そこで,右の上に「
札幌市の
水環境の現状と
課題」と書いたページでありますが,その中段ぐらいのところに「
水環境の現状と
課題」と書いておりまして,
水環境を考えるときに
三つの視点からとらえております。
一つは,(1)の水の流れ,
水量であります。
水量というところで見ると,
上流域の
河川はかなり豊かな
水量を保っています。それから,
河川の
中流域,
下流域でありますけれども,上流で水道として取水し,まち中で使って,下水に運ばれて処理して流れるというような格好になっておりますので,
水量が減ってきているというようなことであります。そこで,人々が憩う場としての姿が失われているところもあるということで,そうした憩いの場の創出といったようなことが
課題になっているわけです。それから,
地下水でありますけれども,やはり
地下水位が年々低下する傾向にあるということでありまして,これをとめることが
一つの
課題になっているわけです。
次に,
水質であります。まず,大きく
水道水源ということをとらえております。
水道水源の
水質は大変良好でありますけれども,
廃棄物の
不法投棄といったようなことも見られますので,その
水道水源を保全する
取り組みを継続して進めていく必要があるという
状況になっています。それから,
地下水であります。
札幌市の
地下水の
水質については,一部で
環境基準を超えているところがあります。そこで,
健康影響防止対策として,新たな汚染の
防止に向けた
取り組みが必要となっていることが
課題になっております。それから,
上流域以外の
河川水質ですけれども,これもおおむね良好な
水質になっております。しかしながら,
下流域の水源がなく流れが緩やかな
河川などでは
水質の改善が必要なところもある。また,
札幌市の場合には
合流式下水道が
整備されておりまして,この場合,雨天時に一気に雨水が下水に入り込んで,
処理能力を超える場合には処理されずに川へ流れるようなことがありまして,この対策が必要となっている
状況にあります。
それから,3番目は,
生物の
生息,あるいは,
水辺とのふれあいというところであります。
生物の
生息というところでは,多様な
生物がいるわけでありますけれども,一方で
生物が
生息しにくい
河川構造や流量となっているところも見られることから,こういうところの改善が
課題となっているわけであります。
それから,右の「
水辺とのふれあい」というところでは,
上流域においては豊かな自然が保全され,また
景勝地などもあって,貴重な
水環境を有しているという
状況にあります。それから,
中流域・
下流域にあっては,
住宅地で親水に配慮した
整備が進められているようなところもありますけれども,一方で,人が近づきにくい構造のために
水辺への関心が薄れて
不法投棄の場所になっているようなところもあります。
こういった
状況を踏まえて,左の「
計画の基本的な考え方」というところに書いておりますけれども,
三つの望ましい
水環境として,これは,今の
水量,
水質,
生物の
生息・
水辺との
触れ合いという
三つの視点からの
水環境像と,それに対応する九つの
水環境目標を掲げて,そのための施策を体系化するという形になっているわけであります。
今ごらんのところをさらに開いていただきたいと思います。
一番左の,「望ましい
水環境像1」に「豊かな
水量をたたえ,健全に水が
循環する都市」と書いております。これは,
水量をとらえた
水環境像でありまして,これに対応する
水環境目標を
三つ掲げてあります。
そこで,この
水環境目標のところでありますけれども,この中には長期目標というものが書いてあります。これは15年
計画でありますのでおおむね15年,あるいは,それを超えるという考えです。ただ,実際に
事業の進行管理をする上では,中期目標ということで,これは本書の中に書いてあって,ここには書いておりませんが,おおむね5年くらいの
事業を想定した目標と,そういう組み立てになっております。
それから,数値目標として掲げられるものは掲げるという考え方をとっておりまして,これが四つございます。中身を
説明させていただきますと,まず,「
水環境目標1 川に水の流れを取り戻す」ということであります。長期目標は,流れを失った川に水の流れを取り戻すということで,主な
取り組みとしては,
河川水などの導水,あるいは,水の有効利用の促進といったようなことで川の水の流れを少しでも取り戻していきたいという考えであります。
次に,目標の2は,「水生
生物の
生息に必要な流量(水深)に配慮する」ということであります。
河川の流量という見方をすると,大きくは景観,
水質,
生物の
生息環境などにかかわってくるわけでありますけれども,ここでは,魚類が
生息,移動できる流量,あるいは,水の深さ,水深の確保を目指してみたいということを長期目標にしております。主な
取り組みとしては,水源の保全ということで,例えば水源涵養林の保全とか,そういう水源の保全,それから,
生物に配慮した
河川整備の推進といったようなことを掲げております。
次に,目標の3ですが,「
地下水位の低下を止め,
地盤沈下を
防止する」ということです。ここでは,長期目標は,
地下水涵養量の増加と揚
水量の削減により,
地下水収支の均衡を図るという目標を掲げております。具体的な数値目標として,
平成12年度の
地下水揚
水量の4,000万立方メートルを基準として,年間揚
水量を700万立方メートル削減するという目標を掲げております。具体的な
取り組みとしては,
地下水使用の適正化,あるいは,
地下水涵養の促進というようなことを掲げております。
次に,
水質に着目した
水環境像で,「安全できれいな水を有し,安心して生活できる都市」ということに対応させた目標を四つ掲げております。
一つが,「
水道水源の
水質を保全する」ということです。長期目標は,
水道水源の現状の良好な
水質を維持し,さらに
水質の向上を目指すということで,主な
取り組みは,水源の保全,あるいは,監視体制の充実というようなことを取り上げております。
次に,「公共用水域における
水質目標値を達成・維持する」ということです。長期目標は,
水質汚濁物質の
排出量を削減し,
水質目標を達成するということで,
環境基準などの達成率を100%にするという数値目標を掲げております。主な
取り組みは,下水道の
整備,汚濁排出源の対策等でございます。
それから,「雨天時に公共用水域に排出される汚濁負荷量を削減する」ということです。長期目標は,
合流式下水道からの降雨に起因する排出汚濁負荷量を削減するということで,ここでは,そのための合流改善
施設の
整備の前後でおおむね2割程度の汚濁負荷量を削減するという数値目標を掲げております。主な
取り組みは,
合流式下水道の改善,それから,面的汚濁負荷の削減の検討といったことを掲げております。
それから次に,「新たな
地下水汚染を
防止する」ということです。長期目標は,有害物質の適正な管理によって新たな
地下水汚染を
防止するということで,数値目標は,有害物質取扱
事業場における新たな
地下水汚染を起こさないということにしております。主な
取り組みとしては,有害物質対策等で,実は生活
環境確保
条例がこの2月に施行されておりますけれども,この中でそういう規制を既に講じているところであります。
次に,「水や緑や
生物などの自然と人がふれあい,うるおいと安らぎが感じられる都市」として,二つの目標を掲げており,
一つは,「
地域で親しむことができる
水辺を創出し,維持する」,もう
一つは,「
生物が
生息できる
水辺を保全・回復する」ということであります。
まず,親しむことができる
水辺の創出のところですが,その裏をめくっていただきたいと思います。
表表紙のすぐ左側の上の方に「
地域別の
水環境」と書いてあり,実は,
札幌のエリアを
地域区分と流域区分で分けております。点々で囲ったところですけれども,流域としては豊平川流域,新川・星置川流域,茨戸川流域の
三つに分け,
地域の区分は山地系
緑地,
住宅地域,都心・都心
周辺地域,平地系
緑地と,これを重ねて全体を11の
地域に区分しております。
ここにそれぞれイメージ的なものを載せておりますけれども,
計画書本書の中では,
地域の概況,
水量,
水質,
水辺,それからどんな
生物がいるか,また,協働の
取り組みとして,公共主体の
取り組み,あるいは,
地域主体の
取り組みはどんなことが進められているかということが
計画書の中に紹介されております。
ここで,またさっきのところにお戻りいただきたいのですが,
水環境目標の8のところでは,長期目標に,「人々が
水辺とふれあい,親しむことのできる
地域を広げていく」というようになっております。ここでは,
地域の目指すべき
水辺像というものを設定して,それを創出していく。そして,そこをできれば
地域住民が主体となって決定して進められると望ましいと考えております。そのときに,先ほど紹介したようなことを見ながら,それぞれの実情に合わせて設定をしていく,その上で親しめる身近な
水辺の創出でありますとか景観の保全といったことをやられていく,そういう
取り組みを進めたいということであります。
それから,最後は,「
生物が
生息できる
水辺を保全・回復する」ということです。長期目標は,
地域の住民が主体となって身近な
生物の
生息環境を保全するとともに,
生息できる
環境の場を広げていくということで,
生息環境の情報の収集・発信,あるいは,その保全といった
取り組みをしていくということであります。
大きく言うと,こういった目標を掲げて施策を体系化しているわけであります。
次に,一番右のところでありますが,実際に進めていくに当たっては,協働による
水環境の保全ということが重要になってまいります。
そこで,一番右上のところに,「協働による取組みの方向性」と書いております。ここでは,やはり,
市民意見の把握と,それを施策に反映していくということが大変重要になってきます。そのため,模式的に「これまでのしくみ」「これからのしくみ」と書いておりますけれども,これまで,
市民意見というのは,例えば連絡所や区役所を介して担当部局へ上がってくる,あるいは,
市民の声を聞く課というようなところを通じて上がってくるということがありますが,こういったものは当然,継続・発展をしていくわけであります。さらに加えて,これからの仕組みということで,本年9月1日にオープンした
環境プラザですが,これは情報の集まるところでありますので,そういうところでの情報交換,それから,
環境局が調整窓口となる関係部局連絡会議といったようなものを設けていきたい。それから,関連組織との連携を図っていくことと同時に,場合によっては
市民の方と意見交換会といったようなことも実施しながら,いろいろな意見,要望を施策に反映する仕組みにしていきたいという考え方であります。
それから,その下の「啓発,情報交換,
環境教育のあり方」ということで,やはりここに
環境プラザが出てくるわけでありますけれども,下に模式的な絵がかいてあります。グレーの楕円のようなところに,
環境プラザ,
環境局というのがあって,その上の方でホームページとかその他広報さっぽろ等で情報発信をしていきますと。それが,
市民,町内会,PTAその他の団体に情報が行き,そういうところとの情報交換が
環境プラザあるいは区役所といった場で展開され,さらに,関係部局,関係行政機関,それから
北海道の組織である
環境サポートセンター,あるいは,市の
市民活動サポートセンターといったところと連携を強化して情報を共有化し,その中で,
環境教育の推進,あるいは,保全活動のすそ野を広げていくといった進め方をしたいという考え方であります。
最後に,一番下の
計画の進行管理のところでありますけれども,
札幌市という四角い箱がありまして,ここで目標達成に向けた
取り組みをしていきます。それから,その右の方に
市民・
事業者とありまして,ここも「目標の達成に向けた取組み」と書いてありますが,このときに情報を共有し,意見交換をしながら進めていきましょうと。その下の関係行政機関とも必要な連携を図っていく。
札幌市のところでは,達成に向けた
取り組みをし,その
内容の
調査,把握を行い,達成
状況を評価し,
計画の進行
状況を公表していく,こういったことを毎年進めていきたいと考えております。それから,新まちづくり
計画などのいわゆる中期
計画の策定時にこの全体の見直しをしていきたい。大きくは,このような考え方で進めていきたいと考えているところでございます。
○
近藤和雄 委員長 それでは,
質疑を行います。
◆猪熊輝夫
委員 水環境目標の6番で分流式に劣らない程度で雨量が増したときの合流式での対処というようなことが3行の中に凝縮して書いてありますが,自信を持って書いているのか,これから研究するということで書いているのか,期待と不安で
質問します。
◎原田
環境活動担当部長 ここの数値目標に掲げておりますように,合流改善
施設の
整備前後で2割程度の汚濁負荷の削減はできると所管している下水道局の方で言っておりますので,こういう効果は期待できると思っております。
◆猪熊輝夫
委員 それから,これは,とりあえず,安心して水と親しむという前提を強調した感じになっていますね。全体の流れでは,一たび水が暴れたらどうするかという側面には余り触れていない。資料としてはありますけれども,治水という点です。
国有林,里山を含めて,いわゆる水道水の涵養林の保全ということはうたっているけれども,山全体の水の保水力を低下させないような形での対策が大もとにあって,里山から都市のこの辺はどうなるのかという形について
一つ一つ具体化されていくということは
理解しているつもりなのです。しかし水道水の涵養林だけは少し触れていますが,その大もと対策みたいなものは,具体的に触れていないような気がするのです。それは,別なエリアで考えられていて,これとセットになったらすばらしい
計画案になるのだということなのか,あるいは,実はそこはあえて触れておりませんということなのか,それはどうなのですか。
◎原田
環境活動担当部長 今のところは,確かに水源の涵養ということでありますが,それだけではなくて,この
水環境目標でいきますと,「豊かな
水量をたたえ」という
水環境像の目標2で,これは流量の話をしておりますけれども,主な
取り組みの中に水源の保全ということがあります。これは,必ずしも
水道水源だけではなくて,降ってきた雨は,森林があることによって土壌に蓄えられ
地下水に涵養され,それがまた地表に出てくるという大きな
循環がありますので,お話しのとおり,そこのところの対策が一番重要だと認識をしています。
ですから,施策として行おうとすると,
市民の森
事業でありますとか,できるものは買収していくようなことがありますけれども,できるところからそういうことを行っていくようなことになろうかと思います。
◆猪熊輝夫
委員 今の
説明だと,従来型ですよ。要するに,里山の買えるところは買う,あるいは,市有林としての山づくりというようなことで。
そこで,協働型という形でうたい上げながら,国有林にも,涵養林というか,水道水を安全に確保するという点で,それは国有林だけれども,その部分は
札幌市水道局が流域設定の中で一定程度の発言力や行動はとれることになると思うが,それ以外の部分に対しても,
下流域にある住民あるいは自治体が,相当の意識をした形で施策の具体化をせざるを得ないところまで,現状としてなっているという気がしてならぬのです。なぜかというと,例えば定山渓の国有林というのは,今から20年前は300人以上の人がいて維持管理を含めて守られていました。今,現実は10人いませんよ。そうしたら,短時間で
水量がどんとふえたときに,林道などは大変な状態になっています。そういうことを含めて,山の維持管理というのは大変なことになっている。
少し前のテレビ放映で,ある雨量に達したら
札幌市内はどうなるかということをシミュレーションで放映したことがありました。僕はたまたま見たのですが,テレビ塔の付近まで水がどっと押し寄せる映像です。そういうことを含めて,
札幌ではどの程度の
水量になったときにどのような
状況になるかということを想定して,その対応として,何をしなければならないかということの押さえをしっかりする。そして一方では,日常的にこういった
水辺空間や水と親しむというような政策も行っていくということがあって,
水環境に対する施策としては充実していくと。まだ一面的かもしれませんけれども,こういう政策というのはそういったことも含めて具体化すべきではないかという思いがあるのですが,どうでしょうか。
◎原田
環境活動担当部長 少なくとも,安心して生活できるということが重要でありますから,災害を受けないという対策は一番の基本になると思います。
ただ,一番初めに
委員がお話しされたとおり,
水環境計画という本書の中で治水について触れております。既にごらんになっておられると思いますけれども,治水対策というのは当然やらなくてはいけないことなので,その場合にもここにのっているように
環境に配慮するという組み立てで考えられています。ですが,今のお話のように大もとのところの対策は当然必要になると思いますけれども,この
水環境計画の中では,治水というのはその前段にあるものという位置づけをしておりますので,具体的にどうしてというような今の議論は,残念ながらしておりません。ただ,そこのところは,
河川管理者もこの中に入っておりますので,そういう視点から必要なことは行っていく必要があると思います。また,水源涵養林については,これは主体が国になりますけれども,こういう考え方の中で,必要な要請あるいは協力をお願いしていくようなことになろうかなというふうに思っております。
◆猪熊輝夫
委員 治水といったら護岸というような感じのところが強いのですよ。だから,山づくりというか,保水力というのがとても意味合いのあるものだという形で押さえて,そこに
下流域の
市民がどうかかわるか,かかわっていかねばいかぬが,それを協働型でいこうと。そして,国有林を初めとする山の所有権を持っている部分と連携をとりながら,国有林だから国有林野
事業に任せるだけではなくてみずからやるというようなことを含めて,これからは展開が必要になるのではないか。任せておいたら大変な山になってしまいますから,そういう危機意識があるものですから,あえて発言をさせていただきました。
すばらしい方針を立てられたという前提で発言をさせていただいていますので,どうもならぬというようなとらえ方だけはしないように,意見を申し上げて,終わります。
○
近藤和雄 委員長 ほかに
質疑はありませんか。
(「
なし」と呼ぶ者あり)
○
近藤和雄 委員長 なければ,
質疑を終了いたします。
以上で,本日の
環境消防委員会を閉会いたします。
──────────────
閉 会 午後1時55分...