものである。  監査人としては、以上、3つの理由から、本件契約が契約課所管の単価契約 でないということであれば、契約方法について定めのある契約依頼書兼執行伺 書(事務手続2))が「契約締結伺」と評価されるべき書類であり、部長が専決 者ではないかと考える。  事務決裁規則違反の可能性があり、そうであれば、次年度以降、同種の契約 を締結する際には、契約依頼書兼執行伺書に福祉部長の決裁があることを確認 すべきである。 【意見 契約課】  上述したとおり、事務決裁規則の文言(「契約締結伺」)と実際使用されてい る書面(「業務委託設計書兼施行伺書」「契約依頼書兼執行伺書」)との関係性 が不明確であったという実態があった。  そこで、明確性の見地から、岐阜市事務決裁規則「別表第1 財務に関する 事項 ア 支出負担行為等に関する事項 単価契約」の「契約締結伺」と委託 契約における「業務委託設計書兼施行伺書」、「契約依頼書兼執行伺書」との関 係を明確にすることが望ましい。  また、併せて、岐阜市事務決裁規則別表第2「個別専決事項」の契約課に関 する事項において、「契約課所管の単価契約の契約締結伺」に関する事項を明 記することが望ましい。 6 少額による随意契約と単価契約との関係性 【事実関係】  本件委託契約の単価は、「1件あたり、○円」という単位であり、これが予 定価格とされている。ただし、かかる単価に予定処理件数を掛け合わせれば、 その金額は年間百万円を超える値となる。ちなみに、本件委託契約の実績は、 総合計年間109万2,110円である。 【規範】  岐阜市契約規則第21条(予定価格の決定方法)は、次のとおり定める。 ┌──────────────────────────────────┐ │予定価格は、競争入札に付する事項の価格の総額について定めなければなら│ │ない。ただし、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用│ │等の契約の場合においては、単価についてその予定価格を定めることができ│ │る。                                │ └──────────────────────────────────┘  地方自治法施行令第167条の2第1項第2号は次のとおり定める。 ┌──────────────────────────────────┐ │1 地方自治法第234条第2項の規定により随意契約によることができる場 │ │合は、次に掲げる場合とする。                    │ │ 一 売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあつて│ │  は、予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第五上欄に掲げる契約の種類│ │  に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で│ │  定める額を超えないものをするとき。               │ └──────────────────────────────────┘  岐阜市契約規則第28条 ┌──────────────────────────────────┐ │政令第167条の2第1項第1号の規則で定める額は、次の表の左欄に掲げる  │ │契約の種類に応じ同表右欄に定める額とする。             │ │6 前各号に掲げるもの以外のもの    500,000円          │ └──────────────────────────────────┘
    【意見 契約課】  単価だけを捉えると、本件委託契約は、岐阜市契約規則第28条6の契約に 該当してしまう。その場合随意契約の締結に理由が不要となる。  実際はそのような考え方をとらないはずであろうが、解釈に疑義が生じな いように、単価契約を締結するにあたって、当該契約が、岐阜市契約規則第 28条の少額随意契約に該当するかどうかの判断基準を、規則あるいは取扱要 領などで明記することが望ましい。実態からすれば、予定数量に予定価格(単 価)を乗じて得た支出予定総額とすることを明記することになろう。 7 複数単価契約における契約者の選定方法 【事実関係】  上述したとおり、本件委託契約は、複数単価契約であり、区分ごとに単価、 予定処理件数が設定され、予定価格が定められている。予定価格は、非公表と されており、指名業者に送付される仕様書には、単価区分及び予定件数が次の とおり記載されている。   岐阜市における「複数単価契約の契約事務の流れ」は以下のとおりである。 ┌─────────────────────────────────┐ │1)各業者の単価に予定数量を掛けた総合計金額で最低価格となる業者を │ │ 選定                              │ │2)選定された業者の各項目の単価が、それぞれの予定価格以下であれば決│ │ 定                               │ │3)予定価格を超えている項目がある場合は、当該項目があることを業者に│ │ 連絡し、2回目の見積書を徴収し予定価格以内であれば決定(1回目の │ │ 単価から下げられない場合は、2回目の見積の辞退届を提出)     │ │4)予定価格以下とならない場合又は見積を辞退した場合は、総合計金額で│ │ 2番目に低い業者と2)~3)の手続を同様に行う。          │ │5)全ての業者について、各項目の単価が予定価格以下とならない場合は、│ │ 予定価格超過で不調とする。                   │ └─────────────────────────────────┘                             (契約課作成)  業者に送付される指名通知書には、注意事項(13)では、「その他見積りにあ たっては岐阜市競争入札心得の条項を遵守すること」とあった。  岐阜市競争入札心得の「落札の決定」には、複数単価契約の場合の決定方法 については何の言及もなかった。  また、業者の担当者にヒアリングしたところ、複数単価契約における業者決 定方法は知らないということであった。それどころか、本件委託契約を「入札」 ととらえており、複数単価契約という意識もなかったようである。 【規範】  岐阜市において、複数単価契約における契約者の選定方法について定めた 規定は特にない。業者に示される書類においても複数単価契約という記載自体 もなく、決定方法も示されていない。 【指摘 契約課】  現在、岐阜市は、複数単価契約について、規則等の根拠もなく上記のとお り決定している。しかし、そもそも、かかる決定方法は絶対のものではない。  すなわち、現状、岐阜市は、1回目の最低価格見積業者において、ある項目 の単価が予定価格を上回っていた場合、同業者に対する2回目の見積もりにお いて、上回っていた項目が予定価格以下となれば、当初の見積もりにおいて総 合計額が最低価格の業者を選定している。しかし、例えば、1回目の見積もり において、2番目に総合計額が低い業者が、最低価格の業者が予定価格を上回 った項目について予定価格を下回る金額を見積もりしていた場合はどうであ ろうか。その場合、2回目の見積もりで基準となるのは、予定価格ではなく、 2番目の業者が提示した予定価格を下回る見積額ということもありうるので ある。  また、1回目の見積もりにおいて、最低価格見積業者の見積もりに、予定価 格を超えている項目がある場合、予定価格が非公表であることとの関係はどう なるのであろうか。予定価格を非公表のままとすると、業者が予定価格に達す るまで、契約課は「ノー」と言い続けるのであろうか。  公平性・透明性の見地から上記の手続には、疑問がある。  現状のように、複数単価契約を随意契約として扱うのであれば、契約者の決 定基準を設け、そして、それを業者に周知すべきである。 8 契約方法 【事実関係】  契約依頼書兼執行伺書(事務手続2))によれば、本件委託契約は、随意契 約であり、地方自治法第234条第2項、同法施行令第167条の2第1項第2 号の随意契約の方法によるものということで契約課長の決裁がなされている。 【規範】  地方自治法第234条第1項及び第2項によれば、契約については、入札が原 則形態であり、随意契約は地方自治法施行令第167条の2第1項各号に該当す る場合に例外的に認められるものである。  そして、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号は、「契約の性質又は 目的が競争入札に適さない場合」に認められる随意契約である。  岐阜市随意契約ガイドラインには、地方自治法施行令第167条の2第1項第 1号から第9号の例示が具体的に記載されているが、複数単価契約についての 記載はない。 【意見 契約課】  本件委託契約は、相見積もり形式の随意契約、複数単価契約であるところ、 上述したとおり、契約の事務手続の整備が万全になっておらず、業者に対する 透明性・公平性が確保されていないと考えた。  また、かかる手続は、市民にとっても透明性がない。仮に、指名競争入札で あれば、見積業者名、見積価格、落札価格はインターネット上で公表されるが、 本件委託契約は、そのような形で公表されないのである。  入札を原則とする地方自治法の建前からしても、そして、以上の実態からし ても、本件委託契約は、そもそも、複数単価という設定も含めて、本当に随意 契約でなければ締結できない契約なのかを検証することがのぞましい。 【意見 契約課】  他の自治体の随意契約ガイドライン(さいたま市、鎌倉市等)によると、複 数単価契約については、地方自治法施行令第167条の2第1項第6号に該当す るというものがあった。随意契約該当性を判断する担当の便宜という観点から も、複数単価契約を随意契約ととらえるのであれば、何号に該当するのか、岐
    阜市随意契約ガイドライン上に明確に定めることが望ましい。 9 仕様書 【事実関係1) 仕様書の業務内容】  本件委託契約書添付の仕様書記載の委託業務内容は、次のとおりであった。 ┌───────────────────────────────────┐ │・診療報酬明細書(電子・紙)を対象に診療内容、頻回及び重複受診、向精神│ │ 薬の重複処方、重複請求の点検を行い、再審査請求書類の作成をする。  │ │・4月、7月、10月、1月は縦覧点検を行い、有効か否かの審査と再審査請求  │ │ 書類の作成をする。                         │ │・介護給付費公費受給者別一覧表と介護券交付処理簿との突合点検をする。 │ └───────────────────────────────────┘  頻回及び重複受診、向精神薬の重複処方、重複請求の点検は、医療扶助の削 減にかかる重要な業務であろうと考えた。向精神薬の重複処方により、それを 転売するなどの不正が報道されることもある。  そこで、点検の実態を検証すべく、本件委託契約の業務報告書及び業務完了 報告書を確認したところ、月及び業務内容ごとの業務量の報告があるのみであ った。仕様書で明示された点検結果は何ら明らかとはなっていなかった。  そこで、担当職員らに対しヒアリングを実施して、これら点検業務の実情を 尋ねた。  そのところ、担当職員らにおいては、頻回及び向精神薬の重複処方、重複請 求の点検については職員が担当し、重複受診の点検については誰も担当しない との回答であった。  以上の書類閲覧、ヒアリング結果により、平成24年度、平成25年度及び平 成27年度の同種委託契約の仕様書も確認した。  点検の対象について、平成24年度は、「診療内容、頻回及び重複受診、重複 請求」、平成25年度と平成27年度は、平成26年度と同様で、「診療内容、頻 回及び重複受診、向精神薬の重複処方、重複請求」であった。  診療内容以外の点検業務を業者にしてもらっていないことが事実であると すれば、契約の債務不履行という問題が考えられる。  そこで、この点を確認すべく、平成26年度、平成27年度の委託業者である A社、平成24年度、平成25年度の委託業者であるB社に、地方自治法第252 条の38第1項の関係人調査を実施した。  具体的には、両社に対して書面照会をし、両社から回答を得た。そして、平 成26年度、平成27年度の委託業者であるA社については、ヒアリング及び現 場作業の依頼をしたところ、協力を得たので確認をした。 ・A社、B社のいずれも、仕様書記載の委託業務はすべて行っているとの回答 であった。 ・A社に対しては、ヒアリング実施後、現場作業にて各種点検業務を説明して もらった。仕様書が再審査請求書類の作成をすることを求めている以上、それ に向けてのレセプトの点検という認識である。各種点検は実施しているが、再 審査請求書類と別に、点検結果を岐阜市に報告するものではない。 【規範】  平成26年度契約書第1条によれば、「受注者は、別紙仕様書、図面等(以下、 「仕様書等」という。)に基づき頭書の契約金額をもって、当初の履行期限ま でに、委託業務を完了しなければならない。」と記載されている。他年度の契 約書第1条も同様の記載である。 【指摘 生活福祉一課・二課】  仕様書上、再審査請求の書類作成を行うことが業務内容とされており、業者 は、再審査請求の書類作成は履行している。頻回受診、向精神薬の重複処方等 の点検については、岐阜市側が、別途、何ら成果物としての提出を求めておら ず、業者が点検しているという以上、業者の債務不履行を指摘することは困難 であると考える。  業者に対し、頻回及び重複受診、向精神薬の重複処方、重複請求の点検を行 うことを求めるのであれば、現状の仕様書の見直しを考えるべきである。 【事実関係2) 仕様書の業務範囲の確認】  A社へのヒアリングによれば、仕様書の業務内容等、岐阜市担当者と定期的 に協議するような場はないとのことであった。 【規範】  契約書第23条第2項には、契約に関し疑義が生じたときは、その都度発注 者と受注者とが協議して定めるものとされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  岐阜市も業者も医療扶助費削減という目的のもとに本件委託契約を締結し ているはずである。  それに向けて、契約をより効果的なものとするよう、契約書第23条第2項 の場合はもちろんのこと、定期的に業者と協議の場をもつことを検討すること が望ましい。 10 業務処理状況の調査 【事実関係】  上記「9」で述べたとおり、本監査にて、本件委託契約書添付の仕様書の業 務範囲と実際の業務について疑義が生じた。地方自治法第252条の38第1項 の関係人調査を用いて調査を実施したが、同法に基づく調査には強制力はない。 あくまで関係人の協力により、実施が可能となった。 【規範】  本件委託契約書第4条では次のとおり定められている。  「発注者は、必要と認めるときは、委託業務の処理状況を調査し、もしくは 受注者から関係書類を提出させ、又は受注者に対し報告を求めることができ る。」  岐阜市処務規則第3条で、契約課の事務分掌としては、「(1)工事の請負、 委託等の契約に関すること」の記載があり、岐阜市事務決裁規則 別表第2 「個別専決事項」の契約課に関する事項 契約の締結は、契約課長等が専決者 である。 【意見 契約課】  委託契約に疑義が生じた場合、上記契約書第4条に基づき、実際に担当課が 調査を実施することがなければ、条項は空文となる。疑義が生じた場合の調査 手続について、担当課において、適時に実効的な調査ができるようにすべく、 契約課が主導して、定期的に実際的な研修をすることが望ましい。 【意見 契約課】  契約書第4条による調査が可能な時期は、本件委託契約書上明記されていな い。
     契約期間は1年であり、契約期間経過後に契約に疑義が生じた場合、同条に よる調査が実施できるかというと困難ではないかと考える。債務不履行責任等 は契約終了後も追及しうるのであるから、他の自治体等の実情も踏まえ、調査 を契約後も実施できるようにする条項を入れることを検討することが望まし い。 11 契約の履行確認 【事実関係】  本件委託契約については、仕様書に基づき、毎月、業者に、業務報告書及び 業務完了報告書を提出させている(事務手続7))。  それを福祉政策課にて確認の上(事務手続8))、支出負担行為、支出命令、 支出がなされる(事務手続9)~11))。 【規範】  本件委託契約書第13条では、「受注者は、この契約が完了したときは、発注 者の検査を受けなければならない。」とされ、同第14条第1項にて、「受注者 は、前条の検査に合格したときは、発注者の定める手続に従って契約金額の支 払いを請求するものとする。」とされている。  そして、同第2項にて、「発注者は、前項の規定による請求があったときは、 その日から起算して30日以内に契約金額を支払わなければならない。」と規定 されている。  岐阜市処務規則第3条にて、福祉政策課は(4)部内(介護保険課を除く) の財務及び庶務に関することが掲げられている。 【指摘 生活福祉一課・二課、福祉政策課】  本件委託契約において、業者から提出される業務報告書及び業務完了報告書 と仕様書記載の業務内容を照合しても、仕様書記載の業務が完了したかどうか は必ずしも明らかとならない。上述したとおり、例えば、業者が頻回受診等の 点検をしたかどうかは、月ごとの点検枚数だけでは決して判らない。  仕様書の業務内容を意識し、業務の検査が可能となる業務報告書及び業務完 了報告書の提出を求め、仕様書と照合して、実効的な完了検査を行うべきであ る。 第7 葬祭扶助と遺留金品 1 制度の概要 (1)はじめに  葬祭扶助については、生活保護法第18条及び同法第37条に規定されている。  困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、検案、死 体の運搬、火葬又は埋葬、納骨その他葬祭のために必要なものの範囲内におい て行われる。  葬祭扶助の対象者は、本人が死亡していることから、葬祭を行う者に対して である(生活保護法第37条第2項)。  墓地、埋葬等に関する法律や行旅病人及び行旅死亡人取扱法が適用されて、 区市町村長が葬祭を行う者となる場合などは、生活保護法における葬祭扶助は 行われない。また、生活保護法第18条第2項に基づき、葬祭扶助を行う場合 には、生活保護法第76第1項に規定されているとおり、死者の遺留金品を保 護費に充てることができる。  葬祭扶助が行われる場合と遺留金品の充当関係を図にすると次のとおりで ある。 (2)事務の流れ  葬祭扶助にかかる事務の流れは次のとおりである。 2 岐阜市の葬祭扶助の現状 (1)葬祭扶助の額及び件数  葬祭扶助については、生活保護法による保護の基準(昭和38年4月1日厚 生省告示第158号)別表第8に基準額が定められている。同基準の第234次(平 成26年3月31日 厚労省告第136号)においては、1級地及び2級地におい て、大人206,000円以内、小人164,800円以内である。  かかる基準を踏まえ、岐阜市においては、大人201,000円、子ども160,800 円を上限として、葬祭扶助費が支給される。  直近3年度分の岐阜市の葬祭扶助の額と件数は次のとおりである。    <岐阜市における葬祭扶助の額・件数>    ┌─────┬─────┬─────┬─────┐    │     │平成24年度│平成25年度│平成26年度│    ├─────┼─────┼─────┼─────┤    │件数(人)│ 178(8)│ 172(13)│ 179(8)│    ├─────┼─────┼─────┼─────┤    │金額(円)│33,683,516│30,932,140│32,946,292│    └─────┴─────┴─────┴─────┘                ( )内は葬祭扶助のみ支給している件数 (2)死亡による廃止の件数  第8章でも報告するが、直近3年度分の岐阜市の被保護者死亡による保護廃 止の件数は次のとおりである。    <岐阜市における死亡による廃止件数>    ┌─────┬─────┬─────┬─────┐    │     │平成24年度│平成25年度│平成26年度│    ├─────┼─────┼─────┼─────┤    │件数(人)│    212│    191│    210│    └─────┴─────┴─────┴─────┘ (3)分析  葬祭扶助の適用は、被保護者の死亡の場合に限られるわけではないが、各年 度における死亡による廃止件数と葬祭扶助の件数を比較すると、被保護者死亡 の場合、その8割以上に葬祭扶助費の支給が行われていることとなる。  また、葬祭扶助の金額について大人と子どもの区別なく単純に平均すると、 平成26年度においては、1人当たり184,057円が支給されたことになる。  岐阜市における葬祭扶助費の上限が、大人201,000円、子ども160,800円で あることからすれば、遺留金品による充当が多くはないのではないかと推測さ れる。
    3 監査の観点及び監査手続  岐阜市は、現状、高齢者単身世帯が多く、今後の高齢化社会の進行を考えて も、葬祭扶助は増加する可能性がある。最低限度の保障という観点から、葬祭 扶助費を支給する場合には、遺留金品の把握・充当を確実・適切になすべきで ある。  この観点から、葬祭扶助にかかる事務執行が適切になされているかを監査す るため、岐阜市における葬祭扶助、特に遺留金品の取扱いの現状を確認した。  具体的には、ヒアリングを実施するとともに、関係書類の閲覧(廃止事案の 死亡・葬祭扶助適用のケース記録)をし、遺留金品の保管状況を確認すべく現 地視察を行った。 4 現状保管されている遺留金品への対応 (1)保管の現状 ア 現場視察に至る経緯  ヒアリングによれば、被保護者が死亡した場合、入居していた施設や家主か らの求めに応じる形などで、担当現業員が遺留金品を受け取る場合があるとの ことであった。この場合、生活福祉一課・二課の事務スペースに運びこまれ、 金庫に一時保管されることが原則形態である。本監査において、生活福祉一 課・二課内に存在する金庫に遺留金品が保管されていることを確認した。金庫 は物理的な保管の限界があることから、これまでの遺留金品の保管状況につい て確認したところ、これまでの遺留金品については、岐阜市内に存在する三輪 第一書庫と方県倉庫に保管されていることが判った。  そこで、平成27年10月5日、三輪第一書庫と方県倉庫の現地視察を行った。 平成22年10月27日以前の遺留金品については三輪第一書庫に、平成22年 10月28日搬入分以降の遺留金品については方県倉庫に保管されていた。 イ 現地視察の結果 1)三輪第一書庫内  書庫の地下の一区画に保管されていた。死亡した被保護者だけではなく、い わゆる行旅死亡人の遺留品も存在していた。  保管されていた遺留金品としては、現金(1,800円弱)・通帳(最終日残高 が3万4,000円ほど)・印鑑・時計・テレカ・生前の写真・家具類(コタツ・ ストーブなど)・仏壇・自転車など様々なものがあった。ダンボールや封筒に 入れられている物は氏名記載の上で封がされていた。 2)方県倉庫内  平成22年10月28日以降に運び込まれたと思われる遺留金品が保管されて いた。ダンボールでの保管が主であり、ダンボールの搬入日をみると、平成 22年10月28日搬入が大半であり、その他平成27年1月28日搬入のものも 保管されていた。ダンボール以外では透明の袋で保管されていたものもあった。  ダンボールを一部開けて中を確認したところ、袋あるいは封筒に死亡日・氏 名などが記載されて保管がなされていた。  保管年月日や名前が記入されているものもあったが、何も記入されていない ものも存在した。保管されていた遺留金品としては、通帳(最終日残高が20 万円ほど)・印鑑・衣服などがあった。方県倉庫と異なり、家具類などの保管 はなされていなかった。 (2)現存する遺留金品への対応 【事実関係】  監査人の実施した現地視察では、複数の者の通帳と1名の現金が確認された。  通帳・現金以外でも様々な遺留品が存在していた。  通帳と現金所持者については、廃止後5年を経過しており、ケース記録は廃 棄されて存在しない。  ただし、死亡廃止後も生活保護受給者であった者については、岐阜市のシス テム上、ケース管理データが残存している。内容としては、ケース番号、世帯 主名、世帯員の住所、生年月日、性別、開始日、廃止日、地区担当者名等が判 る。 【規範】  民法第896条は相続について、次のとおり規定する。 ┌───────────────────────────────────┐ │相続人は、相続開始のときから、被相続人の財産に属した一切の権利義務を │ │承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない。 │ └───────────────────────────────────┘  地方自治法は現金について、次のとおり規定する。 ┌───────────────────────────────────┐ │(現金及び有価証券の保管)                      │ │第235条の4 普通地方公共団体の歳入歳出に属する現金(以下「歳計現金」 │ │という。)は、政令の定めるところにより、最も確実かつ有利な方法により │ │これを保管しなければならない。                    │ │2 債権の担保として徴するもののほか、普通地方公共団体の所有に属しな │ │い現金又は有価証券は、法律又は政令の規定によるのでなければ、これを保 │ │管することができない。                        │ └───────────────────────────────────┘ 【指摘 生活福祉一課・二課】  法第76条1項の場合(葬祭扶助の保護費に充当する場合)を除いては、現 在保管する遺留金品を岐阜市が預かり保管し続ける法的根拠はないはずであ る。  この点、現金及び通帳所持人についてはケース記録が保管されておらず、葬 祭扶助の支給があったか否かも不明であり、現金については、地方自治法第 235条の4第2項に違反する状態であると考える。  現金、通帳は勿論のこと、現在保管する遺留品について、早急・適切に処分 すべきである。  具体的には次の事務処理の流れが考えられる。 ┌──────────────────────────────────┐ │1)現状の把握                            │ │ 三輪第一書庫内、方県倉庫内にある遺留品全てについて、氏名等個人が特│ │ 定できる情報・遺留品内容を確認し、リスト化する          │ └──────────────────────────────────┘   ↓ ┌──────────────────────────────────┐ │2)相続人の探索                           │ │ ア 廃止後5年を満たない者は、ケース記録を確認の上、相続人の探索 │ │ イ 廃止後5年を経過した者については、ケース管理データを確認の上、│
    │  相続人の探索(氏名、住所、生年月日という情報で相続人が探索でき │ │  る可能性がある)                        │ └──────────────────────────────────┘   ↓ ┌──────────────────────────────────┐ │3)相続人が判明した場合                       │ │ 相続人への引渡し、あるいは、相続人の同意を得た上で廃棄処分    │ └──────────────────────────────────┘   ↓ ┌──────────────────────────────────┐ │4)相続人が判明しない場合(相続人不存在・遺留品に氏名未記載のものも含│ │む)                                │ │ 今後、遺留金品の取扱いに関する根拠規程を整備することで対応    │ │ 現金については、供託手続等を検討                 │ └──────────────────────────────────┘ 5 今後の遺留金品に関する事務対応 (1)根拠規定の未整備 【事実関係】  いずれも明確なルールに基づかず、次のとおりの事務取扱の実態があった。 1)葬祭扶助との関係を考慮することなく、担当現業員個々が、遺留金品を確 認・預かるという実態があった。ケース記録を閲覧したところ、多くのケース において、葬祭扶助を行っているにもかかわらず、遺留金品の確認の有無及び 方法が記録上不明であり、遺留金または遺留品もしくはその両方につき記録さ れていないケースが多々見られた。 2)遺留金品の保管については、生活福祉一課・二課に持ち寄り、書庫・倉庫で 保管することがあった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  早急に遺留金品の取扱いを定めた規程類を設けるべきである。  様々な自治体が遺留金品の取扱いに関する要綱・規程を作成しているので参 考にするとよい。定めることが必要な要素は少なくとも次のとおりである。  また、作成する以上はこれに従い事務処理を実施することは当然である。  これまでのケース記録への記載の現状から、念のため述べるが、記録化は徹 底する必要がある。 ┌────────────────────────────────┐ │1)相続人等の確認                        │ │2)遺留金品の確認    例 確認の要否の基準、確認方法、記録方法│ │3)遺留金品の保管    例 保管の可否の基準、保管方法、記録方法│ │4)遺留金品の処理    例 処理・処分の方法、保管期間、記録方法│ │5)関係書類の整備・保管 例 対象の特定、保管期間        │ └────────────────────────────────┘ (2)死亡者の預金通帳の取扱い 【事実関係】  閲覧したケース記録の中で葬祭扶助を行っていることが明らかなケースが 33件あり、そのうち、通帳について記載されていたものは8件あったが、親 族等の協力を得て、葬祭扶助費に充当されたケースは3件であった。  死亡者に預金通帳が存在した場合であっても、遺留物品として払い戻しを受 け、葬祭扶助費に充当された事実はない。 【規範】 生活保護法第76条は次のとおり定める。 ┌───────────────────────────────────┐ │第76条 第18条第2項の規定により葬祭扶助を行う場合においては、保護  │ │の実施機関は、その死者の遺留の金銭及び有価証券を保護費に充て、なお足 │ │りないときは、遺留の物品を売却してその代金をこれに充てることができる。│ │2 都道府県又は市町村は、前項の費用について、その遺留の物品の上に他 │ │の債権者の先取特権に対して優先権を有する。              │ └───────────────────────────────────┘  「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月 1日社保第34号厚生省社会局保護課長通知)では、死者名義の郵便貯金の 取扱いについて、次のとおり定める。 ┌──────────────────────────────────┐ │第13 その他                            │ │問2 葬祭を行なう扶養義務者がないため葬祭扶助を行った場合において、│ │ 死者名義の郵便貯金通帳があるときは、どのように処分したらよいか。 │ │答 郵便貯金通帳は、法第76条第1項にいう死者の遺留物品と解すべきで │ │ あるが、とくに債権の証拠物件であることにかんがみ、別紙1郵政省貯金│ │ 局長通達の手続きに準じて郵便局から払いもどしを受けるのが適当であ │ │ る。                               │ └──────────────────────────────────┘ ┌──────────────────────────────────┐ │〔別紙1〕                             │ │行旅死亡人等の郵便貯金の払もどしについて              │ │(昭和29年4月1日 郵1業第304号 郵政省貯金局長通達)       │ │ 郵便貯金の預金者が死亡した場合に相続人が明らかでないときは、家庭裁│ │判所の選任する財産管理人以外の者は、その貯金に関する権利を行使するこ│ │とはできないのであるが、行旅死亡人の取り扱いに要した費用に充当するた│ │めの死亡人名義の通常貯金の払もどしについては、行旅死亡人を取り扱った│ │市区町村長からの請求により、郵便局で便宜左記によるほか、一般の例によ│ │る払もどしの取り扱いをすることとされたから、了知のうえよろしく取り計│ │らわれたい。                            │ │ なお、右のほか、死体の埋葬もしくは火葬を行う者がない死亡人又は死体│ │          ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄│ │の埋葬もしくは火葬を行う者が判明しない死亡人の取り扱いに要した費用に│ │ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄│ │充当するための死亡人名義の通常貯金の払もどしで、その埋葬もしくは火葬│ │ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄│ │を取り扱った市区町村長からの請求によるものの取り扱いについても、同様│ │ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄│ │であるからあわせて了知されたい。                  │ │ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                  │ │ 命によって通達する。                       │ └──────────────────────────────────┘  平成19年10月の日本郵政公社の民営化により、上記通達は効力を失ったも のの、架電にて総務省に確認したところ、「民営化に伴い通達は失効したが、
    ゆうちょ銀行に確認したところ、運用は継続されている」とのことであった。 【意見 生活福祉一課・二課】  郵便貯金通帳は、法第76条第1項にいう死者の遺留物品と解すべきと考え られているが、かかる考え方は、それ以外の金融機関の預金通帳についても妥 当するのではないかと考える。  被保護者がゆうちょ銀行の口座を有している場合、郵政省貯金局長通達(昭 和29年4月1日郵1業第304号)の運用がなされているのだから、これに沿 った手続きを行い、払い戻しを受け、葬祭扶助に充当すべきこととなる。  他の預金については、郵政省貯金局長通達のような通達がなくとも、法第 76条第2項の規定によって、保護費の範囲内で、優先的に払戻しを求めるこ とができる性質を有する。  したがって、葬祭扶助を行うに当たり、遺留金品に預金通帳がある場合には、 法第76条第2項に規定されている優先権を主張して、払戻を求めることが考 えられる。  岐阜市としては、金融機関と協議の上、死亡者の預金通帳の払い戻しを受け ることができるような運用の実現を検討することが望ましい。  この点、名古屋市では、「生活保護法第76条による遺留金品取扱規程」 を改正し、預金の払戻しに取り組んでいるようであり、このことは参考に なると考える。 ┌─────────────────────────────────┐ │(名古屋市生活保護法第76条による遺留金品取扱規程)        │ │第4条 金融機関からの預金払戻し                 │ │ 戸籍上相続人が存在しない場合、または相続放棄等戸籍上最終順位の相│ │続人はいるが相続資格が無い場合において、金融機関への預金があるとき│ │は、原則、葬祭扶助費に充当する額の範囲内で払い戻しの手続きをする。│ │払い戻しについては、「被保護者の遺留金に対する先取特権の行使につい│ │て」(様式5)を用いて、金融機関で手続きを行うこと。       │ └─────────────────────────────────┘ (3)相続財産管理人選任 【事実関係】  保護費を上回る遺留金品が残った場合、岐阜市においては相続財産管理人を 選任して対応する事例が少ない。 【規範】 ┌──────────────────────────────────┐ │(生活保護法施行規則)                       │ │第22条 保護の実施機関が法第76条第1項の規定により、遺留の物品を売 │ │却する場合においては、これを競争入札に附さなければならない。但し、有│ │価証券及び見積価格千円未満の物品については、この限りでない。競争入札│ │に附しても落札者がなかつたときも、同様とする。           │ │2 保護の実施機関が法第76条の規定による措置をとつた場合において、 │ │遺留の金品を保護費に充当して、なお残余を生じたときは、保護の実施機関│ │は、これを保管し、すみやかに、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に請求│ │し、選任された相続財産管理人にこれを引き渡さなければならない。   │ │3 前項の場合において保管すべき物品が滅失若しくはき損のおそれがあ │ │るとき、又はその保管に不相当の費用若しくは手数を要するときは、これを│ │売却し、又は棄却することができる。その売却して得た金銭の取扱について│ │は、前項と同様とする。                       │ └──────────────────────────────────┘ 【意見 生活福祉一課・二課】  保護費を上回る遺留金品が残存した場合、相続財産管理人を選任することと なるが、選任に際しては、請求にかかる費用がかかる。  残存額が多額でないと利用することが躊躇されるが、少額が残存する場合で あっても、複数件数をとりまとめて選任することで対応することも考えられる。  相続財産管理人選任にかかる取扱いを定めた根拠規定の作成を検討するこ とが望ましい。 第8章 保護の停止及び廃止 第1 概要 1 はじめに  保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなったときは、速やかに、 保護の停止又は廃止を決定し、書面をもって、これを被保護者に通知しなけれ ばならない(生活保護法第26条)。生活保護は国が最低限度の生活保障をする ものであることから(生活保護法第1条)、保護の必要性がなくなった場合に はかかる措置が講じられることとなる。  また、報告義務違反、立入調査拒否及び検診命令違反(生活保護法第28条 第5項)、指示等に従う義務違反(法第62条第3項)の場合、保護の停止又は 廃止がなされることがある。生活保護は、保護費を受給する権利であると同時 に義務も課せられていることから、違反の場合についての効果としてかかる措 置が講じられる。  「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日 社保第34号厚生省社会局保護課長通知)に、生活保護法第26条により保護を 停止すべき場合又は廃止すべき場合の取扱いの基準が定められている。  図にすると、次のとおりである。 2 事務手続の流れ  保護の停止及び廃止にかかる事務手続の流れは、概ね次のとおりである。 第2 監査の観点及び監査手続  保護の停止及び廃止は、最低限度の生活保障という見地から、被保護者に大 きな不利益を与える可能性があるものであるから、その手続には特に適正さが 要求される。  そこで、この点に関し、岐阜市の現状を確認するため、ケース記録の閲覧と
    ヒアリングを行った。  具体的には、平成26年度廃止決定がなされたケースのうち、平成26年4月 45件、5月20件、6月10件、平成27年1月24件、同年2月14件、同年3 月40件のケース記録及び辞退ケース全件の合計158件の書類を閲覧した。 第3 岐阜市の現状 1 保護の廃止 (1)岐阜市の生活保護廃止世帯の推移  過去5年間における生活保護の廃止世帯数は、以下のとおりである。  過去3年間における生活保護の廃止事由の推移は、以下のとおりである。 2 保護の停止 (1)岐阜市の保護停止の状況  平成26年度の保護停止件数は次のとおりである。  保護の停止は、一時的に保護を要しなくなったときや保護を要しなくなった が、その状態が今後継続することについて確実性を欠くため、若干の期間経過 の観察が必要であるときに行われる。  岐阜市の資料によると、失踪、稼働収入の増加、累積金の増加、逮捕などが、 停止の理由とされている。ケース記録を見ると、稼働収入の増加の場合、停止 期間を6カ月とする決定がなされており、期間満了前に、担当現業員が被保護 者に生活状況を確認の上、廃止となっている。  施設入所中の被保護者については、累積金が6カ月分の保護費を上回る額に なった場合、停止期間を6カ月とする決定がなされており、その間累積金の減 少が確認された場合、保護が再開されている。 第4 保護の停止及び廃止の決定 1 文書指導 【事実関係】  次のようなケースがあった。  再三の口頭による収入申告書の提出指導に従わず、窓口支給に変更したが受 け取りに来なかったケースで、ケース会議で協議した結果に基づき6ヶ月間の 保護の停止を決定したところ、被保護者が岐阜県に対して不服申立をした。岐 阜県は、「文書指導がなされておらず、保護費を受け取りに来庁しないことを 持っての保護停止処分は妥当とは言えない。保護停止処分を取り消し、主と話 合い、主に収入申告をするよう求め、それでも応じなければ文書指導すべき」 との判断をした。 【規範】  「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて」(平成18年3月 30日社援保発第0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、 1)一定期間、口頭による指導指示を行ったにもかかわらず、目的が達成されな かったとき、又は達成されないと認められるときに文書による指導指示を行う、 2)文書による指示を行っても正当な理由なく文書指示に従わない場合には、さ らにケース診断会議に諮る等組織的に十分検討のうえ、弁明の機会を与える等、 法第62条第4項による所定の手続きを経たうえで保護の変更、停止又は廃止 を行うこととされている。 【指摘 生活保護一課・二課】  被保護者が保護の決定若しくは実施または法第77条若しくは法第78条(同 条第3項を除く。)のために必要な報告をしない場合には、保護の停止を行う ことができるが、保護の停止は、判断を誤った場合の影響が大きいものである から、手続の適正を確保する必要性が高い。  指導義務違反を理由として停止する場合には、その前提として、文書による 指導を行うべきである。 2 決定時のケース診断会議 【事実関係】  岐阜市が岐阜県施行事務監査資料にて提出した会議区分においては、停止・ 廃止については、「必要に応じて」判定会議を開催することとなっている。  ヒアリングによれば、保護の廃止の場合、死亡のように要件に該当すること が明らかであれば、ケース診断会議で検討することはなく、担当現業員が判断 に迷った場合にケース診断会議が開かれる運用となっているとのことである。  死亡による廃止ケースの中には、次のようなケースがあった。  被保護者が不動産(固定資産税評価額約540万円)を所有しており、売却で きたら法第63条の適用により廃止をする予定として保護開始決定がなされた が、売却がなされないまま、2年間が経過し、被保護者の死亡により廃止とな った。 【意見 生活福祉一課・二課】  保護の停止・廃止は、判断を誤った場合の影響が大きいものであるから、そ の手続には特に適正さが要求されるところ、資料をもとに、組織的決定をして、 その過程を記録に残さなければ、適正な判断をしたかどうかを評価できない。 不服申立てがあった時に、岐阜市の判断が合理的であったことを証明する必要 もある。  また、廃止の判断とは直結しないが、組織的にケースを検討することにより、 過払金等などの返還請求を見逃すことを防止することにもなるし、第5で述べ るように、停止・廃止の際には、過払金の免除の可否が問題となるが、その点 についての適切な判断に資する。  従って、停止・廃止を決定する際には、全ケースについてケース診断会議を 開催することが望ましい。  毎月の停止決定がなされる件数は明らかでは無いが、廃止ケースは年間約 500件あり、これらにつき全てケース会議を開催すると、担当者の負担が増え ることになるが、第4章、第5章や第13章などで指摘したように、資産保有 台帳などケース記録の整備を行うことにより効率化すれば、可能と考える。  ケース会議を開催する場合の手順については、第13章記載のとおりである。 3 決裁手続 【事実関係】  廃止ケースの中に、次のようなケースがあった。
     担当現業員は定期預金による預貯金が350万円ほどあることを認識しなが らも生活保護法第63条を適用せずに一度廃止の通知を送付してしまった。後 日、福祉事務所長から生活保護法第63条を適用すべきという指示を受けた。  法第63条を適用して、返還金を回収した場合、被保護者の預貯金がなくな り、廃止の理由がなくなることから、廃止の通知を事実上回収していた。 【規範】  保護廃止決定通知書作成の前提として、同通知書の決裁がなされていること が必要である。  岐阜市福祉事務所設置条例施行規則別表において、保護の停止及び廃止の決 定の決裁権者は福祉事務所長である。 【指摘 生活福祉一課・二課】  上記規則において、決裁区分が定められ、保護の停止及び廃止の決裁権者を 福祉事務所長であると定めたのは、保護の停止及び廃止の最終判断を福祉事務 所長がすべきだからである。  保護廃止決定通知書の発送は、福祉事務所長の決裁を経た後にすべきである。 4 辞退 (1)はじめに  保護の廃止が行われるのは、被保護者が保護を要しなくなったときであり、 保護を要しなくなったときとは、被保護者の死亡など保護の対象がいなくなっ た場合の他、収入の増加、最低生活費の減少など客観的な事情により、恒常的 に最低限度の生活が保障される場合をいう。本来であれば、保護の辞退は廃止 事由には当たらないはずである。しかしながら、被保護者の意思の尊重という 観点から、辞退による廃止が認められている。 (2)監査の観点及び監査手続  被保護者の真の意思から辞退するのであればよいが、そうでない場合がある とすれば、被保護者の最低限度の生活保障を侵害するものであって違法となり うる。その点に関する岐阜市の事務執行が適切であるか検証すべく、平成26 年度中にあった辞退ケース5件のケース記録を閲覧した。 (3)辞退の際の指導・助言 【事実関係】  生活保護廃止理由別の推移の表からすれば、保護辞退による保護廃止は、平 成24年度で24件、平成25年度で9件、平成26年度で5件と減少している。 平成26年度の辞退による廃止ケース5件は、就労による収入の増加、親類等 からの援助、親類縁者等の引取りにも分類しうるケースであった。  このうち、国民健康保険への加入を指導した旨の記載がなされているのは2 件であった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日 社保第34号厚生省社会局保護課長通知)によれば、保護の廃止に際しては、 国民健康保険への加入など、保護の廃止に伴い必要となる諸手続についても助 言指導することとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  例えば、辞退者が後に国民健康保険の加入の必要について聞いていれば辞退 しなかったなどと不服申立てする可能性はある。指導したことを記録しておく ことは、廃止手続が適正になされたことを担保することにもなる。  国民健康保険の加入等の助言指導を行った旨は確実に記録すべきである。 5 保護停止決定通知書・保護廃止決定通知書の様式・記載 【事実関係】  現在使用されている保護停止決定通知書及び保護廃止決定通知書(巻末資料 3に添付)は、岐阜市生活保護法施行細則第5条第1項で定められた様式(様 式第17号)と異なる様式で作成されている。  ケース記録に添付された、保護停止決定通知書・保護廃止決定通知書を確認 したところ、廃止の理由欄に、「その他の理由(手書き)により廃止します。」 と記載され、手書きによる補充がなされていないものが数件あった。 【指摘 生活福祉一課・二課、福祉政策課】  現在使用している様式を用いるのであれば、岐阜市生活保護法施行細則を改 正すべきである。 【指摘 生活福祉一課・二課】  保護停止決定通知書及び保護廃止決定通知書は、保護の停止・廃止という重 要な決定を被保護者に伝える書面であり、また、不服の申立の対象を明示する ものである。  保護停止決定通知書及び保護廃止決定通知書に停止・廃止の理由を明確に記 載すべきである。 6 停止期間中の管理 【事実関係】  停止期間中のケースの管理は、担当現業員の責任においてなされることにな るが、万一、担当現業員が停止期間の経過に気づかなかった場合、チェックす ることができるシステムとはなっていない。  次のようなケースがあった。  施設に入所中の被保護者について、累積金が判明したため、期間を6カ月間 とする停止決定がなされた。期間が満了した4日後、施設担当者からの連絡に より、期間満了の翌日付で保護を再開した。ヒアリングによると、保護が停止 された後は、担当現業員以外の者の関与がなくなるとのことであった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生労働省社会・援護局長通知)によれば、保護停止中の被保護者につ いても、その生活状況の経過を把握し、必要と認められる場合は、生活の維持 向上に関し適切な助言指導を行う等、所要の措置を講ずることとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  停止案件については、担当現業員任せにするのではなく、停止事務の担当者 を定め、停止ケースの一覧表等で管理できる体制をとるべきである。 第5 免除 1 はじめに  保護費の支給がなされた後、保護が停止又は廃止となると、保護の停止又は
    廃止日以降分の保護費は、過払金となり返納の対象となるのが原則である。  しかしながら、生活保護法第80条において、「保護の実施機関は、保護の変 更、廃止又は停止に伴い、前渡しした保護金品の全部または一部を返還させる 場合において、これを消費し、又は喪失した被保護者に、やむを得ない事由が あると認めるときは、これを返還させないことができる。」として、その例外 を定めている。  岐阜市における、過去3年間の法第80条に基づく免除件数及び免除額は、 以下のとおりである。  免除額は、平成26年度で900万円ほどであり、免除率は52.8%である。  死亡した場合の免除件数は210件、免除金額は440万円ほど、免除率は 75.2%といずれも最も高くなっている。  免除は例外であるところ、免除率からみれば、原則と例外が逆転しているこ ととなる。 2 免除の判断 【事実関係】  保護決定調書には、戻入方法として、何ら理由を記載することなく、「法80 条免除」とされているものが多数あり、中には、明らかに免除を認めるやむを 得ない事情が認められないと思われるケースや免除の判断が妥当であったか 疑問が残るケースがあった。  廃止件数の約6割(免除額の約5割)を占める死亡ケース、次いで件数の多 い逮捕ケース、1件当たりの免除額が大きいケースの例をいくつか挙げる。 1)死亡ケース ┌────┐ │ケース1│ 死亡により廃止となったもの。被保護者は、現住家屋(固定資 └────┘ 産税評価額約130万円)(持分10分の9)、土地2筆(固定資産税評価額合計 約340万円)を所有しており、亡父の相続人は被保護者とその妹であった。 また被保護者の相続人は妹のみである。 ┌────┐ │ケース2│ 死亡により廃止となったもの。単独世帯であり、現業員が、警 └────┘ 察から遺品である通帳を受け取り、残高が20万円以上あるため、葬祭扶助は できないと伝え、これを被保護者の母親に渡した。 2)逮捕ケース ┌────┐ │ケース3│ 逮捕されたため停止となり、同日付で免除の決定がなされ、10 └────┘ 日間の勾留後起訴猶予となり身柄解放されたが、アパートを引き払ったため、 廃止となった。 3)1件当たりの免除額が大きいケース ┌────┐ │ケース4│ 年金を受給しているうえ、親からの仕送り500万円の見込み(う └────┘ ち100万円の受取りは確認)があるため、廃止となったもの。5万円以上の 返納を免除している。 ┌────┐ │ケース5│ 被保護者より、婚姻を理由として保護の廃止の申出があったも └────┘ の。3月に新居の契約をするが、現在の借家の4月分の支払いが必要である こと、子らの進学が必要として、約19万円の返納を免除している。  免除をするにあたっては、各担当現業員が判断し、課長決裁を受けることと なっているが、「前渡しした保護金品を消費し、又は喪失した被保護者に、や                   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ むを得ない事由がある」か否かを判断するための手続や基準を定めたものはな  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ い。 【指摘 生活福祉一課・二課】  生活保護費が公費によって賄われている以上、保護の廃止、変更等に伴い保 護費の変動が生じたことにより過払いとなった前払い金は、当然に返納される べきである。  これを免除することは例外であり、「やむを得ない事由」が必要とされてい るが、その基準が明確でないと、安易な免除がなされるなど適正な運用がなさ れないし、また被保護者間にも不公平な結果となる。  1)死亡ケースについては、被保護者に対する過払金返還債務は、相続の対象 となるため、安易に免除せず、相続人に対し、返還請求すべきであった。  2)逮捕ケースについては、実務的に、回収の困難性や債権管理の問題もある と思われるが、逮捕されたこと自体は、法80条に定める「前渡した保護金 品・・・を消費し、又は喪失した」に当たらず、「逮捕された」ことのみをも って、免除することができないと思われる。       ┌────┐  3)のうち、│ケース4│については、免除の理由はなく、返還を求めるべきで       └────┘     ┌────┐ あった。│ケース5│については、当該世帯の自立更生のために必要であるとい     └────┘ う目的は適正と思われるが、その額が妥当であったかは不明である。  前掲の生活保護廃止理由の推移に示されているように廃止理由が多様化し ているものの、ある程度の類型化がされている。  適正かつ公平な適用を行うため、各類型に対応することができるような法第 80条の免除をする場合の手続及びその基準を定めるべきである。 【意見 生活福祉一課・二課】  停止・廃止の決定の際に、ケース会議を開催することが望ましいことは、第 4項で述べたとおりであるが、そのケース会議において、免除の可否について
    も判断することが望ましい。 第6 ケース記録の管理・保存 1 ケース記録の管理 【事実関係】  保護が廃止されると、そのケース記録のファイルの表紙には、保護番号、被 保護者の氏名、開始年月日、保護停止年月日、保護廃止年月日及び担当現業員 を記載し、ファイルは、廃止した年度の原則月毎に分類され、段ボール箱で原 則5年間保存される。  保存期間内に保護の再申請があった場合、以前のケース記録のコピーを新し いケース記録に旧ケースとして綴ることになっている。  しかしながら、ケース記録を閲覧したところ、ファイルの表紙に、保護番号、 開始日、廃止日のいずれか、又は複数の記載が欠けているものが散見されたほ か、ケース覚書及び取扱経過が一切添付されていないもの、取扱経過が一切な いもの(2件)があった。 【規範】  岐阜市文書取扱規則第37条第2項では、文書の整理は、ファイリング・シ ステムによって行うとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  岐阜市文書取扱規則違反である。作成した文書はケース記録に確実にファイ リングし、ファイルの表紙には、整理し得るための記載をすべきである。 2 ケース記録の保存期間 【事実関係】  岐阜市が書庫、倉庫にて保管する遺留金品の中に、預金通帳が数冊あり(内 1冊は約20万円の残高が記帳)、また、2,000円弱の現金もあった。  しかし、ケース記録等が保存期間を経過して処分されていたため、どのよう な経緯で遺留金品として保管されるに至ったか、かかる遺留金品を葬祭扶助な どに充当することができなかったのかなどといった事実確認をすることがで きなかった。 【規範】  平成23年3月4日岐阜県課長通知によれば、保護廃止したもののケースフ ァイルの保存期間は、廃止後5年とされ、保護を廃止した者に対する生活保護 費返還金等の債権を有している場合その他特に理由がある場合は、延長するこ とは差し支えないとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  遺留金品は、葬祭扶助費に充当することができないのであれば、相続人に返 却されるべきものである。しかし、記録が存在しなければ、葬祭扶助費を支給 したか否かが確認できない。  遺留金品のあるケースについては、廃止後5年ではなく、例外的に、遺留金 品の処分時期と連動した保存期間を設けるべきである。 第9章 費用返還及び徴収 第1 法第63条の費用返還と法第78条の費用徴収 1 両制度の内容及び相違点 ┌───┬───────────────┬───────────────┐ │   │法第63条に基づく費用返還   │法第78条に基づく費用徴収   │ │   │(資力がありながら保護を受け │(不正受給者からの徴収)   │ │   │た者からの返還)       │               │ ├───┼───────────────┼───────────────┤ │生活保│第63条            │第78条第1項         │ │護法の│ 「被保護者が、急迫の場合等に│ 「不実の申請その他不正な手 │ │規定 │おいて資力があるにもかかわら │段により保護を受け、又は他人を│ │   │ず、保護を受けたときは、保護に│して受けさせた者があるときは、│ │   │要する費用を支弁した都道府県 │保護費を支弁した都道府県又は │ │   │又は市町村に対して、すみやか │市町村の長は、その費用の額の全│ │   │に、その受けた保護金品に相当す│部又は一部を、その者から徴収す│ │   │る金額の範囲内において保護の │るほか、その徴収する額に百分の│ │   │実施機関の定める額を返還しな │四十を乗じて得た額以下の金額 │ │   │ければならない。」      │を徴収することができる。」  │ ├───┼───────────────┼───────────────┤ │法的性│ 法第19条第4項により市長が │ 地方自治法第153条第2項に  │ │質  │福祉事務所長に委任した保護決 │より市長が福祉事務所長に委任 │ │   │定及び実施に関する事務    │した事務           │ ├───┼───────────────┼───────────────┤ │趣旨 │ 法第63条は、資力はあるが、 │ 不実の申請その他不正な手段 │ │   │これが直ちに最低生活のために │により保護を受け、または他人を│ │   │活用できない事情にある要保護 │して受けさせた者は、刑法該当条│ │   │者に対して保護を行い、資力が換│文(詐欺等)又は法第85条の規 │ │   │金されるなど最低生活に充当で │定によって処罰される。しかし、│ │   │きるようになった段階で既に支 │これだけでは保護金品に対する │ │   │給した保護金品との調整を図る │損失は補填されないため、不正に│ │   │ために、当該被保護者に返還を求│保護を受けた者から保護費を返 │ │   │めるものである。       │還させるよう法第78条が規定さ │ │   │               │れている。          │ ├───┼───────────────┼───────────────┤ │適用判│ 被保護者の作為又は不作為に │ 次の基準に該当すると判断さ │ │断  │より保護の実施機関が錯誤に陥 │れる場合は、法第78条に基づく │ │   │ったため扶助費の不当な支給が │費用徴収決定をすみやかに行う。│ │   │行われた場合に適用される条項 │1) 保護の実施機関が被保護者 │ │   │ではない。          │ に対し、届出又は申告について│ │   │ 被保護者に不当に受給しよう │ 口頭又は文書による指示をし │ │   │とする意思がなかったことが立 │ たにもかかわらず被保護者が │ │   │証される場合で、保護の実施機関│ これに応じなかったとき。  │ │   │への届出や申告をすみやかに行 │2) 届出又は申告に当たり明ら │ │   │わなかったことについてやむを │ かに作為を加えたとき。   │ │   │得ない理由が認められるときや、│3) 届出又は申告に当たり特段 │ │   │保護の実施機関及び被保護者が │ の作為を加えない場合でも、保│ │   │予想しなかったような収入があ │ 護の実施機関又はその職員が │
    │   │ったことが事後になって判明し │ 届出又は申告の内容等不審に │ │   │たとき等は、法第63条の適用が │ ついて説明等を求めたにもか │ │   │妥当である。         │ かわらずこれに応じず、又は虚│ │   │               │ 偽の説明を行ったようなとき。│ │   │               │4) 課税調査等により、当該被保│ │   │               │ 護者が提出した収入申告書が │ │   │               │ 虚偽であると判明したとき。 │ ├───┼───────────────┼───────────────┤ │費用返│ 原則として、当該資力を限度と│ 徴収額の確定は、保護の実施機│ │還額の│して支給した保護金品の全額と │関ではなく、保護費を支弁した市│ │決定・│すべきである。ただし、全額を返│町村の長が一方的に行うもので │ │不正受│還対象とすることによって当該 │あり、さらに法第78条による徴 │ │給額の│被保護世帯の自立が著しく阻害 │収額は、不正受給額の全額又は徴│ │確定 │されると認められる場合は、一定│収する額にその100分の40を乗  │ │   │の範囲の額を返還額から控除し │じて得た額を加算した額の範囲 │ │   │て差し支えない。       │内で決定するものであって、法第│ │   │               │63条のような実施機関が徴収額 │ │   │               │から自立更生のために充てられ │ │   │               │る費用を控除する余地はない。 │ └───┴───────────────┴───────────────┘ 2 主な手続の流れ 3 監査の観点及び監査手続  法第63条の費用返還及び法第78条の費用徴収は、最低限度の生活保障にか かわる問題であり、適切な回収がなされる必要がある。  そこで、平成26年度に法第63条に基づく費用返還及び法第78条に基づく 費用徴収を決定したケース(252件)の一覧表を閲覧し、 1)上記ケースのうち、法第63条に基づく返還金の返還が分割弁済によりなさ  れているケース記録(84件)及び法第63条の決定理由が「その他」とさ  れているものから任意に抽出したケース記録(15件)の精査 2)上記ケースのうち、法第63条による決定額が50万円以上のケース記録(27  件)及び法第78条による決定額が50万円以上のケース記録(21件)の精  査 3)債権管理簿の閲覧 4)職員のヒアリング を実施した。 4 法第63条の決定理由  平成26年度に決定した法第63条の決定理由別ごとの件数は、次のとおりで ある。             (岐阜市作成の一覧表より) ┌───────────────────┬───┐ │決定理由               │件数 │ ├──┬────────────────┼───┤ │1) │各種年金の遡及受給       │ 69件│ ├──┼────────────────┼───┤ │2) │生命保険の解約返戻金      │ 10件│ ├──┼────────────────┼───┤ │3) │資産売却            │  2件│ ├──┼────────────────┼───┤ │4) │交通事故等の補償金       │  6件│ ├──┼────────────────┼───┤ │5) │扶助費算定誤り         │ 72件│ ├──┼────────────────┼───┤ │6) │介護保険償還金         │  1件│ ├──┼────────────────┼───┤ │7) │雇用保険給付金         │  2件│ ├──┼────────────────┼───┤ │8) │入院給付金           │  1件│ ├──┼────────────────┼───┤ │9) │高額療養費償還金        │  1件│ ├──┼────────────────┼───┤ │10) │その他             │ 23件│ ├──┴────────────────┼───┤ │                 合計│ 187件│ ├───────────────────┴───┤ │  (「その他」の内訳)           │ ├──┬────────────────┬───┤ │a │稼働収入の判明         │  2件│ ├──┼────────────────┼───┤ │b │各種年金及び福祉各法に基づく給付│  6件│ ├──┼────────────────┼───┤ │c │預貯金の判明          │  8件│ ├──┼────────────────┼───┤ │d │その他収入の判明        │  3件│ ├──┼────────────────┼───┤ │e │世帯員の増減          │  2件│ ├──┼────────────────┼───┤ │f │誤った扶助費の受給       │  1件│ ├──┼────────────────┼───┤ │g │保護停止中に受給        │  1件│ └──┴────────────────┴───┘       (「その他」の内訳は監査人による分類) (1)扶助費算定の誤り 【事実関係】  扶助費算定誤りの件数が4割を占める。 【指摘 生活福祉一課・二課】  これらの扶助費算定誤りによる法第63条による返還金は、実施機関にとっ ても、債権管理に係る新たな事務を発生させるだけでなく、未収金、さらには 不納欠損のリスクを発生させることにもなるため、未然防止又は早期発見に努 めることが求められる。また、無駄な事務作業が増え、他の業務の効率が下が ることにもなる。  担当現業員が慎重に事務処理を行うべきことはもちろんであるが、査察指導 員及び課長等幹部職員においては、日常のケース審査の強化、チェック表など を活用した扶助費算定誤りの未然防止又は早期発見の指導を徹底すべきであ
    る。 (2)年金遡及受給 【事実関係】  年金遡及受給の件数も4割弱を占める。 【意見 生活福祉一課・二課】  のちに指摘するとおり、遡及受給をするのが遅くなれば、返還すべき保護費 が時効により制限されてしまい、全額返還されないことになりかねない。  担当現業員においては、年金受給資格を得る年齢に達する月の確認はもちろ んのこと、「ねんきん定期便」などを活用した年金保険料の納付済期間、保険 料免除期間及び合算対象期間の確認、障害がある場合は主治医訪問等により傷 病の初診日及び障害の程度について聴取するなどによる年金受給権の可能性 の検討を徹底することが望ましい。  また、可能性があると判断された場合の年金申請についての被保護者に対す る助言指導、任意加入により年金受給権が得られる場合は任意加入手続、年金 受給権を得られる可能性がない場合は脱退手当金の受給可否の確認、受給可能 であれば請求手続の支援を徹底することが望ましい。 【意見 生活福祉一課・二課】  査察指導員及び課長等幹部職員においては、保護開始時における年金等の受 給権の確認の周知徹底、日常のケース審査の強化及びチェック表などを活用し た一斉点検の実施などによって、他法他施策の活用を徹底すべきことについて の指導を徹底することが望ましい。 【意見 生活福祉一課・二課】  障害年金に関しては、初診日の判断や身体障害者手帳の対象外の疾病でも支 給対象になる場合があるなど専門的知識が必要な場合もあるため、年金調査員 の非常勤任用等について検討することが望ましい。 5 資力発生時点から決定通知までの期間 【事実関係】  岐阜市が平成26年度に法第63条を適用決定したケースのうち、分割返済と なったケース83件において、資力発生時点から決定通知までの期間が1年以 上のケースが31件あった。このうち3年を超えるケースが9件あり、中には 13年を超えるケースもあった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  発覚するまでに時間がかかると、受給者が費消してしまい、一括返済が不可 能となり、分割返済によらざるを得なくなる。後で述べるように、調定額の翌 年度繰越額が増加しているのは、分割返済によるケースが多いことが原因であ る。翌年度繰越額が増加すれば、不納欠損に陥る額も増加することになる。  生活保護に関する業務は肉体的にも精神的にも厳しいものであり、現業員や 査察指導員の苦労も理解できるが、市民の税金が使われていることを考えると、 理由はあるにしろ、結果的に多く受給された分は、早期に全額回収しなければ ならない。  一括返済のケースを増やすよう、保護開始時及び保護開始後の調査において、 法第63条や法第78条によるリスクを想定し、被保護者の供述だけに頼るので はなく、通帳などの根拠資料の確認を必ず行うなど厳格な姿勢で取り組み、早 期発見に努めるべきである。 6 資産処分と法第63条 【事実関係】 ┌────┐ │ケース1│ └────┘  被保護者の亡父名義の土地があるため、遺産分割を行うよう指導し、土地の 処分がなされた後に法第63条を適用することにしていたところ、何ら動きが 無いまま、約5年後に被保護者の死亡により保護廃止となった。  ケース記録には、遺産分割について、どのような指導をしたのか明確な記載 はなかった。 ┌────┐ │ケース2│ └────┘  被保護者が不動産(固定資産税評価額約540万円)を所有しているため、売 却できたら法第63条を適用する予定として保護開始決定をしたところ、売却 がなされないまま、約2年後に被保護者の死亡により保護廃止となった。  ケース記録からは、不動産処分を促すような指示・指導をしたのかどうか明 らかではなかった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発 社第123号厚生事務次官通知)によれば、最低生活の内容としてその所有又は 利用を容認するに適しない資産は、原則として処分のうえ、最低限度の生活の 維持のために活用させることとされている。  「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて」(平成18年3月 30日社援発第0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、 指導指示を行う場合には、口頭、文書を問わず、長期的に漫然と行わず、指導 指示の内容、履行期限等を具体的に明示して行うことが重要となり、口頭指導 による指導指示に十分対応していないと判断される場合には、さらに組織とし て対応を協議し、必要に応じ、個別ケースに即して適切な履行期限を定めたう えで、法第27条に基づく文書による指導指示を行うこととされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  処分すべき資産がある場合には、ケース診断会議で資産処分の目標時期を設 定するなどして、資産の処分について積極的に指導すべきである。口頭指導に よる指導指示に十分対応していないと判断される場合には、ケース診断会議に 諮り、文書指導を積極的に活用すべきである。 7 保護廃止と法第63条 【事実関係】      ┌────┐  ┌────┐  上記6の│ケース1│及び│ケース2│のケースでは、被保護者の死亡による廃止      └────┘  └────┘ 後、相続人に対して何ら措置を取っていない。 【指摘 生活福祉一課・二課】
     指示に従い早期に資産の処分をした場合には法第63条が適用される一方で、 資産の処分を行わないまま保護廃止となった場合には法第63条が適用されな いのでは、明らかに不公平である。  法第29条は、「保護の実施」のために必要があると認めるときは、「被保護 者であった者」の関係人に、報告を求めることができることとされている。法 第63条の費用返還は「保護の実施」に該当することから、「被保護者であった 者」の相続人に対して報告を求めることができると考える。  「生活保護問答集について」(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局 保護課長事務連絡)によれば、法第63条の費用返還義務は、保護受給中にお いて保有を認められていたものについては及ばないと解されるとされている が、これを反対解釈すれば、保護受給中において保有を認められていなかった ものについては、法第63条の費用返還義務は及ぶことになる。  資産処分がなされたら法第63条を適用することとしていたところ、処分さ れないまま被保護者が死亡した場合には、相続人から資産についての報告を求 めるとともに、法第63条を適用することを検討すべきである。 【事実関係】 ┌───┐ │ケース│ └───┘  平成23年に被保護者(主)の子が交通事故の被害者となったが、加害者と の間で示談が難航し、その後、働き手の転入により廃止となった。  ケース記録には、平成25年4月「示談難航」、同年12月「子の示談未了」 との記載があったが、上記交通事故につき、どのような処理がなされたか、明 確な記載はなかった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  先ほども述べたが、早期に資産を取得した場合には法第63条が適用され、 資産を取得しないまま保護廃止となった場合には法第63条が適用されないの では、明らかに不公平である。  上記のとおり、法第63条の費用返還についても、「被保護者であった者」に 対して報告を求めることができ、保護受給中において保有を認められていなか ったものについては、法第63条の費用返還義務は及ぶと考えられる。  資産の取得が見込まれており、資産を取得したら法第63条を適用すること としていたところ、資産を取得しないまま保護廃止になった場合には、被保護 者であった者から資産の取得についての報告を求めるとともに、法第63条を 適用することを検討すべきである。  なお、改正法第76条の2にて、直接保険会社や加害者に対し求償可能とな ったので適切に適用されたい。 8 法第78条の決定理由 【事実関係】  平成26年度に決定した法第78条の決定理由別ごとの件数は、次のとおりで ある。               (岐阜市作成の一覧表より) ┌──────────────────────┬──┐ │決定理由                  │件数│ ├──────────────────────┴──┤ │稼働収入関係                   │ ├─┬────────────────────┬──┤ │A│稼働収入の無申告            │30件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │B│稼働収入の過少申告           │11件│ ├─┴────────────────────┴──┤ │稼働収入以外の収入関係              │ ├─┬────────────────────┬──┤ │C│労災補償金等の無申告          │ 0件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │D│任意保険金等の無申告          │ 4件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │E│各種年金及び福祉各法に基づく給付の無申告│11件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │F│預貯金等の無申告            │ 2件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │G│資産収入の無申告            │ 0件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │H│交通事故の補償に係る収入の無申告    │ 3件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │I│その他                 │ 3件│ ├─┴────────────────────┴──┤ │扶助費の不正                   │ ├─┬────────────────────┬──┤ │J│住宅扶助                │ 0件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │K│その他(移送費等)           │ 0件│ ├─┴────────────────────┴──┤ │その他                      │ ├─┬────────────────────┬──┤ │L│重複受給                │ 0件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │M│世帯員の増減、転居、無届        │ 0件│ ├─┼────────────────────┼──┤ │N│その他                 │ 1件│ ├─┴────────────────────┼──┤ │                   合 計│65件│ └──────────────────────┴──┘ 9 法第78条の適用判断 【事実関係】 ┌────┐ │ケース1│ └────┘  平成23年から生活保護を受給していた者において、平成23年から企業年金 を受給していた事実が平成26年の課税台帳調査から発覚した。被保護者に悪 意(不正の意図)がない、現業員による課税台帳の見落としがあったという理 由から、法第78条ではなく法第63条を適用した。
    ┌────┐ │ケース2│ └────┘  昭和53年から生活保護を受給していた者において、平成13年に定期預金 600万円を預け入れ、ここから平成20年から平成23年にかけて数回に分けて 払い出していたという事実が平成26年に通帳の写しを見て発覚したが、法第 63条を適用した。 ┌──────┐ │その他ケース│ └──────┘  上記以外にも、法第63条を適用し「その他」に分類されているケースには、 稼働収入の判明、各種年金及び福祉各法に基づく給付の判明、預貯金等の判明、 その他収入の判明が理由となっているものがあり、その中には、被保護者が事 実を認識していながら申告しなかったケースがあった。 【規範】  「第1」の両制度の内容で記載したとおり、法第63条は、資力がありなが ら保護を受けた者から返還を受けるためのものであり、実施機関に落ち度があ って返還が必要になった時に用いるものではない。  これに対し、法第78条に基づく徴収金の徴収は、財政支出の適正という見 地から行われる徴収であって、保護の目的達成という見地からの配慮を要請さ れる性格である法第63条の返還とは異なるものである。保護費は、すべて公 費により賄われているものであるが、特に不正受給者から徴収する債権は極め て公共性が高い債権であることから、法第78条に基づく徴収金は、徴収金の 加算が可能となった(法第78条第1項、平成26年法改正)、国税徴収法の例 により強制的な徴収ができることとなった(法第78条第4項、平成26年法改 正)、破産法上の非免責債権とされているといった、法第63条に基づく返還金 との大きな違いがある。  また、地方公共団体が、いわゆる不正受給について法第78条の発動を怠っ ている場合は、保護費の国庫負担に当たって当該地方公共団体に対し負担措置 がとられる場合もある(生活保護手帳別冊問答集・問13-25)。  「生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて」(平成24年7 月23日社援保発0723第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、 被保護者に不当に受給しようとする意思がなかったことが立証される場合で、 保護の実施機関への届出や申告をすみやかに行わなかったことについてやむ を得ない理由が認められるときには、法第63条を適用することができるとさ れている。法第78条の「不実の申請その他不正な手段」とは、積極的に虚偽 の事実を申し立てることはもちろん、消極的に事実を故意に隠ぺいすることも 含まれ、刑法第246条にいう詐欺罪の構成要件である人を欺罔することよりも 意味が広いのである。「生活保護行政を適正に運営するための手引について」 (平成18年3月30日社援保発0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通 知)によれば、例えば被保護者が届出又は申告を怠ったことに故意が認められ る場合は、保護の実施機関が社会通念上妥当な注意を払えば容易に発見できる 程度のものであっても法第63条ではなく法第78条を適用すべきであるとされ ている。  事実を認識していながら申告しなかったのであれば、原則として法第78条 を適用すべきである。 【指摘 生活福祉一課・二課】  ┌────┐  │ケース1│のように、被保護者に不正の意図がないであるとか、現業員が見  └────┘ 落としたということは、法第78条の適用を否定する理由とならない。  ┌────┐  │ケース2│は、被保護者が定期預金の存在と払出しの事実を秘して、生活保  └────┘ 護費を受給していたのは明らかであるから、まさに「F 預貯金等の無申告」                       ┌──────┐ として、法第78条を適用すべきケースであった。│その他ケース│もまた、資力                       └──────┘ の存在を認識していながら申告しなかったのであれば、同様である。  法第78条の適用を安易に避け、法第63条を適用してしまえば、財政支出の 適正を害することになりかねないし、悪質な事案に対して、徴収金の加算や告 発等の措置(法第85条第1項)をとる機会を逸することにもなりかねない。 また、後述のとおり、法第63条では、法第78条とは異なり、保護費から返還 を求める代理納付はできないため、一括返還をさせるか、分割納付であれば、 いったん保護費を支給してから、自発的な返還に委ねることになり、返還され ないリスクが高まることにもなる。  法第63条と法第78条の違いや各々の適用判断に関する正しい理解を全職員 に周知徹底させ、法第78条を適用すべきケースには、法63条を適用するので はなく法第78条を適用するように徹底すべきである。 【事実関係】  被保護者から、法78条の適用を避ける意味で、「申告しなくてもいいと思っ た。」などといった主張がなされたケースが散見された。 【意見 生活福祉一課・二課】  実施機関の説明、指導、確認が不十分であると、このような主張が生まれる 要因にもなるし、被保護者との軋轢を避けて法第78条の適用を躊躇すること にもなる。実施機関が説明、指導、確認を十分に行っていれば、このような主 張を排斥することができ、申告しなかったという事実のみをもって、不正受給 と認定することができることになり、不正受給であるのに法第63条を適用し てしまうという事態を避けることができるし、不正受給そのものの阻止にもつ ながる。  被保護者に「しおり」を配布したり、「同意書」に署名させたりするのは当 然であるが、資産や収入に関する申告義務についての説明、指導、確認を個別 具体的に分かりやすく十分に行うことが望ましい。 10 資力の認定 【事実関係】 ケース  保護開始後、交通事故の被害を受けていた事実が発覚し、申請の約1か月半 前に申請者の代理人口座に交通事故の賠償金として約100万円が支払われて いたことが判明したものの、代理人口座に支払われたことを理由に本人の資産 と認定しなかった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  賠償金が申請者の代理人口座に入金された場合でも、代理人は預り金として
    入金を受けているにすぎないのであるから、当該賠償金は本人の資産である。  代理人口座に入金されたことのみを理由に本人の資産と認定しないことは 誤りであり、代理人口座に賠償金が入金されていた事実を認識していながら申 告しなかったのであれば、不正受給として法第78条を適用すべきであったこ とになる。  代理人口座に預り金がある場合、これを資産と認定し、本人の認識を確認し た上で、法第63条または法第78条の適用を検討すべきである。 11 決定手続 (1)ケース診断会議の開催 【事実関係】  事実発覚から決定通知を出すに至る過程において、「処遇判定票」(巻末資料 3に添付)の作成はされ、決裁手続はとられているものの、ケース診断会議等 により組織的に協議検討されたことの分かる記録は作成されていない。「処遇 判定票」の書式には、問題点、調査事項、指導事項、結果の項目があるが、ほ とんどのケース記録では、時系列で経過が記載されているだけであった。  ヒアリングによれば、会議というようなものは開催しておらず、決裁の際に 説明をするということである。 【規範】  「生活保護行政を適正に運営するための手引について」(平成18年3月30 日付社援保発0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)によれば、収 入未申告等の疑義が生じた場合、事実確認(金融機関等に対する調査、本人に 対する事実確認等)を行い、事実確認ができた時点で、所長等幹部職員を交え て要保護世帯の処遇方針等を協議検討する会議(ケース診断会議)を開催し、 不正受給であることの判断やその後の処理方法等について、組織として、十分 に協議検討して決定することとされている。  上記のとおり法第63条と法第78条のいずれを適用するかという問題は重要 な事項であることから、担当現業員個人の判断のみによることなく、組織的に 協議検討したうえで判断することとされているのである。 【指摘 生活福祉一課・二課】  上記のとおり法第78条を適用すべきであったのではないかと思われるケー スが散見されることからも、組織的な協議検討がなされていないか、なされて いたとしても不十分であったのではないかと推察される。  法63条または法第78条を適用する際には、ケース診断会議を必ず開催し、 組織的な協議検討を十分に行うべきであるし、その過程を議事録として記録し ておくべきである。 (2)岐阜市生活保護実務の手引きの不明瞭 【事実関係】  「岐阜市生活保護実務の手引き(平成23年4月)」では、本文においては、 法第63条、法第78条の返還金、徴収金の返還義務が発生したときは、返還す べき額等について「処遇判定会議に諮る」と明記されている一方で、別表の決 裁・回議区分においては、「判定会議は必要に応じて」とされており、どちら に従っていいのか判別ができない。 【指摘 生活福祉一課・二課】  この「岐阜市生活保護実務の手引き」自体が職員に周知徹底されていないこ とも問題であるが、このように、その内容があいまいであることも、組織的な 協議検討が十分になされないことの原因の一つであると思われる。  職員にとって明確な指標となる手引き・マニュアルを作成し、それを周知徹 底する措置をとるべきである。 12 一括返済と分割返済 (1)一括返済の原則 【事実関係】  平成26年度でみると、分割返済によることとなったケースは、次のとおり、 法第63条では、187件中84件(約45%)であるのに対し、法第78条では、 65件中56件(約86%)であった。 法第63条         (岐阜市作成の一覧表より) ┌─────────────┬───┬──────┐ │決定理由         │件数 │内、分割返還│ ├──┬──────────┼───┼──────┤ │1) │各種年金の遡及受給 │ 69件│    18件│ ├──┼──────────┼───┼──────┤ │2) │生命保険の解約返戻金│ 10件│     1件│ ├──┼──────────┼───┼──────┤ │3) │資産売却      │  2件│     1件│ ├──┼──────────┼───┼──────┤ │4) │交通事故等の補償金 │  6件│     0件│ ├──┼──────────┼───┼──────┤ │5) │扶助費算定誤り   │ 72件│    47件│ ├──┼──────────┼───┼──────┤ │6) │介護保険償還金   │  1件│     0件│ ├──┼──────────┼───┼──────┤ │7) │雇用保険給付金   │  2件│     2件│ ├──┼──────────┼───┼──────┤ │8) │入院給付金     │  1件│     1件│ ├──┼──────────┼───┼──────┤ │9) │高額療養費償還金  │  1件│     0件│ ├──┼──────────┼───┼──────┤ │10) │その他       │ 23件│    14件│ ├─────────────┼───┼──────┤ │          合 計│ 187件│    84件│ └─────────────┴───┴──────┘ 法第78条 ┌──────────────────────┬──┬──────┐ │決定理由                  │件数│内、分割徴収│ ├──────────────────────┴──┴──────┤ │稼働収入関係                          │ ├─┬────────────────────┬──┬──────┤ │A│稼働収入の無申告            │30件│    26件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │B│稼働収入の過少申告           │11件│    11件│ ├─┴────────────────────┴──┴──────┤
    │稼働収入以外の収入関係                     │ ├─┬────────────────────┬──┬──────┤ │C│労災補償金等の無申告          │ 0件│     0件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │D│任意保険金等の無申告          │ 4件│     4件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │E│各種年金及び福祉各法に基づく給付の無申告│11件│     7件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │F│預貯金等の無申告            │ 2件│     1件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │G│資産収入の無申告            │ 0件│     0件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │H│交通事故の補償に係る収入の無申告    │ 3件│     3件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │I│その他                 │ 3件│     3件│ ├─┴────────────────────┴──┴──────┤ │扶助費の不正                          │ ├─┬────────────────────┬──┬──────┤ │J│住宅扶助                │ 0件│     0件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │K│その他(移送費等)           │ 0件│     0件│ ├─┴────────────────────┴──┴──────┤ │その他                             │ ├─┬────────────────────┬──┬──────┤ │L│重複受給                │ 0件│     0件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │M│世帯員の増減、転居、無届        │ 0件│     0件│ ├─┼────────────────────┼──┼──────┤ │N│その他                 │ 1件│     1件│ ├─┴────────────────────┼──┼──────┤ │                    合計│65件│    56件│ └──────────────────────┴──┴──────┘ 【規範】  生活保護の支給の根本は、「健康で文化的な最低限の生活」を送ることがで きることにあるから、それを超えて受給した場合は、出来るだけ早急に返還さ せるべきこととなる。  法第63条による返還も法第78条による徴収も、一括返済が原則である。法 第78条による徴収は、いわゆる不正受給費の徴収であるから一括徴収させる べきである。  対象者が無資力であったり債務履行が困難であったりして、履行期限を延長 せざるを得ない場合は、地方自治法施行令第171条の6に履行延期の特約が定 められているが、あくまで特例としての位置づけである。 【意見 生活福祉一課・二課】  発見が遅れたがために被保護者が費消してしまい、分割返済にせざるをえな くなったケースが散見された。  既に指摘したとおり早期発見を常に意識し、一括返済をさせるように取り組 むことが望ましい。 (2)分割返済の在り方 【事実関係1)】  平成24年度から平成26年度までにおける、法第63条及び法第78条の発生、 回収、不納欠損、回収状況は、次の一覧表のとおりである。 法第63条 ┌──┬───┬───┬─────┬───┬──────┬─────┬──────┬────┐ │  │調定 │件数 │ 調定額 │件数 │回収額(b) │不納欠損額│翌年度繰越額│回収率 │ │  │年度 │   │ (a)  │   │      │ (c)  │ (a-b-c) │(b/a)│ ├──┼───┼───┼─────┼───┼──────┼─────┼──────┼────┤ │  │当年度│ 2,118│94,113,277│ 2,023│ 84,694,269│     0│  9,419,008│ 90.0%│ │24年├───┼───┼─────┼───┼──────┼─────┼──────┼────┤ │  │過年度│  217│ 9,091,875│  19│   179,533│  825,881│  8,086,461│  2.0%│ └──┴───┴───┴─────┴───┴──────┼─────┼──────┼────┘                             │   合計│ 17,505,469│ ┌──┬───┬───┬─────┬───┬──────┼─────┼──────┼────┐ │  │当年度│ 2,343│81,254,374│ 2,187│ 64,381,566│     0│ 16,871,808│ 79.2%│ │25年├───┼───┼─────┼───┼──────┼─────┼──────┼────┤ │  │過年度│  281│17,505,469│  16│   602,082│  186,712│ 16,716,675│  3.4%│ └──┴───┴───┴─────┴───┴──────┼─────┼──────┼────┘                             │   合計│ 33,588,483│ ┌──┬───┬───┬─────┬───┬──────┼─────┼──────┼────┐ │  │当年度│ 2,605│67,825,073│ 2,494│ 63,934,771│     0│  3,890,302│ 94.3%│ │26年├───┼───┼─────┼───┼──────┼─────┼──────┼────┤ │  │過年度│  401│33,588,483│  14│   559,479│ 1,465,191│ 31,563,813│  1.8%│ └──┴───┴───┴─────┴───┴──────┼─────┼──────┼────┘                             │   合計│ 35,454,115│                             └─────┴──────┘ 法第78条 ┌──┬───┬───┬─────┬───┬──────┬─────┬──────┬────┐ │  │調定 │件数 │ 調定額 │件数 │回収額(b) │不納欠損額│翌年度繰越額│回収率 │ │  │年度 │   │ (a)  │   │      │ (c)  │ (a-b-c) │(b/a)│ ├──┼───┼───┼─────┼───┼──────┼─────┼──────┼────┤ │  │当年度│ 1,866│31,098,700│ 1,798│ 16,863,839│     0│ 14,234,861│ 54.2%│ │24年├───┼───┼─────┼───┼──────┼─────┼──────┼────┤ │  │過年度│  227│17,060,949│   8│   64,230│ 2,759,030│ 14,237,689│  0.4%│ └──┴───┴───┴─────┴───┴──────┼─────┼──────┼────┘                             │   合計│ 28,472,550│ ┌──┬───┬───┬─────┬───┬──────┼─────┼──────┼────┐ │  │当年度│ 2,285│63,498,445│ 2,130│ 37,039,316│     0│ 26,459,129│ 58.3%│ │25年├───┼───┼─────┼───┼──────┼─────┼──────┼────┤ │  │過年度│  296│28,472,550│   9│   48,000│  136,525│ 28,288,025│  0.2%│ └──┴───┴───┴─────┴───┴──────┼─────┼──────┼────┘                             │   合計│ 54,747,154│ ┌──┬───┬───┬─────┬───┬──────┼─────┼──────┼────┐ │  │当年度│ 2,396│28,746,299│ 2,258│ 22,102,140│     0│  6,644,159│ 76.9%│ │26年├───┼───┼─────┼───┼──────┼─────┼──────┼────┤ │  │過年度│  430│54,747,154│  13│   75,289│ 4,001,839│ 50,670,026│  0.1%│ └──┴───┴───┴─────┴───┴──────┼─────┼──────┼────┘                             │   合計│ 57,314,185│
                                └─────┴──────┘                          (岐阜市からの提出データに基づく)  上記の一覧表から注目すべき点は、次のとおりである。 ・ 調定額より回収額が上回る年度はなく、毎年度、翌年度繰越額が増加して  いる。 ・ 当年度発生分の回収率は、法第63条では8割から9割、法第78条では5割  から7割程度あるものの、過年度分の回収率は、1割にも満たない。 ・ 平成26年度の不納欠損処理額は、過去3年の中で最も多く、法第63条では  合計100万円を、法第78条では合計400万円を超えている。 【事実関係2)】  債権の管理台帳を確認したところ、返還徴収金額の大小に関わらず、分割で 返済している対象者の月々の返済額が、5,000円、10,000円となっている。100 万円を超える不正受給額を徴収するケースでも、月々の返済が5,000円や 10,000円となっている場合も少なくなく、金額によっては最終返還までに10 年以上を費やすケースもある。  実際のケースを例に説明する。  ・ 発生時期(決裁時期):平成22年12月13日  ・ 返還額:3,012,672円  法第63条適用理由:事務処理の誤り  ・ 返済計画は次のとおりとされた。 ┌──────┬────────────┬─────┬─────┬────┐ │      │    返済月     │返済予定額│ 合計  │返済額 │ ├──────┼────────────┼─────┼─────┼────┤ │      │1回目(H22.2)     │  12,672│  12,672│ 12,672│ │当初返済計画├────────────┼─────┼─────┼────┤ │(5年ごとに│58か月(H22.3~H26.12) │  10,000│  580,000│ 580,000│ │延長申請) ├────────────┼─────┼─────┼────┤ │      │最終月(H27.1)     │ 2,420,000│ 2,420,000│    │ └──────┴────────────┴─────┴─────┴────┘ ・ 平成27年2月に再履行延期が承認され、3月以降は月々9,000円の返済  となった。 ・ 結局、最終月の残額を一括で返済することはおよそ不可能であるので、  延長申請を繰り返すことになる。そうすると、全額返済するまで266.6か  月(約22年)かかることになる。 【規範】  生活保護の支給の根本は、「健康で文化的な最低限の生活」を送ることがで きることにあるから、それを超えて受給した場合は、出来るだけ早急に返還さ せるべきこととなる。 【意見 生活福祉一課・二課】  過年度の回収率が著しく低いのは、返還徴収金額に比べ、月々の返済額が余 りにも小さいためである。そのため、完済するまで長期間かかり、調定を繰り 返しているいわゆる長期滞留債権たるものが存在している。余りに小さい返済 額では、最終的に回収できず不納欠損処理をせざるを得ないケースが出てくる ことにもなり、いわゆる「やったもの勝ち」となりかねず、市民の理解を得ら れない。  分割返済が増えると、債権管理事務が増加する。  生活保護費の4分の3は国庫負担金とされているところ、国庫負担金の交付 額は、簡単に図式化すると次のように算定される。  このように、不納欠損処理を行った場合は、国庫負担金の交付額が増えること になるが、国に対する過大請求との指摘を受けることにならないよう、不納欠 損処理の妥当性を記録化して説明できるようにしておかねばならず、その意味 でも債権管理事務が増加することになる。他方、不納欠損処理を行えない場合 は、国庫負担金の交付額が減り、市の財政負担が増加することになる。  被保護者が申し出た返済額を安易に受け入れることなく、最低限の生活がで きる範囲内で最大限に大きな額としたり、就労指導を厳しく行ったりするなど、 早期に全額回収できるよう厳格な姿勢で取り組むことが望ましい。 13 納付方法 (1)法第63条の費用返還における代理納付 【事実関係】  法第63条適用ケースで、代理納付にしているケースがあった。  代理納付とは、保護費を支給する際に、返還すべき金額を、保護費の振込先で ある被保護者の口座とは別の口座(市が管理する口座)に送金し(別送金)、これ をもって返還金の納付をする手続をいう。 【指摘 生活福祉一課・二課】  返還・徴収の対象者が被保護者である場合であっても、保護費は差押えが禁止 となっている(法第58条)ことから、保護費の全額を被保護者に支給した上で、 返還・徴収すべき金額を被保護者に納付してもらわなければならない。  しかし、費用徴収を行う時点で、すでに不正受給により得た金銭を費消してい るケースが多く、費用徴収の実効性が低いとの課題があったため、平成26年の 法改正により、本人が申し出た場合において、生活の維持に支障がないことを前 提に、保護費から徴収金を徴収できることとなった(法78条の2)。この場合、 上記の代理納付という手続がとられる。  これは、法78条に基づく徴収が不正受給者に対する徴収であることから例外 として認められたものである。法第63条に基づく返還の場合は、原則どおり保 護費の全額を被保護者に支給しなければならず、代理納付の手続をとることはで きない。  保護費から返還を受けることができれば簡便かつ確実に返還を受けることがで きることは理解できるが、法制度上、代理納付が許されていない以上は、代理納 付にすべきではない。 (2)法第78条の2に基づく代理納付の未実施 【事実関係】  法第78条適用ケースで、代理納付にできるケースであったにもかかわらず 代理納付にしていないケースがあった。代理納付していない理由は不明である。 【規範】  生活保護法第78条の2第1項によれば、被保護者の申し出により、保護の 実施機関が当該被保護者の生活の維持に支障がないと認めたときは、当該被保
    護者に対して保護金品を交付する際に当該申出に係る徴収金を徴収すること ができるとされている。 【指摘(改善報告) 生活福祉一課・二課】  生活の維持に支障があるような特別な事情がある場合を除いては、法第78 条の2に基づき、代理納付にすべきである。  なお、すでに、岐阜市は、課内研修を通じて、適正な運用に努めているとの ことである。 14 被保護者死亡後の対応 【事実関係】  ヒアリングによれば、分割納付の途中で被保護者が死亡した場合、相続人に よる相続放棄の申述の有無について書面で確認していないとのことであった。 【規範】  「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて」によれば、費用徴 収債権の管理にあたっては、被保護者の債務の相続人に対する対応を十分に行 うことに留意すべきとされている 【指摘 生活福祉一課・二課】  分割返済の途中で被保護者が死亡した場合、相続人を調査し、相続人からの 債権の回収を行うべきである。  相続人から相続放棄をしたとの主張がなされた場合には、家庭裁判所が交付 する申述受理証明書を提出させるべきである。 15 債権管理 (1)管理体制 【事実関係】  債権の管理は経理が行い、対象者との接触は担当現業員が行っている。  経理は、入出金の確認をしているのみであり、現業員は、多くのケースを抱 え、保護費の支給面に時間と手間をかけており、回収面にまで手が回っていな いのが実情である。 【規範】  岐阜市債権管理条例によれば、市長は、法令又は条例等の定めに従い、市の 債権の適正な管理に努めなければならず(第4条)、市の債権に関する事務の 状況を的確に把握するとともに、市の債権を適正に管理するための体制を整備 するものとする(第5条)とされている。 【意見 生活福祉一課・二課】  債権を適正に管理するための体制整備の方策として、回収業務を外部に委託 することを検討することが望ましい。 【意見 生活福祉一課・二課】  債権管理においては、常にその全体の状況を把握し管理しておかないと、回 収できたものまで回収できなくなるリスクがある。  債権管理・回収状況を毎月の会議での重要な報告事項として位置づけ、課内 で情報を共有し、全員で危機意識を持って管理していくことが望ましい。 (2)管理資料 【事実関係】  分割納付者の管理をエクセルの管理表と手書きの債権管理簿で行っている。  両者の内容は同じであり、データが消滅した場合のバックアップとして手書 きの債権管理簿が作成されている。 【意見 生活福祉一課・二課】  バックアップという機能からすれば、最低限の情報、例えば総額、月々の返 還金、返還予定表程度を書いておけば十分で、毎月の返還状況と残額を手書き で全件記入するのは無駄な作業と考える。基本はエクセルで管理すれば、計算 も簡単で正確であり、状況確認も容易である。今後はエクセルを主として残し ておけば十分である。  管理台帳は一つにまとめることが望ましい。 【事実関係】  エクセルファイルにパスワードがかかっていない。 【意見 生活福祉一課・二課】  エクセルファイルの場合、パスワードがかけられていないと、故意または過 失により、データが変更されてしまう可能性がある。  エクセルファイルには、経理がパスワードをかけ、その他の職員は読み取り 専用で閲覧できるようにすることが望ましい。 【事実関係】  不納欠損額の増減は把握しているが、長期滞留債権の増減は把握していない。 【意見 生活福祉一課・二課】  長期滞留債権は不納欠損の予備軍である。  債権の管理をする場合、実際に不納欠損処理した額だけでなく、長期滞留債 権の増減も合わせて把握しておくことが望ましい。 16 不正受給対策 (1)徴収金の加算 【事実関係】  法第78条において、いわゆる不正受給があった場合、保護費の返還は当然 のこと、その40%以下の金額を加算して徴収できるとされているが(平成26 年7月1日より)、生活福祉一課・二課にヒアリングで確認したところ、その ような徴収をしたことは一度もないとのことであった。 【意見 生活福祉一課・二課】  この法の趣旨は、偽りその他不正の行為によって保護費を受けた者に対し、 より重い負担を課すことで、今後の正しい受給を促すことにある。  同じような制度として、法人税の重加算税があり、法人税の申告に際して隠 ぺいまたは仮装があった場合は、納税額に35%ないしは40%の上乗せをして納 めなければならず、一種の罰金と考えられる。  法第78条の適用を受ける場合は、悪いと知りながら保護費を受けたのであ るから、その返還は当然のこと、明らかに悪質であれば市民の税金を不当に使 用したとして、罰金が科せられて当然である。  現状のように、100万円を超える多額の不正受給を受けた場合でも、月々 10,000円程度で10年以上かけて返還し、しかもその罰金が取られないとなれ
    ば、いわゆる「やったもん勝ち」となり、市民は納得しないはずである。不正 受給や貧困ビジネスが問題になる中、岐阜市でもこれらに対し厳しい姿勢で臨 む必要がある。  悪質な不正受給者に対しては、徴収金を加算していくことが望ましい。 (2)対応体制 【事実関係】  平成26年度においては、不正受給対策の担当職員2名が配置されていた。 警察OBを採用しており、ヒアリングによれば、主として、現業員からの依頼 票に基づく不正受給調査のほか、暴力団関係者の相談者対応を目的としている とのことである。  ヒアリングによれば、岐阜市は、「生活保護不正受給防止マニュアル(平成 27年3月)」を策定し、職員の研修を行っている。「生活保護不正受給防止マ ニュアル」は、内容としては有用な記載がなされているが、例えば、マニュア ル添付のチェックリストが使われていないなど、十分に活用がなされていない 面が見受けられた。 【指摘 生活福祉一課・二課】  不正受給対策の担当職員以外の職員も、面談や調査の際に、不正受給対策を とる必要がある。上記のとおり、不正受給者からの費用徴収の回収が困難な実 情からしても、事前に不正受給を防ぐことは極めて重要である。  査察指導員及び所長等幹部職員においては、過去の不正受給事案の問題点の 検証などもしながら、マニュアルを実践するための指導、マニュアルを実践す るためのツールの作成など、具体的な対策を実行すべきである。 【事実関係】  詐欺罪や法85条に基づく罰則の適用を求めていくための手続を定めた要綱 がない。 【指摘 生活福祉一課・二課】  いざ悪質な不正受給者が現れた際に、厳しい措置を講じようとしても、手続 を定めたものがないと、現実に措置を取ることは困難であろう。  詐欺罪や法85条に基づく罰則の適用を求めていくための手続を定めた要綱 を制定すべきである。 第2 法第77条第1項の徴収 1 制度内容 ┌──────────────────────────────────┐ │法第77条に基づく費用徴収(扶養義務者からの費用の徴収)       │ ├──────┬───────────────────────────┤ │生活保護法の│第77条                        │ │規定    │ 被保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行し │ │      │なければならない者があるときは、その義務の範囲内におい│ │      │て、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用│ │      │の全部又は一部を、その者から徴収することができる。  │ ├──────┼───────────────────────────┤ │趣旨    │ 生活保護法第4条第2項において、民法に定める扶養義務│ │      │者の扶養は、保護に優先して行われるものとされている。 │ │      │ 法第77条に基づく徴収は、かかる原則を実行あらしめる │ │      │ものである。                     │ └──────┴───────────────────────────┘ 2 調査結果の活用 【事実関係】  扶養義務調査を毎年行っている。未回答者及び不渡りだった者でも戸籍照会 を行い、転居の事実等が判明した者について調査票を送付している。岐阜県施 行事務監査の資料作成のため、調査票について集計をしている。  しかし、調査票の集計結果に基づいて、回答を得られる扶養義務者に面談し たり、扶養義務者に対する法第77条の実施を検討したりするなどの対応を取 っていない。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)によれば、実施機関は、要保護者の扶養義務者の 存否の確認、扶養義務者の扶養能力の調査を行い、扶養能力の調査によって、 要保護者の扶養義務者のうち法第77条第1項の規定による費用徴収を行う蓋 然性が高いなど、明らかに扶養義務を履行することが可能と認められる扶養義 務者が民法に定める扶養を履行していない場合は、書面により履行しない理由 について報告を求めることとされ、重点的扶養能力調査対象者が十分な扶養能 力があるにもかかわらず、正当な理由なくして扶養を拒み、他に円満な解決の 途がない場合には、家庭裁判所に対する調停又は審判の申立てを考慮すること とされている。  そして、とりあえず必要な保護を行った場合には、法第77条の規定により、 扶養義務者から、扶養可能額の範囲内において、保護に要した費用を徴収する 等の方法を考慮することとされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  調査結果に基づき、明らかに扶養義務を履行することが可能であるのに履行 していない扶養義務者の存否、十分な扶養能力があるにもかかわらず正当な理 由なくして扶養を拒んでいる重点的扶養能力調査対象者の存否を確認し、調停 又は審判の申立てや法第77条の適用を検討すべきである。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)によれば、扶養義務者の扶養能力又は扶養の履行 状況に変動があったと予想される場合は、すみやかに、扶養能力の調査を行い、 必要に応じて報告を求めたうえ、再認定等適宜の処理を行うこと、重点的扶養 能力調査対象者に係る扶養能力及び扶養の履行状況の調査は、年1回程度は行 うこととされている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  扶養義務者の扶養能力や扶養の履行状況は変動するものであり、前回の調査 でどうであったかを確認しながら調査をしていくことが重要であることから、 調停又は審判の申立てや法第77条の適用の検討過程を記録しておくべきであ る。 3 扶養義務者への資産の移動 【事実関係】
     次のようなケースがあった。  『被保護者が施設に入所し、そこが終の棲家となったため、居宅生活時に認 めていた不動産(家屋)保有が認められなくなったが、当該不動産は既に親族 (配偶者の兄弟)に無償で譲渡され名義も変更されていた』。  このケース記録には、「(既に無償譲渡され名義変更されているため)売却指 導の必要性はなく、法第63条による費用返還についても発生しない。当該ケ ースは、施設入所時に不動産の扱いについて、口頭で指導を行い、速やかに名 義変更がなされているため、ケース診断会議の結果について、主に通知する必 要もないと決定した。」と記載されていたが、法第77条の適用を検討した形跡 がなかった。 【規範】  「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第 246号厚生省社会局長通知)によれば、扶養義務者の扶養義務の履行を求める のと同時に必要な保護を行った場合には、法第77条の規定により、扶養義務 者から、扶養可能額の範囲内において、保護に要した費用を徴収する等の方法 を考慮することとされ、法第77条の規定による費用徴収を行うに当たっては、 扶養権利者が保護を受けた当時において、当該扶養義務者が法律上の扶養義務 者であり、かつ、扶養能力があったこと及び現在当該扶養義務者に費用償還能 力があることを確認することとされている。 【指摘 生活保護一課・二課】  扶養義務者に被保護者の資産が移動した場合には、法第77条の適用を検討 すべきである。 4 手続規程の整備 【事実関係】  岐阜市生活保護実務の手引き(平成23年4月)には、法77条に基づく徴収 の手続に関する記載がない。 【指摘 生活福祉一課・二課】  上記ケースの他にも、平成26年度において法第77条を適用すべきであった ケース、適用を検討すべきであったケースが1件もなかったとは考えにくい。  とはいえ、手続の流れを示したマニュアルやモデルケースを示したものがな いと、なかなか実施できないのが現状であると思われる。  法第77条の積極的な活用を図るため、手続きの流れを示したマニュアル等 を作成し、研修を行うべきである。 第10章 施設 第1 保護施設 1 概要  生活保護法では、生活扶助は居宅で実施することを原則としている(生活保 護法第30条第1項本文)。その例外として、これによることができないとき、 これによっては保護の目的を達しがたいとき、被保護者がこれを希望したとき は、「保護施設」に入所させて保護を行うことができる(同項但書)。  かかる「保護施設」としては、救護施設、更生施設、医療保護施設、授産施 設及び宿所提供施設の5種類の施設が規定されている(生活保護法第38条)。  そして、これらの施設の設備及び運営については、都道府県は、保護施設の 設備及び運営について、条例で基準を定めなければならないとされており(生 活保護法第39条第1項)、この条例の策定基準として(同条第2項)、厚生労 働省が定めた「救護施設、更生施設、授産施設及び宿所提供施設の設備及び運 営に関する基準」がある(昭和41年7月1日厚生省令第18号)。  岐阜市でも、これとほぼ同内容の岐阜市救護施設、更生施設、授産施設及び 宿所提供施設の設備及び運営に関する基準を定める条例(平成24年12月25 日 条例第72号)が制定されている。  その内容は、例えば、同条例第19条第1項にて、「入所者に対し、生活の向 上及び更生のための指導を受ける機会を与えなければならない。」と規定され、 また、同第2項にて、「入所者に対し、その精神的および身体的条件に応じ、 機能を回復し又は機能の減退を防止するための訓練又は作業に参加する機会 を与えなければならない。」と規定されるなど、保護施設については、単なる 居宅の確保にとどまらず、入所者の自立助長にも繋がる施設であることが期待 されている。 2 監査の観点及び監査手続  以上のとおり、保護施設は、設備と運営面に関して一定の質を確保しなけれ ばならないとされているが、こうした施設に対して、岐阜市の関与が適切であ るか否かについて監査するため、生活福祉課一課・二課職員に対するヒアリン グを行った。また、平成27年10月9日付で、生活福祉課に対して、書面調査 を行った。 3 岐阜市の生活保護施設の現状  岐阜市には、救護施設を含む生活保護法上の保護施設が一つもない。  他方で、岐阜市が実施責任を負っている保護施設入所者数は、平成26年4 月1日時点において、以下の表のとおりであった。                    (単位:人) ┌───┬────┬────┬────┬────┐ │   │救護施設│救護施設│その他 │ 合計 │ │   │(県内)│(県外)│保護施設│    │ ├───┼────┼────┼────┼────┤ │岐阜市│ 5  │ 3  │ 0  │ 8  │ └───┴────┴────┴────┴────┘ ※県内1施設、県外1施設  なお、全国及び岐阜県の保護施設件数は、以下の表のとおりである。                                                   (単位:件数) ┌─┬────────┬────────┬────────┬────────┬────────┬────────┐ │ │保護施設    │救護施設    │更生施設    │医療保護    │授産施設    │宿所提供    │ │ │総数      │        │        │施設      │        │施設      │ ├─┼──┬──┬──┼──┬──┬──┼──┬──┬──┼──┬──┬──┼──┬──┬──┼──┬──┬──┤ │ │総 │公 │私 │総 │公 │私 │総 │公 │私 │総 │公 │私 │総 │公 │私 │総 │公 │私 │ │ │数 │営 │営 │数 │営 │営 │数 │営 │営 │数 │営 │営 │数 │営 │営 │数 │営 │営 │ ├─┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤ │全│ 291│ 26│ 167│ 183│ 16│ 167│ 19│  2│ 17│ 60│  2│ 58│ 18│  5│ 13│ 11│  1│ 10│ │国│  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │ ├─┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┼──┤
    │岐│  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │ │阜│  1│  │  1│  1│  │  1│  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │ │県│  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │  │ └─┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┴──┘ (厚生労働省社会統計室 平成26年社会福祉施設等統計調査より)  このように、岐阜県や全国的にも、公営の保護施設の件数は極めて少ない。  岐阜市では、救護施設については施設入所を検討しなければならない要保護 者が存在した場合、同一県内の中にある救護施設や隣県にある救護施設に対し て、受け入れを依頼し、対応してきた。市外・県外救護施設へ入所依頼する際 には、入所等依頼書が作成されているほか、岐阜市福祉事務所長が被保護者の 身元引受人となっている。 第2 無料低額宿泊所 1 概要  生活保護法では、前記のとおり保護施設として5種類の施設を規定している。  その一方で、生活保護受給者に関連する施設として、「保護施設」以外に、 社会福祉法第2条第3項に規定されている「無料低額宿泊所」を住居とする生 活保護受給者も一定数存在している。  ところで、「無料低額宿泊所」については、一部の宿泊所において、昨今、 劣悪な居住環境のもとで保護費から高額の居住費等が徴収されている実態(い わゆる「貧困ビジネス」問題)が社会問題化している。  こうした問題を受け、厚生労働省からは次のような通知がなされている。 ───────────────────────────────────  「社会福祉法第2条第3項に規定する生活困難者のために無料又は低額な料 金で宿泊所を利用させる事業を行う施設に対する留意事項について」(平成20 年12月10日社援保発第1210001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)  一部の自治体において、無料低額宿泊所の運営主体が組織的に生活保護の不 正受給に関した事案が発生し、 1)入所者に生活困窮者を装わせて保護の申請を行わせ、受給した保護費を搾  取するなど、不当に利益を得たこと 2)入所契約書に規定されていない金銭を入所者から徴収するなど、入所に不  当な処遇をしたこと 等の報告がなされたところである。  このような事案は、社会福祉法に規定する事業のみならず、生活保護制度に 対しても国民の信頼を著しく損ねるものであり、同様の事案の再発防止の観点 から、下記の点に留意の上、生活保護制度の適正な運営に努められたい。                  記 ┌──────────────────────────────────┐ │1 都道府県、指定都市及び中核市本庁の無料低額宿泊所所管課において │ │ は、定期的に社会福祉法第70条に規定する調査を事業者に対し実施し、 │ │ 無料低額宿泊所の適切な運営が確保されているか確認すること。    │ │2 各実施機関においては、一般住宅に居住する被保護者と同様、無料低 │ │ 額宿泊所に居住する被保護者に対しても訪問調査を行い、生活実態の把握│ │ に努めるとともに、施設内において適切な支援が行われているか随時確認│ │ すること。その際、施設において不適切な処遇がなされていることが確認│ │ された場合は、無料低額宿泊所の所管課へ直ちに連絡し、情報を提供する│ │ こと。                              │ │  なお、居宅生活が可能と判断された場合は、必要に応じて一般賃貸住宅│ │ への転居等の支援に努めること。                  │ │3 日頃より、生活保護所管課と無料低額宿泊所所管課は、必要な情報を │ │ 随時交換するなど、連携の強化に努めること。            │ └──────────────────────────────────┘ 2 監査の観点及び監査手続  以上のように、「無料低額宿泊所」の一般論としては様々な問題点が指摘さ れている中、「無料低額宿泊所」に対する岐阜市の関わり方が適切なものとな っているかの監査を実施するため、事業届出資料一式の書類監査、平成27年 8月時点で、無料低額宿泊所に入居している者のケース記録全29件の書類監 査、そして、指導監査課び生活福祉一課・二課担当職員に対してヒアリング、 平成28年1月8日に後記の「無料低額宿泊所」への現地視察を実施した。  なお、本監査は、あくまで、岐阜市の無料低額宿泊所に対する関わり方を監 査するものであって、無料低額宿泊所そのものに問題があることを前提に監査 するものではない。  この点は、誤解がないように予め述べる。 3 前提事実-岐阜市内に無料低額宿泊所が存在すること  岐阜市では、「無料低額宿泊所」が1つ存在している。  以下、岐阜市に存在する無料低額宿泊所の施設名を「A」、「A」を事業運営 する主体を「NPO法人A」と称する。平成22年10月26日、岐阜市長は「A」 からの社会福祉法に規定する第2種社会福祉事業開始届を受理し、同年11月 1日より「A」の運営が開始され、現在に至る。 4 無料低額宿泊所にかかる分掌事務 【事実関係】  「NPO法人A」は、社会福祉法第2条第3項第8号に規定する生活困難者 のために、低額な料金で、簡易住宅を貸し付ける事業を行っているが、かかる 事業は、第2種社会福祉事業に該当する事業となり、岐阜市に対して事前届出 が必要となる事業である。  社会福祉法第70条では、同法の目的を達するため、社会福祉事業を経営す る者に対し、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員をして、施設、帳 簿、書類等を検査し、その他事業経営の状況を調査させることができると規定 されている。  岐阜市では、「社会福祉法第2条第3項第8号に規定する宿泊所の運営・届 出に関する指針」(平成27年10月15日決裁 改正前のもの。以下「岐阜市指 針」という。)において、施設運営者に対して、岐阜市が関与する部分を定め ている。届出手続や運営面に関する基準の担当課は、岐阜市福祉事務所生活福 祉課(以下「生活福祉課」という。)とされている。  しかし、岐阜市福祉事務所設置条例施行規則第4条に規定されている生活福 祉一課・二課の分掌事務には、無料低額宿泊所に関する規定はない。 【指摘 福祉政策課】  こうした事態は、岐阜市指針で生活福祉課の関与が不可欠とされている無料 低額宿泊所について、生活福祉課の所管事務であるという意識の希薄化を招き かねない事項とも思われる。以下で述べる生活福祉課に対する指摘事項及び意 見についても、こうした所管事務の不明確性に端を発するものがあると考える。  岐阜市福祉事務所設置条例施行規則第4条の分掌事務には、無料低額宿泊所
    に関する事務の規定を設けるべきである。 5 事業開始届出時の資料 (1)施設職員名簿の不備 【事実関係】  「A」の事業開始届出時資料の中に施設職員を記載したかのようにみえる書 面(具体的には「A」だけでなく、「A」以外の施設の職員名も記載された「NPO 法人A」の名簿)の添付がなされていた。かかる書面では、「統括寮長」、「寮 長」、「寮長補佐(食事担当)」なる肩書きの職員名の記載はなされているもの の、「施設長」が誰であるのかの記載が一切なかった。 【規範】  岐阜市指針では、事業開始届出に添付する書面として、「施設長の要件が確 認できる書類及び施設職員名簿」を定めている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  「施設長」は、当該施設での責任者たる地位にある者と思われるところ、そ の主体が不明確のまま届出時の添付資料とすることは、名簿として不備なもの と言わざるを得ない。  届出時添付資料として要求される職員名簿には、少なくとも「施設長」が誰 であるのかを明記させるべきである。 (2)施設長及び施設職員の要件 【事実関係】  「A」の事業開始届出時資料の中に、「統括寮長」という名の肩書きのある 者の社会福祉主事資格認定証書は添付されているものの、それ以外に施設長及 び施設職員の要件充足を裏付ける資料は添付されていない。 【規範】  岐阜市指針では、施設長の要件として、社会福祉法第19条各号のいずれか に該当する者等とし、施設職員の要件として、原則社会福祉主事の資格を有す ることとしている。 【指摘 生活福祉一課・二課】  「統括寮長」なる肩書き自体がいかなる地位にある者なのか不明確であるこ とは前記指摘のとおりであるが、その他の施設職員である「寮長」や「寮長補 佐(食事担当)」が社会福祉主事の資格を有しているか否かが不明である。  岐阜市指針では、施設の職員は、原則として社会福祉主事の資格を有してい ることが条件である以上、仮にそれを要求しない「例外」的事情があるのであ れば、それ相応の根拠が必要であるがその記録も一切ない。  届出時添付書類において、施設長以外の職員についても、社会福祉主事資格 等の証する資料を要求すべきであるし、仮にそれがないような場合であれば、 それを許容するような例外事情の有無を確認すべきである。 (3)「低額」であることの確認 【事実関係】  「A」の事業開始届出時に添付されている居室使用料に関する資料を確認し たところ、「A」の運営主体である「NPO法人A」が岐阜市以外の場所で既 に事業を開始している施設での利用料金表が掲載されたもののみであった。 【規範】  社会福祉法第2条第3項第8号の施設は、「無料」又は「低額」であること が求められる。  岐阜市指針によれば、居室使用料について、次のように規定されている。 ┌────────────────────────────────────┐ │ア 居室使用料は、無料又は低額であることとし、使用料を徴収する場合には、│ │ 当該使用料に見合った居住環境を確保すること。             │ │イ アの「低額」とは、近隣の同種の住宅に比べて、低額な金額であること。 │ └────────────────────────────────────┘ 【指摘 生活福祉一課・二課】  提出を受けた資料は上記のとおりであり、実際に近隣地域の賃料相場を見積 もった資料はなかった。  岐阜市指針を踏まえ、「無料」又は「低額」であることについて、確たる資 料を提出させるべきである。 6 暴力団排除条項 【事実関係】  岐阜市指針においては、施設運営者側の反社会的勢力排除のための規定が存 在していない。 【規範】  生活保護受給者に関わる施設である保護施設に関して規定する岐阜市救護 施設、更生施設、授産施設及び宿所提供施設の設備及び運営に関する基準を定 める条例(平成24年12月25日条例第72号)第3条は、救護施設等の設置者 にかかる暴力団排除条項を定める。 ┌──────────────────────────────────┐ │(暴力団の排除)                          │ │第3条 救護施設等の設置者は、次の各号のいずれかに該当する者であって│ │はならない。                            │ │(1)暴力団(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年│ │法律第77号。次号において「暴力団対策法」という。)第2条第2号に規定│ │する暴力団をいう。)                        │ │(2)暴力団員(暴力団対策法第2条第6号に規定する暴力団員をいう。)│ │(3)岐阜市暴力団排除条例(平成24年岐阜市条例第13号)第6条に規定 │ │する暴力団又は暴力団員と密接な関係を有する者            │ └──────────────────────────────────┘ 【意見 生活福祉一課・二課】  保護施設については、こうした暴力団排除条項が規定されているにもかかわ らず、無料低額宿泊所に関して暴力団排除条項を設けていないことに合理性は ないと考える。  昨年度の外部監査においても、岐阜市の事務における暴力団排除条項の整備 の必要性を指摘した。  岐阜市指針においても、施設運営主体及び施設長等関与者の要件として、上 記条例と同様の暴力団排除条項に関する要件を設けることが望ましい。 7 調査実施状況 (1)はじめに
     社会福祉法第70条では、「この法律の目的を達成するため、社会福祉事業を 経営する者に対し、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員をして、施 設、帳簿、書類等を検査し、その他事業経営の状況を調査させることができる。」 と規定されており、中核市である岐阜市にも、その調査権限を認めている。こ れを受けて、岐阜市では、「A」に対して社会福祉法第70条調査(いわゆる指 導監査。以下「指導監査」という。)を定期的に実施している。指導監査の実 施通知書面上の担当窓口は、「岐阜市福祉部 指導監査課」とされている。  また、同書面上、担当監査職員としては、指導監査課2名と生活福祉一課・ 二課2名となっている(岐阜市社会福祉施設等指導監査実施要綱第3条によれ ば、「監査班は、監査職員(指導監査課職員及び関係課職員)2人以上をもっ て編成するものとするとされている。  以下では、この調査内容について、報告する。 (2)監査頻度 【事実関係】  岐阜市では、「A」に対し、事業を開始した平成22年11月以降平成27年 11月1日現在までに、指導監査を2年に1回の頻度で、合計2回実施してい る。 【規範】  岐阜市社会福祉施設等指導監査実施要綱第2条第3項及び第4項では、監査 頻度について、次のとおり規定している。 ┌─────────────────────────────────┐ │3 一般監査は、原則として毎年1回又は随時行うものとし、実地監査を│ │ 原則とする。                          │ │4 前項の規定にかかわらず、事業運営が良好な法人及び施設について │ │ は、別に定める基準に該当したときは、実地監査は、2年に1回行うも│ │ のとする。                           │ └─────────────────────────────────┘  そして、第4項の「別に定める基準」として、「実地監査の隔年実施等に関 する基準」(平成14年3月18日決裁。以降順次改正。)が制定されている。 【指摘 指導監査課】  「A」について、岐阜市において、「事業運営が良好」であるとの認定がな されたことはなく、また、前記のとおり、それを確認できるような資料も徴求 されていない。「A」について監査頻度を2年に1回行うとしている現在の運 用は、上記要綱に適合していないものとなっていると考える。  「A」についての監査頻度は、原則どおり1年に1回とするか、もしくは、 2年に1回とするのであれば、「A」に関して「事業運営が良好」といえるか の検証を早急にすべきである。 (3)監査内容及び監査の記録 【事実関係】  平成25年2月14日に「A」に対して実施した指導監査は、「A」の施設内 で実施された。  その際に、指導監査課が求めた提出資料は、次のとおりであった。 ┌─────────────────────────────────┐ │事前提出資料                           │ │    1)平面図(避難経路図)                  │ │    2)入居規約                        │ │    3)入居契約書(雛形)                   │ │当日準備資料                           │ │    1)利用者名簿                       │ │    2)利用者の自立支援及び処遇に関する書類          │ │    3)利用者と金銭管理契約をしている場合はその契約書及び現金出│ │     納簿                          │ │    4)利用者の健康管理及び施設内の衛生管理に関する書類    │ │    5)利用者の費用徴収に係る書類               │ │    6)利用者との入居契約書及びサービス内容を記載した利用者に交│ │     付する書面                       │ │    7)消防計画書及び避難訓練等実施記録書           │ │    8)職員の処遇に関する書類                 │ │    9)施設長の要件を満たしていることが確認できる書類     │ │    10)苦情処理に関する書類                  │ │    11)施設の収支等に関する帳簿類               │ │    12)事業開始から直近月までの月ごとの入退去状況報告書    │ └─────────────────────────────────┘  以上の指導監査の結果、「指摘すべき問題点が見当たらない」との報告がな された。岐阜市においては監査をどのように実施するのかを定めたチェックリ スト類はなかった。  なお、岐阜市指針では、次のとおり規定されている。 ┌──────────────────────────────────┐ │ア 食事、日用品等を提供する場合は、食費、日用品費等に見合った内容の│ │ ものとすること。                         │ │イ 光熱水費を徴収する場合は、実費相当とすること          │ └──────────────────────────────────┘ 【指摘(改善報告)指導監査課 生活福祉一課・二課】  指摘すべき問題点が見当たらないという結論は、以下の理由から疑問がある。  提出資料上、「A」の入居者の食費(一日三食)、水道光熱費(内訳:ガス・ 電気・水道。)は定額制となっていた。  岐阜市指針に従えば、食事は食費に見合った内容のものである必要があると ころ、岐阜市が提出を求めた資料では確認しようがないはずである。また、光 熱水費も定額制であるが、岐阜市指針に反している。さらにいえば、食費、光 熱水費以外にも、「施設運営費」、「管理費」等について、事情の有無にかかわ らず、定額制が採用されている。  以上のような疑問があるところ、監査の過程が不明であり、監査結果の正し さは担保できないものと考える。  監査については、岐阜市指針との関係から、必要な資料等を要求し実施すべ きである。  ただし、指導監査課では、昨年度外部監査の指摘を踏まえ、平成27年度か ら、岐阜市指針に基づいた無料低額宿泊所指導監査チェックシートを作成した とのことであり、これを確認したところ、岐阜市指針に従って監査項目が細分 化され、それぞれに評価するという内容になっている。これに基づいて監査を 実施し、記録化していけば、無料低額宿泊所に対して、綿密かつ効率的な監査 が可能になると思われる。今後、このチェックシートに沿った監査及び確実な
    記録がなされることを期待する。 8 義務履行状況の確認 (1)はじめに  岐阜市指針では、無料低額宿泊所が生活福祉課に提出する書類として、次の とおり規定している。 ┌──────────────────────────────────┐ │4 運営面に関する基準                       │ │(13)事業者は、次のア及びイに掲げる事項により事業経営の透明性を確保│ │ すること。                            │ │イ 貸借対照表及び損益計算書など収支の状況を、毎会計年度終了後3月以│ │ 内に公開するとともに、生活福祉課へ提出すること          │ └──────────────────────────────────┘  更に、岐阜市では、ホームページの生活福祉一課・二課において、「宿所開 設までの流れ」を図表で示したものを公開しているが、その中で事後調査とし て、「事業運営状況の確認」を行うことを謳っている。  以上の内容によると、「A」は岐阜市に対して、事業開設後も、上記内容の 義務を負っていることが明らかであるが、岐阜市において、これらの義務の履 行状況を適正に確認しているか否かについて、報告を行う。 (2)貸借対照表及び損益計算書など収支の状況について、毎会計年度終了後 3月以内の提出の督促状況 【事実関係】  「A」の事業開設以降、1期分の「NPO法人A」の貸借対照表及び損益計算 書の存在については確認ができたが、それ以外の期における収支状況の書面は 確認できなかった。 【規範】  岐阜市指針においては、「NPO法人A」から、毎会計年度終了後3月以内 に、貸借対照表及び損益計算書など収支の状況が判る書面の提出を受けること となっている。  目的は事業経営の透明性確保である。 【指摘 生活福祉一課・二課】  収支状況が分かる書面については、岐阜市指針に記載されているとおり、無 料低額宿泊所を運営する事業者の事業経営の透明性を確認するとともに、食費 や光熱水費等の定額徴収性を是認できるか否かを確認するための資料として、 必要不可欠な重要書類である。  こうした無料低額宿泊施設の運営が適正になされているか否かを確認する 資料として不可欠な書面について、受領していたか否かについて確認できない ということ自体が問題である。  指針に基づき、「NPO法人A」から、毎会計年度、貸借対照表及び損益計 算書など、「A」という施設に関する収支の状況が判る書面の提出を受けるべ きである。 (3)生活福祉一課・二課の行う事後調査との関係 【事実関係】  岐阜市生活福祉一課・二課自らが制作しているホームページ上では、事後調 査も行うと宣言している。しかし、同課が実施する事後調査がどのようなもの を指すのかを明記した根拠類は見当たらない。 【意見 生活福祉一課・二課】  上記(2)で述べた収支状況書類の提出にもかかわるが、それを提出しても らってどうするのかという効果を考えなければ、提出自体無意味になりかねな い。  生活福祉一課・二課として、無料低額宿泊所に対する事後調査を実施する範 囲について検討することが望ましい。 (4)寮長の変更等 【事実関係】  「A」の寮長については、平成24年4月と平成25年5月に変更になったと のことであったが、岐阜市では、現在の寮長の氏名・連絡先などの把握ができ ていない状態である。  また、寮長変更を示す書面については提出を受けていなかった。 【意見 生活福祉一課・二課】  寮長は「A」の事実上の管理者ともいえる。岐阜市が「A」に対して事業運 営調査をするのであれば、誰が寮長であるかという点については、常に正確に 把握しておくべき必要がある。しかるに、「A」側に事情の変更があった場合 に関する定めは岐阜市指針にはない。  岐阜市指針の中に、寮長の変更等がなされた場合には届出をしてもらう旨の 規定を設けることが望ましい。 9 民生委員の関与 【事実関係】  現状、「A」に入居する生活保護受給者全員につき、民生委員の関与がない。 【規範】  生活保護法第22条では、民生委員は、生活保護の施行について、「市町村長、 福祉事務所長又は社会福祉主事の事務の執行に協力するものとする。」と定め ている。  また、「生活保護制度における福祉事務所と民生委員等の関係機関との連携 の在り方について」(平成15年3月31日社援保発第0331004号厚生労働省社 会・援護局保護課長通知)によれば、「生活保護制度の適切な運営に当たって は、要保護者の把握を始め、保護の要件の確認の徹底や被保護者の自立に向け た援助等を行うことが重要であり、そのためには、福祉事務所が民生委員等の 関係機関と十分な連携を図ることが必要である。」とされており、具体的に、 「保護受給中の対応」として、民生委員に対しても「処遇方針の樹立及び変更 を行うために必要な事項や保護の方法等に関する事項等についての参考意見 を聴取」する等して連携をしていくことが求められている。 【意見 生活福祉一課・二課】  上記規範からは、民生委員との関わりとして、保護受給決定までに限らず、 それ以降の段階においても連携をしていくことが求められている。  また、実際にも、地域の実情を良く知り、入所者の日常生活を見る可能性が ある民生委員からも、自立及び就労支援に関する援助方針を聞くことが、各入 居者の個別的な支援につながる可能性がある。  「A」に入所する生活保護受給者について、全件、民生委員の関与不要とな
    っている運用が正しいといえるのか、今後改善ができないのかを検証すること が望ましい。 第11章 不服申立て 第1 概要 1 制度  生活保護法は第64条から第69条において、不服申立てを規定する。  生活保護にかかる不服申立ての手続は、保護開始処分、保護却下処分、保護 停止、保護廃止処分、法第63条に基づく保護費用返還決定処分、同法第78 条に基づく保護費用徴収決定処分、就労自立給付金の支給処分など、処分庁の 処分に不服がある者に保障されている手続である。生活保護による最低限度の 生活保障は国家の責任であるところ(生活保護法第1条)、それを担保する手 続である。  岐阜市の生活保護事務(処分庁は岐阜市福祉事務所)に不服がある者が不服 申立をする場合、岐阜県知事に対する審査請求と岐阜市長に対する審査請求の 2種類がある。生活保護法第78条に基づく保護費用徴収決定処分については、 岐阜市長に対する審査請求となる。 2 事務手続の流れ  岐阜市の生活保護事務に不服申立てがなされた場合の事務手続の流れは、概 ね次のとおりである。手続については、主に行政不服審査法が規律する。なお、 以降、本章の行政不服審査法は改正前のものを指す(改正法は、平成28年4 月1日施行)。 【不服申立てに関する事務手続の流れ】 ┌────────────────────────────────────┐ │1)岐阜市福祉事務所長の教示                       │ │ 岐阜市福祉事務所長の処分について、不服申立てができる旨の書面による  │ │教示をする(行政不服審査法第57条第1項)。               │ │   ↓                                │ │2)審査請求人の審査請求                         │ │ 審査請求人は、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内  │ │に、岐阜県知事宛に審査請求書を提出する(生活保護法第78条に基づく費用  │ │徴収事務については、「岐阜市長」(以下、「岐阜市長」と記載ある場合は、こ│ │の事務の場合を指す))(行政不服審査法第14条第1項)。         │ │   ↓                                │ │3)岐阜県知事(あるいは岐阜市長)                    │ │ 審査請求書を受理した上で、岐阜市福祉事務所長(処分庁)宛に審査請求  │ │書の写し、弁明書の提出通知を送付する(行政不服審査法第22条第1項)。  │ │   ↓                                │ │4)岐阜市福祉事務所長                          │ │ 弁明書(正本・副本)を作成し、岐阜県知事(あるいは、岐阜市長)宛に  │ │提出する。審査請求人は反論書(正本・副本)を作成し、岐阜県知事(あ   │ │るいは、岐阜市長)宛に提出する(行政不服審査法第22条、第23条)。再   │ │弁明、再反論が繰り返される場合がある。                 │ │   ↓                                │ │5)岐阜県知事(あるいは岐阜市長)                    │ │ 裁決する(岐阜県知事宛の審査請求は、審査請求のあったときから50日以  │ │内 生活保護法第65条第1項)。裁決の内容は、処分の全部取消(請求認容)、│ │処分の一部取消(処分の変更)、処分の認容(請求棄却)、請求の却下である │ │(行政不服審査法第40条第1項乃至同第3項)。              │ │   ↓                                │ │6)岐阜県知事(あるいは岐阜市長)                    │ │ 岐阜市福祉事務所長及び審査請求人宛に裁決書を送付する(行政不服審査  │ │法第42条)。                              │ │   ↓                                │ │7)審査請求人                              │ │ 岐阜県知事の裁決に不服がある場合には、厚生労働大臣宛に再審査請求を  │ │することができる(生活保護法第66条第1項)。              │ │ 岐阜市長の裁決に不服がある場合には、岐阜県知事宛に再審査請求をする  │ │ことができる(行政不服審査法第8条第1項第2号、同第2項、地方自治法  │ │第255条の2第2号)。                          │ └────────────────────────────────────┘ 第2 監査の観点及び監査手続  不服申立ては、岐阜市の生活保護事務の執行が適正に行われていたか否かに かかるものである。不服申立ての結論が処分の全部あるいは一部取消というこ とになれば、事務の執行に問題があったということになるであろうし、そうで なくても不服申立てがなされる以上、事務の執行に何らかの課題があった可能 性がある。  そこで、この点に関する岐阜市の現状を確認すべく、ヒアリングにより、岐 阜市における不服申立ての事例の有無を確認し、直近5年度において不服申立 てがあったと報告されたケース記録全件(7件)を閲覧した。ただし、後述す るとおり、第8章 保護の停止・廃止の監査にて閲覧したケース記録中、組織 として把握できていなかった不服申立の事例が1件存在したことから、そのケ ース記録も検討した。  また、不服申立ての前提としては、不服申立てに関する教示(審査庁等)が 正しくされている必要がある(行政不服審査法第57条第1項)。この点につい て、確認すべく、平成26年度に作成された生活保護法第78条による費用徴収 決定通知書を無作為抽出にて閲覧した。 第3 不服申立ての教示 1 教示の確認 【事実関係】  不服申立ての教示について確認をすべく、岐阜市が新人職員の研修用に作成 したとする事務の手引き(平成26年7月版)を確認したところ、生活保護法 第78条による費用徴収決定通知書の様式の記載は、「岐阜県知事宛」になって いた。  そこで、本報告書 第9章にて閲覧した生活保護法第78条適用事案のケー ス記録を無作為抽出し、平成26年度に決定のあった生活保護法第78条による 費用徴収決定通知書を確認したところ、費用徴収決定通知書(案)として、次 のとおり教示しているものがあった。 ┌──────────────────────────────────┐ │この決定に不服があるときは、この決定があったことを知った日の翌日から│ │起算して60日以内に、岐阜県知事に対し審査請求をすることができる。  │
    │           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                │ └──────────────────────────────────┘  なお、この事案においては、被保護者に送付した通知書そのものはケース記 録に綴られていなかったが、費用徴収(案)は内部決裁を得ており、そのまま 被保護者に通知されているはずである。 【規範】  地方自治法第153条第2項、行政不服審査法第5条第1項第1号、同第2項 により、生活保護法第78条の費用徴収決定処分についての不服申立について の審査庁は岐阜市長である。 【指摘 生活福祉一課・二課】  岐阜県知事を審査庁とすることは誤りである。誤った教示をした場合、審査 請求人に対する救済措置があるとはいえ(行政不服審査法第18条)、それでよ いということにはならない。  岐阜市の行政の事務執行に疑念を抱かせる一事情となりうる。  関係法令を必ず確認し、通知書記載の教示において審査庁などの誤りが起き ないように徹底すべきである。 2 様式の整備 【事実関係】  岐阜市生活保護法施行細則には、生活保護法第78条による費用徴収決定通 知書に関する条項及び様式の定めはない。 【意見 生活福祉一課・二課、福祉政策課】  生活保護法第78条による費用徴収決定は、被保護者にとって大きな影響を 及ぼす処分である。  生活保護法第78条による費用徴収決定通知書については、岐阜市生活保護 法施行細則上で条項及び様式を定めることが望ましい。 3 教示誤りの回避策 【事実関係】  不服申立てに関する書面による教示に関し、行政課に対してヒアリングを実 施したところ、行政課としては、規則、要綱等に様式の定めがあるものについ ては確認をとることができるが、規則、要綱等に様式の定めがなく担当課が独 自に作成しているものについては、教示の誤りの有無をチェックできないとの ことであった。  ただし、担当課から不服申立てにかかる教示に関して相談をされれば、行政 課としては助言するとのことである。 【規範】  岐阜市処務規則第3条 行政課(4)では、「争訟並びに法令の解釈及び適 用上の疑義に係る助言等に関すること」とある。 【意見 行政課】  全庁的にみて、不服申立てにかかる教示の誤りがないことが理想である。  行政課としては、相談されれば助言するという現在の事務執行に誤りはない。  しかし、上記「1」の【事実関係】で報告した事例のとおり、担当課にて教 示を誤った事例も実際にあった。  各課に対し、不服申立ての教示書面の内容確認等について注意喚起を行うな ど、適正な事務執行の確保に向けた取組みを行うことが望ましい。 第4 不服申立ての情報共有 1 情報把握の現状 【事実関係】  ヒアリングにて、過去5年間の不服申立て件数について確認したところ、当 初、生活福祉一課・二課では、組織として不服申立て件数を把握していないと の回答であった。  そこで、同課に対し、過去5年間の不服申立て件数の資料の作成を依頼した ところ、岐阜市から報告された直近5年度の岐阜市における不服申立て件数は 次のとおりであった。           年 度 別 件 数(岐阜市からの回答)                                  (単位:件数) ┌────────┬─────┬─────┬─────┬─────┬─────┐ │        │平成22年度│平成23年度│平成24年度│平成25年度│平成26年度│ ├────────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │  審査請求  │    0│    0│    0│    7│    0│ ├─┬──────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │ │県知事に対す│    0│    0│    0│    7│    0│ │内│る審査請求 │     │     │     │     │     │ │訳├──────┼─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │ │市長に対する│    0│    0│    0│    0│    0│ │ │審査請求  │     │     │     │     │     │ └─┴──────┴─────┴─────┴─────┴─────┴─────┘  監査の対象である平成26年度は1件もなく、平成25年度に7件あった(な お、7件とあるが、1件は16名連名での審査請求を1件としている)。  7件中6件は、生活保護費基準改定関連のものであり、残りの1件は、生活 保護法第63条の費用返還金決定処分に対するものであった。  結果としては、いずれも処分認容(請求棄却)とのことであった。  岐阜市からの不服申立て件数の報告を踏まえ、不服申立てに関する資料につ いて確認したところ、資料は各ケース記録に綴じ込まれており、不服申立てに 関する資料のみをまとめる形では保存されていなかった。  その後、本監査において、平成26年度の停止及び廃止ケース記録を閲覧す る中で、岐阜市からの報告にはなかった不服申立ての事例が見つかった。  そこで、実際の不服申立て件数を確認すべく、岐阜市より岐阜県に問い合わ せをしてもらったところ、平成23年度から平成26年度の岐阜市の生活保護に かかる不服申立て件数は、次のとおりの回答ということであった(平成28年 2月5日現在)。      年 度 別 件 数(岐阜県による回答)                        (単位:件数) ┌────┬─────┬─────┬─────┬─────┐ │    │平成23年度│平成24年度│平成25年度│平成26年度│ ├────┼─────┼─────┼─────┼─────┤ │審査請求│    2│    0│    23│    0│ └────┴─────┴─────┴─────┴─────┘
     岐阜市の回答とは、数が合致していない。  まず、岐阜市は、組織として、平成23年度の2件を把握していなかった。  また、平成25年度については、岐阜市の件数の数え方(連名での申立てを 1件)と岐阜県の件数の数え方(1人1件)が同じではないが、岐阜市は、組 織として、監査人が監査の過程で確認した1ケースを把握していなかった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  事務執行に課題があった可能性がある不服申立てケースを組織が全件把握 していないこと自体大きな問題である。  不服申立てがあった事例については、組織としてその情報を共有する体制を 構築すべきである。具体的には、不服申立ての記録を、ケース記録に保存する だけではなく、不服申立てにかかる専用ファイルを作成することが考えられる。 その際は、事務担当を決める必要があろう。 2 業務改善に向けて 【事実関係】  岐阜市は組織として不服申立て事例を業務改善に活かす策を講じていない。 【意見 生活福祉一課・二課】  不服申立ては、その内容によっては、事務の課題を発見し、今後の業務改善 に活かすことのできるものである。職員の業務改善に向けての格好の教材とな りうるのである。実際、不服申立て事案中、訴え却下がなされたケース(岐阜 市が当初報告では挙げていなかったケース)は、岐阜県から、文書指導を経ず になした保護停止処分の問題性を指摘され、裁決前に自ら是正した結果のもの であった。また、岐阜市より当初報告のあった不服申立て7件中1件のケース (生活保護法第63条の費用返還決定処分に関するもの)も、担当現業員の指 導が一つの問題となっていた。  不服申立てがあった事例については、例えば、係単位で検討会を実施するな ど、事務執行の改善に役立てることが望ましい。 第12章 査察指導員の事務 第1 査察指導員について横断的に検討する意義  社会福祉法第15条第3項によれば、査察指導員は、所の長の指揮監督を受 けて、現業員の指導監督する所員である。  その立場は、現業員(ケースワーカー)を管理し、教育し、支持するという ものである。  査察指導員については、以下の3つの査察指導機能があると言われる(新版 福祉事務所 ソーシャルワーカー 必携 生活保護における社会福祉実践 岡部卓 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 84頁 参照)。 ┌─────────────────────────────────┐ │1)管理的機能                           │ │  現業員の行う業務が適正かつ効果的になるように把握、管理すること│ │2)教育的機能                           │ │  支援の方法や法制度を教え、経験や能力の不十分な現業員に対して指│ │ 導、援助すること                        │ │3)支持的機能                           │ │  一人ひとりの現業員が能力を十分に発揮できるよう補うこと    │ └─────────────────────────────────┘  査察指導員は、以上の査察指導機能を果たす必要があるが、現業員と異なり、 査察指導員の業務内容については見えづらい部分があるのではないかと考え た。そこで、本章では、監査人が認識した岐阜市の査察指導員の業務の現状及 び課題と改善点を横断的に報告することとした。 第2 査察指導員の事務 1 事務の概要 (1)はじめに  査察指導員及び現業員に対するヒアリング、記録(保護台帳兼世帯名簿、 ケース記録(査察指導員の意見等)、ケース援助方針、処遇判定票、被保護世 帯訪問計画及び実施計画、査察指導台帳(査察指導票等))、ケース診断会議 の傍聴、「岐阜市生活保護事務の手引き」(平成26年7月)の閲覧から認識し た岐阜市における査察指導員の役割は、以下のとおりである。  平成26年度査察指導員は8名であり、内2名は保護開始決定まで関与する 新規担当の査察指導員(以下、「新規担当査察指導員」という)である。  その他6名は保護開始決定後の継続段階を担当する査察指導員(以下、「継 続担当査察指導員」という)である。 【ケース診断会議の構成員として(新規・継続問わず)】  課長2名、係長(査察指導員)8名のうち3名が担当して、新規案件や処遇 困難な案件について、ケース診断会議の中で、現業員と協議し、助言指導する。  1週間のうち3日間、午前9時から午前11時にかけて行われる。1件15 分程度の時間で、協議する。 【係長会議】  生活福祉一課・二課においては、毎月1回、係長会議(課長も出席する)を 開催して、生活福祉一課・二課における事務処理の確認や連絡事項の徹底、事 務分担表に基づく業務内容の報告・連絡・相談を行っている。  毎月、会議室を予約する担当係長がいて、交替で、予約係を担当する。  会議は、夕方に行われ、1時間~2時間程度である。  各事務分担については、毎年度3月頃に、係長会議において決定される。 2 査察指導員の業務マニュアル 【事実関係】  岐阜市では、査察指導員の業務マニュアルというA4で3枚ほどのマニュア ルが存在する。しかし、その内容を確認したところ、記載が抽象的であり、業 務を網羅してはいなかった。 【意見 生活福祉一課・二課】  査察指導員の資格や経験、個性によって、査察指導員の業務内容が大きく変 わることは、岐阜市における生活保護行政の公平性や統一性を欠くことになる。  現状、査察指導員になる係長は、現業員の経験がない者や社会福祉主事の資 格がない者もいる。
     誰が査察指導員となっても、ある程度、一定の水準の業務処理ができるよう に、具体的な査察指導員の業務マニュアルを策定し、研修を実施することが望 ましい。 3 現業員に対する査察指導機能 (1)援助方針 【事実関係】  「ケースの援助方針」という現業員が作成する書面において、四文字熟語や 簡潔な文言に留まるものが散見された。また、保護台帳兼世帯名簿にある査察 指導員の意見欄は、「同上」が多くあった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  ケースの援助方針の決定は重要な事務である。  査察指導員は、現業員と協議して具体的な援助方針を定め、そして確実に記 録化するように、現業員を指導監督すべきである。 (2)訪問調査 ア 訪問調査の進行管理 【事実関係】  Aケース(月1回以上訪問)など、ケース格付どおりに、現業員が訪問でき ていないケースが散見された。また、現業員が、訪問調査をしたにも関わらず、 訪問調査の結果をケース記録に記載しないまま、1月以上経過しているケース があった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  査察指導員は、毎月、ケース記録や査察台帳、被保護世帯訪問計画及び実施 表などにより、訪問調査の実施状況を確実に把握した上で、適切に訪問調査を 行うように現業員を指導し、その指導内容を査察指導台帳などに確実に記録す べきである。 イ 訪問調査の同行 【事実関係】  査察指導員が訪問調査に同行するケースは、年間300件程度であり、全訪問 回数の2パーセント弱に留まっている(第5章)。ヒアリングによると、査察 指導員の多忙な状況から、訪問同行を求めることに心理的抵抗を感じている現 業員もいた。 【意見 生活福祉一課・二課】  査察指導員が現業員の訪問調査に同行する基準や目安を決めることが望ま しい。  現業員も、基準や目安があれば、査察指導員に、必要以上に遠慮せずに、訪 問調査への同行を求めやすくなり、問題のある事案等について、組織的な対応 を取ることが可能となる。  また、査察指導員と現業員との訪問調査の同行が行われやすくなることで、 両者の間において、情報共有を図ることが可能となる。 (3)実態把握(訪問調査以外) ア 資産の活用について 【事実関係】  不動産等の資産保有ケースについて、売却処分や廃車処分の指導等の方針を 決めたにもかかわらず、売却処分等が進まない事案が散見された。 【指摘 生活福祉一課・二課】  査察指導員は、資産保有台帳を利用するなどして、資産保有ケースの資産処 分状況を把握した上で、一定期間内に不動産や自動車などの資産処分をさせる よう現業員に助言・指導し、その助言・指導内容を査察指導票(巻末資料3に 添付)に記録すべきである。 イ 就労指導 【事実関係】  査察指導員も、就労・求職状況管理台帳等で、毎月の就労・求職状況を 確認しているようである。しかし、査察指導台帳などに、査察指導員の指 導や助言が記載されていないことから、査察指導員が、就労・求職状況に ついて、どのように関わっているか不明であった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  査察指導員は、就労・求職状況管理台帳により、就労・求職状況を確認 するとともに、稼働能力活用に係る処遇方針に沿った助言や指導を現業員 が行っているのかを確認すべきである。  査察指導員は、指導・助言した内容は、査察指導票などに明記すべきで ある。 ウ 法第29条調査 【事実関係】  面接相談員が、要保護者の知人や、扶養義務者の配偶者の世帯情報等を利用 している事案があった。ヒアリングによると、査察指導員は、内部情報の利用 について、担当現業員に任せていることのことであった。 【指摘 生活福祉一課・二課】  査察指導員は、同意外及び利用許可外の情報について不正にアクセスしない よう、現業員(アクセス権限者)に指導すべきである。 【意見 生活福祉一課・二課】  査察指導員は、定期的に、アクセスログをたどり、同意外及び利用許可外の 情報について不正にアクセスしていないかどうか、課長とともに、内部監査を することが望ましい。 エ 扶養義務調査 【事実関係】  重点的扶養義務調査対象者で管内にいる者について、実地調査をしていない。  また、査察指導員は、実地調査について、現業員に指導していない。 【意見 生活福祉一課・二課】  査察指導員は、実地調査をするかどうか、組織として決定するためにケース 診断会議にかけるよう現業員に指導することが望ましい。仮に、実地調査をし ないのであれば、その理由を記録化するよう、現業員に指導助言することが望 ましい。 オ 遺留金品の取扱 【事実関係】  岐阜県施行事務監査資料において、「(4)現業員等による生活保護費の詐取
    等の不正防止等について」の「ウ 遺留金品の取扱いについて」では、「(イ) 現業員等の事務の範囲及び取扱い手順」として、「遺留金品の確認。遺留金品 がある場合は指導員を伴って対応する。」と記載されている。  現業員及び査察指導員のヒアリングによると、遺留金品について、現業員は 査察指導員に対して報告しているとのことである。  しかし、査察指導員の関わりがはっきりしない事例も散見される。  また、ヒアリングによれば、遺留金品の確認について、現業員が、査察指導 員を伴って現場に確認に行くことはないとのことであった。  遺留金品についての対応は、岐阜市において定められていない。 【指摘 生活福祉一課・二課】  遺留金品取扱規程を設けることについては、第7章でも提言したが、規程の 中に、査察指導員の役割も明確に定めるべきである。 (4)ケース診断会議 【事実関係】  新規案件では、取下ケースについて、ケース診断会議に諮っていない。  継続案件では、辞退ケースや文書指導をするケース、指導指示違反による停 止・廃止ケースは、ケース診断会議に諮る。しかし、それ以外のケースについ ては、ケース診断会議に実際に諮ることはほとんどない。  法第63条案件、法第78条案件についても、大半は、処遇判定票の回覧決裁 により、決定している。 【指摘 生活福祉一課・二課】  査察指導員は、法第63条や法第78条適用など、重要事項を決定するケース については、ケース診断会議に諮るよう、現業員に指導すべきである。  なお、今後、どのようなケースについてケース診断会議に諮るのかについて は、規定や要綱を設けるべきであるが、この点については、第13章で述べる。 (5)現業員との情報共有 ア 現業員との面談や係会議 【事実関係】  面接相談については、平成26年度実績で1,834件あり、その内、申請に至 ったものは566件ある。そのため、新規ケース担当の査察指導員については、 1人あたり年間280件以上の申請案件に関与することになる。  また、被保護世帯は、常時5,000世帯以上あることから、継続ケース担当の 査察指導6人は、1人あたり常時800世帯超の案件を管理することになる。  中には、処遇困難なケースもあるが、現業員は、査察指導員が多くの案件を 管理していることを知っているため、訪問調査の同行や相談などをするのに遠 慮をしてしまうことがあるとのことであった。 【意見 生活福祉一課・二課】  査察指導員は、現業員と情報を共有して管理的機能を果たすとともに、教育 的機能、支持的機能を果たすために、定期的に、現業員1人1人と面談する機 会を設けることが望ましい。また、定期的に、係会議を開いて、係においても、 情報共有や意思統一を図ることが望ましい。 イ 記録の管理 【事実関係】  現業員が、調査後、長期間経過後に、ケース記録に記載するケースがあった。  また、ケース記録の記載についても、訪問調査の内容について何も記載され ていない例や、現業員の感想が多く、事実関係が不明確な記載をしている例も 散見された。 【指摘 生活福祉一課・二課】  査察指導員の管理的機能として、訪問調査等の現業員の活動について把握、 管理する必要がある。  そのためには、ケース記録の記載時期や記載内容についても、指導する必要 がある。「岐阜市生活保護事務の手引き 平成26年7月」には、「ケース記録 は、保護の決定実施の根拠となる重要なものであるから、記録の方法について も指導すること。」とある。  査察指導員は、ケース記録の記載時期や記載内容についても、的確に行うよ う、現業員に指導すべきである。 第13章 ケース診断会議 第1 ケース診断会議を単独の章で取り上げる意義  ケース診断会議は、事務中、重要な事項について、組織として、審議し決定 する場面である。これまで報告した個々の章においても、ケース診断会議につ いて言及してきたところではあるが、その重要性から単独の章として取り上げ、 まとめることとした。 第2 岐阜市のケース診断会議の現状 1 岐阜市が開催を必要としているもの  下記表は、岐阜市が、平成27年度岐阜県の施行事務監査に提出した資料を 基に作成したものである。  「○」とある部分は、全件開催という意味とのことである。「◎」とある部 分は、「必要に応じて」という意味とのことである。 ┌──────────────────────┬────────┐ │項目                    │判定会議    │ ├──────────────────────┼────────┤ │保護の開始決定               │○       │ ├──────────────────────┼────────┤ │保護の停止・廃止決定            │◎       │ ├──────────────────────┼────────┤ │保護の費用返還 法第63条、法第77条、法第78条│◎       │ ├──────────────────────┼────────┤ │保護の費用返還               │◎(別途決裁要)│ ├──────────────────────┼────────┤ │文書指導                  │◎       │ ├──────────────────────┼────────┤ │保護却下・取下げ              │○       │ └──────────────────────┴────────┘ 2 岐阜市の実施状況  平成27年度の岐阜県の施行事務監査資料に基づくケース診断会議の実施状 況は、以下のとおりである(処遇判定票の回覧決裁も含む。)。
    【ケース診断会議の実施状況】 ┌─────────────┬─────┬─────┬─────┐ │             │平成24年度│平成25年度│平成26年度│ ├─────────────┴─────┴─────┴─────┤ │ケース援助に関する                      │ ├─────────────┬─────┬─────┬─────┤ │ 新規開始ケース     │    734│    623│    530│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 援助困難ケース     │    58│    72│    69│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 個別援助        │     7│    12│    13│ ├─────────────┴─────┴─────┴─────┤ │費用返還に関する                       │ ├─────────────┬─────┬─────┬─────┤ │ 63条返還        │    216│    219│    215│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 77条徴収        │     0│     0│     0│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 78条徴収        │    165│    78│    66│ ├─────────────┴─────┴─────┴─────┤ │指導指示に関する                       │ ├─────────────┬─────┬─────┬─────┤ │ 27条文書指導指示    │    14│    16│    22│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │  就労指導       │     6│     3│     8│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │  自動車に関する    │     2│     5│     4│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │  収入申告書提出    │     2│     2│    -│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │  日常(生活・療養態度)│     2│     1│    10│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 検診命令        │     2│     5│     0│ ├─────────────┴─────┴─────┴─────┤ │その他                            │ ├─────────────┬─────┬─────┬─────┤ │ 自動車の保有要件に関する│     7│    -│     3│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 辞退廃止        │     0│    -│     5│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 指導指示違反による廃止 │    -│    -│     1│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │ 申請取り下げ・却下など │    49│    42│     8│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │開催回数         │    153│    168│    167│ ├─────────────┼─────┼─────┼─────┤ │検討数          │   1,196│   1,062│    924│ └─────────────┴─────┴─────┴─────┘ (検討数については、処遇判定票の回覧決裁も含む。)  課長、査察指導員のヒアリング及びケース診断会議の課長・係長(査察指導 員)担当一覧表によれば、ケース診断会議は、毎週3日、1回に課長、係長か ら3名が担当することになっている(所長は入っていない)。  また、1回のケース診断会議に、新規案件が3~5件あり、たまに、継続案 件もあるとのことである。時間としては、1~2時間とのことであった。 3 ケース診断会議の未開催 【事実関係】  保護の取下げ事案については、全件ケース診断会議を開催することとなって いるが、平成26年度において、全件が開催されているわけではない。 【指摘 生活福祉一課・二課】  保護の取下げについては、市民の最低限度の生活保障に直接かかるものであ って、その有効性如何によっては、重大な効果をもたらすものである。  岐阜市が自ら作成した資料上、全件開催するとしている場合には、全件ケー ス診断会議を開催すべきである。 4 ケース診断会議の記録化・根拠資料 【事実関係】  ケース診断会議において、申請段階においては、保護の要否のほか、追加調 査すべき事項、重点的に指導すべき事項などを審議し、決定する。保護開始決 定後の継続段階においては、組織的に判断すべき事項として、法第63条や法 第78条の事案、文書指導の判断などについて審議し、決定する。しかし、ケ ース診断会議においては、保護台帳の案のほかは、特に資料もなく、現業員の 説明を判断材料として、判定をしている。  また、ケース診断会議で議論したことについて、会議録等を作成していない。 ケース会議の要点をケース記録に記載することはあるが、記載していない例が ほとんどである。  さらに、ケース診断会議の進行方法についても、特に定められていない。 (1)ケース診断会議の記録化 【指摘 生活福祉一課・二課】  ケース診断会議における審議過程は、会議議事録等を作成し、記録化すべき である。  岐阜市が保護の要否や格付、文書指導や法第63条、法第78条の適用などに ついて、合理的に判断したかどうかを明確にしておかなければならない。そう しないと、不服申立があった時に、岐阜市の判断が合理的であったことを証明 できないし、また、どのような根拠で判断したのかが分からないと、引継の際 に、現業員によって取扱いの差異が生じたり、過去の資料を参考にしたりする ことができなくなってしまうからである。それは、現業員によって、ケースの 取扱いが異なることを事実上放置することにもなりかねず、岐阜市の生活保護 行政の公正さに疑問を残すこととなる。  ケース会議議事録等の作成が、生活福祉一課・二課職員の新たな負担になら ないよう、例えば、あらかじめ、ケース会議議事録の書式(フォーマット)を 決めておくか、保護台帳兼世帯名簿のほか、ケース記録(地域社会の環境、関 係者の意見及び近隣の風評、世帯員の生活歴、社会診断及び指導方針)の記載 及び記載案を配布し、その記載に従って、ケース診断会議の進行を進めていき、 会議中、手書きかパソコンにより、メモしていくことが考えられる。
    (2)根拠資料 【意見 生活福祉一課・二課】  ケース診断会議の際に、根拠とした資料については、ケース診断会議の会議 録等に、検討資料として添付しておくか、配布・閲覧した資料について、ケー ス診断会議の会議録等に明記しておくことが望ましい。  添付資料としては、具体的には、以下のものが考えられる。  申請段階においては、保護台帳兼世帯名簿のほか、ケース記録(地域社会の 環境、関係者の意見及び近隣の風評、世帯員の生活歴、社会診断及び指導方針) の記載及び記載案についても資料として配布する。  保護開始決定後の継続段階においては、身上表や、ケース援助方針、被保護 世帯訪問計画及び実施計画、査察指導票、1年分のケース記録のほか、法第 63条、法第78条、文書指導の起案などについても資料として配布する。 5 ケース診断会議の積極的な開催 【事実関係】  平成27年度の岐阜県の施行事務監査資料からは、ケース診断会議、ケース 検討会等の開催回数167回、検討数924件とされている。ただし、法第63条 及び法第78条の案件については、実際には、全案件をケース診断会議にかけ ているのではなく、処遇判定票の回覧決裁により、ケース診断会議の実施を代 替していることもある。したがって、ケース診断会議で検討しているケースは 924件もない。  本監査におけるケース診断会議の傍聴やヒアリングから、ケース診断会議を 実施する場合、1日2時間程度の時間で、新規及び継続を含めて8件(1件 15分)ほど実施することは可能とのことである。1日8件で、週に3日実施 すると、年間で1,200件ほどケース会議にかけることが可能となる。そのうち、 新規案件を500件とすると、継続案件は700件程度を審査することが可能とな る。 【指摘 生活福祉一課・二課】  組織として、ケース診断会議を開催する継続案件の対象を増やすことを検討 すべきである。  具体的には、法第63条及び法第78条の案件は全件を、ケース格付の変更案 件や法第77条案件(重点的扶養能力調査対象者の実地調査を含む。)、あるい は、停止・廃止の事案などでも個々の現業員が必要性を判断するのではなく組 織として類型化することが考えられる。格付変更の案件(第5章)や廃止(第 8章)など各章で触れたが、ケース診断会議の開催がされていればよかったと 考える事案があった。 6 開催要綱の不存在 【事実関係】 ケース診断会議についての要綱等の規定は存在しない。 【指摘 生活福祉一課・二課】 ケース診断会議についての要綱等がないことから、ケース診断会議にかける基 準が、現業員や査察指導員によって異なり、統一されていない状態にある。 ケース診断会議について、会議に諮るべき事項、会議の構成員、運営方法、会 議の議事録の書式などを規定した要綱を設けるべきである。 浜松市や岐阜県内では中津川市等、他の自治体が要綱を策定しているので参考 にされたい。 終章 第1 監査を終えての所感  本監査の過程でたびたび生活福祉一課・二課の現場を訪れたが、そこだけ空 気感が違うという印象であった。広くはない事務スペースの中で、数多くの職 員が、空間を縫うように動き回り、熱心に仕事に取り組んでいた。  外部監査は、数ヶ月にわたり、数多くのヒアリング、書類提出、調査の依頼 等をするものであり、本来の事務とは別の負担をかけることとなる。  そのような中で、所長をはじめ、課長、係長、現業員、経理・医事等係員、 各嘱託員など、数多くの職員が本外部監査に快く対応していただいた。  心より感謝を申し上げる。 第2 現状の課題  個々の職員は、熱心に仕事に取り組んでいるが、不適切な事務執行など多く の指摘・意見を出さざるを得ない結果となった。  監査人は、課題の発生原因は、主に次の2点に集約されるのではないかと考 える。  1)組織的な対応体制  2)職員の配置 第3 提言  以上から、監査人は、岐阜市に対し、以下、2点を提言する。 1 組織的な対応体制の確立 (1)統一した適切なルールの整備  生活保護事務は、被保護者の生存権にかかわる事務であり、特に適法性に留 意して事務執行なされる必要がある。  この点、本監査でも述べたとおり、生活保護事務は、生活保護法をはじめ、 国の通知など数多くのルールの中で執行するものであるが、日々の目の前の業 務に追われている個々の職員がすべてをフォローすることは困難であろう。監 査人も本監査において膨大な通知類に触れ、その大変さを実感したところであ る。誰が事務をしても一定の水準を保ち、職員の負担を軽減するという意味で、 組織として、岐阜市の生活保護事務にかかる統一した適切なルールを整備する 必要があると考える。具体的には次のことが考えられる。 ┌──────────────┐ │事務取扱にかかるマニュアル類│ └──────────────┘  現在、生活福祉一課・二課にある個々の事務マニュアルについて全て集約し た上で、整備をしていく必要がある。  現在あるものは、改善を検討することとなる。  例えば、現業員の事務マニュアルについては、岐阜市生活保護事務の手引き (平成26年7月)を改善することが考えられる。本手引きは、そもそも、新 人研修用に作成されたもので、持っている職員と持っていない職員がいるとい う位置づけに問題があるが、内容も様式が不正確であったり(法第78条の費 用徴収決定通知書の様式は、教示に誤りがあった)、岐阜市の実情に合致して いなかったりするなど問題点が見受けられた。ただし、現業員の事務処理全般 を概ね網羅しており、事務処理にあたって有益となる記載もある。かかる手引
    きを改善するなどして、職員が事務を執行するに際して、適法な、拠って立つ ことのできる事務マニュアルを作成されたい。  また、査察指導員の事務マニュアルについては、すでに存在しているが、特 に、経験等に乏しい査察指導員において、実際の事務執行に耐えられるほど具 体的ではないと考えた。別途、査察指導員用のマニュアルを整備する必要があ ると考える。  新たに策定することが必要なものがある。早急に定める必要があるものとし ては、ケース診断会議に関する要綱や遺留金品取扱規程などが考えられる。  また、生活福祉一課・二課は、事務実施にあたり必要な岐阜県の通知の保管 を1年しかしていないとのことであったが、通知の効力は1年に限定されない はずである。岐阜県に依頼して、可能な限り、通知を集め、今後、県通知は確 実に保管する必要がある。 ┌───────────────┐ │岐阜市生活保護法施行細則の改定│ └───────────────┘  岐阜市生活保護法施行細則を改定する必要があると考える。同細則には、各 種様式が定められているが、例えば、重要な処分である生活保護法第78条の 費用徴収決定通知書は細則に条項・様式の定めがなかった。また面接記録票、 保護廃止決定通知書など改善が必要と考えられる様式もある。  細則を全面的に見直し、業務において、必要かつ重要な書類は、できる限り、 細則に位置づけていく必要がある。 (2)ルールの周知・徹底  これらルールを整備した上で、生活福祉一課・二課の全職員に確実に周知す べきである。  周知方法についてであるが、現業員には現業員の事務マニュアルなど関係す る部分だけを交付すればよいとするのではなく、岐阜市の生活保護事務全般に かかるものをまとめ、一冊のファイルにするなどして交付するという形にする ことが望ましい。事務の全体像を把握し、他の事務の情報を共有することで、 自分の職務の位置づけも明確になるはずである。  そして、整備し、周知したルールにそった運用がなされるように、研修、指 導監督等を徹底すべきである。なお、研修、指導監督等の際には、抽象論では なく、具体例を通じた情報共有が重要な要素になると考える。 2 職員の適切な配置  平成17年度から平成26年度にかけて、岐阜市においては、被保護世帯、被 保護人員などが2倍以上になっているという現状があった。かかる現状の中、 生活福祉一課・二課の職員は、生活保護法の目的達成に向けて、それぞれの立 場で、様々な業務を、適時・適切に実施する必要がある。特に現業員は、被保 護者と直接対応する事務を担い、役割は重責であり、負担は大きいと思われる。 100件を超える担当を持っている現業員も複数いるのである。  組織として、現状に即した適切な職員配置が必要である。  この点、現状には課題が多い。  まず、職員の数が不足している。特に地区担当現業員は、社会福祉法が示す 標準数(80世帯あたりに1人)を大きく超える世帯(平成26年4月1日現在 平均で91.9件 地区担当現業員に限定すると103件)を対応している。また、 例えば、医療扶助は年間50億を超える金額であるにもかかわらず、医療事務 担当者は2人である。数多くの債権の管理や支給に携わる経理も2人である。  推移を見れば、職員数、そして現業員数も増加しているので対策を講じてい ないということではないが、それでも不足は明らかである。  次に、雇用形態は、臨時的任用職員が多い。ヒアリングによれば、臨時であ る上に、退職者が多い傾向にあることから、経験のある現業員が増加しにくい という現状があるとのことであった。実際、本監査において、現業員の退職が 続くこともあり、担当現業員が年に2~3回変更するなど頻回な担当者変更が 生じているケースを確認した。これは被保護者にとって好ましい状態ではない。 現業員自らの身分が不安定な状況で、果たして安定した事務が執り行えるかと いうこともあろう。  さらに、社会福祉法第15条第6項において、現業員と査察指導員には、社 会福祉主事でなければならないとされているが、現状、全員が資格保有者とい うわけではない。特に、現業員は、平成26年9月1日現在では、56名中30 名という実態である。資格取得の支援や資格保有者配属の考慮など対策は講じ られているようであるが、社会福祉法の要求には程遠い現状である。  加えて、現業員の経験年数が浅い者が多く、退職者も多いため、経験がなか なか蓄積されないという課題がある。  職員の状況については、「第2章 第3 岐阜市の生活保護事務の現状」で 事実を紹介したが、本監査を終えてみると、抽象論ではなく、具体的な課題と して見受けられた。  組織として、現状の体制を前提に、改善できるところから始めることは当然 ではあるが、適切な事務執行に向けて、最も重要であるはずの「マンパワー」 に課題がある。被保護者等の「人」を相手にする事務である以上、職員という 「人」の重要性はいうまでもない。  最優先の課題としてとらえ、職員の数、正職員、資格取得者、経験者の増加 等、適切な職員配置を早急に図るべきである。 3 提言の意味  以上、2つの提言については、監査の結果たる指摘という形としてはいないが、 監査人は、岐阜市が生活保護事務の執行をするにあたって、最も真摯に取り組む べきものであると考えているものである。 第4 最後に  生活保護は、「最後のセーフティネット」である。  岐阜市民の立場からみると、岐阜市の生活保護事務が適切になされることは、 岐阜市で安心して暮らすことができるということである。  岐阜市の立場からみるとどうであろうか。生活保護事務は、最低限度の生活 を保障する側面とともに、その人に応じた自立助長を目的とするもので、人が 人らしく生きることを手助けする本来生産的な事務のはずである。  決して「負」の仕事ではない。  岐阜市の生活保護事務が適切になされることに向けて、本監査が少しでもそ の助けとなることを切に願い、本監査報告を終える。 巻末資料              指摘及び意見一覧表 第1 はじめに  本監査における指摘及び意見の一覧は、「第2」記載のとおりである。  「指摘」は合計124個、「意見」は合計93個である。  「指摘」と「意見」の定義は次のとおりである。指摘をしていても改善が確 認できたものは【改善報告】と記載している。
    ┌──┬─────┬───────────────────────┐ │指摘│べきである│違法又は不当であり、是正・改善を求めるもの  │ ├──┼─────┼───────────────────────┤ │意見│のぞましい│違法又は不当ではないが、是正・改善を求めるもの│ └──┴─────┴───────────────────────┘ 第2 一覧表 ┌──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┐ │番号│  対象(課)  │指摘│意見│        内      容         │頁 │ ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第4章 相談から保護開始決定・通知に至るまでの事務   指摘26 意見18            │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │1 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【住民に対する生活保護制度の周知】        │ 41│ │  │         │  │  │岐阜県部長通知に従い、生活福祉一課・二課の窓口に │  │ │  │         │  │  │パンフレット等を配置すべきである。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │2 │生活福祉一課・二課│  │意見│【住民に対する生活保護制度の周知】        │ 42│ │  │         │  │  │現状の取り組みに加えて、例えば生活保護制度に関す │  │ │  │         │  │  │るパンフレットを市の関与する施設に配置するなど  │  │ │  │         │  │  │の方法により、生活困窮者が生活保護制度を知る機会 │  │ │  │         │  │  │を増やすことが望ましい。             │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │3 │生活福祉一課・二課│  │意見│【挙証資料の教示】                │ 43│ │  │         │  │  │「申請時の必要書類」という表現は、相談者に資料の │  │ │  │         │  │  │提出が申請の要件であるとの誤解を持たれかねない  │  │ │  │         │  │  │表現であるから、例えば「申請の際に持参して欲しい │  │ │  │         │  │  │もの」等の表現に変更することが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │4 │生活福祉一課・二課│  │意見│【面接記録票の記載状況】             │ 43│ │  │         │  │  │今後は、面接記録票の重要性を再認識し、記載項目は │  │ │  │         │  │  │漏れなく全て記載するとともに、誰が見ても読みやす │  │ │  │         │  │  │く記載すべきである。               │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │5 │生活福祉一課・二課│  │意見│【面接結果の記載項目】              │ 44│ │  │福祉政策課    │  │  │申請権の侵害の疑義が生じないように、岐阜市生活保 │  │ │  │         │  │  │護法施行細則様式第1号(第2条関係)を改定し、面 │  │ │  │         │  │  │接記録票に面接結果を記載することが望ましい。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │6 │生活福祉一課・二課│  │意見│【申請に至らなかった面接記録票の整理方法】    │ 45│ │  │         │  │  │申請に至らなかった面接記録票の綴りに日づけごと  │  │ │  │         │  │  │にインデックスを付けるなど、面接記録票の整理方法 │  │ │  │         │  │  │を検討することが望ましい。            │  │ │  │         │  │  │【改善報告】                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │7 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【面接記録票の承認方法】             │ 46│ │  │         │  │  │面接記録票を1枚ずつ承認したことを明確にするた  │  │ │  │         │  │  │め、承認印は1枚ずつ押すべきである。       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │8 │生活福祉一課・二課│  │意見│【面接の効率化】                 │ 46│ │  │福祉政策課    │  │  │面接の効率化を意識するために、岐阜市生活保護法施 │  │ │  │         │  │  │行細則様式第1号(第2条関係)を改定し、面接記録 │  │ │  │         │  │  │票に面接にかかった時間を記入する欄を設け、記入す │  │ │  │         │  │  │るなどにより、現状を把握することが望ましい。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │9 │生活福祉一課・二課│  │意見│【面接相談室】                  │ 47│ │  │         │  │  │担当課としては、管財課に専用の面接室設置の要望を │  │ │  │         │  │  │することが望ましい。また、専用の面接室の常置が困 │  │ │  │         │  │  │難であったとしても、例えば、別の課の空いているス │  │ │  │         │  │  │ペースを借りる等、できる限りプライバシーが守られ │  │ │  │         │  │  │た空間の確保を管財課に相談することが望ましい。  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │10 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【個人情報利用の範囲】              │ 48│ │  │         │  │  │面接時における個人情報の利用に際しては、岐阜市個 │  │ │  │         │  │  │人情報保護条例第10条第2項を遵守すべきである。  │  │ │  │         │  │  │【一部改善報告】                 │  │ │  │         │  │  │職員に対し、面接の時点で利用する情報は要保護者本 │  │ │  │         │  │  │人及び同居の親族に限るように指導し、平成28年1  │  │ │  │         │  │  │月時点では当該指導に沿った運用がなされていると  │  │ │  │         │  │  │のことである。                  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │11 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【個人情報の利用申請書の記載】          │ 49│ │  │         │  │  │面接の段階において個人情報の利用を行うのであれ  │  │ │  │         │  │  │ば、個人情報の利用申請書の「保護申請者」、「生活保│  │ │  │         │  │  │護受給者」という記載を、「要保護者」に変更すべき │  │ │  │         │  │  │である。                     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │12 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【システム利用職員】               │ 50│ │  │         │  │  │違法な税務情報の利用を予防するため、システムを利 │  │ │  │         │  │  │用する職員を限定すべきである。          │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │13 │生活福祉一課・二課│  │意見│【情報利用の監査】                │ 50│ │  │         │  │  │定期的にアクセスログをたどり、個人情報の違法な利 │  │ │  │         │  │  │用がなされていないかどうか、課長・係長による内部 │  │ │  │         │  │  │監査をすることが望ましい。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │14 │生活福祉一課・二課│  │意見│【面接事務の質の確保】              │ 51│ │  │         │  │  │面接相談員用の事務のマニュアルを作成し、面接記録 │  │ │  │         │  │  │票の記載から個人情報の取扱まで、面接全般に係る研 │  │ │  │         │  │  │修を定期的に実施していくことが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │15 │福祉政策課    │指摘│  │【柳津分室-事務の根拠規定】           │ 52│ │  │         │  │  │今後も、柳津分室において生活保護相談業務を行うの │  │ │  │         │  │  │であれば、要綱等、事務の根拠規定を制定すべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │16 │柳津分室     │  │意見│【柳津分室-生活福祉一課・二課との連携体制】   │ 52│ │  │生活福祉一課・二課│  │  │柳津分室においても面接記録票を利用するなどして  │  │ │  │         │  │  │相談内容を記録し、当該記録票をファクシミリで送信 │  │ │  │         │  │  │するなどの方法で生活福祉一課・二課に引き継ぐこと │  │
    │  │         │  │  │が望ましい。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │17 │柳津分室     │指摘│  │【柳津分室-挙証資料の教示】           │ 53│ │  │         │  │  │相談者に挙証資料の提出が申請の要件であるとの誤  │  │ │  │         │  │  │解を持たれかねない表現は、改めるべきである。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │18 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【生活保護申請書その他の提出書類の代筆】     │ 55│ │  │         │  │  │要保護者本人の意思能力がないと疑われる場合には、 │  │ │  │         │  │  │要保護者の扶養義務者又は同居の親族を申請者とす  │  │ │  │         │  │  │るか、生活保護法第25条により職権をもって保護を  │  │ │  │         │  │  │開始することを検討すべきである。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │19 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【生活保護申請書その他の提出書類の代筆】     │ 55│ │  │         │  │  │各書類を申請者以外の者に代筆させる場合には、各書 │  │ │  │         │  │  │類において、代筆である旨及び代筆者名を記載させる │  │ │  │         │  │  │とともに、ケース記録において、代筆をさせた理由、 │  │ │  │         │  │  │代筆者名及び申請者と代筆者の関係を記録すべきで  │  │ │  │         │  │  │ある。                      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │20 │生活福祉一課・二課│  │意見│【資産申告書の敷金欄の追加】           │ 55│ │  │福祉政策課    │  │  │岐阜市生活保護法施行細則の改正により、資産申告書 │  │ │  │         │  │  │に敷金の記載欄を設けることが望ましい。      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │21 │生活福祉一課・二課│  │意見│【敷金返還請求権の確認方法】           │ 56│ │  │         │  │  │敷金返還請求の可否及び額を明らかにするため、賃貸 │  │ │  │         │  │  │借契約書の写しの提出を求めることが望ましい。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │22 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【訪問調査の実施期間】              │ 57│ │  │         │  │  │申請書等を受理した日から1週間以内に訪問調査を  │  │ │  │         │  │  │行うべきである。                 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │23 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【訪問調査の実施期間経過にかかる措置】      │ 57│ │  │         │  │  │仮に1週間以内に訪問調査を行うことができなかっ  │  │ │  │         │  │  │た場合には、その理由を記録化しておくべきである。 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │24 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産処分の確認方法】              │ 58│ │  │         │  │  │自動車の処分確認にあたっては、要保護者から提出を │  │ │  │         │  │  │受けた車検証の写しの所有者欄だけでなく使用者欄  │  │ │  │         │  │  │も必ず確認するとともに、使用実態を確認すべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │25 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産処分の確認方法】              │ 59│ │  │         │  │  │自動車の処分確認にあたっては、要保護者から車検証 │  │ │  │         │  │  │の写しの提出を受けるなどして処分の事実を確認し、 │  │ │  │         │  │  │その結果をケース記録に記載すべきである。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │26 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【重点的扶養能力調査対象者に対する実地調査】   │ 61│ │  │         │  │  │個々のケースに照らし、実地調査を検討し、その判断 │  │ │  │         │  │  │および理由をケース記録に明記すべきである。    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │27 │生活福祉一課・二課│  │意見│【重点的扶養能力調査対象者の認定】        │ 61│ │  │         │  │  │重点的扶養能力調査対象者該当性について、統一的な │  │ │  │         │  │  │判断基準を設けるか、ケース診断会議に諮るなどし  │  │ │  │         │  │  │て、個々の現業員による判断の不統一を防止すること │  │ │  │         │  │  │が望ましい。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │28 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【扶養照会の発送時期】              │ 62│ │  │         │  │  │扶養義務者の住所が判明した場合には速やかに扶養  │  │ │  │         │  │  │照会を行うべきである。              │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │29 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【仕送りの収入認定】               │ 62│ │  │         │  │  │扶養義務者から仕送りをする旨の回答があった場合  │  │ │  │         │  │  │には、要保護者及び扶養義務者に対して仕送りの有無 │  │ │  │         │  │  │を確認し、仕送りをしていた場合には、収入認定すべ │  │ │  │         │  │  │きである。                    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │30 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【法第24条第8項による通知の適用】        │ 64│ │  │         │  │  │生活保護法第24条第8項による通知の適用について  │  │ │  │         │  │  │は、生活保護法施行規則の要件及び「明らかに扶養義 │  │ │  │         │  │  │務を履行することが可能と認められる扶養義務者」に │  │ │  │         │  │  │該当するかどうかを確認し、その過程を記録すべきで │  │ │  │         │  │  │ある。                      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │31 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ケース診断会議の記録化】            │ 66│ │  │         │  │  │会議において検討すべき事項を記載した議事録の書  │  │ │  │         │  │  │式を定め、当該書式に沿って議事を進行し、会議の経 │  │ │  │         │  │  │過や判断根拠となる資料を議事録に記録すべきであ  │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │32 │生活福祉一課・二課│  │意見│【保護台帳世帯名簿の敷金欄の追加】        │ 66│ │  │福祉政策課    │  │  │岐阜市生活保護法施行細則の改正により、保護台帳兼 │  │ │  │         │  │  │世帯名簿に敷金の記載欄を設けることが望ましい。  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │33 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【援助方針の記載】                │ 66│ │  │         │  │  │援助方針については、世帯個々の実情を踏まえて、で │  │ │  │         │  │  │きるだけ具体的に記載すべきである。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │34 │生活福祉一課・二課│  │意見│【ケース格付】                  │ 68│ │  │         │  │  │ケース格付基準のあてはめに拘らず、ケース診断会議 │  │ │  │         │  │  │において、被保護者の個々の状況に応じたケース格付 │  │ │  │         │  │  │等の対応を検討することが望ましい。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │35 │生活福祉一課・二課│  │意見│【決定通知の時期】                │ 70│ │  │         │  │  │延長理由に正当性がある場合はやむを得ないが、あく │  │ │  │         │  │  │まで14日以内の通知に努めることが望ましい。    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │36 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【決定通知書の理由明示】             │ 71│ │  │         │  │  │申請から保護の決定通知までに14日を超過する場合  │  │ │  │         │  │  │には、決定通知書に理由を明示すべきである。    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤
    │37 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【保護決定通知書の写しの扱い】          │ 71│ │  │         │  │  │保護決定通知書写しを作成して記録に添付しておく  │  │ │  │         │  │  │べきである。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │38 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【保護決定通知書の作成日付】           │ 72│ │  │         │  │  │保護決定通知書の作成日付が保護決定調書の決裁日  │  │ │  │         │  │  │よりも前の日付となる状態は是正すべきである。   │  │ │  │         │  │  │【改善報告】                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │39 │生活福祉一課・二課│  │意見│【決定の通知方法】                │ 72│ │  │         │  │  │保護決定通知書の交付にあたっては、手渡しによる場 │  │ │  │         │  │  │合には交付した日付を、郵便の場合には発送した日付 │  │ │  │         │  │  │を、ケース記録に記載することが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │40 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【取下げに際しての意思能力の確認】        │ 73│ │  │         │  │  │申請者の意思能力に疑念が生じるような場合には、申 │  │ │  │         │  │  │請者の意思能力の有無を確認し、意思能力がないと判 │  │ │  │         │  │  │断されたときは、却下すべきである。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │41 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【取下書の代筆】                 │ 74│ │  │         │  │  │取下書が代筆によってなされている場合、申請者の取 │  │ │  │         │  │  │下げ意思を確認し、その意思を確認した旨の記録を確 │  │ │  │         │  │  │実に残しておくべきである。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │42 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【取下げの任意性】                │ 74│ │  │         │  │  │申請者の納得が得られないような場合には、無理に取 │  │ │  │         │  │  │下げを説得するのではなく、却下にて対応すべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │43 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【取下げの場合におけるケース診断会議の開催】   │ 75│ │  │         │  │  │取下げ事案については、全件ケース診断会議に付した │  │ │  │         │  │  │上、その記録化をすべきである。          │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │44 │生活福祉一課・二課│  │意見│【却下の場合におけるケース診断会議の記録方法】  │ 76│ │  │         │  │  │却下事案については、ケース診断会議を行ったことの │  │ │  │         │  │  │記録だけでなく、その日時や出席者、議論状況など具 │  │ │  │         │  │  │体的な記録をすることが望ましい。         │  │ ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第5章 地区担当現業員の事務              指摘21 意見18            │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │45 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【援助方針やケース格付の変更】          │ 80│ │  │         │  │  │ケース診断会議を開くなどして、組織的に、統一され │  │ │  │         │  │  │た基準で、ケース格付変更を行うべきである。    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │46 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ケース診断会議録】               │ 80│ │  │         │  │  │訪問計画策定時において、訪問格付の見直しを適切に │  │ │  │         │  │  │実施するために、訪問格付の判定根拠資料について、 │  │ │  │         │  │  │ケース記録やケース診断会議録などに明示すべきで  │  │ │  │         │  │  │ある。                      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │47 │生活福祉一課・二課│  │意見│【市外の施設入所者についてのケース格付】     │ 81│ │  │         │  │  │被保護者が他市の施設へ移った場合は、帰来意思や移 │  │ │  │         │  │  │る期間も考慮した上で、実施機関が岐阜市福祉事務所 │  │ │  │         │  │  │のままでよいのか、移送の必要がないのか、ケース診 │  │ │  │         │  │  │断会議等で組織的に検討することが望ましい。    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │48 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【訪問計画】                   │ 84│ │  │         │  │  │現業員は、ケース格付に従って策定された年度訪問計 │  │ │  │         │  │  │画に従い、訪問調査を行うべきである。       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │49 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【訪問調査の実質化】               │ 84│ │  │         │  │  │現業員から電話連絡をし、次回の面談予定日を決めて │  │ │  │         │  │  │おくなどすることで、訪問調査において、確実に面談 │  │ │  │         │  │  │できるようにすべきである。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │50 │生活福祉一課・二課│  │意見│【査察指導員の同行】               │ 85│ │  │         │  │  │査察指導員が、現業員の訪問調査に同行する基準や目 │  │ │  │         │  │  │安を決めることが望ましい。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │51 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【訪問調査活動結果の記録化】           │ 86│ │  │         │  │  │訪問調査後は、原則として当日中に、ケース記録を記 │  │ │  │         │  │  │載し、速やかに査察指導員に提出すべきである。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │52 │生活福祉一課・二課│  │意見│【訪問調査時の資料確認】             │ 86│ │  │         │  │  │訪問調査の際には、本人に通帳や給料明細書など一定 │  │ │  │         │  │  │の資料の提出を求めるなどして確認し、確認した内容 │  │ │  │         │  │  │は、少なくとも、ケース記録に明記することが望まし │  │ │  │         │  │  │い。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │53 │生活福祉一課・二課│  │意見│【訪問調査時の資料確認】             │ 86│ │  │         │  │  │規則やマニュアルで、組織的に、訪問調査の際の資料 │  │ │  │         │  │  │確認を義務付けることが望ましい。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │54 │生活福祉一課・二課│  │意見│【訪問調査の水準確保】              │ 86│ │  │         │  │  │訪問調査のマニュアルや準則等を策定し、その上で、 │  │ │  │         │  │  │毎年、訪問調査についての研修(新人に限らない)や │  │ │  │         │  │  │意見交換会を実施することが望ましい。       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │55 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産の実態把握・不動産】            │ 89│ │  │         │  │  │不動産保有ケースを把握するための台帳を整備すべ  │  │ │  │         │  │  │きである。                    │  │ │  │         │  │  │【改善報告】                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │56 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産の実態把握・不動産】            │ 90│ │  │         │  │  │各ケース記録にも、当該不動産についての土地家屋等 │  │ │  │         │  │  │資産管理台帳(個別シート)を綴じるべきである。  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │57 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産処分の指導】                │ 91│ │  │         │  │  │処分すべき資産がある場合には、ケース診断会議で資 │  │ │  │         │  │  │産処分の目標時期を設定するなどして、積極的に指導 │  │
    │  │         │  │  │すべきである。                  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │58 │生活福祉一課・二課│  │意見│【資産の実態把握・預貯金】            │ 91│ │  │         │  │  │施設に入所しており、施設が通帳等を管理しているケ │  │ │  │         │  │  │ースについては、施設から、訪問調査時を含めて、定 │  │ │  │         │  │  │期的に、通帳の写しを提出させることを検討すること │  │ │  │         │  │  │が望ましい。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │59 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産処分の指導】                │ 92│ │  │         │  │  │自動車の処分を援助方針の一つとしている場合は、保 │  │ │  │         │  │  │護開始決定時から遅くとも1年経過するまでに自動  │  │ │  │         │  │  │車を適切に処分するよう指導すべきである。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │60 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産の実態把握・自動車】            │ 93│ │  │         │  │  │速やかに、資産保有台帳において、日々の業務に活用 │  │ │  │         │  │  │するための自動車保有台帳を作成するか、岐阜県施行 │  │ │  │         │  │  │事務監査資料として作成した自動車保有台帳を活用  │  │ │  │         │  │  │すべきである。                  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │61 │生活福祉一課・二課│  │意見│【資産の実態把握・自動車】            │ 93│ │  │         │  │  │自動車保有台帳を査察指導員が確認し、自動車の処分 │  │ │  │         │  │  │ができていない状態が1年以上経過しているケース  │  │ │  │         │  │  │については、その状態や理由を確認することが望まし │  │ │  │         │  │  │い。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │62 │生活福祉一課・二課│  │意見│【資産の実態把握・自動車】            │ 93│ │  │         │  │  │自動車の価値の判断基準を定めることが望ましい。  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │63 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産の実態把握・敷金】             │ 95│ │  │         │  │  │被保護者の転居の際には、旧契約の敷金返還請求権に │  │ │  │         │  │  │ついて確認し、確認状況をケース記録に残すべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │64 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産の実態把握・損害賠償請求権】        │ 95│ │  │         │  │  │被保護世帯に損害賠償請求権を有する者がいる場合、 │  │ │  │         │  │  │その支払いの有無を定期的に確認し、確認状況をケー │  │ │  │         │  │  │ス記録に残すべきである。             │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │65 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【日常生活自立支援】               │ 98│ │  │         │  │  │「高齢者健康維持・向上プログラム」「生活習慣病患 │  │ │  │         │  │  │者健康管理プログラム」など、日常生活自立支援のた │  │ │  │         │  │  │めのプログラムを実施すべきである。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │66 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【社会生活自立支援】               │ 98│ │  │         │  │  │例えば、社会福祉協議会を通じた公園清掃などの「社 │  │ │  │         │  │  │会参加活動プログラム」のような社会生活自立支援の │  │ │  │         │  │  │ためのプログラムを実施すべきである。       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │67 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【自立助長のための相談・援助】          │ 99│ │  │         │  │  │相談及び助言をしたことについては、例え、毎回、同 │  │ │  │         │  │  │じ内容であったとしても、必ずケース記録に記載すべ │  │ │  │         │  │  │きである。                    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │68 │生活福祉一課・二課│  │意見│【保健指導】                   │ 101│ │  │         │  │  │保健指導にあたっては、専門的なケース診断が必要と │  │ │  │         │  │  │なる場合には医師などの専門家の意見を求めるなど  │  │ │  │         │  │  │して、ケースを的確に把握し、その上で、指導の実施 │  │ │  │         │  │  │状況について経過観察と結果の確認をし、ケース記録 │  │ │  │         │  │  │に記載することが望ましい。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │69 │生活福祉一課・二課│  │意見│【保健指導】                   │ 101│ │  │         │  │  │ケースによっては、医師や看護師、保健師などの専門 │  │ │  │         │  │  │家と同行訪問する等して連携することが望ましい。  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │70 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【文書指導】                   │ 101│ │  │         │  │  │ケース診断会議において、文書指導を決定した記録を │  │ │  │         │  │  │残すため、議事録を残すべきである。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │71 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【文書指導の活用】                │ 102│ │  │         │  │  │不正受給により法第78条の適用を受けた受給者につ  │  │ │  │         │  │  │いては、保護の停止・廃止を検討するなどして、再発 │  │ │  │         │  │  │を防止する必要があるため、文書指導を積極的に活用 │  │ │  │         │  │  │すべきである。                  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │72 │生活福祉一課・二課│  │意見│【文書指導の活用】                │ 102│ │  │         │  │  │就労指導に従わない被保護者などに対する文書指導  │  │ │  │         │  │  │の積極的な活用を検討することが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │73 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【停止期間中の指導】               │ 103│ │  │         │  │  │保護停止中の被保護者についても、生活状況の経過を │  │ │  │         │  │  │把握し、助言指導等を行うべきである。       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │74 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ケース記録の記載内容】             │ 103│ │  │         │  │  │「岐阜市生活保護事務の手引き 平成26年7月」に  │  │ │  │         │  │  │ある具体的な記載例を参考にするなどして、5W1H │  │ │  │         │  │  │を意識して、正確に記載すべきである。       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │75 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ケース記録の記載時期】             │ 105│ │  │         │  │  │ケース記録は、原則として、訪問調査等があった当日 │  │ │  │         │  │  │に記載すべきである。               │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │76 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ケース記録に綴じる書類】            │ 106│ │  │         │  │  │決定通知など現業員として作成に携わる書類は、ケー │  │ │  │         │  │  │ス記録にすべて綴じるべきである。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │77 │生活福祉一課・二課│  │意見│【ケース記録に綴じる書類】            │ 106│ │  │         │  │  │訪問調査の計画が分かる書面(査察指導票)など書類 │  │ │  │         │  │  │については、ケース記録に綴じることを検討すること │  │ │  │         │  │  │が望ましい。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤
    │78 │生活福祉一課・二課│  │意見│【ケース記録の綴じ方】              │ 106│ │  │         │  │  │ケース記録に綴じる文書のチェックリストについて、 │  │ │  │         │  │  │綴じるべき順番を記載することが望ましい。また、決 │  │ │  │         │  │  │定通知書など重要書類について、付箋を付けるなど検 │  │ │  │         │  │  │索性を高めることが望ましい。           │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │79 │生活福祉一課・二課│  │意見│【新規担当から地区担当への引継のタイミング】   │ 106│ │  │         │  │  │法第28条調査、法第29条調査が、終わった段階で、  │  │ │  │         │  │  │新規現業員から地区担当現業員に引き継ぐように、具 │  │ │  │         │  │  │体的な事務処理ルールを統一化することが望ましい。 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │80 │生活福祉一課・二課│  │意見│【新規担当から地区担当への引継書類】       │ 107│ │  │         │  │  │個別のケースごとに使用される引継書については、チ │  │ │  │         │  │  │ェックリスト方式にすることで、引継事項、注意事項 │  │ │  │         │  │  │の漏れをなくす工夫をすることが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │81 │生活福祉一課・二課│  │意見│【新規担当から地区担当への引継時の訪問調査】   │ 107│ │  │         │  │  │新規現業員は、地区担当現業員の最初の訪問調査に同 │  │ │  │         │  │  │行することが望ましい。              │  │ │  │         │  │  │【改善報告】                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │82 │生活福祉一課・二課│  │意見│【担当変更時の引継】               │ 108│ │  │         │  │  │個別のケースごとに使用される引継書については、チ │  │ │  │         │  │  │ェックリスト方式にすることで、引継事項、注意事項 │  │ │  │         │  │  │の漏れをなくす工夫をすることが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │83 │生活福祉一課・二課│  │意見│【担当変更時の訪問調査】             │ 108│ │  │         │  │  │旧地区担当現業員は、新地区担当現業員の最初の訪問 │  │ │  │         │  │  │調査に同行することが望ましい。          │  │ │  │         │  │  │【改善報告】                   │  │ ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第6章 就労自立に向けた事務              指摘7 意見11            │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │84 │生活福祉一課・二課│  │意見│【就労可能対象者の判断】             │ 114│ │  │         │  │  │稼動年齢対象者だけではなく、被保護世帯全体を踏ま │  │ │  │         │  │  │えた就労可能対象者のリストを作成することが望ま  │  │ │  │         │  │  │しい。                      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │85 │生活福祉一課・二課│  │意見│【就労支援プログラムの効果】           │ 117│ │  │         │  │  │就労可能者であって就労支援を必要としていない者  │  │ │  │         │  │  │についても、当プログラムの意義を説明するなどして │  │ │  │         │  │  │理解をしてもらい、できるだけ当プログラムに参加し │  │ │  │         │  │  │てもらえるように助言することが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │86 │生活福祉一課・二課│  │意見│【生活再生雇用事業】               │ 118│ │  │         │  │  │効果という観点などから現状を分析し、実施内容の改 │  │ │  │         │  │  │善を図ることができないか、場合によっては、実施の │  │ │  │         │  │  │継続の有無について、検討することが望ましい。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │87 │生活福祉一課・二課│  │意見│【キャリアカウンセリング事業】          │ 120│ │  │         │  │  │効果という観点などから現状を分析し、実施について │  │ │  │         │  │  │の改善を図ることがないか検討することが望ましい。 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │88 │生活福祉一課・二課│  │意見│【就労体験事業-設計金額】            │ 121│ │  │         │  │  │補助金で事業費の100%が賄われるにしても、前年度  │  │ │  │         │  │  │の単価や参加率を考慮し、できるだけ正確に設計金額 │  │ │  │         │  │  │を算定することが望ましい。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │89 │生活福祉一課・二課│  │意見│【就労体験事業-効果検証】            │ 121│ │  │         │  │  │現状把握、分析をし、当事業の継続については再検討 │  │ │  │         │  │  │することが望ましい。               │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │90 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【就労体験事業-事業評価シート】         │ 122│ │  │         │  │  │事業評価シートを使用せず評価する事務事業には該  │  │ │  │         │  │  │当しない以上、事業評価シートを必ず作成すべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │91 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【自立活動確認書の扱い】             │ 124│ │  │         │  │  │自立活動確認書の作成を一切求めていないという現  │  │ │  │         │  │  │在の事務執行を今後も継続することが妥当であるか  │  │ │  │         │  │  │早急に検討すべきである。             │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │92 │生活福祉一課・二課│  │意見│【就労活動促進費】                │ 124│ │  │         │  │  │上記確認書の作成に対する岐阜市のスタンス次第で  │  │ │  │         │  │  │はあるが、確認書を作成するということがあれば、利 │  │ │  │         │  │  │用を検討することが望ましい。           │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │93 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【求職活動状況・収入申告書の提出】        │ 125│ │  │         │  │  │稼働能力の活用状況を毎月確認するためにも、求職活 │  │ │  │         │  │  │動状況・収入申告書は毎月提出させるべきである。  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │94 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【収入申告書等の整理】              │ 125│ │  │         │  │  │提出を受けた収入申告書、求職活動状況・収入申告書 │  │ │  │         │  │  │は、ケース台帳ごとに整理すべきである       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │95 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【就労・求職状況管理台帳の記載】         │ 126│ │  │         │  │  │査察指導員を中心に、どのような目的で作成する書面 │  │ │  │         │  │  │であるかを担当現業員に周知した上で、担当現業員に │  │ │  │         │  │  │て確実な記載をすべきである。           │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │96 │生活福祉一課・二課│  │意見│【就労指導】                   │ 127│ │  │         │  │  │各種通知では、指導指示の検討順序が具体的に定めら │  │ │  │         │  │  │れているので、これに従い、順序を踏まえて、就労に │  │ │  │         │  │  │かかる指導指示を適切に実施することが望ましい。  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │97 │生活福祉一課・二課│  │意見│【事務マニュアル】                │ 128│ │  │         │  │  │就労自立に向けた事務執行がより組織的・効率的に行 │  │ │  │         │  │  │われるようにするためにも、就労自立に向けた事務全 │  │ │  │         │  │  │般のマニュアルを作成することが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤
    │98 │生活福祉一課・二課│  │意見│【就労自立給付金の周知】             │ 131│ │  │         │  │  │毎年1回は必ず研修を実施するなどして、就労自立給 │  │ │  │         │  │  │付金を確実に周知できる体制を構築することが望ま  │  │ │  │         │  │  │しい。                      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │99 │生活福祉一課・二課│  │意見│【就労自立給付金の算定書類】           │ 132│ │  │         │  │  │支給要件の確認に必要な書類の提出は義務ではない  │  │ │  │         │  │  │が、支給の決定に必要があると考えた場合は躊躇する │  │ │  │         │  │  │ことなく、書類の提出を求めることが望ましい。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │100 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【就労自立給付金の算定チェック】         │ 133│ │  │         │  │  │担当現業員の責任において正しく入力するようにし、 │  │ │  │         │  │  │各現業員に計算を任せるのではなく、査察指導員な  │  │ │  │         │  │  │ど、他の職員がチェックする体制を整えるべきであ  │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │101 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【就労自立給付金の起案・決済書類】        │ 134│ │  │         │  │  │決裁文書については、ケース記録中に整理すべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第7章 保護費                     指摘22 意見19            │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │102 │生活福祉一課・二課│  │意見│【振込依頼書の控え等の取扱い】          │ 138│ │  │         │  │  │効率化の観点から、被保護者と直接事務処理を行う担 │  │ │  │         │  │  │当課として、振込依頼書の控えや領収書の写し等の資 │  │ │  │         │  │  │料を、保護費支給の証拠書類として残すことが望まし │  │ │  │         │  │  │い。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │103 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ホームレス領収書の保管】            │ 139│ │  │         │  │  │現金の収支の動きを表す「ホームレス領収書」は、パ │  │ │  │         │  │  │ソコンの故障等不測の事態に備えるため、紙で出力し │  │ │  │         │  │  │て保管すべきである。               │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │104 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【小口現金の取扱い】               │ 139│ │  │         │  │  │不正経理防止のため、小口現金の処理規程を早急に作 │  │ │  │         │  │  │成すべきである。                 │  │ │  │         │  │  │【改善予定】                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │105 │生活福祉一課・二課│  │意見│【ホームレス支給の審査】             │ 139│ │  │         │  │  │ホームレスへの支給のうち保証金・敷金等の支給は、 │  │ │  │         │  │  │生活保護の決定前に行われるため、不正受給が行われ │  │ │  │         │  │  │ていた場合の返還金・徴収金の遡及ができない。特に │  │ │  │         │  │  │保証金・敷金等の支給は高額となるため、支給に際し │  │ │  │         │  │  │ては、ホームレス及び不動産仲介業者の審査等を厳格 │  │ │  │         │  │  │に行うことが望ましい。              │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │106 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【医療扶助審議会】                │ 142│ │  │         │  │  │医療扶助の適正化の実現に向けて、最低でも年に1  │  │ │  │         │  │  │回、医療扶助審議会を開催すべきである。      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │107 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【嘱託医の勤務状況】               │ 144│ │  │         │  │  │嘱託医の勤務時間は、要綱どおり勤務させるべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │108 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【嘱託医事務処理状況日計表】           │ 144│ │  │         │  │  │嘱託医の実際の勤務時間を把握した上で報酬を支給  │  │ │  │         │  │  │するため、嘱託医事務処理状況日計表には実際の勤務 │  │ │  │         │  │  │時間を記録すべきである。             │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │109 │生活福祉一課・二課│  │意見│【嘱託医への委託内容】              │ 145│ │  │         │  │  │医療扶助費の削減に向けて、嘱託医の役割は大きく、 │  │ │  │         │  │  │より綿密な医療要否意見書の検討や要保護者に対す  │  │ │  │         │  │  │る調査・指導を行うためにも、一件あたりの処理時間 │  │ │  │         │  │  │を多く確保する必要があると考えられる。まず要綱ど │  │ │  │         │  │  │おりの勤務時間で職務を行うことを前提に、勤務時間 │  │ │  │         │  │  │の延長等の対応を検討することが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │110 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【タクシー券の交付そのものの考え方】       │ 147│ │  │         │  │  │医療扶助における移送費の不正受給を防ぐためにも、 │  │ │  │         │  │  │タクシー券の交付は極力避けるべきである。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │111 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【タクシー券の交付基準・手続規程】        │ 149│ │  │         │  │  │タクシー券の交付を継続するのであれば、タクシー利 │  │ │  │         │  │  │用及びタクシー券交付の適否を審査するための基準  │  │ │  │         │  │  │と手続規程を早急に作成すべきである。その際には、 │  │ │  │         │  │  │岐阜市生活保護医療扶助審議会を活用するなど組織  │  │ │  │         │  │  │的に検討できるようなものにすべきである。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │112 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【タクシー券の管理方法】             │ 149│ │  │         │  │  │納品の際の冊数、チケット番号を記載する管理簿を速 │  │ │  │         │  │  │やかに作成すべきである。             │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │113 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【タクシー券の発行簿】              │ 151│ │  │         │  │  │タクシー券発行簿に会計担当の確認欄も設けるべき  │  │ │  │         │  │  │である。                     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │114 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【タクシー券の発行簿】              │ 151│ │  │         │  │  │タクシー券を一冊ずつ番号順に発行することにより、 │  │ │  │         │  │  │タクシー券の管理状況を明確化すべきである。    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │115 │生活福祉一課・二課│  │意見│【タクシー券の使用状況】             │ 151│ │  │         │  │  │タクシー券の使用状況について適正であったかどう  │  │ │  │         │  │  │かは、現業員が確認しなければ分からない。     │  │ │  │         │  │  │現業員が経理担当と連携し、医療目的外に使用される │  │ │  │         │  │  │などの不正使用が行われないよう被保護者に指導す  │  │ │  │         │  │  │る体制を強化することが望ましい。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │116 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【タクシー会社との契約書類の保管】        │ 152│ │  │         │  │  │タクシー券の発行依頼書や利用申請書など契約行為  │  │ │  │         │  │  │に類する書類を作成する場合は、当該書類を永年保存 │  │
    │  │         │  │  │すべきである。                  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │117 │契約課      │指摘│  │【タクシー会社との契約方法】           │ 153│ │  │         │  │  │地方自治法において、契約は、入札が原則である。例 │  │ │  │         │  │  │外となる随意契約においては、その理由は明確でなけ │  │ │  │         │  │  │ればならない。                  │  │ │  │         │  │  │随意契約というのであれば、その理由を、書類上で明 │  │ │  │         │  │  │確にすべきである。                │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │118 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【タクシー会社との契約と見積り】         │ 154│ │  │         │  │  │タクシー券を利用するのであれば、複数の見積りを徴 │  │ │  │         │  │  │収すべきである。                 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │119 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【タクシー会社との契約と契約書】         │ 155│ │  │         │  │  │タクシー券の交付を継続するのであれば、タクシー会 │  │ │  │         │  │  │社との間で、監督及び検査や調査条項など岐阜市がタ │  │ │  │         │  │  │クシー券を管理するための条項を盛り込んだ契約書  │  │ │  │         │  │  │を作成すべきである。               │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │120 │生活福祉一課・二課│  │意見│【医療扶助の適切な実施】             │ 159│ │  │         │  │  │主治医等との意見調整件数を増やすことが望ましい。 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │121 │生活福祉一課・二課│  │意見│【医療扶助の適切な実施─長期入院】        │ 159│ │  │         │  │  │調査票の省略により、正確な履歴が残らず適切な措置 │  │ │  │         │  │  │が出来なくなる恐れがあるので、調査票は作成するこ │  │ │  │         │  │  │とが望ましい。                  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │122 │生活福祉一課・二課│  │意見│【医療扶助の適切な実施─頻回受診】        │ 161│ │  │         │  │  │調査票の省略により、正確な履歴が残らず、情報伝達 │  │ │  │         │  │  │が欠落し適正な指導が出来なくなる恐れがあるため、 │  │ │  │         │  │  │調査票は作成することが望ましい。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │123 │生活福祉一課・二課│  │意見│【後発医薬品の使用促進】             │ 165│ │  │         │  │  │全ての指定医療機関に対して通知回数を増やしたり、 │  │ │  │         │  │  │通知方法の改善等を行い、後発医薬品の使用促進を積 │  │ │  │         │  │  │極的に働きかけることが望ましい。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │124 │生活福祉一課・二課│  │意見│【医療扶助の適正な実施-総括】          │ 165│ │  │         │  │  │長期入院患者や精神科に関わる患者についての指導  │  │ │  │         │  │  │が非常に困難であることは理解できるが、現業員の能 │  │ │  │         │  │  │力向上、医療扶助審議会の活用等を含めて、不適切な │  │ │  │         │  │  │受診行動を抽出した後の対応について再考すること  │  │ │  │         │  │  │が望ましい。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │125 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【レセプト点検等業務委託契約-設計金額】     │ 168│ │  │         │  │  │同種契約を設計する際には、設計金額について、前年 │  │ │  │         │  │  │度実績を踏まえ、また、参考見積もりをとるなどして、│  │ │  │         │  │  │適正な積算をすべきである。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │126 │福祉政策課    │指摘│  │【レセプト点検等業務委託契約-設計金額】     │ 168│ │  │         │  │  │本件委託契約に関しては、同種の契約が複数年継続し │  │ │  │         │  │  │ているのであるから、当該書面だけをみて、設計金額 │  │ │  │         │  │  │が形式的に予算の範囲内に収まっているか否かのみ  │  │ │  │         │  │  │を確認するだけではなく、前年度の契約実績などと対 │  │ │  │         │  │  │比して、生活福祉一課・二課において適正な積算がな │  │ │  │         │  │  │されているかを確認すべきである。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │127 │契約課      │  │意見│【レセプト点検等業務委託契約-予定価格】     │ 169│ │  │         │  │  │今後は、相見積もりをとる形での随意契約であって  │  │ │  │         │  │  │も、一者随意契約理由書などを参考として、予定価格 │  │ │  │         │  │  │決定に際し、担当課における積算の根拠を契約課が確 │  │ │  │         │  │  │認できるような措置を講じることを検討することが  │  │ │  │         │  │  │望ましい。                    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │128 │契約課      │指摘│  │【レセプト点検等業務委託契約-「契約締結伺」の事 │ 170│ │  │         │  │  │務決裁】                     │  │ │  │         │  │  │事務決裁規則違反の可能性があり、そうであれば、次 │  │ │  │         │  │  │年度以降、同種の契約を締結する際には、契約依頼書 │  │ │  │         │  │  │兼執行伺書に福祉部長の決裁があることを確認すべ  │  │ │  │         │  │  │きである。                    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │129 │契約課      │  │意見│【単価契約の「契約締結伺」-事務決裁】      │ 170│ │  │         │  │  │明確性の見地から、岐阜市事務決裁規則 別表第1  │  │ │  │         │  │  │財務に関する事項 ア 支出負担行為等に関する事  │  │ │  │         │  │  │項 単価契約の「契約締結伺」と委託契約における「業│  │ │  │         │  │  │務委託設計書兼施行伺書」、「契約依頼書兼執行伺書」│  │ │  │         │  │  │との関係を明確にすることが望ましい。       │  │ │  │         │  │  │また、併せて、岐阜市事務決裁規則別表第2「個別専 │  │ │  │         │  │  │決事項」の契約課に関する事項において、契約課所管 │  │ │  │         │  │  │の単価契約の契約締結伺に関する事項を明記するこ  │  │ │  │         │  │  │とが望ましい。                  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │130 │契約課      │  │意見│【少額による随意契約と単価契約との関係性】    │ 171│ │  │         │  │  │解釈に疑義が生じないように、単価契約を締結するに │  │ │  │         │  │  │あたって、レセプト点検等業務委託契約が、岐阜市契 │  │ │  │         │  │  │約規則第28条の少額随意契約に該当するかどうかの  │  │ │  │         │  │  │判断基準を規則あるいは取扱要領などで明記するこ  │  │ │  │         │  │  │とが望ましい。                  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │131 │契約課      │指摘│  │【複数単価契約における契約者の選定方法】     │ 173│ │  │         │  │  │現状のように、複数単価契約を随意契約として扱うの │  │ │  │         │  │  │であれば、契約者の決定基準を設け、そして、それを │  │ │  │         │  │  │業者に周知すべきである。             │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │132 │契約課      │  │意見│【レセプト点検等業務委託契約の契約方法】     │ 173│ │  │         │  │  │レセプト点検等業務委託契約は、そもそも、複数単価 │  │ │  │         │  │  │という設定も含めて、本当に随意契約でなければ締結 │  │ │  │         │  │  │できない契約なのかを検証することが望ましい。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │133 │契約課      │  │意見│【複数単価契約の性質】              │ 174│
    │  │         │  │  │随意契約該当性を判断する担当の便宜という観点か  │  │ │  │         │  │  │らも、複数単価契約を随意契約ととらえるのであれ  │  │ │  │         │  │  │ば、何号に該当するのか、岐阜市随意契約ガイドライ │  │ │  │         │  │  │ン上に明確に定めることが望ましい。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │134 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【仕様書の記載】                 │ 175│ │  │         │  │  │業者に対し、頻回及び重複受診、向精神薬の重複処方、│  │ │  │         │  │  │重複請求の点検を行うことを求めるのであれば、現状 │  │ │  │         │  │  │の仕様書の見直しを考えるべきである。       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │135 │生活福祉一課・二課│  │意見│【仕様書の業務範囲の確認】            │ 176│ │  │         │  │  │契約をより効果的なものとするよう、契約書第23条  │  │ │  │         │  │  │第2項の場合はもちろんのこと、定期的に業者と協議 │  │ │  │         │  │  │の場をもつことを検討することが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │136 │契約課      │  │意見│【委託契約の業務の調査】             │ 176│ │  │         │  │  │委託契約書に基づき行われる調査手続について、担当 │  │ │  │         │  │  │課において、適時に実効的な調査ができるようにすべ │  │ │  │         │  │  │く、契約課が主導して、定期的に実際的な研修をする │  │ │  │         │  │  │ことが望ましい。                 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │137 │契約課      │  │意見│【委託契約の業務の調査時期】           │ 176│ │  │         │  │  │債務不履行責任等は契約終了後も追及しうるのであ  │  │ │  │         │  │  │るから、他の自治体等の実情も踏まえ、調査を契約後 │  │ │  │         │  │  │も実施できるようにする条項を入れることを検討す  │  │ │  │         │  │  │ることが望ましい。                │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │138 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【契約の履行確認】                │ 177│ │  │福祉政策課    │  │  │仕様書の業務内容を意識し、業務の検査が可能となる │  │ │  │         │  │  │業務報告書及び業務完了報告書の提出を求め、仕様書 │  │ │  │         │  │  │と照合して、実効的な完了検査を行うべきである。  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │139 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【現存する遺留金品の対応】            │ 183│ │  │         │  │  │現金、通帳は勿論のこと、現在保管する遺留金品につ │  │ │  │         │  │  │いて、相続人を調査するなどして、早急・適切に処分 │  │ │  │         │  │  │すべきである。                  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │140 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【今後の遺留金品に関する事務対応】        │ 184│ │  │         │  │  │早急に遺留金品の取扱いを定めた規程類を設けるべ  │  │ │  │         │  │  │きである。                    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │141 │生活福祉一課・二課│  │意見│【死亡者の預金通帳の取扱い】           │ 186│ │  │         │  │  │岐阜市としては、金融機関と協議の上、死亡者の預金 │  │ │  │         │  │  │通帳の払い戻しを受けるような運用の実現を検討す  │  │ │  │         │  │  │ることが望ましい。                │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │142 │生活福祉一課・二課│  │意見│【葬祭扶助費を上回る遺留金品の扱い】       │ 187│ │  │         │  │  │相続財産管理人選任にかかる取扱いを定めた根拠規  │  │ │  │         │  │  │定の作成を検討することが望ましい。        │  │ ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第8章 保護の停止及び廃止                指摘9 意見2        │  │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │143 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【停止の前提としての文書指導】          │ 192│ │  │         │  │  │指導義務違反を理由として停止する場合には、その前 │  │ │  │         │  │  │提として、文書による指導を行うべきである。    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │144 │生活福祉一課・二課│  │意見│【停止・廃止決定時のケース診断会議の開催】    │ 193│ │  │         │  │  │停止・廃止を決定する際には、全ケースについてケー │  │ │  │         │  │  │ス診断会議を開催することが望ましい。       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │145 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【決裁手続】                   │ 193│ │  │         │  │  │保護廃止決定通知書の発送は、福祉事務所長の決裁を │  │ │  │         │  │  │経た後にすべきである。              │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │146 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【辞退の際の指導・助言】             │ 194│ │  │         │  │  │国民健康保険の加入等の助言指導を行った旨は確実  │  │ │  │         │  │  │に記録すべきである。               │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │147 │生活福祉一課・二課│  │指摘│  │【保護停止等決定通知書の様式】       │ 195│ │  │福祉政策課    │  │  │現在使用している様式は、岐阜市生活保護法施行細則 │  │ │  │         │  │  │で定められているものではなく、使用を継続するので │  │ │  │         │  │  │あれば、同細則を改正すべきである。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │148 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【保護停止等決定通知書の理由の記載】       │ 195│ │  │         │  │  │保護停止決定通知書及び保護廃止決定通知書に停   │  │ │  │         │  │  │止・廃止の理由を明確に記載すべきである。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │149 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【保護停止期間中のケース管理】          │ 196│ │  │         │  │  │停止案件については、担当現業員任せにするのではな │  │ │  │         │  │  │く、停止事務の担当者を定め、停止ケースの一覧表等 │  │ │  │         │  │  │で管理できる体制をとるべきである。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │150 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【免除の基準】                  │ 198│ │  │         │  │  │適正かつ公平な適用を行うため、各類型に対応するこ │  │ │  │         │  │  │とができるような法第80条の免除をする場合の手続  │  │ │  │         │  │  │及びその基準を定めるべきである。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │151 │生活福祉一課・二課│  │意見│【停止・廃止決定と免除】             │ 199│ │  │         │  │  │停止・廃止の決定の際に行うべき会議において、免除 │  │ │  │         │  │  │の可否についても判断することが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │152 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【廃止時のケース記録の管理】           │ 199│ │  │         │  │  │作成した文書はケース記録に確実にファイリングし、 │  │ │  │         │  │  │ファイルの表紙には、整理し得るための記載をすべき │  │ │  │         │  │  │である。                     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │153 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【廃止後のケース記録の保存期間】         │ 200│ │  │         │  │  │遺留金品のあるケースについては、廃止後5年ではな │  │ │  │         │  │  │く、例外的に、遺留金品の処分時期と連動した保存期 │  │ │  │         │  │  │間を設けるべきである。              │  │
    ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第9章 費用返還及び徴収                指摘18 意見12            │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │154 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【扶助費算定の誤り防止】             │ 204│ │  │         │  │  │担当現業員が慎重に事務処理を行うべきことはもち  │  │ │  │         │  │  │ろんであるが、査察指導員及び課長等幹部職員におい │  │ │  │         │  │  │ては、日常のケース審査の強化、チェック表などを活 │  │ │  │         │  │  │用した扶助費算定誤りの未然防止又は早期発見の指  │  │ │  │         │  │  │導を徹底すべきである。              │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │155 │生活福祉一課・二課│  │意見│【年金遡及受給】                 │ 205│ │  │         │  │  │担当現業員においては、年金受給資格を得る年齢に達 │  │ │  │         │  │  │する月の確認、年金保険料の納付済期間、保険料免除 │  │ │  │         │  │  │期間及び合算対象期間の確認、障害がある場合は主治 │  │ │  │         │  │  │医訪問等により傷病の初診日及び障害の程度につい  │  │ │  │         │  │  │て聴取するなどによる年金受給権の可能性の検討を  │  │ │  │         │  │  │徹底することが望ましい。             │  │ │  │         │  │  │また、可能性があると判断された場合の年金申請につ │  │ │  │         │  │  │いての被保護者に対する助言指導、任意加入により年 │  │ │  │         │  │  │金受給権が得られる場合は任意加入手続、年金受給権 │  │ │  │         │  │  │を得られる可能性がない場合は脱退手当金の受給可  │  │ │  │         │  │  │否の確認、受給可能であれば請求手続の支援を徹底す │  │ │  │         │  │  │ることが望ましい。                │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │156 │生活福祉一課・二課│  │意見│【年金遡及受給】                 │ 205│ │  │         │  │  │査察指導員及び課長等幹部職員においては、保護開始 │  │ │  │         │  │  │時における年金等の受給権の確認の周知徹底、日常の │  │ │  │         │  │  │ケース審査の強化及びチェック表などを活用した一  │  │ │  │         │  │  │斉点検の実施などによって、他法他施策の活用を徹底 │  │ │  │         │  │  │すべきことについての指導を徹底することが望まし  │  │ │  │         │  │  │い。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │157 │生活福祉一課・二課│  │意見│【年金遡及受給】                 │ 205│ │  │         │  │  │障害年金に関しては、初診日の判断や身体障害者手帳 │  │ │  │         │  │  │の対象外の疾病でも支給対象になる場合があるなど  │  │ │  │         │  │  │専門的知識が必要な場合もあるため、年金調査員の非 │  │ │  │         │  │  │常勤任用等について検討すると望ましい。      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │158 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資力発生から決定通知までの期間】        │ 206│ │  │         │  │  │一括返済のケースを増やすよう、保護開始時及び保護 │  │ │  │         │  │  │開始後の調査において、法第63条や法第78条による  │  │ │  │         │  │  │リスクを想定し、被保護者の供述だけに頼るのではな │  │ │  │         │  │  │く、通帳などの根拠資料の確認を必ず行うなど厳格な │  │ │  │         │  │  │姿勢で取り組み、早期発見に努めるべきである。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │159 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資産処分と法第63条】              │ 207│ │  │         │  │  │口頭指導による指導指示に十分対応していないと判  │  │ │  │         │  │  │断される場合には、ケース診断会議に諮り、文書指導 │  │ │  │         │  │  │を積極的に活用すべきである。           │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │160 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【保護廃止と法第63条】              │ 207│ │  │         │  │  │資産処分がなされたら法第63条を適用することとし  │  │ │  │         │  │  │ていたところ、処分されないまま被保護者が死亡した │  │ │  │         │  │  │場合には、相続人から資産についての報告を求めると │  │ │  │         │  │  │ともに、法第63条を適用することを検討すべきであ  │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │161 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【保護廃止と法第63条】              │ 208│ │  │         │  │  │資産の取得が見込まれており、資産を取得したら法第 │  │ │  │         │  │  │63条を適用することとしていたところ、資産を取得  │  │ │  │         │  │  │しないまま保護廃止になった場合には、被保護者であ │  │ │  │         │  │  │った者から資産の取得についての報告を求めるとと  │  │ │  │         │  │  │もに、法第63条を適用することを検討すべきである。 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │162 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【法第78条の適用判断】              │ 210│ │  │         │  │  │法第63条と法第78条の違いや各々の適用判断に関す  │  │ │  │         │  │  │る正しい理解を全職員に周知徹底させ、法第78条を  │  │ │  │         │  │  │適用すべきケースに、法第63条ではなく、法第78   │  │ │  │         │  │  │条を適用するよう徹底すべきである。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │163 │生活福祉一課・二課│  │意見│【法第78条の適用判断】              │ 211│ │  │         │  │  │被保護者に対し、しおりを配布したり、同意書に署名 │  │ │  │         │  │  │させたりするのは当然であるが、資産や収入に関する │  │ │  │         │  │  │申告義務についての説明、指導、確認を個別具体的に │  │ │  │         │  │  │分かりやすく十分に行うことが望ましい。      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │164 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【資力認定の誤り】                │ 211│ │  │         │  │  │代理人口座に預り金がある場合、これを資産と認定  │  │ │  │         │  │  │し、本人の認識を確認した上で、法第63条または法  │  │ │  │         │  │  │第78条の適用を検討すべきである。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │165 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ケース診断会議の開催】             │ 212│ │  │         │  │  │法63条または法第78条を適用する際には、ケース診  │  │ │  │         │  │  │断会議を必ず開催し、組織的な協議検討を十分に行う │  │ │  │         │  │  │べきであるし、その過程を議事録として記録しておく │  │ │  │         │  │  │べきである。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │166 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【事務マニュアル】                │ 213│ │  │         │  │  │職員にとって明確な指標となる手引き・マニュアルを │  │ │  │         │  │  │作成し、それを周知徹底する措置をとるべきである。 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │167 │生活福祉一課・二課│  │意見│【一括返済の原則】                │ 215│ │  │         │  │  │早期発見を常に意識し、一括返済をさせるように取り │  │ │  │         │  │  │組むことが望ましい。               │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │168 │生活福祉一課・二課│  │意見│【分割返済の在り方】               │ 217│ │  │         │  │  │被保護者が申し出た返済額を安易に受け入れること  │  │ │  │         │  │  │なく、最低限の生活ができる範囲内で最大限に大きな │  │ │  │         │  │  │額としたり、就労指導を厳しく行ったりするなど、早 │  │ │  │         │  │  │期に全額回収できるよう厳格な姿勢で取り組むこと  │  │
    │  │         │  │  │が望ましい。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │169 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【法第63条の費用返還における代理納付】      │ 218│ │  │         │  │  │保護費から返還を受けることができれば簡便かつ確  │  │ │  │         │  │  │実に返還を受けることができることは理解できるが、 │  │ │  │         │  │  │法制度上、代理納付が許されていない以上は、代理納 │  │ │  │         │  │  │付をしないようにすべきである。          │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │170 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【法第78条の2に基づく代理納付】         │ 218│ │  │         │  │  │生活の維持に支障があるような特別な事情がある場  │  │ │  │         │  │  │合を除いては、法第78条の2に基づき、代理納付に  │  │ │  │         │  │  │すべきである。                  │  │ │  │         │  │  │【改善報告】                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │171 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【被保護者死亡後の対応】             │ 219│ │  │         │  │  │分割返済の途中で被保護者が死亡した場合、相続人を │  │ │  │         │  │  │調査し、相続人からの債権の回収を行うべきである。 │  │ │  │         │  │  │相続人から相続放棄をしたとの主張がなされた場合  │  │ │  │         │  │  │には、家庭裁判所が交付する申述受理証明書を提出さ │  │ │  │         │  │  │せるべきである。                 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │172 │生活福祉一課・二課│  │意見│【債権の管理体制-外部委託の検討】        │ 219│ │  │         │  │  │債権を適正に管理するための体制整備の方策として、 │  │ │  │         │  │  │回収業務を外部に委託することを検討することが望  │  │ │  │         │  │  │ましい。                     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │173 │生活福祉一課・二課│  │意見│【債権の管理体制-情報共有】           │ 219│ │  │         │  │  │債権管理・回収状況を毎月の会議での重要な報告事項 │  │ │  │         │  │  │として位置づけ、課内で情報を共有し、全員で危機意 │  │ │  │         │  │  │識を持って管理していくことが望ましい。      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │174 │生活福祉一課・二課│  │意見│【債権の管理資料】                │ 220│ │  │         │  │  │総額、月々の返還金、返還予定表程度など最低限の情 │  │ │  │         │  │  │報につき、今後はエクセルを主として残しておけば十 │  │ │  │         │  │  │分である。                    │  │ │  │         │  │  │管理台帳は一つにまとめることが望ましい。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │175 │生活福祉一課・二課│  │意見│【債権の管理資料】                │ 220│ │  │         │  │  │エクセルファイルには、経理がパスワードをかけ、そ │  │ │  │         │  │  │の他の職員は読み取り専用で閲覧できるようにする  │  │ │  │         │  │  │ことが望ましい。                 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │176 │生活福祉一課・二課│  │意見│【債権の管理資料】                │ 220│ │  │         │  │  │債権の管理をする場合、実際に不納欠損処理した額だ │  │ │  │         │  │  │けでなく、長期滞留債権の増減も合わせて把握してお │  │ │  │         │  │  │くことが望ましい。                │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │177 │生活福祉一課・二課│  │意見│【不正受給の場合の徴収金加算】          │ 221│ │  │         │  │  │悪質な不正受給者に対しては返還金を加算していく  │  │ │  │         │  │  │ことが望ましい。                 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │178 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【不正受給の対応体制】              │ 221│ │  │         │  │  │査察指導員及び所長等幹部職員においては、過去の不 │  │ │  │         │  │  │正受給事案の問題点の検証などもしながら、マニュア │  │ │  │         │  │  │ルを実践するための指導、マニュアルを実践するため │  │ │  │         │  │  │のツールの作成など、具体的な対策を実行すべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │179 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【不正受給の対応体制】              │ 222│ │  │         │  │  │詐欺罪や法85条に基づく罰則の適用を求めていくた  │  │ │  │         │  │  │めの手続を定めた要綱を制定すべきである。     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │180 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【扶養義務調査の結果の活用】           │ 223│ │  │         │  │  │調査結果に基づき、明らかに扶養義務を履行すること │  │ │  │         │  │  │が可能であるのに履行していない扶養義務者の存否、 │  │ │  │         │  │  │十分な扶養能力があるにもかかわらず正当な理由な  │  │ │  │         │  │  │くして扶養を拒んでいる重点的扶養能力調査対象者  │  │ │  │         │  │  │の存否を確認し、調停又は審判の申立てや法第77条  │  │ │  │         │  │  │の適用を検討すべきである。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │181 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【扶養義務調査の結果の活用】           │ 223│ │  │         │  │  │扶養義務者の扶養能力や扶養の履行状況は変動する  │  │ │  │         │  │  │ものであり、前回の調査でどうであったかを確認しな │  │ │  │         │  │  │がら調査をしていくことが重要であることから、上記 │  │ │  │         │  │  │【指摘】の検討過程を記録しておくべきである。   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │182 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【扶養義務者への資産の移動】           │ 224│ │  │         │  │  │扶養義務者に被保護者の資産が移動した場合には、法 │  │ │  │         │  │  │第77条の適用を検討すべきである。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │183 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【手続規程】                   │ 224│ │  │         │  │  │法第77条の積極的な活用を図るため、手続きの流れ  │  │ │  │         │  │  │を示したマニュアル等を作成し、研修を行うべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第10章 施設                      指摘7 意見4            │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │184 │福祉政策課    │指摘│  │【無料低額宿泊所にかかる分掌事務】        │ 229│ │  │         │  │  │岐阜市福祉事務所設置条例施行規則第4条の分掌事  │  │ │  │         │  │  │務には、無料低額宿泊所に関する事務の規定を設ける │  │ │  │         │  │  │べきである。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │185 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【施設職員名簿】                 │ 230│ │  │         │  │  │届出時添付資料として要求される職員名簿には、少な │  │ │  │         │  │  │くとも「施設長」が誰であるのかを明記してもらうべ │  │ │  │         │  │  │きである。                    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │186 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【施設長及び施設職員の要件】           │ 230│ │  │         │  │  │届出時添付書類において、施設長以外の職員について │  │ │  │         │  │  │も、社会福祉主事資格等の証する資料を要求すべきで │  │
    │  │         │  │  │あるし、仮にそれがないような場合であれば、それを │  │ │  │         │  │  │許容するような例外事情の有無を確認すべきである。 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │187 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【「低額」であることの確認】           │ 231│ │  │         │  │  │岐阜市指針を踏まえ、「無料」又は「低額」であるこ │  │ │  │         │  │  │とについて、確たる証拠を提出させるべきである。  │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │188 │生活福祉一課・二課│  │意見│【暴力団排除条項の導入】             │ 232│ │  │         │  │  │岐阜市指針においても、施設運営主体及び施設長等関 │  │ │  │         │  │  │与者の要件として、岐阜市救護施設、更生施設、授産 │  │ │  │         │  │  │施設及び宿所提供施設の設備及び運営に関する基準  │  │ │  │         │  │  │を定める条例と同様の暴力団排除条項に関する要件  │  │ │  │         │  │  │を設けることが望ましい。             │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │189 │指導監査課    │指摘│  │【監査頻度】                   │ 233│ │  │         │  │  │「A」についての監査頻度は、原則どおり1年に1回 │  │ │  │         │  │  │とするか、もしくは、2年に1回とするのであれば、 │  │ │  │         │  │  │「A」に関して「事業運営が良好」といえるかの検証 │  │ │  │         │  │  │を早急にすべきである。              │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │190 │指導監査課    │指摘│  │【監査内容】                   │ 234│ │  │生活福祉一課・二課│  │  │監査については、岐阜市指針との関係から、必要な資 │  │ │  │         │  │  │料等を要求し実施すべきである。          │  │ │  │         │  │  │【改善報告】                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │191 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【収支の状況が判る書面の提出】          │ 236│ │  │         │  │  │岐阜市指針に基づき、「NPO法人A」から、毎会計 │  │ │  │         │  │  │年度、貸借対照表及び損益計算書など、「A」という │  │ │  │         │  │  │施設に関する収支の状況が判る書面の提出を受ける  │  │ │  │         │  │  │べきである。                   │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │192 │生活福祉一課・二課│  │意見│【事後調査の実施範囲】              │ 236│ │  │         │  │  │生活福祉一課・二課として、無料低額宿泊所に対する │  │ │  │         │  │  │事後調査を実施する範囲について検討することが望  │  │ │  │         │  │  │ましい。                     │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │193 │生活福祉一課・二課│  │意見│【寮長変更の届出】                │ 236│ │  │         │  │  │岐阜市指針の中に、寮長の変更等がなされた場合につ │  │ │  │         │  │  │いて、届出をしてもらう旨の規定を設けることが望ま │  │ │  │         │  │  │しい。                      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │194 │生活福祉一課・二課│  │意見│【民生委員の関与】                │ 237│ │  │         │  │  │「A」に入所する生活保護受給者について、全件、民 │  │ │  │         │  │  │生委員の関与不要となっている運用が正しいといえ  │  │ │  │         │  │  │るのか、今後改善ができないのかを検証することが望 │  │ │  │         │  │  │ましい。                     │  │ ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第11章 不服申立て                   指摘2 意見3            │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │195 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【教示の確認】                  │ 240│ │  │         │  │  │関係法令を必ず確認し、通知書記載の教示において審 │  │ │  │         │  │  │査庁などの誤りが起きないように徹底すべきである。 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │196 │生活福祉一課・二課│  │意見│【教示書面の様式設定】              │ 241│ │  │福祉政策課    │  │  │生活保護法第78条による費用徴収決定通知書につい  │  │ │  │         │  │  │ては、岐阜市生活保護法施行細則上で条項及び様式を │  │ │  │         │  │  │定めることが望ましい。              │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │197 │行政課      │  │意見│【教示の誤りの回避に向けた対策】         │ 241│ │  │         │  │  │各課に対し、不服申立ての教示書面の内容確認等につ │  │ │  │         │  │  │いて注意喚起を行うなど、適正な事務執行の確保に向 │  │ │  │         │  │  │けた取組みを行うことが望ましい。         │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │198 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【情報共有】                   │ 243│ │  │         │  │  │不服申立てがあった事例については、組織としてその │  │ │  │         │  │  │情報を共有する体制を構築すべきである。      │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │199 │生活福祉一課・二課│  │意見│【業務改善措置】                 │ 243│ │  │         │  │  │不服申立てがあった事例については、例えば、係単位 │  │ │  │         │  │  │で検討会を実施するなど、事務執行の改善に役立てる │  │ │  │         │  │  │ことが望ましい。                 │  │ ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第12章 査察指導員の事務                指摘8 意見5            │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │200 │生活福祉一課・二課│  │意見│【査察指導員の水準の確保】            │ 246│ │  │         │  │  │誰が査察指導員となっても、ある程度、一定の水準の │  │ │  │         │  │  │業務処理ができるように、具体的な査察指導員の業務 │  │ │  │         │  │  │マニュアルを策定し、研修を実施することが望まし  │  │ │  │         │  │  │い。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │201 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【現業員に対する査察指導機能-援助方針】     │ 246│ │  │         │  │  │査察指導員は、現業員と協議して具体的な援助方針を │  │ │  │         │  │  │定め、そして確実に記録化するように、現業員を指導 │  │ │  │         │  │  │監督すべきである。                │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │202 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【現業員に対する査察指導機能-訪問調査】     │ 247│ │  │         │  │  │査察指導員は、毎月、ケース記録や査察台帳、被保護 │  │ │  │         │  │  │世帯訪問計画及び実施表などにより、訪問調査の実施 │  │ │  │         │  │  │状況を確実に把握した上で、適切に訪問調査を行うよ │  │ │  │         │  │  │うに現業員を指導し、その指導内容を査察指導台帳な │  │ │  │         │  │  │どに確実に記録すべきである。           │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │203 │生活福祉一課・二課│  │意見│【現業員に対する査察指導機能-訪問調査の同行】  │ 247│ │  │         │  │  │査察指導員が、現業員の訪問調査に同行する基準や目 │  │ │  │         │  │  │安を決めることが望ましい。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │204 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【現業員に対する査察指導機能-資産処分】     │ 247│ │  │         │  │  │査察指導員も、資産保有台帳を利用するなどして、資 │  │ │  │         │  │  │産保有ケースの資産処分状況について把握し、一定期 │  │ │  │         │  │  │間内に不動産や自動車などの資産処分ができるよう、 │  │
    │  │         │  │  │現業員に助言・指導を行い、その助言・指導内容を、 │  │ │  │         │  │  │査察指導票に記録すべきである。          │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │205 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【現業員に対する査察指導機能-就労】       │ 248│ │  │         │  │  │就労・求職状況管理台帳により、就労・求職状況を確 │  │ │  │         │  │  │認するとともに、稼働能力活用に係る処遇方針に沿っ │  │ │  │         │  │  │た助言や指導を現業員が行っているのかを確認すべ  │  │ │  │         │  │  │きである。                    │  │ │  │         │  │  │査察指導員は、指導・助言した内容は、査察指導票な │  │ │  │         │  │  │どに明記すべきである。              │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │206 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【現業員に対する査察指導機能-情報】       │ 248│ │  │         │  │  │査察指導員は、同意外及び利用許可外の情報について │  │ │  │         │  │  │不正にアクセスしないよう、現業員(アクセス権限者)│  │ │  │         │  │  │に指導すべきである。               │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │207 │生活福祉一課・二課│  │意見│【現業員に対する査察指導機能-情報】       │ 248│ │  │         │  │  │査察指導員は、定期的に、アクセスログをたどり、同 │  │ │  │         │  │  │意外及び利用許可外の情報について、不正にアクセス │  │ │  │         │  │  │していないかどうか、課長とともに、内部監査をする │  │ │  │         │  │  │ことが望ましい。                 │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │208 │生活福祉一課・二課│  │意見│【現業員に対する査察指導機能-実地調査】     │ 248│ │  │         │  │  │査察指導員は、実地調査をするかどうか、組織として │  │ │  │         │  │  │決定するためにケース診断会議にかけるよう現業員  │  │ │  │         │  │  │に指導することが望ましい。仮に、実地調査をしない │  │ │  │         │  │  │のであれば、その理由を記録化するよう、現業員に指 │  │ │  │         │  │  │導助言することが望ましい。            │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │209 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【現業員に対する査察指導機能-遺留金品】     │ 249│ │  │         │  │  │遺留金品取扱規程を設ける際、処理規程の中に、査察 │  │ │  │         │  │  │指導員の役割も明確にし、適切な取扱いが行える体制 │  │ │  │         │  │  │を整えるべきである。               │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │210 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【現業員に対する査察指導機能-ケース診断会議】  │ 249│ │  │         │  │  │法第63条や法第78条適用など、重要事項を決定する  │  │ │  │         │  │  │ケースについては、ケース診断会議に諮るよう、査察 │  │ │  │         │  │  │指導員は、現業員に指導すべきである。       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │211 │生活福祉一課・二課│  │意見│【現業員に対する査察指導機能-情報共有】     │ 250│ │  │         │  │  │査察指導員は、現業員と情報を共有して管理的機能を │  │ │  │         │  │  │果たすとともに、教育的機能、支持的機能を果たすた │  │ │  │         │  │  │めに、定期的に、現業員1人1人と面談する機会を設 │  │ │  │         │  │  │けることが望ましい。また、定期的に、係会議を開い │  │ │  │         │  │  │て、係においても、情報共有や意思統一を図ることが │  │ │  │         │  │  │望ましい。                    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │212 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【現業員に対する査察指導機能-ケース記録】    │ 250│ │  │         │  │  │査察指導員は、ケース記録の記載時期や記載内容につ │  │ │  │         │  │  │いても、的確にするよう、現業員に、指導すべきであ │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┤ │第13章 ケース診断会議                 指摘4 意見1            │ ├──┬─────────┬──┬──┬─────────────────────────┬──┤ │213 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ケース診断会議の開催】             │ 253│ │  │         │  │  │岐阜市が自ら作成した資料上、全件開催するとしてい │  │ │  │         │  │  │る場合には、全件ケース診断会議を開催すべきであ  │  │ │  │         │  │  │る。                       │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │214 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ケース診断会議の記録化】            │ 253│ │  │         │  │  │ケース診断会議における審議過程は、会議議事録等を │  │ │  │         │  │  │作成し、記録化すべきである。           │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │215 │生活福祉一課・二課│  │意見│【根拠資料等の添付・明記】            │ 254│ │  │         │  │  │ケース診断会議の際に根拠とした資料については、ケ │  │ │  │         │  │  │ース診断会議の会議録等に検討資料として添付して  │  │ │  │         │  │  │おくか、配布・閲覧した資料について、ケース診断会 │  │ │  │         │  │  │議の会議録等に明記しておくことが望ましい。    │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │216 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【ケース診断会議の積極的な開催】         │ 254│ │  │         │  │  │組織として、ケース診断会議を開催する継続案件の対 │  │ │  │         │  │  │象を増やすことを検討すべきである。        │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │217 │生活福祉一課・二課│指摘│  │【開催要綱】                   │ 255│ │  │         │  │  │ケース診断会議について、会議に諮るべき事項、会議 │  │ │  │         │  │  │の構成員、運営方法、会議の議事録の書式などを規定 │  │ │  │         │  │  │した要綱を設けるべきである。           │  │ ├──┼─────────┼──┼──┼─────────────────────────┼──┤ │合計│         │ 124│ 93│                         │  │ └──┴─────────┴──┴──┴─────────────────────────┴──┘ 平成27年度 包括外部監査の日程  平成27年度の包括外部監査の日程は次のとおりである。監査の透明化という観点 から掲載をした。ここでは、内部の全体協議、レクチャー、ヒアリング、書面照会、現場 視察、訪問調査、関係人調査を記載している。監査においては、この他に、文献の収 集・検討、書類閲覧、内部個別協議、報告書作成などの作業があるが、以下には含 まれていない。 ┌─────┬──────────┬──────────────────────┐ │ 月 日 │  担当課 等   │         内 容          │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課、│予備ヒアリング(テーマ選定)        │ │4月20日  │福祉政策課、行政課 │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │          │内部協議(第1回)              │ │5月1日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │          │内部協議(第2回)              │ │6月1日  │          │                      │
    ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課、│レクチャー(生活保護事務全般)       │ │6月8日  │福祉政策課     │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(生活保護費の支給等)      │ │6月23日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │          │内部協議(第3回)              │ │7月6日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(生活保護事務の手引き、要保護者 │ │7月27日  │          │の発見・把握、保護施設、停止・廃止等)   │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │福祉事務所柳津分室 │現場視察・ヒアリング(柳津分室の業務内容全 │ │7月31日  │          │般)                    │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(面接相談員による面談業務)   │ │8月5日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(支給手続、経理の流れ等)    │ │8月7日  │          │                      │ └─────┴──────────┴──────────────────────┘ ┌─────┬──────────┬──────────────────────┐ │ 月 日 │  担当課 等   │         内 容          │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(新規担当現業員の業務全般1))  │ │8月10日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(新規担当現業員の業務全般2))  │ │8月17日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(地区担当現業員・査察指導員の業 │ │8月18日  │          │務全般1))                 │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(地区担当現業員・査察指導員の業 │ │8月26日  │          │務全般2))                 │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │          │内部協議(第4回)              │ │8月26日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(レセプト管理、タクシー、遺留品の│ │9月14日  │          │取扱い等1))                │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(レセプト管理、タクシー、遺留品の│ │9月16日  │          │取扱い等2))                │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課、│ヒアリング(保護施設、無料低額宿泊所等)  │ │9月25日  │指導監査課     │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(就労自立支援・就労指導・就労自 │ │10月2日  │          │立給付金等)                │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │方県倉庫、     │現場視察(遺留品の保管状況の確認)     │ │10月5日  │三輪第一書庫    │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(生活保護事務全般)       │ │10月9日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │書面照会(保護施設)            │ │10月9日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(債権管理状況)         │ │10月14日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │書面照会(生活保護法第80条免除)      │ │10月19日 │          │                      │ └─────┴──────────┴──────────────────────┘ ┌─────┬──────────┬──────────────────────┐ │ 月 日 │  担当課 等   │         内 容          │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │          │弁護士との面談               │ │10月21日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課、│ヒアリング(レセプト点検等委託契約)    │ │10月22日 │契約課、福祉政策課 │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ケース診断会議傍聴(1))          │ │10月23日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │訪問調査同行(Cケース)          │ │10月28日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │監査委員      │関係人調査についての監査委員協議      │ │10月28日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │          │内部協議(第5回)              │ │11月4日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(レセプト点検等委託契約)    │ │11月11日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │関係人2社     │レセプト点検等委託契約にかかる関係人調査  │ │11月20日 │          │(書面照会)                │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │          │NPO法人関係者との面談          │ │11月30日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ケース診断会議傍聴(2))          │ │12月10日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤
    │平成27年 │生活福祉一課・二課、│                      │ │12月14日 │人事課、      │ヒアリング(停止・廃止、継続)       │ │     │管財課       │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課、│ヒアリング(施設)             │ │12月14日 │指導監査課     │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課、│ヒアリング(相談・面接、新規)       │ │12月17日 │福祉政策課     │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成27年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(継続・就労)          │ │12月21日 │          │                      │ └─────┴──────────┴──────────────────────┘ ┌─────┬──────────┬──────────────────────┐ │ 月 日 │  担当課 等   │         内 容          │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │          │内部協議(第6回)              │ │1月6日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │生活福祉一課・二課 │訪問調査同行(Aケース)、現地視察(無料低 │ │1月8日  │          │額宿泊所)                 │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │契約課       │ヒアリング(契約 レセプト、タクシー)   │ │1月13日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │生活福祉一課・二課 │訪問調査同行(Dケース)          │ │1月14日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │行財政改革課    │書面照会(事業評価シート)         │ │1月14日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │国保・年金課    │ヒアリング(生活福祉課との連携、個人情報) │ │1月15日  │子ども支援課    │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │関係人       │レセプト点検等委託にかかる関係人調査(ヒア │ │1月15日 │          │リング)                  │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(査察指導員の業務全般1))    │ │1月18日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(査察指導員の業務全般2))    │ │1月19日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │契約課       │書面照会(レセプト点検等契約関係)     │ │1月21日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │行政課       │ヒアリング(個人情報、不服申立て、文書等) │ │1月22日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(新規担当査察指導員の業務)   │ │1月22日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │人事課、情報政策課 │ヒアリング(人事、情報管理)        │ │1月27日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(原稿全般)           │ │1月29日 │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │生活福祉一課・二課 │ヒアリング(ケース確認)          │ │2月4日  │          │                      │ ├─────┼──────────┼──────────────────────┤ │平成28年 │          │内部最終協議(第7回)           │ │2月6,7日 │          │                      │ └─────┴──────────┴──────────────────────┘ 3: ◯議長(竹市 勲君) 以上で諸般の報告を終わります。             ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 開  議 4: ◯議長(竹市 勲君) これより本日の会議を開きます。  本日の日程は、さきに御通知申し上げたとおりであります。             ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第1 会議録署名議員の指名 5: ◯議長(竹市 勲君) 日程第1、会議録署名議員の指名を行います。  本日の会議録署名議員は、会議規則第87条の規定により、議長において3番渡辺貴郎君、4番長屋千歳君の両君を指名します。             ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第2 会期の決定 6: ◯議長(竹市 勲君) 日程第2、会期の決定を議題とします。  お諮りします。今期定例会の会期は、本日から3月25日までの23日間と定めたいと思います。これに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 7: ◯議長(竹市 勲君) 御異議なしと認めます。よって、今期定例会の会期は、本日から3月25日までの23日間と決しました。             ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第3 報第1号から第74 第70号議案まで 8: ◯議長(竹市 勲君) 日程第3、報第1号から日程第74、第70号議案まで、以上72件を一括して議題とします。            ───────────────────              〔議 案 等 掲 載 省 略〕            ─────────────────── 9: ◯議長(竹市 勲君) これら72件に対する提出者の説明を求めます。市長、細江茂光君。    〔細江茂光君登壇〕 10: ◯市長(細江茂光君) 皆さん、おはようございます。    〔「おはようございます」と呼ぶ者あり〕  提案説明をさせていただきます。  本日、平成28年第1回岐阜市議会定例会が開催され、新年度の予算案を中心に諸議案の御審議をお願いするに当たりまして、市政に臨む所信の一端と施策の大要を申し上げます。  資源小国であります我が国におきましては、戦後の復興から高度成長期を経て科学技術立国として繁栄をしてまいりました。しかしながら、バブル経済の終焉やアメリカのリーマン・ショックに端を発した経済不況、そして、隣国中国の台頭など、世界経済情勢が大きく変化する中、我が国の国内総生産は世界第3位に転落するなど、日本経済は低迷し、いまだ回復の途上にあります。  この景気先行きが不透明な将来を見据えたときに、今後は、これまでの繁栄の原動力となった科学技術立国に加え、豊かな発想による知的産業立国の時代を迎え、個性や個人の独創性、多様性がこれからの日本存続のキーワードとなってくるものと考えられます。  地方におきましても、個性あふれる輝きを保つためには、固有の歴史的、文化的背景や環境教育などを踏まえた、「まちづくり・ひとづくり・しごとづくり」を行っていくことが不可欠な時代となってまいります。  本市におきましては、産業分野においては、融資制度の充実などにより、地域経済の核となる中小企業の下支えを着実に行うとともに、中期的視点から、企業誘致や薬用作物の産地化を初めとする新たな産業の創出に取り組むなど、将来の産業構造の礎となる布石を打ってまいりました。  さらに、本市の持続可能性を確保するための長期的成長戦略として、人財の育成に傾注し、人こそが最大の資源、財産であるという信念のもとに究極の教育立市を掲げ、邁進してきたところであります。  これまで、国に先駆け、小学校における英語教育の教科化を初め、ICT教育の推進や市立全小中学校へのエアコン整備、さらには、子ども・若者を取り巻くあらゆる悩み、不安を総合的、継続的に支援をする子ども・若者総合支援センター「エールぎふ」を開設するなど、時代を先取りした教育施策に積極かつ果敢に取り組んでまいりました。  こうした個の力を伸ばす本市のさまざまな取り組みは国から注目され、私も教育再生実行会議に有識者として参加する機会をいただいております。この会議におきましては、本市の先進的取り組みを紹介する機会をいただけるなど、多様な個性を大切にし、生かしていく教育について活発な議論が交わされており、我が国の将来を考える上で大変意義深いことであり、喜ばしく思っております。  さらに、市民の皆様の個の力を発揮する知、絆、文化の拠点「みんなの森 ぎふメディアコスモス」が昨年7月にオープンいたしました。本施設においては、この2月までの8カ月間で75万人を超える多くの方々が訪れ、大いなるにぎわいが創出されております。今後、隣接地に整備予定の行政の拠点となる新庁舎との相乗効果により、このにぎわいがさらに増幅され、新たなまちを創造する、まさに「ぎふルネサンス」の幕あけとなるものと考えております。
     また、昨年は日本遺産や世界農業遺産の認定などにより、本市の自然豊かな金華山、長良川を初めとする地域固有の歴史文化資産が、国のみならず、世界的にその価値が認められた、まさにきらめく年でもありました。2017年には、織田信長公入城・岐阜命名450年を記念する、信長公450プロジェクトが予定されており、新年度はプレイベントの開催など、万全の準備を整え、翌年に、さらには、未来につなぐ年にしてまいります。  過去から現在につながれてきた多様な個の輝きを未来にしっかりとつないでいくことが、今を生きる我々に託された使命であります。市民の皆様とともに、輝ける時代への幕あけにふさわしい年となるべく、全力で都市経営に邁進をしてまいります。  それでは、本市を取り巻く環境について申し上げます。  我が国経済は、政府の経済政策による円安、円高を背景とし──いや、失礼。──株高を背景とした企業収益の改善などにより回復基調にありましたが、ことしに入り、緊迫した世界情勢を反映して、円高、株安の進行、マイナス金利の導入など、環境が一変し、予断を許さない状況となっております。  こうした中、先月、ニュージーランドでTPP・環太平洋パートナーシップ協定加盟12カ国による協定の署名が行われ、今後、各国において承認手続が進められることとなっております。この12カ国は、人口約8億人、世界GDPの約4割に相当する巨大な経済規模となり、その市場において、関税の削減や撤廃にとどまることなく、サービスや投資の自由化、さらには、知的財産、電子商取引など幅広い分野で新しいルールを構築する21世紀型の貿易投資協定が生まれるわけであります。  こうした物、金に加え、人の交流も加速化してまいります。平成27年の訪日外国人旅行者数は1,973万人と発表されており、大阪万博が開催された昭和45年以来、45年ぶりに訪日外国人旅行者が出国する日本人を上回る結果となりました。また、爆買いという言葉に象徴されるように、外国人旅行者の消費行動が我が国経済に大きな波及効果をもたらしていると言われております。  このような状況の中、平成27年度の国の税収は、24年ぶりの高水準となる56兆円台前半に達する見通しとされております。  また、雇用環境につきましては、有効求人倍率が平成26年の1.09倍から平成27年には1.20倍へ0.11ポイント改善するとともに、企業倒産件数は7年連続で前年を下回り、平成2年以来、25年ぶりに9,000件を割る低水準に戻りつつあります。  一方で、国の借金は平成27年12月末時点で1,044兆円となり、国民1人当たりに換算すると約824万円に達するなど、依然として増加を続けております。加えて、外国人投資家による日本国債の購入が加速し、昨年9月末時点の保有高は100兆円を超えており、これら投資家の動向によっては、日本国債の金利の乱高下につながる可能性も懸念されるなど、国家財政の健全化は喫緊の課題となっております。  さらに、昨年からの中国経済の減速や中東情勢の不安定化に伴う原油安など、世界経済のさまざまな要素に影響を受け、景気の先行きを見通すことが非常に難しい局面に差しかかっております。今後、国においてはTPP対策や地方創生、さらには、成長戦略の具現化などにより、経済再生と財政健全化の両立を目指すとしており、去る1月に成立をした3.5兆円規模の平成27年度補正予算とあわせ、新年度においてもさまざまな取り組みが推進されるものと考えております。  我々基礎自治体においても、こうした社会経済情勢や国の動向を的確に把握し、柔軟かつ迅速に対応するとともに、自立した財政基盤の確立につながる定住・交流人口の増加策などを積極的に推進し、将来にわたり持続可能な都市経営を行う手腕が求められております。  こうした社会経済情勢が大きく変化する状況の中、これまで本市は一貫して人を中心とした人間主義に基づき、施策の一丁目一番地に教育を据え、子育て環境の整備や健康・医療の充実など、人への投資に全力で取り組んでまいりました。  同時に、本市の顔とも言える岐阜駅周辺や、知、絆、文化の拠点である「ぎふメディアコスモス」、さらには、健康づくりの拠点、防災・健康ステーションなど、さまざまな基盤整備につきましても、計画的に進めてきたところであります。  今まさにこれまで育んでまいりました、多様な人々が持つ潜在的な力と、人々が活躍するステージとなるさまざまな都市機能を将来のまちの発展に向け有機的に結集し、新たな岐阜市づくりに挑む重要な時期を迎えております。  そこで、来る新年度は重点政策の基本方針のキーワードを「ぎふルネサンス2016」とし、副題に「~個の復権、心の原風景~」を掲げ、市民の皆様が主役となり、人と人とのつながりやぬくもりを感ずる施策を展開してまいります。  そもそも、ルネサンスとは再生を意味し、14世紀から16世紀にかけて、本市の姉妹都市であるイタリア・フィレンツェ市を中心に興り、ヨーロッパに広がっていったもので、古代ギリシャやローマ時代の文化の復興や、文学や芸術を通した人間性の回復を求めた動きであります。  私自身、岐阜の歴史を振り返りますと、かつてこの地が輝いた時代は、少なくとも二度あったと考えております。  一度目は、織田信長公がこの地を岐阜と命名した450年前であります。信長公は楽市楽座による自由な市場を築くとともに、川湊の材木商人に舟木座としての特権を認め、川湊の繁栄を図るなど、先進的かつ柔軟なまちづくりを行うことで、岐阜を国内有数のまちへと発展させました。宣教師ルイス・フロイスは、諸国からさまざまな品物を抱えた商人や外国人たちが集まる当時のにぎわいぶりをバビロンの混雑と表現しております。  また、二度目は、戦後復興期から高度成長期にかけ、アパレル産業の柱となる問屋街や柳ケ瀬、長良川旅館街に全国から多くの人々が集まった時代であります。私自身、子どものころ、柳ケ瀬で肩がぶつかり合うほどのにぎわいを経験しており、今なお、私のみならず、多くの皆様に、心の原風景として残っていると思います。  こうした岐阜が輝いた2つの時代を岐阜の心の原風景と位置づけ、新たな時代の入り口に立つ今こそ、岐阜が三度目の輝きを放つ原風景を再生し、創造しようという思いを「ぎふルネサンス」という言葉に込めたものであります。  さきに申しましたように、これからは金太郎あめのように皆が同じ方向を向くのではなく、多様な個の力がますます重要な時代となってまいります。人々が個性を生かし、持てる力を発揮することで、企業もまちも大きな輝きを放つ「ぎふルネサンス」の実現に向け、重点政策を人への投資である教育や健康、市民の暮らしを豊かにする産業、人々を引きつけるまちづくりの三本柱とし、市民の皆様とともに全力で取り組んでまいります。  それでは、これらの重点政策の柱について順次申し上げます。  まず、1つ目の柱であります教育や健康についてであります。  教育は、一人一人の個が持つ能力を開花させ、その可能性を最大限伸長する根幹となるものであり、豊かな人生と安心して暮らせる社会を実現する礎となるものであります。  かねてより申し上げておりますように、資源小国の日本においては、人こそが最大の資源であるとの考えから、平成18年度より「知識社会への転換」を掲げ、人を磨き高める教育を最重要政策に位置づけてまいりました。こうした中、国においても、近年、英語教育の強化や大学入試制度など、さまざまな改革論議がなされております。  本市は、今後とも教育への投資を未来への投資と位置づけ、教育制度の変革を見据えた国の5年先行く教育の一層の充実を図ってまいります。  新年度におきましては、民間の教育研究機関との連携による共同研究を推進するなど、英語教育のさらなる進化に取り組むほか、ICT教育につきましても、タブレットパソコンを全小中学校、特別支援学校に導入し、子どもたちが楽しく学び合うことによる一層の学力定着を図ってまいります。  また、「健全な精神は健全な肉体に宿る」との言葉にもありますように、個人の力を発揮するためには、知識の習得、学力の向上のみならず、その土台となる健康な身体が必要であります。ワクチン予防接種の概念を生み出したフランスのルイ・パスツールは「幸運の女神は準備を整えた者を好む」との言葉を残しておりますが、健康寿命の延伸は、高齢化が進展する将来を見据えた事前の一策として、行政が担うべき重要な役割であります。  新年度は長良川ウエルネスエリアの健康づくり拠点として、柳ケ瀬健康ステーションの約5倍の運動・交流スペースを備える長良川防災・健康ステーションが4月にオープンするほか、食や音楽とウオーキングイベントのコラボレーションを図るなど、「歩く」を基本とする健康づくり、スマートウエルネスぎふを一層推進してまいります。  また、事後の一策として、万が一病気にかかった場合でも安心できる医療環境を構築するため、市民病院において、PET-CTなどの先端医療機器の導入や、救急医療体制のさらなる充実を図るなど、市民誰もが健やかに生き生きと暮らせる施策を推進してまいります。  次に、2本目の柱であります産業・雇用の創出や観光についてであります。  今後、少子・高齢化が加速していく中で、地方に仕事があることは若い世代をとどめ、人口減少を防ぐために必要不可欠であります。経営の神様と言われる松下幸之助氏は「仕事に生きがいを見出せるかどうか、そこに幸せな人生への1つの鍵が隠されている」との言葉を残しておられます。  本市におきましても、雇用の確保、産業の活性化は、本市の教育で育まれた若い世代が力を発揮し、彩りある豊かな人生を創造するとともに、収入の確保と税の負担によって、個人と地域社会全体の豊かな暮らしを支える観点からも大変重要であると考えております。  さらに、本市におきましては、事業所の99%以上が中小企業であることから、中小企業の振興が、ひいては人やまちの活力に直結することになります。このため、これまで取り組んできた販路開拓、創業などの支援や融資対策に引き続き万全を期するほか、新年度には、中小企業の経営者が高齢化し、休廃業の増加が懸念されていることを踏まえ、新たな事前の一策として、中小企業の円滑な事業承継を支援してまいります。  さらに、農業分野におきましても、TPPの発効によるグローバル化が加速していく中で、消費者に選ばれるためのさらなる競争力の強化が重要となってまいります。このため地産地消を一層推進することに加え、岐阜の特性を生かした薬用作物の産地化や枝豆、イチゴなど「ぎふベジ」のブランド化を図るとともに、市外へ積極的にPRする地産外商による消費の取り込みなど、さまざまな施策により農業の活力を高めてまいります。  また、観光交流人口の増加につきましては、昨年3月、長良川鵜飼漁の技術が国の重要無形民俗文化財に指定され、続く4月には、『「信長公のおもてなし」が息づく戦国城下町・岐阜』が日本遺産第1号に認定されました。さらに、平成29年には、信長公450プロジェクトを開催するなど、歴史のまち岐阜の魅力を広くアピールする絶好の機会が訪れております。  今後も、本市の玄関口となる観光案内所のリニューアル整備を進めるとともに、これら本市固有の歴史資産を生かした観光に磨きをかけ、海外も含め、多くの方々に訪れていただくことで、本市の約6割を占める第3次産業の裾野をさらに押し広げ、地域経済の活性化につなげてまいります。  次に、3本目の柱、まちづくりについてであります。  近年、局地的豪雨などの異常気象が全国各地で頻発するとともに、東海──失礼。──南海トラフ巨大地震などの大規模な自然災害の発生が懸念されております。  一方、本市のみならず、全国の自治体において、少子化による若年世代の減少に伴い、長期的な人口減少が避けられない状況にあると考えられることから、人口規模に応じた社会基盤のあり方が問われる時代となっております。    〔私語する者あり〕  こうした防災、都市機能の活性化、ネットワーク化などの観点から、都市全体を俯瞰し、多様な地域核のあるまちづくりを進めてまいります。  大規模災害時の防災拠点であるとともに、メディアコスモスと一体となった行政の拠点ともなる新庁舎の建設につきましては、平成32年度の完成に向け、新年度、実施設計や用地取得などを進めてまいります。新庁舎には災害対策本部室を常設するほか、電気などの基幹設備を中層階に集約するなど、地震や水害等のあらゆる災害発生時に高度な防災機能を発揮するとともに、来庁者の多い窓口部門を低層階に集約し、市民目線に立った多様なサービスをワンストップで提供できるよう整備してまいります。  柳ケ瀬活性化の起爆剤となります高島屋南地区市街地再開発事業を推進し、新庁舎とメディアコスモスの活力を、岐阜駅周辺までの中心市街地全体につなぎ、新たなにぎわいを創出してまいります。商業機能の強化、まちなか居住の促進とともに、健康増進や子育て支援施設などの公共施設の設置により、中心市街地の魅力を一層高めてまいります。  一方、人口減少と高齢化など社会構造の変化を見据え、新年度には市中心部と周辺部を結ぶ公共交通と、居住及び都市機能の誘導を一体的に図る立地適正化計画を策定し、コンパクト・プラス・ネットワークのまちづくりに取り組んでまいります。  最後に、教育や健康、産業、まちづくりの重点政策の3本の柱を支える自主自律の都市経営、財政基盤の確立について申し上げます。  さきに申し上げた重点政策により、新たな岐阜の原風景を創造していくためには、未来への投資を可能とする確固たる財政基盤が不可欠であります。本市はこれまで複雑化、多様化する社会情勢の変化に的確に対応できるよう一貫してたゆまぬ行財政改革に取り組んでまいりました。  職員定数につきましては、市民ニーズの変化にしなやかに対応しながら、ピーク時である昭和56年度の4,999人から、新年度は3,766人へと1,233人、率にして25%を削減し、効率化を進めるとともに、給与の適正化も図ってまいりました。  また、実質的な本市の借金とも言える普通債残高につきましても、ピーク時平成11年度の1,362億円から、本年度末には718億円と644億円、率にして47%の縮減を実現するとともに、市営バス、保育所の民営化や給食調理、ごみ処理施設管理の委託化など、民間活力の活用を積極的に進めてまいりました。  これらの取り組みの結果、財政の健全化を判断する4指標の1つで、財政規模に対する後年度の負担の程度を示す将来負担比率が、平成26年度決算で初めてマイナスとなり、実質公債費比率などの指標もあわせ、中核市の中で上位を堅持しております。  新年度におきましても、引き続き行財政改革大綱2015及びその実施計画である行財政改革プランに基づき、一般会計のみならず、病院、市場、上下水道の企業会計も含めた市全体の財政基盤をより強固にするべく、さらなる取り組みを進めてまいります。  また、人口減少社会の到来を見据え、将来の人口動態を踏まえた地方創生戦略の指針となる岐阜市まち・ひと・しごと創生総合戦略及び岐阜市人口ビジョンを昨年の12月に策定をいたしました。  これらを踏まえ、本市の重点政策の柱である人を中心としたまちの創生を推進するとともに、公共インフラにつきましても、新年度策定する公共施設等総合管理計画に基づき、将来の利用需要の変化や財源などを勘案し、更新、管理の最適化を図ってまいります。  今後とも、確固たる財政基盤を堅持しながら、社会情勢の変化に的確に対応する効率的な都市経営に努めてまいります。  続きまして、新年度予算案について申し上げます。  まず、市税収入などの歳入についてであります。  歳入の根幹である市税収入につきましては、個人市民税が個人所得の増などにより、固定資産税が家屋の新増築の増加によりそれぞれ4億円の増となる一方、法人市民税が法人税割の税率引き下げの影響で6億円の減となるなどの結果、全体で、本年度と比較して4億円、率にして0.6%増の652億円を見込んでおります。  また、地方消費税交付金につきましては、景気回復基調を反映し、6億円の増を見込む一方、地方交付税に臨時財政対策債を加えた実質的な地方交付税につきましては、本年度の決算見込み及び地方財政計画などから、本年度当初予算と比べ22億円の減を見込んでおり、これらを合わせた一般財源は、前年度に比べ約12億円の減となる見込みであります。  一方、歳出につきましては、高齢化の進展等に伴い、福祉や医療などの社会保障費が大幅に増加をしております。さらに、新庁舎建設の推進や南消防署建設及び消防庁舎の指令センター整備に係る防災面の強化など、大規模な財政需要も見込まれております。  本市財政を取り巻く環境は依然として厳しい状況にある中、市民ニーズを的確に把握し、中・長期的な展望に立った大胆な選択と集中のもと、引き続き健全財政の維持に努めてまいります。  その上で、財政規律を保ちながら、人と人のつながりによる、輝く岐阜の原風景を創造するため、市民の皆様とともに果敢に取り組むという思いで新年度予算の編成に当たりました。  この結果、平成28年度の予算規模は、     一般会計は、過去最大となる 1,600億3,000万円     特別会計は         1,144億3,550万円     企業会計は      528億8,105万6,000円     総計は      3,273億4,655万6,000円 となり、  平成27年度当初予算と比較いたしますと、     一般会計で     31億7,000万円 2.0%の増     特別会計で     29億6,260万円 2.7%の増     企業会計で     45億1,686万円 9.3%の増とし、     全体では     106億4,946万円 3.4%の増 となったところであります。  それでは、当初予算案の主要な施策の大要につきまして、「人・まち・自然 個性輝く市民協働都市ぎふ」づくりを目指す、ぎふ躍動プラン・21が掲げる4つの将来都市像に沿って、順次御説明をいたします。  最初に、少子・高齢社会への対応や福祉・健康・医療の充実、防災対策など市民の安全、安心の確保、市民の支え合いによる福祉の増進などを通じ、誰もが安心して暮らせる都市を実現していくための施策について申し上げます。  まず、子育て支援についてであります。  政府は、少子・高齢化の流れに歯どめをかけ、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現に向け、2020年までに希望出生率1.8を目指し、さまざまな対策を打ち出しております。  この目標の達成に向けては、若者の雇用安定や育児休業などの労働環境の改善に加え、結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じた切れ目のない支援の強化など、社会全体における総合的な子育て支援が求められております。  本市におきましては、子育てで選ばれるまち岐阜を実現するため、これまでにも、全ての子どもや家庭に対するきめ細やかな支援を行ってまいりました。とりわけ全国に先駆け、子育てを総合的に支援する中核となる子ども・若者総合支援センター「エールぎふ」を開設し、これまで一月当たり約1,000件を超える多くの相談に対し、関係機関の連携によりさまざまなケースに的確に対応しているところであります。しかしながら、開設年度には、子ども本人が直接相談を寄せる件数は全体のわずか0.2%にとどまっていたことから、本年度、子ども専用の連絡先を記載した「子どもホッとカード」を作成し、市内の全小中高生約5万6,000人に配布した結果、子ども本人からの相談が大幅に増加いたしました。  そこで、新年度には、さらなる周知を図るため、カードのデザインを新たにし、広域連携として、山県市、岐南町も含め再度配布することで、悩みや不安を抱える子どもがみずから相談を寄せやすい環境づくりに努めるなど、総合的かつ継続的な支援を一層充実させてまいります。  また、新たに結婚支援事業に取り組むとともに、不妊治療に対する助成や、小規模保育事業などによる未満児保育の拡充、さらには、児童扶養手当の増額などにより、ひとり親家庭や多子世帯への支援の充実を図るなど、結婚から子育てまでの切れ目のない支援に努めてまいります。  全小学校で開設しております放課後児童クラブにつきましては、新たに12カ所において受け入れ対象学年を6年生まで拡大し、利用時間につきましても、保護者の就労実態や利用希望に応じ、29カ所において午後7時まで延長するなど、子育て世代のさらなる支援に努めてまいります。  さらに、こうした量の拡大に加え、放課後の過ごし方により学力格差が生じないよう保育から教育の場へと質の転換を図るため、学習支援員が巡回して子どもたちの学習意欲を向上させるなど、「放課後の学び」充実プロジェクトを推進してまいります。  次に、高齢者、障がい者の地域における生活支援について申し上げます。  いわゆる団塊世代が65歳を超える中、本市におきましては、人口に占める65歳以上の高齢者の割合である高齢化率が27%と、4人に1人以上が高齢者となり、核家族化の進展なども相まって、高齢者のひとり暮らし世帯や老老世帯が増加をしております。  高齢者の多くの方々は、仮に介護を必要とする状態となっても、できる限り住みなれた地域での生活を望んでおられることから、住民が主体となる、地域での見守り・助け合い活動をより一層推進するとともに、災害時の避難行動支援を一体的に進めるなど、高齢者等への地域生活支援に努めてまいります。  また、要支援者や近い将来介護が必要となる見込みの高齢者に対しましては、介護予防・日常生活支援総合事業といたしまして、従来の介護事業所による訪問、通所介護に加え、新たにNPO、ボランティア団体等による多様なサービスを提供してまいります。  また、障がい児、障がい者に対する施策といたしましては、障害福祉サービスの提供など、地域での暮らしをよりきめ細かく支援し、相談体制の強化を図るとともに、4月に障害者差別解消法が施行されることから、障がいや障がい者に対する理解を一層促す取り組みを推進してまいります。  生活保護につきましては、景気の回復により就労する世帯が増加しつつあるものの、高齢化の進展に伴い、依然として受給世帯は緩やかな増加傾向にあります。このため生活保護に至る前の生活困窮者に対し、生活・就労サポートセンターにおいてきめ細かな相談支援を継続して実施するとともに、新年度には、対人関係に不安のある人を対象とした社会的居場所づくり事業にも取り組むほか、就労準備や子どもの学習に対する支援をさらに強化するなど、生活困窮者自立支援の充実を図ってまいります。  次に、健康増進、医療の充実について申し上げます。  我が国が世界に例を見ない長寿大国となる中、本市におきましては、生涯にわたり健康で幸せに暮らせるまちづくり、スマートウエルネスぎふを掲げ、平均寿命を延ばすだけではなく、糖尿病などの生活習慣病を予防し、健康寿命の延伸を図るさまざまな施策を全庁挙げて取り組んでまいりました。  新年度におきましても、健康づくりの基本であり、最も身近で手軽な運動である歩くことを多くの市民の皆様に体感していただけるよう「スマートウエルネスぎふ 健幸ウォーク」を開催してまいります。同日開催するぎふ市民健康まつりや岐阜市農業まつり、「さんぽde野外ライブtoスペシャルライブ」との連携により、スタンプラリーや音楽とのコラボレーションなどの工夫を凝らし、より多くの方々に楽しみながら歩いていただけるよう取り組んでまいります。  また、健康づくりの拠点といたしまして、柳ケ瀬ウエルネスエリアの拠点、柳ケ瀬健康ステーションに続き、長良川うかいミュージアムから金華橋かいわいを含む長良川ウエルネスエリアにおいて、第2の健康づくり拠点となる長良川防災・健康ステーションを開設いたします。本施設は洪水時は水防活動の拠点として、平常時には市民の皆様に金華山や長良川など豊かな自然を満喫していただきながら、健康増進の拠点として活用していただきたいと考えております。  また、長良川や鵜飼など、本市の誇る資源と一体化した歩行空間であります長良川プロムナードにつきましても、景観に配慮し、より安全かつ快適に散歩できるよう整備を進めてまいります。  次に、医療の充実についてであります。  インフルエンザは毎年多くの方が罹患することに加え、特に乳幼児や高齢者は、脳症や肺炎などを併発し、後遺症の発生や死亡する事例も見受けられます。しかしながら、インフルエンザによる病状の重症化などは、事前の予防接種を受けることにより、軽減することが可能とされております。  このため、これまで実施しております高齢者のインフルエンザワクチン予防接種に加え、新年度には、乳幼児に対しましても予防接種費用の一部を助成し、子育て世代の負担軽減を図るとともに、子どもの健康確保に取り組んでまいります。  また、小児救急につきましては、比較的軽症な一次救急の場合、市内の各医療機関のほか、市民病院における小児夜間急病センター、休日急病センターなどで受診をしていただく体制をとっております。  これまで受け入れ体制がなかった午後11時から翌日8時までの深夜帯におきましても、医療体制を確保することとし、子育て世代の皆様が安心できるよう小児の一次救急医療体制を充実してまいります。  また、地域医療の拠点であります市民病院におきましては、この2月から高度治療室・HCUが稼働し、これまで以上に重症患者の受け入れ体制を強化したところであります。
     新年度におきましては、がんの早期発見や、より正確な診断を可能とするPET-CTの稼働に向けて引き続き整備を進めるなど、市民の命、健康を守る最後のとりでにふさわしい、より高度で質の高い医療の提供に努め、高度急性期病院としての使命を果たすべく、さらなる医療環境の充実を図ってまいります。  次に、市民生活の安全について申し上げます。  昨年、市内の特殊詐欺被害額が過去最悪の4億円を超えるとともに、消費者トラブルなども含め、多くの高齢者が事件、事故に巻き込まれており、こうした被害を未然に防ぐことは喫緊の課題であります。  このため新年度には、高齢者を支援する各種団体間のネットワーク化を図り、課題や対応策などを共有する協議会を設置してまいります。また、地域の防犯ボランティアの方々に加え、高齢者に接する機会の多い福祉関係団体の方々に対しましても、防犯研修会への参加を促すなど、高齢者の見守りに対する地域力の向上を図ってまいります。さらに、振り込め詐欺の手口や緊急連絡先などを記載したカレンダーを配布し、高齢者への啓発を一層推進するとともに、通話録音装置に係る無料貸し出しに加え、購入に対する助成制度を新たに創設し、被害の未然防止に努めてまいります。  また、核家族化の進展などによる住宅事情の変化に伴い、所有者による適切な管理が行われていない空き家が増加し、地域住民の生命、財産や生活環境などに影響を及ぼすことが懸念されております。  このため新年度には、空き家の実態調査を実施し、管理不全な空き家等の所有者に対しては、維持管理の要請や必要な措置を行っていくなど、空き家の適正管理に向けた啓発を実施してまいります。  次に、総合防災体制の充実強化について申し上げます。  近い将来、発生が危惧される南海トラフ巨大地震などの大災害に備え、東日本大震災を初めとする大規模災害を教訓に、初動対応から応急対策、復旧・復興対策などを含め、地域防災計画を見直し、市民の安全と安心を守る各種防災対策を進めてまいります。  災害避難者支援といたしましては、防災倉庫やマンホールトイレの整備を引き続き進めるとともに、被害発生時における円滑な避難を促すため、ピクトグラムや多言語による看板を中学校や公園などの避難場所に順次設置してまいります。  また、これまで防災行政無線や緊急速報メールなど情報伝達体制の多重化に取り組んできたところでありますが、市民の皆様に、より迅速かつ確実に伝達するため、防災情報の発信を一元化するシステムを整備してまいります。  さらに、地震災害による被害を軽減するため、高齢者や障がい者等の、いわゆる避難行動要支援者を対象に、家具の固定に係る新たな支援制度を創設するなど、自助による減災対策を推進してまいります。  消防力の充実強化につきましては、市南部の重要な防災拠点である南消防署について、新年度から建設工事に着手し、平成29年度の完成に向け着実に整備を進めてまいります。  また、災害時の情報収集などに重要な役割を担う消防指令システムを更新するとともに、高所カメラや情報共有機能の再構築を図り、災害対応の初動に万全を期してまいります。  さらに、瑞穂市及び山県市との連携による消防の広域化につきましては、2市からの事務委託実施に向けた協議を進め、都市間連携による総合防災力の強化を目指してまいります。  建築物の耐震化につきましては、耐震化整備計画に基づく市有施設の耐震化が本年度完了することから、引き続き照明器具などの非構造部材の耐震対策について、避難所となる学校施設などを中心に整備を進めてまいります。  また、民間建築物につきましても、木造住宅の無料耐震診断及び耐震補強工事に対する助成を継続するなど、耐震化率のさらなる向上を図ってまいります。  災害時の交通確保に重要な役割を果たす橋梁につきましては、定期的に近接目視点検を行い、老朽度の実態を把握し、早期の対応を図るとともに、緊急輸送道路を補完し、避難所や病院などへ通ずる道路ネットワークにおいて、第4期橋梁耐震補強事業計画に基づき、耐震化を進めてまいります。  内水対策につきましては、急速な都市化に伴う保水機能の低下と局地的な集中豪雨の頻発により、特に境川流域において水害が多発しております。  このため河川管理者の県に対し、引き続き早期の整備を要望していくとともに、支流の三井川右岸堤防のかさ上げ整備に着手するほか、流域の公園における雨水貯留施設の整備計画を策定するなど、浸水被害の軽減を図ってまいります。  また、市内各所の排水路や市街地の学校における校庭貯留施設の整備を引き続き推進するなど、あらゆる対策により水害への備えに万全を期してまいります。  次に、便利で快適な都市の実現のため、持続可能な低炭素社会、循環型社会の構築に努め、自然との共生を図るとともに、利便性の高い生活環境の充実に努めていくための施策について申し上げます。  最初に、地球環境保全対策の推進についてであります。  昨年12月にパリで開催されたCOP21において196の国や地域全ての合意により、2020年以降の温室効果ガス削減の新たな枠組みとなるパリ協定が採択されました。地球温暖化は人類の存亡にかかわるといっても過言ではない問題であり、温暖化の進展が多くの動植物の生態系を脅かしております。  私たちの暮らしは、多様な生き物がかかわり合う生態系からの恵み、いわゆる生物多様性によって支えられており、我々基礎自治体におきましても、地球温暖化対策と生物多様性の保全への取り組みを一層推進する必要があります。  このため新年度は、水素社会やゼロエネルギーハウスの推進など、新たな視点による地球温暖化対策実行計画を策定してまいります。さらに、本市は長い日照時間や豊富な地下水を有することから、太陽光や地中熱などの再生可能エネルギーを最大限に活用する上で大きな強みを持っております。  この視点に立った省エネ都市・スマートシティ岐阜の推進に向け、昨年度から実施している実証事業の取り組みを普及するためのプランを策定するほか、地中熱ヒートポンプ空調設備や家庭用燃料電池などの設置に係る助成を継続してまいります。  生物多様性保全対策につきましては、子どもたちを対象に副読本の作成やキッズセミナーを開催し、生物多様性の大切さを未来へ引き継ぐ人材の育成に取り組んでまいります。  また、ふるさとの原風景の象徴であり、多様な生態系を有する長良川の自然環境を守り、次世代へつないでいくため、アユの産卵環境など、長良川の生物多様性調査に取り組んでまいります。  次に、ごみ減量・資源化の推進について申し上げます。  生態系の保全や、美しい住環境、都市景観を次世代に継承していくためには、ごみの発生抑制や資源の循環的利用、廃棄物の適正処理を図り、地球環境への負荷を減らし、日常的に資源を有効利用する循環型社会を構築することが重要であります。  本市におきましては、ごみ減量・資源化指針2011に基づき、分別されずに焼却されている雑がみの回収を「ごみ1/3減量大作戦」市民運動の1つとして進めており、その回収量は600トンを超え、この5年間で約3倍となっております。  新年度は、この市民運動の機運をさらに高めるため指針を改定し、雑がみの回収に加え、生ごみ対策としてダンボールコンポスト地域循環モデル事業に取り組むとともに、その他プラスチック製容器包装類の分別実施に向けた啓発活動を進めてまいります。  また、引き続き資源分別回収や古紙回収用ボックスの設置などを通じた地域みずからの取り組みを支援し、ごみの減量化、資源化に努めてまいります。  さらに、清潔で快適な生活環境の実現のため、ごみ処理施設など環境施設の整備を着実に行ってまいります。  昨年10月の火災で損傷いたしました東部クリーンセンター粗大ごみ処理施設につきましては、2年以内の復旧を目標に、本市の管理下において、原因者による整備を進めてまいります。あわせて、施設が復旧するまでの間、市民サービスの低下を招かぬよう、粗大ごみの処理を着実に実施するとともに、火災により発生する全ての費用について、原因者に求償していく方針としております。  一方、安定的かつ継続的にごみを適正処理していくためには、地域の御理解を賜りながら、既存のごみ処理施設を計画的に更新していく必要があります。缶、瓶及びペットボトルの中間処理施設でありますリサイクルセンターにつきましては、排出量の増加が著しいペットボトルへの対応及びその他プラスチック製容器包装類の処理が可能な新施設の整備を進めてまいります。  また、稼働から36年が経過し、老朽化への対応が必要となっている掛洞プラントにつきましては、将来にわたりごみ焼却体制を安定的に維持していくため、新ごみ焼却施設整備の検討に着手してまいります。  さらに、下水道事業につきましては、中部プラントの全面改築を引き続き進めていくなど、施設設備の適正な維持管理に努め、安定的な稼働を確保するとともに、快適な生活を享受できる環境づくりに努めてまいります。  また、産業廃棄物不法投棄事案につきましては、現場及び周辺のモニタリング調査や浸出汚濁水処理設備の維持管理業務を継続し、適切に管理をしてまいります。なお、不法投棄行為者等への責任追及につきましては、引き続き専門家の助言を得ながら行政代執行等の費用回収を継続してまいります。  次に、利便性の高い生活環境の充実について申し上げます。  交通政策につきましては、総合交通戦略及び地域公共交通網形成計画に掲げる「公共交通を軸に都市機能が集積した歩いて出かけられるまち」を目指し、コンパクト・プラス・ネットワークの実現を図る諸施策を推進してまいります。  総合交通戦略の柱となるバス交通につきましては、岐阜市型BRTとコミュニティバスを軸に、利便性の高いネットワークの構築をさらに進めてまいります。特にコミュニティバスにつきましては、新たに七郷・木田地区において導入を予定しており、計19地区の運行エリアで市内人口の84%をカバーすることとなります。  さらには、これらの公共交通ネットワークを基軸とした、人口減少社会に対応したコンパクトシティーを目指す立地適正化計画を策定し、市民生活の質の確保と活力あるまちづくりを推進してまいります。  次に、中心市街地ににぎわいを取り戻し、まちなか居住の推進を図るとともに、本市の歴史や文化、自然を生かした観光や多様な産業の振興、雇用の確保などにより、活力のあふれる都市を実現していくための施策について申し上げます。  まず、にぎわいある中心市街地の創出についてであります。  中心市街地を形成する岐阜駅周辺から柳ケ瀬、「ぎふメディアコスモス」周辺に至る区域につきましては、引き続き2期中心市街地活性化基本計画に基づき、にぎわいの創出やまちなか居住の推進を図るため、さまざまな取り組みを進めてまいります。  昨年7月18日に、知、絆、文化の拠点としてグランドオープンしました「ぎふメディアコスモス」は、本市の教育立市、市民協働の核となり、新たなまちの原風景を創造する「ぎふルネサンス」の象徴として、大いなるにぎわいを生み出しております。2月末現在の来館者数は75万人を超え、目標とする年間100万人の来館者を達成できるものと見込んでおります。  開館以降、さまざまなメディアにおいて、「何度でも足を運びたくなる地元住民の憩いの場」「かたいイメージの公共図書館が、胸わくわくする空間へ変貌」といった評価を多々いただいたことは、大変喜ばしいことであります。新年度も多くの市民の皆様に愛される施設としてさらなる磨きをかけるとともに、公共交通との連携により、このにぎわいが中心市街地全体に波及する取り組みを進めてまいります。  また、施設の東側に隣接する立体駐車場につきましては、土壌より環境基準を超えるヒ素が検出されたことから、必要な対策を行った上、速やかに整備を進めてまいります。  市街地再開発事業につきましては、岐阜シティ・タワー43と岐阜スカイウイング37のツインタワーが、本市のシンボルとしてにぎわいの創出とまちなか居住に大きな効果をもたらしております。  新年度には、超高齢化社会を迎えた時代のニーズに対応し、商業施設、福祉施設、住宅を組み合わせた、岐阜駅東地区の再開発ビル建設工事がいよいよ始まります。  さらに、柳ケ瀬活性化の起爆剤として期待されている高島屋南地区におきましても、設計や各種調査が進められる予定となっており、岐阜駅周辺からメディアコスモス周辺におけるさまざまな施設の相乗効果による中心市街地全体のにぎわい創出に向け、事業の推進を図ってまいります。  また、名鉄高架事業につきましては、県、名鉄と連携し、都市計画決定に向けた事業進捗を図るとともに、高架化や周辺区画整理事業などに要する財源として、新年度も引き続き鉄道高架事業基金に所要の積み立てを行ってまいります。  次に、観光の振興について申し上げます。  本市は、悠久の歴史、文化に裏打ちされた、誇るべき地域資源を豊富に有しております。中でも、戦国時代、本市の礎を築いた織田信長公は、その卓越した先見性から、これまで小説、ドラマなどに数多く取り上げられるなど、現代においてなお類いまれなる情報発信力を持っております。  平成29年には、信長公岐阜入城・岐阜命名450年を迎えるに当たり、これを絶好の機会と捉え、官民一体となり、信長公450プロジェクトとして、国内外に岐阜の魅力を継続的にアピールしていくことが重要であります。  新年度には、周年事業の開催に向け、信長学フォーラムを東京で開催するなど、積極的なプロモーション活動やさまざまなプレイベントを行ってまいります。  さらに、メーン事業となる信長展につきましては、フランシスコ・ザビエルの直筆による書簡などのさまざまな史料の展示や、フロイス・ザビエル像の複製制作について、関係先と協議の上進めてまいります。  また、信長展に続く、ルネサンス期の著名な芸術家の作品を展示するフィレンツェ展につきましても、平成29年度に向けた準備を推進するほか、岐阜城跡及び信長公居館のバーチャルリアリティー技術による映像作成を行うなど、歴史、芸術が融合した一大イベントとして市民の皆様の心に残るよう本市及び実行委員会等の総力を挙げて取り組んでまいります。  また、信長公とともに、本市のかけがえのない資源である長良川鵜飼は、国の重要無形民俗文化財に指定されるとともに、日本遺産のストーリーにおいても重要な構成要素となっております。  加えて、「清流長良川の鮎」が昨年12月、世界農業遺産に認定されるなど、これら鵜飼にまつわる価値の高まりを受け、観光振興の推進につなげていくとともに、長良川鵜飼文化のユネスコ無形文化遺産への登録を目指し、市民意識の醸成を図ってまいります。  また、さきに申しましたように、観光誘客を図る上で、訪日外国人を呼び込むことが大変重要であることから、本市の玄関口である観光案内所について、これまでのWiFi環境整備などに加え、新年度には、外国語表記による広告や展示物の設置など、外国人観光客にも配慮したリニューアルを進めてまいります。  さらに、海外における誘客プロモーションを支援するほか、民間事業者によるパンフレット等の多言語化などへの支援に引き続き取り組むなど、インバウンド戦略を積極的に推進してまいります。  次に、産業の振興について申し上げます。  国の政策により、大企業を中心とした経済の好循環の効果が徐々にあらわれているものの、本市経済を支える中小企業への波及効果は、いまだ限定的であると言われております。  このため岐阜市信用保証協会を活用した融資制度の充実策として、信用保証料の補填拡大を継続し、企業の負担を軽減するなど、引き続き市内中小企業者の資金繰りの円滑化を支援してまいります。  さらに、新年度からは、後継者不在により事業の継続が困難な中小企業に対し、M&Aにかかる経費の一部を助成する事業承継サポート事業に取り組むなど、市内経済の活力強化を図ってまいります。  また、中央図書館におきまして、創業及び経営に関する相談窓口の設置やセミナーの開催などによるビジネスチャレンジ支援事業を継続し、新産業の創出を促進してまいります。  企業誘致につきましては、柳津地区ものづくり産業集積地において、本年2月に全ての企業が操業を開始し、さらなる雇用の創出や地域の活性化につながるものと期待をしております。  さらに、昨年10月には、県及び周辺16市町が共同で策定した地域再生計画が国の認定を受け、本市計画区域内への立地企業に対し、税制上の優遇措置等の支援制度が受けられるようになったところであります。    〔私語する者あり〕 このため新年度には、本社移転や事務所増設に係る助成制度を拡充し、既存企業の事業拡大に向け、大都市から本市への企業立地をさらに促進してまいります。  今後も、東海環状自動車道全線開通に向け、インターチェンジが設置される三輪地域、黒野地域を中心に、ものづくり産業のほか、物流や研究施設の集積を図るなど、全力で企業誘致に取り組んでまいります。  次に、農業の振興について申し上げます。  国におきましては、昨年10月、TPPが大筋合意されたことを受け、翌月には国内対策の指針となる総合的なTPP関連政策大綱が示されました。この大綱においては、アメリカの政府借り入れの拡大や、──ごめんなさい。──米の政府これ(笑声)米の政府買い入れの拡大や牛肉・豚肉生産者への所得補填の増額など、経営安定対策の拡充で守りを固めつつ、経営感覚にすぐれた担い手の育成や国際競争力の強化により輸出促進を図るなど、攻めの農林水産業への転換を進めるとしております。  昨年4月には、良好な景観形成や環境保全など、都市農業が持つ多面的機能の安定的な継続を目的とした都市農業振興基本法が制定されたところであり、我が国の農業は大きな転換期を迎えております。  このような中、本市におきましても、攻めの農林水産業を図る施策として、薬用作物の新たな産地化に向け、市内生産者で構成された栽培協議会により、約34アールの農地において11品目を栽培しております。今後は、栽培技術のさらなる向上と種苗の増産を図るとともに、販路開拓のため、製薬メーカー等との協議を進めてまいります。  農産物のブランド化につきましては、本市の安全、安心な特産農産物を「ぎふベジ」として広く情報発信していくため、地産地消推進の店「ぎふ~ど」においてキャンペーンを実施するほか、新たに「ぎふベジ」専用のホームページを立ち上げ、生産者と消費者双方の情報、意見を掲載することにより、より効果的なPRを図ってまいります。  あわせて、農業まつり、農業楽市など各種イベントや岐阜公園で開催する朝市などの場を活用した取り組みにより地産地消立市をさらに推進してまいります。  加えて、地産外商の取り組みといたしまして、名古屋市内の大型商業施設での「ぎふベジフェア」の開催や、農業体験と観光資源を融合させた岐阜市版グリーンツーリズムの定着化を図り、市外におけるさらなる販路拡大に取り組んでまいります。  一方、守る農林水産業の施策としましては、新規就農者の育成など担い手に対する支援の拡大や、農地中間管理事業の活用により農地集積・集約化を一層推進してまいります。また、生産性の向上に必要な施設整備や機械化のための支援を拡大するなど、経営のさらなる安定、強化を図り、持続可能な力強い農業の実現を目指してまいります。  次に、心の豊かさを実感でき、人生を楽しむことができる都市の実現のため、市民協働のまちづくり、学校教育、生涯学習の充実など、さまざまな人づくり施策を推進するとともに、文化の継承、創造に努めていくための施策について申し上げます。  人口減少・超高齢化社会を迎える中、我々基礎自治体は、地域の特性を生かした個性豊かなまちづくりの実現に向け、市民と行政がともに考え、活動する共助のネットワークを構築していくことが大変重要であります。  本市におきましては、行政の重要なパートナーであります自治会を初め、各種団体、NPO、企業などに、積極的に公益サービスの担い手として御協力いただくなど、住民自治の向上に向けた協働の取り組みを一層推進してまいりたいと考えております。  この市民協働のまちづくりの推進拠点であります市民活動交流センターにおきまして、本年度末で計32地区において設置されるまちづくり協議会を初め、地域の活力を高めるさまざまな活動に対する支援を引き続き充実させてまいります。  さらに、新年度におきましては、各地域におけるまちづくり活動をより積極的に支援するため、(仮称)岐阜市まちづくりサポートセンターを設置し、情報提供や活動の提案、支援などに協働で取り組み、「ぎふルネサンス」の推進力となる地域力、住民力の向上に努めてまいります。  また、外国人市民の地域社会への参加を促し、外国人市民の持つ多様な文化を生かし、共生していくことが、新たなまちの魅力を創造するものと考えております。このため昨年3月に策定した多文化共生推進基本計画に基づき、「ぎふメディアコスモス」内の多文化交流プラザを拠点とした、外国人市民と地域住民による多様な交流を推進してまいります。  続いて、生涯学習の推進について申し上げます。  全ての人が生きがいを持ち、心豊かで充実した人生を送るためには、身の周りにあるさまざまな事柄に関心を持ち、学び、そして、その成果を生かしていくことが大切であります。本市の生涯学習の指針となる第2次生涯学習基本計画策定から10年近くが経過し、生涯学習を取り巻く状況が変化するとともに、今後は生涯学習の成果を住民自治の向上に生かすことが重要となってまいります。  このため新年度には、次期計画策定に向け、生涯学習にかかわる市民ニーズなどの意識調査を行うとともに、生涯学習を通じた地域活動を担う人材の養成や、人材と地域間のコーディネートの仕組みについて調査研究をしてまいります。  また、中央図書館におきましては、身近で楽しい滞在型図書館として、子どもからお年寄りまで楽しく学び、交流できる施策を展開してまいります。  新年度には、おはなし会や文学講座に加え、子どもたちがみずから本の魅力を発信する「子ども司書養成講座」や、郷土の魅力を再発見する「大人の夜学」などを実施し、本の貸し出しという従来型の枠組みにとらわれない、本を介して人とまちをつなぐ次世代型図書館として運営をしてまいります。  生涯スポーツの充実につきましては、スポーツ推進計画に基づき、市民誰もがスポーツを通じて元気で健康な生活を営むことができるよう、ノルディックウオーキングや軽スポーツなどを気軽に楽しめる健幸エンジョイ・スポーツDAYなど、さまざまなイベントを開催してまいります。  さらに、東京オリンピック・パラリンピックにおいて活躍が期待されるトップアスリートに対する競技力向上のための支援を拡大するほか、専門的な指導に触れる機会を提供する、ジュニアスポーツクラブの開催やスポーツリーダーの派遣など、スポーツ活動のさらなる振興を図ってまいります。  次に、学校教育の充実について申し上げます。  本市におきましては、教育によって選ばれるまち、究極の教育立市の確立に向け、昨年12月に策定した岐阜市教育大綱に基づき、複雑化していく現代社会に対応しつつ、多様な個性や能力の発揮により将来の夢や希望を実現できるよう子どもたちの生き抜く力を育んでまいります。  グローバル社会への対応が不可欠である現状において、国の教育改革においては、知識、技能など、何を知っているかから、思考力や判断力、表現力に基づく、知っていることを活用して何ができるかへと、重点がシフトしております。このため教員の講義形式によるこれまでの受動的な学習に加え、子どもたちが主体的に、協働して学び、知識を応用する能力を育てる能動的な学習、アクティブラーニングが大変重要となってまいります。新年度には、古代ギリシャにおいて、ソクラテスやプラトンなどが激論を交わした広場から命名したアクティブ・ラーニングスペース「アゴラ」を全22中学校に整備するとともに、授業における地域人財の活用や専門家による指導などを通じ、アクティブラーニングの実践研究を進めてまいります。  ICT教育につきましては、モデル校などにおいて活用実践を積んでまいりましたタブレットパソコンを全小学校に各40台、全中学校に各80台、特別支援学校に160台、計4,100台を導入し、ICT教材を積極的に活用した「わかる・できる・楽しくなる授業」の一層の推進を図ってまいります。  また、英語教育につきましては、国に先駆け、昨年度より小学校1年生から正式な教科として力を注いでおります。  さらに、去る2月には、民間の豊富なノウハウによる本市の教育研究機能のさらなる向上を目的とし、教育分野の一大シンクタンクでありますベネッセ教育総合研究所と包括的研究推進等に関する協定を締結いたしました。
     新年度には、義務教育の9年間を通して、読む、聞く、書く、話す、4つの技能のバランスを重視した英語教育を確立するため、本市の職員を同研究所に派遣し、教育実践や学力分析に係るノウハウを習得するなど、総合的な教育研究を進めてまいります。  また、本年度より開催し、英語のみの生活を送る非日常の体験が大変好評を得ました「イングリッシュ・キャンプ in GIFU」につきましては、定員を160名に拡大し、実施をしてまいります。  理数教育の充実につきましては、STEM教員を増員し、理科実験やクラブ指導の充実を図るとともに、新たに4年生以上の小学生を対象に、最先端の科学技術を初め、科学の魅力を存分に体験できる「ぎふサイエンス・キャンプ」を実施してまいります。  さらに、科学教育の中核施設である科学館におきましては、来る5月に、常設展示を最新の科学技術機器に大幅に更新し、来館者がより楽しめる参加体験型の施設へと生まれ変わります。新たに設置するサイエンスステージでは、学校では体験できない迫力あるサイエンスショーを実演するなど、子どもから大人まで科学の魅力に触れ、興味、関心を高めることにより、将来の科学技術立国、知的産業立国を支える人材の育成につなげてまいります。  また、障がい者が差別されることなく、障がいのない人とともに生活し学ぶインクルーシブ教育を一層推進してまいります。  子どもが抱えるさまざまな問題や課題に対し、よりきめ細かく対応するため、特別支援教育介助員を増員するとともに、ハートフルサポーターに加え、新たに配慮を要する児童生徒に単独で授業を実施するハートフルティーチャーを8名配置し、指導、支援を一層充実させてまいります。  本年度から実施しております土曜日の才能開花教育「ギフティッド」につきましては、数学や物理、デザイン、ダンスなどに興味を持つ中学生を対象とし、大学教授やプロなどによる高いレベルの授業や特別講座を実施し、さまざまな分野の才能を掘り起こすきっかけとなるよう取り組んでまいります。  また、ハード面につきましては、これまで進めてまいりましたエアコンの設置や学校施設の耐震化が本年度までに完了し、より安全かつ快適な学習環境が創出されたところであります。  引き続き施設の老朽化対策や環境改善などに取り組むとともに、今後の校舎の建てかえや大規模改修、給食共同調理場の整備などに多額の財源が必要となる見込みであることから、計画的に教育施設整備基金へ所要額を積み立ててまいります。  次に、歴史ある文化の継承について申し上げます。  さきに申しましたように、国にその価値を認められた、本市の誇る歴史資産や伝統文化のすばらしさを、市民の皆様はもとより、国内外に広く発信していくことが重要であります。  新年度には、本市におきまして、文化庁との共催により日本遺産サミットを開催する予定となっているほか、長良川鵜飼のユネスコ無形文化遺産登録に向けた市民意識の醸成を図るなど、日本遺産と長良川鵜飼について魅力や価値を高めるとともに、連携したPRに努めてまいります。  また、信長公居館跡を含む国史跡岐阜城跡につきましては、岐阜城・信長公居館の再現映像を作成し、信長公450プロジェクトで活用していくとともに、今後の整備に向けた保護と活用の方策について検討を重ね、引き続き発掘調査を進めてまいります。  次に、新たな都市文化の創造についてであります。  「ぎふメディアコスモス」におきましては、市民の皆様の文化的活動の発表の場となる展示ギャラリー等において、本市ゆかりの芸術家の作品を紹介するメディアコスモス新春美術館を開催するほか、訪れた市民の皆様が気軽に芸術鑑賞できる機会を提供するなど、文化の拠点におけるにぎわいの創出を図ってまいります。  また、健幸ウォークと連携し実施する「さんぽde野外ライブtoスペシャルライブ」につきましては、新年度、会場数を倍増し、中心市街地を散策しながら、さまざまなジャンルの音楽に触れる機会と市民の発表の場の創出を一層図ってまいります。  さらに、小中学校へ芸術家を派遣し、児童生徒の感性に響くライブを引き続き実施するなど、幅広い年代に多様な文化・芸術や伝統の魅力を伝え、人材の育成を図ってまいります。  次に、行政の効率化について申し上げます。  社会経済情勢が大きく変化する中で、本市が持続的に発展し、あらゆる行政需要にも柔軟に対応できる自主自律の都市経営を確立するためには、民間活力の導入、計画的な行財政運営など、効率性、実効性を向上させるためのたゆまぬ努力が必要であります。  職員定数につきましては、信長公450プロジェクトなど、本市の政策の柱となる事業を推進する体制を充実する一方、掛洞プラント運転管理業務の全面委託化などにより行政サービスの低下を招くことなくスリム化を進めるとともに、職員の給与についてもさらなる適正化に努めてまいります。  職員育成管理につきましては、新たに育児休業者に対する円滑な職務復帰に向けた研修など、能力・資質向上を図るための効果的な研修を実施するほか、職員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐためストレスチェックを行うなど、労働安全衛生対策の一層の充実を図ってまいります。  情報システムの最適化につきましては、人事給与などの事務システムについて、統一的かつ費用対効果の高いシステムへと再構築を進め、市民サービスの向上やコストの削減、業務の効率化をより一層図ってまいります。  さらに、国民の利便性の向上及び公平、公正な社会を実現するため、去る1月から運用が開始された社会保障・税番号制度につきましては、国や他自治体との情報連携のためのシステム改修を進めるとともに、情報セキュリティー対策に万全を期してまいります。  また、マイナンバーカードの利活用につきましても、新年度から、住民票の写しなど6種類の証明書について、全国のコンビニエンスストアで取得できるサービスを開始するとともに、平成29年1月から、印鑑登録証としても利用いただけるようシステムの構築を進めてまいります。  合併協議に基づき設置をされました柳津町地域自治区につきましては、本年度末をもって設置期間が満了となることに伴い、地域自治区の事務所である柳津地域振興事務所も廃止となります。このため当該地区における住民自治の拡充や利便性を図る観点から、新たに柳津地域事務所を設置し、今後の都市内分権を見据え、福祉、地域支援、保健などの機能をあわせ持つ地域事務所のモデルとして運営してまいります。  以上をもちまして、平成28年度の主な施策とその大要を申し述べました。  冒頭でも申し上げましたように、現在の我が国は、経済再生に向け、官民一体となって懸命な取り組みを進めておりますが、今後は、少子・高齢化のさらなる進展に伴い、人口構造、ひいてはまちの姿が大きく変化していくものと考えられます。  こうした状況にあって、本市のあるべき姿をしっかりと見据え、将来世代が、人・まち・自然の豊かな岐阜市を実感できるよう効率性の高い都市機能を構築することにより、まちが持続的に発展する礎を築くあらゆる施策を実行していくことが重要であります。  新年度におきましては、これら施策の実現を通じ、本市のさらなる魅力創出につながる輝ける時代の幕あけの年とするべく、これまでの経験を生かし、全力を傾注してまいる覚悟でありますので、議員各位を初め、市民の皆様の御理解と御協力を賜りますようお願いを申し上げます。  なお、予算に関係いたします条例なども提案いたしておりますが、それぞれ提案理由が付記してありますので、よろしく御審議の上、適切なる御決定を賜りますようお願い申し上げます。  続きまして、同時に提案をいたしました平成27年度一般会計補正予算及びその他の議案について御説明をいたします。  最初に、第60号議案平成27年度一般会計補正予算についてであります。  さきに申し上げましたように、我が国は依然として景気先行きが不透明な状況の中、少子・高齢化など、さまざまな課題に対応しつつ、持続的成長戦略を構築していくことが喫緊の課題となっております。こうした観点から、去る1月に、保育、介護基盤の充実や地方創生の加速化、さらには、TPP関連施策などを柱とした国の補正予算が成立したところであります。  こうした状況の中、本市におきましても、地方創生をさらに加速させるための施策や防災・減災対策などを中心に、所要の予算を計上いたしました。  初めに、国の経済対策に伴う事業につきまして順次御説明申し上げます。  まず、地方創生に関する取り組みでありますが、昨年12月に策定した、まち・ひと・しごと創生総合戦略に基づき、将来にわたり、魅力的で活力あふれる地域社会を構築するため、国の地方創生加速化交付金を活用し、補正するものであります。  まず、中心市街地におけるにぎわい創出に係る事業といたしましては、公共交通による中心市街地へのアクセスを向上させ、まちを楽しみながら歩ける空間を創出する、いわゆるトランジットモールの社会実験を、BRTを導入している長良橋通りにおいて実施する経費1,900余万円を補正いたします。  さらに、にぎわいの拠点となる「ぎふメディアコスモス」におきまして、夏季イベントや、本年度好評を博しましたテニテオイルミナードなど、年間を通じた自主事業の開催経費3,500余万円を補正いたします。  また、人材、雇用の場を確保する事業といたしまして、市内企業への就職や転職を希望される方々と、本市の多様な中小企業とのマッチングを図る就職説明会などの開催経費1,300余万円を補正いたします。  さらに、長良川や金華山など歴史・文化的資産を活用した観光誘客を推進するため、県及び長良川流域4自治体の広域連携による協議会への負担金250万円を補正するものであります。  これらの地方創生を加速化する事業につきましては、それぞれ所要の費目において措置するとともに、新年度予算に掲げる関連事業と一体的に推進し、効果的かつ効率的に実施をしてまいります。  次に、防災・減災対策といたしまして、土木費の道路橋梁維持費には、道路のり面整備に2,100万円を補正し、緊急的な補修などの対策を講じるとともに、教育費には、いずれも非構造部材の耐震対策として、厚見中学校の武道場及び特別支援学校の校舎及びプール棟の改修工事にかかる経費、合わせて9,400万円を、それぞれの費目において補正するものであります。  また、マイナンバーを活用した情報連携開始に向け、国が進めております情報セキュリティー抜本強化策に対応するため、総務費の行政管理費に、本市のネットワーク環境の再構築やシステム機器整備費8,200余万円を補正するものであります。  民生費の戸籍住民基本台帳費には、社会保障・税番号制度の円滑な導入のため、マイナンバーカード作成等に係る事務委任に要する経費6,900余万円を補正するものであります。  また、援護費につきましては、国の経済政策による賃上げ効果が及びにくい低所得高齢者に対し、1人当たり3万円の給付金を支給する経費12億5,500余万円を補正するものであります。  以上が国の補正予算に伴うもので、合わせて15億9,200余万円の補正となりますが、いずれも完了が次年度になる見込みであることから、繰越明許費として所要の措置を講ずるものであります。  このほか、総務費の行政管理費につきましては、職員の退職手当について2億円を減額するものであります。  また、民生費には、重度心身障がい者等、子ども、ひとり親家庭に係る医療費助成及び後期高齢者医療広域連合負担金につきまして、1人当たりの医療費単価の増などにより、予算に不足を来すことから、合わせて4億4,100余万円をそれぞれの費目において措置するものであります。  障害者福祉費には、放課後及び夏休みなどに、障がいのある児童が通う放課後デイサービスについて、当初の利用見込みを上回ることから、7,300余万円を補正するものであります。  また、老人福祉費につきましては、介護保険施設整備費助成の対象となる認知症高齢者グループホームの建設工事について、年度内完成が困難となったことから、開設準備経費に係る助成費240余万円を、子ども保育費は、私立保育園整備費助成について、事業着手が困難となったことから、6,400余万円をそれぞれ減額するものであります。  土木費の土木総務費には、道路及び街路に係る県営工事の進捗に伴い、負担金1億1,700万円を補正いたしました。  また、市街地再開発事業費は、高島屋南地区の市街地再開発に係る事業区域の都市計画変更により、年度内の事業進捗が見込めなくなったことから、新年度において対応することとし、2億300余万円を減額いたしました。  公園整備事業費につきましては、岐阜公園再整備に係る予定事業の一部に変更が生じたため、用地取得費などを減額する一方、国費を有効に活用し、遊具広場整備の進捗を図るなど事業調整の結果、810余万円を減額補正するものであります。  教育費の中学校建設費におきましては、入札不調等により年度内の完成が困難となりました岐阜中央中学校ほか2校の体育館等改修工事につきまして、新年度において対応することとし、3,800余万円を減額するものであります。  また、債務負担行為につきましては、社会福祉施設建設費助成について、岐阜駅東再開発事業の進捗に合わせ、期間を平成30年度まで延長するものであります。  このほか、完了が次年度になる見込みの事業につきましては、繰越明許費として所要の措置を講ずるものであります。  以上、事業費の補正総額は17億869万9,000円となり、財源内訳といたしましては、     国庫支出金       14億3,084万4,000円     繰越金その他特定財源   2億7,785万5,000円 をもって措置した次第であります。  あわせて、本年度当初予算における財政調整基金からの繰入金45億円につきましては、繰越金等の状況を勘案し、40億円の繰り戻しを行うなど、歳入の財源更正を行うものであります。  第61号議案国民健康保険事業特別会計補正予算は、平成26年度療養給付費負担金の確定に伴い、国への償還金1億7,364万3,000円を補正いたすものであります。  次に、第62号議案から第65号議案及び第68号議案から第70号議案は、いずれも条例の改正でありまして、それぞれ提案理由が付記してありますので、説明を省略させていただきます。  第66号議案は、土地区画整理事業の施行などに伴う市道路線の認定、廃止及び変更をしようとするものであります。  続きまして、第67号議案は、給与費等の一般会計補正予算であります。  人事院が国家公務員の給与について官民較差を是正するため、給料月額の引き上げなどの改定を勧告した、いわゆる人事院勧告に準じ、本市におきましても、一般職について給与を改定するとともに、特別職及び市議会議員の給与等につきましても、一般職に準じ、改定を行うものであります。  次に、報第1号の専決処分事項でありますが、昨年度に引き続き工事の入札不調への対応といたしまして、次年度にわたる執行により早期の事業完了が可能となるよう繰越明許費の補正をいたしたものであります。  最後に、報第2号の専決処分事項でありますが、岐阜薬科大学に係る損害賠償請求事件の高等裁判所判決に対し、最高裁判所に上告するため専決処分をいたしたものであります。  以上、補正予算及び関係諸議案を御説明いたしました。  よろしく御審議の上、適切なる御決定を賜りますようお願いを申し上げます。             ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第75 請願第1号及び第76 請願第2号 11: ◯議長(竹市 勲君) 日程第75、請願第1号及び日程第76、請願第2号、以上2件を一括して議題とします。            ───────────────────             請   願   文   書   表                     平成28年第1回(3月)岐阜市議会定例会 ┌───────┬────────────────────────────────┐ │請 願 番 号│請願第1号                           │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │件     名│安全保障関連2法(国際平和支援法、平和安全法制整備法)の廃止を │ │       │求める意見書採択についての請願                 │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │受理年月日  │平成28年3月3日                       │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │請願代表者  │岐阜市徹明通7-13 岐阜県教育会館302号          │ │住所・氏名  │新日本婦人の会岐阜支部 支部長 和田玲子            │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │紹 介 議 員│松原徳和、服部勝弘、田中成佳、高橋和江、井深正美、原 菜穂子、 │ │       │堀田信夫                            │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │付託委員会  │総務委員会                           │ ├───────┴────────────────────────────────┤ │(請願要旨)                                  │ │ 平成27年9月19日、参議院本会議において、安全保障関連2法(国際平和支援法、│ │平和安全法制整備法)が強行採決された。その後、安倍首相は国民が納得するよう説明 │ │責任を果たすと表明したが、各報道機関の調査では、「政府は説明不足」との回答が8 │ │割に上る。また、NHKの調査では、安全保障関連法の成立により、抑止力が高まり日 │ │本が攻撃を受けるリスクが下がるという政府の説明に、59%の人が「納得できない」 │ │と答えている。事実、北朝鮮は、安全保障関連法の成立後にミサイルを発射しており、 │ │この法律が国際平和を維持する抑止力になっていないことは明らかである。      │
    │ 戦後、日本国憲法のもとで、戦争によって誰ひとり殺されなかった、誰ひとり殺さな │ │かった歴史を私たちは誇りに思う。だからこそ、自衛隊が海外で殺し・殺される事態に │ │なることを許すわけにはいかない。しかも、アメリカの軍隊の下請として自衛隊が利用 │ │されることなど、もってのほかと言わざるを得ない。                │ │ 安全保障関連2法は、歴代の自民党政権が憲法上不可能としてきた集団的自衛権の行 │ │使、戦闘地域での武器及び燃料などを補給する兵たん活動、戦争状態の地域での治安活 │ │動などを可能にし、これら全てが憲法第9条を踏みにじるものである。だからこそ、多 │ │くの憲法学者や元内閣法制局長官、法律家らが繰り返し「憲法違反」だと明快に述べて │ │いるのである。                                 │ │ 憲法第98条は、最高法規である憲法に反する法律は効力を有しないと規定しており、│ │憲法違反である安全保障関連2法は廃止する以外にない。              │ │ 戦後70年が経過した今こそ、戦争への道を食いとめ、憲法第9条によりアジア及び │ │世界に不戦を誓った平和国家としての歩みを進めるときである。           │ │ 以上のことから、下記事項について請願する。                  │ │                   記                    │ │1 安全保障関連2法の廃止を求める意見書を国に提出すること。          │ └────────────────────────────────────────┘ ┌───────┬────────────────────────────────┐ │請 願 番 号│請願第2号                           │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │件     名│木曽川水系連絡導水路事業の「継続」を容認しないことを求める請願 │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │受理年月日  │平成28年3月3日                       │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │請願代表者  │岐阜市中新町4                         │ │住所・氏名  │よみがえれ長良川実行委員会                   │ │       │代表 粕谷志郎                         │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │紹 介 議 員│松原徳和、服部勝弘、田中成佳、高橋和江、井深正美、原 菜穂子、 │ │       │堀田信夫                            │ ├───────┼────────────────────────────────┤ │付託委員会  │建設委員会                           │ ├───────┴────────────────────────────────┤ │(請願要旨)                                  │ │ 昨年11月11日、木曽川水系連絡導水路事業の再検証に係る、「木曽川水系連絡導 │ │水路事業の関係地方公共団体からなる検討の場」(以下、「検討の場」という。)(幹 │ │事会)が開催された。これは、前回の会議並びにパブリックコメントの実施以来4年ぶ │ │りの開催であり、今後、学識経験を有する者、関係住民、関係地方公共団体の長、関係 │ │利水者からの意見聴取を経て、対応方針案を決定するとされている。         │ │ 本事業計画については、長良川の環境悪化を心配する岐阜市民の声が高まり、国はあ │ │れこれ修正を加えて市民に説明しようとしたが、納得できるものではなく回答不能のま │ │ま中断し、2009年秋には凍結となっている。そして、2010年秋からは、他のダ │ │ム等の84事業の1つとして、再検証の対象となっている。             │ │ しかし、この再検証には大きな問題がある。常識では考えられないような代替案を持 │ │ち出し比較して検証するものであり、対象事業の大部分が強行に継続決定されているこ │ │とから、今回の4年ぶりの「検討の場」の再開に大きな不安を覚えるものである。   │ │ 本事業については、凍結決定及び「検討の場」の長い空白の中でマスコミ報道も少な │ │くなり、事業が立ち消えたものと思っている市民も多い状況のもと、岐阜市は「検討の │ │場」において、本事業を長良川の環境と水道水源の改善になるとして、根拠のない期待 │ │で事業継続を容認するかのごとき意見を表明している。これは市民の長良川の環境悪化 │ │の不安を無視するどころか、全く反対の意見表明であり、重大な問題である。     │ │ 徳山ダムの水を長良川(岐阜市長良古津付近)に放流することは、世界農業遺産に登 │ │録された「清流長良川の鮎」に大きなダメージを与えることにとどまらず、次世代に残 │ │さなければならない岐阜市民の最大で最良の宝を失うことにもなりかねない。岐阜市民 │ │として疑問と不安を抱えたままでの導水路事業の継続は到底認められるものではない。 │ │ 以上のことから、下記事項について岐阜市議会として決議されるよう請願する。   │ │                   記                    │ │1 岐阜市は市民の疑問を残したままの導水路事業の継続を容認しないこと。     │ │2 市民に開かれた「導水路事業が長良川に及ぼす環境検討会」(仮称)を設置し、市 │ │ 民の疑問、不安に応えること。                         │ └────────────────────────────────────────┘ 12: ◯議長(竹市 勲君) 請願の紹介議員において発言の申し出がありますので、これを許します。20番、井深正美君。    〔井深正美君登壇〕(拍手) 13: ◯20番(井深正美君) おはようございます。    〔「おはようございます」と呼ぶ者あり〕  ただいま上程されました請願第1号安全保障関連2法(国際平和支援法、平和安全法制整備法)の廃止を求める意見書採択についての請願、請願代表者は、新日本婦人の会岐阜支部支部長、和田玲子さんです。  及び請願第2号木曽川水系連絡導水路事業の「継続」を容認しないことを求める請願、請願代表者は、よみがえれ長良川実行委員会代表、粕谷志郎さんです。  以上、2つの請願について、紹介議員を代表して請願の御紹介をさせていただきます。  最初に、請願第1号安全保障関連2法(国際平和支援法、平和安全法制整備法)、いわゆる戦争法の廃止を求める意見書採択についてです。  昨年9月19日に、安倍政権は、憲法9条をじゅうりんし、歴代政府の憲法解釈を180度転換、集団的自衛権の行使を可能とし、アメリカ軍の戦争支援のために自衛隊を海外派兵する安全保障関連2法を、国民世論の反対の声を無視し強行採決しました。その上で政府は、安全保障関連2法の公布から半年となる今月29日にも施行するとしています。そうした中、安倍首相は、衆議院予算委員会において、南スーダンに派兵している陸上自衛隊のPKO部隊に、駆けつけ警護などの新たな任務の拡大を検討すると表明。  駆けつけ警護とは、集団的──失礼しました。──武装集団に襲撃された国連要員などを救出する任務であり、自衛隊の武力行使によって、殺し殺される現実の危機が迫っていることが国会論戦で浮き彫りになっています。  安全保障関連2法の強行採決後も、国民の廃止を求める世論はおさまるどころか、さらに大きく広がっており、若者のグループ、シールズや子育て中のママの会など、多くの団体や個人が立場の違いを超えて結集、自主的、自覚的に抗議集会やデモが全国各地で波状的に行われています。さらに、安全保障関連2法の廃止を求める「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が戦争法の廃止を求める2,000万人統一署名を提起、全国各地で草の根の活動として取り組まれています。  折しも、安全保障関連2法の強行採決5カ月目となった2月19日、日本共産党、民主党、維新の党、社民党、生活の党の野党5党が共同して、安全保障関連2法を廃止する法案を衆議院に提出し、今国会で審議されることになりました。  安全保障関連2法については、地方においても大変重要な問題であり、隣の各務原市や愛知県小牧市には航空自衛隊の基地もあることから、決して無関心でいられる状況ではありません。  岐阜市議会においても、市民の命と暮らしを守る立場から、戦争への道を食いとめ、憲法9条を守り平和を礎にした国として歩みを進める立場から、安全保障関連2法の廃止を求める国への意見書採択を求めるものであります。  次に、請願第2号木曽川水系連絡導水路事業の「継続」を容認しないことを求める請願についてです。  昨年11月の11日に、4年ぶりとなる第3回「木曽川水系連絡導水路事業の関係地方公共団体からなる検討の場」、略称して「検討の場」が開催されました。今後は、学識経験者、関係住民、地方公共団体、関係水利者からの意見聴取を経た上で、対応方針案を決定するとしています。  そもそも木曽川水系連絡導水路事業とは、2008年春に本格運用を始めた徳山ダムにためた水を利用するとして、異常渇水時の河川環境の改善や、愛知県と名古屋市の水道水や工業用水に使うため、ダム下流の揖斐川から木曽・長良川に毎秒20トンの水を流せる導水路をつくる事業で、当時、事業費は約890億円との試算がされ、国、愛知県、岐阜県、三重県と名古屋市がその費用を分担するとしていました。計画では、徳山ダムの水を揖斐川から全長43キロの地下トンネル、導水路を通して、木曽川と長良川に流す計画になっており、長良川の場合は、長良古津付近で放流する計画となっています。  この導水路事業について、長良川の環境悪化を心配する声が高まる中、市民に対するまともな説明ができない中で事業が中断し、2009年には事業が凍結され、2010年秋からは、国のダム事業の見直しによって再検証の対象事業84事業のうちの1つになっています。しかし、再検証については、最初から実現が不可能とも言うべき対策案の提案をして比較するなど、事業の継続を前提にするような検証であり、結果的に大部分の事業継続が決定されています。  導水路事業については、2009年には事業の凍結、その後、「検討の場」の未開催が続く中、事業そのものが立ち消えになったと思っている市民も多い状況の中、第3回の「検討の場」において、長良川の河川環境保全や水道水の確保に必要であるとの根拠のない期待によって、事業の容認継続を意図する意見表明を岐阜市が行っております。  導水路事業による長良川の環境悪化、世界農業遺産に登録された「清流長良川の鮎」に致命的なダメージを与えることにより、次の世代に残すべき市民の宝を失う結果をもたらすことにつながります。  以上の理由から、1、岐阜市は市民の疑問を残したまま導水路事業の継続を容認しないこと、2、市民に開かれた「(仮称)導水路事業が長良川に及ぼす環境検討委員会」を設置し、市民の疑問と不安に応えることの2点を市議会に決議することを求めています。  以上、2つの請願の紹介をさせていただきました。  両請願とも、市民に直接かかわる内容であり、議員の皆さんが請願の趣旨に賛同され、ぜひとも採択をしていただくようお願いをしまして、請願の紹介とさせていただきます。(拍手) 14: ◯議長(竹市 勲君) 以上で請願紹介を終わります。             ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 一 休  会 15: ◯議長(竹市 勲君) お諮りします。明日及び3月7日から11日までの6日間は、議案精読のため休会したいと思います。これに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 16: ◯議長(竹市 勲君) 御異議なしと認めます。よって、明日及び3月7日から11日までの6日間は休会することに決しました。             ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 散  会 17: ◯議長(竹市 勲君) 以上で本日の日程は全部終了しました。本日はこれで散会します。  午前11時51分 散  会  岐阜市議会議長      竹 市   勲  岐阜市議会議員      渡 辺 貴 郎  岐阜市議会議員      長 屋 千 歳
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