札幌市議会 2003-12-10
平成15年少子化対策・青少年育成調査特別委員会−12月10日-記録
平成15年
少子化対策・
青少年育成調査特別委員会−12月10日-
記録平成15年
少子化対策・
青少年育成調査特別委員会
札幌市議会少子化対策・
青少年育成調査特別委員会記録
平成15年12月10日(水曜日)
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開会 午後1時
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勝木勇人 委員長 それでは,定刻ですので,ただいまから
少子化対策・
青少年育成調査特別委員会を開会いたします。
小谷委員からは,遅参する旨の連絡が入っておりました。
それでは,議事に入ります。
少子化対策についてを議題といたします。
本日は,
吉岡てつをさん,
長谷川敦子さんをお招きいたしております。
最初に,お二人のお話を聞かせていただいた後,質問を受ける形にしたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
委員会を開催するに当たりまして,一言ごあいさつ申し上げます。
はるばる来ていただきましたお二人におかれましては,お忙しい中にもかかわらず,快くこちらのお願いを聞いていただきまして,心から厚く御礼申し上げます。
本日は,前回に引き続き,少子化の現状や課題,意見などについて,それぞれのお立場からお話を伺いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
まず,吉岡様の
略歴紹介をさせていただきます。
吉岡てつをさんは,
厚生労働省にいらっしゃる方でございます。
厚生労働省雇用均等・
児童家庭局少子化対策企画室長でして,略歴については,
健康政策局計画課課長補佐,
医薬局企画課課長補佐,
大臣官房総務課課長補佐,そして
厚生労働省大臣官房総務課企画官を経て,平成14年8月より
少子化対策企画室長を務められ,同年10月からは同省に設置された
少子化対策推進本部の
事務局次長も務められております。
よろしいですか。
それでは,吉岡さん,よろしくお願いいたします。
◎吉岡 参考人 私どもの
雇用均等・
児童家庭局は,3年ほど前に
省庁再編がありまして,厚生省と労働省が一緒になりましたが,そのときに新しくできた組織でございます。
雇用均等というのは,昔の労働省の女性局で,女性の働くことを考えるところであり,
児童家庭局というのは,昔の厚生省の
児童家庭局で,子供の福祉を考えるところでした。それが一緒になったわけでありまして,子育てということに関しては非常にいい組織ができたと思っています。つまり,企業の側,働く側から子育てを考えるということと,地域の側から子育てを考える,この両方をトータルで考えることができるようになったわけであります。例えば,
育児休業と保育所の問題は非常に密接な話ですが,今まで別々のところで議論をされていましたけれども,それが総合的に議論できるようになったということであります。私は,そこで
少子化対策企画室長を務めさせていただいております。
今,全国のいろいろなところでお話をさせていただいておりますけれども,最近,
子育て支援をめぐる状況が大きく変わりつつあるなということを非常に痛感しております。一例を挙げますと,今,日本全体でNPOが約1万3,000ありますけれども,その中で子供,
子育て関係のNPOが約5,000という状況になっています。そして,全国のどこに行っても,
お母さん方は子育てに対して悩みを持たれていますが,ただ悩みを持つだけではなくて,その現状を何とか変えなくてはいけないのではないかということで,今,さまざまな活動に参画されたり,そういう活動を起こしたりというふうな状況になっているのであります。
それから,住民に一番身近な市町村の状況はどうかといいますと,私どもとともに,これまで保育所の問題を精いっぱい取り組んでまいりましたけれども,率直に言って,
子育て支援ということに関して言えばまだこれからの状況であると思っております。こうした中でも,最近,全国の多くの
市町村長が私どものところに来られるようになりまして,うちの市,うちの町もこれから
子育て支援で頑張りたいのだとおっしゃる方が非常に多くなってきております。
これは,例えば高齢者の介護の問題であれば,
ホームヘルプ,デイサービス,ショートステイ,グループホームというような基幹的なものがありますけれども,子育てというのはもっと多岐にわたる
取り組みとなります。しかし,子育ては,子供が生まれる前の問題,生まれた直後の乳幼児の問題,それから幼稚園,保育所の問題,小学校に上がってから,中高生の問題と,
年齢層ごとにそれぞれさまざまな
取り組みが必要になるわけであります。ですから,
子育て支援ということについては,地域の独自性とか特殊性が発揮しやすい分野ではないかというふうに思っております。したがって,恐らく,二,三年後には,各市町村,各地域において,
子育て支援をめぐって競い合う時代が間違いなく来るのではないかということを感じさせていただいております。
それでは,我々国の方はどうなのかということであります。私どもは,ことしを
子育て支援,
次世代育成支援の元年と位置づけまして,今,新しい
取り組みを始めたところであります。
本日,お手元に分厚い資料をお配りをしておりますので,それに沿ってお話しさせていただきますが,まず,1ページをごらんいただきたいと思います。
なぜ,
子育て支援,
次世代育成支援元年かということであります。
昨年1月に,新しい将来
推計人口が公表されました。これは,5年に1度,公表しているものでありますが,これまで,少子化の要因については,晩婚化,未婚化であるとされておりました。そうすると,これは必ずいつかはとまるわけです。
平均初婚年齢が40歳にも50歳にも60歳にも上がることはありませんし,札幌市の
平均初婚年齢が83歳になったというようなことにはなりませんので,いつかはとまるだろう,それが少子化だというふうに思っておりました。
しかし,今回の新しい推計では,晩婚化に加えて,結婚した夫婦から生まれる子供の数も減少していることが新たに把握されました。すると,これはとめどもない状況になるおそれもあるわけでございます。そうした危機感の中で,昨年5月には,
小泉総理の方から,改めて実効性のある対策を検討するようにという指示が私どもの
坂口大臣になされました。
それを受けて,まず,昨年9月に,
少子化対策プラスワンという今後の
政策パッケージを公表させていただきました。
プラスワンという名称につきまして,これはもう一人産む意味かとよく言われますが,私どもは,もう一段の対策ということで
プラスワンと称させていただいております。
この
プラスワンは,
厚生労働省の案として示させていただきましたので,以後,政府の中でいろいろと議論を重ね,その結果,ことしの3月に少子化に関係する
閣僚会議で
次世代育成に関する当面の
取り組み方針というものを改めてまとめ直しました。この内容につきましてはまた後ほど申し上げたいと思いますが,その中でさまざまなことを掲げております。そして,それを具体化するための手段として,
次世代育成支援対策推進法案という新しい法律,それから,子供の福祉の基本であります
児童福祉法の
改正法案を国会に提出させていただき,ことしの7月,全党・全会派の賛成で成立をしたところであります。
ここで,
次世代育成支援という新しい言葉を使わせていただいておりますけれども,私どもは,これまで
少子化対策ということを言ってきましたが,とり方によっては非常に誤解を与える向きもありました。産めよふやせよ的なことをやるのではないかという誤解を与えたり,あるいは,地域の
お母さん方にとってみれば,私たちは別に
少子化対策のために子供を産んで育てるわけではないのだというふうな反応も返ってまいります。
結局,我々や自治体で今までやってきたこと,そしてこれからやっていかなければいけないことは何かというと,言うまでもなく子供を産み育てやすい
環境づくりを進めることでありまして,言葉をかえると,子育て,子育ちというものを社会全体で支援しようということであります。それを端的にあらわす言葉として,今,
次世代育成支援という言葉を新たに用いさせていただいており,この名前のもとに,これから
取り組みを進めていきたいと考えております。
まず,少子化の今の足もとの状況であります。
資料の2ページをお開きいただきますと,我が国では,かつて第1次
ベビーブーム,そして第2次
ベビーブームがありました。本来ですと,第2次
ベビーブームのときに生まれた人たちが大人になったときには,第3次
ベビーブームが来てしかるべきですが,それが来ないまま,ほぼ一貫して少子化が進んでおります。昨年の出生数は約115万人でありますが,第2次
ベビーブームのときには1年間に210万人の赤ちゃんが生まれておりましたから,約半分の出生数になっております。それから,
合計特殊出生率というのは一人の女性が一生の間に何人の子供を産むかという数字ですが,これが2.08を下回ると人口は長期的に減少すると言われておりますけれども,今,その2.08を大きく下回る1.32という過去最低の水準まで来ております。
少子化の要因につきまして,3ページをごらんいただきますと,左上は,従来から指摘をされております晩婚化,未婚化です。例として,25歳から29歳の未婚率をとりますと,昭和50年当時,男性は48.3%であったのが今は69.3%,女性は20.9%であったのが今は54%という状況です。それから,50歳から54歳の未婚率ですが,これは人口学的に生涯未婚率というふうに言われておりますけれども,こちらは,今や男性10.1%,女性5.3%という状況にまでなっております。この数字を東京についてだけ取り出しますと,男性はもう既に約20%です。つまり,東京の男性は5人に1人が独身という状況になっており,女性も10%,10人に1人という状況であります。当然ながら,
平均初婚年齢も,今,28.8歳,27歳にまで上昇しているという状況でございます。
もう一方,今回新たに把握をされましたのが
夫婦出生力の低下です。結婚した妻の年齢が25歳から29歳,30歳から34歳,35歳から39歳のそれぞれで平均して何人の子供を産んでいるかを示したグラフです。ごらんいただきますと,1990年代に入り,いずれの年齢層でも生まれてくる子供の数が減少していることが明らかになりました。
この両方の要因によってこれから少子化が進んでまいりますが,直近の問題として,平成18年をピークに日本は
人口減少社会に入ることになります。そして,このままの状況が続けば,21世紀末には人口は半減すると見込まれております。それから,子供の数も,先ほど今は第2次
ベビーブームのときの約半分になったと申しましたが,50年後にはさらに今の約半分になっていくと見込まれます。
よく,1億2,000万という日本の人口は狭い国土の中でちょっと多過ぎるのではないか,6,000万人でちょうどいいのではないかという議論がなされますけれども,白紙の状態から,今からきれいな国家をつくろうということであればそれでいいと思います。問題は,今の1億2,000万という人口が急激に半分になっていくこと,特に,高齢者が多く,それを支える世代が少ないということで,
年齢構成のバランスが非常に悪い形になっていくこと,そしてまた,そのスピードが諸外国に比べて急ピッチで進むということが非常に大きな問題としてあります。
次に,少子化の影響を4ページに掲げさせていただいておりますが,これは,大きく言って経済面での影響と社会面での影響があります。
まず,経済面の影響としましては,当然ながら,
労働力人口が減少します。減少するだけではなく,高齢者の割合も高くなるために
労働力供給が減少いたします。あわせて,貯蓄力も低下しますので,総じて
経済成長率の低下が懸念されます。それから,国民の生活水準への影響では,高齢者の割合が高くなっていきますから,年金や医療,福祉などの
社会保障分野において
サラリーマン世代,
現役世代の負担が増加しますので,ひいては
手取り所得が減少していくことにもなります。
二つ目は,社会面での影響です。最初に,家族の変容と掲げさせていただきました。今まで,私どもも,家族というのは,お父さん,
お母さんがいて,子供が2人ぐらい,たまにはおじいさん,おばあさんがいるのが家族だと思っていました。しかし,単身者,子供のいない世帯がふえていきますと,家族というのは何だろうかと,その概念まで変わってくるのではないかとも言われております。それから,家系が断絶することになると,先祖に対する意識の希薄化も起きてくるのではないかとも言われております。
二つ目に,子供への影響であります。子供というのは,小さいころから,
地域社会の中でいろいろな子供と接触してともに成長していくことが大事である,とりわけ異なる年齢の
子供同士が一緒にはぐくまれていくことが大事だと言われておりますけれども,当然ながら,そういう機会も減少していきます。一方で,親の過保護化も進み,子供の健やかな成長への影響が大きく懸念されます。
三つ目は,
地域社会の変容です。これから日本全体が
人口減少社会に入っていきますが,とりわけ小さな町村において
人口減少が著しく,また,高齢化の割合も高くなります。そのとき,住民に対する基礎的なサービスが十分にできるだろうかいった懸念も生じている中で,今,全国的に
市町村合併の動きが進んでいるということでもあります。
それでは,こうした少子化は日本だけなのかといいますと,5ページをごらんいただくと,1960年ぐらいから
各国ともに少子化が進んできております。そして,1980年ぐらいから,単純に下がる一方ではなく,グラフは非常に複雑になっております。上がったり下がったりする国がある。これは一つには景気の影響もありますけれども,このころから,各国においてそれぞれの国なりの
家族政策に手がけてきたからです。そうした政策の力を入れると少子化は改善し,手を抜くと少子化が進むといった状況があることも指摘をされております。
そうした中で,先ほど言いました2.08%を上回っているのは,唯一,
アメリカの2.1%だけです。低いのはどこかといいますと,日,独,伊の3カ国になっております。とりわけ日本は,一貫して少子化が進んでいる状況にあります。
こうした諸外国の状況をもう少し申し上げたいと思いますが,まず,6ページの下の図をごらんいただきたいと思います。
縦軸に出生率,横軸に女性の
労働力率を掲げました。よく,女性の
社会参加が進むから少子化が進むと言われることがありますが,そうではないことが見ておわかりかと思います。両者の関係は正の
相関関係にありまして,女性の
労働力率が高い国ほど出生率が高く,低い国ほど出生率が低い状況にあります。したがって,女性の
社会参加がいかに進んでも,仕事と子育ての両立を支援できる環境が整備されれば両方とも高い水準を維持できるし,それができなければ両方とも低い水準になってしまうのであります。
これは,1960年代の時点をグラフにとると負の
相関関係にありましたが,今や正の
相関関係にあります。また,日本国内の
都道府県別に同じ図をつくりましても,同じことが言えます。女性の
労働力率が高い都道府県ほど出生率が高く,低いところほど出生率が低い状況になっております。
そうした中で,こうした国々をグルーピングしますと,大きく三つに分かれます。一番上の丸に書いてあるのが両方とも高いグループです。まず,
フランスは,
出生促進型と言われておりますが,特に
児童手当などの経済的な支援が非常に高い水準で行われています。これは,税制もn分n乗方式ということで,家族がふえればふえるほど税金も非常に安くなります。また,
フランスは,公的な対応だけではなくて,民間でも,交通機関とか博物館などは家族が多いと割引がききます。それから,二つ目は,
男女共同参画が最も進んでいる北欧であります。最後に,
アメリカなどの
英語圏諸国ですが,
人口学者の間では不介入型というような言い方がなされております。というのは,公的には,国や連邦は家族の問題について特に政策を行っておりません。しかしながら,両方とも高い水準にあります。
この要因につきましては,一つは女性の
労働市場が非常に弾力的です。
お母さん方が子育てのために家庭に一度戻っても,またいつでも働きに出られる環境にあります。それから,公的には行われていなくても,民間でのベビーシッターが非常に発達しています。それから,男性の家事,育児への参加率が高い。そういった三つの要因が
アメリカを支えているのではないかということがよく言われます。
それから,二つ目は,
ドイツ語圏の
伝統家族型と言われているものです。ドイツでは,3歳児神話というものがいまだに根強く残っておりまして,その影響もあって
保育サービスが未発達であります。それから,小学校も午前中で終わるところが多く,
お母さん方は午前中に短時間就労のような形で働き,午後は子育てをします。それによりまして,女性の
労働力率は高いけれども,出生率は低いという状況になっているのではないかと言われております。
両方とも低いところは,イタリア,ギリシャ,
スペイン等の
南欧諸国,それから,日本を初めとする
NISE諸国であります。共通の特徴としては,男性の家事,育児への参加率が低いことがあると言われております。
それでは,国内の状況はどうかといいますと,次の7ページをごらんいただきます。
日本の中で一番出生率が高いのは,右側の一番上の沖縄の1.76であります。今,沖縄は,日本全体の中でも経済の問題,雇用の問題が一番大変なところですが,出生率を見ますと一番高い水準にあります。これにつきましては,少し前にNHKで「ちゅらさん」という番組がありまして,あれを見るとよくわかる,家庭や地域というものがまだしっかり残っていて,子育てしやすい環境にあるからだと言われます。
一方で,低いのは,一番下の東京の1.02,それから,京都,奈良,大阪,神奈川ということで都市部が軒並み低いですが,その次が北海道の1.22でありまして,北海道の低さは札幌市が押し下げていると言われております。
やはり,こうした都市部の問題につきましては,後ほど申し上げますように,企業における働き方の問題と,地域における
子育て支援の問題と,この両方をしっかり進めていかなければ,それはなかなか改善しないのではないかと考え,私どもは,各自治体の
皆さん方と一緒になってこれからも取り組んでいきたいと思っております。
ここで,改めて,少子化の要因から今後の対応を考えてみたいと思います。
次の8ページをごらんいただきますと,まず,少子化の一つの要因である晩婚化,未婚化であります。左下に男女別に年齢別の未婚率の推移を掲げておりますが,いずれの年齢層でも未婚率が上昇しております。それから,右側には生涯未婚率の推移を掲げておりますが,
男女ともに上昇しており,とりわけ男性の上昇が非常に著しい状況にあります。
こうした晩婚化,未婚化の要因としては,一つは,結婚などへの価値観の変化があると言われております。もう一つは,やはり働くことへの生きがいを含めて,世の中に楽しいことがたくさん出てきた中で,結婚,その先の子育てに対して,どうも負担感だけ感じられ,相対的な魅力が低下しているのではないかと考えております。
したがって,晩婚化,未婚化の問題につきまして,私どもは何ができるかというと,結婚,その先の子育てを選択しやすい社会にしていくことが必要なのではないか,そのために子育てしやすい
環境づくりをやっていくことが,やはり晩婚化,未婚化に対してまず必要な対策であろうと考えているところであります。
それから,結婚した夫婦の状況ですが,次の9ページをごらんいただきます。
1組の夫婦から平均して何人の子供が生まれるか。かつて昭和15年の時点では4.27人という水準でしたが,昭和47年ぐらいからは大体2.2人の水準であります。したがって,結婚すれば平均して2人以上の子供が生まれておりました。あわせて,昭和52年から,理想の子供数は何人ですかという調査をしておりますが,その結果は,昭和52年以降,理想と現実の間に0.3から0.5ほどの開きが一貫してあります。したがって,この問題につきましても,子供を産み育てやすい
環境づくりをすることにより,結果として理想の子供数まで引き上げることができるのではないかと思っております。
理想の子供数まで引き上げることができたらどの程度の効果になるのかということでありますが,仮に2.23が2.56になったとしますと,大ざっぱに計算して
合計特殊出生率換算で1.53という水準まで上昇します。これは,
スウェーデン並みの水準でありまして,そうしたことから,家庭の問題についてもやはりこれからは
環境づくりを進めていくことが必要であると思っております。
そうした中で,10ページですが,私どもは,平成2年以降,少子化への対応を進めてまいりましたけれども,まず,平成2年に1.57
ショックという言葉が生まれました。これは,昭和41年がひのえうまの年でありまして,そのときの出生率が1.58でしたが,それをも下回ったということで1.57
ショックという言葉が生まれ,これ以降,本格的な対応が始まりました。
ごらんのように,最初は非常におっかなびっくりのような表現ぶりで少子化への対応を行ってきたことは事実であります。出生率の動向を踏まえた対策とか,少子化への対応の必要性に基づく対策といったキャッチフレーズが使われておりまして,当初は,家族や個人の問題に国が関与していくことをどう考えるかという議論がありました。これにつきましては,平成9年に,厚生省の
人口問題審議会で多角的に議論され,理論的な整理がなされました。子供を持ちたいという人の障害を除去していく,そして,その希望をかなえるための政策ということは,何も問題なく,積極的に進めるべきだということがこのときにしっかりと位置づけられました。
これ以後,平成10年には少子化への対応を考える
有識者会議での提言がまとめられ,平成11年からは総合的な
少子化対策ということで
取り組みが進められてきました。しかし,冒頭に申しましたように,昨年,平成14年度の新しい
人口推計でもさらに少子化が進展する状況が見込まれる中で,今,少子化の流れを変えるためのもう一段の対策というところに行き着いているのであります。
では,もう一段の対策として具体的にどういうことをやっていくかということにつきまして,ことしの3月に,
閣僚会議の方で当面の
取り組み方針を決定いたしましたので,これに沿ってお話をさせていただきます。
まず,12ページに,目的・基本的な考え方を掲げておりますが,もう一段の対策を推進するということで当面の
取り組み方針を策定いたしました。
特徴としましては,一つには,政府,
地方公共団体,企業などが一体としてやっていくということ,二つ目には,国の
基本政策として
次世代育成支援を進めると位置づけております。国の文書でわざわざ
基本政策とまで銘打っているのは余り例がないのではないかと思いますが,それだけ私どもの危機感,意気込みをあらわしたものでもあります。目指すところは,都市化,
核家族化の進行の中で失われてきた家庭や
地域社会における
子育て機能を再生していこうということで,これを目的として位置づけております。
次に,
取り組みの方向性ですが,我々は平成2年からいろいろやってきたと申しましたけれども,今振り返ってみると,右下にありますように,保育所問題を初めとする仕事と子育ての
両立支援に特化し過ぎた嫌いがあるのではないかと評価をしております。よく,諸外国から日本の
子育て事情を視察に来られた方がおっしゃる言葉として,日本の保育所というのは非常に立派であると。人員的な面,設備的な面では世界に冠たる保育所であります。でも,保育所以外に何もないのですねと,皆さんは同じことをおっしゃいます。
そうした中で,今申しましたように,少子化がこれだけ深刻な状況で,もっと根本的な問題への対応を含めて総合的に取り組んでいくことが必要だろうということから,今回,新たに4本の柱を掲げて取り組むことにいたしました。一つ目は男性を含めた働き方の見直し,二つ目は地域における
子育て支援,三つ目は社会保障における次世代支援,四つ目は子供の社会性の向上や自立の促進ですが,
両立支援にこの4本柱を加えて
取り組みを進めていこうということであります。
なぜこの4本柱かということにつきましては,13ページをごらんいただきますが,14ページ以降に4本柱に関して図1から図11まで資料としてつけておりますので,この背景について順にご説明させていただきたいと思います。
まず,男性を含めた働き方の見直しに関してでありますが,まず,資料14ページをごらんいただきますと,縦軸に出生率,横軸に週60時間以上就業している者の割合,いわゆる長時間労働者の比率をグラフにしておりまして,これは負の
相関関係にあります。
男女とも,長時間労働者比率が高い地域ほど出生率は低い,長時間労働者比率が低い地域は出生率は高いという状況でして,やはり厳しい働き方の現状は少子化を促進することになっているのであります。
では,現実の生活はどうなっているかというのは,次の15ページをごらんいただきます。
未就学の子供のいる父親が何時に家に帰っているかという調査を行いましたら,夜の11時から朝方の3時までの間に帰っている父親が日本全体で14%おりまして,とりわけ,私どもがいます南関東では2割以上という状況にもなっております。北海道は7%ですが,恐らく,札幌だけをとりますと相当高い数字になっているのではないかと思います。これは帰宅時間でありますので,お酒を飲んで帰ったのも当然入りますが,毎日毎日飲んでいるわけではないでしょうから,非常に厳しい働き方であることは間違いないと思います。
そうした厳しい働き方でだれが一番しわ寄せを食っているかというと,次の16ページですが,子育て期にある30歳代の就業時間が最も長いということであります。30歳から34歳の男性では,週60時間以上働いている人が一番上の部分ですが,23.2%います。それから,35歳から39歳でも23.3%いるという状況でありまして,子育て期である30代の2割以上が週に60時間以上という状況に今なっております。そうすると,なかなか家で家事,子育てというわけにはいきません。
次の17ページをごらんいただきますと,日本の男性の家事時間割合は約5%であります。要は,全体の家事時間のうちの95%を女性が担っており,男性は5%ですから,時間にしますと約10分という状況です。出生率と男性の家事時間割合をごらんいただきますと,ほぼ正の
相関関係にありまして,男性の家事時間が短い国ほど出生率が低く,中でも日本は5%,10分と,諸外国に比べても極端に少ない状況になっております。
一方,働いている女性の状況でありますけれども,次の18ページをごらんいただきますと,私どもは
育児休業制度をつくったり改正したりしてきておりますが,それでもなお,
育児休業がとれない,断念したという方がいらっしゃいます。その理由として最も多いのが,職場の雰囲気というのが43%もいらっしゃいます。そうすると,これは制度をつくるとか改正する以前の問題でありまして,職場の環境自体を変えていくことが必要になっているのであります。
19ページをごらんいただきますと,国民の方々に
子育て支援で何が必要かということを聞きますと,一番多い答えは,子育てしながら働きやすい職場環境の整備となっております。結局,長時間労働の企業戦士は,日本の高度経済成長を支えてきたことは事実ですけれども,大きく経済,社会が変わってきている中で,今,日本の将来を危うくする少子化の根本原因の一つである企業の働き方を変えていかなければいけないのではないか,次世代の育成という大切なことのために,男性も企業社会も積極的に関与していかなければいけないのではないかという考え方のもとに,男性も含めた働き方の見直しを対策の柱の一つとして掲げました。
それから,二つ目が地域における
子育て支援ということであります。
20ページをごらんいただきますと,私どもは,これまで保育所の問題を中心的に取り組んでまいりました。保育所というのは,要は共働き家庭の支援になりますけれども,実際の子育ての負担感はどうなっているかといいますと,まず上のグラフをごらんいただくと,共働きの女性で子育ての負担感が大きいと感じている人は29%です。これに対しまして,片方のみ就労,主に専業主婦の女性の方は45%ということで,専業主婦の負担感の方が高い状況です。もう一方,子育てへの自信喪失,自信を失ったことがよくある,時々あるという二つを合わせて見ますと,有職者,すなわち共働きの女性は約50%という状況に対し,専業主婦が約70%と,専業主婦の自信喪失の方が高い状況になっております。
こうした専業主婦家庭を含めたすべての家庭の
子育て支援が各地域でどのぐらい行われているかについて,21ページに掲げております。全国約3,200の市町村の各事業ということで,私ども国の補助制度として用意している事業を並べておりますけれども,それぞれの事業ごとに幾つの市町村で行われているかというグラフであります。ちょっと前から取り組んでいる代表的な地域の
子育て支援センターとか一時保育は,数の上では3分の1です。代表的であるにもかかわらず,まだ3分の1ぐらいの市町村でしか行われていません。それ以外の事業になりますと,本当に緒についたばかりという状況であります。
私どもは,こうした国の補助制度をメニューとして用意しておりますが,各自治体からは,これまでニーズがないという答えがよく返ってまいりました。ただ,それは,今までニーズ調査がしっかり行われてこなかったのではないかということも事実であります。そうした中で,今,この行動計画の策定に当たり,まず住民に対するニーズ調査をしっかりやっていただき,その結果を踏まえて,それぞれの地域での
子育て支援事業の
取り組みを総合的に進めていただきたいとお願いしているところであります。
3点目に,社会保障における次世代支援を掲げております。
これは,主に私ども国の制度の問題であります。今,年金,医療,福祉という社会保障の給付として国民の方にお支払いしているのは約78兆円ありますが,そのうち,高齢者向けに使われているのが68%,それに対して子供向けに使われているのが3.5%であります。これは,小児医療の部分だけを取り出すわけにいきませんので,そこは入っておりませんが,それでも68対3.5という状況であります。当然,高齢化の進行によりまして,年金の給付が拡大する,医療費もふえていく,介護保険制度もできたということでこうした状況になっておりますが,私どもとしては,高齢化への対応を進めると同時に,子供に対してもこれからの社会保障制度の中でさらに積極的に対応していかなければないかということで,三つ目の柱としてこの問題を掲げているわけであります。
これは,国の制度の状況でありますが,恐らくは,各自治体の単独施策の状況も同じようなことが散見されようかと思います。そうした子供への対応,子育てへの対応というものを,それぞれの制度の中でいま一度考えていただくことが必要ではないかと思っているところであります。
4点目は,子供の社会性の向上や自立の促進を言っております。平たく言いますと,次代の親づくりの
取り組みであります。最近,フリーターとかパラサイトシングルの増加ということが言われておりますが,やはり,子供というのは次の時代の親になるものであるという視点から子供をはぐくんでいくことが大切だろうということであります。
ことしになりまして,私どもは,中高生に対する意識調査を初めて行いましたので,その結果を23,24ページに掲げております。
まず,23ページですが,上の方は,中高生は結婚と仕事に対するイメージをそれぞれどう持っているかについてクロス集計したものであります。その結果,ぜひ結婚したいと考えている中高生は,仕事に対するイメージも,人生のやりがい,夢の実現,あるいは,仕事を通していろいろな経験ができるというふうに前向きなイメージを持っています。一方で,できれば結婚したくないと答えている人は,仕事についても大変そうであると答えている人が多い。それから,下の表は,欲しい子供の数と仕事のイメージをクロス集計しました。欲しい子供の数が1人という人は,仕事に対するイメージもお金を稼ぐことができるものというネガティブなイメージであるのに対し,3人以上という人は,人生のやりがいや夢の実現,あるいは,いろいろな経験ができるというポジティブなイメージであります。総じて,仕事に対して前向きなイメージを持っている中高生は,結婚や子供を持つことにも前向きなイメージを持つ傾向にあります。ある意味で当然な結果でもありますが,子供の生きる力を総合的に身につけるためにどうしたらいいのか,そうした生きる力を養成するための
取り組みを各地域でしっかりやっていただくことが大事ではないかと思っております。
それから,24ページですが,上の表は,縦軸に子供を持つことのイメージ,横軸に学校や地域で活動していることということでクロス集計しました。すると,子供を持つことのイメージについて,自由な時間がなくなるとか負担が大きいとか子供は煩わしいと答えている人は,学校や地域では特に活動をしていない人が多い。それから,下の表は,同じく子供を持つことのイメージについて,負担が大きいとか煩わしいとかわからないというふうに答えている人は,小さな子供と触れ合う機会がないと答えている人が多いということであります。したがって,子供を持つことにネガティブなイメージを持っている中高生は,現在,学校や地域の活動に参加していない人が多く,小さな子供と触れ合う機会も持っていない人が多いということでありますので,それぞれの地域でさまざまな社会体験活動を進める,それから,小さな子供との触れ合いを含めた世代間交流の機会をしっかりつくっていくことが大事であろうと考えております。
それでは,
両立支援に4本柱を加えた
取り組みを進めるに当たり,具体的にどういった
取り組みを進めるかが25ページ以降であります。
それぞれ左側に書いてありますように,25ページはすべての働きながら子供を育てる人のために,26ページが子育てしているすべての家庭のために,27ページが次世代をはぐくむ親となるためにということであります。
まず,25ページでありますが,最初に掲げているのは,男性を含めた働き方の見直し,多様な働き方の実現です。
先ほど言いましたように,30代の非常に厳しい働き方の現状の中で,子育て期間の労働者の残業時間の縮減に社会全体として取り組もうではないかということを掲げています。
二つ目は,子供が生まれたら父親が5日間の休暇を取得と書いております。子供が生まれた親子にとって,一番大切なときに父親が家庭に戻り,子供と家庭を直視する体験が子育ての最初の時期にあることが重要だということから,5日間の休暇の取得を社会全体の運動として進めていこうではないかということであります。
それから,多様就業型ワークシェアリングの普及促進と書いておりますが,例えば,短時間勤務の正社員の制度とか隔日勤務とか,さまざまな働き方ができる環境,あるいはそうした社会の形成に向けて取り組んでいきたいということであります。
それから,二つ目に,仕事と子育ての両立の推進です。
これは,
小泉総理の指示を受けまして,
育児休業取得率などの目標値を掲げさせていただいております。男性10%,女性80%となっていますが,現在,足元の数字はどうなっているかといいますと,女性は64%で着々と上昇してきておりまして,80%は時間の問題だろうと思います。一方で,男性はどうかというと,0.33%でありまして銀行の金利よりは少しいいような数字であります。
この目標値をつくったときに,経済界からは,最初は,そんな勝手な数字をつくってもらっては困るといった反応が返ってきました。しかし,これはどういう数字かといいますと,とりたいと思っている人がとったらどういうことになるのかという数字でありまして,私どもが勝手につくった数字ではなく,国民の声が10であり80であると申し上げております。
それにしても,0.33が10になるのかというと,日本の男性には
育児休業についての認識はまだ十分に浸透していないと思っております。
育児休業というのは丸々1年も休まなくてはいけないのではないかと思っている方もいらっしゃいますが,例えば,
お母さんが11カ月とって,最後の1カ月はお父さんがかわるとか,途中の大事なときに1カ月かわるといったとり方ももちろんできます。また,年明けには,
育児休業制度をもっと利用しやすい制度にするための見直しも行うことにしております。
それから,最近,実際に
育児休業をとられた男性の声を聞きますと,皆さんは非常によかったとおっしゃいます。子供にとっても奥さんにとってもよかった,そして,それよりも自分にとってよかった,子育ての経験が仕事に生きた,何よりも自分をかけがえのない存在だと思えるようになったとおっしゃっています。そうしたよかったという声をしっかり伝えていけば,10%という数字はあながち難しくはないと思っております。これは一つのシンボル的な目標値ですので,もちろんこれだけではなく,総合的なことをやらなくてはいけませんが,シンボルであるからこそ,この実現に向けて取り組んでいきたいと思っております。
ここまでの1と2は主に企業側の
取り組みでしたが,3番目の
保育サービスの充実ということで掲げている部分は地域での
取り組みになります。
小泉内閣になりまして,私どもは待機児童ゼロ作戦を進めておりまして,1年間に約5万人分の保育所を整備するということでやってきております。しかし一方で,待機児童はどうなっているかというと,逆にこの1年間で900人増加したという状況です。身近なところに保育所ができると,潜在的な需要が掘り起こされて,待機児童がふえるような状況になっておりますが,そうした潜在的な需要を含めて,地域,地域でニーズをしっかり把握し,計画的に保育所の整備を進めてもらうことはまだまだ必要だろうと思います。
ただ,これは,全国的な状況ということではなくて,都市部に限られた状況になっております。今,待機児童が100人以上いる市区町村は全国で60余りでありますが,札幌市は私の手元の資料では184人の待機児童と承知していますけれども,60余りの市区町村の一つになっているところです。また,待機児童が50人以上いる市区町村でも,110余りということで,これは都市部に限られた問題になっております。我々は,いわば5万人分というマクロ政策をやってきましたが,これからはマクロ政策プラス都市部へのピンポイント対策ということで,そのために,今回,
児童福祉法も改正しまして,待機児童の多い市町村ではその解消のための計画をつくっていただくことも盛り込ませていただいております。そうしたことで,都市部と一緒になって,私どももさらなる対策を進めていきたいと思っております。
それから,二つ目には,最近,パートタイム労働者の方が非常にふえてきておりますが,パートの方からすると,今の保育所は預け過ぎになります。そこで,パートの状況に応じて,例えば週の2日だけ預けられる,3日だけ預けられる,あるいは,午前中だけとか午後だけというような弾力的な制度として,今年度,特定保育事業というものを創設しました。地域での導入はまだまだ進んでおりませんので,これから計画をつくっていく
取り組みの中で,こうしたことにもしっかりと対応していただきたいと思っております。
それから,
お母さん方からは,子育ては,保育所のときまでよかったけれども,小学校に上がってから本当に大変だったという声があります。これは,小学校低学年のとき,学校が終わってからの受け皿となる放課後児童クラブというものが地域でまだしっかりと整備されていない地域もあるからです。そこで,利用を希望する子供の数だけしっかり受け入れられる放課後児童クラブをそれぞれの地域で整備していくことも,保育所の問題とあわせて進める必要があると思っております。
結局,すべての働きながら子供を育てる人のための支援というは,企業と地域の共同作業であると言えまして,企業側の
取り組みと地域側の
取り組みの両方がしっかり進められることが大事であります。
一つ例を言いますと,今,日本ではゼロ歳児保育が非常に急増しています。これは,諸外国にはない事例であります。本当は,子供がゼロ歳のときには,
育児休業をとって家庭で子育てをしたいと思っている方が大勢いらっしゃいます。しかし,現実問題としてそれができないために,ゼロ歳児保育ということで子供を預けているということであります。したがって,各地域の
取り組みとして,保育所の整備を進めることと同時に,働く環境を変えるという企業側の
取り組みにもぜひ目を向けてやっていただけるとありがたいと思います。いわば待機児童ゼロ作戦の一つの効果的なやり方として,企業の働き方を変えていくこともあると思っているところあります。
それから,26ページは,子育てしているすべての家庭のためにということです。
まず最初に,さまざまな
子育て支援サービスの充実と書いております。
ここに代表的な
子育て支援事業を幾つか書かせていただいておりますが,最初に,一時預かりサービスの推進とあります。専業主婦のご家庭でも急病とか育児疲れのときに身近なところで子供を気軽に預けられる,そうした一時預かりサービスを地域でしっかりと整備してもらうことがまず大事であります。先ほどの資料の中で,一時保育を行っている市町村は全国で約3分の1ぐらいあると申しましたが,やっている市町村でも,例えば広い市の中で1カ所だけやっていてもやっていることになります。しかし,広い市の中で1カ所の保育所だけが一時保育をやっても,なかなか預けに行きにくいです。やはり,身近なところで一時預かりのサービス体制をつくっていくことが必要だろうと思っています。
二つ目に,子育て中の親子が集まる場として地域
子育て支援センター,つどいの広場を掲げておりますが,今,最もニーズが高いものです。地域
子育て支援センターというのは,主に保育所に併設される形で運営されております。また,つどいの広場というのは,昨年度から国の補助事業として始めたものですが,市町村からの委託でNPOなどさまざまな主体が実施できる形態のもので,非常にニーズが高いものです。親子が身近なところで集まり,
子供同士が遊ぶ中で親もお互いにいろいろな相談をする,そして,そこのスタッフからいろいろなアドバイスも得る,そういうものが身近な地域の中でつくられることが大事だろうと思っております。
お母さん方の悩みは,専門的な相談で解決される部分よりも,気軽な雰囲気の中でお互いに会話する,そしてアドバイスを得るところで多くのことが解決されていくと言われておりますので,そうしたものが身近な地域にあることが大事だと思っています。
実際に,こうしたつどいの広場を利用されている
お母さん方の声として,ここがあったからもう一人子供を産もうと思ったとよくおっしゃいます。そうしたことでの政策効果も非常に高いものがあると思っていますし,私どもは,こうした地域の
子育て支援センターとかつどいの広場は,将来的に例えば中学校区単位ぐらいの身近なところにあるような社会を目指して
取り組みをやっていければと思っております。
また,全国の事例をいろいろと見渡してみますと,単に
子育て支援の場というより,もう少し広い機能を果たしているところもたくさん出てきております。こうした場があると,地域の高齢者や女性がさまざまな形で運営にかかわってくることにもなります。高齢者でも子育てを通じて社会に貢献したいと思っている方はたくさんいらっしゃいますので,そうした方にとっての活動の場にもなりますし,女性の方にとっても自己実現の場にもなります。
さらに,地域振興にもつながるところがあります。例えば,横浜市にびーのびーのというつどいの広場があります。ここは商店街の空き店舗を使ってやっていますが,商店街自体は非常に高齢化しておりますので,例えば商店街のお祭りもこうした広場で考えるようなことを行っております。また,長野県の茅野市では,駅前に百貨店がありましたが,そこがつぶれて,その跡地で広場を運営しています。1日平均100世帯が利用されていまして,雪の日には300世帯が利用されている状況でありますので,
お母さんたちの化粧品売り場とか子供のベビー服売り場とか,おのずと周りにさまざまな店舗ができるようになりまして,こうした地域振興の役割を果たしているところも出てきております。
こうした
取り組みは,お金の面でもそれほどかかりません。標準的には大体400万円ぐらいで年間の運営費が賄えまして,それに対して国の補助制度もあります。400万とはどういう数字かというと,ゼロ歳児保育に例えると年間約2人分であります。市町村の予算ではいわば誤差の範囲で1カ所できるのではないかと思いますが,そうしたことでこうした
取り組みを進めていきたいと思っております。
また,保育所に併設されている地域の
子育て支援センターについては,今,相当数が出てきましたが,なかなか地域の
お母さん方のニーズに合わない運営のところもあります。一番求められているのは身近なところで気軽にいつでも行ける場ですけれども,なかなかそういう場になっていません。そのため,このセンターの機能の見直しもこれから進めていただく必要があろうと思っております。
それから,こうしたさまざまな
取り組みや事業を行うことと同時に,
子育て支援の総合コーディネーターというものが必要であろうと思っております。地域の声を聞きますと,市も
子育て支援をやっている,教育委員会でもやっている,NPOでもやっているけれども,この地域では一体どこでどうやられているのかよくわからないという声がよくあります。したがって,それぞれの市町村では,さまざまな
子育て支援の情報を一元的に集約してわかりやすい形で住民の方々にお届けする,それから,あるご家庭でこうした
子育て支援が必要だということであれば,それにマッチする事業者からちゃんとサービスが届くように調整する,そうしたコーディネート機能をしっかりと果たしていただきたい,そのために
子育て支援の総合コーディネーターを各市町村に置いていただきたいと思います。
これは,今回の
児童福祉法の改正の中でも盛り込ませていただいておりますが,もちろん市町村みずからやっていただいてもいいですし,それぞれの地域にとって一番適したところ,支援センターであったり,つどいの広場であったり,社協であったり,NPOであったり,それぞれの地域の
お母さん方にとって一番いいところに委託して,こうしたコーディネーターを配置して
取り組みを進めてもらうこともあわせて大事だろうと思っております。
それから,2番目は,これは主に文部科学省の
取り組みですが,家庭の教育力が低下している中での家庭教育への支援の問題です。
3番目には,生活環境の問題として,とりわけ子育てバリアフリーということを書いております。高齢者,障がい者のバリアフリーの
取り組みが相当程度進んだことにより,子育てしている人も助かっている部分があります。子育て特有の問題として,こういった庁舎や公共施設へ行ったときの託児室,授乳コーナー,それから,子供が小さいときには
お母さんが並んでトイレを使わなければなりませんが,そのためトイレの改修もあります。こうした子育てバリアフリーの
取り組みは,日本はまだまだおくれていると言われておりまして,とりわけ,民間企業での
取り組みより官公庁での
取り組みがおくれているというデータもございます。そうしたバリアフリーの
取り組みも,あわせてこれから進めていくことが大事であろうと思っております。
それから,4番目,5番目,6番目は,主に私ども国の
取り組みになります。再就職の問題,年金制度の改正の中での対応,それから教育費の問題につきましても,これからさらなる対応を進めていきたいと考えております。
次に,27ページは,次世代をはぐくむ親となるためにということであります。
最初に,中高生が乳幼児と触れ合う機会の拡充と書いております。最近の中高生は,乳幼児と触れ合う機会がないと言われます。そうすると,やはり,子供とは何かとか,家庭とは何かとか,生きるとは何かということを実感として味わえなくなっているのではないかと。先ほどのデータにもありますように,そうしたものと触れ合う機会がないために子供を持つことにネガティブなイメージを持つ人が多い状況になっているのであります。
そうした中で,昨年度,触れ合う機会をつくるためのモデル事業を全国数カ所でやりました。児童館あるいは保育所でやりましたが,非常にいい反応が返ってきまして,子供たちも中高生と触れ合う機会があってよかった,中高生も非常によかったと言っております。今年度もこの事業を本格的に展開しておりますので,ぜひ地域の中の
取り組みの一環として進めていただきたいと思います。
それから,先ほど言いましたように,子供の生きる力を総合的に育成することが大事でありますので,体験活動や世代間交流をさまざまな形で進めていくことが必要であると思っております。それから,結婚するしない,子供を産む産まないというのは個人の自由でありますが,やはり,国あるいは自治体におきましては,家庭を築いて子供を産み育てることはこんなに大事であり,すばらしいことなのだということをしっかりと教育し,広報,啓発していかなければいけないと考えております。
そのほかにも,今,フリーターが全国に約200万人という状況になっておりますが,若者が安定して就労できるための環境整備もやっていかなければなりません。
それから,少し角度は違いますが,子供の健康,安心,安全の問題としては,最近,食を取り巻く状況が非常に厳しくなっていると言われております。朝食欠食児童,朝飯を食べない子供がふえているとか,中高生の女性にやせとか激やせが非常にふえています。そうした中で,食を通じた家族形成とか人間性の育成が大事だということで,これからは食育という
取り組みも進めていきたいと思っております。
また,性の問題では,10代の人工妊娠中絶や性病の罹患率もふえている中で,改めて性に関しての正しい理解の普及,あるいは,いいお産の普及もやっていきたいと思います。
さらには,不妊治療の問題ですが,今,10組に1組の夫婦が不妊に悩んでいる状況です。現実に28万人の方が不妊治療を受けられている中で,いろいろな経済的負担が大変だという声があることから,選挙前に,与党3党で不妊治療に対する経済的支援施策をまとめられ,来年度から実施すべく今準備を進めています。あわせて,不妊治療に関しては,経済的なこととあわせて,心理的,医療的なケアが大事ですので,各都道府県ごとに不妊専門相談センターを整備する
取り組みも進めさせていただいております。
28ページに,今後の推進方策を掲げておりますが,今申したようなことを進めていくために,ことし,来年の2年間を対策の基盤整備期間と位置づけて,一連の立法措置も講じることにしております。ことしは,後ほど申し上げます
次世代育成支援対策推進法,そして,
児童福祉法の改正法を提出し,成立いたしました。
それから,来年も幾つかの約束をさせていただいておりますが,一つには,
児童手当制度の見直しがあります。日本の
児童手当は,第1子が5,000円,第2子も5,000円,第3子以降は1万円と,諸外国に比べると非常に見劣りする制度になっているのは事実です。そうした中で,
児童手当を増額すると,ばらまきではないかと批判されることもあります。ただ,諸外国のどこを見ても,
児童手当が対策の大きな柱の一つになっていることは間違いありません。それから,先ほどのデータを見ましても,やはり,経済的な負担が大変だと思う方がたくさんいらっしゃることも事実でして,私どもも,将来的には
児童手当をもっと本来的な大きな制度にしていかなければいけないと思っております。
そうした中で,ちょうど昨年末の税制改正で配偶者特別控除の廃止が決定されましたので,その財源を活用して2,500億円を
児童手当の拡充を初めとする
少子化対策に充てることが与党で合意されました。それを受けた
取り組みの一つとして,
児童手当につきまして,まず,来年は,今まで小学校に入るまで支給されていたものを小学校3年生まで引き上げるという拡充措置を講じることにしております。わずか3年間の延長でありますが,これでも費用にしますと約1,700億円かかります。さらに大きな制度にしていかなければいけないと思っておりますが,そのためには社会的な
子育て支援の重要性の認識がまだまだ育っていかなければいけないと思っております。そうした中での第1弾として,
児童手当制度の見直しをまず来年に行いたいと思っております。
それから,
育児休業制度についても,もっとより利用しやすい制度にしていきたいと思っております。例えば,今,民間では
育児休業を1年間とれますが,1年間の終わるときが2月だったりすると,4月から保育所があくのにといったことをよく言われます。そうしたことから,
育児休業期間を延長するという問題があります。また,今はお父さん,
お母さんが1回しか交代できませんが,もっと何度も交代できる制度にできないか。それから,子供が病気のときの看護休暇制度はまだ企業の義務になっておりませんので,これを
育児休業と同じような請求権化ができないかといった問題,あるいは,有期雇用の職員の方がふえているので,それらの職員に対する
育児休業をどう考えるかなど,さまざまな論点があります。こうしたことにつきまして,今,審議会で最終的な議論の整理を行っておりますが,来年にはその結果を得て
育児休業制度の改正を行いたいと思っております。
こうした中で,ことしは,
次世代育成支援対策推進法が成立をいたしましたが,資料29ページにその趣旨を書かせていただいております。
今,政府の当面の方針としてるる申し上げたようにさまざまなことを書いておりますが,それを実現するための手段として,一つには,右側のラインにあるように,
児童福祉法とか育児・介護休業法などの個別制度も見直して進めていくという個別施策の推進,あわせて,もっと大事なのは,やはり市町村とか企業といった現場で具体的な
取り組みを進めてもらうことが大切なので,それぞれで行動計画をつくっていただく,そのために
次世代育成支援対策推進法という法律を提出したわけであります。
法律の内容を一言で申しますと,国が定める指針に即して自治体,企業が行動計画を策定し,とにかく10年間は集中的な
取り組みを進めようということであります。こうした計画づくりの背景を見ますと,まず,左下にあるように,各自治体でもこれまで地方版のエンゼルプランとか児童育成計画などをつくっていただいておりますが,全国3.200の市町村の中では1,300余りにとどまっています。また,つくっている市町村も,その内容が従来の保育中心であったり,総合計画の一部としてちょっと書いているところも含めての1,300であります。一方,企業も,先ほど申しましたように,職場環境を総合的に見直すことに取り組んでいかなければならない状況です。そこで,各都道府県や市町村では,それぞれの地域でどういった
子育て支援,
次世代育成支援をやるのかということを掲げた計画をつくっていただこう,企業の方では,それぞれの企業ごとにどういった
両立支援の
取り組み,働き方の見直しの
取り組みをやるかということを掲げた行動計画をつくっていただこうというのが
次世代育成支援対策推進法であります。
30ページに,そのフレームワークを載せております。
また,こうした計画をそれぞれつくっていただくために,国では,既にことしの8月に行動計画の策定指針をつくりましたので,これも踏まえてそれぞれの自治体,企業で計画をつくっていただくことになります。
まず,自治体の計画でありますが,全市町村,全都道府県で計画をつくらなければならないというように,義務とさせていただきました。これは,今,地方分権と言われる時代の中で,全部の自治体に義務づけるのはどうかといった議論もありました。しかし,冒頭に申したように,国の
基本政策として
次世代育成支援を進めるという考え方のもとに,最終的にすべての自治体でつくっていただくという結論に達したものであります。その際,私どもがもう一つ意を用いたのは,やはり,
子育て支援に関してはさまざまな人たちが地域でかかわっておりますので,そうした人を含めて,住民の
皆さん方との協働作業として地域の計画をぜひつくっていただきたいということから,法律の中にも,地域住民の意見の反映とか,計画内容や実施状況の公表まであえて規定させていただきました。
それから,事業主の行動計画でありますが,まず,一般事業主というのは通常の企業であります。今回,従業員301人以上の企業については,計画の策定を義務づけるとさせていただきまして,全国で約1万2,000社の企業が対象になります。また,中小企業についても,努力義務を課し,極力,つくっていただくようにお願いしております。
あわせて,事業主の認定制度を設けまして,いわば
子育て支援版のISOと称しております。すぐれた計画をつくり,それを成し遂げた企業が認定されますと,認定を受けた企業は自社の広告や職安の求人票に認定マークをつけることができる制度であります。これは,今,女性を初め,若い人たちには,ファミリーフレンドリーな企業で働きたいという希望を持つ人がだんだんふえてきました。これからさらにふえてくると思いますので,若い人材がそうした企業に集まる環境をつくることをねらいとしております。
あわせて,特定事業主の行動計画ということで,これは主に人事課がつくる計画になりますが,国や自治体の機関でも特定事業主の計画を策定していただき,公表まで義務づけさせていただいております。私ども
厚生労働省も,特定事業主計画をつくらなければなりません。国会の参議院,衆議院事務局も,最高裁判所でもつくるということで,札幌市あるいは都道府県でもそれぞれつくっていただくことになります。
これが
次世代育成支援対策推進法の枠組みでして,これに沿って16年度末に向けて47都道府県,3,200の市町村,そして1万2,000を超える企業での行動計画づくりが一斉に進められ,17年度からその
取り組みがスタートいたします。また,各市町村でこの計画をつくっていただくに当たって,先行的に計画をつくっていただくことが必要ではないかと考えて募集をしましたところ,札幌市にも手を挙げていただきましたが,全国53の市町村では今年度末までに計画素案までつくっていただく
取り組みを今お願いしております。
あわせて,今回,
児童福祉法の一部を改正する法律を提出させていただきました。
32ページをごらんいただきますと,左側に背景と趣旨が書かれております。先ほど言いましたように,子育ての負担感は専業主婦の方が高い中で,
子育て支援事業は十分ではないということであります。これは,各市町村の責任だけではなく,私ども国にも責任があります。これまでの
児童福祉法は,どちらかというと被虐待児の問題とか保育所の問題はしっかり書いてありましたけれども,すべての子育て家庭の支援についてはしっかり書かれていなかったので,すべての子育て家庭の支援をする
児童福祉法に改めるというのが今回のコンセプトであります。そのために何をしたかといいますと,地域における
子育て支援事業を法律に位置づけ,市町村の責務として推進していただくということであります。
さらに,
子育て支援事業として3類型を位置づけました。一つが子育て相談支援で,地域の
子育て支援センターやつどいの広場がこれに該当します。それから,子育て短期預かり支援は,一時保育とか病後児保育,あるいは放課後児童クラブとか,さまざまなものが当てはまります。それから,居宅に赴いての
子育て支援ですが,出産直後のようなケースの支援とか,なかなか外に出ないで引きこもっている家庭への支援は虐待防止の上でも大切であります。こうした3類型の事業を
子育て支援事業として位置づけ,各市町村で総合的な
取り組みをお願いしております。
こうしたことを
児童福祉法に盛り込んだことにより,先ほどの
次世代育成支援対策推進法の行動計画の中でも,地域の
子育て支援事業がしっかりと位置づけられて推進されることになると期待しております。あわせて,保育施策にありますように,待機児童が多い市区町村では,解消のための計画をつくっていただくことも規定させていただきました。
そうしたことでこれから各地域での行動計画づくりが進みますが,34ページには,8月に関係7大臣連名の告示としてつくった策定指針の概要をお配りしております。
35ページがいわば総論の部分でありまして,下の方に基本理念を掲げておりますが,
次世代育成支援対策推進法の中にもこの基本理念を位置づけさせていただいております。
次世代育成支援対策推進法を国会に提出するに当たって,また,提出した後も,国会を初め,いろいろなところからさまざまなご意見をいただきましたが,その意見の一つとして,こうした
子育て支援を充実すると,親をなまくらにするのではないかということがありました。私どもは,
子育て支援は決してそういうことであってはいけないと考えております。やはり,
お母さん方が本当に悩んでおられるときに身近なところで相談できる,あるいは,急病とか育児疲れのときに子供を気軽に預けられるようなことを
子育て支援としてやるのであって,それは親に育児力を身につけさせるものである,親の育児力を回復させるものである,ひいては,親子のきずなを深めるものだということを申し上げました。そうしたことで,子育ての意義についての理解が深められ,家族を実感し,喜びを実感する,そのようことに配慮して行われなくてはならないという形でこの法律の中にも規定させていただいております。
もう一方では,子供というのは,生まれたら社会の子供として育てるべきだ,親など関係ないというような極端な意見もありますが,やはり,子育てについては父母その他の保護者が第一義的な責任を持つのだということをここでもはっきりさせていただきました。これは,子どもの権利条約にも書いてありますが,やはり,一義的な責任は父母などが持つものであると思います。ただ,今の環境はなかなか第一義的な責任をしっかり果たしづらい環境になっているから,そこは,子育てしやすい
環境づくりを進めることにより,第一義的な責任をしっかり果たせるような状況にしていきたいということであります。そうしたことで,各党のご意見も踏まえながら,こうした基本理念を規定いたしました。
次に,36ページからは,市町村や都道府県の行動計画であります。
策定に当たっての基本的な視点として,子供の視点,それから地域特性の視点という八つの視点を掲げました。それから,手続ということでは,今年度中に各市町村で住民に対するニーズ調査を行っていただきたいということをお願いしております。策定の時期につきましては,5年を1期とした計画で前期計画と後期計画の二つをつくっていただきます。内容に関する事項については,先ほど当面の
取り組み方針の中で申し上げたので省略させていただきますが,最初の地域における
子育て支援から,37ページの母子保健の関係,教育環境の問題,生活環境の整備,そして,38ページの両立の推進,安全の問題,きめ細かな
取り組みの推進ということで7本の柱を掲げております。
これらは概要の資料でございますので,全体の本文は全部で50ページにわたるものであります。私どもは,国なりにこれからの各事業はどういうやり方が望ましいかということについて議論し,まとめさせていただいたものでありますが,当然,これは必ずしもすべての市町村に当てはまるものではないと思っております。この指針に照らして,自分のところではどういう
取り組みが必要なのかということを点検していただく材料として活用していただき,各自治体の総合的な計画の策定をお願いしたいと思っております。
39ページからは一般事業主の関係,41ページからは特定事業主の関係ですが,説明は省略させていただきます。
次に,42ページでございますが,今申しましたように,各自治体の計画は,総合的な計画にすることと同時に,具体的な計画にしていただくことが必要だろうと思っております。そのため,私どもは,各市町村に,そこにあります特定14事業について具体的な数値目標を定めていただきたいとお願いしております。国では,今,新エンゼルプランを策定しておりますが,これが平成16年度末で終わることになっております。したがって,17年度から新しい国のプランをつくらなくてはなりませんが,今度の新しいプランは,各地域の計画を積み上げたものが新しいプランになる形にぜひしていきたいと考えております。そうしたことから,特に,こうした14の事業につきましては数値目標を掲げていただきたいとお願いしております。また,これに限らず,各自治体では,それぞれの地域の実情を踏まえた具体的な数値を入れたり,さまざまな
取り組みを進めていただくことをぜひお願いしたいと思います。
43ページには,そうした中で
子育て支援として何が必要かということでの事業メニューを体系的に示したものもお配りしておりますので,参考にしていただければと思います。
最後に,少子化社会対策基本法という法律が先般の通常国会で成立いたしました。これは,超党派の国会議員によって平成11年に提出された法律ですが,これまで審議が行われておりませんでした。今回,政府が
次世代育成支援対策推進法等を提出したことに合わせまして,この基本法も成立を図ろうということで審議が進められ,成立したものであります。
内容的には,まさしく基本法でありまして,第1の総則の3番目にありますように,政府においては,これから改めて施策の大綱をつくることにしておりまして,来年5月にはまとめる予定になっております。それから,第2に基本的施策と書いておりますが,それぞれの施策ごとの基本的な方向性が法律の中である程度具体的に規定されております。それから,第3にありますように,少子化社会対策会議が設置されます,これは,全閣僚がメンバーとなり,ここで議論されて大綱が策定されることになりますが,45ページにはその全体的な構成を書いております。
国の重要施策については,それぞれの分野ごとに基本法というものがありますけれども,今まで,少子化についてはそうした基本法がありませんでした。そうした中での基本法の成立というのは,やはり,立法府としても少子化問題は国の基本施策だということを改めて認識されたのだろうと思っております。こうした基本法が整備され,現場における具体的な
取り組みを進めるための
次世代育成支援対策推進法が整備され,そして,各個別の法案につきましてもこれから逐次見直しをやっていきますが,こうした新たな法的な枠組みの中で,私どもはもう一段の
取り組みをこれから進めていきたいと考えているところであります。
全国を見渡しますと,本当は子供が欲しい,あるいは,本当はもう一人子供が欲しいと思いながらも,大きな負担感の前に立ちどまっている方がたくさんいらっしゃいます。そうした人たちのために,また,すべての子供たちのために,私どもは各自治体の皆さんと一緒にこれからさらに
取り組みを進めていきたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
○
勝木勇人 委員長 吉岡さん,ありがとうございました。
次に,NPO法人北海道
子育て支援ワーカーズ代表理事の
長谷川敦子さんにお話をいただきます。
長谷川さんは,札幌市立幼稚園の教諭,札幌市立幼稚園の新規採用教員研修指導員を経て,平成7年に
子育て支援ワーカーズプチトマト設立に参加され,代表を務められました。その後,平成14年にはNPO法人北海道
子育て支援ワーカーズ理事,15年度からは同法人の代表理事として各種の
子育て支援事業に参加されております。
ご自身が代表理事を務められているNPO法人北海道
子育て支援ワーカーズは,親子が気軽に集える広場の提供活動,子育てに関する情報交流活動,各種の保育事業等を主な事業としておられるそうでございます。
それでは,長谷川さん,よろしくお願いいたします。
◎長谷川 参考人 初めてこういう場に来ましたので,なれませんが,いろいろお話しさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
ただいま委員長から紹介していただきましたように,NPO法人北海道
子育て支援ワーカーズは,先般お配りしましたリーフレットにも書いてありますように,設立からまだ2年しかたっていない新しい団体です。しかし,これを構成しております4団体は,一番古いところではもう18年,新しいところでも9年間,まだ
子育て支援という言葉が社会の中に余りなかったときから,地域の中で子育てを応援し,サポートをしてまいりました。
自分自身が子育ての中でいろいろぶつかったり悩んだことを,自分よりちょっと若い
お母さんたちに味あわせたくないというか,助けるというより,自分と同じ立場なのだけれども,応援したいなという思いで始めたことが,もう20年近くたち,こういう形になっております。各構成団体では,主に地域の中で出張保育をしておりまして,地域の中の
お母さんたちの実際の姿,子供たちの姿を見ています。きょうは,日ごろの実践から見えてきたことをお話ししたいなと思ってまいりました。
先ほど,女性が働くこと,社会進出することと出生率の関係が正の関係にあるというお話がありましたが,札幌市は,それを考えると本当に大変厳しい条件にあるまちです。専業主婦が大変多いまちです。そして,核家族も多いまちです。転勤族も多いまちです。そういう中で,今,就学前の子供たちの80%が専業主婦と呼ばれている
お母さんたちが育てている,そういうまちです。先ほど言った正の
相関関係をこれから目指していくためには,女性も働きやすいまちをつくっていかなければいけないということであると思いますが,実際問題としても,まず,80%の専業主婦が子育てを担っているところを考えて,札幌市の政策を考えていくことが大変大事なことではないかと思っております。
それで,その80%が,保育園に通っている親よりも,負担感や不安感や閉塞感の中で子育てをしていることに対して,なぜかなというふうに思われる方もたくさんいると思います。まず,
お母さんたちは大変孤独なのです。自分もそうだったからよくわかりますが,地域の中で子育て仲間に会うというのは,子供がもう少し大きくならないとなかなか会えません。昔は,結婚と同時に地域の中で暮らし始めることが結構あったのですが,私も,仕事をしているときには地域の中に人間関係はありません。職場に行って,帰ってきて,寝るという生活をする。そして,子供ができて,初めて地域の中に自分の居場所をつくっていかなければならない。転勤族の方も同じだと思いますけれども,そういう中で,なかなか頼る人に出会えない,友達に出会えないという問題があると思います。
保育園に行っている方が,余りというか,半分ぐらいはいろいろな心配はもちろんありますが,どうして思わないかというと,身近なところで,毎日,保育士の先生に会えるのです。ちょっと心配なことがあっても,朝,子供を預けに行ったとき,迎えに行ったときにちょっと先生に話を聞いてもらえる。それから,仲間の
お母さんと話をすることができる。そういう中で,保育園に行き,大変な中で子育てをしながらも,2人目,3人目と思えるのは,ひとりで子育てしていると思わなかったからだというふうに皆さんはおっしゃいます。つまり,現実的には,専業主婦の人はどうしても一人で担うという気持ちになりやすいということがあると思います。
そういう80%の
お母さんたちのすべてではないかもしれませんが,閉塞感や不安感や負担感の中で子育てをしているということは,子供たちも同じ状況の中で生活をしているということです。
お母さんたちが閉塞しているということは,子供ももちろん閉塞した中で生活しています。
子育て支援を考えるときに,やはり,子供がどうなのかを一番考えなければいけないと思うのですが,子供は,自分で移動したり,自分で友達をつくったりできるのはもっと大きくなってからで,生まれたばかりの子供たち,ゼロ歳,1歳,2歳,3歳の子供たちは自分ではそういうことはできません。つまり,親が開かれた場所にいなければ,子供もそういうところに出会えない。そういうことから,やはり今,札幌市の中で80%いる専業主婦の人たちが元気に子育てができるまちをつくっていかなければ,魅力ある札幌にはならないのではないかなと思っています。
NPO法人北海道
子育て支援ワーカーズでは,昨年,数は大変少ないですが,1,000人の方にアンケートをとらせていただきました。700ぐらい戻ってきたのですが,その中では,やはり親子が過ごす場を求めている声がたくさんありました。その中で
お母さんたちが一番出かけているところが公園とスーパーと児童館の三つです。札幌の特殊事情から言いますと,冬場は公園がなくなって,雪捨て場になります。雪捨て場になっていない公園でも,ゼロ歳,1歳,2歳ぐらいの幼い子供が,長い時間,厳しい冬の公園で過ごすのは難しいということになりますと,行く場所はスーパーと児童館になります。あとは,お友達の家に行って遊ぶことになるのですが,そういう人間関係がつくれない人にとっては,本当に昼間はどこも行くところがなく,閉ざされた中で子育てをしている人がたくさんいます。
そこら辺は,転勤してきた方もおっしゃいます。外を歩くのが大変なのです。私はずっと北海道で育った人間なので大して思いませんが,転勤してきた方は,自分が歩くのさえ精いっぱいなのに,どうしてこの幼子を連れて遠くに出かけられるでしょうとおっしゃいます。自分も初めて迎える冬という中で不安がどんどん募っていってしまう,ブルーになってしまうということが
お母さんたちの話の中でよく聞こえます。そういう中で,国の中でも今一番の重点的な政策として,先ほど吉岡さんからお話がありましたつどいの広場事業が出てきていると思います。
皆さんは,つどいの広場という言葉をどのようなイメージをもってお聞きになるでしょうか。札幌市では,子育てサロンということで,児童会館で,毎週1回,1時間半,開催されていますが,これは,子供と
お母さんが一緒に行って過ごすもので,子供たちにも親たちにも大変大事な事業だと思います。また,それを利用して大変よかったという声も聞こえてきます。
ただ,本来的に言えば,つどいの広場は,私たちは常設であると考えております。つまり,いつでも,行きたいと思うときに行けるということです。毎週何曜日と決まってその日だけ落ち込んでいるわけではないですし,その日だけ閉塞感を持っているのではありません。ですから,行きたいな,きょうはちょっとしんどいな,だれかに会いたいなというふうに思ったときには,まず行けることがつどいの広場の最大のポイントだと私たちは思っております。
それから,時間についても,午前中だけというくくりではなく,もっと長い時間やっているということが必要だと思います。午前中の1時間半というくくりで毎日ということもあるかもしれませんが,こうしたくくりは,子育てしている人にとっては非常に厳しいものであります。特に,ゼロ歳,1歳ぐらいの子供たちは,昼寝と言うとおかしいですが,午前中にも寝る時間が1回あります。そうすると,サロンには非常に行きづらい。10時とか10時半に寝て,起きる時間が11時,11時半だったら,もうその日は行けません。でも,子供の生活のリズムとしてそういうことは普通にあります。
もう一つは,先ほど父親の帰宅時間が遅くなっているということもありましたが,子供の生活時間が夜の方に遅く動いておりまして,朝,起きる時間も遅い。これは,成長ホルモンなどいろいろな面からもいいことではないのですが,でも,父親と触れ合うことでそういう時間帯になっている家庭もたくさんありますので,それは企業の方にだんだん是正していただくとして,現実はそうなのです。そうすると,10時にその場所に行くということが逆にストレスになってしまいます。それに間に合わせて行くことが,子供をしかりつけて出かけなければならないことになっていくことがありまして,ぜひもっと長い時間やることが大事なのではないかと思います。そうしたつどいの広場を,遊び場所を提供している児童会館での子育てサロンとは別に,それはそれとして続けながら,もう少し違う形のつどいの広場事業にも札幌市としてぜひ取り組んでいただきたいと考えています。
それでは,その広場では実際に何をするのだろうということですが,基本的にはノープログラムと言われています。何かをするということを主催者が提供するのではなく,そこに来る人が,そこで自分の時間をつくっていくことを考えているプログラムです。これは,いわゆる予防型と言われていますが,引きこもりや虐待を予防する意味で大変有効な事業ではないかと思います。そこには,子育てを経験したスタッフがいて,でも,それは,指導するのではなく,
お母さんたちと同じ目線に立ってサポートしていくことを基本に考えていきたいというふうに思います。
そこで何ができるかというと,親が親として育っていくことができるわけです。だれかに助けてもらって子育てはできません。やはり,親が家庭で育てなければならないところがいっぱいありますから,親自身が力をつけていかなければ,幾ら社会が
子育て支援をしていっても難しいことがいっぱいあると思います。こうした親を育てていくというプログラムは,昔は確かに地域の中にあったと思いますが,今は地域の中にありません。例えば,私のような世代の人はほとんど地域にいないのです。なぜかというと,北海道の場合は,一度退職しますが,また働き出します。それは,働かざるを得ないというか,教育費のためにということもあります。本当に専業主婦が多いまちですが,子供がある程度の年になると働く人もまた多くなるまちではないかというふうに私は実感します。だから,私も今はほとんど地域におりません。そうすると,
お母さんたちにとっては,そういう広場みたいな仕組みをつくっていかなければ,身近なところで助けてくれる人になかなか出会えなくなるというふうに思います。そういう中で,
お母さんたちが自分で力をつけ,また友達に出会い,そこには高齢者の方も集うし,いろいろな方たちが集う中で地域をつくっていくことができると思います。ですから,常設ということが大変大事になってくるのではないかなと思います。
それから,子供たちがそこでいろいろな人に出会うことも大変大事なことだと思います。いろいろな子供に出会う,いろいろな
お母さんに出会う,いろいろな人に出会うということが,今,余りにも少な過ぎます。
今,心配の時代と言われております,子育ては,不安ということではありません,心配なのです。心配で心配でたまらない。自分の子供を育てることに,
お母さんたちはとても心配なのです。だから,そこでいろいろな子供がいるということに出会うことが大事だし,いろいろな子供と子供が触れ合う中で育っていくと実感することも大事だと思います。閉塞感の中では,どんどん心配がたまっていってしまうと思います。
そこで,私たちがやっているつどいの広場事業について具体的に説明いたします。
事前に資料をお配りしましたけれども,私たちも常設でやりたいと思っておりますが,実際には,財源もありませんし,力もないということで,現在,構成団体が四つありますので,市内4カ所でとんとんひろばというつどいの広場事業もどきのようなことをやっております。
ここで,私たちが一番大事にしているのは,長い時間やるということです。常設ができないならば,せめて長い時間やろうということで,10時から2時までやっております。これで十分だとは決して思っておりませんが,私たちのできる精いっぱいのこととしてこのような形をとっております。
これは,実は,昨年度,社会福祉・医療事業団の方から支援をいただきまして,市内で1カ所,北区の方でやっていた事業でしたけれども,助成金はもうなくなりましたが,やはり大切だということで,自分たちの力で何とかやってみようと思って始めたことです。麻生は独自な事業としても前年度からやっておりましたので4月からスタートしておりますが,ほかの3カ所は6月スタートしております。その結果について,9月までしか集まっていなかったのでちょっと中途半端ですが,表にして持ってきましたけれども,これを見て皆さんはどういうふうにお感じになるでしょうか。
サロンは,もっとたくさんの方が参加されています。60組,70組という参加人数だと聞いております。60組,70組の中に出て行ける元気な方もおりますが,そういう中には出ていけない,小さい子はもっとゆっくりした空間が必要というようなこともありまして,このような数の人が参加してくれています。
典型的な二つの会場のことを具体的にお話ししたいのですが,大谷地というところです。4ページ全部をめくっていただくとよくわかると思いますが,参加する子供たちが大変多いところで,ゼロ歳児,1歳児と,本当に典型的な広場の形です。ここは,中学校区の一つに児童会館がありますが,多分こういうふうな形で,空白ではないのですが,児童会館と児童会館の間で,どちらに行くにも遠い。Aの児童会館も遠い,Bの児童会館も遠いところで,本当に行く場所のない子供たちがたくさん住んでいる場所です。そういうところではこれだけの参加人数があります。ですから,週1回でも構いませんが,こうやって空白区を埋めていくことは大変大事なことだと思うのです。
その隣に麻生とありますが,
年齢構成を見ていただくと,隣とは若干違っております。ここは,2年前から始めたこともありますが,市立の新琴似保育園が乳児のための保育サポートといいますか,広場事業をやっております。たしか週に3回やっていると思いますが,つまり,麻生のすぐ近くでそういうところが無料でやっているのです。そうすると,その子供たちは多分そこにも行けるので,わざわざ有料のここに来ることもないのかなというふうにも思うのです。2歳,3歳の子供たちが70人というように,とても子供たちが集まるサロンの場所ですから,そういうところになかなか入れない子供や
お母さんたちがいて,そういう子供たちが2歳,3歳になってこちらの広場の方に来ているというふうにも考えられるのではないかと思うのです。
だから,市内の中学校区に一つ児童会館があって,そこでサロンをやっているから十分だということは決してないと思います。空白区もありますし,実際にサロンをやっていても,麻生児童会館と同じ建物の中に麻生の地区センターがあって,複合館なのです。同じ場所で水曜日に子育てサロンをやっているのです。そして,このとんとんひろばは火曜日にやっているのでが,有料でもこれだけ人が集まってきます。ですから,本当にたくさん必要だし,長い時間やっていることが必要だということが,私たちのつたない実践からも読み取っていただけるのではないかなと思います。
このような中で,広場参加者の声ということで,
お母さんたちからお聞きした声を幾つかまとめてまいりました。
私も専業主婦の時代がありましたので大変よくわかりますが,自分たちが思っていることを伝える機会がとても少ないのです。例えば,保育園に行っている方だったら,保育園の園長先生とか保育園連合会とかという方が,こういう場所で,今,保育園はこんなに大変なのです,働いている
お母さんもお父さんもみんな大変なのですという話をしてくださいます。幼稚園もそうだし,小学校もそうだし,中学校もそうです。
しかし,今,80%の人が専業主婦で家庭で子育てをやっていますが,社会的にどこにも所属していない人たちの声はなかなか届けることができません。今までの仕組みの中では難しいし,また,そういう訓練も受けていません。小さいお子さんを育てている方はとても若い方たちで,そうした社会的なすべも知らないし,訓練も受けていなくて,私たちが少しでもそういうことの橋渡しができればいいかなと思って活動をしている中で出てきたのがこの声です。ぜひ,生の声として,議員の皆さんに読んでいただきたいなと思いますが,小さい子供を連れた親がどういうことを求めているか,これを読んでいただくと大変よくわかるのではないかと思うのです。
それから,2人目のお子さんを連れた方が私たちのやっている広場によくいらっしゃいます。というのは,やはり,広い場所で2人の子供を見るのがとても難しいので,小じんまりしたサロンにいらっしゃるわけです。だから,いろいろな場所が必要なのではないかと思います。体がたくさん動くようになって広い場所で遊びたい子供もいれば,じっくりと遊びたい子供も親もいます。だから,一つつくればいい,一つの形でつくればいいというものではなく,いろいろな形の徒歩圏内で行ける広場をたくさんつくっていただくことが国の言っている広場事業だと思いますし,私たちが
お母さんたちを見ながら,また,自分が子育てをやった経験からそういうふうに思っています。
広場事業についてはそのようなことですが,言葉足らずのところもあると思いますので,また後で質問していただけたらお答えしたいと思います。
もう一つつけ加えて,ファミリー・サポートについても若干お話ししたいと思うのですが,ファミリー・サポート事業も,札幌市の
子育て支援の中では大きな柱としてやられていると思います。これは,一時的に子供を預かるという事業ですが,昨年1年間で4,000時間弱と聞いております。私たちは,先ほど主に出張保育をやっていますとお話ししましたが,四つの各構成団体で大体50人のメンバーがいる中で,昨年は1万時間の出張託児をさせていただいております。
この数字の差はいろいろな意味があると思いますが,
お母さんたちはいつでも自分が助けてほしいときに助けてもらえるのだという安心感を求めています。それで,先ほど言いましたアンケートの中で,1時間700円のファミリー・サポートは,専業主婦にとっては大変高いとおっしゃっています。それから,就業している方,有職というか,両働きという方たちにとっては,急なときに大変使い勝手が悪いとお聞きしております。つまり,経済的には利用できるけれども,利用勝手は悪い。片方では,利用勝手の方は,多分,少し余裕がある中で自分の都合に合わせてお願いしますから何とかなるけれども,保育料は高いとおっしゃいます。私たちは,1時間1,000円という金額で出張していますが,事業としてやっておりますので,急なものにも対応できるし,無理にも対応しています。けれども,仕事してやると,やはりそれ以下の金額ではできないわけです。
だから,地域の中で子育てを支えるということは,有償ボランティアの事業と,市民事業と言われている事業をうまく組み合わせた新しい札幌型のファミリーサポート事業みたいなものを考えていただきたいと思います。そして,
お母さん方が,専業であっても,働いていても,どんな方でも,本当に必要だな,ちょっと助けてほしいなというときに,地域の中に何か助けのすべを用意しておく,そういう政策をぜひ考えていただけだからいいのではないかなと思います。これは,核家族や転勤族が多い札幌のまちには大事なことではないかなというふうに思います。
私は,
子育て支援というのは,やはり子育ち支援なのではないかなと思います。子供が健やかに育っていくためには,親も元気でなければいけないし,社会も元気でなければいけないというふうに思います。
また,未婚率が高いということが少子化のもう一つの原因だというお話は,先ほどもありましたし,よく聞きます。日本では結婚しないで子供を産むことは余りないですが,パートナーがいないというわけではなく,シングルであってもパートナーがいる人はいます。ただ,シングルというのは,子供を産まない人生を選択した人がどんどんふえてきているということだと思います。産む産まないは最終的には個人の問題だと思いますが,やはり,私たちが子育てをしている今の方たちの様子を見ている中でとても気になるのは,閉塞感とか負担感がどんどん強くなって,そして,その中で子供が育っているということです。パラサイトシングルとか,親も子離れできず,子供も親離れできずみたいなことの根本の問題は,いろいろなことがあると思うのですが,小さいとき,幼いときからの育ちというか,生まれ育っていく環境にも若干つながっているのではないかなと思います。
それで,親子2人,特に母親と2人で過ごす時間が多いとか,母親も自分の能力をいろいろなことでもっと生かせる場があるのではないかと思いながらも,家庭にいて,子供と向き合うだけの時間しかない自分を発見し,そして,あり余るエネルギーをすべて子供に重ねていく,また,自分の価値,自分の評価は子供がどう育っているかということでなされると錯覚してしまう問題もあると思います。それから,父親が全く家庭にいないとは思いませんが,なかなか子育てに参加できず,子供が父親の姿を見ないで育っていくような中で,子供が健やかな育ちを保障されているのかなということも心配になります。
やはり,豊かな育ちというのは何なのか,とても抽象的でわかりづらいと思うのですが,まず,自分を大切に思わなければだめだと思います。今,自制心とよく言われていますが,相手を大切にすることは,まず自分が大切だと思わないと相手のことも大切にできないというふうに思うのです。やはり,たくさんの人に愛されている実感を子供が持っていく中で育っていくことが大事だと思います。家族とか血縁関係の中でしか大事にされなかったというのではなく,本当に子供たちが小さなときから地域の人,周りの人に出会って,触れて,大事にされて,そして,自分が少し大きくなったときに地域の子供たちを見て,またそれを大切だと思い,自分もそこで大切だと思われて育っていることを実感する,そういう社会の仕組みが豊かな育ちを保障していくのではないかなと思います。だから,私たち大人は,子供がたくさんの人の中で育っていく環境をどうやってつくっていくか,そういうことをもっともっと考えていかなければいけないのではないかなというふうに思います。家庭も社会の中の一つの単位ですから,やはり,社会がもっと元気に子育てができるようになっていって,子供たちも健やかに,そして,20年後,30年後にその人たちが親になるという選択ができるようなまちに札幌市がなってほしいなと思っています。
○
勝木勇人 委員長 長谷川さん,ありがとうございました。
それでは,委員からの質問をお受けいたします。
この場合,質問する方のご氏名を特定してお願いいたします。
◆小田信孝 委員 きょうは,企画室長の吉岡さんに来ていただきまして,私からも御礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。
今,
小泉総理から各省庁に対して,財源の削減,予算の削減の大なたを振るわれまして,
厚生労働省も相当な金額の削減が言われて,金額も新聞報道などでだんだん明らかになってきております。
そういう中で,私どもは心配事が一つございまして,それは生活保護の削減なのです。これは吉岡室長さんの担当ではございませんので,ちょっとここで質問するのは私も気が引けるのですが,本庁に帰ったときにいろいろな会議があると思いますので,ぜひお訴えいただきたいのです。実は,札幌市は,従来から離婚率が結構高いのです。特に,若い
お母さん,30代の
お母さんが,子育てをしながらパートで働き,足りないところを生活保護を受けている方も結構いらっしゃいます。この辺の視点は,今回の次世代の法案に関するきょうの説明の中でも触れておられませんでした。これは別問題だというふうにとらえていらっしゃるのだと思いますが,これは,札幌の特徴として重大な視点の一つになっておりますので,ぜひ室長さんのご意見をいただきながら,今後,削減については相当に頑張っていただきたいなと。陳情みたいな質問で恐縮でございますが,一言,お話がございましたらお願いしたいと思います。
◎吉岡 参考人 今ご質問をいただきました三位一体の改革については,私どもも大変苦慮している状況であります。実は,きょう,総理裁定が出される予定でありまして,最終的に決着すると思っておりますが,非常に多額な額を私ども
厚生労働省に求められておりますから,今,いろいろな方々の声を聞いて省としての対応を進めております。
ご指摘の生活保護のことも,一つ,やはり対応していかないと私たちの宿題をなかなかこなせない状況になっているのも事実であります。生活保護の状況を見てみますと,私は直接の担当ではございませんが,各自治体の
取り組みによって,保護率が非常に低下した,あるいは,増加したということが非常に見られているのも事実です。職員がしっかりと対応して保護率がかなり改善したところもありますし,大阪市のように逆に急激に上昇しているようなところもあって,かなり自治体の裁量の余地が大きいことも事実だと思います。それからまた,いろいろな雇用対策,あるいは地域の振興を進めることによって生活保護の改善につながる要素もあるのではないかなと思います。いずれにしても,そこは各自治体の
皆さん方にご理解をいただく中で対応していかなければいけないと思っております。そうした中で,きょうの総理の裁定でどうなるか,私どもも非常に注目をしているところであります。
また,特に離婚率が高いというお話がございました。今まで,母子家庭の問題は,どちらかというと児童扶養手当という経済的な支援を中心にやっていましたが,本質的な話としては経済的な支援だけではないだろう,まずは働く場をどうつくるかが大事だというふうに思います。それから,離婚した後の養育費の問題ですが,ほとんど払われていない状況もありまして,養育費をちゃんと取れる仕組みをつくることもあります。そういうことで,我々は,昨年度に,今まで児童扶養手当一本やりで来た政策を転換することにしまして,働く場をしっかりつくっていく,それから,地域の子育てサービス,
子育て支援事業を母子家庭のためにしっかりやっていく,さらに,養育費の問題についても対応していくという総合的な
取り組みをやろうということで法律改正をしましたので,これにつきましても各自治体で法律に基づいた計画をつくっていただく枠組みができております。
きょうは母子家庭の問題の説明を十分できませんでしたけれども,今回の
次世代育成支援対策推進法の計画の中でも,母子家庭の方で別個に計画をつくられるというのであればそれでも結構かと思いますし,一体のものとして今回の
次世代育成支援対策法に基づく計画をつくるのであれば,自治体のそれぞれの条件に応じてそうした
取り組みもできるようにしておりますので,当然,そういう母子家庭の状況も視野に入れた全体としての行政の推進をぜひお願いしたいと思っております。私どもは,決して最初から別のものと考えているわけではございません。
◆柴田薫心 委員 ちょっと的を射ない質問になるかもわかりませんが,勉強不足のお許しをいただきたいと先に断っておきます。
きょう,いろいろな勉強をさせていただきまして,特にこの
次世代育成支援対策推進法は,非常にいい施策がなされていると感心して聞いておりました。
そこで,問題なのは,これは
厚生労働省関係から出ている一つの施策でないかと思うのですが,今,世の中の流れは幼保一元化で進んでいるように僕は思っております。そういう中で,文部科学省関係から,これらの策定に当たってのコミュニケーションというのでしょうか,政策会というのでしょうか,勉強会というのでしょうか,よくわかりませんが,そういうものが行われて,こういう方向に進んできたのかなということがわからないものですから,そういうことを一つお聞かせいただきたい。
この中にいろいろ出ておりますが,僕は,幼稚園という言葉を探したら2カ所しかありません。1カ所は,
保育サービスの充実の放課後児童クラブという中に載っています。25ページに,「幼稚園等の活用も含めた」とあります。幼稚園等の活用も含めたということは,これは
厚生労働省の方からの言葉であって,文部科学省の方からはこういう言葉は出ないのではないかなと思っております。
それから,よくできておりますけれども,特定14事業の中には入っていない。入っているのは,放課後児童健全育成事業,括弧して放課後児童クラブと入っています。同じ児童クラブという名前です。それから,その他の事業の中に,幼稚園における預かり保育という言葉が出てきますが,これだけなのですよ。
そういう中にあって,これからの文部科学省と
厚生労働省との関係,そして我々地方がそれをどのように理解して幼児教育とか保育事業を進めていっていいのか,幼保の一元化の関係をお知らせいただきたい。
もう一つ加えると,特区というのがあります。特区というのは,北海道は東川町にあって見てきましたけれども,10億のお金をかけて,幼保一元化ですべてが一つになってやっております。そういうことは,手を挙げたところには許可するけれども,手を挙げない札幌にはまだ許可をしないのか,そういうことを含めてお知らせいただきたいと思います。
◎吉岡 参考人 今ご質問いただきました文部科学省との関係につきまして,幼保一元化をめぐる問題,あるいは,今回の
次世代育成支援対策推進法の問題でも,いろいろな形で議論させていただいて,私どもは非常にいい関係でやっていると思っております。それで,今回の
次世代育成支援対策推進法も,私ども
厚生労働省だけではなく,7省庁共管の法律としてやらせていただき,今回の指針も7省庁の共同告示でやらせていただいております。指摘の中で,例えば,今回,行動計画の策定指針を先ほどご説明しましたが,37ページの三つ目の柱で教育環境の整備を設けていますけれども,こうしたところはほぼすべて文部科学省の関係の
取り組みになっております。
それから,幼稚園の活用も含めた放課後児童クラブもありましたけれども,今,地域で取り組むときに,児童館あるいは学校を活用するのが一般的な放課後児童クラブのやり方ですが,それだけではなく,そうした場所がないところは幼稚園を活用してやる方策もあることを強調したいがために,幼稚園の活用も含めたという表現を用いております。
それから,特定14事業は基本的に
厚生労働省だけではないかというお話がございました。実は,こうした具体的な数値目標を掲げて報告をお願いする事業につきまして,私どもは,取りまとめる立場として,各省庁でもぜひ上げてもらいたいとお願いをしました。しかし,各省庁のほかの事業は,具体的な数値目標を掲げるところまで,なかなか追いついていかなかったのが正直なところであります。ただ,これは,地域で一番求められている分野はやはりこうした14事業にあるのではなかろうか,そういう状況にあるとも思っております。
もう一つは,幼保一元化についての問題であります。私どもは,単純な幼保一元化というのは,子供の幸せの観点から決していいことではないと思っております。今,幼稚園と保育園は,ある意味でさらに機能が分かれている部分があると思います。働き方が非常に多様になってきている中で,保育園は,究極的に言えば,24時間,子供を預かれるような施設になっていくことが求められています。その一方で,幼稚園というのはどうしても教育施設です。預かり保育ということを言われている幼稚園もありますが,せいぜい夕方までです。そうすると,非常に機能が分かれていて,地域の人たちにすれば,幼稚園もあり保育園もあり,いろいろな子育てサービスがあり,それを選択できる環境をつくることが一番いいのではないかと思っております。
ただ,そうは言っても,小さな町村,あるいは,大都市部で子供がいなくなっているところで,幼稚園と保育園の両方を改築しなければいけないとなると,やはりコスト面からいって問題があります。そうしたところは,特区として,一緒につくることもできる,合同保育を認めるという措置を講じさせていただきました。
それから,規制改革の流れの一つとして,新たに幼稚園と保育所の機能をあわせ持った総合施設という類型をつくる,保育所,幼稚園以外に総合施設をつくることが,先般,最終的に決定されましたので,これから2年ほどかけて文部科学省と議論して新しい総合施設のあり方を考え,実現していきたいと思っております。
◆柴田薫心 委員 理解できるものは理解できました。
例えば,札幌の場合,待機児童ゼロということでどんどん進めています。一方,幼稚園は9割以上が私学でやってます。そして,待機ゼロですから,子供がいなくなって,幼稚園から保育園にどんどん流れていっている。そういうことは,やはり働く人の支援ですからやむを得ない流れではあるのですが,僕は,これからの少子化時代にあっては,その辺のバランスというのでしょうか,補助金も三位一体で削られてきている,文部科学省にも2,300億円のてこ入れが入りましたから,そうなってくると,同じように札幌にも影響してきます。そういう中で,私学は,何十年間,維持してきたわけですから,やはり文部科学省も
厚生労働省も全国的な視野の中でうまく研究,議論をしてほしいなと僕は思っております。
何かそういう方法がとれればいいのではないかと感じておりますが,今,ご返事はありませんけれども,何かあれば一言お知らせください。
◎吉岡 参考人 確かに,全国的に見ましても,数年前に保育所の入所者数が幼稚園の入園者数を上回った状況にありまして,これからも,こういう状況はさらに続いていくと思います。したがって,幼稚園の果たす役割として,非常に大事な場が幼稚園の空間にありますから,そこを大いに活用していただき,幼稚園を使って先ほど言ったさまざまな
子育て支援サービスをやることもぜひ地域で工夫していただければと思っております。私ども
厚生労働省の施策というのは,決して保育所などだけでやるものではないと思っておりますので,幼稚園の機能も使い,ぜひさまざまなサービスを地域で実現していただければということを文部科学省にもお話しさせていただき,関係団体でもぜひそういう
取り組みをやっていきたいと思います。
◆柴田薫心 委員 もう一点,希望だけ言っておきます。
そうであるならば,例えば放課後の幼稚園を使って,あるいは,学校の空き教室を使って,いろいろありますけれども,そういうときの預かり保育等々でクリアしていっているわけです。そのとき,幼稚園の場合は補助金が全然ないのです。一切,補助の対象になりません。例えば,幼保一元化といって,保育園を学校法人立でやっても補助金はないです。簡単に言うと,500万円ぐらいの金額がありますけれども,そういうような関係があります。
そういう意味では,少子化ということでは札幌は特に1.06という数字ですから,その辺も含めて,やはりご研究の中に一つ入れておいてほしいと要望して,終わります。
◆猪熊輝夫 委員 吉岡さんにご質問させていただきたいと思います。
まず,具体的な問題で,保育料金ですが,高い,低い,適当だと,全国的にはいろいろな意見があろうかと思います。この部分について,いわゆる子育て全体における保育料を将来はどういう形にしていこうとするのか,今回の計画でも何か意識された内容があるとすれば聞かせてもらいたい。
もう一つは,
育児休業です。ごく最近の北海道新聞などを見てみますと,4月の年度スタートのときに保育所のいわゆる措置が不可能な場合について,1年の
育児休業を1年半に延長するようなことも検討されているようです。
この場合,
育児休業を利用したときの有給休暇制度について,内部的な議論はどの程度されているのか。無給ではなく,7割とか8割の有給による
育児休業を含めて,7割か8割かは別にしても,その議論をされていれば聞かせてもらいたい。
それから,活字の中で,医療の充実という部分がありますが,いわゆる乳幼児の医療給付,無料化の問題は,国としてどの年齢ぐらいまで上げようとしているか,検討しているとすれば,具体的にどの程度の年齢まで想定して議論しているのか,あるいは,全く考えていませんというのか。
児童手当については,5,000円と1万円では低いというご指摘がありましたが,そちらの方で具体的に対応して,今言った三つの問題については遠い課題ということになるのかどうか,まず,これを聞かせてください。
◎吉岡 参考人 まず,保育料金のお話であります。
保育料金をもっと安くしてもらえないかというお話は,いろいろなところで,その都度,言われている話であります。私どもは,基本的な考え方として,やはりサービスを利用する人と利用しない人の公平ということを考えた場合には,やはり一定の対価をお支払いしていただくことは当然であろうと思っております。その際の料金の設定としては,やはり高齢者や障がい者に対するサービスもありますから,そういうサービス間のバランスを考えて設定しなければいけないと考えております。
ただ,その際,やはり過重な負担になってはいけませんので,所得水準ごとの保育料金という形で設定させていただいております。また,子供が2人,幼稚園に入れば,2人目は5割になる,3人目であれば9割安くなるといった制度も今備えていまして,これからも,そうした基本的な制度の考え方のもとにやっていかなければいけないだろうと思っております。ぼんと財源が出て,保育料金を安くできるというのであれば,それにこしたことはありませんが,なかなかそういう環境にない中で,基本的にはやはり適正な対価をいただく必要があるだろうと思っております。
二つ目は,
育児休業です。
今,労働政策審議会の方で最終的な議論が進められておりますが,私どもからのまとめ案としては,現行1年の
育児休業を1年半に延長する形で提案させていただいております。それは,1年の
育児休業が終わるのが例えば2月だったりすると,4月に保育所があくのにという状況に対応するためです。本当はもっと延長すべきではないかという意見もありましたが,経営者側と労働者側の両方の意見を調整する案として1年半という形にしております。
その際の
育児休業の給付ですが,今まで,1年間の
育児休業期間につきましては従前所得の4割が雇用保険から
育児休業給付として給付されておりました。それに加えて,社会保険料が免除されますので,実質的には5割から6割ぐらいの給付がなされている現状にあります。当然,今回,1年を1年半に延長いたしますので,私どもは,1年半を利用される人には,できれば
育児休業給付も1年半分が出るようにしたいと思っております。そこまで財源的な面での調整を今からしなければいけないと思っておりますので,引き続き,実現に向けて努力していきたいと思っております。
もう一つは,乳幼児医療の問題であります。
今,既にすべての自治体で何がしかの乳幼児の医療給付が行われていて,各自治体からは,かねてからぜひ補助制度をつくってほしいという要望をいただいておりました。私どもの基本的な考え方としては,全国のそれぞれの自治体でやられている中で,国の方で補助制度をつくっても,結局,それは財源振りかえで,国民の方々には何も届かない,そういうことにしかならないと考えております。そこで,そうした部分は各自治体の
皆さん方にお任せしながら,私どもは,例えば子供の難病とか,小児慢性特定疾患という制度がありますけれども,そういう難しい部分を国としてしっかり担わせていただきたいという考え方で今までやってきました。
ただ,そういう中でも何とかしてほしいというお話がございましたので,先般の医療保険改革で3割負担を導入したときに,逆に,子供については2割の給付にしたという措置も講じさせていただいております。実際には,それはまだまだ不十分ではないかというご意見もあろうかと思いますけれども,医療の問題はそうした考え方のもとに対応させていただいております。
◆猪熊輝夫 委員 医療給付の関係だけ,やはり不十分だということになるのではないかと思います。財源が振りかわるだけというのではなく,地方自治体ではさらに上乗せをするような形を含めて,具体的に生かしていくことができると受けとめていただければ,もう少し前向きな議論になるのかなと思いますから,ご検討いただければと思います。
さきの柴田委員から発言のあった幼保一元に関連してですが,
子育て支援という点で言うと,地域で子供さんと
お母さんが孤立をしていることが大きな課題となろうかと思います。今の状況は,幼稚園と保育園という形で分かれて,なおかつ,保育園はどちらかというと地域性が重んじられるような措置入所がされておりますが,幼稚園の場合はとりわけ広域に幼稚園児募集をされているために,子供と親が地域で孤立をしています。そして,薄いなりに,幼稚園や保育園がいろいろ分かれて地域に分散してそれぞれ施設を利用しております。
問題は,小学校単位でそのための何らかの受け皿があればなと。小学校1年になって地域に戻ったときの
お母さん方の状況を受けとめていただきたいと思います。子供を間に置きながら横の連携がとれて,初めて子育ての経験をする
お母さんと3人目の子育てをする
お母さんが情報交換をできるようになれば,
子育て支援事業という形の屋上屋的な施策は相当縮減できるのではないだろうかという思いがしてなりません。
そんな点で,僕は,小学校区単位を基本とすることと,また,決してそれがすべてうまくいくような分布にはなっていきませんから,それを基本に据えながら,さらに現状の部分も必要だと思います。今まさに少子社会ですから,戦後の大変な状況の中のいわゆる生活支援的な保育行政,あるいは,車社会における補完の場としての幼稚園という歴史的なものを踏まえながらも,もう一回,子供が一番少ない今の時点で考え直してみることがあっていいのではないかと思います。
いま一つは,先ほどの説明の中で,中学生や高校生は,子育てというか,低学年あるいは乳幼児との触れ合いにより,大人になっていく過程での心の動きが子供を持つ方向へ大きく作用する要因になるというようなお話をされました。僕が東京都のある施設などを視察させていただいたときに,学校の建物の中で複合施設の一翼として統合的にやっていらっしゃって,学童と乳幼児が交流をしているところがありました。
厚生労働省と文部科学省はまだ認めていらっしゃらないようですが,指導する保育士などは,そのことにとてもほほ笑ましく温かいものを感じていらっしゃいます。
そういう点を考えていったときに,小学校区単位を軸にして,中学校などにも併設をするようなことを含めた複合的な視点を,この時期にこそ,検討されていいのではないかと思います。そして,そのことは,必然的に一元的な発想になっていくのではないだろうか,一元化することが選択の幅を縮めるとか狭めることにはなっていかないと僕は思っております。統合的にやっていく中で,保育機能を重点に置いた部分と教育的な部分に重点を置いた幼稚園は時間帯などで操作し,入所という点でも,親が働いている働いていないということを含めて十分緩和し,子供と親が選択できるような状況をつくっていくと十分可能になると考えている者の一人なのです。
そういう点で,もう一回,再検討してもらいたいと思いますが,不十分な私の主張に対して,今の時点でどういうお考え方をお持ちですか。
◎吉岡 参考人 今のお話は,まさしくこれから総合施設のあり方というものを検討していかなければいけないということで,私は,単純に今までの幼稚園や保育園をやめて,幼保一元の施設しかないという世の中では余りにも寂しいのではないのかなということを申し上げているのであります。幼稚園もあり保育園もあり,そして新しい類型として総合施設ができる。だから,各地域でどれを整備されても結構だという社会が一番望ましいのではないのかなと思っております。総合施設のあり方は,これからまた文部科学省と詳細を調整していかなければいけませんので,今のようなお話も踏まえて,そのあり方をいろいろ検討していかなければいけないと思っております。
それから,子育てをしている家庭の孤立の問題が一番の基本になりますので,今おっしゃったような話につきましても,先ほど申し上げたつどいの広場というものが小学校区単位あるいは中学校区単位でできていくことが大事であろうと思っております。そういった場の持ち方は,商店街の空き店舗でもいいですし,極端に言えば幼稚園の中にあってもいいですし,いろいろな場所を有効に活用していただくことが大事だと思っております。その際の視点としては,学校と保育所や幼稚園の合築のような整備があります。これは,私どもの省の制度的には何の問題はありませんが,教育サイドの方で一定の問題があるのかもしれません。私どもは,そうしたこともぜひ進めていきたいなと思っているところであります。
同時に,子供だけ考えることもなくて,高齢者や障がい者と一緒の場をつくる
取り組みもあっていいと思うのです。私どもは,そういう規制はできるだけなくしていこうという方向で考えておりますので,今回,各自治体で行動計画をつくられるに当たって,こういう制度の見直しが必要だという声があれば,私どもも真摯に受けとめて,制度の改正についても考えていきたいと思っております。
◆猪熊輝夫 委員 今のお話で,受けとめていただいているかというか,これでなければいけない,これはだめだという議論ではないと理解しました。
そこで,小学校を中心にして,幼稚園でも保育園でも,とりわけ通学路という点で社会資本が相当に整備されているのは全国的にご理解いただけると思いますが,歩道などを含めて,このことを基本に据えて考えると,ひいては放課後事業などの問題についても連檐していくと僕は思っているのです。だから,全く場所がないとか確保が難しい場合に,児童館や公民館,商店街の空き店舗といったもの否定するものではありませんが,小学校というのは,通学路を含めて,社会的にも,そこにうまくクモの巣状態で向かっていけるような安全が確保されている場所です。そのようにとても充実した環境にある場所を有効に活用することは,地域的に容易に合意形成しやすいという押さえをしていいのではないだろうかと思います。
そこで,もう一つ,話は変わりますが,障がい児保育の関係です。障がい児について1項目のっておりましたけれども,混合保育の効果が相当なものであることは共通の認識に立っていただけると思います。しかし,小学校になったら養護学校や特殊学級へ無理やり分離させられて,中途半端な形でぷつんと切れてしまいます。その結果,大人になったときに,
社会参加,職場参加ということで,福祉的な視点で障がい者に対するいろいろな支援をせざるを得ない。そして,心のバリアを何とか取り除くために,
厚生労働省を中心に大変な努力をしています。
◎吉岡 参考人 通学路の問題も含めて,学校の活用は大事だと思っておりますので,私どもは,引き続き,文部科学省ともできるだけそういう
取り組みをやっていきたいと思っております。ただ,要は,学校の管理の問題で,各市町村の教育委員会,あるいは,学校長が決める問題だとなっているところで,まだまだ理解が得られていない部分があります。そこで,私どもは,非常に先駆的な事例を集めて,それを各地域にお届けすることでそういう
取り組みをできるだけ促していきたいと思っております。
もう一つは,混合保育の問題です。私どもは,障がい児保育を進めておりますが,文部科学省も,文部科学省なりに子供にとっての最適の教育とは何かという観点から今の制度があるのではないかなと思っております。これは,私どもとしては専門外の話でもありまして,文部科学省では,これから,教育基本法の問題とか,教育体制全般の議論をさらに進める予定になっておりますので,そうした中で改めて議論すべき話ではないかなと思っております。
◆福士勝 委員 それでは,吉岡さんに端的に質問させていただきます。
次世代育成支援対策推進法が制定されて,全国の自治体で行動計画が策定されることとなりましたが,問題は,この計画を策定することではなくて,それをいかに実行していくか,その実をとることだと思います。いずれにしても,それらの実現のために国の果たす役割は極めて大きいし,我々も期待をしております。
そこで,全国の自治体がこの計画を実行に移すのは平成17年以降ということになりますが,各自治体に対する国としての支援策などの予定についてお伺いをしたい。
もう一点は,
次世代育成支援対策推進法とともに
少子化対策基本法が制定されましたが,先ほど,
少子化対策会議が設置され,平成16年5月をめどに少子化のための施策の指針として大綱を策定するという説明がありました。そういう意味では,平成16年度中に全国の自治体が策定する行動計画にこれらの絡みが何か出てくるのかどうか,お伺いいたしたい。
◎吉岡 参考人 まず,1点目の行動計画は,全市町村,それから1万2,000人以上の企業で策定していただきますので,それを本当に実効性のある計画にしていただくことが大事だと思っております。単に枠組みをつくっただけでは何の意味もありませんので,まさしく実効性のある計画にしていただく,そのために私どもはいろいろな支援をやっていかなければならないと思っておりまして,計画をつくる段階で策定指針を既につくらせていただいたり,あるいは,詳細なマニュアルをつくらせていただいたり,あるいは,札幌市を初め53の市町村で先行的に計画をつくっていただくようにお願いしたとか,いろいろなことをやってまいりました。
ただ,最終的に実行する局面では,財源の問題が非常に大きな部分だと思っております。そのため,先ほども若干申し上げましたが,今,国の方で新エンゼルプランをつくっておりますが,これがちょうど16年度末で切れますので,これから17年度からの新しいプランをつくらなければいけません。したがって,17年度からは,国の新しいプランと各自治体の行動計画が一斉にスタートする形になります。私どもは,今度の新しいプランは,基本的に各自治体でニーズ調査をやり,行動計画をつくったものを全部まとめて国の新しいプランになるという環境をぜひつくりたいと思っております。そうすると,基本的には,各自治体が計画に基づいて取り組まれることは,国の一定の財政的な支援が得られる関係になりますので,そういった関係をぜひつくり上げていきたいと思っております。
二つ目は,基本法が成立しまして,来年5月までに政府の大綱をまとめることになりました。一方で,
次世代育成支援対策推進法では16年度末までに行動計画をつくっていただきますので,恐らく,5月にまとめる大綱の中では,各自治体や各企業のつくる行動計画の内容としてどういったことが求められるのかといった点について,改めて整理をしたものを掲げる必要があると思っております。
ちょうど,けさ,第1回目の大綱策定のための検討会が内閣府で行われておりますが,5人の大臣と8人の有識者による検討会がスタートしております。そのほか,中心となるのは,政府の大綱ですから,国の制度としてどうするかについて,もう一段,もう二段のことで何が言えるかが課題かなと思っております。そうしたことでこれから大綱の策定作業が進められますが,当然,各自治体の計画策定の
取り組みがしっかりと行われるような形のものをその中に盛り込んでいきたいし,また,自治体を支援できるものになればと思っているところです。
◆福士勝 委員 ありがとうございました。
今後,支援対策の関係で,子育てと仕事の両立の問題は私は極めて大きいと思っております。女性の方々の社会進出等々の関係でも,子育て環境の整備は大変重要になってくると認識しておりますし,先ほどのご説明でもるる出てきました。いずれにしても,
次世代育成支援対策推進法では,従業員が300人以上の企業には計画策定を義務づけ,300人未満は努力義務としています。また,自治体も300人以上の企業と同じように行動計画を策定しなければなりませんが,
子育て支援を社会全体で推進していくという意味では,第一歩を大きく踏み出したと思います。
そこで,国として,労働行政を持たない市町村に対して,企業に対するどのような
取り組みとか連携を期待しているのか,お伺いしたいと思います。
◎吉岡 参考人 今後の一つの大きな柱は,企業における働き方をどう変えられるかということであろうと思っておりますが,今回,すべての大企業で計画をつくっていただくのは,あらゆる行政分野にとって初めての試みでありましたので,この法律の決定までにはいろいろなご意見もありました。ただ,要は実効性のある計画を企業につくっていただかなければいけませんから,そのために
次世代育成支援対策推進センターという枠組みを法律の中に設けましたけれども,各経済団体にこのセンターになっていただきたいと考えております。各経済団体が,傘下の企業の計画づくりを支援する役割を担っていただきたいということで,これから具体的な協力を求めることにしております。
基本的には,企業の働き方の問題はこれまで各都道府県の労働局で行ってきまして,この計画づくりも労働局で対応する話でありますが,やはり,地域の企業を動かしていくためには,各自治体のご協力やご支援が非常に大事だと思っております。労働行政を直接的には担っていただいておりませんが,先ほど言いましたように,働き方の問題と地域の
子育て支援の問題は非常に密接に関係する問題でもありますので,ぜひ各自治体からも地域の企業に対して働き方を見直すことについての協力を要請していただいたり,さまざまな働きかけをやっていただくことは非常にためになるであろうと思っております。そのため,私どもでも,ポスターとか小冊子とか,創意工夫に富んだ啓発のためのいろいろな材料をこれからもつくっていきたいと思っております。そうしたものも活用しながら,ぜひ地域でも企業の働き方を変えることにご尽力いただければありがたいと思っております。
◆堀川素人 委員 僕の方から幾つか質問させていただきます。
まず,働いている人には有給休暇がありまして,今回,
育児休業が出てきました。日本は,有給休暇をとらなくても問題ないわけです。ところが,僕は,ドイツの友達から,とらなければ会社自体が罰せられるという話を聞きました。ですから,その担当の人は,ぜひとりなさい,とらなければだめですと言って勧める,ほとんど100%とっているのだと。しかし,日本の場合はそうではない。これに対して,
育児休業はぜひともとらせる形にできないのでしょうか。まず,それが1点です。
それから,日本の特殊出生率をここで保ちたいという目標数値はどこにあるのか。僕は,今まで7,000人万とか8,000万人まで下がるとは聞いておりましたが,きょう初めて人口が6,000万人まで下がることを聞きました。その中で,特殊出生率の目標数値があって,それを達成することによって,今世紀の中,そして今世紀末にはどのくらいの人口になることが望ましいと想定しているのか。
もう一つは,全体のことで考えると,
少子化対策といいますか,次世代対策といいますか,こういう中でたくさん語られるものが
次世代育成支援と言うなら,本当に特殊出生率を上げるためには,いつも一部の話になっているのかなと僕は感じるのです。要するに,子供を産む覚悟をして,産んで,その後をどうやって少しでも楽に支えるのかということでの話はありますけれども,子供を産むことが極めて大事であり,楽しいことである,その思いを小さな子供のときからどう育てていくか。もしこれができれば,ある意味では産むという行為を自然に簡単にできるようになります。
ところが,この間も話しましたが,日本は堕胎率が大変高い。特に,主婦の堕胎率が極めて高いのは,産まないと決定してしまうのです。そういう決定をするまでのことについて,人間が育ってからそうした大人になるまでの間の子育てというか,子供を産むことに対する啓蒙,支援というのでしょうか,そういうことが語られないのは残念だなと。これが,まず,残念な中の一つです。
それからもう一つは,学歴社会の中で,乳児期,幼児期,小・中・高・大学とあって,大学までがまさに子育てなのです。うちの子供はこういう大学に入れたいと思っても,そのためには莫大な金がかかる。この間もテレビを見ましたら,東大に入る人間というのは,ほかの大学に比べて,収入が高い家庭に生まれ育った子供だという実態があります。
それから,大人社会の中では,モラルの崩壊があって,希望を持てなくて死んでいる子供もいます。これをどうするのか。不公平社会が厳然として残っている中で,希望が持てるのか。こういうことも
次世代育成支援の中できちんととらえていかなければならない。たくさんの
子育て支援の中で,穴があって,その穴を一つ一つ埋めていかなければいけないのに,その中の一部しか埋めていないような気がしているのですが,それについてどう思うか。
もう一つは,5ページの図の説明の中で,スウェーデンが大きくカーブを描いています。1980年代に出生率が1回落ちて,それからもう1回上がり,また下がって,今回は少し上がっているのかなと思いますが,この変化についてご説明いただければありがたい。
◎吉岡 参考人 まず最初に,有給休暇について,罰則を適用してでもちゃんととらせるべきではないかというお話がありましたが,日本の企業の場合,いきなり罰則というところまではなかなか難しい状況にあろうと思っております。今回の
次世代育成支援対策推進法に基づく企業の計画の中でも,年次有給休暇の取得の促進も指針の中に位置づけて,ぜひ各企業の計画に掲げて取り組んでいただきたいし,そうした取得率なども,できれば各企業ごとに目標値を盛り込んで取り組んでいただければと考えて,近々お示しすることになりますが,企業の計画づくりのマニュアルでもそういったことを提示させていただきたいと思っております。
二つ目ですが,出生率の目標数値はなかなか難しいものがあります。これはそもそもの議論にもなりますけれども,やはり,産む産まないは個人の選択になる話でありますから,国家としてその目標値を決めるのはどうなのかという入り口の議論があります。
ただ,そうした中で,先ほど申したように,今,現実の子供数が理想の子供数に達しておりません。仮に,それが理想の子供数に達すれば1.53という数字になりますが,正直に言って,今の日本の出生率で今後2.1というような水準にすることはなかなか難しいと思います。1.7,1.8というところも難しいと思うのです。
いずれにしても,今,急激に少子化が進んでおりますから,それをいかに緩和できるかということだろうと思っておりますので,さまざまな政策を総動員して,できるだけ少子化の流れに歯どめをかける結果になればと考えてやっております。これは,諸外国でも,そうした目標数値はなかなか立てづらいとどこの国も言っておりますが,結果として少子化が改善されるような
取り組みを進めていかなければいけないと思っております。
それから,私どもがやっているのは一部の
取り組みではないかというお話がございました。おっしゃるとおり,そうだと思います。やはり,今のお話にもありましたように,将来に希望が持てる社会にならなければ,若い人たちは結婚して子育てしてとはなりません。希望がない中で,若いころから将来の年金が幾らになるか計算し出すようだと,結婚して子育てするという選択にはなかなかならないのではないかという議論もあります。そういう意味で,景気対策であったり,雇用対策だったり,いろいろなものが広い意味での
少子化対策だと思っております。
もう一つ,これは自民党の方から言われましたが,我々政府がやってきたのは
子育て支援という短期的なことであるけれども,やはり国家論,教育論,民族論的なことなど,もっと幅広い見地からの議論が必要ではないかというお話がありました。そして,自民党の中に少子化問題調査会が設置され,今,議論が進められております。そうした与党の動きなども見ながら私どもも対応を考えていかなければいけないと思っておりますが,そうした
取り組みを進めているところであります。
それから,スウェーデンの話がございました。このことはいろいろな文献にもよく書かれておりますが,
育児休業に関する制度を充実したときに少子化は改善しております。それから,EUに加盟するに当たって,たしか
育児休業給付だったと思いますが,制度をちょっと弱くしたときがありましたけれども,そのときに少子化が進んだという状況になっておりますので,両者にそういう因果関係があるのではないかということはいろいろな論文に書かれております。ただ,これは,もちろん明確に必ずそうだと言い切れる部分ではないのですが,そうした指摘はなされております。
◆堀川素人 委員 1990年ぐらいに上がっているのですが,これは,育児休暇というか,それがきちんととられるようになったときに上がったと考えていいのですか。
◎吉岡 参考人 詳細は忘れましたけれども,
育児休業の制度を充実させたときに改善して,その後,
育児休業給付に関してたしか金額か何かを少し低くしたことがあって,そのときに少子化が少し進んだというデータがございます。
◆堀川素人 委員 この辺でたしか政権が変わっていますね。福祉に対して強い支援をする政党と,そうではない政党ということで,めがねの関係なんかで僕は記憶がありますが,そのときの10年間の中で大きく動いています。それは,政権が変わったというか,僕もはっきり言えませんが,そういう中で
育児休業制度が大きく影響しているというふうに考えていいのですか。
◎吉岡 参考人
育児休業制度の影響があるのではないかといろいろ言われております。
◆堀川素人 委員 それから,さっきのお答えの中で,1.53という一応の目標みたいなものがあると言われました。そうすると,このまま行ったら6,000万人になるだろうと言われましたが,今の目標を達成すればおよそ幾らになるとお考えなのですか。
◎吉岡 参考人 私どもは,1.53というものを決して目標値として考えていないので,そういう計算は実はやっておりません。また,人口に与える要素というのは,別に
合計特殊出生率だけではなく,いろいろなことが要素として出てきますので,仮定の上に仮定を重ねて数字を出すのもいかがかなと思っております。
◆小谷俵藏 委員 私から,吉岡室長さんに少しお尋ねをしたいと思います。
段々のお話でもいろいろありましたが,まず一つには,幼稚園と保育園について,保育園は一定の基準による計算に基づいて保育料を出しておりますが,幼稚園は基本的にそういったことがありません。これは,保護者負担を中心としながらいろいろやっています。私は,保育園に通う子供と幼稚園に通う子供の兄弟の数でいくと,共働きなり,片親の場合等を中心にした保育園に通う子供の兄弟の数がむしろ平均を上回り,幼稚園の方が少ないと聞いております。
家庭で専門に子供を育てるのは,必ずしも就職をしたくないのではなく,なかなかそういう機会がない。むしろ,家庭で子供を守りながら何とか子育てに頑張っていこうという部分も非常に多いと思います。しかし,経済的には,やはり共働きに比較して厳しいということでこの現象が起きている。私は,やはりこの差をなくすように,それぞれ育児保障というようなものについては,できるだけ双方を見守りながら,見据えながら取り組んでいくことがまず一つ必要ではないかと思いますが,これらについてご見解をいただきたいと思います。
次に,現在の少子化問題は,今,本当に大変な時代に入ってきたと思っております。私は,こういった問題に取り組む場合に,応急的に取り組むべき問題と将来を見据えた恒久的な問題をきちんと分けて,まず,応急的なものについて,何かをすることによって少子化に何とか歯どめをかけなければなりません。少子化がどんどん進めば進むほど,いわゆる社会保障制度,とりわけ高齢者の年金などにストレートにかかわってまいります。直接,間接を問わず,やはり,生産年齢が高齢年齢を支えている現実を考えたとき,大変なことになってしまうと考えておりますが,このことについてもご見解をいただきたい。
もう一つは,少子化については,私は,経済面でももちろん多岐にわたっていろいろあろうと思いますが,それは従であって,主は意識の問題としてもっと違うところにあると思います。必ずしも,子育てが大変だから,できないから,子育ての仕方がなかなか難しい,わからないからというのではない。やはり,我は我,人は人という意識の中で,ここ数十年,今の社会が進んできたのではないか。そこで,いま一度,社会性という中でお互いにしっかりと手を携え,そして,将来を見据えて,社会をつくっていくための教育が必要だと思います。これは文部科学省の話にもなりますが,きょうおこしいただいております
厚生労働省も中心となって,これから,少なくともそういう意識の改革をしていかなければ恒久的には大変な問題ではないかなと思っております。まさに,少子化が続く限り,将来の社会保障制度はなくなってしまう。極端な論かもしれませんけれども,私はそう申し上げてみたいと思いますが,これについてのご見解をいただきたい。
◎吉岡 参考人 まず最初に,幼稚園と保育園のバランスみたいな話がありましたけれども,制度として,今,保育所には国の補助制度がありますが,幼稚園は今やほとんど一般財源化されています。ただ,国と地方を合わせて公費が1人当たりどのぐらい支給されているかを比較しますと,幼稚園の子供1人当たりも保育所の1人当たりも,3歳児以上であれば大体イーブンで,公費としては同じぐらいの額が出ていることになっております。
いずれにしても,私どもによる少子化への
取り組みは,どういうご家庭であろうと,ひとしく支援していかなければいけないという考え方に立っております。決して,女性のM字カーブの就業曲線を是正することが目的ではないと思っています。専業主婦のご家庭であれば,それに適したことをやっていかなければいけないし,共働きのご家庭であれば,それを支えることをやっていかなければいけない。それぞれの家庭のさまざまな事情に目配りした
取り組みを進めていかなければいけないと考えております。
もう一点は,応急的な
取り組みと将来的な
取り組みをしっかりと区分してやっていくべきだということは,おっしゃるとおりだと思っております。そうした中で,きょう,私がるる申し上げたことは,そういう意味では応急的な
取り組みであろうと思っております。将来的な話としては,私どもが研究しているのは育児保険的な仕組みであります。介護で介護保険ができましたが,やはり,子供の問題も社会全体として支援する仕組みをつくっていく,そのための選択肢の一つとして育児保険的な仕組みを考える必要があるのではないかと考え,既に研究会を立ち上げて報告をまとめております。
ただ,今の非常に大変な状況の中で,新たな企業の負担なり国民の負担を求めるのはどうかという議論もありますので,そこはいろいろな世の中のタイミングもあろうかと思います。私どもは,さらにそうした議論も深めながら検討していかなければいけないと思っております。
もう一つ,人の意識の問題はどうかというお話もありました。ある意味ではこれも将来的な問題の一つかなと思いますが,与党の先生方からは,これは政治の仕事だとおっしゃっていただき,役所の仕事ではないということで,自民党の中で調査会をつくってその議論ももう始まっております。そうしたところからのアドバイスもいただきながら,我々としてもやるべきことはやっていかなければいけないと思っております。
◆西村茂樹 委員 私の方から,1点だけ,吉岡さんにお聞きしたいと思います。
お二人の話の中に出ていましたように,これからの
子育て支援をどうするかということでは,一つは,保育所で子育てをしていくことと,もう一つは,専業主婦として子育てをしていくという二つの事柄がありました。8割の方が専業主婦で,子育てをしながら負担を感じ,その中で不安と閉塞感に大変苦しんでいるのが実態であるという話がありました。そして,もう一つは,保育所の方でも,働く中で保育所に通いながら子育てに苦労されているということで,子育ての支援にはこの二つがあると思うのです。
今の実態で言えば,保育所の場合に何が言えるかというと,申し込むときに保育に欠けるということで一つ限定されています。さらに,待機児童ということで,働いている人でもなかなか入れない実態もあります。しかし,少なくとも保育所にはたくさんの子供たちが集まっていて,預ける側も子育てという部分では安心感のある場所になっていることは事実です。そういう中で,潜在的には働きたくても,現実に働いていないから子供を預けられない,預けることができるなら働きたいという方々もいます。
そういった意味では,子育ての支援という面からは,今の保育所のあり方自体も門戸を広げた形になるように,もうそろそろ保育に欠けるという条件が撤廃されてもいいのではないかと思います。とりわけ,
子育て支援という部分では,この計画の中でも地域の身近なところでどんどんふやしていきたいという話が出ています。身近なところというと保育所でして,多いか少ないかは別にして,札幌市内には私立と公立を合わせて150近くあります。ですから,私は,そこがもう少し整備をされて,
子育て支援という意味では混在しながらやっていくことがいいのかなと考えます。
つくったはいいけれども,どうしてもそこに保育に欠けるという条項があると,専業の
皆さん方が保育所に足を運ぶことはなかなか困難になってきます。ですから,もっと機能的に保育所をつくるという意味で,保育に欠けるという条項が余り弊害にならないようなことがあってしかるべきなのかなと考えておりますが,いかがでしょうか。
◎吉岡 参考人 これは従来からある議論ですが,私どもは,保育に欠けるという要件について,例えば,仕事を探している人とか,あるいは,学校に行っている人も保育所に入れるということで,今,非常に弾力的な運用をさせていただいております。
ただ,保育所自体について,専業主婦家庭も含めて子供を預ける場所にするのがいいかということに関して言えば,保育のプロの人たち初め,有識者の皆さんもやはり反対されます。それは,まさしく,親の子育て放棄につながるのではないか,親のなまくらを助長させるのではないかという意見が支配的であります。結局,専業主婦の
お母さん方が困っていることは何かというと,いろいろな相談の場がないとか,あるいは,本当に大事なときに一時預かりできる場がないことですから,専業主婦のご家庭には本当に必要なサービスを
子育て支援事業として届けていくのが本筋だろうと思っています。専業主婦の
お母さん方まで子供を保育所に預けることになれば,自分は家でごろごろしていて,それを公費で全部見ることになり,本当に国民に皆さんのご理解いただけるかとなると,そこはなかなか難しいものがあります。やはり,本当に必要なところにしっかりとしたサービスをつくっていくということをやっていかなければいけないのではないかと思っております。
◆細川正人 委員 今のかかわりですが,長谷川さんから約8割の方が専業主婦というお話を伺いましたし,せんだっての懇談会でも,専業主婦の方に一人っ子が多い傾向があると言われました。では,共働きという形になっていったらと考えられるのかなと思うのですが,この数字からすると,実はそうでもないです。それぞれの国でも,それぞれによって来るところがありますから,なかなかそうはならないだろうと思います。
そこで,吉岡さんには,25ページから27ページの具体的な施策の中で,特に子育てをしているすべての家庭のためにということで,専業主婦向けには,一時預かりのサービスあるいはつどいの広場の設置の推進ということが掲げられ,また,再就職の促進も一つは考えられているのかなと思いますけれども,専業主婦層に対して,今後,さらにこういった支援をすべきではないかといったお考えがあるのかどうか,お伺いいたします。
また,長谷川さんには,とんとんひろばというようなことで4カ所開いているというお話を伺いましたが,専業主婦の方々に対して,本当はこういう支援があれば心配や不安を払拭できるのにというようなサービスについてお考えがあるのかどうか,そのこともお伺いしたいと思います。
◎吉岡 参考人 女性のライフコース別の平均子供数をまずご紹介したいと思いますが,就業継続型ということで,ずっと働きながら子育てをされている家庭の平均子供数は2.19人,それから,最初のときは家庭で子育てし,その後にまた就職される再就職型世帯での平均子供数は2.17人です。そして,専業主婦型が2.11人ですから,状況からしますと就業継続型で子供が一番多くなっています。ただ,10年前と比較しますと,就業継続型はかつては2.41だったのが2.19まで低下している,専業主婦の方も2.29であったのが2.11に低下しているということで,やはり就業継続型,専業主婦型の双方の対策をしっかりやっていかなければいけないと思っております。
とりわけ,ご指摘のありました専業主婦に対する
取り組みということでは,先ほどつどいの広場とか一時預かりの問題を言いましたが,全体像としては,43ページに各市町村における事業の体系図を掲げさせていただいております。ケース別に言いますと,一番左側にありますように,子育ての悩みや不安があってだれかに相談したい場合や子育て親子同士の交流を図りたいときには,つどいの広場や地域の
子育て支援センターが必要です。それから,育児困難な家庭への訪問支援の
取り組みとか,一時的に子供を預けることが必要な場合の
取り組みなど,こうしたサービスが,ニーズに合った分だけ,各地域で総合的に提供されることを目指すべきであろうと思いますので,私どもはそのための支援をこれから一生懸命やっていきたいと思っております。
◎長谷川 参考人 今,吉岡さんがおっしゃったことに加えまして,去年のアンケートを見ると,専業主婦の中には,子育て中でもひとりになる時間が欲しい,興味のあることを学習したい,体験したいという母親がいっぱいいます。きのう,札幌市の会議でいただいた資料にも,やはり余暇の時間が全く持てないという悩みが出ています。札幌市の児童家庭部が平成11年にとったアンケートでは,精神的,肉体的な負担が多く余暇の時間が持てないというのが男性では26.9%ですが,女性は45.7%あります。ですから,先ほど言いました気軽に相談できる場とか,本当に預けたいときに預けられることが必要です。今は,病気のときでさえ預けられません。そういう人間関係が
地域社会の中にはもうないのです。昔だったら,隣の人に預けてちょっと病院へと普通にやれていたことが,本当に普通にやれていないのです。今はそういうことがあって,預ける場所が必要です。
もう一つ,これからは,母親として生きる時間だけではなく,一人の個人として生きる時間,生活する時間を持つことも必要です。今の若い人を見ていると,一つのライフスタイルの中で,結婚して子供を産んで育てることを自分が選択したというふうに思っている人がいっぱいいます。選択したからこそ,一生懸命に子供を育てなければいけない,ちゃんと育てなければいけない,これが私の仕事だというふうに,昔よりももっと思い込んでしまう。いろいろな選択肢があるだけに,子育てを選択したことに対する負担感と責任感をより以上に持っているなと感じます。
だから,そういう選択をしても,なおかつ違う時間を持てるようにする。例えば,子供がある程度大きくなったときに再就職するためのスキルアップだったり,身近なところで言えば,区民センターで託児つきの講座があったり,料理講習会でも何でもいいと思います。まず,子供とちょっと離れて自分だけの時間を持つ,子供も親と離れた時間を持つ。小さい子の場合は,保育園に預けたり幼稚園に行ったり,また,つどいの広場も必要ですが,それだけでなく,プラス親と子供が別々の時間を持つことが日常の中にもっとあってもいいのではないかと思っています。
◆坂ひろみ 委員
次世代育成支援対策推進ということで,主に
子育て支援がメーンになっていると思いますが,ちょっと視点を変えて,子供の視点に立ったときに,今,子供たちをめぐるさまざまな問題があって,非行とかいじめ,引きこもり,不登校といろいろ出てきています。また,学校現場では,文部科学省が推進するゆとり教育の中で5日制や総合学習などが導入され,その反面で,文部科学省が方向転換をして学力低下を認めたり,さまざまなことが行われています。
ただ,根本的に学歴社会であるということでは,学力低下が指摘される中で
お母さんたちは子供たちを塾に通わせたり,経済的な負担の問題も出てきて,今の子供たちの教育環境を考えたときには,教育行政のあり方がどうかということも
少子化対策と全く無関係ではないと私は考えるのです。今の子供たちの教育現場をめぐるこうした文部科学省の教育行政のあり方は,
少子化対策という部分では各自治体がかかわるところではありませんが,国として
次世代育成支援対策推進法を決めるときに,こうした問題は議論の中に出てきたのかどうか,もし出てきたのであれば,子供たちの教育現場での環境問題と
少子化対策の関連性をどのようにとらえていらっしゃるのか,お尋ねいたします。
◎吉岡 参考人 今回,国の方では,地域で計画をつくられる際の行動計画策定指針というものを関係7省庁と一緒につくりましたが,その一つの柱が,まさしく教育環境の整備ということであります。具体的には,確かな学力の向上を図るためにどうするか,あるいは,豊かな心や健やかな体の育成のためにどうするか,信頼ある学校づくりのためにどうするか,そういった子供の生きる力の育成に向けた教育環境の整備ということも一つの柱にされておりまして,そうした考え方に基づき,各自治体の計画をつくっていただくということでそれぞれの地域の実情を踏まえた
取り組みをお願いしております。
そもそも教育の制度論的な話になりますと,今後,文部科学省でまたいろいろ議論しなければいけない問題だろうと思いますし,一つには,教育基本法の問題もあろうかと承知しておりますが,そうした中で改めて今の教育問題が議論されていくのかなと思っております。当然,
次世代育成という視野の中では,学校における教育環境の問題も含んだものとして各自治体の計画が進められていく必要があると思っています。
◆三宅由美 委員 25ページのすべての働きながら子供を育てている人のためにという中に,子育て期間における残業時間の縮減と書いてありますが,私は,厚生省と労働省が一緒になったことで,労働行政についてすごく期待を持ちました。また,26ページはすべての家庭ですが,上の方に特に専業主婦について書いてあります。核家族の中の専業主婦も問題ですが,さらに問題なのは,その家族の中で,子育ては主婦に一手に割り当てられ,家族の中で孤立していて,そのために不安感や抑圧感を持っていると思うのですが,今までのお話は,すべてそれを社会でどう見ていくかでした。そういう中で,私は,やはり父親が子育てにどうかかわっていくかという視点が非常に大切だと思いますが,それがこの中にのっておりません。また,残業は,過労死という言葉が国際共通語になるぐらい,10年以上も前から問題になっているのに,正社員である男性の残業時間は一向に減らないばかりか,かえってふえています。そうした残業時間の縮減は大変だと思いますが,
厚生労働省としてどう変えていくのかというのが1点目の質問です。
2点目は,不妊治療についてです。不妊治療が産めない方に対するプレッシャーにならないようにということですが,不妊治療を受けていても,産めるようになる方は大体30%ぐらいだと言います。長く続けることにより,非常につらい思いをする男の方も女性の方もいると思いますが,プレッシャーを感じないで済ませるような方策をどのように考えていらっしゃるか,2点についてお伺いします。
◎吉岡 参考人 最初の残業時間の縮減の話ですが,私どもは,今,労働基準行政の中で,サービス残業の撲滅についてかなり厳しい措置も講じてやってきています。そうした
取り組みはこれからもやっていかなければなりませんが,それに加えて,今回の次世代法の枠組みでは,子育て期の労働者の残業時間の縮減は,企業の計画づくりなどを通じて社会全体で進めながら実現していきたいと思っております。
また,この資料にないとおっしゃいましたが,25ページのすべての働きながら子供を育てる人というのは,女性だけではなくて男性の話でもあります。ですから,男性の働き方を見直すことによって専業主婦の子育ての負担感が軽減されていくということでご理解いただければと思います。
それから,2点目は,不妊治療の問題です。経済的な支援をやることによって,不妊治療を受けるプレッシャーが一層かかるのではないかという議論がよくありますが,それは経済的支援をするしないという以前の問題ではないか思っております。
ですから,そうした配慮は当然やっていかなければいけませんが,ある意味で不妊治療の制度をつくることによって,その配慮がさらに行き届くことになるのではないかと思います。こうしたことで,不妊治療への対応において配慮しなければならないことが,多くの人の共通認識を得られる機会にもなっていくのではないかと思っておりますので,そういうことに十分配慮しながらやっていこうと思っております。
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勝木勇人 委員長 もう時間が来ましたので,質問を終わらせていただきます。
本日,ご出席いただきました長谷川さん,そして吉岡さんには,心から感謝を申し上げます。おかげさまで,本当に中身の濃い充実した委員会になったと思います。
本日の成果につきましては,今後の委員会活動に生かしていきたいと考えているところでございます。
本当にありがとうございました。
以上で,委員会を閉会いたします。
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閉 会 午後3時56分...