長野県議会 2021-02-18
令和 3年 2月定例会本会議-02月18日-01号
令和 3年 2月定例会本会議-02月18日-01号令和 3年 2月定例会本会議
令和3年2月18日(木曜日)
応招議員の席次及び氏名
1 番 下伊那郡高森町 熊谷元尋
2 番 長野市 望月義寿
3 番 須坂市 小林君男
4 番 上伊那郡宮田村 清水正康
5 番 長野市 加藤康治
6 番 下伊那郡平谷村 川上信彦
7 番 上田市 山田英喜
8 番 佐久市 大井岳夫
9 番 茅野市 丸茂岳人
10 番 安曇野市 寺沢功希
11 番 佐久市 花岡賢一
12 番 長野市 池田 清
14 番 長野市 山口典久
15 番 佐久市 小山仁志
16 番 埴科郡坂城町 竹内正美
17 番 佐久市 竹花美幸
18 番 諏訪市 宮下克彦
19 番 木曽郡木曽町 大畑俊隆
20 番 岡谷市 共田武史
21 番 塩尻市 丸山大輔
22 番 長野市 髙島陽子
23 番 千曲市 荒井武志
24 番 長野市 埋橋茂人
25 番 塩尻市 続木幹夫
26 番 松本市 中川博司
27 番 松本市 両角友成
28 番 松本市 中川宏昌
29 番 上田市 清水純子
30 番 諏訪郡富士見町 小池久長
31 番 伊那市 酒井 茂
32 番 須坂市 堀内孝人
33 番 東御市 石和 大
34 番 南佐久郡小海町 依田明善
35 番 小諸市 山岸喜昭
36 番 飯田市 小島康晴
37 番 中野市 小林東一郎
38 番 岡谷市 毛利栄子
39 番 長野市 和田明子
40 番 大町市 諏訪光昭
41 番 中野市 丸山栄一
42 番 飯田市 小池 清
43 番 飯山市 宮本衡司
44 番 東筑摩郡朝日村 清沢英男
45 番 上伊那郡辰野町 垣内基良
46 番 長野市 鈴木 清
47 番 上田市 高村京子
48 番 北安曇郡池田町 宮澤敏文
49 番 長野市 西沢正隆
50 番 長野市 風間辰一
51 番 駒ヶ根市 佐々木祥二
52 番 伊那市 向山公人
53 番 上田市 平野成基
54 番 松本市 本郷一彦
55 番 松本市 萩原 清
56 番 上水内郡信濃町 服部宏昭
57 番 安曇野市 望月雄内
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欠員(1名)
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出席議員(56名)
1 番 熊谷元尋 28 番 中川宏昌
2 番 望月義寿 29 番 清水純子
3 番 小林君男 30 番 小池久長
4 番 清水正康 31 番 酒井 茂
5 番 加藤康治 32 番 堀内孝人
6 番 川上信彦 33 番 石和 大
7 番 山田英喜 34 番 依田明善
8 番 大井岳夫 35 番 山岸喜昭
9 番 丸茂岳人 36 番 小島康晴
10 番 寺沢功希 37 番 小林東一郎
11 番 花岡賢一 38 番 毛利栄子
12 番 池田 清 39 番 和田明子
14 番 山口典久 40 番 諏訪光昭
15 番 小山仁志 41 番 丸山栄一
16 番 竹内正美 42 番 小池 清
17 番 竹花美幸 43 番 宮本衡司
18 番 宮下克彦 44 番 清沢英男
19 番 大畑俊隆 45 番 垣内基良
20 番 共田武史 46 番 鈴木 清
21 番 丸山大輔 47 番 高村京子
22 番 髙島陽子 48 番 宮澤敏文
23 番 荒井武志 49 番 西沢正隆
24 番 埋橋茂人 50 番 風間辰一
25 番 続木幹夫 51 番 佐々木祥二
26 番 中川博司 52 番 向山公人
27 番 両角友成 53 番 平野成基
54 番 本郷一彦 56 番 服部宏昭
55 番 萩原 清 57 番 望月雄内
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説明のため出席した者
知事 阿部守一
公営企業管理者 小林 透
副知事 太田 寛
企業局長事務取扱
副知事 小岩正貴 財政課長 矢後雅司
総務部長 関 昇一郎 教育長 原山隆一
警察本部長 安田浩己
監査委員 田口敏子
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職務のため出席した事務局職員
事務局長 小山 聡
議事課担当係長 山田むつみ
議事課長 百瀬秀樹
総務課担当係長 青木武文
議事課企画幹兼 丸山俊樹
課長補佐
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午後1時開会
○議長(小池清 君)ただいまから第418回県議会を開会いたします。
知事から招集の挨拶があります。
阿部知事。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)本日ここに2月県議会定例会を招集いたしましたところ、議員各位の御出席を賜り、まことにありがとうございます。
提出議案につきましては後刻御説明を申し上げますが、何とぞよろしく御審議の上、御議決を賜りますようお願い申し上げ、挨拶といたします。
令和3年2月18日(木曜日)議事日程
会議録署名議員決定の件
会期決定の件
知事提出議案
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本日の会議に付した事件等
報第6号 交通事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第7号 交通事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第8号 交通事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第9号 家畜検査中の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第10号 交通事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第11号 道路上の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第12号 道路上の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第13号 道路上の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第14号 河川隣接地の事故に係る損害賠償の専決処分報告
報第15号 訴えの提起の専決処分報告
報第16号 訴えの提起の専決処分報告
〔議案等の部「1 議案 (1)知事提出議案」参照〕
○議長(小池清 君)以上であります。
次に、お手元に配付いたしましたとおり、地方自治法第122条及び
地方公営企業法第25条の規定に基づき知事から予算説明書の提出がありましたので、報告いたします。朗読は省略いたします。
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△知事提出議案
○議長(小池清 君)ただいま報告いたしました知事提出議案を一括して議題といたします。
提出議案の説明を求めます。
最初に、阿部守一知事。
〔知事阿部守一君登壇〕
◎知事(阿部守一 君)ただいま提出いたしました令和3年度当初予算案をはじめとする議案の説明に先立ち、新年度に向けての県政運営に関する所信などについて申し述べさせていただきます。
新型コロナウイルスと度重なる自然災害。私たちは今、二つの大きな危機に直面しています。県民の皆様の「確かな暮らし」の基盤を揺るがすこの危機を乗り越え、より豊かで安全な長野県を創るため、県が果たすべき役割と責任は極めて重大です。将来を見据えつつ、県民の皆様が、明日への希望を持ち、安心して暮らすことができるよう、全力を傾注してまいります。
まず、県民の皆様の命と健康を守るため、
新型コロナウイルス感染症対策に最優先で取り組みます。感染状況に応じて適切な
まん延防止対策を講じるとともに、医療・検査体制の充実・確保や医療従事者への支援、円滑なワクチン接種のための体制整備などを進めます。一方で、経営に対して直接・間接的に大きな打撃を受けている事業者や、失業等により暮らしの困難に直面されている方々を、しっかりと支え抜いていかなければなりません。コロナ禍の影響が長期化する中、きめ細かな対策を切れ目なく講じ、感染が落ち着いている状況にあっては需要の喚起に努めるなど、暮らしと産業に対する積極的な支援を行ってまいります。
本県に甚大な被害をもたらした一昨年の
東日本台風災害から1年4か月、昨年の7月豪雨災害からは7か月の歳月が経過しました。被災箇所数は膨大で、復興は未だ道半ばです。被災された方々の思いに寄り添い、一日も早く日常の暮らしと生業を取り戻していただけるよう復旧・復興に全力で取り組みます。
私たちが暮らす長野県は、大規模な自然災害にこれまでも度々襲われてきました。私の知事就任後だけでも、栄村を中心とする長野県北部の地震災害、平成26年2月の豪雪災害、南木曽町の土石流災害、白馬村を中心とする
神城断層地震災害、
御嶽山噴火災害、そして
令和元年東日本台風災害など、多くの災害で数多の尊い人命や貴重な財産が失われました。自然の豊かさを享受する反面、急峻な地形に囲まれ、自然の厳しさと常に向き合ってきた本県においては、災害に強く、安全な地域社会をつくることは、多くの県民の皆様の強い願いです。これまでの大規模災害の教訓を踏まえ、県民の皆様の生命と財産、暮らしと産業を守るため、不退転の決意で防災・減災対策と県土の強靱化を集中的に進めてまいります。
新型コロナウイルスの危機は、私たちに暮らし方や働き方の変容を迫り、人々の価値観も大きく変化しつつあります。その一つの現れが地方回帰の動きです。移住したい県として常に注目されてきた本県としては、この好機を逃すわけにはいきません。「
信州回帰プロジェクト」として、仕事や遊び、農ある暮らしなどの
ライフスタイルと組み合わせた移住の提案を行い、テレワーク、デュアルワークといった新しい働き方を「つながり人口」の拡大につなげるなど、大都市圏等からの人や企業の流入を加速させてまいります。また、県内企業の経営構造の転換、成長が期待される産業の振興、地域の特色を活かした
観光地域づくりの推進等に取り組むことにより、人と企業をひきつける県づくりを進めてまいります。
ソサエティ5.0 時代における魅力ある地域づくりには、デジタル技術とデータを活用して新たな価値を創出するDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が不可欠であると考え、昨年7月、「長野県DX戦略」を取りまとめました。その後、オンライン学習やテレワーク、遠隔医療や非接触型決済など、コロナ禍において改めてデジタル技術の有用性が認識され、デジタル社会の構築に向けた動きが加速化しています。
スマートハイランド推進プログラムに基づき、教育環境のデジタル化や自治体のスマート化などを積極的に推進するとともに、IT人材やIT企業の集積地を目指した「
信州ITバレー構想」を関係者とともに具現化することにより、暮らしの利便性と産業の生産性を高めてまいります。
一昨年の「
気候非常事態宣言」により、本県は2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロとする決意を表明しました。昨年、県議会において全会一致で可決・成立した「長野県脱
炭素社会づくり条例」の趣旨を踏まえ、ゼロカーボンの実現に向けた取組を新年度から本格的に開始いたします。エネルギーはもとより、交通や建物等の各種インフラ、様々な産業活動や私たちの日常生活など、
社会システム全般のあり方を見直し、急速かつ広範囲にわたる脱炭素化を進めてまいります。目指す脱炭素社会は、持続可能な
ライフスタイルが定着し、今以上に地域経済が発展して生活の質が向上している社会です。将来世代に胸を張って豊かな地球環境を引き継いでいくことができるよう、全ての県民の皆様とともに、従来の延長線上にはない「新たな道」を切り拓いてまいります。
今定例会に提出いたしました令和3年度当初予算案及び令和2年度
補正予算案並びにその他の案件について御説明申し上げます。
コロナ禍や災害から県民の皆様の命と暮らしを守る施策を切れ目なく実施するため、国の補正予算等を最大限活用し、令和3年度当初予算案と令和2年度補正予算案を一体のものとして編成しました。令和3年度当初予算案の総額は、一般会計1兆423億3,067万5千円、特別会計4,333億61万2千円、企業特別会計415億2,862万5千円であります。特別会計は
公債費特別会計など11会計、企業特別会計は
流域下水道事業など3会計であります。また、令和2年度補正予算案は、一般会計731億4,867万4千円、企業特別会計7億1,721万4千円であります。企業特別会計の補正予算案は、
流域下水道事業会計に係るものであります。
新型コロナウイルスがもたらした危機に全力で対処するとともに、近年特に激甚化・頻発化している災害に対する備えをより一層強化するため、必要性・緊急性が高い事業費について積極的に予算計上いたしました。その結果、一般会計当初予算案は過去最高額となり、補正予算案を加えると1兆1,000億円を超える規模となります。
新年度の県税収入は、
新型コロナウイルスの影響による景気の後退により、今年度当初予算と比べて約170億円、地方譲与税も同じく約136億円減少する見込みです。一方で、国の地方財政対策により一般財源総額が確保されたことに加えて、県としても、事業の選択と集中に努めるとともに、
新型コロナウイルス感染症に対応するための
緊急包括支援交付金や
地方創生臨時交付金、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に係る国庫支出金などを最大限活用した結果、財政健全化の指標とされている
実質公債費比率や将来負担比率については、引き続き健全な水準を維持できる見通しです。今後、5か年加速化対策の積極的な推進と
臨時財政対策債の発行により、県債残高が当面増加することは避けられず、また、
社会保障関係費についても引き続き増加基調となることが見込まれることから、引き続き、歳入・歳出両面にわたる不断の見直しが必要です。
このように厳しさを増す財政状況に加え、
新型コロナウイルス感染症の影響による人々の価値観の変化、デジタル技術の浸透による社会変革の加速化や新たな情報システムの導入による県庁の業務環境の大幅な変更など、県の行財政を取り巻く環境は、大きく、しかも急速に変化しています。こうした中、複雑・多様化する県民ニーズに迅速・的確に対応する行政へと転換し、県民の皆様にも働く職員にとっても満足度が高い組織をつくるとともに、財政についても、真に必要な事業に重点的に予算を配分しつつ、持続可能なものへと転換していかなければなりません。そのため、現行の「長野県行政経営方針」を見直し、新たな視点で行政・財政改革を進めるための方針を策定してまいります。県民の利便性向上や職員負担の軽減につながる業務改革、時代の変化に対応できる行財政の基盤づくりを通じて、新時代の行政経営への質的転換と財政構造の改革を進めてまいります。
以下、主な施策につきまして、順次御説明申し上げます。
年末年始の大きな人の動きも影響し、1月に入ってから県内の
新型コロナウイルス陽性者数は急増しました。患者の死亡も増え、県内ではこれまで41名の方がお亡くなりになっています。謹んで哀悼の意を表するとともに、御遺族に対し、心よりお悔やみ申し上げます。
1月3日に佐久圏域をレベル4に引き上げて以降、圏域や市町村ごとに県独自の感染警戒レベルを踏まえたきめ細かな対策を講じてきました。入院患者数が200名を超えるなど医療提供体制への負荷が著しく増大したことを受け、1月14日には「医療非常事態宣言」を全県に発出し、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある方の不要不急の外出自粛や感染リスクが高い会食の自粛などを呼びかけました。多くの県民の皆様の御協力により、当初設定した1週間当たりの新規陽性者数と病床利用率に関する数値目標を達成することができたことから、2月3日、医療非常事態宣言については予定どおり解除いたしました。第一線で
新型コロナウイルスと闘い、私たちの命を守ってくださっている医療従事者の皆様に深く敬意を表しますとともに、暮らしや事業活動に大きな影響を受けながらも、感染防止に御協力いただいてきた全ての皆様に改めて心から感謝申し上げます。その後、県内全域で新規陽性者の発生が落ち着いたことから、一昨日、全県の感染警戒レベルを1に引き下げたところです。緊急事態宣言が発出されている地域もあることなどから、県民の皆様には引き続き感染防止のための注意を呼びかけてまいります。
県としてはこれまで、感染拡大の防止に最善を尽くし、他方で権利や自由の制限を必要最小限にとどめるため、
まん延防止対策については、できるだけ早く着手し、狭い範囲で強い措置を講じて、短期間で終了させる「早く、狭く、強く、短く」を基本として取り組んでまいりました。今後とも陽性者の発生状況をしっかりと把握し、感染警戒レベルや医療アラートの的確な運用を図ることにより、地域の実態に合った対策を講じてまいります。
医療機関の多大なる御理解をいただき、
新型コロナウイルス陽性者の受入可能病床数については、これまでの350床から434床へと大幅に拡充することができました。宿泊療養施設についても新たに南信地域で1施設を開設し、全部で375人の陽性者を受け入れることが可能となりました。また、パルスオキシメーターの貸与や、食料品の提供等により、自宅療養される方が安心して療養していただけるよう努めてきたところです。回復期の患者が速やかに転院等を行える環境整備を進めるなど、今後とも療養体制の確保に努めてまいります。
疫学調査等を行う保健所については、職員数を増強すると同時に市町村からも応援の保健師等を派遣していただき、また事務職員に対してもクラスター対策に必要な研修を行うなど、体制の強化を図ってきました。PCR等検査については、検査前確率が高いと考えられる場合には、無症状の方も含む医療・介護施設の従事者等に対する幅広い行政検査を実施してきたほか、医療・介護施設等が一定の要件のもとで自主的に行う検査費用を補助する制度を創設いたしました。また、診療・検査医療機関についても、医療機関の御協力のもとで順次増やすことができ、2月12日現在で575の施設を指定しております。
医療従事者等への支援も引き続き行ってまいります。
新型コロナウイルス感染症入院患者の診療等に当たっていただいた方々に対する応援金の支給について専決処分させていただいたほか、医療機関における危険手当の支給や、自宅に帰宅できない方々のための宿泊施設の確保に対する助成を継続して実施します。医療・介護施設等において陽性者や濃厚接触者が多数発生した場合でも医療・福祉サービスの提供体制が維持できるよう、他施設等からの応援職員の派遣に要する経費を助成します。また、急激な陽性者の増加に備えて個人防護具等必要な物資を県として備蓄いたします。
ワクチン接種につきましては、国が先行的に行う医療従事者に対する接種が昨日から開始されました。本県でも、その他の医療従事者に対する接種準備を進めるとともに、市町村が中心となって行う高齢者等に対する接種が円滑に実施されるよう取り組んでまいります。1月25日、「ワクチン接種体制整備室」を設置するとともに、2月3日には県の新型コロナ対策本部及びその地方部にワクチンチームを設置し、接種実施体制の構築や調整を行っています。また、「
新型コロナウイルスワクチン接種体制整備連絡会議」を設置し、市町村・医療関係者などとの連携を密にして取組を進めてまいります。ワクチン接種を進めていく上では、接種を行っていただく医療機関の確保、ワクチンの円滑な流通、接種対象者への説明など取り組むべき課題が多くあります。市町村や医療関係者の皆様方と十分な意思疎通を図り、県民の皆様に対する積極的な情報提供を行いながら、円滑な接種が行われるよう取り組んでまいります。
県によるまん延防止のための要請や、他都府県での緊急事態措置等における往来自粛の要請等により、飲食業、観光業、交通事業等を中心として県内経済に深刻な影響が生じています。そのため、営業時間の短縮要請等に応じていただいた飲食店等に対して協力金を支給するとともに、感染警戒レベルが5となった市町村等が講じる事業者支援の取組に対する交付金を創設しました。また、こうした状況下にあっても前向きに取り組む事業者を支援するため、飛沫防止パネルの無償配付、持続化補助金の上乗せ補助、テイクアウト・デリバリー等に取り組む店舗を応援するキャンペーンの実施などを行ってまいりました。さらに、持続化給付金の再度の支給や、緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金の対象に県内事業者が確実に含まれるようにすることなどを国に要請するとともに、雇用調整助成金・休業支援金等様々な支援策の周知にも努めてきたところです。今後は、新型コロナ対策推進宣言の店のアップグレードや、通販サイト「NAGANOマルシェ」における酒類、食品類や工芸品の割引販売など、需要を喚起するための施策についても推進してまいります。
今回提出した補正予算案には、低感染リスク型のビジネス展開を支援するため、国のものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業及び小規模事業者持続的発展支援事業に上乗せで補助を行い、補助率を最大で10分の9に引き上げるための経費を計上しました。また、飲食業・サービス業等に対する支援策として、感染防止対策を徹底している店舗を対象にプレミアム付きクーポン券を発行するための経費を20億円計上しました。クーポン券の販売を2月5日に再開した信州Go To Eatキャンペーンと合わせ、失われた需要を取り戻すことができるよう取り組んでまいります。
企業の円滑な資金繰りを支援する中小企業融資制度資金に関しては、3年間実質無利子・無担保の「
新型コロナウイルス感染症対応資金」について、融資限度額の6,000万円への引上げや、同一資金内における借換条件の緩和など、事業者の実情を踏まえた制度変更を行うほか、当初予算案では過去最大となる1,500億円の融資可能額を確保しました。各種相談対応から支援策の紹介、申請書の作成・提出まで、課題を抱える事業者を総合的に支援する産業・雇用総合サポートセンターについては、設置期間を来年度末まで延長いたします。
バス・鉄道事業者に対しては、県民生活に欠くことのできない公共交通の維持・確保の観点から、運行継続のための費用を支援します。農林業に対する支援として、県オリジナル品種「風さやか」の販売促進キャンペーンを行うほか、県産花きの家庭内消費拡大のため、県内生花店と連携した「信州フラワーフェア」を通年で実施します。また、林業事業体の経営支援のため、県産材需要の拡大や、仕事が不足している地域と労働力が不足している地域との林業従事者のマッチングなどを進めてまいります。
昨年の秋以降、観光需要が全国的に回復傾向となりましたが、Go To Travelキャンペーンが全国一斉に一時停止された影響を受け、年末年始を中心に宿泊施設等で多くのキャンセルが発生いたしました。このため、12月28日から1月11日までの間、県内在住の同居の家族を対象とする家族宿泊割事業を緊急に実施し、宿泊需要の下支えに努めたところです。しかしながら、県内への旅行客の大宗を占める11都府県に対して緊急事態宣言が発出されて以降、旅行マインドは一層冷え込み、本来であれば国内外から多くの観光客で賑わうスキーシーズンであるにもかかわらず極めて厳しい状況が続いています。
県内の感染状況が落ち着いてきたことから、観光需要の早期回復に向け、宿泊施設等における感染防止対策を再度徹底した上で、家族宿泊割の第2弾を明日19日から改めて開始するとともに、県内のスキー場でリフトを半額で利用できるキャンペーンも再開することといたしました。今回提出した補正予算案においても、宿泊割引の対象拡大、体験施設や日帰り入浴施設等を含めた様々なアクティビティの割引クーポンの販売、貸切バスや観光タクシー、観光列車の運行支援など、観光需要を喚起するための事業費として20億円を計上しました。今後とも裾野の広い観光産業を切れ目なく支援してまいります。
県内の有効求人倍率は、昨年7月に1倍を割り込んだ後再び上昇し、12月には1.18倍にまで回復しました。しかし、
新型コロナウイルス関連の解雇・雇止めが2月12日現在で1,855人にも上るなど、雇用情勢は依然として厳しい状況が続いています。今回のコロナ禍では、求人が大幅に減少し、特に非正規労働者など社会的に弱い立場の方々の失業が深刻な問題となっていることから、正規就労の拡大を図るとともに、積極的な求人開拓や人手不足分野への就労促進などに取り組んでまいります。
「緊急就業支援デスク強化事業(Jobサポ)」を継続し、引き続きお一人おひとりに寄り添った正規就労のための支援を行うとともに、「ジョブカフェ信州正社員チャレンジ事業」を拡充し、正社員として就労するための実習機会等を増やしてまいります。求人開拓については、Jobサポを通じて正社員を雇用した事業所に対して賃金の一部を助成する緊急雇用対策助成金等の周知を図るとともに、ハローワークと連携した求人確保対策本部による事業者への働きかけを強化します。また、離職者と介護等の人手不足分野をマッチングさせるための専任職員の配置や、職業訓練による求職者のスキルアップなどにより、人手不足分野への就労を促進してまいります。
非正規労働者、ひとり親家庭、外国人の方々など、コロナ禍で生活費等に困窮している全ての方々が必要な支援を確実に受けることができるようにしなければなりません。生活福祉資金の特例貸付については、国の償還免除の対象とならない方でも償還時に住民税非課税世帯相当である場合には、県が償還額の一部を補助すること、また、緊急事態宣言の延長等に伴い総合支援資金の再貸付が実施されることなどを積極的に周知いたします。「まいさぽ」や多文化共生相談センターにおける相談体制を拡充するとともに、ひとり親家庭の養育費確保を支援するための弁護士による法律相談なども行ってまいります。引き続き住居確保給付金の支給、高校生や県立の大学等の学生に対する授業料の減免などを実施するほか、フードバンクの活動に対する支援の拡充、信州こどもカフェ運営費助成の増額などにより、食料支援の取組も充実してまいります。
自殺対策については、日本財団や関係団体、市町村とも連携して、各種啓発活動やゲートキーパー研修などに積極的に取り組んでまいりました。警察庁による速報では県内における昨年の自殺者数が減少するなど、一定の成果が表れてきているものと受け止めていますが、女性と無職者の自殺者数は増加していることから、各種相談会やSNS等を活用した広報啓発を充実するとともに、女性向けリーフレットの作成等による女性の自殺対策を進め、県民の命を守るための取組を一層強化します。
新型コロナウイルスに感染された方やその御家族、医療従事者等エッセンシャルワーカーの方々に対する差別や誹謗中傷は、人の心を深く傷つける行為であり、絶対に許されるものではありません。県民一丸となって誹謗中傷の抑止等を推進する「“あかりをともそう”キャンペーン」を継続し、「ココロのワクチンプロジェクト」により一人ひとりに自らの行動を振り返っていただくとともに、市民中心の活動として県内各地でも広がりを見せている「シトラスリボンプロジェクト」の輪を更に広げてまいります。また、県で設けている新型コロナ誹謗中傷等被害相談窓口で受け付けた相談等については、法務局等の関係機関と連携し、相談者の立場に立って課題解決に向けた対応を行ってまいります。
アフターコロナ時代も見据えて、より多くの人と企業をひきつける県づくりを進めるため、地方回帰の動きを本県の活性化に確実につなげるとともに、企業等の積極的な事業展開を支援してまいります。
人や企業を本県に呼び込む「
信州回帰プロジェクト」を強力に推進します。密な環境を避ける動きやテレワークの普及等を背景に本県と東京都との人口移動は、昨年4月以降9か月連続で転入超過となっており、この好機を活かして移住者や「つながり人口」の更なる増加を図ります。
雄大な自然が身近にある生活、信州やまほいくなどの特徴的な教育環境、大都市圏とのアクセスの良さなど、信州の強みを活かした働き方や暮らし方を提案することにより、移住を考える人たちの希望に応えてまいります。就農や農ある暮らしを志向する人たちを呼び込むため、先輩移住者が暮らしの楽しさなどを対話型で伝えるオンラインセミナーの開催や、農地付き住宅物件の情報発信などに取り組みます。「つながり人口」の拡大を図るため、大都市の企業等をターゲットにして信州リゾートテレワークのPRを強化するとともに、IT人材を呼び込むための「おためしナガノ」の募集件数の20組への倍増、県内企業が副業人材を活用するための交通費助成等に取り組みます。
さらに、長野県で「働く、暮らす」ための情報発信総合サイトの開設と本県の魅力等をプッシュ型で配信する総合情報発信アプリの作成により、移住や二地域居住、テレワークなどに関する情報発信を強化します。また、銀座NAGANOについては、現在入居しているビルの5階を新たに借り受け、移住やテレワーク希望者に対する情報提供、特産品の販売、企業誘致などを進めるための拠点としての機能を強化します。
人口減少・少子高齢化が進む過疎地域は、道路等の社会基盤の整備や集落の維持・活性化など依然として多くの課題があるものの、都市と連携しながら、豊かな暮らしの中で様々な付加価値を生み続けられる場としての役割が期待されています。現在、「過疎地域自立促進特別措置法」に代わる新しい法律の制定が検討されており、県としても、移住・定住や企業移転の促進などにより、過疎地域への人の流れと雇用の場の創出に市町村と連携して引き続き取り組んでまいります。
企業規模の拡大や生産性向上のため、前向きに事業展開を図る企業を積極的に支援し、県内産業の競争力を強化します。
ものづくり産業の分野では、コロナ禍の情勢変化等を踏まえて、企業が取り組む事業の再構築や、今後の成長期待分野における取組を支援します。信州未来リーディング企業育成事業補助金により、中小企業が行う新分野展開や規模拡大などを強力に後押ししてまいります。医療機器産業については、これまでも振興ビジョンに基づき、様々な機器の開発を支援してきたところですが、新たにテクノ財団にプロデューサーを配置し、事業化に向けた伴走型の支援を行います。また、医療機器ベンチャーや医療機器開発企業の中核的な人材を育成するため、開発から経営まで医療現場での実習等も含め幅広く学ぶことができる先進的なプログラムを信州大学と共に構築してまいります。航空分野では、需要回復期に備えて企業内のエンジニアの育成を支援するとともに、航空機向け除菌装置や荷物運搬用ドローンの開発等を進めてまいります。さらに食品分野では、コロナ禍による消費者ニーズの変化を踏まえ、免疫力を高める機能を持った食品や簡単に調理できる食品などの開発を支援してまいります。
農産物をはじめとする県産品の更なる販路拡大を図るため、マッチングサイト「しあわせ商談サイトNAGANO」を活用したオンライン商談会の拡大、来年度、本格的に市場デビューする本県オリジナルの赤系ぶどう「クイーンルージュ」の戦略的なプロモーションなどを行うほか、輸出の拡大に向けて、沖縄国際流通ハブを活用した輸送コストの低減、相手国の求める規制に対応できる農産物の産地づくり等に取り組んでまいります。
観光面では、コロナ禍にあっても安心・安全にお過ごしいただける
観光地域づくりに観光関係者とともに取り組むとともに、3密とは無縁の雄大な自然やアクティビティなどの豊かな観光資源を活かし、心も身体もストレスから解放できる旅先としての魅力を発信してまいります。コロナ後を見据えて、普段は近寄れない自然を体験できるツアーなど特別感がある旅行商品づくりに対する支援、県の観光機構に配置する専門人材によるDMOの活動支援などにより、長期滞在型観光の推進と観光客のリピーター化を進めてまいります。
沖縄県との交流については、昨年10月に訪問した際の玉城知事との懇談を踏まえ、物流、観光、環境などの分野における連携や青少年交流について、沖縄県側との協議・具体化を進めています。旅行会社の学習旅行担当者の招へいや、信州まつもと空港と沖縄を結ぶチャーター便の運航に向けた旅行商品の造成にも取り組み、両県の相互発展に向けて協力・交流を深めてまいります。
デジタル社会の構築を進めるため、「長野県DX戦略」を積極的に推進します。推進体制を強化するため、新しく「DX推進課」を設置するほか、先進的な企業との間で「長野県DX戦略推進パートナー連携協定」を締結することにより、民間のデジタル人材との共創を進めます。
個別最適化された学びと協働的な学びを実現するため、県立学校へのICT機器の導入を積極的に進めます。また、小中学校も含めた教育現場がICT機器を有効に活用することができるよう、デジタル教材の効果的活用等の実証研究や教員のICTスキルの向上支援などを行う「ICT教育推進センター(仮称)」を設置します。さらに、デジタル人材を育成するため、農業高校や工業高校などにカーボンニュートラル型植物工場、AI・IoTロボット実習システムなど最先端の教育設備を整備します。
日常生活の様々な場面でのデジタル化も進めます。遠隔診療に必要な機器を県立病院において順次整備するとともに、高速乗合バス路線におけるQRコードやクレジットカードによる決済の導入、観光地の店舗におけるキャッシュレス端末の導入などを支援します。観光客のアンケート結果等をリアルタイムで収集するための情報システムを県観光機構が構築し、観光事業者が行う経営戦略策定等にも役立ててまいります。さらに、企業局に「スマート化推進センター」を設置し、水力発電所や浄水場等を一括監視する次世代監視制御ネットワークの構築等を進めます。また、多くの方がデジタル化のメリットを享受することができるよう、シニア大学におけるICTを活用した講座や、障がい者ITサポートセンターにおける就労支援、講習会等を充実してまいります。
県内企業の競争力を高めるため、様々な産業分野のDXを推進します。AI・IoT等先端技術利活用支援拠点における相談対応や先端デジタルツールの導入支援、工業技術総合センターのAI活用/IoTデバイス事業化開発センターにおける新たなシステムやサービスの開発・普及に対する支援などを進めます。加えて、電子部品産業の集積地である本県がポスト5G時代のフロントランナーとなるため、次世代通信(ポスト5G)規格に対応した最先端の試作開発装置等を備え、材料の開発から製品化までを一貫して支援するための次世代電子部品開発総合支援拠点(仮称)を新たに工業技術総合センターに整備します。
また、スマート農業推進担当者の農業農村支援センターへの配置や、大学・企業と連携した農業用の先端機器の開発、林業事業体等に対するICT活用技術の導入支援などにより、農林業のスマート化を一層進めてまいります。
IT企業、IT人材にとって魅力ある地域を創造することにより、「
信州ITバレー構想」の実現を図ります。高い技術力を持つものづくり産業の集積、大都市との近接性など、本県のポテンシャルを活かしつつ、善光寺門前、松本城下、八ヶ岳山麓などで始まっている大学や企業、自治体などによるコンソーシアムを発展させ、新たな価値創出と技術革新を促すエコシステムの形成へとつなげてまいります。
具体的には、産学官50機関で構成する信州ITバレー推進協議会が推進エンジンとなり、ITの力で地域課題を解決するためのハッカソン・アイデアソンの開催や異業種交流の場の設定などを行い、そこで生まれたビジネスアイデアの具現化を支援することにより、ITビジネスの創出を促進します。
また、IT関連を中心として、起業を志す人材を支援するため、県内2か所目となる創業支援拠点「信州スタートアップステーション」を新たに長野市に開設します。松本市に設置した施設と同様、経験豊富な専任コーディネーターを配置することにより、創業相談やセミナーの開催、企業の成長を促す伴走型プログラムの実施など、総合的な支援を行ってまいります。IT企業の誘致についても、ICT産業立地助成金を活用するほか、県外からの本社等移転に係る助成金の上限額の引上げなどにより、積極的に取り組んでまいります。
県庁のスマート化も一層推進してまいります。情報の安全性を高め、非常時であっても安定して行政サービスを提供し、あわせて職員がより創造的に働くことができるよう、次期情報システムの構築に着手します。新たな文書管理システムの導入やAI・RPAの利用拡大、業務の効率化やペーパーレス化の徹底など、しごと改革と情報システム整備とを一体的に進めることにより、県組織の生産性向上につなげてまいります。また、行政手続における押印の見直しや書類の簡素化、各種手続のオンライン化、AIが自動で回答するチャットボットによる相談対応など、県民の利便性向上に資する取組も積極的に進めてまいります。
「ビルド・バック・ベター」の理念の下、
令和元年東日本台風災害等からの復旧・復興を着実に進めるとともに、県民の皆様の命と財産を守るため強い決意を持って、防災・減災対策と県土の強靱化を進めます。
市町村に対する昨年末の聞き取り調査では、
令和元年東日本台風災害で半壊以上の被害を受けられた世帯のうち、2割を超える世帯で住宅の再建等が済んでおらず、今も500世帯を超える方々が仮設住宅等での生活を余儀なくされています。被災者の事情に応じた仮設住宅の入居期間等に係る国との調整や、市町村と連携した公営住宅への転居の御案内など、引き続き被災者に寄り添った支援に努めてまいります。
また、被災された中小企業は、「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」等を活用し、約9割の店舗や工場が復旧を済ませ事業を再開しています。しかしながら、一部の事業者においては、施設工事や設備納入の遅れ等により復旧が長期化していることから、補助金の一部を新年度に繰り越し、早期に復旧が完了できるよう引き続き支援を行ってまいります。
道路、河川、農地・農業用施設等インフラ施設の復旧については、令和3年度末までには全ての復旧を完了できるよう事業を進めており、これまでのところ工事はおおむね順調に進んでいます。千曲川流域の復興については、国や市町村と連携し、河川整備によるハード対策と流域における対策やまちづくり・ソフト対策とを一体的に進める「信濃川水系緊急治水対策プロジェクト」を進めています。県が行う堤防の強化や河道拡幅などの対策については令和6年度末まで、国が行う立ケ花狭窄部の開削や遊水池の整備などは令和9年度末までの完了を目指し、鋭意取り組んでまいります。プロジェクトの推進に当たっては地域の皆様に丁寧な説明を行い、理解と協力を得られるよう努めてまいります。
南信地域を中心とした令和2年7月豪雨災害については、被災事業者から申請いただいた「なりわい再建支援補助金」の交付決定を先月までに全て完了しました。また、道路、河川、治山等のインフラ施設の復旧も順調に進んでおり、令和4年度末までには全事業が完了するよう取り組んでまいります。
平成30年度から進めてきた「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」については、河川内の樹木の伐採や堆積土砂の撤去、道路の法面対策など即効性のある対策を中心に取り組んできました。しかしながら、防災・減災のために取り組むべき事業は依然として県内各地で数多く残っていることから、3か年緊急対策終了後も必要な予算を確保するよう国に対し強く求めてきたところです。今般、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の実施が決定され、第3次補正予算に所要の経費が計上されたことを受け、県としても487億円余に上る事業費を補正予算案に計上しました。
治水対策の推進、道路網の整備、ため池の耐震化、治山施設の整備など、激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策、社会インフラの老朽化対策などを総合的に推進し、災害に強い県土づくりを進めてまいります。
洪水被害を軽減するためには、河川管理者が行う治水対策の着実な推進に加え、関係者が協働して、雨水流出抑制対策や水害に備えたまちづくり、「逃げ遅れゼロ」を目指した避難体制の構築などの流域対策を進めることが重要です。新しく策定した「長野県流域治水推進計画」に基づき、雨水貯留浸透施設の設置、雨水貯留のためのため池や水田の活用、浸水想定区域図の作成など、効果的な取組を市町村や県民の皆様とともに推進してまいります。
新年度においては、堤防の補強や護岸の整備、河道内に堆積した土砂の掘削や支障木の除去といったハード対策、浸水想定区域図の作成や河川監視カメラ・危機管理型水位計の設置などのソフト対策を引き続き進めるとともに、県有施設における雨水貯留タンクや雨水貯留浸透施設の整備、ため池を活用した雨水貯留の促進などに取り組んでまいります。
1,700名を超える方々が浸水域から救助された
令和元年東日本台風災害の教訓を踏まえ、「逃げ遅れゼロ」の実現を目指した取組を進めます。デジタル版防災県民手帳を搭載した「信州防災アプリ(仮称)」を新たに導入することにより、個人の避難行動計画(マイ・タイムライン)の作成支援やプッシュ型の防災情報発信等を行い、県民の適切な避難行動を促してまいります。災害時住民支え合いマップについては、地域への訪問指導や研修会の開催、作成・更新が容易なデジタルマップの普及などにより、必要な全ての地域での早期の作成完了を目指します。また、浸水想定区域に所在する社会福祉施設等に対するきめ細かな助言や支援を行い、避難対策を徹底してまいります。
避難生活における精神的・肉体的な負担をできるだけ軽減し、災害関連死を防ぐため、避難所におけるTKB(トイレ・キッチン・ベッド)の改善を進めます。市町村やNPO等と連携して、快適で利用しやすい仮設トイレの導入支援、温かい食事を提供できるキッチンカーの災害時における派遣調整、ダンボールベッド等の迅速な調達体制の確保などに取り組んでまいります。
平成26年
御嶽山噴火災害の教訓を踏まえ、地元町村と連携した避難施設の整備や火山マイスターの育成、名古屋大学の火山研究施設への支援等に引き続き取り組んでまいります。また、火山防災協議会の関係機関とも連携し、山頂付近の登山道の規制緩和に向けた安全対策を進めてまいります。御岳県立公園御嶽山ビジターセンター(仮称)については、噴火災害の伝承等展示内容を具体的に検討するなど、令和4年度の開設に向けて準備を進めます。
地球温暖化に起因すると考えられる災害が世界各地で頻発するなど、気候変動は人類共通の最重要課題となっています。「
気候非常事態宣言」及び「長野県脱
炭素社会づくり条例」を踏まえ、二酸化炭素排出量を2050年までに実質ゼロとするための取組を強化することとし、交通、建物、産業、再生可能エネルギー等に関する必要な施策を新年度当初予算案に計上いたしました。なお、同条例に基づく行動計画となる長野県ゼロカーボン戦略については、今後、多くの皆様との丁寧な対話を重ねた上で新年度の早い時期に取りまとめてまいります。
交通分野では、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)を利用しやすい環境を構築するため、「長野県次世代自動車インフラ整備ビジョン」を改定し、生活圏や観光地等における充電インフラの普及を図るほか、自転車走行空間の整備など自家用車に依存しないまちづくりを進めます。また、県有施設における100パーセント再生可能エネルギー由来の急速充電設備の整備や、2030年までの特殊車両等を除く公用車電動化率100パーセントを目指したEV21台、FCV1台の導入を行い、県としても率先して取組を進めてまいります。
脱炭素社会を実現する上で重要な建物の分野では、断熱性能の大幅な向上に取り組みます。断熱性能が高い住宅はヒートショックなど健康面でのリスク低減にも資することから、ゼロエネルギー化が実現可能な高いレベルの断熱性能を有し、県産材を活用した「信州健康エコ住宅」の新築を支援します。あわせて、多くの工務店等が恵まれた日照や森林資源を活かしたゼロエネルギー住宅を施工できるよう信州らしい住まいづくりの指針を策定し、技術力向上のための講習会も開催します。また、新たに建築する駐在所や次世代電子部品開発総合支援拠点(仮称)についてはネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)とし、県庁本館棟についても省エネルギー化改修の可能性調査を行います。
産業分野におけるゼロカーボン化の取組を促進するとともに、企業がグリーン化の動きをビジネスチャンスとして活かすことができるよう、必要な支援を行ってまいります。
事業活動温暖化対策計画書制度により、事業所における二酸化炭素の排出削減を促進することに加え、中小企業融資制度資金にゼロカーボン枠を創設することにより、金融面での支援を強化します。気候変動対策も含まれるSDGsを事業活動に取り入れていただくよう、SDGs推進企業登録制度への参加企業の更なる増加を図ります。また、農業分野においても、温暖化に適応した新品種の開発や農業生産に由来する温室効果ガスの発生抑制技術の開発に取り組んでまいります。
世界に貢献するグリーンイノベーションの創出と県内企業の挑戦を後押しするため、10億円規模の長野県ゼロカーボン基金を新たに設置します。国内外の企業や大学・研究機関の保有する最先端の技術と県内産業を結び付けたゼロカーボン技術の開発プロジェクトを推進することにより、国内外からESG投資を引き寄せることができるリーディングカンパニーの創出を目指します。なお、ESG投資に対する機運醸成を図るために発行したグリーンボンドについては、発行意義に共感して県内外の多くの企業・団体や市町村等に投資表明をいただいたことから、新年度は発行額を増加させてまいります。
再生可能エネルギー分野では、本県の豊かなポテンシャルを活かすことができる太陽光・熱や水力等自然エネルギーの一層の利用拡大を図るとともに、エネルギー自立地域づくりの創出を目指します。
太陽光・熱の利用を一層推進するため、信州屋根ソーラーポテンシャルマップの活用促進に努めるとともに、太陽光発電設備や蓄電池の共同購入事業に取り組みます。また、豊富な水資源と急峻な地形を活かして、全国第1位の導入実績を誇る小水力発電の更なる拡大を進めるため、小水力発電に係るポテンシャルマップの作成、収益納付型補助事業における補助率や上限額の引上げ、企業局による水力発電所の新規建設などを進めます。長野県立大学については全国の国公立大学としては初めて使用電力を100パーセント県内産の再生可能エネルギーに切り替え、御嶽山ビジターセンター(仮称)も再生可能エネルギー100パーセント利用の施設として整備するなど、県関係の施設における再生可能エネルギーの利用を拡大します。さらに、市町村や電力事業者とも連携して100パーセント再生可能エネルギーで暮らしが営まれるモデル地域の創出に取り組むほか、企業局においては、大規模災害時に地域へ電力を供給するマイクログリッドの構築を関係機関とともに進めてまいります。
森林吸収源対策として、健全な森林づくりと木材の利用を進めるほか、緑豊かな魅力あるまちを目指した「まちなかグリーンインフラ推進計画」を策定し、まちなか緑地や街路樹の整備などを推進します。信州気候変動適応センターにおいては、国の研究機関と連携し、県民生活や産業活動における気候変動の影響評価を進めるとともに、農業、生態系、健康など各分野における適応策を検討・実施してまいります。
ゼロカーボンを実現するためには、県民の皆様一人ひとりが、気候変動の影響を理解して、具体的な行動を起こすことが必要です。ゼロカーボンについて学ぶ信州環境カレッジWEB講座の開設に続き、新たに「ゼロカーボン実現県民会議」を立ち上げ、幅広い県民の参画のもとで、脱炭素社会実現のための県民運動を展開してまいります。気候変動に関する国際会議への高校生の派遣、県内小売事業者との連携によるエシカル消費の推進、植樹体験を行う学習旅行の普及、「地域発 元気づくり支援金」におけるゼロカーボンの重点テーマ化とプラスワンアクションなどを、県民や事業者の皆様がゼロカーボンについて考え、行動していただく契機としてまいります。
これまで申し述べたことに加え、学びの県づくりや子ども・若者の希望実現、信州ACE(エース)プロジェクトの推進や文化・スポーツの振興など、「しあわせ信州創造プラン2.0」の着実な推進を図ります。
多様な学びのあり方を共有し、学びの関係者が交流するオンラインイベント「ラーン・バイ・クリエーション長野」を先月開催し、6日間で延べ2,000人を超える皆様に参加いただきました。今後ともシンポジウムやオンラインでの交流イベントなどを通じ、県民の皆様とともにこれからの学びについて考えてまいります。人生100年時代を迎え、私たちは働くために必要な知識や技能を常に新しいものにしていかなければなりません。雇用の安定を図り、また、労働需要の変化に応じた円滑な職種転換・再就職を促すため、高等教育機関が行う社会人向けリカレント講座の開設経費を支援します。
令和3年度に全ての学年がそろう長野県立大学では、学生の就職活動の支援やコロナ禍でも安心して学べる環境づくりに取り組むほか、令和4年4月の大学院設置に向けて、カリキュラムの構築や選抜試験の実施など必要な準備を進めてまいります。
令和2年1月から9月までの本県の婚姻件数は前年比約16パーセントの減少、同じく妊娠届出数も約6パーセントの減少となっており、コロナ禍という特殊要因はあるものの、少子化に一層の拍車がかかる事態も懸念されます。そのため、若者への結婚支援、働く環境の改善と安定した雇用の実現、不妊・不育症治療に係る負担軽減の3項目を重点的に進めてまいります。
結婚マッチングシステムを若者が利用しやすいスマートフォン対応に切り替え、AIにより相性の良い相手を選ぶことができる機能を付加することなどにより、登録者及びお見合い件数の増加を図ります。また、SNSを活用して若者の出会いの場となる交流イベントに関する情報発信を強化します。
職場いきいきアドバンスカンパニ―認証制度を改定し、ワークライフバランスの推進に加えて、ダイバーシティの推進や若者の雇用・育成に関して先進的な取組を行っている企業を新たに認証いたします。また、就職氷河期世代が正規就労するための支援を拡充するなど、ジョブカフェ信州等における若者の就労支援を一層強化します。
不妊や不育症に悩む方の経済的負担を軽減するため、不妊治療費の助成に係る所得制限の撤廃や1回当たりの助成額の増額などを行い、県単独で実施している不育症の治療費助成についても所得制限を撤廃します。また、不妊・不育専門相談センターが治療を検討する方の相談・支援に当たるとともに、職場環境改善アドバイザーが企業を訪問して、不妊治療と仕事の両立のための休暇制度の導入など多様で柔軟な働き方の普及を働きかけてまいります。加えて、若い世代のがん患者等が妊孕性を温存するための治療費を助成する制度を創設いたします。
不登校の児童生徒が増加する中、全ての子どもの学びの機会を保障するための取組を充実します。学校の授業を自宅やフリースクール等で受けられる環境を整備するとともに、市町村教育委員会が設置する教育支援センターに不登校支援コーディネーターを配置し、不登校の子どもたちの状況に応じた学習計画の作成などに取り組みます。また、フリースクールなど学校以外の民間施設における学びを一層充実するため、ICTを活用した学習環境の整備や外部講師の活用のための経費を助成いたします。さらに、「不登校児童生徒の支援者のつどい」の開催などにより、学校と民間施設、また民間施設相互の交流連携の円滑化を図ってまいります。
こうした子ども・若者関連施策を県として総合的・一体的に推進するため、新たに「こども若者局」を県民文化部内に設置します。結婚から妊娠・出産・子育てまで、また幼少期から青年期まで、切れ目なく子ども・若者を支えることにより、若い世代が夢や希望を実現でき、子どもを安心して産み育てられる社会の実現を目指します。
新型コロナウイルス感染症の流行により、「巣ごもり」による運動不足や経営悪化による健康経営に関する意識の希薄化などが懸念されています。そのため、信州ACE(エース)プロジェクトによる健康づくり運動の一環として、保険者、経済団体等との協働によるアプリを活用した事業所対抗ウォーキングの実施や、飲食店等における健康配慮型メニューの提供拡大などに取り組んでまいります。また、市町村と連携して糖尿病の重症化予防対策を進めるとともに、国民健康保険のデータに基づき健康課題を「見える化」し、保健事業の効果的な実施につなげてまいります。
4月10日、いよいよ新しい長野県立美術館が開館します。8月までの間を県民の皆様に親しんでいただくためのお披露目期間とし、最新のデジタル技術を駆使して精密に復元した「スーパークローン文化財展」をはじめ、衛星から撮影した長野県の高精細映像の無料展示、屋上広場でのワインガ-デンの開催などのユニークなイベントも計画されています。
8月28日からのグランドオープンでは、豊かな森や水に恵まれた県として、「森と水と生きる」をテーマに企画展を開催いたします。海外の著名作家の作品や重要文化財に指定されている作品など、新しい美術館の本格的な幕開けとして、よりすぐりの名品を展示します。また、これに引き続いて、平成28年から全国で開催されてきた東山魁夷画伯の唐招提寺御影堂障壁画展の最後を飾る展覧会を予定しています。国宝善光寺に隣接する好立地を活かして県内外にその魅力を広く発信し、多くの方々に愛される美術館となるよう取り組んでまいります。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、昨年来、様々な文化行事が中止や延期を余儀なくされてきました。こうした困難な状況を乗り越え、文化芸術の力を再び取り戻すことができるよう、セイジ・オザワ松本フェスティバルと北アルプス国際芸術祭の開催を支援してまいります。また、専門的な人材が文化芸術活動に対する相談や助成などを行うアーツカウンシルの構築にも取り組みます。
国民スポーツ大会や全国障害者スポーツ大会の本県での開催を視野に入れ、スポーツを通じた元気な長野県づくりを進めてまいります。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関しては、今後の動向を見極めつつ、ホストタウンとなっている市町村等とも協力し、必要な準備を進めてまいります。来年の冬に予定されている北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会については、長野冬季オリンピック・パラリンピックを成功させた私たちの経験を活かして必要な協力を行うとともに、冬季スポーツを通じた青少年交流を促進し、河北省・北京市との連携を強化する機会にしてまいります。
スポーツ基本法の改正に伴い名称が変更された第82回国民スポーツ大会と、第27回全国障害者スポーツ大会については、開催予定年が令和10年となりました。この年は、「やまびこ国体」から50年目、長野冬季オリンピック・パラリンピックから30年目の節目の年に当たります。この記念すべき時に開催される両大会を単なる一過性のイベントとすることがないよう、県民がスポーツに参加できる文化の創造や地域の魅力発信による経済の活性化などにつなげてまいります。また、開催に当たっては、ゼロカーボン社会の実現やデジタル化の推進などにも配慮し、本県の価値や施策を発信する大会にしてまいります。
国内外との交流拡大や産業の活性化などを図るため、「本州中央部広域交流圏」の形成に向けた高速交通網の整備を進めてまいります。
中部横断自動車道や中部縦貫自動車道、三遠南信自動車道、伊那木曽連絡道路及び松本糸魚川連絡道路等、地域の暮らしや産業にとって重要な道路の整備を推進いたします。また、市町村や民間団体等と連携したリニアバレー構想実現に向けた取組や、リニア中央新幹線の整備効果を広く県内に波及させるための道路整備なども引き続き着実に進めてまいります。なお、着工が遅れているリニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区については、JR東海に対して、国や静岡県との協議による早急な課題解決を求めているところです。
信州まつもと空港の利用者は、
新型コロナウイルス感染症の第3波やGo To Travelキャンペーンの停止等の影響を受け、昨年12月から再び急減しており、国際チャーター便についても運航が止まっている状況です。こうした状況を踏まえ、厳しい経営環境が続くFDAの運航支援を行うとともに、定期便の利用促進を図るため、関西地域をターゲットとした広告宣伝などに取り組んでまいります。
最後に、条例案などについて申し上げます。
条例案は、新設条例案1件、一部改正条例案18件であります。
このうち、「
資金積立基金条例の一部を改正する条例案」は、長野県ゼロカーボン基金を設置するものであります。
事件案は、17件であります。
このうち、「訴えの提起について」は、リースをしていた消防防災ヘリコプターについて、航空法に定められた耐空性を有する機体を提供する義務が履行されなかったことにより、運航を休止せざるを得なかったため、運航休止期間中の賃貸借料及び運航業務委託料等の損害賠償を賃貸人に対して求めるものです。
「「有料道路事業の実施について」の変更について」は、新和田トンネル有料道路を令和4年4月1日から一般道路化するものです。
専決処分報告は、「令和2年度長野県
一般会計補正予算(第10号)の専決処分報告」など16件であります。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を申し上げました。何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
○議長(小池清 君)次に、原山隆一教育長。
〔教育長原山隆一君登壇〕
◎教育長(原山隆一 君)令和3年度の教育委員会関係の議案につきまして、その概要を御説明申し上げます。
最初に、これからの長野県教育に関して、教育長としての所信の一端を申し述べさせていただきます。
我々大人の誰もが経験してきた学校教育。そこでは黒板とチョークによる一斉一律の学びが中心でした。その学びのあり方が、今大きく変わろうとしています。変わっていかざるを得ないのです。
世界は、比較的ゆっくりと変化した時代から、急速に変化が進むとともに、不連続な変化が各方面で起こる時代へと転換しており、今後ますますその傾向は強まることが予想されます。これに伴い、個々の人間も社会全体も、未知の事態に直面することが、確実に増えていきます。
これからの子ども達には、こうした時代を生き抜き、未知なるものに出会っても柔軟に対応でき、探究心を持って一生学び続ける力を育成することが求められます。
個に応じた学びも協働的な学びも、物理的な空間を共有して行う学びも仮想空間で行う学びも、こうした力を育むためのものなのです。
知識は思考のためのいわば道具です。ICTも意味合いは違いますが、やはり思考のための道具です。道具は使えなければ、そして使わなければ意味がありません。自在に道具を使いながら、自分の頭で考え、探究する場が学校なのです。
さらに、そうした必要な力を、個々の家庭の経済事情等に左右されることなく、すべての子ども達に育むことが、公教育の重要な役割です。
学びの改革に全力で取り組んでまいります。
次に、令和3年度の教育委員会の重点的な施策について申し上げます。
最初に、すべての子どもの「学びの保障」について申し上げます。
まず、
新型コロナウイルス感染症への対応につきましては、令和2年度2月補正予算案との一体的な編成により、消毒液などの保健衛生用品や三密対策に必要な物品の追加購入、感染症の影響により生活が困窮している世帯の児童生徒に対する奨学給付金などの追加支給、学校での消毒作業や児童生徒の健康管理等を行うスクール・サポート・スタッフの配置など、教育活動を継続していくために必要な感染防止対策を徹底してまいります。
なお、これまで国の緊急経済対策などを活用し整備を進めてまいりました県立学校や公立小・中学校におけるタブレット端末の導入、校内無線LAN環境等の整備につきましては、今年度内にほぼ全ての公立学校で完了する見込みとなりました。感染症の影響により学校が再び休業や分散登校を余儀なくされても、オンライン等を活用した学習により、コロナ禍における学びを最大限保障してまいります。
次に、困難や悩みを有する子どもへの支援について申し上げます。
不登校児童生徒への支援につきましては、どこに居てもその子に合った学びを提供するための支援体制を構築することが重要です。そのためには、一人ひとりの学びをコーディネートする人材の確保や、ICT等を活用しどこでもオンラインで授業を受けることができる環境整備、その学びの評価などの課題を克服することが必要です。
このため、来年度は知事部局とも連携し、県下4地区において市町村教育委員会が設置する教育支援センターに不登校支援コーディネーターを配置し、市町村教育委員会、学校や家庭、フリースクールなどとともに、不登校となっている児童生徒が学びを継続できる仕組みづくりに取り組んでまいります。さらにこうした取組の効果と課題について、学識経験者や学校関係者、民間の不登校児童生徒の支援者などによる協議会で検証を行い、令和4年度以降の全県展開に向けて取り組んでまいります。
児童生徒の相談体制につきましては、コロナ禍における子どもたちの悩みに対応するため、来年度はスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの支援時間を拡充し、支援を必要としている児童生徒へのきめ細かな心のケアに対応するとともに、引き続き24時間体制の電話相談窓口や、LINEの相談窓口を開設してまいります。
次に、幼保・小・中・高の一貫した「学びの改革」について申し上げます。
まず、「ICTを活用した新たな学び」につきましては、これまで、コロナ禍における学びの継続や、効果的な授業展開や協働的な学び、個別最適な学びを実現するため、全力をあげて学校へのICT環境の整備を進めてまいりました。
4月からは、信州大学などの有識者も参加する「長野県ICT教育推進センター(仮称)」を立ち上げ、公立学校におけるICT機器を活用した学習の目指す姿や教員のICT活用力の向上、ICT機器整備のあり方などを包括的に検討してまいります。
また、将来を先取りした学びを実践する県立学校を「ICT教育パイロット校」として指定し、先進的なICT教育の実践研究と、その実践内容の公開や情報発信を行うことにより、ICTを活用した学びを進化させ普及してまいります。
次に、幼児教育につきましては、今年度は
新型コロナウイルス感染症の影響により、県内7箇所で予定していた実践園でのフィールド研修の開催が困難となりました。このため、オンラインを活用し、コロナ禍における行事や支援のあり方といった、保育現場の喫緊の課題をテーマに保育者同士の具体的な実践や悩みなどを共有する研修を行ったところです。
来年度は、これに加え、幼児期と小学校の育ちをつなぐ、幼保小接続の効果的な実践カリキュラムなども開発できるよう、引き続き幼児教育支援センターが中心となって取組を進めてまいります。
義務教育につきましては、学校改革に挑戦する小・中学校42校を新たに「学びの改革実践校」として指定し、アドバイザーの助言を受けながら学年担任制や学年の枠を越えた授業の導入、タブレット端末の活用による自由進度学習などに取り組む学校を支援します。また、多くの学校がこのような取組を実施できるよう、この実践校の取組を定期的に情報発信してまいります。
高校教育につきましては、「未来の学校」として指定した県立高校6校において、今年度、「卓越した探究的な学び」や「信州に根ざしたグローバルな学び」などの先進的・先端的な取組について実践研究をスタートさせました。来年度は、これまでの取組で得られた各校の成果を、公開授業や成果報告会等の開催により全県で共有し普及につなげてまいります。
高校再編につきましては、「高校の将来像を考える地域の協議会」から、昨年12月までに意見・提案をいただいた地区につきましては今年3月に2次分として、また、残りの地区につきましては来年3月までに3次分として、「再編・整備計画(案)」を策定・公表するよう検討を進めてまいります。
既に1次分で決定した統合新校3校につきましては、各校に設置した「新校再編実施計画懇話会」において、引き続き、学校関係者・市町村・産業界、そして生徒などとの意見交換を重ねながら、目指す学校像や設置する学科などを明らかにする「再編実施基本計画」の策定を進めてまいります。今後とも地域の皆様との合意形成を丁寧に行いながら、再編・整備を着実に進めてまいりたいと考えております。
また、高校改革の一貫として進めております「新たな入学者選抜制度」の検討につきましては、学校現場における
新型コロナウイルス感染症への対応状況に鑑み、今後も慎重に検討を重ね、今年9月を目途に新たな選抜制度の具体的な内容を公表したいと考えております。
特別支援教育につきましては、障がいの状態に応じて可能性を伸ばす質の高い教育を提供するため、自立活動担当教員を25名増員し、特別支援学校の専門性や対応力を向上させるとともに、図書及び教材の整備や芸術家などの外部専門家による授業の充実を図ってまいります。
インクルーシブ教育の推進につきましては、発達障がい等の特別な教育的ニーズのある児童生徒の適切な学びの場の整備と支援を充実させるため、小・中学校の通級指導教室をさらに11 教室増設するとともに、特別支援学校の児童生徒が居住地の小・中学校に副次的な学籍を置く副学籍校制度をさらに普及し、交流及び共同学習の充実を図ります。
次に、県立学校の環境整備について申し上げます。
施設等の整備につきましては、老朽化した校舎等の保全や長寿命化、ゼロカーボンに資する省エネ化などの改修を計画的に進めてまいります。また、児童生徒からの要望の多いトイレ改修について、洋式化を引き続き計画的に進めるとともに、悪臭対策や内装改修も併せて実施してまいります。
特別支援学校の老朽化及び狭隘化等への対応につきましては、学びのあり方と環境整備の基本的な考え方を示す「長野県特別支援学校整備基本方針(案)」をこのほど取りまとめました。パブリックコメントや特別支援教育連携協議会での御意見などを踏まえ、年度内に基本方針を策定することとしております。
この基本方針を基に来年度は、老朽化が著しい松本養護学校及び若槻養護学校について、国における特別支援学校の設置基準策定の検討状況なども注視しながら、整備計画の策定に取り組んでまいります。
学校における働き方改革につきましては、引き続き教員の業務量の適切な管理やスクール・サポート・スタッフ、部活動指導員など専門スタッフ・外部人材の活用などにより、積極的に推進してまいります。
次に、令和10年に開催予定の第82回国民スポーツ大会・第27回全国障害者スポーツ大会に向けたスポーツの振興について申し上げます。
スポーツ基本法の改正に伴い、国民体育大会の名称が「国民スポーツ大会」に変更されたことから、「国体準備室」を「国民スポーツ大会準備室」に改称し、令和4年度に延期となった中央競技団体による正規視察に向けて競技会場地を選定するなど、両大会の準備を着実に進めてまいります。
また、7年後の国民スポーツ大会において天皇杯・皇后杯を獲得し、さらに大会終了後の競技力の維持・定着につなげていくためには、計画的な選手の発掘・育成・強化の取組が急務です。このため、新たに競技団体と地域をつなぐスポーツ活動の拠点づくりや、医科学面から選手のサポートを行うネットワークの構築を進めてまいります。
来年度は、本県において5年ぶりに第42回北信越国民体育大会を、9年ぶりに全国高等学校総合体育大会夏季大会を開催します。選手にとって夢の舞台であるこれらの大会が、いつまでも選手たちの心に残る大会となるよう関係機関と連携し準備を進めてまいります。
次に、生涯学習・文化芸術の振興について申し上げます。
公民館活動や生涯学習推進センターによる各種講座につきましては、
新型コロナウイルス感染症の感染防止のためオンライン活用による講座開催を積極的に進め、公民館活動や地域での学びを継続してまいります。また、県立長野図書館の「信州・学び創造ラボ」においても、フォーラムなどオンラインを活用したコミュニケーションの場づくりに積極的に取り組むなど、県民の誰もが・いつでも・どこでも学べるよう創造的な学びを支えてまいります。
また、県立歴史館につきましては、これまでに築いた県内外の博物館等との連携を活かし、連携先が所蔵する国宝・重要文化財の展示など、創意工夫を凝らした企画展を実施するとともに、各種講座・講演会等を通じ信州の歴史に関する情報を発信してまいります。
文化財の保護につきましては、特に、後世に残すべき貴重な文化財が失われることがないよう、防災対策や修理保存などの支援を実施してまいります。
令和3年度の重点的な施策を申し上げてまいりましたが、こうした施策を着実に推進していくためには、何よりも県民の皆様の信州教育に対する信頼が不可欠であります。しかしながら、今年度、教職員の非違行為が複数発生し、県民の皆様の信頼を大きく損なうこととなってしまいました。
引き続き、研修による教職員の資質向上など、非違行為の根絶に粘り強く取り組み、信州教育の信頼回復に向けて努力を重ねてまいります。
以上、教育委員会の施策の概要について申し上げました。
これらの施策を推進するため、令和3年度当初予算案は一般会計1,815億3,828万2千円、高等学校等奨学資金貸付金特別会計1億280万3千円をお願いしております。
令和2年度
一般会計補正予算案は、国の補正予算に対応し、感染防止対策を徹底するために必要な物品の追加購入や低所得世帯等の生徒が使用する貸与用タブレット端末の購入、地域の産業を支える人材を育成するための専門高校における最新の産業教育設備の整備などに要する経費、22億1,271万1千円の増額補正をお願いするものでございます。
条例案は、今年度末に、長野県望月高等学校を廃止することに伴う「
高等学校設置条例の一部を改正する条例案」の1件でございます。
以上、今回提出いたしました議案につきまして、その概要を御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議の程をお願い申し上げます。
○議長(小池清 君)次に、安田浩己警察本部長。
〔警察本部長安田浩己君登壇〕
◎警察本部長(安田浩己 君)警察本部関係の議案説明に先立ち、県下の治安情勢と長野県警察の運営重点について御説明させていただきます。
初めに、令和2年中の県下の治安情勢について御説明いたします。
まず、犯罪の発生・検挙状況についてでございます。
刑法犯認知件数は6,944件で、前年と比較して1,560件、率にして18.3パーセントの減少となりました。刑法犯認知件数は、平成14年以降、19年連続で減少しており、戦後最少を更新したところでございます。
また、刑法犯の検挙率は、59.5パーセントで、前年と比較して10.7ポイント上昇し、平成元年以降最高の検挙率となりました。
殺人や強盗等の重要犯罪の状況につきましては、認知件数は85件で、前年と比較して15件、率にして15パーセントの減少となりました。
重要犯罪の検挙率は、83.5パーセントで、前年と比較して0.5ポイント減少しております。
ストーカー、DV及び児童虐待の状況につきましては、ストーカー認知件数は270件で、前年と比較して8件、率にして3.1パーセントの増加、DV対応件数は975件で、前年と比較して9件、率にして0.9パーセントの減少、児童虐待の認知件数は878件で、前年と比較して52件、率にして5.6パーセントの減少となっております。
特殊詐欺の状況につきましては、認知件数は125件で、前年と同数でありましたが、被害額は約2億9,678万円で、前年と比較して約5,891万円、率にして24.8パーセント増加したところでございます。
なお、被害額が増加した要因は、キャッシュカード等を対象とした預貯金詐欺や詐欺盗が増加したことや、1,000万円を超える高額被害が多発したことが主な要因であると考えております。
次に、交通事故の発生状況について御説明いたします。
交通事故発生件数は4,802件で、前年と比較して1,479件、率にして23.5パーセント減少しており、平成17年から16年連続の減少となりました。
死者数は46人で、前年と比較して19人、率にして29.2パーセントの減少で、統計を取り始めた昭和23年以降で最少となりました。また、死傷者数も大幅に減少しております。
昨年は、第10次長野県交通安全計画の最終年でありましたが、この計画に掲げた「交通事故死傷者数9,000人以下、死者数55人以下」の目標を達成することができました。
一方で、高齢者の交通事故の発生状況は、発生件数、死者数ともに減少はしたものの、高齢者死者数は31人で、死者数全体に占める割合は、67.4パーセントと依然として高い割合を占めており、高齢者の交通事故防止対策が喫緊の課題となっております。
続きまして、本年の長野県警察の運営重点について、御説明いたします。
県警察では、県民の安全・安心を向上させるため、運営指針を「県民とともにある力強く温かい警察~日本一安全・安心な信州を目指して~」と定め、その下に6つの運営重点を掲げております。
第1は、「総合的な犯罪防止対策の推進」であります。
ストーカー・DV・児童虐待などの人身安全関連事案につきましては、事態が急展開して重大事件に発展するおそれが高いことから、検挙措置等による加害行為の防止や関係機関等と連携した的確な保護対策により、被害者等の安全確保に万全を期してまいります。
また、特殊詐欺につきましては、年間の被害額が3億円に迫るなど依然として深刻な情勢が続いていることから、関係機関・団体等と連携した先制・予防的活動や、あらゆる世代への手口分析に基づいた注意喚起、金融機関等と連携した水際対策の更なる強化など、被害防止に向けた取組を強力に推進してまいります。
さらに、サイバー空間が日常生活の一部になる中、サイバー空間における脅威が深刻化しているところ、サイバー犯罪捜査能力の向上を図り、事案の解明と早期検挙に努めるとともに、犯罪被害の防止対策を推進してまいります。
第2は、「検挙力の強化」であります。
県下の治安情勢は、刑法犯認知件数は減少を続けているものの、特殊詐欺が高水準で推移しているほか、暴力団対立抗争や人身安全関連事案等の発生も後を絶たないなど、予断を許さない情勢であります。
こういった情勢の下、県民の関心が高い重要・凶悪事件や特殊詐欺事件等を、緻密かつ組織的な捜査により徹底的に検挙してまいります。
また、県民の安全を脅かしている暴力団犯罪につきましては、あらゆる法令を駆使した反復継続した取締りにより、組織の壊滅・弱体化を図ってまいります。
第3は、「交通事故防止対策の推進」であります。
県下の交通情勢は、交通事故死者の多くを高齢者が占めるとともに、小学生が横断歩道上で犠牲となる死亡事故も発生するなど依然として厳しい状況にあります。
そこで本年は、抑止目標を交通事故死傷者数6,500人以下、死者数50人以下と定め、最重点である高齢者の交通事故防止対策を始め、子供や自転車の
安全確保対策等の交通事故防止対策を、関係機関・団体と緊密な連携を図りながら推進してまいります。
第4は、「テロ・大規模災害等危機管理対策の推進」であります。
本年は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が予定されており、県内においても聖火リレーが行われる予定であります。
これら行事が、安全かつ円滑に開催されるよう、テロ等違法行為の未然防止に万全を期してまいります。
また、県内では、豪雨による河川氾濫や土砂災害の発生、大規模な地震や噴火の発生等が懸念されております。
平素から自治体等関係機関との連携を深めるとともに、実戦的な教養・訓練を繰り返し実施し、大規模災害等危機管理対策を推進してまいります。
第5は、「地域社会の安全力を高める地域警察活動の推進」であります。
交番や駐在所における地域警察官の活動は、昼夜を分かたず常に警戒態勢を保持し、様々な警察事象に即応することにより、地域住民の安全と安心のよりどころとなっております。
街頭活動の強化、事件・事故への迅速・的確な対応により、地域住民が身近に不安を感じる犯罪等の予防と検挙を推進してまいります。
第6は、「県民の立場に立った積極的な対応と警察基盤の強化」であります。
県警察の運営指針である「県民とともにある力強く温かい警察」を体現するためには、「県民の立場に立った積極的な対応と警察基盤の強化」が不可欠であります。
積極的な採用募集活動や実戦的な教育・訓練により、「力強さ」と「優しさ」を兼ね備えた優秀な人材の確保と執行力の強化に努めてまいります。
また、県民の意見・要望等を踏まえ、県民の立場に立って、その期待と信頼に応える警察活動を推進してまいります。
以上、県下の治安情勢と県警察の運営重点について御説明させていただきました。
新型コロナウイルス感染症の影響により、警察活動にも様々な制約があるところではございますが、職員の感染防止対策に万全を期しながら、運営重点に基づいて、県民の安全・安心の確保に全力で取り組んでまいります。
次に、警察本部関係の議案について御説明いたします。
まず、令和3年度
一般会計予算案についてでございます。
令和3年度
一般会計予算案は、日本一安全・安心な信州の実現を目指し、運営重点として掲げた各種施策を推進するため、456億7千万円余を計上いたしました。
主要なものといたしまして、高水準で発生している特殊詐欺の被害防止対策の強化や、高齢者を始めとする交通事故防止対策の推進、重要犯罪等発生時における迅速・的確な初動警察力の強化のために要する経費を計上しております。
次に、専決処分報告についてでございますが、「交通事故に係る損害賠償の専決処分報告」等2件を報告するものでございます。
以上、警察本部関係の議案につきまして、その概要を御説明させていただきました。
御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○議長(小池清 君)次に、小林透
公営企業管理者。
〔
公営企業管理者小林透君登壇〕
◎
公営企業管理者(小林透 君)企業局関係の議案につきまして、その概要を御説明する前に、企業局を取り巻く状況等について申し上げます。
平成28年の策定から5年を経ました「長野県公営企業経営戦略」の改定につきまして、その概要を御説明申し上げます。
この改定の背景としては、まず、脱炭素社会へ向けた国内外における潮流の顕在化が挙げられます。
令和元年には、軽井沢町での「G20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合」において世界に発信した「長野宣言」とともに、県議会の11月定例会における決議を受けて、知事が行った「
気候非常事態宣言-2050ゼロカーボンへの決意-」の表明があり、令和2年には、10月に公布された「長野県脱
炭素社会づくり条例」で「エネルギー自立地域の確立」が規定されました。
企業局としては、それらの具現化を図るため、電気事業において、国の電力システム改革等の動向を見据えつつ、本県の豊かな水資源を活かす水力発電により、「再生可能エネルギーの供給拡大」と、「エネルギー自立分散型で災害に強い地域づくり」に向け、新規電源開発等にスピード感を持って取り組んでまいります。
その上で、市町村、企業、地域等の様々な主体における発電への取組に対し、これまで培ってきた技術や経験を積極的に提供するとともに、地域の電力を活用した地域内経済循環にも、取り組んでいく必要があると考えております。
二つ目は、本格的な人口減少社会を迎え、県内の水道事業者の多くは、水需要の減少に加えて、老朽化する施設等の更新、耐震化や、不足する事業の担い手の確保、育成などの共通の課題が山積し、厳しさを増す経営環境にあるということです。
こうした中で、令和元年10月に施行された改正水道法では、水道の基盤強化を図るため、適切な資産管理や広域連携の推進等が盛り込まれました。
企業局としては、水道事業において、日本で唯一、都道府県レベルで末端給水と用水供給の両事業を経営する強みを活かしつつ、持続可能な水道事業経営に向け、知事部局と連携して、水道事業を経営する市町村等への技術支援、広域連携等に取り組んでまいります。
三つ目は、近年、全国各地で頻発している地震、風水害等の大規模災害への対応です。
令和元年東日本台風では、河川の氾濫や土砂災害等により電気・ガス・上下水道などのライフラインが寸断される被害が県内外で発生し、令和2年7月豪雨では、企業局の水力発電所の施設も被災し、一部で発電停止を余儀なくされました。
とりわけ長期に及ぶ停電、断水等は、住民生活や社会経済活動に深刻な影響を与えることから、災害時におけるライフラインの維持確保に向けた施設の耐震化、止水壁等の整備とともに、地域における連携体制の強化が求められています。
それに加えて、
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、企業局としては、職員や受託事業者の従業員が感染するなどの状況においても、ライフラインの維持確保ができるよう、知事部局とも連携しつつ、業務継続のためのバックアップ体制を構築することなどが必要になっています。
こうした背景を踏まえ、今回の改定においては、「激動する新たな時代に向けて、志高く果敢に挑戦することで、美しい長野県の豊かな水の恵みを未来へつなげていきたい」という思いを込め、新たに基本目標を「水の恵みを未来へつなぐ」と定めました。
この目標に向けた基本方針は、「経営の安定と未来への投資」とするとともに、これを推進するための現行の3つの視点を一部改定した上で、新たに3つの視点を加えた6つの視点を連携させながら、部局連携により具体的な事業に取り組むことで、地方公営企業として県民サービスの向上に貢献するという思いを込めました。
それでは、この6つの視点に沿いつつ、改定後の経営戦略の案につきまして、その主な内容を御説明申し上げます。
まず、「未来への投資」の視点として、電気事業では、現行の固定価格買取制度や補助制度を最大限に活用しつつ、「新規電源開発地点発掘プロジェクト」により、市町村等から御協力をいただきながら、知事部局と連携して開発候補地点を選定、調査し、スピード感を持って新しい発電所の建設につなげてまいります。
それとともに、西天竜、美和、春近及び与田切発電所をはじめとする基幹発電所等の大規模改修や出力増強等についても、着実に推進してまいります。
こうした水力発電所の建設等は、環境投資によってコロナ禍からの経済回復と脱炭素化を両立して進めようというグリーン・リカバリーの考え方に通じるものであり、積極的に取り組むことで地域経済活性化への期待にも応えてまいります。
また、水道事業では、基幹管路や重要給水施設に至る管路等の耐震化を、末端給水事業は令和6年度に、用水供給事業は令和5年度に、いずれも目標を前倒しして完了させるとともに、老朽化対策では、アセットマネジメントの活用も図りつつ、施設等の状況に応じた計画的な更新と長寿命化に取り組みます。
こうした施設の更新等に当たっては、水需要の減少等の動向を踏まえた施設のダウンサイジングを検討するとともに、広域的な水運用を視野に入れつつ、施設の共用、管理の共同化等についても、関係市町村等と幅広く検討してまいります。
次に、「先端技術の大胆な活用」の視点として、電気事業では、AI・IoT等の先端技術を活用し、スマート保安に積極的に取り組むことにより、次世代監視制御ネットワークシステムを構築し、県内各地に広がっていく発電所等の管理運営を高度化するとともに、効率化を図ってまいります。
また、川中島庁舎の水素ステーションにおいて、企業局の水と水力発電から水素を作り出していることを最大限に活かし、知事部局や県内企業と連携して、水素エネルギーの利活用に向けた実証事業を推進してまいります。
水道事業では、AI・IoT等による浄水場等の監視制御機能の集約化、高度化に向けて、関係市町村等と連携して検討を進めるとともに、国等の動向を踏まえつつ、知事部局と連携して、県内の各水道事業者が保有する水の運用や施設台帳等のデータ整備を促進し、その利活用を図る水道情報活用システムや、共有プラットフォームの導入を検討してまいります。
次に、「リスクマネジメント」の視点としては、電気事業のハード面では、大規模災害の発生等に備え、知事部局との連携により、降雨・流入予想システムの導入を進めるとともに、災害等の停電時にも対応可能な自立運転機能を水力発電所に順次導入してまいります。
ソフト面では、企業局管理ダムにおいて、河川管理者等との治水協定に参加することなどにより、国、市町村等の関係機関や知事部局との連携を強化しつつ、下流域の安全確保に向けて協力して取り組んでまいります。
水道事業のハード面では、令和元年東日本台風等の経験を踏まえ、豪雨時における浸水対策として、施設への止水壁の設置や施設の嵩上げ等を実施していくほか、災害時の断水に備え、地域の避難場所となる学校等の重要給水施設に、応急給水拠点である「安心の蛇口」を順次設置してまいります。
ソフト面では、災害時の応急復旧対応、感染症の蔓延時等における受援体制の強化を観点とした「受援マニュアル」や、関係市町村等との合同防災訓練等の充実を図ってまいります。
次に、「地域への貢献、地域との連携」の視点としては、企業局の事業が地元市町村や、地域の皆様の御理解、御協力のもとに成り立ってきたことを踏まえ、これまで培ってきた技術力や経験を活かした「地域への貢献」と「地域との連携」を、企業局の果たすべき役割として位置づけ、市町村等への支援や地域の皆様との関係づくりなどに対して積極的に取り組んでまいります。
電気事業では、これからは「地域連携型水力発電所」を目指して、建設の計画段階から地域の方々の参画を得て、維持管理を協働で行うとともに、発電所が地域の学びの場や観光振興の拠点等として活用されるよう取り組むほか、停電時に地域への電源供給を図る「地域連携水力発電マイクログリッド」の構築に向けた研究も進めてまいります。
また、売電に関しては、企業局電力のブランド価値を高めつつ、電力の地消地産や大都市との連携を進めるとともに、地域内経済循環に資するものとするという視点で、これからの売電のあり方を検討してまいります。
電気事業の利益については、引き続き一般会計への繰出しを通じて、地方創生の取組や未来を担う子どもたちを支援してまいります。
水道事業では、令和2年10月に知事部局と連携して、県内の全市町村とともに立ち上げた「長野県水道事業広域連携推進協議会」において、水道施設台帳整備、情報共有や、人材の確保、育成などをテーマにワーキンググループを設置して、できることから実施することを共通認識とし、持続可能な経営に向けた広域連携の方向性等について検討を進めてまいります。
また、企業局の2つの経営区域ごとに設置する、関係市町村との連携研究会において、今後の水需要の動向等を見込んだ最適な施設配置のあり方や、水質検査等の業務の共同化等に向けた検討を進めてまいります。
次に、「柔軟で俊敏な組織づくり」の視点としては、本年4月に「企業局スマート化推進センター」を設置し、次世代監視制御ネットワークシステムを構築して、発電所や浄水場等の施設を一括して監視制御することを目指すとともに、水道事業の広域連携を図りつつ、専門人材の確保、育成や、防災体制の強化等に向けて取り組んでまいります。
最後に、「経営の安定」の視点としては、未来に向けて中長期的な視点から施設整備等に積極的な投資を行うため、常に経営状況の把握に努めて、毎年度の決算や、成果、目標の達成度等を検証するなかで、財政計画を適宜見直し、財務健全性の確保と財政基盤の強化に向けて取り組んでまいります。
以上、改定後の経営戦略の案につきまして、6つの視点に基づき御説明申し上げました。
それでは、令和3年度企業局予算案の概要につきまして、御説明申し上げます。
令和3年度は、改定する経営戦略の計画初年度となることから、基本目標を推進する6つの視点を柱に、「しあわせ信州創造プラン2.0」の目標達成に向けて、積極的かつ重点的に取り組むという観点から編成いたしました。
最初に、電気事業についてですが、料金収入は、しゅん工を予定している新たな3つの発電所と、大規模改修中である西天竜発電所の運転開始等により、発電電力量の増加を見込む一方で、美和発電所の大規模改修工事等による運転停止や、令和2年7月の豪雨災害により損傷した発電所の発電電力量が減少することなどから、今年度に比べ7,800万円余の減となる36億6,323万5千円を計上し、純利益は、これに加え、委託料や新規発電所に係る減価償却費が増加することなどから、今年度に比べ1億6,800万円余の減となる4億3,260万6千円を計上いたしました。
建設改良費につきましては、新しい発電所の建設や基幹発電所の大規模改修等に係る事業費等として、今年度に比べ23億7,500万円余の増となる58億8,005万3千円を計上するとともに、債務負担行為につきましては、75億1,181万円を設定いたしました。
電気事業の利益剰余金を活用した一般会計への繰出しにつきましては、地方創生積立金から4億円を繰り出し、県立学校におけるICT環境の整備等を支援してまいります。
次に、水道事業についてですが、水道料金収入は、末端給水事業では、近年、給水戸数が増加する一方で、戸当たりの給水量が減少傾向にあることから、今年度とほぼ同額の36億2,708 万9千円を計上し、用水供給事業においても、今年度とほぼ同額の14億4,395万4千円を計上いたしました。
両事業を合わせた純利益につきましては、施設等の更新に伴う減価償却費等が増加することなどから、今年度に比べ6,200万円余の減となる1億6,072万7千円を計上いたしました。
建設改良費につきましては、施設・管路の耐震化や更新等を着実に進めるための事業費等として、末端給水事業では、20億2,671万8千円、用水供給事業では、7億8,501万9千円を計上いたしました。
また、これらの事業を、スピード感を持って積極的に展開するために、昭和36年度に発足した企業局が60周年を迎えることを一つの機会と捉え、戦略的で効果的な広報活動を展開することで、企業局ブランドの向上を図り、県民の皆様の事業への御理解が深まるよう取り組んでまいります。
以上、電気事業会計と水道事業会計を合わせた企業局の予算額は、収益的支出と資本的支出を合わせて200億943万7千円となります。
条例案は、「信州もみじ湖」、「くだものの里まつかわ」、「小渋えんまん」の3つの発電所のしゅん工と、建設部が管理する3つの発電所を企業局へ移管することに伴う「長野県公営企業の設置及びその経営の基本並びに財務等の特例に関する条例の一部を改正する条例案」の1件であります。
以上、企業局関係の議案につきまして、その概要を御説明申し上げました。
何とぞよろしく御審議の程をお願い申し上げます。
○議長(小池清 君)以上をもって知事提出議案の口頭説明は終了いたしました。
ただいま説明がありました以外の部長の説明につきましては、
議会運営委員会の意見を徴した結果、口頭説明を省略することとし、お手元に配付いたしましたとおりでありますので、御了承願います。
〔議案等の部「3 口頭説明を省略した部長の議案説明要旨」参照〕
──────────────────
○議長(小池清 君)これらの議案は、来る2月25日から行う質疑の対象に供します。
──────────────────
○議長(小池清 君)お諮りいたします。本日はこの程度で延会にいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(小池清 君)御異議なしと認めます。よって、本日はこれをもって延会することに決定いたしました。
次会は、来る2月25日午前10時に再開して、各党派代表質問及び知事提出議案に対する質疑を日程といたします。書面通知は省略いたします。
本日は、これをもって延会いたします。
午後2時59分延会...